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1971-05-11 第65回国会 衆議院 商工委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年五月十一日(火曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 八田 貞義君    理事 浦野 幸男君 理事 鴨田 宗一君    理事 進藤 一馬君 理事 橋口  隆君    理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君    理事 岡本 富夫君 理事 吉田 泰造君       小川 平二君    小峯 柳多君       左藤  恵君    坂本三十次君       始関 伊平君    塩崎  潤君       田中 六助君    藤尾 正行君       前田 正男君    石川 次夫君       岡田 利春君    相沢 武彦君       近江巳記夫君    松尾 信人君       川端 文夫君    米原  昶君  出席国務大臣         通商産業大臣  宮澤 喜一君  出席政府委員         通商産業省鉱山         石炭局長    本田 早苗君         通商産業省公益         事業局長    長橋  尚君  委員外出席者         議     員 石川 次夫君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 五月七日  辞任         補欠選任   中谷 鉄也君     三宅 正一君   川端 文夫君     渡辺 武三君 同日  辞任         補欠選任   三宅 正一君     中谷 鉄也君   渡辺 武三君     川端 文夫君 同月八日  辞任         補欠選任   石井  一君     中馬 辰猪君 同月十日  辞任         補欠選任   田中 六助君     木野 晴夫君   山田 久就君     松山千惠子君 同日  辞任         補欠選任   木野 晴夫君     田中 六助君   松山千惠子君     山田 久就君 同月十一日  辞任         補欠選任   中谷 鉄也君     日野 吉夫君 同日  辞任         補欠選任   日野 吉夫君     中谷 鉄也君     ————————————— 四月二十八日  寡占事業者供給する寡占商品価格等規制  に関する法律案辻原弘市君外十名提出衆法  第一七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  寡占事業者供給する寡占商品価格等規制  に関する法律案辻原弘一君外十名提出衆法  第一七号)  公益事業に関する件  鉱工業に関する件      ————◇—————
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。  辻原弘市君外十名提出寡占事業者供給する寡占商品価格等規制に関する法律案議題とし、提出者から提案理由説明を聴取いたします。石川次夫君。     —————————————
  3. 石川次夫

    石川議員 ただいま委員長からお話がありました、寡占事業者供給する寡占商品価格等規制に関する法律案提案理由説明するわけでありますけれども、説明に先立ちまして一言申し上げさせていただくならば、物価の問題は、国民の最大の関心の的になっておることは、言うまでもございません。したがいまして、今国会の壁頭、本会議における各党の代表質問におきましても、ひとしくこれをとらえて、特に管理価格規制の問題についての善処方政府に要望したわけでありますけれども、それに対する佐藤総理大臣答弁は、公正取引委員会というものがあり独禁法というものがあるので、これによって善処し得るという答弁がなされたわけであります。ところがその後、予算委員会等を通じまして、佐藤総理答弁も漸次変わってまいりまして、いまのままの公取、あるいはいまのままの独禁法だけでは十分ではないであろう、したがってこの改正も考えなければならぬ、あるいはまた、調査権というものをもっと確立しなければならぬであろうというようなことが言われてまいったわけであります。  しかしながら、独禁法改正ということになりますとたいへんなことでございまして、そう早急になし得ることではございませんので、いまから申し上げる提案理由におきましては、独禁法の補完、補強という形でこれに取り組んだわけであります。したがいまして、結果的には政府の意図に全く沿った形の法案になったわけでございまして、これにあえて取り組むという姿勢がない限り、政府・与党は物価に対して何らの積極的な意欲がないということになるのではなかろうか、こういう考えがしてならないわけであります。  以上申し上げまして、いまから提案理由説明を申し上げたいと思います。  ただいま議題となりました寡占事業者供給する寡占商品価格等規制に関する法律案につきまして、日本社会党、公明党、民社党の三党を代表して、その提案理由を申し上げます。  とどまるところを知らない物価の高騰は、ますます国民生活に大きな圧迫を加え、わが国経済の基盤をゆすぶっておりますことは、まことに重大と申さなければなりません。いまこそ効果ある具体策を超党派の立場で実行することが、われわれに課せられた使命であり、また急務であると信ずるのであります。  従来、物価対策について、政府においても幾つかの試みを行なっておりますけれども、残念ながらその実効はきわめて薄いと申さなければなりません。特に、いわゆる管理価格の打破が、物価対策上、大きなウエートを占めていることが指摘されながらも、これにあえてメスを入れなかったことは怠慢のそしりを免れません。  高度成長下における寡占化傾向、そして寡占事業者市場占有に伴う当該製品価格固定化とその上昇は、ますます物価騰貴の大きな要因となりつつあります。技術の進歩や設備近代化に伴う大量供給体制は、コストダウンによる販売価格低下があってしかるべきであるのにかかわらず、不急のモデルチェンジ、あるいは販売促進を名目とする諸経費等を隠れみのとして、かえって価格水準上昇しているというのが実情であります。  このような現状をそのままに放置することは、消費者利益保護国民経済の健全な発展の見地からして、断じて許してはならないのであります。したがって、その要因除去のため、寡占事業者を統制する方策につきましては、あらゆる角度から検討されなければなりません。直接的には価格統制、あるいは企業公有化細分化などの強い措置も考えられますけれども、われわれ三党は、当面この直接的方法をとらず、寡占状態国民に与える不利益を排除する実質的効果をねらい、次のような現実的な方策をとろうとするものであります。  すなわち、メーカーの不当な価格による取引規制、過大な広告費交際費規制、これに違反するメーカーに対する公正取引委員会による必要な措置をとるべきことの勧告、さらにこの勧告に従わない場合の原価などの公表制度がそれであります。  以下、順次法案概要を御説明申し上げます。  第一は、寡占事業者は、その生産し販売する寡占商品価格を不当な価格にしてはならないという規制であります。不当な価格とはどの程度であるかにつきましては、公正取引委員会判断にまかせたわけでありますけれども、当該事業者商品価格構成と、他のメーカー蔵出し価格及びその価格構成との比較、あるいは輸出価格国内価格並びに国際価格との比較等を勘案してきめられるべきものと考えております。  第二は、寡占事業者寡占商品にかかわる広告費交際費規制であります。広告費交際費企業市場開拓販売促進のためには効果的な一手段ではありましょうけれども、反面それらの費用はすべて販売原価に組み入れられ、一般消費者へはね返ってまいります。さらに、これらの過度の支出は、商品差別化品質価格以外の競争促進し、流通コスト上昇をもたらすなど、健全な競争を妨げる理由ともなりますので、その規制を行おうとするものであります。どの程度支出が妥当なりやいなやにつきましては、商品の様態を勘案し、公正取引委員会規則で定めることといたしました。  第三は、以上申し上げました二点に違反をした事業者に対しましては、公正取引委員会による必要な措置勧告を行なうこととした点であります。さらに、この勧告に従わなかった場合には、その寡占商品蔵出し価格など必要に応じ原価をも公表することといたしたのであります。これらの違反に対して、罰則をもって強制する方法をとらず、あえて勧告原価などの公表という方法をとりましたのは、真実を一般消費者に知らせることにより、良識による国民世論を盛り上げ、それによってメーカーの自主的な措置を期待せんがためであります。なお、公表する場合には、メーカーに弁明の機会を与える等、公正な運用を期しております。  第四は、寡占商品寡占事業者定義についてであります。一般にいわれております管理価格定義につきましては、独占禁止懇話会等でも種々検討されているようでありますけれども、いまだにそれをもって規制を行ない得るほど十分な定説がありません。したがって、われわれも慎重な態度で臨み、管理価格を形成する少数の事業者当該市場を占有しているという実態に着目をしまして、一の商品について、三年間平均市場占有率上位三社で六〇%、上位十社で九〇%以上であるものを寡占商品とし、この商品を一〇%以上供給しているメーカー寡占事業者として本法の適用とし、あえて定義の定めがたい管理価格ということばを避け、実質をもってこの法律規制対象とした次第であります。  次に、どのような物品が寡占商社に該当するかは、公取委の実態調査に待ねばなりませんが、一応想定いたしますならば、粉乳、バター、マヨネーズ、ビール、ウイスキー、合洗剤、フィルム、時計、ピアノ、カラーテレビ、冷蔵庫、タイヤ、乗用車などの一般消費財的なもの、また、板ガラス、アルミ板合成ゴム、パルプ、新聞用紙などの原材料的なものなど、二百品目前後となる見込みであります。  第五は、寡占商品寡占事業者の公示と調査についてであります。これらは、商品供給量割合できめました関係上、全商品供給量実態を把握する必要がございますので、公正取引委員会は、寡占商品に該当するかいなか、寡占事業者に該当するかどうかを調査し、その結果を、毎年一回、定期に官報で公示することといたしました。これにより各メーカーは、本法による寡占事業者であるかどうかを知ることができる仕組みになっております。  第六は、寡占事業者価格並びに原価に占める広告費及び交際費割合届け出制度であります。  第七は、この法律所管公正取引委員会としたことであります。このことはあえて新しい行政機関を設置するという煩を避け、公正取引委員会権限を強化し、必要な職員の増員によって、行ない得ると判断いたしたためであります。また、この法案は、現在の独禁法の限界、すなわち、価格の当不当を直接対象にできない、独禁法上の事件とならなければ公正取引委員会調査権限に制約がある点等を補完する性質を持つものでありまして、独禁法運用とあわせて公正取引委員会所管とすることが妥当と考えられます。  そのほか、調査の場合の報告、違反事実のあった場合の立ち入り検査等、所要の規定を設けました。  なお、施行につきましては、調査などの規定公布の日から一カ月後に、この法律主要部分規定は、調査関係上、公布後一カ年内において、政令で定める日から施行することといたしました。  なお、この法案は、今日まで企業活動の自由という名のもとで、社会的監視がほとんどなされなかった領域を対象とするもので、そのため法案実施にあたっては解決すべき幾つかの課題がございます。  今日の複雑多岐にわたる生産体制においては、この法案施行上、公正取引委員会が決定すべき内容、たとえば、商品の分類、シェアの調査価格原価届け出の基準や算定方法不当性判断等を明らかにするには、さまざまの要因を検討しなければなりません。この面での国の調査研究は著しく立ちおくれているのは事実であります。しかし、これらの作業は、いわゆる管理価格に対する何らかの規制を行なうためには、今後必ず直面する避けて通れない問題であり、政府調査能力、今日の経営分析技術等水準からして、政府の決意さえあれば、実施上の困難を取り除くことは十分可能と考えられます。  以上が本法律案提案理由及び概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  以上であります。(拍手)
  4. 八田貞義

    八田委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  本案の質疑は後日に譲ります。      ————◇—————
  5. 八田貞義

    八田委員長 公益事業に関する件、鉱工業に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。これを許します。岡田利春君。
  6. 岡田利春

