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1970-12-15 第64回国会 参議院 公害対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十二月十五日(火曜日)    午前十時十二分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         占部 秀男君     理事                 鬼丸 勝之君                久次米健太郎君                 杉原 一雄君                 内田 善利君     委 員                 長田 裕二君                 川上 為治君                 木島 義夫君                 古池 信三君                 玉置 和郎君                 矢野  登君                 山本敬三郎君                 渡辺一太郎君                 小野  明君                 竹田 四郎君                 小平 芳平君                 田渕 哲也君                 須藤 五郎君    国務大臣        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        内閣審議官    城戸 謙次君        経済企画庁審議        官        西川  喬君        厚生政務次官   橋本龍太郎君        厚生省環境衛生        局公害部長    曾根田郁夫君        農林大臣官房技        術審議官     加賀山国雄君        通商産業政務次        官        内田 芳郎君        通商産業省公害        保安局長     莊   清君        通商産業省公害        保安局公害部長  柴崎 芳三君        通商産業省鉱山        石炭局長     本田 早苗君        建設省道路局長  高橋国一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        経済企画庁総合        開発局総合開発        課長       武藤 正幸君        中小企業庁指導        部長       西田  彰君        運輸省航空局技        術部長      金井  洋君        建設省都市局参        事官       石川 邦夫君        建設省河川局次        長        角田 正経君    参考人        中央公害対策        審議会委員   進藤武左衛門君        横浜市公害セン        ター所長     助川 信彦君        国立公衆衛生院        大気汚染室長   大喜多敏一君        全日本海員組合        漁船部長     二見 俊男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○公害対策基本法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○公害防止事業費事業者負担法案内閣提出、衆  議院送付) ○騒音規制法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○大気汚染防止法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付)     —————————————
  2. 占部秀男

    委員長占部秀男君) ただいまから公害対策特別委員会を開会いたします。  公害対策基本法の一部を改正する法律案公害防止事業費事業者負担法案騒音規制法の一部を改正する法律案及び大気汚染防止法の一部を改正する法律案、以上四件を一括して議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 渡辺一太郎

    渡辺一太郎君 公害の問題につきまして若干御質問いたしますが、連日御答弁いただいておりますので、あるいは重複することになるかとも思いますが、その点は御了承賜わりたいと思います。  まず第一に、公害行政機構についてお尋ねしたいと思います。  いまや、公害対策という行政需要は、あらゆる省庁にわたっていることは申し上げるまでもないと思います。しかしながら、現行縦割り行政組織におきましては、所管ばらばらでございますので、こういった行政需要に対処するわけにはいかないと思うのでございます。これらのおもなるものを統合いたしまして、センターをつくり、行政統一的企画総合調整的な実施の推進をはかる必要があることは、これまた申し上げる必要もないと思うのでございます。総理府に、ことしの七月三十一日に公害対策本部が発足したのも、こういった客観的背景に基づくものだろうと思うのでございます。しかしながら、この本部は、閣議決定によってできたものでございまして、法的に根拠がないのでございます。したがって、事実行為として、総合調整やあるいは企画をやっているものだと思うのでございます。したがいまして、組織も活動も、全くとりあえずのもの、臨時的なものというようなものでございます。幸いに、山中長官政治力で、かなりの成績をあげておられますことは、ほんとうに敬服に値するところでございますが、しかしながら、このような組織でいつまでも続けていくというわけにはいかないんだろうと思うのでございます。そこで、今後は総理府に、法令に基づいて各省庁のある程度の事務を統合して、公害対策部局を設け、より強力、統一的に公害行政を推進する必要があると思います。  長官は、さきの連合審査会で、公害対策室をつくるお考えがあるように承りましたけれども、その対策室は、どこに所属して、どんな組織であるかが明らかではございません。今日の状況を見ますると、公害対策会議あるいは公害対策審議会総理府に置かれております。しかし、改正しようとする案によりますれば、その庶務は内閣官房にあるわけでございます。公害対策本部内閣にはあるが、公害に関する法案取り扱い等総理府でおやりになっておるわけです。このように、総理府内閣の間にごちゃごちゃになっておりまして、非常に理解できがたいものがあると思うんでございますし、また公害基本法第十九条に基づき、内閣総理大臣特定地域公害防止基本計画を策定するのでございますが、どこでその事務を取り扱うのか、明らかではないのでございます。また、公害防止事業費事業者負担法所管官庁も明らかではないと思うのでございますが、これらは、ひっきょう、現行公害対策本部法令上のものでなく、かつ、臨時的なものであるということに起因しているのではなかろうかと思うのでございます。  そこで、臨時交通安全対策本部内閣にできておりまして、現在では、総理府設置法改正して、総理府交通安全対策室をつくっているように、公害対策についても総理府に強力な部局をおつくりになる考えはないのか。あるいは、この公害対策と申しますと、非常に臨床医学的なにおいがいたしますが、保健衛生的な感覚で、野党の御提案ではございますけれども、環境保全省というようなお考えはございますかどうか、そして、それらに対しまして強力に国政を統一していくためには、国務大臣をもって担当させるというようなお考えはあるかどうか、山中長官お尋ね申し上げたいと思います。
  4. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) いまの御議論を三つに整理して、まず第一は、現在の公害対策本部とは、という、その性格の位置づけから入りたいと思いますが、いまの公害対策本部は、先ほどお話にありましたように、閣議決定をもって設置されたものでございます。でありますので、これは内閣法の第六条による——本部長たる内閣総理大臣、たまたま一致いたしますから、この内閣総理大臣が各行政機関の長を、閣議決定を経た方針に基づいて、指揮監督、指示というような権限を持つ、こういうことが背景にありまして、したがって、総理府でなく、いわゆる総理府の長たる総理大臣というものは各省庁の行政機関の長たる大臣を指揮できないことになっておりますから、それをもって、内閣に置くということにしたわけであります。これは、一に、国の行政ばらばら行政を少なくともしぼり上げて、政府の意思を一本にしぼるためには、総理大臣内閣法に基づく権限を行使する以外にはないということで出発をいたしました。でありますから、私は、衆議院連合審査で、ずばり言ってこの公害対策本部性格はどういう性格なんだと言われて、新選組ですかなあという答弁をして、まあ満場爆笑というような一幕もあったわけですけれども、そういう意味では、認知された私生児みたいなことになるかもしれません。表現もちょっとおかしいかもしれませんが、要するに、ちょっと不安定な存在だ。しかし、それはとにかく、野党から公害国会を開けという、臨時国会の要求がありましたので、憲法の定めによって開かなければならないし、また、政府が自発的に公害国会というものを開く客観情勢というものが、国際的にも国内的にもあるということで、そのための準備をするために本部ができたわけです。  そこで、このようにして法律案を、一応現時点において作業のでき上がったものすべてを提案をいたしまして、政府姿勢の、法律における輪郭を明確にいたしましたから、さてこれからはどうするのだという問題が一つございます。それが第二点になるかと思います。これらの性格を持った本部を……。このままでは公害対策基本法は明らかに総理府所管する法律となりますし、法律には明示してありませんが、提案の表紙に総理府と書いてありますように、公害事業費事業者負担法も、これまた同じく総理府所管する法律になります。この場合において、公害対策本部職員は、その法律作成には努力をいたしましたものの、それの所管職員であるかどうか、はなはだ疑問になるわけです。そこで、私が申しました対策室を設けたいということでございますから、これは官房と申しましたが、それは内閣総理大臣官房たる総理府に置くわけですから、これは総理府の中の対策室公害対策室というものになっていく。これで、あと新規の人員を求めるわけにもいきませんので、幸い各省から選び抜かれた者が来ておりますから、この諸君を一応形式上各省を脱藩させまして、そして二足のわらじをはかせるということで、公害対策本部職員であり、同時に総理府に置かれる、新たに置かれる公害対策室職員であるという、まことに苦肉の策をとっておるわけであります。  そこで、この第一、第二点を踏まえて、このままでよろしいかという御疑問については、これはたびたび繰り返された問題でありますが、最終判断総理です。これは、あくまでも総理が、どのような機構をもって臨むかについて決断を下されなければ、私自身がどうやろうといっても、なかなか内閣法改正の問題でございますから、そう簡単にいく問題ではありませんが、しかし、スエーデンやあるいはイギリスやアメリカ、そういうものを見ておりますと、この世界の傾向の中で、日本公害立法というものが、かりに世界に冠たるという表現が当たるとしても、世界に冠たる法律をつくらなければならないような情勢が、また世界に冠たる公害の現状を呈しておる事実も、私たちはこれは反論できない点がございます。そうすると、やはりこれに立ち向かう姿勢というものは、諸外国よりも日本はもっと進んだ機構、あるいはそういう運営あり方についての確立されたもの、諸外国日本に対して非常な興味を示し、日本に対して勉強したい、資料を送ってくれというようなことがあると思うのです。そのためには、結論として、お話のように、専任大臣のもと、環境保護省みたいなものが設立されることが望ましいと私は思うんです。しかしながら、いま、唐突の総理の指名ではあったにしても、本来の総理府総務長官たるの任務と全く関係のない公害担当大臣を拝命して、全力をあげております私の立場から言えば、泣きごとを言ってはとてもやっていけませんから、役所をつくって大臣を設けてほしいとは言えません。しかし、静かに客観的にながめてくるときに、今日までの四カ月間の貴重な作業の体験を踏まえて、やはり日本は、ある意味において、世界の、いい意味ほんとう先進国になるためには、そういう機構というものも必要ではなかろうか。しかし、専任大臣を任命することと、大臣を増員して任命することとは、私は必ずしも一致するものではなかろうと思います。これは私の判断でございます。
  5. 渡辺一太郎

    渡辺一太郎君 詳細な御答弁でございまして、了承いたしました。  それでは次に、公害防止計画についてお尋ねをいたします。  昨年五月二十七日に、千葉、三重及び岡山県が、公害対策基本法第十九条に基づいて総理大臣から策定を指示された公害防止計画につきましては、関係各省とも十分な協議の上、この十二月に承認されたのでございます。また、新たに京浜工業地帯尼崎工業地帯基本計画が策定されることとなったのでございますが、この計画は、環境基準の設定と同様に、基本法に定められている公害防止の諸政策のうち最も重要なものでございまして、各般の施策を総合的計画的に実施しようとするものでありますが、この計画は、大体昭和五十年までの短期間にその事業をすべて実現させ、実効あるものにしようとするのでございますが、地方公共団体にとっては、財政上相当の困難が予想されると思うのでございます。  ちなみに、千葉市の公共下水道事業を見ますると、四十一年から四十五年までの事業費は約四十一億円でございます。四十六年から五十年までの事業費については約六十億円で、その割合は一・四七倍と増加しているのでございます。また、ごみ処理施設事業につきましては、四十一年から四十五年までの事業費は約六億円でございましたが、四十六年から五十年までの事業費は約四十六億円と、その割合は七・四倍にも達し、公共下水道ごみ処理施設、さらに屎尿処理施設を合算いたしますと、その計画年度事業費は、平年度事業費の二倍以上になっているわけでございます。また、市原市におきましては、千葉市の場合と異なりまして、その割合ははるかに大きく、数倍強の負担額となっているのでございます。  このように、関係地方公共団体財政は急激に圧迫せられると思うのでございまして、関係地方団体は機会あるごとに政府に特別の財政措置立法化について要望し続けてきたと思うのでございますが、このことにつきまして政府はどのようなお考えを持っているのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  6. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 基本姿勢は、統一見解で示したとおりの姿勢でございます。地方自治体に、この防止計画以外の各公害についても含めて新しい公害対策を打ち立てたことによって負担の過重をしいることはしないということを言っておりますが、ただ、この公害防止計画そのもの内容分析をいたしますと、地方自治体負担が確かに計算上飛躍的にふえます。ところが、一方、自治体の、これらの進出企業等に関するあるいは固定資産税なり、事業税——は県ですが、住民税法人税割等々のことを原因とした、いわゆる地方の単独の税収というものも相当またこれが伸びるわけです。でありますから、単純に計算しますと、現在の防止計画内容計画遂行にあたって、いまのままの補助率、いまのままの財源手当でも完遂できないということはないという一応の計算もあるわけです。しかしながら、これは公害防止計画基本法に基づいて遂行していく、それは国家的な仕事として、それぞれの地域計画を承認する総理大臣行為が伴うわけですから、これらの姿勢から考えるときに、やはり大蔵大臣も私の統一見解に異議はないということを申しましたように、まず国がそれに対してどのような財政上の措置をとり得るのか、そうしてその次に、地方自治体のそれに対応する財源について国がどのような措置をとるのか、これは、国の措置は特別な起債措置その他も含めてですが、これらの問題はやはり検討しなければならない。ことに、収入がそれに対応して異常にふえていくからカバーできるという議論もありますが、収入がふえていくことによって、それが起債の償還の財源になっていくという見方をすれば、やはりここは短期間に投入していく地方自治体負担額については、やはり起債等肩がわりをしておくということのほうが、地方自治体財政運用に、ぎくしゃくさせないために必要な措置であろうと考えますので、私としては、これは地方債の問題でもございますから、自治大臣並びに大蔵大臣等も含めて、予算年内編成がありますれば、文字どおり至急にこの問題のあり方について具体的な議論を進めてまいるつもりでございます。
  7. 渡辺一太郎

    渡辺一太郎君 ただいま長官から詳細に御説明いただいたんでございますけれども、やや長官のお考え財政収入の増ということに大きく期待されているようでございますが、公共団体は、単にこの公害の問題だけでなく、あるいは急増の教育施設、あるいは立ちおくれている公共資本の投資というようなことに、かなり財源を必要とするのでございまして、いわば、公害基本法に基づきまして特別に処置するというような事案につきましては、重ねてお願いしたいことは、地方財政がこのことによって圧迫をされない、あるいは少しぐらいの圧迫はいいけれども、たいへんに圧迫されないように格別の御配慮をお願い申し上げたいと思います。  それから次に、排水基準違反測定についてお尋ねを申し上げたいと思います。  排出基準違反については、現行法は勧告という中間の方法がございましたけれども、改正法によれば、違反すなわち処罰というストレートな関係に置かれていると思うのでございます。たとえば、水質汚濁防止法案第十二条には、「排出水を排出する者は、その汚染状態当該特定事業場排水口において排水基準に適合しない排出水を排出してはならない。」としてありますし、第三十一条には、「第十二条第一項の規定違反した者は、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」と書いてございまして、直ちに、違反・即処罰ということになっております。そうしますと、処罰されるかどうかということは重大な問題でございますので、それをきめるきめ手となる測定技術だとか分析技術というものが確立されていないと、非常に無用の混乱、不当な事態を招くおそれがあると思うのでございます。この点で大幅に権限の委譲を地方公共団体になさいましたけれども、各地方公共団体体制というものが十分整備されているかどうかということにつきましては、私は、遺憾ながら、大部分の公共団体におきましては貧弱なものだろうと考えるのでございます。そこで、この体制整備につきまして具体的なお考えお尋ねしたいと思うのでございます。  それからまた、地方公共団体が行なう各種測定の機材だとか、分析機械整備には多額の費用を必要とするものでございますが、これらに対する国の助成措置についてはどういうふうにお考えになっているか。さらにまた、地方公共団体においては、公害を担当させる技術職員確保及び育成が非常に困難であろうと思うのでございます。そこで、地方団体としては公害担当職員を充実させなければならないけれども、これに対して、政府は、たとえば公害大学というようなものをつくって、公害担当者育成をされるようなお考えがあるかどうか。  以上の諸点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  8. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 初め私から基本的な問題についてお答えいたします。  第一の地方の実務に当たる、すなわち直罰規定を受ける基準監視測定、これがやはり一番大きな問題でございますから、これが誤っていて直罰を受けた場合には、これはやはり企業者もかわいそうだということは否定できないと思います。行き過ぎにもなります。そこで、やはり地方職員の新たなる、最も最新の、今日の公害防止対策なり、あるいは新しい法律に伴う諸規制等実態等、これらを十分研修させる必要があることは論を待たないわけです。現在地方におります職員は、数はまあ三千四十六名ほど数えられるようでありますけれども、しかし、その質が、今日の公害対策について、この法律の中で各種法で定められた地方自治体への大幅権限を受けて、それを十分に、直ちに行使できるような質であるかというと、はなはだ心もとないと言えば地方に失礼ですけれども、実情は、そのままではいけないという実情があると思うのです。そこで、これもまた総理判断事項でありますが、研究機関というものを国立公害研究所というもので一本にしぼって、あるいはできるかという検討事項がございます。これがもしできますと、これに附属して国立公害研究所地方公務員研修センターみたいなものが可能になると思います。しかしながら、これは非常に大事なことでありますから、現在、厚生省はじめ、その他各省ばらばらに、それぞれの所管法律についての研修を行なってはおりますものの、これが十分であるとは言えない状況であることは間違いございませんので、でありますから、まず自治大臣等の構想が一部ありますが、自治大学の講師、あるいはその他の指導者確保をさせて、可能であるならば、当分の間、自治大学にそういう地方公務員公害対策に対する研修課程を設けて、そこで一定期間みっちり修業させて、最新法律に伴う最新公害の態様に対処する技術の習得、あるいは知識の修得等を終えさせて、そうしてこの法律運営に万全を期せしめるよう、これがやはり一番大きな国の責任ではなかろうかというふうに考えているわけでございます。  あとのこまかな点は、所管省から説明をしていただきます。——じゃ、私から、これはもう答弁はしていることでございますが、八月末で締め切りました大蔵省に対する各省公害対策関連予算——関連予算と申しますか、公害対策そのもの費用というものは、その後作業いたしまして、今回の国会提出した法律というものの施行に伴う必要な経費、たとえば統一見解の中で、委任事務等については国が財源措置を講ずるというようなことをやっております。こういうふうなこと等もございますから、やはり新たに現在の要求されている各省の金額に、今国会法律が通ったという現実を踏まえて、法律の新しい改正制定事項、こういうものに伴う必要な予算というものを私の対策本部各省から全部出していただきまして、それを新たに大蔵省最終査定に間に合うように追加要求することも必要であろうかと考えます。これらの細心の、手抜かりのない措置はとっていきたいと思っております。
  9. 渡辺一太郎

    渡辺一太郎君 ありがとうございました。何ぶんにも処罰ということにつながる問題でございますので、十分なるお手当てのほどをお願い申し上げたいと思います。  次に、大気汚染観測体制の充実について厚生省と通産省にお尋ねをいたしたいと思います。  大気汚染防止法改正案第十六条では、ばい煙排出者ばい煙発生施設にかかるばい煙量またはばい煙濃度測定し、その結果を記録しなければならないとするとともに、第二十二条には「都道府県知事は、大気汚染状況を常時監視しなければならない。」としてあるのでございます。すなわち、個々の発生源におけるばい煙記録測定と同時に、環境全体の汚染監視をあわせて行なおうとするものでございます。しかしながら、それらの規定はいずれも努力規定でございますので、これを怠った場合の罰則もございません。これはちょっと甘過ぎるのではなかろうかと思うのでございますが、ばい煙排出者のうちの一定規模以上のもの、あるいは特定種類のものについては測定記録を義務づけて、これに違反した場合には罰則を科するというようなお考えを将来お持ちにならないかどうか、あるいは、そういったことが被害者発生源との因果関係あとで問題になった場合に、排出量濃度がはっきりと記録されておれば判断の材料になり得るものでありますから、義務づけをぜひする必要があると思うのでございます。第二十二条の知事による常時監視につきましては、義務づけることによりまして、監視に必要な施設の設置については必要な費用の一部を国が補助するというようなことにすべきではなかろうかと思うのでございます。さらに、発生源測定記録知事の設置する常時監視施設に直ちに伝達され、緊急時においては監視施設から発生源に指令が発せられるような自動的なシステムの拡充が今後必要になってくるのではないかと思うのでございますが、大阪府では、現にこのようなテレメーターシステムというものが採用されているそうでございますが、今後、全国の主要都市、工業地帯にこのような方式をとるように、国は技術的にも財政的にもいろいろと考え、かつ、援助をせられるべきではないかと思うのでございますが、これらについて御所見を承りたいと思います。
  10. 橋本龍太郎

    政府委員橋本龍太郎君) いま渡辺先生が御指摘になりました点、第一点からお答え申し上げたいと思います。確かにゆるいという御批判も出るかもしれません。しかし、御承知のとおり、排出基準のほうはかかるわけです。そして、それに違反した場合には直罰が直ちにかかるわけであります。必ずしも私どもはこの条文の上において義務づけまでしなければならないとは、今日の時点では、考えておりません。むしろ、排出基準違反した場合の直罰というものがある限り、私どもは、この体系でだいじょうぶ処置していけると、まず第一点の質問について、考えております。  また、そのあとお尋ねを続けていただきました都道府県知事の常時監視体制整備、そしてそれに付随していまお話のありました、すでに一部で採用しているテレメーターシステム等の各ブロックごとへの採用、そうして、それに対する国及び国から地方自治体への財政上の助成措置等、これは確かに先生の御指摘のとおりの点であります。今日までも、常時監視体制については国も助成してまいりましたし、自治体もまた、それなりに努力してまいりました。今回のこの一連の法改正とともに、私ども自体も、なおその点に対しては心を使っていかなければならないと考えております。
  11. 渡辺一太郎

    渡辺一太郎君 私も、この報告の義務というものを必ずしもそう強くしなければならぬというような強い意味もないわけでございますので、運営によって実効があがるようにされることをお願いしたいと思います。  それから次の問題でございますが、地盤沈下についてお尋ねしたいと思うのでございます。  私の出ております千葉県を例にとって恐縮でございますが、江戸川下流地域の浦安、市川、船橋地区では、最近とみに地盤が沈下しておりまして、その勢いは非常なものでございます。浦安地区では、地盤沈下のために亀裂ができて、小学校の改修工事を余儀なくされたり、船橋市内では墓地が水没の危機に瀕したり、満潮のとき通学路が冠水して、児童がくつを脱いで通学するような状態が起こっておるのでございます。市川市では、四十四年には二十四センチ、十年間に約一メートルの沈下をしているというようなことでございますが、その沈下の原因としては、天然ガスの採掘、江戸川上流地域の地下水のくみ上げなど、いろいろな原因があげられておりますが、決定的なものはまだつかんでおらないというのが実情だと思うのでございます。公害対策基本法では、公害の種類の一つに地盤沈下も規定されているのでございますが、有効な対策は現在講じておられないと思います。今回御提案公害関係法案の中には、地盤沈下に関する法案提出されていないのでございますが、この地盤沈下について、法案提出の以前に、政府部内ではそういった問題を検討されたのかどうか。現在では、工業用水法あるいは建築物用地下水の採取の規制に関する法律、いわゆるビル用水法あるいはその他鉱業法等もございまして、これらの問題に対処しているのでございますが、それぞれの制限がありましても、これは不十分だと思うのでございます。したがって、将来こういう地盤沈下ということに焦点を合わせて総合立法をおやりになるお考えがあるかどうか。これは総務長官にお伺いを申し上げたいと思います。  それから沈下のおもな原因が工業用水の大量くみ揚げであるということも、推定できないこともないところもございます。そういうことであるならば、くみ揚げの規制を強めるとともに、工業用水道の建設にもっと意欲的に取り組むべきではないかと思うのでございます。さらに、地下水脈の特性からいいまして、沈下の原因が非常に広域にまたがっているということも考えられるのでございます。したがって、地下水脈等、これらの枯渇の原因調査を広域的に広く実施いたしまして、対策に広域性を反映させる必要があると思いますが、この点につきましての御意見を伺いたいと思います。  また、国の規制の権限のある種類のものを現在では地方団体に委譲してございませんが、これらを知事にある程度委譲いたしまして、具体的な措置がとり得るようにしたらどうかという点につきましても、あわせて御所見を伺いたいと思うのでございますが、通産省の方にお尋ねをいたしたいと思います。
  12. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 今回の提出法案の中に地盤沈下関係そのものずばりの法律が出ていないことは、おっしゃるとおりでございます。実は、大阪等において非常に成功した例というものがございますので、われわれとしては、これを念頭に置いて、何らか新しい法律というもので一本にまとめることはできないだろうかということをいろいろ考えてみたわけです。しかしながら、結論から申しますと、公害防止事業費事業者負担法案等の中で防潮堤のかさ上げ等をその対象にする、もちろん、工業用水道施設等について、いわゆる布設時の先行負担もさせるかわりに、場合によってはそれは使用料一本でいってもいいとか、いろいろな感触は出しておるわけですけれども、しかし、地盤沈下そのものに対して対処する一本の法律というものは、たいへんにむずかしいわけでございます。一時は、もちろん、工業用水、ビル用水の地下水くみ上げが犯人だということでございましたから、深いところならいいだろうということで、洪積層まで掘り下げて、そのくみ上げ口の大きさとか、いろんな水量等をきめてみたわけでございますけれども、しかし、なかなかそれだけではないらしい、もちろん、性格を異にするものも、天然ガス採取に伴うものが別なケースとしてあるわけですけれども、水脈の関係から、上水よりも地下のものを念頭において配慮したい、地下水だけではだめだし、また、地下水も深さだけではだめだというような議論等もいろいろ入り乱れておるわけでございます。そこで、私たちとしては、これをもう少し正体究明、というのも大げさですけれども、地盤沈下というのは重大な問題ですし、外国あたりにおいては、天然ガスのくみ上げに伴う地下水の採取について、ほぼ等しき量を還元しておるというような国等もあるようでございますが、これらも他山の石としながら、今後、これはやはり一地域の問題であっても、典型的な公害であることは間違いございませんので、これはどのような形がきめ手になり得るかという問題について、いまの一例である工業用水道というものは、もちろんこれは重点的に布設していかなければなりませんが、その面の努力は現実に進めるとしても、法律の形としていまここで一本にするについては、そのような背景を持っておりますために、大阪のようには簡単にはまいらないということでございます。この点は、ひとつ御了承賜わりたいと思います。
  13. 莊清

