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1971-06-30 第65回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    六月十八日  次の委員会開会要求書が提出された。     委員会開会要求書  衆議院規則第六十七条第二項の規定により、早  急に委員会開会を要求する。   理由一、沖繩返還協定並びに交換公文、了解       覚書、愛知外務大臣書簡等に関する       問題     一、根本自治大臣臨時代理沖繩に関す       る発言問題   昭和四十六年六月十七日    沖繩及び北方問題に関する特別委員                 中谷 鉄也                 中川 嘉美                 小平  忠                 安井 吉典                 上原 康助                 美濃 政市                 楢崎弥之助                 桑名 義治                 安里積千代  沖繩及び北方問題に  関する特別委員長  池田 清志殿 ――――――――――――――――――――― 昭和四十六年六月三十日(水曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 池田 清志君    理事 大村 襄治君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 床次 徳二君 理事 箕輪  登君    理事 中谷 鉄也君 理事 中川 嘉美君    理事 小平  忠君       國場 幸昌君    田中 龍夫君       西銘 順治君    山田 久就君       上原 康助君    大出  俊君       楢崎弥之助君    美濃 政市君       安井 吉典君    桑名 義治君       安里積千代君    瀬長亀次郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 中曽根康弘君  委員外出席者         防衛庁参事官  高瀬 忠雄君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛施設庁長官 島田  豊君         防衛施設庁総務         部調停官    銅崎 富司君         防衛施設庁施設         部長      薄田  浩君         沖繩北方対策         庁長官     岡部 秀一君         沖繩北方対策         庁総務部長   岡田 純夫君         外務省条約局長 井川 克一君         沖繩及び北方問         題に関する特別         委員会調査室長 綿貫 敏行君     ――――――――――――― 委員の異動 六月三十日  辞任         補欠選任   楢崎弥之助君     大出  俊君 同日  辞任         補欠選任   大出  俊君     楢崎弥之助君     ――――――――――――― 五月二十四日  一、沖繩及び北方問題に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  沖繩問題に関する件      ――――◇―――――
  2. 池田清志

    池田委員長 これより会議を開きます。  沖繩問題に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますから、順次これを許します。鯨岡兵輔君。
  3. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 沖繩問題については、われわれは二つの大きな問題に分けて今日まで審議を続けてまいりました。  一つは、言うまでもなく、きょう外務大臣との間で詰めようと考えている沖繩返還についてのアメリカとの協定問題であります。もう一つは、返還された沖繩に対して、内政問題として豊かな沖繩県をつくるのにはどうしたらいいかというようなことを、われわれは別途詰めているわけでありますが、きょうは、申し上げましたように、外務大臣返還協定について今日までの経過、内容、それらについて承りたいと思いますが、主として三つの点に分けて私はお尋ねをしてみたいと思います。  きょうは外務大臣の御日程がおよそ十二時半までということでございまして、委員長も先ほどの理事会において、それはひとつ守ろうではないかというお話でありましたから、与野党ともそのつもりでありますが、重大な返還協定でございますだけに、どうかひとつ、きょう一回というようなことじゃなしに、これから何回もこの問題について審議を続けていきたいと私は考えておりますので、外務大臣にもひとつそのつもりで御協力を賜りたいと思うわけでございます。と申すのは、返還協定内容について、世間でいろいろまだ危惧を持つ者もあります。そこで、そういう危惧国民に明らかにして安心してもらうというためにも、ここで十分の審議を続けていかなければならないと思うからであります。  お尋ねしたい第一点は、返還協定内容といいますか、条件といいますか、戦争でとった沖繩アメリカ日本に返すということになれば、アメリカ側にもいろいろ条件があろうと思います。同時にまた、潜在主権日本にあるということをかねてからいわれてきた沖繩を返してもらうのですから、四分の一世紀異民族の支配にあったいろいろの問題を解決するためにも、当方にもたくさんの条件があります。  そこで、アメリカ側条件は別として、当方条件をできるだけ満たすということが、言うまでもなく国益ですから、これが大事なことだと思うのですが、私は、たとえば基地問題についていえば、戦争でとったのですから、とった当初はもう占領地なのですから、本土占領地なんかと違って、戦争で現実にとったところですから、あそこもここもということで、ずいぶん大きな基地を持っていた。それは現在沖繩に行ってもよくわかるわけです。実際上、われわれが見て軍事基地関係のない遊び場みたいなところ、あるいは住宅地みたいなところもかなりぜいたくにとっている。そのために沖繩の県民は非常に困っている。だから、返還のときには、この土地は相当に返されていいんじゃないかなというふうな感じがしていたのですが、ABCに分けて、Cの部分ですね、いますぐ返還までに返すという部分がきわめて少ないし、また、返還話し合いで返ってくるというBの部分だってそんなに多くない。これは外務大臣もあらゆる場所でお認めになっているところですが、もう少し何とかならなかったかなという感じがいたします。それからVOA、ボイス・オブ・アメリカ問題にしても、何か割り切れないものがある。私は、当方条件ばかりがんがん言うて、先方立場に立って考えないことは、決していいことであるとは思いません。思いませんが、もう少し何とかならなかったかなと思いますだけに、外務大臣の今日までの御苦労を多としながらも、その衝に当たって御苦労なさった外務大臣に、いま申し上げた基地問題VOA問題をはじめ、その他もう少し何とかならなかったか。外務大臣はお考えになってやったけれども、どうもアメリカ側条件もきつくて、そうは思うとおりにならなかったというようなことがあったら、その点についてひとつ詳細に御説明を願いたいと思います。
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一に、これからもいろいろの点から御批判や御質疑があると思いますけれども政府立場としては、核抜き本土並み、そして七二年のなるべくすみやかな時期、これは三大基礎条件でございまして、これを何とか貫くということに全力をあげてまいりました。同時に、これもいろいろの角度から御批判もあることも知っていますけれども政府としては、あれだけの凄惨な大激戦で失って、そして平和条約において立法、司法、行政の一二権がアメリカに認められてきた。つまり平たいことばで言えば、とられたところを平和的な話し合いで取り戻すことができる、これはたいへんなことであろうと思いますが、そのたいへんな仕事をやり切ると同時に、三条件を貫徹したということで、これは今回の協定で私は貫き得たと信じております。同時に、ただいまの御質問もまことにごもっともなことでありまして、いわゆる施設、区域の問題にしても、安保条約本土並みに適用いたしまして日本側が提供することになるわけですが、その際に、提供しなくても済むもの、つまり今回の協定関連して合意いたしました書類の上で明らかにされておりますいわゆるCというものが、できるだけ多く、また面積も広いにこしたことはございませんが、しかし、これが完全に本土並みの扱いになって、一部にはAのリストというものはやはりどうしてもいままでの基地ということとの関連性を持って考えがちでございますから、永久に何かこれはアメリカの憲法のもとにおいて租界というようなものになって続くのではないかというような素朴な考え方で心配なさる向きもあるようでございますが、これは合同委員会対象になって、常時今後もその必要性との関連におきまして縮小整理対象になるわけですから、とりあえずCというものが少なかったにしても、Bを手始めにいたしまして、漸次これを縮小整理方向に向かいたい。現在のところでは、Cの占めている比率がやや少ない、このことは認めますけれども、同時に、これが制度としても運営上としても縮小整理方向に段取りがついたということはやはり大きな前進である、かように政府としては考えております。
  5. 鯨岡兵輔

  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは中間報告のとき、あるいはそれ以前のこの委員会のいろいろの御審議のときにも率直にに申し上げましたように、基本的なアメリカ側日本側態度あるいは原則が異なるわけで、日本といたしましては、電波法という日本としてのユニークな法律並びに制度があって、外国には電波を許さない。ところがアメリカ側から言えば、友好各国との間にも多くの事例を持って現に運営されておるということで、これをどうかして原則的に制度的に認めてもらいたい、これは返還とかあるいは安保条約とかいう問題ではむしろないという立場をとって考えておるわけでございます。政府としては、この点についてはずいぶん努力努力を重ねましたが、原則論として、わがほうとして恒久的なものとして認められないことはもとよりでございます。そして最終的に五年の暫定期間を限りまして、またその運営等につきましても、日本政府としての発言権を留保いたしまして、暫定的なものとして合意をいたしたわけでございます。
  7. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 VOA問題については、五年という暫定期間を設けて認めた。これはわかるのですが、二年後にもう一回話し合いをして、そのときにいろいろ将来の問題をとりきめようというような文章も入っております。そこでわからなくなってくる。わからなくなってきますけれども、それらの問題は、冒頭申し上げましたように、きょうは大ざっぱにずっと上をさらっていきたいと私は考えますので、そういうこまかい点に入ってこれから後に審議を続けていくということにして、外務大臣が言われたように、条件についてはどうも満足でない点も認めないわけではないが、しかし原則である七二年、核抜き本土並みということが貫かれた以上、これはやはり成功であると思うということは、私もそのとおりだと思います。思いますが、基地問題が出ましたから――外務大臣にお聞きするよりは防衛庁長官にお聞きすることだろうと思いますが、外務大臣もお立ち会いになっておられたそうでありますから承りますが、日本自衛隊が今度沖繩に行くということについて、何か配備の取りきめについて、むずかしい取りきめの署名などをなぜしなければならないのでしょうか。私その点がちょっとわからないのですが、外務大臣のお考えをちょっと示していただきたいと思います。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまのお尋ねは昨日の安保協議会問題と思いますが、昨日の安保協議会は随時やっております一つのあれで、前回は昨年の十二月二十一日であったと記憶いたしますが、昨日はそういう定期の会議でございまして、日米両方都合ということは、先方はハワイに常駐している太平洋軍司令官がこの正式メンバーである関係どもございまして、双方都合のいいときを選びまして、昨日開きました。  一つは、アメリカ太平洋軍として見た極東の軍事情勢というようなことについてのブリーフィングをだいぶ詳細にしてもらったわけですが、もう一つ問題は、沖繩における自衛隊配備問題であります。この問題は、私の記憶では昨年の五月だったかと思いますけれども、将来沖繩返還が実現された場合、というのは、昨年の五月ということは一昨年の十一月にすでに日米共同声明が出たあとでありますが、本土並み沖繩返還されることを前提として考えました場合に、若干の自衛隊本土としての沖繩の専守防衛というのでございますか、その任務を持つのは自然な姿であるということを前提にして防衛庁側が主として研究に当たる、そしてそれに対して現在は何もないわけでございますから、先方からの引き継ぎを受けたいものもある、調整をしたいものもある、そういう点については先方アメリカ側協力も求めなければならないということで、ずいぶん長く双方防衛当局間の打ち合わせが行なわれておった。その自衛隊としての配備計画や希望その他がまとまって、かつそれが米側との関係のあるものについては米側賛成を得たといいますか、協力を得ることができることになったということで、この段階でそれらの点について合意したことを両方事務当局間でサインをしておこう、こういうことになったわけでございます。こうしたような事項につきまして両者が事務的に合意をしたしるしをいたしますことは通常行なわれることであり、返還協定ができましてからあとでありますので、えらいことが何か起こったかのように報道されておるようでございますけれども、さようなことでは全然ございませんで、政府考え方としては、本土並み返還ですから、自衛隊が若干出てその職責を全うすることは当然である、それから現在のところは何らそういう態様がないわけでありますから、それらの点について米側協力あるいは助言を受けるということもこれまた自然なことである、これだけのことでございます。
  9. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 そういうような話し合ができたときには署名を事務的に行なうということは通常のことであって、何らおかしいことではないというお話でございましたが、そこらが問題でございまして、日本を守るのは日本の力で守る、これはあたりまえの話だ。沖繩が返ってきたらばどれぐらいの自衛隊沖繩に持っていくということは日本考えることであって、アメリカとの話し合いをすることはいいでしょうけれども、それじゃそのとおり守りなさいよ、守りますというようなことで判こを押し合う、署名し合うというようなことは、通常のことと簡単に言われますが、どうも何か通常のことでないように思うのが国民的な感情ではないかと思いますので、この点についてはまた後ほど外務大臣にもお話をお聞きしなければなりませんし、防衛庁長官にもお尋ねをしなければならない、国民の不安を除去するために、そう思っておりますが、時間がありませんから次に進みます。  申し上げましたように、条件を言えば当方にもいろいろあります。またその条件をたくさん言っていいと思います。しかしアメリカ側にもやはり条件があることをわれわれ忘れてならないと思いますから、それをあまりとやかく、自分の条件が全部満たされなければ承知しないというような言い方をするのは十分誤りであると思いますが、外務大臣が言われたように、原則である七二年、核抜き本土並み、これが貫かれているからいいのだということに私は賛成だということを先ほど申しましたが、その核抜きのところで国民一般は、この協定の中に、核は撤去する、核は云々というようなことを、核兵器があれば撤去するとか、核兵器撤去するとか明らかに書いてほしかった、書いてないからちょっと不安だというような向きがあります。ありますが、核というものはどこにあるのだかわからないですから、沖繩にあるということをだれも言った人はおりませんし、ないと言った人もいないのですからそうは書けなかった、そこで財政の面でそれをやっていくのだというようなお話であったようですし、またそういう解釈が今日まで伝わっておるのですが、この間の事情について外務大臣から国民の不安を除去するために明確にひとつお答えをいただきたいと思うのであります。  ついでながら申し上げますが、もしそれ核があったとかりにして、それを撤去するための財政的なものは日本がしたわけですから、それを今度は持ち出すときには、毒ガスを持ち出すときのいまの騒ぎを思い出して、私は毒ガスどころでないえらい騒ぎになるのではないかなという感じがするのですが、その間の問題も含めて、外務大臣にひとつ大ざっぱなお答えでけっこうですからしていだたきたいと思います。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点も政府立場をかねがね明らかにしてまいったつもりですけれども、ということは、共同声明の第八項というものが政府としては非常によくできている文言であると確信いたしております。したがいまして、第八項がこうして両国最高首脳間で確約されてあるのですから、これで十分である、かような立場であるわけです。しかし同時に、これは政府としても、先ほど申しましたように核抜きということは三大条件一つであって大きな要点でありますし、それから国民的にも最も関心の深いところであることをよく承知しておりますので、両国首脳間の共同声明の上における確約だけではなくて、できるならばこれを返還協定条約文の上に何らかの形で念には念を入れて規定することが最も望ましいことであると考えまして、この点につきましては、私ども交渉に当たりました者としても最大の重点にあげたところでございます。そして御案内のように、この協定の第七条によりまして、この地域の「日本国への返還を千九百六十九年十一月二十一日の共同声明第八項にいう日本国政府政策に背馳しないよう実施すること、」ということは、つまりここにいう「日本国政府政策に背馳しないよう」というのは、核抜き返還を実現するということにほかならないわけでございます。これが第七条のこの条約文言の上にここまで、核というものの性質その他からかんがみまして両国協定の上に出ましたことは、私どもといたしましては喜びとしているところである。喜びとしているということは、これによって核抜き返還ということがなお一そう十分に保障された。そしてこの条約文言の上にここまで書かれまして、そしてとれが両国国会の御承認を得て批准の交換ということになることはたいへんありがたいことである、かように考えてりおます。  なお、この第七条にいわば財政条項とでも申しましょうか、この中に入れましたゆえんのものは、三億二千万ドルの支払いを米側に対してするわけでございますけれども、その中の約七千万ドル程度は、この核の撤去をはじめ、日本側として欲せざるものについての撤去費用について、これはアメリカ側としても費用の相当要ることでもございましょうから、それに所要の経費として支払うことにいたしまして、さらに三段がまえで、こうやって核の撤去というものが返還までに行なわれるのであるということをいやが上にも明確にいたしたつもりでございます。  それからその次の御質疑で、これもごもっともなことと思いますけれども、やはり核というものについては毒ガス等とはまた違った性格のものでもございましょう。それからまた一般的に、これも従来しばしば御答弁申し上げているところでありますが、核に限らず、軍の装備、施設というようなものについては、権利として点検をするとか、条約上の義務として持てるものがこれを一般に公開をするとかいうことにはなじまないものであろうかもしれませんが、基本的に条約でかような確約ができましたわけでございますから、今後におきましてもいろいろとくふうをこらしまして、御安心が願えるようにいろいろと配慮をいたしてまいりたい、かようには考えておりますが、条約の上においてここまで明確にされております上におきましては、核抜きについては何ら御心配ない、かような態度政府がおりますことをこの議場を通じましても明確にいたしたいと思います。
  11. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 これからも国民の不安を除去するためにいろいろ説明していくというお話でございましたが、ぜひそう願いたいと思います。  あらためて承りますが、いま沖繩核兵器があるかどうかはわかりませんが、返還後は沖繩には核兵器は置くことを許されないのだ、沖繩には核兵器がなくなるのだということ、端的にそういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど申し上げましたように、この条約の第七条でもさらに一段と明らかになりましたように、返還核抜きで行なわれる、返還後においてはさようなものはない、こういうことに相なるわけでございます。
  13. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 この問題は、大村委員からもお話があると思いますから、この程度にいたしまして、最後に私は、大臣なんかはそうでしょうけれども、何事でも相手の立場に立ってものを考えてみるということがものごとを成立させていく場合においてしばしば必要なことだろうと思います。アメリカ側は、アメリカの子弟がずいぶん犠牲を払って、血を流して沖繩を取った、その沖繩をこれからの日本との協力のために日本の願望を入れて返すことはいいんだが、なぜここまで譲歩しながら沖繩を返さなければならないのだろうかというような、アメリカ側の中にそういう反応はございますまいか。それから、それを受けて上院がこの協定審議をこれから秋ごろやるでしょう。わが国もやります。けれども上院のほうは三分の二の賛成がないと成立しないということですが、その動向はいかがでしょうか。この点について最後に承って私の質問を終わります。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、ずいぶん長い時間がかかりまして、こうして協定ができまして、そうして国際的な宇宙中継という方法によってまで調印式をいたしましたくらい、そうしてこれに非常に積極的な態度を示しましたアメリカ政府立場からいたしましても、上院に対しまして十分の説明がなし得るものだと思います。したがって、私は、大多数の上院の議員の方々が心から本件に賛成してくださることを心から期待いたしておるわけであります。もちろんアメリカの中にもいまお示しのようないろいろの議論がありますことは、報道等においても相当伝えられておるとおりでございます。けれども私は、やはりアメリカといたしましても沖繩における軍事的な力というものが非常に減殺されることになると思うのですが、それをも押して日本要望どおり返還が実現されるということは、より大きな高い立場に立っての政治的の判断というものもあったからだと思うのでありまして、そういう判断や見識というものはアメリカの多くの国民方々に支持される考え方である、こういう確信を持って見守ってまいりたいと思っております。
  15. 池田清志

