運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1971-03-16 第65回国会 衆議院 社会労働委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年三月十六日(火曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 倉成  正君    理事 伊東 正義君 理事 佐々木義武君    理事 増岡 博之君 理事 田邊  誠君    理事 大橋 敏雄君 理事 田畑 金光君       有馬 元治君   小此木彦三郎君       大石 武一君    梶山 静六君       唐沢俊二郎君    小金 義照君       斉藤滋与史君    田中 正巳君       中島源太郎君    早川  崇君       原 健三郎君    松山千惠子君       向山 一人君    山下 徳夫君       渡部 恒三君    川俣健二郎君       小林  進君    島本 虎三君       武部  文君    山本 政弘君       古寺  宏君    古川 雅司君       渡部 通子君    寒川 喜一君       西田 八郎君    寺前  巖君  出席国務大臣         労 働 大 臣 野原 正勝君  出席政府委員         労働大臣官房長 道正 邦彦君         労働大臣官房会         計課長     増田 一郎君         労働省労働基準         局長      岡部 實夫君         労働省労働基準         局賃金部長   藤繩 正勝君         労働省職業安定         局長      住  榮作君         労働省職業安定         局審議官    中原  晁君         労働省職業訓練         局長      渡邊 健二君         自治省行政局選         挙部長     中村 啓一君  委員外出席者         参  考  人         (雇用促進事業         団理事長)   堀  秀夫君         参  考  人         (雇用促進事業         団理事)    広瀬 忠三君         参  考  人         (雇用促進事業         団理事)    中田 定士君         参  考  人         (雇用促進事業         団経理部長)  佐々木正治君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ――――――――――――― 委員の異動 三月十二日  辞任         補欠選任  小此木彦三郎君     小坂徳三郎君 同日  辞任         補欠選任   小坂徳三郎君    小此木彦三郎君 同月十六日  辞任         補欠選任   小林  進君     武部  文君 同日  辞任         補欠選任   武部  文君     小林  進君     ――――――――――――― 三月十五日  通算年金通則法施行による共済組合退職一時金  控除の選択期限延長に関する請願田邊誠君紹  介)(第二五四九号)  栄養士管理栄養士必置義務等に関する請願  (奧野誠亮紹介)(第二五五〇号)  療術の開業制度復活に関する請願古川喜一君  紹介)(第二五五一号)  同(粟山ひで紹介)(第二五五二号)  はり、きゅう、マッサージの健康保険取扱手続  き簡素化等に関する請願奧野誠亮紹介)(第  二五五三号)  清掃事業地方自治体直営化による転廃業者の  補償救済に関する請願宇都宮徳馬紹介)(第  二五五四号)  同(遠藤三郎紹介)(第二五五五号)  同(神田博紹介)(第二五五六号)  同(木部佳昭紹介)(第二五五七号)  同(斉藤滋与史君紹介)(第二五五八号)  同外一件(始関伊平紹介)(第二五五九号)  同(高見三郎紹介)(第二五六〇号)  同(坪川信三紹介)(第二五六一号)  同(西村直己紹介)(第二五六二号)  同(三ツ林弥太郎紹介)(第二五六三号)  同(山田久就君紹介)(第二五六四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  勤労者財産形成促進法案内閣提出第四五号)      ――――◇―――――
  2. 倉成正

    倉成委員長 これより会議を開きます。  勤労者財産形成促進法案を議題とし、審査を進めます。  この際、申し上げます。本日は、雇用促進事業団当局より参考人として理事長堀秀夫君、理事広瀬忠三君、同じく中田定士君及び経理部長佐々木正治君、以上四名の方々に御出席をいただいております。  なお、議事は質疑応答形式で進めてまいりたいと存じます。  それでは、質疑の申し出がありますので、順次これを許します。まず武部文君。
  3. 武部文

    武部委員 ただいま当委員会勤労者財産形成促進法案審議中でございますが、雇用促進事業団はこの法律ときわめて重大な関係を持っておりますので、去る二月二十日予算委員会第四分科会で、労働省監督下にある雇用促進事業団の運営、特に、これから申し上げます日本ライク、さらには関東物産等宿舎用地買収疑問点について幾つか指摘をいたしたのでありますが、実はきょうも引き続きこの問題を中心に質問をいたしたいと思います。  私は、日本ライク事業団売却した昭島市の郷地宿舎用地六千八十七坪、相模原市の下九沢宿舎用地約五千坪、横浜市善部宿舎用地約四千九百四十八坪、さらに関東物産売却いたしました横須賀市公郷の宿舎用地三千五百五十七坪につきまして時間をかけていろいろ調査をしてみました。調べれば調べるほど疑問が出てまいりまして、私は、四団地だけではありません、そのほかも調べておりますが、とりあえず日本ライク事業団との間に売買が成立いたしました郷地下九沢善部用地、この問題について取り上げたいと思います。  買い主が事業団であって売り主が日本ライクであるということはすでに分科会で取り上げたとおりであります。日本ライク設立年月日は、その登記簿によりますと昭和三十六年十月九日であります。私の記憶に間違いがなければ、この発足は事業団労働福祉事業団から分かれた時期と同時ごろであろうと思います。初代理事長万仲氏、副理事長が現在中高年齢者福祉協会理事長江下孝氏だったと思いますが、この労働福祉事業団設立年月日、そのときの労働大臣事務次官職業安定局長名前をお知らせいただきたい。
  4. 住榮作

    住政府委員 雇用促進事業団設立年月日は、昭和三十六年の七月一日でございます。大臣石田大臣、それから事務次官亀井次官職業安定局長堀局長、こういうことでございます。
  5. 武部文

    武部委員 そういたしますと、ただいまの御回答は、福祉事業団設立年月日と当時の大臣次官職業安定局長でありますが、雇用促進事業団ができたときの大臣次官職業安定局長名前をちょっとお知らせ願いたい。
  6. 住榮作

    住政府委員 雇用保事業団は三十六年の七月一日でございますので、いま申し上げたとおりでございます。
  7. 武部文

    武部委員 いまのお答えでは三十六年七月一日ということでございます。それで、事業団も三十六年、日本ライク設立も三十六年、これは分科会の席上で私が申し上げたとおりであります。当時、日本ライク設立発起人として名前を貸した佐々木清蔵さんという人がおりますが、この人が今度事業団仕事をすることになったので発起人として名前を貸してほしいと一柳社長の父親の義一さんに頼まれた。また、一柳社長の奥さんも、主人江下さんと昔から知り合いで、江下さんの関係仕事をしているということを主人から聞いておる、こういうことを述べておるのでありまして、私は日本ライクという会社事業団設立と同時期にでき上がったということ、そしてこの両者に相当親密な間柄があって何かの取りきめがあったのではないかと推測ができるのであります。いまのところでは推測にとどめておきますが、そのことはあとで具体的に申し上げます。それでなければ、資本金わずか百万円の会社が数億円もするような土地を動かせるわけがないと思うのです。私はそういうふうに感じます。  日本ライク事業目的というのを見ますと、電気機械修理販売工作用機械販売宅地造成並びに宅地建物取引業務、こういうことになっておりますが、登記書によりますと、十項目のうち一つだけ、この宅地造成並びに宅地建物取引業務というのが一番最後のほうに一項目入っております。当時この日本ライクという会社電気のソケットを販売をしておるという会社であって、調べてみましても、これまで事業団との間に電気器具工作機械取引をした実績は全然ございません。先ほど申し上げましたように、この会社郷地下九沢善部宿舎用地のみ事業団との間に関係があるのであります。くどいようでありますが、わずか百万円程度の資本金会社が数億円もの物件を売ったり買ったりするところの力があるだろうか。こういう点に私はたいへんな疑問を持って調べてみたわけであります。しかも数千万円にのぼる金を手に入れ、現在会社名前だけでありますけれども、その実態は休眠状態、そして社長は、先般申し上げましたが行くえ不明であります。こうした会社が、事業団首脳部と密接な関係がなければこういう取引というものはできない、私はそういうふうに指摘をしたいわけでありますが、調査された監督官庁である労働省、また当該の事業団は、いま私が述べたような疑問を感じられないのでしょうか、全然そういうことは感じておられないのだろうか、それをお聞きしたい。
  8. 堀秀夫

    堀参考人 ただいま御指摘の点でございますが、その後御指摘の件につきましてはいろいろ調査いたしました。何ぶん六、七年前の事件でございまして、当時の関係者もあちらこちらに散らばっておりまして、書類も散逸いたしておりますので、詳細な調査ができなかったことは残念でございます。  この日本ライク設立されましたのは昭和三十六年の十月ころでございます。そこで雇用促進事業団との関係は、その後昭和三十九年になりまして御指摘のように土地売買についての話を持ってきた。それから引き続きましてただいま御指摘の三件の土地売買を行なった、雇用促進事業団との関係はそれだけでございまして、その前後に関係はございません。  なお、この日本ライクは、労働福祉事業団に対しまして――これは雇用促進事業団よりも先にできておったわけでございますが、ただいまお話し電気器具類を主として、職員を対象といたしまして電器とかテレビとかそういうものを売っておった、こういうことがあるわけでございます。そこで私は、この日本ライク社長については、いまお話がありましたように、その後聞いてみましたら、江下理事長とそういう関係で知り合っておったということでございます。そこで、その日本ライク設立されましてから約二年半くらいたちましてその土地の問題が出てきたわけでございます。当時の状況は、率直に申しますと、炭鉱離職者が各地に続出しておりまして、これの宿舎建設ということが非常な急務になっておった。しかし、東京その他の大都会周辺では適当な土地がなかなかないというので、よい話を持ってくる者があればすぐこれを相手にする、こういう気分とあせりがあったことは事実でございます。そういう関係で、この日本ライクが持ち込んできました話に乗った、こういうことだろうと思います。私は、率直に申しまして、雇用促進事業団のような公的な機関は、やはり、いろいろ売買等をいたします場合には、国民の疑惑を招かないように、李下にかんむりを正さないようにすることが適切であろうと思いますので、このような小さな会社相手にしたという点には、調査してみますると反省すべき点があったのではないかと私は考えておりますが、そのような実情であったということでございます。
  9. 住榮作

    住政府委員 私ども、ただいま堀理事長からお話がございましたように、当時の移転就職者用宿舎建設予定地、これは炭鉱離職者等の再就職先がどうしても労働需要の多い東京とか愛知とか大阪ということになるわけでございまして、そういう意味で適当な土地を探すということがきわめて急務になっておったわけでございます。そういう意味で、事業団に早く適地を選んで宿舎の建築を急がせておったことも事実でございます。そういう意味で、ただその場合にそういう大きな需要地付近ではなかなか適地が見つからないというような観点から、いろいろ土地探しに苦労が多かったのだろうと思うのでございますが、そういう意味で、たとえばいま問題になっております土地はいずれも宿舎建設用地としては適当であった、こういうように考えておるのでございますが、ただその相手方が、先生御指摘のような会社であった、それが必ずしも当を得なかったというような点もあるのではないかというように考えておるわけでございます。
  10. 武部文

    武部委員 理事長職業安定局長も当時直接担当であった人でないわけでありますから、非常に古い話でありまして、皆さん当時の模様を御承知ないことはよくわかります。ただこの問題は、古いからといってこうしたことをそのまま黙ってほおかぶりするわけにはまいらない。またあとで出てまいりますもう一つ会社は、いまもこうした問題で事業団と密接な関係があるわけでありまして、私はそういう面から、たとえ六、七年前のことであろうと、究明すべき点は究明しなければならぬ、このように考えるのであります。  ここに土地謄本土地売買契約書用地取得経過不動産鑑定書があります。まず下九沢取得用地経過について、資料の要求に対する回答労働省から参りました。この経過を見ますと、用地約五千坪でありますが、この用地取得については、かねて日本ライクから事業団売却申し入れがあった、それは三十九年六月十七日に売却申し入れがあったので、三十九年六月十七日に事業団不動産銀行鑑定の依頼をいたしておるのであります。そうしてその結果が出たのが鑑定を依頼した五日後、六月二十二日であります。ここに記載のとおりであります。ところが、日本ライク地主榎本厚さん外六名から土地を購入したのは七月一日なのであります。つまり事業団日本ライク土地でない土地を高い鑑定料を払って鑑定をしてもらったことになる。これはもう出されたこの文書の経過から見て当然そうなっておるのであります。極端な言い方をいたしますと、事業団買収できるかできないかわからないそういう土地を、思惑で鑑定を依頼しておるということにこの結果はなるのであります。  あと二つ申し上げますが、大体同じケースであります。このときすでに坪当たり一万六千円という鑑定価格が出ております。これはここに記載のとおりであります。日本ライク地主から買った値段は私ども調査では坪一万二千円であります。そうして七月三日に登記をして、事業団日本ライクとが売買契約をいたしましたのが四日後の七月七日であります。事業団が買った坪単価は一万五千円、総額七千五百十八万円であります。日本ライクという会社は、わずか五日間で坪三千円高く売って、そのさや総額一千五百万円であります。そうして事業団日本ライクに金を払ったのは七月八日であります。わずか資本金百万円の会社が、七千五百万もするような土地を購入して、その代金を払う力がない、これは当然のことであります。つまり事業団から土地代が入ってこなければ日本ライク地主に金を払うことができない、そういう状態でございます。これは私ども調査で明らかであります。  考えてみますと、日本ライクという会社は、自分会社の金を一銭も使わないで、事業団の金を右から左へ動かしただけで坪三千円のさやをかせいでおる。こういうことは、少なくとも事業団の幹部と会社とが親しい間柄でなければとてもできるわざではない。私は、こういうことこそ先行売買でなくて何だろう、こういうことを言いたいのであります。こういう事実を一体どうお考えになりましょうか。
  11. 堀秀夫

    堀参考人 ただいま御指摘になりました日付はそのとおりでございます。この日本ライク社長も現在行くえ不明でございますので、その辺の調査も不十分でございます。当時の実情を私どもで調べてみましたところ、次のようなことがございました。  それは、当時におきましては、事業団用地買収するときは、土地所有権者から直接売買する、こういう形式をとっておる。したがいまして手数料制度というものがなかったわけでございます。ただこの問題は、後になりまして合理化されまして、現在はそういうことはございませんが、このときは予算上そういうような立て方になっておった。  ところで、日本ライクがこの土地があるということを雇用促進事業団に持ってまいりましたのは、お話しのように六月以前であったようでございます。そこで日本ライクはいまのような制度に従いまして、同年七月一日にもと所有者から買収して、これを間もなくこの事業団に転売した、こういう形になっておるわけであります。実際のところは、それまでに相当長い期間にわたりまして個々の地主に対しまして、炭鉱離職者のための住宅を建設するので協力してもらいたいというようないろいろな呼びかけや世話をいたしました。地元不動産業者土地取りまとめを依頼するなどいろいろの措置をとっておった模様でございます。そこで、そういうようなことがありましてから七月一日に、これを形式上は買収いたしまして、これを事業団に転売したということになっております。  当時の事情も、これも一体どうなっておったんだかということでいろいろ問いただしてみたわけでございます。商慣行上からいたしまして、日本ライクもと地主からどのくらいで買ったのかということを言いましても、なかなかこれはわからなかったそうでございます。そこで、これを日本不動産銀行評価を依頼しましたところ、一万六千円という鑑定が出てきた。それを参考にいたしまして一万五千円で買ったということになっておるわけでございます。  その間の実情調査とかその他の点が不十分な点があったのではないかと思いますが、事実はただいま申し上げたとおりであるようでございます。
  12. 武部文

    武部委員 いまのお答えを聞いておりますと、日本ライクという会社は、相当期間、何人か分散をしておる地主取りまとめに時間を要しておったというような話でありますが、私の調査ではそういう事実はありません。そういう答弁はいただけないのであります。いずれにいたしましても、常識からいう商取引というのは、私どもの考え方をいえば、ある不動産会社自分土地がここに幾らぐらいある、そういうものの証明になる登記謄本をもって事業団売却申し入れる。事業団はそれを鑑定を依頼する。そうしてその鑑定の結果によってみずからの価格をきめて相手取引をする、これが普通の慣行上の取引だと私は思うのです。ところが、先ほど申し上げるように、すでに事業団の場合、この日本ライクとの間には前もって、他人の土地事業団そのもの鑑定をさして、鑑定価格を前もって日本ライクが知っておる。日本ライクは知っておるのです。そういうことをしておって、日本ライクというものは一体どういうことをするでしょうか。当然、その鑑定価格よりも地主から安く買って、鑑定の額に近づけて幾らで売ればどれだけのさやをかせげるということは、もうちゃんと初めからわかっておることなんです。鑑定の結果をいち早く知ったのがまだ土地を買っていない会社であったということが問題なんです。そういうことが一体あっていいか、私はその点をたいへんふしぎに思うのです。  それならば次のもう一つ宿舎用地について申し上げてみたいと思います。この善部という用地取得経過もここにございますが、これを見ますと、四千九百四十八坪、これは昭和四十年一月十八日に一万三千五百円で地主志賀粂吉さんという方から買って登記いたしております。事業団不動産銀行に依頼したのが一月十八日から二十六日にかけて、坪二万一千円という不動産鑑定評価が出ておるようであります。その翌日の一月二十七日に坪一万九千円で事業団に売っております。わずか九日間で坪五千五百円高く事業団に売っておるのです。総額二千七百二十一万円ものさやかせぎをいたしておるのであります。これも、事業団から日本ライク代金が払われてから日本ライクから地主に払われておる、こういう結果が出ておる。  いま一つ昭島市の郷地という宿舎用地経過資料としていただきました。この用地は六千八十七坪、この経過下九沢と全く同じケースであります。日本ライク事業団売却申し入れいたしましたのが昭和四十年十月六日です。その日に事業団は直ちに不動産銀行鑑定を依頼し、坪二万九千円という鑑定を出しております。ここに鑑定書がございます。日本ライクもと地主であった西武鉄道から購入登記したのが十月の二十八日であります。したがってこの経過から見ますと、事業団は十日も前に、日本ライク土地でない西武鉄道土地鑑定をしておるということになるのです。この土地売買について、事業団は、日本ライク西武鉄道から購入したその日に売買契約を締結しておる。日本ライクが買った坪単価は二万五千八百円、事業団ライクから買った坪単価は二万八千三百円ですね。これは先日、参議院決算委員会で明らかになった数字であります。先般私が分科会で申し上げるときにはこの事実はわかりませんでした。わかりませんでしたが、先般の参議院決算委員会で明らかになった購入の坪単価は二万八千三百円なのであります。同じ日に、二万五千八百円のそれが横流しされて、一日で坪二千五百円、総額一千五百二十一万七千円のさやかせぎが行なわれておるのであります。したがって、このケースでは、事業団ライクに支払った金額は総額一億七千七十一万七千四百八十六円という巨額にのぼっておるのであります。それがたった一日、いや登記あるいは契約時間を差し引けば、わずか数時間かもしれません。そういうわずか数時間で一億七千万円にものぼる物件が決定するなどということは、一体常識で考えられるでしょうか。私はそういう点に非常に大きな疑問を持つのです。この裏には相当実力者がいなければこういうことはできぬはずです。私どもはそういうふうに思ったのです。  事業団が以上の三つの宿舎用地買収のために支払った総額は三億三千九百九十万九千四百八十六円であります。日本ライクのかせいださや総額で七千八百四十三万一千五百円、わずか資本金百万円の会社が、三十九年の七月から四十年十月までのわずか一年三カ月間にこれだけの七千八百四十三万一千五百円という膨大なさやをかせいでおる、自分の金は一銭も使わずに。みんな事業団の金です。こういう点についてどう思われるでしょうか。私はそれをお聞きしたい。
  13. 堀秀夫

    堀参考人 善部郷地用地買収事業でございます。所有権移転日付等は御指摘のとおりでございます。  そこで、この間の事情につきまして、先ほど申し上げましたように、当時においては土地所有権者から直接購入する、こういう制度になっておりました。土地世話があった場合にもそのような形を形式上とる、こういうことになっておったために、いまの登記面が御指摘のような日付になっておるということでございます。  ところで、この間の事情につきまして、これもいろいろ問いただしてみたわけでございますが、善部につきましては、日本ライクはこの用地所有権を取得する以前におきまして、公道から新幹線のガードわき敷地に至る間の約三百メートルの私道の通行権について関係者承諾を取りつけたり、あるいは排水の工事についても農協や関係部落会承諾をとるなど、この土地もと地主から買収するだいぶ前からいろいろの措置をとっておった模様でございます。  それから郷地につきまして、これも日本ライク用地事業団に推薦してまいりましたのは四十年の九月以前でございます。そこで、日本ライクとの交渉過程におきまして、このときは事業団は、土地西武鉄道所有であるということがはっきりしておりましたので、西武に対しまして直接に売却してはくれないかということを申し入れた事実があるわけでございますが、西武におきましては、これはすでに、形式は別として、実質的に日本ライクに売約済みである、だから日本ライクに交渉してくれ、こういうような話があったので、日本ライクと交渉を継続した、以上のようなことがございます。  なお、この郷地土地につきましては、日本ライクが排水管の設置あるいは給水管の設置につきまして、いろいろな措置をとるということを約束しておるわけでございます。  以上のようなことがその間の経緯としてあるわけでございますが、お話のように、この両方の土地につきまして、もと地主所有者からどのくらいで転売したかということが、当時においては事業団としては把握できなかった。事業団としては、不動産銀行あるいは不動産研究所のような法律に基づく信用のある鑑定機関の鑑定を依頼し、その範囲内で買ったということが、私ども現在調べました事実でございます。
  14. 武部文

    武部委員 私が申し上げたいのは、こういう三つのケースを見まして、全くあっという間に右から左へ転売をされておる。また、この不動産鑑定が、いま言ったような時日的に見て、土地の本来の所有者から中間の会社が買う以前に鑑定が依頼をされて、その鑑定価格というものを中間の会社が先にそれを知っておる。そうして鑑定の結果が出たあとで、その本来の持ち主から安い値段で買ってすばやくこれを売っておる、こういうケースについて私は、常識では考えられないじゃないか、この点は、前回はトンネル会社じゃないか、こういう点を指摘したわけでありますが、当時労働省としては、調査もしてありませんしよくわからないということでございました。しかし、いま経過が全部私どもの手に、これはあと謄本についても申し上げますが、売買契約書も非常にふしぎなのでお尋ね申し上げたいのですが、そういう経過から見て、また現実に日本ライクという会社休眠状態社長が行くえ不明、その他の事情から見て、明らかにこの三件のみをもって事業団との間に売買をしておった会社である。本来の目的の仕事は何にもしていない。そういう面から見て、これは明らかにトンネル会社じゃないかというふうに私は指摘をしたわけですが、そういうふうにいまの経過を皆さんがお調べになってお感じになりませんか。
  15. 堀秀夫

    堀参考人 私どもは、当時の用地取得の方法が、先ほど私が申し上げたようになっておったということによりまして、この売買契約あるいは所有権の移転登記というものが、土地所有権者から直接事業団土地を購入する、こういう形式にするためにそういうような形式をとったというようなことになっておりますので、その結果でいまのような日付の間隔が短かったという事実になったのであろうと思います。  私は、先ほど申し上げますように、この公的な機関である事業団といたしまして、土地の取得というような問題については人一倍、公的な機関であるということを自覚して買い手方を選択すべきである、このようには思います。その意味で、日本ライクというものは、当時いろいろな用地適地があれば早く買収したいという要請があった点はございますが、やはり慎重な配慮に欠けておった点は認めますが、必ずしもトンネル会社であったとは私は思わないのでございます。
  16. 武部文

    武部委員 それならば次の疑問を申し上げたいと思います。  郷地日本不動産銀行鑑定書がございます。この鑑定書を見ますと、鑑定価格は坪二万九千円となっておりますが、それを事業団は二万八千三百円で買っておりますね。鑑定書よりも七百円安い値段で買っております。ところが、この鑑定書鑑定評価の条件の二のほう「所有権以外に何ら権利関係の附着しない給排水設備の完備した造成済の宅地を想定した更地の正常価格である。」と記載されておるのです。したがって、この二万九千円という鑑定価格は、給排水設備工事完了後の価格であります。ところが、先日の参議院決算委員会指摘があったようでありますが、この日本ライクは給排水設備工事というものをしておりません。そこで、事業団は訴訟を起こして争った。しかし、いまだに日本ライクはやっていない。あなたも御答弁になったように社長が行くえ不明です。会社休眠状態です。そういう状態ですから、いまの段階ではやむを得ません。しかし、当時事業団の金を右から左へころがすことによって七千八百万以上の利益を得ておる。そういう会社ですから、この給排水設備工事にはわずか三百万円程度の金しか要らない、そういう工事ができないわけはない、私はそう思います。なお、普通の経営者ならば、三百万円以下のところでこれほどうまい商売をみすみす手放すばかがあるでしょうか。三百万の給排水工事をやらなかった。もうけは七千八百万。そうすると一体、七千八百万円という多額なさやかせぎをした金がほんとうに日本ライクの手に入ったんだろうか、どこか途中でこの七千八百万円の金というものはリベートに取られておったのではないかと勘ぐりたくなるのです。そうでなければ、わずか三百万円ほどの給排水工事をなぜしなかったのか。しなければ次の分の取引はなくなってしまうのです。これは当然のことなんです。こういう点が私どもがこの問題を取り上げて一番問題点に考えておるところです。そうでなければ、七千八百万円もの膨大な利益を得てわずか一年三カ月ですよ、そうしておいて、そのあともう生活が苦しくなって行くえ不明だ、家族はばらばらに住んでおる、こういうことが一体起こり得るでしょうか。私どもは非常にこの点をふしぎに思うのです。ですから、ほんとうにそれだけの金が日本ライクの手に入ったんだろうか、こういう疑問を次々と起こさざるを得ないのです。こういう点について事業団はどの程度のことを御調査になったのか、お知りならばお知らせいただきたい。
  17. 堀秀夫

    堀参考人 御指摘のように、郷地土地につきましては、給排水の工事を行なうということになっておるわけでございます。ところで、この給排水の工事の実施の状況でございますが、給水の工事につきましては実施したようでございます。しかし排水の工事につきましては、日本ライクはやると言っておりながら実施しなかった。その理由はどこにあったかと申しますと、排水をいたしますその排水路につきまして、立川、昭島の両市と、それからそこの排水関係の組合に対しまして、排水管を設置してこの場所に排水させてもらいたいということをいろいろ折衝を重ねた模様でありますが、立川、昭島の両市の組合におきましては、この排水管の設置につきましていろいろそのほうの面からの異論がありまして、なかなかそれを承知しなかった、そういうことでずっとこの工事がおくれておったわけでございます。そこで、いつまでたってもできませんので、事業団がその後乗り出しまして、事業団が立川、昭島の両市に対しまして直接いろいろ折衝いたしました。その結果、一年半ぐらいたちましてやっと商談が取りつけられた。そこで、事業団といたしましては、この工事を自分のところでやるから、その費用は日本ライクが負担するようにということで折衝いたしまして、誓約書を出させて工事をやりました。それで金を請求いたしましたところ、この前後におきまして、日本ライクは他の業者との何かいろいろな信用問題らしい問題等がありまして、実際問題として破産に瀕して、そこで金も支払えないということで、事業団といたしましては、それは困るということで訴訟を提起いたしまして、裁判所でこの訴訟は事業団の勝訴になったわけでございますが、事実上金が払えない、これが約三百三十万円でございます。  ただいまのような事情がありまして、だから、そのときにおきまして排水の工事ができなかったというのは、相手方が言うことを聞かなかった、要するに立川、昭島の両市と、その排水関係の組合の同意がなかなか得られなかったという点がそのおくれた理由であると思うのでございます。ただし、その間におきまして、いろいろな誓約書とか確約書の提出等もございましたが、もう少ししっかりした契約の手続をしておくべきだったという点は、事務処理上これは反省すべき点があったと私は思うのでございます。排水管の工事がおくれましたのは、ただいまのような事実が原因であったと思います。
  18. 武部文

    武部委員 実は非常に短い時間でございまして、たくさんのことを申し上げることができないので、少しはしょって話を進めてみますが、訴訟は勝訴になったのですけれども相手がつぶれておるから何にもならぬわけですね。この会社の役員の一人、社長の弟は詐欺罪で四十四年に逮捕され、保釈中に逃走、警察で行くえをさがしておるところであります。そういうような信用のおけないインチキ会社と多額の土地事業団取引しておった。もしかりに西武鉄道と直接取引があったとするならば、こういうような給排水工事というものの不履行はない、こう言うことができると思うのです。そういう点で、事業団の責任というものは私はたいへん重大だと思うのです。いまあなたのほうは訴訟の経過お話しになったわけですが、日本ライクの役員というのは、もうさがしても見つからぬというのが現実のようですね。  そうならば、もう一つ私はお尋ねをいたしたいのでありますが、ここに事業団日本ライクとの間にかわした三つの用地購入についての土地売買契約書がございます。これは資料としてお出しをいただきました。いま一つ関東物産のもございますが、とりあえずこの三つの契約書を見ても、いかに当時事業団の運営がずさんであったかということが指摘できると私は思うのです。  なぜならば、具体的に一つ一つ申し上げますが、同時に日本ライクという会社がいかに信用のおけないインチキ会社であったか、これもここではっきりいたします。私は、当時この契約書が正式の契約書であって、これに基づいて金銭の受理なりあるいは不動産登記を行なったものと思うのでありますが、契約書の上に書いてある「案」というのは一体どういうことでしょうか。
  19. 堀秀夫

    堀参考人 それは私存じませんので、ちょっと調べてみます。
  20. 広瀬忠三

    広瀬参考人 この「案」と書いてございますのは、決裁文書で起案して回すときの「案」でございまして、決裁を終わると同時にこの「案」は消えるべき性質のものであったのでございますが、急いで提出いたしましたので、こういうことになっております。
  21. 武部文

