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1971-05-12 第65回国会 衆議院 社会労働委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年五月十二日(水曜日)     午前十一時五十七分開議  出席委員    委員長 倉成  正君    理事 伊東 正義君 理事 小沢 辰男君    理事 小山 省二君 理事 佐々木義武君    理事 増岡 博之君 理事 田邊  誠君    理事 大橋 敏雄君 理事 田畑 金光君       有馬 元治君   小此木彦三郎君       梶山 静六君    唐沢俊二郎君       小金 義照君    斉藤滋与史君       田中 正巳君    中島源太郎君       松澤 雄藏君    松山千惠子君       箕輪  登君    向山 一人君       山下 徳夫君    渡部 恒三君       大原  亨君    川俣健二郎君       後藤 俊男君    島本 虎三君       山本 政弘君    古寺  宏君       古川 雅司君    寺前  巖君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 内田 常雄君  出席政府委員         厚生省環境衛生         局公害部長   曾根田郁夫君         厚生省児童家庭         局長      坂元貞一郎君  委員外出席者         大蔵省主税局税         制第一課長   山内  宏君         参  考  人         (公害防止事業         団理事長)   江口 俊男君         参  考  人         (公害防止事業         団理事)    古澤  實君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十一日  辞任         補欠選任   大原  亨君     八木  昇君 同月十二日  辞任         補欠選任   八木  昇君     大原  亨君 同日  辞任         補欠選任   大原  亨君     八木  昇君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  児童手当法案内閣提出第五六号)  厚生関係基本施策に関する件(環境衛生に関  する問題)      ――――◇―――――
  2. 倉成正

    倉成委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  おはかりいたします。  本件について、本日公害防止事業団理事長江口俊男君、同じく理事古澤實君の両君に参考人として御出席願い、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 倉成正

    倉成委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     ―――――――――――――
  4. 倉成正

    倉成委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。田邊誠君。
  5. 田邊誠

    田邊委員 この委員会においても、現在の時代の要請でありまする公害防止の問題、あるいはまた環境衛生問題等についていろいろと意見の交換をしてまいったのでありまするが、特にこれらの施策を行なうについては、国民理解協力を得なければならぬことが前提であることは御案内のとおりだろうと思います。特に大臣からも発言がありましたが、環境衛生整備等については、たとえば屎尿ごみ等について整備計画がこれから立てられるわけでありますけれども、五カ年計画についての実施がいまだ十分できない、こういう釈明もありまして、われわれはこれから先検討していかなければならぬと思うわけであります。こういった屎尿ごみ、いわゆる廃棄物処理については実はいろいろと問題があるわけでございまして、当然地元住民協力前提であることは御案内のとおりであります。そのことといわゆる公害防止の今後におけるところの整備をはかるということからいきましても、住民理解があくまでも前提であるということについては、これは言わずもがなであろうと思うわけでありますけれども、今後の施策を進めるにあたって、いま申し上げたような国民理解協力を得るという立場厚生行政全般について必要であるという認識については、大臣は私と同じ意見であろうと思いまするけれども、いかがでございますか。
  6. 内田常雄

    内田国務大臣 そういうことでなければ、屎尿処理施設にいたしましても、あるいは廃棄物処理施設にいたしましても、あるいはまた斃獣処理場でありますとか、魚腸骨処理施設でありますとか、そういう公害発生源につきまして円満なる対策が立ちにくいものでありますので、私どもは、地域住民また地方公共団体の十分なる協力のもとに協議を重ねつつ事態に処してまいるということは、従来からの考え方であり、今後とも変わりません。
  7. 田邊誠

    田邊委員 いま大臣の御答弁を聞いて、私はやはりその基本の上に立って仕事を進めていただくことについて強く要請をいたしたいと思うのであります。  そこで、きょうお伺いいたしたいのは、福岡市の西部の地区北崎という地区がございまするが、そこに公害防止事業団の手によって水産加工センター建設するという議が持ち上がったのでありまするが、地元でかなり強い反対があるわけであります。私どもは、この建設については、いま大臣のことばを受けて、当然地元住民理解協力を得るということが大前提であると思うわけでありますけれども、聞くところによりますと、住民のきわめて強い反対があるということであります。そこで公害部長、この水産加工センター建設という問題について、一体あなたはどういうふうにお考えをいただいて、これに対するところの建設についてはどういう経緯をたどって今日に来たか、ひとつ簡潔にお示しください。
  8. 曾根田郁夫

    曾根田政府委員 福岡市の魚腸処理共同利用建物建設経緯について簡単に申し上げますと、この施設は四十四年に当初今津地区予定して計画をいたしたのでございますけれども地元住民反対等もございまして、予定地区変更いたしまして、最終的にはいま御指摘西浦地区変更になったわけでございます。  そして、この件につきましては、公害防止事業団による造成事業として行なうことになりますが、市のほうで公有財産取得についての議会の議決も本年の一月にございましたので、その後公害防止事業団では、実は公害防止事業団法によりますと、事業団造成事業を行なう場合には事業実施計画をつくりまして、それを関係都道府県知事協議すると同時に、主務大臣、つまり厚生通産大臣認可申請するという手続になっておりますが、福岡市のほうから譲渡の申し込みがございましたので、本年の二月三日、公害防止事業団では事業実施計画を作成いたしまして、地元福岡県知事協議すると同時に、同日付をもちまして厚生大臣及び通産大臣認可申請書を提出いたしたわけでございます。     〔委員長退席伊東委員長代理着席〕  この件につきまして、先般の予算委員会分科会等におきましても実は質疑がございまして、やはりいま御指摘のように、地元のかなり強い反対もあるので、なるべく無理をしないで、時間の許す限り地元説得協力してもらいたいというような要望がございまして、認可自体はいわば年度内、三月三十一日までに行なえばよろしいわけでございますので、私どもその間の推移を見守りまして、できるだけ円満に解決することを期待しておったのでございますけれども最終的に、つまり三月末の時点までに、必ずしも地元における一部の反対の完全な了承を得るに至らなかったのでございます。  そこで、これについていかがすべきかいろいろ検討いたしたのでございますけれども公害防止事業団といたしましては、市のほうで正規の手続をもって進めておった事業でもあり、また市当局責任を持ってなお説得努力を続けるということでもございますので、四十五年度の事業として計画しておる以上、どうしてもこの認可をしていただきたいということで私どものほうに要望がございましたので、三月三十一日付をもって認可指令書を渡した次第でございます。  これによりまして、事業団といたしましては、同日付をもちまして地元福岡市との間に譲渡契約を締結したわけでございますが、ただしその際におきましても、私どもとしては、なおそのような反対現実にあるということから、それをそのままにして一応認可はいたしますが、無理な作業を進めるということには問題がございますので、これは非常に異例なことでございますが、事業団のほうにもいろいろと相談いたしまして、福岡市と公害防止事業団との先ほどの譲渡契約におきまして、特に一項を設けまして、事業団の責めに帰すことのできない理由によって施設建設が不可能となった場合、これは催告によらないで事業団が一方的に契約を解除できるというような規定も入れさせましたし、また、念のためでございますが、事業団から担当課長あて事業実施にあたり現実工事着手する場合には、あらかじめ私どものほうに協議するという念書も入れさせまして、一応事業計画としては認めますけれども現実工事を始めるまでに今後とも説得努力を続け、無理をしないでやっていくということを明らかにした次第でございます。
  9. 田邊誠

    田邊委員 最初に予定をした地区変更した事情というのは一体何の理由ですか。
  10. 曾根田郁夫

    曾根田政府委員 私ども承知をしておりますところによりますと、やはり当該地元住民が悪臭あるいは汚水問題等による公害発生を懸念したということが主たる理由であるというふうに承知しております。
  11. 田邊誠

    田邊委員 したがって、予定地区変更して、新たにこの北崎地区センターをつくるということについては、当然あなたのほうは地元からの反対が起こるであろうことは予測したと思うのですね。これは予測なしに変更をすることはできないだろうと私は思うのです。この予測されるところの反対動き住民意思に対して、一体具体的にどういう手を打ってきたのですか。
  12. 曾根田郁夫

    曾根田政府委員 この魚腸骨処理施設等に限らず、先ほど先生指摘のございましたような廃棄物処理施設等につきましては、やはり、えてして地元において一部反対運動が寄せられるのでございますけれども、その場合、従来の例を考えますと、ともすればそれは事業者側説明といいますか、そういった地元民に十分な理解を得る説明が必ずしも適切になされていないというようなことが多いのでございますけれども、私どもとしましては、もちろんこういう施設でございますので、最終予定地につきましてもそのような動き予測されましたし、また現実にあったわけでございますが、地元市当局責任をもってこの反対運動といいますか、その住民については責任をもって説得するということでございましたので、私どもとしてはそれに期待をして以上のような手続を進めたわけでございます。
  13. 田邊誠

    田邊委員 現実にはまだ反対住民がある、そういう意思を持っている人がたくさんおる、こういう事態の中ですから、あなたの当初の、市が責任をもってこの説得に当たる、その説得は成功するであろうという予測はみごとにはずれているわけですね。私はあと事業団にお伺いいたしまするけれども公害部長はそのことも予測をし、なおかつ大臣のさっきのいわば総括的な答弁にありましたとおり、この種の施設建設については地元協力がなければならぬ、こういう立場から、当初あなたは反対をしているところの住民意思というものを尊重して、そういったもののいわゆる了解なり確約を得ないうちはこの建設についての認可はしないというように言ってきたと思うのですね。少なくとも三月の二十六日ころまではそういう話し合いをしてきた、こういうように思うのですよ。それが、わずか一日か二日足らずして承認を与えるという、こういうことになった主たる原因は一体何ですか。その間に地元反対しておったのが反対がなくなった、そういう地元協力が得られたという心証があったという事実があったのですか。そうでないでしょう。とすれば、あなたがいままで反対住民意思を尊重すると言ってきたそのことが、わずか数日でもってくつがえった、こういったことに対しては、私は何らかの違うものがあったというふうに推測をせざるを得ないのですけれども、その間の事情は一体どうなっているのですか。
  14. 曾根田郁夫

    曾根田政府委員 中間段階におきます私の見通しといいますか、その点について多少の甘さといいますか、そういう点があったことは否定できないと思いますけれども最終的にこれを認可するということにしたことについて特段の事情があってということではございませんで、最終段階におきまして市、県も含めましてこれはぜひやらせてもらいたいということと、事業団におきましても、役員会の一致した意見として最終段階に正式な要請もございましたので、事務的には当然そのようにすべきであると考えて以上の手続を済ませた次第でございます。しかしながら、その際におきましても、念には念を入れまして、譲渡契約における特別な条項の挿入あるいは念書提出等を求めたということでございます。
  15. 田邊誠

    田邊委員 ですから、あなたは明らかに見通しを誤った。その見通しが明確につかないうちに、あなたはいままでそういった住民意思を尊重するというあなた自身考え方をひるがえして承認を与えたという点に対して、私は厚生省の他の部局が事務的にそういう手続をとったというならある程度わかります。しかし、いわば公害防止をするという立場でもってこれからいろいろな万般の事業をやっていかなければならぬ、仕事をやっていく立場責任者としては、私はきわめて不謹慎だと思うのです。これから先いろいろな問題が起こりますよ。その際、そういった詰め誤り、そういう見通しを誤ったことによってどのくらい住民に対して離反をした政治になるか、離反した行政になるかということは、あなたはいろいろとわかっているはずであります。きょうは局長来ていないけれども、私自身も、地元において斃獣工場について猛烈な反対がある。これに対する処置が実はきわめて誤った不徹底な状態だったという事実を知っているわけですね。あなた方に強くその点に対してしばしば指摘をしているところでありまして、そういった点であなたのいまの答弁にありましたとおり、見通し誤り、甘さ、こういうことに対して私はこの際明らかにしておかなければならぬと思うのであります。しかも、この承認を与えるという限りは、ただ単に県や市の説得がきくだろうというようなそういう推測だけでなくて、厚生省自身がこれに対して確かめる責任が私はあると思うのです。確かめましたか。
  16. 曾根田郁夫

    曾根田政府委員 私ども担当職員が直接現地に行って確認するという手続は、時間的余裕もございませんでとれませんでしたが、その事前に、公害防止事業団のほうの担当の係員のほうから現地の模様については聞いております。
  17. 田邊誠

    田邊委員 それが誤りだったのじゃないですか。大体公害防止事業団からあなたが聞いた範囲では、これはそういった見通しについては誤りがあったということをあなたはみずから答弁しておる。しかも、あなたのほうは、そういった承認を与えるについて、地元反対があるであろう、これを何とか説得しなければいかぬということで、厚生省係官現地派遣をするという手配をしたのじゃないですか。手配をしたでしょう。ところが、手配をしたけれども、その者を現地に飛ばせる寸前において、その予定変更して、係官を、具体的にはあなたのところの課長を、いわば飛行機からおろして現地に行かせなかった。行かせなかった理由があるでしょう。なぜ行かせなかったのですか。あなたはいま、余裕がなかったと言うけれども現実に、飛行機に乗って現地に飛んで、現地説得する、現地見通しを聞くという手配をしておったのが、飛行機に乗せてそれをおろすという、こういうあなたのほうは手続をとった。これはなぜですか。そういう余裕がなかったのじゃない、あえてそういったことを回避をしなければならぬところの理由があったのじゃないですか。理由なくして派遣した職員飛行機から引きずりおろす、そういうむちゃなやり方をする必要がありましたか。なぜですか、これは。
  18. 曾根田郁夫

    曾根田政府委員 先ほど私は、結果的にこちらから行かなかったという意味でそのことを申したのでございますけれども、ざっくばらんに申し上げまして、先生ただいま御指摘のように、最終段階におきまして、反対の方々から、ともかく現地を見てわれわれ反対派意見をなまに聞いてもらいたいという要請がございまして、私はやはりその要請は当然これに応ずべきであろうということで、急遽担当官現地派遣手配をいたしましたところが、その後、これはたまたま私外出いたしましたし、その担当課長がもうすでに飛行機に乗り込んでおった時点で、地元から正式にこの段階で中央から係官現地に来てもらうと、かえって地元のトラブルが大きくなるおそれがあるので、急遽見合わせてほしいという要請がございましたけれども、先ほど申しましたように、私自身がその際に役所におりませんでしたが、その連絡係官がそのまますでに飛行機に乗っておる課長に伝えたために、その課長は、実は飛行機が離陸する寸前だったのでありますけれども理由もわからぬでとにかくおりてくれということであったためおりたということが実はございました。そのいきさつにつきましては、現地のそういう要請の内容を十分知らない係官連絡をしたということによって、そのような事態が起こったということでございます。
  19. 田邊誠

    田邊委員 大臣、これは重大なことですよ。この種のものをつくるときに、賛成をする側について云々する必要はないのです。問題は、反対をする人たちをどう理解協力させるかということが必要だということは、大臣のさっきの答弁のとおりなんですね。そういう人たちが、ともかく地元厚生省が見て、ひとつわれわれの意見も聞き、事を運んでもらいたい。そこで公害部長係官を飛ばすということになった。それが不可解にも、飛行機に乗り込んで離陸する寸前に、レシーバーか何かで連絡を受けて急におりた。しかも公害部長はそのとき外出して知らなかったという、無責任きわまるじゃないですか。そのことがどのくらいこの種のものの詰めを誤るかという、これは私はいい見本だと思うのですよ。こんな無秩序な、いわゆる命令系統がきわめて紊乱している役所は私は見たことがない。部長なり責任者の命を受けて課長現地に飛ぶという状態でもって、部長は知らないのに、現地からこの際来てくれちゃ困る、こういう連絡をだれが受けたか知らぬけれども、受けたことを課長に伝えて、それでまたのこのことおりてくるような行政がありますか。まさに不可解、奇々怪々である。私は断じてこういったことを認めることはできない、こう思っておるわけでありまして、これは大臣聞いておって、どうも筋道が立たぬじゃないか、こういうようにお考えだろうと思うのでありまして、そのことが実はこの問題のいわば解決をよりおくらし、より混迷におとし入れたたいへんな事件なんですね。大臣どうですか。
  20. 内田常雄

    内田国務大臣 私は厚生大臣でございますので、厚生省行政の関連について起こりましたことは、いわばみな私の責任でございます。しかし現実には、田邊さんは苦労人でいらっしゃいますから、何でもおわかりですが、私がそこまで実は目が届きませんで、きょう初めてそのお話を聞いておりまして、まことにごもっともな点があると思います。  ただ、冒頭に私が申し上げましたように、この種の問題につきましては、公害発生源対策としてきわめて必要でありますが、どうも私ども郷里についても同じであり、また田邊さんの御郷里でも同じようなことが起こったというお話がございましたように、必要性は認めながら、その処理施設が自分の地元に来られることにつきましては、どうもあまり歓迎されないような向きもある性質の仕事だろうと私は思います。私がごく最近部長にただしましたところによりましても、あるいはこれは私の誤解があるかもしれませんが、福岡市の計画と申しますのは、福岡市としてこの施設公害防止事業団に頼んで造成建設をしてもらって、福岡市がそれを引き受けて、従来あるこの種の幾つかの複数の施設を統合して合理的に運営するという計画のもとに、公害防止事業団と話を進めておられたようであります。その造成地点は二転、三転しておるようでありまして、これは地元で歓迎されなかったようなことから起こったと思うわけであります。  そこで私は、田邊さんのお話を聞いておりまして、大臣として考えますことは、あなたのお話まことにごもっともでありますし、行政は円満に処理する必要があると思いますので、従来私が存じておらなかったことにつきましては、それはそのことでお許しをいただきまして、今後どう処置するかということにつきましては、幸いこの事業団造成計画並びにそれの福岡市への譲り渡し計画につきましては、厚生通産大臣認可はしてしまったが、認可付款があって、これを着手するときにはもう一ぺん見直しましょう、着手願いというようなものを出させて、さらに慎重に検討しますということになっておるようでございますから、その条項を活用いたしまして、いかがでございましょうか、もう一ぺん公害部長なり、あるいは責任ある職員を、今度は私も承知の上で現地にやりまして、市当局の話、またこれは市ばかりじゃございません、市は県に協議するたてまえでありますから、これは、私は決して賛成派の味方に立つわけではございませんが、県としてももっともであるということで協議を成立させた点もあるのかもしれませんが、そういう面も確かめ、また反対派の意向も、今度は飛行機をおりるのではなしに、先乗りをしないで、直接地元意見も聞いてやって、一番いい方法はどうしたらいいかということを、もう一ぺん着手前にさわらせてみるようにいたしたらいかがかと思います。しかし、皆さんの反対で、福岡市民魚腸骨のくそ攻めになってしまってもこれまた皆さん迷惑でありますから、市にも十分努力をしてもらい、また、場合によっては県にもさらにもう一ぺん仲に入っていただきながら、反対派意見もよく聞くということで、着手以前にそういう措置をとらせていただくようにしておさめたいと思いますので、そのように御了解いただければ非常に幸いだと思います。
  21. 田邊誠

