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1971-05-18 第65回国会 衆議院 商工委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年五月十八日(火曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 八田 貞義君    理事 浦野 幸男君 理事 鴨田 宗一君    理事 進藤 一馬君 理事 橋口  隆君    理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君    理事 吉田 泰造君       稲村 利幸君    遠藤 三郎君       神田  博君    坂本三十次君       田中 六助君    前田 正男君       石川 次夫君    中谷 鉄也君       松浦 利尚君    松平 忠久君       相沢 武彦君    松尾 信人君       川端 文夫君    谷口善太郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     谷村  裕君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君  委員外出席者         議     員 辻原 弘市君         議     員 石川 次夫君         議     員 吉田 泰造君         衆議院法制局第         三部長     河村 次郎君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十八日  辞任         補欠選任   松平 忠久君     松浦 利尚君   米原  昶君     谷口善太郎君 同日  辞任         補欠選任   松浦 利尚君     松平 忠久君   谷口善太郎君     林  百郎君 同日  辞任         補欠選任   林  百郎君     米原  昶君     ――――――――――――― 五月十四日  小規模企業の助成に関する陳情書  (第二九三号)  中国及び韓国産絹織物の輸入規制に関する陳情  書  (第三四二号)  中小企業対策に関する陳情書  (第三四三号)  中小企業金融対策に関する陳情書  (第三四四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  寡占事業者の供給する寡占商品価格等規制  に関する法律案辻原弘市君外十名提出衆法  第一七号)      ――――◇―――――
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。  辻原弘市君外十名提出寡占事業者の供給する寡占商品価格等規制に関する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。松浦利尚君。
  3. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは、まず最初に、提案者に一問だけ、本法案提出した根拠についてお尋ねをしたいと思うのであります。  御承知のように、管理価格に関する問題については、日本は、極端な言い方をすると、全く野放し状態になっておる。私はこれが現実管理価格に対する日本行政の姿だと思うのでありますが、米国あるいは英国などの先進工業国では、早くから企業集中の進行に伴って管理価格というものが発生をし、その弊害というものについても議論がされ、防止についても積極的な姿勢がとられておるわけでありますが、そういったことを関連させて、本問題に対する今日の行政の取り組み、こういったことについて本法案提出した趣旨があるやに提案理由説明から理解をしておるわけでありますが、そういうことについて間違いがないかということが一つ。それからもう一つは、本法案根拠というのは、現在ある独禁法補完するという意味提案をされておる。全く新たなものを別個につくるということではなくて、補完をするという意味であるというふうに理解をしておるわけでありますが、その点間違いがないかどうか、提案者のほうから明確にお答えをいただきたいと思います。
  4. 辻原弘市

    辻原議員 松浦さんにお答えをいたしますが、第一の点は、お話ありましたように、すでに当委員会でも、また物価特別委員会等でも、いろいろ管理価格という問題が物価上昇に非常な大きな影響を与えているということを指摘されつつも、その具体策というものに積極的に政府も取り組んでまいっておりません。したがって、先進諸国等のこの問題に対する諸般の今日までの立法、あるいは行政措置等をも十分検討いたしまして、この際、特に小売り物価上昇に対する管理価格寄与率の大きなことをわれわれ判断いたしまして、少なくとも当面、完全ではありませんけれどもとり得る措置を立法化すべきである、こういう趣旨に基づきまして提案いたしたのであります。  それから第二の点でありますが、いろいろの根本的な方法検討せられました。たとえば、これは先進諸国等でも、アメリカを除いてフランスあるいは西ドイツ等でも検討されております、いわゆる公有化による価格安定の方策、こういった直接的な問題がございます。あるいは直接価格統制をやる、こういった方法もあるわけでありますが、私ども提案いたしました趣旨は、この直接的な方法によらず、少なくとも現在、企業の中でくふう、改善をこらすならばこの硬直した価格が是正されるであろう。その是正されるための具体的方法として、提案いたしておりますように、とりあえず二つの点からこの価格の問題を規制していこう。一つは、不当な価格であってはならない。価格についての不当性を追及する。いま一つは、価格にはね返ってまいります広告費あるいは交際費等を適正なものならしめて、これが原価に不当にはね返らないような措置をとる。こういったことを基本にいたしまして提案をいたしておるのであります。  本来でありますと、これは当然公正取引委員会でやらなければならぬことでありますが、現在の独禁法のたてまえから申しますと、事件にならなければこうした問題を積極的に取り上げていくことができない。いま一つは、公正取引委員会の構成上から見て、現行の組織のままでは、調査その他に当たる人員の不足から、これだけの業務を行なうことはむずかしいのではないか。こういうことを判断をいたしまして、この際、公正取引委員会を強化することによって、同時にまた独禁法補完するという立場で、あわせて言えば、この法律をもって独禁法を一歩前進せしめる、こういうことで提案をいたしたのであります。  ただ、ここでひとつ御了解を得ておきたい点は、いま、大企業その他の中、あるいは財界等におきましても、独禁法の緩和といったようなことが議論されております。私どもは、したがいまして、この独禁法自体をいじくりますことは、往々そうした問題との間に誤解が生じて、必ずしもわれわれの趣旨が貫かれないというきらいがございます。したがって、独禁法本来の機能を強化いたしまして、現在の状態から少なくとも独禁法が骨抜きにならないような、そういう立場を踏まえつつ補完をしてまいる、こういうような発想に出ておるわけでございます。
  5. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ここで、通産大臣が非常にお忙しいそうでありますから、通産大臣質問からまず入りたいと思うのであります。  いま提案者からもお話がありましたように、公取の再三にわたる、フィルムとか洗剤、あるいは地金等調査等でも明らかなように、広告宣伝あるいは販売促進費などという、いわゆる非価格競争というものが現在出てきておるわけであります。またそれと同時に、製品差別化政策というか、こういったことを広告宣伝を通じて行なっておりますし、あるいはまた商品ライフサイクル短命化政策というものも非常に出てきておるわけであります。いずれにいたしましても、私は、通産行政消費者行政というのは、うらはらではなくて一体のものだというふうに理解をしておるわけでありますが、こうした現在の状況、こうしたあり方について、通産大臣は、どのように理解をし、こういう姿があたりまえの姿であるというふうにお考えになるのかどうか。その点を、担当大臣というよりも、通産行政立場からどういうふうに見られるのか、お答えいただきたいと思うわけであります。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 生産をいたしますのは、消費をするために生産をするのでありますから、したがって通産行政というのは、消費者行政一体のものでなければならないと言われます点については、そのように私も心がけております。  広告費交際費の問題でございますけれども交際費につきましては、それが非常に過大であるということになりますれば、おそらく税法の問題に当然なるわけでございます。広告費につきましては、私どもは、自由経済というものが最もわが国にとってはいいものであると考えておりますから、統制経済時代には広告費というものは必要はないわけでありまして、そのことから考えていきますと、自由競争がある自由経済においては、広告費というものは当然あってしかるべきものである。それが非常に誇大になる、あるいは虚偽になるということになりますれば、それぞれ法の規制を受けるわけでございますが、一般論として私は、広告費というものについては、これを是認をする立場であります。
  7. 松浦利尚

    松浦(利)委員 大臣広告宣伝を是認するということについては、われわれも、そのこと自体を否定するつもりはありません。ただ問題は、価格で競争するのではなくて、そういった非価格競争というものが現在表面に出てきておる。しかもこの広告宣伝を通じて、製品差別化政策、あるいはライフサイクルを非常に短命化していく。極端に言うと、消費者のほうは、同じ会社の製品であるけれどもただ名前が変わるだけという形で、要するに短命、非常に商品サイクルというものを短くさせられて、何か新しいものを買わされるようなイメージを受ける。本来の意味広告宣伝ということではなくて、むしろそういった面に広告というものが使われてきておる。そういう点について大臣の御見解はどうか、こういうふうに質問しておりましたので、私の質問が悪かったかと思いますが、再度御答弁いただきたいと思います。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 品物を消費者が求めますときには、その効用によって消費者が求めるものだと思いますが、効用とは何かということになりますと、かなり問題が複雑ではないか。たとえば簡単な例で申しますと、冷蔵庫であれば、それは物を冷やして保存をする、あるいは氷をつくる、それが冷蔵庫効用であろうと思いますけれども、その冷蔵庫にある飾りがついておる、あるいは特殊なかっこうをしておる、非常ないい色をしておるといったような部分効用であるかないかというようなことになってくると私は思います。それは効用でないとはなかなか言い切れない。非常に物の少ない時代でありましたら、そういうことに効用を認める人はそうおらないと思いますけれども、いわゆる情報化社会ということになってまいりますと、形も色も、あるいはいろんな意味でのアクセサリーも、それ自身効用のうちであるというふうに消費者考えるようになってくる。そのことのいい悪いは議論がありますけれども、私はそれが事実でありましょうと思います。  そこで、いまお話ライフサイクルといったような問題はそれに関連をいたしますので、実体的には効用は変わらぬではないか、しかし新型だといって、本質的な効用関係のないところに変化をさせておるだけではないかという議論は、議論としてはよくわかるわけでございますけれども、しかし、そういうものによけいな金を払う消費者態度というものが現実にはある。そういう消費者態度がいいか悪いかということになるわけでありまして、それは結局やはり消費者サイドにおいて判断していかなければならないであろう。消費者がそういう意味で非常に本質的な効用だけを求めるという態度になりましたら、生産側において、いかに消費者にじょうずにものを売り込もうといたしましても、それはその目的を達しない。そういう形でライフサイクルというものが延びていって、そして大量生産が可能になり、本質的な効用を維持したまま価格が安くなるということは非常に望ましいことだと私自身は思っておりますけれども、しかし、その選択はやはり消費者がしなければならないのではないだろうか。生産者の側で消費者をだまかしては、これはいかぬわけでございますけれども、しかし消費者を誘うという行為は、だまかすという行為と実際問題としては非常に近くなる場合があるわけでありますから、そういう意味で、消費者をだますという生産者はおってはならないということは、これは申し上げても差しつかえないことで、それに類するようなことは、広告であると、あるいは生産体制であるといなとにかかわらず、本来避けるべきことであろうと思います。
  9. 松浦利尚

    松浦(利)委員 通産大臣、もう一つ広告の問題で最後お尋ねしておきたいのですが、行き過ぎ広告宣伝過度広告宣伝というのは社会的な浪費だ、かように私は思うわけであります。どの点が行き過ぎたかということについての判断というのは、私はなかなかむずかしいと思いますけれども過度行き過ぎ広告、こういったものについてはやはり社会的浪費だという考え方に立たれるのか。それとも、広告というものはもう野放しでいいのだ、どんなに宣伝をしてもかまわない。極端な言い方ですが、交際費とは性格が違うにいたしましても、広告宣伝そのものは野放しだ、それが製品価格にはね返ってこようがどうしようが、それはもう自由競争社会だからしようがないのだ、こういう判断に立たれますか。それとも、やはりある一定の水準というものが必要であって、広告宣伝についてはある程度の規律というものを求めるべきである、過度広告宣伝は社会的な浪費であるというお考えに立つかどうか。その点を最後通産大臣お答えをいただいて、大臣に対する質問を終わりたいと思います。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのお尋ねは、まじめに考えれば考えるほど、お答えのしかたがむずかしいというふうに思うのでございます。つまり、過度広告とは何かということをやはり定義をしてかかりませんと、どうもそれにお答えすることが考えれば考えるほどむずかしいと思います。したがって、最後お答えいたしますことは、非常におかしなお答えになりますけれども行き過ぎ行為行き過ぎ行為考えるかとおっしゃれば、私はそう考えますと申し上げるお答えになってしまうわけでありますから、過度ということについて、やはりある程度の定義づけについて、松浦委員と私との間で合意ができませんと、何をもって行き過ぎとするかということが申し上げにくい。これはまじめに考えれば考えますほど、私はそういうお答えになるのではなかろうかと思います。
  11. 松浦利尚

    松浦(利)委員 答弁に対してまたいろいろ質問を出して、たいへん申しわけないのですが、それでは過度という問題ですね。行き過ぎ宣伝費というものについて、どういうものを限界とするかということについて、通産行政としてこれから検討を加えられるというお考えがあるのかどうか、その点もあわせてお聞かせいただきたいと思うのです。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 消費者の利益ということを一番に考えなければならないのでございますから、いわゆる行き過ぎ広告があって、それがコストに大きく影響をし、消費者にそれが転嫁されるというようなことは、本来それが行き過ぎ部分であれば望ましくないということは、私は明らかであろうと思います。したがいまして、その定義がむずかしいということはあらかた見当がつきますけれども、そういう問題については、やはり消費者本位立場から検討をし、明らかにそうであると思われるものについては、やはりそれなりの行政指導をするという基本的なたてまえは大事なことである、そういうたてまえを常にとっておくべきものであると私は考えます。
  13. 松浦利尚

