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1971-05-12 第65回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年五月十二日(水曜日)     午後一時二十一分開議  出席委員    委員長 渡部 一郎君    理事 木野 晴夫君 理事 佐々木義武君    理事 菅波  茂君 理事 田川 誠一君    理事 前田 正男君 理事 石川 次夫君    理事 近江巳記夫君       梶山 静六君    森  喜朗君       綿貫 民輔君    田中 武夫君       堂森 芳夫君    吉田 之久君       山原健二郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      西田 信一君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         日本学術会議事         務局長     高富味津雄君         科学技術庁長官         官房長     矢島 嗣郎君         科学技術庁計画         局長      楢林 愛朗君         科学技術庁研究         調整局長    石川 晃夫君         科学技術庁原子         力局長     梅澤 邦臣君  委員外出席者         参議院議員   矢追 秀彦君         原子力委員会委         員       山田太三郎君         科学技術会議議         員       篠原  登君         科学技術庁航空         宇宙技術研究所         所長      山内 正男君         大蔵省主計局主         計官      渡部 周治君         大蔵省主計局主         計官      原   徹君         運輸省航空局飛         行場部長    丸居 幹一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  海洋資源開発振興法案矢追秀彦君外一名提出、  参法第一二号)(予)  海洋資源開発公団法案矢追秀彦君外一名提出、  参法第一三号)(予)  海洋資源開発技術総合研究所法案矢追秀彦君  外一名提出参法第一四号)(予)  海洋資源開発委員会設置法案矢追秀彦君外一  名提出参法第一五号)(予)  科学技術振興対策に関する件      ————◇—————
  2. 渡部一郎

    渡部委員長 これより会議を開きます。  最初に、去る三月十八日予備審査のため本委員会に付託されました矢追秀彦君外一名提出海洋資源開発振興法案海洋資源開発公団法案海洋資源開発技術総合研究所法案海洋資源開発委員会設置法案、以上四案を一括して議題とし、提案理由説明を聴取したします。矢追秀彦君。
  3. 矢追秀彦

    矢追参議院議員 ただいま議題となりました四法案につきまして、その提案理由並びに要旨を御説明いたします。  今日、世界の人口の急速な増加に加え、国民生活向上産業経済発展に伴いまして各種資源に対する需要が増大しております。このため、最近海洋資源利用世界的に注目され、米ソ仏等先進諸国においては、海洋資源開発について国としての長期計画を立て、多額の研究開発費を投入して、これに積極的に取り組んでおりますことは御承知のとおりであります。  これは海洋資源が人類に残された未開発重要資源であるとの認識によるものであり、投資すれば必ずそれに見合うものが返ってくるであろうとの見通しが、ほぼ確実視されるに至っていることによるものと思います。  四面海をめぐらし、国土の七五%に当たる大陸だなを有し、しかも陸上資源に乏しいわが国としては、海中、海底に眠っている海洋資源開発は、最も重要かつ緊急を要する課題の一つであると思います。  最近における科学技術の急速な発展は、海洋資源開発を可能にしております。しかし海洋陸上と異なり、特殊な環境にあり、その開発には巨額の経費と広範な総合的技術、さらにはすぐれた人材の結集が必要であります。そのためわが国としても早急にこれが対策を樹立し、国の施策として総合的、計画的に推進する必要があります。  この四法案は、こうした最近における海洋資源開発重要性緊急性、さらに開発体制のおくれ等にかんがみ、海洋資源開発に対する政府目標基本的施策等を定め、それに基づき、開発のための機構整備し、海洋調査開発技術研究及び関連産業育成等を強力に推進しようとするものであります。  以下、法案要旨を簡単に御説明いたします。まず海洋資源開発振興法案について申し上げます。  第一に、この法律海洋資源開発推進することによって、わが産業振興国民生活向上に資すべきことを明示し、その達成のため、海洋等調査開発技術研究推進、その成果利用推進研究機関整備研究者技術者の確保と勤務条件適正化等施策を講ずることとしております。  第二に、海洋資源開発平和目的に限られ、しかも自主、民主、公開、国際協力の原則に従って行なわれるべきことの基本方針を明示するとともに、政府はこれらの施策を実施するため、必要な法制上、財政上及び金融上の措置を講ずべきものとし、政府が講じた施策及び海洋資源開発進展状況に関し、毎年国会に報告すべきことといたしております。  第三に機構整備につきましては、海洋に関する調査開発技術研究などに関する事項について企画、審議、決定する最高機関として海洋資源開発委員会を設置することとし、さらに開発技術等研究機関として、政府監督のもとに海洋資源開発技術総合研究所を、また実際に開発の事業を行なう者に対する資金貸し付けを行なう機関として海洋資源開発公団を、それぞれ設立することといたしております。  第四に、委員会海洋資源開発に関する基本計画を策定しなければならないこととし、しかも、毎年基本計画検討を加え、必要があるときはこれを修正しなければならないことを定めております。  次に、海洋資源開発振興法案に基づき設置されることとなっております三機関に関する法律案について御説明申し上げます。  まず、海洋資源開発委員会設置法についてでありますが、第一にこの委員会は、委員長及び委員六人をもって組織することとしております。委員長国務大臣をもって充てるものとし、委員は両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命することといたしております。  第二に、この委員会所掌事務は、海洋資源開発に関する基本計画の策定のほか、海洋資源開発に関する重要な政策、関係行政機関事務総合調整のうち重要なもの、関係行政機関経費の見積もり、研究者及び技術者養成訓練その他海洋資源開発に関する重要事項について企画し審議し、その決定に基づき内閣総理大臣に対して意見を述べることであります。  第三に、委員会の庶務は、科学技術庁計画局において総括処理するものとし、関係行政機関所掌に属するものについては、その行政機関と共同して処理するものといたしております。  次に、海洋資源開発技術総合研究所法案について御説明いたします。  第一に、この研究所海洋資源開発を総合的かつ効率的に推進するため、海洋に関する調査海洋資源開発技術及び機器装置に関する基礎的研究及び応用研究のほか、研究者及び技術者養成訓練等を行なうことといたしております。  第二に、研究所政府及び政府以外の者の出資額合計額資本金とすることとし、さらに必要に応じて資本金を増加させることができることといたしております。  第三に、研究所理事長、副理事長理事七人以内及び監事二人以内をもって構成し、理事長海洋資源開発委員会同意を得て、内閣総理大臣が任命することといたしております。  最後に、海洋資源開発公団法案について御説明いたします。  第一に、この公団海洋資源開発に必要な資金貸し付け及びその資金にかかる債務の保証並びに海洋資源開発に必要な機器委託開発、購入及び貸し付けを行なうことといたしております。  第二に、公団資本金政府が全額出資するものとし、さらに必要に応じて資本金を増加し得るものといたしております。  第三に、公団総裁、副総裁理事五人以内及び監事二人以内をもって構成し、総裁海洋資源開発委員会同意を得て内閣総理大臣が任命することといたしております。  以上四法案につきまして、提案理由及びその要旨を御説明いたしましたが、何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 渡部一郎

    渡部委員長 以上で提案理由説明聴取は終わりました。      ————◇—————
  5. 渡部一郎

    渡部委員長 次に、科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近江巳記夫君。
  6. 近江巳記夫

    近江委員 関係の方がちょっと御出席がおくれるそうでございますので、来られている方に一つお聞きをしておきたいと思います。  科学技術庁の中に航空宇宙技術研究所というものがあるわけでございますが、宇宙のほうは非常にはなやかな脚光を浴びておるわけでありますが、一番われわれに密接したそういう航空方面が、ともすれば宇宙のはなやかさに隠れておる、こうしたこともございます。さらに最近は公害問題が非常にやかましくいわれておるわけでございますが、その中で航空機騒音という問題が非常に大きな公害問題としてクローズアップをしてきておるわけであります。航空機騒音、これをいかに今後防いでいくかということについては、いろいろ各方面研究なさっていることと思うのですが、まず初めにお聞きしたいのは、この航空宇宙技術研究所ではどういう研究をなさっておられるか。またそういう中で航空機騒音に対する研究はどの程度進んでおるか。これについてきょうは所長さんもお見えになっておるし、まず所長さん、そのあと局長さんからひとつお聞きしたいと思います。
  7. 山内正男

    山内説明員 ただいまの御質問にお答えいたします。  航空宇宙技術研究所におきましては、いまお話ございましたように航空機及び宇宙技術に関する研究を行なっております。そうしてそれの規模は、たとえて申しますと、昭和四十六年の計画におきましては、大体航空機関係予算と、それから宇宙技術関係予算との割り振りで申しますと、大体は半々程度になっております。やや航空機関係のほうが多いという状況でございます。  そうしてその航空機に関しまして、騒音関連した研究といたしまして、従来も基礎的に研究を進めておりましたけれども、それはたとえて申しますと、航空機騒音といいますのは、大部分ジェットエンジンによって発生しております。したがいまして、このジェットエンジン騒音をいかにして減らしていくのか、そういうことが中心となった研究でございます。それで、四十六年度におきましては、この問題を特に大幅に取り上げまして、ジェットエンジンの低騒音化研究という方向に向かって特別研究としてこれを進めておるわけでございます。このエンジンの低騒音化と申します場合に、それの内容が二種類ございます。一つは、エンジンがすでに発生した騒音をいかにして吸音装置その他をうまく活用して外に音が伝わっていかないようにするか、つまり吸音をいかにして効果的に行なうかというのがその一つでございます。それから二番目は、大体エンジンが発する音そのものを極力少なくしていこう。この研究となりますと、エンジン設計そのもののところからスタートしてまいりませんと、エンジンの発する音を少なくするということを達成するわけにはまいりません。それで、四十六年度におきましては、まず発生する音をいかにして外に伝わらないように吸音するか、その辺の研究をまずスタートしております。この場合におきましては、当研究所にあります角田支所で、この研究所研究試作を行ないましたJR100というエンジンを若干改造いたしまして、これにこれまで研究をしてまいりましたジェットエンジン吸入部分ダクト、それから排気ジェットノズルダクト、そういうところに吸音装置をつけまして、それでいかにして騒音を吸収するか、それの実験をこの十一月ごろをめどとして進める計画をしております。それからエンジンそのもの発生する音をいかにして少なくするかということは、これは大体エンジンの一番最初のところにあります圧縮機あるいはファンエンジンの場合はファンでございますけれども、そういうファン騒音をいかにして少なくするのかという設計、これはファンを構成しております翼列の問題もありましょうし、それからその構造の問題もあります。そういうところの研究試作を行なって、騒音発生を極力減らすというのは、四十七年度以降にこれを実施していきたいと考えております。  これらの研究成果を全般的にとりまとめましたものは、通産省で進めつつあります大型プロジェクトとしまして、推進用ファンエンジン開発がございますけれども、これの中に当研究所で行なっております研究成果を全面的に取り入れまして、いわゆる低騒音エンジンというものに持っていく計画をしております。
  8. 石川晃夫

    石川政府委員 科学技術庁といたしましては、この科学技術の中におきます航空技術というものが非常に重要であるということに注目いたしまして、航空技術につきましては科学技術庁航空技術審議会というものを設けまして、そして長官からのいろいろな諮問に応じて航空技術に対する答申を行なっているわけでございます。この航空技術審議会におきましては航空機の機体あるいはその安全性の問題その他いろいろな航空機の問題につきまして検討を進めておりますが、やはりその中で騒音の問題もやはり最近のように航空機需要が非常に加速度的にふえてまいりまして、しかも相当大型になってくるという状態になりますと、この騒音の問題もないがしろにするわけにいかないわけでございます。その問題につきましては現在航空宇宙技術研究所において騒音の問題と取り組んでいただいているわけでございますが、その内容につきましてはただいま所長から説明がございましたのでそれに尽きているのではなかろうかというふうに存ずる次第でございます。  ただ、このような航空機騒音の問題につきましては、これは単に航空機のみの問題ではなく、いろいろ公害問題も付随して出てまいりますし、さらに国際的な問題もあるわけでございます。したがいまして、航空機の運航が国際的になるに従って、この騒音問題につきましても十分各国との連絡をとりながら進めていかなければならない、こういうふうに存じておる次第でございます。
  9. 近江巳記夫

    近江委員 科学技術庁がこの航空機の問題は非常に重要な問題であるということで取っ組んでおるということについて局長さんから答弁があったわけであります。この研究所規模なり何なり見てみましても、予算、陣容においてもかなり大型なものでありますし、われわれもそれを非常に期待しておるわけであります。騒音取り組みについてはわかったわけですが、特に航空技術研究所としてどういう問題を、ほかに大きな柱として取っ組んでおりますか。こまかい説明は要りませんから、簡単に柱だけひとつお答えいただきたいと思います。所長さん。
  10. 山内正男

    山内説明員 お答えいたします。航空関連いたしましては、現在われわれの研究所重点研究目標というのを三つ掲げております。  それの一つが、VSTOL機でございます。第二が遷音速機あるいは超音速機であります。それから第三が航空機安全性でございます。ただいま申し上げました三つ重点研究目標の中に、エンジンの低騒音化というものは、これは遷超音速機の問題としても取り上げられますし、それからまたVSTOL機におきましてもエンジン騒音という問題が解決しませんと、このVSTOLというものを実現させるわけにまいらないと存じますので、その両方に関連をいたしましてエンジンの低騒音化をやっております。重点研究目標としては三つを掲げております。
  11. 近江巳記夫

    近江委員 非常に研究をなさっていらっしゃるわけですが、しかしわれわれ国民が受け取る航空機騒音のはだで感じ感じ方というものは、これは日を追うごとに大きくなってきているわけです。そういう点、きょうは運輸省も来られておりますし、いろいろお聞きしたいと思うのです。そうした国際機関、そういうようなところにおたくの研究所成果なり、そういうことがどれだけ主張されて、どれだけ航空機全体の騒音に対して影響を与えておるかということなんです。その点、運輸省には航空局があるし、東大にも宇宙航空研究所もあるし、その辺の成果というものがいかに反映しておるか。りっぱな研究所であることは私もわかるのですが、相互に関連性が薄ければ効果ということは非常に期待できないんじゃないか、それを心配しているわけです。その点、どういうように反映してきておられるか。それについてきょうは運輸省所長さんのほうから簡単にひとつお聞きしたいと思うのです。まず所長さんのほうから。
  12. 山内正男

    山内説明員 ただいまの問題でございますけれども、世界的に航空機騒音の問題というのが提起されましたのは、昭和三十年代になってからでございます。それでジェット機航空輸送に使われる、そういうようになりましてから、航空機騒音問題というものが非常に問題になってきたわけでございますけれども、これが世界的に申しましても、騒音測定方法の問題であるとかあるいは騒音評価法、そういうものが確立しないままにそれぞれの国が独自の測定あるいは計測というようなことを行なってまいってきております。  それで、そういうことがありましたものですから、ICAOにおきましてこれを問題として取り上げ、昭和三十六年からこれの具体的な検討を進めておるわけでございます。それで昭和四十四年に加盟各国に呼びかけまして、騒音に関する特別会議を開いたわけでございますけれども、それによって国際的な基準作成というものを進めておるわけでございます。しかしまだ現在の段階で全面的に取りきめが定まったというわけではございませんで、航空機の重量に応じた騒音制限基準、そういったようなものが若干規定されておるものもございますけれども、そういうものに基づきまして、今後世界各国開発していきます航空機というようなものをその基準にのっとって設計を製作していくということになろうかと思います。  それで、わが国におきましてはそれが一体どうであろうかということですけれども、現在わが国におきまして、ジェットエンジンの生産を行ない、それを、いわゆる国産機ジェットエンジンを搭載しているという例はございません。そういう点におきまして、エンジン騒音をいかにして減らしていくのかということに関連しては、航空機設計の一環といたしまして、ジェットエンジン自主開発においてその中に初めて低騒音エンジンというものはつくり出し得るものであると考えます。そしてエンジン騒音を減らす手段としまして、消音装置によってすでに発生した音を吸収するという手段は大体騒音の低減のうちの五〇%を受け持つものであり、それからエンジン設計段階において発生する音を減らそうというのが、残りの五〇%を分担するものと考えております。そこで、たとえばアメリカ航空宇宙局におきましては低騒音エンジンというものの開発を行なっておりますけれども、これにおきましては、現在ジェットエンジン騒音というものが百十五ないし百二十デシベルという程度になっております。それを大体十五から二十デシベルぐらい下げて、つまり九十四ないし九十五デシベルに持っていこうという計画推進しておるわけです。これに対しまして、フロントファン研究試作であるとかあるいは低騒音エンジン試作というものに対しまして、七十億円以上の開発費を投入しております。こういうことを行ないまして初めてその低騒音エンジンというものができてまいります。で、そういうことによりまして、これの場合のねらいというのに、飛行場における騒音基準というものはこのくらいにしたらいいというアメリカ自身の案の中に入るように持っていきつつあります。  それで、わが国といたしましても、現在のところあまりそういう基準が明確ではございませんけれども、極力そういう基準が明確化し得るように、またアメリカ航空局できめましたFAA基準というようなものに準じて、その騒音を減らすような努力が必要であろうかと考えます。
  13. 近江巳記夫

    近江委員 私がちょっと申し上げたのは、その科学技術庁航空宇宙技術研究所のそういう成果というものがどのように運輸省航空局なりあるいは東大宇宙航空研究所なり、そういう成果が一本になって、それがまた国際機関ICAOですか、そういうところにも反映して、世界全体にもそういう騒音を低下さしていこうという動きに貢献してくれているか、その辺のところが私、各研究所がばらばらのような感じがするわけです。その辺、ほんとうに一体となった、そういうわが国あげての騒音対策なら騒音対策としての集中した取り組みができておるかどうか、この点について先ほどお聞きしたわけなんです。その点、柱になっていらっしゃる運輸省航空局も来られておりますので、航空部長さんからお聞きしたいと思うのです。
  14. 丸居幹一

    丸居説明員 航空機騒音防止対策としては、まず航空機発生源のところで音を軽減する方法発生源を遠ざける方法、それからまた音の伝播を遮断する方法というような総合調整軽減方策があるわけでございますが、その発生源でもって音を軽減する方法といいますのは、いま所長のほうから話がありましたが、これは航空機エンジンそのもの製造過程においてやるよりしようがない。いま先生から話がありましたように、わが国ジェット機がずいぶん飛んでおりますけれども、民間航空ジェット機というのはすべて外国からの輸入機を飛ばしておりますので、この点についてはわれわれ自身監督官庁でもありませんしいたしますので、それほど大きな連絡をとりながらやっておるということはございません。   〔委員長退席石川委員長代理着席〕  ただ、あとの二つでございますね、これにつきましては、主として東大宇宙航空研究所のほうのお力をおかりいたしまして、航空機騒音測定方法——この測定方法というのはいま非常にむずかしいというお話でございますが、その測定方法についての御指導をいただいたりあるいは航空機が飛びます場合の騒音のコンターの作成等お願いをいたしまして、現在いろいろ御調査を願っておるというふうなことをいたしております。  われわれが騒音対策を行ないます場合には、主としてこれら先生方のそういった騒音についての専門的な知識をおかりいたしまして、それをもとにして騒音対策を実施しておるというふうな現状でございます。
  15. 近江巳記夫