  16. 大村襄治

    大村委員 返還協定についてお尋ねしたいことはたくさんございますが、時間の制約もございますので、鯨岡委員の御質問との重複を避けながら、なるべく簡単にお尋ねいたしたいと思いますので、大臣の簡単明瞭なる御答弁をお願い申し上げます。  まず第一に私がお尋ねいたしたい点は、今回の返還協定前文におきまして、両国政府が、「これらの諸島の日本国への復帰が前記共同声明基礎の上に行なわれることを再確認した」旨うたわれております。この点につきまして、佐藤・ニクソン共同声明、これは見直しますと、経済関係条項まで入れますると、十数項目の広範な範囲にわたっておるのでありますが、今回の返還協定前文において、「前記共同声明基礎の上に行なわれることを再確認した」とわざわざお述べになっておるのはどういうお考えであるか。共同声明そのもの条文化でないことは疑いはないと思うのでありますが、共同声明との関連において、今回の返還協定のねらいとするところは何であるか、特にお尋ねをいたしたいのであります。
  17. 愛知揆一

    愛知国務大臣 沖繩が一九七二年中に、核抜きで、本土並みでわが国に返還されるということについては、一昨年十一月の共同声明によって基本的な合意を見たところであります。この前文は、まさに沖繩の復帰が、このような共同声明基礎の上に行なわれるという既定の事実が確認されたことを述べたものでございます。  それから、一般的に申しましても、前文というのは、この条約の制定といいますか、条約ができるに至りました経過を述べているものであって、そして条約内容として、両国を、法的に権利義務を規定するものは第一条以下の本文である、各本条であるというのが条約の定説でございまして、今回のこの協定もまさにその考え方を採用いたしております。
  18. 大村襄治

    大村委員 核抜き本土並み、一九七二年中の返還、こういった点に重点を置かれているという点はわかったのでありますが、そこで核抜き本土並み原則の点につきましては、先ほど来鯨岡委員がいろいろお尋ねになったのでありますので、重複は避けますが、この協定内容を見ますると、第二条、第七条、それは結局共同声明の第四項なり第八項に関連を持つと認められるのでありますが、こういった点で第二条、第七条において明らかにされていると思うのでありますが、なお鯨岡委員の御指摘になりました核抜き問題、あるいは沖繩には特殊部隊あるいはSR71偵察機等、現在本土には見られない部隊が存在しているように承ったのでありますが、こういった点は、返還の際に、あるいはそれまでにどのようにされるお考えであるか、この点を重ねてお尋ねしておきたいと思うわけであります。
  19. 愛知揆一

    愛知国務大臣 お尋ねのように、第二条によりまして、安保条約関連取りきめがそのまま何らの変更なしに沖繩に適用される、これすなわち本土並みでございます。したがいまして、その安保条約のワク組みの外にはみ出るようなものは返還のときまでにいなくなる、これが自然の成り行きでございます。これは両国間の今日までの協定づくりの過程におきましても、当然のこととして考えられておる点でございます。
  20. 大村襄治

    大村委員 この協定につきましては、調印発表の際に現地の屋良主席が不満を表明されているようでございますが、衝に当たられました愛知大臣としては、県民不在の協定という批判に対してどのようにお考えであるか。これは手続上、内容上についての批判があるようでございますが、この点はどうでございますか。  なお、あわせまして、今回の参議院選挙におきまして、沖繩の県民の大多数の方はこの協定に賛意を表されたものと私どもは受け取っておりますが、この点につきまして、協定の実質的進行に非常に苦労されました外務大臣としてどのようにお考えになっておりますか、あわせてお尋ねいたします。
  21. 愛知揆一

    愛知国務大臣 県民不在ということばは、このごろ私は幸いにもうごく一部の方を除いて消えたように考えております。と申しますのは、ここに私も皆さまの貴重な時間をさいて多くを申し上げることは省略いたしますけれども、一々レコードの上においてもお話し申し上げたいと思うくらいでございますが、この協定の作成につきましては、まずこうして国政参加ということが早くできましたために、沖繩選出の国会議員の方々と何べんも質疑応答を繰り返すことができたことをはじめといたしまして、国会におきます中間報告というようなことも、あの段階で条約について中間報告ということは、これは前例にもないことで、政府としては非常に思い切ってやりましたことであります。また、だんだん煮詰まるに従いまして党首会談もお願いをし、各野党の方々もきん然とこれに党首が御参加いただいたことを感謝いたしております。また立法院、琉球政府あるいは復帰協あるいは地主協会その他各種の公私の団体もございますが、つとめてこれらの方々の御意見を伺い、またわれわれの考え方もそのつどいろいろと御説明につとめてまいりました。さらに国会の中間報告に際しましては、屋良主席、立法院その他の方々にこちらから出向きまして御説明につとめました。また調印式に先立ちまして竹内政務次官を派遣いたしまして、現地においての説明も申し上げました。また調印式が終わりましてからも、私自身も出向きまして、主席はじめ一般県民の方々にも、この協定内容等につきまして誠意を尽くして御説明申し上げてまいりました。政府としては、県民不在というようなことがないように――もちろん、これは手の行き届かぬことも多々ございましたでしょう。しかし誠意に誠意を尽くして処理してまいりましたことはお認めいただきたいものだと、私は心からさようにお願いをするわけでございます。  参議院選挙についてどういうふうに評価されたかというようなことにつきましては、これは事実がもう済んで結果があらわれているようにも思いますので、この上ともに県民各位が、政府の意図いたしてまいりましたこと、並びにあげてまいりました実績というものを、ほんとうに客観的に、初めから結論づけをされないで、ほんとうに心を平らにして御理解をいただきたいものだ、これを心からお願いする次第であります。
  22. 大村襄治

    大村委員 今回日米間において合意を見ました施設、区域に関する了解覚書によりますると、復帰に際し米側に提供されるものA表、復帰に際し一たん提供されるが、しばらくして返還されるものB表、復帰の際または復帰の前に返還されるものC表等がございますが、この問題は、沖繩本土に一歩近づくという意味におきましても、また復帰後の民生の安定、向上をはかる上からいきましても、きわめて重要な問題であると思うのでございます。すでに鯨岡委員からお尋ねがございましたが、基地の整備統合についての政府の基本的考え方をお伺いいたしたいと思います。今後さらに縮小される見通しがこの表のうちに予定されているのかどうか、この点もあわせてお尋ね申し上げます。
  23. 愛知揆一

    愛知国務大臣 今回のこの協定につきまして、まず第一に、御案内のような岡崎・ラスク協定というような方式あるいは奄美返還のときにとられましたような方式は避けることができました。ということは、日米間で話し合いがつかないものについては、アメリカ側の意図するとおりに、今度の沖繩の場合で申しますならば、現在基地として使用しているところをずっと使用するというような意見も出がちであると思います。それからまた、そういうことを防ぐ意味で条約上何らかの保障を与えてもらいたいというような希望がアメリカ側から出るのは、私は自然の成り行きだと思うのでありますが、さようなことが条約の上に文言としてあらわれなかった、岡崎・ラスク協定のようなものができないで済みましたということは、政府としてはほっとしているところでございます。  同時に、返還と同時に合同委員会において安保条約の目的からいい、現状において提供することを適当と認めるべき施設、区域は、その返還の日に合同委員会できめるべきものでございますけれども、これは一面におきましては県民各位の関心が非常に深い問題でもありますし、また合同委員会等の作業を円滑に進める上から申しましても、この点だけはあらかじめできるだけ合意をしておいたほうがよろしいと思いましたので、便宜上、米側との相談がずいぶん骨が折れましたが、ABCのリストということで発表することにいたしたわけでございます。先ほど鯨岡委員の御質問にもお答えしましたように、このAというものは、一部にやむを得ない誤解であろうかと思いますけれども、永久に基地として提供されるものではないだろうか、租界のようなものになるのではないか、こういうふうな固定したものになるという心配が県民の方々の中にもございましたが、この点はおわかりいただけたと思います。つまり全く本土並みの扱いでございますから、本土におきましても相当の時間はかかりましたけれども、急速に考え方が進みまして、現に本土におけるいわゆる施設、区域というものは、個所数から言いましても面積数から言いましても、その当初に比べれば全く比較にならないような状態になっている。そこで、沖繩の場合におきましても、Aリストのものについては、もう返還と同時に合同委員会が十分配慮をいたしまして、できるだけ急速度にこの整理縮小に努力を集中してまいりたい、かように存じております。
  24. 大村襄治

    大村委員 関連してちょっとお尋ねしておきたいのですが、B表の注を見ますと、「牧港住宅地区の代替施設完成による返還問題は、今後の検討の特定の主題とされる。」とあり、望みがあるようにも受け取れるのですが、ちょっと念のために、ひとつ例示的にお伺いしておきたいと思います。
  25. 愛知揆一

    愛知国務大臣 牧港の住宅区域、施設というものは、やはりわれわれとしては、いわば目玉商品として考えるべきところであると現に考えております。そしてあの地域は、将来の那覇の都市計画から申しましても、非常に重大なところでございますので、なるべくすみやかに返還を期待いたしたい。米側も移転するということについて原則的に異存はございません。むしろ今後日本側におきまして、あれだけの広い――ちょっといまパーセンテージを私正確に記憶しておりませんが、米軍としてあの種の施設として必要としているところの非常に大きな部分を占めておりますだけに、これの縮小、そしてその代替施設の建造、これを沖繩県全体の総合計画の上に立って、日本側がやはりできるだけ協力をいたしまして、移転配置を早急に考えるべきである。それができますれば、牧港の住宅の移転ということは必ず実現ができるわけでございます。これを日本側としても特に大きな焦点としているということが、B表のフットノートの中にあらわれている文言にわれわれの気持ちが象徴されておる次第でございます。
  26. 大村襄治

    大村委員 復帰後、米軍施設の一部を自衛隊が引き継ぐというふうに承っており、また昨日はその関係の取りきめが関係間に行なわれたように承っております。ところが、自衛隊沖繩への展開につきましては現地住民に強い反対があるようにも聞いております。さらに共同声明の第六項にこの関係の事柄がうたわれたようにも記憶いたしております。そこで、この返還協定の衝に当たられた外務大臣として、復帰後の自衛隊沖繩への展開の問題そのものについてどのようにお考えであるか。あるいは防衛庁長官との関連もあるかもしれませんが、まず外務大臣にこの問題についての基本的なお考え方を承っておきたいと思います。
  27. 愛知揆一

    愛知国務大臣 基本的な考え方は、アメリカの軍が沖繩にいる、たとえばこれだけのものがある、これを日本自衛隊が肩がわりするという観念では全然ございません。まさに本土並みでございまして、これは防衛庁長官からお聞き取りをいただきたいと思いますが、日本本土において自衛隊の持っておりまする同等の役割りを沖繩において展開するのは、また一方から言えば当然であり自然である。その際に、米軍が持っておりました施設、区域、基地等を活用するということは、これも当然あってしかるべきだと思います。要するに肩がわりの観念ではない。自衛隊自衛隊法によって認められているところの本土の防衛ということを目的とし、かつそれに限定された役割りのために沖繩に若干の部隊が展開する。かように御理解をいただきたいと思います。
  28. 大村襄治

    大村委員 協定第七条は三億二千万ドルの支払いについて合衆国の施設日本国政府への移転関係共同声明第八項関係、そしてさらに復帰後の雇用の関係、三つの項目をあげて総額を示されております。新聞紙等にはその内訳についての数字もあがっておるようでございますが、この三項目についてどのようなお考えでこの協定第七条の金額を決定されたのか、外務大臣の基本的なお考えをお伺いいたしたいと思います。
  29. 愛知揆一

    愛知国務大臣 協定上に、御承知のように内訳は掲げてございません。総額三億二千万ドルで合意をいたしたわけであります。ただ、その内容をしいて申し上げますならば、資産の引き継ぎ関係で一億七千五百万ドル程度、それから退職金等の負担関係で七千五百万ドル程度、それから核の撤去その他これに類するようなもので七千万ドル程度が適当であると判断をいたした次第でございます。  さらに、もう少し申し上げますならば、資産の引き継ぎというのは、いわゆる三公社等の関係で引き継ぐものでございます。それから退職金等の関係と申しますのは、基地労務者、軍労の関係方々にかねがねからの強い御要請があります。また当然の御要請でもありますが、間接雇用に全部ずばりと切りかえて、そして本土並みということにいたすことに相なりました。したがいまして、これは返還の日にかかわりなく、雇用契約ができましたときにさかのぼりまして、たとえば退職金の規定も全部引き上げ改定が行なわれるわけでございます。そして将来いつの日にか退職される方は、その雇用契約ができましたときから返還のときをまたぎまして、そして退職されるときに間接雇用になって、格段に引き上がりました退職金規程が援用されるようにするということに考えたわけでございます。ところで、そうしたことによって負担が雇用者側に激増することになります。受益者は日本方々でございます。そういう関係もございますから、この三億二千万ドルの中に約七千五百万ドルを計上することが適当であると考えたわけでございまして、この分は、したがいまして受益者は軍労の方々であるというところに特色があるわけでございます。  それから核の撤去費等では、これはその他にも、欲せざるもので、やはりお金がかかる、お金はなかなか出ないというようなものをやはり考えに入れる必要があると思いましたので、七千万ドルをここに積んでおきますことが適当であると判断したわけでありまして、この三億二千万ドルにつきましては、一億ドルが最初の年次、それからあとは四年間、全部で五年間に分割支払いされるわけでありますが、第二年度以降を例にとりますれば、円にいたしまして年度百九十億円程度のものになろうかと考えております。
  30. 大村襄治

    大村委員 いろいろお尋ねしたいことがあるのですが、もう時間がほとんどなくなりましたので、あと二点だけにしぼります。  一つVOAであります。協定を見ますと、五年間は残すが、それからあとは返るのだ、二年たったら協議に入るのだというようなことが書いてあるわけでありますが、なお議事録なんか見ますと、かわる施設ができない場合にはどうとかという規定もちょっと見受けられるのでありますが、協定の本文どおり五年で返るというふうに受け取ってよろしいのでありますかどうか、念のために承っておきたいと思います。
  31. 愛知揆一

    愛知国務大臣 撤去解体作業が行なわれて、そして五年、幾らおそくとも五年以内でこれは完了することになっておりますが、予見されないような何らかの自然的な現象の関係でもあって、そしてそれがちょっとずれ込むことがありはしないだろうかという懸念が表明されているわけでございますが、この点について明確にいたしておきたいと思いますのは、五年以上延びますような場合は新たなる条約を必要とする、新たに日米政府間で、つまり日本合意した条約が新たにできなければ五年以上認めるわけにいかないということが、VOAについての日本政府側の見解であり、アメリカ側もそれを了としているわけでございます。
  32. 大村襄治