    松浦(利)委員 非常に時間がございませんので、ほかに大臣に対する質問がございましたが、通産大臣質問はこれで終わらしていただきます。お忙しいそうでありますから、どうぞ御退席いただきたいと思います。  それでは、あと残された時間、経企庁官長公取委員長に御質問をいたしたいと思うのでありますが、長官公取委員長とはしょっちゅう物特委議論をしておりますので、ある意味ではもう議論したじゃないかという点もあるかもしれませんが、きょうはせっかく野党で提出した法案中心の審議でありますから、また過去の質問が出てくるかと思いますが、その点はお許しをいただきたいと思うのであります。  御承知のように、これは公正取引委員会資料調査をしたわけでありますが、ミーンズが一九三五年にアメリカの上院で、産業の諸価格と非伸縮性に関して農務長官提出した報告書管理価格というものが議論をされておるわけでありますが、このミーンズが、反トラスト小委員会で一九五五年以降の卸売り物価上昇原因について調査をしております。主要卸売り物価グループ三つカテゴリーに分類をいたしまして、一つ価格管理が主要な役割りを果たしているグループ二つ目市場価格が支配的あるいは高度競争的産業グループ三つ目には中間混合的産業グループ、この三つカテゴリーについて一九五三年から五八年の間の動きを調査をしておるわけであります。そしてミーンズは、一九五〇年代後半の価格上昇原因として管理価格が作用しておるのだと、そういうことを明確に結論づけておるわけであります。先ほど申し上げた第一のグループが最高の上昇を示しておる、それから二番目のカテゴリーについてはわずかの騰貴か下落の傾向を示しておる、中間混合的産業グループでは両者の中間を示しておるということで、アメリカにおける一九五〇年代後半の価格上昇原因として管理価格が作用しておるということをミーンズは明らかにしておると私は思うのであります。  これと同じ調査が、実は公取の手によりまして、「生産集中度価格変動頻度および変動幅」ということで、二回にわたって調査をされておるわけでありますが、この調査内容とこのミーンズ報告内容というのは、私は全く類似しておると思うのであります。この公取調査結果から見て、今日の物価上昇の全部とは言いませんが、一つの重要な犯人として管理価格というものが作用しておるということが明らかではないかと思うのでありますが、政府は、そういうふうに重要な犯人一つとして今日まで理解をし把握しておられるのかどうか、その点を経企庁長官公取委員長お尋ねをして、さらに経企庁長官には、もし管理価格ということが指摘できるとするなら、いまいわれておる管理価格というものについて、今日の日本における物価上昇に対してどれだけの影響を与えておるかという物価上昇に対する寄与率。これは昨年の物特委員会以来、管理価格一体今日の物価に対してどれだけの影響を与えておるのか、具体的に統計その他で調査すれば出てくるのではないかという議論を私は続けておるのでありますが、もうかれこれ何年かたっておるわけでありますが、こういった管理価格寄与率というものについて、長官のほうからお答えをいただきたいというふうに思います。
  14. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 今日の物価問題は、御存じのように、私たち消費者物価上昇ということを中心にして非常に心配をしておるわけでございます。御存じのように、わが国におきましては、御売り物価がわりあいに低位に安定的に動いておるのに対しまして、消費者物価が相当上昇しておる。いわゆる卸売り物価消費者物価の乖離ということが特に指摘されておるのは、御存じのとおりであります。まあ、いまもそこで御指摘がございましたが、諸外国はそこのところがだいぶ違うと私は思います。むしろ卸売り物価に非常な問題がある、こういうふうに察せられます。そういう意味において、主として大企業中心として議論されている卸売り物価についてわが国がわりあいに安定的である、そういう感じを持っておるのです。そういう意味で、よく管理価格の問題が物価問題の重要問題として議論されてはおりますけれども、厳密に今日の物価問題の中における比重というか、ウエートというか、位置というものを考えてみますると、いわゆる管理価格的なものが今日の物価上昇中心的なものである、そう私は断定はしておりません。それは行き過ぎである、こういうふうに私は考えております。そういう意味において、なお局部的に、調査をすれげ問題があるところもあると思いますけれども物価問題全体として見ると、そういうふうな感じを持っております。  また、したがってそれについてのウエートということも、いま特別の数字は持っておりませんけれども、いずれにしましても今日は、消費者物価上昇について、何と言っても需要と供給の問題、これがやはり一番基本になっておる。高度成長に基づくところの需要の問題、これがやはり中心になり、そしてその間にあって賃金問題等も問題になってきており、そうしてそれらを総体的にくるめて、現在、価格決定のメカニズムが問題になってきておる。これはまた、中小企業あるいは大企業を問わず、そういう管理的な様相が濃くなろうとしている分野がないでもございません。そういうものについては、できるだけそうしたものの解きほぐしをしていく。私たち立場は、いわば市場経済的な手法というものをあくまでも原則にして考えてまいりたい、こういう考えに立っておるわけであります。
  15. 谷村裕

    谷村政府委員 私ども独占禁止懇話会提出いたしました資料で、いまちょっと御指摘になった生産集中度価格変動関係というのをしるしたものがございますが、いま企画庁長官の御答弁になったように、大体において、そういう生産集中が高いとか大企業が多いとかいわれているものの生産しておりますものは、それだけ非常に日本経済発展とともに成長性のかなり高いものを含んでおります。そういった関係で、むしろ物価という面だけから見れば、上昇をしていない、あるいは下がっているという点もうかがわれると思います。  問題はむしろ、生産性上昇ということが、価格がもっと低下するはずであったのに低下に向かわないというふうな問題として、物価との関係一体それをどう考えるかといったような問題とか、あるいは生産性向上が高いところの賃金上昇というふうなことが他の低生産性部門へ波及していく。そうして、いま御指摘のあったような意味での消費者物価上昇という、一つの大きな、基本的な流れが経済成長のもとに起こっておる。そういう中で、大企業なりあるいは生産集中度の高い企業の果たしている役割り一体何か、そういうふうに考えなければならないのではないか、かように私は考えております。
  16. 松浦利尚

    松浦(利)委員 言われることは、一応私は理解しないでもないのですが、ただ、もっと具体的に御質問いたしますと、生産性が上がってコストが下がってきても、それが実際的に価格に作用しない。コストが下がっても価格が下がらない。どうもコスト価格との関係に因果的なものが存在をしておるというのを私たちは経験をするのです。  そういったことを、アルミ、フィルムあるいは合成繊維公取調査から理解をしてまいりますと、常に一定以上の収益率というものをどういう時期でもあげているのです。だとするなら、管理価格というものと、これはまだ一部の学説にしかなっておらないかもわかりませんが、管理利潤というものとが作用しておるのじゃないか。管理価格というものの背景に管理利潤というものの存在があるのではないかということをよくいわれるわけでありますが、そういった点について公取委員長見解を簡単に述べていただきたいと思うのです。
  17. 谷村裕

    谷村政府委員 広い意味で、しかも経済をかなり静態的に考えましたときに、非常にダイナミックに動いている経済でない経済を前提として考えた場合に、一定利潤を確保するために一つ市場の条件というものをつくり出していくというふうなことは、理論的にはあり得るかと思います。日本経済のように、非常に成長性の高い経済で、しかも業種間に生産性格差が非常にはなはだしいといったようなときに、なおかつ、その生産性上昇の成果というものが、現実コストの減、したがってまた価格の減という形にあらわれてくるということのためには、かなり競争条件も必要でありますが、それ以外のいろいろな条件も私は必要ではないかというふうに思います。  そこで、いま御指摘のような利潤というもの、これは当然企業でありますから、私ども考えております市場経済というたてまえからいたしましても、利潤を追求することは当然でありますけれども、その利潤を必ず一定のところに管理して持っていこうというようなことが、実際問題として、できるときもございましょうし、できないところもございます。利潤というのは、そういう意味では私は、かなり弾力性を持ち幅を持つもので、最後の受け取りというものの形をとられたと思います。そういう形でなくて、いまの日本経済には、かなり強いコストプッシュ的な、しかもそれが下方硬直的な様相を示しているものが経済成長とともにあるというふうに私には思われます。したがって、管理価格、本来の意味での独占利潤とか、本来の意味での管理的な利潤とかいうようなことが、理論的には考えられますけれども日本のいまの経済の現状において、そういうものが結果的にある程度確保されている、そしてそれがいわば市場支配的な力を背景にして行なわれているという、そういう姿があるようには、私は思いません。
  18. 松浦利尚

    松浦(利)委員 非常に短時間でいろいろと議論を掘り下げていくことはできませんけれども、もっと簡単にお尋ねをいたしますと、需給のアンバランスが出てきて市場が悪くなってくると、トップ企業生産調整をする。生産を切って市場を調整する。逆に、拡張経済で設備投資というものが調整がつかなくなってくると、トップ企業がひとつ遠慮をするからということで、設備投資そのものについても調整をする。現実的には市場の働きというものが働かない。逆に生産調整をして、できた生産物そのものが、市場に一〇〇%出荷されるのではなくて、その二〇%しか市場には出てこない。残りの八〇%というのは、逆に言うと事後決裁、市場価格がきまらずに直接企業企業の取引によって価格が決裁をされていくといった寡占体における価格形成というもの、こういったものが明らかに今日存在をしておると私は思うのです。ここに私は、いうところの管理価格というものが明らかに作用しておるというふうに理解をすることが、むしろ当然な考え方だというふうに思うわけでありますが、公取委員長はどのようにお考えになりますか。
  19. 谷村裕

    谷村政府委員 高度に発達いたしました経済社会におきましては、経済を動かしていくいろいろな経済主体の行動というものが、そこにもちろん、私ども考えております競争といった、あるいは価格のメカニズムの中に生きる、あるいは市場機能の中に行動する、そういうことが基本的にあるはずでありますが、同時に、一種の管理された経済社会と申しますか、特にマーケッティングといったようなことが企業においては非常に大きな要素を占めてまいりますし、それはそれぞれの個別の企業だけではなく、もう少し広い意味で、一国の国民経済、あるいはさらにもっと広くいえば国際経済の中においても、ある種の管理された経済社会というものの姿が他の一面においては出てくるようになりますし、また、そのこと自体は、それとしての意味を持っているのだというふうに私は思います。  したがって、たとえば景気政策の問題一つ考えてみましても、本来、好況、不況の波というものを大幅に動かしていくほうが、市場機能を動かしていくためにはよろしいのかどうか。あるいはむしろ、好況、不況の波、あるいはいわゆる景気の微調整といったようなことを非常に芸こまかくやっていくほうが経済のためにいいのかといったような問題もあれば、先ほどちょっと触れましたような、国際経済の中における一種のそういった調整作用、調整方法といったようなものもございまして、たいへん長くなって恐縮でございますが、いまの経済社会は、本来的に持っているべき競争機能だけが全部を動かしているという姿になっていない。また、そういう経済社会に先進国の姿というものはなりつつあるということも、私は一つの事実として考えなければならないというふうに思っております。
  20. 松浦利尚

    松浦(利)委員 もう一つ公取委員長お尋ねをしておきたいのですが、実はビールですね。一つのいい例だから、私はビールを例にとりたいと思うのであります。  ビールには管理価格というものが存在をしておるのかどうかという問題だと思うのですが、御承知のように、ビールは全くの寡占業界であります。上位三社でほとんどの市場を占めておる。四社では一〇〇%占めておるという状態だと思うのです。この企業そのものが、それでは協調的寡占体かというと、そうではない、競争的な寡占体だというふうに私は思うのです。御承知のように、市場拡大競争というものが非常にきびしく行なわれておる。場合によっては優劣が転換をするかもわからないような状態があるわけですね。そういう状態の中で、現実に、いうところのプライスリーダー、こういったものが存在をすると公取理解をするか。あるいは、そういうプライスリーダーに商慣行として右へならえをするという慣行というものが、日本にあると理解をなさるか。この点はどうでしょう。
  21. 谷村裕

    谷村政府委員 いまビールを例におあげになりましたが、確かに企業はお互いに競争をいたしております。たいへんな競争であると思います。しかし、価格についての競争ということになった場合には、競争をするときもあれば、競争をしないで競争を回避するという姿をとることがございます。  同じく私どもが、グルタミン酸ソーダ、いわゆる化学調味料等の価格につきまして調査をいたしました結果を、本日午後、独占禁止懇話会において議論するわけでございますが、そこらあたりで見ますと、昭和三十年代に入りまして、特に新しい製法の発明とともにコストがうんと下がった。しかも、従来非常に独占的な地位を占めておった企業に対して、新しく相当の大企業二つ三つと新規に参入してきて競争をしかける。そういったときには、製品市場価格の低下という競争の姿も、かなり見られたことは事実でございます。しかし最近においては、またそれがある程度、いまお話が出ましたように、協調的と申しますか、価格に関する限りは競争回避的になるという姿も出ております。  このことは一体何を意味するかと言いますと、結局、企業が自分で、ここで価格競争をして勝ったほうが得か、それとも、どこかが値段を上げたら、その上げた値段に一緒になって自分も乗っかっていったほうが得かという、企業としての判断をしたのだと思います。  物価委でありましたか、大蔵委員会でありましたか、去年、ビールの関係で社長さんたちを呼んで御質問になったときに、いわゆるシェア一位の企業の社長は、私どもは他の社が値上げをしたときに、それに乗って値上げをしたほうが得だと思ってそういたしましたと、そういうお答えを堂々としておいでになるし、そしてまた、その答えをすること自身一つも自分としては間違っていないと思っているということをおっしゃっておったのを私は記憶をしておりますが、商習慣としてプライスリーダーがあり、そして商習慣としてそれにならってということじゃなくて、そこで価格競争をしていったほうが得か、乗っかっていったほうが得かという企業としての判断をしたのだと私は思います。  たいへん力の強い企業が、しかも力の弱い他の企業に対してもし価格競争をしかけていくならば、それは価格の面から見れば、たいへん合理的に値段も下がっていくということになると思いますが、ある意味では、しばしば強いところがいよいよ強くなる、いよいよ市場において支配力を高めていくというふうな競争にもなりかねないと思います。その辺はたいへんむずかしい問題をはらんでいるというふうに思います。
  22. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いま言われたように、価格の面で協調的寡占、価格の面では協調をしていく、あるいはある場合においては価格の面で競争をする場合もある。ところが、実際の国民の素朴な理解のしかたとしては、やはりそこに何らかのやみ行為があったのではないか、やみカルテルが作用したのではないか、こういう理解をするのが普通だと私は思うのですね。しかし、実質的にそういうやみ行為があったかどうかということについて、疑いがあるけれども証拠はない。現実の独禁政策の中では、そういった証拠のあがらないものについては、あっただろうという想像だけではチェックできない、規制できない。しかし国民の多くは、そういった管理価格的なもの、極端に言うと、管理価格ではないが証拠のあがらないやみ行為ということによっての協定価格、こういったものが実際に、日本企業が寡占化してくればくるほど出現をしてくる可能性というのは強いと私は思うのです。  だとするなら、現在の公正取引委員会では、そういった行為についてチェックする機能というものも持っておらない。現在の独禁政策に触れるという証拠がない限り、推定されることがあったとしても、公取委員長は歯がゆいでしょうけれども、手が出せないというのが実態だと私は思うのでありますが、ましてや、全く別個の管理価格というものについては、手を触れることのできないものだというふうに公取委員長理解をしておられると思うのですが、その点いかがでしょうか。
  23. 谷村裕

