運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1971-03-10 第65回国会 衆議院 建設委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年三月十日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 金丸  信君    理事 天野 光晴君 理事 大村 襄治君    理事 正示啓次郎君 理事 服部 安司君    理事 渡辺 栄一君 理事 阿部 昭吾君    理事 小川新一郎君      稻村左四郎君    金子 一平君       砂原  格君    丹羽喬四郎君       葉梨 信行君    浜田 幸一君       廣瀬 正雄君    藤波 孝生君       古内 広雄君    森下 國雄君     早稻田柳右エ門君    井上 普方君       佐野 憲治君    松浦 利尚君       柳田 秀一君    新井 彬之君       川端 文夫君    浦井  洋君  出席国務大臣         建 設 大 臣 根本龍太郎君  出席政府委員         建設政務次官  田村 良平君         建設大臣官房長 大津留 温君         建設省計画局長 高橋 弘篤君         建設省都市局長 吉兼 三郎君         建設省河川局長 川崎 精一君         建設省道路局長 高橋国一郎君         建設省住宅局長 多治見高雄君         消防庁次長   皆川 迪夫君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    高橋 盛雄君         建設省住宅局建         築指導課長   前川 喜寛君         建設省国土地理         院長      原田 美道君         日本国有鉄道建         設局長     内田 隆滋君         参  考  人         (日本住宅公団         総裁)     林  敬三君         参  考  人         (日本住宅公団         理事)     尚   明君         参  考  人         (日本住宅公団         理事)     宮地 直邦君         参  考  人         (日本道路公団         総裁)     前田 光嘉君         参  考  人         (日本道路公団         理事)     三野  定君         参  考  人         (水資源開発公         団総裁)    柴田 達夫君         参  考  人         (水資源開発公         団理事)    畑谷 正実君         参  考  人         (本州四国連絡         橋公団総裁)  富樫 凱一君         参  考  人         (本州四国連絡         橋公団理事)  蓑輪健二郎君         建設委員会調査         室長      曾田  忠君     ————————————— 委員の異動 三月二日  辞任         補欠選任   藤枝 泉介君    稻村左四郎君 同月十日  辞任         補欠選任   渡辺 武三君     川端 文夫君 同日  辞任         補欠選任   川端 文夫君     渡辺 武三君     ————————————— 三月二日  消費者保護目的とする宅地建物取引業法の改  正に関する請願佐々木秀世紹介)(第一三四  八号)  同(堀昌雄紹介)(第一三四九号)  同(中谷鉄也紹介)(第一四一九号)  同(鍛冶良作紹介)(第一四二〇号)  同(菅太郎紹介)(第一四九一号)  同(田中武夫紹介)(第一五三三号)  同(西尾末廣君紹介)(第一五三四号)  同(豊永光紹介)(第一五三五号)  地代家賃統制令廃止反対に関する請願青柳盛  雄君紹介)(第一四二一号)  同(浦井洋紹介)(第一四二二号)  同(小林政子紹介)(第一四二三号)  同(田代文久紹介)(第一四二四号)  同(谷口善太郎紹介)(第一四二五号)  同(津川武一紹介)(第一四二六号)  同(寺前巖紹介)(第一四二七号)  同(土橋一吉紹介)(第一四二八号)  同(林百郎君紹介)(第一四二九号)  同(東中光雄紹介)(第一四三〇号)  同(不破哲三紹介)(第一四三一号)  同(松本善明君紹介)(第一四三二号)  同(山原健二郎紹介)(第一四三三号)  同(米原昶紹介)(第一四三四号)  尾瀬分水反対に関する請願小沢辰男紹介)  (第一四九二号)  高速道路三ツ沢線路線変更に関する請願(門  司亮紹介)(第一五三六号) 同月四日  消費者保護目的とする宅地建物取引業法の改  正に関する請願大竹太郎紹介)(第一五六三  号)  同(熊谷義雄紹介)(第一五六四号)  同(鈴切康雄紹介)(第一五六五号)  同(森喜朗紹介)(第一五六六号)  同外五件(中村弘海紹介)(第一六〇一号)  同(永田亮一紹介)(第一六〇二号)  同(佐々木良作紹介)(第一六〇三号)  同(小林進紹介)(第一六九五号)  同(田中角榮紹介)(第一七六四号)  岡山市西大寺の公営住宅払下げに関する請願  (黒田寿男紹介)(第一七六五号)  地代家賃統制令廃止反対に関する請願松本善  明君紹介)(第一七六六号) 同月八日  地代家賃統制令廃止反対に関する請願松本善  明君紹介)(第一八〇五号)  消費者保護目的とする宅地建物取引業法の改  正に関する請願阿部未喜男君紹介)(第一八〇  六号)  同外六件(大村襄治紹介)(第一八〇七号)  同外六件(加藤六月紹介)(第一八〇八号)  同(栗山礼行紹介)(第一八〇九号)  同外二件(羽田野忠文紹介)(第一八一〇号)  同外二件(廣瀬正雄紹介)(第一八一一号)  同(葉梨信行紹介)(第一九六〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  建設行政基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 金丸信

    金丸委員長 これより会議を開きます。  参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  すなわち、建設行政基本施策に関する件調査のため、本日、日本住宅公団から、総裁林敬三君、理事明君理事宮地直邦君、日本道路公団から、総裁前田光嘉君、理事三野定君、水資源開発公団から、総裁柴田達夫君、理事畑谷正実君、並びに本州四国連絡橋公団から、総裁富樫凱一君理事蓑輪健二郎君、以上の方々参考人として御出席を願い、御意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 金丸信

    金丸委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人からの御意見は、質疑応答の形式でお聞きすることにいたしたいと存じますので、さよう御了承願います。      ————◇—————
  4. 金丸信

    金丸委員長 建設行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上普方君。
  5. 井上普方

    井上委員 私は、一年ぶりに建設全般につきまして質問するつもりでいろいろと用意いたしておったのでありますが、理事会のお申し合わせによりまして時間を短縮されたそうでございますので、各論から進めたいと思います。  そこで、道路局長にお伺いするのでございますが、二、三日前の新聞を拝見いたしますと、二年前の、新四ツ木橋リングビーム工法に際しまして死者が出た事件について、責任者が逮捕された。あの工法に対しましては、当委員会におきましても当時問題になったわけであります。しかし、昨年の六月に、建設省もこの事件不可抗力だと認定なさったようであります。しかし、その後検察当局がこの問題にメスを入れたそうでありますが、その間の詳細についてお伺いいたしたいと思います。
  6. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 四十四年の四月一日に、荒川の新四ツ木橋の下部の施工中に、御承知のようにリングビーム工法を採用しましたところが、それが破壊いたしまして、そのために貴重な人命を失った事件でございますが、事件直後建設省は新四ッ木橋事故調査技術委員会を組織いたしまして、ここで一年有余にわたります調査の結果、昨年の六月に建設大臣あて答申が出ております。それによりますと、詳細な調査を行なった結果、結論を申し上げますと、異常な土圧が働きましたことと、それからそれを受け持つべきリングビーム面外挫屈を起こしまして、それによって破壊したものでありまして、異常土圧につきましては、現在の技術におきましては予測することができなかった力であるから不可抗力である、簡単に申し上げますとそういう結論答申になっておるわけであります。  一方、労働省におきましては、労働安全の立場から、別に調査団をつくりましていろいろ検討しております。労働省調査団の団長は建設省事故調査技術委員会委員のお一人の方がなっておられまして、建設省データもとにいたしまして、主として労働省は安全の立場から検討を進めたようでございます。その中にはいろいろこまかく詳細な指摘があるようでございますが、建設省調査委員会のほうは、それらをすべて検討した結果、最終の結論として先ほど申し上げましたような結論を出したような次第であります。  一方、警察当局におきましては、事故と同時に捜査を行なったわけでございますが、昨年の秋に、ちょっと数は忘れましたが、十数名の書類送検が行なわれております。それをもとにしまして検察庁が昨年秋以来捜査を開始していたようでありますが、先般、関東地方建設局首都国道工事事務所の新四ツ木の元の出張所長であります青島君外東京エコンというリングビーム会社の二名並びに施工者の間組の二名、計五名が、証拠隠滅疑いあり、ないしは証拠を変造する疑いありというふうな事情かと思われますが、逮捕されたようでございます。  以上でございます。
  7. 井上普方

    井上委員 そこで問題になりますのは、証拠隠滅もしくはデータ改ざんが行なわれておる疑いがある。ここに私は大きい問題があると思うのでございます。証拠隠滅もしくはデータ改ざん疑いを持たれるようなことをなぜしたか、これはまだ事件捜査中でありますからはっきりいたしておりませんし、われわれはわからない。しかし、このように科学的な調査をやらなければならない事件に対し、証拠隠滅あるいはデータ改ざんということが行なわれるならば真実は発見できない、ここに私は大きい問題があると思う。いやしくも、建設省技術者というものは、技術者的良心、あるいはまた科学者的良心にのっとって事故調査を行なわなければならないと思う。おそらく、この事故調査委員会の出したものも、その改ざんせられたデータに基づいての結果ではなかろうかと私どもはおそれるのでありますが、この点はどうでございますか。
  8. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 今回の逮捕はわれわれにとりまして非常に意外だったわけでございます。と申しますのは、証拠隠滅なり改ざんということはわれわれはいたしておりません。先ほど調査委員会のことにちょっと触れておりますが、委員長は当時の土木研究所福岡正巳さんでございまして、先般の地震政府の代表として行っている方でございまして、これは世界的な学者でございます。なお、その委員のメンバーを申し上げますと、東大教授がお二人おります。それから国鉄の研究所長が一人入っております。それから業界の方面の基礎のエキスパートが二人。そういうふうな構成になっておりまして、わが国のそういう基礎工事におきます最高権威者をもって編成されておりまして、約一年有余にわたるたいへんな努力をした結果の結論でございまして、こういう結論に対しましてわれわれは敬意を払っております。  なお、今回逮捕されました方々がどういう事情でどういうような証拠隠滅方法をとっているのか、私たちは全くわからないのでございますけれども、少なくも事故後、建設省が、業界ないしは東京エコンと申しますか、そういうリングビーム会社と接触して改ざんするようなことを命じたようなことは絶対なかったというふうに私は確信しております。現場の職員がそういうことをやったことは絶対ないというふうに私はいまだに確信しております。
  9. 井上普方

    井上委員 局長委員幾ら最高権威者であっても、その委員に示されるデータがすでに改ざんされておったならば、出てくる結論というものは、これは真相をつかむことはできない。したがって、このたび、ともかく、証拠隠滅あるいはまたデータ改ざんという疑いで、技術者諸君あるいはまた科学者諸君が逮捕せられたということは、まさに、科学に従事する者、あるいはまた技術者として最も恥ずべき行為ではなかろうかと、このように思うのです。データ改ざんする。これから出てくるものは誤った結果しか出てこない。そこで私はこのことを聞いておる。少なくともあなたがおっしゃっているように、私もそういうように確信いたしたい。しかし、第三者である検察庁、しかもそれは技術者でもなければ、あるいはまた学者でもない、その諸君が調べ、そして改ざん疑いがあるという疑いで逮捕せられた。これに対しましては、建設省全部の技術者諸君もこれは重大な関心を持たざるを得ない問題である。あなたは絶対ないと確信を持つとおっしゃる。しかし、第三者である検察庁証拠隠滅データ改ざんが行なわれておると言っていることに対しましてあなたはどういうように考えるか。もしその事実ありとするならばあなた方の責任はまさに重大だと思うのですが、どうでございますか。
  10. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 ただいまデータ改ざんないしは云々というふうな御意見がございましたが、私も当時担当の課長といたしましてその委員会には列席しておりまして、現場も数回見ております。これは確信をもって言えることでございますが、実際の破壊した状態なり、そのデータ改ざんした例はございません。したがいまして、私は、検察庁はどういうお考えから調べたか存じませんけれども、少なくも破壊したデータないしはその工事中のデータ等改ざんしているとは信じられないのでございます。  以上でございます。
  11. 井上普方

    井上委員 信じられないと申しましても、第三者であり、しかも調査専門家犯罪捜査専門家が見て、改ざんした疑いがある、あるいは証拠隠滅のおそれがあるということで逮捕せられているのでしょう。まさに、そのこと自体につきましては、破壊検査のあとのデータは、これはやられていないとあなたはおっしゃいますけれども事故そのものの、あるいはリングビーム工法そのもの基礎データ、あるいはまたそういうデータそのもの改ざんせられておる疑いがなきにしもあらず、このように考えるのです。したがいまして、この問題はいずれ司直の手において明らかになるだろうと思いますから、この問題はさておきましても、いやしくも技術者である皆さん方がこのようにデータ改ざんを行なわれるということになりましたならば、私どもは大きな不安を持たざるを得ない。科学者として、技術者として、その基礎データなるものが司直に出されることをおそれて改ざんあるいは証拠隠滅されるということになれば、これはゆゆしい大事だと思う。したがって、この問題は、いずれ後ほど司直の手であるいは起訴せられたら、その段階においてでもまた質問いたします。  委員長、この点保留いたしたいと思います。
  12. 根本龍太郎

    根本国務大臣 私に対する質問はございませんが、たいへん重要な御発言でございますから、私からも御答弁申し上げます。  建設省技術あるいは設計改ざんされたというようなことになるとはなはだ重大です。この意味において、司直の決断を待ちます。その結果もしそういうようなことがあったら、そういうことについては厳重なる措置を講じます。もししからざる場合には、警察自身責任をとってもらいます。事いやしくも建設行政技術について学界権威のある方々が出したものを、もうすでに二年後に至って証拠隠滅改ざんというようなことでやられることは——それは司直のやることは自由です。しかし、何らの証拠なくして、単なる疑いということでやったとなれば、警察も相当の——これは一般国民に対しても建設省に対してもたいへんな迷惑です。この点私からも、この司法の最後の結論が出ることを待ちまして厳重なる措置をとりたい、こう思います。
  13. 井上普方

    井上委員 ただいまの大臣のおことばで私は了承するのでございます。しかし、そういう事実がもしあったりするならばゆゆしき大事でありますので、ひとつその点あくまでも御注意願いたい。  そこで、私は、次に、例のロサンゼルス地震の問題につきましていろいろとお伺いいたしたいのであります。  まず第一番といたしまして、先ほど建設省から、ロサンゼルスに派遣せられた方々が逮捕せられておるというようなことで、まことに残念な事柄でありますが、そこで伺いたいのでありますが、少なくとも関東大震災以上の地震が起こる可能性がなしとしないと地震学者からいま警告せられておりますが、その場合に、建設省として、建設省の諸施設のうちで一番脆弱と思われ、かつまた補強しなければならないと考えられるものは何か。ひとつお伺いいたしたいのであります。
  14. 根本龍太郎

    根本国務大臣 総体的にお答えいたしまして、技術に関することは政府委員から答弁いたさせます。  一応井上委員も御存じのように、日本建築構造物は、関東大震災経験を経ましてからは、関東地震より少し震度の高いと申しますか、もっと強い地震に対しても十分に対応できるように建築基準法その他構造基準でやっておるので、その点は一応学界でもだいじょうぶだと認定されております。ただ、問題なのはそれ以前にできたもの、これについては若干問題があるかとも思います。しかし、これらのものについても、建設省もとよりのこと、東京都、関係の省庁をしてできるだけこれを改善するように進めてまいってきておるのでございます。しかし、今回のロサンゼルス震災の結果、これを見てまいりまして、これはさらに一段と念を入れて再点検すべきだという感じを受けまして、私は、この日本における大都市並びに震災が起こると見られるところの地方における営造物構造物については総点検を命じたところでございます。特に、ダム、橋梁高速道路というようなもの、これが大きく取り上げられると思います。  それからもう一つロサンゼルス調査経験から考えてみて問題になると思われますものは病院でございます。病院は非常に行動の敏速を欠くような方が多数おられる。ところが、日本病院は必ずしも非常に強靱な構造になっていない。ロスにおいてすらそうでありますから、その点が心配でございます。  それからもう一つは、救急車等が発動しなければならないときにあたって、ロスでも、救急車等、そういうものを収容しておる建物が相当やられており、行動ができなかった。  それからもう一つ日本で脆弱な点と思われますのが実は学校です。この学校が、実は最近国会でも問題になっておるように、建築違反プレハブ学校もあるということが指摘されておる。これがかなり問題ではなかろうかというふうに感じています。  それからもう一つ日本において問題になるのはガスです。ガス管、これがはたしてだいじょうぶかどうかという点。  それから水道でございます。これもそれぞれの所管省において十分に監督しているはずでございますが、これはもう一回総点検すべきだということで、これは私のほうから各省庁に申し出、中央防災会議においてこれを総点検するということにいたしておるわけでございます。  現在のところまあそういうところですが、特に建設省としていま早急に総点検をしたいと思っておりますのは首都高速道路、これは十分な設計をしているはずでございますが、はたしてこれがどうかということと、それから道路に接続するところの営造物がどういうふうになっているかという点です。  それから、私のほうの所管ではございませんが、実はたいへんたくさんの化学工場がこの南関東にあるわけです。製油所化学工場、これらの防災対策がはたしてできておるかどうか。これは通産大臣から、点検して、そうして自衛消防と申しますか、震災に対する各企業別対策を講ずるように指導してほしい。これは同じくデパート等についてもこれをやっていただきたいと思っております。  それからもう一つは燃料です。LPガススタンド、それから石油スタンド、これがもう所々に点在しておるのでございまして、これは一応の安全を考えてやっておるはずでございますが、さらに総点検する必要があるというようなことを考えまして、実は、先般ロス派遣調査団が帰った翌日の閣議において私が発言をいたしまして、総合的な点検の後、これに基づく——これは一番大事なことは、震災そのものよりも、その震災のショックを受けて起こる。パニックです。パニックがいろいろの災害を起こしますので、これは幾ら政府施策をやっても防げません。そこで、これはわかりやすい心得書みたいなものを作成する。たとえば、地下鉄に乗っておるときに地震が来たときにはどういうふうな措置を講ずべきか、あるいはまた高速自動車道で車に乗っておるときにはどうしたほうがいいか、あるいはデパートにおるときはどうしたほうがいいかというようなわかりやすいものを書いて、これをみんなに周知徹底せしめて、そうした事態に対処する心がまえ国民全部が知っておくことが一番大事だと私は思います。これの手引き書中央防災会議においてそれぞれ研究した上、あるいは自治体等でこれを普及徹底せしめるような方法も必要であろう。さらにまた、一地区を限って演習をしてみる必要もある。いままでは動揺を来たすからいけないということでずっとやめておりますけれども、ある程度まで未然にそういう大きな事態に対する心がまえをする意味においても、やはりこれは演習を研究すべきである。そのときにはいろいろの機関がこれに協力してやるというようなことも考えるべきだ。そういうことを私が申し上げて、閣議でもこれを了承して、いま作業を進めることになり、その中において、わが建設省においては一つプロジェクトチームをつくって、さっそく点検並びに研究をするというように命じておる次第でございます。
  15. 井上普方

    井上委員 いろいろと問題があることは、近時NHKのテレビで放送されておるようでございますし、私も大体知っておる。しかし、新潟地震の際にあの橋梁がたくさん落ちた。たくさんといいますか、最も新しいのが落ちた。これの調査はできておりますか。そして、あれはどういうような結果であったのか、ひとつお伺いいたしたいのが第一点。  第二点といたしましては、これは住宅局長になりますか、特に、大臣学校ということを言われましたが、函館震災の際には学校倒壊して、一階がぺしゃんこになって、そして二階、三階がそのまま残ったというような事態がございます。この点だれか御答弁願いたい。  第三点といたしましては、これまた新潟震災でございますが、公営住宅倒壊に瀕した。その原因はどこらにあったのか、そして今後のその対策はいかになさっておるかという点をひとつ明確にしていただきたいと思います。
  16. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 新潟地震におきまして橋梁が落ちた事件がございまして、これにつきましてはその後すぐ調査を開始いたしましたわけでございますが、どんな調査でどういうふうな結論が出たか、ただいま手持ちがございませんので、後ほど調べまして御報告いたしたいと思います。
  17. 多治見高雄

    多治見政府委員 函館におきます地震によります学校倒壊と、それから新潟におきます公営住宅倒壊の問題でございますが、その後技術的にいろいろ検討いたしましたが、新潟におきます公営住宅倒壊の問題につきましては、あそこの地盤が通常の地盤と特に違って、非常に脆弱であったということが一番大きな原因ではないかというふうに結論的にはなるように聞いておりますけれども、最終的には、そういった脆弱地盤があります場合には、脆弱地盤に対応した基礎工事をしっかりやるべきだという点について、やはり技術的にもっと検討する必要があるというふうに考えております。  それから学校倒壊につきましては、これは文部省の所管でございますので、私どものほうからどういう原因でどういうことで倒壊したかということをはっきり申し上げるわけにまいりませんが、文部省のほうの調査の結果、いろいろ伺ってみますと、やはり設計上、施工上いろいろ問題があったというふうなことを聞いておりますので、その点についての技術的な解明につきましては、文部省と協力いたしまして、今後われわれのほうといたしましてもそういった点についての配慮をしたいということで、文部省と緊密に連絡をとってやっておる段階でございます。
  18. 井上普方

    井上委員 道路局長、その新潟の原因についてはいつお知らせ願えますか。後ほどとおっしゃられましても、私はあなたのほうに地震の問題について質問するということは申してあるはずです。あれほどのロサンゼルス地震があったことですし、新潟震災のときにはどういう原因で起こったか、対応策はどうするかということは当然常に頭の中に置いていただかなければならぬと思うのです。その点どうでございますか。
  19. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 新潟地震の教訓はその後の橋梁設計施工に生かされておりまして、新潟地震のような地震が起きても橋梁が落ちることのないような設計施工にその後変更されておるはずだと思いますが、その詳しいデータはいま電話で照会中でございますので、もうしばらくお待ちいただきたいと思います。
  20. 井上普方

    井上委員 これは、日本全体がともかく地震地帯であります。したがいまして、新潟であのような事故があったのは、これは設計あるいは施工上のミスだけでは済まされないと私は思う。当然予測して設計施工されなければならない問題だと思う。ところが、その後もこれが生かされておるという話でございますから、その後はいいといたしましても、あの橋は新しいのでしょう。したがって、震度六もしくは関東震災以上の地震が起こった場合、日本橋梁の中で、少なくとも長大橋において、一体どういうところが問題になるのか、そしてそれは何カ所ぐらいあるのか、ここらの調査はできておるのでございますか。
  21. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 新潟地震のあとに調査したはずでございますが、その詳細をまだ存じておりません。また、ただいまのロサンゼルス地震のあと、大臣からも御指示がありまして、現在もう一回全国的に橋梁調査を開始しているところでございます。
  22. 井上普方

    井上委員 先ほど住宅局長からの御答弁がございましたが、地盤が脆弱であるというようなことは当然わかっていなければならない。現に、調べるまでもなくわからなければならない。そこへ公営住宅が建っているのでしょう。地盤脆弱なるがゆえに、基礎工事にしても当然十分なことがなされなければならない。それがともかく倒壊するということになると、この設計した技術者というものは、まさに設計士、技術者の名に値しない技術者であると申しても私は過言ではないと思う。あるいはまた函館の問題についても、単に文部省の問題であるといって知らぬ顔しておくわけにはまいらないでしょう。あなたは技術者のようでございますが、——違うのですか。建築家としての技術者の答弁を、おたくにはおるはずだから、ひとつお伺いいたしたい。
  23. 多治見高雄

    多治見政府委員 お話のございました技術者としての答弁は、私技術者ではございませんからできませんが、新潟公営住宅倒壊につきましては、私が伺っております範囲では、地盤について非常に特殊な条件があった。この地盤についての基礎工事をします場合の配慮は、一般的に、建築基準法で、耐震構造につきましては相当きびしい規定を置いておりますが、地盤につきましては、個々のその場所の地質の問題等非常に微妙な問題があるようでございます。したがいまして、これに対応した基礎工事というものを技術的にしっかりやらなければいかぬというのは当然の要請でございますが、これについて、新潟のあそこの地盤が、通常建築技術から常識的に考えておる地盤と非常に違った特殊な条件の地盤があって、それに対応する配慮が足りなかったのではないかというふうなことからそういう結果が出たというふうに——私も技術者ではございませんからはっきり申し上げられませんが、いままで聞いておる範囲では、そういった特殊な地盤に対する特殊な配慮という面において従来欠けておったのではないかということで、その面についての検討を今後十分やるということでやっているわけでございます。
  24. 井上普方

    井上委員 ともかく、技術者として、地盤が特殊だ、脆弱だなんということは答弁になりませんよ。起こったあとでの言いわけのための答弁だったら私は聞かなくていいのです。ともかく、これをいかにして有効に後の経験に生かすか、そしてまた、現在危険なところは一体どこにあるか、ここらあたりを技術者諸君はひとつ考えてほしいと思うのです。私はあなた方を何も責めるわけじゃない。寺田寅彦さんが天災は人災だということを申されたことを私は本で読んだことがありますが、新潟橋梁の落下事件にいたしましてもそのとおりです。函館にしても、あるいはまた新潟にしても、いままでに起こった地震は天災にあらずして人災だと言っても過言ではないと思う。ここらあたりは、特に建設省技術者諸君は注意してやっていただかなければ安心できないと思うのです。  そこで、もう一つお伺いするのですが、ただいま建設大臣は、首都高速道路については総点検をなさるというようなお話でございましたが、道路公団のほうとしては、高速自動車道路は大体高架になっておるようでありますが、この点はだいじょうぶなんでございますか。どうでございますか。
  25. 前田光嘉

    前田参考人 お答えいたします。  道路公団の橋梁、高架部分につきましても、先ほど大臣からも御説明がございましたように、過去の地震の強度を基礎にいたしまして、これに耐えるという設計をいたしております。われわれは地震が起きてもだいじょうぶという確信を持っておりますけれども、さらにこの際点検いたしまして、必要な点があれば所要の措置をとりたいと考えております。
  26. 井上普方

