○
平田参考人 船主協会労務
委員会の労務
委員平田弘でございます。
船舶職員法の一部
改正の
審議にあたりまして、
意見を述べる機会をいただきましたことを感謝いたします。私
どもは本
改正案に全面的に
賛成という立場から、若干の時間をいただきたいと思います。
航海士、
機関士に関します
改正の内容あるいはその
賛成度合い、あるいは沖の
船舶職員の熱望度、こういうものは、さきに
斉藤参考人が申されましたので繰り返して申しませんが、少なくとも
航海士、
機関士に関する限り申し上げますと、本
制度の早期実施というものを切望しておる、こういうことは申し上げられると思います。
次に、
船舶通信士に関してでございますが、
船舶通信士の船内の地位あるいは
職場の問題、こういうものから
本案に
賛成するということでございますが、私はその船内の地位だとか
職場の問題というものは少しあと回しにいたしまして、なぜこういうことを考えることができるのかということを申し上げたいと思います。
国際電気
通信条約付属の
無線通信規則の第二十四条の「
船舶局及び航空機局の
通信士の等級及び最少限の数」というもので、第二種及び第三種
船舶局には第一級または第二級の無線電信
通信士証明書を有する
通信長を乗せなくちゃならない、こういうふうになっております。今次
審議の対象となる
近海区域就航船は、もちろん客船を除きまして、わが国の区分では第三種局甲の局でございます。しかして、これらの
船舶局の
通信士の
資格につきましては、
電波法第五十条におきまして、第二種局の乙を含めまして、
通信長には一定の経歴を有し、現に第一級
無線通信士または第二級
無線通信士の免許を受けている者を要求しております。私
どもの解釈、考えによりますと、本条による限り国際条約と同様に、遠洋
船舶といえ
ども第二級、言うならば
乙種通信士でよいとしておる、こういうふうに私、
理解しております。
しかるに、無線従事者
操作範囲令の第二条及び
船舶職員法の別表第三におきまして、俗にいう
近海一区以内に限定されておるのが
現状であります。したがいまして、私
どもはこのワクの完全撤廃こそ妥当だ、こういうふうに考えますけれ
ども、ともあれ
本案のとおり、
近海全域就航船までの
拡大はぜひお願いしたい、こういうふうに考えております。
遠く東洋に回航いたしましてわが国に入港しております西欧国の貨物船にも、
乙種通信士のみの乗船例を見ております。私
ども、わずか二十隻ほどの調査の中では不十分かも存じませんが、英国、デンマーク、ギリシャ、西独等の二十隻中十三隻を数えております。
わが国も、
漁船につきましては、御存じのとおり、
昭和三十九年以来
乙種通信士による世界各地からの交信が認められております。
漁船の
通信内容は特殊で類型的であるのに対しまして、
一般船舶のそれはより高度で多様なものとして別段の取り扱いが必要である、こういう反論もあるやに聞いております。しかし、
船舶通信を大別いたしますと、第一は保安
通信であり、第二は営業上の必要からくる商業
通信であろうかと存じます。したがって、まず第一の点を考えるときに、
船舶がその
海域にある限り、原則として
漁船、商船で区分されるわけはないはずであります。ゆえに、
漁船におきまして支障のないことは当然商船においても実施し得るものである、こう考えます。ただいま
斉藤参考人の例にもありましたが、これは別の機会で言わせていただきます。
乙種通信士の技術あるいは商業
通信の具体的内容と量というものもあとで申し上げますが、そのいずれもが、このたびの
従事範囲の
改正の障害になるということは絶対ないと私
どもは考えております。
乙種通信士の技術面について申し上げますと、さきに申しました国際条約の
無線通信規則の中に、
通信士証明書の発給の条件が明確にされております。また、わが国の二級
通信士資格免許の条件が、完全に国際的水準に達しているということは疑いもありません。元来二級
通信士資格は、
国際通信に必要な
知識、技能を有することを前提としてその技術を認められた者が免許されている、こういうことを申し上げたいのであります。
しかしながら、語学などに関連させまして、
乙種通信士に
通信長として現在認められている
近海一区は、第二次大戦の敗戦までは
日本の勢力圏内であり、
