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1971-01-28 第65回国会 衆議院 大蔵委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和四十五年十二月二十六日)(土 曜日)(午前零時現在)における本委員は、次の通 りである。    委員長 毛利 松平君    理事 上村千一郎君 理事 藤井 勝志君    理事 村上信二郎君 理事 山下 元利君    理事 広瀬 秀吉君 理事 松尾 正吉君    理事 永末 英一君       宇野 宗佑君    奥田 敬和君       木野 晴夫君    木部 佳昭君       木村武千代君    佐伯 宗義君       坂元 親男君    田村  元君       高橋清一郎君    地崎宇三郎君       登坂重次郎君    中島源太郎君       中村 寅太君    丹羽 久章君       原田  憲君    福田 繁芳君       坊  秀男君    松本 十郎君       森  美秀君    吉田 重延君       阿部 助哉君    中嶋 英夫君       平林  剛君    堀  昌雄君       美濃 政市君    八木  昇君       貝沼 次郎君    伏木 和雄君       古川 雅司君    春日 一幸君       竹本 孫一君    小林 政子君 ――――――――――――――――――――― 昭和四十六年一月二十八日(木曜日)     午後四時七分開議  出席委員    委員長 毛利 松平君    理事 藤井 勝志君 理事 村上信二郎君    理事 山下 元利君 理事 広瀬 秀吉君    理事 松尾 正吉君       宇野 宗佑君    木野 晴夫君       木村武千代君    坂元 親男君       地崎宇三郎君    中島源太郎君       中村 寅太君    原田  憲君       坊  秀男君    松本 十郎君       森  美秀君    吉田 重延君       阿部 助哉君    佐藤 観樹君       堀  昌雄君    貝沼 次郎君       古川 雅司君    小林 政子君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省主計局次         長       橋口  收君         大蔵省主計局次         長       佐藤 吉男君         大蔵省主税局長 細見  卓君         大蔵省証券局長 志場喜徳郎君         大蔵省銀行局長 近藤 道生君         大蔵省国際金融         局長      稲村 光一君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総裁佐々木 直君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ――――――――――――― 委員の異動 昭和四十五年十二月二十六日  辞任         補欠選任   美濃 政市君     佐藤 観樹君   八木  昇君     藤田 高敏君   竹本 孫一君     西村 榮一君     ――――――――――――― 一月二十七日  塩専売制度存続に関する請願浅井美幸紹介)  (第一号)  映画等入場税減免に関する請願津川武一君  紹介)(第二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  国の会計税制金融に関する件(財政金融の  基本施策)      ――――◇―――――
  2. 毛利松平

    毛利委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  国の会計に関する事項  税制に関する事項  関税に関する事項  金融に関する事項  証券取引に関する事項  外国為替に関する事項  国有財産に関する事項  専売事業に関する事項  印刷事業に関する事項  造幣事業に関する事項の各事項につきまして、今会期中国政に関する調査を行なうため、議長に対し、国政調査承認要求を行なうこととし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 毛利松平

    毛利委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  4. 毛利松平

    毛利委員長 次に、小委員会設置に関する件についておはかりいたします。  先刻の理事会で協議いたしましたとおり、それぞれ小委員十四名よりなる税制及び税の執行に関する小委員会金融及び証券に関する小委員会財政制度に関する小委員会を設置することとし、各小委員及び小委員長は、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 毛利松平

    毛利委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、小委員及び小委員長は、追って公報をもって指名いたします。  なお、委員辞任に伴う小委員及び小委員長補欠選任、小委員及び小委員長辞任の許可並びにその補欠選任につきましては、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 毛利松平

    毛利委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  7. 毛利松平

    毛利委員長 国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  まず、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  金融に関する件について、本日、日本銀行総裁佐々木直君に参考人として委員会出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 毛利松平

    毛利委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。     ―――――――――――――
  9. 毛利松平

    毛利委員長 この際、財政金融基本施策について、大蔵大臣より説明を求めます。福田大蔵大臣
  10. 福田赳夫

    福田国務大臣 通常国会がいよいよ再開となりまして、いろいろな事案につきまして御審議をお願いをする、それに先立ちまして私の財政金融に対する所見を申し述べたいと存じます。この私の考え方につきましては、整理をいたしまして、所信表明として印刷したものをお配りしてあります。これは過日、本会議において私が申し述べました財政演説と大体において同じなんです。したがいましてそれを朗読することを省略さしていただきまして、二、三、私が特に感じておる点について申し上げさしていただきます。  第一の問題は、当面の経済運営に関する点であります。  私は、本会議においても申し上げましたが、ここ数年間のわが国経済動きにつきましては深くこれを憂えておったのであります。つまり、これはたいへんな勢いである。昭和四十一年暮れから始まりました景気上昇、四十二年になりますと実に一三%をこえる成長であった。四十三年に至りましてもそのような傾向が続く。しかもそれがさらにはね上がるという傾向であります。四十四年度、これは結果におきましては一三%成長を切るようなことになりましたが、これは途中で金融調整政策がとられた影響が出ておると思います。しかし、あの勢いを放置しますとだんだんと成長勢いが加速化される傾向を私は看取いたしたのであります。一昨年ぐらいな時点に立ちまして、その翌年、つまり昨年になりますと、この年を展望するとどうも一四%成長というような高い成長が実現されそうだ。そういう状態が続きますと、これはたいへんけっこうなことには違いありませんけれども、実はけっこうなことが実現できない。なぜかというと、これを制約する諸条件というものがあるわけです。  これは申し上げるまでもなく、第一は何といっても資源の問題であります。一四%成長が続くというようなことになると、約五年間でわが日本経済のスケールがまた倍になる。四つの国土の上におきまして生産される品物がまた倍になるということなんです。さなきだにいま資源入手につきましてはそう容易な状態ではございません。それが五年後には倍になるんだというようなことになった場合に、資源入手がはたして可能になるかどうか。いま太平洋、大西洋あるいはインド洋をたくさんの船が行き来をしております。その行き来をしておる船の状態を見ましても――つまり荷動きです、そういう状態を見ましても、わが日本資源に不足しておるという状態が非常にはっきり出るのです。経済一等国は何といってもアメリカでございます。また二等国はソビエト・ロシアかと思いますが、これらの国々に比べて根本的に違う点は、わが日本資源がない、国内資源というものがほとんどない、こういう点です。最近の統計を見ましても、石油につきましては一三%がわが国に船で運ばれる。また鉄鉱石につきましては三九%、さらに石炭につきましては五〇%がわが国に運ばれる。そういう状態であります。これをトンキロで直しますと、非常にこれは片寄った数字が出てくるわけでありますが、石油については約二〇%が日本向け、また鉄鉱石につきましては五六%、また石炭につきましては実に七七%だ。そういうように資源のほとんど全部を海外に依存するという状態でありまするから、これはどうしても売り手市場ということになり、皆さんも御承知のように、昨年の秋にはもうアラビアの石油は値段を上げておる。あるいは船賃はどんどん上がっていく、こういうような状態です。また原料炭入手のごときも今日すでにもう非常な逼迫を告げておる。これが五年間で倍のものが調達できるか。これはもう非常に困難なことではないかと思います。  そればかりではない。かりに万一それが入手できまして国内に運ばれる、そうしてそれを生産するというようなことになりました場合にどうなるか。生産がされ製品化された場合に、それを流通市場に乗っけることはこれはできません。道路の輸送力は倍にならぬ。あるいは国鉄の輸送力は五年で倍にはなりません。そういうようなことからすると、できた品物は倉庫にうずたかくたまっていくということにならざるを得ない。この輸送力というものに制約が出てくる。  一番問題は、何といっても私は労働力だと思います。いま企業におきましては、近代化合理化省力化が進んでおる。したがいまして、五年間に日本生産が倍になるという場合に倍の工場労働力が必要であるかというと、私はそうはならぬと思いますが、しかし倍に近い労働力は必要になってくる。この労働力をどこから求めるか。わが日本労働事情は、ドイツやイギリスのような超完全雇用状態の国に比べますると、比較的には楽な状態にありまするけれども、五年間に二倍近い労働力をさらに追加する、これはとうてい不可能である。そういうような状態になれば一体どうなるかというと、これは人手の取り合い競争が始まります。また賃金引き上げ競争が始まる。そして賃金物価との間に急速な悪循環が始まってくる。そういうようなことを通じまして非常な混乱状態が出てくるんじゃないか。  ですから、いまそれにもかかわらずこの数年間の動きというものは、五年間で倍になるための設備投資が行なわれておったわけでございまするけれども、しかしこれは五年間で国の経済力を倍にする、こういうことにはならないで、一、二年にして壁に突き当たる。壁に突き当たって鼻血を出すというぐらいななまやさしい状態ではなくて、これは脳天を打ち割る、こういうような状態になりはしないか。そういうことを深く憂えまして、一昨年秋から景気調整政策をとった。金融引き締め政策を主軸としたわけであります。その推移を見ておりますると、だんだんと浸透してまいりまして、はっきり去年の秋から景気鎮静化というものが見られるようになった。  さて、そういう状態が今日続いておるわけでございますが、その時点に立ちまして、今後の財政金融政策をどういうふうに運営していくか。  私は大観してみまして、昭和四十五年度、この年度の上半期におきましては、金融調整政策効果も出てまいりまして、一昨年に比べると成長は鈍化してきておると思うのです。まだ詳しい統計表は出ておらぬ。ですからこれははっきりした数字を申し上げるわけにはまいりませんけれども、大体一二%成長というところにきたんじゃないかというふうにいわれておる。これがまあ通説であります。さてそれじゃ下半期状態はどうなっているのだろうか。下半期というのは申し上げるまでもなく十月からことしの三月に至る期間でありまするけれども、その鎮静化勢いはだんだんと進みまして、そして三月の時点ごろではかなり落ち込んだ状態にいくのではあるまいかというふうに見られておるのであります。一体その下半期の平均がどういうふうになるか。これはまだ経過中の問題で、見通しをすることにあまりに大胆かと思いますが、しかしだんだんと下がって、この三月という時点、これはかなり落ち込んだ状態になっておるんじゃあるまいか、そういうふうに見るのであります。  私は、景気過熱をまたぶり返しちゃ困る。これはもう日本経済混乱への道に向かうというふうに思います。これは絶対に避けなければならない。しかし同時に、景気が急激に落ち込みまして国民の士気を阻喪させる、こういうようなことがまたあっては相ならぬ。この時点に立ちますと、どっちかというと、景気過熱がぶり返すという心配よりは、むしろ景気が落ち過ぎて全国に沈滞の気分がみなぎる、そういう状態が出てきはしまいかということをおそれているのであります。そういうことから財政金融政策運営というものが非常に大事になってくる。  この大事な使命をになった財政金融政策、これはこれからの経済動きを深く注意をしてまいらなければなりませんけれども、その動きに応じて機動的、弾力的な対策をとるということを主眼としなければならないのじゃあるまいか、そういうふうに考えておりまして、当面する四十六年度予算もそういう経済運営に対する機動性ということを旨として編成をいたしたわけであります。  すなわち、従来大体において予算編成予算の性格、そういう考え方を三百で表現します場合に警戒という字が入ってきたわけでありますが、四十六年度におきましては警戒の字をとったのであります。そしてこれにかわるに機動という字を加えた。そして中立機動型と称したわけであります。したがいまして、財政の規模は、四十五年度の伸び幅に比べますと、四十六年度におきましてはこれをやや大き目にしております。  その上さらに、予算数字には出てまいりませんけれども、念のため景気に対しての安全弁を備えておいたほうがよかろう、かように考えまして、政府保証債発行権限、また政府金融機関、つまり八公庫の貸し出しを増額し得るために原資としての借り入れ権限を拡大する、あるいは政府債務負担行為、との権限を拡大しておくなどの措置を講じようといたしておるわけであります。これは、それらの措置全体とすると大体八千億くらいになります。これはGNPの一%に当たるわけでありますが、大体これだけのものを持っておれば景気の下ざさえ、これには事欠くことはなかろうと私は考えております。財政を軸といたしまして、過熱もなくまた落ち込みもない、安定した経済状態、つまり大体一〇%くらいということを目標にしておりますが、その辺の経済状態を実現をさせたい、かようなことを考えておる次第であります。  景気過熱時におきましてこれを冷やす、抑制する、そういう際には金融政策が大きくものを言う。しかし景気下降期沈滞期におきましてこれが下ざさえをする、あるいはこれが浮揚の役割りを演ずる、そういう際にはどうしても金融は受け身になりがちであります。やはりそういう際には財政が一役買わなければならぬ、こういうふうに考えまして、特にこの際、財政政策運用につきましては、慎重の中にも機動性を持ちました運用をしなければならない、かような考え方をいたしておるわけであります。そういう基本的な考え方をいたしておるということを御理解願いたいのであります。  それから第二に私の念頭にあります問題は、国際社会におけるわが国経済姿勢という問題であります。  いま、皆さんも御承知のように、世界じゅうスタグフレーションという風が吹きすさんでおる。最もその典型的なものはアメリカかと思います。アメリカでは一昨年の正月、ニクソン政権が成立をいたしまして、そしてジョンソン時代以来のインフレを克服したい、そういうようなことから、金融量的規制というものを強力に打ち出したわけです。つまり、全体を見ておりますと、一昨年アメリカにおきましてはほとんど通貨供給量というものをふやしておりません。これは実にきびしい、われわれには想像もできないようなきびしさを持っておるものであります。わが国は、金融引き締め引き締めとは申しておりますが、とにかく通貨供給量引き締め下においても一六、七%はふえておった。それに比べますと実は想像もできないようなきびしさを持ったアメリカ政策でありましたが、これはそれだけのきびしさがあるだけにすぐ効力をあらわしまして、一昨年の暮れごろから沈滞状態がだんだんと浸透してまいったようであります。つまり、アメリカにおきましては失業率というものを非常に重視するのでありますが、失業率四・五%を危機ラインというふうに呼んでおります。その危機ラインを突破しようという勢いである。越えて昨年の春ごろになりますとその危機ラインを軽く突破して五%というような高い失業率になる。私は、ニクソン政権は非常に驚いただろうと思う。失業者は出る、倒産、破産は相次ぐ、しかも、そういう際には必ず物価が下がるものでありますけれども、物価は逆に上昇を続ける、こういうような状態である。  そこでアメリカ政府としましては大きな方向転換をしたのじゃないかというふうに見られる。つまり、引き締め政策から転じまして金融緩和政策を採用するようになる。まず量的な規制の解除を始めたわけです。そうしてしばらく推移をする。それでもまだ効果はあらわれてこない。そこで昨年の暮れごろから二カ月半にわたって、実に四回の公定歩合の引き下げを行なうということまでいたしました。まだたいした効果もあらわれない。しかも物価はどんどん上がっておる。つまり典型的なスタグフレーション、不況の中の物価高です。ヨーロッパ諸国におきましても大同小異であります。  そういうさなかにおきまして、わが日本経済はどうだろう。アメリカにおいてあるいはヨーロッパにおいて、特にアメリカにおいてはGNPは横ばいで、昨年一年だけをとってみるとGNPがマイナスになっておる。ヨーロッパ諸国においては一、二%、多いところで四%ぐらいの成長だ。わが日本はそれらの先進諸国の中におきまして実に一〇%がらみの成長を続けておるわけなんです。まあ、下がった下がったと言うが、そういう成長路線をばく進をしておる。  わが日本におきましても、消費者物価上昇が見られるわけであります。しかしアメリカヨーロッパと違う点が一つある。これは何かというと、これらの諸国におきましては、消費者物価が上がりますけれども同時に卸売り物価がまた上がっておる。わが日本におきましては、消費者物価先進国並みに上がります。上がりますけれども、卸売り物価は微動もしないという状態なんです。これはまた経済原則に反するわけです。高度の成長をすれば卸売り物価は上がるものだ、その上がるものだという中において、わが日本では卸売り物価が安定しておる。  それからもう一つ他先進諸国と違う点があるのです。それは国際収支です。景気が悪くなれば国際収支が改善される、そういうものでありますから、欧米諸国においては国際収支が大いに改善されていいはずだ。ところが国際収支もまた改善されない。特にアメリカのごときは非常に弱っておる。わが日本は高度の成長をなし遂げておる。しかも、一〇%をこえるような成長であるにもかかわらず国際収支は非常に好調であり、ますます好調であるといってもいいような状態です。そういう状態下におきまして、わが日本外貨保有高が漸増をしております。昨年一年間で九億ドルをふやしまして、今日では四十四億ドルというふうになっております。四十四億ドルになったからといって他の国に比べて必ずしも高い水準とは言いません。言いませんけれども、その背景にある国際収支、これは非常にいいのです。どの国よりもわが国国際収支はいいというような状態です。  そういうような、先進諸国の中では非常に飛び抜けていい立場にあるわが日本経済であります。これは世界諸国から、いいにつけ悪いにつけ非常に注目をされる日本経済となったわけであります。その点が問題だ、私はこういうことを申し上げたいのであります。つまり、わが日本はそういうさなかにおいて世界じゅうから期待をされ、あるいは低開発国からは経済協力期待をされる日本国になったわけです。しかし同時に、先進諸国からはわが日本国際経済に臨むマナー姿勢、これが大きく問われる日本になったわけであります。  私どもはいま資本の自由化、この計画を進めております。また輸入制限の撤廃、これも計画的に逐次実行しつつあるわけであります。また低開発国援助につきましても、GNPの一%というものを目ざして逐次これを拡大しつつあるというような状態であります。が、特に貿易の面、輸出の面におきまして、これが秩序正しく、諸外国に対しまして大きな刺激を与えないような姿勢、こういうものが特に要請されるのではあるまいか。また、既定の路線で進んでおるもろもろの自由化の問題にいたしましても、これが着実に実施され、その施策の内容につきましても諸外国から評価されるような形の自由化、こういうものが期待されなければならぬと思います。  そういう点を着実にやっていくということ、そういうことがないと、諸外国から国際経済社会の中において何か孤立したような立場になってくるような傾向が始まってくる、あるいはそれが高まってくるというような状態になりはしないか。私は、国内経済運営の問題も大事な問題でありますが、これと並んでわが国国際社会に臨む姿勢、これに十分心してまいらなければならぬ、かように考えております。  特に私が申し上げたいのはその二点でありますが、そういう二つの点を踏まえましてこれから財政経済運営に当たっていきたい。そして、それらに関連したいろいろな法律案、これは十九件あります。また議決案件もお願いしてあるものが一件あります。二十案件につきまして今国会では御審議をわずらわすわけでありますが、御協力のもとに、超高度成長という危険な形から安定成長路線というものが確立できるということになりますると、私は、わが日本の前途というものは洋々たるものになってくるのではないかということを考えるわけであります。  いま当分、何といっても第三次世界大戦なんというものは考えられない。これまで、また戦前は、軍事力背景として世界に向かって発言をするという国際社会であったわけであります。しかし、第三次大戦というものがなかりそうだというような今日の情勢におきましては、軍事力は全然ものをいわないという世界情勢でもないと思いますけれども、だんだんと経済国際社会という世界になってくるのではあるまいか、そういうふうに思います。私は、経済を着実に伸ばしていく、そうして内はりっぱな福祉社会を実現する、外は国際社会から信頼され期待されるようなマナー、これを貫き通すということになりますると、ほんとうに生きがいのある日本国というものを建設し得るのじゃあるまいか、そういうふうに考えております。  いろいろお願いする案件がたくさんあるわけでありますが、さような考えでやっておりますので、御理解を賜わりまして、何とぞ御協力のほどをお願い申し上げます。(拍手)     ―――――――――――――
  11. 毛利松平

