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1971-05-07 第65回国会 衆議院 外務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年五月七日(金曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 田中 榮一君    理事 青木 正久君 理事 坂本三十次君    理事 田中 六助君 理事 永田 亮一君    理事 山田 久就君 理事 松本 七郎君    理事 曽祢  益君       石井  一君    西銘 順治君       野田 武夫君    豊  永光君       勝間田清一君    河野  密君       戸叶 里子君    堂森 芳夫君       中川 嘉美君    西中  清君       松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省条約局長 井川 克一君         外務省条約局外         務参事官    由崎 敏夫君  委員外出席者         外務省経済局外         務参事官    小山田 隆君         大蔵省関税局国         際課長     西澤 公慶君         農林省農林経済         局国際部長   吉岡  裕君         外務委員会調査         室長      吉岡 俊夫君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十六日  辞任         補欠選任   石井  一君     辻  寛一君   鯨岡 兵輔君     中山 利生君   豊  永光君     加藤 陽三君 同日  辞任         補欠選任   加藤 陽三君     豊  永光君   辻  寛一君     石井  一君   中山 利生君     鯨岡 兵輔君 同月二十三日  辞任         補欠選任   鯨岡 兵輔君     小沢 一郎君   豊  永光君     床次 徳二君 同日  辞任         補欠選任   小沢 一郎君     鯨岡 兵輔君   床次 徳二君     豊  永光君 同月二十七日  辞任         補欠選任   豊  永光君     田村  元君 同日  辞任         補欠選任   長谷川 峻君     豊  永光君 同月二十八日  辞任         補欠選任   鯨岡 兵輔君     有田 喜一君 同日  辞任         補欠選任   有田 喜一君     鯨岡 兵輔君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  第四次国際すず協定締結について承認を求め  るの件(条約第一五号)  核兵器及び他の大量破壊兵器海底における設  置の禁止に関する条約締結について承認を求  めるの件(条約第一六号)  関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三  十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許を修正し  又は撤回するためのアメリカ合衆国との交渉の  結果に関する文書締結について承認を求める  の件(条約第一七号)  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 田中榮一

    田中委員長 これより会議を開きます。  第四次国際すず協定締結について承認を求めるの件、核兵器及び他の大量破壊兵器海底における設置禁止に関する条約締結について承認を求めるの件及び関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許を修正し又は撤回するためのアメリカ合衆国との交渉の結果に関する文書締結について承認を求めるの件、以上三件を議題として、順次政府から提案理由説明を聴取いたします。外務大臣愛知揆一君。     ―――――――――――――  第四次国際すず協定締結について承認を求め  るの件  核兵器及び他の大量破壊兵器海底における設  置の禁止に関する条約締結について承認を求  めるの件  関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三  十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許を修正し  又は撤回するためのアメリカ合衆国との交渉の  結果に関する文書締結について承認を求める  の件   〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま議題となりました第四次国際すず協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この協定は、第三次国際すず協定有効期間が本年六月三十日に満了いたしますので、それにかわるものとして、一九七〇年四月から五月にかけてジュネーブで開催された国際連合すず会議で採択されたものでありまして、すず消費国としてはわが国を含む二十二カ国が署名しており、また、すず生産国としては、七カ国が署名しております。  この第四次協定は、第三次協定と比較しました場合、条文の構成等形式面では変更が加えられておりますが、内容的にはおおむね第三次協定内容を引き継いだものとなっております。  すなわち、本協定は、生産国義務的供与に基づいて設けられる緩衝在庫による売買操作を通じまして、すず国際価格を一定の価格帯の範囲内に安定せしめることを主たる目的としており、また、すず市場価格がこの価格帯を下回って低落するおそれがある場合には、参加生産国輸出統制を行なうことができる旨を規定しております。  わが国は、すずの主要な消費国一つでありますとともに、マレーシア、インドネシア、タイ等世界すず生産の大きな部分を占める東南アジア諸国とは経済的に密接な関係にあります。したがいまして、わが国が、第二次協定及び第三次協定に引き続きまして今回の第四次国際すず協定締約国となりますことは、国際すず理事会の場におきまして消費国としてのわが国立場を十分反映せしめるためにも、また、開発途上にある生産国、特に東南アジアにある生産国経済発展に協力する見地からもきわめて有意義と存じます。  次に、核兵器及び他の大量破壊兵器海底における設置禁止に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この条約は、ジュネーブ軍縮委員会におきまして一九六九年の春の会期からその作成のための審議が重ねられ、同委員会参加各国の強力な支持を得て、一九七〇年の第二十五回国連総会に提出されたものでありまして、同総会はこの条約を推奨する決議を圧倒的多数をもって採択いたしました。その結果本年二月十一日、米、英、ソ三国の首都におきましてこの条約署名式が行なわれ、わが国も、同日上記三都市で署名を行なったものであります。  この条約のおもな内容は、核兵器及び他の大量破壊兵器を距岸十二海里以遠の海底設置することを禁止し、また、締約国は、条約の順守を確保するため、他の締約国海底における活動を観察等によって検証することができるというものであります。  この条約海底における核軍備競争を防止することにより、世界平和の維持及び国際間の緊張の緩和をはからんとするものであり、最近の軍縮交渉の成果の一つでありまして、わが国が、この条約締約国となりますことは、わが国軍縮に対する熱意を広く世界に示すとともに軍縮に関するわが国主張を推し進める上できわめて望ましいと考えられます。  最後に、関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許を修正し又は撤回するためのアメリカ合衆国との交渉の結果に関する文書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  わが国は、貿易自由化の一環といたしまして、チューインガム自由化を近く実施する予定でありますが、これに対応してその関税を引き上げる必要が生じましたため、昨年十月より、関税及び貿易に関する一般協定に基づき米国交渉を行なってまいりました。その結果、ガットに付属する日本国譲許表に掲げるチューインガムについて、わが国譲許税率三五%を四〇%に引き上げるとともに、その代償として他の譲許税率の引き下げ及び新たな譲許を行なうことにつき、本年二月に合意に達した次第であります。  チューインガムは、昭和三十年にわが国ガットに加入いたしました際に行ないました関税譲許の品目の一つであり、また、その譲許決定いたしました時の交渉相手国米国でありましたので、今回の交渉は、関税譲許の修正に関する手続を定めておりますガット第二十八条の規定に基づいて行なわれました。  チューインガム譲許税率の引上げに対する代償といたしましては、スイート・アーモンドについての従来のわが国譲許税率が引き下げられ、また、七面鳥の断片肉及びペット・フードにつきまして新たな譲許が行なわれることとなります。  本件文書は、このような交渉結果を収録したものでありまして、国会の御承認を得た後、政府ガット事務局長に対して行なう通告によって効力を生じ、実施されることとなっております。  以上三件につきまして、御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  4. 田中榮一

    田中委員長 これにて以上三件の提案理由説明は終わりました。      ――――◇―――――
  5. 田中榮一

    田中委員長 引き続き、国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。戸叶里子君。
  6. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はきょうは、沖繩協定の問題と中国との関係について、一、二点大きな問題だけちょっと伺いたいと思います。と申しますのは、いま野党間で連合審査申し出等もございますので、これがやがて実現して、いろいろとこの国会中に質問できる機会を望みながら、きょうは二、三点伺いたいと思いますが、まず最初にお伺いしたいのは、台湾帰属の問題でございます。  実は四月十四日に、私ちょっと病気で入院しておりましたので、出席できませんでしたが、そのときに佐藤総理答弁されたことを速記で拝見いたしますと、私がたびたびこの委員会台湾帰属の問題について質問をいたしましたのに対しまして、愛知外務大臣は、台湾帰属は未決定である、そしてそれは国際的な話し合いなり何なりできめられるであろうというふうな答弁をされていたと思います。私自身もそのときには不満な気持ちでしたし、またかつて本会議吉田総理が、二十七年の二月二十五日に、台湾政府はすでにある中国の一部の領土を現実に支配しているといわれておりましたそのことばも引用をして伺ったのですけれども、それすらも否定するような発言をされておりました。しかしはっきりと、この間の委員会での速記録を見ますと、佐藤さんがおっしゃっているのは、「中国のものだと言われること、これは北京政府か、台湾中華民国か、これは別として、とにかく中国のものであることには変わりございません。」こういうふうに答えていられるわけでございまして、佐藤総理もなくなられた吉田総理と同じように、台湾帰属というものは中国のものである、つまり、北京政府かどっちかは知らないけれども、ともかくという言い方で、帰属のことをはっきりおっしゃっていられる。そうすると、外務大臣が答えられてきたことと、総理の答えられている点とが違うわけですけれども、私は総理お答えになったのが正しいと思いますが、外務大臣、この点はどういうふうにお考えになるか。やはり佐藤総理がおっしゃったとおりであるというふうにお考えになるかどうか、この点をはっきりさせていただきたいと思います。
  7. 愛知揆一

    愛知国務大臣 台湾帰属について私が何回か申し上げておりますことは、政府見解でございます。そして四月十四日に総理が言われたことはそれにかわるものではない、政府態度はそういうふうに御理解をいただきたいと思います。四月十四日のときの質疑応答は、その議事録でもよくおわかりいただけると思いますけれども、一つ質疑の焦点が、総理に対しましては、政府があるいは日本外務大臣台湾帰属が未決定なんであるといっていることは、日本台湾に対する何らかの意図を持っているからではないかというような趣旨の、あるいはそういうことにも聞こえるような御質疑があったのに対して、日本台湾というところに対して野心とか領土権とかいうものを主張するなんてことはとんでもないことでございます、そういう気持ちを強く含めてそのときの御答弁総理が申し上げているわけでございまして、基本的な条約論、あるいはまた政治的に日本政府として、台湾帰属については国際的にきまっておりません。こういう点については、私が御答弁申し上げていることと何ら違いはございません。
  8. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務大臣のおっしゃろうとすることは私が質問していることとちょっと違うと思うのです。外務大臣のお考えというのは、私はこの委員会でいろいろな角度からたびたびこの点を御質問申し上げました。それに対して外務大臣としては、帰属は未決定ですということをいろいろおっしゃりながら、結論として帰属は未決定ということをおしゃったと思います。ところが今度の総理答弁はそうじゃない。しかもいま私が申し上げましたように、中国のものだと言われること、これは北京政府台湾中華民国か別として、とにかく中国のものであるということは変わりありません、こういうことをはっきり言っていらっしゃるので、その帰属中国のものであるということは、北京政府のものかどっちのものかわからないけれども、ともかく中国のものであるということは変わりない、こうはっきりお答えになっていらっしゃいますから、私はこの点が非常に疑問に思ったわけですけれども、そしてこれはかつて二十七年に吉田総理お答えになったのと全く同じですから、この点を確かめてみたわけですが、外務大臣は、政府見解は私の見解と同じである、こういうふうにおっしゃってしまいますと、総理大臣見解政府見解と違うということはあり得ないのですから、少し私は戸惑います。どう解釈していいかわからないと思うのです。この点をもう一度はっきりおっしゃっていただきたい。総理答弁は間違っていますとおっしゃるならそれもまた一つお答えだと思いますけれども、この点をはっきりさせておいていただきませんと、これからの中国問題等考えていく場合にいろいろな問題が出てくるのじゃないか。特に最近は政府の重要な方々もいずれも中国問題に対しては積極的な姿勢を示そうとしていらっしゃるときですし、いろいろな角度から中国との接近ということもお考えになっていらっしゃるときでございますが、これは非常に基本的な問題になりますので、はっきりさせておいていただきたい、こう思います。
  9. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま申し上げましたように、台湾帰属というものについては、日本は放棄したものでございますから、それに対して条約的にとやこう日本としては言うべきものでございませんというのが、私が累次申し上げているとおりでございます。そういうのは、それならば何か日本政府は、台湾というものが、場合によってはほしいからそういうことをがんばって言っているのではないかというような感じをも含めての御質疑に対して、総理がとんでもない、日本はそんなことを言っているのではないということを強調して言われたことであって、私はそこには食い違いはございませんということを先ほどから申し上げているわけでございます。私も同席いたしておりますし、これはさように御理解をいただいて間違いはないと断言申し上げます。
  10. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はたまたま休んでおりましたからわかりませんけれども、そのときの答弁なり何なりは速記録に残っているわけです。したがいまして、私どもの判断する材料というものは速記録しかございません。速記録は正直にそれを伝えているわけです。ですから、私はいまのことをどうしてもふしぎに思うので伺ったのですけれども、佐藤総理にここにいらしていただけば一番はっきりすると思うのですが、またのそういう機会を私も与えていただきたいと思うわけですけれども、いまの外務大臣の御答弁はちょっと私も解せないのです。何も日本台湾をいまからでもとろうとするとかいう欲望があるというような、そんなものを持っているとはだれも考えていませんし、そういうふうな気持ち質問をされるなどということは、私はあり得ないと思うのですよ。それをそういうふうに結びつけてしまって、とんでもない、台湾をまた日本がほしいというふうに考えられてはたいへんだからと思ってそういう答弁総理がされたというのですけれども、ちょっとその答弁のしかたがそういうふうには解せないと思うのです。帰属の問題ではっきり中国のものですということをおっしゃっているのに、台湾はほしくないから中国のものですというような言い方をする。それではもっと正直に外務大臣のおっしゃったとおりの答弁をされればいいと思うのですけれども、総理のおっしゃっているのは、どうも吉田総理と同じようなお気持ちで言ったのじゃないかというふうに思うのですけれども、それでは佐藤総理のおっしゃったのは違っていて、そしてあくまでも政府考え方はこうなんだ、愛知さんのおっしゃるのが正しいのだ、こういうことを御主張になるわけですか。この点をもう一度念のために伺っておきたい。これは今後において問題になると思いますので、お伺いしておきたいと思います。
  11. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まあ何と申しますか、私は違っていない。それから質疑応答というのは、そのときの感じその他から、表現やなんかもそこだけをとらえて論じ得られないところもずいぶんございます。そういう点はいまさら申し上げるまでもないと思うわけでございますし、それから台湾日本が野望を抱いているとかなんとかいうことは、お話しのようにそんなことはあり得ないことであると思いますけれども、しかし日本の国内でなくともそういうふうなことを言っている向きもございますから、そういうことも頭に置いて、日本台湾というところに領土的な何らの意図を持っているのでないということは、日本政府としてもあらゆる機会に表明をしたい、これはもう強く考えておりますから、そういう気持ちのほうが強く出た御説明であり、答弁であるとお聞きいただければ私はいいのじゃないかと思います。一体として私は間違いはないことであると考えます。
  12. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いま愛知外務大臣の御答弁がありましたけれども、私はどうもあの答弁から見まして、そういうふうな憶測の底の底まで外務大臣のお考えとして述べられたようなことをだれも想像はできないと思うのです。そういう意味でちょっとこの点は今後においても疑問として残さなければならないと思うのですが、ただ問題は、総理の御発言のあとだったと思いますが、時間的にちょっとはっきりしませんが、アメリカのほうでやはり発表をして、台湾帰属国際的な世論できめるべきだ、あるいはもう一つ方法としては、中国台湾との間で話し合いをするか、二つの方法しかないというようなことをいわれました。それは全く外務大臣のお考えと同じわけでございますけれども、これに対しても中国では非常に不満の意を新聞に発表をしていることは外務大臣も御存じのとおりだと思うのです。そういうふうな考え方のもとでいきますと、中国問題が一体解決するかどうか、そこが私は大きなポイントになってくるのじゃないかと思いますから、この点はたいへんに私は執拗に食い下がりますけれども、日本が前向きの姿勢で、そして中国問題と取り組んでいこうとされるならば、この辺の問題をこうしたあいまいな形でなしに、はっきりと態度をおきめになることが必要じゃないか、私はこれは御忠告として申し上げておきます。そうでない限り中国問題というのはある程度解決しない。そういう意味で、佐藤総理がこの間答弁されたということは非常に見識のあることでいいことだと私は思いました。そういうふうに寝ていながら考えたものですから、その点をはっきりさせていただきたいと思ってきょうは質問いたしましたけれども、どうも外務大臣の御答弁は、前に答弁したとおりだということで、アメリカと同じですけれども、そういうふうな答弁を固執しておられますし、それ以上のことはおっしゃいませんので、佐藤総理の言われた答弁は――まあ外務大臣が、外務大臣としてはこう思う、しかし佐藤総理はああいうふうに答えたけれども、その答えは根底においてそういう考えじゃないというようなことをおっしゃいますけれども、これは総理の基本的な考え方の中にそういうものがおありになったから出てきたのじゃないか、私はこういうふうに判断をするわけでございます。しかしこれは私の考えですし、一ぺん佐藤総理の真意もいつのときか伺ってみなければならない、こういうふうに思います。そこでこの問題についてこれ以上のことを繰り返していてもしかたがないので、これ以上のことは申し上げません。  そこで、一体国際的な話し合いでできるかどうかということは、これはだれが考えてもちょっとむずかしい。というのは、中国というものを承認しなければならないという国々があちこちに出てきました。そして世界の大部分独立国というものが中国承認ということになってまいりますと、こういうような問題というのは、国際的な話し合いの前に、もうすでに中国領土であるという考え方のもとに進められていっているのですから、とても国際的な会議なんというのはやれないと思う。私は、これは言ってもできないことだというふうに考えますけれども、そういうふうな会議一体持てるというふうにお考えになりますか、どうですか。この点も念のためにお伺いしておきたいと思います。
  13. 愛知揆一

