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1971-03-18 第65回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年三月十八日(木曜日)     午前十時四十四分開議 出席委員    委員長 渡部 一郎君    理事 木野 晴夫君 理事 佐々木義武君    理事 菅波  茂君 理事 田川 誠一君    理事 前田 正男君 理事 石川 次夫君    理事 近江巳記夫君 理事 内海  清君       加藤 陽三君    海部 俊樹君       梶山 静六君    松永  光君       綿貫 民輔君    田中 武夫君       堂森 芳夫君    三木 喜夫君       山中 吾郎君    小宮 武喜君       山原健二郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      西田 信一君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         内閣法制局第三         部長      荒井  勇君         防衛施設庁総務         部長      長坂  強君         科学技術庁長官         官房長     矢島 嗣郎君         科学技術庁原子         力局長     梅澤 邦臣君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君  委員外出席者         原子力委員会委         員       有澤 廣巳君     ————————————— 委員の異動 三月十八日  辞任         補欠選任   吉田 之久君     小宮 武喜君 同日  辞任         補欠選任   小宮 武喜君     吉田 之久君     ————————————— 本日の会議に付した案件  原子力損害賠償に関する法律及び原子力損害  賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法  律案内閣提出第三三号)      ————◇—————
  2. 渡部一郎

    渡部委員長 これより会議を開きます。  原子力損害賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  西田国務大臣より発言を求められておりますので、この際、これを許します。西田国務大臣
  3. 西田信一

    西田国務大臣 米原子力軍艦が第三者に原子力損害を及ぼした場合の損害賠償につきまして、政府部内での検討の結果を御説明申し上げます。  米国原子力軍艦による事故が万一発生した場合の賠償問題は、安保条約に基づく地位協定関係条項に従って処理され、同協定適用がない場合は、いつでも日米両国政府間の外交交渉によって問題の解決をはかることができることとなっており、また米国関係国内法による救済の道も開かれておるのでございます。  詳細につきましては外務省アメリカ局長から説明いたさせます。
  4. 渡部一郎

    渡部委員長 次に、政府委員より補足説明を求めます。吉野アメリカ局長
  5. 吉野文六

    吉野政府委員 事故補償の概要は次のとおりであります。  まず、人的損害については地位協定適用されます。この場合には、地位協定の十八条五項(a)にいう「日本国自衛隊行動から生ずる請求権に関する日本国法令」である原子力損害賠償に関する法律適用され、米側無過失責任を負うことになっております。  物的損害のうちの、いわゆる小規模海事損害については、地位協定規定適用することに昭和三十五年の日米間の口上書確認されておりますので、人的損害と全く同様に処理されます。  その他の物的損害については、地位協定規定適用されませんものですから、外交交渉により解決することになっております。政府としては、わが国関係国内法適用された場合に比べまして、被害者の保護の点において欠けるところのないように、最大限の努力を払う所存であります。  また、このほかに被害者に対しては米国国内法がございます。公船法とか海事請求解決権限法及び外国請求法、これらの法律による司法的または行政的な救済の道が開かれております。また、これらの救済手続を利用するについては、わが国としてはあっせんその他必要な援助を予定しておりますから、被害者救済には万全の措置が講ぜられることになると思います。いかなる場合にも外交交渉というものがあるわけでございますから、それによって解決が可能となるということは先ほど述べたとおりであります。
  6. 渡部一郎

    渡部委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。最初に近江巳記夫君。
  7. 近江巳記夫

    近江委員 まず確認をしておきたいと思うのでございますが、この特殊海事損害及び小規模海事損害とは何を意味するかということでございますが、この一九六〇年八月二十二日付の交換公文及び一九六一年九月五日付の合同委員会における了解された範囲である、このように考えてよろしゅうございますか、それについて詳しく御説明願いたいと思います。
  8. 吉野文六

    吉野政府委員 けっこうでございます。
  9. 近江巳記夫

    近江委員 これも確認でございますが、この地位協定十八条五項(g)及び特殊海事損害にかかるものについてはこの請求権適用されない、そして民法米国内法適用されるということになっておりますが、どのような法律適用されることになるのか、具体的に伺いたいと思います。
  10. 吉野文六

    吉野政府委員 先ほども申し上げましたように、米国公船法でございます。それから海事請求解決権限法、それから外国請求法、以上でございます。
  11. 近江巳記夫

    近江委員 そうすると、この三つをどのように運用するわけですか。どれにかけるのですか。
  12. 吉野文六

    吉野政府委員 これらはいずれも米国国内法律でございますから、どれを適用するか、その他につきましては、米国弁護士その他によく相談しまして、それぞれの報告をいたす所存であります。
  13. 近江巳記夫

    近江委員 それでは米国の有利な弁護士に相談する、そういう簡単な事柄についてすら、もうその一言でわれわれとしては不安を感ずるわけですよ。米国の有利なそういう条件弁護士にさがさせて選ばせるのですか。
  14. 吉野文六

    吉野政府委員 ただいまの発言は、一般的な態度を申し上げたわけでございまして、詳しく説明いたしますと、公船法による司法的救済の場合に、米国裁判所が必ず無過失責任原則に基づく判決を下すものと断定すべき明確な根拠はない一方、原子力損害のように非常に大きな損害の場合にも、一般の船舶の衝突の場合と同様に、過失責任のみを認めることになると考えるのは当を得ないであろうと思われます。公船法及び海事請求解決権限法に基づく行政的救済の場合には、過失責任をたてまえとしているといわれておりますが、外国請求法の場合には、米国政府損害の原因であることをもって足り、責任の立証を要しないものとされているので、無過失責任を認める立場と解されております。  賠償額限度については、公船法のもとでは、米国軍艦行為についても私船の所有者がその船舶行為に対して責任を負う限度において責任を負うとされている以外には、金額上の制限はございません。海事請求解決権限法は百万ドルまで、外国請求法は一万五千ドルまでの範囲内であれば、それぞれ関係軍事長官限りで行政的解決をする権限を与えられておりますので、前記の額をこえる場合にも、議会支出承認を得れば解決をなし得ることになっておりますから、賠償額限度が定められているというわけではございません。
  15. 近江巳記夫

    近江委員 その問題についてはあとでもう少し聞きます。  もう一つ前提条件としてお聞きしたいのですが、プライス・アンダーソン法、これは地位協定にかからないものについては適用されないのですか。確認をまずずっと進めていきます。
  16. 吉野文六

    吉野政府委員 サバンナ号だけについては適用があることになっております。
  17. 近江巳記夫

    近江委員 そうすると、軍艦等については適用がない、こういうことでございますね。もう確認をしっかりしていかないとだめですから……。
  18. 吉野文六

    吉野政府委員 そのとおりでございます。
  19. 近江巳記夫

    近江委員 そうすると、あくまでも米国はこの三法をもってしか補償する責任を負わないことになる、このように考えていいわけですか。
  20. 吉野文六

    吉野政府委員 現在のアメリカ法としてはそのとおりでございますが、アメリカ議会がみずから別の権限法をつくる場合にはその限りではございません。
  21. 近江巳記夫

    近江委員 まず確認のそれをずっとやっていきたいと思うのです。もう一ぺんはっきり聞きますけれども、この三法は無過失責任集中責任無限責任原則を保持しているのですか。はっきり答えてください。
  22. 吉野文六

    吉野政府委員 先ほど説明したとおりでございます。
  23. 近江巳記夫

    近江委員 民法規定でありますから、この補償にかかる場合、この海事法上の法的責任を示すことが要求される。先ほどずっと説明されたわけですが、そういう意味で無過失でなく、また集中責任でなく、また無限責任でもない。この限度というものはきわめて低いということになってくるわけですが、そうしますと、この法的責任を明らかにできなければ米国は要するに賠償責任を負わない、もしくはきわめて低い賠償措置しか講じない場合も十分にあり得るのじゃないか、このように思うのですが、これについてはどう思いますか。
  24. 吉野文六

    吉野政府委員 通常の船舶については必ずしも責任限度が明らかにされているものとは思いませんですが、原子力艦船の場合には先ほど申し上げたとおりでございます。
  25. 近江巳記夫

    近江委員 いずれにせよ、いまの政府統一見解でいきますと、米国損害賠償責任希薄性というものは否定できないのじゃないか、このように思うわけです。お答えになっている政府としても、非常にその点の不安を感じながらおっしゃっておると思うのですよ。この米国が負う責任希薄性ということについて、どう思いますか。
  26. 吉野文六

    吉野政府委員 米国国内法は以上申し上げたとおりでございますが、御存じのとおり、日米あるいは政府間には常に外交交渉というものが法律には縛られずにあるわけでございますから、それによって最大限補償を取るよう、政府としては努力いたします。
  27. 近江巳記夫

    近江委員 要するにその外交交渉ということ自体、これが大きな問題になるのですが、何の保証もないわけですよ。ただ外交交渉ルートが残されておるというだけですよ。(「根拠がない」と呼ぶ者あり)そう、いまおっしゃっておりますが、根拠がないわけですよ。それじゃ何を根拠にわれわれ日本国民安心をすればいいのですか。米国内法では全然そういう安心できる状態ではないわけですよ。では、残された道は外交ルートだ、外交ルートで何をこれは保証してくれるのですか。また日本がその交渉によっては大きな負担を負う場合も出てくるかもわからない。何のために、日本負担を負わなければならないのですか。そういうことが何もきまってないじゃないですか。  そこで、あとに各委員もいらっしゃいますので次にいきますが、米国による補償措置が十分でない場合、生ずる可能性は十分に過ぎるほどあるわけですが、その場合、政府被害者に対してどういう措置を講じようとなさるのですか。もちろん外交ルートというものがあるわけですが、ほかにどういうことを考えていますか。
  28. 長坂強

    長坂政府委員 ただいまの先生のお問い合わせの点は、十八条五項の(g)の規定によって同条五項の適用をかりに受けない損害、それについてはどうやるのだ、こういうお問い合わせだと存じますが、それにつきましては特殊海事損害賠償請求に関する特別措置法というものがございまして、これは被害者アメリカ関係法令とか言語慣習なども違いますので、そういう被害者のために米国に対して損害賠償請求をする場合、防衛施設庁が円満な解決をはかるようにあっせんをする。そしてまたそのあっせんによっても被害者にとっては満足すべき結果が得られない、米国裁判所に提訴をするというようなときは必要に応じまして訴訟費用の立てかえとか、そういう訴訟上の援助を行なうことにしておるところでございます。
  29. 近江巳記夫

    近江委員 国内でいろいろなそういう被害が住じた場合でも、国内の場合は原子力損害の場合はこういう法律がありますからできますけれども、他国にまたがってやる場合、なかなかそんな簡単にはいかぬわけですよ。しかもそういう補償責任というものは非常に希薄性が強いということがありまして安心できる状態ではないわけですよ。政府として被害者に対しては適切な処置をしたいということでいまいろいろそういう援助なり何なりをしていきたいというお答えがあったわけですが、もう一つ確認をしておきたいのですが、そこで講じられる処置一つとして、原子力損害賠償に関する法律の十六条一項の「必要な援助」及び十七条の「被災者救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置」の項の適用によるものであるかどうかということなんです。それについてはどうですか。
  30. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 これについては関係ございません。
  31. 近江巳記夫

    近江委員 これはもう大問題なんですよ。局長がいま関係がないと言われた。これでなおさらわれわれとしては、国民としては不安になるわけです。要するに、原子力損害賠償法適用されないということであります。それではいかなる法律に基づいた処置をしてくれるかということなんです。いかなる法律に基づいた処置をしてくれるのですか。
  32. 荒井勇

    荒井政府委員 アメリカ原子力軍艦が本邦の領域において原子力損害を生じた場合にいかなる法律上の措置が講ぜられるかという御尋ねでございまして、現在の法律規定から言いますと、それが人的損害であるとか小規模海事損害であれば、これはわが国国内法規定が実質的に適用になりまして無過失責任というようなものをかぶるわけでございます。それに対して特殊海事損害の場合には、先ほど防衛施設庁のほうから御説明しましたように、特殊海事損害賠償請求に関する特別措置法というものが国内法としてございまして、これに基づく援助措置なり請求についてのあっせんなりというようなことが行なわれるというのが現行法のたてまえでございます。そしてこれは基本的には地位協定の十八条第五項の規定の問題でございまして、その十八条五項の運用に関しましてはアメリカ国内法によるという合意がありますし、この問題はいつでも外交交渉によって取り上げるという両国間の合意ができておるということで、それは日米両国のこういう安全保障措置に関連し、あるいは両国の国交に関する重要問題であるという意味で、適切な措置がそのケースに応じてとられることを予想しているというふうに考えられると思います。  そしてそのほか国内法的にどういう措置が講ぜられるかといいますと、政府は予算の範囲内で権限を与えられるということでもございますので、そういう懸案事項について従来やった措置等から考えましても、政府がその場合に何ら対策を講じないで放置するというふうには考えられないで、国会から権限を与えられたところに従ってそのときには必要な措置を講ずるということになろうかと思います。
  33. 近江巳記夫

    近江委員 適切な措置が講ぜられることが予想される。あくまで出ているのは予想なんですよ。予想であっては国民は納得しないし、安心しないわけですよ。われわれはこのことを言っておるわけです。ですから、満足な適切な救助措置が法に基づいてはっきりとこうだというものがあれば、われわれは安心するわけです。何もないわけですよ。だから言うわけです。あと委員から質問がありますから、私は時間の関係もありますので、最後にお聞きしたいのですが、結局いまのこういう米国国内法、いろいろ統一見解から示されたわけでありますけれども、いずれにしても結論から言えば国民としては安心できない、納得できない、そういう形しかいまここでは残されておらないということです。そこで米原子力艦原子力事故損害補償に関する特例法、これは仮称であり捜すけれども、そういうものをぜひとも検討しなければならぬ。これがあれば国民はもうみんなはっきりと安心するわけです。これについては政府はどう考えていますか。これは関係各省、そして大臣、お聞きします。それで私の質問を終わります。
  34. 吉野文六

    吉野政府委員 軍艦の与える損害について特別補償法をつくるということは、外国軍艦自身御存じのとおり治外法権を享受しておりまして、こういうようなものについて起きた損害についてわが国国内法をつくるということは適当でないと考えております。なおNATO諸国もみな日本と同じようなたてまえでやっておりますから、特にそのような法律は必要ないと思います。
  35. 近江巳記夫

    近江委員 何も外国にそんな悪いことをやらす必要はないのですよ。原子力損害というものは普通の事故と違って想定できないものがあるわけですよ。日本は広島にも長崎にも落とされている、原子力被害についてはそういう非常に強い意識をやっぱり持っているわけです。何も外国がそうだからということでする必要はないのです。日本の場合は、特にアメリカ原子力艦艇がそういうように出入りも多いわけですし、当然国民安心させていくためにもそういう特例法というものは政府としては設けるのがほんとうなのですよ。できないことはありません。あなた方誠意を持ってアメリカ交渉すればいい。こんな断定的にしないほうがいい、そんなことをいま言うていいのですか。もう少し幅を持った答えをしたらどうですか。
  36. 吉野文六

