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1971-02-24 第65回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年二月二十四日(水曜日)     午後二時五十分開議  出席委員    委員長 田中 榮一君    理事 青木 正久君 理事 坂本三十次君    理事 田中 六助君 理事 山田 久就君    理事 松本 七郎君 理事 大久保直彦君    理事 曽祢  益君       池田正之輔君    鯨岡 兵輔君       西銘 順治君    村田敬次郎君       山口 敏夫君    豊  永光君       勝間田清一君    河野  密君       戸叶 里子君    堂森 芳夫君       中川 嘉美君    松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         沖繩北方対策         庁調整部長   田辺 博通君         外務政務次官  竹内 黎一君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省経済局長 平原  毅君         外務省条約局長 井川 克一君         外務省国際連合         局長      西堀 正弘君         通商産業省繊維         雑貨局長    楠岡  豪君  委員外出席者         外務委員会調査         室長      吉岡 俊夫君 委員の異動 二月二十四日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   松本 善明君     不破 哲三君     ――――――――――――― 二月二十日  婦人労働者に係るILO関係条約批准促進に関  する陳情書  (第六八号)  日朝両国間の自由往来等に関する陳情書  (第六九号)  日中国交回復促進に関する陳情書外一件  (第七〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 田中榮一

    田中委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次、これを許します。戸叶里子君。
  3. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はきょうは台湾帰属の問題について質問をしたいと思います。  最初にお伺いしたいことは、新聞によりますと、何か外務省が二日に明らかにしたところによりますと、米国務省中国政策担当官の間で現在、一つ中国一つ台湾方式の新決議案が検討されている様子である、こういうふうなことが報道されておりましたが、これについて外務大臣としてはどんなふうにお考えになっていらっしゃるかをまずお伺いしたいと思います。
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま戸叶さんからお尋ねがございましたが、最近アメリカとの間で台湾の地位とかその他の問題について、特種のサブジェクトについて相談をし合ったとか、結論が出たとか出つつあるとか、そういうことは私承知しておりません。さような事実はございません。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 アメリカ日本の間でなくて、アメリカ中国問題の担当官の間で何かそういう話が出ているというような話を聞いたのですが、そういうことは外務省には何も入っておりませんですか。
  6. 須之部量三

    須之部政府委員 もちろん国務省の中で担当官がいろいろ検討し協議しているということは聞いております。しかしそれは事務的なレベルでやっていることでございまして、それ以上のことは存じておりません。
  7. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務大臣にお伺いしたいのは、中国問題については佐藤ニクソン会談で緊密な連絡協議というのが約束されているわけでございますが、いまのような一つ中国一つ台湾方式というようなものがもしも表に出てきたとすると、日本の国ではそれに対してどういう処置をなさるんでしょうか。もしそういうふうな話が出てきた場合に、日本外務大臣としてはどう処置されるかということをまず伺っておきたい。そういうことが幾らアメリカのほうで出てきても、そして緊密な連絡協議というような約束はしていても、そんなことにはかまわないのだ、少しも関係ありませんという態度をおとりになるのか。やはりある程度そういうものに耳を傾けなければならないのじゃないかと思いますが、この点はいかがでございましょうか。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いつも同じようなことを申してまことに恐縮なんでございますけれども政府として中国問題についてこういう新しい態度を打ち出すべきであるというようなことについて、具体策というか、あるいは考え方というものをまとめる段階にまだ至っておりません。外務省としてはもちろんいろいろ情報を集めて勉強をいたしておりますのが現状でございます。  そういう状況でございますから、他の国がどういう案を出すかということもまだわかりませんし——いまのは、アメリカがこうこういう案を出してきたときにはどうだろうかという戸叶先生の御想像だろうかと思うのですけれども、もしそういう場合がございましたら、そういう案に対しても十分その考え方基礎や見込みやいろいろ聞く必要もございましょうけれども、いまそこまで予想しているわけではございません。またアメリカだけではなくて、いろいろの国々との間においても協議をしたり情報交換をしたりということが非常に必要なことではないか、そういう認識は持っております。  それからもう一つ具体的なお尋ねでございましたが、佐藤ニクソン会談で、中国問題等について十分緊密に一そう連携をはかっていきましょうという話し合いができておることは事実でございますけれども、それを受けて特に顕著に具体的にこうこういう会合が行なわれたというようなことはまだございません。御案内のように友好国同士ワーキングレベル情報交換やコンサルテーションはしょっちゅう行なわれておりますから、そういうことはもちろんやられておりますけれども、特に目立った新しいやり方や機構での話し合いというものは現在のところまだやっておりません。
  9. 戸叶里子

    ○戸叶委員 新しい考え方をまとめる段階にまだきていないというお話でございましたが、日本政府としてもずいぶん長いこと勉強をされているわけで、苦慮されていることはわかりますけれども、何か一つ考え方なり方針なりをまとめてお出しになるのは、大体いつごろをめどにしていらっしゃるかをお伺いしたいと思います。たとえばことしは秋には国連の総会もあるわけでございますから、それまでには何らかのめどをおつけになるのか、それともそれまでにもめどもつけずにそのままいこうとされるのか、この辺のところを外務大臣に伺っておきたいと思います。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 率直に申しましていつと日にちを切って新しい政策を打ち出すということは考えておりません。ただ前々から申し上げておりますように国連では、国連での代表権の問題という形では、どういうふうにしたらいいかということで、各国ともそれぞれにいろいろと検討しているようでございますから、もちろん日本といたしましても、その場合にどういう態度をとったらいいかということについては、そのときまでにはいろいろと検討の結果を待ちたいものだと思っておりますけれども、それにしてもまだ相当の時日がある。それからそもそも政府見解といたしましては、中国問題というようなものは最近の歴史的な見方から見ましても、来月どうするとかあるいは二、三カ月後にはというくらいの早さではなくて、もり少しじっくり落ちついて考える必要もあるし、また事実相当の時間がかかる問題である、こういう認識を持っている次第でございます。
  11. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務大臣答弁はあんまりいままでと変わらないのですが、そこできょうの新聞に、訪中されておられます藤山さんに、中国のほうで人事交流必要性を説いて、そして交流にあたっては一つ中国で、中華人民共和国を唯一の合法政府と認めて台湾中国の一部とする中国原則を認める人でなければならないというようなことを強調されたということが出ております。これは当然のことだと思いますけれども先ほどアメリカ国務省が研究している案といい、そしてまた今回中国藤山さんに示した案といい、両方をよく見てみますと、やはりそこで問題になってくるのは台湾帰属という問題じゃないかと私は思うのです。  そこで、この台湾帰属という問題については未決定であるということがたびたび答えられておりますけれども、そうすると台湾というのはどこの国にも属さない、結局国際法でいうところの無主地というふうな形になるんじゃないかと思いますが、そうでございましょうか。私はきょうは、この帰属の問題について、いろんな角度からちょっとただしておきたいと思いますので、まず最初にその点をお伺いしたいと思います。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 台湾帰属の問題については、一つ角度は、日華平和条約のいわゆる適用地域の問題でも論議として取り上げられる問題だろうと思いますけれども、この点も念のために申すわけですけれども政府見解としては、日華平和条約の第一条とか第四条とかいうような国と国の法的関係を拘束するようなものについては、適用範囲の問題は起こらない。しかし適用範囲の問題を、特に交換公文その他で明らかにしたのは、一つは通商その他の関係のように、適用範囲の問題があるから、それを交換公文等で明確にしたのでありますし、同時に、台湾地域というものに対しては、日本サンフランシスコ平和条約でこれを放棄しておる。そしてこの台湾帰属についてどうこうすべきであるという見解日本政府としては表明すべき立場にない。また台湾は、いまのおことば無主物というおことばがありましたが、そのことば国際法上の練れたことばであるかどうかは別といたしまして、帰属がきまっていない、こういうようなことからも、適用範囲の問題というものが、念のために日華平和条約の上でも交換公文等から明確にしておく必要があったのだ、こういうふうな立場を、日華平和条約について日本政府はとっておるわけでございまして、台湾という土地に関する日本政府見解は、以上のような見解でございます。
  13. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いま外務大臣もおっしゃいましたように、その帰属につきましては、どこに帰属するかということが、平和条約ではしるされておりません。日本放棄したというだけです。そこで対日平和条約の二条の領土放棄というのは、いままで前例を見ない形だと思います。たとえば、どこどこに放棄をするというようなのが普通の形だと思いますけれども、これは何々国に放棄するという形がとられておらない。そこで対日平和条約は、領土問題で最も関係がある中国ソ連の不参加を前提にして作成されたのであり、そうかといって対日平和条約起草国である米英カイロ宣言原則を無視することができませんでしたために、さしあたりこれらの領域を、平和条約帰属国の明記、どこに属するかということをはっきりさせないで、日本から分離しておくという必要があった、こういうふうなことが、平和条約の二条によって私は明らかにされていると思います。したがって平和条約の二条では、どこに属するということがはっきり書かれておらない。だから私どもは、台湾澎湖島帰属というのは、当初から中国に属するものであるということが、平和条約署名国によって黙示的に了解されていたはずではないか、こう考えるわけでございますが、この点について外務大臣はどう思われるでしょうか。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 前段におっしゃったことは、そのとおりだと思いますけれども先ほど申しましたように、日本政府としては、サンフランシスコ平和条約第二条によりまして放棄をいたしましたが、どこに放棄したとかどこがこれを占有することになったかということは、このサンフランシスコ条約では書いてない。同時に、日本放棄したわけでございますから、この台湾帰属については、俗なことばで言えば発言権はございません。また政府立場発言すべきものでもないと思いますから——歴史的にカイロ宣言でどうだった、ポツダム宣言でどうであった、こうした背景から見ればこうこういうことであったろうということを、歴史学者的にあるいは政治学者的に言うことはできましょうけれども日本政府としては、やはり条約の上でだれに放棄したのでもない。放棄しただけでございますから、政府公式見解としてどこに帰属すべきかということは言うべきではない、かように考えております。
  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、この帰属についてはだれがきめるのですか。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは、いまも申しましたような環境でございますから、日本政府といたしましては、だれがどういうふうにきめるべきだということを言うべき立場にないと思うのです。日本としては、多くの国々に対してサンフランシスコ平和条約でこれを放棄いたしましたし、それから先ほどもその関係にちょっと言及したわけでありますが、日華平和条約におきましても、これを再確認しているわけでございますから、日本政府台湾についてはこうこうすべきであるということは差し控えたほうがよろしいかと思います。
  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務大臣は、どこのだれがどういうふうにきめるかということは差し控えたほうがいいというお話でございました。私、一月二十九日だったと思いますが、予算委員会でこの台湾帰属問題に触れられて、そしてその帰属問題でいろいろと質疑応答はされませんでしたけれども帰属問題に触れて外務大臣答弁されたのに、この帰属は多数関係国間できまるものだというような答弁をされております。私はそれを見て、一体多数国間というのは、どこの国が入ってどういうふうな形できめるのか、一体中国もこの多数国間の中に入るのだろうかというようないろいろな疑問を持ちまして、帰属問題というものを少しあっちこっちから研究してみたわけでございますが、大臣がきょうお答えになりました多数国間というものの中には、どういうものを描いて答えられたのでしょうか、この点を念のために伺いたいと思います。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いま同じことを申し上げて、これも恐縮なんですけれども日本以外の多くの関係人たちできめてもらうべきものだということを、抽象的に言えると思いますけれども、それにはどこが入るべきだとか、どういう形の国際会議がいいとかいうようなことは、私はコメントすべきではないと思います。要するに日本は、発言放棄したのですから発言権はございません、これが謙虚なる態度であろうかと思います。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、日本以外のどこかわからないけれども、どこかの国できめるというふうなばく然たる考え方でおっしゃったのですか。その中に中国というものは、全然考えていらっしゃらないわけですか。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そこまでいかないわけでございまして、日本政府としては、本件については発言をいたさない、それではだれがきめるのか、こう言われれば、日本以外の多数の国々の間でおきめになることになりましょうということを常識的に申しただけでございまして、それ以上こうやってきめるべきだ、何国は入らなければならぬ、いや入ってはいかぬ、こうなりますと、これは日本政府としては行き過ぎであろうと思います。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は大臣がおっしゃるように、どことどこの国がどうなって、そして中国が入ってはいかぬとかなんとか、そういうようなことを聞いているわけではないのです。やはり台湾帰属の問題というものがあるために、いろいろと中国問題の解決のガンになっているわけですから——歴史的にそういうことをずっとたどって見てまいりますと、台湾中国の一部であるというようなことが示されているわけです。たとえば平和条約の二条で日本台湾澎湖島のすべての権利、権限を放棄した、こういうふうに言いながら、どこに放棄したのか、連合国にしたのでもないし、そして講和条約署名国にもしたのでもない、そういうことからたどっていってみると、これは中国の一部である、その一部であるという考え方に対して、世界のどこの国も大体黙示的にこれを認めている、それに対してどうだこうだという国は私はほとんどないと思うのですけれども、どこかに中国の一部であるということに対して非常に反対をとなえるような国があるでしょうか、いまのところないように私は思いますが、いかがでございましょうか。
  22. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは率直に申すのですが、その辺の御議論のところが、政府としてはそういうところへだんだん発展していくことについて、日本政府としての意見を言うべき立場にない、日本放棄しただけなんでございますから、これはどういうふうな形になったほうがいい、どういう国国と御相談くださいとか、どういう国には決して入ってはいけませんということになりますと、このサンフランシスコ条約以来の姿勢がくずれることになるし、また当面のいろいろのなまの政策にも関連してまいりますので、ますますもってその辺のところは、まことに恐縮でございますがこれ以上台湾帰属については政府としては同じことを繰り返す以外にないと思います。
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 大臣のような御答弁ですと、なかなか先の審議ができないわけですけれどもアメリカでも、一九五〇年のころは朝鮮戦争の始まる前までは、トルーマン大統領アチソン国務次官も、台湾中国の一部であるという議論文献等にあってはいたしております。それを私はいま読み上げる時間もありませんので申し上げませんが、そういうふうなことから見ましても、そしてよその国々中国の一部であるということに対して、これを否定するようなことの発言がないというようなことから見ましても、やはりこれは中国の一部ではないか、そしてまた蒋介石が、中国の中のソ連というような本の中で書いているのを見ましても、中国の旗を立てて私はここに政府をつくったというようなことを言っているわけですけれども台湾自身もその当時は中国の一部であるという立場に立っていたと思うわけです。  そこで私どもがいまたいへんふしぎに思いますのは、台湾帰属の未決定論というのは、ある種の政治的意図を持たない限り国際的に通用しないのじゃないか、こういうふうに私は思いますけれども、その考えは間違っているでしょうか。
  24. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはあるいは専門的に政府委員から意見をお聞きくださってもけっこうでございますけれども、私はこう考えます。  たとえばカナダあるいはイタリア、これらのところが中華人民共和国政府と国交ができることになりました。その際に、いわゆるテークノートというような新しいことばといいますか態度が出てまいりましたわけですが、このテークノートするということを台湾について言うたということも、カナダにしてもイタリアにしても台湾というところの帰属問題というものが未決定なんだということにも触れた考え方ではないのだろうかと私は考える次第でございます。いわんや日本は、何べんも申しますようにサンフランシスコ平和条約において台湾放棄している、それから日華平和条約等におきましてもそれを再確認している、これがもう一貫した国際的な日本態度なんでございますから、その放棄した台湾放棄先、所属がきまっていないからといってこれはこうすべきであるなどということは言うべきではないのじゃないか、こういうふうに考える次第でございます。
  25. 戸叶里子