    田邊委員 いま大臣から今後の措置についての説明がありました。それはそのとおりにしてもらいたいと私は思うのです。これは、きょうの大臣の言明をそのまま受けていきたいと思いますが、それには前提があります。大臣の話のように、あくまでも地元理解協力を必要とする、話し合いによって最終の決着をつけるということになるのは当然ですね。ところが、これには私一つどうしても確かめておかなければならない問題があります。というのは、いま公害部長説明にありましたとおり、事業団事業実施をするにあたっては、実施困難な場合には中止をすることもあり得るという――ちょっとその契約書を見せてください。この契約書の九条にありますとおり、「甲の責に帰することのできない理由によって施設建設が不可能となったときも前項と同様とする。」ということがあります。「その他乙が、この契約に違反し、または乙が、この契約の履行不能になったとき。」というのもあります。いずれにいたしましても、実施困難な場合には中止をするということがいわれておるわけですけれども最終的にはこれはあくまでも話し合いであるというような答弁が、いま再三ありました。ところが大臣、一方においてこの加工センター土地取得について、なかなかこれが実現できないということで、土地収用法を適用するという申請をしているのですね。これは事業団にお聞きをしたいのですけれども、あなたのほうでは、この土地の買収についてはまだ終わっておらないわけですな。
  22. 古澤實

    古澤参考人 この計画実施にあたりまして、先生指摘のように、まず用地が要ります。用地が要る場合に、やはり地元地主さんから買う必要がございますが、その場合に、事業団といたしましては、何ぶんにも地主さんとの接触その他が、いわゆる土地カンといいますか、そういうものもございませんし、そういう意味で一切市にお願いをしまして、市のほうであらかじめ手当てしていただくというふうなことになっておりました。それで、契約の前に市のほうにわれわれのほうで確かめましたときに、竹園さんという方から三月二十二日に、正確に申しますと五千三百八十四平方メートル購入しました、こういう報告がありまして、われわれも非常に安堵したわけです。先生が御指摘のように、われわれもはなはだ不勉強で申しわけないのですが、その土地をどういう形で入手したか、その他の経緯について実は存じませんで、こういうような形で土地を購入しましたので、土地については心配ございません――その土地は、県の公社のほうで肩がわりといいますか、購入したわけでございますが、そういう報告を受けたので、われわれも実は契約の際に安堵しておったわけでございます。  以上でございます。
  23. 田邊誠

    田邊委員 それで、どうして土地収用法十六条の規定によってこの申請を出したのですか。私は、この福岡市の公報を見ましても、土地収用法二十四条第一項の規定によって、知事から建設工事事業認定申請書及び添附書類の送付を受けたので、同条二項の規定によって次のとおり公告すると出ていますけれども、実際にこの加工センターというものは、あなたのほうでりっぱなパンフレットをつくっていますけれども、これは斃獣処理工場という、いわばそういう認識に立ったパンフレットじゃありませんで、いいことずくめのことが書いてありますけれども、この中に斃獣処理工場として土地収用法にかけなければならぬ、そういう事業をやるということがどこかに書いてありますか。そういう認識をもってあなた方は地元説得してきたのですか。
  24. 古澤實

    古澤参考人 事業団としましては、御承知のように、公害防止のための造成建設事業をいたしております。その場合、公害発生源として、たとえば福岡の例でございますが、悪臭とか、それに伴っての汚水、こういう公害の防除施設を御注文があれば建設するわけでございます。そういう意味合いで、四十四年度事業におきまして、ちょうど福岡と同じような形で東京都から御依頼がございまして、墨田区に現在建設中でございます。これも全く同じように魚腸骨の悪臭公害防止するための施設でございます。そういうことで、事業団としましては、そういう悪臭その他の汚水公害について造成建設の依頼がございますれば、それをするたてまえになっております。これは現にしているわけでございます。同じようなことは四十五年度の事業でも釧路市から御注文をいただきまして、これはもう現在契約を終わりましていろいろ準備段階に入っております。  それで、土地の問題につきましてですけれども、これは実は土地取得という問題につきましては、地元のいろいろな関係もございますものですから、事業団よりもむしろ直接、最終の引き渡し先である地方公共団体、その関連の土地供給公社とか、そういうふうな外郭団体がございますから、そういう方面に全面的に依頼して入手したほうが、われわれ他人が行くよりも、どちらかといえばスムーズにいく。そういう形で、すべてそういうことで土地のほうについては依頼先の市のほうに入手その他についてのお願いをしている次第でございます。
  25. 田邊誠

    田邊委員 これはあなたのほうでは、センターというのは法律的にいったらどういう性格を持ったものなんですか。
  26. 古澤實

    古澤参考人 これは福岡市からの御依頼によります内容では、福岡市内の魚屋さんから出ている魚腸骨とか、あるいは水産加工業者から出る裁断残滓とかいうようなものをいろいろ川とかその他に捨てることが、非常に付近住民公害をなしているということで、これを一カ所に集めまして、福岡の場合もその他の場合も同じでございますが、魚腸骨処理の場合には、鉄筋コンクリートの建物をつくりまして、全部密閉いたしまして、その中に処理装置――これは非常に高価なものでございますが、処理装置をつくり、さらに汚水を出さないようにする、こういう形での造成建設事業をいたしておる、こういうことになっております。
  27. 田邊誠

    田邊委員 理事長、この加工センターというのは法律的にどういう性格のものなんですか。
  28. 江口俊男

    江口参考人 公害防止事業団法の十八条の一号及び二号の施設というような契約をいたしております。
  29. 田邊誠

    田邊委員 しかし、福岡市から県に出しておる事業認定申請書を見ますると、これは明らかに土地収用法第三条第一項第二十六号に規定するへい獣処理場等に関する法律に基づくいわゆるへい獣処理場に準ずる事業として設置することになっておりますね。あなたのほうは名実ともにそういうことは言っていない。これは住民をいわゆるペテンにかける意味でそういうことを言っているのではないですか、あなたの認識はそういうことではないのですか。
  30. 江口俊男

    江口参考人 斃獣処理工場というような感覚は実は私たち自身は持っていないし、現在も持っておりません。
  31. 田邊誠

    田邊委員 そうしますると、この福岡市から県に出しておる事業認定申請書、この事業認定を申請する理由、ここにこう書いてありますね。本市が計画している水産加工センターは、市内で消費される鮮魚や水産加工場から発生する魚腸骨処理する施設で、土地収用法第三条第一項二十六号に規定するへい獣処理場等に関する法律に基づくへい獣処理場に準ずる事業として設置するものである。それ以外の何ものでもないのですね。それだけなんですよ。それ以外に、いわば水産物を加工していろいろな干ものやなんかをつくったりするほうが主で、従としてそういったいわばいろいろ出てくるところの斃獣を処理しなければならぬ、こういう付随的なものでないそのものずばりこれは斃獣処理工場なんですね。そういうふうに言っておるのですよ。この福岡市の認識は誤りですか、あなたのほうの認識が誤まっておるのですか、どちらですか。
  32. 曾根田郁夫

    曾根田政府委員 ただいまの件につきましては、先ほど事業団理事長からお話がございましたように、公害防止事業団法に定めておる造成の対象事業の類型としては、十八条の一号あるいは二号の施設ということになりますが、これにつきましては、また別に先生指摘のへい獣処理場等に関する法律というのがございまして、同時にこの法律に基づく魚腸骨処理施設でもあるわけでございまして、魚腸骨処理施設はへい獣処理場等についての規定が準用されておりまして、へい獣処理場準用施設ということになっておるのであります。そういったことで、土地収用法の第三条の二十六号でへい獣処理場等に関する法律によるへい獣処理場というのが土地収用法の対象になる事業として書いてございますけれども建設省にもこの解釈を確かめましたところ、準用施設も含めて、したがいましてけものの斃獣処理場でなく、魚腸骨処理場についても土地収用法に基づく収用対象事業にはなり得るという解釈でございます。
  33. 田邊誠

    田邊委員 したがって、いま江口理事長の答弁は、認識としては誤りがあると私は思うのです。あなた方がつくるいわば事業の法律的なたてまえというものは、これは斃獣処理場としての事業なわけですから、そのことの認識に立ち、そのことを十分地元に知らしめ、それで理解協力を得るという、こういう立場をとらなければいかぬと思うのですよ。このりっぱなパンフレットのどこにもそういうことは書いてない。これはみんないいことづくめだ。道路ができるとか、水道がくるとか、そういう形でもって最終に来て、この土地収用法に対するところのいわば申請が出、福岡市の公報が出た。これでは地元はペテンにかかったと思うのです。したがって私は、やはり率直に、法律的な根拠に基づく事業であれば、そのことを知らしめ、それによって地元住民が納得をし理解をし協力をするという立場をとらなければならぬと思うのですよ。そのことの筋道があまりにも欠けておるじゃありませんか。私は、これがそのことのいわば紛争を惹起し、事業をおくらしておる有力な原因だろうと思うのです。  そうすると公害部長、これは土地収用法に基づく強制執行なんということはありませんね。
  34. 曾根田郁夫

    曾根田政府委員 けさほど地元に確かめましたところ、土地収用法に基づく手続地元でいたしておったのを取り消すべく目下内々で相談しておるということであります。
  35. 田邊誠

    田邊委員 あなたのほうはどうです。そういうことはあり得ないと思っていますね。ですから、さっきから大臣から再三にわたり答弁があり、部長からも、あくまでも話し合いによって地元理解を得てこの問題については処理をするという確約もある。したがって、地元もそのことを受けて、土地収用法に基づくところの強制執行等はやらない、そういう手続については取り消す、こういう連絡があったということを聞いて、したがって、事後においてもこの種の強制執行等はあり得ない、こういう認識をしてよろしゅうございますか。厚生大臣どうですか。事業団どうですか。
  36. 江口俊男

    江口参考人 私のほうとしては、先ほど来のお話のとおり、そこまでやって強行すべき性質のものであるとは考えておりませんから、相談があれば、もちろん強制執行ということについては慎重の上にも慎重に考えたいと思っておりますから、あり得るというよりも、むしろないという方向で考えております。
  37. 曾根田郁夫

    曾根田政府委員 私どもも、この種のものについての強制収用というのは、今後の問題としても一般的にいって望ましくないというように考えます。
  38. 田邊誠

    田邊委員 やりますか、やりませんか。
  39. 曾根田郁夫

    曾根田政府委員 これは事業者が国でございませんで、地元の市としての問題でございますので、私どもがどうこうということは言えないわけでございますが、私どもの指導としては、一般的にいえば、やはりそういうことはなるべく避けたほうがいい、また、そのように指導するということでございます。
  40. 田邊誠

    田邊委員 いろいろとお聞きしたい点がありますけれども、私は最初に申し上げておるような観点で実は質問しておるわけですから、皆さん方のいままでのいきさつの手違いや、行政の指導がきわめて不的確であったことについて、あえてこれ以上追及することはしたくないと思うのです。要は、この問題に対するところの円満な解決をはかるべきである、こういう観点で質問をしてきたわけでありますから、したがって大臣、いま公害部長からもお話がありましたとおり、今度の問題については、あなたの意図を受けて、あくまでも話し合い最終の円満な解決を得るという道に全力を尽くしてもらう。したがって、それの何か弊害になるような土地収用についての強制執行等についてはやらないように、地元に対しても十分な指導をするということに対して、大臣も同意見だろうと思うのでありますが、そういった観点で事を運ぶということに承知をしてよろしゅうございますか。
  41. 内田常雄

    内田国務大臣 いま両君から述べられたとおりでよかろうと思います。  ただ、私あなたにさからうわけではありませんが、一番心配いたしますのは、この種のものはきわめて必要なものであるけれども、しかしどうも地元からは招致運動などはなかなかないものでございまして、どこも反対だということになりまして、広く福岡市民全体が困るようなことがありますことは、私どもも非常に頭を痛める問題でありますので、要はこれをどこにつくるか、また、地元の十分なる協力理解が得られるように努力をすべきことが行政の主眼であると思いますし、また、地方公共団体福岡市なり福岡県なりのこれまた役目であると思いますので、そういう見地に立ちまして、円満にこの施設ができて、そして広く地域住民、また地域事業者の公害発生源というものが処理されるような――これはだから手荒いことをするという意味ではありませんが、そういうようなことにつきまして、冒頭に申しましたように、地域の住民並びにその地方公共団体の一そうのいろいろなごあっせんやら御理解を得る方向で処理をいたすように、これはひとつ私も心配をしていく所存でございます。
  42. 田邊誠

    田邊委員 これは私は、いまお話しをいたしましたとおり、私の地元にもこの種のことが起こって、私は厚生省にいろいろと連絡をした事実もあります。要は、いわば根気のよい、しかもあからさまな形で地元に話をすることが必要だと思うのです。何かうわべだけよく整って、実態は話をしていない、しかも連絡はきわめて不十分。私は事業団を責めているのではありませんよ。しかし事業団も、この公害防止に関するいろいろな施設をすることについて、いろいろな教訓があるのです。言うならばたいへん困難な話だし、やりづらいことだけれども、やはり事実は事実として説明をし、十分な説得を与え、そのところを得ていきますならば、仕事最終的にできると私は思うのですよ。したがって、いま私がお聞きしたとおり、最初の予定地区変更をされた、その変更された理由があるでしょう。したがって、大臣の言うように、この種のものをどこかに設置しなければならぬということについては、私はわかります。しかし、それにはそれのところが要る。そしてまた、いわば住民理解を得るということがなければ、いかにいい施設であり必要な施設であっても、そのことによって地元民がほんとうに心髄からそれに対して賛意を表することにはならぬのですよ。したがって、私がいままでお聞きをしてきた事実をもってしても、何か粗略に扱って、適当な時期になればこのことは済むだろうということで、実態は知らせない、あるいはまた、地元連絡はなるべく簡略にしていこう、こういう節々が見えたことが、こういうそごを来たす、行政の一貫性を失っている有力な原因ではないかと思うのです。大臣のことばを受けて、あくまで厚生省なり事業団も、この種のことについては労をいとうことなく、積極的に事実を明らかにして、その上に立ってほんとうに適切な場所に、そして地元の全面的な協力のもとに事業を遂行する、こういう決意とねばり強い手段がとられていくべきである、こういうふうに私は思っておるわけであります。この問題についても、ひとついま私が申し上げた趣旨に沿ってやってもらうということについて、公害部長事業団からぜひもう一度御答弁をいただくと同時に、大臣の発言を受けて、ひとつ公害部長、早急の機会に現地話し合いをあなた自身がされたいと私は心から要請をするわけでありまして、そのことに対しても御答弁をいただいて質問を終わりたいと思うのです。いかがでしょう。
  43. 曾根田郁夫

    曾根田政府委員 御趣旨の線に沿って今後できるだけ努力いたしたいと思います。  なお、私自身現地に参る件につきましては、大臣からのお話もありましたので、現地に出ていきまして、じっくり反対立場人たち意見も聞いてまいりたいというふうに考えます。
  44. 江口俊男

    江口参考人 全く仰せのとおりの必要がございますので、監督官庁ともよく相談をし、現地の県なり市なりとも十分連絡をとりまして、過去のことは別として、将来に向かって最も円満なる方法をとりたい、こう考えております。
  45. 田邊誠

    田邊委員 それでは大臣、ひとついまのようなそれぞれの具体的な手だてを講ずるというお約束もございまするから、ぜひひとつこの問題は、ただ単に福岡水産加工センターの問題としてとどまることではございませんので、ぜひいい例をつくっていただく意味で、最善を尽くして、地元の皆さん方の理解が得られる方法を講じてもらうことを心から要望いたしまして私の質問を終わります。
  46. 伊東正義

    伊東委員長代理 江口古澤参考人には、御多用中御出席いただきましてありがとうございました。  この際、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時五十分休憩      ――――◇―――――    午後一時四十二分開議
  47. 倉成正

    倉成委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  児童手当法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。川俣健二郎君。
  48. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私の場合は、本会議の代表質問の機会も与えていただいたので、大体の抽象的なお答えは伺いましたが、質問に入る前に、私、社会労働委員の一人として、わが日本の国にようやく、やっと児童手当制度が生まれるということを考えますと、まあ各地方の自治体では矢つぎばやに児童手当というのが実現しておるから、そう真新しい感じはしませんが、よくも国として実現の運びになったものだということを、関係者に私は敬意を表したいと思います。  そこでまあ私たちは、特に私の年齢の場合は、早く国から児童手当というものをもらってみたいものと思いながら、とうとうもらえずじまいで終わってしまうわけですが、わが社会党が終戦後、二十四、五年ごろから、社会保障制度の根幹でもあるし、将来の国をしょって立つ児童に対する手当というものを実現すべきではないか。それから社会労働委員会でも、正式には昭和四十一年から何回となく特段の努力をするという確認を大臣の前に先輩の委員がやっておる記録を見ました。  そこで私は、総理大臣の口からも、四十二、三年当時、池田内閣から引き継いだ当時から、今度はおれの手でやるということを選挙のたびごとに公約して、ついにいままで延び延びになったということ、それに対してやはり一応弁明すべきではないかという本会議の質問に対して、総理は「御指摘のとおりであります。」と。そこで中心になって努力された厚生大臣に、ちょっと忌憚のない内情を、この機会に私たちも知っておきたいと思うわけです。というのは、まあ生まれたとはいうものの、小さく生んでこれから大きく育てるんだという旗じるしのようだから、それじゃ一体どういう障害があったかということを伺いたいと思うわけでございます。というのは、総理はこういうようにおっしゃっている。「御指摘のとおりであります。児童手当制度は、わが国の社会保障の体系の中で欠けていた制度であり、それだけに、制度の内容及び他の制度との調和が大きな問題でありました。」「関係者の十分なコンセンサスを得られることが必要であったわけで、実現までにかなりの時日を要したことは、率直におわび申し上げます。」ということが本会議の議事録に載っておるわけですが、それに対して厚生大臣は、総理の勇断と大蔵大臣の御理解ということでお答えしておりましたが、やっぱり私たちとしては、これから――小さく生んでいるとはいうものの、未熟児に近い生まれ方だと思います、各国に比べて、あるいは皆さんが期待を寄せておった制度に比べれば。それに対してわれわれは、その方々ひっかかるところを排除するという意味もあって、担当当局がこれからこの未熟児を育てていく上においても、われわれはどういう障害があり、どういう実情であったかということを、厚生大臣に苦労話を一番先に伺いたいと思うわけです。
  49. 内田常雄

