○愛知国務大臣 外務省の所管事項につきまして、その概略を御
説明いたします。
百万
沖繩県民をはじめ、
日本全
国民の長年にわたる念願でありました
沖繩の
祖国復帰をいよいよ明年に控え、本年は
沖繩返還協定に署名を行なう年であります。
沖繩の
祖国復帰につきましては、すでに御高承のとおり、一昨年十一月のワシントンにおける
佐藤総理大臣とニクソン大統領との会談の結果発表されました
日米共同声明に示されておりまする
核抜き本土並み、一九七二年中という
沖繩の
施政権返還の
基本的
大綱について、
日米間の合意が成立しておりますので、外務省といたしましては、右共同声明の趣旨に沿って
沖繩返還を
実現すべく、返還協定及びこれに関連する諸事項につきまして、目下関係
省庁とも密接に連絡を保ちつつ、米側と鋭意交渉に当たっております。
返還協定交渉につきまして、具体的に申しますと、この交渉は昨年六月五日の私とマイヤー駐
日米国大使との会談を起点といたしまして、その後原則として毎月一回右会談を行なうほか、
日米双方の
事務当局において、鋭意かつ密接に協議を進めてまいりました。
その結果、
政府としては、
沖繩返還のための
作業は順調に進んでいるものと確信しております。具体的日程といたしましては、明一九七二年内のできるだけ早い時期に
沖繩返還を
実現するとの
基本方針にのっとり、本年春より夏にかけて協定に署名の上、本年内に国会の承認手続を完了したいと考えておりますので、ここに各位の御協力をお願いする次第であります。
返還協定の
内容につきましては、目下鋭意交渉中の
段階でありますが、先ほど申し述べました一昨年十一月の
日米共同声明に明記されております
核抜き本土並み、一九七二年中という
施政権返還の
大綱のワクの中で、返還協定が確保されることは申すまでもありません。
これまでの対米交渉を通じて明らかとなりました
沖繩返還に関連する主要交渉事項といたしましては、
沖繩住民の対米請求の取り扱い、裁判等に関連する諸問題の取り扱い、米国資産の処理、在
沖繩外資系
企業の取り扱い等がありますが、これら諸事項のうち何を協定に規定するかはいまだきまっておりません。また、このほか
施政権返還の日から
沖繩に地位協定をそのまま適用するため、米側と十分話し合いつつ、必要な準備を進めております。
以上申し述べました主要交渉事項につきまして、交渉の現況を
中心に、若干補足
説明いたしたいと思います。
まず、
沖繩住民の対米請求の取り扱いにつきましては、
施政権返還に際しどのように取り扱うことが適当であるかの点につき、現地の実態、法的側面等をも勘案しつつ、慎重に検討中であります。これらの対米請求の取り扱いぶりにつき、返還協定中にいかなる規定が置かれるかは、
日米間の話し合いによりきめられるものであり、現
段階では何とも申し上げられませんが、いずれにいたしましても、
政府としては、
沖繩住民の要望を十分念頭に置きつつ、公正妥当な
解決につとめる所存であります。
次に裁判の引き継ぎ問題につきましては、現在関係各
省庁間で、あらゆる角度からの問題点の検討が進められており、外務省といたしましても、右検討の進捗を見つつ米側と本件に関する話し合いを詰める所存であります。
また、三公社、軍事
基地外
道路、行政用建築物、航路
援助施設等のごとく、
施政権返還後も
沖繩の
住民にとって有益であると認められるような資産の引き継ぎについては、
日米間の協議を通じ、公正かつ公平な
解決をはかってまいりたいと考えております。
また、在
沖繩外資系
企業の取り扱いにつきましては、右
企業の実態につき、
復帰準備
委員会を通じ、すでに米側から相当の資料を収集し、現在関係各
省庁において
内容を検討中であります。その具体的取り扱いぶりは、右検討により各
企業の事態を十分に把握した上できめるべき問題でありますが、
一般的に言って、
政府としましては、
沖繩の
施政権返還が具体的な日程にのぼる以前から、
沖繩で正当に
事業活動に従事してきた外資系
企業に対しましては、
復帰後においても公平な取り扱いをすることが必要と考えております。いずれにせよ、在
沖繩外資系
企業の取り扱いにつきましては、
日本の外資政策及びこれに関連する政策との斉合性を保たせたいと考えております。
最後に、
復帰後の
沖繩に対する安保条約及び地位協定等関連取りきめの適用につきまして一言触れたいと思います。
返還時における
沖繩の米軍
基地につきましては、一昨年十一月の
日米共同声明にも明らかなとおり、
施政権返還にあたっては
日米安保条約及びその関連諸取りきめが、
本土の場合と同様そのまま変更なしに
沖繩に適用されるのでありますから、米側に提供されるべき施設、区域が、右条約及びその関連取りきめに従って提供されることとなることは言うまでもありません。
その際
政府といたしましては、不要不急の
基地に加えて、
沖繩の民生及び
経済開発発展のため、その移転返還が望ましい
基地もあろうかと思われますので、これらの点を踏まえ、
日米安保条約の目的に照らしつつ、米側と鋭意検討を進め、
日本側の意向が十分に反映された形で決定が行なわれるように
努力してまいる所存であります。
次に、わが国の
北方領土問題につきまして、同様
政府の所信を申し述べたいと思います。
戦後二十五年余を経た現在なお
北方領土問題が未
解決であるために、日ソ間に平和条約が締結されていないことはまことに遺憾であります。特に、明年には
沖繩がわが国に返還されることを考えるならば、歯舞群島、色丹島、国後島及び択捉島に対するソ連の不法占拠が依然として続けられているという事態がひとしお残念に感ぜられるのであります。
政府は、かかる異常な事態をすみやかに解消し、日ソ関係を真に安定的な基礎のもとに
発展させることが、ひとり両国関係のみならず、アジア全体の緊張緩和に資するゆえんであると信じ、過去久しきにわたりソ連
政府に対し領土問題の
解決方を強く働きかけてきました。しかしながら、ソ連はわが国をあげてのかかる要望に耳を傾けず、いっかなわが国との話し合いに応じようといたしません。しかのみならず、昨年十一月十一日にわが
政府に対して行なわれたソ連
政府の口頭声明で、ソ連は、わが国における
北方領土復帰促進運動を戦後の国際秩序を破壊しようとする一部の人士による復讐主義的性格を持つものと述べている次第であります。かかる批判がおおよそ事実と相反していることはここに申すまでもないことであります。
日本国憲法には、「
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理念を深く自覚するのであって、平和を愛する諸
国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と述べられています。
わが国がソ連との善隣関係の
発展を求めているのも、かかる平和外交の理念に根ざすものでありまして、特に最近日ソ間に貿易
経済、運輸、文化等広い
分野にわたって顕著な成果が得られておりますことを喜ぶものであります。しかしながら、いずれの国にもあれ、
外交関係の
発展は一国の
努力のみで達成し得るものではありません。日ソ関係についても、われわれの隣国たるソ連が何よりもまず
北方領土問題の
解決に誠意を示すことによって、わが国との関係を真に安定的な基礎のもとに
発展させていくごとができるのであります。
政府は、ソ連が近い将来このことを正しく理解するに至ることを衷心望むとともに、今後とも
北方領土問題の
解決を目ざして、ソ連
政府の要路に対し、粘り強く働きかけていく所存であります。
以上、簡単でありますが、外務省の所管事項につきまして、概略御
説明申し上げた次第でございます。
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