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1971-03-10 第65回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年二月二十六日(金曜日)委員長指名で、次の通り小委員及び小委員長を選任し た。  宇宙開発の基本問題に関する小委員       加藤 陽三君    木野 晴夫君       佐々木義武君    菅波  茂君       田川 誠一君    橋口  隆君       前田 正男君    石川 次夫君       堂森 芳夫君    三木 喜夫君       近江巳記夫君    渡部 一郎君       内海  清君  宇宙開発の基本問題に関する小委員長                 木野 晴夫君  海洋開発に関する小委員       海部 俊樹君    木野 晴夫君       佐々木義武君    菅波  茂君       鈴木 善幸君    田川 誠一君       前田 正男君    石川 次夫君       田中 武夫君    山中 吾郎君       近江巳記夫君    渡部 一郎君       内海  清君  海洋開発に関する小委員長   田川 誠一君     ————————————— 昭和四十六年三月十日(水曜日)     午後一時五分開議  出席委員    委員長 渡部 一郎君    理事 木野 晴夫君 理事 佐々木義武君    理事 菅波  茂君 理事 石川 次夫君    理事 近江巳記夫君       加藤 陽三君    梶山 静六君       田中 武夫君    堂森 芳夫君       三木 喜夫君    吉田 之久君       山原健二郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      西田 信一君  出席政府委員         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛施設庁施設         部長      薄田  浩君         科学技術庁長官         官房長     矢島 嗣郎君         科学技術庁原子         力局長     梅澤 邦臣君  委員外出席者         原子力委員会委         員       有澤 廣巳君         防衛庁防衛局運         用課長     福田 勝一君         防衛施設庁総務         部施設調査官  来栖大児郎君         外務省国際連合         局科学課長   堤  功一君         労働省労働基準         局労災管理課長 桑原 敬一君         参  考  人         (日本原子力船         開発事業団理事         長)      佐々木周一君         参  考  人         (日本原子力発         電株式会社常務         取締役)    石田 芳穂君         参  考  人         (東京電力株式         会社常務取締         役)      田中直治郎君         参  考  人         (動力炉・核燃         料開発事業団副         理事長)    今井 美材君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  原子力損害賠償に関する法律及び原子力損害  賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法  律案内閣提出第三三号)  日本原子力船開発事業団法の一部を改正する法  律案内閣提出第三四号)      ————◇—————
  2. 石川次夫

    石川委員長代理 これより会議を開きます。  委員長所用のため、委員長不在の間、委員長指名により私が委員長の職務を行ないます。  原子力損害賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律案、及び日本原子力船開発事業団法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  まず、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  両案審査のため、本日、日本原子力船開発事業団理事長佐々木周一君、並びに原子力損害賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律案審査のため、日本原子力発電株式会社常務取締役石田芳穂君、東京電力株式会社常務取締役田中直治郎君及び動力炉・核燃料開発事業団理事長今井美材君をそれぞれ参考人として意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 石川次夫

    石川委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用中のところ、本委員会に御出席くださいましてありがとうございます。どうか、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べくださるようお願い申し上げます。  なお、御意見の聴取は質疑応答の形で行ないますので、さよう御了承願います。     —————————————
  4. 石川次夫

    石川委員長代理 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三木喜夫君。
  5. 三木喜夫

    三木(喜)委員 いま委員長代理のほうから申されました三法につきまして、きょうは参考人の方がおいでくださっておりますので、お待ちいただくのも申しわけないと思いますので、集中的に四人の方に最初お伺いしたいと思います。  この三法が出ましたことにつきまして、特に損害賠償のほうの問題は、これは時宜を得ておると思います。したがって、これについての疑問点もありますけれども、まず、原子力船開発事業団に、「むつ」を持っておられるのですから、この法律案に対するところの御意見を承っておきたいと思います。  なお、日本原子力発電株式会社あるいは東京電力株式会社もちょうど大型原子炉の設定をなさっておりますから、この法律とは非常に関係が深いと思います。率直に、この法律を縦から横から見たお考えを、いままで検討されておるでしょうから、お聞かせをいただきたいと思います。  それから動燃事業団のほうについては、これは別の問題になりますので、あとでお伺いしたいと思いますので、さしあたりこの原子力損害賠償に関する、あるいはそれに関連する法律についてどういうように思っておられるか、お伺いしておきたいと思います。——佐々木さんからお伺いし、石田さん、田中さんの順番でお伺いしたいのです。
  6. 佐々木周一

    佐々木参考人 まず、賠償法の問題でございますが、これは御承知のとおり、日本法律は無制限になっておりまして、いわゆる青天井になっておる。ところが諸外国は全部有限になっております。そういう関係で、外国原子力船日本へ入港する場合に、日本法律によれば無制限になっておるものですから、外国ではそれを承知しない。そういう関係で先般アメリカサバンナ号日本へ入港できませんでしたし、またドイツのオットー・ハーンも万国博のときに日本へ寄港したいというような話もあったのですけれども日本へ来ることができなかったわけであります。外国船日本へ来られないのは、たとえば、原子力船事業団としては別に痛痒はないのでございますが、「むつ」が完成しました場合、今度は外国へ行けないという次第なんです。それで事業団としましては、ぜひ外国船日本へ来られるようにひとつお取り計らいをしていただきたい、それが今度の賠償法改正せられたような次第でございます。今度のこの改正ができますと、外国船日本へ来られますし、したがって日本原子力船外国へ行ける、こういう次第でございますので、ぜひこの賠償法改正はしていただきたい、かように考えておる次第でございます。
  7. 石田芳穂

    石田参考人 賠償法に関しまする我妻先生委員長をやっておられる専門委員会委員も私、その当時やっておりましたので、その際には、電気事業会としまして、現在はいわゆる五十億円の責任保険プラス国援助という形になっておりますけれども、国の援助というのではいささかたよりがないので、国家補償という制度を、金額は三百億なり四百億なりまた別としまして、国家補償制度を取り入れてくれというお願いと、それから現在われわれは無過失集中責任を負っておりますけれども、他産業との関連において青天井というのは少しひど過ぎないかという話を申しました。しかし、この国家補償をしてくれと言った意味は、決して何か万一事故があった場合に会社の負担がどうだからという見地から申したのではなくて、そういう制度があれば原子力発電所をつくる際にその周辺の方々が安心するんではないか、安心料としてそういう制度を置いてもらえないかという意味お願いをしたわけでございます。しかしながら、たまたまこの委員会をやっている最中は、ちょうど環境問題があらゆる面において非常に問題になっておる時期でございましたので、いろいろ産業間のバランスといいますか、全般的に産業界としてどうそういう問題を考えるか、原子力だけにそれを認めていいのかどうかといういろいろな問題もあると存じましたので、今後ともそういう制度について前向きに検討をしていただくという約束のもとに、まあ現行どおりでしかるべしという考え方をいたしたわけでございます。  それで、要望としましては、国家補償が第一でありまして、青天井という問題はむしろ第二義的に考えておりましたので、いままで青天井責任を負っていたものが急に有限になったのでは、またこれは一般大衆がかえって危惧の念を抱くかもしれないというようなことで、しいて強くは要望しなかったような次第であります。したがって、国家補償については今後とも研究はするけれども、いまの賠償補償関係現行どおりでおおむね期限だけを延ばすという今回の法案の趣旨だと存じますけれども、これは異議のないところと存じます。
  8. 田中直治郎

    田中参考人 東京電力といたしましては原子力開発につきまして長期の計画を持って建設を進めておるわけでございまして、目下三基の原子力発電設備を建設しております。その最初の一号機につきましては近く試運転に入る予定でございます。したがいまして、四十四年の十二月及び四十五年の一月にそれぞれ原子力損害賠償法に基づきましてその措置をとったわけでございます。  こういう点につきましては、十年の時限立法ということで今回それの延長がなされるわけでございますが、この法律改正点につきまして三つの点が私ども電気事業者にとりまして関連を持つのでございまして、第一は賠償措置額、第二は放射性廃棄物についても保険をかけられるようになること、第三として、損害第三者に起因した場合、第三者に対する求償権を故意の場合に限定したこと、その三つが今回の改正点のように承っております。この趣旨につきましては異議はございません。しかしながら諸外国におきましては原子力事業者損害賠償につきましては責任限度額が設けられておること、また政府もそれを越える分につきましては補償することになっておりますが、これは御高承のとおりでございます。わが国の場合は、原子力事業者は無限の責任が課せられておるわけでございまして、特に発電を担当する事業者としてはその場合に該当することになっております。この法律の目的が被害者の保護をはかり、また原子力事業の健全な発達に資するということでございますので、電気事業者としての私どもとしては原子力安全について万全の措置を講じている次第でございまして、原子力損害が起こるということは万々ないということを考えておるのでございますけれども、やはり原子力の育成にかんがみまして諸外国並み国家補償並びに原子力事業者賠償責任明確化ということを希望をしたい次第でございます。  今回の改正ではその点がいれられませんでしたけれども、これはまた諸般の事情でやむを得ないことと存じますが、今後におきまして機会が得られましたならば御検討を賜われば幸いと存じます。
  9. 三木喜夫

    三木(喜)委員 原子力発電とそれに関連いたしましてやはり原子力船の問題が関係してまいります。この原子力船が今度は就航いたしますと原子炉が動くということになりますので、これにも非常に関係が深いですし、なおこれの特殊任務鉱石を運ぶということになっておりますので、さしずめウラン等を運ぶんじゃないかと思うのです。しかし、私ども非常に気にすることは、この「むつ」がはたして運ぶ能力があるのかどうか。日本要求を満たすだけの働きをしてくれるのかどうかということに非常に危惧の念を持つのです。それは別問題としまして、そういたしますと、就航して寄港するところがアメリカカナダ、それからオーストラリア、こういうところが予想されるのです。遠くアフリカまでは行くか行かないか、それはわかりませんが、そういたしますと、当然動燃事業団のほうもこの問題と関係が深いと思うのですが、今井さんおいでいただいておりますが、いまウランの問題は原油の値上げというようなことでエネルギー政策全般から考えかなり大きなウエートを占めてきたと思います。早急にこれはオーストラリアカナダかどこかで鉱石を得なければなりませんし、もうその手当てはしておると思うのです。しかしながら、電力の方がお二人見えておりますけれども、いま必ずしも、私は国の動き方として動燃事業団意欲を持ってやっておっても、九電力が最終的にはこれをチェックしてしまうといいますか、あとは経営するというようなかっこうになって、どうもその辺がうまくいかないような気もするのです。  そこで一つは、この「むつ」号にそういうような仕事を付加することがいいのかどうか、これは原子力船の用途というものを変更しましたが、そのことと関連するのですけれども、そのことが充足されるかどうかということが一つ問題。  それから、次に起こってくる問題は、中曽根防衛大臣じゃないですけれどもウランの濃縮の問題です。これはカナダ一緒にやるのか、アメリカ一緒にやるのか、アメリカの技術を導入するのかということはこの委員会でやかましく言われましたので、いまさらそんなものはあげつらいませんけれども、かりにカナダとやるといたしますと、電力かなり安く水力で得られますから、そういう関係考えてみますと、カナダへ「むつ」号を送る。こうなってくると、ここにどういう国際条約の上で「むつ」を動かすのか、あるいはこの法律だけでカナダとの関係はいいのかということも考えられると思うのです。回りくどい言い方をしましたけれども、結局問題は、原子力発電というものが非常に脚光を浴びて考えられるようになった。したがって採算を度外視してはやっていけないので、やはり国家補償というものがこの災害の場合は必要だ、これはわかります。しかしながら、これがカナダなりオーストラリアへ行ってそこで通用するようなぐあいになっておるのかどうか、これをひとつお伺いしたいと思うのと、今井さんには、いま申しましたような見地に立ってこの原子力船で間に合うのかどうか、もっとほかの輸送船をうんとふやさなければだめじゃないかと私は思うのですけれども、その辺どう考えておられるか、これひとつ。それから先がた申しました点もひとつお伺いしておきたい。
  10. 今井美材

    今井参考人 ただいまお尋ねの問題は、諸々方方探鉱開発等を手がけておるようであります。その場合、将来に輸送をどう考えるかということに関連してくると思うのです。私どもがやっておりますのは、いますでにお示しがございましたように、カナダオーストラリアあるいはアフリカなどでございまするが、この際に輸送という点から考えますると、ウラン鉱石特殊事情でおおむね低品位鉱でございますから現地製錬ということが不可欠で、よって輸送するものがいわゆるイエローケーキ、あるいは多少違ったものになるかもしれません。そうしますとたいへん量は減りまして、かりに、いろいろ数字はもうすでにお持ちのことと思いますが、一万トン、一万五千トンという年間の輸送量になるのはそう遠い先ではないわけでございます。しかしながらかりに一万五千トンという数量にいたしましても、包装の関係から申しますと、これは大体ドラムかんのごときものに従来も梱包されておりましたので、将来もその種のものになると考えます。そういたしますと、私は船の専門でありませんのでようわかりませんけれども、一万五千トンあるいは二万トンというような程度のものがドラムかんのごときものに入っておるということだといたしますれば、積載量が十分であれば格別の困難はないように考えます。  以上であります。
  11. 三木喜夫

    三木(喜)委員 それと、あなた方、開発意欲を燃やされた問題を、後は九電力がやってしまうということに私は思うのですが、その辺の関係はうまくいっていないような気がするのですが、どうですか。
  12. 今井美材

    今井参考人 その点はまだ十分煮詰めるような段階に至っておらぬと思います。しかしながら、すでに国内には海外ウラン開発のための特別の組織もできておりまするし、これがいわゆる開発と申しましても、探鉱段階にいま入ったばかりであります。これが有望だということになりまして、しかる後にほんとうの掘さくという意味開発になり、あるいはさらにこれが製錬という段階になるわけでございまして、時間的にまだかなり先のことと思われますので、その段階においてよく協議されることだと思います。ただいまのところはまだそこまで話し合いが進行しておらぬと申し上げるような実情でございます。
  13. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そういうお考えなればそれでいいのですけれども法律的にはやはり動燃事業団が最終的にめんどうを見、そこで現地製錬までやれるというような状況にはなっていないのですね。そこに盲点がありまして、せっかく動燃事業団が燃料問題について意欲を燃やしている、あるいはまた動力炉開発に対して意欲を燃やした場合といろいろありますが、そういう場合に、動燃事業団の使命が最終的に全うされないうらみがあるということを私、申し上げておるので、現在その検討段階であるとか煮詰める段階だとか、こうおっしゃっておりますけれども、煮詰めたり検討しなくとももうはっきりしておるので、その点は私は将来これは改正せんならぬ点じゃないかと思っておるのです。あなたがそこで燃料問題を専心やっていただく部門開発部門と二つに分けてやった場合、海外進出した場合に、意欲が挫折するというようないまシステムになっておるわけですね。そのことが惜しいので、これに対してどうお考えになっておるかということをお伺いしたわけなんです。そういうお考えでこれから検討されるということならしごくけっこうであります。  それから「むつ」が一万五千トンくらいだから、持って帰るのに「むつ」使ったらいいでしょう、こういうお話で、それでけっこうです。これはカナダへもいくだろうし、それからオーストラリアへもいくだろう、こういうことでありますので、それだけお伺いしておきたいと思うわけであります。  それから、別の問題になりますのですが、東京電力日本原子力発電KKのほうにお伺いしたいのですが、この賠償問題とかあるいは損害補償の問題についてずっと前をさかのぼってみますと、四十四年の七月、原子力災害というものが非常に大型化されるので、補償制度の手直しをしようということで始まったわけです。そうして八月中に原子力委員会専門部会を設ける、こういうことになっておるわけですけれども、ここに一つ私は抜けておるんじゃないかと思いますことは、第三者よりも不利な原子力事業従業員立場が私はあると思うのです。これはこの法律案検討をなされるときに両会社ではどういうようにお考えになったのですか。前々からこの問題は日米原子力産業会議ですか、ここでも問題になったようでありますしいたしますけれども会社側はどういうぐあいに受けとめられておるのですか、やむを得ない、こうお考えになっておりますか。
  14. 石田芳穂

    石田参考人 当社原子力発電だけしかやっておりません会社なものですから、かねてから組合と話をしまして、その点に関する労働協約を結んでおります。それで大体組合としても満足する処置を約束しておるのでありますけれども、その専門委員会での議論の際に、私のほうは原子力一つですから問題は簡単ですけれども、ほかの電力会社さんですと、水力もあり火力もあり高圧線の活線作業もあり、それから原子力もあるという際に、原子力だけにそういう制度があることが同じ組合員がいろいろの仕事をしておるのに少しくバランスを失するじゃないか、かえってやりにくいのではないか。むしろそれぞれの会社のお立場組合とお話し合いをなされたほうが適当ではないかというような議論をしたわけであります。私はいまでも、ほかの電力会社のことですけれども、そのほうが適当ではないかというふうに考えております。
  15. 田中直治郎

    田中参考人 東京電力に関しましては、私のほうでは水力火力あるいは送電、配電、いろんな職場がございまして、原子力事業場だけで働く者が第三者賠償を適用されるということがバランスを失するということもございますし、また原子力におりまする従業員が他の職場に参る、たとえば火力転勤をする、あるいは火力から原子力転勤をするというような相互の異動などもございまして、この点から従来一般社内で適用しておりまする組合との間の協定などによりまして一般と同じ扱いを原子力においてもしておる次第でございます。  しかしながら、原子力発電所におきまする放射線障害の問題は、当社といたしまして、施設においても、あるいは運営管理におきましても、十分に、最大限可能な限り、いつも許す範囲の措置をとっておりますので、この事故というものはまずないと考えてよかろうかと思うのでありまするが、万々一そういうことが生じた場合を考えまして、会社といたしましてもさような場合には、補償あるいは生活の保障あるいは医療というような面で、事故に関しましては必要な万全の措置を講じるということで、そういう会社の態度をとっております。その点については組合とも意見が一致しておる次第でございます。
  16. 三木喜夫

    三木(喜)委員 よくわかりました。しかし、これからどんどん原子力発電をなさろうというこういう立場に立っておられる御両所ですが、ちょうど三十五年のころにこの原子力災害補償問題がかなりやかましくいわれたときがあるのですが、そのときの論議を私たち見てみますと、やはり鉱害だとか火薬の爆発だとか、こういう問題に対して連鎖反応を起こすので、この原子力災害だけ従業員にそういう特別の措置をとってもかえって害があるということを大蔵省からいわれて、そのことが今日までやはり尾を引いておるような感じがするのです。しかしながら、原子力災害というものの規模というものをどの程度にお考えになっておるのか、その御認識のほどをお伺いしておかなければ、労災措置だけでこれは処理できない問題じゃないかと私は思うのです。労災は御存じのように、いまはどんな災害やっても二百万円です、個人に対する災害補償は。それでは現在絶対にやっていけない事情があります。私はそんな実際の例に数回ぶつかっておりますけれども、それで労働組合のほうで非常に満足だ、こうおっしゃるなら、私たち何をかいわんやですけれども原子力災害検討がちょうど三十六年の四月科学技術庁から出ておるわけです、積算費用が。最大が五十万キロワットで三兆二千億円、こういうぐあいに出ておるわけであります。これは学問的にも非常に価値のある論文だと当時されておったわけでありますが、そういたしますと、いまおっしゃったようなことで従業員原子力災害に対する考えというものを律するわけにいかないんじゃないか、こう思うのです。私はいま金の額だけで申し上げたのですが、大型発電所の万一の事故の場合、最高で三兆二千億円ということになりますから、相当な被害周辺の住民も受けるでしょうし、従業員も受けるわけであります。この場合の三兆二千億というのは、百万都市が百二十キロのところにあるという想定でされておるように思うのです。もう一ぺんそれを私、思い出して見直したのですけれども、これは「大型原子炉事故理論的可能性公衆損害額の試算」という論文が三十六年の四月の二十日、原子力局から国会に提出されておるわけであります。これには非常に権威ある学者が二十人ほど参加いたしましてこの結論を出しておるわけであります。まあ一つの試算ですけれども、こういう種類の研究が米国の国立研究所にたった一つあるだけなので、日本としてもこれは非常に貴重な研究であろうと思います。  それは、一つには人口の密度が日本は非常に稠密でありますし、そして都市が平均二十キロのところに十万、百二十キロのところに六百万都市があるという日本の典型的な発電炉敷地を想定しておるわけでありますから、私はやっぱりこの線からも考えなければならぬのじゃないかと思うのです。これは企業者に申して釈迦に説法かもしれません。  それからもう一つは、当時もやかましくいわれておったわけでありますけれども、この原子力災害というものは事前の安全審査が非常にきびしい、しかしながら、未知の部分がたくさんありまして、絶対に起こらぬという保証はないわけであります。外国の例を見ましても、不測の事故が起こっておる例が多いですし、その事故が起こったら非常に広範な被害を受けるわけであります。その中における従業員の位置づけというものも私は考えていただきたい。まあとやかく申して恐縮ですけれども、そんな感じでいまのお話を承っておったわけであります。これにつきまして、原子力委員の有澤さんもおいでになっていますから、ひとつその従業員の場合のお考えを、原子力委員会としても専門委員会を設けられて、これがネックになっております。それから、前々からこれはやかましくいわれておったのですけれども、これも大蔵省がやはり自説を固守してわりあいこれには関心を払っていないというような事態ですけれども、今回もそのことが成り立っておりませんね。多少考えられたのですか、論議の過程で、どういうことだったのでしょうか。ひとつその辺をお伺いしたい。
  17. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 原子力事業に従事しておる人々に対する損害賠償、この点につきましても、今度の損害賠償制度決定を専門部会におきまして相当議論をしたところでございます。まあこれには我妻さんあるいは石川吉右衛門さん等のそっちの方面の専門家も一緒に御議論していただいたわけでございます。最初考え方といたしましては、労災保険でまずカバーをする。これは労働省のほうでもそのほうにつきまして、私ども考え方、考えているような意味においてもっと労災保険の範囲を拡大してもらうこと、それから労災保険では一応いま御指摘のありましたように限度がありますから、その限度を越える分につきましては、事業者におきまして労働協約等においてその上積みをはかっていただくこと、それから、もう一つは、従業者の災害保険制度というものを考えてみたわけでございます。ところが、現在の日本損害保険会社におきましては、いますぐその事故保険するだけの準備がない。それで、その点についてはいまわれわれは従業者の災害保険について制度考えておるから、もう少しわれわれの検討のための時間をかしてもらいたい、こういうお話でございました。それで、何と申しましても、一つ労災保険という国がやっておる保険制度、それから一つ事業者自身が損害に対する措置考える。労働協約においてその義務を負う。第三番目は、いま申しました、ちょうど第三者損害保険と同じような意味第三者、従業者に対する保険制度考えよう。ただし、これはいま保険業界において検討中でございますので、その検討の結果をまってその措置を講ずるようにいたしたい。こういうふうな形におきまして、一応従業者に対する損害保険損害補償損害賠償という問題を考えてきたわけでございます。  しかし、御指摘のありましたように、第三者に及ばない損害でも、原子力事故でも、従業者にはその損害が及ぶということももっとケースとしては多いのじゃないかと私は考えます。それがために私どもといたしましても、この従業者に対する損害賠償といいましょうか、補償制度につきましては、いま申し上げました保険業界の従業者保険制度とともに、もっとなお検討を進めて十分の措置を講じたい、こういう考え方でおりますが、今回の法案の提出につきましては、いま申しました保険業界の制度も、まだ十分検討が終わっておりませんので、そういうこととあわせて考えるために今回は見送りということになりましたが、もし保険業界のほうも制度がもうこういう形でやってよろしいということになりますれば、それとあわせて私どものほうも十全の措置を講じたい、こういうふうに考えております。
  18. 三木喜夫

