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1971-03-12 第65回国会 衆議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年三月十二日(金曜日)     午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 田中 榮一君    理事 青木 正久君 理事 坂本三十次君    理事 田中 六助君 理事 山田 久就君    理事 松本 七郎君 理事 大久保直彦君    理事 曽祢  益君       石井  一君    江藤 隆美君       大平 正芳君    中島 茂喜君       西銘 順治君    野田 武夫君       村田敬次郎君    山口 敏夫君       豊  永光君    戸叶 里子君       中谷 鉄也君    西中  清君       松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         外務政務次官  竹内 黎一君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省条約局長 井川 克一君         外務省条約局外         務参事官    山崎 敏夫君  委員外出席者         警察庁刑事局調         査統計官    丸谷 定弘君         法務省刑事局公         安課長     豊島英次郎君         法務省刑事局参         事官      亀山 継夫君         法務省入国管理         局警備課長   伊藤 卓蔵君         運輸省航空局監         理部総務課長  范  光遠君         外務委員会調査         室長      吉岡 俊夫君     ————————————— 委員の異動 三月十二日  辞任         補欠選任   小坂徳三郎君     江藤 隆美君   勝間田清一君     中谷 鉄也君 同日  辞任         補欠選任   江藤 隆美君     小坂徳三郎君   中谷 鉄也君     勝間田清一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  航空機不法奪取防止に関する条約締結  について承認を求めるの件(条約第八号)      ————◇—————
  2. 田中榮一

    田中委員長 これより会議を開きます。  航空機不法奪取防止に関する条約締結について承認を求めるの件を議題として、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西中清君。
  3. 西中清

    西中委員 前回少し入ったところで終わってしまったわけですが、ハイジャック条約の第一条の(a)の未遂についてその範囲をお聞きしました。そのときの御返事では、この条約でいう未遂乗降口が閉ざされてから開かれるときまでに限定されていることであって、いわゆるどろぼう等一般犯罪における未遂概念とはおのずから違いがあるように御答弁がございましたが、その点は間違いないのか。  それからもう一つは、そこに法的な矛盾というものはないのかどうか、この点について最初にお伺いをしておきたいと思います。
  4. 山崎敏夫

    山崎政府委員 前回の御審議でも御説明申し上げましたように、この条約ハイジャックという犯罪行為は、第一条にも書いてありますように「飛行中の航空機内における次の行為は、犯罪とする。」というわけでございまして、その「飛行中」というものの定義は第三条に書かれております。その第三条には、先生からも御指摘がありましたように、ドアが閉ざされてから開かれるまで、こういうことでございますから、そういう状態飛行機の中に起こった犯罪であるというふうに御観念願いたいわけであります。  そして既遂未遂のことでございますが、結局既遂となりますのは、その構成要件にも書いてありますように、航空機不法奪取し、または管理した時点既遂になるわけでございます。それに至らない時点についてはまだ未遂でございます。
  5. 西中清

    西中委員 ここでもう一つの問題をこの前お聞きしております。ドアが開かれたまま犯人ハイジャックをしたとき、要するにパイロットスチュアーデス等を追い出して犯人のグループが飛行機を奪って逃げた場合は適用されない、こういうことでございましたが、そうなりますと、これは、この条約そのものはそういうことを想定しなかったのかどうなのか、この点について説明をしていただきたいと思います。
  6. 山崎敏夫

    山崎政府委員 前回も御答弁申し上げましたように、いま先生があげられましたような例、すなわちドアが開かれたままパイロットをおどかして、乗客も全部降ろして飛行機を奪って逃げたというものは、一般の社会の観念からすればそれもあるいはハイジャックかもしれませんが、この条約にいうハイジャックではないということを申し上げたわけでございます。そうしてそれはこの条約対象外であるということで、結論的にはその場合には各国がそれぞれの国内法に従って罰するということになるわけでございます。  そういうものを想定しなかったのかというお話でございますが、結局はハイジャックというものが非常に厳罰をもって臨むべきであるという観念になっておりますのは、何と申しましても飛行機は飛んでおって、しかも密室状態において飛んでおって、そこでそういうふうな行為が行なわれたならば非常に危険であるから、乗客乗員の全部の生命が危険にさらされることを防止しようあるいは抑止しようということがねらいでございます。地上にある飛行機ドアが開かれたままパイロット乗客を降ろして奪うという行為は、まあおどかされるという危険はございますけれども、飛んでおるわけではございませんから、ドアも開かれておるわけでございますから、そういう意味では落っこちて全部が死んでしまうという危険もないわけでありますから、これはこの条約の直接の目的にしなくてもよかろうということでこういう限定が行なわれたのであろう。しかしそれは決して許さるべきものではございませんので、それはもちろんその犯罪の起こりました時点で、またその場所において適用さるべきそれぞれの国内法によって処罰さるべきものであろうと存ずる次第であります。
  7. 西中清

    西中委員 国内法で処罰されるというようにおっしゃいますが、犯罪行為が行なわれたら、たとえば日本なら日本で発生して外国へ行くわけでしょう。そうすると国内法というのはこの行為そのものにはほとんど適用されないことが多いんじゃないか。不法侵入とかそういうことはひっかかるでしょうが、それ以外の強盗なりをしたということについては適用されないということになるのじやないですか。
  8. 山崎敏夫

    山崎政府委員 そういうふうにドアをあけたままで脅迫して人を追い出して飛行機を奪って逃げたという場合には、もちろんそれ自体は一種の強盗でございますから、強盗犯として追及さるべきものであります。それが日本のかりに羽田で起これば、日本国内法適用されることは間違いありませんが、それが外国に逃げた場合には、これは通常犯罪人引き渡しの問題として、たとえばアメリカにかりに逃げたとしますればアメリカに対して要求し得るわけでございます。完全に引き渡されるという保証はありませんけれども、アメリカとの場合であれば犯罪人引き渡し条約がございますし、ほかの国であればそれぞれの相手国国内法に従って犯罪人引き渡しを求めることはできるわけでござます。
  9. 西中清

    西中委員 ですからこれは先ほどから言っておるように、わざわざ乗降口云々という、そしてその未遂範囲がその場合に限られておる。これはそれだけを限ってハイジャックの罪にするということは一つ限定でございましょうが、しかしながらそういう例外的な場合も起こり得るわけで、むしろ犯人の立場からすれば、大ぜい連れていくよりこういうのが気が楽でいいということにもなりかねないという点から考えれば、何でわざわざこういう規定をつくったのか。この点がどうも不審なんですね。ここに限ったというのはどういう意味なのか、その点についてもう一ぺん御説明を願いたいと思います。
  10. 山崎敏夫

    山崎政府委員 この前の審議におきまして、法務省刑事局長からも御答弁がございましたように、飛行中という定義に関しましては、東京条約では二つの定義がありまして、広い定義と狭い定義があったわけでございますが、その後この条約審議するにあたりましては、その東京条約で使われたむしろ広い定義というものを採用したということであります。そしてこの第三条はまさにそのハイジャックというものを認定する範囲飛行中について広く解釈したわけでございます。ただ、それでもまだ狭いではないかという御質問でございますが、いま先生がおっしゃいますようにドアを開いたままおどかして飛行機を奪うという行為であれば、まあそれは飛行場等国家でございますから、当然そこにはその空港警備の体制がとられておるわけでございます。ことに最近のようにまあハイジャックについていろいろと対策が講ぜられておる状況では、そういう状態ならばもちろん普通コントロールタワーその他からそういう状況はわかるわけでございまして、直ちに警察権を行使してそういうものをつかまえることもかなり可能であろうとわれわれは考えます。先ほどから申し上げますように、このハイジャックというものの考え方は、この条約でとらえましたハイジャック範囲と申しますのは、やはり飛行中の航空機を奪うということが非常に乗客及び乗員生命の危険をもたらすということをポイントに置いているわけでございます。それはこの前文にもございますように、「飛行中の航空機不法奪取又は管理行為が人及び財産の安全を害し、航空業務の運営に深刻な影響を及ぼし、また、民間航空の安全に対する世界の諸国民信頼をそこなうものであることを考慮」してつくられておるわけでございますので、やはり飛行機が飛んでおるその飛んでおる範囲はできるだけ広く解釈して、ドアが締まってからあくまでということにしたわけでございまして、その点やはり密室状態の非常に危険な状態にあるものに限るべきであるというのがこの条約を作成した会議における議論でございまして、地上におけるそういうふうなドアが開かれたような状態においては、それぞれの国が警察権を十分行使し得るであろうという前提で書かれておるわけでございます。決してそういうものを許すというつもりではございませんけれども、やはり条約というものの性格上みんなが一致し、そして絶対やらなければならぬポイントを押えてこういうふうに作成されたものだと了解いたします。
  11. 西中清

    西中委員 そういう御説明では、先ほど私が申しました例では、やはりこの第二条の「重い刑罰を科する」ということにはちょっと適合しないということを私は申し上げておるわけでありまして、これはきまったものだからということはわかりますけれども、そういう点、私はこの法の不備をむしろ強く感ずる。むしろ計画的になればなるほどそういう場合が考えられるということで、この未遂というものについての概念が少し私は問題ではないか、この点はまだ明らかにされていないような気がします。  それで、時間もとりますので次に参りますが、一条(b)に「加担する行為」というのがございますが、これはドアを閉じて開くまでの加担というのは一体どういうことなのか。共犯者行為はやはり加担じゃないだろう。そうしますと、これは乗客行為をさすのかどうなのか。それともたとえば途中の空港飛行機がおりた、そういう場合に外から支援するのを「加担する行為」というのか。だけれどもこれはやはりドアが閉じてから開くまでの間ということになっておりますが、そういう点ではちょっと疑問がある。それともほかに何らかの場合を想定しておられるのか。その点の御説明をお願いいたします。
  12. 山崎敏夫

    山崎政府委員 この「加担する行為」というのはいわゆる共犯でございまして、日本刑法でいいます共同正犯に該当する行為は(a)項の問題でございます。一緒にやるようなものはこれはもう共同正犯でございまして(a)項の問題でございます。したがいまして、(b)項でいう「加担する行為」と申しますのは、日本刑法でいいます教唆犯あるいは従犯となる行為でございまして、いま先生お話にございました機外から何かやるということは、これはちょっとこの条約の(b)項には該当しないのではないかと思います。と申しますのは、この第一条の冒頭にありますように、これは「飛行中の航空機内における次の行為」でございまして、ですから機外から何か応援して——飛んでいる飛行機機外からということはなかなか考えにくいのでございますが、あるいはドアが締まってから滑走路でこれから飛び立とうとしている段階においてはあるかもしれませんが、そういうふうな機外からの援助する行為は、ここにいう「加担する行為」には含まれないと存じます。
  13. 西中清

    西中委員 そうしますと、機外から加担をする、たとえば無線を使うとかそれから飛行機食料を積み込むとか、こういう場合はこの未遂に入るのか、まるっきり関係のない犯罪として扱うのか、その点はどうでしょう。
  14. 山崎敏夫

    山崎政府委員 機外から、いま先生おっしゃいましたように無線で連絡するとかあるいは食料を積み込むとかそういう場合は、いま申し上げましたように、ここにいう「加担する行為」には入らないわけでございます。そして、ではそういうものはどうするのかということになりますれば、これは先ほどの論議と同じでございますけれども、やはりそれは国内法の問題として罰せられるものは罰せられる、あるいは日本刑法でもそういうものは幇助として罰する関係規定があると存じます。日本国内法につきましては、私は残念ながら十分知識を持ち合わせておりませんが、御必要ならば法務省関係官からも御聴取願いたいと思います。
  15. 西中清

    西中委員 それではその辺の詰めはまたあらためてということにしまして、どうもそういう点で私はまだすっきりしないのです。抜け穴だらけてはないかという感じがますます強くなるわけです。  今度は第三条一項に「不時着の場合」とありますが、この「不時着の場合」というのは、この条約加盟国の場合に限るのか、非加盟国の場合も適用して飛行中とみなすのか、その点はどうでございましょう。
  16. 山崎敏夫