日本語による
通信が可能とされておった、したがって、二級
通信士は和文
通信可能な
範囲に限定が妥当である、こういう反論も聞くことがございます。当時の
日本勢力圏内でありました国との交信は、現在
国際通信といたしまして英文を用いておる。それも戦後すでに二十年もたっておる。こういうことを思うならば、この反論は、現在の二級
通信士の免許水準に故意に目をおおっておる、こういうふうにいわざるを得ません。別の場合を申しますと、従来二級、すなわち
乙種通信士が次席として乗船勤務の場合に、形式的には
甲種通信士の
通信長の監督下であり、定められた時間割りによって当直をしておりますが、その間、その当直の時間は独力で
国際通信を行なっております。そして別段の支障はなかったのでございます。
現在、
船舶通信士は、
昭和二十六年くらいから後は主として仙台、詫間、熊本の国立
電波高校の出身であります。これらはすべて所定の語学、専門教育を受けております。内航、
近海の
乙種免状の甲板、機関の職員のように部員として働きながら、独学あるいはそれに近い方法で
資格をとってきた人たちと
通信士は経路を別にしておる。これはさきの
中村参考人も言われましたが、そういう点に注目していただきたい。同じ乙でも乙の位が違う、こう申し上げたいのでございます。したがいまして、
乙種の甲板、機関の職員については、
試験科目の中に英語がございません。一方、
通信士に対する
試験の内容は、
乙種といえ
ども和文英訳あるいは英文和訳、会話が含まれておることは御高承のとおりでございます。要約すれば、甲板、機関の職員の語学に限っていえば、
甲種免状と
乙種免状との格差は、英語の教育を受けた者と受けなかった者と、こういう差が考えられますが、
通信士の場合は、同じ教育を受けた者同士の間の成績のよし悪し、この程度の学力差しかない、こういうふうに考えられます。よって、語学に劣るがゆえに
乙種通信士は
近海に不適であり、
通信阻害のおそれがある、こういうことは考えられません。
また、
乙種通信士の
学術試験は、科目表で見ますと
日本付近の
海上気象、こうなっております。このことから、
乙種通信士の
海上気象に関する
知識をもってしては、
近海全域には不適であり不安である、こういう反論があるやに承ります。
〔
委員長退席、宇田
委員長代理着席〕
日本付近の
海上気象の
知識をもってすれば、
日本を
中心とする
近海全域の
海上気象は容易に
理解できるものと、こういうふうに思いますけれ
ども、この議論の前に申し上げたいのは、原則として
通信士の業務なり責任は、
海岸局より送信される
海上気象、海象の情勢を受信し、あるいはファクシミリ放送などによる天気図その他を受信いたしまして船長に届けることでございます。言うなれば
情報の仲介であり、耳の役目でございます。したがいまして、異常な
状況にいかに対処し行動するかを判断、決定し行動するのは船長の責任でございまして、これを補佐するのは
航海士の役でございます。
通信士の気象上の
知識を取り上げての反論は、やや筋違いかと私は存じます。同じように、
日本付近の
海上気象のみの
試験を受けておるところの
乙種一等
航海士は、三百トン未満の遠洋
漁船の船長として、
乙種二等
航海士は百五十トン未満の船長として、大体
近海全域に就航操業しておる実績を持っておるということを申し上げたいと思います。
近海航路
船舶の
通信の内容と量、これは商業
通信に限って申し上げますと、
日本海岸局との和文
通信は主として正午位置、配乗
連絡、荷役積み荷
連絡などで、
近海区域船なるがゆえの特殊なものはございません。問題とされる英文
通信を大別いたしますと、たとえば「名古屋五日発、マコ着予定十二日朝」英文で大体七語でございますが、こうした入港通知、それに「水先頼む」とか、「全員健康」とか、「喫水」こういうものが付加されることもございます。それに通過報、荷役積み荷
連絡などで、これらはほぼ文型が一定しております。したがって、内容、発受信度数にいたしましても、
近海一区船と
近海三区船との間に著しい差を認めません。
近海三区就航の某船の昨年九月の
通信量は、和文受信が二十九、発信六十四、英文受信ゼロ、発信二、十月の和文受信が十七、発信三十七、英文受信が二、発信十二、こうした例から、私
どもは、
