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1971-03-26 第65回国会 衆議院 商工委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年三月二十六日(金曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 八田 貞義君    理事 浦野 幸男君 理事 鴨田 宗一君    理事 橋口  隆君 理事 武藤 嘉文君    理事 中村 重光君 理事 岡本 富夫君       小川 平二君    大久保武雄君       海部 俊樹君    神田  博君       小峯 柳多君    坂本三十次君       始関 伊平君    藤尾 正行君       増岡 博之君    松永  光君       山田 久就君    石川 次夫君       相沢 武彦君    近江巳記夫君       松尾 信人君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         経済企画庁長官         官房長     船後 正道君         経済企画庁総合         開発局長    岡部  保君         科学技術庁計画         局長      楢林 愛朗君         科学技術庁原子         力局長     梅澤 邦臣君         通商産業政務次         官      小宮山重四郎君         通商産業省企業         局長      両角 良彦君         通商産業省繊維         雑貨局長    楠岡  豪君         通商産業省公益         事業局長    長橋  尚君  委員外出席者         議     員 伊藤惣助丸君         水産庁漁政部長 田中 慶二君         海上保安庁警備         救難監     粟野 次郎君         商工委員会調査         室長      椎野 幸雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  兵器輸出禁止に関する法律案伊藤惣助丸  君外一名提出、第六十三回国会衆法第二九号)  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。  第六十三回国会から継続になっております、伊藤惣助丸君外一名提出兵器輸出禁止に関する法律案を議題とし、提出者から提案理由説明を聴取いたします。伊藤惣助丸君。
  3. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)議員 兵器輸出禁止に関する法律案につきまして、提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  近年におけるわが国経済高度成長は、まことに目ざましいものがありますが、日米安保体制下での兵器産業の台頭もまたはなはだ顕著であります。ことに沖繩返還日米首脳会談ベトナム撤退作戦を通じて、わが国に対する自主防衛力強化の要請はにわかに表面化し、これに伴って兵器産業は急速な膨張を続け、いまや日本産業界に大きな地位を占めるに至っております。  一方、アジアにおける軍事情勢は、ますます緊張の一途をたどっておりますが、この中でアジア諸国国民は、巨大な生産力と高度の科学技術を持つわが国において、兵器産業が急激に伸びている事実と過去の戦争経験とを考え合わせ、暗い不安と危惧を感じているのであります。  平和憲法のもとにあるわが国におきまして、産業の発展がいやしくも平和を脅かし、内外国民感情を刺激して、国際緊張を高める役割りを果たすことは、何としても避けなければならないのが当然であります。  この意味におきまして、わが国における兵器生産は、平和憲法下の自衛の範囲内において行なわれるべきであり、これを越えて過大な兵器生産をし、輸出することは厳重に禁止すべきものと考えるのであります。  さらに、政府は現在、いわゆる武器輸出三原則に基づいて武器輸出を制限しておりますが、これは政府部内の内規にすぎない上に、表現があいまいであり、武器範囲も明確でなく、拡大解釈の余地が無限にあると考えざるを得ないのでありまして、この際、はっきりした法的措置によって、兵器定義を明定するとともに、これらの輸出禁止する規定を設ける必要があると存ずるのであります。  以上の理由に基づきまして、本法律案提出した次第でありますが、次にその要旨を御説明申し上げます。  第一条は、本法目的でありまして、さきに申し上げましたような趣旨に従って兵器輸出禁止し、もって国際平和に寄与することを目的としております。  第二条は、兵器定義であります。本法において兵器とは、武器等製造法規定された武器をはじめ、戦闘用艦艇戦闘用航空機戦闘用車両及びこれらの部品をいうことといたし、具体的には政令によりまして、種類を指定することとしております。  第三条は、兵器輸出禁止規定でありまして、本法趣旨を「何人も、兵器輸出してはならない」という一言にして言い尽くしたものであります。  第四条及び第五条は、本法違反に対しては厳重に処罰する旨の規定であります。  さらに附則におきましては、現行の条約に基づく兵器輸出等について所要の措置を講じております。  以上、本法律案提出理由及びその概要を御説明申し上げました。何とぞ御審議の上、御可決賜わりますよう、お願い申し上げます。(拍手)
  4. 八田貞義

    八田委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  本案の質疑は後日に譲ります。      ————◇—————
  5. 八田貞義

    八田委員長 通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件、及び私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。順次これを許します。石川次夫君。
  6. 石川次夫

    石川委員 きょうは二つの項目について質問をしたいと思っておるのでありますけれども、まず最初質問申し上げたいことは、「昭和四十六年度経済企画庁予算概要」、この説明書の中で、経済企画庁といたしまして、「経費の内訳につきまして、ご説明申し上げます。」というところで、第一に、経済企画庁として二十五億八千六百二十八万円を計上しております、そして第二に、新たに総合研究開発調査費として一億五千万円を計上しております。これは、世にいうところのシンクタンクというものの調査費ではないかと思うのですが、念のために——きょう実は経済企画庁長官質問したかったのでありますけれども、どうしても出られないということでたいへん残念でありますが、官房長にきょうは質疑応答をいたしまして、その結果、その経緯というものについては十分ひとつ長官にお伝えを願いたいということを前提として、官房長に御答弁を願いたいと思うのです。
  7. 船後正道

    ○船後政府委員 お答え申し上げます。  四十六年度の経済企画庁予算には、一億五千万の総合研究開発費が計上されておりますが、これは先生御指摘のとおり、いわゆるシンクタンクにかかわる経費でございまして、この調査費は、特定課題研究開発、またこういった総合研究開発に関する研究者等の養成、それから研究開発機構設立準備調査に充てる経費でございまして、予算実行段階におきましては、必要に応じまして関係省庁に移しかえることを予定しております。  なお、関係省庁といたしましては、現在のところ通商産業省科学技術庁を予定しております。
  8. 石川次夫

    石川委員 それでは、たいへん初歩の質問で恐縮なんですけれども、事を整理をするという意味で、若干、非常に幼稚な質問をいたしますけれどもシンクタンクというものの定義はどうされておりますか。
  9. 船後正道

    ○船後政府委員 最近、環境問題でございますとか都市問題、社会経済構造の変化に応じまして、新たに複雑な問題が発生してきておるわけでございますが、こういった問題を解明しますには、従来のような縦割り的な、個別的なアプローチでは不十分でございまして、やはりシステム手法等に基づきまして、広範な専門分野の頭脳を結集した新しいタイプの研究開発機構が必要でございます。このような研究開発機構通常シンクタンクと呼んでおるわけでございますけれども、学者の定義によりますれば、シンクタンクの特色といたしましては、研究開発方向政策指向性目的指向性、また未来指向性を持っておること、さらに広範な分野にわたる専門家を結集いたしまして、プロジェクトごとインターディシプリナリー研究開発体制を持っておること、さらに研究成果中立性独立性を確保できるような組織運営形態をとっておる。おおむねこのような研究開発機構シンクタンクとわれわれは了解しておる次第でございます。
  10. 石川次夫

    石川委員 まあシンクタンク定義をどんぴしゃり正確に言うということは不可能だろうと思うのです。実は去年私ども科学技術国会議員調査団といたしまして、スタンフォード、ランドあるいはアーサー・D・リトル、こういうシンクタンクを一応見て歩いたのですけれども、そういうところは、私どものところはシンクタンクと申しませんと、向こうのほうで言っておるわけであります。そのくらいでありますから、シンクタンクとは何ぞやということは、群盲象をなでるにひとしいような、非常にあいまいな定義になるわけなんです。それだけに、これからのシンクタンクと称して調査をするという方向づけが、一体どういう方向へ行くんだということが、いまのうちに明確にならないで、それが積み重ねられて五年なり十年なりたった後で、既成事実の上に立って抜き差しならない方向づけをつけたままで法案が出るということになりますと、これは日本政治を左右するような重みを持つ可能性が出てくるのじゃないか。したがって私は、法案は出ておりませんけれども法案が出たと同じような重要性をもって、いまのうらから、ある程度の方向づけなり、ある程度の歯どめなり、こういうものだけはきちっとしておかないと、とんでもないことになるのではないかという感じがしてならないわけなんであります。  念のために伺いますけれども、これは経済企画庁窓口だということになりますが、分担はどうなって、どういうふうに分担をするという形に政府の中ではなっておりますか、伺いたいと思うのです。
  11. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 いま先生がおっしゃいましたように、シンクタンク定義というのはなかなかむずかしいと思います。それで一億五千万という経費企画庁のほうに計上いたしましたのは、これは通産、科学技術庁経済企画庁というのが三者で協議して今後どのような形で持っていくかという、一つ調査の前の調査だというように考えておりますし、分担その他については、今後とも三省が協力してこの方向を見つけていく。シンクタンクという仕事が一つの省に限った問題ではございません。各省間にわたる、また国のプロジェクトにわたるものでございますので、今後とも緊密な連絡をとり、また協議をし、その方向を決定していきたいと思っております。
  12. 石川次夫

    石川委員 小宮山次官科学技術のほうはたいへんお詳しいので、シンクタンク相当関心を持っておられると思うのでありますけれども、しかし現時点では少なくとも暗中模索なんだろうと思うのですよ。これは科学技術庁のほうも関係がある。それから通産省も関係がある。それから窓口は一応経済企画庁ということになっておるけれども、どういうふうに分担をして、いわゆるインターディシプリナリーの形をとるのだというようなことは、ほとんどまだ方向がきまっておらないのではないか。一体何をしようとするのか、これも見当がつかないのではないかということが実態であろうと思うのであります。日本では、日本らしい、日本政府ポリシーサイエンスと、こう一口にいっておりますが、ポリシーサイエンスが一応シンクタンク使命だということになるわけで、日本の場合には技術進歩人間福祉の調和という関係が非常に重要視されて、経済成長に対応する環境保全政策という展開が急激にいま必要になってきたということで、それらは、非常にセクトの形で狭い分野でもって対応することはできないであろうというようなことが、シンクタンクを生んだ一つの背景をなしておると思うのであります。それから、すべてのことが全部、技術開発自体というものがシステム化され巨大化されて、プロジェクトそのものが非常に複雑多岐また巨大化されておるというものについては、各官庁の一分野でこれを処理するのは不可能になってきているというような意味シンクタンクというものが必要になってきた。それから、経済大国として国際的な地位というものが非常に向上したので、多角的な経済協調政治的調整の手段の一つとしてやはりシンクタンクというものがどうしても必要ではなかろうか。日本におけるシンクタンクのあり方というものの結論がそういうところに帰着して、大体、いろんな各分野に分かれておったものを総合的に横につないで、いわゆる官庁のなわ張り的なものを打破した形でもって、総合的な広い視野に立って考える機関がどうしても必要であるというのが、シンクタンクのつくられるべき目標だろうと思うのであります。  ところが、シンクタンク内容をここで言っても議論になってしまいますけれどもシンクタンク未来を予測するという使命がどうしても必要なわけですね。未来を予測をし、そしてシンクタンクが非常に多くの部門にわたっておるものを横につないでいく、いわゆるシステム化する。ですから、トータル・システムアプローチということとインターディシプリナリーというふうな方法をこれに取り入れなければならぬというようなこと。それから科学的手法といいますか、いわゆるPPBSとかPERT方法だとか、あるいはデルファイ法とか、いろんな方法があるわけなんで、そういう近代的な手法というものを用いる。でありますから、先ほどのシンクタンク定義で言われたような程度であれば、これは現在の審議会とほとんど変わりがないわけなんですね。そういうもの以外にシンクタンクができるということは、それだけの複雑多岐にまたがるものを科学的にちゃんとトータルシステム化していかなければならぬというところに大きな意味がある。調査費でもってわずか一億五千万しか積まれておりませんけれども、これがだんだんそういう形ができてきて、PPBSなりPERTなりの内容を持った意味での政策というものが打ち出されますと、政府もそれに従う、これを尊重するという前提が必要になってくるということになると、これは法案が出てないからといってうかつに見のがしますと、将来これができた暁は、政治をゆるがすような強大な力になるという可能性が出てくるだけに、何とかこの方向づけというものをいまのうちから大体きめていかなければならぬのではないかという気がするのです。  端的に私の希望を申し上げます。これは私が申し上げたいのは、内政関係外交関係といろいろあるわけなんです。しかし、日本的シンクタンク審議会においての答申は、外交関係なんかも含めたような広範な、国際的地位が高くなったからというようなことでの答申が出ておるわけです。しかし私は、外交関係あるいは防衛関係、こういったものは、イデオロギーがちょっと違うとすぐ方向がずれてくる、こういう性格を持ってくると思うのです。したがって、シンクタンクを育てる場合には、国民生活に密着をした内政関係に限る、こういう一応の方向づけをきちっときめておいてもらいたい。これは内政関係でもやらなければならぬことがたくさんある。これは私どもが行ったときの報告書なんでありますけれども、私の意見としても申し上げてありますが、たとえば住宅問題、交通問題、流通機構健康管理教育制度都市開発、公害、地方行政制度、もう数限りないほどある。公害問題なんかもこれに入るわけでございますけれども、現在のわれわれの市民生活に密着した問題というものはたくさんあるわけであります。そういう問題をまず取り上げる。外交とか防衛とかという関係になりますと、マクナマラがシンクタンクを駆使してああいう計画を立てたりいたしたわけでありますけれども、あのような失敗をしておるというようなことを引き合いに出すわけではありませんけれども、とかくこの問題はシンクタンク対象にはならないのではないか。  なぜ私はそれを強調するかというと、アーサー・D・リトルは別でありますが、アメリカのいろんなシンクタンクはほとんど国防に依存している部面が多いわけなんです。宇宙開発なんかは相当多くの部門を占めておりますけれども。そういう、何かアメリカシンクタンクをつくったからということで、日本もすぐこれにならうというふうな形になっておりますけれどもアメリカと同じような形で政府からの融資といいますか、依頼というものは相当出るでありましょうが、ポリシーサイエンスである以上、それは当然でありましょう。しかしながら、外交関係にまたがること、あるいは防衛関係にまたがること、こういう関係だけは、シンクタンク対象にすることはきわめて不適当である。このことは逆に、シンクタンクというものの定義づけというものを崩壊をさせる大きな原因になりかねないのではないか。こういう点で、この点の歯どめというものはやっぱりぴしっときめておかなければいかぬと私は思うのです。これはほんとうは、企画庁長官にはっきり意見を聞いておきたいところであったわけでありますけれども、この点の意見を伺っておきたいと思うのです。
  13. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 シンクタンクの問題については、今後どういうふうな形であるべきかということを四十六年度中に調査研究し、またシンクタンクの一番要素でございますのは人間でございます。人間をどういうふうに集め、あるいは養成するかというような問題に入ってくるかと思います。  先ほど先生がおっしゃいましたように、われわれが一番考えておりますのは、今後の科学技術の問題とか、あるいは産業政策の問題とか、住宅都市交通とか、そういう問題を含めて、技術システムを合わせてどういうふうにあるべきかということを考えるのが一つシンクタンクの構想ではないかと思います。もちろん、先生のおっしゃるようなイデオロギーを含めての問題というのは、外交とか国防とかというような問題にこれが直接入ることは、まだまだ当分先のことでございましょうし、また、そういうことは私自身も予想が現在つきません。もし法律をつくるようなことになれば、少なくともそういうものを除いてものを考えていかなければいけない。現在の時点では、先生がおっしゃいました住宅とか流通とか交通とかいろいろな問題を含めて、都市改造という問題を一番最初に考えざるを得ないのが実情かと思います。そういうようなことで、法律をつくるときには、そういう問題を排除してものを考えていきたいと考えております。
  14. 石川次夫