    愛知国務大臣 どういう形の会議できめるべきものであるかどうかということも含めて、私は、日本政府として、台湾帰属については、放棄したものであるから言うべき立場にないということを申し上げておるわけですから、どういう形の国際会議が望ましいとか、どういう形がいいとかいうことは申し上げられません。したがって、それ以降は仮定の問題になりますしいたしますから、それについての意見を述べれば、日本政府はこういうかっこうでこういうふうにおきめになったらいいということまで含まれてしまうわけではないかと思いますから、かたくななようでございますけれども、それに対してはお答えができません。
  14. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はたいへん外務大臣に申しわけないのですけれども、少し誠意がなさ過ぎると思うのです。私もやはり中国問題には真剣に取り組んでいくつもりです。それに対して、何か私の質問をはぐらすような答弁しか伺えないというのは、ほんとうに残念でたまりません。私は国際会議をどんな形でしたらいいかなんということは聞いていないのです。一体国際会議というものが望めますか。世界の大勢として中国を認めようとしてきている独立国がずっと出てきているときに、いまこんなおくれた問題と取り組んでいて――そういう国々はみんな、台湾帰属というものは、中国の一部であるということはもう自然的に了解している。そういう中で中国問題を解決しようとしている国々が多い中で、一体国際会議というものが開けますか、開けませんかということを聞いているのであって、どんな形でいいですかなんということは私は別に聞いているつもりはないのですけれども、開けるということの自信はお持ちになっていらっしゃるのですか。こういうことだけちょっと伺っておきます。御答弁はあまりそらさないように、そのものずばりでけっこうですから、お聞きしたいと思います。
  15. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私もきわめて誠意を持って考えながら慎重にお答えしているわけでございますが、ただいまのお尋ねにもございますが、開けるようにすることに自信をお持ちであるか――私は開く立場にございませんから、開くとか開かぬことには、自信というようなことよりも前に、それに対してはお答えができません、こう言っているわけでございますから、そこは私は誠意を尽くしてお答えするから、結果においてはそういうふうな紋切り型の答弁になる、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  16. 戸叶里子

    ○戸叶委員 なかなか国際的にデリケートな問題ですから、外務大臣の慎重な点だけはよく理解をいたしますけれども、ただ私が伺っているのはそういうことじゃなくて、アメリカもそう言っているし日本もそう言っているけれども、一体そういうことができるかどうかということに対して非常に疑問を持つわけでございまして、その点を伺っているのですが、大臣からはしゃんとした答弁はいただけない。私は、やはりこの辺で、大臣は大臣なりの悩みを出していいのじゃないかと思う。アメリカと違った形においての悩み、アジア人としての悩みを出していいんじゃないか。そして中国と非常に日本は近いのですから、あまりからの中に閉じこもって慎重に慎重にばかり言ったり、あるいはまたアメリカに気がねしない形で日本中国問題に対しては一つのリーダーシップを取るような気持ちでやっていただきたいということを私は考えます。そういうことを要望として申し上げます。これ以上のことは申し上げても、大臣、からの中に閉じこもってなかなか慎重のほうが先に立つようですからお伺いいたしませんが、ぜひアメリカに先立ってリーダーシップをとって、そして中国問題の解決に当たるくらいの気がまえのある外交をぜひやっていただきたい、これをまずお願いをいたしたいと思うのです。それを考えていただきたいと思うのですが、この点の御決意をちょっと承りたいと思います。
  17. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その決意は大ありでございます。大ありと申し上げても、そんなことを言ってもそれは口先だけだ、すぐそういろ御質疑が返ってくることは十分私もわきまえておりますが、ただ、ただいまもアメリカ云々とお話しになりましたけれども、先ほど御質疑の中にありましたように、私どもが国会におきまして申し上げておる性質の問題、それに対して時間的にはそれからだいぶあとになってから、アメリカとは申し上げませんけれども、ほかの国でも同じようなことを申しておる。同じような悩みがあるなということは御理解をいただけると思います。  それからこれも再々申し上げていることですから、また同じことをとおしかりを受けるかもしれませんが、たとえばカナダの場合におきましても、台湾の地域の問題については御承知のようにテークノートしたわけですが、同時にカナダ政府としては、台湾についてテークノートということは、台湾帰属ということも含めてと私は解しておりますけれども、中国側の見解に対してエンドースしたというわけでもないし、さりとてチャレンジしたわけでもないという、いわば有名なステートメントが同時に出ていることも御承知のとおりでございまして、私は、そういう各国がバイラテラルの関係中国側と本件について盛んに論議がされたことと思いますけれども、そういうことを言っているということもまたなかなかこれは複雑な問題であると存じます。したがいまして、日本のように台湾についてその領土を放棄したという立場のものからいたしますれば、いかなる形の会合を開いてそれをきめるべきものであるというようなことを言うべきものではない。しかし日本が占有を主張するなんということはとんでもないことであるということは、これは常識的に見ていわば中国のものであるのだということと私は何ら背馳することはない、こういうふうに考えておるのでございまして、それが先ほど来申し上げておるところでございます。
  18. 戸叶里子

    ○戸叶委員 たいへん不満ですけれども、この問題はこのまま繰り返していてもきりがないので、もう一点中国問題で伺いたいのは、いま国連での態度がいろいろいわれておりますが、報道関係によりますと二重方式というようなことがいわれているようですけれども、二重方式というのは台湾のいま国連加盟しているところを認めながら中国の国連復帰を認めるという形のようでございますが、これは手続上どういうふうなことをするのですか。どういう決議案の内容になるのですか。これは事務当局でもけっこうですけれども、条約局長に教えていただきたいのです。二重方式というのはどういう形をとられるのか、ちょっと教えていただきたい。
  19. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この中国の国連における扱い方、代表権の問題については、これは何と申しましても十一月にスケジュールがちゃんと組まれて、当然そこで問題になる一大問題でございますから、日本政府といたしましてもいろいろの角度からどういうふうに考えていったらいいかということを、これは今国会の冒頭に申し上げましたように、真剣に検討を続けておるわけでございます。それからやはりこれは表決になる問題でございますから、どういう結果に国際的に大多数の意向が固まるであろうかということも、いわばきわめて俗なことばで恐縮でありますが、十分に票読み的な要素も加えて検討してまいらなければなりません。そういう関係からいたしまして、まだ政府としてこういう方法が適当であろうという考え方にしぼる段階にきておりません。しかしいろいろなバラエティーを想定いたしながらいろいろな考え方について検討いたしておりますことはもう事実でございますし、それが政府としての当然の責務である、かように考えております。したがって、考え方に非常なバラエティーといいますか、バリエーションがありますだけに、国連における手続等もそれによって非常に予想される様相が多岐にわたると思います。これらの点につきましては、まだ相当の時日もございますし、さらに十分に検討もしなければなりませんし、また各国の動向等についても十分ひとつ見きわめをしてまいらなければならない、かように存じておる次第でございます。したがいまして、いま事務当局といたしましても公式にこまかくいろいろのバリエーションについて御説明をいたしますということは現在のところではまだできない、かように考えております。
  20. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務大臣のおっしゃるととはわかります。  そこで二重方式というのが新聞等で報道されておりますし、そういうことばが私たちの目に入ってきますと、どういうふうなものだろうという疑問を持つわけですけれども、そういう方式についても、ただ一つの方式として質問というか、お答えいただくわけにはいかないのですか。やはりそういうことは一々取り上げないほうがいいというお考えですか。これはやはり新聞等に出てきますと、どういうふうな形をとるんだろうかというちょっと疑問を持つわけなんですけれども、二重方式とはこういうふうな形なんだということくらいもお伺いするわけにいかないわけですか。
  21. 愛知揆一

    愛知国務大臣 非常に重要な政策の問題でございますから、先ほど申し上げましたように、日本政府として事務当局としても、従来からもそうでございますが、ずいぶんいろいろの国と率直な意見交換をいたしておりますが、それぞれの国もいまだ最高の政治判断の問題としての結論的な線は出ておりませんから、その点はひとつまず前提として御理解をいただきたいと思います。  それからそうしたいわば外国流に言えばワーキングレベルの自由な意見交換の中に、ある、たとえば政府のワーキングレベルの人たちの研究の一案として、いま二重方式とお尋ねがございましたが、デュアルリプレゼンテーションというようなことも一つの案として考えられておることは事実でございます。ところがそのデュアルリプレゼンテーションの方式というものにもいろいろなバリエーションがあるようでございまして、的確に一つの案はこうだということを割り切って申し上げることはできないと思いますけれども、要するにその考え方一つは国連のユニバーサリティーということからいって、世界のどこの地域の人民の利益も国連に代表されなければならないのではないだろうか。そのためにはもちろん中国本土の八億の人たちの利益というものも国連に代表されなければならないが、同時に台湾の千四百万人という人たちのこともまたそこに、横文字で言えばリプレゼントされなければならない。これが国連のユニバーサリティーの原則ではないか、そこから出てきておる考え方ではなかろうかと私は考えております。  同時に日本政府、私が特にしばしば申しておりますように、いわゆる一つ中国問題というものは本来お二人の当事者の間できめていただくべき性質の問題である、これを非常に期待するんですけれども、現実の事態は、とにかく事実としてこういう状態があるんだから、その基本的な話が望ましいけれども、それまでの間にも両方が国連に代表されるようにしたらいいのではないかという、暫定的にそういうかっこうを考えることがいいのではないかというような考え方がいわゆるデュアルリプレゼンテーションですか、その考え方の基礎になっているのではないだろうかと思いますが、その考え方にも具体的な提案の形になって、そしてとりまとめていくというようなことがかりに考えられるとすれば、そのワーディングや考え方やあるいはそのほかのいろいろの問題についてこうでもないああでもないという論議はずいぶんあり得るのではないだろうか、私はかように考えております。したがいまして、先ほどの御質疑にもありましたように、国連の総会でどういう手続をとるのか、あるいはまたその以前に第何委員会というようなところでどういうふうな手続をとるのか、その手続は憲章の第何条によってやるべきであるかあるいは憲章何条をどういうふうにこれを読むべきであるか、これはなかなかそれぞれの各国からいきましてたいへん複雑ないろいろの議論があり得ることであろうかと想像いたします。
  22. 戸叶里子

    ○戸叶委員 結局手続上非常に困難なあれではあるけれども、内容としては台湾中国との代表権を二つ認めていくというような形になると思うので、これは手続上だけでなくして、中国自身も最も望まないところであろうと思います。そういうふうに考えますけれども、日本政府としてこういうふうなむずかしい問題と一体積極的に取り組むか、あるいはよそからそういう案が出てきたときには日本政府としてはどういうふうな態度を示されるのだろうかということまで私は伺いたいのですけれども、いまの最初の外務大臣の御答弁にありましたように、たいへんにむずかしい問題だからいまいろいろ言えないというふうなおことばしか返ってこないと思いますから、日本がどういうふうにしますかということは伺いませんけれども、そういう形というものはやはり中国にとっては望ましくないことであり、台湾にとっても望ましくないことだと思いますし、第一私が申しました台湾帰属の問題が初めからさかのぼってずっと解決をしてこなければならない問題ですから、そういう問題等もからんで今後よくお考えになっていただきたいということを申し上げまして、中国問題はこの辺で打ち切ります。  そこで沖繩の問題、一、二点だけ触れておきたいと思いますのは、沖繩の返還協定というものが大体できかかってきたということも報道されているわけですけれども、その経過といいますか、その中間報告というものはこの国会の終了前に国会にお出しになるということも承っておりますけれども、現在までの段階では大体でき上がった形か、それともまだいろいろな問題が残っているのか、この辺のところをお伺いしたいと思います。そして大体国会に報告できるのは、伝えられるように二十日ごろになるのか、そしてまた調印は六月の上旬ということも報道で伺っておりますけれども、そういうふうなめどをお立てになっていらっしゃるのかどうか、この辺のこともお伺いしたいと思います。
  23. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまの状況は、こうでございます。一番短いところの目標は、何とかしてこの国会の会期中に何らかの形でひとつ中間報告をさせていただきたい。それまでに大筋について、政府としての心証を十分固めてまいりたい、こう考えておるわけでございますが、現在の状況ではなかなか、この基本の考え方はもちろんきまっておりますから、その点は気持ちが楽でございますけれども、何ぶん二十数年間にわたって異国の統治下にあったところを完全な本土並みにするということであり、また安保条約につきましては何らの変更なしに沖繩に適用するということが本則であり、これをどうしても成就いたすわけでございますから、そういう点でいろいろ多岐にわたる越えなければならない話し合いがございますために、現在ワンパッケージとしてお話しをし得る段階にまだ来ておりません。いま精力的にアメリカ側との話をできるだけ詰めて、先ほど申し上げましたように、日本側としての心証を得まして、そして会期中に国会に御報告を申し上げたい、そしてそれからいよいよ本格的な条文づくりに入ることにいたしたいと思いますけれども、条文づくりにやはりある程度の時間がかかることは当然でございますので、これもおまえは用心深過ぎるとまたおしかりを受けるでしょうけれども、当初から申し上げておりますように、夏になる前には調印の運びにいたしたい、公式の政府態度としてはさように考えておりますが、なるべくこれも急いで調印の運びにいたたしい、どんなにおそくとも夏前に、こういうふうに考えております。
  24. 戸叶里子