    近江委員 東大研究所からはかなり御協力をいただいておるというお話がございましたが、科学技術庁航空宇宙技術研究所もずいぶん協力されておるわけですか。いま時間の問題がありますので、あまりこまかいことを言われますとなんですので、項目的でよろしいですから、協力しているなら協力している、その辺の若干説明お願いをしたいと思うのです。
  16. 山内正男

    山内説明員 ただいまの問題ですけれども、われわれのほうでは騒音測定という問題は、むしろエンジンの低騒音化に付随して起こっておる問題でございまして、現在音響専門家はおりません。したがいまして、エンジン専門家音響をいかにして少なくし得るかという方向に向かっての研究を進めておるわけでございます。したがいまして、単に音響を発しているものの音響測定ということに対しては専門家をかかえておらないで、現在それをどういうふうにやっておるかといいますと、たとえば東京大学宇宙航空研究所、それから東京大学小林理科学研究所、それからNHKの技術研究所、そういうところの方々を研究所技術員になっていただきまして、そして共同して低騒音化を進めておるわけでございます。
  17. 近江巳記夫

    近江委員 それぞれの各機関があるわけでございますから、さらにお互いにそうした成果を結集していただいて、そうして国民がこうやって航空機騒音でもやはり困っておるわけでございますので、それが生かせるように十分にひとつ今後は力を合わしていただきたい、このように思います。  それで、航空機騒音というものがどういう影響を与えておるか。日本の中で一番大きな影響を受けておるのは、私は内陸部にある大阪空港じゃないかと思うのです。特におりてくる豊中側、あるいは上がっていく川西方面、非常に人口が密集しておるわけです。そういう点でたとえばいままで北摂地帯ということで、美しい住宅地でもあったわけですが、昔は、どこに住んでおられますか、そうすると、豊中です、あるいは川西です、そういう答えに、よろしいおまんな、まあよいところですな、一生に一度は住んでみたいですな、そういうように、大阪弁でなんですけれども取りかわしたわけです。ところが、最近はたいへんでっしゃろな、あんた寝れまっか、身に支障おまへんか、そういう会話にも変わってきているわけです。これはほんとうに庶民が一番はだで感じておる騒音に対する受け取り方じゃないか、このように思うわけです。そういう点で、特に一番その被害が集中しておるわけですが、こういう悩む密集地帯について、政府としてそういう研究の促進をし、解消につとめておられるということはわかるのですが、なかなかそういう結果ということが私出てきておらないように思うのです。そういう点、航空機自体の騒音対策エンジンをしぼるとかいろいろ技術的にあると思うのですが、そういうことと同時に総合的な騒音対策を進めなければならぬ、このように思うのです。その点、航空宇宙技術研究所を持っておられる科学技術庁が一番力を入れてなければならぬ問題ですよ。大臣としては、まず私はそれをどういう位置づけで航空機騒音というものをとらえていらっしゃるか、それは騒音でしゃあないわというような感覚でおられるのか、重大な問題であるというふうにとらえていらっしゃるのか、その辺まず私は大臣の考え方を一ぺん聞きたいと思うのです。大臣はどういうふうに受けとめておられますか。
  18. 西田信一

    ○西田国務大臣 お尋ねのとおり、狭い国土に一億以上の国民が住んでおる日本でございますから、しかもまた経済活動その他において航空機利用というものはきわめて急ピッチに増加しておる、こういう点から申しまして、将来さらにこれが航空機利用のほうに依存度が高まっていくであろうというふうに考えられます。そういう立場から申しまして、私はいま御指摘になりましたように、騒音の問題はこれはきわめて重大な事柄でございまして、技術的な立場からの、音を消す、あるいは音を低くするというような点とあわせまして、やはり住民に対する騒音によるところのいろいろな起きます現象を、政府のいろいろな施策によりましてカバーしていかなければならぬ、こういうことにつきましては積極的な姿勢で取り組まなければならぬと考えております。
  19. 近江巳記夫

    近江委員 大臣としても積極的に取り組まなければならぬという御意見でございまして、私もまあそのまま受け取りたいと思うのです。しかし、どのようにやってくれているかという現状からすれば、それとはちょっと離れたような感じを、私、率直に申し上げて持つわけです。  きょうは航空局の方もこられておりますし、まず一番密集した大阪空港ですね、これの騒音対策昭和四十五年までにはどのように進めてきたか、四十六年度の計画はどうなっておるか、それから四十七年度以降の対策はどうなっているか、詳しくは時間の関係がありますので、けっこうですから、ポイントをひとつ答えていただきたいと思うのです。
  20. 丸居幹一

    丸居説明員 昭和四十五年度までの運輸省の行なってきました大阪国際空港周辺の騒音対策事業の内容でございますが、これは防音工事につきましては小学校、中学校、高等学校、幼稚園、保育園、これら合わしまして着手いたしましたのが四十九カ所、完成いたしましたのが十カ所でございまして、現在三十九を継続工事をやっておる最中でございます。それから共同利用施設にいたしますと、現在まで二十施設を完成いたしております。昭和四十五年度から、こういった学校には冷房施設がございませんでしたが、冷房設備につきましても助成を実施しておるという状況でございまして、また空港周辺の一定区域の移転補償でございますが、先生おっしゃるとおりに、大阪周辺はたいへん密集しておりまして、われわれ音で悩んでいる方々に申しわけないというふうに思っております。その対策といたしましては、ただいまいろいろ根源において音を減らすことを研究され、ある程度成果をあげてはおるわけです。まだそれを大げさに言うという段階になっておりませんので、やはり直下、特に進入表面の直下については立ちのきをしていただくよりしようがないというので、立ちのきに最近非常に力を入れてまいりまして、四十五年度では予算にいたしまして二億九千二百万円計上いたしまして、鋭意その立ちのき交渉をいたしておる最中でございます。今年半ごろまでには完了するようにという目標で努力をいたしております。  それから昭和四十六年度でございますが、これはさっき申し上げましたような施設、同じような施設でございますが、この施設、五十九施設につきまして実施をしてまいりたいと思っております。なお、共同施設につきましては、したがいまして、総数が九十八ということになってまいります。なお、四十六年度からは、新たに医療施設につきましても防音工事の助成を実施することにいたしております。なお、さっき申し上げました移転補償につきましては、さっき申し上げましたような観点から昭和四十六年度は一そうこれに力を入れることにいたしまして、その経費七億五千六百万円を準備をいたしております。そういたしまして、空港にきわめて接近して住んでおられる方々から順番に移転を促進していきたいというふうに考えております。  なお、騒音対策でございますが、こういったものはさっき言いましたように、ある程度音を遮断するとか音を遠ざける、こういう方法一つではございますが、やはり騒音対策で最も効果の多いのは根源において音を断つということでございますが、続いてやはり騒音源を遠ざけるということが大きな対策だと思います。そういう対策としまして、やはり現在の大阪国際空港に出入りしております飛行機の中で一番大きな音のする飛行機は、やはり国際線を飛んでおる飛行機でございます。また国内線を飛んでおる飛行機にいたしましても、遠距離を飛ぶ飛行機がやはり重量が重うございますので、これが非常に大きな音を立てる。そこで騒音対策の見地からしてでも、やはり新関西国際空港というのを別の意味で計画いたしておりますけれども、騒音対策という意味からでもこれをいっときも早く実現いたしますと、いままで伊丹の周辺でまず音を立ててそれから西宮の上あるいは芦屋の上を通り越して香港であるとかあるいは台北であるとかあるいはそれがまた東京へ行くというふうな飛び方をしておるわけであります。新空港をもしほかへつくりましてそういった国際線を移すことができれば伊丹の中では近いところを飛ぶ国内線だけになりまして、そういう意味からいいましても関西新空港をつくるということは一つの伊丹における騒音対策ではないだろうかというふうにわれわれは考えておりまして、またあの地元のほうでつくっておられます八市騒音対策協議会でも強くこのことを主張いたしておられますので、そういう点からもやはりそういうことが非常に大きな効果の一つであるというふうに考えております。
  21. 近江巳記夫

    近江委員 騒音対策としても、あるいは今後航空機の乗客や貨物輸送等を考えても、これ以上大阪空港で飛行機の発着は危険も増しますし、騒音が増大するということからやはり限度に来ておるということは、これは政府としても御了承になっておりますし、地元のほうの人の意見を聞いてもそういう一致した意見のように私は思うわけです。  いま、部長さんのほうから、結局公害対策の問題あるいはその他のいろいろな要因を考えて関西新国際空港はどうしてもつくらなければならぬ、このようにおっしゃっておるわけですが、いままでこの位置の選定について非常にいろいろな声がずっとあったわけで、確としたそういう位置についてはまだ政府としては明示されておらないように私は思うのですが、いままでいろいろ調査をなさっておると思うのですが、その進捗状況について、ここのところについてはこうだとかいうその辺のことについてひとつ御報告願いたいと思うのです。
  22. 丸居幹一

    丸居説明員 位置の選定でございますが、やはり大阪国際空港の使い方というものを考えてみますと、国際線もかなり大きく伸びてまいっておりますけれども、国内線が非常に大きな伸びをしておる。そこで現状のまま進んでいきますと、昭和四十六年度、つまり本年度ですね、本年度一ぱいくらいで大阪は満員になってしまう、パンクしてしまうという状況でございます。ことしパンクしたのではどうにもならぬと考えますので、そこで飛行機をなるべく大型化していこう、そうしますと、YSで飛びますと六十人乗れるところが、三百人乗れるものがかりに飛べば、五はい出入りしたのと同じになりますので、そういうことをやっていこう。もう一つは、大阪で乗りかえられる方がかなりおる、九州から東京に来られるときに大阪でジェット機に乗りかえてこられる方がかなりたくさんおります。そういう方はなるべく九州から東京へ直行していただくあるいは北海道へ直行していただく、この大型化、直行化をこれから少し力を入れて実施していきたいというふうに考えておりますが、そういうことをいたしましても、昭和五十二年度にはやはり大阪はパンクしてしまうという見通しでございます。したがいましてどうしても五十二年度あたりには新空港をつくり上げなければならぬわけでございますが、ただいま申し上げましたように国際線も伸びておりますけれども、非常に大きな伸びを示しておるのは国内線である。したがって、その新しい国際空港の位置はどうしてもやはり大阪の市内から一時間程度の範囲内で物色しなければならぬのではないかというふうに考えております。  それから先ほど来問題になっております騒音でございます。やはり騒音対策を十分飛行場の建設の側で講じなければいけない。したがって、民家の上を飛ぶようなことのないような場所あるいはそういう滑走路の方向というものを検討しなければならぬのじゃないだろうか、こういうふうに考えて位置の選定を行なっておる次第でございます。  その候補地につきましては一応南のほうから申し上げますと和歌山、阪和県境というのがあがったのでございますが、この阪和県境につきまして一応長短を申し上げますと、やはりこれは大阪から少し遠い、さっき言いました国内線もともに使う国際空港としてはどうも大阪から少し遠いという欠点がございます。  それからもう少し北のほうへ上がりまして大阪湾内へ入ってまいりますと泉南地方から堺のあたりについて一応の候補予定地があるわけでございますが、これはさっきも言いますように民家の上を飛ばないということにしようと思いますとどうしても沿岸から少なくとも五、六キロは沖へそれをつくらなければならぬということなんでございます。そういたしますと、この飛行場は、水深が十五メートルから二十メートル近くなりますし、その下に沖積層、洪積層合わせまして、ヘドロといっては大げさでございますがあまりかたくない層というものが四十五メートルから五十メートル程度あるわけでございます。こういった深いところに埋め立てをするということになりますとたいへんな土量が要る。土量がよけい要るということは工期が長引く、金が高くつくという結果になるわけでございまして、そういう工事上非常にむずかしい問題がございます。それからなお五、六キロあるいはそれ以上も沖へ出すということになりますとやはりトンネル——橋は無理になりますからトンネルをつけなければならぬ。トンネルというのはそういう長い距離になりますと自動車の排気ガスの問題というものも起こってまいりますので、これらが非常にむずかしい問題として残っておるわけでございます。  それからもう少し北西へ上がってきますと六甲の沖とかあるいは神戸の沖とかいうことを、しばしば新聞でも騒がれておりますような地点が問題になってまいるわけでございますが、こういうところにつきましても、さっき言いました騒音関係からいいますと、どうしてもやはり五、六キロ沖には離さなければならぬ、そういうことになりますと、ただいま申し上げましたような問題点がこれらの地域についても同じように起こってくるわけでございまして、その余分に、神戸港は何といいましても日本で一、二を争う貿易港でございますので非常に大きな船が出入りいたしておりまして、これらの航路との調整問題といったようなものもそれに加味されることになってくるわけでございます。  それから、非常に早くから手をあげております淡路空港というものに触れてみたいと思いますが、淡路で考えられておりますのは、淡路島のやや北のほうに近いところに妙見山という五百メートルの山がございます。この妙見山という五百メートルの山を頭のほうから二百メートルほど切りまして三百メートルの高さに切って谷を埋めてそうして三百メートルの高台に飛行場をつくるという案でございますが、これはさっき言いました埋め立てよりもはるかに大きな土量を動かすことになるわけでございます。またその三百メートルもの谷を埋めるということは埋めた後の管理がなかなかたいへんでございますし、そういう問題等もありまして、なかなかこの淡路島の上というのもむずかしい問題をいろいろはらんでおります。またこれは山をくずすわけですから当然たくさんのハッパをかけて大きな石を取り除かなければならぬといったような問題もありますので、かなり工期も長引くし金額も張ってくるという結果になるように考えられます。  それからもう一つ明石沖というのがあるわけでございますが、これは周辺の地質も非常によくて飛行場をつくればかたい飛行場ができるんじゃないかというふうに考えられるのでありますが、これはどうも地形の関係から沿岸に近いところに場所がなりそうである、もっと離したい、つまり五キロも六キロも離したいと思いましても、そう離したのでは船のほうに障害が起こる。船のほうに障害が起こるというような問題がありますのと、ここはかなりの漁場でございまして、そういったものの漁業補償等に非常にむずかしい問題があるのではないかというふうに考えられるわけであります。  それから岡山県の錦海湾という話等も実は昔出たのですが、これはさっきの和歌山よりなお大阪を中心に遠くなりますので、この岡山県の錦海湾というのは、候補地としては無理ではなかろうかというふうに考えている次第でございます。
  23. 近江巳記夫

    近江委員 そうすると、いままで候補地としてあげられたところは、全部一長一短あって一応みなだめであるというような感じに受け取ったわけですが、運輸省として、この辺はどうだというようなところをいままでいろいろ調査をなさっていたわけですので、いまどの辺が一番いいと思っていらっしゃるわけですか。
  24. 丸居幹一

    丸居説明員 その点につきましては、ただいま調査を大々的に外部にも発注したり、あるいは運輸省の、港湾でありますと港湾建設局等の協力も得まして、きわめて大々的な調査をしてまいったわけでありますが、なお補足調査といいますか、あるいは追加調査というのに入るかもしれませんが、そういうものを約二十項目につきましていま行なっております。この調査が出てまいりませんと、どこということがちょっと申し上げられないのであります。  といいますのは、一例をあげてみますと、それを神戸側について一応見てみますと、水深二十メートルで、その下にヘドロと称するものが五十メートルあるということになりますと——ヘドロといいましても洪積層あたりになるとかなり耐久力がありますから、またそれも全部のけるというわけではありませんが、そういったものの上に土を置いてつくっていかなければならぬということになりますと、沈下の問題というのを非常に大きく取り上げていかなければならぬ。それから平等に沈下していく場合はある程度何とかやっていけるわけでございますが、不等沈下が起こりますと、つくって間もなく使えないというようなことになるおそれがございますので、どの程度の不等沈下を見込めるであろうか、また、全体としての沈下をどういうふうに見込んでいったらいいだろうか、また、沈下した場合には、それに対する対策としてどういうことを考えていくべきであろうかというふうな点等につきましてもう少し突っ込んだ検討をいたしませんと、神戸というものについて、ここは候補地になるという確信が持てぬわけであります。  いろいろ調査しておりまして、最近やや判明してまいりましたのは、われわれが非常に心配をいたしておりました神戸港あるいは尼崎、西宮といったようなところに入る船に致命的な障害を与えるのではないだろうかという点についていろいろ検討いたしてきたのでありますが、これも最終的結論が出たわけではないのでございますが、ほぼそれはだいじょうぶではなかろうかというふうなことがわかってまいったというのが、最近起こりました新しい調査結果でございます。大阪の南側の泉南地域等につきましてもこれと同様でございまして、こういった二十項目につきましての調査がもう一ぺん出てきた上で、それを詳細に検討した後でありませんと、みな非常に大きな長短がございますので、ちょっとどこという決心がまだ事務的にも考えられないような段階でございます。
  25. 近江巳記夫

    近江委員 そうすると、いろいろお聞きして、人家に与える公害とか、いろいろな点を考えて、やはり大阪湾上ということはかたいわけですか。
  26. 丸居幹一

    丸居説明員 やはり候補地にあがっておるものの中では、大阪湾に、私たちがいま言っておりますように五キロ、六キロという沖へもしつくることができたといたしますと、少なくとも横につきましては、音は雑騒音以下の音になるだろうと思います。これはいま伊丹あたりでたいへん御迷惑をかけておりますけれども、非常に事情が違ってまいると思います。  それから滑走路の先の進入面の下でございます。これはかなりのところまでやかましゅうございますけれども、いろいろと検討いたしますと、大阪湾内で曲がりくねるということになっておりますので、その点についても民家の上を飛ぶということはございません。騒音対策ということからいいますと、大阪湾というのは非常にいい場所のように考えております。  それから淡路島でございますが、もちろん淡路島の上につくります場合に、島がこう長くあって、それに横に滑走路をつくりましても、その滑走路から飛び立ちます飛行機の進入表面下にやはり民家は残るわけでございますが、それは移転をしていただくよりしかたがないと思っております。この民家を移転していただきますと、あとは海から入って海へ出ていくという飛行場になりますので、淡路島というのもわれわれは陸上空港というふうに解釈をいたしておりません、海上空港というふうに解釈をいたしておりますので、これも騒音対策からいえばかなりプラスの多い飛行場ではないかというふうに考えております。
  27. 近江巳記夫

    近江委員 騒音対策というベースで考えてきたわけですが、要するに利用者の乗降客のメリットあるいは貨物輸送のメリット、経済圏のそうしたメリット等を考えて、大体一時間以内というような点から推して、運輸省としては、大阪湾というのが一番候補地としては強いのではないかというような御判断でございますか。
  28. 丸居幹一