    石川委員 私がアメリカシンクタンクを訪ねますと、どこへ行ってもまず第一に言うことは、政府から八〇%以上資金を仰いでおるというような実態のようですけれども政府とは完全に分離し独立をしておるんだということを強調するわけなんです。あまりにも判で押したようにどこでも強調するので、やはり逆にそういう懸念を多分に持っておるなということを裏書きしているような感じがしてならないわけなんで、時の政府意図というものはシンクタンクに反映をする。政府意図もくみながら、シンクタンクというものはいろいろな試行を重ねるということになれば、これはとんでもないことになるので、これは完全に独立した機構でなければならぬということは必要不可欠、まず第一の条件ではないか、こう考えるわけなんですが、この点まず所信を伺いたいと思うのです。
  15. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 アメリカでは確かに民間主導型でございます。日本でも、財界は民間主導型という声も聞いております。この点については、今後とも、どういう形がよろしいのか、また政府資金がどのくらい入り民間がどのくらい入るというようなこともどういう形がいいのか、四十六年度中にこの点について考えていきたいと思っております。
  16. 石川次夫

    石川委員 われわれがシンクタンクをやはり日本で必要じゃないかと言ったのは、政府関係政策関係シンクタンクというのは大体一つでいいんじゃないか、あちこちでないほうがいいんじゃないかというふうな考え方で、民間のものは、いろいろな企業関係シンクタンクというものはたくさん出るでありましょうが、およそ相当巨大なものをひとつつくり上げてみたいというような意図からそういうことをわれわれも発想をしたわけであります。でありますから、民間主導型というか、政府主導型というかわかりませんけれども日本のいまのあるところの、非常にこまかい、零細だといっては語弊があるかもしれませんが、現状のシンクタンクでは、国の大きな政策をまかせるというわけになかなかいかないでありましょう。したがって、そういうようなものが処理できるようなシンクタンクというものをぜひ日本でもほしいということが、今度一億五千万の研究調査費を計上された一番の原因ではないかと思っております。  それで、取り上げなければならぬ問題としては、先ほど申し上げたのでありますけれどもシンクタンクを運営するにあたってのいろいろな条件があるわけです。これを一々申し上げますと時間がかかりますから、個条書きにして申し上げますけれども、どこのシンクタンクも、シンクタンクそれ自体が、その機関それ自体が、問題提起調査というものが自由に行なえる、こういうような自由というもの、自主性というものを持たせなければそのシンクタンクというものは生き生きした活動はできない。また、それだけの潤沢な資金というものを与えなければ、非常に窮屈な資金のもとではそういうような活動ができない、こういうことが言えるのではないかと思うのであります。それから発表はいつの場合でも自由でなければならぬということも一つあります。  それから、こまかいことではありますけれども、急いで成果を求めるということになればシンクタンクは死んだものになる。十分に納得のできるような成果を得るということのためには、やたらと期限をつけてその成果というものを求めるというようなことでは、シンクタンクは十二分の力というものを発揮することができないのではないか、こういうようなことが一言えると思うのであります。考え方としてはいろいろあるのでありますが、それとあと一つは、結論が尊重されるという習慣が日本にあるかどうかということになりますと、これは全く未知の分野に属するわけでありますし、またアメリカでは、シンクタンクに所属をし、そこにつとめておるということになりますと、非常に敬意を払われる。韓国あたりでもアメリカのまねをいたしまして、アメリカの指導のもとにシンクタンクのキストというものをつくっておるようでありますけれども民間の会社からシンクタンクに行くと給料は少なくとも倍です。大体三倍というのが相場でしょう。でありますから、そこのシンクタンクに行ったということが非常に誇りになるし、そのシンクタンクに行ったということで箔がついて、大学の教授になるとかなんとか、こういうふうなことになるのが社会通念のようになっておりますけれども日本の場合には、そういったようなシンクタンクを尊重するというような風潮は、まだまだ生まれておらないわけでありますから、その結論が非常に費用をかけて期待をかけても尊重されないということになったのでは、シンクタンクというものはいたずらに費用をかけただけになってしまうということになるのではなかろうか。こういうような運営するにあたってのいろいろな条件というものを十分考えてもらいたいということを強く要望しておきたいと思うのであります。  それから、シンクタンクをつくるということについての反対論も非常に出ておることは御承知だろうと思うのでありますけれども、それは何といいましても、私が先ほど言ったことの裏返しになりますけれども、どうもシンクタンクというのが、いかにももっともらしいいままでの審議会のような形ではなくて、いろいろなコンピューターを使い、あるいはPPBSを使い、PERT方法を使い、デルファイ法を使い、もっともらしい数字を積み重ねることによって動かしがたいような権威を持たせてしまう。しかし、その中には、時の政府政策政府意図というものが影を落としてしまって動かしがたいものになるというと、ほとんどそれに弁駁することが不可能な状態のままで結論が出てしまうということになれば、日本政治方向というものを誤らせる危険性が生まれてくるのではなかろうか、こういう点が懸念をされておるわけであります。逆に、端的に言いますと、不合理のものでも合理化をさせてしまうということもシンクタンクによって不可能ではないと思うのであります。そういうふうなことになるおそれはありはしないかというような点が、シンクタンクに対して非常に懐疑的な意見として提出をされておるし、またばら色の夢を描いて——まあ現在の日本の公害問題とか、あるいはまた経済のひずみだとかいろいろな問題があるのでありますけれども、何かシンクタンクによってばら色の将来というものを描いてみせることによって、そういうものをカモフラージュしてしまうというようなことにもなるのではなかろうかというような懸念も持たれておるし、それから、日本シンクタンクをつくるという場合に、いうところの人材というものがはたしていま得られるかどうか、これはたいへん問題だろうと思うのです。シンクタンクというものの存在をほとんど日本の人は知らないわけですから。しかしながら、シンクタンクというものに参加をして国の重要な政策を横断的に、多角的にインターディシプリナリーな形でもって、お互いの領域を全部埋め合わせて、そうして非常に広範な合理的な結論を出すということの場合には、もちろんこれは人間のやることでありますから、いままでの帰納法とか演繹法とかいうことだけでなくて、それにまた直感的なシャープな直感力というものもつけ加えなければならぬということになってまいるわけでございますけれども、そういう人材を一体どこで養成するのだ、どこから求めるのだということが、いまのところ調査費範囲でございますから、全然わからないといっても無理はないのでありますけれども、人材をどうして得るのだということは、何か見込みがあるのかどうか、見通しがあるのかどうか、その点を伺いたいと思うのです。
  17. 船後正道

    ○船後政府委員 シンクタンクのあり方に関する先生の御指摘、まことにごもっともでございまして、一番大きな問題は人材の問題である、私どももかように考えております。企画庁でも、昭和四十四年度から国土総合開発の調査費三千万円が計上されておりまして、これも国土総合開発という非常にインターディシプリナーの領域に関する問題についてのいわばシンクタンク的な研究調査を進めてまいったのでありますが、この経費におきましても、こういった人材の養成をあわせ行なうということに留意してまいった次第でございます。四十六年度予算で計上いたしましたこの総合開発の経費の実行にあたりましては、人材の養成ということも一つ目的として掲げておるわけでございまして、これにつきましては、当然、大学なり、あるいは既存の民間の研究機関なり、あるいは政府関係の各研究機関なり、そういったところの御協力も求めつつ、また特定プロジェクトの解明をなして、このような方面への人材を養成していくということも心がけてまいりたい。しかし、組織的にどのようにして乏しい日本のこの関係者を養成するかという問題につきましては、さらにこの調査費をもって研究してまいりたい、かように考えております。
  18. 石川次夫

    石川委員 何の仕事でもそうでありますが、人材が確保できるかどうかということがキーポイントになるわけでありますけれども、韓国の場合でもそうでありますが、いま申し上げたように、アメリカの場合でも、シンクタンクにいたんだということが非常に大きなプライド、その人に箔をつけるということになるわけで、大体給料は倍から三倍というのが普通であります。そこから外へ出る場合には、そこで箔のついたままで一段と高いところへ行けるということが一つと、それから先ほど申し上げたように、規範的方法、検索的方法とかいろいろ手法があるわけでありますけれども、直感というものにたよるところが非常に多いと思うのであります。ところが、一カ所でもって停滞をすればその直感力はどうしても眠ってしまうということで、韓国あたりで考えておるのは、三年で必ずやめさせる。三年たったら、どこかへ留学をさせるとかほかに職場を転換するとかいうことをしないと考え方が固定をするという問題が出てくるわけであります。そこまでいまから考える余地はないかもしれませんが、そのくらい人間の——いわゆるPPBSとかPERTとかいっても、率直にいって、日本がいまからシンクタンクをつくっても、そういう手法を駆使できるだけの能力が持てるかどうか、非常に疑問だと思うのです。私は非常に疑問視しております。しかしそれは別にいたしましても、人間の直感力を鈍らせないということのために、やはり人材を絶えず流動させなければならぬということが、シンクタンクとしての不可欠の条件だろうと思うのです。これは可能かどうかというと、日本ではシンクタンクを尊重するというような風潮が、先ほどから申し上げておりますように、ありませんから、そういう流動性というものはなかなか十分には行ない得ないのではないか。そうなれば、何か率直に言って大学の古手の名誉教授みたいな人ばかり集めてやってしまうというのでは、シンクタンクというものの持つ一番大きな使命というものは、時代の変化というものを見抜いた上に立っていろいろな手法を生み出す政策をつくるということが鉄則になるわけでありますから、そういう貫禄のある、名の通った名誉教授的な御老体を集めたのでは何にもならない。やはり若い、これから将来伸びんとするような人を集めていかなければならぬというような条件も十分考慮をしなければならぬと思うのでありますが、その点についてどうお考えになりますか。
  19. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 その点については、確かにシンクタンクをつくっていく上において重要なことはやはり人でございますけれども、まずそのテーマをとったときに、その経営者というか、管理者というか、そういう問題もございますし、また日本の社会でございますと、一度ポストにつきますとなかなかその地位を去らない。先生のおっしゃいますように、人事が流動的に行なわれない、そういう面のきらいが今後出るかもしれません。私は、今後シンクタンクをつくっていく上においては、そういう人事の問題が一番重要な点だ。シンクタンクの資産は人でございますので、ただ単に社会的地位というようなことだけでなくて、実質的に今後のシンクタンクを運営していく、またすばらしいアイデアないし知識をお持ちの方になっていただかなければいけない。それがどの程度まで集められるかというところでシンクタンクの大きさがきまる。もう一つ先生が先ほど申していらっしゃったように、国内にあちこちに民間企業でシンクタンク構想ができますと、人的資源が非常に分散するというおそれもございます。これをどういうふうにしていくかということも、あわせて考えていく必要があろうかと思っております。   〔委員長退席、浦野委員長代理着席〕
  20. 石川次夫

    石川委員 具体的な質疑応答を繰り返すところまで、まだ調査費の段階で進んでおりませんから、いろいろ申し上げても、のれんに腕押しというようなかっこうになってしまうわけなんでありますけれども、私が申し上げておる中でも、何としてもイデオロギーに左右されない、生活に密着したもの、こういうものを取り上げるということ。それから中立、独立性というものの確保、時の政府意見というものがそのシンクタンクの中に影を落とさないというようなことを堅持するということがどうしても必要である。それから、何をシンクするんだ。何をやっていこうかというような方向づけというものを何とか考えていかないと、ぼけたものになって、あまり重要でないものを取り上げてしまったりするようなことでは、せっかくシンクタンクに相当の費用をかけて育成をしようとする意味がなくなってしまうんではないかということと、先ほど申し上げたように、人材の養成ということは、日本の場合にはシンクタンクを尊重するという風潮は全然ないわけでありますから、シンクタンクというものは、シンクタンクにふさわしい働きをするような人材が確保できるかどうかということがポイントになるのではないか。やろうとするとこれは非常にむずかしい問題でありますが、一たんでき上がってしまいますと、これは非常な力を発揮する。したがって、いまのところは一億五千万の調査費にすぎないのでありますけれども、これが偉大な力を持った上に立って、法案が今度は既成事実の上に立って出てくるというようなことになると、その既成事実というものは、われわれの意図するもの、国民意図するものとは相反するような形になったんでは、将来の政治にとんでもない禍根を残すんではないかということをおそれるので、まだまだ法案も出ていないうらでもありますし、調査費の段階ではあるけれども、あえていろいろな意見を申し上げた次第でございます。その点をひとつ御理解を願いたいと思います。  シンクタンクの問題につきましては、こまかい点で申し上げたいことはたくさんございますけれども、いまは調査費の段階でございますから、いま申し上げたような私の意見というものを、経済企画庁長官にもよく申し上げていただいて、しかも、この分担科学技術庁、通産省、経済企画庁ということになっておりますが、どこでどういう分担をし、そして私が先ほど申し上げたような問題点をどう整理していくかというようなことについて、特に科学技術庁のほうの関係においては、計画局長見えておりますから伺いたいのでありますけれども、ソフトサイエンスを一つまず努力をし、確立をしてもらわなければならぬと思うのです。これはドイツあたりへ行きますと、ドイツでは最近若干日本的に変えなければならぬというような動きが出てまいっておるようでありますけれども、基礎理論の数学から出発をしてシンクタンクというものを考えていこうというように、非常に遠大な計画、非常に基礎的なものから出発をするというようなことになっておるのでありまして、科学技術庁といたしましては、ソフトサイエンスの基礎固めをするという任務もつけ加えて非常に重視をしていってもらいたいと思うのですが、その点について御意見があれば教えてもらいたいと思うのです。
  21. 楢林愛朗