    武部委員 そうすると、これは正式の契約書だということになりますね。そうなれば申し上げますが、この下九沢契約書、これにはまず収入印紙の貼付がありません。甲乙署名をあとにいたしておりますが、なぜか判が置いてありません。この下九沢契約書を見ますと、さっきから申し上げるように、甲を買い主事業団、乙を売り主ライク、こういうことになっておりますが、さっき言ったように収入印紙の貼付がない。契約総額七千五百十八万円という契約書が収入印紙がなくてよく通用するものですね。これはたいへんふしぎだと思います。それから、裏面を見ますと、「この契約の証として本書2通を作成し、甲乙署名押印のうえ、それぞれその1通を保有する。」とあるが、割り印もなければ、代表者の印もない。ただ、ここに事業団という名前ライク代表一柳雅和、しかもこの一柳雅和という売り主の署名はペン書きであります。あとで一括してお答えいただきたいのです。  次に、いま一つ善部契約書、これも下九沢と同じであります。これも収入印紙がありません。そして、これにはどこをさがしても事業団ライク両者の署名捺印がない。  さらに、昭和四十年十月二十六日、昭島郷地契約書、これも前と同じく収入印紙の貼付もなければ割り印もありません。  もう一つ提出いただきました関東物産の公郷の土地売買契約書は、収入印紙もきちんとございます。割り印も何もこれは全部そろってきちんとしたものです。これだけは一体どうしてこういうことになっておるのでしょうか。こういう公郷の宿舎売買契約書とこの三つの売買契約書とは雲泥の差がある。私はこういう点で、最初はペン書きであったものが、最後はゴム印です。日本ライクという会社の判になっております。もちろん何にも判はないんです。一体こういう契約書が正式な契約書として通用して、金銭の授受あるいは不動産登記、こういうことが行なわれておったということは重大なことだと思うのですが、その点はどうですか。
  22. 堀秀夫

    堀参考人 私も実はただいまそのお話は初めて伺いました。気がつかなかったのでございますが、いま聞いてみますと、この「案」とありますのは、こういう売買契約書によって契約を正規に結ぶということで起案いたしまして決裁文書につけたのがこの「案」とある書類だということでございます。そこで、これによって決裁をとりまして、正式にその土地売買契約書を取りかわしますときには、ただいま一番あとで御指摘になりましたその文書のように、双方の署名捺印があり、収入印紙も張ってある、こういう契約書になるわけであります。そこで、この「案」というものが提出されましたのは、実は非常に急いで取りまとめて出しましたので、あわてて決裁の文書にくっついておったものを先生のほうに差し上げたんじゃないかと私は思っております。したがいまして、正式の契約書はあるはずでございますから、調査いたしましてそれをさっそくお届けすることにいたしたいと思います。
  23. 武部文

    武部委員 先ほどこのものは正式なものだとあなたもおっしゃったのですよ。この「案」は一体何だと言ったら、回すときにそう書いてあるので、受理したときには消えるものだとおっしゃったから、これは正式なものですよ。それなら、なぜこっちだけ出すんですか。われわれは、四つのものが来れば、四つのものを並べて見るのは当然のことでしょう。こっちだけはりっぱなほんとうのものを出しておいて、こっちのものはうそのものを出して、そんなことで資料といえません。そして、全然名前も書いてない。こっちはペン書き、こっちはゴム印、こんなばかげた、割り印も何もないものを出してきて、これが資料でございます、売買契約書でございます、ということにならない。それならこっちだけなぜこういうものを出したのですか。こういうやり方が、私は少なくとも事業団のいいかげんなやり方がそういうことになっておるのだと思うのですよ。どうですか、それは。
  24. 堀秀夫

    堀参考人 資料の提出につきましていま、ミスがあったようでございますので、正式の契約書はすぐ先生のところに提出することにいたします。
  25. 武部文

    武部委員 私は、この売買契約書、さらには不動産鑑定評価書、こういうものを、あるいは所有権移転登記、これを全部ずっとしさいに検討してみました。してみましたが、やはり疑問は晴れないんです。あの当時なぜこういう会社が急遽つくられて、そうして矢つぎばやに三件の物件が、ほんとうにそれこそあっという間に転売をされておる。そうしてばく大な金額が日本ライクという会社の収入になっておる。ところが、収入を得たはずの会社は倒産をしておる。そうして、その役員の生活というものは全くたいへんなことになっている。本人に対してはたいへん失礼な言い方ですが、調べた結果そうなっておるんです。そうすると一体、あの当時七千九百万をわずかな間に取得したことは先ほど申し上げたとおりなんですが、何かそこにあったのではないかと疑いたくなるのは、私はだれもがそうだと思うのです。当然だと思う。しかしそれ以上のことはいまの段階では私は申し上げません。申し上げませんが、このように西武鉄道というようなりっぱな持ち主がありながら、なぜそれを十日も前に不動産鑑定を他の者に依頼をして、十日もあと西武鉄道から買うというようなことがあっていいだろうか。こういうような点を考えると、疑問はだんだん深まる一方なんであります。したがいまして、きょうはもうほとんど時間がございませんから次に移ります。  これと同じようなケースがもう一つ私が指摘した中にございました。これは関東物産という事業団出入りの訓練用機械その他を納入する業者でありますが、これが、坪六千円で当時地主から買った土地を三倍の一万八千円で事業団に売った。これは一体どういうことかという点を指摘いたしましたところ、その後の答弁の議事録を拝見いたしますと、何か造成工事をしたためにそういうふうに高くなったのだというような話もございました。しかし、少なくとも私ども調査による金額あるいは常識から考えてみて、当時約七割ないし八割程度地主、持ち主がこの造成に手をかしておった、そういうことが事実としてございました。したがって、完全なさら地にしてこれを事業団売却するにしても三倍という値段はたいへんな値段です。われわれはこれについて納得できぬのであります。そういう点でいろいろやりとりをいたしましたところが、これまた皆さんのほうから経過書が提出をされました。これをずっと読んでみますと、何か会社は、不動産売買会社でないところの訓練用の機械を納入しておる関東物産、この会社土地売買したということについておかしいではないかということを指摘をいたしましたところが、皆さんのほうから次のような反論があったようでありますね。この関東物産という会社は日本橋の室町にある。代表取締役は安田岩雄さんです。ところが、同じような関東物産というのが小平市の津田町にございまして、同じ安田さんが社長であります。関東物産という会社が日本橋と小平と両方にあった。そして社長は同じ人間であります。途中でこの小平市にあった関東物産という会社は関東地産と商号を変更いたしております。そういう経過も皆さんのほうからございましたが、この売買契約書である宅地造成の申請書というのは、日本橋の関東物産ではないとあなたのほうはおっしゃっておる。これは小平市の関東物産であって、日本橋にある関東物産でないということに皆さんのほうは言っておられますが、現実に売買契約書の条件である宅地造成の申請書というのは昭和四十年九月二十日付、日本橋室町の関東物産です。同時に四十二年十月十八日という終了届けを出したのも同じく日本橋の関東物産であります。これはまさに宅地造成等規制法違反だというふうに私は思いますが、まず皆さんが経過書をお出しになった点について、これは私は間違っておると指摘をするのですが、どうですか。
  26. 堀秀夫

    堀参考人 お話しのように、関東物産はいろいろな工作機械あるいは訓練教育用の機械の販売納入ということを本業にしておる会社でございます。そこで、四十年の四月に、ただいま御指摘がございました東京都小平市に関東物産株式会社という会社を別に設立するということで登記をしておるわけでございます。私は、その場所等は違っておりますけれども、この会社名前や役員の構成からいたしまして、これは事実上姉妹会社と申しますか、同じ系列の会社である。ただその日本橋の分が工作機械の納入販売を行なうということから、土地売買は小平のほうの関東物産で行なう、こういうふうに区分けをして設立したものであろうと思いますが、実際上はこれは姉妹会社であることは間違いない、私はそのように思っております。
  27. 武部文

    武部委員 ですから、あなたのほうの経過でお出しになったことは間違いなんです。そして、あなたがはしなくもおっしゃったように、この二つは別個の会社ではないのです。この二つは同じものであって、これはあるものをカムフラージュするためにこうしておかなければ、少なくとも、あとで申し上げますが、訓練用の工作機械を大量に商売をしておる会社として宅地の売買などということはできない。そこで別個なものを一つつくっておった。しかし現実に宅地造成のいわゆる申請をやったのは日本橋のもとのほうがやっておったのですよ。それも終了届けもそれが出しておるのですよ。ですから、これは明らかにあなたがおっしゃったとおりなんです。これは全くインチキのカムフラージュの会社であったということが指摘をされるのです。いま一つ、私は先ほど六千円と一万八千円のことを申し上げましたが、これは現実に土盛りをどのくらいして、その費用がどのくらいかかったかということを私は調査しておりません。ただ、あの土地関東物産に売った橋本政刀氏という人が八割方造成したということを当時述べておるし、同時に横須賀市役所の指導課の石井さんという人の説明でも、大体橋本氏によって切り盛りがされておったということを証言をいたしております。だとすると、六千円が三倍の一万八千円になるということに私は大きな疑問を持っておる、こういうふうに指摘をいたしたのであります。この解明についてはされないままであります。一体、関東物産がわずか数カ月前に手に入れた土地を三倍の値段にして事業団に売ったということについては、いまだに疑問が晴れません。これはいずれあらためて問題を提起いたします。  そこで、なぜ関東物産という訓練用の機械を納入する会社がこのような土地売買に介入をして、そうして事業団との間に仲立ちをしておるかということに私は疑問を持ちました。次の事実について述べてみたいと思います。  兵庫県加古川市にあるある会社――この会社名は今回は申し上げません。ある不動産会社所有土地約一千七百坪、これを皆さんの事業団に買ってもらいたいということで、あるブローカーを通して話をいたしたところが、ここではしなくも、事業団に買ってもらうためには関東物産という会社を経由しなければだめだ、そういうことを言われ、関東物産が中へ出てきたわけであります。証人を出せとおっしゃればいつでも出しますが、この関東物産社長と会ったところ、関東物産の安田という社長は、事業団には自分のところを経なければ買ってもらえないことになっておる、これは幹部の理事とちゃんと話がついておる、いろいろ政治的にも関係があるので、げたをはくのは当然だ、げたをはか、ざるを得ないと言っておる。これは多少オーバーな表現ですね。オーバーな表現ですが、いずれにしてもこの土地売買会社でない関東物産が、こういう兵庫県の加古川にある土地売買の中にも出てきている。そういうことを言われて現実にこの不動産会社関東物産にそれを売ったのであります。四十年の七月三十日に売却をいたしました。関東物産にはその間の経緯が二、三どうもあるようでありまして、本来ならばすぐ売るはずのところが、少し時間がかかりまして翌年の四十一年四月十三日に、金額は三百万円ほど上積みされておりますが、関東物産から事業団にこの土地が売られております。ところが、関東物産はこの支払いをいつやったか。元の地主に対して、四十年の七月に買っておきながら、支払いは四十一年四月三十日であります。金額三千百五十三万六千百八十二円。これも事業団から金をもらわなければ払えない。こういう結果になっておったのであります。  私はここで申し上げたいのは、関東物産という訓練用の機械を納入しておる会社が、なぜこのような公郷という土地に手を出すのかと思っておったところが、それのみにとどまらず加古川の問題にも同様にこれが介入しておる。そして、いま私が申し上げたようなことを現実に社長が話をしておるということに大きな疑問を持ったのであります。そこで関東物産という会社事業団の皆さんとの間に一体どういう関係があるのだろうかというので、いろいろと関東物産資料の提出を皆さんに求めたわけであります。  そこで、土地の問題はその程度にしておきますが、皆さんからお出しをいただきました職業訓練用機械の納入状況という一覧表がございます。これは事業団設立以来昭和四十四年度までの訓練用の機械の一覧表であります。これを見ますと、三井物産あるいは丸紅飯田、そういうような著名会社も見られますが、この一覧表を私ずっと見てみました。関東物産からの納入がきわめて多いのであります。これを統計的に数字をまとめてみました。こういう結果が出ております。三十六年に事業団ができてから四十四年までに関東物産がどの程度納入をしておるか。たとえば昭和三十九年、事業団の機械の購入額は総額三億六千万円であります。そのうち、関東物産単独で納めた金額は一億九百八十万円。約三割であります。翌年、四十年は四億九千万円の事業団本部の購入に対して一億七千八百八十万円、約三六%。最近では、四十四年の七億九千万円の事業団本部の購入に対して二億三千万円、これは三〇%であります。地方の施設分、これは特に多いのでありまして、四十四年の事業団の地方の施設が購入した機械の総額は九千百八十三万円、この一年間の購入のうちで、実に関東物産は六千三百万円、六六%であります。一社でもって六割六分納めているのであります。三十六年以来四十四年の間の平均の数字を算出してみました。大体最低が二割、最高が三割四分、三割五分、こういう納入の実績になっておるのであります。  したがって、私もしろうとでありますが、この機械の内容をずっと見てみました。普通の旋盤その他たくさんございます。工作機械がたくさん入っておる。たくさん会社があるのに、この関東物産だけこのように多額な割合を占めておるということは一体何だろうか。そこで契約方法でありますが、この契約の方法についても述べてあります。指名競争入札、指名入札後随契、あるいはまた単独随契、そういうものがたくさんありますが、一体この関東物産がこのように一社でもって――これは資本金一千万円の会社ですね、これが多額の契約をして納入をしておるということは一体どういう原因なのか。さらに、関東物産の場合、随契及び指名入札後随契というのが半分以上ありますが、これはどういう関係でそうなるのか、これをお伺いしたい。
  28. 堀秀夫

    堀参考人 事業団の職業訓練用機械の納入元の数字は大体御指摘のような実績であると思います。  そこで、この訓練用の機械でございますが、これは雇用促進事業団におきましても、他の関係の機関と同じように、メーカーから直接買う場合も一部ございますが、ほとんど全部商社から買っておるということになっております。これは他の機関においてもそのような例が多いわけでございますが、要するにいろいろな機械器具のメーカーがございまして、それがそれぞれその自分のつくった物品、製品の納入をどこの商社に委任するということになっておるわけでございますが、この関東物産には相当メーカーからの委任が多いということが第一の原因でございます。それから指名競争と随意契約の問題でございます。指名競争入札が原則でなければならないわけでございまして、事業団におきましても、訓練用機械器具の購入につきましては指名競争入札によることでなるべく行ないたいということでやっておりますが、御指摘のように随意契約の割合が約半分近くなっておるということは、これも事実でございます。  そこで、なぜこうなるかと申しますと、訓練用の機械、これは要するに教育訓練用の機械でございまして、生徒に対しまして、ある基礎訓練から始まりまして、それからさらに高等な訓練を行なう、その訓練の内容に応じまして、それぞれの段階に見合うところのいろいろな機械の性能、規格、種類、こういうものが要求されるわけでございますが、そういうふうにしてまいりますると、ある訓練用の機械につきましてはこういう性能、こういう規格を持っておるというようなことで技術的にいろいろ審査してまいりますと、これがどうしても、結局一つのメーカーの製品になる。要するに、銘柄を指定したような形になる場合が相当ある。これはやはりどこでも同じであると思います。それからもう一つは、訓練につきまして、やはり最近は訓練の内容が向上いたしまして、機械の性能それから内容というものについて相当精密な近代的な機能が要求されるというようなこともあります。どうしてもその機械の性能、内容を指定すると銘柄を指定したような形になる、こういうことで随意契約の率がなかなか減らない、こういうことでございます。  いまのようなことがございますが、結局、その結果といたしまして、ただいま先生が御指摘になったようなことでございます。関東物産に限って随意契約が多いということでなくて、一般にどの商社についても随意契約というものがやはり相当多いわけでございます。私どもは実はこれも、私は就任以来この機械物品の購入問題につきましても、もう少しいい知恵が浮かばないものであろうかということで実はいろいろ検討をしておるわけでございまして、それにつきまして、私は、結局この訓練用の機械の特殊性から申しまして、どうしても指名競争入札によることができないような場合は、そういうものについて、いままでは大体主として内部の技術者それから職業訓練大学校、こういうところの教授のような人たちによってその委員会をつくって、これで審査してやっておったわけでございますが、今後においてもこういうことはもう少し民間人だけのものをつくったらどうだろうかということで、実は昨年の十二月の初めに民間の学識経験者、第三者からなるところの専門家の委員会をつくって、ここでひとつ今後はやろうということで、十二月の初めに実はそういうことも正式に通達できめまして、それで、その委員をこの三月一日に実は各公正な専門家の相当権威のある方々を集めまして発令をいたしまして、今後はそういうところでその御意見を聞いてさらにスクリ一ニングしていくことが必要であろう、私はそういうふうにいま改善をやっております。従来の経緯は、私が申しましたように、主として内部の技術者それから関係の養成機関、大学、高訓校の技術者が集まりまして、どういうものが必要であるかということを、性能、内容をきめまして、それによって指定する。それによって、結局随意契約のものも相当多い、それから指名競争入札によるものは少ない、こういう段取りになっておるわけでございます。
  29. 武部文

    武部委員 随契の基準についてちょっとお知らせ願いたい。随契の基準があるわけですね。
  30. 中田定士

    中田参考人 随意契約の基準につきましては、雇用促進事業団一般会計規程六十六条にございますけれども、金額につきまして、まず第一は、契約の性質または目的が競争に適しないような場合、それから急迫の際、競争に付するいとまがないような場合、それから事業団の行為を秘密にする必要があるような場合、それから現に履行中の加工もしくは修理等につきまして、契約を現に履行中の契約の締結者以外の者をして履行させることが不利なような場合、それから随意契約によると書は、時価に比べまして著しく有利な価格契約ができる見込みがあるような場合、予定価格が百五十万円をこえない製造または予定価格が百万円をこえない加工をいたしますような場合、または物件の購入をいたしますような場合、それからそのほか運送または保管をさせるような場合、それからこれは事業団にはほとんど関係ございませんが、外国で契約をするような場合がございます。
  31. 武部文

    武部委員 いま聞いておりますと、結局低額で、そして緊急の場合、あるいはまた秘密を保たなければならぬ場合、さらには特殊なものというようなものが随契の基準のようでございますね。ところがいまお述べになった理事長の答弁から、私はこの内容を比較してみますと、そうはならぬのであります。これを全部ずっと見てみれば、ほんとうに随契が多い。そうしてそれがいまお述べになったような基準に当てはまっておるかどうか、これについても大きな疑問を持つのです。そうしてたくさんの会社があるにかかわらず、関東物産という会社が飛び抜けてそういう問題について特殊な技能を持ち、そうした経歴を持っているかというと、そうではない。そうだとすると、事業団が全国で取り扱っておる年間の総額の、ひどいものになると三割、地方においては六割六分も一会社からほとんど随契という契約で買っておるということについては疑問が出るのですよ。当然だと思うのです。今後も事業団は、いま私どもが申し上げたような点について具体的に検討し、そういうような疑問の点を皆から持たれないようにそういう姿勢でおやりになるということについては間違いございませんか。
  32. 堀秀夫

    堀参考人 ただいまの会計規程との関係でございますが、会計規程の六十六条第一号にございますように、契約の性質または目的が競争に適しないとき、これは私は先ほどるる御説明いたしましたように、訓練用の機械の性能、品種というものを技術者が指定いたしますると、どうしてもこの第一号にならざるを得ない場合があるので、その率が多い。これが全体の約半分である。それで関東物産だけについて随契が多いというわけではなくて、他の商社が多いように関東物産も多いということなんであります。ただし、いま御指摘になりました点もきわめてごもっともな御意見でございます。私も先ほど申し上げましたように、やはりこの随意契約に付する場合ももう少しやり方を検討したらどうかということで、さっきのような方式も考えてやっておるのですが、今後におきましていまお話しの趣旨、全く私も同感でございますので、これをもう少し適正に行なうために、それから第三者にもよくわかりますガラス張りで行なう、こういう形で根本的に検討をしてやっていきたいと思っておりまするし、今後もそのつもりで実行いたしたいと思います。
  33. 武部文

    武部委員 私は、この土地問題から、関東物産という会社がなぜ本来の業務でない土地問題等に手を出したのかという疑問を持ったのでありまして、そういう点からいろいろ調査をしてみましたところ、関東物産という会社雇用促進事業団との間にはいろいろ風評がございます。この風評はただ単なる風評であってほしいと思うのですが、どうもそうではない。たとえば千葉市に中央技能センターというものがございます。この中央技能センターにはいま職員が何人くらいおりますか、大体十七、八人ぐらいのセンターだと思うのです。これは訓練用のセンターでありますが、この初代所長は中垣さんという方であります。現在おられませんが、この所長は、当該の職員を自分の費用で関西、たとえば京都あたりに二泊三日くらい自分で連れて行ったと称しておるのであります。慰安旅行であります。実はそうではない。この費用は関東物産から出ておるという証拠を私どもは握っておる。同時に、こういう旅行にちゃんと関東物産がついて行っておる、こういう事実があります。さらにこの技能センターには、関東物産との連絡窓口の担当者が置かれておったという事実がある。こういうようにこの契約一つとってみても、いかに一千万円の小さな資本金会社が他の大きな会社をしり目にこれだけの多額の契約をしておるということに大きな疑問を持ったのであります。そうすると、いま申し上げたようなそういう具体的な事実が現実にあがってきたわけであります。  私はあとで申し上げたいと思ったのでありますが、この問題を二月の二十日の日に予算委員会分科会で取り上げましてから、私の手元に電話、書面によって十件以上、全国の事業団とこういう会社との具体的な問題の指摘がございました。端的に言えば、労働省の職員の方からもあったのです。事業団の職員の方からもありました。きわめて詳細な具体的な問題です。きょうは私は時間の関係でこれをここで申し上げる機会がございません。しかし、現実にあの問題を自分で見たといって電話がかかったり、手紙が来たり、そうしてきわめて詳細に具体的に、こういうことはおかしいじゃないか、ここに大きな疑問があるということを指摘をしてきておるのであります。たまたまいま一つ、千葉の技能センターのことを申し上げました。これだって根も葉もないデマではないでのす。そういうように、こういう事業団の運営の中に一企業がこのように癒着をしておるということについて、私はたいへん疑問を持つのです。  時間が来ましたので、最後にお伺いをいたしたいのでありますが、この関東物産という会社が政治献金をしておるはずであります。自治省の選挙部長いらっしゃいますか。――お尋ねをいたしますが、近年、関東物産という会社が政治献金を正式に届けておるその内容をひとつお示しいただきたいと思います。
  34. 中村啓一

    ○中村(啓)政府委員 四十四年-四十五年上期におきまして、株式会社関東物産が献金をしております額は、私どもの現時点で承知しておる範囲では二百万円。これは四十四年の下期になされておるようでございます。
  35. 武部文

    武部委員 相手名前を述べてください。
  36. 中村啓一

    ○中村(啓)政府委員 寄付を受けております政治団体は、齋藤研究会でございます。齋藤研究会は、所在地は千代田区永田町衆議院第二議院会館六百三十三号室でありまして、代表者は今野茂夫であります。
  37. 武部文

    武部委員 いま一回分だけおっしゃいましたが、もうございませんか。もう一つありませんか。いまのは四十四年ですね。四十三年はございませんか。
  38. 中村啓一

    ○中村(啓)政府委員 四十三年につきましては、ただいまここに資料を持っておりません。
  39. 武部文

    武部委員 わかりました。  労働大臣、私は前回の予算分科会の際にこの問題を唐突に申し上げましたので、大臣も初めて聞くことだということで、事実とすればたいへん問題だということをおっしゃったわけです。私はきょうは資料に基づきまして日本ライクあるいは関東物産、そういういわゆる土地会社でない会社事業団との間に、他人の土地を入手してそれをきわめて巧妙に転売をして膨大な利ざやかせぎをやっておる、こういう事実、これを具体的に申し上げたことを先ほどからお聞きいただいておると思うのです。こういうように、かつて事業団が発足して以来のずっと経過から調べてみますと、このような全く私どもが想像できないようなやり方がなされておった。今日、そのような過去のいろいろな例を脱却するために、いろいろ事業団の幹部の皆さんが努力をされておるということをこの場で聞きました。そうであってほしいと思うのです。しかし、現実に関東物産という会社はいまだにこういう経緯をもって事業団と結びついておる。したがって、土地問題について具体的なその七千八百万円の金が一体どこへ流れていったかということについてては、ここで私は申し上げません。なお調査が必要だと思うのです。しかし、あの社長の行くえ不明の問題やあるいは三百数十万円のわずかの排水工事もやらないで倒産をしてしまうというようなこの具体的な事実、こういうものから、この間に何かのことがなければこのようなことが起こらなかった。私は、普通の人がこの問答をお聞きになれば、ははあ何かあったなということを感ずるのは、これは当然だと思うのです。そういう点をお聞きになって、一体事業団の今後の運営について、監督官庁の責任者である労働大臣として、いままで私が前回から述べ、きょう約一時間半の時間でございましたが述べた経緯について、どのようにお感じになっておるか、それをお伺いをして、私、きょうのところはこれで終わりますが、いずれにいたしましても、先ほど申し上げるように、一件以上の具体的な連絡が私どもに来ておるのです。これは解明しなければなりません。国民の不信を解かなければならぬのです。これはいずれあらためて私は具体的に例をあげて、皆さんから具体的な回答をいただきたい。そうでなければ納得できないのであります。きょうまでの経過について労働大臣の見解を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  40. 野原正勝

    ○野原国務大臣 本日、非常に具体的に日本ライク関東物産にまつわるさまざまの問題の御質問をいただきました。承っておったんでありますが、どうも一種のミステリーのようなもので、これはもうたいへんな問題だ、えりを正してこれから雇用促進事業団の運営もやってもらいたい。むしろいままでの官庁のいき方あるいはいろいろな今後の問題につきまして、これは慎重に考えなければならぬ問題であろうかと思います。したがいまして、この問題に関しましては、先ほど来のお話等を今後の施政の上に十分肝に銘じて反映させたい。幸いにただいま事業団は、堀理事長をはじめとして皆さん方がたいへん熱心にしっかりやっていただいておるので、今日の段階では何ら心配はないと思うのでありますが、過去におきまして、どうもいろいろなお話を伺いますと、きわめて十分でない節々が見受けられたわけでございます。これに対しましては、まことに遺憾であった。過去のことにつきましては、なおそれを今後の施政の上に、再びさようなことのないように心してまいるべきものであろうと承ったわけでございます。今後の労働行政に限らず、官庁の機構の中に、いわゆる形式を重んずるのたてまえ上から、ややもすると形式に流れがちであります。その形式の間を縫って、さまざまな問題が起こり得る可能性もあるわけでございます。そういう点は一片の形式のみにこだわらずに、もっと背景、実態をつかんで行なうということが必要だろうと思います。今後の施政の上に肝に銘じまして今後再びこういった問題が起きないように、あやまちの起きないように注意してまいりたいというふうに考えております。
  41. 武部文

    武部委員 約束の時間がちょうど来ましたので、私の質問を終わります。
  42. 倉成正

    倉成委員長 次に大橋敏雄君。
  43. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 きょうは勤労者財産形成促進法の法案の中身について実は質問していく予定であるわけですが、この法案の中に雇用促進事業団の果たす役割りというものはきわめて重要なものであります。したがいまして、前々回から、この促進事業団にまつわる黒い霧の問題が国会で非常に騒がれてきたわけでございますが、この法案の中身に入るにあたりまして、まずそうした黒い霧についてすっきりして入っていきたいということから、きょうの参考人の要請になったと思います。  そこで、いままで武部委員からこまごまと質問されましたので、私はそうした詳細については割愛するといたしましても、一言で言いまして、たとえば関東物産あるいは日本ライクという、その会社が一体どのような会社であったのかというのが一つですね。それから、そういう会社からなぜ用地買収しなければならなかったのかという理由、そういう点を簡単でけっこうですが、なるほどそうだったのかと納得できるようなお答えを願いたいと思います。
  44. 堀秀夫

    堀参考人 日本ライク昭和三十六年の十月九日に設立されまして、資本金百万円の会社でございます。営業目的は電気機器及び付属品の製造、修理並びに販売、それから宅地の造成、宅地建物の取引業務並びにこれに付帯する事業を営む、こういうことになっております。   〔委員長退席、増岡委員長代理着席〕  関東物産は、これは設立されましたのは昭和三十二年の十二月でございます。資本金は一千万円で、内容は、各種工作機械それから訓練用の工作機械等の販売、納入を行なっておる会社でございます。ただし、この関東物産につきましては、昭和四十年の四月二十六日に小平市に同じ名前関東物産というものを設立いたしまして、土地建物売買及びそれに付帯する一切の業務を行なうということを謄本にうたっております。なお、双方とも建設関係の法律によりますところの取引業者としての登録は済ましておるわけでございます。  それから、このような会社とどういう経緯で取引をしたのかということでございます。当時の昭和三十五年から昭和四十年、この時期は御承知のように、炭鉱離職者が各地に輩出をいたしました。これを各大都会周辺に移動していただいて、適職についてもらわなければならない、こういう要請がきわめて強かった。したがいまして、それには住宅がなければおれない。そこで、そういう目的で、雇用促進事業団は住宅用地の取得と住宅建設業務を早く促進すべきである、こういう要請が非常にされておった次第でございます。  そこで、当時の事業団の連中の考え方につきましては、特に東京などの大都会の周辺においてはなかなか適切な土地が見つかりませんので、適当な土地であるということで持ってまいりますれば、これは適当な土地であるという証明がなされればもうだれでも相手にしたい、こんな気持ちとあせりがあったということは事実であったと思うわけであります。そこで、この日本ライクあるいは関東物産、これは、日本ライクはただいまの規模、経営の内容からいたしまして、お話しのように小さな会社でございます。それから関東物産工作機械等が本業で、そちらのほうはちゃんとやっておりますが、これが土地のほうまでやるということについてはいろいろ問題があったと思うのでございますが、いまのようなその当時の事情からいたしまして、これが持ってきた土地が非常に適当であった、こういうことでそれと契約を結んだ、こういうのが当時の事情であったようでございます。
  45. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 雇用促進住宅の用地取得に関して、炭鉱離職者等が大量に出た当時であるし、そういう要請にも応ずるためにはそういう会社等も利用せざるを得なかったというように聞こえたわけでございます。お話しなされましたように、昭和三十九年から四十年ごろの問題のようでございますが、私が一番心配するのは、これはこの前も私は聞いたと思いますけれども事業団内部にそうした体質といいますか、こういうものを起こしていく条件、状態というものが潜在しているのではないか、これを非常に私は懸念するわけですね。そういう点について、事業団のいわゆる綱紀粛正といいますか、そういう立場に立って理事長の今後の決意といいますか、そういう点をまずはっきり聞きたいと思うわけです。
  46. 堀秀夫