    丸居説明員 先ほど来申し上げておりますように、海の下というのは非常に十分な検討をいたしませんと確信が持てませんので、一応いま申し上げました大阪湾の南のほうと、神戸側寄りと、それから淡路島、それと明石、大体この四地点ぐらいに重点をしぼりまして調査をしておることは確かでございます。
  29. 近江巳記夫

    近江委員 それで、成田空港を見ましてもかなり大型空港になっておるわけなんですが、この関西新国際空港はどの程度規模をお考えになっていらっしゃるんですか。また、世界各国の空港のどのくらいのランクにあるか、われわれ飛行場につきましてはしろうとですので、わかりやすくひとつその規模の点についてお聞きしたいと思います。
  30. 丸居幹一

    丸居説明員 これは、一応われわれが案を立てますと、航空審議会とか、その他専門家あるいは学識経験者等によって構成せられている審議会にはかって最終的な原案をつくり、それを閣議決定でもしていただくというふうになるわけでございます。いまここでどれくらいの大きさということを申し上げるのは単にわれわれ事務当局の考えにすぎぬわけでございますが、一応私たちがいまこれぐらいの大きさの飛行場をつくったらどうだろうかと考えておりますのは、新関西国際空港はさしあたって千ヘクタール程度の飛行場にしたらどうであろうかというふうに考えております。千ヘクタールの飛行場といったらどの程度かといいますと、成田でつくっておるのが千六十ヘクタールでございますから、大体あの程度の飛行場を海の中とか山の上とかにつくっていきたいというふうに考えております。ただ、それで終わりということにしてはならないのではないかというふうに考えておりますのは、東京にいたしますと、羽田はいま四百九ヘクタールしかないわけでございますが、これはまだ埋め立てようと思えば埋め立てて拡張ができる余地もございますし、東京周辺にはほかにも飛行場がありますので、まだ対策としては東京周辺には残っているように思いますけれども、大阪は、現在の大阪国際空港、これは大きさが三百二十八ヘクタールございますが、この三百二十八ヘクタールのものを広げることはほとんど不可能でございます。そういたしますと、将来大きく発展していく関西地域の飛行場としては、千ヘクタールだけでは済まないじゃないか、そこで、約千ヘクタールを第一期工事としてつくるのでございますけれども、これは必要に応じて拡張できる余地を残しておかなければならないというふうに考えております。少なくとも最終二千ヘクタールぐらいな大きさになるようなつもりで千ヘクタールの計画をしておいたらどうだろうかというふうな考え方でおります。  それから、御質問の一つでございます世界のほうの問題、ちょっと御参考までに申し上げますと、ニューヨークのケネディ空港は二千ヘクタールございます。ニューアークは九百二十ヘクタール、ラガーディアは二百三十ヘクタールで、ニューヨークの近辺はこういった三つの飛行場を持っておりまして、しかも第四空港をただいま計画をいたしております最中でございます。  なお、ロンドンにつきましては、ヒースロウ空港が千百ヘクタール、それからガトウィックが四百九十七ヘクタールございまして、このほかにロンドンでも第三空港を計画している最中でございます。  それから、フランスのパリは、オルリー空港が千六百ヘクタールございまして、もう一つル・ブルジュという飛行場が五百九十六ヘクタールございます。しかし、フランスは最近ロアシーという飛行場をパリの北のほうに計画をして、ただいま一九七二年に供用開始をする予定で建設をいたしております。ル・ブルジュの飛行場はこのロラシー空港ができますとつぶすことになっておりますので、したがいまして、フランスは千六百ヘクタールのオルリー空港、三千ヘクタールのロアシー空港の二つになることだと考えております。
  31. 近江巳記夫

    近江委員 そうしますと、第一期で千ヘクタール、最終は二千ヘクタールといいますと、滑走路にすれば何メートルぐらいの滑走路が大体何本ぐらいできるのですか。
  32. 丸居幹一

    丸居説明員 千ヘクタールといいますと、大体新東京国際空港と同じ広さでございますので、四千メートルの滑走路が一本、それに交わります横風用の滑走路——横風用の滑走路は横風が吹いたときだけ使おうということでありますから、これは三千五百程度あれば十分ではないかと思います。その二本ぐらいを一番最初考えておいたほうがいいのではないかというふうに考えております。
  33. 近江巳記夫

    近江委員 そうすると最終の二千ヘクタール、それは事務当局でお考えになっていることですが、二千ヘクタールぐらいあったら、滑走路はどのくらいの規模になって何本ぐらいになりますか。
  34. 丸居幹一

    丸居説明員 二千ヘクタールになりますと、これがさしあたって倍になるわけでありますが、それ以上に——ただいま申し上げました千ヘクタールができたころには、一本の主滑走路をつくりまして、それから、それに対して横風のときの滑走路をどこかにつけるということになるわけでございます。もしこれを二千ヘクタールに拡張した場合のことを考えますと、この主滑走路に平行いたしまして、間隔二千メートルぐらいをあけまして四千メートルの滑走路をもう一本つくることができます。それで、混雑してまいりますと、主滑走路の横のほうに三百メートル程度離して、もう一本主滑走路と平行な平行滑走路をつくることができます。これは二千メートル離してもう一本平行滑走路をつくったときほどは、発着回数の上から見て能力の増にはなりませんけれども、しかし、やはり平行滑走路というのはかなり何割かの能力の増になりますので、したがって、主滑走路のそばに三百メートル程度離れたところの一本の滑走路。それからもう一つ二千メートル離したところに主滑走路と平行に一本の滑走路ができる。それにまた三百メートルぐらい離して、その三番目の滑走路に平行した第四番目の滑走路をつくるということはできるわけでございます。それと、横風用の滑走路をいま言いました三百メートルぐらい離して二本つけるといったようなことが、大体どんどんふやしていったときの、考えられる一番最終の姿ではないかというふうに思います。
  35. 近江巳記夫

    近江委員 それで、特にこの新国際空港の建設については、公害、特に騒音問題を心配して新空港の設置を一部地元で反対している向きがあるわけですが、これに対してはどのように対処なさっていくおつもりでございますか。
  36. 丸居幹一

    丸居説明員 地元のほうで反対なさる一番大きな原因は、やはり伊丹の飛行場をごらんになりまして、非常に音がやかましいし、あんなものが近くに来てくれたらたいへんだというお気持ちが一番強いのではないかと思います。したがいまして、われわれがいまつくろうとしている飛行場は海上空港、淡路島も含めましての海上空港であるということをもう少し皆さんにわかっていただいて、認識していただくことが必要ではないかというふうに考えます。   〔石川委員長代理退席、委員長着席〕  それからもう一つは、そういうことも含めて地元の皆さん方と十分お話を申し上げて、そうしてそういうこともわかっていただく、あるいは飛行場の効果を十分地元でわかっていただくようにしなければならぬのじゃないか。  また、現在の大阪国際空港を拡張をいたします場合、三千メートル滑走路をつくりましたですが、その三千メートル滑走路をつくるべく拡張をいたします際に、大阪府、大阪市、大阪商工会議所、それから兵庫県、神戸市、神戸商工会議所の六つの公共団体の六団体が寄って、伊丹空港協会というものをおつくりになりまして、非常に御協力をいただいた次第であります。こういった団体等ができ上がりまして、地元もわれわれと一体になって新空港の建設をやっていただくことになれば、非常に趣旨その他も徹底し、地元にもそういう雰囲気ができていくのではないかというふうに考えまして、そういうものができるだろうか、そういうものをつくっていただけるだろうかというふうな気持ちでおりますとともに、地元に対しましてもそういう話をしている最中でございます。
  37. 近江巳記夫

    近江委員 そういう機関を今後つくっていかれるということについては、非常に今後話し合っていかなければならぬというお考えの一つの具体的なあらわれではないかと、私はこのように思うのですが、やはり住民がおそれるのは、この予定地の決定にあたって、十分に地元民と話し合いをせずに、政府の言うことなんだから、国のためだから黙っておれという行き方は、これは私は避けてもらわなければ困ると思うのです。その点、根本的に政府としてはどのように考えていただいておりますか。
  38. 丸居幹一

    丸居説明員 ただいまのところでは、さっきも申し上げましたように、ここなら十分いけるという自信がまだ持てておりませんので、そういう話を地元に向かってしている段階でございます。飛行場を設置します場合には、航空法でもって、地元関係者と対話といいますか、いろいろ御意見を聞く公聴会制度も設けられております。したがいまして、最終的にはその公聴会で御意見を聞くという形式を踏まなければならぬわけでありますが、これはどっちかといいますと形式法でありまして、先生御指摘のとおり、われわれも、この地点でなければ関西国際空港をつくることができない、ここが最良の地点なんだというふうなこと、また騒音対策については、こういうふうな航行の方法について配慮すれば、皆さんの頭の上は飛びませんといったようなことを、十分誠意をもって地元の方々とお話し合いをしていかなければならぬというふうに考えます。そういう場所がだんだんと固まるに従いまして、地元の皆さん方と十分その点についてのお話し合いを持っていきたいと思います。
  39. 近江巳記夫

    近江委員 その問題についてはこれ以上はなにかと思いますけれども、決定に際しては、地元民の意思を無視して強行決定をするということはございませんね。もう一度お聞きしておきたいと思います。
  40. 丸居幹一

    丸居説明員 もう十分に地元の方々と話し合いをして、決定をしていきたいというふうに考えております。
  41. 近江巳記夫

    近江委員 いま、五十二年ぐらいには完成しなければならぬということをおっしゃったわけですが、逆算していきましてわれわれしろうとなりにそれぞれ考えるのですが、やはり決定の時期というものが私はあると思うのですけれども、それはいつごろをお考えでございますか。
  42. 丸居幹一

    丸居説明員 先ほども申しましたように、五十二年を目標にしてやるということになりますと、非常に工期が苦しいのでございます。したがいまして、どうしても昭和四十七年度予算には組織も認めていただかなければならぬと思いますし、それから工事費自身もつけていただかなければならぬと思いますので、これらの査定を受けます段階までには閣議決定をお願いするというふうな段取りにしなければならぬというふうに考えております。したがいまして、十二月の初めごろには一応場所の決定を見るような段階に持っていかなければならぬというふうに思っております。
  43. 近江巳記夫

    近江委員 それで、これだけの大型の空港を建設するということになってきますと、運輸省が中心になってやられると思うのですが、羽田の場合なんかは羽田空港公団ですか、つくっておりますが、そういう分室とか、そういうような考え方なんですか。どういう組織でそれはやっていかれるわけですか。
  44. 丸居幹一

    丸居説明員 いろいろ意見がありましたが、新東京国際空港公団分室のようなものをつくったらどうだろうか、あるいは、たとえば神戸あたりですと——神戸の場合だけかもしれませんが、あそこに阪神阜頭公団というのがあります。これを拡充整備したらどうだろうかといったような意見もいろいろあるわけでございます。ただいま事務当局として考えておりますことは、やはり独立した新関西国際空港公団を設立して、公団組織でやるのが一番いいじゃないかというふうに考えております。それは、先ほど来申し上げましたように、土量にいたしましても非常に大きな土量を動かす難工事であります。金額にいたしましても数千億の金が必要じゃないかというふうに考えられますので、そういった大工事をやるにつきましては、やはり公団債等の発行のできるような制度、つまり自分である程度の金の調達をすることができるようなそういう制度が、役所自身でやるよりは大きく持てるのじゃないかというように考えますので、そういうふうにいたしたい。  また、新しい公団を設立する必要というのは、先ほど申し上げましたように、非常に難工事であります。大工事であります。そういうものをどこかの片手間にやるということではなかなか工事が十分進捗しない、したがって、これにかかり切る公団というものが必要じゃないだろうかというふうにただいまのところでは考えております。
  45. 近江巳記夫

    近江委員 それで、関西国際空港が竣工後、大阪空港をどうするかという問題なんです。その両空港の運用の問題なんですが、これについてはどういうお考えでいらっしゃいますか。
  46. 丸居幹一

    丸居説明員 新関西国際空港という銘を打ってつくるわけですから、もちろん国際線はすべてこちらのほうへ移したいと思います。そして、現在の大阪国際空港は国内専用の飛行場にかえたいと思っております。  なお、国内線につきましては、ただいままだ結論を得てはおりませんけれども、西へ行くものを全部ここに移すとか、あるいは遠くへ行くものをここに移すとかいうふうな移し方になるのではないか。少なくとも国際線と、約半数くらいの国内線をここに移すべきではないだろうかというふうに考えております。
  47. 近江巳記夫

    近江委員 そうしますと、大阪空港のそういう騒音という点については、いまよりもはるかに軽減できるということはこれは言えるわけですね。
  48. 丸居幹一

    丸居説明員 冒頭申し上げましたように、非常に音の高い飛行機というのは国際線が大部分であります。それからなお国内線にしましても、遠距離を飛ぶのがやはり音が高うございます。そういったものをここに移すわけであります。残った大阪空港につきましては、音は相当いままでよりは減るものというふうに思います。
  49. 近江巳記夫

    近江委員 それで、空港ができるまで、特に密集地帯の豊中なり川西なり伊丹なり池田なり、そういう密集地域は常に航空機の事故等の危険を感じておりますし、あるいは騒音の問題があるし、あるいはテレビ等の電波関係の障害がありますし、電話等が騒音で聞けないとか、あるいは神経衰弱になる人が出ておるとか、いろいろな問題がありますし、その辺の対策についてはこれから格段の配慮をもってやっていかなければ困ると思うのです。その点、航空機全体の騒音の問題を考えても、ICAOにしても、結局世界各国で見ましても、航空機を買う最大のところは日本と西ドイツではないかと思うのです。私しろうとですからポイントが違うかもわかりませんが、アメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ、イタリアあるいは日本、その中で最大のお客さんは日本ではないかと思う。したがって、そういう騒音等の問題についても、メーカーであるアメリカなりイギリスなりに強力に言える問題ではないかと思うのです。その点、特に科学技術庁などは研究所を持ってやっておるんですし、一体となってそういうことは強力にやってもらわなければ困ると思うのです。いかに新国際空港ができようとも、そういう航空機全体が出す騒音問題等については、使用者の立場としても強力にわが国は発言できるのではないか、このように思うのです。その点、大臣と運輸省部長さんと——初めに部長さんに答えていただいて、次に大臣に、今後どうして航空機全体の騒音の問題に取っ組んでいくか、この点についてひとつお聞きしたいと思います。
  50. 丸居幹一

    丸居説明員 確かに先生のおっしゃっておりますように、わが国は非常にたくさんの飛行機を外国から買っております。自分のところでつくる飛行機と違いまして、外国から買ってくる飛行機でございますので、われわれは静かな飛行機をよって買えばいいわけであります。したがって、航空局といたしましては、航空会社に、できるだけ多くの静かな飛行機を買うようにという行政指導を非常に強力に行なっております。  それからなお大阪飛行場周辺の騒音対策でありますが、これは新しく第二次空港整備五カ年計画を先日閣議了解をいただきまして、総額五千六百億円の閣議了解をちょうだいしたわけでございますが、そのうち二百億を騒音対策に充てたいというふうに考えております。四十六年度予算といたしましては、三十億の予算を計上していただきまして、これは三十億といいますと、そう大きな金ではないかもしれませんが、しかし騒音対策の、私なりの試算におきましても、三億から五億、五億から十億、十八億、それから二十数億、三十億というふうに大幅に騒音対策費の増加をさせていただきまして、さっき申し上げましたような立ちのき補償とか、あるいは防音装置をいたしました学校については、冷房装置もやるというふうに積極的な姿勢で臨んでおりますが、来年度以降につきましても、もう少し予算額もふやして、これらの活用の促進であるとか、防音工事の促進であるとかいったようなことをはかっていくように努力をいたしていきたいと考えております。
  51. 西田信一

    ○西田国務大臣 今後航空機需要がますます増大をしてまいることは、これは御質問にもございましたとおりでありますが、私どももそういうふうに思っております。したがいまして、この対策は消極的な対策だけではなく、もっと積極的な対策科学技術を大いに活用いたしまして、科学技術政策の面から騒音対策等に取り組むことが肝心だと思います。そういう心がまえで、これから対処してまいりたいと思います。
  52. 近江巳記夫

    近江委員 もう時間がありませんから、あと一問だけで終わります。  それで、この四千メートルの滑走路ということになってきますと、機種のことをお聞きしたいのですが、どういう機種が出入りをするのですか。
  53. 丸居幹一

    丸居説明員 ただいま飛んでおります機種は、特に大きな機種はこの間まではDC8あるいはボーイング707というのが一番大きな機種でございましたが、最近になってジャンボと呼ばれておりますボーイング747というような機種が入ってまいります。これらはすべて三千メートルの滑走路で飛べるわけでございます。しかし三千メートルの滑走路で飛べるわけでございますけれども、ジャンボあたりは、いまからもう少し大型になるという予想もされておりますので、三千メートルの滑走路では、あるいは少し足らぬのではないかというふうな事態がくるのではないかと思います。  それから四千メートルの滑走路を新東京国際空港あたりも計画いたしておりますけれども、これはSSTが入るというふうに考えられた時点において計画されたものでございます。そこでSSTは先生方御存じのとおり、ただいまアメリカでは一時開発をおくらす、あるいは見合わすというふうな状況になりましたので、あまり急いでやる必要もないということになってきておるのかもしれませんが、しかし、かりに海へつくるにしましても、山の上へつくるにしましても、あとで追加してそこをつくりますと、非常に大きな手戻り工事になります。簡単に御説明いたしますと、一番高くつくのは護岸でございます。この護岸を水深二十メートル、ヘドロ五十メートルというようなところへつくりますと、これを一キロつくる金があれば、六甲山が十キロ抜けるというくらい高い金が護岸についても要るわけでございます。したがいまして、同じやるなら最初に四千メートルなら四千メートルの護岸をしてしまったほうが、あとでそれをわずかでも追加するということになりますと、むだになります。そこで一応、将来いずれ出てくるのではないかと思われますSSTを想定いたしまして、四千メートルの滑走路をつくっておこう、こういう考えでございます。四千メートルの滑走路でございましたら、さっき言いましたジャンボが少々大きくなりましても、これで足りますので、四千メートルの滑走路をつくっておけばだいじょうぶじゃないかというふうに考えておる次第でございます。
  54. 近江巳記夫

    近江委員 もう時間がありませんから終わりますが、最後に申し上げておきたいのは、SSTなどになってきますと、音速を突破したときに非常に大きな音が出るというようなことで、特に公害の心配等はないわけですか。ちょっと念を押しておきます。
  55. 丸居幹一

