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1971-05-12 第65回国会 衆議院 商工委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年五月十二日(水曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長代理理事 浦野 幸男君    理事 鴨田 宗一君 理事 進藤 一馬君    理事 橋口  隆君 理事 武藤 嘉文君    理事 中村 重光君 理事 岡本 富夫君    理事 吉田 泰造君       稲村 利幸君    左藤  恵君       坂本三十次君    塩崎  潤君       田中 六助君    山田 久就君       石川 次夫君    加藤 清二君       中谷 鉄也君    松平 忠久君       相沢 武彦君    松尾 信人君       西田 八郎君    米原  昶君  出席国務大臣         通商産業大臣  宮澤 喜一君  出席政府委員         通商産業省貿易         振興局長    後藤 正記君         通商産業省繊維         雑貨局長    楠岡  豪君         労働省職業安定         局審議官    中原  晁君  委員外出席者         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十二日  辞任         補欠選任   中谷 鉄也君     日野 吉夫君   麻生 良方君     西田 八郎君 同日  辞任         補欠選任   日野 吉夫君     中谷 鉄也君   西田 八郎君     麻生 良方君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申し入れに関する件  通商産業基本施策に関する件  通商に関する件      ――――◇―――――
  2. 浦野幸男

    浦野委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、委員長所用のため、指名により私が委員長の職務を行なうことといたします。  この際、連合審査会開会の件についておはかりいたします。  農林水産委員会において審査中の農村地域工業導入促進法案について、同委員会連合審査会開会申し入れを行ないたいと存じまするが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 浦野幸男

    浦野委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、連合審査会開会日時につきましては、委員長間において協議の上決定いたしまするが、来たる十八日午後開会の予定でありまするから、さよう御了承願います。      ――――◇―――――
  4. 浦野幸男

    浦野委員長代理 次に、通産産業基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。これを許します。松尾信人君。
  5. 松尾信人

    松尾(信)委員 本日は、わが国対外経済協力問題について質疑を重ねていきたいと思います。  すでに、わが国対外援助の問題につきましては、援助の目的、こういうものを明確にしなくちゃいけない、そういうことが非常に叫ばれておりまするし、また、いままでの実績等をいろいろ反省いたしまして、この際、はっきりとした理念というか、そういうものを確立して、そしてりっぱな対外経済協力になっていかなくちゃ相ならない、このように考えます。そういう点からまず進めていくわけでありますけれども、まず、政府援助についてこの際どのように考えていくか、こういう点につきまして何か考えがあれば、それを伺って質問を続けていきたい、こう思います。
  6. 後藤正記

    後藤政府委員 お答え申し上げます。  日本経済発展とともに、発展途上国に対します経済協力を進めてまいりますことは、世界各国もこれを期待しておりますし、特に発展途上諸国におきまして、日本経済力の伸張に伴います期待が漸次高まりつつありますことはお説のとおりでございまして、今後ともこれを進めてまいりたいというのが基本方針でございます。  実績を申し上げますと、たとえば一九六九年、昭和四十四年の発展途上国に対します日本国全体の経済協力総額は十二億六千三百万ドルでございました。これが四十五年には相当飛躍的に伸張いたしまして、十八億二千四百万ドル、こういうように大きく出てまいりました。しかし、その内容等に関しましては、今後さらに改善し期待に沿うべき点がまだ多々あると存じます。特に政府援助の点につきましては、今後これをさらに進めて、発展途上国期待にこたえるとともに、日本国経済協力政策方針を明らかにいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  7. 松尾信人

    松尾(信)委員 政府援助というものを今後大いに進めていくというただいまのお答えでありますけれども、まず、どのような考え方からそれを進めていくか、こういうことであります。  それで、「昭和四十五年中における開発途上国に対する資金の流れについて」、これをいただいておりますけれども、まず、その政府ベースの分の一番大事な点は贈与、このように考えられますが、この贈与につきましては、四十四年に比べて四十五年は減っておる。ふやそうという気はありますとおっしゃいますけれども現実には減っておる。その減った原因というのは、日本賠償分が逐年減少してきておるので、日本贈与という無償供与の分が減ったのだ。こういうことでは、賠償というのは時がくればくるほどなくなっていくわけでありますから、そうすると、無償贈与というものについて、この後、どのような考え方でやっていくか、こういうことでありますが、この点どうでしょう。
  8. 後藤正記

    後藤政府委員 従来、経済援助額中、賠償の分が非常に多くの比重を占めていたことは確かでございます。それが累年軽減いたしてまいりました今日、政府援助、特に無償贈与という形が減ってまいりまして、ただいま先生の御指摘のとおりに、昨年よりも実績が減った、こういうことは事実でございます。しかし、賠償というものの性格、それからさらに、発展途上国は、いわゆる民間ベース経済協力、それだけでは追いつかない部分がある。すでに債務累積いたし、その利払いその他で、一般的な名目的な援助額というものと実質的な援助額というものとが相当開いてきておる国々が多々ございます。したがいまして、今後、無償の分、特に先生指摘贈与の分をさらにふやしていく。特にそれは、貿易その他に直接には結びつかないようなインフラストラクチュア部門と申しますか、その国の基礎的な社会資本充実という面に対する贈与というものを進めていくべきである、かように考えております。今後とも格段の努力政府部内でもいたしまして、この点を推進してまいりたい、かように考えております。
  9. 松尾信人

    松尾(信)委員 無償の分についてはいま考えが示されたわけでありますけれども、同じ開発途上国後進国といいましても、国民所得も非常に少ない、苦しい生活にいま一生懸命になって耐えておるというような国々、そういう国々社会基盤というものをりっぱにしてやらなくてはいけない。政府海外に金を出せば何か取るのだというような考え方は、この際基本的になくなしていって、むしろ同じ後進国の中でも、うんとレベルの低いグループ、そういうものをいままで調査されたことがあるかどうか。そういう国々に対して、社会基盤整備のためにどのように考えていらっしゃるか。たとえば教育の問題、交通、通信の問題。具体的には、道路だとか、橋梁だとか、ダムだとか、そういう、少しでもその当該国々社会基本というものをレベルアップしていくというようなものに、この際日本としてはうんと努力すべきじゃないか。民間ベースでできない部門政府が全部引き受けて、がっちりやっていかなくてはいけないのじゃないか。後進国と一律に言わないで、その内容というものを点検して、そして、そのようなグループはどの国どの国だ、それに対してはどのようなことをやっていくのだ、それに対してはどのくらいの金が要るのだ、このような年次計画というものをすみやかに立てていく必要があるのじゃないか、このように感じますが、どうでしょうか。
  10. 後藤正記

    後藤政府委員 発展途上国自身につきまして、それぞれその発展途上国内で、非常に進んだ国、中心国の域に達しておる国、なおまだ非常に程度が低い国、そういう国の格差が開いてきておりますことが、従来OECDDAC開発援助委員会でも指摘されております。これはおよそ、南北問題経済協力問題というものが俎上にのぼって、世界的な議論になりまして、過去十年進んでくる間に、おのずからそういう格差が開いてきたわけでございまして、そうした、すでに中心国あるいは先進国の域に迫ろうとしておる国々に対する施策と、それから、まだ遺憾ながらその発展がその域に及ばず、ずっと程度の低いところに沈淪いたしておる国々との間の施策格差をつけると申しますか、異なった施策をもってそれぞれに対処していくことは、先生指摘のとおり、当然のことであると存じます。  特に、その発展のいまだしという国につきましては、貿易をもって自助努力と申しますか、自分自身の力で立ち上がっていくということがなかなかできにくいわけでございますから、これはまさに贈与とかいったような無償援助によって、特に民生の安定と申しますか、社会資本充実と申しますか、そういった点に対するインフラストラクチュア部門に対する協力を、先進国はともどもにいたしてまいるという方針は、全くお説のとおりであると存じます。  しかしながら、これは申し上げるまでもないことでございますが、ただこの経済協力全般の問題、特にこれに対しまする政府資金の支出の問題につきましては、日本国内に対する諸施策――これはもともと全部やはり財政の負担ということになってまいるわけでございますので、それとのバランスということ等々も考えまして、私ども経済協力を担当いたしますものといたしましては、でき得る限りそちらのほうに力を注ぎたいという熱意は持っておりますが、これは政府財政当局といたしましては、やはり国内、国外とのバランス問題等を念頭に置かれてその施策考えられるということも、これまた当然でございますので、でき得る限りそちらの方向に向くように、私どもとしては全力を尽くしたい、かように考えております。
  11. 松尾信人