    堀参考人 まことにお話しのとおりであります。特に国民の負託にこたえまして設立されました公的な機関である雇用促進事業団のような機関におきましては、特に綱紀の粛正、それから事業内容の明朗化、合理化と申しますか、こういう点が必要である、私は就任以来そのように感じておるところでございます。そこで、大体見当もついてまいりましたので、実は昨年、昭和四十五年の十月の三十日――それまで率直に申しまして内部にいろいろな宿題を出しまして、綱紀の粛正と事故の防止のための具体的な対策を考えようということで、それを持ち寄りましていろいろ検討し、十月の三十日、役員会でもって正式に決定をいたしました。これによりまして具体的にこれを実行に移していく。その内容につきましては各般にわたっておりますので、申し上げることは省略いたしますが、特に用地の取得については、公共用地を取得することを原則といたしますが、やむを得ず民間の土地買収する場合には、これは二つ以上の鑑定機関の評価を得て行なうとか、あるいはその手数料等につきましても正規の合理的な手数料を支払うということで行なうとか、あるいはいろいろな折衝につきましては必ず関係の府県あるいは市町村あたりの職員の人たちに同席してもらう、このくらいのつもりでやるというようなことをきめております。  それから訓練用機械、器材の問題につきましては、これは内容の性質から申しましてやはり競争入札によれない場合が相当あるわけでございます。その場合にはこういう品種あるいはこういう性能、こういう銘柄が必要であるということをスクリーンするところの、公正な第三者機関が要るのではないか。内部の技術者で検討することももとより必要でありますが、やはり公正な第三者のスクリーンを経る必要がある、このように思います。これも十月三十日の役員会できめまして、これは十二月八日にその具体的な設置に関する規定をつくりまして、これを通達いたしました。それでことしの三月一日に、権威のある第三者的な学識経験者に集まっていただきまして、この委員会を開催しようということで発令いたしました。まだ開催はしておりませんが、これは新年度、訓練用機械、器材の購入につきましては全部この機関におはかりをする、こういうことで、おもな点は具体的にはそういうことでございます。  気持ちといたしましては、特に公的な機関である雇用促進事業団においては、たびたび申し上げますが、李下に冠を正さないだけの、国民に疑惑を与えないような運営を必ずしていこう、こういう決意で私はおるわけでございます。
  47. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 大体その方針あるいは決意等はわかったわけでございますが、いまも話しましたように、今回の促進法の中に事業団の占める役割りというのは非常に大きな内容になっておりますので、いまの方針やあるいは内容を実行の上にあらわしていっていただきたい。  そこで労働大臣にお尋ねいたしますが、今回の事件といいますか、浮き彫りにされた問題を監督官庁の長としてこれをどう受けとめられたかということですね。また雇用促進事業団労働省との関係といいますか、このような住宅関係などの管理監督など、どの程度まで監督指導がなされるのか、そういう点も含めてお答えいただきたいと思います。
  48. 野原正勝

    ○野原国務大臣 きわめて責任を痛感しておるわけでございます。従来におきましても、もとより適切な運営につきまして監督指導を怠ってきたとは考えておりませんけれども、現実にいろいろな問題がある。いわゆる李下に冠を正すという事実等がもしあったとすれば、まことに遺憾である。あらわれました日本ライクにしましても関東物産にしましても、どうも必ずしも適切な運営とは言いがたい面がたくさんあったようでございます。そこで労働省としましては、その事業団の重要な使命にかんがみまして、今後はなお一そう監督指導を厳正に行なうつもりでございます。具体的な方針等につきましては、局長からお答えを申し上げます。
  49. 住榮作

    住政府委員 いろいろ私ども問題になりました件等について調査をいたしたのでございますが、その間におきまして事務処理の面において非常に適切でなかった、こういうことが見られるのは非常に残念に思っております。しかし今後雇用促進事業団の業務というのは、やはり労働者の雇用促進という観点から見まして、ますます重要になってまいるわけでございます。そういう意味で、業務の処理のしかたがいやしくも疑惑を招くようなことがあってはならないのはもう全く御指摘のとおりでありまして、私どもといたしましては、その業務が事業団の目的に沿った正しい運営ができますように、十分配慮をいたしてまいりたいというように考えております。
  50. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 では、参考人はこれでけっこうです。  それでは、本日の議題になっております法案の中身についてお尋ねしていくわけでありますが、まずその目的として、勤労者の貯蓄を促進してあわせて持ち家住宅の増加をはかるのだということになっているわけでございますけれども、実際問題として、今回の法案の中身から見る限りにおいては、私は持ち家住宅まで、実際にその効果があらわれていくのだろうか、このような気がしてならないわけであります。これは預貯金のほうを主体にされているのか、住宅のほうを主体になされているのか、まずその辺からお伺いしたいと思います。
  51. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 今回のこの法案は、財産形成ということでいっておりますように、財産はいま先生御指摘のように、一つはいわゆる預貯金等の資産、それからもう一つは持ち家でございます。そこでどちらが重点かということでございますが、もちろん全体として、それぞれ勤労者が自主的に選択をしてこの制度を利用していくということになりますので、勤労者の選択の問題にかかると思いますが、勤労者の資産の中でやはり一般に比べまして非常に劣っておりますのは持ち家でございます。したがいまして、私どもは、勤労者が持ち家を建設するための努力に対しましてはこの法案でも相当重点的に、たとえばこれに対する事業主の協力体制とかあるいは国、地方公共団体のこれに対する援助というようなことも強調いたしておりますので、そういう意味では集まりました資金が住宅建設、持ち家建設のために有効な働きをすることを期待しておるわけでございます。
  52. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 仄聞するところによりますと、この法案の中身が労働省の当初の構想から著しく後退している、こういうことをよく聞くわけでありますが、どういう点が後退したのか。当初構想なさっていたその内容と、今回出されたこの中身で、後退した点をまず明らかにしていただきたいと思います。
  53. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 財産づくり懇談会等にいわば試案として私ども提出いたしました昨年の六月の構想でございますが、これといま御審議を願っておる法案との後退と申しますか、変わりました点について、六月の試案の場合に、財産形成貯蓄に対しまするいわば恩典と申しますか、援助は、一つは積まれました貯蓄に対しまして一定の税額控除を行なっていく、それからさらに、一定の額に達しないものについては割り増し金を支給していく、こういうようなことを考えておりましたが、一般の貯金につきましては、御承知のように利子等の非課税という措置にしぼられてしまったわけであります。  それから住宅につきましては、住宅取得のための減税対象ということでございまして、これにも実は額についての上限が、私どもの最初の構想よりは若干下回りまして、上限が二万円ということになったわけであります。それから住宅建設に関してでございますが、住宅建設のための資金をつくる、このためには、当初私どもは基金というものでプールして特別のそのための事業団をつくりまして、そこでいわゆる勤労者の貯蓄に対しまする資金をいわばプールしてやっていこう、こういうことでありましたが、これは雇用促進事業団にいわば財産形成部というようなものをつくり、貯蓄そのものは条件つきで金融機関にやらせる。その条件は、財産形成貯蓄という新しい銘柄をつくるということと、集まった預金の一部についてはこれを雇用促進事業団に還元をするという、この二つの条件で金融機関にやらせるということにいたしました。したがいまして、いまの金融機関から資金を受けてこれを持ち家住宅の建設のための融資財源にする、それで融資をしていくということを雇用促進事業団が行なうということにいたしたわけでございます。  それからなお、土地につきまして、これはできれば、要するに土地が非常にネックになろうということで、土地の先行取得をその事業団がやれれば非常によかろうということでそういうことも考えておったわけでございますが、これは国全体で住宅の、いわゆる公営住宅等も含めまして、全体の土地の手当てを建設省中心でやっていくということで、各省がばらばらに土地の先行取得をやるということは適当でないというようなことで、その点はやめにいたしました。大体以上のような点でございます。
  54. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 労働省の当初の案からいきますと、四十六年度において大体百八十一億円の予算が必要である、こういうことで進んでいたようでありますけれども、実際今年度きまったのは六億円ですね。金額の上からいっても、今度の法案の中身が非常に軽薄なものといいますか、薄っぺらなものであるということを感せざるを得ないわけですが、いままでになかった制度を発足させるにあたって、いわゆる小さく産んで大きく育てていこうということかもしれませんけれども、私はやはり当初からもっともっとその当初の案に近い内容で発足してもらいたかった、こういう気持ちで一ぱいであります。  そこでもう一つ問題点として考えられることは、中小企業に働く労働者への配慮といいますか、こういう点も著しく不十分である、こういうふうに感ぜざるを得ないわけであります。たとえば大企業の勤労者の持ち家建設については、雇用促進事業団が融資する場合には、その利率が七%とされております。それに対して今度中小企業の勤労者の場合には、六・五%で貸し出されるというように聞いているわけでございます。わずかに〇・五%の差異が認められたということは、私は中小企業の勤労者に対しては、実質的にはほとんど配慮がなされていないというふうに見えてならないわけですけれども、この点についてはどうお考えですか。
  55. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 御指摘の中小企業についての配慮の問題でございますが、一つは、やはり中小企業は現実に大企業に比べて、いろいろ福祉施設その他が見劣りしている。そういう意味で中小企業の方がそういう面で全般的に恵まれていないということは御指摘のとおりであります。  そこで、私どもこの法案をつくります場合に、どうも中小企業と断定するわけにもまいらないと思いますが、なかなか貯蓄もできない方についてどうするかということもいろいろ考えて、先ほど実はちょっとここで実現を見なかったわけでございますが、一種のプレミアムみたいなものを考えていったらどうかということも実は途中で構想していたわけです。ただ税金の面でどこで線を引いたらいいかといういろいろ技術的にむずかしい問題もございますので、その点は今後の問題といたしまして、現実にはやはり中小企業の従業員に対する中小企業者の努力を結集していただく、これをひとつ考えたらどうかということで、法案の中でも事実上中小企業者は単独でなくて協同組合をつくり、あるいはその他の組織を通じましていろいろやるということで、九条あるいは十三条等に事業主の団体、あるいは十三条では事業主が互いに協力するというようなことで、いわゆる事業主が相互に協力しながら、いわゆる組織を大きくして、その力でやっていくという方法を考え、これに対しまして融資をしていくということにする。融資の利率等は、まだ最終的にきめているわけではございませんが、おおむねいまの各機関の融資との関連等も見てみますと、いま先生御指摘のような利率というようなことになるかと思いますが、何ぶんにもどの程度の原資がたまるものか――私ども実は相当利用されることを期待はいたしておりますけれども、どの程度の原資がたまるかはっきりいたしません点もありますので、今後の実績を見まして――御指摘のようなことは、私どもも当初から実は心配している点でございますので、実績を見ながら、いまの規定を十分活用しつつ、かつ将来の問題として十分考えてまいりたい、こう思っております。
  56. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 大臣にお尋ねいたしますが、いま局長が話しましたように、問題は、大企業の勤労者の持ち家建設については雇用促進事業団から融資される場合は、その利率が七%である、それについてまだはっきりはしてないけれども、中小企業の勤労者の場合には、いままでの例からいくと六・五%程度で考えられるというふうに私は聞いたわけですけれども、これはいまも話しますように、中小企業に働いている労働者への配慮が非常に不十分だというふうに私は考えるわけです。いま局長もこの点は十分検討していく中身だ、原資がどれほど集まるかもわからない現状においてはまだはっきりはしないけれども、これは非常に重要な検討事項であると言っておりましたので、この点について大臣も格段の配慮をもって検討に当たってもらいたいということを要望するわけですが、これについて大臣のお気持ちを聞かしていただきたいと思います。
  57. 野原正勝

    ○野原国務大臣 中小企業の勤労者の財産形成、これは最も力を入れなければならぬことだと考えております。ところで、この財産形成の問題につきましては御承知のとおり、当初は中小企業退職金事業団を発展的に改組しまして新しい財産形成の事業団までつくろう、最後までこれは折衝したわけでございますが、遺憾なから出発の当時においては雇用促進事業団の中において運営をするということになったわけでございます。しかしこの財産形成の仕事は今後非常に大きなものとして発展するであろう。将来、考えてみますと、中小企業退職金事業団と一体となって運営に当たるというふうな理想を捨てたわけではございません。むしろそういう意味において、あくまでも中小企業者のための財産形成政策に力を入れなければならぬものであろうと思います。なおかつこれに対しましては、当初住宅をつくるには何と申しましても土地が大事でございますから、用地の先行取得をやろう、先行取得にあたってはさしあたり政府の財政資金を思い切って用意をいたしまして、その分で実は先行取得をすべきであるという主張を繰り返しておったのでありますが、この問題につきましては事業団と政府から六億ほどの資金を基金として出してもらう、その運用益をもって利子補給をしようというところまではいったのでありますが、遺憾ながら思い切った政府の出資を得るに至らなかったということは、今後の財産形成の政策がまだまだ十分でないことを考えておるわけでございます。そうしたもろもろの最初から理想とするような方向ではなかったのでございますが、しかし一応この辺で財産形成政策を強力に実現さしていくということに意義があるわけでございます。同時にまた、われわれのかねがね考えておった中小企業の勤労者に対しても、現在の融資制度はもちろんなお一そう拡充強化をして、住宅融資等の資金は供給する方針でございますし、同時にまた、勤労者の方々の協力を得まして、貯蓄もふえ財産形成の施策も漸次進めていくということになりますれば、これは必ずお役に立つものと将来を予想しております。そういう意味で出発点にあたっては必ずしも十分でなかった点はいなめない事実でございます。しかしここでそうしたわれわれの要望が十分でないからといって、どうもこの財産形成政策を放てきするわけにいかないということで、あえて問題を将来に残しながらここにスタートを切ろうという決意をいたしました。その中には特に中小企業者に対する事業に対しては、利子補給の問題につきましても、その政策を考えますときに、やはり大企業と中小企業との融資の場合においては当然金利の問題になってまいります。私たちとしましても中小企業の置かれておる現状を考えるときに、ただいま大橋先生の御指摘のような、せいぜいわずか五厘程度の利子の差ではうまくないのではないか、できるならば中小企業に対しては相当思い切った低利長期融資が用意されてしかるべきものであると考えます。一気にそこまではいかないとしましても将来はそうした多数の中小企業勤労者の要望にこたえて、これはその方向に問題を進めさせていただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  58. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 法案の第九条には雇用促進事業団が融資を行なう条件の一つとしましていわゆる持ち家の「分譲を受ける勤労者の負担を軽減するために必要な措置を講ずること、」こういうふうに事業主に対して要求しているわけでありますけれども、このような事業主による負担の軽減の措置というものは、大企業に比べますと中小企業では一そう容易ではない、私たちはこういうふうに考えるのですね。これはいままでの企業内福利施設等の持ち家対策の実施状況から見ましてもほとんどが大企業関係に流れているといいますか、ほとんど中小企業はその恩恵に浴していないといっても過言ではないのではないか、こういう点からも非常に心配するわけであります。この点について今回の事業主に対する要求ですね、これの精神といいますか、また政策の実施にあたってどのようなお考えでおられるか説明願いたいと思います。
  59. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 私どもここで書いておりますのは、いま御指摘のように事業主が現にいろいろな形で従業員の福祉施設と申しますか、それに協力をしているのが見られるわけでございます。その力を大いにこれで引き出して――なかなか勤労者の持ち家建設がはかどらない、それを事業主の力もここで引き出してやっていこう、そこでいま御指摘のように大企業の場合はいろいろ現にあるだろうが、中小企業の場合にはその引き出す力といっても中小企業自体にないのではないか、私どもいままでのケースを見ておりまして、中小企業者個々の場合はなかなかそういう余力が出てこない。そこで最近よく見られますのは、中小企業協同組合等が、この加盟事業主が協力して、そこでやはり土地の取得とかあっせんとかあるいは個々の従業員が借りる場合の若干の利子補給をさらに協同組合がいろいろやっていく、そういうようなことも現実に見られますので、事業主が中小企業個々でなかなか達せられないものはむしろやはり共同化、組織化と申しますか、そういう線を通じてできるだけ力が結集されていくようにと、こういうことも十分指導しながら、この融資の場合に中小企業に特にうまく流れていくというようなこともあわせて考えてまいりたいと思っております。
  60. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 今回の法案の成立にあたってのいわゆる背景といいますか、要するにわが国の勤労者の賃金水準はかなり上昇してきたし、相当預貯金もできている、こういう立場から、そういうのを基本として今回の制度の発足があるものと思われるわけでありますけれども、要するに預金できる者、これは今回微力ながらも何らかの恩典に浴するわけでございますが、問題は預金したくとも貯金したくともできないといういわゆる低所得者、そういう者に対して、先ほどお話がありましたように、おそらく割り増し金等の支給によってそれをカバーしていこうということだったのでしょうが、これが削られたということですね。西ドイツの法案を大体参考にしてつくられたということであるわけですけれども、西ドイツにおいては事業主から財産形成給付といいますか、これによって勤労者間の格差をなくしていっている、こういうことのようでありますけれども、今回の法案で見る限りにおいてはその点の配慮が全くないじゃないか、こういうふうに感ずるわけでございますが、その点についてはどうでしょうか。
  61. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 西ドイツの場合には当初この制度が導入されました一九六〇年のときにはやはり減税中心でやってまいってきたようでございますが、最近の改正によりましていま御指摘のように、勤労者のいわゆる貯蓄に対しまして年間六百二十四マルクですか、それを限度といたしましてそれに対して割り増し金を何割か付加金として出していく、こういう制度でございまして、これはいま御指摘のように、いわば配分の公正というようなことは考えられておるようでございます。そこで私どもも、実は減税措置によるのか割り増し金という制度によるのか、この問題が一つ大きな課題としてあるわけでございます。ただ私どもの今回の段階におきましては、どうもいまの日本の現状におきますと、財産形成給付金とかあるいはそれに対する割り増しということが全般的にはまだなじまないというか、いまの段階ではちょっと無理なような気がいたしました。そこでまあ減税の措置でやっていく。その場合にも御指摘のようにもうちょっと魅力あるものとして税額控除をぜひ実現したいと思って努力したのですが、それもまあ結果的には少額利子の非課税ということになってしまいました。そういう意味では実はまだまだこの制度自身が御指摘のような未熟なものを含んでおります。ただこの減税措置が十分活用されていった段階にいろんな問題がまた出てまいると思います。その実績を見ながら今後十分検討してまいりたい。まあ西ドイツにおきましても十年間に三回ほどいろいろ制度改正をやってきておりますので、その実績を見ながらやっといまの制度になったわけでございますので、私どももそういうことで、この制度をともかく有効に活用されるような方途を考えながら、実績をにらみ合わせて、いろいろな御指摘の点については十分今後の課題として検討してまいりたい、こう思っております。
  62. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それでは、従来、勤労者の住宅分譲を積極的にまた中心的に果たしてきました勤住協ですね。これに対してこの制度運用においてどの程度の援助、いわゆる融資率だとか、そういう点を行なおうとなさっているのか、その点をお伺いいたします。
  63. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 いま御指摘の勤住協につきましては、この法案のいまの九条の一項二号のところに、勤住協に対しまして「勤労者の持家として分譲する住宅の建設のための資金の貸付けを行なうこと。」ということで、事業主で先ほど御指摘のような、ある条件を満たす者、要するに財形貯蓄をやっている者と、さらに何らかの負担軽減措置を講じている者、この二つの条件を満たした事業主と同等に、勤住協に対しましても融資をしていくということで、勤住協自体を――ほかの団体は一切認めないわけでございますが、勤住協が特別の法律に基づいて、もっぱら勤労者のための住宅の取得あるいはその土地の取得等を目的とする団体でございますので、これに対して事業主と同じことで、むしろ個々の援助義務等はなくて融資を受けられるということにいたしました。ただ具体的なこれに対する融資条件をどうするかということにつきましては、まだ最終的にきめておりません。一般の事業主の場合とどういう取り扱いをすることがその目的に合致するか、十分検討をしてまいりたいと思います。
  64. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 時間がございませんので、次に移りますけれども、今度の法案の中身からいきますと勤労者の給与の一部が、いわゆる事業主との契約によって天引きされる、それで財産形成貯蓄ということになっていくわけでありますけれども事業主がおれはそういうのはやらないよというようなことが起こり得るかもしれませんけれども、そういうときはどうなりますか。勤労者のほうは今回の法案の成立を見て、ぜひともそうしてやりたい、こう申し出ても事業主のほうが、協力の努力規定はありますものの、これはあくまでも努力規定ですから、いや、わしのところはそれまでのことはやりたくないというようなことは起こり得るかもしれませんが、そういうときはどうなるのでしょうか。労働者自身、勤労者自身、直接預け入れるようなことにもなるのでしょうか。
  65. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 この法律では、具体的には個々の勤労者が住宅貯蓄なりあるいは一般の貯蓄契約を金融機関とするわけでございます。そこで個々人の契約は一応結ばれる、その場合にその条件といたしましては事業主を通じて預貯金をするということになっておりますので、事業主を通じないで直接個々人がばらばらにやることは、この法律は予想しておりません。と申しますのは、勤労者に限った、いわゆる雇用労働者に限ったということから、それからさらに、事業主はいろいろな形で協力をするということから、そういうことにしております。そこで、通常の場合には事業主を通じてということになりますので、事業主との間で今度は、いまの契約に基づいて毎月あるいは毎年あるいは定期的にどのくらいの貯金をするかということ、それを勤労者にかわって払い込みの代行をしてもらうという契約をすることになると思います。その場合におれはいやだということを言うた場合に、その強制力を持たせることは法律的にはちょっとむずかしいと思います。ただ、いわゆる賃金から控除をいたしまして勤労者にかわって払い込みをいたすわけでございますが、その場合には、基準法の二十四条によりまして労使間の協定ということが前提として必要になるわけでございます。したがいまして、労働組合がありますれば労働組合と事業主との間の話し合い、ない場合には労働者の代表者との間の話し合いということになりますので、事実上個々の労働者というよりも、労働者全体の総意が結集される場合には、おそらく事業主のほうもそれに対して十分協力をしていくものと考えております。と申しますのは、事業主がそれによって、代行して払い込む等の若干繁瑣な手続があると思いますが、従業員の福祉をはかるということについても、事業主といたしましては当然ふだんからもいろいろ考えておると思いますので、全体の意向によりまして、そういうことが実現されるものと思っておるわけでございます。
  66. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それじゃ時間も来ましたので、最後に一言聞きますけれども、かりに財産形成貯蓄の契約を結んで実際やっていた、たまたまその勤労者がよその職場に転勤をした。その転勤先の会社事業主が財産形成貯蓄の契約はまだ結んでいないというようなときには、これはどうなるのですか。
  67. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 たまたまその制度を持たないところということでございますね、その場合にはいきなりそこですぐやるわけにもまいらぬと思いますが、事業主に対しまして従来からの貯蓄、いわゆる財形貯蓄をやっているという事実をもって、事業主に引き続きいま申しましたようなことで積極的にその道を開いてもらう、こういうことでやるしか、実は強制力をもって法的にやることはちょっとむずかしいと思いますが、そういうことでやります。
  68. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 ただいま局長からお答えしたとおりでございますが、ただ前の事業主と行ないました契約に基づく貯蓄につきましては、その契約に基づいて預入された分の利子非課税というものは、そのまま支払い期の利子については非課税になるということでございます。
  69. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それではもう時間も来ましたので、私は、そういうこまかい問題ですけれども、しかしこれは非常に影響性は大きいと思います。そういう点を十分配慮なさって監督、指導をしていただきたい。そうしないと、そういう財産形成という問題からある一つの企業に足どめされるような気持ちを労働者が持った場合、これは非常に悪影響だと思いますので、こういう点も十分配慮なさった上で今後この制度の進展を望みたいと思います。  じゃ、以上をもちまして私の質問を終わります。
  70. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 この際、暫時休憩いたします。本会議散会後直ちに再開いたします。    午後零時五十四分休憩      ――――◇―――――    午後二時三十三分開議
  71. 伊東正義

    ○伊東委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。島本虎三君。
  72. 島本虎三

    ○島本委員 大臣にお伺いいたしますが、勤労者財産形成促進法案ということで出されましたが、これは勤労者の財産の形成であって、労働者ではないような表現なんですが、労働者ではなくて勤労者のみの財産の形成という意味なのか、労働者と勤労者の相違を考えての名称なのか、この点がよくわかりません。皆さんが扱っている法律そのものは労働法でありまして勤労法ではないのに、これだけは勤労者という名前をつけた、この高邁なるゆえんをお聞かせ願いたい。
  73. 野原正勝

    ○野原国務大臣 労働者は即勤労者であるということだと私は考えております。この法案は勤労者の豊かな生活の実現のために、財産形成の施策を進めていこうという立場でございまして、これは労働者の財産形成促進法といっても差しつかえがないと思いますが、あえて勤労者としましたのは那辺の事由かよくわかりませんが、勤労者はすなわち労働者である、労働者はまたもとより勤労者でなければならぬというふうに考えております。全く同じものではないかと考えます。
  74. 島本虎三

    ○島本委員 同じものであるのに、別々な名前で、複雑な表現をなぜ使うのか。一つのものにやったほうがわかりやすい。しかしながら、そういうような点でまだ若干疑義があるほかに、大臣のいままでの御答弁によりますと、これを実施することによって将来は大いにこの事業は伸びるし、また歴史的なものになる。両三年後にはかなりのものになるけれども、現在は魅力あるものとは言いがたいんだ、こういうようなまことにりっぱな答弁を得たわけであります。もしそうならば、勤労者と労働者の区別もはっきりしていない、また、していてもあえて勤労者ということばを使う、このように現状は不完全だけれども、将来性に期待してくれ、こういうような一つの希望要件を付して提案してくる、こういうことになると、政治的な責任を将来に回避することになると言われたらどうしますか。法律を出した以上、これによって規制を受けるのは国民ですから、国民の前にりっぱなものを出して初めて大臣としてのこれに対する責任と姿勢がりっぱであるということがいえるのではないかと思うのです。将来に期待する、現在は未熟なものである、これを自認して出してよこすというような姿勢は私はとるべきではない、こういうふうに思うのです。  それで、こういうような提案をせざるを得なくなったのはあなた自身の責任か、それとも総理が命令したのか、それとも他の省の重圧によるものであるのか、これを少しはっきりしてもらいたい。
  75. 野原正勝

    ○野原国務大臣 私が前に、この法案が、当初考えておったものから見れば、必ずしも満足すべきものではなかったと申し上げました。これは正直なところ、勤労者財産形成促進法ということでまとめたわけでございますが、ここまでくる過程におきまして、やはり勤労者財産形成のための強力な一つ事業団をつくろうと考えまして、実は中小企業退職金共済事業団ども発展的に改組をしまして、この際勤労者の財産形成促進の事業団としようと考えたり、あるいはまた、勤労者が願望しております住宅の問題につきましては、まず土地が用意されなければならぬ。土地についてはこの際政府が全面的に資金を出しまして、先行投資でできるだけ安い土地を条件のいいところを確保しておきたいということもありまして、かなり大きなものを要求しておったわけでございますが、そういう点もいろいろな点でむずかしくなりまして、資金は一応確保しましたけれども、非常に不満足であったわけでございます。その他勤労者のために、貯蓄をするならば貯蓄控除をしていったらいいじゃないか、これもずいぶんと要求したわけでございますが、結局は利子減税という問題になりました。いろいろな点で不満足ではあったわけでございますが、よく考えてみますと、西ドイツあたりでも、十年前にこの法律ができて、今日まで幾たびか手を加え、改正を見まして今日のような状態になったということから見ましても、これで勤労者の財産形成という政策をとにかく推し進めていく、それには多少不満足ではあっても、この際ともかくスタートするのが必要じゃないだろうかというふうに考えます。将来の大きな勤労者の財産形成は、政策がおそらく勤労者の皆さま方の深い御理解と共鳴を得まして必ず拡大強化するに違いない。その段階においては、当然これは勤労者のための大きな政策として政府ももっとこれに対して理解のある態度を示し、財政を思い切ってさいても、その政策の実現に理解を持っていただける可能性もあるんじゃないか、とにかくここはスタートをすべきではなかろうかというふうに考えまして、まあ折衝の段階において幾たびか非常に難航しましたが、まあここはしんぼうどころだというふうに考えまして、とにかく一応ある程度のところでしんぼうしたということであります。  これは、そういう二、三の点を除きますと、非常に内容的には、御検討をいただけばいただけるほど、なるほどなかなかよくできておるわいと御理解いただけると思うのであります。ただ肝心なところで二、三食い足りないところもございますが、その点はこれからの楽しみでありますから、むしろこれは今後に期待して、大きく伸ばしていただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  76. 島本虎三

    ○島本委員 まことに明確な名答弁をちょうだいいたしまして、私も光栄に思いますが、まずそういうことならば、私も少し――二、三点だけといいますが、二、三点にとどまらない事実を示さなければならないわけであります。大臣としては、本法案のねらいをどこに置いて御提案になったのか、なぜこの段階でこの法案を提出になったのか、いろいろ法案に対しての諸外国を参考としての御意見も若干あったようでありますが、どこの国の意見を参考にしてこういう案を出したのか、その辺のねらい、それからいまの段階でこの法律を出したという理由は何なんだ、この辺についてまず大臣の御高見を拝聴します。
  77. 野原正勝