    毛利委員長 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。阿部哉君
  12. 阿部助哉

    阿部(助)委員 この前は本会議財政演説、またただいまは所信表明をお伺いいたしまして、大臣はたいへんに、日本経済の今日までの運営、そのことについて誇らしげにお話をされたのでありますが、確かに大企業の側から見れば私はそのとおりだと思うのであります。しかしまた、勤労者の立場から見ればここに幾つかの問題があろうと思うのであります。  その点、時間の制約もあって数多く触れることはできませんが、まず、今度の予算機動的中立型予算だ、また機動的に運営するのだ、こうおっしゃるのでありますが、私は、これは別な面から見ればたいへんおそろしいことだと思うのであります。機動的だ。そうして今度は国会にはかることなく、いわゆる政府保証債その他を政府がかってにこれを運営するというようなことになりますると――なぜ一体今日までこのように国会予算が最重要案件として論議をされなければならないかということを考えますと、国会を無視した形でこれが行なわれるとすれば、私はこれは非常に危険なことだ。ある意味で、弾力的だとか機動的だということは、政府自体にはっきりした見通しが立たないで、はっきりした方針が立たないからこそ、機動的に、国会を無視した形でこれは運営しなければならないということになるのじゃないか。こういうことをやるから日本はますますアジアの諸国からは軍国主義といわれる。いわゆる財政民主主義を破壊しているのだという中で軍国主義云々がいわれるのも、これは私はまた当然のことだと思います。特に福田大蔵大臣は四十年には、日本財政の平和のシンボルだと私は信じておったところの公債不発行主義というものをくずして、公債発行に踏み切られたということもあわせ考えますると、私は、このたびの予算は決して中立型でもなければ、また、特に機動的という非常にことばたくみな表現の中で危険を感ぜざるを得ないのであります。その問題はまたいずれ論議の機会があろうかと私は思いますが、時間の関係もありますので、きょうはほんのわずかの二、三の問題にしぼってお伺いしたい。  それは、まず第一に物価の問題であります。このたびの国会で各党の代表から、もうほとんど口をそろえてといっていいほど異口同音に問題を提起されたのは物価の問題でありますし、国民もまたこの物価の問題では苦しみ抜いており、かつ非常な関心を持っておるところであります。ところが、佐藤内閣は成立以来今日まで、物価は最重点施策である、物価安定に努力します、こういってまいりましたが、物価はさっぱり安定しない。一体政府は物価を安定させるというつもりがほんとうにあるのかないのか。私は、たいへん皮肉のようだけれどもまずその点からお伺いしたいと思う。
  13. 福田赳夫

    福田国務大臣 物価を安定させる意欲があるのかないのかという御質問を伺いまして、おそれ入りました。  物価は何としても安定させなければならぬ。ただ、成長経済下において横ばいの安定ということは私はむずかしいと思います。ある程度の物価上昇、これはやむを得ないところじゃあるまいか。それがしかしことしのように七%をちょっとこえるというような状態になると、これは非常に遺憾なことであり、こういうような事態が再びあっては相ならぬ、こういうふうに考えておりまして、四十六年度におきましては五・五、こういう目標を立てておりますが、これは万難を排して実現をいたしたい、かように考えております。
  14. 阿部助哉

    阿部(助)委員 まあ、この責任の問題もあとでお伺いしたいのでありますが、五・五%という数字、この見込み、これ自体が、大臣、たいへんな高さじゃないですか。そう思いませんか。かつて大臣は私の質問に対して、銀行金利を上回るような物価上昇は万難を排してもこれは避けなければならないということを、この委員会の記録でおっしゃっておるわけです。五・五%といえば、税金等を差っ引けば預金金利をはるかに上回っておる。大体、五・五%の見通しを立てておるなんという政府は一体先進国の中にあるのですか。私は、この五・五%が大体めちゃくちゃな数字だ、こう考えるのですが、大臣はいかがですか。
  15. 福田赳夫

    福田国務大臣 私も、五・五%というのは決してこれが満足すべき数字であるというふうには考えておりません。これはやはりもっともっと下げるようにしなければならぬというふうに存じますが、とにかく四十五年度は四・八だ、こう言った。それが七%をちょっと出る、こういうことになる。それじゃ申しわけないです。やはり目標は堅実なものにしなければならぬ、こういうふうに考えたわけでありまして、この五・五%、少し高うございます。しかしこれに向かって全力を傾倒する。  ただ、五・五%という消費者物価上昇、これは国際社会の中においてはまあ大体おっつかっつのところなんです。しかも諸外国じゃ卸売り物価もまた上がる。物価水準というと卸売り物価消費者物価を合わせるという水準のとり方をしますが、そういう状態におきましては、卸売り物価がかりに上がらないという際におきまして、五・五という消費者物価はそう高いあれじゃないのです。ないのですが、消費者物価がとにかく上がってくるということにつきましては、私どもはもう非常に重大なる関心を持っておる。私は、この消費者物価問題さえなければもうほんとうにわが日本は万々歳だ、こういうふうに思っておるわけであります。この点だけがわが日本経済の黒一点である、こういうふうに考えまして、鋭意取り組んでまいりたい、さように考えております。
  16. 阿部助哉

    阿部(助)委員 物価がこう上がって苦しむのは国民大衆なんですよ。大衆へのしわ寄せ、犠牲の中で大企業が高度成長、高い利潤をあげておるということなのであって、私は、五・五%なんという高い物価見込みを立てておる政府があるかと、こうお伺いしておる。なるほど、最近アメリカ等は実勢としては高い物価上昇率をたどっておるかもわからない。しかし政府自体がこんなに高い、五・五%になるであろうという見通しを立てる。しかもその立てた五・五%なんというものが、国民は、はたしてこの五・五%でとどまるというふうにはこれは期待できないのじゃないか。大臣は努力をすると、こうおっしゃるけれども、企画庁長官はこれは目標であるというような形で、もう逃げ腰になっておるわけであります。一体五・五%をほんとうに守るのかどうか。もし守れなかったときには、もうこの辺で佐藤内閣、責任をとってもらわなければいかぬと思うのですが、その辺、それだけの覚悟でおやりになっておるのですか。どうなんですか。
  17. 福田赳夫

    福田国務大臣 総理大臣も物価の問題につきましては非常な決意をもって取り組んでおるわけでありまして、この問題には経済問題の中で特に重点を置いて考えておるわけです。いわば陣頭指揮というような形でやっておるわけでございます。何とぞひとつ御期待のほどをお願い申し上げます。
  18. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私はこの五・五%ということ自体、不満はありますが、大体物価対策というものを今日まで一体何をしてきたんだということをお伺いしたいのだけれども、その前提として、なぜ物価がこのように上がるのかという根源的な基本的な問題はどこにあるのかということの認識がなければ対策は出てこないと思うのですが、大臣は、その根源的な理由というものはどこにあるのか、どうお考えなんですか。
  19. 福田赳夫