    岡田委員 私は、S源対策、なかんずく硫黄問題を中心にして、若干質問を行ないたいと存じます。初めに事務的な点から質問をいたしますので、事務的な面は事務当局からお答え願いたいと思うわけです。  硫黄対策は、硫黄需給懇談会が設けられて、三カ月ごとに需給見通しをする、こういう方向で進められてまいりましたけれども、ここ二年の需給見通しは、いずれも懇談会で一応策定したものとずれておる。いわば需給見通しについて非常に甘さがあったのではないかと私は思うわけです。しかし、四十五年度の総括はすでに出ておると思いますし、また、今年、昭和四十六年度単体硫黄で見た場合の需給動向については、一体どのように政府は見られておるのか、この点についてまず事務的な説明を願いたいと存じます。
  7. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。  御指摘のように、当委員会決議をいただきまして、需給計画硫黄について的確に立てることの御指示を受けておりまして、需給懇談会鉱業審議会硫黄分科会の中に設けまして、硫黄需給見通しを絶えず見てまいっておるわけでございますが、御指摘のように、硫黄需給につきましては、一つには生産面変動、二つには需要状況変動のために、かなり大きな食い違いを生じてまいったということは事実でございます。ことに回収硫黄生産が、原油硫黄分低下に伴いまして、計画のとおりに出ないということ等がございまして、一時需給が逼迫するというような事情が出てまいりまして、昨年度は一万トン輸入をするという事態になりましたことは、たいへん遺憾に存じております。  四十五年度硫黄需給につきましては、昨年の十二月に行ないました見込みでは、需要が約三十六万トン、そして供給では、期初の在庫が二万三千トン輸入一万トンを含んで四十一万トン弱ということで、期末の三月末在庫は五万トン程度というふうに見込んでおったわけでございますが、需要が約二万トン程度減少いたしましたために、七万トン余りの三月末在庫ということで期を越さざるを得ないという状況に相なっております。  四十六年度見込みといたしましては、最近の見通しといたしまして、需要の面においては、硫酸製造において硫黄を使用するという事情が出てまいりましたために、本年度の約三十四万トン需要に対しまして、来年度は四十三万トン程度というふうに見込んでおります。供給につきましては、本年度十万八千トン、約十一万トンでございますが、すでに帝国硫黄吾妻鉱山が五月末をもって閉山するという事情、並びに各山とも若干の生産縮小を行なうということがございますので、七万九千トン程度に減少するということでございますが、回収硫黄のほうは、低硫黄化重油需要の要請が強いという事情を反映いたしまして、また新規に脱硫装置が稼働するという状況もございますので、二十七万トンが三十七万五千トン、約十万五千トンほど増加するということでございますので、在庫といたしましては、約二万トン余りさらに増加するというふうに見ておるわけでございます。
  8. 岡田利春

    岡田委員 昭和四十四年七月二十三日、当委員会において硫黄対策確立に関する決議が行なわれておるわけです。一項目から四日にわたって決議がなされておるわけです。この決議を受けて、政府当局はこれをどのように具体化してきたのか。その処置について御説明願いたいと思います。
  9. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。  四十四年の七月に、当委員会硫黄対策確立に関する件という決議をいただいておりまして、四項目ございました。  一つには総合需給計画の策定でございますが、この点につきましては、先ほど申し上げましたように、鉱業審議会硫黄分科会の中に硫黄需給懇談会を設けまして、需給計画を立てていくということにいたしてまいったわけでございます。  それから、過剰硫黄輸出促進というのが第二項になっております。第三番目には、できるだけコストを引き下げるための合理化を行なうということが指摘されておりまして、第四番目には、石油精製業界硫黄対策への協力促進するための低硫黄化対策の必要な助成アスファルト需要拡大等を行なうという四点が指摘されておるわけでございます。  第二点の硫黄輸出につきましては、硫黄輸出機関といたしまして、四十四年八月に日本硫黄輸出株式会社を設立いたしました。そして過剰硫黄につきまして四千九百トン輸出実施いたしましたが、四十五年度においては、先ほど申し上げましたような需給事情を反映して、輸出はいたしておりません。それから市場調査につきましては、四十四年、四十五年とも、ジェトロを通じまして海外の市場調査を行なっております。  それから第三点の鉱山合理化のためには、四十五年度から新鉱床探査費補助金につきまして、硫黄に限りまして単価を五〇%アップするということによりまして、優良鉱床探査促進をはかってまいったわけでございます。また、製錬技術につきましては、四十四年度に、重要技術研究開発費補助金あるいは中小企業技術改善費補助金を交付いたしまして、合理化につとめてまいったわけでございます。  それから、石油精製業界硫黄対策への協力のための低硫黄化対策助成につきましては、さきに脱硫装置に対する関税軽減を行ないましたが、本年度からは、硫黄を出さないために、低硫黄原油輸入に対しまして関税軽減を行なうということを考えております。また、アスファルト需要拡大のために、現在、市場調査を昨年度並びに今年度につきましても行なうということを考えておる次第でございます。
  10. 岡田利春

    岡田委員 特にこの決議の第二項の、硫黄輸出振興のために硫黄輸出株式会社を設ける。これが石油鉱山硫黄会社で設立をされたわけですが、当時の説明は、まず第一に、会社を設立すると同時に硫黄輸出基地をつくらなければならない。しかもこの基地早期建設についてこれを早急に進めていく。三菱商事の場合には、広島県江田島の鹿川に県の了解を得てこの基地をつくり、三井については、山口県の三井金属の亜鉛工場のある彦島の隣の予定である、こういうことで、まず輸出基地をつくらなければならないという点が、一応方向として説明されておったはずです。それと同時に、輸出商社については、三井物産は韓国、台湾、香港、フィリピン、オーストラリア、三菱商事はシンガポール、あるいは安宅はタイ、あるいは丸紅飯田との協調、こういう関係硫黄会社から商社に渡し、商社輸出する。しかもジェトロを通じ、並びに使節団を派遣して、内外の国際的な硫黄市場調査をし、積極的にこの対策を立てる、こういう説明がなされておるわけなんです。しかしその後、回収硫黄が思うようにいかないで、この面は実質上機能が発揮されていないわけですが、この決議をするときに説明された、いま申し上げました点については、そういう体制にあるかないかという点について御答弁願いたいと思います。
  11. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。  輸出基地の問題につきましては、御指摘のように、その建設を急いだわけでございますが、着工寸前に、鹿川輸出基地につきまして、公害問題のために地元の賛同を得られないで着工できないという事情に立ち至ったわけでございます。  それから、指定商社輸出の件につきましては、先ほどの四千九百トン輸出実施できましたけれども、その後、需給関係から輸出をし得ないような状況に相なったわけでございます。  他面、価格の面から申し上げますと、当時四十三年では、国際価格が五十二ドルから六十五ドルの単価であったわけでございますが、その後、四十四年、四十五年というふうになるに従いまして、カナダ、イラン、フランス等回収硫黄が急速に進みまして、国際価格は、四十四年には三十四ドルから三十八ドル、四十五年には二十五ドルから三十ドルというふうに急激に落ちてまいっておりまして、本年三月の台湾向け輸出の実例でみますと、二十三ドル八八というふうに非常に落ちてまいったわけでございます。こうなりますと、実は鉱山硫黄輸出する場合に、山元手取りは二千円弱というふうなことに相なりまして、非常な出血輸出をせざるを得ないという事情から、輸出市場の変化によりまして非常にむずかしくなってまいったという事情に相なっておる次第でございます。
  12. 岡田利春

    岡田委員 そういたしますと、先ほど四十六年度需給見通しが述べられたわけですが、約九万トン強の滞貨が出る、こういう見通し局長から説明されたわけです。この滞貨になると予想される硫黄輸出でき得る体制にあるのかないのか、どう判断をされるか、見解を承っておきます。
  13. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。  輸出につきましては、当初、過剰硫黄分については鉱山のほうで二、回収硫黄で八という比率で分担しようということに相なっておるわけでございますが、先ほど申し上げたような事情からまいりまして、鉱山硫黄として二千円弱の手取り輸出するということは非常に困難になってまいったという事情がございますし、他面、輸出基地をつくりまして固形化設備をつくって、そして輸出をするという考え方で進めてまいった輸出基地建設がおくれておるというような事情からまいりますと、過剰硫黄について大量にこれを輸出で処分するということが、現実の問題として困難な事情が生じてまいっておるのが現状でございます。
  14. 岡田利春

    岡田委員 次に、輸出の問題では、台湾の例が説明されて二十三ドル程度である。カナダのおそらく実績だと思います。ところで、国内市場で、鉱山硫黄国内平均価格はどうなっておるのか。差し引き山元手取りは一体どういう動向にあるのか、回収硫黄でいえば、液状品固形品で分けて、これは一体どういう価格になっているのか、差し引き製油所手取りは一体どういう動向にあるのか、おわかりであればお知らせ願いたいと思うのです。
  15. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。  最近の硫黄価格は、鉱山硫黄で二万一千円、回収硫黄溶融状態で一万八千円という価格でございますが、流通経費はこのうちに約二千円程度含まれておりますので、鉱山硫黄は一万九千円、溶融硫黄で一万六千円というふうに考えております。
  16. 岡田利春

    岡田委員 最近の動向は非常に価格が下がりぎみでありますけれども、昨年の動向を見れば、私の資料によれば、鉱山硫黄の場合には国内平均価格が二万三千円、手取りが一万九千六百円。そのうち、商社扱い手数料トン五百円、運賃が二千二百円、金利トン七百円。回収硫黄で見れば、液状品の場合には一万九千円。一万八千円から二万円台です。運賃が二千円、商社手数料トン千円、金利は五百七十円、差し引き手取り一万五千四百三十円。固型品の場合には、売り値が二万一千円、運賃は二千円、商社手数料は千円、金利六百三十円、差し引き製油所手取り一万七千三百七十円。最近では若干下がっておりますけれども、昨年の動向からいえばこういう原価内容になっておる、こう私は理解をいたしておるのですが、この理解で一致しますか。
  17. 本田早苗

    本田政府委員 そのようにわれわれも考えております。
  18. 岡田利春

    岡田委員 次に、脱硫硫黄助成について、先ほど若干触れられましたけれども、今年十一月から関税還付が三百円から五百円に上がるわけです。そして、重油脱硫が四十六年度大体八十一億円、低硫黄原油輸入で大体十七億円、こういう予算が計上されておるわけです。大体一キロリットルの一%の脱硫をするのに二千円程度、一応こういう政策になっておるわけですが、一方において、当初出発点では、一%脱硫したものがリットル五百円高、こういう方向で出発をいたしているわけですが、この点について、いま脱硫がどんどん進んでまいるわけですけれども、一%脱硫重油については五百円高という点についての今後の見通しについてはいかがですか。
  19. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。  電力関係石油業界とのいまの取引割合では、御指摘のように、一%五百円、〇・一%五十円というサルファメリットを考えておるようでございますので、御指摘のとおり、いましばらくは推移するものと存じます。
  20. 岡田利春

