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1971-03-24 第65回国会 衆議院 商工委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年三月二十四日(水曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 八田 貞義君    理事 浦野 幸男君 理事 鴨田 宗一君    理事 橋口  隆君 理事 中村 重光君    理事 岡本 富夫君       石井  一君    大久保武雄君       神田  博君    坂本三十次君       始関 伊平君    塩崎  潤君       前田 正男君    増岡 博之君       松永  光君    山田 久就君       石川 次夫君    加藤 清二君       近江巳記夫君    松尾 信人君       川端 文夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  宮澤 喜一君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         経済企画庁総合         計画局長    矢野 智雄君         農林大臣官房技         術審議官    加賀山國雄君         食糧庁次長   内村 良英君         通商産業省通商         局長      原田  明君         通商産業省公害         保安局長    莊   清君         通商産業省繊維         雑貨局長    楠岡  豪君         通商産業省鉱山         石炭局長    本田 早苗君         中小企業庁長官 吉光  久君  委員外出席者         科学技術庁資源         調査所長    酒井忠二三君         農林省農政局参         事官      岡安  誠君         農林省農地局参         事官      住吉 勇三君         運輸大臣官房参         事官      原田昇左右君         運輸大臣官房政         策計画官    大久保一男君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部業         務課長     服部 経治君         商工委員会調査         室長      椎野 幸雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件、私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。順次これを許します。橋口隆君。
  3. 橋口隆

    橋口委員 きょうは、石油問題について大臣に若干御質問申し上げたいと思います。  テヘラン協定に端を発した石油問題は、日本経済界にとっては現在最大の問題でありますし、また、最も大きな政策課題にもなっていると思うのであります。そういうことで、去る三月十二日この商工委員会に、石油に関する専門家の方々を四名お招きをいたしましてそしていろいろとその御意見を伺ったのでございます。それに関連をいたしまして、ひとつ通産大臣の御所見を承りたいと思う次第でございます。  初めに、価格問題についてお伺いしたいと思いますが、現在、ちょうどOPECとの第三回目の交渉に入っているはずでございますが、これが見通しもつかない状況で、大臣もなかなかデリケートな立場におありかと思いますが、一応参考人意見を総合いたしますというと、メジャーに対する値引き交渉は見通し非常に困難である、また値上げ幅二千億円に近いものを石油業界で吸収するのも非常にむずかしい、そういうような意見であったわけでございます。われわれも、国民経済立場からすれば物価が上昇してはいけない、そういう意味で、最終消費者にそのしわ寄せを持っていくことは好ましくないと考えるわけでございます。また大臣も、再三それについて言明をされておりますが、そういう価格問題について、どういうふうに大臣はお考えになっておりますか、一応の御見解を承りたいと存ずる次第でございます。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 精製業界におきましても、いわゆるメジャーと当初統一交渉と申しますか、あまり適当なことばではございませんけれども、そういう形で話をいたしておりまして、話を何回かやっておりますうちに、メジャーの中にも、わが国立場というものにある程度の理解ができるというふうに表示をしてきたものもございます。しかし、理解はできるが、わが国以外の国との供給契約等関連から、表面的にわが国に対してだけ、全員そろってこういうふうにいたしますというふうなことはなかなか申せない。したがって、そのような理解の上に立って、今度はメジャーのおのおのとその関連精製会社であるところと個別的に話を進めたい、こういう申し出があったようでありまして、これは私どももっともなことだと考えましたので、その個別交渉で、ひとつわれわれの主張しておったことを具体的に生かしてもらいたいということで、個別の折衝に入ったというのがただいまの段階だろうと思います。  その結果がどのように出てまいりますか、おのおの一律の結果になるのか、あるいは必ずしもそうでないのか、ただいまから予測をすることができませんが、いずれにいたしましても、その結果と、それから精製会社側自身合理化と申しますか、精製会社側自身努力、それをあわせまして、最終的にどの程度の値上げはやむを得ないかという答えが出てくるわけでございます。私ども、どの部分メジャー側の譲歩であり、どの部分精製会社合理化であるかというようなことについて、これは各社によって事情も違いましょうしいたしますから、一律ではなかろうと思っていますが、ともかくそのネットの答えが一応値上がり分になる、こういうふうに予測をいたすわけでございます。その金額は、したがいまして、ただいまのところさだかでございませんし、いずれにしてもただで済む事態だとは考えられませんが、そうやって出ました値上がり分を、各製品の間でどうやって開くかということにならざるを得ないかと思っております。  その場合、ガソリンのように、いわゆるモータリストというのでございますか、マイカー旅というのでございますか、という人たち最終的に消費するガソリンのように、そこで波及効果がとまりますものと、電力とか、あるいはナフサだとか鉄鋼とかいうようなもののように、それから先に波及効果が行きますものと、いろいろあるであろうと思いますが、私ども、いずれにいたしましても、波及効果国民経済全体に非常に大きいというようなものについては、よほどそれを慎重に考えなければならない。したがって、開き方にいたしましても、そういうことを考えながらやってもらいたいものだというふうに実は思っているわけでございます。
  5. 橋口隆

    橋口委員 この価格問題は、国民経済上非常に大事な課題でございますから、大臣もいまのお話のように十分御検討されていると思いますが、一つわれわれが非常に不満に思いますことは、メジャーの言いなりになっていくということ、これが非常に残念だと思います。そういう意味で、政府でもどうか業界を鞭撻されまして、少しでもメジャーとの折衝が成功するように御鞭撻をいただきたいと思います。また、企業合理化もまだ多少の余地もあるかと思われますし、そういう点でも努力が必要かと思います。できるだけ最終消費段階に、もうすでに波及しているようでございますけれども、それを最小限に食いとめられるように、ひとつ御尽力をお願い申し上げたいと存じます。  そこで、今回のこのOPEC値上げは、向こうの言い分によりますと、中間メジャーが利潤を上げ過ぎているから、それに対する一つの反撃である、最終消費国に対して負担をかける意思はないということは、現地でもたびたび言っているところでございます。そういう意味でも、今後どうしてもわが国としても、今回の交渉を見ていると、全然発言権がないというのは非常に遺憾に思います。そういう意味で、この前ここへお招きいたしました業界の代表の方も、来たる六月のモスクワ世界石油会議においては、どうしても産油国メジャー、それに消費国を含めた世界的な石油調整機構を提案しよう、こういうことを言っておりました。また経済同友会あたりでも、国連の中に国際資源調整会議を設けて、そこでみんなで協議するような組織をつくりたいものだ、こういう意向を漏らしていることは御承知のとおりだと思います。またきのう、大臣も御列席になっておりましたが、この商工委員会におきまして、岡本委員からの質問に対しまして総理大臣も、そういう世界的機構については自分のほうでも検討してみたい、こういうお話があったようでございます。これにつきまして通産大臣は、どういうふうにこれを具体化して今後外交交渉をお進めになりますか、そういう点をちょっとお伺いしたいと思います。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このたびのOPEC側の動きというものには、いろいろ批判も批評もございますと思いますけれども、ああいう国の立場に立って、自分たち産出する唯一の品物を、できるだけ有利な条件で売って、そうして自分の国の開発に役立たせたいという動機そのものは、理解をすることができると思います。そうしてこれらの産出国は、やがてはおそらくは流通機構まで自分でやりたい。そこまでいけば一ただいまは、まあ産出はいたしますけれども流通機能を持っていないということで、そこにメジャーが入ってきているわけでございますから、そこまできっと考えておるのだろうと想像をいたします。そのような立場から、たとえばイランのパーレビ国王のように、この十数年間で、われわれの売っているものの値段は、われわれの取り分は上がっていない、場合によって下がっている、しかし最終消費者が払う分ははるかに上がっておる、その差額はだれが取ったのかということを言っておられるようで、それは、一つ消費側における課税というようなもの、それが消費国国家財政収入になっておるということについての批判もあろうと思いますけれども、大きな部分は、中間にあるものがそのマージンを取ったのではないか、こういう意味合いだと思いますので、そういう考え方産出国にあるということは、私どももしばしば聞くところでございます。  わが国として、これからどのようにこの問題を考えていくかということでございますけれども、これは御承知のように、わが国自身自分の手によるところの開発を進めていかなければならないということについては、大方の御意見が一致しているように思いますので、そのための施策は進めてまいりたいと思いますが、同時に消費国として、今回のように一言もものが言えないかということになりますと、これはやはり問題でございますから、昨日も総理大臣が言われましたような、何か国際的なそういう場——昨日はお話が出ませんでしたが、OECDあたりでもこの問題は議論になっておりますので、国連がいいか、OECDがいいか、あるいはモスクワで開かれます会議のようなものもそういう糸口になろうかとも思いますが、何かそういう場をさがしていく必要があろう。具体的にどこということを、ただいまの段階で、各国事情もございますから、申し上げられませんけれども、それも一つの方法であろうと考えております。  ただ、その問題がやや微妙であると考えられますのは、今後われわれが開発していくというときに、いろいろな意味メジャーと協力をしていったほうがわが国にとって便利である、あるいは国益になると考えられる場合が、現実の問題としては多々あろうと考えられます。そういたしますと、わが国立場は、やはりメジャーに対して両面の立場を持していかなければならないであろうと思います。そのことは、別に少しも批判さるべきことではないので、現実消費者側としての立場と、それから開発をしていこうという立場とあるわけでございますから、ただメジャーと事をかまえるだけで問題は済むわけではない。そういうことも考慮しながら、ただいまの消費国としての発言の場というものを国際的にさがしてまいるべきであろう、こう思っておるわけでございます。
  7. 橋口隆

    橋口委員 どうかただいまのように、ひとつ積極的な姿勢で今後の施策に取り組んでいただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。  そこで、この石油企業合理化ということが非常に課題になってくるわけでございますが、御承知のように、いま日本石油企業というのは非常に底が浅いので、合理化段階というのは、流通過程が残された一つの道ではないか、こういわれております。その意味で、最近パイプラインの問題が非常に大きくクローズアップされてきたわけでございます。これは、われわれの自由民主党の内部でもそういうような調整をはかりまして、また関係大臣の間で話し合いも持たれた由でございますが、遺憾ながらいままでのところは調整がついていないようでございます。  ところが運輸大臣は、さきの運輸委員会、またきのうの内閣委員会におきまして、パイプライン運輸省専管である、したがって、われわれは四月初旬からもうその着工にかかるのだ、こういう発言があったようでございます。この閣僚間の話し合いがつかないうちに、国鉄だけがそれを押し切って早目に着手をすることは、どうしても理解がしかねるとわれわれは思うのでございます。  御承知だと思いますが、世界じゅうで鉄道に沿うてパイプラインをつくっているところはどこにもないそうでございます。これは、民間の調査団、あるいは政府が派遣された調査団の報告でもそうでございます。アメリカでただ一カ所だけ、石油の全運輸量の五%に相当する分だけが鉄道路線に沿うている。しかし、それはディーゼルエンジンが走るのであって、そこには電流が通じているわけではない。そういうことで、おそらく世界欧米各国を通じて、パイプライン鉄道に沿うているところはどこにもないはずでございます。また技術的な見解によりますと、迷走電流によって非常に電食の問題が生じて危険である、そういうようなことが一般にいわれておるのであります。それをわが日本だけがやるということは、これは私は非常に危険ではないかとも考えられるわけでございます。また世界列国の法制を見ましても、パイプライン所管省は、どこの国でも経済関係の省でございます。経済省燃料動力省あるいは工業省というような、石油所管するところがその主管官庁になっているわけでございますが、日本ではやむを得ずして通産運輸建設三省共管という一応の案も出ているくらいでございますけれども、それを押し切って運輸省所管、また国鉄がこれをやるということは、どうしてもわれわれ納得のいかないところでございます。そういう意味で、私は明らかに主管大臣通産大臣と思うのでございますが、大臣としては今後どういうふうにこれをお進めになりますか、御所見を承っておきたいと思います。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 関係各省の間で、この問題についていろいろ議論をいたしており、また自由民主党におかれましても調停の立場に立っていただいたわけでございますが、その間いろいろな事情がございまして、結局、運輸大臣建設大臣、私と、過日三人でお話し合いをいたしたわけでございます。これがいわゆる権限やりとりの問題でございましたら、何もお互いに目を三角にして閣僚議論をするというほどの問題ではありませんで、それだけでございましたら、おのずからやりとりのつく性質の問題だと考えておりましたが、実は承ってみますと、多少理念の問題がその底にございます。運輸大臣のお考えによりますと、パイプラインというものは、国鉄タンク車あるいはタンクローリーといったようなものが変形をしてパイプラインになるのであるから、そのパイプラインがどこに敷かれようと、これは純然たる輸送業である、したがって、その認可、料金等運輸省専管に属すべきものである、こういう御主張でございまして、このことは権限やりとりするということではなくて、理念の問題であるというお考えでございます。私もそれについて、若干私の意見を申し上げましたけれども、何ぶんにも国会法律案提出するといたしますと、政府の持っております提出の期限という一応のスケジュールもございまして、その時点も過ぎておりますし、かつ、かなり複雑な法律案にいずれにしてもなろうと考えましたので、三者の意見の一致いたしましたところは、この法律案を作成するにあたっては、建設大臣中心にしてひとつ三省でさらに考えを練ろうではないか、こういうことで三人の会議を終わっておるわけでございます。  したがいまして、私どもとしては、なお三省間の協議を進めていくということにいたしておるわけでございます。運輸大臣がその後どのようなお考えをお持ちになり、あるいは所信を披瀝されましたか、私はただいまつまびらかにいたしておりません。
  9. 橋口隆

    橋口委員 私は、運輸大臣主張されることも一理はあると思います。そういう点で大臣も一応了解されたと思うのでございますが、しかし、それならそれで、関東内陸部につきましては、西部ライン運輸省国鉄東部ライン業界あるいは通産省、こういう所管という一応の妥協案ができているわけでございますから、私は、それによって土地収用なりあるいはその他いろいろな施設が必要でございますから、法案は一本にして出すべきではないかと思います。また、申し上げるまでもなく、もう石油輸送は非常に極限に来ておるわけでございますから、一日もゆるがせにできない。それを今国会に提案をできないということになれば、それだけ非常な困難を生ずるわけでございます。また運輸省がやるにしても、政府全体のそういう了解を得ないで強行することは、非常におもしろくないことだと思います。石油業界としても、おそらく協力しかねるところではないかと思います。  そういう意味で、できるだけ今度の国会に間に合うように、そういう法案提出できるように、大臣のほうで御尽力いただくべきではないかと思うのでございますが、その点に対する御決意を承りたいと思います。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これが権限あるいは監督といったような、いわば量的な問題でございますと、お互いの間で、閣僚間で話をいたしますれば、さしてむずかしくないのでございますけれども、先ほど御紹介申しましたように、運輸大臣の持っておられますのは一つ理念でありますので、理念そのものは足して二で割るというようなことがない性格のものだという、そのような御主張と私は実は承りましたので、それでは早急な法律案の作成はなかなかむずかしい、建設大臣中心にしばらくお話をいたしましょうということで三者別れたわけでございます。したがって私どもとしては、できるだけすみやかに了解点に達して、このパイプラインというのは国民経済的に見ましてたいへんに必要なものでございますので、すみやかに法案提出に至りたい、かようにこれは三者とも共通して考えております。  なお、運輸大臣のお考えあるいは御発言等について、私は批判をいたすべき立場にございませんので、ただいまの橋口委員の御発言は、私から運輸大臣に間違いなくお伝えをいたすようにいたします。
  11. 橋口隆

    橋口委員 いろいろむずかしい立場もおありかと思いますけれども、私は世界の大勢にかんがみまして、どうか通産省はもっと自信を持ってお進めいただきたいと思うわけでございます。そういう意味で、国鉄立場ももちろん利用すべきでございますし、建設省にも応援を求めるべきでございますけれども、どうか通産大臣推進力になって、最も早い機会にこれが実現できるようにお進めいただくように、特にお願いを申し上げる次第でございます。  次に、石油開発体制についてお伺いしたいと思いますが、去る三月十七日の新聞報道によりますと、通産省としては今後の石油開発のあり方についての構想を、一応発表されているようでございます。開発金融体制問題石油公団の今後の機構の拡充の問題、あるいは備蓄の問題、そういういろいろな問題について、広範な政策が盛られているようでございます。いままでもこういう点は非常に声を大にして叫ばれてきたわけでございますが、なかなかそれが実現をしない。ことに、予算段階になりますと大蔵省が首を振ってなかなか思うにまかせない、こういうことで推移して今日のような危機を招くに至ったのではないかと思うのでございます。したがって私は、いまやこの石油開発の問題というのは、事務段階での折衝ではなくて、これはもう大きな政治課題である。そういう意味で、特に通産大臣大蔵大臣と協議されることはもちろんのことでございますけれども内閣全体の課題としてその基本方針を決定をしていただいて、そして思い切って予算を投入しなければ、悔いを後年に残すのではないか、こう考える次第でございます。  そういう意味で、今般発表されました盛りだくさんなその政策が、ほんとうに実を結んで実現するように、特にお願いを申し上げたいのでございますが、今後大臣はどういうふうにこれをお進めになりますか、その点を伺っておきたいと思います。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 資源開発の問題につきましては、通産省といたしまして、すでに私の前任者の時代に、今後の新しい通産政策の大きな柱の一本として重視をしてまいったところでございますけれども、私も昨年来、最近の情勢にかんがみまして、何か根本的に現在のやり方を再検討する必要がある、したがいまして、事務当局に寄り寄り考え方をまとめるようにということを申しまして、私どもの役所では、官房中心作業をいたしました。その段階大蔵大臣に対しまして、この問題の私の見方、それからこの際根本的な体制をつくる必要があるということについてお話をいたしまして、大蔵大臣もこれには積極的に賛意を表されましたので、ただ予算要求としてではなく、ひとつ国全体の立場から両省で共同作業をしようではないか、必要があればその他の省庁にも加わってもらうということで、それはたいへんいいことではないかということで、その共同作業提出いたします素案を、先般作成いたしました。それが、ただいま御指摘になりました報道されたものでございます。  それにつきまして、関係省庁と、ことに通産大蔵になると思いますが、作業を進めてまいりまして、これはただ予算要求で、引いたり足したりということでなく、基本的に政府としての考え予算編成時期までにまとめてしまいたい。それによりまして、所要の予算措置あるいは立法措置というものを考えまして、これは来たるべき通常国会ということが適当ではないかと存じますけれども提出をいたしまして御審議を仰ぎたい、かように考えまして、ただいま鋭意共同作業を進めております。なお、このことにつきましては、総理大臣自身十分理解を持っておられるところでございます。
  13. 橋口隆

    橋口委員 いまの話のように承って、非常に心強く存ずる次第でございますが、なるべく早い機会に実現できますように、特にお願いを申し上げます。  その中で、特にお聞きしておきたいと思いますのは、予算にいたしましても単年度予算でございますが、これを今後は五カ年あるいは十年というような長期計画を策定していただいて、そうして同時に石油特別会計を設置していただくことが、最も必要ではないかと思います。これは長い間の懸案でもございます。また、最近問題になっておりますのは、保有外貨の活用の問題でございますが、この点について特にお聞きしたいと思います。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 財政法の原則であります単年度主義との関連考えておかなければなりませんけれども、少なくとも私自身といたしましては、この関係特別会計のようなものが必要なのではなかろうかと考えております。そういたしますと、その会計長期にわたるところの財源、それから歳出といったようなものは、事実上やや長い計画を持っておらなければなりませんし、特別会計であれば、またそのことが心がまえの問題としてはできるわけでございますので、少なくともそういう形にいたしたいと考えております。  それから、外貨の活用の問題でございますが、これにつきましても、実は別途、大蔵大臣とまた私とがお話を、これは一月であったと思いますが、いたしまして、大蔵大臣も基本的に御賛成であって、何かいい方法を考えようではないかということになっておりました。いい方法を考えますのにかなり手間どったわけでございますけれども、何か知恵の出しようもあろうということで、ただいまこれも両省で、日本銀行も含めまして検討いたしております。  問題は、外貨を活用すること自身には基本的に異議がないわけで、むしろ積極的に、意味があろうというふうに関係者はみんな思っておりますけれども、そのための、これは貸し借りということになりますれば、借りるほうの担保というものをどうするか。普通のプロジェクトでございますと担保があるわけでございますけれども、国外で仕事をする、しかもその相手が資源であるというようなときには、何を担保にするかということがややめんどうな問題でございますし、それから、どっちみち為替を集中しておるわけでございますから、そのためには、このような貸し出しは本来長期のものでございますので、原則として短期であるべき預託というようなことでは、長期の投融資に向かないというような感じもいたします。それから、外為関係が今後外貨を買っていきますためには、基本になる円が必要になるわけでございますけれども、本来外貨を借りる側からいえば、それに相当するところの円を調達しなければならないというのでは、これはメリットが失われるわけでございますので、その辺のところをどのように考えればいいか、何か知恵があろうではないかということで、ただいま検討いたしております。これは御要望のような結果が、何か仕組みの中で実現できるのではなかろうかとただいま考えておりますけれども、具体的にどのような仕組みが、最もただいま申しましたような幾つかの条件を満たすかということになりますと、ただいままだこれということを申し上げることができない段階でございます。何か考えたいと思っております。
  15. 橋口隆

    橋口委員 いまのお話を伺うと、非常に心強く思いますが、どうかひとつ思い切って前進して、実現をさせていただきたいと存じます。  そこで、もう一点伺いたいと思うのですが、最近インドネシア石油資源が、北スマトラ沖の油田を放棄したようでございます。ガルフ・オイルに譲り渡したという情報があります。私も昨年現地を見てまいったのでございますが、日本では一番初めに手をつけたところでもございまして、われわれも非常な関心をもってその成果を期待しておったのでございますけれども、とうとうそれを放棄するのやむなきに至った。これは非常に残念に思うのでございます。さきには東カリマンタン沖でも同様な問題があって、それを譲ったとたんに、今度はたしかユニオンであったかと思いますが、それが試掘に成功しておる。こういうようなことで、これはすでに新聞あたりでも非常に批判が出ておるようでございますが、資金力が足りないのはもちろんであるけれども、それよりも技術力に問題があるのではないか、特に深海部の開発技術について、日本には非常に重大な欠陥があるのではないか、こういうことが指摘されているようでございます。これは私は非常に重大な問題だと思うのでございまして、その点を今後通産省としてはどういうふうに指導していかれるか。ことに大陸だなの開発も話題になっておるときでございますから、今後この問題をどういうふうに処理されるのであるか。日本独自の技術を開発されるのであるか、それとも、持っている日本のプロジェクトが二十数個あるようでございますが、そういうような企業体を再編成して技術力をもっと有効に使うか、あるいは国際資本と提携して外国の技術をもっと有効に活用するか、いろいろの方法が考えられると思うのでございますが、その点についてはどういうふうにお考えになりますか。大臣がお答えむずかしければ、これは鉱山局長でもけっこうでございます。
  16. 本田早苗