    三木(喜)委員 いろいろ御検討いただいておることもわかりましたし、さらに前向きなお考えも出ておるようでございますので、審議の経過はよくわかりました。  そこでいま企業のほう並びに国の原子力委員——行政のほうからのお話は聞いておりませんけれども、行政のほうにお伺いしたいと思うのですが、こういうぐあいに外側の御意見を承りますと、サバンナは、オットー・ハーンでもよろしいが、青天井だから日本に来てくれなかった。青天井をなくして日本に来てもらうようにすることがいいのじゃないかということ。  それからもう一つは、いまのお話のように、ナショナルプロジェクト、こうした大型プロジェクトというものは、進める以上やはり近くから大事に考えていただいて、被害を受けるのはやはり従業員ですから、そうして周辺に及んでいく、周辺にも迷惑をかけない、こういうようにしていただくのが本旨じゃないかと思うのです。それは三兆二千億の被害ということを考え合わせますと、そういうような感じがするわけであります。そういうことで、非常にひどい言い方をしますと、これはだれのための規制法であり、だれのための賠償法であるかということになって、話を聞いている限りではサバンナ号が来てもらえないというのは、青天井という問題から考え合わせて、変な言い方ですけれども寄港が一番先決問題なのか、あるいはまた補償ということが喫緊の問題だ、こういう観点に立たれたのか、その辺がいまのお話では非常にぼやけてくるわけなんですが、その辺は原子力局長あるいは大臣はどういうようにお考えになりますか。
  19. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 ただいまの先生のお話でございますが、やはりこの前、法律を三十六年に通していただきまして、それが十年になっておりましたが、その点を検討してこれを延ばしていただきたいというのが最重点でございます。  なお、サバンナ号がこっちへ入るか入らないかというような問題がこの前ございましたが、この点につきましてはわが国のほうの「むつ」の今後の動き方というほうの考え方に重点を置いております。したがいまして、わがほうの「むつ」がサバンナを入れない、あるいはオットー.ハーンを入れない、こういう関係から出られなくなったらどう困るかというところの検討関係が主体でございます。その関係からぜひここに入れていただいてやりたい。したがいまして、この中には、ブラッセル条約はまだ発効しておりませんが、その関係を加味して国内体制に重点を置いて形をとったというのが考え方でございます。
  20. 三木喜夫

    三木(喜)委員 ブラッセル条約を加味するという考え方ですけれども、加味するということに私は非常に問題があると思うのです。きょうは防衛庁からも来てもらおうかと思ったのですが、要するに今度の法改正というものはそれを加味したとは言いながら、このブラッセル条約は軍艦も条約の対象にしておりますね。そうすると、日本にやってくるところのアメリカ原子力潜水艦というのは、われわれ国民の犠牲、それの賠償を求める、こういうことが日米安保条約のかげんで何にもできないというような、ほんとうに植民地か属国というようなかっこうに置かれておるわけであります。だからそういうことがいまの局長のお話ではよくわかったのですが、加味するということばを使わなかったらこれに影響してくるのでぐあい悪いという配慮もあるし、それからもう一つは、なるほど「むつ」がどこかに寄港できなかったらいけない、こういうこともあります。しかしこの「むつ」はほんとうは昔は——昔というか、この数年前は、その目的は海洋観測船だったのです。それを急遽特殊貨物運搬船に切りかえられたのは、その条約を加味する、そしてサバンナ号やオットー・ハーン号は寄港できる、こういうことと抱き合わして名前が変わったような感じがしてしようがないのです。名前が変わって仕事の任務を変えたのはこれらとくっつけるために名前を変えてこんな法律改正という方向にいった、こういう感じがしてしかたがないのですね。  それで、いま申しましたようにサバンナ号の寄港が第一なのか、原子力災害というものは非常に大きいから、これについてはどうしても法的な措置をやっておかなかったらいけないという考え方が主なのか。企業側から聞きたかったのは、これだけの損害賠償が企業全部にかかってくるということになりますと、科学の先取りをしておるところのこんな企業がつぶれるかもしれないという危険性もあると思うのです。きわめて危険性の多い企業をやっておられるわけです。しかしながらやはり原油の高騰、石油資源が底をついたというところから考えますと、当然これはやらなければいけないという必然性もあるわけなんですね。そこで上積み——そういう賠償考えられたのかと思っておったのですけれども、いま皆さんの話をずっと総合して考えてみると、何か敵は本能寺にあるような感じがしてしかたがないのです。それは思い過ごしでしょうか。大臣なり原子力局長ないしは原子力委員もっとわかりやすく説明していただきたいと思います。前向きに考えておるけれども従業員はほってあるしということになりますと、どうもサバンナ号や「むつ」が行くのに都合がいいようにできておるような感じがしてしようがない。人間というものやそのほか条約というようなものが大手を振って考えられないで、何とかこそこそとやっておるような感じがしてしかたがないのですけれども、どんなものでしょう。
  21. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 まことに申しわけございません。私たちの説明はいま先生のおっしゃる方向ではございません。と申しますのは、ただ私たちが御説明いたしましたのは、今度は条項の改正でございまして、改正のところの条項に比較的船が多いものでございますから、そういう関係からそういう答弁等になってしまったわけでございます。考え方とすれば、当然日本の中の原子力関係を安全に育成するという立場からやはり補償措置をとっておいたほうがいいということを考えました。それから船につきましても、当然将来の原子力商船の発展ということにつきましては、まだほんとうに具体的にはきまっておりませんが、期待としては相当ございます。そういう関係からそれに対しての備えをあらかじめつくっておこうという考え方と第一船ができ上がったという考え方、それで船につきましては国際相互関係ということをやはり念頭に置かなければいけないという立場で、先ほど私ブラッセル条約と申し上げましたが、あれの中でも平和利用の関係で、やはり商船が行ったり来たりする分野の条項のところを参考にしたということでございます。そういう形で将来の原子力全般のこれからの行き方を、安全に育成する、国策的にうまく持っていくという立場から、ぜひこの法律改正していただきたいというのが趣旨でございます。
  22. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そうしたらもう一つ具体的にお伺いしたいのですが、今度の改正はどこがよくなっておるのですか。青天井から制限を設けたほうが、これは企業としては助かったといまおっしゃるわけですね。しかし損害をこうむった者は青天井のほうがいいんじゃないですか。それからかりにサバンナ号日本の横浜の港に入ってきますね。そこで事故を起こしたらその事故日本が見るのですか、アメリカが見るのですかということです。よくなっておるところと、それからかりに例をとってサバンナ号が入ってきたときに事故を起こした、そのきめてある範囲の外へ出た場合、それはどこが見るかということをひとつ説明してください。
  23. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 初めの陸上炉でございますが、陸上炉につきましては、これは当然先ほど業界からも御説明がありましたように、アッパーリミットをつけてという解釈でございました。しかし先生御存じのように、実用炉そのものは三つしか動いておりません。そういう関係からその点についてはやはり第三者の気持ちを察して青天井でいくほうが不安感もなくなるし、実際的ではないかということでとりあえずもう十年延ばしていただいたわけでございます。それから船につきましては、これはたとえばアメリカのサバンナでとりますと、サバンナが日本に入りました場合には、入ります前にアメリカ日本政府間協定を結びます。そのときにたぶんいまの想像でいきますと、アメリカは五億ドルのアッパーリミットがついておりますから五億ドルまでの契約は実際に入ると思います。したがいまして五億ドルの範囲内におきましては、向こうがいまの補償した金で無過失責任関係のものの賠償をする。しかしそれより万が一大きいものが出た場合には、これは国が援助といいますか、国が絶対第三者に影響のあった分について補償していくという形をとることになると思います。
  24. 三木喜夫

    三木(喜)委員 国とはどこですか。
  25. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 日本政府でございます。
  26. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そこで私はどうもその点問題に考えるのですが、陸上の原子炉の場合は最高一千万円じゃないですか。違いますか。
  27. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 発電所の原子炉はいま全部五十億でございます。今度六十億にしていただきたいというようなことでございます。  それから、その下に区分がございます。たとえば研究炉とかあるいは運搬の場合の量とか、そういうところで制限がついておりますが、今度はそれを、この法律を通していただきますと、比較的そっちのほうの金額は保険金額が上がる形になっております。その点、発電炉といたしましては六十億ということでございます。
  28. 三木喜夫

    三木(喜)委員 結局五十億を六十億にする、これは保険の場合。十億上げるということ。そのほかどこがよくなっておるのですか。よくなったところをひとつ言うてみてください。
  29. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 よくなったところと申しますと、そのほかにいまの先生おっしゃいました下の、もう少し小さいほうの定額のところの引き上げがあった点が変わっております。あとは、やはり現状といたしましては前の法律のたてまえを十年守っていったほうがいいのじゃないかという検討会の方針で来ておりますので、特にそこで取り上げて、大きいところでどこがよくなったということはちょっと申し上げることはできないと思います。
  30. 三木喜夫

    三木(喜)委員 ブラッセル条約は百億ドルをやっぱり限界にしておったようですね。
  31. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 一億ドルでございます。
  32. 三木喜夫

    三木(喜)委員 一億ドルですか。その辺どうですか。
  33. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 ブラッセル条約は一応一億ドルということで三百六十億。したがいまして、私たちのほうも今度船の場合には三百六十億円を下らないところで二国間で政府協定を結ぶという形で、その点は取り上げておるわけでございます。
  34. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そうしますと、これを二国間協約とせずに条約としたほうがいいんじゃないかと思うのですが、条約とできない理由、それほどまでにしない理由はどこにあるのですか。
  35. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 これはだいぶ私たちも考えたわけでございますが、船が入るか入らないかという関係につきましては、たとえば「むつ」でまいりましても、条約という形でいきますと、行く時期その他について非常に時間がかかると思います。したがいまして、向こうとできるだけ早く結んでいきたいという、船の動きという立場からいけば、できるだけ政府間協定でいかしていただきたいというのがねらいでございます。
  36. 三木喜夫

    三木(喜)委員 それから、いま佐々木さんおいでになっていますが、前に近江君のほうからも質問があってお答えをいただいておるのですけれども、いまちょっと私が申しましたように、「むつ」の使用目的ですね、目的をなぜ変えられたのですか。これは佐々木さんのほうからお伺いしたりあるいは行政側からも聞いたりしたいと思うのですが、それがどうも今度のことと符合さして考えられてしかたがないのですけれども、その点の疑問を解いてください。
  37. 佐々木周一

    佐々木参考人 当初事業団ができましたときには、気象観測船という計画でございましたが、これで造船会社に注文をいたしましたところが、予算の金額よりも非常に高い値段でないと引き受けてくれないのです。政府並びに原子力委員のほうで研究をなさいました結果、特殊貨物船ということにすれば大体予算の範囲内でできる、こういうことで認可を変更なさったように私は承知いたしております。
  38. 石川次夫

  39. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほどの三木委員の質問に対する原子力局長の答弁を聞いておりましてちょっとひっかかりましたので、関連してお伺いいたします。  三木委員は、何がゆえに条約としなかったのか、二国間の契約は条約でもいいじゃないか、こういうことだったと思うのです。それに対してあなたは、いろいろと考えましたがということですが、これは二国間の契約も条約とどう違うのです。条約と契約の違いを言ってください。
  40. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 ただいま私の申し上げましたのは、二国間で政府間協定のところでやらしていただきたいということを申し上げたわけでございます。それで三木先生条約とおっしゃいましたのを私が聞きましたのは、すべて国会承認を受けて全部やっていく条約、こういうふうに判断いたしましたので、私は先ほど政府間協定でやりたいと申したわけです。  それで先ほどのをちょっと補足さしていただきますが、実は先ほど御質問がありましたように、できるだけこの法律の中に入れようということで、ブラッセル条約で三百六十億と出ているので、それを下らない点とかそういう大きなところはこの中できめまして、あとは向こうとの実際的な行き方の問題もこまかい協定というところでいけるから、その点は政府間協定でやらしていただいたほうが、仕事の進み方としてはいいのではないかということでございます。
  41. 田中武夫

    田中(武)委員 はしなくもあなたは語るに落ちたと思うのです。その名称が何であれ、交換公文の交換というようなものであれ、契約であれ条約であれ名称は何であれ、二国間あるいは多数国間の取りきめは条約ですよ。ただ違うのは、いまあなたが言ったように行政権だけでやろうという考え方、条約であるならば当然国会の議決が必要である。したがって国会の審議を経ずして行政権だけでやっていこうという考え方が出ておる、そういう考え方は許されぬと思うのです。  それともう一つは、協約でやった場合、これはどうなんです。国連憲章に基づいて国連事務局へ登録をするのですかしないのですか。たしか国連憲章の二条だったか、国連憲章にはそういう規定があったと思うのです。条約なら全部登録をすることになると思うのですが。
  42. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 確かにいま先生のおっしゃいましたとおり、私の答弁は政府間協定で国会を通さずにやらしていただきたいというのが趣旨でございます。したがいまして、国連憲章の二項ですか、あれの登録にはしない範囲でいくという形を考えております。
  43. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣、これは重要だと思うのですよ。あなたも予算委員会で私の質問を聞いておられたと思うのですが、ともかく行政権で何ごともやろうとする。そうして国の負担あるいは国会の承認を得なければならない問題をすべて行政権の範囲でやろうとするのだ。この契約も国の国庫債務負担行為にならないですか。契約なら債務があるでしょう。それと憲法の国庫債務負担行為、たしか八十五条でしたか、との関係はどうなります。
  44. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 予算といたしましては、予算要求のときに確かに債務負担で補償契約ということで金を計上することになっております。
  45. 田中武夫

    田中(武)委員 国庫債務負担行為として憲法八十五条の手続は予算でとった。それならなぜこれを条約にしないのです。私は、そういう行き方がいけないといままで何回も言っておるのです。できるだけ国会審議を避けようという佐藤内閣というか、今日の政府のやり方にはわれわれは大きな不満を持っております。たとえば、法定事項であったことを政令事項にするとか、今度の健康保険法の改正の例の弾力調整事項だとかあるいは郵便料金の改定、法定料金を政令あるいは省令事項にするとか、あらゆるところで国会軽視があらわれておるのです。大臣、一体、三権分立ということをどう考えておるのですか。できるだけ国会の審議を経ずに、行政権でごまかしていこうという考え方がここにも出てきております。私は、そういう行き方には反対です。大臣の政治的答弁を……。
  46. 西田信一

    ○西田国務大臣 相互間の取りきめは協定によろうということにこの法律は書いておりますが、これは、しかしながら、国会軽視というような気持ちは毛頭ないのでありまして、たとえば、補償措置額等におきましては、三百六十億円という国際的な限度まで引き上げるというようなことも明示いたしておりまするし、あとは、船が相互に出入りするつどに協定を結ぶというようなたてまえからいたしまして、手続関係であるというふうに考えまして、条約という道をとらなかったのでございますが、決して、国会軽視というような、そういう三権分立を無視するというような気持ちは毛頭持っておりません。
  47. 田中武夫

    田中(武)委員 国家間の取りきめ、その名前が条約と使おうが、契約と使おうが、あるいは交換公文というような文句を使おうが、これは原則として全部条約なんですよ。違いますか。そうなれば、当然国会の批准を得るのが手続なんですよ。いま局長の言ったように、当然条約で定めるべき性格のものを国会の審議を避けるために契約といったって、これは通りませんよ。契約という名前を使ったから条約でないということはいえないのです。その名称が何であれ、その内容が条約である限り条約の手続をとってください。二国間協約だから、契約だから、条約でないという言い分は通りません。当然国会の批准を得るべき問題です。何なら学者に聞いてごらんなさい、名前が何であれ、条約とつけようが、契約とつけようが、すべて憲法上いうところの条約なんです、違いますか。何も持っていませんが、何なら一ぺん六法全書を借りてやりましょうか、どうなんです。これは当然国会の批准を得るべき性格のものです。そういうことでは私は了承できません。まだ答弁ありますか。性格は条約ですよ。条約でないという反証があるなら言ってください。
  48. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 確かに先生のおっしゃるとおりでございます。  ただ、私たちのほうは、それを政府間協定で——たとえば、来月向こうの港に入りたいというときの処置というのは非常に急ぐ場合がございますので、そういうのを政府間協定でやりたいということで、手段で申し上げましたので、考え方としまして確かに条約というものはみんなそうでございます。
  49. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣、これは当然条約なんです。条約は、その取りきめは行政がやりますが、国会の批准を得なくちゃいけない。そういう手続を避けるために契約と名前を使ったって、名前が何であれ、これは通説ですよ。どんな名前を使おうと条約であります。したがって、国会の批准を通すべきです。  私は、了承はできませんが、関連質問でありますので、この程度で質問を留保いたします。宿題として預けます。もっと検討して国会批准の手続をとるように要請します。終わります。
  50. 三木喜夫

    三木(喜)委員 私もその問題は別の角度から触れようと思っておったわけです。ちょうど原子力損害賠償制度検討専門部会の答申があなたに出されておるわけであります。四十五年の十一月三十日に出ております。いまこれに参加された委員の方もうしろのほうにおられるようでありますが、その中の六ページの「原子力船」、こういうところに明快に書いてあるわけです。  「『原子力船運航者の責任に関する条約』があり、原子力船運航者の責任を一原子力事故当たり一億ドルで制限するとともに、その制限額まで民間の責任保険等および国家の補償により措置することを義務付けている。このような制度は、すでに米国、西独、フランス等においても採用されている。」となっておりますから、アメリカと、かりにサバンナ号が入ってくるという場合に、当然相手国はこの条約に入っておるのですから、日本もこの原子力船運航者の責任に関する条約に入るべきが先決じゃないか。なぜ入ってないかということを私は聞きたかった。  ロの項に、「このうち、特に、わが国の原子力船外国の水域に立ち入ろうとする場合、および外国原子力船が本邦水域に立ち入ろうとする場合においては、 『原子力船運航者の責任に関する条約』が発効していない現状では、相互主義の建前等も勘案して、わが国政府と相手国政府と合意した額で、原子力船の運航者の損害賠償責任制限しうることとするとともに、その額まで確実な損害賠償のための措置を講じさせることが必要である。」と書いてある。なぜ日本がこれに入ってないか、私はそこから直していく必要があるのではないかと思うのです。それをまず一つお伺いしておきたい。  だから、いまのようなこそくなことが行なわれるのじゃないかということと、もう一つは、私の想像で、先がたからずっと言っておりますが、ブラッセル条約というものは、三十七年五月の十四日から二十五日までかかって、第十二回海事法外交会議で、軍艦も条約の対象、こうしておりますね。そうすると、やはり原子力潜水艦の問題が日本としては一番けんびきになるので、こういうところをそっとされておるのかしらんという、別の角度の批判が出てきておるわけです。私は持つわけです。田中さんは条約論でお話しになりましたけれども、そこからも問題がありますし、大きな国会軽視の問題もありますし、それから軍事と科学との問題、特に日米安保条約というようなところがこんなところにしわ寄せされて、非常に温厚でそして紳士の原子力局長のところにしわ寄せが来て、こんな質問にならざるを得ないということはまことに忍びぬのですけれども、決して局長を責めておるわけではなく、むしろこういう制度がずっとしわ寄せになってきたところがこんなぶざまなかっこうになって出てきたのではないか、こう思わざるを得ぬのです。
  51. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 ただいま先生のおっしゃいました原子力船運航者の責任に関する条約、これ、ブラッセル条約でございます。これは批准したのはポルトガルだけでございまして、あと原子力船を持っている国がもう一国批准するとこれが発効になります。それがまだされておりませんで、実際に発効されておりません。米国、フランス、西独等がすでにその制度を採用して、中身を具体的なところを取り入れているということでございます。ドイツが近くこれを批准するのではないかといううわさが出ておりますが、先ほど先生のおっしゃいましたように、ここに軍艦が入っておりますので、ドイツもその点で非常に疑問視をしているというのが現状でございまして、その点わが国とも同じような立場でございます。しかし、わが国のほうは、やはりできるだけ今後、国際条約はあったほうが原子力船の運航等はいいので、その点についてはできるだけ努力はしていきたいということでございます。
  52. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そこで局長、もう時間がありませんから、くどうは言いませんけれども、われわれといたしましては、これは軍艦にも適用してください。中へ立ち入り権はないですよ。立ち入り権はないけれども、どんな損害かという、これについての検討はやはり日本の国でなされますから、そのときは、これは原子炉事故だったとかなんだとか言わなくても、外に出たところの事故によってわかるのですから、これは科学を主宰し、特に原子力の局長なら、軍艦にも適用というブラッセル条約の同じような制度ということなら、軍艦だけはずしてほかのものの災害だけ言っても知れておるですよ。サバンナ号なんか年に一回ほどしか来ないでしょう。しかし、原子力潜水艦は何回も日本に来ておりますしね。これをやはりシビリアンコントロールとおっしゃるのなら、シビリアンの最たる者は原子力局長ですよ。軍事の最たる者は防衛庁長官ですから、防衛庁長官に科学技術の中へくちばしをいれられて、たとえば濃縮ウランで、はあ、さようでございました、ごもっともですでは、ちょっと済まぬと思うのですね。前にそうだったと思うのです。この科学技術対策特別委員会でも彼は胸を張ってものを言っておりました。軍事がシビリアンコントロールを征服したかのごとき言い分でしたが、私からするならば、やはりこの原子力ということが非常に科学が軍事と結合しそうな接点ですから、その接点を守っておる人としましては、ブラッセル条約の中の一つ、軍艦の適用だけでも主張するところがあってほしいと思うのです。それがやはりここにはしなくもこういう条約になって出てきて、何でもない年に一回ほどのものにウエートをかけておるような感じがしてしかたがないのであります。  それからもう一つ、ついでにこの答申の中に書いてあることでお伺いしておきたいと思うのですが、ハの条項です。「原子力船がわが国の領海内にいる場合の損害賠償制度」について初めのほうにそれが書いてあります。そして五行目に「原子力施設損害賠償責任および損害賠償措置と異なった取扱いをする理由に乏しいとする意見も強かった。」こう書いてあります。これは先方東京電力ないしは原電にお伺いしたことと一致するのですけれども、すでにこういう意見が出ておるわけであります。なぜ異なった取り扱いをするのか。いまお話を聞いておっても、確かに異なった取り扱いがしてある。十年青空のままに置いておくほうが——しばらく猶予をいただきたいという局長のお話ですからわかるのですけれども、これもすでに専門部会でそういう答申をなしております。両方異なった取り扱いをしてはいけないじゃないか。これについて、あえて異なった取り扱いをされておる理由をお聞かせいただきたいと思います。
  53. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 これは問題は船だけアッパーリミットをつけちゃうかという問題が一つございます。そうしますと、相互主義といいますか、外国との行き方が非常に楽になります。しかし、船だけはアッパーリミットをつけて、制限をつけまして、陸上だけが青天井になっているというのは日本としては変ではないか、したがいまして、青天井と両方合わせたらどうか、そうしますと、それでは日本の「むつ」が外に出られなくなる、したがいまして、その分、外へ出る外国との相互交換のところだけ例外に扱うという形で、両方に不平等になるべくしないようにして、しかし外国との関係で余儀ないところをこの形をとったという形にしたというのがこの考え方でございます。
  54. 三木喜夫

