○戸田菊雄君 私は、
日本社会党を
代表して、佐藤内閣
総理大臣の
所信表明に対し
質問を行なうものであります。
〔議長退席、副議長着席〕
まず、
経済の基本についてでありまするけれども、現在われわれは
解決すべき重要な問題を幾つかかかえております。佐藤
総理は過日の特別
国会で内政重点を表明いたしました。戦後の絶え間ない
経済成長は
日本経済の未曾有の膨張を示しました。GNPは二・八六倍、鉱工業生産は四倍、
輸出貿易は三十六億ドルから百七十億ドルに躍進し、その生産力は資本主義
世界第二位にのし上がったのであります。しかし、それは
政府の産業偏重、大
企業中心の成長政策にささえられ、
国民の
生活福祉を犠牲にし、勤労者への過酷な低賃金、合理化の上に築かれた
発展であり、あらゆる面に矛盾とゆがみを生み出し、
国民の間に苦痛と不安と退廃を増大させているのであります。この産業偏重の成長の結果は、生産の集中、資本の集積が強化され、
経済の寡占化、独占化が進行したことであります。
わが国の
経済は数百の主要会社が大
金融機関と結合し、数千の系列、下請
企業を傘下に置き、わが
経済の中枢を握っておるのであります。これらの
企業の株主の大半は、
金融機関その他の法人に保有され、十万株以上の少数の大株主が大半の六割を所有するに至っているのであります。都市銀行は大
企業の資金調達機関であり、銀行信用を増発し、通貨管理制度によって日銀がそのうしろだての役割りを果たしておるのであります。大衆貯蓄を吸い上げる財政投融資による公共
投資、海外
協力も、
国民不在、産業偏重が続いておるのであります。
新産都市建設などによる
企業敷地確保のためのばく大な国、
地方、公共団体の先行
投資、
日本輸出入銀行など
政府関係機関を通じての産
業界への補助など、財政のすべてが大
企業に奉仕せしめられ、かつ税制においても同様と言い得るのであります。本来、平等であるべき税制の取り扱いを見ますると、今年度は一・七五%引き上げられたとはいえ、
世界主要国中最低の法人税の実効率、設備
投資や輸出推進のための各種の特例
措置などであります。しかし、このような
企業保護、生産第一主義はすでに対外的、
アメリカ、カナダに見られるようなダンピング問題、対内的にも行き詰まりの状態を見せ始めているのであります。このような
政府と財界の結託による高度
経済成長は、第一に、物価上昇を恒常化させ、インフレを定着化させるに至りました。
第二に、あらゆる面に格差と不公平、不平等を激化させました。資産と所得の格差、大
企業と中小
企業の格差、都市と農村の不均衡による過密、過疎の現象の激化、公衆衛生、公園、上下水道、住宅など、
国民生活関連
施設の立ちおくれの激しさ等々であります。町にあふれる車の反面、その車からの排気ガスによって鉛
公害を受ける一般住民、広大な敷地を占領し、設備
投資を拡張して利潤追求をむさぼる大
企業、片や一家五人が六畳一間に間借り
生活を余儀なくされ、乳のみ児を死亡せしむるといった勤労者の
生活の実体、所得分配の不公平を是正する
社会保障は、
国民所得の約六%にすぎず、西欧諸国の二分の一ないし三分の一にとどまり、老後や医療の保障も全く不完全なのであります。
第三に、
公害と事故の激発が人命を奪い、自然の破壊を招いていることであります。
総理は、再々人命尊重を強調されますが、これほどそらぞらしく
国民に与えるものはありません。GNP大国を自称しているその裏面には、これらの多くの矛盾が実在しており、この
現状を今日まで放置し、常に生産第一主義と大
企業の保護のみを絶対優先化させ、推進してきた
自民党佐藤内閣の
責任はまことに重大と言わなければなりません。このように生命と健康を犠牲にし、自然を破壊するばかりか、金もうけ中心、拝金思想、利己主義の生存競争を生み出し、人間相互の不信と汚職、犯罪をはびこらせ、
社会病理現象を増加させ、新しい
社会の貧困、欲求不満と人間疎外をかもし出している