    政府委員(莊清君) 通産省からお答えいたします。  法律制度の整備の問題につきましては、いま長官からお答えがございましたけれども、工業用水法の問題につきましては、御指摘のございましたような運用上の問題等も多々ございますので、通産省では、現在、審議会を設けまして、今後の運用の改善なり、制度のあり方について総合的な御審議をいただいておる最中でございます。この答申を得ましたならば、それに基づいて通産省として善処をいたしたいと考えております。  なお、地盤沈下地帯におきます地下水のくみ上げ制限に伴います工業用水道の建設ということに対する国の補助の問題でございますけれども、従来から、工業用水道の建設にあたっては一般会計から補助金を地方自治体に交付しておりましたけれども、御指摘のございましたような地下水のくみ上げ問題というのも、広域的な見地から検討すべき必要が非常にございますので、くみ上げの制限についても広域的な見地から前向きに検討いたしますとともに、工業用水道の建設についても、そういう地盤沈下地帯は今後も引き続いて広域的な見地から十分の予算措置を講ずるように、通産省として目下努力いたしておるところでございます。
  14. 渡辺一太郎

    渡辺一太郎君 あまり時間がございませんので、申し上げたいことがございますが、地盤沈下については地方公共団体にある程度の権限をおまかせいただくように将来お考えいただいたほうが、具体的な適切な処置がとられるような気がいたしますので、御研究いただきたいと思います。  それから次に、航空機による公害の問題についてお尋ねを申し上げたいと思います。  航空機の騒音につきましては、申し上げるまでもなく、騒音規制法では規制を受けておりません。別途、公共用飛行場の周辺騒音規制法によって、航路とか時間規制等をしているのでございますが、これは、現状では私はやむを得ないことと思います。しかしながら、航空機の騒音は、今後、ジャンボジェット機だとかSSTだとかいうような超音速機の開発、就航によりまして、非常に大きな問題になってくるのであろうと思います。現在、千葉の成田国際空港の建設にあたりましても、すでにこのようなことで騒音の障害が心配されておるのでございます。これに対しましては、被害住民側に対しては統一した理念と方針で十分な対策を講じていただく必要があることは申し上げるまでもないのでございますが、騒音を発生する側に対しても、たとえば、飛行場の構造を合理化、完全化していくとか、あるいは航路の規制、飛行時間の制限等を一そう強めていくというようなことも、もちろん当然のことではございますが、騒音防止のための国際協力を進め、騒音の少ない航空機の技術開発を進め、場合によっては、一定以上の騒音を発する航空機の就航を禁止するための国際条約の締結を推進するなど、積極的な手を打つ必要があるのではなかろうかと、こう思うのでございます。  それに関連いたしまして、二、三御質問したいのでございますが、航空機によって聴視が不良になる地区のテレビの聴視料の問題については、しばしばいろいろなところで論議されておるのでございますが、いまだにこの問題が解決しておりません。飛行機のために聴視が非常に困難な地域においては、私は、急速に聴視料を免除すべきだと思うのでございます。  それから、千葉県の木更津市の上空で航空路が集合いたしまして、そうして羽田へ入っていくというようなことになっておりますが、ために、木更津の市民というものは非常に騒音に悩まされておるのでございます。何か非常にむずかしいこととは私思いますけれども、木更津市街の上空が集合地点になっているというようなことは、もうちょっと、その地点をずらすなどというくふうができないものだろうかということをお尋ねしてみたいと思います。何か、標識灯が水中に移動することは非常にぐあいが悪いというようなことぐらいでは、私は理由にならないんじゃないかと思うのでございます。  それから、航空機の大型・高速化は、単に騒音問題を深刻にするだけではなくて、大気汚染にも影響してくると思うのでございます。超音速の大型機の排出する汚染物質の量は、一つのコンビナートの排出する汚染物質の量に匹敵するといわれておるのでございますが、これらの航空機の排出する汚染物質については、国際的にも国内的にも、これを規制するための明確な法制がないのでございますが、これを将来において規制する必要があると思いますし、また、国際間にこれを呼びかける必要もあるのではなかろうかと思うのでございます。先ほども長官が、いみじくもおっしゃられましたように、世界各国に先がけて公害の対策を確立すべきであるというお話でございますので、この問題につきましては好個の世界的な問題だろうと思いますので、各国に先がけて調査研究をすべきではないかと思うのでございますが、総務長官と運輸省の御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  15. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 運輸省のほうの御答弁が至当だと思いますが、確かに、今日の航空機時代というものは、もう、かつての鉄道を利用するような状態で国民全体が利用しておるということは、はっきり言えると思います。ただ、アメリカでも、SSTの開発に関連をしての問題でありましょうが、先般、環境保護局ができました。当初、環境保護庁であったようでありますが、そのときにも、運輸省所管の騒音の問題が、飛行機騒音と関連をして結論がなかなか出しにくくて、内務長官が辞表を出すまで徹底的にしぼり上げて独立の機構をつくったにかかわらず、騒音だけはとれないのだということをトレインさんが私に言っておりました。そういういきさつから見ましても、非常にむずかしい問題であろうと思うのです。ことに、現在の時点においては、これは全部一応木更津上空というところまで行ってから羽田のほうへ進入をするわけですから、その下の人たちにとっては非常に迷惑な話だろうと私もわかります。しかし、現在の航空機騒音に対する法律は、これは民間航空であれ、アメリカの飛行機であれ、自衛隊の飛行機であれ、その周辺ということになっておりますので、木更津あたりは、その周辺と読めるのか読めないのか。しかし、木更津から進入するということがきまったコースになっておるという場合においては、それらの解釈が成り立つのかどうか。ここらの点は運輸当局の答弁に待ちたいと思いますが、いずれにしても、騒音の形態、ことに航空機騒音というものは違ってまいりましたので、これらの問題は、機体構造なり、それらの問題も各国研究をしておるようでありますが、要するに、音のしないグライダーみたいなジェット機というものはあり得ないと思うと、やはり今後の時代に対応する航空機騒音というものに対する考え方は、相当やはり国際的にも日本自体も考えていくべき問題の大きな要素であろうと私も考えております。
  16. 金井洋

    説明員(金井洋君) まず、最初の第一点についてお答えいたします。  これから大型化、高速化されることは御指摘のとおりでございますけれども、これからつくられる飛行機については、ジェット機DC8あるいはボーイング707というような現用のジェット機よりも音は低いものでなければならないという国際間のとりきめがなされておりまして、わが国は西ドイツとともに最もきびしい条件を出してとりきめをするよう会議の席上きびしい規定を要求しております。たとえば、御承知のように、ジャンボジェットは、DC8あるいは707よりは音は低いというふうなデータが出ております。したがいまして、こと大型のジェット機に関しては、いまそういうふうに音が低いわけでございますけれども、将来の超音速旅客機SSTにつきましては、現在の試験中のデータによりますれば、相当音は大きい。しかし、これは将来エンジンその他を変えて、音の小さいエンジンをつくるとか、そういうことを考慮して音を小さくする方向に向いております。それからもう一つ、SSTによる——SSTは三万メートル以上非常に高い高度、いわゆる成層圏を飛ぶわけでございますけれども、ここは非常にきれいなところで、ここに入って排気ガスその他をまき散らされると、非常に地球に対して公害を与えるということで問題になっておりますけれども、こういう問題を討議する会議、ICAOといいまして、国際民間航空機関の中にそういう特別な部門がありまして、わが国もそれに出席して強硬に申し入れておるわけでございます。したがいまして、そういう公害問題その他につきましては、わが国の意見等を入れて、音の少ない、公害の少ないSSTが早く開発されるだろうということを期待しております。  それから二番目の、テレビの問題でございますけれども、現在、滑走路から五キロメートル、それから滑走路から横方向に一キロメートルの範囲内については、テレビの補償をしております。この五キロ・一キロメートルという線を、一応、将来これをもっと広げるかどうかということにつきましては検討したいと思います。  それから三番目の、木更津の騒音でございますけれども、このことにつきましては、木更津市長あるいは木更津市議会のほうからも要望されておりまして、運輸省としましては、何かいい軽減の方法はないかということで検討しました結果、第一の方法としまして、千葉県に御宿というところがございますけれども、この御宿から、木更津を通らないで羽田のレーダーで着陸誘導する方法を考えまして、一部これを実施しております。それからさらに、御承知のように、いまB滑走路というのが羽田にありますけれども、B滑走路を二千五百メートルに延長をする工事をしております。これが来年の二月に完成をしますと、現在C滑走路一本でございますけれども、C滑走路とB滑走路を利用して、御宿から、木更津を通らないで、レーダーによって誘導され着陸する機数が多くなります。ということは、木更津の上空を通る機数がそれだけ減るわけでございます。一応、これは非常にわずかではございますけれども、そういう努力もしております。  それから、先ほど御指摘されましたように、木更津には、羽田にあります計器着陸進入装置の一部であるアウターマーカーというのがございまして、このアウターマーカーから電波を飛行機が受けて、自分はいま木更津の上空であるということがパイロットにはわかるわけでありますけれども、こういうアウターマーカーがありますので、どうしても木更津を通らなければいけない。それではこれをどっかへ移したらいいじゃないか、こういうことも検討しておるわけです。陸上に移しますと、これは似たようなことになりますので、海中がどうかということで検討しておりますけれども、東京港へ出入りする船のじゃまにならないような地点で、どこかいいところがあるかどうかということで、いま検討しております。したがいまして、木更津の騒音につきましては、われわれも十分承知しておりますし、できるだけ軽減したいという方向で進んでおります。
  17. 渡辺一太郎

    渡辺一太郎君 御答弁ありがとうございます。  最後に、低硫黄重油とLNGの問題についてお見通しをお聞かせいただきたいと思います。これは通産省にお願いしたいと思います。  将来の電力事情というものは非常に膨大なものであることは、もう私申し上げるまでもないと思いますし、そのための火力発電というものの燃料も膨大なものであることも、おわかりのことと思います。その火力発電の燃料につきまして、現在では、京葉工業地帯では、大気汚染の六〇%くらいが火力発電から出されているということ、それからまた、火力発電が地元に対する貢献度というものが非常に薄いというようなことから、御承知のように、銚子に世界一の火力発電所を東電がつくろうとしたのを、地元民の反対で、あえなくつぶれたのも、そういった理由であると思うのでございます。そこで、火力発電に使います燃料につきまして、重油に低硫黄のものと高いものとあると思いますが、まず、低硫黄の重油の確保が、どのくらい、なお見通しを持っておられるのか。それから、脱硫技術の開発については、どのようにお考えになっているのか。つまり、高い硫黄を含んでいる重油についての硫黄を取る作業が将来必要になってくると思いますが、これについての技術の開発についてのお見通しを承りたいと思います。  それからもう一つは、LNG、液化天然ガスを、たしか入れておると思いますけれども、これらの液化天然ガスの確保が将来どういうふうになっているだろうか。火力発電ばかりでなく、あらゆる工場において、亜硫酸ガスを出さない燃料を使いたいという希望がたくさんあると思いますけれども、そういった小工場において、液化天然ガスというものの確保が将来どうなっているかということに不安を持っておりますので、できるだけ、こういうふうになっているということをお示しいただくならば、使用者も安心できるんではないかと思います。  以上の三つについて、通産省からお答えを願いたいと思います。
  18. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) お答えいたします。  まず、最初に、低硫黄重油の確保についてはどうかということについて申し上げますと、昨年の十二月に、総合エネルギー調査会で、低硫黄化対策部会というところで検討いたしました結果、報告が出されておりますが、環境基準を達成する中心としては燃料の低硫黄化が当面中心である、そのためには、重油脱硫の実施と低硫黄原油の輸入が推進される必要があると報告されております。御指摘の重油の低硫黄化につきまして、重油の脱硫装置につきましては、現在の段階で、直接脱硫、間接脱硫合わせて、三十七万バーレル・パー・デイの装置が完成しております。四十八年度までに必要な装置は、七十一万バーレル・パー・デイというふうに言われておりますが、現在、石油精製設備の設備許可とからめまして、これの達成を促進いたしておりますが、実現はできるというふうに考えておる次第でございます。それから、低硫黄原油の確保につきましては、御承知のように、世界で低硫黄原油に対する需要が各地とも高まってまいったということで、従来よりは困難になっておりますので、政府といたしましても、この確保につきまして助成を行なって確保をはかりたいと存じますが、目標の五千五百万キロリットルの輸入はできるであろう、こういうふうに考えておるわけでございます。  それからもう一点の、LNGの問題でございますが、御指摘のように、LNGには硫黄がございませんので、大気汚染防止上最も好ましい燃料であるということは御指摘のとおりでございます。すでに東京電力が南横浜の火力発電所でアラスカのLNGを利用して発電を行なっております。それからブルネイのLNGにつきまして、すでに輸入の計画が実施中でございまして、これはおそらく千葉の火力発電に利用されるであろうというふうに存じます。ただ、LNGが現在のところ、まだ原油のようには国際商品になっておりません。その理由といたしましては、一つは、百六十二度で液化するという非常に低温でありますために、タンクあるいは液化装置にかなり巨額の金がかかる、そのために、十年ないし二十年の長期にまとまった量の供給が確保されるという埋蔵量が必要でございまして、もう一点は、タンカーが非常に高くつくということで、これも長距離輸送に必ずしも適さないという事情が経済的な面でございますために、国際的商品にまだなっておりません。しかしながら、御指摘のような点がございますので、液化プラントの技術の開発あるいはタンカーについての技術開発を行ないましてコストダウンをはかるということで、できるだけこれを活用いたしたいということで、いま申し上げましたアラスカ、ブルネイのほかに、LNGの開発輸入を実現できるように、各地、豪州あるいは中近東等の天然ガスについても研究をいたしておる次第でございます。
  19. 渡辺一太郎

    渡辺一太郎君 いろいろと公害対策につきましては、心理的にこうしなければならないというような仕組みの規制がたくさんございますけれども、私は、それも必要ではございますけれども、ただいま申し上げましたような低硫黄の重油を使うことを政府が非常な努力をするというようなこと、そういうような、物理的に公害を出さないような仕組みにしてやるという、いろいろな行政の配慮というものが必要だと思います。したがって、公害立法で心理的に強制する反面、やはり手の行き届いた、そういった公害を出さないで済むような配慮をする行政をお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
  20. 占部秀男

    委員長占部秀男君) これにて暫時休憩いたします。    午前十一時十六分休憩      —————・—————    午後零時二分開会
  21. 占部秀男

    委員長占部秀男君) ただいまから公害対策特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行ないます。
  22. 古池信三

    ○古池信三君 公害関係の諸法案につきましては、関係委員会の連合審査あるいは本委員会におきましても、いままで同僚委員の各位からいろいろな質疑がなされ、それぞれ違った角度から検討が加えられてきたのであります。したがって、私は、できるだけいままでの質疑応答と重複をしないように若干の質疑を行ないたいと思います。なお、こまかい点につきましては、必ずしも大臣の御答弁を願わなくても、政府委員の御答弁でけっこうであります。  まず、近年わが国の産業経済が非常な高度成長をなした、これは世界周知の事実でありますが、この産業の急速な発展に伴いまして、国民生活の上に年々公害が著しくなってまいった、この事実は、まことにわれわれとして遺憾にたえない次第であります。そこで公害問題というものが、いまやわが国における重大なる社会問題あるいは政治問題として、朝野をあげて論議をされるに至った、これまた当然のことと言わねばならぬと思うのであります。私どもが国民の生命を守り、また、国民の健康を保持していく、そういうことが政治の第一の要諦であると考えるのであります。今日、政府もまたわれわれ立法機関に携わる者もともに、熱心に公害防止の問題と取り組んで、そのすみやかな解決のために、連日こうして努力を続けておりまするところのこの臨時国会、これはまことに意義の深い国会であると言わざるを得ないのであります。望むらくは、臨時国会はきわめて短時日でありまするけれども、実りの多い国会であるよう、それを私は念願いたす次第であります。  さて、本年の初めでありましたか、政府においては、公害の問題が各省庁にまたがる問題であり、また、きわめて重要な問題であるということからだろうと思いますが、中央公害対策本部というものを設置されまして、その本部長には佐藤総理みずから当たり、また、専任の副本部長としては、平素きわめて職務に熱心で意欲的で活動的で、まあ世にいわゆるモーレツ大臣といわれる山中長官を据えた。これは政府として非常に時宜に適した傑作であると私は思うのであります。その意味から敬意を表したいと思います。どうかひとつ、山中長官はこの問題にばりばりと勇敢に取り組んで仕事をしていただきたい。そして、国民のすべての期待にこたえられることを心から私は希望する次第であります。  そこで、まずお尋ねをいたしたい第一の問題は、公害対策基本法あるいはその他の関係法案の中で、公害対策基本法の例をとりますると、第一条の第二項に「前項に規定する生活環境の保全については、経済の健全な発展との調和が図られるようにするものとする。」、こう現行法にありまするものを、今回の改正において削除されたのであります。これにつきまして、山中長官の趣旨あるいはその意図について御説明を願いたいと思います。
  23. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 初めに、過分のおことばをちょうだいいたしまして、ありがとうございます。  私は、公害臨時国会というようなものを私たちが二度と開いてはならないんだと、これは初めであって終わりでなければならない義務を私たち政府が負っているんだという気持ちで全力を傾けておるつもりでございます。でありますので、法律の制定をもって終わるとは私ももちろん考えておりません。これだけの与野党の協力を得て法律が成立をいたしますならば、少なくとも、法整備の面からは、やはり諸外国の注目を浴びる整備ができると思いますけれども、その法律を駆使して、はたしてわれわれは子々孫々に対しても申し開きのできる公害に対する挑戦をなし得たか、あるいはまた、世界的に環境保全に対する日本姿勢を明確に打ち出し得て、諸外国の称賛と同感とを呼び得るものになし得るか、これは一にこの臨時国会が終了した直後から私たちが取り組まなければならない重要な課題だと覚悟いたしておるところでございますし、また、それだけに、この問題の意義というものはそれだけの価値のある大きなものだというふうに私は考えておるわけでございます。  そこで、御質問の、現行法の第一条第二項の生活環境にかかる経済との調和条項の削除の問題でございますが、私は、この問題は、経済との調和条項があったから公害対策ができない、今後あったらなおできないという問題でもないと思います。しかしながら、基本法というものは、ある意味では公害の憲法でございます。したがって、われわれは、内外ともに日本姿勢を示す場合に、三年前につくった法律が、三年後にはすでにその基本的な目標条項の基本理念を根本からゆさぶられるところに来ておるということは、これはいわゆる公害対策基本法としての本来の使命を達成していなかったものと私は反省をしたわけであります。でありまするので、第二項の経済との調和条項が、まさに私たち政府・自民党というものが公害に対処する姿としての、いわゆる昔で言うならば、ころびキリシタンの踏み絵というふうに、踏み絵的に政府姿勢を要求されておる、まず最大の個所であろう、場所であろう。しからば、この問題を私たちは削除することにちゅうちょがあってはならぬ。したがって、国会の中においても、あるいは世間から、自民党はその体質において基本法第一条第二項を設けざるを得ない政党なのである、あるいはその第一条第二項というものが設けられた範囲内においてしか、この私たちの後世にまで残さなければならない環境汚染、破壊への挑戦をどこか弱腰の性格を持った政治が行なわれることになるのだという誤解、あるいは批判というものにこたえるためには、端的にこの個条を削除しなければならぬ、こう決心したわけであります。したがって、第一回の公害問題の関係閣僚協議会において、まず基本法第一条第二項の削除ということを明確にいたしました。  しかも、その削除だけでは、これは単に文章を、あるいは法律をいじくったにすぎませんので、これに高い理念というものを求めなければならない。そこで、第一条の目的の中に、憲法の条章を受けた健康にして文化的な生活というものが国民の本来権利として保有するものである、その国民の権利に対して、この法律はこたえようとするものであることを明確にいたしました。しかしながら、日本公害防止というものは、あくまでも公害という現象に立ち向かう姿勢を示しておるにすぎないわけでありますから、もう少し私たちは国際的に、環境というものを保全し、破壊に挑戦をするという姿勢をこの公害基本法の中でも求めていくべきであるという考えから、第十七条の二として、緑地の保全その他自然環境の保護に政府がつとめるという決意を表明することにいたした次第でございます。それらのものはいずれも相関性を持っておるのでございますので、質問に答えて以上の答弁をしたわけでありますけれども、そのような背景をもって第二項を削除したということを御了解賜わりたいと思います。
  24. 古池信三

    ○古池信三君 ただいまの御答弁了解いたしました。  そこで、いま少しお触れになりましたが、公害対策に関する憲法であると、こう言われる公害対策基本法の第一条に、従来なかったこの目的の中に、はっきりと憲法の精神を取り入れた目的というものを明瞭に掲げられたということは、一そうこの法律性格というものをはっきりいたしまして、たいへんけっこうな改正だと思いました。私は、その点について賛意を表するものであります。  そこで、今日わが国の国民の福祉はどうかと言いますると、もとよりこれで十分である、完全であるとは言えないと思いまするが、しかしながら、年々福祉予算は増大いたしております。国民の福祉が向上しておるということは、これまた周知の事実であると思うのであります。しかし、これらはすべて予算につながる問題であります。言いかえれば、国の経済力が充実しなければ国民福祉の向上ということはあり得ない。その一国の経済力の基本というものは何であるかと言えば、産業経済の成長にあるということは、いまさら申すまでもないと思います。したがって、わが国の今日までの社会福祉の増大が経済の発展にきわめて多く負うておるということを申し上げて過言ではないと思います。すべて物事には、よい面もあれば、また反面、悪い面もある。そこで、公害というのは経済の発展に伴う悪い面であるわけであります。今日、この悪い面、あるいは悪い影響というものが、しきりに唱えられておりまするけれども、これに対しましては、私どもはあくまでも最善の努力を払って、これを矯正し、これを排除し、これを防除せなければならぬと思うのでありますけれども、また一面、その経済発展のもたらしたよい面というものも決して忘れてはならぬ、かように考えるものでありますが、これについて長官の御意見を伺いたい。
  25. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私たちは、人間として、日本人のみならず、去年の生活よりも今年の生活のよきものを求め、きのうよりもきょうの生活、きょうよりもあすの生活を豊ならしめんとしていることは、これはそういう基本的な欲望として当然のことだと思います。しかし、それは国の経済繁栄に伴って、それが国民の上に享受される前提であることは当然のことであります。経済成長が全くない国において国民生活のみが快適にして国民の求める欲望を満足せしめ得るような国はあり得ないことは、これは通則であろうと私も思うわけであります。しかしながら、わが日本の極度に原材料の少ない環境の中において、それのすべてを輸入に仰ぎながら、なおかつ日本人の能力と技術において輸出を手段として非常にすばらしい発展を遂げてきたこのことは、世界が、ロンドンのエコノミスト誌のたび重なる日本経済に対する論評を見るまでもなく、ひとしく認めるところであり、われわれ日本人も、くすぐったくなるような、未来学者のハーマン・カーン氏の予言等は、ちょっとどうも買いかぶりであるというふうに思うわけでありますけれども、しかし、私たちがここで謙虚に反省をしてみなければならないことは、われわれはそのように苦しい環境を克服できるという自信のもとに、本来人間の幸福とは何か、すなわち、快適な生活、きょうよりもあすが、よりよき生活であるための努力というものは、すべて経済成長の異常なスピードのみによって達せられることに目を奪われていたのではなかろうか。  これは結果論であって、政府は何をしていたと言われれば、反省しなければならない点もあります。しかしながら、いまここに求められることは、私たちいま生きている者たちだけの問題ではない。すなわち、われわれは経済成長を手段として幸福を追求していかなければならないけれども、それには、その成長の経済の中身の質という問題が伴ってくるのだ、したがって、われわれは、よりよい質を求めた経済の発展を手段としてわれわれの生活の向上というものをはかっていかなければならない。ここに、われわれの考え方の大きな曲がりかどがあるのだと思いますし、また、私たちは、その曲がりかどを、遠心力に振り回されて振り飛ばされることなく、しっかりと、かじをとりながら、これを克服し得た国として、やはり世界の中で着実に国勢を伸ばしていかなければならない国であると考えているわけであります。その意味で、私たちは、経済が量より質の本質の追求に入ってきた時代であるが、これを克服し得るものであり、われわれは克服する能力を持っている。われわれの英知が生み出した繁栄ならば、その英知による繁栄の陰に、処理し得なくなった不要なるものを、また英知をもってあるいは再生利用し、あるいは人間の生活に害をもたらすようなものを処理しないで置くようなことを克服していくという手段をも発見できるはずであります。でありますので、私は、国連やOECDあるいは日米会議等の今日までの過程等を振りかえってみて、日本は確かに、諸外国から見て特異な、公害による人命あるいは健康等に被害というものを与えるような国になってしまっている。しかし、私たちは、ここで勇を鼓して新しい挑戦を試みるならば、この克服においても世界に先がけてなし得る可能性を十分秘めておる民族であることを確信いたしております。  でありますので、今後私たちは、われわれが総力をあげて取り組んで、衆議院においても、野党の御意見も、多数を持っております自民党も謙虚に耳を傾けて、修正すべき妥当な点は修正もいたしてまいりました。でありますので、これはやはり短い期間に与野党が合意しつつ、偶々の部分については立場上賛成できない点があるというようなことが、かりにあったにしても、私たちは、ここでこの国会を、おことばのとおり、非常に実りのあるものであったということをもって、私たちの、単に一九七〇年代のみならず、私たちが後世の子々孫々に伝える日本列島のあり方について勇断をもって前進をしなければならない意味のある国会であるというふうに意義を感じておる次第でございます。つまらないことを申しまして恐縮でございました。
  26. 古池信三