    吉野政府委員 先ほど申し上げましたように、外交交渉に関する限りは、日本政府はこれを強力に行ないたいと考えております。昭和三十九年八月十七日のエードメモワール等は、日本政府に対して、このような強力な外交アメリカと開始することに対して、アメリカ側も十分用意して寄るという趣旨がうたわれておりますから、われわれはそれをひとつ実行したいと思います。
  37. 近江巳記夫

    近江委員 もう終わりますけれども、要するに、強力なそういうような前向きの姿勢がうかがわれるというだけであって、あるいはまたその十分な処置を講じてくれるであろうと予想されるというような、予想とか、甘い期待だけではだめなのです。はっきりとした、法的になるほどこうかという安心できるものがあって初めて納得できるわけです。ですから、国民が納得できるそういうものをつくりなさいということを言っておるわけですよ。全然そういうようなやろうという意思はないのですか。防衛施設庁どうなのですか。
  38. 荒井勇

    荒井政府委員 お答え申し上げます。  外国原子力船損害が生じた場合にはどうするかという問題でございますが、これはそれについて何らかの国内法的な措置が考えられないかということでございますが、法律国民権利義務規定する、あるいは日本国政府政府権利なり義務というものを規定するというのが法律でございまして、こういう国際間に起こる請求権問題であるとか紛争とかいうような問題は、それをカバーするのは国際法の問題である。相手国政府がどういう負担をするとか、義務を負うかというのは、一方的な国内法できめられる問題ではないということが、法律的なお答えになろうかと思います。
  39. 近江巳記夫

    近江委員 それは法律的にいけば、そうでしょう。それは私わかっていますけれども、要するにそういう何も安心できる状態でないのに、こういうアメリカ原子力艦艇をどんどん出入りさせておる。いつ損害が、そういう災害が起きるかわからない。そうして残された道は、ただ外交ルートのその道だけだ、淡い期待だけしか残っていない。補償予想される、そんなことだったら納得できないのですよ。あとベテラン先生方もおられますので、バトンタッチしますけれども、最後長官、いまずっと私何点かの問題をお聞きしたわけでありますが、原子力の全般の総責任者として、こういう不安な状態日本国民が置かれておる、それに対して適切な安心できる何の体制もとられてないわけですが、そんなことで原子力の総責任者としていいと思われるのですか、十分だと思われますか。
  40. 西田信一

    西田国務大臣 ただいま御審議をいただいております法律は、国内におきますところの原子力損害に対することを規定する法律でございますが、いま問題になっておりますのは、外国から入ってまいります原子力潜水艦事故の場合に対していかに対処するかということが論議の焦点になっておるように思います。いま特例法をつくったらどうかという御提案があるわけでありますが、外務省法制局からお答え申し上げましたように、非常に問題が多いし、また非常にむずかしことと思います。しかしながら、国民に一そう安心を与えるという立場から御議論がなっておるところでございますので、十分にひとつ関係各省とも話し合いをいたしつつ検討するということを申し上げる以外に、いまは的確に申し上げることができないのはたいへん遺憾でございますが、御了承願いたいと思います。
  41. 近江巳記夫

    近江委員 それではもう時間がきましたので終わります。
  42. 渡部一郎

  43. 田中武夫

    田中(武)委員 いま西田長官から、国務大臣として政府統一見解を述べられたわけなんですが、あなた自体、この統一見解意味が理解できておるのですか。どうも先ほど来聞いておると、理解しておられない、こうとしか思えません。そこで若干の質問を申し上げます。  まず第一点は「安保条約に基づく地位協定関係条項に従って処理され、」こう書いてある。これはもう先日の委員会でだめだということでこうなったのじゃないですか。「地位協定関係条項」というと、まず地位協定十八条五項(a)号あるいはあとで(g)号を持ってきたわけです。それを受けての民特法あるいは国家賠償法といったような種類だと思います。あるいは基地周辺整備法、こういうことだと思うのですね。しかし、これは先日明らかになったように、いずれもこれは普通災害なんです。原子力災害を考えていないのが第一点。  さらにもう一つは、これは無過失責任制をとっていないわけなんです。原子力損害については無過失賠償責任制責任集中制度を取り入れたところに特質があるわけなんですよ。そうでしょう。しかもこれは、違法に、こういういうことに基礎はなっておるのですね。だから、違法にやった場合、国家賠償法には故意または過失となっておるけれども、しかし無過失規定したものじゃないのですよ。全然範疇が違うのです。カテゴリーが違うのですよ。どうなんです。だからしたがって、この項目は答弁になっておりません、いかがですか。
  44. 荒井勇

    荒井政府委員 法律的な問題なので私からまずお答えさしていただきます。  まず「地位協定関係条項に従って」という見解では、原子力損害について何もならないのではないかということでございますが、この地位協定の十八条五項の(a)の規定によりますと、合衆国軍隊法律責任を有する作為、不作為もしくは事故で、日本国内において損害を与えたものから生ずる請求権は、次の規定に従って日本国が処理するということになっておりまして、その「請求は、日本国自衛隊行動から生ずる請求権に関する日本国法令に従って、提起し、審査し、かつ、解決し、又は裁判する。」ということになっているわけでございます。この(a)の規定趣旨は、合衆国軍隊行動が、それがもし自衛隊行動であるとすれば適用されるような日本国国内法令に従って処理されるということでございますので、それの中には、この(g)号の規定によって適用がされることに在る人的損害でありますとかあるいは小規模海事損害につきましては、まさにそういう日本国国内法令である原子力損害賠償法規定適用になり、無過失責任責任集中ということはまさに該当するわけでございます。
  45. 田中武夫

    田中(武)委員 たいへんですよ、あなた。まず第一点は、自衛隊によって損害が発生するということは一体どういうことなんですか。しかもこの原子力損害賠償に関する法律は、原子力基本法体系の中にある法律ですよ。したがって、あくまでも平和利用そして自主、公開、民主の三原則の上に立った法体系の中にあるんですよ。それが原潜適用あるということはもう全然だめですよ。もし原潜にこの法律適用するというならわれわれはもう頭からこの法律を否定いたします。少なくとも日本原子力平和利用のみに限るということになっておるのです。したがって原子力基本法ができて平和利用の三原則が確立せられ、そのもとに関係条文が整備せられておるわけなんです。したがってこの法律原子力基本法の体系の中に入る法律なんですよ。それを自衛隊云々あるいは外国軍艦による損害適用せられるということは私は納得いきません。
  46. 荒井勇

    荒井政府委員 この地位協定十八条五項(a)がいっておりますのは、日本国自衛隊が持てるか持てないかというようなことをいっているのではございませんで、その合衆国軍隊行動がもし日本国自衛隊行動であるものと仮定した場合に適用されるような、そういう日本国国内法令に従って処理されるということをいっているわけでございます。たとえば、日本自衛隊はその性格からいって長距離爆撃機は持てない。そういうような場合に、そうするとアメリカのそういう爆撃機が国内で墜落して損害を生じたという場合に適用がないのか。中距離機が落ちた場合には適用があって長距離機が落ちた場合にはこの十八条五項の規定適用がないというようなものであるかというとそういうものではございませんで、日本国自衛隊がそういう長距離の戦爆機が持てるか持てないかということにかかわりなく、要するにアメリカの軍隊が持っているところの装備なりあるいはそれがやっている行動というものがもし自衛隊のそれらであると仮定した場合に適用されるようなそういう国内法令に従って処理されるということをいっているだけのものでございます。
  47. 田中武夫

    田中(武)委員 したがって、いま問題になっておるのは、アメリカ原子力潜水艦が来て、もし事故が発生したときにどうするのか、これなんですよ。だからあなたの答えはこれには入らないということですよ。見当違いのことを言っておるということなんです。違いますか。  それに、これに関連する一連は、みな無過失責任じゃないでしょう。過失責任でしょう。あるいは違法ということが前提になっておるでしょう。
  48. 荒井勇

    荒井政府委員 まずその地位協定の十八条五項の適用がある場合に故意、過失ではないか、あるいは違法という要素があるのではないかというお尋ねでございますが、こういう合衆国軍隊行動というものは国家賠償法適用になる対象ではないわけでございます。国家賠償法というのは「国又は公共団体の公権力行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えた」という場合のことを規定しておりますが、合衆国軍隊の構成員在り合衆国軍隊国家賠償法上のそういう機関ではないので、国家賠償法規定適用要件というものをお読みになりましても、それは違うわけでございます。それはまさに日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う民事特別法によって処理をされるということになるわけでございます。こちらのたとえば第一条を見ますと、「安全保障条約に基き日本国内にあるアメリカ合衆国の陸軍、海軍又は空軍の構成員又は被用者が、その職務を行うについて日本国内において違法に他人に損害を加えたときは、」と書いてありまして、国家賠償法とは違いまして「故意又は過失によって」という要件は書いておらないわけでございます。ということは、無過失も入るということでございます。
  49. 田中武夫

    田中(武)委員 おかしいですね。「違法に」というのは無過失も入る、こう読むのですか。すべてこれからその法律をそう読んでいいですか。違法とは一体どういうことなのでしょうか。
  50. 荒井勇

    荒井政府委員 まず国家賠償法でいうところの故意、過失という要素は書かれてい危いということを最初に申し上げたわけですが、その次に「違法に他人に損害を加えたときは、」というのがあるわけでございます。つまり「違法に」というのは何かといえば、その法規に違反するという場合が一番典型的でございますけれども、たとえばそういう法規というものがなくても、それは損害を受忍させることが正当でないと認められるような場合、たとえば空間についての日照権であるとかあるいは肖像権であるとかいうものについてその具体的な法規がない。しかしそういう生活上の権利、利益に相当する、権利と同視せられるような正当な法益というものを侵害する。それが公序良俗に反するという形で行なわれる場合もありますし、あるいはそれが法律責任を有するというふうに置きかえて解釈することもできるわけですから、まさに地位協定十八条五項はそういう「法律責任を有する」と書いているわけでございますが、その「法律責任を有する」という中には無過失損害賠償責任を有するというふうに国内法規定されておるようなものは、すなわちそういう危険責任を伴うようなものは、それを持ち込むこと自身がやはりその法律的評価としては、「違法に」ということに当たるのだということなのでございます。
  51. 田中武夫

    田中(武)委員 よくわかったようでわからぬがね。ともかく私はそういうこともあろうと思って法令用語辞典を引いてみた。違法とは「行為ないし状態法令に違反すること」となっておるのですね。この違法の中に無過失責任という概念はありませんよ。そして日本国法律というのは、すべて民特法にしろこれみな無過失責任じゃないのですよ。先ほど言っておるけれども、この法律原子力損害賠償、これは無過失責任なんです。ところが私の言っておるのは、原子力基本法のもとにある法律。したがって、アメリカ軍艦等は対象にできないわけなんですよ。しちゃいけないのです。もしこの法律をするということであるならば、これは根本的に考えなければならない問題なんです。少なくとも原子力基本法というものがあって、そして平和利用に限る、しかも三原則の上に成り立っておるわけです。そうじゃないですか。
  52. 荒井勇

    荒井政府委員 原子力基本法にいう原子力原則というのは、日本国行動について規定しているものでございます。それはちょうど憲法九条というものが、砂川判決において駐留合衆国軍隊というようなものに適用される、戦力を保持しないというようなことは、日本国の公権力という観点から見ての規定であるということがいわれておるわけでございますが、それと同じように、原子力基本法というのも日本国あるいは日本国民行動としての規範というものが設定されているものであるということでございます。  それから一番最初にお尋ねがございました違法とは何かということでございますが、その違法の中には形式的な違法と実質的な違法というのがあるわけでございまして、その形式的な違法を主に置いて改正しておるものもあるかと思いますが、法令用語辞典をお引きに在りましたが、その中でも実質的違法ということにも触れて書いているわけでございます。こういう損害賠償理論におきましては、日照権の例でももう先生よくおわかりのように、そういう実質的な正当性とか実質的な公平という観点から見た実質的な違法性という観念が学説その他においてもうすでに支配的になっておるわけでございます。
  53. 田中武夫

    田中(武)委員 用語について私は議論をしようと思いません。しかし見解が違いますから、これはひとつしかるべき権威ある学者を参考人に呼んでいただいて、そこで意見を聞きたいと思います。  私の見解を申し上げます。違法とは行為ないし状態法令に違反することである。そして法令には違反しないが、道徳上批判せられるものは、大体不当ということばが使ってある。さらに不法ということばがある。これは違法とおおむね同じであるけれども、これが実質的ないし主観的石面に重きを置いたときに不法ということばを使っておる。それから不適法ということばがある。これは形式的な面を見た場合、あなたの言っているいまの説明は、不適法という、これの概念ではないかと思います。したがいまして、ここは議論になりましても、解決になりません。しかも一法制局部長の答弁では満足いきませんので、権威ある公法上及び私法上の学者を参考人として呼んでいただく、そしてそこで、このいま言っておるような答弁、これは議事録を見た上で十分ひとつ審議したい、参考意見を聞いてわれわれも考えたいと思います。しかるべくおとりはからいを願います。
  54. 渡部一郎

    渡部委員長 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  55. 渡部一郎

    渡部委員長 速記を起こして。  ただいまの田中委員発言につきましては、後刻の理事会においてこれを協議することとしたいと存じます。
  56. 田中武夫

    田中(武)委員 第二点というのは、次にお伺いしますが、いわゆる「同協定適用がない場合は、米国関係国内法による救済の道が開かれている」、こういうことを書くことはナンセンスなのだ。アメリカ法令にたよるということは一体どういうことなのだ。さらに「いつでも日米両国政府間の外交交渉」云々、それはあたりまえですよ。すべてが外交交渉でやろうということになれば、法律も何も要りません。したがってこれも答弁になりません。先ほど近江委員も指摘しておりましたが、米国国内法を持ち出してくるというのはナンセンスです。これを突き進んでいくと、アメリカのしかるべき弁護士を頼んで云々というようなことになるのです。こんなことでどこに自主性があるのです。独立国として恥ずかしくないですか。政府がはたして日本国民を守っていこう、保護しようという気魄がどこにあるのです。外交ルートによって解決をする、それは三十九年か何かに、米合衆国は、外交ルートによって話し合う用意があるということになっているのです。そんなことが基礎になっておったって何にもならぬでしょう。第一、日本国内法でこれの基礎をなすものがないじゃありませんか。どうなのです。あったら言うてください。根拠法があったら言うてください。お得意の法制局どうなのです。
  57. 荒井勇

    荒井政府委員 その点は、内閣は憲法七十三条の規定によって、そういう外交事務を処理しなければならぬ責務を有しておるわけでございますので、もちろんその責務を忠実に履行するということになるわけでございます。
  58. 田中武夫

    田中(武)委員 全然答弁にならぬのです。法制局、一体あなたは何を言っておるのです。憲法の外交権を持ち出すなんというのはナンセンスもナンセンス、何とかして切り抜けたいという窮余の一策かは知りませんが、これはナンセンスです。したがってこれも答弁になりません。答弁になるというなら解明してください。
  59. 荒井勇

