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石川委員 時間の
関係で、
最初に
質問さしていただいて
感謝にたえませんが、実を申しますと、私はきょうは、
工業技術院が
中心になってやっております
ビッグプロジェクト、この経過とその
一つ一つについて克明に
質問をしたいという
気持ちを持っておったわけであります。ところが、与えられた時間がわずか三十分ということでございますので、その時間の中で、私の
質問の要点というものをつまびらかにすることはとても不可能であります。したがいまして、きわめて大ざっぱな、
通産大臣ペースの
質問だけというような
かっこうになりかねないのでありますけれ
ども、その点はひとつあらかじめ御了承を願いたいと思うのであります。
実は、
日本で
総理大臣が主宰してやっております
権威のある
会議といたしましては、
国防会議と
科学技術会議というのがございます。
科学技術会議のほうでは、先般、
答申が出まして、それについての
質問を私は別の
委員会でやっておるわけでありますけれ
ども、この前、この
委員会でも
質問したのでありますが、たとえば
国防会議での
答申というのは着々と実現の緒についておるわけであります。
科学技術会議のほうは
目標だけを示しただけで、
目標だけに終わってしまっておるというようなことであります。たとえば
国防会議について言いますと、第四次防は五兆八千億円というふうなことになっておりますが、
GNPの中で占める
日本の
国防費はきわめて少ないんだ、したがって
日本は絶対に
軍事国家ではないんだ、こういうふうな
気持ちを私も持っておるし、
国民も大体持っておるのではないかと思うのです。
ところが、私、おととし
東南アジアを回ってきまして、実は私
どものこういう
考え方が決して妥当ではないんだということを、身につまされた
感じで受け取って帰ったわけであります。と申しますことは、たとえばインドネシアは
日本と同じ一億人ぐらいの人口でありますが、全体の
予算が大体五千億から六千億円くらいであります。でありますから、
日本の
防衛費というものは、
GNPの中で占める比率がきわめて少ないんだとはいっても、ことしは六千七百九億円という額になっておるということになれば、絶対額の面で、どうしても
東南アジアは、
日本が
軍事国家的な傾向に進むのではないかという
警戒心を持つということはやむを得ぬことだ。しかし、そのことがそれだけで済めばよろしいのでありますけれ
ども、いつも問題になっておりますような、海外の資源を確保する場合の
前提条件としての
経済協力というものに対して非常に暗い影を落とすのではないかという
感じがしてならなかったわけであります。
そこにいきますと、
科学技術会議でやっておりますようないろいろな
問題点の
指摘というのは、
人間尊重ということを
中心として、ひとつ根本的に
技術というものの
方向づけを変えていこうではないか、こういうふうな的確な
目標が立てられておりますけれ
ども、残念ながらこの具体的な
裏づけというものが全然ないわけであります。
その具体的な
裏づけの一端をになって非常に大きな使命を持っておりますのが
工業技術院ということになるわけでありますけれ
ども、その全体の計画を見てみますと、一応ことしから
三つばかり
追加になりましたが、いままでは
六つばかりの大きな
プロジェクトがあったわけであります。大ざっぱに申しますと、この
工業技術院というのは
通産省が所管しておりまして、いわゆる産・学・
官一体となって
企業に直接寄与し得るものという形のものだけが選別されておるといっても
過言ではないと思うのであります。ことし、あらためて
電気自動車と
パターン情報処理システム、それから航空機の
ジェットエンジンの
関係が
追加になったわけでありますけれ
ども、全体としての
予算の額が、
昭和四十五年の五十億に対しまして、四十六年がわずかに五十三億円ということになって、伸びしろがきわめて少ない。この
ビッグプロジェクトの
成功、不
成功というものは、
国民の将来の明暗のかぎを握っているといっても
過言ではないものがたくさんあるわけでありますけれ
ども、いままでの
ビッグサイエンスの中では、もう終わりに近づいたというような、たとえば超
高性能の
電子計算機というものがございますから、そういうところで
予算がうんと減っているということもございましょうけれ
ども、
日本全体の
政府の
姿勢としての
技術に対する
関心度というものが、大体この数字にも出てきておるのではないか。
よけいなことを言うようでありますけれ
ども、私が
OECDに参りましたときに、
OECDはもちろん
先進国の集まりでありますから、
後進国に対する援助というものが
一つの柱になっておることは、これは言うまでもありませんけれ
ども、残りの
二つの柱は
一体何だといったら、
経済と
技術であります。
国際関係の
経済をどうするか、それから、
技術をどうやって生かすか。
日本では何か問題がありますと、
公害、あるいはまた
交通災害対策、あるいは
災害対策というふうな
特別委員会ができますけれ
ども、
OECDでは全部これを
技術という面から出発をするという見方になっておる。これがいわゆる
先進国のものの
考え方であります。
日本の場合には
官僚統制で、
法律でもって何かそれを規制していくという
考え方になっておるというのは、
日本という国が、文化的、文明的な意味で非常な立ちおくれというものをそこに示しておるのではなかろうかという感がしてならないわけなんであります。
