○吉田(之)
委員 私は、初めちょっと、大臣が
法律を出しておられる
責任者ですから、それに
関連して労働者の
災害賠償というものを大臣がどの
程度御認識いただいておるのだろうかということをまず聞きたかったのですが、
専門の有津先生からお答えがありました。それはそれでけっこうです。私は、さすがに有澤先生の御記憶は正確だと思います。しかし、これは単なる記憶
程度の問題では困るのです。正確に記憶しておるから、そしてその経過の中で、たとえば経営者のほうもこういう手だてをするというから、あるいは労働省のほうも
労災のほうもこのように一部内容を改善したというから、まあそれでよさそうだなというくらいのことではこれはたいへんなことになるのです。おそらくそう簡単にはお
考えになっていないだろうと信じておりますけれ
ども、私は、もう少し問題を掘り下げて御
検討いただかなければならないと思うのです。実は、またさっきの機関紙を引用して恐縮でございますけれ
ども、労働者自体はこういうふうに
考えておるのですね。労働者はもちろん
組合をつくっております。そしてほとんどの問題は労使間で交渉し、そして解決していく、これは大原則であります。しかしながら、それでありながら、労使間で解決することができない場合、あるいは労使間で解決することがむしろ妥当でない場合が幾つか出てきた。特にこの
原子力労働者の場合に。たとえば、退職後に
放射線障害があらわれた場合で、事業所がなくなっていた例などでは、
補償を求める相手がない。これは国家的な
補償方法にたよる以外に道がないではないかということをこの人たちは訴えております。また遺伝的なものについても、労働者が何回か事業所を移動した場合は、先ほ
ども堂森さんからお話がありましたけれ
ども、いつどこで影響を受けたか判定することはきわめて難解である。そして放射線の許容量は国が定めなければならないし、国民全体の質的低下を特定集団に限定することによってある線以下に押えるという
意味を含んでいる点から
考えるならば、やはり国家的
補償を
考えることが妥当であろう。さらに二十五レム以上の被曝を受けた場合、発病すれば当然
労災補償は受けられます。これはわれわれ承知いたしております。しかし発病しないときでも人体には何らかの影響を与えていることは事実なんです。しかし、これは全く
労災からは全然別個の時点にある。一体この問題はどういうふうに解決されるのだろうかという問題が出てまいります。こういうふうにして、過去にこの業務の
専門家として専念してきた人たちが自分の
職場を離れることがどんなに苦痛なものであるかは容易に想像できるけれ
ども、しかし発病していないということであって職は断たれ、何ら
労災からも
補償されないという場合も、場合によっては出てくるのではないかというふうなことは
考えられます。首をひねっておられるようですけれ
ども、この人たちがいろいろ心配しているということは、たとえば
一つの事業所を一度退職してからしばらく間を置いて出てきた場合にもいろいろ問題があります。また、病気であるとは認定されないけれ
ども、自分としては何だか労働に十分耐えられない、潜在的な疲労、影響を受けている場合、いろんな場合が私はこれから出てくると思うのです。労働能力は失わず、職業選択の自由は奪われるという場合もあり得る。これはまだそういう事態はできておりませんけれ
ども、何だかかつて
原子力の
産業に働いていた人らしい、普通ならば中高年齢層で採用してもいいのだけれ
ども、少し敬遠しておこうやというふうなことにいつかの時代にならないとは限りません。われわれは、先をあまり案じ過ぎれば切りはないわけですけれ
ども、やはりこれほど重要な新しい
産業と取り組んでいくからには、そこで身を挺して働いている労働者に対しては、もっと積極的に
政府みずからが全く後顧の憂いのないように万般の手だてをして保護してやるということをしなければ、おそろしくて前向いて動けないのではないかというふうな気がするわけなんです。
そこで、私は今度の
改正の前提である答申を拝見いたしまして、がまんならない点が一ぱいあるのです。それは、たとえば今度のこの法
改正には第二者
災害ですかに対する
賠償というものは一応取り除こう、除外しよう、その除外する理由としては、「一、労働者
災害補償保険制度もILO条約並みの水準に相当充実されてきているとともに、すでに相当数の
原子力事業所においては、
従業員災害について
労働協約などにより労働者
災害補償保険制度の上積みの
補償が行なわれていること」というのが
一つの論拠であります。しかしこの
労働協約といえ
ども、
会社は大小さまざまでありまして、先ほど
参考人にお見えの方々は最も大企業を代表しておられるところでありましょうから、多少
事情はいいだろうとは思いますけれ
ども、しかしこれから
原子力産業の将来をとらえてみる場合、また現にある
日本の
原子力のいろんな機構を見た場合に、そういうことばは妥当かどうか知りませんけれ
ども、いわば中小企業並みの研究所とかあるいは事業所ということも当然
考えられるわけであります。実は、もしも
原子力委員会やあるいは
政府がこの答申のまず第一の要件、それが正しいとお
考えになるのであるならば、
一ついま私が例をあげますので、たとえば三菱
原子力の場合、
日本原子力事業の場合、動燃の場合あるいは京大の
原子炉の場合、こういう
労働協約というものがどのように取りきめられているか、その内容などにつきまして、ひとつ、どなたか御
専門がおられるはずでございます、局長からでもお答えいただきたい。