    ○野原国務大臣 私が一々言うよりも、実はこの問題を専心検討してきた労働省の担当官がおりますので、私が説明するよりもそのほうがむしろふさわしいんではないかと思います。  ただ、私が一応申しますと、これはやはりここ数年来賃金はだんだんのぼってまいりました。同時に、消費水準もかなり高まってまいりました。そうして勤労者、労働者の願望は、何とかひとつ住宅を持ちたいものだ、非常にその願望が強いと思います。そういった願望を実現させるためにはどうしたらいいか、やはりこれは貯蓄でございます。と同時に、その貯蓄に対しては国が大きく援助するという必要もございます。そういったことが一連のものとなって勤労者の財産形成が促進されるならば、これは将来、住宅のみならずいろいろな面で非常に稗益するところ大ではないか。とにかく、諸外国に比べましても、勤労者の貯蓄意欲というものは必ずしも低くございません。非常に勤労者の諸君が貯金をしたいという気持ちも強いわけでございます。その貯蓄をしたい、せめていまのうちに何とか貯蓄をふやしたいという願望に対して、もっともっと国がこれに対する援助をするということがあってしかるべきでございます。  そういった面におきましても、今日までさしたる勤労者に対する貯蓄面の援助対策といいますか、理解ある協力はなされていないという面をここで実現をしたい。同時に、それが各金融機関等によって相当の貯蓄を得た場合には、その貯蓄の相当部分を勤労者の住宅の建設なりそういったものに活用する。当然これは活用しなければならぬわけでありますが、その際においては、これはやはり相当長期の資金でなければならぬ。同時にまた、できるだけ低利でなければならぬ。そうなりますと、それに対する利子補給の必要も出てまいります。そういった利子補給の方途も講ずる必要があるという点で、将来そういったものに対しては思い切った利子補給の道も講じていきたい。いま直ちに、実はまだ貯蓄はできているわけではございませんので、住宅資金としてすぐに利用できる段階ではございませんが、これはやがて見る見るうちに大きな財源となって利用されることは必至でございましょう。そうなれば、いまのうちにその利子補給の財源なども相当のものを確保する必要もあるということで、実は財政資金や事業団等から相当の財源を確保しようという努力をしたわけでございますが、まあ初年度であるからというのでわずか六億円ほどの投資にとどまったのであります。そういったものも、いま実はすぐに使うわけじゃないのでございますが、この運用益によって生み出される資金というものが利子補給の財源にもなるわけでございます。これも実はこの貯蓄が増大するに伴ってかなり大きな投資がなされて、それから生まれる運用益と申しますか、利子補給の財源も相当増大を来たす可能性も出てくるわけでございます。そういった面から、やはりこの際はひとつスタートだけはせめて切りたいというふうに考えまして、多少御不満な点もあろうかと思いますけれども、あらゆる点を考えまして、勤労者の財産形成はこの際ひとつぜひとも実施をしたい。それが多数の勤労者の皆さん方の願望にこたえるゆえんではないかというふうに考えましてやったわけでございます。まだまだ十分御質問に答えていないかもしれませんが、その辺は局長なりあるいは担当の部長からお答えをいたさせます。
  78. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 ただいま大臣お答えのとおりでございまして、最近の勤労者の賃金は相当上昇してきている。もちろん国際比較におきましてはいろいろな比較もできますが、ともかく相当な水準に来ております。それに反しまして、いわゆる資産という面で見ますると、諸外国の労働者の資産形成という面から見ますと相当劣っておる状態。たとえば賃金においてはアメリカの四分の一でございますが、資産等の状況においては六分の一以下であるというようなこともございます。  そこで、労働者の生活を今後さらに豊かなものにしていくというためには、賃金の上昇ももちろんのことでございますが、それと同時に、資産を形成していくということに対しても、十分政策的にいろいろ配慮をしていく段階に来ている。たとえば、西ドイツ等でこれと似たような財産形成の制度を設けておりますが、これがちょうど十年前に発足をいたしました。そのときの西独の労働者の賃金水準と比べまして、まさに日本の労働者の賃金水準は当時の水準とほぼ同じあるいは若干それよりも高くなっておるというような状況でもあり、そういう段階において、資産の形成について本腰で取り組んでいくことが、将来の勤労者の豊かな生活を実現していく一つの大きな展開になるであろうということから、西ドイツの例を参考にいたしながら、日本の実情に合うような形で今回財産形成制度を促進するということにいたしたわけでございます。
  79. 島本虎三

    ○島本委員 なるほど理屈は進んでいるようです。しかし、やはり賃金水準も、十年前の西欧が財産形成法を制定したときの水準にほぼ達した、こういうような理由のようでありますが、賃金水準がそのレベルに達した、こういうふうに言って、単純に同じ政策を実施してもよろしいという理屈は、これは大臣はじめおかしいのではないか。そういうのは、簡単な考え方、単細胞的な考え方ならそれでいいかもしれない。しかし、やはりその背景というものがなければならない、その基盤というものがはっきりしてないとだめだと思うのであります。したがって、勤労者の財産形成政策を実施する基盤が、日本と西ドイツでは同じである――賃金は同じになったけれどもそれも同じであるというふうに見ているかどうか。これは私は重大なことで、その認識の違いがあってはだめだ。それと同時に、社会保障一つ見ても、西ドイツのほうはもうすでに数等進んでおるというこの実態、この中で西ドイツと同じような賃金になったらやってもいいのだ、これでは少し簡単過ぎる。それだけでなくて、十分な社会保障の基盤があって、それで賃金もそれ相当に達して、その上に立って今度は個々の労働者の財産のいわば形成をはかる、こういうような考えだと、双方対峙してわかる。しかしながら、社会保障の貧弱ないまの状態、そして労働者の財産形成をその時点で奨励する、こういうことになっている現在では、やはり国の責任を個人の責任にそのまま転嫁するということになってしまう実態じゃないか。それと同時に、この実態は認めがたい、こういっても差しつかえないのじゃないだろうか。ことに一番悪いのは、住宅を欲しているからやるのだ、社会保障が全部いってないから今度は貯蓄させるのだ、これでは、その責任の肩がわりを、政策として実施しないで、労働者に押しつけるということになってしまうではないか。この背景とその基盤というものをどういうふうに考えてやるのか。そうでなければ、いたずらに労働者を苛斂誅求の状態にしておいて、これがわが優秀なる政策である、こう誇るのと同じようなことになってしまうのではないか。大臣、これは大臣として少し考えなければならないところじゃないかと思うのですが、いまの点についての御高見を賜わりたい。
  80. 野原正勝

    ○野原国務大臣 これはちょっと問題だと思うのですが、やはり社会保障の充実というものはあくまでも必要でございます。わが国の場合は、社会保障の歴史も浅うございまして、その整備に今後多大の努力を傾けたいと考えております。しかし、法案はいささかも社会保障という問題の要素を否定するわけではございません。しかしながら、勤労者の生活のすべてを社会保障に依存するということは不可能でございます。人はそれぞれの努力によってみずからの生活の改善向上をはかるべきこともまた当然でございます。勤労者の意識としてもそのように考えているのは事実でございます。  この法案は、勤労者の自主的努力による財産形成と、社会保障の充実、両々相まって勤労者の豊かな生活を実現しようということでございまして、わが国の経済の発展は、勤労者の全面的な御努力、御協力によってのみ初めて可能でございます。より豊かな社会保障制度をつくっていくこともまたわれわれの任務でなければならぬと思うのでありますが、それにも増してこの際、やはり勤労者もそれぞれ自分の願望に対して、その実現のためには、乏しい中からもある程度の貯蓄をしようという人が多いのであります。その貯蓄をしたい、より多くやろうという人に対して、できるだけそれを援助するということもまた必要でございます。いわば今回の財産形成政策は、そうした勤労者のみずから築こうとする努力に対して、国が大きな援助の手を差し伸べようという政策でございます。まあ不十分だという御指摘があれば、あるいはその点はどうも十分ではないということになるかもしれませんが、とにかく勤労者みずからがそうした御努力をなさる、それに対して国ができるだけの援助をしていこうということに重点が置かれておる。これはまた将来ますます援助の手を差し伸べていく必要もあろうかと存じます。そういった意味で、西ドイツ等におきましての財産形成政策がたどってきた道を考えますと、今日まで実は両三回にわたって改正案が持たれて今日のような状態になったと承っておりますが、とりあえずこうした形でスタートはするが、やがてこれは将来必ず勤労者の方々に大いに喜んでもらえる政策である、間違いがないというふうに確信をいたしまして、もっと国の援助体制というものを強力に進めていこうという努力をいたしたいと考えております。
  81. 島本虎三

    ○島本委員 西ドイツ等大いに参考にしたというなら、大臣、これをつくる前に、いわゆるその基盤と背景というものも十分踏んまえて、それを参考にしてやらなければならない。ただ勤労者のそういう意欲があるだろうからそれをやってやる、むしろそういう意欲というのは、勤労者をだしにして、財界や皆さん方のほうにあるのじゃないか、こういうふうにいわざるを得ないような状態さえも理解できる。あえて言うと、西ドイツの例を皆さんのほうは盛んにおっしゃる。確かに西ドイツの例をとったのは賢明だと思う。しかし、その背景になっているものと、いまの日本が出してきたこの背景とを同じに考えるのはあまりにも単純過ぎる。そもそも西ドイツのことを考える場合には、その背景として、大臣、あなたは一番よくわかっているはずだけれども、東ドイツとの対立の関係がいつでも西ドイツにあるのです。資本主義国であって、東西に引き裂かれている国である。それで、その体制自身、もうすべてその存在理由をかけた優劣の争いになっているということですよ。したがって、フランスやイタリアのような、こういう対立があればすぐ国の体制の危機になるというような状態もとに、そういう背景のもとにいろいろなされているから、やることすべてもう生き生きしておるし、そういう背景と基盤があるから一つもむだなくやられている。もう少し具体的に言うと、そういう改革問題がない場合には革命が起きるという一つの緊迫した状態で行なわれているのです。ですから、労働者に対する政策、こういうことであっても、やはり形式的には資本、企業に参加をさせるけれども、内容そのものは再配分政策を強める必要というものも十分認識して、労働者を満足させてこれをやっているのですね。どうもほかの国に例のないような共同決定制度さえ設けているのですね。それと、高水準の社会保障制度が現存している中で行なっているのですね。それと同時に、財産形成政策をその上で展開しているのですね。したがって、もうそういう背景と基盤があるから、やることだってはっきりしているじゃありませんか。まず第一番に、西ドイツの財産形成制度参考にするなら、なぜこの四つの点にわたって明らかにこれを参考にして出さなかったのか。これははっきり皆さんに言わなければならないと思うのです。その一つは、住宅建設の割増金法というような、これは一九五二年にできてやっておりますが、国が二五%から三五%の割増金を年額四百マルクまでを支払う。それと同時に、住宅建設費の四七%を十年の間所得控除さしている。次には、貯蓄の割増金法というような法律をはっきりつくって、五年間にわたって二〇%、年四%で、連邦政府がこれを支払っておる。それから今度はドイツの公有の株式の公開、これも一九五四年、これはプロイセン鉱山ですか、この鉄鉱会社三百万マルク、こういうようなものに対してもはっきり行なっているわけです。一九六一年、これにも一つ、フォルクスワーゲンですか、これに三億六千万マルク、これだけ行なっているわけですね。一九六五年、これにも連邦の鉱山会社、これに対してすべて公有株式を公開して労働者に福利を与えている。こういうことを具体的にやっている。それと同時に、四番目には財産形成法というような法律を一九六一年に出してやっている。こういうふうにはっきり一貫した法律を出して、これによってはっきりした基盤をつくった上でこういうものを実施さしてやっている。背景はまじめである。こんなところに初めて効果が生まれてくるのです。日本では、この背景と基盤が一体どういうような中にこれをつくったか。これはもし間違えばとんでもないほうに利益をもたらすことになるのです。重大だと思うから、あえて大臣、これを聞きたい。
  82. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 御指摘のように、西ドイツにおきましては、基本的に労働関係が、ただいま仰せのように、たとえば共同決定法等の法律によりまして労使協力というような基盤があることは、法律上法制としてそういうものがあることは御指摘のとおりでございまして、そういう意味で日本のいまの実情と西ドイツの状況とが違いがあるということを否定するものではございません。  ただ、西ドイツにおきまして、ただいま御指摘のように関係の法律といたしましては、貯蓄割増金法、それから住宅建設割増金法、これで一般の貯蓄並びに住宅建設については、御指摘のように年額一定の割合の貯蓄をやる場合にそれに割り増し金を出す。そのほかに、勤労者に対しましては勤労者財産形成促進法によってさらにその上に割り増し金をつける、こういうことでこの仕組みができておるわけでございます。  わが国の場合におきましては、勤労者、あるいは一般に庶民と申しますか、が住宅で非常に困っているという意味で、公共機関によりまする住宅建設等も、結果的にはまだなかなかそこまで十分とは申せませんけれども、各種の融資制度あるいは公営住宅あるいは賃貸制度等、いろいろやってきておるわけでございます。その上に立ちまして、あるいはそれとあわせて、個人があるいは勤労者個々の人が、どうしても自分で持ち家を持ちたいという人の自主的努力が現になされておりますし、そういう努力につきまして、今後さらに貯蓄余力等も考えてまいる、あるいは家計の黒字率等も考えてまいりますると、さらに今日以上に貯蓄余力もあるいは黒字率も増してまいるということも考えられるわけです。したがいまして、そういう状況のもとにおいて西ドイツが勤労者に対して、一般の貯蓄あるいは住宅建設に対する割り増し以上に割り増しをつけている制度があるごとく、わが国においても、現段階におきまして、一般の住宅建設のほかに、さらに勤労者の自主的な努力に対しまする援助制度を組み入れていくということで、両々相まって勤労者の資産の形成ということを考えていくことがよろしかろう。もちろん、御指摘のように社会保障の水準等は、これはいろいろな分析のしかたもあろうかと思いますが、西欧に比べて相当劣っているということも事実でございますが、それらの充実と相まちまして、大臣のおことばにございましたように、そういうものも当然今後充実してまいる。それと相ともども、現段階において、ただいま申しましたような勤労者の財産形成の努力に対する援助、こういう制度を確立していくことも非常に意義があることと考えた次第でございます。
  83. 島本虎三

    ○島本委員 そういうような考えで勤労者の資産を形成して、今日以上に黒字の率が増してきているから、その状況のもとに今後成功するであろう、こういうような予想も当然立つわけです。しかし、西ドイツのそれを参考にしたといいながらも、形式参考にして、背景と基盤は何ら考えておらないというような一つの欠点がある。じゃ、日本的な皆さんの考え方――大臣も、今後必ず花が咲くだろう、今後に期待してくれ、両三年後はまさに有望だというようなことをおっしゃっている。そういうことを考えれば、なおさらいまこれがこつ然として問題になってきている、このことに対しての考察も十分しておかないと、将来の運営に事欠くことがあってはとんでもない、こう思うわけです。  それで、これは大臣も知っておられると思うのです、あなたのことばですから。五月二十六日に、勤労者財産づくり懇談会の席上で大臣があいさつされているのです。私もこれで見ておって、なるほどこれが大臣の考え方だということがわかったわけです。それは、勤労者の所得は目ざましい経済発展のもとで大幅に上昇しつつあるが、住宅その他の財産などのストックの面における立ちおくれは著しい。欧米諸国に比べると、その差は毎年の賃金収入における差よりも大きいものと考えられる。しかしながら、勤労者の生活が真の意味での安定と豊かさを確保し得るためには、立ちおくれのはなはだしいストックの面における充実に、一そうの関心と努力が振り向けられるべきであり、勤労者みずからの努力によって住宅や長期の預貯金、有価証券などの財産を保有し、それによって生活の長期安定をはかるという積極的な機運を助長することが必要である。これが大臣の見解ですから、それは大臣の決意であろうと思うのです。それだけはいま何回も承りました。  しかし、これともう一つ、六月八日に、日本経済新聞で、同懇談会の中山伊知郎氏が、インフレ対策という点が一番の重点を置くべきではないか、物価対策の一つの拠点という意味を持たせていくのは必要だと思うと語っている。こういうようにして、財産形成政策に一つの日本的発想を明らかにしているわけです。大臣が考えているように、今後だんだん黒字になってくるし、労働者のために自発的にこれはやらせなければならないのだ。確かにそうでしょう。それと同時に、インフレ対策、物価対策という面からもこれは必要なんだ。西ドイツと違って、背景と基盤はまだ十分ではない上に、こういうような一つのベールをかぶされて、そういうような目的のもとにこれが運用される、こういうことになるとするならば、いまのうちに大臣相当はっきりしておかないと、これをつくって大臣が花を咲かせようと思ったけれども、逆にしぼんでしまうおそれさえないわけではない、こういうことを私はおそれるわけです。したがって、無性格なフローやストック、こういうものではないのです。この背景がはっきりしている、こういうことでもっと考えないといけないと思うのです。大臣も閣僚の一人ですから、高度経済成長というものに対してはあなたも責任の一端をになっている一人なんです。そうなってみると、こういうふうに、蓄積すればするほど物価の点、税金の点、公害の点、住宅の点、社会保障の不備の点が明らかになってきたわけです。いまそういうようになってきて、GNP世界第二位の地位に日本があるといいながらも、いま言ったような物価、税金、公害、住宅、社会保障の点ではがっくり下がっているわけです。そういうような点はどうしても解決を求めなければならない。もちろん春闘でも労働者の要求はこれでしょう。そうなれば、これはもう政府自身の力で、その負担でこれをやらなければならない、また、やらせなければならないという考えと、労働者の負担と大衆の負担でこの矛盾を乗り切れという二つの考えが当然出てくるじゃありませんか。西ドイツのほうをちょうだいした、こう言いながらも、高福祉高負担という名前でいま行なわれている政策は、これは政府が当然やるべき仕事を労働者に肩がわりして、そしてもう安価な労働政策を行なうという意図がありありとしているじゃありませんか。そうであるならば、これはちょっと困りはせぬかということです。なるほど、これはもう国際化の時代であって、経済もそういうようになったと言う。大臣もそう言っておられるのだから、そうでしょう。海外援助も本年から積極的にやろうとする。また、聖域といわれるあの四次防、これにも五兆円をこえるような大型の出資が必要だという。そうしてみると、今後の財政需要はやはりメジロ押しになってくるということははっきりしている。そのときに、各金融機関をはじめとして、すべてその方面に集中させて、労働者をもそれに協力させて、いま政府が当然やらなければならない社会保障の一端である貯蓄、それと同時に、政府がやらなければならない住宅、こういうようなものを労働者の負担でやらせて、安価な労働政策をここに実施しようとする魂胆でないということを表明してください。   〔伊東委員長代理退席、委員長着席〕
  84. 野原正勝

    ○野原国務大臣 これはやはり、先ほど御質問の点で、たとえばインフレの対策であるとか、物価安定の対策ではないか、確かにそれは結果としてやはりインフレの防止にも役立つ結果となると思います。また、物価安定にも役立つことを期待しております。しかし、これはあくまでも勤労者の財産形成政策というものから出発しておるのであって、そうした所得政策や物価政策というものは、結果としてそういうことを考え得るのでありまして、それはむしろ好ましいわけでありますからあえて反対はしないわけでございます。  ただ、何としても日本は、戦後いろいろな建設を進めてきましたが、まだ社会資本の充実等も必ずしも十分でない。まだまだやらなければならぬ問題がたくさんあるということで、それに対しては政府が、今後も財政の事情の許す限り、社会資本の充実をはかり、公共投資もやるでありましょう。また、やってもらわなければならぬ。また、公害対策も本気になってやるというわけでございますが、しかし、勤労者は、所得が上がってくるのでありますから、その上がった所得を、うっかりするとついどうも消費に充当することになってしまいます。消費だけに充当しますと、これはやはり物価の上昇要因にもなりかねないというふうに考えますと、やはり勤労者は、ほとんどの勤労者がみんなある程度貯蓄しよう――貯蓄心はなかなか旺盛でございますから、貯蓄をしたいという願望、やがてそれは自分の家も持ちたい、あるいは、できれば将来株だって持ちたいのだということを言っておるわけでございますから、そういう面で勤労者の財産が豊かになる、生活が安定するということは好ましいわけでございます。そうした貯蓄をするという行為に対しまして、国ができるだけの配慮を加えていくということは当然であります。むしろいままでやらなかったのがおかしいのであります。むしろ、そういう点で……(島本委員「いままで社会保障がおくれているのがおかしいんだ」と呼ぶ)社会保障はもちろんでありますが、貯蓄に対しても端的にまだまだ必ずしも十分ではございません。もちろんそれに対してもっともっと国が援助対策を講ずる必要があるということで、勤労者のためにこれがほんとうに喜んでもらえる政策として理解がいただけるのではないかというふうに考えております。もちろんわれわれは、社会保障や公共投資等も大いにやってもらわなければならぬ。より豊かな、よりりっぱな職場として建設されることを強く望んでおりますが、その中にも勤労者は、こういう自分の財産を形成するという政策を通じまして、やはり国全体の発展に大きく役立つという存在でありたいものだ。その政策の実現は、まず勤労者の財産形成という政策が端的に勤労者の気持ちを代表して、将来の日本の建設に当たり得る大きな力を養うという、これが一つの政策ではなかろうかと考えております。
  85. 島本虎三

    ○島本委員 こまかい内容については先般いろいろ行なわれましたから、それを補足する重大な基本的な問題をいま聞いているわけですが、大臣は考え方がよ過ぎると思うんだ。よ過ぎるというのは、その場その場でよ過ぎると思うんだ。あんたは閣僚の一人として、日本国じゅうの労働者のことを考えるならば、もっとそのために労働者の持ち家を、労働者の負担じゃなく国の責任においてやるようになぜ考えてやらぬのだ。社会保障を、考えるであろうなんて言わないで、考えるべきだし、このことはやるべきであって、青写真をちゃんと示すほど閣僚の一人としてあんたはそういうふうにやらなければならないのに、将来大いにやるだろうなんていう、これは願望の意味を込めた話を発するなんていうようなことは、どうも私は、一回一回、その場その場で、大臣としてよ過ぎると思うんだ。みんないいということは何にもやらないことと同じなんだから、そういうようなことは、私は、いいいいということはけなしておることになるから、あなたはそういう感じで受け取ってもらいたい。そのようなけなしようもあるということを覚えておいてください。  それだけじゃない。いまあなたの言っているのを聞いていると、何か大臣のほうでは、ことばはいいけれども、まあいわば労働者というか、勤労者といいますか、これには勤労者ということばを使っているから勤労者で言うと、その要求に対しては可能最大限鈍感ですね。うんうんということは認めることですよ、それは。あんたのほうは可能最大限鈍感です。それと同時に、独占や財界の要請に対しては敏感過ぎるほど過敏ですよ。ですからちょっと財政要請、また資本需要、こういうようなのがあればすぐこの財産形成という名においてばあっと出してくる。これはほとんど財界や資本の要請じゃありませんか。その中に乗ってこさせられたそれが、勤労者財産形成ということばなんです。その内容は、貯蓄と持ち家なんです。こういうようなことになってしまうじゃありませんか。そういうようなことからすると、ほんとうに西欧諸国をあんたが、皆さんが参考にした、こういうのであれば、もっとなぜその国の基盤と背景のことを言わぬのですか。その内容をもう少し勉強して、それに近づけるように完全なものにして出さぬのですか。不完全だから、今度小さく産むから大きく育ててくれ、こういうようなのは無責任ですよ。もしそれを見習うんだったら、ほんとうにいまの西欧の再生産や労働力の供給、能力の向上や保全、こういうようなものとあわして、もう社会負担というようなものは国も資本も伝統的に高い水準でこれを行なってきている。こういうようなのに、日本のほうではまさに質量ともに貧困、最低賃金と口で言っても、全国一律のものさえないじゃないですか。それでいて、社会保障はこれからだと言うじゃありませんか。雇用の安定をはかる、こんなことを言ったって、まだまだ出す法律の内容は、労働力の流通を考えても雇用の安定を考えていないじゃありませんか。それで今度はもう、いろいろ客観的に資金源が必要になってきたといえば、これをもって直ちに急行発車、こういうようなことになってくる。あくまでも敏感過ぎるんじゃないか、こう私は思うわけであります。おそらくいま言ったことは文句ないでしょう。これはひとつ局長、あんたの考えを……。
  86. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 労働省としてもっと労働者のための端的な政策をとれというお話でございます。実は、この制度につきましては、この制度がどういうふうに運用されてまいりますか、それは将来の問題に属しますので、いま的確に申すわけにはまいりませんが、たとえばもしこの財産形成の制度、これは現在勤労者が営々としてやっております財産形成あるいは貯蓄等が、この制度に乗りまして何千億円かの積み立てができるということになりました場合に、それが今回の法律の制度といたしましては、その何割かは勤労者の持ち家、住宅の資金に還流することは間違いないところでございます。従来一般金融機関に預けられておりまする一般の庶民の預貯金等は相当な額にのぼっておりますが、そのうちで、たとえば住宅をとりましても、住宅ローンに向けられておりますのはわずか一%にすぎないわけでございまして、それだけで比較するのもどうかと思いますが、もしそういう点から見ましても、この制度が十分運用されまして、その資金が勤労者の、たとえば持ち家の建設のために還流されますならば、それだけで相当の成果があるものと考えておるわけでございます。  ただ、後半に御指摘になりましたいろいろな問題につきましては、ただこれだけですべていいのだということを、安易な態度をとるわけではございませんが、私どももこの面につきましては、少なくともそういうような効果を十分発揮し得る、また今後この制度の運用につきましては、労働者の代表もまじえました財産形成審議会で、十分今後のあり方あるいは今後の進め方、発展のしかたについて御意見を聞きながら、これを真に勤労者のための制度として実のあるものに拡充をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  87. 島本虎三

    ○島本委員 よくわかりました。どこかのお経を聞いているような、聞いている間は何かありがたいけれども、内容はさっぱり、こういうような感じがして、私自身不勉強かもしれぬが、どうもあなたの答弁、今後どのようにして実施していってくれるのか、ちょっと理解に苦しむ。むろん住宅のことですから、大臣もその点盛んに言いますから、この点ひとつ私も聞いてみたいと思いますが、勤労者住宅協会ですか、勤労協、こういうようなものを設置するようでありますが、いままで住宅不足は相当なものだろうと思うのです。三百六十万戸だというけれども、おそらく四百万戸から実際は一千万戸ほど不足なのじゃないか。その絶対不足なのはとりわけ中低所得者、この点について絶対不足を示しているわけです。そういうような人たちに対して、ではどういう意味を今度の住宅対策で持つのだ。その零細というか、低所得者、中所得者、こういうような人の住宅対策について、潤いのあるりっぱな成果があげられるならばいいのです。地価の上昇は年二割から四割、十年間に十二倍ほどになっているでしょう。それに建築資材の上昇、これだったらますます、次の日になったらもう前の日の値段なんかパアになってしまう、こういうような情勢でしょう。そうすると、長期据え置きの貯蓄の減税措置を若干しても、これがはたしてどの程度持ち家政策の促進になるか、これはやはり疑問じゃありませんか。その疑問だというのをもっともっと突けばいいのですけれども、百万円に対して利息の税金を免除してやる、そんなことやってもやらぬでも――もうやっているじゃありませんか。マル優措置というようなものを銀行で。ことに、一人の人がやったならば、税金かからぬように、名前を変えるのか何か知りませんけれども、一口か二口、三口くらいに分けてでも、三百万円くらいまでは無税になるような方法さえ講じて指導しておられるじゃありませんか。いまようやく百万円まで無税にします、どこの国の政策です。ドイツのほうを見習いなさい。せっかくそれを参考にしてあなたたちが見習ったというならば、百万円までなんというのは、もうすでにマル優措置でもって銀行はみなやっているのですよ。それがまた四月からですか百五十万円になるそうじゃありませんか。そういうふうにしてみると、これが低所得者層の持ち家政策の促進にどうしてなるんだ。この点私としては指摘せざるを得ません。一年間にこの住宅の建設戸数はどれほどの見込みですか。
  88. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 住宅の問題、特に勤労者の住宅難が非常にはなはだしい状態にございますことは先生御指摘のとおりでございまして、これに対して政府はあらゆる面で対策を立てるべきでございまして、ただいま問題になっております勤労者財産形成促進法もその一翼をになうわけでございますけれども、しかし、これをもって勤労者の住宅問題をすべて解決できるというほど、私どもはそんなことを考えているわけじゃございませんで、勤労者の住宅問題の解決のためには、何よりもやはり大量の公共住宅の建設が大切だというふうに考えておりまして、現に今度建設省を中心に行いまず新しい住宅建設五カ年計画におきましても、大量の公共住宅の建設ということが進められるわけでございます。  ただ、この制度は、先ほど局長からも御説明申し上げましたように、一般にすでに勤労者の方々は九九・七%の方が貯蓄をしていらっしゃいます。いま先生が御指摘のように、各銀行ではマル優制度もありまして、その貯蓄が一般金融機関にたまっているわけでございますが、わずか一%しか住宅ローンに還元されていないというのが現状でございます。そこで、いま御提案申し上げているような仕組みを設けまして、これからの勤労者の貯蓄については、相当まとまったものを持ち家投資に投じ得る仕組みをつくるということは、現状に比べて非常にベターなのではないかというふうに思っておるわけでございます。現に各銀行等においてすでにマル優制度がございますけれども、今度のこの措置はそれの別ワクとして――一般国民に対しては百万円、御指摘のとおり来年一月一日から百五十万円のマル優制度が認められますけれども、勤労者に限りまして、その別ワクとしてさらに百万円に対しまして利子の非課税を実施しようというものでございますので、先ほど来まだ不十分だという御指摘がございますが、これを進めることによって、現状よりはずっと前進できるものではないかというふうに考えておるわけでございます。
  89. 島本虎三