    ○戸叶委員 聞くところによりますと、協定の前文等には、佐藤・ニクソン日米共同声明に使われたようなことばはなるべく避けるというようなことも伝えられておりますけれども、政府があのままの共同声明を持ってきますと、やはりいろいろ抵抗を感じたり、いろいろな反撃等もおそれて、そういうことばをお使いにならないだろうということも想像にかたくないわけですけれども、しかし私どもとしては、沖繩の返還は佐藤・ニクソン会談の共同声明によってきめられているわけですから、この共同声明の精神というものはこの協定の中に生きてくるんじゃないか、こういうふうに考えますけれども、この基本的な考えをまずお伺いしたいと思います。
  25. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま申しましたように、条文の文章についてまだ的確に申し上げるところまでいっておりませんけれども、政府考え方は、もう前々から機会あるごとに申し上げておりますように、沖繩返還によって安保条約というものが変質するというような疑問が国民の間にありますが、さようなことは絶対ないのである、安保条約の性質というものは変わらない、そしてその安保条約というものが何らの変更なしに関連取りきめも含めて沖繩に適用するのであります、こういう姿で沖繩が日本の主権のもとに戻ってくる、こういうことが必要にして十分に条約に規定されることがベストの形である、かように考えております。
  26. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そういうふうな御答弁になるだろうと思います。ただ問題は、日米共同声明の中にいろいろございます。六、七、八と。それを読んでいきますと、安保条約というワクの中だけでは解決できないことがいろいろあるんじゃないか。ことに私は、あの中のことばの中で、「日本を含む極東の諸国の防衛のために米国が負っている国際義務の効果的遂行の妨げとなる」ことがないように、このことばを使っていますけれども、これを実現しようとしますと、この安保条約のワクだけで一体解決できるかうどかということが疑問になってくると思うのですけれども、極東の平和と安全ということは、安保条約の中には書いてございますけれども、さらに進んで、アメリカが負うている防衛の義務の妨げにならないようにするということになりますと、相当アメリカ立場というものが主張され、いま沖繩を使っている基地の使い方というものが、アメリカにはいまの安保条約のワクではできないような形がそのまま適用される、こういうことが考えられるわけでございます。そこで私は、この日米共同声明の基本的姿勢というものはそのまま沖繩返還協定の中には生きているのですねということを伺っているのですが、この点はいかがでございますか。それはその精神、その基本的姿勢は生きているのだとか、いやそれはたいしたことはありませんというお考えですか、その辺のことをまず伺っておきたいと思うわけです。
  27. 愛知揆一

    愛知国務大臣 返還協定については、そういうわけでございますから十分ひとつ御審議、御批判をいただく機会がたくさん残されてあるわけですし、現在その条文の段階までまだいっておりませんですから、その点はひとつ実際の問題としてそこまで申し上げられない状態にあるということは、中身ができていないからでございますから御了解いただきたいと思います。政府態度としては先ほど申したことに尽きているわけでございまして、安保条約というものはこれは御意見が、野党のいろいろなお立場から見れば政府立場と違うわけですけれども、政府立場としては安保条約を是なりと、日本の国策の基本として考えておりますからこの考え方が本土並みに沖繩に適用されることが一番好ましい姿であると思っております。同時に、安保条約が本土において考えられておりましたことが一番いいのでございますから、安保条約そのものがそのままの姿で、本土の意味における安保条約が――この中にはただいま御指摘もございますように、日本の安全、それからそれを含む極東の安全に寄与するということは安保条約の基本精神でございますから、それがそのままずばりと適用できるようにいたしたい、そしてそれが必要にして十分である、この精神で協定をつくりたい、こういう考えでおるわけでございます。
  28. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私が伺っていることに対するお答えにはなっていないと思うのです。そこでもう少し具体的に伺ってみますと、たとえば日本を含めた極東の安全のために米国が負うている国際義務の効果的遂行の妨げとなるものでないようにするという、との内容が私は非常にいろいろ問題があると思うわけです。それが一体安保条約の中だけでおさまるかどうかということは、いろいろ私は問題があるところだと思う。それは政府考え方によるものだとして、それはそれでいいといたしましても、たとえばもう少し具体的に申し上げますと、アメリカが防衛の面での国際的義務の効果的遂行の妨げとならないようにするということになってきますと、いまある沖繩の基地のあり方、内容、こういうものはアメリカが負うている防衛のこの国際的義務の妨げになっていないわけです。だからそういうものを妨げとならない形に延ばしていくためには、やはりいまの沖繩の基地というものをすっかり変えてしまうわけにはいかない問題が残っているわけです。具体的に申し上げますと、問題になっているようでございますが、特殊部隊の問題もありますし、P3哨戒機の問題もありますし、B52が飛んでくるとか、いろいろな問題があると思うのですが、そういうものはアメリカがいま負うている国際的防衛の義務を果たしているからそういうものが必要なので、それが全部なくなってしまって一体こういう共同声明の精神が生きるかということが、おそらくアメリカはそうだろうといって主張してくると思うのです。日本政府はそれに対して、共同声明があるからしかたがないという形にならざるを得ないのじゃないか、この点を考えるわけですけれども、この点はどういうふうに解釈をしたらいいかということが第一点。  それからもう一つは――何か時間がないようですから続けて伺いますと、もう一点は、それじゃ一体いま申し上げましたような特殊部隊の問題とか、あるいはP3とかB52とかいろいろありますけれども、そういうような問題は、この協定締結されるその瞬間に、これは期限を切っていついつまで置きますとか、あるいはこれはしかたがないというふうな形にするとか、何か特別な取りきめといいますか、取りきめといいますと、いやそんなものはありませんとおっしゃるかもしれませんが、協定に付随した形の何か話し合いとか取りきめとか、そういうようなものをおやりになるのかどうか、この点をお伺いしておきたいと思います。
  29. 愛知揆一

    愛知国務大臣 条約を要するにつくるわけでございますね。共同声明は政府間の共同声明でございますね。そうして条約は両方の立法府の指示を受ける形でございます。この条約の案文というものは、そういう意味におきまして念には念を入れてつくってまいりたいと思います。その考え方は先ほど来るる申し上げたとおりでございまして、安保条約そのものが変質をしないで沖繩に適用される、その適用のしかたは本土と何ら変わるところはない。したがって核抜き、それから毒ガス抜き、それから事前協議づき等々でございますから、B52その他の点につきましても現在とは全く基本的なワク組みが違ってまいるわけでありまして、それを確保するような条約であれば必要にして十分である、かように考えております。  それから、この返還条約については、秘密取りきめとかなんとかよくいろいろ言われますが、さようなものは一切やる意図はございません。同時に、完全に本土並みでございますから、たとえば返還後において提供する施設、区域等については、これは日米合同委員会の議事として両国政府間で決定されることでございますから、安保条約に根拠があることでございますから、一々のいわゆる施設、区域等の名称を付したような地域、施設等が条約の中に書かれるというような性質のものはございません。そういうことを前提にいたしまして、ただいまも一、二の例を申し上げましたけれども、そういう点について沖繩の方にはもちろんですが、日本の国民の方々の御心配を解消し、御期待にこたえるようにいたしたい、かように存じております。
  30. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もう一点だけ伺います。  いまの御答弁の中で、条約だけでけっこうだ、条約国会審議する、共同声明は政府間の共同声明であると、そのとおりだと思うのです。ただ、今回の条約をつくるにあたっては、共同声明というものが基礎になっておつくりになるのでしょうということがまず第一点。  それからもう一つは、特殊部隊とかいろいろありますけれども、そういうものはこの協定では触れない、触れないけれども、そういうものについても日米安保協議会で今後において話し合うということだけであって、返還のときに、たとえば返還のときには取り除かれないかもしれない特殊部隊の中のいろいろな問題のある部隊、これは私沖繩でいろいろ話を聞いてまいりまして、いまここに書いたのを持っていないので残念ですけれども、どうかなあと思われるようなものがたくさんあるわけです。そういうものまでも含めて安保協議会で解決をすればいいのである、そういうお考えなのかどうか。  この二点を伺いたいと思います。
  31. 愛知揆一

    愛知国務大臣 第一点は、これはもう戸叶委員のよく御承知のところだと思いますが、条約は、そのプロセスが、どうしてできたかということが前文に書かれるのが通例でございますね。私は先ほど来、まだその案文についてお話し申し上げるだけの用意ができていないということを申し上げましたから、今回の条約についてのワーディングを申し上げるわけではございませんが、通例、この条約はこういった経過でできたということが前文にあることが条約には非常に例が多いということは御承知のとおりだと思います。同時にそういう経過が書かれたことと、その内容、サブスタンスとは通例別ものであるというのが日本政府の従来からの解釈であり、国際的な通念である、かように存じます。それらの点については、先ほど申し上げましたことが私としては十分国民的に御納得がいただけるようにワーディングや構成をつくりたい、かように考えているわけでございます。  それから日米安保条約によって駐留する米軍というものは、日米安保条約のためにおるものでございますから、そしてそういうことが第六条にも書かれてあるわけでございます。そしてその適用は、返還後においては沖繩は本土並みでございますから、本土と同様にいたすべきであると考えております。したがいまして、施設区域については先ほど申し上げましたようにいたします。それからいろいろの軍の実態等だんだんよくわかってはまいりましたけれども、本土並みで律し得られないようなものは好ましくないものである、この基本観念によって処理してまいりたいと思います。
  32. 戸叶里子

    ○戸叶委員 時間がないので残念ですけれども、本土並みになるような基本観念で処理したいとおっしゃいましても、たとえば特殊部隊の中にもいろいろあるわけで、協定が成立したといいますか調印にこぎつけるまでに解決されない問題もあると思います。ことに特殊部隊の中の内容の問題だとか、それから核を積んだもの、積むようなもの――核兵器は持ち込まないといえばそれまでですけれども、基地のあり方とかいろいろあるわけです。私どもが見てきましても疑問に思われる問題があるわけですけれども、そういうような特殊部隊の問題等も解決されなければ調印されないのか、それとも、たとえばVOAの問題にしても、解決されなくても、今後の日米合同委員会にまかせるんだという形で調印するのか、それとも、この問題についてはこういうふうな話し合いなり取りきめをした上で調印をするという形をとられるのか、その辺を伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  33. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ごもっともな御質問だと思います。調印のときにできるだけはっきりさせたいと考えております。たとえば施設、区域等につきましても政府といたしましては、いまは向こうが施政権を持っておるわけですけれども、現状のもとにおきましてもできるだけ使わないところは――これは形、法律的なステータスはいろいろ問題ですけれども、要するに常識的にいえば、これは、施政権返還前に返還する基地があってほしいと思いますし、それから返還と同時に、もうそれから先は日本から提供しない分に入れる。つまり、これも常識的に言えば、返還のほうに入る、こういうものはできるだけ明確にしたいと思いますし、もし明確にできない部分がございますれば、調印からあとに現実に返還のときまでもどんどん話を進めていくこともできる。しかしできるだけ調印のときには条約上のものではない、条約のできたときにそれの適用として行なわれるであろうところの事実行為につきましても実際上の合意をできるだけ広くつくり、かつこれを公表して、御安心をいただけるようにできるだけしたいというところをただいま努力しておる次第でございます。
  34. 戸叶里子

    ○戸叶委員 終わりますけれども、では調印のときにははっきりと話をつけた問題については、たとえば日米合同委員会にまかせられないような問題もあるはずだと思います。そういうものについてはやはり調印のときに話をつけて、そして意見交換だけでなくて、何らかの協定とまでいかなくても、何年後にはどうするとかこうするというようなことをきちんとしたものにしておくというふうなお考えでしょうか、どうでしょうか。この点だけを伺いまして、私の質問を終わります。
  35. 愛知揆一