    ○戸叶委員 大臣答弁を伺っておりますと、日本政府台湾中国領であるということを認めることが法的に不可能であるのか、あるいは帰属決定論がわが国の対中国政策で有利だという認識であるのか、そのどっちなんだろうということを考えたのですが、結局法的に不可能であるように聞こえたのですが、このことを伺いたいと思います。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は意図しているところをもって言っておるわけじゃありません。やはり広い意味国際信義ということがかかると思いますけれども、それは意図するところのあれじゃありません。  それからサンフランシスコ平和条約は、あんなものはだめな条約だという御意見もあることはよく知っておりますけれども、私ども政府としてはその当時からサンフランシスコ平和条約体制を望んで、これをもってその後の一つの外交、内政の基本にしております立場から申しますれば、これをあらゆる意味で尊重してまいりたい、その考え方からして台湾放棄をしたのでありますから、どこに対して帰属を望んだわけでもあるいはその願望等を披瀝したわけでもございません。ほんとうにこちらは何にも申しませんといって放棄したわけですから、その立場をずっと維持すべきものである、これが政府のとるべき態度ではないかと思います。
  27. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いままでのお話を聞いておりますと、やはりサンフランシスコ平和条約帰属というものについては何も触れないで、日本はただ放棄しただけだから、それも何も別に考えずにしたことであるからそれ以上のことではないというようなことになってきますと、やはり法律的にちょっと日本としても帰属考えることができないというふうに受け取れるわけですが、私の考えでは、現在ではもはや、先ほどからの議論をずっと聞いておりましてもどんな国際機関でもまたどんな国際会議によっても台湾帰属決定するということはできないと思うのです。いままでの答弁をずっと伺っていてもそう思うのです。だとするならば、台湾中国領土であるということを承認する以外に方法はないというふうに思うのですが、政府台湾帰属決定することについて何かほかに方法があると考えていられるのかどうか、もう方法はない、いままで言いましたように、それには何も触れないんだということだけしかもう言うべきではない、こういうふうにお考えになるのか、この辺だけをもう一度念のために伺いまして、この問題は打ち切りたいと思います。
  28. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、この台湾という地域帰属問題という角度からの御議論につきましては、再々の御質疑でございますが、その角度からは日本政府としてはお答えができない、事実それが正しい姿勢ではないかと私は思います。サンフランシスコ平和条約によって日本が独立を回復した、日本近世史の一番基礎になっておる条約であり、また先ほどちょっと触れましたけれども、他の国々台湾領域ということの扱いというものは非常にむずかしいことだなということが、何かこう私どもにもわかるような気がいたしますね。たとえばテークノートとかあるいはエンドースもしないがチャレンジもしないとか、いろいろとくふうされた表現や態度をとっておられますね。そういうところを見れば見るにつけても日本政府としてはサンフランシスコ平和条約体制を守り、台湾放棄し、しかもそれがどこにいくのかということについては発言をしないという従来からも立場をとっているのですから、この立場を貫くことが私はまっとうな日本政府としての姿であろうと存じます。
  29. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この問題はこれ以上伺っていても、これ以上の答弁はいただけないと思いますので、また次の機会に譲りたいと思います。私の質問はこれで打ち切ります。
  30. 田中榮一

  31. 村田敬次郎

    村田委員 私は、沖繩問題に関連をして承りたいと思います。  その前提としてまずお伺いいたしますが、昨日の閣議におきまして、天皇皇后陛下の御訪欧日程が発表になったわけでございますが、これには愛知外務大臣は終始随行をされるわけでございますね。
  32. 愛知揆一

    愛知国務大臣 昨日の段階におきましては、両陛下の御訪欧決定をいたしまして、その日程決定をし、関係国と同時に発表いたしました。そのところにとどまっておるわけでございまして、どういうふうな供奉と申しますか随行になりますかは未決定でございますが、ただ通例の国際慣例等から申しますと、やはり憲法上の象徴である陛下の御渡欧に対して閣議決定をもって決定いたしましたから、これは政府としてもこの御旅行が成果のあるように万般の努力をいたさなければならない重大な責任がある。そういう観点から、通常政府責任を持っておりますこういう問題、元首の御外遊ということについては外務大臣それから外務省で申せば儀典長というところが供奉するのか自然の考え方であろうということには政府部内でも考えられております。しかしこれはいま申しましたように、正式にさように決定したわけではございません。
  33. 村田敬次郎

    村田委員 私の承っておりますところでも、外務大臣随行されるのは国際慣例からしても当然のことであろうというふうに考えるわけでございますけれども、もし随行されるということが決定になっておるとすれば、十月十四日までの日程でございますので、そういたしますと、伝えられますところの沖繩国会というのは当然その後ということ、そのほかの国際会議関係もございますし、十月中旬以降になるというふうな想像が一応つくわけでございますが、その点は外務大臣はいかにお考えになりますか。
  34. 愛知揆一

    愛知国務大臣 沖繩の返還協定については、いま一生懸命政府としては努力を続けているわけでございまして、七二年の早期の返還ということを目標にしてやっております。で、同時に、これは返還協定だけの問題ではございませんで、国内立法もその他の準備もたいへんなことでございますから、それらの準備が全部でき上がりましたところで国会の御審議をお願いしたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  35. 村田敬次郎

    村田委員 そういった準備期間から考えますと、現在、巷間伝えられるところでは十月以降ということが一つめどになってくるわけでございますが、そういたしますと、来年、昭和四十七年の四月一日に沖繩が返還されるであろうという国民的な要望、めどにつきましては、あるいは外務大臣も沖特委員会等におかれまして四月一日は沖繩返還に関し重要な期日であるというふうに言われたように承っておりますが、この際、返還期日についての愛知大臣の具体的なお考え方をあらためてお伺いしたいと思います。
  36. 愛知揆一

    愛知国務大臣 七二年の早期に返還を実効あらしめますためには、何としても本年内に国会の御承認をいただくということが私としては最も望ましいことである、かように考えております。そして返還の期日がいつになるかということについては、これはもう日米双方の合意で煮詰めていくわけでございますからまだきまりませんけれども、私は現在の過程において、交渉中の過程でありますけれども沖繩の琉球立法院で超党派で決議された五項目がございますが、その第一に、一九七二年四月一日を非常に強く期待しておられる、私はその考え方を非常によく理解できます。これは琉政の発足の記念日でもございます。日本としては会計年度の始まる日でもございます。いろいろの意味で四月一日という日は非常に大切な意義のある日であるということを私は非常によく理解できますと、こういうふうに琉球立法院の各党代表の方にもお答えをいたしておるわけでございます。まだきまってはおりませんけれども、いわば願望としては私もそのことを理解の上にかような願望を持つということは自然の考え方ではなかろうか、かように存じております。
  37. 村田敬次郎

    村田委員 重要な問題でございますからもう一度確認さしていただきますと、大臣は十月に御帰国になってから最も早い機会に沖繩臨時国会を開かれて、来年の四月一日に返還のはっきりしたことが行なわれるようにできるだけの努力をし、また希望を持っておられるというふうに了解してよろしゅうございますか。
  38. 愛知揆一