    井上委員 ともかく、建設省の全施設、建設省管轄の諸事業に対しましては総点検をやる必要があろう、このように思いますので、大臣、この点あなたの御答弁をもう一度お伺いしたいと思うのです。特にもう一つ先ほども、ガス管あるいは水道管があぶないんだ、これは通産あるいは厚生がこれらの主管ではあるが、中央防災会議に申し出て早急に点検するつもりだというお話でございましたが、これは強力にやっていただかなければならぬと思います。それから、化学工場あるいはガソリンスタンド等々もいろいろ問題がありますので、大臣は、建設大臣であると同時に国務大臣でもあり、特に防災関係には重要な関心を持たざるを得ない建設相でございますので、この点強力なる発言もしくは指導をしていただきたいと思うのですが、いかがでございますか。
  27. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘のように発言もいたしましたし、今後も引き続きこれを促進してまいりたいと思います。内閣の中央防災会議においても、従来六つの班か七つの班でやっておったようでございますけれども、ただやっておっただけじゃいけない。それを各企業者並びに一般国民に周知徹底し、それによってパニックを防いでいく、また、それに基づいて演習する程度までいかなければ効果はあがりませんよということを申し上げると同時に、いままでやったことでいいという安易な考えではいけない。その意味で、建設省は私の所管でございますから、大都市の構造物については、道路橋梁、それから河川——これは高潮もございます。内水面に高潮が来たときにうしろから来られる危険もある。それからダムです。これは全部点検すべきだ。そうして若干でも不安があるところは手直しする。あるいはそういう地震が来た場合において、放水それから避難、そうしたものの訓練をさせておく必要があると思いまして指示をいたしておるところでございます。  先ほど首都高速道路のことを申し上げましたが、首都高速道路全部についても、それからその他阪神等についても全面的に総点検を命じたところでございまして、御指示の点は十分に私のほうからも関係官庁に申し出て、徹底して、震災の被害が発生しないように未然につとめることが国の任務であると思いますので、つとめておる次第でございます。
  28. 井上普方

    井上委員 ここでもう一つ、避難する場合に非常に問題になる問題があると私は思うのです。道路局長、歩道橋はだいじょうぶなんでございますか。
  29. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 横断歩道橋につきましても、通常の橋梁と同様に、関東震災と同程度の地震に対して耐え得るような設計になっておりますので、だいじょうぶだと思います。
  30. 井上普方

    井上委員 私は、道路協会が出しておるのを見ましたところが、横ゆれに対してはだいじょうぶだけれども、縦ゆれに対してはだいじょうぶなんですか。どうなんですか。
  31. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 水平震度が〇・二とってございまして、鉛直震度は〇・一とっております。これは現在の設計ではだいじょうぶということになっております。
  32. 井上普方

    井上委員 そのとおりなっておるようでありますが、震度六あるいは六以上の場合、この水平震度については〇・二になっておる、垂直震度は〇・一になっておる、それでだいじょうぶなんですかと私は聞いておるのです。これは震度、マグニチュード七あるいはまた七・五というような場合、だいじょうぶですかと聞いておるのです。これはあんまりジャーナリズムも取り上げておりませんので、あえてお伺いするのですが、どうでございますか。
  33. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 通常の橋梁の場合でも垂直震度は〇・一とっておりまして、水平震度につきましては、地質に応じましてとることになっておりますが、たとえば現在の横断歩道橋をつくっている位置は〇・二とっておりますけれども、これにつきましては、大部分のところはだいじょうぶでございます。ほとんどだいじょうぶと言っても差しつかえないと思います。  なお、ちなみに、ロスアンゼルスにおきます震度は〇・〇二ないしは〇・〇三程度だと思います。したがいまして、日本の場合は、ロスアンゼルスの場合の五、六倍の強さにも耐え得るというふうになっております。
  34. 井上普方

    井上委員 私は、あなたのほうの書いてあるのを見ましてはなはだ不安を持たざるを得ないのです。メートル当たり百キログラムの荷重がかかるのに耐え得るような設計になっておる。しかし、これでだいじょうぶなんですか。あなたは技術者の良心で——歩道橋というのはほとんど下は掘っていませんよ。一メートルぐらいしか掘っていない。その上に簡単に置いてあるような構造じゃございませんか。この構造については、あなたのほうで標準設計を持っておられるはずなんですから、ひとつお示し願いたいと思うのです。基礎工事といいますか、下のほうがはなはだ脆弱に思われるのですが、その点いかがですか。
  35. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 下については、この指針には触れていないようでございますけれども、通常現場ではそれぞれに地震を考慮した基礎をつくっておるはずでございますので、だいじょうぶだと思います。
  36. 井上普方

    井上委員 地震を考慮して現場のほうでやっておるからだいじょうぶだと言うが、だいじょうぶだというのがたよりないから私は聞いておる。新潟のあの橋梁ができて落ちたのは六、七年前でしょう。だから、あれは基礎工事が一メートルぐらいしか掘っていないじゃないですか。その上へ置いておるだけでしょう。それでだいじょうぶですかと言って私は聞いておるのです。先ほど住宅局長の話によりますと、特殊な地盤でございましたからなんておっしゃいますけれども、関東全体はローム地層とかなんとかいう非常に特殊な地層でございましょう。これでだいじょうぶなのか。あなた方は不安を起こさせてはいかぬと思うのでだいじょうぶだとおっしゃるのだろうけれども技術者的に見た場合にそれはあぶないのじゃないか、このように感じざるを得ないのですが、どうですか。関東におきましても、東京におきましても、あの基礎をわずか一メートルぐらいしか掘ってないじゃないですか。どうですか。標準設計は後ほど見せていただくことにいたしますが、ともかく、現在の歩道橋というものは私は不安でならない。もう一度点検する必要があるのじゃございませんか。どうでございますか。
  37. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 個々に当たってみてチェックしないとわかりませんけれども、従来、横断歩道橋を設計する場合には、先ほど申し上げましたように、やはり関東大震災級の地震を考慮して設計することになっておりますし、横断橋そのものも基礎も含めてそういうふうに設計することに指導しておりますので、私はだいじょうぶと確信いたしますが、なおもう一回、今回の点検の際にも横断歩道橋について個々に点検するようにさせていただきたいと思います。
  38. 井上普方

    井上委員 あなたは技術者ですが、東京都の技術者が私らのところへ参りまして、現在の横断歩道橋が一番あぶないのだ、あれはひっくり返るおそれがあるのですということを言ったのを聞いたことがあるのです。現に私は聞きました。建設省は土木構造物標準設計ということで横断歩道橋をつくっておるでしょう。しかし、この設計にはなはだ疑問を持つ技術者がかなりおるのです。しろうと目にも見まして、私どもがあの基礎工事を見ますと不安にならざるを得ない。もしあれがひっくり返って、道路を遮断したときに起こる災害は、自動車を遮断することはもちろんのこと、歩行者までもあそこでストップしてしまって避難できないというような可能性が十分にある。したがって、この点をもう一度十分にやる必要があるのじゃございませんか。その点どうでございますか。そして、あらためてあなたのほうはこういうものを出されていますけれども、あるいは標準設計も出されていますけれども、はたして地震にだいじょうぶなのかというと、あなた方は実際問題として実験はやっていないのでしょう。やっておらぬはずなんです。そこで聞いているのですよ。どうですか。
  39. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 横断歩道橋そのものの実験等はやってはおらないと思いますが、構造物等につきましては、耐震設計ということで、建設省土木研究所で、それだけを中心に研究しておる機関がございまして、いろいろな構造物を研究しておるわけでございます。今回の横断歩道橋につきましては、確かに、荷重そのものが普通の橋と違いまして、人間だけの荷重になりますので、先ほどの百キログラム・パー・スクエアセンチでございますか、これは人間がずっと並んで通っておる状態を考慮して、しかも地震のときに計算されておるわけでございますが、構造そのものが非常に繊細なものでありますから、基礎そのものがそんなに大きくなる必要がございませんので、私、個個にチェックしておるわけではございませんが、先ほど申し上げましたように関東震災級の地震、〇・二の水平震度、〇・一の垂直震度ということで設計しておりますのは、基礎も同様でございますので、私はだいじょうぶだと思いますが、なおもう一度全国的に横断歩道橋についてチェックさせていただきたいというように考えております。
  40. 井上普方

    井上委員 ともかく技術者の中におきましても横断歩道橋につきましては不安を持っておる方々がかなりある。この点はひとつ十分考慮いたされまして、早急に実験をやられる必要があろうかと思う。それで、その後の対策もこれまた行なわなければならないと思うのです。大臣、この点ひとつお約束願いたいと思うのです。
  41. 根本龍太郎

    根本国務大臣 先ほど総括的に申し上げましたように、私は、道路橋梁、ダム、その他震災の場合被害を起こす危険のあるところは総点検を命じましたので、その中に当然入っております。  なお、いま東京都の技術者が不安だということを言っておるということですが、私はその技術者ははなはだ良心的じゃないと思う。技術者であるならば技術者として、これは改正すべきだとなぜ言わぬか、私ははなはだ疑問に思う。その人間を紹介してください。その人間と建設省技術者とよく話して、善意のことであるならば、こっちのほうが誤っておるならば直させればいいことであって、それを、技術者である者が不安だ、不安だなんて言うことは大きな人心動揺のもとになると私は思いますから、それをぜひ御紹介してください。よく技術者と話をさせまして、どこの点が悪いかということを直させようと思います。
  42. 井上普方

    井上委員 大臣、そのことは再三建設省のほうへ申し出ておるそうです。このことはひとつ覚えておいていただきたい。
  43. 根本龍太郎

    根本国務大臣 はい、わかりました。
  44. 井上普方

    井上委員 もう一つ問題になりますのはダムであります。ダムで、ロサンゼルスの場合は非常に危険にさらされまして避難したという話がございますが、先般、私は佐久間ダムが非常に埋没しておるという話を承ったのでありますけれども、ダムの埋没がひどいところは地震にはかなり弱かろう、このように考えるんですが、そこらの付近の研究はできておるのでありましょうか。そしてまた、それに対する対応策としては考えられておるのでありましょうか。ひとつお伺いしたいんです。特に、私がこういうことを申し上げますのは、私の地方におきまして山津波による倒壊事件がありまして、山と山とが地すべりしましてダムができた。そして、このために工兵隊が来て山くずれを爆破したことがございます。これは明治二十年代のことなんでありますが、このようにしてものすごい被害をこうむったということがありますので、私は特にこの点お伺いするんです。その被害たるや、まさにばく大なものがある。この点、河川局長、佐久間ダムはどうなんですか。えらい埋まっておるという話なんですが、そういうあぶない埋没しつつあるダムが一体どのくらいあるんですか。
  45. 川崎精一

    ○川崎政府委員 お答え申し上げます。  ダムの堆砂の状況につきましては、それぞれ河川法に基づきまして年間のダムの堆砂の実態等報告をさせておりますが、その数字あるいは個々の実態等につきましては、現在資料は持っておりませんのでまことに申しわけございませんが、ダムの全般につきましては、地震の問題並びに堆砂の問題につきまして、今回のロサンゼルスの実例もございましたので、私どもとすれば、ああいったような施工方法なり地震に対する配慮が——ロスの場合は非常に大胆であったように聞いておりますが、心配はないと思いますが、大臣からも御指示がございまして、ダムについて総点検しようじゃないかということでやっております。現在全国で約二千前後ございますが、その中で七割ないし七割五分が、戦前のいわゆる農業用のため池を主としたダムがたいへんたくさんございます。したがいまして、私どもだけでは十分点検が行き届きかねますので、現在事務当局で農林省とそれぞれ分担をし合いまして、そういった問題点についてダムを総点検しようということで作業を急いでおるところでございます。
  46. 井上普方

    井上委員 河川局長、佐久間ダムの現状はあなたは御存じですか。
  47. 川崎精一

    ○川崎政府委員 かなり堆砂が促進をしておることは伺っております。
  48. 井上普方

    井上委員 佐久間ダムといいますと、これは戦後、ダムをつくらなければ、電源開発をしなければということで多目的ダムとしてつくられたものでありますが、それが計画よりもはるかに速いスピードで堆積が行なわれておるということを実は承ったのであります。こういうようなダムはおそらく利根川上流にもあるだろうし、あるいはまた木曽川上流の御母衣もそうだろうし、関西へいきますとたくさんあろうと思うのです。しかも大ダムです。これがもし決壊するというようなことになりましたならばたいへんであります。その土砂の状況なり佐久間ダムの実態なんかも、あなた方が予想されたよりはるかに速いのじゃございませんか。何年くらい速いのですか。わかっておりますか。
  49. 川崎精一

    ○川崎政府委員 その堆砂の、計画時点との詳細な速度の違いというのはちょっと現在御返事申し上げるわけにまいりませんけれども、常識的に建設当時よりはかなり堆砂の速度が速いというのは伺っております。佐久間ダムの場合は、ダムの構造なりあるいは使用目的からいたしますと、あれは電力を主としておるダムでございまして、ダム設計なり安全度からいきますと、ほとんど満砂してもダムの安全度には差しつかえはないというように私どもは承知しております。
  50. 井上普方

    井上委員 しかし、地震の際には、ダムが埋まってしまった場合には一番あぶないのじゃございませんか。これはどうなんですか。北イタリアにおけるダムの倒壊もございましたし、あるいはまたテネシー川におけるダムの倒壊もございました。堆積したときが地震あるいはまた天然災害に対しまして非常にあぶないのじゃございませんか。
  51. 川崎精一

    ○川崎政府委員 佐久間ダムの場合には、重力ダムでございますので、ほとんど満砂をいたしましても、実際にダムの安全度につきましては十分だいじょうぶであるというふうに考えております。ただ、上流で大崩壊があるとか、そういったような場合も考えられるわけでございます。佐久間ダムのような場合には、そういったことで、たとえばダムの天端を水が温流するというような時点でも、あの構造では十分耐えられるというふうに考えております。
  52. 井上普方

    井上委員 佐久間ダムはいいでしょうが、利根川上流にあぶないところはございませんか。あるいはまた多摩川上流のあぶないところはございませんか。満砂してもだいじょうぶですか。
  53. 川崎精一

    ○川崎政府委員 ダムの構造と、それからダムの流域の地質の状況等によっていろいろ判断の基礎が違ってくるかと思いますが、現在利根川上流のダムの堆砂の状況等を見ますと、そんなに危険な状態が進行しておるというふうには考えていないわけでございますが、やはり何といいましても、堆砂をするということはそれだけダムの機能が少なくなっていくということでございますから、そういった点では、いわゆる国土保全という意味からも砂防事業も促進していかなくちゃいけない、こういうふうに考えております。
  54. 井上普方

    井上委員 それでは、河川局長さんの答弁で、ダムに対するわれわれの不安については一応安心していいものと考えて、この問題はおきたいと思います。  もう一つの問題としましては、東京におきましては江東地区、あるいはまた大阪におきましてもゼロメートル地帯が非常に多いわけです。そこで、地下水のくみ取り制限、これは工業用水であれば通産省のかまえになるが、そのために地盤沈下のスピードがおそくなったことは私ども十分に聞いておりますけれども、しかし、依然として地盤沈下をやっておることは間違いない。そういたしますと、先ほど大臣が言われましたが、もしこれに地震による津波あるいは高潮ということが起こったならばどうなるか、りつ然たらざるを得ないのであります。これに対するあそこの海岸堤防はかなり厳重なものができておることは私は知っておりますけれども、さらにこの点について、対策として技術的にはだいじょうぶなのか。関東大震災程度の地震が来て、津波が来た、あるいは高潮が来たというときにだいじょうぶなのか。この点ひとつ河川局長にお伺いいたしたいのです。
  55. 川崎精一

    ○川崎政府委員 江東三角地帯に例をとりますと、外からのいわゆる潮位に対しましては伊勢湾級、それから地震に対しましては関東大震災地震の強さ、こういったものに十分耐えるという構造で現在ほぼ概成をいたしております。地盤沈下につきましても、先生もお話しのように、現在はかなり鈍化はしております。しかし、やはり進行いたしておりますので、私どもとしては、今後十カ年くらいの間に一メートル五十くらいは沈下をする可能性があるだろうというようなことで、そういった点をさらに上積み、土盛りをしまして現在の堤防ができております。したがいまして、大体外郭とすればまずだいじょうぶじゃないかと思います。むしろ、内部河川の始末にいろいろ問題があるのじゃないか。内水の問題等、地震時の構造につきましても、年々地盤沈下をいたしておりますので、それを背継ぎ背継ぎでやっておるわけでございます。そういった点で、このままでいきますと耐震的にもいろいろ問題があろうかと思いますので、現在は江東地区をとりあえずモデル的に取り上げまして、都市防災の一環として、あの域内の水をどういうふうに始末するかということで、一部は埋め立て等いたしますけれども、やはり消火用とか舟運とかいろいろございますので、そういった河川につきましては、常時水位をゼロメートル以下に低下をさせておきたい。そうすることによって、構造物も過大な構造物にしなくても済むじゃないか。したがって、地震にもかなり安全度が高い、こういうような方向で常時水位をできるだけ下げる。そうしますと、集中豪雨等がございましてもある程度リザーブもきくわけでございますので、それを常時ポンプ排水をする、こういう方向で新しく耐震対策の事業を起こしまして、今後、江東地区の防災計画と並行して治水関係の事業も進めていきたい、こういうふうに考えております。
  56. 井上普方

    井上委員 ともかく、江東地区の防災対策、あるいはまた江東地区のみならず、大阪のようにゼロメートル以下のところは、これは積極的にやらなければものすごい災害を起こすと思うのであります。先ほど大臣の御答弁で、建設省関係における地震による災害の考えられる点は再検討をされ、総点検をされるということを聞きまして、私ども安心いたすのでありますが、これは先ほども申しましたが、人が忘れたころに天災は来るという。これは寺田寅彦さんでしたか、そういうようなことを言われております。ロサンゼルス一つの教訓といたしまして、常時この点は考えて、そして国土保全のため、あるいはまた人命擁護のために施策をせられんことを強く望んでおく次第でございます。  もう一つお伺いしたいのでありますが、きょうの新聞でございましたか、河川審議会に大臣が諮問されておるようであります。昨年も、大臣就任早々に、水利権の洗い直しをやられるというお話がございましたが、その後どのように進んでおるのでございますか、ひとつお伺いいたします。
  57. 根本龍太郎

    根本国務大臣 昨年、御承知のように、私が取り上げましたのは首都圏並びに近畿圏、これらの地区において著しく都市用水が不足してまいりました。一方において、関東地区におけるところの農業経営の様相も変わってきておるのでございます。すなわち、水田もだんだん市街化区域に入ってきたし、したがって水田が少なくなる傾向があります。ところが、他面において畑地が相当の収益があがるので、野菜、くだもの等の畑が増加しています。ところが、同じ農民でありましても、水利権を持っているのは水田のほうにいって、同じ農民が畑地かんがいをやるのにも水利がないというところにも一つ矛盾があります。そういう点をもあわせまして、私は、決して農民を犠牲にするということではなしに、十分に慣行水利権を尊重して、水田を永続していく人には、取水口等、農林省と建設省がお互いに協力して用水路を確保してやる、慣行水利権を河川法上における水利権としてはっきりと確保してやりたい、そのかわり、余ったところのものは、いまの都市用水なりあるいは畑地かんがいのほうに活用しようじゃないかということで、このため、建設省河川局と農林省の農地局との共同でこの問題の調整に入るように指示しておりまして、これが部分的に進められております。南関東あたりでも、これが運用によって相当の水需要を満たすようなこともできておりますので、具体的なことは河川局長のほうからいままでの経緯を御説明いたさせます。
  58. 川崎精一

    ○川崎政府委員 昨年大臣から御指示がございてして、私どものほうで、従来からの慣行水利権の実態というものをずっと洗っておったわけです。これは相当範囲も広うございますし、いろいろ農業関係との調整等もございまして、まだ全部十分な調査は行き届いておりませんが、それとあわせまして水の合理化をどういうふうにするかというようなことで——水の合理化につきましては、これは単に農業用水なり慣行水利だけではございませんけれども、農業用水につきましては、一部非常に都市化が進んで、そしてそういった地域ではほとんど農業用水の実態的な利用がないというようなことで、かなり使用量等が減っておるところがございますので、取り入れの構造なり水路の実態からいきますと、依然として相当むだな水を、水資源の意味からいけば取っておるというようなところもかなりございます。したがいまして、そういったところを農林省とも協議いたしまして、逐次整備をして、転換できるものは転換していこうじゃないかというようなことで、一部はすでに水利権の処分もいたしておるところもございます。ただ、農業用水は、御承知のようにかんがい期の取水だけに限られておりますので、これを上水道とかあるいは工業用水とかいったようなものの年間のコンスタントの需要に対応させるのには、さらに抜本的に水資源の補給だとかあるいは水系間の水の融通といったものが伴いませんといろいろ問題がございますので、そういった点を今後どういうふうに調整をしていくかという点を今後検討してみたい、こういうふうに考えております。
  59. 井上普方

    井上委員 大臣はやがて退席せられるそうでございますので、大臣に特に慣行水利権の問題についてお伺いしたい。  いま私ども考えて、一番大きな問題になるのは、用水関係ではやはり農業用水でございましょう。その次に大きいのは電気に使う用水であります。電力会社に水利権を与えておりますけれども、いままでの古い電気事業というのは大体流れ込み式で行なわれておる。あるいはまた、近年になりましても、大きいダムはほぼ電力用につくられておるわけです。したがいまして、電力会社の水利権が、都市用水または下流の人たちに十分に使われるような水の使用方法をはたしてやっておるかということにつきましては、私は大きな疑問を持たざるを得ないのです。単に農業用水だけではなくて、この点をもう少し掘り下げる必要があるんじゃなかろうか、このように思うのですが、大臣、どうでございますか。
  60. 根本龍太郎

    根本国務大臣 それは御指摘のとおりだと思います。従来、水が豊富であったために発電の用に供するために与えたわけでありまして、そのために、総合的な水資源の活用という点からすればいささか欠くる点があったではないかと思われる点があると思います。実は、十年ばかり前に、私の郷里で、ある電力会社と地元住民の農業改造事業とがまっこうから対立してしまったことがあるのですが、ところが、その水利権はすでに十数年前に県が与えてしまっておる。したがってこれはどうしても譲らぬということでかなりシリアスな対立がありましたもので、私が中に入りまして、それはいかぬじゃないかということで直させたことがありますので、いま御指摘の点はよくわかります。したがいまして、今後、農業慣行水利権のみならず、水資源というものを、社会経済情勢の変化に伴いましてどのようにこれを活用するかということを検討しなければいかぬという考えを私は持っております。  実は、昨日、河川審議会の総会があったときに、それと若干関係ある問題として委員の一人から発言された中に、先ほど御指摘がありました地下水の採取基準について、工業用水とかあるいはビルなんかの冷却水のときに制約しておるけれども、地下水の問題については、都市のみならず、水全体の問題として何らかの法的な規制が必要じゃないかという一つの案が意見として出てきました。これは私は考えるべきだと思うのです。たとえ地方といえども、今後この水の問題が相当深刻になっていく。そうして、これをむやみやたらにやりますと、このごろのいろいろの公害の問題のようにカドミウムが入っているなんということを知らずにやっているということもあるから、この水資源と、それが人間の健康に及ぼす影響等から考えて、これも検討する必要があると思う。  それからもう一つ。やはりきのう、これは審議会の建議として出しなさいということをむしろ私から話しておきましたのは、たぶんあとから問題が出ると思いますけれども、一般河川の問題です。いままでは、一級河川とか法定河川については、管理その他かなり責任をもってやっていますが、いわゆる一般河川なるものが、地方自治体では何らいま権限を持っていないでそっちでやらしているような形で、これが一つのブランクになっております。これは一般河川についても治水と関係があるのみならず、水資源の活用の点から見ても、それから環境の保全から見ても考えるべきじゃないかということで、いま御指摘になりました点は、これはまだしかとした構想は持っていませんけれども、慣行水利権と同時に、いまの電力開発のために与えた水利権を総合的に調整するために検討することを事務当局に指示いたしたいと思っております。
  61. 井上普方

    井上委員 では大臣、次官が来られたようですからけっこうです。  次に、やはり水の問題でございますけれども、田村政務次官の地元である早明浦ダムの問題についてちょっとお伺いしたいのですが、早明浦ダムにつきましては、先般またまた五十億程度の建設費の増を水資源公団が要求せられたやに承るのでありますが、どういう内容なんでありますか、ひとつお伺いいたしたい。
  62. 柴田達夫

    柴田参考人 早明浦ダムの事業費につきましては、本年予算をきめます際に、総事業費として、事業を開始いたしましてどうしても増額しなければならぬ部分と、物価の変動によります増の部分、約四十八億を増額していただきたいということを予算の問題として建設省のほうにお願いをいたしました。正規の地元への問題あるいは計画の変更、こういうことにつきましては今後の問題になっており、現在、建設省のほうに、予算をきめます際に大蔵省協議の関係で四十八億ばかりの増額をお願いしておることは事実でございます。
  63. 井上普方

    井上委員 今後の問題と言われるのでございますが、財投の関係はそういうので、常に、問題としましては一般会計、特別会計は出されるけれども財投関係が出されていない。ここに私どもは大きな不満を持ち、しかも、国家資金が公団に流れていくのでございますから、当然これは予算と一緒に出すべきであるという主張をいたしておるところであります。しかし、いまの総裁のお話でございますと、予算はいま要求しておる段階であるから、今後四十八億について処置するということでは、もうすでに新聞にも出たことであり、地元におきましては大きな不安を持っておるのでございますが、この点明確にひとつお答え願いたいと思うのです。
  64. 柴田達夫

    柴田参考人 予算を今後要求すると申し上げたのではなくて、四十六年度の予算を先般大蔵省ときめます際に、四十六年度の早明浦ダムの事業費をきめます際に、総事業費というものをあわせて大蔵省と協議をいたしまして、四十八億増加を前提に四十六年度の早明浦ダムの事業費をきめたわけでございまして、これは予算上の措置でございます。今後予算を要求するというわけではございません。  いま申しました地元あるいは関係省、関係県というものに対します実施方針の変更とか、そういうような正規の手続につきましては、今後建設省と打ち合わせをいたしまして、関係各方面と御協議を申し上げるという段階になっている。かような次第でございます。
  65. 井上普方

    井上委員 四十八億といいますと、少し大き過ぎやしませんか。あなたはいま、物価の増によって総事業費が四十八億ふえたとおっしゃいますけれども、大き過ぎやしませんか。何%になりますか。
  66. 柴田達夫

    柴田参考人 先般総事業費を改定いたしました。現在の早明浦ダムの総事業費が二百五十億でございますから二割弱、四十八億というのは五十億には達しておりません。二割弱ということで、これは些少な額であるとは思っておりませんが、まさにやむを得ざる増額であるというふうに考えております。先般の二百五十億の事業費決定の際にも、今後の物価のスライドによる分あるいは労務費の増加による分は、これもやむを得ないので——いろいろの場合に、ダムの最終段階におきましてはそういう種類の増額はございます。これは一割台ぐらいはやむを得ないかと思いますが、早明浦ダムの場合に、先般の増額は、補償が決定いたしまして、補償の増加によりまして、総事業費をやむを得ずふやさざるを得ないということで増額したのが前回の増額でございます。この関係は、ダム本体に関する補償については終わっているわけですが、あそこは非常に延長の長い補償工事道路がございます。この道路の関係の補償工事の問題と、それからダム本体に実際工事に入ってまいりまして、数量的にコンクリートの打設量がふえたこと、こういうことが地盤の関係等でやむを得ずふえてまいったのであります。このダムの事業費がたび重なって増額することはまことに望ましいことではない、非常にやむを得ないことだと思っておりますが、第一に、最初は地元が反対で、内容の調査が十分できない、対象物件がわからないというような段階で、まず一回増額いたしました。前回は、大体そういうものと物価増と合わした補償を中心とした増額でございます。今度は、物価の増額に加えまして、道路の補償工事、あるいはその地盤の関係で本体をさらに掘る分量がふえて、そうしてコンクリートを打設する分量がふえた、実際に工事に当たってみてからやむを得ずふえたという分を合わせまして、御質問にございましたような二割弱、四十八億の増額をしなければならない羽目になっているのでございまして、これは望ましいことだとも思っておりませんし、まことにやむを得ない増額であるが、何とか関係各方面にお願いをいたしまして御了承をいただくよりほかしかたがない、かように考えております。
  67. 井上普方