    ○本田政府委員 お答えいたします。  インドネシア石油開発が、北スマトラにおきます探鉱につきまして、あと探鉱の期間があまり長く残っていない、未探鉱の地域がなおあるというようなこととからみまして、外国の企業と共同事業という形であとのところの探鉱をやらす、こういうことにいたしたわけでございまして、権利を放棄したというわけではないのでございます。御指摘のように、ユニオンと当たりましたのは、ユニオン社の持っておる鉱区とインドネシア石油開発の持っておる鉱区の境界線上にちょうど構造がございまして、これは共同開発をせざるを得ないという構造でございましたので、共同開発をやったわけでございますが、これが成功したということに相なっております。御指摘のように、かなりの本数の試掘を行ないまして、ある程度の油層あるいはガス層はあったのでございますけれども、商業生産量を確認するに至らなかったというのが、いままでのインドネシア石油開発の探鉱の実績でございます。  これについて、御指摘のように、技術面において足らなかった点があるのではないかという問題でございますが、われわれといたしましては、技術のレベルアップが必要だということは痛感いたしておりますが、これは単に優秀な機器を持つということだけではだめなので、やはり多くの経験を積むということが必要であろうというふうに考えております。したがいまして、今後の技術のレベルアップということにつきましては、共同開発による技術の習得あるいは外国技術の導入ということ、あるいは技術者の養成確保というような各方面の努力を重ねる必要がある、こういうふうに考えておる次第でございます。
  17. 橋口隆

    橋口委員 鉱山局長にもう一回お尋ねしますが、その技術力の有効利用という点については、もう具体的に着手されておりますか。
  18. 本田早苗

    ○本田政府委員 各地で共同開発が進めつつありまして、これらにつきましては、日本側の技術陣も現地で参加して一緒に探鉱を進めておる、こういうことによりまして、経験を重ねるということを現に進めておる次第でございます。それから外国人の技術者を招聘いたしまして、地質図の読み方その他につきましても、技術のレベルアップという意味で現に実施をいたしております。
  19. 橋口隆

    橋口委員 それでは次に、これに関連している問題でございますが、大陸だなの開発について、特に大臣の御意見を承りたいと思います。  今日、ペルシャ湾に日本の九五%くらいの石油を依存しているということは非常に危険である、これらもう衆目の認めるところでございまして、これを分散しようというのが通産省の長い間の石油政策の目標でございます。ところが、なかなかそれが改善をされない。それで、今後特にこの点は推進をしていただきたいと思うのでございますが、わけても必要なのは、日本周辺の大陸だなの開発の問題であろうと思います。これにつきましては、先般それに関する法制まで準備されながら、残念ながらいろいろな事情で実現できなかったようでございます。今後、特にこの大陸だなの開発の問題については力を入れる必要があると思うのでございますが、その点について、今後どういう方針でお臨みになりますか、この際伺っておきたいと思います。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 技術の進歩に伴いまして、今後大陸だなの掘さくということがかなり可能になってまいったと思いますし、またそうなりますと、わが国自身がいろいろ置かれております位置から考えまして、かなり大陸だなの石油資源に期待ができるのではないか。しかも、あるとすれば低硫黄のものではないかと考えられます。したがいまして、しばらく前から探鉱などを日本海側でやっておりましたし、また、最近では太平洋側でも調査をいたしておるわけでございまして、そのようなプロジェクトには公団もまた融資ができるというふうに、現在考えておるようなわけでございます。  このために、大陸だなの石油資源開発についての法律が必要であるかどうかという問題がございます。これにつきましては水産庁等々と、いろいろ問題がございますけれども現実に探鉱なり開発なりをやっていく過程で、どうしても法律がなければやれないということでございましたら、これはもう法制を準備いたさなければなりません。ただいま、しばらくその法制の点は、現実開発の方向を見ながら、必要に応じて考えようという態度でおるわけでございます。
  21. 橋口隆

    橋口委員 この大陸だなの開発につきましては、もう日本経済上、この備蓄の問題とあわせまして、ある意味においては最も有効な備蓄ではないかとも考えられます。そうしてまた、ここで開発をされればコストは安いし、また最も安定した供給源でございますから、ぜひひとつこれら積極的に取り組んでいただきたいと思う次第でございます。  これに関連をいたしまして、過般東シナ海、特に尖閣列島のこの開発の問題につきましては、いろいろと問題が紛糾しているようでございます。その領有の問題をめぐっても問題がございますし、また、さきに中国もこれに対しては、中国の主権を侵犯するものだというような見解すら発表されまして、これをめぐって、日本国内でもいろいろと意見が分かれておるようでございます。また石油業界は、そういう意味から、もう見合わせたほうがいいのではないかという意見が出ておりますが、同時にまた、三月六日の新聞によりますというと、五日の日に総理は、尖閣列島の石油資源は、長く眠らしておくのはまずいから、早期に開発をしたいということを示唆されておるような記事もございます。またそのあとで、三月十七日の記事でございますが、尖閣列島を含んで、三国の共同開発を六月には具体化しようという、そういう業界意見も発表されているようでございます。ところが、また最近の新聞によりますというと、これは中国との国交上非常に都合が悪いから、業界はしばらく見合わせるようにしたらどうかというような示唆もあったというようにも新聞に報道されております。これをめぐる問題は非常にこんがらがっているようでありますが、どういうふうに解きほぐしていただくか、その点を承りたいと存じます。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 尖閣列島の領土的な帰属につきましては、わが国主張に誤りがないということは、これは外交的にも申し上げて差しつかえのないことであろうと思っておりますけれどもただいま御指摘のような幾つかの複雑な経緯がございます。三国間でというような動きも民間にございまして、それは一つの方法であろう。とにかく論争は論争といたしまして、エカフェでも認めております相当大きな賦存資源を開発するということは、お互いの利益ではないか、そういうアプローチも一つの方法であろう、実はこう考えておるのでございますけれども、御指摘のように、あの辺の地勢から申しまして、中華人民共和国がまた独自の主張をし始めたというようなことで、石油資源の問題はそれといたしまして、わが国と中国大陸とのこれから将来の関係等々を考えてまいりますと、いろいろ考えなければならない利害得失もある、そういうふうにも思われます。  したがいまして、この点は、もう少しその辺のところを外交的な努力にまちたいと考えておりますのがただいまの現状でありまして、私どもとして、資源の立場からこの問題には実は非常な関心を持っているわけでございますけれども、全般的な国全体の外交とも関連をいたしますので、その辺をもう少し外交的な努力に期待をいたしたいと考えておるところでございます。
  23. 橋口隆

    橋口委員 それでは時間がございませんので、最後に一間だけお聞きしておきたいと思いますが、現在、通産省石油所管庁であって、鉱山石炭局がそれを担当されているわけでございまして、係官は非常に努力をしてやっておられることは、衆目の認めるところでございます。非常な少ないで人員、乏しい機構で全力を尽くしてやっておられるわけでございます。しかし石油問題は、いまや日本経済の大動脈でございますから、このままではなかなか力不足になるのではないか、そういうことが懸念をされております。そういうことで、自民党の商工部会では先ほど、石油資源の重要性にかんがみて、今後石油行政機構を画期的に拡充強化してもらいたいという決議をいたしました。大臣のお手元にもあるいは届いているかとも思いますけれども、それほどにわれわれは熱望しております。またこの商工委員会におきましても、さきにエネルギー資源小委員会もつくりまして、特にこの問題では積極的に取り組もう、そういう気がまえを見せているところでございます。そういう意味で、どうかこの新しい事態に対応いたしまして、通産省の中でも、石油行政機構の拡充強化を特にお願い申し上げたいと存ずる次第でございますが、それにつきまして大臣の所信を承っておきたいと存じます。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 石油は、わが国のエネルギーの消費の中で七〇%を占めておりますし、総合エネルギー調査会の研究によりましても、今後ともこの事態はかなり長く継続すると考えられます。ただ従来のように、いわゆるバイヤーズマーケットで比較的じょうずにわが国石油を買っておったという事態が、かなり変化する徴候が見られます。これは御指摘のとおりでございますから、そういう変化に対応いたすためには、従来私どもが持っておりました石油行政の機能だけでははなはだ不十分であろうと、これはもう御指摘のとおり私も考えております。他方で政府といたしまして、公務員の定員というものはできるだけ押えていきたい、こういう考えを持っておりますので、その両方を両立させるために、現在、通産省に限りませんが、現在の機構の中にある人員等々をもっとじょうずに活用する方法があるはずでありまして、そういう方法をとりながら石油行政機能の強化をはかってまいりませんと、とてもこの事態は乗り切れないというふうに私も実は考えておりますので、具体化をしてまいりたいと思っております。
  25. 橋口隆