    福田国務大臣 物価は、これは長い間の学説によりまして、需要要因、それから生産費要因、この二つできまると、こういうふうにいわれております。その他にも流通の問題だとか、いろいろありますが、その二つを主としてあげておるのがこれは通説であります。  需給の関係からいいますと生鮮食料品、これが問題だと思います。特に非常に問題でありますのは魚の問題、魚の資源ですね、これがだんだん少なくなる。そういうふうな関係で、昔ほんとうに安く手に入ったサンマが今日たいへん高い値段でなければ手に入らぬというような状態になっておる。これは資源、需給の関係からきておるわけです。それからもう一つは農作物の問題でありまするが、これが天候等によりまして、でき、ふできがある、そこで需給のバランスがくずれる、そういうようなこと。つまり消費者物価を押し上げる一番大きな要因である生鮮食料品、これは需給の関係だと、こういうふうに思います。  それからもう一つの問題がある。これはコスト要因の問題なんです。コスト要因としてこれはいろいろありますけれども、二つおもな問題があると私は思いますのは、これは一つは賃金の問題、一つはこれは外国物価の問題だと思います。  それで賃金の問題、これにつきましては、私は政治家という立場におきまして、賃金がだんだんと上がっていく、これはぜひ、働く者の賃金が上がって生活が楽になるようにということを念願しております。しかし去年のように一八、九%も賃金が上がる、これはどうしたって物価に響きます。いま、物価に響くという問題でありまするが、卸売り物価は安定しておるのに小売り物価が上がっていく、消費者物価が上がっていく。なぜか、こう言うと、大企業のほうは、賃金をあまり急速に上げること自体は私は感心しないのでありますが、しかし賃金が上がります。上がりますが、大企業におきましては近代化合理化生産性の向上で賃金の上がりを吸収し、そして製品の価格を上げないで済まし得る状態である。そしてそういう大企業製品の価格を代表するのが卸売り物価なんです。ところが消費者物価、つまり小売り価格などをもって構成される価格、これは中小企業の価格といってもいいでしょう。そういうものが、これは中小企業の方面におきましては、大企業が賃上げをいたすとどうしても労働力対策の関係上賃上げをせざるを得ない。賃上げを無理してやる。やりますれば、そのはけ口を一体どこに持っていくかというと、どこにも持っていくわけにいかない。そこで中小企業製品の価格を引き上げる、あるいはサービス料金の引き上げを行なう、そういう結果になってくる。私は、卸売り物価日本では安定しておるけれども、小売り物価消費者物価はどんどん上がってくるという一つの有力なる原因はそこにあるのだろう、こういうふうに思うのです。  その根源にさかのぼれば、それじゃ中小企業の近代化だ、農村の近代化だ、この対策がおくれておるのじゃないかということでございますが、そのとおりです。中小企業や農村がどんどん近代化が進んで生産性が上がれば、大企業において賃上げをするとそれに肩を並べて賃上げしても、何も価格を引き上げるとかサービス料金の引き上げを行なうとか、そういう必要はないわけでございますが、しかしそういうことはなかなか簡単にはできないものですから、結局消費者物価の引き上げ、こういうことになってくる。その辺に最近特に問題が出てきておるのじゃあるまいか。  それからもう一つの問題は外国です。先ほど申し上げましたが、わが国におきましては総合物価、これはわりあいにいい状態だ。アメリカあたりでは小売り物価も上がるが卸売り物価も上がる、こういう状態です。その国際比較的に高い物価水準というものが輸入を通じましてわが国に入ってくる。これがまた物価を押し上げる原因になってくる、こういうふうに見ておるのでありまして、まあしかし、賃金問題、これはなかなかむずかしい問題で、そう簡単には解決はできませんと思いますが、輸入の問題等につきましては、関税政策だとか企業努力を通じましてできるだけの努力をしてみたいと、かように考えておる次第でございます。
  20. 阿部助哉

    阿部(助)委員 一つは、大臣のおっしゃるのは低生産性部門がこうだから物価が上がるのだ、こうおっしゃるけれども、資本主義が発達して生産性が向上すれば、本来ならば私は物価が下がってしかるべきじゃないかと思うのです。あなたは低生産性部門のことだけおっしゃるけれども、生産性が上がったほうがほんとうならば物価を下げなければいかぬ。卸売り物価は安定しておるとおっしゃるけれども、これは大体大企業のものであります。大企業は生産性が上がったならば下げればいいけれども、この大企業のほうに対しては政府はいろんな至れり尽くせりの手厚い保護政策をとって、いやが上にもこの生産性が上がるようにしておる。しかも生産性の上がったほうの大企業は下げない。物価は野菜とか何とかおっしゃるけれども、これは下がるものもあり上がるものもありしながら、全体で物価の水準が保たれているので、その生産性の低い上がるもの、当然上がるものばかりあなたは言っておるけれども、下げるべきものが下がらないところに一つ、日本物価問題の一番焦点があるのではないか。しかもその低生産性部門、野菜が上がったとかいうけれども、天候だとおっしゃるけれども、物価は上がりっぱなしであります。野菜等はときには大量に出回ることもあるわけでありますから、物価は上がるときもあれば下がるときもあるというのならまだ話はわかるのです。上がりっぱなしなのですよ。毎年毎年五・何%だ、七・三%だという形で物価は上がりっぱなしなんです。私はここに一番問題があるのじゃないか。特に卸売り物価が上がらないということは、ある意味では処理しやすい。確かに日本は私は処理しようとすればしやすいと思うのであります。しやすいにかかわらず、卸売り物価が上がらないというのは、結局は日本の労働者の生産性は高いが賃金が安いということになる。そういうことから考えれば、もっともっと政府が手を打ち、指導されるならば物価は安定させ得るはずなんであります。私は、これが安定させることができないのだということならば、もうこの辺で万歳して、佐藤内閣、福田大蔵大臣、おやめになったほうが、たいへん失礼だけれども、国民のためにはいいことだと思う。これはおやめになるのが国民のために私は当然のことだと思う。こうやって居すわりながら物価は上がっていく、やむを得ないということでは、何としても私は国民は割り切れないと思うのですが、そういう点であなたのおっしゃる理論には私はとうてい承服ができない。もっとこの管理価格とか、そういうものに対して指導するとか、あるいは低生産性部門に対して大企業に対する以上の助成措置を講ずるならば物価の安定ということは期せられるはずだ、こう思うのですが……。私はあなたの御意見にはこれは賛成することができません。そういうことをやって、物価をほんとうに安定させるという決意でこれから臨まれるのか。まあ五・五%といってもまた六%、七%になるのもこれはしゃあないだろうというふうな、単なる見込みとしてこの数字、五・五%をあげておられるのかどうか。もう一ぺんお伺いしたいと思う。
  21. 福田赳夫

    福田国務大臣 理想的な形は、大企業製品もまた零細企業の製品も生産性が同じく上がっていく、これが一番いいのだろう、こういうふうに思います。しかしいまどうしても生産性の面において大企業と中小企業、サービス業に格差がある。そういう場合においてどういうことが次善の形であるかというと、お話しのように、大企業において製品価格が下がる、低生産性部門の中小企業だとか農村のものの価格が上がる、そこでバランスがとれる、これが私は次善な形だと思うのです。ところがそれができない。なぜできないのだ、こういいますと、大企業のほうで製品価格を下げられないのは、これは管理価格だとか何だとか、いろいろ問題がありまするけれども、一番大きな問題は何といっても私は生産費という問題だと思うのです。つまり、私が先ほどから指摘しておる賃金、これは急に一年間に一八、九%も上がる。またもう一つは外国からの圧力です。外国の価格がだんだんと高くなってくる。また日本がどんどんと物資を買うものですからそういうことも影響してくる。その上船賃も高くなる。そういうような生産費の要因、これが大企業の価格を横ばいというような状態にくぎづけし、そしてこれを引き下げさせない、こういうところに働いておると思うので、私どもは賃金の問題になると非常に力が弱いのでありまして、どうにもならぬ。これは阿部さんなんかの御協力、御理解にまたざるを得ないのですが、その点はどうぞひとつよろしくお願い申し上げます。
  22. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、大臣はいまのようにおっしゃるけれども、一番問題はやはり利潤率のほうに――時間があればもっとゆっくり討論したいのでありますが、それがありませんので結論をいいますと、企業の利潤率を大臣は一番重視しておられるのじゃないか。それだからこそいままでのようなお話をなすったのであって、いまの高度成長を、大臣今度一〇%にするとおっしゃるけれども、一〇%の高度成長なんという国が先進国の中にありますか。なぜ一〇%を落ち込んだら不況になるのか。よその国では三、四%でもけっこう不況感というものがないでしょう。なぜ日本は、大臣は一〇%の成長率を維持しようとされるのか。これ自体がたいへん高い。これが高過ぎる。なぜこの一〇%を落ち込まないようにしようとするかといえば、私は結論から申し上げれば、結局企業の利潤率をどう維持するかというところに一番関心をお持ちになっておって、そのためには国民の生活を犠牲にするというところに、今日佐藤内閣で物価問題を解決し得ない一番の要因があるのだと私は見ざるを得ないのでありますが、いかがですか。
  23. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま日本経済力は爆発的なエネルギーを持っておる、こういうふうにいわれております。そうして高度の成長をなし遂げておる。これは何かというと、一つ一つの企業が非常な高賃金化の労働力をかかえておるわけなんです。それがだんだんと加速度的に上がってくる。数年前は一三、四%の賃上げだった。それが一五%、一六%、一七%とだんだん上がってきて、昨年のごときは一八、九%になっておる。これは設備の拡大をしなければそのまかないができない。それは阿部さん、ひとつ事業家に会って聞いてもらいたいのです。少し成長度が落ちたらとても賃金は払えませんよ、何とかしてとにかく行くところまで行かしてくださいよ、こう言う。つまり、高賃金をささえるためにはどうしてもある程度の成長がなければならぬ、こういうことも高度成長背景をなしておる、こういうふうに思うのです。  私は、今後あるべき日本経済成長の高さがどのくらいであるか、こういうことについては一つの見解を持っております。しかし、いま一三、四%の勢い成長を一〇%に下げる、それだけでもこれだけのくもり模様の気分が出てきておるわけなんです。急にやってはいかぬ。とにかく当面しばらくの間一〇%でやってみて、これで均衡のとれた経済政策というものが実行できないという際にはまた考え直せばいいじゃないか、そう思うのです。いまこれがぐっと下がってしまってアメリカのような状態になったら日本の国は一体どうなりますか。これは勤労者といえどもたいへんな事態に追い込まれる、こういうふうに思うのです。そういう全国民のことを考えるときに、私は、まずまず当面は一〇%成長をやる、その辺が妥当な線だ、こういうことを言っておるのです。
  24. 阿部助哉

    阿部(助)委員 大臣は労働賃金上昇するとおっしゃっておるけれども、佐藤内閣が政権を担当してからの雇用者所得を見てまいりますと、――私きょうは時間がないからあんまり数字のことを申し上げようと思っていなかったわけですけれども、大臣がそう言われれば、雇用者所得を見てまいりますとむしろ低下しておる。それで日本の労働分配率は先進国の中では決して高くない。一番低いほうです。そうしていながら法人所得のほうはといえば、なるほど四十五年からことしにかけては少し落ちておるようですが、依然として高い数字を示しておるわけでありまして、決してこれは労働者の賃金だけに帰せられる問題ではなしに、むしろ会社の利潤のほうに問題がある。その利潤を上げるために一つ問題は、やはり日本の企業の自己資本率の低さにある。その低さは何かといえば、結局今日までの政府の過保護にあるんだ、こう私は思わざるを得ないのでありまして、その辺もう少し根本的な要因というものを――大臣は私の言うことは一方的とおっしゃるかもしれぬが、同時に私も大臣のおっしゃることは一方的だという見方をせざるを得ないのでして、その辺ほんとうに、私は繰り返し申し上げますが、五・五%という見込み自体が非常に高いけれども、この五・五%すらほんとうに守る決意でいかれるのかどうか。そして守れなかったときにはもうこの辺で責任をとるべきだと思うのですが、この点を繰り返し私はお伺いして物価問題を終わり、次に移りたいと思います。
  25. 福田赳夫

    福田国務大臣 物価問題に対する御熱意に対しましては深く敬意を表します。私も同様の熱意をもって物価問題の解決に当たりたい、かように申し上げさせていただきます。
  26. 阿部助哉

    阿部(助)委員 最近、新聞とかあるいは出版物が円の切り上げの問題をいろいろと報道しておる。大臣はこの前の本会議で、私の頭の中にはそういう問題はみじんもない、こうおっしゃっておる。しかし、何といってもこの問題はいろいろな形で報道されておるわけであります。私は大臣のその基本的な姿勢――やるとかやらぬとか、いつやるとかいうことはおそらくおっしゃるわけにはいかぬでしょう。しかし基本的な姿勢についてお伺いをしたいのであります。  その前にまず、昨年の十一月末に政府は外貨手形の買い取り制度を廃止しましたが、これはどういう目的でおやりになったわけですか。
  27. 稲村光一

    ○稲村政府委員 外貨手形の買い取り制度は廃止いたしたわけではございませんのですが、内外金利差の関係で、外為資金貸し付け制度のほうでこれからは輸出金融をまかなっていくということで、従来の制度は従来の金額で頭を打たせまして、今後はそちらのほうでいくということに日銀でいたしたわけでございます。
  28. 阿部助哉

