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1971-03-04 第65回国会 衆議院 決算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年三月四日(木曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 濱野 清吾君    理事 小山 省二君 理事 菅波  茂君    理事 高橋清一郎君 理事 森下 元晴君    理事 華山 親義君 理事 吉田 賢一君       笠岡  喬君    中川 俊思君       中村 弘海君    丹羽 久章君       綿貫 民輔君    田中 武夫君       鳥居 一雄君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      荒井  勇君         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務総局         職員局長    島 四男雄君         総理府人事局長 宮崎 清文君         警察庁刑事局長 高松 敬治君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         外務政務次官  竹内 黎一君         外務大臣官房会         計課長     柳谷 謙介君         外務省アジア局         長       須之部量三君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       大塚 俊二君         大蔵省主計局次         長       竹内 道雄君  委員外出席者         外務省アジア局         南東アジア第一         課長      三宅 和助君         外務省アジア局         南西アジア課長 深田  宏君         会計検査院事務         総局第一局長  中村 祐三君         会計検査院事務         総局第五局長  石川 達郎君         日本専売公社総         裁       北島 武雄君         日本専売公社総         務理事     高村健一郎君         参  考  人         (日本赤十字社         外事部長)   木内利三郎君         参  考  人         (専売事業審議         会会長)    松隈 秀雄君         決算委員会調査         室長      池田 孝道君     ――――――――――――― 委員の異動 三月四日  辞任         補欠選任   中澤 茂一君     田中 武夫君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十四年度一般会計予備費使  用総調書及各省庁所管使用調  書(その2)  昭和四十四年度特別会計予備費使  用総調書及各省庁所管使用調  書(その2)  昭和四十四年度特別会計予算総則  第十条に基づく経費増額調書及  び経費増額調書  昭和四十四年度特別会計予算総則  第十一条に基づく経費増額調書  及び各省庁所管経費増額調書  (承諾を求  (その2)           めるの件)  昭和四十五年度一般会計予備費使  用総調書及各省庁所管使用調  書(その1)  昭和四十五年度特別会計予備費使  用総調書及各省庁所管使用調  書(その1)  昭和四十五年度特別会計予算総則  第十一条に基づく経費増額調書  及び各省庁所管経費増額調書  (承諾を求  (その1)           めるの件)  昭和四十四年度一般会計国庫債務負担行為総調  書  昭和四十五年度一般会計国庫債務負担行為総調  書(その1)  昭和四十三年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十三年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十三年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十三年度政府関係機関決算書  昭和四十三年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和四十三年度国有財産無償貸付状況計算書  (内閣所管)  政府関係機関の経理に関する件(日本専売公社  に関する問題)      ――――◇―――――
  2. 濱野清吾

    濱野委員長 これより会議を開きます。  昭和四十四年度一般会計予備費使用調書及各省庁所管使用調書(その2)外三件の承諾を求めるの件、及び昭和四十五年度一般会計予備費使用調書及各省庁所管使用調書(その1)外二件の承諾を求めるの件並びに昭和四十四年度一般会計国庫債務負担行為総調書及び昭和四十五年度一般会計国庫債務負担行為総調書(その1)を一括して議題といたします。  本日は、参考人として日本赤十字社から外事部長木内利三郎君の出席を願っております。  なお、参考人からの意見聴取は、委員質疑により行ないたいと存じますので、さよう御了承願います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。華山親義君。
  3. 華山親義

    華山委員 赤十字の方においでを願っておりますので、赤十字の方に主としてお尋ねをいたします。  このたび出たいろいろな外国に対する救援につきましては、数が例年よりも非常に多いわけであります。それで、御承知と思いますけれども、昭和四十年にベトナムにつきまして救援を行なおうと政府がした。その際に、赤十字を通じてやろうとしたところが、赤十字がこれをお断わりになった。それは、とにかく南ベトナム救援をするというふうなことは、赤十字としては国際的に全く中立であるという立場に反するという意味でお断わりになった。私はその際に、決算委員会におきまして、このことについていろいろお聞きしたのでありますが、その際に、政府のほうはわけのわからないベトナム協会というふうなものを通じてこれを実行したわけです。それを追及しまして、そしてその後は、赤十字を通じて行なうというふうになってきたようであります。また、例外はいままでありませんでした。私も一つの進歩だと思っておるわけでありますが、それだけに、赤十字といたしましても、やはりほんとう政治にわずらわされない中立なものであるという立場から、人道的立場からやっていただきたいと思うわけであります。このことにつきましてはもちろん御承知だと思うのでございますけれども、いろいろの点から、はたしてそういうふうなものであろうかということについて、私はいろいろな資料をいただきまして、研究といいますか、分析をしてみました。  そういたしますと、ナイジェリアのあの内乱に基づく多くの難民、こういうことにつきましては二十三カ国が救援をしておる。そのほかに民間団体及び赤十字社等がやっておりますし、現在でもアフリカ諸国がこの救援を続けておるわけです。二十三カ国というのは世界の全部にまたがるものであって、これはアフリカに数が多いのでありますけれども、アフリカ諸国が中心になっているものではありません。御承知のとおりであります。  ペルーにつきましては、地震があったわけでございますけれども、これは世界諸国にまたがって三十八カ国がやっておる、こういう状態であります。それから東パキスタン水害については、十五カ国がやっております。それから東パキスタン高潮につきましては、数が減りまして八カ国になっている。なぜだろうか。おそらくは東パキスタン水害のあったあとでもありますし、そういう影響があると思うのでございますが、ただ東パキスタン高潮につきましては、日、英、米、西独、フランスカナダ、ソ連、中共、大国がやっているわけであります。これが特色であります。  それからカンボジアになりますと、これは八カ国なんですが、日本を除きますと、タイニュージーランドフィリピン韓国、いずれもベトナムに対する出兵国です。そしてこれに日本が出ているわけでありますが、そのほかにフランス、これは従来からの、戦前からの関係があると思いますのでそうなっているのだと思うのでございますが、フランスがあります。ベトナムになりますと六カ国しかない。それには、日、米、カナダタイ、オーストラリア、非常に限定されてきておる。それから民間団体としてもいろいろなのがあります。それで、これにつきましてもアメリカはたいしたことはない。カンボジアにつきましてはいま述べたような国ですけれども、あまり大国が入っておりません。アメリカはどうしたのかと思って注意してみますと、子供文房具を贈った程度になっている。そういうふうな状態で、各災害について特色があるわけである。  それで伺いますけれども、それですから、世界全般を通じまして、各種の救援についてはおのおの主観を持ってやっておるということだ。ナイジェリアとかペルーについては全体がやっている、ほかの国につきましては非常に片寄りがあるということ、それからパキスタンについても大体において各国がやっておるということが言えると思います。  それで伺いますが、日本赤十字では一般人々からも寄託を受けていらっしゃる。その寄託状態がどうなのか、各災害について金額等でお知らせ願いたい。
  4. 木内利三郎

    木内参考人 お答え申し上げます。  赤十字といたしましては、災害あるいは戦争内乱等による犠牲者戦争内乱等によって生じました難民等の救護につきましては、人道的立場に立ちまして人道的な救援を積極的に行なうというのが根本的な立場でございます。この根本的な立場に基づきまして、ただいまお話のございました各国の最近の災害等につきましては、赤十字自体には資金が十分でございませんので、一般の方からの赤十字に寄せられます寄託義援金品あるいは政府からも補助をお願いいたしまして、これらによってできるだけの救援をいたします。これが方針でございます。  ただいまお話のございました各場合につきまして申しますと、ナイジェリアにつきましては約八千六百万円の義援金日赤に寄せられております。それからペルーにつきましては一億円の義援金品が寄せられております。パキスタンにつきましては三億四千五百万円の義援金をお預かりして、これを逐次先方に、物資にいたしまして、あるいは一部は現金のまま各国赤十字にお送りしております。
  5. 華山親義

    華山委員 それで結論的に言うならば、日本国民といたしましてはカンボジアとかベトナムにはないわけです。また国際的にも、先ほど申し上げましたとおり、カンボジアベトナムというところにはきわめて限定的な国しか出しておらないということなんです。そういうふうな点につきまして、カンボジアベトナムということにつきまして、何の証拠もございませんけれども、何らか政治的なものの考え方がここにひそんでいるのじゃないか。ほんとうに純粋に人道的なものなのかどうか。それだったならば、日本人も民間の人も出すであろうし、各国の人も出すであろう、こういうように思うわけでございますけれども、各国もきわめて少ない。しかも日本民間からは出ておらない。こういう点に着目されなければならないと思うのであります。赤十字一つ反省資料にしていただきたい。  それから、日本救援はどの程度に行なわれたか。ナイジェリアについては三億六千九百万円、ペルーについては二億七百万円、パキスタン水害については五億六千四百万円、高潮につきましては一億八千万円、カンボジアは七億二千万円、さらに六億一千二百万円を加えておりますから十三億三千二百万円、これはカンボジアであります。ベトナムにつきましては一億八百万円、合計いたしますと、これは千万で切り上げておりますからあとのほうはもっと多くなるかもしれませんが、二十六億七千万円なんですね。二十六億七千万円のうちでカンボジアに出たのが十三億三千二百万円。それですから、この予算にあらわれた一カ年間の対外救援のうちの重点はカンボジアにあったといっていい、五割を占めておるのですから。しかもこれにつきましては、赤十字は出しておるけれども、日本政府は出しておるけれども、国民が出しておらないという現実なんです。気をつけなければいけないと思うのです。それから各国も出しておらない。こういうふうなことを考えますと、そこに何らか政治的な意図が、赤十字にはないとしても政府にあって、この前のベトナムのように、政府から赤十字に対してこういうふうな要請があったのじゃないか、こういうふうな疑いが出てくるわけです。それで各国のこれを比較いたしますと、そういう片寄りがある。世界的な主張国民主張、志向と離れたところのものがカンボジア等に行っておるということなんだ。それにつきまして御意見を伺っても、赤十字社のほうはお困りだと思いますから私、伺いませんが、その点については反省をしていただきたい。  それから、もう一つ伺いたいことは、カンボジアその他につきまして、政府から、おまえのほうを通じて出したいからやってくれというふうな要請はございませんでしたか。
  6. 木内利三郎

    木内参考人 赤十字といたしましては、いかなる場合におきましても、その現地赤十字社あるいは赤十字社連盟を通じまして、赤十字社連盟からの要請に基づいて救援を行なうわけでございます。  カンボジアにつきましては、昨年の六月初め、現地を調査等いたしました赤十字社連盟、それから赤十字国際委員会合同のアピールが日赤に対してございました。そのときに、先方からは医薬品あるいは毛布あるいは車両その他について要請がございまして、日赤はできるだけこれに応じたいということで、先ほども申しましたように資金が乏しいわけでございますので、政府のほうに補助金をいただきたい、その補助金によってカンボジア難民救援を行ないたいということで政府に御連絡をいたしまして、その結果補助金をいただくようになりました。これが経緯でございます。
  7. 華山親義

    華山委員 それで、いまカンボジアに対しては、どういう国がどういう程度救援をしたかということでございますけれども、カンボジアに対しまして、日本は一回と二回に分けまして三百七十万ドル、ニュージーランドは五万ドル、フィリピンは八万ドル、韓国が十万ドル、フランスが、従来からの関係があるんじゃないかと思いますけれども、二十二万ドル出している。それで、これらの国を合わせますと四十五万ドルになります。そのほかにいろいろちょぼちょぼしたものが四つばかりの国からあります。その中には、アメリカ合衆国が子供文房具を贈ったというようなのもありますけれども、その他を五万ドルと一応推計いたしましても五十万ドルなんですね。それですから、日本の三百七十万ドルとこれらの国々の出した五十万ドルを合わせますと四百二十万ドル、四百二十万ドルの中で三百七十万ドルを日本が出しているわけです。私は額の多少を言っているんじゃありません。それでその九〇%ですよ。世界から集まったカンボジアに対する救援の九〇%は日本が出しているということなんです。こういうふうな事実は、私は、何か赤十字のおやりになっていることが世界の大勢、国民意向、そういうものと合致してないのじゃないか。そして国民からは一文の喜捨もない、こういう実態なんです。  それで私は、なぜこんなバランスのとれないものがカンボジアに出たのかということなんです。私はこれにつきまして赤十字のほうにお聞きいたしませんが、何としても私のものの考え方からは、きれいな頭にはなれないわけです。とにかくカンボジア日本が一手に引き受けたというかっこうですね。しかも、ほかの国はニュージーランドフィリピン韓国でしょう、フランスもありますけれどもね。ほかにはいろいろ小さなものはありますが、そういうふうな状態なんです。国際的ではないわけです。こういうふうなことなんで、それで私としてはまことに割り切れない感じがする。一応赤十字反省と言っちゃなんですけれども、お考えを願いたいと思うのであります。  それで、カンボジアに対する第二回目の百七十万ドルは、十一月二十日の閣議できめて、この荷物はいつカンボジアに着きましたか。
  8. 木内利三郎

    木内参考人 カンボジア向けの第二次の救援物資は、昨年の末から一部医薬品等をはじめ、第一便として送りまして、最終的にはこの三月上旬先方に着くことになっております。
  9. 華山親義

    華山委員 それで、ほかの国を見ますと、大体ニュージーランドは昨年の七月、フィリピンが九月、それから韓国が七月、フランスが八月、日本も第一回目は六月二十三日、ここに集中しているわけですよね。いわゆる戦災者のできたときだと思うのですよ。それで、一度救援している日本が、それからまた数カ月もおくれて十一月にきめて、その荷物がことしの三月に着く、各国とやり方が違う、そこに私はやはり割り切れないものが残るわけです。  それで、カンボジアに対する救援の九〇%を占めた三百七十万ドルはどこに使われたか。この間も鳥居委員からお話がありましたが、第一回目はいろいろな救援物資、第二回目は五〇%が自動車なわけですね。その自動車が今年の三月に着くわけですよ。そのころにはもう救援する人はいないのじゃないか。救援物資を運ぶといったって、そういうふうな状態。一体その罹災者というものは、いまどこかに集結でもしているのですか。どうなんですか。
  10. 木内利三郎

    木内参考人 救援物資の輸送につきましては、いろいろの事情でおくれることは、日赤としてもまことに申しわけなく思っておりますが、現在カンボジアにおります難民と申しますのは、収容所に収容されている人と、それからプノンペン等親戚縁者等をたよってそこにいる人、両方あると思いますが、大体収容所におりますのが五万ないし七万程度と存じております。それから、そのほかの一般縁故者等のところに落ちついている人々は、百万人あるいはもう少し多いという程度かと考えております。
  11. 華山親義