    谷村政府委員 多かれ少なかれ、今日のような情報化社会では、企業はいろいろな形で市場の状況を探り、また相手企業の動きというものを見ておるということは、これはもう事実だと思います。そのことが正しい意味での競争を避けさせるような形になっているかどうか、そこらにいろいろの問題があるわけでありますが、少なくともいま御指摘になったような意味で、独禁法という現在の法律の姿においてそういう姿を云々するというわけには、法律のたてまえから当然いかないことであります。
  24. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それで、私は経済企画庁長官にお尋ねをするわけであります。公取委員長にもあらためてお尋ねをいたすのでありますが。  昨年の八月六日でありますか、佐藤経企長官谷村公取委員長とで意見が一致をした。物価政策の立場から、佐藤長官管理価格の実態調査の充実が必要だと強調すると同時に、その対策として、管理価格に対する価格監視体制をつくることが有効な手段だと思う、こういう点で公取と意見が一致した。監視機構というのは政府内に設けるか、あるいは物価安定政策会議のように、国民の声を反映させた政府の諮問機関に置くほうがいいのか、あるいは現行の独禁法改正によって行なうか、新しく立法するかという、いずれか具体的な点について今後検討を加えていきたい、こういうことで経企庁長官は、谷村公取委員長との話し合いの中で、管理価格対策で完全に一致したというふうに発表になっておられるわけでありますが、現実的には管理価格に対して、政府はどういうふうにして取り組もうとするのか。確かに実態調査が行なわれていることは事実だと思います。しかしそれに対して、こういう談話の発表はありましたが、具体的にどういうことをなさろうとするかということについては、明確な政府の方針というものが出されておらない。具体的なものは出ておらないと思うのです。ですから経企庁長官は、こういったものについて明確にやれるとお考えになっておられるのかどうか。この談話は一体その場限りのアドバルーンだったのか。実際にやろうと考えておられるのか、あるいは今後どういうふうにされようとするのか、そのことが一つであります。  もう理事会の申し合わせの時間が来たそうでありますからもう一つ。  政府がそういったことについてちゅうちょしておるからこそ、提案者としては、佐藤長官谷村委員長のこの談話の内容から見て、当然政府もやるものと期待をしておったが、やらないので、野党共同で、提案者がそういった長官あるいは公取委員長立場に立って、現在提出されておるような法案が準備をされた。いままでの答弁を全部お聞きしてみても、そういったことを防止する意味提案者から出されておるというふうに理解ができるわけでありますが、提案者のほうで最終的にそういうふうにお考えになるかどうか。その点もあわせて、まず長官のほうから御答弁いただいて、それから提案者のほうで御答弁いただきたいと思います。
  25. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 だいぶ前のことで正確に覚えてないのですが、あのときには、そういう特別の談話を発表したのじゃないのです。まあ公取委員長と、管理価格の問題がだいぶいろいろと議論されるようになった、われわれとしてもこれについては大いに勉強しなければいかぬ、検討の必要があるだろう、こういうような程度の話をしたのであって、それを私が、またさらに特別談話を発表したとか、そういうことではありません。ですから、国会でお答えをしておることと特別に変わったことを、そこでもって議論したりしたとか、そういうことではありません。その点は念のために申し上げておくといいと思うのです。  それで、いまのお話のように、政府がこれをほったらかしておるということは、管理価格というものは物価政策上非常にウエートの高いものであるという前提でお話しになっておられるわけで、私たちはさっき申し上げましたように、むしろどっちかというと、卸売り物価の分野において議論の対象になる企業があるのじゃないか。消費者物価の今日の上昇ということから言うと、私はとにかく、物価政策上、今日緊急を要する問題としては、管理価格問題というのはそれほどにウエートを置いてはおりません。これは私がしばしば申し上げておるところであります。そうして何といいましてもこの問題は、とにかく価格という、今日の資本主義的な経済機構のいわゆる最終的な意味での調節的な機能を果たすところの重要な問題でございます。そうして、これに対していたずらに行政介入するということは、もうよくよくのことでない限りはこれをしないほうがいいんだ、こういうたてまえで今日まで来ているわけでありますから、そういう意味から言いましても、そう簡単に、これについていま行政介入的なことをしたほうがいいんだというふうなことには、私はならないと思っておるんです。  確かにいろいろと問題が指摘されてきておる際であります。われわれとしても、十分これも検討し、それから、一体そういう局部的な介入というものが価格現象全体にどういう影響をもたらすのか、そうした点もとくと検討する必要があろうと思われます。われわれはそういう意味においていま勉強しておりますけれども、なかなかそう簡単に、すぐこれを介入する、こういうところの結論を少しもいま出しているわけではないのでございます。
  26. 石川次夫

    石川議員 いまの経済企画庁長官の答弁は、予算委員会を通じての答弁と、若干私は食い違うような感じがするわけなんです。それは、物価安定政策会議のほうでしばしば、ビール、あるいはまた最近の牛乳の値上げの例でもわかるように、現在の独占禁止法の運用ではこれを阻止することができないというようなことになっておるわけでございまして、そして今度の予算委員会の審議の過程では、どうしてもやはり価格調査というものが必要である、あるいは行政介入の必要というものはどうしてもあるということを言明されておった答弁とは、かなり食い違っておる答弁になっておるのではないかと提案者としては考えておるわけであります。  しかし、現在の独占禁止法を厳密に運用することだけでもだいぶ違う。たとえばビールのごときは、情況証拠というものが明らかだと常識的には考えられるわけですけれども、しかし具体的な証拠がなければということであって、情況証拠というものは全然実際上は運用されておらない。こういうような独禁法の不備の点を今度補完をする。全面的な改正ということになると、これはたいへんな事業になるし、また別個な組織をつくるということになると、これまたたいへんな作業になるということで、当面そのような弱点を補強をする、しかも政府答弁の範囲内における補強である、こういうふうにわれわれは理解をして今度の法案になったわけであります。
  27. 松浦利尚

    松浦(利)委員 時間も来たそうでありますが、最後にもう一点だけお尋ねをしておきたいのです。  いま、やはり提案者である石川さんから御説明がありましたように、長官の御答弁は、少し消費者サイドから後退ぎみだと思うのです。   〔委員長退席、進藤委員長代理着席〕 私は少なくとも、長官は非常に積極的に物価対策——私は管理価格物価上昇の全体であると言っておるのじゃないのです。その重要な犯人の中の一つである、一つの分野であるということを国民も理解をしておると思う。しかも御承知のように、ビールにいたしましても、あるいはこういうことを申し上げると、新聞社の方からいろいろとおこられるかもしれませんけれども、新聞の値上げの問題にいたしましても、国民が非常にはがゆいけれども、それに対して現在の法体系の中ではどうすることもできない。ですから、そういったものに対して八月の六日に、こういった前向きの、管理価格というものについては監視機構という毛のもつくってみよう、あるいは独禁法そのものの手直しということ、あるいは別個に立法するということも考えてみようというふうに、私はいままでは物特委でも常にそういう御答弁をなさってきておったというふうに理解をするんですが、いまの長官の御答弁によりますと、いや検討していくんだ、管理価格物価上昇原因ではないように思う、あまりそのことは重要視すべきではないのじゃないか、こういった答弁になってきておるわけで、その点、私は、これからの独禁政策の上からも、あるいは公取という機能の上からも、いまの長官の御発言というものは非常に重要だと思うのです。  同時に、いま石川さんからもお話がありましたように、この野党提案法案というのは、私は非常にゆるやかだと思うのです。要するに、寡占企業体における価格というものは、国民サイドから見て妥当かどうかということをチェックをしよう。チェックをしてみて、非常に不当なものについては勧告を出す。勧告に従わないものは、ただ、これはこうこうですよということを国民に向かって公表する。そういう公表という形によって、そういう管理価格的なもの、寡占価格的なものについて規制を加えていこうという、野党としてはきわめて不満足な、むしろ長官の言質なり、あるいは公取委員長サイドに立った提案だというふうに理解をしておったわけでありますけれども、いまの長官お話を聞きますと、要らぬことじゃないか、こういう法律は全く必要でない、物価対策上こういうことは関係がないのだというふうに、ことばでは言われないけれども、内容的にはそういう理解に結論づけられてくる御発言だと思いますから、もう一ぺんこの問題について明確にお答えいただきたいと思うのです。
  28. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 この前から物価委員会等でも申し上げていますけれども、そういう局部的な現象が指摘されているという議論は、われわれも十分に聞いているわけですから、そういう問題についてどの程度これを考えるか、こういうことだろうと私は思うのです。現在の物価上昇問題において管理価格問題というものが支配的であるというふうには私は受け取っていない、こういうことを申し上げているのです。  そこで、それについて政府一体直接介入するほうがいいかどうか、こういう問題は、これは率直に言って、いままでわれわれ議論はしておりません。これはさっきも申し上げているように、従来の考え方からいっても非常に問題のあるところであります。そういうことから、しばしば申し上げておるように、価格の決定のメカニズムを中心にして検討をしておる、物価安定政策会議においてこれを検討しておる、こういうふうに申し上げているので、ですからそれは、何もいますぐ行政介入をするというようなことを前提づけている議論では、もちろんないのでございます。まずそうした実態を調べてみよう、こういうことをわれわれしばしば申し上げている。その範囲においては調査の必要もけっこうである。現に公取委員会においても調査をやっているわけです。そういったこともデータにして、われわれとしては、いまのような問題について結論を出さなければいかぬ、こういうことを申し上げているので、行政介入をすぐする、こういうことはいままでも私たちは申し上げてはおりません。
  29. 松浦利尚

    松浦(利)委員 時間が来ましたが、もう一つどうしてもお尋ねしておかなければいかぬのは、公取委員長も、寡占化対策は独禁法だけでは限界がある、だから公取委員会だけでなく政府全体でこの問題に取り組んでいかなければならないという御発言を、昨年の八月五日に記者会見でしておられる内容があるわけでありますが、それを受けてやっぱり経済企画庁長官との話し合いがあって、そして経済企画庁長官は、不当な価格引き上げがあった場合、それをやめさせるような価格監視体制をつくるのが有効な対策の一つである、こういうことを記者会見で述べておられるわけです。同時に、佐藤総理は野党の質問に答えて、管理価格については現在の独禁法のワクの中でやっていけるのだ、こういう答弁をしておられるのですね。  ところが実際に、政府の機構全体の中では、いまずっと説明したように、管理価格的なものについては、もう現在の独禁法では無理だということははっきりしていると思うのです。公取委員長がそう言っているのですから。ですから、私はさっき言ったように、監視機構というものも一つの対案として考えておられるという長官の談話というものは、前向きの談話、記者会見だと思っているのですよ。それを長官、いまでもそういうふうにお考えになっておられるのか。それとも、いや、それは間違っておりましたというふうにお考えになるのか。その点はポイントとして非常に重要だと思うのです。ですから、簡単でけっこうですから、いまでもそういうふうに思っておられるかどうか、その点をお答えいただきたいと思うのです。
  30. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 これが管理価格であるというふうに決定づけた結論を出したものはまだ一つもありませんけれども、現にそういう問題があると疑いがかけられて、そうして調査等を行なっておるものがある。だから、そういう議論がだんだんと出てくるということになり、そしてその実態というものについての結論が出るということになれば、これはもちろんそれに対して対処をどうするかという問題が起こってくるわけで、私たちはまだそこまではいってないだろう。ただし、しばしば申し上げるように、いままである具体的な問題がありましたけれども、特定なものについて管理価格的な要素がくさいなという感じのものが一、二感じられるということは、具体的な例として申し上げております。  そういう場合に、やはり調査をするということはいいと思いますが、しかし、監視、監視というのですが、結局、監視に伴なう行政介入ということがあって初めて意味があるのだろうと私は思います。したがって、そういう意味においては、ただ監視をするというか、調査をする。いわゆる調査はわれわれもやっておるところでありますから、それ以上のものになると、いわゆる行政介入ということでありますから、これについては私たちとしては十分に慎重に対処しなければいけない、こういうことを申し上げておる。ですから、たとえば政府自身も、ものによって警告を発しています。ただ、それが松浦さんも、政府は警告だけ発して効果がないじゃないか、こういうことを言われているのですけれども、そういう感じのものについての警告はもちろん発しておる。そういう意味では、われわれとしても注目しているのです。ただ、いわゆる制度としてこれを行政介入にまで発展させるかどうかということは、そして結局、場合によってはこれを譲歩をさせるかどうかというところになると、これは価格形式の基本的な問題に触れる問題であるから、われわれとしては、よほどこれを検討しなければならぬ問題であり、目下のところ、そこまでいっている情勢ではないのではないかということを、先ほど付言して申しましたけれども、しかし、いずれにしてもそれはもうちょっと検討を要する。われわれも、大体夏の終わりか秋には、それの結論が出ると思います。純客観的にそういう問題をもっと取り上げて、その検討の結果を待ちたい、こういう際であります。
  31. 松浦利尚

    松浦(利)委員 秋までに結論が出るということでありますが、今度は、公取委員長最後に私はお願いをしておきたいと思うのです。  これは公正取引委員会の国際課からいただいた資料なんですね。これは連邦取引委員会の改組に関する内容のものなんです。これでアメリカの取引委員会委員長が、私はいいことを言っておると思うのですね。「私は効率化が私にとって何を意味するかにつき、いくつかの考えをつけ加えたいと思う。……それはアメリカ人民に忠誠を維持することを意味する。消費者は充足さるべき或る種の合理的期待を有する。納税者もまた然りである。それは政府ができる限り効率的、効果的かつ経済的に運営されるであろうという期待であり、我々はこれらの期待に応ずるつもりである。効率化は全ての能力を十分に発展させ使用するのを許容し……官庁に今持っているもので、なしうる最良のことをなす能力を与えるのである。これが達成された後に、官庁にとっては、もっと予算を要求して議会に行くことも必要であるかもしれぬ。しかし効率化が実証されるまでは官庁は新賃金を捜し出す権利はない。何故ならば新予算は、現在の浪費を隠すだけでなく、それを加速化するだろうからである」、こういうふうにアメリカの連邦取引委員会委員長は、消費者保護に名をかりて予算を獲得するようなことについてはわれわれえりを正す、あくまでもアメリカ人民に忠誠を尽くして消費者を満足させるような行政をしていく努力をするのだ、しかる後にわれわれは、国に対して、国民に対して予算の要求をしていこうという。私は、アメリカ取引委員会委員長としての姿勢をここに明らかにされたものとして理解ができるわけでありますけれども、現在の谷村公取委員長も、委員長になられて以来、非常に積極的に取り組んでおられると思うのです。私は極端な言い方をすると、ちょうちんを持つつもりはありませんが、少なくともこういった感覚に立って、現在の機構の中で精一ぱい消費者立場に立って努力をしておられる。しかしながら、これだけ努力をしておきながら、率直に言って、管理価格的なもの、寡占体制下における価格メカニズムというものについての把握をする能力がない、あるいはそれをチェックする機能がない、どうしたらいいのかという歯ぎしりといいますか、そういうものが現実的に今日の公取の姿ではないか、私はこういうふうに理解をしておるわけでありますが、谷村委員長は、いや、そうではありませんよ、それは買いかぶりであり、そこまで考えていませんという御答弁をなさるのか。それとも、私が申し上げたように、当初、公取委員長に就任なさいましたときの記者会見で述べられておるようなお気持ちで、今日なおかつ、そういうものまでもできればやりたいというふうにお考えになっておられるのか。その点はやはり、消費者、国民に向かってこの際明確にお答えをいただいておきたいと思うのです。この法案の審議があるときに私は非常に有効だと思うのです。明確にしていただきたいと思うのです。
  32. 谷村裕

    谷村政府委員 まず最初に申し上げるのは、それはたいへん買いかぶりになっておるんで、私としてはむしろ恥ずかしいという気持ちがいたします。それはまず申し上げておきますが、しかし、公正取引委員会というところがいま法律によって与えられております任務をもう一つ越えた問題であるというふうに私が考えていることは、それは何べんも、この機会でも申し上げましたし、公にも私は談話その他で申しております。むしろ、こういった新しい経済社会における、たとえば大企業の問題、たとえば新しいインフレの問題、たとえばまた、そこにあるいろいろな価格問題といったようなことは、新しい経済社会の発展段階に即したような政府全体の取り組み方というものが必要ではないか。こういうことも私は何べんか申し上げているところであります。  端的に言えば、それはもっと、経済運営体制の新しい型というものを——ただ価格メカニズム、市場機能をできるだけ生かしていく、あるいは企業の創意くふう、自主的な努力、それをできるだけ活発にいたしていこうということを基本的に置きながら、なおかつ全体としては、経済をどういう姿で誘導していくのがいいかといったような、そういう非常に大きな、そして先進国が常にいま問題としてかかえているような、そういう問題にこの管理価格問題は引っかかっているのだ、私はかように理解して申し上げているわけであります。  公正取引委員会というところのやっております仕事は、競争条件をいかにして維持するかという問題でございますが、その競争条件だけはでどうにもならないような世の中がいろいろな形でできているというところが、新しい経済の悩みであり、またそれを乗り越えていかなければ、われわれのような高度に発達した経済社会というものは運営がむずかしいのではないか。たいへん抽象的なことを申し上げますが、かように私は考えております。
  33. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私の質問はこれで終わりますが、いま長官なりあるいは公取委員長から御説明になった、そういった不十分な点を補完する意味でこの法律が審議されていると私は思うのです。また私は、これは非常に苦労をした結晶だと思うのです。この法案の内容にも確かに未熟な点がある。不当な価格というのは、一体どれをもって不当な価格というのかという判断、これは公正取引委員会にゆだねておりますから、公正取引委員会がそれをどこに求めるかという判断というものは非常にむずかしいという点も行政面であるかもしれませんが、いずれにしても、現状のこういいった独禁法補完する意味としては、私は国民の立場に立った非常に大切な法案だと思うのです。ですから、そういう意味では、各与野党の議員の皆さん方が、積極的に提案された方々の趣旨を体していただきまして、満場一致、本法案を本委員会で通過させることを最後に期待し、また質問者としてお願いをいたしまして、長官並びに公取委員長も、ぜひ政府として積極的に、本法案の受け入れについても御理解をいただきたいということをつけ加えまして、質問時間をオーバーいたしましたが、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  34. 進藤一馬

