運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1971-02-26 第65回国会 衆議院 商工委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年二月二十六日(金曜日)     午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 八田 貞義君    理事 浦野 幸男君 理事 鴨田 宗一君    理事 進藤 一馬君 理事 橋口  隆君    理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君    理事 岡本 富夫君 理事 吉田 泰造君       石井  一君    稲村 利幸君       遠藤 三郎君    大久保武雄君       神田  博君    小峯 柳多君       左藤  恵君    坂本三十次君       始関 伊平君    田中 六助君       林  義郎君    藤尾 正行君       山田 久就君    石川 次夫君       松平 忠久君    近江巳記夫君       松尾 信人君    川端 文夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  宮澤 喜一君  出席政府委員         通商産業政務次         官      小宮山重四郎君         通商産業大臣官         房長      高橋 淑郎君         通商産業省公害         保安局公害部長 森口 八郎君         通商産業省重工         業局長     赤澤 璋一君         通商産業省繊維         雑貨局長    楠岡  豪君         通商産業省鉱山         石炭局長    本田 早苗君         中小企業庁長官 吉光  久君  委員外出席者         商工委員会調査         室長      椎野 幸雄君     ————————————— 委員の異動 二月二十四日  辞任         補欠選任   藤尾 正行君     笹山茂太郎君   相沢 武彦君     坂井 弘一君 同日  辞任         補欠選任   笹山茂太郎君     藤尾 正行君   坂井 弘一君     相沢 武彦君 同月二十六日  辞任         補欠選任   大橋 武夫君     林  義郎君   中谷 鉄也君     阪上安太郎君 同日  辞任         補欠選任   林  義郎君     大橋 武夫君   阪上安太郎君     中谷 鉄也君     ————————————— 本日の会議に付した案件  特定電子工業及び特定機械工業振興臨時措置法  案(内閣提出第四九号)  通商産業基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出特定電子工業及び特定機械工業振興臨時措置法案を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の申し出があります。これを許します。左藤恵君。
  3. 左藤恵

    左藤委員 本法案中身に入ります前に、まず、この法案が提案されました背景と申しますかについて、少しお伺いをいたしたいと思います。  提案理由の御説明の中にありますように、一九七〇年代の機械産業の進むべき道ということで、政府が一昨年十二月から、産業構造審議会重工業部会に対しまして、今後の機械工業政策について諮問されて、その答申が昨年の七月に出てまいりました。この答申で述べられておりますところを簡単に要約いたしますと、結局、わが国機械産業の現状とその将来の方向ということをまず第一に取り上げて、そして今後どういう政策をとっていったらいいかということについての提言であろうかと思うわけでありますが、ここでいろいろと今後の機械産業を展望しておられます。そしてそのおもなものといたしまして、まず進展する国際化の問題、それからだんだん激化してまいります労働力の不足の問題、それから高度化、多様化してまいります需要の問題、そして情報化の進展、こういう機械産業を取り巻く環境変化というものに対処して、七〇年代をどう乗り切るべきかという一つ未来像のようなものが、この答申の内容であろうかと思うわけであります。たまたま、現行の電子工業振興臨時措置法及び機械工業振興臨時措置法が、本年で限時立法の期限が来るわけでありまして、その期限が一緒に到来したということで、今回この二つ法律を一本化して特定電子工業及び特定機械工業振興臨時措置法案という形で提案されてきたものだと、このように理解するわけであります。  そこで、私のちょっとお伺いいたしたいのは、現在の電子工業振興臨時措置法なり機械工業振興臨時措置法法案そのものが提案されました理由と、今回の提案理由の問に、時代の変化に対処した理由というものがどの点にあるかということをまず明らかにしていただきたいと思うわけでありまして、この点について重工業局長にお伺いしたいと思います。
  4. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 機械のほうはいわゆる機振法ということで、昭和三十一年に制定をされております。また電子関係は通称電振法と申しておりますが、翌年の三十二年に制定をされております。両法案、当時の考え方といたしまして、それぞれ共通の面、若干違っている面もございますが、いずれにしても、昭和三十年代を踏まえまして、当時押し寄せてまいります自由化の波、これは物のほうの自由化でございますが、そういったこと。また、世界機械工業電子工業に対しまして、まだ日本のこういった機械産業というものが立ちおくれておる、これの合理化を急速に促進し、そして物の自由化と申しますか、海外機械工業電子工業に対抗できるように引き上げていこう、こういうのがその趣旨でございます。一言で申しますと、そういったような合理化促進ということに非常に大きなウエートを置いたものの考え方であったように考えております。  今回、この両法案を、いま左藤委員お話しのように、一本の法案にし、かつその名称におきましても、特定電子工業及び特定機械工業というふうにしぼって考えてまいっております。このゆえんは一つには、機械工業の面におきましては、先ほど申し上げました機振法というものが、さらに二回延長されまして十五年間続いてきております。こういったことから、当初企図いたしておりましたような、世界機械工業に伍して日本機械工業を一人前に育てていく、合理化をしていくという目的も、全体的に見ますと相当な効果を得た、こういうことでございます。同時にまた、電子の面におきましても、これまた非常に技術革新の激しい面ではございますけれども、ある程度これも効果を得てきた、こういうことを踏まえまして、今後は、先ほどお話のございました産構審の答申にもございますような、七〇年代というものを踏まえまして、それに対応するために、この特定電子工業あるいは特定機械工業というものについて、これをさらに振興していこう、こういう考え方でございます。  その基本的なポイントの一つは、機械工業の面に出ておりますように、今後非常に大きく出てまいると思われます国民経済社会全般のニーズと申しますか非常に多様化し複雑化し高度化してくる、そういったものに対応する機械工業、同時にまた、機械工業電子工業というものが一本に組み合わされました、いわゆるシステムとしての広い意味機械産業、こういったものを今後振興していく必要があるというのが、今回の法案を御提案申し上げた基本的な視点であろうと思います。
  5. 左藤恵

    左藤委員 それでは法案中身に入ってまいりたいと思いますが、まず第一条の「目的」につきまして、従来の法律におきましては、法の目的といたしまして、「産業設備及び技術近代化その他国民経済の健全な発展に寄与する」ということだけを目的としておったわけでありますが、この改正法案におきましては、「生産技術向上及び生産合理化促進することにより、その振興を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与し、あわせて国民生活向上に資することを目的とする。」というふうに第一条の改正をはかる。その趣旨につきまして、先ほど引用いたしました答申中身におきまして、国民生活向上に資するために、たとえば公害安全対策関係機械開発普及とか、あるいは自動車安全化、無公害化、そういうものの促進をはからなければならないというふうな、一つの今後の機械産業が指向する方向を明らかにしておるという点から、こういったものが今回の法律目的に加えられたと思いますが、この点について、具体的に法の運用につきまして、こういう目的が加えられたことによって、いままでの措置法とどういう点で変わった効果が期待できるかということについてお伺いしたいと思います。
  6. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 ただいまの第一条の「目的」の点でございますが、お示しのように、従来の機振法、電振法では「国民経済の健全な発展に寄与する」ということだけでございましたのに対しまして、いまお話しのように、「あわせて国民生活向上に資する」ということを目的の中に入れております。この点は法律の第三条をごらんいただきますと、いわゆる特定機械工業というものの中身政令指定することになっておりますが、その二号のイに、「危害防止若しくは生活環境保全若しくは新技術企業化省力化その他の事業活動方式改善」、こういったようなことを書いておりまして、私どもといたしましては、いままでよりより以上に、今後七〇年代の機械工業の向かっていく目標といいますものが、やはり安全の問題あるいは公害の問題、さらに国民生活に広く関係のあるような、たとえば、これは一つシステムではございますが、交通体系の問題、あるいは過密都市の問題、さらに教育、レジャー、こういったものに対応するような一つシステムとしての機械が今後とも開発され、それによって国民生活向上をねらっていくということが、今後七〇年代に課せられました機械工業の大きな目的でなければならない。こういう意識をもちまして、ただいま御質問のありました第一条の「目的」のところに「国民生活向上に資する」ということを入れた次第でございます。
  7. 左藤恵

    左藤委員 それでは、第三条におきまして、業種指定政令で行なわれるということが規定されておるわけでありますが、本法の対象の機種として、どのような電子機器なり機械を考えておられるか、まずその点をお伺いいたしたいと思います。
  8. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 第三条によります電子機器指定について、これはここに書いてございますように、試験研究観点からこれを促進しなければならないもの、それから事業開始といったような段階のもの、さらに第三に合理化をしなければならぬもの、こういう三つのカテゴリーで、電子機器につきまして政令指定することにいたしております。  第一のカテゴリーに属するものといたしましては、今後いろんな角度で新しい電子機器が出てまいると思います。現在でもそういったものが非常にたくさんございます。たとえば自動車に使います大型の集積回路でございますとか、こういったものは、今後自動車の安全問題ともつながりまして、大きく問題になってまいろうと思います。また、試験研究から一歩出まして生産開始ということになってまいりますと、コンピュータ関係ソフトウエアを伴いました周辺機器といったもの。さらに第三のカテゴリーでは、これは現在すでに生産が行なわれておりますけれども、さらに一層の合理化を進め、海外技術にキャッチアップしなければならぬものといたしましては、集積回路をはじめといたします各種の電子機器、こういったものがあろうかと思います。そういった点、この法律にもございますように、十分審議会等の意見も聞きまして政令指定をしていきたい、こう考えております。
  9. 左藤恵

    左藤委員 この業種指定に関連いたしまして、機械を製造する事業、すなわち特定機械工業という形で今回指定する場合には、「危害防止若しくは生活環境保全若しくは新技術企業化省力化その他の事業活動方式改善又は機械を製造する事業の基盤の強化に資するため」、こういう形で一つ条件ともいうべき限定を付しておられるわけでありますが、電子機器を製造する事業につきましては、そういったことでなくてもう少し幅の広い表現になっておって、限定というものが見当たらないわけであります。これは従来の電子工業振興臨時措置法そのままの踏襲というふうに考えられるわけでありますが、機械の場合につきましては、先ほどお話し申し上げましたような形で、七〇年代の指向すべき方向ということでこういった限度が付せられたのであろう。いつまでもあらゆる機械工業につきまして幅の広いそういう振興対策を講ずる必要はない、もう独自でどんどん進めさせていっていいものもあるんだという考え方であろうと思いますけれども電子機器につきましては、なお当分の間、この限時法によれば七年間という間は、こういった広い範囲で振興を助成していこうという考え方というものがここに見られるわけでありますが、私は、わが国電子工業のことを考えた場合に、アメリカのように、アポロ計算をするとかいうふうな、国家の非常に強大な力によって一つナショナルプロジェクトとして取り上げられて進められていく技術進歩というものに対して、日本の場合にはそういったものが予想されない。たかだか、たとえば電電公社とかいうふうな、一つ国家機関に類します公社が非常に大きな予算技術進歩をはかるとか、あるいはテレビが国民の間に非常に大きな普及をしておる、こういったことに刺激されてのブラウン管なりそういった電子機器進歩というものが期待できるだけでありまして、国が大きな予算を投じてのそういった組織的な技術進歩開発というものがなかなかやりにくい日本実態を考えた場合に、こういうふうな非常に広い、焦点をしぼらないで、電子機器製造事業指定してその振興をはかっていくということについて、法律的にはなかなか書きにくいという問題があろうかとは思いますけれども、実際のこの法に基づく運用につきまして、電子機器についての焦点をしぼった振興というものを考えておられるかどうか、その辺についてお伺いいたしたいと思います。
  10. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 電子機器につきましては、一般の他の機械と違いまして、それぞれ業界の特性があろうかと思います。特に、一般機械と比較いたしますと、何と申しましても電子分野と申しますのは、非常に技術革新のテンポの速い、またそれだけに産業といたしましても、設備の面、技術上の面、そういった面で絶えずインプルーブしていかなければならないといった要素がより強い分野であろうと思います。そういった面からいたしまして、昭和三十二年以来、電振法で全体的にその技術を推し進めていく。まあ言ってみれば、西欧の技術レベルにキャッチアップしていくということを非常に大きな目標として今日まで進めてまいりましたが、今日の段階におきましても、電子の面というのは、他の機械に比べますと、なお日進月歩であり革新性が強い、こういうことが言えると思います。そういった意味から、この電子工業の面につきましては、これを機械と同じような形であまりしぼりをかけていくということにつきましては、やはりまだそこまでいっていないと申しますか、そういうところまで限定をしてやるにはまだ少し時期的に早いのじゃなかろうか、こういう認識をいたしております。  しかしながら、お示しのように、電子工業自身も、過去十数年にわたって振興をはかってまいりました結果、相当な技術レベルにも達しております。したがって、今後運用してまいります場合、書き方といたしましては、ここの第三条の一号にございますような書き方ではございますが、やはり重点的にこれを指向していくということは、いま左藤委員がお示しのような点で、私もそのとおりだと考えております。同時に、この法案の第三条の三項に書いてございますように、今後の電子工業といたしましては、機械と一体になった、いわば、ここにもございますような、「自動制御化その他の機械性能向上」という面に非常に大きく貢献をしてまいる分野でもございますので、特にそういった面を念頭に置きながら、重点的に機種指定あるいは制度運用等をはかってまいる所存でございます。
  11. 左藤恵