    華山委員 その自動車が、今年の三月ごろに着くわけですね。もう着いたわけですね。三月ごろから送り出すわけですか。
  12. 木内利三郎

    木内参考人 現在、三月に到着しつつあるところでございます。
  13. 華山親義

    華山委員 三月ごろから到着しつつあるわけですね。
  14. 木内利三郎

    木内参考人 三月ごろを最後といたしまして、これで全部到着するようになっております。
  15. 華山親義

    華山委員 これは私が考えたのですけれども、自動車というものは――つまりあの際、どんどん戦禍をのがれて、あるいはベトナム人がいろいろベトナムに帰るためにたくさんの人が集まってきた、また戦禍をのがれて集まったそういう人を収容するために、そういうふうなことのための自動車かと私は思っておったわけですよ。だからいまはもうその段階が過ぎている。救援物資を送るためだとはいっても、その人たちは一定の場所に、おそらくは戦禍の及ばないところに収容されているのだろうと思うのですね。そこにどうしてあれだけの自動車が要るのか。この間お話のあったように、また報道機関も報ずるように、これが赤十字の意思に反して、赤十字が努力されても、戦争のほうに回らないのかという疑いが起きるのは当然だと私は思う。私は赤十字の誠意を疑いません。そうであれば、今度よほど国際的に、これに対してはどういう各国意向があるのか、国民の間にはどういう意向があるのか――政府から出る金でもこれは税金ですからね。そういうことを確かめて、意向をきめてやっていただきたい。国民からは一番したくもないところのカンボジアに対しましてこれだけのものが行って、救援金の大体五〇%がここに向いている、そういうふうな事実は、いわばすきっとした気持ちになれないですね。はたして国民意向がこの救援金に反映されているかどうか、そういうことにつきまして疑問を持つわけです。どうぞひとつ赤十字は――私は四十年のベトナム協会の問題で強くこのことを言いまして、今後はすべて赤十字を通してもらいたいということを言ったのは、赤十字に対する信頼があるからなんです。その後政府のほうも、私が言ったからかどうか知りませんけれども、常に赤十字を通している。四十年前までは、ベトナムだけじゃありません、赤十字を通さなかった。それで私は、いい慣行ができた、今後はこの慣行が、ほんとう赤十字の真価に、赤十字の基本的なものの考え方に合致するような方法でひとつ政府にも要求し、救援として出していただきたい、このことを私はお願いせざるを得ません。  また、大蔵省の方がおいでになるならばお聞きしたいのでありますけれども、この救援ということにつきましては、ほんとう人道的立場から、政治的のものを考えないで、各国の情勢去り国民考え方はどうだというふうなことを十分に考え予備費支出をしていただきたい。大蔵省のほうからどなたかひとつ御答弁を願って、私の質問を終わります。
  16. 竹内道雄

    竹内(道)政府委員 救援問題につきましては、ただいまの先生の御意見をよく参考にいたしまして、今後の予備費支出考えてまいりたいというふうに存じます。
  17. 華山親義

    華山委員 なお、それにつきまして、世界の情勢というものが、この災害等に対しまして世界の関心はどういうものであるかということをやはり外務省もよく考え赤十字と相談していただきたい。そして赤十字外務省とのいろいろな話し合いの結果が大蔵省にいくわけですから、赤十字のやる仕事につきまして、外務省は密接な関係があるわけですから、外務省も、今後は、世界がこの災害に対してどういう認識を持っているかということに立ってやっていただきたいと思うのです。いやしくも、これが政治的意図でやったんじゃないか、何かそこにそういう不純なものが入っているんじゃないかというふうな疑いのないようにしていただきたい。私はやはり一応疑うですよ、この結果から見れば。外務省のほうから、ひとつ今後の方針につきまして御答弁を願いたいと思うのです。
  18. 竹内黎一

    竹内(黎)政府委員 お答えを申し上げます。  カンボジアに対する二度の援助につきましては、あくまでも日赤側のイニシアチブによるものであるということは、先生も御説明で御納得いただいたかと思います。私どもも、あくまでも人道的な立場、すなわち当該地域の住民の方々の民生の安定向上という、そういう立場に立った援助を進めてまいりたいと思いまして、決して特定政権に対する肩入れとかあるいはてこ入れ、そういった意図からは考えておらないわけでございます。
  19. 華山親義

    華山委員 私は、赤十字の方がそうおっしゃるのですから、カンボジアに対しましても純粋に赤十字外務省に御相談になったと思うのです。その際に外務省は、第二回までは、十二月までたっているのですから、いままで国民はどういうふうな寄託をしたか、いままで各国状況はどうだったかというふうな判断はなさるべきではなかったのか。それはカンボジア赤十字につきまして私は別に疑いを持つわけではありませんけれども、そういうことだってあり得るわけですね。ほんとうに純粋に人道主義立場でなくて、いろいろなことがあり得るわけです。そういうふうなことを考えて、私が指摘したようないろいろな点から批判を受けないように、今後十分に外務省もお考えを願いたい。そして国際的な比較、そういうものにつきましてもひとつ考慮をしていただきたい。私は、こまかなことを言いますと、いままで述べました各国について、これじゃ日本大国なんていわれないのじゃないか。こんなわずかなことを出して恥ずかしくないかというふうな気のする場所もあります。それからカンボジアのように、ほとんど日本だけが九〇%も出しているなんという、国際的にも疑われるのじゃないかという場合もございます。その点につきまして、広い視野で外務省赤十字と協議をしていただきたい、こういうことをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  20. 濱野清吾

  21. 田中武夫

    田中(武)委員 まず大蔵省に、四十四年度分の予備費支出についてちょっとお伺いいたします。  財政法二十七条では、予備費支出について、「十二月中に、国会に提出することを常例とする。」こういう規定がございます。おそらく十二月中に出すということ、これは通常国会を意味しているのだと思うのですが、四十四年度分については、たとえば一般会計で百二十六億七千五百三十八万一千円という、各省合計ですが予備費が使われておる。しかしこれは、国会提出の準備というのは、もう十二月にはできておったのでしょう。なら私は、十二月に臨時国会が開かれておるならばその時点で出すべきではないか、このように思うのです。憲法の規定も「事後に國會の承諾を得」、このことは、なるべく早く、こういうことだと思うのです。したがって、何も四十四年度の(その2)と四十五年度の(その1)を一緒に出す必要はないのではないか。十二月中に臨時国会があった場合は、それに出すのがいいんではないか、こう思いますが、どうです。
  22. 竹内道雄

    竹内(道)政府委員 私から申し上げるまでもなく、財政法の三十六条三項では、予備費につきましては、次の常会に提出して国会の承認を求めなければいけないということになっております。四十四年度分の(その2)につきましては、昨年の常会が始まりました堅頭、十二月の二十六日に提出いたしました。そして四十五年度の(その1)につきましては本年早々に各省から調書をいただきまして、その結果、総調書を四十六年、本年の二月九日に提出いたした次第でございます。四十四年度の(その2)につきましては昨年の暮れに提出しておる次第でございます。
  23. 田中武夫

    田中(武)委員 この三十六条の三ですか、これは前年度分というか、いまでいうならば四十五年度分のことをいっていると思うのです。二十七条の規定はどういうことなんですか。――ちょっと失礼、これは私が条文を読み違えておりました。二十七条は、これは予算のほうを見ておったのです。これは失礼しました。  しかし、準備ができた段階においてなるべく早く出す、そのほうがいいのじゃないかと思うのですが、どうなんです。これはもちろん十二月の通常国会に出すためにはその年度を分けて出さなければならぬ、こういうことになるわけですが、しかしそれは当然、本年度でいうならば四十五年度の分をこの通常国会に出す、しかしこの通常国会に出さない分についてはあとに回る、それは次の一番早い国会に提出する、これが憲法の精神ではないですか。
  24. 竹内道雄

    竹内(道)政府委員 お話でございますけれども、予備費につきましては、ただいま先生からもお話がございましたように、財政法の三十六条三項で次の常会に提出してということになっておりますので、私ども四十四年度の(その2)につきましては常会の劈頭に出すということをしておるわけでございます。四十五年度の(その1)につきましては、物理的にも劈頭に出すということはむずかしいわけでございますので、それは常会が始まりましてからできるだけ早い機会にということで、先ほど申し上げましたように、四十五年度で申しますと、二月の九日に提出しておるというような次第でございます。
  25. 田中武夫

    田中(武)委員 財政法の三十六条三項で言っておられますが、憲法の精神は、私はできるだけ早い機会と読むべきじゃないかと思うのです。したがってこれは検討をしていただきたい、このように思いますが、どうです。これは四十五年度の(その1)についても私は言えると思うのです。四十四年度の(その2)というのが、昨年の十二月というか、昨年の通常国会に出ているわけでしょう。そうすると、あとの追加分ということですからこれは早い機会に出すべきじゃないか、こう思うのですが、あなたを相手にここで解決がつくものではないと思いますが、どうでしょうか。
  26. 竹内道雄

    竹内(道)政府委員 憲法の八十七条では、予備費の支出については、これは内閣の責任において支出をすべきものであるから、事後に国会承諾を求めなければいけないということで、財政法の規定はその憲法八十七条の規定を受けまして、その国会承諾を求めるについてはいかようなやり方でやるかということを財政法三十六条で規定しておるものだと思いますので、その限りにおきましては、三十六条で常会に提出するといっておる、常会というのは、申すまでもなく常会でございますから、その時期に提出すればいいのだというふうに解釈できると思いますが、なおただいまの先生お話につきまして検討をいたしたいというふうに思います。
  27. 田中武夫

    田中(武)委員 明治憲法を持ち出すのはちょっとおかしいのですが、たとえばこれは緊急勅令と同じようなものだと思うのです。当然当時の議会の承認を得るべきものです。それをやった場合はなるべく早い機会に国会の承認を求める、こういう方法が憲法の精神である。三十六条三項については、この場合では四十五年の(その1)ということに私は見るべきじゃないか、こう思いますが、この程度にしておきます。それから、二十七条というのを間違いましたから……。  それでは、次に参ります。  先ほどの華山委員質問にも関連をするのですが、四十五年度の外務省予備費支出として、いま華山委員から触れられましたいろいろな国に対する救援が出されております。そのうち私はベトナム難民等救援補助金、これにしぼってお伺いいたしたいと思います。金額は一億八百万円でしたね。確認したいのですが、それの支出についての閣議決定が四十五年十一月二十日、それから補助金交付要綱送付、外務省から日赤へそういうのを交付したのが四十五年十一月二十一日、日赤から申請書提出、すなわち補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第五条による申請、これが十一月二十二日、事業開始が十一月二十日、これは外務省日赤、この日付に間違いはございませんね。
  28. 須之部量三

    ○須之部政府委員 予備金支出に関します閣議決定が十一月二十日でございます。それから補助金の交付要綱を日赤に送付いたしましたのが十一月二十一日、それから補助金の交付申請……(田中(武)委員「それはいいです。それに間違いがあるかないかを聞きたい」と呼ぶ)最後の事業開始でございますが、それだけは私ちょっとあれなので、日赤から伺います。
  29. 田中武夫

    田中(武)委員 私はここに、十一月二十二日、日赤から外務大臣にあてた「ベトナム難民等救援補助金の申請について」というのを持っております。その中で、添付書類です、事業計画その四に、開始年月日、四十五年十一月二十日となっています。そういたしますと、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律、それを一つ一つ順序立てて申し上げますと、まず、第五条によって日赤から申請がなされる、それが十一月二十二日、それを受け、外務大臣は、外務省では同法七条で条件をつけるかどうかを検討する、そして八条による決定通知、そして十四条に基づく日赤からの実績報告、そういうように事が運ぶと思いますが、そうですか。そこで、十一月二十二日に申請書が提出せられて、この八条による決定通知はいつ出されましたか。
  30. 須之部量三

    ○須之部政府委員 決定通知書は十一月の二十三日でございます。
  31. 田中武夫

    田中(武)委員 それではまだ終わっていないのですか。十四条による実績報告は出ていますかどうか。
  32. 須之部量三

    ○須之部政府委員 まだ出ておりません。
  33. 田中武夫

    田中(武)委員 ちょっとおかしいじゃないですか。いいですか、日赤の事業開始は十一月二十日ですよ。申請書が出されたのが十一月二十二日、そして決定通知が十一月二十三日、これはもうずっと一日違いで早くなされているようですが、事業開始は二十日になっておるのです。その間の関係はどうなるんです。もう一度言うと、事業開始が十一月二十日なんですよ。申請が出されたのが十一月二十二日、決定通知が十一月二十三日。そうすると、申請以前にもう事業が開始せられておる。私は、まずものごとの順序とすれば、補助金の申請が出される、それをこのいわゆる適正化に関する法律によって、条件をつけるかどうかを七条の条項に従ってきめる、そして決定をして、八条で通知をする、そういう順序になると思うのです。ところがこれならば、補助金が出る前にもう事業が開始し、しかも補助金の申請の前に閣議が決定せられておる。こういうことはどういうことになるんです。これでいいのですか。
  34. 須之部量三

    ○須之部政府委員 まず先に閣議がきまりまして、それから申請が出るというのは、他の予備費等の使用につきましても同じような手続でやっておるというふうに私は了解しております。といいますのは、ほかの例についても同様でございますし、それからこの二十日の点につきましては、なるほど、確かに書面上はいささかおかしいように思いますけれども、まあ現実にきまりましたのが大体十一月の二十日ごろでございますし、つまり閣議のほうできまりましたのが十一月の二十日でございますし、日赤とされても、そのときから事実上、ある程度予備的な仕事を始めたという意味でお書きになったものというふうに私は了解いたします。
  35. 田中武夫

    田中(武)委員 これはおかしいじゃないですか、あなた。大体こういうことをしたいから補助金をいただきたいというのが補助金の性格じゃないのですか。それを受けて閣議で決定をする、そうして適正化法の七条によるところの審査をして、条件をつけるかどうかをきめる、しかる後補助金交付を決定する、その通知が八条によってなされるという順序でしょう。これなら、まず閣議のほうできめて、金を出してやるからおまえのところでやれ、ついては早く申請書を持ってこい。しかも日が二十日、二十二日、二十三日――二十一日は飛んでおるが、二十日、二十二日、二十三日と一日違いで事が運んでおる。予備費の支出が、先ほど来言っているように、厳格な意味においては憲法八十三条の財政議会主義、財政の処理の基本的原理からいえばきわめて例外なんですよ。その例外を、これは何ですか。こういうことでいいんですか。だからこそ、先ほど華山委員も指摘せられたように、きわめて政治的なものである、こうなるのですよ。どうですか、アジア局長、認めますか。
  36. 須之部量三

    ○須之部政府委員 ただいまのお話でございますが、日赤のほうと外務省のほうで事実上事務的にいろいろお打ち合わせしたのは、それはもちろんその前のことでございます。それで、実際上どういうふうに予備費から支出されるかというのが最終的にきまりましたのが、先ほど申しました十一月の二十日でございますし、それで補助金の適正化に関する法律等々の申請がなされてきたのが二十一日になっておるわけでございますし、私どもは補助金……(田中(武)委員「申請は二十二日ですよ」と呼ぶ)失礼しました。いずれにしましても、その前に、言うならば、何といいますか、予算折衝的な前の話し合い、これは前から長く行なわれておったわけでございますので、その上で予備費の支出がきまったというふうに御了承いただきたいと思います。
  37. 田中武夫