    三木(喜)委員 それもわかるのですけれども、こういう意見が出ておるのにどうかなということを思うわけなんであります。堂森先生があとなさるということですから、いま田中さんの質問もありますし、問題がまだあとへ残っております。一応私はここで終わらせていただいて、この次機会があればもう一回やらせていただきたいと思います。終わります。
  55. 石川次夫

  56. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいま上程されております二つの法案につきまして若干の質問をいたしたい、こう思うのでありますが、まず賠償法法律関連してであります。この法律が制定されましたのは三十六年のたしか五月かに衆議院の本委員会を通過いたしまして決定されているのでありますが、私当時の速記録を少しく調べてみたのであります。そうしますると、本委員会でもこの法案が通過いたします際に幾つかの附帯決議が付されておるのであります。この附帯決議が付されました際に、当時の国務大臣でありますところの池田正之輔さんは、これらの決議の案の趣旨はもっともなものでございまして、われわれも決してこれは等閑視しているわけではございません、必ずこれを順守いたしまして決議の趣旨に沿うようにいたすものであります、当然のことでありますが、そう言っておるのであります。そして、私、過去約十年の間のわが政府の科学技術あるいは原子力に関する諸政策の経過を見ておりまして、この賠償法が通るときに付された附帯決議というものの実行すらも、はたしてこれは十分誠意をもって政府は行なったであろうかということをまず検討したのであります。もっとも昭和三十六年でありますから安全基準というようなものはまだ決定されておりませんでした。そういうものも早く決定せいとかいろんなことが書かれてあるのでありますが、私も当時を思い返してみますると、特に東海村の原子力発電所がコールダーホールから輸入されるとか、あるいは研究所の建設がどんどん進んでいくとか、東海村の場合を一つ考えましても、その付近に工場地帯がどんどんできる傾向にある、いろんな周囲の状況等を勘案して、原子力の炉のある周辺には何かの整備をするような方針をもって法律周辺の地帯を規制していく必要があるのではないか、こういう議論が盛んに当時行なわれまして、たしかもう一つ前の大臣は中曽根さんでなかったかと思いますが、当時の大臣等も、そういう法的な規制が必要だから、そういう方向で周辺の整備を行なうような法的措置をしていこう。いま委員長代理をしておられます石川さんもおられて当時盛んに議論をやっておられたのを私覚えておるのであります。そういうようなことを一つ見ましても、原子力周辺にそういう整備をするような法的な措置をするということは何も行なわれておらぬと思うのであります。この第一番目の附帯決議一つを見ましても政府は何にもやっていないのでありますが、一体この法的な措置考え方についてのその後の経過はどうなっておるのでありましょうか、まず承っておきたいと思います。
  57. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 この附帯決議の第一に、「安全基準を速かに設定し、これに基いて原子炉の過度集中を避け、周辺環境の整備を図る等原子力損害に関する予防措置を講ずること。」というのがございまして、これが先生の御質問だと思いますが、いま先生おっしゃいましたように、安全基準につきましては、原子力委員会におきまして原子炉立地指針あるいは原子力船運航指針、軽水炉安全設計審査指針と、具体的な指針をつくって安全審査に対しての処置をとっております。  それでもう一つの地帯整備のことでございますが、地帯整備につきましては、安全審査立場といたしまして、やはり非居住地域あるいは低人口地帯等をつくれということがございました。その地域につきましては、事業者側がその土地を買う、使用権をとるという形で、絶対民衆のほうに事故が起こらない形ということをとらしております。そのほかそのまわりの地帯整備につきまして、たとえば道路その他の問題につきましては、その事業者が、その土地の方々の安心感等の関係から、その地帯整備の事業についてできるだけ強力に進めるようにわれわれ指導しておりますが、その中でも特に東海村関係におきましては、国の施設がございます。したがいまして、その関係につきましては原子力委員会のほうで四十年の八月に東海地区原子力施設地帯整備についてという五カ年計画の地帯整備計画を総理大臣に出しまして、それに基づいて現在まで約二十億の措置をとっております。これにつきましてはまだ少しおくれておりますので、もう一年やりまして、その後第二次計画を出すか、その点をいま原子力委員会検討中でございますが、できるだけ地帯整備に対する努力をつとめておるところでございます。
  58. 堂森芳夫

    堂森委員 私が申し上げておるのは、単に東海村だけのことじゃないわけです。たとえば、現在私の県の福井県では、高浜地区あるいは美浜地区等におきまして、密集したとも申せませんが、隣接した原子力発電所がどんどんできておるのです。また福島県もそういう地帯と見ていいのじゃないでしょうか。しかし、いま原子力局長の答弁を聞いておりますと、東海村についてはそういう計画をつくって、そして巨費を投じて実行している。それは何も法的に全国のそういう周辺地帯を規制するような法律はないのでありまして、私のほうの福井県の敦賀地区、高浜地区なんというのは、ものすごく大きなキャパシティーを持った原子力発電所がどんどん、しかも隣接して、同じ町に、隣の町に、そしてまた一号炉、二号炉、三号炉、こういうふうにできていく予定でありますから、非常な密集地帯であります。したがって、そういう周辺地帯を整備していくような法律的な処置は、十年前のこの法律が通ったときと比較して問題にならないほど現実的に必要なのでございます。大臣、いかがでございますか、それがいまだに法的に何も措置がありませんが、一体どういうふうにしていらっしゃいますか、御所見を承っておきたいと思います。
  59. 西田信一

    ○西田国務大臣 堂森先生御指摘のように、東海地区において、あるいはまた福井県の若狭湾地区におきまして、集中して原子力発電所が建設されておることはそのとおりでございます。そこで、いま局長も答弁を申し上げましたが、この許可にあたりましては、原子炉安全専門審査会におきまして、あらゆる角度から、あらゆる基準に従って厳密な安全審査等を行ないまして、また、他の原子炉との関係等につきましても十分な配慮を行なって、あらゆる環境その他から考えて安全であるという確認のもとに、これを行なっているわけでございます。先生申し上げるまでもないことでありますけれども原子力発電所というものはどこにでもつくろうというわけにまいりませんで、それぞれやはり一つの条件を満たさなければならぬわけでございますが、その意味におきまして、あるいはいま御指摘になりましたように、ある地域に若干集中的な建設が行なわれるということがございますけれども、これにつきましては、いま申し上げましたような安全性につきましては、十分な確認のもとに行なっておるというこでございますし、もちろんこれには地元の方々の御協力というものが前提であることは申すまでもございません。  そこで、安全の問題は別といたしましても、その周辺の地帯整備等につきまして、もう少し徹底すべきでないか、あるいはまた法的な根拠に基づいて建設を行なうべきでないかというのが、先生の御意見であったように伺いますが、確かに現在そういうような法的な基礎に基づいてというような措置はとられておらないことは、先生御指摘のとおりでございますけれども、経済企画庁等が行なっておりますところの地域開発の線にも沿いまして、安全の問題あるいはあらゆる環境の問題等考慮いたしまして、つとめてこの地帯整備にも力を注いでまいりたい、かように考えて、現在も政府みずから行なうものは行ない、また事業会社に御協力願う面も相当ございまして、これらも実行に移しておるところでございます。将来につきましても、十分その御趣旨に沿うように配慮してまいりたいと考えております。
  60. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいまの大臣の御答弁でありますが、一生懸命に安全保持のために、それは当然のことであります。またわが国の、現在における安全基準等の厳重な基準によって、原子炉をつくる場合には非常な念の入れ方で予備的な、いろいろな措置が講ぜられておる。このことは当然であります。たとえば、アメリカのような、広大な地域の国で、しかも人跡まれなところに原子炉をつくる国とは違うのであります。これは当然のことであります。しかし、この狭い国土に一億の人口がおる、こういう地域で、しかも原子力発電所がどんどんできる地帯の付近に、ただ行政指導でやっていくというだけでは、私はだめだろうと思います。いままで、あんなにやかましく十年前にはいわれておった周辺整備のための法律が、今日もできてこないというのはどういうところに理由があるのでありましょうか。他の政府委員でもけっこうでありますが、その間のいろいろな事情等も説明してもらいたい、こう思います。
  61. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 確かに先生のおっしゃるとおりでございまして、現在のところ経済企画庁等で考えております総合開発計画、そういうところでできるだけ原子力地帯のところは先がけてりっぱなものにするという立場をとっております。前々から私たちのほうも、たとえば原子力地帯のところだけの地帯整備の立法ということもだいぶ考えたわけでございます。僻地対策の立法等いろいろございまして、それだけの単独法というのは、いま検討はしておりますが、なかなかむずかしゅうございまして、できるだけ事業者の義務をやらせることと、それから関係各省で地帯整備をやる場合に、その中で原子力のところはできるだけよけいやっていただく、これを、みみっちい形で申しわけございませんが、現在やっておるわけでございます。
  62. 堂森芳夫

    堂森委員 それは僻地対策等と関連して——僻地対策等は問題にならないですけれども、僻地対策はどうでもいいという意味じゃないですが、それはちょっと局長、答弁はおかしいですよ。とにかく大事なことでありまして、もっと積極的におやりになるように大臣に警告しておきます。  それでは質問を進めまして、附帯決議の中に、これは政府が守りますと約束した決議ですから、守っていなければ追及しなければいけない。原子力施設周辺地域の居住者等に対しモニタリングを実施して被害の早期発見に資するようなことをいたします、こう言っていますが、それは原子力発電所あるいは研究所の従業員につきましていろいろモニタリングをやる、それは当然のことであります。しかし私の知っている範囲では、私の県でも、その地帯、地域の一般住民にモニタリングをやっているということを聞いたことはありません。これはやらぬでもいいのですか。それはなるほど学問的には——そのくらい私でも知っています、やらなければいろいろなことが出てこないなんということは知っておりますけれども、やりますと附帯決議をあなた方が承認して政府はやられぬのですから、一体どういうわけでございますか、この点ひとつお聞きしておきたい、こう思います。
  63. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 この件につきましては、もちろんモニタリングの実施の義務づけというものを民間にいたしておりますが、その実施状況については政府が監視する一方、同じように私たちのほうも、放射能調査の一環といたしまして現在調査を進めております。  このやり方といたしましては、やはり雨水あるいは浮遊物それから農作物、海産物等、これはものによっては三カ月あるいは六カ月という規定で県の試験場、現在のところ全国としましては二十七、来年は二十八にお願いするわけでございます。そこで定期的に常時観測をしていただいて、そのバックグラウンドを常に調査して把握しておくという体制ではこれで十分進めております。しかしそのほかに、もちろんモニタリングのしかたあるいはこれから先の精密なやり方等の研究もございまして、こういうことについては放医研にその研究を並行して進めさすという形をとっております。したがいまして、モニタリングにつきましては、政府といたしましても、その原子力のある地帯につきましては十分監視体制をとっております。  ただ、先ほどちょっと放射能調査の一環と申し上げましたが、これは海外で原爆を実験をやります、それの調査もございますので、その両方を一体化いたしまして日本全国の調査を進めているというのが現状でございます。
  64. 堂森芳夫

    堂森委員 やはり私が最初お尋ねしましたように、原子力周辺の地帯の整備法というのは、こういうことも含めたものがつくられているところに意味があると思うのでありまして、大臣にも大いに今後御努力を願いたい、こう思って、質問ですから別に願うわけではないのですが、要望しておきます。  それから当時の附帯決議の中に、「原子力委員会において原子力損害の評価に関する具体的基準を設定すること。」こう書いてあります。何か有澤先生も当時答弁で、大いにやります、こう言っておるのを私は読んだのです。けさ読んできたのですが、何もまだできていない。——あるのでしょうか、できないのでしょうか、あるいはやるのでしょうか、あるいは十年間やったがやれぬというのですか、どっちなんですか、お尋ねしておきたいと思います。
  65. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 「原子力損害の評価に関する具体的基準」こうなっておりまして、これがためにはいろいろ基本的な調査をいたさないと、損害というものが、人的損害、物的損害と、一応はそれで区別はつきますけれども、その場合に、特に人的損害というような問題になってきますと、これはいろいろの場合がありますので、それにつきましては放射線医学総合研究所のほうにおいてなお検討、研究を進めていただいております。  それで、物的損害につきましては、これは土地だとか建物とかあるいは商品とかいろいろありますが、大体その時価というものを基準にいたしたいというふうに考えておりますけれども、それだけで具体的な基準というふうにいえるかどうか、はなはだ心もとない点もございますので、いまそういう基準をどういうふうにきめたほうが最も合理的であろうかということについて研究をしておるところでございます。いままで幸いにこういう事故が全く起こらなかったわけでございますので、私どもの研究も少しピッチが落ちているということはありますけれども、研究はやっておりまして、いずれその具体的な基準の案ができましたならば御報告を申し上げたい、こういうふうに考えております。
  66. 石川次夫

    石川委員長代理 ちょっとお待ちください。  この際、参考人各位に一言あいさつ申し上げます。  あと参考人の御要求もないようでございますので、本日は長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、両案審査のためたいへん参考になりました。委員会を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。  それでは堂森君。
  67. 堂森芳夫

    堂森委員 有澤先生に重ねてお尋ねせざるを得ないのでありますが、私大体ただいま上程されております賠償に関する法律補償契約の法律を見てみまして、この法全体に対していろいろ重要な疑問を持っておるのです。一体この法律はほんとうに損害があった場合に賠償する気持ちでやっておるのか、そういう疑問を持つのですよ。いや、それは損害はほとんどないから、それでほとんどないのだから、そういうものをつくっていくことが国民を安心させることになるからつくっておるのであって、実際はそんなことはないのだ、そういうものが適用されるような場合はまずないのだ、こういう気持ちでおられるから、それで損害の具体的な基準も十年たってもできないのだ、こういうふうに考えられるのですが、そうじゃないのですか。
  68. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 原子力損害というのは、一応損害賠償ですから、起こることがあるかもしれぬということを予想しているのですけれども、これは私どもの感じから申しますとほとんど起こらないという感じを持っております。しかし、安全審査会におきましても、これはとにかく人間が、英知を傾けてはやりますけれども、とにかく人間がやることでございますから、また人知を越えたような何らかの原因で事故が起こらないとも限らないので、そういう場合、全く万々が一の場合に対する措置だ、こういうふうに私ども考えております。しかし法律がそういうふうになっております限りは、もしそういう事態が起こった場合に、それに対して適切な、そして迅速な損害賠償が実施できるように考えなければならない、この気持ちは私は持っております。  それで、いまの損害賠償の評価に関する基準でございますが、基準は一応一般的にきまったものはありますけれども、私どもの最も検討しておる点は、その一般的な基準でいいものかどうか、たとえば、交通事故で人が死んだ場合には、死亡事故に対する損害賠償というような制度はあります。しかしそれでいいのかどうかということになってきますと、もう少し——原子力事故でございますから、その後遺症であるとかあるいは遺伝に及ぼす影響であるとかいろいろな問題が、つまり普通の事故とは違った損害が起こってくることが予想されるわけです。そういうものを考えてきますと、一ぺん基準をきめたら、それ以外の場合には適用できないのですから、よほど基準はきちんとしておかなければいかぬ、こういう意味において慎重な検討が重ねられておる、こういう意味でございまして、決して起こらないからこういうものはつくらなくてもいいというふうな、そういう安易な考え方をしているわけではございません。
  69. 堂森芳夫

    堂森委員 そうおっしゃればなおさら基準をつくる必要があるのではないでしょうか。たとえば、放射能を受けて、そして二十年後にガンになった、あるいはロイケミーが出た、あるいは他のいろいろな病気が出たという場合には、それははたして被曝を受けた、照射を受けたから起きたのかどうかという議論も出てくると思います。中には、自分の場合はたいしたことはなかったが、しかし次の子供の代にかたわが生まれてきた、あるいはかたわでも頭の小さい子が生まれてきたとか、いろいろなことが出た場合に一体どうするか。非常にむずかしい場合があると思うわけでありまして、それならばこそ、むずかしいからこそ、やはり、もちろんそれは幾ら幾らということはきまらぬでしょうけれども、ほぼ目安といったものはきめておかないと、法のたてまえとして、ほんとうに国民に向かってこういう場合はこうだ、こういうことはやはり強くわかってもらうためにも、法の目的からいっても必要だと私は思うのでありまして、十年かかってもまだ研究中だというのは、これはどうもおかしいと思うのです。もう一ぺんくどいようですが御答弁願いたい、こう思います。
  70. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 まことに申しわけありません。おっしゃるとおり原子力損害というものは、人体の場合には非常に複雑な状況になってくると思います。しかもこれは無過失責任の形になっておりますだけに、いま事例としておあげになりましたような場合についても、何らかの形の補償が行なわれるような、そういう基準、いいかげんにつくればいいということになれば、それはある程度妥協するならばできますけれども、それではまた偉い学者さんたちから、こういうものをつくったのはどういうわけだ、こういう反論も起こってくるおそれもありますので、それでその問題は放射線医学総合研究所あたりの御意見も十分聞いて、それで定めたいというふうで、いま検討お願いしておるところでございまして、われわれ自身も、各国の事例をも集めまして、そういう調査を進めておるところでございます。なるべくすみやかに作成いたして、お目にかけたいと存じます。
  71. 堂森芳夫

    堂森委員 しかしそうおっしゃられますけれども、実際に起こったらどうするか。そんなことをしておいたらたいへんだと思うのですよ。たとえば、ちょうどコールダーホールの改良型を東海村に買う話ができた当時でございますが、ちょうど私ロンドンにおりまして、入ったときにウインズケールでああいう事件、アクシデントがあって、当時の総理大臣はイーデンさんでしたか、さっそく総理大臣命をもって調査委員会を発足させまして、それからウインズケールにヘリコプターで飛んだり、いろいろにして、大騒ぎのようなことで調査をされまして、それで損害賠償額というものも決定されたということになったのであります。これは有澤先生よく御承知だと思うのでありますが、イギリスあたりでは、あるいはアメリカでもけっこうでありますが、そういう被害賠償の基準といいますか、あるいは何かめどでございますか、そういうものはないのでございますか、いかがでございます。   〔石川委員長代理退席、委員長着席〕
  72. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 まだそういうものを、実は私どもは承知いたしておりません。イギリスにしてもアメリカの場合についても。
  73. 堂森芳夫

    堂森委員 それでは先に進んでまいります。  さらにさっき三木さんが質問しておられました事業場従業員の救済の問題、賠償補償の問題、これは私あとからあらためて触れたいと思います。  そこで、この二つの賠償法法律が今回改正されるにつきましてのその理由は、いろいろと提案理由のときに説明されたとおりでありまして、明らかなところであります。私、最初の現在の法律が通りましたときの速記録を読んだりしていろいろ考えたのでありますが、あの当時の部会長は我妻先生でした。我妻先生がこの法律は私が考えた子供のようにはなりませんでした。いわば鬼子とは申せませんが、違ったものが生まれてきました、こう言っておられるのであります。その理由を申しましようか、こういうことなのであります。法のたてまえからいけば、また国が全責任を持つというのならば、まず原子力災害損害に対しては、全部原則として国が責任持ちます。こう出て、しからば国が全責任を負うということでは、私企業の電力会社とかそういうものが何も責任持たぬというのはおかしいから、今度は民間保険に契約をさせて、もちろん措置額というものはきまって、そして措置額というものがあるから、国が保険金を取り上げる。あるいはその他措置額をこえるような損害に対しては、国家補償補償料というようなものを、またさらに取り上げていく。そしてそういうものを見ていく、こういうようなことにする。あるいは地震とか噴火等に対しては、これはこの法律でもそうなっておりますが、すべてそういうものは国が責任を負っていく。そして今度は企業者に対して二段的に国が取り上げていく、こういうふうにするほうが法律としては筋が通ると思う。そのほうが国民に与える何といいますか不安感を除く意味においても、そのほうが最も理想的だと思います。しかしどういうものか政府の政策的な御都合でこういう法律になってきたのであります。こういうこともこの国会で述べておられるのであります。私もそう思うのです。どうしてこういうややこしいことにしてきたのか、こう思うのでありますが、この点は将来そういうふうに変えていこうというお気持ちはないのでしょうか、あるいはこれでいいというお考えでございましょうか、大臣から御答弁を願いたいと思います。
  74. 西田信一

    ○西田国務大臣 原子力災害補償につきましては、このようなたてまえをとっているわけでございますが、これはわが国のみならず世界各国とも、いずれもまず第一義的には事業者責任を負わして、そうして、こういう原子力という特異性にかんがみまして、ある限度以上は国が援助する、こういうたてまえをとっておるわけでございます。先生のお考え一つのお考えであろうと思いまするけれども、やはり私は事業者が第一義的に責任を負うというたてまえは、これは貫くべきではないかと思うのでございます。第一義的に事業者に負わしておるから、あと不安があるというふうにお考えかと思いまするけれども、私は国が援助責任を負っておりまする以上、決して国民に不安を与えることはないと思いまするし、やはり第一義的には事業者責任を負う、その及ばざるところを国が補う、こういうたてまえは世界各国の例から見ましても、また事業者がまず責任を持つという責任立場から申しましても、このほうが適当であろうというふうに考えますし、そのことが何か国民に非常に大きな不安を与えるということはなかろう、こう考えます。
  75. 堂森芳夫

    堂森委員 そこで原子力局長に答弁願いたいのですが、この法律は今度もそれは改正されていないのでありますが、措置額以上の損害については政府援助をする、こういうことですね。そうしてそれは国会の議決を経て政府考え措置をします、こういうことでありますが、援助というものは無制限に補助をしていくということとは違うのでしょうか、どういうことですか。
  76. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 事故の度合いで相当な額に達したものは、当然国会の議決を経てまいりますが、われわれが予算その他で持っております範囲内で、当然その事故に十分間に合う点については補助金等でこれを措置していくという形がとられると思います。
  77. 堂森芳夫

    堂森委員 もうちょっと具体的にいいますと、措置額が六十億になりますけれども、五十億でもいいです。五十三億とか五十五億という限度のときには国が補助するのですか、あるいは何か融資していくあるいは会社があるからおまえから出せというのか、どういうことでございますか。
  78. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 会社の健全な発展を阻害しない範囲内において、これは当然補助していくということ、会社が出すということになります。
  79. 堂森芳夫

    堂森委員 援助というのはいろいろあるわけですね。金を出す場合もある、融資をする場合がある、あるいは何か他の方策でいろいろなことをしていく、こういうことでございますね。しかし最終的には企業がつぶれないようにするために補助といいますか保証、そういうものがある、こういうことでございますか、御答弁願っておきたいと思います。
  80. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 全くいま先生のおっしゃったとおりでございます。
  81. 堂森芳夫