    ○島本委員 それを聞いたんじゃない。何戸くらい建てるかということを聞いているのに、あなたも大臣になったつもりでいい答弁している。
  90. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 申し落としまして失礼いたしました。  先般川俣委員からも御指摘がありまして、この制度による見通し、特にいま先生から住宅建設の見通しをお尋ねでございますが、何せ初めてのケースでございますので、正直に申しまして将来の見通しを立てることはきわめて困難でございます。ただ、先般もお答えいたしましたとおり、一つの前提を立てて試算をいたしてみます。つまり毎年五十万人ずつこのところ当分入っていくということで、当面一人当たり年間平均六万三千円程度のこの貯蓄をするということにいたしました。そして財形貯蓄総額の残高の三分の一を期間十年の元利均等償還で借り入れるとします。
  91. 島本虎三

    ○島本委員 毎年五十万戸だね。
  92. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 いえ、そうじゃございませんで、そういうことで住宅融資をやりますその場合に、初年度は、ごくわずかでございますから、千五百戸でございますが、五年間には累計二万五千戸までには達する。むしろ、それ以降この貯蓄高が非常に大きくなりますれば建築戸数も累増してまいる、そういうことになろうかと思います。
  93. 島本虎三

    ○島本委員 まことに微々たるものです。こんなことならやったって効果ないじゃありませんか。これは低所得者に対してですか。これもやはり高所得者に対してですか。その辺の大体の区分を言ってみてください。
  94. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 ただいま申し上げました数字は勤労者全体に対してでございます。
  95. 島本虎三

    ○島本委員 必要なのは、低所得者、それから中所得者、それ以下が必要なんです。全体だと言うが、全体でもこれっばかり、二階から目薬を落とす程度でしょう、こんなものは。東京労金でも年間五千戸を建てています。全国の労金では二万戸建てているそうです。ようやくあなたのほうで、一回千五百戸、本年そうなるのですか。本年は五十戸ですか。どうもこんなような数字では、万とつくのか、ただの戸なのか、ちょっとわからぬ。これはあとから答弁のとき言ってください、時間がないから。それよりも低所得のほうを考えているのか考えていないのか。それもひとつ事務的でいい。事務的がだめなら、大臣、これは低所得者のほうを考えて持ち家政策を実施しますか。
  96. 野原正勝

    ○野原国務大臣 できるだけ低所得者に対する対策を講じたいと考えます。
  97. 島本虎三

    ○島本委員 よくわかりました。そうしてもらいます。  そうすると、この勤労者の持ち家については日本勤労者住宅協会がこれに当たる。そうすると、国家公務員、地方公務員または公共企業体の職員に対しては、持ち家として分譲する住宅の建設及び業務は、それぞれの共済組合が法の定めに従ってこれを行なう、こういうふうになるわけですね。船員に関するものについては、運輸大臣は特例を設けてやるということになるのですね。低所得者に対してこれをやるというならば、身分は特別職の非常勤の地方公務員である失対従事者に対しての対策は考えておりますか。あれはいま一番低所得者じゃありませんか。あれだって身分は特別職の非常勤の地方公務員です。これはどっちのほうの分類でやるのですか。日本勤労者住宅協会のほうですか、共済組合のほうですか。
  98. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 法律のたてまえから申しますと、いまの失対の労務者の方は特別職の地方公務員ということでございますので、共済の適用がございませんので、一般の制度の対象として実施していく、こういうことになります。
  99. 島本虎三

    ○島本委員 特別職であろうと非常勤であろうと地方公務員です。分類してというのは、いままでの説明があって、公務員の場合は三つに分類して共済組合だとはっきりあったからあえて聞いたのです。ではその点は不分明ですね。公務員であっても、日本勤労者住宅協会のほうでこれをやらせる、こういうふうになって、低所得政策は手厚く行なう、こういうふうなことになるのですね。その実施の方法についてもう少し知らせていただきたい。
  100. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 ただいま御指摘の日雇いに従事しておられる方は、いま申しましたように一般の制度の対象になる。それでこの制度は、これによって自主的に貯蓄をされ、また住宅積み立てをやられるということが前提でございますので、そういう方につきまして、たとえば特別に勤住協等が建設計画をもって資金の融資を受ける場合には、それにも融資をしてそれを通じて持ち家の取得が可能になる、こういうことでございます。
  101. 島本虎三

    ○島本委員 そこがよくわからないのです。簡単に言えばどういうことになるのですか。
  102. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 もし勤住協等が雇用促進事業団から融資を受けて、それで低所得の勤労者のための住宅を建設する場合に、当然そのときに住宅を取得する対象になり得る、こういうことでございます。
  103. 島本虎三

    ○島本委員 一々言いません。この程度の手厚いような一つ措置をそれぞれ持ち家貯蓄の方面にしてやって、これが勤労者の財産の形成政策である、こういうようにはっきり言っておられるようですが、この点では私がいままで言った一つ一つの事例に合わしてそうならない。むしろ、残念ながらこれは銀行対策じゃないか、こういわざるを得ないわけです。いまのところではこれに対して準備をちゃんとして、各銀行ではいわば中期預金設置の動きが具体的に出ております。全国銀行協会連合会では奨励金つきの積み立て金制度の奨励、それから信託協会では従業員財産形成信託というようなもの、それから生命保険協会では、生命保険を利用した勤労者の財産づくりのための奨励策、それからまた東洋信託銀行では、自分のほうを利用して信託貯蓄をやってくれ、それに対してはこれこれの利潤がありますという宣伝をもうすでにわあっと流しておる。そうなりますと、勤労者の住宅政策、いわゆる財産形成政策をやるということは、銀行が資金源を労働者に求めて、盛んにかき集める手段に労働省が協力する結果になってしまうのではないか。そうじゃないというならば、もっと手厚いような、西ドイツ以上の政策をここに実施するのでなければ、いたずらに銀行に一つのえさを提供してやるような結果になってしまう。物価でも、公害でも、それから社会保障でも、減税でも、これは国の責任でいまやらなければならない問題なんです。しかしそれを勤労者の責任でいまやろうとする。ちょうど資金源を拡大するような立場にある銀行は、待ってましたというんでそれを受け入れる。それは日本的な一つの背景であり、一つの基盤じゃありませんか。そういうふうにして考える場合には、もっともっと考えて出してもらわなければならないはずのものです。それと同時に、大臣はほんとうにいいことを言っていたので、これを見て感心した。しかしながら、第一次案と第二次案の違いがはっきりしていますね。第一、従業員の申し出または労働協約に基づいて財産形成給付をするというのがあったと思った。ところがその後、東京商工会議所、日経連、こういうものの見解の発表がありましたね。それによって事業主が賃金の一部として財形給付をするのは、労働者側から賃金とは別に付加給付要求とされるので、個人の申告で従来どおり賃金から天引きすべきである。第二、企業が国にかわって勤労者の財産づくりに協力する。したがって減税をも考慮せよ。第三、社内預金も減税や割り増し金の対象にせよ。こういうのが出たとたんに、第二次案にこれが反映していまのような状態になっている。労働者の申し出で賃金から天引きする。それから、財形政策が資本負担にならないようにする。それと、社内預金や社内持ち株制度にも減税を適用する。財産形成基金に対して預託した金額の二倍まで何とかする。結局、商工会議所や日経連からの見解が発表された場合に、一次案がかわって二次案になったとたんに、経営者の言うとおりになって法案が出されてきているという状態じゃありませんか。いま言ったように、金融対策の中にすぱっと入ってしまった場合に、労働省は労働者にサービスする機関のはずなのに、労働省が資本家にサービスする機関になってしまってはだめですよ。私はそういうような感じを持ったので、この問題に対してはまことに不可解に思っておる。  それと同時に、これははっきり法的なというのですけれども審議会その他、手続は完全に了して出されたのですか。そうじゃなくて、急遽出されたのですか。
  104. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 審議会の点でございますが、これは、財産つくり懇談会――これは正式な審議会ではございませんが、昨年の五月、六月にお集まりいだたいていろいろ御意見を承り、試案の作成等に織り込ませていただきまして、ことしの二月になりまして、法案を作成する前の段階で、もう一度財産づくり懇談会でいろいろ御意見を承りまして手直しをして最終的に出した。なお、中央基準審議会につきましては、その法案がある程度固まったところで御意見を承りまして、最終的に固めたものでございます。
  105. 島本虎三

    ○島本委員 大臣、最近は私的諮問機関というものがだいぶはやるのです。やって悪いとは言わぬです。ですが、公的な諮問機関、審議機関、こういうようなものにはっきりかけないといけません。形式だけ通してそれでやろうとする、こんな考え方は間違いです。健康保険法なんかも、社会保障制度審議会のあれも、何のためにやったのかわからぬようにして、目隠しして通してしまった。ああいうふうに法的な手続を了しないやつは、当然いつの日にか天罰を受けますよ。したがって、いま完全に了したと言っているのですが、この二月八日、これはもう一たんこれを出すようなことであったようでした。ところがこれは、教特法が中心の議題になって、ほんの十分間ぐらい二十四条と失業保険特別会計から出るこの五億の問題、これについては、少し読み切れないのではないかという点があって、時間がなくて次の機会にするということでいったようです。十二日には、十六日が限度だということだったが、これまた教特法の問題で九時間かけて十二時までぶっ続けでやって、この次までにということで終わったわけです。そうして十三日になってみたら、閣議が終わっていないということで、審議会の委員のほうから、基準局長、あなたのほうと、あと石井会長のほうに、これは手続が十分了しておりませんという意思表示があったはずです。これをはっきり出してきて、手続が全部終わっていますということは、われわれを瞞着する行為じゃありませんか。どうもこういうようなことではいけません。
  106. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 中央基準審議会で正式に審議をいたします事項は、労働基準法の改正問題ということで、法律上はっきりいたしておるわけでございます。したがいまして、この制度につきましては、実はいろいろ会長にも御相談をいたしまして、この制度自身は、基準法に直接触れる問題は何らございません。したがって、正式にかける筋のものではないけれども、勤労者の財産形成ということでいろいろ関心があるから、その点はもし意見があるなら意見があるということで説明をしてもらったらどうかというお話でございましたので、御指摘のように、八日の日に御説明をいたしまして、そのときにたしかいまのようなお話がございまして、資料を至急出せということですぐ資料をお出しいたしたわけでございます。したがいまして、審議会に御説明を申し上げまして、質疑はあれいたしましたが、いま先生のおっしゃるような意味の正式の議題としてということではないものでございますので、ただいまのような手続で、事実上御意見を承る機会を持った、こういうことでございます。
  107. 島本虎三

    ○島本委員 残念ながら、質問をだいぶ残したままもう時間が来たけれども、これは了解するものじゃありません。私は、これは了解しないということで進まなければなりません。  その第一の理由は、この法案は、貯蓄ということ、また住宅ということ、これも事業主の手を経て全部やることになっている。こういうようなことになると、労働省はこういうような点は一番敏感でなければならないはずです。事業主の意思に左右され、労働者のものかどうかという疑問がまっ先に出てこなければならないはずです。これをうまくやらぬと労務管理に利用される、こういうようなことがはっきりするわけです。  そのほかに、企業の金融助成に労働者を今度は利用する、こういうようなことになるわけです。  この二つの観点から、これは十分考えなければならない法律案である、こういうことであります。これに対してのことばを簡単に言ってください。  それと、最後ですが、共済組合、民間の事業主あたりとの関係で、これは労金の会員資格を持たない者は貸し付けを受ける資格はないわけです。そうでないとこれは員外貸し付け、その程度しか受けられない、こういうことになっているようです。労金法で加入の資格を規定している関係上、当然これは地方公務員というようなものは、会員の資格の関係で直接それにまだはいれない、適用できない、こういうことになってしまうのではないか。そうなりますと、共済組合が事業主体になるということ、当然、金を預ける、借り入れはできないということになると、これが利用できないということになった場合は、せっかく労働者が労働金庫をつくってそこへやっても、国家公務員はいいが、地方公務員やその他のところには不可能である、こういうようなことになってしまえば、当然これに対する対処をしなければならないということになるのではないか。これは十五条の特例で見るのか法改正でいくのか、この点をはっきりしないとだめだと思うのです。これが一つの大きい問題です。これに対して一言で私が納得するように答弁してくれて、私は終わらしてもらえればいいと思うのですが……。
  108. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 前段の御質問に対しましてお答えを申し上げます。  この制度事業主の労務管理に利用されてよくないのではないかという御趣旨だと思いますが、本来この制度は、勤労者が第一義的に自主的にこの制度を利用して貯蓄するかしないかというところが第一点でございます。ただ御疑問の点は、貯蓄をしようとした場合に、事業主を通じてこれを行なうということになっている点だと思いますが、これはむしろ事業主を通じて、事業主に代行させて預け入れをする、また税のとき等は、いわゆる年末調整ということでやるというような、そういう意味の、勤労者にとっての便宜もそこにあるわけであります。  なお、その賃金から控除いたしまして事業主が納める場合には、基準法の定めるところによることになっておりまして、ここで特例を設けたわけではございません。したがいまして、その場合にはいわゆる控除に必要な協定等を結んで行なうことになります。したがってその場合には、個々の労働者と同時に、その組織の意向が十分反映されるということになりますので、そういう面で一方的に事業主がこの制度を利用して特別に労働者に対しまするいわゆる恣意的な労務管理を行なうということにはならないものと考えておるわけでございます。
  109. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 最後にお尋ねの点の労金と共済組合の関係でございますが、御指摘のとおり、労働金庫は原則として会員に貸し付けをするということになりますので、雇用促進事業団が労働金庫から資金をいただく場合には、単なる借り入れだけではなくて、雇用促進債券の発行を予定しておりますので、その引き受けということで資金調達をする道があるわけでございますが、公務員関係の共済組合の場合にはそれがございません。そこで共済組合が労働金庫に財産形成貯蓄をして、労働金庫から資金を調達する場合には、共済組合が労働金庫の会員になるという道があるわけでございます。そこで、労働金庫と共済組合との関係をどういうふうにしていくかということにつきまして、人事局、自治省、労働金庫を監督しております労働省、三者で話し合っていきたい。漸次そういう方向で解決の道を見出したいということでやっておるわけでございます。
  110. 島本虎三

    ○島本委員 これで終わりますが、最後に警告を一つ。  いまでも不慮の災害、労働基準監督官の不足、こういうようなことで、公害を含めてますます重要な窓口として基準局が能動的に動いても、十年間に一回しか工場に行けないというような状態の中で、これは銀行の要望だと思いますが、こういうようなことをやって、また人手不足の状態にされてしまったら、基準監督官はあってなきがごときものである。不足の場合にこういうようなことをやらせるのは、窓口として適当でない。もっと有効に、真の意味の基準監督行政に徹底させる必要がある。このような方面にあまり利用することはよくない。これは大臣に心から忠告いたしまして、私の質問を終わります。
  111. 倉成正

    倉成委員長 次に、古川雅司君。
  112. 古川雅司

    古川(雅)委員 議題になっております勤労者財産形成促進法案につきまして、若干の御質問を申し上げるわけでありますが、先日来、数々の質問がございましたので、重複をいたすと思いますが、ひとつよろしくお願いいたします。  最初に、これは先ほど来指摘をされておりましたが、この法案が、労働省の当初抱いていた構想に比べてきわめて後退したものとして提案をされている。いろいろ御意見の御開陳がございましたけれども、最初に大臣にお伺いいたしますが、労働省としてではなく政府として、ほんとうに勤労者の財産づくりを真剣に考えているのかどうか、その点をお述べいただきたいと思います。
  113. 野原正勝

    ○野原国務大臣 勤労者が豊かな生活を営むための基盤として住宅を持ったり財産を形成するということはきわめて大事であると考えまして、政府ではこの問題に非常な関心を持ち、この政策の実現にぜひとも当たるべきであるということで、この問題に対しましては、関係方面にも十分御理解をいただきまして、ようやくこの法案が日の目を見るに至ったわけでございます。
  114. 古川雅司

    古川(雅)委員 しかし、労働省として当初の構想を実現するためには、労働省の試算でも約百八十一億円の予算の裏づけが必要だといわれておりまして、大蔵省との折衝で六億円にしぼられたわけでございますけれども、その点は、この構想を練ってきた労働省当局としては非常に遺憾であったと思います。したがって、非常にささやかな形でこの制度を発足させることを期しておられるようでありますけれども、当然、これは年々その内容の充実をはかっていきたいということは答弁の中に述べてこられました。労働省の当初の構想の規模ですね、最初考えていた、このくらいで発足させたいというその規模に達するまでに、これから何年かかるというふうにお考えでございますか。
  115. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 当初、百八十数億の予算要求をいたしておりました。現在の予算案では六億になっておりますが、それは御指摘の、規模が縮小いたしましたために予算の金額が減ったわけではございません。百八十数億の中身は、実は百五十億は、事業団土地の先行取得をしようという構想がございまして、その関係の経費の要求でございます。あと二十数億は、これも先ほどお話がございました低所得者のためのプレミアムの支給という構想がございまして、それに要する経費でございます。その辺が最終的には当初の構想と違ってまいりましたので予算が必要でなくなったわけでございまして、全体のこの制度の利用の規模というものは、先ほど申し上げたように大体初年度五十万ぐらいからだんだん大きくなる、正確な見通しはなかなか立てにくいのではなかろうかという判断をいたしておったわけでございます。
  116. 古川雅司

    古川(雅)委員 年次ごとに内容の充実をはかるという意図がある以上、大蔵省との折衝の結果、こうした縮小した形でスタートを余儀なくされたということをお認めになるならば、少なくとも何年ぐらいかけて最初考えたような規模に達したいというお考えは当然お持ちだと思うのでございますが、いかがでございますか。
  117. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 いま賃金部長から御説明を申し上げましたように、予算としては、百八十億のうちの百五十億は土地の先行取得。そこで、この制度が私どもの当初の予定に比べて非常に後退したと申しますのは、たとえばこの貯蓄のインセンティブを与える場合の措置として、最初は税額控除を求めておったのです。ところが、税額控除については、新しくこの制度でいきなり勤労者だけに限って税額控除をやることは、税の均衡というような問題から非常にむずかしいということで、少額利子の非課税制度を拡充してやろうじゃないかということになった。そこで魅力がどこまで減ってきたのかということになるんじゃないか。もし税額控除でもうちょっとやれたならば、もう少し魅力があって、したがって活用する人が相当多いんじゃないか。そうすると金も相当たまるんじゃないか。そうすればそれを見返りにして家も相当建つんじゃないか、こういうことでございます。したがって、私どもいまは、とにかくこの制度を発足させまして、その実績を見ながら、さらにいまのいわゆる刺激を与える措置がこれでいいのかどうか、これをまず検討しなければならぬ。それから、たまった金を還元してくる場合の還元の割合等につきましては、これもいろいろな計算のしかたはあろうかと思いますが、事業団を通じてできるだけ多くを勤労者の住宅建設に還元できるような方向で進めていくとか、そういう内容の充実をまず考えていくべきだ。そういう意味で当初五十万――これも非常に腰だめの数でございまして、これを百万にふやすんだとかいうようなことを、ちょっと数字的に申し上げるような性質のものでないと思いますので、その辺は差し控えたいと思いますが、財産形成審議会を通じまして少なくとも三年ぐらいの実績は要るんじゃないか。その上でこの制度をどう改善していくかということの検討をしてまいりたい。西独の場合も十年間で三回改正をいたして今日に至っておりますので、それをまねするわけではございませんが、大体その程度の目安で拡充をしてまいりたいと思っております。
  118. 古川雅司

    古川(雅)委員 当初労働省としてこの構想を御検討になったとき、この制度は財政負担が非常に大き過ぎはしないか、わが国の財政需要がこれから伸びていくその中にあって、いろいろな形で圧迫を受けないかということを非常に御心配になっておられます。そのときのお考えでは、いただきました資料によりますと、この制度が軌道に乗るのは大体昭和五十年ごろだというふうにお考えになっていらっしゃる。そして、そのときの適用人員は約一千万人で、国の財政援助の総額は、減税額が七百億、それからこのときは割り増し金の制度を考えておりまして、これが三百億、こういう金額をあげて、昭和五十年の段階では過大な財政負担とは思えないというふうに試算をしていらっしゃったようであります。今回、法案の形で御提案になった段階では、この財政負担の問題はどのようにお考えでございますか。
  119. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 当初考えておりました財政負担は、いわゆる低額者と申しますか、貯蓄がある限度にまで満たない方に対して税額控除の制度を考えておりましたから、税額控除のマキシマムに達しない分をむしろ財政補てんをしていったらいいじゃないかという考え方をしておったのですが、財政的なそういう直接のいわゆる逆減税的な意味の財政支出は非常に無際限に伸びていく可能性がございますので、そこら辺がちょっと問題があって、とりあえず減税制度だけで進もう。そこで、税の、いわゆる財政支出の問題につきましては、いま、ことしの制度で金融機関から事業団に金を還元して、それを低利長期で持ち家住宅に融資する場合の利子補給を考えております。利子補給が一種の財政負担になると思いますので、これは預貯金が非常にふえてまいる。したがっていわゆる持ち家住宅に融資される資金源がふえますにつれて、利子補給が、財政支出がふえなければならない。それからもう一つは、利子補給をしていく場合に、できるだけ利子補給を強めていくと申しますか、低利にしていくということになれば、そこでふえていく、こういうことになりまして、それらがいわゆるいまの制度におきます財政支出の増加分ということになってまいると思います。
  120. 古川雅司

    古川(雅)委員 この点、もう一つ確認をしておきたいのですが、現段階ではこの制度をこういう形で発足させて、労働省が意図していらっしゃるいわゆる軌道に乗る時期をいつごろに見込んでいらっしゃるのか。そのとき、当初は適用人員を大体一千万と踏まれたわけですが、先ほどの御答弁では、その点非常に後退をしているのではないかと思うのでございますが、そうした労働省としての見込みと、それに伴う国の財政負担の増加という点で、今後大蔵省との折衝で圧迫を受けないかどうか、その点、くどいようでございますが、もう一度確認をさせていただきます。
  121. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 これも実は予想に基づく試算と申しますか、私ども初年度、四十六年度の場合には、これが四十七年一月から実施ということになりますから三カ月でございますね、三カ月で大体五十万程度の人が加入をしていくのではないか。数字の算定のしかたについては、雇用労働者全数から定期預金保有率、あるいは財形を選択していく選択率等、いろいろかね合わせてのことでございますが、五十万。そこで今度は平年度ベースでそれがどのくらいに伸びていくか、これがちょっとわかりにくいわけでございますが、この制度が理解をされ、普及いたしますにつれて、あるいは百万ないし二百万くらいいくのではないか。それで毎年いくと、五十年くらいには、まあ五年と見ますと、最初が五十万、あとが百五十万、二百万くらいにいたしますと大体八百五十万から九百万というようなことになるのではないかと思います。ただ、その場合には、どうも私どもいまの制度ではある程度いって伸びがとまるのではないかということを率直に考えておりますので、二、三年たったところでその点はもう一回スクリーンをしてまいるということがぜひとも必要になろう、こういうふうに思っておるわけであります。
  122. 古川雅司

    古川(雅)委員 制度そのものに非常に魅力が欠けたという点は指摘できると思いますが、勤労者にこの制度への加入を義務づけるとか強制すると、これは大きな問題になりますので、そういうことは全く考えられませんが、いわゆる選択にまかしているという点、これは非常に制度の中身にうまみがない、魅力がないというところを端的にあらわしているのではないか。むしろ、その適用人員の伸びには、非常に過当にふえて、その点で労働省当局として苦慮する、そういう御心配、不安を持っていらっしゃるのか。あるいはまた、制度の中身が非常に魅力がないので、当初考えたよりも加入する人員が少なくて、制度の成長が非常に問題になるというふうに憂えていらっしゃるのか。その点のお考え、いかがでございますか。
  123. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 いまの点は、実はこの制度自体はあくまでも勤労者の自由な選択の上に立てられるべき制度だ、こういうことを基本に置いておりますので、したがいまして、魅力のあるかないかということには関係なく、ともかく自由に選択していくべきものだ。要するに、いやしくも強制的な意味で貯蓄というような形のものを推し進めていくべきではないという、これは立て方の問題でございます。  それから、その制度としては、私どももうちょっと魅力があれば自由に選択さしてもむしろ相当活用されるというふうに考えておったわけでありますし、それから要するに、いかなる場合においても勤労者がその気になってこの制度を活用していただくのでなければ、その制度自体は死んでしまうのではないかと思っておりますので、自由な選択制度というものは基本としてあくまでも堅持してまいる。ただ、実績を見まして、予期に反してあまり実効があがらないということであれば、これはやはり制度をもっと魅力あるものにして、活用されるように制度自体を改善、拡充するということが先決の問題であろうというふうに考えております。
  124. 古川雅司

    古川(雅)委員 これはあくまで勤労者の選択の自由にまかされるわけでありますけれども、これは勤労者のいわゆるフローをここでできるだけストックに回して持ち家を奨励する、あるいはそれを援助するというような形で生活基盤の安定をはかるということでございます。これも先日来いろいろ議論が出ておりますが、わが国の勤労者、これは大企業等に勤めている高額の所得者を初めとして中小企業に勤めている低所得者に至るまで、一体どのくらいストックに回す余裕があるというふうに試算をなさったのか、その点をお示しいただきたいと思います。
  125. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 これは貯蓄の現状から割り出していくしがなかろうと思いまして、年間の勤労者世帯の貯蓄保有率を見てみますと、全体で九九・七%が貯蓄をしておる。それで、その額につきましては、勤労者世帯の貯蓄として持っております現在高が百十二万九千円ということで、これは四十四年の貯蓄動向調査による数でございますが、一般世帯の百九十九万円に対しまして勤労者世帯が百十二万九千円。このうちでいわゆる定期預金が一番多うございまして、定期予金で持っておりますのは三十五万七千円というようなことになっております。そこで全体の貯蓄率は、このように全体の勤労者の九七、八%は貯蓄する。その平均の額がいまのようなことになっておりますので、少なくとも現在この程度の貯蓄力はある、さらに今後の家計の黒字率その他見てまいりますと、可処分所得はさらにふえてまいる。黒字率もたとえば四十年が一五・三%でありましたのが、四十五年一八・三%というふうになってまいりますので、いまのこれの何%か増しくらいの貯蓄余力は出てまいるというふうに考えております。
  126. 古川雅司

    古川(雅)委員 いわゆる近代化のおくれた零細企業に働く人々の問題ですが、これは大臣の所信表明の中でも一つの大きな柱として、そういう方方の労働条件あるいは賃金のアップという点に意を注いでいくということを示しておられました。しかし、そう早急にそうした諸条件の向上がはかられるとも思えないのであります。こうした住宅貯蓄に対してほんとうに優遇すべきなのは、こうした非常に賃金の低い零細企業に働く人々ではないかと思うのです。先ほどからこれもまた問題になっておりましたけれども、こういう方々に一体さらに貯蓄に回すだけの余力があるのか、全体の貯蓄率ということをあげていらっしゃいましたが、同時にこの点についてどのように意を用いられたか、お示しいただきたいと思います。
  127. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 零細企業に働いておられる方につきましては、全般的にやはり賃金全体の比較からいいまして、賃金水準は低いということは想定されるわけであります。ただ勤労世帯の貯蓄の状況を年間収入の階層別に見てみまして、年間収入が三十万から五十万程度の階層の勤労世帯にとりましても、貯蓄率といたしましては、貯蓄をしている割合としては九六%以上の方が貯蓄をしている。ただ額についてはおそらく、はっきりしたあれはございませんが、少し少なくなっているんではないか。  それからさらに、持ち家制度の場合の事業者の援助でございますが、これの規模別の状況を見てみますと、持ち家援助制度を何らかの形で実施している事業場の数字を規模別に見てまいりますと、やはり大企業、五千人以上が九二・六%という非常に高い率を示している。三百人未満の場合には、百人から二百九十九人まで二三・九%というふうに低い数字を示している。そこで御指摘のように零細企業に働く方については、やはり相当この制度がうまく円滑に活用されるようなことも考えていかなければならない。そこでこの場合には個々の事業主のみが対象になるのではなくて、協同組合とかいう組織化されたものを対象にして、中小企業あるいは零細企業の事業主がよけい集まって、協力してこの制度の活用をはかっていくということによって、各企業の足らざるものを補っていく、そこに融資もしてまいるし、その金利等についてもできるだけ安い金利にしていくというような考慮を払って、運営上零細企業の従業員の方がこの制度を積極的に活用できるような方途も考えてまいりたいと思っております。
  128. 古川雅司

    古川(雅)委員 こういう批判もあるわけですね。いまさら新しいこういう預金制度をつくらなくとも、個人の所得の大体二〇%近い所得が貯蓄に回されているわけでありますから、結局これはもう銀行の預金かき集めに協力する体制だけじゃないか、先ほどこういう指摘もあったわけでありますけれども、銀行援助策、銀行協力策、それ以外の何ものでもないというような手きびしい批判もございます。その点どうお考えになりますか。
  129. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 実は私ども当初、先ほど大臣お話にもございましたように、われわれ自身がこのための事業団を持って、そこでいわゆる貯蓄を管理してまいろうかということも考えておったわけです。ところがこれを現実にやるとなりますと銀行並みのことをやらなければならない、そこで非常に人手もかかることでもございますし、なかなか仕事もふなれな点もございます。それよりもむしろ一定の条件を課して金融機関にやらせる、まあもちはもち屋にやらせたほうがいいと、そういう意味で、条件を課した上で金融機関にやらせる。その条件とは何か、その一つは財形貯蓄という銘柄をはっきりつける、これは一般の貯蓄と違って、それに埋没されてはわけがわからなくなるので、そういう銘柄をはっきりさせることと、集まったうちのある割合の分はひとつ雇用促進事業団に還元する、この率をどれくらいにするか、これは今後の話し合いの問題になろうと思いますが、そうすれば――従来は金融機関に一般の勤労者の貯金が入っておりました場合に、それは一般の貯金の形で入るわけであります。したがいまして、それをたまたま住宅ローンをアプライする人はその条件で受けるかもしれないが、その還元されるものはわずか一%しかないというのが現状でございますので、むしろ金融機関に一定の条件を課して貯蓄を適正に管理してもらって、その集まった金をできるだけ勤労者の住宅資金に充てるような方途を考えるほうが、勤労者の貯蓄が現在あるものは実は還元率が非常に悪いというようなことからいいましても、むしろ勤労者の持ち家の促進のための原資を少しでも金融機関から取り上げる、取り上げるというのもちょっと語弊がありますが、還元できる道を少なくとも切り開くものであって、この率をよけいにすればするほど勤労者の持ち家建設資金がふえてまいるというふうに考えておるわけでございます。
  130. 古川雅司