    田中(武)委員 前からきまっておったとは何ですか。しかも決定以前に事業が開始されておるのですよ。この点につきましては、大蔵大臣と外務大臣の責任ある御答弁をいただくことを留保いたします。
  38. 濱野清吾

    濱野委員長 ちょっと政府から、事業開始の意義、事業開始はどういう意義なのか、こういうことを解明したらいいでしょう。  田中君、事業開始の意義において食い違いがあるようだから、政府の責任ある回答を求めて――事業開始とはいかん、具体的に。
  39. 須之部量三

    ○須之部政府委員 ここに二つ問題があると思います。  ここに書いてありますのは、事業予定期間、予定の年月日を書いておるという点もあるわけでございますけれども、事実上、ある程度の予備的なと申しますか、いわゆる支出などを伴わない意味でのほんとうの事業開始の前提と在るような若干の仕事は、事実上二、三日前から始められておったという意味でここに書かれておるものというふうに私は了承いたすわけでございますし、一方、予備費のほうの支出の閣議のほうの決定はあったわけでございますし、そういう意味でここは二十日、つまり予備的なある程度の仕事も始まった時期という意味で御了承いただきたいと思います。
  40. 田中武夫

    田中(武)委員 だからこそ、きわめて政治的なものであると言うのです。まあこの点は、先ほど申しましたように責任ある答弁を求めることで保留いたします。  そこで、参考人日赤の方にお伺いいたします。  これもまず確認でございます。赤十字社は、「赤十字の理想とする人道的任務を達成することを目的とする。」これは日本赤十字社法の一条ですね。それから同法二条で「世界の平和と人類の福祉に貢献する」そして国際赤十字規約二条五項では、これは会議についての規定ですが、それは精神は一緒です。赤十字社政治的問題を処理したり政治的性格を有するものではない、こういうように赤十字社法及び国際赤十字規約に定められておりますが、間違いありませんね。
  41. 木内利三郎

    木内参考人 間違いございません。そのとおりでございます。
  42. 田中武夫

    田中(武)委員 ベトナム民主主義人民共和国、すなわち北ベトナムにも赤十字社はございますね。
  43. 木内利三郎

    木内参考人 北ベトナム、すなわちベトナム民主共和国にも赤十字社がございます。公認された赤十字社でございます。
  44. 田中武夫

    田中(武)委員 そういたしますと、赤十字参考人の方及び外務省ベトナムに対する救援、いかに抗弁をなされようとも、この救援を受ける南ベトナムは、相対する勢力による戦火、内戦とでもいいますかのさなかにあるそのとき、難民戦争犠牲者が出るのは南だけではありません。双方に出ます。にもかかわらず、南だけに援助をする、救援をする。これは交戦中の片側に対する援助であり、分断国家の一方に対する肩入れであり、きわめて政治的、軍事的な救援といわねばなりません。それが赤十字社の理想、政治中立からいって矛盾はないか。どうでしょう。まず外務省日赤からお伺いいたします。
  45. 須之部量三

    ○須之部政府委員 もちろん政府としましてはまだベトナム民主共和国のほうとの承認関係、国交関係はございません。したがいまして、いろいろ考え方はあり得ると思いますけれども、政府ベースでの二国間の援助ということをいま考える段階ではないと考えております。ただ、御指摘のように、むしろ赤十字というようなことで、国際赤十字あるいは赤十字社連盟というようなもののほうから日本赤十字のほうへ人道的ないろいろな要請がありますような場合、政府としてもその点は柔軟に考え得る余地はあるのじゃないかというふうに実は思っておるわけでございます。
  46. 木内利三郎

    木内参考人 赤十字救援はどこまでも人道的立場で行なうものでございまして、ベトナムにつきましても、南ベトナム赤十字、北ベトナム赤十字、何ら区別はいたしておりません。先方要請がございますれば、これにできるだけ応じて救援をやっております。最近の統計でございますが、南ベトナムに対しましては六百四十万円程度の……。
  47. 田中武夫

    田中(武)委員 北はどうなの。
  48. 木内利三郎

    木内参考人 北につきましては約三十万円の救援をいたしております。これは内容といたしましては、いずれも粉ミルク、毛布、医薬品等でございますが、先方要請に応じましてこれを行なっているところでございます。
  49. 田中武夫

    田中(武)委員 まず外務省答弁ですが、日赤を通じて行なう人道的な行為、これには承認とか云々は関係ないと思います。それから、日赤は人道的見地に立って行なうのに、相手からの要請がなければしないのですか。この赤十字の諸条約は、むしろ起こりは戦闘中の問題から出てきておるのですね。しかも、北にもしましたといって、片方は三十万ですか、一方は三けたも四けたもどころじゃない、何十億――この場合この件だけをとると一億何ぼですが、そういうことで日赤としての使命が果たせると考えていますか。しかも世界の平和ということ、これに貢献することが理想である、精神である。しかるにこれは戦争に対する加担ではないですか。  委員長、これまた私は一外事部長答弁では済まされません。外務省答弁、またしかりであります。本日は、実は赤十字社の東社長に来ていただくことにしております。ところが、所用とか、副社長は病気とかで見えておりません。もっと責任ある人が出てきて、はっきりしてください。そうでなければ、日本赤十字社赤十字国際諸条約に反する。政府日本赤十字社をして国際語条約に反する行為を日本赤十字社にせしめた、まさに日本赤十字社戦争に加担し、政治中立を破って政治的な援助をしたことに在ります。ここであなた方に言っても、どうせ私も納得はしません。したがって、外務大臣、大蔵大臣、東社長からの答弁を後日求めます。よろしいですか。
  50. 木内利三郎

    木内参考人 先ほど申し上げました数字のうち、北ベトナムにつきまして訂正をいたします。北ベトナムに対します救援物資の価格合計、千五百四十六万二千円でございます。
  51. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、南と北に、いつ、どのようなものを幾ら出したかという資料を要求します。同時に、いま外事部長が言った、相手方赤十字社から要請がなかったということは許せません。赤十字社はそんなものじゃないでしょうが。ここに私は赤十字諸条約諸規約集、日本赤十字社法、日本赤十字社定款を持っております。このいずれから見ても、あなたのような答弁は出てまいりません。したがって、責任者の弁明を要求いたします。いいですか。
  52. 濱野清吾

    濱野委員長 東社長でなければいかぬか。
  53. 田中武夫

    田中(武)委員 責任者でなければいかぬ。ああいう答弁じゃいかぬ。相手から要求がなかったから出さなかったということ。政府政治的にやる一方において、承認をしていない、国交がない、だから赤十字社を使ってやったのです。その赤十字社がこれらの諸規約の精神を踏みにじって、人道的立場だといって――人道的立場なら、相手が救いを求めなければやらないのか。現にいま死に瀕した人がおる、助けてくださいと、こう言わなければ助けないのが赤十字なんですか。どうなんです。いまもうこれ以上の答弁を要求いたしません。責任ある答弁を求めます。
  54. 濱野清吾

    濱野委員長 承知しました。それでは東社長に――理事会にあなたよく御説明願って、そこで御報告願う、こういうことにしましょう。政府のほうもそれでいいですな。
  55. 田中武夫

    田中(武)委員 私は責任者として東社長に弁明を求めますが、その取り扱いは理事会におまかせします。したがいまして、これも含めて理事会において相談するということで、外務大臣、大蔵大臣、さらに東社長の出席を求める、こういうことを要求いたしまして、一応この問題を留保いたします。  ここで予備費関係は留保いたしまして、次に行政一般に移りたいと思いますので、お願いいたします。
  56. 濱野清吾

    濱野委員長 予備費関係は以上で留保いたします。      ――――◇―――――
  57. 濱野清吾

    濱野委員長 次に、政府関係機関の経理に関する件について調査を進めます。  この際、おはかりいたします。  本件調査のため、本日、参考人として専売事業審議会会長松隈秀雄君に出席を願い、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 濱野清吾

    濱野委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、参考人からの意見聴取は、委員質疑により行ないたいと存じますので、さよう御了承願います。  質疑の申し出がありますので、これを許します。田中武夫君。
  59. 田中武夫

    田中(武)委員 専売公社総裁にまずお伺いいたします。  たばこの自動販売機はいま全国で何台くらい使用されておるのか、そして、それによる売り上げは幾らで、その収益金は幾らぐらいございますか。
  60. 北島武雄

    ○北島説明員 とりあえず私は台数程度存じておりますので、あとは総務理事からお答え申し上げます。  たしか、昨年の九月末現在で全国で三万二千台程度ございます。
  61. 田中武夫

    田中(武)委員 売り上げ金、収益は。
  62. 高村健一郎

    ○高村説明員 一台当たりの月売り上げが大体五万円見当でございます。推定でございます。したがいまして、三万台で月千五百万、手数料はその一割というのが現状でございます。
  63. 田中武夫

    田中(武)委員 そうしますと、この自動販売機の管理の責任はだれが持っておるのですか。たとえば何々ビル、何々会館――宿舎にもありますけれども、そういうところの管理人が管理するのか、それとも直接専売公社が管理しておるのですか。そしてまた、専売公社以外の者が管理するとするならば、そのたとえばビルの管理者あたりに手数料を払うのか、払わないのか、もし払うとすればどの程度払っておりますか。
  64. 高村健一郎

    ○高村説明員 自動販売機は、いわゆる小売り屋さんが自分の店舗または出張販売という形で設置をいたしますか、あるいは自動販売機で販売をする小売り屋さんを私どもが指定をいたしますか、いずれにしましても、管理責任は小売り屋さんになっております。それ以外の管理責任者はございません。したがいまして、特別の管理手数料を支払うことはございません。
  65. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、手数料というか、それは店先で現実に売るのと同じ手数料をその管理者、いわゆる小売り屋に渡すのですか。それからなお、たとえば私は赤坂の議員宿舎におりますが、赤坂の議員宿舎の入り口に置いてありますけれども、これは一体だれが管理しておるのですか、小売り屋さんというなら、だれが小売り屋さんですか。
  66. 高村健一郎

    ○高村説明員 議員会館の販売機については、私、事実は存じませんけれども、そのもとには指定された小売り屋さんがいるわけでございまして、その小売り屋さんが設置しているものと思います。
  67. 田中武夫

    田中(武)委員 たばこを国家専売にしている国は、日本のほかにどこにあるか、あまりたくさんは要りません。代表的なところがどこどこあるか、それからたばこの自動販売機でたばこを販売している国はどういうところであるか、それから国家専売であって自動販売機を使っておる国で、法律等によって未成年者の喫煙を禁止している国はどこか、これをお伺いいたします。
  68. 高村健一郎

    ○高村説明員 現在専売制を施行しております国はたくさんございますが、ヨーロッパではフランス、イタリア、オーストリア、スペイン等でございます。それから東のほうに参りまして、アジアでは日本韓国、台湾、タイ、そういった国、それからアフリカにも戦後専売制になった国がかなりございます。  自動販売機が非常に普及いたしております国は、アメリカ、西ドイツでございまして、そのほかイギリス等においてもかなりの台数が設置されております。専売国におきましても、フランス、イタリア等でかなり普及していると伺っておりますが、台数等についてはつまびらかでございません。  未成年者の喫煙の禁止につきましては、日本のようなはっきりした禁止をやっております国は韓国だけだと存じますが、そのほかゆるい禁止、たとえば販売業者の販売を禁止している国等は相当ございます。
  69. 田中武夫

    田中(武)委員 そういたしますと、たばこを国家専売をしておって、それを自動販売機で販売しておる、そうして未成年者の喫煙禁止の国、これはイタリアと韓国日本ということになる。そのうちイタリアは未成年者の喫煙禁止については法律ではございません。いまも話があったようにそうきびしいものではない。韓国は、これは法律かどうかわかりませんが、韓国は未成年者を喫煙禁止にしておる。そうすると、この三条件を備えておる国は日本韓国世界じゅうに二つだということになりますが、そうですか。
  70. 高村健一郎

    ○高村説明員 イタリアは喫煙禁止はやっておりませんが、販売の禁止はやっております。韓国は確かに喫煙禁止をやっております。両方やっておりますのが日本韓国だけでありますかどうかは私も存じませんが、その二国が専売制であり、かつ未成年者の喫煙禁止をやっておるという事実は、そのとおりでございます。
  71. 田中武夫

    田中(武)委員 もう一ぺん確認しますよ。国家専売であるということ、それでたばこを自動販売機で売っておるということ、未成年者の喫煙禁止をやっておるという三つの条件を備えておるのは私も調査いたしました。日本韓国だけです。それだけをまず確認をいたします。いいですか。
  72. 高村健一郎

    ○高村説明員 それ以外の国につきましては、私どもの調査はまだ届いておりませんけれども、その二国が専売制であり、かつ禁止しておるという事実は……。
  73. 田中武夫

    田中(武)委員 それから自動販売機を使っておる……。
  74. 高村健一郎

    ○高村説明員 韓国についての販売機は、私どもはまだよくわかっておりません。
  75. 田中武夫

    田中(武)委員 明確になりました。私の言っている三条件、国家専売、販売機使用、未成年者の喫煙禁止、この三条件を備えておるのは、いまの調査では世界じゅう広しといえども日本だけ、こういうことになりますね。いいですね。反論がありましたら伺います。  そこで法務省にお伺いいたしますが、明治三十三年法三十三号、未成年者喫煙禁止法、これはいまも生きておりますか。
  76. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 現在も生きた法律でございます。
  77. 田中武夫

    田中(武)委員 そういたしますと、同法四条では、自用、すなわち未成年者が自分の用に供するということがわかっておって販売した者に対しては、罰金刑に処せられることになっております。そのときに自動販売機を使って、子供がというか、未成年者がたばこを買うというようなことは、同法四条との関係においてどうなるのか。この法律を受けている限り、警察庁見えておるはずですが、警察はやはり違反者を取り締まる必要があります。その取り締まりはどうやっておりますか。
  78. 高松敬治

    ○高松政府委員 自動販売機と未成年者の喫煙禁止法との関係でございますが、これは前にも警察の内部でも多少議論がございまして、現在の自動販売機につきましては、大体各地で表示のしかたが多少違うようでございますけれども、「二十歳未満の方の喫煙は法律で禁止されております」あるいは「未成年者の方はたばこを吸わないようにいたしましょう」というような注意的な文句をあの機械に掲示するというふうなことを一応やっております。  それで問題は、二十歳未満の者がみずから自分の用に供するため、つまり自分で吸うために買うことを知りながら販売することは四条の違反になるということでございまして、その辺に多少問題がございます。一応私どものほうとしては、そういうような注意規定など、いろいろな指導をやりまして、未成年者が自用に供するためにたばこを買うということを控えるというふうな形のことで指導をいたしておるわけでございます。
  79. 田中武夫

