運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1971-03-17 第65回国会 衆議院 商工委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年三月十七日(水曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 八田 貞義君    理事 浦野 幸男君 理事 鴨田 宗一君    理事 橋口  隆君 理事 武藤 嘉文君    理事 中村 重光君 理事 岡本 富夫君       石井  一君    稲村 利幸君       小川 平二君    大久保武雄君       神田  博君    北澤 直吉君       小峯 柳多君    坂本三十次君       増岡 博之君    松永  光君       岡田 利春君    相沢 武彦君       近江巳記夫君    松尾 信人君       川端 文夫君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         外務省経済局長 平原  毅君         外務省経済協力         局長      沢木 正男君         通商産業政務次         官      小宮山重四郎君         通商産業省通商         局長      原田  明君         通商産業省貿易         振興局長    後藤 正記君         中小企業庁長官 吉光  久君         労働省職業安定         局審議官    中原  晁君  委員外出席者         大蔵大臣官房審         議官      平井 廸郎君         通商産業省通商         局国際経済部長 室谷 文司君         通商産業省貿易         振興局経済協力         部長      山口 衛一君         商工委員会調査         室長      椎野 幸雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  中小企業特恵対策臨時措置法案内閣提出第五  〇号)      ————◇—————
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出中小企業特恵対策臨時措置法案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  すなわち、本案を審査するため、明後十九日、参考人から意見を求めることとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 八田貞義

    八田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  4. 八田貞義

    八田委員長 質疑の申し出があります。順次これを許します。岡田利春君。
  5. 岡田利春

    岡田委員 私は、本法の具体的な内容の質問の前に、特恵に関連する若干の問題についてまず御質問いたしたいと思います。  いろいろ長い間経過がございましたけれども、結果的に、先進国後進国に対して一方的に特恵供与する、こういう段階になってまいりまして、いわゆる七〇年代は、特恵により低開発国開発をより促進をさせる時代であるという受けとめ方が今日国際的になされているわけです。したがって、いままでの会議の中でもいろいろ議論されてまいったと思いますけれどもわが国としてこの特恵供与するにあたって、一体、国際的にどういう効果が期待できると受けとめておるのか、そういう点について政府見解をまず私は明らかにしていただきたいと思うわけです。
  6. 原田明

    原田政府委員 特恵の話は、国連貿易開発会議におきまして、発展途上国経済、特に貿易拡大をはかるという目的で進められたものでございます。したがいまして、わが国特恵供与いたします場合にも、第一義的な目的は、やはり、この南北問題、または発展途上国それ自体経済、特に貿易発展という目的に資するという効果を期待しているわけでございます。しかし同時に、そのことはわが国の側から見ますならば、日本貿易経済関係が非常に密接でございまして、特に日本輸出につきましては約四割程度を占めております発展途上国、しかも、その貿易が大部分日本から見て出超という片貿易状態になっておりますので、こういう国からの輸入日本促進するということによりまして、片貿易を是正し、それらの国々外貨収入増大に寄与いたしまして、ひいて経済開発に資し、もしできるならば日本輸出のさらに大きな拡大にも資するという効果を持っていると存じます。
  7. 岡田利春

    岡田委員 いま通商局長から説明がありましたけれども、もちろん第一義的には、貿易をつくり出していく、拡大をしていく、こういうところに大きな効果があると私は思うわけです。この点については、いまの答弁に私は全く同感であります。ただしかし、それと同時に、特恵供与というのは一つ貿易転換というものを促進をしていく、こういう側面というものを私どもは正確にとらまえる必要があるのではないか、こう私ども判断をいたすわけです。特に先発発展途上国、これに対して特恵供与するということになってまいりますと、当然、貿易構造転換、こういうものが一そう促進されていくのではないのか。そういう意味における、いわば軽工業品等分野における国際的分業化あるいは再編成という一つの展望を切り開いてくることになるのではないか、こういう面についてどう一体受けとめられておるのか。あるいはまた、特恵供与の結果として、低開発国特定産業について、これは輸出可能性が非常にあるという産業に対しては外資系資本が積極的に進出をする、こういう面を非常に大きく呼び起こすでしょうし、現にそういう傾向にあることはいなめない事実ではないのか。その結果、特に先発型の発展途上国経済発展を一そう急速に促進をさせる。こういう二つの側面というものも大きく重視をしなければならぬし、このことを正確に受けとめることは特に大事ではなかろうか、私はこう考えるのでありますけれども、この点について見解を承りたいと思います。
  8. 原田明

    原田政府委員 先生御指摘のとおり、貿易の面におきましては、発展途上国貿易増大という効果を期待するわけでございますが、発展途上国特恵恩恵によりまして増大を期待することのできる貿易分野は、主として特恵対象になっております製品関係でございます。その場合に、まず発展途上国発展する可能性のある産業は、繊維軽工業といった部門を中心にする産業ではないかと存じられます。したがいまして、そういう産業製品中心にいたしまして特恵供与する、先進地域貿易拡大を期待するということがこの特恵効果として出てまいるかと存じます。したがいまして、その結果としますと、御指摘のように、同じ発展途上国の中でも、どちらかと申しますと先発発展途上国工業製品といったようなものがこの恩恵に浴する傾きがないとはいえないと存じます。その点も考慮いたしまして、現在私どもで検討し、つくり上げております案では、できるだけ多くの発展途上国にこの特恵恩恵が均てんいたしますようにという観点から、五〇%頭打ちというようなカテゴリーも設けまして、それによりまして、あまり片寄った、特定先発発展途上国製品だけが特恵の恩典に浴し伸びるというようなことのないように配慮いたしたい、というようなことも考えておる次第でございます。
  9. 岡田利春

    岡田委員 わが国貿易構造や、わが国をめぐる環境からいえば、ここ四、五年の発展途上国の動向としては、特に、隣国である韓国、あるいはまた台湾、あるいはタイ、フィリピン、いずれにしてもアジア地域のこれらの国々は、きわめて経済成長も高いし、いわばいずれも先発型の発展途上国です。これにシンガポール等も入るでありましょう。こういう意味では、ほかの国の場合と違って、日本特恵供与の問題というのは他の国の環境とは相当相違がある。たとえばEEC諸国あたりに比べると、むしろ環境的に、そういう面からは相当な差異というものがあるのではないのか。このことを正確に受けとめなければ、本法のいわゆる対策等についても、正確な、最も情勢に適応する対策というものも、私は成り立たないと思うわけです。  私はそういう意味において、先ほど来から、貿易転換の問題や、あるいはまた、アジアにおける先発後進地域との間の分業的な体制の促進ということを特に強く受けとめなければならないし、またすでに、アメリカ系あるいは日本資本もそれぞれ進出傾向を深めておるわけですから、これがより一そう促進されるということも明らかである。このことは、逆に製品輸入されてまいるわけですから、そういう日本特恵供与における影響というものは、日本自体として非常に特恵国際経済環境にある、こう受けとめなければならないし、また一方、貿易の面ではアメリカに片寄っているわけですから、そういう意味で、これまたアジア地域のきわめて近い国々との間の競合というものは非常に強い。こういう側面をぴちっとつかまなければ今後の対策というものは成り立たないから、私は、むしろ一般論よりもこの面の強調といいますか、この面の正確な把握また見通しというものが大事だと思うわけでございます。こういう認識でよろしゅうございますか。
  10. 原田明

    原田政府委員 今回、国連貿易開発会議の決定に基づきまして先進各国供与しようとしております特恵は、一般特恵という名前で呼ばれておりまして、どの先進国も、すべての発展途上国、もちろん国連貿易開発会議のメンバーを主としているわけでございますが、に一律に供与しようとするたてまえでございます。しかし、たとえば英連邦あるいはEECのごとく、昔から旧植民地中心とする地域に対する特恵になれております国々などとは違いまして、日本は初めて特恵ということに踏み切るわけでございますし、ことに日本近隣東南アジア諸国等におきましては、この特恵恩恵を受けることを非常に強く期待し、また可能性のある産業を持つ国々が非常にたくさんございます。また御指摘のごとく、日本の主たる市場一つでありますアメリカ向け輸出などにおきましては、今後、日本の軽工業分野と強く競争する可能性のある産業を持つ国々が多うございます。したがいまして、日本特恵供与にあたりましては、やはりそういう国々との関係というものを強く配慮していかなければならない状態にある。まさに御指摘のとおりであると考えております。
  11. 岡田利春

    岡田委員 今回の一般的特恵供与により、わが国輸出面でなく輸入面だけに限って、一体どういう影響が考えられるか。特恵供与は、後進国は二十カ年を希望しておりますけれども、一応十カ年をめどにしてこの供与が行なわれるわけです。したがって、できれば業種品目、それから十年間を展望して輸入増加率というものは、特恵供与の結果どういう傾向を示していくのか。そしてまたその金額は、どのような方向に推移すると推定をしているのか。いずれにしてもわが国の場合には、シーリング枠の設定を行なう方針でありますから、輸入の場合にはまだ、そう輸出に比べては影響は少ないと思われるわけですが、この点について政府見通し見解を承りたいと思います。
  12. 原田明

    原田政府委員 試算として、たとえば一九六九年を例にとりまして、総輸入額を一〇〇と計算をいたします。そういたしますと、今回二五類から九九類まで、つまり工業製品ということで主たる特恵対象になります品目が占めております比率は約八四%でございます。このうち、日本は原材料の輸入を非常に強く進めておる国でございますので、無税品目がかなりございます。無税品目輸入額が約三七%でございます。したがいまして、有税輸入品目の額が約四七%を占めております。この有税品目につきまして、発展途上国からの輸入特恵供与される可能性があるわけでございますが、いま申し上げました発展途上国からの輸入のうち、四七%を占めます有税品目のうち、例外、つまり特恵供与しないということにきめております品目が三七%を占めます。また、特恵をやることにきめてはおりますが、五〇%しか関税を下げないということにきめております品目の占める比率が一・八%ございますので、無税特恵供与しようということにきめております品目ウエートは八・八%でございます。したがいまして、五〇%下げる品目でございましても、ある程度のそれに相応する特恵影響というものはあるわけでございますから、大まかに概算をいたしますと、約一〇%程度のものに特恵影響が起こる可能性があるわけでございます。これが、近隣諸国の場合にはやや高い国もありますし、それほどでない国もございますが、大体の感じといたしましては、いま申し上げましたようなウエート輸入に対しまして、今回の特恵影響が出る可能性があるというふうに御了承いただきたいと存じます。
  13. 岡田利春

    岡田委員 いま通商局長から大体の見通しについて述べられたわけですが、これをしぼって、本法が提出されているゆえんである中小企業に対する影響、こういう面を特にしぼってみた場合にどうなるのか。こういう点について中小企業庁は、ある一定の輸入増加推計というものを行なったことがあるのかないのか。また、そういう資料があるのかどうか。あれば、その点についての御説明を受けたいと思います。
  14. 吉光久

    吉光政府委員 ただいま通商局長がお答え申し上げました製品、特に最近発展途上国から輸入増加いたしております製品は、繊維製品あるいは軽工業品というふうなことでございまして、いずれかといえば、中小企業性製品というふうなことが言えるものが多いかと思うわけでございます。計数的にこの全体を整理いたしてはおらないわけでございますけれども、ただ、過去のいろいろの状況等から判断いたしてみますと、たとえば一九七〇年の輸入実績が一九六八年の二倍以上にまでふえておるというふうな、そういう品物も多々あるわけでございまして、これは受益国がどう定まるかということによって変わってまいる面もございます。たとえば絹糸等につきまして、これはSPになっておりますけれども韓国中共等からこの二年間で約十倍という伸び率を示しております。あるいはまた毛糸につきましては、台湾韓国等関係で十五倍というふうな大きな伸び率を示しておるもの。あるいはまたメリヤスのくつ下、これもSP品目でございますけれども、二十四倍、その他、繊維縫製品関係相当伸び率を示しておるもの、あるいはまた雑貨等につきまして、人形あるいは玩具等につきまして相当輸入伸び率が高いというふうなものが多くあるわけでございます。もちろん、消費の絶対量の中に占めるウエートはまだそれほど高くはないわけでございますけれども伸び率だけで見ました場合、相当伸び率輸入されてきておる、こういう状況であるわけでございます。したがいまして、そういう輸入が急増しておる伸び率の高いもの、こういうふうなものにつきましては、要監視品目として監視しておく必要があるのではないだろうか、こう考えておるところでございます。
  15. 岡田利春

    岡田委員 今度の特恵供与の場合も、生糸、絹織物、合板、にかわ、皮製品皮製衣類、はきもの、あるいはその部分品等は、これは適用除外になっているわけです。そういたしますと、輸入面で見ますと、特に近隣諸国関係が問題になるのでしょうけれども合板とか、これらのそれぞれの品物は、特恵供与しなくてもわが国中小企業に重大な影響を及ぼしておる。またさらに及ぼす影響は強まっていく、こう見ることができると思うわけです。したがって、特恵供与による影響としては、綿糸あるいはスフ糸、あるいは綿織物、敷きもの、衣類プラスチック製品旅行かばん、ハンドバック、あるいは細貨類、玩具、ライター、こういうものが輸入の面で見れば特に集中的に影響を受けるのではないのかと思われますが、これ以外に何かありますか。
  16. 吉光久

    吉光政府委員 ただいま御指摘になったような繊維製品あるいは雑貨品というものが、大きな影響を受けるものとして予想さるべき品物ではないかと思っております。
  17. 岡田利春

    岡田委員 これらの品物は、いずれも特恵供与をしなくてもすでに影響を受けているし、またこれからもその影響は深まっていく。そういたしますと、特恵供与することによってより一そうこれが加速化するという受けとめ方が私はできると思うのです。そういたしますと、輸入面では、いわば先発発展途上国影響をすでに受けつつあるわけですから、黙っていてもこれが深まる。特恵供与しても、結局一つ天井ワクがあるわけでございますから、これを越える分については別に適用しないという面から見れば、輸入面では特恵供与影響が大きいのか。それとも、近隣発展途上国のそういう貿易構造傾向が進んでいく結果としての影響を受ける度合いが大きいのか。いずれの度合いが一体どういうウエートになるのかという分析については、なされたことがございますか。
  18. 原田明

    原田政府委員 確かに御指摘のとおり、現在でもすでに、先ほど中小企業庁長官の御報告申し上げました数字のとおり、かなり伸び率が高いというようなものがあるわけでございます。したがいまして、ほっておいても相当輸入伸びるものに特恵をやれば、さらに伸びるという状態が起こるわけでございます。私どものところでは、幾らやったときに幾ら伸びるという計算は非常にむずかしゅうございますので、精密な計算をやるということはたいへん困難でございますが、傾向値としまして、ここ数年来伸びているような程度伸び率をこえまして、特恵供与の暁にその伸び率が著しく増大をするというようなことがありました場合には、その他の、たとえばこちらの景気の状況、または発展途上国輸出キャパシティー増大といったような、特定の要因を除いて考えました場合には、それは、おそらく特恵によるものではなかろうかと考えることはできないのではないか、こういう考え方をいたしております。
  19. 岡田利春

    岡田委員 では次に輸出面で見ますと、これはアメリカ対象になるわけでしょう。それ以外の先進諸国の場合にはウエートが非常に少のうございますから、主としてアメリカということになると思いますが、これまた同様に輸出の面で見ますと、十カ年間を展望して、どういう業種品目、あるいはまた、できれば伸び率影響を受ける増加率は、一体どういう傾向にあるのか。こういう点について、輸入と同様にひとつ御説明をいただきたいと思うわけです。
  20. 吉光久

    吉光政府委員 確かに、日本輸出、特に繊維製品あるいは軽工業品等の対米輸出ウエートは非常に高いわけでございまして、軽工業品全体で、アメリカ向きに出ておりますものが、三七・二%というふうな大きなウエートを占めておるわけでございます。しかもそれが、発展途上国輸出市場で実はいろいろと競合いたしておるわけでございまして、対アメリカ関係におきまして、たとえば韓国が三八・三%、あるいはまた台湾が二二・九%というふうに、発展途上国製品ウエートもまた大きくなっておるわけでございます。したがいまして、特恵供与というふうなことになりました場合、さらにこれが加速されるという状況になるわけでございまして、特に繊維あるいは雑貨というふうな面につきまして影響が大きくなるものと予想するわけでございます。ただ、その関税差という意味価格面での利益発展途上国製品に与えられますけれども、この価格差利益だけで競争が行なわれるというふうなことにもなりかねない面もあるわけでございまして、品質の問題でございますとか、あるいはデザインその他の問題、あるいはまたアメリカにおきます好みと申しましょうか、国民の好みというふうなものもやはり取引には相当影響してまいりますし、同時にまた、発展途上国現実生産余力と申しましょうか、輸出余力と申しましょうか、そういうふうなものがどういう形で伸びてまいるかというふうなこと、それらのものが総合的に作用して影響面にあらわれてくるというふうに考えられるわけでございます。したがいまして、これを計数的に把握するというふうなことは非常に困難ではないであろうかと思っておるわけであります。  私どものほうでも、いろいろな角度から、実は単純価格面だけとかどうとかというふうな意味での試算はいたしてみました。しかし、それはあくまでも試算でございまして、こういうふうな影響を受けるというふうに公にするにしては少しお粗末な資料ではないであろうか、というふうな感じがいたしておるわけでございます。ともあれ、そういうふうな意味で、現実の問題といたしまして、いま計数的にどうであるということを推定することは非常にむずかしい問題がございます。したがいまして、むしろ、現在アメリカ市場におきまして、どういう商品について競合が行なわれ、そしてシェア低下が行なわれておるか、そういう面からの追跡をやっておるところでございまして、そういう意味で、ある影響を受けそうだと思われるような商品名を一部あげることまでは可能でございますけれども、それ以上の計数的にどうということの推定はきわめて困難な事態ではないか、こう判断いたしております。
  21. 岡田利春

    岡田委員 わが国では、合板適用品目除外をいたしておりますけれどもアメリカの場合には、おそらくまだ最終的に決定しておりませんが、合板もこれは特恵供与対象になる。そうすると関税は二〇%かかる。一方において、特恵供与されればこの二〇%の関税はかからないから、二〇%の差というものが当然出てくるわけです。しかし、この一九六六年から一九六九年だけを合板で見ますと、六六年当時は、日本アメリカ市場の三〇・七%のシェアを占めて、韓国が二二・五%、台湾は二〇・七%、フィリピンが一・五%であった。この第一位だった日本が六九年には一八・七%、韓国が三六・九%、台湾が二一・八%。実に二位の座も譲って大きく後退しているわけです。これは、別に特恵供与しなくても、こういう傾向で六六年から六九年まで推移しておるわけです。ですから、特恵供与されればより一そうこれは加速されて、非常にハンディキャップを背負うことになることは、もう明白な事実ではないか。ところがわが国では、一方そういう面では、従来のラワン合板を主体とする輸出から、できれば二次加工合板のほうに転換するという努力もされておるようでありますけれども、なかなかこれも遅々として進まない。二次加工品に出れば、米国産とのいわゆる価格競争というものにぶつかる。逆にこの面についても、むしろ発展途上国のほうがやはり伸びるのではないか。特に合板は特殊な例でしょうけれども、こういう非常にきびしい状態にあるのではないかと思うわけです。あるいは雑貨の場合には、北米にわが国シェアが六九年で大体六一%、ヨーロッパに対しては一七%、その他には二二%。ヨーロッパの場合には、非常に保護貿易主義の底流というものが強いという状況にありますし、対日差別輸入制限という壁もございますから、ヨーロッパのほうには雑貨の場合にはなかなか伸びられない。一方において特恵供与されてくるわけですから、この面についても相当深刻な状態が出るということは明らかになるのではないか、このように私は判断をいたしておるわけです。  そういう面から考えてまいりますと、結局、先ほど局長から答弁されましたけれども、大体伸びが三七・二%、これを特に影響を受けると目される十九品目に限ってみますと、やはり従来の発展途上国伸び率というのは三七・八%、これも局長の言われた数字と変わらないという傾向をたどっておると思うわけです。しかし、経済伸びに従って需要が増加する、輸入増加していく。しかしわが国は、むしろその輸入増加の中で、なおかつ対米輸出については減少していかざるを得ない、はっきり減少するという方向が特に繊維雑貨関係については言えるのではないか。いろいろ影響度合いは違いますけれども、従来の実績を相対的に確保していけるという趨勢をたどるのか。それとも、全然増加をしないでむしろ減少していくという方向をたどるのかという程度は、ある程度ぴちっと見通しを立てておく必要があるのではないか、こう思うのですけれども、これらの点についてはいかがでしょうか。
  22. 原田明

    原田政府委員 大きな数字で見ることにいたしまして、アメリカの総輸入の中で、日本及びその他の発展途上国、特に韓国台湾、香港といったような国からの輸入がどういうふうに変遷しているかということを見ますと、六四年から六九年までの五年間ということで見まして、日本からのアメリカ輸入は二・八倍になっております。これに対しまして、韓国からの輸入は八倍、台湾からの輸入が五倍でございます。香港からの輸入も三・八倍になっておりますから、伸び率に関します限りは、これらの韓国台湾、香港といったような国からの輸入が非常に急激な伸びを示して、日本からの輸入伸び率をはるかに上回っているということが言えるわけでございます。ただ、六四年ごろにおきましての韓国台湾からのアメリカ輸入額は、それぞれ三千六百万ドルまたは七千七百万ドルという非常に低い数字から出発をいたしておりますので、現在でも、たとえば六九年に日本輸入が四十九億ドルありますのに比べますと、わずかに二億九千または三億九千といったような程度でございまして、伸び率だけから見ますとこれらの国々相当急ではありますけれども日本競争するという段階に至るにはまだ相当の隔たりがあるのではないかと存じます。  したがいまして、この特恵供与されることによっての影響といいますのは、先ほども先生から御指摘になりましたような、軽工業品雑貨といったようなものを中心にしまして強く出てくるわけでございます。御指摘合板などにつきましては、原料のラワン材が日本産ではないというような関係もございますし、また、フィリピン韓国その他の東南アジア諸国が、みずからそういう技術を発展せしめまして輸出に乗り出しているというようなところから、特恵をやるまでもなく日本シェアが非常に急激に低下をしているわけでございます。したがいまして、こういうものにつきましては、アメリカがこれに特恵をやるというようなことになれば、現在でもふえつつある影響がかなり加速されるということは、ほとんど疑いをいれない事実ではないかと考えております。
  23. 岡田利春

    岡田委員 そういたしますと、結局、わが国特恵供与をして輸入の面で受ける影響よりも、輸出の面で受ける影響がはるかに大きい。業種的に見ますと、おもちゃなどの場合は特に象徴的に出ていますし、そういう点ではむしろ輸出の面で影響を受けることが大きいと言えるのではないのか。金額的に見ても当然そうであろうかと思います。  そういたしますと、発展途上国特恵供与を受けるけれども日本の場合、すでに輸出しているものが、これにある一定のワクを設けられて、五〇%ないし無税になるという点でのメリットはもちろん大きいのでありますけれども輸出の面のほうで見れば、アメリカが、日本品目除外しているたとえば合板やはきもの、これらについてもアメリカ特恵供与をするわけですから、アメリカ特恵供与のほうが、特にアジア近隣諸国関係においては恩恵がはるかに大きいということが言えるのではないのか。したがってこれらの国々は、アメリカ市場に限っては、アメリカがいわゆる特恵供与をしてくれたおかげであるという点では、むしろ対米輸出の面のほうがおかげが大きいし、そういう点の感謝する念も大きくなるのではないのか。素直に考えれば結局そういうことでないのか、こう思うわけです。特に台湾あるいはまた韓国フィリピン、香港等の関係を見ますと、そういう点では、特恵供与というのは、むしろ恩恵からいえば、アメリカ市場のほうに大きく傾斜をするという理解が正しいのではないかと思うのですが、いかがですか。
  24. 原田明