近海第一区で大体一カ月の平均英文
通信取り扱いは十通内外、
近海二、三区で十四通内外と見ております。内容は平均できませんが、さきに申しました船の場合短いのは五語、長いので五十語の例を見ております。
以上申し上げましたことにより、
漁船の
通信内容とはおのずから異なるものがあるにいたしましても、別段の取り扱いが必要、こういうものは何もないと考えております。
さらに、
近海全域に広げた場合、地理的な条件によって、五百ワット以上の高出力の空中線電力にしなくてはならぬ
船舶もあるから、技術操作の
範囲も
拡大される。このことは、機器の運用、保守の能力
低下を法が認めることになるとの反論も聞きます。私
どもは、第二級
通信士の国際的な水準から見ましても、五百ワット以上の出力の機器の運用操作もけっこうだ、こういうふうに考えますが、本
審議にあたりまして、現無線従事者
操作範囲令の次の条項、「空中線電力五百ワット以下の無線電信及びファクシミリ」の操作の
範囲の
改正までは
要望いたしておりません。
近海全域といえ
ども、わが国
海岸局の出力の増加であるとか、あるいは工業技術の進歩に伴う
通信設備の向上であるとか、こういった高性能は当然考えられます。したがって、本年二月調査いたしましたところの
近海資格船の中で、五百ワット以上の無線電信を設備している
船舶は四十二隻のみでございます。この中には、
近海一区以内の
船舶も数隻見受けますが、これらの
船舶と同じ地域に就航しておりますところの他の
船舶は、五百ワット以下で何ら支障なく交信を行なっておるのであります。また、弱電関係の航海機器を含めまして、
近海区域の航海日数から見ましても、その間の保守、整備は二級
通信士、
乙種通信士の技術で十分である、こういうふうに考えます。
以上述べましたわが国の
資格免許の水準によって保証される技術、
通信内容と量などから見まして、安全、確実に直ちに
本案は実施し得るものと、こういうふうに考えております。
そこで、先ほ
ども中村参考人が述べられましたが、商船における
乙種通信士の
職場は激減しております。
第一は、第三十九回の国会で決定されました
船舶職員法別表第三の
改正によりますところの
船舶通信士の
定員変更であります。従来
近海、遠洋の千六百トン以上の
船舶には次席
通信士、五千五百トン以上についてはさらに三席
通信士、いずれも
乙種通信士の
定員を定めておりました。これが
通信設備の進歩その他によりまして、
法律上の
定員からはずされました。
法律で見る限り
乙種通信士の
定員はゼロであります。ただ、現在は労使間の協約により、遠洋就航
船舶の次席の
職場が残されております。
第二は、沿海
区域就航船の
通信設備の
変革であります。沿海船のほとんどは、手軽で安全に操作のできる電話が普及したために、符号で送受信する無線電信を敬遠しております。ある資料で、
昭和三十五年と四十四年を比較いたしますと、五百トン以上の沿海
資格船は、二百十七隻が六百三十二隻と十年間に約三倍に伸びておるのにもかかわらず、無線電信設備船、すなわち
乙種通信士を必要とする船は百五十一隻が九十三隻にと、逆に五十八隻も減っております。
すなわち、いままでの
法改正も
通信設備の
変革も、
甲種通信士の
定員には何らの
変化がなかったということでございます。遠洋、
近海船舶のふえただけは需要は伸びております。これに反しまして
乙種通信士は、すべての分野で縮小の影響を受け、法では
近海一区以下のみに就航する、確実ではありませんが、推定百から百五十隻程度の
範囲、それと
労働協約、これも廃止の交渉が形を変えて継続されておりますが、目下のところは、これによる遠洋
船舶の次席
通信士だけの
職場になっております。これとて、
甲種通信士が法定
定員のゆえをもって、
定員外の次席といえ
ども甲種通信士資格者を優先採用しており、こういうふうな大手中核体に
乙種通信士を採用される度合いは、きわめて少なくなっております。
一方、
船舶通信士の養成源でありますところの国立
電波高校三校の卒業時における
資格取得の
状況を見ますと、
昭和四十五年三月に本科生二百九十一名中一級十名、専攻科生百十九名中一級三十六名、平均一一%程度であります。残りの九〇%に近い卒業生の中で、ある者はそのまま
乙種通信士として就職を志し、ある者は