    内田国務大臣 私は浅学非才でございますが、しかしこの児童手当の構想というものは、すでにもう前の池田内閣の時代からこのことが言及をされてきたと私は記憶いたすものでございます。その後、もうここで繰り返すまでもなく、国会で各党の皆さま方から、いつ実現をするかということにつきまして強い御注文がありました。そのつど政府は、早急に対策を立てて実現をいたすとか、あるいは場合によりましては、明年度から実現をいたすというようなことを何年か重ねまして、今日に至るまでこれが実現できなかったわけでありますので、さようなときに私が厚生大臣をお引き受けをいたすことになりましたことと、また、いまの時代が、私はいつも口ぐせのように申すのでございますが、軍事大国の時代にあらず、また経済大国の時代にあらず、福祉大国の時代である、こういうことを政府も国会も国民もそういうような意識を持つような時代に来ておりますさなかに、いままでのような状態でいつまでもこの児童手当というものが姿、形さえもあらわさないということは、まことに政治のあり方として適当でないと私は考えつつ、実は厚生大臣にも就任をいたしたわけであります。  いまだから申し得ると思いますが、おしかりを受けるかもしれませんけれども、私はひとつ私の厚生大臣の時代に総理に直談判をして、とにかくいままでの言明を実現するために児童手当の法律だけはつくって、その実施は政令をもってきめるということでもよろしい、つまり予算は一年くらいずれてもやむを得ないが、児童手当の法律だけはぜひつくるべきであるということを、実は閣議のあと残りまして、総理大臣にも直談判をいたしたことがございます。しかるに私のそのような考え方よりも、総理大臣の勇断と大蔵大臣理解が進みまして、とにかく法律だけでなしに予算も一部つけていこうと、こういうことになりましたので、皆さん方には非常に御不満を残して出発する形ではございますが、しかし、正直のところ、そうでもしない限り、ことし四十六年度もまた法律の影さえもできなかったかもしれないことを思いますときに、私も多少努力のしがいがあったような気がいたすものでございます。でございますから、申しわけないことばでありますが、小さく生んでということでございまして、このままで終わるわけではございませんで、法律自身の中にも、これが両三年の間に全体の姿となることを既定の事実としてうたってございますし、また、金額等については別に法律が今後の増加等については触れておりませんし、また、対象となる児童を何番目からの児童にするというような今後の発展の構想については触れてはございませんけれども、やはり国民の意識が児童手当につきまして引き続き期待が大きく、また、その方面に沿って発展をされるならば、皆さま方の御激励のもとにこれは大きく育てていきたい、私はかような考えを持っておる次第でございます。もっとも、金額などにつきましては、三千円ときめてございますけれども国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動がございました際には、それに対応する措置もとるべき旨、これは審議会などの答申にはございませんでしたが、そういう規定さえも入れたような状況でこの法律案を提案いたしております。  以上、御理解をいただければたいへんありがたいと存じます。
  50. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そういうことだと思います。  そこで、これはだれがつくるにしても、だれが当局になり大臣になるにしても、新しい制度をつくるということは方々にぶつかりがあると思います。  そこで、いままでおくれたのを私は私なりに考えてみますと、やはり少しでもりっぱな制度をつくろうというために時間がかかったという場合と、それから、もう骨子はできておったが、やはり財源の問題で延び延びになっておった。それから中には、時期尚早論というもの、極端に言えば無用論まであったのだという考え方もよく聞かれる。しかし、いまどき無用論というのはよっぽどのずれた人でなければないと思います。そこで、やはり問題は財源あたりにその原因があったと思います。これから、内田先生じゃないが、小さく生んだ子供を大きく育てる上に、やはり財源を確保するという方向に進まなければならぬ。そうすると、当然国ばかりでなく自治体あり、そして企業がある。  そこで、大臣に伺いたいのですが、児童手当というものの財源というものは国と地方と企業という三者分担という考え方が正しいか正しくないかという論議よりも、いまの日本の現実としてこういう方向しかないのだ、これが一番いいのだということなのか。せめてこれからの方向は、この三者分担のうちでも、厚くするところはどこで、薄くするところはどこかという方向づけでもあるのかどうか。まあ方向づけについてはあとで局長からでも伺ってみたいのですが、大臣、まずこの三者分担という思想をどのようにお考えになるのか。
  51. 内田常雄

    内田国務大臣 川俣さんがただいま御提起になりました論議に触れるような御議論が先般当委員会で行なわれました。それは、児童手当制度というものは一体社会福祉制度なのか、社会保険制度なのか、こういうことに関連する論議でございまして、私は実はたいへんはっきりしないお答えを申し上げておきましたが、簡単に申しますと、社会福祉寄りの社会保障制度でありましょう、若干は社会保険的な要素もなきにしもあらずでありますが、しかし厚生年金でありますとか、あるいはいま問題になっておりまする健康保険制度のように、受益者が同時にその財源の拠出者であるという直接の関連がないという点から見ますると、一部企業の財源負担制度がありますけれども、社会保険とは言いがたい。しかし、何らの反対給付なくして受けられる社会福祉の完全な姿とも違う面があるというようなことから、ただいま触れましたような答弁を先般もいたしたわけでございます。  これは、社会福祉、社会保険というものは、私はたいへん失礼な言い分でありますが、時代とともにいろいろな意識の変動もあることと思いますので、私はここで十年、十五年先のこれの財源分担なり仕組みなどについて予定をいまのところ立てておりません。ことにこれは、金額も生活水準やこの制度に対する国民の意識が増高いたしますならばふやすほうがよろしいし、また、対象の児童につきましても、未来永劫に三子以降、しかも義務教育学校卒業以前の子供ということに固定する必要もないことでありまして、これだって十年、二十年先には変動があるかもしれない問題でございます。外国の例などによりましても、二人目からの支給もあれば、三人目からの支給、ソ連などは四人目から支給というような制度をとっておることは御承知のとおりでございます。それから考えてみましても、今後の問題としていろいろな問題があり得ることは私は否定をいたしませんが、当面はいまの分担制度でまいるのがよろしかろう。ことに企業の拠出される料率を上げるということをしませんでも、やはり経済が成長いたします限り、賃金水準と申しますか、個人個人の賃金水準よりも会社の総支払い賃金額というものはやはり増高するでございましょうから、そういうものに対する一定の比率のような形で今度の児童手当財源の拠出もいただきますので、自然に増加はいたしますし、国の財政規模、地方公共団体の財政規模でも、経済が伸びます限りにおいては大きくなると思いますので、したがいまして、今後のこの制度の発展を頭に置きましても、費用の分担について、いまのままの制度で当面いきながら、その間の変動に応じて、また皆さま方の御指導や御協力をもいただいた変化もあり得るということで進んだらいかがか、かように正直のところ思います。
  52. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それではさらにその点だけをもう一回深めてみたいと思います。  いまこれは国の立場でお互いに、大臣、論議しているわけですが、それでは一体企業のほうでは、代表的な意見で聞きたいところなんですが、お金を出す限りにおいてはやはり黙っては出さないと思います。何かこれからの条件みたいなものがあると思います。そういったような話が、もしできますれば明らかにしてほしいということと、それからもう一つは、地方自治体のほうですが、一体、地方自治体のほうの意向をどの程度聞いたのか。いま地方自治体で二百前後実施しておるところがあるわけですが、この国の制度が実現すれば、自治体のほうでは直ちにそのかわりとしてやめる自治体のほうが多いのか、存続していく自治体のほうが多いのか、この辺のところになると局長の答弁になると思いますが、いま制度化している自治体が一体何ぼあって、国の制度が実現すれば廃止する自治体が何ぼあって、継続しておく自治体は何ぼあるのか、その辺も聞きたい、そういったところです。
  53. 内田常雄

    内田国務大臣 前段の方面の私が承知をしておることをまず申し述べますと、企業のほうからは別に条件は付せられておりません。少なくとも大臣に対しましては、条件は付せられてございません。ただ、考え方は、今日に至るまでの間、他の考え方もございまして、企業負担はけっこうであるけれども、それは税金の形で取っていただいて――一種の目的税ということになりましょうか、あるいはまた一般税の場合もあり得ると思いますが、税金の形で取っていただいて、そして児童手当の財源として所要の制度に乗って配分をしてもらう制度、そのほうが自分らとしては受けやすいという御意見も中途においてあったことも事実でございます。しかし、結論におきましては、児童手当審議会に代表を送っておられまする経営者側あるいは労働者側の皆さん方を含めまして、この法律の骨子となりますような財源分担の制度で落ちつきました。  それから、地方財政の負担でございますが、これは一番小さくなっておるわけでありまして、一番負担関係の少ない被用者関係の児童手当におきましては、県と市町村がそれぞれ十分の〇・五ずつ負担するというようなことがございまして、新しく大きな負担を課するというようなわけにもなるまいと思いますので、私どものほうは、自治大臣とも十分相談の上そのようにいたし、また自営業者に属する児童手当の財源につきましても、国の負担割合よりもその半分以下に引き下げましたようなことも、地方財政等を顧慮してつくったそういうあらわれでございます。  なお、現在まで地方公共団体それぞれがおやりになっております児童手当は、全体といたしますと、今度この法律によりまして到達する児童手当の制度あるいは金額よりもはなはだ劣っておるものが大部分でございます。児童手当という名のもとに出産手当、分べん手当のようなものもございますし、金額等につきましてもはるかに少ないものが非常に多いということを考えますときに、地方公共団体の一部の負担をされても、地域住民のためにこの国の制度に全体としては乗り移るという方向にまいるでありましょうし、また、私どもは自治省とも協議の上そのように指導してまいりたいと考えております。  なお、各公共団体の実情等につきましては、政府委員から答弁していただくようにいたします。     〔委員長退席、小山(省)委員長代理着席〕
  54. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 いま大臣から申し上げましたように、現在私どもが報告を受けております地方団体で児童手当といわれる制度を実施している団体が二百八十九ございます。そのうち、いま御質問がございましたように、国の制度が実施をされた場合に、当該地方団体の制度を廃止するというような団体の数は、実はまだ的確に全国的につかんでおりません。ただ当該地方団体の条例で、国の制度が実施された場合はその条例を廃止するというように明記をしている地方団体がございますが、それは四十九ございます。これは条例上はっきりそのような意思を当該地方団体として明確にしているわけでございますが、それ以外の残された地方公共団体で、今後国の制度との間をどう調整していくか、これはただいま大臣が申されたとおりでございまして、今後自治省なり当該地方団体ともよく御相談なり協議を進めて、全国的な統一的な運営というような見地から適切に指導をしてまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  55. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それでは、地方自治体の中で一番条件がいいというか、金額的にも、あるいは親の立場から見ても、一番条件のよさそうな制度というのは、金額的に幾らで、条件的にどのくらいのところなのか。そうして、代表的な都市をあげられればちょっとお示し願いたいと思います。
  56. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 現在提案を申し上げておりますこの児童手当法案の内容等に最も近似している地方公共団体は、東京都の児童手当制度でございます。これは義務教育終了前の児童の第三子以降というような形で、金額は月額三千円ということで、すでに各特別区、各市町村ごとに実施をいたしておりますので、この東京都の例が一番今回の国の制度に近似しているということがいえると思います。それ以外の地方公共団体におきましては、たとえば金額が月額三千円であっても、それは第四子からというようなこととか、あるいは金額が月額五百円とか千円とかいうようなところが大部分でございまして、一番国の制度に似通っているのは、先ほど申し上げましたように、東京都の場合がこれに当たる、かように思うわけでございます。
  57. 川俣健二郎

    ○川俣委員 地方じゃなく、中央の東京のことですからもう少し聞いてみますと、一番類似しているというよりも、むしろ国の制度より上回っておるのかなというように感ずるのだが、私はわからぬから。というのは、国の制度は三つの骨がある。十八歳未満の児童の中で第三子、それから一番先は五歳未満、それから三番目は二百万以下、これは政令できめるのだろうけれども、こういったところを勘案すると、東京都のほうと国のほうと、条件がどのようになっていますか。
  58. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 東京都の場合、ただいま申しましたように、義務教育終了前の第三子以降の児童を対象にしております。ところが、今回の法律案におきましては、御存じのように十八歳未満ということが一応条件になっておりますので、その分に関する限りは国の制度のほうが、考え方としまして対象者が多いわけでございます。  それから、金額等につきまして、三千円ということで、これは大体同様でございます。ただ国の制度は、先ほど大臣も申し上げましたように、段階実施考えておりますので、つまり当初は五歳未満というようなことを考えておりますので、その点は、段階実施の間は、東京都のほうが若干対象の数が多い。  それから、所得制限につきましては、東京都の場合は、扶養親族五人の場合に、年間の収入が百二十万のところで所得制限を引いているわけでございます。今回の法律案におきましては、前年収入が同じく扶養親族五人の場合に二百万、こういうことを考えておりますので、その面は国のほうがより有利である、こういうことがいえるということをわれわれは考えているわけでございます。
  59. 川俣健二郎

    ○川俣委員 局長、それじゃこれから行政指導というのは、一体、国の制度ができたんだから、もうそっちのほうはいいじゃないかという指導をするほうが行政指導なのか、いやプラスアルファでやってくれよというような指導が行政指導なのか、私はわからぬですけれども、局長はこれから局長通達でいろいろやるのだろうけれども、一体どのような指導方針をとろうとしておりますか。というのは、いまの制度はやはりそのままにしておきなさい、それにプラスアルファしてやるのがいいんじゃないか。それとも全く自主的にまかせるということなのか。特に国の足元の東京都の場合は、選挙の問題はここにからませたくないんで、そういうあれは全然ありませんが、やはり都民は、せっかくできた制度なんだが、ただ国に変わっただけじゃないかというような、悪たれではないんだが、そういうような意見も出てくるかもしらぬ。それに対して局長は、どういうように全国的に指導しようとするのか、お聞かせ願いたいと思います。
  60. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 地方自治団体が実施している特殊の制度というのは、これは本来地方自治のたてまえからいっても独自の観点から制度を新設してきた。これは一向差しつかえないと思うわけでございます。したがいまして、そういう観点から申し上げますと、国の制度ができることに伴いまして既存の地方公共団体の制度を改廃するかしないかというようなことにつきましては、やはり地方団体が独自に判断していい問題だということが一般的にはいえるわけでございます。ただ、今回のような全国統一的な制度を国の法律に基づきまして実施をするということにいたします以上は、やはり国の制度と目的なり趣旨なり内容等が重複しているというような場合は、私どもはできる限り国の一般的な制度に移行していってもらいたい、こういうことを考えているわけでございます。もし目的、内容等が完全に重複している場合に、独自に地方公共団体が別個にやるということがいいかどうかという問題があるのじゃなかろうかとも思いますし、やはり目的、内容等が国の制度と重複しているような場合は、できる限り私どもは国の全国的見地に立った統一的制度の運用という立場からしますと、この国の制度のほうに移行をしていくということが一番現実的でなかろうか、かように思うわけでございます。  ただ、問題は、いま御質問のように、全然国の制度と内容なり何なりが違うという場合があり得るわけでございます。先ほど大臣も申されましたように、出生手当とか何かほかの名目で児童手当的なものをやっておる公共団体がございますが、国の制度とそういう目的、趣旨、内容等が違う場合、これは私どもはなかなか一がいに児童手当制度という立場からだけでこの問題を考えるということは、必ずしも適当でないわけでございまして、当該地方公共団体の自主的判断にまかすべき問題である、こういうふうに一般論としては考えているわけでございます。
  61. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ここで私は行政学を論争しようとはしていないのだけれども、これは非常に大事な問題だと思います。たかが知れた児童手当三千円のことだから、並行したっていいし、やめなさいと言ってもいいんだが、ただ民主主義と行政指導という画一的なものとの論争になると、かなりいろいろな論議がこれに対して出てくると思います。何も自治体でやるんだから国が世話する必要はないのではないかという考え方は必ずしも民主的じゃないと思うのです。したがって、その辺を当局はきちんとした姿勢を示しておかないと、せっかくの国の児童手当制度というものを、さっき大臣がおっしゃったように、三者分担という思想がある限りは、関係者が財界でもあるし、自治体も関係者であるだけに、やはりきちんとした行政指導をしてほしいと私は思います。これは要望ですから、これに対する御意見はけっこうです。  それから、具体的に入りますと重複するきらいが出てくると思いますが、御容赦願いたいと思います。  まず局長、第三条に「児童とは」ということをせっかく定義づけていながら、児童手当の児童とは三つばかり違う。義務教育なんだよ。このようにしたのは財源からの制約なのか、それとも諸外国の例をとったのか、それとも大体義務教育というところでおさめたのか、その辺ですが……。
  62. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 確かに法律の構成のしかたとしまして、児童というのは十八歳未満ということで、いわゆる児童福祉法の児童をここでとらえて規定しているわけでございます。ところで、第四条のほうで支給要件という場合に「義務教育終了前の児童を含む三人以上の児童」というような形にしたわけでございます。私どもとしましては、これは義務教育終了前の児童というものをいわゆる児童手当の支給の計算の基礎に置いているわけでございますが、そういうふうなことにいたしました理由としましては、外国の例をおあげになりましたけれども、外国の場合も義務教育終了というのを一つのめどにしておる国が多いわけでございます。ただ、外国の場合は、それに若干のいろいろな条件をつけております。これは御存じのとおりでございます。そういう義務教育終了前ということを外国等の例もこれあり、私ども考えましたときには、やはり義務教育期間中というものが児童の人間形成上、人格形成上一番大事な時期であるということが一つと、それから労働基準法等のいわゆる就労を禁止されている期間である。つまり、その期間は何といっても国なり社会なりがこの児童を健全に育成する重要な年代である。そういうようなことからいたしまして、義務教育終了前というものを支給の場合の計算の基礎に置いておるわけでございまして、これは確かに児童手当審議会等でも義務教育終了前だけの子供を対象にした構想を中間答申として出していただいたわけでありますが、若干その点は児童手当審議会の答申と違いまして、上限のほうを十八歳までということが今回の法律案でございます。義務教育終了前という考え方を基礎に置きましたのは、私いま申し上げましたような考え方基本になっておる、そういうふうに御了解願いたいと思います。
  63. 川俣健二郎