    楢林政府委員 いま先生の御指摘のソフトサイエンスの技術の重要性については、当庁といたしましても、今後このような科学的な、総合的にアプローチするための有力な手法である。また、この基礎的な科学的な手法が、今後そのことにアプローチするために、各方面でも不可決な事項になるのではないかという認識のもとに、今後当庁といたしましては、関係方面とも十分緊密な連絡の上、ソフトサイエンスの技術の振興、開発というものについて力を尽くしたい、かように考えております。
  22. 石川次夫

    石川委員 委員長に要望しておきたいのでありますけれども、いまのところは単なる調査費で一億五千万円というので、ちょっとこれは見落としがちなんです。あまり重視をされない傾向があると思うのでありますけれども、これは積み重なりますと、日本政治に相当大きな影響を与えるという力を持つ可能性が多いわけでありますから、との点については、科学技術庁のほうも相当の関心を持ってもらわなければならぬ。そういう点では、科学技術委員会のほうと商工委員会と、あるいは合同審査ということも必要になってくるのではないかと思うので、そういう場合にはひとつ十分に考慮を願いたい、こうお願いをしておきたいと思うのであります。  シンクタンクの問題については、あとは幾ら申し上げても一方的な話だけになってしまいますから、きょうのところは一応そのくらいにいたしておきます。  それから、公益事業局長見えておりますね。これは、きのう中部電力の方も見えましたし、通産省の方も見えましたしするので、大体の経緯は伺ったのでありますけれども、前々から石油資源というものが、OPECの値上げの問題をきっかけにして、相当な関心を持って、海外資源を何とかしなければならぬ、こういうことが強く認識をされ始めておるわけでありますけれども、何といっても石油だけに依存するわけにいかない。どうしても原子力というものに相当依存しなければならぬ。現在のところはエネルギーは、たぶん五千七百万キロワット、火力、水力、原子力合わせてそんなもんだろうと思うのでありますけれども、あと二十年のうちに、実は四千万キロワットの原子力発電所という計画であったものが、急遽、石油の重油専焼ボイラーというもので公害の問題というものもあるでしょうし、無限に石油というものが存在するものでもないというようなことも含めて、去年、六千万キロワットというふうに計画が変更になっております。六千万キロワットというと、現在の火力、水力、原子力、全部合わせただけのものでありますが、あと二十年もたてば、大体、日本のエネルギー源というものの半分ぐらいは原子力に依存しなければならぬのだということになるわけですから、この原子力発電所というものの立地条件というものをどうするかということは、非常にまたむずかしい大きな政治課題になると思うのであります。  ところが、重油専焼ボイラーの場合には、脱硫装置がどうのこうのということで、公害の問題と結びついてたいへん世の中の関心を集めておりますけれども、原子力の場合は公害が少ないんだと一口にいわれております。ところが、実は原子力の弊害というものは、日本が唯一の被爆国でありますだけに、国民がこれに対して非常に関心を持っておることであります。普通の状態であれば、確かに重油専焼ボイラー発電所に比べますと公害は少ないかもしれませんけれども、一たん事故が起これば、これはとんでもないことになる。これはだれでもわかっていることだと思うのであります。通産省ですか科学技術庁かで大体試算いたしますと、発電所が暴走しますと最低三兆二千億円ぐらいかかるだろう。死んだ人に対して一人当たり三百万円ぐらい出すという計算を基礎にしてのものだと思いますけれども。それにいたしましても、三兆二千億円であります。でありますから、もしこういうような大きな発電所の事故が起これば、これはその会社がつぶれるなんという問題ではなくて、日本でも原子力発電所をつくり得なくなる。それだけじゃなくて、内閣も総辞職しなければならなくなるというようなことになる危険性も多いわけであります。  それからあと一つ非常に困ることは、原子力の場合は、いわゆるICRPというものでもって、ここの限界まではよろしいのだという一つの許容量というものはありますけれども、しかし許容量まではだいじょうぶなんだという保障はないんです。ただ、ここくらいまでは何とか公益との関係でがまんしてもらおうという、端的に言うと、がまん量というようなかっこうで指示をされておるわけでありますけれども、これが遺伝に対する、あるいは人体に対する影響が一体どういうものだということは、二百種類もある核でありますから、この一つ一つについて精密にまだ研究され尽くしておらない面がたくさんあるわけです。たとえて言いますと、ストロンチウム九〇の半減期は二十七年、それからジルコニウム、これはたいしたことはありませんが、セシウムなんかは三十年、セリウムなんかは二百八十五年、こういうふうな半減期を持っておるわけです。最近はアメリカあたりは、日本のように原爆の洗礼を受けてないのでありますけれども、たいへん原子力の公害というものに対して国民の関心が高くなりまして、ミネソタ州では、ICRP、AEC——アメリカの原子力委員会でもってきめた基準の五十倍のきびしい規制でなければ発電所をつくってはならぬ、という州政府の決定であります。したがって、それではもう原子力発電所はできないじゃないかというようなことにもなりました。ところが、これはミネソタ州だけじゃなくて、あと十州がこれにならっていま裁判をやっている最中であります。したがって、ICRPというものの権威がぐらつき始めておるというのが実情であります。このガンマ線とかアルファ線、いろいろあるわけでありますけれども、その中のガンマ線だけをとりましても、これを半分にするためには、大体アルミなら四十ミリくらい当てなければ半減しないわけですね。ガンマ線が通ってしまうわけです。それほど免険なわけです。しかもICRPの権威というものも、いまアメリカ自体から疑われ始めておるというような実態であります。したがって、このICRPまではかまわないのだということの考え方であってはいけない。ICRPじゃなくて、ゼロでなければならないのだという前提で、しかもICRPまでは、日本は一割くらいなものでありますけれども、やむを得ない場合にはここまでは認めようということであって、ここまではかまわないのだ、安全なんだということではないのだという認識が、どうも私は日本人には足りないのではないかと思うのです。  私はいたずらに、原子力の危険というものは非常に大きいのだという恐怖感をあおって、反対運動に火をつけようというような気持ちは毛頭ございませんけれども、しかし、最近の朝日新聞の記事を見ますと、どうも政府自体がそういう認識がきわめて薄いのではないかという懸念にたえないわけです。三月二十四日の夕刊だと思いますけれども、浜岡原電、これは中部電力でありますが、この安全協定がきびし過ぎるということを通産省のほうから中電を強く非難したという記事が出ておるわけです。その中身、監視機構の問題でありますけれども、協定に県だけではなくて地元三町を加えたということはけしからぬ。それから、発電所内の立ち入り権を認めたということは——これは知事の立ち入り権でありましょうけれども、非常の場合に発電所に立ち入るということが協定できめられておるわけでありますが、これはけしからぬというようなことで、電気事業の場合は通産省が権限を持っておるのであるから、非常の場合といえども入ってはいかぬのだというふうにとれるような新聞の記事がここに出ておるわけであります。  公害の水質汚濁あるいは大気汚染の問題のこまかい条文も読んでみましたけれども、これを申し上げますと、非常に話がくどくなりますから申し上げませんが、しかし、もしこれが事実とすると、これからどうしても原子力発電所にたよらなければならぬというためには、地元民の納得というものはどうしても必要である。しかしながら、こういうような中部電力を批判し非難したような、安全協定がきびし過ぎるというようなことが事実とすれば、これからは絶対原子力発電所はできない。一体どうするつもりなんだろうか、こういう懸念を持たざるを得ないので、その経緯について一応御説明願いたいと思うのです。
  23. 長橋尚

    ○長橋政府委員 御指摘の経緯につきましてお答え申し上げます。  三月十六日でございますが、中部電力株式会社から、このたび浜岡発電所の建設に関しまして、静岡県と、それから地元の浜岡町、御前崎町、相良町の三町と中部電力との間で、原子炉の安全確保等につきましての協定を結びたいということで説明がございまして、その際、原子力関係の従来の協定とはだいぶ異なったものでございましたので、話を聞きまして幾つかの問題点の指摘を行なった事実はございます。  その際、指摘いたしました点は、この協定案の中で、環境放射能測定技術会、それから原子力環境安全協議会というのを設けることになっております。これは案におきましては、静岡県と地元地方公共団体の側において設けることになっておりまして、この点につきまして、やはり協定当事者である中部電力も加わって、地元公共団体と電気事業者の間の共同の組織という形で行なうことが適当なんではなかろうかという点。   〔浦野委員長代理退席、委員長着席〕  それから協定案におきまして、異常な事態が発生いたしました場合に必要に応じて地元公共団体が立ち入ることができるようになっております。この点につきまして、もともと非常に安全について注意をしなければならない区域でございますし、発電所に立ち入ります場合に、事前に連絡を受けて来ていただくということをはっきりしたほうが問題が少ないのではないかというふうな点を指摘いたしたわけでございます。  その後三月の十九日に協定が調印されたわけでございます。私どもといたしましては、ただいま御指摘の報道にございますような、本協定自体にクレームをつけるとか、あるいは協定当事者を非難するというふうなことをいたした事実は全くない、かように存じております。  なお、ただいま先生御指摘のように、原子力発電所の開発は、今後の電力需給の安定確保のために非常に重大な問題になっているわけでございます。しかし、そのためには安全性の確保について十分な措置がとられなければならないということで、従来から政府といたしましては、科学技術庁、通産省協力いたしまして、原子力発電所の安全確保について関係法令の定めるところに従いまして、建設、運転の両段階を通じまして最善の措置をとることとしているわけでございまして、また同時に、国としても万全の措置を講じております。  それで、原子力の安全確保について地元の信頼と理解を一そう深めることが大切であるわけでありまして、地方公共団体と電気事業者との間で従来も協定を結びまして、公共団体と電気事業者と共同の協議会ないし連絡会を設けまして、施設周辺の放射能監視の状況の確認をいたし、その結果を公表するといったような措置がとられていることは御承知のとおりでございます。今回のこの浜岡の原子力発電所に関する協定締結につきましても、原子力発電所の建設に際して、その建設計画の円滑な遂行をはかりますために、電気事業者が、事前に協定締結というふうな形によりまして地元の了解を取りつけ、地元の不安のないようにしていくということが本来好ましいことである、かような考え方で通産省としてはいるわけでございます。その点につきまして御了承を得たい、かように考える次第でございます。
  24. 石川次夫

    石川委員 公害関係法案で、大気汚染、水質汚濁の場合に、電気事業というものが適用除外になっているわけですが、この適用除外せられた趣旨は一体どういうことなのでしょうか。これはあくまでも通産省の権限内であって、ほかのものには容喙させないというようなお考えなのか。それとも放射能関係は独特のものがありますから、これはとても地方ではまかない切れないのだというような趣旨に基づくものなのか。その辺のところをひとつ御説明願いたいと思うのです。
  25. 長橋尚

    ○長橋政府委員 お答え申し上げます。  昨年十二月に、大気汚染防止法等公害関係法の改正に際しまして、電気事業につきましては、その関係法令の一部規定の適用除外が認められたわけでございます。大気汚染防止法について申しますれば、もともと亜硫酸ガス等の排出基準、それからその遵守義務、あるいは緊急時における措置、あるいはまたそれに関連しての都道府県知事の立ち入り検査権というふうな規定は、電気事業に対しましても適用に相なるわけでございまして、適用除外になりましたのは、むしろ、施設の設置の届け出あるいはその改造命令というふうな面での、つまり排出基準の励行を確保してまいりますための諸規定という面につきまして適用が除外され、電気事業法の相当規定に基づいて規制が行なわれる、かようなことに相なったわけでございます。  その趣旨は、排出基準の実効を確保していく、こういうふうな実施面につきましては、電気事業法にも相当の規定があるわけでございまして、むしろそういう面は電気事業法の相当規定に基づいて、消費者保護とか供給の確保というふうな面の公益事業規制の規定と一体的に運用していくことが行政上最も望ましいという考え方に立つものでございまして、他方、都道府県知事におきましては、その地域の総合的な公害対策を推進していくというふうな責務があるわけでございます。そういった都道府県知事の責務との関係につきましては、前回の改正法律の中で、電気事業法に基づく面につきましては、都道府県知事の側からこういう措置をとってほしいというふうな要請権、それからその要請を受けました場合、通産大臣の側からこういう措置をとりましたという通知義務、そういうふうな規定が特に設けられまして、そういうことによりまして、公益事業規制としての電気事業法の目的と、それから公害防止という面を相互に矛盾のないように担保することが実施されたわけでございます。
  26. 石川次夫