    松尾(信)委員 方向社会基盤整備部門にしっかり力を入れていく、それも結局は予算的な問題にからんでくるから、なかなか考えなければできないというようなお答えですけれども大臣も総理もたびたび言っているとおりに、国民総生産の一%までがんばる、こういうことでありまして、これはすでに四十五年で民間ベースその他をひっくるめますと〇・九三%まで来ておるわけであります。それで、投資なんかを入れますると、この国民総生産の一%というのは問題がないわけでありまして、むしろ政府ベースの、おもに無償という部門でこの一%というものは達成しなくてはならないんだ、このように強く感ずるものであります。  とすれば、そういうのは、もうすでに日本政府方針でありますから、それにのっとった年次計画、その年次計画の中から相手グループ別社会経済基盤整備にどのように出していくか、こういうものができていない。できなくちゃいけないじゃないか。それを年々獲得してやっていく。予算配分の問題でむずかしい点がありましょうけれども、五兆八千億というような防衛予算――いまから審議されますけれども、いま、資源開発とか、また経済協力というものが非常に大事なときでありまして、資源開発の点には今後どのくらいの投資が要るか。これは膨大なものが出てくるだろうと当然予想されます。ある程度そういうものとのうらはらで、やはり日本としては無償供与をがっちりやっていきませんと、いままでのいろいろの評判の悪さというものが残る、資源開発というものもできない、こういうことになってくるおそれがある。がっちりその予算の面については年次計画を立てて、そして早く一%に政府ベースでなるようにがんばっていかなくちゃならぬと思いますが、どうです。
  12. 後藤正記

    後藤政府委員 筋道といたしましては、まことに先生指摘のとおりであると存じます。しかしながら、一応将来のめどといたしましては、一九七五年までに国民総生産の一%というものを援助目標とするということは、内外に宣明をいたしたとおりでございまして、〇・九三%というものが昭和四十五年の実績としてあがっていることも事実でございます。しかし、先ほどお答えいたしましたとおり、その内容というものが、残念ながらまだ政府援助というものの比率は、DAC諸国の平均にはるかに及ばない数字になっておる。したがいまして、この部分をでき得る限り強化せよ、こういう御趣旨のように承っております。もちろん、そのように努力はいたしたいとは存じまするが、先ほどお答えいたしましたとおりに、これはやはり国内財政事情とのバランスの問題であると存じます。  それから、五年先、十年先まで計画的に、こういった経済協力目標、さらに政府援助計画化の問題につきましては、私ども担当事務当局といたしましては、いろいろそれの計算をいたし、関係各省の間で、まだこれは試案程度でございますが、いろいろ協議をいたしておるところでございます。しかし先生承知のとおり、現在日本予算制度は単年度予算でございますし、将来の予測というものを確定いたし、累年別計画、こういったものが、事務当局案ができ上がりましたときにおきましても、内外に出ますることは、これまたいろいろなほかの影響が出てまいると存じます。  ただ、私どもといたしましては、こういった一番大筋の一%目標、これはすでに達成近くなっておりますが、その内容政府援助部分をふやすというほうに対しまして、こういうようにあってほしいという勉強は、外務、大蔵、農林経済企画、その他関係各省とも、いろいろ事務的にいまだ検討を続けて勉強をいたしておる段階でございます。方向といたしましては、そういったビジョンができ上がった方向に沿っていきたいとは存じますが、かような段階にあるということをお答え申し上げます。
  13. 松尾信人

    松尾(信)委員 この一%の問題ですけれども海外投資観点を全部ひっくるめて言いますと、もう来年、再来年あたりで一%になるのでありまして、その内容は、だんだん投資がふえて政府援助がどんどん減っていくというような傾向がいまあるから、私は指摘しておるわけです。でありますから、いまおっしゃったとおり、その中で政府ベースをどのくらいふやしていくかということは、いま年次計画をつくっておる――単年度だからとおっしゃいますけれども、これはやはり第一次防、第二次防、第三次防というように、そのような計画もあるわけですから、事海外経済協力に関する限りは、政府ベース中心に、一%達成年次計画というものをがっちり立てていくべきであろう、こう強く思いますが、大臣がお見えになりましたので、これは一応ここでとめておきます。  大臣もお時間がございませんので、特に伺いたいと思う点を申し上げますけれども、先般、大臣はエカフェの総会に御出席なさいました。この総会におけるいろいろの話の中で、わが国海外経済協力に対する諸後進開発途上国の受け取り方、そういうものについて、何か大臣のほうで感じたり、または話を聞かれたことがあれば、簡略にお知らせ願いたい、このように存じます。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 公式並びに非公式の接触を通じまして感じましたことを簡単に申し上げますと、一つは、わが国援助条件が、先進国の幾つかに比べまして、まだかなりきびしいという点でございます。もう一点は、経済援助に伴いましてわが国企業進出をする。その企業進出のしかたにつきまして、すでに表に顕在化している問題があるわけではございませんけれども、私どもがよほど気をつけませんと、将来、出先で相手側に無用な不安を与え、また摩擦を起こすおそれがある。現在、具体的な問題はございませんけれども、そのことはよほどわれわれとして戒心をすべきである、こういう印象を受けてまいりました。
  15. 松尾信人

    松尾(信)委員 いま大臣から、そのような感じ等お話があったわけでありますけれども、なるほど海外経済協力、これは政府ベースのものと民間ベースのものとあるわけであります。政府ベースというものは、基本的にいえば海外経済協力でありますから、いままでも事務当局のほうとお話を進めてきたわけでありますけれども途上国、その途上国の中でも非常にレベルの低い、国民所得の少ないところで、たくさんの問題をかかえて苦しんでおる、そういうところに対して、どのようにあたたかい手を伸ばしていくかということが、政府ベース海外経済協力基本であろう。そして技術協力というものがそこに無償で行なわれる、両々相まってやるのが政府基本的な海外経済協力であろう。それは、いろいろ貿易関係、または海外投資との関係もございますけれども、こういうものは民間主体である。民間のできない資金援助その他を政府ベースとしてある程度やる、主体はあくまでも民間であろう、こう感じます。  そうしますと、いままでのこの海外経済協力に対する基本的な考え方は、政府ベースでは一体何をどのようにやっていくのか。そうしてそこには、一%という一つの大きな目標がございますから、それを達成していくためには、どのようにしていかなければいけないかという基本的な問題がそこにあるわけでありまして、こういう点をいまはっきりさしていかないと、いまお話のとおりに、日本条件は非常によそに比べてきびしいとか、また、いろいろ条件緩和だという話が出る間は、日本海外経済協力の土台というものは確立されていかない。日本は金があっても経済協力理念がないとか、いろいろいわれてくる基本はそこにありまして、ひいては資源開発のほうにも差しつかえが出てくるんじゃないか、このように考えますけれども基本的な政府ベース援助というものに対して、大臣はどのようにお考えでしょうか。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 問題の御提起としては、私も松尾委員の言われたことが正しいというふうに考えております。いわゆるサプライヤーズクレジット、貿易に伴います金融を援助の中に入れますことは、OECDで認めておりますから、そのこと自身は間違いではございませんけれども、やはりトレードとエードというものを本来分けて考えますならば、エードというのは、松尾委員の言われましたようなことが中心になってつくられるべきものであろうと考えます。  ただ、この点になりますと、わが国国内にも、まだまだ国民が十分でないと思っておるいわゆる社会資本充実等、足りない点がたくさんございます。そういうときに、いわゆる政府ベースのものを発展途上国に非常に大量に持って出ていくということには、これは時間とともに国民の理解を得なければならないという要素がございますしいたしますから、わが国としては、一九七五年差でに国民総生産の一%の援助というやつはありますものの、そのうちの七割は政府ベースでということの約束はできなかったわけでございます。これは計算をしてまいりますと、総体がふくれてまいりますだけ、なかなかそれだけの金額を積み上げることが困難だという感じを持ったからでございますが、しかし、わが国国民的なそういう問題についての認識が高まるとともに、方向としては、御指摘のような方向に向かっていくことが、これがほんとうの援助の精神であるということは、私もさように考えます。
  17. 松尾信人