    田中(武)委員 日本の自動販売機にもそういうことが書いてありますか、それが一点、それから、これは少し大げさになりますが、人を殺したら、刑法百九十九条でこれこれの死刑または無期もしくは三年以上の懲役に処すと書いて張っておけば、犯罪の取り締まりといえますか。
  80. 高松敬治

    ○高松政府委員 日本の自動販売機には大体ついておるはずでございます。たとえば、私も警察庁にあります自動販売機を見ましたが、そういう表示をしてございました。  それからもう一点問題がありますのは、普通の販売店におきましても、たとえば、われわれが子供にたばこを買ってこいといって買ってこさせる場合が間々あるわけであります。販売店が、子供がのむため左のかおとながのむためなのかというふうなところの認識といいますか、その差によって四条の適用があるかないかというような問題にも相在るわけでございまして、その辺は、先ほどの殺人の場合に張ってあるからというお話と多少色合いが違う、こういうふうに思うわけでございます。
  81. 田中武夫

    田中(武)委員 そういう注意書きが全部入っておるかどうか、注意書きをしたからといって済まされる問題であるのかどうか。なるほど子供にたばこを買いにやる、だから喫煙禁止法の四条は、自用に供することを知って販売した者は罰金刑に処せられる、一々たばこ屋が、あなたが吸うのですか、おとうさんが吸うのですかとは聞かないけれども、厳然として生きておる。少なくともおかしいと思えば、あなたが吸うのですか、おとうさんの分ですか――このごろは中学生でも吸っているそうです。それは、聞くことが、確かめることがたばこ販売業者に課せられた義務ではないですか。実際はそうすべてはやっていないと思いますが、それが法のたてまえとは違いますか。  話は変わりますが、去る二月二十七日予算総括締めくくりの質問におきまして、成田代執行の件を私が総理に質問をいたしました。総理は、日本は法治国である、法制度等は守らなければならない、こういった意味の答弁をいたしました。当然、日本は法治国です。法制度は守らねばならない。にもかかわらず、国家機関である専売公社が、この自動販売機による販売は喫煙禁止法の精神――これは目的は聞かなくてもわかると思うのですが、ついでに目的も聞きますけれども、それを無視した売らんかなの商法だといわねばなりません。その点、どうなんでしょう。
  82. 高村健一郎

    ○高村説明員 御質問の一部に対するお答えになるかもしれませんですが、自動販売機に未成年者は法律によって喫煙が禁ぜられている旨の表示は、私どもとしまして指示事項という形で明確に小売り屋さんに指示いたしております。したがいまして、全販売機にそれは表示されております。もし表示されておりません場合は、これはさかのぼって専売法違反ということで取り締まりの対象にしておるわけでございます。  それから、小売り屋さんが開業いたしますときには、営業の心得を文書でお配りし、そのほか指導をいたしておりますが、その際、未成年者には販売しないように十分指導はいたしておりますが、これは状況によって小売り屋さんがそれを判断する以外にはないわけでございますし、私どもとしては、できるだけその効果があがりますように指導はいたしておるつもりでございます。
  83. 田中武夫

    田中(武)委員 ひきょうですよ。すべては小売り屋さんの責任に転嫁する。自動販売機採用の際にこの問題を討議せられましたか。売らんかなの商法、これでは許されないと思います。さらに、取り締まりのほうが実効があがらない、そんな法律ならやめ左さい。法務省、この法律を廃止いたしますか。もし廃止しないとするならば、法務省、警察、大蔵省並びに専売公社、この喫煙禁止法によるところの問題を自動販売機にどのようにして適用するのか、それをここに提示せられたい。さらに、法制局も呼んだので来てもらっておると思うのですが、法制局の見解はどうです。実際何にもならない法律ならやめたらいいじゃないですか。やめられないのなら、取り締まりの方法、あるいはそういうことができないような方法を考えるべきである。それぞれの立場からの答弁を求めます。
  84. 荒井勇

    ○荒井政府委員 未成年者喫煙禁止法の廃止を検討されるべきではないか、そうでなければ取り締まりを適確にやるべきではないかということで、存置するからにはきちんと取り締まりをやるべきだということでございますが、この問題は、昭和三十九年に大蔵委員会で田中先生お取り上げになりました。そのときに、取り締まりの実績等も当局から答弁を求められておりまして、そのとき答弁がありましたように、やはり年間三十何件とか、取り締まりの実績は出ておるわけでございますから、全然何らの取り締まりも行なわれていないということではないと思いますし、その立法の趣旨からいって、やはり「満二十年ニ至ラサル者ハ煙草ヲ喫スルコトヲ得ス」ということで、未成年者が喫すること自身についての罰則は設けられていない、その親権者なり販売者についての特別の配慮というものを要請して、それに一定の禁止規範をかけておるということでございますけれども、まあそういう法律が現にありまして、それが執行されておることも事実でございますので、私ども、別に廃止することが必要だというふうには毛頭考えておりません。
  85. 田中武夫

    田中(武)委員 三十九年にも実は私が大蔵委員会でやったのですね。そのときは自動販売機の問題じゃなくて、現実に手渡しして売る場合、小売り屋の責任について四条に関連して申し上げました。いまはそうでなくて、自動販売機の場合にこの四条をどうチェックするのか。チェックの方法がないじゃないですか。あるのなら言ってください。ただ書いて張っておけば――書いてないのもありますよ。百歩譲って、書いてあるとしてもよろしい。書いてあるからそれで済むのだという問題ではありませんよ。したがって、廃止しないのだったら――法務省も廃止するとは言えないでしょう。どう取り締まるのか、ひとつ関係者と打ち合わせて答弁してください。
  86. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 ただいまの自動販売機によります販売と未成年者喫煙禁止法第四条との関係でございますけれども、私どもが承知いたしております実情は、自動販売機による販売は、専売公社のほうにおきまして、たばこ専売法に基づく指示がいろいろあるように承っておるわけでございまして、それによりますと、まず学校の近くには自動販売機なんかは置かさぬようにするとか、あるいは自動販売機を置いても販売者においてできるだけ監視をするとか、もちろん、先ほど来御議論になっております自動販売機に未成年者の喫煙禁止ということを表示するとか、あるいはまた店頭に置いておかれるとか、いろいろ御配慮がなされているようでございます。そういうことになりますと、この自動販売機で売るということが、すなわちそれ自体で販売者側において未成年者の自用に供することを知って売ったということには、一般論として直ちにならないと思うのでございます。で、自動販売機で売っておりましても、それがすべてこの四条違反にもちろんなるわけではございませんが、しかしながら逆にまた、自動販売機で売っておりましても、その横で店の者が見ておって、自動販売機で未成年者が買っていくことを十分知っておる、知りながらなおこれを放任しておくということになれば、四条違反が販売者について成立する場合もあろうと思うのでございます。現に、先ほども御答弁がございましたが、未成年者喫煙禁止法違反といたしまして全国検察庁で受理いたしております事件数も、近年におきまして、やはり毎年二百件ないし四百件ぐらいの事件を受理いたしておりまして、この法律は現にりっぱに運用されているということがいえると思うのでございます。
  87. 田中武夫

    田中(武)委員 だから廃止しない。これは先ほど来私が言っておるように、自用を知って販売したり――自用を知るということについては、これは販売業者に課せられた一つの義務なんです。自動販売機で販売したのがすべてがいけないとは言っておりません。第四条との関係をどうチェックするのか、これを言っておるのです。しかも、これは外にある場合は夜中でも買えるのですよ。だから、警察はどう取り締まるのか。その前に専売公社は一体四条との関係をどうチェックしていくのか。ただ単に、それは販売業者の責任であるからおれは知らぬのだでは済まされません。どうなんです。自動販売機で売ったたばこが全部違法だとは言っておりません。自用を知るということを確かめることがどこでできるのかと言っておるのです。掲示しているからといって、それで事が済むのじゃありませんよ。それなら、大げさな例を出したけれども、刑法百九十九条ではと、張り紙をして町へ張っておけば、警察は昼寝していてもいいということになる。どうなんです。
  88. 濱野清吾

    濱野委員長 高村常務理事、何かくふうはありませんか。
  89. 高村健一郎

    ○高村説明員 自動販売機が徐々にふえてまいっておりますのは、業界における労働力不足、それから労働条件の改善というようなことで、店を開いております日数なり時間なりが減ってまいっております。そのために消費者の方に御迷惑をかけないようにということで、これはやむを得ず自動販売機がふえていく方向をとるわけでございますが、その場合に、未成年者の喫煙を誘導しないようにという配慮は当然やるわけでございまして、方法としましては、先ほどの表示なり、それから明らかに未成年者の喫煙を引き起こしそうな場所には絶対許可をしないというようなやり方で、できるだけ法との間の調整をはかってまいるということで私どもやっておる次第でございます。
  90. 田中武夫

    田中(武)委員 いまので答弁になりますか。もう一度確認いたします。  世界じゅうで、たばこ国家専売制をとっておって、そのたばこを自動販売機で売っておって、その国で法律をもって未成年者に喫煙を禁止しておるのは日本ただ一つ日本だけなんです。それによって、先ほどの話では月千五百万円、これだけ自動販売機で売り上げておる。なるほど便利です。だが、総理も強調した法、制度、法律第一主義ということから見てチェックができない、取り締まりの方法がない。機械たたいて返事しますか。私はいまの答弁では満足できません。したがって、専売公社、その管轄の大蔵省、さらに法務省、取り締まりをするところの警察合議の上で、どのように扱うかを委員長を通じてこの委員会へ提出をしてください。いかがでしょうか。
  91. 濱野清吾

    濱野委員長 非常にむずかしい問題だが、ひとつ研究して、ある程度の概念ができましたら出すようにしますか、どうですか。政府や専売公社はどうですか。非常にむずかしいことですがね。  ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  92. 濱野清吾

    濱野委員長 速記を始めて。
  93. 北島武雄

    ○北島説明員 私、専売公社でございますので、政府側にかわって御答弁することができないわけでございますが、ただいまの御指摘の点もございますので、関係各省と一ぺん相談をいたしたいと思います。  ただし、たいへん弁解になるようでございますが、やはり自動販売機というものがどうしてできたかということは、やはり御理解をいただかなければならぬと思います。ただいま高村が説明いたしましたように、最近の商店の人手不足ははなはだしいものでございます。昔は、たとえばたばこ屋に看板娘がおりまして、そこで笑顔のもとに売っておりましたが、最近はそういうことはなくなりまして、おじいさん、おばあさんが売っておる店がだいぶふえてまいりました。それでもまだ間に合わないということで、しかも夜間も早くやめるようになり、あるいはまた日曜日も休む日が多くなる、こういうことになりますので、たばこ屋さんとしても自動販売機を備えつけておるというわけで、そういう必要があるわけであります。  ただ、未成年者喫煙禁止法との関係におきましては、専売公社におきましても、先ほど申しましたように、自動販売機には、必ず十九歳未満の方は法によって喫煙を禁止されていますということをはっきり表示させるようにいたしておりますし、それからまた、自動販売機を据えつける場所にいたしましても、児童の出入を中心とするような場所、児童が入りやすい場所には置かない――議員会館は児童は入りませんから、そういうところはよろしゅうございますが、児童が多く出入するような場所にはそういうものは置かせない、こういった方法も講じておるわけであります。  それから、未成年者喫煙禁止法ができた由来は私どもわかりませんけれども、おそらく道徳的な問題も私はだいぶあったと思います。昔から、徴兵前の者は酒もたばこも吸ってはいかぬという親の気持ちがありまして、そういったことがもとになってできておるかと思いますが、いまとなっては、この間の専売事業審議会でもお話があったんですが、いまの二十歳という年はむしろ高過ぎる、もっと低くしたらどうかというような御意見もありまして、そのかわり取り締まるべきものはしっかり取り締まる、こういった御意見も一部にはございます。取り締まりの点についても、警察御当局もなかなかたいへんではございますけれども、私個人の考えでは、そういうような法律はないよりもあったほうがいいんじゃないか、こう思っております。
  94. 田中武夫

    田中(武)委員 北島さん、冗談じゃないですよ。私はあなたとのつき合いは長いからあまりいじめたくないですが、いまの答弁、何です。そんなら全然法を無視しておるじゃありませんか。いま流通の近代化ということはわかっております。だからといって、法律を無視したような販売はできませんよ。学校の近くに置かないとか、議員会館――議員会館じゃありません。宿舎には学生も子供もおります。家族がおります。そういうような感覚でやるんなら私は許しませんよ。冗談じゃない。いまの答弁、何です。取り消しなさい。
  95. 北島武雄

    ○北島説明員 私の申し上げたことが田中委員の御納得を得なかったようでございますが、もともと未成年者喫煙禁止法について、専売公社としてもできるだけのこれに協力する措置はとっているわけであります。ただ、法についてどうするか、具体的には自動販売機についてはなかなか取り締まりがうまくいかないのじゃないか、こういった問題は確かにあろうと思います。こういった点については、関係当局ともお打ち合わせいたしまして、一体どういう手があるかこういう点を検討いたしたい、こう考えます。
  96. 田中武夫

    田中(武)委員 何ですか、あなた、できるだけ協力する体制とは何ですか。国家機関ですよ。法に協力とは何ですか。第三者のような言い方やめなさいよ。絶対守るべきが使命ですよ。そんなことをおっしゃるなら、総裁としての適格性を疑います。先ほどもちょっと速記をとめたときに私申しましたが、実は予算でこれを用意しておったんです。だがしかし、武士の情けで決算へ回した。予算でこの場面が出たらどうなりますか。冗談じゃないですよ。はっきりしなさい。しないなら、私は直ちに参議院のほうへ行って、社会党の参議院議員にこの資料を渡して、直ちに予算をとめさせます。いいですか。
  97. 濱野清吾

    濱野委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  98. 濱野清吾

    濱野委員長 速記を始めて。
  99. 北島武雄

    ○北島説明員 先ほど実は私が協力ということばを使いましたが、たいへん適当でありませんが、法律的にはあれは警察法だという意味が私の頭にあったわけでありまして、しかし、もちろん専売公社におきまして、小売り店をして守らせるのは私どものつとめでございますので、ああいった協力ということばは適当でありませんので、取り消させていただきます。
  100. 高松敬治