    左藤委員 いまのお話のような運用のしかたをしていただけばいいと思いますが、私はやはり、現在の電子工業界と申しますか、そういった点を考えた場合に、外国からの技術導入によって進められている部分が相当の部分を占めているというように聞いております。そういった点から考えまして、何でもたとえばアメリカに追いつけ追い越せというふうなことでなくて、やはり日本工業実態に沿って、導入技術導入技術として活用していく。それから、日本に適した技術開発というものにつきましては重点的に金もつぎ込む、そういう振興行政を進めていくというのがいいのじゃないかと思います。それには、ただ行き当たりばったりの方式ではなくて、今回設けられます審議会なら審議会というものを十分活用していただいて、先ほど引用いたしました産業構造審議会答申の中では、こういった電子工業の面につきましては簡単に触れられておるだけで、はっきりとした方向というものが示されておらないように思いますので、電子工業界の今後の動向について、そういったものに諮問されるなり何なりされて、そして十分方向を固めてこの運用に取りかかっていただきたいということを要望申し上げたいと思います。  次に、四条高度化計画変更のことでございますが、三条高度化計画を策定する。そして四条では、「技術の著しい進歩又は生産条件その他経済事情の著しい変動のため特に必要があると認めるときは、高度化計画変更しなければならない。」こういう規定があるわけでございますが、従来の二つ法律におきましては、長期的な振興基本計画をつくって、それから毎年振興実施計画をつくっていくというような二段がまえの策定の方法をとっておった。それを今度は、こういう形で高度化計画をつくってその計画を遂行していくが、なお不都合が生じたときは変更しなければならないということで、今回のほうが弾力的であろうとも思われるわけでありますけれども、この変更そのものが、業界に、機械工業なり電子工業の将来の進路を示す上にショックになるようなUターンを行なうとかいうふうなことも予想されるわけでありまして、そういった場合に、急激な変更によって混乱をするとか、あるいはその方向に対して進路が変わることによって混乱を生ずるというふうなことのないように、その辺の取り扱いについて通産省でも十分指導配慮をしていただきたいと思いますが、この点についての御見解をお伺いしたいと思います。
  12. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 第三条、第四条規定しておりますこの「高度化計画」でございますが、これはいわゆる「計画」というふうに書いておりますが、単なる見通しではなくて、いわば私どもとしての望ましい方向を示す一種の意欲的なビジョン、あるいはその遂行にあたりましての基本となる方向といったようなつもりで、この「高度化計画」というものをつくりたいと考えております。そういったような考え方からいたしまして、いま左藤委員からお示しがございましたように、今度、従来の機振法、電振法に比べまして計画を一本にいたしました。これは従来の十年間余にわたります私どもの経験からも、年度別計画等をあまりこまかくきめるよりも、大まかな七年間のビジョン示しておいて、そして必要があれば年度別あるいは中間年次といったものの目標を示すのがより実際的であろう、こういう配慮から今回は「高度化計画」で一本にし、かつ第四条におきまして、途中年次における「計画変更」という条項を設けたのでございます。  こういうことでございますので、もちろんこの計画に従いまして関係業界あるいは関係企業が、いろいろな方向に向かって、カルテル等を結んだり、あるいは規格の制限をしたり、いろいろなことを実施をいたしますので、いまお話しのように、あまり急激な変更というものはかえって業界混乱を招こうかと思います。したがいまして、四条規定と申しますのは、いまのようにやや長期の大きなビジョンを与えます関係上、途中年次においてこれが変えられないということでは、これはまた逆の意味で支障がございますので、そういったふうな観点からこの四条を設けたというふうに私ども考えておる次第でございます。
  13. 左藤恵

    左藤委員 三条の三項に「高度化計画には、機械電子計算機その他の電子機器を組み合わせることによる自動制御化その他の機械性能向上促進について、特に配慮が払われていなければならない。」こう規定されておるわけであります。一方、答申におきましては、いわゆる機電一体化あるいは産業システム化ということが今後の方向として取り上げられておるわけでありまして、これを、たとえばシステム技術振興とかいうふうな、そういった形で表現しないで、こういう「自動制御化」とか「機械性能向上」ということだけのばく然とした表現であって、もう少し有機的な幅の広い結合、組み合わせ、そういうものを活用しての一つシステムデザインと申しますか、そういうものをこの条文の中に取り入れるということはできなかったものかどうか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  14. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 ただいまの点は、考え方といたしましては、御質問の中にございました考え方と私ども全く同じでございます。今後やはり全般的な国民経済と申しますか、あるいは社会と申しますか、そういったものの要請にこたえる機械工業電子工業ということになりますと、どうしてもそれらが、機能集約的と申しますか、あるいはシステムと申しますか、そういった方向に当然指向していかなければならない、こういうことはやはり必然の機械工業の行くべき方向だと存じます。同時にまた、そういったようなシステム化をし、機能集約をしていくということになりますと、いま御指摘がございましたソフトエンジニアリングと申しますか、システムデザインと申しますか、そういったことがやはりその中核になる一つ技術であろうと思います。こういったものを、私ども今後促進すべき非常に緊要な技術だと考えているわけでございますが、いまお話しのように、その法律自身の中にそういった面をどういうふうに表現をしていくかということで、この点はいろいろと苦心をいたしました。これは一つ法律的な観点からでございますが、この法律自身が、ハードウエアの面に着目をいたしまして、一つ機種という概念で全体を貫いております。そういった面から、この中に特に、いまお話しのようなシステムデザインと申しますか、ソフトウエアの面を書き込むということについて、うまく法制的な均衡がとりにくかったというような法律技術的な問題が一つございます。そのほかに、いまお示しになりましたような重要な点は当然でございますので、何かそういったことも考えながら機電一体という感じを出し、かつ、そういったことについて高度化計画の中に一つのガイドラインと申しますか、そういったものも打ち立てていきたい、こういう考え方のもとにこの三項という規定ができたのでございます。  なおまた、いま申し上げましたようなシステムに関しますいろいろな面につきましては、この法案には書かれておりませんが、四十六年度以降、こういったシステム技術向上のために必要な融資の制度も新たに設けました。また同時に、システム商品といったものに対します特別償却制度も、これは租税特別措置法のほうで新たに認められることになりました。こういった面から、別のところに規定をされ、また創設されました制度等を十分活用いたしまして、この法律目標である、非常に高度の機械産業、こういったものについて一そう施策を進めてまいりたい考えでございます。
  15. 左藤恵

    左藤委員 そういった「高度化計画」の中に、ガイドポストとして、いまのソフトエンジニアリングの点についてはっきりとお示しいただきたいと思う。運用の面でそういう御配慮をお願いしたいと要望しておきます。  それから次に第五条につきまして「資金の確保」という点でございますが、この振興臨時措置法に関連いたしまして、財政資金にはどのようなものがあるか。そして四十六年度の予算にどういったものが予定されているかについてお伺いいたしたいと思います。
  16. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 ただいま御質問の点でございますが、四十六年度におきましては、日本開発銀行の設備資金の特別融資ワクとして百十億円が設定をされております。それから第二といたしまして、中小企業金融公庫の設備資金の特別融資ワク、これについて五十億円が設けられております。さらに機械産業高度化促進金融措置といたしまして、これは長期信用三行の金融債を資金運用部で引き受けまして、その見返りとして三行から融資をされるものでございますが、この金額が三十億円であります。この最後の三十億円の点は、先ほどの御質問とも関連をいたしますが、特にシステム化のために必要な資金の貸し付けということを中心にやってまいりたい、こう考えておるわけでございます。なおこのほかに、重要技術開発費補助金が十八億円ございますが、この運用にあたりましても、本法の対象機種を十分配慮いたしまして、重点的にこれを施行してまいるようにいたしたい、こう考えております。
  17. 左藤恵

    左藤委員 いまのお話に関連いたしますが、機械工業の中では、今回新しく法律改正されますと、指定を受けられない業種というものが出てくるだろうと思います。これらの業種を営みます工業には、比較的規模の小さい、中小企業に属するものがかなりあるのじゃなかろうか、このように思います。そうした中に、従来から中小企業振興という立場で、近代化促進という立場で、中小企業庁が一般的にほかの業界と同じような形で振興助成をしておられる面があろうと思いますが、今回、いままでのそういう機振法によって振興助成を受けておりましたものがはずされた場合に、中小企業庁としてはどのような手を打たれるか、その辺について中小企業庁長官からお伺いしたいと思います。
  18. 吉光久

    ○吉光政府委員 この法案運用につきまして、まだ指定がどういうふうな形になりますか、具体的な業種等について御相談をいまからいただく段階でございます。したがいまして、どういうふうな業種指定され、従来指定されておりましたものでどういう業種指定から今回漏れていくかという点につきましては、いまから重工業局のほうと御相談をいたすということになろうかと思いますけれども基本的にはこれはダブル指定があってかまわないものでございます。したがいまして、よしんばこちらのほうの指定から落ちましても、現在続けておりますような近代化促進施策が必要である業種につきましては、これは従前どおり近代化施策を継続してまいるというふうなことになろうかと思います。あるいはまた、他の下請振興施策等との関連につきましても、施策の斉合性がよく保たれますように、十分に重工業局と打ち合わせした上で、密接な連携のもとに施策を進めてまいりたいと考えます。
  19. 左藤恵

    左藤委員 中小企業庁の所管に属するような形のいわゆる中小企業というものに入る会社と、そうでないボーダーラインのようなところが、従来、非常に機械振興法の助成を受けておったというふうな会社が多いと思いますので、その辺の配慮も十分打ち合わせて、漏れるものがないように御配慮いただきたいと思います。  次に、六条以下にございます「共同行為の実施に関する指示」という点について若干お伺いをいたしたいと思います。  まず、グループの共同化についての従来の目標と申しますか、どういうものに目標を置いておるだろうか、そしてその実績はどうであるか、これをお伺いしておきたいと思います。
  20. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 従来、機振法、電振法でもってこういったような指示カルテル制度をとってまいりました実績をひとつ申し上げてみますると、機振法に基づきます合理化カルテルの実施状況でございますが、まず分野調整につきまして、三十一年以降第一次、第二次、第三次と三回にわたりカルテルの指示をいたしております。その合計は十七機種でございまして、たとえば、化学機械でございますとか、プラスチック機械あるいは試験機、単圧機械、こういったものを含めまして、機振法では十七の機種につきまして分野調整のカルテルが行なわれております。さらに規格制限の面につきましては、繊維機械あるいは木工機械工業計器、こういったものをはじめといたしまして、十の機種が規格制限のカルテルを実施いたしております。こういった合計二十七機種が、機振法に基づくいわゆる合理化カルテル、これを実施しておるわけでございます。  今回は、いま冒頭のほうの御質問にございましたように、機械の面につきましては、需要に対応する今後の新しい方向を見つけていこうということでございますので、そういった面からの機種のしぼりもいたしてまいりたいと思います。こういった従来のカルテルの実施の成果等も踏まえまして、かつまた新しくこの法律に盛られた精神にのっとりまして、いわゆる規格制限以下、必要なカルテルの指示をしてまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  21. 左藤恵

    左藤委員 こういったものは、本来の目的と申しますか、そういう点についてその趣旨が十分徹底できるように、いろいろな要件をきびしくして、その中で配慮しなければならないと思います。従来の現行法におきますカルテルでは、こういうものは実際の実例はいまのお話ではなかったようでありますが、数量制限ができるというようなカルテルの指示ができることになっておったわけであります。けれども、今回はこういうものを落として、要件をきびしくされたと思いますが、こういった問題について公正取引委員会と十分話し合われたかどうか、この辺の経過についてお伺いいたしておきたいと思います。
  22. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 いま御指摘のように、この第六条以下の「共同行為」、つまり指示カルテルの内容につきましては、従来の機振法体系とはいささか違った形でしぼりをかけております。この点は公正取引委員会ともいろいろな形で十分議論をいたしました。やはりいま独禁法で認められております合理化カルテルというのがございますが、この合理化カルテル以上に、機械分野につきまして特別にこういった指示カルテルを必要とする理由。また、その指示カルテルをやるとすれば、どういった要件のもとにこの指示カルテルというものを独禁法の特例規定として設けていくべきか。さらに公取のほうの考え方で申しますと、今後とも合理化カルテル自身の数と申しますか、要件というものをできるだけ厳重に進めていきたい、こういう考え方でございますので、そういった面と、この法案に盛られましたいわば七〇年代の機械工業方向というものを、どういう点で意見の調整をはかっていくかという点が、公正取引委員会との議論の中心の課題であったわけでございます。そういったような討論の結果、ここにございますように、六条の一項でございますが、「規格の制限」、「技術の制限」、こういったことにつきましては、従来と同じような形でやっていくことができるということでよかろうというのが第一点でございますが、第二項並びに第三項にございますように、「品種の制限」あるいは「部品又は原材料の購入方法」、「生産施設の利用」、こういったことに関します共同行為につきましては、従来と違いまして、この第二項に書いておりますように、「生産合理化促進しなければ国民経済の健全な発展に著しい支障を生ずるおそれがある」という点、さらに「当該事業に係る高度化計画に定める合理化目標を達成するためやむを得ない必要があると認めるとき」と、こういった二つのしぼりをかけまして、ただいま申し上げました「品種の制限」、「部品又は原材料の購入方法」、「生産施設の利用」、こういった共同行為につきましては、今後そういった点も十分内容を審査をいたしまして、言ってみれば、非常に必要である、必要やむを得ない、こういったときにのみこれを発動していこうというふうにいたした次第でございます。
  23. 左藤恵

    左藤委員 次に、第十条につきまして、規格の制限に関して共同行為を実施することを指示した場合に、その指示の内容に従って合理化関係電子機器等の規格を制限すべきことを命ずることができるというようになっておりますが、この規定を置くという必要性と申しますか、こういうものをどうしても置かなければならないか。そして、いままでにこういったことが発動したことはないというふうに聞いておりますが、そういうことができるという条文が設けられてあるということだけで効果があるものかどうか、この辺についての御見解を伺っておきたいと思います。
  24. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 第十条に関する御質問でございますが、いまお話しのように、この規格制限命令は昭和三十六年の機振法改正時に設けられたわけでございます。従来、電振法にはこういった規格制限命令の規定はなかったわけであります。その後、いろいろな機械並びに電子両面にわたりまして実際のやり方を見ておりますと、必ずしも指示カルテルのやり方だけでは十分でない面があるのではなかろうか。たとえば第一次の機振法では、規格制限カルテルというものが、いろいろ私どもが奨励をいたしたと申しますか、行政指導いたしましてもなかなかできない、指示をいたしましてもなかなかできない、こういったことがあるわけでございます。何ぶん規格の制限ということになりますと、主として部品とか材料の面でこれが出てまいりますが、大メーカーに対しまして、どちらかといえば中小のメーカーがたくさんございまして、こういった中小メーカーを中心といたします各種の部品材料等を、できるだけ規格を制限をして、そして多品種少量生産から一定の合理的な生産規模、あるいは品質の面におきましても、非常にすぐれた品質のものに集中的な生産が行なわれるようにするということがねらいでございますが、何ぶんユーザーのほうの力が非常に強いということ。また、いま言ったように、多数の企業者がそれぞれ競争関係でこれをつくっておりますので、ある種の規格を制限するということになかなか実際問題として困難がある、こういうことでございます。こういった面につきましては、現状におきましてもまだ十分な解決を見ていないのが実情でございますので、やはり今後は、こういった面の施策を一そう進めるためには、規格制限命令を置いて、私どもとしては、大メーカーと、いま申しました、これらに納めておる部品材料等のいわば中小メーカーとの関係、こういったものを十分調整をはかっていく必要がある、こういう観点からこの第十条の規定を設けた次第でございます。
  25. 左藤恵

