○平原
政府委員 お答えいたします。
御存じのように、日米間の
繊維問題交渉は一年半続きました。そして
政府間の話を断続的に行なってまいりました。特に昨年秋、佐藤総理とニクソン大統領で、合意に到達するために交渉を再開しようじゃないかというお話のあと詰めたわけでございますけれ
ども、よく御存じのように、
アメリカ側のほうは非常に厳格なカテゴリー別と申しますか、
品目を十七、最後の段階は十七をむしろ二十くらいにしてほしいというようなことを言ってまいりましたが、それに
一つ一つの天井をつけて、しかもその
品目間のシフトと申しますか、動きもわずか三%
程度だというような、非常に厳格なことを言ってきました。これに対しまして、先ほど先生は、ガットが無力化しておる、そういう
傾向にあるとおっしゃられたわけですけれ
ども、実はこの
政府間交渉で
日本の
政府が強い態度がとれました
一つは、やはりこれはガットの原則に反するんだ。また国会のほうでもそのような決議をされておりましたので、国会の決議の次第も述べまして、どうしても
アメリカの言うような、ガットの原則から逸脱するそういう交渉はできない、まとめられないということで、これがことしのつい最近まで続いたわけでございます。
その間におきまして、御
指摘のような、ミルズ議員のほうから直接
日本の業界のほうに、従来
アメリカ政府が申しておりました案よりも、
日本の業界にとってはるかにゆるやかな案を、自主規制してくれれば、いわゆるミルズ法案といわれております、
アメリカが一方的に
輸入繊維の割り当てをするという法案は通さないという話があったというふうに聞いております。その後きわめて短時間でございましたけれ
ども、
日本の業界のほうも、ここで
日本政府に相談し、それが表に出るというようなことになると、ミルズさんの立場は、
アメリカ政府と国
会議員、しかも野党という立場からいろいろデリケートである、したがって
日本政府には話の内容はいたしませんという業界のお話で、私たちも、それはもっともである。
日本の
政府の希望は何かというと、この日米
繊維問題が、
日本の業界も一応納得する形でまとまる、そうして、そのためにややわだかまりのできました日米
経済関係が改善されるというのがわれわれの最大の
目的でございますから、どうぞ業界のほうも、ミルズさんとの話がうまくいくならば、われわれにその内容はお知らせくださらなくてもけっこうですということで、極秘裏に業界とミルズさんが話を続けたわけでございます。そして御存じのように、今月の八日に
日本繊維産業連盟のほうから、かくかくの自主規制をするという一方的な宣言を発したわけでございます。それに間髪を入れずミルズ議員のほうも、このような
日本の
繊維産業連盟の宣言を非常に歓迎しまして、これでいわゆるミルズ法案というものは通す必要はなくなるだろうということを言ったわけでございます。
ところが御存じのように、この交渉は、
日本の業界と、いわば野党議員である、ミルズさんとの間で、
政府に相談せず直接話をしておられたので、
アメリカの行
政府、特に交渉を担当しておりましたフラニガン大統領補佐官としては詳しくは知らなかった。それが、いきなり三月八日に一方的宣言を
日本の業界が出す、ミルズさんがそれを歓迎し、わが方の
政府も官房長官の声明ということで、このような
日本業界のイニシアチブというものを非常に歓迎し、それと同時に、このようなことになったから、従来続けておった
アメリカと
日本の
政府間の交渉はもう要らなくなったと考えると言ったわけでございます。これに対しまして、いま申しましたやや寝耳に水のような
感じで、
アメリカの行
政府というのは非常に反発したというように
感じております。
これがどうなるかと申しますと、結局、相手のあることでございますから、一〇〇%正確な
見通しと言えるかどうか知りませんけれ
ども、われわれといたしましては、これが解決するためには、
日本の
繊維業界が、あの宣言に盛られました内容を忠実に、いわゆるオーダリーマーカッティングということで
実績を
アメリカに示す、こういうことで、結局わが方の努力、それが
アメリカの
繊維市場にマーケットディストラクションといいますか、
市場撹乱を起こさないのだということを四月以降
実績で示す、これが何よりも説得力があることじゃないか、そのように考えておるわけでございます。
したがって、私たちといたしましては、ニクソン大統領がステートメントで、
日本の業界の宣言というものは受諾できないと言っておりますけれ
ども、しかし、あれを非常にしさいに読んで見ますと、たとえば、
日本からの
繊維品の
輸入状況を毎月統計にとって
アメリカの議会に提出するというようなことも書いてございます。そういうことを読んでみますと、先方もやはり、わが業界があの宣言のような自主規制というものを行なってくれるといことをある
程度期待しておる、そうではないかというような
感じもするわけでございます。したがって、道といたしましては、この際やはりわが業界があの声明どおりの自主規制を行なっていただく、そしてしばらくその
状況を見れば、この発表のしぶり、あるいは、まことにやむを程ないことで
政府間の事前通告なんかできなかったわけでございますから、そのために起きた誤解というようなものは、
実績でマーケットディストラクションが起きなければ解けていくのではないか、そのように考えておる次第であります。