    岡田委員 大臣にお伺いをしたいのですが、いま局長にいろいろ質問いたしたわけですけれども、とにもかくにも、四十六年度は九万トン強の滞貨が出るという見通しについては、明らかになってきたわけです。一方、国会決議をして、その対策を進めるようにということになっておりましたけれども、その後いろいろな事情等もございまして、輸出でき得る体制にはない。一方において、国際市場はダンピングの傾向を示して、実際の手取りでは千五百円程度で出さなければ輸出ができない、こういう情勢が明らかになってきたわけです。一方、鉱山硫黄回収硫黄の場合、結局、回収硫黄が予定以上にその量がふえてきておるわけですから、滞貨しておっても、液状の場合はタンクに入れておるわけですよ。いま実際問題も、タンクが満ぱいになってきたわけですね。タンクを増設しなければならない。そうすると、固型化して貯蔵する問題も出てくるでしょうし、また硫黄滞貨というのは、そのまま放置しておくと、管理を十分にしなければまた公害問題が起きるということになるわけです。結局はそうなると、回収硫黄の場合には値段があってないようなものですから、価格を下げてどんどん売り出す。そうすると鉱山硫黄のほうはとてもやっていけない。これが二、三カ月の間に急速に非常に深刻な問題になってきておるわけです。  そういたしますと、当初の方針は、八割は回収硫黄輸出し、二割は鉱山硫黄輸出するということで輸出会社ができたと思うのですが、輸出会社はその機能を果たさないわけですから、このまま手をこまねいておると、硫黄鉱山は結局はやめなければならない。はっきり申し上げますと、いま硫黄鉱山は、全面閉山をしなければならぬのか、一体どうなるのか、やめるにもやめられない、こういう深刻な事態に立ち至っておるわけですし、その主たるところは群馬県でありますから、佐藤内閣の大蔵大臣、あるいは中曽根防衛庁長官の出身地でもあるわけです。したがって、いまのこの硫黄の問題点を、政府はいままでの経過にかんがみて、どう解決されようとしておるのか、この点について見解を承りたいと思うわけです。
  21. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昭和四十四年に当委員会の御決議がございまして、まことに適切な御指摘でございましたので、先ほど政府委員からるる申し上げましたように、それに沿いまして施策をいたしてまいりましたが、需給関係のアンバランスは、わが国のみならず国際的でございますし、しかも供給側では、いよいよ脱硫の必要が日とともに高まっておりまして、需要の側では、肥料等、これも世界的な過剰がございます。というようなことから、需要の伸びはそうそうは見られない。そこへ持ってまいりまして、回収硫黄ですらそういう状況でございますから、鉱山硫黄はなお困難な状況にある。  もっと申し上げますと、一般的な政府の自由化方針というものから申しますと、硫黄は現在自由化されておらないわけでございますが、その問題にもいつかはぶつからなければならない。全体的に申しまして、非常にむずかしい状況にございますことは、否定することができないと存じます。これが全面的な撤収作戦につながらざるを得ないものであるかどうか。もしかりにそうであるといたしますと、どのようなことを処置として考えなければならぬか、いろいろな問題がございますので、鉱業審議会硫黄部会におきまして、近くそれらの問題を全部総合的に検討をお願いいたしたい、かように考えておるところでございます。私どもといたしましても、いかにしたものか、実はいろいろ御意見も承り、またお知恵も拝借したいと考えておりますのが、現在の偽らない実情でございます。
  22. 岡田利春

    岡田委員 いま大臣から、国内硫黄鉱山が、実際問題としてやっていけるかどうか、撤収しなければならないのかどうか。現実的には、やはり時間的な猶予をあまり置けない現状に立ち至っている、私はこう見ているわけです。しかも、若干長期的に見ますと、たとえば四十八年には百二十三万トン回収硫黄が出るというような点も明らかですし、さらにそれ以降のロングランで見ますと、とにもかくにも硫黄がはんらんをするという点が明らかになっているわけです。ですからそういう意味では、もちろん審議会も審議するのでしょうけれども、極端に言いますと、今年の上期中、ここ二、三カ月中に何とか方針を出さなければならない事態だ、こう私は認識をしているわけです。そういう深刻な事態について、私の認識と大臣の認識は一致するでしょうか。
  23. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 硫黄鉱山に働いておられる人々、長い職場でございますから、経済上の問題は別としましても、いろいろ職場に対する愛着等々持っておられることは、十分想像できることでございますから、それを頭から無視したようなことを申してはならないと思いますけれども、全体的な需給関係コストとの関連などから申しますと、事態は、ただいま御指摘のように、なかなか打開が困難なところへ来ておるということは認めざるを得ないと思います。
  24. 岡田利春

    岡田委員 当面のこの硫黄鉱山対策としては、現在、二万二千円前後の国内販売価格、この価格鉱山硫黄の八万トン程度のものを優先的に買い取って、これを国内に優先的に販売をする。あと回収硫黄を残ったシェアについて販売をして、余ったものは輸出をするか、山積みにして持っているという政策をとるか、でなければ残念ながらやまを全部閉山をさせるか、この二者択一の選択に迫られている、私はこういう認識なんです。ですから、国内硫黄生産するものを、いまの実績の価格二万二千円前後で、これは量が少ないのですから全部優先買い取りをする。それを国内消費者に売って、あと残ったシェアは回収硫黄を売る。余ったものは輸出をするか、滞貨で持っておるという方向で割り切るか。それができないとすればやまを全面的に閉山をせざるを得ない。どちらかの道をとらなければならないことだけは明確になっていると思うのですが、あとの中間的な案はないと思うのです。やめるか、それとも優先的に一定価格で買い取って、合理化をしてコストアップ要因を吸収するという方向をとらせるか、いずれかしかないと思うのですが、この点についてはいかがでしょうか。
  25. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 やはり中途はんぱな方策というものは考えにくいのではないかと思っております。
  26. 岡田利春

    岡田委員 いま大臣の答弁のように、非常に深刻な事態になってきているわけですが、硫黄の場合には、歴史的な経過からいえば、戦後の食糧増産のための肥料をつくるために、とにもかくにも硫黄の政策が具体的に戦後進められてきたわけです。そして今日こういう事態に立ち至っているわけですが、この事態に立ち至っておるのは、結局、エネルギーの構造的変化に伴って、特に、わが国の高サルファ重油、これの低硫黄化対策を具体的に進めていくということが、昨年の国会の一連の公害対策等の関連から急速に進んできたという現状にあるわけです。いわば公害対策のために脱硫した。公害対策のために結局鉱山硫黄は立ち行かない、二次公害だ、私はこういうことばを使うわけです。そういうものを、いまウエートが小さいからといって、放置をする手はないと思うわけですね。あれだけの一連の公害対策をし、その結果としてやめなければならぬ、成り立っていかないとするならば、それを放置をして、深刻な事態にまで、崩壊するまで見放しておくのではなくして、政治家としては、そういう歴史的な経過なり今日の公害対策現状から考えて、二次公害的な鉱山硫黄の面に、ある一定の決断をしてこれに対処するということ以外にないのではないかと私は思うわけです。  そういう意味で、特に本件については、十三日に鉱業審議会硫黄分科会もあるようでありますけれども、ひとつできるだけ早い機会にこの方針を明確に立てていただきたいということを、私は強く要望しておきたいと思うのです。  私は、この段階に来て、硫黄鉱山を無理に維持しなければならぬ気持ちは、どう分析しても持てないわけです。やるとすれば、先ほど言ったように、一定価格で優先買い取りする以外にない。そこを踏み切らない限り、鉱山硫黄はやっていけない。深刻な事態にならない前にその対策を立てるべきだというのが私の意見でありますので、この点をひとつ十分含んで、これからの対策を立てていただきたいということを強く要望しておきます。いまここで明確な答弁が得られないと思いますけれども、早急に具体的な対策を立てて、その混乱が起きないように処置を願いたいということを強く要望いたしておきます。  それと同時に、いまは鉱山硫黄だけの問題ですけれども、これがさらに進んでまいりますと、S源全体の問題に発展していくわけです。いま硫黄がバランスがとれておる時代はよろしゅうございますけれども、これがどんどん量が多くなってまいりますと、輸出価格手取り千五百円程度だ、滞貨してもこれは公害が起きる、でなければ金がかかる、マイナスの要因が出るということになりますと、価格はどんどん下がってきて、結局、固体硫黄を硫酸化するという方向に入ってまいるわけです。こうなってまいりますと、結局、国内の素硫化鉱及び硫化鉄鉱等のベースメタル関係から出る硫酸との競合が問題になってくる。資源対策の面からいえば、どんどん資源を輸入するわけでありますが、独立製練所の場合も、公害対策上からいっても当然これを補足しなければならない。硫酸化をする、こういう面との複雑な競合関係が出てたいへんな事態になるということは明らかだと思うわけです。  そういう意味で、今日の硫黄問題というのは、硫黄鉱山だけの問題を考えるのではなくて、国内鉱山全体の問題、それと独立製練所を含めて、低硫黄化のために脱硫される問題を含めたトータル的な対策を一体どう進めていくのかということを、いまからきちんとしなければたいへんな問題になる、私はこう考えておるわけです。  そういう意味で、今度、国家的な要請で脱硫を進めて、硫黄が回収されて硫黄鉱山がつぶれれば、この次は結局、硫酸関係国内鉱山が占めているそういう関係に入っていく。一方、その段階になりますと、直接脱硫をやっていますけれども、今度は排煙脱硫の技術が開発されてまいりますから、排煙脱硫の場合には脱硫は一番早いのでありますけれども、排煙脱硫の場合は、硫黄分が九八%まで回収できるわけでありますから、これが即硫酸になる。とにもかくにも、公害対策を含めて、わが国のS源対策をどうするかということは、非常に大きな問題に発展する。単にいまの鉱山問題をやっていますけれども、そういう認識ですみやかにこの点については対策を立てなければ、鉱山全体に影響もするし、硫黄の問題が出る、こう思うわけであります。その点について、一応分科会等もございますけれども、この段階でもう一度、わが国のS源対策についてそういう総合的な観点から何らかの答申を得るという段階に来ておるのではないかと思うのですが、この点については大臣としてはどういうお考えでおられるか、聞いておきたいと思います。
  27. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今後、直接脱硫、排煙脱硫等はどうしてもやっていかなければならない問題でございますから、そういたしますと、ただいま御指摘のような問題に発展する。これはおそらく趨勢として避けられない問題であろうと考えるわけでございます。当面は、ともかく硫黄鉱山をどういうふうにするかということが緊急の問題でございますが、それと同時に、そういう先々の問題も頭に入れて考えていかなければならない、かように考えておりますことは、私は御指摘のとおりだと思います。
  28. 岡田利春

    岡田委員 これからいろいろ大臣、事務当局で検討してもらうのですが、私が先ほど言ったように、一定の優先買い取りの政策がとれないとすれば、山をやめざるを得ない。山をやめる場合にはやはり金がかかるわけです。いずれかを選択しなければならぬわけですが、国会の決議に基づいて、過剰硫黄輸出するということで輸出会社ができたわけです。現実に輸出すれば手取りは千五百円になる。たとえば七万トンあると、そのうちの約六万トン程度は回収側が輸出しなければならぬわけです。鉱山側が二割でありますから。そうすると、これは千五百円で出さなければならない。鉱山をつぶして売ればとにかく二万円で売れる、あるいは二万一千円か二千円で売れということになるわけです。ですから、そういう決議に基づいて、せっかく石油業者も入って輸出会社をつくったのでありますから、少なくとも今年一年分の過剰硫黄は、これは石油脱硫会社がとにかく輸出をするという考え方に立ったらどうなのか。そうすると千五百円で出せばいいわけですね。しかし鉱山がやめた場合には、その市場が穴があくわけでありますから、これは国内で消化できるわけですから、価格は二万一千円前後で消化できるわけです。そこにやはり一つのふん切りをつけるか。いま予算も通って——この硫黄対策のために特別立法をわれわれも出したことがあるのですが、いまの段階で法律を出してこれを救済するといっても、非常に困難もあるでしょうから、そいういう政策の経過から判断をして、輸出をするという回収側の二対八の義務からいって、台湾価格が大体二十三ドルから二十五ドルという価格がはっきりしているわけですから、手取りは千五百円から二千円くらいしかないわけですから、そういう面の経過と現状とを十分からみ合わせることによって、結局言うなれば、自主的な山の買い上げをはかる、こういう方向に行くか。それとも、先ほど言いましたように、優先引き取りでコストアップの分は合理化に回しますとか、あるいは技術革新に回すという方向を選択するか、これ以外に、あとは法律を立てるなり財政資金で救済をするか、いずれかそういう方法にたよらないとすれば、いま言った方法以外にないのではないか、こういう判断を、私自身、いままでこの問題を扱ってきて感ずるのでありますけれども、私のこういう考え方に対して、大臣の所見があれば承っておきたいと思うのです。
  29. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。  当面の過剰硫黄対策として、御指摘のような解決の考え方もあることについては、われわれとしてもごもっともと存ずるわけでございますが、さきに硫黄対策として、過剰硫黄輸出についての配分といいますか、こうした事情もございまして、これらの点は、先ほど申し上げました硫黄分科会におきまして、関係者の御意見も一度よく聞いてみたいというふうに存ずる次第であります。
  30. 岡田利春