    山崎政府委員 いまの問題にお答えする前に、ちょっと申し添えておきます。  いま先生がおっしゃいました地上共犯の問題でございますが、経緯的に申し上げますと、それもこの条約対象に含めるべきではないかというのが、実は日本側がこの会議に臨むときの考えであったのであります。イギリスあたりもこれを支持してくれたのでありますけれども、昨年十二月のへーグの会議においては、残念ながら、先ほど申し上げた観点で、人命の安全ということを重点に置くならばそこまで広げる必要はないという考え方のほうが多数を占めまして、わがほうの提案は破れたという経緯が実はあるわけでございます。しかし、その考え方は、先ほどから申し上げましたように、人命の安全ということにしぼるならばこれで十分であるということになりまして、わがほうとしても最終的にはこれに同意した、こういう次第でございます。  次に、第三条の不時着の場合でございますが、もちろん不時着ということでございますから、これは締約国であるとか締約国でないということは問わないのでありまして、どこの領域におりようと不時着でございます。この不時着の場合が入っておるのは、この点は先ほどもちょっと触れましたが、東京条約の場合とは違って、若干ここも広がっておるわけであります。  その不時着の場合には、かりに入り口が一つ開かれておったとしても、不時着した国の「権限のある当局当該航空機並びにその機内の人及び財産に関する責任を引き継ぐ時まで、飛行中のものとみなす。」というふうに広げたわけでございますが、これは、飛行機不時着してしかもドアが開かれた段階ハイジャックが行なわれるということは実はあまりないとは思いますが、いずれにしましても、どこの国の当局もそういう状態では機内の人や財産の安全について責任を負えない場合が多いと思うので、たとえば野原のまん中におりるようなことにもなるわけでございますから、そういう場合には、そこに権限のある当局が到着して責任を引き継ぐときまでは、飛行機飛行しているものとみなして、これもハイジャックに含めておいたほうがいいのではないかというような提案が一部の国からございまして、これが設けられた次第でございます。したがいまして、先生の御批判もございますが、この条約としては、飛行中の範囲をぎりぎり拡大しておるという感じでお考え願いたい次第でございます。
  17. 西中清

    西中委員 第三条二項に、「この条約は、軍隊税関又は警察役務に使用される航空機については適用しない。」この場合、書かれておるこれ以外に、公的機関飛行機は含まれるかどうかということでございます。要するに、この条文の中で例示的にこれを示したものなのか、それとも列挙方式でこれを示したものなのかという問題でございます。これを三つだけに限るのか、ほかの公的機関飛行機は一体どうなるのか、こういう問題でございますが、その点どうでしょうか。
  18. 山崎敏夫

    山崎政府委員 この条約前文に書かれてありますとおり、この条約は「民間航空の安全に対する世界の諸国民信頼をそこなう」云々とありますように、対象としては民間航空機を考えておるわけでございます。その観点からこの第三条二項の適用除外規定が設けられておるわけでございます。  したがいまして、御質問にお答え申し上げれば、それは限定的なものではなくて、例示的なものだとわれわれは了解しておる次第でございます。  なお、こういう点は、ここでは三つ機関をあげておるにすぎませんけれども、これはずっと国際民間航空機関の一連の条約に出てくる規定でございますけれども、それのもとになりました国際民間航空機関条約、いわゆるシカゴ条約の第三条におきましては「この条約は、民間航空機のみに適用するものとし、国の航空機には適用しない。」と書いてありまして、その次に「軍、税関及び警察業務に用いる航空機は、国の航空機とみなす。」こういうふうに書いてございまして、シカゴ条約規定からは例示的であることが明らかになっております。
  19. 西中清

    西中委員 そういう点では、たとえば役務等というような文章になっておるとこれは明快だと思うのですが、限定されたような印象も受けておりますので、あとで問題が起こらないかということでお聞きをしたわけでございます。  いまの御説明でわかりましたが、その点、この文章は、原文がそのとおりであるとすれば、各国の了解がはっきりとついておるもの左のかどうなのか。そういう点であとで問題を起こしてはなりませんので、公約機関は全部含むのだ、それからほかに、公的な機関でなくても、特殊な職業といいますか会社が所有しておる飛行機もございますが、そういうものも含むのか含まないのか、その点はどうなんでしょうか。  たとえばマスコミ関係とか、そういう政府機関飛行機でもない、いわゆる旅客のための航空機でもない、そういう飛行機は、この「航空機は、」という第三条一項の規定の中にはどのような位置を占めておるのか、この点を御説明願いたいと思います。
  20. 山崎敏夫

    山崎政府委員 この条約は、先ほども申し上げましたように、国際民間航空機関ICAOでつくられました条約一つでありまして、正確に申し上げれば、むしろICAOのイニシアチブのもとに外交会議が開かれてつくられた条約でございまして、ICAO関係でつくられておる条約はみな同様の文章が書かれておるわけでございます。東京条約にもそういう文章が書かれております。したがいまして、私が先ほど申し上げました点につきましては、従来締約国間で誤解がなく運用されておると存じます。  それから、御質問の点でございますが、旅客を運送するためでもなく、国の機関業務に供するものでもない飛行機、たとえば新聞社の使うような飛行機という御質問でございますが、これはもちろんこの条約対象でございまして、除外はされておりません。ここに除外いたしますときには、こういうふうな、軍隊とか税関とか警察というような役務に使われる場合には、そこに載っているものは、すべて国家特別左利害関係にあるということで除外しておるわけでございまして、新聞社その他の場合のような飛行機は、当然この条約対象であります。
  21. 西中清

    西中委員 三条二項に、「この条約は、軍隊税関——「軍隊」でありますが、自衛隊飛行機はどこに入りますか、この中に入るのか入らないのか。
  22. 山崎敏夫

    山崎政府委員 先ほどから申し上げましたように、これは例示でございます。でございますので、これに準ずるもっぱら国家役務に使用される航空機であるという意味においても、自衛隊機はその中に含まれると思います。ただ誤解りないように申し上げますが、この条約適用上はそういうものとして扱われるべきであると考えます。
  23. 西中清

    西中委員 そうしますと、軍がチャーターした民間航空機の場合、それが軍の役務に使用される場合というのは、これは適用しないのか、するのか。この点はどうでしょう。
  24. 山崎敏夫

    山崎政府委員 軍がチャーターした飛行機という場合はいろいろあると思いますが、パイロット民間人である場合、こういう場合は、やはりこれはこの条約適用されると思います。民間航空機を完全に軍人が全部操縦し軍人を全部乗っけるということは、ちょっとあまりないかと思いますけれども そういう場合にはこの条約適用されないと思います。だからやはりチャーターのぐあいによっていろいろ変わってくると存じます。
  25. 西中清

    西中委員 それが適用されないということは、そうするとパイロットによるということですか。逆に民間航空機で、通常運航ないしは臨時の運航で、ほとんど軍の関係者が乗った、そういう場合もやはり問題になるんじゃないかということですね。もう一度そこのところ、はっきりお答え願いたいのですが……。
  26. 山崎敏夫

    山崎政府委員 先ほどから申し上げましたように、こういう航空機国家航空機除外されるという意味は、ここに乗っておる者はすべて国家と特別の身分関係にあるということの趣旨から除外されておると存ずるのでありまして、したがいまして、一部でもそういう民間人が乗っておる場合には、それはこういうものの適用除外には該当しないと考えるべきということの基準でわれわれは判断しているわけでございますし、またそれが従来からもICAO関係条約の判断でございます。
  27. 西中清

    西中委員 それじゃ第四条に移りますが、この前も少しお話が出ておりましたが、裁判権の設定できる国は航空機登録国着陸国運航国容疑者の所在する国のそれぞれに裁判権設定の権利があるわけですが、競合した場合に、十二条一項で仲裁なり国際司法裁判所ということがございました。ところがその十二条二項では、この一項を採用しない、とらない国ということがございます。その場合はどういうようにしてこの競合した場合に決定をするのか。この点はどういうことになるのでしょうか。
  28. 山崎敏夫

    山崎政府委員 前回も御答弁申し上げたかと存じますが、裁判権が競合する場合に直ちに十二条の紛争処理規定にいくということではございませんで、裁判権はむしろ競合する場合が多いわけでございます。これだけ広く裁判権お互いに設定する義務を負いますから、競合する場合が多いわけでございますが、それは第一義的にはやはり外交交渉お互いに話し合ってどちらが裁判権を行使するかをきめるということでございます。ただそれが話し合ってもどうしてもうまくいかない場合には、十二条の紛争処理手続にいくことになるかと思います。そして、その場合に第二項の留保をした国があった場合どうなるかということでございますが、第十二条の一項は、仲裁に付託されてそれが仲裁の組織について合意に達しない場合にはどちらかの要請で国際司法裁判所紛争を付託することができる、国際司法裁判所に付託されればいわば強制的な拘束力がある判決が出るわけでございますから、そういうものを好まない国は二項で留保ができるわけでございますが、そういうふうになりますと、そういう採択は自由でございまして、これは国際紛争一般的な問題として国際司法裁判所の確定的な判決に服することを好まない国があるわけでございます。     〔委員長退席、山田(久)委員長代理着席〕 これは国際社会の現状においてやむを得ない。そういう場合にはしかたがございませんので、やはりほかの一般的に利用し得る調停手続その他の手続をできるだけ使う、あるいはまたもとへ戻って外交交渉を続ける、そういうふうな方法でやる以外にはないのでございます。これは一般的な国際社会の現状ではやむを得ないと存じます。
  29. 西中清

    西中委員 そうしますと十二条二項の留保規定をとる国々については、これは非常にめんどうだということになりますね。  ところで、最近の報道ではソ連政府から外務省にハイジャック防止の二国間協定を結ぼうという申し入れが来たというように書かれておったんですが、そういう事実はございましたでしょうか。
  30. 山崎敏夫

    山崎政府委員 ソ連はこの条約の作成会議にも参加いたしまして署名をし、現に批准書の寄託国の一つになっておるわけでございまして、この条約に対してはソ連政府は非常に熱意を持っておるわけでございます。ただソ連政府といたしましては最近のいろいろな事例の経験にかんがみまして、この条約だけでは犯罪人引き渡しその他について十分明快ではないという点を考えて、登録国ハイジャック犯人を優先的に引き渡す義務を負うような二国間条約を結びたいという希望を持っておりまして、そのことについて日本政府にアプローチしてきたのは事実でございます。ただその点につきましては、われわれとしてもかなり慎重に考慮する必要がありますので、目下検討中でございます。
  31. 西中清

    西中委員 最初から述べてきましたように、いろいろと実際問題として犯人の扱いについては甘いということが感ぜられるわけで、おそらくそういうあたりから来たんじゃないかという気もするわけですが、いま御検討されておるようでございますので、これ以上申しませんが、必要ではないかというように私たちも感じております。  そこで八条でございますが、この前も質問がございましたのでその辺は省略いたしまして、一項の政治亡命の場合は引き渡しについてどうするかということについて法務大臣の判断によるというようなお答えがございましたが、判断の基準というものは大体どういうものなのか、その点をちょっと聞かしていただきたいと思います。
  32. 山崎敏夫

    山崎政府委員 その点は、実はわが国の場合におきましては入国管理法の運用の問題でございまして、外務省として、有権的な解釈といいますか、お答えを申し上げかねる次第でございますが、まあわれわれが承知しております限りにおきましては、そういうふうな政治亡命を希望する外国人に対しては、法務省においてはその根拠、政治的迫害というふうな主張の根拠が十分根拠があるかどうかを慎重に検討して、その場合には、法務大臣において、人権の尊重という見地と、それからわが国の利益、それから公安の保持というものとの調和等も考えて、特別に在留を適当とする事情がある者については入国管理令の手続に従って在留を許可するということがあるというふうにわれわれとしては承知しております。ただ、具体的にそれをどういうふうに適用するかとなりますと、ちょっとわれわれとしてはお答え申し上げかねる次第でございます。
  33. 西中清

    西中委員 その辺の判断の基準というものが、まあ出入国管理法の考え方、根本精神というものと、政治的な亡命でございますから、政治判断ということがひっかかってくるので、私もこれ以上追及いたしませんけれども、これはある程度筋道をはっきりさせたほうがいいんじゃないか、このように考えております。  ところで、たとえば日本人がアメリカハイジャックをした、金がないので帰ってくる、こういう場合は、アメリカのほうから要求があったらその日本人は引き渡すかどうかということです。一般の国際法では自国民は引き渡さないというのが原則でございますが、この日本人は日本にとどめたまま処罰するか、それともアメリカのほうに渡すか、その点はどうでしょう。たとえばですがね。
  34. 山崎敏夫

    山崎政府委員 日本アメリカとの間には日米犯罪人引き渡し条約がありまして、それには自国民不引き渡しの原則が書いてあるわけでございますので、原則として引き渡さないと思います。
  35. 西中清

    西中委員 逆にアメリカ人が日本犯罪行為をしたときに、アメリカに逃げ帰った者があった場合に、いままであったようですが、その場合に日本政府は引き渡しの要求をされたことはございましたですか。
  36. 山崎敏夫

    山崎政府委員 ちょっと御質問の趣旨でございますが、アメリカ人が日本においてハイジャックをした例があるか、私どもは存じておりません。
  37. 西中清

  38. 山崎敏夫

    山崎政府委員 一般犯罪行為としては、そういう例は戦前においてはございます。そういう場合において、具体的に引き渡し要求をしたかどうか、その点はちょっといま調べてお答え申し上げたいと思います。
  39. 西中清