    古川(雅)委員 現在の経済情勢は、これは勤労者の財産づくりにとって決して楽観的なものではないと思います。今日までも勤労者が営々と働きながら土地を求め家屋を求めてきた、そうした苦労はあるわけでありますが、今日いまだに家も持てない、家を建てるための土地も買えないというようないわゆる残された勤労者の層、そういう方々にとって、これからこういった制度ができましても、この制度によって恩恵を受けていくために一番阻害要素になるのはいわゆる物価上昇ではないかと思います。その消費者物価がこの十年間に七〇%も上がっておりますし、地価は十倍ぐらいにも上がっているわけでございますから、こういったこととあわせてインフレというような傾向が今後起こりかねない、そういう経済情勢の中で、こういう貯蓄を奨励していくことについて労働省としてどのようにお考えであるか。こういった要素を考えながらもなおかつ、責任をもって勤労者に対してこうした財産形成の貯蓄を奨励していけるかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  131. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 御指摘のように物価が非常に上昇していくという情勢の中で貯蓄するということ自体は、非常にそれ自体むずかしいといいますか、経済法則からいうと必ずしも好ましい姿にはならないということもあるわけでございます。しかしながら現実にいろいろな世論調査等の結果から見ましても、こういう状況で何をたよりに今後生活していくのだろうというような意識調査でございますが、その場合でもやはり自分の在職中の貯蓄や財産でともかく何とかやっていかなきゃならないのだ、あるいはいくんだというような意識を持っている方が五割はあるというようなことも出ております。それから現在の貯蓄率等を見ましても、相当な貯蓄率である。そこで政府全体といたしましては、やはり物価問題をそのままにしておくということはとるべきあれではございませんので、できるだけ物価対策は考えていくということを前提といたしましてのことでございますが、その中で私どもとしては、現に努力している勤労者の皆さんの貯蓄が少しでも有利になるようにということをやっぱり考えていかなきゃいけない。それから集まりました金をできるだけ還元するということを考えていく。それでともかく持ち家を持ちたいという方には持てるというささえを少しでもつくるということは、やはりこういう時代でも大事ではないか。そういう意味で、この法律そのものはいわゆる財産形成貯蓄についての促進を書いてございますが、その中で国、地方公共団体等がいろいろ関連した施策を講ずることを規定しております。これらはやはり土地の問題とかあるいは全体の資金の手当ての問題とか、そういうものをこの法律の施行と相まちまして総合的にいろいろな施策を講ずることを考えておりまして、それらの施策についてはこの法律の全体の総則のところにございますように、財産形成の基本方針、基本政策というものをつくって、それで関係各省にも呼びかけ、そういう基礎的な基盤の整備を進ませるとともに、われわれもこの法制の実施という総合的な施策を強力に進めていく、そのために基本方針をつくり、財産形成審議会を通じて十分意見を聞きながらやって関係各機関に働きかけていく、こういうことでやってまいりたいと思います。
  132. 古川雅司

    古川(雅)委員 これからもまた際限ない消費者物価の上昇というのは当然予想されるわけでありまして、その点で通貨価値の下落によって勤労者が受ける損失というのは非常に大きなものであると思います。  と同時に、土地問題でございますけれども、いわゆる土地問題の完全な解決がなければこうした持ち家援助対策を行なうことに意味がないという議論には、同意しがたいというような意向を労働省は示していらっしゃいます。しかしこの土地問題につきまして、従来から建設省が地価公示制度の実施とかあるいは都市計画法の改正、そういう政策を進めております。それから地価対策閣僚協議会においても、宅地開発の計画的な推進それから農地の宅地化の促進、土地税制の改善、そういう検討を進めてはいるわけでございますが、こうしたものの確実な保証の上に立って――ただ建設省がこういった構想を持っている、除々に進めているということだけで、土地問題については心配がない、この持ち家援助政策を現在の構想どおりに進めていって何ら支障がないというふうにお考えなんでございましょうか。
  133. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 土地問題が特に持ち家住宅を建設する場合に非常に大事なことは、御指摘のとおりでございます。私ども当初百五十億の土地の先行取得のための財政的な手当てをしようかということを考えておりましたのも、実はそういう趣旨に出たわけでございます。しかしながら政府全体といたしまして、やはり住宅建設建設省が政府の部内におきましては大きな政策を実施しておることも、これまた先生の御指摘のとおりでございます。そこで各省がそれぞれそういう土地の問題を手がけては、これでは政府部内においていろいろ問題もあるということで、しからば政府においては土地問題について建設省を中心にできるだけ進めていくのだということで、私ども先行取得の予算的手当てをしないことにしたわけです。  そこで、いま御指摘のようにいろいろな手が打たれておりますが、はたしてそれで十分まかせ切りでいいのかということでございますので、先ほどもちょっと申しましたが、法律の第四条に労働大臣、大蔵大臣及び建設大臣をこの財産形成の基本方針を定める場合の関係大臣として規定いたしまして、建設大臣は当然持ち家建設等に関する部分については主管の大臣ということになるわけでございます。そこで私ども考えますのに、やはりこういう勤労者財産形成制度というようなものをもって、これをてことして宅地の問題、土地の問題についても建設大臣に十分実行を迫るということにしますれば、非常に具体性をもっていろいろな要求もできるものと思いますので、この基本方針そのものに建設大臣も加わってもらうと同時に、また今後財産形成の進め方については審議会でいろいろ検討願いますが、そういう意見をもって、しかも財産形成制度の実施という具体的な課題を掲げて建設省に強く要望いたしまして、いまの土地問題解決にさらに一そう促進をはかってまいりたい、こういうふうに思っております。
  134. 古川雅司

    古川(雅)委員 大臣が十六時四十五分までで参議院予算委員会のほうへいらっしゃるそうですから、一つだけお伺いしたいのでございますが、この土地問題の解決ですけれども、いま局長から御答弁がありましたが、いわゆる完全な解決がないままこれからの問題として土地問題を残されているわけでございます。こういう段階でこの制度のスタートに踏み切ったということについて御不安はないか、問題とならないか、その点ひとつお答え願います。
  135. 野原正勝

    ○野原国務大臣 率直に言いまして土地の対策、先行取得をやろうとたいへんな意気込みであったわけでありますが、どうも余儀なくされたという点はいささか不満であるわけでございます。これは、勤労者財産形成の政策で具体的に相当の貯蓄ができる段階になりますれば、当然大きな国家の財政上の措置によって土地の先行取得はぜひやりたい。これは当初百五十億を考えておったのでございますが、この段階になればおそらく三百億も五百億も必要な段階がくる。そういうことによって、宅地だけはしっかりといわゆる財産形成の事業団が確保する、その上にいつでも必要とする住宅は建設できるという体制を進めてまいりたい。  いまの土地政策というものは、御承知のとおり、土地所有者から実はそれを利用したいという人たちがこれを買いまして、土地の権利の移動があるわけでございます。ところが地域によりましては、土地を持っている人たちは必ずしもそういうような形で譲渡を欲しない人もある。非常に土地価格というものが不当に上昇しておりますので、思わざる金が急に入ったということは、その一家にとっても実はむしろいろんな点で問題になるわけでございます。そういう点で、必ずしも一度にどさっとお金が入ってくるようなことは好ましくないという人も多いわけでございます。そういう点に着目しまして、農用地がこの際ある程度転換できるという段階になりましたので、安定した対象であれば土地はむしろ権利の移動によらずに、利用せしむる条件さえ備われば貸し付けることも可能である、そういう点でまじめに考えておる向きもございます。現に農協中央会などとも話し合っておりますが、土地はそういままでみたいにむやみに移動して、そのためにその値段は上がる、上がったのはいかにも――農地を持っておる農民の人たちの土地の引き上げに対して、いろんな批判があるわけであります。したがって、そういう点はこれからの土地政策については、むしろこれをほんとうに利用する人、使用したい人たちのために、いかにして土地を真に利用してもらえるか、安心してお貸しできるかというふうな問題があるのではないか。真剣に考えている。私どももそういう観点から建設大臣とも話しておりますが、いままでやってまいりました土地の移動、売買という方式だけでなしに、新しく土地の権利を使用させ収益を得せしむるという点において、地価の上昇というものは物価や賃金の上昇に見合って一定のパリティでもって改定をするというふうな形ができるならば、そのほうがむしろいいのではないかというふうな主張もあるわけでございます。これは検討する問題であると思うのでございますが、いずれにせよこの財産形成の最も大事な点は、いかにして土地を確保するか、しかもそれがほんとうに勤労者のために喜んでもらうような形でいいところが確保できるかという問題、もちろんそれには二戸建ての庭つきの家ということだけではないのでありまして、場所によっては高層建築等も必要でありましょうけれども、当然この土地問題を無視して勤労者財産形成の問題を論ずるわけにいかないという段階で、その問題に対する手配が、手当てが十分でなかった点はいまもって残念でございます。
  136. 古川雅司

    古川(雅)委員 局長にお伺いいたしますが、当初の構想ではこの勤労者財産形成事業団による土地の先行取得という点を非常に重きを置いて考えていらっしゃったわけです。それができないということになりますと、その先行取得だけじゃなくて、企業の共同機構による中高層住宅の建設とかあるいは農協との連携、農地の賃借権、地上権の取得等いろいろお考えになっておるようでございますが、いずれにしてもこういう一つの保証を踏まえた上で制度のスタートを考えられたわけでございます。しかしその点が確保できない、保証できないまま、はっきりいえば土地問題をそのままにして、現状のままにして制度のスタートに踏み切ったという点で今後これが大きな障害になるんじゃないか。制度そのものが何ら意味をなさないどころか、障害になり得ないかという点を非常に不安に思うのでございますが、その点どのようにお考えですか。
  137. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 御指摘のように特に市街地等におきましては、高層住宅をつくるにいたしましても土地問題を解決しなければいけない。そういった意味土地の手当てを何らかの形でしないと、実際問題としてなかなか家は建たないという懸念が実はあるわけでございます。ただ土地の先行取得の予算を考えたわけでございますが、あとその土地をたとえば無償で提供するというわけにもまいらぬ。これは何らかの形で有償にはなると思うのです。したがいましてやはり、労働省の所管の予算としてその問題を直接持つかわりに、建設省にいろいろな宅地造成その他、要するに家を建てる場合の土地の取得のいろいろな制度がございますので、それらとのかみ合わせをどうつけていくかということになろうかと思うのです。いま、まだ発足いたしました当初におきましては、積み立てそのものが融資するまでにはならぬと思いますが、その間に実はいろいろな基本方針をつくっていく場合に、現実に政府の中においては労働省がやろうが建設省がやろうが、それをこの制度とどう結びつけるかの問題でありますので、建設省が行なういろいろな土地の手当ての制度とこれをどう結びつけるか、これは真剣に考えてまいりたいと思っております。
  138. 古川雅司

    古川(雅)委員 その点は非常に大きな今後の課題になると思います。  次の点でございますが、これは勤労者の選択にまかされているわけでございますけれども、一たん加入をいたしますと、当然これは給与の一部を天引き貯蓄に充てることになるわけですね。つまり一定期間凍結することになるわけでございますが、これは国民消費の支出を抑制しようとしている、そういう意図があるんじゃないかという意見がございます。と同時に、所得政策の代案じゃないのか、あるいはそれを補完するものではないか、あるいは全く関係ないのか、その点この際ひとつ明確にしていただきたいと思います。なお、担当が賃金部であるという点がその辺にいろいろ誤解を招くもとではないかと思います。明確にお示しいただきたいと思います。
  139. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 この制度は、この法律の最初の目的にもございますように、あくまで勤労者が自主的に財産を、資産を持つという場合にこれに援助をしていくという一つ制度をつくろうとするものでございまして、まさに文字どおり目的はそこにあるわけでございます。ただ、それの運用の面からいろいろお考えになって、たとえば賃金から控除をしてそれを貯蓄に回していく、したがって消費抑制ではないかということでございますが、その面をとりますと、少なくとも貯蓄に回った分は消費需要にその間回らないということでは、需要を引きとめる役割りは果たすと思いますが、それは結果的なものであって、必ずしもそれを目的とするものではありません。というのは、集まった金をほんとうに消費に回さないなら家のほうに回すのもおかしいわけでございまして、これは一定の目的を持った家のほうにある程度たまった金を流すという場合には、これは当然需要のほうに出てまいるわけでございます。したがいまして、むしろ無計画に消費に流れないで、一定の計画性を持って貯蓄され、それが計画的に家のほうに流れていくということになるのではなかろうか。  所得政策との関連ということでございますが、これは所得政策をどういう定義でするかの問題とも関連しましょうが、いま申しましたようなことでもし無計画に消費に向かわないでいくということが、物価の上昇の要因ともなる需要についてある程度の計画的なものを持つということの作用をするとすれば、その面から若干物価の安定のための要因とはなろうかと思いますが、直接賃金を抑制するような所得政策的な意味は何にも持っておらないわけでございます。  それから賃金部でございますが、これはちょっと誤解をされておるのでございますけれども、設置法で基準局の中に労働者の福利厚生に関する事項というのがございます。福利厚生というのは非常にばく然としたあれでございますが、労働省にはほかにあまりやるところがないものですから基準局で実はそれをやっておるわけで、たまたまそういうようなことを賃金部がいろいろ所掌して、賃金の一部を回すというようなこととも関連もいたしましてやってきているだけでございまして、これは大臣にも申し上げておるのでございますが、これができました暁には、いままでは私ども手がけておりますので、生み落とすまでは私のほうであれして、あとは一番いいところでやるようにということまで言っておるわけでございますが、そういう意味で、いまやっておりますのは別に他意は全然ございません。今後のこの仕事の実績あるいは実効に関連いたしまして、最も適当なところに持っていくほうがよければ、そういうことも十分考えられる問題だと思っております。
  140. 古川雅司

    古川(雅)委員 大臣がこの制度の発足を決意された底には当然慎重な裏づけがあったと思いますが、こういうことを聞くのは非常に大臣に対しては酷なんでございますけれども、この制度が万一不発に終わった場合、円滑に実施されない場合ですね、そういった点についてはどうお考えか。もしそういう事態が起こったときにどう対処されるお考えでいるか、その点お伺いしたいと思います。
  141. 野原正勝

    ○野原国務大臣 私は、この制度が発足を見ないようなことは万が一にもあり得ないと考えております。と申しますのは、この制度は、勤労者の豊かな生活を目ざして、勤労者の持っておる願望にこたえて、その貯蓄に対する国の援助を行なうという点で将来大きな、わが国の経済の発展、同時に勤労者の生活の安定という点で、非常な結果のあるものであると考えます。そういう点で、いろんな見方はありましょうけれども、確かに勤労者には喜んでもらえると確信しております。  そこで、この政策がもしできなかった場合ということになりますが、これは私としては考えたくないのであります。あくまでもこの政策は実現できる、そして勤労者には喜んでもらえる。しかも、それによって勤労者の住宅問題も必ず一歩前進、二歩前進という形で、大きな国家の財政上の配慮も加わり土地の取得もできるということになりましょうし、あるいは金融機関等も当然住宅建設に対しては――従来もわずか一%程度の特別な長期住宅ローン等はあったようでありますが、少なくとも三分の一程度は当然勤労者住宅の基金として活用するつもりでありますから、そういう面では格段の有利な条件ができるというふうに考えております。  いずれにせよ、いままでなかったものに対して、勤労者がみずから進んで貯蓄をするものに対して、国がそれに対する援助をする、これを利用する場合には利子の補給もしようということでございます。それが必ずしも十分ではないといえば、あるいはそのとおりかもしれません。しかし、今後は皆さん方の御協力も得まして、ますますこれをよくしていこうという点で、まだまだ出発当初からこれを言うのはおかしいけれども、必ずこれは非常に大きな力になる、これは勤労者の力となり、日本経済の発展にも大きく役立つであろうということを確信しております。したがって、この政策は不発に終わるようなことは断じてないことを私は期待し確信をしております。よろしくお願いします。
  142. 古川雅司

    古川(雅)委員 大臣としては当然の御答弁だと思いますが、制度の内容が魅力に欠ける、あるいはうまみが非常に少ないというような点で、 スタートはしたけれども予想したような金はない、勤労者の参加がないというようなことになれば、やはりそうしたスタート後に不発に終わるというような事態も憂慮されるんじゃないかと思います。そういったときに、あらためて制度の内容について再検討をしていく、魅力を加えていくといった点についてお考えであるかどうか、その点をお聞きしたかったわけでございます。
  143. 野原正勝

    ○野原国務大臣 私はこの政策の推進の中心でございます。したがって、この制度がいよいよ発足をしたところが思うようにいかなかったということになりましては、政治家としてこれは重大な責任でございます。したがって、私は全力をあげましてこの政策の推進に鋭意努力をいたす決心でございます。将来ともこの政策については、責任をもってこの推進役を買って出る考えでございます。
  144. 古川雅司

    古川(雅)委員 先ほど大橋委員から質問のありました点ですが、どうも答弁がはっきりいたしませんでしたのでもう一度お伺いしたいのでございますが、これは勤労者が事業主を通して契約をするという形になっておりまして、これは勤労者独自ではできないわけでございますね。転職をした場合を大橋委員は問題にしたわけでございますが、転職先で事業主がこの制度契約をしない場合どうなるかという点であります。この点については一応の御答弁がありましたが、そういったことでこれがいわゆる労働者を一つの企業にとめておく足どめにならないか、足どめ策に悪用されないか、そういうおそれはないかということを伺ったわけでございます。こういった事態が起こりますと、これは憲法の職業の選択の自由にも抵触をしてくるというような危険性があるわけでございます。どうも午前中の答弁が釈然といたしませんでしたので、もう一度明確にお示しをしていただきたいと思います。
  145. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 この制度で、いまの御質問ですと、Aの会社で財形貯蓄をやっておる、この貯蓄契約自体は御本人と金融機関とで結ぶことに当然なると思いますが、ここでおそらく財形貯蓄通帳というものを持つことになるだろうと思います。それで、その払い込みの場合に、定期に払い込んでいくということになると思います。それを事業主を通じてする。そこら辺が事業主との間の話し合い。そこで、移ったときに、その事業所ではそういう制度をやっておらないという場合のことだと思います。そこで、あくまで事業主がやらぬといえばできなくなるじゃないか、そこでもとのAからBに移れなくてAに足どめを食らう、こういう御趣旨かと思います。先ほどもちょっと御答弁申し上げましたように、これはもともと自主的な制度にいたしておりますので、あまり法律で強制力を持たした形でいろいろな規定をしておらないという前提がありますために、いま申しましたように事業主の協力義務ということで、法律にいわゆる宣言的規定を書いておるわけであります。しかしながら現実に、それじゃ、めんどうくさくていやだということで事業主がそれほど拒否しなければならないようなものであろうかどうかというと、それ自体は必ずしもそうじゃないんじゃないか。したがいまして、契約そのものは破棄しない限りは貯蓄契約は続きますので、移りましても続いている。その間事業主等を通じていつから払い込むことになっているから払ってくださいということで、事業主はそれに協力をしていくという体制ができると考えておりますので、それほど強い足かせといいますか、移る場合の支障になろうとは実は思っておらないわけでございます。
  146. 古川雅司

    古川(雅)委員 時間になりましたので、これで最後にさせていただきますが、いわゆる中小企業、零細企業の勤労者に対する配慮、これはいろいろ質問がありましたけれども、いわゆる雇用促進事業団が融資をする場合に、その利率において〇・五%という一つの優遇策を考えていらっしゃいます。この制度がこうした中小企業、零細企業に働く勤労者にどれほど恩恵をもたらすか、効果をもたらすかということが大きな焦点になると私は思います。  一つお伺いしておきたいのは、労働省がこの法案を作成するにあたって、提出するまでに、そういった点の配慮から中小企業の経営者あるいは労働組合の代表、そういった方々とどういう協議を重ね、協力を得る保証を得てきたか、その点一つだけお伺いをいたしまして、私の質問を終わらしていただきます。
  147. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 中小企業の事業主の方については、従来この形ではございませんが、雇用促進融資等でも一応そういう制度もございます。いろんな融資制度もございますが、この制度との関連では、前に申しました財産づくり懇談会に中小企業の団体の代表の方もお入りいただいております。そういう場を通じていろいろ私どもの試案も出し、御意見も承ってやってまいっておりますので、少なくともこの案をつくる基本的な考え方については御了解をいただいているものと思っております。ただ、具体的にまだこれから運用上きめてまいる点がございますので、それらの点については今後できまする財産形成審議会等にもまたそういう部面の方もお入りいただいて、いろいろ御意見を承りながら有効に運用できるようにしてまいりたい、こう思っています。
  148. 古川雅司

    古川(雅)委員 終わります。
  149. 倉成正

    倉成委員長 西田八郎君。
  150. 西田八郎

    ○西田委員 答弁が長いと時間がさらに延長をされますので、簡潔にお答えをいただきたいと思います。  この法案でいうところの労働者の財産というのは貯蓄、持ち家ということに限定をされておるようでありますけれども、それ以外に労働者の財産というものはないのかどうか。
  151. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 いろいろの財産ということでありますれば、一般の不動産その他もございますと思いますが、この法律で考えておりますのは、一般的な預貯金あるいは有価証券の保有並びに持ち家のための貯蓄ということに考えておるわけでございます。
  152. 西田八郎

    ○西田委員 そうすると形のあるものだけに限定するということで、要するに労働者の財産というのは、働く技術なり能力というものも、これは一つの財産ではなかろうかと思うわけです。それをただ形にあらわれる貯金だとか家だとかいうものだけに限定されて財産形成法という形でつくられたところに、いささか私は不満があるのですけれども、そういう点はどういうふうになるのですか。
  153. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 実は御指摘のような非常に大きな、いわば宝的なものがあるということは御指摘のとおりだと思いますが、私ども、いまこの法律のねらいといたしましては、現に勤労者がいろいろの形でいわゆる資産、財産を持つという物的な財産のことについて、いろいろ直接生活の安定に結びつく物的財産を貯蓄というものを通じてやっておるこの自主的努力に対して援助をしていく必要がある、その援助のための制度を財産形成促進制度ということで考えましたので、その面に実は限定してこの制度は考えておるわけでございます。
  154. 西田八郎

    ○西田委員 多少の問題はあるにしても、これは財産についてはやはり形に残るものという概念から出ておるものだと思うのですが、そういう概念から考えて、まず貯蓄に関連をして伺っていきたいと思いますが、ここでいう貯蓄といわれるものは一体どういうものがあるのか。有価証券だとか、あるいは信託にもいろいろな信託があるわけですが、大体幾つぐらいの種類で、どういうものがあるのか。
  155. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 財産形成といっております場合に、第二条に定義がございますように、預貯金の預入、金銭の信託及び有価証券の購入、それから持ち家の取得、これを一応この法律では財産形成といっております。したがいまして、一般的な預貯金がまず考えられます。この預貯金につきましてはこの法律の六条でもうたっておりますように、勤労者が通常行ないます銀行、信託会社、信用金庫、労働金庫、信用協同組合その他、たとえば農業協同組合等々に預け入れておりますいろいろな預金、貯金というものが考えられます。それから金銭の信託は、俗に貸付信託という名前でできておりますように、ああいったたぐいのものが勤労者にはなじみが深いかと考えます。有価証券につきましては、証券投資信託でございまして、その中には公社債の投信でございますとか株式の投信がございますし、それからまた公社債そのもの、あるいは株式そのものもございます。そこで、この法律では一応有価証券の中で、当面元本保証のございます公社債あるいは公社債投信、それから株式につきましては一般的にはまだ勤労者の財産形成の対象とするには適当ではございませんので、安定性の強い株式投資信託にしぼって対象にしたいというふうに考えておるわけでございます。
  156. 西田八郎

    ○西田委員 この投資信託というものは、元本は保証されるとしても非常に危険性の高いものですね。これは信託の引き受けをしたその銀行あるいは証券会社が、運用を誤らないようにしていこうということでかなり慎重には扱っているようでありますけれども、この投資信託というものは元本が保証されればそれでいいということで、果実を生まないというか、無配ということもあり得るという契約になっているんじゃないかと私は思うのです。したがって、そういう投機性の高いものをこういう――財産形成というならば、財産を形成していく限りにおいてはそこにメリットがなければいかぬわけですね。そのメリットは何かといえば、元本から生じてくるところの利子いわゆる果実じゃなかろうか、そういう果実がないもの、きわめて危険性が高いものまで含めるということはどうかと思うのですけれども、その点については十分なる自信があるのかどうか。
  157. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 御指摘のように、株式一般のように元本保証のないものにつきましては、先ほどもお答えいたしましたように、非常に収益の高い、つまりインフレに対しては非常に強い面を持つと同時に、御指摘のような危険も伴うということでございまして、この制度で直ちに勤労者の財産形成の対象とするには適当でないと思っております。ただ投資信託の中で、株式投資信託の中でも、一般的に対象にするということじゃなくて、特にその運用方法について安全性の高いもの、これをしぼって、いま大蔵省等で一般的に少額貯蓄の利子の非課税の対象にしようということで検討中でございます。もしそれが実現されれば、私どものほうのこの制度にもやはり対象にすべきではなかろうか。あくまでも安全性の高いものに限定すべきではないかというふうに思っております。
  158. 西田八郎

    ○西田委員 それは、私はぜひそうしていただきたいと思うのです。非常に安全性の低いもの、また安全性が高いからといって安心しておられないというのが、私は投資信託の性格ではなかろうかと思うのです。公社債投資ならまだ安心ができるけれども、株式投資あるいは一般投資信託というものは、そういう意味で私は非常に危険をはらむと思う。したがって、かりにこれを実施されるにしても、私はそういうものは除いていくべきではなかろうかというふうに考えるわけで、その点十分注意をしていただきたいと思うのです。  さてそこで、いま言われましたような預貯金、それで現在利回りは一体どれくらいになるのか。金銭信託なら年六分何厘、貸付信託なら七分何厘ということを信託会社等は宣伝をされておるわけなんですけれども、その利回りは一体どれくらいに見込んでおられるのか。
  159. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 この財産形成貯蓄は、この法律の第六条にあげてございますような銀行、あるいは信託会社、信用金庫、労働金庫等々の金融機関と契約を結びまして行ないます預貯金でございます。それに対して利子に関し特別の非課税の恩典を与えようというものでございまして、利子そのものは、そういった金融機関が扱います利子と全く同じわけでございます。したがいまして、たとえば一年もの定期預金でございますと五分五厘、一年半で六分とか、通常の金利によるわけでございます。
  160. 西田八郎

    ○西田委員 その契約は、先ほどちょっと聞いておったのですが、事業主を通じなければできないのですか。個人で契約するというわけにはいかないのですか。財形貯蓄契約というのですか、先ほど局長お答えになっておりましたけれども、個人で直接銀行へ行って取引するとか、労働金庫へそういう形で預けるというようなことはできないのですか。
  161. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 第六条にございますように、財産形成貯蓄契約そのものは勤労者と金融機関との間の契約に相なるわけでございます。ただ、それに条件がついておりまして、六条の三号に、金銭の払い込みにつきましては事業主が賃金から控除してかわって払い込む、こういう条件がついております。したがって、その払い込みについて本人と事業主との間に契約関係が成立する、かようなことになるわけでございます。なぜそのような制度にしたかという点につきましては、特に勤労者にだけ特別の優遇をしようという制度でございますので、そこで、その契約の当事者が勤労者であるかどうか、さらには、勤労者であって確実に賃金から預入されるものであるかどうかということがはっきりする必要があります。そこで、かような仕組みになっておるわけでございます。
  162. 西田八郎

    ○西田委員 そういう趣旨なら、どこどこの会社につとめておりますという在籍証明書と、そしてこれだけの契約をしてこれだけずつ納めますという契約をすれば、それでいいことじゃないですか。労働省は労働者というものはお金に関しては信用ができないとおっしゃるのですか。個人の労働者だって、それでできるのじゃないですか。ということは、私がなぜそういうことを言うかというと、やはり金を幾らためているとかそういうことは、あまり人に知られたくないものです。ですから、金を預けるのは、たとえば、あいつが五千円しておるのならおれも五千円。しかし余裕ができたからこっちへもう五千円したいという気持ちになると思うのです。人にあまり秘密をさぐられたくないということからいえば、やはりそれ相当の身分の証明なり、それ相当の収入があれば、個人と契約したっていいのじゃないかと思うのですが、どうしてこれは事業主を経由することに――わざわざ本条第一項では「勤労者が」となっておるのにかかわらず、三号でそういう形において特定の処置をとられたのか、この辺のところに若干疑問が残るのですが。
  163. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 ただいま申し上げましたように、この預金は特別の優遇を受けるという観点から、その人が勤労者であるというだけでなしに、さらに賃金から預入されるということを把握する必要があるわけでございます。特にあとの賃金からの預入という点で、やはり賃金を支払うときに控除をするということが一番正確であるという配慮と、特に税法上の手続が伴います関係で、たとえば一般所得税等でも事業主が源泉徴収者になっているということもございまして、事業主において処理をするということが一番能率的でもあるというような判断が加わりまして、さような制度になっております。
  164. 西田八郎