    ○川俣委員 レファレンスの資料によりますとこう書いてある。たいがいの国において児童が教育を受けている期間は制限年齢以上に受給資格の年齢を延長させている。一切延長を認めていない国も若干はある。これはほんのわずかだ。「教育を受けている学生にたいし制限年令をこえて受給期間を延長させる年令は次のとおりである。」はなはだしいのはオランダの二十七歳、これは別として二十一歳が多いわけです。オーストラリアそのほかかなり多い。それから十九歳、十八歳、この辺がやはりある。この辺も局長、諸外国は義務教育という程度にはとどめていないということも御認識願いたいのです。  それから、今度児童手当ができるんだよということで私らも国会報告のたびごとにお話しするし、この間本会議の質問をやろうとしたら、厚生省、大蔵省、自治省、三省の若手の人たちが私の部屋に、例の、何を質問されますかと聞きに来た。七、八人私の部屋に集まった。みんな粒ぞろいの前途有望な若手官僚の卵である。今度児童手当ができるんだけれども、君たちはもらえますかと聞いたら、一人もいない。国に帰って、農村の青年たちを集めて、川俣代議士お得意の講演会をやって、どうだ、君たちはいるか、と言うと、まずほとんどいなかった。これから小さく生んで大きく育てるという話で帰ってきた。  そこで数字的に伺いますが、第一段階は四十七年の一月一日から四十八年三月三十一日までですね。これは何人対象者がおって、どのくらいの金額が必要なのか。第二段階は十歳未満で、何人でどのくらいの金額が必要なのか。最終段階の四十九年の四月一日からといういまの当局の方針でいくと、どのくらいの金額で何人ぐらい対象者がいるか、まずお知らせ願いたい。
  64. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 法律の附則に書いてございますような段階実施というものをやります場合の対象人員及び給付の総額につきまして申し上げたいと思います。  第一段階の五歳未満という形でやる場合に、対象人員は九十三万六千人でございまして、これの給付の総額は三百三十七億円でございます。それから第二段階の十歳未満という段階になりますと、百九十三万三千人でございまして、給付の総額は六百九十六億円。それから最終段階になりますと、対象人員は二百四十七万九千人、これの所要給付総額は八百九十三億円ということで、二百四十八万人ぐらいの対象児童がおりまして、約九百億円近くの給付総額が最終的には必要になってまいるわけでございます。
  65. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると大臣、大きく育てるというのは、二百五十万人が大きくなるのか、九百億が大きくなるのか。
  66. 内田常雄

    内田国務大臣 正直に申しますと私は両方を考えております。先のほうは三年半計画で自動的に当然成長いたします。あとのほうのことにつきましては、最初に申し述べましたように、これは国民なり政治家のこういう児童手当等を含む社会福祉に対する意識の伸び方に従って私どもは対応できるものと考えております。
  67. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると局長、いま子供一人育てる費用は大体どのくらいとつかんでおりますか。
  68. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 若干資料は古いかもしれませんが、四十二年当時の私どものほうの調査によりますと、世帯の態様はいろいろございますけれども、平均的なことを申し上げますと、月額六千五百円程度の児童一人当たりの養育費がかかっている、こういう結果が出ております。
  69. 川俣健二郎

    ○川俣委員 四十二年ではちょっと心細いのですけれども、いまは大体一万円ぐらいだろう、こういうのですが、その辺のことを勘案しますと、三千円という額はどんなものだろうかと思います、国と親が半々で育てる義務があるという思想から発したということを諸外国の文献に書いてあるだけに。  そこで第六条の二項の「前項の額は、国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるため、すみやかに改定の措置が講ぜられなければならない。」これは文句どおり受け取っていいのかどうか。
  70. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 いわゆるスライド規定と一般にいわれている規定でございます。厚生年金、国民年金等の長期給付の制度に取り入れられているいわば例文の規定でございますが、この規定を私どもこの児童手当制度みたいにいわゆる短期給付制度に入れましたのは初めてであるわけでございます。先ほど大臣も申し上げましたように、やはりこの三千円という児童手当の額はいつまでも固定する性格のものではない。この法律案の六条二項にございますようなこういった趣旨に対応しまして、今後これに対応した金額というものを考えていくべきだという、いわば法律の明文を置きまして、こういう姿勢をここにはっきり立てたわけでございまして、私どもとしましては、大臣も申し上げましたように、三千円という金額を今後どのように上げていくかということになりますと、この六条二項の精神を最大限尊重しまして、その時点時点におきまする諸事情を十分勘案しながらやっていくということで、この規定に入れたことを相当評価していくべきでございますし、また政府自体も、この六条二項を絶えず念頭に置きながら、今後児童手当の額の問題については積極的な姿勢で検討を進める必要がある、かように受け取っているわけでございます。
  71. 川俣健二郎

    ○川俣委員 絶えず念頭に置いていただいて、肝に銘じていただきたいということを要望しておきます。  それから、これは確認されておると思いますけれども、もう一ぺん私からも念を押したいと思います。  例の障害児に対する特別児童扶養手当、これとは併給するということでいいですね。それからもう一つは、生活保護の例の手当、これとも併給するということでいいですか。
  72. 内田常雄

    内田国務大臣 本会議場で、川俣さんであられたと思いますが、同趣旨のお尋ねがございまして、私はそのとき思い切って、あなたの御希望のとおりにいたします、ともう言ってしまっております。大臣はかわるかもしれませんが、本会議場で厚生大臣が言ったことを、おそらくそれは変えるわけにまいりませんと思いますし、また、趣旨から考えてもそうあるべきであると私は思いますので、心身障害等を持つ子供さんに関する従来の特別児童手当というものと今回の児童手当というものは趣旨が違うんだから、私は併給をさせるべきであるし、生活保護のほうは、これは併給と申しますよりも、所得認定をするかどうかと、こういうことでありますが、所得認定はしないほうが児童手当制度が生きると私は考えますので、これは私はもう、もし省令だか政令だか告示だかやります場合には、私が申しましたとおりでやり抜くつもりでおります。
  73. 川俣健二郎

    ○川俣委員 まあ局長、そういうように大臣もおっしゃっておりますから、どうかひとつ確認をお忘れなく……。  それから、かなり地方自治体でもう制度化を前提に質問されるのですが、さらにこまかく入っていきます。これはおやじを対象にしてくれるのであって、したがって別のほうで暮らしておる子供が一人、二人いる場合がある、その場合には、自分のうちで正式に育てておるものと合わせて条件に考えるんだ、こういうように読んでいいのか、この支給の条件の四条は。
  74. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 第四条の一項の一号、これはまあ普通の、いわゆる両親がそろっている場合とか、あるいは片親だけの場合も、普通の場合のこれは根拠規定でございますが、いまお尋ねのような事例、つまり、たとえばいなかのほうにはおかあさんがおって、子供が次男坊と三男坊が二人おる、それから長男のほうはどこか都会地に行って働いておるというような事例の場合だろうと思いますが、そういう場合にはこの四条一項の一号によりまして「義務教育終了前の児童を含む三人以上の児童を監護し、かつ、これと生計を同じくするその父又は母」でございますので、監護とか生計維持、同一という要件がございますならば、たとえ都会地で長男が働いておりましても、その支給要件に合致をいたすわけでございます。したがいまして、まあわかりやすく申し上げますと、いなかのおかあさんのほうに長男が毎月生活費等の一部をという形で仕送りをしていなかのおかあさんなり弟妹を助けておると、こういうような場合は、当然この一号に該当して対象になるわけでございます。ところが、都会に出ております長男なら長男が、もう全然生計を同一にしていない、完全に独立してしまっているという場合が事例としてあるわけでございますが、そういうような場合は、確かにこの一号規定に合致するかどうか、これはちょっと簡単には即断できないわけでございますので、よくそこらの実態を、つまり生計同一であるかどうかという、そういう社会通念上の考え方による実態把握をやった上で対象にするかしないかをきめるべき性質のものだ、こういうふうに考えているわけでございます。一般論的には、お尋ねのような場合は大体対象になる、こういうふうに私ども考えております。
  75. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それじゃ時間も迫ってきましたから、この第八条、それから認定の項ですが、何条でしたか……。結局、最初は役場に申請手続ということになると思います。ところが、いまは出かせぎあり船乗りあり、これは非常に混乱すると思います。そこで、申請がなければくれないのか、これが第一点。手続というものがなければほっておかれるのか。  それから、申請しても認定しますという返事がなければだめなのか。  それから三番目は、申請を忘れてあとで申請した場合はさかのぼってくれるのかどうか、この文章にもあるようですが、どうもはっきりしない。  それから四番目は、月半ばで資格を失った場合はどうなのか。極端に言うと、きょう五月十二日に三人きょうだいの一番上の子供が十八歳になりました。そして十八歳になったんだからきょうからもらえないはずです、三番目は。あした四番目が生まれた、これは極端な例なんだけれども、そういった類も運用の妙味で支給するのかどうか。  それから、これは年三回で役場が窓口になるのかどうか、その辺のところなんですが……。
  76. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 逐次お答えを申し上げます。  第一点の申請がなければ支給がされないのかという点でございますが、これは八条の趣旨から申しまして、いわゆる認定請求というものをやっていただくたてまえになっております。なぜそういうふうに認定の請求をしなければいけないかと申しますと、先ほども説明しましたように、養育関係とか生計関係というのが四条の支給要件の中に規定されておりますので、単に戸籍、市町村役場等にございます住民台帳とか、そういうようなものだけでもわからない場合があるわけでございます。これは非常に千差万別でございますので、一応そういうような養育関係、生計関係というものは、やはり本人の申請と申しますか申し立てによりまして実態を把握した上でないと、支給要件に合致するかどうかが判断がつかないということで、そういう意味におきまして認定の請求ということをたてまえにしているわけでございます。  それから、同様に第二の御質問でございますが、認定をしますということの返事がなければだめなのかということでございますが、四条に資格要件がきめられておりますので、その資格要件に合致しておる場合は、認定の行為自体が若干おくれるということがあり得るわけでございます。そういうような場合でも、資格要件に合致してしかも請求がなされているということが前提となっておりますならば、やはり請求した月の翌月分から支給をされるということに相なるわけでございます。  それから第二点に、申請を忘れてしまってあとで申請をしたということでございますが、この場合は確かにそういうことがあり得るということも十分わかるわけでございますが、法律の趣旨からいいましても、やはり申請をするということになっておりますので、認定の請求をした日の属する月の翌月分からということでございますから、忘れた場合でもその翌月、つまり忘れていたけれども思い出して認定の請求をしたというその時点からとらえましてその翌月分からと、こういうことに相なるわけでございます。  それから、月半ばにおいて欠格、いわゆる失権をしたという場合でございますが、こういう場合にはこの八条の二項によりまして「支給すべき事由が消滅した日の属する月で終わる。」ということでございますので、先ほどお述べになったような事例では五月分は当然支給されるわけでございます。  そして新たに第四番目の子供が生まれたという場合は、おそらく五月中に認定の請求をされるわけでしょうから、六月分からその四番目の分に該当するいわゆる児童手当が支給されるということで、結果的には五月分、六月分がそれぞれ支給をされる、こういうことに相なるわけでございます。  それから最後に、市町村の役場で児童手当の支払いがなされるのかということでございますが、私どもとしましては、児童手当というものが全国民を対象にしております関係上からしましても、受給者の便宜というものをできる限り考慮してその支払い方法を考えてまいりたいと思っておりますので、現在私どもとしましては、もちろん市町村の窓口で支払いのできるところは窓口でやっていただいてもけっこうだし、それから窓口払いができないような市町村においては、各市町村から自動的に市町村長の指定します市中金融機関の預金口座というようなものに振り込みをしていくというような形で、最大限受給者の便宜を考えるような支払い方法を市町村の実情に応じて指導をしてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  77. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ちょっとこまかくなったけれども、そうすると忘れた場合は出してから、そして認定してから、それから忘れなくても認定期間がかかった場合はまた認定から、こういうことですか。もう一ぺん確認しておきます。
  78. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 八条の精神はやはり認定の請求をした日の属する月の翌月分から支給をするということになっておりますので、うかつにも忘れた、あるいはその他の事情でぐあいが悪かったというような場合は、この八条の二項の規定からいいますとやはり支給の対象にならぬわけでございます。ただ八条の三項には、特別な事情があって請求自体ができなかったという場合の一種の特例規定を設けておりますが、一般的な場合の、忘れてしまったとかあるいは知らなかったというようなことがあった場合に、やはりその認定の請求をしたという時点でとらえてその翌月分からというのが法律の規定でございますので、その点はちょっと私どもも弾力的に運用するというわけにはまいらぬわけでございます。したがいまして、知らなかったとかというようなことがないように、今後PRというものを十分やっていくことがわれわれの任務でもあろうか、かように思うわけでございます。
  79. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これは児童手当ばかりじゃなく、過去にいろいろと、創設された制度のときには必ず、特に地方に行き、山奥に行けば行くほどそういう問題が出てくるのです。私はやはりせっかく制度ができたのだから、認定主義じゃなく発生主義でいいと思うのですよ。その子供がもらえる条件になったら、一カ月ぐらい申請がおくれたからというので、まして申請したのだけれども認定がおくれたから認定の翌月からという、その辺のちょっと弾力的な運用はどうですか。やってもらわなければ困ります。
  80. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 後段に言われました認定がおくれたからその翌月からというのは、これは私が明確にお答えしなかったかもしれませんが、そういうことにはならぬわけでございまして、かりに認定行為自体がおくれても、請求という事態があり、しかも支給要件に合致しているということがございましたら、認定行為自体がかりにおくれても、当然請求の翌月分から支給をする、こういうことにいたすつもりでございます。
  81. 川俣健二郎

    ○川俣委員 特に三項は弾力的な逃げ場というものもうたってくれておるようだから、ケース・バイ・ケースで少しは弾力的に運用をしてもらうことを要望しておきます。  それからさらにもう一点になりますが、例の公務員の扶養手当ですね、これとの調整云々という意見がやはり本会議で少し出ておる。これに対してどうですか、局長。
  82. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 国家公務員なり地方公務員、いわゆる公務員の扶養手当とこの児童手当制度の調整の問題でございますが、私どもとしましては、結論的に申し上げますと、これはやはり別個の問題であります。したがいまして児童手当法自体の問題ではなくして、むしろ公務員給与法の体系の問題でございますので、将来公務員の扶養手当とこの児童手当とを調整するというようなことがかりに起こるといたしますならば、これは給与法自体のほうの改正ということで考えていくべき筋のものだというふうに考えているわけでございます。
  83. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それでは最後に大臣にもう一ぺん、一番先に戻るようですが、これから大きく育てる、こういうのですけれども、改善案を、額も対象もとこういうのだが、対象はやはり十八歳未満の第三番目ということはある程度いくのでしょう。それから額も三千円ということがある程度いくのでしょう。そういうことで改善案というのはどういうことなのか、もう少し聞きたい。
  84. 内田常雄

    内田国務大臣 とにかく四十六年度の終わりから出発するわけでありますので、しかもそれも段階的出発で、一応の三年後の目標をこの法律で示しておりますから、それから先のことは、これは何べんも申しますように、いま日本の国は福祉大国たらんとしているし、政府や国民意識も社会福祉ということに向かって大きく前進をしている際でありますから、その線に沿って私どもは必ず再検討をする機会がくるということを私は心の中で持っている、こういうことを申し上げたわけであります。  その中身は、手当の三千円を増額することもございましょうし、あるいは児童の対象につきましても、これは世界じゅうが第三子以降ということになっているわけではございませんので、国民の意識の成長に伴いまして対象児童の範囲等につきましても私は当然考え直す時期もくるのではないかということを心に持つものでございます。たとえば教育なんかにつきましても、進学率等もますます進むわけでありますが、今日ではここで大学教育というようなものまではもちろん想定はいたしておらないと考えざるを得ませんけれども、それらの問題をも含めて、児童手当だけではなしに児童教育手当というような名前にして大発展をさせるほうがいい場合だって、これは将来こないとは限らないというくらいのつもりで、私は将来を期しておるものでございます。
  85. 川俣健二郎

    ○川俣委員 その程度のお答えしか得られないのかと思うのですが、結局局長以下の皆さん方、これから運営していく人方に聞きたいのです。よくその辺を認識してもらいたいのですが、九百億ぐらいの予算なら、どうせこれだけの制約された条件でしかもらえないものなら児童公園でも建ててもらったほうが、なんという声もちらほら聞くだけに、そういうようなものに流されないように、これは大臣、いつまでも大臣であっていただけたらいいのですけれども、これはやはり局長以下皆さん方に、まず制度はつくった、しかしこの制度は社会保障制度の根幹であり、りっぱなものであるというように大々的に改革するときが二、三年後にくると思います。三千円で、第三番目で、十八歳未満で、二百万なんといったってとても、児童公園を建ててもらったほうがいいんだという声もちらほらあるところを見ると、その辺も特に、さらに検討を続けてほしいということを要望して終わります。
  86. 小山省二

    ○小山(省)委員長代理 次に、大原亨君。
  87. 大原亨

    大原委員 児童手当の問題につきまして、いままでかなり質問が進んだわけでありますが、いままでの質問に重複しない範囲で逐次質問いたしてまいります。同じような質問でございましても質問の角度を変えて質問いたしたいと思いますから、率直にお答えをいただきたいと思うのです。  児童手当の問題は、大臣、諸外国の立法の例からいいますと、第一次大戦以降もかなりできておりますが、第二次大戦以降、世界の各国においては、社会保障制度を確立していく基礎的な条件の問題として児童手当の問題を取り上げてやってきたわけです。しかしながら日本におきましては、世界各国に比べまして、特に最近の十数年来の経済成長は目ざましいわけですが、非常におくれておるわけです。しかし、これは認識が足らなかったという国民的な世論、合意の問題だけではなしに、たとえば昭和二十四年の社会保障制度審議会は、この問題につきましてはいち早く取り上げまして、そして児童手当を実施すべしというかなり詳細な勧告をいたしておるわけでありまして、これは御承知のように総理大臣の諮問機関でもあるわけです。その後、昭和二十七年に経済四カ年計画に関連をいたしまして、児童手当の問題がかなり詳細に取り上げられております。さらに昭和三十七年の、社会保障制度審議会がヨーロッパの水準を目ざしましての十カ年計画を策定いたしました社会保障の改善に関する勧告の中にも取り上げられておるのであります。その後国会におきましても、御承知のようにしばしば質疑討論がかわされて、この社会保障に関連をした問題のときには附帯決議で取り上げられておる。また私が最初に、昭和四十二年に衆議院の予算委員会におきまして、佐藤総理に質問をいたしましたときに佐藤総理は、初めてですが、昭和四十三年から児童手当を実施する、こういうことを答弁したことがございます。その後、児童手当の問題は各方面でかなり活発に議論されておるわけです。  そのような経過を申し上げたことが示しておるように、国民の側の世論や意見というものや国際的なそういう経験というものが、児童手当はきわめて重要な社会保障制度の一環であるという認識の上に立って取り上げられておるわけですが、日本は経済大国、経済成長が世界第二位になった昭和四十六年のこの国会で初めて取り上げられるということになったわけです。これは一体どこにそのようなおくれた原因があるのか。  この問題はいままでいろいろな角度から議論されましたが、私はこれを取りまとめる意味において、厚生大臣から一つの反省事項としてお答えをいただきたいと思うのです。
  88. 内田常雄