    橋口委員 それでは、どうかいまの大臣の御所信どおり進めていただきますように、特にお願いを申し上げます。  これで私の質問を終わります。
  26. 八田貞義

    八田委員長 加藤清二君。
  27. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私はこの際、たいへん苦況に悩んでおります日本の繊維業界、わけても中小企業の問題について二、三お尋ねしたいと存じます。  佐藤さんがニクソンさんと妙な約束をしていらっしゃったおかげで、ついに日本は自主規制に追いやられました。片やGNPが伸びたというわけで、発展途上の国に対しては特恵を与えなければならぬということになったわけです。この両方のはさみ打ちを受けまして、日本の繊維産業はいまや倒産が続出でございます。その結果は機械産業、紡機、織機、これにまで影響を及ぼしまして、救いがたい状況に追い込まれつつあるわけなんです。きのうも聞いておりますと、総理は、この被害の救済については過去もやってきた、将来もどんどんそれをするんだと、まあこういうお話なんです。それはいつおやりになるのでしょうか。おやりになるのだったら早くやってもらわぬと倒れてしまう。倒れて転業したり失業したりしてからでは、どうにもならないわけなんです。  そこで、大臣にお尋ねいたしますが、すでに法律によってきめられておりまする日本の繊維構造改善事業、これは一体期限内に完成するのですかしないのですか。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府関係の中小三金融機関が年末に融資をいたしますことは、これはもう、ここのところ例年の例になっておりますけれども、昨年末もいたしました。今回はたまたま年末、それから三カ月たちました年度末というところで、やや異例な、先例の乏しい融資を増ワクをいたしましたが、これらは、やはり主体となりましたものは繊維産業でございまして、総理がきのう御答弁をされましたのも、そういうことを申し上げたものと思います。  なお、わが国の繊維産業が対米自主規制の一方的宣言をいたしましたに伴いまして、そこから生ずるであろう損失についての救済措置、これにつきましては、ただいま繊維産業から出されました要望につきまして、私ども鋭意検討をいたしております。要望の筋そのものは、私は理にかなったものが多いと見ておりますので、できるだけすみやかに政府としての考えをきめていきたい。ただ、申し上げるまでもなく、規制の態様いかんによりまして、具体的にどこをどうするかということは、それを待つ必要がございますけれども、心がまえとしては、その作業を進めていきたいと考えておるわけでございます。  それとの関連もございまして、構造改善のお尋ねでございますが、織布業の構造改善が一応来年で予定の期間を過ぎるわけでございますけれどもただいままでの進捗率が五三%程度でございますから、これを残った期間で終わるということは不可能であると思います。また、数年前に立てました計画の背景になっておりました客観情勢は御指摘のように非常に変わってまいりました。したがいまして、少なくともあと二年この延長をいたしたいと考えております。そうしてその間に、変わりました新しい環境に基づいての最後の二年間の構造改善というものをやっていきたいと思っておりますが、そのための所要の法律案につきましては、この国会で御審議をいただきませんでも、あとの国会でも時期的に足りると考えましたので、今国会には法案を御審議ただいておりません。しかし、私どもといたしましては、繊維工業審議会及び産業構造審議会の答申にもございますように、二年程度の延長は必要である、また相当であると考えておりますので、将来の機会に、所要の措置について御審議を仰ぎたいと考えております。
  29. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 アメリカの繊維制限から発生する被害の救済のために、業界からの申し出についてはすみやかに実行に移したい、第二は、構造改善は予定の期限内にできない、ゆえにこれを二年間延長したい、その具体的方法としては、次の国会法案提出したい、こう受け取ってよろしゅうございますか。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 厳密に次の国会と申し上げますことが適当であるかどうか別といたしまして、十分それに間に合うような機会に御審議を仰ぎたいと考えております。
  31. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 わかりました。  それではこの際、もう一つだけその件について承りたいのですが、構造改善をあれほど長い期間にわたって論議をし、検討をし、業界もまたこれをのんでおきながら、なぜ期限内に実行に移すことができなかったでしょうか。この原因について、大臣はどう把握していらっしゃるのか。この把握のしかたいかんによって、二年はまた三年、四年と延びなければならぬ。同時に、二年延ばすことは、やがてあの当時の磯野発言、乙竹発言は捨て去られなければならない、うそであった、こういう結果になるわけですね。したがって、原因を的確に把握しておくことが必要だと存じますが、賢明な大臣のことでございまするから、現時点においてどのように把握していらっしゃるか、お教え願いたい。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私の申し上げることが、不正確でありあるいは不足でございましたら、政府委員に補足をしてもらいたいと思いますけれども、何ぶんにも構造改善という仕事は、業界にもいろいろな意味で犠牲をしいる仕事でございますから、市況等によりまして、ことに産地ひとつ一緒になってやろうというような種類の構造改善になりますと、市況の強い弱い、将来に向かっての見方がおのおの違いますし、また自分のところの業態もおのおの異なりますから、その辺の利害関係は必ずしも一致いたさない場合が多い。それに対して私どもが半強制的に、ともかく構造改善をやれと申すのには、事柄そのものが改善する側の意欲、多少の犠牲を払っても合理化をしようという、それにかかりますだけに、半強制的に行なうということはどうもなじまない、適当なことでない、こういうことがこの数年あったように思います。したがいまして、ある年にはなかなか申し出がない、またしかし少したちますと、いままでなかった熱意が急に出てきたといったような、早く乗る人となかなか乗らない人、おそくなって乗りたいと考える人、いろいろな人があるのではないかと思います。これは織布業だけについて申しましても、そのようなことが言えますし、それ以外の業については、なかなか利害関係なり時期なりの判断が、私どもと業者とでは異なる、こういうことが今日まで達成率五三%ということの基本的な原因ではなかったのか。予算のほうに制約があって希望を満たせなかったというようなことは、総体としてはなかったのではないであろうか。  ただ、もっと具体的にこまかい話になりますと、その織機と準備機との予算の割り方が、もう少し準備機のほうにウエートをかけてもらいたいとか、いろいろ産地で承りますけれども、基本的に、今日半分ちょっとの達成率であるということは、原因は何かとおっしゃれば、私はいまのように理解をいたしております。
  33. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 大臣のおっしゃることもごもっともでございますが、私どもが現地を回ってみたり、あるいはその業界の方々と懇談をしてみました結果から申し上げますと、第一は、機械がおくれているということ、構造改善の発足と新鋭機の工業化とが出発点において食い違っておる。もうここで二年間の余、食い違っておる。したがって、二、三年後によい機械が市場に売り出されるとするならば、それを待ってからにしましょう、これが第一でございます。当然なことです。自動車のように、一年や二年でスタイルの変わるものならばいいですけれども、御案内のとおり、紡機、織機は二十年も三十年も、長きにわたっては五十年も耐久力があるわけです。それは日本の繊維機械の技術が世界に冠たるものだからです。けっこうなことなんです。しかし、一度設備をしますと、二年や三年で償却はできない。ここにも一つの問題がございますが、いずれにしても出発点が食い違っていた。だから、最初からあれは無理だということを、あの時期に私どもは再三申し上げた。これが一つ。  第二、新しい機械ができれば、これを買い入れる可能性のあるのは大企業だけなんです、中小零細企業は、かりに新しい機械ができてもそれを買う力がない。そのために事業団その他その他というものができておりますけれども、ここの金すらも借りることができない。なぜかならば、担保がないから。担保はすでに運転資金やその他その他に使われてしまっている。だから協業化ということがいわれたけれども、一国一城のあるじさんばかりですから、かっこうはできても、実質上協業化だの合併だの吸収だのということは、なかなか容易にできるわざではない。金を借りることができない。だから金を借りやすくしてやるということが伴わなければ、かりに二年延ばしても三年延ばしても、文鎮型である。そのてっぺんのところだけは改善ができるでしょうけれども、土台になっている圧倒的多数の中小零細企業を直すことができない。協業化とかどうとかおっしゃるけれども、これは地場産業なんだ。機械もまた工場、工場によって違っている。統一しようの何のいったってできっこないのです。これが第二です。  第三は、周知徹底されていない。もうあと一年で終わりという時期に至っても、なお構造改善そのものすらも知らない機屋がたくさんにある。そんなことがあったんですか、こういう話なんです。特に北陸路を調査した結果は、構造改善制度を知らない業者が三割の余ある。ですから、この構造改善の恩恵に浴しているのは一体何かといえば、その県の工業会のトップクラスの役員クラスの会社だけなんです。あるところに行くと、町長さんも御存じないというこの現象は、一年や二年ではできない。いわんやアメリカの制限の追い打ちをかけられてきては、同時に特恵関税によるところの恩恵は、やがて発展途上の国から日本へ敵前上陸してくる。  そこで、きょうは重工業局長はいらっしゃらないようですが、日本の機械産業、繊維機械のトップメーカーの販路は一体どこですか。内地よりも外国のほうが多いのですよ。新鋭のよい機械はいま輸出にたよっている。そのことはますます発展途上国の生産力を増して、アメリカ市場で争うのみならず、日本へ敵前上陸を容易にする原因がいま着々と進みつつある。これでは構造改善を何度やったって、繊維産業は救われっこない。この点について、二年延ばすというところまではわかりましたが、じゃ、延ばすその間に、この構造改善を完成したいという具体的内容について、要点だけでいいから承りたい。
  34. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 ただいま先生の御指摘のように、構造改善のおくれは、一つは、新鋭織機の開発あるいは導入が、比較的構造改善が始まりましてからあとになって一般的に採用されたということに原因がございますと同時に、やはりいまの構造改善の発足当時、私ども努力はいたしたのでありますけれども、なかなか構造改善の必要性が一般に浸透しなかったというところにあるかと思います。この点につきましては、私どもも重々反省をいたしておるところでございます。  それで、構造改善のいまの進行状況は、先ほど大臣からもお答えがございましたように、設備のビルドにつきましては、四十五年度末におきます進行の見込みが五三%程度でございますから、これを二年延ばすことによりまして計画そのものを完成させていきたい。なお、対米輸出規制等の問題がございますので、さらに新しい事態に関しましても所要の検討を加えながら、激化いたします国際競争に耐え得るような産業にしていきたい、かように考えておる次第でございます。
  35. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 二年延ばす、その間に行なおうとしていらっしゃる、あるいはきょうからでも行なおうとしていらっしゃる具体的内容を承りたかったのですが、大臣の都合があと十分ですか、お急ぎのようでございますので、このことはまた別な時期にお尋ねするとしまして、先に進めたいと存じます。  発展途上の国から日本へ、すでに敵前上陸がずいぶん行なわれております。この場合に特恵関税が実施されますると、ますますその可能性を大にするわけでございます。——もう一度説明しましょうか。現在すでに発展途上の国から日本への繊維の輸出が行なわれている。いますでにですよ。ところが、それに特恵関税を与えますと、その国から産出された繊維がなお日本への輸出を容易にする、こういうことでございます。これは日本の中小零細企業にとってはたいへんな脅威でございます。なぜか。特恵関税を与えるということは、きのうの総理の話にも、GNPが二番目になったんだ、日本の国は富んだんだ、だから、後進国といっちゃ失礼だけれども、発展途上の国に対してこの程度のことはしなければならぬ、こういう話なんです。しかし、日本の繊維産業を構成しているほとんどの中小零細企業は、GNPは二番目ではない。他の基幹産業がずいぶん伸びたおかげで、全体では二番目になったけれども繊維産業は二番目でない。中小零細企業は二番目に富んでいない。むしろ後進国の繊維産業のほうが、はるかに日本の繊維産業よりはやりやすい状況下に置かれている。なぜかならば、設備はほとんど有償、無償でもらった材料である。日本からゼロにひとしい価格でもらったものなんです。それを貸し与えられている。賃金は日本の三分の一以下程度なんです。材料はといえば、天然繊維は自国産が多い。合成繊維は、日本の紡績業者や機屋業者が買い入れる卸売り相場、三品市場の相場よりCIFでもってはるかに安い合成繊維をもらっている。だから、これに特恵が与えられて、そうして輸出が容易になれば、ますます日本の繊維産業は競争ができなくなってくる。ここに、どんなにかねや太鼓で構造改善やりなさいといったって、業者がその気にならなくなってきておる原因がある。むしろ廃業、転業のほうがよろしいということなんです。  そこで承るが、ナイロンタフタの加工賃は、一体どのくらいが適当だとお考えでございますか。
  36. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 大体、昨年の一−三月で千百円程度でございまして、昨年の一−三月は、まだ業界はほぼ正常な状況でございました。千百円程度あるいはそれ以上が適当かということになるかと思いますが、ただ現状におきましては、御承知のような不況でございまして、その半分程度に落ち込んでいるのが実情でございます。
  37. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 大臣、お聞き及びのとおりでございます。ナイロンタフタ一反を織り出すのに、一つの織機では十三時間もかかる。十五時間くらいかかる。その工賃はいま五百五十円から六百円なんです。どう考えても千二、三百円から千五、六百円がペイするところなんです。五、六百円なんです。しかし、これをつくっている女性が、床屋に修業に行って床屋をやると、材料ほとんどなしでこれは一時間にかせげる金なんです。その方が東京に出てきてマッサージをやられますと、その金は四十分でかせげる、こう言うのです。それじゃどんなに機械だけよくしてもらったってどうにもなりません、もうやめます、こう言う。これは五十台、七十台持っていると大きいほうなんです。ところが、その社長いわく、わが家には一家団らんがありません、こう言う。この間、孫がつづり方を学校で書かされた。一家団らんという題だった。家には一家団らんがありませんと書いてある。御飯を食べるときもテレビを見るときもみんなばらばらで、家には対話がありませんと書いてある。それを私どもに訴えるそのおじいちゃんが、もうこんなことは息子にやらせとうない、こう言っている。孫にもやらせとうないと言っている。これが現状なんです。それが、GNPが二番目になったからというので、なぜ犠牲をしょわなければならないのか理解に苦しむと言われる。これに対する対策がございましたら、大臣お教え願いたいのです。   〔委員長退席、浦野委員長代理着席〕
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 賃加工の場合の工賃が、昨年のいまごろに比べまして五割ないし六割程度に下がっておりますということは、そういう産地が多くございますことは事実で、私も存じております。で、それが正常な事態であるというふうには考えておりません。しかるがゆえに、先刻も申し上げましたような、政府としても特別の金融措置をとっておるわけでございます。  ただ、そうではございましても、発展途上国との関連で、わが国の賃金水準がはるかに高いのでございますから、そこで構造改善といったようなことをやっていかざるを得ない、また、そうすべきものであろう。先ほど構造改善を知らない者もいる、また一国一城のあるじなんでとおっしゃいますが、それはそのとおりでございますけれども、しかし、一国一城のあるじで家来が三人というような状態でしたら、それはそういう一城というのは、そのままでいつまでも維持しようということは、現実といたしましてなかなかむずかしいのでございますから、それで協業化なり何なりということを申すわけでございます。  いずれにいたしましても、繊維産業を単純な生産業であると考える限り、わが国におきましては、どれだけ構造改善をいたしましても賃金の格差は残りますから、やはりこれは一つの情報産業的な部分加わっていかなければならないのではないか。一つのチームとして、各段階で新しい付加価値をどうやってつけていくかというところにくふうがなければならないのではないかというふうに考えるわけでございます。またそのことは、現実にわれわれよりさらに進んだ国でも、繊維産業が維持されておるということを見ますと、可能でありまして、またそのことが、今回日米間の繊維交渉で、なるべく付加価値の高いものを日本から送ってもらわないほうがいいと、まことにかってがましい言い分ですけれども、アメリカ側が申しますのも、先方の付加価値のほうが高いということを意味するわけでございましょうから、その道は可能である、そういうふうに考えるべきではないか。  しかし、それにいたしましても、たまたまわが国業界がこのような状態になっておりますときに、特恵制度を開こうというのでございますから、そういう衝撃はできるだけ緩和をいたさなければならない、これは私は御指摘のとおりと思います。したがいまして、先般御審議願いましたように、そのスキームにおきましても、いわゆる五〇%カットでありますとか、あるいはシーリングでありますとかいうものを設けまして、多くの繊維品はこの中へ入れておりますし、また絹織物のように、完全に例外の扱いをいたしたものもございますようなわけで、これは、この点で十分とは申しかねるかもしれませんが、特恵を実施するにあたりまして特に配慮をいたした点でございます。
  39. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 大臣のおっしゃることはわかりますけれども、ではもう一つ、機屋でなくて、今度は染色整理のことについてお尋ねしたいのです。  染色整理のうちで、日本の技術で最高なのはしぼりといわれております。このしぼり産業が現在どうなっているかと申しますと、南朝鮮、これは特恵関税が与えられなくてもいま現在どうなっておるか。南朝鮮からどんどん入ってきておる。日本のオール消費量のうち、朝鮮から輸入されるしぼりの量でも比率でも、何でもいいですから、お調べになっているところ、わかっているところを御発表願いたい。
  40. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 ただいま、輸入に加えて国産の量を全部ひっくるめまして消費といたしますと、その約七割が輸入でございます。
  41. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 大臣がおられませんので、あとで大臣によくここのところを教えておいてもらいたい、オール消費の七割が食われてしまったと。私はこのことがあると思えばこそ、南朝鮮との有償、無償の八億ドルのあの論議が行なわれたときに、いまそこにいらっしゃる原田さん、次長さんでみえたが、私はあえて実物を持って出て、そうしてあなたもお訴えしたことがあるし、三木通産大臣にも訴えました、ほっておけば必ずそうなると言って。いまや日本の伝統芸術であるしぼり産業は、全体が倒産の寸前に来ている。これはたいへんなことでございます。このわざは、御案内のとおり、戦争はなやかなりしころでも、時の総理大臣はマル芸品として残したのです。配給統制の時代であったけれども、除外例をしいておった。なぜかならば、正倉院の御物をはじめとして、しぼり産業は伝統芸術であるのみならず、これは残さなければならない日本の誇りであるということで、時の総理大臣もこれには特別な恩恵を与えていたわけなんです。ところが、南朝鮮の絹の減産ということと工賃の安さということと、そのうまい汁を吸いたいという輸入商との関係で、委託加工貿易でありながら、徐々にこれがなしくずしになり、あの三木通産大臣と約束したことが次から次へとくずされていって、ついには日本の生産をはるかオーバーして、輸入量が日本の生産の二倍余になってしまった。一体この先、この業をどうするつもりなんです。これは倒れてもいいんですか。
  42. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 しぼり産業は、先生御承知のように、知多半島にかたまっておりまして、多くは農漁村の方々のいわば副業的な家内労働によって行なわれておりますので、これを合理化して国際競争力をつけるということは非常にむずかしゅうございます。しかししぼり産業は、先生御指摘のように、わが国古来の独特の産業でもございますし、これをそのままに放置するということは、私どもとしてもできないわけでございます。したがいまして、たとえば韓国との貿易交渉におきましても、先方は委託加工制度を活用したい、こちらから原反を出しまして韓国からしぼり製品を輸入します場合、原反相当分の関税をまけてくれというような要望も強いのでありますけれども、私どもは、産業の実態を説明いたしまして、これをお断わりしているという状況でございます。また、特恵供与につきましても、絹織物は、特にしぼりを頭に置きまして、今回、特恵の許容品目の例外にしたという経緯もある次第でございます。  今後どうするかということになるわけでございますが、現在、韓国からのしぼりを輸入しております業者の団体が、実は昨年当方も指導いたしましてできたのでございますが、そういう団体に対しまして、しぼりの輸入によります国内市況の悪化という事態を避けるように、いわば輸入秩序を維持するようにという指導を行ないまして、輸入面からする不当な圧迫もできるだけ避けていきたい、こういうようなことで指導している現状でございます。ただ、しぼり産業自体の強化策といいますものは、私ども非常に苦慮しておるのでありますけれども、産業の実態から申しましてなかなかむずかしく、非常にいま困っている実情でございます。
  43. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 アメリカが日本の維繊制限を強要してまいりましたね。一体、かの国のオール消費に対する日本の輸出量はどのくらいというと、ものによって違いまするけれども、せいぜい三%から多くて五%くらいなんです、最高のもので。毛織物のごときは全体の五%しか輸入しない。その五%を、イギリスとイタリアと日本とフランスで分け合っているのです。したがって、日本から輸出される毛織物のごときは一%か二%——二%にはならない。ところが、朝鮮から輸入されるこのしぼりは七〇%ですよ。なぜそれを野放しにするのですか。同時に、これはかつては数量割当てがあったはずなんです。輸入業者はもうかるものですから、この数量割当てを、上半期どころか第一・四半期だけで全部食いつぶしちゃって、またくれまたくれという陳情があると、またぞろ、またぞろとふやしてみえる。それだからこんなにふえてきた。これはおかしいと思うのですよ。アメリカは二%や三%で制限とくる。日本は七〇%も食われて、それで倒産寸前になっても、なお対策がなかなかにできない。いまお話しの特恵関税の許容品目から絹織物は除外したとおっしゃいますけれども、委託加工貿易のときには二〇%以上でしたね。いま関税率は何ぼになっていますか。
  44. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 ただいまの絹織物の輸入関税率でございますが、合繊と混織のものにつきましては、本年一月から一五%、それが四月からは一二・五%になる予定でございます。また、その他の絹織物でございますから、いわば一〇〇%絹織物がこれに入るわけでございますが、これは協定税率で申しますと、一月から一二%が四月から一〇%になる予定でございます。
  45. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 四月一日から一〇%になりますか。しぼりについてお尋ねします。しぼりはそれでは四月一日からは何ぼになりますか。
  46. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 しぼりは、先ほど申し上げましたその他の絹織物ということで、一〇%になる予定でございます。
  47. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そうでしょう。なぜそれを許すのですか。これは、あのときの三木通産大臣とのかたい約束が予算委員会の記録に残っておりますよ。なぜそんなことをするのです。絶対下げませんと言っておる。
  48. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 絹織物につきましては、昭和四十二年にケネディラウンドの協定ができました際に、絹織物の税率を下げるということを約束しておりますので、その関係で、やはり下げるということにいたした次第でございます。
  49. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 ケネディラウンドといって、ケネディラウンドをつくった本家本元のアメリカが日本の繊維に対しては制限を押しつけてきているのですよ。佐藤さんはそれを向こうへいって密約をしてきているのですよ。日本国会ではそれをおっしゃらぬですけれども、アメリカへ行ってみたら、みんな密約説が、これは通説になっておるのです。アメリカは一等国のうちの一番ですよ。日本は二番、二番といったってしぼり業は二番でもなければ三番でもないのだ。経済力からいったら何十番目かわからないほど、ずっとずっと零細なんです。なぜ十ぱ一からげにしなければならないのか。ケネディラウンドは、何も十ぱ一からげにしなければならぬという約束はどこにも書いていない。なぜそういうことをしなければならないのか。このままで、それではどういう対策が行なわれるのですか。きのう総理は、過去もやりました、今後もやります、救済はやりますと言った。お尋ねする。しぼり業並びにしぼり加工業、これは先ほどあなたは知多半島とおっしゃいましたが、渥美半島から三河路からずっと一円に広がって、これに従事する者の員数は十五万人の余あるのです。これはどういう救済策があるのです。あったら承りたい。死んでもいいのですか。
  50. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 しぼり産業が死んでいいということは決してございません。したがいまして、当面、輸入の秩序を正しくするということで、輸入面からする影響をできるだけ少なくしようと努力しておる次第でございます。  それからなお、国内対策につきましては、率直に申しまして、ただいまこういうふうな対策をとるという成案はございませんけれども、今後業界ともよく相談いたしまして、実情に沿った対策を検討いたしたいと考えております。
  51. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 きのうの総理の発言といい、ただいまの繊維雑貨局長発言といい、過去も救済した、将来も必要とあれば幾らでも救済する。それからいまのあなたのお話は、早急に業界とも打ち合わせをして対策を講ずる、こうおっしゃられました。だから、それを了として、私はこれ以上追及はいたしません。しかし、いままでにしぼり業界に、何ぞ国家のたいへんな恩恵が与えられたことがあるというならば承りたい。ただあったのは、東条内閣のときに、戦争はなやかで、ぜいたくは敵だといわれたやさきでも、配給統制からあれは除外されておるのです。東条さんでさえもやったのです。ケネディラウンドだから十ぱ一からげにしなければならぬなんという、そんな理屈がどこにあります。アメリカみずからがケネディラウンドを破っているのですから、そんなものをなぜ聞かなければならぬのです。それを東条さんのように、除外例にしたら一体どういうことになるか。何ぞ罰則がつくか。何もつかない。アメリカから何ぞクレームをつけられるか。何もつかない。なぜそんなことをしなければならぬか、私にはわからない。当然除外されてしかるべきだ。  ところで、もう一つの問題がございます。与えられた時間がもうあと十分ですから結論しますが、南朝鮮から入ってくるしぼり、これは質が悪いのです。加工賃も安い。それなれば、日本の国民がこれを買いますときに、それ相当の安値で買えるというならば、まだ物価引き下げに効果があるから、まあよろしいといわざるを得ない、長所もあるといわざるを得ない。しかし、南朝鮮から入ったこのしぼり、朝鮮ものという表示がございますか。
  52. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 韓国産という表示はないと存じます。
  53. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 国籍不明なんです。したがって、これが日本ものに化けて売られるので、値段も日本ものになる。同時に、質はまぜこぜにして売られておる。したがって、日本国民の中には、しぼりとはこんなに銭が高いけれども、こんなに早く利用価値がなくなるものかという悪い印象を、しぼりそのものに対して与えておる。同時に、これを買わされた国民は、にせものを本物だと称せられて買わされておるわけなんです。これを放置しておいていいですか。公取さんが来てみえるから承りましょう。
  54. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 お答え申し上げます。  一般に申しまして、その商品の原産国が異なるということによりまして、商品価値が非常に違う、原産国が明らかでないということによりまして、一般消費者が誤認をするおそれがあるというものにつきましては、景品表示法の第四条三号、「商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示」、そういう表示でありまして、「不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがある」ものは、公取が告示で指定をいたしまして、原産国を表示してないということ、これを不当表示ということで規制ができることになっております。  しぼりに関する表示につきましては、これらいま申し上げました条件に当てはまるか、まだ十分詰め切っておりませんので、それを詰めた上で、必要があれば告示をしてまいりたいというふうに考えております。
  55. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私は、このことを公取さんにいま初めて言うのじゃございません。何度も何度も申し上げたのです。それで、あなたの先任者の事務局長さんは理解されて、実行に移しましょうというところまでいったのです。ところが、鉄に押し切られちゃったのです。鉄の合併が問題になって、頭へきたのかどこへきたのか知らぬけれども、ついにその約束された人も、いまはその地位にいらっしゃらない。調査も済んでおるはずなんです。なぜ実行に移すことができないのか。どういうわけなんですか。このごろ公取は盛んにヒットを打ってみえる。けっこうなことだと思います。これは国民、消費者を守るために、公取の存在を非常に高く評価されるようになってきておりまするから、まことにけっこうなことだと思いまするが、一体七〇%のにせものから発生する国民、消費者の損害は、金額にして何ぼぐらいだと押えてみえますか。
  56. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 いまおっしゃいました国民的損害が幾らぐらいかということは、押えておりません。  ただ、一般に景品表示法では、表示がしてある場合に、それが不当表示で、著しく優良であるとか、あるいは有利であるとか、一般消費者を誤認させるような表示であれば、それは不当表示として規制できるというたてまえになっておりまして、表示がしてないということは、これは指定がないと規制できないわけですが、おっしゃいますとおり、非常に長いことかかって何をしておったのかというおしかり、ごもっともだと思いますので、できるだけ早く結論を出していきたいというふうに思います。
  57. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 日本の商品がアメリカに渡りましたときに、国籍不明で通りますか。日本の繊維製品が、絹なんという一枚二百万、三百万、安いものでも十五、六万、帯一本で二十万もするような、そんな高いものじゃなくて、ワンダラーブラウスでも、国籍がなかったらアメリカでは通用しませんですね。そうでしょう。とっくり首のニットのシャツ、せいぜいツーダラー、それでも表示がないとこれは通用しないですね。皆さんネクタイをごらんください。絹織物だったら全部表示があるのです。デパートがみんなここに自分のマークをつけておる。なぜ韓国のしぼりだけは無籍者で通るのですか。なぜ表示しなくてもいいのですか。万年筆であろうと香水であろうと、消費物資といえどもみんな国籍はついておるのです。同じ朝鮮のものでも朝鮮ニンジンには、はっきり朝鮮ニンジンと書いてあるのです。焼き肉料理でも、ちゃんとこれは朝鮮焼き肉料理と書いておるのです。なぜしぼりだけはもぐり的でいいのですか。あれは最初にせもので非常に物が悪かった。だからもぐりで来たのです。それがずっと前例になってきておるのです。なぜもぐらしておいていいのです。もぐりを何年続けると、あなたのほうは発動なさるのですか、承りたい。
  58. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 お答えいたします。  原産国の表示がしてないということ、しかもその品質があまりよくないという場合、何も表示がしてなければ、一般消費者は、あたかも国産品であると思って買うということがはっきりしておりますれば、これは四条三号の告示をすべきだと思いますが、しぼりについては、品質が最近だいぶよくなっているというようなあれもありまして、まだその点について十分の調査をしておりませんので、著しく劣っているもので、しかも価格が安い、そういうものが、国産品のような表示はしてないけれども、そういう誤認を与えるおそれがあるということであれば、これは告示をすべきであるというふうに考えます。
  59. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 確かに当初、輸入が開始されて保税加工貿易が開始されたころのしぼりと比べますと、韓国からの輸入品もこれまた質がよくなってきておることだけは事実なんです。だからといって、これを日本ものとして売られる、そのことがよろしいとは言えないわけなんです。現に山梨県でできた朝鮮ニンジンは、朝鮮ニンジンといってはいけないと韓国からクレームをつけられて、朝鮮ニンジンとはいわれなくなった。これは種は同じものなんです。ただ産地が違うだけです。だから、当然しぼりの場合でも、生産国の名前をつけてしかるべきです。私はきのう、この特恵関税の法案については賛成をしました。だから、韓国から輸入されるものが安く入って、そして国民、消費者が助かるということなら賛成なんです。日本と韓国とは今後ますます友好を続けなければならぬということは知っておる。友好を続けるためにも、にせものがもぐりで流通機構に乗っておるということは、今後の友好上よくないと思うのです。したがって申し上げておる。  最後に、しからば国産品について統一マークをつけようではないかということになり、それもあなたの先任者と話し合って、これはけっこうなことでございますということになった。ところが、あなたの部下はあれこれクレームをつけて、ついにそれも日の目を見ずに今日に至ってきた、こういうことなんです。これはおかしいです。ですから公取としても、友好をますます進めるためにも、消費者を守るためにも、この際特にがんばっていただきたい。一月十五日の成人の日、それからきのう、きょう、女子大の卒業式が行なわれておりますね。みんなつけておるのです。しぼりなしであの服装はできないのです。日本の女性が純日本式の服装をして出るときには、しぼりは絶対欠かすことのできない衣料品なんです。これはおよそ日本の女性であれば最低一回は使う、お嫁入りのときに。国民の必需品なんです。だから、戦争中といえども別扱いにされたわけなんです。国民全体に被害が及ぶということであれば、当然あなたのほうの権限を発動されてしかるべきであると思うわけです。あなたはまあ交代なさったんですからね。きょうが初めてですから、これはやむを得ない。至急これについて調査を進め、国民のためにも善処していただきたい。このことを要望しまして、ちょうど時間になりましたから、私の質問はこれでおしまいにします。
  60. 浦野幸男

    ○浦野委員長代理 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。    午後零時三十三分休憩      ————◇—————    午後一時四十五分開議
  61. 八田貞義

    八田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。加藤清二君。
  62. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 先ほどの質問に引き続きまして、質問をお許しいただきましたのでいたしますが、さっき大臣がお留守のときに、実は日本のしぼり産業が崩壊の寸前にきている、それは南朝鮮、韓国からの輸入の量が、日本の生産量よりもはるかに上回って、オール消費の七〇%が韓国から輸入されるようになった、日本が三〇%に追い込められてしまった、アメリカは二、三%でもって制限、こうくる、じゃ日本は一体何%まで追い込まれたら対策を立てるか、こういう質問をしたわけです。その対策について、あれこれ具体的に私が提案をしましたところ、それについて通産省側も、公取側も、取り急ぎ対策を立てて善処をします、こういう答弁があったのです。それについて、まだ聞いていないでございましょうから、あとでよく打ち合わせをしていただきまして、急速対策を立てていただきたいと思います。それは、ただ単にしぼり業というと御理解ただけないかもしれませんが、従業員は十五万人もおるわけです。同時に、この十五万人の救済策を、総理がきのうは、いままでも前向きでやってきた、今後も必要とあれば幾らでも救済策は立てる、こうおっしゃって見えたのですが、残念なことに、しぼり業を助けるといったって、いままで助けてもらった覚えがないのです。今後助けるとおっしゃって、どういうふうに助けていただくか、救済をしていただくか、内容がないのです。同時に、この業に携わっている人たちは、これはほかに転向のしようがない。なぜかならば、住んでいる場所が半島の先であったり、島であったりです。これは大体尾張と三河の島ですね。島と半島で、工場に通勤のできない人たちが従事している仕事なんです。どうやって助けるか、助けようがない。したがって、私が提案をしました諸案件について、せめてそれを実行に移していただければある程度の救済策になる、こういうことでございます。ですから、あとでよく打ち合わせをして、急選対策を樹立していただきたい、こういうことを先ほど申し上げたわけでございます。大臣の御所見を承りたい。
  63. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 お話の概要は、私も実は前から聞きまして、比較的、現地ではございませんが、机上ではございますけれども、知識を持っております。今回の特恵のスキームをつくるに際しましても、特に絹織物は例外といたしたわけでございますけれども、そのときにも、このことはだいぶ私ども議論の対象になり、実は話題になりましたわけでして、わが国の市場占有率が、もうそのときでも六〇%をこえておったということも存じておりまして、例外にいたしておるわけであります。家内工業と申しますか、そういう形で従事しておる人が非常に多いということであろうと存じますので、対策もなかなか容易なことではあるまいと考えますが、よく御指摘の点は、後に事務当局から聞きまして、研究をいたしてみたいと思います。
  64. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 その例外措置の問題でございますが、例外というものの例外でなくなってきているのですね。今度の特恵関税の問題で、かつて、日韓の国交回復の以前、あるいはその当初におきましては、保税加工貿易については二〇%の関税がかかっておりました。ところが今度のあれで、四月一日からは一〇%になるんでしょう。しないんですか。やはり二〇%で据え置きですか。例外ということはどういう意味ですか。
  65. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私の例外と申しましたのは、御審議願いました特恵の品目の中で、絹織物を含みます七品目は特恵の対象にしない例外品目といたしておりますので、そう申し上げているわけでございます。
  66. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 かつて二〇%であったものが、しかもその二〇%は下げないという約束——国交回復の八億ドルを供与するときに、予算委員会で横路君と私とで質問しました結果、時の通産大臣三木さんは、かたい約束をされたけれども、それがケネディラウンドその他の関係でだんだんとなしくずしにされて、いまや一二%になっている。今度改定されると、四月一日から一〇%になるのじゃございませんか。これは例外ですか、あくまで。
  67. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 ただいま先生の御指摘の税率はガット税率でございますが、これは一般的に適用になるものでございます。大臣が例外と言われましたのは、さらにその税率から下げるということはしない。つまり、特恵供与対象国に対しましても、絹織物は関税率を引き下げないという意味でおっしゃったものでございます。
  68. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 引き下げないじゃなくて、だんだん引き下げてきたんでしょう。引き下げませんという予算委員会の確約があるにもかかわらず、二〇%が一六%になり、一二%になり、今度一〇%にするのでしょう。しないんですか。そこが問題なんです。
  69. 楠岡豪