    愛知国務大臣 なるべくそういうことにいたしたいということで鋭意努力いたしております。
  36. 田中榮一

    田中委員長 中川嘉美君。
  37. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 私は、沖繩返還協定を中心とした質問を大臣にしたいと思います。  先ほど戸叶委員の御質問に対する御答弁の中で、条文の段階までまだ行っていない、このような表現が何回か出てまいりました。ところが条文の段階まで行ってしまってからでは非常におそいというようないろいろな問題点、もっともっと現時点において――本来ならもうおそい感がいたしますけれども、検討を重ねていかなければならない問題がたくさんあると思います。その中でも二、三気のついた点の一つでありますが、外務省筋では返還協定作成上、施政権返還をする地域の表現について、個々の島名を列記しない方法をとるということを聞いておりますけれども、そのとおりでしょうか、どうですか。
  38. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはサンフランシスコ条約第三条によって現在米国が立法、司法、行政三権を持っている領域の中ですでに返還された奄美、小笠原を除く全域が日本にそのまますっぽり返るということを条約上はっきり約束をするということが必要であり、同時に十分である、かように考えております。
  39. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 当然そのとおりであってほしいと思うわけですけれども、たとえば尖閣列島の問題が今日非常に問題にされてきておりますが、尖閣列島が返還されたかどうかということがはっきりと第三者にわかるようにしなければならないと思います。どうも北方領土の問題あるいは竹島の問題もわがほうだけの解釈に終わってしまったような感じがしないでもないのですけれども、こういった前例があるだけに返還条約のときに尖閣列島がはっきりと明記されるべきだ、このように私は思うわけです。条約上こういったことが明記されるのか、されないのかということをこの際もう一度確認をしておきたいわけであります。
  40. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは明らかにきちっとこの範囲がきまっているわけでございますから、その本体について御心配がないように、私どもとしては十分やってまいるつもりでございます。
  41. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうしますと、この条約に書かない、表現されないということですけれども、返還と同時に尖閣列島も返還されたんだといったことを覚え書きなり、あるいは交換公文なりを取りかわすべきであるわけですけれども、こういった点について、その必要性ということについて、重ねてひとつ御答弁いただきたいと思います。
  42. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはいろいろの方法があると思いますけれども、とにかく施政権が返ってくる、その施政権の対象は何らの変わりがないので、これは条約上も明らかにいたしますし、それで足りないと思われる向きに対しては十分御説明ができる――向きに対してはというのは、内外に対して、条約上十分はっきりいたしたいと思っております。
  43. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 なぜここまでいろいろ伺うかと申しますと、将来万一――そういうことを想像すること自体どうかと思いますけれども、国際紛争でもあればその中に一番困るのはわが国日本である。この際、尖閣列島も含むということを明らかにうたわないということ、要するにアメリカにそういうことでもって責任回避の口実を与えるべきではないと私は思います。本件は単なる一例とするわけではないのですが、返還協定の中身そのもの、これはいいかげんであってはならない、このように思うわけですが、いまの尖閣列島のみならず中身の問題について、大臣として、今後ともいいかげんであってはならないというわれわれの気持ちをどのように取り上げていかれるか。ほかのいろいろな問題に関連して、ひとつ御答弁をいただければと思っておるわけであります。
  44. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはいまさら私から申し上げるまでもございませんが、この施政権返還の対象ということは、一番大事な要素なのでございますから、そういう点につきましては、条約だけで御安心ができないということであれば、その御安心をいただけるように、そしてまた先ほど申しましたように、この方法論はいろいろございましょうが、たとえば尖閣列島という例をあげるならば、これは、かつて私もあるいは言い過ぎたことがあるかもしれませんくらい、たとえば日本の鹿児島県なら鹿児島県を称して、ある国の人が、あれはおれのものだということを宣伝しているようなものでございまして、こういういわれのないことに対しては、私は論議するだもどうかと思います。国際会議だとか、国際紛争が起こり得るはずがない、そこは政府といたしましても十分の態度をとっておるつもりでございますから、条約上におきまして、あるいはそれを補完する方法についても十分の態度をとってまいりたいと思っております。
  45. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 尖閣列島のことばかり聞いているわけにもいきませんので、一応次に移りたいと思いますが、要するに、沖繩返還交渉でもって少なくとも明らかになっておること、これは現段階においては、日本政府が一方的にアメリカの要求に押しまくられている――こういうことを言いたくないのでありますけれども、そういう感じが非常に強いというのが現時点であります。もしそのような返還であったとするならば、それは日本国民のひとしく念願してきたところのほんとうの意味での施政権の返還ではないのじゃないか、むしろ形骸化された、名前だけの施政権の返還になってしまうのではないか、それをまたさらに言えば、そういった形骸化された施政権そのものをドルで買い取らなければならないという感がだんだんしてくるわけでありますけれども、例をあげれば、現在の米軍基地はほとんどそのまま残される、すなわち縮小いたすことは期待できないという感じが非常に強くなっております。あるいはこれに関連して、日米安保条約にそぐわないもろもろの特殊部隊、これはもうほとんどそのまま据え置きになるという印象が強い、そしてまた第七心理作戦グループ、あるいはスパイ目的のSR71偵察機の存続、こういったことを認めざるを得ないようなあるいはまたわが国の法律から当然排除さるべきVOA放送の承認、また元来返済の必要のないはずのガリオア資金で設置された電気あるいは水道公社施設の買い取り問題、あるいは献呈されたはずの建物の買い取りの問題、そしてまた協定には核兵器の持ち込み禁止という規定をうたわない、こういうような問題、あげていけば切りがないわけでありますけれども、アメリカ主張をすべて承認するという、そういうような感じが非常に強いわけでございます。これははたして国民が納得するような形の返還であるかどうかということ、私はやはり政府はこの時点において反省すべきじゃないかというふうに感ずるとともに、なぜこれまで譲歩しなければならないのか。この点を、この席において大臣にひとつ御答弁を伺っておきたいと思います。
  46. 愛知揆一

    愛知国務大臣 おことばを返すようですけれども、協定話し合いがもう少し煮詰まりましたならばいろいろお話しをいたしたい、そうして御理解を仰ぎたいと思います。現在すべて断定して、アメリカの言いなりになったからこれは返還ではない、そんなことは反対だというふうにまだきめないでいただきたいと思うのであります。  やはり、率直に言わしていただけば、平和的な話し合いで――激戦の結果、取られたということ、これもまたことばは穏当でないかもしれませんけれども、二十年余り、ほんとうに筆舌に尽くしがたい御苦労をされた沖繩県の方々に対して、ようやくここで平和的な話し合いで復帰ができる、そして憲法がそのまま適用される、そうして問題の安保条約にいたしましても、何らの変更なく核抜き本土並みできれいな姿で返ってくるし、その後も事前協議は十分かかることになった、こういう姿ができるということを踏まえまして、現在そのほかのいわばいろいろの点にわたってやっておるわけですが、その中に、たとえば三公社の施設の引き継ぎの問題もお触れになりましたけれども、政府態度といたしましては、これは二十数年アメリカが占領していたのがけしからぬということを基本にしての御意見もわからないわけではございませんけれども、これからも沖繩のためにパブリック・ユーティリティーとして役立つ資産を適当な評価で適当なお金を払うということは、むしろ日本側としてやるべきことではなかろうか。そこは逆の観点に政府は立っております。しかもそれは沖繩県民の方々の御負担にならないように、日本本土として、これはある程度のお金を払って、その資産を引き継ぐのだ、それが日本国としては当然の態度である、政府としてはかような立場に立っているわけでございます。  それから、いまやはり返還の前ですから、こうもあろう、ああもあろうと言われるわけで、これもお気持ちはわかりますけれども、返還の後になりましたならば、一切の法令その他が本土並みになるわけでありますから、これは何と考えましても、現在よりはるかによくなるということだけは、私はあえて申し上げて言い過ぎではないと思います。また批准国会のときになりましたならば、凡百の沖繩の県民の福利向上のために本土としてなすべきことについては、数々の立法の用意もいたしまして、十分御審議をいただく用意もいたしておるわけでございまして、まあそういう気持ちでわれわれやっておるわけでございますから、断定的に、もうすべてが何かどうこうということをいま前提にしていただくのだけはごかんべん願いたいと思います。
  47. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 まあ現段階においては、協定話し合いの段階だから、あまりきめつけないようにという、そういうような御答弁が返ってきたわけであります。その次に来た御答弁が、非常に希望的な観測一本でお答えをいただいたような印象が強いわけでありますけれども、事実上、もう先ほど来この例はたくさんあげましたとおり、そういった条件を何となくのまざるを得ないような、そういうような方向にぐんぐん進んでおる。そのような立場から、また国民的な立場に立っても、どうしてもこの時点においてこれだけのことをお聞きしておきたい。こういう観点から実は伺ったわけですけれども、これはこれといたしまして、聞くところによると、この沖繩にあるある施設ですね、これを沖繩以外の地域に移転するのに――これは米軍基地の問題に関連しますが、その移転料も日本は負担せざるを得ない。向こうが負担を要求しておる、こういうことでありますけれども、それまでわがほうがめんどうを見る必要があるかどうか。またこの移転料というのはどういうあれですか。単なる引っ越し料ということを意味するのか。この辺もちょっとわからないのですが、こういったことについて、そこまでめんどうを見なければならないかということについて大臣の見解を賜わりたいと思います。
  48. 愛知揆一

    愛知国務大臣 引っ越し料、移転料というような話は、どういうところをおさしになっているのか私には率直に言ってわかりません。ただ、何か不当に日本国民の税金をどうとかというふうなことは、それは政府としても考えるはずがないのでございまして、合理的にこういうものは、先ほど三公社等の例で申し上げましたように、これは国民にお願いして払うべきものであるというものは若干あろうかと思います。また資産の引き継ぎ等については、ある程度の額になると思いますけれども、それ以外に何も、これもやる、これもやる、買い取るというような感じが出てくるようなことは避けたいと思うわけでございます。
  49. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 その移転料云々がどこから出たかわからないという大臣のおことばですけれども、沖繩返還協定の骨子、その中に「米資産の有償引継ぎ」というところがちゃんと設けられております。「沖繩にある米国の資産で、復帰のさい日本側に引渡され、それが復帰後も沖繩県民の民生に役立つものは有償で引継ぐ方針を述べ、米側から引き継ぐ対象、日本側が支払う総額を明記する。この場合、基地関係の移転費、米軍労務費負担増の肩代わりなど日本側が米側に支払う金額も含まれる。」はっきりとこのように書かれております。そういったところが私どもは非常に心配になるわけです。そのほかに沖繩空港が全面返還される場合の問題ですけれども、米軍のそこにある施設の移転あるいは代償を要求してきておる。わが国の了解もなく、アメリカが施政権者として必要に応じてつくったもの、このものを移転するから金を出せというのはどうしても筋が通らないと思います。施政権を返還する際には、当然アメリカに負担が生じるのはあたりまえじゃないか、このように思うわけですが、そんな費用まで日本に負担させようとするのは筋が通らないと私は先ほどから申し上げているわけです。また、いまちょっと読み上げました中に米軍労務者の問題が出てまいります。この退職金の調整経費も日本側に負担せよ、こういうことを言っております。これもまた私は筋が通らないのじゃないかと思います。アメリカが直接雇用労務者に対して退職金を支払うのは当然じゃなかろうか、こういう立場からも、日本が肩がわりする理由は全くないのじゃないか。どういう理由からアメリカ日本に負担を迫ってきておるか、アメリカのこの理由がおわかりになれば、大臣、ひとつ説明をしていただきたいと思うのです。
  50. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私、率直に申しましてちょっと感じが違うのですけれども、何か御質問によりますと、アメリカ日本がまだ敵対関係にでもあって、向こうが要請し、こちらが要請し、そしてチャンチャンバラバラやっているような感じでございますが、もう返還ということについては少なくとも政府間は完全な合意ができているわけでございます。そして平和的な処理で返還を受ける上は、国会を通して御説明できるような種類の問題については、日本もある程度の、たとえば資産引き継ぎ等についてもむしろ金を払うべきものは払うのが堂々たる態度ではないか、私はかように考えているわけでございますから、そういう考え方で律し得る、カバーし得るようなものについては、これはまだ大蔵省の関係などが非常にあるわけでございまして、私はまだ具体的に申し上げることはできませんけれども、基本的な考え方はそれでいいのではないか。しかし不当に何もかにも、アメリカの軍費まで日本が負担するかのようなことをお考えであるとするととんでもない、私どもはそんなことは考えておりません。それからたとえば労務者の問題にいたしましても、少なくとも復帰と同時に間接雇用になるわけでございますね。間接雇用になりますれば、待遇の条件や退職金の条件や、その他もいろいろ違うわけでございます。しかもその間接雇用に応じる方は、これまでは沖繩の方でしたが、法律的に申しましても復帰後は完全な日本の方々で、間接雇用に応じる方々でございます。この方々の福利向上その他を考えるというのは、やはりお互い同胞としてのあたたかい気持ちでささえてあげるべきものではないだろうか。そういう面におきまして、日本の本土政府が予算上あるいはその他の措置によってその支援をするということは、私は当然じゃないかと思うのです。したがって、そういう点をもう少し時間をかけていただきまして、政府としても、また外務省の立場におきましても、アメリカとの間の関係あるいは各省庁との間の関係の話の煮詰まりに応じて、私どもの考え方を御説明するようにさせていただきたい。頭ごなしにおまえら何をしているか、返還はもういいかげんにしろ、やめてしまえとでも言わないばかりの御口調で御追及いただくことは、もう少し先にしていただきたいと存じます。
  51. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 返還なんかやめてしまえと私は言った覚えは一つもありません。そういうわけで、あくまでも返還になる以上は、いろいろな問題が山積されているわけであって、私たちが一番心配しておった内容が外務省からなかなか発表にならないので、こういうこともあるのであろうとか、こういうことも起こってくるのではないだろうか、ほんとうにみなで知恵をしぼって、いろいろと円滑なる返還が行なわれるように今日まできて、やっとこうした骨子が出てきてみると、なるほど思ったとおりのいろいろな問題、われわれが予想したとおりの問題がいろいろ出てきておる。時間をかしていただきたいという大臣のお気持ちをくんで、これ以上申し上げませんけれども、返還になる以上は、やはり時間をかしてほしいとおっしゃる、そのいまの時点が一番大事だと思うのです。そういう意味で、きょうはそのうちの十分の一も百分の一も取り上げられなかったわけですけれども、どうかひとつこの時点に十分その点を再考をいただいて、こういった問題があるので――私は過去における沖繩・北方問題特別委員会あるいは当委員会において、大臣にそういうことがないだろうかということを何べんもお聞きしたわけでございますが、あまりこの問題で終始しておりますと、もう時間も迫ってまいります。もう一つだけ、これに関連しますが、VOAの問題、これもさっきちょっと例の中にあげましたけれども、このVOAについては、アメリカは西ドイツあるいはイギリス、セイロン等にも置いてある。だから沖繩にもVOA放送を認めるべきだ、このように主張しておるようですけれども、この主張もどうも私は納得ができないわけです。これらの国では日本の放送法であるとかあるいは電波法のように、外国の放送を禁止してないのかどうか、これが一つだと思います。あるいはこれらの国も国内法でもって外国放送を禁止しているけれども、特に特別法か何かでそれを認めるのかどうか、これが第二番目。最後に、西ドイツ、イギリスあるいはセイロンと申しましたけれども、これらの国がVOA放送を許可しているところの国内法との関係または条件、こういったものがどうなっているかという問題。このVOAについてはこれ一問で終わりたいと思いますけれども、ひとつお答えいただきたいと思います。
  52. 愛知揆一

    愛知国務大臣 VOAについてはしばしば申し上げておりますように双方の見解が対立しておりまして、まだなかなか決着がつきそうもございません。ただ、ただいまもお話がございましたように、これは日本政府の意見ではございません。先方が強調しているところはただいまも御指摘のとおりでございまして、これは沖繩返還ということだから、これだけ取り上げるのかもしれぬけれども、向こうからいえば東京あるいは本土に従来置いておいていただいたって、自分のほうはお願いし得る施設であったつもりだというわけでございまして、たまたま沖繩にあるものですから、返還と関連して、日本ではたいへんわれわれに対して反対である、こういうふうに向こうは言ったり、そういうふうに向こうは理解しているわけです。その根拠となっているのが、いまおあげになりました西ドイツとかセイロンとか、あるいはイギリスその他数カ国あるようでございます。そしてそれはどういうふうになっているかといいますと、国と国によって多少違うようですけれども、原則的にはアメリカと当該の国との間の協定をもとにしておりまして、その協定によって電波を出すことを当該国では認めておるようでございます。そしてアメリカ側からいえばそれが支障なく運営されているのである、かような説明でありますことは事実でございます。
  53. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 先ほど来の大臣のおことばをかりれば、こういったこともあるので時間を少しいただきたい、こういうふうなことだと思いますけれども、いずれにしても先ほど来申しているような各国々、他国の前例に従うということはないと思うのですが、そういう意味においてもっと主体性を持った交渉というものを、さらにひとつ続けるべく御尽力をいただきたい、このように要望しておきます。  最後は昭和四十四年の二月十七日の外務委員会でございますけれども、愛知外務大臣は沖繩施政権返還について、「戦争で失った領土話し合いで解決する、これは外交上の新しいパターンである、」このように御答弁されておるようです。またせんだっての新聞報道によりますと、ジョンソン国務次官がある報道関係者との会談で米国として平和的な話し合い領土返還を実現する先例がない、このようにもジョンソン国務次官は述べております。私は、こういった表現、またこれの認識といいますかこういったものは絶対に誤りであって、承服することができないわけです。したがって、大臣が沖繩施政権返還の問題を領土の問題と考えておられるかどうかをまず明らかにしていただきたいわけです。したがって、沖繩の施政権が日本に復帰したことを、日本領土である沖繩が日本に返還された、このように認識をされておられるかどうか、この一点をまず伺いたいと思います。
  54. 井川克一