    大村委員 最後に一問、協定の効力発生の見通しでございます。第九条では、批准書の交換の後二カ月で効力を生ずると書いてございますが、現在の時点で発生の時期の見通しはいかがでございますか。相手のあることでたいへんお答えにくいかもしれませんが、大臣のお考えを承っておきます。
  33. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは、米国側におきましてもこれから上院の承認を得る必要があるわけで、これは向こうの事情がそうですが、当方におきましても、十分御審議をいただいて御賛成をいただきたいと考えております案件に、あらかじめ条約上に日にちを入れるというようなことはいかがかと思いまして、両国政府合意をいたしまして、十分協議をいたしまして、批准発効後二月ということにいたしておるわけでございます。そういうような配慮を十分にいたしておるところでございますから、見通しを一方的に日本政府だけで申すわけにはいかないと思います。ただ、琉球立法院の与野党一致のかねがねの御決議もございますし、その他いろいろの点から考えまして、日本側としては、明年四月一日に効力発生、完全にそこで復帰ができることが望ましいということは、強く米側に要請してございます。米国政府としてはこれに留意するという態度をとっております。要するに、それは心にとめておきましょうということに相なっております。
  34. 大村襄治

    大村委員 終わります。
  35. 池田清志

    池田委員長 大出俊君。
  36. 大出俊

    大出委員 外務大臣の今日までの御努力のほどは認めるわけでありますが、残念ながら旧来いわれてまいりました核抜き本土並み、七二年返還、こういうわけでありますが、七二年返還は、これからでありますからともかくといたしまして、この核抜き本土並みというのは、実は核隠し、本土沖繩化である、こう私ども言ってまいりましたが、これはまことに残念でございますけれども、核隠し、本土沖繩化である、こういうふうに申し上げざるを得ないのであります。沖繩県民百万の皆さん、あるいは心配をしている日本国民諸君の立場からしても、まことに残念だと思います。  そこで、中身を承りたいのでありますが、国際的に見て、条約上明文化されておりませんものは守られない、これは常識であります。そこで核抜き本土並み、こう二年前に公約をされておるのでありますから、なぜ一体核を抜く、この点が条約上直接的に明示的に明らかにされなかったかという点、理由を明確に承りたいわけであります。
  37. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、直接明示にひとしいものだと考えておりますことは先ほどお答えしたとおりでございまして、共同声明第八項にいう日本政府政策に背馳しないように処理をするということが明確になっておることは、これは核抜き返還が行なわれるということにひとしいと思います。したがいまして、この種の問題について、私から申せば、これ以上条約として明文化されることはないのではないか、ほとんどこれで――ほとんどではない、これで百%日本政府の希望しておりましたことは達せられた、かように考えております。なお、先ほど申し上げましたように、費用の点にまで触れているというようなことは、日本政府としてできるだけ念には念を入れて御安心を願いたいということの配意でございます。
  38. 大出俊

    大出委員 具体的に言いますが、F105というサンダーチーフなる飛行機は、これは核を搭載していることになっている、これは国際常識でございます。それからまた原子力潜水艦、これまたサブロックなる核爆雷を搭載している。戦術任務についている原子力潜水艦は核爆雷を搭載している。この点は先般の私の委員会で明らかにしたところであります。アメリカの議会議事録にもあります。これが沖繩から日本に常時行ったり来たりしている、これも現実であります。第七艦隊所属の艦船の搭載核、これも戦術任務についている場合にはそれぞれ搭載をされている、明らかであります。それだけに単なる八項を持ってきたからといって核抜きになったか、これは共同声明のときにすでにさんざん論争したことでありまして、それでは困るから核抜きを明示的に直接的に条約に明らかにすべきである、これが旧来のわれわれの主張で、その線での努力をすると言ってこられたわけでありますが、それが何ら保障されなかったということになっているわけでありますから、形式を整えても、実際はそうでなければ、これはアメリカのニクソンさんが最近はトリッキーニクソンというあだ名がついたそうであります。形式を整えても中身が違うと、どうもこれはトリックだということで、一つ間違えれば日本にもトリッキーなる人ができては困る。そういう意味で、なぜ明示的に直接的に書けなかったかという理由をもう一ぺん承りたいのであります。
  39. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私はこれが明示にひとしいという見解をとっておりますから、なぜこういう表現になったのか、理由はどうかというお尋ねにまあかってに切りかえてお答えをいたしたいと思いますが、先ほど来申しておりますように、共同声明第八項で、両国首脳間の最高の確約で内外に表明されていることでございますから、それで心配はない、かように確信をしておるのでありますけれども、累次の国会での事前のいろいろの御審議や、政府われわれとしてもごもっともな御意見であると考えまして、この条約の上に何とかこれをもう一ぺん再確認といいますか文章化することがきわめて肝要である、かように存じまして努力を重ねまして、そして私のいま申しますことばで申しますれば、この「共同声明第八項にいう日本国政府政策に背馳しないよう」ということは、もうこれはだれが見ましても核抜きでということに同意義なのでございますから、そういうふうに実施することがこの条約の上に第七条にはっきり明文化されたことは、話しことばで申しますこの返還核抜きで行なわれますよということと同意語である、かように御理解をいただきたいと私は思います。
  40. 大出俊

    大出委員 それではもう一ぺん聞きましょう。  角度を変えて聞きますが、その理由を先に申し上げます。三十九年に原子力潜水艦が日本の港に寄港することになった。そのときにエ-ドメモワールができまして、日本政府の意に反することをしない、こういうふうに表現されていた。先般私が内閣委員会質問いたしましたように、サブロックなる核兵器を搭載しているアメリカの潜水艦、これが三十四隻ある。原子力潜水艦の総数は四十七隻、その差は十二隻。だから核兵器サブロックを積んでいない潜水艦は十三隻しかない。ところが、積んでいる型の潜水艦が十五隻入ってきている。そうすると、だれが考えても二隻は積んでいるはずじゃないかといって詰めた。あなたはどこかでおろしてきたはずだと言って、沖繩から入ってくるんだから、そうなれば沖繩へおろしてきていることになる。最後にあなたは、政府間で、つまり日本政府アメリカとの間で詳細に詰めてみたい、国民の心配の種なんだからとお答えになっている。しかも、それも委員会で明確に報告をするとまでおっしゃっている。これとても信用しろ信用しろといわれたって信用できない。現にそういう事実がある。アメリカ議会の証言もある。だから同じ表現ですよ。日本政府の意に反することをしない、背馳することをしない、同じ表現であります。それから先は信用しろということしかない。そうするとまた、今日問題になっている原子力潜水艦の日本寄港をめぐるような問題が常時起こっている。これでは困るから、だからそこまであなたがいま強調するように、ニクソン大統領と佐藤さん、あるいはロジャーズ国務長官とあなた、ほんとうに核を抜くことに意見が一致しているなら、もっと、こんな財政のところに書かぬで、核兵器沖繩から抜きますよと直ちに書けば済む。なぜそれができないか、こういう抽象的な言い回しで、事言いのがれに類するような書き方をしなければならぬのかという理由。いまあなた、口で、話しことばで言うならばと申されている。しからば話しことばで、明文化して条約上の表現があります、核を抜きますと明確になぜなさらぬのです。だから屋良主席は心配をする。沖繩県民は心配をする。国民多数も心配をする。保障がないじゃないか。あたりまえでしょう。なぜそれができないのか。あなたがそこまで強調されるなら、アメリカがそこまで了解したと言うなら、なぜ直接的明示的にあっさり書けないのですか。すなおに書けないのですか。それを聞きたい。
  41. 愛知揆一

    愛知国務大臣 なぜ書けないかということは、同意語でありますから、私はその理由として何も申し上げることはございませんで、大出さんがおっしゃるとおりに、私は、核抜きをこれほど条約文で、エードメモワールというような一方的な行政府のペーパーというようなものではなくて、両国が、代表者が調印をいたしましたその中の文言でございますし、これが十分国会の御審議を経て両国の約束になるわけでございますから、この約束、それが、先ほど話しことばで言えばと言いました内容が、ここでこうして御審議を通して、その当事者からこうして御説明を申し上げておりますし、この点については米側上院における審議においても同様のことであろうと私は思います。十分その点は御信頼を受けて、そしてこれが実施に移る。これは破るにも破りようがない。あるいは条約はあいまいなことは破られるのが通例だというおことばが先ほどございましたが、そこまでいきますと何も信用ができないということにもなりかねない。そういうことを言われたわけではもちろんありませんけれども、私は十分国会のこの席におきまして、日本政府政策に背馳しないで実施をするということは、核抜きで、しかも第八項にいうところの日本政府政策に背馳しない云々ということは、明らかにもう何としても核抜きで返されるということを意味している。これは何べんお尋ねがございましても申し上げるところで、それから、これは念のために申し上げるわけでございますが、私も確かに、大出委員から内閣委員会等におきまして、厚子力潜水鑑の寄港の問題について、あるいは核の搭載の有無等について非常に詳細な御質疑があり、またそれに対する政府の答弁が従来の答弁では足りなかったと思います。これらの点については引き続き十分にいたしたいと思いますが、それは寄港のときの問題でございます。いまここで沖繩問題で一番大事なことは、核抜き返還が実現されるということでございまして、それとはいささか違うものだ。沖繩に核を抜いて返させるということが、私はまず第一の、一番の大事なことで、それからあと本土並みの扱いになって、これから核はイエスと言わないということになっております。そのイエスと言わないはずのものがまだ疑惑が残るではないかという点につきましては、別途内閣委員会等において、前々からの論争といいますか討議につきましては、政府としてもさらに一段と誠意をもってお答えするようにいたしたいと思います。
  42. 大出俊

    大出委員 そこに語るに落ちる感じがするのですがね。寄港のときは別だとおっしゃる。こうなりますと、リチャード・ハロラン氏の記事ではありませんけれども、トランシット協定、通過協定があるのではないかという。核を積んだ原子力潜水艦が日本の港に入っていたと書いてある。寄港のときはいいんだということになってしまう。寄港のときはいいということになると、置いてもいいということになるのですよ、実際は。  そこで、私はもう一つ実証したいのだが、ここにタイム誌の六月二十八日付の「やりとたて」という論評がある。「やりとたて、沖繩」ここに、最も扱いにくいのは核兵器問題だ、こう書きまして、日本が同意しない限りアメリカ沖繩核兵器を貯蔵する権利を行使しない。これはどういうことかというと、つまりいまあなたがおっしゃる共同声明文言をさしておる。これはアメリカ沖繩核兵器を持っていると公式に認めたことは決してない事実に由来している。いいですか、アメリカ沖繩核兵器を貯蔵しておいていると言ったことは決してない、一ぺんもないという事実に由来している。この表現、この先がありますけれども、時間を節約いたしますが、そこでアメリカの国防、国務両省がホワイトハウスに向かって、戦術核をどけろという言い方をしておるのだ。こういうふうに言って、つまりしょせんどけるどけないについて、いままで一度もあるともないとも言ってないのだから、しょせん、どういうことになるにしろ核兵器というものは表に出ないのだ。ただ言えることは、その上に一つある。それはこの条約八条を引用したということは、事前協議におけるアメリカ立場を害することなくというのが明確に書いてあるのだから、持ち込むことは自由なんだ、そうなっている。持ち込みは自由なんだ。いまある核は、あるともないとも言っていないのだから、結果的にあるともないとも明らかにならないままなんだ。ただ、アメリカの国防、国務両省がホワイトハウスに戦術核兵器をどけたほうがいいのではないかということを言ったということが書いてある。つまり、わからないでしょう、置いてあったって、あるとも言ってないのだから。  そこで、私は結論を申し上げたいのだが、時間がないからはっきり申し上げますが、二つしかないのですよ、国民に安心してもらう方法というのは。それは何かというと、条約上、直接的に明示的に明記をするということ、それが一つ。ごまかしのない、背馳をしないなんという書き方をさせないということ。もう一つは、核兵器撤去時における日本政府の米軍基地点検、撤去確認、これが明確になされるという二つが抱き合わさって、日本国民も百万の沖繩県民も、沖繩に核が全くなくなった、こういうことになる。この二つの点、前段はあなたと論争の点で、結論は時間がありませんからここで出ません。後段、このほうはどうされるおつもりですか。
  43. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず後段にお答えする前に、大出委員はよくおわかりいただいているのですけれども、この問答が誤り伝えられるといけませんから、念のため申し上げておきますが、寄港はよろしいなどと言った覚えは全然ありません。ただ、問題が別だと申しましたのは、沖繩返還するときに核抜きで返してもらわなければならないということと、それから本土に返りましてからあとの寄港とか持ち込みという問題の論議とは別だ、まず返すときにきれいな核抜きでなければならないということを強調いたしましたために、お聞きになりようによっては、そこがまた新聞の表題に出たりいたしますから念のために申し上げます。  それから後段のお尋ねですが、条約文言につきましては、私はさっきから何べんも申しておりますように、これは話しことばで言えば、核抜きで返す、核抜きでなければいかぬぞ、これが確認された条約上の約束である。これを当事者といたしまして、はっきり申し上げます。  それからもう一つは確認、点検の問題だとおっしゃる。私は、この点についてやはり大出さんのような方にそういうことまで申し上げるのはたいへん恐縮なんでありますけれども、これは核の問題に限らず、軍の装備というようなものにつきまして、軍備の内容というようなものにつきまして、主権国家相互間に、権利をもって点検をするとか確認をするとかいうことを条約的あるいはそれに類するようなことで、権利として、あるいは義務として規定することにはなじまないし、またなじまないどころではない、国際公法の現に何国といえども承認している原則ではないかと私は思います。したがって、点検とかなんとかいうことを国と国との関係の権利義務の問題として取り上げることは、私は、これは不適当だと思います。ただ、友好国の間で、そして一方の国の国民が非常に心配をして、何と言われても安心ができないというような場合に、何らかまたそれに対して納得を得るような方法がいろいろと出るのではないかというようなことについては、今後といえども政府といたしましてもできるだけの知恵をしぼり、努力をいたしまして、いやが上にも御安心を願うようにいたしたい、こういうふうに存じております。
  44. 大出俊

    大出委員 簡単に聞きますが、いまの問題の詰めです。佐藤総理は、二年前の予算委員会で三つのケースをあげておりますね。核の問題、点検確認の問題撤去確認――点検というか撤去確認、まず事前協議云々という問題ではない、沖繩を返してくれと言った、現にある基地の中にぐあいの悪いものがあったらどけてくれというのがまず返還交渉時における問題の焦点なんだ、まずいところをどけてくれ、これが一つ。それからもう一点、返還がきまった、これは一ぺん軍用地といえども返すのですよ、再提供になる。これは外務大臣が言わぬでもわかっておるのです。返してもらって再提供、つまりそこに安保適用、地位協定の適用、そのときにもう一つ点検確認の場所はある。最後にもう一点残るのは、安保条約四条に基づく随時協議、ただこれは保障がない、きめ手がない。だから総理の言う交渉時における点検確認、撤去確認、それから返還、再提供、このときにおける点検、撤去確認、この二つのいずれかをやるべきであることを詰めた。総理は、私に、日本の領土が返ってくるので、そこに基地があるのだから、返してもらう基地をまず点検したい。それじゃ困ると言って詰めたら、日本の返してもらった土地にアメリカ基地があるのだから、米軍基地を含めて点検確認をしたい、努力したい、こういうように、ついこの間の総理がお出になった内閣委員会で総理は答弁をしておられる。ここに議事録がある。聞いておらない方もたくさんある。そこはどうなったかと聞いておる。
  45. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず前提としてというか結論として、撤去して返しますということが条約アメリカの義務になる。これですべては私は解決したと思います。  それからもう一つは、先ほど私が申し上げましたように、確認でありますとか、あるいは点検ということがよく言われることであり、それはそれなりにごもっともでございますが、それを条約的な、あるいは両国間の権利義務を設定するしかたの上からこれはどうこうというのには、私はなじまない問題ではなかろうかと思いますが、それにもかかわらず、何らかの日米協力の線の上に立って、いやが上にも御安心を願うような方法について、さらに今後におきましても探求をいたしてまいりたい、かように考えております。
  46. 大出俊

    大出委員 結論ですからもう一ぺん聞きます。形式はいろいろある。がしかし、それだけ国民が心配をする。これはいろいろな総合誌をお読みになっても、新聞をお読みになっても、それから沖繩の皆さんの主張をお聞きになってもおわかりだと思う。いずれの形にしろ点検、撤去確認、これをおやりなさい。これはやる。こういう御答弁だと聞いていいのですね、いまの点は。
  47. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まあ率直に申しまして、ちょっとお考えと私のあれとすれ違っております。私は、何らかの御納得をいやが上にも得られるような方法について探求を今後といえども一生懸命いたしたい、こう申し上げておる次第でございます。
  48. 大出俊