    ○楠岡政府委員 今度四月から一〇%になる予定でございますが、それ以上は下げないという趣旨でございます。
  70. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 冗談じゃないですよ。だんだんなしくずしでいって下げてきた。その結果が、輸入量が七〇%になり、国の生産量は三〇%に減ってしまったということなんです。アメリカはどうかといえば、わずか総消費量の三%や四%、一〇%をこえたものは一つもありません。それでもなおインジュリーがあるのないのというて、そして制限をし、ケネディラウンドの精神を破り、LTAの第一条の違反を侵し、ガット精神も侵して日本の繊維は制限してきている。なぜ日本だけがケネディラウンドに従わなければならないのか。自分から唱え出したアメリカがそれを打ち破って、実績を示して日本に無理やりな自主規制を強要している。そういうやさきに、なぜ日本だけがケネディラウンドを守って、日本の業者を痛めつけなければならないのか、これがその業に携わる人たち理解に苦しむ点なんです。もっとも、しぼり業のごときはつぶれてもやむを得ぬとおっしゃれば、これはやむを得ない、そういう感覚であれば。これは国の必需品なんです。だから、この点に留意をしていただいて、至急対策を立ててもらいたいという要望を先ほど申し上げたわけです。ひとつぜひ大臣、緊急に対策を樹立願いたい。  もう一点、さきの質問に、取り残した問題でございますが、この特恵関税は、ガット加盟国にのみ限るわけですね。それ以外の国は、これは適用するのかしないのかという問題です。
  71. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 特恵関税そのものは、ケネディラウンドと違いまして、ガットの従来の考え方から申せば大きな例外になるわけでございます。むしろ変則になると申し上げたほうがよろしいと思います。これは、御承知のようにUNCTADで始まった話でございますから、原則は、UNCTADのメンバーである発展途上国ということになるわけでございまして、それに対しまして、なおそれ以外の場合にも、地域等について考え得るということは御提案を申し上げたとおりでございますが、ガットとは直接に関係がないことだというふうに考えております。
  72. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それじゃお尋ねいたしますが、いま日本では絹の需要がふえた。あるいは繭、絹糸を加工して絹織物とし、日本の伝統芸術をこれに加えて、それが輸出にも向いている。ところが、かつては輸出の王座を占めていた絹織物、絹糸は、いまや輸入国に変わってきている。その輸入先は大体東洋である。その際に、今度の特恵が適用されましたとすると、同じ朝鮮でも南は一〇%になる。北は二〇%である。同じ中国でも、香港を通ってくると一〇%になる。中国から直接ですとこれが二〇%になる。これは日本にとって利益なことでしょうか。それとも不利益なことでございましょうか。これ、そういう原案になっておるでしょう。もし私の言うた数字が違えば、その点を御指摘願えればけっこうでございます。
  73. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう原案になっておるだろうと仰せられますけれども、その原案と言われますものが、何を言っておられますのか。特恵との関連では、生糸も絹織物も例外でございますから、このたび御提案申しました特恵の法案とは、関係がないことになります。  問題は、ガット、ケネディラウンドで協定いたしましたものを、その他の国々に均てんさせるという立場で私どもずっとやってまいりました。と申しますのは、ケネディラウンドはいわゆる一般的な関税譲許でありまして、特恵のように特定なものではございませんから、韓国、台湾以外の国々にも、何かの形で均てんをはかることが適当であろうと考えまして、すでに数百の品目について均てんを実現してきたわけでございます。ただいま均てんが実現していない品目が、たしか二十三あると思いますが、その中に生糸などが入っておるわけでございます。これは主として中国本土との関連でございますけれども、韓国、台湾等々のそれらの製品が、いわばわが国のある意味で注文生産といったような性格を持っておりますのに対しまして、中国本土にはそういう関係はございませんし、なお、生糸の生産については中国本土は非常な力を持っておる。絹織物につきましても、わが国国内の産業と、注文でなくてむしろ競合的な性格を持つというようなことから、均てんをさせる中での例外として二十三ほど残っておる中にそれらのものがございます。したがって、それは御指摘のように、韓国あるいは台湾との関係におきましては関税率に格差がございます。これはもう御指摘のとおりでございますけれども、それは先ほど申し上げましたような、わが国との競合関係というものを考えましてそのようにいたしておるわけでございます。
  74. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 競合とおっしゃいますけれども日本はいま繭や絹糸や毛羽は輸入国なんです。輸出するならどこかで競合するのですが、わが国の繭とどこが競合するのですか。わが国の絹とどこが競合するのですか。私にはわかりません。たとえば油にしてもそうでしょう。中近東だけではいけない。ローサルを求むるならば、それは大陸だなであろうと、カムチャツカであろうと、ソ連の油であろうと、あるいはガスであろうと、世界じゅう、地球上至るところからローサルは求めるべきであるという方針で進んでおるのでしょう。なぜこの生糸だけをそういうことをしなければならぬのですか。競合するといえば、何やら日本がどこかの市場においてけんかする、こういうふうに思われますけれども、現に足りないのですから、足りないのを外国に求める。競合といえば、むしろそれは朝鮮の南と北ないしは中国との関係において輸出競争ということが行なわれる。そういう競合はあり得るでしょう。何かほかに競合がありますか。
  75. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御承知のように、わが国には生糸の生産も絹織物の生産もございますので、輸入品とそれらの国産品との競合でございます。
  76. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それが韓国から輸入するときは一〇%、中国から輸入するときは二〇%、同じ中国の品物でも香港を回ってくれば一〇%、これはどういうわけなんでしょう。このことはよほど気をつけていただかないと、たいへんな天つばになって、国益にそむく結果になるから申し上げる。  第一の理由。それはコットンがそうです。アメリカが二国間協定のときに、LTAの前のSTAからそういう制限をやりました。日本を制限するためにあれこれの制限を設けました。ところが、日本には制限が加えられたけれども、韓国や香港ものについてはそんなきびしい制限はなかった。日本はワクを全部食ってしまった。それでもなお輸出をしたいというワクが香港に余っていた。そこでどうなったかといえば、結果は、日本の生産力は維持されていた関係上、日本品が香港品としてアメリカへ輸出される結果となった。そこで日本の商社はどうなったか。香港の人に口銭を払う分だけ利益が減った。アメリカの輸入商はどうなったか。香港を回ってくる分だけ買いが高くなった、そういう結果になった。これが第一。  第二は、現に繭や糸の輸入の実績を大臣はよく御存じだと存じます。これは輸入されるようになった当初では、一位が中国、二位がソ連、三位が韓国、四位が北鮮、五位が北ベトナム、こういう順序であった。ところが関税の操作によって、きのう、きょうの順序では、第一が韓国に変わってしまっている。しかもこの韓国は南だけの話なんです。もうすでにそのことが起きている。これがもう一そう追い打ちをかけ、片や一〇%になる、片や二〇%になれば、輸入の口銭というのは、これは釈迦に説法でございますけれども、大体四%を上回るなどというものはないのです。したがって、流通機構の商社仲間で、片や一〇、片や二〇ですから、これを利潤の中で消化するということは不可能なんです。しかし糸自体は昔からそうなんです。天蚕といえども、繭といえども、中国のものがいいにきまっているのです。それを押えて、どうして韓国ものだけを多く輸入するようにしなければならないのか。これが理屈としてはわからないと同時に、具体的にこれを加工する業界では、何という妙なことをするんだろうか、繭の中には共産主義はないのだ、これをまた輸入して加工する人たちも共産主義になった人はおりはせぬというのです。なぜそんなことをしなければならぬだろうか。これがやがていまや、自動車業界まで中国に向かってオファーをしている時代になってきた。もう使いを派遣する時代になってきた。中国語のパンフレットをつくって、機械も自動車もわんさと向こうへ行こうとしている。そういうやさきに、中国から必然的に輸入されねばならない絹の問題で、逆に今度日本から向こうへ輸出したいというものにペナルティーや罰則をつけられる結果になれば、これは国益にとってはたいへんな損ではないかと考えられますが、これは私の間違いでしょうか。
  77. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このお話と先ほどのしぼり染めのお話とは、どのような関連に立ちますのか。もし、わが国がネットの輸入国であるものについては、関税などはずっと低くして、あるいはなくしてしまったほうがいいという御主張でありましたら、それは一つの御主張で一貫しておると私は思いますけれども。実は、わが国に生産の全然ございませんものでしたら、関税で何も国内の産業を防ぐ必要がないわけでございますけれども、これらのものはわが国にまだ生産がございます。生糸もございます。絹織物はもちろんございます。そして諸外国のうちで、実は御指摘のように、中国本土の生糸というものは昔から非常に競争力がございます。非常に強いのでございまして、それは韓国、台湾の比ではないのでございます。そういうことから考えますと、わが国にまだ相当の生産がございます以上、やはりそこである程度の関税政策というものが入り用になる。これがもう一つ徹底をいたしますれば、冒頭に加藤委員の言われたようなお立場も、私は一つ考え方だと思いますけれども、やはり国内産業保護という面がそういうところに出てまいっておることは、私は否定をいたしません。
  78. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 約束の時間がまいりましたので、私まだ理解しませんけれども、これはいずれ後の機会に譲りたいと存じます。  中国の絹の生産の力が大きいということは、よく承知しております。だから、それに対して制裁的な関税をかけられるという意味もわかります。わかりますけれども日本の総生産といおうか、糸の需要は四十万コリでしょう。その中で輸入されておるのは一体どれだけありますか。せいぜい一割五分ですよ。それには制裁的なあれをつける。しかもその一割五分のものを、先ほど申し上げました五カ国で輸入しているのです。中国から輸入される分は、日本の総生産ないしは総消費の三%か五%にも満たないものなんです。ところが、さっきのしぼりのごときはどうなったかといったら、日本のオール消費量の七〇%が輸入されるようになってしまった。この七〇%になってしまったほうは野放しにしておいて、加工材料であるほうは三%か四%でもって制限する。これはおかしいじゃございませんか。それこそ私は理解ができない。本日は、もう理事さんとの話し合いでなんですから、これ以上私は時間をとろうとは思いませんが、理解のできないままお預けにして終わります。
  79. 八田貞義

  80. 近江巳記夫

    ○近江委員 いろいろお聞きしたいこともございますが、まず初めに私はいま問題になっておりますパイプラインの問題についてお聞きしたいと思います。  運輸省が非常にバックアップした国鉄の線、それから通産省がバックアップをいたしました業界のそうしたパイプライン、株式会社によるそうした路線、いま非常にいろいろとその調整について政府としても対処なさっておるわけでございますが、このどちらがどうだということについては、きょうの質問であとでずっとお聞きしていきたいと思っておりますが、まず、このパイプラインというものがわが国の現状にとってどのように必要であるか、それをどのように政府として受けとめていらっしゃるか。どちらがどうだということは別問題としまして、パイプラインのそういう必要性というものについて、簡潔にひとつお答えしていただきたいと思います。  局長さん、それからきょうは資源調査所長もいらっしゃっておりますし、科学技術庁の資源調査会が昭和四十二年一月二十四日に「パイプラインによる石油輸送の近代化に関する調査報告」、非常にすばらしい報告書を出していらっしゃいますし、調査所長さんもきょうお見えになっていらっしゃいますので、パイプラインの必要性の問題、そして三番目に大臣に、このパイプラインがなぜわが国にとって必要であるか、通産大臣としてどのようにそれを受けとめていらっしゃるか、お三人の方にまず初めにお聞きしたいと思います。
  81. 本田早苗

    ○本田政府委員 お答えいたします。  欧州諸国におきましては、すでに十数年前からパイプラインが敷設され活用されておるわけでございますが、わが国は海岸線が非常に長いということで、製品をタンカーで基地まで送るという方法によりまして石油製品の流通を確保していくという方法がとられてまいりました。そのためにパイプラインの採用がおくれてまいったわけでございますが、内陸におきます石油製品需要が逐次増加してまいりまして、経済性の点でパイプラインの利用が可能になるという状態が出てまいったわけでございます。かたがた、鉄道の輸送能力あるいは道路のローリーによる輸送能力等は、能力的な限界も近づいてまいるということになりますと、内陸での石油製品の輸送につきまして、需要を満たすための方法としては新しい方法をとることが必要だ。その際、量もまとまってまいった地域におきましては、パイプラインによって送ることが、タンク車あるいはタンクローリーによって運びますような、片道が片荷になるというような問題もなく、連続的に送れるという事情もございまして、パイプラインの採用が必要であるというふうに相なってまいりまして、われわれとしても、数年来研究の結果、それを具体化することが必要だというふうに考えてまいっておる次第でございます。
  82. 酒井忠二三

    ○酒井説明員 御説明申し上げます。  ただいま近江先生からお話がございました「パイプラインによる石油輸送の近代化に関する調査報告」というのはこの資料でございますが、これは四年の日子を費やしまして、昭和四十二年一月に科学技術庁資源調査会の正式な報告書に採用されまして、直ちに科学技術庁長官に提出された報告書でございます。  このパイプラインによる石油輸送ということにつきましては、ただいま、その必要性につきまして通産省局長さんからお話がございましたが、われわれがこれを取り上げました動機と申しますものは、諸外国のパイプ輸送の状況、それからわが国におきます石油類の輸送におきましていろいろ事故を起こしたというようなこと、また都市内の交通が非常に渋滞して大災害を起こすおそれもあるというような観点、一応社会開発関係の観点もございます。石油と申しましても、いろいろ油種別に種類もございますし、また地域的にも地域の特性というものがございます。そういうものをパターンを分けまして、五つの類型のケーススタディーをいたしました。  われわれがこの報告書によって現在プッシュしておりますのは、石油の大量中距離輸送は、わが国のこれからの石油輸送に非常にメリットがある、利点があるという点でございます。ここで大量と申しますのは大体年間一千万キロリッター以上の輸送、中距離輸送と申しますのは大体百キロメートルから三百キロメートルくらいで、ただいま通産省局長さんから御説明がありましたように、長大距離になりますと、日本は四面環海の国でございますので、沿岸のタンカーで輸送したほうが安いし安全でもあったということも従来ございますので、いまわれわれが、資源調査会の報告書によりまして推進しようと考えておりますのは、いま申し上げた中距離大量輸送という点でございます。その利点を具体的に五つ、六つ申し上げます。  まず、これは工学的なことでございますが、パイプの直径が二倍になりますと四倍のものが運べるという利点がございます。それに対しまして、パイプの直径が二倍になりましても建設費は大体二倍だということでございます。  二番目に、臨海部から内陸部に非常に石油の需要がふえている。したがいまして、他の輸送手段たとえは鉄道、自動車——タンクローリー、タンク車と申しますか、そういうものに比べてその輸送費が割り安であるという点が第二点。  第三点といたしましては、最近の科学技術の進歩によりまして、パイプの中に入れます隔壁、ピグと称しております。または電子計算機、コンピュターを利用することによって、コンピュター・コントロール・システムの技術が発達いたしまして、配送というものが非常に正確になった。私どもはこれを水道方式といっておりますが、供給者から需要者に対しまして、個別にでも運べます。しかも量は非常に正確に運べます。ガソリンでも灯油でもナフサでも、軽油類までそれを運べますという技術が進歩しております。これが第三点。  それから第四点は、これは随伴することでございますが、この各輸送方式を比べますと、労働力が非常に節約できる。  それから、天候等に左右されないで安定的に供給もできる建設期間も比較的に短縮できるという利点もございます。  それから、冒頭に申し上げました他の目的、最近の都市間の交通渋滞による混雑を十分に緩和できるという利点もございます。  いままでいいことをぺらぺらしゃべりましたが、考えなければならない点が三つございます。  まず第一点は、安全性の問題でございます。元来石油といいますのは可燃性の液体でございます。これは天然ガス、都市ガスに比べれば危険ではございませんが、一応可燃性の液体でございます。でございますので、パイプのあるところから漏洩するというような場合に火災を引き起こしやすい。しかも、日本のように人口の密集地域におきましては、大災害を起こしかねまじいことも懸念されます。
  83. 八田貞義

    八田委員長 簡略に願います。
  84. 酒井忠二三

    ○酒井説明員 どうも失礼いたしました。  したがいまして、安全性に対する技術基準を確立するということがまず第一に必要だと思います。  それから第二点といたしましては、固定施設になりますので、建設費が非常に巨額になる。これに対しまして、二重投資を防ぐとか、稼働率が落ちない、輸送費を上げないようにするくふうが必要だ。それには、パイプラインを敷きますときに長期的な需給の見通しをしっかりやれということでございます。  最後にもう一つは、石油パイプラインを敷くことによりまして、地域独占性を相当持ってくるということでございます。地域的な独占性を持つということは二つ問題がございまして、一つは公共用地等を相当使わなければいけないという点と、エンドユーザーと申しますか、最終需要家までそのパイプで縛ってしまう独占というようなことも一部懸念されます。また他面、現在の石油の流通業との関係もございます。そういう問題がございます。  以上でございます。
  85. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 つまり内陸部の大きなところでは、在来、パイプラインというものが比較的採用しやすいし、またそれが経済的であったというふうに考えられますが、わが国は海がございましたから、最近までその必要を感じなかった。しかし消費量が非常に多くなりましたことと、交通上の安全あるいは公害のおそれ等々から、新しくパイプラインによる輸送が浮かび上がってきたわけでありまして、パイプライン側においては、技術の進歩に伴って異種の製品を一つのパイプで送れる、あるいはコンピュター等によって正確に制御できる、こういったような要因が出てまいりましたので、今日パイプラインによる輸送というものが非常に大切な問題になってまいったというふうに考えております。
  86. 近江巳記夫

    ○近江委員 メリット、それからまた注意しなければならない欠点等、三点ほどいまずっとお聞きしたわけでございますが、しかしこのメリット、デメリットを考えていきますと、やはりこれから高度に発展していく大都市圏を考えると、このパイプラインというものは非常に必要であるし、しかも緊急にやるべき性格のものである、私もこのように判断をするわけであります。  そこでいま国鉄の案さらに通産省がバックアップされております業界の案というこの両省の案が並行したままで、その点で何とか一致したそういう建設というものができないものであるかどうか、これは国民の多くの皆さんがそういう感じを抱いていらっしゃるのじゃないか、このように思うわけであります。  そこできょうは、運輸省建設省も来られておりますし、通産省ももちろん、大臣をはじめとして関係局長さんも来られておりますので、まず運輸省にお聞きしたいと思うのですが、この国鉄の案を強力に主張なさるメリット、またしなければならない点、ひとつ要点的に、できるだけ詳しくお聞きしたいと思うのです。それが終わりまして、次に通産省局長さんから、業界パイプライン会社によるメリット、また注意しなければならない点等について、簡潔によろしくお願いしたいと思います。
  87. 大久保一男

    ○大久保説明員 お答えいたします。  パイプラインの問題につきましては、先ほど皆さん方からお話がございましたとおりで、私も基本的に全く同感でございます。法律制度の問題とプロジェクトの問題は、一応は関連はございますけれども別でございまして、最初の法律制度の問題につきましては、寄り寄り通産省その他とも目下検討をしておる最中でございます。  ところで、あとの具体的なプロジェクトの問題につきまして申し上げますと、国鉄はいろいろ計画を持ってございますが、まず緊急にやらなければならないという点が一つございます。それは京浜地区と申しますか、東京湾の西側でございますが、川崎、鶴見、横浜、その地区の製油所から関東内陸への石油輸送国鉄はほとんどになっておるわけでございます。たとえば群馬、栃木両県におきましては、九九%以上が鉄道輸送によっておるわけでございますけれども、御承知のように、この京浜地区の貨物輸送量というものは非常な伸びを示しておりまして、一部では旅客電車と共用のところもございますので、線路容量が非常に逼迫して、四十七年中にはもうパンクしてしまうだろう、こういう状態でございます。そこで、その対策といたしまして、京浜地区発送貨物の四割以上が油でございますので、これをパイプラインに置きかえることによりまして、ほかの貨物を含めて輸送力の増強になる、こういうふうに考えております。  それからもう一つは、御承知のように、京浜地区から内陸へ入ります列車の経過地といたしまして、山手貨物線というところを通るわけでございますが、四十二年の八月に、御承知と思いますけれども、新宿駅でタンク貨車の爆発事件が起きまして、たいへんな騒動になったわけでございますが、そういう過密地帯の鉄道のタンク貨車による輸送を排除いたしますためにも、パイプライン化することによってそういう事放の再発を防ぐことができる、こういうことでございます。  それからさらに、パイプラインの問題は、用地確保ということが一番わが国では肝要なことでございますけれども国鉄のいまの計画では、ほとんど大部分鉄道の既存の線路敷を活用するということもございます。それからターミナルも、一部鉄道の貨物ターミナルを利用するというように、用地手当てに非常に問題が少ない、したがって安くできる、こういうこともございます。  それから、国鉄は新幹線をつくりました技術もございますので、そういった技術能力をフルに活用いたすこともできますし、パイプラインの事故は、諸外国の例で見るように、第三者に起因する事故が多うございますけれども国鉄は線路敷を排他的に管理しておりますので、一体としてそういった事故防止もできるということもございます。  それから、四十四年九月には国鉄パイプライン輸送事業をやることについての閣議決定もございますし、着々と三十八年ころから準備も進めて、用意万端終わっておりますし、まだ通過はいたしておりませんけれども、四十六年度予算案には四十億円の工事費も計上されておるわけでございまして、そういった諸般の、予算の通過とか、あるいは一部にいわれておりますように、集油ラインと申しますか、関係石油業界との話を円満につけまして、早急に着工いたしたい、このように考えております。
  88. 本田早苗

    ○本田政府委員 お答えいたします。  いま業界計画しております。パイプライン計画は、われわれといたしましては、石油業界合理化、近代化の一つの必然的な形だというふうに考えておるわけでございまして、機能的に生産、販売の一体化、一体的な運営だというふうに考えるわけでございます。そういう意味考えますと、いまのルートが栃木、群馬へ行く際の石油需要の濃密な地帯を通っていくという形で、需要の地域と合っておるということが一つ。それから先ほど申し上げましたように、パイプラインとしてはやはりスケールメリットが必要なのでございまして、その際、京浜地区にも千葉地区にも両方に製油所がある。その両方の地区の石油企業が同時に利用できるということによってスケールメリットを享受し得る。また臨海部に製油所がございますので、できるだけ海を通してルートを選ぶというほうが適当ではないかというふうに考えるわけで、需要構造から見て適当であるというふうに考えておる次第でございます。そういう意味で経済性の点も要件をかなえておるのではないかというふうに考えるわけでございます。
  89. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま両省のお話をお聞きしまして、そのお考えになっていらっしゃる点は非常によく理解できるわけです。そこで、結局これでは、国鉄さんのおっしゃるのもいいし、業界さんのおっしゃるのもいい、では二本引くのかということになるわけでありますが、そうなりますとこれは経済性とかいろいろな点からいって、やはり非常にまずいのじゃないか、このように思うわけです。そこで結局、お互いがおっしゃっているその辺のところ、やはりもう少し煮詰めて考えていかなくちゃいけないのじゃないか、このように思いますので、私もこの辺、聞きたいと思う点を数点お聞きしたいと思うのです。  まず国鉄さんにお聞きしますが、国鉄のこの八王子のパイプライン計画について、これについてはいまメリットをずっとおっしゃったわけでありますが、特にどういう利点があるわけですか。
  90. 大久保一男

    ○大久保説明員 先ほどいろいろと申し上げたわけでございますが、重複するかもしれませんけれども一つは、関東内陸への大部分の油を運んでおります鉄道輸送力の逼迫を緩和するということと、それから、より安全な輸送手段でございますパイプラインに油を転嫁させることによって、安全性を確保するという問題が基本的にございます。それから、国鉄パイプライン計画のその他のメリットといたしましては、先ほども申し上げましたが、線路用地を利用いたしますので、新たに用地手当をすることなしに、線路のといいますか、用地の立体的有効な活用ができる。それからさらに、国鉄パイプラインのターミナルは、八王子、南埼玉ともども鉄道の貨物駅と共用と申しますか、入っておりまして、パイプラインによって運ばれた油を、その地場で消費するものばかりでなしに、さらに奥地へタンク貨車に中継することによって、非常に有機的な、効率的な輸送が確保される、こういう点に尽きるかと思います。
  91. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで通産省は、この国鉄の八王子パイプライン計画については、どのように評価しておりますか。
  92. 本田早苗

    ○本田政府委員 お答えいたします。  パイプラインにおきましては、先ほど申し上げましたように、経済性があるということがきわめて必要なわけでございますが、そういう意味におきましては、国鉄の現在の計画につきまして、経済性あるいはルートの指定の最適性というものにつきましては、国鉄石油業者の間で十分さらに詰めるべき問題点が残っておるのではないかということで、両者の間でもさらに現在そういう点について検討を進めておる次第でございます。
  93. 近江巳記夫

    ○近江委員 だからその問題点を聞いているわけですよ。抽象的なお答えは要らぬわけです、きょうは。ですからどう評価なさっているのですか。ほんとうのことを言ってくれなければ、われわれ判断しようがないわけですよ。煮詰めてますとか、そんな抽象的なことでは困るのです。
  94. 本田早苗

    ○本田政府委員 業界といたしましては、一つ国鉄の現在の計画パイプラインまで油を持っていくべき集油ラインというものの建設が必要でございます。この集油ラインの建設については、業界としてもまだ最終の結論が出ていないということが一点ございます。それから、線路敷きについての技術につきましては、国鉄としては十分検討済みというふうなお話でございますが、その点について迷走電流等の問題がございますので、これらの点についての御説明を十分伺う必要があるというようなこと。それから、実際の運営にあたって今後の輸送料金がどうなるのか、それについては将来にわたってどういうふうにきめ得るのか、これらの点についてまだ明確になっておらないわけでございます。したがいまして、石油業界としては、現在の計画ですぐ利用し得るという判断に立ち至らないというのが現状でございます。
  95. 近江巳記夫

    ○近江委員 国鉄は四月から着工したい。きのうの内閣委員会でも、たしか運輸大臣が、四月から着工するという答弁をなさったということを私は聞き伝えにお聞きしておるわけですが、これについては国鉄さん、どうですか。どう考えておられますか。
  96. 服部経治

    ○服部説明員 ただいまの点、お答え申し上げます。  先ほどから大久保計画官から御説明申し上げましたように、国鉄パイプライン計画につきましては、同地区の川崎から関東内陸向けの貨物輸送量の逼迫に対応するためにこれを考えているものでございますので、そういう意味で非常に緊急性があるというふうに私どもは認識いたしております。もとより、これの着手という問題につきましては、関係石油業界との話し合いが必要であるということは十分認識しておるつもりでございます。  なお、昨日の大臣答弁は、私もその場におったわけでございますが、四月にでも着手させたいというふうに思っておるというような答弁であったと記憶いたしております。
  97. 近江巳記夫