    丸居説明員 SSTというのは先生のおっしゃるとおりに、確かに音速を突破して、音速の二倍とか二倍半とかいうスピードで飛ぶわけでございますから、当然衝撃波の問題は起こるわけでございます。しかし飛行場周辺に参りましたときには——飛行機は地上におるときにはとまっておるわけであります。それから徐々にスピードを増してきまして、最終の時点において音速の二倍とか二倍半で飛ぶわけです。また着陸いたします場合も、音速のまま着陸することはできません。空港周辺に来ましたら、現在のジャンボと同じように亜音速になりまして、それからまたもっとスピードを落として最後とまってしまう。空港周辺において音速を突破するというふうなことは、一応考えられぬことでございます。ただ音速を突破するのだから非常に音が高いのではないかという質問をあちこちで受けるのでございますが、これはわが国は買うほうでございますので、十分そういう点等をも勘案いたしまして、何も日本が一番最初に使うというわけではございませんので、外国で製造され、それが試験飛行をし、そして外国で飛んで、これは商業機として十分使えるというところを見たときに、これを購入いたしましたら、そういう問題は防げるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  56. 近江巳記夫

    近江委員 終わります。
  57. 渡部一郎

    渡部委員長 石川次夫君。
  58. 石川次夫

    石川委員 私は、きょうは科学技術会議の「『一九七〇年代における総合的科学技術政策の基本について』に対する答申」、この問題について質問をするわけなんでありますけれども、その前に、原子力関係の設備について障害になる点が二点ほどありますので、その点について若干の時間をさかしてもらいたいと思うのであります。  それは実は私、商工委員会で通産大臣にも迫ったのでありますけれども、浜岡の発電所をつくるに際しまして地元との協定をつくりましたところが、通産省のほうから非常にきびしい制約といいますか、注文がついたわけであります。地元の三町村を入れるとはけしからぬではないかとかいうようなこと、あるいはまた電気事業法というふうな関係において、事故が起こった場合に無断で立ち入るというふうなことはけしからぬというようなことだけが朝日新聞に大きく報道されたのでありますけれども、さらに地元の名古屋の新聞を見ますと、もっときびしいことを言っておるわけであります。それはこの交渉に当たったのが——社長がやるべきではないかとか、あるいは浜岡発電所だけ受ければ、それでほかのほうはどうなってもいいと思うのかとか、いろいろなことを言っておったようであります。私は、これは必ずしも新聞の誤報だとは言い切れない。委員会の席上では、大臣、局長は平身低頭そういう事実はございません。あの協定は非常によくできておりますので、これを順守いたします。ということで、当面答弁が済んだわけでありますけれども、実際問題として、通産省あたりの考え方は非常に権力的な形で、地元の了解を得なくてもいいんじゃないかと考えているのではないかと思われるほど認識が浅い。これでは、これから二十年後に四千万キロワットの原子力発電所をつくるというのが、最近になっていろいろな事情からして六千万キロワットにかさ上げをされたわけでありまして、そうなりますというと、ほとんど重油専焼の発電所と同じくらいの比重を持つということになってくる。どうしても原子力発電所というものは推進をしなければならぬということは事実でありますけれども、この程度の浅い認識でこれから原子力発電所あるいはその関連の設備をやろうということになりますと、にっちもさっちもいかぬのじゃないかという懸念がしてならないのであります。その点は昨日私は通産大臣にきびしく注文をつけておきました。しかしながら何といっても担当するのは科学技術庁でありますので、科学技術庁長官としても閣議その他におきまして、これからの原子力発電所を設置しなければならぬという場合においては、第三者といいますか住民の参加といいますか、そういうものを含めた監視機構というものを十分につくってその住民が十分に納得のできるという前提の上でなければ原子力発電所は一カ所といえどもつくることはできないんだという認識を政府自体が全体となってしてもらわなければならぬのじゃないか、私はこういう感じがしてならないわけなんであります。  そこで、いまのところ浜岡の発電所あるいは大熊あるいは福井県それぞれ各県と中央とにおいていろいろな協定を発電所関係については結んでおります。また東海の再処理工場の問題に関連していろいろ協定を結ばれようとしておる経過は私も一応聞いております。聞いておりますけれども、その中で二点だけどうしてもやってもらわなければならぬという点があるわけであります。もっと前にさかのぼって本質的な問題を言うならば、私は現在の原子力発電所と限らず電力事業全体についても言えることでありますけれども、自己資金というものの比率がどんどん減っております。財政投融資その他の比重というものが相当多くなってきている、これからますますその比重が薄れていく。おそらくこれは私企業だというふうなことは言い得ない。したがって、利潤追求の形ではなくて、これは一元化して国営にすべきであるという基本的な考え方を持っております。特に原子力発電所につきましては、どうしても電力料金の値上げというものを避けようとするというようなこと、あるいは利潤追求という原理というものにどうしてもかかずらってまいりますと、保安対策というものはどこかで手が抜けてくるんではなかろうか、そういうところから思わざる暴走というふうな事態が出てまいりまして、これはちょっとした計算でも中都市におきましては三兆円をこすというふうな損害が計算をされておるわけですね、試算ではありますけれども。これは非常に低目の試算だと思うのです。もちろんこんなことがあればそれから先の原子力発電所というものは全然できないでありましょうし、それだけじゃなくて内閣総辞職だと思うのですよ。そういうふうなことまでも予想されるわけなんです。そういうことのないようにするために私は基本原則に立ってこのエネルギー産業、特に原子力産業というものは国家が一元化してやるべきだ。格差をなくすためにもそれから原子力産業というものの安全対策ということを考える上でもそうすべきだという基本的な意見は持っておりますけれども、それをここで主張しても話は平行線になると思いますからあえてここでは申し上げません。ただ最低限の歯どめとして二点だけはひとつぜひやってもらいたい、これをお願いしたいと思います。  それは監視機構というのは、茨城県におきましては茨城県の衛生研究所でやっております。私もそこを見学をいたしておりますけれども、たいへん熱心にやっておりますが、これは日本では相当権威のある研究試験所だということになっております。ところがその中で、核の種類は二百種類もあって半減期が二百八十九年もにまたがるものがある。特に半減期は短くてもアルゴンのように比重が重くて逆転層があればすぐ下におりてくるという可能性があって、大熊発電所なんかはそれに相当該当するんではないだろうか、あるいはまたアメリカでは御承知のように、この前も申し上げましたから繰り返しませんけれども、ミネソタ州外十州はいまのICRPの五十分の一でなければ困る、こういう強い意見が出て、アメリカ自体が原子力発電所が設置できないというような状態に追い込まれているわけであります。日本は唯一の被爆国でありまして、当然原子力に関しましては鋭敏過ぎるぐらい関心が高いわけでありますから、アメリカであることは当然日本でも出てくることだと思わなければならない、ということを考えますと、このICRPの五十分の一という基準まで下げなければならぬというような事態になってくるのではないかという心配を私はしておるわけであります。大体二百種類もある核の種類の人体に対する影響及び遺伝に対する影響というふうなものはこれからの科学の分野であって未知の分野なんですから、こういうふうなおそれを抱くのも無理からぬことだと思うのです。  そういうことについて一々申し上げますと時間がかかりますから申し上げませんけれども、そこで、私は、この監視体制というものを各現地につくるけれども、それだけにまかせておいたのではきわめて不十分である、中央においてそれを全部統括をして、これからデータ通信の時代にもなるわけでありますから、データ通信でもって中央に送ってそれの適否の判断を即座に受けることができるような体制、こういうところまで徹底した監視体制というものができなければ、これから先二十年の間に六千万キロワット発電所をつくろうと思ってもつくり得ないのではなかろうかということを私は非常におそれるわけなんです。  きょうは原子力委員会のほうからも来ていただいたわけなんでありますけれども、中央の評価委員会といいますか学者も入れる、これは官側が入るんじゃありませんよ、学者とか第三者とかそういったほんとうに権威のある学者たちが集まって、そしてそのデータに基づいてこれはいいとか悪いとかという判断ができる権威のあるものがあって、それにいつでもつないでいくことができるという体制、地方は地方でもってもちろん監視機構というものはつくらなければいかぬと思いますが、その監視機構は、一つのモデルというものをやはり原子力局でもってはつくるというような、こういう万全の対策を整えない限り原子力発電所の設置はにっちもさっちもいかぬのではなかろうか。私はそれだけできればあとは十分だというのではないのです。まだまだ言いたいことはそれ以上たくさんあるわけでありますけれども、最低限それだけはやらなければいかぬ、こう思うわけです。監視機構というものを現地と中央と結んでいく、中央には相当権威のあるものをそれに設置をするということがなければいかぬのではなかろうか、こう思うのでありますけれども、局長と山田原子力委員の御意見を伺いたいと思うのです。
  59. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 ただいま先生御質問の監視機構でございますが、これにつきましては原子力委員会におきましても、昭和四十五年の一月十二日でございます、そのときに監視機構をつくる場合の内容その他について十分検討しようということで、目下検討中でございます。ただ検討が延びておりますのは、前々申し上げましたが第三者監視機構、これは福井県等にございますが、まずそっちのほうの確立した、いわばりっぱなものといいますか、われわれの考えがまだまとまりません。今度間もなく東海のやつも確立したものが出てまいります。したがいましてそれとのかね合い、それから評価する場合にどういう内容のものをどう評価していくかというような体制から、どういう組織にしておくべきか、そういうものを総合的に判断しなければなりませんので、その判断を原子力委員会でいましているところでございまして、これは当然今後置かなければならないものとして考えております。
  60. 山田太三郎

    ○山田説明員 ただいま石川先生御指摘のとおり、中央評価機構というのは非常に大事であるということにつきましては、いま局長から申し上げたとおりでございます。しかしこれがどういうふうに機能すべきであるかということにつきましてはまだ審議の過程でございまして、たとえばいま石川先生御指摘のように地方機構と常時連絡をつけるほうがいいのか、それとも地方機構が相当な権威を持っておるといたしますと、そこにおいて非常にむずかしい問題が起こったときだけのコンサルタントをするのだろうか、そこら辺につきましてはよく検討が済んでおりませんですが、いずれにいたしましても、放射線審議会の例の答申も公正に評価する機構ということをいっておられますので、そういう意味で国民の信頼を得られるような機構をつくり上げなければならぬというふうに考えております。  それから先生お話にございましたアメリカの問題でございますが、これにつきましてはわれわれもすぐ何とも申し上げることができませんですけれども、いわゆる低レベルの放射線の問題につきましてはまだ非常にわからないことが多い。しかもこれは確率の問題で百万ないし二百万といったような資料の中からやっと答えが出るか出ないかというような問題でございますので、非常に時間がかかると思います。しかしこれは非常に重大であるということにかんがみまして原子力委員会ではこれから放医研等におきましてそういう研究を大いにやっていきたいというふうに考えております。
  61. 石川次夫

    石川委員 これから監視機構をやはりどことでも協定をしなければならぬと思うので、その場合に中央との関係をどうするかという点は問題としては残ると思います。相当しっかりした監視機構が地方でできるという場合にはある程度のことは地方でやってしまう、非常の場合だけ中央のほうに伺いを立てるという場合もあるでしょうし、それから地方にそういうしっかりしたものがなかなかできそうにないというようなところでは中央自体が乗り出さなければならぬという場合も出てくるでしょうし、これは千差万別になってくるんじゃなかろうかという感じがいたしますけれども、いずれにいたしましてもこれは非常に未知の分野があって、中央にそういう評価委員会があったって適否の判断を的確に行なうことができるかどうかという問題点はたくさん残る。しかしながらこれはやらなければならない。そういう権威のあるものがあって、地方との協定を結んだ監視機構との間にそういう関連性があって、そこでいつでも正確なデータというものがつかみ得るんだ、そして住民が納得するような材料を与えることができるんだということを確約をすることが前提でないと、原子力発電所の設置はこれから不可能になってくる。原子力発電所だけではなくて、これに関連するいろいろな施設というものが出てくるわけでございますから。そういう点で、いま山田さんのほうからそれをつくるんだという方針だけは明確にされたようでありますから私はそれを信頼いたします。どういう形でつくるかということは別として、これは早くつくるということにしていただきたい。これは西田大臣にも強く要望いたしておきます。そういうことがなければ、現在もう石油にも限界があるでしょうし、何としても原子力発電所にたよらなければならぬということは必然の趨勢なんですから、私はそれができるための最低の条件を申し上げているわけですから、ひとつ御認識を願いたい。  それからあと一つ、これはちょっと次元が低いので恐縮なんでありますけれども、現実の問題として申し上げますと、私のところの東海村というのは勝田という工場地帯と日立という工場地帯の間にはさまれております。ところが日立から工場が移転する場合には、あるいは東京から工場が進出をしてくるという場合には東海村は素通りなんですね。全部勝田か日立のほうに集中をしてしまう。不動産業者は団地をやろうと思っても東海村という名前を聞いただけですぐ手を引いてしまう。したがって、原子力施設を集中させて持ってきたということが非常なマイナスであったという印象を現在持っているわけです。そこへかてて加えて道路をたくさんつくらなければならぬ、あるいは緑地帯を整備をしなければならぬということになって、街路については地元負担金が三〇%、緑地帯については二〇%でしたか、そういった負担をしなければならぬわけです。そうすると、われわれのところはこういう原子力の設備がなければ住宅もどんどんできたし工場もどんどんできたはずなんだ、にもかかわらず、原子力施設があるばかりに地元の負担金というよけいなものを持たなければならぬのだ。こういうことになりますと、これまた地方でこれが前例になって、それがわかってまいりますと、原子力設備をつくるということに対して相当ちゅうちょをする面が出てくるのではないかという懸念を私は持っておるわけなんです。  それで、これは法律問題にもなってくるのでございましょうし、簡単にいまここでもってはっきりした答弁ができる性質のものではないと思うのでありますけれども、地元負担金はよほど軽減をするということがなければ原子力設備をつくるということはなかなかむずかしくなるんではないかという現実の問題であります。次元はちょっと低い問題のようでありますけれども、現実の問題としてはかなり深刻な影響を与えると思うので、この点どういうふうな経過をたどっておるか、今後どうしようとされるおつもりなのか。これはほんとうは議員立法でやろうという意向もあったのでありますけれども、われわれの怠慢ということもありますがなかなかそこまで手が届きませんで、しかし何とか官庁関係の間の折衝でひとつこの点の打開をはかってもらいたい、こうお願いしたいと思うのですが、原子力局長なりあるいは大臣でもけっこうでございますからひとつ御答弁を願いたいと思います。
  62. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 ただいまの先生からの問題でございますが、私たちもこれは非常に気にして目下考えているところでございます。実際的にはいままで、東海地区等につきましては地元の負担を軽減するために起債を利用するとかそういう措置でなるべくやっておりました。しかし原子力そのものばかりでなくて、火力の発電所等の場合も非常に同じような立場をとられております。そういう関係から、関係各省とも相談して補助率の軽減とかそういうことはできるだけやっていきたいと思っております。しかし先生おっしゃいましたように、これは僻地対策等いろいろなかね合いもございましてなかなかこれだけが簡単にいくということではございませんが、今後ともできるだけそういう観点で進めさせていただきたいと思っております。
  63. 石川次夫

    石川委員 これは何とかしないと、これから原子力設備をつくるのに障害になると思うので、これはぜひお願いをしたいと思うのです。具体的にどうこうということは申し上げませんけれども、ひとつ大臣もこれに関心を持っていただきたいということをお願いしておきます。  では次に本論に入るわけでありますけれども、篠原先生お見えになっておりますが、たいへん苦心の作で、いままでとはたいへん歩調が変わってまいりまして、まあ一口に人間尊重の科学といいますか、そういうことで、とれも私は一から十まで目を通したわけでもないわけなんでございますが、これを一つ一つ究明をしていきますと何時間あっても時間が足りないようなことになりかねないのです。  それで私はきょうは、ほんとに大ざっぱな点についてだけ御質問をしたいと思っておりますが、総理大臣が主宰をしている非常に権威のある会議というのが日本には二つあるわけです。それは一つは国防会議であります。一つ科学技術会議というので、私は科学技術会議というものに対して相当の期待をしておるわけでございます。ところが一方の国防会議のほうは、御承知のように第一次防、第二次防、第三次防、第四次防とこう見てまいりますと、五年ごとに確実に倍になっていくわけですね。ここは国防会議の問題について申し上げる場ではございませんから申し上げたくないのでありますけれども、一言触れますと、私、東南アジアへ行きましたときに、日本の軍国主義ということをだいぶ言われました。こういうふうに日本の軍備がどんどん拡大をしていくということに対するおそれでありますが、そのときの私の認識としては、GNPの中で占める国防費の比率というものは日本はきわめて低いのだ。アメリカやヨーロッパとは比較にならぬのだ。そんなことを問題にするのはおかしいではないかというふうに感じたのでありますけれども、またあらためて考え直してみますと、インドネシアなんかは日本と同じぐらいの人口で、国家の総予算が五千億円ぐらいなんです。そうしますとことしの六千七百九億円という国防予算、軍事予算というのはやはりたいへんな脅威になるのだということは、これは現実的に認めなければならぬという感じがしてまいりました。これはインドネシアにしてもそうでありますから、マレーシアとかシンガポールとかその他についてはなおさらのことであります。あの中共にいたしましても全体の国民総生産が千二百億ドルぐらいでありますから、これまた国防に相当力をさいたといっても、額自体についていうと、やはり日本は相当の脅威になってきているという感じがしてならない。  一方、私は資源の問題について非常に関心を持っているのでありますけれども、二十年たてば食糧なんかも含めて九〇%は海外依存ですよ。ほとんど全面的に海外に依存をしなければならぬ。現在は石油が九九%依存になっておりますが、亜鉛だろうがニッケルだろうが、銅、鉛、すず、そういったもの全部を含めても九〇%海外依存です。そのときに日本が軍国主義だなんていう印象を与えるようなやり方でいくということになると、この資源は一体どうして確保できるだろうかという懸念を私は持っておる。私は国防会議それ自体が存在することをあえて否定するわけじゃないけれども、こういうふうに国防費だけが答申の線に沿ってどんどん実現をしていくというのは時代逆行であって、軍備でもって資源の確保を守り得るなんというのはこれは夢物語です。  ですから、国防会議科学技術会議の比重を考えれば、私は日本の繁栄と人間の幸福というものを考える場合には、国防会議よりは科学技術会議の決定のほうがさらに高く評価をされ、尊重をされなければいかぬ、こういう感じがしてならないわけなんです。  ところが、科学技術会議のほうではいろいろと答申をされておりますが、これは単なる目標だということに終わってしまって今日に至っておるという点は、私はたいへん残念でならないのです。  一つ例をあげますと、三十五年の十月に答申が出て、そこではGNPに対して二%という目標を立てました。それから六年たって、四十一年の八月だったと思いますけれども、GNPに対して二・五%という目標を立てました。ところが現在まだ一・九%足らずというような状態で、今度の答申はというと、今度は三%という目標を高らかに掲げておるわけです。たいへん私はけっこうだと思うのです。けっこうではありますけれども、一体この科学技術会議というのはこういうふうな目標をきめ、方向づけをするということだけで実現の方途を何にも持たないのかどうか、何とかしてこういう権威のある会議できめたものであれば、これを絶対に実現させるのだ、私は国防会議なんかよりは、このほうを重視をして実現をさせるという力を持たせたいと思っているわけです。これについて篠原さん一人を責めるつもりは毛頭ないのでありますけれども、何か所信があれば、ひとつ伺いたいと思うのです。
  64. 篠原登