    松尾(信)委員 この問題は、論議しますれば時間もかかります。これは今後ひとつしっかり考えていただきまして、そうしてすみやかにそのような方向でいくような検討をしていただきたい。要するに、日本における社会資本充実の問題と、この途上国の、その中でも非常にレベルの低いところの問題と、基本的に違います。死ぬか生きるかという非常に悲惨な状態でありまして、世界全体における所得配分というような観点から進めておられるわけでありますから、これは国民的な支持も得られれば、与党、各野党全体そろっての意見の一致はできるだろうし、強いそのような姿勢というものとうらはらでありますけれども日本の足りない資源の獲得に対しましてほんとに大切左道である、このように考えまするので、今後これはしっかりひとつ策定という段階に入っていただきたい、このように要望いたします。  次に、大臣にお聞きしたいのでありますけれども、このようにしまして、だんだん海外経済協力をやっておりますので、債務累積といいますか、相当いま、たまってきておるわけでありまして、すでに直接借款について、日本としましても、再融資してみたり、それから債権繰り延べ等現実にやらなくちゃできないような実態でございます。これがやがて、金額的にもいま調査をしておりますけれども債務累積の額というものが相当いまたいへんな問題になっております。現在、政府及び政府保証分で四百三十六億、そのための年間債務支払いだけで現在約四十億ドル。四十億ドルの内訳は、現金払い二十八億ドル、利子の支払いが十二億ドル、このような計算でありますけれども、これが一九七五年になりますと、政府及び政府保証債務の残高が一千億ドルになる。これは世界全体です。そういたしますと、そのときの年間元利支払いが約百億ドルになる。このような累積債務というものがありまして、とても発展途上国が支払っていくことはできない。いままでの各国政府ベースによる海外経済協力というものが方向転換をすべきときだ。日本でも、条件緩和だとか、そういうことをやらなくちゃできない実態でありますから、後進国途上国から取ろうと思っても取れないという事態が来ておるではないか、こう思いますが、そういう点につきましても、やはりある腹がまえというものをつくっていきませんといけないし、将来どのような方向へ進まなくちゃいけないということがはっきりする、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 発展途上国における累積債務利払いが新たに受ける援助額に比較して非常に高くなってくるという問題につきましては、ピアソンにいたしましても、ミュルダールにいたしましても、しばしば指摘をし、一般に認識されておるところであります。そういうことの現実事態に対処するために、御承知のように、債権国がいわゆるコンソーシアムというものをつくりまして、そして既存債務についての延べ払い、リファイナンスというようなことも共同でやってまいっておるわけでございます。  このようなことが起こりました一つ原因は、受け入れ国において、援助輸出関連産業の育成ということに使う、そうしてそれによって外貨を稼いで債務返済をするという計画そのものが、いろいろな政治的事情、あるいはその他計画と実際とのそごという形であらわれてくるからでありまして、これはもう相手の国情から見ましてやむを得ないというものについては、リファイナンスというようなことで処理をしていくよりしかしかたがないものだと思っております。  しかしながら同時に、援助を受け続けるということは、相手国がある段階でそれをもとに自分の力で離陸するということにつながりませんと、実は長い目で見れば、お互いによろしいことではないわけでございますから、そういう意味では、リファイナンスをする、既存債務についての軽減措置を講ずるというようなときは、コンソーシアムの立場から、相手国のやや長期的な経済離陸計画を一緒に考えさしてもらう必要があれば、IMF、ワールドバンク等も入ってもらって、相手の自主的なそういう経済自立の道をつくってもらう、こういうことが伴っていくことが必要であろうというふうに考えるわけでございます。
  19. 松尾信人

    松尾(信)委員 いまの問題に関連するわけでありますけれどもわが国東南アジア諸国との貿易バランスの問題でありますが、これは四十五年の実績をながめますと、差し引き十九億ドルが日本の出超になっております。援助はしている、貿易関係でもいろいろやっている、無償もやっているということでありますけれども他方貿易ではこのような結果が示されておる。これは主として貿易関係でいけば、日本日本のマーケットを開放していかなければいけないのじゃないか。まず、この出超問題をどのように考えていくかというのが一つと、むずかしい問題がそこに横たわっておりますけれども、そこには思い切った考え方がなければいけないのじゃないか。今度は、相手の工業化ということをはかっていった場合に、輸出指向型ですか、それを大いに助長していこうということになると、向こうの製品は、いまおっしゃったとおりにやがて出ていく。そのときには日本にも来る。こういうことでありまして、貿易バランスがそこでうまくいけばいいですけれども、現在の出超関係をまずどのように考えていくかということと、将来、相手国の工業化で輸出指向型というものが工業の育成強化となりますと、さらにこの問題はどのようになっていくか。この点はどうでしょう。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これらの多くの国の輸出可能商品が一次産品でございますから、さしずめそれを中心にいたしまして、たとえば開発輸入というようなことも一つの方法でございます。それからまた、現実わが国がこれから一年間に何をどれだけ輸入し得るか、先方が何をどれだけ供給し得るかというようなことを、政府ベース及び民間ベースで具体的に品目別に突き合わしてみる、そしてそれが一年間に実行されたかどうかというような実績をチェックをする、このような方法は案外有効な方法でございまして、そのようなことで、先方の輸出関心品目をこちらが買うという方法をとっておる国もございます。そういうことになりますと、かなり具体的にお互いの意思が通うようになるわけでございます。  それから、ことにこの点は、今後わが国の工業化がさらに進むということを考えますと、一次産品についてそれらの国から供給を受けるということが、長期的には比較的自然な姿ではないかと思われますので、進めていくべき方法だと考えるわけでございます。  それから、次に第二次製品、工業製品でございますが、これはやはりわが国から先方に投資をする、それによって新鋭の生産力を先方が持つ、それがわが国にも輸出されるというような姿はいい姿であると考えますので、これは主として民間投資によることでありますが、しかし、政府ベースのインフラストラクチュアの投資ども、それを助ける結果になるわけであります。と同時に、わが国が特恵というような姿でそういう生産品を有利な条件で受け入れてやる。こういったような、相手国別におのおの特色がございますので、具体的なやり方を相手国政府と相談をするというようなことが有効な方法であろうと考えております。しばらくの間わが国の出超になりますことは、にわかに先方も輸出を増大するということが困難でございましょうから、やむを得ないと考えておりますものの、長期的にはそういう方法が先方にとって一番好ましい方法であるというふうに考えております。
  21. 松尾信人

    松尾(信)委員 筋道は大体いま大臣お話しのとおりと思いますけれども、一次産品の輸入ということは、これも農林水産関係でありまして、非常にむずかしい問題がありますけれども、いま大臣お話のとおりに、貿易じりをどうするかという問題とあわせて、これはしっかり検討していくべきである。それと工業製品の問題につきましても、やはりわが国がマーケットを提供ししていくんだという基本的なものをしっかりとっていくべきである。この点を強く要望いたしておきます。  それから、先ほどもいろいろエカフェの話が出まして、日本条件がきびしいということでありますけれども、これは直接借款の問題等につきましても、そのように感じます。たとえば、探鉱をやる、または試掘をするというようなことも、各国ともこれを無償でやっておるはずでありますけれども日本は有償である。このような問題がありますので、こういうことはすみやかに改善さるべきじゃないか。時間がありませんので、しばらく一方的に申します。  それから、政府の輸出信用にいたしましても、これは民間投資等に関する政府分でありますけれども、これも当然条件緩和をなすべきである。なおまた、輸銀のベースよりも基金のベースを大いに伸ばしていかなければならぬのじゃないか。これは問題点であります。  それから大切なのは技術協力関係だと思います。この技術協力関係をながめてみますと、残念ながらわが国援助総額に占める技術協力の比率は非常に低いのですね。世界最低と言ってもいいくらいであります。一九六九年で総援助額のわずか一・五%ですから、ここに一つの問題点があるんじゃないか。ここに一つ政府海外技術協力というものに対する考え方のおかしい面が出ているんじゃないか、こう感ずるわけですよ。でありますから、こういうことから、日本は一生懸命海外経済協力をやっているのだと言いますけれども、評価は案外そうじゃない、むしろ評判が悪い、こういうことにもつながってくると思います。いずれにしましても、日本人とこういう国々の人々が接することが一番多いのは技術協力関係だと思いますので、これはうんと力を入れて、国民外交的な面もありますので、思い切った施策をせぬといかぬ。一・五%程度のものではならない。これをすみやかに一〇%程度まで上げる。それから二〇%以上やっている国も相当あるわけでありますから、日本は東南アジアの一つ中心勢力としまして、これはうんと力を入れていかなくちゃ相ならないと思いますけれども、どうでしょうか。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点まことにごもっともなことでありまして、私ども、そういう努力をいたさなければならないと考えておりますが、今日までのところでは、いろいろ原因がございまして、わが国自身が、つい先ごろまで、あるいは現在も、先進国の技術をいわば借りておるという姿でありますから、わが国の技術開発というものは、それらの国に比べると、独自のものが今日までたくさんはなかったという点が一点。  次に、やはりことばの問題というようなこともあったと思います。先進国の中で技術協力関係の比率が非常に多い国は、概してかつて宗主国と植民地の関係であった国に多く見られるところでありまして、つまりそういう間には、おのずから人的交流が従来からあったわけでございます。それが技術協力の形で今日も続いている、こういう関係の場合が多うございます。  わが国もそういう意味で、積極的に人を迎え、また人を送って技術協力をしていくということ、これが一番ほんとうの意味での人類愛につながるわけでございますけれども、と同時に、これは人と人との接触になりますので、一番拒否反応を起こしやすい種類の分野になるわけでございます。しかし、こうしてまいりませんと、ほんとうの友好関係は生まれない。それをわれわれがこれから間違いなくやり抜けるかどうかというのが、わが国の将来を決する一つの大きな問題ではなかろうかというふうに考えておりますので、そのような危険をよほど慎重に回避しながらそういう方向へ進めていくことが、当面大事な問題であろうというふうに私も考えております。
  23. 松尾信人