    ○近江委員 このどちらがいい悪いということは、もっとお聞きしてみなければ私自身の判断はまだできませんけれども、しかし、両省が意見がまだ一致しておらない、業界等交えて三者のそういうことができておらない。先ほども国鉄さんおっしゃっておられましたが、閣議でも決定しておるとおっしゃっておるわけですね。それで大臣も、そういう発言のニュアンスからいまますと、四月から着工したい、この気持ちが非常に強いわけですし、その点、国鉄パイプライン事業は閣議決定されておる。おそらくそれに基づいていまおっしゃっておられると思うが、国鉄が四月に着工したいとおっしゃっていることについて、通産省としては、どのように受けとめていらっしゃるわけですか。抽象的な議論は抜きにして、きちっと思っていらっしゃるところを、ひとつはっきりおっしゃっていただきたいと思うのです。
  98. 本田早苗

    ○本田政府委員 国鉄計画について、運輸省としてもできるだけ早く着工をさせたいということで御意見が出ておるのだと思いますが、先ほど申し上げましたように、集油ラインの問題とか、あるいは石油業界の輸送について基本的な条件の話し合い、こういうものがまだできておりませんから、早急に着工というのはむずかしいのではないかというふうに考えております。
  99. 近江巳記夫

    ○近江委員 じゃ大臣、ひとつこの問題について……。
  100. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このパイプラインの敷設の問題につきまして、土地収用法の問題等もございますので、実は法律案を御提案申し上げたいと考えておりまして、関係各省間でその作成をいたしておりましたが、意見の一致を見ることができない点が多少ございました。それで、運輸大臣建設大臣、私と三者でその調整をはかることが適当であろうということになりまして、いろいろ御相談をいたしたわけでございます。  これがいわゆる権限問題等でございますと、これは正直申して次元の高くない話でございますから、三大臣の間で話し合いますとおのずから調整がつくであろうというふうに考えたのでございましたけれども、多少理念的な問題が出ております。それは、従来タンク車あるいはタンクローリー等で運んでおりました。それがパイプラインという形に変わっていくのであるから、そのラインがどこを通ろうともそれは輸送業務である、こういう理念運輸大臣としてはお持ちでございます。このことにつきまして、これは理念の問題でございますから、いわゆる足して二で割るというような筋合いではないという運輸大臣のお考えでございまして、そうでございますと、それは相当基本的な問題でございますから、三省間でもう少し話し合ってみようではないか。たまたま、私ども国会法案を御提案いたします日限というものを政府として考えておりましたので、それも迫り、実はそれを過ぎたりいたしましたので、できるだけ早く建設大臣中心にその間の話し合いをいたそうではないかというのが、ただいまの現状でございます。  他方で、現実パイプラインを敷設いたしますということ自身は、それ自身法律がなければできないという筋合のものではなかろうと存じます。そこで、国家的に考えまして重複投資になるということでございましたら別でございますけれども、そうでない場合に、運輸大臣が御自分権限に基づかれて行政的な判断をなさるということについては、私どもがとやかく口をはさむべきことではない。いろいろ御準備等々、あるいは先ほど政府委員が申し上げましたような業界との問題は、これはございますと思いますけれども運輸大臣が御自分の判断で法律に基づいてやられますことは、私どもとしてとやかく申すべき筋合いではない、これが私の考えでございます。
  101. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、そういう重複した投資であっても、運輸大臣のそういう管轄下のことでやっていかれることについてはやむを得ない、こういうお話でございますか。
  102. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 重複的な投資になりますようでしたら、それは国民経済として損失でございますから、それであれば別でございますがと、こう申し上げたのでございます。
  103. 近江巳記夫

    ○近江委員 しかし、この四月に着工していくという点になりますと、まだ三省調整ができておらない。現実の問題としてはやはりそういうおそれが非常に出てくるのじゃないか、このように思うわけです。その点は何とか早く調整をやっていただきたい、このように思います。  そこで、さらにこの問題点をずっとお聞きしていきたいと思うのですが、この国鉄の事業費が四十六年度に予算計上されており、直ちに着工できる、こうなっておるのですが、その辺のところ、もうちょっと突っ込んでお聞きしたいと思うのです。別に法案とか何にも基づかなくても、予算があるから話し合いがつかなくてもできるわけですか。
  104. 服部経治

    ○服部説明員 国鉄がすぐにでも現状においてパイプラインに着工できるかとのお尋ねであると思いますので、数点に分けてお答えいたしたいと思います。  まず、国鉄の法律上の行為能力という点でございますが、これは私ども、現在の日本国有鉄道法の解釈上行ない得る立場にあるというふうに考えておるわけでございます。  それから次に予算の点でございますが、これは現在、国会で御審議をいただいております予算案の中に、まあ国鉄の実行計画ベースの問題ではございますが、一応四十億円という額がパイプライン工事用に考えられておるということも事実でございます。  それから技術能力その他の点につきましては、国鉄はもうつとに早くからその面の検討を始めておりまして、特に保安関係の問題につきましては、日本土木学会というところに諮問いたしまして、きょうその答申が出てくるというような運びになっております。  また、用地の点につきましても、先ほど来御説明申し上げておりますように、ターミナルの一部の地区を除きましては、ほぼ全面的に鉄道線路敷を使用いたす予定でございますために、特段用地上の手当てというものが現段階では必要ではないというような状況に相なっております。
  105. 八田貞義

    八田委員長 関連して橋口君。
  106. 橋口隆

    橋口委員 ただいまの近江委員の御質問に関連して、運輸省が見えられておりますので、ひとつお聞きしたいと思います。  原田事官がちょうどお見えになっていますから伺いますが、運輸大臣は、前に運輸委員会、きのうは内閣委員会でこういう発言をされたそうです。パイプライン運輸省専管である、四月一日からできるならば着工したい、こういうふうに伝えられておりますが、その真相はどうでございますか。
  107. 原田昇左右

    原田説明員 お答え申します。  ただいまの御質問の前段のパイプライン運輸大臣専管であるという点と、後段の四月から着工するという点とは、分けてたしか御発言があったかと思います。  前段の点は、法律論の問題として、運輸大臣は、パイプラインについては公共事業としてこれを法制的に把握することが当然であるから、したがって他の運送手段と同様、責任の主管は運輸大臣が主管して、そして各関係大臣に協議するという形で国民の窓口をすっきりするのが私の考え方である、ということを言われたのではないかと思います。  それから後段の点でございますが、四月から、先ほど服部業務課長から答弁申し上げましたように、大臣としては、京浜地区から北関東への鉄道輸送力が非常に逼迫しておりまして、四十七年じゅうには完全にお手上げになるという状況にございますので、それを解決するためには運輸主管大臣としては、四月ごろからできれば着工させないとそういう事態の解決策が立たない、したがってできればそうしたいのだ、しかしもちろん、石油業界その他との話し合い国鉄がつけて円満にできればやらせたい、こういう趣旨で申されたものと私ども解釈しております。
  108. 橋口隆

    橋口委員 私は、その前段のまず考えですけれどもパイプライン一つの輸送手段であるという考えは、これはおそらく日本運輸省だけがとっておる考えじゃないかと思うのです。御承知と思いますけれども、欧米諸国いずれも、パイプライン石油所管省がやっておることは周知の事実。これはもうあなた方も十分調査団を派遣されて御承知のことだろうと思うのです。もしそういうような油の輸送手段であるとすれば、工業用水も運輸省でありガスパイプも運輸省でなくちゃならないというような、実にこっけいな議論が成立すると思うのですね。私の言う意味では十分運輸省考え直される必要があると思うのですが、それは事務当局全体としても、そういうお考えになっておりますか。
  109. 原田昇左右

    原田説明員 お答え申します。  運輸省の中で大臣事務当局が何か意見不一致のような御印象では非常に申しわけないと思いますので、私ども大臣のきのうの御発言の趣旨は、パイプラインは輸送手段であって、パイプライン事業というのは輸送事業である。そしていまの御質問のあれは、欧米は供給業あるいは石油業を所掌する所管庁が所掌しておるというお話でございましたけれども、私ども調べた範囲で、たとえばアメリカにおいて申し上げますと、これは、鉄道、トラック等の公共輸送機関を所掌いたします官庁である州際交通委員会が、パイプラインを同様の一緒の法律の中で輸送事業としてとらえまして、公共輸送人の責任をパイプライン事業者に負わせるという形で州際交通委員会が所掌しておるわけでございます。それからなお安全の規制は、米国の運輸省パイプラインの安全法規をつくっておりまして、規制いたしておりますので、私ども承知しておりますのは、大体世界の八割を占めますパイプラインを持っておるアメリカでは、運輸省とその系統、つまり鉄道とトラックを所掌いたしております州際交通委員会というところが所掌しておるように承っております。  なお、欧州の例でございますけれども、共同事業でやっておるようなケースが非常に多いのは私ども承知しております。そういった関係で、工業省なりしかるべき官庁がやっておるようでございますが、たとえばフランスのトラピールのような、政府出資の一種の特殊会社のような公共的なものについては関係省がその監督に共管で当たっておるというように承っています。
  110. 橋口隆

    橋口委員 いまの海外の所管省の問題ですが、われわれが知る限りでは、アメリカの州際委員会といえども、これは交通だけの所管ではなくていろいろな問題を扱っておる。その一部として監督しておるように聞いております。また、世界じゅうで、鉄道線に沿うてやっておるところはおそらくどこにもないと思います。というのは、御承知のように、技術的な非常に重大な問題がある。これは電流のかげんで技術的に非常にまずいということは常識になっておるかと思います。運輸省でも国鉄でも、その点は研究をされているはずでございますが、世界じゅうでおそらくない。アメリカでも鉄道線路に沿っているところはディーゼルカーにすぎない、こういわれておりますが、そういう点はどうしても私は、それほど海外では鉄道沿いではぐあいが悪いといっているのに、日本ではそれを強行されようとするのは、保安上も非常に重大な疑義があると思います。この点も十分御検討願いたいと思います。  それから、時間がありませんので簡単にお聞きいたしますが、できるならば四月一日から着工されるということですけれども大蔵省はその点、予算執行を認めるかどうかということですね。それから法制正、今度は幾ら国鉄といえども土地収用をされないと十分な設備はできないだろうと思います。そういうような土地収用の場合なんかは、これは全然そういう権限は必要ないのか、それとも現行法でやれるのか、そういう点もひとつ承りたいと思います。  また、今度西部ラインをやられるとした場合に、経済的に採算が合わないだろうというのが経済界一般の見方ですね。おそらく赤字が出るだろう、一年間の操業率はおそらく三分の一を下るだろうといわれている。それをあえてしてやられるのか。また業界も、通油保証をおそらくしないだろうと思いますが、そういう点をどういうふうにお考えになっているのか。それでもなおかつ強行されるおつもりなのかどうか、ここでお聞かせいただきたいと思います。
  111. 原田昇左右

    原田説明員 お答え申し上げます。  まずパイプラインについて、欧米の例を必ずしもまねて日本がそのとおりやらなければならないものではないと私ども考えておるわけでございまして、日本のような非常に過密社会、高密度社会におきましては、土地の利用の形態、あるいはそれに伴いますパイプラインの敷設計画といったものは、やはり日本独自なユニークなものを編み出していかなければならないと思います。先般、欧米から帰りました視察団の話を聞きましても、山林、原野をまっすぐに、一直線でやられるというようなパイプライン建設が行なわれておるようでございますけれども日本の場合は、先生先刻御承知のように、非常に人家が密集いたしておりまして、また公共施設も非常に密集しておるところに、狭い、非常に困難な条件で建設されておりますので、やはり日本的な発想法が必要ではないかと思います。特に土地問題については、私ども成田で非常に苦しい経験をいたしておるわけでございますけれども日本の場合の土地の収用とか公共用地の取得という問題は、欧米と違いまして、並みたいていのことではないということを私ども心から感じておる次第でございます。そこで、欧米のほうは鉄道線路敷を使わなくてもうまくいけるような状態であるのは、非常にうらやましい次第であると感じておるわけでございます。しかしながら、日本の場合においては、鉄道線路敷を使う計画というのはかなり現実性があるのではないか、こう考えておるわけです。もちろん私どもは、鉄道線路敷を使わないで、しかも最も経済的で現実的なルートがあるとすれば、それはそれで十分活用していったらいいんじゃないか、こういうように考える次第でございまして、何も国鉄だけにやらせる意思は全然ございません。その点だけははっきり申し上げなければいかぬと思います。  それから次に、四月から強行するのかという点につきましては、これはもちろん、先ほどから大臣も申し上げておりますように、強行するというような考え方は一切ございませんで、できるだけ円満な解決を話し合いによって当事者同士がつけていくということは一番大事じゃないかと考えておる次第でございます。  しかしながら、この際御理解願いたいのは、鉄道はとにかく現在タンク車で運んでおるわけでございまして、その需要がどんどんふえておるわけです。それを鉄道がパイプにかえまして輸送を合理化して、しかも安いコストで運んであげましょうということでございます。それに対して荷主が、一般的な取引関係であれば、安くて安全に運んでもらえることであれば、コマーシャルベースとしてどのくらいの条件でどういうことかということが詰まりさえすれば、基本的な反対はあり得るはずがないと私ども考えておるわけでございます。政策論としてはもちろん別でございますけれども。コマーシャルベースで当事者同士の話し合いがあれば、たとえばいままで三トントラックで運んでおった運送業者が、今度は十トンのトラックにかえて、運賃も二割なら二割コストダウンしますという場合、荷主がそれをいやだというのは、コマーシャルベースとしては非常に奇異な感じを受けるわけでございますので、その点は両当事者が率直に話し合いをすれば、必ず問題は解決するんではないかと私どもは期待し、また確信いたしておる次第でございます。  それから最後に、通油保証の点がございましたのでお答えいたしますと、通油保証は、実は外航タンカーにおいては長期契約をやらしております。これはタンカーでは、御承知のように、マーケットが自由市場できまるわけでございます。したがって私どもは、長期の用船契約をしてきたものに対して開発銀行の財政資金をつけるという指導をいたしまして、それによって、たとえば八、九年前に比べましてタンカーマーケットは、国際市況で大体三倍ないし四倍になっております。しかしながら、日本の荷主が払う運賃は、タンカーコストでトン当たり大体半値に近いくらいまで下がったわけでございます。したがって通油保証は、そういう場合には非常に有効であろうかと思いますけれども、国内の運賃の場合は全部認可制をとっておりますので、そういった場合に必ずしも通油保証は——もちろん、あって差しつかえないわけでございますが、必要ないんじゃないか、こういうように考えております。
  112. 八田貞義

    八田委員長 関連ですから、あと一問だけです。
  113. 橋口隆

    橋口委員 運輸省がやられることには、それは必要があればおやりになってもいいだろうと私は思うのです。問題は、あなた方も参加されて三省共同でやろうということで話し合いがついて、そしてパイプライン法案の大綱まできめたところで逃げ出すというようなことになったのは、実にふに落ちないと思うのです。これは、あなた方もその話し合いに参加をされて、そしてそれを守られないということ。そしていまや、法案提出されないで、運輸省も困ればほかの業界も困るということは、これは実は合点がいかないことだろうと思うのです。だから、西部ラインのほうは国鉄がやられる、東部ラインのほうはその法案をつくって、そうしてあなた方も協力をして、これはまた別な路線でやる、こういうふうな話し合いがついている以上は、それに協力して、それで今国会にその法案を出すということが当然じゃないかと思うのですが、その点を運輸省全体としてはどういうふうに考えておりますか。これが一番の問題点なんです。
  114. 原田昇左右

    原田説明員 私どもは、政府全体として話し合いを進めまして、一つの結論が早急にできることを切に希望いたしておる次第でございます。
  115. 橋口隆

    橋口委員 あと一問だけ通産大臣にちょっとお願い申し上げますが、われわれの知る限りでは、党内でもパイプライン協議会を開いて、そしてその最低の妥協案である大綱をきめた。ところがこの専管ということも譲歩して、そして通産運輸建設で仲よくやろう、こういう話し合いがきまった。だから三大臣におかれましても、この際もう少し話し合いを詰めていただいて、そしてぜひとも話し合いの上で、一日も早くパイプライン法案が通過できるように、お互いに協調してこの関東内陸部パイプラインがまずできるようにお願いしたいと思います。これは将来近畿地方あるいは九州その他全国にまたがる問題でございますから、この際しっかりと話し合いをつけていただきますように、特に通産大臣お願い申し上げます。
  116. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は、午前中橋口委員の御指摘になりました点につきまして、私も運輸大臣までお伝え申し上げますとお約束をいたしましたが、それとあわせまして、関係閣僚できるだけ最大限の努力をいたしまして、政府として法案を御提案できるようにつとめたいと存じます。
  117. 近江巳記夫

    ○近江委員 運輸省は運送事業であるということでごらんになっておるわけですが、通産省も運送事業であるとごらんになっておるわけですか。局長さんにお尋ねいたします。
  118. 本田早苗

    ○本田政府委員 お答えいたします。  基本的には石油の供給事業の一部だというふうに考えておるわけでございますが、これが輸送事業であるかどうかというのは、新しい方法でございますので、むしろその定義の問題よりも、こうした事業が最も合理的に運営されていくという観点から結論を導くのが適当であろうというふうに考えておる次第でございます。
  119. 近江巳記夫

    ○近江委員 その点、運輸省さんのあれを聞いておれば、業界の同意を得られるだろう、二割も安くなればいけるじゃないかという話があったのですが、しかしこの二十八社が寄ってパイプライン会社をつくっておるわけです。そういう点を考えますと、国鉄さんにやってほしいという気持ちのほうが強いのか。運輸省さんのお話でそのままいきますと、石油業界はもうパイプラインを施設しない。要するにやる気があるのかないのかという点ですが、その所管官庁として通産省としては、端的にいえば、石油業界パイプラインを施設する気があるのかどうかですね。その辺のことについてはどのような確認をとっていらっしやいますか。
  120. 本田早苗

    ○本田政府委員 お答えいたします。  パイプライン問題につきましては、官庁の権限争いというふうに世間で考えられております点は、われわれとしてははなはだ遺憾だと思っております。  実は本問題につきましては、パイプライン建設につきまして、昨年の秋この問題が起こるときから、業界の首脳にお集まり願いまして、運輸だ、通産だというような権限の問題でなくて、新しい時代に即した石油の流通形態としてパイプライン事業はどういうふうに建設、運営するのがいいか。国鉄のほうで建設し輸送しようという案も出ているときでありますし、資金の問題もありましょうし、あまりなれない建設事業でもございますから、その点等をよく考えて、石油業界としてはどういう形の運営がいいかを率直に決心されてしかるべきで、われわれへの気がねは一切不必要ですということを強く申し上げまして、石油業界の判断を求めたわけでございますが、石油パイプライン会社を設立して、石油業界の共同事業としてパイプライン建設、運営したいという結論が出てまいっておるのが実質でございます。
  121. 近江巳記夫

    ○近江委員 石油業界では、何かそういう意思表示というものを対外的にきちっとやっておるわけですか。それに基づいて、もちろん形としてパイプライン会社の設立ということになったと思うのですが、その前提条件で何か意思の統一ということをやっておるのですか。
  122. 本田早苗

    ○本田政府委員 お答えいたします。  昨年十二月にわれわれのほうのそういう決心を求めたのに対しまして、「石油パイプライン事業の運営について」、また「関東内陸パイプラインの基本構想について」ということで、十二月に文書による決意が表明されておりまして、そうしてこの基本的構想というのが中央ラインの構想でございます。それから先般の三月十五日には、さらに石油パイプライン法の早期実現についてということで、われわれとしては、パイプフライン会社によってその事業を企画、推進してまいりたいという決意を党のほうにお出しになっております。
  123. 近江巳記夫

    ○近江委員 石油業界で施設すると土地収用法の適用がなされないのではないか、このようにいわれておるのですけれども、それについてはどうなんですか。
  124. 本田早苗

    ○本田政府委員 土地収用法の適用がなされるかなされないかという問題につきましては、建設省が土地収用法の所管の官庁でもございますので、御意見を伺っておりますが、一定の要件が備わるならば土地収用法の適用も考え得るという見解をいただいております。
  125. 近江巳記夫

    ○近江委員 通産省はこの中央ラインをなぜバックアップするかということなんです。それはどうなんですか。
  126. 本田早苗

    ○本田政府委員 お答えします。  先ほど来申し上げますように、パイプライン事業というものはスケールメリットが必要でございます。直径が二倍になれば四倍送れるというような先ほど御説明がございましたが、そういう意味でいきますと、できるだけ多くものが利用できるということが必要でございますので、京浜地区と千葉地区とにたくさんの製油所がございますが、これらの製油所が共通で利用できるという形態が必要だと思います。そういう意味で、この中央ラインの形ならば共通利用で可能である、また北関東の需要の構造にも見合っておる、こういう意味で、われわれとしては適当であるというふうに考えておる次第であります。
  127. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほどからずっとお話を聞いておりまして、通産省はなぜこのパイプラインについて権限を強力に主張するかということなんです。その点はどうなんですか。
  128. 本田早苗

    ○本田政府委員 日本国民経済の基本的なエネルギーでございます石油の製品につきまして、これの低廉、安定な供給が必要である。その意味パイプライン事業が、むしろ石油会社の製油基地から奥地の内陸基地への石油製品の配送という形になっておるわけでありまして、石油業界の内部における製品の移動という形でございますので、これは石油業の一環として運営するのが適当であるというふうに基本的に考えることに基づいたわけでございます。
  129. 近江巳記夫

    ○近江委員 運輸省は輸送事業である、通産省は供給事業である、根本的な考え方が相違しておる。そういう点からこの両者の話がずっといっておるわけですが、ここで外国の例ですけれども、主務官庁なり、あるいは石油政策所管官庁なり、あるいはパイプライン事業のための特別の立法の措置とか、あるいは土地収用権の供与等について、あるいは保安規制等について、外国の場合はどうなっておるのですか。
  130. 本田早苗

    ○本田政府委員 パイプライン事業のための主務官庁ということでは、先ほど運輸省から話がありましたように、アメリカではインターステート・コマース・コミッションという、州際通商委員会といいますか、これが所管しております。そのほかはフランスは工業省、西ドイツは経済省、イタリーが商工省、オランダが経済省、イギリスが商工省、スイスは連邦エネルギー経済事務局ということに相なっております。石油政策所管官庁は、いま申し上げましたパイプラインの事務官庁と、欧州諸国では一致いたしております。アメリカでは、石油政策所管主務官庁は内務省ということに相なっております。  それから、保安規則につきましても大体は一致いたしておりますが、フランスが工業省、西ドイツが労働厚生省、オランダが経済省。イタリアは特に保安規則はございません。イギリスが商工省、スイスは連邦エネルギー経済省、アメリカが運輸省という形に相なっております。
  131. 近江巳記夫

