○堤説明員 現在大陸だな条約につきましては、その条約自体に二つの問題点がございまして、これが
わが国の加入を妨げているわけでございます。
その一つは大陸だな条約におきましては大陸だなの範囲がいま一つ確定しておらないわけでございます。その範囲はどういうふうに規定されておりますかと申しますと、第一条におきまして、深度二百メートルまでの海底あるいはそれ以上にわたるときは
技術的に
開発可能な範囲まで、その
技術的に
開発可能な範囲までということがきわめて不確定であるということであります。
いま一つの問題点は、大陸だなの資源というものはいかなるものが含まれるかということで、大陸だな条約の規定と
わが国の
立場と根本的に相いれないところがあるわけでございます。それは漁場資源に対してでありまして、大陸だな条約では、収穫のときにおいて定着種族に属する生物資源はこれは大陸だなの資源である、こういうふうに規定しております。その点は
わが国の従来の伝統的な漁業上の
立場と全く相反するものでありまして、この二つのために
わが国は大陸だな条約に入っておりません。
これに関して、私どもは、大陸だなにおける鉱物資源の
開発という観点から見ますと、この権利は鉱物資源の探査並びに
開発に対する沿岸国の主権的な権利の行使はすでに一般的な国際法で認められたものである、そういう
立場をとっておりますので、その点について大陸だな条約に加入しないことによって何らマイナスはこうむらないという解釈でありますし、事実そう
判断できる次第であります。
国際的にその点についていま少しくつけ加えますと、この大陸だな条約ができまして、その範囲が
技術的に
開発可能なところまでということをきめたのは、実はずいぶん前のことでございます。その後具体的に
海洋開発技術が進展して、さらに深いところの鉱物資源の
開発もできるようになったという客観的な情勢を踏まえて、国連におきましては大陸だなより深いところの
深海の海底は国際的な人類共同の財産である、国際海底であるということにいたしまして、それを
開発する法制度を、これは従来の国際法では全然つくられておりませんでしたので、新たにこの
深海海底の
開発の法制度をつくろうという動きがございます。これは結局七三年に行なわれます
海洋法
会議できめられるわけでございますが、その中の最も重要なポイントでございますところの国際
深海海底の外側の範囲ということは、実は大陸だなのまた範囲でもあるわけでございます。
深海海底の範囲がきまるにつれて大陸だなの範囲もきまってくるということでございますから、この方面の動きを見きわめてから大陸だな条約に対する態度を確定するのが妥当左手順であろうと思いますので、現在のところ、
わが国といたしましては、大陸だな条約そのものに加入するということは
考えておりません。
それで、先生の御質問の領海の幅員の点でございますけれども、これもただいま申し上げました七三年の
海洋法
会議の非常に重要な問題の一つでありまして、その七三年の
海洋法
会議におきまして、この領海の幅員ということが国際的な合意を見ることを切に希望しておるものでございます。と申しますのは、
日本は漁業資源、海運等の観点から
海洋国家でございまして、
海洋法については安定した制度というものができているということが
わが国の利益と存じております。その点から申しますと、現在の領海の幅に対する各国の動向というのはきわめて不安定で、御承知のとおり、中南米の数カ国は二百海里という広い範囲にわたって領海を主張しておる。こういうことは、
わが国の漁業上、
開発上の
立場から見てはなはだ好ましからざるところでございます。で、領海につきましては、いろいろな国がいろいろな主張をしている中で、十二海里という幅を主張している国が実は一番多数であります。
わが国は現在のところ、伝統的な三海里という主張を行なっている国の一つでありまして、これが第二番に大きなグループ。このようにいろいろな幅を主張している国が入りまじっているのが遺憾ながら現状でございますので、これもその国連の場で討議を経たあとで七三年の
海洋法
会議でまとまるものと思っております。