    内田国務大臣 この児童手当が今回法律案として国会に提案されるに至るまでの間のかなり長い期間の経緯につきましては、大原さんが述べられたとおりであると思います。実は私も、従来担当をいたしておりました方面が、正直に申しまして、いささか違った方面の担当を政治家としていたしておりましたので、この間の経緯の詳しいことは、厚生大臣に就任いたすまでは私も実は気がつきませんでした。しかし昨年一月厚生大臣に就任いたしまして、従来の経緯等について勉強いたし、また予算委員会その他におきまして、各党委員の方々からあらためて繰り返しこの問題に対する御発言をお聞きするごとに、私はこの問題に対する認識を深めてまいったわけでございます。  従来の経緯経緯として、これは多少言い過ぎになることはお許しをいただきたいと思いますが、私が厚生大臣であります間にぜひ何とかしてこの制度発足の緒をつけたいと実は考えました。先ほどもちょっと申し上げたのでございますが、閣議のあとなどでも実は残りまして、法律だけでもつくりたい、銭はあとからでもよろしいというようなことで、政令、省令あるいは予算の定むるところによりというようなことで譲りましても、姿だけでもつくりたいということで、直接総理大臣、官房長官などにも私は申し述べました。努力をいたし、まあ今日、社会福祉大国といわれておる時代の厚生大臣が、このくらいのことに手がつけられないようでは、厚生大臣やめてやろうかなどと実は思ったのです。昔は陸海軍大臣なんかがやめると内閣はつぶれたようでありますが、このごろは厚生大臣がいじめられたりやめたら内閣が倒れるぐらいの慣習をつくれないものかとさえうぬぼれましていささかの努力をいたしましたが、総理大臣の勇断と大蔵大臣の若干の理解によりまして、段階的にこれが予算もついたということで、私といたしましては小さく産んで大きく育てるということばで表現いたしましたとおり、社会意識の成長とともにさらにこれを広げていく努力を続けてまいりたい。これは、私が大臣をやめるであろうことも目の前にぶら下がっておりますが、しかしこの問題に対する取り組みはやめるわけではなしに、この次には私が、あなたがすわっていらっしゃるところにすわってやることになるわけでございますので、皆さま方与党委員並びに野党委員協力して、せっかく緒につきましたこれを十分育ててまいりたい、このような考えを持っておることを実は告白をいたします。     〔小山(省)委員長代理退席、委員長君席〕
  89. 大原亨

    大原委員 私がこの質問をあえて繰り返して言いますのはどういう理由かといいますと、いままでのところはともかくとしまして――あなたには私は最後に申し上げますが、いままでの内閣の大臣のときにできなかったのは、一体どこに原因があったのかということを若干討論をし明らかにすることは、これからどのように改善していくかという問題と密接不可分ではないか。厚生大臣の寿命は、あなたが予測をされましたように、大方の観測というものは七月であるということがいわれておるが、私の希望といたしましてはまだまだその責任をとってもらいたい、医療の問題もあるし。そういうことでありますが、それは別にいたしまして、どこに一体理由があって経済大国の日本が、そういう面において、世界が非常に重要視をしてきた児童手当を軽視をしてきたのか。  考えられることは二つあると思うのです。一つは、児童手当に対する認識が欠如しておったのではないか。認識の問題です。それから第二は財政的な理由です。財政がそれに応ずるだけの力量がなかったのかどうか。そういうことが原因であると考えるのかどうか。二つの点が大まかにいえばあるのではないか。一体どういう点に、いままでの反省として、おくれた理由があるか、そういう点について明らかにしてもらいたい。
  90. 内田常雄

    内田国務大臣 先ほども述べましたように、就任前私はこの問題に対する勉強がございませんでしたので、さような経験の私が申し述べますことは言い過ぎにもなりましょうし、誤りにもなろうと思いますので、いまの私のお答えからもわざわざそのお尋ねの問題を避けて発言をいたしてまいりましたが、重ねてのお尋ねであれば、私もおおむね大原さんと同じように考えざるを得ません。しかしあとの財源の問題につきましては、これは分担技術等の問題とも関連するところもございまして、これまででも解決し得ない問題ではなかったかとも思いますし、それから第一の児童手当に対する重要性の認識の欠如ということにつきましては、児童手当ばかりでなしに、社会福祉全体についての考え方の中でどれを先にすべきかという問題、また社会福祉を政治の課題あるいは財政の対象としてどのくらいの幅で取り上げるべきかということにつきましても必ずしも十分な価値判断がつかなかった、こういうふうに、くだいて考えると、私はあなたと同じような考えを、これは私は学問が足りないからいつでも訂正をいたしますけれども、思わざるを得ません。
  91. 大原亨

    大原委員 主としてあなたはやはり認識の問題――児童手当に対する認識の問題、ひいては社会保障全体に対する考え方の問題、こういうものが私は一つ大きな障害になっておったと思うわけです。あなたの御答弁にもありましたように、社会保障制度を一定の目標まで引き上げていくような総合計画を政府が責任をもって立て、たとえば防衛計画でも四次防というものがずっと続いているわけですから、社会保障についてもぴちっとこういう点が足りなくて、こういう点はこういうふうに実施をするというふうな意欲的な社会保障制度に対する取り組みがなかったのではないか。もう一つは、そういうことは必然的に、つまり日本の社会保障に対しては歴代の保守党内閣は、佐藤内閣もそうですが、財政硬直の問題等で議論も若干あったことがありますが、社会保障制度を充実させていくと人間が横着になる、こういう気持ちがあったのではないか。つまり生かさず殺さずということでもあるでしょう。つまり、生活保護法的な社会保障を考える。貧乏という事態発生したことに対して救済の手を差しのべる、そういう救貧政策としての消極的な政策が社会保障の本流であったのではないか。したがって、児童手当というふうな支出がふえる部面に対する保障、つまり他のほうは、病気とかあるいは老人とか身体障害者というふうなものは、これは収入が減少するわけです。収入の減少を補っていくというふうな社会保障が中心であって、子供が多いことによって支出が増大する、こういうことに対しては、児童の人権を重視する問題と一緒に、考え方が国際的にも非常におくれておったのではないか。むしろ世界各国ではそれは逆であって、支出が増大するものについて国家的な保障をしながら、そして医療保障や所得保障もやっていくというふうな考え方を進めてきた。これは国民の意識の問題でもあります。予算の問題でもありますよ。そういう社会保障に対する基本姿勢が、こういう児童手当を今日までおくらせた一つの大きな原因じゃないかと私は思いますが、いかがですか。
  92. 内田常雄

    内田国務大臣 これもどうも勉強が足りませんので、私が大臣として断定的のことを申し述べてしまいまして、累を政府や内閣に及ぼしてはならないと思います。あくまでも私個人の考え方でありますが、たとえば児童につきましても、私どもが覚えておりますことは、今日の児童委員の制度の前には方面委員と言っておったように思います。この方面委員というものはまさに救貧制度の媒介役をやっておったと思いますけれども、しかし今日の児童委員あるいは民生委員というものは、救貧制度的な理念から置かれているものではなしに、まさに児童の保護、育成また国の将来を担当するものとしての資質の向上というようなことを頭に置いての児童委員でありまするし、民生委員におきましても貧乏におちいった者をさがし出してそれの生活保護的な措置をするということだけでは決してないわけでありまして、社会福祉活動の第一線を形成するような形で運営されている、こういうふうに私は考えます。それはいつからかというと、必ずしもこの児童手当の問題が起こりました数年前ということではなしに、すでにこれらを含めました社会福祉尊重の理念というものは、いまの内閣が発足いたしましたもう二十数年前くらいにおきましてもその理念が、どこから来たかは別といたしまして、それはみずから編み出したか、あるいはアメリカから教えられたか、あるいは国際連合から来たったか、ユニセフから来たったかということは別といたしまして、二十数年前からもうそういう社会福祉の理念というものは、戦前と違った姿において日本において起こりつつあった。ただそれを実現するための政治の面においてもあるいは国民の意識の面におきましても、あるいはまた衣食足って礼節を知るというような、とにかく経済尊重が何よりも先だというようなことのために、その理念が発現する機会を押えられておったというような気がいたします。
  93. 大原亨

    大原委員 時間もあれしておって何ですが、生活保護というのは貧困という現実に対して国が保護政策をとるわけです。生活保護の発生原因は病気がもとになったり、あるいは子供が多いということがもとになったり、あるいは年をとるというようなことがもとになったりするわけですね。それが原因で生活保護の適用に入っていく、こういうことになるわけです。つまり、貧乏におちいった人を救済するのが生活保護の制度です。日本では社会保障の中で生活扶助の面が非常にウエートが高いのはなぜかというと、病気に対する治療と所得の保障の制度が非常におくれておったということ、それから年金の制度が未成熟であって、老人や身体障害者、母子家庭に対する所得保障の制度、生活保障の制度が少なかったということ、そういうことと児童手当の問題等を含めて、そういう積極的な意味の社会保障の制度というものがおくれておったために、生活保護の面がやむを得ず大きな分野を占めたということになる。ですから所得保障や医療保障の面が充実してまいりますと、失業の問題等を含めてまいりますと、生活保護の費用というものは減ってくるのであります。ですから救貧的な政策は生活保護を中心としてなされておるわけですが、積極的に貧乏の根源を断つという防貧的な政策を総合的に進めてまいりますと、生活扶助の占める分野は少なくなる。ですからそういう長期計画なり積極的な社会保障に対する取り組みというものが日本の政治の分野においては非常におくれておったということが、私は児童手当をおくらしておった一番大きな原因ではなかったか、そう思います。その議論に対してどうお考えですか。
  94. 内田常雄

    内田国務大臣 今日のたとえば生活保護の内容を分析してみますと、国の施策の貧困により生計が維持できなくなったような、そういう救貧対策的な内容からかなり変わってまいりまして、実はあれは欠陥家庭対策のような面が非常に濃厚になってまいりました。それは何であるかというと、身体障害家庭でありますとか、あるいは老齢者家庭でありますとか、ひとり暮らし家庭でありますとか、名前は生活保護という昔の名前は使っておりますけれども、中身は老人対策あるいは身体障害者対策あるいは病人対策的な欠陥家庭対策、単なる貧困ということではなしに、そういうことにかなり変わってきた内容が実はうかがわれてきておりますことは、近年における経済の発展で働く機会が多くなり、また進学等の機会も多くなったという一面と、また他の面におきましては、いまるるお話がございましたような救貧的な対策から、社会福祉、社会保障というような対策が進められておって、そして生活保護というものが、その名は同じであっても、中身は社会福祉対策に変わりつつある。またそういう見地から、一挙にはまいらぬにいたしましても、生活保護の内容というものはひとり暮らしの老人対策あるいは病弱者対策ということによって、中身を入れかえていくべきだということを、私自身厚生大臣として実は気がついておるわけでございますので、私ごときおくれた者がそこまで気がついておるわけでありますから、いまの政府も、またいまの政治も十分このことには力を入れつつあるとぜひ考えていただきたいと思います。過去のいろいろな段階的な発展の歴史や経緯はございましょうが、それはそれとして、今日は政府もそのような考えになっておることをぜひひとつ御理解をいただいて、また足らざる面は御鞭撻をいただきたいと思います。
  95. 大原亨

    大原委員 議論は発展させませんけれども、こういうことなんですね。社会保障の水準をあまり引き上げていくと、人間が横着になるとか働かぬとか、やはり生かさず殺さずですれすれのところが一生懸命働くという考え方、それからあなたは池田さんとは非常に親しかったが、たとえば池田さんが、社会保障が充実されると、スウェーデンのように老人が自殺をする、自殺率が高いということをどこかで言って問題になったことがあった。依然としてそういうことを言っておる人がある。これは間違った考えです。事実に反しているのです。老人の自殺率は御承知のように、女性については日本が世界一です。男のほうのお年寄りについては、世界三位か四位くらいですね。やはり社会保障が充実されてないと自殺率は高いわけです。親との断絶が高度成長で始まっているわけですから。そういう消極的な考え方でなしに、救貧的な、恩恵的な考え方でなしに――そういう考えであると、生活保護でも、テレビを持っているからお前はだめだ、こういうことになるわけです。そうすると、憲法第二十五条の健康で文化的という条文に抵触するわけです。そうではなしに、貧乏の根源を積極的に断つ、そして生活する権利を保障していくんだ、憲法の二十五条を実現していくんだという考え方で社会保障を進めていく、そういう気持ちがあるならば、年をとった、身体障害者になった、母子家庭になった、失業した、病気をしたということで収入が減る。それに対する裏づけをするということだけでなしに、子供がどんどん生まれていく、養育されていく、こういう支出が増加する家庭においてこそ、所得の保障をしていくということが生活安定の前提条件であるという考え方を持つならば、ヨーロッパ等で早く児童手当がなされたというのは、そういうことで国民にも責任がある、われわれにも責任があるけれども、政府、与党はそういう点については、今後改善計画についてはっきりした基本的な姿勢をこういう国会論争を通じて持つべきだ、こう私は思うわけです。この点について簡単に御答弁いただきたいと思います。
  96. 内田常雄

    内田国務大臣 私も同感でございます。であるがゆえに児童手当も今度出発させました。また、世の中にはいろいろわけがわからぬ人も絶無ではありませんけれども、少なくとも私は、池田さんは死んでしまいましたけれども、おれが持たぬところをお前は持っておるようだから、社会福祉のことも考えろという、遺言は言いませんでしたけれども、そういうような気持を持った私の先輩だったと思いますので、あなたの御激励にこたえながら、いまの自民党政府にも、そういう私ごとき考えを持つ者が厚生大臣であることを、あらためて認めていただきたいと思います。
  97. 大原亨

    大原委員 何とかせんとするやその言やよしということばがあるけれども、なかなか発言がよろしくなったですね。  それから第二の問題は、児童手当の月額三千円の基礎については、これはいままでのお二人とも議論があったのです。そこで、お答えの中に、養育費の二分の一とは言わないけれども、国際的に二分の一とか三分の一とか議論があるが、昭和四十二年の一人の児童の養育を基礎とすると、大体六千五百円という見当であったというわけです。私は、それを一歩突っ込んで質問いたすわけですが、昭和四十六年の現在におきまして、あるいはまた昭和四十五年現在におきまして、児童一人の養育費というものは幾らかかっておるのか。これは政府の統計数字を記録にとどめたいので……。いかがですか。
  98. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 四十二年当時は、私どものほうが全国的に一定の方式で調査をいたして、児童養育費の結果を集計いたしたわけでございますが、その後実はやっておりませんので、現在の時点なりあるいは昨年の時点において児童養育費がどのようになっているかということの、実態調査による数字というのはなかなかないわけでございます。したがいまして、その後の消費者物価なりあるいは家計調査等の、もろもろの資料をもとにしまして一応推定する以外に方法はないと思いますが、かりにこの六千五百円といわれた四十三年当時のものを、現在の時点に焼き直して推定をいたしてみますと、八千円から九千円ぐらいのところにおそらくいくのじゃなかろうか、これは数字の上だけの推定でございます。
  99. 大原亨

    大原委員 児童の養育費の八千円ないし九千円平均という数字は、これは概略の数字でありますが、その内訳は大体どういうことなんですか。養育費の中にはおもにどういう項目が入っておりますか。
  100. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 四十二年当時六千五百円といわれた養育費の内容としましては、いわゆる家庭における家族の共通経費的なものが相当あるわけでございます。そういうような共通経費的なものを一応拾い上げてみますと、飲食物費から住居費、衣料費、それから保健医療費、そういうようなものがおもにあるわけでございます。そういう共通経費的なものを一定の方式によりまして積算をいたした、こういうふうになっているわけでございますが、それ以外に児童特有の経費というのがあるわけでございます。これは学校に入っている場合は、いわゆる学校の教育費、そういうようなものもあるわけでございまして、そういうようなものを含めたものが、当時の計算の場合の六千五百円に相なっているわけでございます。
  101. 大原亨

    大原委員 児童一人当たりの養育費をそういうふうにできるだけしぼってまいりまして、そして共通費の面で家族全体にかぶせることができるものについては捨象してまいりますと八、九千円という推定であるというような御答弁です。九千円といたしますと、三千円は三分の一に当たるわけですね。これはそういうことだけを検討されたのではないと思うが、しかしこの法律を審議し、将来これを改善をしていくという、小さく産んで大きく育てるという話が、歴史に残る名言が内田厚生大臣から本会議で御答弁になっておる。これはいつまでも語り継がれるであろうということですが、それは将来の発展を期する意味において、その基礎をいまの審議を通じて明確にするということは、これに対する改善の指標、目標を明確にすることになる。たまたま三千円という数字は、支給制限をいろいろな角度からして、予算を小さくしぼるという観点からしぼられたものであるかもしれないが、しかし国会として、国民としてこれを受け取める際には、小さく産んで大きく育てるということに希望をつながざるを得ないわけですから、そういう点から、この児童手当の重要性についても若干議論したわけですが、そういう点から考えてみまして、そういう私が申し上げたような考え方で三千円をきめた、こういうふうに考えてよろしいかどうか。
  102. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 三千円というものをきめました明確な一つの基準というのは、実は率直にいいまして、ございません。やはり児童手当懇談会なりあるいは児童手当審議会というような審議会等の中の審議の空気というのが別にございますが、私どもといたしましては、児童手当審議会というものもやはり三千円というものを中間答申の形でいただいているわけでございますし、それから現在の他の社会保障制度というようなもろもろの制度との関連、そのようなものも金額をきめる場合のやはり一つの要件になるわけでございますので、特に大原先生御質問のように、児童養育費の二分の一とか三分の一というような、そういうような的確な基準を実は根拠に置いてこの三千円という金額を今回の法案においてきめたわけでは実はないわけでございます。
  103. 大原亨