    井上委員 この問題につきましてはいろいろと問題がある。この入札に際しましても、三月三十日に入札して四月一日に水資源に引き渡したというようなはなはだ不明瞭な——不明瞭と申しますか、当時大臣はやむを得ぬというようなお話でございましたけれども、はなはだ私どもとしては納得のいかぬ問題がある。その次にはまた昨年は増額が行なわれた。これは補償費の増額とおっしゃいました。今度また五十億に近い四十八億が上がっておるわけであります。最初の計画によりましても、これは地元あるいは関係者に御説明になったときには、設計は一年前の設計で実は説明したんだ、上がるのはあたりまえだというようなお話だった。これは水資源じゃございませんで、建設省当局のお話でしたが、河川局長、総額において、早明浦ダムの工事に対しては、何年何月には幾らであって、その次に四十五年には幾らになって、また四十六年には幾らになったか、明確にひとつお答え願いたいのです。
  68. 川崎精一

    ○川崎政府委員 早明浦ダムを当初は直轄事業ということでスタートをいたしたわけでございますが、三十八年に設計をいたしまして、費用の割り振りなり、そういったものを協議をいたしました段階の工事費が百七十億でございます。したがいまして、これをそのままいろいろ各省あるいは地元四県との折衝を重ね、さらに事務手続を進めまして、四十二年の三月に吉野川水系の水資源開発基本計画を決定したわけでございます。そのまま百七十億の数字で最初の基本計画はできております。  それからさらに、その後四十三年の八月に、私どものほうで水公団等のいろいろな資料を調査いたしまして、四十三年八月時点で約二百五十億必要であるというような結論になりまして、これはちょうど四十四年に対する予算要求の資料の取りまとめの時点でございましたが、この時点で二百五十億を積算いたしました。したがいまして、四十四年の初めから関係各省、その他地元等に折衝に入りまして、その結果、四十五年の二月に現在の工事費二百五十億で基本計画の決定を見たわけでございます。その後の経過につきましては、先ほどの公団の総裁からのお話のとおりでございます。
  69. 井上普方

    井上委員 ここで問題になりますのは、一つは三十八年の設計のまま、四十二年に水資源に引き渡すまで百七十億で四年間過ごしたということです。これが一つなんです。四年たってあれだけ物価の変動の激しいときに、上昇の激しいときに、依然として百七十億としか一般関係者には説明していなかったところに一つ問題があります。その後四十四年になりまして、この国会に出されました資料は二百五十億。その際には、ダムの補償費が増加したから、これが大体四十億近く増加したのだ。そして物価の変動によって十億ぐらい上がったのだという御説明があった。このときにも関係者は四十二年と四十四年とを比べてそんなに上がるわけはないじゃないかといって強い不満が述べられたことは御承知のとおりです。今度上がりますと三百億になるのです。地元あるいは関係者にしますと、四十二年から四十六年のわずか四年の間にダムの工事費は倍近くになっておるのです。これで一体一般の方々は納得できますか。また、私どもといたしましても、最初は百七十億で出発し、四十六年には二百九十八億になるのだというようなことではちょっと納得できないのですけれども、今後地元民をいかに説得しますか。関係者に対して説得する自信があるのでございますか。これは関係者と折衝するのは水資源あるいは建設省のいずれか存じませんけれども、どこでございますか、この点自信がありますか。ともかく私が関係者であるならば、四十二年に百七十億で、そして四十六年の現在になって二百九十八億、こんな増加が認められるかということを言わざるを得ないと思うのですが、どうですか。
  70. 川崎精一

    ○川崎政府委員 私どもも、常識的な感じとすればやはり受け取り方は先生のお気持ちと同じでございます。ただ、いろいろ内容等を聞きますと、当初は補償基準の妥結の段階で、あまり詳しい補償の対象なりあるいは事業の工事量なりが把握できない段階で物価をスライドいたしまして二百五十億にしたわけでございます。その後補償物件等も詳細にわかってまいりましたし、ダムの地質の精査に伴います掘さくの量あるいはコンクリートの量、こういったものがある程度現状ではつかめましたので、その内容を一々聞いてみますとやはりやむを得ないものばかりでございますので、見た目には値上がりの幅が非常に大幅でございますけれども、実情やむを得ないということで、できるだけ全力をあげて説得をし、納得をしていただくように努力をしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  71. 井上普方

    井上委員 政務次官、これはあなたの地元です。百七十億で出発して四年後に二百九十八億ですね。そうしますと何割の増になりますか。わずか四年間ですね。これで地元民を、少なくとも高知県をあなたは自信を持って説得できますか。どうでございますか。
  72. 田村良平

    ○田村政府委員 いまお話しのとおりでありまして、実は、私の郷里は四国の水没する地域であります。いま公団と、また河川局長からも答弁がありましたが、私たちも、いわゆる地元関係民という立場におきましては、これらの問題は慎重に扱っていきたいと考えますが、何しろ、かつての四県の知事会でも、あるいは土木部長会議においてもそうでしたが、吉野川の総合開発につきましては四県の産業、経済、文化を推進する基盤の重大な問題であります。いろいろと見込み違いがあったり、あるいは決定的な問題点の解明がおくれたために、補償の問題やあるいはその間の経済界の変動に伴う物価の水準が変わってくるというようなことで、いろいろと負担の増加についても御審議をお願いするということはまことにこちらとしても残念であります。しかしながら、御承知のように、四国にとりましての世紀の偉業的な大きな開発の事業でありますので、何とか各関係機関ないし地域の方々の御協力と御理解をいただきまして、われわれとしてはこの問題をどこまでも円満に成功裏に進めていきたい、このように考えておりますので、特に地元の関係がございますので、この上ともの御協力をお願いいたしたいと思います。
  73. 井上普方

    井上委員 協力せいといっても、こんなことでは協力できませんよ。三十八年から四十二年の総工事費は百七十億で四年間過ごしていった。いま四十六年になると、何と百七十億が二百九十八億になった。これを地元民にのめ、関係者にのめなんて言うことは私はできません。建設省当局は、いままで地元に対しまして百七十億でできるのだといって説得していたが、徳島県は、これに対しては批判的でありました。これを百七十億でできるのだということで費用負担まで、アロケーションまでやってきておる。ところが、これが四年間に百七十億から二百九十八億まで増額する。しかもその四年前までは、三十八年には百七十億、四十二年も百七十億、これで過ごしてきたのです。言いかえますならば、この間の、三十八年から四十二年までの物価の高騰なんということは建設省は計算に入れてない。これは地元あるいは関係者に対するペテンじゃありませんか。そして、着工したらとたんにどんどんどんどんと総工事費が上がって、現在では二百九十八億という数字をあなた方は出してきている。これで関係者に負担しろと言ったって、これではだれが納得しますか。私どもは、このやり方に対しましては大きな不満を抱かざるを得ない。この点につきましてはもうこれ以上申し上げることはやめますけれども、このようなやり方を建設省がしておることは、私は、今後の建設行政の進め方において大きな不満を持ち、かつまた、今後は正直に地元関係者におっしゃるように強く要求するものであります。  それからもう一つの問題といたしましては、先般来本四公団総裁が各所で、着工については差があるであろう、三本のルートは差があるであろうとおっしゃられた。また、建設大臣は、当委員会において、それはこういう意味だと、総裁の言明に対して解説をなさった。また、その後も、公団総裁は、四国へ参られまして、経済界の代表と橋の問題についていろいろと講演をしたり、あるいはまたサゼスチョンをお与えになった。こういうことがございますが、橋はもう同時着工とか時差着工とかいう段階ではないと思うのです。したがいましてお伺いするのですが、現在の技術をもって、資金量がたっぷり本四公団にあるならば、鳴門の大橋は一体いつできるのか、明石の大橋は一体何年に完成するのか、あるいはまた瀬戸大橋は何年に完成するのか、あるいは広島と愛媛とをつなぐ橋は何年に完成するのか、この点をひとつ明確にお答え願いたい。もういままで政治的にこの問題はさんざん利用し尽くされまして、政治橋とさえ言われておりますから、この点、技術者としての公団総裁の表明をひとつお願いしたいと思うのです。
  74. 富樫凱一

    富樫参考人 本・四連絡橋の問題につきましては、公団といたしましては、四十八年度に各ルート同時着工できるように調査を進めるということを申してまいりました。これはいまも変わっておらぬわけでございます。着工の問題になりますと、実施計画の承認をいただいて着工するということになるのでございまして、ただいまのところは、調査の目標を申し上げておる段階でございます。先般、大臣の御答弁で、時差着工というようなお考えであるやに新聞に報道されたわけでございますが、徳島県の財界の皆さんとお目にかかりましたときにそのことに触れられましたので、私は、大臣のお考えは調査の目標について言われたのでなくて、たぶん着工の段階になって起こるべき問題を言われたのであろうという説明をいたしたわけでございます。私技術者でございますが、技術者として考えますと、万般にわたりまして自信のいくまで調査させていただきませんと、その後の着工段階並びにいつどの橋ができるのであるかというようなことは申し上げられないのでございまして、この点御了承をいただきたいと思います。
  75. 井上普方

    井上委員 総裁にお伺いするのですが、十分調査をさせてほしいということも私はわかります。しかし、その十分なる調査というのはいつまでかかるのですか。これはまさに線を引くわけにはいかぬと思うので、いつまでに十分な調査ができるということは言えませんでしょうけれども、あなた方がほぼ自信が持てる調査はいつ完了するのでございますか。各ルートについてひとつ説明してください。
  76. 富樫凱一

    富樫参考人 四十八年度同時着工目標に調査を進めておりまして、四十七年度にはおおむね調査を完了して、四十八年度には実施計画の承認をいただいて着工するという段階をめどにいたしております。
  77. 井上普方

    井上委員 総裁、そうしますと、四十八年度に着工するのは明石の大橋も同時に着工するのでございますか。
  78. 富樫凱一

    富樫参考人 各ルートについて着工すると言っておりますのは、各ルートのどの部分かに着工するという意味でございます。  明石の橋のお話が出ましたけれども、明石の橋の調査につきましては、ほかの調査よりも一、二年おくれるであろうということは、私は、国会じゃございませんが、前にも申し上げたことがあるわけでございます。
  79. 井上普方

    井上委員 それくらいの調査をやられたならば、その調査委員会で出されました金額と——大体金額は物価の上昇がございましょうが、期間はそれくらいで大体できるのでございますか。どうでございますか。
  80. 富樫凱一

    富樫参考人 確実なことは調査が終わらないと申し上げられません。したがって、金額の問題にいたしましても、また工事にかかる期間にいたしましても確実なことは申し上げられませんけれども、昭和六十年までに三本ということがございますので、それに合わせるように努力いたしたいと考えております。
  81. 井上普方

    井上委員 努力されるということでございますから了承しますけれども、いろいろと調査は十分させてほしいというお気持ちもわかります。ましていわんや、潮流の激しい、あるいはまた台風、地震の予測せられるところでございますので、十分やられることはけっこうでございますが、この橋につきましては、ともかく昭和三十二年から、いまにもかかるのだ、かかるのだということで過ごされてきたわけであります。しかし、初めて総裁から、四十八年に実施設計をやって着工したいというお話でございますので、私どもも安心いたすのでありますが、今後四十八年までは十分な調査をやられるわけでございますから、どうか精力的にこの問題にお取り組み願いたいということをお願いいたしておきたいと存ずるのであります。  実は、二時間の質問予定で、もうそろそろ時間が来ましたので、最後の問題としてお尋ねするのですが、道路五カ年計画で高速道路一つ示されたわけでございますが、いま出されておる高速道路の整備計画は五年以内に全部着工し、また完成するのでございますか。どうでございますか。
  82. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 国土開発幹線自動車道の予定路線は全線七千六百キロでございまして、現在の基本計画は四千四百九キロメートル出ておるわけでございます。なお、整備計画は二千七百九十九キロメートルを策定しているわけでございますが、ただいまわれわれは、第六次道路整備五カ年計画におきましては、現在すでに供用しております東名、名神等を含めまして四千五百キロメートルに、既着を含めてでございますが着工し、約千九百キロメートルを供用させたいというふうに考えております。したがいまして、全路線を現在着工するというふうには考えておりません。
  83. 井上普方

    井上委員 羊頭を掲げて狗肉を売るということばがありますが、こういうようなことがないように着工し、いつまでに大体できるかということを明確にしながらやっていただきたいことを強く要求いたしまして、私の質問を終わります。
  84. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 おくれましたが、先ほどの、新潟地震調査について簡単に御報告をさせていただきます。  新潟地震の直後に直ちに調査団を派遣いたしまして地震の被害の調査を行なったわけでございますが、特に昭和橋の被害につきましては詳細な調査をいたしました。その結果を御報告いたしますと、クイックサンドという現象、これは簡単に申し上げますと、こまかい砂の上に構造物をつくった場合に、ある地震が起きた場合に、その砂と同じような周期の震動が起こりますと、その砂が液状のような状態になりまして支持力を失ってくるような状態でございます。御承知のように、砂そのものは非常に支持力が強いわけでございますが、砂の固有振動と同じ振動が加わりますと液状のような状態で支持力がなくなるという、そういう現象をクイックサンド現象と申しておりますが、これによりまして橋脚、特にパイルの基礎が支持力を失ったためにバックリングを起こしまして折損したというような結果が出ております。こういうふうなことから、橋脚が異常に沈下したり偏位したために橋げたが次々に連鎖的に倒れたというふうな結果がわかったわけでございます。したがいまして、その後全国的に、こういう現象が起こりやすいと思われる橋梁は詳細に調査いたしまして、それに対する対策といたしましては、斜めのくいを打たせるとか、あるいは直ぐいの数を増加させるとか、あるいは橋台のベース部を広くするとか、そういうような措置を全国的にとらせております。したがいまして、今後こういうクイックサンド現象によります橋脚の倒壊ということはないのではなかろうかと思います。  なお、古い橋が残りました最大の理由は、古い橋はそういうパイルを使わないで、ウエルを沈めておりました。従来の最も古い工法でございますが、ウエルを沈めて施工しておりますので、こういう橋はすべてだいじょうぶだったわけでございます。  以上で終わります。
  85. 井上普方

    井上委員 最後ですが、ともかくいまのお話を伺っても感ずるのですが、現在の科学をもってしては、その何とか現象というのは前々から大体おわかりになっておっただろうと思うのです。それをおろそかにしておったのが新潟震災ではなかろうかと思うのです。こういうような問題につきましては、新しい工法を使う場合には、そのときそのときの科学の粋をきわめて十分な調査をやり、かつまた地盤との関係もどうなるかというようなことをやった上で新しい工法をされることを強く要求いたしておきたいと思います。
  86. 金丸信

  87. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 最初に住宅公団総裁にお尋ねいたしますが、埼玉県草加及び八潮の団地の取得に際して、ただいまニュースを聞きますと、公団の課長さんと係長さんが埼玉県警に逮捕された。汚職事件がいま盛んに発達しておるのですけれども、これは実情はどうなんでしょうか。
  88. 林敬三

    ○林参考人 ただいまお尋ねの件でございますが、去る三月八日に、関東支所の浦和営業所の原市団地の管理の仕事をいたしております米沢和孝と申します主事が、埼玉県の警察本部の捜査第二課に出頭を求められました。そしていまお尋ねがありました埼玉県の八潮の団地並びに草加の団地、これらの団地の用地買収に関しまして、堀川産業株式会社の水口茂という者から接待を受けて一部金銭を授受したという疑いをもって逮捕せられました。なお、これに関連いたしまして、彼は現在は浦和営業所の勤務でございまして、四十四年十一月から四十五年五月まで関東支所の計画部土地第二課という用地の課に勤務いたしておりました間のできごとでございますが、そのときの係長及び現在の係長、この二人がまた昨日並びに本日取り調べを受けておるという状態でございます。現在捜査中という段階でございまして、公団といたしましてもそれ以上の具体的内容が明確に把握できないのでございますが、いやしくもこういう疑いをもって逮捕状を執行されるという状態に立ち至りましたことはまことに遺憾でございまして、住宅公団をお預かりいたしております身といたしましてまことに申しわけなく存じておる次第でございます。
  89. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 そうすると、係長から、いま現在は課長に発展しているわけなんですか。エスカレートしたわけですか。
  90. 林敬三

    ○林参考人 係長が、前の係長といまの係長と、この二人が調べられておるという段階でございます。  それから課長は、昨日、支所の課長でございますが、警察に出頭したようでございます。これは課長の職務権限、それから係長の職務権限、それから、その下におりましたところの現在の被疑者の米沢という者の職務権限、こういうことについて課長は聞かれたというふうに聞いております。
  91. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 いま私どもに入ったところによりますと、日本住宅公団の庶務課長が数百万円もらった疑いでいま逮捕されたということなんですけれども総裁にはまだニュースが入っておりませんか。
  92. 林敬三

    ○林参考人 当時の係長でございまして、これは現在市原開発事務所の庶務課長をいたしております。現在は市原開発事務所の庶務課長でございますが、当時は係長でございます。そういうことでございます。
  93. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 きょうじゅうに逮捕ということで、いま警察へ連行するということになっておりますけれども、このような事件がこの二、三年の間には相当多発しているように聞いておるのですけれども、はっきりした事例、件数はお手元にございますか。
  94. 林敬三

    ○林参考人 まことに遺憾千万なことでございますが、昭和三十年に公団が発足いたしましてから四十四年までの表がございますが、用地関係において六件こういうことが出ております。最近といたしましては、四十三年に一件と、四十五年に二件という状態でございますが、いずれにしろ、まことに遺憾千万に存じております。
  95. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 大臣、私はこの事件について本質的にどうのこうのということはいま申し上げませんが、こういった地方自治体と住宅公団とのトラブルまたは不正事件が起きるというのは、やはり土地問題に関連しているわけなんです。すべて土地問題なんです。土地の贈収賄に関係している。また、住宅公団が住宅建設五カ年計画で政府施策住宅の割り当て数を消化するためには土地の確保がなければできないことはもう承知の上なんですが、たまたま建設費、人件費、総ワクの予算で押えられておりまして、私がこの間の総括質問のときにも示したとおり、その建設の予算というものは、予算額の金額では示されない。いつも建設戸数で示されておる。そこで、住宅公団も非常にいま苦慮していることは、土地の高騰であるとか、人件費の高騰であるとか、また資材、建設費の高騰ですね。これが二戸当たりのワクからはみ出して、どうしてもどこかでしわ寄せがくる。そこで首都圏の安い土地を買いあさる。そこにいろいろと無理が生じてくる。  私は、このような問題からもう一歩掘り下げてひとつ大臣にお尋ねしたいのですが、日本住宅公団法の第三十四条に「地方公共団体の長の意見の聴取」というところがございますが、住宅公団は、「住宅の建設又は宅地の造成をしようとするときは、当該住宅の建設計画又は宅地の造成計画について、あらかじめ、当該住宅の建設又は宅地の造成をしようとする地域をその区域に含む地方公共団体の長の意見を聞かなければならない。」というこの三十四条が私は問題だと思うのです。そこで、たとえば今回起きました草加及び八潮の団地の場合も議会が全然知らなかった。執行部の「地方公共団体の長」ですから、この場合でありますと、八潮の町長、草加の市長がこの意見を聞いて、たとえば土地の値段の問題だとか、面積の問題だとか、関連公共事業における公共減歩の問題だとか、また学校建設とか、その他の問題についての話し合いが行なわれ、そこに妥協が見出されるならば、この八潮とか草加というところへ建設用地を確保する、こういうことで三十四条があるのですけれども、ここに問題がありまして、私は、ここにもう一つ加えなければならぬ問題があると思うのです。この点についてはいまお尋ねいたしますけれども大臣地方公共団体の長の意見だけでいいと思いますか。まず御意見だけお聞きしたいと思います。
  96. 根本龍太郎

    根本国務大臣 現状ではやはり法律どおりでいいと思います。ただ、小川さんが言わんとするのは、おそらく議会の承認とか何かという条件をつけたほうがいいということだろうと思いますけれども、これは理事者がやるべきことでありまして、これを義務づけることははたしてどうかと思います。というのは、そういう執行の実際の責任者理事者でございまして、これを議会の承認を経なければいけないというところまではたして行くべきかどうか、まだこれは検討の余地があるのではないかと思いまして、現状では、私はいまの法制でいいではないかと考えております。
  97. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 執行部の行政権に立法府の議会が立ち入りするということでなくして、いま団地をつくる場合には、たとえば千葉県あたりになりますと、もう住宅公団を受け入れることを拒否している市町村もたくさん出てきたわけですね。これは公共団体が、市長とか行政府の独断的な判断といいますか、それによって執行していくのですから、どうしてもいろいろな問題が出てくる。そこで、この三十四条を使って意見を聞かれたときには、拒否するとか、またはその問題については賛成するとかいうことになるのですが、私は、地方市町村の総合的な開発、また日本の住宅の総合的な開発ということからいきますと、そのコミュニティの問題からいきますと、これだけ大きな団地の土地の確保ということになってくると、当該公共団体の議会の議決というものは、どうしてもこれは十分考えなければならぬという問題にまでなってきたと思うのです。これをつくったころの状態と、いま現実に差し当たっている土地問題と、特に三大都市圏に集中しておる人口のバランス等を考えたときに、どうしてもここに地方議会の議決なり意見を求めるとかなんとかということを何かもう一つ加えていって、総合的な立場からこういった住宅公団の土地の取得、建設というものを考えてあげればこういった問題が起きてこないのじゃないかという気がしてならないのですが、大臣の御検討を私は促したいのです。重ねてこの点をお尋ねしたいと思います。
  98. 根本龍太郎

    根本国務大臣 議会の議決を条件とすることはかえってまたマイナスの面が出ないとも保障できない。これは特に複雑な政党構成になっているところにありましては、これが今度は議決をしなければ全然動けないということになると、その自治体の議員の構成のいかんによっては全然これは手が出ないということになるおそれなしともしないのです。そのときに、やはり執行機関としての責任においてやって、あとは議会の承認を得るということでいいじゃないかと私は思うのです。そういうような配慮もありまして、いま直ちに法律を改正する必要があるというところまできておりません。ただ、事務当局なり、またいろいろ公団の実務をやっている方面から見て、その条件をつけたほうがより円滑に事が進むとなれば、これは再検討してもと思いますけれども、いまはむしろそういうことは要請されていないところから見まして、直ちにいま御提案のようにするというところまで腹がきまりません。検討させます。
  99. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 林総裁、私の意見大臣意見は大体あなたの考え方できまってくるように思うのですけれども、私は、いま大臣の御心配のような点も確かにわかりますけれども、あらゆる階級から市民の代表者が出ている議会というものが、日本住宅公団の団地政策、国の団地政策というものに賛意を呈して、万場一致でこれをやるということになっていけば、これはいまのような住宅公団受け入れ拒否なんという問題も起きてこないのじゃないかという気もある一面においてするのですが、総裁いかがですか。
  100. 林敬三

    ○林参考人 ただいまの御質問に対する私の所見といたしましては、これは理論的また制度的には建設大臣のおっしゃるとおりでけっこうだと存じます。  なお、幾ぶん蛇足になりますが、具体的に運用いたしております当事者としての感じを申しますと、あの公団法三十四条というのは、地方住民の意向というものが公団の団地を設置するときに十分反映して、それと広い見地から見た場合の要請というものとの間に調和された姿で団地というものが初めてできる、そういう形を求めるためにああいう条項があると存じますし、また、地方公共団体の長の意見を聞かなければならないということは、その長になっております方個人の意見というものではなくて、やはりその法文のとおり公共団体の長ということであって、申すまでもなく、団地建設の問題とか、重要な問題については議会の意向というものが十分反映した措置というものを内部でおとりになっておやりになるというふうに思うのでございます。軽易なこと、あるいは執行機関にまかされていると考えられることは、議会の意思をくんだ方法によって長の方が独自でこちらと折衝なさるということで、これはやはりケース・バイ・ケースだとも思うし、また地方自治法の中の運用の妙であると思うのでございますが、しかし、趣旨としては、小川委員のおっしゃるように、地方住民の意向というものがよく反映しながら、しかも全体の発展的見地から、必要性から見て、そこに調和を見出させるように、その自治体の長と私のほうとでもって十分の協議をしていくということであり、また、必要に応じては議会の議をその自治体の長の方が経られて、あるいは報告されて、了承を得られて、そうして私のほうとの間の仕事を進めていかれるということでなければならないものと思っております。
  101. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 この土地の獲得について、いま取り調べ中ですけれども、草加、八潮の自治体の職員が関連しているようにいま言われているのです。そういうところにいろいろな問題があるから私どもはこの一つの提案を提起したわけです。どうかひとつ、いま大臣がおっしゃったように、あなたのほうで、その点でいろいろな不備な点があるならば、遠慮なく大臣に聞いてやってください。前向きな検討はするということなんですから。私どもも、市長の意見だけでは危険である、こういう事件が起きてくる、ということを勘案してお尋ねしているわけなんです。その点いかがですか。
  102. 林敬三

    ○林参考人 具体的に市の中がどうなっているかということは、それぞれの市の特性がありまして、公団でもなかなかはかりかねるところもあるのでございますが、市長あるいは市の職員という方はもちろん自治体の職員でございますから、それで自治体の住民あるいはその代表の方というものの気持ちに十分沿った線において仕事をしていただくということであるべきであると思っており、またそう信じて交渉をさせていただいておるのでございます。しかし、ただいまのいろいろの御注意、今後の仕事の執行の上に十分参考に承りまして、また建設省ともよく相談いたしまして、大切な、また非常に金額の多い、面積の多い、困難の多い用地買収というものを極力正しく、かつ可能なように進めてまいるように努力いたしたいと存じます。
  103. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 そこまで公団総裁もお考えくださっているようですから、私は、この問題についてはきょうはこれ以上深くお尋ねはいたしませんが、何ぶんともにこういう事件を起こさないために、私がいま申し上げたことを御勘案して、ひとつ建設省と体制をよく整えてもらいたい、こう思うわけです。  次に、建設業法のことについて二、三お尋ねいたしますが、まず第一番目に、いま建設業法は参議院で審議中でございます。これは衆議院で審議したものが回っていって、またこちらへ返ってくるようになっていますけれども、中小建設業者の管工事、電気工事等を専門とする建築設備の専門業者の育成は、現在のような資本主義の体制の中で、競争の中で非常に急を要する。これは前回われわれが審議するときにも、契約問題等についてはいろいろと御注文を出したはずです。それに対して約半年以上過ぎております。まだこの法案は通過したわけではございませんけれども、建設業法を改正をするところの趣旨についてはわれわれも十分聞いておりますので、私どもが昨年夏に審議して以来、その後どのようになっているのか、現実にはどうなっておるか、このような専門業者がどういうふうになっているのか、まずお尋ねしたいと思います。
  104. 高橋弘篤