    原田政府委員 雑貨軽工業品の中でも、輸出比率のさほど高くない商品または業種につきましては、さほど心配する事態は起こらないかと存じますが、いま御指摘になりましたような品目の中には、かなり輸出比率の高いものがございます。しかも、そのかなりの部分アメリカ市場というものに出ているのが、現在までの日本状態でございます。したがいまして、日本特恵供与しまして、それによって日本の中に輸入が入ってくるという影響よりも、むしろ、アメリカ特恵供与することによって、発展途上国からのこれらの製品の対米輸出が有利になりまして、それで日本の同業種、同産品というものが影響を受けるということのほうが大きいのではないか。これはまさに私どもも、そのように考えた次第でございます。  したがいまして、この特恵問題審議のOECD、または国連貿易開発会議における審議の経過におきまして、輸入国間の負担の公平ということと並行しまして、特に日本輸出国の利益、その負担の公平という主張を強くいたしたわけでございます。この主張は、一応理念としては各国も賛同するわけでございますが、しかし同じ先進国が、ほぼ似たようなスキーム、基礎的には同じ考えのもとに立ちまして特恵という制度に踏み切るということになりました場合に、非常に強く、こういう制度をある国に例外にしろという働きかけも、なかなかむずかしい面があるわけでございまして、現在のところは、アメリカ繊維とくつというものだけを例外に考えておるようでありますが、その他のいま御指摘のような商品は、例外になる可能性はまずないようであります。したがいまして、こういう商品についての影響というものをまず第一に考えなければならない。これは経済外交というような面で、もし起こりました場合に、その対策を相手国市場その他と相談をするという面と、それよりさらに強く、日本の国内におきまして、これらの産業業種に対するいろいろな意味における援助、支持といったようなものに踏み切らなければならないと考えたわけでございまして、それが今般、中小企業庁中心に御立案になっている対策法の一つの大きな理由にもなっているものであると私ども考えております。
  25. 岡田利春

    岡田委員 アメリカの場合には、私どもの情報では、おそらく今年末ごろにこの特恵供与に踏み切る、実施をするのではないか。きのうは秋ごろという答弁もありましたけれども、むしろそれよりもずれて、今年末くらいになるのではないかという情報も実は受け取っているわけです。しかし政府側の措置としては、いずれにしてもエスケープクローズ方式をとるということは、これはもうはっきりしておるわけですから、そういう面でわが国との場合と違っているわけで、いわばわが国の農水産物と同じような方式をすべてについてとるというのがアメリカのようであります。わが国は大体EECと同じ方式をとるという考えのようでありますけれどもアメリカわが国政府側の措置の違いというものは、どういう要因で違いが出てくるのか。特にわが国は、アメリカと異なる方法、EECと全く同じ方式をとるという面についてはどういう理由によるか。そういう判断の基礎等について伺っておきたいと思います。
  26. 原田明

    原田政府委員 特恵をやります場合に、発展途上国の側の要求は、ほとんどすべての工業産品、製品、半製品につきまして無税特恵供与しろ、例外というたようなものはほとんど持たないようにしてもらいたいということでございます。しかしどの進進国も、それぞれ国内産業をかかえておりますし、国内の事情というものがございますので、その発展途上国側の要求どおり、全面的に無制限の特恵をやるというわけにはいかないわけでございまして、そういう国内産業保護といったような利益と、発展途上国に対する南北問題の観点からの主張をいかにして調和するかというときのメカニズムとしまして、アメリカ型のエスケープクローズまたは例外方式という考え方と、それからヨーロッパ型のシーリング、一定のワクを設けるという考え方と、二つが出てまいったわけでございます。当初、日本も、アメリカ型、つまり例外方式という考え方をとっておりました。発展途上国側の要求のとおり特恵供与することを原則といたしますが、できないものは例外にさせていただきますという考え方で作業をしたわけでございます。しかしその場合に、わが国の国内産業の中には、発展途上国、特に近隣諸国との競合が強いという産業がございますので、かなりたくさんの品目を例外に載っけざるを得ないという結果になりまして、一応そういう案をOECD等に出したわけでございます。これに対しまして、ヨーロッパの諸国は、伝統的にアフリカ諸国等につきましてその特恵の制度を持っておりました。そういうところから、かなり広い品目、つまりほとんど例外はないというくらい特恵供与いたしますが、その特恵供与するワクを限って、それを越えた場合には普通の関税に戻すという制度を主張したわけでございます。したがいまして、日本の場合には、もし例外を多くしても発展途上国側の要求が満足できるということであればアメリカ型が採用されたわけでございますけれども、いろいろ審議の結果、とてもそういう多数品目についての例外を国際場裏で通すというのはむずかしいし、また日本側から見ましても、ワクを限ったほうが、ある程度影響ということに限定をしながら、日本産業に刺激も与え、高級化、高度化を進展させながら、かつ発展途上国輸入を迎え入れるということが可能になるというような利益も考えられましたので、このシーリング方式ということに途中で切りかえた次第でございます。これは、どちらも一長一短あるわけでございますが、現在私どもの考えでは、日本軽工業品発展段階、特に発展途上国との競争状況といったようなことを考えますと、このシーリング方式をとったほうが有利であるということから切りかえたわけでございまして、それがアメリカ日本との方式の違いということになって出ているわけでございます。
  27. 岡田利春

    岡田委員 シーリング枠方式をとったわが国は、その基準年次を昭和四十三年度にとる、そう仮定をしてみますと、なぜ一体四十三年度をとったのかということが一つ疑問点があるわけです。したがって、四十三年度をとって一応計算をいたしますと、四十六年度の七月以降実施するのでしょうけれども、四十六年度でも四十七年度でもけっこうなんですが、受益国からの前年度の輸入総ワクからの伸びというものは、この計算方式では微々たるものではないのか。もちろんそれは、前年の実績に若干プラスされたものが特恵供与されるわけですけれども、ワクとして大体微増である、実績の微増であるということになるのではないか。したがって、四十二年度を基準年次にとったのは一体どういうわけか。ここが一番問題点になるわけですが、この点についての理由について明らかにしてもらいたいと思います。
  28. 原田明

    原田政府委員 この特恵の話が国際会議の場所に出てまいりましたのは数年前でございまして、発展途上国の側にいたしますと、なるべく早く特恵をやってもらいたい、しかもその特恵はできるだけ輸出がふえるようにしてもらいたいということでございますから、もし例外方式をとるならば、例外を少なくしてもらいたい、もしシーリング方式をとるならば、そのシーリングをできるだけ大きくしてもらいたいという要求になるわけでございまして、そうなりますと、そのワクを大きくいたしますためには、基準になる年がなるべく新しいほうがおおむね輸出額が大きくございますから、新しい年にしてくれということになるわけでございます。そういうことで、世界各国、大体昭和四十三年というものを基準にして計算をするということで出発をいたしました。  現在のわが国の例外品目、または五〇%しか下げない品目といったようなものを選定いたしますときの作業も、その四十三年という年の実態というものをベースにして作業が行なわれております。また、EECその他の諸国もこの年を基準にいたしておりますので、したがいまして、基準年としては四十三年をとるということになったわけでございます。その後ふやしますワクといいますか、シーリングは、特恵供与しようとする年の前々年でございますから、もし七一年に特恵をやろうといたしますと、六九年ということになりますし、七二年の特恵ワクのシーリングは七〇年というものがベースになるわけでございます。毎年ふえてまいりますから、それだけワクはふえる可能性があるわけであります。ただ、先生おっしゃいますとおり、発展途上国の側はほとんど一〇%しかワクをつくらないというのではあまりふえないのではないか、微々たるものであるという考え方をとっておりますが、しかし、国内産業利益というものを考えなければならない先進国の側にいたしますと、それほど大きくもできないわけでありますし、またヨーロッパその他もほぼ同じ程度いたしておりますので、わが国としても、一応この線で進めるということはいいのではないかというふうに考えたわけでございます。
  29. 岡田利春

    岡田委員 特恵供与は、いわば市場拡大の間接的な経済援助、こう割り切って受けとめていいのではないかと私は思うのです。そして国連決議に基づく、国民総所得の一%を経済援助に回せということで、わが国もこれに協力をする態度をすでに政府は決定をいたしておるわけです。この直接的な経済援助からいえば、特恵供与はいわば市場拡大の間接的な経済援助だ、こう受けとめることができるのではないかと思うわけです。そういたしますと、結局、低開発国発展途上国も、経済援助を考える場合には、この直接的な経済援助と間接的な経済援助をどう結びつけて考えていくか、どう対処していくかということが、当然、特恵供与に踏み切るわが国として整理されなければならないと私は思うわけです。その基本的な方針と見解をこの機会に承っておきたいと思います。
  30. 原田明

    原田政府委員 発展途上国問題を広く南北問題としてとらえました場合に、当初はどちらかといいますと、経済協力ないし援助ということに重点が置かれまして、より多くの援助を発展途上国へというかけ声で進められた傾きがあったようであります。しかるにその後、依然として発展途上国の側の外貨債務あるいは経済発展のおくれといということが目立っておりまして、援助ないし協力ということだけでは発展途上国経済開発は期待できないわけで、貿易も援助とあわせて進めなければならない。あるいは、ときとしては援助より貿易へというぐらいのかけ声さえ起こったわけでございます。この発展途上国貿易、特に輸出拡大に資する方策の一つとして浮かび上がったのが、この特恵でございます。したがいまして、確かに先生御指摘のとおり、発展途上国ないし南北問題というものの解決のためには、経済協力、援助、あるいは融資、投資、それに加えまして貿易拡大、その中の一つとしての地位を持つ特恵というふうに理解をいたしまして、こういうものを総合的、有機的に進めるということで解決をしていかなければならない問題ではないかと考えております。
  31. 岡田利春

    岡田委員 いまの局長の答弁でまいりますと、結局そういたしますと、援助と特恵をどう結びつけるか。結びつきの度合い、これによってそのメカニズムがビルトインされる面も出てくるし、援助の場合いろいろありますから、その度合いというものについてずいぶん差異が私は出てくるのではないか、こう思うわけです。しかしいずれにしても、いま答弁されたように、この結びつきということが考えられてまいりますと、特にビルトインされる場合には、国際経済の中における南北問題に対処する役割りとしてこういう政策をとるけれども、その結果としてどういう方向がもたらされてくるのか。具体的に申し上げますと、先進国の重化学工業部門というものが一そう拡大をして、そして比較的低位生産部門から資本と労力というものがむしろそっちのほうに吸収されまして、軽工業関係については特に後進地域発展途上国ウエートが乗っていく。いわば世界的分業といいますか、再編成の方向というものが結果的にもたらされてくるのではなかろうか、こう私は考えざるを得ないわけです。そういう一定の展望は、特に日本を取り巻く韓国台湾、香港、フィリピンと、特に成長率の高い、いわば先発型の後進地域に取り囲まれているアジア地域から見れば、わが国として、援助と特恵の結びつき、それのもたらすものについて、先ほど申し上げましたように、ある一定の方針といいますか、そういうものに対処する心がまえというものが、この特恵供与に踏み切るにあたって、一定方向についてきらっと整理されておかなければならないのではないか、こういう感じがあるのですけれども、こういう点についてはいかがですか。
  32. 原田明

    原田政府委員 たいへん大切な、しかしむずかしい問題の御指摘であると存じます。大きな方向といたしましては、発展途上国はどの国も、援助も貿易もと言っておるわけでございますが、経済協力は、どちらかといいますと、その国の経済開発、特に最近はインフラストラクチュア的なものを含みました経済開発に資する部門に先進国からの資金、技術等の流入というものを期待するという形で行なわれておりますので、プラントあるいは道路、港湾等々といったようなものに援助が行なわれるというような形が多いようであります。他方、発展途上国の側は同じように、軽工業部門につきましても経済開発のために伸展を進めておりまして、その中には、当初の段階では先進国から技術その他を導入する場合もございますが、一定の段階に達しますと自立的にその産業発展をいたしまして、単に国内の需要を充足するだけではございませんで、非常に大きく輸出伸び、その輸出外貨獲得力によりましてその国のその他の経済開発をまかなうというような傾きがあるようでございます。  したがいまして、こういうことはなかなか一がいに一律的に申すことは正しくもございませんし、また誤解を招くおそれがあるわけではございますが、もし許されますならば、先発発展途上国等では、どちらかといえば、地についた軽工業中心とするその国の自由産業発展及び輸出、そしてその拡大のための特恵といったような方向に力を入れがらでございますし、おくれておりますほうの発展途上国では、先進国からの経済協力、援助というものにより強く依存をいたしまして、その国の産業経済の基盤から開発を始めるというような傾きがあるようでございます。そういたしますと、自然にそういう軽工業部門を中心にいたしまして、特恵対象になりやすいような産業部門につきましては、発展途上国側の領域が、国際分業の観点から見ましても拡大をされまして、先進国の側——日本の場合でもそうであろうかと存じますが——は、より多く重化学工業部門または頭脳産業部門といったような方向に移行をいたしますと同時に、同じ軽工業分野におきましても、より高度化された、一般にいわれておりますソフィスケートされた部門へ移行するという形で、国内産業にあまり無理を来たさない範囲で発展途上国産業を受け入れるという形の国際分業のパターンが進むということになるのではないかと考えます。
  33. 岡田利春

    岡田委員 発展途上国開発戦略はそれぞれ国々によって違うわけですから、そういう面から見ますと、この特恵供与、そうしてまた経済援助との結びつき等を考えますと、先ほどからも議論されておりますように、先発開発国のほうが利益が大きくて、後発の発展途上国のほうが利益、マージンが少ないという点で、格差はより一そう拡大をしていくということがはっきり言えるのではないかと思うわけです。したがって、特恵供与だけで見ますと、もちろん、これは低開発国経済発展に資するのでありますけれども、その結果として格差はより一そう拡大をする。大体十カ年間という年限を限っておるわけですから、少なくとも前期五カ年間はむしろ格差を拡大をするという傾向を深める。これはもちろん、是正する方向をとるために努力をするのでしょうけれども、大体十カ年間を展望すると、むしろ格差は拡大をするという受けとめ方を、残念ながらしなければならないのではないかと私は思うわけです。そして、わが国のように一次産品の輸入が非常に多いというところでは、わが国に対して一次産品を供与している国々は、これは無税か非常に低い関税ですから影響はないわけですが、そういう角度から考えますと、わが国経済援助というものは、それぞれの国の開発戦略に対応して適宜適切な経済援助を展開していくというような方向がきわめて望ましいのではないのか。特に、たとえばエネルギーとか原材料の場合は、わが国相当ウエート輸入しておるわけですから、一方においては、繊維雑貨とか軽工業の面については、先発の低開発国がどんどん伸びてくるが、しかし、わが国経済発展から考えると、原材料の安定的な確保、そのためには経済協力を積極的にしなければならないという面があるでしょうし、こう考えてまいりますと、そういう点では、それぞれの国の開発戦略に対応するわが国経済援助という面を、特恵供与に踏み切る段階においてある程度見直しをするとか、そういうことがやはり必要ではないか。特に最近のエネルギー事情は、それだけでもある程度経済援助の方向について再検討を迫られておるわけですから、そう考えるのでありますけれども、この点についてはどう受けとめられておりますか。
  34. 原田明

    原田政府委員 まさに先生御指摘のような問題があるわけでございまして、たとえば日本の油を中心といたします資源の輸入というような観点だけを考えましても、中近東諸国、あるいはまた鉄鉱石、石炭あるいは小麦といったようなものを輸入しております豪州、カナダといったようなものを入れましても、これだけの国からだけの輸入でも約二十六億ドルくらいのマイナス、貿易の入超というものを日本は持っております。他方、発展途上国、特に東南アジアに対する輸出で約十九億ドルくらいの貿易出超というものをしておるわけでございますので、その意味では、先生の御指摘のように、将来、日本経済の需要という観点と、それから相手国の経済開発戦略に、ミートするという両方をあわせまして日本経済協力を進めるということが、これから最も肝要なことになるのではないかと思います。それとあわせまして、貿易、特に発展途上国からの輸出促進のための特恵といったものに踏み切らざるを得ないわけでありますが、日本近隣諸国、先生御指摘先発発展途上国の中に入るかと思われます近隣諸国からの日本貿易、これはどちらかといいますと非常に強い日本の片貿易、出超でございますので、その観点からは、これらの国からの輸入日本としては促進をしなければならないという非常に強い立場にある一わけでございます。  そういう貿易上の要請と、それからそれぞれの国の開発計画にミートするという要請と、それに日本の国内の産業及び資源、または国内産業保護といったような観点をあわせまして、総合的な観点から協力と貿易というものを発展しなければならないということにつきましては、先生御指摘の点、全く同感でございます。
  35. 岡田利春

    岡田委員 経済審議会の経済協力研究委員会においても、いわば先発開発国といいますか、非常に成長率の高い国といいますか、これに対しては民間の投資によって援助を強化をしていく、活発化していく、そして経済成長の非常におそい低開発国、後発型については公的援助という原則は出されておるわけですが、しかし、直接、間接の経済援助という意味で、特恵供与に踏み切る以降の経済援助のあり方は、やはりより一そうそれぞれの国の開発戦略と非常に結びついていくというか、より的確に対応していくという姿勢が私は非常に大事だと思います。特に昨今のエネルギー資源問題というのは、わが国の重要な課題になってきているわけですから、むしろ特恵供与を踏み切るにあたっては、そういう点についての見直しといいますか、より的確に経済援助に対応するように、この機会に強く要望いたしておきたいと思います。  次に、特恵供与にあたっての受益国の要件でありますけれども、第一は経済開発の途上にある国、第二は国連貿易開発会議に加盟している国、もちろんガット三十五条援用国及び関税日本を差別している国は除く、そして相手国が特恵を希望する、そして供与国が特恵を与えることが適当である場合わが国の政令で定めるとなっていますが、特恵を与える国というのは、前三つの要件を備えている場合は、大体無条件といいますかで特恵供与する、こういう方針で政令で定められるものと理解してよろしいですか。
  36. 原田明

    原田政府委員 国連貿易開発会議その他の国際的な場所で、長年各国の討議を経ました上で到達された原則でございますから、もちろん、その原則に適合していると認められる場合には、ほぼ例外なしにやれるわけでございますが、特に政令で定める場合というようなことを申しておりますわけは、同じ原則に適合している国の中にも、たとえば日本に対しましてガット三十五条を援用しておる国とか、三十五条を法律形式的に援用はしておりませんけれども、かなり強い差別をやっておりまして、その三十五条援用または差別の援用ということについて、必ずしも当方として納得し得るような理由がないはずであるというような国もないわけではございませんので、そういう国に対しましては、この貿易上の広い意味での経済協力という、先生御指摘のような観点から見ましても、無条件にすぐさま同じ特恵を適用することが必ずしも適当ではないのではないかというような場合が考えられるわけでございます。したがいまして、そういう場合のことを想定いたしまして、原則としてはそのとおりでございますが、政令で定めるような場合については若干こちらとして考慮する場合があるというように考えております。
  37. 岡田利春

    岡田委員 局長、私の質問も、ガット三十五条援用国、それから関税日本を差別している国を除いて、こう言っているわけです。ガット三十五条援用国及び関税日本を差別している国を除いて特恵を希望する国には、ほぼこれは無条件で特恵供与するのだろう、こういう質問なんですよ。ですから、いまの答弁を聞いていましても、大体言われたことは、ガット三十五条の援用国と関税日本に差別待遇を実際に行なっている国以外の理由はあげられていませんから、それ以外の何か要件があるのでしょうか。
  38. 原田明

    原田政府委員 開発途上にある、国連貿易開発会議のメンバーでありまして特恵を希望する国であれば、先ほど申し上げました例に示されるような場合を除きましては、原則としてほとんど例外なく適用されることになるというふうに考えております。
  39. 岡田利春

    岡田委員 特恵供与地域の場合について、政令で指定する地域及び物品と、こうあるわけですね。この政令で指定する地域、これはまあ国でない香港だとか、あるいはまた、わが国と国交関係を持っていない国々をさすのではないかと思うのでありますけれども、この政令で指定する地域及び物品について一応の原則的な方針について承っておきたいと思います。
  40. 原田明

    原田政府委員 先生の御質問は、地域、属領のほうのことを御質問のことかと存じますが、これは、先ほど申し上げました国連貿易開発会議での一般的考え方に基づいての受益国選定のほかに、国連貿易開発会議のメンバーではございません国とか、あるいは、その国自体は属領でありまして、したがって、本国という立場から見ますと先進国に入るわけでありますから、その国が先進国である場合には特恵対象にはならないはずであるというような国がございます。そういう国々の中でも、固有の関税または貿易の制度を持っておりまして、単に宗主国がめんどうを見るべき問題であると簡単に片づけにくいような国、そしてまた特に日本との経済関係が密接でありまして、貿易その他の実情から見ましても、特恵を適用したほうが適当ではないかと思われるような国があるわけでございますので、そういう国または地域といったものにつきましては特恵供与することができるようにしておいたほうがよろしいのではないかということでございます。   〔委員長退席、橋口委員長代理着席〕 しかしその場合に、そういう国または地域は、当初から、現在考えられております特恵のスキームをつくりますときに対象地域として考えておいたところではございませんので、したがいまして、現在考えておりますスキーム、つまり例外品目または五〇%カット品目といったままでこれらの地域特恵供与することは、国内産業保護その他の立場から必ずしも適当ではないという場合が起こるわけでございます。したがいまして、そういう地域にもしやるとなれば、これは対象品目を限定しなければならないであろうという考え方から、地域及び物品を指定をして限定をし得るということを可能にする条文をお願いするのがよろしいのではないかという結論に達したわけであります。
  41. 岡田利春

    岡田委員 どんずばり聞きますと、香港は経済的に非常に密接な関係わが国とあるわけですが、この対象として考えておるのかどうか。これは今度実施するとすぐ問題になってくるわけですが、香港は一体考えておるのかどうか、いわゆる発展途上地域と考えられるかどうか、非常にこれは問題のあるところじゃないかと思うわけです。限られた地域ですし、しかも、産業構造からいっても、香港の場合には一定期間の租借でありますから、これは経済構造をさらに高度化していくということにはならぬのではないか。投資の傾向を見ましても、いわばある一定期間に回収できるものが進出をする、そして回収できるもので、いつ問題が起きてもいいような考え方で資本も進出をするというのが、もう特徴的なわけです。台湾の場合にも言えるかもしれませんけれども。そういう意味では、いま局長の言われた面からいって、香港をわが国の方針として対象にするのかしないのかということをはっきりお聞きしたいと思うのです。
  42. 原田明