    ○高松政府委員 未成年者のたばこの喫煙の問題につきましては、これは御承知のように、いま取り締まりはかなりやっております。昨年の実績からいいまして、補導件数で二十二万六千件ぐらいやっている。そこで今度は、たばこをそれではだれが手に入れたかということで、喫茶店だとかパーだとか、そういうところでたばこをやっておったとかいう者を毎年百人、二百人検挙している、親の保護者についても一、若干名の検挙がございます。  そういうふうな状態で、私どもとしましては、やはり未成年者に喫煙をさせない、それをできるだけ補導していくということ、それからそういうことをさせた者については、警告し、あるいは送致をしていくというふうな意味では、こういう法律は必要であるというふうに思います。われわれの適用自身が、たとえば販売者の適用の検挙が一年に二百や三百では非常に少ないではないか、こういうことになるかもしれませんけれども、しかし悪質な者はそれで検挙されていく、こういうことでございまして、そういう意味の一つの力を持っているというふうに考えまして、少年の補導についてはそういう問題があろうと思います。今後、そういうふうな少年を補導していろいろやっておりますうちに、自動販売機の問題について非常にいろいろまた問題が出てくる、自動販売機で買っている者が大部分である、自動販売機についてたいへん野放図である、そういう事実も出てくるかもしれません。私どもといたしましては、そういうことの防止のためには、専売公社あるいは法務省あるいは法制局というふうなところで、この問題をもう一度検討してみたい、有効な方法があれば、何とかそこに一つ道を考えてみたい、かように思っている次第でございます。
  101. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、三者合議の上で、委員長を通じて取り締まりの方法等について報告を求めるということにしましたが、それをやめて、いまのような答弁では、私は本気で取り組む気があるとは思えません。したがいまして、大蔵大臣、法務大臣、警察庁長官及び荒木国家公安委員長出席を求めてこの問題をさらに追及することを申し上げておいて、留保いたします。  そこで、きょうは松隈参考人に来ていただいております。  専売事業審議会は去る二日に、有害表示する必要はない、ニコチン、タールの含有量を表示するだけで十分である、さらに、たばこの宣伝もいまの程度ならかまわない――これは新聞で見たのですが、こういった趣旨の答申を大蔵大臣にしております。その審議過程、結論、簡単にお伺いいたします。簡単でけっこうです。それが間違いあるのかないのかということだけでけっこうです。
  102. 松隈秀雄

    ○松隈参考人 専売事業審議会といたしましては、大蔵大臣から、喫煙と健康の問題に関連して日本専売公社の業務の運営について、という御諮問がございました。そこで、こういう問題の性質に顧みまして、特別委員の方五人を追加していただきまして、その御意見も伺ったわけでございます。その特別委員は、お医者さんあるいは医事関係の評論家でございますが、その結論を伺いますというと、たばこと肺ガンの関係は、疫学的、統計学的には、たばこをよけい吸う人がかかる率が高いということはわかっておるけれども、まだ病理学的には必ずしも結論を出す時期に至っていない、こういうことでございました。そこで有害表示をする必要は、現段階においてはない、しかし、現在公社がニコチン、タールの量をステッカーで店頭に張り出しておりますけれども、それをさらに一歩進めて、個々のたばこの包装にこれを表示するということによって消費者の関心を高め、そして、もともとたばこというものは、日常生活に必要な食料品等とは違って嗜好品である、こういうことからも消費者の自由判断にまかせるほうがよろしい、こういうのが結論でございまして、これは特別委員も加わり普通委員も加わって、全会一致でこの答申がまとまりましたので、それを大蔵大臣に提出した次第でございます。
  103. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、きのう新聞に出てきたような答申の記事は間違いありませんか、こう言ったんですが、間違いないですね。――そこで、昨日の各新聞紙には、この答申を取り上げまして、読売は、いわく「世界の大勢に逆行」、毎日は「「有害表示」肩すかし」、朝日は「答申、健康を煙に巻く」等々と激しい批判を加えております。また国立がんセンターの平山部長は「責任負うか」あるいは「野球でいえば、野手が飛んできたタマにソッポを向くような無責任な」答申である、あるいは「国辱的な答申だ」等々の批判を加えております。さらに、去る二月八日の予算総括質問の中でわが党の堀委員が詳しいデータをもってこの問題を提起いたしまして、総理、大蔵大臣等々が検討すると答弁をいたしております。加えてWHO、世界保健機構から昨年ですか、喫煙の制限に関する報告並びに何らかの法的措置をとるよう勧告があったと思います。  そこで、公社及び参考人、このWHOの勧告等を受けてどう考えられるか、あるいはこの激しい世論あるいは専門家のがんセンターの平山部長のこれに対する談話、これを一体どうお考えになりますか。ことしのWHOの総会でこの勧告を受けた各国が受諾の結果を報告すると思います。そのときに、このようなことで総会に臨んで日本の恥を世界にさらしたいのですか。公社総裁及び審議会会長松隅さん、どうお考えになりますか。
  104. 松隈秀雄

    ○松隈参考人 WHOの勧告がございましたので、厚生大臣から大蔵大臣に相談があり、大蔵大臣が専売事業審議会に諮問をされました。そして、専売事業審議会におきましては、先ほど申し上げました特別委員意見も聞き、さらに一般参考人意見を聞きまして、十一回にわたって慎重審議をした結果、現段階においては、個々の箱に有害という表示をするのは行き過ぎである、その一歩手前と申しますか、個々の箱にニコチン、タールの表示をして、そして消費者自身の判断にまかせるのが適当である、こういう答申をいただいたので、先ほど申し上げたとおりでございます。  それから、世界の大勢と申しますけれども、これもまた有害表示をするのが大勢であるかというと、まだそこまでは至ってないように考えます。現に、有害表示を実行しているのはアメリカペルー、それからまた二、三の国だけで、ドイツは最近そういう方針を決定したということです。ですけれども、世界でたばこをのんでいる国の数からいって、四つや五つは、そういっては悪いのですけれども、まだ大勢とはいえない、したがって、答申にも書いておりますように、今後世界の動きを見、それから公社もたばこと健康の関係については各方面に研究を依頼しております。ですからそういう結果も出てくる、それから世界の動き、同じ専売制度をしいているフランスなりイタリアなりの動きもわかってきますから、そういうことと相まって、さらに第二段の問題の取り上げ方をするかどうかということは、これは今後に残された問題であって、今後引き続いて検討すべき問題であるということは特別委員も申しておりますし、先ほど申し上げましたように、この答申は、現段階においてはこの程度のことをすることが適当である、こういう答申になっておりますので、御了承を得たいと思います。
  105. 北島武雄

    ○北島説明員 申し上げるまでもございませんですが、この専売事業審議会は大蔵大臣の諮問機関でございまして、大蔵大臣がこのWHOの通告を受けまして、そして専売公社に対してどういう運営をさせたらいいかということを御諮問になったわけでございまして、その答申が出た段階でございますが、私どもとしては、大蔵大臣の御指示があるまではちょっと私のほうの立場からいろいろ申し上げることは適当でない、こう考えております。
  106. 田中武夫

    田中(武)委員 これも結局大蔵大臣が来たときに譲らねばならないと思います。しかし結局、このような答申になった裏には、有害ということを書けば、国が有害商品を売るということになる、それはまずいのじゃないか、こういうことが私は背後にあったと思う。たとえばチクロ入りの食品を禁止したケースと一緒だと思う。疑わしきは罰せずは法律の問題、ことに刑事法の問題であります。しかし、このようなものは、疑わしきは是正する、これが国民の健康を守り――私も吸っております。しかしながら、これからの世代をになうところの若い人にたばこの害は知らしめるべきである。  そこで私は、もうこれ以上は申しませんが、有害な商品を国が売る、こういうことはまずいから表示をやめろという、これは本末転倒だと思うのです。先ほど来私はたばこの自動販売機の問題を取り上げた。今度の答申の問題を取り上げました。  要約いたしますと、このたばこの専売制度、これ自体を検討する時期がきているのじゃないですか。ここで専売公社の総裁、参考人を前にしてこの問題をぶっても、これは意味がございません。そこで、先ほど留保いたしました問題とあわせ、必要ならば総理も来てもらって、私はたばこ専売の可否について論じたいと思います。委員長にお取り計らいをお願いいたしまして、私はきょうはすべての質問を留保し、次回に譲りたいと思います。委員長に対する要望です。
  107. 濱野清吾

    濱野委員長 承知しました。
  108. 華山親義

    華山委員 関連して伺いますが、タール、ニコチンの量を少なくする、こういうようなことで、最近になりましてエポック、それからセブンスターというような新しいたばこを売り出された。その際に、私の記憶によれば、そういう葉をこれらの新しい品名のものに集めるために、従来最も一般人々の吸っていたハイライトのニコチンとかそういうものの量がふえた、こういうことを専売公社が発表なすったように記憶しております。今後ニコチンとかタールとか、そういうものを表示するということになりますれば、タールやニコチンが多いのは悪いんだということは常識になっておりますから、勢いそういうものの少ないほうに向くだろうと私は思うのです。そういう際に、そういう品種、いまでいえばセブンスターとかエポックとかいうものを十分につくれるだけの御自信がおありなのか。またその際に、一般消費者の負担を増さないでそういうことができる御自信がおありになるのか、ひとつ総裁に伺っておきたい。
  109. 北島武雄

    ○北島説明員 専売公社におきましても、喫煙者がやはりニコチン、タールの少ないほうをだんだんおとりになるという傾向がございますので、できるだけニコチン、タールの少ないものを最近出しておるわけなんです。その結果、全体としてはニコチン、タールの量は変わらないのでございますが、一部に前年よりも――これは農産物の関係もございましょうけれども、多少上がったものもございます。しかし、こういうことはやはりおもしろくない、できるだけ低ニコチン、低タールの品をつくろうということで、これは原料のほうからいってもたいへん大きな問題でございますが、私ども全力をあげまして、まず国内産葉について緩和の葉にだんだん誘導していく、それから当面の問題としては、緩和の葉を外国から輸入いたしまして、そして消費者の要望に沿いたい、こう考えております。それによって価格が上がることはできるだけ防ぎたい、こういうつもりでおります。
  110. 華山親義

    華山委員 そういうふうな用意ができなくて、いま委員会でおっしゃったようなことを六カ月たったらおやりになるということですけれども、国民がたいへん迷惑するんじゃないですか。そういうたばこが吸いたい、まだ出ておらない、買おうと思うと高い、そういうふうなことになりはしないかと私は心配しておるわけなんです。六カ月後にはやれるとおっしゃるけれども、たいへんに困った事態が起こるのじゃないか、そういうことを私は申し上げているわけです。  それから、先ほど自動販売ということで販売機のことが出ました。人手が足りないというお話でありますけれども、小売り店になりたいというのはたくさんありますよ。それを許可しないのでしょう。そうしておいて、人手が足りないから自動販売機だというのはおかしいですね。人手が足りないということであるならば、そういうところにどんどんどんどん売らしたらどうなんですか。そして、そこで気がついたら少年等には売らないようにやったらいいんじゃないでしょうか。販売店を制限しておいて、人手が足りないから自動販売機だ、そのために、先ほどお話のありましたように、法律の規定をうまく運用できない、これは私はおかしなことじゃないかと思うのです。もっと小売り店をおふやしになる御意向はございませんか。  この二つのことについてもう一度伺っておきたい。
  111. 北島武雄

    ○北島説明員 小売り店の問題につきましては、消費者の需要に応じまして、やはりできるだけ多いほうが好ましいと思います。ただし、中小企業の過当競争などの問題もございますので、そういう点も配慮いたしまして、いま地域制限がございますが、こういったことは実行上だんだんゆるめつつございます。
  112. 田中武夫

    田中(武)委員 最後に一点。実は私も小売り店問題に触れたいと思っておったのですが、はしなくも華山委員が触れたのですけれども、一方においては、華山委員が指摘したようにたくさん申請を出すのですよ。ところが、ほとんどが落とされる。そうしておいて先ほど来の御答弁、これは矛盾しています、そういうことも含めて、さらに先日浅井委員から指摘された天下りの問題、それに関連する輸入葉たばこの問題等々もあわせ保留いたしまして、これはやはり総理以下の大臣が出たところで決着をつけたいと思います。  本日は、私はこれで終わります。      ――――◇―――――
  113. 濱野清吾