    ○古池信三君 最近の日本の経済の成長の率はきわめて高い。平均年一四、五%と、こう言われておるのでありますが、政府において、本年の初めでしたか、設定されました新経済社会発展計画によりますと、今後五年間、年平均一〇・六%ぐらいにとどめたい、いわゆる高度成長から安定成長に持っていきたい、こういうお考えのようであります。そこで、公害の発生というものが経済の発展に伴って増大していくというたてまえから考えてみますると、それだけ経済発展のテンポがおそくなる、あるいは成長の率が低くなるということになれば、やはり公害発生の率というものもそれだけ低くなる、従来に比べまして今後は低くなるであろうという予想ができるかどうか、これについて簡単に御意見を承りたいと思います。
  27. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 人為的に、公害を克服するために経済成長を低くするという論法は、少し手段としておかしいかと思うんですが、経済成長の中身で質の問題を追求するためには、たとえば、アメリカにおいて保護貿易の一つの有力な論拠として、相当有力な財界人が、日本の企業がアメリカに向かってダンピングをしてくるのは、これは本来よき隣人として社会の中に存在すべき義務的な経費である公害防止費用というものを適当にごまかして、そしてそれに対する費用の分だけを安くしてダンピングしてくるんだという批判をしたことを、私たちは単なる一財界人の発言として受けとめてはならないというふうに考えております。そのようなことから、結果的には、公害防止に投ずる費用は、これはGNPの計算には入りますけれども、しかし、公害防止の機器を製造する産業というものが起これば、これはまたその成長は正しい意味の成長として乗っかってくるでありましょうが、少なくとも自分たちの収益に貢献せざる部門に対して相当大幅な、たとえば一〇%程度の投資を原則とするような時代が招来される、こういうことになるであろうと思いますが、そのような場合においては、やはり経済の収益率の低下ということは、私は、やむを得ない現象として、ここしばらくの間はもたらされてくるのではないか、その結果として経済成長率の鈍化という統計上の数字はもたらされることであろう、しかしながら、その過程において、日本経済は、質の経済というものを克服しつつある過程の、いわゆる数字としての成長率の鈍化である、その底には、それを克服し得て、なおかつ今度は雄飛に転じた際の経済成長率というものは、なおかつ日本世界で一番高い成長率をなしとげ得る国になるべきである、というふうに考えておるわけであります。たいして違いはないと思いますけれども、ただ経済成長を押えることが公害対策であるとは言えませんから、公害対策を実施することによる収益の低下が結局は経済成長の鈍化に結びつくであろうということの表現のほうを私としてはとりたいと思います。
  28. 古池信三

    ○古池信三君 今日いわゆる産業公害といわれている公害の原因は、ただいまも御議論に出ましたように、最近の急速かつまた顕著な日本の産業の成長発展にあると思うのであります。そうして、この日本産業のきわめて急速な発展の裏には、近年の技術革新というものがある、科学技術のすばらしい最近の進歩が日本の産業の発展に大きく寄与している、このことは、何といっても否定のできない事実であろうと思うのであります。そこで、逆説的でありますけれども、最近の公害の発生というものが間接的ながら科学技術の発達に伴うものであるということが言い得るならば、今度は、その公害を防止する、公害を抑制するという点において、科学技術の力を利用する、科学技術の力によって相当公害というものが防止できるのではないか、かように私は見るのであります。これについて長官のお考えを伺い、かつまた、日本の科学技術というものは相当国際的に高い水準になってきましたけれども、まだまだ十分とは言い得ないのであります。一そう科学技術の振興のためには政府は力を入れていただかなければいかぬと思いますが、山中長官行政官庁の関係から言えば御主管ではないと思いまするが、しかし、国務大臣として日本の科学技術の発展のために大いに力を入れよう、こうお考えになるかどうか、ぜひ私はそう願いたいので、その希望を含めながら御所見を伺いたいと思います。
  29. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私たちはそういう能力を持っているということを申しましたが、現実の各年における過去の日本技術輸出がどの程度行なわれたか、逆に、日本の企業は外国からの特許その他の技術を輸入して、それに対して対価を支払いながら成長しているのかという数字を見ますときに、大きなことを申しましたけれども、現実に日本の企業はどうも、ものまねで、そうして、それを取り入れていっては雄飛しているというきらいがはっきりとデータに出ております。でありますから、御承知のように、二年ほど前から議論のありましたところでありますけれども、科学技術の研究にそれぞれの企業が投資することについて税制上の配慮等も加えるようになったわけでありますが、しかしながら、基本的にはやはり国民の英知の結集のされ方が日本では問題があるのではなかろうか。アメリカでは、NASAの人員の大量縮小が財政上の理由によって行なわれた。ところが、それを一転して今度は公害の防止技術の開発に優秀な科学者を結集しようという動きがあるように聞いております。私は、それらの点は見習うべき点があるのではないかと思うのでありますけれども、ひるがえってわが日本の状態を見ますと、企業自身のそういう研究開発、技術の開発というものは、自分の企業の繁栄のためにのみ企業の中で循環をしておりまして、それが一般社会に広く応用されるところに至っておりませんし、あるいはまた、政府自身の足元を見ても、政府自身の研究機関はそれぞれ各省庁に付属して、りっぱな研究成果をあげつつありますが、政府行政の中においても、それが有機的に循環し、活用され、総合的な成果として国民に広く公表されて応用されていないきらいがある。われわれは、そのような意味から、これらの問題を、まず政府自身が、できるならば、公害技術研究所みたいなもの等も必要になるでありましょうし、あるいは、さしあたりはデータバンク等も取りそろえて、少なくとも日常報告をしっかりと保存をしながら、諸外国等との交流なり、あるいはお互いの研究開発なりに資する努力を開始するとともに、基本的には、言われたような、国家をあげて官民ともに日本人の優秀な技術が、研究分野においても、国民全体の幸福のためにこれが助長されて、飛躍していくように、われわれはあらゆる努力を惜しんではならないということを、いま考えている次第でございます。
  30. 古池信三

    ○古池信三君 大気汚染に関連いたしまして、日本の自然の保護ということについて御所見を伺いたいのであります。  普通、大気の中には酸素が二〇%ぐらい含まれていると言われております。私は専門家でありませんから、正確なことは存じませんが、それが、今日日本の工業都市の上空の大気の中には酸素は非常に減っている、十数%ぐらいしかないというように言われているやに承知しております。また一面、自然環境の中で、植物と動物の生態的循環が、人間の科学技術の発達によって破壊されつつある。最近、いわゆるエコロジーといいますか、生態学、これがさようなことを教えているように承知しております。そこで、日本では、国土の狭小、産業の発展、人口の集中、それらの点が総合されまして、特にひどいと言われている都市、あるいはまた農村におきましても、最近緑地の後退がまことに著しいものがあるのであります。そこで、わが国における緑の復活、また、これを保存していくという問題が非常に急務ではなかろうかと思うのであります。私どもは、わが党において、われわれ大和民族の心のふるさとと言われている飛鳥古京の保存のために議員連盟をつくって努力をしておるわけでありますが、これも幸いにして、飛鳥の地域はまだ緑が昔のごとくに残っております。これをぜひ残したいと考えておるわけであります。これが古都、古跡の保存ということのみでなく、やはり日本に残された美しい緑の自然というものを残そうという考えでありまするが、これが大気汚染法律と非常に重大な関係があると思います。この公害問題にからめて、日本の美しい自然の保存について、長官はいかにお考えになっておるか。また、これは主管省は厚生省であると思いますから、厚生次官からも御所見を承りたいと思います。
  31. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) まさに、その点が、私たちが後世に日本列島をいかに残し得るかという問題であろうと思います。アメリカの、あの自分の国内で原子力実験をやってもたいした被害が周辺に及ばないというような膨大な面積を持っている国においてすら、ニクソン大統領も、議会に対する勧告の中に、荒野を含む全土地の利用というものの計画をやり直せと、これが公害の出発点であるということを言っていることは、われわれとして顧みて、じくじたるものがあると考えます。しかし、幸いにして日本列島は、公害の発生からいえば不幸なことでありますが、人間の居住面積というものが非常に少ない。そして、国土の七割、六割というものが、少なくとも人間の生活から汚染されないままで、いわゆる緑地的なものとして山岳地帯が残っておる。この点は、ある意味において私たちはおくれてはおりましても、おそきに失することはない環境を持っておると思うわけであります。  余談になりますが、私沖繩に参りまして、西表島に参りました。これは、戦前はマラリア蚊の生息地で、何回入植さしても死に絶えてしまうというような悲惨な島であったために、だれも西表島の——木そのものはたいして価値はないんですが、自然林におのを加えようとはしておりませんでした。ところが、アメリカ軍が占領中に空中散布によってマラリア蚊を全部壊滅させたことによって、いま西表島は、観光開発か、あるいは自然の山を切って生活して、住民の生活を守るか、あるいはそれとも、現在世界に残された亜熱帯天然林としては全く一カ所しかない貴重な、おのの入っていない、千古斧鉞を加えていない場所であるということを残すか、これはこれから政府としても大いに議論をして、主として厚生省の国立公園指定の地域の範囲等について重点を置いて考えなければならぬということを痛感して帰ってきたのでありますけれども、私たちは、やっぱりそのようなことを見ましても、われわれの国土というものを、この美しい日本列島というものをわれわれは保存し、そして乱暴な開発その他から、これは具体的に建設省の開発計画、あるいは民間の宅造等の無制限なスプロール等も含めてのことでありますけれども、国全体として日本列島を再展望する必要があろう、したがって、土地利用政策というものは、これは日本の今後の公害政策の柱となるべきである、すなわち、公害産業等の立地の規制等も当然今後要求されてくるでありましょうし、私たちとしても、この日本列島の美しさというものを……。近くアメリカは、世界の陸地、海洋等の汚染そのものを調査監視するための人工衛星を、特殊な機能を持ったものを飛ばそうとしているようでありますが、この人工衛星等が見た地球というものを、最も美しい天体であった地球の中のどの部分が最も汚染されているかということが毎日観測をされるという事態も近く予想されます。そのときに、私たちは日本列島がきたない列島であるというそしりを受けることは断じてあってはならないということも考えておるわけであります。  たいへん抽象論ばかり申し上げるようでありますけれども、私たちとしては、今回の法律でも、十七条の二の「緑地の保全」その他を入れたことを申し上げました。これを受けて、われわれとしては、今回の国会に、さしあたり、まず国と県が責任を持つ国立・国定公園等について、さらにきびしい制度を適用する、あるいはまた、海洋汚染防止法でも、条約ならば油濁防止にとどめてもよろしいのですけれども、それを廃棄物まで含めて、ある意味では私は世界では一番進んだ立法だと思っておりますが、そういったことに踏み切っておるというようなこと等は、政府のこれに臨む姿勢の第一歩であるというふうにお受け取り願ってけっこうであろうと考えるわけでございます。
  32. 橋本龍太郎

    政府委員橋本龍太郎君) いま基本的な問題点について山中長官のほうから大半のお話がありました。私ども、いま山中長官から御答弁を申し上げましたことに、二、三補足をさせていただきまして、厚生省としての態度にかえたいと思います。  御承知のとおり、現在、自然公園法を本院において御審議を願っております。これは、公害という問題の提起から、逆に自然の回復力、自然の増加力というものをできるだけとどめておきたいという観点から今回改正を願っておるわけであります。しかし、現実問題として、私どもとしては大きな問題点が二つございます。  一つは、なるほど、わが国にはまだ山岳地帯を中心として非常に多くの緑地が残っております。しかし、都市部において、人口の特に集中しておる東京あるいは大阪といった大都市にも、都市の中における緑地というものがきわめて少ないという現実、これがわが国の最も大きな実は悩みであります。最近、光化学スモッグ等が問題になります一つの原因も、都市における緑地の不足、これが大きな原因であるということはいなめません。世界的に見て、わが国の都市部における緑地の保全の面積というものはきわめて少ない、これをいかに回復していくかということが私どもの一つの大きな問題点であります。現に、実は東京都と係争中であります。東京都の道路計画において、新宿御苑の一部を公園地域からはずし、高速道路をつくりたいというお話がまいっております。しかし、そこには、それこそ徳川時代から残る古いりっぱな木がたくさんあります。道路計画も重要ではありますけれども、そのために、ただでさえ少ない緑地を減らすことはできない、私たちはそういう考え方を持っております。  また、国立公園、あるいは国定公園、それ以外の地域における緑地、これについては全然別個な問題が実は存在をしております。アメリカ等の国立公園を見ました場合に、私どもとして一番うらやましいことは、国立公園の地域そのものが実は国有地のみで成り立っておるということであります。わが国において、国立公園行政あるいは国定公園行政というものをしてまいります上において最大の問題点は、国有地あり、公有地あり、私有地あり、その混在によって、わが国の国立公園というものがなっておる。そうして、その中には絶対に手を触れることのできない貴重な資源としての自然林もございます。原生林もございます。それと同時に、長いわが国の国土の歴史の上において、現在は非常に美しい景観の要素になっておりますが、人工的に造林をされてまいった地域、人工林がございます。これをどのように組み合わせて保護を加え、必要なものは植えかえを行ない、伐採を行ない、そしてわが国の自然環境を破壊しないようにしていくか、これが私どもに課せられたもう一つの大きな問題点であります。  しかし、いずれにしても、これ以上わが国の緑地の面積を減らしていくことだけは少なくとも避けたい、これが私どもの率直な希望であり、また仕事に取り組む上での基本的な課題であります。
  33. 古池信三

    ○古池信三君 最後に一言お尋ねをいたします。この臨時国会は、先ほども申しましたように、公害国会とも呼ばれるような重要な国会であります。したがって、政府提出の十四にわたる公害関係法律案は、すべて与野党間の協調によりまして、ぜひとも今期中に成立させることを希望をいたす次第であります。しかし、これらの公害規制の法律案というものは、ようやくその骨組み、その方向ができたと申してよいかと思います。具体的には、これからこの法律その他の法令についての肉づけが必要であると思うのであります。また、法案内容自体につきましても、なお今後検討し、これを充実させていく必要がある点も多いと思うのでありますが、したがいまして、今後法律を施行するにあたりましては、いろいろな政令も出ることでありましょう。そういう場合には、所管が広く各省庁にまたがっておりまするから、各省庁の縄張り争いが起こってはならぬ。あくまで各省庁が大局的な立場から協調をし、協力をすることが必要であると思うのであります。で、そういう場合には、扇のかなめをなすものは中央公害対策本部であり、その責任者である山中長官であると思うのであります。したがって、今後の法律実施にあたっていろいろな問題が出てきた場合に、かなめの役をして、あくまでこれを取りまとめて強力なる実行の方途を講じていただくについて、山中長官としてはいかなる決意をお持ちであるか、それを伺っておきたいと思います。
  34. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 今度の法律の立案過程においても、これは熱心さのあまり、いろいろの議論が出ました。これをセクショナリズムと一様に片づけるわけにもいかない本質的な議論もございました。しかし、それをそのまま放置いたしますと、一つの法律に七名の関係大臣の名前が列挙されなければならないことになった。あるいは都道府県に五つ以上新たに審議会をつくらなければならないことになったであろうというようなこと等については、私も好きこのんで、にくまれたくないのでありますけれども、やはり各省からの反発もございましたけれども、それを大局的に了解をしてもらって、ここまでこぎつけたわけであります。精通しておられますから、今後政令制定についてはいろいろの調整が必要であろうということを申されました。まさに、今後私どもの苦心はそこに存するわけでございますが、これは各省庁がいまの協調態勢——現在は非常に協調態勢ができておると私は判断しておりますので、これを持続してもらって、ぜひとも政令等についても、おおよそのところは、ここで御質問になれば、それぞれ全部答弁ができるくらいまで詰めてはございますが、なお御注意を守りまして、少なくとも法律を制定したことをもって終わりとしない。私自身の力が足りなければ、そのために——先ほど御質問にお答えした点になるわけですけれども、今回の対策本部の持つ権限は、内閣法の定めるところによって、総理大臣各省大臣に対する指揮権というものがございますから、必要ならば、俗に言う虎の威を借りることも辞さないというつもりでやるつもりでございますので……。まあ党のほうも、今回は各部会が各省と一緒になって突き上げるということが全然ございませんでした。たいへんその点は感謝しておりますが、今後もひとつ、党のほうにもよろしく御協力のほどをお願い申し上げます。
  35. 古池信三

    ○古池信三君 最後に、かように重要なる法案がたくさん提出され、これがやがて成立すると思いますが、幾ら法律が成立しても実効があがらぬでは、それは全く無意味であります。どうか、如才はないでありましょうが、この法律の効果がすみやかに生じて、公害の防止抑制ということが早く実現を見るように私は強く期待をいたしまして、質問を終わります。
  36. 占部秀男

    委員長占部秀男君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  37. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 速記を起こしてくださ  い。  午前の会議はこの程度にとどめ、午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時四十四分休憩      —————・—————    午後一時十三分開会
  38. 占部秀男

    委員長占部秀男君) ただいまから公害対策特別委員会を再開いたします。  公害対策基本法の一部を改正する法律案公害防止事業費事業者負担法案騒音規制法の一部を改正する法律案及び大気汚染防止法の一部を改正する法律案、以上四案を一括して議題といたします。  本委員会に参考人として、中央公害対策審議会委員進藤武左衛門君、横浜市公害センター所長助川信彦君、国立公衆衛生院大気汚染室長大喜多敏一君、全日本海員組合漁船部長二見俊男君の御出席をお願いしております。  この際、委員を代表いたしまして、一言ごあいさつを申し上げます。参考人の方々には御多忙のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。ただいまから、目下当委員会におきまして審査を進めております四法案について、参考人の方々の御意見を承り、審査の参考にいたしたいと存じます。何とぞ忌憚のない御意見をお述べくださいますようお願いを申し上げます。  なお、議事の進め方についてでございますが、これから進藤参考人、次いで助川参考人、大喜多参考人、二見参考人の順に、お一人三十分程度で御意見をお述べいただき、そのあと委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。また、御発言の際には、そのつど委員長の許可を受けることになっておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。  それでは、まず進藤参考人からお願いをいたします。
  39. 進藤武左衛門

