○有田
政府委員 お答えいたします。
北方領土問題につきましては、長年の懸案でありまして、最近の一年間の動きは、具体的な
交渉という場面では遺憾ながら何もございません。
御
承知のように、わがほうの基本的立場は、
歯舞、
色丹、これに加えて国後、択捉は
日本の固有の領土である、したがってすみやかにこの
返還に応じて平和条約を締結して、安定的な関係を持ちたい、このように再三再四、特に申し上げませんけれ
ども、先方の要人が来たとき、あるいはこちらの要人が行かれたときに、それぞれ相手国の要人に強くこの点を説明しております。
幸い、日ソの関係の他の方面におきましては、たとえば貿易関係におきましては、昨年の貿易は往復で八億ドルをこしております。それで、昨年の十二月の末にこの五カ年の日ソの取りきめが失効いたしました。したがいまして、今後の五カ年——これはちょうどたまたま
ソ連の五カ年計画にも合うわけでございますが——の貿易取りきめを行ないたいということで、先般
東京で
交渉いたしまして、これはイニシアルができました。今後の五カ年間でございます。これは先般の五カ年取りきめとは違いまして、附属書に予測数字というものが書いてございませんが、しかし、品目表はついております。これで、われわれのほうで見込みを申し上げますと、大体今後の五カ年間に、双方往復の貿易量が約五十一億ドルにものぼる、つまり平均十億ドルの線にのぼるということでございます。これは日ソ関係はこの面においてはきわめて良好であるということでございますし、それから、御
承知のように、航空機の関係では、シベリア上空が開放されて、ただいま
日本航空も週四便、モスクワ経由でそれぞれパリとロンドンに行っております。そのつながりといたしまして、つい最近にローカル路線、地方路線といたしまして、ハバロフスク−新潟間の航空路が開けました。新潟の飛行場がただいま整備されておらない関係で、当面は
東京に飛んでくるということでございますが、この面も日ソ関係のプラスの面でございます。
このように、いろいろな面についての
日本関係の発展を通じて、われわれとしては、
ソ連側が一そう日ソの親善関係を希望し、かつまた、基本的にこの領土問題を解決することが日ソ関係をさらに進展させ、また、より一そう安定的な基礎に置くために必要であるということを認識してもらうという方針で、この点を強調しておる次第でございます。したがいまして、具体的に、この
北方領土の
返還については、遺憾ながらテーブルに着いて
交渉するという
段階ではございませんが、われわれとしては強力に今後もこの点を強調していきたいと思います。しかし、遺憾ながら、
ソ連側の
態度は従来と変わりません。
最近、第二十四回共産党大会が、御
承知のようにモスクワで四月の初めに行なわれましたが、その際のブレジネフ共産党書記長の演説も日ソ関係に触れております。実は、
ソ連の要人の党大会における演説といたしましては、従来は一カ所で
日本のことに触れるというような状態であったわけでございますが、今度のブレジネフ書記長の演説をしさいに検討してみますと、
日本に対する言及が六カ所に及んでおります。しかし、この領土問題につきましては、ちょうどここにございますので、どういう言い方をしておりますかと申しますと、「
日本の若干の階層がいわゆる「領土問題」を利用せんと企図していることは、日ソ関係にとり利益とならぬことはもち論ではあるが、われわれは
日本との互恵的協力の一層の拡大に少なからざる可能性を見出している。」云々、いろいろなことを言っておりますが、この領土問題に対する
ソ連側の否定的な
態度というものは変わっておりません。しかし、同時に、
ソ連側としては今後も日ソ関係を発展していきたいという希望は強いのだということを申しております。この間にわれわれといたしましては、何らかこの
北方領土問題に対する打開策というものを今後とも考究していきたいと思いますが、それには、
先ほども
お話がございましたけれ
ども、やはり
日本国の全
国民の支持ということを背景に、日ソ関係全般の関係の打開という観点から措置を考究していくということが必要かと
考える次第であります。