    原田政府委員 香港は、御存じのとおり英国の属領でございます。英国は先進国でございますから、その意味では発展途上国対象にならない。発展途上国とは申せないわけであります。そうなりますと、国連貿易開発会議で到達されました原則、つまり開発途上にある国ということからははずれるわけでありますので、香港は対象として考えられていなかったわけであります。現在の日本のスキームも香港を対象として考えられたものではございません。しかしながら、その後、香港及び英国その他の諸国から、香港はその立場をよく考えますと、貿易関税上の固有の制度を持っておりまして、通貨さえも英ポンドを使っておりませんで、香港ドルというものを使っております。また一人当たりの国民所得も数百ドルにすぎません。また鉄鋼業その他の大きな産業を持っておるわけでもございませんし、かたがたまた日本関係から見ますと、貿易比率が、日本から見ますと輸出九に対して輸入一という程度の非常に大きな片貿易でもあります。かつ、香港から出ております輸出品に対する原材料の若干の部分あるいは相当部分が、日本から供給されているというような事実もございます。したがいまして、そういう香港の地位というものを考えますと、この際やはり特恵をやるべきではないかという考え方も生まれるわけでありますし、特に英国それ自体が、自分の国の属領ではあるが、香港には日本特恵供与してもらいたいという非常に強い希望を表明しております。その意味におきましての自己選択の度は非常に強いわけであります。そういうことでございますので、香港は、はたして特恵をやるのがいいのか、やらないのがいいのかという考慮の対象になる地域ではないかと存じまして、法律上はその可能性を認められるといたしますならば、その条項の対象になり得る地域であると考えております。  しかし、御指摘のとおり、香港は軽工業部門、雑貨の部門については、かなり競争力を持つ産業が成長しつつあります。現在の日本のスキームは、そういうものを対象にして考えたものでもございませんので、かりにやるというようなことになりましても、その場合には、こういう産業または商品というものは、十分限定をしてやらざるを得ないということになろうかと存じますけれども、現在の段階では、全くどちらともきまっておらないという段階でございます。
  43. 岡田利春

    岡田委員 そういたしますと、香港問題というのは、アメリカが香港に対して特恵供与するかどうか、その結果としてわが国繊維雑貨部門の輸出がばく大な影響を受けるということは明らかなわけです。そうすると、アメリカ特恵供与するということと、わが国特恵供与をするということは無関係であり得るかどうか。もちろん、わが国は独立国だから、わが国の意思によって、希望があれば、特恵供与をする場合には法律的にできるのだから、するという意思決定をすればいいのでありますけれども、しかし本法が提案されている背景から見ますと、アメリカが香港に特恵供与するかどうかということが非常にまた大きな一つウエートを示すわけです。そういう意味政府は、この点についてはどう判断をされておるか、伺っておきたいと思います。
  44. 原田明

    原田政府委員 今回、供与しようといたしております特恵は、国際的な合意に基づいて行なわれる一般特恵でございます。したがいまして、その受益国についても、私どもは、よその国がどうやるかということを十分に見た上で考えたいと思っております。特にヨーロッパ諸国などもどうするかとかいうようなことも見て考えたいと思っております。  アメリカが香港に特恵を与えるかどうかということは、日本の、特に香港産業競合する産業分野にとっては、非常に大きな関心事であるわけです。その意味で私どもアメリカがやるかどうかということも十分考慮に入れて、もしやるということになりましても、そのやるかやらないかということを決定いたします際には、考慮の要因の中に入れたいと考えております。ただ現在の状況では、アメリカ特恵をやる時期は、先ほど先生からお話しございましたように、少しおくれそうな気配にございます。通商法案自体でも、なかなか通らないような国でありますから、特恵の法案もそう簡単に通るかどうか、なかなか予断を許さないわけであります。したがって、私どもの考えとしましては、アメリカ特恵をやらないならばこちらもやらないというような考えではございません。むしろ、国内産業、特に香港産品と競合する産業部門の立場を考えますと、アメリカはあまり早くやっていただかないほうがいいというような立場も出てくるわけでございますので、アメリカがやらなければこちらは香港にはやらないという考え方ではございません。しかし、アメリカだけではございませんで、ほかの先進諸国が香港にやるかどうかということを十分考えた上で内容、時期といったようなものを配慮したいというふうに考えております。
  45. 岡田利春

    岡田委員 中国問題についてはきのう大臣が答弁されて、これはむしろ外務省から答弁するのが適当でしょうという前提を置いて言われているわけですから、ここで局長に、この点について質問してもどうかと思いますけれども特恵供与以前の問題としてこの機会に聞いておきたいのです。  今回の関税率の改正案の中でも、中国の場合は、関税是正をしなければならないいわば二十二品目について、依然としてこれは関税格差があるわけですが、これらに対しては一体どういう理由なのか。できれば若干詳しくこの機会に承っておきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  46. 原田明

    原田政府委員 先生の御質問は特恵ではございませんで、一般の関税の格差のことを御指摘ではないかと思います。現在、ケネディラウンドで引き下げました関税等につきましては、かなりの部分につきまして、ケネディラウンドの適用地域と中国との差別を解消してまいったわけでありますが、まだ残っている分野がございます。この分野の主たる理由は、国内産業に対する影響を勘案しまして行なっているというのが実情でございます。
  47. 岡田利春

    岡田委員 そういたしますと、たとえば一つの例をとりますと、いま韓国から輸入している生糸の場合、昨年の輸入実績が三万五千俵ですか。そして本年四月一日から関税は七・五%。中国からは二万俵輸入して関税は一五%だ。いま局長の簡単な答弁からいえば、これはウエートからいっても、韓国の場合三万五千俵、中国の場合は二万俵だ。今度のケネディラウンドにおける五十二品目のうち、三十品目を是正し、二十二品目を残し、そのうち特に生糸なんかこういう状態にあるわけですから、これは一体どういう理由ですか。
  48. 平井廸郎

    ○平井説明員 お答え申し上げます。  御承知のように、ケネディラウンドによりまして、生糸の関税率は七・五%に下がりますが、中国本土に適用されます税率は一五%ということになっているわけでございます。このような格差が残っている理由につきましては一般的に申しますならば、中国本土からの輸入価格、これとわが国で生産されます生糸の生産価格とのバランス、さらに韓国からの輸入生糸の価格、こういったもののバランスを考えまして、現在の段階ではその程度の格差が残るのはやはりやむを得ないというふうに考える次第でございます。
  49. 岡田利春

    岡田委員 七〇年代は中国問題ともいわれて、最近、LT貿易についても合意に達しておるという状況から判断しても、国内措置については、国内措置としてまたいろいろ考えてまいらなければならぬ点もあるわけですが、しかし今回の措置で、特に二十二品目についてこういろ状態に置かれておるという点について、今後の日中関係において依然として問題を残していくのではないか。まして今度は特恵供与が行なわれるということになってまいりますと、生糸のような場合には、一次産品ですから別にしましても、特恵供与が行なわれていく。中国については国交がないわけですから、供与ができない、こういう状態に置かれるわけです。しかし、これからのわが国貿易構造転換させていく意味においても、あるいはまた、わが国をめぐるアジアにおける先発発展途上国の動向等から判断しても、わが国が少なくともすみやかに日中の経済関係貿易関係をより発展をさせていくことがきわめて重要ではないか。いわばそういう意味における政治優先といいますか、そういう立場でものごとを判断しなければこの問題は打開できないのではないか。きわめて事務的な答弁をいまいただいたわけですけれども、残念ながらきょうは大臣も何も出ておりませんから、局長さんに政治的判断という点についていろいろ意見を述べても無理かと思いますので、一応私はそういう意見といいますか、態度だけを表明しておくことにとどめます。  ただ、特恵につきましても、国交のあるイギリス、フランス、イタリア、カナダ、これらの先進国が中国に対して特恵供与するという動きがあるという情報を得ているのか得ていないのか。あるいはまた、これらについては、国交のあるこれらの国々が、対中国の特恵問題についてはどう対処しようと考えておるのか。いずれにしても、これはわが国の日中関係から見れば、わが国としてこれらの情報を的確に把握することがまずきわめて大切なことだと思うのですが、これらについて、どう政府は把握されておるのか明らかにしてもらいたいと思います。
  50. 原田明

    原田政府委員 主要先進供与国のうちで、公式の場所におきまして、中国に特恵関税供与する旨の表明をした国は、いまのところまだ全然ございません。したがいまして、他の主要先進供与国が、特恵という問題に関しまして中国をどう取り扱うかということは、まだいまのところは不明でございます。
  51. 岡田利春

    岡田委員 不明だといえばそれで終わりでありますけれども、しかし、これからやはり注意深く、これらの動向等について——たとえば、特恵供与しなくても、特定品目については関税的に優遇措置をとって見合い的な措置をとるとか、いろいろな多面的なことが考えられるのではないか、こういう点について、やはりわが国としても十分注意をしておく必要があるのではないか、こう私どもは思うわけです。  問題は、先進国後進国かという点については、いままでも議論されて一応の線が出ているわけですけれども、特に日中間の問題を考えれば、台湾の場合には、政治的にいえば、国連の安保理事国ですから、国連の位置からいえば大国なわけです。しかるに、台湾に対しては特恵供与されるというような面——これはいろいろ政治問題がからんでむずかしいとは思いますけれども、少なくとも、国交を回復しておるイギリス、フランス、イタリア、カナダ等は、対中国との間の特恵をも包括する関税的な政策というものが、品目的にいろいろ配慮される面もあるのではなかろうか。ですから、特恵供与するかどうかという一点だけにしぼるのではなくして、関税政策という大きなワクで、それらの情報なり動きを十分敏感に察知をして、わが国もそういうことを参考にしながら対処するという方針が大事ではないかと思うのですが、そういう点については、そういう動きもないという意味ですか。
  52. 原田明

    原田政府委員 現在までの非公式な情報でございますが、先生が御指摘になりましたような、国交のある国の中でも特恵の問題については最終方針を決定していないように見えますことは、先ほど御報告申し上げたとおりでありますが、国によりましては、可能性をオープンにしておくという方向で検討を始めたという国もあります。それからまた、ほかの国がどういう意向であるかというようなことを見ながら方針をきめることにしたいというのではなかろうかといわれている国もございます。中には、いわゆる発展途上国七十七カ国グループ、実際にはもっと数がふえておりますが、代表的なことばとしていわれております七十七カ国グループという、国連貿易開発会議発展途上国グループに入っておらないということを理由にしまして、与える意思はいまのところ全然ないように見えるというような国もございます。いずれにしましても、すべての先進国が、これからの情勢の進展というものを見まして、特恵に対する態度をきめようとしているように思えます。わが国としましても、御指摘のとおり、特恵の問題だけではございませんで、関税格差という広い問題につきましても、国内産業保護その他の観点を配慮をしながら、情勢の進展に対応するように留意してまいりたいと考えております。
  53. 岡田利春

    岡田委員 政府は当初、本法を策定するにあたって、その検討を開始した当時、仮称でありますけれども産業調整援助法というような法律をこの特恵供与に関連して制定したらどうかと種々検討されたように私は承っておるわけです。特にその場合には、今回提出されておる内容である特恵対象業種、また相手国から輸出の自主規制をしいられておる業種、さらに農業、軽工業など低生産部門から転換しようとしている業種、あるいはガット十九条、免責条項で関税引き上げを実施された業種、こういうような面も幅広く含めまして、これに対処する立法をしようとする検討がずいぶんなされたように私は承知をいたしておるわけです。しかし、今国会には、特恵による中小企業の被害に対処する内容を持つ法案にしぼられて提案されているわけですが、これはどういう検討の結果、最終的にこういう判断に踏み切られたのか、明らかにしてもらいたいと思います。
  54. 吉光久

    吉光政府委員 確かに、昨年の八月ごろの段階におきまして、そういう産業調整援助法案というふうなものを検討した経緯はあるわけでございます。特に当時の状況といたしまして、一方において輸入の自由化を緊急に促進しなければならないというふうな情勢がございましたこと、あるいはまた他方において、特恵供与の問題もだんだんと近づいてきているというような状況がございましたこと、そこらを総合的に勘案いたしまして、一本の法律で処理することはできないかというふうなことについて検討いたしたわけでございます。ところが、いまの輸入自由化の繰り上げというふうな問題に関連して考えてみますと、その場合、主として問題になりますのは農産物でございました。それから工業関係につきましては、皮革及びその製品等を除きましては——あるいはコンピューター、これはむしろ大企業の問題でございますけれども、除きましては、ほとんどすべて自由化されておるというふうな状況であったわけでございます。したがいまして、農産物の輸入自由化対策としての手段というふうなものと、中小企業製品についての手段というふうなもの、実は必ずしも同じ手段がとり得ないというふうなことがあったわけでございまして、そういうふうなことから、実はそういうふうな全体の問題という立場を改めまして、一番緊急を要しております特恵対策、しかも、その中小企業者に与える影響といういうふうな面に着目いたしまして、今回の法案を提案するに至ったわけでございます。
  55. 岡田利春

    岡田委員 この機会にお願いしておきますけれども特恵供与について、先ほど局長からも、一般的な影響といいますか、見通しについて説明があったわけですが、それらについて一応の資料があると思うのですけれども、これはいただけますか。先ほど、私の質問に局長は一応答弁されましたけれども、この特恵供与による貿易上のわが国の国内産業に対する影響輸出輸入で見てですね。そういう影響に関連する資料、こういうものをいただけますか。
  56. 原田明

    原田政府委員 私ども、可能な限り差し上げたいと思います。
  57. 岡田利春

    岡田委員 時間もないようですから、法律上の若干の問題点について聞いておきたいと思います。  本法第一条ですが、「特恵供与による需給構造の変化に対処し、中小企業の成長発展を図るため、中小企業者が行なう事業の転換を円滑にするための措置等」と、「等」が入っているわけですが、これはこれ以外の要求があるのだと思うのですが、これはどういう意味をさしておるのですか。
  58. 吉光久

    吉光政府委員 この対策法案の主軸をなしておりますのは、「事業の転換を円滑にするための措置」でございまして、これが三条から六条のところまでに具体的な措置を書いておるわけでございますけれども、さらに、こういう問題に対しますかまえの問題といたしまして、基本的には、中小企業の近代化施策を積極的に推進してまいるということが必要になってまいるわけでありますが、その点が第七条に規定されておりますし、あるいはまた、転換等によります場合の職業訓練その他の労働対策というふうなものについて第八条に規定いたしております。それからさらに第九条に、中小企業者に対します指導、助言の規定が入っておりますし、あるいはまた十一条におきまして、特恵供与に伴う措置、関税暫定措置法その他との関連におきます措置につきまして、有機的な連携をはかるよう、その運用面について触れておりますので、それらを含めましてここで「等」という字を使ったわけでございます。
  59. 岡田利春

    岡田委員 先ほどの質問で明らかになりましたように、この法律は、「特恵供与による需給構造の変化」と、すぱっとこうきているわけです。ごく厳格な意味で、これはこの法律の「目的」に書いておるように、「特恵供与による需給構造の変化」と、きわめてすんなりきているわけですよ。しかし、先ほど来質問しているように、特恵供与による需給構造の変化以外に、特恵供与と並行して一般的な要因が併存をするというのが特徴ではないか。中小企業は特にそういう特徴を持つのではないのか。そういう意味で、この「目的」の理解があとからの運用にも関係するわけですから、そういう意味で私は、この法律は、一応、特恵供与による需給構造の変化を目的とはするけれども中小企業の性格からいえば、一般的な要因による需給構造の変化ですね。貿易環境の変化とか、特に輸入の面なんかで見る場合にはまた変わってくるわけですし、そういう面では、これは一般的な貿易環境の変化、そういうような要因が併存をする、こう思うわけですね。なかなか厳格にはいかないと思うのですが、そういう意味でこれは理解してよろしいですか。
  60. 吉光久

    吉光政府委員 御指摘のとおりでございまして、特恵だけの影響というふうなものだけで終わるものもございますれば、そうではなくて、いまのような広い国際経済全体の需給構造の変化というふうなものが、特恵供与による影響とからみ合って出てまいるということは、多々起こってくることであるというふうに考えるわけでございまして、その場合、何も特恵供与だけだというふうに狭きに解する理由はないというふうに考えておるわけでございまして、御指摘のような趣旨で私どももこの措置法を運用してまいりたいと考えておるところでございます。
  61. 岡田利春

    岡田委員 そういたしますと、端的に言って、中小企業本法の第十五条、二十一条、二十二条で、輸出の関連とか、あるいは転換問題については、もうすでに定められておるわけですから、そういう面と関連して、この柱になるのは特恵供与だけれども中小企業本法が示している従来の政策方針というものを包括して理解していいのだという意味でもよろしゅうございますか。
  62. 吉光久

    吉光政府委員 お示しの基本法の、それぞれの条章に基づきましたものを、さらに具体的に特恵供与というふうなことを柱にいたしまして、転換その他の施策を講じたのが本法でございます。
  63. 岡田利春

    岡田委員 第二条「定義」の二項三号でありますけれども、これは近促法の施行令の第一条に定められているものと全く同じである、こう理解してよろしゅうございますか。
  64. 吉光久

    吉光政府委員 そのとおりでございます。
  65. 岡田利春

    岡田委員 目的が明らかになりましたから、都道府県知事にその計画が適当である旨の認定を受けるという第三条の場合、「次の各号に該当する事業で政令で定めるもの」、こうなっているわけですが、この点についても、私はやはり、特恵供与以前に、すでに進行しておるわが国発展途上国との貿易関係でも、すでにもう近代化に手をかけなければならぬ、かけようとしている、若干手をかけつつあるというような業種もたくさんあるようですね。たとえば共同化のような問題では、自動車部品だとかいろいろな問題については、特恵供与以前の問題でも、もうすでに手をかけつつある機運があるところもあるわけです。そういう面から見れば、当然、特恵供与以前にもうそういう問題が出てくるということが予想されるわけですから、そういういままで計算されておるような面についても、この第三条の「計画」として認定されるもの、こう判断してよろしゅうございますか。
  66. 吉光久

    吉光政府委員 従来、近代化施策、高度化施策等を推進してまいっているわけでございますけれども、これらの施策の主たる部分というのは、やはり何と申しましても、発展途上国競争力が強化される、そういうふうな問題に対応いたしまして、日本中小企業の生産力を強化してまいるというふうなことで、いわば特恵供与されるであろうことを前提にいたしまして、いろいろの施策がすでに進められておるわけでございます。御指摘の点は、そういうふうな、すでに施策の進められておるものについても本法の適用対象になるか、こういう御指摘だろうと思うわけでございますが、私どもも、まさにそのとおりに考えておるわけでございまして、いまから新たに起こってくる事態だけを前提にして考えるというふうなことではない、むしろ広きに解しておるわけでございます。
  67. 岡田利春

    岡田委員 転換について、きのう小宮山政務次官は、サービス産業関係、旅館だとかボウリングだとかいろいろ質問が出て、そういうものにもきわめてあっさりと、弾力的にこれは扱っていきます、こういう答弁をされておったわけですが、旅館などのような場合は、これは直接中小企業金融公庫の貸し付けの対象ということになると、きわめてむずかしい問題でもあるわけです。あるいはボウリングなんという場合は、いまの場合では制度に乗っていないわけですね。そういうものもいとも簡単に、質問が出るものだから、弾力的にそういうことも考えますと、きわめてあっさりと答弁を次官がされておるわけですが、その答弁はあのとおり理解してよろしいのですか。
  68. 吉光久

    吉光政府委員 転換先の事業につきましては、つとめて広くやりたいと思っておるわけでございます。ただ、一部制限が置かれることもやむを得ないと思われるわけでございますけれども、その制限の第一でございますが、たとえば、現にここで「特定事業」として指定されておるような、そういう業種に属する事業、これはむしろ他のほうに転換をしようとしておる業種でございますので、そこにまた転換し入っていくということは好ましくないという意味で、これは除外いたしたいと思います。それから第二に、現に適法な生産制限、設備制限等をやりまして、業界内部で調整行為を行なっておる、これもまたいわば不況業種と申しますか、過当競争業種というふうなことの具体的証左でございますので、こういう部面への転換も遠慮していただく。それから第三のそれ以外の業種でございますけれども、要するに、風俗営業等取締法の中で特にきびしい取り締まりを受けておるようなそういう営業、あるいはまた公序良俗に反すると申しましょうか、いわばいかがわしい事業と申しましょうか、そういうようなものは原則的に積極的な助成をする必要はないという意味で、転換先の事業からははずしてまいるというふうな基本的な方針できめさしていただいたらどうであろうかと考えておるわけでございます。
  69. 岡田利春

    岡田委員 そうすると、端的にお聞きしますけれども、旅館、ボウリング、あるいは貸し家、家をつくってアパート業といいますか、こういうものは対象に入るか入らぬか。大体、この程度聞いておけば、あとの範囲はわかるでしょうから、入るか入らぬかということですね。
  70. 吉光久

    吉光政府委員 具体的にお答え申し上げます。  ボウリング等のスポーツ施設でございますとか、あるいは遊園地でございますとか、アパート業でございますとか、そういうふうなもの、あるいは旅館、あるいは簡単な食物だけを出すような飲食店がございますけれども、こういうようなものにつきましては、一応転換先として入り得るというふうに考えております。
  71. 岡田利春

    岡田委員 貸し家はどうですか。
  72. 吉光久

    吉光政府委員 アパートのほうでお答え申し上げましたけれども、アパートに類するような行為でございますれば、転換先に入り得るというふうに考えております。
  73. 岡田利春

    岡田委員 それと同時に、転換という点について、きのうも若干出ておりますけれども、ブランド・イメージチェンジといいますか、そういうものでも転換に入るわけですか。具体的に言いますと、高級種への転換ということは入るわけですか。たとえばライターの場合、オイルライターからガスライター、ガスライターから電子ガスライター、こういうものも三段階くらいあると思うのですが、そういう三段階は転換に入っていくのか。きのうの例としては、おもちゃなんかの場合は、ゼンマイのない走るおもちゃ、ゼンマイのついているもの、ゼンマイでなく今度は電動機によるもの、いろいろおもちゃのほうについては出ておりますが、そういう点についてはどうなのか。あるいはイメージチェンジのため、デザインとかいろいろな面で変えていく、目先を変えていくというような面。ですから日本品物は、どちらかといえば、ヨーロッパあたりに比べると、安かろう悪かろうというのがずいぶんいわれておるわけですけれども、そういう面で、高級品へのイメージチェンジをしていくという面については広く転換に入るのだ、こういう理解でよろしいですか。
  74. 吉光久

    吉光政府委員 単純にイメージチェンジだけというふうなことになりますと、あるいは問題が起こるものもあるかと思いますけれども、抽象的にこれを申し上げますれば、結局、新しい製品の品種が、転換前に比しまして付加価値が非常に高いというふうなこと、あるいは高級であるというふうなことが認められる。あるいは原材料自身が違っておりますとか、生産工程も相当違っておりますとか、あるいは用途、機能、そういうふうなものが違っております場合には、いわゆる産業分類上、同一の業種に属しておりますものでございましても、この扱いといたしましては、むしろ転換というふうなことで扱ってまいりたいと考えております。
  75. 岡田利春

    岡田委員 今度の法律上の政策から、今年度、特恵対策の助成に関して予算も計上されておるわけですが、一般の中小企業庁関係事業で、指導の問題、あるいは実態調査、あるいは現地実態調査というもの以外、直接この転換に対する施策として、中小企業振興事業団の特恵転換の特別ワク十億、財政投融資は金庫を通じて特別ワクが十億設けられた。あるいは税制の問題。それから信用保険制度、これは大体産炭地並みのあれで従来特例があるわけですけれども、こうずっとこの面をながめてみますと、特別ワクが設けられたということが強調されているのでしょうけれども、そのうちの条件を見ますと、基本法に基づく、あるいは近代化法に基づく条件とあまり変わらぬわけですね。特恵による特別転換についても、結局は変わっているといえば、貸し付け期間が十五年以内のものが十六年以内ですか。あとは全く同じじゃないですか。あるいは金庫の貸し付けにしても、構造改善を見れば十年以内、これが十年と限っている。十年以内だから、実質は七年だとか六年ということになるのでしょうけれども、制度として見れば、そう大きな変わりはない。金利についても、貸し付け限度についても同様である。特別ワクが設けられただけである。それからいま言ったように、保険の場合の八〇%というのは、これは産炭地の場合にも適用されていたもので、初めてここに出てきたものでもない。言うなれば、基本法あるいはまた近促法に基づく構造改善、近代化の政策とほとんど変わらない。要するに特別ワクを設けた。これは何も法律じゃないわけですから、法律上から見ればそう変わらない、こう私は思うわけです。基本法だって労働問題については、大体この程度の趣旨のことは書いてあるわけですよ。そういう意味では、立法したというのは保険の関係の特例、それから税制の問題について若干載っておりますけれども、私は意地悪いのかもしれませんけれども、ほとんど変わらないというぐらいに思うわけです。何か画期的なと主張するものがありますか。伺っておきたいと思います。
  76. 吉光久