    大原委員 ただ、いろいろな努力なり、いろいろな積み上げの結果ここへ出てきたわけですが、しかし出てきたものについてはやはり明確な理由づけをすることが必要ではないか。というのは、いまの御答弁聞いていましてもそうですが、私も調べてみましたが、一つは答申――児童手当審議会、その前の厚生大臣の懇談会、そういうものや、あるいは私の調べによっても、外国の実際に行なっておる例、そういうものが頭の中にあってこの金額が出たことは間違いないわけです。したがって、これを現在法律をつくる時点において考えていく場合には、当然にその意義づけというものがあってしかるべきではないか。九千円の純養育費が一人の児童についてかかるとするならば、三分の一という基準は国際的に見ても低いのではないか。逓増方式その他の問題もありますが、そうすると将来は、この金額については一人当たりの児童養育費の二分の一を目標にして改善をすべきではないか、こういう議論が出てくるわけでございます。それらの議論を踏まえて、厚生大臣は非常に御熱心な態度であるわけですが、いまの議論を通じて厚生大臣はどういうふうにお考えでありますか。
  104. 内田常雄

    内田国務大臣 大原さんのまことにごもっともな御意見だと私は思います。ことに、私ども行政官庁でありますから、三千円ときめた以上は、三千円の根拠につきまして十分納得いただけるような説明がさるべきである、こういう御注意に至りましては、まことに私はそのとおりであると思います。しかし、これは政府委員から申し述べましたように、そもそも児童手当が実現性に向かって、懇談会、審議会等が発足をいたします段階から、児童養育費の全部を国が助成するという考え方ではなしに、その一部を助成するという考え方でございまして、たまたまその当時、昭和四十二年当時の生計費調査における児童養育費というものが六千五百円であったということから、たまたま二分の一程度の三千円というようなことから、三千円三千円と語り継がれて今日に参っていると思います。このことにつきましては、私はそれだけしか理解はないわけでありますが、多少私は政府委員と違った考え方がなきにしもあらず。これは将来この金額の増額につきましては、ことに六条の第二項というような一種の調整増額規定さえも、審議会にないものまでも実は入れました。これはだれからの入れ知恵でもなしに、厚生省のむしろこの問題に対する熱心と進歩的な考え方の表現だと御理解いただいていいわけでありますが、私の頭を、実は正直に、支配をいたしておりましたのは、他の類似の手当額と申しますか、たとえば老齢福祉年金等の金額のことが私の頭を支配をいたして実はおりました。実はおりましたということは、いま私が申し上げます類似の金額等につきましても第六条の二項を実現するまでの間に到達し得るような金額、これは非常に言い回しが微妙でありまして、御理解いただけたかどうか知りませんが、そういうことも想定をいたしまして、老齢福祉年金は今度上げて二千三百円でございます、この国会で法律を通していただいて二千三百円でありますので、これはまた児童とは違った意味において社会福祉あるいは社会保障的の意識、認識というものは高まりつつあること申すまでもございませんが、そういうものが追いつき得る金額というもので一応出発しようということも、正直に告白いたしますとございました。しかし、何べんも申しますように、これは児童養育費の三分の一でとめるつもりもなければ、二分の一がいいという国際連合の申し合わせでもなければ、するわけでありますから、決して固着をいたさないで、いろいろな動きをも観察しつつ将来の充実を金額面におきましてもはかる、その端緒として六条の二項を私の在任中に置かした、こういうこともひとつ御理解いただきたい。
  105. 大原亨

    大原委員 児童憲章には、児童は人間として尊重されなければならぬというふうな意味の規定がございますね。これは児童手当の一つの精神的なりっぱな根拠になっていると思うのです。そうして子供が多いからといって貧乏することも、社会的におかしいわけです。  そこで考えられることは、私がいままで申し上げたことについて集約的に質問いたしたいことは、昭和四十二年当時、一人の児童の養育費は六千五百円であった。その当時からこの具体化の問題が議論されて、一人月三千円というのがだれ言うともなく一つの国民的な合意を形成しておったのではないか。われわれ社会党の案にも、公明党、民社党の案にもそれに近い規定があると思うのですが、当面発足は三千円でいく。これを逐次五千円とか六千円とか一万円に引き上げていく、八千円に引き上げていく、こういうことがあるわけです。そういう経過からいいますと、昭和四十六年現在、養育費は九千円にもなっておるわけですから、三千円で発足することについてはやむを得ないとしましても、法律の第六条の第二項を将来運営していく上において改善し、たとえば「国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合」こういうふうなことで、ことばが足らぬ点は補うといたしまして、そういうように考えた場合には、四十二年当時のこの三千円は、昭和四十六年当時になりますると、九千円に対する三千円になりますから、三分の一になってしまう。こういうことであるから、将来の児童手当の改善計画の中には、児童手当は二分の一を目標にして手当金額を改善するように努力すると一緒に、税金とか、保育所とかその他ずっとそういう物的な給付の制度、福祉の施設等を総合して、児童が人間として尊重される、どういう環境のもとにあっても最低限度の生活権は保障される、こういう考え方でいくとするならば、そういうことを頭に置きながら、経過を頭に置きながら、手当金額の改善をもなすべきではないかというふうに考えるが、いかがですか。
  106. 内田常雄

    内田国務大臣 もう先ほどからのお答えを私は繰り返すだけでありまして、私は三千円に固着しないで、あなたが御記憶せられた私のことばのとおり、小さく産んで大きく育てるということは、あのときだけの逃げことばではございませんで、私はあくまでもそう考えておるわけでございます。ただし、いまさっき回りくどい表現で、なるべく、はっきり言ってしっぽをつかまえると困りますので、回りくどい表現をしました。しかし、あなたは頭がいいからおわかりだと思うのです。わざと他の老人福祉の問題と関連して申し上げましたが、そういうことを頭に置いて、それは左手と右手を上手にあげて使い分けていこう、右手があがったら左手をすぐあげるぐらいのつもりで私はやっておりますけれども、あなたがそれ以上私におっしゃると、ここへ大蔵大臣が来て、厚生大臣答弁を取り消せと、こうなりますから、どうかそういう点で御了解いただきたい。
  107. 大原亨

    大原委員 昭和四十二年当時の基礎の数字が、一人の養育費が六千五百円だった。当時三千円というのが各党の一つの合意であったし、また答申もそれを基礎にしてなされた。国際的な金額を頭に置きながら金額をきめた。これは私は事実だと思う。その事実を尊重されるということは、国民生活水準が上がっていく、生活費が上がっていく、そのことは物価の上昇もあるわけです、そういう物価とか賃金の上昇に比例をして改善計画を立てるべきである。スライドすべきである。その目安は、たとえば福祉年金を努力してさらに、月三百円などというけちなことを言わないで上げていく。それから賃金の上昇、給与所得の上昇、そういうこと等を頭に置きながら、また国民年金の再計算、厚生年金の再計算、そういうことを頭に置きながら将来も改善をしていく、そういうふうに第六条の二項は考えてよろしいかどうか。
  108. 内田常雄

    内田国務大臣 けっこうでございます。その趣旨でございます。ただその時期が若干問題でありますから、私にぜひ左手と右手を交互にあげさせるような働きをさせていただきたいということを、先ほどから申し上げているわけでございます。
  109. 大原亨

    大原委員 第三の問題は、所得の制限に関する問題であります。  いままでも議論がありましたが、第一子、第二子に対しては児童手当を出さないで、第三子から出す。大体今日の若い青年諸君の常識で、結婚いたしましたら、子供を一人でストップするとか二人でストップするとか、そういうふうにストップした人は、妊娠しない措置をとった人はもう間に合わない。三人目をつくろうと思っても、児童手当だけを目標にしてつくったら大けがをするからやらないかもしれないが、それにしても間に合わない。とにかく第一子、第二子というのがほとんどである。それを見越して第三子からやったということでもないだろうが……。     〔委員長退席、増田委員長代理着席〕  それでは私は、そのことに関係して計数をひとつここに記録にとどめたいのですが、十八歳以下の児童の数は幾らか。それから、義務教育終了前の児童の数は幾らか。昭和四十七年一月一日から実施をされる五歳以下の第三子、こういう場合における対象児童は幾らかという三つの点について、数字をひとつお答えをいただきたい。
  110. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 十八歳以下の全児童数は、四十七年の一月一日の推計によりますと約三千万、正確に申しますと二千九百九十六万人でございます。  それから義務教育終了前の全児童数というのは、二千六百十四万人でございます。  それから五歳未満の児童ということで、この法律の規定による対象児童というのは約九十四万人でございます。
  111. 大原亨

    大原委員 これは所得制限は入っているのですか。
  112. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 入っております。
  113. 大原亨

    大原委員 所得制限入れないとどうなるか。
  114. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 冒頭に申し上げました十八歳未満あるいは義務教育終了前の児童というのは、所得制限前でございます。  それからいま最後に申しました九十四万人というのは、所得制限後でございます。
  115. 大原亨

    大原委員 わかりました。つまり、こういうことですね。外国では、児童手当を出している国は六十三カ国やっておるわけで、五十カ国は第一子から出しているわけです。支給の段階は別にいたしまして、第一子から出しているのです。日本は経済大国ですからね、第二子くらいで大体ストップしていることを見越して第三子からやるというけちなことをしないで、少なくとも将来改善をすることを――小さく産んで大きく育てる、改善することの目標としては、第一子から支給できるように、そういう方向で本委員会の審議を通じて私は確認さるべきであると思うが、いかがですか。  十八歳以下の児童が、いま御答弁ありましたように、二千九百九十六万人いるわけです。約三千万いるわけですが、その中で九十四万人しか初年度の支給がない。そういうことは、約三千万の中での九十四万人、百万人足らずですから、三十分の一しか対象児童がないということになるわけです。三十人に一人しかもらわないということになるのです。十八歳以下の児童について、三十人に  一人しかもらえないということになる。(内田国務大臣「出発当初はね」と呼ぶ)当初は……。三年後は……(坂元政府委員「十分の一になります、十人に一人」と呼ぶ)三年後は十人に一人だ。宝くじよりはましだけれども、非常にけちな制度ではないか。児童手当として、国際的な考えからいっても、日本のような経済力のある国ということからいっても、これはまことにけちな話ではないか。だから、第一子からやるということをやはり将来の法律改正の目標として、本委員会の審議を通じて一つの合意をなすべきではないか。第二子、第一子と、こういうふうにやっていくというのが、これは児童手当の立法の趣旨から考えてみても当然のことである。日本における妊娠中絶その他の実情から考えても、当然のことではないか。そういう目標を明確にすることは必要ではないか。いかがですか。
  116. 内田常雄

    内田国務大臣 大原さんの御意見として十分私も傾聴をいたしておきます。  出発は、とにかく三人目以降ということで出発をさせていただきました。ソ連は四人目でありますから、ソ連の上ぐらいは私はいきたいと、こういう気持ちもございまして三人目から出発いたしましたが、しかしこれから十年先には、いま局長が述べた数字はだいぶ変わってきている。つまり、その二人をこえる子供を生む人は、他の特別の政策でもない限りあまりないかもしれませんから、したがって、いま述べられた数字はきょう現在かあるいは昨年現在の数字でありますから、いまに、あなたのおっしゃりかかったように、三人目以上の子供にはやりたくても対象が減る一方だ。しまいにはゼロになるかもしれません。ゼロに近くなるということさえもあるかもしれませんので、そういうことの状況にも応じまして、私どもはそれは二人目に上げ得る場合もある。しかしこれはすべて政治や国民意識における児童手当に対する意識の向上、変化ということにも対応して、私は前向きの変化を期待しておると申し上げたいと思います。  それからもう一つは、これは実はもう御承知でございましょうが、この制度に関連いたしまして、給与制度上の扶養手当とかあるいは税法上の子供の扶養控除というものは、実はそのまま手をつけませんでした。一人目からでも扶養手当は出ますし、一人目、二人目の子供につきましても扶養控除もあるということも関連させまして、そういうことをしぼっていきますと、私の在任中にはこの法律はできないかもしれない、いわんや最初の端緒の金さえもつかないということも心配いたしまして、とにかく出発をさせたという次第もございますので、それらのことはあなたの御熱心な御意見として政府も十分銘記をいたしてまいる所存でございます。
  117. 大原亨

    大原委員 将来の改善計画の中においては、外国の立法例が示しておるように、子供の数によって逓増させていく。賃金の一部の家族手当の場合は、子供がふえていけばふえていくほど比較として少なくなるのです。これは労使間の関係でやることですから、資本家がやることですからやむを得ないにいたしましても、しかし外国の立法例を見ますと逓増方式をとっておる。その逓増方式を考えていくべきだ。これは十分の養育費を出すわけではないわけですから……。  それからもう一つは、他の制度と児童福祉制度との総合計画考えるべきである。たとえばいまたまたまソビエトの第四子からの例がございました。あなたや局長がソビエトが第四子からやっていると言う場合における、ソビエトの児童福祉政策全体について調査したことがありますか。
  118. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 私自身はございませんが、厚生省としてはいろいろな方面で調査をしたことがございます。
  119. 大原亨

    大原委員 だから、厚生大臣に認識不足があるといけませんから申し上げますが、つまりソビエトではこういうすぐれた制度があると思います。一週間保育というのがある。土曜日に子供を連れて帰って、日曜日には持っていく。一週間保育をいたしまして、その保育所の費用は、食費に至るまで助成をするという制度がある。そうすると結局は現物で給与していることになる。金額で児童手当を第四子から出しておるけれども、年齢制限を設けておるけれども、現物でやっておるということもある。それから義務教育ということはないにいたしましても、学校教育における費用の支出のしかたがある。たとえば大学などでは授業料を払うのではなしに、最低生活費をもらっておる。日本の憲法は義務教育は無償であるけれども、実際は無償でない。だんだん努力をしている形はあるけれども、なお足らない。児童手当の問題だけでなしに、そういう教育保障の問題や、あるいは保育所の問題や、あるいはいろいろな遊び場の問題や、そういう福祉の問題をやはり老人の福祉対策と一緒に、子供は将来の、われわれの次代を背負う人ですから、人間として生活の内容も保障していくという考え方に立つならば、こういう児童手当が発足する機会に、児童福祉に対して、保育所の問題その他を含めて、幼稚園教育の問題を含めて、学校教育の問題を含めて、あるいは税金の控除の問題等を含めて、あるいは賃金の問題等を含めて、そういう総合的な福祉政策について国民的な合意が得られるような機構を確立しながら、一方においては国民経済の合理的な運営、むだを省くということ――日本の社会保障はたくさん窓口があって、これは種々雑多で、全部中途はんぱだということが特色ですよ。総合性がないから非常に不経済になる。たとえば生活保護と他の所得保障の関係も申し上げたとおりです。ですから児童手当の発足を契機に、現物給付その他等を含めて、児童がよりよい環境で人間として尊重されるという児童憲章のたてまえに立った総合的な福祉計画を私は考えるべきであると思うが、厚生大臣の見解はいかがですか。
  120. 内田常雄

    内田国務大臣 まことにごもっともな御意見であり、また私どもに対するありがたい御激励であると考えます。私どもは、児童手当がわが国の社会保障制度の中で欠けておる一つのものであったので、これを打ち立てて穴を補てんすればそれで済んだということでは決してございません。こういう制度が児童福祉対策の有力なるささえとしてできましたのを契機といたしまして、もちろん保育所対策にいたしましても、あるいはまたさらに、子供が生まれる前の母子保健対策にいたしましても、あるいはお話にございました児童園も児童館もございます。これはみな児童の保育施策などと相関連を持つものでもございますので、そういう方面のことを一ぺん総ざらいに取り上げて、そしてそれぞれの施策が重複せず、欠陥なしに、しかも中央のみならず地方公共団体施策とも相連携しながら、これからの日本の将来を背負っていくそういう次代に対する社会福祉の施策として、りっぱなものになるような努力を続けるべきだと私はまじめに考えます。そういうことを除いて厚生省施策というものはそんなに大きなものが幾つも残されるわけではないと思いますので、おことばはありがたく承りまして、努力をいたします。
  121. 大原亨

    大原委員 厚生大臣が後段において御指摘になったように、たとえば都市の公園を管轄しているのは建設省です。そして児童公園等で事故があったときに、公園の管理者を置くべきであるという議論があって、建設省のほうで人件費が一部不完全ながらついております。それから文部省の関係では幼稚園とか児童館という問題があるし、かぎっ子対策があります。厚生省関係では保育所の問題等があります。あるいは児童の収容施設の問題、障害児施設の問題があります。ですからそういうふうなものでことばの概念も違うし、対象は一つであるのに非常にまちまちな政策があると思う。ですから私は、厚生大臣がお答えのように、総理府が総合調整するか厚生省がやるかは別にいたしましても、児童手当を一つの基礎にいたしまして、児童福祉のそういう施設、現物給付の問題等を含めて有機的な連携を考えながら――それを受ける側は国民です。その前には自治体です。自治体がそれを補うていくということにもなります。そういう点で、官僚的な統制を許すものではないが、一元的に施策を充実していくということが必要であると思います。厚生大臣は私の議論については異議ないと私は思いますが、いかがですか。
  122. 内田常雄

    内田国務大臣 全く異存はありません。あなたのおっしゃった意味のことを、私は先ほども申し上げた次第でございます。
  123. 大原亨

    大原委員 この問題に関係をいたしまして、私は予算委員会で議論いたしました際に、いまの政調会長の水田前大蔵大臣――あるいは大蔵省の財政審議会の答申等でも出ておりましたが、税金との関係を大蔵省に出席を願って一つだけただしておきたいのであります。  いままで議論をいたしましたように、児童手当は、当初の発足構想、国民的な合意当時は、養育費が一人について六千五百円。この計算のしかたは、六千五百円では一人の養育はできませんよ。あなたの子供だってやれぬでしょう。大蔵省だってそれを知っているはずです。六千五百円出すから一人の子供を養育しなさいといったら、できやしません。現実はそうですが、しかし当時は六千五百円で三千円という国民的な合意を基礎にしたのがいま残っておって、小さく産んで大きく育てようということで、三千円という数字が法律化されてきた。そこでこの三千円は政府の見解によると、養育費の三分の一に相当する金額である。であるとすると、他の施設で一緒に児童が養育される。たとえばフランス等では公共運賃まで逓減制をとっていて、たくさん子供がおると逓減している。十一人目にはただになるようなことになっている。一割、二割、三割と減少いたしまして、十人をこえるときにはただに近いような運賃、バス賃であるようなことになっている。ですからあらゆる面で補完をしていくわけですが、税金の面も私はそういう面があるというふうに思う。そこで質問の能率を上げるために申し上げるわけですが、いまの扶養控除の制度は逆進性を持っておる。所得が大きい人ほど扶養控除が大きいという結果をもたらしておることは、これははっきりした数字のとおりです。これを正していくのは――税金だけでやることはできないけれども、これを正していくのは、これは税額控除の制度にすべきではないか、こういうふうに控除の制度を税金の面からも合理的に調整していく必要はないかどうか、これに対する大蔵省としての見解をお答えいただきたい。
  124. 山内宏

