○山原
委員 本
会議の前に終わらなければなりませんから時間が二十五分程度しかありませんので、最初十分間私は実情の説明をいたしますから、本日は法務省、経済企画庁、水産庁、通産省、
厚生省来ていただいておりますので、状況を最初に把握をしていただきたいと思うのです。
本日も各新聞が発表しておりますように、東京都における河川の軒並み汚染というのが出ておるわけですね。ところが、東京都の場合にはこのような
調査も総点検ができるわけですけれ
ども、実際は地方においてはこういうことがなかなかできない。
予算が足りない、人が足りないというような実情の中で、きわめて乱暴な自然破壊が行なわれ、水質の汚染とかあるいは海洋の汚染が進行しておるという実情を私は申し上げてみたいのです。
〔内海(清)
委員長代理退席、近江
委員長代理着席〕
私の本日申し上げますのは一地方の問題でありますけれ
ども、針の穴から天井をのぞくような状態ですが、しかしのぞいてみればいわゆる政府の公害に対する政策というものがいかに矛盾に満ちたものであるかという天井のしみがよくわかる、そういう実情があるわけです。
私がきょう申し上げますのは、実は高知市を流れております江ノ口川という川でありますが、これは高知市のどまん中を流れておる川です。そして、この川のそばには皆さん御
承知の
科学者であり文人でありましたところの寺田寅彦博士が生まれております。その家はこの川のすぐそばにあるわけですが、全く皮肉なことですけれ
ども、この自然
科学者の目の前の川が西
日本随一の汚染ざれた川ということに現在なっておるわけです。しかもその川の流れる浦戸湾、これは高知港と呼ばれ、また別名吸江湾と呼ばれておりますけれ
ども、これはかって頼山陽が、私
ども中学生のときに習った漢文の中に出ておりましたが、土の吸江天下の絶景、こういわれているところ、ここには全く魚が住まないという状態があらわれておるわけです。私は、時間がありませんから、ここで公害展をやるわけではありませんけれ
ども、実際の現物を見ていただきたいと思うのです。これは私が地元の方々からいただいたものでありますけれ
ども、たとえば、現地の方々は官庁にたよることができないものですから自分たちでいろいろな
調査をやって、その現物を保存しているわけです。
これは子供たちのおもちゃのキューピーです。これはプラスチックでできておりますけれ
ども、実際はこういう色――黄色だったのです。一カ月にして家の中にありますところのこの子供の遊ぶ道具がこういう色――黒褐色になってしまう。ふいてもふいてもこの色が取れない。硫化水素による汚染をされているわけですね。
さらにまた、食器類あるいはこのようなハンドバッグ、これな
どももともと色はまっ白であったものが、これは正月に買ったものですけれ
ども、かなり高価なものですがこういう灰色になってしまう。
さらに、ここにはオリンピックの千円貨幣があります。これは上の黒いのはオリンピックのときに買いまして、そして机の中に入れて紙袋で包んであったのです。それを取り出してみるとこういう色です。ところが道
一つ隔てて川から離れたところの、同じ机の中に入れてあったこれも同じ紙袋に入れてあった貨幣はこのように白いわけですね。これくらいの相違が出てくる。さらにあるたばこ屋のおばさんは、たまりかねて十円玉作戦というので、十円玉をこのように家の中あるいは自分の家の屋外に置きまして、そして日数に従ってこの貨幣を調べていると、屋外にあるのはこのようにわずかに十日目にしてまっ黒くなっているのです。最初はきれいな十円貨幣が、こういう色になってしまう、これを見てくれ、こういうわけです。こういうふうな形、また食器類にしてもこういう色になっているわけです。ここで境目ができておりますように、こちらはまっ黒くなって、こちらはもとの姿ですね。
〔近江
委員長代理退席、
委員長着席〕
これが硫化水素による被害でありますけれ
ども、こういう中で、たとえばこの付近は住宅密集地帯、しかも住宅街もありますし旅館街もあるわけですが、旅館もにおいが部屋の中にこもっておりますために、お客さんが来ないあるいは来ましても旅館をかわるというような状態あるいは
学校の生徒さんたちが修学旅行に来ましてそして感想文を書いておりますけれ
ども、その感想文を読みますとまず第一番におもしろかったのは、旅館でまくらの投げ合いをして遊んだのがおもしろかった。二番目は何か、ごはんと部屋がくさかった、こういうことなんです。もう二度とここへは修学旅行に連れていかない、こういうような状態になっているわけです。しかも大きな
