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杉原一雄君 東京都は、昭和四十三年九月十日、火力発電所の
公害防止に関する覚え書き、それから四十四年の一月六日、都市ガス製造工場の
公害防止についての協定等を結んでいるわけでありますね。これはむずかしいことでないので、あくまで燃料に使う重油を低硫黄にすべきだ、
公害を出さないようにしなさいということを協定しているわけですから、結局、これに伴うていわゆる原油の輸入の体制とか通産
行政、貿易
行政との関連は非常にあるわけです。東京都がこういう約束をしても、それは具体的になってみるとなると、通産省の
行政の
範囲の中で処理されるべきものが非常に多いわけですが、こういう協定はどんどんつくられるべきであるし、効果不十分である限りは、こうあるべきなのが地方自治のたてまえであると思うのでありますので、そういうものを覚え書きにおいて補強するような、あるいは補完するような
意味の通産
行政というものはきわめて必要であるというふうに私は申し添えて、この問題はこれで終わります。
それで、時間の許す
範囲内で田子の浦の問題についてお伺いするわけですが、いまさら経過
措置とか今後の方針というものを聞いても始まらないわけです。繰り返し
山中長官からも
報告を受けたし、私の意見も私は述べてまいりました。ただここで若干この問題をめぐって十四の
法律がいまいろいろな形で出ておりますが、この
法律を、どのような形で、この問題処理にあたって適用するか。たとえばこの問題の始末をつける
責任の主体はだれか。いわゆる防止事業を進めていく主体はだれなのか。そしてその費用は、先般
山中長官は全額企業者負担だと、こういうふうに言っておられますから、その点ははっきりしているようでありますが、重ねて、
事業者負担法等による費用の負担決定にあたって、なかんずく、富士市
周辺の製紙パルプ工場等は非常に数が多いし、その中で、やはり中小、零細業もございますから、そうした
問題等についての負担割り当ての大体の
基準、めどみたいなもの、将来、政令、省令で決定されるようなことなどを含めて、一応私はこれを応用問題と申しますが、応用問題を出しますから、出したんですから、この問題に対して、こうこうこうなんだと、いわゆる防止事業の
責任の主体と、費用分担のある程度具体的な、——大昭和製紙はこれだけ出せということはなかなか言いかねると思いますが、そうした中で、類型別というような、中小、零細、そういった問題に対しては法的にはこういう配慮があるのだといったようなことなど——やっぱり結局抽象的になるかもしれませんが、そうしたような回答を最終的に求めたいと思うのであります。
それの前に、私ここで言いたいことがあるわけです。それは二、三日前に出た週刊言論、十二月十八日号でありますが、——こういう本はぼくは初めて買ったのですよ、いつも買っていると思われては困りますが、非常に意地の悪いものの選び方をするわけですね。この中に「
公害法案の骨はこう抜かれた」という大見出しみたいなものがあります。そのところの、
政府に対する文句はこの中に書いてある、言いませんからひまがあったら
長官、読んでおいてください、たいへん悪口書いてありますから。それよりも、いまここに関連する業者の発言ですが、「田子の浦のヘドロ問題で有名な」と書いてあります、「大昭和製紙の斎藤了英社長は、九月七日、ヨーロッパの
公害対策視察の旅から帰ってくるなり、こう開き直った。「
政府が操短を要求しているというが、設備投資をしている以上、そう簡単に操短できるものではない。今のところ絶対に操短を考えない」」この答えですが、これに対して、操短を要求したのか。社長が言っているとおりそれはできないと言って断わってきて、現在どうなっているか、そのことをひとつ
あとでつけ加えて
答弁をしていただきたいと思います。そして彼は、「外国の
公害対策を視察してきたが、
公害対策は日本がいちばん進んでいて、」
山中長官、安心してください、「外国は問題にならない」と、これはどこを見てきたのですかね、アラビアのほうへ行ってきたのじゃないかと思いますが。「この斎藤発言があった二か月前の七月、軽井沢で生産性
本部主催のトップセミナーが開かれた。そこでも、
公害に対する財界首脳人の声が聞かれた。」三菱商事社長藤野忠次郎、「
公害の犯人は、ある場合には都市であり、」ほんとうに聞き捨てならない
ことばですが、「都市であり、
政府であり、企業でもある。」われわれ政治家は入っておらぬからいい、案外でしたが、「そして、ときには、個人は
加害者と
被害者の二面をもっている」考えさせますね。その次、興銀頭取の正宗猪早夫、「個別企業の