乙種通信士として勤務しながら、さらに
甲種通信士へ進むことを願っておる、こういう青年
船舶通信士を受け入れる
職場が局限されておる、こういうことでございます。こうしたことが、せっかくの卒業生を弱電関係の盛んな求人と相まって、
陸上企業に去らせる傾向に拍車をかけ、ひいては
通信士の絶対数不足にもつながることになる。これは
中村さんと同じ考えでございます。したがいまして、二級
通信士を
船舶の
乙種通信士として迎える
職場、こういうものの
拡大こそ、人材の
海上誘致を可能にする道ではなかろうか、こういうふうに考えます。
〔宇田
委員長代理退席、
委員長着席〕
需給の問題をここで申し上げることは、誤解されることがございますが、一般的な事情の
変化は一応お聞き及びを願える、こういうふうに思います。すなわち、開運の再建案として施行されました企業合理化の促進によりまして、大手外航
会社が
近海船を積極的に分離いたしました。したがって、
近海船のほとんどは、
近海船を主とした
会社か、あるいは内航船の
会社がこれを併有する形をとっております。このことは、
甲種通信士の卵であるところの
乙種通信士を
定員として乗せる
船舶がないか、あってもきわめて少ないこと、あるいは
甲種通信士の
資格をとって、あるいはその
会社で育てた者であっても、一たん
資格をとりますと、
制度上からも好条件である遠洋航路の船を志望して流れてしまう。同じ乗るならば、やはり待遇のいい、船の大きい、遠いところに行く遠洋の船に乗りたいのだ、こういうことで、
近海しか持っていない
会社で幾ら育てても逃げてしまう、こういう
現状がある。こういうことは、われわれも協約に従い、あるいは各社の努力によりまして、一級への
講習、こういうものには相当の便宜をはかっておりますが、しかし、こういうふうに自分で逃げていく者を、これをもって
近海内航
船主の責任である、怠慢である、人事に対しての見通しを持っていない、こう責められるのは酷ではなかろうか、こういうふうに考えます。
今次の
要望は、
通信士の
定員を増減するものでなくて、いままで
甲種通信士でなくてはならなかった
海域の一部を、
乙種通信士でもよいと改めていただきたい、それが
乙種通信士のためにも、現在は
乙種通信士であっても、将来
甲種通信士を志向する人たちのためにも、すなわち、
電波高校などの卒業者の大半の人たちのために道を開くことではないか、こういうふうに考えております。
反対論のそれぞれの団体には、やはり
乙種通信士も含まれておる、こういうことでございますので、私
どもはここではっきり、だれだれからどういうあれがあったと、こういうことを申すのは遠慮いたしますけれ
ども、新聞紙上の投書欄あるいは電報、文書その他によりまして、二級の切実なる訴えも、われわれのところにたくさん来ておるということは申し上げたいと思います。
通信士の船内における地位と申しますか、慣習とか実績から、
通信長は制服のそで章、肩章、あるいは食卓の位置につきましても、大体一等
航海士、
機関士と同列になっております。賃金面におきましても、従来も、現在の
労働協約でも同列になっております。
遠洋
船舶の職員は
甲種免状でありまして、商船大学なり商船専門学校を出まして、一定の経歴を経て一等
航海士なりあるいは船長の免状をとった人、こういう者とも同列でございますので、
電波高校出身の甲通に対しては、たいして不利な列でもないわけでございますが、
乙種船長を頂点といたします
近海船におきますところの一等
航海士は、言うならば兵隊からのたたき上げ、部員から登用されました
乙種船長または
乙種一等
航海士の免状受有者でございます。これと同列に並べるということは、
通信士そのものが反発することであろう、私はこう考えております。
要約しますと、甲板、機関の
甲種免状及び
通信士は甲乙とも、少なくとも高校以上の専門教育を受けておるのに比しまして、
近海以下の
乙種免状の職員は、技術、識見は別といたしまして、学歴面で見る限りには低いといわざるを得ません。
通信士についていいますと、先ほ
ども申し上げましたとおりに、
乙種というふうに甲板、機関の
乙種と同列な名前をつけておるところにこういう誤解があろうか、こういうふうに考えます。したがいまして、例としては不適かもしれませんけれ