    荒井政府委員 憲法上の責務を内閣が履行するということについて、それが答弁にならないというふうにおっしゃるのは、私ははなはだどうもおかしいことだと思います。これは内閣としてはまさにそういう責務を負っているわけでございますから、それに従って外交関係国民の利益に従って処理しなければならぬという立場にあることはもう明々白々であると思います。
  60. 田中武夫

    田中(武)委員 これは当然のことなのですよ。こんな文句を書かなくたって当然のことなのですよ。したがってそれは答弁にならないというのだ。私は憲法をもっての答えを否定はいたしませんよ。それは当然のことなのです。米国法が適用になる根拠があるのか、国内にあるのか、もしあるならその法律を示してほしい。そういうことはあり得ないのですよ。したがってこれもいただきかねます。  それから第三点、これは先ほど関連して明らかにいたしましたが「原子力損害賠償に関する法律適用され、米側無過失責任を負うこととなる。」これも答弁になりません。それは先ほど言ったように、この法体系の中においてはそれは考えられない問題である、そういうことです。  次に第四点、物的損害について「いわゆる小規模海事損害」こういうことなのです。これは普通災害、普通損害を言っているわけです。したがって、いま問題になっておる米潜の問題は全然問題ではありません。米潜による被害であるけれども、これは原子力損害ではない、いわゆる普通災害、普通損害、これを言っておるのですから、これも答弁にはなりません。どうですか。
  61. 吉野文六

    吉野政府委員 お答えいたします。  先ほど私から各場合につき列挙してお答えいたしたつもりでございます。
  62. 田中武夫

    田中(武)委員 もちろんこの小規模も原潜によるところの損害を言うておるのです。それはいいのです。しかしわれわれがいま問題にしておるのは、それでなくて原子災害を言っておるのです。したがってこの普通災害についての取りきめは問題ではありません。さらにひっくるめて最終的に外交交渉解決が可能になっているということは先ほど言ったとおり、もしそれであるならば、この法律原子力船についての政府間の合意なんて要らないわけですよ。事が起こったら外交交渉したらいいのです。すべてそう去ります。答弁になりません。  それから、最後の一点は、先ほど近江委員も触れられましたが、一体どうするのか。これは日本法律でもってということには私は無理があると思います。したがってこれは少なくとも条約を結ぶべきです。いや、そうでなくて、まず基本線に立ち返って、原潜の入ることをお断わりすること、拒否することなのです。少なくともそういう体系ができるまでは原潜お断わり。当然原潜が初めて入るときに条約をもって定めておくべき問題であります。それをやらずにノーズロースで入れたというときにここに問題ができたわけです。これは政府外交姿勢というか、べったりアメリカ追随の姿勢がここにあらわれてきたわけなのです。  したがって、以上述べましたところでこの答弁全部お返しいたします。このままお返しいたします。よろしいか。そうでなかったら納得のいく答弁をいただきたい。
  63. 吉野文六

    吉野政府委員 お答えいたします。  御承知のとおり船舶の規律、法律は旗国法という主義をとられております。損害についても同様でございます。したがって原潜あるいは原子力艦船についてもついても同様な規定が根本にあると思います。
  64. 田中武夫

    田中(武)委員 何とかしてと思うけれども、そんなことでないのですよ。  大臣いかがですか。もう私は官僚答弁は要りません。何とかして逃げたいというだけで、つまらぬことを持ち出してきたり、当然のことを言ってみたり、法制局部長さんか知らぬが、あなたもどうかしていますよ。憲法の行政権を、行政による外交権なんか持ち出すのはほんとにとぼけたといっていいですよ。適格性を疑います。大臣、どうします。これは少なくとも無過失賠償責任制を中心とする、しかもアメリカ集中責任を持って賠償する、こういうことを基本とした条約を結ぶ、そういう答えがない限り、原潜は入港を拒否する。そうでなくては、いまやかましく言ってこの法案をかりに成立させたといたしましても、常に日本国民は同じ危険にさらされており、しかもそれは法によるところの保護はない。政府はただアメリカの好意に期待する、これだけじゃありませんか。いかがですか。——与党の委員を含めて御答弁がございますならば受けて立ちます。
  65. 渡部一郎

    渡部委員長 政府委員のほうから御答弁はありませんか。
  66. 吉野文六

    吉野政府委員 政府委員から、補足的に御説明いたしますと……。
  67. 田中武夫

    田中(武)委員 補足があったら大臣が言ってからにしてください。
  68. 吉野文六

    吉野政府委員 いや、いままで申し上げたことをさらに補足させていただきたいと思いますが、もしお許し願えれば……
  69. 田中武夫

    田中(武)委員 委員長が許されたらけっこうです。しかし私は、あなたの言うことは聞きません。
  70. 吉野文六

    吉野政府委員 御承知のとおり一九六二年のブラッセルの原子力船に関する条約ですら軍艦を入れることは各国全部反対いたしまして、そのためにいまだに成立しないというような状況でございます。少なくともアメリカその他の主要国は軍艦について規制されるのは困るということを主張しております。考えてみますと、軍艦のような国家権力の最も最終的な象徴のようなものにつきましてはいままではその国の法律以外には規制する方法がないのでございます。これを条約で規定しようとすることも非常に無理があるとわれわれは考えております。
  71. 田中武夫

    田中(武)委員 聞かないと言っておったのだけれども……。  私の言っておるのは、多国間条約ではありません。二国間条約です。少なくとも原潜が入ってくる相手国との間の、この際は日米の条約です、それができないということであるならば、お断わりなさい。
  72. 渡部一郎

    渡部委員長 では、関連して近江巳記夫君。
  73. 近江巳記夫

    近江委員 私は先ほど質問の中で最後に申し上げました米原子力艦原子力事故損害補償に関する特例法、仮称的なものを検討してはどうか、その他適切なということを申し上げておる中には当然条約のことも入っているわけです。それを、どういう答弁があるかということを期待しておったわけですが、時間の関係で引き下がったわけでありまして、何も国内法だけに限れということを言うているわけじゃないのです。条約も当然含めてという意味でございますので、この点だけ誤解のないように申し上げておきます。
  74. 西田信一

    西田国務大臣 アメリカ原潜の入港に関する特別な条約等を考えよという御趣旨でございますが、先ほど外務省が答弁しておりますように、私は非常に困難なことであると考えますが、御趣旨は十分承りました。御趣旨を承ってそれぞれの責任者にも御趣旨は伝えたいと思います。
  75. 田中武夫

    田中(武)委員 そういたしますと、このように理解していいのですか。冒頭読まれましたところの政府統一見解は撤回する、そしてアメリカ原子力潜水艦については日米間にその損害が発生したときにどうするのかということを条約できめます、そうでなかったら答弁になりません。
  76. 西田信一

    西田国務大臣 そういうふうに申し上げているのではないのでありますが、アメリカがいまアメリカ局長も御答弁申し上げましたようにブラッセル条約の加盟につきましても非常な難色を示しておるというような現状でございます。そこで日米間で二国間の条約を結べという御趣旨でございますが、私は安保条約に基づいてアメリカの潜水艦が入港しているということだと理解しておりますが、そういう立場から申しまして非常にむずかしいことであろうというふうに認識をいたします。しかしながら御趣旨の点は承りました、こう申し上げたのでございまして、この統一見解を撤回する、こういうふうにはおとりにならないようにひとつお願いしたいと思います。
  77. 田中武夫

    田中(武)委員 疑問の点を六点ばかりあげて、全部私としてはこれは答弁にならない、こういうことを申し上げたつもりなんですよ。だから最後に申し上げましたように、これは答弁にならないから撤回しなさい。撤回しようとしまいとそれはいいですよ。それならこれが一つ政府見解となってあとあと尾を引きますよ。いいですか。これが既成事実として残って尾を引きますよ。それともう一つは、二国間の条約を結びなさいとこう言う。それはできないと言う。これじゃちょっと困るわけです。したがって、これも理事会の相談にゆだねたいと思いますが、私は内閣を代表しての総理の答弁を要求します。さらに法律的な見解については、先ほど申しましたが、権威ある学者、これの参考人として出頭を求め、その見解を聞いてから判断をいたしたいと思います。失礼ですが、内閣法制局部長さんの答弁では了承できません。以上です。
  78. 吉野文六

    吉野政府委員 はなはだ僭越でございますが、もう一言言わしていただきます。  田中先生の御指摘のような原子力災害ということは、これは普通予測していないような重大な事故になり得るだろうと思います。したがってそのような場合には、アメリカ政府としても重大な責任を感ずるだろうということは予測にかたくないことだろうと思います。したがって、そのような場合にはわが国としても非常に強力な外交を展開できると思います。したがってひとつこの点は日本政府に信頼を置いていただきたい。われわれとしては国民の納得するような、国民安心を与えるような外交をいたしたいと思っております。
  79. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたまたそんなことを言うの。それなら法律なんか要らないじゃないか。政府におまかせくださいということなら、法律も何も要らないです。専制政治、議会民主主義否定にもつながりますよ。そんなことは取り消しなさい。そうでなかったらこれは重要ですよ。政府にまかせ、それなら国会は要らないじゃないか。君は何という答弁をするのだ。これまた外務省局長としては適格性を欠きます。
  80. 吉野文六

    吉野政府委員 お答えいたしますが、私のいま申し上げたことは、アメリカとの関係においてだけ申し上げた次第でございます。(田中(武)委員、「できぬから困っておるのじゃないの」と呼ぶ)
  81. 渡部一郎

    渡部委員長 委員長より申し上げます。  田中質問は保留とし、次の質問者の質問に移りたいと存じます。田中質問に対する扱いは後刻の理事会において扱うことといたします。  次に三木喜夫君。
  82. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 いままで論議されましたことなりあるいは答弁を受けたことについて、多少整理しながらお伺いしたいと思います。  この原子力賠償法あるいは契約法、この二つが一本になって法律として出てまいりましたその段階で、一つの意見として米国原子力潜水艦の問題が出てこなければ、この問題はこのように混乱しないんだ、こういう意見が一方にあるんです。なるほどそのとおりで、今日外務省なりあるいは防衛施設庁あたりから出てきていただいてその見解を伺っておるのは、全くその問題が出たからであります。ところが前の核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案の審議のときに、入港原子力船の諸規制をどうするかということが問題になった。しかしこのときはこういう問題は抜きにして、原子力潜水艦ということはもう別だということで、これははずされておったわけです。だからあえて、前の法律を審議したときにはこの問題は出なかった。ところが今回は原子力災害をどうするかという問題ですね。そうするといまのお話の中でともすれば出ようとするのは、公権力の一番かたまりのような、原子力潜水艦というようなものはわれわれの力では及びません、だからのけておいてくれと言いたげな御答弁があるわけなんです。それでは今度の原子力災害というものをたいへん重視したこの法律案というものが死んでしまうわけなんです。なぜかと申しますと、日本の「むつ」がかりにアメリカへ行くといたしましても、一回ぐらいのものでしょう。数回もアメリカをわざわざ訪問する必要はないのです。ドイツのオットー・ハーン号が日本に来ても、数港には寄港するかもしれません。するかもしれませんけれども、来るのも一回ぐらいなものでしょう。サバンナ号が来たといたしましても、一年に一回というくらいのことでしょうけれども、日本国民として原子力損害あるいは災害というものをもろに受け、心配しておるのは原子力潜水艦の入港なんです。だからこの際、原子力潜水艦の入港というもの、あるいはそれから受ける災害というものを抜きにして、あるいは法理論、外交論、こういうものを抜きにして、この問題を避けて通るわけにはいかないのです。私の聞くところによると、外務省から出たのかあるいは防衛庁から出たのか、それは私は知りませんけれども、政府部内では、科学技術庁のこういう提案のしかたが悪いからこういう問題に関連してくるんだ、野党がそれに飛びついてきて話をするんだというような、いまこういう観測があるというように聞くのですね。あると私は断定できませんけれども、そういうようにいわれておるような節が、私の想像するところあるいは聞いたところを総合する範囲ではあるのです。それはとんでもないことである。なぜかというと、原子力潜水艦というものは、あるいは空母というものは、ベトナムの問題あるいは沖繩の今度の返還の問題を中心にして、当然議題にあがってこなければならぬ問題なんです。そこで、科学技術振興対策特別委員会でこのことが問題になることについては、どこかで問題にならなければいかぬことであったわけであります。科学技術振興対策特別委員会だから、このくらいの見解でまあそこを納得させ得るだろう、こういうような甘い考えはひとつ捨てていただいて、どこでこの問題が議題になろうと、私は真剣に国民として取り扱わなければならぬ問題にいま逢着した、こういうように認識していただきたいと思うのです。いまお話を聞いておりますと、まかしておいてくれ、おれたちは外交でやるんだからということです。こういうようなことではちょっと国民は納得がいかないわけであります。そういう観点に立って、いまから以下問題になるところをよく考えていただいて、そして対処願いたいと思うのです。  そこでこの法律案の持つ意義ですけれども、いまも若干触れましたように、国民サイドに立ってあるいはそこにおる住民サイドに立って、どのようにこの災害を起こさないようにするかということが一つの大きな観点だと思うのです。起こったときにはどうするかという、これがこの法律の持つ意義だと思うのです。だから陸上の原子炉については、いままで損害賠償の業者の責任を五十億としておったのを六十億にして保険をかけさせて、そして災害に対処するところの費用をここに積み立てなければいけない。これは国民が納得しない、こういうことなんです。  それからもう一つ、これは私は前から問題に思っておるのですが、前もそんなことを言ったのですけれども、政府の答弁はやや明快を欠いたのですが、「むつ」が外国へ行くであろうということを想像して、ほんとうなれば海洋観測船だった。それを特殊貨物船にして、オットー・ハーン号と同じようにしまして、そして外国へ行くであろうということを想定して、それ表ればこれに賠償責任をつけなければいかぬ。しかしながら米国日本にやってきたと奏の賠償の限界が五億ドルだ。日本は一億ドル、いわゆるブラッセル条約の線に沿うて一億ドルにしようじゃないか、何かためにすることでこれがつけられたから不明朗な答弁が出てくるのではないか。私どもそれを初めから聞きたいところなんですけれども、そういう明確な答弁はないのです。科学技術庁に聞いてみると、これで鉱石を運搬しても七億円ほど要って、二億円くらいは運賃で入ってくるだろうが五億円の赤字だ。この船はどこが一体持つのですか。おそらく業者としては持たない。企業としては持たない。そうすると政府がどこかに委託しなければならぬということが起こってくると思う。それはそれでよろしい。科学の先取りで、原子力船を日本としてはつくったという経験を得るということが大事ですからね。それはそれの問題にしておいたらいいのですけれども、特殊貨物船として外国に出かける、ここに問題が一つあると思う。それにしましても、一億ドルとアメリカは五億ドルという差があります。こういうようなことが起こってきてこの問題が論議されたのですが、要するに災害をどう受けとめるか、こういう観点に立たなければどうにもならないわけであります。私たちはこういうような背景に立って皆さんに御質問申し上げておるのです。ところが原子力潜水艦というようなダンプカーがいきなり横から出てきて、スムーズにいくべきであろうところのこの審議がいかなくなってしまった。全くけしからぬことだというようなお考えがあるなら、これは直してもらいたいと思う。交通ラッシュのところは、交差点ではやはり交通整理をやっておるわけです。横からダンプが出てくるから問題が起こるのでしょう。私たちは原子力潜水艦はダンプだ、こう見ているのです。そのダンプをどう規制するかということなしに、それを抜きにしてのこの法律案の審議はナンセンスですよ。ところが、まず近江君の質問に対するその答えで、アメリカ局長にひとつお聞きしたいのですけれども、アメリカ局長はえらいことを言ったわけです。公権に対しての民権というものは、特にアメリカに対してはてこに合わぬのですよ、原子力潜水艦なんかはてこに合いますかいなというようないま答弁をされた。私はもってのほかだと思うのです。そんな考え方では日本の国のシビリアンコントロールが、いわゆる軍を主宰する、こういうところに対しましてきくはずがないのですよ、そういう考え方では。ここで科学技術庁ががんばってもろうて、それこそ身命を賭して、ひょっとしたら首が飛ぶかもしれませんよ、こんな問題が与党の中で問題になったら。一科学技術庁、科技特で問題になったあるいは外務委員会とか、予算委員会で問題になったとかいう問題と違いますからね。そういうところで問題に在ったということになれば、科学技術庁に累が及ぶかもしれないという心配を私は持ちます。そうあってはならぬと思うのです。そんなことでよけて通ってもらっては困ると思う。いま話を聞いていましても、長官、えらい意見がましくて済まぬけれども、あなたの態度が非常に不明確ですよ。これに対して非常な覚悟を持ってきょうここへ来ましたか。私らゆうべから夜を徹してこの問題をやっているのですよ。近江君の質問に対しましても、田中君の質問に対しましても、何ら聞くべきものがないじゃないですか。まかしてください、外交でやります、外交でやったらえらい損をするのですよ。限界が百万ドルですよ。アメリカ原子力潜水艦はどういう立場をとって補償するかわかりません、いまのところ。外交交渉でも限界が百万ドルです。そうじゃないですか、いまの話を聞くと。一億ドルは日本の「むつ」でもアメリカに対しては補償せにゃならぬのですよ。向こうが五億ドルと言えば五億ドルせにゃいかぬのですよ、合わすためには、二国間協定をやるためには。そんな低いレベルで交渉を見通してくれておるようなことでは困ると思うのです。まずここからお伺いしたいと思うのです。どうあがいてみたって限界は百万ドル。そしてそれ以外は議会の承認が要るのです。議会まで動かす外交ができますか。日米繊維交渉を見ても、議会まで動かす交渉ができますか。まかしておいてくれとこうおっしゃるのですから、アメリカ局長、あなたにまかしますが、できますか。「(おれはまかさぬぞ)と呼ぶ者あり」いやいや、百万ドル以上はできるか、どういう方法でやるのか、ひとつ聞かしてください。
  83. 吉野文六