責任だけを追及しても解決しない。新しい問題として、みんなで解決することだ」あるいはこう言っております。住友化学の長谷川周重は、「
公害問題は、ややもすれば感情的に、政治的に扱われる傾向がある」こうなりますと政治的な扱いということが悪いことのようでありますが、「それはかえって問題を複雑にするもので、
国民も正面から医学、生物学をも含めてイデオロギーを離れて
公害と取り組まねばならぬ」ここらあたりはやや評論家であります。こういったようなことを彼らは言っているわけです。特に斎藤社長に反論の資料を私は出していきたいと思います。それは、これもめったに買わないものですが、週刊現代がきのう出ました、十二月二十四日号。これによりますと、「本誌独占ルポ
公害退治に米国から来た猛烈男」名前はデニス・ヘイズであります。これは、八日の日に、
公害のデパート田子の浦に直行、彼の言っていること、直感的に言っていることをちょっと紹介します。「私の国では、こんなひどい
公害を出した企業主は裁判に訴えて刑務所に叩き込んでしまいます。安全
基準を破った社長は少なくとも罰金でこらしめることができます。日本はどうなっているのですか?まだ日本ほど
環境汚染がひどくないアメリカでも、みんなが
公害追放運動に立ち上がっているのです。日本もいま運動をスタートさせなければ、取り返しのつかないことになってしまいます」弱冠二十四歳のデニス・ヘイズ、
公害追放闘争の闘士であり、二千四百万人のアメリカ人を組織して堂々と戦ってきた実戦の勇士であります。彼は、
公害のデパート田子の浦を見て感じたことをこのように語っているわけであります。そうしますと、斎藤さんの言われることとは違ってくるようであります。加えて、
政府の文章を引用します。外務省情報
文化局「各国における
公害問題」十月十五日、これによりますと、これは
政府の
責任と書いてあるのじゃありませんけれ
ども、イギリスのエコノミスト誌の九月五日号に載せられたのを特に日本のところをピックアップしてあります。日本、「降りそそぐ
汚染物質」ということで日本の東京
周辺の
公害の
状態等を光化学スモッグを含めながらいろいろ
政府の方針とともにここに紹介してあるわけです。そうしますと、斎藤社長の、日本は各国に比較して非常に
公害対策が進んでいるという判断なり考え方は、こうした二つの証明で否定されるようにも思われます。なかなか問題は、ヘイズが直ちに刑務所へほうり込めと言いますけれ
ども、イタイイタイ病裁判が今後五、六年——十年かかると思われるくらい
資本家というものは一筋なわ、二筋なわでいかない、こういう現実を踏まえながら私、これからの
重要法案を皆さん
政府の
責任において省令、政令等となって具体化するわけですが、この
法案の実効をあげるには結局何が大事かということをこの
あと私が言わなくても御推察をいただけると思いますが、やはり私は総理のように、福祉なくして成長なしという
ことばが
国民には非常にうつろな響きしか与えません。
山中総務長官の情熱あふれるような御
努力も砂漠に夕立のような結果になってしまうおそれがきわめて大きい、こういう状況の中で一段と勇猛心をふるってやっていただきたいし、
行政当局の皆さんも政令、省令等の制定にあたりましても、こうした困難な状況の中で大いにがんばっていただきたい。このことをつけ加えながら冒頭にお願いした田子の浦のヘドロをなくして、港の機能を回復し、そして大昭和製紙はじめ多くの会社、工場が今後とも繁栄する道は何か、こういうことの探究、あるいは打開策をここで明示していただければ幸いであります。
ただ、私の
手元にもう
一つ、非常に
山中長官にすみませんけれ
ども、やっかいな文書が手に入りました。きのう調査室を通じて、日本商工会議所から
政府なり自民党に出されている
公害対策についての要望書はないかと、確かに二通手に入りました。やっかいではございません。問題は金融の問題とか、中小企業に対する
手当ての問題とか、そういうことなんです。ところが、私が求めて手に入らなかったのは
公害関係諸
施策の慎重な
審議を望むという経団連、日経連、経済同友会等の
政府・自民党に対する要望書が手に入りませんでした。入らなかったけれ
ども、十二月二十二日の
「エコノミスト」に暴露されました。それを読んで見ました。なるほどなと実は思っております。そういうことをもわれわれは知りながら、踏まえながら、これは現実ですから、
公害の問題に取り組むべき決意を私
たちはいよいよ固めたいと思うのでありますが、先ほど申し上げた田子の浦の処方せん、カルテをどなたでもいいから簡単に示していただきたいと思います。