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1971-02-23 第65回国会 衆議院 社会労働委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年二月二十三日(火曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 倉成  正君    理事 伊東 正義君 理事 小山 省二君    理事 増岡 博之君 理事 粟山 ひで君    理事 田邊  誠君 理事 大橋 敏雄君    理事 田畑 金光君       有馬 元治君    小柴彦三郎君       大石 武一君    梶山 静六君       唐沢俊二郎君    斉藤滋与史君       中島源太郎君    松山千惠子君       向山 一人君    山下 徳夫君       渡部 恒三君    川俣健二郎君       小林  進君    後藤 俊男君       島本 虎三君    山本 政弘君       古川 雅司君    渡部 通子君       寒川 喜一君    西田 八郎君       寺前  巖君  出席国務大臣         労 働 大 臣 野原 正勝君  出席政務委員         労働大臣官房長 道正 邦彦君         労働省労政局長 石黒 拓爾君         労働省労働基準         局長      岡部 實夫君         労働省労働基準         局賃金部長   藤繩 正勝君         労働省婦人少年         局長      高橋 展子君         労働省職業安定         局長      住  榮作君         労働省職業安定         局審議官    中原  晁君         労働省職業安定         局失業対策部長 遠藤 政夫君         労働省職業訓練         局長      渡邊 健二君  委員外出席者         通商産業省繊維         雑貨局紙業課長 宇賀 道郎君         参  考  人         (雇用促進事業         団理事長)   堀  秀夫君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十九日  辞任         補欠選任   島本 虎三君     阪上安太郎君   古川 雅司君     渡部 一郎君 同日  辞任         補欠選任   阪上安太郎君     島本 虎三君   渡部 一郎君     古川 雅司君 同月二十日  辞任         補欠選任   山本 政弘君     辻原 弘市君   古川 雅司君     矢野 絢也君 同日  辞任         補欠選任   辻原 弘市君     山本 政弘君   矢野 絢也君     古川 雅司君 同月二十二日  辞任         補欠選任   小林  進君     辻原 弘市君   古川 雅司君     矢野 絢也君   寺前  巖君     谷口善太郎君 同日  辞任         補欠選任   辻原 弘市君     小林  進君   矢野 絢也君     古川 雅司君   谷口善太郎君     寺前  巖君 同月二十三日  辞任         補欠選任   古川 雅司君     鈴切 康雄君 同日  辞任         補欠選任   鈴切 康雄君     古川 雅司君     ――――――――――――― 二月十九日  勤労者財産形成促進法案内閣提出第四五号) 同月二十二日  最低賃金法案小平芳平君外一名提出参法第  二号)(予) 同日  福祉年金大幅引上げ等に関する請願宇野宗  佑君紹介)(第九〇一号)  医療事務管理士法制定に関する請願外六件  (久保田円次紹介)(第九〇二号)  同外二件(佐々木秀世紹介)(第九〇三号)  同外四件(塩谷一夫紹介)(第九〇四号)  同外九件(中山正暉紹介)(第九〇五号)  同(森喜朗紹介)(第九〇六号)  同(小川半次紹介)(第一〇四七号)  同外百四十件(小金義照紹介)(第一〇四八号)  同(小峯柳多君紹介)(第一〇四九号)  同外二件(砂田重民紹介)(第一〇五〇号)  海洋戦没者実態調査促進に関する請願外一件  (安倍晋太郎紹介)(第九〇七号)  同(谷垣專一君紹介)(第九〇八号)  同(田中正巳紹介)(第一〇五三号)  美容師法の一部改正に関する請願柳田秀一君  紹介)(第九〇九号)  看護婦不足対策に関する請願江田三郎紹介)  (第九一〇号)  同(江田三郎紹介)(第一〇五二号)  栄養士管理栄養士必置義務等に関する請願  (島本虎三紹介)(第九一一号)  同(粟山ひで紹介)(第一〇四五号)  医療保険制度の改革に関する請願阿部助哉君  紹介)(第九一二号)  同(竹下登紹介)(第九一三号)  労働災害以外によるせき髄損傷者援護に関す  る請願千葉七郎紹介)(第九一四号)  同(八百板正紹介)(第九一五号)  同(小金義照紹介)(第一〇四三号)  失業対策事業存続に関する請願川崎寛治君紹  介)(第九一六号)  同(柳田秀一紹介)(第九一七号)  同(柳田秀一紹介)(第一〇四六号)  はり、きゅう、マッサージの健康保険取扱手続  き簡素化等に関する請願早稻田柳右エ門君紹  介)(第九一八号)  同外一件(地崎宇三郎紹介)(第一〇五四号)  日雇労働者健康保険改善に関する請願川崎寛  治君紹介)(第九一九号)  清掃事業地方自治体直営化による転廃業者の  補償救済に関する請願島本虎三紹介)(第九  二〇号)  同(伊藤宗一郎紹介)(第一〇五一号)  べーチェット病患者救済等に関する請願(松平  忠久君紹介)(第九二一号)  せき髄損傷者に対する労働者災害補償保険の給  付改善に関する請願(小金義照紹介)(第一〇  四四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月二十日  がん予防法早期制定に関する陳情書  (第一九号)  看護婦不足対策に関する陳情書外一件  (第二〇号)  老齢者医療保障制度確立に関する陳情書  (第二一号)  建設国民健康保険組合に対する国庫補助等に関  する陳情書(第二二  号)  同(第七九号)  保育所充実に関する陳情書  (第二三号)  失業対策事業存続等に関する陳情書外一件  (第二四号)  同(第八七号)  老人医療費無料化に関する陳情書  (第二五号)  同外一件(第八  九号)  国民健康保険療養給付費国庫負担金の一部地方  負担反対に関する陳情書  (第二六号)  同(第七  八号)  老齢福祉年金併給限度額引上げに関する陳情  書  (第二七号)  老齢医療保険制度の創設に関する陳情書  (第二八号)  精神障害者対策に関する陳情書  (第二九号)  国民年金法の一部改正に関する陳情書外一件  (第七七号)  国民健康保険組合運営強化に関する陳情書  (第八〇号)  医療保険財政調整に関する陳情書  (第八一号)  社会保険国民年金事業に従事する職員の定数  削減中止等に関する陳情書  (第八二号)  老人福止対策強化充実に関する陳情書  (第八三号)  社会福祉施設整備に関する陳情書外一件  (第八四号)  失業対策事業存続に関する陳情書外四件  (第八五号)  災害救助措置整備充実に関する陳情書  (第八六号)  結核対策強化等に関する陳情書  (第八八号)  原爆被爆者援護法早期制定に関する陳情書外  一件(第九〇  号)  カネミ米ぬか油中毒症患者救済等に関する陳  情書(第九一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  勤労者財産形成促進法案内閣提出第四五号)  労働関係基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 倉成正

    倉成委員長 これより会議を開きます。  勤労者財産形成促進法案議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。労働大臣野原正勝君。
  3. 野原正勝

    野原国務大臣 ただいま議題となりました勤労者財産形成促進法案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上ぼます。  近年における目ざましい経済成長に伴って、わが国勤労者賃金水準は年々大幅に上昇しつつある反面、貯蓄住宅等資産保有の面では、まだかなり貧弱であることは、争えない事実であります。したがいまして、今後においては、勤労者資産充実にもっと各方面の努力と関心が向けられなければならないと考えるものであります。  現に、勤労者の多くは、将来に備えて、営々として貯蓄につとめ、また、持ち家取得等に非常な苦労を重ねております。このような勤労者負担を緩和し、さらには資産充実を促し、真に豊かな安定した勤労者生活を実現するためには、労働条件改善、物価の安定等基本的施策充実強化をはかることが必要であることは言うまでもありませんが、勤労者がみずから進んで行なう貯蓄への努力に対して、直接に政府援助を行なう道を開くこともきわめて重要と考えるものであります。また勤労者の自主的な努力によって行なわれます貯蓄について、その一部が立ちおくれの著しい住宅建設に役立つような仕組みを設け、政府がこれを援助することも必要であると考えるのであります。  さらに、勤労者住宅保有を進めるためには、現に多くの企業従業員に対する持ち家援助を行なっているかんがみ、その協力を得ることが。現実に即し、かつ、効果的なやり方であると考えます。  このような観点から、西ドイツ等の先例に学ぶとともに、わが国実態に即した勤労者財産形成政策について研究を重ね、今回この法案提出した次第であります。  次に、この法律案内容について、その概要を御説明申し上げます。  第一に、この法律は、勤労者預貯金有価証券持ち家等資産を保有することを促進することにより、勤労者生活の安定をはかり、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的としており、この目的の達成に資するため、国及び地方公共団体は、勤労者について、貯蓄の奨励及び持ち家取得促進するための施策を講ずるように配慮するとともに、労働大臣は、関係大臣とともに、勤労者財産形成に関する施策基本となるべき方針を定めるものとしております。  第二に、勤労者金融機関等契約を締結し、三年以上の期間にわたって定期的に、賃金から控除する方法により、事業主を通じて、預貯金預け入れ、金銭の信託または有価証券の購入をし、その預け入れ等の日から少なくとも一年間は、払い出しまたは譲渡を行なわないこととするものを勤労者財産形成貯蓄として、勤労者がこれを行なったときは、租税特別措置法で定めるところにより、所得税の課税について特別の措置、すなわち、元本百万円までにつき、それから生ずる利子等を非課税とする措置を講ずることにしております。なお、この場合、その手続等について事業主協力を求めることとしておりますす。  第三に、勤労者持ち家建設の推進をはかるため、雇用促進事業団は、事業主及び事業主で組織された法人並びに日本勤労者住宅協会に対し、勤労者分譲住宅建設資金を、貸し付ける業務を新たに行なうこととしております。この場合に、雇用促進事業団はその資金を調達するため、勤労者財産形成貯蓄契約を締結した金融機関等に対し、協力を求めることができることとしております。  なお、事業主は、勤労者持ち家取得を効果的に推進するため、必要に応じ互いに協力するようにつとめるものとし、国及び地方公共団体は、この場合、事業主に対し、必要さ助言、指導等援助を与えることとしております。  第四に、勤労者財産形成政策基本方針その他の勤労者財産形成促進に関する重要事項調査審議するため、労働省に、勤労者財産形成審議会を置くこととしております。  なお、この制度は公務員にも適用がありますので、その場合の特例、すなわち、預け入れに伴う控除の手続各種共済組合役割り等についても規定しております。  その他、この法律案においては、労働大臣が行なう調査等に関する所要規定を設け、また、船員に関する特例を置くとともに、その附則において、関係法律について所要整備をしております。  以上申し述べましたとおり、この法律案は、勤労者がみずから進んで財産形成につとめる場合に、事業主協力と、国及び地方公共団体援助とによってこれを促進し、勤労者生活基盤をより強固なものにしていこうとするものであります。  以上この法律案提案理由及びその概要につきまして御説明申し上げた次第であります。  何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。      ――――◇―――――
  4. 倉成正

    倉成委員長 この際。参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  雇用促進事業団における業務運営に関する問題調査のため、本日、雇用促進事業団理事長堀秀夫君に参考人として御出席を願い、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 倉成正

    倉成委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。      ――――◇―――――
  6. 倉成正

    倉成委員長 労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。  山本政弘君。
  7. 山本政弘

    山本(政)委員 東壜株式会社というのがありますけれども、これは自動製びんメーカーで、業界では中堅企業だという話であります。倒産前の従業員が約五百名、組合員は約四百名でありますけれども、これが製びん業界設備投資の過大、そういうようなことで、あるいは乱売というような事情があって、経営状態が思わしくなくなってきた。同時に大手需要先に対する従属関係を非常に深めてきたというようなことで、その後の経過の中から四月十七日に倒産をしたわけであります。この東壜労組背景の中には東洋ガラスという会社がありまして、この東洋ガラスというのは実は不当労働行為等で十件近い問題を起こしておる、それがいずれも労働委員会あるいは裁判によって敗訴になっておる、そういうたいへんな会社でありますけれども、それが実は背景に介在をしておる、そして今日に至っておるわけでありますけれども、四月十七日に会社倒産をした直後に、労働組合としては当然全員解雇になるかもわからぬそしてその結果、失職をすることによって組合員生活基盤が大きく動揺する、そういう展望に立って、最低限の生活保障だけはしたいということで、会社側としては倒産と同時に、一時の混乱で会社に迷惑がかかっても生産の再開努力するということであったので、破産による企業閉錯という最悪の事態になれば、これは退職金を中心とする経済的な諸条件をできるだけ有利にするようにしようというようなことで、生活を防衛するといいますか、そういうことで基本方針を組み立てたわけでありますけれども、どうもその後会社側の態度というのが非常に不法であるということであります。  四月十八日に、倒産した翌日に実は会社側組合とで団体交渉を持った。そのときに一つは、今後の労働条件一切については労使協議の上決定する。第二番目には、組合活動に必要な食堂、寮、社宅、浴場その他厚生施設の利用を認める。第三番目には組合役員及び組合員職場立ち入りを認める、これが四月十八日であります、倒産の翌日そういう覚え書きを取りかわしたのですけれども、それにもかかわらず、会社が数日後にこの覚え書きというものを実は破棄した。そうして支払い能力をたてにとって全員自宅待機を命じ、その間六〇%の賃金保障を行なうということで一方的に言明をして各職場に立ち入り禁止を通告したわけであります。  これがいきさつでありますけれども、第一番目にお伺いしたいのは、一般に、会社人員整理をする場合には使用者の恣意的なあるいは主観的な方法をとらないという、そういう私は信義上の原則があると思います。もちろん正当な理由がある場合には、全員解雇ということは許される場合がある。しかしその場合でも、ただ使用者側の恣意的なあるいは主観的な方法によって解雇すべきではないかと思うのです。そうしてこれによりますと、四月十八日に実は覚え書きをかわしておる。会社側は、覚え書きだから、それは協定ではないからこれに縛られる必要はない、こう言っておるんだけれども、倒産が十七日、その前後は私は事態としても非常にあわただしいような状況があったと思う。その中で行なわれた団交の際に覚え書きとして双方が取りかわしたものが拘束力を持つのか持たないのか、その点をどうお考えになっておるか、労働省として。
  8. 石黒拓爾

    石黒政府委員 一般論としてお答え申し上げたいと存じます。具体的事案裁判所に係属してございますので、具体的事案についての判断は差し控えたいと思いますが、一般論といたしましては、労働組合使用者代表者の間で、労働条件等について合意ができました場合に、これが文書になされ、代表者が署名または記名捺印いたしました場合には、その題が協定であろうと覚え書きであろうと、その内容と形式に従いまして、これは労働組合法上は労働協約の効力をもつというのが一般論でございます。
  9. 山本政弘

    山本(政)委員 いまのような一般論としてそういう御答弁をいただいたわけですけれども、会社が数日後そういう協定を破棄をした。そしてその後に六〇%の賃金保障すら困難だという事情で、東洋硝子株式会社川崎工場出向させることになった。で、組合員がそれを拒否をした。拒否をする理由としては、私が調べた範囲では、東壜労働者というのは三十七歳から三十八歳で平均四万少しばかりの賃金をもらっておる。それが六〇%の支給ということでは生活ができない。しかも、九時から五時まで拘束されるということになると、これは生活ができないと思うのです。そういうことで、実は就労せよというのを就労しなかったということで全員解雇というものが出たわけですね。その点について、平均四万ちょっとだとすれば、六〇%なら二万少しです。そういう中で就労しても生活はできないということになれば、自然ほかの方法をとらざるを得ない。いまアルバイトに行っても、かなりの金額がとれると思うのです。そういう場合に、就労しなかったということに対して、労働者のほうに責めがあるのかどうか、この辺はどうなんです。
  10. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 一般事業主責めに帰すべき事由によって仕事が行なわれないという場合には、その就労期間中に、当然事業主基準法二十六条に基づきます手当を支給するということに相なると思います。いまお話の、いろいろな事情から他の事業場に行って働くということについては、特別にその間にいろいろな話し合いがない限りにおきまして、強制的には就労させるということにならないと思います。
  11. 山本政弘

    山本(政)委員 そういう中で出向させられる。その出向について、実はいろいろないきさつがあるわけであります。これは全員にその労働条件を提示し、そして賃金なり職種なりあるいは労働時間なりを話し合いをしないで、一方的に何人かの人を出向させる。しかも、その出向させるいきさつについては、酒食の供応といいますか、あるいは個別的に当っていって、そして勧誘するというような方法でやったようであります。これは日にちも場所もわかっておりますけれども、別に申し上げる必要もないと思いますので申し上げませんけれども、その中で六名の人かそれに応じて――実際は七名でありますけれども、応じている。そうして一人の人は、川崎に行って、そこの工場長と会って、そしてその労働条件が、初めに勧誘されたときと違うので帰ったわけです。その場合に、その人は、帰ったからというわけで解雇の対象になり得るだろうかどうだろうか、それが一つであります。  それからもう一つは、本来ならば、組合とそういう覚え書きをかわしたのですから、私は拘束力を持つと思うのですすれども、その場合に、組合にあらかじめそういう話し合いをしないで、個別に引き抜きをやった。そうして川崎工場へ行くようにしたということは、覚え書きに反しはしないだろうか、この二点についてお考えを聞かしてもらいたいと思います。
  12. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 お話のように、ある会社休業業期間中に、休業しておる職員につきましてほかの事業場出向を命ずる、それを拒否するというか、受け入れないという場合でございますけれども、一般論といたしまして、休業中にはまだ雇用契約はあるということでございますので、その雇用契約に基づいて、たとえば同一の会社のほかの工場出向というようなことの場合には、その従業員もその会社の中で働くことでございますから、当然就業しなければならないと思います。ただ、直接関係のない、いわゆる他会社のほうに参るということになる場合には、必ずしもその就労に応ずるという義務はないというふうに考えております。よって、そのことを理由とする解雇ということが正当な理由であるかどうかは、それだけでは判断できない。一般的な解雇問題として考えていかなければならないと思うわけでございます。  なお、覚え書きの違反かどうかの問題についてはこれは先ほど労政局長一般論として申し上げましたとおり、協約が締結されておる場合には、当然その協約の条項に違反するかどうかということで判断すべきだと思います。
  13. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると、つまり東壜という会社があって、その東壜の中で労使の間で覚え書きを取りかわしたわけですね。ですから、別会社東洋ガラス川崎工場へ行くときには、当然事前に話をして、そして出向さすべきだし、もちろん個々に折衝して、そしてそれを引き抜いて川崎工場へ持っていくということは不当であるし、同時にそれを拒否することによって解雇理由にはならぬ。同時に、解雇するための基準一つとして、出向することを拒否したら要するに就労意思がないものとして解雇基準にすることも誤りだと思うのだけれども、その点はいかがですか。
  14. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 通常の場合に、解雇事由につきましては就業規則その他できまっておるわけです。特にこういう場合に、仕事がなくなった。要するに現に休業中であるという場合でございますが、いまおっしゃったように、他会社にとにかく就労するということは、新たにそこと雇用関係を結ぶということになるわけですから、これは本人の自由意思によるべきものと思います。したがいましてこの東壜休業休業、その休業がもう続かなくなってほんとうに解雇していくということならば、そういう形で解雇を当然すべきだろうと思います。
  15. 山本政弘

    山本(政)委員 これは会社側のほうから出た書面で、もちろん裁判所に出されておりますが、労働基準法百十条、これによれば即時解雇に関する規定だと書いてあるのですけれども、そうであるかどうか。私は、条文にはそう書いてない、報告義務ですか、そういうふうに書いていると思うのだけれども、報告義務ですね。これは間違いございませんね。
  16. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 これはいまおっしゃるように使用者労働者基準法の施行に関しまして行政官庁あるいは監督署からいろいろな報告を求められたときにはそれに従って報告しろ、こういう規定でございます。
  17. 山本政弘