    松尾(信)委員 抽象的にはいまの大臣の答えでわかるわけでありますけれども現実的には一・五%という数字が出ておるわけですよ。でありますから、これをせめて取り急ぎ、カナダ、西ドイツ、イギリス等の諸国並みにまず一〇%程度にする。おまけに今後は、日本資源開発の問題、海外投資の問題が急速に伸びていくと思われますので、これはほんとうに力を入れてやらないと、いまのような状態では、やはり日本経済協力全体の海外の評価がいつまでたっても改まらないと思いますので、これは具体的に策定さるべきであろうと思います。  時間の関係大臣がいらっしゃらなかったのですが、きょう私の言っていることは、日本海外経済協力につきまして、新聞等の評論も、日本は金はあるが、ないのは援助の理由づけだとかなんとか、いろいろ言っているわけでありまして、非常に残念であります。でありますから、同じ開発途上国といっても、その中には、社会基盤整備をしなければならないグループと、貿易等の発展育成というものに向けていく国々がある。そのように、非常におくれておる、非常に苦しい思いをしている国々に対しては、日本としましては、当然、無償政府経済援助というものがいま強力になされなくちゃ相ならぬ。これはどのように考えておられるかということを論じておったわけでありますが、そこに大臣がお見えになったのであります。これは特に事務当局からも、そのとおりだ、しっかりがんばっていくという返答がありましたけれども、しっかりしていただきたい。  ところが現実は、四十四年と四十五年を見ますと、そうだといいながらも、無償資金供与というものは、賠償が減ってきたために、むしろ四十四年よりも四十五年が減っているというような、逆行している傾向が出ているから、うんといまここでがんばらないと、おかしいじゃないかということを論じておったわけであります。これは大臣もあとで考えを一言おっしゃっていただきたいと思うのです。  次には累積債務の問題ですね。これは先ほど大臣お話しいたしたとおりでありますから、これもしっかりお考え願いたい。  それから東南アジア諸国との貿易のアンバランスの問題ですね。出超関係、現在十九億ドルもある。こういうものに対してはっきりした見通しを立ててやっていきませんと、これは海外経済協力と相矛盾した現象というものが出てくる。これをいかに調整していくかという問題ですね。これを計画を立ててやっていくというお答えでありました。特に政府ベースというものは、原則は無償の分に力を入れていかなくちゃ相ならぬ。それと一%の達成というものに進んでいかなくちゃいけないのに、いま海外投資というものもひっくるめて四十五年が〇・九三%になっておる。これは海外投資等もひっくるめて入れるならば、一%とか何%というものは、やがて問題なく来年、再来年には達成されるだろう。その中から、政府無償供与として、政府のベースとしてやるべきものが残されていく傾向にある、それじゃいよいよおかしい結果になるのだから、もう海外投資というものは別ワクにして、政府のベースによる一%の達成をすみやかに策定をしてしっかりやっていかなくちゃ、海外経済協力というものの実があがらぬのじゃないか、このようなことをきょうは申し上げておるわけでありますけれども、全体ひっくるめまして、大臣の御返答を聞いて終わりたいと思います。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆるトレードとエードということを考えますと、いままでわが国発展途上国になしてきたエードというのは、実は多くのものがトレードの延長として考えられておったのではないか。ほんとうの意味でのエードというものは、賠償はしいられたものでございますので別でございますから、トレードの延長としてでないエードというものを十分に考えるべきだということで、いままでの実績は実はあまり誇るべきものが多くない、これがほんとうのところではないかと思うわけでございます。  たとえば、御指摘のように、無償供与ということでかりに十億ドルなら十億ドル、予算に三千六百億円というものを計上いたしましたときに、それが、国内におけるいろいろな予算的な必要とどれだけ競合せずに、国民的な合意のもとに成立するかということになりますと、それもなかなか一朝一夕にはまいらぬことでございましょう。金の問題についてすらそうでございますから、そういうエードをになう人――先ほどからお話しのような技術協力にいたしましても、人の心がまえ、人の養成というようなものは、さらに時間のかかる問題であろうと思います。しかし、この仕事を摩擦なく国民的合意のもとにやれるかやれないかが、二十一世紀に至りますまでのわが国のこれからの進路を決定する問題ではなかろうかというふうに、私は実は考えておりますので、松尾委員のような御指摘が国会においてございますことは、きわめて意を強くいたしますし、そのようにわが国の世論が形成せられることがきわめて望ましいと考えるものでございます。  政府といたしましても、そういう方向に向かって極力努力を続けてまいりますが、何ぶんにもこれは一朝一夕ではなし得ない種類のむずかしい問題であり、先ほど申し上げましたように、失敗をいたす可能性も決して少なしとしないのでございますから、国民全部がいわゆるコンセンサスのもとにそういう方向へ歩き出すという世論の形成というものが必要ではなかろうかというふうに考える次第であります。
  25. 松尾信人

    松尾(信)委員 それじゃ質問を終わります。
  26. 浦野幸男

  27. 西田八郎

    西田委員 私はまず最初に通産大臣に伺いたい。  世間をかなり騒がしました日米繊維交渉は、三月の八日、日本繊維産業連盟の自主規制宣言によって一応のケリが見られたように思うわけでありますが、しかし、この自主規制宣言の中に、極東三国との関係において、同じようにアメリカに繊維製品を輸出する各国の同調を求める、その同調のない場合にはこの宣言の変更も考慮するということが入っておるわけであります。そういう関係からいたしまして、この宣言の中には、政府その他には規制されないということばもあるので、政府としては、業界に対して強く、ああせいこうせいという指示、そういうことはできないというふうにお考えであろうと思うのですけれども、もともとこの問題の発生してきました経過等を考えましたときに、政府としても黙って黙視するというわけにはいかないだろうと思うのです。そこで、この極東関係事情というものが現在どのように動いているのか、通産省として把握しておられる範囲において、ひとつお聞かせをいただきたいと思う。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 業界があのような自主規制宣言をいたしましたときに、ただいま御指摘のような点が含まれておりましたのは、おそらくは業界としては、規制を受け入れる側である米国が極東三国に対して働きかけをするであろうと、このように期待をしてのことであったというように考えるのでありますけれども、今日まで、アメリカ側がそのような働きかけをしておるという事実を聞いておりません。さりとてこれは、わが国政府が動き出す種類の事柄でもございません。それらの国とは非公式には、いろいろ外務省、私どもの役所でも接触がございますのでありますが、韓国、台湾、香港、いずれもいわば別にアメリカからまだ話もないのでというようなことで、目立った動きは、私どもの知っておる限りございません。
  29. 西田八郎

