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橋本政府委員 参議院の予算
委員会に大臣出席しておりますために、たいへん恐縮でありますが、私からかわりまして
お答えを申し上げます。
今
国会再開勢頭の
社会労働委員会におきまして、厚生大臣が、所信表明をさせていただきました際に、現在の
社会情勢の変転に伴い、従来以上に老人
対策というものを重視し、従来以上に力を入れていかなければならなくなったということをたしか申し上げたと私は記憶をいたしております。いま、松山
先生の御
質問の冒頭にありましたように、近年わが国の経済また
社会情勢というものが、たいへん大きな発展を遂げてまいりましたその反面に、お
年寄りを取り巻く環境というものが非常にきびしくなりました。その
原因は、あるいは昔の家族制度のもとでありましたら、大きな家族の一員としてのしあわせな
生活を送っておったであろうお
年寄りというものが、いわゆる核家族化の波に押し流されて、お
年寄りだけの
生活をしいられる、あるいは扶養意識の変化に伴って、みずからの力でみずからの
生活をつくり上げていかなければいけなくなりつつある。いろいろな
問題点があろうと思います。
それと同時に、いま御
指摘の中にありましたような、老人の方々の全人口の中に占める割合が高まってまいった。そして、このままでまいりました場合に、近い将来、世界有数の老齢化
社会をわが国が迎えなければならないという客観的な情勢と、こうしたものがその裏づけになっておると思います。
こうした観点から、
厚生省としては、従来以上に老人
対策というものを省の最重点施策の
一つとして取り上げて、総合的な、また計画的な推進をはかってまいろうと今日つとめておるわけであります。確かに、ひとり年金問題にとどまらず、老人
対策ということばの中には多くの
問題点が含まれております。それこそ、住宅問題もありましょう、また健康問題もありましょう、それと同時に、中高年齢層の方々の就職の問題もありましょう、
社会保障いわゆる所得保障
関係の問題あるいは健康や医療費の問題、住宅、老人ホームあるいは定年制、種々の
問題点がその中には含まれております。そして、老人
対策というものは、実は物だけで、たとえばお金だけをあるいは建物だけをつくっていけばそれで足れりとする施策でないことは、
先生よく御
承知のとおりでありまして、物心ともに伴ってまいらない限りは、完全な老人
対策というものは生まれてまいりません。かつて西欧においても、老人
対策というものがわが国より進んでいるといわれる国々において、高齢者の自殺の増加というようなことが非常に議論をされました。結局、金、物、それだけでは満たされない何かがお
年寄りの中にはあったわけであります。私
どもが、今日老人
対策というものを
考える上において、こうした点を見のがすわけにはまいらない、これが基本的な
問題点であります。
昨年九月に「豊かな老後のための国民
会議」というものを開催し、これは若い人、
子供さんあるいは現在壮年期にある方、一切の国民を含めて、老後問題に対する国民的な目標の設定の努力がなされてまいりましたほかに、十一月には、厚生大臣の諮問機関であります中央
社会福祉審議会から「老人問題に関する総合的諸施策について」という御答申をちょうだいをいたしたところであります。これらの趣旨を尊重して、行政の中に取り上げていくことが私
どもの今日の課題であります。
そのため先般、ここにおります
社会局長を中心といたしまして、
厚生省の全省的な努力のもとに、老齢者
対策のプロジェクトチームというものを発足させました。いま自由民主党においても、老人
対策の小
委員会を設けたというお話がございました。
厚生省としても、全省的な立場で老人問題には取り組んでまいろうとしております。現在、健康管理及び医療施設、医療給付体系及び費用、所得保障、居宅のサービス及び
福祉施設、それと同時に生きがい、この五部会を設けて、目下その推進をはかっておるさなかであります。
具体的に
昭和四十六年度において
厚生省はどのような老人
対策を講ずるかというお話でありましたが、少しこまかくというお話でありますので、多少
細部にわたって
お答えをさせていただきたいと思います。
まず、老齢
福祉年金につきましては、年金額の引き上げ、扶養義務者の所得による支給制限及び戦争公務による扶助料等との供給の大幅な緩和を行なってまいりますと同時に、からだに障害のあるお
年寄りについて老齢
福祉年金の支給開始時期を早めるなどの措置を改善措置として講じてまいります。
同時に、老齢者の医療の確保のために、健康保険制度の改正案において退職者継続医療給付制度というものを創設していくと同時に、七十歳以上の被扶養者の医療給付率を五割から七割に引き上げてまいりたい、こうしたことを取り上げております。
次に、ねたきり老人
対策としては、従来から白内障の手術を行なってまいりましたが、新たに脳卒中後遺症者の在宅における機能回復訓練を実施してまいる。いまお
年寄りの半身不随等の大きな
原因となっております脳卒中後のリハビリテーションというものを重視してまいりたいと
考えておりますし、そのほかに特別養護老人ホーム等、大幅に整備をいたしてまいりたいと
考えております。
また、新たにひとり暮らしの老人
対策というものを取り上げまして、相談電話というようなものを設置していく、及び疾病時の介護人派遣に関する助成をいたしてまいろうとしております。
同時に、われわれは、働きたい、
社会の役に立ちたいというお
年寄りの声にこたえていきますために、新たに老人
社会奉仕団というものの活動を助成してまいりたいというようなことを
考えてまいりました。