    濱野委員長 次に、昭和四十三年度決算外二件を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。吉田賢一君。
  114. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 過日、いわゆる天下り人事と言っておりますが、「営利企業への就職の承認に関する年次報告書」が配付されました。これを中心にいたしまして、公務員制度の基盤まで掘り下げて伺っておきたい、こう思います。  まず第一点は、この百九十三名の営利企業への就職の承認報告でありますが、相当多数が高級技術者であります。人事院総裁といたしましては、高級技術者がこのように多数退職して、それぞれ営利企業に流出していくという事実に対して、これの原因は何であるというふうにおつかみになっておりますか、この点をひとつ明確にしておいてもらいたい。長い御説明は要りません。
  115. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 まことにずぼしのお尋ねでございます。私ども去年あたりからいま御指摘の傾向を相当顕著に見ておるわけでございます。     〔委員長退席、高橋(清)委員長代理着席〕 一種の有能な人材の民間への流出という面から、これをこのままほうっておいていいかどうかという問題としてとらえているわけでございます。去年そういう傾向もありましたし、かたがた一般考え方としても研究者の優遇が必要であろうということから、御承知のように、昨年の給与勧告におきましては相当思い切った研究職の給与の改善を御勧告申し上げた。これは一つの手であったと思います。  やはり第一に考えますのは、そういう給与を中心としての待遇改善の問題であります。それからもう一つ、これは実は人事院の所管ではございませんから申し上げるのは遠慮しなければならないかもしれませんけれども、大体、技術出身の方々が昇進されるについてのいろいろな、課長とか局長とかのポストの問題があります。これは事務関係の方々が大部分そういうポストについていらっしゃいまして、主要なポストに技術出身の方が案外ついておられないのじゃないかという点からいいますと、やはりその人材登用という面から、そういう内部のいろいろな承認その他の扱いの上で考慮していただければ、またこれも一つの方法ではないか、とりあえずこの二つのことに気づいておるわけであります。
  116. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 これ以外に、承認を求めたけれども不承認になったというものはあるのですか。
  117. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 これは手続といたしましては、各省大臣あるいは外局の長官から、だれだれを承認してほしいという申し出を人事院にお出しになります。したがいまして、各省の人事当局者その他がまず第一に下ふるいの審査をするわけであります。幸いにしてここ数年、もういろいろと先例も確立いたしましたものですから、各省の方々も、これはだめというような見きわめをおつけになるような判断のあれをお持ちになっておるものですから、したがいまして、もうだめというものは各省内部でこれをふるい落としてしまわれる、これはよかろうというものだけをこちらへ手続をされますけれども、それにつきましても、これは一般の役所はどこもそうでございますけれども、大臣名で承認を申請した書類が、人事院から不承認というらく印を押されて戻ってくるなんということは、これは普通の役所ではそういうことはできるだけ避けるのが当然でございますからして、承認の申請をお出しに在る際にも、なお念のためにどうであろうかということを瀬踏みをしてこられるわけであります。したがいまして、その際に私どものほうで、これは撤回なさったらどうか、だめですよというようなことでいきますものですから、正真正銘の正式文書で不承認というらく印を押したものを大臣あてに出すという場面はないのは当然のことだと思います。そういうことで、去年の場合は七件ぐらいございましたか、ある意味の撤回をしてもらったということでございます。
  118. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 このいわゆる天下り人事なるものは、これは六年前の臨時行政調査会の過程においても、また結論としての勧告におきましても相当重視して指摘した一点であります。したがいまして、この問題につきましては、毎年、昨年も二月にこの年次報告が出ました。ことしは三月になって出たんでありますが、出るごとに世論はごうごうとわくのであります。  そこで、人事院といたしましては、各実施官庁と違って、厳正な一つ中立的な官庁であります。あなたのほうが、この多数の高級技術者が退職し、また世論がわくような営利企業に就職していくようなこの事実を、あげました原因はともかくといたしまして、あなたのほうとしてこの事実を率直に評価せられたときに、総裁としての感懐いかん、これはどうしても聞いておかなければいかぬ。何にも感じはありません、世論はわくも、人事院総裁は何にも感じませんというのでは、これは国民不在の行政のあり方になります。それはなるほどみずからまず選考して人事院にこれを持ち込んだ各省庁の長官の立場は別としまして、あなたのほうは違うのです。しかるがゆえに、人事院としては厳正に一つの確立したものがあるべきなんです。これがもしくずれてしまいましたら、公務員行政なんというものは空文に終わります。だから人事院はあってなきがごときかかしになってしまいます。ですから、一方に世論は毎年わく、この国会においても天下り人事と称して何回か取り上げました。ことに高級公務員の天下りということは、これはともかく何回か取り上げているんであります。  こういう点から考えて、あなたのお立場として、一体どうこの事実を評価せられるか、これを率直に述べてもらいたい。失礼だけれども、あなたの地位がどうだこうだというんじゃなしに、これは全国民に答えるというような厳正中立立場での評価をお聞かせいただきたい。
  119. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 私の立場などにとらわれることは、私自身として全然必要ないと思っておりますので、率直に所感を申し上げさせていただきますと、先ほどちょっとお触れになりましたように、この問題は、特に昨年からことしにかけての問題としては、焦点が二つになったというふうに考えます。  この一つのポイントは、これは従来からいわれておった役所の職務と企業とのくされ縁だとか癒着だとか、そういうものに結びついてのいわゆる天下り、これはけしからぬというのが従来からある問題、ところが、もう一つ先ほど来御指摘になりました問題は、昨年来の一つの事象として、研究職を中心とする技術屋という人たちが今度は顕著に出ていっておるじゃないか。これは御承知のように、研究所の中でフラスコを振っている人たちは企業との間に監督権を持っているわけでもなし、くされ縁を生ずる場面もない、その人たちが今度は民間に出ていく、むしろそれはスカウトされるといったほうが率直かもしれません。問題は、違う性質のものが二つ出てきているというように私は考えます。  したがいまして、先ほどのお尋ねについてお答えしましたところは、そのあとのほうの人材の流出をいかにして防ぐかという面に目をつけて申し上げたわけなんですが、もう一つ、最初に申しました従来からのくされ縁とか癒着とかといわれている問題点については、これはわれわれ少なくとも国家公務員をお預かりしているものとしては、やはり世間の批判というものに対しては大いに耳を傾けて、またいろいろ反省すべきところは反省しなければならないだろう、ただ、問題の根本は、このいわゆる天下りといわれるものをただチェックしてしまって、たとえば、絶対にもう転出は許さないというたてまえにしてみたところで、癒着なり何なりという不正な、あるいは不純な行為というものが絶滅できるかどうかということになりますと、決してそんなものではない、もっと深いところにメスを入れなければ、これだけを万能薬としてとめてみたところで、これは何にもならないであろう――これはいみじくもいまの制度ができましたときの第一回国会、さらにこれが今回のように規制をきびしくされました第三回国会における御審議の場面において、こんなことをやって一体官庁の粛正の役に立つのかというむしろ懐疑的な御発言が出ているわけです。それは、たとえば天下りを一切禁止する、それならそれで、公務員は信頼すべからざるものという前提からいえば、どうも天下りができなければいまのうちにしこたまふところを肥やしておいて余生を楽しもうということで、収賄その他の方向に走ることは、これはあり得るじゃないか、だからこれは単なるからめ手からの一つのささえであって、これをもって万全を期し得るというようなたよりにはできない制度だというおことばが国会の審議で出ているわけです。これはまことに私はもっともなことだと思う。やはり問題は、職場における不正の発生の余地そのもののないように未然にこれにメスを入れて監督を強化する、あるいは、場合によっては懲戒処分をもって厳正にこれに臨む、やはり規律の確立が一番根本ではないかという気分を持ちまして、実は昨年、幸いにして給与の勧告も完全実施をさしていただきましたし、また大幅の勧告もお認めいただいた、公務員としては、私はこれで相当優遇された形になったと思います。それは当然のことかもしれませんけれども、結果においてはそう思います。したがいまして、これに対してやはり国民の公務員に対する批判なりあるいは期待なりというものは一そう従来よりもきびしいものがあるに違いない、したがって、公務員諸君よ、ひとつこの際七〇年代に臨んで心がまえを切りかえようじゃないかということを、また私、個人的な努力の及ぶ限りにおいてやっておりますとともに、役所としても、たとえば人事局あたりと連携して、その根本のほうにもう少し力を入れていくべきじゃないか、ちょっとお答えがずれたかもしれませんけれども、ほんとうの気持を述べろとおっしゃれば、それがほんとうの気持ちでございます。
  120. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 いろいろとお答えいただいたのでありますけれども、やはりいろいろと雑感が主になっております。また指摘された点、大事な点もございます。ある種のものがずばっと一切を解決するという簡単な手段はない、これはごもっともであります。手段がないがゆえに、しからば放置してよいのかということになると、やはり問題は次に次にと続発してあとを断たずということになります。天下り人事といいまするが、これは形容詞、比喩でありますから、正確な法的表現ではございませんので内容がとかく明瞭を欠きます。それから、天下ることを根絶するということは、これは不可能なり、またそんなことをする必要もありません。なぜならば、職域を新たに求めるということも、憲法で保障された国民一つの権利でありますから、そこに筋を立てて、そしてみずからの地位を顧みて、職責も汚さず、国民の期待にもそむかずという道もあろうじゃないかというのが、一つの模索の焦点になっていくだろうと思います。これは議論になりますからのけます。  そこで、やはり問題の一つは、あなたに伺いたいのだが、一体これは何を基準に一たとえば国家公務員法の百三条の第二項、これがいまの「職員は、離職後二年間は、営利企業の地位で、その離職前五年間に在職していた人事院規則で定める国の機関と密接な関係にあるものにつくことを承諾し又はついてはならない。」ということですね。これが根拠になっているようでありますが、しからばこの「国の機関と密接な関係」、これは何のことを意味しておるのだろうか。そもそも一体何を基準にしてこれは承認し、もしくは不承認とするのであろうか。この点について、この法律の概念として明確に、簡単にお述べを願っておきたい。
  121. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 私どもが考えておりますところは、この国の機関と密接な関係という場合を、たとえば通産省、大蔵省というような役所を考えれば、大蔵省の所管行政に属する企業、あるいは通産省の所管行政に属する企業……。
  122. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 総裁、失礼ですけれども、ひとつこういうふうな問答にしていただいたら非常に明快になると思うのです。例示はちょっとあとにしまして、たとえばはあとにいたしまして まずこの規定の法概念は一体何なのか、何が一体密接な関係として、われわれはこれを観念すればいいのか。だからこの法文の認識です。条文の認識の問題なんですが、これはどういうふうに規定されておるのだろうか、これを伺いたいのです。しかして、これはこれに適用せず……。
  123. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 その省所管の行政に関係のある企業ということ、その企業の地位がここにいう密接な関係のある地位――密接ということばは、相当しぼった言い方をしておるわけでありますけれども、私どもは、その省の行政に関係のある企業、その地位というものが一応これにはまる、まずそこを最初にお答え申し上げましょう。
  124. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 その省に関係のある企業――一体、関係といったら何ぞやと、また問題が問題を生んでくる。追っかけ合いになってくるわけです。もう少し明確に、たとえば一般の法の適用で、私法の分野なんかになりましたら、御承知のとおり最高裁に判例もございますし、最高裁の判例は、この概念はどういう趣旨であるかということをかなり綿密に各方面から検討しまして、これを規定するというのが慣例でございます。でありまするので、一体国の機関と密接な関係あり、あらずということは、もう少し具体的に何かものさしがないと、一々総裁が全部をおやりに在るわけじゃないですから。この辺は何か具体的なものさしをおつくりになっているのじゃないですか。その基準なくして――なければやはりつくらなければいかぬ。基準とかあるいは規則でも何でもよろしゅうございますが、人事院規則の一四-四、これは読んでみますとわかりますが、これも同じことですよ。何もその内容、概念は明らかになっておりません。何かあるのじゃございませんか。ものさしが。
  125. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 話を小出しに申し上げたために第一段階だけを先ほどお答えしたのでけが、いまのおことばですと、どういうものを承認し、どういうものを不承認にするのかということのようですから、それについて申し上げますと、たとえば――たとえばというとまたおしかりを受けるかもしれませんが、ある局長なら局長のその権限が当該企業に対して、たとえば許可認可権を持っておるとか、あるいは補助金の交付について権限を持っておるとか、あるいは請負契約の衝に当たっておるとかいうような権限のあるポストであれば、これはやはりわれわれとしては、そういうポストにおった人は、いかにその人が誠実に仕事をやったという証拠があっても、これはだめです、不承認ということでいっているわけです。
  126. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 人事院規則というものはずいぶんたくさんおつくりになっておりますが、人事院規則をきちんとつくって、そういうところをもっと明快にしていただいて――たとえば、たとえばということになりましたら、こういう流動化の時代において何ぼでも次から次に新規のものが出てまいりますから、それでは行政事務をやるものとしましては、言うならば右往左往することになるのじゃないだろうか。それは明確に密接企業に該当する場合でも甘い査定をするおそれがあり、甘い査定という批判もかなり厳粛に行なわれていますよ。だから、そういうことを、いな、しからず、われわれはこういう規定をもって、このものさしでやっているのだというようなことが何かないと、その行政担当者の地位によって、独断によってものさしがどうにでも左右されるということになりましたら、この法律は空文になってしまうのです。そんなことになりましたら、百三条というものはあってなきがごとくになってしまう、こういうことになるのですから、そこで私は、これは非常に大事な、言うなれば、あなたのほうがものを行なう上で憲法に近い重要なものでなければならない。だから、何かなければいかぬです。人事院規則でよろしいが、省令でもよろしい、何かあって、そのものさしがずばっと当てはまる。これが、もうことしは規格に合わぬようになってきた、もりと新規のものが発生してきた、そうしたら、これを拡大するというように、何かがなければいかぬが、その辺はどうですか。書いたものも何もないのですか。
  127. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 部内の内規的なものとして、いま私が申し上げましたような趣旨の大筋ですね、骨子、これはもちろん内規的にもわれわれは持っておりますし、このような場合、席上でお尋ねがあります場合にはそういう趣旨でやっております。  それは大筋については御納得いただけると思いますが、これは御承知のように、私企業に関係ある法令そのものといえども、たいへんな数になりますし、それぞれ一人一人の人の経歴というものを五年前にさかのぼって調べるわけですから、これをもってしゃくし定木、と申しますと語弊がありますけれども、この基準ですっかり機械的にやるのだというような基準は、事柄の性質上できないわけです。また、場合によってはそれが弊害のもとになることもあり得るだろうということもありまして、近ごろは毎年個々のケースごとに国会に御報告申し上げておるわけでございます。それによって御判断いただくほかはない。大筋はいつでも御説明申し上げるという……。
  128. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 その大筋を説明してもらいたい。たとえば、このような職場であればそれは法の趣旨に反するのである、このような職場であれば反しないのである、それによって、大体それをかがみとしてこれは見ていくというようなことは、あなたの部下がそれによってやることでありますから。大筋でよろしゅうございますから、大筋はどんなものをつくってあるか、もし何でしたら文書をもらってもよろしゅうございます。文書になっておるのでしたら、委員長に御提出いただきたい。だから大筋だけ御説明してください。簡単でよろしゅうございます。
  129. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 それぞれの経歴に出てきておる地位について、その地位が許可認可権の行使に関係ある、そういう権限を持った地位である、あるいは補助金の交付に関係ある地位である、あるいはまた会社との請負契約を締結するような地位であるというような地位であれば、これはその地位に少しでもおった人はもうだめ、というたてまえでいっておるわけであります。
  130. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 たてまえはいいといたしまして、あなたがたてまえでやっておるとおっしゃいますが、あなたの部下に示すだけのものさしは、やはり官庁の行政事務でありますから、何か文書で示しておかぬといけません。ですから何かおつくりになっておかなければいくまい、こう思うのです。だから、たとえば人事院規則の一四-四をずっと読んでみましても、結局は、法の趣旨に反しないようなときにはごうごうという規定もあるわけでありますが、何かあなたのほうで大筋というものを持っておらなければいくまいと思う。何もないのでしょうか。
  131. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 詳しく申し上げてよろしければ、たとえば承認する場合としない場合とありますから、する場合のほうから申し上げれば……。
  132. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 ちょっと総裁、えらい時間をとって悪うございますけれども、たとえはあとで聞きますから。あなたが、総裁として御説明いただきましたが、それをちゃんとこしらえてこれを部下にみな渡してあるというのであれば、これによって疑問があればまた総裁に聞く、局長とも相談をする等々の方法もあるのですが、そういうものをつくらずにおやりになっておるのか、そういうものをつくっておるのかどうか。つくっておるものなら荒筋は何か、それだけ聞けば、そのほうが簡単明快なんです。
  133. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 次のような場合で特に問題とすべきような事項がなければ承認する。当該営利企業に対して、事業の免許、事業計画または料金の認可等、事業の監督指導を行なう関係がなかった場合、それから次に、当該営利企業に対して国税の更正決定を行なうなどの関係がなかった場合、さらに次に、当該営利企業に対して監査、製品の検査等を行なう関係がなかった場合、それから次に、当該営利企業に対する工事契約関係、物品購入契約関係等への関与の関係がなかった場合、当該営利企業に対する補助金の交付、外資導入等の認可、特許権等の設定の審査などへの関与の関係がなかった場合、これらは一応セーフになりますけれども、しかしこの人が在職中に実際上どういう行動、執務ぶりをしておったか、そこを調べて、そのほうで欠点が出たらこれはだめだということになるわけです。
  134. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 それは具体的に適用をする場合ですね。あなたがいまお述べになりましたのは、それは文書なんですか、あるいは口で言われるだけなんですか。文書をつくってあるのですか、何かあるのですか。ありましたら、それをもらったほうがいいのですよ、いまのはあなたのほうの御説明の内容らしいから。いかがですか、何かあるのですか。
  135. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 いまお読み上げ申し上げましたものは、これは骨子として文書にしてございますから、それはお目にかけて差し上げてもよろしゅうございます。ただし問題は、それだけで解決するという単純な問題ではありませんから、骨子だけだということをお含みを願います。
  136. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 それは私どもが言いたいことなんです。それだけでは解決しない、常に流動する社会においては、社会の客観情勢を無視するわけにいきません。国民がこの問題についてごうごうと非難するようなときには、何ゆえに非難するのであろうか、こういうことも省みて次の参考にするとか、あるいは過去におけるそれをまた反省してみることにしなくちゃいかぬ。それは私のほうの言うことなんだ。だから、それだけで問題は解決しないということはわかっている。  それは一体私文書ですか公文書ですか、もしくはこれは省令か政令か規則か何かあるのですか。それは何ですか。
  137. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 これはもう決して正式なものではございませんので、内部の覚え書きと御了承願ってよろしいと思います。
  138. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 これは提言いたしますけれども、そういうものは、たとえば規則をちゃんとつくっておくということが、これが正しい行政の業務のあり方と違いましょうか。一つの公務の基準でありますから、言うならば、これは不当でないかというような非難がもしありとするならば、しからず、こういう規則があるんだ、こういうことも言い得ます。ただの覚え書きだということでありますならば、覚え書きというのはこれは一つの私文書ですからね。私文書は、あなた総裁がかってにお書きになって、一晩たったらまた考え出して加筆をするということも、私文書なら可能でございます。そういうものであってはいかぬと私は思う。やはり百三条の国の行政機関と密接な関係のある企業という、こういう相当厳格な規定において仕切りを画しておるのですから、ここをきちんとけじめをつけておくということでなければ、公正な人事管理、そして公務員制度というものに手をかけるわけにいくまいと思うのです。これはまず第一段の問題だと思うのですが、くどいようですが、ここは何かきちんとした明文の法的根拠みたようなものにすることが適切であると思うのですが、この点どうでしょう。
  139. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 これはおことばを返すようでありますけれども、私どもはそれはそれでまた一利一害あるものと考えまして、きわめて精密なもの、そのスケールを当てさえすればすべて答えがおのずからイエスかノーかが出てくるというようなスケールはつくり得ない、決して完全なものはつくり得ないということになりますと、それをスケールに基づいてわれわれが諸般の事情を考慮した結果を御報告申し上げて、その人の経歴まで書いたものを国会、内閣に御報告申し上げて、そうして世間に公表しているわけでありますから、それによって、今度は個々のケースごとに御判定をいただく、これが甘いんじゃないか辛いんじゃないかは、私は、見ていただけば、これは公明正大なること、これ以上のものはないという確信を持ってわれわれは公表を申し上げておるわけであります。
  140. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 いまお読み上げになりました覚え書きというものは、これはひとつ今後の参考にいたしまして、これが法文化する必要ありとするならば、われわれも立法権があるのですから法文化いたします。規則にしなければいかぬということであれば、規則にすることを要請いたします。いたしますから、それはあとでひとつ出していただけませんか。委員長、しかるべくお取り計らいを願います。――それで、時間の関係がありますから少し進みます。  そこで伺いますが、重要な高級技能公務員がどんどんと退職していくということは、これはたいへんなことであります。反面から見ますると、この時代は、言うまでもないこと、科学時代です。一そう合理化しなければならぬ時代です。公害問題でもそうです。この委員会で十数年前に例の黄変米を扱いましたときに、私は、黄変米の毒素というものを肝臓に注射をしたら肝臓がこわれてしまうということがわかって――病理学の大学の先生がそう言うておるのです。それで、河野一郎さんに研究しなさいと言ったけれども、馬耳東風でありまして、われ関せずえんでした。ところが最近はカドミウムの問題がやかましくなりまして、大騒ぎするという現状でございましょう。だから、やはり技術とか科学というものに対してもっと尊重の社会風潮を行政府みずからが率先してなすということでなければ、新しい時代を展望いたしまして、ほんとう日本の国運に寄与し得るような体制はできません。この意味におきまして、技術者がもし少しでも、国外にでも逃亡ということは悪いけれども、流出するということはたいへんでございます。私ども決算委の調査室その他の諸君とも海外旅行をしたりしたことがありますが、優秀な技術陣が、日本に帰らずにアメリカに行くというのも現実に私は見ました。なぜか、アメリカに行ったほうが研究が自由にできる、ほんとうに力を伸ばし得る、日本ではこういうような力を伸ばし得るような傾向が乏しい。これはこういう公務員制度の面から見ても感ぜられるのですね。そうすると、民間では矢もたてもたまらぬほど技術陣がほしいということになっているから取り合いになってしまう、それでおくれてしまう。そうすると、給与の問題と待遇、昇進等々、これが引っかかっておるということに原因がつかめます。けれども、このままではどうにもいかぬということに通ずるのではないだろうか、行政事務、まことに貧弱だということになってしまう、こんなことを思うのですが、そうすると、どうしたらいいのかということになりますが、こうなりますと、私はやはりこれは公務員の全般に関する一つの再検討時代が到来したと信ずるのであります。この点は佐藤総理もしばしばそれに着手するという答弁はあるけれどもなかなか進まない、これが現状なのであります。そうでありますので、たとえば臨調の答申をとって考えてみましても幾多の問題があるわけでありますが、私は改革の目標、骨子等につきまして一、二指摘いたしまして御答弁を伺っておきたい。これは天下り是非の一番公明正大なる大道につながっていくのでありますから。  少し前提から掘り下げてみますが、公務員のとかく人事管理機構というものが整備されていない面がないだろうか。したがって、たとえば能率問題にいたしましても、公務員の能率をもっとあげたらどうかという問題がしばしばいわれます。優秀な人材がたくさん集まっておりましてもなかなか能率があがらぬ。これは会社、企業の激しい競争場裏のあの実情から比べますと見劣りがしますということも考えてみたいのです。こんなことを前提にして、公務員諸君は、みなそんなことを言われるのはいやでしょう。いやだけれども、いい面ばかりをちやほやしておっては問題は解決いたしません。だから私はあえて言うのでありまするが、これにつきましては、やはり人事管理機構やら、ないしはそういう方面の整備を徹底するということが、反面必要ではないだろうか。この点はどうお考えになっておりますか。つまり、非能率を除去するという一つの重要な手段、方法なんですが、この点、どうお考えになりますか。これはまあ簡単に率直に答えてください、あとでいろいろ聞きますから。
  141. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 民間の場合は、企業努力というようなことばで言いあらわされるような努力が、ある会社全体を通じて満ち満ちて行なわれておるということであれば、公務員の場合も、その営利の問題とは違いますけれども、やはりその職域職域においては同じような努力というものがあってしかるべきだろう、そういう心がまえで皆さん奮闘していただきたいということを、先ほど申しましたように、いろんな機会に私としては要望してまいっております。これは制度の問題よりも、心がまえのほうをまずふるい起こしていただくということが第一じゃないかと思います。
  142. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 精神訓話的な心がまえだけじゃ解決しませんです、これは。ですから、やはりいかにして人事管理、労務管理機構、管理運営の実情をもっと強化するかということはほんとうにやらねばいけません。半分勤務、平均勤務、そのほうが出世いたします、あまり早く来たら出世しません、こういうような風潮が風靡いたしましたならば、これはもう堕落してしまいます。そうしてその人材をあたら埋もれさせてしまいます。惜しいことです。若い人はそんな風潮に何年かなずんでおりましたらだめになっちまいます、ということさえ感じるのであります。だから、これは精神訓話だけじゃ解決しません。士気高揚も大事であります。大事でありますけれども、やはり何らかの手段、方法は制度的に運用の実態として確立せなければいくまいと、こう思うのであります。  もう一つは、やはり優秀な人材をほんとうに賞揚する、昇進の道を開いていく、押し上げる、そうして能力を開発する、新たなる人材は、埋もれておってもこれは発掘していく、こういう努力を上層部はせなければいくまいと思います。エリートコースの課長以上ならばゆうゆうとしてそれぞれ大道を歩いていくけれども、課長補佐以下はともかく暗いというようないまの制度ではどうかと思うのです。ですからそこは、やはり能力を開発する道いかん、人材を発見する道はいかん、信賞必罰を励行しなければいかぬという問題も、これもやはり口だけではいくまい、やはり相当な制度的な改革の手を差し伸べねばいくまい、こう思うのでございますが、この点はどうですか。まあ最終的にはあなたの所管ではありませんぜ。所管ではありませんけれども、人事院総裁はこういう面について一番の行政的体験者であるし、中立でおられますから、私は、あなた御自身が提言なさるのも非常におもしろい場だと思うのです。どうですか。
  143. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 全くおっしゃるとおりで、その点については、われわれとして――われわれと申し上げるよりも、いまいみじくもおっしゃいましたように、実は人事院の所管というよりも、あるいは人事局の所管である面が多いかもしれませんが、どこの所管ということでなしに、関係の部局それぞれ手をとり合って、大いにその方向に向かって推進をしていかなければならぬ、その気持ちは当然持っておるわけであります。  当面、私どもの所管の面においては、いまお示しになったような筋から、たとえば信賞必罰というおことばもありましたし、有能なる者の昇進について保障するというような面もございます。いまの制度も制度としては実はできておると思いますけれども、運用の面について、もう一そうその辺に力を入れていただきたいものだ、そういうことは率直な所感でございます。
  144. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 その点についてちょっと人事局長に初めに伺っておきますが、やはり国家公務員は特にそうでありますが、政治的な関与とか情実的人事というものは、何とかもっと日本は払拭する必要がないんであろうか。情実、因縁、義理、人情、こういうものが日本の美徳のようにいわれておりましたけれども、もっと生活を合理化せにゃいかぬし、公務員制度というものは厳にやはり合理的な明るさと公明さがなければなりません。押し込み、突っ込み、情実、義理で、ある人に言われたがゆえにやむを得ず、というようなことになりましたら、これはやはり人事停滞、行政停滞のもと、非能率のもとであります。こういうことが全体のいわゆる士気、いまおっしゃった士気を低下させることおびただしいといわねばなりません。そして信賞必罰という原則におよそかけ離れたことになります。これはあなたらの立場は非常に重要であります。いささかでもあるならば、厳としてそれに対して臨んでいく、こういうしゃんとした姿勢がなければ、この後の問題はとてもとてもいけませんです。これはどうでしょうね、あなたは。それからいまの人材開発とか能力を開発していくというようなそういう問題とうらはらの関係になりますが、非常に大事だと思うので、総理府のお立場として大事な面であります。局長、どう考えますか。
  145. 宮崎清文