    ○井川政府委員 あるいは私質問を取り違えましたかも存じませんで恐縮でございますけれども、沖繩は御存じのとおり平和条約第三条で施政権がアメリカにあるわけでございまして、いわゆる潜在主権、いうものは常に日本国が保持しているところでございます。その施政権が今回の返還によりまして日本国に返ってくる、したがいまして潜在主権が完全な主権となる、こういうことと政府は常に了解しております。
  55. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 いまお答えありましたように、沖繩の地位というものは平和条約第三条、これで述べられているわけであります。しかしわれわれこの第三条に承服するかしないかということは別として、あくまでも政府立場に立って論を進めるわけでありますけれども、やはり沖繩が国連の信託統治に置かれるまでの間暫定的にアメリカが施政権を行使する、こういうことであって、わが国領土である沖繩がアメリカに割譲されたとかあるいは日本国領土アメリカに移転してしまった、そういうことではないはずであります。ダレス自身がやはりこの潜在主権は日本にあるのだ、このようにはっきりと言っていることからも、これは明らかだと思います。だからこの沖繩問題は沖繩という領土、この領土アメリカ日本に返還するというのではなくて、現在までアメリカが行使していた施政権というものを日本に返還するんだというお答えがいまありましたけれども、こういう問題ではないかということをもう一度ここではっきり認識をしたいわけですが、大臣が昭和四十四年二月十七日に言われた「戦争で失った領土」というのは一体どういうことでおっしゃったのか。もう一度ここで明確にしていただきたい、こう思うのですが……。
  56. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、しかし実質的にはいまでもそう思っております。とにかく信託統治にいつ付せられるかは別問題として、それまでの間は、ことばは悪いかもしれませんが、施政権がアメリカに取られていたわけですから、それを戻してくるということは、実質的に私は話し合い領土問題が解決したと言うことに何らやぶさかでない、かように私は考えております。
  57. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 これは沖繩施政権返還というものがいま一番問題になっているわけですけれども、これを領土の返還だ、こういった認識に立つということは基本的には私はやはり誤りである、表現上何げなくおっしゃったのかと思いますけれども、この辺がやはり大事だと思います。こういった基本的な誤りによってジョンソン国務次官の発表に代表されるように、アメリカが沖繩の返還をあたかもアメリカの植民地かあるいは属領を日本に返してやるんだというような、そういう錯覚から、現在の施政権返還でわが国に対して不当かつ過大な要求を押しつけてくるんじゃないか、こんなふうに発展していかざるを得ない、こういうことになりますけれども、まことに遺憾ながら、いま大臣の御答弁にあったように、いまだに誤った原点に立っておられるように私には思えてならないわけです。いまからでもおそくはないわけで、沖繩施政権返還の問題は領土の問題じゃないんだ、そしてアメリカが暫定的に行使しているところの施政権を正当な行使者である日本政府に返還させるんだ、わかりきったことかもしれませんけれども、この認識をさらに先方に改ためさせていかなければならない、このように思うのですが、大臣いかがでしょうか。
  58. 愛知揆一

    愛知国務大臣 問題は二つあると思います。私は、ですから正確には、日本政府考え方あるいは条約上の問題としては施政権返還ということばを常に使っているわけで、先ほど私はいまに至るも同じだと言いましたのは、実質的というか常識的にそう言っているわけで、いつまでもこの状態が続いておればたいへん困ったことになる。これは向こうが返すと言わなければなかなか返すことはできなかったわけです。それが話し合いで解決したことは喜ぶべきことである。これは確かに喜ぶべきことであるという認識は私は絶対に変えません。  それからもう一つ角度は、これからの返還協定について要するに心配しているようなことのないように、当然返すものを返すのだという前提に立っておられるわけでありますけれども、日本側として多くの人がまあまあこれならよかったと言われるような条件で条約をつくれ、こういう御激励であると承りますから、その御激励にこたえるようにこれからも大いにがんばりたいと思います。
  59. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 私もいま大臣が御答弁になられたとおり、非常に喜ばしいことであるということに立ってのいろいろ御質問を行なってきたわけです。  時間もないので最後に移りたいと思いますが、こういう要するに錯覚というのでしょうか、領土ということばを外務大臣立場においてどこかでやはり使われる。領土ということばの使い方はいろんな使い方があり、意味もありますけれども、使い場所とそれからどういう問題について話された中に領土と表現されたかというような問題、したがってそういう点がやはりアメリカとしても、そこまで私は言いたくないけれども、領土という錯覚、そっちのほうにずっと引っぱっていくような、またそれをジョンソンもそのままそっくり領土の返還というようなニュアンスで言っているようなそういう錯覚の問題に発展する危険性というものは多分にあるのじゃないか、こういう点から実はいろいろ伺ったわけです。だからこういう正しい原点に立って交渉を行なってこそ、私はアメリカ側の、しいていえば不当かつ過酷な、こういうふうなことばをここで使いたくありませんけれども、そのような要求に対してむしろ正々堂々と拒否すべきものは拒否できるのじゃないかというような気持ちがしてならないわけです。現在の認識に立つ限りは、やはりどうしてもアメリカ領土の恩恵的な返還というようなことで、これからもなおそういった不当な要求を日本政府に押しつけてくるかもしれないという気持ちから、こういうただいままで申し上げてきたような問題に触れたわけですけれども、要するに二十五年余りにわたる異民族の支配のもとに、政治的あるいは経済的に民族の誇りもしいたげられながらも返還を念願してきたこの沖繩県民が、漏れ伝えられるところによりますとこの返還協定には非常に不満である。何も条約締結の段階ではありませんけれども、現時点において非常に不満を示し、返還協定粉砕だというような憂慮すべききざしも現地では起きつつある、こういうふうに私どもも聞いております。政府はこの事態をよくひとつ再認識をしていただいて、また私は別に文句をつけているわけではございませんけれども、今後とも対米折衝に大いにがんばっていただきたい。御答弁は特に要りませんけれども、最後にこのことを強く要望いたしまして、時間も参りましたので、質問を終わりたいと思います。
  60. 田中榮一

    田中委員長 曽祢益君。
  61. 曾禰益

    ○曽祢委員 私は、よくいわれるアメリカ中国との関係が非常に雪解けが速くて、日本がむしろあっと言わされるように米中関係が非常に改善のスピードが速くて、日本のほうがむしろおくれている、一般的にそれほど現時点において日米関係が日中関係よりも進んでいるとは考えておりません。ですけれども、最近のいろいろな現象の中に、確かにアメリカ政府として中国関係の打開といいますか改善といいますか、これに相当、従来より以上に本腰だなという感じがする事態が若干あると思うのです。なかんずく、四月二十八日に、国務省のスポークスマンが新聞記者会見におきまして述べました内容が――実はこれは正確なコピーを外務省にけさお願いしたのですけれども、いまアジア局長が持っている以外にないという、こういう取り扱いはどうも困るので、われわれがこういうことを申し上げたらコピーぐらいはすぐできて、むしろそんなものは要請されなくとも、あれだけ新聞をにぎわした問題について、外務委員のほうには外務省のほうから積極的にコピーぐらい送ってもらいたい。これははっきり外務大臣に要求申し上げておきます。あとで御答弁願いますが。  そこで、これは新聞の報道ですから、私もさっき議事録的なものを一覧はさしていただきましたけれども、要約すればアメリカ政府台湾の主権の帰属というものはまだ国際的にきまっていない、それはやはり国際的な決定が下されるかあるいは北京政府及び台湾政府と面政府話し合いで平和的に解決されるならそれでもかまわぬのではないか、こういったような趣旨を含んだかなり注目すべき発言であったと思うのです。ただし、この問題がその後の発展におきましては、翌日の大統領の記者会見においてはだいぶ水をかけられたような発言もあったようでありまして、中国と国民政府との直接の話し合いなどは全く非現実的である、こういうふうに言ったと伝えられております。これも実はコピーがほしいのでありますけれども。要は、おそらくブレイ氏の発言というものは原則を述べたのだろうと思うので、それが政治的の現実として、いずれもお互いに全中国の支配者を争っている両政府の間に、台湾帰属というと――そういうことばすらがおこられるのでしょうけれども、そういうことを話し合いせよということは非現実的であることは、現状においては確かにそうだと思うのですね。しかし、そういうようなある程度の是正といいますかあるいは政治的の否定があったにせよ、私はこれは国務省の一つの原則的な立場としてはかなり重要な態度表明ではないか、かように考えますので、まず事の真相とこれに対する外務大臣の評価をお伺いしたいと思います。
  62. 愛知揆一

    愛知国務大臣 最初の資料、ことに公開のクエスチョン・アンサーなどの資料についてはお話のとおりで、外務省にあるいは行き届かなかったことがございましたらさっそく是正いたします。  それから、アメリカの対中国政策も、お話を待つまでもなくいろいろの動きが出てきていること、それからその評価として、私は必ずしも、その意味も控え目におっしゃっていただいたわけですけれども、私はその点をたいへんありがたく思うのですが、必ずしも日本より進んでいるわけでも何をしているわけでもないと思います。先ほど戸叶委員に率直にお答えいたしましたように、中には私の考え方をだいぶ取り入れているところもあるように思いまして、むしろ恐縮に思っているくらいです。  ところで、今回の国務省の新スポークスマンの質疑応答ぶり、それからそのことが大統領の会見で、水をかけられたという御表現がありましたが、多少ニュアンスが違っておったというようなことは、アメリカでもいろいろ複雑な要素がある問題でございますから、先ほどこれもお答えいたしましたように、最高の政策決定はまだされていない、そのことをこういうところでも如実にあらわしているのではないだろうかと思います。注意深く見守り、また相談すべきことは先ほど申しましたように相談し合いまして、日本としても間違いのない道を歩むようにいたしたい、かように存じます。
  63. 曾禰益

    ○曽祢委員 私の先ほど申し上げたことをさらにふえんして申し上げますと、たとえばいかにピンポン外交がはでに行なわれても、やはり日中間においては、政府協定ではないけれども――そこに問題はあるけれども、九億ドルをこえるような貿易も行なわれ、記者の交換も行なわれている。何千という日本人が、これはやや一方交通のきらいがありますけれども、中国をたずねている等々の関係からいいましても、決して日本のほうが全般としてはアメリカの対中関係よりおくれているとは思いません。ただ最近の政府態度を見ておりますと、確かに問題の複雑な関係もあって、日本政府のほうがオールストップになっておるのではないか。アメリカのほうはとにかく相当顕著に前進を始めた。これはかなり顕著じゃないかと思います。たとえばこの問題にいたしましても、先ほどから同僚戸叶委員が突っ込んでおられる台湾帰属についても、確かに私個人の感じからいえば、外務大臣の言っておられる国民政府との条約論からいっても、日本領土権を国民政府にすら認めていないのだ。サンフランシスコにおいて放棄したままだ。放棄したことを日華平和条約の中で確認しただけで、だからこそ付属交換公文では、現に支配する云々という、要するに事実上支配しているという関係を認め、あとは法律的に放棄しただけだ。すなわち日本としては、国民政府との条約にもかかわらず、国民政府にすら領土権を確認していないのだ。いわんや大陸中国に対して領土権の問題について確認するも確認しないも、何もできやせぬじゃないか、発言権がないのだという法律解釈は確かに一つの法律解釈であるけれども、いささか逃げ腰にすぎるので、事実上は一時的にせよ国民政府に支配権を認めたような条約を持っているのだと私は考えている。それから歴史的にいえば、いわゆるリパブリック・オブ・チャイナ、それを訳し方によっては中華民国に、放棄された台湾及び澎湖島は返すのだということが、やはりカイロ宣言以来の趣旨であったわけですね。その意味ですから、日本は放棄した以上、もう一ぺん日本に返そうと思ってみたり返すのがしゃくだからなるべく独立させようと思ったり、どっちの政府にあれするというようなことは慎むべきだという議論もそこから出てくるので、やはり全般としては中国という民族国家に返るのが自然であるという態度は一貫して変わらない。ただ両政府が争っているし、もう一ついえば、何年間か長い間日本の植民地になっておって、それから二十五年も事実上本国から分離されているから、住民の意向まで聞かなくていいのかという問題が、単に両方の支配を主張している政府関係だけでいいかという問題が背後に一つあるでしょうけれども、いずれにしても日本側が支配権を主張しようなんという野心を持ってはならないのだ。中国という民族国家のワクの中で解決さるべきだという基本的な、政治的な姿勢は当然あっていいと私は思うのですが、余談のようで恐縮ですが、そういうような観点に立って日本台湾領土権に関する非常に慎重過ぎるというか、態度をとっている。一方アメリカの今回の態度はかなり、私は、もしそのとおりに政策になれば、これは思い切った転換ではないか。これは、日本と国民政府との関係は平和条約関係だけであります。しかしアメリカと国民政府との関係は、五四年のいわゆる相互防衛条約ができているわけですね。その経緯から見れば、日本以上にアメリカのほうは、通常は――こう言いましょうか、朝鮮動乱までは、アメリカのほうも、北京政府のほうに、大体支配を認める方向に進んでおった。アチソン国務長官が、台湾はもうアメリカの防衛の範囲から除いてしまった。朝鮮半島もそうでしたけれども、そういう態度日本との条約ができれば、日本との条約のときにきまるかもしれないでしょうけれども、国際条約できまる以外は、アメリカとしてはノータッチというくらいなつもりだったと思うのですけれども、それが朝鮮戦争以来態度が変わって、ついに五四年の条約では、これはいろいろの読み方はあると思いますけれども、私は、この条約を率直に読めば、はっきりとこれは国民政府領土権を認めている条約に間違いないと思うのです。たとえば、これを読んでみましても、第二条なんかに非常に重要だと私は思うのですけれども、これは第五条による条約のほんとうの直接的な相互防衛の義務の発生は、この第五条にあるように、西太平洋における一方の領域に対して行なわれる武力攻撃の場合にだけ発動するようになっておりますけれども、第二条なんかを読んでみれば、「武力攻撃並びに締約国領土保全及び政治的安定に対して外部から指導される共産主義者の破壊活動に抵抗する個別的及び集団的能力を、維持し発展させる。」だから目的からいえば、外部から指導したいわゆる謀略、撹乱、内乱、それに対してもお互いに協力し合って守っていくという精神になっております。しかし第五条によれば、直接に発動する防衛の義務は、これは武力攻撃に対してのみになっているようであります。これはいいんですけれども、第二条と第五条を受けて第六条は「第二条及び第五条の規定の適用上、「領土」及び「領域」とは、中華民国については、台湾及び澎湖諸島をいい、アメリカ合衆国については、その管轄権の下にある西太平洋の諸島をいう。」こういうふうに考えれば、これは吉田さんが苦心してつくった日華平和条約とは格段に、だれが何と言おうと、この条約によれば領土と認めていることは一点の疑いもない条約です。一たんこれだけのはっきりした態度で、五四年の条約によって、実際上は国民政府の領域であることを認めているのに、国務省のスポークスマンが、むろんこれはかつて五〇年ごろに言ったことでしょうけれども、日本と連合国との平和条約によってきまるだろう。そういう意味で、国際的な取りきめによってきまるだろうとか、あるいは今度は、最近どこから持ってきた議論か知りませんけれども、政治的に、暴力でやられちゃ困るし、武力の発動があれば、アメリカとしてはおっとり刀で国民政府を助けに行く義務があるけれども、平和的に話してくれるならば、領土はどっちに行っても、主権はどっちに行ってもかまわぬのだということになると、それは先ほどの話じゃありませんが、北京政府側からほめられないことは初めからわかっているけれども、むしろ台湾政府のほうがびっくりしただろうというくらい、かなり大きな政策転換になるかもしれないきわめて重要な、法律的立場が非常に変わってきているという感じすら抱くのですが、その点は一体どうお考えでしょうか。
  64. 愛知揆一