    堂森委員 そこでもう少し進んで質問をしていきたいと思いますが、その前にさっき原子力地帯周辺の整備に関連をして、防衛庁の方来ておられますね。これは簡単に聞いておきたいのですが、賠償法が通った当時、十年前には誤爆事件があったりして、水戸の射爆場はたいへんな問題となっておりました。そうして国会でも、この委員会でもそうだと思うのでありますが、早くこの射爆場がわが国に返還されるように政府は努力すべきである、政府もその意思を持って努力をします、こういうふうに答弁しておったと思うのでありますが、これは現在はもう演習は中止されておることはわかっておるのでありますが、そうしてこれを近く返還されるというめどでアメリカ側と交渉しておる、話もついておる、こういうふうに聞いておりますが、その間の事情を少しく聞いておきたい、こう思います。
  82. 薄田浩

    ○薄田政府委員 施設庁のほうからお答えいたします。  先生御指摘のとおり、水戸の射爆場につきましては、過去誤爆、誤射等ございまして、いろいろ御迷惑をかけまして、かつ近傍に原子力施設があるというようなことで、施設庁といたしましても、いろいろそういうアクシデントの起きないように、いままでも射方向とか標的等を変えるように努力してきたわけでございます。それから政府といたしましても、射爆場の移転について検討するというような決議もございまして、絶えず努力してまいりました。ちょうど昨年の九月に米軍側から通告ございまして、ことしの一月一日から射爆撃はやらない、こういう通知が来ております。それで、これを将来どういうふうに使うか、あるいは先生おっしゃいますような返還というような問題も含めて、現在対米的に折衝しておりますが、まだ結論は出ておりません。
  83. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、私が聞いておったところでは、ことしの四月ですかあるいは五月、六月ですか、そのころには返還になるんだ、こういうふうに聞いておりましたが、そうじゃないのですか。もう一ぺん確かめておきたい。
  84. 薄田浩

    ○薄田政府委員 先生のおっしゃるような意見も出ておりませんし、また情報としても聞いておりません。
  85. 堂森芳夫

    堂森委員 そういう事情ではあるが、しかしもう爆弾投下等の演習は絶対にない、こういうことはいえるのですか。
  86. 薄田浩

    ○薄田政府委員 本年の一月一日からいわゆる対地射爆撃場としては使用しなくなった。おっしゃるとおり、いわゆる火砲、射撃でございますか、それから模擬爆弾等の投下、こういうものには使用いたさない、これは米軍側が明言いたしております。
  87. 堂森芳夫

    堂森委員 そうすると、そういう場合以外の演習等には使うこともあり得る、こういうことでございますか。ああいう地帯はそういうことはないのですか。
  88. 薄田浩

    ○薄田政府委員 これは水戸の対地射爆撃場、いわゆる対地訓練の場所でございまして、いままでの実績から申し上げますと、いわゆる航空機からの射爆撃の訓練と、それから多少物量投下をやっておったことがございます。その辺どうなるのか、実は対米的に向こうの意向なり、またこちらの希望もいろいろ申したい、こういうことをいま折衝中ということであります。
  89. 堂森芳夫

    堂森委員 いま折衝中は折衝中でいいのです。やらぬということですか、物を投げるというような演習も、爆弾はもちろんですが、そういうものはやるのかもしれぬのですか、どうですか。
  90. 薄田浩

    ○薄田政府委員 実は一月一日から射爆撃はやらないということでございまして、現実には実は米側は一月と二月に物量投下等はやっておるわけであります。だから今後もやりたい希望はあるのではないか、こういうふうに思っております。
  91. 堂森芳夫

    堂森委員 爆弾と違いまして、物量投下の場合はそれは被害は違うでしょう。しかし原子力発電所の炉に向かって直撃弾みたいにして物量が落ちてくれば、それは被害が起きないという保証はない、そんなことではやはり問題は私はあると思うのです。そういうふうな一切の演習はやらない、こういう方向でやはり折衝してもらわなければ、これは原子力施設がたくさんある地域に近いのでありますから、そういう間違いが起きてきてはたいへんであります。したがって、大臣からも、政府として一日も早くこれが返還されるように、そういう意味でのひとつ御決意のほどをお聞きしたいと思います。
  92. 西田信一

    ○西田国務大臣 再処理工場を建設いたします条件として、あそこが射撃に使われておる間は運転はしないという、地元と約束をいたしております。そういう立場から申しましても、われわれの立場から申しますと、射撃はいま停止になっておりますが、一切あそこを使用しないように、できるならばなるべく早く返還をしてもらうようにということを防衛庁当局に対しまして要請をしておりますし、防衛庁当局もその線で米側と折衝しておると心得ております。できるだけそういう方向で努力をいたします。
  93. 堂森芳夫

    堂森委員 私はもう演習が行なわれなくなったし、近く返還される見通しがあるように聞いておったのですが、まだそこまでいかぬのですね。もう一ぺんくどいようですが、聞いておきたいと思います。
  94. 薄田浩

    ○薄田政府委員 先生おっしゃるような形、返還ということが具体的にまだ話題にはなっておりませんが、しかし施設庁といたしましても、地元の御要望も長年よく存じておりますし、近傍にああいう施設がありますので、いわゆる返還等も含めて、これは一部返還の場合もあろうかと思いますが、そういう面も含めまして、いま折衝をしております。
  95. 堂森芳夫

    堂森委員 それからさらに、近く返還されるであろう、そういうふうに私は了解しておったのです。そして防衛庁は、返還されたならば、それを一部やはり演習に使いたい、こういう計画で、内内いろいろ調査を進めておるのだ、こういうふうにも聞いておったのですが、どうなんですか、そういうことは仮定論になってしまいますが……。
  96. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 ただいま施設庁のほうから御説明ありましたように、水戸の射爆場については、現在米側と折衝中でございますが、これがもし返還になった場合、あと地をどういうふうに利用するかということの問題があるわけでございます。防衛庁としましては、千葉県の習志野の演習場でこれまで部隊の空挺降下訓練を実施してきておりますが、周辺が非常に開発が進みまして家が建ってきたというようなことから、地積が狭いものですから、非常に訓練の実施上危険があるというような状態になっておるわけであります。そこで、御承知と思いますが、空挺降下訓練と申しますのは、やはり気象条件のいいところとかあるいは平たんなところ、いろいろそういう地理的な条件がございます。そこで、この水戸の射爆場につきましては、射爆訓練は停止になったということでございますが、このあと地については、千葉県でやっております訓練を、この一部を利用して防衛庁としてはやりたい、こういうふうに考え、かつ、検討しておる段階でございます。
  97. 堂森芳夫

    堂森委員 ではお尋ねしますが、空挺部隊というのはヘリコプターですか、あるいは何か、どんなことをやるのですか。
  98. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 従来やっておりますのは、主としてC46という輸送機でやっております。しかし場合によってはバートルというヘリコプターからも降下訓練を実施しております。
  99. 堂森芳夫

    堂森委員 あの地域は何万坪あるのでしょうか、何十万坪でしょうか、その点をちょっと……。
  100. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 水戸射爆場は全体として約千百万平方メートルでございます。
  101. 堂森芳夫

    堂森委員 坪にすると幾らになりますか。
  102. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 約三百数十万坪になると思います。
  103. 堂森芳夫

    堂森委員 しかし、もちろんおっしゃるようにそういう広い地域でありますが、やはり原子力発電所の、あるいは研究所の炉、施設があるそういう地域に持っていって、航空機を使った自衛隊の演習地をつくるというようなことは、私はこれは適正でないと思うのです。起こるべき、予想さるべき——これこそあり得ますよ。ずっとそれが直撃弾みたいに航空機がどんと原子炉の上に落ちてきたらどうなりますか。これはたいへんなことですよ。そんなことはやるべきでない、常識としてこういうふうに考えなければならぬことであります。そういう間違いが起きないという保障はないわけでありますから、これは国務大臣として、射爆場の返還があった場合には、そこには自衛隊の、防衛庁のそうした演習地をつくらない、こういうことで大臣は努力をする。それは当然あそこにコールダーホールの原子炉が来るときにそういう了解がちゃんとできておったはずでありますから、そういう点で大臣大いに努力をすべきであると思いますが、いかがでございますか。
  104. 西田信一

    ○西田国務大臣 地元側とは水戸射爆場の移転が実現してから稼働するという約束をいたしております。そこで移転ないしは返還、どちらになりますか、そういう場合に、要するに、工場に危険を生ずることをおそれてこういうように取りきめておるわけでありますから、そのあとの使い方につきまして全く危険がないという使い方であるならば、これはまた考えようがあると思いまするけれども、工場操業に危険があるというふうなことであるならば、そういうことは避けてもらいたいと考えておりますし、そのように交渉いたします。
  105. 堂森芳夫

    堂森委員 これ以上あれでありますから、考えられるような危険がないようなことで万全の措置を当然とってもらいたいということを要望しておきます。  そこで、話を少しく進めまして二、三の点をさらに聞いておきたいと思うのでありますが、原子力施設が安全であるためにはもちろん安全基準というものが設けられておりまして、厳守されておると思うのであります。そしてそれはたとえば人口の問題、これは当然基準がちゃんとできております。また気象の問題あるいは水流の問題等も、当然安全基準でいろいろと措置がされておるのでありますが、さらにもう一つ、最大許容量の問題も、これは安全基準の重要なファクターとして考えられておるのは当然であります。その最大許容量はICRPでございますかの基準の十分の一以下にする、こういうふうになっております。そこで、私がお聞きしたいのは、ICRPの許容量の十分の一という規定は、その原子炉一つ一つについてこれが規制されておるようになるのか、あるいは私の県のように幾つも原子炉が並んでできると、たとえば一号炉から四号炉までできたとする。そうすると、ICRPの十分の一が四つになれば十分の四になる、目の子算によってそうなるが、一体、そういう場合、それで人体に被害を与えることになる心配がないのか、あるいはそれはいつの場合でもずっと十分の一以下であるから、四つあろうが、十あろうが十分の一をこえることはないんだということなんでございますか、この点承っておきたい、こう思います。
  106. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 十分の一以下ということの規定は、その全体的な考え方でございます。したがいまして、先生おっしゃいますように、炉が二つそばにあった。だから、一方が十分の一で、一方が十分の一で、両方足せば十分の二だということではなくて、その全体を考えまして、その地帯のサイト全体から見てそこが十分の一以下であるという考え方で安全審査会はするわけでございます。
  107. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、原子炉が何十もできることはないでしょうが、しかし、四つなり五つなり、六つなり七つなりせいぜい——あるいはどうか知りません。しかし安全性からいったら幾つもの炉が近接して密集してつくられることは好ましくないんじゃないかと思うのですが、いかがでございますか。あるいはいろんな経費の観点から、近いところに幾つも、何号炉もつくっていくということは、これはあり得ると思う、経済性からいって。しかし安全性からいってどうなんでしょうか。そういうことは、あなたが答弁されるように十分の一以下になっておるから、四つあろうが三つあろうが十分の一をこえてあぶないということにはならぬ、こういうことでございますが、どうなんでございますか。
  108. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 ただいま申し上げましたように、全般的に十分の一で考えるわけでございます。そうしますと、経済性も考えますと、そのそばに来ますと、逆にその安全性を保つために経済性も上がるという考え方もございます。したがいまして、経済性そのものではなくて、全般的な安全性の立場から十分の一になり得るというところを安全審査会できめまして、それで設置をしていくという考え方でございます。したがいまして、そばにつくったほうが経済性であるか、あるいは離れたほうが経済性であるかというのは、たとえばその十分の一のいまの基準を守る上で考えられることになると思います。
  109. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、そういう意味では、経済性は別にして、厳密な意味では、四つなり五つなりが近接してつくられておるからあぶないとか、あるいはばらばらで一つ一つずつがつくられたほうがいいとかいうことはいえないということもわかるのです。それは横着すれば一つでも上がるんです。四つあっても厳重になおさら一生懸命の努力をして注意をするという心がけで経営されるということであれば、かえってそのほうがいい場合もあるかもしれない。いまあなたのおっしゃるようなことはいえると思うのでありますが、しかしやはり何といっても十分な、一〇〇%の注意を払うということ、これは前提条件ですし、そして一つなら一つの炉があるほうが、二つ、三つ、四つよりはいいんじゃないかと思うのですが、いかがですか、これはしろうと考えでしょうか、局長、どうでしょうか。
  110. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 先生のおっしゃいますのは、あまり同じところに集中してたくさんあるよりも離れたほうが、しろうと的といいますかわれわれの考え方としてはそうではないだろうか。その点は、先ほど申し上げましたように、安全審査会が安全な見地でそのサイト全般を考えてやっていくという形でございまして、場所によって、あるいはその場所が七百万キロワットから八百万になるかどうか、そういう点の関係のかね合いもございまして、それはもう安全審査会のほうが全体的な場所のサイトから判断していただくという立場しかないのではないかと思います。
  111. 堂森芳夫

    堂森委員 もう時間があまりありませんから、それではさっき残しました従業員諸君の災害補償の問題について、二、三聞いておきたいと思います。労働省から来ておられますね。  さっき三木さんも触れておられましたが、今度の原子力損害賠償制度検討専門部会といいますか、この答申の中で、この法律従業員については除外しておる。第三者損害補償法律であるから省いておる。しかし、何といっても従業員の問題については重大な考慮を払った適当な措置を講じなければいかぬ、こういうふうになっていると思うのであります。また、その中にも、何かさっきもどなたかの御答弁、有澤先生ですか、局長ですか、何か民間保険でもそういうものをつくろうとしておるので、いま検討中である、それは本末転倒だと思うのです。そうじゃないでしょうか。そんな民間——それならいまの健康保険だってそうですよ。病気になったら君ら保険に入っておけ、政府は金がかかってしょうがないから、これと理屈はよく似ているわけです。非常に単純な言い方をすればそうだと思います。それから、第  一政府のいままでの方針は無責任だと思う。そうでないでしょうか。第一、放射能にさらされたために起きた病気かどうか判断する材料というのはいまありますか。私はやぶ医者でよくわからぬけれども、わからぬですよ。たとえば、白血病の原因が放射能の被曝であったかどうか、そんなことはだれも証明できないです。たとえば原子力発電所に十年、十五から二十五までつとめておりました。二十五でやめてほかの仕事をしておったら、四十五になってガンが出て死んだ。これは一体どこが原因か。いまの医学ではだれも説明できないですよ。だれも証明できないですよ。どういうわけでガンになった、あるいは白血病になった。それで、いろいろなことを調べると白血病ということがわかったが、白血病というのはそうした放射能を受けたために起きる場合もあるでしょう。広島の原爆、長崎の原爆の患者諸君には白血病が非常に多いこともわかる。しかし、白血病は必ずしも放射能だけによって出るものではありません。原因がわからぬのであります。そうしますと、そこで働いておって、不幸にして病気になった従業員諸君は、おまえは保険に入っておらぬから死んでもしようがないということは無責任だと私は思うのです。しかも——労働省の人おられますね、一体こういう病気になった人たちを職業病として間違いなくきめるという方法はあると思いますか、いかがですか。いろいろな問題があると思うのですが、いかがでございますか。
  112. 桑原敬一

    ○桑原説明員 御質問の件につきましては、非常にむずかしい医学的な問題でございます。ただ、私ども労働省といたしましてはこの問題非常に重要でございますので、昭和二十七年に関係専門の先生方にお集まりいただきまして、専門会議を開いていただきまして、そこで一応認定基準をつくりました。急性のもの慢性のもの二つに分けまして、因果関係がわりあいはっきりするものにつきましては、その認定基準によって地方で処理をしていく。それからまた非常にむずかしい慢性的なものにつきましては非常に問題がございますので、本省に稟伺をさせて、専門家の御意見を聞きながら処理をしていく、こういう万全な措置をとっております。幸いにいままで具体的なそういう補償の申請がございませんので、具体的な非常にむずかしい問題があったということについてはまだ経験がございません。そういうようなことで慎重に取り運んでおります。
  113. 堂森芳夫

    堂森委員 労働省としては——けい肺法をつくるときに私経験したのです。一般論として、逆に職業病というようなものについて一つ一つ法律をつくっていくというようなことは好まないという方向なんですか、どっちなんですか。非常にむずかしいために逃げるというようなことじゃないのですか。
  114. 桑原敬一

    ○桑原説明員 私は労災管理課長でございますので、労災管理の面から申し上げますと、職業病と申しましてもいろいろ種類がございますが、その病気の種類、原因にかかわらず、そこに起こります病気については治療なりあるいは障害補償なりやりますけれども、そういった病気の種類によりましてその補償を変えるということはいたさないたてまえになっております。これは諸外国も同じようなたてまえになっております。ただ、じん肺とか脊損とかむずかしい問題につきましては、補償という面よりも予防の面において、たとえば管理部門を設けまして適切な健康管理をしていくという意味におきまして、ただいま先生のおっしゃいましたようなじん肺についてそういった予防の法律があるわけでございますが、補償につきまして特別に違った制度を設けたものはございませんし、また私ども設けるつもりは現在ございません。
  115. 堂森芳夫

    堂森委員 けい肺のような病気でありますと、これは診断は楽なんですね。そうじゃないでしょうか。職業歴というものを見て、そしてレントゲンの結果を見れば、これはけい肺ということはすぐわかりますよ。これはやぶ医者でもわかるのですよ。ところがガンとか白血病のようなものはこれはだれだってわからぬですよ。職業歴を幾ら見たって、二十年つとめておったってガンにならぬ人のほうが圧倒的に多いのですからね。それでたまたまそういうふうになった人は、そうした事業所におったために発病したということも考えなければならぬし、あるいはこれは無関係であろうということも考えようと思えば考えられる。それはちょっと関係がないということは無理でしょう。関係があるかもしれぬということは学問的には考えられるが、関係はなかったという断定はできない。ところがこういう人たちに対して労災法は適用されるのでしょうか、どうでしょうか。そういう断定が下せぬ場合はできないのですか、どうでしょうか。
  116. 桑原敬一

    ○桑原説明員 先ほど申し上げましたように認定基準をつくりましてそれによって処理いたしますが、たとえば被曝線量と申しますか、はかり方が技術的に非常にむずかしい面がありまして、その辺現在科学技術庁その他で研究いたしておりますけれども、それだけにこだわらず、その方の置かれております職場環境なり作業内容等を総合的に判断いたしまして、それが業務に起因しておりますれば、私どもとしては労災も適用していく、こういうふうなたてまえで現在進めております。
  117. 堂森芳夫

    堂森委員 職業病の決定ということはむずかしい場合もあるし、むずかしくない場合もある。大体今日までにどれくらいの人たちが職業病として決定をされて処置を受けていますか、全体で。
  118. 桑原敬一

    ○桑原説明員 私の手元にございますデータでは、四十四年で二万九千百三十一人の方が、いわゆる職業性疾病によって補償を受けられております。
  119. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、約四万に近い人が、四十四年度で、労働基準法施行規則第三十五条四ですか、この規定に当てはまるようなカテゴリーとして認定されて、そして法の適用を受けておる、こういうことですね。そこで、放射線等による被害によってそういう認定を受けておる人は何人くらいありますか。
  120. 桑原敬一

    ○桑原説明員 先ほど私お答えしました二万九千と申し上げましたが、三万九千、先生のおっしゃるとおりでございます。  それから、放射線によります疾病によって補償を受けておられます方は、四十四年で九件であります。
  121. 堂森芳夫

    堂森委員 そうして、原子力の事業所に働いておる労働者であった人では一人もいないというふうに聞いておりますが、そうですか。
  122. 桑原敬一

    ○桑原説明員 現在のところございません。
  123. 堂森芳夫

    堂森委員 原子力の事業所でないところで働いておるような人たちで、いろいろな、ラジウム線とかレントゲン線とか、そういうものの照射によって疾病が出てきておる。そしてこれが地方から中央に、労働省に、その認定についていろいろ疑問がある、疑義があるので照会するというような事例は、あまり来てないのですか。そしてまた、もう一つあるのです。原子力事業所に働いておるような人たちで、そういう疑わしい人が出てきたのでどうだろうかという照会は、一回もないのですか、いかがですか。
  124. 桑原敬一

    ○桑原説明員 第一の御質問、一般の放射線その他広い意味の点につきまして、その補償の問題について特にトラブルがあったことはございません。それから第二問の、原子力関連いたしまして疑義その他の照会が本省まで上がってきたことはございません。
  125. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますると、もう一ぺん、今度は少し進んで質問したいのですが、原子力事業所で働いておる従業員諸君の、そういう犠牲者といいますか、疾病になった人たちに対しては、労災法の一般適用で救い得るのだ、こういうふうな考え方を持っておられますか。労働省はいかがですか。
  126. 桑原敬一

    ○桑原説明員 労災保険制度は、先生御承知のように、損害賠償よりもやや狭うございまして、全損害補償するということではございませんで、たとえば、けがをいたしましたら、そこで稼得能力が喪失いたしますので、それを補てんする、あるいは死亡された場合には扶養されておった利益がなくなりますので、それを補てんするということで、そういった限界があるわけでございます。この制度の仕組みは諸外国も同じような思想でございまして、確かに、御指摘のように、全損害を補てんするという意味においては限界があるというふうに考えております。
  127. 堂森芳夫

    堂森委員 ちょっと私の質問が悪かったのですが、原子力事業所に働いておる諸君の放射能にさらされたために発病した人たち——労働省は労働者を守るところでしょう、世話をする役所でしょう。役所としては、そういう人たちに対しては、労災法の適用だけでいいと思っておられるのかどうか、こういうことを聞いておるのです。十分かどうかと聞いている。十分と言わぬがそれでいいと思っておられるか。
  128. 桑原敬一

    ○桑原説明員 ちょうどこの原子力損害補償法が出ました時期におきましては、たとえば病気にかかられました場合には、なおりませんでも三年で打ち切りというようなかっこうになっていたわけです。それを四十年の改正で、病気がよくなられるまで、ずっと治療を続けていけるような、長期傷病補償給付といいますけれども、そういった制度の前進を見た。それから、障害が残れば、一時金制度ではなくて、やはり年金でずっと見るというような形で前進してまいりましたので、一般的にそういった補償の面については相当程度どもは進んでおると思います。ただ、精神的な損害その他については、私どもとしては、労災のそういう制度の制約から、必ずしも十分ではなかろう、こういうふうに考えます。
  129. 堂森芳夫

    堂森委員 大臣、お聞きになったと思うのですが、労災保険というこの制度で、確かに、向こうの課長が言われるように、そういう深刻ないろいろな損害補償するというものが労災保険法律のたてまえでないか、それはそのとおりでありますが、そこでさっきも参考人の東電の方ですかあるいは原子力発電の方ですか、稼働部門に働いておる労働者と原子力発電の分野で働く者とが不均衡になるというのはどういう考え方でしょうかね。まるで労働者を何かおもちゃかなにかに考えておるのじゃないでしょうか。そうじゃないでしょうか。不均衡になったっていいじゃないですか。あるいはまた、危険な場所に働く人には、十分な、そうした庇護の手を差し伸べるということは当然のことであり、そうして私は、おそらく労働省もそう思うと思うのでありますが、原子力事業所に働いておる労働者諸君への補償の問題をうまく解決していくということは、これは日本の労働者に対する疾病の保護とかいろいろなものに対する、あるいは労災保険のこの法律の非常にレベルの低いものをもっと高くしていく、一つの突破口になるような重要な問題だと思うのであります。それはもちろん、こうした事業所に働いておって、特殊なそういう被害を受けた人たちには、ほんとうにことばに言えぬような同情すべきいろいろな問題があるわけですが、広く見ると、こういう問題について、もっと政府が強い態度を持って臨んでいかれるということは、広く他の労働者にも、よりよい疾病その他の補償というものを、政府がより進んでよい制度をつくっていくという突破口になる、こう私は思うのでありまして、おそらくそれに対して労働省は一生懸命に賛成をして大いに努力をする、こう思うのであります。  大臣は、さっきの、この問題、三木さんのときも触れられました。それから、いろいろ、この答申案等も見ておりまして、大いに問題があるのだ、こう言っておるのでありまして、やはりもっと積極的な前向きの姿勢でこの問題を解決する方向にいってもらいたい、こう思うのであります。十年前にこの本法が通って、まだ研究中だ。別に有澤先生に皮肉を言うわけじゃないですが、またこれから十年研究ではたいへんなことでありまして、大いにもっと前向きでやってもらうように私は要望したい、こう思うのであります。まずその点について承っておきたいと思います。
  130. 西田信一