    山本(政)委員 ありがとうございました。つまり私の申し上げたいのは、そういうずさんな考え会社が持っておるということを実は証明したいわけです。百十条が即時解雇に関する条文だなどということをぬけぬけと法廷に出すような神経が一つはわからぬ。そういう考えを持っている会社だから、そういう正常な労使関係というものを破って――実は東壜というのは柏の工場再開をされて人手がほしい、だから個人的に、組合があるけれども、組合の中のものを個別にやって、そして第二組合を片一方でつくりながら、そしてなおかつ人が足らぬから第一組合の人の勧誘をする。しかも人がほしいけれども、組合役員あるいは活動家は要らぬということでこれは排除するというのがいまのここの考え方だろうと思うのです。そういうあり方というのは正常な労使関係であるかどうか、これはどうですか。
  18. 石黒拓爾

    石黒政府委員 第二組合云々のことは私ども承知いたしておりませんが、東壜の紛争の経過を見ますると、労使双方、特に使用者側におきましても非常に労働問題の処理には不なれである、近代的労使関係というものについての十分な認識が欠けておった点があるように感じております。
  19. 山本政弘

    山本(政)委員 この会社はその後六月四日と五日に女子全員と特別雇用者を即時解雇をしているわけです。即時解雇をする場合には解雇の手当をすぐ出すべきです、即時解雇ですから。それから解雇を予告した場合には三十日間の余裕があるということ、そういうことですね。ところがこれはすぐに払っておらぬわけです。そして年末近くになってこの人たちに解雇手当を出しているようであります。そういう出し方は労使の慣行といいますか、基準法に従ってノーマルであろうかどうであろうか、その点はどうなんでしょう。
  20. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 おっしゃるように基準法二十条でいまの規定をしているわけです。解雇する場合には三十日間の予告期間を置け、それで即時にする場合には三十日分以上の解雇手当を支払え、こういうことになっております。当然その時点におきまして手当が支給されるのが通常の場合、また法もそれを予定しております。
  21. 山本政弘

    山本(政)委員 私が実はきょう質問したのはいま労政局長から会社側労使関係に非常にふなれだという話があったけれども、もちろん不なれかもしれない、不なれかもしれないけれども、しかし不なれにしてもさっき申し上げた基準法百十条なり、それからこの即時解雇の場合の手当にしても、これは非常にプライマリーな点だと思うのですが、それすらやっておらぬところは、不なれというのを通り越して、あの場合には会社側の故意あるいは不法にしか、つまり労使慣行を無視してやっているとしか思われないわけで、そういうことで、つまり例証をずっとあげて確認してもらいたいから質問しておるわけですけれども、いま製びん業界は四直三交代制というのが実はノーマルなあり方だと思うのです。それで、これもここに出ておりますけれども、会社側としては四直三交代制をとっているのは日本硝子とそれから山村硝子にしかすぎないというふうに言っておる。しかし私が調べたところでは、そのほかに広島硝子、大和硝子、石塚硝子、第一硝子、これは倒産をしましたけれども、そういうところが実は四直三交代制をとっておる。そして三直三交代制をとっている会社側の例としては野崎硝子、大久保製壕、市村硝子、それから東洋ガラス、そういうふうに、相当多数存在するというふうに言っているのですけれども、問題はここにも実は会社側の作為があるような気がしてならない。というのは、四直三交代制をとっているところが現実に多いわけです。多い上に、自動製壜協会という協会のメンバーに入っているところはほとんど四直交代制をとっておるわけです。三直三交代制をとっているところはいわゆるアウトサイダーで、これは小企業と言えるところなんです。ただ一つ例外は東洋ガラスという三大メーカーの一つが三直三交代制をとっておる。しかもその東洋ガラスというのは不当労働行為とかなんとかで製びん業界では著名な会社であるというようなことになれば、四直三交代制というのが製びん業界でとられているむしろノーマルな考え方だと思うのです。むしろ労働省にそういうことを聞くことは無理なことかもわからないわけです。しかし業界として通常これは、他の職種も同じだろうと思うのですけれども、そういうことが行なわれておるときは、これは協定上のことにも関連をするかもわかりませんけれども、やはりそういう慣行というものは尊重しなければならぬと思うのです。これはなかなか御答弁がしにくいかもわかりませんけれども、私は個人的にはそう思うのです。その辺は一体どういうふうにお考えになっておるのか。
  22. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 交代制の問題につきましては、基準法上は直接交代制そのものにつきまして基準を定めたものはございません。ただ就業規則ではっきりさせろとか、あるいは労働契約の中の明示事項等にいたしておるわけでございますが、現実にどういう交代制をとるかは労使間が自主的にきめるべきもので、三直、四直という、そのどちらがどうだということは、にわかにちょっと申し上げにくい問題ではなかろうかと思っております。
  23. 山本政弘

    山本(政)委員 私は、この東壜の争議を見てみますと、そうして組合の人たちにもけさ会いましたけれども、いまやっている人たちは全員就労意思があるわけですね。就労意思があるにもかかわらず、そして会社側としても人手がほしいにもかかわらず、組合役員並びに組合活動家を排除しておる。そういうことで、現実に人がほしい職場、柏工場では社員募集をやっているわけです。しかし、そういうことで、かたくなに組合役員就労活動家就労というものを拒否をしておるのですけれども、そのために、拒否方法としてたいへんおかしなことが実はあるわけであります。と申しますのは、これは名前を出していいと思うのですけれども、鈴木という人がおりますけれども、この人は、要するに解雇基準の中で、いろいろ基準のメルクマールがありますけれども、その中でマイナス四点という点数をつけられてやられておるわけです。第一次にこの人は解雇されているわけです。本人には解雇の通知が行ったわけであります。ところが、東壜の総務部長が、その後に、解雇通知を受けた後に本人を呼びまして、就業しろ、こう言っておるわけです。そして説得の結果本人は就労したわけです。この点数によれば、解雇というのは少なくともマイナス四点以上のはずなんだけれども、しかしこの人はマイナス四点になっておるわけです。事情を聞いてみますと、この解雇基準がつくられたのが、実はこの人を解雇をして、いろいろ係争になってきたので、にわかにこれをつくって、解雇基準はこういうことでありますということで出したわけです。そこでこの人はマイナス四点以上あってはいかぬので、マイナス四点というものをつくってここに当てはめておるわけです。しかし、それはそれとして、偶然か何か知らぬけれども、組合役員全員が全部失点になっておるわけですよ。そういうことはちょっと常識じゃ考えられないと思うのです。しかも組合の中の人たち、あるいは解雇になった人たちの中には、在職二十五年とか十三年という人たちがおる。二十五年も働き、また十三年も働いておる人たちが、言われるように勤務成績が悪かったとか業務の熟練度がなかったということは、本来なら言われないと私は思うのです。それならば二十五年も働くわけがないだろうし、働かせるわけもないだろうし、考えてみれば、全部そういうことでにわかづくりにこういうものをつくっているような気がしてならないけれども、しかし、いずれにしても、組合役員なるがゆえに、それから組合活動家になるがゆえに、全員それは排除していく。そうして組合員の中で活動家でない者は全部個別折衝によって就労を勧誘しているという事実というものについて、これは私はふなれだとかなんだとかいうことは言えないと思う。まさにこれは不当労働行為じゃないだろうかと思うのだけれども、その点はどうお考えになりますか。
  24. 石黒拓爾

    石黒政府委員 私どもは解雇された人の一々の評定が正しいものかどうかにつきまして判断する材料は持ち合わせておりませんが、ただ、お説のように執行委員十二名全員がすべて解雇に該当したというふうにされておることにつきましては、これはわれわれの常識からいたしますと、異常なる状態であるという感じは禁じ得ません。
  25. 山本政弘

    山本(政)委員 もう一つ解雇基準をだれがしたかということで、実はここに準備書面があるのですけれども、東壜の砂町工場の、要するに解雇基準に基づいて解雇をした、その査定をした人の名前がここにあるのです。全部で五人ですけれども、この人たちは実は砂町工場に来たのは解雇の二カ月そこいら前なんですね。それまではほかのところにおった。その人たちが解雇基準をつくって、そして解雇の名前をずっとあげていった。ところが、二カ月足らずのときに、二百名前後の人たちを個別に査定をするほど接触をしてないはずです これは会社の重役ですから。一人は工場長工場次長、製造課長、製造係長、管理部次長という人で、それを指摘された。  指摘をされたところか、今度は急遽――急速というわけじゃありませんけれども、その後には、今度はその人たちは、この文書で読むと、柏工場は昭和四十三年十二月に操業したので、同工場従業員は大多数債務者会社北砂工場より転属したものであるから、従来北砂工場の役職にあった米沢、宇田川、その人たちは柏工場従業員について最もその事情を知悉しているものであって、基準の採点の評価に対する組合側のそういう反論というものは当たらない、こう言っておるわけです。  そうすると、こっちのほうは、砂町工場関係の人たちを、いま言った米沢とか宇田川とかいう人たちが、わずか二カ月のうちに査定をした。二カ月足らずのうちに全部その人物を知悉して採点をじた、こう言っておる。これはこっちに出しておるわけです。  反論されたときは、逆にこの人たちは北砂工場に長くおったのだから柏の人たちを採点をするのには何らおかしなところはない。こういうことなれば、あなたの聞いておる範囲では何かちぐはぐな感じをお受けになるでしょう。こっちの工場について知悉をしてないといって反証したら、実はこっちの工場については知悉をしているのだということは、何ら反証にならぬですよね。要するに、そういういいかげんなことをこの会社はやっておるのです。だから、どう考えてみても、くどいようだけれども、組合役員活動家をやはり排除するというだけのことしか考えてないような気が私はしてならないのだけれども、きのう何か団交が開かれたという話も私ども聞いたのですけれども、多少前向きに話が進んでいるのかと思ったら、そうでもないような気もするわけです。労働省のほうにそういうことで何かきのうの段階でおわかりになっているのかどうか、その辺の内容についてちょっと聞かしていただきたいと思うのです。
  26. 石黒拓爾

    石黒政府委員 私どもか承知しておりますところでは、労働条件等につきましては、双方の歩み寄りか非常に進んでまいりまして、残る点は解雇の問題だけである。それにつきましても、会社側がかなり柔軟な態度を出しつつあるので、団体交渉妥結の見込はかなりあるという報告を受けております。
  27. 山本政弘

    山本(政)委員 私は、ほかの問題は別としても、当面争点になっておるのは解雇の問題じゃないかと思うのだけれども、解雇の問題というのが片づいて、就労意思のある人たちを会社就労させる――これは、そのときの労働条件は別としても、そういう意思があるならばかなり進むであろうと思うのですけれども、その辺について労働省として、今後労使か円満に話し合いができるように、どういうふうな方向をおとりになる用意があるのか、その辺はいかがでしょう。
  28. 石黒拓爾

    石黒政府委員 私どもといたしましては、先般来この事件につきましては注目いたしまして、会社側をたびたび呼び出しまして、事情聴取いたしますとともに、若干の点につきましては、会社側に注意を与えることもいたしております。そういった私どもの助言というものを尊重されまして、両当事者が誠意をもって団体交渉を進めるということによって、当事者間の自主的交渉で円満に解決することを、現状におきましては強く期待をしております。
  29. 山本政弘

    山本(政)委員 最後に一つお伺いしたいのですけれども、いままで労働省に入った報告とかその他のことについて、資料とかそういうものに基づいて御判断になった場合に、私どもの見解は、会社側というものが労組との交渉を無視して、そして休職者に対して個人的に出社命令をするというようなことは、あくまでもこれは組合を無視したと思うのです。その点について私たち、これはたいへん強制的のようなことでまことに申しわけないのですけれども、会社の態度というのは不なれなものもあるであろうし、多分に不法な行為があるとお認めになるかどうか、この点はどうですか。
  30. 石黒拓爾

    石黒政府委員 会社側の態度をどう評価するかということを、私どもここで正面切って申し上げることはどうかと存じますが、ただいままでの、御答弁申し上げたところのニュアンスからおくみ取りいただきたいと思います。
  31. 山本政弘

    山本(政)委員 それでは、これで終わります。
  32. 倉成正

    倉成委員長 田邊誠君。
  33. 田邊誠

    ○田邊委員 きょうは、三つの課題について御質問いたしたいと思います。  一つは、労働基準に関する問題、特に女子労働に関する問題について、二つ目は、最近行なわれている公害防除に関連をして、公害の名のもとに、企業が立ちゆかないということで倒産ないしは解散をするということが行なわれておりますけれども、日本製紙にからむ企業解散というものが、はたしてこの種のものに類するのかという点に関する問題、三番目は、さきの予算委員会分科会において取り上げられました雇用促進事業団の黒い霧に関する問題この三つについてお伺いしたいと思います。  最初にお伺いしたいのは、労働基準法に関連をする問題でございまするが、つい最近、昨年の十月八日に東京商工会議所が労働基準法に関する意見というものを発表いたしております。基準法は、御案内のとおり、戦後いち早く制定をされて、いわば労働者を守るところの憲法として二十数年間施行されてまいったわけですが、言うならば劣悪な労働条件のもとで働いている日本の労働者にとって、この基準法があることがいかに大きなたてになってきたかということは言わずもがなであります。これは基準法の中でまだまだ十分守られていない点、基準法が完全に施行されていない点、こういったものを、どうやって完全に施行させるかが、戦後におけるところの労働者保護育成の立場からいって最大の課題だったということもおわかりのとおりだと思います。さらには時代の進展に従って、基準法についてさらに国際的なレベルから見て改正をすべき点があれは、当然いろいろ考慮していかなければならない点もわれわれはいま考えていいのではないかと思っております。  ところが、東商が発表いたしました意見というものは、そのほとんど大部分について、いまの労働基準法を実質的に後退させよう、実はこういう意見であることをわれわれは看過することはできないと思うわけであります。ただ一つだけ、通勤途上事故に対して労災の給付の対象としたほうがいいじゃないかという意見が私どもと一致する意見でありまして、これはさきの国会でもって、労災法の改正の際に論議になりまして、政府も今後十分検討しなければならぬ、こういうことになっておるわけでありまするから、言わずもがなでありまするけれども、この一点を除きまして、あとはほとんどが、いわばいまの労働基準法を改悪をしようという考え方に立っておるのでありまして、断じてわれわれは認めるわけにはいかないのであります。  その中で、特に留意しなければならぬ点は、女子労働者に対して実は各種の改悪を意図していることでございまして、特に女子労働が持つところの特異な性格について思いをいたしたときに、こういった意見を、いわば経営者の一つのグループであるところのものが軽々に述べることについては、私はいかがかと思うのであります。特に商工会議所という性格のものが基準法についてこういう意見を述べることについて、私は、これはまた一つの筋違いでないかとすら思っておるわけでございまするけれども、それはともかくといたしまして、この女子労働についてこれらの意見が書かれているというこの現実の状態を踏まえまして、われわれはひとつ行政当局も考え方を明らかにしてもらわなければならないというように思っておるわけであります。  まず大臣にお伺いしたいのは、この東京商工会議所が発表いたしましたところの意見について、あなたは一体どういう御所見をお持ちであるか。あとで内容についてお伺いいたしまするけれども、特に女子労働のそれぞれの問題について一体どういうふうにお考えでありますか。女子労働というものの性格について、一体どういう観点でとらえておいででありますか。ひとつ基本的な考え方について、大臣からお答えいただきたいと思います。
  34. 野原正勝

    野原国務大臣 女子労働については、これはあくまでも男女は別でございますから、女子には女性としての、男のできない役割りがございます。まず妊娠ということ、子供を育てるということ、それからやはり家庭生活の中心でございますから、そういった面では、男女同権ではあるが、同時に特別な任務を持っておる。しかし同時にまた、労働力が非常に不足時代になりましたので、御婦人の方々にもできるだけ勤労をお願いしたいということもございます。家庭生活と、あるいは子供を育てること、子供を生むことと、いかにして矛盾なく調和をはかっていくかということの配慮が絶対必要でございます。そういった点を私どもは考えて、あくまでも母体保護の立場を考えていくべきものだというふうに考えております。  そこで、東京商工会議所の主張を一応拝見をしておりますが、まあいろいろの面で男女は同じでなければならぬというからには、やはり勤労条件等についてもあまりにどうも甘やかしたことばかりやっておったのではいけないというような意味合いも含まれて、ああした御意見が内部にあったということを承知しておるわけでございますが、その点は労働基準法によって、しっかりと、女子労働というものを、いま申しましたような、いかにして女性の特質と両立し得るかという問題について、これからも十分先進国等の例も考えながら御検討願いたいというふうに考えております。  まあそういうような意見等がちょいちょいありましても、それを一々取り上げておるわけでもございませんので、そういう意見もあったかなということで、労働基準法の研究会等ではあるいは多少の参考意見にはするかもしれませんが、その程度である。基本的には何ら変わるところはない。労働省の態度は、あくまでも女性を守る、また女性にもできるだけの勤労をやっていただこうという考えでございます。その基本方針でございます。
  35. 田邊誠

    ○田邊委員 大臣も認識をされておるように、母体保護という特異な性格を持っておる女子労働者に対して、やはり適切な保護を与えながら、しかも就職の機会を広げてやる、こういうことが必要だということはお話しのとおりであります。で、現在商工会議所が言っておるように、女子労働者は甘やかされ過ぎているじゃないか、こういう意見があるようですけれども、現在の基準法からいって、日本の女子の労働者は一体甘やかされておるのですか、過保護過ぎておるわけですか。あなたはそういう認識でございますか。それとも、いやそうでない、適当な母体保護の観点に立って基準法は適切な措置を求めておるわけですし、そしてまたそれをにわかに改める必要はない、こういうふうにお考えでございますか、野原労働大臣、どういうふうにお考えでございますか。
  36. 野原正勝

    野原国務大臣 現在の基準法というものは、私もなかなかよくできておると思います。ですから、まだ多少改善を要する面もあるかもしれませんが、おおむね非常に女性の立場も十分に考え基準法であろうというふうに考えております。私、実は十年ほど前に共産圏を旅行しました。シベリア鉄道を歩いていましたら、線路工夫がほとんど御婦人でございます。どうもああいう共産主義の国があまりにも女性に重労働をさしておくことはどうかなとしみじみ見ておったのですが、工場なんかへ行ってみましても、女性の方もやはりずいぶん働いておるようでございます。非常に体格がいい。いつの間にか男性化しておって、あまり魅力を感じませんでしたが、そういう意味では、どうもみなそれぞれの国で情勢が変わっておると思う。中華人民共和国も見ましたが、これなども御承知のように女性の方々が無理な労働をしておるようでございます。これはしいられておるというより、むしろ進んでやっておるのでしょうけれども、やはりだんだん時代が変わって近代化が進んできますと、女性はそうした重労働から解放されるべきだ。特に農村では、私は、そのために農業の機械化、近代化を急ぐべきであるということで、もっぱらそのほうに力を入れたのでありますが、最近における農村ではどうやらあまり重労働は見られない。だんだんよくなってきております。したがって日本の経済の成長は、女性に対しても昔とはかなり進んでまいった、女性保護の立場は進んできておる。まだしかし、必ずしも十分ではないかもしれません。これは時代とともに大いに改善を加えていく必要があると思います。最近は家庭生活なども非常に合理化されて、したがってあまり大きな労働を要しないという面もございますから、そういった面はある意味においては余暇も出たわけです。時間もひまになった。したがって、テレビの前にすわって一日中遊んでおるよりも、ある程度は勤労のほうに御参画をいただきたいということも、これまた、労働力不足時代を生んだのですから――まあ甘やかしているとも思いませんし、また同時に、なかなかうまいぐあいに現在の基準法わが国の婦人に対する対策はできておる。しかしまだまだ問題がある。できるだけ女性は保護すべきである。大いに子供を産んでもらいたいという立場において、できるだけの配慮を加えていきたいというのが本心でございます。
  37. 田邊誠