    参考人進藤武左衛門君) 進藤でございます。非常に公害問題はむずかしい問題でございまして、法律的に知識のないわれわれが御意見を申し上げることはどうかと思いますけれども、しかし、公害に対する考え方につきましては、われわれ意見を率直に申し上げまして、御参考に供したいと思います。  まず、公害基本法でございますが、これは日本公害問題に対する対策の一番根本になるものでございますので、前の基本法も拝読いたしましたし、また今回の国会審議の過程におきまして、産業との関係等についての御議論もあったことも承知いたしておるのでございますが、しかし、日本公害というのは外国と非常に違った点がございます。  その一つは、日本の産業の原料が海外にほとんど依存しておる。ほとんどというのは言い過ぎかもしれませんが、大都分が海外に依存しております。その原料を日本に輸入して、この国土を工場として生産をしている。そしてそのエキスを輸出するということが、日本の経済振興の一つの大きな行き方になっておるわけでございます。そこで今度その工場になっております国土はどうかと申しますと、三十七万平方キロという狭い国土のうち、われわれ人の住んでおるのはわずかに三分の一でございますが、その三分の一、さらに河口を中心として——河口というのは、御承知のとおり、いま水が濁りまして、上流からほとんどいろいろの汚濁のものを流してくるわけでございますが、その河口を中心として、非常に大きな都市が成長しておる、工場もそこに密集しておるというふうに、産業の原料の立場から申しましても、あるいは工場立地と申しますか、あるいは国土計画から申しましても、公害に対しては非常にむずかしい条件を含んでおるわけでございます。  そのほかにもう一つ、これは戦争後特にそうでございますけれども、国民の公共道徳というものは、私は非常に低下しておる。でありますからして、人に迷惑をかける、川をよごすというふうなことはあまり気にならないような方向になっておるような気がいたすわけでございます。  そこで、いま公害問題を解決いたしますのに、法律をたくさんつくったのでございますけれども、この法律は現在の公害を防止するあるいは公害を早くなくする対策としてはよろしゅうございますが、将来の日本公害問題を解決いたしますのには、いま申し上げましたように、原料を海外に大部分依存しておるのでありますからして、この原料は一体どうするか、たとえばいま問題になっております田子の浦のヘドロの問題でありましても、木材を海外から輸入してあそこでパルプをつくっておるのでありますが、海外からパルプを輸入するということになりますと、あのヘドロが相当減ってまいると思います。また、アルミニウムの生産を日本でやっておりますけれども、これもアルミナを海外から輸入する、また銑鉄を海外から輸入するというふうな、公害問題とからんだ産業の考え方が今後必要になってまいるのじゃなかろうか。ことばをかえて申しますと、産業構造の変化というところまで掘り下げませんと、日本公害というのは非常にむずかしい問題が出てきやせぬかという気がいたします。  それから国土の問題にいたしましても、ことに戦後開発されました水島でありますとか、あるいは鹿島地区であるとか、千葉の五井、姉崎地区であるとかというふうな新興工業都市は、いまみなわずか十年そこそこで公害に悩んでおるわけでございます。でありますからして、この工場立地、大きくいえば国土総合開発の立場から公害問題をしっかり取り上げて、これをもう一ぺん検討する必要があるのじゃなかろうかというふうな気がいたします。  それから先般新聞で拝見しますと、小学校の教育に対しても公害の問題に対する今度は御検討をなさっておるようでございますが、私も国民の公害に対する心がまえあるいは対策等に対する常識の養成に対する国のPR、これをしっかりやっていただきたいと思います。こういうふうな国民の公害に対する認識を深めること、あるいは国土の総合開発におきまして公害の起きないと言っては語弊がありますけれども、少なくなるような計画をお立てになること、それから産業構造の変化までやる、こういうふうなことをしっかり掘り下げておやりになることが私は公害対策の根本になりはせぬかと考えております。  この公害対策基本法の名前につきましてもいろいろ御議論があったようでありますが、われわれはいまの現状におきましては、公害を早くなくすという焦点をしぼってやっていただく。しかし、いま申し上げたような条件をこれから検討するためには、やはり環境保全というふうな広い形のものに将来はなるべきだと思いますけれども、現在におきましては、この公害対策基本法というのは、非常に焦点をしぼって、国民にも理解しやすい法律であると考えておるわけでございます。そこでこの間基本法で問題になりました産業と環境保全との調和ということばを今度おはずしになりましたが、これは理屈なしに人間の健康問題が大切でございます。特に大気、空気、それから水、それから日光、この三つはわれわれの生存に欠くことのできない条件でございますから、これを保持することはわれわれ人類の義務であるのでありますが、どうもこの空気と水に対しましては、これは公共といいますか、公有の資源であります。空気も、水も、これは万民共有の資源でございますが、これがだんだん個人的の私有みたような、所有みたようになって、かってにいろいろに使ってしまうということがいま公害の問題として取り上げられておるのでございますから、この空気、水、あるいは太陽光線というふうなものに対しても万民共有のものであるから、これをみんなで力を合わせてきれいにして保持していくということが私は基本法の精神になるべきだということはわかります。しかし、どうもこのわれわれの受ける印象は、公害対策をやるためには、産業のほうはある程度やむを得ぬじゃないかという議論がだいぶ出ているようにも聞いておりますけれども、これもその議論の一つだと思います。現在のような公害が多い時代にはやむを得ぬと思いますが、この点は将来の問題といたしまして、公害の問題がある程度現在の状況を解決した暁におきましては、いま申し上げましたような基本的な考えを土台とした公害を守るための法律をさらに御検討を願いたいということを希望をいたしておきます。  それから次に水質保全法でございますが、これは実は極端に言いますと、日本の河川というのは大体もう下水道化しておるということを申し上げて差しつかえないと思いますし、ことに水がただ物質的にきたなくなっただけでなくて、水質がすっかりだんだん変わってまいりました。たとえば農薬の流れ込みでありますとか、じんあいその他の問題は別としまして、水質が非常にむずかしくなってまいっておりますが、これを法律だけでもって取り締まれるかというと、私は非常に疑問があると思います。現にわれわれ利根川の水を東京の水道に持ってくるために、利根川と荒川の間に水路をつくりまして、両側に網を張ってごみが入らないようにした。ところが、荒川に入りまして、荒川の鴻巣から浦和に至るまでは自然流下になっている。あそこはほとんどごみ捨て場になっているという状況になっていたわけでございます。したがって、私は徹底的にやるには下水道をしっかりやる。つまり河川の流域下水道についてもしっかりした措置をとっていただくということが必要でありまして、もっと具体的に申しますと、たとえばいま荒川の左岸に広域下水道をやっていらっしゃいますが、川の両側に下水道をずっとつくりまして、そうしてまん中の川はいわゆるほんとうの川、水を流す川であって、両側は全部下水をそをに入れる、そうして終末処理場をつくりまして、浄化した水はさらに工業用水に使う、あるいは雑用水に使うというふうに水資源対策としても必要でありますし、また、河川の水質汚濁対策としても必要でありますから、金は非常にかかると思いますけれども、とにかく川の流域の両側に広域下水道をつくるという方針をぜひお立ていただき、非常に長期の問題になると思いますけれども、これを重要なところからだんだん実行していくということを希望いたします。これは特に淀川でございますけれども、淀川は滋賀県から下流までほとんど各県の下水道になっておりまして、大阪の上水道の終点あたりは実に汚濁がひどいのでありますが、あれを淀川のいまの流れは、流域から、たとえば琵琶湖からとってくる水をそのままうまく持ってくる。両側には下水道をつくって各排水は全部そこに入れてしまうというようなことをいたすことが水質汚濁の防止としては大切なことでございまして、非常にこの水質汚濁の原因は複雑多岐でございますから、これを取り締まるということは、あるいは対策を講ずるということは非常にむずかしゅうございますので、できるだけ重要な、特に飲料水関係の問題に対しましてはいま申しました具体的施策を裏づけとした水質汚濁の法案をぜひつくっていただきたい。もちろんカドミウムでありますとか、あるいは有毒金属類の発生源がはっきりしているものはそれに対処することは当然でございます。しかし、全体としていまの水質汚濁対策をやりますのにはそういうふうな根本的なことをやりませんと、なかなか法律だけではできませんので、その点の御希望を申し上げておく次第でございます。  それから大気汚染の問題でいま一番大きな問題は亜硫酸ガスの問題、それから自動車の排気ガスの問題、この二つがおもな問題でありますが、亜硫酸ガスの対策の問題に対しましては、何か衆議院のほうでもいろいろ附帯決議を出していらっしゃるようでございますが、御承知のように、現在電力が亜硫酸ガスを出す、電力とか製鉄が出すようになっておりますが、電力を例にとりますと、電力の現在の発電力の七割近くは火力発電でございます。そうしてその火力発電が使っております燃料は、一部石炭がございますが、大部分は重油でございまして、その重油の約九割五、六分は海外依存でございます。そうしてその海外依存は中近東の油を中心としていま入っているわけでございますから、われわれが四、五年前のように日本の国内の水力発電、あるいは国内の石炭をたいておった時代と全然日本の発電機能のベースが変わってしまっている。そういうベースの中で低硫黄の油を確保するということは、これは国のエネルギー政策としても非常に大きな問題でございますから、これに対しましてはどうして確保するかという問題を国でも十分御検討を願いたいと思います。それから亜硫酸ガスの排煙脱硫と申しまして、煙突から出る途中で硫黄を取るわけでございます。これももうすでに工業技術院と電力会社が共同で四日市あるいは東電の五井でやっておりますけれども、この技術を、技術としてはいまできておると私は思っておりますが、これを一体、実用化し、経済的にやる段階まで、いまきょうやれるかと申しますと、これにも問題がある。技術の問題は、まあ経済的な問題にも関連しますが、そのほかたとえばバイプロダクトがたくさん出ます。硫安がたくさん出る、あるいは硫黄がたくさん出るという状況でございますから、四日市の例をとりますと、あすこで硫安がどんどん産出されますというと、肥料工業に非常な影響を与える。肥料工業は御承知のようにいま硫安が尿素にだんだん置きかえられつつある時代に、いま新しく硫安を持っていくということはなかなかむずかしい問題でございます。ですから二硫化炭素と申しますか、亜硫酸ガスの対策としましては、理論上はあるいは実験上はできておると思いますけれども、これから先この法案をつくりまして、さて実際にやる場合におきましては、以上申し上げましたような対策の裏づけをぜひつくっていただきたい。これはまあもちろん電気事業者は一生懸命やっていらっしゃることと思いますが、ただ電気事業者だけではできない問題がいま日本の電力の現状にあるわけでございますから、この点をぜひ御留意願いたいと思います。  それからまあもう時間もだいぶたちましたから、そのほかの法案関係しましてお願い申し上げたいと思いますことは、今度は十幾つかの非常にこまかい法案を御制定になるわけでございますが、この法案ができましたら、これがほんとうに実行される態勢ができませんと、私は法軽視の風習を国民に植えつける心配が多分にあると思うわけです。いままでも大気汚染防止法であるとかあるいは水質汚濁防止の問題だとかいろいろあって、もう七、八年この方やっておりますけれども、なかなかできないでいまの状況になっているのでありますからして、今度はこれだけたくさんの公害対策法案をつくりますというと、これの裏づけをぜひやっていただかなければならない。たとえば指導員の養成であるとか、あるいは測定器具の充実であるとか、あるいは一般の国民へのPRであるとかというふうないろいろの問題の裏づけを十分していただきませんと、法律はりっぱにできましても、なかなかこれの実施が完全にはいかないと、かえって逆に法律軽視の風習を起こすということになると困りますから、この点をぜひやっていただきたい。  それからもう一つお願いは、いま日本公害問題で今度公害としてあがっているものはみんな技術的につかめるものです。つまりつかんで法律の対象になるものだけあがっておりますけれども、公害というのはこれだけの問題じゃなくて、公害の定義はまあ法律ではこれだけでありますけれども、そのほかいろいろの物質もありましょうし、問題がございます。でありますからして、環境の保全あるいはわれわれの生命を守るための科学的、技術的の研究をしっかりやっていただかなければならぬと思います。で、今度国会で研究所をつくるというふうなことを御検討になっておるようでございますが、私はやっぱり科学技術を中心とした対策でありませんと、むだが非常に多くなる、つまり公害を出しておいて、あとからあとからと対策費を出すということでは非常にむだでありますから、これに対しましてはひとつ公害技術研究所と申しますか、総合的な研究所をぜひつくっていただいて、そしてそういうところの研究の結果を行政面なりあるいは実施面に及ぼしていただきたいということをお願いいたしたいと思います。  ちょっと時間がたちましたから、これだけで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  40. 占部秀男

    委員長占部秀男君) ありがとうございました。  それでは次に、助川参考人にお願いをいたしたいと思います。
  41. 助川信彦

    参考人(助川信彦君) ただいま進藤先生から参考人としての御意見の開陳がございまして、特に後段の御意見私同感でございます。したがいまして、その点は省略することといたしますけれども、大体公害行政の実務に携わる立場におりますので、その経験をもとにして若干所見を申し上げることにいたします。  都市の自治体と申しますのは、地方自治法の第二条に規定がございまして、住民及び滞在者の安全、健康、福祉を保つ、その他生活環境を保全することが本来固有の仕事でございます。たとえばつい先日のことで小さな例で恐縮でございますが、横浜市内を流れております鶴見川の上流に小さなメッキ工場がございまして、青酸カリの溶液が約一万リットル流出いたしました事故がございました。こういったことは人命にかかわる問題でございますので、直ちに市の公害センターだとか保健所が工場に指示をいたしまして、次亜塩素酸ソーダのようなものを散布させましてシアンの中和分解をはかりまして、河川の流水の検査だとか、また沿岸の方々に井戸水をとにかく飲まないようにという広報宣伝をいたしまして、幸いに人命の事故を未然に防ぐことはできたわけでございますが、これは自治体として当然のことでございまして、どうしてこんな席で言うのだというような御疑念もあろうかと思いますけれども、横浜市の当局といたしましては、工場の立ち入り権もあるいは操業停止の命令権も持っていない問題なのでございます。初動の措置はすべて行政指導の形で行なったわけでございますが、幸い地元に神奈川県庁もございますので、御当局の御指示によりましてさっそく法的な規制措置がとれて事なきを得たという面があるわけでございます。つまり毒物劇物の取り締まりというのは、薬務行政の範疇におきまして都道府県知事権限に属しております。また、鶴見川は水質保全法による指定水域でございますから、国や県の取り締まりのもとにありまして、地元自治体は法的規制権は与えられていないわけでございます。つまり住民保護という責任の所在とその保護のために行政措置をとる権限とが分離いたしておりますために、非常に仕事がやりにくいということがございます。住民の保護に直接の責任を有する都市の自治体に公害の取り締まり権が委任されていないということが問題でございます。在来の公害行政は、政府法律上の権限が集中いたしておりまして、自治体に委任される場合も、せいぜい都道府県どまりであることが多いわけです。一部騒音規制法とか大気汚染防止法のうちの事業場の監督というような面は現在まあ政令で定める市の職権に属しておりますけれども、大体において中央集権の色合いが非常に強いわけでございます。こういう関係考えてみますと、ちょうど先般来問題になっております沖繩の潜在主権のような形だと思うわけでございまして、国において法律をつくりまして、本来市町村の固有事務の中にございますことを法律事項として国の事務として吸い上げてしまいます。その吸い上げたことの一部を知事に機関委任事務と申しますが、まかせることがあるというわけでございます。どのようにこの市町村固有事務を国が吸い上げをいたしまして、都道府県なら都道府県に機関委任をする、あるいは団体委任をするということをいたしたといたしましても、市町村に本来固有のこの使命と申しますか、沖繩の潜在主権のごとくに、今回のたとえば青酸カリの流出事故のようなときに、これを本来あれは国の仕事になっているから市は関係しないといって逃げるわけにはいかぬというそういう立場にあるわけでございます。このたびも政府公害法案を策定いたしまして国会に上程され、また、制定改廃を行なわれるのでございますけれども、これは国民のつまり健康あるいは生活を守るための立法でございますから、私どもとしてもこの固有事務を取り上げるなといって異議を申し立てることはいたしませんけれども、この際地方自治の精神を生かされまして、直接住民の保護に責任を持っております市町村、特に都市自治体に極力その権限を委任いたしまして、できる限り責任の所在と権限の所在とが分離しないように御配慮賜わりたいと思います。これが第一でございます。  そのようにいたしまして国や都道府県が市町村を監督する、たとえば公害行政については私なら私の首根っこを押えていただく、その足りないところを補完するというように動いていただくことが最も行政効果があがる方法でありましょうし、住民自治を育てることにもつながります。あるいは科学的あるいは合理的な思考方法を育てていく民主主義を国民に定着させることにもつながってまいる正しい方法であろうと存じます。大体、公害問題は従来からその被害に悩む住民の突き上げによりまして、都市の自治体が相互に連携をいたしまして、こちらにおられます大喜多先生の国立公衆衛生院あたりの御指導をいただきまして、たとえば大気汚染防止についての一定の方法で測定データを積み重ね、都市同士が比較できるような方法で国に善処をお願いしてきたという経緯がございます。そうしたことで法制化がはかられたのでございまして、本来、都市行政の範囲に属する仕事なんでございます。それを法律ができますと、都市自治体には関与させない形をとることが多かったということにつきまして申し上げたわけでございます。ただ、とかく市町村という自治体は行政能力が弱いからまかせ切れないという反論を聞くこともございます。政府が真に地方自治体を、あるいは住民自治ということを尊重する姿勢でございましたならば、都道府県と協力していただきまして、市町村の自治能力を高めるように手段を尽くして懇切に育成をしてくださるのが本筋ではなかろうか、かように思います。  次に、公害対策基本法につきまして一点だけ問題点を申し上げます。これはいままでもいろいろ議論がされておるようでございますから、それは典型公害として、大気汚染、水質汚濁、今度土壌汚染というようなもの、その他が列挙されておりますけれども、この字句の上に「相当範囲にわたる」という限定がございます。これはあまりどなたもお取り上げにならないのでございますが、私はその都市自治体におきまして実務を取り扱っております関係でこの問題に触れたいと思うのでございます。私どもが扱っております公害問題というのは、先ごろ話題を呼びましたような日本鋼管の京浜製鉄所のリプレースに伴いまして、将来、昭和五十三年ごろの亜硫酸ガスの濃度をどのくらいのPPMにしなさいというようなことで大手企業とお話し合いをするような問題もございますけれども、実は大部分の仕事は相当範囲にわたらないものばかりでございます。横浜市は昨年一年間に一千二百七十件の公害事案を取り扱っておりますが、そのほとんどが住宅と工場の混在に基因いたしますところの騒音や悪臭の問題でございまして、「相当範囲にわたる」公害ではございません。解釈のしようによっては「相当範囲にわたる」とは言えないものも相当多いのでございます。去る十二日の当院におきます連合審査の席上、山中総務長官公害対策を進めるのは国の第一義的な責務であり、地方自治体公害対策財源については、基本法第二十三条によって国において必要な措置を講ずる旨を政府の最終見解として明らかにされたと承っております。本年度、横浜、名古屋、大阪、京都、神戸、あるいは北九州の六大都市におきまして計上いたしました直接的な公害対策——間接的なものを含みません、もちろん人件費なども含みません。大気汚染とか、水質汚濁とか、騒音とかいう直接的な公害対策費は約七億八千六百万円です。六大都市で国からの補助金は一千五百万円にすぎないわけでございます。この点は、先般衆議院連合審査におきまして自民党の古屋亨先生が明らかになされた点でございます。つまり政府は一千五百万程度だけが六大都市におきましては「相当範囲にわたる」公害とお認めになっておるようでありまして、その他の七億七千万円余は相当範囲にわたらない都市自治体の固有事務であるとお考えになっておられることと存じます。相当範囲にわたらない公害、つまり市街あるいは相隣、お互いに隣同士という関係の加害、被害の問題につきましても、イギリスのように行政訴訟的な制度が、あるいはそういう慣習が確立をしております国柄でありますならば、損害賠償だけでなくて工場操業の一時停止というところまで裁判所が判決を下す、そんなようなことであればよろしいのでございますが、そういう風習や制度が確立しておりませんわが国におきましては、相当範囲にわたらない、解釈のしようによりましてはわたらない公害でありましょうとも、都市自治体が扱わなければ住民はたよるところがないわけでございます。そうした実情につきましての御理解を賜わりたいと存じます。私ども公害対策基本法に定める「相当範囲にわたる」という、この限定句といいますか、修飾詞というものはおやめいただきたいのでございます。必ずしもおやめいただかなくても、まあ実情をお調べの上、前向きに都市自治体の公害財源について国が十分充足をはかっていただきたい、その点をお願い申し上げたいと思います。  このたび国会提出されております公害関係法案は、すべて本年度問題化いたしました公害につきまして、これを繰り返さないための応急対策法案でございます。この点は進藤参考人も申されたわけでございます。これはこれらなりに必要な措置と存ずるのでございますが、先ほどもお話がございましたように、将来起こるべき事態を先見的に予測の中に取り入れて先取りの姿勢で実は法制化がはかられることをわれわれ期待しておったわけでございますが、その点この環境保全基本法案というものに、その志向をいたしますところは特に評価したいというふうに思うわけでございますが、従来の公害法制が不備でありましたために、それを補完するために、私どもいろいろ苦肉の策をとっております。たとえば公害対策横浜方式といわれますものは、埋め立て地の売買契約とかその他の行政行為に際しまして企業と交渉いたしまして、相手方の同意を得て公害防止上の約束を契約の形で取り結ぶというやり方でございますので、どうしても一定の限界がございます。行政指導の範疇に属するので違法、不当なことをいたすわけにはまいりません。したがって、私どもは、国におかれまして一日も早く公害法制を完備せられまして、横浜方式とか公害防止協定などの必要がなくなるように御措置いただくことを願っておるものでございます。しかし、公害法制の完備というものは、いつまでも狭い公害対策のワクにとどまっていては目的を達しがたいと存じます。たとえば工場立地の適正化のようなこと、あるいは高速道路や鉄道の沿線におきます住宅建設の規制などの措置を進める必要があろうと存じます。工場の緑化とかそうしたこと、あるいは自然環境基準とかあるいは緑地の施設環境基準などの構想があるやに承っておるわけでございますが、例の環境保全基本法案に盛り込まれておるように聞いております。まあ、その点はなはだユニークな法案であったのではないかと思いますけれども、まあ私どもそうした配慮を若干は従来、実際行政の面でいたしております。たとえば三十九年に新たに根岸につくりました工場地帯の新設に際しましては、進出の各社と協定をいたしまして、三百九十万平米のうち三十五万平米、約九%の緑地帯を工場の敷地の中から出して、それぞれ造成をさせることに成功をいたしております。また、本牧地先の埋め立て地におきましても、三十万平米の敷地でもって石油会社にはその三分の一の十万平米の緑地をお願いし、またその外に市がまた十万平米の緑地をとる、こういうふうなことで最近その木がだいぶ茂ってきております。宅地開発等につきましても、造成業者と話し合いまして開発面積の三%から六%に当たる敷地を緑化させるというようなことを、これも行政指導のお話し合いでございますが、着々とそうしたことも行なっております。しかし、各地におきましても各都市自治体がいろいろと苦肉の策をめぐらして都市環境の保全に微力を尽くしております実情も御賢察くださいまして、つまり工場公害の規範を、公害対策の規範を要請するというような面につきましても早急に御配慮をお願いしたいと思います。  若干申し上げたいところもございますけれども、少し進藤先生も時間を早めていただいておるようでございますので、私もこのくらいで……。   〔委員長退席、理事杉原一雄君着席〕
  42. 杉原一雄