    ○進藤委員長代理 中谷鉄也君。
  35. 中谷鉄也

    ○中谷委員 時間がないようですので、二問だけお尋ねをいたしたいと思います。  第一問は、提案者に対するお尋ねであります。  本会議及び当委員会において、提案理由の説明を詳細にしていただきましたので、特に重ねてお聞きすることは、屋上屋を重ねることに相なるのかもしれませんが、法案趣旨、内容をさらに明確にいたしますために、お尋ねをいたしたいと思います。  一条から十二条までの各条文のそれぞれについてお尋ねをいたしますことが本旨ではありまするけれども、特に三条に限ってお尋ねをしておきたいと思います。提案理由についても、すでにこの点については詳細お触れいただいておるわけでありまするけれども、本法案三条の第一項で「その価格を不当なものにしてはならない。」とあります。この場合の「その価格」というのは一体何か。また「不当」とは何か。さらにまた、「価格を不当」というような点について、提案理由ですでに御説明をいただいているわけでありますが、重ねてお尋ねをいたしたいと思います。  時間がございませんので、引き続きお尋ねをして、提案者からお答えをいただきたいと思います。  同じく同条第二項でございますが、第二項は「原価に占める広告費及び交際費の割合」という規定がございますが、この「割合」というのはどのようにしておきめになるのか。その場合、一体どの程度のものになるのか。これらの点についてお答えをいただければ幸いであります。  それから次に、いま一点だけ法案の内容についてお尋ねをしておきたいと思うのであります。それは、市場の占有率が三社で六〇%、十社で九〇%以上の高品を寡占商品といたして、それを供給する事業者を寡占事業者としておられますが、その根拠趣旨、理由等についてあらためてお答えをいただければ幸いであります。  非常に質問をまとめましたが、以上、三点についてお答えをいただきたいと思います。
  36. 辻原弘市

    辻原議員 三点ございます。  第一点は、この法律でいう「価格」とは一体何をさすのであるか、しかも、その「価格」が不当であるというのは、一体どういう場合をいうのであるか、こういうことでございました。  価格は、寡占事業者、まあ通称メーカーでありますが、これはメーカーの販売価格、もっと具体的に言いますれば蔵出し価格意味しますが、その価格は決して一様ではございません。第一次卸売り業者に卸売りをする場合、また直接に小売り商に売る場合、あるいはまた消費者に直接売る場合、さらに一度に多く売る場合、少なく売る場合、こういった売るケースケースによってそれぞれ価格というものは異なってまいります。しかしながら、ここで言う「その価格」という意味は、メーカーがいわゆる蔵出し価格としてそれぞれの相手方に売る場合の値段をさしておるのであります。  そういう蔵出し価格がどの場合不当だかという点につきましては、この法律では具体的な基準は示しておりませんが、社会通念上、メーカーの蔵出し価格は、原価に何%の利益を加算したものが適当であるというものがすでにあるはずであります。また、国際価格との比較、輸出価格と国内向け価格との比較などを、十分公取委が勘案をいたしまして、公取委の諸般の調査及び判断によって決定をしてもらいたい、こういう趣旨にいたしておるわけであります。  それから第二点のお尋ねの、原価に占める広告費及び交際費の割合はいかほどにきめる考えであるかと、こういう点でありますが、新聞、テレビをごらんになればわかりまするように、業者は膨大な広告宣伝費及び交際費現実に使っておるのであります。しかもその費用の大半は商品コストに算入して、これが消費者の負担になっておることもまた事実でございますので、これを規制いたしたいという発想に出たものでありますが、その割合がどの程度が適当であるかどうかということは、やはりこれまた調査に待たなければなりませんので、この点の決定を、前者の場合と同じように公正取引委員会にゆだねておるのであります。しかしながら、当然、一般の他の商品における広告費交際費を具体的に調査した上、その比較論に立って公正取引委員会がきめるということになるであろうと、われわれは予想いたしておるのであります。  それから最後お尋ねの、市場占有率が、寡占事業者の場合、三社で六〇%、十社で九〇%以上の商品寡占商品とし、これを供給する事業者を寡占事業者としておる根拠一体何であるかと、こういうお尋ねであります。  先刻、谷村公取委員長あるいは経済企画庁長官もお話しになりました、いわゆる独占禁止懇話会というものがございます。ここで、先ほどもお話がちょっとありましたように、管理価格とは一体何かということについて、現在、調査あるいは討議をせられているようでありますが、その際の一つの目安として、一応、市場占有率三社で七〇%以上のものを考えておられるようであります。それと対比いたしまして、具体的に個々の商品を当てはめてみますると、おおむね七〇%で、大半のものは国民経済の常識上、これは寡占商品であろう、寡占事業であろうと推定されるものが入ってくるのでありますが、しかし若干不十分であります。たとえばカラーテレビのごときは、この三社で七〇%という範疇には入りません。したがって、この懇話会の検討されている目安七〇%というもののワクを若干広げまして、したがって、今日問題になっておるいわゆる寡占価格とおぼしき商品を、包括的にこれを六〇%と定めたわけであります。
  37. 中谷鉄也

    ○中谷委員 冒頭にお約束を申し上げましたとおり、二問だけの質問をいたします。  あと一問は、したがいまして、この法案のただいま提案者からのきわめて適切な答弁根拠にいたしまして、それとの関連で政府に対してお尋ねをいたしたいと思うのであります。  そこで、先ほどの同僚松浦委員質問を引用いたしまして、経済企画庁長官と公取委員長お尋ねをいたします。再質問はいたしませんから、まとめてお尋ねをいたします。  最初にお尋ねをいたしたいのは、行政介入と物価についての対策との関係でありますけれども、たしか私の記憶によりますと、物価安定政策会議が昨年の七月に、「行政介入と物価について」というのを発表された中で、一部に大企業製品価格の下方硬直性が指摘されている今日、いわゆる管理価格等の弊害を防止するための行政介入はかえって強化すべきであるという趣旨の記載があったと私は記憶をいたします。実はきょうはその原本を持ってまいりませんでしたが、これは私の記憶では間違いないと思います。そういたしますと、この点と先ほどの長官の御答弁、軽々に行政介入すべきでないということとは、食い違うことになるのかどうか、この点を私は最初に確かめておきたいと思うのであります。  次に、引き続いて質問をいたしたいと思いますが、二つ資料をまず最初に申し上げておきたいと思います。  本年の二月三日の日経新聞の報道によりますと、公正取引委員会は百二十業種について管理価格にメスを入れるんだ、そういうことで百二十業種を調査をする、そして価格形成会議で公表する、四月からそれはやるんだ、こういう趣旨の報道がされました。それが一つ。いま一つは、本年三月十八日の同じく日経新聞の報道。物価安定会議の部会において、消費財にしぼって十月をめどに政策提言をする、寡占価格の実態掌握を急ぐ、要するに六品目について調査をすることに相なった、こういう趣旨の報道であります。そこで、次のような点を引き続いてお尋ねをしておきます。時間の関係上、再質問をすることができませんので、答弁漏れのないようにお答えをいただきたいと思います。  最初に引用いたしました百二十業種を調査するというこの報道。公正取引委員長見解も出ておりますが、この記事については、まず事実の確認を求めたい。これが質問の第一点であります。  次に、同じく前提として、これはすでに私、承知いたしておりますけれども質問の順序として、三月十八日の寡占価格の実態掌握を急ぐという、要するに六品目についてのこの報道についてお尋ねをいたしたいと思うのですが、この報道は事実でございましょうねというのが、まず質問の第一点であります。  それから、その次の質問は、それを調査をされる、実態の掌握を急がれるという報道に相なっておりますが、これは何らかの規制を予測あるいは想定して行なわれるのかどうか。ただ単に調査されるというだけなのかということであります。  次に、どうしても私たちが知りたいのは、六業種ということに相なっておる。そういうことは、かりに私たち立場から言わせれば、限定ということに相なろうかと思うのです。そういう六業種ということを選ばれた理由、限定された根拠、そういうのは一体どこにあるのか。疑わしいのは六業種だけだという判断なのかどうか。なぜもっと多く調べることができないのだろうか。要するに、それは、先ほど申しましたように、二月三日は百二十業種というのが出ておる。今度は六業種ということになっておる。これの落差があまりにも大き過ぎるじゃないかというふうなことも質問の前提としての感想としてあります。その点についてお尋ねをいたしたい。  補足してお答えいただきたいけれども、こういうふうになったのは、調査能力の限界ということが関係をするのか。調査能力の限界ということから六業種にしぼられたのか、それともそれ以外の理由なのかということであります。  質問が多岐にわたりますけれども、同じ問題でありますから続いてお尋ねをしていきますが、この調査の法的な根拠というのは一体何でしょうか。この種の質問は、物特委、商工委員会等で繰り返しなされておりますけれども調査の法的根拠は何に基づくのですかという質問を、この機会にいたしておきます。要するに、単に企業に対して協力をしてくださいという協力要請をされるということにとどまるのかどうか、それ以上のものをおやりになるのか、この点であります。  その次に、国民として知りたいのは、結果は公表されるのでしょうかという質問であります。おそらく、百二十業種の調査の点について期待できるような答弁がないかとも思われますので、お尋ねをいたしておきますけれども、百二十業種を調査するということは事実である。そうなると、公正取引委員会として調査能力はお持ちでしょうかということも、私はこの機会にお尋ねしておきたいと思います。そしてまた、その場合には、独禁法四十条というのはいつもわれわれ引用する条文でありますけれども、その関係において、どんな権限を行使して調査をされますかということも、この機会にお尋ねをしたいと思うのです。  一問での質問でありますので、質問がかなり多岐にわたりましたが、答弁漏れのないようにお答えをいただきたい。
  38. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 いま御質問のございました物価安定政策会議の提言でございますが、ここで「いわゆる管理価格等の弊を防止するための行政介入はかえってこれを強化すべきであると思われるので、本会議は、今後これらについて検討していくこととしたい」、これに基づいて、結局こうしたこともあって、いまたびたび申し上げるように検討しておる際でございます。ただ、いわゆる行政介入ということ。このときの「提言」では、これを例外として取り除いて別に調べる、こういうことにしておるわけでありますから、これはそれに引き続く——先ほどの三月十八日ですか、これの記事にもあらわれておりますように、いま物価安定政策会議でもってこれの結論を急いでおる、大体秋には結論が出るであろう。われわれはそれを期待しておりますけれども、その結論を十分見まして政府としても考えていかなければならぬ、こういうような態勢にあるわけです。  この具体的な中身については、まだ私たちは詳しくは聞いておりませんけれども、しかし、この記事にあげておるようなことを対象にして、いままで、とにかく寡占、寡占といって、寡占の形態というか、そうしたものだけはわりあいに議論になっていましたけれども、そのもとにおける価格の形成というのは、おそらく今度が初めてじゃないかと思われます。そういう価格中心とするところの問題を掘り下げて検討していく、これがいま第二調査部会でやっておる実態でございます。
  39. 谷村裕

    谷村政府委員 お尋ねの、約百二十業種ぐらいを対象にして、それを何か管理価格調査のほうとしてつかんでみたいというふうな新聞記事は、私も記憶がございます。  実態をありていに申し上げますと、ある程度シェアの高い、シェアが少数の企業によって占められているような業種がどのくらいあるかというふうなことでリストをつくったことは、事実でございます。それから、やはり大蔵省に、管理価格調査のための予算が必要だという意味で、その予算要求資料としてそういうものをつくって出したことも事実でございます。どうしたはずみか、その予算要求に使いました資料が新聞の方のお目にどこかでとまったのでございましょうか。それが、百二十業種に対してメス、というふうな表題をつけて出たわけでございますが、実際は私ども、そういうことを公表したこともなければ、進んで発表したわけでもございません。むしろ私どもとしては、数あるそういった業種の中から、その市場行動なり、あるいはその価格形成なりについてどういう実態があるだろうかということを、私ども立場に立って調べてみるものが毎年幾つかずつございます。そういうふうにして、ちょうど先ほどは、物価安定政策会議のほうで六業種というふうにおっしゃったのと同じような意味において、私どもが現在与えられている予算と人員とでやれるものは、五業種あるいは四業種というふうにしてやってまいっておるわけでありまして、それは、とりもなおさず、一つのそういった条件のもとにおける市場の姿、あるいは価格形成の姿、そういった流通の状況等まで含めた一つの実態を把握しようという、そういう試みなわけでございます。とても百二十業種一度にどうするというふうにいくものではございませんけれども、それはまずそういう意味のものであったということを御承知おき願いたいと思います。  それから第二の御質問でございましたが、私ども調査は、任意に、もちろん協力を求めてやっていただいておりますが、法的根拠としては、その市場行動等について、独禁政策の立場から、すなわち法一条に掲げられました独禁法の目的から、当委員会がその職務を行なうに必要と認める法四十条に基づく調査権限としてやることは可能であると思っております。しかし、現実には御協力をいただいて調査をしておるという形でございます。そして従来は、かつて調べましたものをそう表に出したことはなかったのでございますが、管理価格調査を始めましてからは、これは公表をいたしております。ただし、法律に書いてございますように、事業者の秘密を除いて必要な事項を一般に公表をする、そういうことでやっておりますが、これもしいてやかましく、法律に基づくとか、基づかないとか、そういうようなことをしておるわけではございません。  以上でございます。
  40. 中谷鉄也

    ○中谷委員 質問を終わりますが、要するに本法案についての私の意見だけを申し上げておきますが、寡占化に伴う管理価格の弊害排除については、昭和四十一年、物価問題懇談会が提案をされて以来、ごくわずかなものについて実態調査がされただけ。百二十業種というふうなものについても、本日あらためて当委員会で御答弁をいただきましたけれども公取の職員の人に聞いてみると、あれは、そういうことは実際できっこないしという話であることは、前々から聞いておりました。そういうことになってまいりますと、あらためて政府においても、野党提案の本法案についてひとつ謙虚に検討されなければならないというふうに考えます。  質問を終わります。   〔進藤委員長代理退席、浦野委員長代理着   席〕
  41. 浦野幸男

