○曽祢
委員 私の先ほど申し上げたことをさらにふえんして申し上げますと、たとえばいかにピンポン外交がはでに行なわれても、やはり日中間においては、
政府間
協定ではないけれども――そこに問題はあるけれども、九億ドルをこえるような
貿易も行なわれ、記者の交換も行なわれている。何千という
日本人が、これはやや一方交通のきらいがありますけれども、
中国をたずねている等々の
関係からいいましても、決して
日本のほうが全般としては
アメリカの対中
関係よりおくれているとは思いません。ただ最近の
政府の
態度を見ておりますと、確かに問題の複雑な
関係もあって、
日本政府のほうがオールストップになっておるのではないか。
アメリカのほうはとにかく相当顕著に前進を始めた。これはかなり顕著じゃないかと思います。たとえばこの問題にいたしましても、先ほどから同僚戸
叶委員が突っ込んでおられる
台湾の
帰属についても、確かに私個人の
感じからいえば、
外務大臣の言っておられる国民
政府との
条約論からいっても、
日本は
領土権を国民
政府にすら認めていないのだ。サンフランシスコにおいて放棄したままだ。放棄したことを日華平和
条約の中で確認しただけで、だからこそ付属交換公文では、現に支配する云々という、要するに事実上支配しているという
関係を認め、あとは法律的に放棄しただけだ。すなわち
日本としては、国民
政府との
条約にもかかわらず、国民
政府にすら
領土権を確認していないのだ。いわんや大陸
中国に対して
領土権の問題について確認するも確認しないも、何もできやせぬじゃないか、
発言権がないのだという法律解釈は確かに
一つの法律解釈であるけれども、いささか逃げ腰にすぎるので、事実上は一時的にせよ国民
政府に支配権を認めたような
条約を持っているのだと私は
考えている。それから歴史的にいえば、いわゆるリパブリック・オブ・チャイナ、それを訳し方によっては
中華民国に、放棄された
台湾及び澎湖島は返すのだということが、やはりカイロ宣言以来の趣旨であったわけですね。その
意味ですから、
日本は放棄した以上、もう一ぺん
日本に返そうと思ってみたり返すのがしゃくだからなるべく独立させようと思ったり、どっちの
政府にあれするというようなことは慎むべきだという議論もそこから出てくるので、やはり全般としては
中国という民族国家に返るのが自然であるという
態度は一貫して変わらない。ただ両
政府が争っているし、もう
一ついえば、何年間か長い間
日本の植民地になっておって、それから二十五年も事実上本国から分離されているから、住民の意向まで聞かなくていいのかという問題が、単に両方の支配を
主張している
政府の
関係だけでいいかという問題が背後に
一つあるでしょうけれども、いずれにしても
日本側が支配権を
主張しようなんという野心を持ってはならないのだ。
中国という民族国家のワクの中で解決さるべきだという基本的な、政治的な
姿勢は当然あっていいと私は思うのですが、余談のようで恐縮ですが、そういうような観点に立って
日本の
台湾の
領土権に関する非常に慎重過ぎるというか、
態度をとっている。一方
アメリカの今回の
態度はかなり、私は、もしそのとおりに政策になれば、これは思い切った転換ではないか。これは、
日本と国民
政府との
関係は平和
条約の
関係だけであります。しかし
アメリカと国民
政府との
関係は、五四年のいわゆる相互防衛
条約ができているわけですね。その経緯から見れば、
日本以上に
アメリカのほうは、通常は――こう言いましょうか、朝鮮動乱までは、
アメリカのほうも、
北京政府のほうに、大体支配を認める方向に進んでおった。アチソン国務長官が、
台湾はもう
アメリカの防衛の範囲から除いてしまった。朝鮮半島もそうでしたけれども、そういう
態度で
日本との
条約ができれば、
日本との
条約のときにきまるかもしれないでしょうけれども、
国際条約できまる以外は、
アメリカとしてはノータッチというくらいなつもりだったと思うのですけれども、それが朝鮮戦争以来
態度が変わって、ついに五四年の
条約では、これはいろいろの読み方はあると思いますけれども、私は、この
条約を率直に読めば、はっきりとこれは国民
政府に
領土権を認めている
条約に間違いないと思うのです。たとえば、これを読んでみましても、第二条なんかに非常に重要だと私は思うのですけれども、これは第五条による
条約のほんとうの直接的な相互防衛の義務の発生は、この第五条にあるように、西太平洋における一方の領域に対して行なわれる武力攻撃の場合にだけ発動するようになっておりますけれども、第二条なんかを読んでみれば、「武力攻撃並びに
締約国の
領土保全及び政治的安定に対して外部から指導される共産主義者の破壊活動に抵抗する個別的及び集団的能力を、維持し発展させる。」だから目的からいえば、外部から指導したいわゆる謀略、撹乱、内乱、それに対してもお互いに協力し合って守っていくという精神になっております。しかし第五条によれば、直接に発動する防衛の義務は、これは武力攻撃に対してのみになっているようであります。これはいいんですけれども、第二条と第五条を受けて第六条は「第二条及び第五条の規定の適用上、「
領土」及び「領域」とは、
中華民国については、
台湾及び澎湖諸島をいい、
アメリカ合衆国については、その管轄権の下にある西太平洋の諸島をいう。」こういうふうに
考えれば、これは
吉田さんが苦心してつくった日華平和
条約とは格段に、だれが何と言おうと、この
条約によれば
領土と認めていることは一点の疑いもない
条約です。一たんこれだけのはっきりした
態度で、五四年の
条約によって、実際上は国民
政府の領域であることを認めているのに、国務省のスポークスマンが、むろんこれはかつて五〇年ごろに言ったことでしょうけれども、
日本と連合国との平和
条約によってきまるだろう。そういう
意味で、
国際的な取りきめによってきまるだろうとか、あるいは今度は、最近どこから持ってきた議論か知りませんけれども、政治的に、暴力でやられちゃ困るし、武力の発動があれば、
アメリカとしてはおっとり刀で国民
政府を助けに行く義務があるけれども、平和的に話してくれるならば、
領土はどっちに行っても、主権はどっちに行ってもかまわぬのだということになると、それは先ほどの話じゃありませんが、
北京政府側からほめられないことは初めからわかっているけれども、むしろ
台湾政府のほうがびっくりしただろうというくらい、かなり大きな政策転換になるかもしれないきわめて重要な、法律的
立場が非常に変わってきているという
感じすら抱くのですが、その点は
一体どうお
考えでしょうか。