    高橋(弘)政府委員 御質問についてお答え申し上げます。  建設工事業者の中で、管工事だとか電気工事だとかいうものを担当いたします建設業者が非常に多うございます。これは中小建設業者でございます。これに対する育成策というものにつきましては、従来から建設省としてもいろいろ対策を講じておりますけれども、御承知のように、一つには、そういう事業のいわゆる組織化というものをはかるために、協同組合だとか、それから協業組合だとか、ジョイントベンチャーを進める、そういうことで企業の合理化をはかったり、また、受注機会の確保とか施工能力の増大をはかっているわけでございます。  また、先生のおっしゃいましたいろいろの対策の中で、公共工事につきましては、工事金額に応じまして建設業者の受注分野の調整をはかるという意味で、現在もすでに職別の発注標準というものが、御承知のようにございます。そういうことによりまして、専門的な性質を有する工事につきましては、業者の専門性を十分尊重してそういう発注をするということを通達にもうたっておる次第でございます。この発注標準等につきましても、建設省におきましても、もう少しそういうことは徹底するように現在検討中でございまして、その検討の成案をなるべく早く得まして、これを実施に移したいというふうに考えておるわけでございます。さらにまた、公共工事につきましては、そういう専門工事につきまして分離発注というものをなるべく進めるということで、そういう中小の専門工事業者というものを、十分育成をはかっております。今後ともそういうことを積極的にやっていきたいというふうに考えておる次第でございます。  また、これは先生もすでに御承知のとおり、今回の建設業法におきましては、こういうことについても十分はかれる体制を、いま審議をお願いしておるわけでございまして、この成案が成立の暁におきましては、この趣旨にのっとって、さらに積極的にこういう施策を講じてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  105. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 いま分離発注のことで言われて、私も納得しているのですけれども、分離発注というのは、御存じのとおり職種別の分離発注ですね。  それでは、重ねてお尋ねいたしますが、昭和四十四年八月二十七日の建設省の中央合同庁舎第四号館の電気配管工事の金額と、契約者はどこですか。
  106. 大津留温

    ○大津留政府委員 お尋ねの四号館の空調工事、これは約六億一千五百万円の工事でございますが、契約の相手は鹿島建設。それから同じく四号館の電気設備工事、これが約二億四千万の工事でございます。これにつきましても、契約の相手は鹿島建設でございます。
  107. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 四十五年の九月四日の中央合同庁舎第四号館の電気設備工事、それから空気調整設備工事、これの金額と、契約はどこですか。
  108. 大津留温

    ○大津留政府委員 先ほどお答えいたしましたように、四号館の電気工事二億四千万円、空気調整工事は約六億一千五百万円でございます。これの契約の相手は鹿島建設でございます。
  109. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 昭和四十五年九月四日の建設省関東地方建設局大手町第三合同庁舎の電気配管工事と電気設備工事、同じく四十五年六月四日の第一回空気調整その他の工事、金額と、業者はどこですか。
  110. 大津留温

    ○大津留政府委員 いずれの工事も、契約の相手は清水建設でございます。金額は、ちょっと手元に資料がございません。
  111. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 四十四年十二月一日の建設省の外務本省その他庁舎増築、空気調整設備、これの契約者と契約金額。
  112. 大津留温

    ○大津留政府委員 契約の相手方は竹中工務店、金額は後ほど調べてお答えいたします。
  113. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 分離発注ということは、あくまでも専門業者がそこに出てこなければ分離発注にならないのですけれども、私があげた三例は全部本体契約者である竹中であり、清水であり、鹿島である。電気配管工事、電気設備工事、空気調整設備工事等わずか三例をあげても、分離発注が中小企業に契約が回らないのですが、これが私ちょっと疑問がある。これは建設省の契約ですから、他省の契約ではございません。建設業法を提出する主体のお役所がこういうことである。われわれが昨年検討するときにはこの点が十分議論されたわけです。特に、分離発注とか、重層契約とか、地方の出張契約については、われわれは厳重に注意を促し、皆さん方の法案作成の主眼となるところの思想というものをわれわれとしては打ち出したわけですが、これはみんな入札日は四十五年九月四日、四十五年六月四日、四十五年八月五日などです。昨年、私どもが審議していたのはいつですか。
  114. 大津留温

    ○大津留政府委員 建設省が発注いたします工事は、建設業法の趣旨にのっとりまして、御指摘のような設備工事あるいは電気工事というような専門工事につきましては、分離発注というのをたてまえにしております。したがいまして、先ほど来例におあげになりました四号館あるいは大手町三号館等の空調工事または電気工事につきましても、建築の主体の工事と別に、空気調整工事あるいは電気工事としてそれぞれ別に指名を行ないまして入札をしたわけでございます。ただ、たまたま御指摘の三例につきましては、建築工事を請け負っております鹿島建設あるいは清水建設という会社は、設備部門あるいは電気部門の専門部をそれぞれ持っておりますので、これらの会社も指名に加えましてそれぞれの専門業者と競争入札をさせたわけでございます。その結果、建築本体を受け持っておるこの会社がやはりいろいろ有利な条件がございますので安い札を入れたという結果、そのゼネコンが結果的にはとったわけでございますが、建設省としましては、御指摘のような専門工事業者を育成するという趣旨から、やはり分離発注というたてまえをとっておる次第でございます。
  115. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 そうしますと、それはたてまえと筋論と現実とはずいぶん食い違いが出てきちゃったですね。それはいま官房長がおっしゃったように、大手の業者にもそういった部門があって競争させたんだからね。  それでは重ねてお尋ねしますが、他の大手メーカーもそういった部門を持っておるのに、なぜそういうところは参加しないで、本体契約工事をしたところのメーカーのみが全部を請け負ってしまったかという点が一つ。  もっと不可解なことは、それじゃ大手メーカーは、この第四号館庁舎の電気工事、配管工事、空気調整設備工事というものは他の零細中小企業には絶対にやらせておりませんか。契約には入っておらないんだから、当然やる権利はないんだから、仕事は、ほんとうに鹿島なら鹿島だけでやっておりますか。
  116. 大津留温

    ○大津留政府委員 これらの設備工事または電気工事につきまして、専門業者と同等以上の部門をかかえておるゼネコンというのは日本でも十社かそこらしかございません。したがいまして、建設省が発注する営繕工事におきましては、建築の施工業者と電気や設備の施工業者というのは別の業者である。ほとんどそういうのが実態になっております。たまたま御指摘のケースが大きなゼネコンで、そういった専門部門を同時にかかえておるという業者が当たりましたのでそういう結果になったということでございます。建築工事本体の施工業者と同じ会社がそういう部門を持っておると、入札で競争する場合には、やはり何かと有利な条件になりますので、したがってこれが安い札を入れたという結果だろうと思います。  ただ、その際に、なぜほかのゼネコンの設備部門も指名に入れなかったかという逆の御指摘でございますけれども、これはむしろ専門業者のほうになるたけそういった競争の機会を与えようというので、本体工事を受け持っておるゼネコンだけしか入れない、ほかは入れないという方針でやった結果がこういうことでございます。  それから、設備工事、電気工事等におきましても、請け負いました業者がその一部をさらに下請に出すというケースは、これは通常ございます。したがいまして、御指摘のございました四号館あるいは大手町三号館の工事におきましても、そういった設備工事、電気工事におきまして、契約した業者の下請として他の業者が入っておるというケースはございます。
  117. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 そうすると、全部にやらせるということはないわけですね。やっておるその下請業者が競争入札に参加した業者であり、代表してそこをやっておるということは、この四号館においてはありませんか。
  118. 大津留温

    ○大津留政府委員 その下請に、たまたま指名に入っておった他の業者が入るというケースはあろうかと思います。しかし、お示しのように、請け負いました設備工事なり電気工事なりのほとんど全部をそういった他の業者が行なうということはございません。
  119. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 いま、あなたのほうでおっしゃったから名前を言うのですけれども、四号舘庁舎にしても、外務本省その他の庁舎の増築にしても、これは全部建設省がやっておるので、それを請け負うことができるのであれば、最初からたとえば鹿島なら鹿島に全部やらせる。これはやる能力があるからやったのであって、それをまた鹿島がもうけて、競争入札に参加したものを下請にやらせるということは——この前の議論のときに、重層にだんだん下請さしていくことは好ましくないんだということをあなたの口から私は聞いておりますよ。だから、今回のような建設業界のすっきりした線を出し、中小企業の育成ということを考えてこの業法というのを出すというとき、その出す根本であり、主体である建設省がそういうあいまいもことした姿勢であれば、これは地方でも、また他の所管の省でも問題が起きてくるんじゃないですか。私はここのところがどうしても納得がいかないから重ねてお尋ねしているわけです。いかがですか。
  120. 大津留温

    ○大津留政府委員 先生御承知のように、建設工事は、建築工事あるいはいまお示しのような設備工事等につきましても、契約の当事者である業者が一から十まで全部やることは例外というか、むしろまれでございまして、やはりそれぞれの部門について下請を使う、それを総合的にまとめて、その契約の当事者である業者が責任をもってやる、こういうのが実態でございます。したがって、部分的には、同種の業者等が下請に入るということはあるわけでございまして、建設省としては、そのこと自体をけしからぬと申し上げておるわけじゃございません。ただ、お示しのように、請負の当事者である業者が当然なすべき総括的な責任というものを一括して他の業者にまかせるというようなことは建設業法でも禁じておりますし、建設省が発注する工事ではそういうことはございません。
  121. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 だから、専門分野に分かれて一つずつ分離発注していくんですね。全部の総合的なものを一人でやれといったってできないのですから、電気配管だの空気調整だのというふうに分かれているのを分離発注するということなんでしょう。だから、分離発注する業者を一つずつ契約していけば問題は起きないのですよ。それを、こっちはこれをやらせる、こっちはこれをやらせるということで、総合的な能力のあるものが上前をはね、ピンはねしてやることになったら、そこの精神が死んじゃうじゃないかと私は指摘している。最も姿勢を正さなければならない建設省がそれでは困るじゃないか。そこのところをあなたのほうでほんとうに実態を調査なさって、いま参議院で審議しているこの法案がもう一ぺん衆議院にカムバックしてきたら、私どもがこれを採決する際に、今後こういったケースは考えなければならぬ。いまのようなこと、そのために分離発注しているんだということで、その本体は鹿島なら鹿島が全部請け負うことはけっこうだが、その中の管工事だ、電気だ、空気調整だということになったときには、分離発注していくのが当然なんだという姿勢を貫き通さなければよそに示しがつかないじゃないですか。私が心配しているのはそこなんです。それはどうですか、約束できますか。
  122. 大津留温

    ○大津留政府委員 先ほど来御答弁申し上げておりますように、そういった専門工事は分離発注という原則で貫いております。したがって、そういう専門業者を別に指名いたしまして競争させる。たまたまその指名競争の中にゼネコンでそういう専門分野をかかえている業者が入っておったということでございまして、原則には何ら差しつかえないと思いますが、しかし、お示しのような問題点といいますか、できるだけ専門業者を分離発注して、いわゆるピンはねとか重層というようなむだを省くということでございますが、これはもうお示しのとおりでございますから、今後さらにそういう点を徹底させてまいりたいと思います。
  123. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 まあ、それでけっこうだと思います。  いま私がお示ししましたのは、大臣、中央合同庁舎の第四号会館です。総体はゼネコンが契約をすることはけっこうです。ところが、私がいまお聞きしたところによると、電気工事も鹿島だ、空気調節も鹿島だ、それからあれも鹿島だというように、何もかもみんなあらゆるところに顔を出してやってきているという御説明だから、そんなに欲を出すことはないじゃないか、中小企業にその分野を譲ってやるべきじゃないかと言うのです。そうして、自分が全部やるならまだいいですよ。それもできないで、今度また競争入札に参加した会社にやらせているんじゃ、そんなむだなことをどうしてやるのかということはしろうとだって疑問が出てくるのですよ。私は、何もかも零細中小企業にやらせろと言っているんじゃないのです。これは中小企業の分野だ、ここは大企業の分野だという、その分野分野を守っていくべきだと言うのです。もしもそれが守れなかったならば、そんなことはやめればいいんですよ。ところが、契約した名前が出てくるやつは全部下請にやらせているんじゃないか。それも競争させている業者にやらせている。そういうむだなことは、建設省は、建設業法を出した主体の省として姿勢を改めなければならない。そうしなければ私どもは建設業法を通過させるわけにはいかない。私自身の考えでは、そのことの姿勢が改まらないうちは通過させられない。四十五年九月というと、まだ最近ですよ。われわれが審議してわあわあ言っているときの契約ですよ。何も四十一年、四十二年のときの契約をぼくはさらけ出しているんじゃない。国会で議論しているときに同じことをやっているという、そんな侮辱されたやり方では納得できない。私の意図するところがおわかりになっていただけたと思いますから、最後に所見を聞いてこの質問は終わらせていただきます。
  124. 根本龍太郎

    根本国務大臣 よくわかりました。発注に当たる事務当局によく注意して、業法を改正した趣旨に十分沿うように行政指導するようにいたしたいと思います。
  125. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 よろしくお願いします。  次に新建材の問題でお尋ねしますが、全国春の火災予防運動が二月二十八日からスタートしました。建設省は三月七日から全国の旅館、ホテル、地下街の防火施設の総点検を行ない、危険な施設の一掃に乗り出したと私は聞いておりますが、全国の旅館、ホテルは、一体この対象軒数はどれくらいあるのか。
  126. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 約四万軒ぐらいでございます。
  127. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 その四万軒というのは、何人で調査し、いつまでに結果をまとめるのか。私どもの計算では、三階以上のもので七万四千軒ありますが、一体全体これはできるのかできないのか、ただかけ声だけなのか、その点お願いします。
  128. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 全国の消防署がそれぞれの区域ごとに従来から調査をしておったわけでございますが、そのうち特に調査内容の十分でないと思われるようなところはある程度リストができておるわけでございますので、そういうものを重点にして調査を進めていくということにいたしております。その時期につきましてはまだはっきりめどを立てておりませんけれども、去年も実は実施いたしましたので、それを補完追及していくという形において、これは大体毎年こういうことを実施しなければならぬと思っておりますけれども、進めてまいる所存でございます。
  129. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 建設省はどうですか。
  130. 多治見高雄

    多治見政府委員 ただいまお話がございましたように、三月七日から総点検を始めておりまして、現在実施中でございます。その結果の報告につきましては、今月中に報告をいただくということで現在鋭意やっている段階でございますが、軒数につきましては、これは推定でございますが、先ほどお話しの七万軒ぐらい対象はあるだろうというふうに推定いたしております。そのうち、三階以上で、特に危険であるというふうに考えまして、特に注意して点検しなければならぬという軒数は二万ないし三万軒ぐらいではないかという推定になっております。  その中で、現在までのいろいろな調査の結果、改善の命令を出す場合にこういった改善が必要なんではないかという推定は現在いたしておりますが、調査の結果を待って正確な数字は出てまいりますが、内装その他について特に改善命令を出して改善する必要がある軒数というのはやはり二万軒ぐらいあるのじゃないかという推定をいたしております。
  131. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 総点検なんといったって、わずかな人間ではとてもできないのじゃないか。われわれは総点検の先輩だからよくわかるのですが、総点検なんというものは並みたいていなことではできやしませんよ。夜も寝ないでがんがんやらなければできない。その点で、私はここで人数がどうのこうのと追い打ちはかけませんけれども、それは不可能だと思うのです。そこで危険な限度に限ってくると思うから、一部点検になると思うのですけれども、いまここに張られているのは新建材だと思うのですけれども、この建築基準法の合格マークは、この建物にはどこに張ればいいのですか。
  132. 前川喜寛

    ○前川説明員 お答えいたします。  これは指導的にやっているわけでございますが、おもな壁面の二カ所といいますか、そういったことで、二カ所ずつぐらい張っていただくというかっこうでやっております。これは実はそういった扱いを始めましたより以前の建物でございまして張ってございません。  なお、その前に、ここに出てくる材料でございますが、たとえば石綿スレートの三、六の板とか、そういうものについては原則的にいって各一枚ごとに表示を張る、こういった点で、使う側が使うときにわかるようにという体制をとっております。
  133. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 そうすると、きめられた、張らなければいかぬという以前のこういうものは日本全国にたくさんあると思うのです。その中にたくさん危険なガスが出るものがあるわけです。この材質はどういう材質で、燃えるとどんな煙が出て、どんなガスが出ますか。この新しい建物は、われわれしろうとがこの部屋に入ったときに、どういうふうに何がどこに出るのかわかるのですか。
  134. 前川喜寛

    ○前川説明員 お答えいたします。  率直に申し上げまして、仕上げをしてしまいますと、なかなか専門家でもわかりにくい場合が出てきます。ましてや一般の方々にはそれが非常にわかりにくいというケースがございます。したがいまして、われわれ先ほど申し上げましたような表示、こういったマーク、これを非常に重視しまして、一般の人にぜひわかるようにということで体制をとっていきたい、こういうように考えております。
  135. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 われわれも一般の人だからいま  この建材について聞いているわけですが、これはどこにどういうふうに何が張ってあるかというと、何もない。火事とか煙については、これは前の基準だから、前の建物だから張ってなくていいとか、張ったから安全だというものじゃないのですね。それを私は聞いているのであって、今後は違反建築物に対して、そういう張らないものに対して改善命令を出すと聞いておりますが、その基準建築基準法第十条によると思いますが、その第十条に「著しく保安上危険であり、又は著しく衛生上有害であると認める場合においては、」とありますが、「著しく」というと、具体的にどういうことを「著しく」というのか、この限界がわれわれにはわからないのです。
  136. 多治見高雄

    多治見政府委員 先生よく御存じで御質問になっていると思うのですが、内装の建材につきまして、火災の危険ということについて真剣に考えられ出しましたのは、確かに御指摘のように最近でございます。したがいまして、建築基準法におきましても、先ほどの法律の改正でその点非常に重視してやったわけでございまして、その後御承知のように、内装材料につきまして、不燃材料、準不燃材料、難燃材料というふうに分けて、それぞれの性能に応じまして、火災の危険度に応じて、こういった場所にはこういった材料を使え、こういった場所にはこの建材でいいだろうという規制をいたしているわけでございまして、その使う場合に、消費者の方がわかりやすいように、その材料についてそれぞれ指定のマークをつけろという指導をしているわけでございます。したがいまして、これはもちろん経済的な問題ともからみますが、火災危険度の大きさに応じてこういった材質のものを使えということを要請するわけでございまして、理想的に申し上げれば、あらゆる場所に完全に不燃の材料を使うということにすれば火災の危険については非常に安全なわけでございますが、これと経済的な要請との見合いで、火災の危険度に応じて不燃、準不燃、難燃というふうに材料を分けて規制するわけでございます。したがいまして、これは非常にこまかくなりますが、どういった場所にこういった材料を使うのがいいかということについては、われわれとしては、技術的に非常に精密に検討しているつもりでありますので、それに応じた規制を今後もいたしたいということで努力している段階でございます。
  137. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 現在の新建材の中で、ホスゲン、これは第一次世界大戦のときに使った毒ガスですが、このホスゲンの出る物質を含んでいるものがあると私のほうの資料にはあるのですけれども、このホスゲンを含んでいる材質というものは一体何ですか。
  138. 前川喜寛

    ○前川説明員 お答えいたします。  ホスゲンがどういうふうな材料からどう出るかということは、実は、私正確には知りませんが、大体プラスチック系統の材料でいわゆる毒ガス並みというのは、シアンのガスとか、あるいはホスゲンガス、こういったものがいろいろ出るというふうになっております。一時そういった有毒ガスの点も非常に問題にはなったわけでございますが、その後いろいろ検討してまいりますと、実は、その煙自身の問題が実際の火事のときの死傷者に一番大きな影響を与えているのじゃないかということになってまいりました。いまのいわゆる毒ガス的な意味のものは量としては微量でございます。直接的にすぐそれによってやられるということはないんじゃないだろうかというふうな見当を持っております。そういった意味では、これは実は毒性その他につきましても鋭意検討しているところでございますが、やはり一番問題なのは、火災時に起こってまいります一酸化炭素と、それから酸素が非常に急激に減少することで、いわば煙自身の、そういう組成の空気を吸うというふうなことでやられるのじゃないかというふうに大体見ております。
  139. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 私、時間も限られている中でやらなければならないので、この点はまた後ほど詳しくお尋ねしたいと思うのでありますが、約束の時間が参りましたからこの点は中止しておきます。  最後に、きょうは地震関係で総理府からもおいでをいただいておりますので、何にも聞かないで帰られたのでは失礼でございますので、ひとつ地震のことでお尋ねして終わらしていただきます。  ロス級の地震がわが国で起きた場合を想定して、災害対策基本法に定められている中央防災会議の現在の活動状況ですけれども、それについて  いろいろと問題が出てくると思うのですが、防災基本計画と非常災害時の緊急措置計画、これが一番で、二番は、現行の行政組織を再編成し、各省庁に分散している防災行政を集中する新しい行政機関、防災庁のようなものを今後つくるような考えが検討されているかということ、この二点をお尋ねいたします。
  140. 高橋盛雄

    高橋説明員 お答えいたします。  ロス級の災害がかりに大都市地帯に発生したとすれば、どのような災害対策計画または体制が現在確立しているかという第一点の問題のように理解いたしますが、それにつきましては、先生御承知のように、現在、災害対策基本法に基づきまして、防災基本計画、それから各省におきまする防災業務計画、それからさらに各都道府県並びに市町村における地域防災計画を定めて、それから防災体制で、避難、誘導、救助、復旧、という各般の事項を定めているわけでございますが、さらに昨年消防庁の消防審議会の答申にも出されました大震火災対策を受けまして、現在中央防災会議に八つの部会を設けまして検討している段階でございます。さらに今後とも各防災計画を通じまして防災体制の強化ということに努力してまいりたい、このように思っているわけでございます。  それから第二点につきましては、非常に大きい問題でございまするが、そのような災害対策基本法に基づく国の防災体制、つまり、各省、地方公共団体、各指定行政機関並びに各公共機関を通じて現在防災体制が成り立っておりますので、これを今後ともさらにフルに活用して力が出せるようにする、このようなことで進むのがよい、このように考えております。
  141. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 大津留官房長にお尋ねしますが、大津留さんのお宅に火災保険をかけておると思うのだけれども地震になったときに火災保険がもらえると思うか、もらえないと思うか、どれくらいもらえるとあなたは計算しておかけになっておられるか、それが一つ。  それから、それがはっきりしていれば、何らかほかの対策を講じなければならぬというお考えが建設省でも出てくると思うが、官房長の立場で火災保険の点について検討したことがあるか、この点を伺います。
  142. 大津留温

    ○大津留政府委員 私がかけております火災保険におきましては、地震に基づく場合は保険金が出ないという内容になっております。したがいまして、地震に対しましては、地震保険という別途の保険をかける必要がございますが、これは一般的にはまだなかなか普及がされておりません。また、保険会社としましても、もし地震が起きた場合にはたいへんな損害でございますので、これに応じ得ないという危険もございますので、その辺はこれから十分検討さるべき大きな課題だと思います。
  143. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 大津留さんのお宅では地震も含む総合保険をかけていらっしゃらない。その理由はいろいろあると思いますが、保険料が高いからかけないのか、それとも知らなかったからかけないのか、勧誘されなかったからかけないのか、いろいろあると思いますが、いまあなたがいみじくも申したように、一般市民はその地震の内容のことなんか知らないのですね。そこで、その対策として、わが党が提案した災害共済法案というのを参議院から出しました。これはわあわあ言って出した。これは御存じだと思いますが、災害共済制度というようなものを建設省としては検討したことがあるのか。また、これは私が災害対策特別委員のときに何度も趣旨説明し、提案しております。これについて、建設省の見解をまず承りたいと思います。
  144. 大津留温

    ○大津留政府委員 この問題につきましては、非常に大事な問題で、総理府の中央防災会議でもいろいろ調査をしておられるようでございますから、総理府のほうから御答弁願います。
  145. 高橋盛雄

    高橋説明員 お答えいたします。  個人災害共済制度が制度として成立するかどうか、そういうことを中心に、昨年九月一日、防災の日でございますが、それを期しまして一斉に全国の調査を実施したわけでございまして、現在その集計がまとまりまして、専門機関に解析の委託をしているところでございます。三月末にその解析の調査結果は出ることになっておりますが、さらに四十六年度におきましても、引き続きこの問題の制度についての研究をするために予算措置いたしまして、継続的に実施してまいりたい、このように現在考えております。
  146. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 建設大臣、どうお考えになっていますか。
  147. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘のように、これは望ましいことでございまするが、保険会社がこれをやるには、いろいろの専門的な資料、それから運用上の問題もあるようでございまして、ただいま中央防災会議がこれを積極的に取り上げまして、まずデータの整理、それに基づくところの可能性——可能性が出てきましても、今度これは純然たる民間だけでできるかどうかというところの問題も出てくると思います。そういう問題を中央防災会議が中心となって検討の上、私としてはできるだけこれを実現してほしいということで、実は関係方面には大いに推進しておるところでございます。そういう段階でございまして、できるだけこの実現をはかりたいと思っておる次第であります。
  148. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 では、これで終わらしていただきますが、国土地理院にお尋ねいたしますが、三浦半島、房総半島の地殻の変動が大きく取り上げられております。これは河角博士やその他の学者の言う七十年周期説ですか、昭和六十六年には地震が来るやのことを言っておる説もあるというときに、いま三浦半島、房総半島の地殻が大きく隆起している。この問題は大地震と何らか関係があるのですか。
  149. 原田美道