    愛知国務大臣 四月一日ということは、非常に大切な意義のある日であるということを踏まえて努力をいたすべきものであろうと考えておりますが、この点はまだどういうふうになりますか、これからの折衝、協定のつくりぐあい、あるいは国会の御承認、いろいろの条件がございますから確たることは申すことができません。
  39. 村田敬次郎

    村田委員 次に進ましていただきます。  次は沖繩復帰対策につきましての資産の買い取りその他の問題でございますが、特に琉球電力公社あるいは琉球水道公社、琉球開発金融公社等の資産の引き取りについて、これを有償で行なうという原則は確認しておるように承っておりますが、これは間違いございませんか。
  40. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは私どもの返還協定の一つの大きな問題点であると同時に、実はなかなかむずかしい問題でございますし、技術的な点もございますので、現在大蔵省の代表者とアメリカ財務省の代表者との問に、もう何回にもわたりまして東京あるいはワシントンにおいて交渉が行なわれております。そして当方の考え方としては、予算委員会で大蔵大臣が申しましたように、三公社そのほかにも行政上の用に供し得るいろいろの建造物などがありますが、これは今後とも沖繩県民の方々の福利のために役立つところのいわゆるパブリックユーティリティーである、そういう点に着目して、日本政府がある程度の負担をする、ある程度の金額を払うということもあり得るということを大蔵大臣も申しておりますが、そのとおりでございます。ただ買い取りという観念とは違うのでございまして、その辺のところは御了解いただきたいと思いますのと、結局これは、しかし同時に評価その他が基礎になりますから、まだその額がどの辺の見当に評価されどのくらいのところまで日本が見ていかなければならないか、その辺はまだこれからの問題であります。
  41. 村田敬次郎

    村田委員 最も最近手に入れました沖繩の復帰要綱の第二次以降分の地元の要請書を見てみますると、この中に「物価、公共料金」という項目がございまして、「復帰に伴い沖繩の諸制度が本土のそれに移行する場合公共料金を含め物価に対し直接的な影響を与えると予想される諸制度については特別な措置を講ずることとし、復帰後急激かつ大幅な物価の上昇をきたさないよう措置すること。」という強い要望が出ております。例を水道にとりますが、上水道の場合は、御承知のように、現在水道公社におきまして、市町村に払い下げる上水の原価がトン当たり二十一円であります。これは末端需要、売り渡し価格になりますと、一般家庭用向けにつきましては四十五円ないし七十二円、これはトン当たりでございますが、この価格は本土に比べるとかなり高い価格であります。したがいまして、もし水道公社の資産を買い取る場合に、その買い取りました水道公社の資産を新しく引き継がれる。たとえば沖繩県といたしますと、そういうところのいわゆる資産の中に債務として入れられますと、それが水道料金にはね返って、そして一般の沖繩県民を苦しめるということになるわけでございますが、その買い取りの際に、水道料金は末端において値上がりをしないような特別の措置を講ずるといった考え方についての大臣の御意向を承りたいと思います。
  42. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは、何と申しますか、私の所管ではございませんで、結局協定その他の関係で引き継ぎをどういうことでやるかということは、私も一生懸命お手伝いをいたしますが、一つは大蔵省の問題であり、それから料金等の問題になってまいりますと沖繩対策庁の所管でございますから、そのほうから御答弁申し上げることにいたしたいと思います。
  43. 田辺博通

    ○田辺政府委員 水道の問題は、沖繩におきましては、水の問題というのは非常に緊要なことであると存じております。御質問の、米資産に対しましてある一定の評価をした場合に、現在の水道料金は内地に比べましてもそう安くはない。それがさらに高くなりはしないかという御懸念かと思いますけれども、私どもといたしましては、その米資産を有償で引き取ろうとあるいは無償であろうと、この料金問題にははね返らさないようなくふうをとってまいりたい。復帰後における水道公社の水道の経営をどういう形態でやるかということか一つの問題でございますけれども、いずれにいたしましても、有償か無償かということによって料金が急上昇するというようなことは絶対避けたい、そういう覚悟で関係省庁と調整をしております。
  44. 村田敬次郎

    村田委員 水道料金にはね返らさないという原則はたいへんけっこうであります。ぜひそういった方針に従って行なっていただきたいと思いますか、その水道公社の持っております施設、そのほかに米軍の統合浄水場の施設そのものを引き継ぎの対象にするかという問題で、買い取りについての原則というようなものが政府において確立されておるか、もし確立しておればその買い取りの原則を承りたいと存じます。
  45. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど申し上げましたように、これは日米間の折衝の問題でもございますが、本質的には大蔵省に非常に骨を折ってもらっておるわけで、それから大蔵省自体も財務省と直接の意見交換もしばしばやっておりますので、できれば大蔵省当局からその観測を聞いていただきたいと思います。私の承知しておりますところでは、先ほどもちょっと申しましたが、いま額がどのくらいのところで話がつくかというところ、まだめどがつきかねているのではないかと思っております。
  46. 村田敬次郎

    村田委員 やはり資産の買い取りに関連した問題でございますが、軍事基地外の道路あるいはいわゆる軍用道路といったものにつきましては、当然無償で日本政府に移管になるものと了解してよろしゅうございますか。
  47. 愛知揆一

    愛知国務大臣 基地外の道路、これは三公社と同様、あるいは先ほどもちょっと申しましたが、行政用の建造物というようなものと同じふうに律して、やはりパブリックユーティリティーであるという角度から考えていきたい、こういうふうに考えております。
  48. 村田敬次郎

    村田委員 今度は方面を変えまして伺いますが、沖繩の中にはアメリカの企業が百九十ないし二百くらい、たとえば輸入業者であるとかあるいは自動車関係であるとか保険業であるとか、そういったいろいろな業態の方が入っておるというふうに聞いておるのでございますが、現在は御承知のようにいわゆる為替管理あるいは貿易管理等について、日本の国内に比べますれば非常に特権的な取り扱いを受けておるということになるかと思うのでございますが、これが日本復帰後も同じようにアメリカの企業が特別な扱いを与えられるということになりますと、これは国民感情にとっても非常にマイナスであると思いますし、当然アメリカの企業に対しても日本の企業と同様の措置が行なわれるものというふうに了解をしたいのでございますが、これについての大臣の御所見を承りたいと存じます。
  49. 愛知揆一

    愛知国務大臣 米系の企業の問題については話し合いは大体かなり順調に進んでおります。つまり本土並みの返還でございますから、従来かりにアメリカの大企業などで米民政府から許可とか認可を受けていたものは、復帰と同時にその根本の認可、許可というものが無効になってしまう。このことは企業体もアメリカ政府側もよくわきまえております。したがって、返還の日からあとは本土並みの諸法令の適用下にある、こういうことになります。  それからいまもおあげになったように、百八、九十では済まないくらい相当中小のたくさんのいろいろの仕事がございますが、これらの中にはまた弁護士さんというような自由職業もある、歯医者さんも獣医さんもありますし、いわゆる資格を必要とする自由職業の方々をどういうふうにするかということも具体的にはなかなかむずかしい問題でございます。これらにつきましても沖繩の実情を踏んまえて、そうして原則的にはもちろん本土並みにならなければならないのでありますけれども沖繩の県民の方々の理解のもとに、あるいは協力のもとに、ある期間公平の取り扱いを受けさせるようにしてあげることも、また返還をスムーズにするゆえんではなかろうか、かように考えております。  それから外資法とか輸入制限法その他の一切の法律、命令等は全部本土並みになるわけでございますが、御承知のように法律、命令の中にも行政上の措置、裁量にゆだねられる部分もございますが、そういう面は適宜に事情に即した運用をやっていく、これらの点についてはもう詳細にわたりまして企業側の実態調査もほぼ終わり、それから希望等もクエスチョネアをとり、それを各業態ごとにしさいに検討し、そして本土の通産省、農林省その他関係の当局に詳細にお願いをいたしまして、その処理方法を定め、そしてこれを米側と合意をする。その中のもので相当のものはもうこれは協定の問題以外でございます。話し合いで処理のつくものが相当たくさんございますこともあわせて申し上げておきたいと思います。
  50. 村田敬次郎

    村田委員 フリーゾーンのいわゆる特殊関税地域、自由港と申しておりますが、この問題について具体的にお伺いしたいのでございます。  最近、これは二月十七日付で琉球商工会議所の会頭から提出をせられました要望書の中を見ましても、自由貿易地域の新規設置による産業振興という項目をあげております。それからまた従来山中総務長官あるいはその他の政府の方々の発言を見ましても、いわゆるフリーゾーンについて相当大きな意欲を持っておられるということを私どもは感じるわけでございますが、事実このフリーゾーンがほんとうに大きく活用されますならば、これからしっかりとやっていかなければならない。東南アジアとの貿易その他の問題について重要かる基地になると思うわけでございますけれども、その点、たとえばプエルトリコ方式であるとか、高雄方式であるとか、いろいろな方式を検討されておるように承っておるのでございますが、この問題についての具体的なお考えを承りたいと存じます。
  51. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは本土に復帰して、その後の沖繩の経済その他の体制をどうするかという問題でございますから、この点には外務省は関与いたしておりません。いずれ関係省庁の御相談の中の一環として外務省にも御相談があろうかと思っておりますが、まだ政府部内におきましても、その構想は十分には固まっていないのではないかと思われます。
  52. 村田敬次郎

    村田委員 沖繩・北方のほうから参事官が出ておられるようでございますので、お答えをいただければと思います。
  53. 田辺博通

    ○田辺政府委員 お話のいわゆる自由貿易地域につきましては、沖繩の置かれている地理的な事情、条件あるいは比較的豊富な労働力があるのでこれから大いに雇用機会を造出しなければならないという観点から、例にあげられましたような高雄であるとかプエルトリコというようなところで行なわれておりますところの一定の区域を限りまして、輸出入に関する手続を簡素化するとともに、租税、関税につきましても、原材料の輸入等について完全にフリーにする。また特別な用地の提供、これを提供しやすいような形でもって業者に提供するあるいは固定資産税その他各種の租税の減免措置を検討するというようなことで、沖繩のある一定の地域にそういうた企業が出てまいるあるいはそこに相当の雇用が吸収できるということになりますと、たいへん望ましいわけでございまして、私ども目下検討中でございます。
  54. 村田敬次郎

    村田委員 高雄の自由貿易地域の場合は、その地域の中に工業施設がございまして、しかも労働力が非常に安く得られるというようなところから、非常に成功しておるということも聞いておるわけでございますが、そういう工業施設を中に置く考え方であるか。あるいはまた民間伝えられるところによれば、那覇市の北方の浦添市の一部にそういった自由貿易地域を設けられるということを聞いておりますが、これはある程度具体的な考え方であるのかどうか、そういった点について伺いたいと思います。
  55. 田辺博通

    ○田辺政府委員 立地の場所につきましては、いまおっしゃいました新しい安謝新港が構築中でございますが、その臨港地域といたしまして浦添市の区域に入りますところの地域一つの有力な候補として考えております。
  56. 村田敬次郎