    岡田委員 十三日に分科会が開かれる予定でありますから、これ以上質問しても具体的な答弁は得られないと思いますので、いずれ分科会が終わるなり、あるいはまた小委員会でこの対策を詰めてまいりたいと思います。ただ、やはり政治はタイミングを逸しないで、決断をもって対策を立てるということが一番肝要でありますので、私の判断では、できれば少なくとも、いずれの方向政府としてはこの問題についてとるのか、せめてその方向だけでも今国会中にぜひ明確にしていただきたい、こういう強い希望を持っていることを申し添えて、あとは別の機会に質問を留保いたしたいと存じます。  終わります。
  31. 八田貞義

  32. 石川次夫

    石川委員 実は私は、きょうあえて質問するまでもないと思ったのであります。と申しますことは、前に一回質問をしたことの焼き直しなのであります。ただ、その当時、残念なことには、宮澤大臣が参議院の予算の分科会に出席をされておりまして、私の質問を聞いていただけなかったということで、念のために、このことに非常に重大な関係があり、また重大な問題であるだけに、直接結論的なことだけでもお耳に入れておきたいということで、簡潔に結論的なお話を申し上げますので、ひとつ御答弁を願いたいと思うのです。  その一つはシンクタンクの問題でありまして、小宮山政務次官が、私と基本的な点ではほぼ意見が一致をしたということになるわけでありますけれども、実は私も、このシンクタンクの問題につきましては、昨年アメリカに行きましていろいろ調べてまいりまして、日本でもこういうものがなければならぬであろう、こういう結論でありますが、ただ日本では、アメリカのように、シンクタンクヘ行けば給料が倍になり三倍になる、世間的にも非常に尊重されておるというような認識がないということ。あるいは人材の流動性というものがアメリカのように自由ではないというような点。そういうことで、はたして日本では、シンクタンクというものが正しい形で発展し得る土壌があるかどうかという点については、非常に疑問の点があるわけですけれども、しかし、そういう疑問の点も困難の点も克服をして、ぜひこれを正確な実りのあるものに成長させてもらいたいということを強く希望しておきたいと思うのです。  ただ、予算といたしましては、経済企画庁と通産省と科学技術庁との三省共管ということで、調査費として一億五千万円しか取ってありません。取ってありませんけれども、これは御承知のように、未来を予測するという重要な使命を与えられる、あるいはその手法としては、デルファイ法、PPBSとか、PERTとか、あるいはシナリオライティング・システムとか、いろいろな方法で非常に精密な手法をとらなければならない。しかし、そういう方法がはたして日本で消化できるかどうかという点に疑問がありますけれども、少なくともそういうことが必要である。それからさららに、いままでの帰納法とか演繹法とかいうことだけではなくて、直感的なものがそこにつけ加わっていかなければならないということになると、人間の配置がしょっちゅう流動的でなければならぬというような点をも含めて、シンクタンクを完全に成立させるためには、いろいろむずかしい条件が必要になるわけであります。  それで問題は、そういうふうにしてシンクタンクができ上がった場合には、いままで政府ではいろいろな審議会を持っておりますけれども、審議会の結論でありますと、われわれ幾らでもこれに弁駁ができるという形がとれるわけでありますけれども、非常に精密な形ででき上がったシンクタンクの政策上の結論というものに対しては、ほとんど弁駁ができないのではなかろうか。したがって、このシンクタンクの出した結論というものは、相当な権威を持って政府をゆり動かす、政策というものを根底から変えていく。また、インターディシプリナリーという手法を使いますから、各省の縦割りというものを横に打破していくという一つの効果もあると思うのでありますけれども、それだけに、このシンクタンクのでき方によっては、ゆがんだ形でできますと、ゆがんだ政策というものが非常な比重を持って政策上に影響を与えるのではないか、そういうことが私には非常に心配される点なのであります。  私が申し上げたいのは、シンクタンクの必要性というものは十分に認めながら、その効用というものを十分に認めながら、しかも、このでき方いかんによっては、とんでもないことになるという点で、時の政府の意図というものをそのシンクタンクに反映をさせてはならない、これは完全に独立をした機関として成長させなければならぬという点が第一点であります。  それから、でき上がった以上は、この政策というものにつきましては、これを相当尊重していくということがなければならぬし、その他申し上げたいことはたくさんあるのでありますけれども、いまのところ、一億五千万円で調査費だといって、うっかり見のがす懸念があるのでありますけれども、これは積み重なっていって、シンクタンクが形をつくっていって、そのできた既成事実の上に立ってシンクタンクの法案提案されるということになった場合には、取り返しのつかないことになる場合も予想されるわけであります。したがって、これの正常な発展というものについて、大臣は特にこういうことについては御関心をお持ちになっておられると思うので、どういうふうなお考えか、まず一言所感をお伺いしたいと思うのです。
  33. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御指摘になっておられる問題は、私にもよく理解ができておるつもりでございます。結局、シンクタンクに対して与えるところの問題の与え方ということになるのではなかろうかと思います。哲学なり、あるいはそれに基づく方針を決定するのは、これはおのおの人間でありますし、また、その集合体である企業であるとか、あるいは政府であるとか機構でございますから、そういう問題を正しく与える。正しくということの意味は非常にまた複雑だと思いますけれども、価値ある問題の与え方をする、そういうところへ問題は返ってくるのではないであろうか。シンクタンク自身が、自分の自律的な意思で動くということはある程度ございますけれども、しかし、これを結局方向づけをし、あるいは問題を与え規制するのは人間ということになるわけでございますから、そういう人間の哲学あるいは世界観というものが問われなければならないということになるのではなかろうかと考えます。
  34. 石川次夫

    石川委員 私の希望したような答弁ではないのでありますが、よろしいでしょう。  端的に申し上げます。と申しますことは、たとえば防衛問題、外交問題こういう問題は、イデオロギーに左右される面が多々あるわけなのでございます。こういう問題をシンクタンクで取り上げるということになりますと、基本的なイデオロギーの対立というものがそこにまぎれ込んで、シンクタンクの存在それ自体も危ぶまれるということになりかねない。しかし、それ以前に、アメリカあたりでも最近盛んにやっておりますような、都市開発の問題とか、あるいはまた住宅問題、交通問題、流通機構の問題、健康管理の問題、教育制度の問題、公害の問題、地方行政制度の問題、こういうふうな多岐にまたがって、現在アメリカでは、インターディシプリナリー的な方法でこれらの処置をシンクタンクに依頼をしているという場合が多いわけであります。私は、日本の場合は、こういう外交的な問題、防衛の問題というような問題は切り離して、実生活に直結するような問題に一応限定をするということを前提としなければいけないのではなかろうかという点がまず第一でありまして、その点について、簡単でけっこうでございますから、大臣の所感を伺いたいと思うのです。
  35. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 おそらく、そういうことをお考えでのお尋ねであろうと私も考えましたので、先ほどのように申し上げたのでございますけれども、しかし、たとえば防衛というような問題を、世界各国が徹底的にシンクタンクにたよって、しかも徹底的に合理的に行動をするということ、そういう仮定をいたしますならば、防衛といったような問題は、実は非常にいい形で解決されるかもしれない可能性が私はあると思います。つまり、お互いに錯誤がない、きわめて合理的にシンクタンクでものを考えていく限りは、現在のような、過剰とも思えるような各国の防衛体制というものは、あるいは新しい解決を見出し得るかもしれない、そういうふうにも実は考えられますので、必ずしもシンクタンクに防衛問題を考えさせることが人類にとって害であるとは、私は言えない場合があるのではないか。そこが、先ほど申し上げましたような、結局シンクタンクを運営する人間の哲学なり世界観なりということに帰着するのではないかと申し上げましたのは、実はそのような意味を含めて申し上げたつもりであったのであります。
  36. 石川次夫

    石川委員 実はこの前質問をしましたときに、小宮山政務次官は、私の意見に全く同感である、したがって、外交、防衛というようなイデオロギーによって考え方が基本的に分かれてくるというような問題については触れません、内政問題に限定をいたします、という答弁をいただいておるわけなんです。いまの大臣の答弁とは若干の食い違いがそこで生じてくる。それだからこそ、あえて私はきょうその点について質問をしたという理由も、そこにあるわけなんです。  たとえば、いかにコンピューターを駆使して、シンクタンクを駆使してやっても、ベトナム戦争はああいうふうなアメリカの敗北と言っていいのかどうかわかりませんが、ていたらくになっているというようなことも含めて、防衛とか外交問題とかというのは、そのとき、そのときの情勢でもってどう複雑に変わってくるか、とてもこれはシンクタンクで予想することは不可能だと私は思うのです。そういうことがありますので、やはり実生活に密着した問題に限定をするという前提でシンクタンクというものを出発させなければいけないのではなかろうか。そうでないと、われわれのほうの側でも、私なんかは国会議員の中でもシンクタンクをつくることに一番熱心なほうだと思っているのです。しかし、その点だけははっきりとけじめをつけてもらいたい、こういう希望も私は熾烈に持っているわけなんで、その点あと一回所信を伺いたいと思うのです。
  37. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わが国の場合は、戦争を完全に放棄しておりますので、シンクタンクが大いに防衛問題を考えなければならないというような必要は、そうそうはないものと私は思いますけれども、しかし、それにいたしましても、一定の与えられた人員と財源とで最も効率的に専守防衛をするのにはどうしたらいいかというようなことは、これは私は、シンクタンクに考えさせても決して間違いだとは言えないのではなかろうかというふうにも考えます。国民的な負担を軽くしていくという方途があれば、これはやはり考えてよろしいことではないであろうか。  もう一つ別の次元で申しますと、たとえば米ソといったような関係を考えてみますと、シンクタンクを徹底的に利用することによって、人類を不幸な戦争と、そのための過重な負担から免れさせる可能性が、私はかなりあるというふうにまた考えるわけでございます。
  38. 石川次夫