ども、一方が士官学校卒の将校だとすれば、片方は兵隊からのたたき上げの将校准尉である。しかも、船長という公的な立場から指揮命令を出す形になっております。
職場と日常生活の場が直結しております
船舶だけに、出身の相違等からくるこうした間隙を縮めることも決して無
意味ではない。そうして、それが先ほど申し上げましたように、安全上に問題がないものでありますから、
乙種通信士の
操作範囲を
近海全域に広げることは、この面からも妥当である、こういうふうに私は申し上げたいと思います。
今次の改定は、繰り返して申しておりますとおり、
通信士の
定員の変更ではありません。したがって、
乙種通信士を含めた
船舶通信士全体から見ますと、何らの増減はありません。甲板、機関の職員の場合のように、学校出身者にかわって実地出身者が出てくるのではございません。しかし、当該
船舶に乗り組んでいる
甲種通信士が
乙種通信士にとってかわられる、そして
甲種通信士が解雇される、これが問題である、こういう向きがございます。法で要求されますのは、
乙種通信士でなくてはならぬというのではございません。その法定
資格より下位なれば使いようがありませんが、上位であり、より有効であるとの
理由ならば、これで解雇される
理由は何もございません。
乙種二等
航海士で足りる
航海士にかえまして
乙種一等
航海士、
乙種船長などの免状受有者を、あるいは
乙種船長で足りる船長にかえまして
甲種一等
航海士、
甲種船長免状受有者を歓迎、乗船させている例は、通常見るところでございます。すなわち、上位
資格者の採用が可能でありさえすれば、より優秀な技術を証明されたこれらの人たちを優先採用こそすれ、これを忌避する
理由はございません。また、現在の労使間の協定による賃金
制度は、
船舶の就航
海域、トン数、職名、職歴によって本給は定められまして、個々の
資格の上下は無関係であります。したがいまして、同じ給料で上位
資格者が得られるならば大喜びするのが当然でございまして、また、協約のみならず、実際面におきましてもきびしい解雇制限をいたしまして、単なる長期予備すらも協議の対象となっているのでございます。
ただ、最近の人手不足からか、
近海船所有の中小
会社に定着を好まずに、同じ乗るならば本給、手当、日当など
制度上からも当然高収入になるところの遠洋
船舶の
会社を求めて、おのずから流動する者があることは事実でございます。このこと自体で、これらの
通信士を非難するものではございません。それは当然だ、こう考えます。しかしながら、さらにそれが形を変えまして、
全日本海員組合長も最近の某紙上で指摘されましたように、労使協定による賃金よりもはるかに高い賃金の、個人契約で臨時
船員が生まれ、船をかわるごとに所得倍増、これは組合長の表現でございますが、そういう
状態をつくり出していることは、これは重大な問題であります。これらの事態は、海運にとってゆゆしいことだといわざるを得ないのでございます。私
どもは、心から乗り組み員の定着をはかり、精一ぱいの努力をし、組合とも誠意をもって協議し、協約、協定も尊重してきております。したがいまして、個人であれ集団であれ、意識的にあえて労使協定のワク外にとどまって自分だけの利益をむさぼり、他の職務との均衡などは意に介しない、こういうような異常な雇用
状態が存在するならば、そういうものをつくり出すことは当然批判さるべきでありまして、早急に正常化の方法がとらるべきである、こういうふうに考えます。こうした
需給、雇用の正常化は、
乙種通信士の
操作範囲の
拡大によってこれが若干でもやはり解消されていく、こういうふうにわれわれは考えているのであります。したがいまして何らの不安を招来するものではない、
海上安全の不安を招来するものではないということは、いままでに申し上げた
理由で御
理解願えた、こういうふうに存じます。したがいまして、
本案の早期実現方を強く
要望する次第でございます。
さらに、労使協定によりまして正常の雇用関係にありますそれぞれの
会社所属の
通信士が、このためにいささかなりとも不安を感じる、こういうことでございますならば、いつでも労使間におきましてこの問題に関する真剣な討議をし、その解決策を見出す努力は惜しむものではないことを申し上げたいと思います。
長々ありがとうございました。