    村田委員 その際に、いわゆるガット、関税及び貿易に関する一般協定でありますが、高雄地域の場合はガットに加入しておりませんからその関係はございませんけれども日本の場合は三十年九月十日にガットに加入をしておりますから、これとの関連で支障のある問題もありはしないかと思います。これは外務省の所管だと思いますが、大臣いかがでございますか。
  57. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど申しましたように、まだ自由港構想をどういうふうに展開していくかということについて私もつまびらかでございませんが、まあその案の内容にもよりますけれども、一がいにガットに抵触するとは言えない、こういうふうに考えております。
  58. 村田敬次郎

    村田委員 電力の引き継ぎの問題でございますか、御承知のように現在沖繩の電力は琉球電力公社、それから本島の五配電、離島の三電力、小規模町村営準電気事業者といったようないろいろなものに分割をしておるのでございますが、引き取り後は九州電力によってこれを措置する形であるかあるいはその他の方式によってやっていく形であるか、その辺について承りたいと存じます。
  59. 田辺博通

    ○田辺政府委員 お答え申し上げます。  この問題は第一次的には通産省の所管の問題でございまして、通産省でもって鋭意検討しておるところでございますが、ただいま知り得る限りでは、九州電力がこれを引き継ぐということにつきまして即座にはかなり困難が伴っておるというぐあいに聞いております。
  60. 村田敬次郎

    村田委員 時間が参りましたので結論を申し述べたいと存じますが、先ほど愛知外務大臣が力強く言明をされましたように、一九七二年四月一日というのは、沖繩返還についての一つの大きな国民的な要望の日であると考えるのでございまして、そのために事務的な日程ではいろいろ無理な点も多々あろうかと存じますが、ぜひその時期にできるだけそういう全く自主的な立場日本沖繩百万の県民の方々が復帰できますように、最大の努力を尽くしてくださいますことを要望いたしまして、本日は私の質問を終わらせていただきます。
  61. 田中榮一

    田中委員長 堂森芳夫君。
  62. 堂森芳夫

    堂森委員 愛知外務大臣中国に対する佐藤内閣の態度政策の基本問題について一、二の点について伺っておきたい、こう思うのであります。  前週の外務委員会以来一週間を経過したわけでありますが、この一週間に新聞を見ておりますと二つの国が新しく中国を承認する、こういう方向で政府がそれぞれその対策を急いでおる、こういうふうに報道されておるのであります。たとえば十八日に、アメリカの極東政策に全く同じように非常に協調的な態度をとっており、またベトナムには現在も地上部隊を六千名くらい送っておる、こういわれておる国であります濠州では、野党の労働党の議員の質問に答えまして、外務大臣が、前向きの態度であらためて濠州政府は対中国の外交的な態度を新しく洗い直して検討を進めておるのである、これは総理と貿易大臣、工業大臣外務大臣が密な連絡をとりつつ、目下対中国政策を全部洗い直して再検討する、しかもこれは前向きの姿勢で検討をしておるのであります、こういうような答弁をしておるというふうに外電は伝えておるのであります。  それからもう一つは、十九日のボンの共同の通信によりますと、新聞に報道されておるところでありますが、中立国であるオーストリアの国会において新しく中国を承認することが決定された、そしてその承認する時期であるとかその交渉等については一切を政府にまかした、そして、その交渉が行なわれる場所はパリかあるいはベルリンで行なわれるであろう、こういうようなことが報道されておるのであります。もっともオーストリアは、外務大臣御承知のとおり、いままで中国北京政府台湾政府をも承認をしていない国であります。そして昨年の国連の総会でも、中国代表権問題については重要事項方式に賛成をし、また中国の北京政府の招聘に賛成をするという、いわゆる従来イギリス方式といわれてきたやり方をとってきた国でありますから、これは、濠州とオーストリアという国とは、もちろん従来からの対中国的な態度等においては違った国でありますが、ともかくこのわずか一週間に、世界で二つの国が中国との国交を回復していく。しかも濠州というような国は、佐藤内閣の、あるいは保守党内閣のとってきた対米協調外交というものの線では同じような国であるということもいえると思うのでありますが、この濠州もそういう方向に踏み出してきたというふうなことが報道されておるのでありますが、こういう二つの国がそういう態度に大きく前進をしてきたという事実を、外務大臣はいかようにお考えになっておるでありましょうか、まずこの点から伺っておきたい、こう思うのであります。
  63. 愛知揆一

    愛知国務大臣 二つの国をおあげになりましたが、オーストリアのほうはだいぶ進んでおるようでございます。ただオーストリアとしても、いろいろ情報の判断にもよりますけれども、ずいぶんいろいろと慎重に、あらゆる状況を考え、分析して、自国の態度というものをきめたいということで、非常にオーストリアらしい苦心が払われているように私は観察をいたしておるわけでございます。先ほどベルリンというお話がございましたが、一つの報道には、スイスのベルンがその地点になるのではなかろうかというようなふうにも伝えられておりますし、また少数民族と申しましょうか、少数国家の立場ということに対する関心の深さというものもなかなか真剣に考えられている一つの要素のようにも見受けられるわけでございます。また、いわゆる重要事項指定というようなことについてもいろいろと検討が加えられているのではなかろうかと想像されますが、先ほどもちょっと申しましたが、いずれの国もそれぞれの国益あるいはそれぞれの国を中心とする友好関係などを踏まえまして、今週の国連では一体どうしたらいいかということについて、それぞれ苦心が払われている、かように観察もいたしておるわけであります。  それからオーストラリアでございますが、これは国会で、やはり質疑応答が最近も行なわれておりますが、この国会におけるところの質疑、それに対するマクマーン外相の答弁その他から見ますると、急速に変わる様子がはたして出てくるのかどうかということについては、やはりいろいろの見方があると思いますが、急速な展開というものが、必ずしも一部に伝えられるようにはないのではないかという見方も成り立ち得る、かように存じております。いずれにいたしましても、中国をめぐりましていろいろの国際状況が動きつつあるということはお示しのとおりでございます。
  64. 堂森芳夫

    堂森委員 さっきオーストリアと中国の今後の交渉について、ベルリンあるいはパリと、こう申しましたが、私のノートの書き違いでありまして、やはりベルンのようであります。外務大臣おっしゃるとおりであるようでありますが、ただいまの外務大臣答弁を聞いておりますと、そうすると濠州と中国との国交回復といいますか、今後の交渉というものは、私の受け取り方では、それはそういうこともある情報もあるが、逆の情報も大いにあるんで、全然そういう方向ではないんだ、こういうお話でございますか、どうなんでしょうか、私そういうふうに受け取ったんですが。何か、否定のほうが大きいように思うのですが、私はそういうふうには受け取ってはいないのですが。
  65. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは他国のことでございますから、しかもなかなか微妙な問題でございますかり、説明もむずかしいところでございますけれども、一部に伝えられたように急速な展開ではなさそうなふうに見えるわけでございまして、たとえは国会での公開されている質疑応答におきましても、濠州として農産物を大量にさばくためには、いわゆる中華人民共和国政府を国際社会に入れたほうがいいではないかというような趣旨の意見に対しまして、そういうふうな角度考えるべきものではないのではないかというような、そういう趣旨の答弁をしているようなところであって、私の得ております感じといたしましては、一部に報道されておりますように、ここ最近のところで急激なオーストラリア、濠州政府の対中国政策が急転するということは、必ずしも一部の報道の伝えるところのようには見ておりません。
  66. 堂森芳夫

    堂森委員 いま、日本外務大臣が他国のオーストラリアの重要な外交政策について、そういう報道はいろいろあるが、どうもどうかと思うというふうな、そう取られるような、何か妨害するような答弁をしろと、こういうふうに取られても、私は愛知さんの——幾ら党が違っても、国益という意味では、それはある意味では一致する面もあるわけですから、それ以上追及いたしませんが、現在、先刻も対中国の国交回復についてはいずれの国もいろいろ流動的に考えておる、その考える場合に、いずれの国も国益及びその他いろいろな国際関係等の事情を勘案してそれぞれ大いに考えておるところである。これは佐藤総理もあるいは愛知さんもそういう答弁をいつもされるのでありますが、私はどうもようわからぬのでありますが、私は国民もわからぬと思うのであります。国益を考え中国との国交回復等について大いに考えておるんだ、こういう話でありますが、もう少しわかるように御答弁をこの際承っておきたい、こう思うのであります。
  67. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはその話をすると長くなり、かつ幾ら長くなっても、おまえはいつも同じことを繰り返しているという御批評を受けるのでありますけれども、私はそれが現在の日本政府立場として妥当かと考えておるわけでございます。  何と申しましても、ただいまのお話にもありますように、また先ほど戸叶さんの御質疑にも大いにあるわけですけれども一つ中国問題というものはなかなかむずかしい問題、双方ともに、一方と結べば一方と断交するという、こういうふうな環境でずっときたわけで、政府といたしましては、この種の性格の問題は何といいましても両当事者の間でしか解決のできない問題だ、何とかして武力だけ使うのはかんべんしてもらいたい、平和的な処理をしてもらうべき筋合いのものであるというのが政府考え方でございます。一つ中国であるべきものである。しかしそれは平和的な話し合いで決着していただきたい問題であって、そうでないと私どもの内政不干渉、相互の立場尊重、イデオロギーの違う国に対してもどこに対してもの基本的な外交の姿勢というものからいって、私はそうでなければならないと思うわけでございます。そして同時に、一九四五年九月二日以来、日本が降伏文書に署名をしまして以来、あるいはそれ以前からの関係から申しまして、一面において日華平和条約の締結をいたしておる。しかし他面において中国大陸において八億の人民を支配しておるのは中華人民共和国政府である、これもまた現実としてよく認識をいたしております。こういう環境の中で、そう簡単に日本政府としての見解態度というものを軽々に変えるべきであったり、きめるべきではないのではないだろうかと思います。  同時に、国連というようなものは毎年一回総会をやる。ことしの総会には一体どうやるのか、これも十一月という時期はきまっているにしてもまだいま二月でございますから、十分国際情勢の変化や各国が、ことにこの場合においては国連加盟国という立場に立っての国連を舞台にするところの各国の考え方というものがそれぞれに考えられる。だんだんにこういうことが出てくる。これらも十分見合わせて日本として態度をきめて決しておそくないし、大事には大事をとってやるべきものである、私は政府立場においてはかように考えます。
  68. 堂森芳夫