    石川委員 私はちょうどこのころ国会に出ておらなかったものですから、あとから見て、電気事業法というものは通産省の分野だから県知事の容喙するところではない、こういう権力的な形にこの法案が受け取れました。それと、特に原子力発電所の場合には、緊急事態が発生をしたといえば、知事だって何だってそこの発電所にかけつけなければなりませんよ。そういう使命が当然出てくると思うのです。これは先ほど申し上げたように、一たん原子力の大きな事故が出れば、これはもちろん住民がじわじわと死に至るという可能性もあるし、損害も何兆円というような損害になることも目に見えているわけですから、そういった大きな事態が発生をするという可能性が出てきたとすれば、これは緊急の場合で、異常事態が発生した場合ですから、その場合は知事はかけつけて、どうなっているのだということぐらいは、けだし当然中の当然の責任じゃないかと思うのです。それに対して、あらかじめそれについて通告をしないのはおかしいではないかというような、きわめて常識的な判断でこれに接するということは、ぼくは、原子力の弊害というもの、放射能の障害というものをほとんど理解をしてない証拠ではないかということと、通産省はあまりにも権力主義におちいっているのではないかという気持らがきわめて濃いわけです。  実はこの間、科学技術委員会のほうで、原子力損害の賠償・補償法の一部改正法案が出ました。そのときに、原子力の障害というものに対して、この法案それ自体をいまここで申し上げる必要はないわけでありますけれども、非常に住民が関心を持っておる。反対運動がだんだん熾烈になろうとしておる。現在のところは原子力の災害というものは表に出ておりませんけれども、一たん出たらどうなるのだというふうな非常に恐怖に似た関心を持っておるわけでございまして、そういう住民を十分に納得させる歯どめは一体何だろうかということで、自民党その他四党全部が集まりまして附帯決議をつけたわけであります。  その附帯決議は、一応読み上げますと、「原子力損害は広域かつ甚大であることにかんがみ、損害の発生を防止する監視機関を設置するとともに住民の代表学識経験者等、第三者の参加を図り、その民主的な運営を図ること。」、これは国会の決議であります。これは最低限です。  実を言うと私は茨城県で、東海村にすぐ隣接をしております。ここは発電所もありますけれども最初に工場というものをつくらなければならぬというようなことに政府の方針としてはきめておるわけでございまして、これはまた発電所と違った意味での危険性が多い。私は、こういうふうな法律ができれば原子力発電所をつくってもいいというのじゃなくて、もっと本質的な問題を言えば、利潤追求、営利企業としてのいまの九電力に原子力発電所をまかせることについては本質的に私は反対なんです。どういう協定ができようが、もし事故が起こればとんでもないことになる。これはやはりどう考えても、営利というものと保安というものとがバランスにかけられて、採算がとれないということになれば、保安対策というものはおろそかになる可能性が出てくる。もしそういうことから事故というものが出てくるとすればとんでもないことになるという点で、私は、いまの時点でこういう形でもって原子力発電所を進めるということについては、大いに異議があるわけでありますけれども、それは一応ここでは申し上げません。しかしながら、最低限、最初に工場なんかをつくる場合の歯どめ、住民の納得を得るということになれば、これはやはり住民が参加をしていつでもそういうものの——ただカウンターでもって調べるということだけではだめなんですよ。御承知のように、放射能をはかる基準というものはたくさんございます。カウントで調べる方法もあるし、キュリーで調べる方法もあるし、あるいはガンマ線ではかる方法も、レムではかる方法もあるしというようなことである。しかもガンマ線なんかは、先ほど申し上げたように、アルミニウムなら四十ミリやっても半分にしかならない。そういうふうにきわめて危険きわまりないものです。そういうふうなことがだんだんに住民にわかっております。それからしかも、セリウムみたいに二百八十五年なんという半減期のものがあるのです。  それで、私は端的に申し上げますと、大熊とか、あるいはまた敦賀、ああいうところに膨大な発電所というものを集中的に建てますと、アルゴンなんかは、現在のICRPをこすのではないかという懸念を持っているのです。学者の中ではそれを明言する人もある。そういうふうなこともあるものですから、私はそういう点が心配でならないのです。住民を十分に納得をさせるということのためには、住民がとことんまで納得できるという監視体制で、住民が参加をする。しかも、原子力基本法というのは、御存じでしょう、自主、民主、公開ですよ。いかなる場合も公開をする。電気事業法だから立ち入り禁止なんというものとは別なんです。いつの場合でも公開をするということが原則になっている。またそれでなければならぬ。だから、住民がいつでもそういう公開の場に参加をして監視ができるというようなことがなければ、これからの日本のエネルギー不足に対応しての原子力発電所づくりということは、ほとんど停滞をするのではなかろうか。どう考えても、住民が十分に納得をするということの最低限の歯どめとして、これすらも認めないということになれば、もうどこの発電所も全部立地は不可能だと私は思います。  そういうときに、非常にまずいことにはこの新聞記事が出てきたわけです。安全協定がきびし過ぎるという、この影響は、ぼくははかり知れないものがあると思うのです。日本国じゅう原子力発電所の予定地がたくさんあるわけです。そこで、安全協定がきびし過ぎるといって通産省が中電を非難したというようなことになれば、住民が参加して監視機構なんかできないことになります。これは三町が参加したこともけしからぬ。これは、この朝日新聞のこれだけを見ますと、いまの御説明ではそういうことを言わなかったというようなお話のようでありますけれども、実は名古屋のほうで出ている朝日新聞を見ますと、もっと詳しく出ております。まさかそこまで新聞が誤報するとは思えないのです。  これを申し上げます。たくさん書いてあります。この記事のほとんど倍以上書いてあります。「さらに通産省側は「このような協定を自治体のいうがままにのむとは何事か」」、これが一つであります。それから「協定作成に当っての中電側の責任者はダレか。このような重要な問題は社長が直接交渉すべきである」ということをいっている。「中電は浜岡原子力発電所さえうまくゆけば、あとのことはどうでもよいつもりなのか」などと述べたという。これらについて、中電側とのやりとりで関係があるとみられる通産省の公益事業局原子力発電課では「「話はしたが内容はいえない」とほとんどノーコメントで多くを語らない」。けれども、中電の中からこの話が漏れておると私は察しています。こういうふうなことが事実とすれば、おそるべき時代錯誤です。こんなふうな態度でこれから原子力発電を進めようとしたら、にっちもさっちもいきません。一体だれがこういう交渉をしましたか。
  27. 長橋尚

    ○長橋政府委員 最後のことばを正確に聞けなかったのでございますが、一体だれがこういうことを……。
  28. 石川次夫

    石川委員 通産省の意見として、「浜岡原子力発電所さえうまくゆけば、あとのことはどうでもよいつもりなのか」というような、非常に強い意見が出されておるわけですね。通産省のどなたがこういうようなことを言われたのですか。
  29. 長橋尚

    ○長橋政府委員 お答え申し上げます。  先ほど御答弁申し上げましたように、説明を受けました際に、その場で問題点の指摘という形で二つの問題を特に御指摘した、こういうことでございまして、ただいまお読みのような内容で、公益事業局の者が、会社側に対して非難がましいこと、あるいはクレームをつけるようなことを申した事実は全くない、こういうことでございまして、まず、こういうふうな話が参ります場合には、組織の中のあれといたしまして、担当課に話が参るわけでございます。その段階で、先ほど私からお答え申し上げましたような、いろいろ問題点の指摘をした、こういう事実はございますが、非難がましいこと、そういう角度から問題を提起したというふうなことは全くございません。
  30. 石川次夫

    石川委員 時間が来たのですが、きわめて重要な問題ですから、あとちょっと時間をいただきたいと思うのです。  これに対しまして中電側は、「問題は、通産省の言い分や態度だ。原子力発電所に対する地域住民の不安を少しでも取除くためには、会社としてはできる限り地元の要求に従うのは当然」、「この程度の協定内容は時代のすう勢である」、こういうようなことを言っておるということが新聞記事に出ておるのです。これは東京の朝日新聞には出ておりません。しかし、全然荒唐無稽なことを天下の朝日ともあろうものがまさか書く理由がないと思うのです。だから、必ずそういうふうなことが事実あったのではないか。もしそういう事実があったとすれば、これはとんでもないことだ。今後原子力発電所は一切計画を中止したらよろしいとさえ私は考えるわけです。でありますから、これは完全に誤報であると言い切れるのか。それとも、こういうことがあったということを前提として、今後は態度を変えて、とことんまで住民の納得のできるような監視機構あるいは立ち入り権というものを認めることにされるのか、そのお返事をお願いしたいと思うのです。
  31. 長橋尚

    ○長橋政府委員 お答え申し上げます。  先ほど来申し上げておりますように、こういう協定ができれば云々、非常に将来の障害になる、そういうふうな角度から問題点を指摘した事実は全くございません。それで、先ほどもお答え申し上げましたように、通産省といたしましても、従来から、発電所に関します地元との協定が締結されることによりまして、地元の理解、納得が得られてまいるということは基本的に好ましいことである、かように考えている次第でございまして、今後とも地元と発電所との間の協定につきましては、公害の防止、あるいはまた安全性の確保、あるいはまた消費者のための電気の安定的な供給というふうな総合的な観点に立ちまして、およそ結ぶからにはそれを会社側に励行さしていく、そして長期的に地元との信頼関係を保ち得るような協定が今後とも結ばれてまいりますように必要な指導も行ない、またその協定の履行のためには、通産省といたしまして、たとえば今度いろいろ通産省の側で立ち入り検査をいたします場合等におきまして、協定内容どおりの、大気汚染で申しますれば低硫黄の燃料がたかれているかどうかといったような点につきましても、十分に通産省の立場からもチェックをいたし、地元との関係の円滑化に対して支援してまいりたい、かような所存でございます。
  32. 石川次夫

    石川委員 時間がありませんから、最後に、原子力局長いらっしゃっておるようでありますから……。  地元との協定が福島県と結ばれております。それから福井県にも一つございます。それと今回は浜岡、こう三つになったわけでございますけれども、これが大体大同小異ではあるけれども、多少のニュアンスの違いがある。しかし私は、この程度のものでは今後なかなか住民の納得が得にくいのではないか。これは大体官庁ベースで交渉してまして、地元の住民というものは全然参加してないのです、どれを見ても。それをどういう形で参加をさせるかということまで含めていかないと、これはなかなか円滑にいかないのじゃないかと思う。住民というものをどういうふうに参加させるかということも、これまたむずかしい問題です。単にガイガーカウンターだけで調べればそれでいいというものではない。核の種類のうらで特に半減期の長いもの、特に人体に影響を及ぼすものについては、ほんとうは中央に権威のある試験所というものが一つなければいかぬと思うのです。私は茨城県の衛生試験所に行ってみましたけれども、ここは非常に熱心にやっておりますが、日本では相当有数な試験所だそうでありますけれども、権威のあるものだそうでありますけれども、しかし貧弱です。あの程度のものではとてもわれわれは納得できない。そうしますと、地方にもそういうものが必要だけれども、それがいよいよといった場合には、中央に集結したところの権威のあるものがあって、そこでも調べ得るということにつながっていかなければ、これからどんどん原子力発電所をつくっていかなければならぬという場合に、それぞれ住民に安心感を与えるということはむずかしいのではなかろうか。こういう点も含めながら、しかも地元の協定というものが個々ばらばらであります。学識経験者というものを一体どういう人を充てるのがよろしいのか、地元の住民の参加をどういうふうにして得たらよろしいのかというモデルを、ひとつ早急につくってもらわなければならぬと思うのです。そういうことがなければ、今後、原子力発電所あるいは原子力関連産業というものは、なかなか発展させることが不可能ではなかろうか。  それと、先ほど来公益事業局長から御答弁をいただきましたけれども、どうも朝日新聞が根も葉もないことを書いたとは思えないのです。だからこういうふうな、誤解なのか正解なのか知りませんけれども、いやしくもこういう記事が載るようなことがちょっとでもあるようなら、もう原子力発電所の計画はおやめになったらよろしい。これは絶対に地方の住民の十分なる納得を得る、通産省が権力意識を発揮したような印象を与えるようなことがあったら絶対にいけない、進捗しないということを十分に肝に銘じていただきたいということを強く要請して質問を終わります。
  33. 八田貞義

    八田委員長 中村重光君。
  34. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまの石川委員質問に関連して私もずっときょうは質問をする予定でしたけれども、経企庁長官が物価対策特別委員会の関係があるようでありますから、ただ一言申し上げておきますが、いま石川委員から、中部電力の原子力発電所の問題について指摘があったわけですが、私は端的に申し上げて、どうも最近通産省はたるんでいると思うのです。この前の化粧品の公正取引の問題で、通産省のほうから公正取引委員会に、課長命令ですけれども、クレームをつけているのですね。それは、そういう事実はないのだ、これは単にメモだと言っている。ところが正式に、日付が二月二十五日、そして公正取引委員会が三月六日で受付をしている。公文書になっているのですよ。それをメモだ。ところが、メモか公文書か形式の問題は別として、中身が公正取引の問題ですから、いろいろ消費者の立場に立って公正取引委員会としては協定をつくろうとしている。それはいけない、これはいけないと、課長がいろいろな干渉というのか、クレームをつけてきている。それを局長も知らない。大臣までは行かないにしても、課長の前に事務段階でまたいろいろと折衝もあるのだろうし、課長は課長としての固有の仕事として、事務としてのこともおやりにならなければいけないと思うのですね。しかし、少なくとも重要な問題に対しては、十分局長、あるいは場合によっては大臣とも事前に話し合いをして、そして公取にこの点はいけないとかなんとかいうことを言うのでなければ、全く上部は知らない段階において処理されてしまったということが起こってくるじゃありませんか。  いまの中部電力の問題についても、私は全くこうした事実がないということはないのじゃなのか。やはり課長の段階なのか、あるいはもっと下の段階なのか、それが、クレームをつけたかどうかわからないけれども、好ましくないじゃないか、こういうことでは原子力発電所というものを今後つくっていけないではないかということを言ったのじゃないか。どうもその気がしてならない。立ち入りとかなんとかいう問題については、私はそこまできびしいものじゃないと思う。何か問題が起こったら、それを住民に周知させるのはあたりまえの話なんですね。また、その設備が適当なのかどうかということについて非常に不安が、原子力発電所ですからあるわけですから、やはり関係住民がその設備を見たいということになるのはあたりまえの話なんですよ。それは立ち入りというものじゃないのですね。ですから新聞に「立ち入り」ということを書いている。私は立ち入りという問題は、そんなにきびしい問題でないので、表現としてはどうかと思いますけれども、いずれにいたしましても、どうも好ましくない、この後の原子力発電所の設置について支障を来たすであろうという、その面にあまり危惧のあまり、不満というのか何というのか、何かそういったことを漏らした。それがやはり中部電力との間にいろいろな話し合いという形になって、それが新聞記事にあらわれてきたのじゃなかろうかという気がしてなりません。  水力発電所、火力発電所は、それぞれ公害が出るということで、やはり住民が設置に対して反対をしている。ましてや原子力発電所ということになってくると、これは、住民が重大な関心を持って反対をしたり、あるいはいろいろと注文をつけたりする。そうして電力会社側としても、できるだけ住民が納得するような形で発電所の設置という方向へ進むということはあたりまえだ。だから通産省は、クレームをつけてなければつけてないでいいが、あのように新聞に報道されたような形であることは間違いないようですから、住民との間の協定というのは、それが適当とお思いなのか。どうもこれは行き過ぎだ、こういう点は将来原子力発電所の設置に支障を来たす、何かもっと考えてもらいたいというようなお気持を持っていらっしゃるのか。そこなんですよ。どうですか。
  35. 長橋尚

    ○長橋政府委員 お答え申し上げます。  今回、浜岡原子力発電所につきまして締結されました地元地方公共団体との安全確保等のための協定につきましては、私どもといたしまして、これによりまして、地元の原子力問題に対する不安がやわらぎ、地元の協力、納得が確保された、こういうふうな点につきまして、今後、浜岡原子力発電所の建設、運営を進めていきます上で非常に好ましいことである、かように評価をいたしております。
  36. 中村重光