    ○近江委員 この土地収用権の付与等については、どういう根拠法に基づいておるか、あるいはその主務官庁についてはどうなっておりますか。
  132. 本田早苗

    ○本田政府委員 土地収用権の付与につきましての根拠法は、フランスでは、パイプラインの特別政令によって付与されておりまして、主務官庁は工業省になっております。西ドイツは、州の土地収用法によって付与するということで州政府が持っておりますが、収用価格については経済省が関与するということになっております。イタリアでは、商工省の許可によって土地収用権を付与しておりまして、商工省が主務官庁になっております。オランダでは、経済省による許可公益性の宣言にかかるものについては土地収用権が与えられるということになっておりまして、経済省所管しております。イギリスでは、パイプライン法に基づいて土地収用権が付与されておりまして、商工省が主務官庁となっております。スイスにおきましても、パイプライン法によりまして土地収用権を付与して、連邦エネルギー経済事務局が主務官庁となっております。アメリカにおきましては、州の公用収用法によって付与するということで、州政府が主務官庁ということに相なっております。
  133. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、いずれにしましても、根拠法というものが各国にはやはりきちっとあるわけですよ。そうすると、パイプライン法も国会を通過せずに、そうしてお互いがこうやっていくんだ——これは結局、京浜地帯だけではなく、むしろ現在大阪のほうが、京浜地帯よりももっと過密のような状態になっているわけです。そうすると中京地帯にも移る。あるいは北海道にもそういう工業地帯があるし、北九州にもある。これは全国的にやはり広がっていく問題ですよ。それが、そういう根拠法も何もなく、両省が相いれないままに突っ走ってしまったら一体どうなるかということですよ。諸外国の場合は、これは全部一本で統一されてやっているわけです。これでは世界的にも恥ずかしいですよ。  私はほんとうに考えてみて、確かに、社会のそういう状態というものは複雑多岐化してきておりますし、お互いに善意に基づいていろいろ皆さんも御努力なさっておる。それはわかるわけです。だけれども、そういう複雑多岐にわたったときにこそ、私は原点に戻る必要があるのではないか。ほんとうに真剣に国民のそういう立場というものを原点として考えていただきたいと思うのです。安全に、しかも安定的に、しかもスピードがある、そうしてしかも安くと、いろいろな条件があろうと思うのですけれども、そういう普遍的な国民という立場に立ったその一点に返って、真剣に関係各省がそこで話を煮詰めてもらわなければ、お互いがそういう主張ばかりしておって、走っていったんでは一体どうなりますかということです。  そこで、このパイプラインのこれについて調査をまとめられた酒井所長もいらっしゃるわけですから、国民という立場に立って、どういうことを原点にすべきか、所長さんの御意見を伺いたいと思うのです。
  134. 酒井忠二三

    ○酒井説明員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘の原点に返ってということでございますが、先生のおっしゃった御趣旨まことにごもっともでございます。しかし、私の現在の立場から申し上げますと、運輸省通産省とも、それぞれエネルギー事業または運送事業ということの立場議論をされ合って、いい線までいって、なおかつできないというのは、私個人といたしましては、非常に残念に思っております。建設省も入れました関係各省でもって、できるだけ十分な忌憚のない議論をされて一致することを私は願っております。
  135. 近江巳記夫

    ○近江委員 所長さんの立場も私よくわかるのです。私が申し上げておるのは、要するに国民が原点として考えていかなければならないその基本的なことをお示し願いたいということなんです。たとえば、どういう方法が一番安くしかも安全か、そういうような基本的な考え方の尺度といいますか、そういうことをいまお聞きしておるわけです。所長さんのお考えでけっこうです。
  136. 酒井忠二三

    ○酒井説明員 お考え申し上げます。  どういう点を尺度にするかと申しますのは、冒頭に御説明申し上げましたように、安全性に対する問題、それからパイプライン事業が地域独占的な性格が強い点、これは公共物の専用ということが非常にからんでまいります。それから非常に巨大な投資が必要であるという、この三点にしぼられるわけでございます。特にそのうち私どもがこの問題を取り上げましたのは、冒頭でも御説明申し上げましたように、社会開発、先ほど運輸省さんのほうからもお答えがありましたように、タンクローリーまたはタンク車による事故等が発生しておる。これが大きな災害を惹起するおそれがあるという点で、このパイプラインによる石油輸送の近代化に対する調査報告をまとめたのでございまして、三点のうちでも、安全性に関しましては十分に検討される、一番重要であるというふうに考えております。大体以上の三つを尺度にしております。
  137. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま三つの尺度をお示しになったわけでございますが、いずれにしても近代諸国は、そういう複雑多岐にわたる、そうして近代化のすばらしい発展の中に、きちっとした根拠法も持ち、しかも官庁もはっきりしておるし、保安規則の問題等、全部きちっとやって、そうしてパイプラインというものについて多大な成果をおさめておるわけです。日本の場合は、これからさらにばく大な石油を使っていく、そういう点からいけば、これは焦眉の急ですよ。それについてこのように両関係省の意見がまとまらない。これでは、ただ単にどうするんだということではなくして、世界じゅうのもの笑いになりますし、少なくとも戦後、血と汗と涙の努力によってあの荒廃の中から今日まで立ち上がってきたその国民の努力、さらに、私は、行政に携わってきた関係者の皆さんの努力というものが非常に大きかったと思う。ところが、ここまできて、それだけの行政能力を持っておられた政府がこういう醜態を演じておって、国民としては、こういう指導性のない政府についていっていいのか、非常にこれは大きな心配になるわけです。そういう原点に返って、いかにしていけば一番国民にプラスをするか、こういう点に立って、真剣にひとつこの点については早急に解決していただきたいと思うのです。きょうは通産大臣も、先ほどからの質疑はずっとお聞きでございますし、この石油パイプライン問題について、今後大臣としてどのように対処なさっていかれるか、忌憚のない御意見なり、また確信というものをお聞きしたいと思うわけであります。
  138. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほども申し上げましたように建設大臣中心に三大臣でこの問題の話し合いをいたしておるわけでございますが、先ほど理念云云ということを申し上げましたパイプラインというものの中を石油製品が流れていくという観点から見ますと、これは確かに一つの輸送であるという見方はできるわけでございます。また同時に、全く新しい施設でございますから、これは石油産業の中で製品が所を変えていく。最終消費者のところに行くときもございましょうし、また途中のプロセスへ動く場合もございましょうし、そういう観点からいたしますれば、これは一つの産業の中のできごとである、こういうふうに見ることもできましょうし、何ぶんにも新しい施設でございますから、これをどのように概念規定をするかということは、おのおの見る角度で違ってまいりましょうと思います。この点が先ほど御紹介いたしました理念の問題云々というところでございまして、普通の常識的な結論のつけ方をするといたしますれば、新しいものであるからいろいろな観点があろう。たとえば鉄道のラインに沿っていく場合には、これはもう何といっても国鉄あるいは運輸省のほとんどお仕事でございますし、保安もそれでいろいろ見てもらうこともできるであろう。これはごく常識的にそう考えられます。それからそうでない場合、道路であるとか、河川敷であるとかいいますときには、保安というようなことについて、そこまで運輸省にということは多少常識的でないかもしれない。むしろ道路、河川ということになれば、建設省も関係がございましょうし、一つの産業の中の製品の移動であると考えれば、その所管省である通産省だ、こういうふうにも考えられると思います。しかし、さりとてこの両方の場合の所管を分けるというようなことになりますれば、これはまたきわめてややこしいことでございますから、かれこれいろいろな面があるので、関係の三つの役所が一緒になって所管をしていったらどうだというのが、従来の常識的な処理といたしましては、一番出やすい結論ではなかろうか、私はこう実は思っておるのでございますけれども、それはしかし、運輸大臣の抱いておられる理念とは異なる。むしろはっきり一省の所管にすべきだ、こういう御主張のように私は存じます。  しかし、先ほどから御指摘もありますように今後わが国あちこちにこういうパイプラインというものが敷かれなければならない、また敷かれることが望ましいと考えますから、やはり基本になる法律というものがございますことが望ましいことはもう疑いのないところでございます。したがいまして、さらに関係大臣努力を重ねまして、できるだけ早くそのような法律を御提案いたしたい。この努力を急ぎたい、急いでつけたいというふうに考えております。
  139. 近江巳記夫

    ○近江委員 この問題についてやっていけば、まだまだこまかい、いろいろ申し上げたいことがたくさんあるわけでありますが、私も時間の関係もございますので……。  いずれにしましても、この問題については、国民の多くの人たちも、詳しいことがわからないということで理解しにくいような点もあったわけでありますが、だんだんと、一体政府は何をしておるのだという、そういう声が日増しに高まってきておるわけです。どうかひとつ、そういう点において指導性をもっと発揮していただいて、国民が安心して政府に一切をまかしていける、こういう今後のあり方でやっていただきたい。強くこの点を要望しておきます。  それから、その次に石油開発の問題でありますが、今回のOPEC値上げ等の影響というものが国民の物価にも非常に大きく響いてきておる。いままで、石油問題、資源問題などというものは、もうどこかで大きいところがやっているのだと、遠い問題に考えておったのが、ほんとうに身近な問題として、これはたいへんな問題である、このように一人一人みな認識してきておるわけです。政府としても、石油開発促進についてこの間も六項目にわたる今後の検討事項を発表されたわけでありますが、その中で二、三お聞きしたいと思うのです。  公団が利権を先行的に取得するという構想があるわけでありますが、その必要性の根拠というものはどういうものでありますか。
  140. 本田早苗

    ○本田政府委員 お答えいたします。  現在、公団は、民間の開発計画、あるいは利権を取得した、それに対して投融資するという形でおるわけでございますが、今後石油開発をやる場合には、きわめて大規模な開発計画を進めていくことが必要になってまいっております。しかしながら、大規模になりますと、長期にわたってきわめて膨大な、資金が要るということで、必ずしも民間で実施ができるかどうかという問題でございます。そうした場合に公団が取得するということが必要なケースが予想されるわけでございますので、先行的に取得することを考えておるわけであります。  もう一つは、国際入札のような場合に、入札を行なうにあたって、条件といたしましては、落札してから何カ年で探鉱を終えることというような条件があるわけでございますが、そういう際にすみやかに意思決定することも必要でございますので、利権取得の意思決定を、民間側の決定を待って応札するという態勢では間に合わないということも出てまいるわけでございますので、そのために、公団が有望なプロジェクトを見つけた際には自分であらかじめ取れる、こういうことも必要だということで、先行的に取得するということを考えたいというふうに考えておる次第でございます。
  141. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう中で、いままでのわが国資源開発のメリットあるいはデメリット等の姿が出てきておるわけですが、いままでのわが国企業の海外石油開発状況を見ますと、エジプト石油開発株式会社、アラビア石油株式会社、カタール石油株式会社、三井石油開発株式会社、アラスカ石油開発株式会社、ノース・スロープ石油株式会社、コロンビア石油株式会社、ジャペックス・カナダ、サバ海洋石油株式会社、サバ石油開発株式会社、ジャペックス・オーストラリア、インドネシア石油資源開発株式会社、九州石油開発株式会社、ジャパン・ローサルファ・オイル、北スマトラ石油開発協力株式会社、アブダビ石油株式会社、合同石油開発株式会社、中東石油株式会社、コンゴ石油株式会社、いろいろずっとあるわけですが、完全に掘っておるのはアラビア石油の千八百万キロリットル、北スマトラ石油開発協力株式会社の二百万キロリットル。あとコンゴで一本ぐらい出ておるということも聞いております。リスクが大きいということは私はわかるのですけれども、成功率といいますか、その辺が非常に弱いのじゃないかと思うんですよ。いままでのデータで見て、いや普通だとおっしゃるかもしれませんけれども、この間もどこかの会社が百億から投資して、しかも国の資金が五十億、半分くらい入っておる。もう外国の会社に渡して引き揚げてきたというような結果も出ておるわけです。何も全部が成功するとは私も思いませんけれども、そういう点で、なぜそういうように効率的に開発が進まないのか、その辺についてはどのように局長として反省しておりますか。
  142. 本田早苗

    ○本田政府委員 御指摘のように、現在二十社が二十余のプロジェクトを手がけておるわけでありまして、現在油を生産しておるのは二社でございます。それから、試掘に成功しておるのが三社で、そのほかはまだ探鉱中あるいは基礎調査中ということでございます。実は石油の探鉱、開発というのはきわめて長期の期間を必要とするものでございまして、アラビヤ石油を除きますと、昭和四十年ごろからこれらの会社が次々と出てまいったということで、むしろ現在は進行の途中にあるという状況でございます。したがいまして、現在の試掘井に対する成功の井戸の数という比率でいきますと、必ずしも世界の平均以下でなく、むしろ成績はいいというふうに考えられておるのでございまして、しばらくこの石油開発の推移を見守っていただきたいというふうに考えるわけでございます。
  143. 近江巳記夫

    ○近江委員 その点はあなたと意見がちょっと違うようでございますが、私もリスクということはわかりますが、成績は中かどうか、下かどうか知りませんけれども、しかしいずれにしても、それではいまやっておられるそういう対策というものがすべていいのかというと、これはいいことではないわけです。  そこで、私もちょっと聞いておるのですが、この石油開発を推進する上において非常に重要なことは、情報収集体制の整備ということがあげられるわけですが、これはお聞きするところによりますと、石油開発公団なんかもベイルートに一人しかおらない。あとはほかにも、大使館にしろ政府機関がいろいろあろうかと思うのですが、いずれにしても、専門家もおらないで、ただの情報だけではわからないわけですよ。そういう情報収集体制の不備でいいかということです。その点については、どう反省なさり、これからどうなさるのですか。
  144. 本田早苗

    ○本田政府委員 お答えいたします。  石油開発のためには、有望な利権を取得することが必要でございまして、そのためには、豊富な情報を機動的に集める、そうしてそれを体系的に処理し有効に活用するということが必要である点は、御指摘のとおりでございます。  現在の情報収集の体制はきわめて不十分ではないかという御指摘でございますが、まことにそのとおりでございまして、われわれとしても、情報収集体制の整備を強化してまいろうというふうに考えておる次第でございまして、すでに現在各地にジェトロがでておりますので、ジェトロの中の特定の人については資源関係の情報を担当してもらう。それから御指摘の、ベイルートに一名だけ置いておるわけでございますが、四十六年度に入りますれば、これは事務的な折衝で派遣員を増加することができますので、四十六年度予算の発足とともに駐在員の増加も考えたいというふうに存じております。また、公団では、現在、情報センターというものを設けることにいたしまして、管理体制を整備するということも考えておりますが、御指摘のように、情報収集体制の強化はこの際特に必要であるというふうに考えております。
  145. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、この公団の投融資比率及び債務保証を引き上げる、このように大体の方向を示していらっしゃるのですが、現在、公団の投融資比率というのは大体五〇%、債務保証というのは四〇%ぐらいに聞いておるのですが、この点、具体的にどのくらい引き上げるように考えておりますか。
  146. 本田早苗

    ○本田政府委員 お答えいたします。  現行の公団の投融資比率は御指摘のとおりでございます。投資比率につきましては、今後はどの程度上げるかというのはプロジェクトの性格によってきまりますが、さしあたって四十六年度の予算としては、大規模なものについては七五%程度までは引き上げ得るようにいたしたいというふうに考えております。  それから債務保証比率につきましては、現在アラビア石油に対してだけ行なっております関係で、四〇%ということになっておりますが、今後の新しい開発につきましては、相当高くしなければならぬと思っております。われわれとしては、少なくとも七五とか八〇とかいうふうな融資比率にいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  147. 近江巳記夫

    ○近江委員 この石油資源の開発の問題については、やれば一日以上かかってもできないくらい問題があると思うのですが、特に大臣にお聞きしたいのは、東シナ海の石油の問題とか日本近海の石油開発については、私もいろいろ機会をとらえてそうした問題の推進をいままで申し上げてきたわけでございます。そうした際にも、たとえば数年前からシェルと三菱の合弁会社が島根沖でいま試掘しておりますが、ああいう問題も、今後さらに石油が出てくるという可能性があれば、どんどんと鉱区を設定していって、しまいには、韓国なり、あるいは中国なり台湾等の、そういうところにもいろいろかみ合ってくる、こういう点について十分な配慮をいただきたいということを申し上げてきたわけです。ところがもうすでに、この第七鉱区の点について韓国と完全に重なっておるわけで、非常にこれが紛糾してくるだろうということがいわれておるわけです。この九州沖の第七鉱区の紛争の問題について、大臣としては今後どのようになさっていかれるか、これが一点であります。  それから尖閣列島の問題につきまして、日韓台の三国で共同開発をしていく、そのための共同委員会が発足して具体的に進めていく、六月ぐらいからスタートする、こういうような動きになっているわけです。ところが、完全に民間のベースだけでやっていけばいいのだ、そういうわけにはいかぬのです。これは法制の問題等も入ってきまして、政府としては関与せざるを得ない。中国は、自分のほうの大陸じゃないか、かってなことは許さぬぞというようなことも言ってきておるわけです。そういう点、石油開発の問題をめぐって国際紛争が大きく発展していくというおそれが非常にあるわけであります。それについて、特に具体的に九州沖の第七区の問題、尖閣列島の石油問題この二点にしぼって大臣としての御所感、そして今後の対策についてお聞きしたいと思います。
  148. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大筋の考え方を申し上げますと、九州沖あたりで韓国の大陸だなとわが国のそれとが重なり合う、重なり合った鉱区が生ずるといったといったようなことは、実は昨年夏以前にわかってきたことでございますが、要は日韓両国とも、質のいい、しかも自国に近いところで石油資源を開発いたしたいということでございますから、これは一つの領土を、自分のものか、おまえのものかといって取り合うということは同じではない。少なくとも、質のいい石油開発してお互いにそれを利用したいというのでございましたら、これは話のしようがあるわけで、全部かゼロかというようなことと考える必要はないというふうに私思います。したがいまして、このような問題は、領土あるいは領界といったような問題としてとかく国民的な感情問題となりやすい。そのような姿に持っていくことは賢明なことではありませんので、関係国が話し合って円満に開発をしていくという方途を発見することのほうがより賢いやり方である、そう考えまして、表立たない外交の問題として話をいたしておるわけでございます。私はそれが賢明なことであろうと考えております。  次に尖閣列島でございますが、この領有についてのわが国立場は疑いをいれるものではないと存じますけれども、ここでも台湾政府との間に、その限りではおそらく第七鉱区に似たような問題でございます。両方でひとつ石油資源をお互いに利用しようではないかといったようなことでありますと、前のケースと同じように話し合いのできる問題だと思っておりましたところが、中国大陸が、これについて独自の主張をいたしておるわけでございます。あの辺の地形から見まして云々という主張をしておるわけで、こうなりますと、これは、わが国が未承認の、しかも将来わが国が無交渉ではあり得ないところの大陸中国が、そういう形でこの話に異議を申し立てたということでございますから、日韓の場合に比べまして外交的な要素が非常に多うございます。したがいまして、これについては、将来のいろいろな問題を考えながら、もう少し、外交的な接触、あるいは外交面でのいろいろの配慮を払っていくべきではないのだろうか。ぜひこの資源も開発いたしたいのでございますけれども、処置を誤りますと、われわれの望ましくない別の、しかも大きな問題に発展する可能性もあるのではないか。そう考えますと、これはもう少し、前者の問題に比べまして慎重に扱っていくべき筋合いの問題ではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  149. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう時間がございませんので、あと二点で終わります。  大臣に確認しておきたいのでございますが、島根沖のシェルとの合弁会社においては、これはフィフティー・フィフティーで出資しておるわけですが、まあ学者の説によりますと、あの辺には非常に石油があるだろう、あるいは天然ガスが出るだろう、このように言うわけでありますが、外国出資が五十あるんだから、その半分はうちがもらう権利があるんだということで外国へ持っていかれる懸念はないのか、それについてどういう歯どめをしていただいておるか、これが一点であります。  それからもう一つは、大陸だなの問題とか、領海の問題とか、あるいは深海底の平和利用なり、あるいはそうした海洋法の問題等について、わが国の場合、非常に遅々とした体制しかとっておらないように思うのです。これは私は単なる外務省だけにまかしておくべき問題ではないと思います。そういう点で、少なくとも海底資源等の開発については、担当省は通産省でございますし、強力にこういう海洋に関する国際法、こういうものについての取り組みの姿勢というものを外務省とどのようにやっていかれるか、その辺のところの強固な対策をとる必要があるんじゃないか。これについての具体的な大臣のお考えを承りたいと思います。この二点をお聞きしまして私の質問を終わります。
  150. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前者の問題につきましては、これは契約いかんにもよることでございますので、政府委員からお答えをいたします。  後者につきまして、いわゆる大陸だな条約の加盟の問題でございますが、これは御承知のように、農林、あるいはむしろ水産でございますけれども関係にもいろいろな問題がございますので、政府の内部で討議をし、また研究をしておるのでございますけれどもわが国としても、なるべく早くそういうものに加盟をしていくべきではないかと私どもとしては考え、また努力をいたしたいと存じます。  なおその場合に、先ほど韓国との関係について御指摘がございましたように、両国が接近しております場合の大陸だなの分け方と申しますか、どういうふうにそれを規定するかということは、条約の本文におきましても、いまだに確たる定説の生まれないところでございますが、これなども、やはり海洋学者等々の協力を得て、国際的に受け入れられるような定義をつくっておきませんと、将来紛争の種になるかと存じます。そのような努力もまた必要であろうと存じます。
  151. 本田早苗

    ○本田政府委員 島根沖の石油開発に伴って、成功した場合の原油、ガス等についてはどうするかという問題でございますが、これは国内へ持ち込むということを前提としてあの事業を認めておるわけでございます。
  152. 近江巳記夫

    ○近江委員 これで終わりますが、いま大臣お話で、特に大陸だな問題にしぼっていまお話があったわけでございますが、私が申し上げたのは、深海底の平和利用の問題とか、あるいは大陸だな、あるいは領海の問題とか、関係法がたくさんあるわけです。あるいは海水の汚濁に関する防止法とか、そういう点一切を含めて、農林省あるいは通産省、あるいは外務省と、関係各省たくさんあると思うのですが、その辺の連絡、特別にそういう国際法に関する関係各省寄って何かのチーム等をつくって対処なさっていくとか、もう少し具体的なその辺のところの構想をひとつお聞きしたい、こういうわけでございます。
  153. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは実は一般に海洋開発と申しますか、そういう問題につきましての各省間の連絡あるいは協議体制というものが、現在のところ欠けておるわけでございます。従来から何かそういうものが必要ではないかという議論がありまして、どこかでひとつこれを取りまとめたいと考えておるのでございますけれども、まだ実現をしておりません。しかしこれは、やはり早急にしなければならないことじゃなかろうかと思っております。
  154. 近江巳記夫

    ○近江委員 終わります。
  155. 八田貞義

    八田委員長 この際、川端文夫君から発言を求められております。これを許します。
  156. 川端文夫

    ○川端委員 時間がないようでありますので、私は資料の要求をいたして質問にかえたいと思うのですが、先ほどからいろいろ同僚議員の質疑の中で明らかになったような気がするのは、いわゆる石油パイプライン法案作成にあたっていまだに各省間の意見が一致していない、それぞれの主張もあるし意見もあるということで、調整中であるということであるわけですが、その調整がどうなるかは別として、当商工委員会において地下資源やエネルギー問題に対する小委員会も設置いたしておるわけですから、このパイプライン法作成に対して、私ども通産省からいろいろの質疑を通じて意見を聞くことはできるが、建設省なり運輸省なりの主張と、その功罪というか、メリットというか、こういう問題を調べたいために、この三省の現時点における主張なり、そのことが国民のためにいい方法であるという考え方があるならば出してほしいということで、ひとつ三省に向かって、パイプライン法作成に至るそれぞれの主張あるいは考え方の資料の提出を要求していただきたいと思うのです。御賛成いただければ私はこれ以上関連質問をいたさないのですが、いかがですか。
  157. 八田貞義