    ○田邊委員 あなたの話の中で、特に社会主義の国で何かやっておられたのを見られて云々されるのは、これはもうちょっと研究してくださいよ。それは労働時間の問題とかいろいろ研究されないと、うわべだけでもって、重労働をやっているような認識を持つのはいささか労働大臣としては浅い知識だろうと思うのです。これをちょっと見てください。私も中国へ行ってよく見てきましたけれども、それで労働時間は一体どうなっているか、それから生理休暇はどうなっているか、有給休暇はどうなっているかということを私は研究してきましたから、ひとつあとでその見聞記をお話しいたします。  そこで、だいぶ女子労働者も体格がよくなってきたのですけれども、しかしまだ日本の女子労働者は家庭的な面からも解放されない、それからいまの通勤事情からいってもたいへんだ、しかもいわば家庭の中でで核家族化は進んでいますけれども、まだ親を見なければならぬ、こういういろいろな拘束が実はあるわけですね。二重三重の拘束があるわけです。そういう中で働いておるわけでありますから、いわばいろいろな面でたいへん苦労が多いわけであります。そこでひとつ、体格がよくなったというけれども、標準型の婦人少年局長に、いま大臣はそういうふうに言われましたけれども、女子労働の中で特に時間外労働の制限の問題と危険有害業務に対する就業制限の問題等、女子労働者に対してはいわば必要な措置がはかられていると思うのでありますが、これらは現在の状態の中でいわば適切な措置であろうと私は思うのです。これらについて、これを撤廃をしたり緩和をすることはにわかに私はやるべきでないと思っておりますけれども、あなたは日本の標準型の女子労働者の一番中核であります。あなた自身の体験から徴しまして、現在の女子労働者に対する基準法上のいろいろな保護規定なり適切な処置は必要であるであろうというふうにお考えでございますか。
  38. 高橋展子

    ○高橋(展)政府委員 お答えいたします。  基準法上の女子に対する保護規定といたしまして、時間外労働の制限と、いまおっしゃられました危険有害業務への就業制限の点がございますが、その両者とも女子の生理的な機能特に母性機能というものへの特別な配慮と、それからまた社会的な要素についての配慮が基点になって設けられたものであると存じます。  時間外労働の制限につきましては、御存じのとおり一日について二時間、一週につき六時間、また年間百五十時間以内ということになっておるわけでございますし、危険有害業務につきましても幾つかのカテゴリーがございまして、女子の就業を禁止しているわけでございますが、それぞれやはり諸外国の立法例あるいはILO条約等の規定を尊重して設けられた規定でございますし、大臣から申し上げましたように女子保護の基本的な規定といたしましてたいへんに重要なものであると認識いたしております。
  39. 田邊誠

    ○田邊委員 そこでいろいろな意見がいわれているわけですけれども、私は深夜労働禁止の問題についても、あるいはまた現在の日本の生理休暇の規定の問題についても、実施の面では、適正に行なわれているところもあるけれども、まだまだ十、分でないところもあるわけでありまして、私は労働省のいままでの指導についてさらに徹底をしてもらわなければならないというふうに思っておるわけでありますけれども、ひとつあとでもって、こういう際ですから、生理休暇の実施状態なり産前産後の休暇の実施の状態なりお聞かせをいただきまして、これがほんとうに適切に行なわれているかどうかということに判断を下したいと思っているわけでございますが、総体的に見た場合には、最近の実情というのはこれらの女子の必要な休暇なりあるいはまた深夜労働の禁止については、これは厳格に行なわれているというふうに判断をしてよろしゅうございますか。
  40. 高橋展子

    ○高橋(展)政府委員 女子保護に関する規定の実施状況につきましては、私どものほうで毎年女子保護実施状況調査というのをいたしておりますが、その調査の限りにおきまして、いまこちらにデータがございませんが、産前産後、生理休暇の取得状況あるいはその他の労使間で取りきめたところの女子保護のいろいろな方法についての実施状況でございますが、それなどはおおむね、産前産後につきましては規定の六週間を上回る休業が確保されているように記憶いたしております。また生理休暇につきましては、これもただいま手元に数字がございませんが、生理休暇を必要とする女子がその生理休暇を請求いたしました場合には、それが確保されているというような答えであったように記憶いたしております。
  41. 田邊誠

    ○田邊委員 もう一つは、国際的ないわば基準であるところのILOの中で婦人労働に関するいろいろな条約があると思うのですけれども、これが日本は一体どの程度批准をしておるのか。あるいはまた百十一号、百三号、百二号、八十九号等、いわば今後日本が批准を迫られている問題も数多くあると思うのでありますけれども、そういった点に対して一体どういうような態度でもって日本の労働行政を受け持つあなた方としては対処しようとしているのか。この点に対してもひとつお伺いしたいと思います。内容はわかっているからよろしゅうございますよ。
  42. 高橋展子

    ○高橋(展)政府委員 ILO条約関係につきましては、女子保護に関する条約で今後の批准が課題とされているものが幾つかあるわけでございますが、私どもといたしましては前向きの姿勢でこれらの批准の問題について検討をいたしたいと思っております。
  43. 田邊誠

    ○田邊委員 抽象的なお答えだけれども、御婦人だから少しまけておきましょう。  そこで最近、この労働基準法についての改正を意図して、昭和四十四年の九月から三年間の目標でもって、この基準法に対して改正に関する研究をしてもらおうという労働基準法研究会というものをつくっておる、こういうように聞いておるのでありますけれども、これは一体いかなる目的でもって、また終局の結論は一体どこに置いて、どういう観点においてこの研究会をつくられておるのか、現在の進行状態は一体どうなのか、総括的な面でけっこうですからお答えいただきたい。
  44. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 ただいま御指摘の基準法研究会は、一年前、四十四年九月から発足をいたしまして、それで今日まで三つの小委員会でいろいろ御検討いただいておるわけであります。目的といたしましては、基準法制定されましてから今日まで二十年以上の年月がたっておりまして、具体的に個々の規定がどのように施行されているのか、それが実態面でどういうふうな関係になっているかというような実情を、実態並びに法制的にどうなっているかということをまず研究すべきだということで、その研究会はまさにそういう実態を把握するという目的で発足をいたしました。  いままで三小委員会をつくりましてやってきておりますが、そのうちで安全衛生の問題につきましては、具体的にいまの安全衛生の諸規定と、それから最近の技術革新その他の問題との処理の点についての実態が、ある程度つかめてまいっております。そのほかの点については、まだほんの研究の緒についたところでございまして、いまのところ、実態をつかむべき資料をいろいろ御検討願っている、こういう段階でございます。
  45. 田邊誠

    ○田邊委員 基準法改正はもちろん基準審議会にはかるわけでしょう。あなたのほうは大体、一つの定見を持ってないようなことを言いまして、この種の、いわば私的な懇談会だとか研究会をつくりまして、これは三年を目途だというのですけれども、大体二年十カ月くらいは何か天のぬぼこをかき回すような研究をしているように見えて、最後のところへいきますと脱兎のごとく一つの成案を得て必ず労働大臣に結論を具申をする。それを受けて法改正に持ち込むというのが、いままでの手なんですよ。これは大体そういう手段なんです。これはいわば一つの隠れみのなんですね。私は、そういう形でもってこの研究会があるとすれば、これはたいへんな間違いだと思う。本来的に、現在の基準法がどう施行されているか、それから、その中でもってさらに改善をするものは一体どういうようなものかということについては、労働省自身が把握をし、労働省自身がそれに対するところの一つの定見をまとめていかなければならぬのであります。何も持っていない、私のほうは何も意見がないというようなことをいっておって、研究会でもっていろいろなことをやって、いよいよ最後になると、一つの意見ができた、これは第三者なり学識経験者が出した意見だから、有力な意見だから、これをもとにして改正をしなければならぬ、こうなってくると思うのです。いままで大体そうでしょう。大体そうだ。そういう機関にされては、はなはだ迷惑なんですよ。やはり労働省自身が、これらの問題に対しては、いままでの長い、二十三年にわたるところの基準法施行以来の経過を踏まえて、一体どうあるべきかということに対する労働省自身の意見をまとむべきだというふうに私は思っている。私がそういう質問をすると、それをまとめるための一つの手だ、この研究会がいろいろな意見を出しても、そのものでもって決してわれわれは盲従するものではありませんと言うに違いないのだ。けれども、いままでは大体そうだった。だから私は非常に危ぶむのです。現に、あなたいま、ただ単に何か調査研究してもらって、実態を把握してもらっている、こう言う。私が問題にいたしました東京商工会議所のこの意見の中にも、一番最後に、労働省労働基準法研究会においてひとつ積極的に検討してもらいたい。それからいろいろな細部についても、労働省労働基準法研究会においてこの点に関して十分な検討を行なわれたい。きわめて重要視しているのですよ。この研究会でもって、われわれの意見を取り入れて一つの結論を出してもらいたい、そういう場所だという認識を東商の人たちは持っておるのですよ。だから、あなた方が考えているような、いわば軽い形でもって、懇談会的にやっているというように世の中は見ていない。おそらく基準法改正に対する一つの方向づけをするだろう、そのレールの上に乗って役所は作業を始めるだろう、こういう認識をしているわけでして、すでに一年有半たっている、そろそろ私が言っているような形があらわれてくるのではないか。しかも形があらわれたときはすでにおそい。レールは敷かれたという形になるわけですから、そういった点で、私は女子労働者の問題を取り上げましたけれども、これはそれだけではないのであります。それ以外にパートタイムの問題もありまするし、あるいは監視または断続労働の問題もありまするし、交代制労働の問題もありまするし、休憩時間の問題もありまするし、いろいろな問題が実はこの中に出ている。中には、賃金通貨払いの原則の緩和についてなんという、大原則の問題についても何かこれを変えようというような動きがあるわけですから、こういった面について、いわば働く労働者の側に立ってその権益を守ろうという行政機関である労働省は、この際き然たる態度が必要であるというように私は思っておるわけでございますけれども、私の言ったことの中で間違いだと思う点があったら言ってください。私の言っていることで、それは田邊さんの思い違いだという点があったら、言ってください。ないでしょう。ありますか。
  46. 岡部實夫

    岡部(實)政府委員 間違いを指摘ということで、そういう点は特にございませんが、ただ私どもの考え方もちょっとこの際お聞き取りいただきたいと思います。  研究会自体には、実はいろいろ法曹関係の人、法律関係のそういう実務家の御出身の方もお入りいただきまして、もっぱら実務的、法制的に実態をまずはっきりさせたいということでやっております。基準法自体の改正問題につきましては、先ほど大臣が冒頭にお述べになりましたように、基準法労働者保護の立場から最も基本的な法制であることは私ども十分認識いたしておりますし、その施行についてもっと努力をすべきことも当然であります。そこで、この改正問題については、あくまでこれは慎重を期さなければなりません。そういう基本的な立場は貫いてまいりたいということを申し上げておきたいと思うわけであります。
  47. 田邊誠

    ○田邊委員 これは、私は東商の例を一応あげたけれども、私は別に東商をたたく意味で言ったのではない。しかし、いろいろな意見がこれから出てくると思うのですけれども、やはり基本的にはいままでの基準法のたてまえというのが貫かれながら、時代に即応した形で、より改善をはかる。特に女子労働については、その母体保護という特異な性格を没却することなく、十分それを生かしながら、なおかつ女子に対するところの就業の機会を広く与える、こういう基本的な考え方だけは貫いてもらいたいと思うのでありまして、先ほど大臣からの答えがあったとおり、現在の基準法はなかなかよくできているのでありますけれども、しかし、それらについて、より改善をすべき点がありとすれば、十分ひとつその立場に立って、労働者の権益を守るという観点から研究してもらうということで、にわかに、いま私が申し上げたような外部の意見について左右されることはない、こういうように認識してよろしゅうございますね。
  48. 野原正勝

    野原国務大臣 御指摘のとおりでございますが、何せ二十三年たっているということになりますと、過去を振り返り、新しい方向を考えて、一応労働基準法を研究会でお調べをいただいておるわけです。私どもはこれを改悪する意思はございません。むしろ、より一そういい基準法をつくって、時代とともに、大きくこれが日本の産業経済全体のためにも、また働く勤労者のためにも、これが全くいい法律だと喜こんでもらうようなものでなければならぬと思っておりますから、その考え方で、やはりここらあたりで一回ひとつ総ざらいをしてみようということもいいのではないかと思います。何でも改正すれば、改悪だ改悪だということもちょっとおかしいのでありますから、決して改悪を考えてないというふうに考えております。(田邊委員「そんなことを言ってない。だれが言っているのだ。」と呼ぶ)いや、ややともするとそういう議論が出がちでございますから、田邊さんはおっしゃっておりませんが、とかく非常に進歩的な、進んだ側からはややもするとそういうことを言いがちでございますが、決してそうは考えてないというふうに考えております。そういう方向で、しっかりと労働基準法は守るべきものは守り、また勤労者のためにほんとうにこれはりっぱなものとしてますます完全なものにしていきたいというふうに考えます。
  49. 田邊誠

    ○田邊委員 いまのは歴史的に残る大臣の発言だからよく踏まえておきますけれども、忘れないでもらいたいですね。  時間がないから次の問題に移ります。これは東京の赤羽にあります紙パルプの会社であります。日本製紙株式会社、資本金五億円がこの三月で会社を解散するという措置に出たことは、御案内のとおりであります。すでに二月の十二日の株主総会で解散の議決をしたと称しておるのであります。しかし私は、この日本製紙が解散をする理由というものがどうしても納得しがたい点があると思うのでありまして、ほんとうにこの日本製紙という会社は経営が成り立ち得なくなって解散せざるを得なくなったのか。いわば倒産一歩手前である、こういう状態の中で解散を余儀なくされたというふうにどうしても考えられないのではないかと私は思っておるのであります。この日本製紙が株主に対して、会社解散理由報告というものを出しておりますけれども、これを見ましても、最近赤字が大いにかさみ、そして倒産にならざるを得ない状態だということにはどうしても見受けられないのであります。確かにこの会社は昭和三十八年に倒産をいたしました。そして当時四十一億の負債を背負って、会社更生法によって更生計画を立てたという経験がございます。ところが、その後中小債権を六七%切り捨てたというようなこともございましたので、この七年間に負債は約十億になっておるのであります。あとは整理をいたしたのであります。あとは返済をいたしておるのであります。そして昨年の三月までは黒字決算を続けておった会社であります。最近は、原料高あるいはまた過当競争等いろいろな要素が加わって若干の赤字を来たしておりますけれども、しかしこの三十八年の倒産当時の状態と比べた場合には会社の状態は数段よくなっている、こういうふうに実は見受けられるのであります。この会社が今回解散せざるを得ないというところに立ち至ったというのは、他に理由があるのではないかと実は私は思っておるのであります。  この種の会社の状態から見て、いま私が申し上げたように、三十八年に倒産したという状態、その後かなり立ち直ってきた経緯、現在の状態、負債を十億ばかりかかえておるという状態、この会社倒産をせざるを得ない一歩手前まで来ているというふうに、あなた方は役所の経験から、他のいろいろな類似例から見てお考えでございますか。解散をしなければならないという事態に追い込まれているというふうに通産省では御認識でございますか。いかがですか。
  50. 宇賀道郎

    ○宇賀説明員 日本製紙の最近の経営状態につきましては、四十四年三月期で、売り上げ十六億に対しまして利益は約千七百万円、約一%強ということになっております。四十四年九月期には十六億の売り上げに対しまして約一千万円程度、したがいまして一%を下回るわけでございまして、紙パルプ産業全体の売り上げ高、利益率と申しますか、これは一つの経営の指標になるわけでございますが、これにつきまして通産省としていろいろ調査をいたしておりますが、対象企業は必ずしも一致しておりませんから直接的に比較するのは若干問題があるかと思いますが、紙パルプ十一社について大体調査しております。売り上げ高、利益率は三%ないし若干三%弱ということになっております。もちろん直接的な比較は困難でございますが、そういうような状態でございますから、必ずしも経営は好調ではなかった。四十四年をとってみますと好調ではないと言うことができるかと思います。それでは、倒産に至るような状況かどうかという点につきましては、ただいま御指摘のございましたように、三十八年に一回、会社更生法の適用を受けております。この時点で、負債につきましては数字がちょっと手元にございませんが、三十七年の六月-十一月期の売り上げ高は十三億九千四百万円でございます。当時更生法適用前に出ました三十七年の六月-十一月期の赤字は一億一千五百万円でございます。四十四年は黒字を計上しておったわけでございますか、四十五年三月期以降収支が悪化いたしまして、四十五年三月期の日本製紙の決算は、十六億円の売り上げに対しまして利益が二百九十万円、それから九月頃の、倒産といいますか解散前の状態でございますが、十六億一千万円の売り上げに対しまして三千四百万円の赤字でございます。十三億九千万円に対する一億一千五百万円という前の状態と比較いたしますと、計数的に見る限りは今回極度に悪くなっているということは認められないわけでございまして、問題は、今後長期的にわたる視点においてその会社を経営していくわけでございますから、その場合、あのような操業を続けていくということの長期的な見通しに立って、会社の経営者としては解散をするということに至ったのではないかというふうに考えております。
  51. 田邊誠

    ○田邊委員 あとで時間があれば言いますけれども、この会社は機械が非常に老朽化しているんです。これがまた問題なんです。いわば非常に能率の落ちているものなんですよ。これに対して何らの手当ても講じていない。私は、講じない理由があるのではないかと思うんですよ。機械の設置制限というものが四十四年まであったんです。老朽の機械が見返りとしてなければ、新しい機械を設置することができない、こういうものがあったんです。三十八年に倒産をした以後、大昭和製紙が株の大部分を握っておったわけです。大昭和製紙が機械を新しくする場合に、その見返りに老朽機械がなければならぬ。老朽機械を見返りとして新しい機械が入れられるという、このような制限規定から見て、この日本製紙の老朽機械に目をつけたのじゃないかという節があるわけです。したがって、非常に能率が悪い、当然利益が少なくなるような仕組みになっている。いうなれば今日を目指してほっておいたような形跡があるのじゃないかと思う。四十四年にこの制限が解除されて、いうならば、大昭和製紙にとってはこの日本製従というものの存在価値がなくなってきた。なくなってきたというのが極端であれば、薄れてきたというところに、私は、この会社が非常に低能率でもって生産がほんとうに上がっておらない原因があったのじゃないかというように思っておるのですけれども、この見方はうがちすぎていますか。
  52. 宇賀道郎

    ○宇賀説明員 ただいま御指摘がございましたように、通産省では紙パルプにつきまして、官民協調方式による調整をやっておるわけでございます。このうちパルプの段階につきましては、現在調整を存続しておりますが、抄紙機につきましては、四十四年以降着工するものにつきましては調整を行なわないということに方針を変更しておりますしたがいまして、現在時点では、スクラップ・アンド・ビルドというのは行なわれておらないわけでございます。なお、スクラップ・アンド・ビルドのいわば種としまして、大昭和製紙が日本製紙というものを傘下におさめたのではないかという御指摘でございますが、三十八年に傘下に入って以来今日まで、この日本製紙の設備をつぶしまして、そのかわりに大昭和製紙がどこかへつくったということの事実はございません。しかし、会社の傘下におさめる時点において、あるいはそういうようなことも念頭にあったかいなかわかりませんが、事実としましては、この日本製紙のものをつぶして、そのかわりに大昭和がいままでどこかにつくったということはなかったようでございます。
  53. 田邊誠

    ○田邊委員 したがって、いまあなたの御指摘のとおり、そういう意図があったから、いわばこの会社は利潤率等が向上しない大きな原因をつくっているのですよ。もっと経営を改善しようと思えば幾らでも改善できる余地が私はあったと思うのです。それをほっておいた経営の責任というものは、これはきわめて重大だと思うのです。それを何ら措置をしないでおいて、今度の解散という、こういう事態になったことに、私は実は大きな疑問を持たざるを得ないのであります。  しかも、この解散のもう一つの大きな理由というのは、何といっても公害対策がたいへんだということですね。一体、この日本製紙は、ほかの製紙関係会社に比べて、あなたのほうで握っておる資料から見て、膨大な公害対策のための設備投資をいたしておりますか。企業投資をいたしておりますか。どうでしょうか。
  54. 宇賀道郎