    大出委員 その食い違いはあとでまた詰めます。  二点目、簡単にお聞きしますが、この本土並みというものの考え方の中心は、基地本土並みに減らす、基地を減らす、なくす、ここに私はあると思うのですね。ところで、これはあなたのほうは、非常に何といいますか、私に言わせればトリックが多過ぎるような感じがする。まず、一点具体的に指摘をしますが、返還三十四カ所、Cですね、さっきあなたのおっしゃった。そして残存するところは、したがって、米軍基地は八十八カ所、こういうことですね。さてそこで、これを調べてみると、残るほうはたくさんある。広大なところを一まとめにして一つになっているのですね。これはふざけた話ですよ。子供だましです。まさにトリッキーです。いいですか。嘉手納弾薬庫、比謝川サイト、波平弾薬庫、読谷合同廃弾処理場、陸軍混成サービス群弾薬庫、知花弾薬庫、嘉手納ヴォルタック施設、嘉手納タカン施設、東恩納弾薬庫、九つの広大な基地です。私も行って知っている。これが何と八十入の中には嘉手納弾薬庫地区一つになっている。かと思うと今度は、あなたのほうで目玉だ云々といろいろおっしゃったけれども、返ってくるほうの中で、これは非常に小さいところですよ、町の中ですから。返ってくるほうは、コザ憲兵隊詰所、それとコザ憲兵隊支署、これは支署があるから詰所があるのでしょう。なぜこんなものをわざわざ二つに分けて書くのですか。片方は広大な九基地、みんな弾薬庫です。回りみんな草っ原ですよ。こういうところを一つにあげて八十八カ所、こういうことをするから疑問を持つ。さっきの核だってそうですよ。財政負担のところにちょっとそんなものを入れた、それ自体国民は疑惑を持つじゃありませんか。そうでしょう。  さっき私が申し上げたタイム誌の論評を見ると、八十八カ所といっているけれどもそうじゃないのだ、アメリカは以前管理しでいた土地の七分の一を日本に返すだけだ、だから以前持っていたものの九五%を今後持つのだ、これは必要不可欠の基地なので保持していくのだと明確に論評している。そうアメリカの高官が言っているのです。なぜそう率直に書かないのですか。そう形式的にやられるとトリッキーになる。私は、トリッキーになっては困る。私だって、愛知さんほどのまじめな人をトリッキー愛知にしたくない。お笑いになるが、これはほんとうです。  そうかと思うと、これは永久基地ではないとあなたはさっきしきりに強調された。そんなことを言ったって、これをごらんなさい。二つ例をあげますけれども、海兵隊の司令官と陸軍長官の両方沖繩に行っているのです。  まず第一は、チャップマン米海兵隊司令官は七月二十二日に沖繩に行って、海兵隊は半永久的に沖繩に駐留する、沖繩が復帰し、米軍の行動に事前協議が適用されても、海兵隊に関する限り機能に全く変化はないと言い切っているのです。そうでしょう。返還交渉のきなかです。あなたがマイヤー大使と四回交渉をやったその直後です。  ウエストモーランド米陸軍参謀総長、この方は、七月九日に沖繩に行って、沖繩の米軍基地は復帰とかかわりなしに、戦略的価値は何ら変わらない、こう言い切っているでしょう。VOAもそうでしょう。五年というけれども、これは協議するというわけでしょう。アメリカの高官は何と言っていますか。背景説明の中で、五年間で日本考えが変わってくれるように望むと言っている。話は逆ですよ。これをして本土並みというのは、どういうわけですか。
  49. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まずトリッキーだと言われる点は、協定がこういうふうに調印される前の中間報告あるいはそれ以前の段階でも私が申し上げておりましたように、米軍の側でも、陸海、あるいは海兵隊、航空隊、それぞれその基地の勘定のしかたはずいぶん不統一であったわけです。それから今回の場合も、おそらくこういう御質問も出るかと思うくらいです。いままでは基地という表の中に出ていなかったところが、今度は提供されるものの中に入っているじゃないか、こういう点をできるだげ詳細に、勘定のしかたその他も精細にいたしまして、今度の八十八カ所というのは、従来の勘定のしかたからいうと違っているところがそういう点からいってございますし、それから三十四の勘定のしかたも違っているところがございます。返るほうは、御指摘のように非常に小さいところも一カ所になっておりますが、やはり管轄の関係その他もございまして、そういう勘定のしかたになっております。同時に、これは数の問題だけではなくて、面積の問題がある。面積については、先ほどありましたように、これだけしかという御意見もありますことは十分知っておりますが、これもあえて実情をそのまま、トリッキーでなく、ありのまま、返る土地はこれこれ平方メートルで、全体がこうであり、パーセンテージにすればこうこうであるということも、これは両方合意の文書なんかではございませんけれども、よくおわかりいただけるように政府として解説書などを用意し、あるいは説明のときにも率直にそれを申し上げておる次第でございまして、そういう点については今後におきましても十分御質問に応じてお答えをしてまいりたい、こう思っております。  それから、これは本土並みではないじゃないかというこの点は、やはり前々から政府としてはずいぶん御説明につとめているつもりですが、政府として大事だと思いますのは性格の問題で、自由発進などができなくなる、安保条約関連取りきめが全部本土と同じように適用されることによって、いわゆる基地、今後においては施設、区域の提供されるものの活用については、米側としても非常な制約を受けるわけでございます。その性格の変更が私は一番大切なことだと思います。しかし同時に、今後におきましては密度あるいは面積の縮小につきましてもできるだけ努力をする。これはもし施政権返還ができておりませんければ何としてもならないことですけれども、幸いに施政権返還になりますれば、合同委員会という両方対等の委員会ができたわけですし、これは私つい数日前沖繩に参りましたときも申しましたが、ますます沖繩県民の方々の御要望というのが政府に十分通じて、そういう意図が合同委員会等に今後十分反映できますように、われわれももちろん努力いたしますが、大いに御協力を願いたいと申し上げたわけで、これを施政権返還ができればこそ私はこうした大きな前進ができるのではないか、かように存じます。
  50. 大出俊

    大出委員 これでおしまいにしますが、SR71が残っている。第七心理作戦部隊はそのまま。VOAも五年たってどうなるかわからない。その他の特殊部隊もある。基地は九五%維持されている。極東のかなめ石、前進攻撃基地という性格は変わらない。第三海兵隊もおりますけれども、これは常時千五百人を艦載できる。つまり艦船に積める攻撃部隊です。これもあります。フォーカス・レチナ作戦なり、フリーダムボールド作戦をやりましたが、この中心基地もこれまた沖繩で、性格は何も変わってない。これでもなおかつ、つまりさっき申し上げた「やりとたて」――さっき質問のありましたように、自衛隊配備は去年の十月にきまっておる。去年の十月にちゃんと発表しているじゃないですか。衆議院の内閣委員会でも答えているじゃないですか。半年で三千二百、一年で六千八百、とっくの昔軍事面だけは先にきまっちゃっている。そのときにすでに協定という話が出ている。時期を見ていた。協定調印が終わってから、軍事面の極東の米軍と日本自衛隊の役割りというのをミックスして配置計画がきまって、共同作戦計画をきめてブルラン作戦計画以下ずっとやっているのだから。そうして、選挙が終わった、協定が終わった、そのあとでぽっと出してきた。これまた非常に意図的。だからそういう面でこれを本土並みと言おうとしても、それは無理です。  そこでもう一つ、これは一昨年十一月の共同声明に基づいて、韓国の安全は日本の安全にとって緊要である、台湾地域における安全も日本の安全にとって重要である、この二つの前提に立って佐藤総理はプレスクラブの演説で、韓国が攻撃された、そういう場合には事前協議については前向きにすみやかに検討する、核についてだって事前協議におけるアメリカ立場を害することなくと明確になっている。だから、アメリカの高官は、自由発進だ、できると言っているじゃないですか。そうなると旧来の安保条約の性格が明確に変わった、こう聞きたい。安保条約の性格が明確に変わった。これは日本の施政のもとにおける領域という前提で五条があって、共同戦闘があることは認める。しかし六条の事前協議――岸・ハーター父換公文、これは五条を抜いている。つまり日本関係のないところで起こった戦闘、その場合に、日本にある米軍基地を使う場合に限られている。だからこそ、事前協議は岸総理が拒否権だと言った。すべてノーと言った。歴代の総理はそう言い続けてきた。沖繩返還を前にして、佐藤総理はそれを変えた。そして、アメリカの高官の言うとおり、自由発進を認めてしまった。その共同声明を今回の協定前文に基づくという形における条約化をした。こうなると、これは明らかに安保条約の変質であり、日本に全く関係のない地域における紛争、戦闘に、返ってきた沖繩を含む日本基地から米軍が自由発進をする。結果的に、こういう結果を認めたことになる。ここに明確に安保の変質がある、こういうことになります。この点について、やはり明確な御回答をいただいておいて、あとの論争に譲りたいと思います。
  51. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは、今度の協定よりも観念的には以前の問題で、十分論議の尽くされたところと思いますけれども、たいへん大切な問題ですから、一言申し上げたいと思います。   〔委員長退席、大村委員長代理着席〕  まず第一に、この安保条約が変質したという話なんですが、政府の見解は、共同声明安保条約の変質したものではございません。これが政府の基本的な態度で、何べんも申し上げたとおり。  それから、事前協議がこれについて問題になるわけですけれども、一九六〇年の安保改定のとき以来、当時の岸総理大臣、歴代の外務大臣、これは一々具体的に日時と場所をあげて私も何べんか衆参両院でお答えをいたしましたが、事前協議というものであるから、ノーもあればイエスもある、そうでなかったらプライアーコンサルテーションではないではないかという政府のこの考え方というものは一貫して続いておるわけでございまして、佐藤内閣あるいは共同声明以後そういうことが言われているということではございません。同時に、佐藤内閣といたしましても、ノーと言うことは歯どめであって、戦争に巻き込まれるというようなことがかりにもないということのために、特に核というようなものについてはノーですよということが、きわめて明確に何べんも繰り返されて言われておりますし、この点は共同声明におきましても十分アメリカ側が理解をし納得をしておる、こういう次第でございます。  それから、今度の協定問題ですが、「基礎の上に」ということに非常にこだわりをお感じになっているようですけれども、私はこれも協定前に申し上げたことがありますけれども、かりに共同声明前文条約になったとしたって、文言がそうなったとしたって、安保の変質ではないということを、再三私は申し上げているくらいでございますけれども、今度の協定はよくごらんいただきたいのです。それからまた、最近における奄美、小笠原の返還協定前文ともひとつ十分お読み比べをいただきたいと存じます。要するに、前文の「基礎の上に」といっているのは、返還について共同声明の六項、七項、八項が第二条、第七条、あるいはその他のところにはっきりしておりますし、前文というのは両国の権利義務を拘束し合うものではなくて、この条約が締結に至った経過を、他の一般的な条約と同様に叙述しているものでありますことは、先ほど申し上げたとおりでございます。しかし、それにもかかわらず安保の変質論とか、あるいはこの条約共同声明関係ということが、ことさらにまた御心配の種のようでございますから、この前文につきましては、私といたしましても念には念を入れまして、条約論からいいましてもこの協定によって安保条約の変質したものでないということを明確にいたしたつもりでございまして、この前文の作成にもわれわれとしてはこん身の努力を払いましたことも御認識いただきたいと思います。
  52. 大出俊

    大出委員 私は、事前協議というのは拒否権であると考えてきた。しかし、今回のこの協定成立に基づいて、まだこれは国会審議はありますが、拒否権ではなくて許諾権になってしまった、日本政府は許諾した、こう実は残念ながら申し上げなければならぬ。その意味で安保条約は旧来の単なる安保ではない。明らかに変質をし、かつ先ほど来申し上げた理由でアジア安保にまで拡大をされた。巻き込まれる危険が非常に強くなった。この争点だけは明確に指摘しておいて、あとで詰めたいと思いますが、時間がありませんので、終わります。
  53. 愛知揆一

    愛知国務大臣 答弁はお求めになりませんでしたけれども、非常に大事な点ですから、私が先ほど来申し上げておりますとおりをもう一ぺんここで申し上げたことにいたしておきたいと思います。私は大出委員の御見解を承認するわけではございませんから、その点はあしからずどうぞ……。
  54. 大出俊

    大出委員 私のほうも承認しておるわけではありませんから、またやりましょう。
  55. 大村襄治

    大村委員長代理 上原康助君。
  56. 上原康助

    上原委員 私は、まず対米請求権の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  協定の第四条の中で触れられておりますが、交渉の過程において政府としてどういう請求権を要求なさったのか、合意に達するまでの経過ということと、ここで漏れている請求権についてはどうなさるのか、その内容をまず説明していただきたいと思うのです。
  57. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ちょっとこまかいことになりますので、答弁が長くなりますが、御容赦願いたいと思います。  私といたしましては、御承知のように請求権と普通いわれておりますが、この問題を私なりに整理いたしまして、十の項目に分けて、これは対米請求権と律しられては困るのですけれども沖繩方々が請求権と通称呼んでおられるものを大別分類してみますと、こういう十項目になるという前提で前から御説明してまいったわけでございます。そういうわけでございますから、そのまま対米交渉の基礎となり得るものではございませんけれども、この十に分けましたものの中で、今般の協定と付属文書に基づいて処理されることになりますのは次のとおりでございます。  一、軍用地復元補償、これは布令第二十号上補償が認められまする一九五〇年七月一日以降の形質変更については協定第四条第二項、同日前のものにつきましては同条第三項の支払いの対象に相なります。  二、漁業補償(土地裁判所の分)は第四条第二項、それから四条に関する合意議事録一の(二)をごらんいただきたいと思います。  三、軍用地賃借料増額請求(土地裁判所関係)は、第四条第二項、いま申しましたのと同じく、第四条に関する合意議事録一の(二)を御参照願いたいと思います。  四、講和後の人身傷害に関する補償、第四条第二項、第四条に関する合意議事録一の日を御参照願います。  五、海没地に関する補償、これは海没地の問題の解決に関する交換公文でございます。  六、基地公害に関する補償のうち、外国人請求法の関係は、同じく第四条第二項、第四条に関する合意議事録一の日を御参照願いたいと思います。  そこで、講和前の人身傷害補償漏れにつきましては、まことに御同情すべき事情はございますけれども、当時相当の期間をもって募られました請求に対して、米側が一たん当時見舞い金をもって支払いを行なった経緯がありますことも考慮されなければならないと思います。また入り会い補償及び通損補償につきましては、わが国との法制上の相違等の問題がございます。米国にその処理の責任を負わしめることは困難であった次第でございます。  それから、つぶれ地補償につきましては、これが琉球政府ないし市町村との関係で生じている問題であることにかんがみまして、日米間で解決すべき性質の問題とはなり得ないわけでございます。  それから、なお、施政権返還時において地位協定に基づいて施設、区域として提供される土地及び協定第六条に基づき日本国政府に移転される米国財産がありまする土地の復元補償については、それぞれ協定第三条二項及び第六条四項によって、わがほうの責任において処理されることになると考えておる次第でございます。
  58. 上原康助

    上原委員 いまかなり詳しい説明がございましたが、この請求する支払いの額の算定ですね。たとえば一例を申し上げますと、復元補償についてはやるということを覚え書きでなされておりますが、具体的な額はどうなのか。また、いま一応補償の対象になっているという項目をおあげになりましたが、たとえば漁業権の補償の問題についてはすでに十七件出されていると思うのです。その中で、土地裁判所に提訴をして却下になったものもある。そういうものの取り扱いについて具体的にどうなさるのか。そういう面についてさらに説明をしていただきたいし、いま漏れた幾つかの請求権について、日本政府として補償の対象になるものもあるという説明でしたが、その処理についてはどういう方法でやるのか、その点をもう少し説明をいただきたいと思います。
  59. 愛知揆一

    愛知国務大臣 復元補償について請求総額が規模としてどのくらいになるかというお尋ねですが、この種の復元補償についての請求者側からの請求額としては、昨年の七月末現在で約四百四十万ドルの数字が出ております。これを地主会連合会御提出の資料によりますと、さような数字があげられておりますが、本年六月三十日付で開放される軍用地、それから今後施政権返還時までに開放される軍用地についても、この第四条第三項の対象となり得べき復元補償問題が生じ得ると思いますので、このような請求額の最終的な数字がどの程度の規模になりますかは、現段階では予測がいまだ困難でございます。  それから、これもお尋ねがあった点かと思いますが、この第四条第三項に基づいて米側が自発的に支払うものがございますが、その総額が幾らであるかというお尋ねですが、これは米側として、個々の事案について、講和前補償の際に比べて権衡を失しないように行なうと言っておりますので、その個々の案件の積み上げによって総額が出る。したがって、総額幾らというようなことは現段階では米側としてもわからないという状況でございます。
  60. 上原康助