    ○西田国務大臣 先生の御意図は私もよく理解をいたしておるつもりでございます。先ほど来の三木先生の御質問に対しまして、事業者側からの答弁もございました。そこで、この労災だけで事足れりということではなかったようでございまして、その足らざるところを労働協約等によってカバーしていく、こういう答弁があったように思うのでございます。そのことは私はたいへん適切な措置であると考えるのでございます。しかしながら、もちろんこれは原子力発電所等に働いておりましても、原子力関係に働いておりましても、やはり労災の対象になるということが考えられることでございます。ただ、労災保険制度につきましては、長年の前の経緯もございまして、さらに改善のことを含めまして審議会でも御検討をくださることになっておることでございまするし、御検討を願いたいと思っておるのでございます。ただ、これで十分だということを申し上げるのではございませんし、検討しなければならぬと思いますが、この法律は、主として第三者に対するところの損害補償というようなたてまえの法律であるように思うわけでございまして、そういうようなことも、若干それに含まれないという理由の中の一つに入っているんじゃないかと思うのでありますが、しかしながら非常に危険性のある事業所でございまするから、そのところに働いておる労働者の方に対しまする将来の措置につきましては、十分ひとつ検討してもらいたいと考えております。
  131. 堂森芳夫

    堂森委員 それは労働協約でその企業企業でいろいろ話をしてくれる、これは労働者としては当然要求されるのでありますが、あるいは民間会社保険をつくって任意保険をやっていく、それも一つのあれでありますが、しかし政府としては、それでは無責任である、こう思うのであります。だから政府が自分の責任で、そしてこれは第三者損害補償する法律だからそれはあと回し、それは私はいかぬと思うのであります。一番危険にさらされておるのは従業員ですね。その人たちをほうっておいて、それはおまえたちは、この法律の対象外だからあっちに行っていろというんじゃ、それはあまりにもあれですよね。それはそうだと思うのです。もっと積極的に大いに推進してもらわなければ、これはいかぬ、こう思うのであります。  たくさん聞きたいのですが、もう時間が——私ばかりしゃべっていると御迷惑でありますが、局長にちょっとお尋ねしておきたいのですが、従業員のモニタリングとは、具体的にどんなことをしているのでございますか。ちょっと教えてもらいたいと思います。
  132. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 従業員のモニタリングにつきましては、保安管理規程等に示してございますが、たとえて申し上げますと、基準バッジを必ずここにつける、それから特別な場所には、そのほかにガラス線量計、あるいはポケット線量計、そういうものを必ず持って入って、そのときに受けるものがどのくらいあるかということは必ず登録させておくことにしてございます。したがいまして、私たちのほうも、その登録が標準化してうまくいっているかどうか、たとえば基準バッジの分析等、そういう点についての標準化の指導書というものを現在つくっております。そういう関係で従業者が原子力関係のそばにいた場合のからだに対する放射能の受け方というものについては、測定器で十分守るように、しかもその実績を登録してくれということをすすめているわけでございます。
  133. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、基準バッジで放射能を受けておる、それはわかりますね。たとえばずっと何年も働いておるのでありますから、一年間にどれくらいの照射を受けておることになるか、そういうちゃんとしたデータは、それぞれとってあるのですか。そうしないと、瞬間がわかったって何にもならぬと思うのです。
  134. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 一年間にその従業員が受けました線量等につきましては、すべてこれは登録する形になっております。それで各事業所がその登録をすべて保管しております。それで常に定期検査——健康診断は年に二回やりますが、その定期検査等も含めて実際に記録をとどめておくという形になっております。
  135. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、最後に原子力船のことを少し聞きたかったのでございますが、時間もございません。まだ三人の御質問がありますので、はしょりたいと思いますが、これは賠償法とは直接関係がないのですが、この前も私はお聞きしたのですが、燃料の問題であります。  この間ある友人が来まして、私に国会で質問をしておいてくれ、そして政府に大いに奮起を促しておいてくれ、こういうのでありますが、燃料の確保の問題であります。  御承知のように石油の問題が、こういうふうに足もとに火がつきました。たいへんな問題であることも私が申し上げるまでもないことであります。そして公害が当然のごとくやかましくなってまいりまして、一・一%以下の硫黄の含有量の低硫黄ですかの重油を大量に確保しなければならない、こういう事情が当然今後進んでいくと思うのであります。ところが国際市場で低硫黄の重油を確保することは、そう簡単なことではない。しかも、もちろん値段も高くついているということになって、重油による火力発電というものの将来は、かなりきびしいものになっていくだろう、そして私、これはきょうも調べてみたのですが、政府の見通しでも、一九八五年でございますか、大体原子力発電が四千三百万キロワットぐらいになっておるのですが、それが六千万キロワットぐらいをこえるようになっていくのではないだろうか。そうなったら非常に大量のウランが必要になってくることは、これはもう当然である。そして政府の予想をはるかに上回るような方向に原子力発電がどんどん進んでいくだろう。この私に言った友人の話では、オーストラリアにはいま非常に有力な何か——私はそのほうはしろうとで、よくわからない——ですが、非常に有利な条件で日本ウランを売ってもいいのだ、こういうようなことを言っている、豪州は従来からわれわれの知っている限りでは農業国であった、しかし地下資源は非常に豊富であるので、ウランの生産についても非常に熱を入れている、日本に対しても、できるだけいい条件で売ろうじゃないか、こういうふうな話を向こうの経済界では言っておる、だから、いまならばオーストラリアではわりあい他の国といろいろ契約するよりは有利な条件でウランの確保ができるような状態にあるように思う、それでさっそく政府に要望をして、しかるべきいろいろな方法でオーストラリア政府あるいは経済界とのいろいろな接触を密にして、原子力の燃料であるウランの確保について、オーストラリアに大きな手を差し伸べるようなことを政府にやらせるように発言をしておいてくれ、こういうことであります。大臣にひとつその点についての今後の御努力を願わなければなりませんが、御所見のほどを承っておきたい、こう思います。
  136. 西田信一

    ○西田国務大臣 わが国の原子力発電等が急速な勢いで伸びたことは、先生のおっしゃるとおりでございます。これを、しっかりと確保してまいりますためには、何と申しましても一番肝心なものが燃料の確保であるということも全く同感でございます。必要に応じて買い入れることも必要でございますけれども、やはり長期契約あるいはまた開発輸入というような手段を積極的にとらなければならぬと思います。  そこで、いまオーストラリアのお話が出ましたが、昨年の暮れだと思いますが、オーストラリア原子力委員長が参りまして、私も会談をいたしましたが、その際にも非常に有望なものが見つかったという話がございまして、その際に私は、ひとつ日本に対して積極的な燃料供給ということを考えてくれということを希望しておいたのでございますが、伺うところによりますと、採掘可能なウラン鉱石として、ウランの含有量はいままでは約二万トンぐらいであったそうでございますが、最近有望なものが、北部地方で大鉱床が発見されたということで、これも的確かどうかわかりませんが、これがさらに十万トンぐらい増加した、こういうふうにいわれておるのでございます。そこで、従来オーストラリアかなりきびしい輸出規制を行なっておりましたが、このようなオーストラリアの国内ウランの埋蔵量が非常に増加したということ等もございまして、ことしの二月に輸出の数量制限というものを撤廃したようであります。これに伴いましてオーストラリアは将来大量なウラン輸出国になるだろうというふうに考えられます。わが国としましては今後に処しますために海外から安い、そして安定的なウランの入手を確保していかなければならぬのでございまして、そこでいまオーストラリアに対して積極的な手を伸べよ、こういうことでございますが、先方もそういう意思があるようでございますから、まずなるべく早く日豪の原子力協定のようなものを締結するというふうなことを進めてまいりたい、かように思いますし、それから開発に対します民間並びにその他動燃はもちろんでありますが、これに対しまして積極的な助成の道をとってまいりたい、かように考えております。  動燃事業団が現在向こうに行ってウラン鉱床の調査を実施いたしておりますが、動燃でも昨年南オーストラリアで有望な地区を発見いたしまして、現在探査を続けておるわけでございますが、今後もさらに海外ウラン資源確保のためにひとつ積極的な姿勢で調査を進めると同時に、あらゆる資源確保ということがいまわが国にとって一番重要でございます。わけてもウラン資源の確保につきましては積極的な対策をわれわれのほうでも十分検討いたしまして、そうして従来よりもはるかに飛躍的な対策を講じていかなければならぬ、こういうことでいま原子力委員会等におきましても鋭意具体的な検討を進めておる段階でございます。
  137. 堂森芳夫

    堂森委員 もう終わりたいと思いますが、外務省当局から、担当の方からこれらの事情について外務省として現地の公館等を通じて大いにやってもらいたいのですが、いろいろその間について御所見等承っておきたい、こう思います。
  138. 堤功一

    ○堤説明員 先生の御質問にもございましたとおり、ごく最近オーストラリアにおきましてウランの非常に大きな鉱床が発見されたのであります。オーストラリア政府もそのウランをどういうふうに扱うかということについては最終的な結論を出しておらないと思います。はたしてオーストラリアがわれわれの期待どおりに有利な条件で長期契約に応ずるかどうかもわかりません。しかし西田長官の御答弁にもございましたとおり、われわれとしては非常に重要なウラン資源の供給先としまして、すなわち世界で四番目ぐらいの大きなウラン資源国でございますが、供給先といたしましてオーストラリアを重視しておりますので、まず手始めにオーストラリア原子力協定を締結するという交渉に積極的に取り組んでまいりまして、その資源確保のために努力したいと思っております。
  139. 堂森芳夫

    堂森委員 終わりました。
  140. 渡部一郎

    渡部委員長 堂森芳夫君の質疑を終わり、吉田之久君。
  141. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 私は原子力損害賠償二法案につきまして民社党を代表して質問をいたしたいと思うのであります。  特に、その質問を労働者災害一点にしぼりましていろいろと経過をただし、また今後の対策を伺っていきたいと思います。ただ、もっともいま堂森委員からも、また先ほど三木委員からもいろいろとこの点については詳細な御質問がありました、つとめて重複を避けてまいりたいと思いますけれども、どうかその点あらためてひとつできるだけ明快にいろいろと御答弁をいただきたいと思います。  そこで、実は大臣も御承知だろうかと思いますけれども、現在原子力産業でその第一線に立って働いている労働者が数多くおります。この人たちは原子力被害を常に持続的にからだに幾ばくか受けているものだと当然想定できます。そういうことに対して自分たちがどう対処しなければならないかということで非常に深刻な協議を続けております。したがってまた組織的な連絡も強化いたしております。特に、放射線問題連絡会議というような会議をつくりまして、これは放連会議というふうに呼んでいろいろ機関紙などを出しているわけです。先ほどからもいろいろお話がありましたけれども、いかにこうした未知の世界で、しかも非常に危険と、場合によっては死と隣合わせに仕事を続けている労働者の人たちが、この賠償問題をどのように深刻に考えているかという点をちょっとこの機関紙から御披露いたしたいと思うのです。  「労働者が安心して働らくためには安全に作業するということが重要なのはいうまでもないが、同時にその作業によって生じた災害例えば病気や怪我あるいは最悪の場合などの補償も同じ程度に重要性をもつ。この災害補償原子力産業や放射線を扱かう職場で働らくときには、潜在的な危険性を含めてその特殊性あるいは国民感情をも考えて、十分になされなければならない。」まことに当然だと思います。そういうことから十年前この法律ができましたときに、原子力産業で働いている労働者の人たちが、いかにこの法律の中に第二者に対する補償というものが確立されなければならないかという点で非常に努力を続けてきております。また、政府のほうでもその要請をくみ取りまして、労働者側から、たとえば原研から天野君、原電から青木君、三菱原子力から森山君という三氏を専門委員としていわゆる原子力事業従業員災害補償専門部会というものを構成していろいろ検討を続けてきておることは御承知のとおりであります。このようにして働く人たちは自分たちの身分をいかに保障されるべきであるかという点であらゆる努力と期待をつないでまいりました。しかしながら今度の法改正を見ますと、それは全く徒労に帰してしまっているという感じがしないではありません。いろいろ先ほどから、いやまだまだこれから検討するのだといわれておりますけれども、これほど労働者の側にとって深刻な問題であったこの労働者災害というものに対する手だてというものが全くこの法改正では無視されてしまったということの経過につきまして、もう一度私に得心いくように、ひとつ説明を大臣からいただきたいと思います。
  142. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 原子力災害賠償制度検討会は、原子力委員会のもとに設けました委員会でございますので、私から御答弁申し上げたいと思いますが、いま御指摘になりました従業員損害賠償についてでございますが、これは昭和四十年だったと私は記憶しておりますけれども従業員災害賠償制度専門会でしたか、そういう専門会が設けられまして、たしか我妻さんが委員長で、そして組合の代表者の方も数名お入りになって検討したことがございます。そのときの結論といいますのは、一つ労災法をもっと十分拡大して、また改善して、その保護を受けることができるようにすべきこと。それからなおそれでも足りない分野につきましては、何らかの補償措置を設けることということであったかと思います。いま、ちょっと私、答申を持っておりませんので、全部詳しいことはお話しできませんけれども、私の記憶に残っているところは、そういう問題であったと思います。  それで、労災法を拡大、改善するということにつきましては、労働省のほうにいろいろとお話を申し上げました。また、多少不満足な点も残っていると思いますが、先ほど労働省の課長さんからお話しになりましたような諸点において大きな前進を見ることができたと思います。  その残っている分野につきましては、たとえば不妊の問題、妊娠ができなくなった、しなくなったとかいうようなそういう問題は、なかなか労災法でははっきり因果関係を突きとめることができないから、それを受けとめかねるというような問題が残っているわけでございます。それで、それはそれといたしましても、なお年金にしても給与にしても、手当の問題にいたしましても、不十分なところがあろうかと思います。ことに精神的な面についての問題は、これはいま労働省の課長さんからのお話にもありましたように、ちょっと労災のほうでは受けとめかねる。そこで、私どものほうといたしましては、一つは、先ほども申しましたように、会社労働組合との間の労働協約でその点を受けとめてもらう。というよりも、むしろまだ会社のほうが——私どもこの間の検討専門委員会で話をいたしましたところ、会社のほうが進んでそれは労働組合とわれわれとのほうで協約を結んでやります、また、現にやっているところもある、こういう一つの回答がございましたし、また、それだけでは、なお労働協約を結ぶところもあれば、結ばぬところもあるでは困るから、さらにそれ以上の損害賠償につきまして、やはりこれはちょうどいまの第三者に対する損害賠償と同じような意味においての従業者損害賠償保険、これはもう初めから保険制度に入っておる。もし何か事故がありましたならば、保険から支払いを受ける、こういう制度考えたらどうかということになりましたところ、それについては、いまのところ損害保険会社は、いろいろな第三者損害賠償だとか財産保険の問題だって、その点を十分まだ検討できていないけれども、しかしもう自分たちのほうでも、この従業員災害補償保険制度を設けろと言われておりましたから、その点の研究を進めておりまして、ある程度その制度の構想もでき上がっている。いずれ近いうちに損害保険会社の間で話し合いをして、保険プールをつくって、そうしてその制度考えていきたい、こういう話でございました。ですから、いずれできるだけすみやかに保険制度を設けてもらいたいということは、私ども保険会社のほうに要請してございます。いずれ案ができましたならば、また私ども保険会社のほうとで検討いたしまして、私は、できればこの従業者災害補償保険制度ができましたならば、これを施設者、原子炉設置者には強制をいたしたい。どの従業者も事業者もこの保険に入ってもらう。ちょうど第三者損害賠償保険と同じようなそういう賠償措置を講じてもらいたい、こういうふうに考えております。  以上でございます。
  143. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 私は、初めちょっと、大臣が法律を出しておられる責任者ですから、それに関連して労働者の災害賠償というものを大臣がどの程度御認識いただいておるのだろうかということをまず聞きたかったのですが、専門の有津先生からお答えがありました。それはそれでけっこうです。私は、さすがに有澤先生の御記憶は正確だと思います。しかし、これは単なる記憶程度の問題では困るのです。正確に記憶しておるから、そしてその経過の中で、たとえば経営者のほうもこういう手だてをするというから、あるいは労働省のほうも労災のほうもこのように一部内容を改善したというから、まあそれでよさそうだなというくらいのことではこれはたいへんなことになるのです。おそらくそう簡単にはお考えになっていないだろうと信じておりますけれども、私は、もう少し問題を掘り下げて御検討いただかなければならないと思うのです。実は、またさっきの機関紙を引用して恐縮でございますけれども、労働者自体はこういうふうに考えておるのですね。労働者はもちろん組合をつくっております。そしてほとんどの問題は労使間で交渉し、そして解決していく、これは大原則であります。しかしながら、それでありながら、労使間で解決することができない場合、あるいは労使間で解決することがむしろ妥当でない場合が幾つか出てきた。特にこの原子力労働者の場合に。たとえば、退職後に放射線障害があらわれた場合で、事業所がなくなっていた例などでは、補償を求める相手がない。これは国家的な補償方法にたよる以外に道がないではないかということをこの人たちは訴えております。また遺伝的なものについても、労働者が何回か事業所を移動した場合は、先ほども堂森さんからお話がありましたけれども、いつどこで影響を受けたか判定することはきわめて難解である。そして放射線の許容量は国が定めなければならないし、国民全体の質的低下を特定集団に限定することによってある線以下に押えるという意味を含んでいる点から考えるならば、やはり国家的補償考えることが妥当であろう。さらに二十五レム以上の被曝を受けた場合、発病すれば当然労災補償は受けられます。これはわれわれ承知いたしております。しかし発病しないときでも人体には何らかの影響を与えていることは事実なんです。しかし、これは全く労災からは全然別個の時点にある。一体この問題はどういうふうに解決されるのだろうかという問題が出てまいります。こういうふうにして、過去にこの業務の専門家として専念してきた人たちが自分の職場を離れることがどんなに苦痛なものであるかは容易に想像できるけれども、しかし発病していないということであって職は断たれ、何ら労災からも補償されないという場合も、場合によっては出てくるのではないかというふうなことは考えられます。首をひねっておられるようですけれども、この人たちがいろいろ心配しているということは、たとえば一つの事業所を一度退職してからしばらく間を置いて出てきた場合にもいろいろ問題があります。また、病気であるとは認定されないけれども、自分としては何だか労働に十分耐えられない、潜在的な疲労、影響を受けている場合、いろんな場合が私はこれから出てくると思うのです。労働能力は失わず、職業選択の自由は奪われるという場合もあり得る。これはまだそういう事態はできておりませんけれども、何だかかつて原子力産業に働いていた人らしい、普通ならば中高年齢層で採用してもいいのだけれども、少し敬遠しておこうやというふうなことにいつかの時代にならないとは限りません。われわれは、先をあまり案じ過ぎれば切りはないわけですけれども、やはりこれほど重要な新しい産業と取り組んでいくからには、そこで身を挺して働いている労働者に対しては、もっと積極的に政府みずからが全く後顧の憂いのないように万般の手だてをして保護してやるということをしなければ、おそろしくて前向いて動けないのではないかというふうな気がするわけなんです。  そこで、私は今度の改正の前提である答申を拝見いたしまして、がまんならない点が一ぱいあるのです。それは、たとえば今度のこの法改正には第二者災害ですかに対する賠償というものは一応取り除こう、除外しよう、その除外する理由としては、「一、労働者災害補償保険制度もILO条約並みの水準に相当充実されてきているとともに、すでに相当数の原子力事業所においては、従業員災害について労働協約などにより労働者災害補償保険制度の上積みの補償が行なわれていること」というのが一つの論拠であります。しかしこの労働協約といえども会社は大小さまざまでありまして、先ほど参考人にお見えの方々は最も大企業を代表しておられるところでありましょうから、多少事情はいいだろうとは思いますけれども、しかしこれから原子力産業の将来をとらえてみる場合、また現にある日本原子力のいろんな機構を見た場合に、そういうことばは妥当かどうか知りませんけれども、いわば中小企業並みの研究所とかあるいは事業所ということも当然考えられるわけであります。実は、もしも原子力委員会やあるいは政府がこの答申のまず第一の要件、それが正しいとお考えになるのであるならば、一ついま私が例をあげますので、たとえば三菱原子力の場合、日本原子力事業の場合、動燃の場合あるいは京大の原子炉の場合、こういう労働協約というものがどのように取りきめられているか、その内容などにつきまして、ひとつ、どなたか御専門がおられるはずでございます、局長からでもお答えいただきたい。
  144. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 原研、動燃、原船、これには若干の上積みがございます。たとえば原研におきましては、死亡した日における本俸月額の百分の四百、四カ月分でございますが、これを弔慰金として上積みをするというような規定がございます。しかしこれは確かに不十分でございまして、先ほどの民間の損害は、特別の今度の新しい制度ができたときには十分考えさせていただきたいという考えでございます。
  145. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 ほかからは例はまだつかめませんですか。動燃はどうなっていますか。
  146. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 失礼しました。動燃については、内規により、役職員が業務上の災害により死亡した場合には、労働基準法第十二条の規定により平均賃金の五百日分をその遺族に支給するものとする、というのがございます。それから、業務上の災害により死亡または負傷した場合、及び業務上の疾病にかかった場合、内規により五万円以内、それから公傷病見舞い金として三万円以内の見舞い金を支給することができるとしております。それから従業員退職金規程第八条で、職員が死亡した場合においては、その者が死亡した日における本俸金額の百分の四百、これは原研と同じでございますが、の割合を乗じた額を弔慰金として遺族に支給するというのがございます。
  147. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 有澤先生お聞きのとおり、不幸にしてなくなった場合でも、ある場合は弔慰金として四カ月分、多くてもせいぜい一年か二年足らずというささやかな金額であります。それから一方見舞い金、いわゆる被曝三レム以上の場合には一定の金額をやろう。何だか変な制度だと思うんですけれども、それが何千円か何万円か知りませんけれども、しかしこれは補償とかいうようなものには全く当たらない、まあいわばちょっとおつかなかったなというお見舞いだと思うんですね。お聞きのとおり、私はこの程度のものだと思うんですよ。今日の民間団体においてもいろいろと労働協約その他で手だてをしているといいかっこうをしておりますけれども、とてもそれはほんとうの賠償などには足元にも寄りつかないものだ。事は原子力産業をこれからになおうとする人たちのことなんです。この程度のことで原子力委員会が、だから第二者災害については今度の法改正からしばらくはずしておこう、結果的にはそうなったわけですね。私はたいへん心配なんです。  それからその次に二番目として「同一の事業体において原子力部門に従事する従業員に限り特別の措置を講ずることは、他部門従業員との間においてバランスを失することになる」、こういう理由をあげているのですが、有澤先生、こういう理屈が適用されていいでしょうか、これからの原子力に。どうなんです。
  148. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 いまの報告書といいましょうか、答申、あれはみなで審議をいたしまして、それで中にはバランスを失するというようなことは考えなくてもいいという議論かなりありました。けれども、やはり現実感を持っていらっしゃる方はどうもアンバランスバランスを失するということになると、労働管理といいましょうか、会社の労務管理の上からいってまことに都合が悪い。ですから、その点はそれとして、別の何かの措置考えてもらいたい、こういう言い方でした。それで、別のというのはいま申し上げましたように、労働協約一つでしょうが、原子力従業者災害補償保険、それがやはり労災が一方にあるし、これは国がやる、一方はちょうど第三者に対する損害賠償とか、これは賠償措置額として保険に入っています。それと同じような意味においての従業者損害賠償保険という制度ができれば、そこで初めて、いま御指摘になりましたような大中小というようないろいろな規模の事業所があるにいたしましても、その原子力を利用する事業についてはその保険にみな入るように、そうすれば、これは国が強制するような形になりますが、そのファンドは研究事業者が支出をするということになりますが、これは従業者にとりましても、それが一つの危険の担保になるわけでありますから、私はそういう形の制度でお互いが保障し合っていくという形のものがいいんじゃないかと思います。  ですから、いまおっしゃった答申のこの点がこれでいいですかといわれたら、これで満足しているという人はだれもいないわけです。ただもう少し審議会の状況を見ますと、これは何といっても、今度の損害賠償制度検討会においては第三者損害賠償、ことに船の問題と、それから陸上炉につきましては国家補償契約というものの年限が切れるという目前の状況を特に強く意識したということがあります。いまの従業員賠償の問題は、いまの保険制度のものが近くそのうちにできるだろうということにかなり期待をして、そしていま申し上げましたような、いますぐたとえば国が何か労災保険と同じ保険制度をつくるというようなこと、これは根本的な問題であります。  それから堂森さんのおっしゃった職業病に対する補償制度を何かつくったらどうかということになりますと、これまた非常に根本的な討議を必要とする問題であります。そういう関係もありまして専門部会においての議論がいろいろある。いまそういう制度も適用しつつあるから、その制度ができた上で再びその問題について、それだけについて今度はひとつやりましょう、こういうような考え方であったと思います。ですからいまのところは、とにかくこの答申の中身は十分その思想を盛り込むことができなかったし、また専門部会の中におきましても、いろいろいま言ったようにバランス論、アンバランス論にしましても、そういうふうな意見かなり分かれておった。何もその点ばかりでなく、青天井の問題についても意見が非常に分かれて、委員長がこれを統括するのにたいへん御苦心なすったと思いますが、従業員の問題も同様に問題だったと思うのです。
  149. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 こちらは従業員のほうの側に立ってものを判断するくせがございますので、だからあるいは少し被害者意識が強過ぎるのかもしれませんけれども、われわれの側から見れば、先生、第三者に対する賠償をきめる、「むつ」が出航しなければならないので、この際どうしてもきめなければならぬ、それならそれでいいですよ。それならば第二者のことに対して僣越なことを言うな、ここで取り扱わないとか、こうしたほうがいいだろうとか、私はそういう態度がどうにもがまんならないのです。なまいきだと思うのです。船のことなら船のことだけだ、労働者のことなんてわれわれは論じておりません。別個にひとつしかるべき機関で御検討くださいというならいいですけれども、一々その答申の内容、これは先生に直接関係責任はありませんけれども、こういうバックグラウンドが気に食わないのです、ほんとうに。わかってくださるでしょう。ましてや、第二者に金を出したら第三者の金が減るからどうだとか、もってのほかだと思うのです。人間さまを度外視して、もちろん第三者も人間だけれども、まずそれを動かしている人たちを度外視して賠償のことを進めていくというそういう姿勢、どうも少しこちらはひがみっぽく考えているのかもしれませんけれども、やはりそういう見方もできるんですよ、こういうことをいわれたり書かれたりすると。だから、どうかその点は大臣よく御認識いただきたいと思うのです。みんなこう心配してきております。ただ私はいま有澤先生がひとつ強力な保険制度でこれをカバーし、そして担保していけばいいじゃないかというお気持ちはよくわかります。しかし私は保険とか労災のワクをはみ出す問題が原子力の場合には確かに出てくる。それは何百分の一か何万分の一か知りませんけれども、そういう可能性がこれにはあるわけなんです。ほかのいままでの工場において作業中に手を切ったとか足を落としたという問題ではない要素が含まれておるだけに、労災が少しよくなったとか労働協約があるじゃないか、これは保険でカバーするよとかということだけで私は済まされないと思う。大臣、この辺ちょっとくどいようで申しわけありませんけれども、私の気持ちわかっていただけますね。
  150. 西田信一