    西中委員 それではいまの点はあとでまた教えていただきたいと思います。  第九条の一項、「あらゆる適当な措置をとる。」という条文がございますが、公海上空で関係国からの阻止等の要請もない場合、この条文の目的を達するための行動を起こすことも含まれるかどうか。たとえば要請があった場合、要請がない場合、それは結局は義務として扱うのか権利として扱うのかということでございますね。この点はこの条文からはどういう解釈になるのか。これはどうでしょうか。
  40. 山崎敏夫

    山崎政府委員 この条文からは、別にその飛行機の属する国からの要請ということを待ってやれということは書いてございません。その意味におきまして、その締約国である以上は、適当と判断するならば、措置を取り得るわけでございます。     〔山田(久)委員長代理退席、委員長着席〕 ただ何が適当であるかということは非常にむずかしい問題でございまして、ことにやはり問題は、そのハイジャックされた飛行機の機長にコントロールを回復させることにあり、そしてそのことによってその乗っておる旅客及び乗員生命の安全を確保することにあるわけでございますから、それをいわば危険におとしいれるような行為をとることは適当とはいえないわけでございまして、実際問題としては、ほんとうの意味での飛行中の飛行機に対してとり得る手段はかなり限られてくるのではないかと存じます。
  41. 西中清

    西中委員 ですから、これをさか手にとれば、政治的な意図でもって、要請もないのに、ということもある程度考えられるわけですね。その点は一体どうなるのか。  それからもう一つは、公海上空における規定との関係、国際法、公海条約第六条の問題とこれはどういう関係になるか。ある特定の国の航空機を他の国が云々することについて、はたして公海条約第六条の問題にひっかからないかどうか。この点はどういう解釈をされておりますか。
  42. 山崎敏夫

    山崎政府委員 適当な措置ということについて、その権利が乱用される可能性があるのではないかという御質問でございますが、先ほどからも申し上げましたように、適当ということは、あくまでその航空機のコントロールを機長に回復させるということが主眼でございます。さらに、実は昨年の六月のモントリオールで開かれましたICAOの臨時総会では、地上当局は、機長の見解それから航空機運航部、航空機会社の意見、その他周囲の状況を考慮に入れずしては、航空機不法奪取を終了させるためのいかなる行動もとってはならないという旨の決議があるわけでございまして、ICAO加盟国の間では、適当な措置をとるといっても、そういう人たちの意見を十分尊重した上でやるべきだというふうな了解になっておるわけでございまして、この点が乱用されるという点はあまり懸念はないのではないかというふうに存ずる次第であります。  それから公海条約第六条の点は、ちょっと私御質問の趣旨を十分把握し得なかったので、もう一回ちょつとおっしゃっていただけないでしょうか。
  43. 西中清

    西中委員 要するに、公海上空においては、よその国から干渉したり監督したりということはやはり当然制約されるわけでございますから、この要請あるなしにかかわらず適当な処置をとるということは、公海上空においても妥当なのかどうなのか、こういうことでございます。
  44. 山崎敏夫

    山崎政府委員 ハイジャックされた航空機が公海上を飛んでいるというふうな場合には、ことにそれは公海上にあるわけでございまして自国の領空上にあるわけじゃございませんから、やはりその航空機の所属国の要請とか、あるいは少なくとも協議して、旅客の安全に第一義的な考慮を払った措置をとるということが、一般的にいえば適当な措置であろうと思います。公海上についてはよほどこれは慎重にやる必要があるだろうと思います。
  45. 西中清

    西中委員 最後に十三条でございますが、これはいわゆるオールステーツ方式をとっておるようで、その点はけっこうだと思うわけでございます。ところが現実問題として、日本の地理的条件から考えても、この条約が効果的に働く、発効するしかしないかということは、やはり現在の分裂国家というものが問題になる。何としてもあらゆる国が加盟するということがやはり望ましいし、わが国にとってもやはり実際的課題であろう、このように思うわけです。分裂国家に対しても、このままほうっておけばおそらく加盟しないだろう、こう思うわけですね。その加盟に対して政府は何らかの働きかけなり呼びかけなりを積極的に行なう、こういうお考えがあるかないか、その点を伺いたい。
  46. 山崎敏夫

    山崎政府委員 提案理由の段階でも大臣から特に申されましたように、この条約をオールステーツ方式にすることについては、非常に例外的な条約でございますけれども、日本も大いに積極的に努力したわけでございます。その意味で、この条約はいわゆる分裂国家はすべて加入するような体制になっているわけでございます。現に東独はこの条約に署名しておりますので、われわれとしては東独は加入し得るものと期待しております。ただ残念ながら、アジアにある分裂国家についてはわれわれとしてはまだその見通しを得ておりません。それについて積極的に働きかけるべきではないかということでございますが、われわれの場合、分裂国家の場合はいまだ承認いたしておりませんので、適当なルートを見つけることはかなり困難でございますけれども、この点は今後この条約の御承認を得ましたならば、そういう国についても何らかの方法で呼びかける方法を考えたいと存じております。  一つの行き方としては、とりあえずではありますが、国連などの決議でそういう呼びかけを行なうのも一つの手であろう。実は東京条約についてはすでに東京条約に早期に加盟すべきことを呼びかける決議が行なわれておりますが、この条約につきましてもことしの秋の国連総会あたりでそういう呼びかけ決議を行なうことも一つの方法であろうと思っております。
  47. 西中清

    西中委員 最後に、分裂国家というもの、また国交のない国というのはたとえば朝鮮民主主義人民共和国とかそれから中華人民共和国とか、これは実際問題こういうところヘハイジャック犯人が逃げていった、こういうことで、前にもよど号の事件がございましたが、ああいう事件を経験された結果、今後こういう事件が起こった場合にはどういうようにしてこの問題を処理されるのか。何らかの糸口なり方法なりお考えになったかならないか、その辺のところをひとつお伺いしておきたいと思います。今後の問題として……。
  48. 山崎敏夫

    山崎政府委員 この前のよど号のような事件が再び起こったような場合をまさに考えますからこういう条約を実はつくっておるわけでありまして、われわれもそれに積極的に協力しておるわけでございます。また北鮮や中華人民共和国がこういう条約に入ってくれれば、この条約の手続に従ってかなりのことはできるわけでございます。そして要するに、この条約に入ってもらえればそれぞれの国がハイジャック犯罪を重罪に科し得るわけでございますし、処罰手続あるいは犯罪人引き渡しについても一つのルールができるわけであります。われわれとしては第一次目標はあくまでそういうアジアにある分裂国家がこの条約に入ってくることを強く期待し、また適当な方法で呼びかけるということが第一義であろうと思います。ただ入ってもらえないときに具体的にどういう方法があるかとおっしゃいますと、それは実はわれわれとしても非常にむずかしい問題でございまして、ただこういう条約もでき、世論も高まっておりますので、この条約の存在自体がそういうことをやる人たちに対する若干の抑止効果になるであろう。またかりにそういうことが起こった場合には、この前の経験にかんがみてそういう当局に何らかの方法でアプローチする、現に前回のアプローチしたわけでありますが、そういうことは当然生かすべきであろうと思います。ただ効果的に何ができるかとおっしゃいますと、この条約に入らない段階においてはなかなかむずかしいというのが正直なところでございます。
  49. 西中清

    西中委員 いま具体的には何らの方法もまずとれない、こういう状態であろうと思いますが、できるだけこの条約に加盟するようなやはり積極的な働きかけ、これは国交の正常化という観点からも必要なことであろうと私は思っておりますので、努力を強く要求しておきたいわけです。  一応これで私の質問を終わります。
  50. 田中榮一

    田中委員長 山崎事官から発言の要求がございますので、これを許可いたします。山崎事官
  51. 山崎敏夫

    山崎政府委員 先ほど西中委員から御質問がございました、日米間において犯罪人引き渡し日本が要求した事例があるかということでありますが、アメリカ人一名を引き渡し要求して、その引き渡しを受けた例があります。それから日本人についても一名ございます。
  52. 田中榮一

    田中委員長 曽祢益君。
  53. 曾禰益

    ○曽祢委員 この条約に関連して最初にお伺いしたいのですけれども、よど号事件以来東京条約並びに航空機の強取等の処罰に関する法律の制定等によって、自後少なくとも国内的にいろいろなハイジャック防止に関する警備措置と申しますか、防止の措置といいますかやってきていると思うのです。そこで、これは関係法務省警察庁、運輸省それぞれあると思いますが、簡単にいって飛行場での乗客飛行機に乗る前の防止等についてのいろいろ警備等をやっておられるようですが、その点、それから飛行中の警戒等に対しては、あるいは必要に応じてのガードマンだとかあるいは正式の警察官の搭乗の問題等々について、現状とそれからこれからの問題点を簡単にそれぞれの当局から御説明願いたいと思います。
  54. 范光遠

    ○范説明員 さきのよど号ハイジャック事件以後、関係当局と協議いたしまして、特効薬的な防止策はございませんが、協議の結果あれやこれや対策を講じております。  まず、法律改正、条約批准、そのことについては省略させていただきますが、旅客及び手荷物のチェックの徹底を、昭和四十五年の四月六日の航空局長通達をもってチェックの徹底をはかることといたしました。それからその次には、定期便の発着する全空港、四十八ございますが、これに凶器発見器を全部設置いたしました。さらに旅客と送迎人とが特に混雑する空港におきましては、旅客と送迎人とを分離するためのさくを設置いたしまして、送迎人が旅客に危険物を手渡すということがないように防止措置をとりました。それから四十五年の十月にやはり航空局長通達をもちまして、関係者よりなります航空保安委員会を各空港に設置して、それぞれの空港の特殊性に応じた防止対策を協議することといたしました。なお航空機内に対する措置といたしましては、操縦室内に犯人が侵入することを防止するために、操縦室のドアに施錠するという行政指導をいたしました。それから、かりに事件が発生した場合に、機長と地上との間の連絡をはかるために一定の無電のコード信号を使用する措置をとりました。  大体以上のとおりでございます。
  55. 丸谷定弘

    ○丸谷説明員 警察といたしましては、よど号事件が発生いたしましたあと警察庁が空港を管轄します都道府県警察に警戒強化の措置を指示いたしました。この種事案は、申し上げるまでもなく空港以前に極力情報を入手して、未然に防止をはかることが第一でございますので、この点に十分留意をいたしまして警戒を厳にするとともに、いろいろな措置を推進しております。まず関係都道府県警察では、民間航空機の離着陸する空港五十九に警察官を毎日約三百五十人配置いたしまして、警戒警備に当たっておりますほか、それぞれの空港ごとに警察、航空局、航空会社などからなる空港保安委員会を設けまして、関係機関、担当部門と緊密な連絡のもとに警戒をしております。
  56. 曾禰益

    ○曽祢委員 いわゆる凶器の探知器といいますのは、あれはどのくらい有効なんでしょうか。大体あれで凶器あるいは凶器とまぎらわしいものについてはほとんど完全にわかるのですか。またそういう場合に、事実上場合によって身体検査等について法制上その他の問題がないのかどうか。この点はいかがでしょう。
  57. 范光遠

    ○范説明員 凶器発見器と申しておりますが、精密に申しますと、これは金属探知器であります。金属を持っておりますと探知器のランプが点火することになっておりまして、相当量以上のものが持ち込まれておるという場合には、ランプの数が相当数つきますので、そういう場合には荷物の開披を同意を求めて行なうということにしております。あくまでも荷物の開披は本人の同意を求めてやっておりますので、法制上の問題は別に起きない、こう考えております。それから火薬等の探知器についても外国では研究されておるようでございますが、いまだ実用の段階には達しておりません。
  58. 曾禰益

    ○曽祢委員 非常に小型な短銃、ピストルみたいなものだったらあまり大きな金属でないから、そういう場合にはなかなか判断に困るのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  59. 范光遠

    ○范説明員 現在の金属探知器はわりと性能が正確でございまして、小型といえども金属のピストルでございましたら、完全に発見器に信号がなされるような仕組みになっております。
  60. 曾禰益

    ○曽祢委員 だけれども、それがかみそりとどこが違うかということが探知器で外からわかるのですか。
  61. 范光遠

    ○范説明員 金属探知器に赤ランプが点火されるというような場合には何らかの金属を持っておりますので、荷物の開披を求めて、差しつかえのな  いものでございましたら通過させて、差しつかえのあるものでございましたら飛行機に乗せないという措置をとっております。
  62. 曾禰益

    ○曽祢委員 そんなことを言ったって、ぼくらも全部一々かみそりなんかを持っておるのを赤ランプがつくからといって荷物の開披を求められたらたいへんですよ。だからそこは現場の警察官の判断で、にんてい、ふうさい、いろいろの点も考慮したり何かして——それでなければたいへんじゃないですか。一々開披を求めたら、かみそりでも探知器が非常に敏感だから探知できるわけでしょう。赤ランプの一つくらいつくんじゃないですか。全部開披したらたいへんじゃないですか。混雑が起こってしまう。
  63. 丸谷定弘