    石川委員 これはどうも話が並行線になりそうですから、やめておきます。というのは、科学技術関係委員会でも、その点はかたくくぎを打って、了承いたしましたという答弁を得ておるわけなんです。この前は小宮山政務次官も、内政問題だけでも手に余るほどたくさんの問題をかかえておるので、内政問題に限定をいたします、国民の実生活に密着した問題だけを取り上げます、こういう答弁をいただいておるわけなんです。私もそれが一番妥当ではないか、こう考えておりますが、これは経済企画庁が一応の窓口になっておりますから、いずれまたそのことについて議論をする機会もあろうかと思いますけれども、いまのように、防衛問題ということになりますと、考え方は世界観でだいぶ変わってくるということがあります。そうなりますと、世界観で変わり得るような問題についてシンクタンクにかけるということについては、大きな錯誤と混乱というものが出てくる可能性が非常に多い。そういうことで私は、シンクタンクというものをつくる必要性を十二分に認めながらも、そういう点でのけじめといいますか、了解というものをはっきりさせていきたい。実生活に密着したものに限定をしなければならぬということを私は強く希望いたします。これは申し上げれば、切りがないほどいろんなことがあるのでありますけれども、その点は、いまのところちょっと意見が食い違うようでありますが、この点については、機会を見てじっくり話をしたいと思っております。  それからあと一つ、これもまた繰り返しになってたいへん恐縮なんでありますけれども、これは参議院の分科会でも取り上げられ、同時にこちらの委員会でも取り上げられまして、公益事業局長から一応の答弁はいただいておるわけなんです。それで一応結論が出たわけなんですけれども、これはどうしても前向きに積極的にひとつ通産大臣が認識をしていただかなければならぬという点で、だめ押しのような形でたいへんくどいようでありますけれども、原子力発電所の問題について申し上げておきたいと思うのです。  それは、中部電力でもって、三町村に参加をさせて、監視機構をつくるという問題について、その三町村を参加させることはけしからぬとか、あるいはまた、非常の際に知事あるいは地元の連中が電気事業所といいますか、発電所に立ち入るということについて了解を与えたことはけしからぬというようなことが、朝日新聞にでかでかと出たわけですね。それについて質問したところが、いや、そういう事実は全然ないんだというようなお答えがあったわけです。ところが、名古屋のほうの地元の新聞を見ますと、それ以上にきついことが事こまかに出ているわけですよ。それはどういうことかといいますと、通産省は、「このような協定を自治体のいうがままにのむとは何事か」、あるいは「協定作成に当っての中電側の責任者はダレか。このような重要な問題は社長が直接交渉すべきである」というようなことを言った。あるいは「中電は浜岡原子力発電所さえうまくゆけば、あとのことはどうでもよいつもりなのか」というようなきびしいことを言ったということが、地元の名古屋における朝日新聞には相当大きく報道されておる。これは東京の新聞には出ておりません。私は、朝日新聞ともあろうものが、事実無根のことを書いておるとはどうも考えられない。ただ、局長答弁によれば、そういうことを言った覚えはない、あくまでも地元の協力が必要であるので、一、二の点でもって指導したことはあるけれども、そういうふうなことを言った覚えはないのだ、こういうふうな答弁になっておるし、また参議院の分科会では、あまり突っ込んだ質問にはなっておらなかったようでありまして、一応その線に沿って通産大臣も答弁をされて了解をしたというような形で相済んでおるように受け取れるのでありますけれども、私は隣に東海村があるという関係もあって、原子力には相当関心を持っております。  そこで、この原子力のはかり方というのは、カウントではかったり、キュリーではかったり、あるいはガンマ線ではかったり、レムではかったりしますが、核の種類には二百とおりもある。二百もの核の種類の一つ一つの影響度というものは、まだまだ未知の世界なんです。そのうちの半減期の長いものについていいますと、二百八十九年なんというのがある。でありますから、ICRPという、世界で放射能の許される許容基準というものがありますけれども、これがはたして妥当かどうかということは、まだ学者だって自信がないわけです。大体この辺であろう、ゼロでなければならぬけれども、しかしやむを得ずここまでは認めてやろう、というような線が一応出されておるというだけであって、これは世界の定説だということは、まだまだ私は言えないと思うのです。しかも日本では、いろんな事情がございまして、ICRPの一割の線に押えております。でありますから、日本の場合にはたいへんきびしいから、それでいいんだというようなお考えのようでありますけれども、実はアメリカではミネソタ州が、ICRPの五十分の一という基準でなければいかぬというふうに、日本よりはるかに低いのです。そして、ミネソタ州にならって、アメリカではほかの十州もまた、ミネソタ州と同じ要求を政府に対してしておる。そして、AECとの間でもっていまその裁判をやっておるわけです。したがってアメリカでは、最近は原子力発電所はほとんどつくれないというようなところまで追い込まれているというのが実態なんです。私は無理もないと思うのです。  ところが日本の場合は、御承知のように原爆の洗礼を受けておる。しかも公害問題については非常に関心が高まっておる。したがって、公害の問題についてだけ言えば、原子力のほうが重油専焼の発電所よりは少ないのだというようなことがいわれておりますけれども、一たん事故があったらどうなんだということはだれも予測できない。中都市で発電所が事故を起こした場合の損害の計算などを一一やっておりますけれども、大ざっぱに言って三兆二千億円。しかもこの計算の基礎で言いますと、人一人死んだら大体三百万円というたいへん低い評価です。もし一たん事故が起これば、これはおそらく内閣総辞職でしょうね。そういう危険性がある。しかもこのICRPというのは定説ではない。しかもアルゴンとかストロンチウムというものについては半減期は短いけれども、福井とか大熊とか、四百万キロワットというようなことになりますと、この逆転層のあった場合には、アルゴンはICRPの現在の基準をこしてしまうのではないかという心配をしておるわけなんです。  そういうような問題がいろいろあるわけなんです。原子力発電所それ自体は、あと二十年たてば、重油発電所と同じぐらいの量になる。六千万キロワットというのを予定しておるわけでありますから、大体重油専焼の発電所と原子力発電所が同じくらいの量になるだろうと思うのです。立地条件が非常にきびしいし、これからどうやってこれをやっていくか。私はこれを阻止する気持ちは毛頭ないのです。原則的なことを言えば、利潤追求の九電力でやるということについては疑問を感じています。これはほんとうは保安対策というものをまず第一に考えるということになりますと、原子力発電というのは国家でやるべきじゃないかという基本的な考え方は持っておりますが、それは議論でありますからここでは申し上げません。しかしながら、一たん事故があったらとんでもないことになるのだということを考えると——この前の科学技術委員会でもって、ある法案に附帯決議をつけました。これは今国会でありますけれども、「原子力損害は広域かつ甚大であることにかんがみ、損害の発生を防止する監視機関を設置するとともに住民の代表学識経験者等、第三者の参加を図り、その民主的な運営を図ること。」、こういうきびしい条件をつけて原子力損害の賠償・補償法の一部改正法案を通しているわけなんです。したがって、この答弁としては、この前は局長から伺いましたけれども、決して現地のほうをそうやってどうかつをしたといいますか、けしからぬと言った覚えはないのだ、現地のやったことは妥当で、そのとおりでよろしいのだ、こういうふうになっておりますけれども、どうも現地の末端のほうは、そういうことを知らないのじゃないかと思うのです。何か監督、指導というふうなことだけが表に出て、原子力発電によって起こり得る災害に対する認識というものはきわめて薄い。しかも現地の住民を、とことんまで監視機構というものに参加をさせて、十分な安心感を与えるということがなかったら、私は、原子力発電所というものは、これから一カ所もできないと思うのです。そういう点の認識が非常に浅いのではないか。  私は、この原子力発電所というものが、将来、石油というものにも限界があるわけですから、それに取ってかわらなければならぬ。これについてはいろんな問題がありますけれども、きょうは触れませんが、現在のような通産省の認識では、原子力発電所というものの設置が先行き非常に危ぶまれる。  具体的に言いますと、核の種類がたくさんありますが、その中で特に危険性の多いもの、あるいは半減期の非常に長いもの、それから非常に多発しそうなもの、こういうものについての調査を一体日本でどこがやっているか。ほとんどやっているところはないのですよ。ということは、茨城県では発電所が一つありますので、そこからどろを取ったり水をとったりしてやっていますけれども、実に二人か三人の連中で細々とやっているというかっこうで、しかもこれが大体日本で一番権威があるだろうというような状態なんです。こんな形では、原子力発電所をこれから重油専焼発電所と同じようなところにまで持っていこうなんというときに、住民が参加をしても、こんなものでいいのかという疑問が当然出てくるのではないか。住民を参加させると同時に、そういうものを十分に監視をする中央の権威のある監視機構というものがあって、データ通信でも何でもやって、そこですぐ調査をさせる、適否を確認をさせるというようなことまで、とことんまで考えていかなければ、原子力発電所の設置はおぼつかない、そういうふうなことが十分に予見されるわけです。したがって、ただ単に、浜岡の発電所の問題についてどうこうなんという区々たる問題で私は質問をしようと思っているわけではないので、今後ほんとうに、原子力発電所というもの、そのエネルギーがなくちゃ日本の産業は発展しないわけで、石油だけにたよれないということが実態でありますから、そういうことになれば、住民を参加をさせ、しかもその住民が十分に納得のできる機構、こういうことにならなければ、たいへんなことになるのではないか。いまその手を打っているかというと、全然その手は打たれておらない、こう私は思うわけなんです。この点について所感をひとつ伺いたいと思います。
  39. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 浜岡発電所の認可のときにそういう問題がございましたことを私も記憶をいたしております。調べましたところ、公益事業局長がすでに御答弁申し上げましたように、そういうような意図で話をしたものではないということを、私も報告を受けたわけでございます。  で、御指摘のように、私ども、将来わが国で原子力発電にたよらなければならない比重は年とともに増大する、そうならざるを得ないと考えておりますが、かりに事故がございますと、これはもうそれ自身たいへんなことでございますし、もし小さな事故でありましても、将来の原子力発電というものは、ほとんどそれで不可能になるというようなことも考えておかなければなりませんから、よほどしっかり安全係数をとりまして、建設をしなければならないと思います。具体的に、監視あるいは調査等々の機構、これは原子力委員会、科学技術庁のほうの主として所管と思いますけれども、そういうことについても、万全の措置政府としてもとり、また地元の住民には、ことさらに納得をしてもらうということは、これは、やってやり過ぎるということはない、大切なことだというふうに考えます。
  40. 石川次夫

    石川委員 これは直接通産省の所管ではないので、原子力委員会あるいは科学技術特別委員会、そちらのほうで十分にこれからも話を煮詰めたいと思っておりますけれども、非常に密接不可分な関係が通産省としてもあるわけですね。こういうことについて、私はもちろん、原子力委員会その他については、十分に認識を深めさせるように努力はしたいと思いますけれども、通産省自体としても十分認識をしていただいて、いまのような、ただ住民が参加をして、カウンターでもって計算をしたというようなことだけで何か事が足りるという問題では済まなくなる。だんだん実害がふえてきて、アメリカでさえ日本よりもはるかにきびしい基準というものを求めて、十一州の州が裁判をやっているという実情なんですから、日本の場合も、監視体制をどう合理的につくり、どういうように権威づけるかというようなことがなければ、この原子力発電所は全然進展できないという可能性がきわめて濃いような情勢になることは、もう火を見るより明らかだと思うのです。そういう点で、これは通産省としても、正常な原子力発電の発展のためにひとつ十分重大な関心を持っていただきたいということを特にお願いを申し上げておきます。
  41. 八田貞義