    堂森委員 まるで私聞いておってわからぬのです。国益を考えて日中関係の問題は解決していくんだ、こういう答弁をいつも承っておるのでありますが、そうすると、ことば意味の論争みたいになりますが、国益とは何でございましょうか。もう一ぺん教えてもらいたいと思うのです。あなたの答弁ではわからぬ。たいへんことばじりみたいになりますが……。
  69. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いま申しましたようなことがやはり国益というものの立場考えなければならないことであると思います。いずれにしましても中国問題というのは相当時間のかかる問題だ、まず第一に私はこれを踏んまえていきたいものだと思います。短気に、ある人があるいはある国々がこうだと言っているからといって、それにさっと身をひるがえしていっていい場合もありましょうが、通常の場合にはそれは少し思慮の足りないことではないだろうかと私は思います。もっと率直に言えば、日本も近世の政治史の上でもずいぶんいろいろの経験をしてきましたが、戦後の二十五年の今日におきましてもそれらの経験を踏まえましても、日本としても末長く安定した繁栄を、近隣の諸国との間にも十分正すべきは正し、議論し合うべきことはし合って、そうして結び得る関係というものこそ将来長きにわたった安定を築くゆえんではないだろうか。こういうふうなことはわざわざ私などから国益とは何ぞや、講釈めいたことを申し上げることはまことに僭越しごくでございますが、私の考え方はいつも同じことでして、こういう考え方は変わっちゃいけないのであって、何べんでも同じことを申し上げるようですが、こういう立場に立って考えてまいりたいということを重ねてお答え申し上げます。
  70. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、ことばを変えて言いますと、これは私は直接聞いたわけではないのです。新聞報道の記事でありますが、佐藤総理が予算委員会のいろいろの質疑応答の経過で、日中関係の改善は、私の任期中には困難なことだというような答弁をした、こう新聞は報道しておりました。ほんとうにそのことばの内容等の詳細については私は聞いておったわけではありません。あなたの答弁を聞いておりますと、あわてぬでいいのだということばではないかもしれませぬが、あわてたってそれはできないんだ、ゆっくりやるんだ。それでは何もせずにその関係というものは改善されていくものでありましょうか。具体的に何も努力をせず、また前回の委員会でも戸叶さんでありましたか、いろいろ質問されたときにも、大使級の政府間の交渉、話し合いもやってもいいのである。では何を一体話し合いするのですかと言うと、その内容については何もおっしゃらぬというようなことで、さっぱり政府は何を考えておられるのかわからぬ、こういうふうなことも私は言えると思うのであります。  せんだって与党の議員で、日中国交回復の促進をはかるための議員連盟ができました。その全員の数は二百七十九名になった、こういうふうにいわれておるのであります。いま決してことばじりをとらえるわけではありませんが、外務大臣から、そんなことであわてることは少し軽々の行動でないかという意味にとれるようなあなたの答弁もありましたが、国会議員四百九十名のうち、もっとも衆参両院でありますからもっと多いのですが、三百名に近い人たちが日中間の国交は北京政府との間で回復さるべきであるというふうに意思表示した、こう解釈していいのでありますが、この点について愛知外務大臣はどう考えておるのでございますか、もう一ぺんこの点も承っておきたいと思います。
  71. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、ただいまの政府立場での考え方姿勢を申し上げたわけでございまして、政治に携わる方々がお互いにこうあるべきでのるということを真剣に考えられ、そしてそこにコンセンサスができるということ、もちろんこれは尊敬すべき考え方でありビヘービアである。私はそれを否定するどころかそれを尊敬するわけでございます。ただ、政府立場に立った場合、そして今日の日中間のような、ほんとうに長い間の経過がございますし、誤解も非常にございましょうが、たとえば政府間の接触にしても相手方のあることでございますね。そしてよく外交上のことばにはプレコンディションというようなことばがございますけれども、これは一般論として申し上げるわけでございますが、非常に関係が閉ざされていた、何とかして対話を持ちたいというときに、一方のほうがこういう態度らしい、こういうふうに想像されるということで、こちらの、それに合うような条件をだんだん積み上げていって、そしてこれでどうぞという行き方もございましょう。しかし、いまの日中のような場合には、そういうことではなくて、隣国でもあり、長い関係を持っておるところ同士でありますから、相互に、この二十年、三十年には誤解もあったろうし、不信感もあっただろう、ともかく、しかし政府間同士でプレコンディションなしに対話の場を持とうではございませんか、その中で双方の言いたい主張やお互いに困っていることも話し合っていくという、私はそのやり方のほうが正しいと思うのです。ですから、私は政府立場におきましては、おまえは政府間接触をすると言っているが、何も条件を出さないで一体何を持っていくのだ、こうおっしゃられることに対しては、私は、たいへん潜越でございますけれども、そのお考えには、にわかに賛成ができないわけでございます。こういう関係でございますから、ひとつ中華人民共和国政府のほうも相互の立場尊重で、そして内政不干渉でというたてまえで、とにかく接触、対話を始めようではございませんかということをこちらも提唱している。そして先方さんもそのことは御存じのはずなんでございます。やはりこうしたことについては、多少の時も待つ必要がございましょう。環境の熟するのを待つことも必要でございましょう。そういうことで政府としてはやってまいりたいと思います。
  72. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいまの外務大臣の御答弁ですが、政治家として考えることと、政府の閣僚として答弁として申し上げることとは違うのだ、そんなことがあるでしょうか。二重人格じゃないですか。政治家として、閣僚としてでなしに、考えておることを閣僚になったから変える。そんなことがあるでしょうか。そういう二百七十何名の議員たちが考えておることにおれは賛成なんだが、いまの事情ではなかなかそれを即刻実行に移すようなことはむずかしいのだというならわかるでしょう。そういうことならあるかもしれません。しかし一般の議員として考えておることと、政府として、あるいは閣僚となると、何か違うような意味のことをおっしゃるのですが、私はそれはおかしいと思うのです。そうじゃないでしょうか。しかも、あなたのような、あるいは佐藤内閣全体がそうでありましょうが、そんな態度で一体外交はあるのですか。成り行きにまかせているようなものじゃないですか。  いろいろお尋ねしたいし、また申し上げたいこともありますけれども、もう時間が来てしまいましたので、もう一つ、方向を変えて承っておきたいと思います。  この外務委員会でたびたび伺ってきました繊維の問題でありますが、きのうあたりの新聞報道によりますと、アメリカのミルズ歳入委員長でありますか、もし二国間の繊維交渉が、政府間の交渉がまとまらなければ日本の業者が自主新制をしてもらえば、それで繊維を目的とした輸入制限法は出さなくても済むのではないか、こういう意味発言をしておる。そしてそういう報道がされておるので、外務大臣は駐米大使に向かって、その間の事情を詳細に調べてこちらに報告してこい、もちろん自主規制を業界がしたとしても、やはり両国の政府の間のいろいろな交渉がまとまらなければ、ほんとうの実を結ばぬのだ。そして何とかして沖繩の返還のいろんな問題で、アメリカの国会にそうした関係条約でありますか、そういう案件がアメリカの国会に上程される前に両国の政府間の交渉をまとめておきたいという意図で、駐米大使に詳細調査をして報告してこい、こういうような訓令を発しておられるというような報道がされておりますが、どのような——まだ早いから返答がないというのでもけっこうでありますが、大臣が、外務大臣として、もちろんお一人でやられるわけではありませんが、外務大臣は、駐米大使にそうした命令をされる責任者でありますから、この一両日間のそうした動きについて一応の答弁を承っておきたい、こう思いますが、お願い申し上げます。  また、もし、詳細なことは、繊維関係ですから、政府委員が来ておりましたら、通産省のほうからも答弁を願いたい。
  73. 愛知揆一

    愛知国務大臣 お答えいたしますが、まず第一に、日米繊維問題というものは、私は、今日でもそう思いますけれども、何とかまとまってほしいものだということを、人ごとみたいに言って恐縮なんですけれども、何とかこれはまとめたいものであるということは今日も考えておりますが、しかしもう昨年末以来、いわばステールメートと申しましょうか、全然もうちょっとやそっとで話し合いが寄ってくるという状態ではございません。そこで私も苦慮しておるわけでございますし、それからアメリカ側でもいろいろの動きが動きつつあるようでございます。そういう環境でございますし、前々からそうですが、まあちょっと私にぐちを言わしていただければ、しょっちゅうそういうわけですから、情勢の転換を——ワシントンその他アメリカの状況も十分私は把握するようにつとめておりますが、電信の場合もありましよう、電話の場合もありましょう、書信の場合もありましよう、何かちょっと連絡があると訓令だ、訓令だと言われますが、そういう意味の訓令というものは、もうしばらくとだえておるわけです。もうステールメートの状態でございますから、ちょっとやそっとで打開はできません。しかし同時に、双方の環境は、向こうの人にもお耳に入っておると思いますが、官の人だけでなくて、民の人もその道の達人が最近も一人ならず日本にも旅行に棄ております。そういうようなわけで、双方とも情報を十分把握しながら、何とかしなければという気持ちは通じているようで、そういう意味で、私は、もちろん牛場大使との間に緊密な連絡をとっております。それからミルズ委員長が、やはり議会人の立場で、これは日米親善関係からいいましても、それから御自分の下院の歳入委員長という重要な職責にかんがみても、何とかしなければならないという熱意を非常に持っておられることは事実でございまして、これは私も敬意を表しておりますが、いままでのいわゆる牛場・フラニガンに線がありましたこの交渉の場と、それから、こうしたミルズさんのような有力な方の、議会人としての御意見や動きというものがどういうふうに展開されてくるかというようなことについては、まだ、私としても、何とも申し上げる段階にはございません。私は、本会議でもことしも繰り返して申し上げましたように、日本としては、かねがねの国会の御決議の線ということを一言いえば、そこにいろいろの意味が含まれていると私は思います。そのことが日本の国益を踏んでということに本件についてはなると思いますが、国会御決議の線を踏まえて、何とか今後においても妥結するように努力はしたいと思いますけれども、ただいまのところはなかなかそんな雰囲気ではないというふうに判断をいたしております。
  74. 堂森芳夫

    堂森委員 時間がありませんから終わりますが、ただいまの大臣答弁では、ごく最近のミルズ委員長を中心としたような、そういう報道を含めての最近のこまかい情報については、まだ報告がない、こういうことでございますか。
  75. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いまも申しましたように、本件の判断については、状況の推移を的確に判断することが非常に大切なことだと思いますから、そのことについては私もできるだけの努力をいたしております。したがいまして、最近のミルズ委員長の説あるいはその説の背景をなすもの、あるいは見通し、その内容等につきましても、できるだけその意図を掌握することにつとめております。ただ、先ほど申し上げましたように、これが、先方としても、どういうふうにこれから発展するか、どれだけの根回しの上に成果があがるものか、また、これが日本の通産省としてどういうふうに観察されるかというようなところを十分伺った上でなければ、私どもとしては、もちろん意見もまだ言うべきではございませんし、先ほど率直に申しましたように、本件については、まだまだとてもむずかしい雰囲気であるように私は観察しております。
  76. 堂森芳夫

    堂森委員 また次の委員会お尋ねしますが、外務大臣、どうも秀才のせいか、顧みて他を言うような答弁をされたらよくわからぬです。もっと率直に、簡単に答弁してもらいたい、こう思います。きょうは、もう時間がありませんから、終わります。
  77. 田中榮一

    田中委員長 中川嘉美君。
  78. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 最初に、沖繩の問題で一つだけお聞きしておきたいのですが、先ほど村田委員質疑に対する答弁の中で、返還協定の準備は全力をあげておられるという旨の答弁がありましたが、この返還は、協定方式にきまったわけですが、どうですか、ここのところをちょっと答えていただきたい。
  79. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは、協定という文字になるか、条約という文字になるか、その辺のところはまだ全然きまっておりません。一つには、これはアメリカ側がどういう形を希望するか、そういうところはアメリカの希望にできるだけ沿うてあげていいんじゃないかと私は考えております。そういう点もございますから、まだきまっておりません。
  80. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 アメリカのほうは、条約方式を希望しているというふうに私どもも了解しておりますが、もし、そういうふうな形でやるとするならば、大体いつごろそういう姿が決定いたしますか。
  81. 愛知揆一