    ○理事(杉原一雄君) ありがとうございました。  次に、大喜多参考人にお願いいたします。
  43. 大喜多敏一

    参考人大喜多敏一君) 私の研究機関公害に対する研究それから地方の方々の実際に公害に対処なさっておる方々に対する教育及び実際に私たち地方に行きまして、地方の方と一緒に公害について考え、しかも悩んできた本人としまして、今回の法案につきましていろいろ意見を述べさしていただきたいと思います。  私、一応この十四法案全部読ましていただきまして、まず最初に非常にささいなことから入らしていただきたいと思うのですが、大気汚染防止法案の中にいわゆる塩素とか弗化水素、こういうものが、いわゆるこれがばい煙として扱われております。これは私たちの常識から考えますと、ちょっとこのばい煙ということばに非常にひっかかりがあります。で、まあ二つぐらいでしたらいいんですが、今後これが全部ばい煙という形で扱われてくるといたしますと、非常に日本語としてちょっと変なことになってくるんじゃないか。それを一つ感じる次第でございます。しかも、まして塩素というのは、いわゆる物を燃焼することによって出るんではなくて、むしろ化学工程から出てくるものでありまして、その辺非常にこまかいことでございますが、一つ気になるところであります。  さて、同様な問題といたしまして次にひっかかるのは、いわゆる人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律の中で、いわゆる「公衆の生命又は身体に危険が生じうる程度」と、こういうことばがございますが、これも非常に抽象的なことばでございます。で、私まあ科学者の端くれといたしまして、WHOのいわゆる健康の定義というのが——健康といいますか、これは大気汚染の場合でございますが、いわゆるWHOの四つの定義というのがございます。それを簡単に申し上げますと、第一は、これは直接的にもあるいは間接的にも全然人体に対して何らの影響も与えないいわゆる汚染のレベルというものがございます。   〔理事杉原一雄君退席、委員長着席〕 二番目といたしまして、いわゆる人間の感覚に刺激を与える。それから草木に損傷を与える。それから指定障害を与える。その他環境に損傷を与えるという、これを第二のレベルといいます。第三のレベルといたしまして、いわゆる人間の生理機能に損傷を与える。たとえば慢性気管支炎を起こすとか、生命の短縮を起こすと、こういうのが第三レベルであります。それから第四番目といたしまして、敏感なグループの人々に急性疾患を起こし、ある場合には死をもたらすと、こういう四段階がございます。それから考えますと、私は少なくともここにありますことばの中にはもう少し具体的にはっきり、せめて三より、第三レベル以下のところでこの問題を考えていただきたいということが一つでございます。  さて、こういうぐあいにたくさんの法案が出てまいりまして、先ほどの進藤先生もおっしゃいましたように、これがはたしてほんとうに守られるかどうか、そういう問題が次に浮かんでくるわけであります。私たち実際地方に行きましてそういう経験をしておりますが、たとえばこういうことも聞きます。装置をつけておきまして、ある県の監督官が行った場合だけその装置を動かして、いつもの場合には装置を動かしていない、そういうことを、うわさかもしれませんが、そういうことがございます。たとえば今回の法案で、たとえば廃油を流してはいけない。それから廃水を、たとえばシアンを流してはいけないと、いろいろきまっておりますが、そういうものがはたしてほんとう法律どおり守られるかどうか、これは人間は性善説といいますか、絶対ごまかしはしないものだ。私はどうもそれを信じません。あくまでもまあそれは教育にもよるんでありますが、現状としてはとてもこれを信ずることができない。そのためには、これは非常にあまりいいことじゃないですけれども、罰則をはっきりさせ、しかも監視体制をはっきりさせていかなくちゃいけない、こういう問題があるわけでございます。  さて、こういう問題につきまして、じゃどのような監視体制が望まれるか。現在実際こういう仕事に当たっていらっしゃるのは地方の県あるいは市の職員の方が大半であります。さて、そういういわゆる技術職の方、こういう方がほんとう地方におかれましてどのような待遇をされているか、それがその次の問題になってまいります。私たち地方の方によく伺うのでありますが、何とか私たちの待遇、処遇というものを考えていただきたいということをよく言われます。いまの、はっきり申し上げまして、国の場合も、あるときには国もそこには含まれますが、こういう技術職の処遇というのが非常にあやふやでございまして、すなわちいわゆる出世ということば、あまり聞こえはよくないかもしれませんが、出世するためにはどうしても管理職につかなくてはいけない。ところが、この公害の問題につきましては、これはある程度専門職でなくてはとてもつとまりません。その場合、そういう専門職で一生涯通そうとした場合、現在のそういういわゆる給与体系と申しますか、そういう中ではほんとうにちゃんとそういう人らが自分の専門というものを生かしていけないという心配があります。現在若い人々が公害の問題、ほんとうに真剣に考えて、この問題に取っ組んでいきたいという動きが非常に強くなっております。これは非常に歓迎すべきことであります。ただしかし、そういう人らが将来どうなるか。やはり人間でありますから将来のことを心配いたします。その場合やはり後顧の憂いなくこの問題に飛び込んでいけるための措置といいますか、そういうものを当然考えていただきたいと思います。一例をあげますと、ことしの夏でございましたか、いわゆるオキシダントの問題が出ました。このオキシダントが非常に植物を枯らすわけであります。しかし、この一体どういう状態で木が枯れていくか、これをやるのは非常にむずかしい問題、たとえばアメリカのミドルトン博士、この人はアメリカの大気汚染庁の長官でありますが、この人は植物の専門家でもあります。この人が、うちの部長がいろいろこの人に見てもらったわけでありますが、部長のうちにいろんな木があるわけです。その木の、何にやられたかといった場合、見た場合全部あるものはオキシダント、あるものは硫酸ミスト、あるものは何かほかのもの、あるものは虫食い、それから水枯れ、いろいろあるわけです。こういう非常にむずかしい問題、ましてこのオキシダントスモッグ、これは今後日本全体に広がる可能性が十分ございます。そういう場合、これに対処するのは、わずか中央官庁の人がとてもこれは一々追っかけるわけにいきません。こういう仕事は地方のそれぞれの方がやっていただく以外にない。そういう場合に、そういう人は何人得られるかどうか。まして今後は公害というのはただたとえばカドミウムだというと、全部カドミウムに走るような、そういう体制じゃなくて、それぞれの地方におきましてそれぞれの問題があるわけであります。そういう問題を先取りできる人、そういう人を養成しなくちゃいけないわけです。そういう人のためにどうしても魅力ある職場にしていただきたいということがあります。これにつきまして、現在私どもの公衆衛生院で教育を現在もやっているわけでありますが、この教育はおそらく日本で唯一のこういうユニークな教育をやっているところだと自負しておりますが、わずか七人でやっております。大気二名、騒音二名、水質二名であります。あと部長一名ということです。このわずか限られた人数のものが教育と研究をやっておりまして、しかもその範囲たるや生物学、理学、数学、工学全部を含めた新しい体系の一つの学問体系、そういうものでこれを見ていかなくちゃいけないわけであります。そういう意味におきまして、この教育の拡充というものをはかっていただきたいということがあるわけであります。  それから同じく教育といたしまして、私、前から考えておりまして、先ほど進藤先生が述べられたこと、同感でございます。全く、もっと小学校時代からこの環境というものに対する考え方、そういう教育をやっていかなくちゃいけない。わが国は非常に——外国に行ってこられた方はわかりますが——美しい国であります。この財産は、日本だけの財産ではない、いわゆる世界全体の財産であります。こういうものをいかにして保つか、これについての教育、これをぜひやっていただきたいと思うわけです。  で、あわせまして、たとえば国立公園法等も今度は出ておりますが、そういうものについては、何々してはいけない、こういうふうに書いてあるわけですが、それに対して罰則がどうもなさそうですが、こういうものも片手落ちではないかと思います。  それから、たとえば農薬取締法におきましても、畜産、動植物については配慮してございますが、たとえば鳥だとかこん虫、そういうものに対する被害というものはあまり配慮がなされていないのではないか。そういう点も非常に心配いたします。  さて、まあ私の専門の大気汚染の問題でございますが、たとえばこのSO2の排出の基準の問題がございます。それにつきましては、どうも条文を読みますと、この排出基準について都道府県が国よりももっときびしい基準が出せるかどうか、どうも文面を読みますと、危ぶまれる面がございます。私たちは、いま、ある県のお手伝いをいたしまして、現在の東京だとか、そういうすでにやられている県の空気を、それよりももっときれいな状態で置こうという夢を持っております。また、その県の方もそういう夢を持ってやっていらっしゃる。ところが、こういう状態になってまいりますと、非常にその夢が破れてしまうわけでありまして、ぜひその点、まあ先ほど助川先生もおっしゃいましたが、そういう意味でできるだけ、あらゆるこういう規制の問題は、地方に移管できるものは移管していただきたいと思う次第です。すなわち、地方の方が一番地方のことを心配なさっているわけです。私たち、幾らえらそうなことを言っても、中央におりますとわからないわけですね。まあはっきり言いまして、たとえば四日市ぜんそくもわからなかったし、ほかの水俣病のことやなんかもわからないわけです。そういう意味におきまして、もっと地方の方にそういう権限を与えていただきたいと思うわけであります。  それと並びまして、いわゆる環境基準というものがせっかくあるわけですから、環境基準をやはり守れるような排出基準という形にしていただきたい。排出基準が幾ら規定されておりましても、煙突が非常に多いとしますと、これは環境基準が絶対に守れないわけでありますので、その点はあくまでも環境基準を主体にして考えていただきたいと思うわけであります。  同様に、現在、電気ガス事業法の対象となっている事業場に対する排出基準の問題もございますが、そういうものも実際は地方に移管していただきたいということであります。  まああと少しこまかいことでありますが、たとえば水質汚濁の問題の中に肥料による汚濁という問題が全然取り上げられておりません。これは、アメリカにおきまして、特に窒素肥料からの河川の汚濁というものが一つの大きな問題になっておりまして、そういうものをやはり今後水質汚濁におきましても考えていっていただきたいと思う次第でございます。  最後に、私、研究者の端くれといたしまして、やはりその研究というか、教育というものにもっと金をつけていただきたいと思うわけです。先ほど言いましたように、たった七人で四苦八苦してやっているわけでございますが、仏つくって魂入れずで、やはり幾ら私たちの努力、あるいは地方の自治体の方の努力というものがありましても、やはりある意味じゃ金が必要なわけであります。たとえば自動車の規制が今度なされますが、その場合、一般にCOでもって規制をなさろうということになると思うのですが、一方においてオキシダントの問題が出ております。そういうものが、一体、自動車を規制することによって、どのようにオキシダントの濃度を減らすかというのが、これは非常に複雑な問題であります。COは直接自動車の排気ガスから出てまいりますから問題はないのですが、問題がないと言っても、それでも非常に拡散されてむずかしい問題でありますが、ましてオキシダントというのは、空気中でいわゆる一次汚染物が化学変化を起こしまして二次汚染物に変わっていく、そういう問題であります。  それから今後問題になるような例を幾つかあげますと、自然公園におきまして自動車の排気ガスの影響がどうなるか、そういうような問題、これはまだだれも手をつけておりません。それから土壌中におきまして、一応カドミウムは非常に皆さん騒がれておって取り上げられておられますが、実際重金属というのはいま問題になっているだけでも十幾つございます。それらの問題というのは全然まだだれも手をつけておりません。そのほか農薬といいましてもいろんな形のものが次から次へ出てまいりますし、それからヘドロにしましても、ヘドロがあるということだけで、一体ヘドロというものはどういうものか、こういうことも全然わかっておりません。まして人体に影響、たとえば亜硫酸ガスと、今度は特に微粒子の環境基準が審議中でございますが、亜硫酸ガスと微粒子、両方吸入するともっとひどい症状を起こす、そういうことも今後の問題なんです。また、個々の金属につきましての影響、これも全然わかっていない状況であります。また、公害病の認定の問題がございますが、この認定にあたりましての基準といいますか、そういうものもはっきりしていない。このように考えますと、これはほんとうに一例をあげたにすぎないのですが、問題が山積しておりまして、これに対する研究、特に研究者の数が非常に少ないということであります。先ほど言いましたように、公衆衛生院に全部、あらゆる公害でわずか七人ということでございまして、そういう点をひとつ御配慮いただきたいと思う次第でございます。以上でございます。
  44. 占部秀男

    委員長占部秀男君) ありがとうございました。  次に二見参考人にお願いいたします。
  45. 二見俊男

    参考人(二見俊男君) 私は、進藤先生はじめ助川先生、大喜多先生、いずれも公害のその場の衝に当たっておられる方々でございますけれども、私は漁船の乗り組み員、漁業従事者、こういう立場で御意見を申し上げたいと存じます。  皆さんよく御承知のように、日本の漁業はその生産量においては、四十四年度統計で八百六十万七千トン揚げております。しかし、これは昨年から見ますと約一%減で、四十年以来続いてきた上昇傾向は、四十四年で一応頭打ちになる、今後それがふえるという見通しは現在のところ立っていないわけでございます。特にわが国の漁業の実態、なかんずく沿岸漁業の状態を見ますというと、非常に沿岸漁業そのものの荒廃というものが目に余るものが出てまいっております。一例を申し上げますというと、瀬戸内海の漁業を参考までに申し上げますと、四十三年度における内海の全生産量約六十万トン、生産金額にして六百三十四億に対しまして、水質の汚濁による漁業被害は三十四億二千四百万にのぼっておるわけでございます。さらに船舶による漁業被害、船舶による漁業被害というのは衝突の事故、船舶が使う廃油の投棄、そういう面の被害で四億二千八百万円、合計三十八億五千二百万円の金額に損害が及んでおるわけでございます。また水質汚濁のその源とも言うべき工場、事業場数におきましては、大阪の八百三十を筆頭にいたしまして、瀬戸内海を囲む隣接十一府県が約全部で二千百六十の工場群を数えております。その他埋め立て、干拓によりまして十年間に一万八千五百ヘクタールの浅海漁場を失っております。このようにかって清らかであった瀬戸内の島影やなぎさも、埋め立てや干拓あるいは水質の汚濁によりまして、海岸線は変貌いたし、漁業被害の態様では水質汚濁の複合状態というものが出てまいりまして、産卵場、それから稚魚の生育場の喪失、魚族の異常斃死、異臭魚の発生、変形魚の発生、漁場価値の低下、こういう面の現象が随所に見られるわけで、その範囲も沿岸から沖合いにどんどんと出ておる、範囲が広がっておるわけでございます。こうした現象を招いた最大の原因、これは何であるかと申しますと、われわれは高度経済成長政策がもたらした臨海工業地帯の開発そのものに大きな原因があったと考えるわけでございます。それに比例いたしまして、漁民の漁場というものはどんどん減ってまいってきた。しかもその漁場の代償というのは漁業補償金という名目で漁民に与えられて、その結果、漁民の生活は破壊されて、工場排水で漁場自体は荒廃し、漁業は崩壊していったことを漁民は身をもって体験をしてまいっておるわけでございます。もちろん日本の産業発展ということはひとしく喜ぶべき現象でありますけれども、その陰に幾多の公害を一身に身に受けて散っていく漁民の立場というものにわれわれは思いをいたす配慮が今日きわめて重要ではなかろうかと存ずるわけでございます。で、かつて経済審議会におきまして、七〇年代前半のわが国経済の運営の指針となる新経済社会発展計画の審議、答申をしたことは御承知のとおりでございます。  答申の内容というのは、人間性豊かな経済社会を目ざそう、そのためには国際的な視点に立って経済の効率化をはかろう、物価の安定をはかろう、社会開発の推進を行なおう、四番目には、適正な経済成長の維持と発展基盤の培養という四つの柱を打ち出して、漁業に対しては食料生産の安定的な供給という課題を与えて期待をしているのでございます。で、その中で沿岸漁業では新しい枝術の活用で資源培養型の漁業を発展させる。第二には、沖合い、遠洋漁業で未利用資源の利用拡大をはかる。第三点には、漁港の重点的整備と流通・加工施設の集約的な拡充をはかる。こういう政策を積極的に展開すべきだという答申がなされておるわけでございます。  なるほど掲げている内容は抽象的なきらいはあっても、そのこと自体は間違いはないわけでございます。しかし、漁業にとって抽象的なお題目よりも、聞きたいのは経済運営の指針をどうこなしていくかでございます。  第一に掲げられておるところの沿岸漁業の魚族の培養計画を推進するといいましても、現在のように化学工業群の沿岸地帯への進出によってその培養というものが不可能視されつつある現状にございます。この点をどう理解し、今後調整をしていくかという点については何らの具体策が示されておりません。ともあれ開発によって臨海部に進出をした企業は工場排水などによって周辺の海水を広範囲に汚染をさせて、そこに漁業権が設定してあったとしても長年にわたる排水の結果、とても漁業のできる状態ではなくなって、結果として漁場は死んだ海になり、そうした状態の既成事実の上に立って、漁業を放棄した漁民に対して漁業補償という手が打たれ、企業は一括して漁業権を買い取ってきたというのがいままでの歴史的事実でございます。したがって、この海というものを漁業補償という名目で一私企業が買い取って支配をするということは許されないと考えるわけでございます。海は当然国民共通の財産であるからでございます。そう考えてまいりますと、われわれの漁船という立場、その面から公害という問題をどうやはりわれわれは取り上げていかねばならぬかということをしろうとながらにも考えなければならない事態に立ち至ったわけでございます。で、したがって、過般労働省が調べた実態を見ましても、一万三千カ所の工場群を労働者保護と、こういう観点から調べた際に、猛毒シアンについては約一七・六%、カドミウム、クロムなどについては二一%もの工場が廃液を工場の外にたれ流しておったということが指摘されておりました。まあシアンの毒性についてはこれは皆さん十分知られておるところでございまして、この結果多くの魚族が斃死した事実もございます。そういうことを考えますときに、工業用排水あるいは水質の汚濁、この点に十分メスを入れて、工業用排水をした場合でもそのもとにはやはり魚がおるというような状態にまで復活するような施策というものを積極的に講じていただきたいと考えるわけでございます。しかも人命軽視をするような悪質的な企業に対しては断固取り締まって、場合によっては営業停止をする、こういう措置政府もしくは地方自治体が行なえるような裏づけというものがなければ、漁業の立場から見ても公害の防止という目的遂行はなかなかむずかしいのではないかと考えるわけでございます。  そこで、そういった漁業という立場の前提に立って今般公害対策基本法の一部改正を見たわけでございますが、先ほども皆さん諸先生が申されましたように、生活環境の保全そのものが国民一人一人の基本的人権にかかわる問題であると考えます。したがって、それ自体は強く守られなければならない、そういう立場に立たざるを得ないのでございます。従来の現行法におきましては、生活環境の保全を産業の発展との調和に従属させてきた現行法というものが、これは確かに産業優先の立場に立ってつくられておる公害防止基本法だ、公害対策基本法だと考えてまいっておったわけですが、政府においてその産業の発展との調和という条項を取って前向きにされたということについては敬意を表する次第でございます。したがって、この公害対策基本法全般をながめてみた場合に、過般衆議院野党三党が出されました環境保全基本法、それと対比をいたしました場合に、われわれとしては、野党三党の環境保全基本法案に賛意を表せざるを得ないと考えるわけです。その理由は、もとより政府の案そのものが現実から出発して現実の悪い点を一つ一つ改善をしていこう、こういう思想の上に立っておることは一つの考え方でございますし、行政の面にあってはそういうのも必要であろうかと存じますけれども、事今日の公害の問題に発展してまいったいろいろな条件というものを考えてみた場合に、相当強力なビジョンを持って国民をやはり引っぱっていくと、こういう思想が必要なのではなかろうかと存ずるわけでございます。したがって、野党三党の中で盛られたいわゆる取り締まり権限等も含めて公害防止に関する権限地方に委譲をする、あるいはこれだけ広範にわたる公害の問題を各省各般にわたり、しかも十四法案にそれぞれ具体的に分かれておりまして、それを総合的にやっていくにしても各省の調整ということが出てまいり、そこには妥協の産物としての施策しかできないであろうということをわれわれはうかがい知るわけでございます。そういう意味からするなれば、やはり一つの公害防止法というようなものを設けて、そこで一元的、総合的に積極的な施策をやっていくということが望ましい姿であることは当然であろうかと存じます。  さらに公害の防止の問題点につきましては、それぞれの諸先生がおっしゃっておりますので重複を避けたいと思いますが、何といってもその公害の実態を見きわめ、その公害を直接受けた住民がたよるところは地方自治体でございます。そういう意味からするならば、むしろ政府の持てる権限というものを地方自治体に分かち与えて、地方自治体が相当の取り締まり権限を持ってこの公害防止に対する積極的な施策をやっていくというのでなければ、国民の健康と国民の環境保全というものについては完ぺきな期待はできないのではないかと思う次第でございます。どうか政府においては、この公害対策基本法を一応足がかりにいたしまして、さらに改善の方向を今後も続けていただきたいと思います。  もう一つは、この公害対策基本法にかかわる一つの関連事項といたしまして、政府予算の中で社会保障関係費であるとかあるいはまた防衛庁関係費であるとかいうところの、予算項目でいう款に相当する項目を設けて公害の防止対策については十分な財政措置というものを講じていただきたいと考えるわけでございます。  最後に、この公害内容そのもの、いかに具体的にどう扱っていくべきか、防止すべきか、こういう点は私も十分そういった点には詳しくございませんので、ただ漁業の立場から見るならば、国際的にも海洋生物資源の保存ということが強く叫ばれており、海を守る行政というものが積極的に講ぜられてこそ初めて日本の漁業というものが世界に信頼され、世界との話し合いの上で、世界の利益との調和の上で日本の漁業の維持、発展ができる、こういうことを公害の問題と相関連してお願い申し上げて終わりたいと存じます。
  46. 占部秀男

    委員長占部秀男君) ありがとうございました。  これより参考人の方々に対する質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言願います。
  47. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 進藤参考人にちょっと伺いますが、さっきお話しのとおりに、亜硫酸ガスの対策、これは非常に大事な問題で、またいろいろむずかしい問題を含んでおりますが、このお話の中の脱硫装置ですね、これは相当経費を要すると思いますが、電力関係の発電所等で一体どのくらいかかるものか、さらにお話にありました石油は九〇数%輸入で、しかも中近東から入れているものが非常に多いわけですけれども、低硫黄の石油の今後の輸入見通し、確保される見通し等について御存じであればお答えを願いたいと思います。
  48. 進藤武左衛門

    参考人進藤武左衛門君) お答えの前に、ちょっと先ほど申し上げたことでもう一つつけ加えさしていただきたいと思いますのは、現在御承知のように、この廃棄物の問題が非常に問題になってまいりました。産業廃棄物、都市廃棄物でございますが、年に約四億五、六千万トンの廃棄物で、これは毎年何%かふえている。一日に百数十万トンという廃棄物がいま全国に出てまいっておりますが、これの廃棄のやり方に対して今度はいろいろ法律もあるようでございますけれども、やっぱり考えとしては自然還元の法則へのっとっていくという考え方が必要だと思います。そこでいまもうたまっているやつを捨てなくちゃならないわけでありますが、捨てる場所をどうするかということに対してもう少ししっかりした御研究を願いたいと思います。川ではいかぬから海に捨てろという簡単なことではなく、海へ捨てるのには潮流の状況もございましょうし、あるいはいろいろの漁業への影響もございましょうし、また、海は自然還元の法則をやるわけでありますが、非常にたくさんやりますと、これはもうほんとうの汚物になってしまうのでありますから、廃棄に対するもう少し科学的、技術的検討を十分やっていただきたいと思うのであります。まあ従来地上で廃棄したやつの例を見ますと、いま、二十年、三十年前にいろいろ鉱山等で発掘して、その際捨てたものが現在の公害のもとになっておる。ですから、いまの鉱山で排水処理あるいは廃棄物処理をしっかりやりましても、従来の堆積物がやっぱり残っておるという例が全国各地にあるわけであります。でありますからして、これから先は廃棄物をしっかりした場所へしっかりした方法で廃棄して、再び何というか、汚濁公害を起こさぬようにということに対しまして、もう少し廃棄場所の研究をぜひやっていただきたいということをお願いしておきます。  それからもう一つ、都市廃棄物でございますが、これの集める問題等もございますけれども、都市廃棄物の廃棄の観念が、自分の家庭の捨てたものは自分で処理するんだというくらいの気持ちがないと、もう捨てるものは人が始末してくれるのだという考え方が私は非常に都市廃棄物の取り扱いを困難にしていると思うのです。アパートの、団地の廃棄物を例にとりますと、これはアメリカの例でございますが、大体アメリカの団地の廃棄物は水分が六、七%しかないわけであります。ですからそこでもって焼却が大体どんどんできる。ところが日本の団地の廃棄物というのは二七、八%水分があるそうでございます。勝手のごみでも、それからびんのかけらでも何でもかんでもみんな捨ててしまうという、その捨てるときに整理の考えはないわけであります。でありますからして、都市廃棄物に対してはやっぱり、気の長い話かもしれませんが、自分でもってものを処理するというPRをぜひやっていただいて、そういう方向に進めていただきたいということをつけ加えて申し上げます。  いまお話しの脱硫の問題でございますが、これは非常にむずかしい問題でございまして、工業技術院でも技術的に研究され、さらに中部電力、三菱工業ですか、あるいは日立等でというふうに現地でもって研究されて、そしていまの段階では大体これを実際に営業用として使えるだろうという方向へいっているようでございますけれども、さて、さっき申し上げましたように、なかなか経済的の問題を考えますというと簡単にいかないと思います。たとえば非常な敷地を要する、それから機械に金がかかる、あるいは何と申しますか、せっかく重油をはるばる中近東から持ってきて、そして大きなタンクをあそこにつくっておいて、それを今度はたいたあと、また脱硫でもってうんと金をかけるというふうなことよりも、私は公害の根本対策はもとを正すという考えをぜひすべきだろうと思うのです。そこで脱硫が必要ならその現地で、産地脱硫というものをぜひそういう方向へとっていただいて、それに対しては、これはまあ外国との関係でございますから外交問題もございましょうが、これは政府がやっぱりそういう政策に対して十分お力添えを願うというよりも、指導をしていただいて、産地脱硫でありますと運賃の問題と関係します、またこちらへ持ってきてからの費用も少なくて済むわけでありますから、できるなら硫黄分の少ない油が確保できればこれはもう問題ございませんけれども、さっき申し上げましたように、九〇何%みんな海外依存だということになりますから、これはむずかしいわけでありますが、少なくとも現地脱硫の方向をぜひ確保していただきたい、それに対しては政府が実現できるような対策をとっていただくということが一番やりやすい方法じゃないかというふうに考えておるわけでございます。  それから現在の脱硫、持ってきたものの脱硫をいたしますのには、さっき申し上げましたように、非常に金がかかるわけであります。ところが、いままでの電気料金の中には一体脱硫だとかいう公害問題は経営の中に入っておらない。そして、これから先、公害対策費というものは電気料金の非常に大きな構成のエレメントになってまいりますからして、今度は電気料金との関連も十分検討しながら脱硫対策を講じませんと、いろいろの点で問題が出てまいると思いますので、単に技術的にこれができるというだけで簡単に解決するということには私は立ち至らぬと思います。
  49. 助川信彦

    参考人(助川信彦君) 関連して。実は、横浜の根岸に東京電力が液化天然ガス——LNGを使っての発電所をつくっております。現在の出力は七十万キロワットでございます。これの千キロカロリー当たりの単価でございますが、もちろん重油よりは高いのでございます。現在の石炭よりは安い。ただし、そのLNGの輸入に対しましては重油の関税のようなものを現在のところかけてないように聞いております。液化天然ガス、あるいはパイプラインによりまして、天然ガスを引っぱってくるというような方法以外に亜硫酸ガスの大気汚染の抜本的な対策というものがないように思います。天然ガスの場合には御承知のように、全く硫黄分を含みませんので、亜硫酸ガスの対策としては有効な手段でございます。先般、ごく近年、モスクワ、レニングラードその他の地区におきまして発電所のような大規模のところにおきましては天然ガスが使われております。
  50. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 進藤さんは電気関係の専門家だと、かって東電でもって重役をしていらした方だと思います。私も小林一三のころに一緒にお伺いしたことがあるのですが、そこできょうあなたの御意見を伺っていまして、もっともだと思う点もあるわけですが、やはり亜硫酸ガスですね、これを除去するためには私はやはり、公害をなくすためには発生源で食いとめなければいかぬとこういうふうに思うのですが、いま発電所で、発生源で食いとめるとなればやはり重油で脱硫した、要するに硫黄分の少ない重油を使うことと、それから排煙脱硫ですね、この二つだろうと思うのですが、いま現在この脱硫装置が日本でできておるのかどうか。私が聞くところによりますと、排煙脱硫が八幡製鉄で開発されて、そしてもうすでに海外に売られておると、そして数十億の利益をあげておるということをこの間学術会議である方が報告をなすったということを私はちょっと耳にしたのですが、その真偽がわかりませんので、この際進藤さんにそういうことが事実あるのかどうかということですね、あるならばなぜ日本の発電所がその排煙脱硫を、それほど優秀な、海外にまで売れるような脱硫装置があるならばなぜそれを使わないのかという点ですね、それをまず伺いたいと思うのです。
  51. 進藤武左衛門