    ○西田委員 それはおかしいですね。火災保険なんか個人で契約していたって、ちゃんと税金のときは、保険料控除の証明書を持っていけば控除してくれる。生命保険だってそうなんです。特別措置がある。何のメリットがあるのですか。ただ利子の非課税が、通常いま元本百万円が百五十万円に延ばされるらしいけれども、その上にもう百万円だけおんぶされるだけのことでしょう。金額にしてみれば幾らになる。年額七千五百円か八千円そこそこじゃないのですか。六分何厘に回ったとしてそれくらいのメリットだけで、どうしても事業主を通じなければならぬという理由にはならないと私は思うのです。租税特別措置法の中でも、火災保険でも、生命保険でも、みんなやっているのですよ。どうしてこれだけ事業主を通じなければできないのですか。
  165. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 いまの御指摘の火災保険、生命保険等につきましては、広く国民一般についてそういう恩典が行なわれておりまして、勤労者に限ってということではございませんし、御指摘の一般のベースにございます少額利子の非課税制度は国民一般を対象にいたしますけれども、この法律による勤労者財産形成貯蓄についての利子の非課税は、特別に勤労者だけに限って行なわれます制度でございます。そこで、勤労者であり、かつ賃金から預入されているということを確認する必要がある、こういうわけでございます。
  166. 西田八郎

    ○西田委員 これはおかしいです。勤労者というのは一体どういう人をいうのですか。いま一億六百万ですかの国民のうち、実際に就業している人は何人おる。五千六百万近くおるのじゃないか。人口の過半数近くが勤労者じゃないですか。勤労者を除いたら、子供と家庭におられる主婦と年寄りでしょう。ほとんどの人がいま働いておるのですよ。だから、火災保険は一般が対象だ、これは勤労者だというなら、では勤労者と一般とどう違うのですか。
  167. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 勤労者と申しますと、これは私ども、いわゆる雇用関係にある労働者――働いているという意味ではすべて勤労者でございますが、雇用関係にある労働者、要するに賃金その他の報酬を得て生活をしているという形態の勤労者と申しますか労働者を対象にする。そこで一般のそれは、そういう意味じゃない勤労者という意味では入りましょうが、狭義の意味のいわゆる雇用労働者だけにつきましていまの特別な制度を適用していこう。これ自体が税法上の適用関係では一つの特別制度、したがいまして租税特別措置法ということで、特別措置として考えていく。その場合に、その対象になる特徴は、要するに賃金から貯蓄をしていくという特徴をつかまえまして、そこにいまの特別措置を適用しようということでございますので、その点を明確にする意味で、事業主を通じて賃金からはっきりと貯蓄に回った分が対象になる、こういうことにするのが一番はっきり確認をしやすいわけでございます。税法上一一確認をする手続等もいろいろいるわけでございますから、したがいまして、そういうことなしにすれば当然特別措置法の対象になるということになるわけでございます。それからその具体的な減税措置等につきましては、これは勤労者がやっております年末調整等によってやるとかいうことでありまして、そういう現実の便宜の問題等もありますし、一つには特別措置の対象になるものを明確にする、それを特別の証明なしに当然その対象になり得るということにすること、これと便宜的な意味ということを含めてこういう制度にしたわけでございます。
  168. 西田八郎

    ○西田委員 そうなると、雇用労働者ということに限定されてくると、いま廃止になりましたけれども、日雇保険の擬制適用を受けている屋外労働者がいますね。板金工であるとかあるいは大工であるとか、左官であるとかこれも雇用されているのです。雇用はされているけれども、雇用主が一定しないということで、あっちに行って働く、こっちに行って働く。賃金は受けているわけですね。こういう人たちはこの対象外ということになるわけですか。
  169. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 雇用労働者である限りにおいて、この法律の対象になることは……。
  170. 西田八郎

    ○西田委員 いや、雇用されていない人です。自分で……。
  171. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 一人親方の場合には実はこの意味では雇用者ということではございませんので、対象外になることになります。ただ、特別な法律ではそれぞれの目的によっていわゆる擬制適用するということをとっておりますが、この場合には雇用者ということに限って適用すること、したがってはずれてまいります。
  172. 西田八郎

    ○西田委員 従来、それまで広げるということは考えてないのか。
  173. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 ただいまこの制度の発足にあたりましては、まず雇用労働者ということで発足をしてまいりたいと思っておりますので、今後一切対象としないという趣旨ではございませんが、ともかくこの制度のまず第一義的な対象は雇用労働者ということで発足して、将来の問題として検討事項とはなり得ると思います。
  174. 西田八郎

    ○西田委員 これはもうぜひ広げてもらいたい。同じように働く勤労者なんですから。雇用されているものだけが優遇されて、そうでない一人親方であるとかあるいは日雇いであるとか、先ほども失対ということばが出ておりましたけれども、同じように働いてめしを食っておる人たち、その人たちが片方は法律で非常な優遇を受けておる、片方はそういう一これが優遇になるかどうかは別として、片方はそういう待遇を受けられて、片方は受けられないというようなことは、私はやはり不合理だと思うのです。法のもとに平等ということからいけば、私はこの法律に限って平等性があるかもしれぬけれども、しかし憲法の働く権利というところからいけば非常に不平等になってくるのではないかということで、その点についてはぜひひとつ今後考えてもらいたいということが一つであります。  そこで私は、ここで突き当たってくるのは、社内預金制度関係がどうなるかということです。現在各企業で行なわれておる、主として大企業で行なわれておるわけですけれども、大企業で行なわれておる社内預金の総額というものを把握しておられますか。そして、それに対する年利息というんですか、利子というんですか、大体どれくらいに回っているか。利回りはどれくらいになっておるか。九分何厘が最高だというふうに私は聞いておるわけですが、その辺のところ、わかっておりましたら聞かしてください。
  175. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 社内預金の現状についてのお尋ねでございますが、昭和四十五年三月三十一日現在で社内預金の総額は一兆一千六百九十五億になっております。これを利用しております労働者数五百三十二万人でございます。なお利子につきましては平均で七分七厘七毛になっております。一番高いのが住宅積み立て預金でございまして、八分五厘七毛というふうになっております。
  176. 西田八郎

    ○西田委員 一番高いのが八分五厘七毛、そんなことはないでしょう。現実に九分払って預けさしている会社を私知っている。いままで一割出していたけれども、それは山陽特殊鋼の問題が出たときに社内預金というのは問題があるということで、かなりな文句が出て、そして利子が高いから社内預金にずっと集まるんだろう、こういうことで利子が値下げされたけれども、私は九分二厘が最高と認められておる利子だと思うのですけれども、すでにそれを払っているところがあるんですよ。
  177. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 先生御指摘のとおりでございまして、ただいま申し上げました最高というのは普通預金とか定期預金とか住宅積み立て預金とかの平均の金利のうちで、平均金利が一番高いのが住宅で、いま申しました八分五厘七毛でございます。そして沿革は先生御指摘のとおりでございまして、従来非常に社内預金の金利が高うございまして、問題が起きまして昭和四十一年に中央労働基準審議会から答申が出まして、そのときに漸次金利を下げていくという勧告が出ております。そこで当面暫定的に認められた金利もずっといままでの金利よりは低く押えられている。そのときに住宅積み立て預金についてはたしか九分八厘以下の押え方であるわけであります。現に年々減って、金利は下がってまいっております。四十五年三月が先ほど御報告したような平均金利になっております。   〔委員長退席、増岡委員長代理着席〕
  178. 西田八郎

    ○西田委員 そこでお聞きしたいんですが、先ほどもいろいろあげられました預貯金の中で、やはり一番高い利回りであろうと予測されるものは大体どういうものがあって、どれくらいですか。
  179. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 勤労者が行なっております普通の貯蓄の中で比較的金利の高いものは貸付信託でございますが、五年ものでたしか七分四厘七毛ぐらいになっておると思います。
  180. 西田八郎

    ○西田委員 片一方では七分七厘七毛という社内預金がある。社内預金は社内留保ができるわけです。それは会社の運転資金に使える。ところがこの金は、七分四厘七毛が最高で、しかもそれは会社に留保することができない、どこか金融機関に預けなければならぬ。こんなことではたしていわゆる企業主が協力すると思われますか。
  181. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 社内預金につきましては、現状はいま賃金部長から御説明申し上げたとおりです。ただ社内預金そのものにつきましては、これが特別の場合に、先ほど山陽特殊鋼のお話も出ましたけれども、やはり私どもの立場からいたしますれば、適正にこれを管理していく必要がある。そういう意味で先般来、この利率につきましてもできるだけこれを適正なものに引き下げていくという方向で来ておるわけです。したがいまして、いまたまたまそういうことになっておりますが、いま社内預金を、それをあるべき姿あるいは正しい姿として私ども認めてやっていくたてまえではございませんので、将来社内預金についてはさらに適正な規制をしてまいるということを考えております。ただ現実にやはり利率の点ではいまのようなことになろうかと思いますが、この制度が発足をいたして軌道に乗ってまいります場合には、当然それの融資の対象となるというようなこともはっきりいたします。そういう意味で、いまの利率だけの比較ではなくて総合的に比較いたしてまいります場合に、どちらが安定してさらにその目的を達し得るための貯蓄であるかということから判断されると思います。
  182. 西田八郎

    ○西田委員 社内預金につきましては、これは山陽特殊鋼の問題を起こしたときですから六年ほど前ですか、労働金庫協会あるいは労働四団体から社内預金はけしからぬじゃないかという申し入れをしたわけです。ところがなかなか経営者の抵抗も強くて、大蔵省もまたそれに対しては非常に手ぬるい処置で、一般でたしか一割が九分二毛、住宅で九分八厘ですか、そういうことでまだ一般市中にない高い金利を持続しておるわけです。この制度ができたからといって、はたして労働省がそれをもっと低い金利に下げるという自信がありますか。
  183. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 私どもこの法案をつくるときに、社内預金の取り扱いをどうすべきかということで議論がございまして、社内預金の中でたとえば住宅貯蓄という形でやっておるものについてはこれを取り込んでいったらいいじゃないかという議論も実はあったわけです。しかしながら私どもは、この法律の財形貯蓄としては、そういった社内預金のようないわば特殊な形の貯蓄は対象に入れないということで踏み切ったわけでございます。  いま金利を直ちにどこまで押えられるかという御質問でございましたが、これは審議会の答申の線もございますのでそうドラスチックにはできないと思いますが、徐々にさらに適正化をはかってまいるということで努力をしてまいりたいと思います。
  184. 西田八郎

    ○西田委員 きわめて心もとないと思うのです。どうしてもメリットの多いほうへだれしも集まっていくというのが人間の心理です。しかも、だれしも自分会社はだいじょうぶだと思っているんです。だから山陽特殊鋼のようなことがかりに起こったとしても――あの山陽特殊鋼の問題が起こったときに何億という預金があった、その会社の預金が引き出されたかというと、そうではなかったのですね。そういうことから考えていくとこれは非常に問題になるし、しかも社内預金というのは金融の面から見てあまり好ましくない方法なんですね。天引きして強制的に貯金をさした昔の制度が、任意制という形においてそのまま残ってきておるのが現在の社内預金制度だと思うのです。だからそういうものを残していくためには、少々のリスクがあっても、高い利子を払っても、従業員の賃金を頭から渡さぬで済むわけですからね。それが社内預金の実態だと思うのです。そういうものが、いまおっしゃるような方法では経営者が簡単におさまらないと思うのです。これはよほど力を入れなければいかぬのですが、大臣どうですか、自信ありますか。
  185. 野原正勝

    ○野原国務大臣 社内預金については、できるだけ規制をしてまいりたいと考えております。
  186. 西田八郎

    ○西田委員 規制をしてまいりたいぐらいでは、ちょっと済みません。先ほど政治家の政治生命とおっしゃったのですが、政治生命をかけてでもやってもらわなければできないというふうに私は思うわけです。  そこで、社内預金とよく似たものに社債があるわけですね。たとえば電力債であるとかいろいろな債券がありますね。ああいうものも含まれるわけですね。
  187. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 公社債もこの財産形成貯蓄の対象になります。
  188. 西田八郎

    ○西田委員 そうすると、たとえば一つ会社自分のところの社債をばっと出して、その社債を全部従業員に引き受けさすという方法もその中で出てくるわけですよ。これはきわめて危険な方法じゃないですか。それは企業を助ける一つの大きな方法になって、企業は、社内預金はこういかれたけれども、今度は利回りの低い、七分二、三厘の社債を従業員に買ってもらうという方法も、やり方によっては可能なんです。そういう場合、どういうことになります。それは制限があるんですか。
  189. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 実はこの制度自体が、勤労者が自由に自分の好むところを選択してやるというたてまえになっておるわけです。たてまえがそのまま貫かれるかということの御質問になろうかと思いますが、契約そのものは個々の勤労者が望むところで契約するわけですから、そこには勤労者の自由な選択がある。ただ現実に払い込むときに、事業主を通してというところで一つの関門がある。そこでチェックをされるんじゃないかということになろうかと思いますが、さきにも申しましたように、基準法の手続を踏まなければそれはできないわけです。したがいまして勤労者がある職場においてそういう制度を自主的に選んでやっていこうという場合には、当然そういう団体の意思をもって事業主のほうと話し合いをやりまして、それでこの制度をその事業場で適用してまいる、こういうことになると思いますので、あくまで労働者としては、その組織あるいは全体の力でもって当然自分らの選択する方向で行ない得る、こういうことになろうかと思います。
  190. 西田八郎

    ○西田委員 選択の自由があるといいましても、現在の日本の労働組合はほとんどが企業組合なんです。職業別にあるいは職能別につくられておる組合というのは、きわめてまれにしか見られない。そうすると、企業組合である限り、団体交渉ということになるとその幹部が会社と団体交渉をすることになるわけです。ことにそれが貯金という関係で交渉する場合には、これはどんな貯金であろうと、この貯金あの貯金一つずつに切って契約をしなければならぬことにはなってないはずです。とにかく会社側と協議してきまったら、そうした種類の貯金をするための給料からの天引き、いわゆるチェックオフを認めるか認めないかということだけですね、基準法に制限されるのは。ですからそういう意味からいきますと、企業組合であり、そして団体交渉できめられるということになってくると、ほんとうの労働者個人個人の選択権というものは大幅に制限をされてくる。そういう中で、ひとつ会社のために協力をしてくれぬか、賃金も上げるのだ、一時金も上げるのだから、会社の社債がこれだけあるんだがひとつ引き受けてくれぬかということになってきたとき、いやということ言えますか。これは私は、そういう会社の資金調達の肩がわりを労働者の賃金の中からしていくというような形になりはしないかと思う。もちろん証券会社へ預けるのでしょうけれども、証券会社会社なんていうのはうまく結託しておけばいいわけですからね。こういうことは通常行なえることです。これはよほど労働省として監督指導をしなければならぬ。その指導監督について自信がありますか。
  191. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 この法律をつくって、いま御指摘のようなことを助長する意味は毛頭ないわけです。私どもそういうことは考えておらないわけでございます。そこで、おそらくこういう制度ができますと金融機関全体もこれに対して、まあ預金を自分のところへとるといいますか、そういうような競争も相当ございましょうし、それから労働者個々人のこれに対する態度というものも相当はっきりしてくるのではなかろうか。そういうことでこの制度が本来の趣旨が達成されるように運営をされなければならぬという意味で、私ども直接の監督権をどこまで行使するかの問題はございますけれども、そういうようなこの法の趣旨に反するようなことが明らかに、かつ危険性を含んで行なわれるような場合には、当然特別な指導監督を行なうつもりでおります。
  192. 西田八郎

    ○西田委員 それは、そのチェックをどこでするかということですね。危険だと言われたって、労使双方で話し合いされるわけでしょう。そしてその労使双方で話し合いされたものが、信託銀行なりあるいは銀行が預かっていくわけですよ。そんな場合にチェックする方法ないでしょう。片っ方が何か口を割らぬ限りわからぬことになってしまうわけですよ。それで、そういうことのないように努力するとしても、見つけた場合には極端なものは注意すると言うが、どこでチェックするのですか。
  193. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 社内預金等の問題も同じようなことがいえると思うのです。そこで私ども、この運営にあたりましては、たとえば住宅等の貸し付けの場合には、当然その融資条件等で財形貯蓄がはっきりやられているところを対象にする、これは法律で事業主とはっきりしておるわけです。そこで、いまそういう問題とからまずに、貯蓄の対象として自社の社債というようなことになった場合に、これは実は表に両方とも出さないということになればちょっとわからないと思いますが、相当な弊害を伴い問題となるような事例でありますれば、当然表へ出てまいるものと思っておりますので、社内預金に対する規制をいたしましたと同じような形、あるいは今後の財形の運営の方針について財産形成審議会等の意見を聞いて、はっきりした基準、方針を明示して、それで適正な正常な運営がされるように確保していく、こういうことで進んでまいりたいと思います。
  194. 西田八郎

    ○西田委員 結局、考えてみますと、これはあまり労働者にメリットはないのですよ。結局、この制度があって一番資金を集めやすくするのはどこかといえば銀行なんです。それ以外にこれはお互いにあんまりメリットがない。まあ労働者の場合は百万円というプラスがあるが、これだけだ。金利もプラスされない。それならば、せっかく全国の各都道府県に労働者のつくった金融機関があるわけです。その金融機関に直接いわゆる財産形成貯蓄契約ということを一つの項目にあげさして、現在市中銀行にプラス一厘だから、労働金庫の場合はすべてが一これをもっと大幅に利子を認めて、そうして利子が払えなければ、市中よりも利子が高い部分は利子補給を政府がするという形において初めて財産形成といえるのじゃないですか。だから、やはりそれはどこか特定のところに指定することが私は大切じゃないかと思うのです。全国でもうすでに労働金庫の預金高は何千億という金額になってきておるわけであります。そして、いままた毎年友愛貯金だなんだということで、労働金庫は労働金庫なりの努力をしてきておるわけです。だから、そういう労働金庫を通じて――しかも労働金庫から現在家を建てるために、改築するために、増築するためにということで出されておる資金というものは、労働金庫の貸し付けの大部分は住宅に使われておるわけです。そういうこと等を勘案するならば、一般の市中銀行と労働金庫とは設立された趣旨が違う。法律にも書いてあるとおり、営利を目的としてはならない労働金庫である。そういうところへ集めて、そうして労働者の自主的な金融といいますか、財産の形成に思い切ってやるべきではなかったか。これで労働金庫の利子は現状よりももっと有利にするという考え方はないですか。
  195. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 仰せのように、この貯金、貯蓄を取り扱わせる金融機関について、労働金庫だけに特定するということでなくても、相当優先的にこれに考えていったらどうかというような御指摘だと思いますが、全体にこの制度が幅広く利用されていく、その前提としては、貯蓄というのはやはり個人個人の自由な選択ということを前提とすべきではなかろうか。したがいまして、どれだけのものをどこに預けるかということについても、基本的な原則は、やはり好きな金融機関を選択させるということがいいのではないかというふうに考えます。  そこで、そのために金融機関だけが有利になるのではないかということでございますが、金融機関には条件を付して預貯金、要するに財形貯蓄を扱わせることになる。したがいまして、ある程度たまったときにはそれを還元して勤労者に直接融資できる財源にしていこうということでございますので、従来の一般市中金融と同じように取り扱うことでは毛頭ございません。ある程度たまった金が、従来金融機関からわずか一%しか還元されていないという事情からすれば、むしろ相当程度の還流が考えられるのではないかと思います。  それから、労金その他につきましては、実はこの融資の対象といたしまして事業主のほかに勤住協を唯一の団体として対象に法律上したわけでございまして、それはやはり勤労者の特別な団体がこの対象となって十分勤労者の住宅の建設に資するようにという配慮でございます。同時に、労働金庫等とも非常に密接なつながりがございますので、そのほうとの関連で労働金庫が十分この制度の利用される一つの対象として考えていかれるように、今後の運営についてはいまの御指摘の点も含めて十分考えてまいりたい、こう考えております。
  196. 西田八郎

    ○西田委員 質問の趣旨を含めてということは、労働金庫というのは営利を目的としていないし、ほかに高い金利で貸し付けるわけじゃない。二銭八厘、せいぜい三銭ぐらいで貸し付けておるわけですから、その利ざやというものもきわめて少ないわけです。特に預貸率は、大蔵省の監督がきびしくて、八〇以上は絶対いけないというようなきびしいお達しも出ております。そうすると、労働金庫としては利子収入が非常に少なくなってくるわけですね。最近は金額がふえてきておるので、金額がふえればふえただけ、それだけまたコスト的要因が生まれてくるわけですから、どうしてもそれは採算が合わないというようなことで利益はあがってないわけです。そこへ高い利子を払って預かる、そして安い利子で金を貸すということになってくると、ますます利ざやというものは縮小していくわけですから、そこで、こういうことをするのなら、そういう労働金庫なら労働金庫協会を通じ、あるいは連合会を通じて利子補給をするというようなことをしたらどうかと私は言っておるわけですが、それも含めてということですね。
  197. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 含めてと申しましたのは、実はこの財形そのものの制度の一環としては、金融機関の特定のものを特別扱いにするということは、制度の性質からいって適当でない。ただ、御指摘の点もございまして、やっぱり勤労者のための持ち家、住宅ができるだけ円滑に建てられるということが主でございますので、その面では労働金庫がどういう役割りを果たすべきかということも十分考えなければいかぬ、そういう意味で労働金庫を今後どういうふうに活用していくかということを考えていくべきであろう、そういう受けとめ方でいまの御指摘の点も検討すべきであろう、こういうことでございますので、その点御了承いただきたいと思います。
  198. 西田八郎

    ○西田委員 結局、預けた金にたくさんの利子を払うか、借りた金から少なく利子を取るかの差だと思うのです。だから、市中銀行との均衡がとれなくて高い利子が払えない、利息がつけられないというなら、こっちのほうで少ない利子にしてやればいいわけです。貸し出しのほうを低い利率にしてやればいい。そういう点を十分ひとつ運営よろしきをいただきたいということを要望します。  次に、もう一つの財産形成の重要な要素といいますか、目的、目標になっておる家なんですが、これは先ほども大臣から御答弁があったのですが、家を建てるについてはまず土地なんです。しかし土地が簡単に見つからぬのですよ。そして安い土地は交通の便が悪いのです。そうすると、勤労者の財産形成だ、持ち家だということで持ち家は持ってみたけれども、いままでのところと違って通うに三倍も時間がかかる、あるいは四倍も時間がかかるということになるわけです。そうすると、家を持つがために結果的には自分のからだをすり減らすことになる。そういうことであってはならない。そこで、何としてもやっぱり土地の手当てということが問題になってくるわけで、当然土地を政府の力によってつくってもらえるというふうに理解しておったら、そうじゃなさそうだ。土地も含めて自分たちで適当にやれ、こういうことなんです。それならなかなか持ち家は持てない。そして、たとえば六百万円かかる家なら土地に約三百万以上の金を食われてしまう。これが現在の常識なんです。そういう土地についてどう考えておられるか。
  199. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、特に住宅建設にあたっては、御指摘のように土地の問題を解決しなければならぬ、この御指摘はまさにそのとおりでございます。ただ私ども、当初そういうことで事業団が住宅建設用地の先行取得までやるべきではなかろうかということで、実はいろいろ考えておったわけでございますが、御承知のように、政府全体といたしましては、建設省がいわゆる公営住宅の問題、あるいは一般的な民間住宅の建設、勤労者あるいは一般低所得者の、あるいは住宅金融公庫等を通じてやる場合等につきましても、一般的な宅地造成その他を推進するいろいろな計画、また現実の策を持っておるわけでございます。したがいまして、それとどうかみ合わせていくかということになろうかと思います。この法案でも、財産形成のうちで住宅建設の部門については建設大臣が所管の大臣として法律第四条で出てまいっております。したがいまして、労働大臣が中心になりますが、建設大臣とも十分連絡をとりながら、基本方針その他で、建設省のいまの住宅建設あるいは宅地造成等の計画と見合って、それとこの制度とどう結びつけてやっていくか、いろいろ事業団で具体的なあっせんその他もあろうかと思いますが、そういうことで具体的に解決してまいりたいと考えます。
  200. 西田八郎

    ○西田委員 それは当てになりませんな。そうすると何年かかってもできない。土地価格は値上がりする一方、全然宅地造成というものが進んでいないのが現状ではなかろうか。公団の住宅にしましても、年々住宅の家賃が上がるのは、主として土地の値上がりによる割り増しということに聞いておるわけです。そういうことになると、公団をもってしても土地がなかなか購入できないとなると、労働者自身が家を建てる、そういう場合に、自分土地をさがしてくるというようなことになれば、とてもじゃないができる相談じゃありません。そうすると、土地を用意せずに持ち家制度を進めてみたところで、これは私は成り立たぬのじゃないか。
  201. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 この法律でいま予定しておりますのは、事業主を対象に融資する、あるいは事業主の団体ということで中小企業の場合には事業主が集まって組織するたとえば協同組合その他の団体に対して融資する。したがいまして、個々の労働者の方が個別融資を受けて個々に土地をさがすことは非常にむずかしいと思いますが、そういう事業主を通じ、あるいは事業主の団体を通して融資をいたすことによりまして、その分譲持ち家住宅、こういうことになろうかと思いますので、そういう場合に、事業団としては、融資の場合にできれば建設省その他との連絡を密にいたしまして、土地のいろいろな情報の提供その他、できればあっせん等、これらも十分やってまいるというようなことで、できるだけ土地問題の具体的な解決を促進してまいりたい、こういうことでございます。
  202. 西田八郎

    ○西田委員 そうすると、そこでもまた企業主に非常に加担することになるわけです。いわゆる企業がそれぞれの企業の実情に応じて従業員住宅というものをそれぞれつくっておるわけです。それはいままでは会社のつとめ、義務のように考えて社宅というものを建ててきたわけです。しかし最近は、だんだんとコストが上がってくる、労務費も上がってくる、そこでそういう社内労働福祉というものはだんだん減らしていきたいというのがいまの企業主の考え方なんです。そこで、これは持ち家制度などと言っておるけれども、各企業では五年も六年も前から融資して持ち家制度を進めておる。それは年々自分たちが負担していかなければならない労働者の厚生福祉費用というものを減額する意味においてやっておるわけです。それにちょうどマッチするわけです。都合のいいものをこしらえてくれたということでそっちに肩がわりしてくる。金は預けませんぞということになってきたらどういうことになるのですか。そういう意味では、企業の社内労働福祉というものに対して非常にプラスになるけれども、労働者個人についてはプラスにならない。しかも、あなたのおっしゃるように、一人で申し込んで一人で建てることができないとするならば、何が労働者の財産形成なんですか。こんなおかしいことはないですよ。
  203. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 自主的に労働者がどういう形で資産の形成なりあるいは持ち家を持っていくかということは自由でございますので、この制度を活用するかしないかは、勤労者が自主的に判断してくださればいい、それが前提にあるわけです。そこで、現実には各企業が単なる従業員宿舎というようなことではもうだめで、やはり勤労者にたとえば福祉活動などの一環としてということもあろうかと思います、とにかく分譲住宅ということでなければ、住宅問題については今後もう解決にならない。単なる社宅に入れてどうこうということではだめだということで、現にいろいろなことがあるわけでございます。そこで、かたがたいままでの実情を見ますと、勤労者が個々で、たとえば金融機関を通じて住宅ローンを受けて、自分の持ち家をつくり得るという可能性は非常に少ないわけです。現実にないわけです。そこでこの制度を活用して、事業主のそういう力も合わせてともかく自分の家をつくるということができれば、まず一つの目的は達するのではないか。そこで将来、たとえば何か会社の分譲住宅ではあるけれども付属の住宅だというようなことがあるかもしれませんが、そこは将来こういった住宅の市場というようなことも考えられるのではないか。そこで交換とか、あるいは移るわけですね、そういったようなこと等も考えてまいれると思います。その基盤としてはやはり持ち家の住宅がともかくできる、現実にできるんだという体制にしてまいることがまず大事ではなかろうか。あくまでその選択は勤労者の判断による、こういうことで立て方というか仕組みを考えております。
  204. 西田八郎

    ○西田委員 その趣旨は十分わかるのですよ。わかるけれども、この法の運用ということを将来展望してみたときに、ほんとうにその趣旨が生かされるような方向であるかどうかということに疑問を抱くわけです。貯蓄にしても、これは社内預金の金利を下げずしてこっちに貯蓄さそうとしてもなかなか集まりっこないし、社債を持たすということになれば、それは利用される危険性が十分あるし、家は持ち家だといいながら、結局会社がそういうことをあっせんすることになれば、会社が当然建てるべき社宅の肩がわりだ、こういうことになってしまいはしないかということになるわけです。労働省の言われるのと私が言うのと全く反対のことで、悪い点ばかりをあげていくわけですが、そういう点で非常に心配するわけです。  時間がないけれども、若干認めていただきましてさらにお伺いをするのですが、最近は労働者の流動性が高まってきている。年功序列型賃金からいわゆる職能別賃金、仕事別賃金に切りかえる、こういう形の中で、職種が変わらなければ賃金が上がらない。日本の場合でも早晩そうなってしまうと思うのです。いま年功序列型賃金は残っていますけれども、労働が流動しなければ賃金が上がらない、収入がふえないということになるわけです。そういう場合に、持ち家というものが労働者の流動を阻害する要因になりはしないか、そういうことを非常に心配するのですが、その点についてどう考えますか。
  205. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 自分の家を持つということは、やはり勤労者のみならず一般的に、要するに住居を定めるわけでございますから、その意味で流動性を欠いてくることはいなめないと思います。ただ、この制度がある程度軌動に乗ってでき上がっていった場合は、こういった制度による持ち家というのが、特に市街地等におきましては高層分譲住宅になろうと思いますので、一つの勤労者財産形成制度による持ち家市場というような形のものもやはり出てくるのではないか。そこで全体の流動に伴いまして住宅の交換とかあるいは移転とかいうようなことも考えられてくる、将来そういうこともファンクションとして当然考えていかなければならないと思っておりますので、そういう意味で流動が阻害されることをそういう面から緩和していくような措置もあわせて考えてまいりたいと思っております。
  206. 西田八郎