    ○宇賀説明員 会社が公害関係についてどういうように投資しているかというのは、現在時点でわれわれが聞いております範囲では、この会社の排水は東京都の公共下水道に流しております。月間三十万立方米ぐらいというように聞いておりますが、このため一立方米五円五十銭、ことしの一月からは若干値上げを要求されまして六円六十銭になるというふうに聞いておりますが、そういう代金を東京都の公共下水道に払いまして排水を流しておるわけでございます。それ以外に騒音防止といたしまして若干の設備投資をやったということは聞いておりますが、現在の時点におきまして、これまで公共下水道に払っております料金以外に、特段に排水関係で過去の実績としまして設備投資を行なったということは聞いておりません。  ただ問題は、立地条件でございまして、この会社が現在やっております主要品種、これは中しんと申しましてダンボールの原料になるわけでございます。その原料となりますのはSCP、セミケミカルバルブと申しまして、非常にきたない、よごれた段階の排水を出すものでございますが、いまの日本製紙は、このSCPから始めまして中しん原料に至るまで一貫生産を行なっております。  それでは、ほかに中しんの原料の生産はどういうところで行なわれているかといいますと、工場の一覧表の中には若干、草加でございますとかあるいは尼崎でございますとかいう工場もございますが、大半の会社は北海道等が主でございまして、そういう立地条件からいって、非常に悪い立地条件の中で操業を続けているということは言い得るかと思いますが、実績といたしましては、いま申しましたようなことでございます。
  55. 田邊誠

    ○田邊委員 したがって、SCP廃液を中心としたいわばここから出るところの排水問題について特別の施設をしておるのではなくて、中間の処理工場があるために、それに対するところの処理料金を月間大体百五十万払っていたというのが普通ですね。それ以外に、確かに四十年以降において六年間に約千四百万、排水浄化の設備が三千万かかっておるそうですが、これをいわば用水の再利用の形でもって必ずしも利用価値がないわけではありません。用水を再利用するわけです。そういう形で六年間に四千四百万、一年間に約八百万の施設をしているにすぎないのです。ところが、この解散の御報告という中に主としてあげておるのは、業績悪化によって改善の見込みが立たないということよりも、公害問題というのが大きなウエートを占めておるということを実は言っておるのです。昭和四十七年には工場排水最終処理場が完成する、そうなれば当然この最終処理料金が加算されていくということを言っておるのでありますけれども、いままでにほとんどこれに対するところの見るべき設備をしておらない。こういう状態の中で、これらの経費が必要だということを名目にして解散をするということは、まさに何か公害対策が時代的な要請であるということに籍口いたしまして、いわばこれに対するところの費用を生み出すことができないということで倒産をする、あるいは解散をする、こういういわば公害に名をかりた擬装倒産、擬装解散じゃないかという、こういう世論の反発を受けるのもやむを得ないのじゃないかと思うのです。これらの問題に対してくふうができないかといったら、私はできると思うのです。  さらに、いま課長から話がありましたが、立地条件が悪い。ところが、立地条件か悪いと言うけれども、この立地条件が悪いことかまた倒産理由なんですね。あすこの近くはどのくらい地価はしておるか知りませんが、たいへんな時価でしょう。約二万坪の土地があると聞いておるのですけれども、これが今度解散をされていわば売却をされるとなったらとうなるか。たいへんな――実は五、六十億と一応言っておるそうですけれども、あるいはそれ以上ではないかと私は思うのであります。そういう土地なんですね。一体、それならば、この土地の条件が悪いという――これは町の中にあって、排水についても実はいろいろと処理が必要だ、あるいは騒音についても必要だ、悪臭も問題だ、そういうことがありとすれば、それはそれなりに、工場を他に移す、いわばもっと安いところの土地を求めて移して、そういう中でもって環境をよくしながら仕事をすることは私は決して不可能ではないと思うのです。そういうことに対するところの努力もしないで、今回突如として解散に踏み切るということは、私はまさに世論に対して弓を引く行為ではないかというふうに思っておるわけでありますけれども、この点はどうでありますか。
  56. 宇賀道郎

    ○宇賀説明員 先ほど、会社がこれまで実績として公害関係にどれだけ経費を支出してきたかということを申し上げたわけでございますが、条件の変化は将来の問題といたしまして、御承知のように、この会社の使っております公共下水道は公共用水域の水質の保全に関する法律の荒川水域乙というところに出しております。この水質基準は四十二年にきまったわけでございますが、この段階においてはまだ公共下水道等についても終末処理場は完備していない。したがって、さしあたり暫定的にゆるい基準でけっこうであるということでBOD二〇というふうにいわれておりますけれども、このきびしい基準の適用を猶予されておったように伺っております。しかしながら、四十二年以来相当の月日も経過いたしまして、東京都としても荒川の下水対策をやらなければいけないということで、東京都の下水道局のほうから、あの付近にあります工場に対しては四十七年四年末に終末処理場をつくって水を流す。そうなれば、いまのような五円五十銭、あるいは一月からは六円六十銭ということで通報があったようでございますが、この料金ではやれないので、立方米当たり十円程度の引き受け料金の引き上げをしなければいけないという通貨かあったことは、これは特に日本製紙だけではございません。この地域全体の工場についてございます。それは事実でございます。十円といたしますと三十万立方米でございますから月間三百万円、年間三千六百万円ということになりまして、四十四年でこの会社の計上いたしました利益が二千七百万円でございますから、もしこれがさらに負担の中に上のせされるということになれば、要するに経営上の大きな圧迫の要因になるということは事実であろうかと思います。ただ、もちろん御指摘がありましたように、公害問題というのは、紙パルプ産業全体共通の問題でございます。特にこの会社の場合には、東京にございます関係上、きびしい基準を要求されて、コストアップの原因となったということは事実でございまして、その場合に、どこかよそへ移転するということか当然考えられると思います。この会社の場合にも、株主各位ということで通知の中でいろいろ候補地をさがした。しかし紙パルプ産業、特にSCPというのは非常にきらわれておると申しますか、汚水問題等をかかえておって比較的困難なため、適正な候補地を見出すことができなかったというようなことを理由にあげておるというふうに聞いております。
  57. 田邊誠

    ○田邊委員 あなたはそういうふうに言うけれども、あなたは事情を知らぬようだからそういう通り一ぺんのお答えになるのだけれども、実際はそういう経過を追ってないのですよ。合理化についても、生産の向上についても、いわば従業員に対して昨年の十一月くらいまでは協力を求めていた。そういうことを会社の社長から日本製紙労働組合委員長あてに言ってきた中においても、献身的に働いてもらった、非常にその点に対しては感謝しているという文言が載っておるわけですね。それが突如として十二月になってそういう解散通告になった。そういうことが内外に明らかにされていないのですよ。株主にしたって知りませんよ。しかも、実に脱紙パルプということで、マーケットの経営なり、マンションの経営なり、あるいはボウリング場の経営をやろうとしたけれどもやれなかった、と言うけれども、これだってこの文句を見てごらんなさい。実際に手をつげたのじゃありませんよ。何かやろうと頭の中で考えたけれども、どうもうまくいきそうもないということでやめちゃった。多角経営の問題については、私ちょっと意見がありますけれども、そういう努力をしてないのですよ。そういう努力の積み重ねの中でもって、最終的に解散なり倒産なりになったというなら話はわかるけれども、そうじゃないのですよ。わずか半年くらいで赤字がちょっぴりだ。あなたがおっしゃったように、三十八年とは質量ともに違うわけだ。そういうことの中でもって突如として解散したのは、これはあまりにも擬装倒産、擬装解散ではないか。私がいま言ったように、やはり製紙としてもやれるところの余地はいろいろある、こういうように私はいわざるを得ないというように思っておるわけであります。  さっき申し上げたように、この会社の社長は、大昭和製紙の専務であり、これが直接関連産業であるところの大昭和商事の取締役をやっておる、そして日本製紙の社長をやっておる、こういう状態であります。そういう中でもって大昭和の指示に従って、一にも二にも大昭和オンリーという形でもって七四%の株を持っておる大昭和の意向に従って今回解散をする、こういう挙に出たと私は思うのです。一体、会社倒産をして、大体退職金が七億から十億くらい払うというのですね。それから負債が千億、約十七、八億から二十億の清算に必要な金が要るというのでありますけれどもこの土地が五、六十億で売れたらどうします。土地の利用という面でいっても措置ができなかったかという、事後に問題が起こってくると私は思うのです。現代のことばをもってすれは、時代に即応しないという、みずから何かそういう考え方に立っておる。あるいはそれを、考え方は違うけれども、そういうことに名をかりて解散という措置に出たというふうにしかとれないのでありまして、これは全く社会的に許せない行為じゃないかというように思うのであります。  そこで、労政局長どうでしょうか。いまお聞きになったようないろいろな疑問があります。いろいろ実はただすべき点があるわけですけれども、こういう種類の解散なり倒産というものがこれからふえてくるのじゃないかと思うのです。  あなたに要求する前にちょっと通産省に……。あなたは公害防除のために金が要るというけれども、そのためにこそ、いわば政府が手だてを講じなければならぬ。そのためにこそ公害立法をしてやるわけですから、通例のいわば何か経費がかさむような認識でもって企業に相対することは間違いであります。政府がそれに対して放任することは間違いであります。これに対しては別の手だてを講じなければならぬ。直ちに、それが負債となり、非常に生産の面でもって大きな隘路になる、こういう道はとらないで済むような手だてというものがあなた方のほうでもって講じられてしかるべきだというように私は思うのですけれども、それは当然そうでしょう。
  58. 宇賀道郎

    ○宇賀説明員 御指摘のとおり、先ほど申し上げましたように、公害問題によります費用の増大というのは、経理を圧迫する一つの要因ということにはなっておるかと思いますが、もちろんこれがすべてではないと思います。公害の設備の関係、本件の場合には公共下水道の利用料の問題でございますから、通常の融資でございますとかあるいは税制上の措置とかいうのは直ちには適用にならないかと思いますが、こういう問題に非常に困っている場合には、通産省としてもできるだけこれを助成するという措置考える必要があるかと思います。もちろん、申し上げましたように、公害問題というのは一つの圧迫要因ではございますが、これがすべてではない。全般的な市況とか今後の長期的な需給のバランスとかいう観点から見て、会社としては解散ということを決定したのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  59. 田邊誠

    ○田邊委員 そこで労政局長、こういった種類のものが、これからふえてくると思うんですよ。一つには、私は通産行政に当然関連をして、これについてどう対処するかという政府の姿勢と施策にかかっていると思うのです。それからもう一つはこういったものがふえてきた場合に、一体いままでにそれこそまじめに働いてきた――この会社も低賃金ですよ。労働条件も悪いです。一時の製紙会社ほど、たいへんな好況に立ったような時代というものがなかった。そういう苦境に立ってきた会社でありまして、この社長自身が労働組合に言っているように、たいへん献身的に働いてもらったということを感謝されるような立場、それが突如として解散、おっぽり出される、こういうことで、このままでいいのですか。しかもその中に、やりもしなかった公害に対してたくさんな金がかかる、いままでと同じような考え方でもってこれから先金かかかる――当然いわゆる時代的な要請にこたえた別の手だてがあるわけです。そういったものに対して何らの考慮なしに解散をするという形になって、働いておったところの労働者は町におっぽり出される、こういうことに対して、私は労働行政という立場からいって、そのままほうっておいていいでしょうか。何らの手だても講じられないのでしょうか。民間の会社だからやむを得ないのだということでもって、企業の問題だからどうにもならぬということでもってやっていいのでしょうか。私はそうじゃないと思うのですよ。それならば公害がこれから先いろいろと問題にされ、これから先いろいろと国民的な立場で防ごうじゃないか、こういう政府考え方の中でもって、特に佐藤内閣においても公害法案をさきの国会で通過をさせて、これからひとつ熱意ある積極施策をやろう、こういう状態の中でもって、このことに名をかりた解散ということによって労働者が失業する、首を切られるという事態に対して、労働者の権益を守るという立場の労働行政からいって、一体そのままにほうっておいていいでしょうか。ほうっておかなければならぬのでしょうか。どうです。
  60. 石黒拓爾

    石黒政府委員 日本製紙のような事態は、私どもとしても、企業というのは社会的責任があり、また特に労働者に対する責任がありますので、その責任を十二分に果たしてもらうべき当然の立場にあると思うのであります。こういう事態に立ち至りましたことは私どもとしても非常に遺憾に思っております。  ただ、これをどう扱うかということにつきましては、実は現行法上非常に扱いにくい事件であるということも御理解いただけると思います。私どもとしましても、法律的にすぐどうこうという手段を持ち合わせませんので、通産省と相談いたしまして、この事件あるいはこういう事件の再発というものに何らかの適切な打つ手がないかということを鋭意研究いたしたいと思います。
  61. 田邊誠

    ○田邊委員 ちょっと切り口上のような答弁だから、そんなことでは満足できないけれども、きょう私時間がないからあれしませんが、これは一つの典型的な現代的な解散の事実です。  これは、これだけの問題じゃない、紙パの問題自身は、これからいろいろと公害問題でもって問題になっている企業ですから、これに対してどう対処するか。それから、そこで働くところの労働者の行くえは一体どうするかというようなことに対しては、七〇年代といわれるいわば政治を行なう中でもって、全国的に当然起こってくるところの一つの典型的な例じゃないかと思うのです。したがって、これはほうっておけば次から次へと類似のものが起こってくるというように私は考えるわけでありますから、そういった点に対して、通産大臣とひとつ御相談いただきまして、これに対処をしていただくと同時に、また会社に対しても、今後の問題に対するところの手だて、誤りのないような措置をとってもらわなければならぬ、こういうふうに私思っておるわけでありますから、ひとつそういう点に対して、大臣も積極的な乗り出しをしていただくということを心から切望するわけですけれども、あなたの御意見はいかかでございますか。
  62. 野原正勝

    野原国務大臣 先刻来お話を承っておりまして、非常に心配しておりますが、こういった現象はこれからも次々に起こってくる可能性があると御指摘になりましたが、とにかく公害問題というもの、かいままでも企業に対して不安感を与えておる。そしてまた、それが地域的にも不安を与える、あるいは反対、いろいろな問題で経済的にも成り立たない。必然的にある程度工場地方分散などを余儀なくされる場合が多かろうと思います。しかし、いずれの場合でも工場は、そこで働く人たちの立場にもなって、積極的に改善を加えて、その地域からそうみだりに動くようなことがあってはならぬと思います。この問題については、御指摘の点をよく考えまして、私どもできるだけひとつ対策を講じたいと考えております。今後のきわめて重大な課題の一つであるというふうに考えております。
  63. 田邊誠

    ○田邊委員 それではひとつ、労政局長もまた通産省の課長もいろいろと相談をしていただきまして、その事後の対策についてもひとつ御報告をいただくと同時に、私どもも関心を持っておる問題でありまするから、御連絡をいただきたいというふうに思います。よろしゅうございますね。  それではその次の問題に移ります。  この二十日に予算委員会の分科会で、雇用促進事業団に関連をする土地買収について、きわめて遺憾な事実があるのじゃないかという質問かございました。私は、雇用促進事業団が持つ重要な任務からいいまして、この種のことが取り上げられることについては非常に残念に思っているわけであります。私は堀さん自身をよく承知しておりますから、実はあなたが責任者でやっていらっしゃる事業団においてこういう問題が起こっているということは、これは何としても残念でたまらない。したがってひとつ事態を、こういう際でありますからはっきりとさしていただきまして、国民に対して一点の曇りのない形で仕事をやってもらわなければならぬと思うのです。きょう提案説明がありました、政府から出されておりますところの勤労者財産形成促進法案の中においても、雇用促進事業団の果たす役割りは非常に大きいと考えておるのでありまして、私は、このままこれを過ごすことは、法案の今後の審議にも重大な支障があるというふうに思っておるわけでありますから、ひとつ十分その真偽のほどを明らかにしてもらいたいというように考えて質問を申し上げるわけであります。  ここで取り上げられました中で、まず二つ何か会社が対象になっているのであります。一つは日本ライタという会社でございます。この日本ライタという会社は、聞くところによりますと無登録の土地ブローカーだというのですね。雇用促進事業団というような、いわば政府の監督下にあり、政府出資にかかわる事業団が土地の買収をする際に、こういういかがわしい、無登録のいわば土地ブローカー、不動産取引業者でないものから土地の買収をすることが許されるのでしょうか。こういういかがわしい土地ブローカーからなぜあなた方は土地を買わなければならなかったのですか、これは一体どういうわけですか。
  64. 堀秀夫

    ○堀参考人 ただいまお話の問題につきましては、予算分科会における御質問がありまして、急遽、私どものほうとしても当時の状況を調査いたしたいと思いまして、調査中でございます。それで、何せ六、七年前の事件でございまして、関係の担当者もほとんど交代しておりますし、資料も、具体的な詳細な資料が散逸している状況でございます。なお鋭意調査をしておるわけでございますが、そういう事情で、一応判明したところを申し上げたいと思います。  日本ライクという会社は、昭和三十六年十月に設立された会社でございまして、営業目的は電気機器及び付属機器の製造販売ほか十項目あります。その中に宅地の造成及び宅地建物取引業務並びにこれに付帯する事業を営むということになっておるわけでございます。  そこで、当時の事情を申し上げますと、雇用促進事業団において移転就職用宿舎の建設と当時の炭鉱離職者の就職促進というような至上要請にこたえまして、とにかく急いで適地を見つけなければならない。それから大都市周辺においてはそれが非常に困難な状況でありまして、これについても適地であればこれを急いで獲得したいというようなことで業務を行なってきたわけでございます。  一般的に、当時の状況といたしましては、対象土地所有者は、都道府県、市町村、開発公社等の所有するものから直接買い上げる、こういうことを原則としておりましたが、いまのような事情で、大都市周辺地域においては民有地であってもやむを得ないということにしておったわけでございます。そこで、その場合に土地の所有者から買い上げる、こういう方式をとっておったわけでございます。したがって、この日本ライクにつきましては、この日本ライクが前の地主から契約をいたしまして、これを日本ライクの土地として取得した後に、造成をいたしまして事業団に売り渡すというような場合にはこれを相手とする、こういう方針であったわけでございます。  その後の状況といたしましては、四十二年度からはこの買収する土地については、都道府県、市町村、開発公社等の所有地あるいは公約期関のあっせんする土地を取得するという原則を立てまして、それから不動産の取引業者が介入いたします場合には不動産の取引業者のあっせんによって土地を買収するということに改めました。そして、その場合には、不動産のあっせん業者に手数料を支払うという道をとりました。現在はそれでやっておるわけでございます。いずれの場合におきましても、土地の価格につきましては、日本不動産銀行その他信用のおける鑑定機関に鑑定を求めまして、その価格以内で買い取りをやっておる、こういう状況でございます。
  65. 田邊誠

    ○田邊委員 そうすると、当時はそういうあなた方のいわば土地買収にからんで、機構が確立していなかった、無登録のブローカーから買うこともやむを得なかった、こういうことですか。
  66. 堀秀夫

    ○堀参考人 、ブローカーと申しますか、要するに会社なりその他の機関かございますが、これが土地を所有する、土地の所有主であるということが確認される場合におきましては、その土地の登記の状況をずっと審査いたしまして、それで間違いなければ――造成等のもちろん付帯する契約はございますが、それを買い取るということになっておりまして、登録されておった業者であるかどうかというようなことについては、これはいま調べておるはずでございますが、そこまでの調査はいまのところないように思います。
  67. 田邊誠