    上原委員 この件につきましては、時間がございませんので、具体的に数字をあげて議論をするわけにはいきませんが、政府が現在請求問題についての処理についていろいろ検討なさっている金額なり資料等をそろえて、資料を提出していただきたいと思います。  それと請求の復元補償なり、今後対米請求権と一言にいわれていることなんですが、これはアメリカ側がやはり支払うことなのか、三億二千万ドルの中にこれも入っているのか、この面が非常に不明確に受け取れます。その点についての説明を願いたいと思います。
  61. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど来御説明いたしております三億二千万ドルというのは、日本側アメリカ側に向こう五カ年間に分割支払いをするものであり、そして第七条にその根拠になっております事項が三つに分けて掲げられておりますが、「その他」「等」という字もあると思いますが、その第七条によって処理されるわけでございますから、何と言いますか、アメリカのやるべき補償というようなこととはこれは無関係でございます。  それから、その前のお尋ねございましたが、先ほどもちょっと触れましたが、講和前人身傷害補償、それから通損補償、それからつぶれ地、入り会い請求権、こういうふうなものは、出ております原請求取りまとめのところがそれぞれ違っておりまして、あるものは琉政から出ております、あるものは復帰協から出ております、あるものは地主連合会から出ております、あるものはその他の連盟から出ております、あるものは総合的にそれらが重複して御要求になっておるものもございますが、これらが今後必要に応じまして国内施策によって救済ということを考えなければならない問題ではないかと思います。  それから、それらが幾らあって、件数がどうかということは、ただいま申しましたように、それぞれ出しておられるところが違ったりいたしますと、正確にここで申し上げることはまだその段階でないと思いますし、なおまた、現在琉政にも、先般私が伺いましたときに主席にもお願いいたしまして、これらの点についてなお念入りに琉政と中央政府とが連携して、この処理方法あるいはこの実態についてなお一そう念を入れて処理に当たるようにお願いもし、また協力もお約束してきたわけであります。
  62. 大村襄治

    大村委員長代理 上原委員に申し上げます。  時間が来ましたので、次の質疑者に譲りたいのですが、いかがですか。
  63. 上原康助

    上原委員 あと一点だけ……。
  64. 大村襄治

    大村委員長代理 結論をお急ぎ願います。
  65. 上原康助

    上原委員 時間がございませんので、いまの請求権の問題しか触れられませんが、第四条の二項で、「合衆国による施政の期間中に適用されたアメリカ合衆国の法令またはこれらの諸島の現地法令により特に認められる日本国民の請求権の放棄を含まない。」「特に認められる日本国民の請求権」というふうな表現があるわけです。したがって、この協定の中で触れられている処理すべき請求権と日本政府として考えなければいかない十幾つかの事項については、特に認められないということになりますと、結果的には請求権を放棄せざるを得ないという県民の立場に立たざるを得ない。その面を、この問題の処理にあたっては、特に県民の立場というものを踏まえた上でぜひ処理をしていただきたいということ、これは特に要望申し上げておきます。  時間が来ましたので、最後に、いろいろ返還協定についての御見解がございましたが、確かに外相がこれまでやってきた御労苦に対しては、われわれとしても御苦労さんと申し上げたい。だが、あなたのおっしゃるほど沖繩県民は喜んでいない。その点をぜひ今後の日米間のいろいろな問題処理にあたっては御努力いただきたいし、特に返還協定の中身について、あるいは軍用地復元補償の問題基地の取り扱い等について――爆音だって嘉手納はますますひどくなってきていますよ。もしよければ二、三日嘉手納にお泊まりになって、基地の実態というものを調べていただきたい。そういうものがなくなることをわれわれは要求したのです。そこいらを踏まえてこれからの問題をやっていただきたいということを御要望申し上げて、時間がありませんので、質問を終えたいと思います。
  66. 大村襄治

    大村委員長代理 桑名義治君。
  67. 桑名義治

    桑名委員 去る六月十七日沖繩返還協定の調印が行なわれたわけでございますが、二十六年間に及ぶ米国の沖繩統治に終幕を告げまして、一応日米間の合意が確立したということは、わが国の戦後史に新しい一ページを加えた、これは事実でございます。われわれも、沖繩県民の悲願の結実として、もろ手をあげて心から沖繩九十五万同胞の復帰を迎えたい、このように思うわけでございます。ところが、最も主役となるべきはずの屋良主席がこの場に姿が見えなかった。あるいはまた、協定が調印されたただいま、沖繩の県民の中に本土への復帰に対して明るい希望を持ち得ない多数の県民が存在をしているということがいろいろな面で報道もされております。こういった姿に対しまして外務大臣はどのようにお考えになり、今後どのように対処していかれようと思われているのか、その御見解をまず伺っておきたいと思います。
  68. 愛知揆一

    愛知国務大臣 こういうことをお答えするのはいささか甘えるようにお聞き取りになるかもしれませんけれども、屋良さんとあえて申し上げたいと思いますけれども、主席になられる前から私は存じ上げておりました。そしてこの沖繩問題につきましては、先ほどもちょっと触れましたが、できるだけ接触をし、対話を持ち、そして御意見をできるだけ取り入れて努力することにしてまいりました。そこで、途中省きますが、いよいよ返還協定ができ上がって、調印式が行なわれそうだということになりましたときに、特に私からも、御出席をいただきたいということをお願いをいたしましたが、どうしてもいろいろ考えるところがあって伺えないことをたいへん遺憾に思う。しかし、施政権返還ができたということについての喜びと謝意を、手紙等におきましても表していただきまして、私もたいへんうれしく思いました。それから、その式に臨まれないということで、非常に残念でございましたが、調印式の前に、調印式のときに発表せられるであろう屋良主席の声明書というものをあらかじめ全文御連絡をいただきました。つぶさにこれを読みまして、私は屋良主席の御心境というものを非常によく理解できました。それから、越えて二十二日、先ほども申しましたように、那覇へ主席をおたずねをいたしまして、あらためて主席の直々の見解を承ることができましたが、これは声明書にも随所に出ておりますが、施政権の返還ということについては非常に喜んでいただけたと思います。同時に、返還協定については竹内政務次官からも伺ったけれども、いろいろ自分として期待しておったことが達せられるのかどうか、なかなか疑問点が多い。私からもまたいろいろと御説明をいたしましたが、とにかくこれからは、返還がきまった以上は、りっぱな沖繩県ができるように、また自分が声明書の上にうたっておったように、たとえば先ほど来御意見がございまして、ごもっともですが、本土並みも理解できなくはないが、少なくとも密度、個所等においては理解はできない、これを何とか縮小整理をスピードアップをしてもらいたい、あるいは請求権の問題については、私の見解や意見もよくわかったが、どうかそういう線で今度は日本本土政府が強力にわれわれの希望をいれてくれるように格段の努力をしてもらいたい、それから核については、あなたの説明を聞いて、私はいままでより理解がうんと進みました、しかしあなたのおっしゃるとおりに、はっきりひとつ県民を納得させてもらうようないろいろの方法を今後とも熱心にやってもらいたい、というようなことでございまして、私はどの程度の県民の方が何割お喜びくだすったかなんかということよりも、この屋良さんの声明や、御自身の立場から出ているようなこの意見や気持ちを体して、これがおそらく沖繩県方々の相当部分の方の御期待ではないかと思いますので、その線に乗って今後とも日本の内閣としては――どういう内閣に今度なりますか、内閣は全力をあげて努力を集中すべきものである、かように考えております。
  69. 桑名義治

    桑名委員 いま屋良主席のいろいろな心境等をお聞きしたわけでありますが、先ほども他の委員から、核の問題や、あるいは本土並みであるかどうかといういろいろな質問が行なわれたわけでありますが、国民全体の疑惑はこれで完全に解かれたわけではないと思うわけでございます。いま外務大臣が言われましたように、屋良主席も実際に基地返還問題はこれは十分なものではない、こういうふうなお話も入っておったわけでございますし、あるいは核の問題にいたしましても、いま外務大臣説明の中では、屋良主席はそれは完全に了解をし、あるいは納得をしたというふうにわれわれは受けとめるわけにはいかないわけでございます。  そこで、私はここで、これはごく基本的な問題としてお尋ねをしておきたいわけでございますけれども協定の調印の五日前すなわち六月十二日、この日に屋良主席は、立法院においてはこれは最後の主席としての施政演説になるとは思いますが、「戦争中は祖国防衛のたてとなり」こういうふうなことばを使われております。こういったことばから受けとめられることは、すなわちいままでの基地の島から復帰後は県民福祉の島へと、こういうふうに大転換をし、人間として平和な県に生まれかわる、かわりたいという、そういういわゆる悲願を込めたことばではないか、またこれは沖繩県民のひとしく願う気持ちであろう、こういうふうに思うわけでございます。もちろん国と国の外交上の問題、いろいろな問題はあるかもしれません。しかしながら、基地問題や核の問題、その他いろいろな今回の返還協定の中身を見てみますと、今後の沖繩の経済発展のために、あるいはまた県民の福祉重点への政策を推進する上におきまして、万全な態勢がはたしてとられたであろうか。おそらくこういう点におきますと、外務大臣もこれは疑問の点が大いにあるのではなかろうか、こういうふうに私は思うわけでございます。沖繩問題は、基地問題が解決しなければこれは一切の問題が解決しない、こう言っても決して過言でない、私はこのように思うわけでございますし、この施政演説の中に「戦争中は祖国防衛のたてとなり」こういうことばを屋良主席が述べられておるという、この次元から考えてみましても、沖繩の現在置かれているこの立場というものは一向に変更がなされていない、そのための不安はぬぐい去ることができない、こういうふうに私は思うわけでございます。そこで、今日のベトナムに対するアメリカの方針の変更、あるいはまた現在の中国に対する態度、こういった流れの中から考えてみますと、まだまだ外交上の交渉の段階で強力ないわゆる交渉ができたのではないか、こういうふうに私は思うわけでございます。すなわち今回のこの協定を結ぶ段階におきまして、日本政府として軟弱な姿勢ではなかったか、こういうふうに思うわけでございますが、その点についての外務大臣の所信をもう再度伺っておきたいと思います。
  70. 愛知揆一

    愛知国務大臣 国民的な大きな期待のかかっている問題でありますだけに、この協定が、私も先ほど来御説明につとめておりますけれども、これはたいへんいいものであると言って自画自賛するような気持ちは毛頭ございません。ただ、いまお話がございましたが、これまでのところでこの協定がこの形でまとまりましたのは、すでにいまおあげになりましたいろいろの条件が幸いしたものであると、私はこういうふうに理解しております。  何と申しましても、まず一番大きなことは、戦後の日本全体の再建の成果というものが国際的な非常な評価を受け、そして将来にわたって日本という国の信頼と協力をかちえたいというこの国際的な評価の中に立って、アメリカ日本にこういうふうな考え方返還に踏み切ってくれたものと思いますが、同時に、世界的な緊張緩和の状況は、ベトナム戦争に対する最近の米国政府の兵力削減を具体的に誠意をもってやっておるという点にもあらわれておる、あるいは中国等に対する見方、考え方が相当流動的になってきているというようなこと、いろいろな状況がこの返還問題に対して幸いをした。そして最後に、私は自分がずっとこの問題に当たってまいりましただけに、あるいは間違っているかもしれませんが、私の受けている印象といたしましては、アメリカとして沖繩における軍事的なかなめとしての力というものが減殺しても、それよりは日本にできるだけ日本の希望するように施政権を返したほうが、大所高所からいってアメリカのためにもなる、日本との関係においてこれが非常な新しい時代の基礎になることは言うまでもありませんけれども、そういう角度でこの踏み切りができたのではないだろうかと、私はさように感じております。私の感じ方があるいは間違っているかもしれませんが、私としてはさように感じております。
  71. 桑名義治

    桑名委員 いろいろと外務大臣の意見を承ったわけでございますが、冒頭に申し上げましたように、私はそういったアメリカの現在のアジアに対するいわゆる政策の変更、あるいはまた世界におけるいわゆる各国の情勢のダウン、こういうふうな立場から考えた場合に、まだまだ先を見通した外交交渉がなされたならば、沖繩県民の満足とまではいきませんかもしれませんが、しかし前進的な立場でこの問題が、協定が結ばれたのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。  そこで、まず私がここで問題にしたいのは、沖繩問題の解決はすなわち基地の解決である、こういう立場から考えますと、言うならば本土並みというこの三原則の中の一つ、これをやはりもう少し真剣に討議を繰り返していかなければならないのではないか、こういうふうに思うわけでございます。先ほどからの質疑の中にもいろいろと論点が浮き彫りになったわけでございますが、しかしながら、先ほどから概数を申し上げているわけでございますが、沖繩基地の面積、これは今回の返還になったとしても、沖繩本島の二七・二%が減少して二二・六%、あるいは全沖繩の一四。八%を占めている分が一二・三%になる、こういうふうな数字の面からいいましても、これは決して本土並みになったということはなかなか言いがたいわけでございます。それと同時に、先ほどから問題になっておりましたこのVOAも、本土法の中のいわゆる電波法第五条に抵触をするという、そういうような状況下にありながらこれを認めなければならなかった、あるいは認めたという、こういう立場考えてみますと、はたしてこれが本土並みであるということが言い得るかどうか。あるいはまた、今回の日米安保協議会における日本国における沖繩局地防衛責務の引き受けに関する取りきめ、こういった問題に対して署名をした。で、この署名をしたことそのものにも、私は先ほどからいろいろ質疑を通して問題はあると思いますがと、同時に、沖繩の占める位置というものが台湾に非常に接近をしている。そうなってきますと、自衛隊が今後出動をする場合を考えますと、自衛隊が米軍の防空を肩がわりする、そういう立場から考えたときに、これは当然問題が起こり得るのではないか。こういういろいろの面から考えたときに、はたして現在の段階で臨戦即応体制がそのまま持続されているのではないか、こういうふうな疑問を持つわけでございます。  そういった三点から考えたときにも、本土並みということばは欺瞞にひとしい、こういうふうに私は言いたいわけでございますが、その点についての外務大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
  72. 愛知揆一

    愛知国務大臣 本土並みと言うことが欺瞞であるということは、ちょっと私としてはそのままは遺憾ながらちょうだいできないわけです。なぜかと申しますと、本土並みということには、先ほど来申しておりますように二つの面があるわけでございますね。こちらが提供いたします施設、区域がアメリカ本土並みに自由濶達に米軍の思うように使えるというのが現状であって、これに安保条約関連取りきめという大きなかんぬきがかまされて、そうして先ほど、私はこう考えます、と申しましたように、そのミリタリーの活動には非常な制限が加わったこと、これは非常に大事なことだと私は思います。自由発進というようなことはできなくなった、核の持ち込みはできなくなった、これが非常に私は大事なところだと思う。  もう一つの面というのが、先ほどから申しておりますように、しからばおまえの言うことは面積それから比率、これはどうか、これはまさに沖繩のほうがはるかに大きい。そうしてこれを小さくすることにできるだけの努力をいたしましたが、CリストあるいはBリストという程度に、序ノロといいますか序幕のときにはその程度にとどまったことは、私どもの非力を感ぜざるを得ないわけでございます。  ただしかし、これとても、この縮小整理、つまり安保条約に基づく合同委員会対象になったということは、これはもう、これがなければ、ただ口の上で面積が広いと言っただけでは片づかないんで、そういう意味から見れば、この本土並みの第二の面から申しましても非常な前進で、これから大幅に減ることはあっても、ふえるなんということは全然あり得ないことでございますから、この点について本土政府としてもできるだけ今後やってまいりたいと思います。  ただ、この点について、これも念のために申し上げておくところですけれども基地のない、青空のもとの沖繩本土復帰、これをもうほんとうにそのとおりだと思うのですね、心情的には。ことにアメリカとの間どころではない、先ほど御引用になりましたおことばにもありますように、「さきには本土のためのたてとなり」ということばに非常にはっきりあらわれているように、敗戦以前にもう、まさに二十六年前の六月二十三日、いつも私も覚えておりますけれども、あの凄惨な戦闘で失われて、今度本土に復帰するとなれば、もうカーキ色というのは見るのもいやだというそのお気持ちも非常によくわかるし、返るならば、基地なんか一つも要らない、このお気持ちも私は非常によくわかる。しかし本土並みということは、同時に本土が二十数年にわたってわれわれはよかったと思う選択をしてきた、野党の方々はその点御反対なのはいたし方ございませんが、要するに安保体制が今日の本土の隆盛を来たし得た、政府はかような確信の上に立っておる。したがいまして、本土と同じような考え方安保条約の適用、したがって将来減りはいたしましょうが、施設、区域の提供ということは、そういう意味で御協力を願いたいと思いますし、それから自衛隊の派遣ということも、本土並みに御理解をいただきますならば、まことにしあわせだと思う。その点が一緒になりまして、基地というものに対する考え方が、安保廃棄のお立場をとられる場合の取り上げ方と、われわれのような取り上げ方の本土並みとの間には、そこに平行線的な問題があるということはどうもやむを得ないことではなかろうかと思います。
  73. 桑名義治