    西田委員 これははっきり宣言の中にあることは事実なんですが、日本の自主規制宣言というものは、同時発車ということが業界では非常に強い条件になっておるわけなんです。そうすると、政府がいま、そういうふうにして情報等を把握してないということになると、これはこの宣言を発した日から三カ月後ということになっておるわけで、もうその時期が来ているわけですが、実際には自主規制というものが行なわれなくてもいいというふうに判断をされるわけですか。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点はまことに、お聞きになりようによっては、木で鼻をくくったようなことを申し上げて、私の本意では実はないのでございますけれども、業界がそのような宣言をされた、そうしてかりにその条件が満たされなかったときにどうするかという問題は、やはり業界において考えていただかないといけない問題だと、公にはこのように申し上げるしか方法がないわけでございます。     〔浦野委員長代理退席、進藤委員長代理着席〕 むろん非公式に、それらの点についても、必要があれば意見の交換をいたしたいとは思っておりますものの、もともと業界の発意によって行なわれたことでございますので、そのような事態にいかに対処するかということは、第一義的には業界においてやはり決定をしていただかなければならない問題ではなかろうか、こう考えております。
  31. 西田八郎

    西田委員 そうしますと、大臣そのものも、木で鼻をくくったような答弁で申しわけないというような前提でその答弁をしておられるわけですけれども、この問題が起こってきたいきさつをいろいろ勘案し、しかも国会でも何回か審議されました中で、私もこの問題に関しては、二度ならず三度、四度と質問をしてきておるわけですし、本年の予算委員会の総括質問のときに、総理大臣とこの問題のやりとりをいたしましたときにも、大臣が密約をしたということは肯定されなかったけれども、少なくとも政府は、こうした問題に干渉したということについては、外交上の甘さといいますか、見方が甘かったという意味での発言は、これはもうはっきりおっしゃったわけです。そういうことからいくと、やはり政府がこの問題に対しては、自主規制宣言が発せられるまでは干渉をしてこられたわけですし、また見切り発車というようなことも行なわれたわけであります。そういう形の中から生まれてきた本交渉が、最終的には、業界側が自主規制宣言を発するということによって解決したというものの、私は、政府としての責任というものは当然免れないと思うのです。だから業界が、政府がへたな手出しをしてくれるなとはいうものの、そこにはやはり、何とかこの問題に対してもっと重大な関心を寄せてもらいたいという気持ちが動いておることは、裏側を通して見れば、私はあるのではないかと思うのです。したがって、そういう公式な答弁ではなしに、実際にこの問題の処理は、極東三国との同時発車ができなかった場合、せっかく落ちつきかけたものが再びまた再燃するということも考えられることだと思うのです。そうだとすれば、そういうことを再燃させないだけの努力というものは、私は政府にあってもしかるべきではないかと思うのですが、その点、大臣の所信はいかがですか。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府といたしましては、業界の自主規制宣言をいわば当面可能な次善的な策であると考えまして、これを支持した立場でございます。今日もその立場は変わっておりません。したがいまして、政府といたしましては、アメリカ政府が、この業界の自主規制宣言の上に立って、極東三国に対して働きかけをするということを、アメリカ側に対して期待をいたしております。また、そのようなことを何度か、公式ではございませんけれども、先方にも伝えてございます。が、ただいままでのところ、そのような動きは、アメリカ政府が、私どもの知っている公式な動きとしてしたことは、まだないようでございます。  なお、わが国自身がそれらの国に働きかけるということも、米国政府協力するという形でならぱ考えられないこともないわけでございますけれども、その協力をすべき御本尊のほうがそういう動きをしておりません限り、政府として何らなすことはない。また、いたしますことは多少筋の違ったことでございますので、そういう要望を、政府としては米国側に対して持っておるということは、これは公に申し上げることができることでございますが、ただいまのところ、それを越えてどうということを申し上げることができない現状でございます。
  33. 西田八郎

    西田委員 それじゃ重ねてお伺いしますが、そうしますと、極東三国との同時発車ができなかったということの理由によって、この宣言の自主的な規制を開始する時期というものが多少ずれるというか、おくれるというようなことがあってもやむを得ないという判断のもとで、政府は対処しておられるのかどうか。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もう一度原則論に戻ることになりますが、この宣言がなされるに至りました段階で、政府が何かの勧奨をした、そのような事実はございませんで、文字どおり業界が自発的にいたしたことでございます。そこで、条件が満たされなかった場合にどうするかということは、まず業界自身考えられなければならないことではないだろうか。かりにそのような仮定が事実になりました際には。その際に政府に御相談があれば、政府としては私ども考えておることを申し上げたいと思ってはおりますが、この点は、まだ業界としていろいろに研究中のように存じております。
  35. 西田八郎

    西田委員 質問に対しての答えとしては、ちょっとそらされているように思うのですけれども、これは業界自身がきめることだとおっしゃるわけですよ。これは先ほどから大臣が何回かおっしゃるところなんです。そこで、業界がこの条件としておる極東三国との同時発車ということができない場合、宣言の効力を失うわけじゃないけれども、宣言の実施の時期をずらすということをかりに業界できめる、そして一年先なり半年あとにやるんだというようになってきた場合に、政府は一体どうするのか。それでもやむを得ないということなのか。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 お尋ねの趣旨は、よくよくわかっておるつもりでございますけれども政府としては、アメリカ側も極東の主要輸出国に、わが国に対すると同様な働きかけをすることを要望しておる立場でございますから、その立場から申しますと、ただいまのような仮定のお尋ねにお答え申し上げることは、差し控えるのが実はしかるべきではないか、かように思いますので、お答え申し上げることをお許しいただきたいと思います。
  37. 西田八郎

    西田委員 そうすると、これからの質問も非常にむずかしくなってくるわけですけれども。仮定の説で論議はできないということになると、まだ実施がされていないのですから非常にむずかしくなるのですが、しかし、そうは言うておられないと思うのです。これは大臣に、そういうことであればやむを得ないんだという強い態度を示していただきたかったわけでありますけれども、事実上は自主規制のほうへどんどん動いておるわけであります。  私は先日も、四国の丸亀と今治地方へ行きまして、その実態調査してきたわけでありますけれども、このために、輸出縫製業界あるいはメリヤス業界は、非常な恐慌に見舞われておるわけであります。当然そこにはいろいろな被害というものが生まれてくると思うのです。自主規制が実際に効力を発生しない現在においても、すでにそういうような徴候が見られるわけでありますから、昨年の対米輸出の伸び率等から見ました場合に、この自主規制はそれの半分以下に押えようというわけですから、たいへんなことになってくると思うのです。ことに縫製品等につきましては、対米を目的につくった製品でありますから、規格からいっても日本人には全く合わないのであります。  余談になりますけれども七先日、この滞貨になった製品がたくさんあるので、運動会の賞品にというのでたくさん放出されたのですけれども、もらった人が着たって全然サイズが合わないで、ありがたみも何もない、どうしようもない、こういうような笑えない笑い話がなされておったのでありますけれども、そういうようなことも、事実上産地に起こってきたわけであります。  そこで、そういうことが想定されるものを通産省として把握しておられるのかどうか。もしも把握しておるとするならば、どの程度の被害が出てくるのか、その辺の状況について把握しておられるならば、おられる範囲内でひとつ局長からでも答弁をしていただきたいと思います。
  38. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 ただいま御承知のように、業界におきまして規制方法をいろいろ検討中でございまして、ただいままでのところ、大づかみに申しまして、全体の繊維を綿織物、毛織物、化合繊織物、それから二次製品というような四つに分けて、それぞれその内部におきます規制をいま考えておるところであります。  具体的に、たとえば、メリヤスあるいは縫製品につきまして実際のワクがどうなるかということは、スタートのときはある一定の基準に従いまして割り当てるにいたしましても、その後の時間の経過につれまして、需要にいろいろと動きがございますから、その動きにできるだけ応じ得るようにということで、弾力性を持たせた規制をやることを考えておるわけでございます。したがいまして、個々のものにつきましてどのくらい被害が出るだろうかということにつきましては、ただいま詳細にと申しますか、正確に申し上げますことは非常に困難でございます。  ただ、非常に大づかみに申しまして、昨年の対米輸出は、原料を除きましても約五億五千万ドルでございました。このほかに韓国、台湾、香港に対します輸出が総計いたしまして四億八千万ドル程度ございます。それで、たとえば織物にいたしますと、米国に対します輸出は、絹も入っておりますけれども、絹はごく少量で約一億九千万ドルでございますけれども、第三国、たとえば韓国、台湾、香港に対します輸出が約二億ございまして、織物が直接影響を受けますものはこの両方になるかと思います。そのほかに、織物としては二次製品の輸出がございますので、こういうものを合わせまして、それぞれの輸出の面において影響が生じるということが考えられるかと思います。  たとえば、これはかりの話でございますが、第三国が日本と同じような非常にきびしい規制をやるというようなことになりますと、大体織物にいたしますと、全体の一割弱になると思いますが、設備が過剰になるというようなことも考えられるわけでございます。したがいまして、ただいま申し上げられますことは、それぞれの部門について影響が出てまいりまして、やはり過剰設備が生じてくるということが考えられるということでございます。
  39. 西田八郎