病院もありました。岡村
病院という
病院ですけれ
ども、すべて器材がこういうふうに汚染をされて
使いものにならないわけです。一番ひどいのは医療器具あるいは電気器具、だから東芝の
会社もありましたけれ
どもこれも移転をする、
病院も移転をする、こういう状態が起こっております。さらにこういう状態でありますから、人体に及ぼす影響というものも大きいわけです。ぜん息でなくなった人もおります。また頭痛、目まい、吐きけ、いろいろな障害が起こっておりまして、さらに地下水の汚染が起こっているわけです。現在井戸の場合、九十尺掘らなければ真水を得ることができないというような状態が出ておりますし、ある小
学校のプールは汚染をされて、子供たちを泳がすことができない、こういう状態。しかもその河川に沿っておりますところの人家は、人口を見ますと約二万五千人の人が
関係をしておる、こういう状態にあるわけですね。
そこでこれ以上時間の
関係で申し上げることはできませんが、この川から流れる先ほど言いました浦戸湾というのは、これは自然
科学者にとりまして垂涎の的だといわれておったのです。この湾内に生息しておる魚介類は二百数十種といわれまして、世界第二の魚介類の豊富なところといわれておったのです。ところが現在では魚はほとんど死滅をいたしておりますし、魚をとりましても食べることができない、こういう状態になっているのですね。だからこの湾内において、かって
昭和三十七年には千二百人の漁業者がおりました。ところが現在はほとんどいないのです。無理に探せば百三十名程度いるだろうというような状態になって、自然破壊と経済破壊とがぴったり結びついておるわけですね。高度経済成長政策は自然を破壊するが経済は発展するのだということはここでは全く通用しなくて、自然の破壊が経済の破壊と結びついておる、こういう事態があらわれているわけであります。
そこで
一つは、この河川に面しまして高知刑務所があります。だから法務省のほうにお尋ねしたいのですが、この刑務所におきましては、現在百五十頭の豚を飼っておる、養豚をやっております。しかもここは特別清掃区域ということになっているのですが、その豚はかって戦後におきまして囚人の残飯を処理するためということで豚を飼い始めた。しかし、このときには
中央保健所は多数飼育は許しておりません。残飯整理という
意味で飼ったわけです、これは戦後のできごとでありますけれ
ども。それが次第にエスカレートして百五十頭、現在では混合飼料までとってそして養っておる。そして刑務所の運営に充てている、こういうわけです。町のどまん中ですよ。そばには商店街もあります。住宅もあります。そこで、国の管理しておるところの刑務所がそういう豚のふん尿、その他汚物をこの河川にたれ流しをしておる。私はここへ証拠の写真を持ってきておりますけれ
ども、これは数年前に現に囚人が豚のふん尿を川に捨てておる姿を写真に写しているわけです。
先日もこの周辺にまいりますと、約一センチ五ミリの黒いハエがばあっと飛んでくるわけです。におい、豚の泣き声、もうほんとうに住民の方たちはたまらないということで、しばしば刑務所側に対しても、また
中央保健所に対しても交渉しておりますけれ
ども、一向に解決しない。そして刑務所側の話によりますと、全国の刑務所でこういうことをやっているのだから、ここだけ養豚をやめることはできないので、何とか許してもらいたいということで、そのままになっておるのが現在の実情です。現在は多少豚舎は整理をしまして、見た目にはよくなっておりますけれ
ども、河川に流しておるという事実は、これは否定することはできません。だからこんなことを国の機関が許しておいてよいのかという問題であります。現に、市民に対してはいろいろなちりあくたを投棄するなということを県は盛んに言っておる、市も盛んに言っておるのですけれ
ども、実際は国の機関そのものが最もきたない汚物を流しておる。こういうことでは、河川を整理することはできないのでありますが、これにつきまして法務省の見解を簡単に伺っておきたいのです。現在事実上全国でそういうことをやっているのですか。またやっておるとするならば、これは直ちにやめて、刑務所の
予算が足らぬとするならば、これは当然正当な
予算を組んで刑務所運営をはかるべきだと私は思いますので、伺っておきたい。