    桑名委員 時間が来ましたので、この論議はもうこれで終わりたいと思いますが、しかしこれは外務大臣の御答弁に満足して引き下がるわけではございません。この問題についてはまたいろいろと論議を尽くしていきたい、こういうふうに思いますが、いずれにしましても、安保廃棄という立場からと安保堅持という立場からの論議のその差がここにあらわれているのだというふうなお話でございますが、私は、たとえ百歩譲って安保堅持という立場から考えましても、これはいわゆる過剰的な意味の基地であるし、あるいは機能を持つものである、そこに私は論議の焦点を合わせているつもりでございます。いずれにしましても、時間がございませんのでこれで終わりますが、この問題についてはまたこの次の沖繩国会のときにもいろいろ論議を尽くしていきたい、このように思います。  以上で終わります。
  74. 大村襄治

    大村委員長代理 安里積千代君。
  75. 安里積千代

    ○安里委員 具体的な質問に入る時間もございませんので……。今度の返還協定は、明文にも示されてありまするとおり、日米共同声明基礎として行なわれたものでございまして、協定内容を見ますると、やはり基本的には沖繩は軍事上重要な役割りをしているのだ、日本の安全のためにも極東の安全のためにも重要な地位にあるのだ、こういう基本的な考えのもとに結ばれた内容になっておると思うのでございまするが、そういう観念が基本的に貫いておる、こう解しておりますが、そのとおり見てよろしゅうございましょうか。
  76. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはどうも事務的な御答弁になって恐縮なんでございますけれども、先ほどから御論議がありますように、この条約のまず前文からごらんをいただきたいと思うのでありますけれども、どこに軍事基地とか安保が変質したということがあるのでしょうか。私どもは、かりにもそういうことを避けるために、念には念を入れて、この前文からして非常に念を入れましてつくったつもりでございますし、またこのつくり方につきましては、相手のあることでございますけれども、私は、アメリカが私ども考え方に終局的によく同調してくれた、かように考えております。たとええば安全保障という字もどこにも出ておりませんでしょう。そうして政府の公的解釈といたしまして、両国の権利義務を規定するものは第一条以下である。これは条約論の通則でございますが、念のために日米両国ではそういう点につきましても十分意見を戦わされてあります。私は、どこからお突きいただいても、政治論は別といたしまして、条約論からいたしましても、これがどうして安保の変質になったり、あるいは沖繩軍事基地化を容認したりということになるのだろうか、どうか条文についてお教えいただたきいと思うくらいでございます。こういうふうな気持ちでございます。
  77. 安里積千代

    ○安里委員 大臣は私の問いに対してお答えになっておらないのですよ。私はいま安保の変質論を論じておるのでなくして、基本としてはやはり沖繩が軍事上重要だ、これはアメリカ自身がそういう基本的な考え方を持っておるわけなんです。そういう基本的な考えの上に立っての協定であるかということをお答え願いたいのです。それとも軍事上そのような価値はないのだ、あるいは日本及び極東の安全保障のためにはそれほどの価値はないのだという立場でやっておるのか、沖繩というものはやはり軍事上重要な役割りをしなければならぬのだ、こういう基本的な考えの上においてこの協定が結ばれておるかということをお聞きしておるわけですから、非常に簡単なお答えができると思うのです。
  78. 愛知揆一

    愛知国務大臣 簡単なようで私簡単でないと思いますのは、これは、アメリカの基本的な国策というか、この問題に対しての基本的な考え方はどうかということについて、私は米国を代表して意見を申し上げるわけにいきませんので、先ほど申し上げましたように、私が交渉当事者として受けている印象を申せばこのとおりである、しかもそれは私の受けた印象ですから間違っておるかもしれませんということをお断わりしながら申しておりますのは、もし軍事的に非常にこれが大事なところであるというのならば、まず第一に私は、この時期に返還話に応ずるはずがないと思うのですね。それから第二には、もしそんなに軍事的にも決定的に大事なところであるならば、核を抜くはずはないと思いますね、もしありとすれば。あるいは事前協議が適用されるような安保条約の適用を本土と何らの変更なしにということもないのではなかろうか。これは私は間違っているかもしれませんが、アメリカの気持ちについて私一個の個人的なそんたくを申し上げればさようなことでございますというのは、先ほど申し上げたとおりでございます。
  79. 安里積千代

    ○安里委員 アメリカ政府がどう考えているか知らぬが、では政府としてはどう考えておられるか。アメリカ考えはいろいろそんたくされておられるようでございますが、アメリカ自身は軍事上重要なかなめ石だというととをしばしば公言をいたしております。政府とされましては、沖繩の復帰にあたっての沖繩の地位、沖繩立場というものに対しまして、そのような軍事上の重要な地点である、こういうようなことを日本政府としてはどう考えておられますか。そういう考えはないのですか。
  80. 愛知揆一

    愛知国務大臣 政府としては、憲法がそのまま沖繩に適用されて、本土にもいろいろの御要求がございましょう。たとえば安保論争にしても、まだ終わったとは言えません。いろいろの論争その他ございましょうが、現在のこの形の本土並みになっていただくことが最も望ましい。そして本土のわれわれは戦争などということを断じて考えているわけではない。戦争に巻き込まれることが断じてないように、こういう考え方沖繩本土並みで大いに発展をしていただきたい。それから、くどいようでございますが、たとえば自衛隊に対する沖繩方々の、カーキ色であるということで何とも抵抗感を感ぜられることも、先ほど言いましたようにわかりますけれども、これは米軍の肩がわりというものではないということは、先ほども昨日の安保協議会のことで御質問があったときにもお答えしたような次第でございます。そういうことで、完全な本土並みになっていただきたい、完全な、それこそ総理のことばでいえば、自由に徹し平和を守る国になりたい、それにジョインしていただきたい、こういうことであると思います。
  81. 安里積千代

    ○安里委員 共同声明にも、沖繩がそのような軍事上重要な役割りを果たしておるということについて、あるいはまた返還にあたってもその機能をそこなわないようにと、いろいろなことがございます。そういうことは佐藤総理としても合意された事項であります。また今回の返還協定の中を見ましても、先ほどからお話がありましたように、重要なる軍事基地というものはずっと提供されるところの部類に入っております。そうであるとしますならば、少なくともやはり沖繩というものは軍事上重要だ、こういう基本的な観念というものが土台になっておることは否定できないんじゃないですか。これは本土並みに適用になるとかなんとかいうことをいま論争しようとは思いません。少なくとも沖繩というものは軍事上重要だということを否定なさいますか。はっきり言えるはずですよ。基本的な姿勢なんです。
  82. 愛知揆一

    愛知国務大臣 特に沖繩を要塞化するなどという考え政府の中に全然ないことは御承知のとおりじゃないかと思いますが……(「要塞化されている」と呼ぶ者あり)ですから、たとえばA、B、Cの問題にしましても、CとBをまず幕あきの象徴として、これからAを減らしていくようにいたしましょう、こう申しておるのであって、このままそれならば施政権の返還もなくしてどうしてそれができるのですか。しかし同時に、本土の中だって、ある県をあげて、これは軍事的に要衝であるか、これはどうであるか、こうお聞きになりましても、私はなかなかお答えしにくいんじゃないかと思いますね。
  83. 安里積千代

    ○安里委員 大臣は頭がいいので、私の問いに対してそらしておられると思うのです。どう弁解しましょうとも共同声明基礎にして行なわれたこの協定、しかもその内容を見ますならば、軍事基地問題というものが非常に重要な部面を占めております。そういうところから考えますならば、やはり沖繩返還の後の沖繩の位置は軍事上のかなめ石である重要な役割りを果たしているんだという立場というものは隠れもない事実だと思うのです。それをはっきりおっしゃらないところに、よけい私たちは疑問を持たざるを得ないわけす。  そこで、私なぜこのことを特に申し上げるかといいますならば、先ほど大臣の口からもありましたとおり、歴史は繰り返すと申しますけれども、二十数年前、沖繩が国土防衛の第一線ということで国の防衛という非常に大きな負担がかかってまいりました。復帰する段階になりまして、いま沖繩県民の受けます気持ちは、二十六、七年前あの国防の第一線にされた、復帰する段階になりまして、返還協定から見ますと、やはり安全保障あるいは防衛力の強化と申しますか、国の防衛のために、しかも今度の防衛は日本の防衛というより以上に拡大された極東の防衛というようなことの重荷を、私は沖繩返還にあたって沖繩に負わされておると思うのです。ですから、沖繩の心としては、二十七年前に、あのように国策と申しますか国土の防衛の第一線になった、返還にあたりましてもやはり同じように日本及び極東の防衛という重荷を沖繩は負わされるところの返還協定になっておる、それは否定できない問題だと思いますが、これに対して大臣とされてはどのように考えられるか。再び繰り返されるような沖繩の重荷ということに対しまして、沖繩の心情に対しまして、大臣としてどのようにお考えになりますか。
  84. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、この席でこういうことを申すべきではないと思いますけれども、そういうお尋ねでしたからあえて申し上げますけれども、私はこの沖繩返還問題というたいへんな大仕事を仰せつかったわけですが、その瞬間から、かねがね私の念願でもございましたが、これを手がけてまいりますのには、沖繩県の県民の一人にしてもらった気持らでなければ、この大仕事はとてもできないと思って今日に至っております。そのことが、先ほども私は言い過ぎたかと反省しておりますけれども、たとえば自衛隊問題にしましても、要するに県民の方々のお気持ちは、あの凄惨な世紀の大激闘の中で、二十六年前ああいう目におあいになった御経験からすれば、このカーキ色自体は私はとてもしゃくにさわるとお考えだろうと思うのです。私は、今日これからの復帰の際にあたりましても、そういう気持ちというものをさかなでするような気持ちでは、とてもこれは本土との間がうまくいくものではない、そして第三の琉球処分というようなことになったら、これはたいへんなことだ、何とかしてその間のところを、やはりほかの外国との間でさえ対話を持たなければならないというくらいなんですから、沖繩の百万の方々との間にはほんとうにもうしばしば政府としても対話を持ち、心を通じ合っていかなければならない、私はそういう気持らを持っておりますが、そこで、お話しになることは私は非常によくわかります。そして今後において、できるならば、昭和十二年でございますか、以前のように連隊区司令部しかなかった、兵隊さんはいない、海軍の泊地があるだけだ、理想としてはそういうところへ持っていくように、それはこの機会にこう私が申しましても、現実問題としてなかなかむずかしいことでございましょう。少なくとも心情としてそういう気持ちで、これは個人個人の問題ではなくて、日本国民全部がそういう気持ちで沖繩に対してあたたかい理解と手をお貸しをするといえばたいへん語弊がありますけれども、そうならなければならない、私はかように存じております。
  85. 安里積千代

    ○安里委員 大臣のその気持ちよくわかりますし、また相手のある、アメリカに対する折衝でございましたので、その苦心のほどもよくわかるわけです。  ただ、繰り返して申し上げるようでございますけれども沖繩が、少なくとも歴史の過程におきまして、戦争で国土防衛の第一線になって、非常に大きな重荷を負わされました。復帰する段階になりましても、率直に、むずかしい問題を抜きにいたしましても、現実には軍事上の非常に大きな重荷というものをまた負わされてきている、こういうことに対します非常な不満と申しますか不安と申しますかを感ずるわけです。ですから、端的に申し上げまして、施政権が返るのだから、沖繩の人々はそういう負担と重荷を負うてでも、国策だからこれを甘んじて受けてこい、こういうような気持ちであったら、われわれとしては情けない気持ちだと思うのです。そういう気持ちがどかにあるものだから、大臣によっては沖繩は過保護だということばさえ出てくるようなことになるのです。もっとほんとうに、沖繩返還される、返還されればいいということでなくして、沖繩日本における立場というものを過去にさかのぼって考え、将来に対してどうするかという問題をほんとうに真剣に考えていただきたいと思うのです。  もう一つ――これは時間があまりないようでございますので、あとの具体的な内容につきましては、私は次の機会に申し上げることにいたしたいと思います。
  86. 大村襄治

    大村委員長代理 瀬長亀次郎君。
  87. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 最初に申し上げたいことは、この沖繩協定は、沖繩の施政権の返還を道具に使って、実に共同声明条約化して、安保条約を大改悪しておる。そういった意味で主権を侵し、その意味では実に屈辱的であり、安保の大改悪を通じて行なわれておる意味では侵略的な協定といわざるを得ないし、これが日米両政府の合作による実に世紀の危険左策謀であるという意味で、国民的にこれが支持されていないことは当然だと思います。  そこで時間の制限がありますので、二つ外務大臣にお伺いします。  一つは、日米共同声明、これは条約化しないのだ。さらに連合審査会で、外務大臣は覚えておられると思いますが、日米共同声明条約化の問題については、松本君を代表とする意見、もちろん共産党の松本善明委員のことでありますが、そういったような意見もあるので、文言その他については十分考慮する、またしたと言われております。ところで外務大臣は、共同通信政治部長とのインタビューの中で、いまの共同声明問題をとらえて、交渉で最も苦心した点は共同声明の第六、七、八項を条約の上にいかに盛り込むかだったと言い、さらにこれを明確な形で条約化したことは、てまえみそだが、今日の世界政治の傑作だと思うといったようなことも言われております。これは事実言われたかどうかははっきりしてほしいと思いますが、さらにこの問題につきまして、たとえ共同声明が全体として条約化されても、安保条約の変質にはならぬということまで言っておられます。安保条約の変質の問題については、すでにいままでの、特に野党委員質問に対して、いろいろな面から質問されておりますのでこれに触れませんが、この共同声明これを条約化するために苦心したのだとか、これは条約化しても安保条約の変質にならないなどというふうな考え方にいつから違ったのか、この点をまず明らかにしてほしいと思います。
  88. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まずよりも何よりも、全体のお尋ねお答えをいたします。  私は、かりに共同声明条約化したところで安保条約が変質するものではないというのが私の考え方でございますから、そういうことをいままで申し上げておることは事実でございます。しかし、これはひとりよがりでそういうことを言っても始まらないことでございまして、国会の御論議その他を通じまして、やはり共同声明とそれから返還協定というものとはさい然と考えていかなければならない。これはもう国会でしばしばいろいろな角度から御論議を拝聴いたしました私としての一つ考え方でございます。したがいまして、先ほども申し上げましたが、この前文をあなたも問題にしておられるように伺いましたが、たとえば奄美の返還協定や小笠原の返還協定前文をお持ちでしたらごらんをいただきたいと思いますが、その中には「この地域の安全をそこなうことなく」とか、あるいは「日本を含む極東の安全をそこなうことなく」とかいうような文言もございます。これは条約の本体ではございませんが、したがってこういうことは、と申しますか、日本を含む極東の安全保障ということは安保条約にりっぱに書いてあることでございますから、同じような文言あるいは似たような文言であっても、前文の中にこういうものが出てまいりますと、そこをおつかまえになって、安保条約がこうやって変質しているのだというふうような論議が出ることは、私は不適当だと思いましたから、したがって、この今回の条約前文にはさような文言は一切使わないことにいたしまして、そして共同声明において早期返還が実現されることについて具体的話し合いに入ろうということになったこととか、あるいは六項、七項、八項を念頭に置いておりますが、「共同声明基礎の上に」「オン・ザ・べ-シス・オブ」と軽く経過を記述するのにとどめたわけでございます。こういう点は私どもの苦心の存するところであって、この条約が、いまあなたの御質問の冒頭にございましたように、この協定をもってアジア安保に入り込んだ云々、あるいは米国帝国主義の云々というふうなことは、ほんとうにこの協定のどこにも出ておりませんですよ。よくお読みいただきたいと思います。条約の本体ではないところの、両国の権利義務を規定するのは第一条以下の各本条であって、前文というものは両国の権利義務を規定するものではないという一般の条約の通説に従いつつも、かりそめにもいろいろの疑惑や不必要な論議が起こることを防ぐために、この前文の一言一言にも私どもとしてはほんとうに精魂傾けてつくり、かつ、アメリカ側の同意を得てきているような次第でございますから、私は以上のことをもって、いまの、まずもってではなくて全般に対する瀬長さんの御質問お答えしたつもりでございます。
  89. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いまの外務大臣説明の中でこそ、実に危険な、屈辱的な、侵略的な要素が含まれておる。これはいかに政府国民にPRしてみたところで、共同声明がすでに条約化されて、しかもてまえみそだが今日の世界政治の傑作だと思うなどと言われたのでは、これがいかに安保条約の変質でないというふうなことを強弁されようが、国民の普通の常識では納得できないような内容が含まれておる。  したがいまして、特に私、次に申し上げたいのは、核兵器問題と特殊部隊の問題であります。核兵器問題につきましては、核があるかないかわからないが、返還の時点ではこれはきれいになくなっているということでしたね。そこで、この協定財政支出の項で、いままでの説明でもありますように、三億二千万ドルのうち七千万ドルは核並びにこれに類するような好もしくないものの撤去ということでありますが、これは核兵器撤去する場合に、日本政府が金を出してはいかぬということは当然であります。かりに一歩譲って、当然でない、出したほうがいいと言ってみたところで、この核があるからこそ、あると認めておるからこそ撤去に対する七千万ドルの支出をやるというふうにしか理解できないと思いますが、現在の時点では核があるということの確認の上に立っておられるというわけですね。
  90. 愛知揆一