    西田委員 過剰設備が出るということは、当然それは倒産も出てくるし、廃業という問題も出てくるということですね。これはセットになると思うのですが……。
  40. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 そういうおそれもなしとしないわけでございます。
  41. 西田八郎

    西田委員 おそれじゃなしに、もう現実に出ているわけです。ですから、そうしたものに対する救済措置というものは、当然考えられなければならないと思うのですが、それに対する対策は、公式なものではありませんが、通産省ないしあるいは政府・与党等でいろいろ考えておられることが新聞に報道されておるわけでありますが、この際、一体どういう対策を持っておられるのか、ここでひとつ明らかにして聞かしていただきたい。
  42. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 規制の態様がまだ最終的に決定をいたしておりません関連もございまして、最終的な案を申し上げる段階に至っておりませんが、従来、業界とは密接に連絡をとりながら案の内容を固めつつある段階でございます。  まだ財政当局とは最終的に話をいたしておりませんが、考え方といたしまして、まず過剰になりました設備の買い上げ、廃棄ということを考えなければならないと思います。これは織機だけではなく、かなり広い範囲で考えてまいらなければいけない問題でございまして、ニットにつきましても、あるいはまた縫製につきましては、可能な限りそういうことをやってまいりたいと思っております。それから、製品のだぶつきあるいは操業度の低下等は、当然ある程度低利の金融を必要とすると考えますので、その処置を考えたいと思います。と同時に、一般的に従来行なわれておりました構造改善のテンポと幅を広げていくという、大体大まかに申しまして、その三つの観点から対策を進めてまいりたいと思っております。
  43. 西田八郎

    西田委員 そこで、まず設備の買い上げという問題が出たわけですが、設備が買い上げされ、そして転業、廃業するということになると、そこに労働者の失業という問題が出てくるわけであります。これは当然考えてもらわなければならぬのですが、通産省の領域でないと言われれば、これは別問題でありますけれども、少なくともこういう問題については、私は同時に考えていただくべき問題では左かろうかと思うのです。したがって、そこに失業する労働者の対策というものをどうお考えになっているのか。
  44. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは当然私どもの仕事の関連で生まれるものでございますから、私どもにも責任のあることと考えております。従来、構造改善によりまして転廃業の対策がとられておるわけでございますが、それと同じような線で、職業訓練でありますとか、職業あっせんのための諸制度、これを活用いたす必要がございまして、その点は労働省とも緊密に連絡をとりつつ対策を考えております。
  45. 西田八郎

    西田委員 労働省の審議官、お見えになっておるはずですが、労働省は、そういうことについて何か予測をされて対策を立てられておるかどうか、ひとつお答えをいただきたいと思う。
  46. 中原晁

    ○中原政府委員 いま御指摘の点でございますが、全般的には、いまの雇用・失業情勢というものは長期的にいいわけでございますが、この問題につきましては、中小企業が多い。特に中高年齢層等につきましては、このような時代になりましても非常に各種の問題がございますので、労働省といたしましては、通産省とも連携をとりまして、機動的に職業紹介を行なう。また、各種の職業転換給付金制度というものがありますが、こういうものを支給する。また、なるべく能率的に技能を身につけていただくということで職業訓練を実施していくというようなことで、万全を期するように準備しておるわけでございます。
  47. 西田八郎

    西田委員 重ねてお伺いいたしますが、それは、従来の特繊法に基づく構造改善等から来る特別措置としてなされておる、そういう措置に準じて扱うというか、同様に扱うというか、そういう扱いにするということですか。
  48. 中原晁

    ○中原政府委員 このたびの日米繊維関係における離職者というものにつきましては、今後どのように出てくるかということにつきましては、現在のところ、数的にははっきりとつかめない事情がございますので、今後どういう形でもってこれをやっていくかということにつきましては、もう少し情勢の推移を見なければきめられないと思いますが、いずれにしましても、私どもとしましては、既存の制度の活用も含めまして、万全の対策をとりたいと存じておるわけでございます。
  49. 西田八郎

    西田委員 万全万全と言われたって、万全とは一体何かということになってくると、いろいろ問題が出てくると思うのですよ。少なくとも現在、そういうことで職業転換の場合の処置を受けておる人がおるわけですね、構造改善によって生じてくる離職者対策ということで。だから、そういう対策と同様の対策をするかどうかということです。
  50. 中原晁

    ○中原政府委員 特定繊維の場合につきましては、先生御存じのような施策をしたわけでございますが、今度の場合には、先ほどから通産省からも御説明がありましたように、現在のところ、その全貌といいますか、数の点まではなかなか判明しない面もございますので、そのあたりを、もう少し様子を見きわめた上で、あるいは前と同じようなことが必要か、あるいは場合によっては、この成り行きによってはもっと手を打たなければならぬ、ああいうことではなまぬるいということになるかもしれませんので、そういう点は情勢をよく見まして、いずれにしましても、こういう中小企業に働く方々が失業して迷う、困るというようなことは絶対ないようにいたしたいと思います。
  51. 西田八郎

    西田委員 いずれまたこの問題は、社労委員会なり、あるいは直接お伺いするなりの形で解決したいと思いますが、通産省のほうも、こうした労働者が出るということは十分御承知の上でありますから、その点は労働省と十分協力をして、いま万全ということばがありましたけれども、ただ単にことばの上の万全ということでなしに、それには実際そういう処置をとっていただくように要請をしたいと思います。  そこで続いて、いま出ましたこの被害の中でやはり一番大きな問題は、過剰設備の買い上げという問題と、それから、いずれにしましても事業縮小なりあるいは生産を低下させなければならぬという事態の中から起こってくる、つなぎ資金なり運転資金の融資の問題ということが出てくると思うのです。そこでまず、その過剰設備の買い上げに対して、従来は一部受益者負担というのか、結局、業者負担といいますか、買い上げられないもの、生き残るものがその分を負担するというような形において行なわれてきたのがあるわけです。そういう問題があるわけですが、今回の場合は、いままでのような国の施策として行なわれる場合ではなしに、非常にせっぱ詰まった状況の中から、経済事情の変化というような形で行なわれてくるので、受益者というものは当然生まれてこないと思うのですね。ですから、買い上げのされる中で、一体、残存業者の負担というようなものを実際に考えておられるのかどうかですね。  それと、設備の買い上げについて、織機一台について、業界等からは三十万というような要求も出てきておるわけでありますけれども、こういうものが実際に認容できるのかどうか。そこら辺のところについて、答えられる範囲で答えていただきたいと思います。
  52. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 いわば業界の自己負担分と、それから金額につきましては、まだ大蔵省と相談中でございまして、はっきり申し上げられる段階ではございませんけれども、自己負担分というのは、ある程度やはり業界が全体として、過剰設備がなくなることによりまして受ける利益というのも、かような原因によって生ずることではございますけれども、いなめないわけでございまして、ある程度業界の負担分を認めるという意見も強いわけでございます。  それから金額につきましては、御承知のように、業界は三十万円という要求をいたしておりますが、私どもとしては、金額はできるだけ多く、業界負担分はできるだけ少なくということで、大蔵省といま折衝しておる段階でございます。
  53. 西田八郎

    西田委員 その点は、ぜひとも従来の例にならわずに、できるだけ業界の負担を軽くして、買い上げに万全を期してもらいたいというふうにお願いをいたしておきたいと思うわけであります。  次に融資の面で、現在、保証協会が保証することによっていろいろと融資をされてきておるわけですが、その場合の保証条件といいますか、貸し付け条件というものが非常にきびしいために、いま三百万なり四百万なりプッシュしてやれば何とかなるという企業が、そういうことで非常に困っておるという実態が数多くあるわけであります。そういう場合に、こうした特殊な融資を行なわれる場合の条件というものは十分緩和されるべきだと思うのですが、そういう点について、いわゆる大蔵当局と話し合いを進めておられるのかどうか。
  54. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 先生指摘のように、確かに、金融を行ないます場合は、全体のワクだけではございませんで、具体的に必要な業者に金が流れるような仕組みが必要でございまして、信用保証制度を行ないます場合も、個々の保証協会のワクがありまして融資ができないというようなことがないように、保証制度の面からも融資が円滑に行なわれるように、大蔵省にお願いをしておるところでございます。
  55. 西田八郎

