○佐藤
内閣総理大臣 西田君にお答え申し上げます。
先ほど来
公害と取り組む
姿勢について基本的なものとして触れたつもりでございますが、私は、
公害とは、やはり
公害の一種ではありますけれど心、炭鉱災害、落盤とか爆発等でとうとい人命を失う、このことについても、かつて
国会で、せっかく炭を掘ってお互いがこれによってエネルギー源を確保しよう、これはやはり社会に役立たす、けれ
どもそれをやらないうちに人の生命を失う、何と情けないことか、こういうことを実は申したことがあります。まさしく
公害はいまの非常な顕著な例、それに類似しているものだとかように思いますので、われわれは経済成長もずいぶん力を入れたように思いますけれ
ども、これも当時としてはこの経済成長をしない限りにおいてしあわせは来ない。いわゆる富裕にならない。豊かなところにやはりしあわせがあるのだ、こういうような
考え方だったと思います。しかし、ある程度物質的に恵まれてくると、もっと精神的な面を大事にしなければならないし、やはりねらいはどこなのか。経済発展はどこまでも手段である、目的、目標とするものは、これはもうお互いのしあわせにあるのだ。そのことを
考えると、取り組み方が違うのじゃないか、かように思います。これはもう大にしては国内における
産業の保護から、小にしては、と申してもいいと思いますが、外国貿易との競争におきましても、やはり保護的な立場にとかく立ちやすい、これらのこともやはり反省せざるを得ない。それよりももっと大事なことは、お互いにしあわせがどこにあるか、こういう取り組み方をしないで
産業の発展も意味がない、かように実は私は思うのであります。したがって、そこらでは行政の取り組み方が、これはもう百八十度とは申しません、私はそれは同一のものだと思いますが、ただ、一面的な見方だけはやめてもらいたい。両眼を見開いてもらいたい。むしろよく見えるほうは社会的しあわせだ。そのほうを大にして、そして
産業の発展のほうも同時に見ていく、こういうことが望ましいのではないか、かように実は思っておる次第であります。
しかし、いままでの行政のあり方がどうも発展の方向に向けられていた。それを切りかえるという、何か
公害防止といえば足を引っぱる、停滞するというような感じにどうもおちいりやすい。どうもいままでは利益を一〇〇%あげたんだから、やはり
公害防止施設、これもしなければならない。そこで足を引っぱられるというような感じがあったり、また
公害のためには、
事業さえなければ
公害は発生しないじゃないか、非常な極端な飛び上がった議論すらあるのでございます。そこらに、いままでの行政を切りかえるということがいかにむずかしいか、それについてはやはり理解もしていただきたい。
政府はそういうような在来の行政の態度を変えるのだ、こういうことで取り組んでいるのだから、そういう意味でぜひわれわれの態度も見直していただきたい。また、そういうことにかなっていなければ、ひとつ御叱正もいただきたい、かように実はお願いしておるような次第であります。私はそういう意味からだんだんとよくなりつつあるのではなかろうか、かように思います。
そこで、思い切って
公害国会というものをやった。十五法案予定されていたが、まず十四、今回その
一つができたら、これで
法律的には一応
整備された。しかし、その法の運用ということになりますと、事柄の性質上、また初めてのものもずいぶんあります。ただいまの悪臭
防止法、これなどは実際むずかしい問題で、何をもって不愉快なにおいとするか、こういうような問題になってきますと、これはたいへんな問題だと思います。また、先ほど議論されましたように、悪臭を発散しているものが
中小企業の場合、ことに小さな、地域的なもの、こういうようなものが非常に多い。それだけに取り扱い方もむずかしい、こういうような問題があろうと思います。したがって、ひとり悪臭だけではなく、一般の
公害取り締まりという新しい分野でありますだけに、なかなかむずかしいものがあるのではないだろうか、私も
法律をつくっていただきながらそういうことを
考え、そしてやはり漸を追うて完全なものにしていくという、ここらにある程度の余裕を求めなければならないのではないだろうか。先ほど来からお尋ねがございました。皆さんの御期待に沿い得るような
答弁では必ずしもなかったろうと思いますけれ
ども、しかし、事柄の性格上、やはり漸を追うて進んでいくというような性格のものだ、そこらでひとつ
政府を鞭撻してください、かようにお願いしたのもそこらにあるのでございます。
いまお尋ねになりました二点、私はただいまのように
考えますが、とにかく新しい問題であるということだけお互いにはっきり認識しないと、
政府はあんなに言ったけれ
ども、ちっともやっていないじゃないか、あるいはまた、
政府のほうは大官はいいけれ
ども、その衝に当たっている者は十分問題の所在を理解しておらない、ことに取り締まりにばかり厳重である、こういう議論がおそらく出てくるだろうと思いますし、また片一方からいえば、いまなお
産業中心だ、こういうようなことで
公害防止をする効果があがっていないという御批判もあろうかと思います。それらの点については御叱声、御鞭撻を賜わりますようお願いしたい、かように
考えます。