経済中心主義のやり方は、海外的にも
国内的にも行き詰まりを生じておるのではありますまいか。この際、
政府は、大
企業保護の
観点を反省し、
国民一般を保護する
立場に立って
政治と行政を展開すべきものと
考えますが、
総理の明確な御所見を承りたいと思うのであります。また、今後いかなる
方針で進もうとするのか、そのプランニングを明示していただきたいと思うのであります。
以下、具体的に
質問をいたしたいのであります。
第一は、インフレについてであります。物価の安定は、佐藤内閣登場以来の重要な
政治課題の
一つとして、毎年、
総理の
施設方針演説や
経済企画庁長官の
経済演説の中心に見出すのであります。
国民は、今度こそはと期待するのでありますが、しかし、皮肉にも
政府が物価の安定を強調し、
対策について説明すればするほど、物価上昇は鈍化するどころか、むしろ年を追うて上昇率は加速化し、ついに昨年度は定期預金金利を上回る六・四%にも達したのであります。このような情勢を踏まえ、われわれは、四十五年度
予算審議の際に、現在はすでにインフレ状態であり、真剣にインフレ
対策に取り組むと同時に、
社会保障による年金受給者や恩給
生活者の
生活防衛の改善の策として、物価上昇率に応じたスライド制を採用することを
政府に要望いたしたのであります。
政府は物価を安定することに全力を尽くすと胸を張ったことを、佐藤
総理はじめ、福田
大蔵大臣や佐藤
経済企画庁長官はよもやお忘れではないと存じます。ところが、現在の状態はどうでしょう。昨日の佐藤
総理の
答弁でも、最近の物価情勢はすでに昨年を上回ることを認めざるを得ず、また、物価上昇率はおそらく七%台への突入も避けられぬものと十分推定されるのであります。もし七%台の物価上昇となれば、終戦当時のあの悪性インフレ時代を除けば最高の上昇率となり、ますますインフレは完全に
日本経済に組み込まれていると断言せざるを得ないのであります。
政府は、いまもなお、現在の状態をインフレと承認せず、
経済成長に伴う必然の物価上昇と判断しているかどうか、明確にしていただきたいと思うのであります。また、今年度の物価上昇を何%程度に抑制をしようとしているのでありますか。そして、今後いかなる手段で、このインフレ状態を終息せしめようとしているのか、
政府の明快な御
見解を承りたいと思うのであります。
インフレは、金持ち、貧乏人にかかわらず、
国民全員に降りかかる税金であります。その
意味では逆進性を持っております。その中にあっても、零細な預金金利
生活者や、退職し、恩給や年金のみをたよりに
生活する人々は最大の被害者であります。反面、インフレによる最大の利益者は、ばく大な借金で設備
投資を進めている大資本
企業家であります。
政府の決意表明にもかかわらず、物価が大幅な上昇を続ける限り、意図せざる所得の不平等化が進行しつつあることは否定のできない事実であります。物価を安定させ、不平等の原因を是正することはもちろんでありますが、私は、この際、
現実的に被害を受けて困っている年金並びに恩給
生活者に対し、思い切って物価スライド制を完全に実施し、インフレの被害から守ることが
政治の責務と思いますが、
総理並びに
大蔵大臣は、このスライド制実施をどのように
考えますか、
政治的決断をお聞かせ願いたいのであります。
第二は、
公害問題と事故激発についてであります。亜硫酸ガス、CO、鉛などの大気汚染、工場、鉱山の廃液投棄による水質汚濁、鉱工業排水、農薬、都市下水、屎尿、廃油、漏油、温排水による海洋資源の汚染、その他、食品、薬品の
公害、地盤沈下、ガス爆発等々、
公害問題が一気に吹き出してきているのであります。これこそ営利本位、生産第一、人間の生命と健康を無視した資本主義
社会の爆発であり、GNP至上主義の結果であります。
政府から各議員の
質問に対してそれぞれ
答弁があったわけでありますが、明確を欠いているので、再度、次の点について
質問いたしたいと思うのであります。