    吉野政府委員 先ほど御説明いたしましたとおり、またこの点は周知のことと思っておりますが、いまの百万ドルは海軍長官が自分限りで行政的に解決し得る限度でございます。もちろん、この額をこえる場合には議会により支出権限を与えられなければならないわけでございます。   〔委員長退席、近江委員長代理着席〕  なお、軍艦につきましては、御存じのとおり国際法というものがございまして、これはわれわれが顧みまして、いいか悪いかということは別問題といたしまして、国際的な慣習というのか法規がございまして、お互いにお互いの軍艦については一切規制しないという、これが一つの国家権力の象徴だ、こういうことになっておるわけでございまして、これはもちろん長い目で、将来そういう法律ないし慣行が変わっていくこともあり得るだろうと思いますが、少なくとも現在の状況では軍艦というものはそういうものだとわれわれは理解しなければならないんじゃないか、こういうように考えている次第でございます。
  84. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 そうすると、これを一つ答えてください。  あなたは、NATOでもそんなことにはくちばしをいれていないと、こういうことですけれども、民特法の解説の中にこういうことが書いてある。私は、これはもう前からずっとそう思っておるのですけれども、いわゆる地位協定の十八条五項(e)です。「(賠償金のうち七五%は米国負担する)。これはNATO協定と同じく国際法上の軍隊の法権免除の原則を修正し軍隊が他国の法権に服したことになる(「日米行政協定とそれに伴う民事特別法について)」という点では特殊な立法である。しかしながら日本国が米軍人の不法行為に対してまで責任を負わねばならない法的根拠は無く、被害者にとって被告が国となったとしても国家賠償法の要件で米軍人の故意・過失等を立証せねばならないとすれば手続的にはそれほど容易になったとはいえない」   〔近江委員長代理退席、委員長着席〕 まああとのほうは難点が書いてありますけれども、NATOでもそんなことをした例はないということを、近江君の質問に対して、あなた御答弁になった。これはNATOの例をそのまま日本に持ってきて、そうして法権力というものに対して修正した一つのいい例じゃありませんか。軍艦は聖域であるからだめだというあなたの考え方とはこれはうらはら、全然違うじゃないですか。あなたアメリカ局長ですから、アメリカあるいは国際法についてもよく研究なさっておるのでしょうから、そういう観点をもう少ししっかり立ててひとつ御説明いただきたいと思うのです。私は、そこがわからない。近江君の質問に対して、あなたいまお答えになった。軍艦はなるほど治外法権で別のワクを持っておるでしょう。だからだめだという、こういう考え方はどうかということを言うておる。すでにNATOでもそんなことしたことないとおっしゃるが、NATOやっておるんじゃないですか。
  85. 吉野文六

    吉野政府委員 先ほどの私の答えは多少舌足らずであったかと思いますが、私の申し上げましたのは、原子力損害についてそういう例がNATOではない、こういうことを申し上げた次第でございます。
  86. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 だから言うのですよ。原子力損害とか災害というものは、現代的な慣習をここに持ってこなければいかぬのです。原子力がこれだけ発達してきて、しかも動く原子炉でしょう。この中では国際法の——あなたもブラッセル条約出したでしょう。ちょっとその中の言い方は違っておった。どこの国も入ってないと言っておったけれども、ポルトガルが入っていますよ。ブラッセル条約に入れないというのは軍艦があるから入れないというのも一つあります。しかしながら、ブラッセル条約というものが脚光を浴びてくるのはそれがためですよ。しかもこれを採択したのは、アメリカやドイツや日本原子力船を持っておるところあるいは軍艦を持っておるところはいやかもしれないけれども、後進国と言っては失礼ですが、それらの国はありません。ありませんけれども、原子力災害というものに対してだんだん認識が深まってきておるわけですよ。こわいもんだという考え方は、これは別問題です。災害が起こったときはどういう補償をしてくれるんだということは、これは世界的な観点に立っていま考えなければいかぬ問題ですよ。だからブラッセル条約というものがアメリカの反対で採択されずに、日本もそれに追随してブラッセル条約が認められないわけなんですよ。ドイツは近くこのブラッセル条約の中にみずから加盟して、中へ入ってもしそういう不合理な点があれば改正しようという、こういう考え方でしょう。日本がこれだけ原潜の洗礼を受けて、入港されて、その国会がこれについて考えないというばかな話がありますか。ここで十分考えるということが大事なんですよ。ほかの国よりも日本の国は原子力潜水艦が入る頻度が高いでしょう。だから、この法律と同時にこの問題が論議されてきたわけなんですよ。アメリカ局長、聖域でございますからだめです、こういう考え方はひとつ直してください。どっからか法律によってこれにかかわりをつけていく、こういう努力をしなかったらこれはだめなんですよ。  そこで私は、今度の見解の中で一ところ、これはあるいは後に解釈が違い、また田中さんなんかとでは意見が違うようなところがあろうと思いますけれども、この点では前進したのではないか、私はこう見ておるのですが、これについて科学技術庁から御答弁いただきたいのです。人的損害について原子力賠償法の適用があることはこれでわかったのですが、その際無過失責任集中責任無限責任の三原則適用があるという御説明がいまあったのですが、それはそのとおりでありますか。これは科学技術庁から答弁していただきたいと思います。
  87. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 そのとおりと存じます。
  88. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 そうすると、そこから、これは人的な損害にもせよ、原子力潜水艦がやってきて、そこで人的な損害を及ぼしたときは、日本法律はこれは出てくるじゃないですか。その出てき方は変な出てき方かもしれませんよ。しかしながらその出てくる原子力賠償法という裏には原子力基本法というものがあるのですよ。その原子力基本法は自主、民主、公開、平和の原則が厳然としてあるわけなんですね。それが前に出てくるわけです。ここでつながり、一つのひっかかりができてくるわけです。しかし法体系上は、田中さんが言われるように問題があるのです。出てきて、それによってアメリカ原子力潜水艦事故を起こしてきたときにも、それにひっかかってくる。あるいは自衛隊事故を起こしたであろう想定のもとに、この法律がものをいうというなら、考えようによっては一理あると思うのです。これが一〇〇%信用していいものなら、民意というものがこの軍事に接触したことに私は在ると思うのです。そういう解釈をしていいですか。自衛隊も規制すると見ていいのですか。その点をもう一ぺん聞いておきたいと思います。
  89. 荒井勇

    荒井政府委員 地位協定十八条第五項の規定適用に関して、その人的損害あるいは小規模海事損害について、もし原子力損害が生じた場合に、国内法令に従って処理されるというその(a)項の規定によって処理がされるという考え方が出てきたのは前進であるという御評価をいただいたわけでございますが、この点は昭和三十年代に原潜が最初に入港いたしました当時から、政府としては考えておりました見解でございまして、従来から一貫してそのように考えておるわけでございます。
  90. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 前進とはいえないですけれども、接触点になるということを言っているわけです。前進かどうかということは、あなたの言われた法律全体の体系に立たなかったらやはり問題があると思うのですね。全体的には是認しておる立場を私とっておりませんけれども、接触点にはなり得るということです。ここはわれわれのほうでも論議を呼んだのですけれども、自衛隊がそれに準拠するところの法律と見たときには、国内法全部ですよね、自衛隊にはそういう法律はないですから。近江さんの言われた米原子力潜水艦に対してどうやっていくかという法律は、これはわれわれとしては可能だと思うのですけれども、他国の軍艦を規制することはそれはできないかもしれません。しかし自衛隊に対しては国内法が網としてかぶさってくる、そのうしろには原子力基本法がある、こう解釈されるのですね。  それから近江さんの言われたのは、別に原子力潜水艦の問題に対して日本はどう対処するかという法律をつくらなかったらいかぬじゃないか、こういう言い方だったのですけれども、軍艦はこれは治外法権ですからそんなものこしらえられません、こういう言い方があなたの言い方です。それはそうじゃないでしょう、いまのような観点に立てば。日本の国会として、当然原子力潜水艦に対してどういう交渉をしていくかということをもっと体系的に、いまの百万ドル限界ぐらいのところ、大手を振ってまかしておいてくれという交渉外交がそんなところです、それではまかせられないわけです。百万ドルでまかせいということでは、金目で言うて、変な言い分ですけれども……。その近江さんの言われたことについてもう一ぺん御答弁ください。
  91. 吉野文六

    吉野政府委員 百万ドルという数字は、米国国内法に基づき海軍長官が行政的に支出し得る額でございまして、外交交渉によってわれわれが要求する額ないしは向こうがその結果払う額とは、無関係でございます。
  92. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 わかった。そうなら、あなたのお考えでは、もっとたくさん取れるような交渉ができますということですね。そう解釈していいですか。ちょっと待ってくださいよ。あなたはそういうぐあいに、向こうの法律にたよらざるを得ないという答弁をされておられる。非常に自主性のない、もうこれしかしかたがないのですけれども、たよらざるを得ない、そのたよらざるを得ない相手の責任者が百万ドルと、こう言っておる、行政的にはそれ以外はできないのだという解釈があなたによって下されておるわけです。ところが、それ以上は取り得ると解釈していいのか。日本人的損害に対しては、アメリカの軍隊を日本自衛隊となぞらえて、自衛隊がやったと考えて原子力賠償法が生きるのですから、これを生かして持っていくとおっしゃっておるのか、その辺を聞かしてください。日本法律はこれでございます——日本法律はこれだけではなしに、アメリカとは現にこれから協定を結ばなければいかぬ、二国間の条約を結ばなければならぬ。サバンナ号が来る、日本の「むつ」が行くということになったら、二国間に、一億ドルでけっこうですとか、あるいは五億ドルでけっこうですとかいう、これは現実に協定を結ばなければならぬのですよ。そうすると、あなた方が行かれてやられるなら、この原子力賠償法というものをものさしに持っていかれますかということをいま聞いておるわけです。先のほうから答えてください。百万ドルよりたくさん取れます、そうして、取れて、ものさしは原子力賠償法を持ってまいります、こういうことを言ってください。
  93. 吉野文六

    吉野政府委員 先ほど私の御答弁申し上げました趣旨は、一般に外交交渉で問題を解決する場合は、私人がその国の国内法解決する解決の方法と全然違う側面で行なわれる、こういうことを申し上げた次第でございます。  なお、先ほど私の説明にもありましたとおり、先生最後の点につきましては、政府としては、関係国内法適用された場合と同様な救済が得られますように、最大限の努力を払うつもりでございます。
  94. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 もう少し明快に言ってください。日本賠償法を持っていくのかという問いに対してずばり答えてください。それから百万ドルより多く取れますか、こういうぐあいに聞いておるのですから、そういうぐあいに答えてください。
  95. 吉野文六

    吉野政府委員 そのように努力いたしたいと思います。
  96. 田中武夫

    田中(武)委員 いまの三木君の質問に対する法制局部長の答弁にちょっと関連して伺いたい。  いわゆる地位協定の十八条五項を受けて原子力損害賠償法適用する。それは三十五年の原潜の入った当時から考えておったというのですが、原子力賠償法は三十六年にできておるのですよ。三十五年にはできていないのです。  それから地位協定地位協定とおっしゃるが、地位協定ができた当時にはこういう事態は考えられなかった。予想もしなかった事態なんです。かつて当委員会において原子力発電に関連をいたしまして、電源開発促進法の火力という中に原子力を含むか含まぬかが問題になりました。ところが、当時そういう原子力による発電は考えられなかった、こういうことで法を改正いたしまして、火力の次に原子力ということを入れたという事例がございます。これは協定成立当時予想だにしなかった問題なんです。そうじゃないですか。それをこれに持ってくることもいささか難点があると私は思います。ことに私は三木委員と若干この原子力損害賠償法適用については意見を異にするのですが、いまの答弁で、三十五年から考えておりましたというのはちょっとおかしいのじゃないですか。
  97. 荒井勇

    荒井政府委員 私が先ほど三木委員の御質問に対してお答え申し上げましたのは、三十年代からと申し上げましたので、最初に原子力潜水艦が入港したのは三十五年じゃなくて、問題になり出したのは八年で、現実の入港は九年だったのじゃないかと思いますが、私はともかく三十五年からとお答え申し上げたのじゃなくて、三十年代からと申し上げたわけでございます。
  98. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、三十五年と聞いたから言ったのです。
  99. 荒井勇