    ○山内説明員 御案内のとおり近代的な所得税制といたしましては基礎控除、配偶者控除、それに先ほど御指摘の扶養控除、この三者が課税最低限の主体を形成をいたしておるものでございます。国民経済全般の中でどの程度の段階の所得者なりあるいは収入を有する者なりに対するところまでを税金の負担をお願いするかということは、これは一般的な経済情勢なり社会の情勢なりによっていろいろ違うわけでございますけれども、一般的に課税最低限というものを想定をいたしまして、これによってその金額を上回るかどうかということで実質的な税負担を課するかどうかを判断している次第でございます。その場合われわれといたしましては、現状にありますように課税最低限と申します以上、当然所得の金額のある意味での集計体という形をとりますのがその判断のメルクマールとして一番常識的に把握をしやすいというふうな意味合いから、従来からもいま申しましたような三つの主要な控除につきましては所得控除というふうな体制をとってまいっております。いま申し上げましたのは、たとえば扶養控除なら扶養控除が、扶養家族を持っておる世帯がそれを持っていない世帯に比べて追加的な費用があるというところをある程度しんしゃくしておるという点も考え合わせますと、経費のしんしゃくという意味合いからいたしますれば、それに対応する所得なり収入なりという概念と対置をさせるというのが適当であろうと思います。そういう意味からいたしましても、所得控除という形をとるほうが常識化しておるという気がいたします。それからまた、先ほど申しましたように、課税最低限を越えるかどうかで一般的な税負担を負わせるかどうかという判断をしておるわけでございますが、その場合も一々税率まで計算をして、税率をかけた上で税額を出して、さらにそれを税額控除するというふうな手続を経るまでもなく、所得控除の形でまいりますと、それよりも前の段階で、課税の対象になるかどうかということが簡易に判断できますので、そういう点から考えましても現在のやり方が意味があるというふうに考えておる次第でございます。  なお、委員のおっしゃいました所得税制全般として累進的な効果を持たせるということは、これは所得税制の本来的な意味合い、役柄でございますので、当然そういうふうな形を踏むべきでございますし、現実にも踏んでおるわけでありますけれども、これは個々の控除一つ一つを取り上げて累進的かどうかという判断をするのでなくて、税額の計算まで全部終わりました上で、算出された税額とそれからそれに対応いたします所得の金額とを対比をいたしまして累進的な効果を持っているというふうな、制度全般としてそういう累進的効果を持っておる制度になっておるならば、それで十分ではなかろうかというふうに考えておりまして、現行の制度はそういう点からも御質問の趣旨に十分合致しておる制度ではなかろうか、こう考えておる次第でございます。
  125. 大原亨

    大原委員 税額控除にしなくても現行の扶養控除の制度で、税制全体から見て累進的な控除がなされておるというふうにお答えですね。そういう全体的な総合的な、逆進的でないという資料を出してください。数字を実際にやりまして出してもらいたいと思います。よろしいですね。
  126. 山内宏

    ○山内説明員 いまのお話の点は、結局その所得の金額と税額とを対比をいたしまして、所得がふえるに従って税額がその所得の増加より以上にふえるという点を私どもは累進的と、こう申しておるわけでございまして、そういう点から、換言をいたしますと、所得控除をやるやらないにかかわりませず、その計算をされて残りました所得の金額に対しまして税率をかけた場合は、すでに先生承知のとおり税率そのものが非常に累進的な形になっておりますので、当然そのかけました結果の税額といいますのは、その所得に対応して累進的な効果を持つ、このように申し上げたわけであります。
  127. 大原亨

    大原委員 それから所得制限を二百万円にしたことについては、いままでも議論になったわけですね、厚生大臣。それで二百万円の所得制限というのは、この費用の分担は一部事業主の拠出制をとっているわけですね、そういうところからいいますと、所得制限を設けるというのはおかしいのではないか。これは立法政策としてもおかしいのではないか。全額国庫負担、公費負担でもこれは所得制限はなしにするということはできるけれども、しかし一部事業主負担、拠出金制度をとっている場合には、当然にそういう所得制限は撤廃すべきではないか。  もう一つは、事務当局からお答えいただいてもいいのですが、この二百万円の所得制限によって実際に、この三カ年間の完全実施の期間においてどの程度の人が支給制限を受けるか。この二つの点をお答えいただきたい。
  128. 内田常雄

    内田国務大臣 所得制限につきましてはだいぶ議論が実はございました。ある考え方から、私などもそれに属するかもしれませんが、その児童を監護する親の所得ということに関係なしに、子供は天下の子供である、その天下の子供を健全育成をするという趣旨が半分はあるのだ、あとの半分は子供を育てる家庭の生活の安定というようなことがうたわれておりますが、しかし私が申すそういう意味からすれば所得制限はいかがなものであろうか、こういう考え方もございましたが、現実には今回この制度によります児童手当は、自営業者につきましては国と公共団体の総額財源負担ということで、受給者の家庭は負担が全くございませんし、また被用者に属する自動手当につきましても、手当を受ける被用者本人の負担はございませんで専業主負担という形になっております。つまり別のことばでいいますと、健康保険でありますとかあるいは厚生年金のように、受給者が直接拠出をするようなぐあいに受給者と拠出者との関係が結ばれていないという面も考えてみますと、それともう一つは、これはいま日本の現状におきましては私は無視できない現実の意識だと思いますけれども、やはり国や公共団体の資金が入ります以上は、さらにまた高額所得者等につきましては国民感情上、所得制限を全くしないということにつきましてはコンセンサスがないというようなこともございますので、所得制限を設けることになったように思います。しかしその金額は老齢福祉年金などの場合のように完全公費負担でない面が、いま大原さんがおっしゃいますように一部ございますので、老齢年金のほうは百八十万円であったと思いますけれども、このほうは二百万円というような妙な形で、妙なといいますか違った金額で落ちつけたわけであります。両々の考え方があり得るわけでありますが、今回は先に申しましたような趣旨でやや有利な所得制限をつけました。
  129. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 いまの二百万という制限をいたしますと、数字的には対象人員の約一割が所得制限にひっかかると申しますか、支給されないことに相なるという経過になっております。
  130. 大原亨

    大原委員 事業主が被用者分の児童手当の金額の十分の七に相当する部分を負担をするというふうに、費用負担の区分がなされていると思うのですね。その事業主が負担するについては、財界の諸君もかなり反対をされたやに聞いておる。国際的な例からいうと、国が全部負担している場合もあるし、事業主が負担している場合も、両方が負担している場合もある。両方が負担している場合を日本は適用した。事業主が負担をするという根拠はどこにありますか。根拠をどこにおいてそういう立法をいたしましたか。
  131. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 この法律の第一条の目的からいたしまして、二つの目的を持っているわけでございますが、そこに後段のほうの目的「次代の社会をになう児童の健全な育成及び資質の向上」こういう目的が児童手当の今回の目的の一つの柱になっているわけでございます。もともと一般の民間の企業というものは、やはり将来の労働力というものを維持培養していくというのが企業自体の大きな課題でもあるわけでございます。したがいまして、そういう観点からまいりますと、将来の社会をになう児童の健全育成あるいは資質の向上ということは、やはり将来の若い労働力というものの維持培養にもつながることに相なるわけでございます。したがいまして、民間の一般の企業といえどもやはりそのような児童の健全育成なり資質向上というものには、これは重大な関心を持つべきではございますし、またしかるべき分相応の協力もまたいたさなければならない、こういう考え方のもとに今回の児童手当の財源の一部を、負担能力に応じましていわゆる事業主拠出金という形で協力をしていただく、こういうことに考えたわけでございます。
  132. 大原亨

    大原委員 政府の資料によりますと、事業主の負担割合は、被用者分についてはその児童手当給付額の二四%、こういう数字が出ておりますね。つまり二四%ほどを事業主が負担するということですが、しかしこれからは雇用率がどんどん増大していきますね。工業のなにが変わってまいりまして、農村も崩壊する。こういうことですから、雇用率が非常に高くなってまいります。そうすると、事業主の負担はだんだんふえていくと思うのですね。これから三年目、昭和四十九年、現在の法律が完成いたしますときには事業主の負担区分、拠出金を支払いますそういう比率、全体の財源との比率、被用者分に限ってだけですね、これは大体何%になりますか。
  133. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 今後のいわゆる被用者人口というものの増加傾向というものをどういうふうに見るかにかかってくるわけでございますが、いままでのような増加傾向というものを示すという前提をとりますと、昭和五十年という時点におきまして、ただいま申されましたように事業主拠出金の比率というものは――私どもの現時点における計算が大体二一%ぐらい。それが昭和五十年ごろの時点になりますと二五%弱ぐらいに相なるのじゃなかろうか、こういうような推定をいたしております。
  134. 大原亨

    大原委員 将来ともこの事業主負担については、上がることはあっても下がらぬ。それから国や地方公共団体の負担についても、大体こういう方針でいく、私はこういうことについての意見は、時間もありませんから保留しておきますが、私が質問いたしましたらこの法律のとおりですと言うに違いないから言わないですけれども、この問題はやはり、大きくするためにはどうするかという観点で議論をする問題であろう。  そこでもう一つ、支給対象の問題で身体障害者の問題ですが、身体障害者は外国の立法例を調査してみますと、身体障害者については十八歳以下の児童を対象とするとか、あるいは第二子あるいは第三子から支給する場合でも、身体障害者は十八歳をこえてもその順位の中へ入れるとか、十八歳をこえて二十歳の身体障害者があった場合にそれは第一子として計算してやるとか、そういうような身体障害者については特例を設けてワクを拡大するとか、そういう立法例があるわけです。これは児童手当の趣旨や精神やあるいは現在の実情から考えましても妥当なことであると思うのですが、この問題は私は今回直ちにでも改善をすべき問題であると思うけれども、これについては政府はどういうふうに考えておるかお答えいただきたい。
  135. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 今回の法律案におきまして、ただいまの廃疾等の児童の扱いにつきましては一応法案の中に特例を設けなかったわけでございます。ただ、いまお述べになりましたように外国等の例を見ますと、特別の、心身障害者等につきましては年齢を延長している例も相当ございます。そこで今回の法律案にはなぜこのような心身障害者等の年齢延長等の特例措置を設けなかったかという点でございますが、私どもといたしましては現在は、先ほどもお話があったのでございますが、特別児童扶養手当というようなものが法律制度としてございますが、そういうような制度がわが国にはあるわけでございますので、当面はそういう特別児童扶養手当制度というものとの調整はいたさないわけでございます。したがいまして、そういうような特別児童扶養手当制度いうものがございますので、そういうものと調整しないという現時点におきましては、さしあたり心身障害者等の年齢延長というのはまあ考えないほうがいいだろう、こういうような観点から今回の法律案にはそういう特例措置は設けなかったわけでございます。
  136. 大原亨

    大原委員 児童扶養手当は私の記憶によりますと、一級障害の範囲にとどまると思うのですね。そういたしますとあまりにもシビアじゃないか。そういう点では二級障害、三級障害等も含めてできるだけ範囲を拡大しながら、この問題の適用の特例を設けていくということを考える余地はないか。いまの答弁から見ても考える余地はあると思いますが、いかがですか。
  137. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 特別児童扶養手当の障害範囲自体には、確かにまだ検討を要する問題点がございます。前回の社労委員会でもそういう附帯決議もいただいておるわけでございますので、私も特別児童扶養手当自体の問題として障害範囲の拡大方向には最大の努力をいたすつもりでありますが、それとこの児童手当をどういうふうに考えるかということでありますけれども、とりあえずそういう特別な制度というものがわが国においてはできておりますので、このスタートの現段階においては、心身障害者等の年齢延長というのは、とりあえずいま考えないほうがよかろうということで、政府としましては今回こういう特例措置考えなかった次第でございます。
  138. 大原亨

    大原委員 重度障害の身体障害者を持った家庭というのは、支出がたいへんなわけです。治療費もたいへんなわけです。私はこれについてはできるだけ児童手当の目的の精神に従って十分な措置をとるべきであると、こういうふうに申し上げておきます。  それから順序不同ですが、いままで議論があったわけですが、支給をする場合には窓口は、これは市町村の役場か、あるいはお答えによりますると、銀行かということになっておるわけですが、郵便局を使うようにはなっておらぬわけです。これは農村やその他に参りましたならば、銀行があるわけでもないわけですから、郵便局を窓口に使うということが、私はぜひとも考慮されるべき問題ではないか、こう思いますが、いかがですか。
  139. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 むしろ私どもは逆でございまして、受給者つまりもらうべき人の立場考えまして、幅広く市町村自体において、たとえば農協、こういうようなところも活用できるような方向でこの支払い場所を考えていきたい。一般市中銀行そのものだけではございませんで、農協等も預金口座を設けておるところがあるはずでございますので、市町村のほうでできるだけその預金口座等にあらためて指定をしていただいて、そこに振り込みをしていくというようなことで、市町村自体の便宜あるいは受給者自体の便宜、そういう観点からこの支払いの場所等を今後定めていきたい、かように思っておるわけでございます。むしろ大原先生の意に沿うような支払い場所を考えていきたいというのが本心でございます。
  140. 大原亨

    大原委員 なぜ郵便局を使わないか。
  141. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 これは福祉年金でやっているわけでございますが、郵便局を使う場合はいわゆる事務費というのが相当かかるわけでございます。したがいまして、福祉年金等の例からいっても、このような事務費というものをできるだけかけないように、効率的にやったほうが制度の発足をスムーズにする、こういうような観点から郵便局というものを今回は考えていないわけでございます。
  142. 大原亨

    大原委員 外国の立法例は、検討いたしてみますと、児童手当法の中に生産手当をやっておるわけなんです。日本の生産手当は、御承知のように健康保険の中で保険財政を食うておるわけです。ちょっと厚生大臣に聞いてみたいのですが、お産というのは病気ですか、何ですか。
  143. 内田常雄

    内田国務大臣 私なんかの常識ですと、病気ではない、人間の繁殖現象だと思います。
  144. 大原亨

    大原委員 つまり、医療保障の対象にするというのは少しおかしいと思うのです。これは常識的にそういう制度をあちらこちらにくっつけていったわけです。これはそうなんです。お産が病気だというのは聞いたことはないですからね。これはお産は出産という現象があって、時間が過ぎたら元気になれるのですから……。異常分娩は病気だ。これは保険の対象としていいでしょう。そこで出産費は、やはり児童手当と同じように公費で負担すべきだという考え方が――外国の立法例を見ましても、児童手当法に、子供が生まれてから養育をする金というものを一連のものとして法律に制定をいたしておるわけです。私はこの問題は、検討に値する問題であると思う。児童手当法の中に入れていくような方向で検討をいたすべきである。かつて園田厚生大臣は、それは賛成だということを、議事録にとどめておるのでありますが、調べてみますと、その趣旨は賛成だと言っておる。この点については、私は将来検討に値する問題であると考えるが、いかがですか。
  145. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 外国の例をお引きになったようでございますが、去年私どものほうの有澤会長以下が外国を調査された際も、たとえばフランス等におきましては、児童手当制度の中で、いまおっしゃいました出産手当等の現金給付が行なわれているわけでございます。あるいはオーストリアでもそういう出産手当というのが行なわれているように聞いておりますが、この出産手当制度を今回のような構想の児童手当制度の中に入れるべきだという御意見でございますが、やはり出産手当というものが、わが国におきましては、いろいろな点でまだ不十分な点もございますが、一応の制度というものは持っているわけでございますので、児童手当制度の中に入れるかどうかということについては、やはり根本的な問題として今後検討しなければいかぬのじゃなかろうか、こういうふうに考えているわけでございます。
  146. 大原亨

    大原委員 第一子から児童手当を出す、児童養育費の何%かを負担していく、こういうことが実現して、出産手当についても実施をする問題が出てくるだろうと思うが、そういう点が少しギャップがあるかもしれない。しかし第三子からということになっても、第一子の出産、第二子の出産手当を見ていくということも、これはできないことではない。したがって、この問題はひとつ十分検討してもらいたいと思います。  それから、この法律には児童の「監護」ということがあるわけですが、監護ということばはあまりなじみのないことばです。児童福祉法等にあるわけですが、あまりなじまないことばですが、どういう意味なんですか。
  147. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 児童福祉関係の法律につきましては、やはりもう相当先例をつくっているわけでございます。児童福祉法なり児童扶養手当法なり特別児童扶養手当法等におきましては、監護という法律文言もこの中に入れているわけでございます。     〔増岡委員長代理退席、委員長着席〕 したがいまして、決して熟していない用語ではないわけでございますが、この法律でいいます監護というのは監督保護のことでございますけれども、具体的にはその場、その場、ケース、ケースにおきまして考えなければならぬと思いますが、一般的にはやはり精神面なり物質面から絶えず児童そのものの日常生活上の諸問題について配慮していく、そして児童の衣食住等の問題を具体的にめんどうを見ていく、こまかい指示もしていく、そういうようなことを監護と言っているわけでございまして、たとえば親権の有無等とは関係なく、あるいはまた現実に同居していなくても、現実にそのようなこまかい日常生活上の諸問題について注意なり配慮をしていくということが事実行為としてありますならば、そういう事実行為をとらえまして監護、こういうふうにわれわれは法律上言っているわけでございます。
  148. 大原亨