    ○浦野委員長代理 松尾信人君。
  42. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 まず最初に公取委員長に伺いますが、公取とされましては、生産集中価格変動につきまして、昨年、ビールだとか洗剤、フィルム等につきまして調査をしておられるわけであります。五月十四日の日経によれば、そのことが載っておるわけでありまして、その結果、上位三社の累積集中度が八〇%以上の業種では変動が少ない、この集中度が低下するにつれて激しい価格の変動を示しているというような報告もその中にあります。そして、いずれも管理価格の色彩の強いということを指摘しておられるわけでありますけれども、この点はまずどうでしょう。
  43. 谷村裕

    谷村政府委員 いま五月十四日付というふうにおっしゃいました記事のことを、私はちょっと記憶しておりませんが、私ども公正取引委員会が、生産集中度価格変動についての関係調査した資料は、当然のことながらございますし、公表されております。その場合には、いろいろ集中の姿を分けまして、こういう型の集中——たとえば、二極集中型であるとか、あるいは巨大な企業の力の一方的に強いような集中であるとか、いろいろ集中の姿を分けまして、同時に一方では、価格変動の姿を、変動の幅と変動の頻度——どのくらいの激しさというか、一定の時間の中で何べんくらい動いたかという頻度でございますね。その二つを組み合わせて見ているのでございますが、むしろある意味で、集中の高いようなものでも、価格変動があるものもあれば、そうでないものもあるというふうなことで、必ずしも集中価格変動の姿を一義的に説明し得るような形にはなっていなかったと私は思います。しかし、どちらかといえば、成長性がある程度衰えてきて、そうして業種としては激しい競争を行なわないというふうな姿、あるいは寡占の姿が出てきておるようなところでは、価格の変動頻度並びに幅は少ないという姿が出ております。
  44. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 それはそれなりにわかるわけでありますけれども、いずれも管理価格の色彩の強いこと、こういう点を指摘されておるわけでありますけれども、この点どうでしょう。
  45. 谷村裕

    谷村政府委員 管理価格の色彩が濃いとか薄いとかいうことをはっきりと言うことは非常にむずかしいし、また言ってみても、あまり意味がないことでございまして、少なくとも私どもから言えば、裏を返して申し上げれば、完全とも言いませんが、ある程度競争条件が有効に働く、そういう環境を欠いているために価格の形成について競争が足りない、あるいはとかく協調的な態度をとるようになる、そういうふうに申し上げてよろしいかと思います。
  46. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 いずれにしても、下方硬直性といいますか、そういう実態というものは、調査の結果おわかりになっておる、このように、いまのお答えからも解釈をされるわけであります。  また、十八日の日経によりますれば、昨年の独禁法違反につきまして、審査が約二百十一件なされた。そうして、そのうち四十五件について年度内に勧告、告発などの法的措置をとり、勧告に応じなかった三件については審判に持ち込んだ。そうして昨年度のその調査の特徴は、価格協定が多かったことである、これが審査件数の七割を占めておる、このようにこれははっきりと出ておるわけでありますけれども、この点は事実かどうかということです。
  47. 谷村裕

    谷村政府委員 昨日発表いたしました、いま御指摘のような独禁法違反事件、それの内容に価格協定が多いというのは事実でございます。その事実ということをもう一歩申し上げますと、実は、いまここで問題になっておりますような、大企業あるいは寡占企業等における問題であるよりは、むしろ、末端において非常に競争の激しい——たとえば石油、ガソリンスタンドのような、競争が激しくて、メーカーのほうから値段を上げてこられたのを、うまく消費者のほうに転嫁して値段を上げるわけになかなかいかないといったようなところの価格協定が多い、そういうことでございます。
  48. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 この価格協定のことについて大ざっぱなお話がありましたけれども、これで聞きたいと思いまするのは、そのような、審査件数の七割を占めておる価格協定の中に、管理価格的なものが存在するかどうか。これは相当あると思います。昨年の調査の結果でも大体わかりますけれども、この審査件数の中の管理価格的なもの、こういうものについては、どのように感じていらっしゃいますか。
  49. 谷村裕

    谷村政府委員 管理価格的なものというのが、いわゆる表立った協定をしたり取りきめをしたりして、値段をどうとかするというものでなくて、動いているそういう姿のものを言うわけでございますから、私どもが去年摘発し審査いたしました事件には、管理価格的なものというのは実はないわけでございまして、あからさまに——あからさまでもなかったのでございましょうけれども、私どもが、先ほどお話が出ておりますように、証拠としてちゃんと、協定をいついつどういう形でしたということがつかまえられたものが、大体そこにあがっているものでございます。
  50. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 その証拠のあがったということでありますけれども、証拠はあがったが管理価格的なものじゃない、こういうお答えになるわけですか。
  51. 谷村裕

    谷村政府委員 管理価格的なものというのをどういうふうにいうかによるかと思いますが、いま私どもが申しております管理価格的なものというのは、さっきも何べんかお話が出ておりますように、少数の企業が、相当情報手段等も発達しておりますために、相手方企業の動きなり何なりよくわかっておりますために、しいて話し合いをしたり協定などしないでも、たとえば価格等について歩調がそろうといったような場合をいっておるわけでございますから、私どもが去年、独禁法違反として審査いたしました事件には、そういうものがむしろなくて、ほんとうに協定をやったというものだけが入っている、かように申し上げられると思います。
  52. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 この寡占事業者寡占商品に対する的確なる調査に基づく証拠、これは先ほどから論じられましたとおりに、現実には非常にむずかしい問題だと思うわけであります。でありますから、このような昨年の調査または審査、そういう両方のことを私が取り上げてここで言っておりますのは、結局、公取とされましても、非常にこの実態調査については困難があるであろう、非常に困られるんじゃないか。このような、実態調査なりまたは審査というものに伴いまして、現在の公取として一番お困りの点、どうもこれはやりにくい、ここはもう少しこうあればいいけれどもというようなところを、ひとつざっくばらんにお答え願いたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  53. 谷村裕

    谷村政府委員 公正取引委員会が困るということではなくて、先ほどから申し上げておりますように、要するに経済社会で非常な競争が市場において行なわれ、その競争秩序のもとに価格形成が行なわれてというふうな——極端なことを言えば、アダム・スミスが考えていたような、市場機能だけが働くような世の中ではなくて、もう少し、たとえば生鮮食料品等の問題についてもそうでございますが、管理された一つ経済社会の姿を呈してくるようになりますと、その中である事業者、ある企業だけの一つの意思と申しますか、力と申しますか、それがまかり通るというふうなことが起こり得るわけであります。そういうことが、私はやはり経済全体としては困るのではないかというふうに思います。  公正取引委員会は、競争条件を整備するということを目的としてつくられており、またその仕事をしているわけでございますけれども、その立場から何がおまえは困るかというふうに言われれば、やはりその競争条件がうまく働いていないなというふうに思いましても、それを働かせるようにするという経済の実態ではないという姿に困るというふうに、むしろ申し上げることになるのじゃないかと私は思います。
  54. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 いまおっしゃいましたとおり、そのように働いていかないという経済の実態、そこにはいろいろ彼らが恣意的にやれる余地があるのですし、そこに公取としてもメスを加えられない隔靴掻痒の感があるわけでありまして、先ほどからも、一生懸命やっていらっしゃるのだけれども効果があがらないという、そういう自由主義の社会の中には本質的なものとして管理価格というものがある。その本質的なものにいまメスが加えられない、これがほんとうの意味の実態ではないか、私はこのように感ずるものであります。でありますから、この法案も、そういうメスの加えられないところ、経済のほんとうの実態というものはそういうところにあるのだというところをやりやすくし、そして国民の期待に沿えるようにしていきたい、このような考えから提出しておるわけであります。  しかし、この管理価格というものにつきましては、どうも政府側の考え方というものと、学識経験者または消費者の代表、また消費者一般というものの両者に、認識といいますか、考え方というものが非常に相違があるのじゃないか。先般も、これは二月十二日でございますけれども、予算の公聴会がございました。公述人が参りまして、学者または消費者連絡会会長等がいろいろと公述いたしておりますけれども、その中でも、昨年は戦後第二番目の物価高騰である、減税はそのカバーにならなかった、これは財政政策と金融政策の斉合を欠いたことと管理価格による、このように非常にはっきりと指摘するわけです。この人為的な価格消費者物価の三〇%を占めるのだ、そのうち大企業分が二〇%を占める、ビールというものは典型的であり、乳製品とかテレビ、自動車にその姿がある、このように公述人も指摘しております。また、卸売り物価中に管理価格というものがほぼ七〇%を占めておるのだ、これは大企業の人為的価格操作であり、工業製品の値上がりは弱含み、こう言っておりますね。これは経企長官がお帰りになったので残念だと思っておりますけれども物価の値上がりについては、この管理価格というものはあまり大きなウエートを占めていないというような先ほどの論点でございました。それだからといって、卸売り物価の中で管理価格というものは大きなウエートを占めていないと言いますけれども、他方、生産性というものが非常に上がっておる。結局、その上がった分で価格の低下ができないということが問題だ。値段はぐぐっと上がっていないから目立たぬけれども、ほんとうは生産性が上がっておるんだから下ぐべきものなんだ、下ぐべきものであるにもかかわらず下げていないというところが問題である、政府はこのような問題についての対策というものをどれだけ真剣にやるかどうか、この点については全然なされておらない、このような指摘があったわけであります。  公取といたしましても、この管理価格について大蔵省に予算を要求された。それでいろいろな資料をつけた。そのときの公述人の話でありますけれども管理価格調査のために一課を設けたい、しかし政府の姿勢というものがそういうところにないものですから、わずか二名、三名の増員にとどまった、このようなことが言われておりますけれども、この点については、結果的にはこの公述人の言ったとおりでございましょうか。管理価格調査に対する公取見解は、大いにやりたかったんだ、しかしそれがつぶれたんだ、この点は間違いないでしょうか。
  55. 谷村裕

    谷村政府委員 いろいろおっしゃっていらっしゃいましたが、最後の点だけがもし御質問だとすれば、最後の点だけお答えいたしますが、予算としては、まさに一課を設けることを要求いたしましたが、官庁機構等についてはできるだけ現体制でしっかりやれという大方針のもとに、おっしゃったとおり人数の増員にとどまった。他方、調査のために必要な費用はある程度つけていただいた、こういうことが実際でございます。
  56. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 これ以上、公取委員長には無理だとは思いますけれども、結局このように、世間というものは、管理価格というものががっちり固められておりまして、それが卸売り物価または消費者物価というものに大きなはね返りになっておる、これが総体的な受け取り方でございます。公取でも二百何件かやられましたけれども、その中で、寡占商品についての調査というものがうち何件あるかというのも一つ質問でありますけれども、なかなか実態というものが上がってこない。問題は、やる気があって調査もしたいんだけれども調査の実力もあまりない。人員的にも非常に少ないし、また予算も非常に削られておって実態調査もできにくい。それから大企業、まず寡占事業というものについてやりたいけれども、なかなかこの調査の対象は少ないんじゃないか。こういう二百十一件の中で、ではどのくらい寡占関係のものがあったか、寡占商品があったか、こういうことが一つと、それからやりたいのだけれどもなかなかできないのじゃないか、こういうことを聞いておるのでありますが、いかがでありましょうか。
  57. 谷村裕

    谷村政府委員 いろいろな業種にわたって全部網羅的に調査することは必ずしも必要でない。幾つかありますものから類型的なものを抜き出しまして、そういう類型的なものから、幾つかの市場のタイプとか企業の行動を見まして、全体として、かりに企業数が少なくて競争条件が十分でないようなときにはどういうことが問題になっているかというふうなものが出れば、それで私どもとしての調査はいいのではないかと思います。  そうして、どういうものを調査したかということは、いままでの例で申し上げれば、写真のフィルムでありますとか、合成洗剤でありますとか、そういうものでございますが、本日、独禁懇話会というのに報告いたしますものには、いわゆる化学調味料というのがございます。まだそのほかに楽器の類などもいま調べております。  誤解があるといけないのでございますが、いま提案されております法律案は、一定のシェアを占めるような業種あるいは企業について網羅的に把握をしよう、そして把握をしておいて、それに対して必要があればいろいろな勧告なり何なりをしよう、そういう体制を考えているわけでありますが、私どものほうでやっております管理価格調査というのは、いわば単なる調査、実態を知ろうというだけのものであります。管理価格問題とか、あるいは寡占事業者に対する問題というのは、私は二つあると思いまして、一つは、何をするのか、法律案でいえば、調べたところで一体政府側はどう行動するのか、企業に対して何をどう要求するのかという問題と、それから政府のほうでは一体だれがやるのかという問題、この二つがあると思います。そのだれがやるのかというのは、官庁の組織の問題でございます。再三私が申しておりますように、これは現在、法律において私どもが与えられている職務権限を越えている問題でございますし、公正取引委員会というところにその職務をやらせるのがいいかどうかということも、政府部内で十分今後の問題としても考えなければならぬ問題であろうかと思います。  しかし、それは一つの組織の問題でございますからよろしいのでございますが、むしろ何をどの程度にするかというところが一番むずかしい問題であろうかと思います。しかし、それが再三先ほどから皆さまも御指摘のように、先進諸国でも、その一つの新しい経済政策のあり方として議論になっているところでございまして、介入という、一つ企業に非常にこまかく入っていくというふうな姿も時にはございましょうけれども、むしろ全体としての一つ政府の誘導政策と申しますか、そういうものまで背後に持っておりませんと、個別の企業の自由な価格行動、市場行動に対する勧告とか、あるいはいろいろ指図をしたりするということ、いわんや、当、不当をきめつけるというふうなこと、これは非常にむずかしい問題であると思います。管理価格問題とかあるいは寡占事業者の問題というのは、実はそういう非常に大きな経済運営体制の今後のあり方というものが背後に控えているというふうに私は思います。私どものいまの調査というのは、決してそこも考えてやっているのではなくて、一つの業種における市場の姿なり、あるいは企業の行動なりの実態調査をしている、そういうことでございます。
  58. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 その実態調査がやはり一番基礎であり、大事だと思うわけでありますが、結局これは物価の問題でありますから、確かに政府全体の問題になりますね。その中で公取にわれわれは非常に期待を寄せておるわけでありますけれども、これはあるいは公取だけでできない部門もあるのではないかとも考えられます。でありますが、いずれにしても政府自体が、公取または経済企画庁を中心にいたしまして、管理価格というものを総点検していくのだ、そして物価の問題をそういう面からきちっと押えていくのだという基本的な姿勢が確立されなければ相ならぬ、このように強く感ずるものであります。でありますから、公取としても現在なかなかできがたい問題、経済企画庁としてもできがたい点というものを、公取の過去の実態調査またはこのような審査を勘案しまして、この寡占事業者の寡占事業商品に対する法案というものを一生懸命に考えていま提案しておるわけでありまして、いずれにしても、このようなものは基礎的なことでありますし、また公取経済企画庁が中心になりまして、両々相まってそのような取り組み方を真剣にやって、そうして国民の期待に沿うようにしていく、これが一番大事だと思うわけでありますけれども、方向としてはどうでしょうか、私の言っていることが間違っておりますでしょうか。それとも、そのようにお考えになりましょうか、いかがでしょう。
  59. 谷村裕