    ○丸谷説明員 警察官が現場におりまして、いろいろな状況から判断をいたしまして、荷物の開披を求めないでけっこうだと思うものは一々開披をいたしておりません。
  64. 曾禰益

    ○曽祢委員 そんなことだろうと思うんですね。これは機器のことですから、金属の種類とかかっこうとか目的までは探知できないから、そこで現場の判断というものが要ると思うのです。それはけっこうです。  それからもう一つは、これは運輸省、警察庁両方ですけれども、ほんとうに航空機内の安全をはかる場合に、単にいわゆる乗務員室を中から閉鎖するというだけでなくて、やはり警乗の必要等はないのかどうか、この点はどうなんですか。
  65. 范光遠

    ○范説明員 現在武装警備員を搭乗させております例としては、アメリカ、イスラエル、韓国等がございますが、武装警官を搭乗させることにつきましては、ハイジャックに対する抑止的効果となる点ではもちろん評価される次第でございますが、他方警備員の技量、航空機の構造に関する知識あるいは武器の性能等について十分配慮しなければ、実力行使の際、犯人以外の旅客あるいは航空機に危害を及ぼすおそれがあるというのが問題でございます。そういうようなことで、現在エアマーシャルと称して大々的に警備員を搭乗させておるアメリカにおいてすら、これはあくまでも臨時的な措置であって、ハイジャック防止のためにはやはり水ぎわ作戦で、危険物が機内に入り込まないように水ぎわで食いとめるのが理想であるということで、水ぎわ作戦が、相当設備がそろいましたら、警備員の搭乗はやめさせたいというような意向をアメリカ当局も漏らしておるような現状でございます。こういうような点を考慮いたしまして、武装警備員を搭乗させることが適当かどうかということにつきましては慎重に考慮しなければならない問題だ、こう考えております。
  66. 丸谷定弘

    ○丸谷説明員 ただいまの運輸省のほうの方針と同じでございまして、武装警察官を搭乗させることはかなり効果はあるかもしれませんが、そのほかの面でいろいろ問題もございますし、やはり水ぎわ作戦が重要であるということで、現在は水ぎわ作戦だけでやっておりますが、搭乗については慎重に検討いたしております。
  67. 曾禰益

    ○曽祢委員 それじゃ条約のほうに入りまして、条約適用範囲の問題ですけれども、この第三条で、1、2はすらっと読んですぐわかるのですけれども、3、4、5というのはわかりにくいんですよ。三項、四項、五項ですね、意味をちょっと説明してもらいたい。
  68. 山崎敏夫

    山崎政府委員 まず第三項でございますが、これは簡単に申しますと、純粋な国内飛行はこの条約適用除外になるという趣旨でございます。この条文に即して申し上げますと、「この条約は、機内犯罪行為の行なわれた航空機(その飛行が国際飛行であるか国内飛行であるかを問わない。)」、つまりスケジュールが国際飛行であろうと国内飛行であろうと問わないわけであります。スケジュールは問わない、こういう意味でございます。ただそれの「離陸地又は実際の着陸地が当該航空機登録国の領域外にある場合にのみ、適用する。」したがいまして、たとえばわが国に登録されました航空機が東京を飛び立ちましてハイジャックされて福岡に着陸したというふうな場合のように、その機内犯罪行為の行なわれた航空機の離陸地及び実際の着陸地がともに登録国、つまり日本の領域内にあるような場合にはこの条約適用除外にするという趣旨でございます。  それから四項の規定は、これはちょっと特殊な場合でございまして、第五条に書かれておりますように、共同の航空運送運営組織とか国際運営機関を持っている場合、たとえばSASとかあるいはエア・アフリークと申しますか、アフリカにありますようなああいう共同運航組織の場合について、この第三項と同様に適用するという趣旨でございます。そういうふうな場合の特殊規定でございます。  それから第五項に関しましては、そういうふうに純粋の国内飛行除外する趣旨なんでございますけれども、やはりそういう純粋な国内飛行においてハイジャックを完了した者が、犯行を終わりましてから逃げてしまった場合、たとえばさっきの例でいいますと、東京を飛び立って福岡に着陸したやつがどういうぐあいかうまくアメリカに逃げたとか何かそういうふうなことがありましたような場合には、やはりこれはそういう犯人の所在の確保だとか、起訴だとか、引き渡し等についてはこの条約適用したい、そういう趣旨で、そこで締約国間の協力を確保したいという趣旨でこの五項が設けられておるわけでございます。
  69. 曾禰益

    ○曽祢委員 ありがとうございました。  その次に今度は、締約国裁判権を設定し、または訴追する義務のほうについて伺うのですが、この条約は第四条第一項に基づいて、各締約国に登録した飛行機内で行なわれた犯罪の場合それから、いかなる国の航空機であろうと、犯罪が行なわれた航空機が着陸した場合の着陸国の責務、それから第三には、運営者が住所が締約国の場合、こういう場合に裁判権を設定しなければならない。したがって必要な場合に訴追するということが出てくると思うわけですけれども、これが第一項に書いてあるわけだと思うのです。そのほかにやはり第二項に書いてあること、これは先ほどの第三条の第五項とも対比するかと思うのですけれども、容疑者締約国の領域内にいるという場合には、やはり裁判権を設定して訴追ができるようにしなければならないというようなことを第二項に書いておると思うのですけれども、そういう意味かどうか御説明を願いたい。
  70. 山崎敏夫

    山崎政府委員 先生のおっしゃるとおりでございまして、普通東京条約の場合なんかは、登録国が必ず裁判権を設定しなければならぬということをいっておったわけですが、それだけではまた抜ける場合があってはいけないということで、非常に広く、(b)項において着陸国、(C)項において運航国を入れ、さらにそれがどこへ行きましても、その犯人が所在する国においても裁判権を設定し得るというふうに非常に広く網を張って、犯人が逃げられないようにしたいという趣旨でございます。
  71. 曾禰益

    ○曽祢委員 それは裁判権を設定し得るだけでなくて、締約国である限りはそういうぴょこんとやってきた、かりに通常旅客みたいなかっこうでやってきても、そういう者は犯罪人あるいは容疑者であって引き渡しの請求が主だろうと思いますけれども、通報等があった場合には、そういう者に対する裁判権を設定しておかなければならぬわけでしょう。第四条の二項。と同時に、それとやはり第七条と関連して、訴追する義務、裁判権を設定すること、これは一般的の義務でしょう。それから、そういうものに対して引き渡しをしない場合には、その訴追の手続をとらない。そういう義務を第七条で設定しているんじゃないですか。
  72. 山崎敏夫

    山崎政府委員 仰せのとおりでございまして、単なる裁判権を設定し得ることではなくて、しなければならない義務を負っておるわけでございます。それから、裁判権を設定するということと、さらに今度は具体的に起こった場合にそれをどうするということになりますと、引き渡すかまたは訴追するかということで、この第七条につきましては「訴追のため自国の権限のある当局に事件を付託する義務を負う。」ということで訴追手続をとらなければならない、これはまたその次の段階として書いてあるわけでございます。
  73. 曾禰益

    ○曽祢委員 多くの同僚委員からも指摘されたことですけれども、政治亡命の場合に、これはやはり引き渡さないことはあるけれども、引き渡し要求があっても、しかしそういう場合にこの条約によって、だからといって裁判管轄権を設定しないことは許されないので、本条約に基づく犯罪に対しては、裁判権を設定していること、それからそういうものに対しては訴追をしなければならない。この義務を私は負っているように思うのですけれども、ただ残念ながら、締約国でない場合にはこれはどうにも処置がないと思うので、そこで伺いたいのですけれども、よど号事件を振り返ってみると、私は当時も言ったのですけれども、北鮮当局から見れば、一片の単なる通報だけで日本のよど号が北鮮に来たことは、一種の不法領空侵入みたいなものであるけれども、しかし非常にスマートに、東京条約でもその趣旨が認められて、本条約にも書いてあるように、その乗り組み員、旅客並びに飛行機飛行を続けて日本に帰ることを認めてくれたことはなかなかスマートだ。ただ、残念ながら、犯罪を犯したいわゆる赤軍派というものについては、これは非常に政治的な問題がからんでおったために、わが国のほうとしてもどこまで——私は、やはりはっきり引き渡しを要求すべきだと言ったのですが、どうもしていないらしい。引き渡しができないなら、しかしやはりこれに対しては——彼らはヒーローじゃないんです、英雄じゃないんですから、やはり北鮮の当局の法令に従って、彼らに対する処罰を要求するのがほんとうだというのが私の主張だったのですが、これに対しては、政府としてはいかなる措置をその後とっているのか。第一に、引き渡し、ないしは処罰をはっきり要求したのか。返してくれたことはサンキューでいいけれども、やはりきちんとしておかなければならない。私はそれを外被大臣に要求したのだけれども、どうもやっていないのじゃないか。引き渡しなり処罰の要求をしたのか、その後どうなのか、その点を明確にしていただきたい。
  74. 山崎敏夫

    山崎政府委員 このよど号の犯人は現在北鮮にいると推定されますが、これに関しましては、たてまえとしましては、引き渡しを要求することは確かに可能ではあると思います。しかしながら、わが国としましては、北鮮を承認しておりませんので、実際に引き渡し要求を行なうことについては非常に複雑ないろいろな問題があるわけでございます。具体的に、一体どのルートを通じて要求すべきであるとか、あるいは現実にどういう方法で引き渡し可能であるのか、その他いろいろ問題がありまして、具体的にどういう措置をとるかということについては慎重に検討を続けている段階でございまして、いまだ正式にそういうふうなアクションをとったことはございません。ただ、次の問題としまして、ではもし引き渡し要求をしないならば、処罰をはっきり要求したかという点でございますが、この点については、われわれとしては第一義的には引き渡しが望ましいと考えておりまして、処罰を正式に要求するということはいたしておりません。
  75. 曾禰益

    ○曽祢委員 これは参事官から返答を求めるのが無理な問題で、これは外務大臣から御回答願わなければならない。政務次官から御回答願えればけっこうですけれども、私は、いまの理屈なんか全然なってないと思う。とにかく救助してくれ、返してくれということは、あらゆる機関を通じ、あるいはソ連を通じ、あるいは国際赤十字を通じて言っているのに、引き渡しなりあれのほうは方法がないという意味じゃないと思うんですね。だから政治的にあれだけの問題を起こして、とにかく飛行機も乗り組み員も旅客も無事に返してきたのだから、それに対する謝意は当然であるけれども、そのこととはっきりしたけじめというものはやはりつけるべきだと思う。私はやっぱり、方法がないんじゃなくて、その政治判断についてはいろいろ意見は分かれるかもしれないが、私はやはりそれはそれ、これはこれで、引き渡しなり処罰を求めるのが当然だと思う。方法がないからやれないということは理屈にならない。これは私、いまここでこれ以上論争いたしませんが、私の見解をここにはっきり記録にとどめておき、また適当な時期に外務大臣の見解を私は聞きたいと思っております。  それから最後に本条約の発効でございますが、これは十三条の規定によりまして、ヘーグ会議の参加国の十の署名国による批准が行なわれ、その批准書寄託の後の三十日に発効するということになっておりますが、現状において、参加国の中の署名国の批准は何カ国完了しているのか、今後の発効の見通しについて御説明願いたいと思います。
  76. 山崎敏夫

    山崎政府委員 ヘーグ会議の最終日でございます昨年の十二月十六日に、会議に参加した七十七カ国のうち、五十カ国が直ちに条約に署名しておるのでございます。わが国もその中に入っております。それから考えましても、各国のこの条約に対する熱意は十分うかがえるわけでございますが、わが国と同様に、ことしじゅうにこの条約を批准すべく手続を進めておる国には、英国、カナダ、スイス、アメリカ、デンマーク、ベルギー、オランダ、ドイツ、スウェーデン、ギリシア、ブラジル、イスラエル、 ハンガリー、イラン、チェコスロバキアがありまして、さらにソ連やポーランドも……
  77. 曾禰益

    ○曽祢委員 ちょっと、数で言ってください。
  78. 山崎敏夫

    山崎政府委員 ソ連やポーランドも早期批准ということでございます。以上全部合わせて、いまのところわれわれが承知している範囲でも十七カ国はあります。  それで、いま先生御指摘ありましたように、へーグ会議に参加した十カ国の署名国が批准書を寄託しますと、三十日で効力を生ずることになっておりますので、われわれとしては、ことしじゅうにも発効すると確信しております。
  79. 曾禰益