    ○西田委員 私はその点を伺いたかったのです。せっかく家を持ったけれども、どうしても動かなければならない。企業の中でもよく動く者ほど早く出世するのです。そういう点からいきますと一といって家はやはり三十代には持ちたい、三十代というのは一番流動の激しいときで、一番家の持ちたいときです。この二つの矛盾をどう解決してやるかというためには、自分のつくったことばでまことに申しわけないのですが、ハウスバンク――血液バンクがあるように、家のそういうあっせんを、宅建業者やその他不動産業者にまかすのではなしに、財産形成の中でつくられてきた家というものをどこかで集中管理するというか、何かそういう方法で適当な家と交換する、あるいはまた一定の期間を定めて貸すとか、何かの方法をやはり考えなければ、せっかくの持ち家が持ち家にならないと思うのです。  それからもう一つ、いまアパートあるいはマンションというようなことを言われましたけれども、高層住宅の中の五階の一戸建てを自分の財産といったってこれは承知しませんよ。それにはまず労働者の家というものに対する意識革命からやっていかなければならぬと思う。そういう点についてどうお考えになっているのか、そういう点になると見通しは非常に暗いと思うのですが……。
  207. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 前段に御提示になりました構想は、私どももたいへん実効の上がるものだと思いまして、将来相当住宅もふえてまいった暁には、現実に勤労者の場合には転勤その他ございまして、従来話し合いで留守中ひとつ入っておってくれというようなことでやっておる事例もあるわけでございます。そういうものを組織的にやるといういまのハウスバンクと申しますか、そういうような機能を事業団等でもやっていくことが必要になろうかと思います。貴重なる御意見として伺っておきます。  それから、個々の住宅のあり方の問題でございますが、これはやはり市街地で土地の非常に少ないところ等につきましては、高層分譲ということも十分重点的に考えてやっていかなければならないと思いますので、住居に対しまする全体的な考え方の問題もありましょうが、現実には職住がある程度接近して、サラリーマンが家を市街地につくるということになると、どうしてもその高層分譲という考え方を導入しなければならないと思っております。
  208. 西田八郎

    ○西田委員 これはある会社に勤務しておる間の年限というものと、勤務を終えてからいわゆる老後の生活をするという、そういう老人ニュータウンといいますか、そういうものとのかね合いにおいて行なわないと、結局は持ち家だということでマンションの一角を買ってみたけれども、さあ五十五歳、六十歳になって定年が来た、ここで一生暮らすのかということになるとこれはたいへんだ。どこか空気のきれいな、もっと騒々しくないところへ行きたいという気持ちが起こってくる。その場合に、やはり老人ニュータウンというものがあって、そこにはそういう人たちばかり集まっておるところを一これは厚生省の仕事かもわからないけれども、並行して行なっていかなければ、この持ち家制度というものは、理想は高く掲げても実際には効果が薄いものになってしまうと思う。現在労働者の中でほんとうに家を持ちたいと考えておる人が大半だと思うけれども、それでは建てる能力を持つ者は幾つかというと四十過ぎてからだと思うのです。それは、それ以上に条件のいいところはもっと早くから建てておるところもあるかもしれませんが、大体四十を過ぎてからでないと着手できない。そうすると、もうあとわずかというところで、マンションを買ってどうなるだろうということになってくると思うのです。これはいまの労働者の感覚からいけばそうだと思う。十年たてばどう変わるかは別ですよ。しかし、それは年をとったらやはりそこには住めぬということになってくると思います。そういう点はアフターケアとして十分考えていかねばならぬと思うのですが、そうするためにはこの事業雇用促進事業団でやられるということに問題がある。財産形成をここまで本腰を入れてやるのなら、どうして財産形成のための事業団を特設されないのか。そうしてそこへ金をどんと財政投融資、資金運用部のほうから持っていけばよい。  現在、事業団にこういう家を建てたりするための融資は幾ら出されておるのですか。
  209. 住榮作

    住政府委員 雇用促進事業団で、現在、住宅とかあるいは福祉施設とかあるいは職業訓練の融資を含めまして百八十七億が来年度の予算に――その百八十七億のうち住宅関係が百六十七億に予定されております。
  210. 西田八郎

    ○西田委員 そうしますと、私推算してみたのですが、いまかりに十万人の労働者が家を建てたいというふうに思う。そこでこの人たちが、土地を別にして、とにかく三百万円の家を建てたとすれば大体三千億の資金が必要なんです。逆に現在、それでは労働省が言うからしようがない、協力してやろうじゃないかということで、月五千円ずつ年額六万円の貯金を百万人の労働者が契約してつくったとしても、このお金は六百億しか集まらない。結局、全体の労働者の必要とする資金の二〇%くらいしか、これを全部投げ出しても満たせないわけです。そうだとすると、そこへ事業団資金が百六十七億ですか、これでは何にもならぬ、これくらいの金では焼け石に水です。事業団事業団として貸し付けの住宅を現在やっておられる。だからその事業団のほうの融資はそれでいいじゃないですか。そうして、こっちでほんとうに財産形成をしたいというのなら、それにやはり別な財団というか事業団を設けて、そこで運営をする。そうして、その運営をするのに、この間も私がその質問を申し上げたように、失業保険金の積み立て金もあるわけです。その他労働者が分担しておる金は相当あるわけですから、本腰を入れるならそれを持ってきて、それで最後はこうして埋まっていくという計画のもとで先行投資をするということでなければ、ほんとうに財産形成にはならないと思うのです。ひとつ大臣から答弁してください。
  211. 野原正勝

    ○野原国務大臣 将来の問題としましては御指摘のようなことにぜひしたいものだと考えます。実はこの勤労者財産形成の最初の出発にあたっては、やはり独立した財産形成事業団を設けようということで、中小企業退職金共済事業団と発展的に一緒になりましてやるならば、あそこも十分活用できると考えたわけでございますが、まだどうも機が熟さずして、ついに新規の事業団の設置を見ることができなかった。しかし、これは新規の強力な事業団を設けたいという願望は、事務当局かねてから非常に強く考えております。したがって、この出発にあたっては、一応雇用促進事業団の中でやらせますけれども、いよいよこれが相当のものになったときにはひとつ、ぜひそういうことにいたしたいものだ、これはわれわれの将来の願望でございますが、そうしてそのことによって飛躍的に勤労者の財産形成、住宅建設の問題が軌道に乗る。当然これは国からももっと金を出してもらって、土地の先行取得も必要でございましょう。そういうことの構想も最初あったわけでございますが、遺憾ながらどうも中途はんぱに終わった。この点は非常に残念でございますが、まあ初めから万全を期して満点で出発ということはなかなか容易でない。そこでこの辺のところでまずスタートとしてはしかたなかろうということで、はなはだ残念ながらこの程度になったわけでございます。その辺は御賢察をいただきまして、ひとつ何とか出発させていただきたいということをお願いしたいと思います。
  212. 西田八郎

    ○西田委員 賢察せいと言われても、賢察し過ぎてほんとうは困っているのですよ、大臣。ですからひとつ、うんと力を入れてもらって、そして労働省はこれにかける――ほかにもかけてもらわねばならぬものがたくさんあるからたいへんかもしれませんが、財産形成は重点政策としてやっていく。こういうことで今後やはり土地問題、それから労働者がする預貯金のメリットの問題、それから別途事業団の創設、こうした問題が非常に大きな問題として出てくると思います。したがって、何とか壁の中に指一本突っ込める穴をあけた、こうおっしゃりたいのだろうけれども、その穴をふさがぬように、その穴をぐっぐっと労働省の力で広げていって、そして向こう側に飛び出していただくように、ぜひとも努力をお願いいたしまして、時間が多少超過したようですけれども、私の質問を終わります。
  213. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 次に、寺前巖君。
  214. 寺前巖

    ○寺前委員 時間もなんですから、二、三のこの法律案が持っているところの性格と疑点についてだけお聞きしたいと思います。  第一番目の疑問点は、はたしてこれが勤労者の財産づくりを促進するところの法律案としてなっているのかどうか。これが私はこの法律案に対する賛否の一番基本だと思います。法律案に出てくる事実からいいますと、まず勤労者がここへ出てきます。それが企業主を通じて金融機関に預託をするということが出てきます。また今度は、事業団を通じて預託の面と家をつくるという問題が出てきます。どこかの会社につくってもらってそれを自分の持ち家にする、こういう諸関係がこの法律では出てくると思う。雇用促進事業団の問題は一応横へ置いておいて、その間に出てくるものを見ると、まず勤労者、会社、金融機関、そして建設業者か民間デベロッパー、この種の問題が出てくると思うのです。これの一つ一つについて、この法律によってその一つずつがどういう位置を占めてくるだろうか、私は少し考えてみた。  まず第一に銀行。銀行はこれによって明らかに預金者がふえる。そして、大体三分の一ぐらいを持ち家制度のほうに回すという計画、三分の二は他の資本に貸して銀行としての事業をやる。考えてみたら、銀行は損をするどころか、新しい預託者を持ってその事業の拡大をやっていく。私は、この法律によって銀行はそういう位置を占めると思う。これが一つです。  それから第二番目に会社です。会社はどういう位置を占めるだろうか。会社のほうは、今度は個個人がその会社を通じて預託をする。したがって会社は、先ほどの話じゃないですけれども、社内預金の場合には会社の中の運転資金として使えるが、今度の場合は、預託を通じて出てくる問題というのは、住宅という一分野についてそれを労働者に返していくという役割りの位置を占めさせてもらっておる。しかし同時に、会社を通じて納めさせるということによって、個々の労働者に対して積極的に預金をしなさいよという拘束力、指導性を発揮していく役割りをしていくだろう。ほんとうに家がほしいのだったらもうちょっと社内預金もしなさい、そうしたら、両面から住宅がいけるじゃありませんか。社内預金を促進させる積極的な意味をこれと同時にあわせて持ってくるだろう。だから、会社自身もこのことによって一つも損をしない。労働者を家をつくるために積極的にその会社で働かす、拘束をさせていくという積極的な新しい役割りをするだろう。私は、会社はそういう性格を持っておるだろうと思う。  第三番目に民間デベロッパーといいますか建築会社。これはきちっと保証されたところから家をつくってくれということにおける安全な住宅建設の地位を占めることができる。民間デベロッパーは住宅建設の新しい分野をここに開拓することができる。建築業者もめでたしめでたしという新しい分野ができる。  最後に、一番最初の問題になるところの労働者はどうなんだ。勤労者はどうなんだ。勤労者の場合にはまず預託をする。百万円までその利子については課税がかからない。しかし考えてみたら、せっかく貯蓄をしても、その利子と物価の最近の上昇とを計算に入れてみたら、物価上昇が四十四年から四十五年にかけて前年比八・八%ということになると、貯金をして金の値打ちは下がってしまうという結果が明らかに生まれてくる。若干利子の課税対象からはずされたとしても、決して財産としてふえるという預金にはならない。住宅の面についていうならば、確かに別の分野で住宅建設というものの一つの資金源ができることは事実だろう。しかし、先ほど西田さんがここで言っておられたように、会社が従来厚生事業としてやっていたのを、逆に自分でもっとやりなさいという促進のほうに使われていく。そう考えると、労働者としては得策は一つもないじゃないか。  私は、この四つの分野を見るときに、一番大きな利益をあげるのは結局銀行じゃないか。だから、むしろこの法律の持っている性格は、銀行やあるいは気ばって仕事をさせることを促進する役割りをする会社に、その資本づくりの促進法案という性格を持つんじゃないかと思いますけれども大臣はいまの分析を一体どういうふうにお考えになりますか。
  215. 野原正勝

    ○野原国務大臣 なかなかおもしろい御分析だと思いますが、問題は、しからば勤労者が財産を形成する、自分の家を持ちたいという願望、しかし現実にほとんどの勤労者の方々が貯金もしております。現在貯蓄の気持ちは非常に旺盛なんです。それはなるほど物価も上昇しておりますので、物価はできるだけ安定をして、金利の上昇以内の物価の上昇になっていればいいわけだと思うのでありますが、その点はまだいささか、率直な話が必ずしも十分ではないと思う。しかし、多数の勤労者が現に貯蓄も一生懸命やっておるという事実、しかも、貯蓄をしておるけれども、必ずしも政策的なそれに対する強力な援助は受けていないという事実もまたございます。そこでわれわれは、勤労者がせめて自分で家を持ちたいんだという願望を果たしてあげたい。それにはまず、勤労者が貯金をしたいということに対して、いままで必ずしも十分でなかった国の政策をそれに加えてあげて、できるだけひとつ勤労者の貯蓄を優遇してやる必要があるのではないか。  同時にまた、家をつくりたいという願望に対しては、やはり問題は、金融機関等から話を聞いてみますと、どうも住宅ローン等に銀行が出しておる金というものは非常に少ない。むしろそれ以外のところにみんな行ってしまうという状態はまことに遺憾である。できればそれは、自分で貯金をしたものに対しては、全部これを住宅ローンに向けさせる必要があると思うのでありますが、ただ問題は、住宅ローンになりますと、すべてこれは長期の金融になりますので、相手もその金融については多少渋る点もあろうかと思います。そういう点で、少なくとも最初は三分の一程度の金融は住宅資金の分として提供させる必要もあろうというふうなことで、それには雇用促進事業団やあるいは勤労者住宅協会を通じたり、あるいは生協等を通じまして家をつくる、あるいは中小企業の場合は、その協同体でもってひとつおつくりをいただこうというふうなことで進めておるわけでございまして、いままでほとんど何もしていなかった勤労者の貯蓄に対して、できるだけひとつ手厚い助成を考えていこう、こう思っておったわけでありますが、遺憾ながら必ずしも出発点にあたっては十分ではない。実は、貯金の貯蓄総額に対してせめてこれを免税にしろというのがわれわれの要求だったわけです。ですからこれは、勤労者財産形成促進法が出発しましても、われわれの当初の願望であった税額控除――所得がふえるに従って日本の経済は相当貯蓄もふえると私は思います。したがって、とりあえず年間三十万円ぐらいまでは免税にするとか、将来は三十五万なり四十万、やがては五十万にもなると思います。そういうぐらいの免税もしてあげたい。これを単なる利子非課税というふうな、どうも中途半ばなことで申しわけないとさえ思っておるわけですが、どうも最初のことでございますから、その程度でがまんせえといわれれば、やむを得ずその辺もしかたなかろうということで、まあ折れ合ったわけでございますが、しかし、決してこれで満足しているわけではない。むしろ今後の財産形成政策には、政府内部のあらゆる方面の理解ある協力を強力に望むわけなんです。ということで、とにかく勤労者のための政策にこれが役立つものであらしめたい。  そこで、さっき分析されましたが、一つ一つ反論を申し上げる気持ちはございません。ただ、勤労者に対する分は、われわれの気持ちはあくまでも豊かな勤労者の安定した生活の実現、それにはやはり貯蓄が大事だと考えております。ましてや、日本の経済は、幸いなことにいろいろいわれておりますけれども、まだよその国に比べますと、インフレの状態も必ずしもそう悪いわけではない。それから、物価の上昇もしているとはいいながら、小売り物価が上がっておるのであって、必ずしも卸売り物価等はそう上がってはいない。まだまだくふうのしようもあろう。これからの政策の目標をそこらに置くならば、物価政策も必ずしも上昇を食いとめることも不可能ではない。まあしかし、ここはあくまでも勤労者のための財産形成の政策を考えておる段階でございますので、われわれもそういった面は今後も主張すべき点は強力に主張しますけれども、とにかく大多数の勤労者の方々に理解をされて、これは喜んでもらえるんじゃないか、もし十分でなかったら、これをますます十分なものにするように皆さま方の御鞭撻や御指導をいただきたいものだと考えております。
  216. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、大臣の見解で明らかになったことは、勤労者の財産づくりの促進をするというのが法案のねらいだけれども、一番肝心のところは、結局貯金の分野でいうならば、それは百万円までの利子に対する課税はしないというけれども、実際の貯蓄と物価との関係を見ていった場合には、決してこれは上回っていいものになるということの保障は一つもいまの回答の中にはないでしょう。これは明らかなんだから、現実なんだから、結局貯金をして金の値打ちは下がっていくというのが実態なんだから、ここのところは財産づくりの一番基本のところがくずれている。家のほうはどうだということになると、家のほうもこれによってはたして保障していくことになるのかどうか。自分の住む家がこれで保障されていくのかどうか、これも保障ないですよ。  私はそこで、今度出された問題で、具体的に次に聞いてみたいと思うのです。私はこれをやられる以上は事業計画がちゃんとあると思う。これこれの人が平均このくらいのお金を納めてこのくらいの金額になるだろう。そうするとこのくらいの金額のときに、こういうふうに金融機関から雇用促進事業団が金を借りて、そうしてそれがどういうふうに家づくりのほうに回っていくかという事業計画があって、必ずこういうふうにしてみせますという確信ある計数がなければ、金を入れてください、家はつくってあげますよ、こう言ったって、信用なるかならぬかということになるとたいへん問題だと思うのです。残念ながら私この事業計画を知らないのですよ。  それで、これは四十七年の一月からお始めになりますけれども、この最初にお金を入れ始めた人が、いつから家を建設したい金を借りられる段階にくるのですか。ちょっと説明してくれませんか。
  217. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 いまの御質問でございますと、貯蓄をした人と、それから持ち家を取得する人とがリンクされてお考えでございます。もとより貯蓄の中には持ち家の取得のための貯蓄もございますから、そういうケースがないわけではないのですけれども、このシステムは、財産形成の中身といたしましては貯蓄、それから持ち家、こうなっておりまして、貯蓄それ自体が即財産つくり、こういうことを観念いたしております。  そこで、この制度によってどの程度の人が貯蓄をしていくであろうかという点でございますが、先ほどもお答え申し上げましたように、新しい制度でございますから、見通しがたいへんむずかしいのでございますけれども、前提を置きまして、毎年五十万人ずつ当分の間加入していく、そして一人当たり年間平均六万三千円程度、現状いろいろ含めまして貯蓄をしていくであろうというふうに考えます。そうしますと、初年度は百五十八億円程度でございますが、五年間の累計といたしましては三千三百億円ぐらいの財産形成貯蓄ができ上がるであろうというふうに考えております。これに対して三分の一の資金を十年の元利均等償還で雇用促進事業団が借り入れまして、そして平均三百五十万円程度の融資を二十五年ぐらいでやるというようなことを考えましたときに、最初でございますから五年間で二万五千戸ぐらいの程度になる。その先にいって戸数は大きくなるであろうというふうに思うわけでございます。  それから、一人の勤労者がどれくらいの貯金をして家を取得するかということでございますが、これは個人に対する融資ではないわけでございまして、事業団あるいは事業団から事業主が融資を受ける、あるいは日本勤労者住宅協会が融資を受ける、そして持ち家を建てまして分譲する、こういうことになります。  ただ、そういった分譲する現在の勤労者の住宅につきましては、御承知のように大体いま東京近郊で三LDKで五百万ないし六百万程度の価格になっておりますから、そこでその程度のものを割賦償還で受け取る場合にどういう程度のものになるかということになるわけでございますが、その原資としてこの財産形成貯蓄を使う場合もありましょうし、あるいはさらに自分のほかの貯蓄を使う場合もありましょうし、割賦償還の場合には事業主が援助をする場合もありましょうし、それはさまざまであろうと思います。単価としてはその程度のものが予定されるわけでございます。
  218. 寺前巖

    ○寺前委員 それは、せっかく貯蓄をする――金は貸してもらえるそうだ、持ち家制度もできるそうだということで、積極的に貯蓄が始まると思うのですよ、さっき大臣が言われたとおり。貯蓄というのは、本来貯蓄だけでいったら物価上昇よりも悪いのだから、損だという問題がある。問題はそうじゃない、やはり家の問題だと思うのです。その点では大臣が言われたとおりです。そうすると、自分が貯蓄したものを、家を持つ制度としてはたしてそれが使われるのだろうか、いつになったらもらえるだろうか。大体これは先ほど言われた話だと、年五十万で始めて平均六万何ぼ、そうするとざっと三百五十億ですか、三百何十億になりますね。そのうちの三分の一をそっちのほうに回す。三分の一回すと、たとえば百十億ということになってくるとどうなりますか。金融機関から雇用促進事業団との関係の利子と、それから回すところの関係の差の問題が出てくるでしょう。運転資金で出さなければならぬことになるでしょう。結局あそこへ五億と一億の金をほうり込んで、運転資金をつくっていく。その利子の差額があるんだから、大体一億で二百五十万か三百万か、そのくらいのさやを運転資金でつくっていかなければならぬ。そういうことを考えたら、一年でできる仕事というのは、計算からいくと二千戸くらいにしかならぬのと違いますか。それだけの人が納めたとしても、そのくらいの数字になるのと違いますか。
  219. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 先ほどお答えいたしましたように、初年度はしたがいまして非常にわずかでございまして千五百戸程度にとどまるわけでございますが、それが五十万ずつ累積をしていきますと、五年間までの累計をとりますと二万五千戸になり、さらにそれは将来非常に大きなものになる、こういうわけでございます。
  220. 寺前巖

    ○寺前委員 だからぼくは、この事業計画というものは、持ち家制度をつくってやるのだというけれども、実際問題としては期待はずれのものになる。この事業計画には少しずさんさがある。もしもそういう宣伝をしていったならば、結局会社のほうは気ばって金は集めるけれども、期待はずれのものになっていく可能性があるということを一つは心配するということです。  それから、ちょっと時間もあれですから、その金の運用上の問題で疑点をちょっと聞きたいと思うのですが、雇用促進事業団が失業保険の金を使って運転資金として運用して、五億入れてそのさやの差額を埋めていくというやり方をやるわけでしょう。そうすると、失業保険の制度というのは失業保険者の問題じゃないですか。そこから出発する問題でしょう。それが全然違うところの性格、要するに住宅建設の利子補給、利子と利子とのさやのところに金を使うために運用資金の利子からつくっていくということは、ぼくは失業保険をかけている人に対する冒涜だと思いますがね。これを聞きたいのが一つ。  それから、もう一つは公務員の場合です。公務員はこれを使うわけにはいきませんね。そうすると共済組合になるわけでしょう。共済組合のほうは、その利子補給のための計画というのはどういうことになっているのですか。明確に計画があるのですか。こっちのほうは、一般財源からと失業保険から入れますよ。共済組合のほうはどういうふうになりますか、ちょっと聞かしてください。
  221. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 雇用促進事業団は、いま先生御指摘のように、金融機関等が受け入れた勤労者財産形成貯蓄の一定割合を借り入れまして、そして建設資金として融資するわけですが、いまおっしゃいましたように、逆ざやを解消するために失業保険特別会計から出資を行なうこととしております。これは失業保険特別会計からそういう目的に使用するために出資を行なったという点について御指摘でございますが、事業主及び勤労者の大部分の者が失業保険の適用を受けておりまして、しかもその融資を低利で行なうということは、失業保険の福祉施設としての趣旨にマッチするものだというふうに私どもは考えておるわけでございます。ただいま御指摘がありましたように、一般会計からすべてが行なわれるということがもとより望ましいわけでございますが、財政の都合等もありましてこういう予算になっておりますが、ただ御承知のように、失業保険特別会計では、余裕金がございますと資金運用部資金に預託をするわけでございまして、資金運用部資金に預託をするも、あるいはこのような形で雇用促進事業団に預託をするも、元本が減らないという点では同じでございまして、資金運用部資金に預託された場合には一般の財投計画の中でこれが処理される。ここに預託された場合には、少なくともその金につきましては、間違いなく逆ざやの補てんに充てられるという意味において、ベターではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。  なお、公務員につきましては、御指摘のように、民間の一般の体系とは異にいたしておりまして、この法律でも共済組合でこれの運用をするということになっておるわけでございます。そこで、これらの資金の利率等につきましては、いまだ決定いたしておりませんで、今後この辺を解決していくということになっておりまして、いずれにしましても、財形貯蓄が受け入れられますのが昭和四十七年の一月一日からでございます。実際に融資が動き出しますのはなおその先になるということもありまして、公務員関係につきましては、来年度予算編成の過程でその点を十分検討いたしたい。所管が人事局あるいは自治省と分かれます関係もありまして、労働省といたしましては、とりあえず雇用促進事業団関係のものについて措置をいたした、かような経緯になっておるわけでございます。
  222. 寺前巖

    ○寺前委員 公務員の関係でもやはり四十七年一月からやるのでしょう。それじゃあなた、同じように計画を出さなんだら、事業計画はないということにひとしいじゃないですか。片手落ちじゃないですか。ぼくはおかしいと思いますよ。事業計画を立てるときにはきちっと、この法律はちゃんと両方やるようになっておるのだから、なっておる以上は、計画をちゃんと出してこそ、初めて責任ある執行だと思いますよ。その準備がまだやられてないままに法律が出されている。そうして四十七年の一月からやっていくんだ。私は無責任だと思いますよ。
  223. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 民間の場合、つまり雇用促進事業団に調達いたします資金の関係につきましては、失業保険特別会計等から出資をいたしましてそのような運営が確定をいたしているわけでございますが、公務員につきましては、やはり共済組合に資金を調達してやるという点は明らかになっておりますが、これについてどう措置するかという点は、現段階で申し上げれば、雇用促進事業団で予定されているような金利との見合いにおいては、その利子補給分だけが差ができるということになりますけれども、そのままでは適当ではございませんので、近い将来においてどう措置するかにつきましては、財政的な措置も伴うことでもございますので、来年度予算で処理をいたしたいというふうに考えているわけでございます。  ただいま御指摘の、それじゃどうして四十六年度予算にその点を計上したかという点でございますが、この予算は、政府から出資をいたしまして、それを運用してその余裕金をもって将来利子の補てんに充てるということを考えておりまして、本年度からそれを受け入れて運用するほうが将来の利子補給のためにも有益であるという考えで、ことし受け入れることにいたしたわけでございます。
  224. 寺前巖

    ○寺前委員 私は正直いって、いまの説明は理解に苦しみます。やはり公務員の場合だってちゃんとした事業計画に基づいて予算を組んで、こういうふうにしてやるのだという保障がなければ、この法律は四十七年一月から執行するということを何ぼ書かれたってそれはだめだ。裏づけが不明確だ。私はこの問題はちょっと重大な問題だと思います。  それから、もう時間があれですから、もう一つ制度上の問題として基準局長にちょっと聞いておきたいのですが、労働者の受け取った賃金を天引きしていくというような制度というのは、これは労働基準法の二十四条の精神から見てこれは正しくないやり方だ。そういう制度をこの中に導入してきている。これは私は、労働者の基本的な権利の問題として、資本家の干渉を受けない立場を確立する上から、この精神をおかしていくところの内容になる。これはちょっと重要な問題だと思うんですが、その辺の見解はどうです。
  225. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 この貯蓄をいたします場合に、御指摘のように事業主が賃金から控除をいたしまして、それで勤労者が財形貯蓄を結んだ契約に基づいて勤労者にかわって払い込む、こういうことになるわけです。(寺前委員「理屈はね」と呼ぶ)理屈というか、そういう仕組みに考えております。そこで、貯蓄をやるかやらぬかは勤労者の自由意思によるわけです。そうした場合に、今度は個々の勤労者が事業主を通じてやって、その事業主が賃金から控除してというときには、いま御指摘の基準法の二十四条の規定に従ってその手続を踏むということにいたしておるわけです。したがいまして、二十四条自体は、事業主が天引きをする場合にその弊害が起こらぬということが保障されるというたてまえで特例措置を書いておるわけですから、あの特例措置によりまして協定を結ぶということが前提になるわけでございます。したがいまして、協定が結ばれないというときには事実上事業主は控除できない。したがって、代行して払い込むということも不可能になると思います。したがいまして、あくまでも前提として基準法の手続が先行して、それと個々の勤労者の財産形成貯蓄が並行して行なわれるということをたてまえにしております。
  226. 寺前巖

    ○寺前委員 だから、したがってそういう場合は法律の適用外になってしまうわけでしょう、天引き制度のそういう契約ができ上がらない場合には。この法律の適用外でしょう。ということは、逆に言うたら、この適用、要するに勤労者の財産づくりをそういう法律で促進させるというのだったら、そういう制度をやることによって拘束してしまうのだから、二十四条の精神をおかす役割りをする、だから私は重大だということを言っている。
  227. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 私は、この法律のたてまえ、私どもの考え方は、勤労者が勤労者財産形成貯蓄をやることは、勤労者のために有利だと自分で判断をしたときに行なわれるというふうに前提として考えるべきだと思うのです。もしこの減税制度がなかりせば、貯蓄をいたしましてもそれだけの恩典は受けないわけです。それを選ぶのか、ほかのもっと有利なのを選ぶのかということは、勤労者の判断でございますから、それを選んだ場合、そのあとの手続の問題といたしまして、自分が行ってやるということではなくて、勤労者が正式に賃金から控除してやるということをはっきりさせると恩典を受けられるわけです。そうすることによって恩典を受けたいと思う者はその手続をとるということが前提になっておりますので、強制してこれをやるということにもならないと思いますし、勤労者の意思に反して事業主が控除して代行してやるということにもならない、こういうふうに考えております。
  228. 寺前巖

    ○寺前委員 もう時間があれですからやめておきますけれども、私はこの間から基準法の問題を次次やっているわけですが、ほんとうに労働者の基本的権利を守る立場から言うならば、天引きをしたり拘束されるもとにおいて保障していくというやり方は、正しいやり方でないと思いますよ。そういう意味で私は、この問題はちょっと重要な性格を持っている法律だと思いますので、再検討する必要があると思います。終わります。
  229. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 次回は明後十八日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十九分散会