    ○中村(重)委員 大臣に見解を伺ってみたいのですが、離島振興の問題です。御承知のとおり、離島の振興は離振法でもって公共事業、それからもう三年くらいになろうと思うのですが、一部改正をいたしまして、文教、厚生関係の一部の施設も実は高率補助をするということになったのです。いろいろな議員立法もありますけれども、私はこの法律は実によく動いていると思っているわけです。ところが、公共事業あるいは文教、厚生関係の施設に対して高率補助をするということだけでは、なかなか離島の振興にはならないですね。やはり離島の産業ということになってまいりますと漁業、農業、林業、まあ工業等もありますけれども、もう少し離島の産業を含めて、総合的な離島振興政策ということを強力に推進をしていくのでなければ離島の振興発展にはつながらないであろう、私はそのように考えるわけです。国土総合開発の一環として、離島振興については経済企画庁も積極的に対処しておるということは評価をしておるわけでありますが、それらの離島の総合的な振興策について、何か大臣として構想したものがありますならば、お聞かせをいただきたい。
  37. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 中村委員が御指摘のように、離島振興法ができましてから十数年、私も相当の成果をあげていると思います。しかし日本の全体としての高度成長、こういうことを考えてみますると、一面において過疎的な問題の側面も出てきておりますし、今後、離島というものはいかに経済的に伸びていくか、そこに住まわれる住民の生活水準がいかに維持、向上されるか、これは新しい角度からもちろんとらえていかなければならないと思います。新全国総合開発計画趣旨もそこにあるわけでございますから、国土の再編成、どんな末端の土地といえどもできるだけこれを活用していく、これが新全総の方針でございますから、そうした方向でわれわれも今後臨んでいかなければならない。そのときに、いま御指摘のように、従来はどっちかといいますと、行政投資に対する保護助成ということがどうしても性質上重点になっております。しかし、それだけではいけないのでありまして、そこの産業が全体として繁栄するための環境の整備が必要であろうと思います。特に離島の場合には、水産業はその産業として最重点のものでございます。そういう意味におきまして、たとえば行政投資として漁港の整備をはかる、これに尽きるわけではないのでありまして、さらに漁業全体の高能率化、近代化、そうしたいわゆる産業自体としての改善、こういうことも、一面において行政投資の推進とともに考えられなければならない。あるいはまた安全な操業が行なわれるための環境整備のためにやはり外交が働かなければならない。全体としてそうした環境を整備する、こういうことの一体として高率補助ということも動いてくるわけでございまして、いまお説のように、われわれとしても離島の振興については総合的な角度からこれを考えていくべきである、こういうふうに考えております。
  38. 中村重光

    ○中村(重)委員 お答えのように、総合的な振興開発をはかっていかなければならぬということになるわけです。だがしかし、やはり根幹となるのは、離島の場合、道路であるとか港湾ということ、漁港というのがきわめて重要になってくるわけです。ところが離島の道路というのは国道は全くないのかどうか。これは私の知る限りでは、長崎県の例で申し上げると、長崎県は御承知のとおり全国でも最も離島の多いところ。ところが国道がないのですね。これは離島も県道を国道に昇格すべきだ。離島航路というものは陸の県道であり国道である、こう言っている。長崎県から考えてみますと、長崎県から佐賀県、福岡、そうして航路で対馬に渡って、対馬の厳原から比田勝に行って、それからまた航路で下関に出るのですよ。だから、この離島航路を陸の県道であり国道であると考えるならば、県と県を結ぶことになるわけだからして、離島の県道というものは、当然国道に昇格すべきではないか。離島なるがゆえに国道まかりならぬという考え方は、離島の振興発展をはかる上については大きな障害となるであろう、そのように私は考えます。大臣の見解はいかがでしょう。
  39. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 これは建設省の所管ではありましょうが、国道の昇格ということは、御存じのように相当きびしい条件がございます。これは、今日までの道路投資というものの需要に対する供給がやはり不足がちであったことから、どうしても条件がきびしくなってきていたと思います。今後御存じのように、道路投資はますます盛んになりますし、そしてまたそれだけに、条件についても今後またいろいろと改定も行なわれる時期がくるかもしれません。さしあたってのところ、御存じのように、相当経済的な影響が大きくて、しかも幹線的な要素のものに限っておりますから、そういう意味において、なかなか離島まで国道が回ってくるかどうか。これはやはり全体としての道路投資の進捗状況とからんで今後やはり進んでくる問題であろうと思います。国道が離島にないさびしいお気持ちもよくわからないではございませんが、逐次そうした改善が今後将来にわたって検討されてくる問題であろうかと思っています。
  40. 中村重光

    ○中村(重)委員 私は大臣のいまの考え方をひとつ改めてもらいたい。そういう意味で見解を伺ったのですよ。いまくしくも大臣は、国道は幹線に限っておるからとおっしゃったのですよ。だから、その大臣自体が建設省の所管だからとおっしゃったのだけれども、離島に関する限り、道路であろうと一切が経企長官の所管なんですね。ただ実施官庁として、建設省であるとかその他の関係省にやってもらっておるにすぎない。できるならば離島は全面的に経企長官やってもらう、それがたてまえなんだけれども、そうはいかないということになる。だから、まず大臣の認識を、離島の道路は幹線であるという考え方に改めてもらうわけにはいかないですか。申し上げたように、県と県が結ばれてあるのですよ。だからこれが幹線でないというような認識の上に立ちますと、いつまでたったって、大臣お答えのように、条件がずっと整備されてくればということになるでしょうけれども、基本的なものの考え方として、離島の道路というものは幹線でないのだという考え方であってはいけない。やはり私どもは、航路は当然陸の県道、国道として考えるべきだという見解を持っておるのですよ。だから離島航路というものは、大きいところは国営論を主張しているのはそこにあるのです。そうしなければ離島の人は気の毒なんですよ。離島なるがゆえに生産プラス運賃でしょう。消費プラス運賃ですよ。これではいつまでだったって、離島と本土との経済格差というものはなくならないのじゃないでしょうか。そこをお考えになるならば、経済企画庁、だれが何と言おうとも離島の大きい県道というものは国道にするのだというようなことで旗を振っていただくのでなければ、これは建設省がついてこない。いかがでしょう。
  41. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 私ちょっとことばが足りなかったのですが、いまのお話ですと、県と県との境の島、こういう引例でしたから、確かにこれは離島といってもさまざまあると思います。最近におきましては、フェリーなどの活用もありまして、いわゆる航路というものは道路の延長である、こういうものの考え方もあるわけであります。でありますから、四国であるとか、あるいは九州であるとかいうものと本土をつなぐ場合に、その間に介在する航路は国道的な作用をするものが当然出てくる。そうすれば、またそこの間に横たわる離島というようなものは、同時にその中間の媒体として、そこを国道が通るというような観念は成り立たないものではないと思います。そういう意味において、これはそれぞれの離島の置かれた地理的な条件によって違うかもしれません。  ただ、率直に言いまして、確かに今日まで、国道であるがゆえに舗装率が高いとか改修率が高いということが実質的にございました。しかし今後、もう国道も舗装率もほぼ一〇〇%に近くなる、改修率も進んでくる、そういうことになりますと、道路政策上、今後の重点というものが地方道に移ってまいります。でありますから、はたして国道なるがゆえに非常に優遇されるのか、地方道であってもこれから相当充実していくのか。しかもその際に、財政負担については離島としてのかさ上げの問題もあるわけでございますから、そうやってみると実質がどれほど違いがあるものか。必ずしも私は正確に計算が出ませんが、それほど実質的に差が出るかどうか、多少疑問は持っています。しかし、先ほど申し上げましたような思想で、やはりその置かれている地理的条件によって国道的なものが出てくる、こういう余地は今後出てくる可能性はあると思いますが、一般論としてどうかと言われますと、これは建設省の意見も聞かねばなりませんが、道路行政の投資の現状においてどの程度国道になり得るものがあるか、ちょっとそこのところは測定いたしかねます。
  42. 中村重光

    ○中村(重)委員 予算的には高率補助ですから、たいして変わりないのですよ。ところがそれでは解決しないのです。やはり国道なるがゆえに国の規模でやるというところに、道路の進捗ということにつながっていくのです。そういう意味でも私はやはり国道である。それから、離島の道路を国道にするということになってくると、どうしても離島の地位が高まってくるのです。全般的に離島に対するところの力の入れ方が変わってくるであろうということじゃないでしょうか。だから、単に予算的な問題で解決できないという点があるということを御認識をいただかなければならないだろう、こう思います。  それから、具体的な問題についてお尋ねしたいのですが、大臣の時間の関係もありますから、あとで局長からお伺いするといたしまして、離島のもう一つの問題は水なんです。離島は水不足で非常に困っている。さればといって、これは淡水湖化できるのかというと、これもまた簡単にはできない。具体的に言って、対馬なんかに淡水湖化するといったって、これはちょっとかっこうなところがないですね。これはどうするのかという問題。その他の離島というのは同じように水に困っている。淡水湖化することはできないが、海底水道というものを普及していくのでなければならぬと私は思う。相当な予算というものが必要になってくるわけですが、しかしこれはやっぱり、困難を克服して離島の水の問題を解決をしてやるというのでなければいけないのではなかろうか。この点に対する大臣のお考え方を伺いたいことが一点です。  もう一つ、水の問題でございますから、これまた国土総合開発の観点に立って、水源に恵まれていない地域、端的に申し上げて、具体的な例を引くことが一番わかりやすいですから、長崎の場合を考えてみますと、長崎は全く水源がないのです。一番頭の痛いところですね。それはどうするのだ、大村湾を淡水湖化したらどうだ。経済企画庁の中でも、まだどこまで具体的になっているのかどうかわかりませんが、考え方があるわけです。ところが、これは関係漁民のものすごい反対で、飛行場へ道路をつくるということだけでもたいへんな困難を知事はやったわけです。私どももこれに協力をするということで、ようやく解決をいたしました。あれを淡水湖化するということになればいつもものすごい反対で、これはなかなか現実問題としては無理があるであろうと思います。それではどうするのだ。そうなってくると、どうしても筑後川を考えなければならない。ところが筑後川は、長崎県はこの流域に入っていない。したがって計画の外にある。しかし、福岡県であるとか大分県というところは、筑後川に水源をたよらなくても開発をすることが可能な、そうした水源を持っている川があるわけです。だからして、いわゆる国土総合開発、広域水道の立場から、ひとつその方向に進めていく。そうして筑後川の水を長崎県の大村なら大村の貯水池に入れるということになってくると、どれほどのコストになるのか。私は、これはおくといたしましても、一応の考え方としては、そこまで水源開発の問題は広域的にやはり解決をしていくということでなければ、もう国土総合開発というような一環として問題の解決に結びついていかないのではなかろうかという感じがいたします。  離島の水の問題と、ただいま私が申し上げました水源開発、広域水道という問題についての大臣の見解を伺ってみたいと思います。
  43. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 確かに、離島につきましては水が非常に問題でございます。そういう意味で、簡易水道にも高率助成をしてきたわけですが、また、いわゆる海水を淡水に、海水のまざったそうしたものに対しても、最近はその淡水化のために特に助成を始めておりますが、いま通産省で、大型プロジェクト研究開発の重点項目の一つとして淡水化の問題を取り上げています。現在、相当大きな船なんかで、飲料水に困っている際に、海水を淡水化する装置によって飲料水を確保するという事実に着目しまして、それをもう少し大規模なものにして実施しようということからの着想でいま進めています。私は、これは量とか規模にもよるのでございますけれども、このプロジェクト研究開発は相当期待を持っています。そうしたことで、その方面の研究をできるだけ急ぐというようなことによって、今後また淡水化についての助成の道が開けてくるんじゃないかという期待を持っています。  長崎県の問題は、これは確かに現在至るところで水の需給が逼迫を示しつつありますけれども、特に九州における長崎のような地帯のところには、どうしても水の問題が解決しない。しかもまた、淡水化の問題が進まないということになれば、いまおっしゃったような問題も当然起こってきます。関東平野で神奈川県に利根川の水を導入しなければならないというのとちょっと程度が違いますけれども、似たようなことであります。アメリカにおいても、ミシシッピーの水をコロラド水系に持ってくる、これはやはり総合的な都市開発の一環として今後十分考えられることでございます。  要は、全体としての水の需給の見通し、そうしたものと、それからまた、もちろん他の対策、水使用の合理化とかいろいろな他の対策と合わせて合理的に考えた場合に、どの対策が一番賢明であるか、こういう政策の選択の問題になるわけでありまして、その試験研究自体、その地域の実情に応じて、これはわれわれとしても、そうした方向というものを十分検討しなければならぬ、こういうふうに考えています。
  44. 中村重光

    ○中村(重)委員 もう大臣けっこうでございますが、ただこの点ひとつ大臣、頭に置いておっていただきたいと思うのであります。  離島の公共事業、それから文教、厚生関係の施設を高率補助をすることになったのですね。ところが、高率補助しなければ、当該離島を持っている関係都道府県の補助がそれだけ必要になるのですね。それを国が負担をしてもらっているのです。ところが、都道府県が離島に対してそうした高率補助をしていることを幸いに、国がより離島に対する投資を強めていくというのではなくて、そのお金をほかに流してしまったのでは離島の振興にならないのですよ。これは、経済企画庁は自治省と連絡をおとりになりながら、そうした調査をいろいろやっていらっしゃるのじゃないかと思いますけれども、いつも私どもが問題視するのはそこなんです。なるほど離島をかかえているから、離島を持たない都道府県と比較をいたしますと、支出もそれだけ非常に多くなってくるのです。そこは考えてやらなければいけないと思います。しかしながら、国が高率補助をしているから県の負担がそれだけなくなってくるからというので離島を顧みないという形になってまいりましては、これはどうにもなりません。高率補助プラスやはり県の負担というものをやっていくということ、そこに離島の振興というものが強力に進められていくであろうと私は考えるわけであります。その点、十分の調査をし、指導をひとつやっていただきたいということを大臣に要望しておきたいと思います。どうぞお引き取りいただいてけっこうです。  局長にちょっとお尋ねをいたしますが、長崎県の離島の港湾とか、あるいは港湾の改修とか局改、これは長崎県だけではありません、離島全体の問題ですが、どうも離島はおくれがちですね。これは離島なるがゆえに非常に不便であるということでそうなるのかどうかわかりませんが、離島なるがゆえに重点を置かなければならぬのにかかわらず、どうも重点を置かないというようなことがこうなってくるのではなかろうかという感じ等もするわけですが、どうしてこのように離島の事業というものはおくれがちなのか、その点ひとつ調査の結果についてお伺いをいたしたいと思います。
  45. 岡部保