    左藤委員 もう一問だけ私はお伺いいたしたいと思います。  次に、十五条には、従来の機械工業審議会及び電子情報処理振興審議会を改組して、そうして電子機械工業審議会というのを新しく設置し、そこに幾つかの諮問すべき事項を列挙してあるわけでございますが、こういった形でいままでの両審議会を統合するということに関連いたしまして、従来、機械工業審議会の場合は、いろいろ各業種機種といいますか、そういうものの業界の代表等が一人ずつみな入っておられるというような構成で、定員五十人ですかという形で審議会運用されておるというふうに伺っておりますが、そういった場合の運用のやり方につきまして、今後電子機械両方の審議会ということで一本化された場合に、メンバーもそのままの形でいけば倍になるというようなことにもなるわけでございますので、こういった点について、単なるそういう業界の代表というような形でなくて、もう少しフリーディスカッションをやれるような少人数にしぼるとかいうふうな形にし、また、そういう御意見を聞かなければならないときには専門委員というふうな制度を活用して、この審議会中身を密度の濃いといいますか、というふうなものにするお考えがあるかどうか、この辺のところについてお伺いしたいと思います。
  26. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 いまの御意見、私どももそのとおりだと思います。従来のたとえば機械工業審議会でございますと、現存の機振法に基づきまして、基本計画、それから毎年度の実施計画を定めてまいりますので、そういった実施計画を練るといいますか、十分審議をするという意味からも、いわば業界実態に即した計画でございませんと計画倒れになってしまうということも考えられますので、できるだけ業界の実際に携わっていらっしゃる方々を数多く委員にお願いをいたしまして、業界実態とかけ離れないような実施計画を組んでいこう、こういうことから業界関係委員の方々が相当多数おられたということでございます。ただ今回、こういったように、業種の面におきましても、新しい目標を掲げて、いわば特定機械工業ということでしぼりをかけてまいります。同時に、高度化計画におきましては、先ほど申し上げましたように、いわば単なる目標というよりももう少し意欲的なビジョンを盛り込んで、ほんとうに国際社会に一本立ちになれるような、同時に、新しく伸展いたしてまいります国内の各種のニーズに対応できるような機械工業というふうに考えておりますので、そういった面からも、お示しのような形でできるだけこの学識経験者と申しますか、こういった全体に広くお考えを持っていらっしゃる委員の方々も相当多数今回は入っていただいて、そしていまお話のような、いわば密度の高い審議をしていただくように心がけてまいりたいと考えております。
  27. 左藤恵

    左藤委員 特にこういった問題につきましては、国民のためのものであるという見地から、この審議会運用とか、そういうものも含めまして、この法の運用について十分配慮していただきたい、このように思うわけでございまして、なお幾つかの点につきまして問いただしたほうがいいという点もあろうと思いますが、この法案について一通りずっと見たということで、私の質問をこの辺で終わりたいと思います。
  28. 八田貞義

    八田委員長 石井一君。
  29. 石井一

    ○石井(一)委員 ただいま左藤委員から総括的な問題について質問がございましたので、私のほうからは、少し断片的になるかもわかりませんが、多少いまの質問に重複しない程度に質疑を進めていきたいと思います。  そこで、まず一番最初に基本的な問題でございますけれども、最近、国際化あるいは国内のいろいろな問題その他から、電子工業なり機械工業、それを取り巻く環境変化ということが非常に激しく流動的であろうかと思いますけれども、それに対する認識をどういうふうに通産省は持っておられるか。また、この両工業の重要性というものに対して、今後どういうふうに考えておられるのか。基本的なことでございますから、政府委員からでもけっこうでございますが、政務次官お見えでございますから、政務次官からでも、ひとつ通産省の基本的な考え方をまず聞かせていただきたい、こう思います。
  30. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 石井委員のおっしゃいますように、七〇年代はたいへん激動する時代でございます。まず第一に、われわれの社会の中で、今年行なわれます資本の自由化が本格化される。それから経済の成長ということで、労働力の不足というような問題がございます。そういう中で経済成長をやっていくためには、どうしても機械工業発展によって省力化をやっていかざるを得ない。それには、電子工業機械工業というものが一体化していかなければ、なかなかその環境変化に即応していかれないのではないかということが、通産省で考えておることでございます。そういう事情がございますので、ぜひそういうことで今度の法律を出していきたいということだと考えております。     〔委員長退席、進藤委員長代理着席〕  あと、日本産業の中で見ておりましても、機械工業というものが日本の貿易の中で大きなシェアを占める。また、これからの十年間において、相当大きく日本世界経済の中で寄与する部門でございます。そういうことからでも、通産省としては、これをぜひ高度化し、また新しい電子工業機械工業というものを一体化したものを育成していく企業に持っていく必要がございますので、そういうふうに努力いたしておる次第でございます。
  31. 石井一

    ○石井(一)委員 機械工業の現状について、生産であるとか、輸出であるとか、輸入であるとか、まあ私たちしろうととしまして、相当日本は進んでおるのではないかというふうに考えておるわけでございますけれども、国際比較などをやりましたときに技術的な格差がどういうふうになっておるか、また現況というものはどうなっておるかというふうな点について、もう少し具体的に御説明いただきたいと思います。
  32. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 機械工業の現状につきまして、要点だけ御説明をさせていただきます。  わが国機械工業は、戦後非常に著しい発展を遂げてまいりまして、昭和四十四年におきましては、その生産額は約十七兆六千億円程度、また輸出は約七十一億ドルということになっております。この十年間の年の平均の成長率をとりましても、生産の面では二一%、輸出の面はさらにこれを上回りまして二四%ということに相なっております。そういった結果、昭和四十二年におきましては、すでにアメリカに次ぐ第二の機械工業国ということになっておりまするし、また輸出の面におきましても、アメリカ、西ドイツ、イギリスに次ぎました第四位の輸出国というところまで成長いたしてきております。  こういったような過程におきまして、この機械の輸入といったものが漸次国産化され、さらには輸出にまで伸びてきたということでございまして、この数字の一、二の例を申し上げてみますると、たとえば金属加工機械というのがございますが、これは昭和三十一年には輸入が全体の中で四一%を占めておりました。反面、輸出はわずかに三・五%のシェアしかなかったのでございます。これが昭和四十四年になりますと、輸入がわずか全体の需要量の六・三%。四一%であったものが六・三%に減ってきておりまして、逆に輸出のほうは、三十二年におきましてわずか三・五%でございましたものが、倍増いたしまして七・九%。こういうふうに輸出、輸入の関係が逆転をしてきております。こういったことも、やはりこの十年間におきます機械工業の伸展を物語る一つの数字ではなかろうかと思っております。  しかしながら、やはり欧米の主要企業との格差と申しますか、大きさといった面で見てまいりますと、何と申しましても、まだ見劣りのする面がたくさんございます。たとえば軸受けという非常に重要な基礎部分の面で申しましても、上位の三社平均ということでとってまいりますと、一九六八年の統計でございますが、アメリカは四社の平均ということで日本の三社と比べましても、約日本の二・二倍。スウェーデンはもちろん一社でございますが、日本の三社の平均の七倍。こういったような、非常に巨大な企業が外国にはございまするし、特にまた電子の面につきましては、御案内のように、電子計算機におきましてもIBMというのが、何と申しましても世界の七割のシェアを占めているというような状況でございまして、まだまだ、資本の面におきましても、あるいは技術の面におきましても、これから先十分私ども合理化をし体力を養っていかなければ、なかなかこういったものに対抗できないというような面のあることも事実であろうかと存じます。
  33. 石井一

    ○石井(一)委員 プラス面、マイナス面、両方よく理解したつもりでございますが、この七〇年代を展望して今後どんどん生産を増強して輸出を伸ばしていくという長期的見通しに立っておられるわけでございますか。この点はいかがでございますか。
  34. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 機械工業の今後の方向とその具体的な見通しについてお尋ねでございますので、これも数字をもってお答え申し上げたいと思います。  第一点の今後の機械工業方向につきましては、先ほど来左藤委員の御質問にもお答えを申し上げましたように、やはり頭脳集約的な、あるいは高加工度的な機械というものに漸次合理化方向を推し進めていくということが第一点であろうかと思いますし、第二点といたしましては、先ほど来申し上げております機電一体と申しますか、機能商品的なもの、いわばシステム的なもの、こういった方向機械電子両面にわたる施策を講じていきながら、機械工業はそういった方向に進んでいくことになろうと思います。  そこで生産と輸出の見通しでありますが、これはまだ十分な検討を行なったものとは申せませんが、ごくラフな試算として申し上げてみますと、四十三年度から五十年度までの大ざっぱな見通しを申し上げてみますと、五十年度におきます機械工業生産は約四十三兆円、四十三年度の二・七倍程度の規模に達するのではないかと見込まれております。また輸出の面につきましては、先ほど四十四年の輸出が約七十一億ドルと申し上げましたが、五十年度におきましては、これが約二百億ドルという大きな規模になるのではないかと思います。この二百億ドルと申しますのは、新経済社会発展計画昭和五十年度におきます全輸出額が三百七十四億ドルと想定をされておりますので、優にこのうちの半分以上を機械工業がしょって立つ、こういうふうになるのではなかろうか。また、こういった目標に向かって、今後とも技術の革新、開発、また生産体制の合理化といった面に一段と私ども努力をしてまいらなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
  35. 石井一

    ○石井(一)委員 この機械工業における中堅企業であるとか、あるいは中小企業の占めておる位置、シェアはどういうふうになっておるのでございましょうか。私が推察するところでは、かなり高度の技術を要するのでありますから、やはり中堅以上の企業でないとこれはできないのじゃないか、また国際化の潮流に太刀打ちができないのじゃないか、こう思うのですが、中堅、中小企業の問題についてひとつ……。
  36. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 機械工業と申しますのは、素材の面、それから各種の部品の面、さらに、そういった素材を使い部品を使いまして最終的に一つ機械を組み立てるという、いわば総合組み立て、こういった面がございます。日本機械工業におきましては、この素材及び部品という面は中小企業あるいは中堅企業が非常に多数存在しておることは御指摘のとおりでございます。しかしながら、同時にまた、機械工業が必ずしも大きな巨大企業と申すものだけで成り立っておるわけではございませんで、いまお話しのような中堅企業でございましても、独得の技術をもって、一定の分野におきましては非常にすぐれた製品を出しておる企業も多数あるわけでございます。こういった面から、いま私ども中堅企業対策と申しますか、中小企業対策ではなかなかカバーできない、といって大企業と違って、金融面あるいはその他の面におきましてもいろいろな制約がある、こういった中堅企業というものに着目をいたしまして、こういった面をいかにうまく体制を整備し、そして、いわばそういった合理化された体制のもとに、それらの企業というものがさらに新しい技術を蓄積をしていくということをしてまいらなければならぬと考えております。本法におきましても、私どもこういった観点から、特に、共同行為の指示、あるいはこれに伴います各種の税制、財政上の援助措置等につきましては、主として中堅企業ということを念頭に置きまして、その面の施策を重点的に進めてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  37. 進藤一馬

    ○進藤委員長代理 関連して林義郎君から質問の申し出があります。この際、これを許します。林義郎君。
  38. 林義郎

    ○林(義)委員 いま同僚の先生方の御質問を聞いていまして、ぜひひとつお願いしたい、また御注文をしたいということがあるのでございます。  私は、機械工業の状態を見ますと、非常なピラミッド型と申しますか、網の目型と申しますか、そういった機械工業の構造になっているだろうと思うのです。いろんな部品をつくりまして、それからその部品をさらに組み立てていく、その上にさらにアッセンブリ工業があるというような機械工業の形態ではないかと思いますが、いろいろの機械をつくる場合におきまして、それをつくるところの機械、たとえば工作機械等もありますが、さらにベアリングのような、またナットであるとかいろんなものがございます。そういった一連の分野のものにつきまして、こういった施策を講じていかなくちゃならぬだろうと思うのです。したがいまして、実はこの中に書いてありますところは、機械工業電子工業、こういうふうに二つに分けておられますけれども、実際の運営におかれましては、そういったいわばいろいろな関連の部品、また、さらにそれをつくるところの工業というようなところまで広く運営をしていかないと、ほんとうに機械工業振興にならないのではないだろうか、こういうふうに考えております。政府のほうでいろいろな形を指定されるときには、そういったお考えでやっていただきたい。この辺につきまして、重工業局長さんは重工業局の問題でなくて、通産省としてやっぱりいろいろ考えていただかなくちゃいかぬことがたくさんあるだろうと思いますので、その点につきまして、重工業局の、あるいは政務次官にお願いしたほうがいいかもしれませんけれども、通産省のお考えをひとつ聞かせていただきたいのが一点でございます。  それに関連いたしましてもう一つ申しますが、電子工業機械工業というふうにわざわざことばを分けておられる。普通のわれわれの常識から見ますと、第一、電子工業というのは大体機械工業だろうと考えられるのでございますが、そこをわざわざ分けておられるところの理由等につきまして、御説明いただけたら幸いだと思います。
  39. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 林委員機械のほうは御専門家でございますから、あまり長い御答弁も必要でないかと思いますが、二点御質問がございまして、第一点は、機械工業といってもいろいろな部品あるいは基礎資材、こういったものがある、こういった面についてどういう配慮をするのか、こういうお尋ねでございます。法律によりますと、この第三条のイ、ロでございますが、イ、ロ、二つ観点から機種指定をすることにいたしております。イの点は、法律三条の第一項、第二項のイでございますが、これは先ほど来御説明申し上げておりますように、新しい社会的、経済的なニーズの面をつかまえた観点からこういった機種を選んでいこう。それからロの点につきましては、やはりそういった観点をまず前提に置きながらも、当然そういった機械というものは、それぞれの部品によって組み立てられておるわけでありますから、そういった基礎部品あるいは汎用的な部品、こういった面で品質の改善性能改善等を要し、また生産合理化を特に促進しなければならないものが幾つかやはりあると思います。こういった面につきましても、私どもは、ただ完成機械を頭に置くだけではなくて、その根っこにある基礎的な、あるいは汎用的な部品材料の面についても、機種指定を行なうにあたりましては十分考えてまいりたいと存じております。  それから、第二点の機械電子という問題でございますが、広くいえば何か機械産業と申しますか、そういったような概念でこれをつかまえることができるような気がいたします。しかし、電子機械という面で、ただ、少し実際問題として概念規定で違うと思われますのは、電子のほうは、一つ電子の機能というようなものに着目をして従来の電振法というものが運用されてきております。機械の面は、機械の個体と申しますか、ハードウェアの面と申しますか、金物といいますか、そういったところでこの問題をつかまえております。そういったニューアンスの違いが一つあることと、それからやはり何と申しましても、実体的な面で機械産業は、この十五年間、機振法の運用等にもよりまして相当程度進んでまいりました。先ほども一、二の数字を石井委員の御質問に応じて答えましたが、私どもとしても、やはり相当程度国際的な競争力を持った機械産業になってきた、こう思います。ところが電子の面は、これよりももう少し、やはり技術の面等におきまして、どちらかといえばまだ立ちおくれておる面が非常に多い。特にこの面につきましては、機械の面よりも技術革新性というものが非常に強い、こういうような特色を持っておるのがその実態でございます。  こういった面から、両方ひっくるめて一つの概念規定を置いて、たとえば機種指定等をいたしますよりも、それぞれの現状に応じ、特性に応じた機種指定というものを考えていくのがいいのではないか、こういった点から、三条の第一項におきまして両方を書き分けたわけでございます。しかしながら、先ほど来御説明申し上げておりますように、今後の機械産業、広い意味での機械産業と申しますものは、いわゆる機電一体という方向で、システムというものに大きな重点を置いて発展をしていかなければならないわけでございまするので、第三条の三項にはその趣旨を盛り込んでございまするし、また第五条以降の各種の施策につきましても、機械工業電子工業あわせて同じような施策を講じていくということにいたしておるわけでございます。
  40. 林義郎