    吉光政府委員 保険の関係と税制の関係、これは法律事項でございますので、したがって、この法律の中にこれを盛り込ましていただいたわけでございます。他の一般的な金融上の助成措置につきましては、それ自身が法律事項でない条項でございますので、したがいまして、既存の制度を活用してまいるという方向で考えたわけでございまして、たとえば振興事業団の中に、高度化資金の中で特恵転換分についての特別の施策を行なうというふうなことにいたしましたのも、やはり振興事業団の一般案件につきましては、御承知のとおり、都道府県と相協力して事業をやってまいるというふうな仕組みになっておりますので、したがいまして、今度の特恵関係につきましても、どちらかといえば、産地産業に属するようなものについて影響が出てまいる場合が多いというふうなこともございますし、したがいまして、むしろそういう都道府県と協調して事業をやってまいりますような分野のものがあるわけでございますので、既存の仕組みの中でこれを考えていくということが現実の問題として適切ではないであろうか、こういう判断をいたしたわけでございます。  なお、中小公庫におきます構造改善と全く同じじゃないか、こういうお話でございます。まことに制度としては、構造改善関係の制度と全く同じ仕組みでございます。これは実は、特恵影響に対処いたしますために積極的に構造改善その他を進めます場合と、そしてまた同時に、他の成長性のある業種転換をいたします場合、同じような面として考えたらいいのではないであろうかということで、実は条件を同じにいたしたわけでございます。ただ、高度化事業等の場合におきましては、相当多くの人が集団して将来の事業を託されるというふうなことになりますので、一般案件と違いまして、償還期間だけはさらに一年延ばして十六年というふうな制度を新たに創設いたしたわけでございます。したがいまして、それらの施策は、従来とられております施策、それらを特恵対策という面にしぼりまして、さらにそれを特恵対策面として総合的、集中的に実施していこうというふうな、そういう意図でございまして、特に目新しいというふうな施策はないことは、御指摘のとおりでございます。
  77. 岡田利春

    岡田委員 そうしますと、中小企業産業助成というのは、先ほども質問した面から見ても、制度の問題いろいろ出てまいりますけれども、いわば中小企業に限っていえば、これはいま言ったように、ほとんど変わらないわけですから、これ以上の政策は出ない。転換対策についても、金融対策についても、これ以上のものは出ないという感じを非常に受けるわけですね。そういう意味で、わが国中小企業の政策では、これは大体最後の政策であるというふうな感じすらするわけです。そういうお考えですか。
  78. 吉光久

    吉光政府委員 さしあたり準備いましましたものは、一般的な特恵対策というふうなことで準備をいたしたわけでございます。したがいまして、業種によりましては、たとえば繊維のように構造改善等積極的に進めてまいります。それと並行して旧織機の買い上げというふうな制度もあるわけでございますけれども、個別的な事業の内容、その影響を受ける場面、それらの状況によりましては、この一般措置に加えまして、むしろ個別産業の実情に応じた具体的な措置がさらにとられることもあり得るということを前提にいたして、一般的な措置として御提案を申し上げておるところでございます。
  79. 岡田利春

    岡田委員 わが国中小企業の法律体系は、法律だけをとってみますと世界に冠たるものだ、非常によくそろっているものだ。外国に行っても、みなそう言うわけです。中小企業が多いからそうなるのでしょうけれども、しかし農業政策から見れば、中小企業政策というのは非常に弱いと思うわけです。もちろん農業の場合には、協同組合組織、そういう傘下にあるという特殊性もあります。しかし、中小企業の目ざす方向も組織化の方向でありますから、そういう農業政策とタイアップして見ますと、決してこれはもう最終的なようなものではなくして、業種別は別にあるとおっしゃいますけれども、こういう国際環境の変化に対応してわが国産業構造がいま七〇年代を目ざして大きく転換しなければならないとすれば、この七〇年代の期間における中小企業対策としては、もう一歩画期的なことを考えるべきではないのか、そう言わざるを得ないわけです。七〇年代、これはもう加速化していくのではないでしょうか。もちろん、いままでずいぶんやってきておりますけれども、それだけやっても解決できないわけでしょう。わが国の農業と同じですよ。農業もいずれ十年たつと半分になる。三分の一になる。比較的大型な地域の北海道ですら、約五五%ぐらいに農業就業人口は落ちると予想しておるわけです。まして全国的に見れば三分の一になるわけです。中小企業の場合でも、そういう傾向というものは避けられないわけですね。そうすると、農業政策におけるいろんな制度あるいは金利等を考えますと、決して十分なものではない。そういう意味中小企業庁は、七〇年代のこういう新たな環境をも考慮して、抜本的にむしろ構造的な政策を、さらに、ある程度加速化する情勢に適合してどう対処するかという面の制度のあり方や、税制のあり方や、金融制度のあり方というものを検討するべきではないかという意見を私は持っておるのですが、なかなかむずかしいですか。
  80. 吉光久

    吉光政府委員 確かに御指摘のように、中小企業をめぐる経済環境は非常にきびしさを増しつつあると私は思います。したがいまして、現実にいろいろの状況の中にどう即応し、どのようにあすの中小企業を築いていくかという意味で、解決しなければならない課題、非常に数あると思うわけでございます。私ども、いままで精一ぱいの努力をしてきておるつもりでございますけれども、しかし、これをもって満足すべき状況ではないというふうに反省もいたしております。したがいまして、いまのお示しのような、そういう諸条件の中における中小企業施策について、常に新たな地盤、現実の立場に立って検討を加えながら、あすの中小企業育成のための努力を続けてまいりたいと考えます。
  81. 岡田利春

    岡田委員 労働省は来ているのですか。八条になぜ「事業の転換等」と入ったのか。これは中小企業庁でもけっこうなんですが、やめる人もおるという意味でしょう。転換でない場合もあるというようなことを意味しておるのじゃないか、こう思うわけです。しかし、先ほどの場合には、転換等の措置で労働問題も入っておるから「等」をつけた。ここは今度は「事業転換等」が入ってきて、これは労働問題として受けとめると、「等」の意味は違うのじゃないか、変わってくるのじゃないかという感じがする。廃業も強く予想しておるのではないかという感じがするのですが、それがどうかという意味と、結局、しかも、「職業訓練の実施、就職のあっせんその他の措置を講ずるよう努める」ということで、これもあまり変わりばえもない表現の第八条になっておるわけです。労働省の場合は、労働対策としては、成人職業訓練コースの開設、公共職業訓練事業、事業内職業訓練費補助、職業転換訓練費補助、こうあって、大体いままでの制度にもこれはあるわけですから、特に労働政策についてはそう真新しいものはない、こう私は思うわけです。むしろ、こういう中小企業に働いている、特に繊維雑貨関係などに働いている中小企業の労働者というのは、比較的中高年齢層が多いと思うわけです。そうしますと、一つの面では、炭鉱労働者や、あるいはまた今度、高年齢者の場合には法律は出ていますけれども、そういう意味では、やはり手帳の発給、そのぐらいの優遇措置をとるというようなことが必要ではないのか。職業訓練については特に優先入所させる。あるいは集団の場合には、転換のための特別訓練をするというふうな方法もあるのでしょうけれども、概して中小企業の場合の、こういう構造変化に対応する、そこに働いておる、ほうり出される労働者に対する施策としては、もう一段強化する必要があるのではないのかということを私はしみじみ感ずるのでありますけれども、この点について御答弁をいただいておきたいと思います。
  82. 中原晁

    ○中原政府委員 第八条関係の二点ございますが、第一点は「転換等」の「等」ということの意味でございますが、これは転換のほか廃業等も含むというふうに解しております。これは、本法はもちろん事業転換の円滑化を主眼とするものではございますが、職業紹介、職業訓練というような雇用対策におきましては、なるべく広くこのような措置を講じたいということでございますので、本法の趣旨とは必ずしも矛盾しないのでございまして、労働対策としてはなるべく手広くやっていきたい、かように考えておるわけでございます。  それから後段の、職業訓練の実施その他いろいろ書いてあるが、どうもいままでのことの蒸し返しのようで、あまり新味がないではないかという御指摘でございますが、現在のところ、このような措置によりましてどのような形で何人ぐらいたとえば離職者が出るかというようなことにつきましては、必ずしもはっきりしておりませんけれども、通産省のほうとたびたび相談いたしまして、なるべくそういう人が出ないように運営していこう。また御存じのとおり、現在は若干景気の停滞もございますけれども、大筋としましては労働力不足という事情がございます。したがいまして、特に若年層につきましては全然問題はないわけでございますが、先生御指摘のように、中高年齢層につきましては、こういうようなことになりましていろいろ影響の出る面も考えられますので、万全の措置を講じたい。職業訓練につきましては、通常の職業訓練のほか、特に事業主に委託しまして、職場適応訓練というようなことで委託費を出しまして、それが終わったらそのまま雇ってもらうというような措置を強化する。それから、就職のあっせんにつきましては、これはもちろん重点的に、こういう面につきましては就職のあっせんをやってまいりますが、かりに万一かなりの数の人が一時にまとまって離職をするというような事態が起きた場合には、たとえばそこに臨時の職業相談所をつくりまして、安定所の職員を派遣しまして御相談をするというようなことも考えなければならないと思います。それから「その他の措置」とございますが、これは職業転換給付金という制度がございまして、中高年齢者につきましては各種の就職指導手当その他の各種の手当がございまして、通常受けておられる失業保険のほかにこういうもので措置していく。また同和地域のような場合には、中高年齢者じゃなくても、若い人であっても、雇用情勢にかんがみまして、そういう転換給付金というようなものを渡していきたいということでございます。  いずれにしましても、先生御指摘のように、このような事態を今後も検討いたしまして、必要な場合には万全の措置をとってまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  83. 岡田利春

    岡田委員 外国の立法例を見ましても、こういう産業構造の転換、大きな構造の変化によって転換をしなければならない、あるいは廃業しなければならぬ労働者に対する措置というものは、やはり一番大きなウエートを占めているようですね。そういう意味で、この点について、今後の推移に対応して、ぜひそれに的確に対応できるようにまた御検討も願いたいということを特に希望しておきます。  時間もありませんから、これで終わりますけれども、たとえばきのうの答弁でも、一応実施は七月一日を目途にしているという。しかし、アメリカの動向等も考えれば、何も七月一日にこだわる必要もないじゃないか。法律は大体十月になっているわけですから。こういうような点についても、よく情勢を見きわめて対処すべきであろうしというような点もございます。そういう点については、法律の準備もあるわけですから、この面については十分ひとつ的確に対処していただきたいと思います。  最後に、これも、時間もありませんから質問をやめておるわけですが、ぜひ資料としてもう一つお願いしたいのは、最近の、いわゆる特恵供与をする、特に先発型の発展途上国だと思うんですが、わが国の企業進出はどういう傾向にあるか。昨年度あたりは、もう過去五年間分に相当する企業進出韓国などに行なわれている。また台湾にも企業進出が具体的に行なわれている。できれば、この特恵問題が国際的にいろいろ議論されて以来の、先発型の国々に対するわが国の資本、企業の進出動向等について、これも資料で、ひとつ業種別にいただければ幸いだと思います。  あとありますけれども、以上できょうは質問を終わります。どうもありがとうございました。
  84. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 午後一時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。    午後零時五十一分休憩      ————◇—————    午後一時五十九分開議
  85. 八田貞義

    八田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡本富夫君。
  86. 岡本富夫

    ○岡本委員 私は、特恵関税供与、この法案に入る前に、まずこの特恵関税供与について最初にお聞きしたいことは、わが国は海外援助を相当やっておりますけれども、名国からは非常に評判が悪い。たとえばピアソン報告の、一昭七〇年代の海外援助報告においては、日本は非常にきびしい借款を与えておる、そして結局他の国の犠牲において日本がもうけておるのだ、日本は寄生虫みたいなものである、こういうようなきびしいこともいわれております。アニマルといわれましたが、アニマルは四本足だ、寄生虫になったら足がないんだというような非常にきびしいことをいわれております。  それで政府が、昨年、低開発国に対するところの経済協力に対して三つの重大な公約を行ないました。それは、一つは一九七五年までにGNPの一%の援助を与える、またひもつきの援助を全廃するように努力する。それから三つ目は、七一年から低開発国特恵関税供与する。この三点を公約しているわけでありますけれども、まずその点からお尋ねいたしたいわけでありますが、一九七五年の国民総生産が七体四千億ドルくらいになるということになりますと、この援助金額というものは四十億ドル、一九六九年の約三倍になる。こういうような大きな目標をはたして達成することができるのかどうか、これは非常に疑問があるわけでありますが、これについてまず経企庁、それから外務省、大蔵省に御意見を承りたい。
  87. 新田庚一

    ○新田政府委員 お答えいたします。  御指摘のとおり、昨年の春、OECD閣僚会議あるいは東南アジア開発閣僚会議におきまして、一九七五年、GNP一%内外に努力するという意図を表明をしておるわけでございます。  御指摘のとおり、新経済社会発展計画によりますと、一九七五年のGNPは百四十二兆、ドルにしまして三千九百四十億、約四千億ドルになるわけでございます。その一%の三十九億ドルは、御指摘のとおり、昨年の経済協力が十二億六千万ドルでございますので、約三倍強になるわけでございます。確かに相当な金額でございまして、そう簡単には実現はできるものではないと思いますけれども、一方過去五年間、三十九年から四十四年までの経済協力の伸び率が二八・五%というかなり高い伸びを示しておるわけでございます。これを今後五年間の年率にしますと二一%でございますので、その伸び率よりは若干低いというふうな点、あるいは新経済社会発展計画によりますと、七五年の国際収支が一応三十五億ドルの経常収支の黒字を見込んでおるわけでございますが、そういった点から見まして、三十九億ドル、四十億ドル弱の経済協力というものは、いろいろな面でいろいろな努力が必要と思いますけれども、必ずしも実現不可能ではない、十分実現の可能性があるというふうに私ども考えておる次第でございます。
  88. 岡本富夫

    ○岡本委員 経企庁の見通しはいま聞きましたが、私どもの調査によると、過去五年間の経済成長率が平均一七%、こう見ますと、これからの一九七五年までの経済成長はそんなにしないということで平均一五%くらい、こういうことになりますと、一%の援助達成には、経済成長率を上回る平均二一%に援助を伸ばしていかなければならぬということになりますと、財政資金の手当てなんかは非常にたいへんな状態じゃないかということを考えるわけであります。いま経企庁の調整局長は、大体できるんだというようなお話でありますけれども、いままでの経済援助の姿を見ますと、私は、あなたがいま言った間違いなくできるんだということを非常に心配するわけでありますが、もしもこれができないとなれば、わが国発展途上国に対して公約したことに対して非常に信用問題になるということでありますので、もう少し具体的にあなたのほうで計画を立てておるならば、大体年次別にそういうものをひとつはっきりと出していただきたい。これについていかがですか。
  89. 新田庚一

    ○新田政府委員 もちろんGNP一%、これはわが国の五年後の一つの努力目標でございます。この目標は、先ほど申し上げましたように、過去の趨勢その他を見まして、私どもとしては実現可能な目標であるというふうに考えておるわけでございまして、現時点におきまして、すでにドイツ、フランスあるいはベルギー、イギリスという主要国が一%に達しておるわけでありまして、そういった五年後にわが国として、今後経済が順調に推移した場合に、これが達成できないということはないというふうに確信しておるわけでございます。  ただ、具体的に年次計画というお話でございますが、GNP一%を毎年どの国に、どういうふうな条件で、どういうふうに援助をしていくかという問題をきめますことは、開発途上国の援助の要請の問題とか、あるいは民間の経済協力がどういうふうに動いていくかという問題、あるいは国内の財政需要の推移その他を見なければ具体的にきめられないという問題がございまして、年次計画的なものは私ども持ち合わせておらないわけでございまして、今後の情勢を見ながら具体的にきめていくということに相なるかと思います。
  90. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、非常に心配いたしますのは、一九七五年には達成できる確信があるということでありますけれども、それを今度深く調べてまいりますと、年次計画もない、民間依存、あるいはまたその他の情勢を見てということになりますと、これは非常に心配なことであると私は思うのです。したがって、民間の協力その他いろいろなものが要ると思いますけれども、あなたのほうでやはりある程度のプランをして、そのスケジュールに基づいたような指導をしなければ、いままでの情勢を見てみますと、とてもこれはできないと思うのです。  なぜかならば、一つの例を見ましても、これも非常に後進国からやかましく言われているわけでありますけれども一つ関係各省の調整が非常に手間どる。それから円借款なんというのは、大臣がその国を訪問したり、あるいはまた向こうから来たりしたときに初めて決定される。また円借款の手続が非常に複雑である。あるいはまた、基金あるいは輸銀、こういうものが十分に予算がとれていない。そういったいろいろなものがありますし、また四十四年、四十五年、こういったときに相当繰り越しが残っておる。そのために大体通常は、二年から四年くらいおくれて初めて海外援助が実質的に行なわれておるというようないままでの現状を踏まえますと、あなたはいま、それは必ず達成できるところの確信がある、こういうことでありますけれども、いままでのような状態では私はとても達成できないのではないか。したがって、やはりある程度政府においてそうした計画と申しますか、年次計画をきちんと出して、そして予算にも織り込んでいかなければこれはできないのではないか、私はこういうように強く懸念をするわけですが、この点について、いま答弁なさったような、確信はありますよということでは、これははっきりいたしません。ですから、もう少しわかりやすく、あるいはまた具体的な答弁をいただきたいと思います。
  91. 新田庚一

    ○新田政府委員 ただいま御指摘ありましたように、確かに、五年後に四十億ドルの経済協力の目標達成ということは、そう簡単に実現できるものであるというふうに私ども思っているわけじゃないのでございます。したがいまして、今後、従来の私どもの経験に反省も加えまして、今後の経済協力の展開にあたりましては、協力の態様あるいは地域的な配分の問題、あるいは条件の援和の問題、そういったものを含めまして、関係各省と十分連絡をとって、協力の計画化とか、あるいは援助方針の迅速な決定、あるいは条件の援和の方向といったものについて基本的に考え方を整理して、この問題に取り組もうということで、関係閣僚協議会のもとに局長クラスで会議を編成しまして、いろいろ検討しておる次第でございます。そういったことで、確かにこの経済協力の問題は非常に多面性を持っておりまして、経済協力自体という問題、その固有の領域という問題もございますけれども、外交の問題、あるいは貿易の問題、あるいは財政の問題、いろいろな面に関係がございますので、関係各省十分協力しまして、私どもとしましては、先生お話しのように、十分に調整機能を生かしまして、今後、従来以上の努力をしてまいりたい、そういうふうに考えております。
  92. 岡本富夫

    ○岡本委員 どうももう一つ納得いかないのですが……。この達成をするのは、経企庁、あるいはそういった関係各省のあれでありますけれども、外務省としての意見がありましたらひとつお答え願いたい。——外務省まだ来ていないそうですから、そこでもう一度経企庁の調整局長に。  これはUNCTADの勧告に、GNP〇・七五%の目標を政府ベースで援助をしてもらいたいというような勧告があった。ところが昨年のOECDの閣僚理事会では〇・七五%の目標は実際には達成できない、こういう旨の表明をしておるわけであります。こういうことを考えますと、あなたが先ほどお答えになったように、七五年には確信をもってできるのだということば、これはほんとうの声を上げただけ、言っただけ、公約しただけで、これは国際間のことでありますから非常に心配なんですよ。それで、初年度、それから二年度というような、まあ初年度で達成できない場合は二年目に繰り越してどうするとか、そういったある程度の目標をきめて明示しなければ、ほんとうのことはできない。国際間の援助でありますから、そう喜んでするものではありませんけれども、やはり国際信義にもとるようなことをするから、先ほど私が読み上げましたように、日本は寄生虫だというようなことを言われるのではないか。こんなにここまで成長したわが国でありますし、また将来の南北問題と実質的に取り組もうとするわが国政府の考えであれば、そうしたところの年次目標、あるいはいつにはどうするという計画がなければならない、こういうふうに私は思うのです。一度言ってしまって、あとで変更しては困るというようなことで心配になっているのじゃないかと思いますが、これは国際間の問題でありますから、あとでこうしなかったじゃないかというようなことではない。これは見込み違いもありますけれども、やはりある程度の実施計画の目標を立てなければならぬから、それについてもう一度、はっきり具体的に一つの目標を示していただきたい。
  93. 新田庚一

    ○新田政府委員 援助の問題は、先生御承知のように、援助の量の問題だけでなくて、質の問題も一緒にからんでくるわけでございます。したがって、先ほど先生御指摘のありましたODA〇・七五%の目標というものが一つ国際的にあるわけでございますが、ただGNP一%の量の問題だけを取り上げてみますと、先ほど私が申し上げたような問題になります。その中でいわゆる政府開発援助、現在〇・二六%でございますが、これは国際的にDAC加盟国で〇・三六という数字でございまして、かなり日本の場合は低い。それは民間信用がかなり大きなウエートを持っておるということ。先ほど先生のお話しの高い金利で貸しておるという問題につながるわけでありますが、そういった状態から一挙に五年後に〇・七まで引き上げるということにつきましては、これは非常な財政資金の急増が必要になってくるわけでございます。しかもその財政資金も、財政投融資よりも一般会計の利子のない金のウエートがだんだん高まっていく。さらにそれに条件の緩和、金利を安くするという場合に、さらにそれにまたかぶさって、その政府資金の内訳の無利子の金に対するウエートが高まってくるという二重、三重の問題があるわけでございます。  そういった点を考慮しますと、一方、国内の財政資金に対する需要というものもこれからかなり強くなってくる。それからODAの問題一つ取り上げましても、政府開発援助のウエートを考えます場合に、民間援助、これが資源開発その他でまたその点のウエートも大きくなってくるという、その動きもやはり見なければいけないということでございまして、一つの長期的な年次計画的なものをつくるということは、なかなか困難がある。また、そういったものをつくって表に出した場合に、開発途上国から必要以上の期待を抱かれるという問題もございます。そういったことで、私といたしましては、先生のお話のように、毎年度各省と、本年度はどういう規模でどういう点に重点を置いて経済協力をやるかという点につきましては、十分従来もやっておりますけれども、今後とも従来以上にそういう点について考え方を統一して、経済協力の拡充に努力してまいりたい。それを一つの計画的なものをつくって、それを内外に発表するというふうなことは、なかなか困難な問題があるということを申し上げた次第でございます。
  94. 岡本富夫