    八田委員長 委員長において川端委員のいまの御提案に対しまして、理事会を開き対処いたしたいと思います。
  158. 川端文夫

    ○川端委員 よろしくお願いします。
  159. 八田貞義

    八田委員長 松尾信人君。
  160. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 大臣はもうなかなかお疲れのようでありまするし、私の質問は、きょう直接大臣にお聞きすることはあまりございません。第一問だけあとでお答え願いまして、そして自由にお引き取りなさってけっこうでございます。  このメッキ工場の問題につきましては、先般私が当委員会で質問いたしました。全国に四千五百工場以上ございます。その従業員は四万をこしておりまするし、年間水揚げ高は九百億円を突破している。これは大体大まかな実態でございますけれども。  そういうメッキ工場が、今度それ公害だというので、東京都を中心に衛生局等もいろいろの実態調査をいたしまして、そうしてカドミその他が非常にたくさん出ているというので、勧告を受けたり改善命令を受けたり、ある種の処罰を受けておるということは、先般ここで申し上げました。それで結局、いままで手がつけられなかったこのメッキ工場でございまするので、これを基準にのっとって取り締まっていこうとすれば、ほとんどの工場がこれはひっかかっていくわけでございます。そのように実態調査をするのは基本的に大切であります。しかし、それだからといって、一つ一つを片っ端から改善命令をし、そうしていろいろやっていく。ところが自分自体の力では改善命令も実行できない。特にカドミメッキにつきましては、この公害防除施設は一千五百万以上の金が要る。そういう金は出してもくれませんし、借りる力もないし、そういう施設をすれば、今度は水揚げのほうがそれに並行して伴いませんので非常に苦しい。いっそカドミのメッキはやめてしまおうというような実態であります。  そういうことを先般指摘しておったわけでありますけれども、いよいよ各都道府県が実態調査をやり始めまして、そしてそれぞれの地域地域で改善勧告を受け、また事業をやめていったり、いろいろそのような事故が全国的に起こっております。これは長崎県でありますけれども、まず福岡の通産局が四十五年の十一月四日、五日に、それぞれメッキ工場を立ち入り検査しました。その結果、改善を文書で勧告している。それを受けまして今度は県が立ち入り検査をやりました。そしてカドミメッキを廃止したというところが二カ所出ております。それからやはりこれも勧告を受けまして、いま改善計画書を出しておるのだ、しかし電気メッキの施設は廃止計画、とうとう電気メッキ業務の停止を確認したというような結果が出ております。もう一つの長崎メッキ工業所は、立ち入り検査を受け、そして改善勧告を受け、それで会社としては、どうも納得できないからもう一回検査をしてくれというようなことがありまして、さらに立ち入り検査をして、ただいまそのいろいろの資料を分析中だ。これはもう、やれば全国どの工場にもあるわけであります。でありますから、この特に公害問題がやかましい中に、特に工場としては公害関係のものが非常に出てくるというメッキ工業全体に対しまして、ここでひとつきちっとした基本方針を出しておきませんと、都道府県がこれを逐次やっていきますと、たいへんなことになる。いよいよ政令ができまして、そして都道府県がその権限の実行という段階になりますと、これはもう収拾つかぬのじゃないか。取り締まりは取り締まりとして大切でありますけれども、そのようなメッキ工業全体の影響がありますので、基本的な考え方をひとつしっかりして、そして公害のない、安心してメッキ業務ができるような何か対策はないか、これを立ててほしいということを先般申しておったわけでありますが、逐次このようにして全国都道府県から出てまいるものですから、これも非常に悪い影響、いろいろの社会的な問題が各地域で続発することは間違いありません。そういう点につきまして、基本的にひとつ大臣からお答えを願いまして、そうしてあとは個々に移っていきたい、このように思います。
  161. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 長崎県からの報告につきましては、私どもも聞いておりまして、ただいま御指摘のとおりでございます。全国には、零細な電気メッキ企業、ことにその半数以上が従業員平均九人以下という事業所でございますので、その人たちにとりましては、いわば国民の公害意識、問題意識が先へ進んでいきまして、対策がついてこないということを非常に悩んでおられるであろうと思います。しかも処理施設には、御指摘のように一千五百万円ほどの金がかかるということになりますと、なかなか独力でそれらのものを施設していくわけにはまいらない、こういう現状でございますので、そこで私どもとしては、それらの中には親企業の系列で仕事をしておられるところも相当ございますのですから、親企業において、そういう施設費なり、あるいはそのための技術指導なりもできるだけしてもらいたい、またそういう関係を結んでもらいたいということを指導をいたしております。これが一つでございます。  また同時に、それらのカドミウムあるいはシアンを使いますメッキ業者に対して、何か協業して共同施設をつくっていくということは考えられないかということで、いわば協業化、団地化といったようなことを金融的にも指導をいたしておるわけでございます。  それからまた、国あるいは公立の試験所において、シアンを使用しないメッキの方法といったようなものも開発をするために努力をいたしておるようなわけでございます。  また第四に、ここへきまして、公害防止機器というものの商業化と申しますか、工場生産といったようなものがかなり急速に進んでまいりました。そういうものがもう少し進んでいきますと、多額の費用、一千五百万というようなことでなく、もう少しじょうずに処理ができるというものも開発されるかもしれない。そういうことにも力を入れてまいりたいと考えております。  以上申し上げましたような四つの対策を進めてまいりつつあるわけでございますが、何ぶんにも零細な企業で、問題意識が先にきてしまったということで、これらの方々は非常にお困りであります。そういう立場からは、また非常に同情できることでございますから、なるべくただいま申しましたような指導なり助成なりを親切に立ち入ってやってまいりたい、かように考えております。
  162. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 話はよくわかります。ただ一点、大企業のほうがいろいろ協力しろというお話がありましたけれども、大企業のほうは、むしろそういう防除施設に金の要るものはやめちゃって、下請のほうへうんと出そうというようなことでありまして、第一項で最初に大臣おっしゃいましたけれども、実情はむしろ下請のほうに流れているというのがメッキの実情でございます。それで、いまお話の点をひとつ事務当局に早く浸透させていただきまして、そして速急にこれはおやりになるように、ひとつ強く要望いたしておきたいと思います。  次は資金の問題でございます。近代化資金もありますけれども、なかなかワクが少ない。それから中小企業の公庫のほうは、ワクがありましてもきびしい。相手がメッキ業界でございますので、零細であるというところで、いま協業化等もなかなか進んでおりません。組合のほうはある程度進んでおりますけれども、アウトサイダーが約二千ぐらい、おりますもので、こういうものはなかなか政府の指導のほうにも乗ってきておりません。工場はアウトサイダーのほうが多いのです。そういうところでありまして、なかなか全体的な公害防除の資金は貸してもくれませんし、借りる力もないというのが実態でございます。組合を通じて協業化等はある程度進んでおりますけれども、なかなか大部分の工場はそうではない、こういう実態がございます。そういう実態をとらまえまして、いま大臣のおっしゃいました各項目をひとつ具体化して速急に手を打っていただきたい。あとは事務当局と話を詰めてまいりますけれども、この点はしっかり推進していただきたい、こう思います。  結局、資金の問題は、やはり貸してくれというわけでありますけれども、貸さない。これで県自体が、公害防除のために五千万、一億程度のそれぞれのワクをつくって貸しております。これも、なかなか要望と金額とが合いませず、県のほうはその資金をふやすということに困っております。そういうことでありますので、中小企業の金がどうとかして円滑に出るようにならないか。そして、いっそもう公害防止事業団というものにまとめてしまって、公害防除に関する資金はそのような面で窓口を一本化して推進していくかというようなことも考えられるわけでありますけれども、この資金という問題、この点につきまして大臣考えをよく聞いておきたい、こう思います。
  163. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題は、時間がたつに伴いまして非常にむずかしい問題になってくるだろうということを、実は私は以前から考えております。と申しますのは、それ自身が、生産増強あるいは利潤の上昇のための金融とは申しがたい。また、そういう種類の投資ではございませんから、貸す側といたしまして、回収ということを考えますと、なかなか渋い態度になりやすうございます。どうしてもこれはそういう性格を持っておりますので、したがって、なるべく長期低利ということを申しておりますけれども、いままで私どもが金融と呼んでおったものとは、かなり性格の違ったものにならざるを得ないのではないか。ただいまのところは、まだお話のほうが多うございまして、実際にそういう施設をそうまだたくさんの方がしていらっしゃいませんし、そういう金融もこれから本格化するのでありますけれども、そうなりますと、必ずそういう問題が出てくるであろうというふうに予測いたしております。  そういたしますと、何かひとつ国が本格的に公害を、駆逐するということで、ことに零細な企業に呼びかけるといたしますと、従来の金融の延長線上ではたして事が片づくものであろうかどうであろうか。私それに対して、いますぐ答案を持っておるわけではございませんけれども、そういう観点からこの問題は考えていかないといけない、かねてそういうことを思っておりますので、ただいまどうということを申し上げられませんのはまことに残念でございますけれども、問題はそういうふうにしてとらえていかないと、きっと行き詰まりが出てくるのではないかと思いますから、そういう観点から検討していかなければならないと思っております。
  164. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 お考えはよくわかりました。なかなか急にはいかないと思いますけれども、いまの方向でしっかり推進していただきたい。これは強く私のほうから希望しておきます。ありがとうございました。  で、事務局に伺いますけれども、さしあたりこのメッキ工業全般に対して、どのようにしていったらいいかということであります。とりあえずの対策ですよ。とりあえずどうしていったら一番いいのかということを、ひとつお答え願いたいのです。
  165. 本田早苗

    ○本田政府委員 お答えいたします。  メッキ工場につきましては、前回も御指摘がありましたように、きわめて零細な企業が、しかも下請という業態で、しかもどうしても必要な加工工程という業態でございます。それにもかかわらず、公害の問題とからみますと、どうしても公害を防止する対策が必要だ、こういうことに相なるところへ御指摘のような資金問題がからみまして、なかなかそれが達成できない。したがって、御指摘のように、カドミメッキをやることができなくなるというような事態に相なっております。したがいまして、われわれといたしましては、カドミメッキに関しましては、親企業の資金、技術の援助はもちろん必要といたしますが、さらに中小企業振興事業団あるいは公害防止事業団の協力を得まして、集中生産ができるような体制、共同化、協業化の体制を促進してまいる必要がある、こういうふうに考えておる次第でございます。どうしても公害防止が必要だということとからみまして、メッキ工程の工程管理の改善がどうしても必要だと存じます。来年度からは、各通産局ごとに、試験所の職員あるいは大学の先生等の専門家に巡回指導をしていただこうということを考えておりまして、これで排水の処理あるいは工程管理の改善ということで実効をあげるようにしてまいりたいというふうに存じております。  あと技術的な問題としては、先ほど大臣答えましたように、技術開発につきまして推進してまいることは基本的な方向でございますが、特に重金属類の回収あるいは水の再使用等の装置を、できるだけ安いものを、しかも効率的なものをつくるということが必要だろうと思いまして、これに対しては、来年度は三千万円の補助金を出して工業化を進めるということもいたしております。要するにわれわれといたしましては、排水処理施設につきまして協業化、団地化、共同化等を推進すると同時に、技術水準の向上をはかってまいるということによりまして、どうしても必然的に零細な企業ではございますけれども、公害防止については実効をあげるようにしてまいりたいというふうに考えておる次第であります。
  166. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 組合なんかにも、早く政府考え方というものを徹底させまして、やっていかなくちゃいかぬのじゃないか。また、いよいよ都道府県が権限を持つようになりますと、いまおっしゃったことがそれまでに間に合うかどうか。いよいよ政令で都道府県が実行に踏み切るということになりますと、お話とまた監督のほうとはずれまして、そこに社会問題が起こるであろう、こう思います。どうしても早く、いまあなたのおっしゃったことをきちっとして、そしてある時期を画して関連づけるように、その決意はあるのですか。
  167. 本田早苗

    ○本田政府委員 先ほども申し上げましたような業態でございますから、なしで済ますということにはまいらない工程でございますので、御指摘のような方向で実効をあげるようにしてまいりたいと思います。特に、御指摘のように、組合の指導につきましては、組合の役員としては非常に熱心な方も多うございますので、組合の指導を通じて実効をあげるということも強力に進めてまいりたいと存じます。
  168. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 カドミメッキのことは以上でやめますが、問題の起こらないようにしっかりしていくことが大切だと思います。  次は、対馬の例のカドミの問題ですけれども、米の問題、これは党といたしましても、いろいろ樫根などの方々につきまして調査をいたしました。これは井戸の水もやりました。それから便槽中の屎尿の検査もいたしました。これは権威ある大学の鑑定の結果です。その中で、長瀬さんというお方の屎尿の検査の結果でございますけれども、普通人の含有量は、カドミにつきましては二〇PPMだといわれておりますが、このところでは四三〇PPMと多量に出ておる。もうそれは排せつしておるわけです。これは一番多いところでありますけれども、別のお方のところでは一〇〇PPMのところもございます。それから玄米の調査もいたしました。これは四十五年産米でございまして、そう驚くような結果は出ておりませんけれども、やはり一番高いのはカドミで〇・八九PPMですね。それから〇・五三というようなものもありまして、それぞれこの検査の結果ははっきり出ております。  こういうことを前提にいたしてお伺いするわけでありますけれども、この四十五年産米で一PPMをこえるものがどのくらいあったかということが一点。それから、〇・四PPM以上は配給しない、こうなっておるようでありますけれども、それをこえるものが——順番からいえばこちらが先でありますけれども、それがどのくらいあったのか。その中で、一PPMをこえるのはどのくらいあったのか、それを現在までにどのように処理してまいられたか、このことを聞きたいと思います。
  169. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 お答え申し上げます。  食糧庁が県を通じまして、二月二十日現在で調べた数字によりますと、長崎の巖原町では、四十五年産米につきまして、〇・四PPM以上の米の取れ高が百五十六トン、うち一PPM以上が百七トンと、かなり高い数字が出ております。
  170. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 それをどうしたのですか。
  171. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 御承知のとおり、カドミウム汚染米につきましては、一PPM以上のものは食品衛生法上流通が禁止されておりますので、これは政府買い入れも行なわないたてまえになっております。しかしながら、巖原町の場合には、調査は収穫をしたあとでやったものでございますから、政府が百七トンのうち三十七トンはすでに買い入れを行なっております。その他のものにつきましては、これを凍結をしておきまして、人間の口に入らないように、たとえばのりだとかライススターチだとか、そういうことの用途に売るように県と食糧事務所とであっせんをする、こういうことになっております。
  172. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 そうしますと、三十七トンは政府が買い上げてしまった、残り七十トンは凍結した、そうするとこれは、だれの責任というか、だれの負担で凍結しているわけですか。
  173. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 ただいまも申し上げましたように、一PPM以上の米は政府が買わないというたてまえになっております。したがいまして、調査政府の買い入れが始まる前に行なわれておれば、それは買わなかったわけでございます。ところが、調査の時期の関係政府はそのうち三十七トンを買った、こういうことになっております。そこで、この一PPM以上の米につきましては、政府米につきましても、人間の口に入らないような処分をしなければならないわけでございます。それから、農家が持っておりますものにつきましても、これをただいま申しましたような用途に向けるということになりますと、それは農家の方々の負担においてやっていただくということになるわけでございます。と申しますのは、のり用になりますとやはり値段が多少下がりますから、その分は農家の負担になるわけでございます。
  174. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 そうすると、現在七十トンというのは農家が保有しておるわけですね。
  175. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 そのとおりでございます。
  176. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 そうしますと、これは売ることもできない、食べることもできない、一PPM以上の米だから。これはだれが悪いのですか。
  177. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 私どもといたしましては、そういった汚染米が出た場合には、汚染米の原因になった汚染源に対して補償を請求すべきではないかというふうに考えております。
  178. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 そうしますと、汚染源の追及でありますけれども、では通産省のほうは、この汚染源を追及していかなくては相ならぬ、そこが責任があるんだ、このようないまの農林省の答えですね。それをやってもらえませんと、できた米を全部農家が自分の負担で保有しておる。そうするとこれは、何か安いのりだとか、食用にならないものにしていくんだというのですが、一体だれが売っていくのか。そういうものはだれが世話するのか。これは農林省が世話するかどうかですね。ということで、全くこれは話にならないような、かわいそうな農家の実態ですよ。この汚染源の問題について通産省どうですか。
  179. 莊清

    ○莊政府委員 鉱山カドミウム汚染米についての企業の問題でございますが、一PPM以上のものは、先生御案内のとおり、現在、全部企業に実際上の負担をさせるという方向で所在の県にお願いをいたしまして、農民と鉱山の間に立って問題の円満な解決を逐次はかっていただいておるわけでございます。一PPMに達しない汚染米というものももちろんあるわけでございますが、これについては、現在農林省のほうの御方針として、希望に応じて差しかえをするというふうな政策がとられております。したがいまして、〇・四から一の間のPPMの汚染米については、具体的な措置を現在鉱山に要求しておるという行政指導は実はとっておらないわけであります。
  180. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 そうしますと、一PPM以上の分は企業の責任だ、県がまん中に立ってうまくいっている、こういうお話でありますけれども、では現実にどのようにうまくいっていますか。
  181. 莊清

    ○莊政府委員 対州鉱山の場合を例に引きますと、県のほうの御判断で、現在、四十五年度産米一PPM以上、一二百万円強の補償につきましては、一時便宜的に県のほうが立てかえをしておられる。県としては、これはいずれ企業に当然持ってもらうんだという方針を立てておられるようでございます。これ以外の地域につきましては、安中とか黒部とか、数千万円あるいは一億というふうな大きな金額のものが、現に県のごあっせんで相当部分は支払われ、一部は、こまかい金額的な詰めが終われば企業側としても支払うということで、県のほうにお願いしておるという実情でございます。
  182. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 その責任というのは県にあるのですか。それともあなたのほうにあるのですか。いまのお話では、通産省よりもむしろ県側に全部まかして、うまくやっているのを待っているというような感じがいたします。そうではなくて、やはり企業責任を追及していくのは政府がやるんだ、そして政府の意向等に従って現地の県が動くというならばわかりますけれども、立てかえてみたり——いま三百万とか四百万とかおっしゃいましたけれども、立てかえたお金は企業でいつ払いますか。そういう最終的な話し合いというものは、今度はやはり政府がつけていかなくちゃ相ならぬじゃないですか。なお、困った問題というのは県にまかせるんじゃなくて、やはり政府として解決していくのが本筋じゃないですか。どうです。
  183. 莊清

    ○莊政府委員 先生の御趣旨は私よくわかるわけでございますけれども、現在処理をしております考え方、これは完全に熟した考え方とは申せないかと思いますけれども、裁判で争うとか、あるいは県が中心になって行なうことになっております和解というふうなことで、紛争処理法に基づく和解とか、こういう法律制度の上にきちんと乗せた形のものではなくて、通産省として、一PPM以上の米というのは食管も買わないで明らかに農民が全損を受けるわけだから、そして、裁判をやったり調停をやったり法律上ぎしぎしやったわけじゃないけれども通産省の目から見て、その地域の実態を総合的に判断して、やはりこれは鉱山側が加害者であるというふうに判断されるので、ひとつ企業も誠意をもってスピーディーに金を払うべきじゃないかという判断をして、それに基づいて、われわれ監督官庁、あるいは鉱山に対する指導官庁としての立場で、会社の最高首脳に対して、鉱山の場合やはりそういう姿勢で地域社会で事業を特に注意してやってもらいたい、やるべきだという通産省の指導を行なったわけでございます。それに基づきまして、具体的な問題になりますと、米の調査の問題もございます。あるいは農民なり地域の方々の特殊事情というふうなものもいろいろあろうかと存じます。やはり公害の問題というのは、特に農村の山奥のような場合、深刻な地域問題でございますので、私ども、直接全部的確に把握して善処できるわけでもございませんので、別途私どものほうから会社に指示すると同時に、県のほうにも折り入ってお願いをして、地域全体としてうまく問題が解決できるように御協力、御尽力をいただきたい、こういう姿勢で御了解を得てやってきたというのが実態でございます。   〔委員長退席、浦野委員長代理着席〕
  184. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 早く片づけませんか。この問題は、この前からもたびたび言われたことでありまするし、最終的には早く片づける。それはどういうふうな分け方になるかわかりません。ここは千年も二千年も前からのものでありますから、現在の企業にどのくらい持たせるかということは、煮詰めていかなくちゃきまりませんでしょう。しかし、それもたいした大きな金額でありません。ですから、これをある程度のところで早くきめて、そしてその企業の負担の分を出させておいて、次には残りの分をどうするか。県が立てかえた分は最終的には、企業が半分かりに払ったとすれば、半分はどうなるわけですか。それを早くするということですね。
  185. 莊清

    ○莊政府委員 対州の問題は、ほかよりも立てかえ払いというふうな事態が確かにございます。ほかの地域でも全然なかったわけじゃございません、けれども、事務上の都合等で、一時的な問題で行なわれた場合もございます。御趣旨を体しまして、県とも一度よく連絡の上、前向きに解決をはかるように努力いたしたいと思います。  なお、被害面積とか、数量とか、若干対州の場合には、県のほうの御調査でまだ最終セットと言い切れないような面が、県自身のほうの御都合でもあるのかとも思いますが、そういう点も含めまして促進するように努力をいたしたいと思います。   〔浦野委員長代理退席、委員長着席〕
  186. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 では、早急にこれはやるように、ここで強く要望いたしておきます。  それから、このような地域でございますので、毎年米をつくればこれになるわけですよ。でありますから、こういう汚染地域の農政対策と申しますか、これはどのように考えていらっしゃるか。または、どのようにやっていこうとしていらっしゃるか。また、食べものをつくっていったら、米でなくてもみなやはりぐあいが悪いわけですから、こういう地域は、どのように農政としては指導していったらいいのか。客土の問題かんがい用水路、土壌の改良等ありますけれども、そういうものもひっくるめて将来はどのように持っていったらいいか、どのようにそれを現地指導されるか、こういうことについて伺いたいと思います。
  187. 加賀山國雄