    ○曽祢委員 いままで批准書を寄託した国はないのですか。全部見込みですか。
  80. 山崎敏夫

    山崎政府委員 いままで批准書を寄託した国についてはまだ通報を受けておりません。ないと承知しております。
  81. 曾禰益

    ○曽祢委員 これで終わります。
  82. 田中榮一

  83. 中谷鉄也

    中谷委員 法務省に最初にお尋ねしておいたほうがいいと思います。  前回、与党の同僚委員質問に答えられて、処罰法の「航行中」という文言の解釈については、四十五年四月二十四日以来法務委員会においてかなり詳しく法務省答弁しておられますが、この条約との関係において、その解釈、当時法務省が述べられた「航行中」という解釈は変更されたわけなんですか。
  84. 亀山継夫

    ○亀山説明員 先生御指摘のとおりでございます。
  85. 中谷鉄也

    中谷委員 さて、そこでお尋ねしたいんですけれども、条約三条は「飛行中」ということでございますね。飛行中のみなし規定ですね。そのみなし規定が、三条の一に規定がある。「飛行中」ということばと「航行中」ということばについては、こういうことを法務省に申し上げることは恐縮だけれども、刑法の解釈としては厳格に解釈さるべきことは当然でございますね。みなすことが刑法の解釈上はたして許されるのかどうか。この条約には三条の一項によってかくかくのものを「飛行中」とみなす、ということが明定されている。そのことを受けて「航行中」ということばの解釈を変えていいのかどうか。この点はどうなんでしょう。
  86. 亀山継夫

    ○亀山説明員 この条約におきましては、御指摘のように第三条の第一項で「飛行中」ということばの定義をいたしているわけでございます。ただそれに反しまして、航空機強取等処罰法におきましては「航行中」ということばを用いておりまして、これにつきましては特段の定義規定を置いておりません。そこで、航行中とはどういう意味であるかということは、結局解釈によってその範囲限定しているということになるわけでございますが、国内法上では、航空法その他の用例を見てみますと、飛行中と申しますよりは航行中と申しますほうが若干広い意味で使われているようでございます。  飛行中と申しますと、日常の通常の語感では飛行機の車輪が地上から離れて空に浮かんでいる状態だけをさすような語感でございますが、航行中というのが使われておりますのは必ずしもそれに限られませんで、まだ地上にいる段階も含んでいるわけでございます。ただ、地上にいる段階のどこからがこの防止法に申します「航行中」といえるかという点につきましては、その法律の趣旨とか日常の用語の意味とか、あるいはそれに関する国際的な常識とか、そういうようなものをいろいろ総合して判断するわけでございますが、現段階におきましてはいずれにしましてもその趣旨が、一種の隔絶された密室状態にある中で行なわれるものであるから特に危険であるという趣旨でございますので、そういうふうな趣旨と、それからこの条約が多数の国の集まりました会議で全く反対なく、非常に多くの国の支持を受けて採択されているというふうなことから考えますと、こういうハイジャックに関しましては、ハイジャック犯罪適用上の飛行中ないしは航行中というのは、すべてのドアが閉ざされたときからドアが開けられたときまでというふうに解釈するのがいわば国際的な常識となったのではなかろうか。そういうふうな観点を考慮いたしまして、現時点におきましては、わが国の航空機強取等の処罰法におきます「航行中」という文言もそれとほぼ同趣旨に解釈するのが相当ではなかろうか、そういう趣旨でございます。
  87. 中谷鉄也

    中谷委員 経過はよくわかっているんです。経過はわかってお尋ねをしているわけなんです。しかし、私の質問はこういうふうにお尋ねしているわけですね。  飛行中という一つのことばがありますね。そしてこういう場合は飛行中とみなすのだということばがあります。それが三条の一項ですね。それは結局みなし規定です。そうすると処罰法の論議の際に問題になったのは、委員からの質問は与野党を通じて航行中ということばを、あるいはもう少し狭く解釈しろ、あるいはもっと広く解釈すべきだといういろいろな意見が出たわけですね。あなた会議録をお読みになったでしょう。それに対して、どの委員質問に対しても法務省は次のように答弁しておられるわけです。「この「航行中」の観念でございますが、本法の場合には、離陸のためのエンジンの作動開始のときから、着陸のための滑走が終了する時点まで、かように考えております。」そしてあと非常に詳しい説明がついてくるわけです。それに対してたとえば岡沢君は、とにかく一般的な常識としてはそれはおかしいと思う。さらに刑法の解釈としては狭義に解釈すべきだ、こういうことだったと思うのです。  そこでもう一度お尋ねしますけれども、この条約では飛行中というものを、こういう場合は飛行中とみなすのだとある。みなすということはイコール飛行中ではないと私は思うのです。そうすると、そのことについての解釈は、処罰法当時頑強に固持されておった見解は訂正をするという趣旨なんでしょうか。最後に一言何か、趣旨においてほぼ同一ですというふうなお話がありましたね。趣旨においてほぼ同一ということは、どこかが相変わらず違うのですか。この点はどうなんでしょうか。
  88. 亀山継夫

    ○亀山説明員 条約のほうの「飛行中」の定義におきましては、この三条一項に書かれておりますような定義がなされております。ただこの定義自体も、それではこれですべてはっきりするかと申しますと、必ずしもそうでもないわけでございますが、いずれにいたしましても、このように非常にはっきりしておりますのに対しまして、航行中ということばには別段の定義規定がございませんので、そこにいろいろ解釈の余地はあろうかと思います。ただ現時点におきましては私どもといたしましては、ここに書かれております定義と同一であるというふうに解釈するのが相当ではなかろうかと考えております。
  89. 中谷鉄也

    中谷委員 私は決して法務省を追及するつもりできょうの質問を始めているわけではないんだけれども、そうすると要するに、処罰法の論議の際に、国内法の中で航行中というふうなことばその他のことばについて明確にすべきだということで法務省の見解を求めたわけですね。そうでしたね。そこで、私たちはいまそのことについて一々明確に答弁をいたします、しかし委員質問で明確にせよと言ったからといって、処罰法のていさい上定義を書くわけにはいきません、そういうふうに答えておられますね。そうして、定義はもうこれで動かないのですという趣旨の答弁をしておられるわけですね。ですから、結局当時の考え方としては非常に考えが足りなかったということになるのか。いや、そうではない。やはり航行中ということばは、拡大解釈をすべきでないという刑法の持っている基本的な原則において、処罰法の解釈としてはエンジン始動のときからという従来の見解を堅持されることが、刑法の解釈としては正しいのではないかという考え方もあるわけなんです。  そうすると結論は一つですね。当時と解釈が変わりました。そうして法務省の航行中という解釈は、ほぼ同趣旨ですということではなくて、この条約の文言と同じ飛行中というふうに理解をしてぐださいということになるのか。そうだとすれば当時の考え方は、国際的な常識その他についての勘案、考察が足らなかったということになるのかですね。いや、それはそれとして、航行中ということばは、国内法の解釈としては刑法の原則に戻って、条約三条のみなし規定はともかくとして、従来の解釈であるべきだという考え方だってあろうと思う。こういう問題についてははっきりしておいたほうがいいと思うので、その点についてお答えをいただきたい。
  90. 亀山継夫

    ○亀山説明員 まず結論のほうから申しますと、この航空機強取等処罰法の御審議時点におきまして、法務省当局から御説明申し上げました航行中に関する解釈と申しますか、その限界点を明らかにした考え方でございますが、これは現時点では相当ではない、すなわちその御答弁申し上げました内容とせんだって当委員会で刑事局長から述べられました御答弁では、事実上相違いたしております。したがいまして、その限りにおきましては見解を訂正した、そうお受け取りいただきたいと存じます。ただその点は、確かに御指摘のように、ハイジャック犯罪に関して航行中ということはどういうことかということに関しましての一般常識と申しますか、あるいは国際的な通念と申しますか、そのようなことを判断いたします一つの根拠といたしまして、当時の時点におきましては判断の資料が二つあったわけでございます。一つは例の東京条約でございますが(中谷委員「経過はよろしいから簡単に」と呼ぶ)そういうふうないろいろな資料に基づきましてそういう判断をいたしたわけでございますが、この条約がこういう形で、非常に多数の国の賛成によって採択され、近々発効しようとしているというような情勢下におきましては、当時の解釈を変更したほうが相当である、こういうふうに考えた次第でございます。
  91. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで私はもう一度、だから、法務省、あやまちを改めるにはばかるなかれで改められたらいいのだけれども、聞いておきますが、この条約の三条の一項というのはみなし規定ですね。「飛行中のものとみなす。」という規定ですね。刑法というものの解釈の中にみなし規定を入れることが適当でなければこそ、航行中ということばの解釈を限定的にされたわけでしょう。みなし規定の導入ということについてはどういうふうに説明をされるのですか。
  92. 亀山継夫

    ○亀山説明員 この条約の第三条の一項は、「飛行中のものとみなす。」ということばを使っておりますことは御指摘のとおりでございますが、普通の意味でみなすと申しますと、本来そうでないものをそういうふうに擬制するということになるわけでございますが、この条文ではむしろそういう趣旨ではございませんで、「乗機の後に閉ざされた時から、それらの乗降口のうちいずれか一が降機のために開かれる時まで、」をみなす、と申しますものは、私どもといたしましては、これはいわば飛行中ということばの定義をしているのだというふうに受け取っていたわけでございます。そうしてこの条約がこうなったから、その定義規定をすぐさま日本国内法の航行中ということばの解釈に持ち込んでくるというつもりではございませんで、そういうふうなことが、いわば国際法として確立されていきつつある、統一された国際的常識になりつつある、そういうふうな事情を考慮して、航行中ということばを解釈したい、そういう趣旨でございます。
  93. 中谷鉄也

    中谷委員 それは、おっしゃいますけれども、「飛行中のものとみなす。」とあるのは定義であって、そうしてとにかくみなし規定でないんだ、それは法務省として責任をお持ちになっての御答弁なんでしょうか。そういうふうに言わないとつじつまが合わないからおっしゃっているのではないですか。そうであれば、飛行中とは次のようなものをいうとあるのが普通の書き方じゃないでしょうか。
  94. 亀山継夫

    ○亀山説明員 私は条約の条文作成その他につきましてはあまり知識がございませんので、その点のことを確信を持ってお答えするわけにはまいりません。ただいずれにいたしましてもこの条約で書かれましたことを、書かれたから、それがそのまま処罰法の条文解釈と申しますか、内容に直接取り込まれるという考えではないわけでございます。
  95. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、法務省にひとつ要望しておきますが、当時航空機強取という非常に衝撃的なできごとがあった。それでこういうふうな処罰法をつくった。しかしそのときにやはり本筋は刑法の体系の中に入れるべきである。ことに保護主義から世界主義への転換などという、刑法の基本的な原則がこの処罰法の中では転換されている。非常に問題があるということであった。それで、参事官からこういう問題について御答弁いただくことは非常にむずかしいと思いますけれども、要するに、いまのように急がなければならない理由があって処罰法をつくったけれども、同時に一年もたたないうちに一番大事な刑法の基本的な有権解釈について修正、訂正、しかもそれについては前回、趣旨はほぼ同一ですというふうなことでは、法律家としてはやはり納得いきません。それは完全に解釈が変更されているわけです。変更せざるを得ないような状態ということになってまいりますと、法制審議会の刑法改正作業の状態については一体どうなっておるのか。そういうふうなものについては今後さらに促進すべきだということの意見が処罰法制定当時も出ましたが、この点について、参事官、お答えできるようでしたら答えてください。
  96. 亀山継夫

    ○亀山説明員 先生御存じのとおり、ただいま刑法改正に関します法制審議会の審議は相当進んでおりますが、その中におきましても、これはただいま小委員会で検討している段階ではございますが、ハイジャックの処罰法というのは、その罪の本来的な性質は刑法典に規定すべきものである、そういう方向で現在審議を進めております。
  97. 中谷鉄也

    中谷委員 外務省にお尋ねをいたします。  実態をお聞きいたしたいのですけれども、強取法によりますと、偽計を用いて航空機を強取し、ほしいままにその運航を支配した、こういうものがその処罰の対象になっておりますが、偽計を用いたというふうなものがハイジャックの中に、今日までの実績、犯罪の実態の中にどの程度ありますか。
  98. 山崎敏夫

    山崎政府委員 われわれの承知しております限りにおきましては、偽計を用いてハイジャックしたという事例はいまだ聞いてはおりません。
  99. 中谷鉄也

    中谷委員 「その他の方法により」という場合はいかがでしょうか。
  100. 山崎敏夫

    山崎政府委員 「その他の方法」というのは非常にわかりにくいわけでございますが、国際条約におきましては、この条約の第一条に書いてありますように、「暴力、暴力による脅迫その他の威嚇手段を用いて」というふうになっておりまして、その他についても威嚇手段に限られるわけでございます。
  101. 中谷鉄也