    ○林(義)委員 局長のお話を聞きまして非常によくわかったのですが、私がお願いをしたい、また注文をつけたいのは、機械工業電子工業、こう並べてある。そうしますと、ずっと並べた場合におきます機械工業というのはわりと狭くなるのではないか。そういうことでなくて、先ほど来申し上げておるように、機械工業というのは非常にすそ野の広い産業である。そのすそ野のほうまでやはりいろいろな施策を講じていかないと、ほんとうに機械工業振興ということにはならないだろうと私は思うのです。その点をぜひお願いいたしまして、私の関連質問を終わらしていただきたいと思います。答弁はけっこうです。
  41. 石井一

    ○石井(一)委員 それじゃ続けさせていただきます。  そこで、ただいまの質問に関連してでありますが、産業構造審議会答申の中にいまの点はどういうふうに答申をされたのか。機電一体化というふうな面についてこういう形の法律の提案でいいのだろうか、この辺の論議はどうだったのだろうか、その点ひとつお伺いしたいと思います。
  42. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 私ども、今後の機械工業政策方向を樹立したいということから、一昨年の十二月に産業構造審議会に、今後の機械工業政策方向はどうかという諮問をいたしまして、昨年の七月まで非常に熱心に御討議を願って答申をいただいたわけでございます。この間、私もほとんど全部にわたりまして出席をいたしまして、熱心に各委員の御討議を拝聴いたしました。  その結果、大きく分けて三つの点があろうかと思いますが、一つは、先ほど来議論が出ておりますような、また左藤委員からも御指摘がございましたように、七〇年代の機械工業を取り巻く環境変化、こういうものをどう考えていくのかという議論が相当熱心に行なわれました。その結果、国際化の進展、労働力の不足の深刻化、さらに経済社会全般にわたる新しい需要の現出、さらに情報化の進展、この四つが、大きく分けて今後の機械工業機械産業を取り巻く環境変化の中で特に著しい点というふうなことで、議論が集約をされております。  特に第二点、労働力不足の問題という点からいたしますと、一面では機械工業も非常に多数の労働力を使用しておりますので、この点は非常に問題が深刻でございます。と同時に、みずから自身がやはり省力化機械の供給者という立場でもあるわけであります。こういった、自分自身も非常に大きな需要があると同時に、一方では省力化機械をすみやかにいいものをつくって産業全般に供給をしていく、こういう責任者でもある。したがって、この需要、供給両面の責任体制からいいまして、この面は、どうしても今後いろいろな施策の面で大きく取り上げていかなければならない、こういう認識が非常に深まり、その点の議論が非常に集中的に行なわれたという点が一つございます。  それから、環境変化の第三点でございますが、この面につきましては、従来どちらかといいますと、機械工業というものはいわば単体機械——工作機械もそうでございますし、繊維機械もそうでございますが、こういったような、単体の機械をつくる産業工業というふうに一般的に理解をされておったわけでございますし、そういうのが一般的な認識であったかと思います。こういったものに対しまして、今後の機械に対する需要というものは、これはやはり経済社会の大きな変革と合わせまして、たとえば宇宙でありますとか、海洋でありますとか、こういったような、いわば未来につながるような産業部面、こういった面での必要な機械の供給者、また、過密都市問題あるいは交通問題、教育問題あるいはレジャー、こういったものも、やはり従来の単体の機械という概念だけでは処理し切れないような、複雑で高度化された一つシステムとしての機械というものが必要になってくるのではなかろうか、こういう認識が非常に強く出てまいっております。  こういった面から申しますと、単なる従来の狭い意味機械工業という概念ではなくて、いわば電子機械というものを組み合わせました非常に大きなシステム、こういったものと機械産業としては取り組んでいかなければならない。同時にまた、システム自身をつくるといたしましても、ただいまも林委員から御質問ございましたように、そのシステムのモジュールとしての機械という面もやはり忘れてはならない。そこで、こういったような非常に大きな観点から、先ほど申し上げましたような機電一体という方向が、この答申の中で強く打ち出されてまいったのでございます。  同時にまた、こういったことを遂行いたしてまいりますためには、何と申しましても基礎になる技術の問題、特に、これも先ほど御質問がございましたが、ソフトエンジニアリングと申しますか、システムデザインと申しますか、そういった面で、どちらかといえば従来の日本は諸外国に立ちおくれております。こういった面をやはり今後いかにキャッチアップして伸ばしていくか、こういうことについての施策に大きく重点を指向していくべきであろう、こういった点が産業構造審議会におきますこの関係の議論の非常に重点であったように私は承知をいたしております。  こういった御審議、答申も踏まえまして、今回まず、これだけで全部の機械工業政策であるとは申しませんが、その骨格をなす一つ法律案というものを御提案申し上げた、こういう次第でございます。
  43. 石井一

    ○石井(一)委員 ちょっと話がそれるようでございますけれども、たとえば兵器産業なんかはこの中に想定をされておられるのかどうか、この点はいかがでございますか。
  44. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 兵器産業という概念も、あまり明確な概念ではございませんが、兵器の大部分と申しますのは、やはり機械及び電子関係で成り立っておると思いますので、広い意味機械工業電子工業、この一部に含まれるものと了解をいたしております。
  45. 石井一

    ○石井(一)委員 次に、これは両法律を今度コンバインされたわけですが、五年なり七年の時限立法としてこれまでたびたび更新をされて今日に至っておる。今回また七年の時限立法ということで、ここでいま審議をされておるというようなことでございますが、これはやはりこういうふうに時間を一々切っていく必要があるんでしょうか。この辺の説明をひとつ伺いたいと思います。
  46. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 従来の機振法は、御承知のように五年の時限立法でございましたし、また電振法は七年の時限立法でございました。ところが機振法につきましては、これは二回国会の御承認を得て延長されまして、計十五年、電振法につきましては一回延長されまして、計十四年間、この両法が実施をされてまいったわけでございます。今回この法案を出しますにあたりまして、私どもとしては、やはり七〇年代ということで、できれば一九七〇年までをカバーするような法案にしたい、こういう考えを当初持っておりましたが、その後各方面と折衝してまいりました結果、いろいろな点が議論の対象になってまいりました。  たとえば、この法律で申しますと、第六条以下に書いております共同行為の面でございますが、こういった面につきましては、やはり独禁法の例外規定でもあるということから、こういった独禁法の例外規定を、今回の法案では内容的に相当しぼっておりますが、それでも、あまり長期にわたって独禁法の例外規定実施をしていくということは、事実上どうも独禁法に対するしり抜けになりはしないか、こういったような面からする議論が一つございます。それからさらに、第十四条以降にも合併等の場合の特例が規定してございますし、こういったいろいろな面からいたしまして、やはり一定の期限を切ってこれを実施していくほうが、業界のほうも、いつまでもあるということで、ずるずるっと先が長いということであればそれなりに、俗なことばでいえば、少しのんびりし過ぎてやしないかという面等もございますので、やはり一定期限を切って、その間にこういった特定電子工業特定機械工業についてはまずは一通りの施策を進めていく、そして、そこで一段落したところでひとつ見直しをしてみる。その段階で、一体世界なり日本の現状がどうかといったようなことをもう一度振り返ってみるという期限をつけて促進をするほうが、むしろ実態に即しておるのではあるまいか。こういったような観点と両点合わせまして、何年にするかという議論をいたしたわけであります。その結果、やはり電子工業につきましては、先ほど来申し上げておりますように、やや狭い意味機械工業とは実態的に違った面もまだまだいろいろございますので、従来の電振法の期限でございました七年というのを一つ目標年次に置こう、こういう結論になりまして、この法案は七年間の時限立法ということで御提案を申し上げる結果になった次第でございます。
  47. 石井一

    ○石井(一)委員 次に、資本の自由化に対する対策ということについてお伺いをしたいのでございます。  両工業とも将来に対する展望は非常に明るいということでございますが、その反面、また諸外国との技術格差というものも、これはまぎれもない事実であるというようなことのようでございます。この場合、資本自由化に対する現状と今後の見通しをどういうように立てておられるのか、一体自由化に対する対策というのは万全になっておるのかどうか、この辺お考えになってもちろんつくられたと思うのでございますが、御所見を伺いたいと思います。
  48. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 機械工業につきましての資本の自由化は、四十二年の六月の資本自由化に関する閣議決定の線に沿いまして、第三次まで、つまり昨年の九月の自由化まで着実に進めてまいっております。その結果、家庭電器関係のもの、ベアリング、工作機械あるいは産業機械の一部、こういったものを含めまして、およそ大体八割程度の業種につきまして現在すでに自由化実施をされることになっております。この中で特別な扱いをいたしておりますのは御承知の自動車でございますが、この自動車産業につきましても、部品工業、販売業等含めまして、本年の四月から自由化をするという取りきめに相なっております。  今後の機械工業自由化の進め方でございますが、ただいまのところ、全体の資本自由化の進め方の線に沿いまして、第四次の自由化といいますものが半年繰り上がりまして、ことしの秋ということになっておりますので、原則五〇%自由化、資本参加ということを中心にしながら、今後もやはり自由化を着実に進めてまいりたいと考えておるところでございます。  そこで、こういったような自由化の進展ということを前提に置きまして機械工業政策をどう進めてまいるか、こういう御質問でございますが、やはり第一点は、何と申しましても、機械工業そのものの体質を強化し、技術向上をはかり、また同時に体制の整備をしていく、こういうことによって外から出てまいります外資というものに十分対抗し得るに足るだけの機械産業というものを育てていくということが、何と申しましても自由化対策の基本であろうかと思います。したがいまして、ここに第六条以下共同行為等について書いております点も今後こういった外資の上陸ということを前提にいたしまして、特に中堅企業等が多数あります機械工業が一段と共同行為を強めてまいりまして、そうして内容を充実していくということが必要になってまいると思うわけでございます。  同時に、これはあとからあるいは御質問があろうかと思いますが、従来の機振法、電振法になかった規定といたしまして、第十三条規定を置いております。これは必ずしも外資対抗のための規定というふうには考えておりませんが、要するに高度化計画の定めるところに従いまして、共同化あるいは専門化、こういうことをやっておりますときに、これに加わっておりません企業が大規模な生産開始をすると、あるいはそれも相当早い期間にそういうことをしてくるということによりまして、せっかく事業の共同化等をいたしておりますものに重大な影響を与えるということになってまいりますと、基本的な高度化計画そのものがくずれてまいりますので、こういった場合には通産大臣が勧告をすることができる、こういう規定を置いております。これは先ほども申し上げましたように、必ずしも外資というものだけに適用されるということではございませんが、おそらく、今後予想されます自由化に伴いまして外資が日本に上陸をしてくるとすれば、やはりこういったケースも間々あろうかと思います。こういった場合も十分予想されますので、こういった第十三条の勧告規定も置きまして、私どもといたしましては、今後の機械工業発展に万全を期してまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  49. 石井一

    ○石井(一)委員 その場合、勧告の要件なり内容をここに書いてございますけれども、少し具体性に欠けるように思いますが、この点について御説明がいただけますか。
  50. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 法律の条文に従って若干解説的に申し上げてみたいと思いますが、まず勧告の要件といたしましては、第一に「合理化関係特定電子工業等」、これは電子工業及び機械工業ということでございますが、こういったものを営む者が、高度化計画に従って事業の共同化または生産すべき品種の専門化、これを実施しているということがまず第一の前提でございます。この面につきましては、自助要件と申しますか、みずからがそういったことに努力しておるということがまず第一の要件でございます。  第二の要件でございますが、これはやはり、こういった共同化を実施しております者の当該合理化関係の機器の生産額、こういったものが総生産額に対して相当の比率を占めており、「相当」と申しますのはいろいろとりょうもございますが、少なくとも五割以上相当な分野でこういったことが現に行なわれておる、これが一つの体制の整備と申しますか、当該分野における重要な事業になっておるということがやはり第二の点でございます。  同時に、第三点といたしましては、大規模な拡大をこういった共同事業者以外の者がやろうということによりまして、この共同事業実施に非常に重大な影響がある、あるいはそのことがひいては国民経済全般にも悪影響を及ぼす、こういったような認定ということが第三の要件でございます。  こういったような要件がそろってまいりますと、勧告内容といたしましては二つございまして、一つは、そういった、新しく事業開始したりあるいは拡大をしたりしようといたします者について、この共同事業に参加をしなさい、あなたもこのグループにお入りなさいという勧告が一つの形でございます。第二の形といたしましては、この事業をやろうとします者に、その事業開始の時期でございますとか、あるいは拡大をする場合の規模、こういったものについて、私どもが全体を見て、適当だと思われる時期に適当だと思われる規模でひとつ事業開始、もしくは拡大をしてください、こういった勧告が第二の勧告の形でございます。  こういったようなことでございますので、やめてしまえ、あなたは絶対そういうことはやってはいかぬとか、こういったようなことではございませんので、一つには、共同事業がせっかく全体の中で非常に大きなシェアで行なわれておるのだから、どうぞお入りなさい。あるいはどうも入ることが適当でないと思われるときには、事業開始、拡大をしようとするときに、この共同事業がぶっこわれてしまわないように、その開始の時期なり、あるいは拡大の規模なりというものについて、国民経済全体の観点からひとつ調整をしていただきたい、こういう勧告をしていきたい、こう考えておるところでございます。
  51. 石井一