    荒井政府委員 それは違います。
  100. 田中武夫

    田中(武)委員 その当時これが問題になった、そう思っておったのです。  それともう一つは、先ほど言ったように地位協定を結んだときには予想だにしなかった事態なんです。それに対してはどういうように考えますか。しかも、ほかの法律もその当時なかったのですよ。あとからつくっていってそれをかぶせた、こういう経緯がありますね。だから、そうじゃないですか。
  101. 荒井勇

    荒井政府委員 地位協定が国会の御承認を得ましたのは昭和三十五年でございますが、その前にいわゆる規制法、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律昭和三十二年に制定されておりまして、その第七十六条では、この法律規定は国に適用があるものとする、国の機関が原子炉を設置した場合に適用があるのであるということを明確に規定しておったわけでございます。そのほか、不法行為がありました場合には民法規定適用されるということがあり、国害賠償法の適用規定があるというのが昭和三十五年の状態関係法律の状況でございまして、その損害を生じたのに賠償規定がないということは毛頭ないわけでございます。それに対して、あと昭和三十六年に原子力損害賠償に関する法律ができましたのは、民法に対する特例として、特別規定として無過失責任責任集中あるいはそれに対する補償措置をいかにするかということを定めたということでございまして、事故が起こった場合の不法行為責任というものに関する法制は現行としてあったわけでございます。
  102. 田中武夫

    田中(武)委員 また議論するともとへ戻るからもう言いませんが、そう答えられるのだったらまたもとへ戻るのですよ。法の範疇が違うのですよ。対象が違うのですよ。それだけ申し上げておきます。
  103. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 有澤原子力委員がおいでになっておりますから、一つ承っておきたいのですが、原子力船の入港、相互に交換するということはもう時間の問題になってまいります。そう在りますと、SOLAS条約との関係で、この入港については当然基準について審査しなければならない、そして総理大臣の許可を求めなければならない。これは、原子力船というものは無害航海をするという範疇に入っていないから、国際法上当然そういうSOLAS条約に入っておるわけなんですが、そうなってくると、現在の「むつ」あるいはサバンナ号、これらの入港と関係しまして、原子力委員会としては、前のSOLAS条約との関連においてどういうように手続を今後とられるのか、手続が変わってくるのか、安全審査をなおなさるのかどうか、端的にいえばそういうことですよ。
  104. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 いま個々的に、商船の場合には、原子炉の設計図その他材料を取り寄せまして一々安全審査をしておりますけれども、やがてその問題は、原子力船がお互いに入港したりするようになりますと、炉の安全性についてそれぞれ国際的に認められたサーティフィケーションを持つようになってくる。それで一応安全を確認するというやり方になっていくと私は考えております。むろん疑わしいところがあればそれは審査ができると思いますけれども、普通の場合におきましては、ちょうどいまの普通の船舶が安全性についての検査証を持っていると同じように、原子炉そのものについての構造とかその運転とか、そういう観点からちゃんと調べられたサーティフィケーションをみなその船として持って、それを提出してその上で入港が認められる、こういうふうになると思います。
  105. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 原子力船の場合はそういうことが当然必要で、あなた方の任務だと思うのです。ところが、だんだん原子炉が多くなってまいりますから、そこで政府としては、この監視機構とかあるいはまた被害の審査、こういうものについてはこのごろ非常に住民参加がやかましく言われておる。どの公害でもほとんど住民が納得しないから、住民から代表を入れてその審査なりあるいはまた監視なりをやらなければいかぬ、こういうことになっておるのですね。海上ではあなた方が御責任を持たれると同時に、これと関連して、陸上の場合の監視体制あるいは損害を審査する、そういう体制を福井県ではとっておられるようですけれども、各方面にこれをとる計画、どういうやり方でやったら一番合理的だろうか、こういうことをお考えになっておりますか。ちょうど有澤先生にいまお尋ねしたので、これもついでにお伺いしておきます。
  106. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 陸上炉につきましてはむろんモニタリング——これは平常運転でございますが、平常運転の場合においては、一応排出につきましては空気についても水についてもちゃんとした規制を行なっておりますが、しかしそれだけではまだ安全でない、その規制が規制どおりに、あるいは規制されている値より、その周辺の空気にしてもあるいは海水にしてもあるいは海産物にしても、そういう規制といかに相違があるかということを常時モニタリングをしなければならぬと思います。  モニタリングにつきましては、原子炉を設置しておる事業者もやっております。それから、その設置されておる地方自治体もやっております。それからもう一つは純然たる第三者の機関がやる。その第三者の機関が地方自治体と一緒になってやっておるというところもあると思います。そしておのおのモニタリングの結果、観測値を常時監視していて、何かそこに異常なことが起こってきたときに初めて寄り合ってこの問題を検討する。それがさらにどうしても地方で片づかない場合には中央の審査会のほうへ持ってきてもらおう、こういう体制に持っていくことを考えておりますが、いま問題になっておるところは、私どもの手で、まあその設置者がやるのはこれは当然のことです。それからもう一つは、地方自治体もやる。その地方自治体と第三者だけ——住民だけからできている第三者といいましょうか、とが独立にしてやるのがいいのか、あるいは地方自治体と一緒になってやるのがいいかという問題。と申しますのは、この観測というのはそう簡単でない。非常に低レベルの放射能でございますから観測がなかなか容易でない。またそれを読み取ることもかなり技術を要する。そういう技術的な問題もそこにあると思いますので、その点をもう少し詰めたいと私どもはいま考えております。
  107. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 それでけっこうなんですけれども、それなら法律で、過密な日本の都市周辺でやるのですから、それに対して法律的にそれを規制していくという用意を持っておられるかどうか。そうでなかったら、やあカドミウムが出たとか硫酸銅が出たとかいうて被害者が出、そこから死者が出てからあわてて法をつくってみても、それはもうしり抜けですよ。だから、ならぬ前に、いまたくさん原子炉をつくっている間にこれをやってもらいたい。法律的に規制していく、厳格なものをつくっていかなければだめですね。そういう用意があるかどうか。
  108. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 法的に強制するということも含めてわれわれは検討しておるところでございます。
  109. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 それなら一つお伺いします。陸上の原子炉はそのとおりですけれども、いま近江君や田中君や私が質問しておるのは、そういう状況のところへ原子力潜水艦、空母等おそろしいものがやってくるのですからね。いまのアメリカ局長のお話のように、原子力の総本山、平和利用のメッカは私は原子力委員会だと思っておるのです。そこにおいてもこれは聖域だからだめだ、困ったことだ——まあモニタリングはしておられますよ。まあ言うたら、あれは原子力潜水艦がへこいたやつをかいで回っているようなものだ、あのモニタリングはね。まあいまやったらへみたいなものだと思います。それよりももっと大きな事故を起こすであろうことに対する対策、いまいろいろ質問いたしました。もう聖域だということで手をこまねいて科学技術庁というワクの中でおられますか。それともこれは何とかせなければいかぬとお考えになりますか、いまの論議を聞いておって。この御意見を承って私の質問を終わります。
  110. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 軍艦につきましては炉の安全性というのか、炉ばかりではないかもしれませんが、原子炉を積んだ軍艦の安全性の問題、それともう一つはそれに対する賠償措置の問題。私ども原子力委員会としましては、軍艦のそういう問題について実際どれくらい検討するだけの権限を持っておるかどうかということも実は問題でございます。しかしそうだからといって、この問題を委員会として不問に付すということではこれは国民が納得しない。そこで三十九年の八月だったかと思いますが、それまでわれわれの持っておる疑問点を、外務省を通じましてアメリカの当局等にただしていただきました。それでアメリカのほうからいろいろ回答が参りました。それ以上にその軍艦の炉そのものの安全性を、たとえば安全審査会にかけるということはわれわれの力ではできません。これはおそらく日本国としてもできないと私は思います。それですから、いま申し上げましたように、われわれが炉の安全性について持っておる、起こり得る疑問点、その疑問点の一つ一つ外務省を通じてアメリカ当局にただしていただきまして、そしてそれに対する回答を得たわけでございます。そうすると、おおむね私どもの持っておる疑問点が氷解をいたしました。ですから、アメリカの潜水艦が入港しても一安全であろうという総合的意見を原子力委員会として発表したわけでございます。  それから賠償の問題につきましては、これも皆さんがいままで御指摘になりましたように、われわれにとりましてきわめて重要な問題でございます。これにおきましては、いまことばどおりは覚えておりませんけれども、日本国民国内の原子炉なら原子炉によってこうむった損害に対する賠償と同様の賠償を受けられるように、政府がその責任において十全の措置をとるべきである。ですから平たく申しますならば、日本賠償法が潜水艦によって起こった事故に対しても、住民の被害者にとっては同様の損害賠償が行なわれるようにすべきであるということを政府に意見として述べた次第でございます。その詳しいことは、それからどういうふうになったかということは私ははっきり存じませんけれども、政府は、その翌日か翌々日の閣議で当時の原子力委員長がこの委員会の意見を発表いたしまして、閣議がこれを了承した、こういう報告を私どもは受けております。それで私たちの言うべきことは言ったと思いますが、ただ言ったとおりになっておるかなっていないかということは一つの問題だと思います。それで、きょういろいろ御議論に在ったような点が私どもに報告をされたわけでございますが、私どもの了解したところによりますと、つまり地位協定やその他の規定でカバーされている損害補償はともかくも、それ以外の物的損害、つまり外交ルート解決をしようというその損害賠償、それにつきましては、アメリカのエードメモワールにおきまして、この問題についてはアメリカ日本政府との外交交渉をせざるを得ない、必ず外交交渉に応じますということが一つ。そして私どもの聞いているところによりますと、損害が起こったときには、当然日本の場合も同様でございますけれども、損害賠償評価委員会というものがあります。ですから、軍艦の場合は、おそらく日本アメリカ委員から構成される損害賠償評価委員会というものができると思います。それが一定の基準、物的損害ではどういうふうな評価の基準がありますだろうか、その評価に従って査定した額について、日本政府外交ルートをもってアメリカ合衆国に要求を出す。まあ外交ルートですね、そういう形になると思います。それでアメリカ政府は、あとはどういう措置になりますかといえば、おそらくそれを国会に出して、国会の承認を経て、それだけのものを支払うべきかどうかということになるだろうと思います。アメリカの国会がそれをどう受け取るかということはいまちょっとわかりませんけれども、もしアメリカの国会がいま評価された損害評価額以下で査定をしたという場合におきましては、私はここにも書いてありますように、被害を受けた個人がアメリカの法廷に訴えることができると思います。その訴える場合には、政府が、まあ防衛庁なら防衛庁が弁護費用とか訴訟費用についてはそれを援助する、こういうことになっておると思います。ですから多少不安定なところがあります。外交交渉外交ルートによっていろいろ折衝をしなければならないわけですから、多少不安なところがありますけれども、私どもの考えているところでは、とにかく原子力潜水艦なら潜水艦で損害を受けた日本の住民の損害賠償は、日本の炉で受けた場合と同等の取り扱いを十分受けるのだ、それは政府が保証しておる、私はこういうふうに考えます。
  111. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 終わります。
  112. 渡部一郎

    渡部委員長 次に石川次夫君。
  113. 石川次夫

    ○石川委員 この法案のいろいろな疑問点については、前から、それぞれ専門的な立場質問がありましたので、私は、国民立場といいますか、きわめて素朴な疑問をひとつぶつけてみたいと思うのです。  その前に、エードメモワールというのを拝見しますと、これはおそらく原子力潜水艦が入ってくるようになったために、それに応じて外交交渉ルート損害賠償ができるという、覚え書きのような形でもってこれがかわされたと思っております。これには、「いかなる場合にも、前記の地位協定適用されないときは、合衆国政府は、寄港している通常の原子力潜水艦に係る原子力事故から生ずる請求を、外交上の経路を通じて処理する用意があることを保証する。」これは当然のことだと思うのですけれども、「原子力潜水艦」と書いてありまして、このごろは、ほかの巡洋艦でもあるいはまた航空母艦でも原子力船であるという可能性が非常に強いわけですね。これは原子力潜水艦に限らず、そういうものについても適用されるということを確認されておりますか。これはアメリカ局長
  114. 吉野文六