その
一つは、
公害防止費用の
負担の原則についてであります。従来から、物価へのはね返り、さらには
企業の存立を危うくするとのことで、産
業界では、
公害防止に種々の援助
措置を
政府に要求しているところであります。しかし、
公害問題は明らかに
企業活動に伴って生ずるものであり、一般の
国民の税金から出すべき筋合いのものではないことは当然である。これら
公害防止の
費用負担は、すべて
企業自体の
責任の中で
解決すべきと思うが、どうでありますか。
その
一つは、
企業に対する
政府の
公害責任の追及と
規制の強化についてであります。今
国会に提出された
公害法案の中に、無過失
責任が取り入れられなかったことは全く残念であります。立法技術の問題もさることながら、要はそれに対する
政府の熱意であろうと思うのであります。
公害の無過失
責任をなぜやめたのか、再度
政府は検討し直すべきであると思うが、具体的にお示しを願いたいと思うのであります。
その
一つは、海洋資源の汚染についてであります。最近の海洋の汚染はまことにはなはだしいものがあります。海洋汚染には、
一つは、汚染の結果、生物が住めなくなること、
一つは、生物自体が汚染されることの二つがあると思いますが、しかも、このような汚染は、内海に限らず、海洋一般まで拡大されつつあります。ことに、相模湾、東京湾、三陸沿岸等々、内湾、近海水域の汚染の結果、異常な富栄養化が進行し、鞭毛藻類の異常増殖現象であるところの赤潮が多発し、水産増養殖や有用底棲生物に大きな被害を与えているのであります。また、海洋汚染で重大なものは漏油によるものであります。海上輸送中の石油漏油量は、一九六八年に千二百万トンに達しました。ほかに、タンカーの海難事故続発による漏油、廃油投棄等による被害が大きくなっているのであります。
日本人の食
生活に占める水産物の比重の大きさは、一九六八年資料によりますると、
日本人一日一人当たり動物たん白摂取量は二十九・五グラムであるが、その五五%の十六・三グラムを水産物で占めているのであります。
世界で最も高い比率であります。ほかにかなりの量の海藻類を摂取しているのであります。つまり
日本人は
世界で最も水産物に依存している
国民であります。また、漁業生産金額——鯨を除く——は、
昭和四十三年で七千四百四十七億円に達し、漁業従事者は減少したとはいえ、六十万人を数え、漁船の総隻数三十七万五千隻、漁獲量八百六十七万トン、うち、浅海養殖業五十二万トンと、
国民経済に占める漁業の重要性はいまさら強調するまでもありません。IOC、
政府間海洋委員会は、
昭和四十三年十二月、
国連で海洋調査研究の長期拡大計画の原案を作成し、その六項目の中に海洋汚染が入っているのでありますが、また、
わが国でも、海洋科学技術
審議会が
総理大臣に対し、海洋開発のための「科学技術に関する開発計画について」という答申を行ないました。七〇年代の海洋開発の
方向づけとして重要でありますが、これらの海洋開発進展を含め、
政府はどのように国際的
協力の
もと、組織的調査を行なっておるのでありますか、明らかにしていただきたいと思うのであります。また、今日発生しておる内海並びに海洋の汚染防止をはかる
具体策を示していただきたいのであります。
その
一つは、自動車事故発生防止についてであります。自動車事故は、年々二万人に近い生命を奪い、香川県人口に匹敵する百万人の負傷者と不具者を生み出しております。新
経済社会発展計画では、
昭和五十年に車の数三千万台となります。そのときを想定いたしますると、死者毎年二万二千人、負傷者何と二百万人に増加する見込みであります。佐藤
総理の
人間尊重は、この一点を見ても強く糾弾されなければなりません。交通災害は多様であります。騒音、振動、自動車排気ガスによる大気汚染、また、走る凶器とか、あるいは走る棺おけとの表現どおり、交通事故は、前述したとおり多発激増の傾向にあります。これに対し、