    ○原田説明員 お答えいたします。  国土地理院が昭和四十四年の二月に房総半島の水準測量を実施したわけでございますが、その前昭和四十年にやはり一回測定してございます。その二つの結果を比較しましたら、関東震災以後一般的にずっと下がっていた傾向であったものが逆になっている、隆起になっているということで、その量も四年間で約四センチないし五センチくらいでありまして、一年に割りますと一センチ一ミリ。日本の一般的な地面の変動はどのくらいかというと、一般的に絶えず動いておりますが、大体大ざっぱにいいまして年間一ミリとか二ミリとか、その程度の変動が標準でありますが、それに比べて量も数倍大きいし、いままでの向きが逆になっているということで、地震予知連絡会で取り上げたわけでありまして、同じような現象は三浦半島でも起こっており、量それから傾向が同じであった。それで現在測定をもう一回やっております。三月でございますが、大地震といいますと、学術的にはマグニチュード——これはエネルギーでありますが、このM7以上を大地震と通称われわれは言うわけでございますが、房総半島の異常地殻変動がそれの前ぶれであるかどうかはわかりません。しかし、地震の前兆であったのではなかろうかというような地殻変動は、これまでに、たとえば新潟地震の場合にあったわけでございますが、ただ、それが、前兆現象を終わって何年後に大地震が起こるかという定説というものはまだございません。しかし、房総半島の隆起というものは南関東でもありますし、非常に注意する必要があるというわけで、連絡会では、南関東一帯を、観測の強化地域という、ランク二になるわけでございますが、強化地域に指定しまして、測量でいいますと、これをできれば一年くらい——従来は全国五年ということでございますが、最大の努力をしていこうということで、国土地理院としましても、地殻変動の推移を今後ももう少し特別に熱を入れまして、関東に目を向けたい。  いま縦の話でございますが、同じような横のズレ、水平方向の変動も現在やっておりますが、これも新しいレーザーの機械もございまして、そういう機械を使いまして、非常に高い精度でございますが、測定を繰り返すようにしていきたいと思います。
  150. 金丸信

    金丸委員長 午後二時十分再開することとし、この際、休憩いたします。    午後一時三十八分休憩      ————◇—————    午後二時二十九分開議
  151. 金丸信

    金丸委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐野憲治君。
  152. 佐野憲治

    ○佐野委員 実はきょう、公団家賃の値上げの問題に関しまして主として質問したい、こういう予定で参ったのですけれども、まずそれに先立ちまして、一言大臣なり関係者の御意見を聞いておきたいと思うのです。  実は、七日、八日にかけまして、災害対策特委天野雪害対策委員長が富山に参りまして、その機会に私も同行いたしたわけですが、その中で特に問題となりました点について、その解決策についてぜひお伺いしておきたいと思います。  と申し上げますのは、富山県の利賀村という村なんですけれども、そこには人口約二千人がいるわけですが、冬季間交通がほとんど途絶してしまう。ですから、経済的に歴史的に非常に関係の深い地域への交通が閉ざされて、やむなく、峠また峠を越して、歴史的にあるいはまた経済的に関係が薄いのですけれども、そのほうが一車線を確保できるというので非常に努力いたしておる現況を見にまいったわけです。そこは小さな村でありますけれども、十数台のブルドーザーを買い上げまして、そのブルドーザーを配置することによって、豪雪のとき、あるいはまたどか雪のとき、あるいはふぶきのとき、その一車線を確保するために冬季間常駐しておる、こういう現況にあるわけなんです。そとで、私たちその地帯に参りましていろいろと現地の事情をお聞きいたしまして、村長以下がもし病気の場合はどうするとか、あるいは生活物資をどうするとか、いろいろな面で苦労しておる姿がよく理解できるのです。と同時に、歴史的にもあるいはまた経済的にも非常に関係の深いその地域をどうして選ばないのか、こういう疑問も当然出てまいるのですが、しかし、ここはがけくずれなりその他のためにとても冬季間交通を確保することができ得ない。なだれなりがけくずれの危険にさらされておる。ときには川をさかのぼったりして何とか交通の確保にも当たっているんだというような事情を伺ったわけですが、そこで、特に現地からの要望を聞きますると、現在非常に除雪費を使い、経費を使って、谷から谷へと非常に困難な中に一車線を確保しておるんだが、いま申し上げましたような従来からの道路は、いままでは村道であって、その村道を、実は毎年毎年多額の金を出して、改修に次ぐ改修をやってきたんだ。そこで、県のほうはこれに対しまして県道に昇格をして、ようやく経済的にはほっといたしておるけれども、しかしながら、県道になったけれども、改修は遅々として進まない。こういうことで、天野小委員長は特に声涙下る陳情をお受けになっておったわけですが、この道路を何としても二車線を確保するというためには、なだれなりがけくずれ、 こういうところヘスノーセッドなりその他を設置することによってとりあえず確保できるのじゃないか、そのためには一億二千万円の金を要する、一億二千万円は要するけれども、とにかく一刻も早くやってもらいたい、そのためには村はあらゆる困難を乗り越えて、半額の六千万円は村で用意しましょう、あとの六千万円は県なり国においてめんどう見てもらいたい、こういう趣旨であったわけなんです。財政力指数を見てまいりますと〇・一六以下だ。しかも三億五千四百万円の予算である。ですから、同じ規模から見てまいりますと五倍の予算を計上いたしておるわけで、たいへん無理しておる。しかも一億円は道路改良費に投じておるわけです。あるいはまた八千万円というばく大な金が農山林対策になっておりますけれども、やはり林道なりいろいろな交通整備のために使われておる。同じ規模の五倍の予算を組み、かつまた膨大な道路費を計上いたしておる。ですから、いま財政的には破綻状態じゃないかということすら考えたわけですけれども、しかしながら、そういう中にあっても、なおも半額の六千万円は村で持つんだ、将来におけるところの利賀村の発展のために、あるいはまた置かれている現況を打開するためには、これが村民一致の願いなんだ、こういうお話であったわけですが、こういう点につきまして何か方途を講ずる必要があるのではないか。特に、先ほど申し上げましたように、経済的にも縁が遠いけれども、とりあえず物資なり医療関係なんかを考えまして、非常に迂回した道路によってばく大な経費を使っている。それよりも経済的に関連の多いこの県道の改良は、少々おくれても、ともかくスノーセッドその他によって二車線が確保できるのではないか、そういうことによって、村の産業なりあるいは村におけるいろいろな福祉の問題なりを解決する糸口になるのではないか、こういう悲痛な声でありましたので、大臣もひとつそういう点をお聞き取りの上、善処していただきたいと思います。
  153. 根本龍太郎

    根本国務大臣 いまお聞きいたしまして、私も非常に胸を打たれました。私の郷里にもやはりそういうところが間々あるのです。これはいわゆる常識的ないままでの行政のありきたりのことではできないこともあるとは思います。しかし、与野党を通じての正規の視察団が行きまして、これに対して善処する旨の約束をしたようにいま承りましたので、それを受けて、私といたしましても、現在の建設省のやり得る権能を全面的に動員いたしましてこれを解決するように、要望に沿うようにいたしたいと思います。事務的なことはよくわかりませんから、道路局長から一応説明させまして、それを私が確認する形においてこれを前向きに解決する方法を講じたいと思います。
  154. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 ただいまの利賀村に達します砺波からの県道、水無−庄川線でございますが、御説明のとおり、まだ未改良の区間が多く、約二億四、五千万の改良事業が残っているかと思われます。なお、スノーセッドは約一億二千万程度残されているように聞いております。御指摘の点につきましては、昨日小委員長であられます天野先生からも詳しく実情をお聞きしておりましたので、さっそくいま検討させておるところでございます。ただいま大臣からお答えございました旨を体しまして、できるだけ地元の御要望に沿えるように早急に解決するようにつとめたいと考えております。
  155. 佐野憲治

    ○佐野委員 大臣並びに道路局長からそれぞれ懇切なお答えをいただきまして、非常に感謝いたしておるわけでありますが、さらにもう一つだけお尋ねしておきたいのですが、当時、私たち調査団が来るというので、派遣地になっていない上平村あるいは平村という隣接の村落の村長さんがお見えになったわけです。実は、国道一五六号線と国道三〇四号線の二つがこの村に通っておるわけですが、この二つの村もやはり冬季間物資の交流が途絶してしまうという状態にあるわけです。そこで、庄川という川の船を通じて非常な危険をおかしながら行き来している。実は船しか交流できない。といたしますと、国道の中におきまして、現在船によらなければ冬季間の交通が確保できないというのは非常に珍しいことじゃないかということを調査団の皆さんも話し合ったわけです。この点につきましてもいろいろ改修計画が立てられておるように伺っておりますけれども、一体どうなっておるだろうか。特に一五六号線は非常に重要な国道であるが、現在船によらなければ冬期間の交通が確保でき得ないというような現況に対してどのような改修計画が進められておるか、こういう点もお伺いしておきたいと思います。
  156. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 国道一五六号線のうちのただいま御指摘の個所は庄川町から岐阜県境までの問題であろうかと思いますが、庄川町と平村の間は国の補助事業として実施しておりますし、また、それから先、平村から岐阜の県境までは建設省の直轄事業として実施しておるわけでございます。建設省の直轄になりましたのは昭和四十一年度からでございますが、これは先生先ほど御指摘のように、非常に急峻な地形で、ダムに沿った道路になっておりまして、冬期間には交通が途絶になるために、船を利用しておるというようなところでございます。現在の整備の重点といたしましては、船の利用のできない平村祖山から県境までの間の冬季の交通不能な区間の解消を主たる目的として重点に整備しておりまして、ただいま、われわれの新しい第六次五カ年計画におきましては、県境を残しまして、ほとんど全部完了するような考え方に立ちまして整備を進めておるわけでございます。  なお、除雪につきましては、小牧ダムから下流の国の直轄維持管理区間につきましては国が直接行なっておりますが、その他の区間につきましては富山県が行なっておる状況でございます。
  157. 佐野憲治

    ○佐野委員 いずれこの問題につきましては、小委員長の天野さんを中心とする雪害対策委員会におきまして、報告を中心としての質疑がまた深められることと思いますので、この程度にしておきたいと思いますが、ちょうどふぶきの中を天野さんと一緒に歩いてまいりまして、天野さんは非常に元気でしたけれども、私はすっかりかぜにやられてしまって、頭がふらふらという状態で——非常に恐縮なんですけれども道路関係はこれでよろしいです。  公団家賃の問題に移りたいと思いますが、実は私、先般東京の効外の公団住宅をたずねましたところ、非常に不安な表情で私を迎えられたわけです。というのは、その団地にはすでにあき家家賃の値上げが実施されておるわけです。このことが居住団地内にいろいろな波紋と不安を呼びかけておるわけです。そういう中でやはり皆さんが心配しておられるのは、団地内においていろいろな格差が起こってくる、次はまたあき家に値上げがやってくる、そういうことで結局は全部の公団家賃値上げになるんじゃないか、こういう不安が常につきまとっておるところへ、実は公団関係の自治協議会で発行いたしておるニュースが配られてまいった。私そのニュースをいただいてまいったのですけれども、そのニュースの中で、二月の十二日に自治協議会の方たちが建設省を訪問された中で、公団の家賃の値上げは大臣がやらないという方針であるけれども、これは閣議の決定ではない、だからやるかもしれない、これに対しては法律的にもすでに可能なんだ、こういう点が述べられたことが明らかにされておるわけです。続いて一月二十七日の記事といたしまして、関東自治協の皆さんが本省において交渉を持たれたが、この席において宮地理事がやはり、「四十六年度は値上げしないというのは正式な閣議でなく経済閣僚会議の意向であり、拘束力はない。四十六年度の値上げの有無は未定である。」と言い、次に、「値上げ問題と修繕費の上昇とは関係ない。」と言うなど、いろいろなことを交渉の中で宮地理事が述べられたことが明らかにされておるわけです。だからやはり値上げはやってくるのかという不安の中で私たちにいろいろな質問が出されたわけですが、私にとって非常にふしぎに思いましたことは、二月十六日の衆議院本会議におきまして佐藤総理がはっきり明言された、そのことばがよみがえってくるわけなんです。これは郵便料金値上げの問題をめぐる質疑に対する答弁でありますが、各質問者が一斉に、公共料金の値上げあるいは政府主導型の値上げに対しまして、政府の公約違反ではないかという追及をして、それを中心として総理が答弁しておられるわけなんです。そのときに佐藤総理は、公共料金の抑制の方針を変えない、しかも物価問題は非常に重要だから、政府の主導的な意味における値上げは絶対やらない、そういう意味において、郵便料金の場合は、郵便の企業体の関係上、いろいろな赤字その他の問題があってやむなく今回の値上げ案を提案したんだ、しかしながら、公団家賃あるいは大学の授業料、あるいは航空旅客運賃等のものは上げないんだ、だから政府の方針は貫かれておるものと了承してもらいたい、こういうぐあいにはっきり各議員の質問に答えておるわけですね。それの印象が私の中にはっきり残っておりましたので、どうもおかしいではないかと思うわけですが、総理大臣が物価対策上上げないんだという方針を明確にいたしておるのに、公団におきましては、ただいまのニュースで述べられておるような交渉経過の中で、あれは閣議の決定ではないんだ、根本大臣はそう言っておるけれども、あれは経済閣僚懇談会においてきめたことであって、拘束力を持たないのだ、だから上げることもあり得るんだということを言っておるわけですね。こういうことに対しまして大臣はどう判断されますか。
  158. 根本龍太郎

    根本国務大臣 私の言ったことが徹底しないということではなく、御承知のように、昨年の六月に住宅宅地審議会のほうから、現在公団、公社——これは地方住宅公社を意味しますが、これが古いのと新しいのと非常に格差が出てきておる、特に古いところに入っている人は比較的便利なところに入っておりながら、最近できたものに比べれば非常に安くなっておる、そのために修理代すら間に合わない、これは均衡を失しておるから、これを調整し、合理的な、入居者同士における不均衡のないようなものにしたほうがいいという答申が出ておるのであります。それに基づいて建設省に検討させておるのでございますが、私は、ただいま佐野さんが御指摘になりましたように、現在も、政治的判断として、四十六年度は上げない方針をとるべきだとしている。これは政治的判断によってそういたしておるのでございます。しかしながら、住宅公団としては非常にやり繰り算段で困っておりますので、家賃そのものは上げないけれども、均衡をとるという形のために、あき家に新しくまた入居する人については——これは入った人は前に比べれば上がったようになるけれども、これはいわゆる公団家賃を上げたんではなくて、均衡をとっているという立場でいっているんではなかろうかと思います。しかしながら、公団当局もいわば私の監督する機関でございますので、いわゆる公団の住宅家賃を正式に値上げするということは四十六年度はやらせない方針をとっているはずでございます。具体的なそういうニュースの出たことについては、何かよくわかりませんが、いずれこれは住宅公団から御説明があると思いますが、ただいま申し上げたことが、総理並びに私の四十六年度における公団、公社住宅に対する態度でございます。
  159. 佐野憲治

    ○佐野委員 公団の総裁は、ただいまの御意見に対しましてはどうですか。
  160. 林敬三

    ○林参考人 ただいまの件でございますが、昭和四十六年度においては公団の家賃を上げることはしないということは、政府からも十分に連絡、通達を受けております。また、公団自体としても、この家賃を上げますときの形は、政府的な公共的な機関でありますけれども総裁が案を具しまして、大臣の許可を得てこれを実施するということになっておりますし、四十六年度にこれをいたすということはやらない所存でございます。ただ、いま大臣から御答弁のありましたとおり、公団も十五年たっておりまして、古いものと新しいものとの間にあまりにも格差がひどくなり過ぎている。しかも古いもののほうが便利なところにあるということは、非常に社会問題にもなってまいっておるようでありまして、住宅宅地審議会においても、今後の住宅政策の基本的なあり方として、建設年度の古い既設住宅と最近建設された住宅の家賃の不均衡を是正して家賃の負担の公平化をはかるべきだという指摘をされておりますし、行政管理庁からもまたおおむね同趣旨の、新旧住宅相互間の家賃の不均衡を是正するようにという指摘を受けております。これらの事態を踏まえまして、公団といたしましても、慎重に、しかも鋭意に、この問題についていかに解決するかということについての検討をただいま進めておる状態でございます。
  161. 佐野憲治

    ○佐野委員 それでは、このニュースの関係はどうですか。
  162. 宮地直邦

    宮地参考人 第一点。自治会と私が会いました日付につきましては正確に覚えておりませんが、一月に自治会の代表者が公団に参りまして話し合いを持ったことは事実でございます。そしてそのときに、第一点におきまして、閣議決定をもって四十六年度は家賃を上げないときめたということを承知しておるかという質問がまず冒頭に出たことも事実でございますが、私は、閣議決定をもって四十六年度の家賃を上げないという方針をきめたということは承知しておらない、これは確かにそうお答えいたしました。このことは事実でございますが、事実また閣議決定でさようなことをされておることを私どもは承知いたしておりません。  それから第二点。われわれは経営の内容につきまして、常に公団の経理状態を検討しておるということは従来から申しておったところでありますが、先ほど大臣並びに総裁からお答え申しましたように、六月に住宅宅地審議会の答申がございましたので、その趣旨を尊重しつつわれわれは家賃問題を検討いたしておるところである、こうこれははっきりそういうふうに申しましたので、値上げをするとかしないということでなくて、そういう趣旨において現在検討をいたしておるということを私は申したので、四十六年度に上げるとか上げないとかいう問題については触れておりません。  以上でございます。
  163. 佐野憲治

    ○佐野委員 ニュースの問題ですから、またいろいろな交渉の席なり発言によって違いも出てくると思いますけれども、そういう点はさておくといたしまして、ここで大臣に少しお聞きしておきたいのです。  公団家賃の値上げの問題につきましては、すでに昨年四十五年の二月二十日に、朝日新聞が、公団家賃の値上げと、このことに対する建設省の基本的な考え方が明らかになり、これに基づいて公団に対して値上げの検討のための指示を与えたという報道を大きくされてまいったわけです。ですから、おそらく大臣は参議院でもこの記事を中心としての質疑を受けておられるでしょうし、私も実は、先ほどのような公団のニュースなり総理の本会議における答弁なりを思い浮かべながら私の切り抜き帳を調べてみますと、ずいぶんこの問題が出ておるわけです。すでに四十五年二月二十日にそういう問題が大きく取り上げられておる。また四月三十日には根本建設大臣が参議院において質疑を受けておられる。五月十三日には、私がこの問題を中心として政府の見解を本委員会においてただしております。六月には、いま申された住宅宅地審議会からの答申が一応出ておる。同じ六月には、朝日新聞が、連載報道として、三日間にわたり、それぞれ「まがりかどの住宅公団」ということで、公団家賃の値上げというものが住宅公団の性格そのものを変えるような状態になってきておるのじゃないかという点を詳細に掲げた記事を、答申を中心として、建設省の動きなり公団の考え方なりを取材しながら編集をやっております。次に、十一月に入ってまいりますと、十一月二日の毎日新聞には、四十六年度には値上げの原案をつくって、PRに期間を置き、四十七年度から値上げすることにほぼ公団の意思が決定したというニュースが大きく流れております。同じく十一月十六日に、公団住宅家賃値上げに対する全国集会が開かれておるわけですが、このときに各党の代表が参加しておるわけですが、自民党からは佐藤三七次さんという本部事務局次長さんですか、この方が来てあいさつをしておられるのには、こういう内容になっておるわけです。「家賃値上げ反対の総決起大会、これは自民党を激励していただく大会だと思う。自民・政府は家賃値上げの考え方はもうとうもっていない。上げたら私が責任をとる。但し、学者専門家で構成されている住宅宅地審議会の答申では家賃の再検討を指摘しているので再検討はするが、上げる意思はない。」「これは自民党の考え方だ。」こういうことを公式の会合で明らかにしておられるわけです。ですから、いろいろな意味において非常に不安を与えておるのも無理はないなということを、スクラップを中心にしながら私読み返したのですけれども、同じく十一月号の雑誌「世界」の「日本の潮」という欄に「破綻した公団住宅政策」という形で、住宅公団発足以来の歴史的経過を踏まえながら、公団の本来の目的、本来の公団というものの性格ががらっと変わってしまったという点を指摘している論文が出ておるわけです。  四十六年の二月の八日になってまいりますと、ごらんのとおり、こういうぐあいに大きく「公団家賃も値上げへ」という記事が出ておる。こういう大きなスペースを使っておりますから、一般の、特に公団居住者に対する刺激が非常に強かったのだろうと思いますが、それだけ内容もまた非常にどぎつい内容になっておるわけです。これによりますと、「公団は“トラブル課”まで準備」となっており、「基本問題検討委員会では、家賃問題を先月下旬からことしの最重要議題として取り上げ、検討を始めたほか、新たに専門の事務局も設置、三班に分けてすでに職員を配置している。第一班は「家賃改定にかかる基本方針の策定。これに伴う国、地方公共団体との連絡調整。国会答弁資料の作成。入居者に対する広報対策。」第二班は「家賃改定に伴う訴訟に関する問題。法的諸問題に対する対策。」第三班は「家賃改定のための家賃算定基準の制定。改定に伴う経営資料の作成。」が主要な仕事。」となっている。こういう主要な任務をそれぞれ与えて準備に入って、結論は六月一ぱい中にまとめたいという。しかし、参議院選挙やあるいは七月には任期の切れる林総裁立場も考慮して、この時期を避けたいという。そういう相当具体的なスケジュールまで明らかにして、関係者の意向をも体しながら記事になっておるわけです。  こういう形になってまいりますと、公団居住者の中に非常に不安が起こってまいるのは私は当然だなと実はスクラップを見ながら思ったわけです。そういう意味におきまして、大臣、ほんとうに公団住宅の家賃に対しましてどういう態度を持っておられるか。いや、ことしは上げないのだ、来年は上げるのだ、そういう意味における検討をすでに始めておる、また始めさせておる、こういうぐあいに理解していいのかどうか、こういう点をはっきり言ってもらいたい。
  164. 根本龍太郎

    根本国務大臣 この住宅問題は非常に大きな日本の社会問題であり、したがってこれは政治問題です。そのときにあたって、他の条件は一切固定したままにしておって、ただ家賃が金銭的に上がったということだけで、これは非常に大きな変革だとかなんとかという議論は私は当たらないと思います。家賃を現状のままに固定することによって、それではたして住宅問題は解決するか。そうはならない。   〔委員長退席、大村委員長代理着席〕 現在入っている人は、なるべく高くしないどころか、むしろ安くしろという要望もあるでしょうが、それはその入っている人に対する対策でありまして、これから非常に核家族化し、今度はますます都市化する中において、それだけをやることによって住宅政策ということにはならないと私は思う。そこで、現在の経済情勢から見て、住宅を必要とし、しかも自前で、あるいはまた会社等で、いわゆる民間で供給することができなくなった階層について、特にそれらの人々が、どういう政策をとるならば自分たちの生活に脅威を与えずにいわゆる低家賃を提供されるようになるかという、これは総合判断だと思う。そういう判断から、宅地住宅審議会でああいう答申を下したことについては、それだけの理由があると私は思う。しかしながら、できるだけ政府施策住宅が安くあるということは、これは望ましいことでありますから、われわれとしては、建設省のみならず、政府全体が総合的な施策をやってその目的を達成するための手法を講じているわけでございます。その一つのあらわれとして——従来、公団住宅家賃が非常に上がらざるを得なくなったのは、とにかく土地が高くて入手に非常に困難をしたということです。しかも今度は、その入手した場合において、純粋に住宅公団のなすべき事業のほかに、地方自治体が、公共用地、具体的に言えば学校の敷地だとか、あるいは幼稚園だとか、いわゆる公益施設に対する負担まで公団に要求する、あるいは建てかえ工事を要求するというようなことで、これまた家賃を高くしなければならなくなってくる。しかし、これは現在の公団の機能からすればやむを得ないということになっているが、それを公団だけに責任を転嫁するのは適当でない。学校等については、これは文部省が人口の急増地帯に対する補助、助成政策を当然やるべきである。あるいはまた、地方自治体に関連する公共事業については自治体がやるべきである。ただ、自治体はいまのところ財源がないとするならば、これは交付税配分の場合におけるいわゆる算出根拠にこれを入れてもよかろうし、あるいは特別なる起債を設け、あるいはまた固定資産税とか都市計画税等、そういうことをやることによって住宅公団の家賃を下げるような努力を各方面でやるべきなんだということで、本年、学校の用地については補助金制度をつくったし、また、地方自治体が公共施設のために、昭和四十年から四十五年の間の特別起債については利子を六・五%まで下げることがでさるように措置を講じさせた、こういうようなことでありまして、さらに今後とも、住宅政策を実行する場合において、地方自治体あるいは国の他の機関においてどういうふうに措置すべきかということも検討する。その結果、なおかつ現状において公団、公社の住宅は上げなければならないという状態があるならば、これはやらざるを得ない。そういう点をいま検討を命じておるという段階でございます。したがいまして、現在のところ、何年から上げるとか、ことしは選挙があるから上げないとか、そういうようなけちな考えは少なくとも毛頭持っておりません。  そこでもう一つ、佐野さんは高い政治的見地でものを考えておられる方だから私は申し上げますが、現在、交通等いろいろの関係から、どうしても都心に復帰するという傾向が、都心に住宅を求めるという人が出てきます。そういう人々は、少しぐらい家賃が従来の標準より高くなっても、交通関係のいいところ、あるいはまた都会生活に密着するところに住みたいという需要が相当ふえている。そうすると、現在のところどうしてもこれは高層化せざるを得ないです。比較的環境もよくし、かつできるだけ安い家賃にするということになりますれば、いわば土地の高度利用をしなければならない。そうすると高層化してきます。高層化しますと設備に金がかかるから、いろいろのことがまた出てきますが、それだけやはり便利があります。だから、ただ絶対的な家賃が上がっただけでこれが非難さるべきものではない。そういうようなことを総合的に検討して、そうして住民の人々も、少しぐらい家賃が上がっても、こういう都心に近いところで、火災や震災に強い、都市機能の高いところに住みたいということになりますれば、若干上がってもそのほうがむしろ住宅需要者の要望にこたえるゆえんである。そういう点を含めて、いま総合的な判断をするための検討を命じておるということでございまして、ただ単純に、日本の知性高きマスコミが何ぼか高くなったからけしからぬと言うだけでは意味をなさぬと私は思うのです。現実的にものを考えなければならぬと私は思っているわけです。そういう意味で、私も安きことを望み、いかにして安くするかということを苦心さんたんしておるところでありますが、ただ、去年より一〇%上がった、従来より上がった、だからこれはけしからぬという議論は、それはほんとうの意味における住宅政策を政治的に判断しているのではなくして、いわばこれは評論のための評論というべきことばかもしれません。私は、その意味で、この問題は真剣に取り組んでまいりたいと思っている次第でございます。
  165. 佐野憲治