    吉野政府委員 確認されております。
  115. 石川次夫

    ○石川委員 それはどういう文書で確認されておりますか。
  116. 吉野文六

    吉野政府委員 昭和四十二年十一月二十日付の口上書によって確認されております。
  117. 石川次夫

    ○石川委員 それは確認されたということにしておきましょう。  それで、この協定というか、この法案が十年前に出ましたときは、私も関係しておったわけでありますが、原子力潜水艦というのは問題にならなかった。寄港という事態が起こらなかったということで、この損害賠償補償法案はいろいろな付帯条件つきで通過を見たわけでありますけれども、しかし、これは、その後原子力潜水艦なり、あるいはまたサバンナ、オットー・ハーンというふうな問題が出て、現実にこれは軍艦を除外するということははっきり書いてないわけですから、やはり先ほど三木委員が言うように、ダンプカーのように原子船が入ってきたといいますけれども、当然これは入れた考え方でなければ、この法律は完ぺきなものにならないということになるのは、これはけだし当然だろうと思うのです。  そこで、いろいろな問題が波及してまいったわけでありますけれども、オットー・ハーンとかサバンナが日本に入港できなかったという事情は、向こうの法案と、こちらの損害賠償法案との均衡がとれないということで、せっかく向こうが入港したかったのに入港を拒否したという事実があったわけです。ところが、原潜については、無条件といって、まあ口上書がありエードメモワールがあるということを前提としてやったわけでありますけれども、全然補償に対する根拠法がないわけですね。いま確かに、人的資源についてはどうのこうの、あるいは物的損害について、小規模のものどうの、大規模のものどうのというふうな分類を一応の統一見解として承りました。承りましたけれども、エードメモワールによっても「海事請求解決権限法は、海軍長官に対し、百万ドルの額を限度」とするということが明記されておる。それで長官の単独の権限では一万五千ドルということになっておる。それ以上どうするかということになれば、「一件ごとに歳出承認を求めるため、議会に報告されることとなっている。」ということになっておるし、日本国内根拠法は、特殊海事損害賠償請求特別措置法というものを、今度防衛施設庁が窓口になって請求をすることになっておるけれども、これは当然無過失賠償責任を含んでおるということにはなっておらぬわけです。通常の損害というふうに解釈するのが妥当であろうと思うのです。したがって、オットー・ハーンあるいはサバンナ号というのは、設計も公開をされておるし、安全性も、われわれは立ち入ってこれをある程度確認することができるという前提のものですら、そして、しかも賠償法という法案が確定しないために、寄航を拒否している。ところが、原子力潜水艦のごときは、領海の中へもぐっていたらどこにいるかわからぬというような、きわめて危険きわまりない。しかも、外交ルート交渉するといっても、外交ルート交渉する根拠法というものがきわめて乏しいわけですね。全然ないといってもいいくらいです。現在のものは、無過失賠償責任なんかは全然どこにもうたってない。ただ単なる損害賠償請求権規定しているだけなんです。こういうきわめて不安定なものを、軍艦であるからということでもって無条件に入れるということは、国民感情としては私はどうしても納得でき互いのじゃないかと思うのです。これは一たん事故が起こったらどうなのだといったら、外交交渉でやります、外交におまかせください。しかし、オットー・ハーンやサバンナ号なんかについては、きちっとした規定ができておる。賠償の基準というものがある。しかもそれがお互いに了解がつかないうちは入港もさせないというふうな、厳格な基準をつくっておる。  ところで、この原子力潜水艦の安全性についてどうのこうのということをいまここで申し上げると時間がかかりますから申し上げませんけれども、これは寄港の問題のときに私はたいへんこれを問題にしたことがあるのです。この間は、異常放射能が出たということで、佐世保にも参りましたし、それから横須賀にも参りました。船にも乗せてもらいました。見ましたけれども、原子炉はどうしても見せてくれません。それから、これにはサブロックというのが載っかっているはずです。完全に核弾頭のサブロックが載ってないなんというばかなことを信じているのは日本政府だけであって、世界じゅうの国民は全部、サブロックが載っかっておるということを確認をしておる。そのサブロックを見せてくれといっても、これは絶対見せません。危険きわまりないものであることは言うまでもないことなんです。しかもこの原潜の原子炉は非常に特殊な設計であります。PWRによってはありますけれども、これはわずかに制御棒は十三本しかないといわれておる。そうしますと、一本一本の荷重というものは非常なものです。なぜこういうふうな簡単な機構になっておるかといえば、これは戦時体制、緊急の事態に対応するために、取り扱いが簡単でなければならぬというようなことで、この制御棒などというものも極力節減をしておるというようなことからいいまして、このオットー・ハーンとかサバンナ号とかというような、安全第一に、設計が公開をされておるものと比べまして、きわめて危険きわまりないものではないかというふうにわれわれは理解をせざるを得ないわけなんです。しかも、それが、外交ルートで、エードメモワールでもってやりますということだけで、国の根拠法となるものが何にもないというような状態のままで寄港をさせるということは、国民感情として私は許されないと思うのです。私たちは、もちろん、社会党でありますから、この軍艦が寄港するということについてそれ自体反対なんでありますが、それを百歩譲って、もし原子力潜水艦あるいは原子力空母、あるいはそのうち原子力巡洋艦あるいは戦艦もできるでありましょうが、そういうものが来るという前には、当然、外交ルートで折衝しますというのではなくて、議会の了解を得なければならぬのだということではなくて、完全な協定なり条約ができるということが前提でなければ、私は国民感情としてはこれは入れるべきではない。したがって、現在入れているのは違法で、国民感情に反すると私は思うのです。  一言だけ申し上げたいのですけれども、いまのような、特殊海事損害賠償請求特別措置法などというような、あぶなっかしい、通常の場合の賠償を要求するような形のこういう根拠法だけではなくて、また議会の了解を一々得なくてはならぬというような形ではなくて、ちゃんとした条約をかわさないうちは原子力軍艦というものは入れるべきではない、これは当分保留する、こういう決然たる態度がなければ国民は納得できないと思うのですけれども、この点について、長官局長の意見を聞きたいと思うのです。
  118. 西田信一

    西田国務大臣 原子力軍艦の入港に関しますることは、これは外交あるいは防衛に関する事柄でございますので、私からその適否について御答弁申し上げることはいかがかと存じますが、しかしながら、その安全等に対し、あるいはまた賠償問題等に対しまして善処しなければならないという御主張に対しましては、十分耳を傾けてまいりたいと思います。
  119. 吉野文六

    吉野政府委員 ただいまの長官の御説明を補足して御説明申し上げますと、言うまでもなく日米安保条約わが国の安全を保障するためにわが国が締結した条約でございます。この安保条約に基づきまして、地位協定というものが締結されておりまして、これによりアメリカ軍艦わが国の施設内に入ることができるわけでございます。原潜もその例外ではございません。ただし、その出入に伴って、損害賠償についてはすでに御説明いたしたとおりでございますが、さらに政府といたしましては、国民の、原子力艦艇に対する特殊の感情を顧慮いたしまして、米国原子力潜水艦及び艦船については、特に先ほど有澤委員が御説明したとおり、先方に疑問点その他を確認いたしまして、その安全性につき十分納得を得た上で入港を認めた次第でございます。
  120. 石川次夫

    ○石川委員 アメリカ局長、変なことを言うようだけれども、安全性を十分確認したとかしないとか、あなた、そんなことわかるんですか。あなた専門家じゃないでしょう。
  121. 吉野文六

    吉野政府委員 原子力委員会の意見を聞いて、そのように判断した次第でございます。
  122. 石川次夫

    ○石川委員 これは議論になりますから、あまり言いたくないのですけれども、原子力委員会だって、設計図を見ているわけじゃないんですよ。ちゃんと設計図を見て、品物を見て、それでこれは安全だというのじゃなくて、大体において、アメリカがだいじょうぶだと言うからだいじょうぶだ——たとえば佐世保において異常放射能が検出をされた。横須賀において異常放射能が検出をされた。われわれ現地へ行って調べました。しかしながら、アメリカは、これは第一次冷却水ではないんだと言うからそうではないと信ずるという答えばかりなんですよ。こんなばかげた答弁はないと、いつもわれわれは憤慨しているわけなんです。アメリカ局長が、安全だということを確認したなんということをぬけぬけと言ってもらっちゃ困りますよ。ということは、この原子力潜水艦関係は、少なくともこの設計は、大ざっぱなものでしか私は見ておりませんけれども、きわめて操作が簡便なものになっているんです。普通のものの数分の一あるいは十分の一ぐらいの制御棒しか使っておらないというような設計になっておりまして、これは戦争事態に応ずるために、操作を簡単にするというためにやむを得ないでしょうし、ソーナーにつかまらないための一つの防御策ということもあるだろうし、公開された原子力船と違う、それよりはるかに危険度の高いものだということは、これは常識なんです。したがって、ごらんなさい。原子力潜水艦は相次いで事故を起こしているじゃありませんか。そういうことを知りながら、安全性を認めた上で、なんということは、ぼくは、日本のだれも言う資格がないと思うんですよ。国民はだれも、これは不安に思っているんですよ。しかも、そういう事故が起こった場合にどう対処するかということは、これは端的にいって外交ルートしかないんだという、こういうような非常に不安定なものであったのでは、国民は納得ができない。したがって、そういうことについてもっときちんとしたルールをつくる——協定なり条約なり、これは協定でも条約でも条約になるわけでございますけれども、そういうものをきちんとつくるまでは、国民としてはこれは受け入れがたいという国民感情であろうと私は思うので、この点を強く要請して、一応打ち切ります。
  123. 渡部一郎

    渡部委員長 では、次に山原健二郎君。
  124. 山原健二郎

    ○山原委員 私は、本日の、長官から出され、補足されましたところの、先日来問題になっております、いわゆる政府統一見解の発表について、第一項の地位協定の問題は一点だけ、あと二、三項の政府交渉米国救済法の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  まず最初に私の感想を申し上げますけれども、原子力潜水艦原子力艦艇事故並びに安全性の問題について非常に敏感でない感覚を持っておられるということを、先ほどからの質疑応答の中で感じることができたんです。現在アメリカが持っておる原子力潜水艦が八十五隻です。さらに原子力空母または原子力フリゲート艦を入れますと八十九隻になっております。そしてわが国へ寄港した回数は、私の調べましたところでは四十四回となっているわけですね。しかも現在原子力潜水艦日本近海を遊よくしていないという保証はないわけですが、最初に防衛庁にお聞きしたいんですけれども、原子力潜水艦の寄港は別といたしまして、日本近海において、アメリカ原子力潜水艦が常時どの程度遊よくをしておるか、聞かしていただきたいんです。
  125. 吉野文六

    吉野政府委員 わが国の近海で遊よくしておる、アメリカのみならず、その他の国の艦船の程度はどのくらいあるかということはわれわれもつかんでおりません。
  126. 山原健二郎

    ○山原委員 日本近海における原子力潜水艦を含む潜水艦の演習指定地域というのは何カ所ありますか。
  127. 吉野文六

    吉野政府委員 何ぶん、公海で演習している限りは、いわばどこで演習しても、これは彼らの国際法上の権利でございますから、われわれとしても何カ所ぐらいあるか承知しておりません。
  128. 山原健二郎

    ○山原委員 私は、そういう答弁だから問題が起こると思うのですよ。米潜水艦の演習指定地域というのはあるんです。たとえば土佐沖はそうですよ。日米安保条約を結ばれて以来今日まで、あの土佐沖の、足摺岬と室戸岬を一直線に結ぶ北側の、土佐湾といわれておるところは、これはもうすでにアメリカの潜水艦演習場として指定をされております。しかし、そこでどのような演習が行なわれておるか、あるいはどういう様態に置かれておるかということは、県民に対しても報告は一度もありません。外務省はそのことを知らぬのですか。土佐沖はどうですか。
  129. 長坂強

    長坂政府委員 防衛施設庁関係としましては、いわゆる漁船の操業制限法に基づきまして操業の制限をする場合には関連を生ずるわけでございますけれども、いま御質問の事柄につきましては操業を制限する必要がないことでございまして、したがって私どものほうとして関連を生じてまいらないような状況でございます。
  130. 山原健二郎

    ○山原委員 土佐沖の場合は潜水艦演習場として指定をされていることすらわからないわけですか。
  131. 渡部一郎

    渡部委員長 山原君に申し上げますが、本日は政府原子力損害賠償法に関する統一見解を主にして質疑が行なわれておりますので、その線で質疑をお願いします。
  132. 山原健二郎

    ○山原委員 それに関係してきますけれども……。ちょっと、答弁があるそうですから。
  133. 長坂強

    長坂政府委員 土佐沖の海上訓練場として指定がございます。
  134. 山原健二郎

    ○山原委員 そういう質問をなぜしたかといいますと、突如海中から黒い船体が浮かび上がって、そのことによって漁船が被害を受けた事実もあるわけですけれども、どういう演習がなされておるのかあるいは原子力潜水艦が来ておるのかどうかもわからないというふうな状態で、もうすでに安保条約以来そういうことが長い期間置かれておる、そういうことに対する政府の敏感な対応のしかたが足りないという意味で私は申し上げたわけです。  それからもう一つは安全性の問題でありますけれども、先日、私の質問の中で、すでに原子力施設の中で百十数回の事故が起こっておる、しかもそれは百万ドルをこすものであり、人命に損傷を起こした事故があるということを言ったのですけれども、これは原子力局長知らないという答弁をされたように思うのですが、これは科学技術庁の出しております「原子力ポケットブック」の中にあるわけですが、そういう事実を知らないのか、ちょっと伺ってみたいです。
  135. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 この前先生おっしゃられましたときに内容でよくわかりませんで、よく調べましたらそれに載っておるものでございました。これにつきまして、炉そのものが研究の過程で事故といいますか異状を起こしたとかいうのを入れまして約百件ほど載っております。
  136. 山原健二郎

    ○山原委員 次に、地位協定の十八条第十二項にありますところの、第二項、五項に関する規定は「非戦闘行為に伴って生じた請求権についてのみ適用する。」という文章になっているわけですが、非戦闘行為ということについて具体的に説明していただきたい。
  137. 吉野文六

    吉野政府委員 第十八条は一応普通の場合を想定して書いたわけでございまして、その意味で第十二項がその点を特に明らかにしているわけでございます。でありまして、安保条約の第五条を適用するような事態になりますと、おのずから事態が違うということになります。
  138. 山原健二郎

    ○山原委員 非戦闘行為というのについて一例例をあげて申し上げたいと思うのですが、一九六八年の一月十五日エンタープライズがハワイの沖で爆発事故を起こしております。その直後に佐世保に入港しておるわけですね。このエンタープライズのその後の行動から見ますと、エンタープライズはその後ベトナムへ行っているわけです。佐世保に寄ったエンタープライズの行動というのは非戦闘行為なのか戦闘行為なのか伺ってみたい。どういう解釈をするのか。
  139. 吉野文六

    吉野政府委員 非戦闘行為だと思います。
  140. 山原健二郎

    ○山原委員 では、戦闘行為というのは、現実に原子力潜水艦というものが相手側に対してたとえばサブロックを発射するとかいうようなことのみが戦闘行為といわれるわけですか。そのほかの航行の途中における行為というのは非戦闘行為というふうに外務省としては理解しておるのですか。
  141. 吉野文六

    吉野政府委員 軍艦につきましては現実に戦闘を行なっている場合が戦闘行為でございます。
  142. 山原健二郎

    ○山原委員 そうしますと、アメリカの潜水艦、原子力潜水艦あるいはフリゲート艦あるいは原子力空母というものがわが本土にしばしば寄港をいたしましても、これはほとんど全く非戦闘行為として見られるわけですね。
  143. 吉野文六

    吉野政府委員 そのとおりでございます。
  144. 山原健二郎

    ○山原委員 次に、この賠償問題に対して、特に米国原子力潜水艦事故を起こした場合にその賠償はどうなるのかという問題から端を発しておるわけでありますけれども、この問題について三つの、一つ口上書一つ日米安保委員会における合意書というものとエードメモワールというものがあるわけですけれども、それについてちょっと伺っておきたいのです。  一つは、要するに九十万円以上、二千五百ドル以上の損害については、結局のところ、皆さん方の話を聞いておりますと、アメリカの裁判にかけるあるいはアメリカ議会の審議にかけるということ以外に日本国民の安全の保全は行なわれないというふうに考えるわけですが、そういう簡単な理解でよろしいですか。
  145. 吉野文六

    吉野政府委員 先ほど私から御説明いたしたとおりでございます。なお、有澤委員もこの点について触れたと理解いたしております。
  146. 山原健二郎

    ○山原委員 米国の三つの救済法について触れてみたいと思うのですけれども、海事請求解決権限法、この場合は、一つは百万ドル、いわゆる三億六千万円以下の場合は海軍長官権限にかかる、それからもう一つは、それ以上の場合は議会の承認を必要とする、こういうふうになっております。それから合衆国外国請求法によりますと、一つは合衆国が当該損害を生ぜしめた旨の立証が必要ということになるわけです。この立証の問題についてあとで伺いたいのでありますが、二番目は、一・五万ドル以下すなわち五百四十万円以下の場合は三軍長官の支払いで行なう。それ以上については議会の承認が必要であるというのが合衆国外国請求法の中身だと思うのです。もう一つ公船法の場合、これは合衆国政府に対する訴訟による解決か、または示談、こういうことになるわけでありますけれども、日本国の権益を守るという立場から申し上げますと、立証の問題です、裁判にかける場合にも、合衆国の議会にかけます場合にもこの立証の問題がきわめて重大な問題になってくるわけです。立証できるという可能性というものがなければ、これは全く日本側にとりましてはまさに従属的な状態に入るわけでありますが、この損害の立証ということを、米国側によって引き起こされた事故であるという立証が今日の日本の現状の中でできる状態にあるのかどうか、この点について伺っておきたい。
  147. 荒井勇

