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中曽根国務大臣 もちろん、長官以下内局の者は厳重に精査して、いささかもあやまちをおかさないようにする必要があると思います。いままで
ダッシュに関する御議論を拝聴しておりましたが、私は
防衛庁の措置は必ずしも万全ではなかったと思いますけれ
ども、しかし不当であったとは思いません。と申しますのは、この
ダッシュの使用期間というものはどの程度であるかといいますと、
アメリカにおいても約十年くらい、日本の場合でも十年くらいであります。
アメリカは四十一年から使い始めて、そして四十八年から四十九年くらいまでは使い続ける
予定です。日本も五十年くらいまではもちろん使い続ける
予定です。
兵器の生命というものはどのくらいあるかということを考えてみますと、F86にしましてもF104にしましても、大体ある一定の生命期間があって、新しい
兵器に更新されていくわけです。その経験を基礎にして新しい
兵器体系が開発されていくわけであります。そういうものの蓄積の上に、
兵器の進歩あるいは
訓練の
充実ということが考えられるわけです。
そういう観点から見ますと、
ダッシュという
兵器は、あれを採用しました当時、
日本側の防衛方針は、小さな船に
性能のいい、機械化されたものを積まなければいけない。有人ヘリコプターを載せるという場合には、艦の強度を強めたりあるいは人間がおりてくるのに、たとえば波や風のために小さな駆逐艦にはなかなかおりにくい。そういう点からしまして、どうしても四千トン、ある場合には八千トンくらいの大きな駆逐艦、
護衛艦になります。それを避けて、できるだけ小型の船に
性能のいいものを乗せようというのは日本の防衛方針でもありましたから、それにまさに適合するのが
ダッシュであったわけです。
そして、開発されました当時においては、もう一つの特色は非常に行動半径が広いということです。十マイルくらいまで飛ばさせられる、そして電波通信によって敵を探知し、ソーナーを据えつけて敵を探知して、そして短魚雷で攻撃できる、そういう当時としてはかなり画期的な
兵器であったわけです。日本も、そういう
日本側の要望に沿いましたからそれを手に入れたと思うのでありますけれ
ども、その演練の結果ば
アメリカの三倍の強度を持っておる。向こうが百二十時間くらいの耐用時間に対して、こちらは三百六十時間くらいまでいっている。それから命中精度は一〇〇%でありました。このことは
米海軍に対して日本の
海上自衛隊の練度が非常に高いということであり、
ダッシュを完全にマスターしたわけです。これには、やはり実用
訓練部隊をつくったりしてやった結果でありますが、現在においても
ダッシュは、
訓練あるいは演習の際にきわめて的確な捕捉をやり攻撃をやって、いい
兵器になっている。まさに日本的にはいい
兵器なんです。しかし、
アメリカのようなああいう大きな、大型の金を持っている国から見ると、
アメリカ側の要請に従ってあれは
中止されましたけれ
ども、しかし日本としては続けたいという
兵器なんです。そこで、向こうが生産を続けている限りはこららも
購入したいという考えで、その耐用
年度を延ばそうという考えで自衛隊側はやったと思うのです。したがいましてこれがむだであったとは思われません。あの無人機というものを飛ばすことについて、非常に大きな技術修得を
日本側はやっております。それから、あれは大体アポロの技術を
兵器に転用して開発したものでございますけれ
ども、
日本側はそういう
意味においても技術的にかなりあれで修得しておりますし、それから十年くらいの間ああいう無人ヘリコプターを使うことによって将来の
兵器の開発、国産化への非常なサジェスチョンを実は受けておるわけであります。そういういろいろな総合的効果を考えてみますと、あれを採用したことが不当であったとは思いません。現在においてもあれはきわめて有用であります。われわれとしては、ああいうものを入れた経験をもとにしまして国産のもっと
性能のいいものを開発しよう、そういうことでわれわれのほうの技術当局も鋭意研究を進めておるところでもございます。
しかし、結果的に見ますと、耐用
年度が十年くらいということは必ずしも長いとはいえない、そういう面から見ると万全であったとは思いませんけれ
ども、しかし
兵器の開発や
兵器の
入手という点においてはこういうことはやむを得ない事態で、起こり得ることであります。
そこで、いまも参議院で質問を受けてきたのですが、
兵器を国産化するのはよくないじゃないか、過剰生産につながったり危険である、そういを御議論がありました。つまり、外国から買えという議論でもあるわけなんです。しかし外国から買うということになるといまのようなような事態が起こる、外国の変化によって直ちにそれが通用しなくなるという危険性もございます。そこで、やはり
性能のいいものを入れて、それを基礎にして国産化していく、それをサジェスチョンとしてもっと
性能のいいものを日本自体でつくっていく、日本自体でつくっていけば補給はききますし、永続性がもっと増すわけでございます。そういうものの組み合わせで順次
充実をしていくというのが
兵器の開発
体系なのでございまして、そういうおくれた日本の情勢から見ますと、いまのようなケースが起こったということはやむを得ない事態ではないか、私は政策的に総合的に見ましてそういうように思う次第でございます。