    大原委員 たとえば、これは私はっきりさせておきたいのですが、児童収容施設ですね。親のいない、あるいは放棄された児童を収容している施設ですね。その児童に対しましては当然に児童手当が支給されると思いますが、受給権者はだれですか。
  149. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 いわゆる児童福祉の収容施設に入っている児童について支給できるかどうかということでございますが、やはり私どもは、現在の児童福祉施設に入っている子供の中には、いわゆるまるまる公費で一切めんどうを見ている者もあるわけでございます。したがいまして、そういうまるまる公費でめんどうを見てもらっている児童について、いわゆるここにございますように、生計同一なり、あるいは父母以外の者で生計を維持しているという法律要件に合致するかどうか、これは非常にむずかしいだろうと私は思います。ところが逆に一部だけをいわゆる保護者負担金という形で徴収をされているとか、あるいは全額保護者が徴収金という形で取られているというような場合は、この法律要件に合致する場合が相当あるのではなかろうか。したがいまして、そういう場合は支給対象になる。しかしながら、まるまる全額公費でめんどう見てもらっているような児童の場合は、生計維持関係は必ずしもないわけでございますので、普通の場合は大体支給対象にはなりにくいということで、児童福祉施設の種類、それからどのくらいの期間収容されていたか、そういう収容期間等、具体的なケースに応じまして支給対象になるものかならぬものかということを判断していく性質のものだ、こういうふうに思っておるわけであります。
  150. 大原亨

    大原委員 併給の問題ですが、生活保護や児童扶養手当等はすべて併給するわけです。そういう面からいいましたら、そういうふうに措置費その他を通じまして出しておる施設にいたしましても、これで十分であるというふうなことは現実の問題として言えない。施設の人件費その他から考えてみまして、言えないわけです。ですから併給ということは十分あり得るのではないか、考慮し得るのではないか。だからその範囲を決定するにあたっては、そういう養育の実態を考えて、小づかいその他等においても非常に窮屈なわけですし、児童は人間として尊重されなければならないのだから、たとえば施設責任者が全部養子にしたらいい。生活保護を取ったにしても、それで足りないんだから、養子にする。これは法律上は併給できるわけです。そういうもぐりというようなことの是非は別にして、私は実情に応じて十分児童手当の精神が実現できるような措置を運営上考えるべきであると思うが、いかがでしょう。
  151. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 先ほど申しましたような趣旨で、ケース、ケースによりましてこれは判断すべきであるという基本線を持っているわけでございますので、児童福祉施設に入所しているからいきなりアウトにするというような性質のものじゃないわけでございまして、養育関係、生計関係等を具体的に判断してやっていく。もちろん運用の面で非常に弾力性を持たせるようなやり方をやってまいりたい、かように考えておるわけであります。
  152. 大原亨

    大原委員 この法律の第二条には「受給者の責務」というのがございますね。その他にも受給権者の規定があるわけですが、「父又は母」というようにあるわけですね。たとえばこういう場合はどうなんですか。おやじが会社とか官庁で一定の所得がある。しかしマージャンに使ったり酒を飲んだりしてあまり持って帰らない。実質上母親がパートタイムや手仕事等いろいろなことでかせいで子供を養育している。そういう場合にはどっちに受給権があるのですか。父にあるのか、母にあるのか。
  153. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 法律の第四条第一項第一号では、監護し生計を同じくしている場合は父または母ということで、両方あるようになっておりますが、四条の二項によりまして、その父または母のうち「児童の生計を維持する程度の高い者によって監護され、かつ、これと生計を同じくするものとみなす」という規定がございますので、いまお尋ねのケースのような場合は、父のほうがそのような性格なり行動でございますならば、現実的には母親のほうがむしろ児童の監護をしていると見るべき性質のものではなかろうか。これはもちろん一般論でございますが、ケース、ケースによりまして、社会通念に従いまして、どちらが監護をしているか、そういうようなことを調べて判断する性格のものだ、かように思うわけでございます。
  154. 大原亨

    大原委員 その主たる所得は、表面上のことではなしに、実質を考えて、この法律の第四条の二項の「生計を維持する程度の高い者によって監護され」という条文の適用をする、実質を見てやるというふうに解釈をされたわけですね。  そこでさらにお伺いいたしますが、児童手当受給権者が手当をもらいまして、子供のために使わないで、飲んだり食うたり、ばくちを打ったりする場合にはどういう措置をとりますか。
  155. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 いま先生のおっしゃったような事例の場合は、他の法律によりますと支給停止等の措置を講ずるような場合の例があるわけでございます。今回の法律案におきましては、そのような特別な規定は実は設けてございません。したがいまして、法律の精神なり趣旨解釈でそういう場合には判断せざるを得ないわけでありますが、かりに父親が不行跡で現実に子供の監護者としてふさわしくないような場合には、四条一項一号等の規定で監護をしているとは言い切れないという判断が立ちますならば、支給を停止するか何かをせざるを得ないだろう、こういうふうに法律解釈としては考えておるわけでございます。
  156. 大原亨

    大原委員 第二条に「受給者の責務」というのがありますね。これは原則的な規定、倫理的な規定です。それを受けて、罰則はお話しのようにないと思うのです。ないのですが、立法の精神に従って差しとめ、一時ストップをするという。しかし子供には何の責任もないのだから、そういう状況がなくなったならば、子供の養育費に回るようにさかのぼって給付をする、そういう運用上の措置をとるということですか。法律の根拠なしに受給権者の権利をかってに侵害できるのですか。
  157. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 いまも私が申し上げましたように、監護することが支給要件の一つになっているわけでございます。したがいまして、客観的にだれが見てももうすでに監護できる父親ではない、監護しているとは思えないというような判断ができますならば、やはり支給すべきじゃない、支給事由が消滅した、こういうふうに法律上当然に解釈していいのじゃないか、こういうふうに私ども考えているわけでございます。こういう点は内閣法制局の審査の際にも、そのような解釈に立つことができる、こういうことに相なっているわけでございます。
  158. 大原亨

    大原委員 それもおかしいですよ。受給権者は父母あるいはそれに類するような、監護をしている者ですね。それが責任を果たさないで、飲んだり食うたりばくちを打ったり、ほかのほうに使って、子供の養育のほうに実質的に回さない場合が間々ある。間々じゃない、そういう問題はずいぶんある。そういうときには、それに対しては、監護の責務を果たしていないのだから支給をしない。そういうことで受給権者に対する権利をストップしておるけれども、その子供には何の責任もないのに回らなかったのですよ。実際上の権利を持っているのは子供なんだ。ただ未成年者であるということから監護の責任者という制度があるでしょう。ですから法律に何の根拠もなしに簡単に差しとめがやられるというようなことは、法律としては片手落ちじゃないですか。
  159. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 その点は根本問題でございまして、第四条の支給要件を解釈いたす場合は、児童手当をもらういわゆる受給者は子供ではないわけでございます。父また母等の、監護をしているいわゆる養育者自体が権利を持っておるわけでございますので、先ほど申し上げましたように、養育者自身が監護をしているという実態がない場合は、当然第四条の支給要件には合致をいたさないわけでございますので、先ほどのようなお答えをいたしたわけでございます。
  160. 大原亨

    大原委員 もう一回聞きますが、受給権者は父または母ということになっていますね。それが原則で、いろいろな例外措置があるわけでしょう。それが実際に月三千円を他のほうへ使うという場合に、ではその子供に対してはどういう保護をするか。それについて、政策としても、児童手当の精神を第一条に述べておきながら、そのことについてこまかな規定なしに、それは受給権者が責務を果たしてないのだから出さぬということだけで解決できるものですか。
  161. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 第四条の支給要件は非常に幅広いいろいろな場合を予想しているわけでございます。父または母がおる場合には父または母になりますが、その子供が父または母に監護されていなかったりした場合に、たとえばおじいさんなりおばあさんが監護している、あるいは監護なりかつ生計維持をしているというような場合等は、そのおじいさんなりおばあさんが受給者になる。あるいはねえさんが弟妹三人を監護し生計維持をしているというような場合には、そのねえさんが受給者になるわけでございますので、そういう幅広い意味の弾力的な運用が実はできるようになっておりますので、私どもはこれを画一的に運用しないようにしていくつもりでございますが、いまお述べになったようなケースにつきましては、もちろん私一般論を申し上げたわけでございますので、もし監護しているという実態がなかなか出てこないというような状況の場合は、法律の要件に合致いたさないわけでございますので、やはり支給はできない、こういうことが法律解釈上はできるわけでございます。
  162. 大原亨

    大原委員 この法律の十一条を見ますと、ずばりその規定ではないわけですが、十一条の後段を見ますと、児童手当の「支払を一時差しとめることができる。」「支給の制限」のところにありますね。これは前段に正当な理由がなく云々の規定がございますから、児童手当の支払いを一時差しとめる、そしてノーマルな姿に返していく。そして場合によっては、児童にはさかのぼっても出す、それは親権者が自分の責務を果たすということで出すというふうな、そういう規定のしかたはいまの法律上できないかどうか。検討するなら検討すると言ってください。これはおかしいと思うのです。法律の大きな精神からいってもおかしい。
  163. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 いま御指摘の法の十一条は、確かに制限的な場合を考えているわけでございます。つまり届け出事項をしなかったとか、書類を提出しなかったという場合だけに一時差しとめの規定を置いているわけでございますけれども、先ほど来から申されておりますようなそういう事例等につきましては、こういう明文の規定は置かなかったわけでございます。ちょうど同じような法律で、児童扶養手当法がございますが、この児童扶養手当法の中に「受給資格者が、当該児竜の監護又は養育を著しく怠っているとき」には「その額の全部又は一部を支給しないことができる」というのがございますが、特に児童手当法の中にそういう似たような明文の規定を設けなかったのは、私先ほど申し上げましたような趣旨からでございます。
  164. 大原亨

    大原委員 児童手当一人月三千円、二人だったら六千円、それを半分だけ養育費のほうに回した、あとは飲んだり食うたりばくちをした、こういう場合はどうするのですか。あとで答えてください。時間がたつのでできるだけ協力するから……。  第三条にございますが、義務教育終了前の児童の規定があるわけですね。義務教育終了前の規定は、身体の障害その他家庭の事情で義務教育がおくれておる、そういうやむを得ない事情でおくれた場合には、年齢が義務教育終了が十五歳あるいは十六歳までかかる場合がある。そういうふうになっても、たとえば十八歳になっても、極端にいえば十九歳になってもこれは義務教育終了前と解釈できるかどうか。
  165. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 三条の一項、二項はあわせて読んでいただきたいわけでございます。つまり関連して読んでいただきたいわけでございます。いま最後にお述べになりましたように、就学免除なり猶予等によりまして、盲ろうあ学校等の、あるいは養護学校の中学部に在学している児童も含むと書いてございますが、この含むという児童は、やはり最高年齢が十八歳でないといかぬわけでございます。したがいまして、たとえば十六歳なり十七歳ではいいわけで、いいといいますか、その範囲に入るわけでございますが、十九歳等になりますと、第一項の「児童」というところで十八歳未満になっておりますので、これはこの中に入らぬ、こういう解釈になるわけでございます。
  166. 大原亨

    大原委員 十八歳までに義務教育を終了するということが条件だということですね。しかしそれが実際には、盲ろう児等にいたしましても、肢体不自由児にいたしましても、ずいぶんおくれる人があるわけで、それは実際に父母の負担、養育費がかかるわけです。そして障害児の側に立ってみましても、これは社会的に人権を保護されるべき人です。ですから、これはひとつ十分検討してもらいたい。  第四条に関係いたしまして属地主義、属人主義の問題があると思います。日本人の商社員、外交官等が子供を連れてたとえば三年、四年と外国へ行っておりますね。そういう人の児童は対象になりますか、ならぬですか。
  167. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 第四条の一項の本文のほうは「日本国民であり、かつ、日本国内に住所を有するとき」、養育者がそういう条件に合致するときに支給する、こういうことになっておりますので、いわゆる養育者自身について、日本国民とか日本国内に住所を有するという条件をここで制限しているわけでございます。したがいまして、養育者が監護いたしております児童自身にはこういう要件はないわけでございますので、たとえば外国に居住するような日本人の児童もこの計算の基礎には入るわけでございます。
  168. 大原亨

    大原委員 日本人であって、帰化はしていないけれども外国で居住している、そういう人の子供は入るのですね。
  169. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 その日本人が日本国内に住所を有するという条件が合致いたしますならば、入るわけでございます。
  170. 大原亨

    大原委員 その住所というのは本籍ですか、現住所ですか。
  171. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 生活の本拠でございますから、現住所の場合が多いわけでございます。
  172. 大原亨

    大原委員 そういたしますと、日本人であって、貿易商社とかあるいはその他長期の旅行者とかあるいは外交官とか嘱託とか、いろいろなことで外国で居住している人、帰化していない人、そういう人は児童手当の対象にならぬわけですね。その親権者と子供の生活の本拠は外国にある、こういう場合は入らぬわけですね。入らなかったら答弁はいいです。  もう一つ、在日朝鮮人等の場合、生活保護等は準用されるわけでしょう。それは日本に実際上の生活の本拠を置きながら歴史的、伝統的に日本においていろいろな仕事をし、今日も仕事をしている、こういう場合には、その子供の監護責任者は児童手当をもらうことができるか。
  173. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 四条の本文にはっきり「日本国民、」こういうふうになっているわけでございます。したがいまして、外国人等の場合はこの養育者の要件に合致いたさないわけでございます。生活保護上の扱い等につきましてもお話がございましたが、このような社会福祉の立法におきましては、大体日本国民というのを支給の要件にいたしておりますので、外国人等では、特に帰化した場合以外は、日本国民という要件に合致いたしませんので、そういうような事例の場合は養育者としての要件は出てまいりません。したがいまして児童手当は支給できない。養育者自身としての要件には合致しない、こういうことになるわけでございます。
  174. 大原亨

    大原委員 ただし在日朝鮮人その他長期の滞在の外国人、それは生活保護等は準用しているわけですよ。だから、絶対できないということはない。これは政策的、法律的問題ですね。それからイギリスでしたら、長期の旅行者は医療は無償でしょう。向こうの医療保険を辺用できるわけですよ。保険の場合には助成金もあるわけです。国の費用も入っているわけです。だから、そういう点から考えて相互主義ということがあるだろうと私は思うわけですね。そういう点で日本のこの法律は、日本人であって日本の国内に生活の本拠があるというふうに非常にシビアに制限しているわけですね。それが私は、全体から見て一貫しないことがあるのじゃないか、これは検討すべき事柄ではないのかと思うのですが、厚生大臣いかがですか。
  175. 内田常雄

    内田国務大臣 黙って伺っておりましたが、これは私は、生活保護はおっしゃるとおりだと思いますが、老齢福祉年金でありますとかあるいは児童扶養手当というようなものの例もございますので、そういうものの例と対応いたしつつ、研究の課題になる問題であろうと思います。  それからまた先ほど来の、父親が受け取るお金を児童監護以外の目的に使ってしまう場合というような、これはやってみますといろいろな場合が出てまいると思いますが、それは支給の窓口に当たります市町村長などの意見も聞きながら、いろいろ政令等で具体的に詰めてまいらなければならぬ場合もたくさん出てくるかとも思いますので、御疑念がありました点は、速記にも載るわけでございますので、これは私どももあらためて検討をいたしまして、一番筋の通った処置をいたすように心がけてまいりたいと思います。  何ぶんにも初めてのことでございますので、ここでいろいろ御答弁を申し上げましても多少ちぐはぐな点もあるようにも私も感ずるところでございますので、その辺は私がいま申すようにいたしたいと思います。
  176. 大原亨

    大原委員 第四条の適用の場合、たとえばこういう場合はどうなるのですか。母が父と別居して子供を養っているときは、だれに出すのですか。
  177. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 母が父と別居して子供を養っている場合でございますが、その母自体がその子供を、ここにございますように、義務教育終了前の児童を含む三人以上の児童を監護し、生計を同じくしているという場合は、その母に児童手当を支給する、こういうことに相なるわけでございます。
  178. 大原亨

    大原委員 まだあるのですが、五時に近づきましたから結論にいたしますが、ちょっといままでの質問の残りでぜひ触れておきたいのはこういうことです。  老人問題とともに児童の問題は将来の日本にかかわる問題ですから、非常に重要である。児童については、児童手当だけでなしに福祉その他施設の問題や総合的な政策を立てるべきである。これについては厚生大臣も同調されました。憲法では義務教育は無償とするということで、教育に関する金の支出があるわけです。教育に関する金の支出は非常に増大をしているわけです。児童手当は養育費ということできわめてシビアに制限いたしております。ですから、総合対策を立てるということになれば、文部省関係の義務教育は無償とするという原則の適用とも有機的な連関をとりながらやる必要があるのではないかということが一つ。すべきである。  それからもう一つ。児童憲章の精神で児童を養育するということになれば、当然今日の住宅問題がある。住宅の間数が非常に少ない。一人一人の児童については、一人一部屋という政策もときどき――当てにならぬけれども政策を出している。そういうことからも、住宅政策を考える必要がある。そういう点で広範に、具体的に児童について児童手当の精神が生きるような、そういう総合的な、補完的な政策、こういうものも十分考えてもらいたい。これは私がメモいたしておりましたことで触れなかった点ですから、特に強調いたしておきます。  以上で、まだ全部が尽きていないわけですが、しかし厚生省厚生大臣もかなりの努力をされたことをわれわれは認めるにやぶさかではない。それからあなたが残された、小さく産んで大きく育てる、こういう趣旨も、これはかなり説得力があることばであります。これは、その場のがれの御答弁であってはならぬわけです。あなたはすぐやめるわけですから、ならぬわけですが、しかしながらこれは議論をしてお互いにその裏づけをした、こういうことです。したがって、これの足りない点の改善については――児童手当を、しかたなしにやるんだ、大体そういう姿勢が政府には見えるのです。そういうことではなしに、児童手当の積極的な意義を認めて、そうしてこの改善に万全の措置を尽くす、こういうことについて最後に厚生大臣の御決意のほどをお伺いいたしたいわけです。
  179. 内田常雄

    内田国務大臣 児童手当の施策は、今回初めて、この法律によりまして皆さま方の御同意が得られますれば出発をいたすわけでありまして、これは今後、私が述べてまいりましたように、あらゆる角度から検討し、また国民の社会福祉意識の成長とともに、充実発展さすべきものだと私は考えております。  また、児童手当は児童福祉対策の一つだけでございまして、御説のとおり、他の方面の児童福祉対策をこの機会に見直しまして、相互の有機的関連をはかり、また政策の効率を高めることが、日本民族将来の発展のためにもなるものと思いますし、また今日的意味における社会福祉施策としてもこれは重要な課題だと私は考えます。おまえはやめるであろうから当てにならぬとおっしゃるかもしれませんが、先ほども申しましたように、やがては私がまたそこへすわりまして、そうして政府を鞭撻するということもあり得るわけでございますので、ともにこの問題は努力をいたしてまいりたい、かように私は心から考えるものでございます。
  180. 倉成正

    倉成委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十八分散会