    ○宮崎(清)政府委員 公務員につきまして、その士気を高揚する、あるいは厳正な服務をはかる、さらに能率の向上をはかるというような点につきましては、ただいま先生御指摘のとおりであろうと存じております。これらの点につきましては、その基本的な基準その他は人事院でおきめになることになっておりますが、総理府といたしましては、関係省庁と常に緊密な連絡をとりながら、いま御指摘のように厳正な服務あるいは能率の増進というようなことに努力しております。  たとえば服務関係でございますと、これは定例的に各省庁の人事管理官の会議を持ちまして、その場であらゆる事象を検討し合い、そこでいかにしたらさらに厳正な服務が維持できるかということを常時話し合っております。また、能率の増進につきましては、いろいろな問題がございますが、一方においては、人事院のほうで研修という点を通じて能率の増進をはかっております。また私のほうといたしましては、特に先ほど御指摘がありましたように、今後の非常に変化してまいります行政に対処いたすためには、最新の知識、科学的な技法等を十分に行政の中にも取り入れることが必要であろうかと存じております。そのような観点から、いろいろ人事院とも御相談申し上げておりますが、特に管理者の啓発計画、これを何とかして樹立いたしまして、まず管理者がそういう新しい知識なり新しい技法なりを十分体得いたしまして、さらに部下の指導をはかって行政の効率をあげていく、こういうことに今後重点を置いて進めてまいりたい、かように存じております。
  146. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 人材をもしくは能力を発掘するとか申しましても、いま各省庁それぞれ連絡して、調整して、人事院と相談してとおっしゃっていますけれども、そういうあなたの、局長の所管ではないかもしらぬけれども、やはりいま劈頭に私がお尋ねしましたように、ことしのいわゆるこの年次報告によって、ほとんどが技術人なんです。高級技術人なんです。この高級技術人が多数国家公務員制度から流出していく、脱落していく、そして私企業、営利企業にそれぞれ入ってしまうということは、これはゆゆしいことなんです。このゆゆしい現象に対しまして、いまのようなそういうなまぬるいお考えをもっていたしましては、とてもこれは対策があるどころか、やむを得ずやむを得ずで現象を追っかけ歩くという程度にしかなっておらぬのじゃないだろうか。きわめて重大な現象としてこれに再検討を加える。これはたいへんだということなくして、そんな技術人なり人材を確保したり、発掘したり、それはできやしません。ですから、その辺はどのようにお考えになっているかどうか、私がそう言っているということをおっしゃってくださいよ。総理府の首脳部と、この重大なできごとを相談なさいませよ。たとえばマスコミが多く取り上げた。マスコミだけではないのですよ。去年も同じことです。同じ世間がこれで騒ぐ、けれどもまた三日過ぎたら忘れちまうというのが、いまの行政府政府の態度ということであるならば、全体として不信感になります。そのおそれもありますから、これはどこに原因するのかということを考えなければいかぬ。官僚というものはそんなものだろうということにまた考え方が発展してくるのであります。だからたいへんなんですよ。でありますから、いまのようなお考え程度では、人材の確保も能力の発掘もできやしません。私はそう考えるのですが、どうお考えになりますか。またこれはひとつお帰りになりましたら、吉田がそんなことを言っているとおっしゃってくださいよ。どうですか。
  147. 宮崎清文