    阿部(助)委員 何かさっぱりわからぬのですが、もう一ぺんわかりやすく言ってください。
  29. 稲村光一

    ○稲村政府委員 本件は日本銀行の制度でございますから、正式には日本銀行のほうから答弁をいただいたほうがいいかと思いますが……。
  30. 阿部助哉

    阿部(助)委員 じゃ、ようございます。この問題については各商社などでも何ぼか、これに対処しようとしております。延べ払いで円クローズを増加してみたり、あるいは為替差損をヘッジするための円保持を増加するとか、数え上げればいろんなことを、手を打ったり、心配したりしておるわけであります。しかし、何としても円の価値を安定させ維持するということは大臣の非常に重大な任務だろうと思うのでありますが、大臣はこの問題に対してどういうふうにお考えになっておるのか。頭の中にありませんということじゃなしに、私はむしろ申し上げたいのは、アメリカに対してもう少しものを言ったらいいじゃないか。アメリカのドル自体が弱ってきておるなら、ドルを切り下げろということを大臣もおっしゃるぐらいの姿勢でおらなければ、この思惑はやっぱり動いてくるだろうと思うのですが、どうなんです。
  31. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま円の切り上げという話ですが、いまだかつてほかの国から円を切り上げなさいというお話は承ったことはありません。国内でいろいろ話をする人があるのは、ちらほらと聞いております。その話の根拠とするところは、日本の外貨が急増している、そこに一つの根拠を置いておるようであります。確かに急増しておる。十年前には十三億ドルだった。いまは四十四億ドルです。しかしこの四十四億ドルというのが、一体わが国の外貨としてこれが多過ぎる状態であるのかというと、そうではないのです、これは。アメリカのごときは百四十五億ドルです。それからドイツが百三十六億ドル、フランスが五十億ドル、イタリアが五十三億ドル、カナダが四十六億ドルなんです。わが日本は四十四億ドル。ですから、GNP世界第二位だ、そういう日本が実に第六番目の外貨保有高の国である、こういうのですから、私はこの外貨保有高の今日の状態をもって切り上げを云々する、これは理由のないことである、こういうふうに考えます。  それからもう一つの議論がある。それは円の実勢の問題なんです。円の実勢が非常に強くなってきているのじゃないか、少し切り上げてもいいんじゃないか、実勢に合わせたらどうかというようなことを言う人がありますが、私はそうは見ておりません。これは終戦直後、二十四年に三百六十円対一ドルという相場がきまった。そのときは非常に日本には重い負担だったわけなんです。それがだんだんだんだんと回復されまして、今日大体バランスがとれるかという段階に来たのでありまして、これも私は根拠のない議論だ、こういうふうに思います。  それから第三の議論は外国からの圧力なんです。何といったって外国から圧力が加わってくるぞというふうに申す人がありますが、これは私は全く本末転倒のおかしな議論だと思うのですよ。つまり、わが日本経済運営よろしきを得まして非常にすばらしい経済発展をしてきた。その日本経済発展を押えて、そして劣等生の国々と一緒になれ、これはおかしな議論です。そうではなくて、日本のような国にみんななれ、こういうのなら話はわかるのですが、逆の話だ。私はそういう外国からの圧力に対しましては、あなたの国こそ-たとえばアメリカです、アメリカこそ国際収支の均衡をとり、また物価を安定させ、そうしてドルの強化につとむべきだ、こういうふうに主張すべきだ。またそういうふうに主張をしておるのです。そういう状態でありまして、理論的に考えましても、また実際問題といたしましても、円の切り上げをいたす理由というものは私は見当たらぬ、こういうふうに考えます。  しかしそれにもかかわらず、外国からどんどんどんどん日本の円を切り上げろというような議論が起こってくる。しかし議論があるだけの話であって、議論があった場合に彼らにどういうふうな手段があるかといえば、円買いが起こるかという問題です。円が高くなりそうだ、切り上げろ、円買いが起こるという問題なんです。この円買いに対しましては、わが日本は万全の備えをしておりますからその心配はありません。  私の頭のどこのすみにも円切り上げということがないというふうに申し上げましたのは、そういう根拠に基づくものであります。
  32. 阿部助哉

    阿部(助)委員 断固たる態度で臨まれるということを期待して、次に移ります。  私は昨年の国会で、本会議で、銀行の貸倒引当金の問題で総理に質問いたしました。このとき総理は、思ったよりはすなおに、検討をいたしますということで、たいへん前向きな姿勢をとられたわけであります。私は当然、銀行の貸倒引当金――大体貸し倒れというのはあまりないのですから、あれだけ多額なものを無税にしておくことはないじゃないか。皆さんは一年一年取りくずしてまたやるんだと言うけれども、結局年々これはふえていって、無税の金額があるわけでして、これは総理大臣がそうおっしゃったんだけれども、さっぱり大臣はやらないようなんですが、これはどういうわけなんですか。
  33. 福田赳夫

    福田国務大臣 阿部さんから昨年そういう御質問がありまして、総理大臣が前向きの答弁をいたし、私もそれに対して検討いたしますというお答えをしたことはよく覚えております。その覚えておることに従いまして、大蔵省においてもこれはいろいろ検討してみました。なるほどおっしゃるとおり、この貸倒引当金の引き当て率は現実の問題とは大きな乖離があるというふうに考えられるのであります。そこでいろいろ相談をしたのでありますが、結局これは銀行の貸し倒れの認定ですね、これがかなりきびしくいっている。これは銀行検査官によって行なわれるものでありますが、これが非常にきびしい。これを多少平常化した考え方をとってこの問題を論ずべきではあるまいか、そういう考え方が銀行局当局から出てまいりまして、なおしばらく、この実際の貸し倒れをほんとうにノーマルに見たらどういうふうになるだろうかということを調べさせてください、こういうことなんです。その調べを待ちまして、もしほんとうに他と均衡を失するようなところがありますれば是正をする、さように考えております。
  34. 阿部助哉

    阿部(助)委員 その検討するというのはいつごろまで検討するのです。もう一年たっておるのですからね。政府やお役人さんの検討するというのは、大体において何にもしないということのかわりのことばだという話もありますけれども、本会議であれだけ総理がおっしゃっておることが、検討しますということでずるずるとやられるようなら、もう本会議も何もこれはほんとうに民主主義のアクセサリーみたいなものであって、われわれは何のために一生懸命こんなにない知恵をしぼって勉強しなければいかぬのかわからなくなってしまう。おやりになる、検討されるのはけっこうです。だけれども、これはことしは間に合わぬが、少なくとも来年には何らかの答えを出す、こういうことですか。
  35. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだ検討が間に合わなかったので、これは申しわけないというふうに思いますが、来年の税制改正におきましては結論を出したい、かように考えます。
  36. 毛利松平

    毛利委員長 堀君。
  37. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣にちょっと最初にお伺いをいたしたいのですが、この書きものをいただいたのでも、去る日の大蔵大臣演説でもございましたが、「昨年は、超高度成長から安定成長への転換の年でありました。そして、本年こそは、この転換に伴う困難を乗りこえて、安定成長路線の定着を図り、息の長い繁栄に向かって、」と、こう書いておられます。さっきお話を聞いておりましたら――私も正確を期したいのでもう一回伺いたいのでありますけれども、超高度成長だと五年くらいでGNPが倍になる。これでは輸送なり資源の関係なり、いろいろな問題でネックが起こる。そうすると安定成長ということで十年で倍くらいになるということであってほしい、こういうふうにおっしゃったように承ったのですが、ちょっとそこを少し正確にもう一ぺんお答えをいただきたいと思います。
  38. 福田赳夫

    福田国務大臣 五年で倍になる、こういうようなことではとてもこれは日本経済は長続きはせぬ、これは崩壊をする、こういうふうに考えております。そこで成長度を落としたい。どこまで落としたらいいのだろう、こういうふうに考えますときには、これは日本経済全体の動きも見なければなりませんが、当面私は一〇%、その辺を目標にしたらどうだろうか、かように考えているということを申し上げておるわけです。
  39. 堀昌雄

    ○堀委員 よくわかりました。実はいま政府がつくっております新経済社会発展計画は、御承知のように年率一〇・六%という率をきめているわけです。一〇・六%でまいりますと五年目に一六五・五%になり、七年目にはいまあなたがおっしゃった二〇〇%にきてしまうわけです。五年で倍なら崩壊をするのならば、七年目に倍になったら、稲田さん、これはどうなりますか。
  40. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう御質問が堀さんからあるだろうと思っておりました。それは相対的な議論であります。しかし七年にしても、五年で倍というよりはこれは非常に楽です。ことし一〇・一といっておりますが、一〇%でいきますと八年目なんです。しかし経済は生きものです。これはやってみて、これじゃとてもまだ均衡ある経済発展、これはできないという際には、それなら私は何もこだわるところなく変えたらいいと思います。しかし急に落ち込みさしたら一体どうなるか。これは日本じゅうまっ暗やみになってしまいますよ。そんな事態は避けなければならぬ……
  41. 堀昌雄

    ○堀委員 そこまででいいです。時間が三十分しかありませんので答弁を簡単にお願いしたいと思います。  私はいまお話を聞いておりまして、簡単に一〇%といいますけれども、非常にどんどん大きくなっているのの一〇%なんでして、実は年率は先へ行けば行くほど比率が高くなるわけです。実質的には高くなる。いまの一〇%と五年先の一〇%とわけが違うわけですから。この点は私は今度予算委員会でも少し議論をさせていただきたいと思うのですが、資源対策としてはこれはたいへん重大な話で、私はきょうお話を承って、五年で倍になったら崩壊をするとおっしゃったので、私はそれが真剣なんだと思ってたいへん喜んでおったら、七年目の倍ならたいしたことはないということになると、崩壊とたいしたことはない差がちょっとひど過ぎますので……。崩壊というくらいの気持ちならこれはたいへんいいことだと思ったのですが、ちょっとあとのほうになるとだんだんどうやら気が抜けたようになってちょっと残念なんです。  私が特にその問題に触れておりますのは、いまや日本経済高度成長にビルトインされつつあるということなんです。ですからブレーキをちょっと踏めば直ちに不況感が出てくる。それは確かに、八%になってくるか九%になってくるか、あとで見なければわかりませんけれども、かりに実質で八%になっていても、それで経済界が何らかのてこ入れをしてくれなどという情勢に来ておるということは、これは私は経済担当者としては十分考えておかなければいけないことではないか。そこでこれにともかく財政で浮揚力をつけていけばたいへんうまくいって、一〇%になっているのですからまたこう、上に上がりかねない要素がある、こういうことです。ですからその点は非常に慎重を要する取り扱いをしていきませんと、これは問題が残ると思いますので、最初に申し上げておきたいのと、ちょっとその意味で、福田さんのお考えは、一〇%は日本における現在の安定成長だというふうにいまおっしゃったと思うのですが、日本では一〇%が安定成長、これでよろしいでしょうか。
  42. 福田赳夫

    福田国務大臣 当面は一〇%、これが望ましき成長の高さである、さように考えております。
  43. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、日銀総裁お入りいただきましたので、日銀総裁に最初にちょっとお伺いしたいのでありますが、実は日本銀行は二回にわたって公定歩合の引き下げを行なわれました。そこでちょっと私、気にかかりますのは、これは新聞のことですからこのように御発言になったのかよくわかりませんけれども、この間の六日の記者会見で、海外要因による卸売り物価上昇には目をつぶらざるを得ない、また消費者物価金融政策の及ばない部分が多く、昨年十月の引き下げの際すでに目をつぶったんだ、こういうふうにおっしゃったと新聞は書いておるわけです。確かに私もおっしゃることはそのとおりでよくわかるのですが、ちょっとやはり気になるのは、中央銀行というのはあらゆるところに増して通貨価値の安定を最も重要な責務として考えておられるべきではないのか、こういうふうに私は考えておるわけであります。ですから、もちろんいろいろな力が及ばざる点ということはわかりますが、どうも総裁御自身が、もう日本銀行は物価についてはさじを投げた、かぶとを脱いだとおっしゃられては、一体どこがほんとうに日本通貨の安定のために国民の側に立って責任を明らかにするところになるのかという点で、私はやや意外の感に打たれておりますので、この際、公の場所で日本銀行の総裁から、通貨価値の安定についてのお考えを承りたいと思います。
  44. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいま御質問のございました海外要因による物価高、これもある程度はしかたがないということを申しましたのは、私の記憶では、質問が、石油の原産地の価格が上がる、それによってこちら側もそれに関連した物価が上がる、そういうことはどう考えるかという質問であった。私は、それはどうもこちらでどうにも防ぎようがないという趣旨のことを申しました。  それからもう一つ、消費者物価につきまして目をつぶったということばが非常に有名になって、はなはだ申しわけないのでございますけれども、去年の十月に公定歩合を引き下げたときに、あのときは消費者物価は高かったではないか、それをなぜ下げたのかという質問がございました。そのときには、われわれとしては、もう卸売り物価が安定しておったので、直接的に金融政策効果の及ぶ卸売り物価の安定がやがては消費者物価の安定につながるものと信じておる、そういうことで、消費者物価自身の現実に高いという事実には、そのときには目をつぶらざるを得なかった、こういう趣旨のお話をしたわけでございます。おっしゃるとおり、国民にとっての物価というのは消費者物価でございますから、お金の価値を維持しなければならぬ日本銀行といたしましては、この消費者物価上昇はしかたがないのだというような、そういう投げやりな考え方は毛頭持っておりません。ただ金融政策の及びますのが、物価では卸売り物価でございますので、卸売り物価世界でもほかに比較のできなほど、比較するもののないほど安定しております現実というものはやはり相当評価しなければいけない。そういう意味で、消費者物価へその安定が及んでいくのに時間がある程度はかかりましょうが、そのかかる期間について、ある程度卸売り物価のほうを先に考えて政策の転換をはからなければならなかった、こういう考え方でございます。
  45. 堀昌雄