    ○石井(一)委員 御趣旨はよくわかりますけれども、そういう勧告が、ある場合には、企業の自助努力であるとか、あるいは合理化というものを、かえって阻害する結果になる場合も起こり得るのではないか。そういうことを多少懸念するわけですが、その点はいかがでございますか。
  52. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 確かに、いまお話しのような点で、一方で共同事業をやっておる、そこへ新しいものが出てくるわけでありますので、むしろそれをかみ合わせるといいますか、競争関係に置いたほうが、かえって刺激にもなり業界進歩にもつながるということになるケースもあると私は思います。そういうことは全くないとは考えられません。そこで、この勧告をするに際しまして、こういったことについても、私どもやはり十分彼此勘案をして、ほんとうに必要最小限度これをやらなければ、全体の機械工業の今後の伸展なり、ひいては国民経済に非常に大きな影響がある、こういう認定をいたしました場合、さらに、この法案にもございますが、審議会等にもはかって、非常に多方面から合理的な御意見もちょうだいをいたしまして、そうして慎重にこういった御意見も聞いた上でひとつ勧告をしよう、こういうことでございます。この点につきましては、十三条の第二項の後段でございますが、「一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害するおそれがないものでなければならない。」、こういう規定は、まさにいまの御質問の点を十分踏まえた規定でございまして、私ども審議会等の場にこういったこともはかりまして、いま御指摘のような、かえって弊害が出ないように万全を期してまいりたいと思います。
  53. 石井一

    ○石井(一)委員 その点は確かに懸念されるところだと思いますので、法の運用について特にひとつ尊重されるように御要望申し上げておきたいと思います。  それから、自由化の問題に触れましたが、もう一つ懸念されるのは、いわゆる特許独占に対する施策をどう考えておられるか。おそらくそういうベースも私は想像できると思いますけれども、そういう場合に、たとえばここにあります十三条の勧告というふうなものを与えてもいいのではないかと思うのでございますが、その辺はいかがでございますか。
  54. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 先ほどの御質問の中に、産業構造審議会答申という面で御質問がございましたが、あの答申を出します際におきましても、実は特許の独占問題、これについて何らかの施策が必要ではないかということが議論をされております。こういった議論を受けまして、私どもとしましては、いわゆる独占的権利であります特許権、これと産業政策の調整、こういう問題をいかにうまくかみ合わせていくかということについていろいろ検討したのでございます。その結果、次のような一、二の点がございまして、今回の法案には実は入れなかったのであります。  その理由といたしましては、一つは、問題となってまいりますようなケースは、実際問題として考えますと、日本経済にとっての非常に戦略的に重要な産業におけるいわゆる基本特許、こういったものであろう。こういったようなものであるといたしますと、現行の特許法の九十三条によりまして、通常、実施権の許諾の裁定の一定の要件を満たせば行ない得るという状態にあるわけでございます。私のほうは、一面におきまして、機械につきましては、政令指定をするにあたりまして、いわばニーズと申しますか、今後の機械工業に対する新しいニーズの面から、資本をかけて特定機械工業ということでやっていこうということでございますので、いま申しましたような特許、特に基本特許と申しますか、こういった面を考えてみますると、やや観点のずれと申しますか、そういったことで若干バランスが合わないと申しますか、そういった面もあるのではなかろうか、こういったような気もいたしております。同時にまた、こうした基本特許を武器といたしまして非常に大規模のニューエントリーが行なわれるというようなことであれば、先ほど申しましたように、第十三条の勧告をもってこれは対処していきたい、こういったような考えでおるわけでございます。
  55. 石井一

    ○石井(一)委員 まだもう少し続けたいのですが、大臣もお見えになったようですから、大体これで私の質問を終わりたいと思うのですが、実は大臣、先ほどから、ただいま議題になっております特定電子工業及び特定機械工業振興臨時措置法案に対して、こまかい内容について政務次官並びに政府委員からいろいろと意見を承ってきたわけでございます。確かにわが国産業にとって基本的に非常に重要な法律だと思いますし、今後の運用面その他で大いに配慮をしていただかなければいけない点をいろいろ御要望を申し上げておるのでありますが、一言にいって、今後どんどん伸びていくかわりに、国際化の潮流の中で激しくゆれ動くということでございましょうけれども、大臣として、七〇年代の機械工業電子工業施策を推進する決意というものを一言最後にお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  56. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まず、ただいまの御指摘のありましたいわゆる国際化の問題でございますけれども、六〇年代におきまして私ども国際化自由化というものを考えましたときには、自由化をする、外国から押し寄せてくる波にどうやって対処していくかということを、やはり幾らか守勢の感じで考えておったと思いますけれども、七〇年代におけるわが国機械工業電子工業に期待されるものは、むしろそういう守りの姿勢というよりは、国際化に対処して、わが国のそれらの工業世界のそういう工業をいかにリードするかという点ではないかと考えます。したがって国際化というものは、考え方において、六〇年代においての姿勢と七〇年代における姿勢と、おのずから異なるべきではないかと思っております。ことにわが国の場合、従来しばしば御指摘がありますように、公害問題であるとか、あるいは自分自身の資源をたくさんには持っていないということであるとか、労働力にも不足が来るとかいうようなことから、いわゆる技術集約あるいは頭脳集約型の産業に進むべきではないかという御指摘がしばしばあるのでありまして、そういう観点から考えましても、この第一の問題についての必要はなおさらであろうと考えるわけでございます。  次に、第二に、七〇年代の課題としてあらわれました人命の尊重、あるいは社会環境改善といったような新しい需要と申しますか、ニーズと申しますか、そういうものを機械工業なり電子工業なりが満たしていかなければならないという、第二の命題があると思います。  それから第三に、このごろしきりにいわれますように、いわゆるシステムとして産業をとらえる、あるいは社会の構造をとらえる、こういう問題も七〇年代の新しい意識であると思いますけれども電子工業機械工業が、そういうシステムとして与えられた自分たちの役割りを果たしていく、そういう意味で、これは六〇年代になかった課題であろうと考えるわけであります。  ほかにもいろいろ申し上げたい点もございますが、それらの三つのおもな点を中心に考えまして、このたびの法案に基づいて、財政的にも、また税制の面からも、金融の面からも、できる限りの支援をこれらの産業発展のために与えていきたい。七〇年代から見ましたこれらの産業に期待するものは、そういう点であると考えております。
  57. 石井一

    ○石井(一)委員 終わります。      ————◇—————
  58. 進藤一馬

    ○進藤委員長代理 次に、通商産業基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石川次夫君。
  59. 石川次夫

    ○石川委員 通産大臣にわずか三十分しか質問できないということなんですが、私の質問しようとすることは、とてもそういう時間ではおさまりそうもございませんから、非常に要点だけでたいへん残念でありますけれども、大臣に所見を伺いたいと思うのです。  目下のところは、公害、物価ということが非常に大きな課題になっておりますけれども、長期的に見て、日本の、特に通産を通じての最大の課題は一体何であろうか、こう考えてみますと、私はかねがね情報と資源の問題に帰着をするのではなかろうかと思っております。情報の問題は、いわゆる情報化社会にどんどん日本がヨーロッパを追い越して急速に進んでおりますから、いわゆる断絶の時代というものは非常に急ピッチでやってくるのではないか。こういう精神の荒廃といいますか、精神の変化といいますか、そういうものに対応する対策も含めながら、ハードウエア、ソフトウェアをどう進めていくかというようなことは、これは政治の長期的展望に立った場合の最大の課題であろう、こう思っておりますけれども、きょうはそのことについて質問するつもりはございません。  きょうは、海外資源を含めて、日本の資源が十年後を見通した場合に一体どうなるであろうかということを考えますと、まことに暗たんたるものがあるわけであります。そのことに触れる前に、海外資源といいますと、目下のところは原油の問題が、物価の問題も中心になりまして、非常に焦点になっておるわけでありますけれども、けさ見た新聞でちょっと気になることがある。その前に伺っておきたいのでありますが、原油の輸入について外貨の割り当てをやるというようなことが新聞にけさ出ておりました。このことは、自由化というものに対する一つの逆コースをとることになるのじゃないか。このことによって統制強化をして、原油の取引ということの価格交渉に対しても何か通産省が主導権をとるという意図がここにはっきり出ておるのではなかろうか。このことのよしあしということの判断はまだつきませんけれども、この意図は一体どこにあるのだということを最初にちょっと伺っておきたいと思うのです。
  60. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わが国の精製会社が、いわゆるOPECとメージャーとの相談の結果をそのまま安易にひっかぶるようなことがあってはならないというのが、私どもの毎々申し上げる考えでございますので、そういうふうにしないためには、どれだけの措置が政府として可能であろうかということをいろいろに考えております。その一つとして、原油の割り当てという問題が研究課題として浮かんできておるわけでございます。その気になりますれば、原油については各国とも、自由化をしていない国はアメリカをはじめ多数ございますから、いわゆる自由化観点から、原油の割り当てをしましても文句を言われる筋合いはない、こう考えておりますので、その点は実はあまり気にいたしませんのですが、一度割り当てというものをいたしますと、それから生ずるところの弊害、いろいろな複雑さ等々、本来、私どもの経済政策から申しますと、できるならばやりたくない種類のことでございます。そういうことと、わが国の精製業者があまり安易にメジャーの言うことを許容する、それに対して政府がどれだけの対応措置がとれるかどうかということ、当面のそういう必要、それとのかね合いを見まして、とにかく研究だけはしてみろと申しておるところでございます。
  61. 石川次夫

    ○石川委員 まあ、政府が指導的役割りを果たすということの必要性というのは、私も基本的にはわからぬわけじゃないんですが、こういう方法がはたして妥当かどうかということについては、私自身もまだ結論が出てないわけでございまして、一応きょうはその点だけにとどめておきたいと思うのです。  それで、海外資源の必要性ということは、もう私から申し上げるまでもないわけでございますけれども、何といいましてももう昭和四十六年でございますから、昭和五十年をとりましても、銅は八三%海外依存、鉄鉱石は九〇%、原料炭が八六%、石油はもうほとんど一〇〇%、ウランについては全面的に海外依存というようなことでありますから、いかにハーマン・カーンが、二十一世紀は日本の世紀であると言ったところで、この資源の一つを考えても、すでに日本生産は連鎖反応を起こしてストップせざるを得ない。石油だけについても、四十日くらい備蓄があるというようなことがいわれておりますけれども、ランニングストックでありますから、現実的には二十日くらいで計算してみなければならないというような実態であるといたしますと、どう考えても、海外資源を何としても自分の手である程度は確保できるという体制をつくるのには、日本はちょっとおくれ過ぎておるのではないか。これは歴代の通産行政の非常な失政というものが、ここにはしなくも出てきたんではないかと思うのでありますけれども、しかしながら、海外資源というものは向こうの主権の存在するところに行ってこちらが自主的に開発をするということでございますから、そう簡単な問題ではないことは言うまでもないわけであります。  そこで、まずお伺いしたいんですが、きょうはもうほとんどこの基本的な考え方というものだけで時間が尽きてしまうんじゃないかと思うのでありますけれども、石油であれば三〇%を目標として何とかこれを自力でもって確保するという対策を立てよう。三〇%といっても、昭和六十年度になりますと、大体七億キロリットルということでありますから、これはたいへんなことなんです。現在成功しているのは、アブダビが若干成功しているくらいで、あとプロジェクトはたくさんありますけれども、ほとんど日の目を見ていないというような実態なんでありますけれども、この三〇%の目標は、いまのような姿勢で取り組む限りは、空想的な目標にすぎないのではなかろうかというような懸念が非常に濃いわけであります。あまりにもそれを強引にやろうとすればリスクが相当多いのではなかろうか。それから後進国の利害との関係の調整を一体どうするのだというような問題が当然浮かび上がってくるわけであります。エネルギー調査会あたりでは、四十六年度、原油で五億キロリットル。これはほんとうは五億キロリットルではちょっと見積もり過少というような現状でありますが、それをエネルギー調査会あたりでも、はっきりと三〇%、こういうふうな目標を立てておるやに聞いておるわけでありますけれども、一体これは可能なのか。ほんとうにこれに取り組んで、自力でもってOPECの言いなりにならないような体制をつくるという決意と政策というものの自信があるのかどうかという点を、まず伺いたいと思うのです。
  62. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実は昨日も、総理大臣と石油を中心にそういうお話をいたしておりまして、ちょうど総理大臣も石川委員が言われたようなことを考えておられたのだと思いますが、自由世界第二の経済といいながら、いかにも綱渡りではないかというお話がありました。私も、それはそのとおりであって、考えてみれば終戦後二十何年か、ずっと綱渡りをやってきて、じょうずに渡ってまいりましたから、綱の高さも実はあまりみんな感じなくなって、幾らかなれてきた感じになっているかもしれませんが、実際はそのとおりである。そのとおりでございますけれども、しかし考えてみますと、それらの資源というものは、まだ世界的に相当に賦存しておる。しかもそれらの資源を持っておる国は、これを自分に有利にではありますけれども開発をしていくということがそれらの国の利益にもなるわけでございますから、確かに石油など、幾らか広い網を張られてしまいましたが、しかし、まだまだ潜在的な資源がないわけではない。ですから私は、幸いにわが国にこれだけの力もついてまいりましたから、そんなに悲観をしたものでもないという考えは基本的に持っておるわけでございます。  そこで一番の問題は、おそらくは金がないとかいうことでもなく、また資源をさがすのにリスクがあるということでもなく、それらおのおの問題ですけれども、もっと問題は、そういう発展途上国にわれわれが、どうやってきらわれずに、相手から歓迎されるような状態で一緒に、つまり相手の社会に入っていけるか、まざり合えるかという実は問題ではないのかという、そのことがこれから十年、二十年の間に一番むずかしい問題ではないかと思っておりますが、このことを間違いさえしなければ、そんなに先を暗いもの、悲観すべきものだとは考えておりません。このことは、ただいま仰せられました石油の三〇%自給につきましても同様なことで、そのこと自身が不可能なことだ、あるいは非常にむずかしいことだというふうには私は考えません。むしろ、われわれが相手国とどのように協調しながらやっていくか、成功するかというわれわれの心がまえの問題に一番むずかしい問題があるのではないか、こういうふうに思っております。
  63. 石川次夫