    ○岡本委員 国益から考えますと、なるほど、あなたがおっしゃったように、そういう計画を立てて発表するということは、これはあまり対外的にはよくないことだというように考えますけれども、しかし、いまあなたがお話しされたように、財投資金、あるいは一般会計の資金、あるいは民間のいろいろな資金、こういうものについてやはりある程度見通しというものを立てないと——それによって民間に対しては許可をしたり、あるいはまた援助をしたり、そういうようなことでなければ、ただいままでのような、その年その年の無策、そのときそのときの計画では、繰り越しで二年から四年もおくれておるわけですよ。そうすると、一九七五年になったときに、ずっとこれから四年たたぬとその目標ができないのだということになれば、ますますこれは対外的の信用というものが落ちる。したがって、私は率直に言うて、あなたが、いま絶対一九七五年にはできる、GNP一%の対外援助はできる、こういう確信はある、そういう目標で努力しようとする考えはあるけれども現実に今度やるとしたら、それはむずかしい、できない、だが努力目標なのだから、できなくてもしかたがない、こういうような考えでは、これはほんとうのことを言ったら、対外信用にもとるのじゃないかと思うのですよ。  しかし、いまのところでは、あなたのほんとうの心の中では、これは、一般会計予算、あるいはまた財政投融資予算、民間とこうなってきて、しかもそこに各省にばらばらになっているわけです。とてもこれではほんとうはむずかしいのじゃないか、こう心の中でひそかに考えながら、確信あります、努力しますと言っているのではないかというふうに私は感ずるのです。それは、こうして公約をしたのだから、努力すると言わざるを得ないと思いますけれども、そうした計画、そういうものがまだまだないのだ、これは各省で調整をするのだ、あるいはこれから一年一年見込みを立てていくのだというようなので、はっきりした裏づけのない努力目標である、こう言わざるを得ないと思うのですが、それについてもう一ぺん私にあやまる必要はないけれども、どういう考えを持っておるのか、ひとつお聞かせ願いたい。
  95. 新田庚一

    ○新田政府委員 目標を内外に宣明したからしかたなくやっていくということではなくて、むしろ積極的に、効率的な経済協力を量質ともに拡充していくということに、私どもとしては積極的に取り組んでいきたいということでございます。したがいまして、政府内部におきましても、御説のとおり、毎年度の予算編成に関連しまして、どういう考え方でどういう点に重点を置いて、どういう条件でやるかということについては十分議論してやっていきたい、こういう考え方でございます。
  96. 岡本富夫

    ○岡本委員 これで時間をとってもあれですから、私はほんとうのところを言って、毎年いろいろきめていくというけれども、いままでのような考えでは、これはもうそうした努力目標は達成しない、だから今後はひとつ強力に、そうしたひそかなスケジュールでもきめて、対外的に発表する必要はないと思いますけれども、やはり年次計画を立てなければならぬ、これだけをひとつ要求しておきます。  そこで、次にこれについてちょっと意見を言っておきたいと思うのですけれども、外国からこうした寄生虫の存在であるとかいうようなことを言われるのは、海外援助のしかた、要するに、あなたがおっしゃったように質ですね。こういうものが的確に行なわれていないのじゃないか。いままで賠償支払いのためにわずかながら払いました、フィリピンを残すのみであとはほとんどなくなったが、こういった援助について、民間の学校や病院、こういうような社会公共施設にもやはり援助を惜しまないようにする。私この間インドに参りましたが、あそこにはらい患者の非常にりっぱな病院ができておった。インドの人たちから非常に感謝されておったというような面も見まして、そういった社会公共施設に対する援助をする。いままでは、何かブラント輸出したり、あとで言いますけれども、ひもつきのような援助の状態ばかりだったというように考えられるわけで、そうした援助目標も、やはり相手国の国民が喜ぶような状態が必要じゃないか、こういうように考えられるわけですけれども、これについての御意見がありましたら……。
  97. 新田庚一

    ○新田政府委員 わが国経済協力の構成を見ますと、先ほど申し上げましたODA、政府開発援助〇・七というのは、換言しますと、経済協力の中の三五%しか占めておらない。これはDAC加盟国の平均が五〇%でございますので、一五%ほど政府開発援助がわが国の場合には低い。その内容を見ますと、贈与、つまり無償経済協力というのが日本の場合には一〇%しかない、DAC平均ではそれが二五%になっておるという点に非常な違いがあるわけでございます。したがいまして、先ほど先生のお話しになりましたような、病院とか学校のような、そういった施設につきまして無償で経済協力をやる。もちろん、そのほかの道路とか港湾とか、インフラストラクチュア的なものにつきましては、政府借款その他低利の経済協力という方法もございますけれども、そういったプロジェクトの内容によっては無償供与もやるという方向、これは外務省が中心になって、現在毎年精力的に努力しておるわけでございますが、そういった方向は、今後とも拡充しなければならないと私ども思います。
  98. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、ひもつき援助撤廃に努力するということでありますけれども、これは、国益から見ると、ひもつきのほうがいいわけでありますが、諸外国から見ますと、日本のほうがひもつきが非常に多いパーセンテージを言ってもよろしいのですが。そういうことを考えますと、今後このひもつき援助についてはどういうような考え方で海外援助をやるのか。ひもつき援助の撤廃についての考え方、あるいはまた具体的な実施方法、これについてひとつお答え願いたい。
  99. 後藤正記

    ○後藤政府委員 ひもつき援助の問題でございますが、御承知のとおり、昨年の九月、OECDの開発援助委員会の上級会議、これが東京で開かれたわけでありますが、国際機関に金を拠出する場合と二国間の政府開発借款の場合のひもつき援助を全廃するということを、これはアメリカが主となって提唱したわけでありますが、わが国はじめ主要国が賛成をいたしました。もちろん一部の国、特にフランスあたりでは、ひもつき援助ということを全部廃止する場合には、援助供与国側の援助に対する熱意というものがわりあい薄められてくるために、全体の援助の資金量に影響してくる、こういうような反論もあったわけで、全会一致とはまいりませんでしたけれども、国際機関への拠出のみでなしに二国間援助の場合も、このひもつきを廃止しようという全体の空気に相なっております。その後引き続き、これはDACの作業部会が数次にわたって開かれまして、一部の原則的な反対者もありますが、おいおいその傾向に進んでまいる。現在のところでは、おそらくことしの秋ぐらいからこの方向に、全般が一部のところを引っ張り込んでそうなっていく、こう思うわけであります。  ひもつきの問題と、それからひもをつけない、こういう問題でありますが、これは全般の経済協力というものの流れを見てまいりますと、一九七一年から始まりましたいわゆる「国連開発第二次の十年」ということにおきまして、六〇年代十年間に行なわれました経済協力全般に対する反省というものが行なわれ始めたわけであります。この中におきましては、いままで資金の供与国側から発展途上国へ流れました量だけで援助の効果というものを測定し得るかどうか、必ずしも期待したような効果をあげていないのではないか、こういう反省が生まれてきたわけです。  と申しますのは、当然、援助をいたして、一国から一国へひもつきで流れてまいりますと、資金とともにやはり技術がその国に流入し、あるいは技術と同時に人間が入ってまいります。それから、その受け入れ国側の安定している既存の社会秩序というものに対する摩擦を生じ、抵抗を生じ、そういった国々のある意味ではナショナリズムとのぶつかりというものが出てくるわけであります。したがいまして、ひもつき廃止も一つでありますが、むしろ今後の援助の方向というものは、与えるものと与えられるものという、その二つの国の間のバイラテラルの場で解決していくよりも、むしろ、特恵あたりもその一つの例でありましょうが、多国間の援助、与えるほうが一つ特定した国というきわ立った形になっていないようなスキームというものが出てきたほうがいいじゃないか、こういう反省が出てきておりまして、特恵でありますとか、あるいはそのほかのいろいろな、たとえば、これは現在熟しておりませんが、アジア決済同盟の問題でございますとか、いろいろなそういった動きが出てきておりますので、全般的な経済援助の風潮、それに対する反省というものからして、今後このひもつき廃止の方向というものはさらに進んでいく、かように考えております。
  100. 岡本富夫

    ○岡本委員 この問題について、先ほど話があったように、昨年の九月十四日の、このわが国がとったところの姿勢について、外務省の経済協力局長、はっきりしてください。
  101. 沢木正男

    ○沢木政府委員 昨年の九月十四、十五日、東京で開かれましたDACの上級会議におきまして、国際機関に対する拠出と、政府間ベースの二国間借款について、全面的にアンタイするということがきめられたわけでございます。そういうふうに至りました理由は、先ほど後藤局長からも御説明申し上げておったかと思いますが、二国間のひもつき援助でありますと、どうしても高くてもその国から買わなければならないということで、結局、後進国が国際入札で買う場合に比較して高いものを買わされる。そこで、援助の条件を緩和するということの一環としまして、できるだけ与えられた金額でたくさんのものが買えるということになれば、後進国にとってもいいし、かつ、逆にいえば、それだけ援助量を減らしてもいいというような理屈から、ひもつき援助の廃止ということが前々から検討されておったわけでございますが、昨年の五月ころアメリカが、全面的に各国が同時にやるならばアメリカもやってもいいということを言いました結果、急速にそういう議が発展したわけでございます。現在アンタイいたします場合のいろいろな手続の面をDACで引き続き検討いたしておりますが、実施の時期としましては、DACのほうの議長は、今年内にもできるだけ早い機会に実施したいという意向でいろいろ積極的に動いておるようでありますが、いまのところ、見通しはまだはっきりついておりません。ただ、わが国の場合は、国内法上の問題がございますので、おそらく来通常国会におきまして法案の改正について御審議をお願いして、それが承認された後、実際の実施に入るというような結果になろうかと思います。
  102. 岡本富夫

    ○岡本委員 これも結局、公約をしたり、あるいはまた、そのDACの上級会議でそういう姿勢を示したままで、あとはできなかったということのないようにしなくてはならない、こういうことを私は要求しておきます。  そこで、わが国で一番おくれておると考えられるのは、技術協力。先ほど後藤局長からもお話がありましたが、この技術協力の額を見ましても、一九六九年の総額が千九百万ドル、それで政府開発援助資金が四・四%、DACの平均が二二%ということになりますと、非常におくれておるんではないかというように考えられるわけでありますが、こうした技術協力をどういうように今後促進をしていくのか、これについては通産省のほうからお答え願いたいと思います。
  103. 後藤正記

    ○後藤政府委員 技術協力が、わが国の場合、DAC諸国の平均に比しまして低いというのは、確かにおっしゃるとおりでございます。発展途上国の各種の開発の主要な推進力となります人的資源の開発とあわせて技術水準の向上に資することによって、発展途上国自身が自分の力によって経国するということを支援する意味におきまして、技術協力は非常に大切なものでございます。かような観点から、政府といたしましては、ほんとに発展途上国のためになる技術協力というものを鋭意進めたい、かように考えておりまして、たとえば昭和四十年から四十四年にかけまして、低いとは申せ技術協力の実績伸び率は三倍をこえてきておるのであります。しかしながら、まだこれは、母体になりますわが国経済技術協力というものが、他のDAC加盟諸国に比べましておくれてスタートしたということもございまして、先ほど先生御指摘のとおりに、絶対額におきましても、あるいは政府開発援助の中に占める比率におきましても低いことは事実でございますので、今後とも一そうその技術協力の拡充強化をはかってまいりたいと考えております。  かような意味合いから申しまして、従来から実施してまいっております、たとえば研修生の受け入れ、あるいは専門家派遣等の事業の拡充は、従来の路線に沿ってさらに強化拡充してまいりたいと考えておるのでございますが、今後はさらに、特に来年度におきましては、現地事情にも通じました専門家の派遣、さらに国際水準に達しております優秀なコンサルタントを国内で養成すると同時に、これを発展途上国に送る。さらにまた研究協力の推進というような点について今後とも大いに努力してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  104. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは貿振局長にこの話をしてもしかたがないわけですから、これは大臣あるいは政務次官に、通産省として特に技術開発に力を入れなければならぬということを要求したいと思っております。それについての論議はきょうはよします。  それで次に、この質の問題でもう一つは融資の問題でありますけれども、まず金利を見ますと、一九六九年のDACの平均が二・八%、それに対して日本は三・七%。それから返済の期間が、平均は二七・八年ですが、日本では一九・五年。あるいはまた据え置き期間にしましても、平均は六・七年ですが、日本は六・一年というように、非常に融資の内容がきびしい。なお、中身を見ますと、余剰米を韓国に三十三万トン、あるいはパキスタンに十万トンというようなものが含まれておるわけでありまして、まあどっちかといえば、日本で不必要なものを入れておるというようなことできびしい批判を受けておるわけでありますが、こうした融資の緩和については、どういうように今後行なうのか、これについての所見を伺いたい。
  105. 沢木正男

    ○沢木政府委員 ただいま御指摘になりましたとおり、日本の援助条件がきびしいということは、先進国からも後進国からも非常に批判を受けております。ただ、こういうふうな借款を出す根元の機関でございます経済協力基金と輸出入銀行二つで見まして、輸出入銀行のほうは、本来は輸出振興機関として発足した銀行がその後いろいろ援助業務を拡大していっておるということでございまして、資金量を充足するために運用部資金の借り入れを自己資本額の三倍までできるという規定がございます。一方、経済協力基金のほうは、後進国援助を目標にして元来設立された機関でございますので、預金部資金の借り入れが自己資本に対して等額までということになっております。御承知のように、運用部資金の借り入れについては年利六分五厘程度の金を払っておりますので、輸出入銀行によって出される借款の条件を緩和すると申しましてもある程度限度があるわけでございますが、経済協力基金の場合におきましては、理論的には六分五厘の半分の三・二五%までは逆ざやにならないというようなことがございますので、今後、援助緩和をやっていくにつきましては、結局、現在の機構のままでは経済協力基金に出資金がいかにふやされるかという問題にかかってくることではないかと思っております。そうしますと、現在、国際収支上の制約はほとんどございませんので、予算の中におきまして、後進国援助のために経済協力基金なり輸出入銀行なりに出資される金がどの程度円資金化し得るかという問題になりまして、結局、円資金需要の中におきまして、海外経済協力にどれほど円が予算上さかれるかという問題にかかるわけでございまして、われわれといたしましては、できるだけ国際水準に近づくように、そういう点についての予算の増額を努力してまいりたいということでございます。
  106. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると、努力するのは結局この経済協力基金をふやすしかない。現在の輸出入銀行の性質から見てそういうことになるわけですが、そういうところから、今後の七五年のGNPの一%の公約を実施するためにどうあらなければならないかというようなこともはっきりしてくるわけですが、これについての経企庁の考え方をひとつ……。
  107. 新田庚一

    ○新田政府委員 現在の直接借款は、昨年末の残高で見ますと、輸出入銀行が約七五%です。それから基金が二五%という比率になっております。御承知のように、借款を与える場合に、相手国の経済発展の段階とか、あるいはその外貨事情とかプロジェクトの性格とかいうものから判断しまして、条件のソフトであるべきものは基金、ハードなものは輸銀というふうな使い分けをしておるわけでございますが、今後の問題としましては、先ほど沢木局長から申し上げましたように、やはり国際的に条件をソフトな方向に持っていかなければいけない。そうしますと、直接借款に対する輸銀、基金の扱い方のウエートを逐次変えていかなければならない。そのためには、基金としても、やはり低利の融資ができますように、出資の比率を漸次高めていくという努力をしなければいけないというふうに考えております。
  108. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、経済協力が的確にいっているのかどうか。この表を見ますと、相当経済協力をしておるにかかわらず、諸外国から、どっちかというと金を借りるほうなんだからそんなにえらそうに言えないのに、これは南北問題で国連で決議しておるわけですけれどもね。こんなにいろんな条件で日本がやかましくいわれるということは、私は、この経済協力というものが的確に行なわれていないのじゃないかというようなところも非常に懸念されるわけでありますが、この経済協力のチェックですね。わが国から出した金と、向こうにきちっと行って協力した金、こういうものが的確にうまくいっているのかどうかというところをチェックするところはどこなんですか。
  109. 沢木正男

    ○沢木政府委員 経済協力が的確にいっておるかどうかにつきましては、昭和四十三年度以来、外務省に経済協力の効果を調査するための予算をいただいております。四十三年度には、インドネシア、韓国、西パキスタン、インドを調査いたしまして、四十四年度には東パキスタン、インド、中華民国、四十五年度の予算でタイ、ビルマを調査いたしております。これらの調査団の報告書は全部公開いたしておりますので、御要求があれば、もちろんわれわれ提出する用意がございます。  一般的に申しまして、先生方のお耳には悪い評判はよく入るわけでございますが、いい評判はあまり入らないのが常でございまして、これらの調査を通じてみましたところ、もちろんいろいろ問題はございます。しかしながら、全般としてはやはり相当効果をあげて、相手国自身においても、基本的には日本の援助というものは感謝されておる。それから、DACでいろいろ問題もございましたけれども、問題点を常に議論しておりますがために、問題ばかりあるように思われるわけでございますが、DACの講評におきましても、日本が量的な面においてきわめて努力しておるという点に対する評価は、非常に高く買われておるわけでございまして、そういう意味において、一般に日本の援助努力というものは、それ相応には評価されておるのではないかというふうに考えております。
  110. 岡本富夫

    ○岡本委員 この前この資料は外務省から出してもらいましたが、全部出てこないですね。ぽろぽろ、ぼろぼろ、少しずつしか出ない。あなた、それだけ大きなことを言ったのだから、当委員会に全部ひとつ資料を出してもらいたい。
  111. 沢木正男

    ○沢木政府委員 大蔵委員会、外務委員会、いろんなところから要望がございまして、印刷したもので現在切れておるものがあるわけでございます。余部のあるものはわれわれ公開いたしておりますので、どなたから要望があっても差し上げておるわけでございますが、切れておる分につきましては、相当部厚いものでございまして、すぐ増刷するという点の予算もございませんし、かつ時間もかかります。したがいまして、いま申しました国々で、ことしの分はまだ報告書ができておりません。しかし、昨年度まで実施しました分については大部分できておりますので、それの余部のある分については直ちに差し上げることができると思います。
  112. 岡本富夫

    ○岡本委員 それは要求しておきます。あなたは、日本経済協力というものは非常に感謝されておると言う。ところが、これは日本の外務省の経済協力局長の沢木さんという方が、そうではないと言っている。あなたは平原さんですかね。ですから、ちょっとそこにそごがあるように私は思うのです。日本の外務省にですね。ですから、まずいところはまずい、いいところはいいとはっきりしたあれをしないと、やはりだめだと思うのです。まあ、ここでそんなこと言ったってしかたがないから資料要求だけしておきますから。  あなた沢木さんですか。そうすると、これはあなたが書いたのでしょう。「経済と外交 外務省経済局監修」と書いてある。これはあなたが書いたのですね。あなたが書いてあなたがいま答弁しておる。あなた平原さんかと思った。だから、だいぶこれに書いてあるのといまのニュアンスと違いますね。
  113. 沢木正男

    ○沢木政府委員 私は経済協力を推進する立場にございますので、現在の協力が決して十全であるとはもちろん考えておらないわけでございます。特に、それを推進する立場からこういう点に問題点があるというのを、「経済と外交」でございますか、それにも書いておりますし、あちらこちらでもそういう話はいたしております。しかし、しからば日本経済協力が外国からどういう評価を受けておるかというのが、ただいまの御質問の趣旨であるかと存じましたので、一般的にいえばわりあい評価はされております。それが証拠に、昨年度の東南アジア開発閣僚会議その他におきまして各国の代表が述べておる演説の中にも、日本の援助はありがたい、ありがたいけれどもまあこういう問題点がある、という意味の表現が常になされるわけでございまして、やはり援助は援助として先方では感謝はされておるということは事実であろうかと存じます。
  114. 岡本富夫

    ○岡本委員 こんなことで時間とったらおかしいのですけれども、この間私フランスに参りましたときに、OECDの加藤大使ですか、この方が言っておりましたが、日本の国内で考えておるのと外国で考えておるのとではずいぶん差があるという。諸外国では、日本はGNPが世界第三位ですか、ですから非常に強力に考えておる。それに対して訓令が来るのは十五、六等国の訓令が来るので非常に困るというようなことも言っておりましたが、それはそれとして、ここにあなた書いてあるのは「日本は援助の世界における「寄生虫」であるとまでいわれている」ということです。「寄生虫」とは何かなとずいぶん考えて、ああとうとう四つ足でなくて足のないのが歩いておるなんて結論したのですが、先ほどあなたが答弁した、非常に感謝されておるというのとは違いますねと言っておるわけでして、この問題で押し合いしてもしかたがありませんからね。(「本人だから遠慮するな」と呼ぶ者あり)こっちで言うのとあっちで言うのと違うというのは、横の外野席から話がありますからもう一度聞いておきますけれども、この当委員会ではうしろの皆さん方にも、各省いらっしゃるから少し御遠慮なさっておるのかもわかりませんけれども、これは人がいないからというのかもしれませんけれども、その点についてひとつ釈明だけしておいてもらいたいと思います。
  115. 沢木正男

    ○沢木政府委員 寄生虫と言われましたのはDACの場でございまして、DACの会議先進国のみが入っておる会議でございます。具体的に寄生虫ということばを使われましたのは、DACの議長が六九年度の援助実績を評価したコメントの中でそういうことばを使ったわけなんです。その意味合いは、インドなんかに対する借款で、ほかの国は非常に緩和された援助の条件を出しておる。そこへ日本一国のみが辛い条件の援助を出しますと、ほかの国の出した援助の金が日本の借款の返済のために回ってしまう。向こう側を潤わさないで日本の返済に回ってしまう。そういう意味においてインドに密着して寄生虫のようにほかの国の援助の金を日本がとってきておるんだ、そういう意味で条件緩和との関連でそれは使われたことばでございます。ただし後進国、援助を受けておる側からいえば、先ほど私が御説明申し上げたとおりでございます。ただ、援助につきましては、もちろん問題がないわけではございません。それから私自身の職掌柄といたしまして、日本の援助をできるだけ国際的に先進国から見ましても、後進国から見ましても感謝されるようなものに、りっぱなものにしていきたいという意味で、国内的には日本の援助の問題点を常に指摘しまして、そういう点を改善する必要があるという努力の一環として、ただいま御指摘の寄稿もした次第でございます。
  116. 岡本富夫

    ○岡本委員 この問題であなたのあげ足をとったようで悪いのですけれども一つはやはりこうしたものにあなたが発表されれば、これは後進国の方もみな見るわけですよ。後進国のほうでは感謝しておるのに、先進国の話し合いの中で日本は寄生虫だと言われた。むしろそんなことを後進国の皆さんに知らせなくたっていいんじゃないか。あまり外交官らしくないようにぼくは受け取るよりしかたがないわけですがね。これを見ますと、いかにも日本の海外援助というものは非常に悪いという印象を受けざるを得ない。だから私は総体の額を見まして、これはほとんどほんとうの援助にいっていないんじゃないか、こうまで推測せざるを得なくなったわけです。ですから国益、あるいはまた、あなたがほうとうに日本の外交官であるならば、そういうところにもやはり注意をした配慮によって本に書くということでなければならないんじゃないかとも考えられるわけですが、いかがでございましょうか。
  117. 沢木正男

    ○沢木政府委員 発表いたします公開されますものについては、確かに、ただいま先生のおっしゃるとおりでございますので、今後そういう点についても十分配慮してまいりたいと存じます。
  118. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、先ほども岡田委員から話がありましたが、特恵関税供与するについてのメリットあるいはデメリット、これについて具体的にひとつお伺いしたい。
  119. 原田明

    原田政府委員 特恵関税供与いたします最も本来的な意義は、発展途上国経済貿易発展、特に輸出所得の増大というものを目ざしたいという、いわゆる南北問題的観点に沿うということでございます。したがいまして、わが国もそういう非常に広い意味から、国際的な場で討議されました方向に従ってやるということでございます。同時に、そのことはまた日本にとりましても、特に日本の周辺に多い東南アジア諸国をはじめといたしまして、日本が出超という形での片貿易に悩んでおります貿易上の問題というものを解決しながら、かたがたこれらの受益対象となるべき諸国の経済貿易発展に寄与し得るということではなかろうかと存じます。
  120. 岡本富夫