    ○佐野委員 国の住宅政策の立場に立って、国の住宅政策としてどうあるべきかという今後の問題を含めて真剣に根本的な検討をやっているのだという意味におけるいろいろな考え方を述べていただきましたが、私たちと共通する部面もございますので、いずれまた私の意見も述べさせていただきたいと思います。  そこで、総裁もお見えになっておりますから、公団の方々にお伺いしておきたいと思いますが、昭和四十一年にあき家家賃の値上げを初めて実施されました。このとき、本委員会におきましても、国会の知らないうちに値上げが発表になるということで、関係公団の皆さんにお集まりを願って、瀬戸山大臣以下いろいろと真剣な論議をした速記録が残っておるわけですが、これで見てまいりますと、まず第一に、当時の瀬戸山建設大臣は、あき家住宅の値上げをする必要性なり理由をこんこんと説明しておられるわけです。そういう中ではっきり言っておられるのは、公団の一般家賃の値上げは考えていない、またそういうものは軽々しくやるべき性質のものでもないということで、こういう点をまず非常に強く意見を述べておられます。あき家住宅の家賃を上げるのは格差是正、その格差是正もどういう意味における格差是正かという点が瀬戸山さんの考え方の、それも特徴ある意見だと思うのですけれども、それは現在の五年前なり十年前に建った公団住宅は非常に劣悪な条件のもとで出発してまいった。ですから、その中には、たとえばふろ場一つ見てまいりましても、非常に昔ふうのものだし、流しを見てまいりましても、石づくりの非常に不潔なしみの多いものである。だから、これをステンレスに取りかえるのだとか、そういう特別補修をやる、そうすることによって居住の水準を引き上げることができるのだ、こういう手当てをまずやりたい、そうすることによって、それと同じ規模の新しく建ってくる家賃と比較検討して、それよりも半分安い程度の値段の中であき家公団の値上げをやっていきたいのだ、こういうぐあいに言っておられるわけです。それで格差是正も、非常に劣悪な条件にあるから、あき家になった機会に根本的な改修をやってあげたい、そのためには、考えると六万三千円かの金がかかるが、しかし、一般の補修にしても一万九千円ぐらいかかるので、五万ばかりの金というのは特別の改修をやるのだ、しかもこれを一回に補てんしてしまうといろいろな問題が出てまいるから、これを十年間に償却をする、だから結果的に考えると二割は特別補修その他に回ることができるのだ、値上げの八割は新しい公団家賃を抑制するための措置としてその資金を回したいのだ、そうすることにおいて格差是正という一つの目標を達成していきたいのだ、そして、新しい家賃を抑制する要素をそれに含ませると同時に、古い不潔な住宅を清潔な住宅にする費用もその中からつくり出すのだという、こういう点を強調しておられるのです。だから、一般の住宅居住者に対する値上げというものは全然考えていないのだという点を言っておられるのですけれども、そういう点に対しましては、総裁としては、やはりそうした当時の大臣の方針というものに従っておいでになりますかどうか。
  166. 林敬三

    ○林参考人 昭和四十一年にあき家家賃を上げました当時のいきさつ、また、当時の瀬戸山建設大臣の御答弁、おっしゃるとおりであると私も記憶しております。当時におきましても、御承知のように、やはり古いのと新しいのと格差があるということで、これを是正すべきだという声も方々からあったのでありますけれども、まだそのころは公団設立後十年しかたっておりませんで、その違いといっても、二倍に足るか足りないかというぐらいの違いでございました。そこで、片や安定して一つの住宅に十年住んでいるという一つの借家人的な立場や、いろいろなその他のこともありまして、まだその当時においては、低い家賃をそこでもって是正してしまうという決断までには至りませんでございました。したがって、当時、瀬戸山建設大臣も、私どもも、ほんとうにこの家賃というものは軽々しく動かしてはいけないし、いじるべきものではないということで、あき家家賃というものだけに限りまして、あとの全体に及ぼす気持ちは当時としてはなかったのでございます。  それから、当時上げました理由はまさに仰せのとおりでありまして、新しく公団に入ってくる人が、くじの引き方によりまして新築の団地へ入ります場合は、相当高い、値段の比較をいたしますと二倍くらいの高さの家に入るのだけれども、古くできたもののくじが当たった人は二分の一ぐらいの値段で入れるということは、同じに新しく公団に入る者の間があまりにもアンバランスじゃないかということと、それから新しく契約をするのでございますから、法律的にいきましても、そこへ新しく入る人と入れる側というものの中の自由な合意でやるということに妥当性があるというよよに、かように考えまして、あき家家賃のみの実施をしたのでございます。しかし、それからあと五年、依然として、さっき大臣からお話しがございましたように、非常な地価の値上がりがありますし、また、その他の建築費も上がりましたし、また、どうしても都心部へ行かなければ、これ以上交通の便の悪い遠くへつくるということは妥当でないということ等、それらの理由がありまして、都心部に相当な鉄材を要するものを建てなければならないとか、いろいろなことからいたしまして、新旧の間が三対一というような状態になり、かたわらああいう住宅宅地審議会の答申やその他のいろいろな指摘も出てまいりましたわけで、本来公団はあらゆる面において、家賃問題も含めまして、絶えず時代の推移とともに検討はせられていかなければなりませんし、先ほど大臣から御答弁もありましたように、この家賃、につきましても、省令によりまして、また、公団の規則によりまして、また、入っていただいた方との契約にもよりまして、三つの理由に該当する場合は家賃を上げ得るという契約にもなっておりますし、それらをいろいろ踏まえまして——しかし一面、この家賃というものは、いまでもなお軽々しくこれを取り扱うべき問題でないということも十分に承知しておるわけでありまして、申すまでもなく、入っていらっしゃる方々にとっては、家賃が幾らかということは生計を維持していく上の一つのたいへん大きな要素でありますし、また、公団の家賃というものが一般のいわゆる中堅層の家賃の一つの大きな基準になっているという点もございますし、また、ほかの公的住宅やあるいは民間住宅に対するいろいろな関連もございます。同時に、借家法などのいろいろな関係もあって、法律上の問題もございますし、また、全体としての物価に対する影響というものも、これを決して無視することはできないのでございます。そこで、いろいろとこれらの点もあわせて、いかなる決意をし、いかなる方途をとるかということにつきましては、さっきもお話しがありましたが、もちろん公団だけで解決すべきものでもございません。建設省はじめ関係省ともよく打ち合わせまして、一番適切な結論を出してまいりたい、かように考えておるわけでございます。  なお、恐縮でございますが、ちょっと申し上げますが、新聞の記事の御引用がありましたが、私の任期とこの問題は何ら関係ない。そういうことではもう仕事ができないのでございまして、やはり公団というものは一体で継続する、なすべきときにはなすべく決意をし、行為をする、なすべからざるときにはしないということで、私は、おります間はそういうことで、一切そういうことは考えてはならないものと思っておるので、微力を尽くしておりますのでよろしく御了承を願います。
  167. 佐野憲治

    ○佐野委員 まあ総裁の人柄から考えましてもそういうことはないと思いますけれども、しかし公団内部におけるいろいろな意見を聞いた中で、この新聞社がそういう判断をいたしたのじゃないか、こういうぐあいにも考えるので、一応私紹介をしておいただけだという点において理解していただきたいと思います。  それから、当時における瀬戸山さんと岡本委員との質疑の中で、勘ぐり過ぎるかもわからないけれども、しかしながら、あき家公団家賃が高くなってくると、先にそこに住んでいる人との間に、融和の面において感情的な問題が起こるのではないか、次に、またその団地の中のあき家に値上がりができる、これと前の値上がりとまた差が出てまいるということも出てまいるし、結局は、公団家賃全部を上げるための一つのねらいではないかということが勘ぐられるという点を非常に強調しておられるわけですけれども、しかし、これに対して瀬戸山大臣は、勘ぐり過ぎる、そういうことは全然私は願ってもいないし、また考えてもいないのだという点を強調しておられるわけです。繰り返し瀬戸山さんが言っておられるのは、古い住宅で、劣悪な不潔な中におる人たちに、改造していいところに入っていただくのだ、そのためには、少しは高いかもわからないけれども、それを前提として新しく契約を結ぶのだ、だから、承認の上に入っていただくのだから、その間はよく説明をするわけだから、他の方が安いから私のほうが高いのだというような問題は決して起こらないのだ、と同時に、繰り返し言うが、公団家賃を上げようという考え方はないのだ、あき家が多くなってまいって、残っておるのは少数だから上げちゃっていいじゃないかという考え方はみじんもないのだということを強調しておるわけですが、そういう点に対しましても、現在住んでおる方たちの家賃を上げようという考えはそれほど強くないのだというのが四十一年における瀬戸山さんの一貫した方針だということがうかがわれるわけですけれども、そういう方針は現在でも踏襲しておられるかどうか。そういう考え方に対して、時代が変わったじゃないか、経済の変動があったではないかというような考え方で問題のとらえ方をしておられるのかどうか、その点を伺いたい。
  168. 林敬三

    ○林参考人 いま、当時の瀬戸山大臣のおことばの御引用がありましたが、瀬戸山さんもそのときはそのとおりに感じておられたと存じます。また、当事者であります私も全くそのとおりでありまして、ただ、あのあき家家賃を上げるときの一つのつらい点というか、心配な点というのは、前から入っておる隣の人と今度新たに入った人との間に家賃の違いがある、同じ大きさの家に入っておるのに、という点が一番つらい面でございました。そこで、いま御指摘がありましたように、そのかわり新しく入る人には、ふろおけをはじめ新品同様にする。新品同様というのは少し言い過ぎで、やはりもとが古いのですから同様にはなりませんけれども、中だけは、畳から何から、塗りかえから全部いたして、新品同様にする。これは公団を維持する上からも、建物維持からもいい結果をもたらすのでありますが、そういうことをしまして、隣との間の違いをつけますということであって、これを突破口にして全部を上げていく手段にするとは当時毛頭考えておりませんでした。現在なおあのあき家家賃の制度があるからということで、これをくずしていって上げようという気は私自身も持っておりませんし、建設当局も持っていないのでございます。ただ、時代が変わったといいますか、情勢が変わったといいますか、公団設立後十年と、公団設立後十六年目との社会情勢の違い、それから家賃の格差の違い、それから土地の値上がり、建設費の値上がりということは、十年前と現在ではやはり一つの違った問題として、新しくこの問題を考えて取り組んでいかなければならない。そして、結論としては、さっき大臣がおっしゃいましたように、客観的妥当性をもって納得していただけること、こういう結論の解決というものがなければならない、かように考えておる次第でございます。
  169. 佐野憲治

    ○佐野委員 では、あき家家賃の値上げの結果として、二割はそういう意味における居住水準の向上といった面に投資をするけれども、あとの八割は、公団家賃の値上がり抑制のための措置としてこれを使いたい、こういう趣旨の説明なんですけれども、一体、これまでのあき家家賃の値上がりによってどれだけの公団家賃の値上がりを抑止する力となっておるか、そういう役割りはどれほどの力になっておるかということを、数字的にありましたら——数字は後ほどでけっこうですけれども、総括的に見て一体どうですか。
  170. 宮地直邦

    宮地参考人 具体的な数字につきましては現在手元にございませんけれども、四十五年度におきましてあき家から発生する抑制財源といたしま一ては、約一億三千ないし四千万円程度のものが、面開発等高額になりますものの家賃の抑制に回っております。四十六年度におきましては、大体それよりも二、三千万円増収を予定いたしまして、これらが具体的に家賃の抑制に回っていく予定をいたしております。   〔大村委員長代理退席、委員長着席〕
  171. 佐野憲治

    ○佐野委員 後ほどまた数字を検討さしていただきたいと思いますけれども、その程度の新しい家賃の値上がりに対する効力しか持っていない。一億何千万円という、この数字ではおかしいじゃないですか。四十一年度の値上げ分だけでも、平年度では三億五千五百万円という金が——数字的な問題は、時間の関係もありますので、後ほど資料として提供していただきたいと思います。七千戸としてみても、どうも数字的におかしいと思いますがね。  そこでもう一つ大臣日本住宅公団法案が国会で審議された昭和三十年、鳩山内閣のもとで竹山祐太郎さんが建設大臣をやっておられた。この法案の質疑を見ますと、やはり非常に重大な将来に対する不安と懸念が述べられておるわけです。ですから、こういう点につきまして、特に附帯決議もつけられておる。あくまで住宅に困窮する勤労者のための住宅だ、低廉でなくてはならないという点が述べられたわけですが、そういう当時におけるところの国会の論議そのものと、最近公団の皆さんが言っておられることなり、あるいはまた先ほど申し上げましたような記事なんかに出てくるいろいろな動きを見ておりますと、公団法ができたときにおいて非常に不安を指摘されておった、その不安がどうも顕在化してきておるのじゃないかという感じを受けるので、そういう意味で、公団法がどういうふうにして日本の住宅困窮の中に生まれてまいったか——特に、こういう住宅に対して大量の建設をやらなければならぬという中でこの公団法が生まれてまいった。しかも、その場合においても、低廉な家賃、これを政策目的として政策家賃をつくるんだ、こういう考え方が明らかにされておりました。出資金にいたしましても、政府としても低利な財投資金なり出資金をもってこれにこたえていくんだ、こういう考え方が明らかにされているわけですね。もう一つは、当時の家賃決定に際しましても、当時の物価なり、当時の状況の中において、政府出資金なりあるいは無利子の出資金なり、あるいは財投資金をやって利子を薄めることになったといたしましても、やはり問題が起きるんじゃないか。国民所得と当時のエンゲル係数、この関係というのは非常に論議されておる。エンゲル係数というものが家賃の決定の相当重大な要素として、平均的な勤労者の所得とこれらの関係を結んで政策家賃を設定するんだ、こういう考え方で論議されておるわけですが、そういう点を、私たちはやはり記憶を呼び起こす必要があるのじゃないか。現実がこういう状態だからこうだと、その場その場の考え方でなく、公団法が生まれた根本精神というものをわれわれは逸脱してはならないのじゃないかという感じを持ちますのと、第二に、皆さんの十年史ですか、昭和四十年の七月に発行されました日本住宅公団発行の十年史、この中でこういうことがありますね。昭和三十四年の四月、行政管理庁から、家賃を下げるようにとの勧告がなされた。三十年当初の四千円台の家賃に対し、数年ならずして五千円台に上がっている。このことに対しまして値上げすべきじゃないか、公団法成立の沿革にかんがみて値下げすべきじゃないかと行政管理庁から勧告を受けている。これに対しまして、物価値上がりその他の状態にもかかわらず、実は努力してきておるんだ、ですから物価その他というのを抜きにした政策家賃をもって実はやってきたんだからということで、行政管理庁の勧告に対して答えておるということが、貴重な歴史の中の一ページとして、皆さん自身の手によって記録されておる。こういうことを私たちは忘れてはならないんじゃないかという点に立って、公団家賃の問題、これに対する関心を持っていただきたいということを大臣に要望するわけです。
  172. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘のとおり、鳩山内閣のときにこれをつくりました。道路公団もそのとおりです。その当時私は官房長官をしておりましたからよく内容を知っております。当時は、実は第五次吉田内閣が退陣をいたして、日本の経済情勢が非常に悪いときです。当時は、外貨は底をついておりました。貿易は非常に停滞気分で、そうしていわゆる台風手形と言われるほど——手形決済が普通ならば三カ月、四カ月が、二百十日もたたなければ決済できないということで台風手形と言われたけれども、しかも、その当時の国民所得は非常に低く、失業者がちまたにあふれておりました。そこで、いわゆる特別失業対策事業等をやった時代でございます。したがいまして、その当時における勤労者や一般のサラリーマンの生活状況は非常に劣悪な状況でございました。そういう状況下において、しかも食糧はまだ足らなかったんです。輸入しなければやれないという状況でありましたために、住宅政策としての公団を発足させた、御指摘のような方針でやったのであります。その当時はまだ土地の値上がりもそれほどではございませんでした。それから勤労者も、ただいま申し上げましたように失業者があふれておるために、土木建築事業における労務の不足はほとんどなかった、こういう状況下です。ところが、現在は、国民所得も非常に上がってきましたし、それからまず第一に労賃と地価の値上がり、これが非常に高騰してきました。しかも、当時から見れば、もっともっと核家族化しておる。住宅を必要とするいわゆる住宅需要が飛躍的に増大しておる。このときにあたりまして、先ほども一言申し上げましたが、現在入っておる人の立場から見れば、家賃は少なければ少ないほどいいという点、この点も住宅政策として忘れることはできないことでございまするが、住宅を利用するより多くの人々にでき得るだけ政府施策住宅をたくさん供給しなければならぬというときにあたって、どういう政策をとるべきか、これを総合して考えなければならぬというところにむずかしさがあるのではないかと思います。  先ほどの新しくあき家に入る人の立場と前の人の公平、不公平論、その論点も成り立ちます。しかし、世の中というものは、ある一点だけから見て全部公平だということは、他から見れば不公平ということになるのです。たとえば理髪に行って刈る時間からいったら、はげた頭の人と毛の長い人とから一律に金を取ることは不公平じゃないかといったって、それはその人には不公平だけれども、社会常識として、おとな幾らという料金からいえば公平だということになる。また、飛行機に乗るときに、重いからだの人と軽いからだの人とが同じ料金では不公平だといえば、これは確かに不公平です。しかしながら、社会常識としては、やはりそこに一定の基準を設けて、その不公平をみんなが容認するということで社会生活ができるのでありまして、住宅政策等も、他の面からいうならば、古い住宅の二階や一階のところなら、これは本来なら全部やりかえて全部高層にしたほうがいいのです。それが総合的にいいのです。しかるに、そう言うと、今度は自分の既得権益だといって絶対に動かぬ。これは社会常識からすれば非常に後退しておるのです。けれども、それをあえて強権をもってやれないというところに住宅問題の困難さがありますから、一つのねらいからだけですべてを公平不公平論で論ずるというと、これは昔からすがめの批評と申しまして、片目をつぶって見ておるということであります。われわれは、そうしたものも全部あらゆる条件を総合的に判断して、現在の社会情勢から見て、でき得るだけ多くの人々に比較的安い住宅を供給する、これがいまの政府としてとるべき手段だと思いますので、そういう観点から、ひとつみんなからいろいろ御批判を受け、お知恵を拝借してやりたいということでございます。  少しおしゃべりいたしましたが、実は鳩山内閣の当時に発足した状況と趣旨は全く同じです。ただ、それを充足する手段が社会経済情勢の変化に伴って変わってくるのもまた政治が生きておる証拠だ、こう思っておる次第でございます。
  173. 佐野憲治

    ○佐野委員 いろいろなお話がありましたので、また別の機会にもっと討議を深めたいと思います。  私は、やはりひとつ考えなくてはならないと思うのは、出資金が昭和四十年度から打ち切られておるわけですね。それまでの出資金は七百八十三億円。これが打ち切りになった。ですから、無利子の金である出資産投資金から出ておったのでしょうけれども、これが打ち切りになってまいったということは、相当金繰りその他にも影響を来たしておるのが、公団経営という面からいくと大きな要素となってきておるのじゃないか、こう思うのですね。あき家家賃の値上げと同時に四十年に行なわれた。考えてまいりますと、三十九年には出資金の打ち切りが発表になってまいった。四十一年からどういう事態が起こってまいったかと申しますと、いままでは、建築費に対しまして、あるいは用地費に対しまして四・一%の金利だったのが、今度は五%に引き上げられた、こういう現象が出てまいっておるわけですね。ですから、皆さんのほうの資料を見てまいりましても、民間からの借り入れ金その他が五九%を占めてまいっておる。最初のときから見るとがらりと性格が一転してしまっている。しかも十年で返済しなければならない。七分九厘から七分六厘、こういう民間資金が非常に大きく、五九%も四十二年には占めてまいってきておる。しかも出資金は打ち切られる。と同時に、用地費に対するところの利息が四分一厘から五分に引き上がってくる。こういう形で公団家賃の値上げの要因というものも非常に出てきておるのじゃないか。  もう一つの点は、皆さんの検討会ですか、公団自身の検討会の資料を見てまいりましても、出てまいりますのは、「昭和四十五年度予算編成において最も注目されたことは資金繰資金が前年度二百十六億円に対して約二倍にあたる四百十二億円に著しく増大したことである。資金繰資金は今後とも大巾に増加することが予想され、一方、財政投融資総枠の伸びにはおのずから限度があるので、事業量の増大にみあった事業資金の確保は困難となり、ひいては事業量を縮小せざるを得ない結果となる。すなわち資金繰資金の増大は公団事業を遂行するうえで致命的な圧迫要因となる。」昭和四十五年度においてこう報告されておりますね。昭和四十六年度になってまいりますと、六百億円に対するいわゆる資金繰り資金が必要となってきておるわけですね。これが非常に大きな経営の圧迫となってきておるということに対して、大臣はどのようにお考えになりますか。
  174. 根本龍太郎

    根本国務大臣 詳細の計数的な問題については事務当局から御説明いたさせますが、政府が住宅政策をやる場合に、御指摘のように、無利子のいわば財源となる出資も非常に有効なものです。しかし、これは出資ということになれば、結局一般会計から入れざるを得ません。ところが、これには政府としてやらなければならないいろいろの仕事がございまするので、そこに限度があるために、それでは住宅が多く建たないから財投手当てでやるけれども、それは利子補給でやっていく。これは現実に住宅そのものに対する負担にならなければ、民間資金を利用しても、利子補給することによってより多くの財源を獲得して、それによって住宅を多数建てるということが政治的に有効であるという判断でやったわけでございます。ただ、そのときにあたって、家賃に占める利子負担の状況が若干高くなったところも一時あったようでありますけれども、これは国民所得の増収ですか、上がったことによって十分解消できるというような判断でやったわけでございます。  その計数の説明については事務当局からいたさせます。
  175. 佐野憲治

    ○佐野委員 数字的には大体皆さんのほうの資料でお話ししているのですからけっこうだと思いますけれども、問題は、出資金は打ち切った、かわりに補給金で、五%として補給金を三年後に精算払いをする、こういうことになっておりますね。そうなってまいりますと、いままでは建築費並びに用地費に対して四分一厘だった、ところが、今度は、その結果として五%になった、そこで逆に利子補給をやるのだ、三年後の精算において行なうのだ、こういうことになってまいりますから、金繰りが非常に苦しくなってくる。ですから、二百四十一億円から四百億円、四百億円から六百億円、これが大きく経営を圧迫しておる。皆さん自身が経験しておられることだと思うのです。こういうことで、たとえば同じ団地へ参りまして、片方に、団地の一角に雇用促進事業団が住宅を建てる。これは失業対策特別会計から繰り入れる。これは全額出資金ですね。ですから、発足して日は浅いし、戸数も少ないのですけれども、百三十八億九千万円の無利子の出資金をもって——これは住宅だけですね。他のいろいろな部門もやっておりますけれども、住宅だけに関しましてはこの出資金を持っておる。無利子だ。ここで公租公課なり修繕費なり、あるいはまた管理人の給料なり、そういうものの計算をしたのが家賃となっておる。ですから、同じ政府住宅でありながら、片方に公営住宅がある。また、公営住宅の場合は、御承知のとおり第二種は三分の二の補助だ。用地に対しましては二%か三%だ。これに対しまして片方は無利子だ。ですから三分の二の補助をもらって、公営住宅よりも雇用促進事業団のほうが安いわけですね。それが同じ規模で、片方において公団のほうがぐっと高くなっていってしまっておる。一万円をこえておる。片方は五千円だ。こういうのが同じところに三つあるわけですね。そうしますと、ここにあき家がある。こういう同じ国の住宅政策で——もちろん政策目的によってできておりますから、それは公営住宅なり、雇用促進事業団の住宅なり、あるいはまた公団住宅なり、地方供給公社の住宅なり、それぞれの政策目的があるといたしましても、資金の使い方によってこんなに大きな差が出てくるわけですね。ですから、もし公団家賃の原価が上がってくるということになってまいりますと、五分のものを逆に三分に下げる。こうした場合において、やはり二五%程度の値上げを防ぐことができるのじゃないか、この程度に利子を薄める、こういういうことも一つの公団家賃の値上がり——逆に出資金をとってしまって補給するんだというかわりに、四分一厘の利子を五分に引き上げる、五%に引き上げる、こういうことで金繰りが非常に苦しくなってくる。しかも、用地費、地価対策その他、そういう点に対しましても最も関係ありますので質疑を深めたいと思っておったのですが、どうもきょうはかぜをひいて頭が痛いものですから、質問が少し長くなりまして非常に恐縮で、きょうはやめさせていただきますけれども、そういう地価対策、たとえば昭和三十年の公団の用地費と四十四年とは十倍の開きが出てきているわけです。ですから、地価の暴騰というもの、地価対策の失敗というもの、地価対策における困難性というもの、そのものが今日における公団家賃の大きな値上がりの要因をなしてきておる。これにやはりメスを入れるということがいかに必要であるかということを物語っておると思います。と同時に、ある程度の無利子の金をここへ投入することによって利子を薄めるということによって、五%——四十一年前は四・一%、これをもっと大胆に三%まで下げるということになってまいりますと、相当大きな、先ほど申し上げました二五%程度の家賃の値下げをすることができるんじゃないかという点も今後検討していただきたい問題だと思いますし、大臣が最初に述べられた大規模団地におけるいろいろな問題、特に建設省も参加されまして研究会が持たれた、その答申なり経過が詳しく出てまいっております。ですから、そういう中におきましても、大臣が指摘されるような、あるいは公共施設なり、あるいは公益施設なり利便施設なり、あるいはまた街路なり、取りつけ道路なり、その中におけるところの集会所なり、公園なり、いろいろな問題に対しまして、公共負担をすべきものはもっと公共負担すべきじゃないか。それを団地に引き受けさせることによって家賃の値上げのかなり大きな原因をなしておるのではないか。こういう意味におきまして、今日における交付税制度の問題なり、起債の問題なり、補助金の対象なり、補助金の内容なり、これらに対する抜本的な検討条項というものはあげられており、一部は今度実現をされておるわけでしょうけれども、これら大きく取り上げられておる諸問題というものが解決していく。困難かもしれませんけれども、町村にとりましても、あるいはまた公団にとりましても、国民にとりましても、非常に多くの問題を解決する糸口が詳しく報告として出ておるわけですから、こういうものを解決していく中で、公団家賃の値上がりの原因を取り除いていく、こういう努力が必要になってくるんじゃないだろうか。  大体時間が参りましたので結論を急ぎますけれども、そういうことを考えますと、いわゆる今日におけるところのそういうものを抜きにして、たとえば面開発なり、あるいはまた都心部における開発なり、そういうことをやっておられるわけですが、そういう中で感じますことは、もう傾斜家賃をとらなくちゃならない。現在の家賃だった場合においては、勤労者のほとんど八割の者は入ることができない。ですから、せめて三分の一は親から仕送りを受けるのだ。合算制度と申しますか、世帯内の合算ではなくて、いなかの親から仕送りを受けておる。いなかに財産があるから、その財産の一部を譲ってもらったんだということにして資格を得る。入居資格を公営住宅の場合は上を押えておるが、公団住宅の場合は下を押えておるという関係上、入りたくても入れない。そのためにわざわざいなかから仕送りしてもらう。そのもらった分を三分の一足してやる。それなら資格条件があるから申し込みなさいということになる。これでは、勤労者の置かれている立場というものはたいへんなことになるのではないか。そういう高いのができたから、これに合わせなければ、公団法施行規則の附則第十条の第二号にいう法的根拠としても不均衡是正が必要なんだというのじゃ、これはたいへんなことになってくるのじゃないか。もっと公団家賃が値上がりをする原因を解決していく。たとえば面開発の場合におきましても、いわゆる再開発公園というものが補助の対象になる。あるいは防災のために必要なもの、あるいはいろいろな公共的目的のために必要なものは公共が持つということによって、面開発なり、これからやるところの職住近接なり、大臣が冒頭に指摘されたようなそういう方向に日本の住宅政策が大きく転換をしていく。そのためにひとつがんばっていただきたいと思います。そういう問題を抜きにしての、単なる値上げの理由を見出すような形では——居住者並びに日本の勤労者、特にILOにおけるところの勤労者住宅に関する勧告の精神、あるいはまた公団法成立の沿革、日本の勤労者の置かれている状態、こう考えましたときに、住宅政策のもっともっと飛躍的な新たなる展開が必要ではなかろうか、こういう点を指摘いたしまして、大臣の御所見を承りたい。
  176. 根本龍太郎