    愛知国務大臣 アメリカは、まず、アグリーメントとかトリーティーということには一方においてこだわらないようでございます。問題は、国会における扱い方がまだきまっておりません。しかし、それに関連して、アグリーメントとかトリーティーとか、そのほかのことばを希望することもあろうか、こう思っておるだけでございます。協定調印の時期は、中身に合意ができて、そしてこちらも、これならば、それこそ国益に踏まえ、かつ共同宣言の三原則に十分合致するものと思われる時期でございますから、まだその時期を申し上げる段階には至っておりません。おそくも夏までということを申し上げておきます。
  82. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは、私はきょうは外務大臣に、主としてインドシナ戦争についての所見を伺いたいと思うのですが、このインドシナ戦争で事実上どろ沼に入り込んだアメリカとしましては、形勢を転換させるために核兵器を使用するのではないか、こういう予想が最近出てきております。最近では、中国においても、公式筋からこのような予想が行なわれておりますし、米側においても、個人の見解ではありますけれども、このようなことがいわれているわけです。政府はこれらの事実を新聞報道等で知っておられると思いますが、どのように理解されておられますか。
  83. 須之部量三

    須之部政府委員 ただいま御指摘の点、確かに新聞報道等には出ております。しかし、私どもとしては、依然として、米国側のいまの基本的な政策は、ベトナム化を進め、漸次撤退していくという基本政策をとっているというふうに理解しておりますし、核兵器使用の問題というものが具体的に検討されておるというようなことは全然存じておりません。
  84. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 どうもいまの御答弁では、わが国の安全性確保という立場から、これはもう、いまの程度の御答弁でありますと、非常に重大問題というふうに私は感じるわけです。外務省は、この国際情勢をどういう観点から見ておられるかということが、いま実は非常に心配になるわけですけれども、ここに週刊誌ですけれども、「ベトナムで原爆投下準備が進んでいる」という大きな見出しで、御承知かと思いますが、見出しだけ申し上げましょう。「俄かに高まる原爆使用の声」「ペンタゴン元高官の予言」「敗北より原爆を」「ハノイが狙われている」こういうような見出しがずっと続いております。そのあと、二十三日の読売新聞でありますが、「中国の続けざまの対米非難の公式声明で特に注目されるのは、アメリカがインドシナで戦術核兵器を使おうとしていると、日本の週刊誌の記事まで引用して、いつになく執拗に警告していることである。「人民日報」は以前にも「アメリカは南ベトナム北部の人民を疎開させ、戦術核兵器の使用を準備している」と指摘しているが、今度のように繰り返し強調したことは初めてである。」これが読売の記事ですね。それから、これはきょうの毎日の朝刊ですけれども、一部読みますと、「シカゴ大学のハンス・モーゲンソー教授は最近のニューリパブリック誌上で、このような拘束があるにもかかわらず、勝利を求めようとするニクソン政策の当然の帰結として戦術核兵器の使用を予想している。ニクソン大統領はこの予想を「ばかげたこと」と一しゅうしたが、ニクソン大統領が勝利と撤退の政策を続ける限り、このような予想はあとを断たないだろう。ニクソン大統領はこういった米国及び世界の疑惑に外交教書中でどのように答えるだろうか。」こういうようなことが出ております。「週刊現代」あるいは読売新聞あるいは毎日、それから海外のものでは「ニューズウイーク」あるいは「フォーリン・アフェアーズ」といった有名誌、こうしたものにすでに掲載されているわけです。どうもいまの御答弁を聞いておりますと、大臣からは御答弁いただかなかったわけですが、政府委員あるいは大臣もこの新聞を全く読んでいらっしゃらないのじゃないかという気がするけれども、その点どうでしょうかね。どの程度理解されておられたのか。先ほど答弁ではちょっとあまりにも無関心と言ってはなんですが、関心がなさ過ぎるのではないかというように聞こえますが、どうですか。
  85. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私どもとしては、インドシナの情勢のみならず世界の情勢に対して、できるだけ情報を収集することにこれつとめておるわけでございます。  それからただいまの御質問にアジア局長から答えてもらいましたのも、何と申しますか、率直に申しますと、私からお答えすると政治的にいいところだけ見ているではないかというようなお疑いもあろうかと思いましたから、なるべく客観的に、情報の分析というものは事務当局にやってもらうのがよろしいという私の年来の考え方でそういたしたわけでございますが、御説明が足らなかったことはたいへん恐縮に存じます。  私どもといたしましては、実は先ほど予算委員会の分科会でもいろいろと御意見を伺ったりお答えしたりしたのですけれども、普通の刊行物はもちろんのこと、放送もそうでございますし、あらゆる手段を講じまして情報の入手につとめておりますが、最近のインドシナの状況について申しますと、率直に言って、これは私一個の感じ方でございますが、日本の中ではみんなが、平和愛好国であるだけに、こういう事態については少しオーバーに分析し、判断しておいたほうがよろしいということがみんなのコンセンサスになっているようでございますから、日本の国内での伝わり方というものが常に少しひどくなりそうだというほうにウエートをかけて見ているようですから、これがある意味では幸いだと私は思うのです。そういう事態になったらたいへんだということで皆さんが関心を深くして、そういう事態の起こらないような努力をする。ことにわれわれの立場におきましては、こういうインフォメーションというか情報をもとにいたしまして、大事に至らないように、オーバーにオーバーに心配して事態を鎮静するような努力をするというふうにしむけていきたいと思います。私はこれは率直に、ただ一個の考えを申し上げたわけですが、日本の国内での取り上げられ方は少し事実を心配して見過ぎているきらいがある。しかしむしろそれはいいことだ。これを外交工作その他の上に照らしてみれば——いいことだというのも言い過ぎかもしれませんが、そういう気持ちで私はおります。
  86. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 大臣日本の国内の問題といまとらえられたようですが、私が先ほどから読み上げたのは、シカゴ大学のハンス・モーゲンソー教授の話でもあり、あるいはまた中国の人民日報に載っている話であって、そういったいろいろな関係記事は大体がいわゆる海外の新聞記事あるいは論調からのそういう見通しといいますか、危険性の見通しが行なわれているわけです。そういった意味で、いま大臣の御答弁もいろいろいただいたわけでございますけれども、まだまだ分析が日本の中におけることだけをとらえているように私には聞こえるわけですね。
  87. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ちょっと補足いたしておきますけれども、これは先ほど御指摘のように、米本国の中にもいろいろの意見がある。それから米本国のさっきおあげになりましたニューズウイーク、七の他の大衆的な読みものもございますが、さらに率直に申し上げますが、そういう中の危険の度合いあるいは予想されそうな危険の度合いを一番強調するようなものが日本の国内で関心を深くして取り上げられる。つまりわれわれが入手いたします外電やインフォメーションやあるいは外国のいろいろな立場の記事でございますね。その中の、率直に言えばショッキングな度合いの強いものが用いられる傾向にある。したがって、少しオーバーに事態を見るような情報が多いような気がする、率直に申してこういうことを言ったわけでございます。どうか御了承願いたいと思います。
  88. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 御答弁のとおりであるならば、こういった非常に危険性の高いものについてはやはり当然オーバーなものであればあるほどいいんじゃないかと私も思います。  次に伺いたいのですが、政府は理由のいかんを問わず、核兵器が使用されるということに対して断固反対しますか、どうですか。
  89. 愛知揆一

    愛知国務大臣 反対というよりも、これも率直に申しますが、まさかという感じを持ちながら、世界のどこにおいても核が実戦の場において、その種類がいかなるものであろうとも、使われることについては、私といたしましても非常な反対というか、もっとそれ以上の気持ちを持っております。
  90. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 私がこういうことをお伺いしたのは、核兵器ですから、現実に使用されてしまってからじゃあとの祭りだという点が特に強調されなければならないという意味でこういうふうな質問をしたわけです。  次に、これも仮定になりますけれども、もし米国がインドシナ戦争で先に核兵器を使用するようなことがあったとした場合、先ほどもいろいろそういう可能性についてはお話ししたわけですが、これはたとえいかに小型の戦術的な核兵器であっても政府はこれを容認するようなことは絶対にないと私も信じるわけですが、念のために政府態度を表明していただきたいと思います。アメリカは、何か事があったときに自衛上やむを得なかったというようなそういう弁護はなさるべきでないと私は思います。この点についてひとつ伺っておきたいと思います。
  91. 愛知揆一