    ○西田国務大臣 吉田先生のお気持ちは私もよくわかってお聞きしているつもりでございます。私自身も、率直なことを申し上げますと、吉田先生と同じような疑問と申しますか、そういうようなものも持っていたこともございますが、先ほどから有澤先生からだんだんとその審議の経過あるいは先のことについてお話がございましたようなことでございまするし、決してこれで十分だというようなことではない。原子力のいろいろな事故のあれを見ましても、国内においてはわりあいに少ないが、諸外国のを見ると、やはり第三者に対する事故被害等よりも、中で働いている方のそれが多いということも事実でございまするし、そういう面から申しまして、やはり特殊なそういう未知の世界に取り組んでおる勤労者の方々に対してもう少し安心していただくというようなことが必要であるということにおきましては全く同感でございます。したがいまして、これで決して十分だ、中で働いている人のことは考えないということではなく、さらに新しい制度のことなども考えられておるようでございまするし、私どもその姿勢でこれからなおざりにしないで取り組んでいきたいと思います。
  151. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 いまの大臣のおことばを聞いて、だいぶこっちの心もおさまってまいりました。しかし十分検討する、急ぐというだけではだめなんです。十年間そのことを皆さま方はおっしゃって、しかもいまのような状態であって、私は全然進んでいるとは思いません。それは準備はなさっているんでしょうけれども、やはりそれじゃあと二年なら二年でやりましょう、答えを出しましようというぴちっとした方針が出ないと、労働者もたまったもんでないし、いわゆる保険制度だけで保険業界と検討を進めているというふうなことでは、私はやはり政府責任は全うされたとは思わない。国家として万に一つの例であっても、こういう場合にはもう保険も何も関係ない、完全に国家でこの従業員たちを守るんだというところがひとつ——現にそういう不幸があっては困ると思いますよ。皆さん方がめったにないと自信をお持ちになればなるほど、やはり万一の場合にはこれほどの完ぺきな保護をするんだということだけは銘記してやっていただかないと、私は今後の青年諸君に対してほんとうに原子力の中に身を投じようということの勇気がだんだん減ってくるのではないかというふうな気がいたします。特にけい肺特別立法という例もあるわけでありまして、そういうものを援用しながら、さらに一歩進んだいろいろな法体系を整備していただきたいと思います。有澤先生はお急ぎのようですからどうかお帰りいただいてけっこうです。特にいま申し上げたことだけはひとつしっかりと、あなたが一番大事な人ですから、その気になっていただいて……。  それでは、労働省の方がお見えだと思いますので少し質問を続けさせていただきます。  このいわゆる我妻委員会ですか我妻レポートができるときには労働省のほうでも労災補償部長という役職の方がこれに参加しておられた。現在機構改革によりまして労災補償部長という席はないようでございますけれども、先ほど来申しておりますような問題につきまして労働省としては絶えず責任ある意見をそれぞれの専門部会委員会等で強力に述べてきていただいているものだとわれわれは信じておりますけれども、今日この答申が出る経過の中で労働省自身としてはこの労働者災害に対する対策の講じ方についてどのような努力をしてこられたか、また今後どのような方針で臨もうとされるか。先ほどから申しておりますように、われわれは単なる労災のワクの中では解決できない問題だという認識を持っておりますけれども、その認識に対して皆さま方はどう認識しておられるか。
  152. 桑原敬一

    ○桑原説明員 原子力損害補償の問題につきまして私どもも我妻委員会等におきましても重大な関心を持って参加をいたしております。特に、先ほど申し上げましたように、労災補償という制度の仕組みから一つの限界がございますので、そういう意味においても重大な関心を持っております。三十六年に原子力賠償法ができます段階におきましては、労災補償水準そのものも非常に問題がございました。したがって、労災プロパーの問題につきましてはその制度の充実をはかっていかなければならないということで、先ほども御紹介申し上げましたように、先生も御承知のように、従来は病気になりましても三年で一応補償打ち切りをして、それで病気は御自分でなおしていただくというふうな制度でございましたけれども、そういったような問題が出てまいりまして非常にむずかしい職業疾病が出てまいりましたので、長期傷病補償給付という新しい制度をつくって、よくなられるまで療養補償をする、またそれの休業補償をするというような制度をつくりました次第でございます。不幸にしていろいろな傷害なり死亡が出ました場合には、年金制度でその損失を補てんしていくというような労災としましては抜本的な改善をいたしたわけでございます。  一方におきまして、原子力災害そのものについては非常に一般災害と違った特性を持っております。先生も御指摘のとおりの問題がございますので、特に労災保険は損失補償の性格から全損害を見るというたてまえになっております。特に問題になります精神的な損害、慰謝料というようなものは労災保険制度では認めておりませんし、これは諸外国にも共通の制度でございます。そういった意味で全損害原子力の被災を受けられた方たちが補てんされるようになれば労働者もあわせて同じような扱いをされるべきではないかという考え方は私どもとしては当初から持っていたわけでございます。しかし諸般の事情でああいう答申が出てまいりましたが、私どもとしては労災が持っております限界を補てんするような、先ほど有澤先生がおっしゃっていただきましたような制度が一日も早く確立することをぜひ期待をいたしたい、かように思っております。
  153. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 ちょっとこの機会に労働省の方にこまかい問題をお聞きして恐縮なんですけれども、たとえば労働者の場合に職場事故に遭遇した、作業中にけがをしたという場合、これは非常に明確でありますけれども、出勤途上においてあるいは退社して帰宅途上において事故が起こったり病気になったりした場合に労災の適用を受けるのかどうか、いろいろ問題の多いところでございますね。たとえば、原子力産業で働いている労働者は絶えず何らかの影響——きわめてゼロに近いのかもっと大きいのかは別として、影響を受けているはずですが、ある日たまたま在宅中に発病した、こんなことはこの場合には何ら関係ないでしょうね、職場であろうが家であろうが。どういうことになるのでしょう。
  154. 桑原敬一

    ○桑原説明員 業務に基因いたしまして発病いたしましたその発病の時点におきます場所は補償には関係ございません。したがって、自宅において発病されてもそれは基因しておれば当然労災の対象になります。
  155. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 それからいろいろと専門部会などで申されておりました、先ほど有澤先生もおっしゃっておりましたけれども、早流産なんかの場合ですが、いままでの観念からいきましたらおやと思うようなことではございますけれども、しかし確かに原子力の場合にはそういう影響が出てくることは考えられるだろうと思います。こういう症状に対して、これを現行労災法で救済できるとお考えになるかどうか。
  156. 桑原敬一

    ○桑原説明員 早流産の問題につきましては具体的なケースがございませんので、私どもまだ十分解明いたしておりませんけれども、これは労災保険の性格論から考えてどう考えるかという基本問題があります。先ほど申し上げましたように業務に基因しているかとうかという問題も——素因としてその方々が流産のくせがあるかどうかという問題も一つございますが、明らかにその業務に基因して早流産されたといたしましても、それが労働能力にどういうふうな損失を与えたかというような問題、あるいは生まれました子供さんに対する影響ということになりますと、いわゆる労働者本人に対する損失補償としての問題に関連して考えてまいります場合に直接その辺の関連があるかどうかということで非常に問題が多いように考えます。したがって、現段階におきましてはなかなかいまの労災保険制度補償の体系にすんなりと乗ってこないのではないだろうかというふうに考えております。
  157. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 大臣、お聞きのとおりでありまして、確かにこれは新しい課題です。現行労災法にはいわばなじまないいろいろな症状が出てくる。それに対してどう補償しなければならないか、そういう面からもやはりよほど画期的な新たな視野からの対策というものが講じられなければならない。それはやはり第二者に対する損害賠償法というものが国家の責任においてなされなければ、とてもこれは民間、いわゆる保険会社ではなかなか処置できない問題であり、疑わしい点が一ぱい出てまいります。疑わしきは罰せずというけれども、この場合には疑わしきは補償しなければならないと思います。疑わしいからといってほっておいてそこに因果関係があったことがもし後日明らかになった場合に、それを放置したということになりますと非常に人道上ゆゆしい問題になります。だから、中には何万分の一か何十万分の一の例か全く関係なかったものを補償したというふうなことが起こるかもしれませんけれども、それでもやはりこの種の業界に働く労働者に対しては完全にカバーするんだという体制が早急にとられなくてはならないというふうに考えますので、そういう点からもひとつ第二者に対する早急な検討政府みずからお急ぎになっていただきたい。  それからまた労働省のほうにお聞きしますけれども、たとえば第三者、第二者、こう言っておりますけれども、出入り業者というのはどっちに入るのですか、二者なんですか、三者なんですか。
  158. 桑原敬一

    ○桑原説明員 出入り業者の性格でございますけれども、少なくとも出入り業者が労働者の資格といたしまして、その企業に雇用関係で入ってきておりますならば、それは労災補償の対象になります。ただその出入り業者というのが個人的に、一種の請負関係で入ってこられた場合には、いわゆる第三者になる、こういうふうに考えます。
  159. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 最後に、実は昨年科学技術庁原子力局は——昨年と申しますと、これは四十五年の新聞ですから、四十四年になると思うのですが、局内に個人被曝線量等の登録管理調査検討会を設けて、いわゆる断続的に放射線の影響を受けている人たちに対して、完全な登録を行なっていこう、カルテをつくり、あるいはこれを永久に保管し、またそれらの検診を完全にやり、それに要する費用は一切国で負担するというふうなことをおきめになっていると聞いておりますけれども、その後これはどの程度具体的に実施されているか、またその効用等について、どの程度局長は確信を持っておられるかということをお聞きいたします。
  160. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 被曝線量の登録管理につきましては、昨年度から学識経験者あるいは関係行政機関で個人被曝線量等の登録管理調査検討会というのを設けまして、それで鋭意そこでやっておりますが、現在までのところ、登録管理の記録のしかた等をまずやりました。そのあといまのフィルムバッジ等、登録管理に必要な計測器の基準と申しますか、読み方と申しますか、正確性、これについてどう取り扱っていくかという技術課題が現在でき上がったところでございます。それで今後、それができ上がりましたので、ある特別のところを指定いたしまして、そこでその登録管理制度がスムーズに、どうやったらいいかという実態的な試験を一度してみよう、そういう形におきまして、全国の登録管理制度の体制の持って行き方を具体的に考えていくということをそこにつなげて、今後努力していくという立場をとっております。これは技術的な問題でございまして、約二年間、計測の方法、読み方の方法等、だいぶかかりまして申しわけなかったのでございますが、今後それで試験的な登録のスムーズなやり方についての実験をするというのが本年の課題になっております。
  161. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 いろいろと大臣にお聞きいたしましたが、やはり大臣みずからがひとつ督励していただいて、さらに愛情ある手だてを講じていただくことが、わが国原子力の将来に対しても非常に大事なことだと思います。特に従業員補償につきまして、格段の御努力を払うことをお願いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  162. 渡部一郎

    渡部委員長 次に、近江巳記夫君。
  163. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは、前回に引き続きまして質問をしたいと思うわけでございますが、きょうは有澤さんもいろいろ御予定があって、いまお帰りになったわけでございますが、きょうは、何か自分の御主宰になっておる会合に行かれる、こういうことで、やむを得ず帰ってもらったわけでございますが、やはりこれだけの大事な法案を審議しておるわけであります。当然本委員会については、もう相当前から、きょう、あすについては、特に審議をするということは言ってあるわけであります。その点、委員長立場でいらっしゃる大臣として、その辺の趣旨の徹底といいますか、その辺のことについてはどういうように言ってもらっておったか、まずお聞きしたいと思います。
  164. 西田信一

    ○西田国務大臣 国会の御審議にあたりましては、その審議に支障のないよう、御要求政府関係者等はつとめて出席をするようにして、十分御質疑に答えるように常に申しておるところでございますが、本日、先ほどまでおられましたけれども、余儀ない会合であると存じますので、この点はひとつ御寛恕を願いたいと思います。
  165. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは、それぞれみな予定があるわけでありますから、これ以上は言いませんが、ひとつ参考人等、政府の出席を要請される場合におきましては、十分国会で審議ができるだけの余裕を見てもらわなければ、またあしたになり、あさってになるというようなことになるわけであります。その点、今後、参考人を呼ばれるときにつきまして、十分御配慮をお願いしたいと思います。これをまず初めに要望しておきます。  この原子力賠償法並びに原子力船の二法の問題でありますが、やはり賠償イコール事故、こういうことになりまして、事故という点に一番焦点が当たるわけであります。それで、御承知のようにあの原子力研究所のそばには射爆場がありまして、いままで米軍が使っておったわけでありますが、あの原子力研究所施設の、入ってはならない区域に、飛行機が非常に侵入してきておる。そういうことについては、科学技術庁としても、過去何回も防衛庁なり防衛施設庁なりに警告を発していらっしゃると思うのです。その点、きょうは施設庁も防衛庁も来ておられますし、過去十年、二十年となりますとなんですから、五年間くらいの間に何回くらい警告を受け、侵入したか、それについてひとつお聞きしたいと思います。
  166. 薄田浩

    ○薄田政府委員 いまの御指摘の回数でございますが、私のほうは、あそこに水戸の事務所というのがございますが、いわゆる原子力施設からは遠いものでございますから、いわゆる原子力発電所のほうから水戸の所長へ、入ったじゃないかという意味で御通告を受けたのが、四十四年度が三べんでございます。それから四十三年が二度、こういうふうに聞いております。それで、そのつど私のほうは防衛庁のほうあるいは米軍のほうに厳重に、これは提供のときの一つの条件でございますし、たいへん皆さん御心配になっておる件でございますので、規則としましても、原研施設の周囲二マイルは近寄らない、あるいはいろいろな訓練をしても、反転をそちらのほうにしないということにきめておりますので、厳重に申し入れております。
  167. 近江巳記夫

    ○近江委員 近いデータだけでも、五回も注意をしながらいまだに侵しているわけですよ。ですから、そういう射爆場ですから、当然いろいろな爆薬をかかえておるわけです。そういう危険区域に四十三年、四十四年だけでも五回も侵入してきておる。これ自体がどれだけ危険であるか。飛行機自体が当たっても相当な被害があるわけですよ。ましてや爆薬を抱き、当たったならば一体どうなるか。だから、われわれとしては、それを一番心配しているわけです。科学技術庁としては、警告をしたことを何回も聞かれてないということは、科学技術庁の言うことなんかもう軽く受けたらいいんだ、こういうふうに受け取られているのと違いますか。どういう注意をしたのですか。五回ですか、ほんとうに。
  168. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 科学技術庁におきましては、原研その他から、私のほうの水戸事務所がございますが、そこに連絡がいきまして、さっそくそれを防衛庁に今後入らないようにということでお願いしたわけでございます。その点、向こうのほうで、できるだけ言うことを聞くという話でやっておりますが、何せ五回ほど最近入りました。この点につきましては、私たちでも今後——いまは停止されておりますけれども、できるだけの努力はいたしたわけでございますので、お許し願いたいと思います。
  169. 近江巳記夫

    ○近江委員 まあ危険区域に入ってはならぬというところに侵入してきておる。ですから、注意をしたって、やはり危険というものはこのようにあるわけですよ。ですから、そういう事態を今後どう踏んまえていくかということが非常に大きな問題になると思うのです。  またさらに、あの射爆場で事故がありましたね。その事故の詳細について、防衛施設庁から詳しくいままでの過去の事例を報告してもらいたいと思います。
  170. 来栖大児郎

    ○来栖説明員 では、最近五カ年間の事故につきまして申し上げます。  年度別に申し上げますと、四十年度でございますが、五件ございます。内容は模擬爆弾の落下が一件、機関砲弾の落下が一件、それからトレーニングアンテナの落下が一件、金属片の落下一件、それから金属製のパネル落下が一件でございます。それから昭和四十一年度が四件でございまして、模擬爆弾の落下が一件、それから爆弾投下装置の落下が一件、それから排気管の落下一件、アルミ製円筒落下一件、こう相なっております。それから四十二年度が二件ございまして、機関砲弾の薬きょう落下が一件、ヘリコプターのドアが落下した事件が一件。それから四十三年度が六件ございます。ロケットの空胴落下が一件、機関砲弾の弾頭が畑で発見されました事件が一件、それから機関砲の模擬弾発見が一件、それから砲弾二件、それから模擬爆弾が一件でございます。それから四十四年度はございません。四十五年度が、現在までに二件ございます。これは、いずれも機関砲弾が発見された事件でございます。
  171. 近江巳記夫

    ○近江委員 長官、いまお聞きになったとおりなんですよ。五年間でこれなんです。ですから、過去にさかのぼって、まだやかましく言わないときは、もっと起きているわけですよ。ですから、ああいう研究所なり原子力発電所の近辺に、そういう危険な射爆場は置いてはならぬと私は本委員会においても何回言ってきたかわからぬわけです。今度は米軍からそれが返還になる。あとまた自衛隊が使う、そんなことを言っている。現実に射撃場にしないかもしれませんよ、空挺だか何だかしれませんよ、だけども、ああいうところへ飛行機がどんどん飛来していけば、こういうようなまた想像のできないような事故が多発してくるわけですよ。科学技術庁としてあとこのように自衛隊が使います、こんなことをおっしゃっているわけですけれども科学技術庁としていいんですか、こんなことで。こんな危険な状態で、そちらがそういうふうにおっしゃるからしかたがありません、そういう傍観の態度でいらっしゃるのですか。まず長官が、まあいいわというような気持ちになれば、ちょっと問題だと思うのですが、それをどう思われておりますか。
  172. 西田信一

