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西堀政府委員 ただいま大久保
先生おっしゃいましたとおり、この
海底軍事利用
禁止問題の審議の発端といいますのは、一九六七年八月、マルタのバルドと申す
国連代表が、現在国家の管轄権の及ばない海域の
海底を平和
目的のため留保すること、及びその資源を人類の利益のために利用することに関する宣言及び
条約、こういった題目を第二十二回
国連総会の追加
議題とするように要請して、その総会で
海底平和利用、
海底軍事利用
禁止問題が初めて審議されたことから始まったのでございます。そして、この総会におきましては、
日本など三十七カ国は、
技術の進歩によって軍事的その他の
目的のため
海底の開発が可能となったことに注目いたしますとともに、この
海底問題審議のため三十五カ国で構成するアド・ホック
委員会の設立をきめる決議案を提出いたしまして、この決議案は、この第二十二回総会において採択されたのでございます。
これでできましたところの
海底アド・ホック
委員会におきまして、翌年の六月、ソ連は、
海底開発に関する法的諸原則に関して最も重要なものは、
海底を軍事
目的に
使用することを
禁止することであるという発言をいたしまして、また、他方米国は、
海底が
大量破壊兵器のために
使用されることを防止するなど、同地域の軍備制限問題を
軍縮委員会で取り上げるようにという
提案をいたしたのでございます。次いで、七月、ソ連は、領海外の
海底を排他的に平和的
目的にのみ
使用する問題を討議し始めるべきである、といった覚え書きを
軍縮委員会に送付いたしました。
第二十三回
国連総会は、この
海底平和利用問題を討議いたしましたけれ
ども、領海以遠の
海底の全面的軍事利用
禁止を主張するソ連と、それから、一方、防御的
兵器の利用については許されるべきだという米側の意見が対立いたしました。それで、この第二十三回総会におきまして、ベルギーなど六十四カ国が、
海底の軍事利用
禁止のための
海底常設
委員会設立の決議案を
国連総会に共同
提案いたしまして、採択されました。ただ、ソ連は、この決議案中の軍事利用
禁止に言及している個所が正確を欠いているといった理由で、この表決には棄権をいたしました。
一方、
ジュネーブにおきます
軍縮委員会における
海底の軍事利用
禁止問題の審議は、一九六八年の夏の会期の冒頭、米・ソ両国
代表によって
提案されましたけれ
ども、この会期では本問題の審議は具体的な進展を見なかったのでございます。
次いで、一九六九年、一昨年の
軍縮委員会の春の会期に、ソ連及び米国は、それぞれ
軍縮委員会に
条約案を提出いたしましたが、この米・ソ両案の主たる相違点は、
禁止対象兵器について、米国案は、固定された
核兵器及び他の
大量破壊兵器並びにこれらの発射装置のみを
対象とする部分的
禁止であったのでございますが、ソ連案は、軍事的利用の全面的
禁止を規定していたこと、それから、
禁止区域については、米国案のほうは、距岸三海里以遠の
海底を
対象としたのでございますけれ
ども、これに対してソ連案のほうは、十二海里以遠の
海底となっていたといったような相違があったのでございます。
この
軍縮委員会は、その年の春、夏の両会期におきまして、この両
条約案を審議いたしましたけれ
ども、他方、
米ソ両国は、
委員会各メンバーの
見解を考慮しつつ、舞台裏でこの両
条約案を一本化する
交渉を行ないまして、十月七日、第一次米・ソ共同
条約案を
軍縮委員会に提出いたしたのでございます。
その主たる
内容は、今回の
批准について御
承認を得ようとしておる
条約の実質的
内容の基礎になったものでございますが、この米・ソ共同
提案に対しまして、
各国は、その
条約本文について、
海底を
軍備競争から排除するため一そうの
措置に関する
交渉を継続することを決意するといった規定を設けるべきである、それから、
禁止の地理的
範囲を規定した条文の表現を明確にすべきであるといったいろいろの
提案ないし示唆を行なったのであります。
それで、米・ソ両国は、さらに協議を重ねまして、若干の手直しを加えた第二次共同
条約案を十月三十日に提出いたしましたが、依然として多くの
軍縮委員会メンバーの満足が得られなかったのでございまして、したがいまして、この共同
条約案は、一昨年の
国連総会に送付されましたけれ
ども、結局、総会においても同意が得られなかったという経緯でございます。
そこで、米・ソ両国は、これらの不満と申しますか、いろいろな示唆が
各国から出されましたので、それを相当部分取り入れた第三次共同
条約案を昨年の四月、
ジュネーブの
軍縮委員会に提出いたしました。そうして、さらにその
軍縮委員会での
各国の
見解を考慮いたしまして、表現その他に手直しを加えた第四次共同
条約案を九月一日に提出いたしまして、この
条約案は
軍縮委員会メンバーの圧倒的支持を得まして、第二十五回
国連総会に送付されたのでございます。
それで、昨年の第二十五回
国連総会におきまして、この
条約案を推奨する決議、もちろん
日本は賛成したのでございますけれ
ども、これを採択いたしまして、そうしてそれに基づきまして、この
条約の署名式が本年の二月十一日に米・英・ソ三国の首都で行なわれた、これが、たいへん長くなりましたけれ
ども、いままでの本
条約の作成経緯でございます。