    ○宮崎(清)政府委員 ただいま先生が御指摘になりました技術者の流出と申しますか、天下りがたいへん多くなったということの原因につきましては、私どもも、先ほども人事院総裁の御答弁にもありましたように、大きな問題といたしましては技術者の処遇の問題があろうかと存じております。さらに具体的に申しますと、給与の問題でございますとか、あるいは、先ほど総裁が触れられましたようにポストの問題がございます。  給与の問題につきましては、これは公務員全体の給与の問題にも関連いたしますし、人事院のほうで今後またいろいろ御検討になろうかと存じます。ポストの問題につきましては、これはいままでの過去のいきさつその他がございまして、なかなか一朝一夕にこれを改めることは困難ではないかと存じております。しかしながら、御指摘の点は、私はもちろんのこと、各省庁の人事担当者も十分に痛切に感じておられるであろうと存じます。したがいまして、今後こういう技術者が先生御指摘のように十分に能力を発揮できるようにさせるため、格段の努力をいたしたい、このように考えております。
  148. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 処遇の改善、待遇の改善の問題でありますが、これは総裁も毎年給与改善の面については御苦労になるようでありますが、全体といたしまして、民間企業の待遇とそして国家公務員の待遇とにはどういう具体的な開きがあるのであろうかどうかということは、絶えず綿密に検討する必要が私はあると思うのです。さりとて、一流の成長産業が最高の給与をもって最優秀な人材をとってしまう、独占してしまうという傾向は、必ずしもほめたことではございません。だから、そういうことをならいなさいというのではありません。ならいなさいというのじゃないけれども、とにかく広い意味におきまして待遇の改善をせにゃならぬということはわかり切っています。早い話が、お役人なんかが会社に行きましたというときには、自分の住宅なんか心配はほとんど要りませんよ。みんな心配してくれる。設備もあります。ところが公務員だとそうはいきませんわ。転任で少し遠方に行きましたらどうにもいかぬ。あるいは公務員宿舎はあばら家で、ろくな家もないというのがざらにございます。ということになりまするので、広い意味における待遇の改善ということにつきましては、全面的に再検討の時代がきておるのじゃないだろうか、こう考えるのです。そしてこれはもちろん福利厚生にもつながってまいります。一流の企業ならば組合管掌の保険制度もあり、中小企業ならこれはなし、政府管掌なし、こういうことになっておりまするし、その処遇、待遇それから福利厚生だけをとって考えましても、担当再検討せにゃいかぬじゃないか。これが天下りを公明正大に食いとめる一つの手でなければ在りません。公務員制度の改革の一つの目標でなければならぬ、こう思うのであります。  この点について、毎年やりなさる給与改定問題はともかくといたしまして、抜本的にこういう方面に対策を立てる必要があるということを、内閣のあり方といたしまして進言をしかるべくする。もちろん総理府とも組んでいく、各省庁協力していく、閣僚会議にもこれを持ち出すというような姿勢でこの問題と取り組んでいくべきであります。でなければ天下り人事は改まりません。この点はいかがでしょう。総裁、いかがですか。
  149. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 おっしゃるとおりと存じます。私どもの立場からは大体給与面を主として考えますけれども、いまおことばにありますように、すべての職場の環境を含めた意味での優遇、待遇の改善ということが、やはりもっと高い立場から考慮されてしかるべきではないかという気持ちを、給与は給与として努力いたしますけれども、その周辺のその他の面についても政府全体として御努力を願いたい、そういう気持ちでおります。
  150. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 あなたが思うだけじゃなしに、政府全体としてというその視野とその立場は貫かなければいかぬと思うのです。そのくらいな高次な姿勢で、中立的な姿勢であなた自身がこの問題を提言するようなことをしなければいくまいと思うのです。それをすることなくしてはとても不可能であります。  それから、さっきも申しました専門職の問題ですが、専門職とか技術職とかいう問題、事務屋さんとの間に若干格差がある、ポストの問題もあるという、これもよくわかります。よくわかりますが、これも何とかの方法で具体的に食いとめることをせんければいかぬと思う。これは説教だけでは問題は解決いたしません。言うならば、能力を尊重する、実績を尊重する、効率的な行政事務を尊重するという傾向がなければいかぬ。それがなければ職階制の問題が起きてきます。職階制というのは法律があって実際に行なっておらない。これは一体どういうわけなんですか。これは二、三回前に尋ねたことがあるのです。総裁、ずぱっとこれは答えてください。法律があって実際に行ない得ないのは何ゆえか。簡単に結論だけでよろしゅうございますから……。
  151. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 これもたびたび御指摘を受けてたびたびお答えをいたしておりますけれども、要するに臨調の報告にも出ておりますように、急激な変化はまず差し控えて漸進的にいくということがうたってある。私どももその趣旨を体してやっております。だいぶ作業も進捗いたしまして、私はうろ覚えでございますけれども、たとえば大蔵省あたりでは実験台になってやろうということで、いろいろな職務の分類などの調査に協力してやろうというようなおことばも出てくるような段階になっておりますので進めておりますけれども、しかしこれは踏み切る段になると、たびたび申し上げておりますように、現状とあまり大きな変革になっても、これはまた各方面に要らざる刺激を与えるということになりますので、そこの勘どころがなかなかむずかしいということも御了察願いたいと思います。
  152. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 それはまた問題が問題を生んでぐるぐる回りをして悪循環、問題は一切解決せぬということに通じるのであります。一体、一つの職があって、その人によって給与が違う、待遇が違う、こういうようなことはないのであろうか。その地位、その職、その能力、その仕事の評価というものを基準にいたしまして、そうして給与体制を整備するという面で一歩前進する、これなくしてはとてもいきません。さっきも申しましたように、課長補佐でもよろしい、係長でもよろしい、しかし優秀な人材で非常に能率の高い仕事ができる人がある地位についた、つきましたら、その地位の名にかかわらず、学歴、職歴なしでもよろしい、東大、京大卒でなくてもよろしい、小学校卒業でも何でもよろしゅうございますけれども、その人が十分に能力があるなら、国家は十分に給与を与えてもいいというような、そこをばらっといくようなところまで前進し、そして一ぺんにいかなくても、いまのエリートはりっぱな経歴を持っている人ばかりですから、そんな者が入ってきたらいやかもしれませんけれども、そこで大きな関門をぶち破って、そうして人材を登用するということをしなければいけません。こうなれば、たとえばその道としては、人材の採用にいたしましても、いま各省庁がそれぞれやっておりますけれども、これは取りまとめて、総理府なら総理府が一本で採用する、そうしてそれぞれに配置していく、適材適所に持っていくというようにするのも一つの方法でないか、何とか大学卒業ということではなしに。あるいは、新聞等を見てみましても、何々大学卒業ということが一番に書いてあるのみであります。人の紹介にしたって、何々大学をいつ卒業したかということが大きな誇りであります。一体それはどこから破ったらいいのか。国民が協力しなければできませんなんていえばおしまいです。そうじゃなしに、法律があるのでしょう。職階制の法律があるのですから、法律があって実施してないのは日本政府なんです。これではどうにもなりません。たとえば専門委員会みたようなものをつくるとか、何か具体的に機関を持って検討するというふうに一歩進めたらどうでしょうか。そうして勤務評定にいたしましても、その制度をもっと整備いたしまして、職務中心、能力中心、能率中心に運営をはかっていくというふうにいたしましたら、職階制というものが日の目を見るときがくるのではないだろうか。そうすることなくしては高級公務員の天下り人事は是正はできません。かくして私は公務員制度改革という大きなとびらが開かれてくると思うのです。もっと明るくなりますよ、こそこそと行くのじゃなしに。一々名前を書かれて、年何ぼやと書かれて、月給何ぼやと書かれて、まあ当分の間、ちょっと何かしらさみしい、そんなことなしに済みますよ。     〔高橋(清)委員長代理退席、委員長着席〕 だから、職階制の確立につきまして、一つのある段階を経ていくというふうな前向きの姿勢、積極的な姿勢になるということにまでどうしてもいくべきでないか。それをしなかったならば天下り人事は解決しない、公務員制度の解決の糸口はできぬということに私は結論を持ちたいのです。それは総裁、どうでしょうね。あなた、まあこの立場でないかもしらぬけれども、これは大事なことだから、ぜひひとつ答弁を伺っておきたい。
  153. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 ごもっともに拝聴いたしますけれども、ただ、前提問題として一つ御了察をいただきたいのは、現在職階制的なものが全然ない、すべて年功序列か何かでやっているのじゃないかということは、一般の方々の疑問といいますか、誤解が一つあるわけです。これはわれわれとしては忍びない。御承知のように、給与から申しましても、行政職、教育職、みんなこまかく分かれて、そして課長クラス何等級何号俸というところまであるわけですから、それをそのまま表に出せば職階制の形にはなるわけです。それは採用でもそうです。採用試験でも、すべての職種ごとに別々の試験を上級、中級、初級とやっておるわけですから、ただそれを組み合わせて、形のいい、見やすい一覧表的なものにしようということで――またそうでなければ、これは飛躍的に理想に走ったものをつくった日には、先ほど申しましたようにたいへんな変動を生じて大混乱を生ずる、そこのかね合いの問題でございますから、早くやれ早くやれとたびたび御催促を受けますけれども、いまとにかくあることはあるんだということだけは御了解いただいて、そして運用のほうで御趣旨のような方向へ努力をしたらどうかという意味で当面は対処していくほかはない。職階制のほうはいずれやることになろうと思いますけれども……。
  154. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 わかりました。まあひとつ、政府の姿勢は佐藤さんにまた一ぺん聞いてみます。これはこの程度にしておきましょう。  そこで、やはり一つの問題は、これも私はたびたび指摘しておりますが、もっと退職後の人生の明るい歩み方、方針等について具体的な明るさを与えるということが必要ですよ。でなければ、たとえば、おととい発表いたしました自書の内容について見ましても、老いぼれだという年齢の人はほとんどありません。五十前後といったら、人生働き盛り、この働き盛りに去っていくのです。察するというと、もう四、五十のときに第二人生計画を立てておかなければいかぬということに通じると思うのです。それならそれを引きとめないのは一体どういうわけだ。堂々と退職後第二人生計画を立ち得るような道を開けばいいじゃないか。何を一体こそこそと行くんだ。そのかわり、その仕事をしているときはりっぱな待遇も与えましょう、信賞必罰でいく、勤務評定も十分にやる、国民ほんとうの奉仕をする――憲法と国家公務員法で、公に奉仕して、全体に奉仕して、公共の利益のためにというようなことをいっているのはから念仏にあらず、ほんとうにそうだということでなければならぬ。そこですね。いろいろな意味で食い違いはあります。たとえば国民にしましても、そういうように憲法やら国家公務員法には書いてありますけれども、国民にしましたら、昔の官員さんみたいなことがまだ残っているかもしらぬ。残っていますよ。また公務員にしましても、おれは権力の行使者なりとふんぞり返っている。陳情があるんならこっちへやってこい。陳情にやってまいりますと、どっちが主人かわからぬのがこれは現状ですね。また国民の期待そのもの自体も、そんな全体の奉仕者とかなんとかいうのじゃなしに、もう一つ別の、官僚さまさまに何か結びつけて求めようとしているのかもしれない、この食い違いはあります。  そんなわけですから、何かとこの原因はありますけれども、やはり当人自身が退職後の人生の歩み方について堂々と闊歩していけるような道をほんとうに公明正大につくることが大事じゃないだろうか。それは一体どうすればいいんだろうか、具体的に検討しなければいけません。これが一つと、時間もないから結論を言います。結論、二つあるのです。  一つは定年制の問題なんです。定年制は、御承知のとおり裁判所とそれから自衛官にありますね。それから大学におきましてはそれぞれ自主的にそういうのをきめています。東大は六十歳くらいでしたか、自主的にきめておる。その他定年制なしということになっておりますが、定年制をつくることは一体どうなんだろう、つくってもいいんじゃなかろうか、つくること、これは一体それほど大きな障害があるのかどうか、それへ一歩前進する、具体化へ一歩前進するということが必要で左かろうか、これが一つであります。  それから、そういうことと、最近どうも参議院選挙なんかになりますとだんだん目立ってくるのですけれども、一々個人を、私は恩怨も何もありませんけれども、公務員制度から考えて残念に思うことは、やはり高級公務員が国会議員に立候補するときの一種の事前運動です。これは何も法に触れるとは申しませんけれども、やはりやめる前からみな知らぬ人はなしということになりますと、何かもう少しこれは明朗にしてもらう手はないであろうか。こう言うと、高級公務員の人は、何じゃ、おれの前途をおまえははばむ発言をするのかといやな感じを受けるかもしれませんけれども、ここはやはり、それとこれとは混同することなしに、公務員であるときには公務員としての規律、厳正にこれは守ってほしい、そして民間に出たときに、その瞬間から大っぴらに何なりとおやりなさい、こういうふうにありたい。そこを公私混同してしまったならば、国民の血税で選挙運動をやるということに、われわれから見たら通ずることになります。これはいろいろな意味で弊害があります。コネ、因縁、情実、昔なにをしてやったから、おまえ後援会のなにになってくれということにも通ずるのであります。これは弊害のもとであります。こういうことは、ひいては国会の運営にも響いてまいります。  あれこれいたしますので、この辺につきまして、退職後の人生の計画の問題、それから定年制の問題、それからいま言うた国会議員立候補における一種の、自主的にすべきか制度的にすべきかは別といたしまして、公明正大に規制すべきでないか、この三点を明確にしておきたいのであります。これも非常に大事な点でありますので、ひとつ一括いたしましてそれぞれ御答弁をいただき、これで終わることにします。
  155. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 いつも吉田委員の仰せられることはすべて同感させられることばかりでありますけれども、ただいまおあげになりましたような、たとえば高級公務員の立候補にもお触れになりましたけれども、私が先ほどから申し上げております私企業への転出の問題と、それは同じポイントをやはり持っているのじゃないか。要するに、それは在職中その職場での規律をもっと厳粛に、いまのおことばにもありましたように、どこからもうしろ指一つさされない厳粛な職場規律の確立ということがあれば、何も天下り――天下りと私が言うのはおかしいですけれども、私企業への転出にせよ立候補にせよ、そんな妙なところで押えることがむしろ必要でなくなってくる。もっと根本的な問題としてわれわれとしては把握すべきではないかという気がいたします。  それと同時に、いまお触れになりました退職後の処遇の問題、これは臨調の報告にも出ておりますように、やはり私個人の、人事院の所管をはみ出すところではございますけれども、これはやはり公務員制度全体の問題として相当大きくこれを考えていただきたい。これは全く御同感でございます。
  156. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 定年制は。
  157. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 定年制は、これはたびたびお話が出るのですけれども、私どもから言わしていただきますと、実情から言わしていただきますと、先ほど公務員の士気ということがおことばにもありました。士気の問題からいいますと、大体普通の人情として、出世をしたい、なるべく上があくのを待って早く上のポストにつきたいというのが大体人情だろうと思います。その点から申しますと、やはりある程度の新陳代謝というものがないと、その点の士気の阻喪の問題がそこにつながってくるという問題がありまして、ある課長と会って話したことがありますが、ずっと先順位の人たちのことを考えていくと、自分がうまくいって事務次官になるのは九十九年あとになりますよというようなことを言う人さえおるわけです。これは士気の面からはよほど深く考慮しなければならぬだろうということを考え合わせますと、いたずらに長くある程度の在任期間を延長するという機械的な方法では、これまた大きな問題がある。そこは人事の運営のむずかしいところだな、また、何か方法があるんじゃないかということを、実は宿題として考えておるわけで、定年制の問題は、必ずしもそれには結びつかないというのが私の考えでございます。
  158. 濱野清吾

    濱野委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後二時一分散会