政府は今日までもっぱら取り締まりと交通
規制の強化で立ち臨んできたのでありますが、現在の交通麻痺並びに交通
公害に対する抜本的
対策が必要かと存じますが、
政府は、いかなる
対策で今後臨もうといたしておりますか、お示し願いたいのであります。
第三に、農政問題についてであります。昨日わが党の鶴園議員も
質問いたしたのでありますが、
総理並びに農林大臣から、基本農政に対し検討中との回答がありましたが、再度
質問いたしたいと思うのであります。
農業基本法の
もとでの農業政策が、基本法の
精神とは全く逆に農業破壊の道を歩み続けていることは、今日の農村へ一歩足を踏み入れれば、だれでもが痛いほどはだ身に感ずる点であろうと存じます。第二次産業重視の重化学工業化政策の推進は、確かに
国民総生産を高めはしたものの、農産物の
国内自給率は年々低下の傾向にあります。農業は逐年縮小再生産の
方向へと追い込まれております。そこでお伺いをいたしますが、
国内農業は荒廃するにまかせ、
国民の食糧は海外、特に
アメリカと東南アジアに依存しようというのが佐藤内閣の農政基本政策でありましょうか、どうですか。佐藤内閣は一体食糧の自給
体制づくりにどのようなビジョンをお持ちでありますか、お示しをいただきたいのであります。
次に、
わが国の農政が今日直面いたしております大きな課題は、米の生産をどう進めるかということであります。来年度は生産制限を今年度の百五十万トンから、倍の三百万トンに引き上げようとしていると新聞は伝えております。さらに、米の買い入れ制限、二段米価、逆二段米価、転作休耕補助金に格差を設けること等も検討中だということでありますが、これらの議論は、木を見て森を見ずとのたとえのとおりではないかと思うのであります。米の生産過剰が起きるには起きる原因があったのでありまして、そうした根本の原因と
日本の農政のあり方を結びつけて
考えずに、目先の
対策だけに大騒ぎをしていることは、不必要に農村や農民に不安を引き起こすだけであります。私は、
自民党の言う、農作物生産について地域分担を明確にして適地適作の農政を実施するというのでありますが、その地域分担の具体案を示していただきたい。また、生産制限の具体的な転換方策を示すべきと思うがどうですか。さらに、それがための
裏づけとなる
予算は一体どうなるのでありますか、具体的にお示し願いたいと思うのであります。すなわち、生産費所得補償方式によって農民が安んじて生産に従事できる農政が準備された上でのみ、米の生産から農民が微退できる最低限度の条件がととのうのではないでしょうか。そうした
対策なしに急テンポで米の生産の制限を行なうやり方は、農民に自殺しろと言うようなもので、許されません。
政府は、従来食管の根幹
維持ということをたびたび声明いたしているのでありますが、来年度も食管制度の根幹は
維持する
考えなのかどうか。さらに、
政府の
考える食管制度の根幹とは一体何なのか、明らかにお示しを願いたいと思うのであります。米の買い入れ制限や二段米価、逆二段米価を導入した場合でも食管制度の根幹は
維持していると
政府は
考えられるのかどうか、その点もあわせて
質問いたすものであります。
さらに、四十六年度
予算編成とも重大な関連があるが、今日好むと好まざるとにかかわらず、農政が大きな転換点に立たされていることは否定できないが、そうした転換をスムーズに進めるには、長期低利の農林業への融資
対策が格段に拡充強化される必要があると思うがどうですか。さらに、貿易自由化のかけ声によって、残存輸入制限をしている農産物を悪玉呼ばわりをしておりますが、国際競争力がほとんどない
日本の農産物について、机上の空論で自由化をやられては、農民にとっては死活にかかわる重大問題である。残存輸入制限の撤廃の
方向が必要だとしても、農民の
生活に不安だけは起こさせない十分な
対策を具体的に行なうべきではないかと思うのでありますが、いかがでしょうか。農林省はこうした積極的な