    根本国務大臣 ただいま数々の御指摘がございましたが、おおむね私も同感でございます。  そこで、従来、ややもすれば公団でやる住宅政策は全部公団だけにやらしておったきらいなきにしもあらずと思うのです。公団でかなり大きな地域について、いわば新しい都市機能を持たせる一つの使命もずいぶんやっておるわけですから、たとえば都市局の街路関係、これを公団内につくっても——私は事務的なことはよくわからぬけれどもやらしていいと思うのです。それから、都市公園というようなものをそこに付設してやる。その経費は都市局からある市町村に補助を出してやってもいいのじゃないか。さらに、先ほど申し上げたように、学校用地等は文部省で当然予算をつけてやる。いろいろ国全体の有機的な総合的な手法を講じていくことによって、住宅公団がつくる団地に心あたたまる施策を国のあらゆる機関から集中してやって、これを育てるというくらいの配慮をこれからすべきだ、こういうように思っております。これによって、いま御指摘になりました公団の入手した土地が入居者に直ちにはね返って年々高くなるということもある程度防げる。それから、地元の自治体も積極的に歓迎するような団地構成ができるようにこれからいたすべきだと思います。この意味で、建設省では、いままではややもすれば同じ建設省内でも、住宅局は住宅だけ、河川局は河川だけ、道路局は道路だけというように分かれておるのを、一つのコミュニティーをつくるために、住宅問題のみならず、建設省のあらゆる権能を一つのプロジェクトに協力させるというような形でやるべきだという指示を現在いたしておりますので、にわかに理想的なことにはいかぬかもしれぬけれども、いま御指摘になりました点にはできるだけ動きを合わせて進めてまいりたいと思っておる次第です。
  177. 佐野憲治

    ○佐野委員 最後に、公団の総裁に対しても要望しておきたいのですが、あなた方のほうでも、「公団賃貸住宅家賃の現況と問題点について」というのを二月にもうすでに配布しておられますね。私は実はきのういただいたわけですけれども、こういうのは部内にもすでに出されておりまして、いろいろな資料がここに載っております。非常に勉強になると思いますけれども、しかし、この資料の問題点にいたしましても、大臣が指摘になったような日本の住宅政策なり公団の使命というものから見て、いろいろな問題点というものをどう解決していくかということに触れた形で、ほんとうに居住者なりあるいはまた国民に共鳴を呼ぶような問題点の指摘がなくては、これは値上げをするための単なる資料だということになってまいりまして、非常に無味乾燥なものになるのじゃないか、こういう点をおそれるわけです。ですから、ほんとうに当面している問題点、日本の住宅政策をどうするかという中で公団が苦悩しておる、その苦悩しておる問題点はどこにあるか。いま大臣が御指摘になったようないろいろな角度において検討されなければならない問題をずいぶん含んでおるのじゃないか。こういう点に対しまして、特に皆さん自身の側にとりましても、利息が四・一%が五%になったのはどんなに大きな影響を及ぼしてまいったか。あるいはまた金繰りの問題にいたしましても、補給金制に切りかえることによってこういう問題が出てくるのだというような問題点なども明らかにして、公団の現況というものに対する理解を深める。そういうPRは私はいいと思うのですけれども、これでは一片の意図というものも考えられぬじゃないかというのでは、せっかくの資料というものもほんとうの広報活動にならないじゃないか、こういう点も感じますので、そういう点に対しましても今後十分検討を深めて、軽々しく値上げをするんだというような官僚的な考え方ではなくて、国民のための住宅はどうあるべきか、こういう観点からひとつ今後検討を続けていただきたい。こういう点をお願いいたしまして、一応質問を終わりたいと思います。
  178. 金丸信

    金丸委員長 新井彬之君。
  179. 新井彬之

    ○新井委員 私は道路問題につきまして若干質問をさせていただきまして、時間がありましたらまた住宅問題を少しやらせていただきたいと思います。  建設省から出しております「明日をひらく道路」というパンフレットがございますけれども、これをいろいろ読ませていただいて私が感じますことは、非常に現在道路の需要が高い。したがいまして、五カ年計画でもって道路をどんどん整備しようということはよくわかるわけでございますけれども、この「明日をひらく道路」の中に書かれていることは、今後の第六次五カ年計画だと思いますけれども日本の国というのは非常に狭くて人口が密集をしている。いままでも、何とか交通渋滞をなくさなければならない、そしてまた交通事故をなくさなければならない、こういうような二本の柱で何回か計画が練られて現在までまいったわけでございますけれども、現在そういう問題が全然まだ解決されない。したがって、日本の国というのは、道路の問題については、要するに居住地面積においてどの程度車というものがあるのが適当であるか、そういう道路容量というものをまず考えていかなければ今後の最終案というものは出てまいらないと思いますけれども、そういう問題についてどのような考え方をされておるか、まず初めにお伺いしたいと思います。
  180. 根本龍太郎

    根本国務大臣 いまの御質問のことは事務当局から御説明いたさせますけれども、私は、まず、その問題をも含めて、全体の日本道路政策の基本的な概念についてお答え申し上げたほうがいいと思います。  まず第一に、日本道路政策は非常におくれています。ということは、これはあまり歴史的な古いことは申し上げませんが、日本道路政策らしいものをやったのは、王朝時代、四道将軍を派遣して全国を制覇したとき、その次は徳川の前の織田信長と秀吉のときです。ところが、徳川時代にこれは逆行してしまったのです。要所要所に関所を設けて、そして今度は要所要所に親藩と外藩とを交互に置いて江戸に進撃することを防いだために、これがむしろマイナスに作用している。それから明治維新になって初めて国道やその他を整備したが、日清、日露で海外に日本の防衛戦が伸びたときに、今度は海外に行ってしまって、日本は鉄道政策に変わってしまった。そのために非常におくれています。ようやく戦後になりまして道路政策を進めたという歴史的な経過があります。  ところで、日本では、現在、平地の、しかも大都市にあらゆる産業、人口、文化が集中してしまっている。ところが、この都市地域の占める面積というものは全面積のわずかに一・二%、それで、あとのほうはずっとほうっておかれた。そこで、まず第一に日本の国土に一つ道路のネットワークをつくり上げるということがごく最折までの道路政策です。ところが、これをやりましても、新しい道路五カ年計画をやってもまだまだできません。そこで、私のほうとしては、昭和六十年度を目当てにして、今後道路政策に六十兆円を投資すれば、いわゆる過密、過疎の現象がおおむね解消される。そして、たとえばいままでは太平洋メガロポリスだとか、こういうふうに太平洋に接続するところの一つの帯状の都市の集中を考えておったのを、そうじゃなくして、それぞれの地区の持つ地勢、資源をできるだけ均等の開発をしていくというところに今後の道路政策の基本があると考えておるわけであります。  しかしながら、これは昭和六十年というかなり長期の計画でございますから、そこで、当面の交通渋滞あるいは交通事故につきまして、都市機能を持たせるということになると、いま新井さんの指摘されたように、もっと別の新たなる観点で自動車と道路との関係を考えなければならない。そこで初めて道路のキャパシティと自動車の増加率をどう均衡をとらせるかというところに問題が出てくると思います。  その具体的計数については私もよくわからないのですが、一応のおおよその見当は事務当局がつけているはずでございますから、道路局長から説明いたさせます。
  181. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 最初に道路の延長はどれくらいあったらよいかという御質問がございましたが、これはなかなかむずかしい問題でございまして、理論的にこれだけの延長があったらいいというものは現在のところはないかと思われます。たとえば、われわれがよく計算いたしますのは、国土の面積に対しまして道路延長は幾らあったらいいかということがよく議論になります。日本の場合は、御承知のように、国土面積が三千七百万ヘクタールになっておりまして、道路延長が約百万キロでございますので、国土面積でもって道路延長を割りますと、五・ニキロメートル・パー・千ヘクタールというふうな数字になります。同じようなことをアメリカでやってみますと六・四になります。ところが、欧州各国を調べてみますというと、西独で十六・六、イギリスで十四・四、フランスで十三・四というふうに、大体日本の三倍程度になっておりまして、国土面積から申しますというと、日本の延長はアメリカより若干低いですけれども、さほど大差はないと思いますが、欧州に比べて二分の一ないし三分の一程度であるというふうなことになると思います。  なお、面積のみならず、人口との相関関係というものがございます。いろいろ試算の方法がございまして、幾らが一番適正であるかということは非常にむずかしい問題でございまして、理論的にこれがいいというふうな数字は現在われわれは持っておりません。ただ、先ほど大臣が御説明いたしましたように、われわれは昭和六十年におきます一つのビジョンと申しますか、長期構想を持っておりまして、そのときまでにわれわれが整備をする方針をきめておるものがございます。  これは、簡単に申しますと、先ほど申しましたように、現在、日本道路は、国道、県道、市町村道全部含めまして百万キロございますけれども、そのうち国道は全部、それから県道全部、市町村道の約二十五万キロ、トータルで約四十万キロ程度の道路を整備すれば、まず経済的にも安定した道路網になるのじゃなかろうかというふうにわれわれは考えまして、約四十万キロの整備を心がけておるわけでございます。その中にはもちろん高速自動車国道も含まれますし、現在の国道などの——二次改築とわれわれは申しておりますが、さらに再改築を行なう事業等を含めまして、大体六兆程度になろうというふうに考えられるわけでございます。  今後の車の保有台数につきまして、考え方がいろいろございますが、これにつきましてもいろいろ御意見がございまして、同じ政府部内においても若干の考え方の相違がございますが、一応われわれは、昭和六十年度におきまして国民二人に一台というふうな積算をいたしますというと、大体五千万台程度の車になるのじゃなかろうかというふうに推定をいたしまして、それがマキシマムというふうな考え方に立っておりまして、あらゆる試算はこういうデータもとにしまして計算されておるわけでございます。その場合における国道の混雑状況であるとか、それから高速道路網のどれだけの延長が必要であるかとか、そういうものもすべて車の保有台数と、そのときにおきます国民の総所得、GNPを想定いたしまして計算して出すわけでございます。  質問に対する漏れがあるかと存じますが、一応お答えします。
  182. 新井彬之

    ○新井委員 ただいまいろいろ答弁をいただきましたが、外国の例と比べましていろいろ例を出されたのですけれども先ほど大臣もおっしゃいましたように、日本の場合というのは、三千七百万ヘクタールの中の一・二%にほとんどの方が住まわれている。森林地帯等も非常にたくさんありまして、そういう中で道路が非常に敷かれておるわけですから、道路の容量としてはそんなに少ないとは思われないわけでございますけれども、何といいましても、その狭い中で今後車がどんどん増加をしてくる。現在千八百万台くらいというように聞いておるわけでございますけれども、この内容を見ますと、建設省としては、今後この五カ年計画が終わる時点においては二千九百万台の車があるのではないかというぐあいに想定されておるわけであります。確かに、この計画にあるように、北海道から九州をつなぐ高速道路等については整備をどんどん延長しなければなりませんけれども、その他の道路については、ほんとうに整備ができて、交通渋滞の解消もしくは交通安全の二つの面がほんとうに確立できるのかどうか、こういうことについてひとつお伺いしたいと思います。
  183. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 おっしゃるとおり、道路投資に比較いたしまして車の台数の伸びが非常に高うございます。したがいまして、われわれといたしましても、効率的に道路事業の推進をばからないというと、混雑区間がますますふえるという傾向が助長されるわけでございます。したがいまして、現在のわれわれの大きな柱は、従来国道の整備、つまり一次改築とわれわれは申しておりますが、全国の国道の整備に従来ウエートを置きましたものを、最近はむしろ交通の混雑している区間の二次改築事業に整備の重点を移しまして、そちらに対する事業の手当てを大きくしております。それと同時に、高速自動車国道を今度の新しい五カ年計画の大きな柱にいたしまして、一応千九百キロの高速自動車国道の開通をこの五カ年内一想定いたしまして、事業の推進をはかっておるわけでございますが、高速自動車国道の建設によりまして、主として中長距離の車はそちらに乗ることを想定しておりまして、近距離の車は、主として国道の二次改築ないしは都市内の街路事業の整備によりまして処理したいというふうに考えて一考るわけでございます。
  184. 新井彬之

    ○新井委員 現在、東京を見ればわかりますけれども東京でも大阪でもそうでありますけれども、実際問題として地下鉄等の総合交通体系というものがどんどん確立されると思いますが、東に乗ってきても駐車場がありません。それから道路が一方通行等になってくる。それにまた歩道をつけなければいけない。そういうようないろいろな状態から考えまして、警察であるとか、これは六通取り締まりをやっておるほうでございますが、また運輸省であるとか、これもまた新幹線であるとかいろいろと新しい計画があるわけでございますけれども、今後の交通総合体系というものからいろいろ考えてまいらなければならないと思うのでございます。この中にあります「生活環境を改善するため交通幹線としての重要な市町村道約二二万キロメーターの整備、その他生活道路約三〇万キロメーターの舗装を行なう。」というのは、これは舗装は行なわれると思うわけでございますけれども、これらにつきましても今後非常な努力が要ると思います。「第六次道路整備五箇年計画と新たな道路交通安全対策事業五箇年計画のスタート」というところで、五番目に、「交通事故の減少を図るため、通学路をはじめ交通安全上必要な指定道路の歩道の設置率を市街地では一〇〇%にするなど歩道の設置を重点とした交通安全施設の整備を強力に促進する。これにより歩行者の交通事故を半減させる。」という目標になっておるわけでございますけれども、この場合に、私が前の予算分科会でも指摘をいたしましたけれども、市町村道というのは八十五万キロある。それも車が通れるような道、また、とても通れないような道等いろいろあるわけでございますけれども、車が通れないのが七三%くらいあるのではないかということで質問いたしましたところ、大体十万キロについては今後整備をしていきたいという答弁をいただいたわけでございます。実際、現在いろいろなところを歩いてみまして、まあ車が通っております。その通っているところに歩道をつければ車が通れなくなってしまうというところが非常に多いわけでございますけれども、特に学校というのは各所にあるわけでございまして、そういうところの整備のしかた、それはやはり一方通行にするとか、それともそこには車をもう通さないようにするのだとか、そういうような方向に建設省としては考えているのかどうか。それとも、もっと区画整理をちゃんとやって、立ちのきをやって、道路の幅を広くしてまともな道路をつくるのか。そういう点についてはどのようにお考えになっているか、お聞かせを願いたいと思います。
  185. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 ただいまの御質問は、交通安全施設を中心にしました、主として通学路の問題かと存じますので、その点について御説明申し上げたいと思います。  先ほど御指摘いただきましたように、新しく昭和四十六年度を初年度といたします交通安全対策事業の五カ年計画を警察庁と一緒になって行なうことになっておりまして、これは、先ほどのように、歩行者の死亡を半減したいという目的でもって強力に推進しようということになっておるわけでございます。そのうちの、建設省の担当で一番大きな事業と申しますのは、やはり歩道の設置かと思われます。  歩道の設置につきましては、われわれといたしましては全力をあげてこれを実施することにいたしておるわけでございますが、先ほど御指摘のように、狭い道路に置きます歩道はどうするかという問題が出てきているわけでございますが、まず、その前にちょっと通学路について御説明いたしますと、通学路の指定をいたすわけでございますが、いま、あれは、指定の基準を改正いたしまして、従来学校から五百メートルまでの通学路が一つの要件になっております。もう一つは、四十人以上が通学する道路、こういうものを指定することにしたわけでございます。これをさらに拡大をいたしまして、最初の五百メートルというものを一キロに延長いたします。ですから、学校に通ずる一キロの道路につきましては、これは全部、たとえ一人の通学者でも通学路として指定して整備するつもりでございますし、四十人以上が通る道路、前の規定では、一つ道路でございましたので、ブランチがございますというとその道路はだめだったわけでございますが、今回は四十人以上を通る道路はどんな道路でも通学路としてこれを指定して整理するということにいたしておるわけでございます。  その整備のしかたといたしましては、文部省当局の調査もございますので、文部省並びに公安委員会と十分連絡をとりまして、特に狭い道につきましては、車をまず排除するのが一番よろしいかと思われますので、たとえば、登校それから下校の場合の時間等がはっきりしております場合には、そういう時間を切りまして車を遮断する方法もあろうかと思います。場所によっては全面的に通行禁止する場合もあろうかと思います。そういうふうな処置をとる場合と、それから幅がわりに広い道路でございましたら、車の一車線を確保する。これは大体三メートル五十くらいのところでございますが、それと、両サイドに歩道をつくるなり、あるいはガードレールで仕切りまして通学者を保護する方法もとっております。  なお、場所によりましては、国道なり県道なり、車の往来が非常に激しいところが通学路に指定された場合で、どうしても歩道等がつくれない場合がございます場合には、現在考えておりますのは、それと並行するたとえばあぜ道みたいなものがございました場合には、それを通学路として指定いたしまして、新たにそれを舗装したり、あるいは車の通行を禁止して、学童の通学のための道路をつくってやるというふうな施策も考えているわけでございます。
  186. 新井彬之

    ○新井委員 道路がどんどん延長する、そういうことで、ここに表が出ておるわけでありますけれども、やはりこれだけ過密的な状態になってまいった場合においては、人命尊重の立場からもいい道路をつくらなければならないということで私はいろいろ質問したわけでございますが、理想的な道路といいますか、いい道路というものはどういう道路をいうのか。これも時間の関係がありますからこっちでお話ししますと、たとえば小学校の四年生の社会科の教科書の中に、「自動車の発達と道路の改ぜん」というところがありまして、「自転車や自動車も、明治になって使われるようになりました。ことに自動車は、明治の終わりごろにゆ入され、そのころは、たいへんめずらしいものでしたが、いまでは、国内でも生産され、人人のくらしになくてはならないものになっています。バスやトラックは、町のなかを走るだけでなく、交通機関にめぐまれなかった山間の部落にまで通じるようになりました。また、都市と都市とのあいだを走って、人や荷物の輸送に大きな役わりをはたしています。このため、道路はますますたいせつなものになってきました。そこで、道路をほそうしたり、道はばをひろげたりして、しだいにととのえられています。近ごろでは、たくさんの自動車が安全に早く走れるように、高速道路や立体交さ道路もつくられています。しかし、このごろは、自動車がきゅうにふえたうえに、道路がじゅうぶんにととのっていないので、交通じこが多くなっています。このため、自動車の流れをうまくさばくためのきそくをつくったり、速度のせいげんをしたりして、じこを少なくしようとするくふうが行なわれています。」となっている。これは社会科の教科書の中に載っておるのですけれども、いまの道路行政からいけば結局は、本来の道路というのは、歩道があり、そしてまた自転車道があり、自動車道があり、また横断歩道があり、また照明灯がついているというのが理想的な道路だと思うのですけれども、小学校で教えているのは、幅が広くて舗装されていればこれがいい道路であるというような教え方になっているわけですね。現在の交通事故とか、交通渋滞とか、いろいろなことから考えまして、こういうようなことを小学校で教えるということは——建設省がそういうような考え方でやっているからいつまでたっても交通事故がなくならない。いつまでたってもほんとうにそういう道路をつくろうということになってこないと思うわけでございますけれども、そういう点について一言お伺いしたいと思います。
  187. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 御指摘のとおり、従来の道路のつくり方は車道が中心でございまして、歩道なりあるいは照明灯につきましては必ずしも十分な設備がなされておらないのが現状でございます。市街地におきましては歩道をつくることを原則としましたけれども、市街地をはずれますと歩道をつくることを義務づけておらなかったのが現状でございます。そういうことをわれわれといたしましても反省いたしまして、まず昨年の秋、道路構造令を改正いたしまして、今後新たにつくる道路につきましては、必要なものには、人の通行のある場合には歩道をつくること、また自転車の通行の多い場合には自転車道も必ずつくるということを規定いたしまして、まず歩行者、自転車に乗る人たちの安全を確保することにつとめたわけでございます。新しい道路はそういうふうにしてやるわけでございますが、従来の古い道路に対する手直しでございますが、これは、先ほど御説明いたしました交通安全対策事業という名目で、もうすでに昭和四十一年から開始しているわけでございますけれども、両側に余地がある場合にはできるだけ歩道をつくるような指導をしております。たとえば歩道として完全にマウントアップする場合もございますが、そういうふうにマウントアップできない場合につきましても、ガードレール等によりまして仕切りをつけまして人を保護するように心がけておるわけでございます。  なお、今度の新しい五カ年計画におきまして、新しい方針といたしましては、人家がずっと密集しておりまして、歩道をつくるために道路を広げるということが非常に困難な場合、非常に金のかかる場合でございますが、そういう場合には、新しいバイパスによって、主たる交通量は全部バイパスを通すことにいたしまして、残った旧道のほうに歩道をつくる方策を考えておるわけでございます。  以上のように、古い道路につきましては交通安全対策事業という名称で整備を進めますし、新しい道路につきましては、先ほど申し上げましたように、道路構造令に従って、これは全国的に歩道なり、あるいは必要な個所には横断歩道橋なり、あるいは街路照明なりがつくようになっているわけでございます。
  188. 新井彬之

    ○新井委員 それでは、いろいろありますけれども、最後に一つお聞きしておきたいのですが、現在道路が、高速自動車道路は七千六百キロメートル、それから一般国道は三万二千六百キロメートル、都道府県道は十二万キロメートル、市町村道は八十五万キロメートルということで、それに向かって現在整備を進めておるわけでございますけれども、特に国道が非常にこんでいるとか、それからまた非常な国道並みの市町村道があるわけでございますけれども、そういう面について、やはり国道に昇格させてあげるとか、それからよしんば昇格させなくても、それなりの理由があって国道並みに使われておるわけですから、それをめんどう見る、補助を出していくというようなところが市町村道の中で比較的多いのじゃないかと思いますけれども、そういう面についてどのように考えていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  189. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 ただいまの市町村道で国道並みに使われている道路という件でございますが、おそらくは、ある国道が非常に混雑しているために、それと並行している市町村道を国道並みに、たとえば上り車線と下り車線を別々に国道と市町村道に通す場合のことをさしているのかと思われますが、そういうものについて国道の指定ということかと思います。たとえば、現在日本の国内でそれに近いことをやっておりますのは、足利の市内がやはり狭くなりまして、そういうふうに上下車線を分離しております。それからただいまやっておりますのは、姫路の市内でやはりそういうところがございます。ただ、これは、国道には国道の認定基準がございますので、これを国道にするのは非常にむずかしいわけでございます。足利の場合にしましても、姫路の場合にしましても、現在バイパスを建設中でございまして、バイパスが完了いたしますと、旧道はそのまま昔のとおりに往復車線で残すことになろうかと思います。したがいまして一時的の現象でございますので、そのためにそういう市町村道を国道に昇格するということは非常に困難であります。  なお、そういうふうな国道に準ずるような市町村道に、一時的とは申しながら相当の交通が流れますと、市町村道が舗装がこわれたり、いろいろそういうふうに費用がかさむ場合が多うございます。そういう場合につきましては、県なりからできるだけ県道に昇格するような慫慂をいたしまして、県道として認定されれば県の負担でもって補修することができますので、なるべくそういうふうな指導をいたしましたり、もしそれが不可能な場合には、県費補助によりまして市町村に補助をいたすというふうな方法を考えております。国から直接そういうことをすることは現在のところはできませんので、そういう取り扱いをいたしまして、市町村の財政の負担を軽減するような方策をとっておるわけでございます。
  190. 新井彬之

    ○新井委員 それでは最後に大臣にお伺いしたいのですが、ただいま局長から答弁いただきました一つの例をあげますと、これはいまも局長からお話がありましたように、姫路の場合なんかは、国道がほんとうに通れないために一方通行にいたしました。ところが、この市道というのは、三十二年から三十四年にかけまして市街地道路として姫路市が建設したものでございますけれども、当時は舗装基準というものがありませんので、厚さ十センチのコンクリートの舗装をしただけであります。いまの国道みたいに一・二メートルの深さまで掘って舗装してある国道と構造が全然違うわけであります。そこで一方通行になる。これは警察のほうからも言われ、また、地元のためということで、これはほんとうに国に協力していると思うわけでございますけれども、そのために、長距離トラックが——これも姫路市に全然関係がないわけでありますけれども、たくさんのトラックが通過をいたしまして、約四キロの市道でありますけれども、亀裂が生じて、三カ月ですでに二千五百万円の市費をつぎ込んでいる。それでまた、現在二億円ぐらいの道路予算が市にあるわけでありますけれども、たった四キロメートルぐらいのところに二割も道路予算をとらなければならない。このためにほかの市道にしても非常におくれておるし、財源が少ないわけでございますので、これを姫路バイパスができるまで、たとえ一時的でも、これはもう当然だれが見てもおかしくないのだから、国道として昇格をして、姫路バイパスができればまたその時点で返してもらいたいという要望があるのです。こういう現実の非常な苦しみがあるわけでございまして、これは法律もいろいろあると思いますけれども、現在のいろいろなそういう事情から考えて、政治的に考えても当然そういうことをやってあげるべきではないのか、このように私は思うわけでございますけれども、その点について最後に大臣にお伺いをして終わりたいと思います。
  191. 根本龍太郎

    根本国務大臣 実情はよくわかります。それで、国道に一時指定するということは望ましいとは思うでしょうけれども、これは法制上できない。そこで、県にも連絡をさして、一時それを県道に指定して、そうして補助を国から流して負担を軽くする何らかの方法を講ずるように、いま道路局長に指示いたしました。問題は財政負担の問題で、苦しいようですから、何らかの形で解決するように努力させます。
  192. 新井彬之