    参考人進藤武左衛門君) 専門家でありませんから満足なお答えができるかどうかわかりませんけれども、八幡でやったことを私聞いております。それから現に、さっき申し上げた四日市それから姉崎、五井発電所でやったのも、これは日立、川崎、三菱重工ですか、これは共同でやっておりますから、つくればできるということは、これは確かなことであります。ただ、八幡のはよく内容を知りませんけれども、容量が割合に少ない、発電所の容量が少ない、だからしたがって、脱硫機も容量がそう大きなものでないと思います。ところが、電力会社がやりますと、百万キロ、二百万キロというふうな大発電所で脱硫をやっていかなくちゃならぬという技術的にもむずかしい問題がまだ検討の余地がある。それからもう一つは、経済的にもこれはほんとうにやれるかどうかという問題が、いま簡単にできるという結論には私はならぬじゃないかという気がいたすわけであります。しかし、これは、政府のほうではできるだけやる方針、電気自動車も一生懸命やろうというような方向でいま進んでおりますから、将来そういう方向でいくことは確かだと思います。ただ、私の申し上げたいのは、いま日本のエネルギーの八割は海外依存なんであります。でありますから、これだけ経済は、発電力は自由世界第二位だ、そして経済の発展は非常にえらいことだといっておりますけれども、肝心のエネルギーの八割もが海外の依存度ということは、これは国民として考えなければならぬ。そこで重油——いまは非常に荷が急激に増加しております。結局、早く建設し早く発電できるということで、重油発電所がどんどん伸びたわけです。しかし、これから先、産業公害の問題が非常に大切になってまいりますと、原子力発電にいくとか、いまお話しのガスタービンの発電になるとかということになると思います。われわれ、いま国内の一体、電源をもう少し開発をできないかということで、われわれ仲間で検討しておりますけれども、水力の開発は大体おしまいになったと称されておる。ところが、日本世界で一番有数な水力国、それから地形から申しますと、国の中央にあれだけの高い山がありますから、水力はまあ大見当で一億キロワットくらいあるんじゃないかという考え方もあるのです。それと、いままでは発電所目的だけの水力開発をやっておりましたけれども、今度は洪水の調節もやらなければならない。用水の確保もしなければならない。水を多目的にやることが御承知のように始まっておりますから、これとの関連をやって、水力開発をもう一ぺん再検討したらどうかということを私は考える。それからわれわれ仲間で十年以上やっておりますが、地熱発電の問題、いま東北と九州に二カ所しかございません。発電力も両方ひっくるめて三、四万キロという非常に小さいものでございますけれども、イタリアのように数十万キロの発電所、ニュージーランドでもできております、そういうふうなもの。また、このごろいわれております潮力、黒潮のエネルギーを利用すること、ちょうど太平洋の南に世界一の黒潮が流れております。それが伊豆七島の間に入りますと、あそこは狭まりますから、スピードが上がるという現象が出てくるわけであります。そういう潮流を利用した発電ができるだろうかどうかというふうな、国内のエネルギーをもう少しどうしてつかまえるかという問題を検討することも非常に大切なことで、これをやらずに、ただ海外から持ってくるということになると、いま八割もエネルギーが輸入されているわけですから、そういう問題との関連もあるから、私はできるなら脱硫というふうな二次的な投資よりも、それをもう少しもとへ持っていって、いま須藤先生のお話しのような、もとをただす対策をぜひやっていただきたいと思いますが、これに対しては、きょうの問題だけを取り上げて検討しておりまして、そういう将来に対する研究調査をやっている組織というふうなものがないのです。そういう問題は、これは当然国が力を入れて国がやるべきだと思います。
  52. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私も今日の問題だけを問題にしているわけではございませんので、私たちはエネルギーというものは非常に重要なものだと思っております。国民を幸福にする産業ならばどんどん発展させていかなければならないとも思っております。ただ、国民を犠牲にする、一企業の利潤だけを追求するような、これはやめてもらわなきゃ困ると思っておるのですね。この前、電力問題ですが、日本の電力九分割問題が出ましたときに、松永安左衛門さんが出てこられまして、私もそのとき電力の一委員といたしまして、私はあのような重要なエネルギーですから、これは九分割などすべきではない、必ず将来問題が起こるからこれは一本であるべきだ、だから、私は九分割に実は反対しました。ほかの皆さんは九分割に賛成なすったようですが、私は反対したのです。というのは、将来のことを考えて、あのような重要な電力のようなものをそれほどこま切れにしてしまっては、将来いろいろ問題が起こってくる、不都合が起こるから、やはり一本であるべきだというのが私の意見であり、また私の党の意見だったわけなんですが、そういうことに対して、将来のことを考えたら、今日、もうほんとうに将来のことに対する抜本的なことを考えていかないといけないのじゃないかと思うのです。この重要なエネルギーをどういうふうに確保していくかということは、これは重要なことだと思うのですが、進藤さんは、そういう問題に対してどういう遠大なるお考えを持っていらっしゃるか、ちょっと参考までに伺っておきたいと思います。
  53. 占部秀男

    委員長占部秀男君) ちょっと公害問題からはみ出しているような感じがしますが、もし御意見がありましたら。
  54. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 将来の公害のことを考えましてね。
  55. 進藤武左衛門

    参考人進藤武左衛門君) 非常にむずかしい御質問でございますし、私、電気をやめて水商売をだいぶ長くやっておりましたので、的をはずれるかもしれませんが、私は、やはり国の基幹となるべき産業ですね、これはやはり他に依存しておるという形をできるだけやめてしまうことが、われわれの、国民の希望であり、国の発展の安定したあり方だと考えております。ですから、まあいままでは電力は非常な勢いで、世界一その伸びが早かったのです。毎年一割四、五分伸びたのですから、それによくこれだけ追いついて、いまアメリカは去年から大電力制限をやったり、停電をやったりしているのですが、それをここまでやってきたのは、電気事業者の非常な努力だと私は思っておるのです。しかし、いまのように、ここへきまして、公害問題がこれだけ出て、しかも電気事業者は、煙突を高くする、何をするといって、もう公害に対する非常な努力をやっておることは、われわれよくわかっておるのですけれども、世間ではそれほど御理解が、われわれの理解するほどじゃないと思います。そういう努力をしてもなかなかできないというのは、海外から重油を九割以上も持ってきているということが根本原因なんです。だから、持ってくる油を現地で脱硫できないだろうかという問題が一つと、それからもう一つは、代用したものになるのじゃないか。つまりいまのガス発電にするか、あるいは原子力発電をどんどん伸ばしていくか、原子力は、もちろん核燃料は海外依存でございますけれども、これは将来技術が発展しまして、高速増殖炉ができてきますと経済的な問題その他、非常に解決されると思いますから、早くそういう方向へ行くかという問題をしっかりやる必要があると思います。  ですから企業形態というのは、これは人がやるのでいろいろの議論があると思います。私は、実際は企業形態とか組織というのはあまり問題にしない、というのは、人が仕事をするのであって、組織が仕事をするわけではありませんから、できるだけそういう組織になっても、目的をはっきりして、それを全力を尽くすということになれば、これは九分割がいいか、一社化がいいかわかりませんけれども、しかし、いま申し上げたような問題ができやすい組織にし、それをやっていくということはどうしても必要じゃないかと考えております。
  56. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 助川さんにお聞きしたいと思うのです。  公害防止協定を横浜ではお結びになりまして、それによって私的な契約ということで、実際かなり立ち入りとか、いろいろな排出の基準をお互いに定めるとか、こういうふうなことをやられておりまして、あれはたしか電源開発の会社が来るときにそういうことをお始めになったと思いますが、公害防止協定が、その後ずっと各自治体でもかなり進めてきておりまして、いままでの公害法律の穴埋めをしてきたような感じを受けるのでありますが、今度の法律改正に基づいて、いままで進められてきた公害防止協定というものに何らかの影響というものが一体出てくるのかこないのか。もし影響が出てくるということになりますと、せっかく自治体でそれだけお進めになっているのを、何か妨害するような結果になる。そういう意味で、その関係をお聞きしたいと思います。  それから第二点でございますが、公害防止協定がその後ずっと進められてきておるわけでありますが、いままでの公害防止協定のあり方というのは、個々の企業と自治体との協定だという形でありますが、最近、ある一定の地域を限っての企業との協定というようなものが出てきておりますが、これは一体、公害防止協定の一番最初の精神とどうもちょっとずれてきたような感じがするのですけれども、その辺は一体どういうふうになっているのかということが第二点でございます。  それから第三点は、先ほどの御陳述の中に、基本法の中に「相当範囲」というような字句を御指摘になられたわけでありますが、これはどういうふうに実際の行政の中で扱われているかということは、さきの数字ですね、六大市で公害対策費が七億八千六百万円ですか、それに対して千五百万円しか国のほうから助成がないというのは、範囲というのは大体そのくらい狭められて——広げられているといいますかね、逆に。国で考えられているのは、そんなに大きな範囲しか考えられないから、公害防止対策の対象に国の負担はなっていないと。それは大体そういう割合だと、こういうふうに見ていいのかどうなのか。  それから第四点は、例の扇島問題でございますが、扇島の問題でたいへん御苦労をされたと思うのですけれども、それでLNGを使うことによって〇・〇一二PPMまで下げて、LNGを使わない場合には〇・〇一五PPMだというふうに私ども聞いておりますけれども、大体その〇・〇〇三PPMですか、これだけ下げるというのは、大体鋼管で使うエネルギーの、たとえば重油とかあるいは重油にかわるエネルギーとしては大体どのくらいのパーセンテージになるのか、その辺ひとつ聞かしていただきたいと思います。
  57. 助川信彦

    参考人(助川信彦君) いま四点ばかりの御質問ですが、この公害防止協定が従来横浜でも進出企業との間に締結されておりまして、さらに既設の企業との間にも類似の発想で企業側の自覚を求めて公害防止協定を結びつつあるというふうに広がってきているわけでございますけれども、今度の法案が成立したといたしまして、公害防止協定、私どものいままで結びましたものが必要がなくなるであろうかというお尋ねでございますが、今度の法律改正だけでは必要がなくなるというようなことは考えられません。と申しますのは、政令にゆだねられている部分もございますけれども、法律のたてまえとしては、一応権限地方に委任されたとしても、府県知事の段階でございますし、また、いまの大気汚染防止法のたてまえは煙突一本一本から出てまいりますものについての排出基準が定められております。あるいは工場の騒音規制にいたしましても、それぞれのつまり騒音発生施設、機器、あるいはその排水処理施設ごとのそうした基準の立て方でございますので、工場全体として、たとえば先ほどお話がありました日本鋼管でございますと現在九十本の煙突がございます。扇島に進出するときには三十本に減るわけでございますが、高くなりますものもございますし、特に低くしてもらうようにした煙突もございますけれども、そういう一本一本で見てまいりまして、一本一本規制するというやり方も一つの方法かと思います。私どものほうは、全体の影響といいますか、着地濃度といいますか、そういうものを見てまいっておりますので、たとえば現在一時間当たりざっと二千立米の亜硫酸ガスが出ておりますけれども、これが昭和五十三年に扇島に進出が完了いたしますと、煙突が九十本から三十本に減るだけでなくて、三分の一にこの亜硫酸ガスの排出量が減ります。ざっと一時間当たり六百ノルマル立米と申しますが、二千のものが六百になるという、そういう約束になっているわけでございます。そういうたてまえで風洞実験とかあるいはこの複合着地濃度という発想で仕事を進めてきておりますので、通産省の御当局におきましても行政指導の面ではこういう規制の考え方を持ち、類似の考え方を持って結んでやっております。法律関係では一本ずつの排出基準でやるという考え方でございますので、私ども住民に対する影響を重視いたしますし、その工場以外の工場から出ます公害の影響というものをそれにプラスして考えるという構想があるものですから、環境基準が〇・〇五PPMというのは平均値でございますけれども、それ以下に押えていくためには、一工場当たりのやつを大体〇・〇一PPMあたりにしてもらわないと、三つも四つも工場が重なった場合には環境基準をオーバーするということもございます。したがいまして、逆に非常に燃料転換だとか画期的なことが行なわれまして、東京からもまた川崎からも、隣接のところからも、亜硫酸ガスなら亜硫酸ガスの影響が全くなくなるというような状況がございますれば、むしろ全くということはございませんが、ある水準まで下がるといたしますれば、横浜方式の規制値はむしろ上げてもいいというか、そういうことはあり得ないと思いますけれども、そういうことでございます。  それから工場との契約でございまして、法制化が整備されたらこれはやめますよということの約束をしておりません。立ち入り権あるいはまたその代執行権に近いような約束が一つできております。この辺のところはよその都市が、まあ現在ざっと四十くらいの、私が調べましたところでは四十くらいの都道府県市が六十くらいの企業と公害防止協定を結んでおりますけれども、条文を見ますと、代執行的な条文が最後についておりませんのが多いように思います。つまり公害防止の設備は進んで会社がおやりになることと、それからまた、こちらから指示されて公害が発生して、あるいは発生のおそれがあって指示された場合やることと、やらない場合にはかわってひとつ横浜市がいたします、その費用はあなたの会社の負担です、こういうお約束が取りつけられているわけでございまして、この点がございますので、公害反対の住民運動の方々が私どもの様子を見ておる、もう一つは、公害監視設備のテレメーター方式等によりますこうしたものを年間八千七百六十時間常時監視をする態勢を整えておるということ、そういった点をたよりにいたしまして、公害反対運動がおさまっておるわけでありますから、やはりそうした背景を整えないで、形だけの公害防止協定というのでは、単に住民向けの何か納得させるための協定というようなものになりかねない面もございます。  それから公害防止協定につきまして、個別協定と一括協定とどちらがよろしいか。やはりこれはその土地土地の事情によりまして、まずとりあえず一括的にその地域にある工場全体から念書でもとっておこうという行き方は、行政として当然あってもいいわけでございますし、それからまあ個別的にも立ち入っていけるような条文になっていれば、それも一つの方法であろうと思います。しかし、まあいろいろな企業というのは、それぞれ生産工程とかあるいは新しい技術の導入とかいう問題がございますものですから、個々にこまかく折衝をいたしまして、時間をかけてそのプロセスの間にお互いに、工場の側も学んでいただくし、また、住民のいろいろな御要求というものについて、工場側にも御勉強をお願いする。われわれもまた生産工程その他こういう問題についてこういう説明がある以上、将来こういう技術が入ってくればこういう汚染物質が出てくる心配があるのだなというようなことも考えながら折衝をしなければなりませんので、でき上がった条文そのものを、鬼の首でもとったように喜ぶのじゃなくて、折衝過程を大事にしてまいりたい。そしてまた、その折衝の結果をきちんと守らせ、監視する職員が必要でございますし、そういう機器が必要であると思います。横浜方式と言われますものも、日に日に新しく、そして新しい技術を導入して変わっていかなきゃならぬというふうに思っております。  それから先ほど申し上げましたのは、公害対策基本法の中に典型公害を列挙しておりまして、それを「相当範囲にわたる」という限定をしておるわけでございます。この限定がわれわれ地方行政をしております者に、ここからここまでのやつが相当範囲で、ここからここまでが市町村の固有事務だという分け方ができないということを少し協調する意味で申し上げたわけでございまして、国の御予算関係その他がありまして、一定のワクで結局市に対する補助金というようなものが制限をつけられるのは、政府の御努力によりましてもやはり限界というのは当然あるであろうと思います。  先ほど申し上げました一千五百万円の内容は、大体土地の整備費等でございます。これが大体その対象の土地の三〇%程度、つまりテレメーターとか大気汚染の自動記録計だとかいうものについて整備をいたしますときの国庫補助金が一千五百万円にのぼっているということでございまして、平均いたしますとわずか一・九%でございますので、ちょっと強調する意味で、それのワクといたしましては、相当範囲にわたらないことも、おまえのほうに有利でやっているのだからというふうにお考えなのかなあというふうなことは、常時私ども都市の関係者同士で申しておりますので、それを強調する意味で申し上げたわけでございます。他意はございません。  それから先ほどの日本鋼管の問題については、初めのほうでお答えをいたしましたので、これで終わります。
  58. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 進藤先生にちょっとお聞きしたいのですが、先ほど日本の産業構造を変えていくのがよろしいと、特にパルプとかあるいはアルミナとか銑鉄とか、これは向こうでそういうふうにして日本に入れるということがいいのじゃないかというお話なんですが、私はちょっと見解が違うのですがね。その場合に、そっちの原料の生産地ですね、その方面の大気なり水質なりを汚濁する心配は一体ないだろうか。確かに日本はそれによっていくらか難を免れるかもしれませんが、そういう方面のむしろ公害というものが発生していくという心配が起こるのじゃないかという点が私ちょっと心配なんです。ほかの点については、先生の御意見そのとおりだと思いますし、私もそういう主張をしてきたのですが、その辺がどうも私納得できないのですが、そういうことをしてもいいのかどうか、この点を一点。  それから大喜多先生にお伺いしたいのですが、確かに公害関係職員といいますか、これはどこの都市でも実際定員よりも少なくて、不足の人員が相当出ているわけですね。それで、実際公害の起こる実態というのは、先ほどお話がありましたように、なかなか中央では察知できないような、しかも相当広範囲にわたらないと思われるような相隣的な公害というのが非常に多い。これも言われてみると調査に行かなければならない。そして、それに対する処置も何とかしなければならぬ。こういうふうになると、たいへん公害防止関係職員というのは、いま日本の中でも非常に少ないだろうと思う。そういう人たちが大学卒業していっても、これはおそらく企業のほうで相当持っていってしまうということも多いだろうと思うのです。  先ほど七人の方で教育をされているというのですが、そういう状態で、一体年間にどのくらいの技術者が養成できるか。それから、大喜多先生として、具体的にそういうこれから専門職の人たちを相当養わなければならぬと思うのです。それはどういう形がいいのか。技術者の養成のあり方、こういうものについて御意見を伺わしていただきたいと思います。
  59. 進藤武左衛門

    参考人進藤武左衛門君) 最初の御質問に対してお答えいたしますけれども、これは非常に大きな問題で、ここで私が私見を申し上げても笑われるかもしれませんけれども、私はやはり公害問題が非常に重要だという考えですと、もとをたださなくてはなりません。ところが、日本の産業はほとんど——ほとんどと言っては何ですが、原材料を大部分海外に依存しているわけです。ですから、原材料を輸入してここで荒ごなしをして、それから製品をつくるということになると、どうしても産業廃棄物あるいは公害問題はこれからもまた問題になる価値があると思うのです。そこで公害問題をほんとうになくすには、もとを正す意味で、さっき申し上げたように、一次ごなしは現地でやるということがいいじゃないかということで申し上げたのです。  もう一つの問題は、私は海外技術協力をずっと戦後、関係をいたしておりますが、いま政府のほうで発展途上国へ経済協力をやっている。ところが、金の議論は非常に強いのですけれども、技術協力の問題が日本は非常に劣っている。先般のDACの会議でも指摘されたような状況でございますが、現地でそういう一次荒ごなしの工場をつくるということが、私は一つは向こうの技術協力というか、そういう技術の水準を上げたり、技術の工員を養成するという、技術水準を向上させるのにも非常に役に立つのじゃなかろうか、またそれを足場にして発展途上国がこれから経済開発をやるようなことになりはせぬだろうか。そういうあらゆる意味におきまして、できれば現地で一次産業をだんだんやるような——どうせ海外に幾らも日本の資本が出ているわけですから、そういう考え方が必要じゃなかろうかということを申し上げたのです。ただ、これは産業構造の非常な変化になりますので、あるいは労働問題もありましょうし、問題は非常に大きいと思いますので、検討の価値があると私は思いますので、申し上げたわけでございます。
  60. 大喜多敏一

    参考人大喜多敏一君) ただいまの教育の問題でございますが、現在、私どものほうにはいわゆる、公害衛生学部というのがございまして、ここで一年コースにつきましては定員三十名、それから一カ月コースにつきましては定員が大体五十名くらい教育しております。  問題は、一つは先ほど申し上げましたように、教員が非常に不足しておるということもございますが、実際に一年コースは、これは大体、大学を出てすぐに来る人、大学のマスターを出た人でありますが、実際、来る人が非常に少ない。はっきり言いまして、ことしは五名、来年もいまのところ希望者は五名くらいです。そのくらい希望が少ないということが一つあります。  それから次に、一ヵ月コースは、これは大体、地方の現在、公害の何らかの業務についていらっしゃる方でありますが、ただ、こういう方が実際、地方に帰られた場合に、ずっといつまでも公害をやっていらっしゃるかというと、そうじゃないですね。たとえば帰られて一年たたないうちにまたほかの業務に飛ばされてしまう、そういう場合が非常に多いわけです。そういう人にとっては決してそれほど意欲が——せっかく教育を受けても意欲がわかないだろう、そういう問題がございます。したがって、私といたしましては、いま国の場合にはいわゆる研究職というのがございまして、行政職とは別になっておりますが、地方で設けていらっしゃるところがあるかもしれませんが、何か一つの別の職種を設けていただいて、その方がかりに課長だとかそういう職につかなくても、給与の面で十分それに見返るだけのものを与えていただきたいということが一つあるあるわけです。実際、ことしなんか希望者が多いのでございまして、私どものところ、たとえば大気——これは五十名と申し上げましたのは、騒音と水質と大気、この三つ合わせてでございます。大気の場合は三十四名応募者がございました。ところが、実際、実習をやるわけですから、講義だったらこれは百人くらい一緒にしてもやれないことはないわけですが、実習をやるためにある程度制限しなければいけない。それで二十三人くらいに制限をしているわけですが、それでも学生のほうからは当然不満が出ます。と申しますのは、一つは器具が非常に少ない。一つの実習をやるのに、方々から、恥ずかしいのですが、ほかから機械を借りてくる、そういう状態です。それから実習に当たる者が少ない。それから場所が非常に狭いですね。場所がほとんどない、そういう状態でございます。したがって、そういう教育と、それから一年の場合は、これは先ほど申し上げましたように、いわゆる将来先取りするような、いわゆる幹部級の人を養成するわけでありますが、いまこの場合の教育では、やはりほとんどの講師が外来講師になってしまう。結局そういうことはあまり望ましいことではないということですね。そういう問題がございます。それから現在ほかでいろいろ実習なさっているところがあると思うのですけれども、たとえば通産省なんかでも、それから関係の施設センターでなさっておりますが、おもに講義あるいはせいぜい一週間ぐらいの実習だろうと思うのです。やはりこの公害ほんとうにやっていくためには全体を一つの体系として見ていく、こういうのが現在の大学の組織ではできませんので、私のところ何とか、これ苦しいのですが、がんばって今後も発展させていきたいと思っております。
  61. 小平芳平

    ○小平芳平君 初めに助川参考人お尋ねいたしたいのですが、この十四法案の審議の過程でも、財政の裏づけはだいじょうぶなのかということが両院を通してしばしば出ているわけですが、その実情は先ほども一例をおあげになったような実情だと思います。で、特に私がいま下水道につきまして、要するに水質汚濁を防止すると、先ほど企業に対する規制のお話がるるございましたが、やはりもう一つの柱は下水道建設が進まないことには水質汚濁防止はとても達成できそうもないということだと思います。ところが、総理大臣はじめ各大臣、それはもう日本は下水道がおくれているんだと、これからは飛躍的に重点的に建設をするんだというふうに述べるわけですが、実際問題それほど進みそうにないように私たちは感じますが、実際に横浜市でそういう面を担当していらっしゃって、現在、さて下水道をそれじゃ飛躍的につくるといっても起債のワクとか、あるいは地方負担とかいろいろな問題が出てくると思います。そういうような点について具体的に御説明願えたら幸いだと思います。  それから時間の関係で大喜多参考人に伺いますが、この国立公衆衛生院は、どちらかというと、私たちは国立公衆衛生大学とでも称すべきものであって、この点についても、十四法案がかりに成立したとしても、   〔委員長退席、理事杉原一雄君着席〕 技術者の裏づけはだいじょうぶなのかということに対して、各大臣はだいじょうぶだと、力を入れるんだと言っているわけですが、いまの質問に対するお答えで、だいぶ国立公衆衛生院の現在の業務の仕組みについてはお話がありましたが、ただ厚生省の一機関として現在やっている状態でいいかどうか、あるいはもう少しそれについて制度そのものに対する発展的なお考えがありましたらお伺いしたいと思います。  それからもう一点は、先ほど、ずっと今後起きるであろういろいろな公害の問題点をおあげになりましたが、その中でオキシダントあるいは硫酸ミスト、こういう点についてことしになって非常に東京はじめ関東周辺で大騒ぎになったわけですが、こうしたオキシダント、硫酸ミストに対する来年あたりの見通しなどおありになったらお聞かせ願えれば幸いだと思います。  それから今回の法律改正では窒素酸化物というものがあまりはっきりした位置づけがされていないように思いますが、そういう点についても御意見をお述べ願えれば幸いだと思います。
  62. 助川信彦