  42. 近江巳記夫

    ○近江委員 私は、きょうは電力問題についてお聞きしたいと思うのですが、大臣も御出席いただいておりますので、その前に一、二問、別の問題でお聞きしたいと思います。  最近、非常にドルが威信を失ってまいりまして、欧州におきましても、非常にそうした混乱が起きておるわけでございます。またマルクの切り上げ等が非常に問題になってきております。マルクの次には円であるというようなこともいわれておりますし、こうした国際通貨問題から、今後この円の切り上げということがわが国でも非常に大きな問題になってきているわけでありますが、通産大臣として、円の切り上げに対しての考え方——世界各国がそういう態度で来ておるように私は思うのですが、そういうことにつきまして、どういう見解をお持ちかお聞きしたいと思います。
  43. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは、しばしば総理大臣からもお答えを申し上げているところでございますけれども、円を切り上げるということは、私どもにとって害があっても益のないことであるというふうに、私自身考えております。またわが国のように、為替管理、ことに短期のお金の動きにつきまして厳重な為替管理を行なっております以上、切り上げを外からの圧力でしいられるというようなことも、これも心配がない、こう考えますので、円の切り上げということを政府としては考える必要はない、また考えてもおりません。
  44. 近江巳記夫

    ○近江委員 まあ、この問題については、いろいろ議論を進めましても並行の形になると思いますので……。  それから、この日米間の問題でございますけれども、そうしたドルの威信の低下、もちろんこれは、いろいろ外交問題等広く関連してくるわけでございますが、非常に心配な点は日米間の経済問題でございますけれども、非常に摩擦が出てきておるわけでございます。そういう点で象徴的な問題として繊維の問題があるわけでありますが、今後、ダンピング問題とかいろいろなことで、日本の輸出には非常に心配な点がたくさん出てきておるわけであります。そうした点、今後ただ成り行きにずっとまかせたままで行った場合に、それではお互いの摩擦というものがこれで少なくなってくるかというと、これからますます摩擦が多くなってくるのではないか。そういう点から、今後のこうした日米の経済問題、これについて、ただもう傍観しておるようなことであってはならぬと思います。政府としてはもちろん努力をなさっておるとは思いますが、基本的に今後の日米間の経済問題についてどういう姿勢で対処されるおつもりか、これについてお聞きしたいと思うのです。
  45. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まあ国際的に強い経済と弱い経済の国がございます場合に、強い経済の国が経済的に強いということは、これは当然のことでございますけれども、わが国の場合、そう言われるにいたしましては、御承知のように、国内的にまだまだ強い経済らしい体制をとり切れない部分がいろいろにございますわけで、これはもう御承知でございますから、一々あげて申し上げませんけれども、そのゆえに外国からその点を批判される。これは批判をする側に理屈のあると思われる点が幾つかございます。したがって、そういう批判を受けるような点を、われわれ自身の努力によって解消していく、これが何よりも当面必要ではないかと考えております。  次に、そういたしまして後も、なおわが国の輸出によって、それが一国あるいは一商品に過度に集中することによって相手国に脅威を与えるということは避けなければならないのでありますから、商品別の分散、あるいは仕向け先の分散、それをしかもあまり急激な形で集中しないような考慮のもとに行なうということも、また必要であろうと考えます。それらのことを、私どもが良心をもって最大限努力をいたしましてあと、なお日本の経済が強いといわれる分には、これは別段弁解がましいことを申す必要はないと存じますが、ただいまのところ、それだけの努力をまずしなければならないというふうに考えるわけでございます。それが日米間にことに象徴されて出てきておる現状ではないかというふうに見ておるわけでございます。
  46. 近江巳記夫

    ○近江委員 基本的なその面は了解できたわけでございますが、たとえば、批判を受ける面を解消していくと、このようにおっしゃっておるわけでございますが、まあわれわれも、それなりには理解をしておるつもりでございますが、その批判を受ける面というのは、大臣としてはどういう面をお考えになり、それをいかに解消していくかという点であります。その点について……。
  47. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、やはりわが国も加盟しておりますガットのコードを文字どおり守る、あるいはOECDの規則に忠実である。また、諸外国との間に通商航海条約が結ばれておることでございますから、それらの条約にも、文字どおり抵触しないように忠実にその内容を行なうといったようなことが、当面の課題ではなかろうかと考えております。
  48. 近江巳記夫

    ○近江委員 諸外国との取りきめ等に忠実であるということをおっしゃっているわけですが、そうしますと、資本自由化問題が諸外国からも非常にやかましくいわれておるわけですが、この自由化の進め方については、どのようにお考えでございますか。
  49. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 貿易の自由化につきましては、政府といたしまして、今年の九月をもちまして、制限品目を四十品目以下にするという方針をすでに決定をいたしております。これが実現いたしますと、まずまず西独並みということになるわけでございますけれども、それでもう十分かということであれば、西独並みでございますから、一応世の中並みになったとは申せますものの、わが国の経済の実力からいけば、さらにそれを減らしていくという努力は継続していたす必要があると存じます。資本の自由化につきましては、これも、今年夏また秋の段階で第四次の自由化を実行いたすつもりでございますが、これによりまして、一応残ったものは最小限にとどめまして、いわゆるネガティブリストの形にいたしたいと考えております。しかし、それで事が終わるというわけではございませんので、ネガティブリストに入りましたものを、また徐々に自由化をしていくということが、さらにその後になされなければならないことでございますし、また、とかく問題のありますいわゆる五〇%という問題、これもおのおのの業種を見ながら一〇〇%の方向に徐々に持っていくという努力も、なお第四次以降に残される問題でありまして、それらを継続してやっていくということが、ただいまの政府の考え方でございます。
  50. 近江巳記夫

    ○近江委員 確かに、そういう摩擦を解消していく上において、自由化というものについては、これはやむを得ない世界の大勢ではないか、このように思うわけです。しかし、この九月に四十品目に貿易の自由化をやっていくことになっておるわけでございますけれども、商品によっては相当打撃を受けるところがたくさんあるわけです。そういう点、やはり急速に手当てをする必要があると思うのですが、それに対してどういう具体策をお持ちでございますか。
  51. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 かりに四十品目になりましたと考えますときに、そのうち、ほぼ七割が農林省所管のものになるわけでございます。通産省所管のものがほぼ三割と考えております。従来もそうでございますけれども、自由化を推し進めていくときに、どうしても何かの問題が当該業種に残るというときには、たとえば関税である程度手当てをするようなことはいたしてまいりました。これも本来ならば、そうしないことのほうが、消費者の立場からだけ見れば望ましいことでございますけれども、生産者の側からいいますと、そうばかりも申せないこともございますので、やはりあわせて必要最小限度にそういう手法も用いていく。従来もときどきそういうことをいたしておりますけれども、今後もそういうことも考えなくてはならないかというふうに思っております。
  52. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは農林省が来ておりませんので、農林対策といいますか、その辺のことを聞けないのは残念でございますが、その辺は、農林省と大臣のほうとでも連携を強力にしていただいて、その打撃についての対策というものをひとつ十分に講じていただきたいと思うのです。  それから、一国 一商品への過度の集中を避けるということをおっしゃったわけです。商品の分散化、これは結局市場の多角化といいますか、日米経済の貿易量は、少なく見ましても約三分の一をこえておるような現状でございますし、やはり今後は世界全般に、共産圏ももちろんでございますが、大きく目を開いていかなければならない、このように思うのですが、市場の多角化いう点については、どのように具体的にお考えでありますか。
  53. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 日米の貿易のウエートが、わが国にとりまして非常に大きいということはやはり一つの問題でございます。それに比べますと、ヨーロッパのウエーとがもう少しあってもいい。だんだん大きくなってまいりますけれども。それから、東南アジアにいたしましても、アフリカにいたしましても、あるいはまた中南米、それからやはり私どもとして当然考えておりますことは中国大陸、いろいろな方法でわれわれの貿易先というものをできるだけ多く、幅広く持ちたい。そのためには、やはりそれらの国の市場調査、情報等々も入り用でございまして、これも御承知のように、政府または準政府機関がそういうことに当たっておるわけでございますが、そういう方法を通じまして、なおまた別途、発展途上国援助の意味からも、経済援助あるいは特恵等々の形で世界各国と貿易量を拡大していきたい、そういう努力を今後とも継続していくべきだと考えております。
  54. 近江巳記夫

    ○近江委員 特にこの中国問題につきましては、非常にそうした高まりが見られるわけであります。この前も局長さんからは、特に中国あるいはソ連等については調査団を派遣する等、そうした貿易拡大に力を入れていきたいというようなお話があったわけですが、特に中国とアメリカとの接触等を見ていきますと、民間等のそういうことを通じてもかなり熱を入れているようであります。そういう点、やはり一番の隣国は日本でもありますし、特に中国に対しては今後強力な貿易を進めていかなければならぬじゃないか、このように思うわけですが、たとえば輸銀の問題などいつもケース・バイ・ケースということで、実際は何もないというようなことにもなっておりますし、その辺、一歩前進を具体的にどういうようにお考えになっておりますか。
  55. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これも、しばしば総理大臣も答えておられるところでございますけれども、具体的なケースが出てまいりましたら、そのメリットに従って決したいというふうに考えております。ただ、この問題は、御承知のようにかなり政治的に関心を持っておる国がほかにもございます。そういうことも考えなければなりませんことは事実でございますけれども、しかし、やはり世界の大勢というものを考えつつ、そのメリットに従って拡大していくべきではないかというふうに考えております。
  56. 近江巳記夫

    ○近江委員 こうした問題については、時間の関係もありますので、また次のときにしたいと思います。  きょうは電力の問題を聞きたいと思うのです。電力の需給が非常に逼迫した状態が伝えられておるわけでございますが、現状見通しにつきまして、簡潔に要点をお聞きしたいのです。局長でもけっこうです。
  57. 長橋尚

    ○長橋政府委員 お答え申し上げます。  電力の需給につきましては、特に昨今、予備率の低下、予備率が適正予備率をかなり大きく割込んでいるというような状況でございまして、特に年間におきます最大需要時期であります八月の供給確保という点が、最大の問題になるわけでございます。この点につきましては、昨年度の夏場、特に八月につきまして、予備率三・四%ということを確保し得て経過いたしたわけでございますが、四十六年度の夏場につきましても、冷暖房需要等の増加がさらに著しい、かような状況下におきまして、供給力不足問題の解決をはかってまいったわけでございます。  そしてその方策といたしまして、新規電源の運開時期の繰り上げとか、火力発電所の定期補修時期を夏場を避けるというふうな調整を行ないますほか、会社間の広域的な電力融通というふうな点を可能な限り織り込みまして供給力の確保をはかりますと同時に、特に夏場の大口需要に対しまして、自主的な節電協力を求めるというふうな需要面の対策と相まちまして、現在の見通しといたしましては、本年八月におきましても、ほぼ実質的に昨年の八月と同じ程度供給予備率三・四%程度を確保し得る見通しを得るに至ったわけでございます。  引き続きまして、来年度につきましても、現在、来年度対策として発電所の建設ということは、事実上不可能でございます。来年度の夏場につきましても、やはり需給両面からの対策を行なう必要がある、かように考えているわけでございまして、来年度におきましても、そういった需給両面の対策と相まちまして、三・五%程度供給予備率を確保し得るのではなかろうかという見通しを持っております。ただ、来年度につきましては、今後の需要状況の推移等にもよることでございますが、この段階としての一応の見通しでございます。  そして四十八年度以降につきましては、現在建設中の発電所の運転開始を期待いたしますと同時に、かねがねの懸案になっておりますような地点につきましての発電所建設を、地元の協力を得ながら円滑に進め、適正予備率をできるだけ早く回復していくという方向で対処してまいらなければならないわけでございます。また現にそのような方向で努力をいたしております。
  58. 近江巳記夫