    愛知国務大臣 現在でさえ即時撤退を強く求めているくらいですから、もちろんのことでございます。
  92. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは少し角度を変えまして、朝日新聞の二十三日の夕刊でありますが、御承知のアメリカの警報ミスですね、このことについてのモスクワ放送の記事がここに出ております。「二十二日の日本向けモスクワ放送はさる二十日全米をおどろかせた非常事態警報の手違いを論評し、今度の事件は米国と安保条約によって結ばれている日本にとって決して無関心ではいられない問題であると警告し、次のように述べた。」前段だけ読みます。「今度の手落ちは悲劇を引起こさないですんだ。しかしこの次はどうなるかわかったものではない。これは日本国民としても決して無関心ではいられない問題である。」これはモスクワ放送の記事でありますが、もしも核兵器が使用されるようなことがあった場合、政府は日米安保条約を破棄するほどの決意があるかどうかという点なんです。広島とか長崎で惨たんたる被害を受けたわが国としては断じてそのような残虐行為と妥協することはできないはずであります。そういうような人道及び国際法に違反する国と安全保障体制を維持するということはできないのじゃないですか。したがってそのような場合には日米安保体制を解消して日米安保条約を破棄するのが私は当然じゃないかと思うわけですが、核兵器を使用するような国との間に安保体制を持つことはわが国にとってもはかり知れない危険性を感じるわけです。政府の明快な態度をもう一度、大体先ほどの御答弁と似通ったものかと私は思うのでありますけれども、表明していただきたい、このように思います。
  93. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ソ連の去る二十日のアメリカにおける誤報事件に関連しての言動等については、それなりに私もいろいろコメントしてみたい気もいたしますけれども、それはよしまして、ひとつあらためて日米安保体制というものと、それからそのモスコーでいっておりますことの関係をちょっと明らかにしておくことが必要ではないかと思うのです。日米安保体制というものは要するに、日本が安全でありたい、核の攻撃というような脅威にはさらされたくない、そして未然にそういう危険を防止したい、そして日本並びに日本を含む極東の安全に寄与するような体制をつくりたいというのが安保条約であるし、これが今後ともそうであるように守ってまいりたいと政府考えておるわけです。そこで、たとえばそのモスクワのなにに関連いたしますと、アメリカ政府が核をどこやらで使った、それで核戦争の脅威を受けるようなことになったらどうなるかというようなことを話題に出して日本国民に警告を与えるというかおどかしているということではないかと思いますが、アメリカ本土がたとえば核で現実の戦争に、戦場になってそれからやられたというようなときに、安保条約があるから在日米軍がかけつけてどうとか日本がどうとかいうふうなところまで言うのかもしれません。しかし在日米軍は核を持っていない、核の持ち込みなんということは絶対に許さないというのが安保条約の本義でございます。そういうことからいっても、それから日本自体が日本の安全を守る、またそういう恐怖が起こらないように未然に防止するというところに意味がある。これを守っていく限りにおいてはモスクワ放送その他が警告を発しているような、あるいは日本国民に一種の恐怖を与えるような発言をしているということは音に介するべきではない、私はこういうふうに思っております。  なお、アメリカが第一段階で核を使うというようなことは厳にやらないでもらいたいし、またさようなことはあり得ないと私は信じております。
  94. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 先ほどちょっと読み上げました例のモスクワの記事の一部ですけれども、非常事態警報の問題ですね。このたびはほんとうに何もなかったからよかったようなものですけれども、万一ということも当然考えられるし、結果論としてはもちろんよかったよかったというようなことにもなると思います。しかしながら、大臣はそういうわけで、安保条約ということを非常に尊重していろいろ答弁をいただいたわけでありますけれども、やはり核による人類の死滅という問題と直接関係しているわけなんで、私もそういった点を非常に心配しましてこういう質疑を行なったわけです。  これに関連して伺いますけれども、今度は基地問題とわが国の置かれている立場という点から伺いますが、われわれが常に疑問に思うのは、わが国が戦争の渦中に巻き込まれることがないという保障のもとでわが国にある米軍の基地使用があり得るかどうか、こういうことです。この点どうでしょうか。要するにそのような巻き込まれることがないという保障のもとでの米軍の基地使用、こういうことが考えられるかどうか、この点まずお答えをいただきたい。
  95. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは長々とまた前からのお話を繰り返すのは省略いたしますが、要するに日本全体の安保体制というものはいわば守ることと、それから脅威が起こることを未然に防止する、このたてまえさえはっきりし、かつそのゆえに事前協議制度というようなものでがっちり歯どめをつけておけば戦争に巻き込まれるということはない、同時にまた事前協議制度というものはその性質上かくかくのものであって、われらの安全を脅かされるような場合においてはこれが安全を保障する何より有力な道具であるということが明らかになっていることによって、また恐怖というもの、脅威というものが未然に起こらないように防止される。この体制さえ国民の理解の上に守られておれば戦争に巻き込まれるというようなことはあり得ない、私はかように存じます。
  96. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 大臣の御答弁も私は決して一〇〇%わからないというわけじゃないのですが、私もう少し現実的な立場からいろいろお聞きしてみたいと思います。  たとえわが国の領土を米軍の補給基地とか中継基地、軍隊の通過基地として使用する場合であっても復仇攻撃の対象となるということは、たとえばアメリカ自身がカンボジア、ラオス進攻の理由として、北側の補給基地あるいは補給路それから軍需物資を破壊するのが目的であることからも私は明らかであると思うのです。したがってわが国が非常に危険であって、また戦争に巻き込まれる心配があるということは、先ほど事前協議の話も出ましたけれども、何も戦闘作戦行動にイエスを与えた場合だけではないということは大臣もおわかりだと思うのです。わが国にある米軍基地が米軍の軍事作戦の中で補給基地や中継基地あるいは軍需物資の集積基地として使用される場合でもわが国が攻撃されることが十分にあり得るんじゃないか、このように私は思います。政府が日米安保条約でもってアメリカの軍事基地を許してアメリカが武力紛争の一方の当事者である限りわが国が安全であるという保障は絶対私はあり得ないと思うんです。むしろ危険の公算のほうが大きいんじゃないか。そういうわけで、くどいようでありますけれどもアメリカ日本の基地を使用して軍事行動をとってそして補給、中継あるいは集積基地である限りはわが国は重大な危険を負担せざるを得ないんじゃないか。わが国がそれでも安全であり、戦争に巻き込まれない保障が何かありますか。大臣、もしそういう保障があれば、こういうことは国民が最も関心を持っておる問題でありますので、ひとつ明確に答えていただきたいと思います。
  97. 愛知揆一

    愛知国務大臣 要するに考え方としては、脅威が日本の安全に対してかかってくるというときに防御専門、国連憲章第五十一条の考え方でもってこれを追い払うという備えができておるわけで、それが現実に行動として必要なときであるかどうかが事前協議にかかるわけでございますね。ですから、その考え方の基本の上に立って事前協議制というものの歯どめを運用することにおいて、私は戦争に巻き込まれるというような危険性はないと思うのです。なぜかといえば、入ってくる場合にはこちらが防御に立ちますけれども、そこで戦闘行動が起こったからといって第一次の侵略をしたのはその場合においては向こう、だれであるか知りませんが向こうさんなんですから、それを防御することは当然国連憲章の考え方からいっても許される。言わば広義の自衛権の発動だろうと私は思いますから、それをやったからといって戦争に巻き込まれるんだと言われればどうにも考えようがなくなってくるんじゃないだろうか、こういうふうに思います。
  98. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 これに関連してもっとたくさん聞きたかったのですけれども、時間があと一分か二分しかありません。いまの大臣答弁を聞いておりますと、何か北ベトナムあるいは解放戦線に攻撃能力がないからあまり心配ないんじゃないかというような、そのように答弁されたわけではありませんが、そういうふうに私には何となくとれてならない。アメリカはインドシナ半島における戦場を御承知のようにベトナムに限らずどんどんカンボジアあるいはラオスに拡大をしているわけであります。  先ほどのモスクワ放送の記事のあとの段になりますけれども、「安保条約第三条により、在日米軍基地は今度のような手落ちの結果、核侵略の発火点になり、さらに反撃の目標になることも想定されよう。事実、安保条約にもとづいて日本の航空自衛隊は府中市の米第五航空団司令部の指揮下に南朝鮮、台湾一つの防空体制に入れられている。米国での警報は直ちに在日米航空隊を出撃態勢に入れ、次いで日本の航空隊も出撃態勢に組入れられる。」これは先ほどのモスクワ放送のあとの段でありますが、そういうわけで、こういったラオス問題についてソ連も非常に強い関心を示しているわけであります。  またラオス進攻は中国の国境に接近するのであって、すでに中国政府は強硬な声明を発表しております。二月十四日付の読売の「インドシナ情勢危機感強める中国」というところにずっと出ております。もう読む時間はありませんけれども、最後のところだけちょっと読むと、「インドシナ三国人民の抵抗は全く正義の戦いであり、これに「断固たる支持」を与えるのは「中国人民のになうべき国際的義務」であって、中国は「あらゆる効果的措置」をとる決意だというのである。」こう書いてあります。ソ連も中共もこのラオスの問題について非常な危機感といいますか、関心を二しておることは申し上げたとおりであります。そのように、インドシナ戦争の様相というものはきわめて緊迫してきておる。政府はインドシナ戦争が拡大の方向に向かっていくのか、これはもちろん攻撃の心配とか戦争に巻き込まれる心配はあるかないかということをまずお答えいただきたいわけですけれども、そういう意味で、拡大の方向に向かって行くか、終息の方向に向かって行くか、どのように政府が判断しておられるか、お答えいただきたいと思います。
  99. 愛知揆一

    愛知国務大臣 何としても拡大させてはいけないと思うのです。何としてもこの状態が鎮静するようにすみやかに推移することを期待して、政府としても、力がございませんからなかなか思うようなことができませんけれども、それでも御承知のように志を同じうする国々と相提携し合い、相談し合って必要なPRをやり、外交工作を活発に展開しておる次第でございます。見通しはどうかということですけれども、私どもアメリカにしましても、まず最小限度、ことしの五月までにはさらに六万の軍隊を撤退するということがかねがねきまっているわけですから、少なくともそういう公約をしたことはどんどん実行してもらわなければならない。それから、今回政府が各国にアピールしましたのは、とにかくまあ対決とか非難とかいうことはやらないで、現状を回復するといいますか、ラオスについていえば、ラオスの中立を尊重するということで外国軍隊の撤退ということを非常に強く呼びかけているわけですが、そういう事態が、関係国のほんとうにすなおな協力の上に立って実現できるようにしていきたいものであるということを強く望んでいるわけで、いわんや拡大したりこれが日本国に関係が起こるようなことはとんでもないことである、私は基本的にかように考えております。いまのところ、そういう心配はない、そういうふうにしょう、こういうふうに思っております。
  100. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 大臣答弁のとおりであれば私も非常にけっこうだ。むしろ聞いていながらこう思うわけなんですが、やはり日本アメリカとの間に軍事同盟がある以上、私は最低限先ほどお伺いした見通しであるとかなんとかいうことについても、国民に説明がはっきりとできなければならないのじゃないか。このように思います。これがまた政府の義務ではないかというふうにも私は思うわけですが、もっとひとつ真剣に取り組んでいただく、これは要望でありますが、またひとつ考えていただきたい。どうもいままでの御答弁からすると、従来いろいろ質問してきたことに対する御答弁とあまり大差というものは感じられませんし、非常にまだまだ楽観的な感じがしてならない。無関心という表現をするとたいへん失礼でありますが、あまり関心を発展さしてないのじゃないかという気がするわけです。きょうは時間が来てしまいましたので、もう伺いたいことの五分の一も伺い得なかったわけでありますが、先ほども申し上げたとおり、インドシナ情勢について、中国ソ連相当な危機感を強めているわけであります。そういうことで、このことを十分考慮して、政府としてもあらゆるケースを研究されてPR、ときには対米交渉というのを積極的に行なう場合も出てきていいんじゃないか。間違っても重大な事態を起こすことのないように、ひとつこの席で要望いたしまして、時間が参りましたので、質問を終わりたいと思います。
  101. 田中榮一

    田中委員長 曽祢益君。
  102. 曾禰益

    ○曽祢委員 先ほど叶委員が触れられた台湾帰属に関連して、ちょっと外務大臣に伺っておきたいと思うのですけれども先ほどの御答弁によりますと、台湾帰属はまだ最終的にはきまっておらないが、わが国はサンフランシスコ平和条約及び日華平和条約で、台湾及び澎湖島に関する主権を放棄しておる。そこから先どういうことになるかはわが国としては発言権がなくなっているのだ。したがって、わが国としてはむしろ外国等から聞かれてもその点についてはどうも言えない。何といいますか、先ほどもちょっとお話がありましたが、テークノートするとかあるいは挑戦もせず反論もせずというような御意向であるやに伺ったのですけれども、私はその点ははたしてそうなのか。確かに日本が一たん放棄した領土に対してこうでなければならない、ああでなければならないということは、これはおかしいことであるし筋違いであるし、言うなれば不遜な行き過ぎだという点があります。しかし同時にわが国が日華平和条約のたてまえから言うと、第二条では領土帰属が国民政府なのかということは書いておりません。書いておりませんが、しかし同時に第三条では台湾澎湖島におけるわが国の財産、わが国民の財産の処理権あるいは請求権あるいはその地域における中華民国政府の財産あるいはその住民の財産等に関する相互の請求権や何かの処理については、日本と中華民国の国民政府の間で話をきめるということになっておりますし、また付属交換公文によるとこの条約の適用は現に国民政府がその時点において支配しているその領域に及ぶんだ、領域に限る、こういうふうになっているわけですね。そうすると、わが国の場合には確かにどうでなければならぬということは少しなまいきだけれども、しかしいい悪いは別として国民政府との条約のたてまえで事実上国民政府領域になっていることをこの条約及び付属交換公文で認めさせられているんじゃないか。つまり言いかえるならば中華人民共和国のほうから台湾に対する領有権をおれのほうにはっきり認めてこいといわれると、それに対してはどうもそこまでは申し上げかねる、権利はございませんと、おそらく逃げるんだろうと思うのですね。同時に国民政府のほうには一札与えているやにとられる節があるのですけれども、その点はどうお考えですか。
  103. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは非常に専門的な御質問ですから、条約局長からお答えいたしたほうがよろしいかと思いますけれども台湾という地域に対して日本がこれを放棄してそれを再確認しているからこそ適用範囲の問題について交換公文というようなものの必要があったんではないでしょうか。適用地域につきまして私はむしろ常識的にそう解釈しているわけです。したがって、先ほど戸叶さんの御質問に対してもその点に触れたわけでございまして、たとえば第七条とか第八条とかいうのは地理的な適用範囲の問題が問題であるから、その点からいっても適用範囲に触れなければならない。しかし今度は台湾という地域に対して日本側は放棄しているところであるから、それとの関連ということで交換公文の必要というものもあったんだということが、法理論としては私は成り立つんではないかと思いますけれども、もちろん私はそのときにはその条約の作成に当たった当事者でも何でもございませんから、私の一知半解の知識でございますから、これは従来から継続的に外務省のとっている条約局としての見解条約局長からお聞き取り願いたいと思います。
  104. 曾禰益