    参考人(助川信彦君) 下水道の建設について、おくれがちではないだろうかというお尋ねでございます。横浜市の場合も非常に立ちおくれをいたしまして、戦後の立ち上がりも、非常に都心部を広範囲に接収されたりいたした関係もございまして、急速に現在一つの重点事業といたしまして、建設局の一部でございました下水道局を独立させまして、急ピッチで工事を進めているわけでありますが、これもやはり六大都市あたりに対しましては、普通の市町村よりは若干富裕なんだろうという見方もあるかもしれませんけれども、補助率といいますか、起債の認証額というようなものが人口とか、そういうもののふえ方に比べますと押えられぎみであったのでありますが、都心部につきましては十五年ほどの計画が立っておりまして、一応進められておるわけでございます。ところが、郊外地がどんどん開発されておりまして、東京あたりの方がお住まいになります。そうしますと、人口当たりの下水道普及率というのが、一生懸命下水道をつくりましても進まない。最近五、六年の間に北部、中部下水処理場、西部下水処理場、南部下水処理場というようにつくりましたけれども、   〔理事杉原一雄君退席、委員長着席〕 鶴見とか、あるいは中区、磯子区とか、そういった臨海部に近いほうからでき上がりつつあるわけでございますけれども、一割にも満たないという状況でございます。ことに内陸に開発される団地につきましては、でき得る限りこの団地の造成を施工するものにこうした下水道とか道路とかいうものについて義務づけをし、ある程度の終末処理もそうしたところでやらせるというような方法をとっておりますけれども、なかなかこの下水道につきましては、御指摘のとおり非常におくれている。今後おくれを取り戻すために、それではもっとたくさんお金をつけたらひとつ解決できぬのかというようなことで、私どもおしりをたたきますと、いまの時点で与えられた仕事をこなすので、たとえば設計とか監督の技術職員が限界に達しているので、これはやはり、たとえば十五年かかるのを十年でやってくれと言われてもできないのだというようなお話を聞いている次第でございます。先ほど公害技術職員お話も出ましたけれども、公害対策を総合的に抜本的にその基盤を固めて仕事をしていこうということになりますと、幅広い根を形づくるところからやってまいりませんと仕事にならないという感じがいたします。  関連いたしまして、私どものほうの公害センターの機構でございますが、二十五人ほどのわずかな職員でございます。大体二十人ばかりが各方面の技術者でございまして、応用化学とか、医師は私一人でございまして、この分析とか、それから電気とか機械とか建築とか、公害の学校というのはございません、一部衛生工学をやっております学校がございますので、大学から何人か来ておりますけれども、各方面の方々に手広く仕事をしてもらいまして、そうして課長とか係長とかいう制度をつくりませんで、ある資格を取得すれば全員が課長になってもいいような主査とか副主幹、そういう制度で統一的に、最近光化学スモッグ、ヘドロ問題とか、とっさに起こってまいるものもありますものですから、フルに動員し得る体制ということで、新しく大学を出た卒業生、また大喜多先生のところで講習などを受けたりさせながら、そういうものを仕事を通じて養成していこう、なるべく簡単にそのほかの職種にかわれないように、そういった体制をもっと整備するためには、確かに研究職的な資格を取得させるということも必要であると思います。公害防止技術者として、都道府県とか、あるいは市町村とか、あるいは国とか、あるいは企業あたりで資格を与えて、そうして将来の見込みをちゃんと持たせて働かせるようにする必要があるという点は大喜多先生と同感でございます。  なおもう一つ、先ほど申しておりませんことで、この際つけ加えさせていただきますと、今度の騒音規制法の中に道路公害と申しますか、自動車の騒音等につきまして、私どもの年来主張をしておりました分は取り入れられましたので、この辺はたいへん前進であるというふうに評価をしておりますけれども、横浜は御承知のとおり、例の都心部を新幹線が通るという問題がございまして、地元に根強い反対運動もございます。で、こういうものにつきまして独自の、地元の大学の先生あたりから環境基準というようなものをおきめいただいて、その公害対策について一つ一つ煮詰めつつある段階ではございますけれども、国の騒音規制法の中身も軌道騒音というものについて一つの規制を課していただくことが、新幹線の被害に悩む住民の方々のことを考えましても、これは健康にあまり害がないからという発想で軽んぜられている傾向がなきにしもあらずでございますけれども、公衆衛生院の御報告等によりますと、必ずしも健康に害がないということはないというふうに報告も伺っておりますので、この軌道騒音——鉄道騒音というものにつきまして、できるだけ早い機会に騒音規制法の中に入れていただき、また、運輸省関係の軌道関係の法規の改廃が必要でございましたら、そうしたことで今後そうした問題の解決がはかり得るような点を御考慮いただきたいと思います。ちょっとつけ加えました。
  63. 大喜多敏一

    参考人大喜多敏一君) いまの問題について御答弁いたします。  まず公衆衛生院の件でございますが、まあ部長会議できまったことでございますが、そして厚生省のほうに提出してございます。それはどういうことかと言いますと、公衆衛生院は今後——英語で言いますと、いわゆるポストグラジュエイト・スクール・パブリックヘルスといいますか、結局公衆衛生大学院という、そういう形態を取りたいということでございます。現在も世界的にはいわゆるWHO、先ほども申し上げましたが、世界保健機構からは日本唯一の公衆衛生大学校である、いわゆるポストグラジュエイトですね、大学を出てから入るところである、これはそういうお墨つきをいただいておるんですが、残念なことにどうも日本の中では非常に影が薄うございまして、大学を出たいわゆる肩書きをもらうんで、それは外国に持っていけば非常に役に立つんですが、日本の中ではそれを持って地方につとめても、あまりそれほど給料が上がるわけでもない。私たちとしてははなはだ不本意なのでございますが、一応そういう部長会議の線が出ておりまして、現在の公害課程もできたら二年にしたい。現在は一年でございますが、将来は博士課程のそれに対応するものを置きたいということを考えております。ただいま何せいまのところいろいろまま子扱いの点がございまして、奨学資金が取れないもので、いわゆるこれは文部省に属していないと、いわゆる育英会の資金が取れないのだそうなんでございまして、しかたないので、ある保険会社の非常な御好意によりまして、決して多額じゃございませんが、特に将来公害をやるようなエンジニアとしてつとめる人のためには、少し奨学資金を出していただくようにしております。そういう非常に不本意な中で私たちがんばっておるわけなんでございます。  それから第二の問題につきまして、このオキシダントとか硫酸ミストが、来年の予報でございますが、実はこういうことでございます。オキシダントは決してことし初めて起こった問題じゃない。すでにもう数年前から、東京のステーションではオキシダントの濃度が、夏だけでなくて四月ごろから高くなっているような場合があったわけです。  それから硫酸ミストの濃度、これは私がもうすでに五、六年前からずっと測定やっておりまして、どうもあまり先取り早くし過ぎまして、そのときはだれも認めてくれなかったのですが、そのころからもうたとえば東京とか大阪の空ではかりますと、必ず硫酸ミストが出てきておりました。そういうことでございますので、そういうものは前からある。したがって、当然今後も出てくるというのは当然でございます。  それからアメリカにおきましても、大体ロサンゼルスは、これは特に有名ですが、それ以外の都市におきましても全部の都市で大体オキシダント・レベルが多かれ少なかれ上がってくると、こういうことが認められておりますので、これは来年はオキシダントの濃度がある程度出るというのは絶対間違いございません。それから硫酸ミストも当然空気中には存在するということでございます。  ただ一つ本年非常に問題になったのは、いわゆる杉並の立正高校だとか、それから川口、町田、それから千葉なんかにおきまして、いわゆる非常にちょっと異常な健康障害というものが出てきたということでございまして、これはロサンゼルスなんかでもあまり例を見ないような状況でございます。それにつきまして、私いま純粋の医者じゃございませんのですが、お医者さんの中にも二派ありまして、その辺がはっきりしていないということであります。しかし、たとえばこの間アメリカからミドルトンと一緒に参りましたニューイルという——やはり米国の大気汚染のいわゆる大きなNAPCAという組織がございます。その中のやはり医学博士の人ですが、これは非常に注目しまして、いわゆるエピソード、たとえばロンドンだとかニューヨークでありましたように、いわゆる大気汚染がひどいときに人が死ぬといった、それと対応するようなエピソードという表現でもって、こういう問題はやはり当然そういう形で取り扱うべきであると言っておりまして、私たちとしても同感でございます。そのようにいわゆるオキシダントといいましても、何種類かのいろいろなものが入っておりまして、たとえば目に刺激を与えるもの、それから視程が悪くなるもの、あるいは植物を枯らすもの、それぞれ少しずつ、あるいは同じものもありますし、そうでないものもありますので、非常に複雑でございます。したがいまして、そういうものを今後つかんでいくためには非常な努力と研究が必要でございます。  それから窒素酸化物につきましては、これも非常に大きな問題で、たとえば亜硫酸ガス、これは先ほどからお話がありましたように、脱硫は非常に困難かもしれませんが、やる気があればやれるわけです。ところが、窒素酸化物の場合はとにかく空気中の窒素と酸素がくっついてできるわけでございまして、なかなかそう簡単に取れないということで、原料の中にも入っているわけじゃございません。したがって、これをどうするかというのが今後の非常に大きな問題。しかも窒素酸化物自身がやはり人体に影響を起こしますし、さらにそれが先ほど言いましたようなオキシダントや硫酸ミストをつくっていく元凶ともなるわけでございます。これにつきましては、現在漏れ聞くところによりますと、環境基準のような形で討議されておりますが、これを防ぐためにも、あるいは将来自動車の中から鉛を全部除かないと、かりに自動車にそういう窒素酸化物を除去する触媒をつけても働かないだろう、そういう意味でもやはり鉛というものが将来はやはりひとつ除かなくちゃいけない対象になるのじゃないかと思っております。以上でございます。
  64. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それでは二見さんにお伺いしたいと思いますが、ただいま漁業に携わっておられる者の立場から公害に対するお話があったわけですけれども、もうすでに瀬戸内海も近い将来死の海になるだろう、こういうような観測もされております。すでにこれは昨年のデータで六百三十四億の水揚げがあった中で実際に公害による漁業被害というのが三十八億もある。これがやはり漁業に携わっておる漁業者の方々の生活に非常に重大な影響を与えておるのではないかと思います。したがいまして、この漁業者の生活に対してどのような実態になっておるのかということが第一点。それから第二点は、この被害に対しての補償が何らかの形でなされておるのかという点、この点についてお伺いしたいと思いますが……。
  65. 二見俊男

    参考人(二見俊男君) この損害につきましては、これは事実出た損害で、何らか企業の、もしくは自治体から出た金は含まれておりません、入った金は計上しておりませんが、ただ部分、部分で、船が衝突をした、相手が、加害者がはっきりしておる、こういう場合には当然魚網の損耗とか魚の損耗とか、そういうものは当然話し合いで損害補償を取っております。ただコンビナート群で複合した企業群が流したいろいろな汚水、廃棄物、そういうものに対して一々補償をとっておるわけではございません。ですからこれらがやはり積み重なっていきますと、過般全漁連が大会ありましたように、そういう補償を企業群に対して要求するには沿岸の漁民のわずか千や二千の力ではどうにもならない。言ってみれば、企業群の側は一応国家的な利益の見地から考えて、多少の海における魚の損害があったにしても、企業自体の国家的利益であるからということで見のがしてしまう、こういうことがありまして、全国、稚内から南は鹿児島に至るまで随所にこういった問題があるわけです。ですから、中には地方自治体も中に入って多少の見舞い金でお茶をにごされるというところもありますけれども、大半がほとんど泣き寝入りである。そういう意味からするならば、当然無過失責任の問題も漁業あるいは魚に対する損害に対して考えなければならない問題がこの辺にも介在しておる。もちろん公害対策基本法は健康と環境保全の問題でございますから、それを立証してどうのこうのということはむずかしいと思いますけれども、そこら辺にやはり考えていかないと、具体的には北海道においても、稚内、白老、紋別、網走、いろいろな工業群ができたところにはそういったものが起こりつつある。そういった点を十分やはり委員会等において考えていただきたい、このように思っております。
  66. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 ただいま二見さんの御説明によりますと、公害問題は漁業者にとっては、これは確かに健康保護に対する被害を与えたということには該当しない、しかし、単なる生活環境の保全というようなものではなくて、やはり生活権を根底から脅かされておる。非常に重要な問題だと思います。今回の審議を通じましても、公害罪の問題もいろいろこの委員会で論議されましたけれども、しかし、公害罪も人の健康に危険を生ぜしめたときに適用されるわけで、この生活権の問題となれば公害罪にかかる問題ではなかろうかと思います。それから無過失賠償責任の問題も、野党の要求としましては、公害一般に対して無過失賠償責任を適用せよと主張しましたけれども、政府のほうでは今回それを出さなかった。しかも、将来これを検討する場合についても、個々の毒物についてそれを当てはめていこう、したがって、政府の意図としましては、やはり健康に直接被害を与えたのに限られるのじゃないかと私は考えておるわけですけれども、そうしますと、二見さんから説明のあったような漁業者の立場を守るような法案から見た場合には、非常にわれわれとしましてももの足りない面があるのじゃないかということを考えるわけでございます。しかも、近い将来に瀬戸内海が死滅するというようなことになれば、ばく大な漁業者の方が生活が奪われるわけですね。一つは、それに対して海員組合の立場からどのような対策を立てておられるのか。それから特に、この法律問題についてさっきも無過失責任の問題も希望があったわけですけれども、具体的にこういう点を望ましいという点があればお答えいただきたいと思います。
  67. 二見俊男

    参考人(二見俊男君) まず、漁業者自身の損害につきまして、これは法律的には水産庁、いわゆる農林省水産庁の漁業法令の一環の中に漁業災害補償法というのがあるわけです。ところがこれは、御承知のように、水産庁自体が公害のゆえをもってその災害補償法の適用をするのではなくして、海難にあうとかあるいは天災の場合に漁業者保護のためにその金は使われるけれども、公害による魚の大量斃死というような場合にその金が使い得るかということになると、これはなかなかその管轄が違うということで使えない。してみるならば、そういう相関連する中でこの公害対策基本法の中でそういった問題、人間が生活権を、あるいは生活の場をやはり守っていかなければならないというようなものに対して、具体的に何らかのやはり裏づけというものを考えなければならないと考えるわけであります。したがって、われわれとしては、これを持っていく窓口というのは当然水産庁でございますが、水産庁に対して、公害によって生じた漁業者の損害、これについて国は補償をしなさい、あるいは具体的に加害者である場合には、何らか早い機会に民事訴訟法ではなくて、簡単に解決のつくような措置がとれるような省令か政令をつくりなさい、こういうやっぱり要求をやっていかざるを得ない、この問題をわれわれは検討しております。
  68. 内田善利

    内田善利君 大喜多参考人にお伺いしたいと思いますが、大気汚染法でも水質汚濁法でもそうですけれども、監視体制ですが、たれ流しによる監視体制、特に大気の場合ですね、煙突から出てくる排煙をどのようにして具体的に監視しチェックするのか、そういった具体的な監視方法ですね。また、水の場合も一体排水口から出てくる水をどういうふうにして監視することができるか、その方法を教えていただきたいと思います。  それから自然公園法の罰則がないということでしたが、その具体例があればお教えいただきたいと思います。  それから助川参考人にお伺いしたいと思いますが、何回も話題になりましたけれども、脱硫開発ですね、この脱硫の技術は長年の間言われてきておるわけですけれども、いまだに脱硫に対する技術開発が行なわれてないと、そういったことが原因して今度の大気汚染防止法にも亜硫酸ガスは適用外にされておると、亜硫酸ガスのことについては国民は、現場においては甘んじてその汚染を受けなければならないと、こういった事実になるわけですが、日本のGNPを第二位に持ってきた日本技術陣でできないことはないのじゃないかと、私はこのように思うのです。利潤追求のためにはできても、公害防止のための技術開発はできないと私は言いたいのですが、そういった点について脱硫装置ということがなかなかむずかしいようには先ほどから聞いておるわけですが、こういった点について見通しがあれば教えていただきたい。日本技術陣をしてできないのがどうも納得できないのですが、この点について見通しがあればお教え願いたいと思います。
  69. 大喜多敏一

    参考人大喜多敏一君) ただいまのこの監視体制の問題でございますが、これは確かに私先ほど申し上げましたように、これは非常に言うべくしてむずかしい問題でございます。先ほども言いましたように、人間が性善であれば、すべて会社にまかせる、たとえば水の場合、会社のほうで排出中のいろいろな汚濁物の濃度をはかりなさい、そういうことが書いてある、しかし、それがはたしてほんとうに守られるかどうかというのが非常に問題であります。これは、一つはやはり私たち地方を見ておりまして、やはりそこでほんとうに真剣に取り組んでいらっしゃる方がいらっしゃるところは会社側もかなり信頼感を置くわけです。そうすると、会社側自身も確かにそれに対して人間ですからごまかしがきかないという、そういう気持ちを持ってくる場合があります。しかし、それは一つの特別な場合でございまして、しかし、そのためにもやはり、私が先ほど申し上げましたように、ほんとうに信頼される人が必要であるということをそこで申し上げたわけです。しかし、そういう信頼関係がどうしても成り立たない場合、そのときはいわゆる個々の企業につきまして排出源に何らかの方法でチェックシステムをつくらなければいけない。これはしかたがありませんが、そうせざるを得ない。これにつきましてはいままでのところあまり話は進んでいないだろうと思うのでございますが、まあこういうことは新しくやはりそれぞれの測器を開発してもらう。最近いろいろ水でも自動的に海水の中のいろいろな成分を自動的に記録できる装置ができております。そういうものを会社側につけさして、それはデータは全部県側がやる、そういうふうなことをやる。それからまあ煙突につきましても同様であります。だから、まあそうせざるを得ないという場合はしかたがありませんからそうするということであります。それからあとまあ廃油ですか、ああいうものについては私も専門ではございませんし、船の場合、どういうぐあいにチェックしていいか、ちょっとわからないのでございますけれども、たとえばこれはちょっと笑い話と聞いていただいてもいいのですが、たとえば亜硫酸ガスを最近苛性ソーダで除こう、そういう考えがあります。そうしますと、これは小さな企業でありますと、まあ苛性ソーダで除くといわゆる亜硫酸ソーダというのができるわけです。それをどこかためておく。それで亜硫酸ソーダを実はうまく利用すればパルプなんかで原料として売れるわけです。これは経済のことは抜きですが、そうしますと、一つ公社ができまして、そういう公社を利用しまして全部それをどこか県なら県の一カ所に集めてしまう。集めると同時にチェックができているわけです。これは一つの笑い話かもしれないですけれども、今後いろいろのそういうシステムといいますか、そういうものに知恵をしぼって考えていただきたいという一つの例として申し上げたわけです。  それから国立公園の罰則につきましては、実は私文面をちょっと読んで、最後にどこに罰則があるかと思って見たのですが、なかったのでそう申し上げたのですが、やはり罰則のない法案というのは何かしり抜けトンボみたいなもので、実際私たち、私は特に自然というものが非常に好きでございまして、山に行ってみて非常に山が荒らされているのは非常に残念でございますが、特に日本は観光資源というのが一つの売りものでございますから、これもやはり資源と考えていただきたいということで、やはりこれは植物、それから岩石そういうものをよごしていく、こわしていく。それから動物をいたずらに殺す。そういうことは、やはりこれは許さるべきではないわけですから、それについてやはり当然罰則があってしかるべきではないかと思います。もしか罰則があれば私の読み違いでございまして、ここでおわびしたいと思います。
  70. 助川信彦

    参考人(助川信彦君) 内田先生にお答えいたします。ちょっと補足して、私あての御質問ではございませんでしたが、測定監視体制について現場のほうからちょっと申し上げてみたいと思います。  環境濃度につきましては、この市内の約六カ所ないし八カ所ぐらいのところに測定点を置いて、特に亜硫酸ガス、粉じん、そういったものを風向、風速というようなものを一緒に専用の電話線で集めて常時私どものところで監視をしておりますし、また、自動車の排気ガスにつきましても、そうした固定測定点というのを四地点ほどの主要な道路のわきにつくっております。このほかに移動測定車というのも持っておりまして、たとえば自動車の排気ガスでございますと、一週間なら一週間、非常にひどいという訴えがあった場所に行く場合が多いわけでございますが、そこへその測定自動車をとめておきます。その中に何台か自動記録計のつきました一酸化炭素、窒素酸化物あるいは粉じん、まあ亜硫酸ガスもあわせてはかったりいたしまして、そういうところで一週間連続的に測定いたしまして、平均的な濃度を出す。一回ある時間でひょっと行ったのではだめでございますので、そういう方法をとっております。しかし、現在やっておりますのはそういうことでございますが、将来こうした問題がまだまだ片づかぬということになりますれば、煙道の横にたいてい穴があいてありまして、私どもの職員が行ってその排ガスを吸引してあとで試験室へ持って帰って分析するというやり方もございますけれども、これは手間がかかってすぐ目に見えてまいりません。で、まあ連続測定装置のようなものをある程度目安もつきかけておりますけれども開発いたしまして、そうして各煙突にある程度以上の排ガスの煙突だけということにはなろうと思いますけれども取りつけまして、常時稼働させて、それを、まあ費用の問題もございますけれども、また電話の回線がそうもらえるかどうかという問題もございますけれども、これを常時私どもの部屋に集めて監視する。そのぐらいのことは企業の経営、つまり生産の向上をはかりますためには、もうすでにこの自動計測化というのが大手の企業、工場では生産管理面で行なわれているわけでございますから、そういう技術を生活環境の保全のために導入する努力というのが今後いかようにでも強力に進めていけば、脱硫の問題よりもこれはもうはるかに可能性のある問題でございまして、いまお話がございましたような水の問題につきましても水の汚染度を電気伝導度法ではかる方法はすでに確立されておりますし、シアンのようなものにつきましても常時測定の装置は可能でございます。そうした方向へもってまいりたい。工場地帯と住宅地帯の間の夜だけ稼働する騒音の自動計器を設置することも可能でございます。可能でございますが、まだそこまで手がついていない。長期的な構想としてはそうした方向へできるだけ早く踏み切ってまいりたいと思いますが、なおそのほかに、またそれをちゃんと正しく読んでそうしたデータの、つまりたとえば電圧が変わったというようなときの誤差なんかをちゃんと読みとる技術者の養成もあわせて必要ではございます。  それからお尋ねの脱硫の問題でございますが、先生のおっしゃいますのは、重油の脱硫、油からの脱硫と排煙の脱硫とございまして、まあその排煙の脱硫のことであろうと思うのでございますけれども、重油の脱硫のほうも間接脱硫と直接脱硫という方法がございまして、むずかしいのは直接脱硫ということでございます。間接脱硫というのは、どっちかといいますと、ちょっと硫黄分を薄めるようなやり方でございますから、触媒を使いまして直接的に硫黄分を取ってしまうという方法、これも現に大きな石油企業が生産に入っているわけでございますので、いろいろ問題はあるようでございますけれども、重油の直接脱硫という問題は見通しがついていると伺っております。排煙脱硫のほうは、たとえて申しますと、神奈川県の工業試験所の技術者の方が開発されましたものを日本鋼管その他で、つまりまあごく簡単に申しますと、非常にメッシュのこまかい網のようなものをつくりまして、そこに水をたまらせておいて、そうして煙を何べんも何べんもその水の膜を通す。それに苛性ソーダなんかをまぜておけばなお効果があがるということでございまして、大体いまのところ一時間当たり十万立方メートルぐらいのものについては脱硫九八%以上の効果があがると言われて、すでに日本鋼管あたりで実験が進んでおります。石油会社などに実用化された分もございます。しかし、これを三十万立米とか非常に大型化してまいりませんと、電気の、つまり発電所なんかの場合には非常に排煙量が多うございますから、大きくいたすための、大型化のためのいろいろな実用化の実験というのがいま行なわれているわけでございまして、必ずしもそこにいろいろ金と技術を投入いたしますれば、排煙脱硫はきわめてこえがたい一線をこえることができないでいるのだという実情でないというふうに私は認識しております。
  71. 占部秀男

    委員長占部秀男君) これにて参考人の方々に対する質疑は終了をいたしました。  参考人の方々には御多忙のところ、長時間にわたる御出席をせられ、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員を代表して厚くお礼申し上げます。  ちょっと速記をとめてください。  〔速記中止〕
  72. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 速記をつけて。  それでは、午前に引き続いて四法案に対する質疑を行ないます。
  73. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 山中総務長官がお出になりませんので、公害対策基本法に関する大きな問題点の質問はあとに譲りまして、こまかいことと言っちゃなんですが、こまかくても重要なことをそれぞれ政府委員お尋ねしたいと思います。  まず、公害防止事業費事業者負担法法案の中で、きのうも論議されましたが、同法案の十六条の規定について川上委員が質問いたしたところでありますが、中小企業者負担する費用について負担金を出しにくいという場合に、政府金融機関に金融上必要な措置を講ぜしめると、これは延べ払いとか、あるいは若干支払いを猶予するとか、そういうようなことだというふうに伺ったのでありますが、この中小企業者負担金を支払うために金がないから融資を受けるというケースがあると思います。その場合に一般の市中銀行ではなかなか貸さない、特に担保も担保力がなくて貸せない。そういう場合に政府関係金融機関の中小企業金融公庫とか、商工中金とか、そういう方面からその負担金に充てるための費用の融通をいかにしてなさるつもりか、なさしめる御方針か、まず伺いたいと思います。
  74. 西田彰