    ○田邊委員 それは大前提だからちょっと調べてください。  この日本ライクというのは、雇用促進事業団が昭和三十六年六月に設置されまして間もない昭和三十六年の十月六日に設立された会社だというんですね。そうするとこれは、もうほかに仕事を求めるのじゃなくて、言うなれば事業団目立てにつくられた会社であるというふうに思っても差しつかえないのですね。その後の日本ライクの関係を見た場合に、これはいわば事業団の土地の買収のために会社をつくられて、その取引を主として、その後消えてなくなった、こういう会社でありますね。
  68. 堀秀夫

    ○堀参考人 先ほど申し上げましたように、設立されましたのは昭和三十六年十月だそうでございます。ただ、それにつきまして、事業団が日本ライクと取引をいたしましたのは昭和四十年でございます。したがって、設立されましてあとおおむね三年、間があるわけでございます。その三年間におきましても、いろいろな事業はやっておったようでございます。したがいまして、当時の事情を調べてみましたが、事業団側が何か日本ライクを土地の仲介をするために設立を示唆した、こういうような事実はないということでございまするし、それから事後に、ただいま申し上げました会社の設立後約三年間たってから、御指摘の三カ所の契約があったということで、それ以外には全然雇用促進事業団とは関係がなかったわけでございますので、必ずしも通り抜け会社であるというようなことではなかったのではないか、このように私は判断しております。
  69. 田邊誠

    ○田邊委員 百万円の資本金の会社ですね、これは。しかもこの日本ライクの社長の一柳雅和という人は、当時きわめて生活に困窮しておったというんですね。とても何千万円という金を動かせる能力もなければ資産もない、こういう会社だったんですね。その会社を相手どって、これはどのくらいでしょうか。買収金額は一億七千万の郷地、それから七千五百万の下九沢、九千四百万の善部の土地を買収したのです。常識で考えられますかあなた。何千万円の金を動かせるような会社でない。当時社長は生活に困っておった。ほかに能力もない。仕事もほとんどできない。こういう会社からなぜ土地を買収するそういう措置を事業団はやったのですか。これは堀さんの長い役所の経歴からいい、あなたのいまの立場からいって、こんなことが常識的に判断できますか。当然できないでしょう。ふしぎに思いませんか。
  70. 堀秀夫

    ○堀参考人 この日本ライクにつきましては、私も調べてみましたが、いままでの調査の資料からいいましても、御指摘のように小さな会社であったようでございます。ただ、当時の事情を聞いてみますと、事業団が土地を買収いたします場合には、その土地の所有者であるということが、土地の登記によりまして非常にはっきりして間違いがないという場合に、それから買い取る、こういう形式をとっておりまして、事業団が日本ライクから買い取りましたときには、日本ライクが登記面上土地の所有者になる、こういう手順を踏んで、それから買い取っておるわけでございます。日本ライクが非常に金に困っておったかどうかということは、当時の事業団の係のほうではわからなかったというのが、正確なところではなかったかと思います。それから、なお私個人の意見ということでございますが、私はやはり事業団というものは公的な機関でございますし、いろいろな契約、売買というようなことに対しましては、李下に冠を正さない、こういう考え方で進むのが適当であろうと私個人は思っております。したがいまして、あまり小さな会社は、たとい登記面上整備されておりましても、そういうものを相手にするということは、私としてはあまり好ましくないことである、このように思っておるのでございますが、当時の事情を聞いてみますと、いまのようなことがございますし、その日本ライクが登記上も土地を正式に取得したということがはっきりしておりますので、それと契約を結んでそれから買い上げた、こういう手順をとりましたとしても、まあ違法ではない。ただ、私個人といたしましても、今後はそういうことは好ましくない。  なお、申し上げますが、日本ライクその他、そういうような会社につきましては、昭和四十二年ごろからあとは一切ございません。この日本ライクとの関係も、いまの三件だけでございます。  なぜ、そういうことが起きたかということでございますが、やはり当時都会周辺、特に東京周辺におきましては非常に土地がなかった。適地がお世話する者がありますれば、それが正式な登記面上の所有者になっておるということが整備されておれば、それから買うというようなことで、いろいろ適当な土地を早く取得をしよう、こういう機運に出たものであろうと思います。その辺にいろいろ事務処理上の問題点は残っておったものと判断しております。
  71. 田邊誠

    ○田邊委員 善部にしても下九沢にしても、日本ライクが買った日と、あなたのほうに売った日と全く同じなんだ。日本ライクが買っておって、ある程度の期間あたためておってそして売ったという普通の不動産会社とは全く違うのです。しかも、同日付けでもってあなたのほうに転売をしたかっこうになっているにもかかわらず、この日本ライクが買った買収価格と著しい差があるというのは、一体どういうことですか。そんなばかげたことがありますか。
  72. 堀秀夫

    ○堀参考人 日本ライクともとの所有者の間の登記面上の移転が、事業団の買い上げた日と接近していることは御指摘のとおりでございます。私も調査をしてみましたら、そうなっております。ただ、実際のところ聞いてみますと、実際問題としては日本ライクが土地所有者といろいろ内契約等いたしまして、それで事実上日本ライクがその土地を前の所有者から受け取る、それでこれにいろいろな、たとえば進入路その他の道路の整備であるとか一宅地の造成であるとか、あるいは排水その他の諸工事を行ないましてこれを整備して、それで事業団に渡す、こういうことになっておるわけでございます。したがいまして、もとの所有者から日本ライクがどのくらいで買ったかということが、これは商慣行からいたしまして、聞きましてもなかなかわからなかっただろうと思うわけでございますが、やはりいまのような土地造成、排水の整備、道路の整備とかいろいろな工事がございますので、そういうものを仕上げて事業団が買うということになりますので、その間に価格の差が出てきておる、そのように思います。  それからなお、先ほど申し上げましたように、その買収価格をきめますときは、日本不動産銀行その他信用のある鑑定機関にその土地の時価を鑑定させまして、それを参考にして決定しておるわけで、それからいいますとそれを上回るというような事実がないことは確かでございます。
  73. 田邊誠

    ○田邊委員 金がないのですから、この会社仕事できっこないですよ、あなた。ですから、日本ライクが買った日とあなたのほうに売った日と同じなのはこれは当然なんです。しかし、いま理事長に私は日本ライクについてだけ聞きましたけれども、もう一つの関東物産もあわせてこれはほんとうに土地造成をやっていますか。そういったものにかなり費用をかけて、あなたに売るときには相当のさやがある中で仕事しているわけですね。間違いないですね。
  74. 堀秀夫

    ○堀参考人 関東物産のお話がでましたが、関東物産については、横須賀市の公郷という土地の問題でございます。これもやはり六年ばかり前の四十年九月の問題であります。これにつきましても事情を調べてみましたが、関東物産という会社は、ただいまお話がございましたが、本来は諸機械の販売をおもなる内容としておる会社でございまして、この基礎はしっかりしておると思います。本来の業務として土地売買というようなことはなかったわけでございます。ただ、当時の事情を調べてみますと、関東物産におきましても、土地の売買業務をやりたいという希望があったようでございまして、そうして関東物産は、一応別会社でございますが、名前は同じ関東物産というの名前の会社を別のところにつくりまして、これは土地建物の売買及びこれに付帯する業務目的とするということに当時しておったようでございます。その別会社である関東物産、しかしこれは実質上はやはり本来の親会社である関東物産と姉妹会社であるといいますか、そういう密接な関係にあったことはもちろんそのとおりだと思います。  それから、事業団がこの関東物産から土地を購入したという事情でございますが、この関東物産から購入しました土地につきましては、調査いたしましたところ、やはりもとの地主から関東物産が買ったわけでございますが、買いましてから相当大規模な土地造成そのほか道路の整備等の工事をいたしました。そのために相当な金がかかったという由でございます。そういうような工事をいたしましてから約半年くらいたちまして、事業団が買い受けることにして登記の手続をとったわけでございます。その間にいまのような相当大規模な土地の造成その他の工事があったということでございます。なお、これにつきましても、買収のときの価格は日本不動産銀行の正規の鑑定を受けまして、それを上回らない価格で売買契約を結んでおります。   〔委員長退席、伊東委員長代理着席〕
  75. 田邊誠

    ○田邊委員 事業団と関東物産は売買契約をしておりますけれども、その日取りよりも関東物産と一前の所有者との売買契約はあとになっておるのはどういうわけですか。それで宅地造成できますか。
  76. 堀秀夫

    ○堀参考人 この点につきましては、その土地の大部分は――大部分といいますか、事業団に売り渡す予定の土地よりもだいぶ上回る部分の土地を、その前にもとの所有者からこの関東物産が買い受けまして、それを造成して事業団に登記を移転した、こういうことでございます。したがいまして、その大部分につきましては、事業団への移転は関東物産が前の土地所有者から取得したよりも約半年以上あとのことでございます。その間の一部につきまして、調べてみましたところ、このもとの買い主から関東物産が買いました日付が、事業団に移転登記が行なわれましたよりも前――前といいますか、そのあとになった部分があるわけであります。これがおそらく御指摘のことだと思います。これについて当時の事情を実は私ども一生懸命調べてみたわけでございますが、このような事情があったという由でございます。  それは関東物産がもとの所有者の橋本という人から買収した実測土地約六千坪のうちから事業団に譲渡するということで売買契約を締結して造成工事の設計を行なてたわけであります。その設計の過程で、事業団に譲渡する敷地の中には、橋本という人の所有地以外の土地も若干ではあるが必要である。要するに北側の土地だったらしいのですが、その北側の土地を事業団に宿舎造成のために売り渡す、その土地の時価額としては――そのその北側の土地を若干購入することが必要であるということで、北側の土地について買収をその後行なったわけでございます。そのためこの土地を事業団との契約以後に関東物産が購入した、こういうことにその部分は一部はなるわけでございますが、これは関東物産のいまの宅地造成設計を行なっておる間に、当初の予定と変わってきて、設計が変わったということでございます。したがいまして、造成完了後の地籍地番が、当初事業団が契約したものと相違しているものがある。いまのことによって宿舎の敷地に何らの支障がなかったので、その地番により移転登記を行なった。したがいまして、少し俗なことばで申しますと、当初六千坪の土地の中から事業団に三千五百坪を予定しておったようですが、それを実際造成の過程において少し北のほうへずらすことが必要だ。そのずれた部分が若干ございます。その部分については、事業団と契約したあとで別な人から買い上げる、こういうことをやっておる。したがいまして、いまのようなことが登記面上出ておるわけでございますが、事業団の宿舎の土地といたしましてはそれで何ら支障がない。いまのような事情があるとの由でございます。
  77. 田邊誠

    ○田邊委員 そんなことは形式上は許されないですね。それと、あなた宅地造成だと言うけれども、一体坪六千円で買ったものが、宅地造成したら一万八千円にはね上がるなんて常識では考えられませんよ。これは多くても二倍ですよ。そういった面から見て、いわば造成した、あるいは買った時期との差の問題についても、これはわれわれの常識の範囲を逸脱したものであるというふうに考えざるを得ないと思うのです。いまお答えがありましたけれども、日本ライクはもっとひどいわけです。これはいわば前の所有者から買った日と転売した日が全く同じ。こういうような点、また公郷の土地についても、いま言ったように、その一部については前の所有者から買った日付のほうが事業団に売った日付よりもおそい。こういうことは実態から見ても、形式から見ても、そんなことが許されていいはずがない。そんなでたらめな形でもって土地が購入されていいはずがない。この二つの会社とも、いまあなたが端的におっしゃったように、関東物産というのは本来は工作機械の販売業、それがいわば不動産の取引をするという形に別の会社をつくった。いわば事業団が目当てですよ。事業団という甘い相手があるから、何とでもできるような相手があるから、もうかる相手があるから、いわば日本ライクにしてもそういったものをつくった。関東物産にしても別の会社をつくった。こういう形ですから、事業団はねらい撃ちをされた形ですね。そういう甘いシステム、いわばこれがこれらの疑惑を生むような、いろいろな手続上から見ても、本来の行き方を逸脱した形になっているのじゃないかというふうに思うのですよ。ですから、当時の事情というものは、いわばまだ発足をして間もないという事情があったということをあなたはおっしゃいましたけれども、私はそれはそれなりに許すことはできない。三十六年からもう三年ないし四年たっているのです。こういったことは許されないというように思っているわけでありまして、この間の実情について、私はきょうはさらに究明をする時間がありませんから、ひとつあなたのほうからわれわれのほうに対して、いまお話がありました諸点を含めて、ひとつお答えをいただきたいと思うわけであります。そして、いまお話がありましたように、この買収価格の決定方法は一体どうするのか。それから、買収にあたっては鑑定評価を一体どういうところに依頼するのかということに対して、私はやはり明確にしなければならぬと思うのです。そうでなければ、あなた方の仕事というものが国民の前に明らかにならぬと私は思っているわけですから、それらの点についてひとつ正式にお答えをいただくということをお願いしたいのであります。  そこで職安局長、これは何といっても労働大臣はこれに対する監督権を持っておるのであります。また立ち入り検査をする権能も持っておるわけでありますから、雇用促進事業団のこれらの問題に対して、あなたのほうは適切な監督をして、いわば必要な立ち入り検査もなさる、そういう経験がおありでございますか。
  78. 住榮作

    ○住政府委員 いろいろ事業団の業務面につきましては、実は監督の問題といたしまして官房に事業団監理官が置かれておりまして、常に業務の適正な運営について監督をいたしておるわけでございますが、同時に、たとえば雇用促進住宅の問題を取り上げてみますと、これは労働者の移転して就職する場合の、労働力流動化政策の一つの具体的な方策、こういうことになっておりますので、私どもの雇用政策の方針が事業団の業務運営において徹底しているかどうか、こういう点につきましては、常日ごろ事業団と十分連絡もとっておりますし、またそのアフターケアもいたしておる、こういう体制をとってやっておるわけでございます。
  79. 田邊誠

    ○田邊委員 この件に関連をして、あなたのほうは必要な検査をいたしましたか、いたしますか。
  80. 住榮作

    ○住政府委員 この件に関しましてはいたしております。
  81. 田邊誠

    ○田邊委員 そこできょうは時間がありませんから、さっき事業団の堀理事長にもお願いいたしましたが、予算委員会の分科会で提起された問題でございますから、予算委員会の総括質問が終わるまでに、必要な私がいまお願いをしたようなものについて、一応経過を御報告いただく必要があると思うのですが、それはよろしゅうございますか。
  82. 住榮作

    ○住政府委員 実は予算委員会の分科会におきまして、十一項目にわたる資料要求が出ております。私どもその資料の項目を鋭意調査いたしておるわけでございますが、何ぶんにも非常に膨大な資料を要求されているような点もございますので、その資料の整備には相当時日を要するものもございますけれども、整備を完了したものにつきましては提出をいたしたい、こういうように考えております。
  83. 田邊誠

    ○田邊委員 それではひとつ私が質問いたしました諸点についても、日本ライクなりあるいは関東物産の会社設立当時の状態、当時の業務の状態、それから事業団との契約の状態、そしてこの該当した土地の価格の問題、前所有者からの買収の時期、事業団に対する転売の時期、その中身、そして土地造成の有無、それから買収価格を決定する方法、鑑定を依頼した先、いま私が並べました問題も含めてひとつ御報告をいただける、こういうふうに解釈して、その時期は、大体のアウトラインについては予算委員会終了時までに報告いただくということで、当委員会にも報告をいただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。委員長から特にその点は参考人並びに労働省に対してひとつ指示をしていただきたい。
  84. 伊東正義

    ○伊東委員長代理 それでは私からも申し上げます。いま田邊委員から御要求がありましたが、労働省雇用促進事業団のほうでいまの資料はなるべく間に合わせて出してください。  大橋敏雄君。
  85. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私も関連して質問させていただきますが、今国会において事業団の雇用促進住宅の用地取得に関しまして、深い疑惑が持たれたわけでありますが、先ほどお話があっておりましたように、事業団が持つ使命またはその役割り、そういう観点から考える場合に、非常に残念でありくやしい思いがします。先ほどから理事長からるる答弁があっておりましたけれども、まだ疑惑はさっぱり晴れません。今後この問題はさらに追及されていくことであろうと思いますけれども、先ほどのお話では、五、六年前の話で――確かに事件そのものは三十九年あるいは四十年の問題ではありますけれども、私は、前の問題だからこれでいいのだという問題ではないと思うのですね。これは関係筋からさらに厳重にその問題は追及されそれ相当の処断がなされていくものと思いますけれども、問題はいまの事業団の中にそのような事件を起こしていくような体質といいますか、そういうものが現在でも潜在しているのではないか、これを非常に懸念するわけです。したがいましてこの際、事業団の綱紀の維持について、理事長の深い反省ある所信をまずお伺いしてみたいと思います。
  86. 堀秀夫

    ○堀参考人 ただいま先生の御指摘がありましたように、六、七年前のことでございますから、口をぬぐって知らぬ、こういうようなことはもちろん許されないわけでございます。それから、当時の事情を調べてみますると、まだいろいろ資料が不明確な点がございますが、やはり事務処理上反省すべき点が相当あるようにも思うわけでございます。  そこで、現在に至っても一番心配されることは、何かこのような不正なことが行なわれるような体質が事業団の中に残っておりゃしないかという御懸念でございます。私もそういうことがあってはほんとうにたいへんなことだと思っております。私は特に、これはもうだれから聞いていただいてもけっこうでございますが、人一倍そういう綱紀の問題については神経質、潔癖な男でございます。私は来ましてから約一年半くらいになりますが、事業団の業務運営につきまして、さらにこれを合理化し明朗化していくことが、やはり公的な機関であるこの雇用促進事業団にかけられた国民の期待に沿うゆえんであると思いまして、いろいろ事務の合理化、明朗化の点につきまして指示を与えておるわけでございます。特に昨年の十月末におきまして、それまでいろいろな作業をいたしておったわけでございますが、全体についていまのような綱紀の粛正――これはいまの土地購入もございまするし、あるいは施設の建設問題もございまするし、あるいはいろいろな機械、資材等の購入問題その他いろいろの問題がございます。そういう問題について、綱紀を粛正し、不正事故を防止し、業務を明朗化するための措置を思い切ってとろうじゃないかということで、昨年の十月三十日に、雇用促進事業団役員会で、具体的な綱紀粛正についての事故防止対策というものを決定をいたしまして、それに基づいてこれをいま着々実行に移しつつあるところでございます。私は、こういうようなことをさらに、今度の問題もございますので、積極的に思い切って推進していくということによりまして、事業団の運営について疑惑が持たれた点につきまして、これを実行によって払拭していくことができるのではないか、そのような思い切った決意を持って今後事務の改善を行なっていくつもりでございます。
  87. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまの御説明では、昨年の十月に綱紀粛正に関してのお話し合いがいろいろとあって、その中身について決定をした。理事長の人柄については私もかねがね仄聞していたわけでございますが、それだけに今回の事件を残念に思うわけでございます。それだけの腹がまえでなさろうとなさっているわけですから、今後においては、こういう問題は二度と起こらないとは思いますけれども、いずれにしましても用地取得についての基本的な方針といいますか、あるいは基準というものがあろうかと私は思うのです。きめられているはずだと思うのですけれども、その具体的な基準がきめられているならばそれを明らかにしていただきたいと思います。
  88. 堀秀夫