    荒井政府委員 原子力事故が起こった場合の損害賠償責任の追及について、その一般原則としての故意、過失という要件が適用されるかどうかというほかに、確かにその原因者が国内法の場合であれば、あの特定の原子力事業者である、あるいはいま問題にされておりますような原子力軍艦による損害であるということは、これは国内原子力損害賠償に関する法律適用する場合にも、その第三条に「当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは」ということを書いておりますように、だれが原因者であるということは請求手続においてはもちろん立証が要るわけで、その点は、国内の場合もあるいは国際的な問題の場合もちっとも変わりはないということでございます。
  148. 山原健二郎

    ○山原委員 そこが違うんじゃないですか。たとえば、「むつ」が就航します場合にはおそらく寄港地から寄港地の時間の配分とか航行というものが決定されていくと思うのです。「むつ」の場合は、たとえば大阪港を出発して東京には何時何分に入るということが厳重に規定されると思うのです。ところが、アメリカ原子力潜水艦はどうですか。全然秘密になっているじゃないですか。だから、スレッシャー号の沈没だって、これは新聞記者がキャッチして世界に報道しただけであって、ほとんど秘密裏にされて、沿岸の航行などについてはほとんど秘密なんでしょう。だから違法性の指摘さえできないのです。私はそういうふうに思うのです。「むつ」の場合は厳重に規定どおり動いていくという中で、事故が発生する場合は捕捉はできると思いますけれども、ほとんど秘密にされておる状態の中で違法性すら指摘することができないという状態原子力艦の場合は置かれるのではないか、そういうふうな考えを持つわけですが、この点についてはどうですか。
  149. 吉野文六

    吉野政府委員 入出港の場合には二十四時間前に通告がございます。公海の場合には一般の船による災害などと同じような状況が現実には起きるのではないかと考えております。
  150. 山原健二郎

    ○山原委員 米国原子力潜水艦の沿岸における航行については日本政府に対して、何時何分にどこから出発してどういうところを動いておるかという報告はあるわけですか。——ないでしょう。二十四時間前に寄港地だけでしょう。だから、その途中において事故が起こった場合はどうなるのですか。
  151. 吉野文六

    吉野政府委員 ただいま申し上げたとおりでございまして、入出港のみについて通告がございます。
  152. 山原健二郎

    ○山原委員 だから、米原子力潜水艦日本沿岸において、たとえば航行しておる途中で事故を起こした場合にこれは捕捉のしようがない。だから、アメリカ裁判所へかけたって、アメリカ議会へかけたって、米国によって生じたところの被害であるという立証措置というものは日本政府にはないんじゃないですか。二十四時間前に寄港すると——横須賀あるいは佐世保というところでは、あるいは放射能汚染とかそういうことはできるかもしれませんけれども、そういうことがべールに隠されたまま事故が起こった場合、だれがこれを捕捉してだれが米軍によるところの損害であるということを実証できるのですか。立証して、そして裁判にかけるわけでしょう。それができなければ裁判にもがけようがない、そういう状態の中で非常に大きな悪条件をかかえたまま裁判に入るというようなことすら予想されるわけでありますが、先ほどからの答弁では、外交交渉によって万全の措置を講ずる、絶対にそのような損害を起こすようなことはしないと言われておりますけれども、その辺のことについてはっきりしたものが日本政府にはいまないわけですね。何をもって一体裁判にかけるのですか。
  153. 吉野文六

    吉野政府委員 いずれにせよ、これは事実問題でございますから、そのつどそれによって確認するよりほかしかたないと思います。これは何も原子力潜水艦に関するだけの問題ではないと思います。
  154. 山原健二郎

    ○山原委員 日本の「むつ」は何時何分にどこを出発してどこへ行くということは規定されるというふうに私は考えておりますが、アメリカ原子力潜水艦の場合には、いまお話がありましたように、航行中の問題は秘密にされておる。日本政府は関与する余地がない。そこで事故が起こった場合、何を立証するかということに対する答弁としては、いまの答弁は全く答弁にならないと私は思うんですよ。さらに、エードメモワールの場合を見ましても——あまり時間がありませんし、二時から本会議でありますから、早口に申し上げますけれども、アメリカ合衆国が原子力軍艦に関する情報の提供に関する法令上及び秘密保護の制約の範囲内においてと限界をしておるわけでしょう。だからまさに米軍の秘密保持上、情報の提供はしないということをエードメモワールの中にははっきり書かれておりますし、またアメリカが発表しました昭和三十九年八月の、外国の港における合衆国原子力軍艦の航行に関する合衆国政府の声明を見ましても、合衆国政府は寄港に関連し、受け入れ国政府に対し原子力軍艦の設計または運航に関する技術上の情報を入手する目的で原子力軍艦に乗船することを許可することはできない。また日本原子力委員会も、合衆国原子力潜水艦の寄港問題についての総合見解として、これは最初に原子力潜水艦わが国に寄港する場合でありますけれども、当委員会原子力潜水艦国際法軍艦としての特殊な位置を有するものであることから、国内で建造する原子力潜水艦の場合のような安全審査を行なうことはもちろん、外国原子力商船に対すると同様な措置をとることは不可能であるとみずから認めているわけでしょう。こういうみずからも認め、アメリカ政府も申しておりますところの——アメリカの潜水艦の中に入らさぬというのですからね。そういう秘密、情報の提供もしないといっている中で事故が起こった場合に、何をもってアメリカ裁判所で争うのですか。日本国民は争いようがない状態に置かれておるのが今日の状態ではないですか。私はもう一回お聞きしますが、そういう場合、事故が生じたときの原因調査をだれがやるのですか。
  155. 吉野文六

    吉野政府委員 そのような損害の認定等については必要な専門家の協力を得てやるということになるだろうと思います。
  156. 山原健二郎

    ○山原委員 専門家の調査というものは必要ですよ。しかし専門家が入るには条件があるわけでしょう。たとえば、軍艦の中に入って原子炉を調べる、あるいは航行というものが日本近海においてどういう航行をしておるかというような諸情報というものが専門家につかめられなかったら、幾ら専門家だって何の根拠もなしに調査できないじゃないですか。その一番肝心な情報の収集さえできない状態に置かれておいて、どうしてアメリカへいってしかもしばしば——私ここに持ってきておりますけれども、沖繩において米軍が行なってきたことによるところの被害に対してほとんど泣き寝入りに終わっているわけですよ、そういう状態。沖繩はわが日本国の沖繩県でしょう、そこにおいて行なわれておる諸事故はほとんど泣き寝入りですよ、そういう状態の中でいま「むつ」を就航させるにあたって、こういう厳重な損害賠償法をつくろうとしておるときに、肝心の、八十九隻もあり、しかもすでに日本に四十四回も寄港しているところの、一番しかもしばしば事故を起こしておるところの、衝突事故さえ起こしておるところの米原子力潜水艦艦艇に対する何らの規制措置がないということでどうして日本国民の安全と生命を守ることができるのですか。
  157. 吉野文六

    吉野政府委員 先ほど先生が引用なさいましたエードメモワールの個所は、これはわが国の情報提供に対する質問に対する答えという意味で、機密保護上の制約の範囲内において答える、こういう趣旨で書いてあるわけでございまして、事故の立証とかいうものとは問題が違うだろうと思います。事故につきましては、その起きたつどその事実関係について調べることになるわけでございますが、この点については別に機密とか軍機保護というようなことがないだろうと思いますから、それについては先方は協力を惜しまないだろうと思います。
  158. 山原健二郎

    ○山原委員 もう時間がありませんのでおきますけれども、エードメモアールをここへ持ってきております。  ではなぜ日本政府はこのエードメモアールの回答に対して、この立証の措置を講ずるだけの交渉をしなかったのですか、いままで、そういうことであるならば。政府質問に対する回答として出てきておるのだからそれだけのものだというこの回答の中に、そういう情報の提供をしないということがあるならば立証措置がないわけですから、なぜ情報を提供しないのか、もし事故が起こった場合に日本国民の安全と生命を保全するために立証の措置が講ぜられるようなことにしてもらいたいという要求をなぜしなかったのですか。今日までそれをほうっておいて私がこれを出してくると、これは単なる回答だというふうにいわれても、これは納得するわけにいかぬわけです。  実際に、私は最後に申し上げますけれども、原子力潜水艦事故を起こした場合に、日本国民の安全と生命を保障する措置はいまのところないということです。寄港地における汚染とかそういうことについてはあり得るかもしれませんけれども、第一日本近海における航行の秘密が保全されておって、どうしてそれを立証することができますか。だから私は外務省当局がけさから言っておられることに対して、うしろで聞いておりまして、ちっとも安心するような気持ちにならないわけです。何かことばの上でごまかしごまかししているような感じしか受けないわけです。日本国民が一番心配しているのはそこのところでしょう。しかも、アメリカ原子力潜水艦が一番入ってきておるこの日本において、しかも一番最初の世界における被爆者として、一番関心を持っておるこの問題について、なぜそこまで詰めたところの交渉が行なわれないのかということです。そのことについて伺っておきたい。まさにこのことが私は日米安保条約アメリカに対する従属性の非常に端的なあらわれだ、最も集中してあらわれておるところだということを指摘しておきたいのです。これについて考え方を伺っておきたいのです。
  159. 吉野文六

    吉野政府委員 先ほど申し上げましたように、日本の港に入港し、ないしは出港する場合には二十四時間の予告がございますから、その範囲内においてはわれわれは知ることができるわけでございます。  なお事故のような場合には全然事態が違うのでありまして、これは損害の立証ということでございますから、その範囲内においては当然先方としても協力し、調査するだろう、こういうように考えておる次第でございます。  なお、日本の近海ないしは公海においては、アメリカ軍艦のみならず他国の軍艦も航行しておるわけでございますから、いずれにせよ、この問題は日米関係のみには限らない、こういうように理解しております。
  160. 山原健二郎

    ○山原委員 この問題は非常に重大な問題であって、おそらくお聞きになっております各委員の方もいまの御答弁では納得できないだろうと思うのです。またおりもあると思います。疑問もいろいろ出てきたところだと思うのです。  私は最後長官に伺っておきたいのですが、これは政府としてもこの辺のことが明らかにならない限り、先ほど田中先生が言われましたように、アメリカ原子力潜水艦の寄港は当然問題が明らかになるまで拒否すべきだというふうに考えますし、またブラッセル条約の問題にしましても、やはりこれは積極的にわが国としては検討していく必要があるということを考えておるわけですが、その点についての見解を伺って、食事も皆さんしなければならぬと思いますので、もう時間がありません。いまの問題についてはまた時間があると思いますし、そのときにいたします。また、皆さんからも御発言があると思いますからよろしく……。
  161. 西田信一

    西田国務大臣 まずブラッセル条約の問題でございますが、これはこの前もお答え申し上げましたが、われわれとしても前向きの姿勢で取り組んでまいりたい、ただ問題がございまして、無限責任と一方は有限になっておりますので、そこら辺の調整ということも大きな問題でございますから、十分それらを含めまして前向きで検討をしてみたい、こういうふうに存じます。  それから米国潜水艦の入港の問題につきましては、先ほどお答え申し上げたのでありますが、これは日米安全保障条約を基礎にいたしましてその入港を許しておるわけでございますが、安全性確保の問題あるいはまた賠償等に対するわが国の主張が通るようにということにつきましては十分考えていかなければならぬ問題だと存じますが、それまで入港させないというようなことにつきましては私の立場でいまここで申し上げることは遠慮させていただきたいと思います。
  162. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に。先ほど損害が起こった場合の立証の問題につきましては、またあとで、先ほどの案件もあるようですから、理事会におきまして検討していただきますように委員長に要請しまして質問を終わります。
  163. 渡部一郎

    渡部委員長 午前の会議はこの程度にとどめ本会議散会後委員会を再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後一時三十九分休憩      ————◇—————    午後三時三十六分開議
  164. 渡部一郎

    渡部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、政府委員荒井法制局第三部長から発言を求められておりますので、これを許します。荒井法制局第三部長
  165. 荒井勇

    荒井政府委員 午前中の審議におきまして、田中先生からアメリカ合衆国の原子力軍艦事故を起こした場合の損害賠償請求に関しまして、それは地位協定のほか外交交渉によって処理する面があるという政府側のその根拠は何かというお尋ねがありまして、私はちょっとその趣旨権限的な意味根拠というふうに誤解をいたしまして、お答えを申し上げましたが、先生のお尋ねの趣旨はその基準となるべきものさしとしての根拠法は何かというお尋ねでございましたので、その点私は権限的な意味のものと誤解をいたしましてお答えを申し上げましたので、これを取り消さしていただきたいと存じます。
  166. 渡部一郎

    渡部委員長 西田国務大臣より発言を求められておりますので、この際、これを許します。西田国務大臣
  167. 西田信一

    西田国務大臣 万一原子力潜水艦による原子力事故により被害が生じました場合の被害者救済につきましては、政府といたしまして午前中の本特別委員会におきまして有澤原子力委員から答弁申し上げたとおり原子力損害賠償法によります場合と均衡を失しないよう万全の措置をとってまいる所存でございます。  なおこの点につきまして昭和三十九年八月二十六日の原子力委員会決定がございます。すなわち「万一寄港する原子力潜水艦に関連して原子力損害が発生した場合に、その損害に基づく請求であって日本国アメリカ合衆国との間の相互協力および安全保障条約第六条に基づく協定適用を受けないものは、外交上の経路を通じて処理されることとなっているが、この場合、被害者に対しては国内の原子炉の運転等による原子力損害が発生した場合に原子力損害賠償に関する法律によって行なわれる補償と均衡を失しないように国がその責任において適切な措置を講ずべきである」これを受けまして、昭和三十九年八月二十八日の閣議においてその趣旨に沿い適切な措置を講ずることを了承いたしておるところでございます。したがいまして、日米間の外交交渉を行ないます場合には、さきに申し上げました閣議了解に基づき原子力損害賠償法の精神にのっとって国内原子力損害に対する賠償に劣らぬ結果を実現するよう、その処理について日米両国政府間の合意に達するよう最善の努力を払う所存でございます。
  168. 渡部一郎

    渡部委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。田中武夫君。
  169. 田中武夫

    田中(武)委員 いまの大臣の所信の表明、その場合に、外交交渉を行なう場合は、こういうことだったのです。われわれの主張しておるのは、事前にそういう合意をしておけ、こういうことなんですよ。いまの発言だと、損害が発生したそのあと外交交渉を行なう、その場合はこうやりますというように受け取れるのです。そうでなくて、損害がいつ起こるかわからない、したがって、国内法でこれだけの制度を置いたのだから、これに劣らないような措置なりあるいはアメリカ責任を持たすような外交交渉を事前にやっておけ、それはわれわれは名前は協定でも条約でもいいが、ともかく条約に基づいておやりなさい、こう言っておるわけなんです。したがって、条約を結びますということは、これはあなただけでは答弁できないと思います。その点は了解します。しかし、事前に行なうことですよ。損失が発生して外交交渉を行なうときにはということではなしに、事前にそういうことを合意に達するようにやる。そうでなくては意味をなさぬと思うのですが、いかがですか。
  170. 西田信一