    愛知国務大臣 米華条約台湾の地域に対する領土権を実際上きめているという御解釈、これも一つの御見識だと思いますけれども、通例の例を引くわけではございませんが、他国間の条約について、第三国の外交当局者、責任者が何らかのコメントをすることは控えたほうがよろしいと思いますから、あえて申しませんが、ただ、先ほど来いろいろな角度からお話しのように、アメリカの対中政策というものも非常に変わりつつある、かつ、急速に流動しつつあるということは、全体の雰囲気のうちから認めざるを得ないのではないかと思います。それから政府といたしましても、先ほど申しましたように、両国政府とも、最高の政策としての方針の決定というようなことはいまだしではありますけれども、当然、友好国関係といたしまして、ワーキングレベルの、自由な意見の交換やその他は行なっておりますことはそのとおりでございますが、それらから見ましても、いろいろの点で、何か国際情勢の緊張の緩和と申しましょうか、そういう面から申しましても、アメリカとしても何らか新しい道を見つけたいというので模索しておることはよくわかるような感じがいたします。
  65. 曾禰益

    ○曽祢委員 おそらく外務大臣の御返答はそうだろうと思う。アメリカと国民政府との条約の解釈を日本外務大臣に伺うのは筋違いだと思うのです。ですから、そういう意味ではございませんが、だからこういうふうに伺ったらいいかと思うのですけれども、少なくともブレイ氏及びその補佐官がやった国務省における記者会見において言いました中で、北京及び国民政府話し合いで解決するのならば、領土権がどっちになってもかまわない、アメリカとしては領土権については国民政府にコミットしてない、あるいは他のどこの条約にも領土権についてはコミットしてないという点については、いま私みずから引用いたしました大統領の水かけにかかわらず、やや訂正的な発言にかかわらず、これは政治的に、不必要に国民政府等を刺激したくないとか、あるいは少なくともそれは現在言うのは早過ぎるとか、機が熟さないという政治的判断から、そんなことはできそうもないじゃないかと言ったけれども、しかし同時にトライアルバルーン、観測気球であったかどうかは別として、国務省のスポークスマンのその解釈ですね、法解釈としては、アメリカは国民政府に対して領土権をコミットしてない、五四年の条約では、ですね。武力攻撃から守ることはむろん――この点は、はっきりしておりますね。平和的でなければいかぬぞ――これはそうだ。しかし、領土権に対するコミットメントはしてないのだ、したがって話し合いによって解決の余地があると、こう言ったことは、これは私は、その点自身は国務省なりあるいは大統領府を含めて、その法解釈については否定されてないというふうに考えていいのでしょうか。これをどう評価するかは別ですが、これは非常に重要だと思うので、これは当然外務省は情報網をお持ちで、これだけ重要なことは、念のために在ワシントン大使館にもお問い合わせになっているかと存じますが、そこの手のうちはどうでもいいですけれども、外務大臣が現に得ておられる情報判断によれば、その重要なアメリカの国務省の法解釈はどうなっているのか、これははっきりしていただきたい。
  66. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点については、もう少し何か次元の低いところからもお話ししたほうがよろしいかと思いますけれども、それはさておきまして、国務省といいますか、アメリカ政府といたしましては、台湾あるいは澎湖島を含んで言っていることはもちろんですけれども、これの帰属の問題とそれから台湾の国民政府北京政府との間の紛争、一つ中国問題をめぐるこれとは別個の問題として、さい然と区別しておるということが、アメリカ国務省の立場であるということを日本政府に対しても申しております。これが現実の状況でございます。
  67. 曾禰益

    ○曽祢委員 わかったような感じですけれども、もう一ぺんはっきりしておきたいのですが、外務大臣が得ておられる情報及び判断からして、国務省のこの法解釈、条約が武力攻撃に対してだけ向けられているというのは、私はそうだろうと思う。かりにこの条約が第二条にかかわらず、たとえば内部にクーデターでも起きて、あっという間に成功してしまえば、私は台湾を防衛に行く必要すらなくなる条約じゃないかと思うのですが、いずれにいたしましても、この条約は、国民政府領土と認められるほどの支配地に対する武力攻撃に対しては、非常にコミットしておりますね。しかし、それにもかかわらず、今度の国務省の発言によると、これは領土権の確認条約とは認めないということにすらなるわけです。したがって、台湾領土としてあるいは場合によってはその意味独立国としていくことも含めて、台湾に関する領土及び帰属というものは、最終的にはアメリカはどこにもコミットしてない、五四年の条約によってもコミットしてないという解釈をとっているのではないかと思うのですけれども、それに反するような、完全に否定されているのか、その点はどうなっているかということだけをお伺いすればけっこうなんです。あるいはこれからさらに調査中であるでもけっこうですけれども……。
  68. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は、ただいままで私どもが得ている情報としては、米華条約上の領土権帰属には触れていないんだ……(曽祢委員「この説明がですか」と呼ぶ)はい、触れておりませんということでございます。  同時に、セキュリティー上のコミットメントについてはこれを守っていかなければならないということを強調といいますか、それを言っておるのであって、今回の質疑応答といいますか声明は、領土権という問題については何ら触れておりません。そういうことを国務省側の見解として受け取っております。  なお、しかしただいまもお話しのように、これは将来の政策の転換との関連という点からとらえれば、非常に大きな点でございますから、また十分米側の見解というものもフォローアップしてまいりたいと思います。
  69. 曾禰益

    ○曽祢委員 これが最後です。だから私もちょっと読んだところによりましては、全く平和的に話し合いによって何とかうまくやってほしい、武力攻撃だけは問題だぞという点に重点が置かれているようにも思いますけれども、しかし領土権ということにこだわった質問がありまして、おまえ、まだ国際的にきまってないのに、それだったら一体アメリカは、いわゆる国民政府があそこを不法に占拠しているというのかという質問が出て、それに対しては、いや日本軍が連合軍の話し合いによる無条件降伏の条件として台湾地方においては国民政府の軍隊に降伏することを指令したんだ。したがって、そのときにおった国民政府の軍隊、権力がそのままいるのは非合法でないという苦しい答弁をしたり、そこら辺のところが必ずしも法的に整理されているとは思いません。だけれども、私としてはまだ全部読んではっきり検討していませんけれども、少なくともそのインプリケーション、含んでいる意味というものはかなり重要に――表面は平和的にやって武力攻撃だけは困るぞということをいうけれども、含意は両国の話し合いによって台湾の処分といいますか、帰属というものはきまることに道を開いた新しい解釈に移行しつつあるような感じがするわけです。  ですからこの点は、私も議事録といいますか速記録を全部読んでさらに検討させていただきますけれども、政府のほうでもさらにこの点を確かめて、これは冒頭に申し上げましたように、アメリカがこうだから日本はこうだではなくて、アメリカのすべてが日本より進んでいるとは思わないけれども、この動きだけは非常に重要な動きじゃないかと私は思うので、十分に検討に値するので、ひとつ今後とも検討してもらい、また近き機会においてあるいはさらに御質問申し上げたいと思います。
  70. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど私ちょっと次元の低いところも申し上げなければと言ったのは、こういう意味でございます。  一部報道されておりますように、国務省のスポークスマンがかわりたてであったというような関係もございましょうが、こういう問題の応答について、途中で中断をしてあらためて相談をしてやり直しをしたというようなこともあったようでございますが、いま曽祢委員からお尋ねがあったような、あるいはそのときの会見における質疑に対して、答弁が必ずしもはっきりしなかったために、そこでそういうところを総合いたしまして、国務省の見解はどうなのであろうかというインフォーメーションを求めたのに対して、ただいまのところ受けております情報といたしましては、条約上の帰属には触れていないのである、それからコミットメントは守らなければならないことを言ったのであるという説明になっております。現在はそういうぐあいにいわれております。  なお先ほど申し上げましたように、今後ともどういうふうなことであるのか十分注意して見守ってまいりたいと思います。
  71. 田中榮一

    田中委員長 松本善明君。
  72. 松本善明

    松本(善)委員 私は、沖繩の核兵器の問題を中心に、核のことについて外務大臣にお伺いしたいというふうに思うわけであります。  まず最初に、B52三機が今月の初めに沖繩にやってまいりました。米軍当局はかつてB52再配備の可能性があるということを言っておりましたし、現地ではこれが居すわるのではないかという心配が非常になされております。これは何のために来たのか、いつ帰るのか、そういう点について外務大臣のお考えを伺いたいと思います。
  73. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ちょうど私、東南アジア開発閣僚会議に出たり帰ったりしておりました最中のことでございますけれども、したがって、より正確に事務当局からお答えしたほうがいいかと思いますが、私の得ております報告は、フィリピン沖の一連の沖繩沖に通ずる台風の来襲に備えて、台風避難の意味で暫時沖繩に飛来した、そしてこの台風が去ると申しますか、航空可能の状態になったら直ちに飛び去る、こういうことを受けておりましたが、そのとおりにすでに退去した、かように存じております。正確な日時その他等については、御必要であれば事務当局から説明いたさせます。
  74. 松本善明

    松本(善)委員 このB52の問題についても非常に関心が多いのは、特に四月二十五日付のニューヨークタイムズで、日米間に核秘密協定があるということが報道をされております。原子力潜水艦を含むアメリカの艦艇が核弾頭を装備したまま日本の港に入ること、それから核弾頭を積載した米軍機が哨戒、訓練飛行、あるいは緊急時に日本の基地に着陸することが認められてきたのだということが報道をされた。この点についてはきわめて重大な問題でありますし、ニューヨーク・タイムズが根拠もなくこういう報道をするというふうには私ども考えられない。これは事実かどうか、その点について明らかにしていただきたいと思います。
  75. 愛知揆一

    愛知国務大臣 このニューヨーク・タイムズの記事は、全く事実無根であって、そのことは米政府からも、非常にはっきりと日本政府にも連絡がございます。もっと正確に申しますと、実は米政府のほうにこういう記事が出るかもしれないということがリークをして、もし出ても、それは全然事実に反するのであるということの連絡が政府のほうにありましたくらいで、これは全く事実でございません。
  76. 松本善明

    松本(善)委員 国民の疑惑はそう簡単には消えないと思います。このことに関係をして、沖繩の核兵器があるのかないのか、一体これはどうなるのかという問題でありますが、中曽根防衛庁長官は、沖繩の返還時に核を含めて基地の総点検をするということを国会答弁をされました。これは沖繩に核がある、あるいはそれが撤去されるかどうかということについて疑念を持っておるから、こういう話が出たのだと思うのであります。これはあとで取りやめということになりましたが、この点について、なぜ一体これはやめるということになったのか、外務大臣の知っている範囲でお答えいただきたいと思います。
  77. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは松本委員もそのときの状況、予算委員会あるいは沖繩特別委員会等において現に御出席であり、現に御発言もございましたから、私からこの際特に申し上げることもないかと思いますけれども、せっかくのお尋ねでありますからお答え申し上げます。  返還になれば核抜きであり、返還後においては事前協議の対象になるから核が持ち込まれるということはないというのが政府の基本的な姿勢であり、またこれに対してアメリカ側が同意を表明しておることは御承知のとおりであります。しかし中曽根君ももとよりですが、私どもも核というものについては、日本の本土の場合には核がないということは、これはもう国民的な確信ということで理解されているかと思いますが、沖繩の場合におきましては、メースB等についても現にあったことは事実なんでございますから、核抜き、そして核の持ち込みが許されないということをいやが上にも沖繩の方々は御心配になっておられる、非常にそのお気持ちはよくわかる。したがって、ないことを証明するくらいむずかしいことはございませんけれども、政府としても誠意を尽くして、ないということの御説明が十分できるようにあらゆる方法考えましょう。また一時よく議論になりましたが、マクマホン法その他でもって、日本がそういう誠意を尽くそうと思ったってできやしないじゃないかという御意見もありますけれども、それは別問題であるという角度に立って、いろいろ政府としても善処をいたしたいと考えておる次第でございます。ただ、これは同盟国同士の国際条約、慣行、通念等から申しましても、一国の軍隊あるいはその基地の中を権利を持って点検するということはできない。これは日本の海上自衛艦というようなものは核装備なんかしているはずもございませんけれども、かりに他国の港に寄港いたしました場合に、他国の官憲が臨検をする、あるいは点検をするというようなことを要請されたって受けるべき筋合いのものではない、こういう種類の問題でございますから、各個所について権利をもって点検して、その不所在を確認するということはいかがであろうかということで、何かよい方法は――そんなことはあたりまえのことじゃないかとおっしゃるかもしれませんけれども、たとえば、まあメースB等があったというようなところの施設をこちらが、今度は核抜きですから活用できるような場合になって、なるほどこういうところにあったらしいが、こういうふうになっておりますよということをしさいに御説明することも御理解を増すゆえんではないだろうか、あるいは毒ガス兵器の撤去にいたしましても、私は、この間の実験のときにも、本土から派遣いたしました専門家に対しまして十分向こうの施設を見せてもらえたと思っております。その視認したところの現状あるいはその所見というものを日本の責任のある専門的な派遣委員から、こうこうこうでありましたということをしさいにいろいろの機会を通して説明させるということも、これもまた適当なことではないだろうか。いろいろ考えれば方法があり得る、かように存じておる次第でございます。
  78. 松本善明