    ○岡部(保)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生のおっしゃいました問題、一般的に申しまして、私ども離島の振興を一生懸命やろうという立場から申しますと非常につらい問題でございます。確かに離島の問題、たとえばいま例におあげになりました港湾にいたしましても、あるいは漁港にいたしましても、離島でこういうものが非常に重要であるということは、もちろん私どもの認識以外に、それぞれの国全体として、その港湾なり漁港なりを所管する各省庁で非常に理解はされておるということは申せると思います。ただ現実に、個所がいろいろこまかく、しかも非常に多くなってくる、そういうようなところから、どうも末端にまでほんとうに十分な意欲が到達しないというようなうらみがなきにしもあらずと確かに存じます。  そこで、私どもといたしましては、先生も十分御承知のとおりでございますけれども、こういう公共事業関係は一括計上いたしまして、現実に私どもと、それから全国を所管いたしております省との間で相当に突っ込んだ話し合いをいたします。実際に予算化し、事業化実施していくという面での相当な突っ込んだ話し合いをいたしております。あるケースでは、各省がお考えになっておった一つの配分計画というものを、むしろこういうふうに変えなければいかぬというようなことまで申し上げ、また各省もその点いろいろ御理解をいただいて直すというようなことになっております。  そこで一つには、先ほどもお話ございましたが、国が非常な高率負担をしておる、高率補助をしておるというようなことで、これは先生先ほどおっしゃいましたが、国がそれだけの費用を負担するのだから地方としては逆にその分は落としていく、ということでは決してないとは私は存じますが、こういう高率負担をしておるというところで、国費の一つ予算に定められましたワクの配分というときになかなかいろいろな問題が出てくるわけでございます。そこで私ども、具体的に個々のケースを十分地元の御意向なども拝聴いたしまして、その上で、こういう点についてはどうしても重点的に、むしろもっと内地以上に進捗をはかるべきであるというような考え方で、ただいま努力をいたしている最中でございます。  ここで、具体的なこういう点での個々のケースについて取りまとめてちょっと申し上げかねるのでございますけれども、全般的な問題といたしまして、最近の予算の伸びも、離島にはむしろ内地以上の伸びを見ておるケースが非常に多うございますし、そういう点で、いま先生のおっしゃいましたような点についての解消を、少しでもはかっていくという努力をいたしておる最中でございます。
  46. 中村重光

    ○中村(重)委員 経企庁が主務官庁である省庁と連絡をとりながら、離島の港湾、漁港等の予算等をつけるために力を入れておるということはわかっておるのです。ただ、その五カ年計画にしても計画がおくれがちだということなんです。予算もつけるが仕事も早くやるということです。そこにひとつ大いに力点を置いてやっていただきたいということです。  具体的な問題で恐縮なんですけれども、長崎県の例の対馬の道路、それからいま着工いたしましたが、空港、これは経企庁のがんばりで、肝心かなめの運輸省航空局の要求ではなくて、経企庁の要求がそのまま通るという形になって、大車輪のがんばりには私どもは敬意を表しておるところです。ところが、当初はよかったけれどもあとが悪かったというのではどうにもなりませんが、道路といまの港湾の完成期はいつなのか、その点どうですか。
  47. 岡部保

    ○岡部(保)政府委員 お答え申し上げます。  まず、いま実例をおあげになりました対馬の縦貫道の問題でございますが、確かにいままで十何年の歴史がございまして、非常に遅々としておったということは事実でございますが、また予算になって申しわけございませんけれども、最近相当な伸びを見てまいりまして、これは地元の方に言うとしかられるかもしれませんけれども、完全なものではございませんが、一応概成と申しますか、大体の筋に乗るというのは、両三年内にはできるのではなかろうかという段階でございます。  それから、もう一つの同じく対馬の空港でございますが、空港につきましては、先生も十分御承知のことと存じますが、さしあたりの滑走路の延長六百メートルという事業につきましては、これもまず四十八年度一ぱいには何とかめどをつけられるように、私どもとしては四十七年度に何とかしたいといって考えておりましたが、どうも四十八年度にわたると存じますが、何しろ一刻もすみやかに完成するということで考えておりますが、ただ、これは先生十分御承知のことでございますが、六百メートルという一つの暫定的な問題でございまして、その次の問題をむしろ少しでも早くしなければいかぬという問題を含んでおりますので、この点につきましては、これから航空局ともよく相談をしてまいりたいという考え方でおります。
  48. 中村重光

    ○中村(重)委員 四十八年ではこれはどうにもならないと思うのですよ。縦貫道路の場合だって、四十六年末には終わるであろう、完成するであろうといわれたのです。二年おくれたのではどうにもなりません。仕越し工事等でもやって、どんなにおそくても四十七年にはこれは完成をしてもらいたい。  それから、御承知のとおり飛行場も、私もうここで繰り返しません。水陸両用などという無責任なことを運輸省が言って、私がだめなんだということを警告をしてまいりましたが、いや絶対だいじょうぶだ、もしそれがだめならば陸上飛行場をつくって迷惑をかけないようにすると言った。そのまま放置されて、ようやくあなたのほうの努力と相まって着工になっている。そして、着工したのはよかったが、六百メートルではどうにもならない。二十人やそこらを運んだんでは、七万の人口がいるわけです。しかも、医療機関が非常に乏しいというような点等々から考えてみましても、緊急時に空港がいかに必要であるかということと、それからいま言う人口の数から申しましても、二十人やそこらではどうにもならないということでございますから、これはおっしゃるように暫定的でございます。千五百まで延ばさなければいけないわけでございますから、これとても六百メートルで終わって一息というのではだめなんです。続いてやってもらいたい。そのことが若干おくれるということはいたし方ないといたしましても、現在の計画による整備は四十七年度には絶対に終わる、そういうかまえでいってもらいたい。要望みたいになりますから、あなたの確信のあるお答えをもう一度しておいていただきたいと思います。
  49. 岡部保

    ○岡部(保)政府委員 お答え申し上げます。  私もまったく先生と同じ気持ちで、これから努力申し上げます。
  50. 中村重光

    ○中村(重)委員 それから、漁村にとって電力、いわゆる動力は、スルメ等の加工に欠くことのできないものなんです。ところが、動力線が入っていないために天日でもってやる。雨が降ってもそのまま干したまま、これでは品質が落ちてくる。これじゃならぬということで、実は私、経企庁のほうへも、通産省にも、九州電力のほうへも話をいたしまして、それから商工委員会でも現地視察をいたしまして、委員会としても強く要請をしたわけであります。ようやく重いみこしを上げまして、動力はずっと入っているようであります。ところが、もう各集落とも終わったのかどうか、その点おわかりでしたらお聞かせをいただきたい。そしてまた、もしいまおわかりでなければさっそく調査をして、すみやかに各集落に対して動力線を引き込むように措置していただきたい、そう思います。いかがでしょう。
  51. 岡部保

    ○岡部(保)政府委員 ただいまの御指摘の点、まことに申しわけございませんが、私存じておりませんので、さっそく調査をいたします。
  52. 中村重光

    ○中村(重)委員 それでは時間の関係もありますから、日韓の漁業協定の問題についてお尋ねをしたいと思います。  漁業協定の成立は、四十年六月二十二日が調印、四十年十二月十八日が発効であったと思うのです。協定期限はたしか五年であったというように思いますが、その後どうなっているのか伺いたい。
  53. 田中慶二

    ○田中説明員 お答え申し上げます。  日韓漁業協定は、先生お話しのとおり、昭和四十年の十二月十八日に発効いたしまして、これは同協定の十条によりますと「五年間効力を存続し、その後は、いずれか一方の締約国が他方の締約国にこの協定を終了させる意思を通告する日から一年間効力を存続する。」ということになっております。したがいまして、本協定の効力はいずれかの国が他方に協定終了の意思を通告しない限り、自動的に延長されていくということになっておりまして、この十条によります五年間の効力の期限は昨年の暮れの十二月十七日に終了したわけでありますけれども、これの協定終了の意思を通告をしておりません。申し上げれば存続をするということで、現在は延長をされている状態でございます。
  54. 中村重光

    ○中村(重)委員 何も問題なかったというのが私ふしぎでたえないのですが、それはあとで具体的な問題としてお尋ねいたします。漁業協定成立後の彼我の漁船の侵犯の状況はいかがでございます。
  55. 粟野次郎

    ○粟野説明員 先生のお話しのありました違反の問題でございますが、韓国漁船の日本専管水域に侵犯いたしました状況につきましてお答えいたします。  ただいまお話のありました、漁業協定発効後、当庁の巡視船艇が視認し取り締まりを行なった韓国漁船の日本漁業水域における侵犯状況は、表になっておりまするが、次のとおりでございます。  それを年次別に申しますと、ただいま四十年からただいままでのものを持っておりますが、四十年に七件、四十一年に百八十五件、四十二年に百九十七件、四十三年に七百十一件、四十四年に四百三十六件、四十五年に五百三十八件、四十六年は二月末現在で二十六件、以上でございます。
  56. 中村重光

    ○中村(重)委員 韓国漁船の侵犯の状況は、いま御説明をいただきましたが、これの処置はどうしていらっしゃるのですか。
  57. 粟野次郎

    ○粟野説明員 これに対する方針と申しますか、処置でございますが、これは当庁としましては、外務省、水産庁等の関係省庁と協議をいたしまして、行政指導を中心とした取り締まりを実施しておりまして、悪質なものにつきましては、外交ルートを通じまして韓国側に強力に善処方を申し入れておる次第でございます。また、共同規制水域におきましては、日本漁船の正当な漁業の確保、韓国漁船の違法行為の監視、紛争の防止等につきまして、取り締まりを行なっておりまして、さらに当庁の巡視船と韓国の海洋警察隊の警備艇と連携巡視を行なって、協定事項の励行と監視を行なっておる次第でございます。
  58. 中村重光

    ○中村(重)委員 私がその処置はどうしているのかと申し上げたのは、いまのお答えでも、それはそれなりにわかります。当然なことだろうと思うのです。ところが、巡視中に侵犯しているということがわかるでしょう。その場合、漁船に対してはどういう処置をとっているのかということもあわせてお答えをいただきたい。と私が申し上げますのは、最近は、わがほうの拿捕というのはあまり新聞報道等がないわけですが、かつて何件かありまして、拿捕されて向こうに抑留をされたという事実等があるわけです。しかし、韓国の漁船はどんどん侵犯をしているのに、どうもだめじゃないかというようなことで、注意だけに終わっておるというような感じがしてならないのですね。それはやはり漁民の大きな憤激ということになっているわけですが、金持ちけんかせずというのか、大ものはおおようにかまえるということなのか。零細な漁民というのはそうはまいりませんからね。その点はどうなんですか。
  59. 粟野次郎

    ○粟野説明員 お答えいたします。  ごもっともなことでございまして、私どものほうは、何年かそういう体験を経まして、これではならぬということで、悪質なものにつきましては、つまり、領海を侵犯するもの、あるいは何度か同じようなことを繰り返す韓国側の漁船に対しましては、直ちにその現認をいたしまして、そのつどまとめまして、外交ルートを通じて向こうに抗議と申しますか、申し入れをしておるのが現状でございますので、だんだん減る傾向になっております。
  60. 中村重光

    ○中村(重)委員 水産庁にお尋ねしますが、この漁業協定の期限が来た、その協定国のいずれか一方がこの条約の改定等申し入れをしない限り自動延長ということになったとおっしゃる。だから、何にもなかったから自動延長になっているということになってくると、また五年ということだろうと思うのです。いま海上保安庁から御報告でもって明らかになりましたように、韓国側の漁船の侵犯というのが、実に四十三年は七百十一件、四十五年にしても五百三十八件、四十六年は二月末現在で二十六件ということですが、これは意識して侵犯をしているのかどうかという点も一つ問題になるのだろうと思うのですが、対馬の比田勝のほう、これは御承知のとおり専管水域と専管水域とが重なり合っているわけです。共同規制水域というものは専管水域の間にはないのですね。公海もないわけですよ。ここが一つ問題になってくるんじゃありますまいか。私はこれを何とかしなければならない。やはり夜中に操業するのでございますから、暖流に乗って相手国の専管水域の中に入ってくるということだってあるわけです。現に、日本の漁船というものはそういう形で、故意に侵犯をしたのではなくて、暖流に乗ってつい知らない間に韓国の専管水域の中に入っておった。にもかかわらず、これが拿捕されたという事実があるわけです。私は目には目をということは申し上げません。韓国の漁船がこれだけ侵犯をしておるのに、なぜき然たる態度をもって処分をしないのかということを申し上げているのではないのであります。できるだけこういった侵犯は起こらないようにしていかなければならない。起こる原因を除去していかなければならないという考え方から、実は申し上げておるのであります。これだけの侵犯事件というものが、単に対馬の比田勝沖の、そうした西や東の海岸における——私はすべてが侵犯事件であるとは思いません。その一部であろうと思います。しかし一部にいたしましても、専管水域がくっついておる、重なり合っておるというようなことがそうした侵犯事件を起こします以上は、これを引き離していくということが当然構想されなければならないのではないでしょうか。五年の期限が参りましたならば、これらの問題点について検討をするということが私は当然でなければならないと思います。その点いかがですか。
  61. 田中慶二

    ○田中説明員 お答えいたします。  少しことば足らずでございましたが、この日韓漁業協定は、これから後はずっと続きまして、終了させるという意思表示をしたときから一年ということで、五年単位で延長していくわけではございませんですが、ひとつその点御理解をいただきたいと思います。  いま先生のお話しになっております、両国の専管水域が接しております対馬と釜山の間を結びます海域につきましては、これは従来は、いわば一衣帯水の水域でございまして、お互いに行き来をし、またそれらの水域において漁業を営んでおったというふうなことがございます。したがいまして、そういう専管水域が接しておりますところにいたしましても、何しろ海上のことでございますし、明確なる線が引かれていない、海図の上だけのことでございますから、あるいはいま先生のお話のような、善意でもって知らず知らずの間にお互いが専管水域に入っているということもございましょう、またあるいは、そういうことをある程度知りながらもやっているのもあるかとも思いますけれども、これにつきましては、先ほど海上保安庁のほうからお答えがありましたように、韓国とも、外交ルートその他を通じまして、お互いに指導、取り締まりを強化をしていこう、こういうことにしておるわけでございます。
  62. 中村重光

    ○中村(重)委員 まあしかし、それは指導をやって全く効果がなかったのだというきめつけ方は私はいたしません。しかしながら、この数字から見ますと、四十三年が七百十一件だからこれが一番多いわけですけれども、四十四年よりも四十五年はふえている。四十六年も相当な侵犯件数になるであろうということが予想されるわけです。だから、私がお尋ねをいたしましたのは、五年間の期限が十二月に満了したことは事実ですから、その際に協定の改定等々が当然考えられてしかるべきだったのではないかということを申し上げるのであります。実はこれは初めから重なり合っておったのではないのであります。原案の段階では、これは共同規制水域あるいは公海を考えられておったのだけれども、済州島付近が豊漁海域になるわけでありますから、ここを日本が確保したいという考え方があったわけです。そこでこの対馬に近いところの韓国のラインをずっと前に押してきた。そこで結果として専管水域に接することになった。それでは済州島が日本が当初考えておったとおりになったのかということになってくると、これまた韓国の巻き返しによって、当初日本が考えておったようなことにならなかった。私は当時、日韓条約の特別委員会の委員でございますから、しかもこの漁業協定の問題は私が担当しておりましたので、ある程度勉強しておるつもりでございます。もうだいぶん記憶が薄れておりまして、いまの期限の問題だって明らかに記憶が薄れておったということがわかったわけですけれども、大筋は知っているのです。しかしそういったことは実はあったわけです。だから、この五年間の協定期限がまいりましたときに、これらの問題について検討してしかるべきであったのではないかというように思いますよ。いかがですか。
  63. 田中慶二