    西田委員 いや、私が言うのは、ワクが少ないから融資ができないというのではなしに、ワクは残っているけれども、保証するときの審査というか、そういう基準が非常にきびしいのですよ。赤字を出していてはいけないとか、あるいは総水揚げが設備に対して対応していなければいけないとか、いろいろ条件があるわけなんです。その審査基準がきびしいために、ほんとうに金を貸してほしいところに金が流れずに、自分で自己資金でも何とかなりそうだけれどもこちらのほうが低利だから有利だ、そういう人のところに金が流れていく。言うならば、現在は高いところに土盛りをするような形になってきておるわけです。そのために泣いている業者が全国には何万とあると思うのです。したがって、そういうことのないように、こういう特別の措置として行なわれる場合には、そういう審査その他の基準を別に設けてやるべきであると思うのですが、その点についてどうかということ。そういうことを考えておられるかどうかということを聞いておるのです。
  56. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 融資でございますので、その面からする制限というのはあるかと存じますけれども、融資を行ないます場合に、各都道府県の御援助も得まして、ただいま先生の御指摘になりました諸点も含めまして、実際の融資が、たとえば中小企業と申しましても、大きなところばかりに片寄ることのないように、本来の目的を達し得るような措置が行なわれますように配慮いたしたいと存じます。
  57. 西田八郎

    西田委員 それから、先ほどちょっと申しおくれたのですが、買い上げの場合と労働者との関係ですけれども、一定の組織があり、かつまた労使双方でそうした協定等が結ばれている場合はいいわけですけれども、まだ繊維業界全体における労働組合の組織立というのは非常に低いわけであります。特に中小企業の組織率というのは低いわけでありますが、そういう中小企業等においては、片一方では、買い上げ織機を百台なら百台買い上げてもらう。かりに三十万として百台ということになれば三千万の金が入ってくる。そこに五十人なら五十人の労働者が働いておる。それに対する手当もなさずに、それをそっくり持って食い逃げするという業者が必ず出てくると思うのです。そういうものをチェックする場所というものが必要ではないだろうか。構造改善の場合には、産地構造改善組合をつくり、その指導員というものが各県に置かれておるわけでありますけれども、こういう場合、一体どういうところでそれをチェックし、そういった悪徳業者の防止をするか、こういう点が非常に重要な問題になってくるかと思うのですが、そうしたことについて何かお考えになっておるかどうか。
  58. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 織機を買い上げます場合に、その買い上げた代金が労働者に行き渡らないでそのままになってしまうというようなことがないように配慮することは当然でございまして、買い上げの場合、私どもとしては、その労働者に対してどういう配慮が行なわれるかという点も、十分チェックして実施してもらいたいと思っております。  ただ、具体的に先生の御質問の御趣旨は、おそらく、いま構造改善をやっております場合に、各県にございます委員会のことを御指摘だと思いますが、業態によりまして、現在そういうものもございませんところもあるわけでございますが、今後、実施の段階に至りまして、どうしたらそういう点を安心して実施させるようにできるかという点につきましては、十分検討いたしまして、御心配のような点がないように配慮いたしたいと存じます。
  59. 西田八郎

    西田委員 そこで私は、一つ提案をしておきたいといいますか、被害の救済措置法を具体的に実施するにあたって、いろいろな条件審査したり、あるいは指導したり、あるいはまたチェックしたりするという意味で、業界、関係官庁、さらに労働組合の代表を入れた三者構成による委員会のようなものを構成をし、その委員会審査を経たところの織機の買い上げを実施する。そして、その労働者が十分に待遇されたかどうかということもそこでチェックするというような方法で、現在、構造改善についてはそうした三者構成の委員会が持たれておるわけでありますけれども、別途にそういうものを設けていただきたいという希望を持っているわけですが、そういうことをお考えになっておるかどうか。
  60. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 率直に申しまして、いま現在、そういう構想をきめておるわけではございませんが、御要望の趣きは十分承知しておりまして、今後御心配のような事態のないような方向でやり方を考えたいと存じます。
  61. 西田八郎

    西田委員 最後に大臣にお伺いをしたいのですが、結局、繊維交渉は、こういう形において非常に日本の業界が被害を受ける。そういう中で、それを承知で、これも次善の策だというので業界が踏み切ったわけでありますけれども、しかし、その業界の態度だけに甘んじておってはならないと私は思うのです。将来、開発途上といわれる後進国からの追い上げというものも非常に急であります。たとえばニット系等の輸入量というものは、ここ二、三年間に膨大な量でふえてきておるわけですね。ですから、そういう観点から考えました場合に、やはり新しい市場の開拓というものを考えていかなければならぬと思います。それはやはり私は、中共も含めてまだまだ開発する地域はたくさんあると思うのですが、そうした点について、通産大臣にひとつ、展望があればお聞かせをいただきたいと思います。
  62. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国のように、賃金ベースがこうやって上がってまいりますと、低賃金の国に比べまして、単純な繊維製品ではなかなか太刀討ちできないということは自明のことであろうと思います。中国大陸においても、賃金水準はおそらく非常に低いと思われますので、同様なことが申せると思います。そこで、われわれとして考えなければならないことは、やはり繊維産業というのは一つの情報産業であるということではなかろうかと考えますので、アメリカのような、あるいは西ドイツのような、賃金水準の高い国でも繊維産業が決して滅びていないということは、付加価値を高からしめることによって、いわゆる技術水準を上げていくことによって産業が繁栄している、こういうことであろうと存じますので、今後わが国の繊維産業として考えるべきことはやはりそういう方向ではなかろうか。そういう方向をとることによって、中国大陸を含めまして、賃金水準の低い国にも彼らの仕事の分野を与え、また、賃金水準の上がっていきますわが国においても、わが国の独特の仕事の分野を持つ、このように指導をしていくべきものだというふうに考えております。
  63. 西田八郎

    西田委員 いままでの質問いたしました答弁その他から考えまして、政府の、今回の日米繊維交渉の結末にあたっての態度は、きわめて消極的といわざるを得ない。特に、業界がそういう態度で臨んでくれたことをいいことにして、政府としては、とにかく古傷にさわらずというような態度が私は見られると思うのです。これはきわめて遺憾な点でありまして、もっとも業界がそういう態度であるからということもありましょうけれども、もともと種をまいたのはどちらかということも考えていただいて、問題は、起こってくる被害に対してやはり十分な措置を講じてもらいたいということと、その被害を救済するにあたっては、単に政府と大蔵当局等とで出せる範囲というようなことでものごとをきめるのではなしに、少なくとも、業界代表なり、実際に被害を受ける労働代表と――まだ十分な資料がない、数字が出ていないということで、きょうの答弁はほとんど具体的に聞けなかったわけでありますけれども、そうした問題も次第に明らかになってきておるわけです。私は、ここに各業界から政府に要求しておられる被害救済の金額その他も持っておるわけでありますけれども、公表すべきじゃないと思って持っておるわけでありますが、そうしたものも実際は出されてきておるわけでありますから、そうしたものは、事前にひとつ業界あるいは組合代表、労働者代表、こういうものを含めた中で十分な処置を講じていただくように強く要請をいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  64. 進藤一馬