    ○堀委員 現実の問題として、金融政策消費者物価がそう簡単に落ちつくとは私も思いませんが、やはりこれも、公定歩合の操作が非常に心理的影響をもたらしますのと同じように、日本銀行でももう消費者物価というものはしようがないんだなということだったら、やはり公定歩合操作以上に私は物価に影響があるような感じがいたしますので、その点は今後とも十分に御配慮をいただきたいということを申し上げておきたいと思います。  その次に、この公定歩合引き下げをされてから、今度は実はたいへん金利が下がっていないように思います。資料を拝見をいたしましたけれども、過去の例に比べて二分の一以下という、たいへんわずかしか――資料もまだ十一月程度までしかありませんから何とも申し上げられませんけれども、下がり方が非常におくれておるような感じがいたします。今度の引き締めのときはたいへんこれまでより早く上がる、下がるときにはたいへん今度おくれるということは、どうも私どもとしてはやや少し問題があるような感じがしてならないわけであります。そこで、確かにいま資金需要が、私ども中小企業の話を聞いておりましても、どうも依然としてタイトであって、政策的には緩和の方向ということになっているけれども、現実には一向にどうも緩和していないというのが実は中小企業の諸君の声でございます。確かに公定歩合操作と実際の金融緩慢との間にはタイムラグがあるということも私は承知しておりますが、どうも少しタイムラグがあり過ぎるのではないのかという感じがしておりますが、この点については総裁はどういうふうにお考えになりますか。
  46. 佐々木直

    佐々木参考人 今回の引き締めにあたりまして、市中の貸し出し金利が従来に比較してわりあい大幅に上がったという事実は、昨年秋、堀先生の御質問に対して私もその事情を御説明した記憶がございますが、十月の公定歩合の引き下げによって市中金利の引き下げは確かにまだあまりはっきり出ておりません。この理由はどういうところにあるか、いろいろ検討いたしておるのでございますが、どうもやはり非常に資金需要が大きくて、少々の量的緩和ではなかなか需給関係がゆるまない、そういうことに一番大きな原因があるようでございます。  今度の引き締めを振り返ってみまして痛感いたしますことは、今度の引き締めにあたりまして、全金融機関の資金の供給量、それは従来の引き締めのときに比べて非常に大きかったように思われます。都市銀行の貸し出しもある程度は伸びておりますし、その他の金融機関の貸し出しは相当大幅に伸びておる。にもかかわらず非常に資金の需給が逼迫しましたことは、産業資金の需要が非常に大きかった、高い経済成長のあとのツケがたくさん回ってきておったということをあらわすのではないかと思います。しかし、今月に入りましてからさらにまた都市銀行の貸し出しについては緩和策を講じております。今般開きました支店長会議での報告を聞きましても、今度はわりあいに需給が緩和していきそうでございます。また市中銀行のいろいろな態度を聞いてみましても、今度は金利がこの前の引き下げのときに比べてわりあいに早く下がっていくのではないか、こういうふうにいま考えております。
  47. 堀昌雄

    ○堀委員 いずれまた三月なり四月なりの適当な機会にお越しをいただいて、その時点で今日の情勢をまた論議させていただきたいと思いますけれども、量的な緩和を進められておるに比してどうも金利の低下なりが少しおくれるのではないのか。その背景にありますものは、やはり都市銀行その他の金融機関の各種の競争を御承知のような統一経理基準という中身の競争に置きかえておりますので、ややもすると利潤追求が先になって、本来の銀行としての社会的責任がやや軽きに失しているのではないか、こういう感じもいたしておりますので、この点は大蔵大臣も日銀総裁もあわせて、銀行の公共性にかんがみて、やはり政府の政策が行なわれておる限り、これにできるだけすみやかに順応するような指導を強化していただきたいということを特に申し上げておきたいと思います。  その次は、今度の公定歩合の引き下げは、新聞で拝見をしておるところによると、海外要因が主であったというふうに、これは大蔵大臣のお話も日銀総裁の御意見もそのようでありましたが、日銀総裁のほうから、今回の公定歩合の引き下げの主たるモメントというものは何であったかということをちょっとお答えいただきたいと思います。
  48. 佐々木直

    佐々木参考人 今度の公定歩合の引き下げにつきましては国内要因と国外要因と両方でございまして、どちらが主ということはなかなかいえない関係にあると存じます。  国内情勢では、いまお話がございましたように高度成長から安定成長へ移る、その転換の時期にそのショックが非常に大き過ぎてはいけないというような配慮もございました。要するに経済運営をなだらかにするためという趣旨が含まれているわけでございます。  それから海外要因といたしましては、御承知のようにアメリカにおける急速な公定歩合の引き下げという問題が、最近においては日本国際収支に直接的な影響をもたらした、そういう面から、戦後における日本銀行の公定歩合操作に、海外要因を具体的、直接的に取り入れざるを得なかった初めてのケースが生まれたわけでございます。  そういう両方が動いておりましたこと、これら両方相並べまして公定歩合の引き下げを決定した、こういう推移でございます。
  49. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣の御見解も大体同じでございましょうか。
  50. 福田赳夫

    福田国務大臣 大体同じでございます。――大体というよりは全く同じでございます。
  51. 堀昌雄

    ○堀委員 実はいまのお話しの海外要因の問題でありますけれども、さっき大蔵大臣の、外貨準備六番目ではそうたいしたことはないのじゃないかというお話――努力をいろいろなすった上での六番目ですから、フリーにしておるところの六番目とはやや意味が違うと私は思いますが、いまの海外要因にこだわるとするならば、アメリカはもう少し下げてくるのではないだろうかという感じがいたしておるわけであります。今年度のアメリカ経済の見通し、いろいろな角度があると思いますけれども、私は、アメリカの本年度の景気の回復は、一般に予想されるように三%にはちょっと届かないのじゃないだろうか、少し情勢は悪いという判断をしております。それのもとは、これまでアポロ計画なりあるいはベトナム軍需にアメリカ産業がビルトインされてきておる。これから平和産業に転換をしようというところへ来ておるさなかでの情勢だと私は思うのであります。この転換は、前回の第二次大戦とか朝鮮戦争後の情勢でありましたならば、当時アメリカ以外のところはみな力が弱くて、輸出力は十分にあったわけでありますから、これは非常に転換がやりやすかったと思うのですが、今日のアメリカの置かれておる情勢というのは、アメリカのほうが下へ落ち込んで周辺のほうが高くなっておる。この高くなっている中で転換をやるというのはたいへんむずかしい問題ではないか。ですから、公定歩合を下げてみても、あるいは財政赤字で少し刺激要因をつくってみても、私はアメリカ景気というものは少し回復がおくれるだろうという判断をしておるのです。おくれればこれまた繊維関係なんかからあの手この手ということになると、アメリカはまた今後もう少し金利の引き下げを行なうのではないだろうか。そうなるといまのドルシフトの問題、いろいろありましょうけれども、やはりある程度はこれに関連を持ちながら公定歩合の操作を考えていかなければならぬという場合もあり得るのじゃないか、こう考えるわけであります。そこらの問題について大蔵大臣はどう考えておられますか。アメリカ経済の今後とアメリカの金利水準との関係、時間がございませんから簡単にお答え願いたい。
  52. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカはいま何といっても景気浮揚政策をとっておる、こういうふうに思うのです。その浮揚政策が成功した場合に今度はインフレ問題がどうなるか、こういうむずかしい問題が起こってくるのじゃないか。ですからアメリカはわが日本で考えるよりは非常に深刻な経済状態にあるのじゃないか、そういうふうに思うのです。  今後の予測ですね、これはアメリカ政府がどういう方向をとるか、これによってきまるのじゃないか。そういうふうに見ておるのでありまして、私は経済がそう急に活発化するような感じもいたしません。そうなりますれば、今度はインフレ問題という大きな問題にまたぶつかる。堀さんが見ているような感じが私もしますが、これは一にアメリカ政府がどういう政策をとるかにかかっておる、こういうふうに思います。  金利の問題は日本銀行総裁にお尋ねを願います。
  53. 佐々木直

    佐々木参考人 最近のアメリカの金利の低下は非常に大きいのでありますが、これは向こうの金融政策のやり方が、資金の供給量を一定にするという方式でやっておることが非常に大きな影響を持っておるのではないかと思います。したがって、いまの政策が続けられております限り、いま御指摘のありました、さらに一段と金利が下がるという可能性も十分あり得ると思っておかなければいけないと思います。ただしかし、先ほど御質問の、そういうときのこちらの金融政策の運びにつきましては、国内情勢が許すか許さないかの判断がそこで重要になってまいりまして、そういう国内情勢が金利低下を許さなければ、海外の要因がある程度問題として出てきましても、それはしばらく見送らざるを得ない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  54. 堀昌雄

    ○堀委員 実はこの前から金利が年率、パーセント建てになりました。現在日本銀行が二回にわたって公定歩合を引き下げましたのは〇・二五%であります。これまでのでいきますと、二回に分けて〇・五%というのは厘に換算いたしますと一厘三毛六糸九幾ら、こうなるわけでございますね。実際は、もう一ぺん〇・二五%引き下げて〇・七五%引き下げになると初めて二厘五糸ということに落ちつくようでございます。どうもこの前の最初の山際さん時代から、日本の公定歩合操作、一厘操作というのは小さいのじゃないかというのが私のかねがねの主張でございまして、ですからそういう意味では私は、パーセント建てになれば今度は幅が少し開くんじゃないかと思っておりましたら、逆に幅が狭くなってしまったというのが最近の情勢だと思います。  そこで、これは国内的要因、国際的要因、いろいろな問題があると思うのですが、いまの状態は、金融状態としてはこれはニュートラルな状態であるのか。つまり、引き締めがありますね。引き締めを解除するとニュートラルな状態が一応あるのじゃないかと私は思うのですが、その次に今度は少し刺激といいますか――引き締めと、それから――表現はちょっとむずかしいのですが、景気に少しブレーキをかけるのと、少しアクセレレーションを踏むのとのまん中にニュートラルがある、こうなるのではないかと思うのですが、いまの場合は総裁は、これはニュートラルなのか、やや少し加速ぎみなのか、どう御判断でございましょうか。
  55. 佐々木直

    佐々木参考人 先般、十月に公定歩合を下げましたときに私は外部の方から、これは青信号を意味するのかという質問を受けたわけでありますが、私はそのときに、もう青信号で、どんなにみんなが前に向かってどういう速度で走ってもよろしいというほどの青信号ではないのだ、模様を見ながら制限速度で走ってほしいという趣旨のことを申したことがございます。したがって、十月の公定歩合の引き下げのときには、おととしの九月の引き締め開始前の状態にする――あのころも多少は軽い調整もしておりましたから、そのときに戻るのだという考え方でございました。今度〇・二五下げまして初めてこれで青信号だというふうに申し上げてよろしいかと思います。ただ、〇・五の引き下げではまだアクセルを踏むというところまでは思い切っていけない。そこのところが非常にデリケートなところでございますけれども、積極的にアクセルを踏むというところまでの公定歩合の引き下げではない、そういうふうに考えております。
  56. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、物価の側面からいいますと、実は在庫調整はしっかりやってもらいたい、こう思いますけれども、また今度は、さっきの福田さんのお話のように、カーブがどうもちょっと強くなり過ぎるのはよくない。カーブがだらだら下がるのはいいけれども、過ぎるのはよくない。カーブが強過ぎると摩擦が起こりますから、カーブがあまり立つのはよくないと思います。そういうときに、私のいまの感じを率直に申し上げますと、金融政策としてはどうもいまおっしゃる程度の、ニュートラルとややアクセルを踏みかけたくらいの中間のところではないかという感じを持っておるわけであります。  過去の例から見ても、公定歩合による金融政策というのは二厘で大体ワンラウンドというか、そのくらいだというのが私の過去の感触でございましたし、山際さんのときにも、一厘ではだめです、二厘でいきましょう。引き締めも二厘でいきましょう。それからゆるめるときも二厘でいきましょう。要するに、もう少し政策がすかっといくように影響を早く出して、そのかわり早くブレーキを踏みながら、ゆるめるならば要するに臨機応変にやってもらいたいということを私は何回も当委員会で言っておるわけであります。せっかく政府が金融財政をこれからどんどんふくらまして、さっき八千億ぐらいの弾力があるということですが、今度は財政主導型景気浮揚政策というのもいかがかと思うのです。やはりそこらのところは、今後金融財政が適度な関連を持っていかないと、あまり財政先行型になりますとこれまた後年度に乗数効果というのは非常に大きいし、それから広がっていきますとこれがちょっと行き過ぎるということにもなりかねない。あわせてそこらは短期決戦をやりながら調整していくというのが、あるべき金融政策財政政策じゃないか、こう思うのですが、そういう問題を含めて、さっき私は合わせて一本、二厘だ、こういう過去の経験から見ましても、今後、国内、国外の諸要因からもう一ぺん〇・二五%ぐらいの引き下げが必要になるという時期があるとお考えか、ないとお考えか、ちょっとお答えを願いたい。
  57. 佐々木直

