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内田国務大臣 ただいま
議題となりました
健康保険法等の一部を改正する
法律案につきまして、その
提案の
理由を御
説明申し上げます。
医療保険制度の抜本改正につきましては、つとにその必要性が指摘され、
政府といたしましても、鋭意
検討を進めてまいったところでありまして、
昭和四十四年に社会保険
審議会及び
社会保障制度審議会に抜本改正の諮問を行なったところであります。しかしながら御
承知のとおり、この問題はきわめて広範多岐にわたるため、両
審議会の熱心な御
審議にもかかわらず、なおその結論を得るに至っておりません。されど、
政府といたしましては、さきの本法改正の際、二年後には抜本改正に着手すべき旨を明らかにした経緯もあり、一方、
政府管掌健康保険の財政
状況は、この間にも悪化の一途をたどり、このまま放置することは許されない事態となっておりますので、
昭和四十六年度からこれが抜本改正の第一歩に着手することといたしました。
すなわち、老齢者に対する
医療を中心として給付の漸進的
改善をはかるとともに、抜本改正にあたっては避けて通ることができない
政府管掌健康保険のこれまでの多額の累積赤字の処理について、思い切った
措置として、これを健康保険の負担外にたな上げすることといたし、また、これとともに新たに国庫補助の定率制を採用するなど、財政の長期的安定を確保するなど所要の対策を含めて抜本改正の第一着手としての改正を行なうこととし、ここにこの
法律案を
提案いたすこととした次第であります。以下、その
内容について概略を御
説明いたします。
まず、健康保険法の改正について申し上げます。
第一は、退職者継続
医療給付制度の創設であります。すなわち、健康保険に十五年以上加入していた者が、五十五歳以後に退職した場合には、退職後少くとも五年間は従前の健康保険に引き続き加入し得るものとして、退職前と同様十割の療養の給付を行なうことができることとするものであります。
第二は、七十歳以上の被扶養者の給付割合を現行の五割から七割に引き上げようとするものであります。
第三は、埋葬料につきまして、一万五千円の最低保障額を設けるとともに、家族煙弾料の額を現行の二千円から七千五百円に引き上げようとするものであります。
第四は、十割給付を受ける被
保険者本人につきましては、再診を受ける際に百円の一部負担金を六カ月間に限り支払うこととするとともに、入院時一部負担金を現行の一カ月間一日当たり六十円から六カ月間一日当たり百五十円に改めようとするものであります。
第五は、標準報酬制度の合理化の
措置であります。すなわち、現行の標準報酬の区分は最近における給与の
実態と著しくかけ離れるに至っておりますので、給与の実情に即してその区分を改めるとともに、前年に
支給された賞与の一部を報酬月額に加えて標準報酬を決定することとするものであります。
第六は、社会保険庁長官は、
昭和四十七年度以降、
政府管掌健康保険事業に要する費用に過不足を生じたときは、社会保険
審議会の
意見を聞いて千分の八十を最高限度として保険料率を弾力的に調整できることとするものであります。
第七は、さきにも申し述べましたとおり、
政府管掌健康保険に対する従来の定額補助のたてまえを改め、画期的な財政
措置として、新たに定率制の国庫補助のたてまえを
法律上導入することとしております。
次に、船員保険法の改正について申し上げます。
船員保険につきましても、健康保険制度の改正に準じて、退職者継続
医療給付制度の創設、七十歳以上の被扶養者の給付割合の
改善を行なうほか、健康保険の例により再診時一部負担金及び入院時一部負担金の設定、保険料率の弾力的調整、標準報酬月額の上限の改定等を行なうこととするものであります。
次に、厚生保険特別会計法の改正について申し上げます。
この改正は、さきにも申し述べましたとおり、
政府管掌健康保険におけるこれまでの多額の累積赤字を
昭和四十六年度限り保険の負担外にたな上げ処理し、これを一般会計からの繰り入れによって補てんするための処理、並びに新規の借り入れ限定等の
措置を規定せんとするものであります。
なお、この
法律の
実施時期につきましては、
昭和四十六年十月一日からとしております。ただし、保険料率の弾力的調整及び厚生保険特別会計法に関する改正は、
昭和四十七年四月一日からとしております。
以上が、この
法律案を
提案する
理由でありますが、何とぞ慎重に御
審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。