対策を講ずるでもなく、一歩一歩後退していくだけの今日までのこの問題への対処のしかたは許さるべきでないと存じますが、大臣の
見解を承りたいと思うのであります。
第四は、税制問題についてである。まず、税制改正について
総理の基本姿勢をお伺いしたいのである。すでに四十五年度の税制改正で、夫婦子供三人、計五人世帯の課税最低限を百三十万円に引き上げ、長期税制答申を履行したということから、税制改正に対する
政府の姿勢は消極的に見えるのでありますが、この点に対して
総理はいかがお
考えですか。今日の
日本経済は、すでに申し上げましたようにインフレ時代を迎えており、毎年大幅な所得減税を実施しないとすれば、物価上昇に所得の増加分が食われることになり、
国民生活の消費や貯蓄が抑制される結果、
国民福祉の向上は望むべくもありません。今後のインフレ状況によって大幅な調整減税を行なうべきだと思いますが、いかがでありましょうか。
政府は来年度所得税減税について、減税幅、課税最低限の引き上げについてどの程度を見込んでおりますか、
お答え願いたいと思うのであります。
私はこの機会に、サラリーマンの税金が重く、かつ不公平を是正するために次の提案を行ないたいと思うのでありますが、
政府の十分な御検討をお願い申し上げたいと存じます。職業上必要な経費は実額計算によって完全に認めるか、あるいは給与所得控除を合理的に改正して、サラリーマンがどちらでも
選択できるようにすること、結果的に課税標準の所得金額が低くなるようにすることであります。二つは、人的控除が標準的な
生活費を上回るように引き上げ、サラリーマンには資産所得者より控除が多くなるように配慮すること。三つは、中小所得階層に対する税率を引き下げ、全体として高度累進制にすること。第四は、源泉徴収か申告納税かはサラリーマンの
選択にまかせること、等々を検討して改善
措置をはかられたいと思いますが、いかがでございましょう。
次に、住民税減税についてでありますが、住民税も今年度課税最低限を七十三万円に引き上げるなど、改善のあとは見られますが、依然として課税最低限が所得税と異なっております。
政府は住民税が応益との議論に固執し、所得税との格差を一向に縮めようとする
努力を行なっていないことは納得できないのであります。徴収される
国民の
立場から見れば、国、
地方税ともに強制的に取り上げられること、国の行政と
地方固有の行政が入り組み合い、判然としない今日の情勢において、国税の応能性と
地方税の応益性に差異を見つけることは困難でありましょう。しかも、かつては所得税と住民税の課税最低限は一致していたはずであります。当時の
地方自治体は困窮せる赤字財政の
もとにあり、現在は若干財政的ゆとりもあるはずであります。この際、所得税、住民税の課税最低限を近づける
努力を
政府はなすべきと思うが、いかがでありましょう。
最近、来年度の税制改正の一環として、間接税の増徴論議がなされておりますが、福田蔵相は、現在直接税に片寄っているため、
国民が重税感を持っており、今後物品税にウエートを置き課税する
方針を明らかにしておりますが、
財源として
考える場合、大衆
商品に課税されやすく、それが物価上昇にさらに拍車をかけることになりはしないか、どうでありますか。むしろ、年間八千億にも達し、
社会的
批判の的となっている
企業の交際費課税を十分にやることこそ先決問題だと思うのですが、どうでしょう。
次に、租税特別
措置の廃止についてでありますが、昨日の日経新聞によりますと、改善することをほのめかしておりますが、いまさら強調するまでもなく、特別
措置により、数、金額ともに一番恩典をこうむっているのは独占
企業、大
企業、資産所得に対するものであります。また、租税特別
措置は、それのみの狭小なものではなく、所得税法、法人税法の本法そのものにも組み込まれているのでありまするから、あわせて再検討すべきだと思いますが、どうですか。
大蔵大臣の所見を伺いたいと思うのであります。