    中谷委員 いや、条約の解釈をお聞きしているのではないのです。要するに、とにかく航空機不法奪取という犯罪の実態は一体どのくらいの件数か、あなたのほうはわかっておりますね。過去何年からどのくらいの件数があったか。そうすると、よりどころになるのは、国内法でいえば処罰法。その処罰法による「その他の方法」というのは、「暴行若しくは脅迫を用い、」というものを排除しているわけですね。暴行及び脅迫を排除している。逆に言いますと、第一条の(a)には当たらない場合でございますね。そういうふうなものが実績、実態としてあるのかないのかということをお聞きしているわけです。——それでは質問を続けますが、「暴力による脅迫」ということば、これは一応刑法をやった人間にとってもわかりにくいことばです。その解釈をお聞きするつもりはありませんが、こういう条約第一条に見合うところの今日までの実績、実態は、すぐ御答弁いただけますか。
  102. 山崎敏夫

    山崎政府委員 世界じゅうに起こっておりますハイジャックの実態に関しまして、私たちも必ずしもつまびらかにしておりませんが、われわれが調べまして、また承知しておる限りにおいては、全部何らかの意味での暴力または暴力による脅迫その他の威嚇手段を用いてハイジャックしたものと承知しております。
  103. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、国内法の「その他の方法」というのは一体どんな場合なんだろうかということをわれわれは論議をいたします。その中でたとえば操縦士をとにかく昏睡させるというふうな場合、よく言われる昏睡強盗というようなものですね。そういうような場合が例としては当然予想されますというふうなことでありました。  そうすると、そういう例は一件もないというふうにお伺いをしてよろしいわけですか。
  104. 山崎敏夫

    山崎政府委員 そういう例はございません。
  105. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、先ほど同僚委員がお尋ねいたしましたのですが、確認をしておきます。  われわれは常識として、共謀共同正犯という観念を持っております。そこで先ほど事官は、共同正犯というものについて、それは全部機内に限るのだということでした。そうすると、機外における共謀共同正犯というものについては、本条約にいうところの犯罪行為を行なったものにはならないという解釈は、少し私はあとで問題が起こりそうに思いまするけれども、確定的なものとしてお伺いをしておいてよろしいのですね。
  106. 山崎敏夫

    山崎政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、機外からそれを幇助したというふうなものは、この条約対象外でございます。しかしながら先ほど申しましたように、そういうものについて、それぞれの国がそれぞれの国内法に従ってしかるべく処罰することは、もちろん妨げないわけでございます。
  107. 中谷鉄也

    中谷委員 答弁が正確でなかったので確認をしているわけです、機外から幇助したとおっしゃるから。そうなってくると、幇助犯しか含まないことになりますから、あるいは従犯しか含まないことになっておりますから、とにかく機外においてその犯罪加担したあらゆる者——共謀共同正犯教唆犯、それに従犯としての幇助犯、そういう一切の者は含まないという趣旨であるというふうにいまも御答弁がありましたので、それはそういうことで確認をしておきまするが、そういたしますと、実際の取り扱いとしては、どういうことになるのが妥当なんでしょうか。と申しますのは、裁判権をわが国が設定をしたというふうな場合に、多くの場合、私はこの種の事案については共謀共同正犯がある場合が多いと思うのです。実際の取り扱いとしては、そういう機外における共犯者についての取り扱いは、具体的にどういうふうに——わが国が裁判権を設定した場合に、どういうふうにするとお考えになっていらっしゃいますか。
  108. 山崎敏夫

    山崎政府委員 もう一回確認いたしておきますが、この(b)の行為はいわゆる共犯でございまして、機内にある限りにおいては、あらゆる形のものが問題となり得る。この条約対象になるわけでございますが、機外にある場合には、この条約対象外であるということを申し上げます。  そこで、しかし——この条約はそれだけに限ったわけでございますが、それぞれの国内法で、たとえばわが国の国内法でも、それ以外のもう少し広い範囲について加担する行為を含める規定を設けることは、何ら条約は禁止していないわけでございますから、したがいまして、わが国の航空機強取等処罰法がその点についてかなり広く規定されていることは、それ自体としては問題がないわけでありまして、それに基づいて、日本の国内で起こりましたそういう問題については、当然処罰し得ると思います。  ただ、強取法の解釈につきましては、これは法務省から御聴取を願いたいと思います。
  109. 中谷鉄也

    中谷委員 参事官、私が申し上げておるのは——処罰されることはあたりまえです。機内におろうが、機外におろうが、航空機奪取することを共謀したり、教唆したり、幇助したり、そういうことをした人間が処罰されないことが世の中にあり得ていいはずがない。ただAという国からわが国にとにかくそういう航空機がやってきた、そして裁判権をわが国が設定をした、そうしたところ、A国に共謀共同正犯がおる、幇助犯がおる、そしてまた教唆犯がおるという場合は十分考えられますね。そういう場合のほうが多いのじゃないでしょうか。そんな場合に、わが国が裁判権を設定した場合にはどういうふうな処置をおとりになることが妥当だというふうにお考えになっていますか。外交上の処置の問題として、私はお聞きをしているわけなんです。
  110. 山崎敏夫

    山崎政府委員 A国からハイジャックされた飛行機がわが国にやってきたというふうな場合には、この条約上から申しますれば、機外にあって、そのハイジャックに関与した人について裁判権を設定する義務は負っていないわけでございます。(中谷委員「わかっておるのです」と呼ぶしたがいまして、それについては、この条約の手続にはかからないということを申し上げたい次第でございます。
  111. 中谷鉄也

    中谷委員 いや、そうじゃないのです。そういうふうな場合に、それらの人に対する処置は、その他の条約その他によってどういう処置をおとりになりますか。共同正犯がとにかく日本国にいて、日本国がそれを裁判をするという裁判権を設定した。これは本条約に基づくわけですね。そうすると、その条約外にいる共謀共同正犯がAとかBとかCとかいう国にいるという場合に、これはどういうふうな処置をとるのが適切、妥当なのでしょうか。その点について、外務省はそういう場合を予想して、どういうふうにお考えになっておられるのですかと聞いているわけです。
  112. 山崎敏夫

    山崎政府委員 私が申し上げておりますのは、この条約の問題として申し上げておるわけでございまして、条約外の問題としては、そういうふうな地上にいる幇助した人間その他に対しては、外交のルートを通じまして、それについてもその国においてしかるべく処罰してくれということを依頼することは可能であろうと思います。ただそれ以上のことはできないと思います。
  113. 中谷鉄也

    中谷委員 そういう共謀共同正犯についてわが国の処罰法は及ばないわけですか。
  114. 亀山継夫

    ○亀山説明員 便宜、私から御説明さしていただきたいと思います。  共謀共同正犯のある者が機外にいた場合、しかもそれは外国にいるという場合でございますが、条約上の適用はございませんが、わが国の強取等の処罰に関する法律では、先生御承知のとおり、世界主義をとっておりまして、何国人がどこで行なおうとわが国の刑法適用があるということになっております。
  115. 中谷鉄也

    中谷委員 この前、笑い話で話が出たのですが、南極でやったやつでもとにかくこの処罰法で処罰できるのですねという話があったのです。ですから、私はとにかくあたりまえの処置を聞いているのですよ。だから正犯をわが国が処罰をするというような場合に、AとかBとかCにいる人間、とにかくそういう条約犯罪者については、犯罪逃亡犯の引渡条約、あるいはまた——この条約があるのはアメリカだけなんだけれども、引き渡しという処置を通じて、わが国に裁判権をまずこの条約で設定した場合において、そういう者がとにかく引き渡しをされてきて、一緒に裁判をするというのは、私は妥当だと思うのです。妥当だと思うのですが、そういうことをされるようなことはあらかじめ考えておられるのですか。その点についてはそこまでは考えていない、それはもういろいろな場合がありますというふうなことなのか。ことに先ほど事官答弁しましたように、処罰法というのは珍しい法律なんですね。御承知のように、保護主義じゃなくて世界主義というふうなたてまえをとっておる。これは刑法の大原則に対する非常な変革でありますわね。そういうたてまえと、裁判権を本条約によって設定した場合、条約外の被疑者、容疑者に対する処置は、外務省としてはどう考えているかという非常に簡単なことをお尋ねしておるわけです。
  116. 山崎敏夫

    山崎政府委員 要するに、この条約外の問題に関しましては、普通の犯罪人引き渡し手続、その他の手続に従って相手国と話し合うということでございます。
  117. 中谷鉄也

    中谷委員 要するに、そういうふうなことをおやりになるというわけなんですね。私の言っておるのは、そういうことをする場合もある、しかししない場合もあるというのじゃなしに、国内法の処罰法のたてまえからいうと、日本でとにかく裁判権を設定をしたという場合には、当然共謀共同正犯教唆犯、その他幇助犯等については、引き渡しを求めることをするのが原則であり妥当だ、適切な措置だという御答弁なんですが、そういうこともできますというふうなことをきょうは聞いているのじゃないのです。できるくらいのことはわかりますよ、法律的に。どういうふうな方針で原則としてあるのか、聞いているのです。
  118. 山崎敏夫

    山崎政府委員 そういう場合には、これは外務省独自に判断すべきものではありませんで、航空機強取等処罰法を所管しておる法務大臣から依頼があれば外務省はそれに基づいて相手国としかるべく交渉する、それは一般犯罪人の引き渡し問題その他として扱うということでございます。
  119. 中谷鉄也

    中谷委員 それは百も承知の上で聞いているのですよ。この条約自身がいま審議されているわけですから、当然外務省は法務省に意見を述べなければいかぬ立場になりますね。ですからそういう点についてはどういうことになるのかという趣旨の質問なんです。ですからその引き渡し法が国内法がどうだ、その所管がとにかく法務大臣だという話を聞いているわけではないのです。そういうふうな場合についての考え方、この条約との関連においてどういうことになるのでしょうかということを聞いたわけです。これはなぜそういう質問をしているかというと、処罰法が世界主義の立場に立っている、そうしてこれは裁判権の設定がこういうふうな条約の中であらわれてきているということの関係においてお聞きしたわけなんです。しかしこの点はどうも明確にお答えをいただけませんが、もう一度答えてください。外務省としてはどういうようにすることが妥当だと思われますか。
  120. 山崎敏夫

    山崎政府委員 繰り返しになるかもしれませんが、私が申し上げておりますのは、この条約機外にあるそういう犯人については対象としていないということであります。外務省は条約についてはもちろん所管しております。したがいまして、そういう機外にある犯人でしかも外国にある者については、それは条約の問題ではありません。ただわがほうの航空機強取等処罰法は先生仰せのとおり世界主義をとっておりますから、それに基づいて法務大臣がこの機外にある犯人でしかも外国にある者について何らかの処置をとるという御判断をなすって外務省に依頼があったときは、外務省はその上でその相手国犯人引き渡しその他を要求することはあり得ると思います。そういうことでございます。
  121. 中谷鉄也

    中谷委員 本条約適用外だということは私のほうから何べんも申し上げておることなんですね、そういう場合は。しかし本条約の精神、趣旨、考え方からいって、国外にあり、機外にあった者についてはどういうふうに処置をすることが適当だと考えられますかと聞いているのです。
  122. 山崎敏夫

    山崎政府委員 もちろん外務省の一般的な考え方といたしましては、ハイジャックというものはあらゆる方法を通じて抑止すべきものでありますから、条約外の問題としてそういうふうな人についても何らかの措置をとり得るのであればとるべきであると思います。したがいまして、国内法適用上そういうものを、そういう機外にある犯人外国にある者についてもつかまえて日本に引き渡してもらうように要請してくれという法務省からの御依頼があるならば、われわれはもちろん積極的に取り組むつもりであります。
  123. 中谷鉄也

    中谷委員 どうもいつまでたっても歯車が合いませんね。先ほど曽祢委員があなたに質問されましたね。同じことになりますが、どの程度外務省というお役所はものごとについて掘り下げてお考えになっているか私はお聞きしたいと思いますが、曽祢委員がお尋ねになったのは次のとおりでしたね。よど号の場合、要するに赤軍派の連中が現在北鮮にいるかどうかわからないけれどもとにかくよど号に乗っていった、そのことについて引き渡しを求めるか、そうでなかったらとにかくその処罰を求めるべきだというのが曽祢委員の御主張ですね。そうしたらあなたの答弁は、処罰は求めていない、処罰についてはとにかくしてくれということは求めていないという答弁であったわけです。そこでお尋ねしますけれども、どの程度御検討になっておられるか、そのことについては検討課題だったというふうに私はお聞きしましたので、いまの問題との関連でお聞きしますけれども、処罰を求める手続はしなかったとおっしゃいますが、ではこの場合どんな処罰がされると考えるか。法律問題としてこういうふうな処罰ということがあり得る、しかし、そういうことも法律的に検討したけれども、そういうことについての処罰は求めなかった、相手国、要するに引き渡しを求める赤軍派の学生が所在している国に対して、引き渡しをしてくれないならこんな処罰ができるはずだということが前提としての法律判断として出てこなければいけませんね。しかし処罰は求めませんでした——そういうことについての検討はどういうふうにしておられるのですか。
  124. 山崎敏夫