    ○田中説明員 お答えをいたします。  私は、協定成立当時こういう仕事に従事しておりませんので、あるいは先生のほうがお詳しいのかもしれませんけれども、この協定の第一条を見ますと、専管水域のことが書いてあるわけでございますが、お互いが距岸十二海里で専管水域にする。この場合に、お互いの沿岸から十二海里を引いてまいりますと、重複をする部分がございますが、その点につきましてはこの第一条の三項に「その部分の最大の幅を示す直線を二等分する点とその重複する部分が終わる二点とをそれぞれ結ぶ直線により二分する。」というふうに規定してございまして、押されてこういうふうな線をきめたというふうなことは、この協定の条文を見る限りそういうふうに理解ができるわけでありますが、それはいずれにいたしましても、そのときの事情がいろいろあったろうと思いますが、私どもといたしましては、そういう十二海里の場合でありますと、二十四海里以内のそういう狭い水道でございますから、そういう点の問題につきましては、十分慎重な配慮をいたしまして、日韓漁業共同委員会等によりましても、共同規制水域のみならず、この専管水域についての取り締まり等についても毎年会議を開きまして、そういう点、お互いに指導をして事のないようにやっていこうということに詰めておるところでございます。
  64. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまの十二海里はわかっているんですよ。どこを起点にするかということでこれは議論が分かれるのです。だから釜山と対馬とは、十二海里という形でいく場合、それだけないわけですから、当然、いまあなたが言われることも表面に出てきているのは、そのとおりなんです。これは二分したのだから、それに共同規制水域をつくられなかった、公海がなかったというのはあたりまえじゃないかということ。これを表面的にいえばそのとおりなんです。ところが、やはりそれよりもよりこの協定が円満に行なわれるためには、共同規制水域があることがいわゆるいざこざが起こらないのです。そういう政治的配慮というようなものは協定をつくる場合に働くわけです。これは図面があって、これとこれを結んだのだということをいま説明をすると、その当時のいわゆる草案ということになるでしょうね。その段階ではここへこう引かれておった。ところが済州島の関係でこうなったということは明らかになっておるのですよ。しかし、いまあなたの答弁も間違いでないのです。表面に出ていることで御答弁になる場合には、そういうことは当然出てくることですから、私はそれを否定しようとは思いません。私のは、むしろどちらかというとその前の裏話みたいなことでありまして、それを申し上げている。しかし、期限満了の際に協定の改定について検討すべきではないかということは、こうした相次ぐ侵犯事件がある、あるいは拿捕事件があった、これは問題なんだから、したがって円満にこの協定が遂行されていくというような観点に立って、いろいろそうした障害になるものを除去していくということは当然考えなければならぬということです。それを除去する基本的な問題として、この協定の期限が来た際にこの改定について検討してしかるべきである、これは私の意見であります。だからいまあなたのお答えはお答えとしてそれなりにそれはわかります。要は十二月の十何日ですかに延長になっているわけですから、一応現段階においては終止符を打たれたという形になっています。したがって、いろいろとこういった侵犯事件を起こさないようにどうするかということは運用の問題になってくるわけでありますから、十分施設をすべきものは施設をする、そしてまた外交努力をしていくというような努力を払って、円満に推進をしてもらわなければならぬということであります。  それからもう一つは、沖合いで衝突あるいは網を切ったというような事故が発生をする。そうしたケースがあって、韓国の漁民が日本の漁船に乗り込んできて実に強談判をするといったこと等々いろいろあるわけであります。これらの事件の経過はどうなっておるのか。最近これらの事件の発生はあっていないのかどうか。いかがですか。
  65. 粟野次郎

    ○粟野説明員 お答え申し上げます。  私どもの仕事といいますか、処置を申し上げたいと思います。漁船で、ただいま先生のおっしゃったような事故が起きました場合に、直ちに通報を受けまして、民間取りきめ、すなわちこれは水産庁のほうの御指導によろうかと思いますが、日本の大日本水産会と大韓民国の水産業協同組合中央会との間における、両国の漁船間の操業の安全及び秩序の維持に関する民間取りきめなるものが御承知のようにございますが、これのルールにのっとりまして円滑に現場解決をするように、巡視船をして指導してまいっております。しかしながら、現場解決ができない場合には、いまおっしゃったように、韓国漁船員がなお日本漁船に乗り込んでくる、あるいは退去しないという場合が間々ございまして、このような場合には、日本への帰港はできるだけ避けさせまして、韓国の海洋警察隊に連絡しまして当該漁船員を引き渡すというような処置をとっております。  具体的なことにつきましては、ただいま警備二課長がおりますので、御要望があれば御説明申し上げたいと思います。
  66. 中村重光

    ○中村(重)委員 よろしいです。時間もありませんから、これで終わりますから。  ただ、私は強く要望をしておきたいことは、これは大きな政治問題ということで、事務当局の皆さんにお尋ねをしたり御意見を伺うということは適当でないかもしれません。ただ、日本が大国であるというその大国意識が過剰になって、日韓親善というようなことにウエートを置くのあまり、零細な漁民にこれがしわ寄せされる、犠牲が押しつけられるという形であってはならないと私は思います。だから、実務に当たられる皆さん方が、その点は十分配慮されて遺憾なきを期してもらわなければならないということであります。  また、いろいろ具体的な問題等々、私も資料の整備もございます。だから、その資料をもって時間があります際にお尋ねをいたしたい、そのように考えます。  きょうはこれで終わります。
  67. 八田貞義

    八田委員長 相沢武彦君。
  68. 相沢武彦

    ○相沢委員 最初に、特恵供与に踏み切ったあとの各業界に対する影響と具体的な対策の問題について、若干、前回質問を残しておきましたので、それをお尋ねしたいと思います。  一つはジュート業界でございますが、すでにこの業界は親会社と下請会社とで親子ぐるみの転換に取り組んでおるようでございます。しかし、大手と目される四社ぐらいのところはかなり力がありますので、わりあいスムーズにいくのではないかということですが、関西のほうにある下請は、大体二百社内外、規模は相当開きがあるそうでありますが、大体零細企業が多いのではないか。特に親会社から機械を借りてやっているようなちっぽけなところがだいぶあるようでありまして、設備を整えるにしても非常な困難が伴うわけであります。これまで、いま話しましたように、生産機械を親会社から借りてその工賃かせぎというようなことでやってきたところは、これから新しく機械を設備するにしても余力がないわけですが、こういうところに関して、どういうような具体的な行政指導をおやりになる考えかどうか、承っておきたいと思います。
  69. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 ジュート工業の構造改善につきましては、一番にはジュート製品の今後の需要が増加することが予想されます部門、たとえば工業用の資材とか、それから織物で申しますとインテリア関係の織物、そういったような方面にいま重点を置きまして、ジュート工業内部でのいわば事業の転換を考えますと同時に、ジュート外への転換といたしまして、たとえば食品工業等へ転換することを業界として考えております。それからもう一つ、ジュート工業の中ではございますけれども、海外への進出というのも考えておるのでございます。  しかし、ただいま先生の御指摘のように、下請が約二百社ございまして、これも一緒に考えていただきませんと、産業ぐるみの構造改善ということになりませんので、親の四社が事業転換をいたします場合、ただいま開銀融資をしていただくように大蔵省といろいろお話をしておるところでございますけれども、そういう際に各親会社が、個々の下請企業をどうするか、その計画も一緒に出していただきまして、たとえば新鋭織機を買い入れましてそれを下請に貸し付けるとか、それからあるいは転換先の仕事に使うとか、それでもどうしてもだめな場合というのは、たとえばその他の仕事への転換のめんどうを見るとか、そういうようなことで、下請への配慮を十分するということを条件にして親会社に対する構造改善資金の融資をする、こういうような方向で構造改善を考えておる次第でございます。
  70. 相沢武彦

    ○相沢委員 いまいろいろと対策をお考えのことを述べられたわけですが、ジュート業種に関しては、発展途上国のパキスタンやインド、タイのほうが、世界市場の八〇%を占めているわけでありますし、かえって先進国みたいな立場にいるわけであります。いま御答弁の中にありました海外進出も考えているといいますが、こういった立場からいきまして、海外進出の成功の可能性という点について、通産省としてはどのように判断されますか。
  71. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 ただいま海外進出の例といたしましてはタイへ進出いたしまして、混紡織物をつくっているという例があります。海外進出は、ねらいといたしましては、海外の割り安な原料を使いまして、割り安な労賃で競争力のある製品をつくるということでございます。ただ、現地のいろいろな状況等ございますので、私ども楽観はいたしておりませんけれども、企業の努力によりまして、成功の道というのはあるものと考えております。
  72. 相沢武彦

    ○相沢委員 特に、先ほど申し述べました小さい零細企業のような場合は、非常に転換がむずかしいケースでありますので、かなり手厚い行政援助を行なって、成功するように一そうの強力な指導をお願いしておきたいと思います。  次は、木製の食卓用品業界のような、企業が小さくて近代化促進法の対象になっていないようなケースなんですが、転業を考えながらも、中級あるいは高級品への市場開拓をしようという経営方針等立てているようでありますが、こういった小さな企業は労働力も乏しいですし、特に近促法の対象にならない小さなこういった業者の部分に対しては、ほかの部分に比べて何か特別な対策を考えておられるのかどうか、その点を伺いたいと思います。
  73. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 木製品と申しますより木製の食卓用品の業界は、先生御指摘のように、非常に小さい規模の業者が全国に散在している状況でございまして、業界がまとまりまして近代化促進計画をつくるというようなところまで至っていないのが現状でございますので、資金面につきましては、中小企業設備近代化資金を貸し付けるということで近代化を助成するということにいたしておりますが、そのほか、木製品の生産に用います専用機械を、これは主として省力的な専用機械でございますが、雑貨センターの専用機械の試作制度に乗せましてつくって、これを中小企業の使用に供するというようなこともいたしております。また、技術面におきましては、各県の工業試験場あるいは指導所、それから通産省の製品科学研究所等におきまして、いろいろな面での技術指導を行ないまして、後進国と競合しないような製品の高級化に努力しておる次第でございます。  それからまた、木製品の一つの問題は、原料の確保の問題でございます。これは一次産品買い付け促進事業という制度がございますが、その補助金を活用いたしまして、海外の木材の供給源を確保するためのいろいろな調査も行なっております。  それから、製品の高級化にも関連するわけでございますけれども、海外の市場の状況を把握する、あるいは競争国の製品の実態をよく知るといったような意味から、ジェトロにお願いいたしまして海外市場の調査を行なうといったようなことで、市場の開拓もはかっておる次第でございます。
  74. 相沢武彦

    ○相沢委員 かつら業界のようなケースについて伺いたいのですが、従来、人毛かつらの業界では、需要のほとんどがアメリカ市場へ依存していたわけでございまして、近年発展途上国からの追い上げが非常に急でありますし、輸出もほとんど期待できなくなっている現状であります。経営方針を変更しまして国内需要に切りかえるというわけですが、すでに国内の場合は、ヘアピース等によって、非常に安いということで主力を握られているわけでありますし、また、これまでほとんど海外に依存していたということで国内の流通経路を持っていないのですが、こういった人毛かつらの業界に対してはどういう指導を考えられますか。
  75. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 かつらにつきましては、昭和三十年後半ごろから輸出産業として発展してきたのでございますけれども、その後、後進国の追い上げ等々がございまして、輸出額は減ってまいりました。ただ、国内におきましては、かつらの需要は非常に伸びまして、全般的に見ますと、たとえば昭和四十四年に五十四億円の生産があったと推定されますけれども、四十五年になりますとそれが五十九億円というようなことで、全体としては順調に進んでいるように考えられます。そのうら合繊のかつらに関しましては、先ほど五十九億という数字を申し上げましたが、大体全体の二〇ないし二五%程度が合繊のかつらによって占められているというような状況でございます。  全体としての需要は伸びておりますので、業界としてはまずまず順調かというような感じでございますが、ただいま先生の御指摘のように、流通経路等についてはまだ必ずしも確立したというようなルートがございませんので、ただいま日本かつら工業組合が中心になりまして、流通組織をはっきりさせますために、たとえば高級品の人髪のかつらは美容院に流す、それから中級品はデパート、合繊かつら等の実用品はたとえばスーパーといったように分野を分けて流通をさせる。あるいはその製品に工業組合の推奨マークをつけまして、それによりましてその品質の維持をはかるとか、そういうようないろいろの策を行なっておりますが、政府といたしましては、昭和四十三年に近促法に指定いたしておりまして、設備の近代化——これは御承知のように、かつらに毛を植えつける段階になりますとほとんど手仕事になるのでありますけれども、その前工程の、毛を洗って脱色をいたしまして染色をするというようなことを中心にしまして設備を近代化するとか、それから製品を高級化するとか、それから経営の近代化をはかるとか、進んで需要の開拓をはかる、こういったような仕事を工業組合を中心にして推進するということを考えておる次第でございます。
  76. 相沢武彦

    ○相沢委員 そうしますと、販路を分ける、あるいは流通経路を分けるとおっしゃいますけれども、人毛かつらの業界が国内需要を目ざしていく場合には、合繊のほうに切りかわっていく比率が多くなって競合するのか、あるいは、合繊のほうはこれまでやってきた業界にまかして人毛かつらの販路、需要を伸ばしていこうとされるのか、そららへ力を入れて行政指導をされようとするのか。その辺の区別をもう一ぺんお伺いしたいと思います。
  77. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 人毛のかつらは高級品だそうでございまして、合繊のかつらは実用品ということで、生産業者もやはり、実用品ならば実用品、高級品なら高級品に特化するということによりまして生産も合理化していく、こういうように生産分野と販売分野を分けていくといったような考え方で指導してまいりたいと考えておるわけでございます。
  78. 相沢武彦

    ○相沢委員 もう一つなんですが、はきもの業界の中で、底がゴムまたはプラスチック製で甲が布製、すなわち運動ぐつ等の業界なんですが、今度の特恵供与に関係なく、この業界は輸入面、輸出面に大きな打撃をすでにこうむってきたわけなんです。いよいよ法案が通りまして、本年七月以降は輸入関税が五%になりますし、発展途上国から非常に安い製品が出回ってくると、これまで非常に打撃を受けた上にさらに打撃を受けるわけなんです。こういう点についてひとつ配慮を考えておられますか。
  79. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 布製につきましては、まず特恵面におきましては、特恵供与の幅を普通の一〇〇%カットでなしに五〇%カットにするということで、特恵からくる影響の緩和を極力はかった次第でございますが、国内の合理化の推進と並びまして、ただいま業界の中には海外進出をしようという動きがございまして、すでに台湾へは、大企業及び中小企業を含めまして五社が進出いたしております。中小企業の海外進出は、いろいろ資金の不足あるいは情報の不足というような点に問題があるわけでございますが、中でも情報面の不足というのが、進出をします場合これを妨げている面が多うございますので、現在、商工会議所にございます情報提供サービス事業を活用いたしまして、その他の税制、金融あるいは海外投資保険制度といったものと並びまして、海外への進出も指導してまいりたいと思います。  重点といたしましては、国内の体質の強化というのがやはり主眼になると思いますが、特に最近の発展途上国との競合等々から、海外へ進出しようという業者に対しましては、ただいま申しましたような指導もあわせてやっていきたい、かように考えるわけでございます。
  80. 相沢武彦