第六は、補正
予算についてであります。今
国会の重要案件は、いうまでもなく日中、繊維問題、
公害関係法案の審査等々がありますが、同時に、四十五年度
予算成立後に生じた
予算支出の
措置であります。そうしてこの
予算支出の最大の焦点は、八月人事院によって勧告されました公務員給与改定に伴う
審議であることもまた衆目一致しておるところであります。しかるに、
政府は、今回これら公務員の給与改定に必要な法律を
国会に提出しただけで、支出を
裏づける補正
予算が提出されていないのは全く
理解に苦しむところであります。支出を伴う
法案は、それを
裏づける
予算措置が明確化されておってこそ
現実に生きてくるのであって、今回のような法律案だけのひとり歩きはまさに空前のできごとではないでしょうか。なぜ補正
予算を
国会に提出しないのか、だれしも疑問を持つのは当然でありましょう。昨年の例を今年度に慣例化させるのは歪曲にすぎません。昨年は、衆議院解散により参議院も国政参与の権利が一時的に停止された結果、補正
予算審議が行なわれなかったにすぎないのであります。しかも、今回の公務員の給与改定
法案には、昇給延伸等、今後の
予算支出に関連して幾つかの問題を含んでいるばかりか、改定に必要な公務員給与費の総額は、当初
予算に計上した五%をはるかに上回る一二・六七%の大幅な勧告であります。この
予算計上額と
現実の差七%、約一千四百億円の
予算措置についてどのようにするのでありますか。われわれは何ら
審議していないのであります。この未
審議部分を行
政権の裁量によって当初
予算の給与費を繰り上げ使用し、二月や三月分の給与費が足りなくなってから補正
予算の
審議などという見えすいた行為は、国政参加の
権限を
国民から付与された人として断じて認めることはできません。それは財政支出
権限を与えられた
国会として、行
政権に服従し、自殺を
意味するものと
考えるのであります。最近、憲法に定められた三権分立の原則に対し、
総理はたびたび尊重を
主張いたしますけれども、これこそまさしく行
政権の優位が問題になっているのであります。われわれは、常に過度な権力の集中しがちな行
政府を警戒しなければならず、財政当局への
権限は、その性格上、権力集中の典型とも言えるのであります。この監視を怠らぬことが、与野党を越えて
国会に課せられた使命であると存じます。今回の
政府の補正
予算の未提出は、その
意味で全く
国会の
権限を縮小し、任務を怠るものであって、断じて見過ごすことができません。すみやかに補正
予算を提出し、
国会の
審議を受けるべきだと思うが、どうでありますか。一体、提出できない理由は何なのか。行政の長であるが、反面、
国会議員の一員として、佐藤
総理は、
国会の財政歳出と
審議の権利をどう
理解されているのか、説明を願いたいのであります。
第七は、防衛問題についてであります。昨年以来、佐藤内閣の防衛力拡充の姿勢は、質的な変化が認められます。そうした中で、鶴園議員も
指摘いたしましたように、五兆八千億から六兆円に達する第四次防衛力整備計画が発表されましたが、その四次防の基本
内容と整備の重点をどこに置こうとするのか、
総理の回答をいただきたいのであります。現在でもその実力はアジアで一、二位を誇る自衛隊をこれ以上拡大強化しようとする理由は、一体何なのか。アジア諸国や
アメリカでさえ
日本軍国主義復活の危険な徴候が
指摘されているとき、
総理の言明のように、平和と専守防衛に徹するということであるならば、軍備拡張は百歩譲っても
現状で凍結すべきであると
考えますが、
総理の
見解はいかがでありましょうか、回答を願いたいのであります。
中曽根長官は、憲法並びに政策上四つの限界、すなわち、他国に侵略的脅威を与える攻撃兵器は保持をしない、海外派兵は行なわない、非核三原則、
社会保障、教育その他の諸施策との適切な調和を守り、漸進的に防衛力を整備する、この四限界の言明を行なっておるのでありますが、四十四年五月十二日の自主防衛強化に関する基本