    佐々木参考人 いまの段階では、一月に引き下げました公定歩合の影響、それからまた一月から量的な段階において大幅な拡大をやっておりますが、こういうものの効果がどういうふうに全体の経済に及んでくるか、それをしばらく見ていかなければならない段階である、こういうふうに考えております。
  58. 堀昌雄

    ○堀委員 あと一問だけ私お願いしたいと思います。  実は、これは日本銀行にも大蔵省にも関係がございますけれども、昨年、御承知のようにアジア開銀債が日本で発行されました。そうしてこのアジア開銀債の応募者利回りが七・六一%程度で実は発行されたわけであります。同時に、この年には日本はマルク債その他で九%程度の外債を発生しておる。これは、国外では高い金利の金を借り、国内では安い金利の金を外国へ出すほど日本はゆとりがあるのかというふうな感じがいたしておるわけであります。さらに、七・六一九%というのは実は日本固有の新発債の利回りでありますから、現実には発行して一カ月もたてば既発債利回りとしてその負担を日本のだれかが負担をしておるという、まことに摩訶不思議な債券発行がまかり通っておる、こう考えております。これは大蔵省のほうが主体でしょう。大蔵省でこういうことをやられたわけですが、一体、高い金利を払いながら海外で外債を出す、国内ではこのような摩訶不思議な仕組みのアジア開銀債を出すということは、私は国民的に見てもちょっと納得のいかないところじゃないかという感じがしますが、大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  59. 稲村光一

    ○稲村政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、アジア開銀債につきましては、金利は確かに七・六%程度でございますが、期限が七年でございまして、中期でございます。それから、いま外から借りております外債は大体十五年というような長期のものでございますので、ただ金利だけの比較では必ずしもあれではないかと存じます。  もう一つはやはり、アジア開銀債のほうの問題につきましては、まあ後進国援助というふうなほうの意味もあるかと存じます。いろいろな点につきまして各方面と御相談をいたしましてこういう条件にしたわけでございます。
  60. 堀昌雄

    ○堀委員 日銀の総裁、私は一昨年、予算委員会に宇佐美総裁にお越しいただいて、長期金利の弾力化についていろいろ論議をしたわけですが、幸いにして最近は少し金融緩慢になりまして、乖離の幅が狭くなってきております。たいへんけっこうだと私は思っております。私は、これから国際化時代を迎えるにあたって、少なくとも長期金利の問題ぐらいはどうしても早く自由化すべきだろうと思います。金融制度調査会も金利の自由化については強く答申が出ておるわけであります。これからいろいろな量的な緩和その他を通じて、私はやはり昭和四十六年度の第一・四半期、第二・四半期程度はかなり金融がゆるむんじゃないだろうか、こう考えているわけでありますが、そういうゆるんだ際にひとつ思い切ってその乖離幅をなくして、そこをスタートにしてあとは自由にしていくということに思い切る一つのチャンスではないか。そうしておきませんと、海外では金利が自由になっておる、日本の場合は長期金利が低いところに固定されていて乖離しておるということは、私はいまアジア開銀債の例を申し上げましたけれども、今後の日本の国際化にとって非常に重要な問題があるんじゃないかと思いますが、総裁のこれについてのお考え、大蔵大臣のこれについてのお考えを承って私の質問を終わります。
  61. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいま御指摘の点は私も全く同感でございまして、公社債の正常化と申しますか、これは私どもにとって多年の念願でございます。昨年の三月にある程度のことができたのではございますが、市中金融が締まっておりましたために市場既発債の金利のほうはやはり上がっていた。発行条件を上げてもなかなか追っつかないという実情でございます。したがいまして、これからの金融援和でこの幅をだんだん狭めていって、そうして既発債と新発債との条件が一本になって、ほんとうの意味での自由な金利のもとで外債でも国内債でも発行されるということでなければならないと思いますし、この機会をぜひつかまえてその目的を達成したいと思います。ただ、これはなかなか一挙にはまいりません。御趣旨のとおりの方向に今後努力をしてまいりたい、こう考えておるのでございます。
  62. 福田赳夫

    福田国務大臣 堀さんのお考えと私は全く同じなんです。ただ実行のタイミング、これは慎重に考えなければならぬ、かように考えております。
  63. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。
  64. 毛利松平

    毛利委員長 日銀総裁には御多用のところありがとうございました。どうぞ御退席ください。  松尾正吉君。
  65. 松尾正吉

    松尾(正)委員 お伺いいたします。  大蔵大臣が、本会議並びに本日、所信表明をされましたし、またいままでのいろいろなやりとりを聞きまして、財政運営に非常に力を入れて、目標等も定めて取り組んでいるという点はよく了解できるのであります。  しかし、ここで方向を変えて、大臣が、福祉社会の建設のために物価の安定並びに公害防止には最大限の努力をしてまいる、こういうことを言われておるわけであります。もちろん、財政運営、それから国内の諸問題について努力をなさることについて国民は大きく期待をしておるわけでありますが、しかし実際に新しい予算の内容、さらには新年度に入りましてから、おりに触れた大臣の経済政策等を聞く限りでは、相変わらず産業優先に力が向けられているのではないか。物価安定、そうして公害を除去して福祉社会を建設していこうということが、から題目に終わってしまうのではないかということが非常に懸念されるわけでありますので、大臣に、最大限に努力をして築こうとする福祉社会の姿、これをまず最初に伺いたいと思います。
  66. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、日本経済が切れ目なく、谷間なく、安定した速度で成長発展していく。つまり――私は常々言っているのです。六〇年代というのは日本の国運のために非常に重要な役割りを果たした。これは経済の量的成長ということを達成した、こういうことであります。しかし七〇年代は、その量的成長もさることながら、日本経済の質的成長に力を注がなければならぬ、こういうことでございます。要するに均衡のとれた末長い、息長い経済の発展、こういうことなんですね。これが何といってもあらゆる問題の前提になると思うのです。  その経済成長の上に立ちまして福祉社会を建設する。その福祉社会の建設のためにまず環境整備をしなければならぬ。環境とは何ぞやというと、これはいろいろありますけれども、とにかく当面重要な問題は物価と公害、この二つの問題である。  それからさらに、その環境を整えるだけではなくて、福祉社会の実態を整えなければならぬ。これは何だ。これもいろいろありますけれども、その最も重要なる問題は、これは社会資本の充実と社会保障制度の整備、この二つじゃないか、そういうふうに考えております。
  67. 松尾正吉

    松尾(正)委員 確かに、経済の安定成長、これはおろそかにできないことでありますが、いまも堀委員等の間で問題になりました一〇%という高い目標、これがはたして理想かどうかということは当然論議されなければなりません。これは当然、私は、資源関係その他、大臣の言われたようなことを考えると、もう少し徐々に下げていかなければならない問題であろう、こう思います。ただ、それと並行して問題になりますのは、いま社会資本の充実と福祉社会の建設だ、福祉に重点を置かなければならない、こういうふうに言われておるのですが、この点がどうしても、景気刺激的な方向に今年度の予算を見ても重点が向けられて、いまの物価の問題、それから社会保障の問題等が、当面見た範囲ではおろそかになっているのではないか、こう考えるわけです。  といいますのは、今年度の一般会計の伸びを見ましても一八%をこえている。さらにこれをずうっと歴年見ますと、この伸び率は三十七年度以来の大幅な増加になっております。また、これともう一つ、政府の財貨サービス購入の伸び率、これも来年度の名目成長を一五%上回っておる。こうした上にさらに不況対策のために弾力条項を持ち込んでいる。こういうことを考えますと、どうしてもこれは不況対策予算じゃないか。結局財政主導型の、景気浮揚を考えた経済主導型の予算といえるのではないか。物価がどんどん上昇しているときは、さらにこういうふうに景気を刺激するような考え方で進めていった場合に、はたして――大臣は物価並びに公害を除去していこうということでありますけれども、もう物価についても公害についても、言うまでもありませんが、これからの問題ではなくて、ほとんど極限にきている問題ともいえると思う。こういう状態の中では、私は、むしろ一部経済成長は押えてもこの国民福祉のほうに重点が向けられる、これがほんとうの安定繁栄を願う財政運営にならないか、こういうふうに考えるわけでありますので、今度の予算について、いま大体わかりましたけれども、確認する意味で、ほんとうにその福祉ということを重点に、あるいは公害、物価というものを重点にして考えたものか、あるいは経済成長ということを中心に考えたものか、そのどららに大臣の腹はあるのかをお聞かせ願いたい。
  68. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは、経済運営というか、景気の問題と予算の問題とはどっちに重点があるかといって、はかりにかける、同じ質の問題じゃないのです。どっちがどうということは申し上げかねますが、いまこの時点日本経済動き松尾さんはどういうふうにごらんになっているか知らぬが、これはかなり鎮静化が進行中だ、こういうふうに見ておるのです。私はそう見ております。その状態下において、この鎖静化に下ざさえの措置をとらない、もし大蔵大臣がそういうものに無関心であったら、一体国民はどういうことを言うでしょうか。私はやはり国民全体は、景気がそんなに落ち込むという、そういうようなことについては大蔵大臣は適宜の措置をとれ、これが私は大多数の声であると思います。そういう景気の問題も一方においては考えますよ。しかし同時に、そういう際であればこそ、好景気のときにはできなかった問題も可能になる。何が可能になるか、こういいますと、われわれの生活環境をよくするための社会資本の問題、これなんかはこの際に大きく解決する一つの大きなチャンスなんです。  ですから、いま予算がどうも福祉軽視だというようなお話でございますが、この予算の中で一番大きな項目は何だと、こういいますれば、これは地域社会、これを築くための地方交付税交付金です。これが実にこの予算の中で二三%を占めておるわけです。しかしこれはまあ別格といたしましても、これを除きまして第一番の大きな構成要因は何だというと、これは公共事業費なんです。つまり、道路を建設し、住宅を建設し、上水道、下水道、こういうほんとうにわれわれの福祉につながる環境を整備しよう、こういうための公共事業費なんです。これが一七%。その次の大株主は何だと、こういいますと社会保障費です。これが一四%を占めるわけです。それだけで実に五五%、この大きな予算の中で比率を占めるわけでございますが、これはもう大きく福祉社会をささえる、前進させるための措置なんです。それからその他の問題にいたしましても、多くはそういう福祉社会建設のための支出でありまして、決してこれは福祉社会を犠牲にして景気を刺激するための予算だというんじゃなくて、それは全く逆なんでありまして、景気過熱はさせません。しかしながら、落ち込みにはさせない。落ち込みになって何もそういうような施設ができないというような事態でありますれば、これは逆に福祉政策に反しますよ。そこで安定的な経済情勢を現出して、その中でわれわれの生活をささえるもろもろの条件を整えたい、福祉社会の建設を目ざしたい、こういう考えでございます。
  69. 松尾正吉

    松尾(正)委員 確かに率では一七%、一四%、非常に高い率は示しておるのですけれども、しかしわが国の社会福祉施設、社会保障関係、いろいろな面で欧米諸国よりももう大幅に――わずかじゃないんですよ、大幅におくれているという点については大臣もよく御承知だろうと思うのですね。そういう意味から、ここで物価問題、公害問題ということをもう一回考え直してもらいたいと思うのです。  この中で、物価の前に社会保障問題でちょっと伺いたいのですけれども、長年懸案であったところの児童手当、これが門戸を開いたということについては、これは私ども評価はしているわけです。ただ、長年願っておったものが、門戸が開いたけれどもその内容が非常に乏しかった。これについて早急に――福祉国家を建設するのだ、福祉社会を建設するのだという大臣から、これについては来年あるいは三年内に大幅な拡大を考えている、こういうことも当然承れると思うのですが、今度一方、老人問題です。  この老人問題はもう年々深刻化して、増加する老人のいろいろな悲劇等が多発しておる現状ですね。こういう中で老人の悲劇問題ということが大きな社会問題となっておるときに――この全体の比率を見ますと確かに一四%という数字は高いですが、本会議等でも指摘されましたように、冒頭に老人の訴え等があそこで紹介されておりました。この老人問題というものはもう非常に行き詰まった状態にあるわけです。ところがこの老人問題に対しては全体のパーセントに比べて非常にわずかな予算しかない。施設面についていいますと、厚生省で福祉施設緊急五カ年計画、これを決定して、それで初年度分として百五十億を要求したところが、大臣は六十億円に切ってしまった。これはもうどう考えても、社会保障に一四%充てているのだということを聞くと力が入っておるように思いますけれども、非常に大きな老人問題に対してはあまりにも冷たい仕打ちじゃないか、こういうことが感じられるわけです。  こういった、児童手当に対してはもっと拡大して、そうして老人問題等に対しては、今年度景気調整のためには機動型の予算を組んでおるわけでありますが、この予算の中から緊急に増額してでも何とかあたたかい手当てをしてこたえられないものか、こういう点について大臣の考えを伺いたいのです。
  70. 福田赳夫