    ○篠原説明員 ただいま御指摘のように、科学技術会議が設立されましたのが昭和三十四年であります。さっそく第一号諮問をちょうだいいたしましたのは、それは「十年後を目標とする科学技術振興の総合的基本方策について」でありまして、約一年あまりの時間をかけまして各方面の権威を集めて、初めて答申が出たのであります。それが昭和三十五年十月、それまでは科学技術庁が各省各庁の科学技術の調整をやっていると申しましても、なかなか徹底的にいかない。なお大学の関係におきましても不十分な点があるというので、その点を中心としてこの科学技術会議が答申を出したのであります。当時は、私もよく覚えておりますけれども、誇張かもしれませんが、科学技術のバイブルといわれて、たいへんその時としては画期的なものであったわけであります。その後、この答申の中身につきまして、もちろん各省各庁におきましても、また大蔵省におきましても相当の努力をされてきたことは、私よく存じておりますけれども、先生のおっしゃるとおりまだまだ不十分であるということは、私これは存じております。  それで、六年たちまして、それではいけないという意味で、もう一ぺん締め直しをやろうじゃないかというのが、「科学技術振興の総合的基本方策に関する意見」で、これは諮問をいただかずに意見としてさらに補強する意味において内閣総理大臣提出をしたのであります。だいぶ分厚なものでありまして、内容につきまして詳細に申し上げることは避けますけれども、要するにやはりおっしゃるとおり予算の確保も必要でございますし、人材の養成も必要であります。また研究活動の整備拡充あるいは情報の流通の円滑化、さらに国際交流の促進など、多面にわたりましてるるその意見書に載っておるのであります。たまたま最近におきまして、先生のおっしゃるとおり、いままではどちらかというと産業経済を中心にこの科学技術振興の実をあげるということを重点としてまいりましたが、あれから十年たった現在におきまして、科学技術を取り巻くいろいろな状況が変わってきた。社会的、経済的条件も変わりましたし、自然環境と人間の活動の調和というような問題もあります。また情報化社会への移行という問題もあります。その他、日本の国際的地位の向上に伴ってなさなければならない幾多の問題もあるわけでありまして、ここでまた思い切って、これらの変化をした状態に対しまして、科学技術が当然ながらその責務を果たさなければならない、こういうことで、従来の第一号答申、あるいは意見書に新たにつけ加えまして、ここで最近、第五号答申として、「一九七〇年代における総合的科学技術政策の基本について」という答申が出たわけでございます。  新たな観点ということにつきまして、四点ございますが、第一点は先ほど石川先生もおっしゃったとおり、科学技術をほんとうに人間福祉のために役立てるということ、いわば人間尊重の科学技術振興ということであります。この考え方は答申全体を貫いておる精神でございます。  それから第二といたしましては、従来は基礎研究から応用研究それから開発というような一本筋を考えておりましたが、もちろんそういうような進め方も必要でありましょうけれども、これから先は何か経済社会に目的があるのじゃないか。その目的に向かって研究開発をやっていかなければならない。別のことばで申しますと、ニーズにこたえるという新しい機会が起こってきておるのではないか、このように考えるのであります。ただ科学技術があまり進歩しておらないときには、ニーズがわかってもそれに向かって進んでいく科学技術の実力がございませんから、ニーズが幾らわかってもその進め方がわからなかった。しかしいまや科学技術が進歩いたしましてそうしてそこにニーズというものがあらわれますと、それに向かって、それを満たすような方向に向かって進んでいくことが可能となったのでありまして、そういうような取り組み方をする必要があるということは今回の新しい問題であります。いろいろなニーズ、これは各方面産業的なニーズもありますし、また環境等に対するニーズもございますし、いろいろな面でございますけれども、やはり人間尊重の精神は決して失うべきではない、このように考えるのであります。  第三点は、非常に違った科学技術分野がふえてまいりまして、専門化、細分化していく、ところが一方ではそのような専門化、細分化ではとても取り組むことができないようないわゆる非常に複雑な多岐にわたる現象が起こってまいりましたので、こういうような問題につきましては当然総合的な観点からいわゆるシステムとして検討しなければならない時代になったのでありまして、その点これから十分に考えていかなければならない点であろうかと思います。  第四点は、いろいろニーズがございますけれども、そのニーズの中で特にわれわれが新しい分野として改革を迫られている点といたしまして、特に環境科学技術と、ソフトサイエンスとそれからライフサイエンスの三つを取り上げたのであります。もちろんこの三つも従来ともある程度手をつけておるわけでございますけれども、この際画期的にこの三つの問題について相当力を入れなければならない環境科学技術は当然でありまして、目下の急務でありまして、各方面の公害あるいはそれに伴っていろいろなマイナス面が起こっておりますし、その他広い意味の環境について科学技術がその責務を果たさなければならない立場に置かれておるわけであります。またソフトサイエンスにおきましても、これは従来は自然科学は自然科学だけやればいいのだというようなことでございましたが、これからは社会科学、人文科学等ともタイアップいたしまして、全体としての人間の幸福への道を発見していかなければならない。そういう意味で非常に大事な面でございます。それからライフサイエンスは、これも従来とも各方面検討されておるわけでございますけれども、ここで思い切って手を打たなければならない。いろいろな病気、たとえばガンとか脳卒中とかいろいろな病気がございますけれども、私は医学のほうではしろうとでございますけれども、そういうような生命現象を根本的に、基礎的に考えていく、これはお医者さんやそれから薬屋さんだけではだめでありまして、物理学者あるいは科学者、いろいろな分野の人が総力を発揮しまして、ソフトサイエンス、生命科学と申しますか、生物科学と申しますか、適当な訳はございませんけれども、こういう方面に向かって相当な努力をしていかなければ、将来の新しい分野に対する準備ができなくなるのじゃないか、こういうようなことを考えて答申をしたわけでございます。  お手元にございますと思いますけれども、答申の内容、たとえば第一章では、科学技術政策の重要性、それからどういう態度を持って取り組んだらいいか、第二章では何をなすべきかを示す科学技術政策の目標、第三章におきましては、目標の達成のための中心課題、目玉商品のようなものを第三章に掲げまして、そして第四章では、一号答申と同じような分類で、一号答申の見直しをしていく、そしてさらにこういう点を強調しなければならないというような立場におきまして、一般施策を第四章に述べておるわけでございます。  石川先生御指摘のとおり、最初の十年前は、正確に言いますと十二年前でございますけれども、科学技術会議では、国民所得の二%を科学技術振興のために使うべし、政府と民間とが総力をあげてやるべしという答申をいたしましたが、その後六年たちまして、それだけでは不十分だということで、二・五%という線を打ち出したのでございます。現在では残念ながら、二%でも二・五%でもございませんで、約一・九%ということは、科学技術会議の議員の一人として、はなはだ残念に思っております。  ただ、ここでちょっと申し上げたいのは、国民所得に対する計算のしかたが数年前に変わりまして、従来のやり方で計算いたしますと、たぶん一・九が二%をちょっとこえるくらいの計算になるかと思います。しかしいずれにしましても、目標の二・五%には達しておらない、こういう点につきましては、科学技術会議の議員たる私どもの努力も足りませんけれども、もっともっと私どもは大きな力を結集いたしまして、三%に持っていく。三%に持っていくということにつきましても、なかなかいろいろな意見がございまして、そう簡単に三%ということにならなかったのでありますけれども、とにかく三%という旗を掲げましたことは、まあまあこれでよかったというような気がいたします。しかしおっしゃるとおり、これは旗を掲げただけでございまして、これから先は大蔵省がどのようにこれを認識してくださるかあるいは各省各庁がいかにこの線に沿って具体化していくかというところに大きな問題があるわけでございまして、これは私ども科学技術会議の議員としましては、政府側のやり方につきまして、はたから見て、今後とも十分御要望なり御注意なりを政府側に申し上げまして、できるだけこの線に近いように、結果ができますように、私どもはそれを念願して今後も努力いたしたいと存じている次第でございます。
  65. 石川次夫

    石川委員 御説明よくわかるのです。いままでは技術万能、技術至上主義といっても過言ではないくらい、そういう旗じるしのもとに、そのおかげで日本のGNPが異常な成長を遂げたという功績を無視することはできないと思うので、その反動的な形でもって公害問題、物価問題あるいは人間疎外というような問題というものが出てきて、それに即応して今度の科学技術会議が日本の科学というもののあり方について、いま言った四カ条を中心として、こういう方向で転換をしていかなければならぬといったことは、きわめて適切だと思うのです。私はその点はその労を多とするというとたいへん尊大な言い方になって恐縮なんでありますけれども、非常に御苦労な労作であったろうと思うのでありますけれども、問題はこういうものができても出っぱなしで目標に終わってしまうということであったのでは何にもならないのではないかという点であります。  たとえば具体的に申し上げますと、今度は昭和四十六年で百九十六億円ばかり増額になっておりますけれども、ビッグサイエンスに百十三億とられているのですね。残りはわずかに八十二億円しか残らない。ところがビッグサイエンスというものに対する反省が生まれているということは、先ほど騒音問題で近江先生からだいぶお話があったわけでありますけれども、SSTの予算アメリカでもって否決されているという現実があるわけです。そういうことからビッグサイエンスというものに対しては事前に技術評価をしなければならない。いわゆるテクノロジーアセスメントをやらなければならないという反省が生まれてきているわけです。そのことは科学技術会議のほうの意見書にも出ているわけです。私もあしたは宇宙のほうのお話をすることになっておるのでございますけれども、どうもアセスメントなしに巨大科学というものがすべて技術の波及効果を生むのだというような非常な楽観的な見方というものは変えていかなければならぬのじゃないか。テクノロジーアセスメントというものをどうしてもやっていかなければならない。そうしてそれ以上に基礎研究というものに対して相当重視していかなければならぬのではないか。私、この間しばらく物価の問題に取り組んでおって、生産の合理性、合理化をやるために何が一番必要かということを考えたら、めぐりめぐっていくと、どう考えても、迂遠ではあるけれども基礎研究から出発する以外にはないのだという結論に私は到着をしたわけです。そういう問題も含めて、物価の問題なんかも含めて基礎研究というものをどうしたらもっと充実させることができるか。ということは、いまのは政府の金を相当出しておるように見えるけれども、二八%ですね。七二%は民間の研究費用なんです。民間の研究費用というのは、そういってはたいへん失礼かもしれぬけれども、生産に結びつき、利潤をあげるものに結びつくものでなければやらないのです。純粋の基礎研究というものに対しては民間は取り組む余裕はありません。それほど競争も激しい。そうするとこの基礎研究それ自体こそは、これこそが政府のやるべきことだと思うのです。ところがこの基礎研究についてもたいへん適切な助言が出ております。出ておりまけれども、これも単なる目標を示したということに終わってしまっておるという点が非常に私は残念なんです。  具体的に質問申し上げますけれども、テクノロジーアセスメントの必要性というのは十分お考えになっておられるでございましょうが、これは官庁自体がやったのではだめだと思うのです。やはり権威のある第三者のアセスメントという機構が必要である。その組織はどうするか、あるいはいろいるなやった仕事に関してチェック・アンド・レビューをやらなければいかぬ。これも官庁自体がやれば自己弁護になる。これ生体どういうふうに組織化されていくかあるいは基礎研究というものを重視しなければならぬということでありますけれども、現在基礎研究というのは政府の手でもって行なわれておるのは三つの項目があるのですよ。この資料をちょっと私忘れてきてしまったのでありますが、一つは科研費というもの、一つは鳥類やそれから獣類、けものなんかを研究する費用が、ごくわずかですけれども一つある。それから大学の基礎研究というようなものは、何か基礎研究それ自体の純粋なものは非常に少ないのです。こんなことでは波及効果がどこまで出るかわからぬというような、巨大科学にばかり取り組む、あるいは応用開発にばかり取り組んでおるという状態では、しかも技術導入はクロスライセンスというふうな条件がつき、あるいは四分の三までは市場で販売する制約がついているのですね、技術導入したって、そのうちの四分の三はこれ以外の土地に売ってはいかぬですよという条件までついているということになれば、どうしても自分で技術開発しなければならない。それには、技術導入というものには限界もあるし、やはり基礎研究から出直していかなければならぬということになるとまことに貧相な基礎研究の費用は日本の場合は研究投資全体のわずか九%です。こんなものでほんとうにすそ野を引き上げて日本の技術を上げることが可能かというと不可能ですよ。だから、基礎研究というもののすそ野を引き上げるための具体的方策いかん。あるいはテクノロジーアセスメントあるいはチェック・アンド・レビューの組織、これをどうしたらいいか、そういうものが必要でございますという目標だけは適切に指摘をされておりますけれども、この具体的な方策というものについては何ら示されておらないというので、これはたいへん要求するほうが無理ではないかとは思うのですけれども、篠原さんのほうでお考えになることがあれば、ひとつぜひ教えてもらいたいと思うのです。
  66. 篠原登

    ○篠原説明員 御説まことにごもっともでございます。私ども大学の研究とか基礎研究に関しまして、それは非常に大事であるということはよく存じております。ただ、大学の研究や基礎研究に対しまして、一々政府なり科学技術会議なりがくちばしを入れるということは、はなはだそれはまずい、学問研究の自由をそこなうことになりますので、そういうような一々こまかいところをくちばしを入れることは絶対になすべきではないと思いますけれども、全体として基礎研究が非常に大事であるということは、これは申し上げるまでもない、先生のおっしゃるとおりであります。私はつくづく感じますけれども、日本には研究のポテンシャルがないというような気がいたします。いままでの産業界の経済の発展に尽くしました科学技術は、いわばお隣さんの欧米のポテンシャルタンクから水をこちらに持ってきて、そしてそれでもっていろいろ研究成果を発揮するということでございますが、それなら日本にはたしてそういうような水のタンクがあるかというと非常に小さい、ポテンシャルがない。そういう点でもっともっと基礎研究をやりまして、そして日本として独特の水のタンクをつくって、その水のタンクによって産業界が潤っていかなければならぬということだろうかと思います。  先ほど御指摘のテクノロジーアセスメントに関しましても、これはアメリカあたりで盛んにいま検討しておりますし、またOECDのその方面委員会でも検討しておるわけであります。ただ、このテクノロジーアセスメントに関しましては、思いつきを簡単にここで申し上げるということはかえって将来にまずい点がある。それはほんとうにじっくり取り組んで悔いを残さないようにしなければならぬ。目に見えた公害、環境問題についてはもちろんどしどし科学技術的な対策を打つべきでありますけれども、将来の評価という問題に関しまして、いわゆるマイナス面とプラス面とをどう調和していくかというような大問題に関しまして、にわかにここで私の個人的な思いつきを申し上げることは、かえってただそれだけにとどまることでございますので、これから府政側とも十分打ち合わせまして、早急にテクノロジーアセスメントの方策についても検討してみたいと思っております。アメリカでもいままさに検討中で、アメリカでもちゃんとした体系はまだできておらないようでございまして、まさにいまちょうど苦慮しておるところである。日本もそれと同じように、これから相当慎重に、しかも急いでテクノロジーアセスメントの体系をつくっていくことが私も必要であろうかと思います。これは一刻もゆるがせにできないことでありますので、これは単なるわれわれのような立場で申し上げるというよりも、政府側でも相当この問題を重視していただいてその方策を検討していただきたい、かように考えております。
  67. 石川次夫