見解を作成し、防衛
予算の飛躍的な増大と、これまで米軍を「やり」とし、自衛隊を「たて」とする
日本の防衛という補完
関係を、米軍同様の「やり」に質的に変化させることをほのめかしているのでありますが、航空距離三千二百キロを保持するF4Eファントムジェット戦闘機と、海上では対艦ミサイルSSMのように攻撃能力を保有する国産ミサイルの兵器体系を織り込んだ計画自体、四限界を越え、
政府のいう専守防衛の域を越えるものと思うが、どうでありますか。論理は飛躍的過ぎるかもしれませんが、
日本の自衛隊は、
日米安保条約並びに
日米共同声明で、しょせん
日米共同作戦を義務づけられ、対米従属を余儀なくされる
現状から、長官がいう自主独立の自衛隊にはなり得ないのではないかと思うのでありますが、長官の
お答えを求めたいのであります。
第八は、
沖繩問題についてであります。戦後二十五年、異国の支配下にあった
沖繩が、七二年返還を目途に戦後初の
国会議員の選挙が行なわれ、この
国会にも
沖繩県民の意思を
代表する同僚議員諸君の登院を見たことは、おそきに過ぎたとはいえ、御同慶の至りであります。今回の選挙が革新陣営の勝利に帰したことは、
沖繩返還に臨む
政府の
態度に現地県民の
不信感の反映と断ぜざるを得ません。
不信感の要因は、核抜きと米軍基地の撤廃について
政府の
態度がきわめてあいまいで、戦争に巻き込まれる危険が、
日本領土の中で一番危険の度合いが高い。
沖繩の復帰はこの危険率を低めることでなければならないのに、新聞の伝えるところでは、来年の参議院選挙後に
沖繩復帰のための
臨時国会を召集するというが、
沖繩復帰のプログラムを明らかにしていただきたいと思うのであります。
時間もありませんから、要約して防衛庁長官にお伺いいたしますが、
沖繩返還後、
日本の自衛隊を派遣するのでありますかどうですか。
日米共同声明に対し、一月二十六日から二十九日の米上院対外分科委員会の秘密聴聞会でのジョンソン国務次官、ランパート
沖繩高等弁務官、マギー在
日米軍司令官等々の証言で、返還後も
沖繩の緊急時には核兵器を持ち込む権利を留保する、これに対し
日本政府は拒否をしないこと、
沖繩を含む
日本の米軍基地が韓国、
台湾防衛の重要基地であること、
日本以外の地域での安全保障に貢献すること、
沖繩に配置している核兵器をベトナムのケサン攻防戦で使用したこと等々を
考えますると、
沖繩派遣自衛隊は核武装の渦の中に巻き込まれることは必定であり、かつ、
政府の言う核抜き本土並みはまさに欺瞞政策そのものではないかと思うのでありますが、防衛庁長官の具体的な
お答えを願いたいのであります。
日中問題について一点、
総理にお伺いをいたします。
総理は、再々、
大使級会談を持つという意向を示しておりますが、具体的にその
内容はいかなるものか、再度お示しを願いたいと思うのであります。
最後に、
社会保障についてであります。佐藤内閣の高度
経済成長政策を誇示し、
昭和元禄を謳歌するその裏には、
社会のどん底にあえぎながら、哀れな多くの
国民のいることを
考えずにはいられないのであります。すなわち、力のない老人、重症身体障害者、共かせぎをしなければ
生活を営めない勤労者に必要な保育所並びに失対事業等々、
社会の底辺で歯を食いしばりながら貧しい
生活をしいられているこれらの
国民大衆に対し、
総理はいかなる基本政策をお持ちでありますか、お示しをいただきたいと思うのであります。また、保育所並びに重症身体障害児収容の
施設はきわめて不足しております。これらに対する
具体策をお示しいただきたいと思うのであります。
以上、私は各般の問題について
質問いたしましたけれども、
総理並びに
関係大臣の誠意ある御回答を期待をいたしまして、
質問を終わる次第であります。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