    福田国務大臣 お話しのように、老人問題はこれからいよいよ重要な問題になってくる、こういうふうに思います。老人につきましては、社会保険の対象としてこれを何とかできないかという議論が一昨年厚生省を中心にしてありました。ところがその財源を一体どうするのだ、全額公費負担にするのかしないのかというようなことで結論を得ないまま今回に至っておるわけですが、これを放置するというわけにもまいらぬ、こういうので、昭和四十六年度におきましては、会社を退職した、その定年退職した後におきましても医療保険に入り得るとか、いろいろ経過的な措置をとる。また御承知のように、寝たきり老人でありますとか、そういう方々に対して手厚い措置をとりますとか、いろいろ努力をいたしております。ただこういうものは一挙にというわけにもなかなかまいりかねるのです。これは財源の状態、そういうようなこともありまして一挙にはまいりませんけれども、重大な問題であるということはよく認識しておりますので、今後も老人につきましては努力をいたしていきたい、かように考えます。  また、児童手当の問題につきましては、これは松尾さんなど、かねて非常に熱心に御主張された問題であります。この児童手当につきましては世間ではいろいろ議論があります。私、見ておりまして、大体賛否相半ばする、こういうような状態でありましたが、今度児童手当審議会の意見に従いましてこれを取り入れる、こういうふうにいたしましたが、お話しのように、これはまだ初めてのことでありますのでその制度の対象となるものもごく限られたものでございますけれども、またこれから経済をだんだんと発展させまして、財源の状態ともにらみ合わせましてこれが充実には努力をいたしていきたい、かように考えております。
  71. 松尾正吉

    松尾(正)委員 ぜひひとつこれはお考え願って、総力をあげていただきたい。お願いしたいと思います。  それから、先ほど物価問題については基本的な面でいろいろお話がありましたが、具体的な問題として、これは農水に属する問題ですけれども、特に大臣にお聞きしたいのですが、米の消費者物価指数に占める割合が五〇%、非常に寄与率が高いわけですね。ところがこの米に対して今度物統令を撤廃する、こういう措置がとられたわけですが、先ほどのお話の中にもあった、何とか大臣は物価上昇を五・五%で押えたい、こういう決意は述べられたのですけれども、一方食糧庁長官等の発言等が新聞報道されているのを見ますと、何とか赤字を埋めるためには消費者米価もある程度引き上げることを了承してもらわなければならない、こういうような発言もあります。それからこの予算の検討段階で大蔵省でも、米価の水準は据え置きにしたいが、新米、古米等に格差をつけたい、こういうような論議もあったということは報道されておるわけですが、とにかく現在の自主流通米が発表された以降も急激に値上がりしているわけです。この物統令がはずされると、もう待っていたとばかりにはね上がるということは国民全体の非常に大きな心配であり、不安ですね。こういう消費者物価に大きなウエートを占める米の物統令をはずしたことについて、秋までだからその間にいろいろ手を打つのだというようなことは農林大臣等も言っておりますが、大蔵大臣が何か具体的にこういうふうにしてお米は値上げを防ぐんだという考えがおありなのかどうか、その点を伺いたいのです。
  72. 福田赳夫

    福田国務大臣 物価統制は物があり余っているというときには必要ないのです。物が足りないときに物価統制というものは要る。米が物価統制令の対象になったという時期は米の不足した時期でありまして、これは物価統制をしないと米価が暴騰するという事態が出てくる。これに対する備えとしての物価統制令の適用でありました。ところが今日は、よく御承知のように、とにかく倉庫に眠っている米だけでも七百万トンをこえるというような状態であります。そういう状態下において物価統制令の対象から米をはずすということにいたしましても、基本的に米価が上がるという要因はないと思います。つまり、この事実関係が米価に反映するように仕組みをいろいろとつくらなければならぬ。そのつくるのには準備が要る、こういうわけでございますから、競争原理を取り入れるとかあるいは価格メカニズムを導入するとか、それらのことを目標といたしましていろいろな準備をするわけです。これは消費者に御迷惑は及ぼさない、そういうように万全のかまえをとりたる上、四十六年度新米よりこれを適用するというふうにしたいと思います。
  73. 松尾正吉

    松尾(正)委員 確かに物価統制令は足りないときに必要なことはよくわかるのです。ただ、いま先ほど来論議されたように、非常に消費者物価上昇しているさなかにこれをはずして、必ずこれははね上がるであろうというときにはずさなくても、一応安定した段階でも間に合うのではないか。それをことさらにいまはずして、しかも具体的にそれでは秋までの間にどういう策があるのだということを聞くと、大臣もいま万全の策を講ずるという。いままで物価上昇がたいへんだたいへんだということで論議されて、これを野放しにするのだということは一つもなかったわけです。万全の策を講じてきたけれどもこういう結果で、結局国民は苦しんでおるのだ。そういう意味で大臣にいま具体的に何か一つくらいは手が伺えるのではなかったかと思ったのですけれども、ただ万全の策だけで終わってしまったのですが、これはひとつ万全の策を講じて、消費者物価はあくまで上げない、こういうことを確信してよろしいですね。
  74. 福田赳夫

    福田国務大臣 消費者物価、末端の消費者米価は上がらないように、これはいろいろな仕組みをただいま検討中です。いろいろな仕組みをいま検討しておりますので、必ず御期待に沿えると思います。
  75. 松尾正吉

    松尾(正)委員 十分に期待しております。  それから、物価問題の結論として、いろいろ大臣もさっきお話がありましたけれども、当面の問題としては管理価格と現在の流通機構、この二点にあるのではないか、こういうふうに思います。もっと複雑なものはありますけれども、当面とにかくこれが重点の問題ではないか、こう思うのです。大臣は財政演説の中で、特に流通機構については近代化していきたい、こういうふうにおっしゃっておられるのですが、これを近代化していくということでは非常にばく然としているので、あそこでおっしゃられた以上、具体策はお持ちと思うから、そこでその構想と、それからもう一つは、管理価格について政府が非常に無力だったということはすでに前国会、前々国会でも明白に露呈されておるところですが、この管理価格について無力な公取委員会、それから独禁法、これらの改正、ないしは物価監視についてのチェック機関、小委員会なりあるいは監視制度なりを設置する。とにかく公取委員会を、強力な権限を与えて強化するか、これらに対して手が打たれなければいまの物価問題というのは前進が非常におそいのではないか。とうてい、五・五%というこれは目標だけであって、結果は期待できない、こういうふうに思うのですが、この管理機構に対する対策について何かお考えがあるか。この二点について伺いたいと思います。
  76. 福田赳夫

    福田国務大臣 物価問題につきましては何といっても低生産性部門の生産性の向上、これが根本になると思うのです。それに加えて流通の問題とか管理価格の問題とか、そういう問題をきめこまかくやらなければならぬ。そこで生産性向上の問題につきましては、農林省の予算の中に何回かそういう方向の経費、これが大部分といってもいいのです。それからなお中小企業対策、これもそういうものです。特に四十六年度におきましても従来のそういう努力に引き続きまして、卸売り市場の施設整備費、これの増額をいたしますとか、あるいは農林漁業金融公庫で卸売り市場近代化資金、これの増額をいたしますとか、あるいは日本開発銀行において大都市再開発、流通機構近代化ワクというものを拡大いたしますとか、あるいは中小企業金融公庫において流通近代化貸し付け、これの大幅な増額をいたしますとか、国民金融公庫におきましても、流通近代化貸し付け、それから生鮮食料品等の小売り業近代化貸し付けのワクを拡大いたしますとか、地方公共団体におきましても市場だとかあるいは屠場の整備を行なうための施設をいたしますとか、また税制上においても、団地に対しまする特別助成措置をいたしますとか、あるいはトラックターミナル施設に割り増し償却を認めますとか、あるいは卸売り市場整備区域内に移転する卸売り業に対する買いかえ特例制度を認めることとか、ことこまかに物価対策をやっておるわけであります。  なお、管理機構の問題につきましては、これはどうしても公正取引委員会運営強化の問題、この運営強化のために要する定員の増加をいたしておる、かように御承知願いたいと思います。
  77. 松尾正吉

    松尾(正)委員 いま、管理価格に対する手入れに対しての答弁がありませんでしたけれども、流通近代化についていま非常にこまかく並べられました。これは確かにいままでも全然なかったのじゃないんです。いままでもあったのですが全然効果はなくて、投入しても上がりっぱなし。特に生鮮食料品中心のこれにはことしも大きな予算が投じられているのですけれども、生産者に対して金が投入されても野菜は全然下がらなかった。ことしも危ぶまれておるわけですね。ですから、どうかひとつ効果のある運営のために、金を出すからには具体的な方策ぐらいは大臣から示す、こういう考え方で取り組んでもらいたい、こう思うのです。  あと、前の質問の管理機構の対策についてひとつお伺いいたしたいと思います。
  78. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま申し上げましたように、これは公正取引委員会の活動を強化する、これがかなめになると思うのです。権限としてはとにかく大きな権限を持っておるわけであります。そこで定員を増加してその機能の発揮に当たらせたいというので、定員は抑制方針をとっておるというさなかにおきまして、公正取引委員会におきましてはその陣容の強化を行なうということを申し上げたわけであります。
  79. 松尾正吉

    松尾(正)委員 非常に物価対策には力を入れるというこの表の看板をこまかく伺ってみますと、どうもいままでと変わらないのではないかという感じを受けます。大臣が先ほど来、冒頭に、五・五%の線は何としても、大臣の首にかけても、こういう意味で御返事があったわけですが、努力してもらいたいと思います。  時間がありませんので、次に税制の問題について一、二伺うのですが、いまお話ししたような非常に物価の急上昇する中で、今度の税改正が国民にどういう印象を与えたかといいますと、国民には重税感、不公平感というものは減るどころかむしろ加重された、こういうことが正直いえると思います。  その第一点は、改正案ですと、国民の大幅減税の期待を裏切って、前年度に比べてむしろ大きく後退した減税になっている。それから課税最低限が現在の標準で――標準は四人になっておりますが、この四人世帯で百万円にも満たない。私はいままでもこの課税最低限についてはもっと引き上げるべきだということを何回かここで申し上げてきたわけですけれども、四十五年度の標準生活費、これを見ますと八十九万円になっております。しかし現状は、物価上昇しますから当然これは相当上回っているでありましょうけれども、課税最低限はどうかというと九十八万円だ。これではぎりぎりで、東京なんかではむしろ赤字が出るのではないか。この課税最低限についていろいろ必要経費その他の論議をしたときに、大蔵大臣は、この課税最低限はゆとりある生活の程度なんだ、ゆとりある生活というのはどういうのかというと、多少たくわえができる生活だ、こういうことを言われたことがあります。こういう論議は私もやった、ほかの委員からも何回も出まして、ずいぶんこの課税最低限については論議されているにかかわらずさっぱり結論が出ない。不公平感というものは除かれない。  そこで私は、これは提案ですけれども、法人等が必要経費あるいは交際費で税の軽減措置等が認められておることを考えたときに、どうしてもこの国民の不公平感を除くためには、課税最低限というのはこういう必要経費、それからこういう生活基準によるんだ、これを以前の大蔵メニュー的なもので税当局がはっきり国民に基準を示す、明確な基準を示す、これをやらない限り、現在の大臣がどんなに努力をしてもこの不公平感というものは除けないであろう、こう思うのですが、この明確な基準をつくっていく考えがないかどうか、これを大臣に伺いたいと思います。
  80. 福田赳夫

    福田国務大臣 今回の課税最低限の引き上げ、これは大体いままでの課税最低限の一割引き上げに相当するものでありまして、とにかく四十五年度において三千億所得税減税をやった、そのあとの措置としてはかなり評価されてしかるべき措置ではあるまいか、私はさように見ておるのであります。これで、アメリカあたりは百三十万円というのでかなり高いのですが、その他の諸国に比べますると大体わが日本の課税最低限のほうが上だというくらいのところまできたのであって、私はこれで満足しておるわけではないのです。今後も大いにやっていこう、こういうふうに思っておりますが、本年度のところとしてはまあ御了承いただけるところじゃあるまいか、そういうふうに考えておるわけです。特に今回は勤労者所得控除を十三万円までした、これなんかもひとつおほめいただきたいところである、かように考えておる次第であります。
  81. 松尾正吉

    松尾(正)委員 これも時間がありませんから次の機会にぜひ強く要求したいと思うのですが、課税最低限に対する必要経費あるいは生活基準というはっきりしたものを設置して、そうして課税最低限というのはこういう基準によってやっているのです。法人税と比べても決してこれは劣らないというような、こういう明確な基準をつくったほうが、大蔵当局としても主税当局としても、国民に堂々と公平な税ですよといえると思う。そういう意味でこの設置はどうかということを伺ったのですが、これに対しては……。
  82. 福田赳夫

    福田国務大臣 最低生活費というのはその時々の経済情勢等で変わっていくわけでありまして、そういうものを設定して課税最低限をきめていくという考え方はどうでしょうか。私が申し上げましたように、やはりわが日本人が国際水準、あるいは国際水準の中においてもだんだんと上位の生活ができるような全国民の状態、そういうものを実現していくということを目ざしてこの問題を考えていくというほうがむしろ妥当な考え方じゃあるまいか。いませっかくのお話でございますが、どうもよく頭にぴんとこない。申しわけございませんが……。
  83. 松尾正吉