    ○進藤委員長代理 加藤清二君。
  65. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 もうすでに十二時二十分でございますので、いまの西田委員の質問に関連しまして、簡単に二、三点だけお尋ねしたいと存じます。  いまこう静かに聞いておりますと、この期に及んで、余剰織機の買い上げ、融資の問題、それから労働者の対策、こういうことが大臣からも繊維局長からも答えられているのですが、これは過ぐる日に三工連が全国大会をやりましたね。そのおりに、政府側も繊維局長はじめ大ぜいさん御出席でございましたので、業界の希望が那辺にあるかは、よく御承知のことだと思います。ただ、いまのお答えの中にわからぬ点がありますので、わからぬ点だけをお尋ねいたします。  対策をする、すると言ってみえますが、その時期はいつでございますか。
  66. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 救済措置の実施の時期はできるだけ早く、私ども、できれば今月内にでもきめていただきたいと考えております。
  67. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 おりあしくといいましょうか、おりよくといいましょうか、参議院選が行なわれますね。グレープフルーツとかどうとかも問題になっているようですが、きょうの新聞によりますと、あれは参議院選後までたな上げにするということのようでございます。それは参議院選をおもんぱかってのことだと存じます。しかし繊維は、政府のほうの要請もこれあり、発車してしまっているのですね。ですから、よほど早く、特に参議院選前にある程度のめどをつけられないと、これが参議院選の論争の一つの焦点になるのではないかと思われます。したがって、参議院選前にある程度のめどをつけて、これを業界ないし国民に知らせるということは、今日の政府にとっても決してマイナスなことではないと思いますが、これは大臣いかがでございましょうか。
  68. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 別段選挙との関連を意識いたしておりません。私どもとしては、規制の態様がきまってまいりますれば、それに伴って救済措置が発動できますように、実はかなり話の最終段階にあるわけでありまして、財政当局とも最終的に打ち合わせましたら、措置を決定いたしたいと考えておるわけでございます。
  69. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それは今月一ぱい程度でございましょうか。
  70. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど政府委員から申し上げたとおりでございます。
  71. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは、今月一ばいと受け取っておきます。  それから、余剰織機の買い上げの金額でございますが、平均三十万という要求決議が行なわれておるのです。しかし、あれはあくまで平均でございまして、ランクをつけられるのが至当だと思います。  同時に、織機の代金というのは、ほとんど減価償却が済んでおるものが多いのです。が権利金がたいへんなんです。これは構革のときにも、すでに何回も論議した問題なんです。権利金を無視してかかられますと、これは幽霊になって生きるのです。だから、ほんとうに構革を行ない、ほんとうに買い上げをするというならば、どうしても権利金をつけてやるということでないと、仏つくって魂入れずになります。幽霊で生きて帰ってまいります。ですから、ぜひこの権利金を見てやるということが一つ。  それからもう一つの点は、買い上げた織機を完全にスクラップダウンするということが最も必要・だと存じます。このことは、小室案のときにも申し上げました。それから乙竹案のときにも申し上げました。ところが依然として、これがスクラップダウンされていないのですね。だから、それをするためには、私は火葬場論という。これは特別な金属でできておる。鋳物、鋳物と申しましても、なべ、かま鋳物と違うのです。砲金が入ってございます。ですから五十年も六十年もこたえられるわけなんです。したがって、普通のくず屋に売る鋳物材料ではないわけなんです。持っていく先は、紡機、織機の製造会社の溶鉱炉なんです。そこへ入っているかとただしてみますと、一台も入っていないのです。みんな幽霊になって生きている。それがやがて次の余剰織機、次の生産過剰を生んでいるわけなんです。いまにして、ここをはっきりさせておかないと、これは永久に直らないと思うのですが、その点、何ぞきめ手を考えていらっしゃいますか。きめ手の一番いい手は、私がもう十五、六年前に、小室案のときにも申し上げた。乙竹案のときにも申し上げた。これはどうなんですか。ほかに何ぞいい手がございましたらお教え願いたい。
  72. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 まず織機の確実な破砕の問題でございますが、私ども、実は現在、特繊法でやっております織機の破砕につきましては、厳格に行なっているものと存じておりますが、確かに、先生のかねての御持論でございます火葬場論というのは、一つの方法だと思います。私ども今後、織機の買い上げを行なうに際しましては、やはりこれが確実に破砕が実施されること。それに加えまして、それが同じ織機でなくても、またもう一度いわゆるやみ織機がふえてくること、これをなくするように万全の策をとりたいと存じております。私どもだけで中央官庁でやれますことにつきましては限界もございますので、県の御援助も得まして、破砕につきましては、先生の御指摘のような不祥事を起こさないように、万全を期したいと思っております。  それからもう一つの点でございますが、買い上げ価格にいわゆる権利を含ませる点でございます。この点につきまして、実質的には、単に織機の簿価ではなくて、そういうものも含めまして業界としては買い上げてもらって、それで事業の規模の縮小あるいは転廃業ができるといったようなものにしたいと、ただいま努力中でございます。
  73. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 さっきの質問にもう一つあったのですが、織機に、平均が三十万という要請だが、ランクをつける必要があると思うがいかんという点について伺いたい。
  74. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 その点は御指摘のとおりでございまして、買い上げます織機につきまして、たとえば自動織機、あるいは木製の織機、あるいは幅の広いもの、狭いものといったようなことで、ランクをつけることは当然検討すべきものと考えております。
  75. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 じゃ、それに関連した整経機であるとか、あるいは紡機であるとかいう件については、どのように計画を立てられておりますか。
  76. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 整経機につきましては、ただいま登録制がございませんので、織布業者につきましては、あとのいわばやみの発生をとめる歯どめという点から考えましても、織機を中心とすべきではなかろうかと考えておるわけでございます。
  77. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 では、より機はどうなるのですか。
  78. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 撚糸業者の撚糸機につきましては、登録がございまして、これは同様にしてもいいのではないかと思っております。
  79. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 つまり、より機は含めるということですね。買い上げの対象にするということですね。はい、わかりました。  これは当然のことでございまして、一連の関連機械のセットでございますから、機場だけが買い上げられて他の部門は買い上げられないということになれば、他の部門は生きて動く関係になる。生きて動けば過剰生産になるにきまっておるのです。特に布帛の制限、それから第二次布帛加工の制限ということが主体で、糸の制限はアメリカにない、これはほとんど除外されているというたてまえからいきますと、アメリカ輸出にかかわる――糸の関係はそうでもないのですが、これが機場から染色整理から第二次布帛加工にわたっていきますと、その製品が制限を受けるのでございますから、以下一連の設備はみんな制限、こういうことになるわけです。したがって、工業用ミシンはどうなるのですか。
  80. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 工業用ミシンにつきましては、実は、織機あるいは撚糸機、あるいはメリヤス編み立て機と違いまして、現在、登録制はないわけでございますが、もう一ぺん設備がふえてくるということがないような、何か適当な歯どめを考えまして、そういうものがございますれば、同様に扱ってもいいのではないかというふうに考えております。
  81. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 大臣、繊維局長は非常にまじめで、よく勉強してみえて、それで誠心誠意ですから、万全万全と言ってみえる。それはけっこうなことなんです。が、その万全を期していただくのでしたら、やはりこの制限を受ける対象の設備は買い上げにするようにする。構革のときに、登録のものはこれに加えたけれども、それ以外のものは加えないというところに抜け穴があって、その結果、次から次へと幽霊のできる原因になっておるのでございますから、そこらのところは、制限を受ける対象の設備を網羅するということと。特に織機については、単独でどこへでも運び出されて、それが一台、二台でも動かすことができる。そういうものは、権利金をもって貸して、貸し賃を取っていま動いておるという状況でございますので、権利金をつけてやる。制限を受けるものは全部対象にしてやるということと、もう一つは、特に織機については、プラス権利金を見てやるということにしないと万全にならないと思います。そこらのところをひとつよく御検討いただきたいと思います。  融資とか労働問題については、もう時間でございますので、いずれ別な機会にいたしますが、織機というより設備の買い上げという問題について、いままでのネックになっていた点を指摘して、善処を要望するわけでございます。大臣の御見解を承りたい。
  82. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 せんだって来、その辺のことは、繊維局長とも実はよく話をいたしておるのでございます。私も、規制の対象になるような、整理の対象になるような機械は、できるだけ買い上げをしたい。そこで、登録のあるものはよろしゅうございますが、ただいまの工業用ミシンのようなものはできるだけ買ってあげたい。ことに相手が縫製でございますから、よけいそう思うわけでございます。何かそこで幽霊になって残らないような方法はないか、知恵を出してくれないかということを、実はせんだって来申しておりますので、先ほど局長がそういうつもりでお答え申し上げたと思います。  それから権利金の問題でございますけれども、これはもう償却が済んでおる、したがって値段はスクラップの値段だと申したのでは、これはどうも話は済むまい、こう思っております。
  83. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 本日はこの程度にいたします。
  84. 進藤一馬

    ○進藤委員長代理 この際、暫時休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      ――――◇―――――   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