    石川委員 そう簡単に思いつきでこの案を出すということは不可能だということはよくわかります。わかりますけれども、基礎研究があまりにも貧相である。何とか具体的に基礎研究というものを重視をし、この予算をふやしていくという方途は早急にひとつ考えてもらいたいと思うのです。これは財界にも私は呼びかけていいんじゃないかと思うのです。たとえばアメリカのNSFというのは財界の拠金でもってできておるわけですけれども、日本なんかと比較にならない。それで自由な研究というものをそこでさせておるわけです。日本の政府の補助金というものはすぐにうるさく干渉してくるというふうな弊害がある。そんなことであっては自由な研究はできない。したがって、わずか九%ばかりの基礎研究ということではなくて、ほんとうに基礎研究というものを重視させるための基金というものを、外国並みに五年なら五年というふうなころがし予算というかっこうにして、もっとこの幅をふやしていく。そして目的基礎研究だけではだめなんです。純粋基礎研究をやらなければだめなんです。こういうことをどうしたら実現するかということをぜひひとつ科学技術会議並びに科学技術庁長官のほうで真剣に連携をとって、早急に対策をとるということがなければ日本の繁栄は頭打ちになると私は思うのですよ。これはどう考えてもやってもらいたい。  それからテクノロジーアセスメントとそれからチェック・アンド・レビューの問題、これは官庁自体がやったのではだめだ。権威のある機関というものがあってそこでやる、これも具体的にどういう組織でもってやるかということをぜひ早急に具体策を考えてもらいたいと思うのです。  それから先ほど申された四つの中で、人間尊重を中心として方向を変えていくということでありまして、その一つのあらわれとしてソフトサイエンス、ライフサイエンスあるいは環境科学ですか、こういったものを重視したということはきわめて適切だと私は思うのです。だれも異論がないと思うのです。だれも異論がないと思うのですが、そのうち特に私がおそれておるのは、ライフサイエンスの中で、これが発展をしていきますと、いまちょっとその芽が出始めておるわけでありますけれども、体外受精というものもできるようになるのではないか、あるいは遺伝子の制御というものができると、遺伝工学によって思うような人間をつくることが可能になるのではないかという見通しもできてきておるわけです。それから生命の合成というものにちょっぴり成功しかけておるということになると、人間とは何ぞやということがあらためて問われるようなことになるわけなんで、そういうときに人間の位置づけというものをしっかりさせるという科学をいまのうちから立てておかないと、人間というものはまるきり物質と同じものとして扱われてしまうという懸念がきわめて強いのじゃないかという意味では、このライフサイエンスというものを大きくお取り上げになったということは非常な先見の明があった、私はこう思うので、この点はただそれが重要であるという指摘だけではなくて、どうすればいいのだ、ライフサイエンスの取り上げ方をこれからどうしたらいいのだということをひとつぜひ具体的に考えていただきたいということが一つ。  それからソフトサイエンスはいわゆるインターディシプリナーな方法で、いろいろな領界が全部重なり合って、シンクタンクのようなかっこうでもっていろいろソフトサイエンスを確立していかなければならぬという必要性もよくわかるわけですが、その中で現実的な問題として私は一番問題だと思うのは、やはり情報化問題だと思うのです。情報化問題で、去年あたりは大体六千七百台くらいしか日本に入ってないが、毎年三〇%くらいコンピューターがふえていくわけです。これがどんどん進んでいくと、いまの構想としては国民の統一個人カードを全部つくる、一億総背番号ということの芽が出てきておるわけです。そうすると、プライバシーは一体どうなるのだという問題が一つ大きな問題として出てくると思うのです。それから日常生活に対してどういう影響を与えてくるのか、テレビなんかの影響の比ではないと思うのです。各家庭の中に端末装置があって、そこでボタンを押せばいろいろなデータが全部入ってくる。工場なんかに通わなくても、うちでもって仕事ができるというようなことも決して夢物語ではない。それから無人工場も出てくるでありましょう。そういうふうなことになれば、ますますここで人間疎外という問題が、ライフサイエンスの場合ではなくてソフトサイエンスの場で出てくると思うのです。いわゆる管理社会、組織が統制をする社会、こういうのになるのは大体あと二十年だと私は思うのです、日本の情報化指数で見ると。二十年なんというものはそんな遠い将来ではないわけです。そうなったときに、一体その管理社会でもって管理をされる側——管理をする側はまだいいですが、される側の造反というものあるいは生きがいというものは一体どうなるんだという問題をいまからどう一体処理していくのだということを、ソフトサイエンスの面でよほどしっかり考えていってもらわなければいけないのではないか。これに対する具体策いかんといっても、これは問題提起の段階だろうと思います。いまのところは具体的にどうなるのだという想定がつかないのでありますから、そうだろうと思いますけれども、しかし、これはきわめて深刻な政治上の、私はいま公害と物価が日本の政治の最大の課題になっておりますけれども、大体長期展望の上に立って見た場合には、日本の資源をどうするかという問題と情報化対策をどうするかという問題、これが最大の課題だと思うのです。これについても、これは問題提起にとどまっておるわけですね。現在のところは具体的にどうするかということはまだ何も出ておらないわけです。これもひとつ科学技術会議としては非常に私は責任が重過ぎてなかなか処理するのは容易じゃないのじゃなかろうかという感じもしないではありませんけれども、しかしほかでやるところはないわけですね。これは科学技術庁と提携をして、こういう問題こそひとつあなた方の取り上げる最大の重要な課題であるということで、ひとつ問題提起をしておきたいと思います。  そのほかこまかいことを言いますと、この報告書には大学の研究については全然触れていないのですね。これをどうするかという問題にも触れておらない。それから産業と官庁とそれから大学との提携を一体どういうふうに具体的にやっていくかという問題も触れてもらいたかったと思うのでありますが、そういう問題にも触れていません。やっぱりころがし予算というふうなことで、五年間くらいの程度でこれをソフトサイエンスでもなんでもやっていくというような制度の確立ということもぜひここに触れてもらいたかったという、これは私の非常な蛇足かもしれませんが、私の希望がひとつここには出ておらなかったという感じがするわけです。そういう点で申し上げると、片っ端からいろんなことがたくさん出てくるのでありますけれども、私は科学技術会議の答申といたしましては非常に当を得たものであるというふうに評価はしますけれども、そういった点について単なる目標に終わってしまったのではたいへんもったいない。これを具体的なものにしなければならぬ。具体的にするには一体どうしたらいいのだという、ひとつ突っ込んだ考え方をぜひこれからやってもらわなければならぬということを強く要望いたしまして、あとこまかい点について申し上げることは、きょうは妥当ではないと思いますから、省略はしますけれども、その強い希望を申し上げて、人間尊重のための新しい科学の発展またその前提としての三つの、ソフトあるいはライフ、あるいは環境科学ということのほかに、基礎研究というものの重視というようなことの具体策、こういうことをぜひひとつ強く要望して、きょうはたいへんお忙しいところをありがとうございました。  質問を終わります。
  68. 篠原登

    ○篠原説明員 私は原案作成に当たりながら石川先生のお説ごもっともというのはちょっとおかしな話でございますけれども、われわれ自身がこれを具体化していくためにはどうしたらいいかということについてたいへんに苦慮いたしております。  先ほどの人間疎外の問題も、結局科学技術の進歩の罪ではございませんけれども、ただ人間が科学技術を使うのであって、決して科学技術に使われてはいけないということを私は身にしみて考えておるわけであります。いろいろなライフサイエンスに対しましても、へたをすると、人間尊重どころか、人間の尊厳を失うような事態にもなりかねないというような点もございますし、またいろいろ非常に科学技術が進歩して、それに伴って変革が激しくなりますと、そこに断絶の世界も出てまいりますし、またいろいろノイローゼぎみなことにもなりますし、ストレスを感ずるようなことにもなりますけれども、これはやはり科学技術を使う使い方を誤っているのじゃないか、こういうように私は解釈しております。  したがいまして、最後に私はほんとうにわれわれ反省すべきは人間の英知であるかと思います。人間の英知をもって科学技術を人間の幸福の用に、人間の尊重の用に、その方面にこれを導いていくということが一つの問題だと思いまして、石川先生の非常に私どもに対する適切な御激励、また将来に対するお見通しにつきまして敬意を払いまして、私のお答えといたします。
  69. 西田信一

    ○西田国務大臣 このたびの総合的な科学技術政策に対しまする答申に関しまして、きわめて具体的にかつ建設的な御質疑をちょうだいいたしまして、私も非常に感銘しながら傾聴いたしておった次第であります。  目標、七〇年代の科学技術政策の方向は今回の答申によってはっきりと示されたように私どもは受け取っておるわけでありますが、これをいかに実行していくかということが大きな課題であると存じます。その意味におきまして、ただいま篠原議員からお答えがございましたように、科学技術会議におかれましても、さらにこの実行の問題についていろいろ具体的な御検討をいただくことであると思いまするし、政府といたしましても十分これに対しまして掘り下げた検討を加えまして、十分実効があがるように努力をしてまいりたいと考えております。  ことに基礎研究あるいは社会科学との関連研究開発その他につきまして、たいへん示唆に富んだ御意見を伺ったわけでありますが、それとまた国全体の研究の充実をはかっていくということとあわせまして、わが国におきましては民間と政府投資の関係におきましても、諸外国と若干異なった実態にございますので、そういう面につきましても十分にさらにわれわれは掘り下げて検討をいたしたいと考えておりまするし、またその充実につとめてまいりたい、かように考えております。  したがいまして、私どもといたしましても、これが単なる目標に終わらないように実効あらしめるための真剣な努力を払いたい、かように考えておる次第でございまして、どうか今後におきましてもひとつ十分な御鞭撻をちょうだいしながら、全力をあげてまいりたいという心持ちをひとつ申し上げておきたいと思います。
  70. 石川次夫

    石川委員 いまお二人から御答弁をいただいたので意を強くするわけなんですが、ぜひひとつそのおつもりで具体化するという方向でお考えを願いたい。  それから、大蔵省から来ていただいて一回も質問しなかったかっこうでたいへん申しわけないので、話の経過でおわかりいただけると思うのでありますけれども、現在一・九%というGNPに対する比率しかない。ところが二・五%というのは、すでにもう数年前に目標が出ておって、それが実現しておらないところへもってきて、今度は三%という目標が出ておりますけれども、私個人の見解かもしれませんけれども、国防会議でどんどんどんどん国防の予算だけはスムーズにふえていくわけです。このことは、むしろ日本の将来にとって逆効果じゃないかという気持ちを私自身は持っている。この二つの国防会議科学技術会議というものを並べてみて、日本の真の平和と国民の幸福のために必要なのは科学技術会議の答申の尊重だと私は信ずるのですよ。そういう点がどうも内閣の姿勢として十分ではないので、私はほんとうはこの理事会なんかではかって、総理大臣、大蔵大臣に来てもらってこのことについてとことんまで実は話をする機会がほしいと思っているのですけれども、どうも会期が迫ったものですから、そういうわけにいかないようであります。  そういうことを含めてひとつ主計官のほうでは十分この科学技術向上、これはもうもろ刃の剣になっているのですから、まかり間違えば人間疎外であり、公害であり、また物価高でありということになってくる。こういうものを、そうじゃなくて、人間がしあわせになるための科学に切りかえるということのための方策はどうするのだということは、ほんとうに真剣に考えなければならぬ、こう思うのですが、どうも科学というと政治の片すみに置かれるような懸念なしとしないわけなんでありますけれども、これをぜひ科学というものを尊重するという、そのためにはまず何といっても予算の裏づけが必要なんで、基礎研究を含めて予算の裏づけというものがなければどうにもなりません。しかも、民間にほとんど依存しているような現在の体制でやったのではだめだと思うので、これを切りかえるための努力をひとつ大蔵省にもぜひ強く要望しておきたいと思います。
  71. 原徹

    ○原説明員 科学技術重要性等につきましての御意見につきましては全く同感でございます。私どもも鋭意努力はしておるのでございますけれども、ただいまの比率につきましても、たとえば三十五年に二%という数字がございまして、この間の答申のときに調べてみましたら、そのときには額が入っておった。その額は実はすぐに達成できてしまったわけでございます。ところが、率になってみますと、どうもGNPのテンポが非常に早いこともございまして、なかなか率として上がるということはおそくなっているというのが現状だろうと思います。ただいま防衛費のお話もございましたが、ちょっと調べてみますと、四十一年から四十六年の間で防衛費の伸びというのは一四・五%でございますが、科学技術振興費のほうは二〇・二、それはだいぶ上回っていることは上回っているわけでございます。私ども決して科学技術をすみっこにやるというようなつもりは全くございませんので、鋭意努力してまいるつもりでございます。今度の答申につきましても、もちろんそういう趣旨に沿って前向きに予算をつけるという努力もしてまいりたい、こう思っております。
  72. 渡部一郎

    渡部委員長 それでは、次に山原健二郎君。
  73. 山原健二郎

    ○山原委員 七〇年代の学術、科学技術振興にあたって、私は日本学術会議の果たす役割りというものはたいへん大きいと思っております。この日本学術会議の問題につきまして、一つは最近起こっておりますところの自由民主党の政調審議会における問題、それからもう一つは沖繩の学術会議に対する選挙権の問題、三番目は学術会議に対する予算の問題などについて質問をいたしたいと思います。  まず、あらためて申し上げる必要はないと思いますけれども、日本学術会議というのは一体何か。これは日本学術会議法によりまして、設立は第一条第三項に「日本学術会議に関する経費は、国庫の負担とする。」ということがはっきりいたしております。さらに目的は第二条に書かれておりまして、「日本学術会議は、わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的とする。」さらに職務といたしまして第三条に「日本学術会議は、独立して左の職務を行う。」として、「一 科学に関する重要事項審議し、その実現を図ること。二 科学に関する研究連絡を図り、その能率を向上させること。」その次に、勧告の条項でありますが、第五条に「日本学術会議は、左の事項について、政府に勧告することができる。」として、「一 科学の振興及び技術の発達に関する方策 二 科学に関する研究成果の活用に関する方策 三 科学研究者の養成に関する方策 四 科学を行政に反映させる方策 五 科学を産業及び国民生活に浸透させる方策 六 その他日本学術会議の目的の遂行に適当な事項」こうなっております。  ところが今回四月二十一日に、自由民主党の政調審議会内閣部会、会長は鯨岡兵輔氏でありますが、部会を開きまして、日本学術会議の実態調査の経過報告と今後の部会の態度を協議しております。これは新聞紙上にも出されておるわけでありますが、その内容が御承知のように「自由新報」という自由民主党の機関紙に出ておるわけでありまして、これは皆さん方もごらんになっておると思います。この中には「科学なき〃赤い巨塔〃学術会議」という見出しの下に「万事、反対に終始」さらには「〃学術会議〃とは名ばかりの政治集団」さらに「イデオロギー一辺倒」、「毎回〃学術会議屋〃が会員に」というふうなことが出ているわけですね。それでこれは一政党の機関紙でありますから、もちろん重要なものではありますけれども、私はこのことに関して政府機関に質問をいたしたいのです。  まず第一点は、三月二十六日の自民党の政調審議会におきまして鯨岡内閣部会長は、学術会議が政治的に偏向しておると発言をいたしております。さらにもう少し精密に申し上げますとこういうふうに述べているわけです。三年ごとに行なわれるこの学術会議の選挙も、左翼的学者の割合がふえているということをいっております。「この結果、学術会議の活動は、政府・自民党に批判的で、破防法、警職法、大学立法などに対する反対声明や原潜寄港についての対政府申し入れなど〃政治的偏向〃がいちじるしい」こういう発言でありますが、これは毎日新聞の四十六年三月二十六日の記事であります。さらに自民党内の批判といたしまして、これは毎日新聞の四十六年三月二十六日の記事でありますけれども、「設置の目的から本来中立であるべき同会議の会員の多くが共産党などのシンパで占められ、かつて大学立法反対の申入れをするなど政府・与党に批判的な政治行動をしているのは許せない」こういうふうに出ておるわけであります。そこで判断をしますに、こういうような見解が出てくる資料というものがどういう形で得られたのか。あるいは政府機関が自由民主党の当部会に対して資料を提供しておるのかどうか。提供しておるとするならば、どのような資料を提供しておるか。このことについて最初に伺っておきたいのであります。これは総理府の日本学術会議の高富事務局長がお見えになっておるそうですから、高富さんのほうから伺っておきたい。
  74. 高富味津雄

    ○高富政府委員 いまの御質問でございますが、学術会議のほうから資料を提供したというようなことは特にございませんが、何ぶん学術会議会議はすべてこれは公開でございますものですから、どなたが入ってもいい。どんな会議もすべて公開になっておりますから、学術会議でやっておりますことはすべてガラス張りの中でやっておるようなものでございますから、どなたにもわかるようになっております。
  75. 山原健二郎

    ○山原委員 学術会議が全く公然と公開で行なわれておるということは私も知っておるわけですが、その中でいま問題になっておりますのは、大学立法や原潜寄港に対する政府申し入れなどが政治的偏向が著しい内容となっておる、こういうふうに出ておるわけでありますが、この点につきましていままで学術会議が出しましたところの勧告、声明というようなものが著しい政治的偏向を持っておるというふうに判断をされておるのかどうか伺っておきたいのです。
  76. 高富味津雄

    ○高富政府委員 ただいまの御質問につきまして学術会議の基本的姿勢と申しますかそういうことに関係すると思いますが、この件に関しましては、ことしの四月に五十八回目の日本学術会議の春の総会をやったわけでございますが、その総会の席上で江上会長から学術会議の基本的態度というようなことにつきまして発言がありまして、それを総会でも了承いたしましたものですから、私その発言内容をお読みしておきます。  日本学術会議は創立以来二十二年、常にわが国の学術の健全な発達とその国民生活への浸透を求めてじみちな努力を重ねてきたのであって、いわゆる政治活動は行なっていない。各会員がそれぞれ政治的意見を持つことは、憲法の保障するとおりもとより自由であるが、本会議全体としては、科学者の代表機関として学問的立場から見解を述べたのであり、たとえ科学者の総意がたまたま時の政府の意見と一致しないことがあったとしても、それをもって政治活動を行なったとすることはできない。それは科学者の代表機関として当然のことを行なったのである。日本学術会議は各政党のみならず、国民のあらゆる本会に対する疑問に答え、誤解を解くことに努力を惜しまないものであるが、学問、思想の自由はあくまでこれを守るものである、というのが御発言の大体の内容でありました。
  77. 山原健二郎

    ○山原委員 ただいまの江上会長の出されております声明と、自由民主党が出されておりますところの著しい政治偏向であるという見解の間には非常に大きな食い違いがあるのです。私は、自由民主党の出身であり、しかも閣僚でありますところの西田国務大臣に対しましてお伺いをしたいのですが、いま高富事務局長が読み上げられましたところの江上会長の春の総会における発言に対しましてどういう判断をされますか。適切な声明だというふうにお考えになりますか。
  78. 西田信一

    ○西田国務大臣 日本学術会議に対しまして一部の批判があった、私はまたいろいろな評価もあると思うのです。あるいはまた要望というようなものもあるだろうと思います。それは別といたしまして、日本学術会議というものは、先ほど先生がお読み上げになりましたように、この日本学術会議法におきまして目的、使命がはっきりいたしておるわけでありますけれども、私といたしましては、この日本学術会議がこのような崇高な設置の趣旨に沿って運営されておるであろうと存じますし、またされることを期待をいたしておるということでございまして、私が批判的なことを申し上げることはいかがかと思いますので、私の期待を申し上げました。
  79. 山原健二郎

    ○山原委員 これは一つ一つ例をあげて申し上げてみる必要があると思うのですけれども、学問あるいは学術、科学というものに対して不当な政治的圧迫が加わる中では、学術、科学の発展は私はないと思うのです。これは戦時中に経験したところでありますし、そういう反省の上に立って日本学術会議というすばらしい日本の十六万科学者を網羅したところのまさに世界にも冠たる学術会議というものを構成しておるわけですね。それに対して不当な言いがりをつけるということは、これは許されませんし、その意味で学術会議の性格、目的、内容というものについてつぶさに検討していく必要が私はあると思いましていま発言をしておるのですが、たとえば自由民主党の先ほどの機関が、内閣部会ですか取り上げましたところの原潜寄港の問題にいたしましても、はたしてこれが政治的偏向といえるのかどうか。ちょっと私は読み上げてみたいと思うのです。原潜寄港が問題になりましたのは昭和三十八年の三月であります。このときに政府に対する日本学術会議の勧告がなされておりますが、それはこういう表題になっております。「原子力潜水艦の日本港湾寄港問題について」でありますけれども、その中身は、原潜寄港問題が国会で大きな問題になっていた時期でありますが、原子炉というのは安全性が重要な問題だから、設置する場合は事前審査をしなければならない、ということなんです。日本国民に対する安全保障の観点から政府は安全かどうか措置をとらなければならない、ということです。さらに、だから政府機関として責任ある原子力委員会がそういう危険がないかどうかを国内の原子炉に行なわれているのと同様によく検討し、確認をしなければならない。そしてその結果を国民に明らかにするという、そういう勧告なんですね。だから何一つこれは学術会議の範疇を離れたものでもありませんし、科学者としては当然の勧告を政府にいたしておるわけです。しかも政府に対する勧告権というのは、学術会議法によってきめられておるわけでありまして、これをさえ反政府声明だ、勧告だというふうに受け取ること自体に大きな問題があるわけです。しかもこの勧告がいかに正しかったかということは、その後におけるスレッシャーの沈没あるいは現在起こっておる原子力艦艇の問題等を考えましたときに、日本学術会議がこの勧告をしていなかったら、これは一体どうなるのですか。そういうことすら政治的偏向だという空気が今日日本の国内の政党の中に醸成されておるということは、私はきわめて重大な問題だと思うのです。しかもこの勧告に対してむしろ政府は十分な措置をとらなかったのです。つまり原子力委員会がよく調査をしまして安全かどうか、その条件が満たされたかどうかを十分な判定のないままに原子力潜水艦の寄港を認める、政府はそういうことをやってしまったわけです。こういうことから考えましても、学者の良心にかけて、しかも三度も原爆の被害を受けたところの日本国における日本学術会議が当然の意見としてこの勧告を出したのが政治的偏向だと言えるのかどうか、私はこの際長官の見解を伺っておきたいのです。
  80. 西田信一