    ○西田国務大臣 先ほども同じような御質問がございまして、お答えしたところでございますが、再処理工場の建設がそろそろ始まるわけでございます。再処理工場のみならず、あの周辺には重要な原子力関係施設がございます。そこで、あの射爆場は、ことに再処理工場の建設には非常に危険があるということで、地元とも、少なくとも返還された後でなければ運転をしないということを確約しているわけでございますが、私どもは、そういう意味から申しまして、少しでも早く返還されるようにということの御努力をお願いしているわけでございます。また閣議におきましても、そのことは方針を決定しているわけでございまして、そういう趣旨に沿うて米側から、この一月以降は射撃を行なわないということを決定して通知してまいったものであると思います。そこで、われわれは、できるだけ早く返還をして安心して再処理工場等の運転ができるようにということの措置を希望しているわけでございまして、その御努力をお願いしているわけでございますが、先ほど申し上げましたように、その後返還がかりにありました後の使途等につきましては、まだ私どもは、はっきりした方針はきまったというふうには聞いておりませんけれども、防衛庁のほうで何か演習用途に、全部であるか一部であるかわかりませんが、使いたいというお考えがあるように先ほども伺ったわけでございますが、それが同じような危険を感ずるような用途であるならば、これは、せっかく返してもらっても意味がないわけでございますから、よく連絡をとりまして、そしてそのような危険を及ぼすような使い方はしていただかないように、われわれとしても、はっきりと意見を述べて御考慮いただきたい、こう思っております。
  173. 近江巳記夫

    ○近江委員 防衛施設庁にお聞きしますが、返還のめどというのはいつなんですか、予定は。大体でけっこうですが……。
  174. 薄田浩

    ○薄田政府委員 米側からは、昨年の九月に本年の一月から対地射爆撃訓練は取りやめるという通知があったわけでございます。先ほども堂森先生の御質問にもあったのでございますが、いわゆる返還——全面返還、部分返還と両方ございますが、返還の話し合い、いま部分返還も含めて話し合いに入っておりますが、まだ明確な指示はございません。
  175. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは返還のあと自衛隊の空挺部隊が使うということで堂森さんからちょっとさっきお話があったわけですが、それは明確に返還にならなくても自衛隊が使用する、こういうことですか。
  176. 薄田浩

    ○薄田政府委員 自衛隊の使用につきましては、私から申し上げるのはいかがかと思いますが、ちょうど防衛庁がおりませんので、私、聞いていることを申し上げさせていただきます。  いわゆるそういう意味で入っていくというふうには考えてないのじゃないかと思っております。  それから先ほど内局の参事官が申しておりましたのは、空挺部隊の降下演習に使いたいというようなことを、先ほど政府側の見解として申しておりました。
  177. 近江巳記夫

    ○近江委員 防衛庁の方、それは全面返還にならなくても米軍は射撃だけをやめて空挺の練習にする、こういうことですか。
  178. 福田勝一

    ○福田説明員 その辺のところはまだはっきりしてないというふうに聞いております。
  179. 近江巳記夫

    ○近江委員 しかしいずれにしても、あと自衛隊が、空挺部隊か何か知りませんけれども、そのように使うという意図ははっきりわかっているわけですよ。長官としましても、危険でない方向に私も努力するということをおっしゃっているわけですけれども、先ほどおっしゃったように再処理工場もできますし、言うなればここは一番施設が込み合っておるわけですよ。ですからみんなの要望というのは、そういう危険区域にはもう飛行機等の侵入はやめてもらいたい、射撃はむろん、ほかのそうした一切のことについても。現実に過去五年間でもこういうような事故が起きている。だれだって事故を起こしたくないわけですよ。事故というものはだれしも起こそうと思わなくたって起きるわけですよ。そういう点、米軍からあとを引き継いだ政府が同じような危険なことをやっていく、これは私はよくないと思うのですよ。そこで、総理なりあるいは中曽根防衛庁長官なりに、純粋な立場から長官から安全という意味において強硬な申し入れ等をやっていただいて、これをとめさすという方向に当然御努力願わなければならぬじゃないか、このように私は思うのですが、長官としては今後どういうように具体的な動きをしていただけますか、それについてお聞きしたいと思います。
  180. 西田信一

    ○西田国務大臣 将来危険が生じないように十分防衛当局と協議をいたしていきます。
  181. 近江巳記夫

    ○近江委員 非常に抽象的な答弁なように思うのです。射撃をしないから危険ではないのだといえばそうなるかもしれない。だからその辺の解釈というものはあいまいなんです。ですからもう自衛隊には一切あそこの場所は、そういう危険区域については使わさない、そういうはっきりとした要請なりをしてもらわなければ困ると思うのです。当然閣議にかけてもらわなければならぬと思うのですが、長官にお伺いします。
  182. 西田信一

    ○西田国務大臣 お気持ちはよくわかりますが、私も射撃をやらないから他の用途に使ってもよろしい、こう申しているのではないのでありまして、たとえ射撃以外のことでありましても、あの区域、原子力施設に対しまして危険を生ずるような使い方はしてもらわないようにいたしたい、こう申しておるのでありまして、自衛隊が一切使ってならぬというところまで申すことが適当かどうかわかりませんが、少なくとも射撃以外のことであっても、危険を及ぼすような使い方はしてもらいたくない、こういうことははっきり申し出まして、そして協議するつもりでございます。
  183. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま東海村の問題をお聞きしたわけですが、それから敦賀なり、現実に原子力発電所も稼動しておるわけでありますし、いま相当数の発電所も建設中であります。もう間もなく稼動するところもあるわけでありますが、いままで東海のあそこの地域以外にたとえば敦賀の上で上空侵犯して警告を受けたとかそういうあれはないのですか。
  184. 福田勝一

    ○福田説明員 東海村それから立教大学の研究所以外の事実はないというふうに各自衛隊に照会いたしました結果、そのような報告が入ってございます。
  185. 近江巳記夫

    ○近江委員 監視がルーズであればたとえ危険区域に上空侵犯しようとしたって勘でたよっているようなことではわからぬわけですよ。ですからその報告が、すべてそれ以外になかったかというとそれは私は言えぬと思うのです。ですからその辺の、今後全国各地に建設中の原子力発電所等についての将来を考えてみますと、非常に私は危険な問題だと思うのです。その点科学技術庁としてはどういう監視体制なりそういうような措置なり申し入れなりをなさっているのですか。それをお聞きします。
  186. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 原子炉を設置いたします場合に、当然飛行機等からの問題がどうあるかということは、安全審査一つの課題となっております。そういう関係で飛行機が落ちた場合には火災が起こる、火災のためにはどうなるか、飛行機の圧力ではどうなるか、そういう点は一応安全審査立場をとっております。と申しますのは、飛行機はシビルな飛行機等、いろいろ商業用の飛行機等が動きますので、全体としてそういうものに対して原子炉の安全であるというたてまえからそういう形をとっておるわけでございます。そういう関係で特に現在までのところでは、東海村につきましては制限地域等もつけてあるわけでございます。したがいまして、その制限地域に入った場合の報告体制というのは非常に忠実に私たちとっております。したがいまして、ほかの一般的な場所で飛行機がどう飛んでいるかどうかということの体制は実はいままでとっておりません。
  187. 近江巳記夫

    ○近江委員 これから原子力発電所がどんどんできていくわけです。いま東海村にとっていらっしゃる危険区域等の設定をし、同じようにまたそういう監視体制は当然しなければならぬじゃないか、私はこのように思うのですが、局長として将来どう考えられますか。
  188. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 監視体制につきましては前々申し上げておりますが、第三者機構という監視体制をつくるように指導しておりまして、福井県等はつくっております。その地元のそこと私たちも相談いたしまして、そういう点についての監視体制の強化ということには、そちらの御意見を問いながら私たちも強力に進めていきたいと思います。
  189. 近江巳記夫

    ○近江委員 当然危険区域等も設定されてやられるわけですね、もう一ぺんお聞きします。
  190. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 いま先生おっしゃいました危険区域、飛行機そのものから考えまして、要するに一般の商業用の飛行機も飛びますし、そういう関係から危険区域を設定するかどうか、そういう点につきましては、その場所場所で違ってくると思います。それは地元の第三者機構と御相談しながら、もし必要ならばそういうことをしていくという立場になると思います。
  191. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう安全体制について地元とそういうような機関を設けていく、なるほど敦賀の場合は設けていらっしゃるわけですが、やはりそれは地元地元の特徴も確かにあるし、わかるわけでありますが、当然それは政府法律なり何なりをつくって、それを強制的にもつくらしていくというようにしていく、それがほんとうの安全性を進めていく一番大きな肝心かなめの施策ではないかと思うのです。任意にまかせるとかそういうことではなくて、政府として当然そういう方向にいくべきではないか、このように思うのですが、局長としてはどのように思われますか。
  192. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 第三者機構でございますので、あまり政府が立ち入りまして中身のものを指導し過ぎますと、第三者という立場をとれません。したがいまして先生おっしゃいますように、設置する場合には私たち通産省とも一緒になりまして、できるだけ設置することということの設置の体制についての進め方には指導するし、努力いたしております。しかし設置する中身につきましては、できるだけその自主性をとるという形でつくっていただくという形を考えております。
  193. 近江巳記夫

    ○近江委員 ですから、地域地域の特徴はわかるわけです。だけれども、そういう骨組みといいますか、何らかのパターンをきめて、そうしてあとは地域的なそういう特色を織り込んでいく、そういう基本線ということは国で将来の方向として設定すべきではないか、そのように思うのですが、局長はどう考えられますか。
  194. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 現在までにできていますのは、一番形としてりっぱといいますか、現状としては福井県だと思います。したがいまして、これから先できていきますものは、それの骨子をとりまして、それに地域ごとに大体の変化すべきところは変化するという形が一番いいのではないか。したがいまして、できるだけ地元の考え方が取り入れられました骨子というものについては、いまは一応福井県のあの形が一番いいのではないかということを、一つの基準といいますか、考え方で進めております。
  195. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、福井のパターンというのを基本型として政府としては奨励して、あとは特色をはめ込んでいくというわけですね。これは、政府が強くそういう形をとらせるようにこれからも指導して、そうして各地において全部それを設置していく、こういうことでありますね。
  196. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 だんだん原子力地帯もふえますので、当然原子力の数もふえると思います。したがいまして、そういう地帯につきましては、できるだけそういうものをつくる、また知事さん方皆さん方も、やはりそういう第三者機構があるべきであるというこに大体一致して御意見がございますので、そういうことで努力していきたい、こう思っております。
  197. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、この前に質問しました例の、原子力が動力として普遍化した場合において、原潜なり原子力艦艇はつくってもいいのだという発言がございまして、もう一ぺん確かめておきたいと思うのです。  昭和四十年に政府は、原子力基本法第二条の解釈について統一見解を発表されているわけです。四十年四月十四日、愛知大臣の当時です。  この内容をちょっと読んでみますと「原子力基本法第二条には、『原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、』云々と規定されており、わが国における原子力の利用が平和の目的に限られていることは明らかであります。したがって、自衛隊が殺傷力ないし破壊力として原子力を用いるいわゆる核兵器を保持することは、同法の認めないところであります。また、原子力が殺傷力ないし破壊力としてではなく、自衛艦の推進力として使用されることも、船舶の推進力としての原子力利用が一般化していない現状においては、同じく認められないと考えられます。」このように言われているわけですが、殺傷力、破壊力として用いることが軍事利用になる、このように解釈しているように思われるわけですが、大臣としてその点どうなんですか。
  198. 西田信一

    ○西田国務大臣 その政府の統一見解は、現時点におきましてもいささかも変更はございません。したがいまして、いまお読みになりましたとおりの見解を持っております。
  199. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで、自衛艦の推進機関等、直接の殺傷力、破壊力はないにしても、戦術兵器の使用を直接的または間接的に支援するものは軍事利用になるかならないか、この辺をもう一度大臣に確かめておきたいと思います。
  200. 西田信一

    ○西田国務大臣 ここで申しておりますことは、将来一般船舶の推進力として原子力が用いられるようなときが来ない限り、現状では原子力基本法において認めない、こう申しておるのでありますから、原子力潜水艦は持てないということでございまして、もちろん殺傷力あるいは破壊力を持つところの原子力の利用ということが認められないことは申すまでもないところであります。
  201. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほどの見解の中で、船舶の推進力として原子力利用が一般化されていないときはそれを用いるのは軍事利用になり、一般化されたとき用いれば軍事利用でないという、この理論というのはどこから出てきているのですか。
  202. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 先ほど先生おっしゃっております破壊力とかいうこと、あるいは戦術で使う場合においてはどうか。要するに、軍用として船を使っているという場合には、現在だめである。ただ、原子力船の中の舶用炉と申しますか、この舶用炉自身が一般化して、どの商船にも載り、こういうものがいまの油のタービンと同じように世の中に普及してしまったということで、一般化したということはそういうことの考え方だと思います。そういうことには現在まだ至っておりません。したがいまして、四十年の考え方はそのまままだ生きている、そういうことでございます。
  203. 近江巳記夫

    ○近江委員 たとえば通常兵器にしても、その破壊力、殺傷力のもとになっている火薬類を例にあげた場合、すでに一般化されておるわけです。土木工事とかその他にどんどん利用されているわけですが、これも同じ火薬なんです。ところが土木工事は平和利用であり、爆弾などはだれが考えても軍事利用なんです。ですから、つまり軍事利用、非軍事利用を分けるものはその使用目的であって、その状況ではないということになるのではないか、私はこのように思うのですが、その辺は政府としてはどう判断されますか。
  204. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 極端に申し上げますと、たとえばジープ、これは軍のほうでもお使いになるでしょうし、私たちのほうでも自由に使っております。そういうのが一般化、こういうふうに考えております。そういうところが原子力利用が一般化して利用される現状という判断のときではないか、私はそういうふうに考えております。
  205. 近江巳記夫

    ○近江委員 大体の考えはわかったわけですが、この原子力基本法のたてまえからいって、そういうくずしていくような考え方に立ちますと、非常にこれは危険な方向にいくわけです。ですから、今後いかなる自衛艦にも推進力としての原子力は使わないという基本的な立場科学技術庁としては当然守っていくべきではないか、ぼくはこのように思うのですけれども、大臣はどう思われますか。
  206. 西田信一

    ○西田国務大臣 船舶の推進力として一般化した場合、こういっておるわけでございますから、まあ潜水艦とか軍艦とかいうようなものは軍が用いる船舶であると思うのでありますが、要するにこれが普遍化いたしまして、一般に船の推進力として原子力が用いられるというときになりました場合に、軍の使う船舶に限ってこれを用いてはならないというところまではこの原子力基本法は認めておらない、こういうふうに思うわけでございますから、つまり一般化いたしました場合には差しつかえない、こういうふうに考えます。
  207. 近江巳記夫

    ○近江委員 普遍化した場合は差しつかえないといういま見解でございました。  そこで、きょうは自衛隊も来られているわけですが、これから四次防、五次防、六次防と、このようにさらに拡大されていくと思うのですが、この前も参議院においてわが党の矢追議員が聞いたときに、中曽根防衛庁長官は、普遍化されたときには原潜の建造も考えられるというような意味の発言をされたわけでございますけれども、具体的にそれでは四次防、五次防、将来六次防になるかどうか知りませんけれども、その辺のことは自衛隊としては具体的にこのように考えておるわけですか。
  208. 福田勝一

    ○福田説明員 四次防では全然考えておりません。四次防は四十七年から始まるわけでございますが、全然考えておりません。  五次防、六次防については全く未知でございますので、これは何ともお答えしようがないのではないか、かように思います。
  209. 近江巳記夫

    ○近江委員 自衛隊内部としては、そのように普遍化してきた場合はそれに使いたいというような意向はやはりあるわけですか。
  210. 福田勝一

    ○福田説明員 自衛隊内におきましては、そういう議論はただいまのところは全くございません。ただ、潜水艦の場合でございますけれども、潜没走行能力という点におきまして、現在の電池の動力を使って潜没潜航する型の潜水艦と、原子力を推進力にいたしております原子力潜水艦の間にはたいへんな差がある。これは質的に格段の差があるということだけは事実でございます。たいへんうらやましいものを各国が持っておるというような程度の、そういったほんとうの個人的な議論はございますけれども、普遍的にそれを持つ、持たないというのは、正式の議論は全然いまのところは出ておりません。そういう状況でございます。全く未知である、こういうことでございます。
  211. 近江巳記夫

    ○近江委員 わかりました。いずれにしても両刃のやいばになるわけです。そういう点、あくまでも国民の願いというのは原子力基本法に定めてあるように平和利用なんです。ですから、その辺は一番監視していただいておるのは長官であり科学技術庁でありますので、その点はどうかひとつこれからも国民の疑惑や心配を招かないように十分に監視をよくしていただきたい、このように思うのですが、どうですか、長官。
  212. 西田信一

    ○西田国務大臣 これはもう厳密に厳格に原子力基本法は守ってまいりたい。平和利用に徹してまいりたいと思います。
  213. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから私はいつも、原子力発電所なり、これからどんどん増設されるわけですが、安全性ということについてはやかましいぐらいにいままで申し上げてもきたわけであります。そこで、敦賀の発電所で昨年オフガス系回路補修作業中に一人の作業者が二レム程度の被曝をした件があるわけですが、それの詳細な状況についてお聞きしたいと思います。
  214. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 御指摘の件につきましては、原電の敦賀発電所におきまして四十五年のたしか七月一日だと思いますが、オフガス系回路補修作業中、一人の従業員が二レム程度の被曝をした事例がございます。これにつきましては、被曝の許容線量というのがございますが、それは三カ月三レムでございます。それで、この方は二レム受けましたので、さっそくその仕事が三カ月で三レムにならないような処置をとるとともに、十分被曝管理を行なって、本人の健康状態についても十分監視をして進めております。幸いそれによりましてこれについてはその後何ともございません。それで原子力発電所におきましても、補修工事等を行ないますところの管理制度、その被曝管理について十分な処置をもう一度再検討するということで再検討して、現在こういうことのないように十分な措置をとるということで続けております。
  215. 近江巳記夫

    ○近江委員 被曝量というのは普通何にもなければ原子力発電所の場合は年三十七ミリレム、これは違うのですか。その辺のところをちょっと聞かしてください。
  216. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 いま先生のおっしゃいましたのは、周辺監視機構の周辺のところのレム数を押えているのだろうと思います。
  217. 近江巳記夫

    ○近江委員 いずれにしても、それは三カ月で三レムが最大許容量かもしれませんけれども、一時に二レムも出ておるということについては、先ほどからも、従業員の安全性については非常に問題があったわけでありますけれども、現実にこういうことが起きておるわけですよ。だから、各委員従業員のそういう安全性ということを心配していろいろおっしゃっているわけです。なぜこういうことが起きたのですか、特にこの事故については。
  218. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 オフガス系の回路補修作業をやります場合に、だいじょうぶであるという形でやりましたのですが、その点でこれが二レム受けてしまった。もちろん、この際ガラスなり何なりある程度防護装置を置きまして、それでやれるという方法があるのではないか、そういう点は十分考慮しておりますが、まあ職業人としてやります場合には計画被曝というのが一応ございます。と申しますのは、どうしてもある程度安全の範囲内で受けて、そのかわり短期間で受けて作業を終えるという計画的にきめてやる場合がございます。今度の事故はそういう中に入らずにやりましたので、そういう点は非常にミスがあったと思います。
  219. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう作業の安全性ということは十分配慮してもらわなければ、やはり従業員にしたってこれが健康にどういう重大な障害を及ぼしていくか、その点が非常にずさんであるがゆえに、いまそのミスを認められたわけでありますけれども、現実にこういうようなことがちょこちょこ起きておるわけですよ。われわれもこまかいこと言うているのとは違うわけです。そういうずさんな作業、それが放置されているというところに重大な事故にまたつながるわけです。法律では賠償してあるからまあ事故が起きてもしょうがないじゃないか、そんなことはまさか考えておられないと思いますけれども、起こさないようにしてもらわなければ困るわけですよ。  長官、いまここにはっきりとした事例がこのようにあるのです。安全性等については長官も前から十分意を尽くしてやっているとおっしゃってますけれども、現実にこういうことが起きておるわけですよ。どう思われますか、これについては。
  220. 西田信一

    ○西田国務大臣 安全性につきましてはもう細心の注意を払ってやっておりますし、たまたまそういうことが現実に起きましたことはたいへん残念でありますが、そのつどその会社に対しましても厳重な注意を喚起いたしております。そういう事故が起きないように十分監視してまいりたいと思っております。
  221. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、こういう事故があったときは少なくとも科学技術委員会委員のわれわれには知らしてもらいたいということを言うておいたわけですよ。なぜ科学技術庁はいままで黙っていたんですか。
  222. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 できるだけの内容につきまして御報告申し上げるということに確かに先生としておりました。この件につきまして、その補修工事の途中で二レム、ある短期間で受けたという報告が参りましたときに、まあ七月で、そのとき先生のところにお伺いして申し上げればよかったのでございますが、その後私たちのほうが、こういうところで、この事故があった、こういう異常があった理由ということを申し上げる機会をちょっとなくしていたということについては申しわけございません。
  223. 近江巳記夫

    ○近江委員 いずれにしても、特に補修工事等においては、非常にその点安易にやる場合があるわけですね、特に周辺の機器とか。しかしそういう場合でも危険性は常にあるわけですよ。ですから、そういう点で今後そういう補修工事をはじめとして、一切のそういうことについても、この被曝管理については十分配慮してもらわなければ困ると思うのです。その点長官としていろいろ手を打たれたと思うのですが、現実にこういうことが起きておるわけですし、いままでのことがやはり徹底がゆるかったのじゃないか。だから、現実にこういうことが起きておると思うのです。その点、この事例を通して、今後さらにいままでやっておられた以上にどういう配慮をされますか。局長と長官とお二人にお聞きしたいと思います。
  224. 西田信一

    ○西田国務大臣 原子力発電所におきますそのような被曝事故はもとよりでございますが、その他医療用でありますとかそういうような放射能の取り扱いに対しましてもときたまそういう事故が起きることがございまして、私はこういうつどそれぞれ関係者全体に対しまして厳重な注意を喚起するような措置もとってまいっております。また、発電所等におきましては当該事業者はもちろんでありますが、全般に対しましても厳重な注意を喚起いたしまして、事故の絶滅を期するように全力をあげておるわけでございます。
  225. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 大臣がおっしゃったとおりでございますが、具体的に申し上げますと、現在の私たちの措置といたしましては、定期検査あるいは一般調査がございます。その場に行ったときに必ず安全関係のことについてはできるだけ十分に指導する、また一そう注意を払うべきことを必ず言って帰るという形をとりたい、こう思っております。
  226. 近江巳記夫

    ○近江委員 そのように十分管理をやっていただきたいと思うのです。  それから従業員がこういう被曝を受けた場合、一ぺんに何もこれで死んでしまうわけじゃないのですけれども、その辺の補償について、非常にあと影響も出てくる、いろいろあるのですが、そういう微妙な点の補償はどう考えておるのですか。
  227. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 あとから起こったのが具体的に必ず原子力関係から起こっているのだということになれば労災から払えるようになっております。
  228. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう因果関係の問題で裁判でも何でも全部行き詰まっておるわけですよ。少なくとも危険性ということは、ほかで働いている人よりも多いし、またそこで被曝しているということははっきりしておるわけですよ。そこで働いておった人がどこかでレントゲンをむちゃくちゃに浴びたとかそういうことはあるかしれませんよ。だけれども、少なくともそこで働いておった従業員がそういう放射能を浴びたと同じような症状が起きた場合は、因果関係の究明ではなくして、無過失責任といいますか、そういうようにはっきりと全部補償する、こういうように私はすべきだと思うのですけれども、どう思われますか。
  229. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 できるだけ先生のおっしゃるようにそうしたいと思います。それのもとといたしまして、確かにどういう被曝を受けたあるいはどういうふうな装置の場所にいた、そういう点の登録の問題があると思います。その点につきまして、われわれもいま鋭意検討いたしておりますが、実際にその従事者の放射線に対する履歴というものを十分残して、それをもとにして労働省に強硬な御意見を出すという形で進みたいと思います。
  230. 近江巳記夫