    松尾(正)委員 私は大蔵大臣考え方もぴんとこないのです。大臣は、とにかく税は公平でなければいけないんだ、公平を中心に税制を考えているんだということはしばしば言われておりますね。この公平の基準についても一点伺いたいのですけれども、課税最低限が必要経費だ、ゆとりある生活だということがばく然と言われておるだけで、きわめて弱いわけですよ、理論的には。そういう意味で基準をきめたほうがいいんじゃないか。これはまた後にぜひただしたいと思います。  それからもう一点、公平という考え方ですが、非常にわが国税制は公平を考えているんだというのですけれども、公平ということは、大蔵省自体あるいは税制当局自体で計算したものを基準にした公平なのか、あるいは国民大衆の声を基準にしたのがほんとうの公平なのか。大臣はどちらが公平だと思うか、お答え願いたい。
  84. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは大蔵省が机の上で考えただけが公平じゃない、私はそう思います。しかし、大蔵省は専門的に税のことについては勉強しておりますから、大蔵省の考えることは有力なる材料である、こういうふうには思います。なおその上税制調査会というものがある。この税制調査会にも、どういうところに公平があるかといろことはよく伺って、また税制調査会は各方面の意見を聞いてそして結論を出す、こういうことでございます。なお、私は国会における御論議、そういうものも十分お伺いし、そしゃくしたる上、結論を出すための重要な資料にいたしておるわけでございまして、一部の人が考えたそれが公平だというふうには考えておりません。とにかく権威ある人が考えられる、それを総合した結果、これが尊重せらるべきものである、かように考えます。
  85. 松尾正吉

    松尾(正)委員 まあ、この公平論議は相当むずかしい問題であります。しかし今日ほどいわゆる所得税が高いではないかという――現実には税を納めていない人まで税金が高いぞ、こういう論議があるわけです。というのは、私先ほど言ったように、課税最低限というのはゆとりある生活なんだとか、その生活基準というものを明確に示していないところから生まれてくるものであって、どうしてもこれは明確なものを示す必要があろう、こういう考えからただしたわけでありますが、時間になりましたので、またこの点についてさらに突っ込んで伺いたいと思います。  時間がなくなったので、公害の問題は打ち切って、きょうは終わります。
  86. 毛利松平

  87. 小林政子

    小林(政)委員 経済高度成長という名の資本の急速な蓄積が進行しております中で、現在国民は公害問題あるいは物価問題、交通災害問題と、それこそ生活と自分の生命にかかわる緊急な問題等に直面していることはさきの代表質問等におきまして各党から鋭く追及のあったところでございます。経済の繁栄が国民生活を向上させてきた、こういうことはしばしばいわれておるわけでございますが、はたしてそうであったかどうか。私は、繁栄の中での新たな貧困というような問題についてあらためてここで考えてみなければならないのではないか、このように考えるわけでございます。  御承知のとおり、賃金一つの問題を取り上げてみましても、確かに名目賃金上昇をいたしてまいっております。しかし、総理府あるいは労働省の統計等を調べてみましても、激しい物価上昇によって、その実質的な賃金というものの上昇はきわめて緩慢な数字を示していることは大臣も御承知のとおりだというふうに思います。  特に労働分配率、これは通産省の資料によるものでございますが、一九五三年には三九・六%であったものが、六〇年には三二・八%、六七年には三一・八%と、労働分配率は年々低下の傾向を示しているわけでございます。国際的に見ても高度成長下にあって例を見ないということがいわれておりますけれども、このような事態の一つを見てみましても、非常に労働者の賃金が上がったから確かに所得は上昇いたしましたけれども、しかし、そのことが直ちに物価問題その他を抜きにして生活の向上ということにつながるかどうかという問題があるかと思います。  七〇年上半期の全国勤労者世帯の実支出は八万三千五百三十三円と出ておりますけれども、六九年の平均賃金、これは労働省の調べによりますと六万四千三百三円である。このことは、いかに実際に支出している額と平均賃金、これとの間で家計の中に大きな赤字を生じてきているか、このことを示すものだというふうに考えます。したがって、平均賃金に達していない労働者の数というのは調査の対象の中でも四分の三もいるということをいわれておりますけれども、このこと一つを見てみましても、どんなにか生活の状態というものがいま深刻な事態に直面しているかということがいえるのではないかというふうに考えます。  さらにまた、このような家計の赤字を埋めるというような事態の中で、パートタイマー、これが非常に増加をいたしているのも最近の傾向でございます。三十九年には三十九万人であったものが四十四年には七十万人という数字が、これも政府の統計数字の中で出てきていることによっても明らかでございます。  私ども、このような状態を一つ一つ見てみますと、さらに病気の問題一つ取り上げてみましても、有病率も非常にこれは年々高まってきているわけでございます。たとえば専業農家の有病率の状態を見てみますと、昭和三十年には二六%であったものが四十三年には七一・九%、三倍以上にふえているわけでございますし、また事業経営者の罹病率等を見てみましても、これも三十年には三四%であったものが四十三年には七八・二%と、二・三倍というふうに増加をいたしておりますし、勤労者の罹病率等を見てみましても、三十年には四三%であったものがこれも約二倍近くふえるというような、こういう事態が数字の上であらわれてきております。  私ども、これは高度成長下の社会生活がこのような実態を生み出したものだというふうに考えます。いま経済の繁栄ということがいわれておりますが、繁栄の中での新たな貧困ということが非常に大きな重要な問題として浮かび上がってきているということがいえると思います。これではたして、高度経済成長政策によって国民生活の向上というものが大きく豊かになったというようなことを大臣は前回言われておりましたけれども、そういうことが言えるのかどうか。この点についてまず第一点、お伺いをいたしたいと思います。
  88. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは、私はそう議論のないところじゃないかと思うのです。あの焼け野原から二十五年目、われわれにこのような生活ができるであろうと、あの焼け野原のころ、だれ一人夢にでも見た人があるか、私はないと思うのです。そのような生活ができるようになったのは何か、こういえば、経済成長発展のおかげですよ。これは人によってはいろいろの受け取り方をされる方もあるかもしれませんけれども、とにかく世界じゅうの人が日本のこの経済の発展、生活の向上、これは奇跡だ、驚きだ、こう言っておるのです。私はいまの小林さんのお話を聞いて、はあ、こういうことを考える人があるのかなという感じを持ちました。どうもお答えのしようがありません。
  89. 小林政子

    小林(政)委員 いまの大臣の御答弁は、私は国民生活の実態というものをほんとうによく大臣が承知をされているのかどうかというふうに思いました。確かに、終戦直後の焼け野原で食べるものもないころ、あのころに比較をいたしますれば、私ども着るものもちゃんと着ておりますし、空腹感も伴わず生活ができるということは向上だと言えないことはないと思います。しかしやはり、いま大臣が常に誇っております国民総生産世界第二位とか三位とかいわれるような繁栄している経済社会、こういうことがいわれている中で、このような、私が先ほど述べました実態があることはこれは事実でございます。十分ひとつその点については大臣にも御検討を願いたいというふうに思います。  それで、私はその中で、時間がほんとうに十分という限られた時間でございますので、ひとつ財政問題についてお伺いをいたしたいのは、物価、公害、そしてまた交通災害とかあるいはまた社会保障の問題当面国民が直面しております、そして具体的に解決を急がれておりますこれらの問題について、財政資源の配分の機能というものを当然十分これを生かし、具体的な効果があがるような、そういう措置が今回とられていないことを非常に残念に思うわけでございます。本来、財政経済政策というものは、当面しているいまのこの問題をどう解決していくか、このところに焦点を当てて考えるべきであろう、このように考えますときに、公害問題一つとりましても東京都の公害対策予算よりも少ない予算で、はたしてこの問題についての根本的な具体的な解決というものが国の予算ではかられるのかどうかということは、国民の大きな疑問の焦点にもなっておるわけでございます。これらの点について、むしろ経済財政政策全般について、一番いま直面しております国民の暮らしと命をほんとうに保障し、守っていくという点に大きく転換をすることがこの際重要な課題としてあるのではないか、このように考えますが、その点について一点お伺いをいたしたいと思います。
  90. 福田赳夫

    福田国務大臣 その点は私もそう思います。経済成長の成果を国民の生活の中に密着させる、これはいまわれわれが当面している最も重大な問題である。ただ、公害の問題で東京都では幾ら支出しているが――千億ですか、国じゃそう出していないじゃないかというお話ですが、なるほど国は一般会計では九百三十億円しか出しておりません。しかし財政投融資、これで、公害防止事業団でありますとかあるいは開発銀行でありますとか、そういうところへずいぶん金を出しているのです。千数百億を出しておる。そのほか御承知のように、御審議を願う税制の中で減税、公害施設をした人に対する減税、あるいは関税の問題につきましても、脱硫装置をする企業に対しまして、軽減税率を適用するその範囲を拡大する、あるいは低硫黄の原油を輸入する、それに対する関税を減額するとか、いろいろな措置をやっておるのですよ。千億どころじゃない。三千億やっておるのですから、その点はひとつ御了承のほどをお願いいたします。
  91. 小林政子

    小林(政)委員 租税特別措置等も含め、あるいはまた減税問題等の内容につきましては、私、意見を持っております。しかし時間がございませんので、この問題はまた当委員会税制問題のときに具体的に御質問をいたしたいというふうに考えますが、私はひとつ老人医療費の全額公費負担についてお伺いをいたしたいと思います。  昨年一月、私初めて国会へ参りまして、初質問として大蔵大臣に伺った問題が、この老人を無料で医者にかかれるようにして差し上げたい、こういうことであったわけであります。大臣は当時、公費負担の全額制は社会保障体系からいいますとむずかしい問題だとしながらも、老人問題にどう対処するかということは今後の社会保障の施策の重要課題になっているので、鋭意検討してみたいという御答弁をされたわけでございます。私は、一国の大蔵大臣が公の委員会で、老人がいま置かれている深刻な状態というものを正しく認められ、鋭意検討するということを約束されたのでございますから、四十六年度の予算には、政府として老人問題に対処する基本的な考え方、あるいはまたその具体化がどのような形であらわれるのであろうかということを非常に強い関心を持って見詰めてまいったわけでございます。四十六年度の予算を見てみますと、七十歳以上の老人の医療費負担五割を七割にするとか、あるいはまた長期勤続した退職後の保険十割給付を五年間延ばすとか、あるいは施設の入所の人員を五千九百六十四人ふやすだとか、あるいはまたテレフォンセンターを設置して介護人をふやしていくとか、このような対策等が四十六年度の予算の中ではとられているわけでございますけれども、これではごく部分的な、しかも非常にわずかなものにすぎません。大臣が財政演説の中で述べられた、社会保障についてきめこまかく配慮するといった内容がこのような構想の範囲を出ないものなのかどうか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。時間がきわめてないので簡単にお答え願いたいと思います。
  92. 福田赳夫

    福田国務大臣 老人問題は、先ほどもお答え申し上げましたが、非常に重要な問題であると考えておるわけです。それで、一昨年厚生省から老人を社会保険の対象にしたらどうだという意見も出たのですが、それの財源問題でなかなか問題がありまして、全額を公費負担にするかどうか、こういう問題、またその公費の配分をどうするかというような問題、そういうような問題がありまして、結論を得ずに今日に至っております。しかし老人問題の重要性にかんがみて、ただいまお話がありましたように、健康保険法の改正の中で七十歳以上の被扶養者に対する給付割合を五割から七割に引き上げる、また長期勤続の退職者が退職後も従前の保険制度の適用を受ける、こういうような経過的な措置を講ずるとか、あるいは寝たきり老人に対する手厚い措置を講じますとか、あるいはリハビリテーション、つまり脳卒中の人なんか再教育したらまた社会活動ができるじゃないか、そういうための措置を講じますとか、文字どおりきめこまかくこの問題には対処しておる、かように御承知願います。
  93. 小林政子

    小林(政)委員 ただいま経過措置としてそのような措置がとられているというお話でございますけれども、私が当初から質問いたしました内容は、老人医療費の全額公費負担、こういうことをぜひ実現してほしい、このことを大臣に質問をいたしたわけでございますし、制度上の制約などいろいろあることはございましょうけれども、基本的な政府の見解について、私は、これを実施するという腹がまえをお持ちになった上での経過措置としていろいろな手をいまやられているのかどうなのか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。現在、老人の人口中、自分の働きによって収入を得ている者は、あるいは年金だとか財産収入、こういったようなもので暮らしていける人は大体三分の一というふうにいわれております。しかも引き続いての物価上昇あるいはインフレ化等の傾向が強まる中で、過去の蓄積を実際には失ってきているというのも実態でございます。無料の医療費の実施によって所得の能力の低い老人が安心して医者にかかれるような、こういう体制を至急整えるということ、社会的に弱い立場に立たされている老人に対する施策が十分いかぬということは、私は政治の根本姿勢につながる問題だというふうに考えます。ぜひ基本姿勢について明らかにしていただきたいと思います。
  94. 福田赳夫

    福田国務大臣 全額公費負担の老人医療制度、これをいまお約束をするわけにはまいりません。しかし老人対策は重要でありますので、今後ともきめこまかくこの問題については検討してまいりたい、かように存じます。
  95. 小林政子

    小林(政)委員 最後に要望をいたしたいと思います。  国民はすべて老人にあたたかい手を差し伸べることをみな願っております。東京都でもすでにこの問題は実施されておりますけれども、しかしこれに対して、もっと年齢を下げて多くの方々にあたたかい手を差し伸べるというような意見は私どもたくさん聞きますけれども、この問題についてこれを実施すべきではないというような意見については、いままで一度も聞いたことがございません。老人福祉法の精神によっても、苦しみに耐え抜き、今日の社会を築き上げた人々の老後の安らかな生活の保障を、国の財政によってこれを措置するということを国民全体が望んでいることを強く私は申し上げ、ぜひとも老人医療費の全額無料を実施をしてもらいたいということを強く要求して、私の質問を終わりたいと思います。
  96. 毛利松平

    毛利委員長 次回は、来たる二月三日水曜日、午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。     午後六時五十三分散会