そういう点からいって、
日本の
技術に対する
体制というものに対して、
政府は
科学技術会議というものを持っておりますし、適切な助言、あるいはまた
方向づけというものの
答申は受けておりますけれ
ども、
ほんとうにこれが尊重されるのだろうかということになりますと、私はきわめて疑問なしとしない。その中で特に、
GNPの中の一・九%ぐらいしかいまのところは占めておりませんが、もう数年前、
昭和四十一年だったと思いますけれ
ども、二・五%ぐらいの
研究投資が必要である、こういうことを指示されましたけれ
ども、いまだに一九%にすぎない。さらに今度の
答申では三%なければならぬ。三%までいったところで
欧州並みになっていないわけなんです。しかしながら、一応、目下のめどとしては三%ということになったわけでありますけれ
ども、三%になるのは
一体いつの日かという
裏づけが全然ございません。したがって、
クロスライセンスとか、あるいはまた
技術を導入いたしましても、四分の三は
地域の
制限を受けております。その導入した
技術を外に売り出すのは、四分の三までは
地域制限を受けて、それ以上は輸出をしてはならぬという
制限を受けておるというようなことになっておりますので、どうしても
日本自体が
自主技術というものを確立しなければ、
日本の
繁栄というものはとうてい望み得ないのではないかというような
問題点が
一つある。
それから
あと、新しい
問題点としては、
ソシアルニーズといいますか、社会的な要請に基づいた
科学というものをやっていかなきゃならぬ。
通産省の場合には、これは
産業に結びついたということになるわけでありますけれ
ども、
ソフトサイエンス、あるいは
ライフサイエンス、あるいは
環境科学という
三つの柱が、今度明確に
科学技術会議の
答申として出されておるわけであります。
そこで、たとえば
ライフサイエンスだけについて見ましても、将来は体外の受精というものが可能であろう。あるいは遺伝子の制御も可能であろう。これがとことんまで行き着けば、
人間工学によって、思ったように
人間をつくり変えることもできるし、つくることもできるというようなことになりかねない。
生命力の合成というものも可能であろう、こういうような時代になってきております。あらためて、
人間とは何ぞやということが問われなければならないような、深刻な事態になりかねないのに即応して、
一体、
科学というものはどうあるべきものであるかということが、非常に大きな問題になろうとしておるわけでありますけれ
ども、こういったものを含めて
政府の
科学技術に対する
姿勢というもの
——まあこれは、
通産大臣だけに申し上げても非常に酷なのでありますけれ
ども、
国務大臣の一人としてどうお
考えになっておるか。
それからまた、特に
通産省に
関係の多いところの、
工業技術院が主としてやっております
ビッグサイエンスにつきましても、
あとからまたいろいろ伺いたいこともたくさんありますが、きょうはできませんけれ
ども、この取り組む
姿勢というものは
一体十分なのだろうか。ということは、諸
外国では
GNPの中の三%をこしており、あるいは非常に高いパーセントを示している国も、
アメリカ、ソ連のごとくあるわけでありますけれ
ども、
民間の
投資というものが大体四割か五割、五割から六割、あるいは多いところは七割というのが
政府の
研究投資なのであります。
日本の場合には、残念でございますけれ
ども、この三%に達したといたしましても、
政府の
投資というものは、現在のところでは二八%。三〇%に達しておらない。こういうふうな
かっこうであります。
時間がありませんから、ついでに申し上げてしまいますと、
基礎研究に対する
投資の率というものは全体の中で九%しか占めておらない。ということは、
基礎研究というのは
民間ではやりません。
純粋基礎研究というものは
企業につながらないわけでありますから、どうしても
基礎研究を軽視せざるを得ないという状況に追い込まれる。ということになれば、
基礎研究というものはどうしても
政府自体がやらなければならない分野ではないだろうか。たとえば、ここに
ビッグプロジェクトがありますけれ
ども、
大蔵省で
チェック・
アンド・
レビューをやるわけであります。ところが、
一つの
方向づけができて、それに
失敗をする、
失敗をすると、もうそれは
失敗だからだめだというので、
大蔵省で
予算を切ってしまうということになりかねない。しかしながら、
基礎研究というものから出ていきますと、全然別な
方途というものがまた新たに生まれてくるのでありますから、そういうことをいえば、
失敗というらく印を押されて、それから出発し直すことは容易でないということで、
大蔵省の
予算がつかないということがある。したがって、
基礎研究というものを
ほんとうにすそ野からしっかりつくり上げていかないと、
日本の
ほんとうの
ビッグプロジェクト、
ビッグサイエンスというものも進み得ないということは自明の理であるのにかかわらず、
基礎研究というものが非常におろそかになっておる。これはここの
委員会で申し上げるのが適当な場所であるとは必ずしも
考えないのでありますけれ
ども、最も
科学というものに
関係の深い
通産省であるだけに、あえて私は申し上げたいと思っておるわけでありますが、そういうことで、
基礎研究の
充実、あるいは現在のような
工業技術院の
体制だけで十分だとお
考えになっておるかどうか。その他、基本的な
考え方について、
大臣の所信があれば、一応伺っておきたいと思うわけであります。