    愛知国務大臣 返還のときに核抜きで返してもらう、そのために必要な措置をとる、こういうことでございます。
  91. 大村襄治

    大村委員長代理 瀬長委員に申し上げますが、時間が来ましたので次の質疑者に譲りたいと思いますから、結論をすぐお願いいたします。
  92. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 ですから、金を出すといいますね、七千万ドル。これは核撤去の代償として出そうというわけなんだから、これがあるかないかわからない状態ではないということなんですよ、普通の常識では。これはアメリカべったりでやる場合の常識とは違うはずなんです。核があるからその撤去に対する費用として七千万ドル出そうという。そうなると、あるからこれを撤去する、その費用というふうにしかわれわれには受け取れないわけですが、いま核があるということの確認の上に立っているのですねということを言っておるわけなんですよ。
  93. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ですから、返還のときには核がなくなる、そしてきれいな姿で返ってくる、そのための費用として、費用も要るでしょうから――これはアメリカがずっと持っているならば、かりにあるとしたって抜く必要ないかもしれませんですね。それにはお金も要るでしょうから持ってお帰りください、お金はこちらで見ましょう、そこまで、核の撤去というところにわれわれとしては重点を置いている、こういうわけでございます。
  94. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これはあまり国民を侮辱したような……
  95. 大村襄治

    大村委員長代理 もう時間になりますから、瀬長委員、次の発言者に譲りたいと思いますが、御了承願います。  鯨岡兵輔君から発言を求められておりますので、これを許します。鯨岡兵輔君。
  96. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 きょうの委員会は、先日行なわれた本委員会理事懇談会において決定したことに基づいて開かれたものであります。すなわち、歴史的返還協定の調印がなされた以上、日米交渉の今日までの経過及び協定内容について直接外務大臣からすみやかに聴取する必要が委員会の目的であります。と同時に、先般根本前自治大臣代理が沖繩返還問題についてなした発言の真意をも聴取する必要ありとして、その出席を要求しておいたのですが、それが他に用務があったと称して実現できなかったことはまことに遺憾であります。委員長においてこのことは十分関係方面に御注意を願いたいと思います。
  97. 大村襄治

    大村委員長代理 楢崎弥之助君。
  98. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ただいまの鯨岡委員の要望に対して、委員長としてはどのようにお取り計らいになるのですか。お答えがないようですが……。
  99. 大村襄治

    大村委員長代理 承知いたしました。
  100. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 改造前の忙しい時期に日程を繰り合わせていただいて、中曽根長官ありがとうございました。しかし、この寸前に非常に重要な取りきめがきのう行なわれたわけですから、時間が短うございますが、なるたけ議論を避けて論点を明確にしていきたいと思います。  まず、きのうの取りきめの問題について、つまり沖繩自衛隊が進駐する、その内容についての取りきめですが、まず第一番に取りきめの形式の問題についてお伺いをしてみたいと思うのです。  いま正式の文書をいただいたものですから、それまでは新聞報道によっていろいろと検討したわけですけれども、「日本国による沖繩局地防衛責務の引受けに関する取決め」、これは署名、調印されたわけですから、英文もあると思います。「取決め」は英文ではどうなっておりますか。
  101. 久保卓也

    ○久保説明員 アレンジメントということばを使っております。
  102. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 協定とどのように違うのですか。
  103. 久保卓也

    ○久保説明員 協定というのは政府間で意思を確認したということのようでありますが、アレンジメントの場合には、事務的な手続の事柄を事務当局間で文書の上で確認をするということのようであります。
  104. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 長官にお尋ねしますが、これは両国政府は責任がないわけですか。
  105. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 両国政府はもちろん責任がございます。佐藤・ニクソン共同コミュニケにおきまして、あの中に沖繩返還された際には沖繩の局地防衛は日本が自主的立場において引き受けていく、そういう文章がたしかあったと思います。それに基づきましてアメリカからカーチスという海軍中将がアメリカ大使館に配置され、わがほうの久保防衛局長とその具体的な調整についていままで話をしました。それに先立ちまして日米安保協議委員会においてそういう話し合いをするということを決定いたしまして、その合意の上に立って事務レベルの話し合いを進めてきたわけであります。それで事務レベルの話し合いがまとまり、調整ができたものですから、きのうは安保協議委員会を開きまして、その内容をお互いが了承して、了承したということの一つのしるしとして事務レベルにおけるサインの交換を行なっておいた、そういうことでございます。
  106. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、やはりある程度政府間を拘束することになるわけです。  この取りきめと協定というのは非常に微妙でして、たとえば松前・バーンズ協定、これは司令官同士の取りきめですが、これは松前・バーンズ協定と言っておる。そうでしょう。そうじゃないですか。
  107. 久保卓也

    ○久保説明員 外務省レベルで、つまり政府レベルで考えました場合には厳密な使い方をしなければいけませんが、その場合に、協定というのはさっき申し上げたような政府の意思を確認するということでありますし、具体的な事務的な内容の場合にはアレンジメントということばを使っている。ところで、松前・バーンズ協定の場合に協定と俗称いたしておりますが、性格的にはやはりアレンジメントの性格であろうというふうに思います。
  108. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまの中曽根長官の御答弁によりますと、これは米国の国防総省と防衛庁の間の取りきめ、協定ですから、一種の行政的な協定考えてよろしゅうございますか。
  109. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 定義によりますけれども、いわゆる行政協定ではない事務レベルにおける調整事項の確認、そういう意味に御了解願いたいと思います。
  110. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから行政的な協定考えていいか、政府の中の一つの行政機関がやっているのですから。
  111. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 外交的用語における協定とは違いますから、協定ということばを使わないで、アグリーメントにあらずしてアレンジメントということばを使ったので、御質問の趣旨と違う答弁をせざるを得ないのであります。
  112. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この種のアレンジメントに署名捺印した例がありますか。
  113. 久保卓也

    ○久保説明員 この自衛隊の配置に関連しての取りきめにサインをしたことはありませんが、ただちょっと名前は忘れましたが、米側からMAPによって物資の提供を受ける場合に、経費の分担をやっております。これについての署名を行なっておりますが、この場合の文書形式の名前を私は記憶いたしておりません。
  114. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうだと思うのですね。それは金額のこと、予算に関係することだから、そのような手続が踏まれたと思います。昨日の取りきめは、この種のものでは私は前例がないと思います。  そこで、取りきめということばで進めてもよろしゅうございますが、この取りきめは返還協定に付随する一種の取りきめであるのか、それとも安保条約に付随する一種の取りきめであるのか、どちらですか。
  115. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 両者とも直接関係はないと思います。安保協議委員会に基づきまして、その具体化として事務的レベルにおけるアレンジメントをした、そういうことでございまして、安保条約から直接出てくるものでもないと思いますし、また返還協定からも直接は出てこない。ただ佐藤・ニクソン・ジョイントコミュニケからは関係があるだろうと思っております。
  116. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間があればその辺詰めていけば、安保条約の変質が具体的に明らかになるわけですが、いま長官は安保条約関係ないと言われましたが、安保協議委員会は何によって設定され、何を目的として協議をするのか御存じですか。
  117. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 もちろんそれは安保条約の具体的運用のための協議機関でございますけれども、このアレンジメント自体が直接安保条約との結びつきで出てきているものではないので、沖繩返還ということに関して関連して出てきているものであります。そういう意味で答えたのであります。
  118. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 しからば岸・ハーター往復書簡による安保協議委員会の性格、いろいろ書いてありますが、このうちのどれに該当しますか。もし該当するとするならば、この委員会は「条約の実施に関して随時協議し」、これ以外にないじゃないですか。そのほかは三つ書いてありますね。「日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じた」、いま一つは、事前協議の事項です。そうすると、この三つしかないから)おそらくこの協議内容は、私は「条約の実施に関して随時協議し、」ということ以外にはないではないか。もしそうでなかったら、安保協議委員会でこの種のことを論議し、署名捺印するというのはおかしいのです。何で安保協議委員会でそれじゃやったのですか。どういう権限でやったのですか。そうなろうと思うのです。
  119. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私が申し上げましたのは、直接関係しない、そういう注意深いことばで申し上げたのでありまして、沖繩返還ということになれば、これはいずれ安保条約の適用地域に将来は入るわけであります。したがって、その後においては安保条約関係してくることは事実であるけれども、しかし今度のアレンジメント自体というものは、この前安保協議委員会でいろいろ話し合った結果の事務的調整のアレンジメントという意味で申し上げたのでございます。
  120. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、私が言ったように、これは「条約の実施に関して随時協議し、」という範疇に入りますね。
  121. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それは入ると思います。それは直接事項もあれば、間接事項もあると思います。
  122. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは明白であろうと思うのです。したがって、内容としては沖繩返還協定に付随する一つの取りきめである。しかし、形式的にはこれは安保条約に付随する取りきめでなくては、安保協議委員会にこの種のことを協議して署名捺印することはできない。だから明白であろうと思うのです。むしろ安保条約に付随するこれは取りきめである、そう見ざるを得ないと思うのです。それは長官が御答弁になりましたから、確認だけで先に進みます。  そこで、いま申し上げたとおり、防衛庁はどのような権限、つまり法的な根拠に基づいてこの種の取りきめに署名調印されたか。
  123. 久保卓也

    ○久保説明員 沖繩の防衛は、日本の主権に基づく当然の行為でありますので、われわれが行なう場合には憲法以下関係法令に従ってやるわけで、その内容、その範囲内において行なわれることについて文書で確認をした、確認の意味でサインをしたということであります。
  124. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、長官にお尋ねしますが、まず根拠は私はやはり安保条約であろうと思うのですね。そうして、その沖繩返還を契機とする新しい安保条約の実施、運用をわれわれとしては規定しておると思う。共同声明に基づく、これは長官のおっしゃったとおりです。  しかし、この内容を検討してみますと、たとえば地位協定関連する問題が出ておる。地位協定の二条四項のことも触れられておる。それから、通信体系のことも触れられておる。通信体系は地位協定の六条に調整のことが掲げられておりますね。そうすると、これは合同委員会の専管事項になってくる。そのような広範な問題をはらんだ内容を安保協議委員会一本で協議し、そして署名調印されたことについては、私は法的にも疑義がある。さらに、現在日米安保条約沖繩に適用されていない。その適用されていない沖繩の防衛分担について、これまた安保協議委員会でそれを決める。これは形式的な観点からです。その点も綿密に言えば私は疑義があると思うのです。こういう点についての解明をひとつ長官からお願いしたい。
  125. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 根拠と申しますと、やはり防衛庁設置法、自衛隊法に基づく自衛隊の責務、法律的に与えられた責務、そういうものに根拠が一つありますし、また沖繩返還された上の話という場合には、返還されてから安保条約は適用されるわけでございますから、条件つきと申しますか、将来に起こり得ることに対していまからあらかじめ両方のアレンジメントをしておく、そういう意味の安保条約との牽連関係はあると思います。しかし安保条約附属交換公文とかなんとか、政府間書簡とか、そういう意味における安保条約の附属文書類、そういう中には入らない、そういうふうに私は解釈いたします。
  126. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はいまの見解はたいへんあやふやであると思うのですね。議論はしたくありません。問題を残しておきます。もちろん自衛隊法に基づいてあなた方は行動されるわけですけれども、いわゆる外国とこの種の取りきめの署名調印をする事項は自衛隊法からは直ちに出てきませんです。そうでしょう。やはり先ほど御答弁になったとおり、これは安保協議委員会の事項だから、当然形式は安保条約に基づくことになる。そうして内容についてはいわゆる共同声明に基づいておると私どもは思うわけです。これは指摘だけしておきます。  そうすると、先ほども長官がお答えになったとおり、政府は拘束される。で、どのように拘束されるかが問題である。拘束されるということは順守義務があるということである。もしこれが順守されない場合は、どちらかが順守しない場合は一体どうなるのか。先ほど愛知国務大臣は、通常やっておることですから、という答弁を鯨岡委員になさったわけですが、先ほどの防衛局長のお答えにあるとおり、これは通常やられておることでない、初めてのことである。それで、ただいま申し上げた点について御見解を示していただきたい。
  127. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 もし将来ああいうものが一部できなくなったとか、変化があるとか、そういう場合には、一部のさまつな部分については、事務的調整でありますから、事務的レベルでこれは解決すべきものもあると思いますが、大きな部分については、やはり安保協議委員会を開いて随時協議の対象として再調整をやる、そういうことではないかと思います。
  128. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 昨年の十二月二十一日に第十二回安保協議委員会で在日米軍基地の整理縮小の取りきめが了解がなされた、合意がなされた。この場合も、ここにありますけれども、文書で明確にされておるわけですが、この種の文書と、この第十二回会合のときの基地の整理縮小に関する文書と昨年のアレンジメントはどう違うのですか、性格的には、あるいは効力的に。
  129. 久保卓也