    ○近江委員 ぜひそのようにやっていただきたいと思うのです。  それからまた、周辺のところもそういう放射能が漏れてそういうようになるという危険性もあるわけですが、周辺のところについてはどのようにお考えになっていますか。
  231. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 原子力発電所等の周辺につきましては、事業者がすべて一応観測するという形になっておりますが、政府としても観測いたさなければなりません。したがいまして、大気の関係、水の関係等については全国に県の試験場がございます。それを動員いたしまして、私たちのほうで、常時モニタリングしておる県がいま十県くらいございます。それからどろの調査等については少なくとも年一回あるいは必要に応じて二回、そのほかのものについては大体四半期あるいは半年という形で政府としても環境の調査ということを進めて、できるだけそのところの経過、データ、そういうものを整えて万全を期するという体制を進めております。
  232. 近江巳記夫

    ○近江委員 特にモニタリングをやっておるところが十カ所ということをお聞きしたわけでありますけれども、地域のそういう協定を結べばそういう点は解決されるとは思うのですが、そうすればどこが監視するか。敦賀の場合、何とか貝ですか、あのときも測定は第三者にまかしておった。それが何かあやふやな監視になっておったわけです。そういう点はっきりと、そういうモニタリングが不正確なことであればこれはどうしようもないわけです。ですから、特にモニタリングのそういう点については厳正を期さなければいけない、私はこのように思うのです。その厳正を期す意味において具体的にどのようにお考えですか。
  233. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 ただいま申し上げましたのが、ちょっと私混合して申し上げて申しわけありませんでした。民間でやるものは全く別にいたしております。そして科学技術庁の中に、これは原爆の海外でやる観測と両方一緒にいたしまして、それで観測体制というものはつくってございます。それに県の試験場と放射線医学総合研究所、われわれのほうがその幹事役をつとめております、そこでもってモニタリングの方法あるいはやり方等の打ち合わせをしながら、その点には正確を期して、その関係原子炉のある場所の観測と両方一緒にいたしまして、先ほど十県常時観測をしておると申し上げましたが、それと両方一緒にいたしまして、日本の全体のバックグラウンドの調査を必ずしておくという体制で進めておるわけでございます。
  234. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういうバックグラウンドの調査をしていただくのはいいわけです。ところがここに非常に大きい問題があるのです。それは調査機器が日本の場合にはメーカーばらばらですよ。西ドイツや外国の場合は全部統一するわけです。そうでなければほんとうのことはわかりませんよ。これは大きい盲点ですよ。このままほっておくのですか。
  235. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 確かに先生おっしゃいますようにまだ標準化いたしておりません。と申しますのは、やはりなるべく正確にはかるという形で、日進月歩機械が動いております。したがいまして、それの標準といいますか、それはやはり放医研その他でこういう機械とこういう機械の誤差というものはできるだけわかるようにいたしております。しかしまだ一般化いたしておりませんので、それをたとえば通産省のJISで標準をつくってやるという立場まできておりませんで、実際的にいまフィルムバッジだとか、ああいうものにつきましてできるだけ標準化した形に持っていきたいというのを検討しておる段階でございます。これは早急に進めていきたいと思っております。
  236. 近江巳記夫

    ○近江委員 標準化を早急に進めたいとおっしゃったのでこれ以上聞くことはないわけですけれども、局長として把握されておるその機器の誤差、いまデータありますか。相当なばらつきがあるわけですよ。
  237. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 これにつきましては機器の誤差と、もう一つはやはり使い方がございます。それでこの間からフィルムバッジその他については、実際の技術的な使い方をこう使うのだというのを、指導書と申しますか、われわれの検討会で最近つくっていただいたわけでございます。そういうところから、機械の精度等の誤差というものはある程度ございますが、たとえば線量計の中で、ポケット線量計にはどこの会社のものとどこの会社のものがこう違うというようなところまでは、ちょっと私ども資料を持っておりません。
  238. 近江巳記夫

    ○近江委員 当然その辺のズレということは科学技術庁としても掌握しておかなければそういうばらつきのもとから出た数値で云々ということは、科学という厳密な因果関係を追っていくという形からすれば、やはり非常に非科学的なんです。ですからいま局長おっしゃったように、早急にこれは標準化して、それに全力をあげていただきたいと私は思います。いま局長から答弁があったわけでございますが、さらに長官にそれを拍車をかけていただかなければならぬわけです。長官の御意見を聞きたいと思います。
  239. 西田信一

    ○西田国務大臣 重要な測定機器でございますから、ぜひとも科学的でなければならぬと思います。その意味におきまして、つとめてしっかりと機械の標準化をはかるということで局長が答弁いたしておりますが、努力してまいりたいと思います。
  240. 近江巳記夫

    ○近江委員 それからまた話をもとに戻しますが、各地に原子力発電所がそのようにどんどん増設されているわけですが、そういう点自衛隊としても、あるいは防衛施設庁としても、米軍なりその辺の飛行経路等のそういう配慮というものは、がっちりとこれはできているのですか。ただ原研の周辺を言われておるから、そこはやっておるけれども、言われていないところはやってない。現実にほかの発電所はできてないというお話がさっきあったわけですけれども、何の制限もなしにいま飛んでいるわけですか。
  241. 福田勝一

    ○福田説明員 原子炉上空の飛行につきましては、陸海空自衛隊、それぞれにたいへんな注意をいたしてやっております。そのいきさつにつきまして簡単に申し上げたいと思います。  昭和四十三年の八月十二日に原子炉施設の安全確保についてということで、防衛事務次官から陸上、海上、航空の各幕僚長あてに、原子力施設の上空の飛行は事故の際放射能災害をもたらすということで、これは重大なことであるので、安全上の措置をとるようにという通達を出しまして、それを受けまして各幕の幕僚長がそれぞれ各部隊に達を流してございます。この骨子でございますけれども原子力関連施設上空の飛行制限についてということで、航空幕僚長が通達を出し、それぞれ幕僚長通達を出しておるわけでございます。その内容は、日本原子力発電東海発電所、それから動力炉・核燃料開発事業団東海事業所、それから日本原子力研究所大洗研究所、日本原子力研究所高埼研究所、日本原子力発電敦賀発電所、東京電力福島原子力発電所、関西電力美浜発電所、立教大学、これは横須賀の研究所でございます。五島育英会、これは武蔵工大でございます。神奈川県の川崎市の王禅寺四ツ田にある研究所でございます。それから東京原子力、これは神奈川県川崎市の王禅寺にございます。それから東芝電気、これは川崎市末広町の研究用の原子炉でございます。それから近畿大学、これは大阪府布施市小若江にあります。それから京都大学原子力研究所、大阪府泉南郡熊取町野田、それぞれの原子力施設の上空を通ることはつとめて避けるように、かように指示をいたしまして、実はパイロット一人一人に航空路図示というものを持たしております。パイロットはこれを全一部頭の中に入れているわけでございますが、そういうことで、こういった原子力施設の上空は避けるように、こういうことで、指示、指導をしておるということでございます。  ただ、航空法上の制限等が全然しかれておらないということで、これは全く技術的なことになるわけでございますけれども、これを禁止する——禁止するということは、当然それを侵した場合には行政責任というような問題もございますので、その辺のところは必ずしも行政上かっちりいたしておりません。したがいまして、私どもの指導といたしましては、施設の位置上をやむを得ず飛行する必要がある場合、これは過去に何回か、立教大学あるいは科学技術庁のほうから御指摘がありました。一連のそういった施設の近くの上空を飛んでいるというような御指摘がございましたけれども、これはおもに気象条件のためにやむを得ず若干近寄って、しかも高度は十分とって、危険は絶対に起こさないように行なっているわけでございますが、そういう気象条件上、どうしてもやむを得ないという場合、または管制機関の指示によって飛行する場合、こういった場合を除いては原則として飛んではならない、避けるように、かような指示を流しておるということでございます。気象条件といったことでもってどうしてもやむを得ない場合、しかもその場合においても高度を保ち、できるだけ真上を飛ばないというような指示、指導をやっております。大体これは守られておるというふうに思っておりますけれども、先ほども申し上げて、繰り返して恐縮でございますが、気象条件その他どうしてもやむを得ない場合には、若干近寄った、しかも上空をどうしても通らざるを得ないというようなことが絶対あり得ないということは断言できない。そこが非常に残念なんでございますけれども、よろしくお願いいたしたいと思います。
  242. 近江巳記夫

    ○近江委員 自衛隊はかなり厳格にやっておるように思うのですが、米軍も同じように、そこまでのきめこまかな通達を、完全な指示徹底ができておりますか、防衛施設庁。
  243. 福田勝一

    ○福田説明員 米軍のことにつきましては、まことに申しわけないのでございますけれども、そういった内部の一連の指示、指導の関係につきましては、私どもちょっとうといのでございまして、これはおそらく航空自衛隊等におきましても手持ちの資料というようなものがないのではないかと思われるわけでございます。相当時間をいただいて調査をいたしまして、向こうがそれに応ずるということでありますれば、そういったパイロット等に対する、あるいは管制官等に対する指示、指導の状況というものがつかめるかと思うのでございますが、これはやはり相手方がそれに対してこたえてくださるということが大前提になるわけでございます。おそらくそういったことにつきましては、それ一本きりの指示通達であるということであれば非常に簡単であるわけでございますが、その他の問題が含まれているというような指示通達ということになりますと、米軍等は軍事上のいろいろな問題がございまして、調査が非常にむずかしいというような感じがいたすわけでございます。いまの最後のところは私の憶測でございますけれども、よろしくお願いいたしたいと思います。
  244. 近江巳記夫

    ○近江委員 日米安保条約が結ばれておれば、たとえ、この原子力施設の上空を飛行することは危険である、それであってもやむを得ないという放置された状態、これは私は非常に重大問題だと思うのです。ですから、この件につきましては米軍のほうに申し入れをしていただき、厳重にひとつ守っていただくようにしてもらわなければ困ると思うのです。それについて今後どういう処置をとられるか、お聞きしたい。  それから科学技術庁長官につきましても、これは私は非常に重大な問題だと思うのです。自衛隊だけが守っても、あるいは自衛隊に通達をされる以上は、当然民間航空については徹底的に通達をされておる、私はこのように思いますけれども、そういう片手落ちであっては困るわけです。この辺長官としては今後どういう処置をとられるか、まず防衛庁からお聞きして、それから長官あるいは原子力局長にお聞きしたいと思います。
  245. 福田勝一

    ○福田説明員 国会におきましてただいま先生のようなお話があったということを航空自衛隊のしかるべきところを通じまして米軍のほうにお伝えいたしまして、米軍のほうからもできればそういった御心配がないような回答を得られるように努力はいたしていきたい、かように思う次第でございます。
  246. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 いままでも射爆場その他の関係で、そのつど防衛庁を通じまして米軍のほうにできるだけの努力をお願いいたしております。今後ともそういうことについては強力に進めていきたいと思っております。
  247. 西田信一

    ○西田国務大臣 局長が申しましたとおりでございまして、私も実は米側に対してどういうような申し入れと申しますか、従来そういうことがあったかないか、そこがちょっといまはっきりいたしておりませんが、もしかりにそういうあれがなかったといたしますれば、防衛庁と十分協議いたしまして、適切な措置をとりたいと思います。
  248. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで科学技術庁としては、現在これだけ社会全体が多種多様化してきておりますし、あるいはすべての面において急速な加速度を持って変化してきております。それに対処しなければならぬ、そういう中で科学技術庁としては防災科学というものに非常に力を入れていらっしゃるわけです。いまは原子力施設のことだけをいっておるわけですが、たとえば石油基地の上を飛ぶというようなことも防災科学という点から問題になってくるわけです。ですから、そういう点を考えてみますと、原子力施設であっても米軍のほうにこういうようにこまかにいっておらぬ。ですから、日米間においてはたしてどこまできめこまかに通達事項なり安全性という点で徹底されておるか、これはもう日米間の問題だけじゃなくして、すべての民間航空も全部そうですけれども、危険な施設等についての総点検を一ぺん、どういう通達がいき、どうなっておるかということについて私は徹底調査をしていただき、それに対する対策をとらなければ非常に危険だと思うのです。その点長官として今後どういう処置をとられるか、それをひとつお聞きしたいと思います。
  249. 西田信一

    ○西田国務大臣 防災の立場からはいろいろな措置がとられておると存じますが、なお不徹底な面があるかもしれません。これらにつきましては、御説のとおり十分点検を行ないまして、足らざるところは政府部内におきましてもしかるべき措置なり対策なりを急速に講ずる必要があると思いますから、善処いたしたいと思います。
  250. 福田勝一

    ○福田説明員 先ほど私、自衛隊のしかるべきというふうに申し上げたのでございますが、ちょっと説明が不十分だったので補足させていただきたいと思いますが、やはり米軍に正式にそういった国会での御議論があったというようなことをお伝えするについては、防衛庁、自衛隊が必ずしも適切であるかどうかという点につきましては検討させていただきたいと思います。と申しますのは、やはり外務省等もございますので、その辺の機関と十分相談させていただきまして、先生等からそういった話が出たというようなことをいかにしてお伝えするかという、その伝え方の手段というものにつきましては検討させていただきまして、その旨とにかく向こうに伝わるように努力させていただきたい、かように思いますので、よろしくお願いいたします。
  251. 近江巳記夫

    ○近江委員 ぜひそのようにお願いしたいと思います。なお運輸省の関係もありますし、外務省あるいは関係機関よろしくひとつお願いしたいと思います。  それから民間航空等は、自衛隊にそれだけ通達されているのですから間違いはないと思いますけれども、いまここで申し上げてもお答えは出しにくいんじゃないかと思います。民間のほうはそれはどうなっていますか。
  252. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 もちろん原子力施設等につきましての問題点については、これは民間関係は運輸省でございます。運輸省のほうも御存じで、できるだけのことをしていただくという形はとっておりますが、こまかくは、まだ私たちも資料を持っておりませんが、十分に今後とも気をつけていきたいと思っております。
  253. 近江巳記夫

    ○近江委員 ちょっといま聞き取りにくかったのですが、こまかくは通達してないわけですか。
  254. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 いまこまかくと申し上げましたのは、こまかい資料をちょっと持っておりませんのですが、全般的に運輸省のほうから民間関係に通達を出していることは間違いございません。内容がどうであるか、こまかい点が私どもちょっと資料がございませんのですが、それにつきましては今後とも十分見ながら気をつけていきたいと思います。
  255. 近江巳記夫

    ○近江委員 ですから、ひとつ科学技術庁が中心になられて関係各省がどういう徹底をなされておるか、もう一度よく調査していただきたいと思うのです。  それから先ほど長官に申し上げましたように、防災科学という点からすべてを総点検してやる、こうお話がございましたが、別に期間は切りませんけれども、調査をなさり、どういうように徹底をなさったか、後日資料をひとついただきたい。これはひとつ委員長にもよろしくお願いしたいと思います。
  256. 西田信一

    ○西田国務大臣 承知いたしました。
  257. 近江巳記夫

    ○近江委員 長官から承知しましたということでございますので、よろしくひとつお願いしたいと思います。  それから次に原子力船開発事業団のことをちょっとお聞きしてみたいと思うのですが、「むつ」が完成後事業団の存続について長官としてはどのようにお考えでございますか。
  258. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 その点は非常にむずかしい問題でございます。と申し上げますのは、今度の法律改正も、実は四年間延長していただいたわけでございますが、その後のあり方につきましては、実はその四年間の間に「むつ」自身の原子炉の成績、船の成績、それがはっきり出てまいります。それに基づきまして、将来その船がどういう運用でいったらいいかということをそこではっきりさせまして、それでその船の所属をどういたしますか、考えさせていただきたいと思います。したがいまして、その法律が五十年で終わりましてからそのあとどういうふうに持っていくかということにつきましては、成績によりまして考えさせていただくということでお願いしたいと思っております。
  259. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうなりますと、当然想定の問題になるわけですが、もし「むつ」の適当な運航事業者が見つからない場合、事業団がその業務を引き継ぐということになるんじゃないですか。この辺についてはどうお考えですか。
  260. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 その点につきましては、事業団そのままで持つか、あるいはたとえば運輸省関係のどこか、あるいは各省が持つか、そういう点は仕事の内容から出てまいると思います。したがいまして、もし民間で受けるところがなければ、事業団を必ず存続するんだという考え方にはいまなっておりません。
  261. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから「むつ」の運用につきまして特殊運搬船ということをちょっと聞いておるわけですが、その辺具体的に計画をひとつお聞きしたいと思います。
  262. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 「むつ」につきましては、第一の実験船とはいっておりますが、船の内容は特殊貨物船という形をとっております。一番最初は海洋観測船という考え方でいきましたが、値上がりその他で将来これを動かしていきますときの問題として、やはり特殊な貨物船として動くほうが、ある程度経済性といいますか、そういう点でもいけるんではないか、総合利用できるんではないかということで、特別貨物船にしたわけでございます。したがいまして、貨物として何を載せるかというところのことについては、まだはっきりいたしておりません。これにつきましても船の今度の成績によってきめていきますが、先ほどもどなたかの先生からお話がございましたように、たとえば廃棄物を運搬するとか、あるいは核然料物質を運搬するとか、そういうことは一応われわれは観念的には考えております。しかし、船の今後の有効利用という考え方から、そういう点については具体的に今後考えさせていただきたいと思っております。
  263. 近江巳記夫

    ○近江委員 やはりわが国の第一船としての原子力船、こういう意義は確かに私は評価があると思うのです。だけれども、その使用目的について、決定に至るまで何かふらふらしておるように私は思うのです。当然当初からそういうことはわかっておるわけですよ。どういう船をつくっていくか、ただ原子炉だけ置いたらそれでいいのだ、これが原子力船だ、そういう——私は何もこのことをやかましく言うのじゃありませんけれども、少なくとも政府が総力をあげて取り組んでいかれる問題にしては少しちょっと軽い感じじゃないか。これを何に使うという目的がぼやけておってはいかぬ、私はこのように思うのです。その点はどうですか。率直な感想をひとつお聞きしたいと思うのです。
  264. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 率直に申し上げさせていただきまして、特殊貨物船という考え方をとりましたときには、原子力船といたしましてはどうしても遮蔽その他で相当な容量を使っております。したがいまして、載せます品物の量といいますと約千五百トンから二千トンというところでございます。そうしますと、二千トンで特殊なものを運んだほうが得であるという考え方、普通の船ですともっとたくさん積めますから、経済的にはたくさんのものを一回で運べる、その点がありますので、特殊貨物船といったわけでございます。したがいまして、特殊貨物とした場合に、貨物で何が一番これに利益といいますか、赤字を埋めるために一番いい貨物は何であるかという点が問題でございまして、その点で私たちのほうは燃料や何かで、廃棄物等、そういうものを運ぶのがいま適切ではないかという頭が出てきたわけでございますが、ほんとうにそういう一千五百トン程度のものでできるだけ運んで、しかも効率的なやり方というところについては、先生おっしゃるとおり初めの考え方のときに少し甘かったかもしれません。しかし今後その点については十分効果をあげる、しかもこの原子力船がうまく動いてちゃんとした成績が出るという確信を持っておりますから、そうなった場合にできるだけ効率的に動かしたい。そのときに特殊というものは何であるかというところは十分詰めさせていただきたいと思います。
  265. 近江巳記夫

    ○近江委員 経済的な効率ばかりをしぼってそのようにおっしゃるわけです。当然効率的に運航はしてもらいたいと私は思うのですが、わが国で初めて生まれたこの原子力船ですよ。たとえば、いま海洋開発ということが脚光を浴びておりますが、その原子力船で大洋のまっただ中に乗り出して調査をしていく、そこには金では買えない夢があると私は思うのです。ただ経済効率だけで初めて生まれる原子力船を貨物船にしてしまうのだ、ちょっと金を食うからということでもう貨物船にしてしまえ、そういう夢も何にもない考え方がはたしていいのかと私は思うのですよ。長官は超現実主義でいかれるわけですか。長官にひとつお聞きしたいと思うのです。
  266. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 いま先生のおっしゃいました夢といっては悪うございますが、たとえば海洋の観測等にこういうものを使うという考え方は当然初めにはございました。それでこれから先もそういうことに使いたいという希望もございます。ただ、中の船員の乗り組む場所、それから観測機械を載せた場合にどうするか、そういう点があの船に対して適切にどうなるか、その点が最初特殊貨物船で設計してつくりましたので、その点をこれから先よく判定してできるだけ広く使ってもらいたいし、われわれも広く使いたいと思っております。その関係で海洋観測等に適切な測定器も載り効率的に使えるならば、ぜひそういうことに使っていただきたい、私たちも使いたい、こう思っております。
  267. 近江巳記夫

    ○近江委員 長官にはあとでお聞きしますが、そのようにいままだ船体自体もどうしても貨物船でなければならぬというようなことは、そこまでは工事は進んでいないわけです。ですから、ここで私は広く国民の皆さんから英知を結集して、国民の皆さんが全部、これだけ国費を投じてつくった船だ、このように使っていこうという、もっと衆知を集めた使い方をしてもらいたいと私は思うのです。ただもうこれを運営していったら赤字になるからということで安易にやっていく、それじゃちょっと私はおかしいと思うのです。また内部でどういう方向に使っていくかということにまだ工事が入っておらなければ、この際もう一回私は原子力船を何に使うかということの根本的な検討をしていただきたいと思うのです。長官にお願いしたいと思うのですけれども、長官どうでございますか。
  268. 西田信一

    ○西田国務大臣 わが国初の原子力船でございます。そこで何かふらふらしておるようにおしかりがあったわけでございますが、私は専門家でございませんので、何が一番向くのかということを私ここではっきりした判断がつきかねますけれども、しかしながらいま先生が一つの示唆を与えられましたが、最も有効に——有効にというのはただ経済性ばかり申すのではございません。最もこれが総合的に有効に使われることが望ましいと思います。そういう意味におきまして、いま一応の考え方はございますけれども、なお十分に時間がございますから検討するにやぶさかでないのでございます。そしてその上で最終的に決定して、最もいい使い方をするということが望ましいと思います。
  269. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう時間も非常にたちますのでこれで終わりますが、長官もいま運搬船にするということは御破算にして、そして最も国民として皆さんが納得していただける、そういう方向を今後考えていくという率直な答弁をしていただきました。私も大いに今後期待しておるわけであります。どうか世界に誇れる、わが国の科学技術の粋を集めた、そういう第一船を誕生させていただきたい、これを特に要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  270. 西田信一

    ○西田国務大臣 よくわかりましたが、また誤解があるといけませんから……。私は特殊貨物船を御破算にしてというふうに申したのではないのでありまして、それも含めまして総合的に有効な使い方を検討するというふうにさせていただきたいと思います。
  271. 渡部一郎

    渡部委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は明十一日木曜日午前十時より理事会、十時十五分より委員会を開くこととし、これにて散会いたします。    午後六時八分散会