    ○近江委員 この適正な予備率という点から見ますと、やはり三・数%台というのは、非常に落ち込んだ、これはもう周知の事実でございますが、そこで、予算委員会等でも非常に問題になりましたこの新規発電所の問題ですが、これは何といいましても、公害問題、この解決以外に私はないと思うのです。それがやはり、具体的なほんとうに地元住民を納得させ得る実効がない限りは、私はますます今後そういう電力の問題は大きな問題に残っていくと思うのです。その点、あれだけ問題にもなったことでもございますし、この公害対策ということについて、その後通産省としては、どういう対策をとって指導し、それを実行させるようにしておりますか、その具体的なことについてお聞きしたいと思うのです。
  59. 長橋尚

    ○長橋政府委員 お答え申し上げます。  大気汚染の面におきます公害対策といたしましては、かねがね、できるだけ硫黄の排出量自体を少なくするための方策といたしまして、低硫黄原重油の使用、あるいはまたLNGといったようなS分を含まない燃料への転換といったような努力をいたしてまいっているわけでございます。同時にまた、この排煙脱硫の面につきましても、工業技術院におきます昭和四十一年以来の大型プロジェクトの成果の上に立ちまして、この実用化について、電力各社でいま中間規模のプラントを三社がつくりつつありまして、その成果を確認しながらさらに実用規模へのスケールアップをはかっていく、かような努力をいたしております。さらに、煙突から出ます量を希釈、拡散するという意味合いにおきましては、高煙突化、電気集じん機の設置といったような措置を、鋭意各社ともに講じてまいっておるわけでございます。それぞれの立地地点の状況に応じまして、ただいま申しましたような各種の大気汚染防止対策を組み合わせながら、地元の納得と協力を得るような実のある公害対策を電力会社実施させる、かような方針で指導いたしておる次第でございます。
  60. 近江巳記夫

    ○近江委員 公害対策のことを聞いていきますと、そういう表面どおりに受け取るわけにいかぬわけです。現状をもっと詰めていきますといろいろ問題がありますけれども、きょうは時間がありませんので、いずれにしても、公害問題についてはさらに真剣にやってもらいたいと思うのです。  それと、いま大気汚染の問題を特におっしゃったのですが、今後、水力は一応頭打ち。揚水発電等もあるかもしれませんが、非常に原子力発電のウエートが高くなってくる。そうなってくると、ウランの確保の問題とか、いろいろな問題が出てくると思うのです。そこで私は、先ほど石川委員のほうからも質問が出ましたが、浜岡の問題について、通産省が、非常に行き過ぎであるということを申し入れたということを私もちょっと聞いたわけでありますけれども、行き過ぎであるというそれのポイントですね。なぜそういうようなチェックをしたのですか。これは要するに、これからの原子力発電を考えていったときに、地元参加ということはかねてわれわれも主張しておったことでありますし、一番地元民の了解を得る上においても一歩進んだことである、そのように見ておるわけでありますけれども、それをチェックしたということは、どういう点でチェックしたわけですか。
  61. 長橋尚

    ○長橋政府委員 お答え申し上げます。  通産省といたしましては、発電所の立地に際しまして、地元の理解、納得を得ますための手続といたしまして、地元公共団体との間に公害防止協定といったようなものを締結するということは、発電所の立地の円滑化、あるいはまた地元協力という観点からいたしましても好ましいこと、かように考えておる次第でございまして、御指摘の、中部電力の浜岡発電所建設に際しましての静岡県及び地元三町との協定につきましても、さような角度から受けとめたわけでございますが、この話が中部電力からございました際に、一、二の問題点と申しますか、参考意見を提起したという事実はございます。しかしながら、新聞報道に見られましたような、本協定自体にクレームをつけるとか、当事者を非難したといりふうな事実は全くない次第でございます。  そこで、私どもといたしまして当初提起いたしました問題は、今回の協定が、従来、原子力発電所設置に際して地元との間で取り結ばれました例と比較いたしまして、かなり異なったものでございましたので、第一点といたしましては、この協定に基づきまして、環境放射能測定技術会及び原子力環境安全協議会というものを設けることになっておりますが、その構成主体は静岡県と地元の三町でございまして、当事者である中部電力はその構成主体に入っていない、かような点につきまして、従来の例にもございますように、当事者である中部電力を含めた地元との共同の技術会ないし協議会という形にするのが適当ではなかろうかという点でございます。  それから第二には、異常な事態が発生いたしました場合に、必要に応じて静岡県及び地元三町が立ち入ることができる、かような約定がございます。これ自体問題はないのでございますけれども、もともと放射能管理について非常にきびしい制約を課せられた場所でございますので、事前に発電所側に通告をして立ち入られるのが、立ち入る側にとっても便宜ではなかろうか、かような観点から、事前通告を入れるようにしたらどうかという点でございます。  以上、二点を中心に問題点の指摘を事務的にいたした、かような事実にとどまっているわけでございます。
  62. 近江巳記夫

    ○近江委員 最近は、住民の方々の意思を尊重して納得の上でやっていくということが、すべての面で行なわれておるわけであります。その点、事務的にやった、その辺のことはやっぱり相当な誤解も生んでおるわけでありますし、十分の慎重な配慮を今後やっていただかなければ困ると思うのです。きょうは時間もありませんので、その点はそれでおきます。  最後に、電気料金の問題についてちょっとお聞きしたい。  これは大臣にお聞きしたいと思うのですが、原油の値上げとかその他、いろいろ発電コストが非常に上がってきたというようなことで、だいぶん業界にそういうような動きがあるように私も聞いておるわけなんです。特に二十九年に九社が全部一斉値上げをやりまして、その後、三十二年には東北、北陸、三十六年に九州、三十六年に東京、三十七年東北といった調子で、ずっとこのように値上げをやってきておるわけですが、あとまだ三社ほどそれ以後値上げはない。関電なり北海道あるいは四国なり、ずっとあるわけですが、そういうこともちらちらと聞いておるわけです。何といいましても、電気料金の値上げということは最も基本的なことでありますし、公共料金の中でも一番重点的なものであります。その点、値上げ問題について、大臣としては、あくまでも国民生活を守るという立場からいろいろ苦慮なさっておると思いますけれども、値上げ問題についての大臣のお考えをひとつお聞きしたいと思うのです。
  63. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど政府委員から申し上げましたように、相当予備率が低くなってまいった電力会社もございますので、それらは新しい開発をしなければならない。またその際には、公害についての十分な手当てもしなければならないということで、一、二かなりつらそうに見えるところがございます。私もそれは知らないわけではございませんけれども、ここはやはりがまんをしてもらいたい、企業努力をしてもらいたいというふうに考えておりまして、当面電力値上げを認める意向はございません。
  64. 近江巳記夫

    ○近江委員 では、あと中村委員もおられますので、これできょうは終わります。
  65. 八田貞義

    八田委員長 中村重光君。
  66. 中村重光

    ○中村(重)委員 大臣に中国問題について簡単にお尋ねをしたいのです。  中国問題が国際的にも大きく動き出してきているということは御承知のとおりですが、米中関係も大きな動きを示そうとしておるわけです。そこで、いまの中国に対する輸銀使用の延べ払い輸出の問題について、私は本委員会で総理大臣にも、どう考えているのかということでお尋ねをしたわけでした。ケース・バイ・ケースで考えていくのだ。いま近江君の質問に対しましても、通産大臣、同様のお答えがあったわけです。  ところが、ケース・バイ・ケースというのは、これは吉田書簡により輸銀使用というものが禁止されたわけですが、それ以来、歴代の通産大臣が、ケース・バイ・ケースでいくのだということを答えてきたわけですよ。同じようなことを繰り返しているわけです。だから、私どもの質問に対して、大臣も、ケース・バイ・ケースでやるのだということについては、何か答弁もしにくいのじゃないかというふうに感じるのです。だから、どう変化してきたのか。これは椎名さんが通産大臣のときでございましたが、ケース・バイ・ケースでいくのだということば、そうした答弁と同様に、何としても台湾の了解を受けなければならないんだということもつけ加えた答弁が実はあったわけです。どのようにことば巧みに答弁をされましょうとも、吉田書簡によって輸銀使用というものが押えられているということだけは否定することのできない事実である。したがって、ケース・バイ・ケースということばでもってつくろってきた、私はこう思うのです。  ところが、いまのように、中国問題というものが大きく動き出してきておる際に、日中関係におきましても、当然これに対応する措置というものを政府も真剣に考えておられるのではなかろうかと私は思う。したがって、ケース・バイ・ケースというものは、答弁は同じであるけれども、内容的に政府の考え方というものがどう変わってきたのかということを私どもは知りたいわけです。ですから、いま通産大臣が近江君にお答えになりました、いわゆるケース・バイ・ケースでいくのだという、そのケース・バイ・ケースというのはどういうことなのか、その考え方をひとつお聞かせいただきたいと思うのです。いかがでしょうか。
  67. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この問題につきまして、ケース・バイ・ケースとお答え申し上げておりますのは、吉田書簡があって、それが政府を拘束しておるという意味ではございませんで、ただいまちょうどお触れになりましたように、わが国といたしまして、台湾に対しましては、九億ドルをこえる貿易量があるわけでございます。また、一億ドルに近い投資もいたしております。したがって、この問題は非常に幅の広い問題でございますけれども、私は通商の問題だけに限ってその分野からお答えを申し上げますけれども、台湾とそのような関係にございますから、国益全体の見地から見まして、輸銀を具体的なケースに使用をいたしました場合に、それが台湾との通商関係にどのような影響を与えるかということは当然に考えておかなければならない問題でございます。そのことは、先方の了解と申しますよりは、われわれとして、われわれの国益からそのほうのことも考えてみる必要がある、これは当然なことじゃなかろうかと思うわけでございます。したがいまして、具体的に、どのようなケースについて輸銀を使用する、しないという問題が起こるか、それを見て決したい、このように考えておるわけでございまして、吉田書簡によって拘束をされておるからという意味でないというふうに私は考えております。
  68. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまの大臣のお答えでもっても、はっきりしないのですが……。吉田書簡によって輸銀の使用というものが拘束されているのではないのだ、だがしかし、台湾との通商上の関係というものがある、輸銀使用によるところの中国に対する延べ払い輸出が、台湾に対してどのような影響を及ぼしてくるであろうかということを配慮しなければならないんだ、こうおっしゃった。そういう面からいわゆるケース・バイ・ケースというようなことでお答えがあったわけですが、してみると、たとえばかつて日立造船所が中国に対して船舶の延べ払い輸出をしようとした。それから日紡の紡績機械プラントの輸出についても御承知のとおりでありますが、そうしたプラントの種類別によるところのケース・バイ・ケース、あるいはその延べ払い輸出を申請してきた企業の経営内容、そういったようないわゆる具体的なケースということがケース・バイ・ケースというのではなくて、品物を延べ払い輸出という形で輸銀を使用して中国に輸出をする、それに台湾がどう反応するか。そのケース・バイ・ケースとおっしゃるのは、あくまでも台湾との通商上の問題というものを念頭に置いたケース・バイ・ケースというように、いまの答弁の中からは私は聞こえるわけですが、そのとおりでございますか。
  69. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、もう少しこまかく申し上げますと、両方であるというふうに考えます。すなわち、中国大陸に対して、われわれとしては輸出をすることは適当でないというようなものが、現在の先進国家の取りきめでは若干あるわけでございますので、このこと自身にはまたいろいろ議論がございますけれども、そういうことがございますから、融資の対象そのものによっても多少判断が分かれる。  それから第二に、しかしおもな部分は台湾との関係と思いますが、その場合にも、対象となる輸出品いかんによりまして、台湾側の反応というものが違い得るというふうに思いますから、一般的なわが国と台湾との通商関係ということと、もう一つ具体的な輸出対象物によりましても判断が分かれてくるということもある、こう考えております。
  70. 中村重光