    ○石川委員 非常に楽観論の御答弁のようだったけれども予算関係からいっても、今日まで三百億円投資をしてアブダビだけが一応成功というようなかっこうで、投下した資本というもの、予算というものはきわめて少ない、単なる助成にすぎないというような現実なんで、そういう体制も変えていかなければならぬということもありますけれども、その外国にいかに協調的に、日本が自主的に採掘できるような体制をつくり得るかということが、非常に私は問題だろうと思う。  まず基本的には、国民経済全体として海外資源開発を考えるのか、あるいは企業のベースで考えていくのか、消費者のベースで考えていくのかという考え方一つあると思います。しかし、それ以上に必要なことは、ナショナルインタレストでこれを考えたのでは、とても他国との協調というものはできないのではなかろうかというので、あくまでもインフラストラクチュア、それに関連する道路あるいは港湾、あるいはその国におけるところの技術指導をして、全体の経済というものを向上させるというような体制をつくってやるのだ、という日本の国の体制というものができない限りは、なかなか向こうで受け入れてくれるということにはなり得ないのではないか。その姿勢というものをきちっと立てないと、いまのままの体制でいまから無理やりに強引に押し込んでいくといっても、とても不可能ではなかろうか、こういう感じがするのですが、簡単にその点について御所見があれば伺いたいと思うのです。
  64. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先方にとりましては大切な資源であり、これにたよって先進国家化をはかろうとしておるのでございますから、ただいま御指摘されましたことはまことにそのとおりだ、私もきわめて同感であります。
  65. 石川次夫

    ○石川委員 私も東南アジアを回ってまいりまして、これは石油の関係じゃございませんけれども日本からたくさんの商社あるいは製造会社が出張員を出しております。きわめて優秀な人が行っておりますけれども、どう考えても、白人というのは自分たちと同等あるいはそれ以上であって、東南アジアの人は自分たち以下なんだ、というふうな潜在意識が抜けないということが一つ。それからあと一つは、行っている人はまことに優秀な選ばれた人ではありますけれども、何といいましても、非常な壮烈社員、猛烈社員が行っておるわけで、自分の企業に何とかして貢献しなければならぬということが第一でありまして、国全体の利益のためにこの国と何とか協調していかなければならぬという姿はどこにも見受けられないというのが、私の率直な印象なんであります。そういうふうな印象からすれば、とても日本の国とひとつ仲よくやろうじゃないかということにならない。あるいは東南アジアあたりへ行けば、日本という国はがめつい、アメリカあたりのほうがまだまだ話がわかるのだというのが定評であります。こういうような定評を前提として、日本がほかの東南アジアなりあるいは発展途上国なりへ行って、そういう協調を得られるかどうかということになりますと、はなはだ疑問が多いのではないか。  したがって、そういう点を打開するのに、いきなり指導するといってもなかなか簡単ではありませんでございましょうけれども、いま非常にプロジェクトが多いわけですね。私がちょっと見ただけで、一々読み上げてもよろしいのでありますが、十八もプロジェクトがあって、一企業が大体一つのプロジェクトということになっております。しかもその一企業一プロジェクトというのは、アップストリームだけなんですね。ダウンストリームというか、精製をする、精錬をするということを全然考えないで掘るだけだ。きわめて不安定で、掘ったらあとは政府が何とかしてくれるだろうというような、極端な言い方をすれば、無責任体制のもとに採掘をするというような情勢になっている。私はこの石油のことだけを言おうとしておるのではない。これは、OPECの関係がCIPECのほうにもそのうちに波及するであろうという予感もしておるのであります。そういうことを前提として、一つの例として石油を取り上げておるわけでありますけれども、そういう点で、何としても向こうの国と協力体制を得られるということのためには当面何をなすべきか、このことのお考えがありましたらお知らせを願いたいと思うのです。
  66. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 前段の問題は、結局、われわれ民族がいろいろな経験を重ねて、それにかんがみてだんだんならっていかなければならぬ非常にむずかしい仕事でございますから、確かに安易に成功すると考えるわけにまいらないほどむずかしいと私は思っております。しかし、幸いにして、このごろ現地におります商社の人々の中でも、結局、根をおろしてほんとうに仲よくやっていくのには、国全体の姿勢、あるいはそこにいる人そのものの姿勢が大事だ、目前の利益を追求しておったのではもう現地に入れないというような反省が、まだまだ抽象的ではありますけれども、生まれてきておるように考えます。私ども、事あるごとにそういうことを申し上げ、また自分もそういう心がまえに立とうとしておるわけでございます。  それから、後段の問題でございますけれども、確かに、一プロジェクト一社というのは、そのプロジェクトがだめになりますとその会社はもうだめになるということで、非常に危険負担能力が小さいことになるわけでございますから、これはやはり、現在あります姿というものを何かの形で考えていかなければならないことだと思いますし、またどこかにプロジェクトがありますときに、急に金を集めてそれに対応する会社をつくる、そうしなければ対応できないというようなことも、何とか考えようがないものであろうかということも実は考えております。  それから、アップストリームの問題ですが、いまのところ幸か不幸か大きなアップストリームにぶつかっておりませんが、大きくぶつかりますと、国内ではそれをどういうふうに精製するのかという問題が確かに出てまいります。それで、精製設備は毎年ふやしていってはおりますものの、かなりのものがいろんな意味でひもがついておるわけでございますから、実は精製許可にあたりましてのそういう問題も考えていかないといけない。全面的にそれらの問題をひっくるめまして、資源、ことに石油でございますけれども、この際新しい考え方を打ち出さなければならないと思いまして、この夏ごろまでには、あれこれそろえまして施策を固めてみたいと思っておるわけでございます。
  67. 石川次夫

    ○石川委員 私は東南アジアへ行ったときに感じましたのは、資源開発の問題でもその他の問題でもそうなんでありますけれども日本の軍国主義というものに対する警戒心は案外根強いということを見て、実はびっくりしたわけなんです。ところが日本の場合には、御承知のように、GNPの中に占めるところの軍事費の比率というものは、先進国の中では非常に低いじゃないか、われわれは結局軍国主義ではないのだ、ということを強調することがわれわれの立場ではできたといたしましても、私が行きましたのはおととしですが、たとえばインドネシアが一番大きな国だと思うのですけれども、ここの一般予算日本の金に換算をいたしますと大体五千億なんですね。非常に少ない国家予算で驚いたのでありますが、四割を国防費にさいているのだというのでまたびっくりしたのであります。特別会計がそのほかにたくさんあるわけでありますけれども日本のGNPの中に占める、あるいは国家予算の中に占める軍事費の予算はきわめて少ないのだといっても、ことしは六千七百億円を無理なく取ったと、こう言っておるわけであります。そうなると、向こうの絶対値からいいますと、日本はいかにそういうふうに謙虚な国防費を組んだといいながらも、かなり強大な軍国化しつつあるのではないかというような懸念が持たれ、それに伴って警戒心が生まれ、それがひいては海外開発というものについて、あるいは片貿易の問題もございますけれども、相当な悪影響を及ぼしてくるのではないかということを私は率直に言って懸念しておるわけなんです。それを私はここで通産大臣にお伺いをして、ここで、そうだというふうな共鳴を得ようとも思いませんし、そういう答弁のできる立場ではないと思いますけれども、実を言うと、GNPの一%をさいて開発途上国に対して援助をするのだというふうな大方針はありますが、このGNPの一%というのは軍事費をさいているのだ、われわれは戦争はしないのだ——実際また、九〇%を依存しなければならぬという将来の日本海外資源依存率というところから見れば、もう戦争はできない国なんですよ。でありますから、あくまでも平和に徹して、軍事費をさいて開発途上国の援助をするのだというような姿勢というものが確立をされないと、後進国に入っていって、そこでマラッカ防衛論なんというようなものが飛び出すかっこうでは、なかなかむずかしいことになるのではなかろうかということを私は痛感しておるのであります。その点は所感をお述べくださいと言ってもちょっとむずかしいと思うのでありますが、通産大臣、何か御意見があれば伺いたいと思います。
  68. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 平和憲法を持ちましたわが国として、いかにしてでも第三次世界大戦というようなものは防がなければならないのでありますが、そのような危険はおそらくは南北間の格差というようなことから一番起こりやすいのでありますから、われわれは平和憲法のたてまえから申しましても、総力をあげて南北間格差といったようなものをなくしていかなければならない、それが御指摘のような経済協力の問題であろうと思います。また、もう少し次元の低い立場から申しまして、戦争が起こりましたら、一番困りますのはおそらくわが国でございますので、そういう立場からいっても、そういうことはやはり極力避けていかなければならない。両様の立場から申しまして、あまりむずかしくものを申さない限りでなら、軍備などに膨大なつまらない金を使うくらいならば、それを発展途上国のために使っていってお互いに平和の基盤を築く、このほうがもっと賢いやり方ではないか、われわれとしてはそうやるべきではないか、そういう御指摘であろうと私は思うので、基本の哲学で私もそのとおり考えております。
  69. 石川次夫

    ○石川委員 これをぜひ内閣の姿勢にしていってもらわなければ、とんだ取り返しのつかないことになるのではないかということを私は懸念をしております。  質問することがたくさんあるので、時間がなくてまことに残念でありますが、個条書きのようなかっこうで質問いたしますから、簡便に御答弁を願いたいと思うのであります。  実は海外資源開発ということになると、いろいろな情報というものを確保しなきゃならぬということになることは当然だと思うのでございます。金属鉱物探鉱促進事業団は海外に二カ所、キャンベラとロンドンにありますが、ことし認められてペルー以下四カ所ということで、合計六カ所ということになったわけでありますけれども、フランスでは二十二カ所、ドイツは十四カ所、イギリスは十五カ所、こういうのに比べると、情報をとる体制というものはあまりにも貧弱ではないか。最近はこれはたいへん認識されて、ことし四カ所ふえたということにはなっておりますけれども、宇宙開発以上にたいへんなおくれがある。これを急速に取り戻していかなければならぬのじゃないかという点があります。  それから石油開発公団の場合でいいますと、現在ベイルートにあるだけですね。ことしは四十六年で三カ所要求したけれども、これは全然認められなかったというふうに聞いていますが、それははたしてそうなのかどうか。ということになりますと、これまた、たとえば一つの例をあげますと、フランスは全世界に四十七カ所の駐在所を持っておる。これを通じていろいろと情報を探索しておるわけであります。そうなりますと、日本なんかはまるっきり手も足も出ない。商社なんかにたよっていろいろやっているのでありますが、商社自体ではなくて、日本の国の体制としてこのような立ちおくれというものを早急に回復をしないと、もう情報収集の点でもたいへんな立ちおくれで取り返しがつかないような現状に置かれている。この点はどうお考えになり、またどうやってこれを追いつき追い越せというふうな体制に持っていけるか。これは内閣全体の問題として、通産省だけの問題ではないと思うのです。日本の国にとって将来たいへんな禍根を残すことになると思いますので、この点についての決意をひとつお伺いしたい。
  70. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これもまことに私が一番痛感していることの一つでありまして、ただいままで私どもの情報網というのはきわめて乏しい。石油開発公団につきましては、ベイルートにございますもののほか、四月、予算が成立いたしましてから折衝することになっているそうでございますけれども、いずれにいたしましても、いままで商社という外国にないようなものをわれわれは幸いに持っておりまして、これがある程度情報網になっておったことは確かでありますけれども目的から申しますと、やはり必ずしも政府の考えておりますことと一緒ではございません。  そこで、これはできるだけ金をかけ、人を早く集めてやりたいのでございますけれども、当面の問題として、私どもはジェトロを持っておりますから、ジェトロの駐在員に、とにかく資源というものについて常に神経を働かせてもらうようにということを、実は先般ジェトロの新しい仕事としてひとつやってもらうことにいたしました。これはそういう体制に入りました。それからもっと申せば、在外公館の諸君に対しても、資源というものについてはできるだけ神経を使ってもらう。さしずめ、あるものを最も効率的に使うのにはどうすればいいかということを、ただいまやりつつあるわけでございますけれども基本的には、もっと人と金をかけて専門の情報網を持たなければ、これはとてもやっていけない。おっしゃいますとおりでございます。
  71. 石川次夫

    ○石川委員 まあ痛感しているようでありますから、あえて追及はいたしませんが、現在、ジェトロその他にそういう任務を与えたということは新聞で承知はいたしておりますが、ジェトロはジェトロとしての任務がまた別にあるわけでございます。それが専門に非常に困難な資源開発の情報を探るというわけにはとてもいかないのではないか。これはそれだけの技術を持っているわけじゃございませんから、特に世界の石油の輸入の三分の一を日本が引き受けているというような情勢であるというふうな必要性からかんがみても、あまりにも劣勢である、あまりにも貧弱であるということは否定できないのじゃなかろうかと思うので、この点は急速にひとつ解決をはかってもらいたい、またもらわなければならぬ、こう思うわけなんです。  それから、話がこま切れになってたいへん恐縮なんでありますけれども、一プロジェクトで十六社でもって、私の見ただけでも、大体十八ぐらいの計画があるわけですね。これが単なる補助金を出すということだけでありますから、これに対して強力な行政指導ということはできないような体制になっております。石油開発公団それ自体が採掘権を持つというふうなことも新聞でちょっと見たわけでありますけれども、とにかく思い切った資金を投入して、これらのプロジェクトを思い切って整理をするというようなことを通じて、国自体が乗り出していく。国自体が行けば、国と国との利害関係ということで、商社が行って自分の企業ということだけでなしに、今度は向こうのインフラストラクチュアなんかも含めて、向こうの開発も含めていくのだという考え方も、国としてならできると思うのです。企業としてはなかなかそこまでは手が出ていかないというようなことも含めて、やはり国が相当乗り出して、プロジェクトを整理して積極的に乗り出していくというような体制を至急につくる必要があるのではなかろうかという点について、ひとつ簡単に御所見を伺いたいと思うのです。
  72. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実はこれも、先ほど申し上げました仕組みの検討の中の一つの大事な項目になっておるのでございますけれども、私ども、できれば民間の創意というもの、それが盛んであります限りはそれを押し立てていきたい。また民間では、そう言っておられますので。それにしても一社一プロジェクトはいかがかと、先ほど申し上げたような理由で思っておりますから、これは調整をする必要があるといたしまして、民間の企業の創意というものを前面に押し立てていきたい。  ただ、それにしましても、何かいい利権でもありましたときに、それから会社をつくるのでは急場の間に合わぬということもございます。それから、さっき言われますように、ジェトロ等々のしろうとでは、地質図を読むなんといっても、とてもできないことでございますから、それらのものは公団なりの専門家が読まなければならない。少なくとも公団というものの機能をもっと大きなものにしてまいらなければならないということは確かでありますが、実はそこで一つ問題なのは技術者の問題でございまして、いままでは、売り込みに来ましたものを買っておりましたから、それで済んでおりましたのですが、どうもその辺のところがやはり急速に整備をすることがなかなかむずかしい。そういう技術者なんかの問題がございます。  それから経済協力との関係は、普通、商社が一つの仕事を見つけますと、当然これが大使館等々から外交ルートに乗ってまいりまして、これには経済協力がどうしても伴うというようなことで、経済協力基金なり輸銀なりが動く、そういう仕組みで、いままでのところは、仕組みとしてはまずまずいいようにできておりますけれども、それよりも、冒頭に言われましたように、経済協力というものをばらばらにやるのではなくて、相手国の立場を考え、そして資源との関連で積極的に重点的にやっていく、そういうような心がまえというか、ものの考え方はいままでやや欠けておりました。これは直していかなければならない点だと、思っております。
  73. 石川次夫