    ○加賀山政府委員 総括的にお答えをいたします。  全国にかなりカドミウムでもって汚染されております土地があるわけでございますけれども、こういう農地におきまして今後どのような農政を行なうかというのは、非常に重大な問題だと考えております。われわれといたしましては、食品衛生法のほうで、一PPM以上というのは人間の健康に害があるということでございますので、一PPM以上の米をつくるということがはっきりわかったような地域というのは、今後できる限りつくらないようなふうに持っていくべきじゃないかと私は思っております。しかし、一PPMにまだ達しないというようなところは、現在食糧庁といたしましてもそれを買っているわけでございます。ただ、いろいろ配給上の操作等から配給をとめておるということでございます。  ただ、一PPM以下にいたしましても、いろいろと農家の方々に御心配を与えているわけでございまして、そのような土地につきましては、いろいろな対策があろうかと思います。一つは、先臨時国会で通過いたしまして、土壌汚染防止法という法律ができ上がったわけでありますけれども、現在その政省令を詰めております。それに基づきまして土壌汚染を除去すると申しますか、そのような基本的な土地改良等を早急に行ないまして、できるだけそのもとの土壌に復元をするというふうな努力をいたしたい。そこでは将来も米がつくれるということになろうかと思いますし、そういうことでございますが、なかなか土壌汚染というものを簡単に除去できない。たとえば先生御指摘の対馬等におきますと、非常に古い鉱滓等が積もっておるということでございますので、これにつきましては、現在かなり精密な調査を、われわれのほうといたしましても実施いたしております。その結果、どのような改良資材を入れたほうがいいのかとか、あるいはどのような作物はどのような影響を受けるかというような試験圃的なものを現在やっております。そういうようなことを総合的に勘案いたしまして、もしか米がつくれないということになれば、あるいは他の作物に転換するということも考えなければならぬ。しかし、他の作物にかえましても、なかなか市場と申しますか、それをどう売るかという問題もございますし、農家所得を保障するという意味で、そういった観点からなお十分に検討いたす必要がございますけれども、そのように、いろいろ方法につきまして現在調査も進行中でございますので、そういったことを勘案いたしまして、なお県当局とも十分な連絡をとりまして、最も適当であり、かつ農家に御迷惑をかけないような方法で対処してまいりたい、かように考えております。
  188. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 あなたのほうと県がいろいろ話し合いまして、試験田をつくったりいろいろやっております。それはわかっております。でありますから、いまあなたがお答えになったとおり、もう来年までにはこういう問題はなくすという方向で、これもきちっと早目にやるようにひとつ進めてもらいたい。これを強く要望して、この対馬のカドミウム汚染米については終わりたいと思います。  それから下請の関係でお尋ねしたいと思います。  先般あなたのほうから、下請代金支払遅延等防止法に基づく検査の施行状況の報告をもらったわけでありますけれども、これは四十四年度、四十五年度の分の報告でありますけれども、この親企業者、製造業で一万六千もあるとか事業所で二万六千もある。このような個所を、どのような方法で定期検査をしたり、または特別調査というのは一体何かということであります。二万六千カ所、これが対象事業所数でありますけれども、その検査をどのようにやっていくのか。結果はここにあるように、三千幾らというふうに、毎年毎年、わずかな事業所しか定期調査もできなければ特別調査もできない。合計五千から六千という年間の件数でありますけれども、これではもう何年かかるのかという問題ですね。そういうことも含めて実態調査についてひとつここで報告していただきたいと思います。
  189. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 お答えいたします。  下請法の施行状況でございますが、下請法におきましては、親事業者は、下請事業者から給付の受領後、検査の有無を問わず六十日以内に支払いをしなければならないことになっております。われわれの調査では、おおむね締め切り後一月以内に支払いがなされているというふうに見られます。しかし中には、六十日以上にわたって支払いを遅延している親事業者もございますので、これらの違反事業者に対しましては、下請法第七条による勧告、それから違反軽微の場合は行政指導ということで、支払い遅延をなくするようにつとめております。勧告の件数は、四十四年度におきましては二十六事業所。ここに差し上げました資料には、四十六年一月までしかまだ済んでおりませんが、三月九日現在では、本年度勧告件数は四十九事業所になっております。行政指導を行なった件数としましては、本年度一月末現在で二百五十四ということになっております。  なお、下請法違反事件につきましては、下請業者からの申し出、申告等が、親に見つかると困るということであまり期待できませんので、公正取引委員会と中小企業庁におきましては、年間合わせまして約二万の親事業者から、下請代金の支払い状況について報告を聴取して、違反親事業者の発見につとめているわけでございます。  公取としましては、ここに書いてございます四十四年度六千六百八十四、これは定期調査、特別調査合わせた数でございます。それから本年度は、四十六年一月現在で五千三十五ということになっておりますが、約二万の親事業者、これを全部公取だけではできませんので、公取が約七千、中小企業庁が約一万三千というふうに分担をして調査を行なっているわけでございます。現在われわれが把握しております親事業者は約一万七千事業者、事業所にいたしますと二万六千事業所ということになっております。この親事業者はすべて年一回は調査を受けるというたてまえにはなっております。  それからなお、一体、特別調査をどういうところに対して行なうかというお尋ねでございますが、定期調査は年四回定期的に行なっているものでございますが、特別調査は、いろいろな聞き込み、それから下請協力団体、あるいは下請改善協力委員というような一種の情報の提供をする機関がございますので、そういうところからの情報等によりまして、支払い遅延が多いとか、あるいは手形のサイトが長いというようなものに対しまして随時行なうものでございます。それで、昭和四十四年度におきまして、カーディラー——自動車のディラーでございますが、それに対しまして二千九十八、それから電気通信機製造業につきまして千百二十七、その他百八十二というものに対して特別調査を行なったわけでございます。それから四十五年度におきましては、繊維製品、鉄鋼金属製品、機械、輸送用機器等の製造業、それから繊維製品卸売り、商社、百貨店業等に対しまして特別調査を実施いたしております。
  190. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 この勧告の内容でありますけれども、これは代金の支払いが非常におそいという内容のものがほとんが全部か、その点どうでしょう。
  191. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 勧告の内容でございますが、これは差し上げました資料にも出ておりますが、四十四年度、二十九の事業所に対しまして、下請代金の支払いがおくれている、支払い遅延というものが十四、それから割り引き困難な手形を交付しているというものが十五件ございます。それから四十五年度におきましては、四十一事業所のうちで、下請代金の支払いがおくれているというものが二十五、それから割り引き困難な手形を交付しているというのが十九でございます。
  192. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 実情とこの公取の調査件数、これはうんと隔たりがあるのじゃないか。このような二十六件とか四十件というようなものじゃなくて、大部分のものが六十日間とかなんとかいうことでまともに支払っていないのじゃないか。そういうところで下請のほうが金繰りに困って倒産をしてみたり苦しんでおるわけであります。この調査というものが、なぜもう少し立ち入りでもしっかりやって、どんどんそういうものを摘発していくことができないのかというわけです。一番隘路になっておる点はどこですか。
  193. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 お答え申し上げます。  先生おっしゃるとおり、確かに勧告の件数は少ないわけでございますが、そのほかに、行政指導によって直させたものが、四十四年度におきましては四百四十七件、四十五年度は四十六年一月まででございますが、二百五十四件という件数がございます。ただ、これで全部見つけ出してやったということは決して言えないと思います。御指摘のとおりだと思いますが、私どもの下請取引関係の仕事をやっております人員は四十数名ということで、非常に少ないわけでございますが、少ない人員でできるだけ努力をいたしてやっております。ただ、下請関係の仕事は、公取だけではなくて中小企業庁もやっておりまして、中小企業庁のほうは、地方通産局の下請法施行関係人員が約八十六名ほどおりますので、それらと密接に協力をいたしまして、できるだけ遺漏のないようにつとめてまいりたいというふうに考えております。
  194. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 それから、勧告の件数、行政指導とありますけれども、これは中小企業庁の分も含まっておるのかどうか。それからまた中小企業庁の実際のやり方ですね。中小企業庁としては、実際どのように下請代金のほうをしっかり調査しておるのか、監督しておるか。こういう点をひとつ……。
  195. 吉光久

    ○吉光政府委員 ただいまも公正取引委員会事務局長からお話ございましたように、この法の施行、監督にあたりましては、公正取引委員会と中小企業庁とは常に緊密な連絡をとっておるわけでございます。さっきもお話ございましたように、毎年、調査する対象の名簿をお互いに照合いたします。そしてお互い重複しないように、同時にまた、前年中小企業庁がやりました分については、翌年公正取引委員会のほうでということで、大体四半期ぐらいずれるようでございますけれども、要するにお互いにクロスして交互に、隔年にまたその事業所について調査をするという名簿調整をまずやるわけでございます。その名簿調整に基づきまして、今年度は中小企業庁のほうで約一万三千の事業所につきまして調査をいたし、同時に公正取引委員会のほうでは七千の事業所について調査してもらうというふうな、そこらの年次計画を組んでおるわけでございます。  いまの御指摘でございますが、中小企業庁のほうでやりました結果につきまして、現在、これは十二月末までの集計でございますけれども、約一万の親事業所につきまして、まず書面調査をやりまして、書面でいろいろのことを記入してもらいます。それの提出を待ちまして、その書面検査の中で、これはちょっとおかしいぞという分につきましては、現実に立ち入り検査、あるいはまた招致検査といっておりますけれども、親事業者を役所に呼んで事情を聞きます。そういうふうなことをやりまして、現実にいろいろと違反があるということが確定しました分につきましては、それに対しまして、一番きびしいのがいまの公正取引委員会の勧告というのがございましたけれども、中小企業庁には勧告権はございません。したがいまして、公正取引委員会のほうに内容を御連絡して、公正取引委員会のほうで支払遅延等防止法に基づきます措置をとってもらいたいという意味で措置請求をいたしておるわけでございます。昨年の十二月末に公正取引委員会のほうに請求いたしております措置請求件数は二件だけでございます。それが内容によりましては委員会のほうで勧告ということになってまいるわけでございます。さらに行政指導によりまして改めましたもの、これは百三十三件ございます。それから、立ち入り検査等によりましてその現場で即時改善をさしておるというふうなもの、これが百五十件でございます。こういうことで、この監督の問題につきましては、実は公正取引委員会と常に緊密な連絡のもとにやっておるところでございます。  先ほどお尋ねがございまして、事務局長のほうからお答えがございましたけれども、こういうふうな文書によって発見するというふうなこと、さらにまた、その文書の中から現実に親事業者のほうに立ち入ってまいるというふうなことでございますし、同時にまた下請事業者として、匿名でもいいんでございますが、自分で言ってもらえばこれは一番よく実態がわかるわけでございます。ところが、まあそこらに下請事業者の遠慮もありましょうが、なかなか正直なところを言ってもらえないというふうな問題もからんでおります関係上、現実に耳にいたします代金法違反のいろいろなケース、こんなにひどいことがというふうなことと、現実にこういう調査権に基づいて調査いたしますものとの間に相当のズレがある。これは私どもも実感として感じておるところでございます。したがいまして、そういう意味からいけば、下請事業者の方が、匿名でもいいし、組合を通じてもいいし、何らかの形で役所のほうに、どこの企業でどうということを自由に言っていただけるのが一番いい方法ではないだろうかという感じがいたしております。
  196. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 長官から先にいろいろお話があったわけでありますけれども、どうも実態と調査といいますか、追跡というものとが大きくずれておるんじゃないかと思うんですよね。まあ、これは公取のほうへいくわけですけれども、勧告の件数にしても少ない。たくさん調査されておいて二件とか何件でありますからね。ほんとはまだあるんじゃないか。これは、私がいま現実にそういう証拠を握っておりませんので強いことは申せませんけれども、いま、何かそういうことを耳に入れたいという長官のお話がありましたが、しかし、そういう面の情報というものについて、弱い下請の人から情報をもらうということじゃなくて、お互い公取も中小企業庁のほうも、下請代金の遅延に関する情報というものをがっちり握るという方法を検討されたことがありますか。
  197. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 確かに先生おっしゃるとおりに、下請事業者から直接上がってくるとかいうことは、これはいろいろな事情があって少ないわけでございますが、私ども公正取引委員会としましては、もちろん中小企業庁とも密接に連絡をとって、地方通産局からの情報はこちらに伝えてもらうようにいたしておりますが、公取独自で、中小企業者のうちから五十名の下請取引改善協力委員というものを委嘱しておりまして、数は少のうございますが、それと、全国で五十一の下請法運用協力団体というものを委嘱しております。これは下請事業者をおもな構成員とする団体でございます。ですから、そういうところで違反関係の情報をできるだけこちらに知らしてくれということで、年に会議を開きまして、意見交換は本局と各地方事務所においていたし、できるだけ情報を集めるということに努力をいたしております。(松尾(信)委員「その結果はどうです」と呼ぶ)結果としましては、団体あるいは協力委員からの件数は、これは別にとってございませんが、かなり一般的な情勢、あるいは先ほど申し上げました特別調査等は、主としてそういう情報から行なっておるわけでございまして、件数自体としては、いままでのところはそんなに多くないというふうに考えております。
  198. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 何か手ぬるいような感じが非常に強いわけでありますけれども、今後、モニター制度か何かもう少しぴちぴちといけるようなものを考えられて、しかも厳正にこの法の運営というものをしてもらいたいのです。そうしなくちゃ、もう何でもすべての問題が下請に集まりまして苦しんでおる、こういう実態でありますから、強くそういう研究をして、情報も集めて、そして厳正にこの法の運営を責任を持ってやる。応援団のほうが数が多いわけでありますけれども、もう少し公取自体も予算なり人員の面もうんと今度はがんばっていって、四十六年度はなお物価の問題で大きな問題が出てきますから、そういう問題にも対処できるような体質というものをつくるというふうに、真剣にひとつがんばってもらいたいと思います。以上で下請関係はやめます。やめますから、ひとつ私がいま要望しておいた問題はしっかりがんばっていくようにしてください。  それから、これは中小企業庁長官にお尋ねするわけでありますけれども、中小企業のカルテルの整理の問題ですね。これはどういうところからこの問題が起こり、そうして中小企業庁でこれを取り上げるに至ったか、何を目的としておるのか、そういうことについてひとつ簡略に要点を説明していただきたいと思います。
  199. 吉光久

    ○吉光政府委員 すでに御承知のように、昨年、物価問題と関連いたしまして、物価と行政介入、いわゆる法令に基づきまして許認可事項が行なわれておる、そういう業種について、要するに許認可に基づいてできておりますカルテル等につきまして、これが少し硬直化しておって、そのために物価上昇の要因になっておるのではないか、こういうふうな御意見があったわけでございます。そういう御意見に基づきまして、二月の二十五日に物価対策閣僚協議会におきまして、そういうカルテル等について行政介入をしておる、いわゆる許認可等を与えておる、そういうふうなものについて、この際もう一回その許認可の基準等について洗い直してみようじゃないか、こういうお話があったわけでございます。そういう意味で、実はそういう全体の中の一環といたしまして、中小企業につきましても、御承知のように、中小企業団体法に基づきまして、いわゆる安定カルテルと申しましょうか、安定事業を実施いたしておりますが、そこらの安定事業について現在の認可方針でいいのかどうか、そういう点についてさらにいまの物価問題をも前提に置いて再検討するように、こういう御指示をいただいたわけでございます。その御指示に基づきまして、中小企業庁もかねてから検討いたしておりましたけれども、ごく最近、三月の二十二日にこの関係審議会を開きまして、その審議会でそこらの認可基準というふうなものについて再検討いたしたわけでございます。
  200. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 まあ、この許認可の行政介入からきたという御説明でありますけれども、現在のこの中小企業のカルテル、これが悪影響がある、悪い結果が出ておるというような判断があるのですか。
  201. 吉光久

    ○吉光政府委員 これも御承知のように、中小企業団体法に基づきますいわゆる安定事業でございますけれども、これは、業界の中に過当競争が行なわれる、そういう地盤を中小企業が持っておるというふうなところから、その過当競争のために正常な取引が阻害され、そしてまた、その結果として相当部分の中小企業者の経営が著しく不安定になっている、こういう場合に、商工組合が主務大臣、あるいはまた、その地域の広がりによりましては都道府県知事の認可を受けて安定事業を実施できる、こういうたてまえになっておるわけでございます。一般的に申し上げますと、中小企業現実の存立基盤というふうなものが、ともすれば過当競争におちいりがちであり、そのために相当部分の中小企業者に相当の影響が出ておるという場合に、こういう事業ができるわけでございますので、したがいまして、この法の趣旨に照らしまして、これが即物価問題を阻害するというふうなことにはならないと思うわけでございます。ただ、安易にこの安定事業が利用されて、それがそのままいつまでたっても存続しておるというふうなことでは、実はまたこれも、この安定事業をやらせようとしておる趣旨にも反するわけでございます。したがいまして、現状におきまして、いまこのカルテルがこういうことになっておるというふうに端的に言い得るものは、ほとんど残っておらないと思います。と申しますのは、過去何年間かにわたりまして、基本的に法の趣旨にのっとって運用してまいっておりますので、すぐにどうという問題は出てまいらないと思いますけれども、やはりこの際、物価問題という非常に重要な側面から、もう一度その気持ちを新たにいたしまして、この安定事業の現にあるものにつきましてどうするかということについて見直しを行なっていきたい、こういう気持ちでございます。  御承知のとおり、安定事業につきましては、要するに毎年一回その事業について見直す機会があるわけでございます。認可の有効期間を一年ということで、一年ごとの有効期間で延長いたしておりますので、その機会に新しい基本方針に立って一見直してみたい、これが今回のその見直し基準の制定につながってまいるわけでございます。
  202. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 しかし新聞発表では、見直しではなくて整理、このように載っておるんです。ですから、見直しとあれば、見直していくわけでありますから、いいほうへいいほうへと指導していくんだ、こう理解するわけでありますけれども、整理ということになりますと、なくなしていくんだ、その目標は三年間でやるんだというように受け取るわけですよ。そのように私は受け取りました。でありますから、世間もそのように受け取っておるんじゃなかろうか、こう思います。見直しであれば見直しのように、どういう点を見直すのか。いまのカルテルはどういう点がどうであるから、そこを指導してこのようにしていくんだというような、はっきりとしたその目標があるわけでしょう。見直しであればあるように、はっきりこれを訂正して、そして整理するというのじゃなくて、その前段階の見直しですね。その見直しの前段階としてどのように指導していくかというのが中小企業庁のほんとの仕事であろう、こう私は思います。やめていくのではない。そうすると、現在のものがだんだんやめられて、そして困ってくるのではないか。中小企業が非常に困るのではないか。いろいろ問題をかかえておるのに、またこういう——せっかく過当競争を防いでいこうというようなことでできたものであります。それから、五十七も現在価格、数量の協定をやっておるわけですね。こういう業種が組合数四百十六。こういうところが大いにショックを受けておるわけでありますから、ひとつ見直しをしていくんだ、その見直しには、このような指導を前提にして見直していくんだというようなことを、ここで明確にしておきたいと思います。
  203. 吉光久

    ○吉光政府委員 先ほども答え申し上げましたように、これはあくまでも毎年認可をいたしてまいります際に、そのときにこういう基準で見直しを行ないますというふうな意味でございます。したがいまして、新聞の見出し等も相当大きく整理というふうなことでいっておるわけでございますけれども、こういう基準に該当しないものについてはみだりに延長は認めません、こういう趣旨でございます。基準に該当いたしておりますれば、これは当然に延長されるべきものでございます。そういう意味で、このカルテルの運用をイージー、安易に考えないというふうなことが役所の基本的態度でもございますし、同時にまた、中小企業業界のほうでも、これをあまり安易に考えていただいては困るという意味での警告を含めたものと御了解ただきたいわけでございます。  そこで実は基準でございます。基準のまず第一でございますが、近代化促進法でございますとか、あるいは特繊法等でございますとか、現在、構造改善を実施しておる業種がございます。これはやはり、構造改善が終わるまでは安定事業というものが横にございませんと、なかなか構造改善がうまく進んでまいらないという意味で、そういう構造改善を現実に実施しております業種、それからそれと密接な関連を持っております業種、こういう業種につきましては、原則として、構造改善事業等が終了する時期まではカルテルは認めます、ということを基本的に宣明いたしておるわけであります。  それからその他の業種でございますけれども、すでに需要が継続的にずっと毎年伸びておりまして、しかも需給の不均衡が相当程度緩和してまいりまして——カルテルが結ばれる場合は、一時的ではあれ需要が減退し、そのために需給が不均衡を生じ、供給過剰になっておるというふうな場合が多いわけでございますが、その結びました当時の事態と事態が相当変わってきておる、需給の不均衡も相当程度緩和されておるというふうな事態がすでに認められる場合でございますとか、あるいは、すでに長期間安定事業をやっておりますけれども、中でやっております事業の効果といたしまして、安定事業をやっておりますうちに、近代化なりあるいは合理化というふうなものをはかることを前提にいたしておるわけではございますが、要するにカルテルという中に浸ってしまって努力のあとが見られないということになりますと、これはかえって競争から途絶することになるわけでございます。そういうようなことで、いつまでも長々とカルテルを続けておくということはあまり好ましいことではないという意味から、そういうふうな非能率的な限界企業の温存、あるいは非能率的な企業の新規参入を招来するような状態になっておるようなカルテルは好ましくないというのが、第二でございます。  それから第三の基準といたしまして、価格上昇がすでに継続して著しく、物価上昇がどんどん行なわれているというようなものにつきましては、これは最初のほうの基準の裏返しみたいなものでございますけれども、そういうものについてはカルテルの延長は認めないでもいいのじゃないだろうか。  以上のような諸原則につきまして、見直しの際には、こういう点に着眼して見直しを行なうという意味でございまして、したがいまして、団体法で意図しております本来の安定事業をそのまま続けられるところの事業につきまして、これをすぐやめろというふうな感じは持っておらないわけでございます。
  204. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 いまのお話の中から強く感じますのは、要するに安易に流れてはいけないということです。そうすると、現実には安易に流れておるものがあるというわけですよ。カルテルがあるために企業努力がなされないというようなものも含んだものでしょう。整理するということ、見直すということの前に、そういうものはかねがね中小企業庁のほうでよく指導をして、ほんとうにカルテル結成の目的を達したものは、それははずしていくべきでありましょうし、あぐらをかいているものは、そこに気合いをかけて、それでは相ならぬというような、企業努力がそこで積極的に出るように指導していくべき問題である。いたずらに先行しまして、そして手直ししてだんだん整理するというような考え方ではいかぬのじゃないか、私はこのように感ずるわけです。  それと、むしろ物価の問題では大企業のほうにいろいろ大きな問題がある。この点につきましては、大企業のほうで価格、数量等のカルテルをどのようにやっているかどうか。その点はあなたのほうでは、むしろ大企業のほうにはあまりないんだという見方。私のほうでは、そういうカルテルを通じての見方じゃなくて、管理価格なり、または再販価格なり、二重価格なり、いろいろあるそういう問題こそ、われわれが真剣に取り組んでいって、物価の安定をはかっていくのが基本線であろう、こう思うわけです。いたずらに中小企業のほうで先走ったようなことがないようにひとつ念を押しておきたいと思うのですが、長官の考えをよく聞いておきたいと思います。
  205. 吉光久

    ○吉光政府委員 先ほども答え申し上げましたように、このカルテルの基準をきめますことによって、中小企業界に逆の混乱を起こすというようなことがないようにつとめなければならないことは、御指摘のとおりでございます。したがいまして、この中小企業団体法に基づくカルテルにつきましては、すでに過去数年にわたりまして、逐次その法の趣旨にのっとりまして、その数も減ってまいっておるわけでございます。現在あるものについて、そういうルーズなものがあるというふうには考えていないわけでございますけれども、そういうものがあってはならないというふうな決意の表明と申しましょうか、そういうことで中小企業界を指導してまいるという立場も必要であろうかと思うわけでございます。したがいまして、現実の問題としましては、そういう業種別にできておりますそれぞれの所管業種につきまして、それぞれの所管業種の主務部局からの指導その他によりまして内容の改善をはかってまいることは、これまた御指摘のとおり、当然やらなければならない問題であると思います。いたずらにカルテルだけをはずしてどうという問題ではなくて、真に自主性のある中小企業業界として育成するという基本的な心がまえが前提にありますことは、私どもも当然だというふうに考えておるところでございますし、同時にまた、そのつもりで努力いたすつもりでおります。  いま大企業云々というお話がございましたが、今回のこの措置につきましては、先ほども答え申し上げましたように、物価と行政介入というふうな問題との関連で、団体法に基づきますもののみならず、たとえば環境衛生関連の法律に基づきますところのそういうカルテルにつきましても、同じように、どう対処していくべきであるかというようなことが議論されておったわけでございます。もちろん価格問題になりますと、こういう法令に基づきます問題以外の問題といたしましても、いまお話しのような管理価格の問題とか、その他のやみカルテルの問題とか、いろいろと好ましくない事態もありますことは当然でございまして、そういうものについて、物価行政の観点からどう対処していくかということも、当然行なわれるべきものであるというふうに私ども考えておるわけでございます。決して中小企業業界のみをここで、悪いことばでいえばいじめると申しましょうか、そういう気持ちで対処しているわけではないわけでございまして、むしろ中小企業業界の健全な発展をこそ願って、こういうふうなもう一回見直しの段階では、こういう気持ちでやりましょう、中小企業業界の方々もそういう気持ちでカルテルを運用していただきたい、こういう気持ちを表明いたしておるわけでございまして、いまの御趣旨の線、私どもも十分に体しまして対処してまいりたいと考えます。
  206. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 質問を終わります。
  207. 八田貞義

    八田委員長 次回は、明後二十六日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十分散会