    ○堀参考人 用地買収の基準でございますね。昭和四十二年度から以降が大体現在のたてまえになっておるわけで、それを申し上げますが、買収は、土地につきましては都道府県、市町村、開発公社等の所有地または公的機関のあっせんする土地を買収するということを原則としております。  それから大都市周辺地域等土地入手の困難な場合には、不動産取引業者のあっせんによって土地買収をすることができるということにしておりますが、この際にはあっせん手数料を取引業者に正規に払う、こういう手続をとっておるわけでございます。  それからなお、この土地の価格の決定につきましては、不動産の鑑定評価に関する法律規定する不動産鑑定業者、銀行またはその他不動産の鑑定評価に信用のある法人等から信用のある不動産鑑定業者を選定いたしまして鑑定評価を徴する、そしてこれを参考にいたしまして鑑定評価額と同程度もしくはそれ以下の適当と判断される価格を買収価格として決定しておるわけでございます。なお、最近におきまして、特にあっせん業者が介入した場合におきましては、不動産鑑定業者の鑑定につきましても二社以上から評価をさせる、一つだけでなく二社以上の評価を参考にして価格を決定する、こういうことでやっておるわけでございます。  なお、さらに先ほど私がちょっと申し上げました事故の防止につきましての役員会の決定におきましては、たとえば事業団の職員か地主または不動産取引業者と売買価格その他基本的な事項について交渉を行なう場合には、関係都道府県または市町村の職員と必ず同席のもとでこれを行なうというようなことを実行しようということで、話し合いを明朗化するというようないろいろな措置も講じたいと思って、これを実行に移しつつあるわけでございます。
  89. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 そういう基準は去年の十月にできたわけですね。
  90. 堀秀夫

    ○堀参考人 私の申し上げ方がちょっと誤解を生んだかと思いますが、初めに私が四十二年度以降と申し上げました。それはずっと四十二年以降やっておるわけですが、最後に私がちょっとつけ加えましたこと、要するに売買あっせん業者その他と話し合いをするときには、必ず都道府県、市町村の職員を同席させる、これは新しくその後づけ加えた、こういうことでございます。
  91. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 結局、今度の事件にされているその問題は、そうした基準もなくいろいろされていたというわけですね。
  92. 堀秀夫

    ○堀参考人 三十九年、四十年当時でございますが、このときにおきましても都道府県が推薦する候補地について用地買収を行なうということを原則としておったわけです。  しかし、やはり土地の所有者、都道府県、市町村、開発公社等の所有するものを原則とするということにしておったわけであります。やはり大都市周辺では民有地であっせんされてもやむを得ない。それで、そのような場合には、土地の所有者と売買契約を結ぶということで、手数料的な制度は当時やっておらなかったわけでございます。したがいまして、いまの土地所有者と売買契約を結ぶということにしております。それから鑑定価格につきましては、やはり信用のある公正な鑑定機関から鑑定価格を出させて、それ以内で取得するということはやっておりました。それをさらにもう少し改善したのが四十二年、それからさらに昨年の末から、われわれは先ほど申し上げましたようなものをさらにつけ加えてやろう、こういうことにしたわけでございます。
  93. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 要するに、こうした売買については、非常に問題が起こる。一般ですらも起こりがちなんです。ましてや政府の外郭団体として雇用促進という重要な使命を持った、あるいは役割りを持った事業団の運営にあたっては、こういう点をさらに慎重に真剣に検討してもらいたいし、運営にあたっては、その内容をチェックしながらやってもらいたいということであります。今度の事件の報道が新聞に出ておりましたけれども、その記事の中に広瀬忠三さんですか、理事の方、きょう来ていらっしゃいますね。その人の話によれば、日本不動産銀行の評価額を標準にしているんだ、それよりも高くなかったからいいじゃないかというような言い方、あるいは悪い業者からは土地を買うことはできないような基準がきめられた、いろいろと述べてあるようでございますが、日本ライクとは売買契約の不履行をめぐって裁判で争ったことがある、こういう話もつけ加えられておりますが、これはいつごろの話なんですか。
  94. 堀秀夫

    ○堀参考人 日本ライクと訴訟が起きましたのは昭和四十二年の七月でございます。これは日本ライクが昭島の郷地の土地を事業団に売却したわけでございますが、その際に、排水工事を日本ライクが施行するという旨の確約書を提出しておったわけでございます。ところが、排水工事の施行につきまして排水放流予定先である現地の衛生処理組合等との間でなかなか話し合いがつかなかった、そのため日本ライクの工事施行がおくれたわけでございます。  そこで事業団は、再三これを督促したのでございますが、なかなからちがあかないというので、事業団がみずから衛生処理組合話し合いをいたしまして、そしてその際、日本ライクから、事業団が話し合って工事を実施する、費用は日本ライクが払います、こういう旨の誓約書を提出させまして排水工事を実行した。ところが、この前後から日本ライクの経営が非常にあぶなくなった模様でございまして、なかなかそれを払わない。そこで訴訟を起こした、こういうことでございます。訴訟を起こしました結果、昭和四十二年の八月に七月に取りかかりまして八月に東京地方裁判所に民事訴訟を提起しまして、十一月にその事業団の訴えどおり東京地方裁判所の判決があったわけでございます。ところが、この前後から日本ライクが事実上倒産いたしまして、代表取締役も行くえがわからなくなったということでございますので、これにつきましては担当の弁護士に債権の保全を一任して目下追跡調査をしておる、こういうわけでございます。
  95. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 とにかく、いろいろとお話を総合してまいりますと、日本ライクというのはあまりいい会社ではないですね。そういう会社とさらに四十年と四十一年にまた取引をやったということは、せっかくきめられた基準が少しも生かされて――基準はあとですね、そこら辺はちょっと私勘違いしましたけれども、いずれにいたしましても先ほどからいろいろと答弁を聞いておりますと、たとえば日本ライクから善部の団地を講入する場合、四十年一月十三日から四十年一月十七日と、五日目にはこちらに渡っておるわけですね。しかも金額的に見ると、坪一万三千五百円から一万九千円というような高い値段に変わっていっている。あるいは下九沢ですか、ここは一万二千円からその日のうちに一万五千円で転売されたとか、あるいはいまの郷地、これは二万八千三百円でやられたとかいうことを新聞の記事等で私は知ったわけでございますけれども、非常にこの辺が不可解きわまりないのです。これは、いまおっしゃったとおり、公平な関係筋から徹底的な調査が行なわれていって明らかになると思いますけれども、問題は、政府出資の特別法人ですよね。四十五年度の予算を見ましても、一般会計四百三十一億七千万円、それから特別会計から十八億八千万円も政府は出資しているわけですね。そういう政府のお金をもって購入する場合、単に法的な鑑定の立場から見た場合、その値段より高くなければいいんだというような安易な気持ちではなくて、もっともっと、その土地がいつごろまでどうなって幾らくらいで売買されたかくらいのことは、探りを入れるくらいにならなければ私は納得いかないですね。潔癖な理事長ですから、今後は、もし売買にあたりましては、特に取得にあたりましては、自分のふところから買うような真剣味といいますか、慎重な態度で運営していっていただきたい、これをつけ加えておきます。  時間の関係もありますので、この際はっきりしておきたいことがありますのでお尋ねするわけでございますが、雇用促進事業団による住宅、これはたとえばA地域からB地域に炭鉱離職者とかそうした労働者が就職する場合臨時的に居住する、そういうたてまえからできておると思うのです。したがいまして、たてまえとすれば一年間、さらにやむを得ない場合においてのみ大体二年間の制限になっていると思うのでございますけれども、私はこれはむしろそうした制限は撤廃すべきではないかというくらいにいま考えております。なぜならば、現在の住宅事情から見た場合、促進事業団がいま運営しているそうした入居期間の制限というものは、非常に無理があるんじゃないかというようなことも考えるのですけれども、その点はどうですか。
  96. 堀秀夫

    ○堀参考人 お話しのように、宿舎の入居期間につきましては、これは暫定的なものであるというたてまえから一応一年間入居を認める、それからあと事実上二年までは認める、こういう措置をとっておるわけでございます。ただ、実際問題といたしまして、ただいま先生の御指摘のように、私ども実際やっておりますと、いまの住宅事情からいたしますと、よそへ移れといってもそう簡単に移れない、こういうことを訴える入居者の方が多いわけでございます。そこで、ただそういう意味からすれば、入居期間はもう思い切ってもっと延ばすとかあるいは撤廃するということが、その考え方からすると望ましいという考え方が出てくるわけですが、実は雇用促進事業団で、この移転就職用の宿舎を建設する際における各省間のいろいろな話し合いによりまして、やはり一般的な本来の恒常的な住宅建設関係のルートでやっていくのが適当ではないか、労働省雇用促進事業団のルートとしては、やはり広域職業紹介によって一時的に入居が困難であるというようなものについて、一時的にそれをお世話をする、こういうたてまえで本来できたわけでございます。そのようないきさつからいいますと、なかなかこの暫定的な住宅という性格を恒常的な本来の住宅というのに切りかえることはなかなか困難な問題がございまして、一朝一夕にはなかなかむずかしいと思いますが、ただいま先生の言われましたような事情があるわけでございますので、私どもはこういう点はもう少し検討いたしまして、関係各省間にもお願いをいたしまして、もうちょっと何か合理化する調整方法が必要ではないか、こんなことを検討しております。
  97. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私もこれは定着対策的に改める方向で進めてもらいたい。なぜならば、現在入居期限二年間が切れた場合、それを超過した者に対しては家賃が高くなるという話なんですね。そういう点はどうも納得いかないような気もするのですけれども、どの程度の歩増しといいますかなさっているのですか、これは期限でもあるのですか。
  98. 堀秀夫

    ○堀参考人 若干の歩増しをしておるわけでございますが、これは住宅建設いたしました年次によりまして、最初のほうの住宅は家賃も安くなっておりますし、あとからできましたものは、それに比べてやや高くなっております。そこで、大体におきまして家賃につきましては月額二千四百円から五千二百円程度が家賃でございます。それから、これに対しまして二年以上たってもどかないでなお残っておるという例につきましては、使用料という名前でとることにしておりますが、大体これは三千八百円から五千三百円程度、こんな状況でございます。
  99. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 促進事業団の住宅というものは、臨時的なものとして入居をさせるわけだ。だから、期限がくれば一応は出てもらわなければならない、そういう意味合いからその家賃をつり上げるわけですか。私はそういうことでないと考えられないと思うのですけれども、そこはそういう考えなのですか。ちょっと確かめてみたいと思います。
  100. 堀秀夫

    ○堀参考人 懲罰的な意味ではないのですけれども、やはり長い間入居しますと、補修も要りますし、設備の改善等も要るわけでございます。そういう面において、やはり長くいることはそれに応じた補修料というか、そういうようなものもよけいに、家賃よりやや割り高に負担してもらおう、割高な使用料をきめておるわけであります。
  101. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 大臣、まあ局長でもけっこうですが、とにかく労働省は監督官庁として、いろいろとこれを指導監督していく責任があるわけでございますが、今回のこの問題を見て、大臣どう思うだろうかということですね。それと、いまもお話しがありましたように、入居基準だとかあるいは家賃の問題だとか、いろいろとまだ問題が錯綜しておるような感じがするのです。もっと整然とこれを整理し、もう少し労働者のために生きた運営がなされなければならぬという感じを非常に強く持つわけです。こうした立場から、労働省としても住宅関係について管理監督あるいはどの程度の指導をなさっているのか、そういう点、労働省の立場から明確に答えていただきたいと思います。
  102. 住榮作

    ○住政府委員 私ども労働力の需給状況を考えてみますと、先生も御承知のように、非常に地域的に需給のアンバランスがある。そういう意味で、まあ雇用促進住宅というものが、地域を異にして就職する者のために――現在の公営住宅であるとかあるいは従業員宿舎、あるいは自力で住宅が建築できるかどうか、こういうようなことから考えてみまして、私ども雇用促進住宅というものが、そういった労働力が他地域に容易に移っていける、こういうような観点から必要な政策であると思っておりますし、さらに今後もますます重要になってくる政策の一つであると考えておるわけでございます。  先ほど先生もおっしゃいましたように、ここ数年、年間一万戸の計画でこの建設を進めてきておるわけでございますが、それに要する経費も非常に多額にのぼっております。そうしてまた、その目的とするところも私どもきわめて重要である、こういうように考えておるわけでございます。したがいまして、この住宅をどこに建てるか、あるいはその建てた場合の利用が目的に沿っているかどうかというようなことにつきまして重大な関心を持つのは当然のことでございます。  そういう意味で、従来からも事業団とも十分連絡をとっておるつもりでございますが、今後、こういう事件があったのを契機にいたしまして、さらにそういう体制、連絡というものを密にし、その目的に従った正しい運営ができるようにしていきたいというように考えておるわけでございます。先生御指摘の、たとえば入居期間の問題だとか、あるいはそれに伴う家賃の問題、先ほど理事長も申されたのでございますが、実はこれは、雇用促進住宅そもそもの設置目的が、とにかくいずれにしても地域を離れてよその地域に再就職する場合、うちがないために移転できない、しかし、その地域における公営住宅の問題だとか、あるいは企業における社宅の問題だとか、そういうようなことによって恒常的な住宅に移るまでの暫定的な住宅である、こういうような趣旨から出発しておるために、先生御指摘のような問題が出てくるわけでございますが、この点につきましても、今後の住宅事情の見通し等につきまして、関係各省とも十分相談いたしまして検討をいたしてまいりたい、かように考えております。
  103. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いま事業団が持っているのは四百十七団地、七万三千三百戸ある、こう聞いております。この管理監督というのは容易ではないと思います。いま局長がおっしゃったとおり、それが実るような監督をしていただきたい。きょうは非常に時間がないので、これ以上追及できないのが残念でなりませんけれども、先ほど田邉委員からもいろいろと資料の要求がありました。私も同様にそれを要求いたします。  特に郷地団地などの場合には二万八千三百円で取得をされたということでございますが、実際日本ライクが西武鉄道から買ったのが幾らであったのか、それはまだ明らかにされておりませんし、そういうのも含めて資料を出していただきたいと思います。  最後に、大臣から一言、この問題に対してどう対処をしていくか、決意を聞いておきたい。
  104. 野原正勝

    野原国務大臣 雇用促進事業団勤労者のための住宅、ただいま御指摘のとおりすでに七万戸以上になります。これからもやっていくつもりでございますが、それが果たしていく役割りというのは非常に大きいのであります。こういう点でただいま御指摘もございましたが、入居期間等につきましてもある程度弾力的に考えてやるほうがいいということで、また同時に、建物も従来は二Kでございましたが、どうやら二DKにしよう。実はもう少し施設の改善をして勤労者が喜ぶような住宅改善をしたいということもありますし、この問題につきましては、事業団のやっております仕事は、実は非常に家賃も安くて勤労者に喜ばれております。おそらく同じようなかかる施設につきまして、ほかに比較しますと、事業団の経営にかかわる勤労者住宅ほど喜ばれておる施設はない。非常に安くなっておるというような点で、こういうような施設住宅というものをむしろ大量につくって勤労者に供給する必要があるのじゃないか。今回勤労者財産形成促進法をこの雇用促進事業団の力によってこれを営むわけでございますが、将来まこうした勤労者住宅というものは大きな日本の生産の最も中心の事業としてこれを一そう拡充強化したい。それにつけても、御指摘のように、あくまでも厳正に、不正等の事実が起こっては相ならぬわけでありますから、厳重に指導監督を加えて、ほんとうに信頼されるような組織体制にこれをぜひとも持っていきたいというふうに考えております。
  105. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 最後に一言。今度の事件に対しても、労働省の責任のもとに、是は是、非は非と明瞭にあかしを立てていただきたいと思います。これをつけ加えて終わります。
  106. 伊東正義

    ○伊東委員長代理 堀参考人には御多用中御出席願いましてありがとうございました。  この際、暫時休憩いたします。本会議散会後直ちに再開いたします。    午後一時五十三分休憩      ――――◇―――――    午後三時四十九分開議
  107. 伊東正義

    ○伊東委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について質疑を続けます。田畑金光君。
  108. 田畑金光

    ○田畑委員 初めに、今度中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法案というものが出ましたが、この法律内容についてお尋ねするのは後日のことにいたしますけれども、この法律によって中高年齢者の雇用促進措置を講ずる、それを受けて特定地域開発就労事業費が予算に出ておるわけです。この新しい制度については、雇用の需要が増大するまでの間、臨時的に就業の機会を与えるものと労働省は説明しておりますが、この事業の性格なり今後の運営について、まず方針を御説明願いたいと思います。
  109. 住榮作

    ○住政府委員 私ども今回提出をお願いし、審議をお願いしております法案の趣旨は、先生御承知のように、労働力状況が非常に好転してきておりまして、基調としては労働力不足基調なんでございますが、今後の雇用情勢といたしましても、労働力不足は一そう進展していくであろう。しかしながら、年齢別だとか地域別に見た場合に、特に手厚い雇用促進対策を講じていく必要があるであろう。年齢別には、特に中高年齢者に対しまして手帳制度を設けまして手当てを支給しながら、職業指導とかあるいは就職促進措置あるいは職場適応訓練とか、こういうことをやっていくわけでございます。と同時に、事業主に対しても、そういう中高年齢者の長年の経験なり能力を生かすという意味で、中高年齢者を雇い入れやすいような各種の措置を講ずる。しかし、地域によりましては非常に雇用情勢が困難である、そういうような措置によってもなお就職をさせうることが困難であるというようなことも十分予想されますので、そういう特定地域には特に予算措置をもちまして開発就労事業を起こす、そして暫定的な就労の機会を与えていこう、従来のような失業対策事業ではなくて、そういう積極的な事業を起こして失業対策をはかっていこう、こういう趣旨で開発就労事業を実施するわけでございますが、それは特定地域でその地域の開発にも資する、と同時に失業対策にもなる、こういう考え方で事業をやっていきたいというように考えておるわけでございます。
  110. 田畑金光

    ○田畑委員 今度出されますこの法律に基づく中高年齢者というものは、結局労働省令で何歳以上、こういうようになるんだと思いますが、そうしますと、職業安定法に基づく中高年齢者というものについて一定の年齢基準が定まっておりますね、それと同じなのかどうか。
  111. 住榮作

    ○住政府委員 現在の職業安定法によります中高年齢措置の年齢の下限は三十五歳でございます。これは御承知のとおりでございます。それは三十八年当時の年齢でございまして、その後の雇用・失業情勢を考えますと、大体求人、求職のバランスがくずれる年齢。現時点で考えてみますと、女の方の場合は四十五歳でそのバランスがくずれております。男の方の場合は五十歳でバランスがくずれている。要するに求職者のほうが求人よりも上回る、こういうような関係になってきております。それだけ雇用・失業情勢が改善されたというように私ども考えておるわけでございまして、そういう観点から省令でその年齢を具体的にきめる、こういうことにいたしておりますけれども、考え方といたしましては、現在の三十五歳を四十五歳にしていいんじゃないか、こういうように考えておる次第でございます。
  112. 田畑金光

    ○田畑委員 そういうことになりますと、今度できる中高年齢者の特別措置法によって、従前の職業安定法の中高年齢者に関する部分は右へならえする、今度の法律と同じような取り扱いをする、こういうことになると思いますか、そのように解釈してよろしいかどうかということが一つ。  それから第二の点としてお尋ねしたいことは、今度の中高年齢者雇用促進の特別措置法案と従前の身体障害者雇用促進法とは同じ発想と申しましょうか、内容等においてはほとんど同じ理念に基づいてできておる立法だと解してよろしいと思いますが、いずれにいたしましても、中高年齢者を今後公共事業その他で一定の雇用率を設けるについても、いずれもそれは拘束規定ではなく訓示規定であるし、身障者雇用促進法を見まして、いろいろ身障者に適合した職種についても一定率の雇用を義務づけておりますが、義務づけるというよりも、その内容は拘束的な規定でなくして訓示規定になっておるわけであります。この両者は内容においては同じものであると見てよろしいと思うのですが、ただ一つ違っておるのは、今回の中高年齢者の特別措置法案においては就職促進措置がとられておりますけれども、それだけが違って、あとは中高年齢者雇用促進法と身障者雇用促進法とは同一内容のものであると理解しますが、そういう理解でよろしいかどうか。
  113. 住榮作