    松本(善)委員 返還時に核がなくなるのだという言明だけでは信用はできないから、それで中曽根防衛庁長官も点検ということを言いだしたのだと思うのです。二月の二十七日、衆議院予算委員会で中曽根防衛庁長官が言われたのは、「先方と合意が得るならば、わがほうの連絡員その他を派遣して、実際核抜きである、あるいはGBガスその他がないということを確かめて、県民の皆さんに安心していただくということは適切な措置であると私は思うのです。」こう言っておるわけです。権利として、向こうがいやだと言うのに調べようという話でもなかった。それが取りやめになったということは、一体向こうから断わられたのか、どうしたのかという問題が残るわけです。中曽根防衛庁長官でも心配をしておられるその問題について、なぜおやめになったかということの御説明はなかったのです。この点にしぼってお答えをいただきたいと思います。
  79. 愛知揆一

    愛知国務大臣 なぜやめたかではなくて、何とかよい方法をいまでも考えているということをいま申し上げたわけでございます。そしてまた、権利として点検というようなことは、先ほど申し上げましたように、国際条約あるいは平時国際公法その他からいったって、これが通念であり、条約上の各国の慣行である、こういうことからいって、話し合いをしても、それは条約の権利として認めることは相互にできないという筋合いのものではないかと思います。
  80. 松本善明

    松本(善)委員 先ほど外務大臣は、メースBがあった施設を活用しておるので、そういうことが国民に納得されるようになるのじゃないかというような話もありました。メースB以外にも核兵器が、沖繩にどういうものがあると考えておられるか、お答えをいただきたい。
  81. 愛知揆一

    愛知国務大臣 返還のときには核抜きになります。
  82. 松本善明

    松本(善)委員 現在何があると思っておられるかということをお聞きしております。
  83. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは返還のときに核抜きになれば必要にして十分でございます。それが政府態度でございます。
  84. 松本善明

    松本(善)委員 私は、四月の二十九口から五月の五日まで共産党の国会議員団の沖繩返還協定問題調査団の一員として沖繩に参りました。そしてすでに発表いたしまして、新聞でも報道されておりますので、外務大臣、御存じではないかと思いますが、第十八戦術戦闘機大隊司令部に、その一つの部門として、核兵器安全点検室というものが置かれてあります。これは嘉手納の基地の八百七十六号ビル内にあるということであります。この点につきまして、外務省は調査をされましたでありましょうか。
  85. 愛知揆一

    愛知国務大臣 松本委員の所属される日本共産党が、公党の名において調査報告を発表されたのですから、政府といたしましてもこれに対しては重大な関心を持っております。政府としては、いまのところ何とも申し上げられません。十分関心を持ちまして、政府としていずれ日本共産党に対して事態を明らかにお答えすることもあろうかと思います。要するに、われわれといたしましては、返還のときに核抜きで返還をしてもらう、これを貫きたいと思っております。
  86. 松本善明

    松本(善)委員 私の手元に資料があります。それは、米軍の電話番号簿の写しであります。この電話番号簿は一九七〇年の末につくったものでありまして、オフィシャルなものであります。私どもは、それが現用のものであるかどうかを調査で確認をしてまいりました。それの一〇二ページには、嘉手納の基地の第十八戦術戦闘機大隊の部分が載っております。その中で八七六ビル、この中に六つのセクションがある。そしてその最後に、ニュークリア・ウェポンズ・セーフティー・オフィサー、四局の四一五一という電話番号が載っております。こういうものが存在をするということは、私は、これは明白に嘉手納の基地に核兵器があるという証拠ではないかと思いますが、外務大臣はどうお考えになりますか。
  87. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、先ほど申しましたとおり、公党として責任を持って内外に御発表になったのですから、政府としては重大な関心を持っておりますし、軽々に扱うことはいかぬと思っております。したがって、それ以上のお答えは私は今日すべきではないと思いますけれども、現在のところ政府として承知しているところを、しいてお尋ねですから申し上げますが、これは御承知のように、横文字でいえば、ニュークリア・ウェポンズ・セーフティー・オフィサーというものの駐在はいたしておる。これは、そのオフィスの電話番号も電話帳にも出ております。そしてそれは、核兵器に関するいろいろの緊急事態が起こるようなときにそれに対するインフォーメーションをとり、そしてまた司令官にアドバイスをすることがその職能である。それで、そのことが沖繩における核兵器の存在を示すものではございませんというのが私どものただいま得ておる情報でございます。
  88. 松本善明

    松本(善)委員 私の手元にもう一つの資料があります。これは一九六七年の九月版のやはり電話番号簿でございます。これは第四百九十八戦術ミサイルグループのものです。これは先ほど来外務大臣が言われたメースBの部隊であります。この部隊にもやはり同様のところがある。チーフ・オブ・セーフティー・ニュークリア・セーフティ、核兵器安全点検主任というものが置かれてあります。これは、核兵器のあるところに必ずこういうものがあるわけです。メースBはもちろん撤去をされておりますけれども……。このことによりましても、核兵器安全点検室がありますならば、そこのところに核兵器があるからそういうものがある。私は、これは政府のほうで外務大臣があえて否定をされるというのはおかしいのじゃないか。これは米軍に確かめられたのでありますか。
  89. 愛知揆一

    愛知国務大臣 日本政府が米軍と緊密な連絡をとっておりますことはいまさら申し上げるまでもございません。そして、私は先ほど、本日のところは、日本共産党はそう思っておられるんだけれども、私としてはそれに対して、ああ言えばこう言え、ああ言えばこう言えとおっしゃるから、私はきょうはこれに対してはお聞きするだけにとどめておきたいと思いましたが、しいてお尋ねですから申し上げたとおりでございまして、松本委員那覇に行かれましてのいろいろの御行動、アメリカ側との御接触等についても私は承知いたしておりますが、私はとにかく多くを申しません。返還のときには核抜きでりっぱに返ってまいります。
  90. 松本善明

    松本(善)委員 しかし、これはそう返還のときはというだけでは済まない問題であると私どもは思います。先ほどでも外務大臣はメースBのことだけしか言われませんでした。このほかにもたくさんの国民の目に隠された基地があるということを、私どもは国民の前に明らかにしなければならない、それがこの国会の義務でもあり、政府の義務でもあろうと思います。これは、私は、外務大臣に、米軍に調査をして、明確に次の機会に答えてもらいたいと思うのでありますが、これは軽視すべからざるものであるということのためにひとつ申し上げておきますが、第七心理作戦部隊につきまして、サイミントン委員会で明らかになりましたのも電話番号簿からなのであります。これは外務省からもらった資料の一三六三ページあたりに出ております。ポール委員が第七心理作戦部隊についてピンカス専門員に聞いているわけです。在日米軍の電話番号簿でこれを発見したのかというのに対して、ピンカスさんは、「私たちは第七心理作戦部隊について全然教えてもらえなかった。在日米軍の電話番号簿を読むことによって日本本土にその出先機関を持っていることを知った。」さらにピンカスさんは、「在日米軍は独自の電話番号簿を持っている。電話番号簿に軍当局はすべての部隊の名前までちゃんと出している。電話番号簿に出している部隊を押え、われわれのために用意された説明をチェックしていったら、どの基地について説明してくれないのか知ることができた。この心理作戦部隊もその一つである。それで特別の説明を求めた。」こういう答えをしておるのです。私は、当然に政府はこの核兵器安全点検室の問題について、沖繩における核の存在について明確に国民に明らかにする必要があると思います。私の提供いたしましたこの資料に基づいて米軍に調査をして、次回にお答えいただけましょうか。
  91. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これにつきましてのみならず、沖繩の米軍につきましては、現在実態の掌握につとめておるということは、前々から申し上げておるとおりでございますから、十分今後とも実態の掌握にはつとめます。
  92. 松本善明

    松本(善)委員 それからもう一つ伺いたいのですが、この第十八戦術戦闘機大隊というのはF105の部隊であります。F105は核弾頭を装備できるものでありますが、その点について外務大臣の御認識はいかがでございましょうか。
  93. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまちょっと担当の局長が米側との交渉のためにこちらへ参っておりませんので、いずれお答えをいたします。
  94. 松本善明

    松本(善)委員 私は、沖繩における核の存在というのは明白であると思います。この沖繩返還にあたって核の撤去を国民に確認をさせるということができますか、この点について伺いたいと思います。
  95. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは先ほど申し上げたこと以上にお答えはできません。たとえば希望者を募って核兵器がないことを見せろといわれましても、ちょっとこれは現実の問題としてはいかがでございましょうか、私はさようなことは少なくとも適当な措置とは思いません。
  96. 松本善明

    松本(善)委員 私はそういうことでは国民は決して納得しないと思いますが、付随的なこととして一つ外務大臣に伺い、また要望しておきたいのですが、このサイミントン委員会議事録というのは、いまも引用いたしましたが、これは日本の今後にとっては非常に重要なものであります。このもの自身もまた一部であります。これは翻訳文を、先ほども曽祢委員から、資料を外務委員会に提供するということについてもっと真剣にやれという話がございましたけれども、この翻訳文はいつまでたってもよこさないのです。言を左右にしてよこさない、こういうことは積極的にやるべきではないかと思いますが、外務大臣いかがでしょうか。
  97. 愛知揆一

    愛知国務大臣 サイミントンの議事録はお配りしてあるはずですが……(松本(善)委員「翻訳です」と呼ぶ)翻訳ですか、これは非常に大部なものでございますし、それからえてして、私はよく注意しているのですけれども、仮訳というようなものを出しますと、外務省の訳し方はこういう意図的にてまえがってに訳されるというように非常にしばしばおしかりを受けるものですから、十二分に点検しない以上は私は翻訳は出してはいかぬと言っておりますから、そういうことであるいは手間がとれているかもしれません。至急に出させることにいたしますが、その際は万一好ましくない訳語がありましても、私まで御注意をいただいて、あまり公の問題になさらないようにしていただきたいと思います。
  98. 松本善明

    松本(善)委員 私はその訳を出すということについての積極さは一応認めますけれども、もうずいぶん時間がたっております。それでこの訳を出すということは、外務省がこれについてどう考えているかということにもなるわけです。もちろん仮訳もいいかげんな訳を出してもらってはとんでもないことだと思います。やはり外務省が責任をもったものを早く緊急に出す必要がある。これをひとつお約束をいただきたいということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  99. 愛知揆一

    愛知国務大臣 資料はできるだけ督促いたしまして、早急にお配りいたすようにいたします。      ――――◇―――――
  100. 田中榮一

    田中委員長 引き続き、第四次国際すず協定締結について承認を求めるの件及び関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許を修正し又は撤回するためのアメリカ合衆国との交渉の結果に関する文書締結について承認を求めるの件、以上両件を議題として審査に入ります。  質疑申し出がありますので、これを許します。戸叶里子君。
  101. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ただいま議題になりました二つの条約につきまして、質問をしたいと思います。  まず最初にお伺いしたいのは、関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三十八表に掲げる譲許を修正し又は撤回するためのアメリカ合衆国との交渉の結果に関する文書ですが、これは一言にいえばチューインガムの外国から入ってくるものに対しては税金を高くするのだ、そのかわりアーモンドとか、それから七面鳥とか、それからペットフードなんかを安くするのだということなんですけれども、何かこの中で私どもが解せない問題がいろいろあるわけです。たとえばチューインガム譲許率を、特に外国から入ってくるのを引き上げなければならないという理由はどういうことでしょうか。と申しますのは、総理が先ごろの閣議で、貿易自由化遂行にあたって関税引き上げは遺憾である、こういうことをはっきり言われているわけですけれども、その直後に、そういうことをかまわずにこの税金だけは引き上げるということをおっしゃるので、私はちょっと解せないのですが、チューインガムの輸入税を上げようとする意図はどこにあるのか伺いたいと思います。
  102. 小山田隆

    ○小山田説明員 お答え申し上げます。  政府は三年前から自由化を促進するという方針をきめまして、いろいろな品目につきまして自由化の努力を続けております。もちろん自由化を実施する場合、国内産業上種々困難があるということはわかりますが、その困難さは企業の努力によって解決すべきものである、克服すべきものであるというふうに考えておりまして、自由化に伴う関税の引き上げというものはできるだけ避けたいと考えております。しかし政府としましても自由化を一そう促進するにあたり、やむを得ない場合、これはいろいろございますけれども、国内産業が外国のものに比して競争力が弱いというような場合には関税上の手当てを行なって、それによってある程度の保護を行なう。しかしそのために自由化の効果を無効化しないという方針でやっております。  いまの御質問の具体的なチューインガムの場合を例にとりますと、わが国チューインガムは、御承知のように戦後初めてできた産業でございまして、その経営基盤は非常に弱いものでございます。またチューインガムで一番大事な原材料、あのガムをかみますとねちゃねちゃするもの、これがアメリカの場合には天然のチクルを使っております。ところが、この天然チクルはメキシコあたりでできておりまして、その相当部分というものはアメリカの商社に買われておりまして、わが国では十分その原料を入手することはできません。そのためにやむを得ずわが国では合成品、具体的には酢酸ビニールでございますけれども、合成品を使用しておりまして、どうしても品質上の格差もございます。それからチューインガムで大事なもののもう一つは香料、フレーバーでございますけれども、その香料をなくさないための包装技術、これもまだわが国のものはアメリカチューインガムに比べますと十分な包装、香味を保つ手段を持っておらない。そのために国際競争力が十分強いとまだ言い切れないので、自由化はする、しかしある程度の保護をこれに与えるということで関税の引き上げ、自由化をそこなわない限度での関税の引き上げに踏み切りたいと思っているわけでございます。  なお、関税引き上げ以外の方法があるのではないかという御質問もあるかと思いますけれども、ガットの規則でも、まず自由化をやる。数量制限をなるべくしないということは、これはもうガットの大原則でございまして、自由化をやる場合には、まずその保護する場合には関税その他の課徴金をもってこれの保護をするというのが原則でございますので、わずかの関税を上げることにしたいというふうに考えております。
  103. 戸叶里子

    ○戸叶委員 まあ国内のチューインガムの生産を保護するというようなお答えなんですが、それでその理由というのは、経営基盤が弱い産業だからだ、こういうふうにおっしゃったわけですけれども、チューインガム以外にも経営基盤の弱い産業というものはないのですか。チューインガムだけですか、経営基盤の弱い産業というのは。なぜここに目をつけられたのか、私ども解せないものですから、ちょっと伺いたい。
  104. 小山田隆

    ○小山田説明員 お答えいたします。  自由化をするにあたって、各国からいろいろ要望がございまして、その各国の要望をも勘案しながら、同時にわが国貿易増進という見地からもいろいろ検討いたしましてその品目を選ぶのでございますが、チューインガムにつきましては、これはアメリカとしては非常に大きな輸出関心品目でございまして、日本ガットに入りましたとき、昭和三十年でございます。そのときにもアメリカ関税の引き下げを要求しまして、現在の三五%という関税譲許を与えているのでございます。その後も再三アメリカは、チューインガム自由化の要望が非常に強かったのでございます。もちろん自由化をやります場合に、ただ外国の要望だけで行動するわけではございませんけれども、やはり品目の選定につきましては各国の要望も勘案するということでございますので、アメリカとしても非常に希望の強かったチューインガム自由化を行なうということを政府としてきめまして、そのためにある程度の保護を与えなければいけないというので、関税引き上げをやったのでございます。
  105. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私が伺っているのは、チューインガムと同じぐらいに経営基盤の弱い産業は日本にはないのか、こういうふうなチューインガムと同じぐらいに守らなければならない産業というのは全然ないので、チューチンガムだけなのだというふうに理解していいのかどうかということです。時間がないものですから、なるべく簡単に答えてください。
  106. 吉岡俊夫