    山崎政府委員 この問題は、要するによど号の犯人が逃げていった国がわがほうの未承認国であるというために起こるむずかしい問題でございまして、先ほどから申し上げますように一般的な問題として、外務省としてはもちろん引き渡しを求めるか、あるいは相手国において処罰を求めるということで臨むわけでございます。ただ、この問題がむずかしいと申しますのは、要するにその行った先が未承認国であるということで、それについての接触の方法についていろいろ考慮すべき要素があるということでございます。私としてはそれ以上の答弁はちょっといたしかねる次第でございます。
  125. 中谷鉄也

    中谷委員 なぜいたしかねるのですか。私が聞いているのはそうじゃない、法律問題として聞いているのですよ。未承認国として話がむずかしいという話はあなたからおっしゃったから、そのことについて、むずかしいという話の複雑な内容についてお聞きしようとするのじゃないのです、設例でもいいでしょう。よど号のような場合、行ったそういう場合に処罰を求めるということになれば、あのケースの場合は一体どんな犯罪がまず成立するというふうに考えますかと聞いているのです。処罰を求めるとおっしゃるのですから。求めなかったのは、それはむずかしかったから求めなかったんだとおっしゃいますけれども、一体処罰の対象になるのかならないのかということくらいのことなら、宿題、課題になっておるのなら御検討はあってしかるべきなんです。処罰されるとすれば一体どんなことが処罰の対象になるのか、そのことについてはどうなっているのでしょうか。しかしもちろん相手国刑法何条とかそういうふうなことまで要求しているわけではございません。そのことについては一体そこまで掘り下げて先ほど答弁されておったのかどうか、答えてください。
  126. 豊島英次郎

    ○豊島説明員 私からお答えいたしますが、このよど号事件につきましては端的に考えまして強盗、傷人が考えられ、あるいは不法監禁の罪が考えられるということで、もちろん外務省当局においても、これがそういったような強盗であるとか、あるいは不法監禁であるとか、あるいは誘拐のようなものであるとか、そういうものに当たるという前提で、そういう基礎知識のもとに御検討になったんだろうというふうにわれわれは考えておるわけであります。その場合に外務省としては、先ほど答弁がありましたように、国交のない未承認国であるという点から、それは外交上の問題あるいは請求のルートの問題、そういったことからむずかしいという問題を抱えておられる、結局は引き渡しの要求をするというような状況には至らなかった、現状もそうであるということを私どもは理解いたしております。
  127. 中谷鉄也

    中谷委員 だから法務省答弁はそういうことでまあいいとして、要するによど号の場合、相手国、北鮮へ行った状態のときまで強盗傷人というふうなことが一体継続していたのかどうか。また一体向こうの刑法、処罰法がどういう体系になっているのかというようなことが調べられなければならないわけでしょう。私は何もきょうはそういりこまかい理屈っぽいことを参事官から答弁を引き出そうとは思いませんけれども、私が言いたいのは、参事官、とにかく処罰の手続はとらなかったとおっしゃる答弁が私はやはり不正確だと思うのです。前提としてはこういうふうな罪に当たるということが考えられる、そういう点についてはいろいろなことを、北鮮の刑法等も調べてみた、そういうことについてのいろいろな検討はかくかくである、しかし処罰の手続は求めませんでしたという答弁、その理由は未承認国、国交が回復していないために複雑なむずかしい問題がありますという答弁でなければ、私は論理的でもないし、正確でもないし、誠意ある答弁でもないと思う。参事官に私が聞きたいのはその点なんです。そういうことについてお調べになっておられるのですかと聞いているのです。外務省の参事官いかがですか。
  128. 山崎敏夫

    山崎政府委員 われわれとしても、北鮮の場合にこういうものがどういうふうに扱われるであろうということはもちろん検討はいたしております。そして、たとえばわれわれの承知している限りにおきましては、北鮮憲法第二十六条に「朝鮮民主主義人民共和国は、民主主義原則、民族解放運動、労働人民の利益または科学及び文化の自由のために闘争し、亡命してきた外国人に庇護を与える。」という規定があることも承知しております。そして、当時の北鮮側の声明が、あたかもこれに該当するような感じのものもございましたし、当時いろいろなやりとりがあったわけでございます。したがいまして、向こうはただこれに従ってあの赤軍派の犯人を保護しておるのかどうかについてはつまびらかにいたしておりません。しかしながら、向こうで単なるうわさとしては一応彼らは保護されておるようでございます。しかし、どういう状態にあるかについては正確な情報を入手し得ない次第でございます。そういう状態において、この犯人に対してどういう処置をとるかということについては、われわれとしては慎重に検討しておるという段階でございます。
  129. 中谷鉄也

    中谷委員 何をおっしゃっているのでしょうね。そんなこと、憲法のことを聞いているのじゃないですよ。とにかく原則をはずして答えてもらったら困りますよ。そういうことを言い出すなら、メキシコ憲法の第十五条には「政治犯罪人またはその犯罪を犯した国において奴隷的状態に置かれた普通犯罪人の引き渡しにかかる条約締結することは許されない」とありますとか、あるいはキューバの一九五九年の基本法にはこうありますとか、よど号の事件を政治犯罪と認めるか認めないかという被請求国の判断の問題をあなたに聞いているわけじゃないでしょう。あなたには処罰の手続をとることが——曽祢さんが私はかねてから主張をしておった、処罰の手続をおとりになったのですかと言ったら、あなたはとってないと言う。だから、私があなたに聞いているのは、処罰の手続をとってないと言うけれども、まずあなたは処罰の手続をとるとかとらないとかいう前提としては、北鮮側がどう考えているか、政治犯罪人として考えているかということじゃなしに、よど号の犯人は政治犯罪人じゃないのだという理論的な前提をあなたがおとりになるのかどうか、外務省ではおとりになるかどうか。そうだとすれば、北鮮のどのような刑法に触れるのか、その他の特別刑法に触れるのかという問題が出てくるわけでしょう。突然あなたは憲法を持ち出して、庇護権の問題に話を飛ばしては話がこんがらかるばかりです。だから、ちゃんと憲法の話としてするならまた話は別ですよ。庇護権の問題の話をしておるのじゃないのです。政治亡命の保護の問題を話しておるのじゃないのです。あなたが処罰の手続を求めておらないということ——求めておるとか求めておらないということの前提として、処罰さるべきものとすればどういうふうなものとして調査されたか、それが一体相手国刑法のどの条文に当たるかなんという詳しいことをきょうはあなたに聞きませんよ。しかし、考えられる犯罪としてはどんな犯罪があるかということくらいは検討した上で宿題についての答えをすべきでしょう、こういう質問をしておるんですよ。
  130. 山崎敏夫

    山崎政府委員 北鮮のそういう一般刑罰法規のどこに当たるかということまで検討したかということでございますが、国交のない国でございます  ので、そこまでは残念ながらわれわれとしては十分わかっておらないわけでございます。
  131. 中谷鉄也

    中谷委員 私もこれからときどき外務委員会に出席させていただくことになると思いますが、答弁は正確にしてください。  処罰の手続をしておりませんというふうなことをおっしゃっておられるけれども、どんなことで処罰されるのかというようなことについて、普通ならそのことが処罰の手続をする前提のABCですよ。その点について検討も何もせずにおって、その点については未承認国で話がむずかしいのでやっておりませんというふうな答弁は、私は納得いかないことおびただしいということを申し上げたいのです。しかしそれはけっこうです。  いま大臣がおいでになりましたから、大臣に御質問いたしたいと思います。少し的確な御答弁をいただきますために、質問についての前提と申しますか、私の説明を四、五分させていただきます。  それは、政治的犯罪あるいは政治犯罪というものについてかなり詳しく私なりに調査をしてみたのです。そういたしますと、いろいろなできごととの関連においてでありますけれども、昭和三十九年の三月五日の法務委員会、同じく三月六日の法務委員会、それぞれ与党の委員の方、さらに三十九年の三月十日の法務委員会においても与党の委員の方、その後参議院で五月七日社会党の委員、同じく五月十四日、五月十九日、さらにまた四十二年になりましてから社会党、民社の委員、あるいはその後四十四年に至ってざっと十回近く、政治犯罪あるいは政治犯罪人とは何かということがあらゆる角度から論議をされているわけです。私、この点については調査が非常に不十分でありました。外務大臣の政治犯罪ということについての御見解を明確にいただきたいというのが私のきょうの質問の第一点であります。その問題についてもうすでに何回か法務委員会でも非常に論議を深めております。そこでそういうふうな前提を踏まえて、少し御答弁長くなってもけっこうですけれども、御答弁いただきたいというのが第一点。  それからいま一つ、これはもう大臣はこの種の問題について私は御研究なさっておられると思うので、当然外務省としても重大な関心を持っている問題というのは言うまでもなしに、東京地裁におけるいわゆる政治犯罪人不引き渡しの原則を、確立した国際慣習法であると認めた事例、いわゆる政治亡命裁判事件問題は、東京地裁の昭和三十七年行ウ一二九号というこういう事件があることは、大臣もうすでに御承知だと思うのです。要するに、日本の裁判所の中においても政治犯罪ということが具体的な判断を迫られておるわけであります。しかも、政治犯罪ということについては、狭義の政治犯罪、広義の政治犯罪というふうな分け方もあるわけであります。さらにまた政治犯罪については、その政治犯罪人の意図をもって客観主観というふうな問題においても政治犯罪というものを規定する考え方もある。要するに、本条約の中において問題になるのは、政治犯罪については、犯罪人については引き渡さない、不引き渡しということだということについての答弁はもうすでにいただいておりまするが、はたして政治犯罪あるいは政治犯罪人というのは何か、どんなものをそのように理解するのかということについては、必ずしも掘り下げてその点に集中して質疑はされていないと思う。その点についての準備だけをきょうは私はしてまいったわけであります。その点についてひとつ大臣のほうからまず政治犯罪とは何か、どのように外務省としてはお考えになっているか、御答弁をいただきたいと思います。
  132. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 すでにこの問題については当委員会においても相当論議されていると思いますし、外務省の見解も明らかにされていると思いますけれども、まず第一に、国際法上はもちろんですが、国際慣習法上からいいましても、政治犯罪定義というものは下されていない、これは御承知のとおりだと思います。ですから、政治犯罪と普通の犯罪との区別はどういう基準でどう分けるかということについては、国際的ないわばレギュレーションといいますか、こういうものはない。そこで具体的に、たとえば政治犯罪人の引き渡し問題というようなことが起こった場合には、その判断というものは請求を受けた、たとえばある国に政治犯罪と思われる者が逃亡していた場合、これを政治犯罪として扱うのかどうかということについては、その者が現に事実上おる国の政府の判断によってこれを政治犯罪とするかしないかということがきめられるというのが事実上の慣行になっている、こういうわけでございますから、要するに、政治犯というものの定義というものが確立されていないということが第一点でございます。  それから、その次の問題は、今後はその政治犯罪人なるものの引き渡しの問題でありますけれども、各国締結しております犯罪人の引き渡し条約、これを見ますと、ほとんど例外なく政治犯罪というものは引き渡し犯罪から除外されている、政治犯というものは引き渡さないということが慣行になっている、これも御案内のとおりでございます。しかし、それならば政治犯罪人は引き渡してはいけないのだという慣行というものが確立しているか、あるいは引き渡してはならないという義務が通常のこととして確立しているかというと、そこまで確立しているとは言いがたい。これが政府のこの問題についての見解ということを総合的に申し上げることができると思います。
  133. 中谷鉄也