    ○住政府委員 現在の職業安定法に予定しております就職促進措置については、私どもこの中高年齢者の雇用促進に関する特別措置法案におきまして手帳制度に切りかえております。それによりまして、従来二カ月ないし六カ月というような期間でいろんな措置を講じておったのでございますが、これを原則として少なくとも六カ月なら六カ月きちっとした手帳を発給いたしまして、きちっとした方針に基づいて就職促進措置をはかっていく、こういうように制度充実改善をはかっていくというような考え方でおるわけでございます。  次に、今度の特別措置法案は身体障害者雇用促進法と同一内容のものであるかどうかでございますが、思想においては私どもそう隔たりがあるとは思っておりませんが、必ずしも身体障害者雇用促進法の例にならっておるわけでもない、新しい方策も取り入れておる、こういうように考えておるわけでございますが、ただ雇用率につきましては、先生御承知のように一つ努力規定と申しますか、そういう性格のものでございまして、義務規定ではございません。さらに身体障害者の場合は、ある職種の事業所に対しましては画一的に、たとえば一・三%以上の身体障害者を雇い入れなさい、こういうように規定いたしておるのでございますが、中高年齢者の場合は中高年齢者の能力、知識、そういったものから考えてみまして、それに適当な職種を選びまして、職種によって雇用率を定めていく、こういうような考え方をとっておるわけでございます。
  114. 田畑金光

    ○田畑委員 身障者雇用促進法を見れば、たとえば第三条を見ましても、それから第十三条を見ましても――十三条は一般雇用主の雇用義務ということを規定しているわけでありますが、事実問題として一定の雇用率をきめてもそれが守られていないことは、現在の経済社会の実情だ、こう見るのですね。  ことに中高年齢者の雇用の問題と同時に、この身障者の雇用についてもっと国が一般企業に対して義務づける、この義務規定をもっと強化する、こういうことは一番必要な問題じゃなかろうか、こう思っておるわけで、そういうことを考えてみますと、今後身障者についても、当然今回の中高年齢者の特別措置法にならって、就職促進手当等の措置があってもいいのじゃないか、こういう感じを持つわけでありますが、今回の措置は中高年齢者のみを対象として就職促進措置がとられておるが、これは身障についてはどうなのか。身障者もこの「等」という中に一この中高年齢者雇用促進法によれば「中高年齢者等」ということになっておりますが、「等」の中に身障者も入れて考えているのかどうか。このあたりについてもっと解釈をはっきりしてもらいたいと思うのです。
  115. 住榮作

    ○住政府委員 御趣旨、先生のおしゃるとおりでありまして、私ども身体障害者の雇用も大いに促進していかなければならないということで、御指摘のようにこの「等」の中には身体障害者を含めておる。その場合に、これは身体障害という属性によって判断するわけでございますので、年齢に  ついては制限等は考えていないのでございます。
  116. 田畑金光

    ○田畑委員 そうしますと、今回の中高年齢者等雇用促進特別措置法と身障者雇用促進法とは非常に深い関係があるわけでありますが、その関係はこの法律条文のどこでこれをうたっておるのか。
  117. 住榮作

    ○住政府委員 私ども、この特別措置法案については定義規定を置いておるわけであります。たとえばこれは第二条の二項の規定でございますが、特別措置法で「中高年齢失業者等とは」と、こういうことで書いておりますが、「その他就職が特に困難な労働省令で定める失業者」ということで、この中で身体障害者を読んでいきたいというふうに考えておる次第でございます。
  118. 田畑金光

    ○田畑委員 さっきの質問に戻りますが、特定地域開発就労事業というのは、聞くところによれば産炭地域であるとか、同和地域であるとか、農村地域であるとか、こういうふうなことをいっておりますが、政府考え方としては、緊急失業対策法に基づく一般失対については漸減する方向にこれからいくわけですね。ところが、現在一般失対の適格者が十九万あるが、それを今回の予算措置では、昨年の十四万に対して十二万に減らして、そして今度は他方において特定地域開発就労事業ということで、ことしの予算措置では五千名を予算化しておりますが、結局そちらのほうを減らしてこちらをふやしたにすぎないのじゃないか。政府一般失対事業をだんだん減らすというけれども、他方において新しいものを設けておる、こういうことになってきますと、どうもその間政府方針は一貫しない印象を強くするわけでありますが、特に私は、政府が今後失対事業については漸減するということであるならば、今回の開発就労事業についてもことしは五千名であるが、これを今後の雇用・失業状況に応じてやはり段階的に縮小していく方針なのかどうか。そういうことを考えてみますと、特に農村地域等の場合は、漸減するというよりもむしろ、このような新しい雇用の機会があれば、一つ職場を提供しますから、その面では出かせぎ問題の解決の一助になり得る、私はこう思うわけです。そうしますと、ある面から見ますならば、むしろ農村地域等においては特定地域開発就労事業などについては、この予算をもっとふやして吸収人員をもっとふやすということが必要になるのではないかという感じを持つわけでありますが、このあたりはどのように考えておるのか。ことに今度の国会には、労働省、通産省、農林省の共管になっております農村地域工業導入促進法案というものが出るわけですね。これは農村地域に新しい工場などを持ってきて雇用機会をふやそうという思想に立っておるわけでありますが、この問題等との関連において、いま申し上げた特定地域開発就労事業等についてどのように考えなさっておるのか。その関連など、このあたりについてひとつ説明いただきたいと思うのです。
  119. 住榮作

    ○住政府委員 私ども現在の失業対策事業の状況を見ますと、先生御承知のように、これは非常に年齢が高くなっておる。それから定着度と申しますか、固定化と申しますか、そういうような現象が見られてきておりまして、現在の失対事業就労者につきましては現在の事業を継続いたしまして就労をはかっていく、こういうような考え方をとっておるのでございますが、今後の失業対策の方向といたしましては、先ほども申し上げましたように、やはり民間の雇用ということを最大の眼目として考えて、そのために失業者に対しましては手帳制度等によりまして就職のための援護措置を講じていく。それから事業主に対しましては、雇用率の設定を初めとしまして、そういう中高年齢者に適する職種に中高年齢者を雇っていただく。こういう体制をつくり、また援助を申し上げていく。そこで一般的に中高年論者の雇用対策をやっていきたいと考えておるのでございますが、先生御指摘のように、産炭地域とかあるいは同和地区、あるいは過疎地域等におきましては、その地域自体に雇用の場がない、こういうことも予想されますので、そういう地域の要するに通常の雇用ができるまでの雇用機会の造出ということで、新しい観点から開発就労事業というものを取り上げたわけでございます。そこで就労をはかりながら、さらに他の雇用機会があるまで待つ、就労をしていただく、こういうことがねらいでございます。そこで、それが今後どうなっていくのか。来年度予算では一応人員は五千人の予算を計上いたしておるのでございますが、やはりそれはそういう趣旨のものでございますので、失業情勢いかんによって、伸縮自在の体制をとるべきものである。真に必要な場合は五千のワクを越えてふえる場合もありましょうし、失業情勢がさほどでないという場合に無理してその事業を続ける必要はないわけでございますから、そういう場合にはおのずから事業規模も縮小されていく。特に特定地域の失業情勢によって弾力的に対応する対策の一つでございます、したがいまして、そういう情勢によって規定を受けるものであるというように考えております。
  120. 田畑金光

    ○田畑委員 私のお尋ねしているのは、特に農村の過疎地域における出かせぎ問題を見るならば、この特定地域開発就労事業の予算ワクなどをもっと大幅にふやすならば出かせぎ問題の解決にもなるのじゃないか、そういうようなことも考えておるかどうか。またもう一つ、今度の国会に出る農村地域工業導入促進法などというのはそのものずばり、これは過疎地域の特に農村における出かせぎ問題の解決などを考えて、このような農村地域における工場の誘地など、工業化の問題を取り上げておると私は見るわけです。だから労働省か今日考えておる特定地域開発就労事業も、また三省の共管である農村地域工業導入促進法律のねらいも同じところを焦点に置いて考えているように見受けるのだが、そのように理解していいかどうかですね。
  121. 住榮作

    ○住政府委員 私ども地域の失業情勢、こういうものを考え合わせましてこの開発就労事業を実施するかどうかということをきめていきたいと思います。したがいまして、農業からの離転職者、こういうものの数によって、特定地域として指定されるかどうか、その数の多寡によってきまってくると思うわけでございますが、直接的には農村地域工業導入促進法案とは関係はございませんが、精神においては先生御指摘のような深い関係があるわけでございます。一応きめる基準等につきましては失業者の多寡ということできめますけれども、実施される地域は農村等もあるわけでございますので、結果的には非常に深い関係が出てくるかと思っております。
  122. 田畑金光

    ○田畑委員 そうしますと、農村におけるあるいは過疎地域における失業者というものは、どういうようなものを対象に考えているわけですか。
  123. 住榮作

    ○住政府委員 たとえば農業からの離農者とか、あるいは先生先ほどおっしゃいました出かせぎ労働者等におきましても常用就職を希望される者の数、そういったものが失業者であるかどうか、こういう範疇になってくるかと思います。
  124. 田畑金光

    ○田畑委員 あまりこの法律に触れて質問しますと何かこの法律審議しているようなことになってくるので、あまり触れられないので残念だけれども、この間もこの委員会で取り上げていましたが、雇用審議会それから中央職業安定審議会がいずれも労働省の諮問に対して答申を出して、そうしてこの法律ということになっておるわけでありますが、ただ一つ、夏期または年末に臨時に支払われる賃金、これについてはこの答申を見ると、いずれもこれをなくしようと書いてないですね。ところがなくしておる、こういうことですね。それから一般失対に働く人方、緊急失業対策法のもとで働く一般の失対労務者については、これは身分は何ですか。特別職の公務員という形で取り扱っていくわけですか。先ほど来いろいろ事業については民間の事業に云々というようなお話もございますが、この点はどのような取り扱いになるわけですか。
  125. 住榮作

    ○住政府委員 臨時の賃金の問題でございますか、これは私ども現在の失対事業の性格から見まして、それから一般民間の日雇い労働者に対してのそういう制度があるかどうか、こういう観点からいたしまして、臨時の賃金いわゆる夏期、年末のボーナスのような制度は、これは失対事業とはなじまないもの、こういうように考えておるわけでございますが、しかし、たとえは雇用審議会の答申におきましても、失対事業に就労する者に対する臨時の賃金については、これまでの経過なり期末手当の社会的慣行等に十分注意する必要がある。しかし現在の運営には問題がありますので、「就労者の生活に激変を与えない範囲において、支給条件等の改善について検討を加えること。」あるいは職業安定審議会の建議におきましては、「従来の経緯にかんがみ、実質的にはこの給付が継続すると同様の方途を講ずること。」こういうことでございまして、実は制度そのものについてはこの答申、建議ともに直接には触れられておりません。ただいずれにいたしましても、就労者の生活に激変を与えないとか、あるいは実質的には給付が継続すると同じような措置をとるべし、こういうことでございますので、私ども実際の運用にあたりましてはこういう答申、建議の趣旨は十分尊重してまいりたい、こういうように考えておるわけでございます。  それから第二点の身分の問題でございますが、特別職の公務員であるということについては従来と変わりはない、こういうように考えております。
  126. 田畑金光

    ○田畑委員 特別職の公務員だとすれば、従前と同じ取り扱い、同じ身分として処遇されるわけでありますから、そこで大臣と同じ特別職の公務員です。あなたは一般職の公務員。だから身分は従前どうりであるし、また従前の制度そのまま存続するわけなんだから、そしてまた答申の内容も、これはいままでの慣行を尊重し、あるいは生活に急激な変化を与えちゃならぬ、こういうことなんですから、臨時の給与だけを打ち切るということは、私はこの答申の精神から見ても、またこの制度の長い慣行から見ても、また今日まで特別職の公務員という身分で国家から給付を受けておる一般失対に働く人方の従前の地位や、あるいはまたその一方の感情という面から見た場合、今度のこの法律については、労働省が非常に答申を無視した、そういう立法の提案である、このように私は指摘したいわけなんです。しかし、これはまあいずれそのときになお深く質問をすることにしまして、そこで私は炭鉱離職者の問題なついて少し触れていきたいのですが、この炭鉱離職者の緊急就労事業ですね。本年度は三千九百名、四十五年度は四千三百名、これは四百名減っておるわけですね。この緊急就労事業の予算の人のワクというものは、毎年毎年こう減っばきておりますが、これはそのように離職者が減ったということなのか、あるいはそれとも、一般失対をだんだんこう減らしていっておりますが、同じ思想に基づいて炭鉱離職者の緊急就労についても固定化してはいかぬ、できるだけ漸減をはかり、将来はこれをなくしていこう、そういう思想のもとで毎年こう予算人員が減ってきておるのか、その点はどうですか。
  127. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 緊急就労対策事業につきましては、先生御承知のとおり炭鉱離職者臨時措置法でこの緊急就労事業という制度が以前定められておったわけであります。これが三十八年の法律改正におきまして、炭鉱離職者につきましては新たに手帳制度が設けられまして、当時それまでの事業吸収方式をこの手帳制度に切りかえることに相なったわけでございます。そこでその切りかえの時点におきまして、当時約八千名くらいの就労者がございました。こういった人たちに対する経過措置といたしまして、その臨時措置法からこの制度が排除されました後におきましては、こういう人たちを予算措置によりまして従来の、それまでの緊急就労対策事業をそのまま続けていく。新しく出てくる人は全部手帳制度になりますが、当時の就労者につきましては、そういう就労者が新たに再就職なりあるいは自営なり、そうした形で自立するまでの間は継続実施していくということに相なったわけでございます。そういうことで年々この就労者の中から就職なり自営なりという形で自立する人が出てまいりまして、そういう人たちの減少によりまして事業の規模が縮少してまいっております。来年度、四十六年度におきましては、四十五年度中に就職なり自営する人たちの数が大体五、六百ございます、その関係で四十五年度の四千三百に対しまして、来年度は事業規模三千九百ということに相なったわけでございます。
  128. 田畑金光

    ○田畑委員 この臨時措置法によって緊急就労事業というものが実施されてきたわけですが、当初は法律にはっきりうたわれていた。それが三十九年の一月の閣議決定で三年延長、それから四十三年の一月三十日にまた閣議決定で三年延長、そうして四十六年三月三十一日までこの緊就事業は継続すると、こうなっておるわけですね。過去幾たびか閣議決定によってこの事業が実施されてきたわけで、当然この四十六年四月以降についても閣議決定なりの手続が踏まれることが妥当な措置だ、こう思うのでございますが、どうも聞くところによると、閣議決定によらずして予算措置で継続していこうという考えのようであります。これは私は従前のいきさつから見ましても、どうして閣議決定の議を経ないままにいくのか、そのあたりが解せないわけで、従来の筋からいうならば、やはりきちんと折り目、筋目をつけてやっていくというのがほんとうじゃないだろうか、こう考えるわけですが、その点はどうですか。
  129. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 緊就事業の実施につきましては、先生御指摘のとおり、法律でこの制度がなくなりました直後、閣議決定によりましてこの事業の実施をきめてまいっております。その閣議決定の実施期限が実はことしの三月三十一日で切れることに相なっております。この問題につきましては、閣議決定をしなければこの事業の継続実施ができないのかどうかという点につきましては、これは私ども必ずしも閣議決定を要しないものであるというふうに考えておりますが、実はこの閣議決定をするかどうか、現在諸般の状況を勘案しながら検討中でございます。  来年度以降の事業実施につきましては、すでに本国会に提案いたしております予算の中に盛り込んでございます。それを閣議決定というような形で裏づけをするかどうか、その必要がどうしてもあるのかどうか、こういう点につきまして現在検討しておるような次第でございます。
  130. 田畑金光

    ○田畑委員 私はその点が幾ら考えても理解できないのですよ。いままでは二回ですか、閣議決定で延長手続をとってきたわけですよね。ところが四十六年の四月以降については、予算措置があればもう閣議決定も要らないのだというのも、これはいかがかとも思うのですね。やはり離職者臨時措置法に基づいて、そうしてこの法律の附則の当該条文がもう失効しているわけですから、その後については三年ごとの閣議決定で事業を実施してきたとすれば、当然やはり、従来のいきさつから見ても閣議決定によって仕事を進めていくというのが本来の行政運営である、行政の秩序から申してもそれが当然だ、こう思うのですね。これは何かその辺に、閣議決定すると非常に問題がややっこしくなったり、場合によってはそんな仕事があたのかということで切られるような心配でもあるのかないのか。しかし、現実に緊就事業については四十年当時は五千八百名もあったのが、今日は四千三百名、そうしてさらにこれが三千九百名に、毎年だんだん減っていっておるわけでありますから、決してこれが財政硬直化を招くとか失業者を固定化するという心配は、その限りにおいてないと思うのだが、堂々とどうして閣議決定に持ち込み得ないのか。今度の国会の労働省関係法律を見ますと、ただ二つしか法律がないので、大臣も非常に安心しておいでのような顔色でございますが、こういう問題等についてはやはり閣議決定される、大臣の発言の機会ももっとひんぱんに持つ機会をつくることが、労働省事務当局として大事な大臣に対する忠誠ではないか。
  131. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 この緊急就労対策事業の実施につきまして、閣議決定が過去において二回行なわれております。このいきさつはもう先生十分御承知だと思いますが、当時、三十八年の法律改正で炭鉱離職者臨時措置法の中の緊急就労対策事業の制度が廃止されました。この条項が失効したわけでございます。ところが現にその当時七千人からの就労者がございまして、この法律が廃止されたことによってこの事業が打ち切られるのではないかという、非常に不安、動揺を起こしかねないような情勢でございました。こういった就労者の不安を解消するために閣議決定という措置をあえてとったというのが、その当時の閣議決定を行なったいきさつでございます。現在まですでにもう法律が失効いたしまして数年にわたってこの事業を実施いたしておりますが、その当時からこの事業に就労している人たちにつきましては、できるだけ再就職あっせんをして、その再就職あっせんによってこういう就労者がなくなるまでは続けるという基本方針には変わりはございません。  実は昨年も、この緊急就労対策事業が三月一ぱいで打ち切られるのではないかというような懸念をもった向きもかなりございましたが、こういう点につきましては、従来の基本方針に変わりはないということで、極力納得をしていただきまして、いまではもうすでにそういう懸念はなくなっておるんではないかと考えております。またこの事業の実施につきましては、必ずしも閣議決定とか法律とかいう制度によらなくても、国会の議決を経て施行されます予算によって実施が十分可能でございまして、こういう例は他にも幾つもございます。現に四十六年度そういうことで一応実施の予定はいたしておりますが、なおかつ閣議決定でそういった裏づけが必要であるということになればこれはいま検討中と先ほど申し上げたとおりでございますが、諸般の情勢を十分考えました上で、こういう措置をとるかどうかということについては最終的に決定いたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  132. 田畑金光

    ○田畑委員 遠藤部長の声もだんだん小さくなったりするので、どういうわけか知らぬが、これ以上質問してもまずいのかなという感じもする。同情が先に出てくるので困ったものだと思っていますが、しかし、これは過去二回閣議決定で延長しているんですよ、二回も。そして減に人はだんだん減っておるわけです。ことしは三千九百名。しかもこれは、予算措置としてもやはり相当な予算ですよ。予算額が三十一億四千百万でしょう。だから、この仕事を継続なさるならば、過去二回も閣議決定しているんだから、堂々と閣議決定に基づいて仕事を進められるほうが、私は、いま遠藤部長が心配なさっているような発言をほんとうに心配している人方も、もっと安心してこの仕事に就業できると思うのでございますが、この問題は大臣としても、私の質問をお聞きになって、そんなことがあったのかなということぐらいはお感じになっていると思うのですが、大臣、いかがお考えでしょうか。
  133. 野原正勝