    谷村政府委員 私は国会でもそういうふうに御答弁申し上げておりますし、またいろいろ新聞、雑誌等にもそう書いておりますので、私はそれを別にいまさらつくろおうとはしないつもりでございますが、結局、物価問題という立場からこれを見る立場と、それから私どものいう、自由な濶達な企業の活動を基礎にして、そこに経済の発展があるといったような、そういう競争条件を持たせることによって経済を常に若々しくしていくんだという、そういう二つ立場がございますが、かりに物価の問題としてこれを取り上げてみた場合に、寡占事業であるとか、あるいは管理価格であるとかいう問題は、別の面から見ますならば、ある意味では付加価値の配分に対して政府が誘導をしていく、そういう問題を背後に持たなければできないことであるというふうに思っております。付加価値の配分を誘導するということばで申し上げると、別のことのようにお考えになるかもしれませんが、よく一般にいわれていることばで言いますならば、利潤を含め、あるいはその他の経費等も含め、そしてまた人件費も含めまして、広い意味での所得政策と申しますか、あるいは誘導政策というようなものが考えられないと、なかなか自由な価格メカニズムだけで世の中がいかなくなったときの経済の運営のしかたというものはむずかしいのではないかというのが、私の基本的な考え方でございます。そういう問題を背後に控えておりますだけに、なかなかこの問題は、単に公正取引委員会だけの問題でもなし、また、ただ管理価格とか寡占事業といって、それだけを言ってみても、それで全体の経済のあり方というものにまで入っていかなければならない、そういう高い次元の問題である、そういうのが私の気持ちでございますので、おまえはどうこの問題を考えておるかという御質問でございますから、そういう、公正取引委員会委員長であります私の気持ちとして何を考えておるかという意味で申し上げたわけでございます。
  60. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 非常に広範な面からのお答えがあったわけでありますけれども、あれもこれもということでありまして、なかなか現実には手がつけられない。でありますから、非常に問題となっておるこの管理価格の面に大いにお互いに勉強をして、そうしてそういう面から、寡占事業者のこのような物価面におけるいろいろの事件も起こっておるわけでありますから、そういうものから手を染めて、そして物価というものを安定さしていこう、消費者のためになる一つ物価というものを築いていこう、これが基本的な考え方であって、総合的な物価の抑制対策というものもほしいのでありますけれども、流通機構の問題にいたしましても、幾ら論じましても結論はなかなか出ません。   〔浦野委員長代理退席、武藤委員長代理着席〕 でありますから、この当商工委員会としてできる範囲のものでしっかり固めていきたい、これがこの法案基本的な考えであります。  時間が参ったようでありますのでやめますけれども最後に、この公取の機構の問題であります。公取には定年制と兼業禁止がある。それで、なかなか公取の運営自体も、思うままの、思うとおりの活躍ができぬのじゃないか。非常勤職員というものを考えたらどうか。これはイギリスの例等をあげて、そのような提案もされたこともあるのでありますけれども、この公取というものを強化していく、そしてがっちりといろいろの問題をもう少しばんばんと取り組んでいけるようにしたい、これが基本的な考えだと思いますけれども、この点、最後に一言聞いておきたいと思います。
  61. 谷村裕

    谷村政府委員 定年制といったような問題は、これは公正取引委員会委員長及び委員だけの問題でございまして、定年は六十五歳、任期は五年ということになっております。一般職員は一般の公務員でございますので、その点について一般の他の公務員との差はございません。  公正取引委員会の活動と申しますか、あるいはもっと別の言い方をいたしますならば、いままでの日本経済体制が七〇年代に入って、ある意味ではまた新しい姿になってきているということもよくいわれるのでございますが、行政各部がみんなそういった、たとえば大企業問題、たとえば消費者問題といったようなことを、縦割りではなくいわば横割り的に、横断的に考えるような、そういう行政の組織あるいは機構というものがあったならば、またできるならば、それが一つの役に立つのではないかということは、私はいろいろなところで申しております。公正取引委員会も、ある意味で言うと、縦割り行政ではなくて横割り行政一つでございますが、経済企画庁などもそうでございますけれども、そういった縦割り行政的なものに対する横割り行政的なものが強くなっていく傾向、これは公害等については実はあるわけでございますが、私は将来とも新しい姿の行政の組織としてはあり得ることだというふうに思っております。  そういうときに、一体公正取引委員会というものはどういう姿になって、また他の行政官庁との調整あるいは仕事の配分をどういうふうにしてやっていったら、さっき、どなたかがおっしゃいましたように、予算もよけい使わずに、税金をよけい使わずに一番能率的にお役に立つように働けるか、これは行政機構全体としての中の公取として考えていくべきだ、かように私は思っております。
  62. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 質問を終わります。
  63. 武藤嘉文

    ○武藤委員長代理 川端君。
  64. 川端文夫

    ○川端委員 二時からの本会議の時間も迫っておりますし、あとになお質問者もおいでになるわけでありますから、要点だけ先にしぼって一括して質問をいたして、一問一答はできるだけ避けたい、時間の節約に協力したいと思っておりますことを、まずもって申し上げておきたいと存じます。  そこで、提案者である吉田泰造さんに、最初に三点にわたってひとつ御意見を承っておきたいと思います。  物価とは、上がるものもあるし下がるものもあって調和がとれていくものであるということは、いままでいわれていることであるし、当然だと思うのですが、いま問題になっている寡占価格規制の問題は、当然値下がりしなければならない大企業製品が値下がりせずに、むしろ寡占状態を強化していこうというところに問題点があるのではないか。こういうことを考えて私どもはこの法案を見ているのが間違いかどうか。この点に対しての御意見を、まず第一として承っておきたいと存じます。  第二の問題は、現在の独禁法自由競争をたてまえとしておりますが、すでに産業自体の中に寡占状態がだんだんふえつつある。この実情の中において、先ほどから公取委員長も言っておりますけれども価格の問題を考えないで広範囲にものを見るのだという見方だけでは、何ら具体的に物価の問題に手を打つことができないというところからこの法案を発想されたのではないかと思うのですが、この点に対してどういうふうに考えて起案されたかという点です。  もう一点の、さらにもう一つの問題は、自由競争という美名にあまりにもこだわって、実体はそうではなくなってきている。硬直したイデオロギーにいまの政府がこだわり過ぎているんじゃないか。こういう点も、観念の上で資本主義経済というものにあまり拘束され過ぎて敏速な手を打てないというのが、一つ原因になっているんじゃないかとも考えているわけですが、それらに対しての具体的な考え方を、この法案作成にあたって考えられておやりになったかどうかという点です。  もう一点の問題は、この法律が実施された場合、どのような期待をわれわれは持つべきか、国民は持てるのかという点に対して、この三点を集約して御質問申し上げたわけですが、御答弁をいただきたいと存じます。
  65. 吉田泰造

    吉田(泰)議員 川端委員の御質問お答えをいたします。  質問の要点が三点であったかと思いますが、まず第一点の、現在の物価上昇原因が、当然値下がりしてしかるべき大企業製品価格が値下がりをしないで、むしろ寡占体制を利用して値上がりをしておるということについてどうかという御質問であったと思います。  質問者の川端委員がお述べになりますように、そのとおりであろうかと思います。最近のビールの値上げ問題、あるいは板ガラスの問題等はその好例でございまして、寡占体制で値上げの方向に向いているということは事実でございます。これはどうかということだけの御質問であろうかと思いますので、そのとおりでございますという御答弁でございます。  第二番目は独禁法の問題。独禁法は国会内で、物価問題等特別委員会、あるいは大蔵委員会、あるいは商工委員会と、いろんなところで、公取委員長あるいは通産大臣経済企画庁長官、あるいは総理も含めて、いろいろ議論が行なわれておりますけれども、現在の独禁法は、川端委員指摘のとおりに、自由競争ということが原則でございます。すなわち、フェアなコンペチション、フェアなバリューではないと思います。現在の独禁法では公正な価格が維持をできないのではないかという世論の高まりがあることも事実でございます。この独禁法に触れるときに、簡単に言いますと、合併問題には自由競争というたてまえから非常に規制をいたしております。しかし、具体的な価格の問題では、談合がなかった場合には問題にすることができないというような、公正な価格を現行の独禁法規制することはできないということも、きょう政府委員として御出席の谷村公取委員長も、この前の物特の連合審査でお述べになっておられます。  私は、ここで再度、午前中の論議の中でも最近のビールの例が出ましたので申し上げますが、ビールの問題でも、去年の十月にビール値上げが行われました。ところが、この独禁法に照らし合わせてみまして、談合の事実がないが情況証拠はある。たとえば、大手四社でほとんど独占をしておる事実、値上げの発表の時期は各会社まちまちであるが、実施の段階は同じように行なわれたというような事実があってもどうすることもできない。これは現在は、独禁法が公正な価格に対してメスを入れることのできない一つの大きな事例であろうかと私は思います。  なお、最後に、この法律提案をした背景はそういうところにありますけれども、現在の独禁法の不備を補完をしようという発想がございますが、川端委員の御質問の中で、この法律が通ったならばどういうメリットがあるかという御質問でございますが、いろいろなメリットがあります。  その第一は、まず、立入り調査権ができますので、寡占企業に対する心理的な抑制効果があろうかと思います。二番目は、会社の経理をある程度調べることができますので、その前のビールのように、各大臣公取委員長ともに、値上げは好ましくないという見解を持ち、また勧告をしながら、なおかつ値上げに踏み切られた。それについて各社とも、配当率あるいは収益性、いろいろな意味から見まして値上げの背景がない。多々ますます弁ずるといいますか、もうかるほどいいというような考え方で値上げが行なわれた。勧告をして会社の経理内容を調べることができないといったような不備がございましたが、これによって会社の経理をある程度調べて、値上げにふさわしいような状況があるかどうかというところを調査することができる。三番目は、もし違反があった場合に公表して勧告する。もちろん強制力はございませんけれども、公表、勧告ということは、大きな国民的世論の背景で公正な価格を維持することができるのではないか、このようなメリットがあると思います。
  66. 川端文夫

    ○川端委員 いまの御答弁理解できるわけですが、谷村公取委員長に少しくお尋ねしたいのは、いまの答弁の中にもありましたように、独禁法そのものの中に不備があるのではないか、この点をどう考えられているのかということが一点です。どうすれば公正取引委員会としては、もっと効率的に消費者立場に立って仕事がしやすくなるかという構想があれば、聞かしていただきたいということが一つと、もう一つは、政府も、この国会が始まって以来、物価問題についてのたびたびの審議の過程の中では、管理価格問題についても何らかの手を打ちたい、このことはいろいろ答弁されてきておるわけでありますが、この何らかの手を打ちたいということに対して、具体的にわれわれが納得できるような何か準備をされていることがあればお答え願いたい。この二点をまずお尋ねしてみたいと思います。
  67. 谷村裕

    谷村政府委員 独占禁止政策、それが具体的にはいま独禁法という形で法律になっているわけでございますが、それの目的は、ただいまもお話が出ましたように、自由かつ公正な競争を維持するという立場から出ております。そしてまた、それ以上のことを独禁政策に求めることは、私は無理であろうと思います。よく私どもは、物価との関係で引き合いに出されますが、自由かつ公正な競争を通じて市場機能が働いて、そこに価格が形成されるというところに意味を認めているわけでございまして、その価格が高いとか安いとかいうことはその市場の条件による、かように考えております。品薄になれば高くなる、あるいは需要が大きくなれば高くなるということがあっても、これは市場のメカニズムであってしかたがない、そういう見方をとっております。  そういう意味で、自由かつ公正な競争ということが私どもの仕事でありまして、結果としての物価というものをどう考えるかということは、これまた別の見方になるわけでございます。そして物価全体が一体いかなる条件のもとに形成されつつあるかということを考えれば、これは個別物価の問題と、そしてまた成長あるいは生産性、そういったような全体としての大きな経済の流れの中における基調としての物価の問題と、二つあると思います。そして、個別物価の問題における管理価格の問題というのが一体どのくらいあるかということでございますが、私どものいまの勉強の程度からいたしますると、そういう個別物価としての問題よりも、基調としての物価問題に、一つの競争条件の欠如といったような問題がもたらす傾向というものが、世界でも、全部同じような意味で問題になっているというふうに私は考えております。  そういう意味で、独禁法がどうあればいいかということとしては、独禁政策の立場からだけの見方というのはございますけれども、いま御提案になっていらっしゃるような意味における物価問題から、独禁法についておまえはどう考えるかという御質問であるとすれば、私は、いまの独禁法について手を加えるという問題はない、別の体系の問題であるというふうに申し上げられると思います。  それから第二に、政府で何らかの対策といいますか、手を考えなければならないのではないかという意味で何を考えておるかということは、私も政府の一員ではございますけれども、私どもなりに考えております一つのあり方としては、やはり大企業の行動なり何なりについての監視、と言うとことばがちょっと行き過ぎるかもしれませんけれども、少なくともその動きをよく見ておくという立場は必要だと思います。必要でございますが、それをどういう立場から見るかということになると、たいへんいろいろと議論があるところでございますので、経済企画庁におきましても、物価安定政策会議等で御検討をいただいているというところであろうかと思います。むしろ問題は、注目するとか監視するとかいうそのこと自体ではなくて、どういう立場、どういう考え方で見るかというところに、一番むずかしい問題があるように私は思います。
  68. 川端文夫

    ○川端委員 いま物価の問題は、公正取引委員会ではそれほど主にできない、こういうような答弁のように承っておるわけですが、私は、きょう問題になっているこの寡占価格というか、こういう問題の中には、やはり大型合併を認めた公取のその時点における判断の中に何か手落ちがあったのではないか、こう言いたいわけです。時間の関係で、討論にわたるような質問は避けますけれども、どうしても、日本経済の国際競争力という立場から見ての大型化というものに対してのウエートが重くて、国民の生活というものは軽んじて寡占化の方向を進めてきたところにやはり問題点があるように考えて、この法案を通すことに賛成したいと思っているわけです。  これ以上言うと討論になりますから、あまり時間をつぶしたくはないが、もう一つ問題を進めて、たとえば、先ほどから提案者がそれぞれの質問に答えて、独禁法補完する、公正取引委員会の仕事を補完する意味においての役割りをこの法案が持っていくべきだ、持ちたい、こういうふうに答弁されておるわけですが、この法案に対して、谷村委員長としては賛成できるかできないのか、もし賛成できないとすればどういう理由によるのか、これをひとつお聞かせ願いたいと存じます。
  69. 谷村裕