    ○相沢委員 これまで、中小企業庁の中小企業に対する対策あるいは指導というものは、企業ごとにやってきたというケースが多いわけでありますが、今度の特恵供与に伴いまして、いろいろと各事業ごとに影響のあらわれ方が違ってくるので、前回も申し上げましたけれども、各事業ごとに対する適切な指導というものについて一そう強化をしていただきたいということを申し上げておきます。  次に、関税引き下げに伴う小売り価格の引き下げについてお尋ねをしたいのですが、四月一日から実施を予定されている関税率の改正に伴って、通産省ではとりあえずといいますか、乗用車とカラーフィルムを対象として、輸入原価の引き下げ分を一〇〇%消費者に還元して物価政策の実効をあげるための行政指導をする、こういうことが出されておりますが、この問題に関しまして若干お尋ねをしたいわけです。  消費価格モニターを活用して一〇〇%還元が実現しているかどうかを監視することにする、こういうようなお話を承っておるのですが、この価格モニターの活用ですが、これまでにも消費生活改善監視員という制度が設けられて七百人ばかりいたと聞いております。今回はこの人たちもダブってやらせるのか。あるいは別個に新しく価格モニターを募集してやるのか。それからまた具体的な任務の内容はどういうことを考えておられるのか。この点をまずお尋ねします。
  81. 両角良彦

    ○両角政府委員 今回の関税定率法等の改正が成立をいたしましたならば、ただいま御指摘のように、私どもは、関税の引き下げ分あるいはそれに伴います物品税の引き下げ分というものは、当然小売り価格において引き下げられていくべきたてまえであるというに考えまして指導をいたしておるわけでございますが、ただいまお話しのように、末端におきます小売り価格がはたしてそのように引き下げられていくかどうかという点につきましては、実は四十六年度から新しく消費価格モニター制度というものを発足をいたしまして、全国的に小売り価格の実態というものについて、消費者の側からひとつ実態の把握及び意見提出をお願いしたいと考えております。  ただいまお話しの消費生活改善監視員、この制度は実は家庭用品品質表示法あるいは電気用品取締法等々の関係の苦情の処理、あるいはその施行状況の消費者のサイドからする監視というようなことに、主たるお役目をお願いをしておりますので、たてまえとしましては、価格引き下げ問題は価格モニターのほうにお願いをいたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  82. 相沢武彦

    ○相沢委員 人員は全国で五百人ですか。この五百人の都道府県の振り分けですけれども、大都市に集中してやるのか、それともかなり遠隔の過疎ぎみのそういった地域まで設けるのか、その辺はどうなっていますか。
  83. 両角良彦

    ○両角政府委員 価格モニターは、全国で御指摘のように五百名を予定をいたしておりますが、その配置といいますか、振り分けは、もちろん全国的に各府県単位に一定の数を振り分けまして、それによる価格モニターの選定ということをお願いをしていきたいと思っております。
  84. 相沢武彦

    ○相沢委員 今回カラーフィルムと自動車を選んだのは、一般家庭で親しまれている品目であるということ、また特に自動車の場合は価格引き下げ分が大きいということで、経済企画庁からの物価対策の面からの要請に応じてこの二品目を選ばれたと思うのですけれども、関税率改正の対象になる物価関係の品目が三十八品目ある、こういうふうに出ておりまして、通産省としては、この二品目だけでやっていくのか、それとも今日一般家庭に親しまれて物価抑制に効果あると思われるものについて順次またやっていくのか、その辺のお考えはどうですか。
  85. 両角良彦

    ○両角政府委員 関税率の引き下げに伴いまする小売り価格の引き下げという点で、カラーフィルムと自動車というものを特にメンションをいたしましたのは、その上げ幅がたいへん大きくてかつ輸入量も相当あって国民生活関係が深い、こう考えた次第でございまするが、それ以外の引き下げられます品目につきましても、当然その引き下げ分は小売り価格におきまして反映をしていただくべきものと考えております。ただし、これ以外の品目はほとんど輸入量が非常に少ない、あるいは関税の引き下げ幅がたいへんに少ない、あるいは半製品、原料といったように直接消費財あるいは消費物資ではないといった品物が大多数でございますので、物価面で大きな影響はあまりない品物があるわけでございます。しかしたてまえは、御指摘のように引き下げ分は価格において引き下げるということで指導をいたします。
  86. 相沢武彦

    ○相沢委員 これまでも何回か経企庁のほうからも要請があって、今回いよいよ自動車とカラーフィルム、取り組んで、この二品目については実施をされたわけで、通産省としては非常に一歩前進の姿を示したわけでありますが、これだけやっておけばだいじょうぶだろうというような考えじゃなくて、そんなに大きく物価に直接響かないものにしても、やはりまた輸入量が少ないにしても、関税引き下げ分が消費者に還元されるということは、原則として当然これはやっていただきたいことでありますし、順次、体制でき次第にやはりほかの品目についてもやっていくという積極的な態度をどうか捨てないで、その点については努力をしていただきたいということは強く要望しておきます。  それから、これまで輸入自由化や関税引き下げ、輸入ワクの拡大で輸入原価が低下しても、それが輸入商や中間の流通業者などに吸収されて消費者に還元されない例があった、こう聞いておりますが、特に通産省所管の業種でそういった例が幾つかありましたか。あったとすれば一体どういう品目ですか。
  87. 両角良彦

    ○両角政府委員 御指摘のように、当然関税の引き下げ分は小売り価格において引き下げとして反映さるべきである、またそのために、当省として十分監視をいたし、あるいは指導をいたしまして、常時怠りなく努力をすべきことは当然でございます。ただ、過去におきまして、そのような引き下げの面が途中で吸収をされてしまって、そして小売り価格に反映されなかった例というお尋ねでございますが、私どもは的確にそういうような中間的な吸収というものが行なわれたものはないと信じております。
  88. 相沢武彦

    ○相沢委員 カラーフィルムについての小売り価格の引き下げにつきまして話し合いの結果の一項目ですか、実施の時期は現行関税のもとでの輸入品の在庫が本年七月末分程度残っているので、できるだけ早い方向で検討するとありますが、この在庫が残っている七月末まで待つのか、あるいはたとえ残ったとしてももう少し早い時期にやろうとされるのか、あるいはやるように指示されるのか、その辺のところをもう少し、一歩突っ込んで御答弁いただきたい。
  89. 両角良彦

    ○両角政府委員 在庫が残っておることは事実でございます。したがいまして、七月末までに在庫がさばけたならば、それ以後の品物において引き下げを行ないたいというのが業界の意向であろうと思いまするが、私どもはできるだけ早く引き下げ分は価格に反映をしてほしいという要請を強く行なっておる次第でございます。
  90. 相沢武彦

    ○相沢委員 二十五日の日経の新聞に「下請け代金支払い停滞で 繊維卸売を緊急調査」という記事が出ておりましたのですが、一見これを見ますと、今度の繊維問題等でかなり業界大きな打撃を受けることになりますし、それによるところの緊急調査ということで、関係者にとってはかなりショッキングに受け取られるのじゃないかと思いますが、この記事が出た背景といいますか、このとおりでいいのか、あるいはもう少し事情があったのか、この辺のところを簡単に承りたいと思うのです。
  91. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 お答え申し上げます。  新聞には緊急調査と出ておりますが、これは格別の緊急ということではございません。公取で行なっておる特別調査というのでございます。公正取引委員会では、下請法の運用にあたりまして、定期調査として年に四回定期的にやるものと、それから随時、臨時的にやる特別調査、この二つを行なっているわけでございますが、今年度におきましては、繊維製品の卸売り業者のうちで、資本金三千万円以上の事業者一千五十七を対象といたしまして現在書面による調査を実施いたしております。まだ結果は集計できておりませんが……。  なお、この繊維関係卸売り業者を特別調査対象に選びましたのは、この業界におきまして、親事業者が製造委託をした場合に、これは下請法の第三条で、一定の事項を書いた注文書を交付しなければならないというふうに書いてございますが、それが必ずしも十分励行されていない。このために値引き等の不公正な行為が行なわれているというような問題があるんじゃないかということが、下請法の運用の協力団体等との事情聴取によってわかりましたので、それによりまして特別調査を実施することにいたした次第でございます。
  92. 相沢武彦

    ○相沢委員 繊維業界の場合は、対米繊維輸出の一方的な自主規制による注文減と、それからまた、このたび中小企業庁が中小企業カルテルの整理方針を打ち出されておりまして、繊維関係は三十一カルテルですかありますので、非常に打撃になる。繊維業界を取り巻く環境は非常にきびしいということで、当然これは前からお考えになっていたと思いますが、その書面調査はいつごろから開始をされたのですか。それからこれが回収されてまとまるのがいつの時点になりますか。
  93. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 お答えいたします。  書面調査は二月でございます。それで結果が出てまいりますのが四月中ということをめどにしております。
  94. 相沢武彦

    ○相沢委員 これまでの書面調査によってさらに立入り検査を行なわなければならない発生率は七、八%だ、こういうふうに聞いておりますが、公取として、大体推測として今回の調査はどれくらいの発生率になると見込んでおられるか。また四月中には取りまとめると言いましたが、その後やはり関係の下請業者のほうから直接事情聴取をやってから立ち入りされるわけですね。そういった点の体制は万全なのかどうか。やはりこれはタイミングを逸しますと、非常に大きな影響が出てくると思うわけです。すでに繊維業関係の方の中から、特に下請だと思いますが、非常に苦しいということで一家心中をはかったような、そういった悲しい報道もありますし、またこれからも、これはタイミングを失してだんだんずれてしまいますと、それが起因しまして、一家の柱が行くえ不明になるとか、あるいはまた心中が続くというような、そういうような悲劇が続出するおそれもありますので、やはりそれこそ緊急調査の対策を強化すべきではないかと思いますが、その点はいかがですか。
  95. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 お答えいたします。  書面調査をいたしましてあと立ち入り検査の発生率、大体現在までのところ七%くらい。したがいまして、本件につきましては、結果を見てみませんとわかりませんが、大体六、七%程度ではないかというふうに考えております。  それからなお、公取の体制の問題でございますが、公正取引委員会で下請法の施行業務に携わっている人員は、本局と地方事務所合わせて現在四十四名でございます。今回の調査は、全国にわたって特別調査を行なったわけでございますが、四十四名の全員がこれに携わるということになると思います。現在は、まだ書面による報告を聴取している段階でございますが、整理は、先ほど申し上げましたように、四月中には終わりたいということでございます。  なお、書面により調査の結果、下請法違反の疑いのある親事業者が見出されれば、裏づけ調査として、その下請事業者からさらに実情を調査した上で、親事業者に対して立ち入り検査を行ないまして、そこで違反事実が確認されれば、それを改善させる勧告をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  96. 相沢武彦

    ○相沢委員 立ち入り検査の場合はあらかじめ予告をして行なうということになっておりますし、ばく然と立ち入り検査しても問題の核心がつかめないということがありますので、その点、下請の場合は非常に親会社に対しては言いづらいという立場もありますし、その点よく配慮してやってもらいたいということが一つと、それから現在下請代金の平均滞留月数、ここにいただいた資料では、四十五年の十月で〇・七四となっておりますが、ほかの全体の業界の平均滞留月数と比べて、繊維業界だけ取り出して調べた資料がございますか。
  97. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 いま全般的な資料を手持ちしておりませんが、繊維のメーカーについて、これは定期調査で調べました。ただ数が少のうございまして、四十二社でございますが、四十五年の十月現在で、平均の滞留月数が〇・四六となっております。  それから現金と手形の割合で、現金の比率が六一%、これは全業種で申しますと三一%。それから先ほど言い落としましたけれども、平均滞留月数、繊維メーカーの場合〇・四六というのは、全業種でございますと〇・七四でございますから、いいわけでございます。  それから手形のサイトでございますが、九十日未満が繊維メーカーの場合でございますと三二%。それから全業種でございますと、九十日未満が一七%ということになっております。ただ、これは四十二社でございますので、これでもって全体の傾向を推しはかるわけにはいかないというふうに考えております。
  98. 相沢武彦

    ○相沢委員 調査規定の重点は、下請代金支払遅延等防止法に定める親事業者が、下請事業から現品を納入してから六十日以内に代金を支払う、これに違反する者ということになっておりますが、いまお話の出ました手形の問題で、長いのでは百二十日あるいは百五十日に及ぶ長期手形が目立ってきておるということですが、実際立ち入り検査をした時点で、こういった長期手形の発行が判明した場合には、具体的にどういう行政指導をなさいますか。
  99. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 立ち入り検査をいたしまして、非常に長期の手形、百二十日あるいは百五十日以上というようなものが見つけられた場合には、行政指導あるいは勧告という措置によってこの手形期間を短縮させております。
  100. 相沢武彦

    ○相沢委員 それから改善命令の問題でお尋ねをしておきたいのですが、これまではメーカーに対してやってきまして、非常に浸透してきた。今回卸売り、問屋に対して初めて調査をされるわけですが、もしすでに浸透していると思わほるメーカーに対して、この改善命令を受けながら再び支払い遅延をやっているような実例があった場合には、どう対処されますか。
  101. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 従来、改善命令、勧告あるいは行政指導を受けながら再びそういうことをやった者に対しては、これはきつい厳重な措置をとりたい、再犯に対しては勧告等の厳重な措置をとりたいというふうに考えております。
  102. 相沢武彦

    ○相沢委員 下請法は、下請取引において親事業者の優越的な地位の乱用を規制するものでありますが、下請事業者の最大の願いは、安定して、しかもかつ継続的に受注を確保することだということで、実際に担当される方もときには板ばさみになると思うのですが、非常にこの点むずかしいと思うわけです。支払い条件が悪くても取引を継続してほしいという立場にある下請の人たちの立場も考えなければならないし、また一応きめられた法を施行しなければならないというあなた方の立場、今後もこの繊維の緊急調査の場合に、やはり両方の立場をよく配慮しながら行政指導に当たっていかなければならないと思いますので、その点の十分なる配慮を望んでおきます。  以上で終わります。
  103. 八田貞義

    八田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十七分散会