    ○石川委員 時間が来てしまいましたので、人的資源の問題、資金の問題、たくさんあるのでありますけれども、これはたいへん重要な問題でありますから、質問を保留して、あとでまたじっくり、ほんとうは佐藤総理にも出てもらって、事の重要性というものを十分に認識してもらうだけの一重要性を持っているのではないかと思うのです。そういう点でそういう機会を得たいと思うのですが、最後に一点だけ、これは思いつきのような質問で恐縮なんでありますが、伺いたいのであります。  政府の試算といっても、昭和六十年までに海外探鉱の資金は公団で六〇%負担する。これは石油の場合です。六〇%負担するとしても二千二百億円で、大体陸上九百億円。そのほかに海域が千三百億円、これは海洋開発でありますが。合わせて四千五百億円、年間最低三百五十億円、これくらい出さなければならぬだろうということが出ているわけです。そうしますと、いままでの助成金のような程度では、これはとても問題にはならないということにならざるを得ないと思うのであります。  そこで私は一つ考えられるのは、外貨対策として申し上げるわけではないのでありますけれども、たまたま日本には外貨の準備というものも相当多いわけであります。したがって、三百五十億円といえばちょうど一億ドルです。日本の将来がどうされるか左右されるようなきわめて重要な課題でありますので、この外貨の中で一億ドルくらいは直接海外資源開発ということに、直接出すということにいかぬでしょうから、銀行を通じてというかっこうになりましょうけれども、これは当然考えられてしかるべきではないか、またそれだけの重要性もあるのではないかということを考えるのですが、大蔵省ではいろいろな事情があって、なかなかおいそれとはいかぬと思うのです。しかし通産省の姿勢としては、たまたま外貨というものに若干の余裕がある、外貨対策ということではなしに、海外資源開発というものはきわめて重要なんだ、いまにして相当のピッチを上げて追いつかなければとんでもない禍根を残すということを考えると、これは当然そのことは考えられていいんではないかと思うのでありますけれども、どうですか。
  74. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実は、その問題はつとに私から大蔵大臣に問題をお話ししてございまして、大蔵大臣御自身も、いい案があればひとつ考えようではないかと、むしろ積極的な姿勢でおられるわけでございます。そこでいろいろ検討しておりますけれども、大まかにいいまして二つ問題がありまして、一つは、そのような外貨を貸しますときに、借りた先からどのような担保がとれるかという、はなはだみみっちい話でありますけれども、投資の対象が海外における資源でありますために、いわゆる担保というようなことになりますと、御推察のように非常にむずかしい問題が一つ。それからもう一つは、そのような外貨を外為会計が買っておるわけですが、外為会計は円でもって買いますので、その外貨がひとりで動いていったときに円が枯渇してしまうという問題がある。これはいずれも技術的な問題ではありまして、それなるがゆえにこの考えはだめだと言っておるのではなくて、大蔵大臣との間では、何かひとついい案をむしろ積極的に考えようではないか、そういうことになっております。
  75. 石川次夫

    ○石川委員 その点について意見がありますけれども、時間がございませんから……。
  76. 進藤一馬

    ○進藤委員長代理 松尾信人君。
  77. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 いままでも、たびたび出ては消え出ては消えておった問題でありますけれども、日米繊維の問題でございます。  このたび業界のほうから、一方的な自主規制に踏み切った、そのような申し出が表明されたということがありますけれども、この業界の表明の要点と、そしていま大臣の考えていらっしゃる基本的な考え方、これを、ホームグラウンドであるこの委員会におきまして、やはりこの際はっきりさせておくべきである、このように考えまして、まずお尋ねする次第であります。
  78. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 当委員会におけるお尋ねとしてごもっともなことでございますが、実はまだ詳細に申し上げるほどの内容が整っておりません。業界において、ともかくこの際自分たちの発意において何か考えるべきではないかということを、首脳部が昨日決意されましたことは確かでございますけれども、その内容については、おそらく業界首脳部もまだ業界の内部で、いろいろな業態がございますので、おまとめになって、そうしてその上で私どものほうに御提示があるのではないだろうか。したがって、具体的な点についてはかなり煮詰まっておらない点が多うございますので、ただいま、かわりまして御紹介いたすことが現実にできないような状態でございます。ただ、そういう心がまえとしての御決心は指導者の数人はされたということは、事実のように思います。  それから、これに対しまして政府がどう考えるかということでございますけれども業界からそういう案の提示を受けました段階できめていかなければなりませんが、少なくとも政府間交渉というものが、とだえた形ではありましても、チャンネルとしては存在をいたしておりますので、両国政府間が気まずいことになっては、これは最も残念なことでございますから、その両方のことを考えまして、どのようにそういう好ましくない事態が起こらないようにしながら業界の発意を実現していくかということを、業界案が固まりました段階までの間に私ども検討したいと考えておりまして、主としてこれは外交的な配慮によるものでございますから、今朝も外務大臣に対して、ひとつ外務大臣のお立場から、どのように運ぶべきかについて早急に御検討を願いたいとお願いを申し上げておいたところでございます。
  79. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 従来の考え方といいますか、そういう基本的な進め方の百八十度の転換ということに相なるわけであります。私たちもいままでは、この自主規制の問題につきましては、ここでいろいろ意見も申し上げてきたわけでありまして、今回は業界の一方的なそのような宣言ということだけをわれわれは知っておるわけでありますけれども、具体的な問題が必ず次々と出てきまして、大臣にもいろいろの要請、また、どのようにやっていくべきかという政府の指導という問題も、いまお話しのとおり出てくると思いますが、ひとつあらゆる角度から業界の希望をいれて、そして、その業界混乱のないように、特に中小企業関係につきましては、問題の出てまいりましたときに、最終的な段階までのめんどうは見るというような決意を承りまして、この繊維の問題を終わりたいと思います。
  80. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 具体的にまだどういうことになりますかわかっておりませんけれども、心がまえといたしましては、さような心がまえで対処いたしたいと思っております。     〔進藤委員長代理退席、委員長着席〕
  81. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 次は、いまお話も出ました石油関係でございます。承っておったのでありますけれども、夏ごろまでには何か計画をきちっとつくりたい、このようなお話でございます。計画といまおっしゃいましたけれども、具体的に考えていく方向、そういうものがどのようにあるのか、どういうものを考えていらっしゃるかということであります。  私たちの考えでございますけれども、この値上げの問題からいろいろ明らかになってまいりましたのは、根本にいえば、わが国の民族資本による石油会社が非常に弱いということです。自己開発した分も、全輸入量のわずか一〇%ぐらいしかない。また二十社ぐらいの開発しておる会社があるが、いろいろの形態があります。外資提携あるいは自己開発ですね。そういう面における単独開発の弱さ、ここにも問題があるのじゃないか。また、石油開発公団を非常に育成強化されるとおっしゃいますけれども、なおなお、そのような育成強化の考え方では非常に弱いのではないか。また自己開発の分を三〇%までまず上げるという目標というものは立てて、早く実現していかなくちゃできぬのじゃないか。これを何カ年計画でやるのか。そのような計画に基づきまして、この三〇%達成というために、どのような部門の計画を立てて、それをどのようにやっていくべきであるかというようなことを速急にひとつ計画を立てられまして、この資源問題、特にその中で石油にきょうは限定いたしますけれども、この石油の五カ年計画といっていいのか存じませんが、三〇%達成への目標をきめられまして、それをどのようにやっていくか、また地域別の開発をどのようにやっていくか、このような問題でございます。  それから、なおなおひとつしっかり腹をきめてやっていかなければできないじゃないかと思うのは、石油の国内備蓄の問題でございます。先般、中村委員質問に対してお答えございました。能力は六十日分ある、ただし現実の備蓄は、原油で十九日、製品で二十日、半製品で七日、これでも五十日分を割っておるわけであります。六十日分の能力がありながらも、五十日分を割っておるという状態です。これは世界の平均備蓄は九十日分であります。西ドイツのごときは百八十日分の備蓄、このようにいわれております。世界一の輸入量がある、今後ともその石油需要は非常に増大していくのだ、そういう点から開発の問題もきっちりやるべきでありますけれども、この国内備蓄につきましては、これを少なくとも当面まず九十日分までは確保する、次いでは百八十日分までくらいは確保していくのだ、というような計画もやはりきちっとお立てになるべきではないか、このように考えます。  また最後には、いまのような石油の使い方で日本が参りますると、これは六十年代になると需要量が七億三千万トン、もう膨大な数字になるのでありまして、輸送力も伴わなければそれだけの輸入というものはとうてい確保できない、このようなことが予測されるわけでございますから、この産業構造をどのように変えていくべきであるか、輸送力も含めて、いまからきちっとした計画を立てるべきではないか、このように存じます。  まあ先走ったようなことをこちら側だけ申し上げまして、はなはだ恐縮でありますけれども、先ほど大臣が、夏ごろまでには計画をつくる、このようにおっしゃいました。やや安心したわけでありますけれども、その計画の内容がはたしてどういうものか、伺うべきが順序でありましたけれども、時間の関係で、まず考えられる点として、私がただいま申しましたそのような点につきまして、ひとつしっかりと具体的な何カ年計画を立てられまして、そして日本産業の基盤であるこの石油燃料については、万全の体制をとってもらいたい。速急にひとつそれをやってもらいたい。これがどうしても達成できませんと、出たとこ勝負の計画になりまして、やれ輸入割当だとかなんとかいうような方向へ走らざるを得ませんでしょうし、そして幾ら日本の石油会社にはっぱをかけましても、本質的に弱いのでありますから、メジャーに対する交渉は力も非常に弱いのじゃないか。やはり全体的にまずレベルアップをしながら、メジャーに対する対抗力を強めながら、そうして資源の開発というものを計画的にやりながら、備蓄もやりながら、そうして産業の使用するこの内容というようなものを考え直しながら、総体的にきちっとした計画を速急に立てていくべきである、これを強く要望する次第であります。  なお、一つは家庭燃料の問題でございますけれども、私がいろいろ買いものをしました中で、非常にほめられたのが一つあります。それは太陽熱の利用でございますけれども、屋根の上にいろいろありまして、それが夏時分になりますと、そこからパイプでとりますと、もう水を埋めなくちゃ入れないようにあたたこうございます。春、秋は大体ほとんど燃料は要りません。冬のきょうの寒さでも、三十分のガスでわかす場合には十分でよろしゅうございます。まあ天気の悪い日、外で太陽が照りませんときはあまりよくありませんけれども、太陽熱の利用というもので私の家庭ではいま非常に喜ばれております。家庭燃料を消費する部門、これは非常に多うございますから、そういう面においてもいろいろと御検討なされまして、そしてそういう面における石油燃料の消費をひとつ考えて、抑制していく。  いろいろなことを申し上げましたけれども、ひとつしっかりした計画を立てられまして、そしてこれを夏ごろにお出しくださったら非常にいいのじゃないか、こう思いますけれども、ひとつお考えをお聞きいたします。
  82. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ともかく従来は、すわっておりますと、向こうから売り込みに参りまして、それを比較的じょうずに買っておったという状態から世界の石油のマーケットのありさまが変わってきつつあるという判断に立ちますと、いままで考えておったことは、かなり根本的に考え直さなければならなくなるわけでございまして、それはどういう問題を含むかと申しますと、ただいまほとんど御指摘になりましたような問題こそが、私どもがただいま一つ一つ検討しておる点でございます。  まあ三〇%の問題にいたしましても、計画は六十年ということに一応言っておりますけれども、これは早ければ早いほうがいいし、またこれだけ本格的に国が取り組もうということでありましたら、その必要が高まってまいりましたら、もっと早くできないものか。これは経済協力等の関係もございますというふうに考えます。  それから備蓄の点でございますけれども、これもしばしば御指摘があって、ごもっともな点でございますけれども、とにかくばく大な金がかかります。その金をどういうふうな備蓄の方法に充てるか。まあタンクをつくるというのも一つの方法でございましょうが、タンカーをつくったほうがいいという考え方もございますかもしれません。あるいはまた、それよりもむしろ、それだけの金であったならば資源の開発そのものに充てたほうが効率的ではないかというような議論も出そうでございますから、それらのところを検討いたしております。  まあ、いずれにしても、その他のエネルギーの開発、たとえば原子力といったようなもの、あるいはわが国自身の産業構造を、エネルギーを比較的少なく消費して付加価値の高いものに変えていくべきじゃないかといわれることも、もちろん一つの大事な点ですし、立地の問題もあるのではないかと思います。これらを離れまして、これは私どもの必ずしも所管ではございませんけれども、温帯にあるわが国として、やはり太陽熱と水の利用のしかたというものはいかにもへたである、もっとくふうしなければならないのじゃないかという問題は、私どもも確かにそういうことは考えておるわけでございます。
  83. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 では、結論的に、そのようなあらゆる問題をひっくるめて、そしてこの石油資源の確保のための計画というものができる。それは一応夏ごろまでにはできる。このように期待して待っておっていいですか。
  84. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは法律事項、それから来年度、四十七年度の予算関連が当然たくさん出てまいりますので、八月までには大筋をきめてしまわなければならない、こう考えておるわけでございます。
  85. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 以上で質問を終わります。
  86. 八田貞義

    八田委員長 川端文夫君。
  87. 川端文夫

    ○川端委員 まあきょうは本会議もありますし、時間がないようですから、大臣、要点だけ明確にお答え願って、説明はあまり長くならぬようにまずもってお願いしておきたいと思います。  私は、昨年の十月に第二回目の金融緩和を行なわれて、自来、日本の経済の動向がどう変わっていくのか、よくなるのかと期待をいたして、今日まで見守ってまいったわけですが、通産省の調査された中において、非常によくなるという調査の実態動向が出ていないことは御存じだと思います。まあしかし、四月、五月にある程度在庫調整も終わって、経済の動向が変わるのじゃないかという見通しをもされておるようでありますが、私はそうは思わないのですが、大臣はどういうふうな見方で今日経済の動向をごらんになっているかを教えていただきたいと思います。
  88. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まあ多くの方がなかなかたいへんだと言われますし、各業界一つ一つ見てまいりますと、よさそうだというのは造船と石油精製、あと非製造業に若干といったようなことでありますから、大勢は、なかなかことしはたいへんだということで、多数説に従ったほうが無事であろうかと思いますけれども、しかし、かりに四、五月ごろになりますと、金融引き締めから半年になりますので、普通、半年たちますとやや末端まで金融が正常化し始めるときでありますし、また財政のほうも、年度が始まりますと、今度は公共事業等相当早く着手したいと考えておりますから、これらのものは、かなりのささえの要因になるのではないだろうか。総体としては、私はあまりこの昭和四十六年というのを、動きのとれない暗い年になるというふうに考えなくてもいいではないかという気持ちを、どこか自分の中に持っておるわけでございます。
  89. 川端文夫