    谷村政府委員 おっしゃったことが二つございますので申し上げますが、第一段に、確かに、経済が進んでまいりますと大企業ができてまいります。合併で競争制限するようなことはいけないと私ども思っておりますが、合併というふうな人為的な行動をとらなくても、たとえばアメリカのような国でも大企業が支配的な力を持つようになる。日本でも、競争を通じて大きくなり支配力を持つような、そういう企業ができてくるということでございまして、市場の状況が大型化してくるとか、あるいは支配力がふえてくるとかいう問題は、必ずしも合併だけとの関係ではない、むしろ競争を通じて、競争の中から生まれてくるということもあり得ることを申し上げておきたいと思います。  第二に、公正取引委員会委員長としてはこういうのをどう考えておるか、賛成ならば賛成と言え、賛成できないならばどういう点で賛成できないかを言え、かようなおことばでございますが、さっきから申し上げておりますように、価格メカニズムの足りないところを補完するという意味法律であろうと私は思います。そして、価格メカニズム、市場機能というものを生かして動いていくといういまの経済基本的な姿勢のその一角を、こういう形で埋めなければならないという判断をするかどうかということは、非常に大きな問題であります。公取の仕事の補完であるというふうにおっしゃいましたし、そういう御説明がありますが、公取がたまたま価格メカニズムの維持ということをやっておりますのでそういうことになりますけれども、もっと広い意味で、市場経済としての不完全さを補うものとしての一種の政府行政権の活動がそこに出てくるものだというふうな、そういう意味合いに私はとっております。  そういうふうに考えました場合に問題になるのは何かと言いますと、一つは、いまの行政府としては、どういうところがこれを担当するのが一番能率的であり、効果的であるか、受け持つ役所はだれかという問題で、公正取引委員会がそれにふさわしいと言えるかどうかという点について、まだ私個人としては疑問を持っております。もっと政府全体の姿が、行政各部を通じてそういう姿になったほうがいいのじゃないかという気持ちもいたしております。まずそういう意味において、直ちに御返事ができないわけであります。  それから第二番目には、何を一体するか、どういう立場からするか、特に物価との関係において見るというのであれば、ただ価格というものをやみくもに見ても始まりませんので、それの内容にまで立ち入らなければならないということになってまいりますと、さっき申し上げましたような意味での、付加価値の配分について誘導していくという問題をうしろに控えて考えなければならないということになるわけでございます。欧米各国でもすでに、たとえば自由な市場でないものとして、労働市場どもその例にあげられておることでおわかりのように、今日の物価問題の中には、広い意味での所得の配分の姿が、価格メカニズムを通じてだけ動いていたのではどうかなという、そういう問題があるわけでございます。  それについてのいわば基本的な政府考え方、あるいは国民の全体としてのコンセンサスというものがないと、こういった法律りつくりましても、どう動くかということ。あからさまに不当であるというふうにいわれるような、何かすごいぼろもうけをしておるというふうな例がかりにあったといたしましても、たまたまそれで済んでいるものならば、それでいいというふうに考えるのかどうなのか。いろいろ価格についての問題に立ち入るということについての立場をどう考えるのかということが、これは私としては私なりの考え方は持っておりますけれども政府全体としても、あるいは国民全体としても、なかなかそこにまだ問題を残しているように思います。そういう意味で、私はやはり、おまえはどう思うかというのに対して、そういうことを申し上げるだけで、結論的に右とか左とかいう御返事を申し上げる段階にはないわけでございます。
  70. 川端文夫

    ○川端委員 独禁法という法律の中に閉じこもって答弁されるという姿になれば、いろいろ窮屈な面も出てきょうと思うのですが、日本政府の一員であるという、政府委員という立場から考えて、もう少しやはり広い視野に立っての見識を出してもらいたい。ときどき、谷村委員長のいろいろな談話等、あるいは執筆等を見ておるわけですけれども、そういう勇気ある姿は、こういう法案を通しての審議の中においても、大胆に言っていただくことが大事ではないかと考えて御質問しているわけです。  そこで、角度を変えて言いますると、どうしても、国際競争力という立場からものを考え日本経済を見ていく場合においては、だんだんと大型、大規模化していく傾向は減らない、こう思うわけです。これを単に私は、独占資本だというきめつけ方でものを言おうとしているのではないが、そういう傾向にあるときに、大企業化していく、大規模化していく産業の中に、やはり国民的な利益の上に立って一つの歯どめが必要ではないか。これが本法案を出されている趣旨であろうとも思います。  そこで、ひとつ角度を変えてものを言うならば、あまりにも大規模化した企業、あるいは独占化する企業に対して、新しく公営企業でもつくって競争させるというならば、国民のために多少勇気を持って競争できるような企業をつくり上げることも必要だと思うのですが、これはあまり独禁法の内部でものを言わないで、ひとつ谷村委員長いままでの御経験の中から、そういう時期も必要じゃないか、そういうことも考えられるんじゃないかというふうにお考えになられるかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  71. 谷村裕

    谷村政府委員 私どもが皆さま方に御報告申し上げていることの中に、外国では一体どういう考え方をとっているかというのを、例として申し上げたことがございました。そして、いま申されましたように、大きな企業に対して、支配力を持つような企業に対する対抗馬を政府の手でつくっていくというふうな考え方をとっている国が確かにございます。たとえばイタリアやフランスなどには、そういう考え方があるようでございます。アメリカあたりでありますと、行政権が企業の内部に立ち入ってくることは極力避けたい。そのかわり、むしろ大きくなった企業は再び分割するのだというふうな考え方をとっている、そういう考え方を言っている人が多いようでございますが、イギリスあたりになりますと、逆に、ちょうど御提案になっておりますような、一種の大企業の行動監視、場合によっては勧告というふうなことを、しかもそれは、ただ独占という考え方でやられるよりは、むしろ物価、所得というふうな立場からやるというふうな例でございますが、そういうのが多いようでございます。  いま、おまえはもうちょっと高い次元に立ってものを考えたときにどうだというふうに言われましたが、私はかつて新聞紙上にちゃんと書いたことがございますので、それを御紹介いたしますと、企業を分割するというふうな行き方はややドラスティック過ぎて、かえって企業の向上しようとする気持ちに対して水をかけることになるのではなかろうか。そうかといって、公営企業を競争相手として出すのは、どうもそれが能率的であるという保証もないし、金も食うし、第一、公営企業というのはあまり能率のいいことはやらない。役人がやることの効果は大体知れている。やはり第三番目の道がいいのではないか。三番目の道というのは、一種の企業の自己責任を前提としながら、そしてまた、その創意くふう活動を前提としながら、ある程度行政権がその弊害をためていくという、そういうやり方が一番いいのではないかということを谷村個人は思うということを、かつて書いたことがございますので、そのとおり申し上げますが、ただ、そのやり方がたいへんむずかしい問題を背後に控えているということは、さっきから再三申し上げているようなことでございます。
  72. 川端文夫

    ○川端委員 なかなか勇気ある御答弁をいただいて、これを私なりの拡大解釈をさしていただくならば、このような法律があってしかるべきだということも、腹に考えておいでのように理解したような気もいたします。具体的な問題、また当面の立場というものを離れれば、そういう考え方だと理解できるような気がいたします。  ただ私は、時間の関係上、最後に申し上げるわけですが、この法律のポイントは、不当な価格で寡占価格をあまり続けるような条件に対して抑制したいという国民の要望にこたえて、法律案として出そうとしている、その事情にある。しかしながら、一面、今日いわゆる資本の自由化その他に伴って、一例をいえばコダックのフィルム等の関係から、日本にはやはり、業界自身の中に、これに対抗するための談合なり、いろいろなカルテルの傾向が生まれてくる危険もあるように思うわけでありまして、そういう意味において、やむを得ない国際競争力というにしきの御旗に隠れて消費者を無視する姿に対しては、どこかでチェックしていかなければならぬのではないかと考えて、この法案を私どもは歓迎いたしておるわけです。  あまり公取委員長にばかり質問してもどうかと思うのですが、提案者のほうにも、勇気をもって各方面にひとつ説得を願って、この法案を通過せしむるように御努力願いたいことを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  73. 武藤嘉文

    ○武藤委員長代理 谷口君。
  74. 谷口善太郎

    ○谷口委員 時間が全くございませんので、非常にはしょった質問になりますが、主として提案者お尋ねしたいと思うのであります。  先ほど提案者は、三条一項の「価格を不当なものにしてはならない。」という、この価格の当、不当の判断については一応公取にまかすつもりだが、しかしその基準として、当該寡占事業者商品価格形成と、それに対応するような他のメーカーの価格形成などとの比較、あるいは国際価格と国内価格、あるいは輸出価格と国内価格、そういうようなものの比較によって一応の目安をつけるべきだ、それを勘案すべきだ、そういうお話がございましたが、これはそう承っておいてよろしゅうございますか。
  75. 辻原弘市

    辻原議員 先ほど御答弁を申し上げましたとおりでございまして、価格の決定、その前提になりまする、それが当を得ておるのか、はたして不当であるのかという点については、かなり精密な調査を全体を通じていたしてみなければなりません。したがって、その調査の結果出ました全体としての価格の状況、そういうものと、先ほど申しましたような国際価格との比較、あるいはその他商品との比較等々、いろいろなファクター、要素というものを前提として公正取引委員会がきめる、こういう趣旨法案を作成いたしておるのであります。
  76. 谷口善太郎

    ○谷口委員 法制局にお尋ねしますが、この場合は、不当と思われる価格のある商品、あるいはメーカー、これに対する対比でありますが、不当であるかないかという問題になりますと、との提案理由説明の中にも書いてありますとおりに、かなり価格形成にまで立ち入って調査をするということが必要になると思う。不当とみなされた業者及びその商品は、これはもう当然そこで厳重な調査をされても文句のないところでありますが、それに比較される相手の業者に対して、そういう調査がこの法律の上からできるかどうか、この点について法文上の解釈をお尋ねしたいと思います。
  77. 河村次郎

    ○河村法制局参事 ただいま御質問の点でございますが、他の類似の商品、あるいは国内価格と輸出価格あるいは国際価格というような場合に、一応経済界の実態としまして、類似の商品についての価格形成のいろいろなあれがございまして、それをたとえば、この法案の実施のために、関係ない他の商品調査につきまして、強制力をもちまして調査をするという、そこまでは考えておりません。
  78. 谷口善太郎

    ○谷口委員 強制力をもった調査はあまり考えてないとしますと、つまり比較はできないということになるわけだと思いますが、その点どうですか。
  79. 河村次郎

    ○河村法制局参事 いろいろな観点から比較するわけでございまして、必ずしも、他の商品価格形成の原価の構成がどうであるかというような、こまかいことではございませんで、この対象になります寡占商品価格形成のあれをいろいろ調査いたしまして、そして通常の経済界の実態から見まして、著しく通常の社会通念上考えられます原価構成をオーバーしている、そういう場合に一応不当なものと判断するつもりでございます。
  80. 谷口善太郎

    ○谷口委員 そこのところは非常にあいまいでして、このことだけをやっているわけにいきませんけれども、かなり強制力を持った調査をやりませんと、社会通念上の問題であいまいなところで比較されるというようなことで、しかもその価格が不当という結論を出されるということになりますと、これはなかなか重大な問題が起こると思います。しかし、私ども考えによりますと、強制力を持った調査を、関係のない業者もしくはその商品に対してするというようなことも、ある意味ではやはり権利侵害というような問題も起こってくるのではないか。だから、なかなかこれは困難なことじゃないかというように考えておるわけなんです。そういう点で、もう少しはっきりさせていく必要があるように思いますが、そういうむずかしい問題がここに一つあるということを、これはやはり指摘をしておく必要があるのではないかと思うのです。  それから、国際価格と国内価格との比較の問題ですが、どこか、よその外国の製品と同一の製品との比較ということになると思いますが、これなども、賃金水準が違う、生活の様態も違うというような外国の製品と、日本製品とを比較するというようなことになると、これはちょっと妙なことじゃないか。そこらを基準とするにはなかなかややこしいのではないか。  それから、輸出価格と国内価格との対比の問題でも、去年のカラーテレビの問題のときに明らかになりましたとおりに、なるほど、国内の消費者価格と輸出価格とを比べると、非常に開きがありまして問題になりましたが、国内におけるいわゆる蔵出し価格といいますか、これとの比較では、メーカーの言っているところによりますと、そうたいした差がないのだ。これの当、不当を論ずるような、そういう比較の例にはならないように思うのですが、この点は提案者のお考えを伺ってみたいと思います。
  81. 辻原弘市

    辻原議員 その前に前段の、全体としてかなり強制権を持った調査をした、そういうデータでなければ、的確に価格というものを比較して決定されるファクターにならぬじゃないかというお話、まことにこれはごもっともだと思うのです。われわれも、そこまで実際としてはやりたいのでありますけれども、しかしまた当然、何ら問題にすべきではない業種あるいは商品等にまで、初めから強制権をもって調査するということは、別個な問題をもかもし出しますので、したがって、可能な範囲ということで、一応、先ほど申し上げましたようないろいろな価格の比較条件というものを洗い出して、その上できめるという方法をとったのであります。  第二の、それと同じ問題でありますが、国際価格との比較、あるいは輸出価格と国内価格の比較などは、あまり当、不当をきめる十分なファクターじゃない、こうおっしゃるのでありますが、問題は、一つ一つを対比してみました場合に、確かに御指摘のように、それがはたして比較できる基準であるかどうか、これは若干疑問があると思います。しかし、ここで私どもが言いますのは、あらゆる比較可能なそういう価格を洗い出して、全体として公正委員会が、これは少なくとも妥当な価格ではない、そういう判断を、附則にも明記しておりますように、やり得るように公正委員会の機能というものを拡充して、そこでそういう判断公正取引委員会に持っていただく。これは法律の中で当初から、どういう形にすればいわゆる当、不当を論ずる基準ができるかということについては、われわれもそこまでのファクターがございませんので、これは公正取引委員会において十分検討していただく。その一つの指標として、先ほどから申し上げておりますような、あらゆる場合の価格というものを基準として比較をすべきだという趣旨で実は提案をしておるのであります。若干あいまいでありますが、どの辺をどうすれば厳密なものが出るかということについては、冒頭申し上げましたように、やはり諸般の調査を比較検討してみないとなかなか出てこないむずかしい問題でありますので、一応、やはりそれらの方法あるいは手段、こういったものは、これを所管する公正取引委員会の機関の中において十分検討をせしめよう、こういう考え方でございます。   〔武藤委員長代理退席、委員長着席〕
  82. 谷口善太郎

    ○谷口委員 自信がないというように言われますと、それ以上申し上げることはできませんから、次の質問に入ります。  同じく第三条の二項、三項についての問題ですが、ここで「原価」といっておるのは、広告費交際費まで含まれた、いわゆる販売原価ということと理解してよろしいですか。
  83. 辻原弘市

    辻原議員 そのとおりです。
  84. 谷口善太郎

    ○谷口委員 そこで、第三条二項で、寡占事業者はその寡占商品の原価に占める広告費交際費の割合を、公取のきめた割合以上に使ってはならないという規定があるわけです。そうしますと、前提条件として公取は、各寡占業者の商品について、原価に占める広告費交際費の割合を新しく定めることになると思うのです。だとすると、そのまた前提条件としては、その商品の原価そのものを厳重に調べる必要があるように思いますが、この点はどうですか。
  85. 辻原弘市