    ○久保説明員 十二月の場合には、基地の整理統合について安保協議委員会で意見が合致をした、あとは手続を踏んでそのとおり実施をしようということで、委員会の議題そのものであったわけであります。昨日のこの問題の場合には、防衛庁とそれから米側との話し合いの大要について了承を得た。いままで討論をしてきたことについての内容について了承を得た。あと事務当局間で合意をするといいますか、サインをすることを同意するということで、少し程度が一段階下がっているように思います。つまり政府間の意思をそこで確認した場合と、それから事務的な手続がどういうふうに進んでいるか、その内容で大体けっこうでしょうというようなことで、さらにまた事務当局者にバトンを譲った、つまりサインをさせたということで、少し性格が違うのじゃないか、そういうように思います。
  130. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私がお伺いしているのは、十二回の安保協議委員会でその決定されたことが文書になっておりますね。これとどう違うかと聞いているのです。
  131. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 さきの十二月の部分は安保協議委員会における正式の合意で、その内容自体が両国委員によって確認され、決定された。今回のものはいままでのディスカッションの経過を両方が承認し合って、その意味においてはこれは合意ができた、その筋に基づいてその具体的内容両国の防衛責任者によって確認という意味でサインをさせておる、そういう意味で、一段階低いといま久保局長申されましたが、施行細則みたいな性格を持っているのじゃないか、そう思います。
  132. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、政府間を拘束するその拘束力に差があるというわけですか。
  133. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これは両国で承認した結果のその確認という意味でありますから、やはり一連のものであって、拘束力は両方同じようにあるのではないか、そう思います。
  134. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もしそうであれば、これはその拘束力からいって政府協定に準ずるものである。したがって、両国の単なる了解事項ではない。もしそうであれば、これは相互に順守義務を伴うところの条約的な行政協定の意味を持つ。実質的に私はこう見ざるを得ない。したがって、これは当然国会の承認を要する種類の取りきめである、このように思わざるを得ないわけです、まず形式的にですね。どうでしょうか。
  135. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 そうとは思いません。安保協議委員会内容でディスカッスしてきているそのことは沖繩返還後あり得べき事態のことであって、沖繩返還後は主権が日本に返るわけでありますから、北海道に部隊を配置すると同じような意味において沖繩にも部隊を配置する、日本の主権の範囲内のことです。ただ安保条約に牽連しているところがありますから、米軍との調整がその場合は必要と認めて、そして話し合ってきたので、いままできめられている憲法、法律、安保条約のワク内におけることでありまして、新しい条約とか協定という意味は持たないと私は思います。
  136. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ところが、あとで触れますけれども内容にわたるとそうはいかないのです。  私は形式上の問題点を一応出しましたが、次にこの種の取りきめをなぜ署名調印という形式に持っていったか、なぜそれが必要であったのか、その必要性を疑うわけですね。一体なぜこういうことが必要であったのでしょうか、前例のないようなことが、新聞の伝えるところによりますと、アメリカ上院議会対策上必要だということで、アメリカのほうの強い要請があったからそうやったのだという解説が載っておりましたが、それは事実でしょうか。
  137. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 役人というものは、いろいろな仕事をぴっちりまとめたりきめたりして、ルーズリーフにおさめておきたいという本能的な欲望を持っていますが、やはりアメリカ側の外交当局諸君も同じようなものもあるだろうと思うのです。ただ私らが想像しているところによりますと、やはりアメリカ上院沖繩返還協定を通すために役立つのではないか、その意味で先方はそういう希望もあったのではないか、これは私の想像であります。もしそういうことに役立つならば、わがほうもアメリカ上院を早く通過することを希望しておるわけですから、障害のない限り、そういう程度ならば協力してもいい、そういう考えにも立ちまして私は同意したわけでございます。
  138. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それはちょっと横道にそれますけれども、あなた方はアメリカ上院議会対策上こういう重大なことをやって、日本の国会においてこういうことは簡単に通ると思っているのですか。日本の国会対策はどうなるんですか。少し軽視しておりはしませんか。きょうは時間がないから詰めができませんけれども、三百三議席を持っておると思って、日本の国会のほうは安易に考えてもらっては困ると思うのですよ、こういう重大な問題を。  そこで、アメリカが議会対策上なぜ必要であるか、ここに一つ問題のポイントがあるんですね。つまりアメリカでいわゆるタカ派が指摘しているのは、沖繩の米軍基地が機能が弱まるのではないか、あるいはアメリカがアジアに負っておるいろいろの防衛条約義務を果たす点について支障があるのではないかという心配をされておるわけですね。だから、そういう心配がないんだ、自衛隊がその穴埋めをするんだということを立証するために、わざわざ署名調印ということを求めた、このようになるわけですね。そこに問題がある。つまり米軍の現在までの機能を維持するために、補完するために自衛隊が六千八百人進駐するということに問題があると思うのです。  そこで、これは鯨岡議員も指摘されたところですけれども、大体独立国にはいわゆる国家としての基本的な権利があります。外交権なり軍事権、日本でいうと自衛権でしょう。これは基本的な権利の重要な柱ですね。したがって、どのような兵力の配備をするかということは、その国にとっては最も自主的な判断を要せられるところです。それを外国の了解のもとで、あるいは外国との合意のもとでこういう自衛隊配備を決定するということは、これは従属国ではそれがあります。保護国でもそれがあります。たとえば近い例でいえばマレーシアとかシンガポール、これは宗主国であるイギリスに一時期その種の軍事権等をゆだねておる。思うとおりにならない。これと同じじゃないですか、見方によれば。私はこれは完全な従属国としてのあり方だと思う。少なくともこういうことが、先ほどの答弁のように、安保条約の範疇の中で行なわれたとすれば、安保条約自身が米国に対する日本の軍事的な従属性を示すことを立証することになるじゃありませんか。私はこれほど売国的な取りきめのやり方はないと思うのです。介入じゃないですか。どうでしょうか。
  139. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 そうとは思いません。先ほど申し上げましたように、沖繩が復帰する場合には日本の主権下に入るわけでありますから、北海道に自衛隊配備すると同じような意味において沖繩にも配備して、全国民沖繩を守る、そういう原則を適用して、わがほうの主体的考えに基づいてやっていることです。ただ、自衛隊が行く場所とかその他について米軍と調整しなければならぬ場所があります。米軍にあけてもらったり、土地を使ったりするということが出てくるわけでありますから、そういうことにも関連いたしまして向こうと調整して、そうして話し合いがそういう点について成立した、あるいはナイキ、ホークにしても新しく買った場合がいいか、あるいは向こうが持っているものを、安く、いいものがあれば買ったほうが国民経済上有利であるか、そういういろいろな面もあるわけであります。そういういろいろなディスカッションの内容について一致したところができましたから、それを確認するという意味で事務的レベルにおけるサインの交換という程度なのであって、基本はやはり日本国の主権に基づくわれわれの国家を防衛し、国土を防衛するというわれわれの立場から出ていることなのであります。安保条約に対する御理解のしかたが、初めから従属的に考えになれば楢崎委員のようなお考えが出るかもしれませんが、われわれはそうとは考えない。対等な日米協力による共同防衛行為、わが日本に関しては共同防衛行為と考えておるわけでありますから、あなたの御見解と私は異なるのであります。
  140. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 議論は残しておきます。  次に、内容の点について私は指摘したいのです。この内容の点がわれわれがいう安保条約の変質、これを端的に示す一つの例だと思う。あわせて、自衛隊の性格、任務がこれでまた変質したと思わざるを得ない内容を持っているわけであります。  まず問題点をあげてみます。第一番に、われわれはこの取りきめはアメリカの極東戦略に日本が主体的に参加することになる、それが第一点である。二番目は、この自衛隊沖繩進駐は米軍基地防衛のためである。と同時に、治安出動の任務を持つ。三番目に、いままでは米軍が沖繩という基地を、米軍の意思で、アジアにおける社会主義圏に対しての挑発基地として維持しておった。それをこれからは自衛隊が進駐することによって、日本自体が主体的にそのような対アジア社会主義圏に対する、特に中国、北朝鮮に対する挑発的な基地として日本自体が沖繩基地を持つということにならないか。それがひいては懸案の対中国との国交関係正常化の大きな障害になるのではないか、こういう点を私は内容的に懸念をするわけであります。  そこで、その第一番の極東戦略に日本が主体的に参加するということは、先ほど申し上げたとおり、アメリカ上院対策として署名捺印を求めたという事実の中にそのことがもう明らかにあらわれておる。つまり、沖繩の今日までの基地機能をそのまま維持することに自衛隊が手をかす。そしてあわせて、先ほども愛知国務大臣がおっしゃっておったけれども、いろいろな特殊部隊をそのまま残す。安保条約で縛るから本土並みという。ところが、真に安保条約で縛られるような状態であれば、あの特殊部隊は沖繩に置いておく意味はないのですよ。これも議論を残しておきますけれども、何も置いておく要必はないのです。つまり、われわれからいうならば、安保条約は条文としては適用されるけれども、その安保条約の実施、運用のほうを逆にあの特殊的な部隊の方向に合わしていく、そうしかならないのです。だから、われわれは変質と言っておるわけです。  長官、もう時間がないでしょう。
  141. 大村襄治

    大村委員長代理 時間をこしていますから……。
  142. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それじゃ、長官がおられる間に一つだけ。私はなぜ自衛隊が変質するのだと指摘するか。しかも、これは米軍の基地を守るためだ。なぜ私が指摘するかというと、最近の自衛隊の演習を見てもそうです。それも私は事実をもって明らかにできますけれども、それは内閣委員会等でやったことがあるから省きますが、ここだけ私は指摘しておきます。源田参議院議員が鹿島研究所出版会「日本の安全保障」という本に書かれておる。御案内のとおり、航空幕僚長であった人です。だから、ここだけ私は指摘をしておきたいのです。まことに明瞭に書いてあるのです。私どもはいままでだって自衛隊というのは在日米軍基地を第一に守るのが任務だと指摘をしてきましたが、ここでいよいよ明確になるのですね。  ちょっと読ましていただきます。「今現在の日本においては、ほとんどだれも言わないと思うのでありますが、表面化されても非常に問題になるような性質なのであります。今の日本の航空自衛隊というものが、何を目標として訓練をし、何をやるべきかというと、」「防御の主体というものは、アメリカの持っている反撃力を守る。日本自体が反撃すれば、」つまり自衛隊が反撃すれば「日本自体の反撃力を守る。」「アメリカの反撃力の飛び立っていく基地を守る。」第一にそう指摘している。  それから、この内容の中に、レーダーサイトをあなた方が引き受けるわけですね。そのレーダーサイトの問題については、源田さんはどのように任務を考えておるか。「またレーダーなんかもそうであります。もとより日本に対してやってくるやつに対して探知しなければならぬのですが、同町に、このレーダーとかそういうものが、すべてその相当部分はどこへ向かうべきかというと、」これから先が大事です。「その相当部分は反撃兵力を目標に対して誘導するためである。」いいですか。ここです。アメリカが攻撃するのを誘導する。「また、帰りをうまく誘導してやる。」攻撃していったやつを誘導してやる。「そういう具合に使って初めてこれが生きてくる。」たくさんありますけれども、明白なんですね。だから、さっき申し上げたとおり、これは沖繩基地の防衛のためである。  それと、もう一つ基地の防衛のためではないかというのは、日本本土に対して沖繩は面積が百分の一ですね。人口も百分の一。それに対して、本土側は約二十六万の自衛隊。そうすると、百分の一であれば、算術計算でいけば二千六百人でいいわけですね。そうすると密度がつり合う。ところが六千八百人ですよ。本土に対する自衛隊の密度は〇・二六です。沖繩の場合の自衛隊の密度は〇・六八になります。つまり、二・五倍の密度を自衛隊は持つことになるわけなんですね、六千八百という数は。どうしてこれだけの数が必要なんですか。ということは、やはりあの基地の重要さとともに、その重要さを裏づける米軍の重要な基地が依然として百カ所近く残るという、この事実によるのではなかろうか、このようにわれわれは指摘せざるを得ないわけです。時間がないそうですから、最後にちょっと御見解をお示しいただきたいと思います。
  143. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 安保条約に基づきまして、日本本土防衛については日米共同で当たるということにもになっております。したがって、日本を守るという意味においては、もし米軍基地がやられる場合には、日本もその米軍基地を守ることが日本の利益であるのであって、そういう意味においては、共同防衛ということは当然のことであると私は思います。その点は、沖繩についても返還後は同じように当てはまると考えます。ただ、沖繩配備すべきものは、北海道にわれわれが配備していると同じような基本観念に立って、日本の主権下に入る以上は日本国民沖繩も守る、そういう原則に立って、主体的立場による選択として、自主的選択として行なうものであります。  それで、ナイキ、ホークというようなものは、これは沖繩の防空上の必要でありますし、またF104戦闘機隊が行くというようなことも、これは同じく領空侵犯措置というようなものが、平時においては大きなことがあるわけであります。そういうような機能をもって、沖繩の局地防衛という意味において自衛隊の派遣は行なわれておるのでありまして、アメリカに隷属するとか、アメリカの手先に使われておるとかというようなことは、私どもと全く見解を異にするものであります。
  144. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 委員長、もう長官はよろしゅうございます。それで、いまの続きをちょっと防衛局長に……。
  145. 大村襄治

    大村委員長代理 楢崎君に申し上げますが、時間がもうございませんから、結論を急いでくださ  い。
  146. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もうわずかです。  沖繩返還に伴って、ADIZは確定しましたか。つまり、防空識別圏の中における防空任務ということが重要な任務になっておるわけですね、今度の自衛隊沖繩に進駐する場合。
  147. 久保卓也

    ○久保説明員 現在米軍が設定いたしておりまするが、私どもは一応ある程度の修正を加えて自衛隊のADIZにしたほうがよろしいのではなかろうかと思っております。検討は今後進める予定で、まだ手をつけておりません。
  148. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その場合に尖閣列島は入っておりますか。この点の修正はどうなっておりますか。
  149. 久保卓也

    ○久保説明員 尖閣列島は入れておくつもりであります。
  150. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 最後一つだけ、条約局長、おられますか。  先ほどの核抜き問題一つだけ聞きます。政府としては、出同声明の八項を引用したということ、それからもう一つ重要な柱として、撤去費用七千万ドルを列挙しておる、これが根拠になっておるようですが、返還時点で核は抜いておるということになると、その前に撤去の作業をしなければならない。そうすると、米国は、日本から払う金額は返還時からまず一週間以内に一億ドルでしょう。そうしてそれから残りをあと四年間で払う。そうすると、米国は七千万ドルを立てかえて撤去することに話がついておるのですか、具体的に。
  151. 井川克一

    ○井川説明員 核抜きにつきましては、愛知大臣も申されましたとおりに、核抜きということが条約上確保されるということは、あくまでも第七条の規定でございます。アメリカ合衆国政府日本国政府共同声明第八項にいう核政策に背馳しないようにして沖繩返還すること、これが根本でございます。それに愛知大臣は、確かに費用の点をつけ加えられましたけれども、主眼は、条約的見地から見ますならば、第七条の規定そのものでございます。  そのお金の点につきましては、いずれにいたしましても、三億二千万ドルというものが交渉の結果きまりまして、その主たる眼目というものはやはり第七条に規定されている眼目でございまするけれども、そのお金を払いますのは、もとより返還が実現された後のことでございます。しかしながら、一方において、返還時において第七条の規定が直接働きますので、そこには核というものが存在しなくなるということでございます。ただ、そのお金の関係の点につきましては、これはアメリカの内部の問題でございまして、私どもと別段話したことはないわけでございます。
  152. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そんな簡単な答弁じゃ困りますよ、あなた。立てかえ払いをしてやらなくちゃ核は撤去されないじゃないですか。もしまじめにあなた方があの七千万ドルというものを核撤去一つの証言にするのだったら、そこまで詰めた交渉をしておるはずじゃないですか。そうでしょう。当然立てかえ払いでやってくださいということになっておるはずじゃないですか。それをやってないとしたら、全くあなた方はあの七千万ドルというものをいいかげんにしていますよ。私はその七千万ドルの根拠も聞きたいですがね。一体あるのかないのかもわからない。しかし国防総省と国務省が要求しておるから、あるだろう。あるいは金額を明示してあるから、あるだろう。瀬長さんの質問にありましたとおりです。日本国民としては、何のことかわからない。何かわけのわからないうちに、とにかく何となく七千万ドル払ったような形、それで何で核抜きの証明になりますか。あなた、どのくらいあるか知りませんが、たとえば千発あるとしてごらんなさい。一発当たりに直すと幾らになりますか。七万ドルでしょう、一発当たり。そんなに金額かかるんですか。一体どういう積算の基礎があるのですか。だから、二つですよ。簡単でいいですから、立てかえ払いするという了解はできておるのかどうか、それが一つ。それから七千万ドルの積算の基礎、この二つ。
  153. 井川克一

    ○井川説明員 もう一度お許しを得て申し上げたいことは、第七条の規定そのものが核抜きのということでございまして、したがいまして、その費用という点につきましてはさらにその次の問題になるわけでございます。  なお、立てかえ払い云々の交渉は、別段する必要はないと思いますし、アメリカが現在持っておる金でやればいいのであります。ただ、条約上の義務といたしまして、アメリカ返還時に核を抜いて日本に返さなければならないということがはっきりしているわけでございます。  なお、その点につきまして七千万ドルの内訳というものは、事柄の性質上申し上げることができないことでございます。
  154. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから、あいまいなんですよ、全然あいまいなんですよ。いいですか。毒ガス撤去問題のときの費用は立てかえ払いが現実に問題になったでしょう。琉球政府が立てかえるとか、あるいは日本政府あとから払うとか、山中総務長官の論議をあなたは聞いておらなかったですか。そこまで詰めないと、まじめにわれわれは受け取れませんよ、幾ら何と言ったって。  それから核撤去費用問題も、私はかつて外務委員会で、毒ガス撤去と同じような形で――どのようなふうに撤去されるのか。あれと同じような点検ができないものか、一つの方法として。毒ガス撤去を例にあげたのです。そうしたら、それも一つの方法だ、検討してみるという答弁があった。そうすると、いろいろな積算の基礎は出てくるわけでしょう。たとえば運搬費用があろうし、人件費があろうし、あるいはどこに移すのか知らぬが、新聞報道だけではグアムに大部分を移すというが、グアムにはたして貯蔵庫があるのか、それを受け入れるだけの。そうすると、グアムの貯蔵庫の建設費用もあるかもしれない。わからないです。われわれの主張によれば、沖繩の核がなくなる以上、沖繩の核貯蔵庫もこれはつぶさなければいかぬ。その費用もあるかもしれない。だから、そういうものが明確になって初めてまじめに、ははあ、これは核は抜くのだという心証を国民は得ると思うのですよ。それを、七千万ドル、ぽっと計上している。それも核兵器と書いてはいないですね。特殊兵器といっているのでしょう。そして、その積算の基礎は、事柄の性質上秘密で言えない。しかもその費用返還後払うということになっておるのに、返還時には核がないことになっている。そうすると、アメリカは立てかえてやらなくちゃ、とうていできないじゃないですか、事柄の性質上。だから、その辺が不明確のままで――私は愛知外務大臣がおったら言いたい。別の機会にやりたと思いますが、もう一ぺん御答弁をお願いします。
  155. 井川克一

    ○井川説明員 先ほどから申し上げておりますとおりに、条約上といたしましては第七条の規定がございます。もちろんその前に共同声明もございますが、第七条の規定に基づきまして核抜きアメリカ沖繩返還日に日本返還する。これが条約上の権利義務関係でございます。したがいまして、それが主でございまして、その条約上の権利義務関係というものは当然守らるべきものであります。その費用の点につきましては、立てかえ払い云々については、私も存じませんし、そのような交渉は私は承知しておりませんけれども、いずれにいたしましても、根源は第七条の規定そのものによりまして核抜き返還されるということになっておるわけでございます。
  156. 大村襄治

    大村委員長代理 速記をとめて。   〔速記中止〕
  157. 大村襄治

    大村委員長代理 速記を始めてください。
  158. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、申し合わせの時間もあるようですから……。いまの答弁では納得できません。それで、愛知外務大臣に出席をいただきたいところですが、その後の取り扱いについては、ひとつ理事会で御相談いただきますように、一応この時点で保留をいたしておきたいと思います。
  159. 大村襄治

    大村委員長代理 承知いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時一分散会