    野原国務大臣 十分検討してみたいと思っております。
  134. 田畑金光

    ○田畑委員 私の言わんとすることもよく御理解願ったと思いますので、そのことも頭に置いてよく御検討願って、願わくば諸般の情勢――こういうことかよくのみ込めませんが、根回しを、調整をしかとおやりになって、やはり堂々と閣議決定して、その仕事をまた何年か先まで延長する措置を講じられるよう切に願いたいと思います。  それから産炭地域開発就労事業の予算を見ますと、四十四年度にこの制度ができてから吸収人員はずっと三千二百名ですね。四十四年も四十五年も四十六年度も三千二百名で事業を進めておられるわけでありますが、昭和四十六年度の予算を見ますと、三十五億をこえているわけです。もっともいずれにいたしましても、さきの緊急就労事業の予算、また今回の産炭地域開発就労事業の予算と申しましても、石炭特別会計の予算のそれでございますが、この産炭地域開発就労事業予算については、三千二百名という就労人員は一向に変わりがないのですが、この三年間、正常雇用にあるいは常用雇用に、あるいはその他の企業に就職の指導なり転職などについて何ら成果がなかったのかどうか、これはどういうことでしょうか。
  135. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 産炭地域開発就労事業の規模につきましては、先生御指摘のとおり、四十四年度この事業が新たに開設されました当時から、本年度ないし来年、四十六年度につきましても、同じような三千二百の規模で実施する予定にいたしております。この事業の性格につきましては、これも先生十分御承知のとおりでございまして、産炭地域におきましては過去における失業者が滞留いたしております。同時に、新たに炭鉱が閉山いたしまして、炭鉱離職者につきましては臨時措置法によって手帳制度がございますが、こういった制度によりまして対処し得ないような関連企業から発生する失業者等が出てまいります。こういう人たちの再就職までの間の暫定的なつなぎということで開発就労事業を実施いたしまして、この事業によって、工場団地の造成でございますとか、そういった地域の開発に寄与し、同時に、それによって雇用の需要を増大させるといった措置をとることによって、こういう失業者の再就職を促進してまいりたい、こういう趣旨でございます。  この事業を実施いたしておりますのは、主としては佐賀、長崎、北九州炭田地帯でございます。こういう地域におきましては、長年にわたる閉山によりまして、相当数の失業者が滞留いたしております。こういう人たちにこの事業に就労していただくことによって、地域の振興とその生活の安定をはかっているわけでございます。ところが、開発の効果は徐々に上がってまいっておりますが、こういった就労者が正常な民間雇用に復帰し得るだけの状態にはまだ十分達していないというのが、こういった地域の実情でございます。と同時に、また最近でも新たな閉山もございまして、関連企業からの新しい失業者も発生してまいっております。こういう実情からいたしまして、この事業の三千二百という規模はそのまま維持してまいるのが適当であるということで、四十六年度も同じような事業規模を予定いたしておるわけでございます。
  136. 田畑金光

    ○田畑委員 四十四年の閉山は、全国では五十六の炭鉱で八百四十万トンの出炭規模のやまが閉山になっております。この一年間で炭鉱離職者が二万二千二百七十名出ておるわけです。昨年四十五年一年間で、本年の一月末現在を見ますと、二十二炭鉱、四百七十万トンの規模、ここから出てきた離職者が七千二百五十七名、こういうことになっておるわけです。炭鉱離職者が集中的に発生したのは昭和四十四年、いわば第四次石炭政策の初年度で、そのような圧力というのが九州炭田における産炭地域開発、就労事業に吸収しなければならぬ多くの炭鉱離職者の滞留となってあらわれたもの、こう考えておりますが、しかし四十五年は、いま申し上げたように四十四年ほどではないわけです。もうあれから足かけ三年も経過するわけでありますから、やはり労働省がその方針としておる、一般失対についてもできるだけこれを減らして、就職支度金その他を支給して正常な雇用に持っていこうという努力ですね、あるいは職業訓練その他を施して正常雇用に持っていこうとする努力、これはだんだん実を結んでおる、成果をあげておると思います。ただ産炭地域開発就労事業についてだけは、一昨年も昨年もことしもその中から一名も正常な職業に転換させ得ないということは、労働省としての職業安定行政から見ても非常な問題だ、こう思うのです。遠藤部長さんはじめ住局長にも、この点どうお考えになっておるか、お聞きしたいと思います。
  137. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 確かに事業規模が三千二百で三年間固定したような形になっておりますので、あたかもその就労者もそのまま固定しているかのようにお受け取りいただいているかと思います。この内容につきましては、先生御承知のとおり、失対事業なり緊急就労対策事業の就労者は、特に緊就の就労者につきましては、過去ずっと固定いたしております。その中から再就職の人たちが抜けていく、常用の職場に就職していくとい形をとっておりますが、産炭地域蘭発就労事業に就労している人につきましては内容的には固定しておりません。再就職なり自営なりでこの事業から自立していく人たちもかなりございます。と同時に、小規模ながらいろいろ閉山に伴いまして関連企業からの失業者が出てまいりまして、そういった人たちが新しく入ってきておる。そういうことで、言ってみれば、この就労者はその相当部分が、再就職によってこの事業から出ていった人と新しく入ってきた人、こういうことで新陳代謝が行なわれておるわけであります。ただ事業規模全体としては、こういった産炭地域の実情からいたしまして、この事業規模を維持することが必要であり、かつ妥当であろうということで、来年度同じ三千二百の規模を予定いたしておる、こういう実情でございます。
  138. 住榮作

    ○住政府委員 失業対策部長が申し上げたとおりでございますが、実は、産炭地の開発就労事業、これはたしか四十四年度は後半から実施し、四十五年度は本格的なフルの操業、こういうような事情かと思うわけでございます。そこで、今後の情勢等をも考えてみますと、やはりまだ石炭山の全山閉山とか、そういった事態が明年度も続く、こういうようなことも考えあわせまして、やはり本年度同様の規模の開発就労事業が必要である、こういうように私ども判断をいたして、予算の御審議をお願いしておる次第でございます。
  139. 田畑金光

    ○田畑委員 いまのお二人のは、私はほんとうは答弁になっていないと思うのですね。緊就事業については固定化しておる。そこに働く人が固定化しておるが、産炭地域開発就労事業については新陳代謝がしきりに行なわれておる、こういうわけですが、しかし、いずれにしても予算を審議するのに、その制度の運用のいかんを判断するのに、やはり人員のワクなりあるいは予算の動きなりを見て判断する以外にないと思うのです。そういう意味においては、産炭地開発就労事業についても、当然両者がある。失対の制度に固定化するということは、労働力の流動化の面から見ても、また本来の正常な雇用関係を維持することが労働者の個人の幸福であるという観点から見ても、それは許されないことだ、こう思うのです。だから、そういう点において、将来産炭地域開発就労事業についても、ここに働く人方についてもできるだけ正常な雇用に転換するよう努力すべきだと思うのだが今後そのように労働省としても善処するかどうかということが第一点。  第二点として私お尋ねしたいのは産炭地域開発就労事業というのは、先ほどの御答弁にありましたように、九州の炭田に適用されておるわけで、常磐とか北海道というものは適用されていないわけですね。いろんなきびしい条件があって、次官通達か何かによって適用する地域と適用しない地域とはっきりされておるわけでありますが、たとえば、今回白炭高松に閉山が起きた。また常磐炭礦の磐城礦業所に集団的な離職者が出てきた、こういうことになってきますると、やはりまた、従来もそうでありますが、今後北海道地域においても予測されないわけでもないわけでありますが、そういうことを考えてみますると、この産炭地域開発就労事業について、いままでの基準というのは動かさないのか、あるいは状況の変化によっては動かすのか、このあたりもあわせて御答弁を願いたい、こう思うのです。
  140. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 この産炭地域開発就労事業の就労者につきましても、失対なり緊就の就労者と同様に、正常な雇用につけるための努力、これはもう当然のことでございまして、私どももこういった就労者につきましても、従来とも、できるだけ正常な雇用につけるようにというあっせん努力は続けてまいっておるわけでございます。今後ともそういう努力を続けてまいりまして、こういう事業実施の必要ができるだけ減少するように、そういう方向で努力したい、このように考えております。  次に適用地域の問題でございますが、従来は実情から見まして、産炭地域の特にこういった関係失業者の多数滞留いたしております北九州ないしは北松炭田でこの事業を実施してまいっておるわけでございますが、御指摘のように、今回新たに日炭高松が閉山することになりまして、また常磐が閉山というような事態が生まれようとしておりますが、こういった地区につきまして、炭鉱離職者につきましては、臨時措置法による手帳制度、就職援護措置が適用されますので、この点につきましては、別途また手厚い援護措置が行なわれるわけでございます。その他のこういった閉山に伴います関連企業からの離職者があるいは失業者がどの程度に、どういう形で出るか、その実態に・応じてこういった人たちの再就職促進援護対策を今後実施してまいる考えでございますが、その実情によりましては、こういった産炭地域開発就労事業の実施ということも場合によってはその必要があろうか、こういうふうに考えております。これからの情勢によって、こういう問題については十分検討してまいりたい、こういうように考えております。
  141. 田畑金光

    ○田畑委員 いま遠藤部長の答弁にありましたように、産炭地域開発就労事業の適用、運用については十分実情に即して今後考えてもらいたい、こう思うのです。  さらに一つ。遠藤さんからお答え願ってけっこうでございますが、先ほど申し上げたように、一昨年から去年にかけて、いわばなだれ閉山という状況が起きておりますが、しかもその中にはいずれも大手の山があるわけです、こういう炭鉱に発生した離職者が、その後どのような就職状況で新しい職場についておるのか、あるいは県内にあるいは地元に、その地域にどの程度定着をし、あるいは県外にどのように移動しておるのか、ひとつおおまかでけっこうでございまするが御説明を願いたいと思うのです。
  142. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 最近閉山いたしました大口といたしましては山陽無煙とそれから羽幌炭鉱、この二つでございます、それから一年ほど前には雄別炭鉱が全面閉山になっております。この三つの炭鉱の離職者の再就職状況につきまして、手元に資料を持っておりませんので、正確な数字ではございませんが、おおまかな経過を申し上げますと、雄別炭鉱につきましては、御承知のとおり町ぐるみ閉山というようなかっこうでございまして、地元に残る人はほとんど皆無でございます。その離職者の約半数が北海道内、残りの半数が道外といいますか、本土のほうに就職いたしております。あとに残っておりますのは、ごく一部の身体障害者とか年齢の高い人たちがきわめて少ない数字で残っております。それから羽幌炭鉱と山陽無煙につきましても、山陽無煙の場合は、これは実は地元の、地つきの人たちが約半数近くおりましたので非常に心配いたしておりましたが、地元の関係市町村の協力あるいは関係企業協力等もございまして、いずれの場合も半数近くが県内、道内でございまして、あとの半数が県外、道外に就職いたしております。いま残っておりますのは羽幌のほうで約二百名、山陽無煙で約再三、四十名かと思っておりますが、こういう人たちがまだ未就職の状態で残っております。概数としまして約九〇%が就職いたしております。残っております二百名ないしは百三、四十名の人たちは、この三月末の学校の関係等ございまして、それまでにその帰趨をはっきりさせようということで、目下就職あっせんをしておる段階でございまして、こういう人たちにつきましても、四月の段階までにはほぼ一〇〇%近く完了するものであろうというふうに考えております。これから出てまいります日炭高松、それから常磐、これは最近にない非常に大量の離職者の発生が予想されます。こういった点につきましては、現地に対策本部を早急に設置いたしますと同時に、現地相談所等を開設いたしまして、できるだけ、先生から再三御指摘がありますように、地元優先という形で就職あっせんに当たりたいと思っておりますが、なおかつ地元で完全就職もむずかしいかと思いますので、他地域への転職希望の方につきましては、本人の希望をいれましてできるだけ有利な再就職をあっせんいたすように努力してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  143. 田畑金光

    ○田畑委員 これはしかとお答えを願いたいのですが、いま遠藤部長からお話がございましたように、近く九州の日炭高松で約二千名の炭鉱離職者が集中的に発生するわけです。また福島県の常磐炭礦の磐城礦業所が閉山しますと、第一次退職、第二次退職を入れますと約五千名の離職者が集中的に発生するわけです。そこで、新しい第二会社を興して石炭の操業を一部継続しますが、そこに吸収される人方、あるいは常磐炭礦は幾つかの系列会社を持っておりますか、その系列会社に吸収される人方、また、もうすでに新規の企業などもほぼ実現のめどが一、二ついてまいりまして、そういう新規企業に吸収される人方、これらを入れますと、この五千名の中でかれこれ千八百名から千九百名くらいは新しい職場ができるわけであります。しかし、残りの三千名は新たな仕事を求めねばならぬ、こういうような状況にきておるわけです。この三千名の中で、当面職業訓練を受けて技術、技能を身につけたいという者が約五百名おりまして、残り二千五、六百名がどうしても職場を求める、こういう状況にあるわけなんです。これだけたくさんの離職者が一つの地域に発生いたしますと、本来、これは広域職業紹介でできるだけ各地域に分散するということが労働省の行政からいうと当然のいき方であろうと思うわけです。  ただ、ここで労働省当局、特に労働大臣として頭に入れておいていただきたいことは、何しろ五千名の従業員をかかえておる企業でありますから、その石炭の系列部門に炭礦の子弟がちょうど四千二百名現在働いておるわけです。さらにまたあの地域は新産都市地域であり、また産炭地振興事業団等の融資やあっせんで相当の企業が参りまして、常磐炭礦の子弟だけでも、系列企業ではなくてあの周辺の企業に約三千二百名就労しているわけです。たとえば福島電子工場は七百五十名おりますが、そのうち三〇%以上は常磐炭礦の子弟が働いておるわけです。いわき電子工場というのがございますが、これは九百名のうち約二百名が常磐炭礦の子弟。常磐縫製というのは、これは規模は小さいのでございますが、二百十名の従業員かおりまして、約半分近くが常磐炭礦の子弟、こういうわけで、常磐炭礦の閉山によって一時に多数の人、方がその地域から離れていきますと、残った系列企業もその周辺の企業も労務倒産という深刻な事態に立ち至るわけです。  そこで、従来のような労働省の広域職業紹介だけでこの問題を取り扱うと、地域社会にいろいろと非常な混乱を巻き起こす。したがって、このような条件を備えた地域に対しては、その地域に即応ずる職業紹介あるいは雇用対策、こういうことを考えてしかるべきだ、私はこう思うわけです。この点について労働省考え方はどうであるかということをしかと承っておきたいわけです。  同時にまた、職業訓練局長もおいででございますが、このように多数の離職者が一地域に集中的に発生いたしましたについては、当然、技術を身につけたい、職業訓練を受けたいという人方については、これに応ずる準備なりあるいは対策などを立ててもらわなければならぬ、こう考えております。現地にもいろいろ職業訓練の機関などがございますが、これについて、現地の希望に十分こたえ得るかどうか、この点もあわせて答弁を願いたい、こう思っております。
  144. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 今回の日炭高松、常磐の閉山につきましては、先ほど申し上げましたように、従来の山陽無煙とか雄別、羽幌の場合と違いまして、常磐の場合は新産都市地域でもございますし、最近工場地帯として発展途上にある地域でもございます。また日炭高松につきましては、北九州工業地帯を控えておりますので、こういった地元企業への就職あっせんということを最優先に取り扱ってまいりたい、こういうふうに考えております。また常磐の場合は、たびたび石炭特別委員会でも指摘されております炭鉱への再就職という問題も、これは北海道なり九州ということは実質的にはきわめて至難のわざかと思いますので、そういった意味合いからいたしましても地元企業への再就職を最優先的に扱って、それでどうしても就職できないで県外への転出を希望される方については、その御希望に応じてごあっせんを申し上げたい、そういう方針でやってまいりたいと思っております。
  145. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 先生御指摘の日炭及び常磐の炭鉱離職者につきましては、おっしゃるとおり、職業転換を円滑にするためには、職業訓練によって新しい技能を身につけることが非常に重要であると考えておりますか、そういう観点に立ちましてただいまそれら離職者の意向調査等を極力やっておるところでございます。常磐につきましては、大体いま先生がおっしゃいましたような数字を私どもも職業訓練の希望者としてつかんでおるわけでございます。地元には、総合訓練所のほかに、県立の専修訓練校もございまして、それらの転職訓練に優先的にその離職者を受け入れますとともに、さらに必要によっては部外に対する委託訓練等も実施して、その対策に万全を期してまいりたいと考えておりますが、現在の希望者程度でございますと、地元の総訓及び県立の専修訓練校、それらの収容能力によっておおむねまかなえると考えております。なお、それ以上の訓練受講希望者が出る場合には、さらに訓練科の増設その他の処置を講じまして必要な訓練を実施してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  146. 田畑金光

    ○田畑委員 最後に、もう一度念を押してお尋ねをして、大臣の御答弁をきちんと求めたいと思うのですが、いま私が申し上げたようなことで、産炭地域も、ほんとうに山の中で石炭を出す地域と、新産都市で石炭を出しているところ、あるいは炭鉱の人方の住まっているところ自体が町の中心であるところと、おのずから閉山のあと始末については別の方法が選ばれてしかるべきだと思うのです。特にこの福島県の常磐のいわき市というところは、昭和四十一年の十月に五市九カ町村が合併して一つの市になったわけでございます。新産都市の指定を受けておりますが、合併当時は三十五万人口がいた。ところがだんだん閉山になってきて、そうして去年の秋の国勢調査によれば、これが三十三万になったわけです。あと一番大きい常磐炭礦が閉山しますと、おそらくその人方が他のほうに出ていけば三十万を割るんじゃないか、こういうようなことも憂えておるのですが、これは市や商工業界あげての地域社会の不安になっているわけです。したがいまして、やはり今後このような地域については、通産省ベースで産炭地域振興事業団等の努力で、工業用地の造成なり工業用水の問題なりあるいは新規企業、中核企業の誘致の問題、こういうようなことで全体として別の産業によってその地域の衰退を防止するということが一番大事な問題に立ち至っておるわけであります。したがいまして、私が特に労働大臣に留意願いたいことは、従前のこの種大量の失業者が発生した場合の職業紹介のあり方というものは、広域職業紹介、こういう観点に立って対策を進めてこられましたが、当然これだけの転職を必要とする人かありますから、そういう労働省の分野で従前のようなベースで世話をする、あっせんをしなければならぬ人方も相当あると思いますか、やはり大事なことは、第一義的には地元に定着させる。幸いにして新興企業がたくさんございますので、そういうところにあっせんする、世話をするということが労働省としてまず第一にやってもらわなければならぬことだと、こう思うのです、幸いに、職業安定法の第十九条を見ますとこういうことが第二項に書いてあります。「公共職業安定所は、求職者に対し、できるだけその住所又は居所の変更を必要としない就職先に、これを紹介するよう努めなければならない。」これが紹介の原則としてはっきりうたわれておりますが、やはり私は、いまの私の指摘するような事例が、この職業安定法の第十九条の第二項にうたわれた原則によって労働省措置されることが最も適切である、このように考えておりますので、この際労働大臣の所見を伺いまして、私の質問を終わりたいと、こう思うのです。
  147. 野原正勝

    野原国務大臣 お答えいたします。  今回の常磐炭礦の問題、まことに重大な問題でございます。したがいまして通産省に申し上げまして、全省をあげて全面的に総合施策のこれは必要かございます。特に、ただいま御指摘の職業紹介等はあくまでも地元優先というか地元を最重点に置きまして、必要な職業訓練等も、必要とあれば就職あっせんの人員を相当にふやしましても、これはつとめる必要がある、あの地域の発展のためにも、またこうした産炭地域の新しいケースとして、ここには最も力を入れてやっていきたい、全面的に協力をする決意でございます。
  148. 田畑金光

    ○田畑委員 これで質問を終わります。
  149. 伊東正義

    ○伊東委員長代理 次回は明二十四日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時五分散会