    ○西田国務大臣 私はその自由民主党の部会ですか、どういうことをさしておられるのかということについて実はつまびらかでございません。したがって、その論評は差し控えたいと存じますが、おそらくは、先ほど私が学術会議に期待をすると申しましたように、学術会議には崇高な使命と目的がありますから、その使命に沿うように運営されることを希望する、そういう趣旨のものではないかと私は考えますが、実はそのことにつきましては詳細を承知いたしませんので、ここでその論評は差し控えさしていただきたいと思います。
  81. 山原健二郎

    ○山原委員 もう二、三の例をあげまして検討の資料にしていただきたいと思います。  もう一つ、政治的偏向の理由一つに、一九五二年の四月に日本学術会議第十二回総会で破防法の問題についての声明が行なわれております。これは内容はこうなっています。「われわれは現在国会に提案されている破壊活動防止法案が学問、思想の自由を圧迫するおそれがあると深く憂慮し、今後のなりゆきについて重大な関心を寄せるものである。」これです。この程度のことなのであります。  さらに警職法の問題が出されておりますけれども、これは一九五八年の十月の第二十七回総会で政府に申し入れが行なわれておりますが、これはわずかに五行くらいのきわめて穏当なものです。中身は、「最近暴力、不法行為の横行により公共の安全と秩序が乱されがちであることはまことに憂慮すべき世相であって、何らかの方策をとられることは官民のひとしく要望するところであるが、目下国会において審議中の警察官職務執行法の一部を改正する法律案中には、もしもそれが誤って適用される場合には、基本的人権を侵害し、ひいては学問、思想の自由を圧迫するものがある。よって政府はその法案の取り扱いについて慎重に考慮されたい。」というものでありました。これは警察官職務執行法に対する当時の新聞、世論あるいは各新聞社の社説よりもむしろこの声明というのは穏当なといいますか、もっとことばをきつくしていない、いわば政治姿勢の低いものになっているわけです。これも政治偏向の一環だと指摘をしておるということも私は重大な問題だと思います。  さらに大学問題が例にあげられておりますけれども、大学問題では臨時総会が開かれておりますが、この問題については次のような声明であります。「この法案内容は、大学の自治と、学問、思想の自由を破壊し、大学の存立を危くする重大な危険性を含むことを考えて、この種の立法については強く反対する。そしてすべての大学と科学者は問題の自主的解決に一そう努力されることを期待する。」というものであります。これは当時、学術会議が大学問題につきまして一貫して三つの原則を持っておりまして、その三つの原則というのは、第一は、大学問題は自主的に解決する、第二、第三は、全国の大学がお互いに手を取り合って、それと国民諸階層との交流をはかり、大学の独善性を排除しなければならない、こういう内容のものでありまして、いまあげられておりますいずれを見ましても、学術会議が政治的に偏向して声明を出しておるというふうには当然考えられないわけであります。こういうものをとらえて学術会議に対する不当な誹謗をしていくというその中から、せっかくつくりあげられましたところの日本学術会議に対する政府側のきわめて冷淡な態度が生まれてくるということを私は指摘しておきたいのです。さらにむしろ私たちから言うならば、学術会議の決定、諸決議というのはきわめて不十分だとさえ考えております。  さらに、学術会議で上程をされながら否決をされたものがあるのです。たとえば学術会議の学問思想の自由委員会の中での諸決議の否決された部分を見てみますと、こういうのがあるのです。破壊活動防止法により学問、思想の自由を守る声明というのが否決されております。憲法擁護の声明も否決されております。細菌兵器使用禁止について国会に対する申し入れも否決をされております。むしろ学者として当然行なわなければならない声明決議すら否決をされておる実例も出てきておるわけでありますが、そういうことを一切無視して学術会議に対する不当な批判をする。「赤い巨塔」などという——これは新聞ですから、党の機関紙でありますから、オーバーな言い方をするのかもしれませんけれども、こういう考え方がきわめて危険な方向を内蔵しておるということを私は指摘をしておきたいのでありますが、私がいまあげました幾つかの例を長官お聞きになりましてどういうふうにお考えになるか、見解を伺っておきたいのです。
  82. 西田信一

    ○西田国務大臣 いろいろお述べになりましたが、私は先ほど申し上げたとおりで御了承を得たいと思います。ただ先生の御意見を加えての御質問でございます。御意見として承っておきます。
  83. 山原健二郎

    ○山原委員 内閣法制局のほうにその点でちょっとお伺いしたいのですが、学術会議は学術会議法によりまして、私はこういう見解を持っておるのですが、この見解が正しいかどうかお答えいただきたいのです。  一つは、学術会議法で会員個人の言動については何ら制約を受けるものではないということです。そしてそれは憲法上全く自由であるということだと思いますが、その点は間違いないかどうか伺っておきたいと思います。  さらに第二点は、学術会議そのものは内閣総理大臣の所轄にはなっておりますけれども、指揮命令を受けるものではない。いわゆる独立してその職務を行なうものであるということ、これは間違いないか。  第三点は、学術会議の出した声明は時に政府の意見と異なるものがありましても、また多少の違いがあっても、また多少批判的なものがあっても、偏向云々ということはもし行政がそれを行なうならば、これは行政が科学の立場を否定する重大な問題であると思うのでありますが、この三つの点について法制上どういう見解を持っておるか伺っておきたいのです。
  84. 真田秀夫

    ○真田政府委員 お答え申し上げます。  まず第一点の御質問でございますが、学術会議の会員個人として持っているであろう基本的人権、学問の自由と思想の自由、良心の自由というような基本的人構は、学術会議法によって何ら制約を受けるものではないと思います。  ただ御注意をしておきたいのは、学術会議は立法政策の問題は別といたしまして、現行の法制の解釈といたしましてはやはり国家行政機関一つでございます。内閣総理大臣の所轄に属する行政組織法八条の機関でございまして、そういう観点から、学術会議としての御活動とそれから会員個人がお持ちの基本的人権とは一応別にお考えいただきたいと思う点でございます。  第二番目の指揮監督権の点でございますが、これは御指摘のとおり、学術会議がその学術会議法によって与えられている職務を行なうにつきましては、それは独立でございますので、内閣なり総理大臣なりあるいはほかの行政庁がとやかく容喙することができないことはおっしゃられるとおりであると思います。  それから第三番目の偏向云々の問題でございますが、これも御指摘のとおり、もともと学術会議政府の諮問に応じて答申をしたり、あるいは職権を持って活動をするということを権限としておりますので、その中身が当面の政府の政策と反するものがあっても、そういうことはむしろ当然予想されているところでございまして、政府の政策のとおりでなければ答申できないというようなことになったのでは、何のためにこういう機関を置いたのかわからないというようなことにも相なろうかと存じますので、そういう当面の個別的な政策に反する内容のものが盛られたからといって、それは法律の予想しないところだというふうに言うことはできないだろうと存じます。  以上でございます。
  85. 山原健二郎

    ○山原委員 私は当然のことをお聞きしておるので、また当然のお答えがあったと思いますので、そういう答弁で大体理解できるわけでございます。  そこで、実はこの偏向論などが出まして、また前々からそういう批判が一部政党筋から出ておる中で、学術会議そのものがアンケートをとっているわけです。それを見ますと、昨年の七月から八月にかけまして、日本学術会議のあり方検討特別委員会がアンケートを出しておりますが、これによりますと、大多数の人が、学術会議の基本的性格、目的、職務、権限に関しまして現行法の規定どおりでよいが、実施機関の強化が必要であるという、このアンケートに、八〇%の人がそのような支持をいたしております。アンケートの対象になっておりますのは、現会員、元会員、さらに会員外としまして大学、研究機関の長などを含めましたところの対象者でありますが、その結果は、現行どおりでよい、さらに強化するほうがよいという意見が、会員の場合が七四・九%、会員外の場合が八一・七%、合計しまして平均七八・九%という数字が出ておるのであります。したがって、学術会議はむしろ法律としては現行のままでよろしいということと同時に、さらにその職能を果たす意味において強化をしなければならないというのが、ほぼ日本の科学者の一致した見解であると私は考えておるわけです。したがって、このアンケートから見まして、学術会議というものをさらに強化をしていくということが必要だと思うのでありますが、その点について高富事務局長の見解を伺っておきたいのであります。
  86. 高富味津雄

    ○高富政府委員 実施面の強化というような御質問と思いますが、私たち事務局といたしましては、これはやはり事務局の人間を少しでもふやしたいとは思っておりますが、何ぶんにもただいま総定員法の時代でございまして、なるべく優秀な人間を適材適所に使って、事務局の行政的な能力をあげていきたいと思っております。
  87. 山原健二郎

    ○山原委員 いまアンケートを申し上げ、またあなたのほうからこれは人員も不足だというような意味の御発言があったわけですが、私は確かにそうだと思うのです。先ほどから言っておりますこのアンケートの結果、学術会議をさらに強化していくという考え方に対しまして、政府がいままでとってきたやり方というのは、学術会議をなるべく押えていこうとする、そういう動きがあるわけです。たとえば、学術会議に対する諮問件数をちょっと申し上げてみますと、毎年減っているわけですね。諮問の減少というのはひどいのです。昭和二十四年に十一件、昭和二十九年に六件、昭和三十四年に三件、そして最近では全く一年間に一件の諮問件数となっております。さらに各期別に調べてみますと、第一期が二十二件、第二期の学術会議に対しては十五件、第三期十三件、第四期九件、第五期七件、第六期四件、第七期三件、こういう形で諮問件数のずっと狭められていくという状態があらわれております。さらにこの前も指摘しましたが、科学技術会議の問題にしましても、八〇年代の総合的科学技術振興の諮問にしましても、会長が佐藤榮作氏である科学技術会議に、佐藤榮作氏みずからが諮問をするというふうなこがと出ておるわけですね。こういうふうにしまして学術会議というものを、日本学術の、科学の振興のほうからはずしていこうとする動きがあるのではないかと思うのでありますが、この諮問件数がこのように減ってきた原因はどこにあるか、そのことを伺っておきたい。どういうところからこんなに減っているのか。
  88. 高富味津雄

    ○高富政府委員 いま御質問にありましたように、諮問件数は毎年減って、ここ十年ぐらいは三件、二件、一件というふうになっておりますが、戦後学術会議ができた当座は、まだ非常に混乱の時代でございまして、何もかにもが学術会議のほうへ諮問されたわけでございますが、だんだん世の中が落ちついてきた。それと同時に、もう定型的に諮問というようなことさらだった形をとらなくても、依頼とか照会とかいうような形式のものが多くなりまして、戦後二十六、七年のころは諮問という形をとったのが、いまは照会というような形に変わっているのもありまして、実質的にはそれほど諮問件数が減っているとは思えないわけでございます。
  89. 山原健二郎

    ○山原委員 件数とあわせて、予算の面でもそうなんです。たとえば、先ほど申し上げました鯨岡さんの自由民主党の内閣部会での発言によりますと、こう言っております。左に偏している学術会議国民の血税を三億円余りもつぎ込んでいる、こう言っているわけですが、この三億円というのは一体どういう内容を持っているのか。これはきわめて不正確な発言であると私は思いますのでお聞きしておきたいのでありますが、実際に日本学術会議が日本の学術、科学を内外に代表するだけの待遇を受けておるかという問題と関連をしまして調べてみますと、会員の方たちは、委員会などがありましても、旅費、宿泊費は自弁でまかなわれておるということを聞いております。したがって、つまり、学術会議は在京の委員を中心にして審議をするような状態が生まれておる、こういう事実を知ってこういう発言になっておるのかどうか、私はこの実情を把握したいと思うのですが、たとえば今年度予算約七億七千万円の内訳でありますけれども、その内訳は一般事務費が一千六百二十四万円、人件費が八千九百七十二万円、内外究研連絡費が一億円余、そしてそのあとの五千五百二十万円が審議経費となっております。そうして、学術国会だといわれるのですから、会員の先生方は国会議員並みにパスでも持っておるかと思うと、そうではなくして、昭和四十四年度の常置委員会あるいは特別委員会研究連絡会議などに出席をしております方々はほとんど手弁当なんですね。その金額が昭和四十四年度で九百二十六万円に達しておる。これは手弁当でやられておる、こういう状態であります。しかも、審議に必要な調査費、また調査事務のスタッフも欠けておるので、十分な審議ができないというような状態に置かれている。さらには、特に地方にいる会員の場合は、文字どおり大きな交通費を自己負担で毎月二回も三回も東京にやってこなければならないという、こういう状態が起こっておるわけでありますが、これは実情として事実かどうかですね。また、そういう財政状態にあるのかどうか、最初に伺っておきたい。
  90. 高富味津雄

    ○高富政府委員 お答えいたします。  ただいま先生のおっしゃりました七億六千何ぼという額が、ちょっと私ふに落ちないのでございますが、今年度の予算が三億六千六百万という数字でございますが……
  91. 山原健二郎

    ○山原委員 七億じゃないですよ。二億七千万と言ったつもりですがね。私の、これは少し間違っているかもしれません。大体三億円程度ですね。
  92. 高富味津雄

    ○高富政府委員 予算総額で申しますと、ことしの予算が三億六千六百万余り、前年度の予算が三億四千万で、ちょうど二千五百二十万ばかり増額となっております。結論的にいいますと、毎年の運営には支障のないように予算的には配慮されているわけでございますが、ただいま先生のおっしゃられましたように、うちの学者先生といいますか、科学者の方たちが来て会合していただくその会議には手弁当で出てこられることも、これはもちろんあるわけでございますが、大体予算のほうでいきますと、もう常設的な——年度当初から予定されているような本委員会とか常置委員会のようなものについては、これはもう予算どおりで、そのワク内で十分できるわけでございますが、臨時的に特別に問題が起きて小委員会とか分科会とか、ワーキンググループとかいうものをやっていただきますと、これは予算的な裏づけがございませんものですから、その辺は手弁当でお願いしておるという段階でございます。
  93. 山原健二郎

    ○山原委員 私が実態をよく正確にはつかんでいないために——しかし手弁当で学者の先生方が、たとえ臨時であろうとも来なければならぬというような、そんな貧弱なことで日本の科学の振興をはかることができるかという疑問が生じてくるわけであります。だから、そういう意味では、第一に日本の学術会議が十六万の会員の上に立ち、しかも内外にわが国の科学を代表するという機関が、わずか三億や三億六千万といいますか、そういう予算でまかない切れるものかどうかということから、私は非常に疑問に思っておるのです。毎日新聞の六九年、一昨年、十二月十九日の記事を読みますと、「世界に肩身が狭い学術会議、貧乏を嘆く」というのが出ております。「日英学者交換も行悩み」という見出しが出まして、これはその前年の三月にイギリスの王立協会からホッジキン博士ら六人が訪問をするときの経費の問題、滞滞費は受け入れ側で持つというわけですけれども、これも捻出に非常に苦労をしておるということが新聞に出ております。さらにまた、江上会長のことばも出ているわけですね。滞在費も結局英国持ちになって肩身が狭いという御発言も出ておるわけです。さらにまた似たような例が、同じ年の十二月十九日の新聞に出ておりますけれども、アフリカのナイロビから来た、国際的なこん虫研究センターをつくる問題についての日本学術会議に対する援助、これは建築費を出してくれというわけではなくて、日本の高度な研究を評価して会議出席してもらいたいというようなことが来ても、これにも出席できるような条件ではないというふうに、ともかく切り詰められた予算内容ではたして日本の学術科学を振興し得るに足るだけの状態に置かれておるのかどうかということでありますが、その点については総理府の担当であります高富さんは自信を持っておられるわけですか。私が言いましたようなこういう記事、こういう実例から見まして、これは、こんなことで十分だとお考えになっておるかどうか伺っておきたいのです。
  94. 高富味津雄

    ○高富政府委員 いまの御質問でございますが、この学者の海外派遣とかいうのは何も学術会議につかなくても文部省なりほかのほうについておれば、そちらのほうからの予算でも参るわけでございまして、学術会議がどの程度そのパートを占めなければいかぬかもちょっとむずかしい問題でございます。ただ実は学術会議多年の念願でございました外国の科学者の招聘というのが去年の四十五年度の予算からつきまして、四十五年度には西独の科学者を招聘いたしまして、本年度はまたフランスの科学者を招聘するというように、学術交流的な海外との交流の面では逐次改善されているわけでございます。  もう一つは、ナイロビのこん虫センターの話でございますが、これが学術会議としては突然起こった話でちょっと応じかねたわけでございますが、突然起こったものはちょっと予算的に最初予定しておりませんものですからめどがつかないということも、ときおりあるわけでございます。
  95. 山原健二郎

    ○山原委員 私はあなたがその程度の把握をしておられるのはちょっと意外なんですけれども、この春の日本学術会議の、四月二十一日ですね。この中間報告を読みますと、学術会議のあり方についての検討特別委員会の報告書ですが、国際学術交流上の問題点としては、何よりもまず予算のワクが決定的に少ないことである。国際会議への学者の派遣費六千万円、これは四十四年となっておりますが、では一年間に世界各国で開催される重要な国際会議数二百ないし三百に対し百三会議にしか派遣できない。たとえば年間十の国際会議を日本で開催し、五百人の学者を海外の国際会議に派遣するとしても、その経費は五億円程度であるが、実情はそういうふうになっていないということですね。第一、三億六千万のワクで、こういう交流が実際にやろうとしてできない状態に置かれておるということをこの中間報告書は出しておるのですが、あなたの見解と学術会議の見解とは違うわけでしょうかね。その点伺っておきたいのです。この報告書は誤った報告ですか。
  96. 高富味津雄

    ○高富政府委員 あり方委員会のはまだ中間報告だと思いますが、理想的にいえば、そのようになるのが私も望ましいとは思います。ただ、目下のところ、経常的に年間百人以上の学者を海外に派遣しておる段階でございます。
  97. 山原健二郎

    ○山原委員 多少感じ方の違いもあると思いますが、きょう大蔵省がお見えになっていますけれども、実際に科学技術振興というものがきわめて重大な問題でありますので、そういう点について、これは文部省が所管になるのかどこがなるのか——総理府ですが、もしそういう要請があれば、これに対してこたえる用意があるのか、伺っておきたいのです。
  98. 渡部周治