    ○中村(重)委員 昨日でございますか、自民党の中国問題委員会の野田、木村正副委員長と大臣が御懇談になっていらっしゃるわけですね。そこで考え方というものを明らかにしておられるわけですが、この点についてもお尋ねをしてみたいと思いますことと、私どものいままでの質問に対して、総理もそうでございました。宮澤大臣も、いつの委員会か、私がいまから申し上げるような内容のお答えが実はあったと思うのですが、ケース・バイ・ケースでいくのだけれども、また業界から申請が実はないのだ、こういうお答えがあったと思うのですよ。ところが、先ほど私が申し上げましたように、日立造船所から船の輸出をするという申請が出ておる。まさにこれは許可になるであろうということは、私は、おそらく政府もその方針で実はあったのだと思うし、また申請者のほうでも、それは確信をしておった。ところが吉田書簡の問題が出て、これがストップをしたという経過があるわけですね。ですから、そのケース・バイ・ケースについて、いまおっしゃった二つの面でお答えがあったわけですが、どういうものであればこれを台湾が了承するとお考えになっておられるのか。また、かつて日立造船所が船舶を輸出しようといたしましたが、その際これを途中でもって許可をしないという方針に切りかえられたのでございますが、そういったような場合、どういった場合にこれを許可する方針なのか。もう相当長い期間でございますから、いま二つの面をおっしゃいましたが、その二つの面についても、私は政府としても相当検討をしていらっしゃるのだろうと思う。ですから、具体的なケースが、まだ申請がないのだから、出てみなければわからないのだということでは、私は答弁にならないと思うのですよ。また、ほんとうに政府が日中貿易の促進をはかっていこう、延べ払い輸出を許可していかなければならないというお考えがあるならば、業界の方々と進んで懇談をするといったような姿勢が当然なければならないと、私はそのように考えるわけです。  ですから、私どもの質問に対して適当にお答えになるということではなくて、どのようなかまえを今後政府は持ってこれに対応しようとお考えになっておるのか。どういうケースであるならば延べ払い輸出による輸銀使用というものを許可しようとお考えになっておられるのか。一応の考え方くらいは明らかにされる必要があるのではないか、私はそう思います。いかがですか。
  71. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 考え方といたしましては、日中貿易を促進、増大するということは、もとより私ども非常にこいねがっておりますけれども、また、日台貿易も同様に促進をし、拡大をいたしたい、こう考えておるわけであります。したがって、その両方のことをどのようにして調和させていくかということが——問題を通商の面だけに限って申し上げておりますけれども、私としての関心でございます。したがいまして、抽象的に、こういうカテゴリーのものならけっこう、これはいけませんというようなことは、事の性質上申し上げられないものではなかろうか。具体的にケースが起こりましたときに、各方面の反応を見ながら事を決するという以外に方法はないと思っておるわけでございます。
  72. 中村重光

    ○中村(重)委員 業者からの申請がないのだとおっしゃるのですけれども、業者は申請をしているわけですよ。だがしかし、政府がこれは許可をしないと考えているから申請をしていないのでしょう。実際問題として私はそうだと思うのです。それならば、政府としても、そうした関係業界の方々とこの輸銀使用の問題について、やはり隔意なく懇談をする必要があるのではないか。少なくとも政府が前向きの姿勢で中国問題に対応していくのだとおっしゃるならば、そのくらいの姿勢があってしかるべきだ、そのように考えますが、そう思いませんか。
  73. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 業界とは、非公式にはしばしば私どもの役所と接触があるわけでございます。また私も、できるだけ業界の動きを観察し報告をしてくれるように、事務当局には申しておりますし、また現実にそういう報告を受けております。が、なかなか踏み切って考えようかという業界が、いまのところ、私の聞いておる範囲では出てきておりません。それは中村委員のお立場からいえば、政府の態度が不明確であるからではないかとおっしゃいましょうと思いますが、政府の態度としては、先刻申し上げましたように、日中貿易も進めたい、しかし日台貿易も盛んにしたい、こういう態度でございますから、しかもこれは業界には周知の態度でございますから、具体的にケースが出てまいりませんと、事前にカテゴリしに分けて、これはいい、これはだめと申せるような性質のものではない。私どもとしては、業界がそういう商談を進め、あるいは意思を持っておるかどうかということについては、絶えず注意をして情報をとるようにいたしております。
  74. 中村重光

    ○中村(重)委員 大臣お答えのように、このようなカテゴリーのものであるならば許可をするのだ、そういうことを公式に表明できないということはわかるのですよ。わかるのだけれども、大臣がお答えになっているような前向きの姿勢というものがあるならば、そうして業界とも懇談をしておるとおっしゃるのであるならば、この問題はとうに解決していなければならないと思うのです。いままでいろいろと懇談をなさって、大臣としては、どうして業界がこの具体的な申請をしないというふうにお考えになっていらっしゃるのでありますか。申請しないのは、どういうことで申請をしないのだというようにお考えになっていらっしゃいますか。
  75. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは多くの場合、商談がなかなかまとまらない。まとまらない原因はいろいろございますと思います。一つは、そのメーカーがやはり台湾に対して関心を持っておるという場合がございます。また、それ以外の商談自身が、純粋に商売としてなかなか成立しないという場合もございます。それから、政府の態度が必ずしも明確でないからということも、皆無であるとは私は決して申し上げません。そういうこともあろうかと思いますけれども、そうでございますから、私どもは実はできるだけ早く情報をとり、業界とも接触をいたすようにいたしておるわけでございまして、私どもが、商談がまとまるのを意識的にやめろといったようなケースは、従来一つもないわけでございます。
  76. 中村重光

    ○中村(重)委員 それは、同じようなことを申し上げるわけですけれども、政府がかつて何回も申請があったのを許可しなかった。だから業者が申請をしないわけです。ですから、ケース・バイ・ケースというのは、従来言ってきたケース・バイ・ケースというのと、いま言っているケース・バイ・ケースというのは、ことばは同じでも考え方は変わってきておるのだということが十分業界に徹底するならば申請が出るだろう。そしてまた、それが実現をするような商談というものが中国との間に行なわれるだろうと私は思うのです。これはだめだと業界は思っているんだから、したがって、そうした商談というものは起こってこないと私は思うのです。政府の態度がここできちっと明確になってくるならば、いわゆる許可をするという態度が明確になるならば、中国との間の商談というものは活発に行なわれるだろう、そのように私は考えるわけです。先ほど、政府の態度が必ずしも明確でないということも皆無ではないということをおっしゃったけれども、それが中心なんですよ。ですから、この際私は、政府が言っているケース・バイ・ケースというのはこういうことなのだということを、これを許可する方針であるならば、明確にされる必要があるだろう、そのように考えます。  それから、吉田書簡に拘束されているのではないのだ、こうおっしゃったわけですが、当初から吉田書簡に拘束されていなかったのかどうか、大臣はその点をどのようにお考えになっていらっしゃるのか、その点も伺いたいと思います。  それから、自民党の中国問題委員会の野田、木村正副委員長と御懇談になっておられる。第二項の、「経済界は日中貿易拡大を望んでいるので、通産行政推進の立場からも、障害を一つ一つ除去していきたい」、こう述べていらっしゃるのですから、「障害を一つ一つ除去していきたい」ということはどういうことなのか。それらの点、考え方をひとつ明らかにしていただきたい。
  77. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまのようなことを、昨日、野田、木村委員と、特にいまお読み上げになりましたようなことをお話しいたしたわけではございませんでしたので、現在、日中間に通商の見地から見て存在すると思われます幾つかの問題について、私から説明を申し上げたのでありまして、私自身がこうしたい、ああしたいということは、実はほとんど申し上げていないのでございます。  それから、吉田書簡なるものがいつまで政府を拘束しておったかというお尋ねでございますけれども、私の記憶しておりますところでは、これは池田総理大臣の時代に先方に出されましたものでありまして、当時の考え方としては、少なくともその年、年内は輸銀というものは使わないつもりである、こういう意向の表明であった。これは吉田さんのお考えということになると思いますが、そういうことであったと了解をいたしております。だいぶ古いことになりますので、記憶違いがあろうかと思いますが、たしか間違いないことだろうと思いますので、したがって、その後、政府が吉田書簡が政府を拘束するものではないということを申し上げておりますのは、そういう当時の経緯に立ってのことだと思います。
  78. 中村重光

    ○中村(重)委員 吉田書簡に対して拘束をされるということは、佐藤総理大臣が社会党の石橋書記長に対して、書記長でない時代ですが、予算委員会での質問に対してはっきり答弁しているんですよ。拘束されるということを言っているんですね。ですから、拘束されてきたことに間違いないわけですよ。私が先ほどからくどいようにお尋ねをいたしましたのは、この際、政府の態度が変化をしておるのだから、変化をしたならば、その変化をしたことを十分徹底をするように対処してもらいたいということなんです。ですから、業界と懇談をしていらっしゃるということでございますから、この際、政府としては、業界に対して、具体的に中国との間の商談が進む、そしてそれによって申請が出てきたならばこれを許可する方針であるということを——もちろんそれは、おっしゃった意味のケース・バイ・ケースということがあるでございましょう。何が何でも申請してきたのをみんなオーケーというわけにはまいらないでしょうから。しかし、そういう方針であるということを、前向きな姿勢で対処するということを、業界に徹底させる御意思があるのかどうか、その点をひとつお答えください。
  79. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 同じことを申し上げて恐縮でございますけれども、政府がこの判断をいたします基準というものは、先刻申し上げましたそういう関係から判断をする、その判断に基づいてケース・バイ・ケースで許す許さないをきめる、これだけのことでございますから、その趣旨は業界としても現実に知っておるというふうに私は思っております。
  80. 中村重光

    ○中村(重)委員 輸銀の総裁にこの委員会に出席をしてもらいまして質問をしたことがあるのですが、輸銀の融資というものはコマーシャルベースであるから、したがって輸銀の総裁の意思によって決定すべきものであるということを申し上げたことがあるのです。それはそうだけれども、やはりそれよりも政治的な方針というものが優先するのだという答弁がなされたことがあります。したがいまして、輸銀の総裁に対しては、通産大臣としてはどのような指導と申しますか、指示と申しますか、総裁に対して、そうした考え方を持っていることは間違いないのでございますから、どのような指導をなさいますか。
  81. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどから一、二度お断わり申し上げましたように、私は通商の分野に限ってこの問題について考えを申し上げておるわけでございますけれども、もう少しこの問題は広い範囲の性格を持っております。したがいまして、輸銀にそのような申請がございましたときは、輸銀総裁としては、当然政府に対して政府判断を求める、そういうことでなければならないと思います。
  82. 中村重光

    ○中村(重)委員 もう大臣の時間がきたようでございますから、あらためてまたこの問題についてお尋ねします。
  83. 八田貞義

    八田委員長 次回は、明十二日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十八分散会