    ○新井委員 それでは、非常に前向きの答弁でありますので、私はこれで終わります。
  193. 金丸信

  194. 浦井洋

    浦井委員 時間がだいぶおそいので、できるだけ簡単に要点を質問したいと思うのですが、私は、ニュータウンといいますか、大規模団地の問題について少し質問をしてみたいと思います。  初めに例をあげたいのですが、兵庫県の三田市に、現在神戸市と住宅公団が事業主体になって北摂ニュータウンを計画されておるわけでございますが、その中で、区域決定の際に二つの問題が起こっておる。   〔委員長退席、天野(光)委員長代理着席〕 一つは、溝口地区という、いわゆる同和地区の立ちのきの問題でございます。一つは、西野上地区というところで、農民が長年農業をするのに必要な材料をそこで採取しておる。それが、片一方のほうは立ちのきを迫られるし、片一方のほうは立ち入り禁止というようなことになって非常に困っておる。そこで、農民の方々が県あるいは公団と相談をしたいという意向を持っておられるわけなんですが、なかなかその話がスムーズにいっておらない、こういうことを聞いておるわけです。その具体的な件についてひとつ局長さんのほうからお答え願いたいことと、それからついでに——ついでといいますか、一緒にやりますけれども大臣のほうに聞きますが、こういうふうに新住法が適用されて買収ということになるわけでございますが、その間、縦覧期間があったり、意見書を出したというようなことがあるわけなんですが、農民の方たちには突然に計画を押しつけられたという形での受け取り方が現実には存在しておるわけであります。こういう点では、国あるいは自治体のほうとしても慎重に配慮するのと同時に、それでもなおかつ話がつかないときには、この地域というのは新住法を適用される地域ですから、その周囲も丘陵であり、あるいは山林であるわけなんですから、その地域を計画変更をして、ここがぐあいが悪ければこっちにひっつけるというようなことも、私、地域を見て実際に可能だと思うわけなんです。そういう点で十分な配慮をすべきだというふうに思うわけなんですが、ひとつお答えを願いたいと思うのです。
  195. 高橋弘篤

    高橋(弘)政府委員 お尋ねの件につきまして御説明申し上げます。  さっそく調査いたしましたところ、最初の溝口地区につきまして申し上げますと、これは御承知の北摂ニュータウンの住宅公団施行の都市計画決定をした分についてでございます。これにつきましては、いま御質問がございましたとおり、この部落の中の四世帯の皆さんから、部分的にこの地区を除外しろという要望がございまして、ちょうど都市計画地方審議会が開催されました当日に、県の現地の事務所にそういう申し出があったようでございます。したがいまして、県としましては、直ちに関係者立ち会いの上に話し合うということを答えて、具体的に近日中に——これは大体の予定でございますけれども、十四日の日曜日に、県を交えて、公団と申し入れ者と現地で十分話し合うということにいたしておるわけでございますが、なお申し上げますと、この部落の地区内の面積の大体九%に当たる部分だそうでございますが、まとまっていなくて点在している部分だそうでございまして、その点どういうふうにするかというむずかしい点がございますけれども、十分これは話し合いを続けるという予定になっておる次第でございます。  次に、もう一点の西野上地区の住民の要望の点についてでございます。これは中央地区と称するところでございますけれども、御質問にございましたとおり、西野上の部落の代表から、農業用の資材の入手——これは具体的には堆肥用の落ち葉その他を採取しているそうでございますけれども、そういう入手が困難になるから、その部落所有の林野の全部を除外されたいという旨の正式の意見書が正式の手続を経て出た。都市計画の案を決定する際に、地元で縦覧をいたしましたところ、そういう意見書が出ております。この意見書につきましては、もちろん都市計画地方審議会におきまして十分これを審議されたのでございますけれども、現在のような都市計画決定が昨年の十二月十八日に決定されているわけでございます。県に問い合わせましたところ、この点につきましても、ひとつ地元の皆さん方と十分話し合いたいという意向がございまして、都市計画決定をされた以降につきましても、十分話し合いをいたしておりまして、県の話では、地元民はほぼ納得をいたしている方が多いそうでございます。この西野上地区におきましては、いまのそういう除外要望の点が面積として大体一四%あるそうでございます。すでに買収に応じた戸数も相当あるそうでございますけれども、もちろんこういう要望の方がございますので、ひとつ個別にいろいろ折衝いたしますが、具体的には、設計の段階でそういう地区を緑地として、その山林の一部を残すということも検討したい。もちろんこれは買収をいたしますけれども、その一部で堆肥用の落ち葉その他を拾うということは従来どおりやらせる、地元の皆さん方にやっていただくということで、設計その他をいろいろ検討する、そういうことで話し合いをしたいというふうに聞いておる次第でございます。  そういうことで、こういう事業をやるときには十分地元の皆さん方とも話し合いをしながら話を進めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  196. 根本龍太郎

    根本国務大臣 ただいま事務当局から御説明したとおりでございますから、せっかくいま地元で意見調整して、申し入れたほうをも尊重しながら、でき得るだけ弾力的に解決しようとしていることでありますから、まずそれを待ちまして、その後にまた何らかの対策を講ずるなり、あるいは政治的に考慮しなければならぬものが出た場合には考慮するということで、いましばらく情勢を見たいと思います。
  197. 浦井洋

    浦井委員 具体的にはそういうことなんですが、一般的にはどうなんですか、大臣。私の質問の趣旨というのはそういうところにあるのです。
  198. 根本龍太郎

    根本国務大臣 一般的に申しまして、相当広いところでやる場合には、個々の人間の個人的考え方がありますから、その二、三の人間のために全計画を放棄するということはなかなかむずかしいと思います。   〔天野(光)委員長代理退席、委員長着席〕 結局、そういうことはお互いに話し合うことによって大体のことは合意ができてきます。だから、やはりこれは開発する者と当事者との間の情の通う交渉がまず第一だと思うのでございます。
  199. 浦井洋

    浦井委員 その点について少し論争もあるのですけれども、きょうはそれはその辺にいたしまして、次に、国鉄の方は来ておられますか。
  200. 金丸信

    金丸委員長 来ております。
  201. 浦井洋

    浦井委員 お尋ねしたいのですが、先ほどから出ております北摂のニュータウンの場合に、ほかにもたくさんニュータウンができる予定で、そして具体的には福知山線がくし刺しのようなかっこうになる。人口はその辺だけで三十万から最終的には五十万ぐらいになる。当然この福知山線が非常にこんでくるわけですが、地元の市町村から出ておるこういう要望書を見ましても、複線電化は一部決定はされておっても、なかなか進んでおらない。また宝塚から向こうはまだ計画されておらない。こういうことなんですが、これはもっと急ぐべきではないかと思いますが、その辺の実情をひとつお知らせ願いたい。
  202. 内田隆滋

    ○内田説明員 ただいま御質問のあった件でございますが、先生のおっしゃられるとおりでございまして、新住法の法律によりまして、ああいうものを都市計画決定されるときには運輸省の意見照会がございます。そのときに、鉄道の用地、それから建設費等についてある程度負担をしていただきたいという御意見を運輸省のほうから建設省のほうにお願いしておるわけでございますが、現在、この計画につきましては、都市交通審議会というものが運輸省の機関として設けられておりまして、その中で大阪地区の都市計画をどういうふうにするかということを検討しております。流動その他を調査いたしまして、昭和六十年度ぐらいを目標に具体的な計画を立てつつあります。これはまだ検討の段階でございまして、結論は具体的に出ておりませんけれども、その答申があれば、われわれも具体的に考えてまいるということでございます。現状といたしましては、先生のおっしゃるとおり、宝塚までの複線化の用地買収にただいま着手しておりまして、それから先の線路を増強すること、あるいは、おっしゃられたように、市街地を通って鉄道を国鉄が敷くというような問題については、具体的な計画を持っていないということでございます。
  203. 浦井洋

    浦井委員 実情はわかりましたので先に進みたいと思うのですが、ニュータウン、大規模団地の場合の一番問題はやはり関連公共公益施設だと思うのです。その中でも一番大きな根本は、やはり金の問題だと思うのです。これは学校道路、下水道、保育所、ごみ処理場等いろいろな問題があるわけなんですが、特に学校の建設費が自治体の非常な赤字の原因になっておるというふうな調査結果も出ておるわけでございます。ちょうどこの北摂ニュータウンができる地域というのは、三田市といいまして、人口三万人なんです。そこヘニュータウンが建設されますと十三万人の人口がふえる。現在財政規模が年間十三億円ということで、今後予定される学校の数としては、小学校が十五、中学校が七、高等学校が五、幼稚園が十五、保育所が二十二、そのほかにも特殊学校であるとか短大などが考えられておるそうでありますが、現在人口三万のこういう小さな自治体では、大きなニュータウン、大規模団地というものの公共施設はとてもまかなえないということは明らかなんでございますが、これについて、やはり国が財政的な補助をする必要があるというふうに思うわけです。本年度から学校の用地についてはほとんど自治体が負担しなくても、五ないし六%ぐらいを負担するだけで済むというような方法ができたわけでございますけれども、用地についてはそうだけれども、校舎であるとか、あるいは他の教育施設については何もない。このほか、学校以外の、道路であるとか、あるいは水道、公園、ごみ処理場というようなものについては、いまのところ自治体でやらなければならぬということになっておるわけなんですが、こういう点についても、国としてはやはり自治体の側に立って、具体的な十分な処理をすべきだというふうに私は思うのですが、ひとつ大臣なり事務当局の御意見を聞きたいと思います。
  204. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘のとおりだと思います。従来その点をほとんど地元の自治体と公団にやらしている。そのためにいろいろの摩擦が起こっている。これはいかぬということで、事あるごとに私は関係閣僚に申し入れ、特に大蔵大臣にも話をして、いまだいぶ改善したところであります。さらに引き続いて、これはもっともっと国がめんどうを見たほうがいいということで、私はプロモーターとなってさらにこれをいまやっておるわけでございます。特に、これは自治省と文部省が一番大きく関係します。それで、こちらのほうで、手法があるじゃないか、たとえばこういうふうなニュータウンなんかが出てきた場合には、用地はいいけれども、建設費等も、これは特別にめんどう見ていいはずだ、それは文部大臣から大蔵省に要求していいじゃないか、それから、自治省においては、いまの交付税の配分のときにあたって、新しいそうした情勢に応じた特平等をやってもいいじゃないかということを申し上げたわけであります。そうして今度は、私のほうとしましては、そういうニュータウンについては、うちの各局で協力できるようなもの、たとえば都市局において児童公園とか何とかいうものをやってもいいじゃないか、あるいはまた負担を軽減するために——これは私の思いつきで、あるいは事務当局ができないと言うかもしらぬが、いまの街路なんかも、ニュータウンだから全部企業者だけでやるべきだなどと言わないで、これは新しい市街地をつくるということだから、街路もめんどうを見てもいいじゃないか、というような考えを私は持っておるのでございます。そういうことを命じておきましたから、ひとつ事務当局からそれができるかできないか確認してもらってもけっこうだと思います。
  205. 高橋弘篤

    高橋(弘)政府委員 ただいま大臣からいろいろ御説明と答弁をされました点につきまして、私どもも意を体しまして、ひとつ十分やっていきたいと思いますけれども、もちろん、それぞれの公共施設の配分についてもいろいろ問題がございまして、各局の関係がございますので、十分そういう方面とも連絡をとりながら、私どもとしては積極的にひとつ推進していきたいというふうに考えております。
  206. 浦井洋

    浦井委員 交付税の問題なんかもあるわけですが、自治省なんかに聞いてみましても、急増地域はいま低いからもっとくれ、過疎地域は社会生活が営めなくて費用がかかるからもっとくれ、そうして中間のところは中だるみで足らぬからもっとくれということで、配分に困っておるんだという話も聞くわけで、そういう点では、もっともっと国のほうが積極的な補助政策をとるべきだというふうに思うわけです。  いまは私は建設の問題を取り上げたわけですが、今度は維持管理の問題がありますね。たとえば学校でいいますならば、ここにちょっと数字を持ってきているんですが、この小さな三田という人口三万の町の例でいいますと、小学生一人当たりの年間の教育費の地元市の負担額が一万二千円、中学生が一万七千円で、これがそこに北摂ニュータウンというようなものができると、小学生が一万七千人ふえ、中学生が一万人ふえるということになって、義務教育に対する市の負担だけで年間三億七千万円で、現在の三田市の財政規模というのが、先ほど申し上げたように十三億円、こういうことになって、とうてい維持管理の面でも手に負えない。三田市などではこういうことで、これは多摩ニュータウンの関係市町村も言っておりますけれども、収支のバランスがとれるのはニュータウンができてからまず二十年はかかるだろうということを言っておるわけですが、建設だけでなしに、ものを獲得するだけでなしに、それを維持管理していくためにも、やはり国がもっと配慮をして補助をすべきだ、こういうふうに私は思うわけです。先ほど大臣は思い切って言われたわけですが、この点についてもひとつ思い切った発言を期待したいのです。
  207. 根本龍太郎

    根本国務大臣 これは、私が申し上げることはどうも僣越になりそうでございますが、この維持のほうは、これは文部省なり自治省でやるべきことですから、私からも言っておきますが、あなたのほうからも文教委員会なりあるいは地方行政委員会等でこれは御発言していただきまして、ひとつ御協力を願いたいと思います。いずれにしましても、いままでは——何と申しますか、そういうニュータウンをつくる必要というものは、その市のためにあるんじゃないんです。おそらくあそこは大阪、神戸等で、ほんとうはそういう地帯のためにあることなんです。だから、これはいわゆる広域行政と申しますか、そうした形において解決しなければならぬ問題だ。だから、本来は、こういう問題は、ニュータウンをつくるときにおいては、神戸市なりあるいは大阪市、大阪府等が協議の上、そういうものをどうして解決するかということをやらなければ、ニュータウンをつくることはごめんこうむりたいというような気になってしまうから、その点をもう少し——これはわれわれのほうも関係はいたしますけれども、主として自治省あたりがこの問題を発議されて、そうして建設省並びに文部省と協議するくらいの積極性を持ってほしいと思いまして、これは自治省にもそういうことを申し伝えます。
  208. 浦井洋

    浦井委員 いま、団地、ニュータウンをつくるのはお断わりというお話が出たわけなんですが、そのことに関連して、現にそういう動きがあるわけですね。国からの特別の補助もない自治体財政ではとうていやれないということでそうなるのだと思うのですが、現在、それに対する新しい方式として、町田方式といわれるやり方、あるいは千葉の海浜ニュータウンですかの千葉方式というようなやり方、こういうものがあるわけなんですが、住宅公団をはじめ団地を開発する開発者にいろいろな公共公益施設の費用を自治体が押しつけるというような傾向、動きがあるわけなんです。こういう動きに対して建設省はどういう御見解を持っておられるのか。この動きをとどめようとされておるのか、それとも、いま出ておるのは特殊なケースなんだという御見解なのか、それともこういう動きをもっと広く広めるべきだ、一般化すべきだというようにお考えになっておるのか、その辺をお伺いしたいと思うのです。
  209. 高橋弘篤

    高橋(弘)政府委員 ただいま御質問いただきましたように、宅地開発事業の非常に著しい大都市及びその周辺におきましては、ただいま問題になっておりますような、そういういろいろな事情がございまして、地方公共団体の費用負担は、ことに市町村は非常に財政が貧弱でございますので、非常に負担が増大してくるわけでございます。そういう点につきましては、市町村の財政能力だとか、それから宅地開発事業者というものがどの程度いわゆる一種の受益者負担に当たるようなものを負担するかということによって非常に違ってくるわけでございます。しかしながら、これは原則としましては、国だとか地方公共団体というものが一般的な財政負担をするということであろうかと思います。そして、それにいま申し上げましたある程度の受益者負担というようなものを加味するということがこういう考え方としての基本的なものだろうと考えます。したがいまして、そういう意味におきまして、さっきから議論になっております地方公共団体に対する総合的な財政能力の付与、そういう対策が必要になってくると思います。したがいまして、ただいま申されましたような例は、私どもとしましては、こういう方向へまいりたいというものでございますから、必ずしもそういう方向に沿うものだというふうには考えておらない次第でございます。
  210. 浦井洋

    浦井委員 それでは、用意を願っておると思うのですが、現在住宅公団が用地の開発のためにいろいろ費用が要る、それを家賃のほうに、入居者のほうに負担をかぶせておる負担金の実例の数字をひとつあげていただきたい。どういうような団地で家賃にどれくらいはね返っておるか、こういう数字を、高いところからベストテンぐらいまで読み上げていただきたいが、時間がないのであとでこちらに資料をいただいてもいいのですが、ひとつその数字を教えていただきたいと思います。
  211. 高橋弘篤

    高橋(弘)政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの点につきましては、まず関連公共公益施設の経費が宅地価格にどういうふうにはね返るか、それがいわゆる家賃にももちろんはね返るわけでございます。したがって、宅地価格にどの程度はね返るかということでございますけれども、これについてさっそく調べましたのですが、実は倉卒の間でございましたので具体的な数字が出ておりません。しかしながら、大体感触を住宅公団に聞きましたところ、大体宅地処分価格に占めるそういうものの公団の負担金の比率というのは二〇%前後だろうというふうに聞いておる次第でございます。二割でございます。
  212. 浦井洋

    浦井委員 二割といいますとどういうことなんですか。もうちょっと説明していただけますか。
  213. 高橋弘篤

    高橋(弘)政府委員 御説明が足りませんで申しわけないのですが、関連公共施設の費用負担が、住宅公団が費用負担をいたしますそれが、住宅公団が宅地を処分するときの処分価格にどのくらい占めるか、その比率が約二割というふうに申し上げた次第でございます。
  214. 浦井洋

    浦井委員 そうすると、場所によって違うでしょうけれども、具体的にそれが家賃にはね返ってくるのは、そういう基礎数字から類推してどれくらいになるわけですか。
  215. 高橋弘篤

    高橋(弘)政府委員 最初に申し上げましたように、宅地価格の点についてしかまだわからないのでございますけれども、御承知のように、家賃というのは、その構成要素の中で地代というのがあります。地代相当額がありまして、それは大体用地費の五%という感じで住宅公団は見ておるようでございます。したがって、そういう計算をしてみなければわからないのでございまして、ここで具体的にどのくらい影響があるかということは申し上げかねるわけでございますが、一応その程度は影響があるということだけを申し上げておきます。
  216. 浦井洋

    浦井委員 私が調べましたところでは、たとえばこういう数字があるわけなんです。これはどこにあるか私は知らないのですが、首都圏の金杉団地で、計算をしますと家賃はね返り分が千八百四十四円、それから西ひかりが丘団地で、これもどこにあるか知らぬのですが、二千百七十八円、それから関西へ行きますと相当安くなるわけですが、たとえば神戸にございます南鈴蘭台団地が七百六十二円、こういうような数字が出ておるわけなんです。その一番高い二千百七十八円の西ひかりが丘団地、これは横浜にあるそうなんですが、この二千百七十八円の内容を調べてみますと、給水費用、これは上水道を引く費用だと思うのですが、それから給水施設、汚水処理場、それから何と河川の改修費用まで入っておる。ガス管の布設費用、共同幹線道路の費用、こういうような分類がされておるというふうに私は報告を受けたわけでございますが、河川の改修費用、特に道路の費用なんというようなものは国なりあるいは自治体なりが当然負担すべきものである。そういうことになってくると、西ひかりが丘団地に入っておられる方々は、毎月二千百七十八円税金の二重払いをしておるというような考え方も出てくるわけでございます。こういう点は承知しておられるのかどうか、あるいはその点についてどういうように考えておられるか、御意見をお聞きしたいと思います。
  217. 高橋弘篤

    高橋(弘)政府委員 ただいまいろいろ御質問がございましたが、私どものほうは宅地造成のほうを担当いたしておりまして、家賃のことまで実は承知していなくて、答弁できないでまことに申しわけないわけでございますけれども先ほどから議論になっておりますように、関連公共公益施設というものの負担が増大されまして、そのことによって、宅地のいわゆる分譲価格、処分価格が非常に高騰したり、また、家賃にまでそれがはね返って相当影響があるということは私どもとしてもちろんとるべき方策ではございませんので、いろいろいろ先ほどから御説明申し上げておりますように、あるいは補助対象として採択するものの範囲の拡大だとか、また新たな補助制度の新設だとか、その他国からのいろいろな補助制度を考えるとか、また、地方財政制度について、根本的に総合的にいろいろ施策を講ずるということによりまして、地方公共団体の行財政能力を高めるということが必要であろうかと思います。そういうことによりまして、地域住民、入居者が非常に不当な負担を受けることがないように考えるべきだと思います。具体的には、私具体的資料がございませんので、申し上げようがございません。
  218. 浦井洋

    浦井委員 西ひかりが丘団地なんかの場合、やはり入居者のほうにしてみれば、おそらくここは家賃が高いだろうと思うのです。地価が上がっておる、そこへ公団が建てて、幸運にも当たった、高くてもしかたがないというふうにばく然と考えて入っておられるだろうと思う。自分たちが毎月二千百何がしかの、関連公共施設をつくったための費用を負担しておるということを知らぬというふうに私は思うわけなんですが、この点は、入居者にも、一つ方法として、そういう関連公共施設の建設費が含まれておるんだということを知らせ、そしてもっと認識を新たにしてもらうということがよいと思うのですが、その点についてはやられるようなお気持ちはあるのかどうか、一ぺんお伺いしておきます。
  219. 高橋弘篤

    高橋(弘)政府委員 そういう家賃の問題につきましては、実は住宅局で所掌いたしておりますので、住宅局ともひとつ十分協議をいたしまして検討いたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  220. 浦井洋

    浦井委員 時間がありませんのでこの辺でやめますけれども大臣に最後にお尋ねしたいのですが、先ほどから大臣も言われたように、人口急増地、大規模団地がずっとできておるような地域に対して、住宅団地関連公共施設整備研究会というのがあって、一年半ほど研究と調査を重ねられて、そしてその結論として、住宅団地の開発は国の責任で財政政策を講ずべきであるというふうな意見具申があったというように私は新聞などで知っておるわけでございますが、ことばをかえていえば、思い切って国から金を出せということを言っておるんだと思うわけでございます。だから、大臣にこの線に沿ってぜひ努力もしていただきたいし、その点についての御意見、決意、こういうようなものをひとつ聞かしていただきたいと思います。
  221. 根本龍太郎

    根本国務大臣 この点については、先ほど以来私が申し上げましたとおりに、これは国だけではいかぬと思います。国でもやはりやりますけれども、大きな意味における受益者はその周辺の大都市です。たとえば東京なら東京周辺の団地も、あるいは神奈川とか埼玉あたりの団地も、主として東京に勤務する人のための施設です。本来ならば東京都内にこれをつくるべきだけれども、それには用地が高過ぎる、入手困難だということでこれは東京周辺に行っているわけですよ。だから、その意味において、これは国だけでなく、そうした広域的な立場から見て、直接というか、利益を受ける地方自治体もこれは相当負担していいことだと思うのです。端的に申しますれば、いま、たとえば水資源の開発にあたって琵琶湖を開発するという場合に、これは下流地域の水需要のためにやる。そこで、いま問題になっているのは総合的な開発、国も助成するけれども、その水開発によって利益を受けるところの下流地帯も応分の経費負担をしようじゃないかということ、これと同じような発想を持っていいんじゃないかと私は思うのですが、こういう点をやらないで、ただ地元の町村だけが受けるというところに問題がある。国の施策ももちろんやる。しかしながら、それによって受ける都道府県も相当負担していいじゃないか。なぜならば、税金はほとんど東京なら東京にみんな集まってしまう。そして施設のほうは、いまのように千葉県のどこそこの村とか、あるいは埼玉県のどこそこの村と、こうなるのです。そこに問題があると思いますから、この点もう少し検討してみたいと思います。これは私のほうのみならず、自治省とも連絡して検討したいと思いますo
  222. 浦井洋

    浦井委員 そういう御意見が出たわけですが、たとえば指定都市の場合、いま大臣の言われたことに当てはまるかどうか。政府のほうは指定都市は非常に財政豊かで潤っておるというお話なんですが、実際に神戸市、大阪市、あるいは京都市というようなところに聞いてみますと、とてもそれどころじゃない、われわれは困っておるのだ、もっと国が財政援助してほしいと言う。いろいろな点でこういう陳情、要望というものが何ぼでもくるわけなんですが、その辺についてはどうですか。
  223. 根本龍太郎

    根本国務大臣 どこの自治体も財政上十分で要らないというところはないのです。みんなよこせよこせと言っている。しかし、客観的に見て、税収入の財源のあるところ、あるいはまた税をかけ得る可能性のあるところ——現在大都市が窮乏しているということで、しからばどこから財源を取りますか。そこは私はもう少し客観的に見なければならぬところだと思います。大都市でも、あるいは指定都市でも、他のほうよりも人件費をうんと上げたり、あるいは一つのムードによって政策的な変更をしておいて、そうして足らなくなったらあとは全部政府でまかなってくれ、これは私は適当じゃないと思う。だから、やはり平均的なことをやって、そうしてしかも自分の地域の開発のために他の地域に負担を客観的にかけたならば、それに対してはやはり応分の協力をするというぐらいのことがなければ私はいかぬと思う。そういうところから、いまいろいろ財界あたりで出てくるのがいわゆる広域行政圏。府県合併等が出てきたりするのは、たとえば東京都と千葉県、これが  一緒になりますれば相当問題は解決できますよ。ところが、実のあるところは全部自分のほうにいって、そうしてあとのことは全部政府がやれ、これは私は要求する気持ちはわかりますよ。けれども、それが正しいとは思われない。そういう意味で、私は、実はこの二十数年来、ずっと党の政策をやったり、いろいろのことをやってみていますけれども、これは選挙にからんでおる。現在の都道府県のあり方はどうしても地域利己主義になりやすい。被害者は全部自分で、受益者は全部よそにあるのだ、国が全部責任負え、税金はなるべく取るな、これではいけない。だから、そこはやはり客観的に見ていかないといけない。いまあなたの言われることは気持ちはわかりますけれども、指定都市がこれ以上国からの援助を受けて、しからばその財源はどこから取るのでしょう。だから、そこはやはり大都市のほうはもっともっと自分で自己財源でやるだけの努力とくふうをしていかないと、過疎地帯あるいはまたずっと収入の少ないところは、もっともっと困難な問題にぶつかるのではないかと思う次第でございます。
  224. 浦井洋

    浦井委員 地方行政委員会みたいな論議になったわけですが、ニュータウンの問題から出発して選挙にまで発展して、大臣の御意見は相当物議をかもすような内容を持っているだろうと私は思うわけです。そういう点で、時間があれば非常によいのですが、同僚の委員の方たちも終わるのを待っておられるようですからここでおさめておきますが、これは重大な問題です。一度時間を与えていただいてじっくりとディスカッションをしてみたい、こういうことを私最後に申し添えて終わります。
  225. 金丸信

    金丸委員長 次回は、来たる三月十七日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十九分散会