    渡部説明員 お答え申し上げます。  学術会議のことにつきましては、その運営に支障がないように配慮しておるわけでございますが、ただいま御指摘のような点につきまして学術会議当局から御要求がございましたら、慎重に検討させていただきたいと思います。
  99. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に、沖繩の科学者の日本学術会議の選挙権の問題について伺っておきたいのですが、沖繩返還を目の前にいたしまして、沖繩の科学者が当然日本学術会議に参加すべきであると、これは私ももちろん考えておりますし、山中総務長官の、四月二十二日の衆議院の沖繩及び北方問題特別委員会の沖繩出身の瀬長亀次郎氏の質問に対する答弁をちょっと読み上げてみますが、日本学術会議に沖繩の科学者を参加できるようにするため、日本学術会議法特例法案を今国会に提出するつもりで現在準備中である、と答弁をいたしております。特例法の成文化はほぼ完了しているが、自民党の了解を取りつけることがむずかしくなっている、しかし、二つのことは無関係だから、政府としては、あくまで今国会提出の方針は変えない、こういうふうに答弁をいたしております。  そうしますと、政府側としては、学術会議の選挙は、まさにいま準備段階に入りまして、本年の秋行なわれるわけであります。そして、この機会をのがしましたならば、三年後の選挙に、ということになるわけでありますが、こういう状態の中で、しかも、今国会はすでに会期末を迎えようとしておるこの段階において、現在なぜこの問題が出てこないのか。これについて、長官お聞きになっておりますか。
  100. 高富味津雄

    ○高富政府委員 お答えいたします。  ただいまの沖繩の選挙につきましては、いまお話のとおりで、本土のほうは目下準備中でございまして、十一月に選挙が行なわれまして、来年の一月二十日に新しい会員が生まれまして、第九期の学術会議の活動が始まるわけでございまして、この活動に沖繩の科学者にも参加していただくことが望ましいと思われますが、沖繩の科学者がこの会員選挙をするためにはやはり登録しなければいけませんものですから、それをするためにはどうしても立法措置を講じたいと思いまして、法案提出すべく目下努力中でございます。先ほど、山中大臣が瀬長先生お話ししたように、総務長官お願いして、目下提出すべく努力中でございます。
  101. 山原健二郎

    ○山原委員 この学術会議の、沖繩との学術交流等に関する連絡会議の世話人であります名古屋大学教授の渡辺武男先生がこういうふうに言っておるのです。政府がその気になればさほど困難とは思われない、学問上の差別は早く解消すべきである、こう言っております。さらに、これは産業経済新聞の三月二十九日の報道によりますと、「“特例法”宙に浮く」「“会議は偏向”自民、気乗り薄」という記事がありまして、自民党との調整に入ると、党側から、学術会議は政治的に偏向している、そういうところへ沖繩の科学者を参加させてもかまわないのか、また、沖繩からの科学者参加をかりに問題ないとしても、無理してまで特例法をつくる必要はない、選挙権、被選挙権の行使は復帰後でよい、などという意見が強く出され、そのため自民党沖繩問題特別委員会を一応パスした法案の取り扱いは現在、宙に浮いた形となっておる、こういうふうに出ております。また、そういう例をあげれば幾つか出てくるわけでありますが、私が最初に申し上げました、やはり依然としてひっかかるのは、この学術会議に対する政治的偏向という見解が依然としてこの問題を停滞させておる大きな原因になっておると思います。  本年の一月二十五日に、日本学術会議の運営審議会にオブザーバーとして参加しております琉球大学の長浜教授は、沖繩の苦しい学問研究の実態を訴えておりますが、そして同会議に対する参加を強く要求しまして、次のように言っております。本土と沖繩の学術交流は名ばかりで、実は本土からの一方交通、本来の交流を実現するためにも、沖繩の学術会議への復帰を早急に実現をしてほしい、こういうふうに言っておるのでありますけれども、こういう当然の学者の要求というものを、また日本列島全体の学術、科学の振興のためにも、この一番の隘路となっておるところの、現在の学術会議が政治的に偏向しておるという、まさにこの偏見を取り除かなければ問題の解決にはならない段階に来ておるわけです。だから、私は、いままで幾つかの例をあげまして、自由民主党の出しております——党全体としてではないかもしかませんが、少なくとも「自由新報」に出ておるこの見解の誤りといいますか、この見解の誤謬というものを指摘しないと、この問題が前進をしないという考えを持っております。  そこで、長官にお伺いをしたいのですが、この沖繩の科学者の日本学術会議に対する参加というのはきわめて重大な問題だと思う。すでに国政参加で国会議員は本国会に出席をいたすような状態になっております。さらに、沖繩返還が行なわれて、しかも今度の秋の選挙に参加できないとするならば、三年後になるわけですね。そうしますと、沖繩返還はなされたわ、しかし沖繩の学者は日本学術会議に参加することができないという、きわめて科学者に対する不平等な取り扱いが行なわれるわけでありますが、これは断じて許されないことだと思いますので、その点に対する長官の、閣僚としての見解を伺っておきたい。
  102. 西田信一

    ○西田国務大臣 担当の山中長官が沖繩の科学者も参加できるような特例法の制定について御努力をなさっているわけでありますから、私は、たぶんそういう方向に進んで、御懸念のないような結果が出るのじゃないか、こういうふうに期待をいたします。
  103. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に、国会の会期も終わろうといたしておりますが、早急に話し合いをしていただきまして、この問題はぜひ解決をしていただくように強く要請をしまして、私の質問を終わります。
  104. 渡部一郎

  105. 近江巳記夫

    近江委員 先ほどは時間の関係で言い足りなかったところがあったわけでございますが、委員の了解を得まして補足質問を若干さしていただきたいと思うわけでございます。  補足質問の一つは、最後に私お聞きしました大阪の新空港の問題で、滑走路を四千メートルにする、将来SSTを考えた上でやるという意味の御発言がありました。そこで特に公害の点については心配ないかという点を申し上げたわけですが、その点は十分研究するということで、少しあいまいな点で終わったわけであります。御承知のように、アメリカでは騒音公害ということで、SSTの中止、これはもちろん資金の問題もあるわけですが、それが非常に大きなウエートを占めて中止にまで至っておる。ましてやアメリカ国内における飛行は禁止する、諸外国もそういうきびしい態度で臨んでいるわけです。その辺のところ、やはりSSTなり何なり、コンコルドにしたって、実態があがっていればこそ、アメリカがそうやって強力な規制もやっているわけです。その点安易に政府が、調査した上でという、そういう先に幅を持った答弁はやはり私納得できないと思うのです。その点、SSTの乗り入れ等については、いまの状態であれば、これはもう絶対に航空機騒音の立場からいいましてやめてもらいたい。そういう大型機を乗り入れる段階であれば当然地元民の納得も得られないと思うのです。その点政府としてはっきりとした態度をひとつお聞きしたいと思うのです。
  106. 丸居幹一

    丸居説明員 アメリカでSSTの開発をおくらすということになった原因は、ただいま先生が御指摘のとおりだと思います。したがいまして、そういう騒音公害あるいは衝撃波というものがある状態で、関西国際空港のみならず、東京の国際空港にも入れてはならぬとおっしゃることは、もうそのとおりだと私も思います。したがいまして、そういった騒音公害なり衝撃波の問題が解決しない間は、わが国にSSTを乗り入れるべきでないというふうに考えますので、先生御発言のとおりに処置いたしたいというふうに考えております。ただ、ちょっと私先ほど舌足らずであったのじゃないかと思いますことは、アメリカにも現にケネディ空港は滑走路が四千メートルあるわけであります。これは当時ケネディ空港では、SSTを想定して四千メートルにしたわけではないと私は思いますが、現在飛んでおりますジャンボでも、温度が三十五度Cくらいになりますと、無風状態の場合は約三千五百メートルぐらいの滑走路長を、フルロードで飛びますと必要とするわけでございます。したがって、そういうこともあって、ケネディ空港あたりは四千メートルの滑走路を持っておるのだと思います。三千メートルの滑走路では、もう今日の飛行機はちょっと滑走路長が短いのでございます。そこで三千五百メートルあれば、いまのジャンボが飛ぶのだから、三千五百メートルの滑走路でいいじゃないかという意見もちょこちょこ聞くわけなんでございますけれども、欧州においてはすでに試験段階にまできておりますし、アメリカのほうでも、やや延びたのですけれども、こういったSST問題というものがやがて騒音の問題も衝撃波の問題も解決して登場することがあるのじゃないだろうか。そのときに、先ほど申し上げましたように、海の中に再び五百メートルなら五百メートル、六百メートルなら六百メートルという延長をする工事が非常な手間取りになるということがありますので、この際四千メートルの滑走路を当初から計画しておいたらどうだろうかというふうなことを事務的に考えておるという意味だったのでございます。  それともう一つは、滑走路を長うしておきます長所というものが一つございまして、かりに三千メートルと四千メートルの滑走路があるといたしますと、実は四千メートルの一番端から飛びますと、離陸をして上昇していきますときに千メートル先でもう上昇しておるわけでございますね。千メートル分だけは早く上昇するわけでございます。反対のほうに飛びます場合にも、四千メートルありますからやはり千メートル分だけは先に上がっておく。そうすれば千メートル分だけの騒音は少なくて済む。あるいは大阪のかりに湾内に仮定いたしますと、湾で回る場合が非常にスムーズに回りやすいというふうなこともありまして、四千メートル滑走路の利点というものと、そういった将来というものを考え合わせてみると、この際四千メートルの滑走路というものを計画しておいたほうがいいのじゃないだろうかというふうなことを事務的に考えておるという程度でございます。先生先ほどおっしゃいましたSSTにつきましては、繰り返してお約束申し上げられることは、現在の航空機騒音よりも大きいような状態ではなかなか入れられないというふうにわれわれは考えておるということを繰り返して申し上げまして、御答弁とさせていただきたいと思います。
  107. 近江巳記夫

    近江委員 その点は一応了解したということにします。  いずれしても、こういう問題点が解決をしないうちは断じてわが国政府としてはそういう乗り入れをさせてはならぬ、この点について確約をいまされたわけでありますし、それをよく守っていただきたいと思うのです。閣僚として大臣も出席になっておるわけですから、いまの部長の答弁を再度ひとつ、大臣、確約をお願いしたいと思うのです。
  108. 西田信一

    ○西田国務大臣 運輸当局の基本的な考え方に私も同感であります。
  109. 近江巳記夫

    近江委員 それからもう一点の問題は、これは新聞にも出ておったわけですが、大阪国際空港の騒音調査していた騒音影響調査研究会、会長は梶原三郎阪大名誉教授ですが、「国が決めている許容限度内の騒音でも、睡眠に影響をあたえている」という調査結果をまとめたわけです。ここで、調査については男子十八人を対象に昨年から二年がかりで行なわれてきたわけですが、これはもうすでにあなた方御承知のとおりですが、「大阪国際空港で騒音を録音、夜間の規制基準となっている七五ホンを中心に、六五ホン、八五ホンの三種類に分け、一回十七秒間ずつ四日間(午後十時−午前九時ごろ)にわたって聞かせ、脳波をとって調べた。」そうすると結局、この「睡眠は、その深さによって四段階に分けられ、一、二段階が〃浅い眠り〃、三、四段階が〃深い眠り〃とされている。測定の結果では、国が決めている許容基準の七五ホンでは浅い眠りの一段階で一〇〇%、二段階でも七三・二%が目をさまし、八五ホンになると、三、四の深い眠りの段階のかなりの部分がこの浅い眠りに落ちてしまうことがわかった。」要するに「国の基準では眠れぬ」こういうことになってきておるわけです。こういう点、これだけ医学的にはっきりとした裏づけ調査が行なわれておるわけですが、国としてはこれをこのまま放置されておくわけですか。この調査班に委託されたそれはあまり信用ならぬということで、国の基準このままいくのだ、こういう態度でいかれるのですか。
  110. 丸居幹一

    丸居説明員 大阪の騒音の規制でございますが、これは午前七時から二十時まで、夜の八時まで一〇七ホン以下ということに規制しております。それで八時から二十二時三十分まで、十時半まで、着は、大阪からよそへ飛んでいったジェット機が帰ってこれますように、着は一〇七ホンにしておる。しかし、出発は一〇〇ホン以下にこの時間帯を押えております。発は一〇〇ホン以下に押えておるということは、国内線のジェット機は飛べるが、国際線は夜の八時以降は飛べない、飛んではならぬ、そういう意味でございます。それから夜の十時半、二十二時半からは、ただいま先生がおっしゃいましたように朝の六時半まで、この間を七五ホン以下ということで規制をいたしておる次第でございます。七五ホン以下でこれを押えておるということはどういうことかといいますと、ジェット機の離発着を禁止しておる。つまり、二十二時三十分から六時三十分まではジェット機の発も着も禁止しておるということでございます。  それでは、この間に何を飛ばしておるかということでございますが、これはYS11型機を飛ばしております。ただいま十分な睡眠がとれぬというふうな記事が出ておるのは、やはりこのYS11も非常にやかましい、相当やかましいという意味だと思いますが、このYS11型機の大部分のものが東京−大阪間等の郵便物の運搬をいたしておるのでございます。この問題につきましては、実は訴訟の中にも出ておりますし、ただいま先生がおっしゃったとおりの、かなり音がやかましいという問題がやはり耳に入ってまいるのでありますが、何せ郵便物という非常に公共的な色彩の強いものを運んでおりますために、実はこれをやめてしまうというところまで踏み切れずにいろいろ苦慮いたしておる次第でございます。しかし、先生おっしゃいますとおりに、地元民の皆さん方の安眠を非常に妨害しておるという点につきましては、今後この郵便機等の離発着の制限等も含めて検討してみたいと思います。
  111. 近江巳記夫

    近江委員 制限も含めて基準検討なさる、こういうことですね。どうなんですか。
  112. 丸居幹一

    丸居説明員 制限を検討するということは、どうしても郵便物をYS11で運んでおるわけでございますが、YS11が七五ホン以下で飛べるということはちょっと考えられませんので、たとえば六〇ホン以下にするとか五五ホン以下にするとかいう制限をつけることは、やはり郵便の運送もやめるということにつながってまいりますので、そういう意味で、この郵便機の離発着を禁止するかどうかということも含めて検討せざるを得ないという意味で、これを含めて検討いたしたいという返事を申し上げた次第でございます。
  113. 近江巳記夫

    近江委員 国民生活の面から考えますと、非常にむずかしい問題をはらんでおるように私も思うわけですが、このYS11につきましては、これは国産機ですよ。したがって、エンジンはロールスロイスか知りませんけれども、国産機であれば、やはり騒音を何とかしぼるという技術的なことはできるはずなんです、むずかしいかと思いますけれども。科学技術庁航空宇宙技術研究所を持っているわけですよ。そういうようなところと常に連携をとって、もっと真剣にやってもらうべきですよ、この点を。そういう点をただ単なる研究所だということで、何か遊離したようなところで研究をやっているという体制は、私は絶対よくないと思うのです。もっと密着した、いかにそういう問題を解決していくか、こういう方向にやってもらわなければ困るわけです。その点、今後どういうように運輸省とも連携をとって国産機の改良をしていくか、その辺について局長さんと最後に大臣に、そうした今後の対策なり決意をひとつお聞きしたいと思います。まず局長さんからお願いします。
  114. 石川晃夫

    石川政府委員 いままでのいろいろな御質問、御答弁でございましたように、この騒音の問題というのは、今後の航空活動がひんぱんになるに従って当然いろいろ起こってくる問題だと思っております。したがいまして、われわれとしても非常に重要な問題だというふうに存じております。先ほど航空宇宙技術研究所所長からも説明がありましたように、航技研といたしましても、この騒音の問題に対しましては四十六年度から取り組んでいるわけでございます。計画といたしましては、今後三年計画でこの騒音の問題と取り組んで一応の成果をあげたいということで、額といたしましては、約一億七千万ぐらいの額を考えているわけでございます。  現在この騒音の問題につきましては、YS11のエンジンは外国製でございますが、今後逐次国産に移るに従いましては、当然研究面からも検討を進めなければいけませんし、また外国のエンジンでありましても、航空機のいろいろな総合的な面から考えまして、幾らかでもとにかく騒音を減らすというように努力すべきだと思います。この点につきましては、運輸省、それから製造面を担当いたします通産省、こういうところとわれわれも今後十分連絡を密にいたしまして、その方向に努力したいというふうに存じております。
  115. 近江巳記夫

    近江委員 大臣お答えになる前にちょっと申し上げておきますが、三年計画で一億七千万、これはしろうとが考えたって、そのぐらいの予算ではたしてどれだけの成果が期待できるかということなんです。なるほどエンジンは外国、たしかロールスロイスだと思いますけれども、こちらは使用者の立場なんですから、もっと強い態度で出てもらって、日本はこういう密集した地帯が多いんだから、何とかそこのところの騒音を現在のエンジンでも改良する方法はないかとか——ただ、これから研究します。それなら、現時点の改良をどうしてくれるのだ。しかも、航空機騒音についても今年度からやっとつけた。科学技術庁の、そういう一番大事な問題についてやっとこさ今年度から取り組んだという姿勢は、私は大いに反省してもらいたいと思います。やっていないよりは、今年度予算でつけたか知りませんが、もっとこういう問題について真剣にやってもらいたいと思うのですよ。  あと、お聞きしたって同じだと思いますので、長官に、こういう現状なんですよ、それでいいかどうか、また長官として今後どう取っ組んでいただけるか、それをお聞きして終わりたいと思うのです。
  116. 西田信一

    ○西田国務大臣 先ほどのお答えの繰り返しのようになるわけでありますけれども、防音でありますとか、あるいはまたいまの騒音のためにいろいろ飛行の規制をするというようなことは、むしろ消極的な対策だと思います。先ほどお答え申しましたように、より積極的な対策というのは、いわゆる技術的な研究開発によって消音あるいは減音するというようなことがわれわれの使命だと思って、先ほどお答えしたわけでございますが、そういう問題と真剣に取り組んでおるわけでございまするけれども、額が少ないという御指摘でありますが、これはただ研究費でございますから、直接の開発と結びついてはおりましょうけれども、研究費でございますから、なお不十分ならば十分充実したいと思いますが、何とかひとつ三年という期間を少しでも切り詰めることができればなおけっこうでありますが、こういうようなことがそう簡単に研究成果が短期間にあがるということもあるいは望めないかもしれませんが、なるべく早く、しかも各省とも十分連絡を密にいたしまして、この日本の置かれておる実情から、現状から見ましても重要な問題だと存じますので、十分ひとつ真剣に取り組んでまいりたいと、一そう決意をいたしておる次第でございます。
  117. 近江巳記夫

    近江委員 最後に要望だけしておきますが、いずれにしてもエンジンのそうした問題についても、早急な解決ということは正直いって非常にむずかしい問題があると思います。そういう点、各個の防音対策とか、そういうやはり対策を強力にやっていかない限りは、なかなか解決しないと思うのです。その点繰り返しになりますので、お聞きしませんが、いずれにしても、そうした空港周辺の公害対策等をさらに今後ひとつ真剣に、運輸省を中心に科学技術庁も参加していただいてやっていただきたい、これを強く要望しまして終わりたいと思います。
  118. 渡部一郎

    渡部委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十一分散会