    ○曽祢委員 ちょっとお待ちください。時間がないので、単に私は学術的な議論を展開しているつもりじゃございません。したがって、もしそういうふうな観点からわが国が中華人民共和国との国交調整の努力、これは私はやらなければならぬと思うのですけれども、そのときに、それならば、かりに台湾に対する領有権、それを書いてこい、少し不遜であるけれども、その点についてわが国の政府が、それを人民共和国のほうにそういう約束をしても、日華平和条約に反しない、反するものではない、こういうことははっきり言えるのですか。この点は、私は単に法律的な解釈だけではなく、政治的に重大な問題であるからお聞きしているわけです。これはむしろしろうと論ですが、私はそこにそう簡単にそう言い切れないような気がするのです。国民政府との条約というものはやはり厳然としてあるのですから、よかったか悪かったかは別として、やはりそこに何らかの義理合いが——領有権とは書いてありませんよ。この二条によれば、放棄してあるだけでしょう。しかし、交換公文によれば、現にその政府が支配する領域ですよ。領域といっている以上は主権を持っているということじゃないですか。ですから、それらの点を考えると、どうもそうカナダみたいに——あまりコミットしたくないから北京政府との交渉においてテークノートで逃げ切ってしまった逃げ切れればけっこうです。しかし台湾との条約があるからなかなか逃げるということを許さないじゃないですか。その場合に、日華平和条約の解釈からくると、わが国は条約上はたしてそういうことができるのかできないのかということは非常に重大だと私は思う。そういう意味の政治的な重要な点であるから、外務大臣の御見解を伺っているわけです。
  105. 愛知揆一

    愛知国務大臣 中華人民共和国が、かりにあるとき日本政府に対して台湾は自分のところの主権の及ぶ地域であるということを書けと言った、そしてこれは日本政府が書いたって、日華平和条約に抵触しない、こういう御意見でございますが、これは曽祢さんの御意見として承っておくことにさせていただきたいと思うのですが、これはなぜかと申しますと……(曽祢委員意見じゃない、質問ですよ。」と呼ぶ)だから、それは意見として承っておきますというのが回答でございます。そうして、政府といたしましては、台湾というところは放棄したのであって、その帰属について何にも言えない、こういう立場をとっておりますということをいまお答えを申し上げているところでございます。そういう立場から言えば、私は曽祢委員の……(松本(七)委員「答えになっていないじゃないか。」と呼び、その他発言する者あり)いえ、御質問に対してお答えをしているのです。
  106. 田中榮一

    田中委員長 私語を禁じます。
  107. 曾禰益

    ○曽祢委員 条約局長意見を一応聞きましょう。   〔松本(七)委員政府見解を述べなければ答えにならないよ。」と呼ぶ〕
  108. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いえ、政府見解を述べているじゃありませんか。政府としては、放棄をしたというところに対して、何も意見を申し上げられないという態度をとっておりますから、いま曽祢さんの言われたことに対しては、御意見を承っておきますという御返事しかできません。これが私の答弁でございます。
  109. 曾禰益

    ○曽祢委員 簡単な結論だけでいいのです。もしかりに、日本政府中華人民共和国政府との約束で、中華人民共和国政府台湾に対する領有権を認めたという場合には、そのこと自身は日華平和条約から見て、違反になるのかならないのかどっちかということを言っていただけばいいのです。
  110. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは先ほど申し上げたとおりだと私は思います。つまり日本としては、台湾放棄したということを日華平和条約で再確認しております。そういう関係でありますから、中華民国政府が現に支配しておるこれこれこれというようなことを書いたのであって、台湾帰属というものを、日本政府がコミットしたものではないと解すべきではないだろうかというのが、一知半解かもしれませんが、私の見解でございます。ただ、それに対して曽祢委員は、しかしおまえの意見の中で、これこれだと書いてあるところが領域であるから、その領域と書いてあるところで、領土的に認めたようなにおいがするではないかという、こういう御意見もそこにつけ加わっておると思いますけれども、しかし、あの条約の作成のときの苦心は、そういう点にあったのではないだろうか。つまり台湾放棄したということを本条で言っております。それと対応をした思想で、現に支配している云々地域という意味でああいうことばを使ったのではないだろうか。私はそのときの当事者でこざいませんが、私はそういうふうに考えておるわけですが、先ほど申しましたように、曽祢委員の御意見というか、御質問としても、それに対して私として承りおいたわけですから、よく私も今後の参考にしたいと思います。
  111. 曾禰益

    ○曽祢委員 こっちが聞いているのにそっちが答えないで参考にされたのじゃ困るのですが、しかしわかるような気がします。この日華平和条約においても放棄したということで、簡単にいえば逃げ切っている。したがって、大臣ことばでイエスとここで言ったらいいと思うのですけれども、まだおっしゃらない。つまり北京政府のほうに領有権を認めても——認めるのは行き過ぎだと思うけれども放棄したものなんだから、認めたんだから、いうならば、権利のないものを認めたんだから日華平和条約に違反しないんだ、こういうようなことなんでしょう。それも承りおくですか。どうですか、イエスですか、ノーですか。
  112. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは先ほど来のところに返るわけですけれども放棄して、帰属については、日本政府としては言うべきでないという態度をとるべきだ、これが私の意見であります。
  113. 曾禰益

    ○曽祢委員 だから、それはわかりますよ、行き過ぎだ、要求として、権利として。ですから、おそらく北京に対しても、こんな条約を持っていないカナダですら逃げたわけですよ、テークノートで。したがって、日本として北京政府にそれを認めることは行き過ぎであるし、そこまでの権利はないのだ、こういうことまでは確かに一致しているのですよ。だからその点からいけば、かりに権利のないものが北京政府に領有権を認めても、そのこと自身は政治的に不信行為であるかどうかは別として、日華平和条約の厳格なる解釈からくれば必ずしも条約違反にならないのではないかということを言っているのですよ。それはイエスでいいのじゃないですか。
  114. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私、必ずしも完全に捕捉できないのですけれども日華平和条約との関係において、イエスともノーとも言えないのじゃないかとおっしゃるように聞こえるのですけれども、これは日華平和条約という意味ではなくて、どこに対しても、つまり台湾に対しても北京に対しても、台湾というところの帰属は、日本としては放棄しただけであって、これに対してここはどこであるべきだというようなことを言うべきでないというのが、先ほど戸叶さんにも一貫してお答えしていたところでございます。
  115. 曾禰益

    ○曽祢委員 言うべきでないということはわかりますが、言うべきでないが、しかし国民政府との条約では言ったにひとしいくらいになっているけれども、それにもかかわらず、国民政府にも台湾帰属ということについてはコミットしていない。こういうことなんですね。だから、かりに、無権限であるけれども、別の政府に、対立する中華人民共和国政府のほうに認めてしまっても、もともと国民政府にも帰属を認めていないんだから、その点だけからいえば、条約違反にならないということにもなるわけですね。それは確かじゃないでしょうか。それを聞いているのです。
  116. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それはそういうことであろうかとも思ったのですが、そこのところがはっきりいたしませんでした。それで、ですから放棄したものだから、日本としては国民政府に対しても、この台湾というものが領土であるということは認めないで放棄したということを日華平和条約で再確認しております。そういう発想といいますか、そういう考え方でございますから、他の、北京ということばを使いますけれども、そのほうにも——こっちにもコミットできないのですから、どこに対してもコミットできない。それは北京に対しても、台湾に対しても、どこに対してもコミットできないという立場は、サンフランシスコ平和条約以来の考え方だ、私はこれが政府見解であって、これが妥当であると思っております。
  117. 曾禰益

    ○曽祢委員 私は、確かに条約的に見て、サンフランシスコ平和条約放棄し、そして日華平和条約放棄している。しかし、その形はとっているけれども、どうも実質的には国民政府のほうに相当コミットしておるように思えますけれども政府としては、国民政府に対しても、第二条で放棄していることを言っているだけであって、帰属は認めていないのだ。将来住民の自治権の問題なんかが出てくるかもしれませんが、非常に重要な発言だとして承っておきまして、これはまた別の機会に総理でも来ていただいてから、じっくりお互いに勉強さしていただきたいと思います。  最後に一点だけお許しいただきます。これも同僚の堂森委員が伺ったことに尽きるわけですけれども、私はやはりミルズ歳入委員長発言というものに期待を持ちたいのです。どうも日米がいつまでも背中合わせになることは、いかにわが国の産業及び労働の問題に重要な繊維製品の問題であっても、背中合わせであるとか、特にクオータ、割り当て法案が通るなどということは断じて避けたいと思うのです。そういう意味で、とにかく内要はまだ明確でないけれども、まあいままで相当強硬に突っぱっていたと思われる人が、二国間の正式の約束でなくても、日本の業者の自主規制といいますか、たとえば鉄鋼の自主規制的な、政府が直接介入しない形の自主規制でも、内容にもよりましょうけれども、そういうものができるならば、割り当て法案なんか無理に通さぬほうがいいというのは歓迎すべき方向じゃないかと思うのです。もちろんこれは内容がありますし、特に業者の一致した賛成がなければ、協力がなければできません。内容はわかりませんけれども、かりに綿紡とそれからその他の化合繊と一緒になって、そして年率五%ぐらいの融通のきく自主規制だと伝えている新聞もあるのですけれども、もしそういうような大まかな、ゆるやかな線ならば、たいへん一つのいいきざしじゃないか。その内容等についても全然聞かれておらないのか。大体いま申し上げたような、伝えられる方向ならば、わが国のほうでも、十分業者に考えてもらって、そういうものができることが望ましいということが言えるのじゃないでしょうか。その点だけを伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  118. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほども私、率直に申し上げたつもりですが、ミルズ委員長もなかなかむずかしい問題の中に立って、ずいぶんいろいろと双方のために配慮をした考え方をくふうしておられる。これは私も敬意を表しているわけです。ただそのぎりぎりのお考えの内容がまださだかにつかまえられておりませんのと、それから一方、アメリカ側の、率直に申しまして根回し等が十分見通しがつき得るかどうかというようなことも同時に大切な要素ではないかと思いますので、その辺のところを、先ほど申しましたが、今後とも十分に情勢を見ながら、そしてできることならば、この長年の問題に締めくくりをつけるようにしたいものである、こういうふうに存じております。
  119. 田中榮一

    田中委員長 本日は、この程度にとどめ、次回は、来たる二十六日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後五時十五分散会