    ○岡本委員 それはメリットのほうの話ですね。ところでデメリットのほうの話は、これは中小企業庁長官ですか。
  121. 原田明

    原田政府委員 特恵供与いたしますことについてのデメリットと申しますか、影響というような点については、少なくとも二つの面が考えられるかと存じます。  第一は、日本貿易のパターンに及ぼす影響でございまして、日本のみならず他の先進諸国も一般的に発展途上国特恵供与することになりますので、その意味で、特恵対象になり得る業種または商品というものについて、日本の関連、競合する業界が輸出の面で影響を受けることがあるというのが第一ではないかと存じます。  第二には、同じ発展途上国の産品が日本の国内市場輸入増大してまいるわけでございますので、その意味で、貿易及び特に国内産業の中でも軽工業繊維といったような分野中心としまして、影響を受けるべき業種が予想されるということではなかろうかと存じます。
  122. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、この一般特恵、これは大体全世界の後進国に適用されるわけでありますけれども、聞くところによると、この特恵について、Aグループ、すなわちアジア方面は大体日本が受け持つとか、あるいはまたCグループ、すなわちラテンアメリカは米国がやる、あるいはまたアフリカ方面はEECあたりが受け持つというような、供与に対するところの考え方があるのではないかというようなことも聞いておるわけですが、これについてのわが国の態度、これについてひとつお答え願いたい。
  123. 原田明

    原田政府委員 今般実施されようとしております特恵は、一般特恵という名で呼ばれております。この点は先生御指摘のとおり、いままでたとえばヨーロッパの諸国が旧アフリカ植民地にやっていた特恵、または英連邦が旧植民地地域にやっていた特恵というものとは異なる、地域特恵ではないという意味における一般特恵ということでございます。しかしその特恵は、国連貿易開発会議という場を利用して、その加盟国である発展途上国が一致団結してその実現に邁進し、先進国もこれに協力するという形で実現をした特恵であります。  御指摘のAグループはアジア・アフリカの諸国でございます。Bグループが先進国ということになっておりまして、Cグループは中南米、Dグループは東欧の諸国でございます。したがいまして、こういう国連の場所で一般に行なわれております国の区分けという形でいきますと、すべての発展途上国というものがAグループとCグループに含まれる形になりますので、今回の特恵はAグループとCグループ、つまりアジア・アフリカと中南米を含めた、国連貿易開発会議加盟の開発途上国すべてに一律にやるというたてまえになるわけでございます。したがいまして、原則といたしますと、わが国も、そういう開発途上の国であって、しかも国連貿易開発会議のメンバーであって、特恵をもらいたいという希望を表明してくる国がありますれば、その国には、三十五条を援用しているとか、差別しているということで不適当であると思われない限りはやるということになるわけでございます。したがいまして、たてまえとしましては、日本アジアを持つ、ヨーロッパがアフリカを持つという考え方ではございませんで、むしろそういう地域的な考え方を打破して、すべての先進国が一様に発展途上国にやろうというたてまえで進むわけでございますが、結果としますと、その国のそれぞれの貿易の実情やその他から見まして、実際問題としての特恵影響とかいうようなものは、日本の場合にはアジア諸国からの輸入に対する特恵というようなことを特に重点的に考えなければならないというような事態は起こるのではなかろうかと存じます。
  124. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると、この新しい特恵方式と関連して、先ほどもお話があったかもわかりませんが、英連邦の属領と申しますか、そうした香港、そういうところもやはりこの特恵対象になるのか。あるいはまた、こういうわが国の基本態度と、UNCTADにおいてはどういうような合意がされたのか、この二点についてお聞かせ願いたいと思います。
  125. 原田明

    原田政府委員 UNCTADにおきまして合意されました一般的な原則は、開発途上にある国連貿易開発会議の加盟国でございまして、特恵供与を希望する国に特恵をやろうということでございます。日本も原則的な考え方としてはこれに従っておるわけでございます。  御質問の香港につきましては、香港は、英国という開発途上国ではない先進国の属領でございますから、もしこれを厳密に適用いたしますと、受益国にはなり得ない国になるかと思いますし、現に私ども特恵のスキームも、香港を対象としないで進められているわけでございます。ただその後、この議論の過程におきまして、たとえ先進国の属領でございましても、貿易関税といったようなものにつきまして固有の制度を持っておりまして、たとえば香港の場合、通貨でさえ英本国のポンドを使いませんで、香港ドルを使っているというようなことでございます。場合には、たとえ属領でありましても、いわゆる開発途上国という国連貿易開発会議の趣旨に準ずるような地域があるわけでございますので、そういう意味から、特に日本との関係も強いことを理由にいたしまして、強く特恵をもらいたいという希望をしてまいっております。したがいまして、そういう条件を考慮しまして、今後はたしてそういう地域にも適用することが妥当かどうか、やるとしてもどういう条件のもとでやるべきか、ということを検討するということになるのじゃないかと思います。
  126. 岡本富夫

    ○岡本委員 その検討にあたって、特恵供与するのか、あるいはまた、十年も長い期間やるのか、こういうことについての検討ということでありますけれども、大体、一応の基本態度というものは固めなければならないのじゃないかと思うのです。なぜかならば、特恵供与についてまだ検討中でございますというようなことを香港あたりに言って、そしてまだ検討中、まだ検討中、そういう政府の答弁のようなことでは、これは対外的な国際信用にひびが入るのではないかと思うのですが、今度の特恵関税を行なうに対しては、やはりある程度の腹づもり、あるいはまた政府の中で一応の基本態度というものはきまっているのじゃないですか。これをもう一度……。
  127. 原田明

    原田政府委員 御指摘のとおり、香港というような地域わが国貿易にとりましてたいへん影響の大きかるべき地域でございますから、もしやるとなった場合にどういう影響が起こり得るかというような検討はいたしておるわけでございます。しかしながら、香港に特恵をやるか、あるいは香港に準ずるような他の属領といったようなものもございますので、こういうものにやるかどうかということは、香港だけではございませんで、およそそういう性格を持つ地域についてどう考えるかということ、あるいはまた日本だけが香港にやるかどうかをまずきめるというような性質のものではございませんで、やはり他の先進国がいついかなる形でやるかというようなことにたいへん関係があるように思います。現在のところは、先ほどもちょっと御説明申し上げましたように、どこの国も、きわめて明確にいかなる形でやるというふうにきめた国はございません。また、わが国といたしましても、そういう状況を見ない前にきめるというのは、必ずしも得策かどうか、特に影響を受けるべき国内産業ということを考えますと疑問もございますので、その意味で検討をしつつはございますが、決定をしていないという段階でございます。  ただ、香港をやります場合には、香港の繊維軽工業品雑貨といわれますものが、日本との貿易の場合に影響を及ぼすべき品目であるということはほぼ予想されるわけでございますので、現在までのきわめて非公式な話し合いの中では、たとえやるといたしましても、他の諸国にやると予想される現在のスキームをそのまま適用するということはきわめてむずかしいのではないかという話をしております。英国または香港の側でも、それはそうかもしれない、したがってある程度限定されるのはやむを得ないかもしれぬが、とにかく特恵はもらいたいということを言っておる段階でございまして、どの範囲に限定すれば、向こうは満足し、こちらは困らないかというようなのは、やるときめてからでないとたいへん問題も多いかと存じますので、まだその段階に至っておらないということでございます。
  128. 岡本富夫

    ○岡本委員 私はなぜそれを聞いたかといいますと、今度の中小企業特恵供与に対するところのこの法案の審議にあたって、やはりそういったものが審議対象に入ってこようと思う、また必要でなかろうかと思って聞いておるのですが、国際問題もあるでしょうから、この程度にとどめます。  そこで、特恵受益国について、発展途上国でもないし、また先進国でもないといったようなボーダーラインの国があるわけですね。これは、ポルトガルとかギリシャとかトルコとかスペイン、こういうような国に対してはどういう考え方を持っておるのか、これについてひとつ……。
  129. 平原毅

    ○平原政府委員 お答えいたします。  御指摘のとおり、世界の百何十国をただ二つの先進国後進国に分けるということになりますと、どうしてもそのボーダーラインの国が出てまいります。これは先進国の間で特恵問題を長年研究いたしましたOECDの場におきましても、一体どこが後進国であるかということは関係国でずっと議論してまいりましたが、結論から申しますと、結論が出なかった点でございます。  出ました結論といたしましては、一応、受益国というのは、発展途上国であって、しかも自分から発展途上国と認め、特恵をほしい。いわゆる自己選択の基準と申しておりますけれども、それを原則としようということがきまったわけでございます。したがって、現在の段階におきましては、いま仰せられたポルトガル、スペインあるいはギリシャ、トルコ、そのほかにも似たような、アルゼンチンでありますとかメキシコでありますとか、後進国の中では非常に進んでおる、しかし必ずしも先進国と言いがたいというような一群の国がございますが、これにつきましては、各国ともまだ最終的な態度の表明はいたしておらない、これが現状でございます。
  130. 岡本富夫

    ○岡本委員 次に、社会主義国ですね。特に日中問題がやかましくいわれておりますが、中国、この国が国連の中に入っていないからということでありましょうか、将来、国連に加盟され、希望するならば、やはりこの特恵受益国の中に含める考えがあるかどうか、これについてひとつ……。
  131. 平原毅

    ○平原政府委員 お答えいたします。  現在の考え方から申しますと、経済体制が異なるからというだけで特恵受益国にしないという考えはわがほうにはない、そういうふうに考えております。したがって、ほかの条件、開発途上国であるか、あるいはみずから特恵受益国になりたいという希望を表明するか、こういう点で将来きまる問題だ、そのように理解いたしております。
  132. 岡本富夫

    ○岡本委員 やはりこういった、中国も希望するならば特恵受益国にしてよろしいというような明らかな表明をしておけば、日中国交正常化ですか、あるいはまた将来の貿易関係にも非常にいいのではないか。何か閉ざしておきますと、いつまでたっても国交が回復しない、あるいは経済の交流がない、貿易促進されない。アメリカがくしゃみをすれば日本がかぜを引くというようないまのような経済状態で、どんどんニクソンドクトリンといいますか、こうした締め出しを食っているわけですから、わが国の将来ということを考えますと、どうしても日中貿易というものが必要になってくる。したがって、やはり大局から見て、そういう面も外交的に、あるいはまた実質的に表明をすることが大事ではなかろうか、こういうように思うのですが、それについて……。
  133. 平原毅

    ○平原政府委員 昨日の参議院の予算委員会で福田大蔵大臣が、同じような御質問に対してお答えになっておりましたけれども、それを繰り返しますと、現在、御審議を賜わっております特恵に関する法案の中で、先ほど原田局長も申しましたとおり、第二の、発展途上地域で、独特の関税制度あるいは貿易制度を持っておって、しかも特恵を希望する地域というものも考える余地が残っておりますので、現在の段階でも決してとびらが締まっておるというふうには考えておりませんし、また将来UNCTADの加盟国になる、しかも特恵を希望するというような場合はもう問題が何もない、そういうふうに考えております。
  134. 岡本富夫

    ○岡本委員 それでは、中小企業庁長官に質問いたしますけれども、この法の第三条の認定基準につきまして、事業転換の原則の中に、業種の中で転換する、すなわち、たとえばおもちゃ屋さんが、いままでは普通のおもちゃをつくっておったけれども、今度は電池で動くところのおもちゃをつくった、こういうような事業転換も、この事業の認定基準の中に入って、そうして助成をしてやることができるのかどうか、これをひとつ伺いたいと思います。
  135. 吉光久

    吉光政府委員 第三条にいっております「事業の転換」の意味内容でございますけれども、一般的には、ある業種に属する事業が他の業種に属する事業に仕事を変えてまいるということが「事業の転換」といわれるものであろうかと思うわけでございますけれども、この特恵影響に関連いたしまして、特にそういう需給構造の変化に即応するというふうな趣旨から、実はこの「事業の転換」ということばを解釈いたしておるわけでございます。  したがいまして、画一的に、ある業種から他の業種へという産業分類的な概念で考えるというふうな方向ではなくて、むしろ実体的に事業の転換であると認められるかどうか、そういうふうな実体的な概念で判断をいたすべきものであろう、こう考えておるころでございまして、いま御指摘ございましたあるおもちゃ、たとえば、ぜんまい式のおもちゃから電動式の玩具に変わっていくというふうなこと、これもいわば品種の転換でございますけれども、しかし、内容的に見まして、その事業内容、そこから出てまいります製品の付加価値が著しく増大し、あるいはまた高級である、そういうふうなものに中身を変えておる、あるいはまた、生産設備等にも相当の変更が起こってまいりますし、あるいはまた、ものによりましたらプラスチックから金属玩具というふうなことになりますと、材料も変わってまいりますし、あるいはまた、新しい生産技術を採用するというふうなことも出てまいるわけでございます。したがいまして、いま抽象的に申し上げましたような諸要件に該当するような品種の転換も、この「事業の転換」のうちには含めて考える、こういうふうに考えております。
  136. 岡本富夫

    ○岡本委員 これはたとえば、おもちゃ屋さんがほかの木工の仕事をやったとか、そういうようなことでは、ほんとうのこの法案の精神による「事業の転換」ということはできないと思うのです。御承知のように中小企業はそんな器用なことはできないわけですから。  いま長官から少しわかりにくくお答えを願ったわけでありますけれども、たとえば同じプラスチックの材質であっても、いままでは非常に程度の低いものであった。そこで今度は電動式に変えたというようなものでも、いままではプラスチックだったものが今度金属に変わったという場合ならという、いま条件がありましたが、おもちゃの外郭はプラスチックであっても中身が今度は変わっておる。やはりこれからは、こういった輸出現実の姿を見ますと、高級品、あるいはまた、まねのできないもの、こういうものを持っていきませんと、後進国にどうしても負けてしまう、香港フラワーの場合を見ましたら、日本でつくったのだけれども、香港の品物が全然安くて、全部ストップしてしまったというような姿も私は調査をして知っております。したがって、その両面から見ますと、同じ業種であっても、そういった面はやはり重視をしてこの法案の対象にすべきではなかろうか、こういうふうに私は思うのですが、もう一ぺんひとつはっきりしたところをお答え願いたい。
  137. 吉光久

    吉光政府委員 先ほど私お答え申し上げましたのも、いまの御指摘の線に沿うような意味での品種転換でありましても、「事業の転換」に入るものがあるということを申し上げたわけでございます。その間、先ほど申し上げましたような、やはりそこに生産プロセスの相違でございますとか、あるいはまた、ほんとうの高級化が行なわれておる、高級化される品物であるというふうなこと。あるいは生産技術についての差があるというふうなこと、技能についても相当の差があるというふうなこと、そこらがはっきりしておる商品でございますれば、すべてこの「事業の転換」のうちに入れる、こういうつもりでやっておるわけでございます。
  138. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、この第二号に、「当該事業について行なう中小企業者の事業の転換を円滑にすることが特に必要であると認められること。」、要するに認められるところの事業、こういうことでありますけれども、これについて、こういう認定、査定というものは、現実においてどういうふうにするのか。たとえば中小企業の業者が申請をする。県なら県が窓口になっておりますから、そこへ申請をして、これは通産大臣の認定が要るのか、そういった面について、もう少しわかりやすくお答えを願いたい。  そこで、中小企業近代化審議会の意見を聞くというようなことにもなっておりますけれども、こういった構成メンバーですね。どういう人がこういう審議をするのか。これについてひとつ……。
  139. 吉光久

    吉光政府委員 いまの第三条の第一項第二号の関係でございます。実はこれは第一項のところで、特定事業につきまして事業内容を政令できめるということになっておるわけでございまして、その政令できめます条件といたしまして、「次の各号に該当する事業」というふうにうたっておるわけでございます。したがいまして、一号で、特恵供与によりまして、輸出入両面につきまして、現実の問題として輸入増加する、あるいは見通しがある、あるいはまた、輸出が減少し、あるいは減少する見通しがある、そういうふうなことでございまして、これはいろいろな統計上の数字から出てまいると思うわけでございますけれども、その業界の売り上げ高でございますとか、あるいは利益率の問題でございますとか、在庫率の問題でございますとか、あるいは設備の稼働率でございますとか、資金繰り、取引条件、そういうふうないろいろの諸条件の中から出てまいります問題。それからさらに、まだそこの諸条件まではまいっておりませんけれども現実シェアの低下問題その他を通じまして、影響されることが見込まれる。要するに、国際的な観点からそういう点について見通されるというふうな要件も入ってくる場合もあろうかと思うわけでございますけれども、そういうふうなものに該当するような、そういう事業につきまして、一応一号で指定要件がきまり、そしてそれをさらにカバーいたしますために、そのうらはらの規定として実は二号を設けておるわけでございます。結局、この転換につきましては、中小企業者が自主的に判断して事業の転換を行なうというふうなことになるわけでございますけれども、そういう事業の転換を円滑に進めてまいるということが必要であるというふうな事業を、この第二号で読もうとしておるわけでございます。したがいまして、第一号のうらはらの関係で二号は必然的に出てまいるというふうに考えておるわけでございます。  それから第二の近代化審議会の関係でございますけれども、やはりこういう特定業種に指定いたしましていろいろと助成策をはかってまいるというふうな非常に重要な問題でございますので、近代化審議会のほうに諮問をいたしまして、そこで判定をいただくということにいたしたわけでございます。  ところで、この近代化審議会でございますけれども、これは御承知のように、近代化促進法の中に設けられておる審議会でございまして、この審議会のメンバーにつきましては、中小企業問題に関して学識経験のある者で構成するというふうに近代化促進法の中にうたわれておるところでございます。と同時に、御承知のとおり、この近代化審議会はすでに、近促法に基づきます中小企業業種別の近代化の問題でございますとか、あるいは構造改善というふうなことにつきまして、いろいろ審議を重ねていただいております。したがいまして、その審議会の委員の方々の中には、まさに業種、業態に応じまして、いろいろの中小企業施策に関連する知識経験が豊富な方が多く入っておられるわけでございます。特にこういう特定事業を指定する、そういうふうな重要な役割りでございますので、従来とも配慮いたしておりますけれども関係業界の方々の意見も十分に反映されるような、そういう組織として運営をいたしてまいりたい、こう考えておるところでございます。
  140. 岡本富夫

    ○岡本委員 それで現実の問題として、業者が通産局のほうに申請するのですか。それとも県を経由するのですか。この法案を見ますと、県を経由するようになっておると思うのです。そうしますと、そういうのがあちらこちらから上がってきた場合、通産省の審議会だけでそういうものがうまく審議されるのかどうか。一つの私の提案としまして、こういうものは、その地域地域でやはりいろいろ地域性があると思うのですね。ですから、こういう審議するのを、県単位のそういう審議会があれば、非常に適切な審議ができるのではないか。それが国、すなわち通産省の審議会だけでこの特恵の問題が行なわれる、しかも近促法の関係の近代化審議会ですか——特恵審議会というようなものが、最初はできるのではないかというように私も聞いておったのですが、これは途中で消えてしまった。そうして「近代化審議会の意見」となってしまっておるのですが、その二点について。要するに、県単位にそういうものがあれば——どの県にも必要だということはないかもわからない。たとえば兵庫県の場合なんか非常に重大な問題でありますから、そういう審議会を置いたほうがいいというような意見もあるわけですが、それについてひとつ……。
  141. 吉光久

    吉光政府委員 まず第一に、事業の指定の関係でございますけれども、この事業の指定は政令で行なうということになっておるわけでございます。審議会の意見を聞きまして政令で指定をいたすというたてまえをとったわけでございます。これは実はこの立て方の問題につきまして、いろいろ議論し検討いたしたわけでございますけれども、やはり事業の指定は政令ベースでいたし、そして実際にこの事業転換を行なう計画を受理し、それを判断して計画を認定するという立場は都道府県知事に与えるということが現状にマッチしておるのではなかろうか、こういう判断から、事業の指定そのものは実は政令できめるということにいたしたわけでございます。と同時に、これは実は通産大臣だけが政令を制定するというたてまえではなくて、それぞれの事業を所管いたしております各大臣が、これは二項のところでございますけれども、「政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは」ということで、業種所管大臣がこれを立案いたすわけでございますけれども、その際に「中小企業近代化審議会の意見をきかなければならない。」これは、どの主務大臣でございましても、この中小企業近代化審議会で統一的に業種指定の基準をきめ、それに沿って指定をしてまいる、こういうことでございまして、そこで一元的な、近代化審議会の意見を聞くというところで思想を統一いたしたわけでございます。もちろん、そういう指定されるべき業種であるかどうか、これはそれぞれの主務大臣は、常に事前にいろいろの情報をキャッチし、同時に調査しという、いろいろの努力が必要であろうかと思うわけでございます。そういう意味で、実は事業指定の段階におきまして、各都道府県知事の御意見、あるいはまた関係業界の御意見は、指定の中に十分盛り込むように努力いたしてまいりたいと思います。  そういうふうなたてまえでございますが、しかし、現実の問題といたしましては、いま御指摘のように、それぞれの産地産業として都道府県行政にも非常に密接な関連を持っておる業種が数多いと思うわけでございます。そういう意味から、やはり実際の転換に関する計画の認定という問題につきましては、これはそれぞれの主務大臣がばらばらでやるよりか、むしろ関係都道府県知事にお願いしたほうがいいのではないかというふうなことで、そういう具体的な個別案件についての判断につきましては、すべて関係の都道府県知事にお願いする、こういうたてまえをとったわけでございます。  それから第二の御質問は、特恵審議会というふうな構想があったように聞くがというお話でございました。確かに、ある一時期にそういう構想があったこともあるわけでございますけれども、御承知のとおり、いま政府全体の姿勢といたしまして、審議会の数はできるだけふやさない、こういう姿勢ができておりましたことが第一点と、それから第二点でございますが、この事業転換も、中小企業の近代化を促進していく、そういう広い意味での中小企業の近代化施策というものとやはり密接な関連を持っておるわけでございますので、したがいまして、現にございます中小企業近代化審議会をそのまま活用いたしまして、この近代化審議会の中に新たに特恵部会を設けまして、特恵問題専門の審議に当たっていただく、こういう感じでおるわけでございます。
  142. 岡本富夫

    ○岡本委員 この中身につきましては、また同僚の相沢委員のほうからあさってお聞きすることにしまして、最後に、こういった特恵問題、あるいはまた、特にいまやかましくいわれておりますところの日米繊維問題、あるいは残存輸入制限問題、こういった国際関係の摩擦が非常に多くなってきておるわけでありますが、日米繊維問題なんかも、ガットの精神からすれば、これはアメリカ側のほうが非常にむちゃを言っているというように考えられるわけでありまして、したがって、こういった問題について、一つは国連の場において、これはもう相当長い間たっておりますから、もう一度ガットの検討をし、中には例外規定を設けるとかいろいろなことがあるでしょうけれども、この検討を国連に働きかけて、そして、一部の力によって押えられてしまう、日本貿易がとまってしまうというようないまのアメリカのやり方を防ぐようなことも考えなければならぬと私は思うのです。それでガットの改正も必要かもわからぬ。あるいはまた一部改正も必要かもわからぬ。また再確認も必要かもわからぬ。こういった問題について国連において何か働きかけをするという時期が来たのではないか、こういうように私は提案するわけでありますが、外務省の考え方をお聞きしたい。
  143. 平原毅