    吉岡説明員 ただいまの御質問の点でございますが、自由化にあたりまして関税の引き上げ措置はなるべく講じたくないという先ほどの御説明のとおりでございますが、やむを得ないものについては自由化関係で幾つかの農林物資につきましても関税の引き上げをいたす計画かございまして、すでに本議会を通過いたしました関税定率法等におきましても、幾つかの産品につきまして自由化と同時に関税の訂正措置をとっておるものがございます。それと全く考えは同じなのでございますが、チューインガムの場合には、これはガット譲許されておりましたために、関税引き上げのための二国間の交渉を必要とした、そういうことで今回御審議を願ったような形で関税の引き上げをお願いしておるわけでございます。
  107. 戸叶里子

    ○戸叶委員 まあお二人の答弁を合わせてみますと、大体わかったような気もしますけれども、チューチンガムというものを選んだところにいろいろな問題があるような気がするわけです。これはこれからちょっと質問してみたいと思うのです。  それではその前に伺っておきたいことは、日本の国内のチューインガムメーカーの数それからそのメーカーと、市場に占める割合、外国との関係ですね、そういうものの比率を述べていただきたいと思います。
  108. 吉岡俊夫

    吉岡説明員 簡単に申し上げますと、現在日本でいわゆるチューインガム企業と申しますものが二十五社ばかりございます。そのうち十四社が資本金が五千万円、またさらに十五社は従業員が三百名にそれぞれ満たないというふうな、全体としては非常に中小企業の多い産業でございます。その中で大手としましては、ロッテ株式会社及びカネボウハリスの二社が大きいのでございますが、この全体の生産額に占めますこれら二社の市場占有率というものはほぼ八〇%ということになっております。また世界の全体の中で日本チューインガムの生産を見てみますと、大体アメリカ世界で第一の生産国でございまして、四十四年で見まして約千五百億円くらいの生産額がございます。日本が全体で約三百億円程度でございますので、約五倍の生産量をアメリカは持っておる、こういうことになっております。そのほかヨーロッパの国でフランス、オランダ、その他若干の生産国がございますが、この生産量は微々たるものでございます。
  109. 戸叶里子

    ○戸叶委員 チューインガムを製造している大きな企業、日本ではロッテとカネボウということでしたね。ロッテが大体日本の消費の七割くらいを占めておるということを聞いたのですが、そうですか。
  110. 吉岡俊夫

    吉岡説明員 昭和四十四年で見ますと、これは業界の協会の資料でございますが、ロッテが大体三七%、それからカネボウハリスが四二%ということになっておりまして、四十四年はカネボウハリスのほうがシェアは高いのでございます。ただ四十四年には風船ガムと申します新製品が非常に出てまいった関係でこういうことになっておりますが、前年の四十三年を見ますと、ロッテが約五二%、カネボウハリスが二三%ということになっております。
  111. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今回のチューインガム譲許税率を引き上げて、そうしてその代償として、先ほど申し上げましたような七面鳥だとかペットフードとかアーモンドというものの譲許を行なうということでありますけれども、それによって受ける税収面の影響というものはどういうふうになるのでしょうか。
  112. 西澤公慶

    ○西澤説明員 ただいまの御質問でございますけれども、関税収入がどれだけ代償品目に関連して減るかということでございますが、これはいろいろな前提を置かしていただいた上でなければ推定いたしかねるわけでございます。  かりにスイートアーモンドの場合ですけれども、これが四十五年と同じような輸入額があるというふうに仮定し、ペットフードについても、これは過去の推移を見まして、四十六年も同じような輸入があるということを前提に立てます。それから七面鳥の断片にしたものでございますけれども、これにつきましては、過去の輸入の推移を見まして二割程度四十六年には輸入がふえるということを前提に置かしていただきまして計算をいたしますと、スイートアーモンドの場合には約二千三百万円の関税収入の減、それからペットフードにつきましては四千二百万円の減、それから七面鳥の断片にしたもの、これが約三十万、したがって合計では六千五百万円の関税収入の減ということが起こるのではなかろうかというふうに推定いたします。
  113. 戸叶里子

    ○戸叶委員 これを見ますと相当の影響があるわけですね。  そうすると今度はチューインガムの輸入税率を上げるということで、日本に入ってくれば当然輸入チューインガムはいままでよりも高くなるわけですね。それと同時に国内のチューインガムの値も上がるのではないか、こういうようなこともいわれておりますけれども、こういうことについてはどういうふうにお考えになりますか。
  114. 吉岡俊夫

    吉岡説明員 自由化をされますと、価格関係ではいろいろ需給事情その他の事情が入りまして変動する要素がございますので、必ずしもそのとおりに実態が動くかどうかということはわからないわけでございますが、一応私どもが現在の値段のもとに五%関税の引き上げによる影響を推定してみますと、まず代表的な輸入銘柄でございますリグレーのチューインガムというものがございますが、これの五枚入りの小売りの包装になっておりますものが現在標準的な値段として三十円ということになっております。そういうことでございますので、これで五%ということで関税負担の増を計算してみますと、金額にしまして四十六銭、比率で約一・五%ということになるわけでございます。したがいまして、このような程度の負担増を理由にして価格の引き上げを行なうということはおそらくできないのではないかというふうに私どもは見ております。
  115. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、ある程度輸入品も上がらないというふうに見ているわけですか。それから、もちろん日本のものも上がらない。私どもが聞きましたことは、たとえばロッテなどの会社で言っていることは、これから貿易自由化するとチューインガムもたいへんに圧迫されてくるから売れなくなる。これが今度のわれわれの社にかけられた運命の分かれ道だというようなことを言われて、そこの社員の人などはむしろどんどん自由化に入ってくるんだというふうな解釈をしているらしいのです。私はそのことばを聞いて、おや、よそのチューインガムに対しては税金を高くするのになぜそういうことが流布されているんだろうと思って、私は商業政策の一つかなと思っていたんですけれども、そういうことを言っていました。社内でさえもそう言っていました。ですから私は、今度のこの税金を、輸入チューインガムの税率を上げるということに対して、ちょっとわからなかったわけです。しかも、いろいろ世間では雑誌なんかを見ますと、政治的な圧力があったんじゃないかというようなことを言われているわけです。というのは、ロッテの会社には相当の政治家が関係しているとか、あるいはまたロッテで扱っているアーモンドは今度は税率を安くするんだということになりますと、ロッテはたいへん助かりますよね。自分の扱っているところのアーモンドは安くなって、外国から入ってくるものの税金のほうは高くされるということになると、自分の一社が相当守られるような形をとるので、結果的にはそうなっているわけですから、そういううわさも流布されているわけですから、この点についてはどういうふうに考えてよろしいでしょうか。
  116. 小山田隆

    ○小山田説明員 いま御質問がございましたようなうわさというものは、われわれ行政当局としては一切承知しておりません。冒頭に申し上げましたように、国産のチューインガム国際競争力が強くない。しかし、他方自由化は促進したいということで、自由化をそこなわない限度において関税率を引き上げるということにいたしたいときめた次第でございます。なお、アーモンドの関税が下がるからある会社はもうかるではないかという御質問につきましても、これは実はいろいろと交渉の経緯にも入るんでございますが、最初アメリカはアーモンドはあまり興味がない。関税わずか一%引き上げても何にも得るところはないというので反対したんですが、わがほうで非常に強くがんばりまして、ほんの名目的な一%の引き下げにとどまった次第で、むしろこの点は交渉成功だと思っております。
  117. 戸叶里子

    ○戸叶委員 下げる側が下げるほうの品物を選ぶでしょう。何と何と何、それは何を基準としてお選びになるんでしょうか。あまり大衆的なものじゃないですよね、アーモンドについても、七面鳥の断片肉とかペットフードなんというものは。私ら一般の庶民の生活にはあまり関係ないものだと思うのですが、そういうものをお選びになったのは何を基準にしておやりになるんですか。
  118. 小山田隆

    ○小山田説明員 お答えいたします。  このガットの二十八条に基づきます交渉、まず関税を上げたいということを申し出まして、それがガット承認されますと、以前関税譲許した国、それから現在輸入で第一位を占めている国を相手に交渉をいたします。そうしまして手続としましては、まず関税を引き上げられる国、つまりこの場合には、アメリカのほうで代償としてほしい品目を出すわけでございます。それが第一ラウンド。日本は、第一ラウンドでアメリカが出してきました表につきましていろいろ議論をしまして、その間品目がいろいろと変わりますけれども、今回の交渉においては昨年の十月から交渉を始めましてことし二月に妥結した次第でございます。それで七面鳥の断片肉、これはアメリカとして非常に関心が強かった品目で、これは最初から出ておりました。アーモンドは途中でこちらからもどうかと言い向こうからもそれなら乗ってもよかろうということで話がついた次第でございます。
  119. 戸叶里子

    ○戸叶委員 あまりチューインガムの問題等で税金をどうするこうするということは興味がないことなので、特にまたこの条約についてすっきりしたものを感じないような気がしますが、この程度にしておきます。  それからすず協定のほうも、もう五分ぐらいしか時間がないので質問ができるかどうかわかりませんが、ともかく一点か二点お伺いしておきたいと思います。そしてもしあとの問題でどうしても質問したいということが残りましたら次の機会に譲りたいと思いますが、ともかくきょうは一、二点入っておきます。すず協定の中の百二十八ページの附属書Aというのがあるのですが、その生産国が産出するすずは全世界の生産量の何割ぐらいになるかをお伺いしたい。
  120. 小山田隆

    ○小山田説明員 お答えいたします。  一九六九年、一昨年の数字で見ますと、世界すずの精鉱生産約十八万トン、正確には十七万七千トンでございます。そのうち協定に参加しております六カ国の生産額は約十五万四千トンで八七%を占めております。いま御審議願っております第四次すず協定が発効いたしますと、従来輸入国であったオーストラリア、豪州が生産国に回ります。その場合豪州の生産を加えますと全体で協定参加国の生産量は十六万二千トン、つまり約九二%に達します。
  121. 戸叶里子

    ○戸叶委員 次いでその中でマレーシアは世界すずの生産の何割ぐらいになっておりますか。
  122. 小山田隆

    ○小山田説明員 マレーシアは約四割、ちょっと正確に申し上げますと……。
  123. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そしてついでにマレーシアのすず産業に占める英国資本の割合はどのくらいになっておりますか。
  124. 小山田隆

    ○小山田説明員 マレーシアは自由世界すず生産量の約四〇%を生産しております。このすず理事会の統計資料によりますと、一昨年一九六九年には鉱石の生産では約七万二千トン、地金生産は自分の国でできるもののほかにインドネシア、ラオスなどの鉱石を輸入して製錬しておりますので、地金の生産で見ますと約八万七千トンの生産がございます。それからマレーシアにおけるイギリスの資本の活動につきましては、従来のすずはわりあい零細な企業でもって製錬も行なわれておりましたけれども、今世紀の初めにドレッシング法という一種のすずとほかのものとの比重の差を利用して選鉱するという比重選鉱方法が考案されまして以来、非常に大きな資本を要するために、イギリスの資本が、当時マラヤでございますけれども、マレーシアに出てまいりまして、その中で大きな会社が二つございます。イースタン・スメルティング、これはペナンにございます。それからストレート・トレイディング、これはバタワースにございます。この二つの製錬所がマレーシアのすず鉱石のみならず、その周辺の地域あるいは国の鉱石をも輸入しまして製錬をしておりまして、マレーシアの場合にはこの二社で大部分すずの地金ができております。
  125. 戸叶里子

    ○戸叶委員 なぜ私がイギリスの資本の占める割合を聞いたかと申しますと、この協定でたいへん気になるのは、協定がイギリスと非常に密接な関係があるということです。たとえば寄託国がイギリスで、事務所、緩衝在庫、市場、市場価格がすべてロンドンになっている。そして通貨もポンドになっていますね。国際協定だとたいていドルを利用していますけれども、それをしていないということ。そういうことから、このすずに関しましてはイギリスとマレーシアの歴史的な関係が現在も非常に続いているというようなことがうかがわれるわけでございまして、すずというものは事実上イギリスに支配されているというふうに思われるわけですけれども、こういう考えについてはどうお思いになりますか。これを伺いたいと思います。
  126. 小山田隆

    ○小山田説明員 お答えいたします。  確かにいま戸叶委員から御指摘のとおり、すずは事務局もイギリスにございますし、その支払いもポンド建てということになっておりますが、これは別にイギリスが世界すずを支配しているということではないのでございます。  具体的には、このすず協定の運営上、すずの場合には戸叶委員よく御存じの例の緩衝在庫の操作でありますが、この緩衝在庫の操作をする場合にその指標となるすず国際価格、これは世界最大の金属市場であるロンドン・メタル・エクスチェンジで形成されているということを申すことができます。この世界的な市場がロンドンにございます。これは戦争前からございました。  その次に、マレーシアというのは御承知のように戦争前は英国の植民地マラヤでございました。その意味でも非常に関係が深い。  それから現在は多少消費量が落ちておりますけれども、戦前はアメリカと並んでイギリスはすずの非常に大きな消費国であった。その意味すずには関心が深かったということもいえます。  また、そういう関係もございまして、専門家あるいは資料の整備という点ではイギリスが非常に進んでいたということが申せます。
  127. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もう一点だけ伺ってやめますが、私がいまそういうように申し上げたのは、もう一つの例にもあるわけです。  たとえば、文章を引用いたしませんけれども、十七条の(a)項を見ますと、通貨についてスターリング貨または、ロンドンの外国為替市場において自由に交換される通貨というふうに、国際協定なんですからドルにも当然リンクしてしかるべきなんですけれども、ドルにはリンクしてないというようなところから見ましても、イギリスが支配しているように見える、こういうふうに考えるのですが、これはいかがでしょうか。
  128. 小山田隆

    ○小山田説明員 お答えいたします。  確かにこれはポンドという指定はございますけれども、具体的に緩衝在庫の操作などをする場合、これはロンドン・メタル・エクスチェンジでありますからポンドが一番便利であること。それから事務局がロンドンにございますので、やはりいろいろな意味で、各国の分担金の支払いなんかにつきましてもポンドを受け取ることがすず理事会としては便利であるということだと思います。  なおつけ足しますと、たとえば砂糖、それから小麦、どちらも商品協定がございまして、その事務局がそれぞれロンドンにございます。その場合には分担金などはポンド建てになっております。
  129. 戸叶里子

    ○戸叶委員 一、二問ありますけれども、時間がないのでこれで質問をやめます。
  130. 田中榮一

    田中委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は、来たる十日午後一時より理事会、午後一時十五分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後一時三十五分散会