    西田国務大臣 原子力委員会の決定の趣旨も、必ずしも事故発生後のことだけをさしたのではないと存じます。したがいまして、私は、事故が万一起きて、そうして不幸な事態が起きました場合のことを決意を申し上げたわけでございますが、この原子力委員会の精神は、やはりこの原子力潜水艦に関連して損害が発生した場合とこう言っておるのでございますけれども、この心持ちの中にはいろいろ広範な意味も含まれていると存じますから、十分ひとつ御趣旨に沿うよう政府としても努力することを申し上げておきます。
  171. 田中武夫

    田中(武)委員 どうも大臣、そう言われるとまだあとへ尾を引かざるを得ないのですよ。発生したる場合と法律にあるのは、発生したあとにこうするということではあるけれども、発生する以前からすでに法はできておって、これだけの措置をいたしますよということを政府国民に法をもって約束しておられるのですよ。それと、その精神をくんで、同じような保護あるいはそれに劣らないそれ以上の保護をやりますよ、こういうことでなくてはいけないわけなんです。だから、損害が起こった場合にあと交渉するということではなくて、事前にそういう合意をしておか塩ければいけないわけなんです。そのことを言っておるわけです。その点どうなんでしょう。
  172. 西田信一

    西田国務大臣 先ほどお答え申し上げましたが、閣議了解の線に沿って努力をさせていただきます。
  173. 田中武夫

    田中(武)委員 閣議了解事項というのは、発生したる場合なんですか。それとも、そういう事故があり得る——この法律だってそうでしょう。現に事故は発生していないのですよね。だが、そういうときに対処するためにこういう法律をつくって国はあるいは政府国民に約束した、法によって約束しておるわけです。と同じようなことを事前にアメリカとの間に合意しておかなければいけないわけなんです。それがいけないのですか。できないというなら話はまたもとへ戻りますよ。事故が起きてからぼつぼつと外交交渉をやろうということなんですか。どうなんです。
  174. 西田信一

    西田国務大臣 ただいまお述べになりましたその線に沿って努力をいたします。
  175. 田中武夫

    田中(武)委員 まだ私はその答弁はしっくり答えたとは思いません。しかし、これ以上西田長官だけをいじめてもしようがないと思います。すでに理事間で話のできておることですから、了承はいたしかねますが質問はこれでおきます。  さらに、法制局第一部長が見えておりますが、これはおそらく長官あるいは吉國次長にかわって第一部長がお見えになったのだと思うので一言申し上げておきたいと思います。  第三部長の午前中における答弁は国会議員を侮辱したものであります。本来ならば私はただ取り消すということだけでは済まさぬつもりでおります。したがって、これは内閣法制局として責任ある態度をとってもらいたい。長官にかわって来ておるんだから返事してください。
  176. 真田秀夫

    ○真田政府委員 田中委員からたいへんなおしかりを受けたわけでございますが、何ぶんまだどういういきさつでどういう質疑応答があったのか一向存じませんので、よく調べまして、非常に不遜なことがあったとすれば深くおわびする次第でございます。
  177. 田中武夫

    田中(武)委員 そういう答弁をするとまたあとを引くのですよ。議事録を確認してから、それまで待ちましょうということになるのですよ。ここまでわれわれが譲って協力しておるのに何という答弁をするのです。そんなら議事録ができるのを待って、その答弁を得てから採決しましょうや。
  178. 真田秀夫

    ○真田政府委員 そこまでおっしゃられませんで、どうぞ私たちの意のあるところをおくみ取り願いたいと思うのでございますが、とにかく何ぶんその場におらない場所でのことでございますので、当の第三部長からも事情をよく聞きまして、もし不行き届きの点があったとすれば深くおわびする次第でございます。
  179. 田中武夫

    田中(武)委員 そういうことなら、じゃここでちょっと休憩してもらって事情を聞いて答弁してもらいましょう、こういうことになるのですよ。そういう答弁なら、じゃ一ぺんここを休憩して事情を聞いてみてください。あるいは議事録を調べてから答弁してください。そういうことになるのですよ。ともかく私はいま何もここでそんなことをして採決を延ばしたりするつもりではないのですよ。不都合なことがあったればこそ取り消したのでしょう。そうじゃなかったら取り消さぬわけですよ。そうでしょう。だから私の言っておることを聞いて、善処しますでいいじゃないですか。そんな答弁はできないのですか。できなければひとつ議事録ができて、検討して、法制局見解が出てくるまで待たしていただきます。
  180. 真田秀夫

    ○真田政府委員 発言者の第三部長がみずから取り消したということでございますので、その部分についてはまことに遺憾であったのだろうと存じます。その意味で深くおわびする次第でございます。
  181. 田中武夫

    田中(武)委員 私の言っておるのは取り消したから済むということじゃない。その姿勢が問題なんですよ。秀才か何か知りませんが、あまりにも何というか高慢な態度、これが問題なんです。だから法制局長官あるいは次長が出てきて、どうするのか、これがはっきりしなければ私は法律を通さぬ、こう言っておるわけなんです。したがって、十分事情を聞いた上で善処しますと言いなさい。
  182. 真田秀夫

    ○真田政府委員 本人の発言の中身もさることながら、態度についてもし御不満な点がおありでございましたら、またその点も後ほど田中委員からじかに伺いまして、長官にも申し伝え善処することにいたしたいと思います。
  183. 田中武夫

    田中(武)委員 何のために第一部長来たんです。あなた途中から来たからわからぬ。それは無理ない。しかし一つは、第三部長のああいう答弁では法律は通さぬとまで話が出たんですよ。いいですか。もうこれ以上は私は申しません。長官なり次長によく話をして考えなさい。  終わります。
  184. 真田秀夫

    ○真田政府委員 承知いたしました。
  185. 渡部一郎

    渡部委員長 三木喜夫君。
  186. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 いま部長から御答弁いただいて、田中さんの問題はそれでいいとしましても、外務省は科学技術庁の長官に対して横からとやかくと知恵をつけてもろうたら困ると思う。純粋に科学を守る、いわゆる平和利用という立場から長官が御答弁いただいておるのに、こういうことをやってもらうということは、私はやはりうしろめたいものがあると思う。  そこで外務省に聞きますが、これもきょうの話で解明してもらわなんだら、この次からは法律案プロパーで話をすることになっていますから、事実をひとつ聞いておきたいのです。米原子力潜水艦の演習海域は日本近海に十四カ所あるというが、土佐湾のほかどこにあるか明らかにしてください。十四カ所。  もう一つお伺いしておきます。土佐湾の場合沿岸ぎりぎりまで入ってよいということを日本政府が認めているというが、事実であるかどうか、外務省来ておるのですから。  それが事実なら横須賀や佐世保でやっているような放射能チェックの必要があるのではないかと思うので、港だけのモニタリングでは片手落ちではないかと思う。  その三つをひとつ答弁しておいてください。これはやっぱり原子力問題が出た以上この事実だけは押えておいて、あなた方から責任ある答弁を伺っておきたいと思う。さきがた山原君が質問しましたですね、土佐沖の問題。十四カ所そのままにして、ほおかぶりして国民の前には明らかにしていないのですよ。
  187. 長坂強

    長坂政府委員 いま在日米軍の海上演習場として提供をいたしております海軍の訓練区域は、チャーリー区域、これは千葉県の野島崎南方の沖でございます。そのほかデルタ区域、フォックストロット区域、ゴルフ区域、キロ区域、リマ区域、マイク区域、ノベンバー区域、それから沼津の乗下船及び積み込み積みおろし訓練区域、相模湾の行動区域、佐世保湾訓練機雷敷設区域、東京湾の区域、土佐湾の行動区域となっておりまして十三カ所でございます。それでこの位置等につきましては、ただいまちょっと資料を持ち合わせておりませんので、後ほど資料として御提出いたします。
  188. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 土佐湾の場合、沿岸ぎりぎりまで入ってよいことを日本政府が認めているというが、事実かということ。
  189. 長坂強

    長坂政府委員 その土佐湾の区域につきましては、いわゆる私どもとしては漁船の操業を制限する法律でございますね。その漁船の操業を制限する法律に基づいて一定の告示をいたしますが、これは潜水艦のそういう訓練が行衣われているとは私どもは伺っておりません。これは一般的に漁業の操業を制限して、そこで海上の訓練をする場合には、そういう告示の手続をとることにしておりますが、その潜水艦については私ども承知をいたしておりません。
  190. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 認めていないのですね。
  191. 長坂強

    長坂政府委員 当庁としましては、まさに漁船の操業を禁止、制限する必要のある場合に関連を生じてまいりますので、米軍から申し入れを受けておりますが、潜水艦の場合、制限をする必要もないせいもあるのでございましょうか、特にそういう申し入れば米軍のほうからございませんで、制限をしておらないわけであります。
  192. 山原健二郎

    ○山原委員 関連して。  土佐湾の足摺岬の南方にリマ海域という、これは米第七艦隊の実弾射撃場となっておるわけです。海上自衛隊も合同演習の際には、米軍から必ず県知事に対する警告といいますか指示がくるわけですよ。何日の何時何分から射撃が始まる、この近海に対する漁船の出漁を見合わせてもらいたいというのがくるわけです。これはしばしば今日まで行なわれております。現在ではもう実質上ここには出漁できないという状態にあるわけです。ところが潜水艦の演習指定区域となっているところのいわゆる土佐湾足摺岬から室戸岬に一直線に結びましたところの北側ですからいわゆる高知県の沿岸区域、この全域が潜水艦演習場として指定されたのが、日米安保条約が調印されたそのときからであります。したがって、いままですでに二十数年間経過しているわけです。その間に一度もここに潜水艦が演習に入ったことがないというふうにつかんでいるのか、あるいは演習に来ておるけれども、しかしそれは潜水艦に関する限り日本政府に対する通告がないのか、おそらく後者だろうと思うのです。事実この土佐の高知の漁民が、一度潜水艦が海中から浮かび上がってきましてかじをとられて命からがら室戸岬に逃げ帰ったという事実もあるわけです。これは十年前でありますが、そのことから考えますと、おそらくここでは演習がなされているだろう。しかしそれについて日本政府に対して何らの通報がないというのが現在の実情ではないか、また彼らは情報の提供をする必要がないというふうに言っているのですから、そういう点について日本政府が把握していないじゃないかというふうに考えるのですが、この点について一言伺っておきたい。
  193. 長坂強

    長坂政府委員 繰り返して申し上げますけれども、私どもの所管しております漁船の操業制限法、それに基づきまして、漁船の操業を制限する必要がある場合はその告示をしておりますが、その制限をする必要がないので、米軍からも通告がない、こういうことでございます。
  194. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 そうすると、施設庁としては日本政府が認めているということはない、こうおっしゃるのですね。沿岸ぎりぎりまで来ていいということは認めていない、こうおっしゃるのですね。認めておるのですかどっちですか、認めてないのですか。土佐湾に例をとりますとぎりぎりまで来てよいということを認めておるのですか、そういう事実があるのですか。
  195. 長坂強

    長坂政府委員 手元に資料がないので確たる答弁ができないので残念ですが、土佐湾の区域として提供はしております。提供しておりますが、漁船の操業を制限するような訓練は行衣われていないということになるわけであります。
  196. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 そこで科学技術庁にお伺いしますが、これはどうするのですか。佐世保と横須賀だけだ、こうおっしゃいますけれども原子力潜水艦は土佐湾に入っていやしませんか。そのときにモニタリングをやらなかったら午前中言いました立証ができないじゃありませんか。私は立証の問題で申し上げるので、ただいま科学技術庁長官のおっしゃったこともまた空文になってしまう。こういうことをみな見のがしていってあなた御答弁なさっておればほんとうに空々漠々でわれわれははだ寒い思いですよ。それで申し上げるのです。モニタリングをやらないのですか。努力しますと言うたってこんなところから努力していかなければ何にもならないじゃないですか。  それで科学技術庁、もしそういうことがあったらモニタリングやりますか、お伺いしておきたいと思います。
  197. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 ただいま初めて聞きましたことで、私のほうは佐世保と横須賀、これに原子力船が入るということで十分なモニタリングをしております。もちろんほかにモニタリングをやるところが必要になるということになりましたら、佐世保同様しなければならないことになると思います。
  198. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 終わります。
  199. 渡部一郎

    渡部委員長 この際おはかりいたします。  これにて本案に対する質疑を終了するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  200. 渡部一郎

    渡部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————
  201. 渡部一郎

    渡部委員長 次に本案を討論に付するのでありますが、別に申し出もございませんので、直ちに採決いたします。  原子力損害賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  202. 渡部一郎

    渡部委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決されました。     —————————————
  203. 渡部一郎

    渡部委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、木野晴夫君外三名より、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者より趣旨の説明を求めます。木野晴夫君。
  204. 木野晴夫

    ○木野委員 ただいま議題と在りました本案に対する附帯決議案につきまして、自由民主党、日本社会党、公明党及び民主党を代表いたしまして趣旨の説明を申し上げます。  趣旨説明は案文を朗読することによってこれにかえたいと存じます。    原子力損害賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   本法の目的はすべての原子力損害に対する被害者の保護を図るにあるが昭和三十六年本法の議決に際し附せられた決議がほとんど実現されていない。   従つて同決議の各項目について具体的に実施することを政府に重ねて要望するとともに本法改正にあたり左記の点を特に留意し、実効をあげること。  一、陸上の原子炉、原子力船、米国原子力軍艦による損害は同じ原子力損害でありながら賠償金額が異なる場合があるので、被害者の保護に万全を期する観点から合理的統一を図ること。    特に米国との外交交渉においては、本法に比し被害者が不利にならないよう昭和三十九年八月二十八日の閣議了解の線の実現を図ること。  二、陸上、海上における原子炉等による損害賠償の差別をなくすため、ブラッセル条約の検討等国際条約の確立のため早急に努力すること。  三、原子力損害は広域かつ甚大であることに鑑み、損害の発生を防止する監視機関を設置するとともに住民の代表学識経験者等、第三者の参加を図り、その民主的左運営を図ること。  四、原子力事業に従事する者が受ける損害及び損失については、新らたな補償措置を講ずるとともに一般住民に対しては、退避体制等の確立など万全を期すること。 以上であります。  委員各位の御賛同をお願いいたします。
  205. 渡部一郎

    渡部委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  本動議につきましては、別に発言の申し出もございませんので、これより採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  206. 渡部一郎

    渡部委員長 起立総員。よって、本案に附帯決議を付することに決しました。  ただいま議決いたしました附帯決議について、西田国務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。西田国務大臣
  207. 西田信一

    西田国務大臣 ただいまの附帯決議の各事項につきましては、十分その御趣旨を尊重いたしまして、なおまた、関係各大臣とも十分協議の上、今後万全の措置を講じてまいることをここに申し上げます。
  208. 渡部一郎

    渡部委員長 おはかりいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  209. 渡部一郎

    渡部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  210. 渡部一郎

    渡部委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。    午後四時十三分散会