    ○平原政府委員 お答えいたします。  確かにアメリカの保護主義の傾向、それからヨーロッパの共同市場中心といたしますいわゆる地域主義の勃興といったもので、戦後いわゆる自由主義経済陣営の世界経済を律しておりましたガットの原則、特に自由無差別の貿易という原則がかなり後退しているのではないかという感じは、私自身も強く感じております。そのために、それではどのようにしたらいいかというのが、わが国にとりまして非常に重大な問題だという認識を私自身も強く持っております。ただ、いま申し上げましたとおり、自由無差別の貿易というこのガットの原則は、わが国が戦後奇跡的といわれるような経済発展をいたしますために非常に役立った原則でございます。したがって、現在のガットの原則自身が悪いのではなくて、むしろそのガットの原則に影がさしておると申しますか、暗雲がさしておる。この暗雲をいかにして吹き払って、最初からのガットの原則である自由無差別というのがもっと現実に行なわれるようにしたいという方策をとっていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。  その一つの方法といたしまして、先生から、国連でこういうことを考えたらどうかという御示唆でございますが、それも確かに一つの方法かとも存じますけれども、われわれといたしましては、四月に、あと一カ月でガットで非公式の総会を開きますし、また、ことしの六月、先進国だけのクラブでございますけれども、OECDにおきまして閣僚理事会がございます。わが国からも、どの大臣が行かれるかはまだはっきりいたしておりませんけれども、必ずや閣僚が御出席なさる、このように思っておりますが、こういうような国際の話し合いの場を通じまして、現在せっかくわが国に非常に利益になります自由無差別というこのガットの原則におおいかぶさっております暗雲を、どのように実際的に少なくしようかという点を話し合っていきたい、こういうふうに私考えております。
  144. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは小さな秘密会議あたりでやっておったのではどうしても——わが国経済力はありますけれども、海外に対する発言力というものが小さい。やはりこれは大騒ぎする必要があると思うのです。騒いだほうが勝ちだと私は思うのです。ですから、やはり国連あたりにもどんどん持ち込んで、そうして国連へ出ていって、そういったガットの精神に反するようなことにならないように国際問題として大きく提起したほうがいいのじゃないか。あなたも、いまのお考えは大体そうだというように受け取っておきましょう。そうしてまた、それと同時に、やはりそれを働きかけなければならない。感じておるだけでは何にもならない、実行に移さなければならない、あまり弱腰の外交ではそういうことができないのではないか、こういうように思うのです。  そこで、最後に一点だけ。牛場大使とスタンズ商務長官が——ミルズ提案に従って、わが国の業界が繊維の自主規制を涙をのんでやったわけですが、その後の交渉経過は、もう行き詰まってどうにもならないのか。あるいは何かひとつここで一歩開いて、わざわざああして、わが国繊維の業者が集まって宣言をした、それに対するところのどんな反響があるのか。ミルズ委員長ですか、これなんかも非常にバックアップしているような姿でありますけれども、それについてわかっているだけひとつお答え願いたい。
  145. 平原毅

    ○平原政府委員 お答えいたします。  御存じのように、日米間の繊維問題交渉は一年半続きました。そして政府間の話を断続的に行なってまいりました。特に昨年秋、佐藤総理とニクソン大統領で、合意に到達するために交渉を再開しようじゃないかというお話のあと詰めたわけでございますけれども、よく御存じのように、アメリカ側のほうは非常に厳格なカテゴリー別と申しますか、品目を十七、最後の段階は十七をむしろ二十くらいにしてほしいというようなことを言ってまいりましたが、それに一つ一つの天井をつけて、しかもその品目間のシフトと申しますか、動きもわずか三%程度だというような、非常に厳格なことを言ってきました。これに対しまして、先ほど先生は、ガットが無力化しておる、そういう傾向にあるとおっしゃられたわけですけれども、実はこの政府間交渉で日本政府が強い態度がとれました一つは、やはりこれはガットの原則に反するんだ。また国会のほうでもそのような決議をされておりましたので、国会の決議の次第も述べまして、どうしてもアメリカの言うような、ガットの原則から逸脱するそういう交渉はできない、まとめられないということで、これがことしのつい最近まで続いたわけでございます。  その間におきまして、御指摘のような、ミルズ議員のほうから直接日本の業界のほうに、従来アメリカ政府が申しておりました案よりも、日本の業界にとってはるかにゆるやかな案を、自主規制してくれれば、いわゆるミルズ法案といわれております、アメリカが一方的に輸入繊維の割り当てをするという法案は通さないという話があったというふうに聞いております。その後きわめて短時間でございましたけれども日本の業界のほうも、ここで日本政府に相談し、それが表に出るというようなことになると、ミルズさんの立場は、アメリカ政府と国会議員、しかも野党という立場からいろいろデリケートである、したがって日本政府には話の内容はいたしませんという業界のお話で、私たちも、それはもっともである。日本政府の希望は何かというと、この日米繊維問題が、日本の業界も一応納得する形でまとまる、そうして、そのためにややわだかまりのできました日米経済関係が改善されるというのがわれわれの最大の目的でございますから、どうぞ業界のほうも、ミルズさんとの話がうまくいくならば、われわれにその内容はお知らせくださらなくてもけっこうですということで、極秘裏に業界とミルズさんが話を続けたわけでございます。そして御存じのように、今月の八日に日本繊維産業連盟のほうから、かくかくの自主規制をするという一方的な宣言を発したわけでございます。それに間髪を入れずミルズ議員のほうも、このような日本繊維産業連盟の宣言を非常に歓迎しまして、これでいわゆるミルズ法案というものは通す必要はなくなるだろうということを言ったわけでございます。  ところが御存じのように、この交渉は、日本の業界と、いわば野党議員である、ミルズさんとの間で、政府に相談せず直接話をしておられたので、アメリカの行政府、特に交渉を担当しておりましたフラニガン大統領補佐官としては詳しくは知らなかった。それが、いきなり三月八日に一方的宣言を日本の業界が出す、ミルズさんがそれを歓迎し、わが方の政府も官房長官の声明ということで、このような日本業界のイニシアチブというものを非常に歓迎し、それと同時に、このようなことになったから、従来続けておったアメリカ日本政府間の交渉はもう要らなくなったと考えると言ったわけでございます。これに対しまして、いま申しましたやや寝耳に水のような感じで、アメリカの行政府というのは非常に反発したというように感じております。  これがどうなるかと申しますと、結局、相手のあることでございますから、一〇〇%正確な見通しと言えるかどうか知りませんけれども、われわれといたしましては、これが解決するためには、日本繊維業界が、あの宣言に盛られました内容を忠実に、いわゆるオーダリーマーカッティングということで実績アメリカに示す、こういうことで、結局わが方の努力、それがアメリカ繊維市場にマーケットディストラクションといいますか、市場撹乱を起こさないのだということを四月以降実績で示す、これが何よりも説得力があることじゃないか、そのように考えておるわけでございます。  したがって、私たちといたしましては、ニクソン大統領がステートメントで、日本の業界の宣言というものは受諾できないと言っておりますけれども、しかし、あれを非常にしさいに読んで見ますと、たとえば、日本からの繊維品の輸入状況を毎月統計にとってアメリカの議会に提出するというようなことも書いてございます。そういうことを読んでみますと、先方もやはり、わが業界があの宣言のような自主規制というものを行なってくれるといことをある程度期待しておる、そうではないかというような感じもするわけでございます。したがって、道といたしましては、この際やはりわが業界があの声明どおりの自主規制を行なっていただく、そしてしばらくその状況を見れば、この発表のしぶり、あるいは、まことにやむを程ないことで政府間の事前通告なんかできなかったわけでございますから、そのために起きた誤解というようなものは、実績でマーケットディストラクションが起きなければ解けていくのではないか、そのように考えておる次第であります。
  146. 岡本富夫

    ○岡本委員 これで終わりますが、業界だけにまかしておきますと、政府間交渉は、あとはしり切れトンボになっているものだから、やはりある程度の誠意のほどを示さなければならぬ、私はこの点を強く要求しまして、終わります。
  147. 八田貞義

    八田委員長 川端文夫君。
  148. 川端文夫

    ○川端委員 本日、いま審議されております中小企業特恵対策臨時措置法案に関しての質問を申し上げるわけですが、午前中から相当長時間にわたってそれぞれの質問がございましたから、できるだけ重複を避けて、私の聞きたいことだけにしぼって質問をいたしたいと思います。  言うならば、この問題で午前中からの質疑の中にあります、日本として利益があるのかないのか、メリットがあるのか、デメリットが多いのかという議論でございますが、長期の問題はわからないにしても、当面の問題は、やはりデメリットがあるからこそ臨時措置法案をつくらざるを得なくなったのではないか、こういうふうに本考えながら、御質問申し上げたいと思います。  質問申し上げる前に、この臨時措置法案のほかに、関税定率法の一部改正が大蔵委員会でやはり特恵問題の対策として行なわれたわけであります。その中に、先日委員会の審議が終了して附帯決議がつけられておるわけでありまして、私どもが聞きたいことがかなり具体的に附帯決議になっておりますからここで読み上げますが、これの精神をどのように受けとめて具体策をどう立てるかということに対してお答え願いたいと存じます。  幾つかの附帯決議がつけられておりますけれども特恵関税の問題にあたっては、「特恵関税の実施に当たり、既に発展途上国が十分な競争力を有する繊維雑貨等の生産品については、当該業界に悪影響を及ぼさぬよう運用面において特段に配慮するとともに、特に競争力の強い地域特恵受益地域に指定する場合には、他の供与国の措置をも十分勘案し、国内産業保護上特に問題のある品目は除外する等の措置を考慮すること。」、その次には、「特恵関税供与に当たり、供与対象品目に該当する国内関連業界に対し、悪影響を及ぼさないよう、中小企業特恵対策としての金融、税制等の諸措置について十分配慮すること。」、このような大蔵委員会においての特恵関税問題の審議の中から附帯決議がつけられておるわけですが、通産省としては、この附帯決議をどのように受けとめてこれにどう対処されようとしているか、一応あらかじめ御説明願いたいと存じます。
  149. 室谷文司

    ○室谷説明員 お答え申し上げます。  御指摘のように、今回実施されようとしております特恵関税供与によりまして、国内産業、特に中小企業関係産業におきましては、多かれ少なかれ影響は免れないものと存じます。そこで、今回の一般特恵スキームの策定にあたりましても、そのような国内産業、特に中小企業への急激なインパクトをできるだけ避けたいということで、たとえば特恵の原則的なワクにつきましては、いわゆるエスケープクローズ方式ではなくてシーリング方式をとる。一部の方式については例外とする。一時期に輸入が集中して市況の混乱を避けるために、所要の品目については事前割り当て制度をとる。原則的には、そのシーリングの管理につきまして月別の管理を行なうわけでございますけれども、センシチブな品目につきましては日別の管理を行なうというような事柄が、特恵スキームの仕組み自体の中に組み込まれているわけでございます。特に、特恵供与によりまして輸入増大し、国内産業相当影響を及ぼし、あるいは及ぼすおそれがあるというときには、緊急措置といたしまして、ガット十九条に基づきます従来の緊急措置の要件をやや緩和をいたしまして、これを機動的に運用を行なう配慮が法案の中に加えられているわけでございます。  先生御指摘の前段の部分につきましては、そのような仕組みの運用を通じまして、繊維雑貨等、すでに発展途上国相当競争力を有しているというふうなものにつきましては、運用面で特別の配慮をはかっていくという趣旨に出るものであろうかと思います。私どもといたしましても、十分その趣旨を体して運用をはかってまいりたいというふうに思っておる次第でございます。  また、前段の後半にございます競争力の強い地域特恵受益地域に指定する場合には、他の供与国の措置をも勘案して、国内産業保護上、特に問題のある品目は例外とする措置を考慮するというふうにございますけれども、これにつきましては、十分その趣旨を体しまして措置してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  150. 川端文夫

    ○川端委員 話は具体的ではないようでありますが、特別の考慮を払うとか、特恵スキームをいろいろくふうしてやっているという御説明であったわけですが、具体的にもう少し角度を変えてものを考えてみれるのは、いま日米の経済の争いというか、この中に象徴的な繊維もさることながら、昨年の暮れに行なわれた燕産業等の洋食器等においても、すでにアメリカ保護貿易主義の立場に立っていろいろな制限を日本に強要してきている。加えて日本は現在、一昨年の金融引き締め以来不況下にあるといわれている条件の中に、この特恵供与することによって、受益国からの日本に対する輸出に対しての大きな影響を与えるのではないか。こういう品目、あるいはこれらの地域のものは日本に一番影響を与えるのではないかという具体的な調査の結果をお持ちであれば、お答え願いたいと思います。
  151. 吉光久

    吉光政府委員 特に輸出面で大きな影響を受けると考えられますのは、大まかに言いますれば、繊維製品あるいは雑貨品というような軽工業品であるわけでございますけれども、特にその中でも、輸出依存度がきわめて高く、しかもその輸出先の主要市場アメリカ市場に求めておるもの、こういうところに一番大きな影響が出てくるものというふうに判断いたしておるわけでございます。たとえば輸出比率が七〇%以上というだけの業種にいたしましても、バドミントンラケット以下七つくらいの業種があがるわけでございます。これは輸出比率が七〇%以上も占めておりますというふうな業種がその程度ございますし、あるいはまた、対米輸出依存度が八〇%以上を占めておりますというふうな業種にいたしましても、すぐに数種の業種があがってまいるわけであります。あるいはまた対米輸出シェアが停滞傾向にある業種というものにいたしましても、十ばかりの業種がすぐにあがってまいるわけでございます。というふうなことで、実はこの特恵供与されることによりまして、対アメリカ市場向け輸出について相当の懸念があるというふうに考える業種が出てまいるわけでございます。  ところが、事実問題といたしまして、特恵供与されました場合にどの程度までの打撃を受けてまいるかというふうなことになりますと、これは私から御説明申し上げるまでもなくおわかりのように、単純に価格差だけでは勝負のつかない、そういう要素が商取引の中にあるわけでございますので、したがいまして、それらの要素を加味しませんと、現実影響がどの程度のものになるかというふうなことを的確に推算することは、きわめて困難な状況ではないかと思っております。
  152. 川端文夫

    ○川端委員 人体で考えましても、健康なときにはからだに少しぐらいの障害が出かかっても治療すれば早くなおるわけですが、しかし弱り切っているときに病菌が入ると、非常に重態になるおそれがあるわけです。現時点をどのような見方に立ってとらえてわれわれが対策を立てるべきか、こういうことになれば、私はやはり、現時点では中小企業の体質が病気寸前の弱り方にある、こういう考え方を持たざるを得ないように思うんだが、その点ではいかがですか。
  153. 吉光久

    吉光政府委員 先ほども御質問の中にございましたように、あるいは御指摘の中にございましたように、金融引き締めの緩和はされましたけれども、まだ中小企業業界全体として浮揚力がつくというふうな状況になっていない、こういう状況、あるいはまた、いままで輸出につきまして規制がなかったものが、何らかの形で輸出について規制を受ける、こういうふうな状況、あるいはまた、中小企業が現在国内問題としてかかえております公害対策費等その他の問題につきまして、いろいろと対処しなければならない課題をかかえておる、こういう状況下で判断いたしました場合、やはり中小企業にとりまして特恵供与というふうなことは、それにさらに一段と制約要素を課するわけでございますので、したがいまして、非常に苦しい段階でこういう問題に対処しなければならないというふうな状況下にあると一般的には言えることではないかと考えます。
  154. 川端文夫

    ○川端委員 そういう角度で考えた場合に、一九六八年ですか、これを一応国連貿易開発会議において日本も参加して受諾しておるわけですから、国際信義の上においては実施に踏み切らざるを得ないことを認めた立場からも、国内対策としてこれらに対する影響、デメリットをどのように食いとめるかというのが当面の重大課題であろうと思うのです。  そこで、この法律の中には、かつてないと言ってもいいほど、将来の影響見通しという立場に立っての対策を立てるということも文章に書かれておるのでありまして、この点は私も賛意を表するわけですけれども、その見通しを立てるということに立ってものを考えた場合に、はたして現状でいいのかどうか。たとえば予算を見ますと、特恵影響実態調査費というものを組まれておる、あるいは特恵関係現地調衣費というものも組まれておりますけれども、はたして日本影響を受ける中小企業の数なり地域なりを考えた場合に、これをもって見通しに対しての施策をするという、この三条の一項一号の「見通し」ということが具体的に実行できるのかどうか、こういうことをも憂えざるを得ないような面があるように思うのですが、この程度の予算ではたしてできるのか、この点をお聞かせ願いたいと思うのです。
  155. 吉光久

    吉光政府委員 特恵関係影響調査というのは、御承知のとおり、国内面における調査と国際面における調査がございますが、この国際面におきますものも、先進国市場における調査と同時に、発展途上国の供給力その他に関連する調査というふうなものに分かれようかと思うわけでございます。さしあたり中小企業庁のほうで組んでおりますのは、実は国内面の調査費でございまして、新しく来年度から、いまお話のございました二つの調査費を計上いたしたわけでございまして、最初のほうの影響実態調査費でございますけれども、結局、指定をいたしますための基礎資料を集めますために、当面影響が予想されております業種につきまして書面調査をまず行ないたい。この書面調査に要する経費が特恵影響実態調査費でございます。それからさらに、書面調査を前提にいたしまして、現地で具体的に事業に当たって調査しなければならないというふうな関係の調査が特恵関係現地実態調査費というふうなことになっておるわけでございまして、これらの措置を着実に履行することによりまして、影響を事前に早く押えてまいりたいと考えるわけでございます。もちろん、いま申し上げましたのは、具体的な業種に即した調査でございまして、こういう具体的業種を選びますために、日ごろ持っておりますいろいろな諸資料を整備いたしまして、可能性があると思われるものにつきましては、幅広にいまのような書面調査あるいは現地調査等を反復いたしまして、実態を正確につかまえてまいりたい、こう考えているところでございます。
  156. 川端文夫

    ○川端委員 ぼくは、この実態調査をするということは、たてまえとしては非常にいいことである、こういう前提でものを申し上げているわけであるけれども、やはり書面調査をまずいたしてということになれば、どれくらいの時間がかかるか、あるいはどれくらいの期間が必要かということをひとつお答え願いたいと思います。
  157. 吉光久

    吉光政府委員 さしあたり予定いたしておりますものは、二十業種につきまして、そして一業種につきまして平均二百企業程度というものを前提にいたしておりまして、しかも年四回実施してまいりたいという考え方であります。やはり四半期ごとにそこらの動きを調査しておく必要がある、こういう観点から年に四回実施いたしたい。したがいまして、もちろんこれはその年四回の中におさまるように調査結果も全部集計いたす、こういう考え方でございます。  それから現地実態調査のほうは、いまの前提といたしましては、年二回現地に参る。書面調査をさらに仕上げといいましょうか、足らざるところを補うという意味で現地調査を年二回実施してまいりたい、こう考えております。
  158. 川端文夫

    ○川端委員 この数字は、私の見誤りでなければ、影響実態調査費というのは六百六十八万ですね。これは間違いないですね。その次の現地実態調査費というものが五百四十五万、この二つ合わせても一千幾らしかない。一千二百万程度で、この狭いといっても広い日本の、しかも数多い中小企業の実態調査がほんとうに可能なのかどうか。あるいは地方庁に依頼するという何か方法を考えられているのか、その点もお答え願いたいと思います。
  159. 吉光久

    吉光政府委員 金額につきましては、いまお示しいただいたとおりでございます。  この調査のやり方でございますけれども、いま私どもの所管しております調査費につきましては、中小企業庁及びそれぞれの主務原局もございますけれども、同時に、通産局というふうなところを中心にして調査をいたすつもりでおります。御承知のように、産地産業を形成しているものが多うございますので、したがいまして、地域的に見ましても、ある程度集中度の高い業種というふうなことになろうかと思うわけでございます。もちろんこれは国の調査でございます。都道府県におきましても、それぞれの産地産業の実態につき  まして常に調査につとめておるところでございますので、そういう都道府県のデータをも十分に参考にして、それらとあわせ一本の調査にいたした  いと考えているところでございます。
  160. 川端文夫

    ○川端委員 この実態調査を、先ほど年四回二百企業についてやると言われておるが、業種としてはどれとどれをまずもって最初に手がけるという方向がきまっておりましょうか。
  161. 吉光久

    吉光政府委員 現在、的確にこれが影響を受けるというふうに断定的姿にないわけでございますけれども、ただ、先ほどお答え申し上げましたように、影響を受けるであろうと想定されるような業種、特にこれは輸出依存度が非常に高くて、しかも対米輸出依存度が高い、しかもアメリカにおいては特恵の除外にしていない、こういう業種を優先的に採択する、こういう感じでおります。
  162. 川端文夫

    ○川端委員 そうすると、まだ業種の内容に対してはいま説明する段階でないということですか。せっかくそこまでお答えいただいたわけですが、それはまだ言う段階でないということで伏せておいでなのか。ここに資料はもらってはおりますけれども……。
  163. 吉光久

    吉光政府委員 影響予想の業種でございます。したがいまして、現に手持ちの、先ほど申し上げましたようなファクターからそれに該当する業種を選定いたすということになるわけでございます。したがいまして、これが現実にどの程度影響を受けるかということは別の問題といたしまして、そういう現実の姿を、先ほど申し上げましたような基準に該当している業種につきまして実施一をいたしたい、こういうことでございます。
  164. 川端文夫

    ○川端委員 輸出比率がかなり高い業種でも九業種ありますね。この九業種を全部おやりになるのか、この中に予算の範囲では重点のA、B、Cのランクがあるのかということで内容が言えないのか、こうお尋ねしているわけなんです。
  165. 吉光久

    吉光政府委員 輸出比率が特に高い、七〇%以上も占めておる一こういう業種につきましては全面的にやるつもりでございます。それからさらに、対米輸出依存度が特別に高い、こういう業種もぜひやりたいというふうに考えておるところでございます。
  166. 川端文夫

    ○川端委員 特恵供与関連業種という例を資料としてもらっておる。対米依存度が高い業種、プラスチックすだれ、花火、クリスマス電球、ペッパーランプセット、この四業種は直ちに調査にかかる準備があるということと聞いておいてよろしいですか。
  167. 吉光久

    吉光政府委員 そのとおりでございます。
  168. 川端文夫

    ○川端委員 国内的な調査の問題に対しては、かなり将来を見なければ、熱意のほどを見なければわからぬ面もあって、お答えいただいた面である程度見守る以外にないのですが、それならば相手国の国内事情をどのような方法で調査されるのか。いわゆる特恵受益国なり、あるいはアメリカなり、その他の関連においての競争関係等に対してどういう調査方法を考えておいでか、お聞かせ願いたいと思います。
  169. 室谷文司

    ○室谷説明員 特恵関連の調査費といたしましては、先ほど中小企業庁長官からお話のございました調査費のほかに、私どもの局の関係の調査費といたしまして、電算機の使用料等を含めまして約一千万計上いたしておるわけでございます。これらの費用を使いまして、特恵商品わが国への輸入、並びに米国、特に第三国の特恵供与による輸出商品影響等につきましては、特に米国市場中心といたしまして、その実態の把握に遺憾なきを期したいというふうに考えておる次第でございます。
  170. 川端文夫

    ○川端委員 予算だけでここで決定的な議論をするのは避けますけれども、一千万という金でこれから世界各国の実態を把握したいということは、はなはだ木によって魚を求めるようなことになるんじゃないか。あまりにもみじめな予算でないかと思うのです。やはりけさからの質問の中にも出てまいっておるように、特恵供与をすると言いながらも、方針は正しいとしても、関発途上国の中にも、先発的な国と後発的な国、この関係は当然いろいろな問題が出てくるであろうし、先進国のいわゆる輸出競争の形になって、また別の意味での戦いが始まるのではないか。これらの問題に対して、絶えず相手国の事情も、国内の体制も十分調査、把握をしておらなければならぬけれども特恵受益国なりあるいは輸出先国の実情を調査するために、もっと強力な姿勢が要るのではないかという立場でお尋ねしておるのですが、どうもこのような重大時期に対しての考え方としては、従来の政策のおざなりに近いような形しか受けられないのですが、そうでない二面があるかどうか、お答え願いたいと思います。
  171. 吉光久