    ○川端委員 そこに私と見解の相違が出てくるわけです。大臣のいまの御答弁からいくと、四十年のあの不景気と現時点と、同じようにごらんになっておるように考えられてならないわけです。なるほど、不景気だとはいわれながらも、輸出においては順調に伸びておる。私はここに、日本経済の今日、七〇年代に直面している大きな問題点がひそんでいるように思えてならないわけです。  御存じのように、四十年の不況のあとに来たものは、いわゆる設備投資の拡大によって、その設備投資が大きな経済の好調のささえになってきたことは、いまさら言うまでもないと思います。しかしながら、今日、日本の輸出を伸ばしているその原動力になったものは大企業の重化学製品であって、これらの鉄鋼、造船その他の重化学製品の設備投資が一巡して、もはやそれほど大きな設備を必要としない、こういう条件も現実である。日本のような特殊的な中小企業の多い加工業界では、ほとんど五〇%以上になっており、この製造業を持っている中小企業の総合的な経済の成長バランスというものは、七〇年代に入り大きくくずれてきておるのだという見方を持たざるを得ないような気がしますが、そうは思いませんか。
  90. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いわゆる重化学工業化というものがあるところまで来たということは、私はそうであると思いますけれども、いろいろな理由からして、もっと頭脳集約的な、技術集約的な新しい産業が起こるだろうと考える理由もございます。それで私は、七〇年代のわが国の経済の成長をささえるであろうと考える幾つかの要因、たとえば人手不足というようなこと、あるいは住宅をはじめインフラストラクチュアが非常に不足をしているということ、公害等によって新しい意味での追加投資が必要になっているということ、これらのことは、おのおのは不平を言う要因でありますけれども、実は成長のほうから考えますと、全部プラスの要因になるわけでございますから、私はそういう意味で、七〇年代というのは、まだまだわが国の経済に成長要因が多い、そう考えております。
  91. 川端文夫

    ○川端委員 大臣はやはり政府という立場に立って、あまり数字にこだわっておいでになるのじゃなかろうか。たとえば日本の経済の話が出ますと、GNP世界第二位だ、こういう数字をあまりにも誇大に主張いたした今日までのいきさつから、ある国においてはエコノミックアニマルなんて悪口も出るような、しかしながら西ドイツと比べた場合においては、必ずしも日本の経済がそれほど西ドイツをオーバーするという姿にはなっていない。なるほど統計からいえばそういえても、一人当たりの生産力なり、これらの問題を考えたときに、世界第二位だという経済大国を主張する姿の中に、姿勢の中に、やはり何か上からものを見る、国民とともに歩むという考え方がないのではないか。たとえば経済の動向を調べる場合においても、不景気だ、不景気だといったって貿易は伸びておるのじゃないか、減っていないじゃないかということで、実態を正確に見ようとしないという考え方があるのではないか。こういう点をどうお考えになっているかということを、時間のないときにあまり長話もできませんけれども、どうもそこら辺に政府は、何か一歩上に立って、あるいは横からものを見て、国民一人一人のしあわせを考えるという立場に立って、日本の経済の構造の中における中小企業の実態というものに対する考え方が、どうしても不足になっていく結果が今日のような状態になってきたのではないか、こう考えられてならないのですが、違いましょうか。
  92. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは実は二つの別々のことだと思うのでございますが、先ほどは経済の見通しというようなことをおっしゃいましたから、これはマクロに考えておりますことを申し上げたわけで、これはミクロに考えても、たくさんの苦労があるということを決して無視して申しておるわけではございません。政治をやる態度ということになれば、そういうミクロの問題が一つ一つ大事なのでございますが、それにもかかわらず経済の見通しをマクロでどう考えるかという見方があってもいいし、それを実はお尋ねになったんだと思ったのでございます。  それで、西ドイツのお話が出ましたが、おそらく西ドイツの就労人口が二千四百万人くらいでございますから、わが国の就労人口は五千百万人であれば、その倍のGNPができたところでようやく一人当たり西ドイツ並みでございます。人手不足がこうなってまいりましたら、必ず一人一人の生産性は上がらざるを得ない。機械導入をせざるを得ないのでございますから、西ドイツと同じだけの一人当たりのGNPになるまでに日本のGNPが伸びないことのほうがむしろふしぎで、伸びるのがあたりまえだというふうに考えるわけでございます。一般に、先ほど申しましたように、いまの生活に不平不満が大体ないと国民が感じ始めましたら経済成長はとまるかもしれませんが、今日のように不平不満が一ぱいございますと、これを全部片づけてまいらなければなりませんから、それはみな経済の成長要因に転じ得るというふうに考えるわけでございます。
  93. 川端文夫

    ○川端委員 マクロの見方とミクロの見方と分類してものを申し上げれば、時間がゆっくりないと話がわかりにくくなりますけれども、私はマクロ的に、なるほど貿易収支は、まだこれ以上大きく鈍化したり低下するとは思えないのであるけれども、しかし、日本の経済の構造の内容から見て、国民全部が喜んで就学できる状態にはないのではないか、形が変わっていくんだ、こう見ざるを得ないように思います。そこで、この議論を長く繰り返しておっても、短い時間でどうかと思いますが、そういう見方を私がする立場からものを考えるならば、いまの不況状態というものは、四月、五月に転換できる、上昇にかわるという見方はどうしてもできないし、現実の個々の企業の内容を聞いても、なかなか四月や五月では上昇にかわり得るという条件はできていないと思うのです。この点いかがですか。
  94. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは確かに、四月、五月ごろからこの経済が上昇に転ずるかどうかに問題がございますが、私どもがもっと気にしておりますのは、実は中小企業にとっての現在の金融上の不正常な状態でございまして、これが少なくとも四月、五月、参議院選挙のころにはやや正常になってほしい、またその時期にはなれるのではないか、いまそのことにむしろ私の気持ちがいっておりますので、経済全体がそのころから上昇を始めるということはどうかと言われます点は、私も、川端委員の言われますように、その点は似たような疑問を持っております。
  95. 川端文夫

    ○川端委員 質問を先取りしてお答えいただいてありがとうございます。言うならば、私はまだまだ不況がしばらく続く、こういう見方を持ちながら、しかも耐えられる限界が三月、四月、五月ではないか。特に中小企業の耐えられる限界がぎりぎりにもうそろそろ来ているのではないか。この場合に、政府のまずできることといえば金融施策だろうと存じますが、具体的にいえば、私はこれもまた、外貨が余っているからといってみんなに振り分けるわけにはまいらないはずでありますから、少なくとも四月、五月、六月のこの危険な状態を脱出させるために、中小企業に従来政府系金融機関が貸しておった金融をある程度繰り延べさせるという方針を明らかにできないだろうか。もっと突っ込んでものを言わしていただくならば、大企業に対しては、やはり国策の一端をになっているという立場もありましょうが、利子補給した例もあるわけですから、できるならば、関連倒産として問題が起きた企業に対しては、利子補給なり利子の軽減をしてやる必要があるのではないか。もう一ぺん繰り返して言いますが、いまの不況の状態の中には、これは人為的に行なった不況であるという、その責任は政府にある。一昨年の金融引き締めから来た今日の不況であるということを考えた場合に、政府はあたたかい手を差し伸べることが必要ではないかと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  96. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実は私どもも同じような心配をいたしておりまして、今回、実はこれは今朝決定をしたことでございますけれども、やや異例のことでありますが、この年度末に際しまして、中小企業公庫、国民公庫、商工中金、合わせまして約三百億円の融資源の上のせをいたす。そのうちで貸し出しワクの拡大は二百億余りでございますが、その他のほうから振りかえましてほぼ三百億円。四月になりますと、四月の新予算がこれらの三公庫とも発足いたしますから、さしずめこの年度末のことでございますけれども、その問題と、それからただいまお話のありました、返済期限の到来いたしたものについて返済の猶予、あるいはリファイナンス等々をするということ。それから中小公庫については、運転資金が従来は千万円でございますけれども、これをもう千万円代理貸しでやらせる。ただしこれは半年間の措置としたい。あと中小企業信用保険ワク——信用補完の問題です。これらにつきまして、今日関係省間で了解に達しましたので、直ちに実施をいたすことにいたします。
  97. 川端文夫

    ○川端委員 この点にもう一つ要望申し上げますと、関連倒産に対しては前に施策があるわけですけれども、特に、地方庁に届け出するすべも持たない零細な企業が、かなり今日倒産を続けているわけです。したがって、もう少し広い視野に立って大きく強化していただきたいし、もう一つは、政府も皆さんのためにやっているんだというこの考え方を理解させるような、大きなキャンペーンもしていただきたいということを問題としてお願いしておきたいと存じます。  不況対策の問題、見通しのマクロの問題、議論をしていれば長くなるし、この辺にしますが、もう一つの問題は、きょう時間がないから簡単に申し上げますが、原油の値上げの問題に対して、先日来、大臣はなかなか強気の態度で、値上げする場合においてはめんどう見ないぞ、値上げは絶対許さぬぞという態度を発表されておるわけでありまするけれども、はたして大臣の力でそういうことが可能なのかどうか。先ほどから議論のありましたマクロ的な前向きの、石油資源の入手の問題に対しては、先日からも、この商工委員会に小委員会をつくって検討すべきではないかという提言もありますので、私はそれに賛成いたしましたが、大臣ははたして、物価にはね返らないというお約束ができるのかどうか、それくらいの強い指導力をお持ちなのかどうか、決意をお聞かせ願いたいと存じます。
  98. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 何分にも、先ほどから御指摘もありましたように、基本的にわが国が持つものを持っていないという、こうなりますと不利な立場でございますから、事柄を楽観するわけにはこれはまいりません。また、値上げ幅から見て非常に深刻な影響を及ぼしそうな問題であることも事実でございますから、その辺を楽観しているわけではございませんが、政府自身が、値上げを全面的にかぶるのはやむを得ないだろうという態度をとったのでは、これは話になりませんから、そういうわけにはまいらない。もしかぶるつもりならあなた方の責任で処理しなさい、こう申さなければ安易な転嫁ということを考えてしまいますから、そういうことがあってはならない。また需要家のほうも安易な転嫁をお引き受けなさるなということを、私どもは申し上げておるわけでございます。
  99. 川端文夫

    ○川端委員 安易な転嫁をするなというこの考え方を発表されることはけっこうだと思いますが、具体的に現実に行なわれている値上げは、昨年二回にわたって灯油が値上げしたことは御存じだと思うのですが、ここでは名前は言いませんが、私の知っているところでは、三月一日からガソリン一リッター二円、灯油一円の値上げを発表して、紙に書いてガラス戸に張っているところが東京都内にあるのです。都内ですよ。したがって、原油が値上がりするであろうこの時点にもう値上げをやっておるところもあるのに、はたして大臣の発表だけで価格の抑制ができるのかどうか。このエネルギーの問題を考えた場合に、電力にしても、あるいは石油にしても、国民が、庶民が利用している数量は、まだまだ鉱工業産業部門よりは少なくない、多いという数字も出ておるわけでありまして、これらの問題点から考えて、これは、いまやかましくいわれている物価の問題にはね返らないような施策は、具体的に何をしようとされているのか、この機会にお聞かせ願いたいと思うわけです。
  100. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまのそのような掲示をしたところがあるという問題は初めて伺いましたが、すぐに調査をさせていただきたいと思います。  私の申しておりますことは、なるほど、メジャーはOPECと値上げ協定をしたと申しまして、ただいまお話しのように、ガソリンスタンドにいたしましても、灯油にいたしましても、ことに灯油は不需要期に入りますから、明らかにわが国には過当競争といってもいいような状態があるわけでありまして、現に油はスタンドの間で二円や三円違うのでありますから、そういうことを考えますと、元が上がったからといっても、わが国が全部一様に上がらなければならないと考える理由はない。むしろ消費者がしっかりしておれば、安いスタンドが実際あるわけでございますから、その辺の力関係といいますか、需給関係といいますか、それから考えますと、わが国の各需要家が、元が上がるからさあ上がるのだとすぐに考える理由はないじゃないかということを、私どもはいま申し上げておるわけであります。
  101. 川端文夫

    ○川端委員 これも新聞によるところでありますけれども、精製業者というか、石油業界が現在の収益を計算すると八百億円くらいだ。それで、今度のOPECその他の関係から来る値上がり分は二千億だと新聞にときどき書いてあるのを見るわけですが、そうだとすれば、値上げがされれば企業努力だけで吸収できないのではないか、こういうふうにも考えられるのだが、これはどうでしょうか。
  102. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはなかなかいろいろな問題を含んでおりますので、そんなに簡単なものでもないと思うのでございます。つまりそれらの精製業者自身がメジャーから出資をしてもらい、金を借りておる、いろいろな複雑な関係になっておるわけですので、それらの会社が全部立ちいかなくなることがメジャーにとってほんとに得なのかどうかという問題が、御承知のようにございますわけですし、その辺の関係はかなり複雑であって、精製業者が言っているほど簡単なものではない。そう簡単に私自身はだまされませんぞというような感じがしておる種類の議論でございます。
  103. 川端文夫

    ○川端委員 いま予鈴が鳴っておりますからこれでやめますけれども日本の石油業界は、外資系と民族系に分けてみても、民族系といわれているところでもいわゆるメジャー部門でありましょう。外国資本の金を借款の形で借りておるんだから、結果としては値上げが必然的に出てまいる、のまざるを得ない、こういう結果が出るのではないか。これに対して、物価との関係を考えて、政府としても何か打つべき手があるのではないか。税制においても、石油関係から年間一兆円も税収をあげている現実から見て、これらのことも考えたいと思いますが、予鈴が鳴りましたからこれは保留いたしまして、また次の機会に申し上げることできょうは終わりたいと存じます。  ただ、委員長に最後に繰り返して申し上げたいことは、先日も同僚委員から申し出ありましたように、この商工委員会で、石油問題、エネルギー問題に対して、名前は何でもけっこうですからひとつ小委員会をつくって、十分われわれも検討して政府に御意見を申し上げる機会を持てるように御配慮を願いたいことを申し上げて、質問を終わります。
  104. 八田貞義

    八田委員長 次回は、来たる三月二日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時五十二分散会