    中谷委員 私、この問題についてはかなり詳しく大臣から御答弁をいただきたい。あるいはまた御答弁を求める根拠を持っているわけですが、いわゆる先ほど引用いたしました東京地裁判決の被告は当然国でございますね。その被告、国は、いま大臣がおっしゃったように、政治犯罪というものについては全く定義がしがたいのだというふうなことを国は言っていないと思うのです。要するに、少なくとも政治犯罪として確定している部分はある、純粋な政治犯罪というものはこのようなものとして言い得る。しかし相対的政治犯罪というものについては内容は多岐多様だ。だから、大臣がおっしゃったように、きょうは時間があまりないし、したがっていろいろなことをあまりああでもないこうでもないとお尋ねするつもりはありませんけれども、大臣がおっしゃったように、政治犯罪という定義は多岐多様かもしれないけれども、これは政治犯罪だというように、動かないものは私はあると思うが、外務大臣としてのそういう御見解をお持ちじゃないのでしょうか。要するに、政治犯罪というものについては、非常に幅が広狭がある。しかし、こういうものは政治犯罪としてはもう全く動かないものとして、というのは、国としても——国の訴訟記録を詳しく調へましたけれども、私はそういうふうな国としては立場をとっていると思うのですが、だから、いまの外務省の御見解は国の立場と少し違うように思うのです。その点いかがでしょう。
  134. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私は主として条約的あるいは国際的な慣行を中心にして見解を申し上げたわけでございます。政治犯罪人とは何ぞやという定義が国際的には確立していない。それで、これは請求を受けた国の判断にまかせるべきが国際的の慣例であるというふうにお答えをしたわけですが、それならその次に、日本国としては、今度は国内的にどういうものを政治犯罪人として認めていくか、これも私は正確な知識を持ち合わせませんし、むしろ法務省からお聞き取りいただいたほうが正確だと思いますから、すでにお答えもあったと思いますが、まず法務省からお答えいただきたいと思います。
  135. 中谷鉄也

    中谷委員 きょうは時間が非常にもったいないので、政治犯罪ということについて、大臣の私は明確な御答弁をひとついただきたいということで準備をしてまいりましたが、どうも論議がそれでは進みません。法務省考え方はもう私逐一調査をいたしておりますから、きょうはもう答弁は私のほうは要らないわけなんですね。  それから次に、これは大臣から御答弁をいただいておいたほうがいいと思います。この条約の問題は、とにかくハイジャックついては、要するにこの条約規定している犯罪行為については、あらゆる場合の訴追についての措置をとるとありますね。そこで、前回戸叶委員から質問したのは次の点でした。要するに、その政治犯罪が行なわれたそれの結果、もしくはそれと密接不可分の関係においてハイジャックが行なわれたというふうな場合は、それは政治犯罪として見る見方があり得るのではないか。さらに、これは当然のことですけれども、原則だけ大臣から御答弁をいただいておきます。要するに、訴追しなければならないということは、たとえば刑法の緊急避難、期待可能性というふうな違法阻却、責任阻却の原則の適用を妨げるものでは全くない。これはもうあたりまえのことですけれども、どうもよど号の事件のときは、あまりにも話がなまなまし過ぎて、緊急避難という場合があるのかとか期待可能性の理論が適用できるのかということを聞く人がいなかったと思うのですが、これはやはりお聞きしておくことが適当だと思います。そういうことになってまいりますと、たとえば政治犯罪人がどうしてもハイジャックをしなければ逃亡しがたいというような場合は、これは緊急避難に当たる場合も法律的にはあり得るのか、でございますね。あるいはまた、そのこと自体が前回からの答弁では全く排除されているけれども、そういうことが密接不可分なものとして航空機奪取行為が政治犯罪の中に吸収される場合もあり得るのではないかというのが質問の第一点であります。  時間がないようですから、質問を続けさしていただきます。  第二点の質問は、先ほど事官はこういうふうな答弁をされたのです。要するに、軍隊警察税関役務に提供されているところの飛行機というものは除くのだ、これはしかし例示的な規定ですということです。しかし、例示的な規定だということはこの条約のどこからも出てこないと思うのです。例示的な規定ということですが、自衛隊はこの条約のいう軍隊に当たるのかどうか、この質問は、同僚委員からも参事官質問がありましたけれども、大臣からひとつ御答弁をいただきたい。  だから、私は最後に二つまとめてお尋ねをしたわけであります。
  136. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 一番最初に、先ほどの東京地裁の四十四年一月の判決は私もここに持っておりますし、これはしかしそれこそ法務省側からお答えすべきことでしょうけれども、ここに示された見解と法務省の見解は違うのではないかと思うのです。というのは、これは控訴をしておりますから、その訴因をどこの点とどこの点で控訴しているのかということになるとまたこまかくなりますからなんでございますけれども、とにかく控訴しているということになりますと、政治犯罪人として見るべきかあるいは政治犯罪人として見た場合に引き渡さないという原則が日本として確立しているか確立していないのかというようなところが争点になるのでございましょうが、それらについて控訴をいたしておりますから、おそらく法務省の見解というものはすでに御承知のことと存じます。  それからその次に、なかなかこれは、私も専門家でございませんから常識的にお答えする域を脱しませんが、政治犯というものとハイジャック、つまり力によって飛行機をいわば乗っ取ったというものとが完全に一体となりますと、犯罪なのかどうかということも問題ではないかと思います。政治犯というものが一つ確立して、そしてその手段というかその正犯を犯すためにハイジャックが行なわれた、それで一体として扱われるかどうかということになると、今度はやはり、一体であるならば、それを政治犯と見る場合には引き渡す義務という問題がそこに出てくる。しかし、国際慣行上はそういう義務は負わないというのがまたそこで原則として出てくる問題ではなかろうか、私はこういうふうに考えるわけでございます。  それからその次のお尋ねは、自衛隊軍隊であるかどうかというお尋ねでございますが、これは条約の第三条第二項の「この条約は、軍隊税関又は警察役務に使用される航空機については適用しない。」この「航空機」の中に自衛隊機は入るというのが、この条約の解釈として妥当ではないかと思います。
  137. 中谷鉄也

    中谷委員 質問を終わるつもりでしたけれども、ではもう一度お尋ねします。その条約軍隊の中に自衛隊は入るわけでございますね。
  138. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは政府機関と申しますか、政府機関というとちょっと法律的に正しくないかもしれませんが、この第三条の第二項に「軍隊税関又は警察役務に使用される」という「軍隊税関又は警察」というのは、私は例示的なものではないかと思いますので、軍隊税関警察とそこにぴたりと当てはまらなくとも、ここにいう「使用される航空機」という中には自衛隊機が入る、かように解釈するのが妥当であると、かように存じます。
  139. 中谷鉄也

    中谷委員 前提をそういうふうにしないと憲法の問題が出てくるわけだと思うのですけれども、例示的なんというて参事官はさっきからそういうふうに答弁しておられるのですけれども、例示的などということは、この条約のどこを押しても出てこないと私は思うのです。もう大臣に対するお約束の時間が少し過ぎましたけれども、例示的だなどということばがなくてなぜ例示的なのか。ほかの条約のところにはそういうことばがある場合がありますね。そうすると、例示的だとすればほかにどんなものがありますか。それは国会での答弁ですから、軍隊警察税関のほかに、例示的なものとしてどんなものとどんなものとをこの条約の交渉の中で考えてこられたのですか。お話として出たのですか。
  140. 山崎敏夫

    山崎政府委員 先ほど答弁申し上げましたように、この条約前文に書いておりますように、これは民間航空機対象としたものでございます。  それからもう一つ、私が例証としてあげましたのは、シカゴ条約においては明かに例示的ということになっておるわけでございます。シカゴ条約は国の飛行機には適用しないといって、軍隊税関それから警察ということを例示的に掲げておるわけでございます。この条約ICAOの一連の条約一つでありまして、当然そう解釈すべきであろうと考えるわけであります。  それからさらに、それではほかにどんな飛行機があり得るのかといわれますと、たとえばいわゆる大統領専用機というものがあったとして、それが完全に国の飛行機として使われておるならば、それなんかもこの中に概念的にはやはり含めなければならないであろうということは、従来からシカゴ条約の当事国の間では了解されています。
  141. 中谷鉄也

    中谷委員 それでは質問を終わりますけれども一、大統領専用機なんということをおっしゃるから、それじゃ大臣から答弁をお願いしなければならぬ。大統領専用機というものを強取した。大統領が乗っていた。そうするとまさに国家に対する反逆の罪とハイジャックとが一致する。そうすると前回ハイジャックの場合は、絶対政治犯罪ではないのだ、はね飛ばすのだ、はね飛ばすのだと言ったことは、全く論理的ではなくなってきたわけですね。あなた方当然自分のほうからそういう設例をおつくりになるわけです。そういう場合はあり得ると私は思うのです。しかしその点についてお約束の時間が来ましたから、政治犯罪の問題について私指摘だけをしておきますけれども、なるほどあの場合の原告が政治犯罪人であるかどうかについて法務省は争っておりまするけれども、政治犯罪というものについては、法務省の見解も、必ずしも大臣が先ほど言ったような、それほどとにかく定義しがたいものだということではなかったことは、もう一件記録を通じて明らかであります。したがいまして、私は大臣の御答弁については非常に不満であるわけです。  それから一つ答弁漏れがありますので、最後に答弁をしてください。要するに緊急避難だとか期待可能性というものは当然訴追をするということとは関係なしに、刑法一般原則として適用されるということはあたりまえのことですけれども、これはやはり気にかかることですから御答弁を、ておいていただきたいと思います。それで私の大臣に対する質問を終わりたいと思います。
  142. 山崎敏夫

    山崎政府委員 大切な問題でございますので、もう一回正確に——ちょっと私伺うことができませんでしたので、お伺いいたしたいと思います。
  143. 中谷鉄也

    中谷委員 二回も私が言ったのを……。二回同じことを申し上げたのですよ。もう一度申しますよ。  とにかく訴追をしなければいかぬということですね。それで、裁判権をとにかく設定した場合に——私はあなたに聞きたいのは、予備調査とは何だとか、一体その相当な理由は何だとか、聞きたいことは山ほど一ぱいあるけれども、一点にしぼったのです。ほかの重大な犯罪と同じように訴追しなければいかぬとあるけれども、それはあたりまえのことを聞いているのですよ。刑法一般原則の緊急避難だとか、あるいはまた期待可能性の理論というふうなもの、要するに、違法性阻却、責任阻却というふうなものは、当然適用されるのですね、これはもうあたりまえのことなのです。そうですという答えが出て、それ一言で終わるのですよ。そのことだけでもこれは記録にとどめておくべき必要があるのですから聞いておるのです。しかも、そのことを、政治犯罪人がハイジャックをやる、それがとにかく一体どうなるのか。その場合は、緊急避難が認められる場合がありますね。ポーランドからロンドンに行った有名な事件があるでしょう。それからハンガリーからスイスを通ってパリへ逃げ込んだ、有名な裁判があるじゃないですか。あなたの国連局から出ているレポートには、そのことは出ておりませんけれども、それはもう外務省の人はみんな知っている事件でしょう。要するに、ポーランドで船に乗って、そして途中で何人かを殺害してロンドンに逃げ込んだ、そういうふうな場合について、とにかく英国で裁判をしましたね。そこには均衡の理論、要するに、どちらにはかりをかけるのかという議論さえもありましたね。そこまで私はきょうは詰めて聞いているのじゃないのです。均衡の理論というふうなことを持ち出すと——きょうはそのことをあなたに、皆さんがお許しになったら、大臣がお帰りになったら四時間でも五時間でも均衡の理論の話をする準備をしてきた。しかし一番単純な期待可能性とか緊急避難というふうなものは結局あり得るのですね。しかもそれは前回戸叶さんが質問をした、それが逃走の手段となった場合ということは当然ですね、こういうふうに聞いている、あたりまえのことを答弁を求めているので、それはしかし大事なことですから、あたりまえのことだけれども、あたりまえのことは何もお答えになっていないので、大事なことだから大臣から御答弁をいただいておきましょうということであったわけです。
  144. 山崎敏夫

    山崎政府委員 訴追の問題でありますならば、その緊急避難とか、そういうふうな違法性阻却原因はもちろん働く余地はあります。  それからなお、国内法の問題に関しては法務省から答えていただきたいと思います。
  145. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 それでは念のために私からも申し上げますが、いま参事官が申し上げましたように、訴追の問題として、刑法一般的原則にあたって、緊急避難等々によりまして違法性の阻却が認められる場合はそれに従う、その原則に従うことは当然だと思います。
  146. 中谷鉄也

    中谷委員 それでは質問を終わります。終わりますが、そうすると宿題として一つ残しておきたいと思いますけれども、均衡の理論というのがヨーロッパ各国の中ではずいぶん論議されているわけですね。これは参事官御存じですね。御存じならその点についても答えていただいたらいいのですが、御存じですか。
  147. 山崎敏夫

    山崎政府委員 私はその点についてお答えするほどまだ十分な知識を持ち合わしておりません。
  148. 中谷鉄也

    中谷委員 それでは質問を終わります。
  149. 田中榮一

    田中委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  150. 田中榮一

    田中委員長 速記を始めて。  これにて質疑は終了いたしました。     —————————————
  151. 田中榮一

    田中委員長 別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  航空機不法奪取防止に関する条約締結について承認を求めるの件について、採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  152. 田中榮一

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、本件は承認すべきものと決しました。  おはかりいたします。ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  153. 田中榮一

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  154. 田中榮一

    田中委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。     午後一時八分散会