    吉光政府委員 海外関係の調査の関係でございますけれども、ジェトロその他の機構を通じて、現にすでに特恵関係についての調査を始めておるところでございます。まずジェトロにつきましては、四十四年度から始めたわけでございますけれども、これは特恵対策調査ということで、特恵対策を前提に置きました調査を始めたわけでございますけれども、四十四年度に七業種、四十五年度に八業種、そしてさらに来年度におきましては十業種というふうなものについて影響調査をやるということになっております。また、特恵問題の調査を担当いたします特恵調査員というものを現在韓国のほうに配置いたしておるわけでございますけれども、来年度からは、ニューヨーク、香港、この二カ所にさらに調査員を配置するということになっております。それからさらに繊維関係でございますけれども、来年度からは例の繊維工業構造改善事業協会のほうに、香港と韓国、それから台湾、これを中心といたします東南アジア繊維産業の実情等についての調査をいたしますための予算を計上いたしておるわけでございます。そういうふうなことで、発展途上国の、特に競合物品に対しますところの生産力その他の調査、それから、主たる市場でございますアメリカにおける動向の調査というふうなことを、ジェトロなりその他を通じまして活発にやっていきたい、こういう心組みでいるわけでございます。
  172. 川端文夫

    ○川端委員 ジェトロを通じて特恵関係の重点的な調査を行なうという構想をいまお聞きしたわけですが、これはこの問題に関連して増員してものをやるのか、従来の関係の職員に単に名目をつけてやらせるのか、この点が一つと、もう一点は、特に受益国との経済協力関係日本との縁故の一番深いところを選んで、貿易関係における一つの協議会的な、あるいは何か権威ある国際会議のようなものが必要になってきたように思うのだが、そういう構想はありませんでしょうか。
  173. 山口衛一

    ○山口説明員 お答えいたします。  最初の御質問でございますが、ジェトロの現在の人員を増員してやるのかやらないのかというふうに承りましたが、現在ジェトロの所員は、増員というのがなかなか簡単にはできないような状況でございまして、また、これまでのジェトロの海外のセンターあるいは駐在員等の仕事の中には、かなりに繊維雑貨等に関連いたします調査が含まれておりまして、それぞれがまた相当の専門的な知識も有しておりますので、必ずしも増員はしないでも、現状の配置によりまして可能であるというふうに考えまして、四十六年度はそのために特別の増員ということは考えてはおりません。  第二の御質問でございますが、経済協力関係等の関係が緊密な地域というお話というふうに理解いたしましたが、四十五年度八業種、また四十六年度の予定は十業種というように考えております。それぞれの八業種または予定十業種の中身、つまり業種の内容でございますが、この業種の内容によりまして、台湾でありますとか、あるいは韓国、香港、メキシコ、フィリピン、こういうような地域に、たとえば台湾の場合には、トランジスターラジオでありますとか、あるいはバトミントンのラケットでありますとか、それぞれかなり競争力の強い問題となる産品がございます。そういうような産品を中心といたしまして、たとえば台湾なら台湾におきまして調査を進めてまいる、こういうふうに、先生御指摘のような、まあ全部が必ずしも経済協力の対象とも言えないかもしれませんが、おおむね経済協力対象地域国々に、関係業種につきましての調査をそれぞれ現地において行なえるような体制を考えております。
  174. 川端文夫

    ○川端委員 具体的にお尋ねしますけれども、それなら台湾韓国にジェトロの職員は何名ずつ配置しているのか、おわかりになりますか。
  175. 山口衛一

    ○山口説明員 お答えいたします。  台湾は現在ジェトロの駐在員は、日本人としましては一人置きまして、現地採用の職員をまた使っております。韓国日本から二人派遣しております。また、それぞれおおむね一人につき一人の現地駐在職員を採用しております。
  176. 川端文夫

    ○川端委員 日本貿易が、ここ四、五年の間に急速に膨張というか、増大しているこのさなかに、いままでジェトロがそうたいして役割りを果たさぬでも、発展したというふうに理解せざるを得ないような数字ですね。われわれ海外に行ってみても、主要首都においてもせいぜい二人か三人。東南アジアを回ってみると、そうたくさんいないのにかなり仕事をしてくれるという意味において、感謝していいのか、やらぬでも成り立っていたのか、こういうことを考えざるを得ないような気がいたします。  そこで過去のことは別として、いま私が申し上げているのは、日本の国内の実態調査をこれから十分固めて処置をしていこうという準備をしている限りにおいては、一人相撲をとらせるわけにいかぬから、相手国の事情をも常に十分把握していなければならぬ。どの程度発展速度を進めているのかということまで知っておらなければ対策の立てようがないのではないかと思うわけでありますが、この点に対しては、どうもジェトロに対して大きな期待をかけておられない、こうしか受け取れないような気がします。  それで、その点は別な問題としてまた議論をいたすとしましても、先ほど質問申し上げている、これらの受益国との国際会議的なものを独自に持てるのか持てぬのか。特に、午前中から質疑がありましたように、後発国といっても先発的な国家、特に台湾韓国、香港、シンガポールなんというような、もう数年にして日本に追いつくかもわからないという非常な発展途上国をかかえておる日本としては、これらの問題に対する対処のしかた、準備のしかたがもっと強力なものであってしかるべきだと思うのですが、そういう国とのアジアにおける日本の特殊的な会議は持てるのかどうかということに対して何かお答えしていただきたいと思います。
  177. 室谷文司

    ○室谷説明員 ただいま御指摘の点につきましては、特恵全般の発展途上国供与国との間におきましては、今後UNCTADの適当な場で、年に一回この特恵につきましてのレビュー、さらに三年ごとに特恵改善の評価並びに改善についてのレビューが行なわれることになっております。ただ、先生御指摘のように、東南アジア中心とする受益国対象として、これらとの間の会議を持ったらどうかというサゼストでございますけれども、現在、韓国あるいは台湾、タイ等との間におきましては、毎年貿易会議というようなものが定例的に行なわれておりまして、これらの国との間におきましては、今後特恵の問題についても議論されることになるだろうと思います。現在のところ、東南アジア受益国全体を包含いたしました特恵をめぐる会議という構想は、浮かび上がっておらないような状況でございます。
  178. 川端文夫

    ○川端委員 私は、農産品等の輸入に対する特恵供与に対しては、やはり物価対策の立場から日本としてもある程度大幅に認めざるを得ないであろうけれども工業競争国となるであろう国に対しては、大乗的な立場に立ちながらも、常に向こうの事情を知っておく、具体的に把握しておくということが、やはりこれからの日本中小企業対策の重要なかぎになるのではないかと考えるから質問しているのです。たとえば日本のことだけを考えてみても、六〇年代においては高度成長で年率一六%も経済成長したのであって、台湾韓国その他の国々がしないという約束はできないのであって、永久に後発国、後進国としてわれわれは安心をしておっていいはずはないではないか。こういうことを考えた場合に、この機会にこそ十分配慮して、これらの国々の事情把握というものに対しては深い配慮が必要あるではないかという立場で申し上げているわけですが、この点は何か不安でならないような気がするわけです。したがって、私が聞くだけじゃなく、そういう不安はないんだ、政府はこういう手を打っているんだと国民にこたえる意味において、何かもっと強力な準備をしているということがあったならばお聞かせ願いたいと思う。
  179. 室谷文司

    ○室谷説明員 先ほど貿振局のほうから、東南アジアわが国と関連する業界の産業の実態把握についての話がございましたけれども、特に繊維雑貨等につきましては、私といたしましては、かなり調査が行なわれているのではないか。そのジェトロの調査を通じまして、各業界の、たとえば雑貨センター等の業界誌にそれが掲載され、あるいはジェトロが集めました資料をもとにいたしまして、雑貨センター等におきましてこれをその雑誌に掲載いたしまして業界等に対する普及をはかっておりまして、かなり進んだ調査が行なわれているというふうに私見ておる次第でございます。
  180. 川端文夫

    ○川端委員 調査はしているとおっしゃる以外には答弁のしようがなかろうけれども、私どもはまだ不安がつきまとっているような気がしてならないから強力な調査機構を確立してほしい、こういうことを要望申し上げておきたいと存じます。  そこでもう一つの問題は、これは特恵受益国だけの関係ではなく、この問題を通じて実施になれば、やはり先進国からの輸入製品に対する価格の問題も日本中小企業に大きく影響を与えてくるであろうことは間違いないように思うのです。たとえば基本計画の中には二五%となっている化繊の原糸等の関税の問題等、必ずしも二五%かけているわけではないようでありますが、これらの問題も見直して、日本の国内の価格引き下げのためにも、いわゆる特恵受益国競争できる条件をつくるためには日本関税全体に見直す時期が必要ではないかと思うのですが、これは大蔵省の関税関係の方からお答え願いたいと思うのです。
  181. 平井廸郎

    ○平井説明員 お答え申し上げます。  ただいま具体的に御指摘のございました合繊糸等の問題につきましてまず申し上げますならば、御承知のように、合繊糸の関税率は、ケネディラウンドによりまして最終一二・五%というふうに引き下げることになっておりまして、これは四月一日から実施されることになっております。このような関税率につきましては、御承知のように、全体としての化学品の中の体系的な位置づけをいたしておりまして、これだけを取り出して議論することはなかなかむずかしいであろうと思いますし、また日本の合繊糸の関税率が、世界の水準で見ましても、それほど高いものでもないというような状況にもございますし、かたがた一方におきましては、合繊糸が逆に輸出製品として育ちつつあるというような事情も考えますと、先生御指摘のように、そういった問題について見直しをする必要があるということは私ども感じているところでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、ケネディラウンドによりまして二五%から一二・五%にと下げてまいりまして、その最終段階がこの四月から実現するというような状況でございますので、その実施の状況を見ましてあらためて検討しなければなるまいというふうに考えておる次第でございます。  それから次に、一般的な問題として、日本関税水準の問題を中小企業対策というような意味も含めて再検討すべきではないかという御指摘もございましたが、これらの点につきましては、私どもといたしましても、化学工業製品につきまして、日本産業保護上支障のない限りはできるだけ下げてまいるというのが基本的な姿勢でございまして、そういう観点から今後とも検討を進めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  182. 川端文夫

    ○川端委員 この機会に承っておきたいわけですけれども関税の率も品目別にいろいろ違うことが多いのですが、たとえば現在問題になっているOPECからの値上げによる原油の値上がりに伴って石油の値上がりが出てまいっております。この問題は別の機会にまた話しするとしても、当然これらを通じて副産物に出てくる合成樹脂やいろいろなものの値上がりにはね返っていくんじゃないか、こういう問題もあるし、物価の問題から考えれば、石油製品の値上がりというものが現実に行なわれている姿から、関税が税金を取ればいいという立場だけではなしに、物価対策なり日本中小企業政策の中に見直す必要のあるものは、どのような方向で直していこうとされているのか、方向をお教え願いたいと思います。
  183. 平井廸郎

    ○平井説明員 お答え申し上げます。  一般的な関税の機能といたしましては、わが国産業保護という観点からいたします保護関税というのが基本的なたてまえでございまして、その限りにおきましては、先ほども御答弁申し上げましたように、わが国産業保護上支障のない限りは、物価対策なりあるいは自由化対策なり、その他の要素を勘案しながらできるだけ下げてまいるというのが、基本的な政府の姿勢でございます。  ただ、ただいま御指摘のございました原重油の関税は、御承知のように、主として石炭財源に充てられているという特殊な財政関税という性格を持っておりまして、一般的な保護関税と必ずしも同一には論ぜられない点もあるわけでございますが、ただ御指摘のように、最近のOPECの原油引き上げがさらに物価にはねがえってくるというような問題もあることは事実でございまして、そういう意味におきましては長期的な観点に立ってエネルギー源の総合的な検討をしなければならぬであろうということは、政府としても一般的に考えている次第でございます。その中において、原重油関税なり、あるいは石油製品に対する内国消費税を含めた総合的検討が行なわれなければならぬであろうということは考えている次第でございます。
  184. 川端文夫

    ○川端委員 まあ原油の関税の問題に対してここで論議する時間がないようでありますから省略するけれども、少なくとも、石炭対策のために財源を求めて、そこに関税を取っておるといいながら、現実は石炭対策の費用よりははるかに上回るものを税収としてあげている事実。これは、量的な輸入量の増大に伴う税収の増加であろうけれども、そのことを考えて、物価との兼ね合いも当然考えるべき時期に来ているように思うわけでありまして、一ぺんきめたらそのまま取るんだという税金の取り方、安易な道は改めてもらいたいという考え方でおることを、申し上げておきたいと存じます。  そこで、最後になろうとしているわけですが、三条の中のいわゆる「当該特定事業」という問題の取り上げ方の中で、どの辺までの幅を広げて政令できめる特定事業の幅を考えておるのか、この点を長官からお答え願いたいと思うのです。
  185. 吉光久

    吉光政府委員 この立法の目的からいきまして、やはり需給構造の変動に即応してまいるというふうなことを求めておるわけでございますので、したがって、できるだけこまかなきめ方をいたしたいと思っておるところでございます。したがいまして、それがある特定の種類に属するという種類の問題にいたしましても、特定業種の種類にいたしましても、単純に産業分類表による画一的な分類というふうなものは、それを採用して弊害のない場合にはそれを採用いたしますけれども、できるだけさらに業種、実態に応じた分類のしかたにいたしたいと考えておるところでございます。
  186. 川端文夫

    ○川端委員 そこで、特定業種を認定するということに対して、できるだけこまかく分類してというお話であるわけですけれども、その中に、特恵に伴う、あるいは特恵だけでない形も出て加わってこようと思うけれども、事業転換をしなければならぬという問題の中に二つあろうと思うのです。一つは、みずから自発的に転換を求めて行動を開始する業種と、みずからそれを行なおうにも、目の前が行き詰まっている立場におってどうにもならぬ立場のものがあろうと存じますが、これらに対しての使い分けというか、指導のしかたをどのようにされようとしているのか、お答え願いたいと思います。
  187. 吉光久

    吉光政府委員 確かに、今回の特恵影響を受けるであろうと想定されますような業種の中には、小規模零細企業が多くの部分を占めておる、そういうふうな関係業種もあろうかと思うわけでございます。産地産業を形成しておりますので、組合としていろいろまた御検討いただく問題もあろうかと思うわけでございますけれども、やはりそういう小規模零細の層の中小企業者のためには、やはりかゆいところに手の届くような、そういう指導体制もまた別に準備いたしておく必要があろうかと思っておるわけでございます。  さしあたり、こういう指導体制の問題につきましては、都道府県にございます総合指導所及び六大市にもございますけれども、この総合指導所を一つの核として使用していきたい、これが基本的な指導機関としてこういう特恵供与の問題に対する指導業務を強化してまいりたいと考えておるところでございまして、さしあたり来年度におきまして、現在この総合指導所におります、国が補助いたしております職員八百六十六名を九百十一名というところまで増員をいたしまして、これは特恵関係を専門にやっていただくというふうな意味での指導員というふうなことで、関係の県及び六大市に配賦いたしたいと考えているところでございます。ともあれ、そういう小規模零細層の方々につきましては、やはり懇切な指導、助言ということがどうしても必要な事項であろうかと思っておるところでございます。  なお、そういう指導所を通じます指導のほかに、先ほども指摘がございましたようないろいろの情報について、やはりこれも、わかりやすく皆さんにわかっていただくということが必要であろうかと思うわけでございまして、先ほどおしかりをいただきましたけれども、ジェトロ等から集めてまいります情報を中小企業振興事業団でさらに選択いたしまして、その中で特に特恵関連の情報を、いまの指導所を通じ、あるいはまた、御承知のように商工会議所あるいは商工会等に経営指導員がおりますけれども、これらのルートを通じて、現実の情報が迅速に末端まで浸透するよう、そこらの情報伝達の面におきましても懇切な配慮が必要であろうというふうなことで、実は振興事業団の予算関係におきましても、それに即応する予算体制を現在準備いたしておるところでございます。
  188. 川端文夫

    ○川端委員 実際問題としては、たてまえとしてはそうあってほしいと思うけれども、なかなか実際そうなっていない業種が多いのです。たとえばクリスマス電球なんか一つとらえても、あまりにも零細規模が多いのです。家庭内職に近いような企業まで加えると膨大な数になるし、組合に集まる人々はある程度問屋なり大手の連中でありますから、これらに対しては常に搾取されているという不信感があって、なかなか組合の計画も立てにくいという実情があるのだが、行き当たってからではたいへんだということを、だれかが行って指導していかなければならぬ面があるわけです。組合がやれないのだからほっておくというわけにいかぬはずだ。これは何もクリスマス電球だけでなく、構造改善の中でいま問題になろうとしておる陶器の問題を一つとらえても なかなか地域的に事情がそれぞれ違っておったり、かまの大きさもあったりして、民芸品等をやる場合におきましては個々の独自性はけっこうであるけれども、大局をわからないために、だれかに信頼できない、人をたよれないという考え方の零細規模をも、どういう形で指導していくか。特に、特恵のような外部の影響によって変わらざるを得ないものに対しては、あたたかい手を差し伸べる用意が必要だと思うのです。この点に対しては、前々から議論されておるように、方針立てたってやる人間いないじゃないか、たとえば中小企業庁に何人おるんだ、法律をつくったって実施するのに人がおるのかという問題が、たびたびこの委員会でも議論になっておるわけですけれども、これらの問題に対して、こういう大きな日本の移り変わり、もっと大きな立場でいえば、国際分業化。国際分業化の経済再編成の第一歩を特恵等によって踏み出そうとしている。そうであるとするならば、国内にもやはり分業化の再編成の道を通さなければならぬのだということを、もっとわかりやすく徹底させる方策をどのようにされようとしておるのか、この点もお聞かせおきを願いたいと思うのです。
  189. 吉光久

    吉光政府委員 仰せのとおりでございまして、私ども、そういう層に対します指導、啓蒙という点につきましては、さらに一段努力する必要があることを痛感しているところでございます。先ほど振興事業団の情報等につきましてお答え申し上げましたけれども、これも印刷物等も相当ふやす予定にいたしておりますし、同時にまた、振興事業団で検討していただく事項の中に、転換事例と申しましょうか、過去においてどう転換し、どう成功したもの、失敗したものというふうな、新しく企業経営の指針になるべきものも、実は作成してもらうことにしておるわけでございます。  それらの資料をほんとうに有効に活用する手段というものを考えなければいけないわけでございますが、結局、現在の中小企業の指導事業の中核をなしておりますのが、都道府県及び六大市にございます総合指導所でございます。したがいまして、この総合指導所を核にいたしまして、同時にまた、先ほどお答え申し上げました、会議所あるいは商工会等の経営指導員、さらには協同組合中央会等を通じまするルート等、組織別あるいは業種別、団体別と申しましょうか、そういうふうなあらゆる機能を動員いたしまして、いまお示しのような線に沿って、啓蒙あるいは新しい仕事への指導というものに一段の努力を傾注いたしたいと考えるわけでございます。
  190. 川端文夫

    ○川端委員 中身の問題をこまかく質問しておるとかなり時間がかかりますけれども、抽象的にものを申しますと、特に零細企業の場合は、課税の特例、いわゆる減価償却の水準引き上げをやろうとしても、それは価値がほとんど考えられないような手工業的な機械でやっているから、かりに転換しようとしても、これを評価して何とかしてやろうとしても、零細規模の連中は、価値としてこれを税の対象としてほとんど考えられないほどの零細なものが多いのである。特にクリスマス電球なり——私はせんだって燕の洋食器の産地を見て帰ったわけですけれども、幾つかの大手があって基本的な仕事をしているけれども、大多数は手工業的な仕事のしかたで、税制の恩典に浴せるような特例がなかなか当てはまらないという実態があるので、なかなか言うことをすなおにきけないという事情もある。これらをどうするかという問題が、かなり、これからたくさん出てまいるのではないかと思うので、やはり政府がこれらの人々を、大局から言うならば、労働力不足の場合に、必ずしもそこにこびりついておらないでもいいような指導のしかたをしていくためには、現在、家庭でかあちゃんと子供と三人でやっているような企業であっても、何らかの援護処置をしてやらなければならぬ時期が来るのではないかと心配しておるわけです。来なければいいですよ。来るのではないかと思うわけですが、これらに対して、そういうこまかい問題に対しては、中小企業庁としてどういうふうに考えておいでになるか、これについてお尋ねしておきたいと思います。
  191. 吉光久

    吉光政府委員 確かに、御指摘のような事態のある中小企業者もあると思います。したがいまして、実は金融措置その他につきましても、特にそういう零細層を中心にした措置ということが必要になってまいるわけでございます。御承知のとおり、今度の信用保証の制度の中におきましても、特別小口、これは担保も保証人も要らない制度でございますけれども、これについて別ワクの設定ができておりますし、あるいはまた、無担保貸し付けにつきましても別ワクの制度が採用されております。これらは特にそういう小規模零細層に対する配慮の上でございます。それから、御承知のように、近代化資金の融資の問題があるわけでございますが、これは小規模層を中心にして運営いたしておりますけれども、やはりこういう特恵対策の一環として、この趣旨に従ってこの資金融資も行なわれるというふうにやってまいりたいと思っております。これは五〇%無利子でございます。  それから機械貸与制度、これも小規模層に対します施策の一環でございますけれども、既存のそういう制度を、特にこの際、やはり特恵対策のほうにも相当重点的に振り向けてまいるというふうなことも必要になってまいろうかと思うわけでございまして、ともあれ、あらゆる力を結集いたしまして、そういう層の近代化あるいは転換、そういう点について積極的な助成をはかってまいりたいと考えるわけでございます。
  192. 川端文夫

    ○川端委員 最後に一言申し上げておきたいわけですが、おそらく特恵供与によっての影響は、この問題だけとらえれば、影響が直ちに膨大な姿になって今年あらわれるとは言い切れないかもしれぬけれども、私はやはり、この特恵の問題を通じて、世界の経済の分業化への道の第一歩を踏み出したという大局的な見方に立って対処していかざるを得ないのではないか。そうであることを理解するならば、やはり国内的にも、国内産業の分業化への指導体制というものをきちっと立てた姿に立って指導していくべき時期に来ているように思うのです。この影響はやはり二年なり三年後には大きくあらわれてきて、問題として、われわれが不注意で、まだ十分用意が足りなかったと非難を受けざるを得ないことにならないようにという懸念を持っておること、考えていることを申し上げて、長官の決意なり、あるいは幸い小宮山次官が見えているから、これらの問題に対処して日本産業転換時期に来ているということを強く考えた施策を考えてもらいたい、このことをお尋ねして質問を終わりたいと思います。
  193. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 特恵問題については、先生、先ほどからるる御質問ございました。これは南北問題でございまして、まあ援助より貿易というような趣旨から南北問題を解決する、それによって将来貿易量がふえて、開発途上国がもっともっと発展して貿易量がふえ、これが先進国にとっても非常にプラスになるという考え方だと思います。先生のおっしゃる面は私も十分わかっておりますし、今後、中小企業、零細企業に対して特段の配慮あるいは施策を講じなければならないと感じております。
  194. 川端文夫

    ○川端委員 一言だけ。反駁するわけじゃないのですが、南北問題等の関係から出てくる問題として、日本としては、世界の平和のために、特恵等を供与して後発国を援助していく義務のあることは、私は重々知っておるわけですが、その直接的なメリットという立場でいくならば、デメリットは中小企業が受けて、おもに南北の国々は資源国が多いわけですから、その有利な面は大企業がお受けにならざるを得ないとなるであろう。こういうことを考えた場合に、一つの問題だけをとらえないで、大所から、日本中小企業にもっと強力な施策がほしいという立場で申し上げていることを御理解願いたいと思うのです。  終わります。
  195. 八田貞義

    八田委員長 次回は、明後十九日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時九分散会