    辻原議員 いま御指摘のとおりでありまして、これも、先ほどの価格の当、不当を論ずる場合の公正取引委員会のきめる基準と同じように、どれがはたして適当かということは、やはり現在、それぞれの個々の事業者あるいは商品の中に、広告費あるいは宣伝費というものがどの程度加わっておるかということを調査の上、それらを見て、これも社会通念上、あるいは通常、価格等が問題にならず、あるいは経営等が問題にならない企業交際費あるいは広告費というものとの比較等を見て、同様公正取引委員会が決定する、こういうことになるだろうと思います。
  86. 谷口善太郎

    ○谷口委員 原価の内容に至りましては、いろいろ問題があるところだと思うのです。これは意見が違うといっても、整理すればいいことだと思う。私がここで聞いているのは、かなり正確に原価を公取が調べるということが前提にならないと新しい基準をつくることができないわけでありますから、調べるかどうかということをお尋ねしたのです。調べるというお答えでありますから、次に参ります。  そこで、提案者のこの条項をつくったねらい、これはおそらく交際費あるいは広告費商品原価に占める割合が高い。これをある程度新しい基準で引き下げさせるということによって、商品原価を引き下げさせる、ひいては消費者価格まで値段が安くなっていくことをねらっている、そこに大きなねらいがあるんだというふうにいま受け取っているわけなんですが、この点について、そうか、そうでないかをお答えいただきたいと思います。
  87. 辻原弘市

    辻原議員 もちろん、その交際費広告費という問題だけをとらえた場合には、いろいろな考え方があると思います。しかし、ここの法律の中で提案しておりますものは、いま谷口委員がおっしゃったとおり、われわれは、過大な広告費あるいは非常に膨大な交際費を使っておる企業が、それらを減額することによって、当然消費者にはね返っている分を価格の引き下げという形に帰することができるんじゃないか、そういう効果をもたらすんじゃないかということを期待している、そういう意味でこの規制ということを考えているわけであります。
  88. 谷口善太郎

    ○谷口委員 この法案の目玉の一つだ、目玉商品だというように私は思っているわけなんですが、そうしますと、実はいろいろな疑問がわくわけなんです。その疑問のところへ入る前に、ここに実は先ほどから問題になっておりますビールの広告費の実態の資料がございます。  キリン、サッポロ、アサヒ、サントリー、この四つを調べたんですが、去年の売り上げ高が、キリンは二千七百九十五億、サッポロが千二百四十億、アサヒが千百億、サントリーが千九十五億。それに対する広告費ですが、キリンが二十億余りです。それからサッポロが二十八億、アサヒが二十五億、サントリーが六十一億。これは割合をとりますと、法案は原価に占める割合ですから、この割合は、そういう意味では用をなさぬわけでありますが、一応おおよその見当はつきますので言ってみますが、この売り上げに対する広告費の割合を調べてみますと、キリンが〇・七二%、サッポロが二・三八%、アサヒが二・三一%、サントリーが五・五八%です。つまり売り上げの小さいところほど広告費をよけい使っておるということになる。一定の基準に引き下げさせるということですから、おそらくこの場合、原価に占める割合として一%とか二%とかまで引き下げられることになるんだと思います、新しい基準は。そうしますと、こういうことが起こってくるんです。キリンの場合は、たとえば一%というふうにしますと問題にならない、〇・七二ですから。サッポロの場合は二・三八ですから、これは問題になる。半分にしなければならぬ。サントリーの場合は五・五八ですから、割合を相当押えなければならぬということになる。  そこで、さっき公取委員長がおっしゃって、私なかなかおもしろい話だと聞いておったのですが、サントリーは一番シェアが狭くて売り上げが小さいですな。だから、もう一生懸命広告をやって売ろうとしている。ところがビールの業界は、最近の経験によりましてもわかりますとおりに、さっき公取委員長がおっしゃったとおり、値段の問題ではむしろ非常に協調的なやり方で、上げることにみんな右へならえになるということになっている。ところが、シェアの狭いサントリーが広告費を激減させられるとしますと、苦しくなることは明らかなんです。そこで値を上げるということになってくると、これは値段では協調ですから、みな喜んで、キリンもそれに右へならえするという現象が起こりかねない。そうすると、割合でもって広告費あるいは交際費の割合を規制するということになりますと、そういうふうに、ある意味では値上げの要因すら含んでくるというような矛盾もあり得るということ、こういう点については提案者はどうお考えになっていらっしゃいますか。
  89. 辻原弘市

    辻原議員 もちろん、広告費単独あるいは交際費単独で価格の引き下げを実現できる、こういう考え方はわれわれ持っていないわけでございまして、確かに、シェアの少ないところが、シェア拡大のために広告費交際費過度に使うという場合のほうが想定されるわけであります。ただし、一定の基準を設けることによって、少なくとも広告費を使わないでも、これは薬品なんかの場合について特に言えることだと思うのでありますが、薬品は少なくとも医学的な立場から効果を判断をして使う。しかし、ただそれを広告宣伝によって売りまくるといったようなことは、これは価格の問題を除いてみても、本来あるべき姿ではないんじゃないかとわれわれは考えているので、したがって、そういう広告費宣伝費というものをある一定基準のもとに、少なくともそれ以上のものは必要ないんじゃないかという判断で基準を設けるということは、それだけ不必要な経費というものが削減されていくわけでありますから、したがってその部分だけは、少なくとも当然これはいわゆる販売価格から引き下げてもしかるべきものだという、そういう認識がここに生まれるわけであります。  そもそも、この法律の全体としての考え方は、規制ということばを使っておりますけれども、最終的にわれわれが期待しておりますることは、この法律に規定をしておりますいわゆる寡占事業者、ないしは寡占商品として認定をせられたものについて、それぞれその企業の内容、これは当然、価格を洗い、あるいは広告費宣伝費交際費というものを洗っていく過程に明らかになってくるわけでありますから、その実態を最終的に公表することによって、いわゆる消費者、全体の国民として、その企業状態、あるいは価格の当、不当というものが認識され、これが消費者、国民運動の姿で批判をされて、そこから値下げという問題がおのずから起きてくる、こういう全体としての構想を持っておりまするので、確かに谷口さんお話しのとおり、広告費だけを問題にした場合には、非常にシェアの高いところの広告費が必ずしも高くない。逆にシェアの少ないところが広告費を多く使っている。それが基準をオーバーしているということで規制をしたならば、お話のごとく、ある場合には、これは逆に値上げの要因ともなりかねないというような心配はあるわけでありますけれども、私どもとしましては、とらえられるいろいろな要素を、基準を設けてその範囲内にとどめることによって、全体としての不要な経費というものを少なくさせ、これが価格の引き下げにつながらせよう、こういう発想でございますので、部分的に御指摘があれば、私どもとしましても、いろいろな問題点をこの法案は依然としてかかえているということは、率直に申し上げざるを得ないと思うのでありますけれども、全体としての考え方として御了承願えればけっこうだと思うのであります。
  90. 谷口善太郎

    ○谷口委員 この法律案の中では、具体的に値下げにつながる施策としては三条二項なんですな。これは数字の上では高いものを安くするのですから、その分だけ安くなるということに、簡単に言えばなる。ここが一番具体的なんですね。すなわち、全体にわたっていろいろなことを勘案するとおっしゃれば、それはそうだと思いますけれども、少なくともこの法案に示されておる具体的な措置としてはここなんで、そのことが逆に、いろいろな状況のもとでは、必ずしも値下げにつながらないばかりか、値上げの要因にすらなり得る可能性もある。実は私は、いろいろな場合をたくさん持って来ておりますが、時間がないからこの例だけを申し上げたのでありますが、私は、そこのところをはっきりさせる必要があると思っておるわけでございます。  そこで先に進みますが、先ほどの御答弁で明らかになったように、原価に占める広告費交際費の割合を新しく基準をつくる、そのために調査するということですから、関係企業に対しては、相当原価の内容にまで立に入った調査資料公取に結集するわけでありますが、これを公表される予定かどうか。この点を伺っておきたい。
  91. 辻原弘市

    辻原議員 原価についての公表は、法律案にございますように、最終的に、勧告をしても聞かず、なお弁明をいたしましたけれども、その弁明については的確な弁明ではなかった、そういう場合にのみまず価格を公表いたします。必要があれば、原価もあわせて公表することができる。ここは非常に法律案作成上いろいろな論点があったところでございまして、どんずばりすべての原価を公表する——この法案がねらっております趣旨だけで通しますならば、原価公表ということが最も効果があるわけでありますけれども、しかしながら、また別の側面から考えますと、先ほどから経済企画庁長官あるいは公取委員長が種々お話しになりましたように、現在の資本主義経済あるいは自由主義経済、そういう立場を踏まえましたときに、その中に位置する企業の原価というもの、これはなかなかもつて重大な問題でありますので、したがって、これは当然原価をも公表してしかるべきものだ。そのくらいその価格は不当なりという最終的判断公取において得られました場合にのみ原価の公表をする。これは若干、われわれの基本立場から申しますと、下がったような形でありますけれども、やむを得ずその辺のところまで、われわれとしては一段階下げて考えたわけであります。
  92. 谷口善太郎

    ○谷口委員 つまり公表しないということですね。その勧告をし、それを聞かなかった場合には公表することもあり得る。しかし、それ以上に集めたものを資料としては公表しないというたてまえだ、こういうことですね。ここは私は一番大きな問題になるのじゃないか。せっかく調査され、そういう権限を公取に与えられたので、そういう意味では確かに公取の権限の強化だと思う。原価の調査をやるのですから。ところが、それを公表しないということになりますと、そこのところは残念なことになるように思うのです。昨年のカラーテレビの戦いの中で、辻原さんよく御承知のとおり、あの闘争をやりました住民闘争のスローガンは、たとえ現金正価を下げましても、そんなところに問題があるのじゃない、原価をはっきりさせろということが運動の要請だったということですね。国民にこたえるという意味でも、せっかくこういう権限を得て調査するのですから、これを公表するというたてまえに立つべきではなかっただろうか。お立ちにならなかった理由は、いまのでわかりましたが、そうなりますと、やはり不当な価格であった場合にやるということになりまして、一般に不当な価格とは何だということは、皆さんのお考えの上では、現在のいわゆる管理価格、私どものことばで言えば、管理価格といっても独占価格一つの側面だと思うのですが、その独占価格状態のもとで、この独占価格それ自体が不当だというように私ども考えておるのです。だから皆さんも、いわゆる管理価格について、これは規制すべきだということを先ほどからおっしゃっていますけれども、どうやらあなたの構想では、その独占価格、いわゆる管理価格はそのままであって、その上で何かもっと不当なものがあった場合にはやるのだ、こういう構想のようであります。  実は先ほど、不当であるかどうかを判定する基準として、あるメーカーのある種の品目と他のメーカーの同種の品目とを比較するというようにおっしゃったのですが、私は聞いていて実はふしぎに思っておるわけなんです。これはいずれも独占価格でありまして、独占価格を独占価格と比較するなんということはナンセンスだ。問題は、独占価格の内容に立ち入ることが必要であって、実はそれはいまの政府じゃできないし、公取でもなかなかやる権限は持っていないし、またやる気もないだろう。そこで、あなた方の委員長の成田さんの提案では、ことしの今国会の冒頭の代表質問でおっしゃったとおりに、キーフォーバー委員会のような、ああいう強力な委員会を国会につくって、管理価格、つまり独占価格を強力に調査する、そういう権限を持った委員会を国会につくるべきである、こういうふうにおっしゃった。私どももずっと前から提唱してきたことは御承知のとおりでありますが、これを今度の法案で明確にお出しになって、その立場法案をつくっていただいたとすれば、これは非常に国民も喜ぶし、物価対策上、独占価格に対する戦いとしては大きな役割りをしたのじゃないか。しかしお考えは、どうやら管理価格はそのままだ。その上に不当なもの、これだけが対象のようでありまして、非常に私どもは不満であります。  ただ、時間がないからもう結論に入りますが、私どもは、今度の皆さんのお出しになったところの法案の中で、若干の公取の権限の強化をされた点があると思うのです。それは、先ほどから問題になっておりますように、まあ相当の時間と人と金とがかかると思いますが、毎年一回ずつ全業種、全商品の総供給を調べ、その中からいわゆる寡占事業者あるいは寡占商品を選び出す。そしてそこからそれをはっきりさせて公示するというような、こういう権限を与えたことなんかは、私は一つの前進じゃないかと思うのであります。ただこの場合は、おそらく公取さんはおっしゃらなかったようですが、私は聞きたいのですけれども、相当な人と金と時間とが要ります。毎年一回ずつやりますからね。そういうことについてどうお考えになっておるかをお聞きしたかったわけでありますが、いずれにしても、そういう権限を与えられた。それから、いま申しました、原価に対して立入って調査をするという権限を与えられた。これは公表しないところにまことに抜け穴があるように思いますが、こういう点も、運用すれば一つの問題に発展することができるのじゃないかと思っておるわけであります。  私どもは、これもつけ加えますが、やはり公取の権限を強化させるというのは、先ほどから住民闘争の話がしばしば出ましたが、住民の要求を受けた苦情が出るので、これを当然公取判断をして、しかるべき企業なり関係の会社に強力な行政指導をやるような、そういう物価裁判所的な権限を持たすべきだと言っておるのです。これは皆さん御承知のとおりです。そういう方向で今後はお互いに協力して、いま言ったようなところはお互いに一致するのですから、推進していっていただきたいと思います。  時間が来ましたので、これで終わります。
  93. 辻原弘市

    辻原議員 確かに、谷口さんのお考えからすれば、若干不十分だという御指摘は私どもよくわかるわけであります。しかし、要は、先ほどからいろんな議論の中にも出ておりまするように、この不当な価格の問題というのは現実の問題でありまして、われわれとしては、一日もこれをほかっておくことはできない。先ほど経企庁長官お話にもありましたような、ああいう——いまおられませんので、とやかく申すことははばかりますけれども、現代の消費者価格、いわゆる価格問題の中で管理価格問題というのは、そう大きなウエートを占めておる問題じゃないという発想、そういう考え方を私どもは絶対に是認できないわけで、一日も早く解決をする。しかもそれは現在の行政機構の中で当然やるべきことなんだ。だから、その中で解決でき得るような法的措置を講じよう、われわれこういう考え方でまいっておりまするので、根本的な考え方からいたしますると、私、本日の答弁の冒頭に申し上げましたように、基本的な立場としてはいろいろなことが考えられます。考えられまするが、ともかく法案を成立させたい、そのためには政府も、現在まで答弁をしておる範囲内において、この程度のことは当然やるべきではないかという、むしろ政府考えを具体的な案として提示をした、そういう考え方でありまするので、基本的なお考え方については、決して私は反対はいたしませんけれども現実問題として解決をさせたい、できれば超党派の立場でこれを実現させたいという、そういう熱意のもとにわれわれが提出をしておるということを御了解願っておきたいと思います。
  94. 八田貞義

    八田委員長 次回は、来たる二十一日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十一分散会