    説明員(西田彰君) お尋ね負担金につきまして、中小企業に対する金融をどうするかという問題は、非常に重要なポイントでございまして、私どもいろいろ考究いたしておりますが、その現状を申し上げますと、中小企業の金融制度の中に無担保貸し付けに対する保証並びに保険制度は一応用意してございます。で、これは現状用意されている制度でございますが、主として企業者自身が公害防止施設を設置いたした場合に運用しているものでございまして、お尋ねのような今後起きてまいります企業負担に対する金融ということにつきましては、確かに一般銀行ではやはり担保を取りたいという気持ちになろうかと思いますので、この点に関しては、政府金融機関、政府関係機関よりの融資というものを検討いたしておりまして、なお政府金融機関といたしまして、国民金融公庫におきましては、一定の限度を限りまして、無担保貸し付けの実績を持っておりますし、中小企業庁といたしましては、   〔委員長退席、理事久次米健太郎君着席〕 今後信用保険制度に公害関係の新しい制度を導入するようなことも検討いたしておりまして、この点につきましては、ぜひ何らかの措置確保いたしたいと思っております。しかしながら、やはり負担金の支出というものは当該企業の設備資金ではございませんので、でき得るならば費用負担金の納付の方法において、各企業体、都道府県において適切な措置をとっていただくことが第一に必要であろうかと考えておりますので、その点につきましても、今後検討事項として要請をいたしてまいりたいと思っております。
  75. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 いまいろいろ対策をやりましたけれども、もちろん負担金の納め方について延べ払い、年賦等もできるだけ考えてやらなければならぬと思うのでございます。   〔理事久次米健太郎君退席、委員長着席〕 しかし、これは一種の公共事業負担金ですね。ですから、関係省庁とよく連絡をしていただきまして、そういう延べ払いの措置をやっても、なおかつ、困る人も相当あると思います。お話しのように、そういう人は、まず市中銀行では絶対貸してくれないと言っていい。いまのお話によりますと、国民金融公庫は無担保でも貸し付けられる——限度はどのくらいか、それも伺いますが、こういう趣旨の制度を他の商工中金等にも、公害関係についてはそういう制度をひとつつくるということは考えられませんか。  それから信用保証制度の対象としてそういう公害関係事業負担金を対象とする、こういうことは可能だと思いますが、いかがですか。もう一ぺん……。
  76. 西田彰

    説明員(西田彰君) ただいまの一番最初の国民金融公庫の無担保貸し付けの限度は、現在のところ、大体、小規模零細企業の対象といたしまして三百万円までが限度になっております。  それから中小公庫の貸し付けにつきましても、代理貸し付け等につきまして、特に担保による債権保全を強制的に固執しないというような一応の制度はとっております。  なお、お尋ねの、今後、保険制度におきましては、こういった公害関係設備投資の金融並びに負担金の問題等を中に含めまして検討をいたしてまいりたいと思っております。
  77. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 まあ中小企業庁としては、これは当然あらゆる手を尽くして考えてもらわなければならぬ問題だと思いますので、どうか、いままで答弁されたことをひとつ的確に、迅速に実施されるように強く要望しておきます。  次に、水質汚濁関係で伺いたいと思いますが、水質汚濁防止法案を見ますと、第十五条で、知事の常時監視義務が規定されておる。また、都道府県知事が水質の測定計画をつくるということになっております。まあこれらの規定は、もちろん必要な基本的な規定でございますが、第二十四条におきましてはその第三項で、河川管理者とか港湾管理者がこの公共用水域の管理上必要がある場合には、その関係都道府県知事に対して、その公共用水域の水質汚濁の防止について意見を述べることができる、というふうに書いてあるのでありますが、御承知のように、たとえば河川管理者について言えば、河川対策事業の主体としてふだんから水質なり流量の調査をやっておりまするし、しゅんせつ事業あるいは浄化用水を取り入れるという事業をやっておりまして、その川については非常に詳しく知っておるわけです。それで私は、この法律の二十四条の規定の第三項あるいは十六条関係をずっとながめてみまして、この水質汚濁防止のために働く者として河川管理者あるいは港湾管理者も同様ですが、これをひとつフルに働かしてもらいたいと思うわけであります。そこでたとえば二十四条の第三項に、ただ、「意見を述べることができる。」という規定だけで、関係行政機関地方公共団体に対して資料の送付とかそういう協力を求めるというような規定が入っていないのでございますが、ほかの条項には入っておる、一体これはどういう事情でそういうことになりましたか。積極的に河川管理者、港湾管理者を使うという姿勢がこの法律の条文の上からどうもうかがえない。やや弱いような感じがいたしますのでこの点を一つ伺います。これは経済企画庁かな……。
  78. 角田正経

    説明員(角田正経君) 先生からの御質問に励まされております私のほうからお答えするのはちょっと問題があろうかと思いますが、御承知のように、前の水質保全法の体系にはこのような規定がございませんでしたが、今度この法律改正にからみまして入ったわけでございます。法律論から言いますと、水質汚濁の防止は、特に排出基準そのものを規制するというふうなことでございまして、一方河川法のほうの体系になりますと、河川を、流水との関係におきまして、水の流れております量との関係において清潔に保持するという義務を負っておるわけでございまして、特に利水関係の問題等も含めて清潔に保持していくという義務を負っておるわけでございます。そういうふうな観点から御指摘のような測定等につきましても従来からやっておりますし、流水との関係においてやはりその排出基準だけでなかなかうまくいかない、特に流量が変わりますと汚濁期間が変わってまいります。そういうふうな状況になりますと、それの排出基準をきめられましても、それ以上に何かしていただかなければならないというふうなことが出てまいります。そういうふうなことにつきましては、従来からもいろいろ意見等申し述べておりますが、この関係をこの法律関係に明確にしていただいたということでございまして、私どもは、特に相手が規制をいたします知事でございますから、知事に意見を申し述べることによりまして知事が善処していただくことに一応期待しておるというふうに考えております。
  79. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 いま建設省河川局のほうから答弁がございましたが、資料をほしいときには企画庁のほうからもらってもいいと、あるいは管理者自身がある程度資料を持っておりましょうから、どうかひとつ積極的に意見を述べるという姿勢を持ってもらいたいのです。これは企画庁よりもむしろ建設省河川局においてそういうふうにひとつ理解して、積極的に今後この水質汚濁防止のために協力することをお願いしておきます。  それから次に、都市河川という問題、幸い河川局見えておりますから伺いたいんですが、一体都市河川というのは俗語だと思いますが、都市区域内の河川の浄化あるいは利水、さらには治水上の問題、これが特に公害のためだけでなしに、非常に大きな問題になってきておると思います。それは町づくりがどんどん進んで道路が舗装され、鉄筋のビルやアパートがどんどん建つと一般廃棄物もどんどんふえるというような現況でございますから、そこで、まず伺いたいのは、都市河川についての基本的な汚染対策、基本的な考え方ですね、これをひとつまず伺いたいと思います。
  80. 角田正経

    説明員(角田正経君) お答えいたします。先生御指摘のとおり、都市河川といいますのは、予算上の採択基準でございまして、一般的に申し上げますと、市街化区域内の人口が三万人以上を含んでいるような区域を流れております河川を一応取り上げているわけでございます。したがいまして、そのような地域につきましては、当然治水上は非常に宅地化等が進んでまいりますから、それに対応したような流量が、河川に流れ込みます量が非常に多くなるということで改修問題がございますし、一方でやはり下水道等が整備されておりませんと、当然家庭下水あるいは工場の排水等が流れてまいります。そういうふうなことで非常に汚濁にもつながるというふうなことになるわけでございます。現在私ども実施しております事項はいまお話のございました水質汚濁防止法等によります排出規制とからみまして、すでによごれております河川につきまして他水系から、他の河川から水を持ってまいりまして流量を多くいたしまして、自然増加をするというふうなこととか、あるいはすでに堆積しております汚泥等のしゅんせつをいたしまして河川の浄化をするというふうなこともあわせて行なっているわけでございまして、負担法のほうにも今後こういうふうなことを大いに進めるというふうなことになろうかと思いますが、私どもといたしましては、都市河川につきまして、特に汚濁関係からいま申し上げましたような浄化対策、浄化用水を導入いたしましたり、汚泥しゅんせつをはかっていくというふうなことを積極的に進めていきたいというふうに考えております。
  81. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 この都市河川というのは概念としてはばくとして、いまちょっと基準を言われましたけれども、問題は、浄化用水を導入したり、しゅんせつをしたりするということも言っておられるが、いわゆる下水道法上の下水道については、これは非常に建設省も熱心であるし、今回の公害対策基本的な事業として総理以下、山中長官も非常に熱意を示して答弁されております。これはふしぎに思うのは、下水道はもう前々から五カ年計画で最も、一番おくれておるし、都市対策の根幹ですからね。必要なんですが、しかし、いわゆる都市河川というのも公害の面から言うと実質的に下水道とあまり違わない。ただ終末処理施設なんか持っていない、そういうものが至るところにあるのですね。だから、やっておると言われますけれども、下水道の事業と比べてこれはむしろ一体的に大きく伸ばしていかなきゃならぬ問題じゃないかと、こう思うのです。この辺について、ほんとうは建設大臣にちょっと申し上げたかったんですけれども、かわりに答えてください。そうして建設大臣によく予算の面に下水道と一体化して、下水道予算と国のほうでもバランスをとって努力をしてもらいたいのです。
  82. 角田正経

    説明員(角田正経君) 先生から御指摘のとおりでございまして、都市河川の中にはまあ非常に大きなものもございますが、都市下水道とほとんど性格の同じようなものも相当あるわけでございます。特に都市計画の市街化区域が設定されまして、今後その中の公共施設を整備するというふうなことになりますと、下水道と都市河川の分担を早くきめまして、それぞれにおきまして排水あるいは汚水の処理というふうなものが円滑にいきますように、これは部内で寄り寄り相談をいたしておりますし、具体的には東京あるいは埼玉というふうな区域ではほぼ分担等をきめてかかっておるわけでございます。それにいたしましてもいままでのようなやり方ではなかなかその整備が進まないことも御指摘のとおりでございますので、来年度予算におきましても相当大幅な伸びを要求しておりますけれども、なお今後とも努力をしたいというふうに考えております。
  83. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 いまのその都市河川、まあ大きなやつは相当計画的に予算も相当——まあ相当でもないかもしれぬが——ついてやっておるが、この中小河川ですね、これがたくさんあるのですよ。これがいわば排水と下水と同じような機能を持っておるから、その下水と総合的な計画を立ててその中で分担をすると、かねて山中長官が言われておるように、やはりこの河川局と都市局と、ともするとこうおのおの別というかっこうになっちゃうとまずいと思う。総合的に一つの対策を立てて、その中で分担をきめてやっていくと、こういうふうにひとつお願いをしたいわけでございます。  そこで、たとえて言えば一つの例でございますけれども、福岡県の大牟田川ですね。これはたしか中小河川だったと思いますが、これなんかもまあ県のほうでしびれを切らしてと言っていいかどうか、ようやくことしから二千万円ほどかけてしゅんせつをやりつつあるのですけれども、こういうまあいわば都市公害上の札つきと言っちゃことばは悪いけれども、そういう川があちこちにたくさんあるのです。大牟田川の対策等につきましては、県の単独の事業で二千万円金出して、この費用を出してやっておるのですよ。こういうものは当然国において取り上げるべきじゃないか。全国何百何十あるかどうか知りませんけれども、ちょっと具体例を出してひとつあなたのほうの方針を伺っておきます。
  84. 角田正経

    説明員(角田正経君) いまの具体的な大牟田川の例で申し上げますと、これはまあ二級河川でございますから県管理でやっておるわけでございますが、具体的にこの河川が非常に流域面積が少なくて流況の悪い河川でございます。したがいまして、基本的にはこの浄化対策といいましてもなかなか、流量をふやすわけにはまいりませんので、まあ工場排水等につきましては共同処理をして海に流してもらうとか、あるいは家庭汚水につきましては下水等を整備してもらうというふうなこととからみ合わせていかないと非常にぐあいが悪いだろうというふうに考えておりますが、なお、もうすでにたまっております汚泥等につきましては、先生御指摘のとおりでございまして、県単で始めているわけでございます。本日ただいま御審議いただいております法律によりますと、大牟田川のようなケースはこの法律事業負担の条項に該当いたしまして、一般的には私どもはこれは事業負担としてある程度金を出していただくというふうなケースに該当するんではないかというふうに考えております。ただ、この場合もその負担率の問題がございますので、その負担をしていただきます残りの分につきまして、その事業費等について国等でも応分に検討はいたしたいというふうに考えております。
  85. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 総務長官おいでになりましたから、山中国務大臣にいまの関係お尋ねしたいと思いますが、いまちょっとお聞きになりましたように、全国の大都市でも大、中、小の都市河川というものが相当ございまして、こっちのほうは大きな山の奥から平野部を流れておる大河川に比べるとちょっと影が薄いんですよ。それで下水道は、さっきも申しましたが、総理以下、山中長官あるいは建設大臣も非常に熱意を持って従来から力を入れておられまするし、今度の公害対策としてもまさに基本的なこれは施設ですから大事ですけれども、私が申し上げているのは、公害の多い都市の中を流れておる都市河川で、実質は水質の汚濁もはなはだしい、廃棄物もどんどん入っている下水にあらざる都市河川で、どうもあまり手が打たれていない、これは非常な片手落ちではないかと、こう思うんでございまして、そういう意味において、都市河川対策、それをひとつ下水道と同じような状態のものは少なくとも下水道と同じように政府においてもめんどうを見ていただきたいということで、たまたま大牟田川の一例を出したんでございますが、本来下水道と一体の関係において総合計画を立ててやるべきだと私は思うんです。幸い山中長官は総合計画総合調整の名士でいらっしゃいますから、その辺ひとつ、建設省の内部の問題ですけれども、水質汚濁防止あるいは河川の利用という面からも、少なくともこの浄化、汚濁防止の面からは下水道と同じように考えてこれの対策を講じていただきたい。問題はやっぱり予算の問題でございますので、その辺について長官のひとつ御所見を伺いたい。
  86. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは鬼丸君のふるさとの話で、それは両方ですよ、役所もふるさとですからね。建設省も少しなまけていると思うのですね。河川法の中の必要な政令というのをことしになるまでほうっておいて、そしてやはり河川というものはこれは浄化とか、あるいは清浄を保つとか、公害防止に資するという観点から考えなくちゃいかぬ。いわゆる渇水時における異常な有害物質とかあるいは汚濁等の進行に対して河川法で対処できない状態にある、あるいは河口港等において特にひどいんですけれども、排水が放置され、最近は大型の粗大ごみや自動車等までほうり込まれて、それを建設省自体が河川法の管理上、一級河川についてもなかなかそこまでいっていなかったということで、おそまきながらことしになって河川法のそれらの所要の政令を定める、そして管理者としての責任を遂行するためにそれらの処置についての要請と申しますか、それぞれの所轄法規に基づく措置を要請するように改正したわけです。しかし、おそくてもいいことはいいことですから、これを受けて今回の法律では、それらのものが河川管理者から要請があった場合において受ける体制も十分とっておりますし、あるいはまた、公害防止事業費事業者負担法案の中でも、浄化水の導入等についても、浄化用水導入等の措置も今回はやはり企業の負担等も伴いつつ公共事業で行なうということになりますから、具体的な大牟田川の例等は、これはまさにオープン型都市下水路みたいなものになっちゃっている現状ですから、やはりこれらについては早急に手を打つ場合におけるモデルケース的な取り上げ方を必ず建設省もする対象の一つであろうと私も考えております。建設省の所管の内部のことですから私のほうでものは申しませんが、公害防止事業費事業者負担法案等にもそれらのことを念頭に置いているわけでございますから、今後建設省の予算執行の中にそのようなものが新しいライトを浴びて登場してこなければならないし、登場するはずであると考えておりますので、なお今後建設大臣はじめ、その他の所管のほうと連絡をとってまいりたいと思います。
  87. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 どうもありがとうございました。これはひとつ今後も建設省を大いにひとつ鞭撻御支援をお願い申し上げておきます。  もう一つ、またふるさとの話になって恐縮ですが、次はほんとうの下水道の問題、この下水道法の改正が出ておりますので、その点について二、三お伺いいたしますが、連合審査質疑の際に建設大臣が、流域下水道、これは下水道の中でも非常に重要な機能を果たすものであることは申すまでもありませんが、これが環境基準のきまったものが四十九カ所と連合審査の際伺いましたが、そのうち五カ年計画で十九カ所を要求されておるようであります。であとのうち、六カ所は規制をしておけば環境基準が達成できる、十九カ所は四十六年から五カ年間に事業をやって環境基準に達成する、こういうような計画だと仄聞しておりますが、金額の問題があるからでしょうけれども、四十九カ所のうち、結局二十五カ所向こう五カ年間に整備する、こういうことでございますが、はたしてこのあとの二十四カ所ですが、これはどういう計画でこれをやっていくのか。さらに四十九カ所以外に、環境基準を設定して流域下水道として整備する必要なものがないかどうか。私はあると思うのですが、この点についてまずお伺いいたします。
  88. 石川邦夫

    説明員(石川邦夫君) 最初に、四十九水系のうち、二十五水系につきましては、五カ年計画の中で水質基準を達成できるというふうな計画になっているわけでございますが、残りの二十四水系につきましても、この五カ年間で目標のところまではまいりませんが、暫定目標を設定いたしまして、できるだけ早期にその目標に達成できるように達成時期を早めるということでこの第三次五カ年計画の中で考えておるわけでございます。  それから流域下水道でございますが、現在継続をして十二本、それからさらに、今後八本近くをやる予定でございますが、この中におきましても、この四十九水域の中でも相当のものがこの中に入ってくるわけでございます。将来水質基準の設定の水域が広がるに従いまして、当然新しい下水道の整備がそれに対応して要請されるわけでございますが、それはこういう計画の中で弾力的に対処してまいりたい、こういうふうに考えております。
  89. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 四十九カ所のほかに、将来、環境基準をきめていないのか、きめておっても、まだ出ていないのか、将来出てくるものはあまりないということですか。
  90. 西川喬

    政府委員(西川喬君) ただいま閣議決定いたしておりますのは四十九水域でございますが、現在審議会で審議いたしまして作業を進めておるもの、すでに部会を終了いたしておりますのは十六水域ございます。今年度中に、現行法におきまして環境基準を設定する予定でございますのは、いま申し上げました十六水域を含めまして三十水域の予定でございます。その中で重複が一水域ございますものですから、最終的には現行法におきまして、今年度いっぱいに当てはめ行為を終えたいというのが七十八水域でございます。来年度以降におきましては、新法におきまして当てはめ行為都道府県知事のほうに委任することになるわけでございますけれども、現在私どもが水質汚濁防止の観点から環境基準の当てはめを行なわなければいけないであろうと思われるような想定される水域は、約二百水域というような見当に相なっております。
  91. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 そうでしょう。四十九じゃ話にならぬと思って、ここに表がありますけれども、ずいぶんあちこち抜けておったと思ったんです。そこで二百水域もあると、そのうちには若干事業をやらぬでも環境基準を守られていくというものもありましょうけれども、これはたいへんなことですね。そこで、やはり公害の水質汚濁のひどいところから重点的に、広域的な流域下水道としても重点的に、思い切った、ひとつ対策、予算措置等を講じていただきたい。ちょぼちょぼやるやつはいつきれいになるのかわからない。さっきちょぼちょぼ五ヵ年計画で二十四ヵ所というような話でありましたけれども、ちょぼちょぼ対策はなるべくやめてもらって、相当な金額が要りますけれども、思い切って総ワクをふやすとともに、思い切って早くするような流域下水道からひとつ仕上げていくという考え方でやっていただきたい。これはそういう決意であるかどうか。
  92. 西川喬

    政府委員(西川喬君) 類型の当てはめを閣議決定いたします場合には、この環境基準を達成するための施策というものを政府として決定することになっております。やはり施策の中で金がかかります一番重要なものは下水道の整備でございます。排水の規制はこれは企業者のほうが自分で処理施設をつくるわけでございますけれども、政府の施策といたしましては、下水道の整備が一番重要でございます。そのためにすでに決定いたしております四十九水域につきましても、環境基準の原則といたしております五年以内の達成が二十五水域にしかすぎなかったというような状況、これは一に下水道の整備にかかっておるわけでございますが、残りの二十四水域につきましても、現在建設省のほうでできております下水道の整備計画に基づきまして、一番長い年限で九年と、九年以内にこれを環境基準まで持っていくということを一応想定しているわけでございます。今後引き続いて決定されます三十水域につきましても、建設省の計画と突き合わせまして、それによりまして政府行政目標といたしましての達成期限というものを確定いたしまして、その期間内に必ず達成するという努力で今後進めてまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  93. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 膨大な金の要る事業でございますから、たいへんですけれども、これは総理以下、山中長官も建設大臣もたびたび言明されておりますから、大いに期待をいたしておきます。  ただ、金を国なり、地方団体が出すということばかりでなく、一面私は公共下水道について利益者負担考えたらどうかと、何と言っても大きな金が要るものですから、利益者負担をある程度適切にかけたらどうかと思うんでございます。いま一部の都市では利益者負担をとっております。詳しいことは聞きませんから、その方針と、それから公共下水道の使用料、今度の改正規定にもございますので、これをひとつ適切に、公平に徴収するということによって、ごく一部でございましょうけれども、そういう下水道によって利益を受ける地元からの費用の徴収ということも積極的に考えたらどうかと思いますが、この点いかがですか。
  94. 石川邦夫

    説明員(石川邦夫君) 受益者負担につきましては、現在二百五十三の事業実施都市のうち大体六割以上に当たる百七十六都市で受益者負担を実施して、事業の実施をはかっておるわけでございます。われわれとしましては、受益者負担が条例によりましてつくられるわけでございますが、これに対しましては、やはり国としても一種の義務があるわけでございます。十分に突き合って、予算の配賦あるいは起債の承認等につきましても十分調整をいたしまして、受益者負担が入ります都市につきましては、市民を裏切らないような形で事業の実施を進めていくというふうな方針をとってまいっておるわけでございますが、今後ともそれの適切な運営をはかってまいりたいというふうに思っております。  それから御指摘のございました使用料の点でございますが、必ずしも現在下水道の使用料が十分な形では取られておらないのでございまして、今後これにつきましても、やはり排水の基準を守りますためには、十分な操作のための、オペレーションのための費用が必要でございますので、この点については十分指導してまいりたいというふうに思っております。特に今回の下水道法の改正によりまして、水質使用料という制度が明確になりましたが、悪質な下水を排水する工場等につきましては、一般家庭下水との均衡を考慮いたしまして、一般の公共下水道等におきましても水質使用料の制度を推進してまいりたい。それによりまして十分な排水の基準を守れる排水をいたしたいというふうに考えてまいりたいと思います。
  95. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 いま伺うと、かなりの都市が受益者負担は取っておると、これは受益者負担を取っておるところは相当やはり事業費の配分において伸びるように考えてきたわけですね。それはそれでいいんですが、問題は大都市で取っていないところがかなりあると思いますが、それは数よりも質の問題というか、大都市が問題なんですね。ひとつ積極的に行政指導してもらいたいと思います。  それからこれはまた助成の話になるんですが、今度くみ取り便所の改造義務づけの規定がございまして、そこで、融資の世話をする、あるいは融資をするか、あるいはあっせんするという規定がございます。ところが東京都——前からそうだったと思いますが、若干の補助、助成をしておりますね、改造する場合。こういうことをひとつ政府としてそういう助成を積極的にめんどうを見るというか、行政措置で指導するか、こういうお考えはございませんか、これはまた少し金の要るほうの話でございますが……。
  96. 石川邦夫

    説明員(石川邦夫君) 水洗化につきましては、御指摘のとおり、現在主として国民年金の還元融資でございますが、その融資を、わけても市町村が多いわけでございますが、一部の市におきましては、御指摘のように、補助を出しておるわけでございます。現在直ちに全般的にそういう助成をするというところまでは至りませんけれども、将来とも水洗化を促進するために補助なり、融資なりの措置を拡充してまいりたいというふうに関係方面と調整をとりまして拡充いたしてまいりたいというふうに考えております。
  97. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 次に総務長官お尋ねいたしますが、この公害対策基本法、今回の改正によりまして、けさほどもいろいろ論議がありましたように、第十七条の二で「自然環境の保護」という規定が入りまして、環境保護、特に自然環境を保全するということについて政府が積極的な意欲を見せる、そういう姿勢をとられてその規定が入ったというふうに理解いたしておりまして、この点を私は高く評価するものでありますが、この規定自体はただ努力規定でありまして、問題は、この規定が生きてくるためにはこの規定を受けて他の関係法令整備され、あるいは行政措置予算が充実されなければならぬことは、これは申すまでもございません。そこで、なおけさほどの長官の御答弁で、この規定を受けて自然公園法の一部改正法が今回出ておるというお話でございましたが、これももちろん公害対策の重要な一環でございますが、ただ問題は、一番自然環境を保護し、特に緑を守り育てなければならぬのは、むしろ都市区域なんですね、市街地がびっしりしておる都会なんでございます。自然公園のほうはどっちかというと、いなかというか、都市からはずれたところにあるわけでございますが、そういう意味では、都市区域内の自然環境の保護についてきょうも先輩の委員からもるるお話があったとおりでございます。やはり緑というものをこの市街地の中に育てていく、これを守っていくということがほんとうに人間の住むにふさわしい環境じゃなかろうかということは、これは外国の都市を回ってもだれしも身にしみて感じておるところであると思いますが、日本では急速に町づくりが進んだ、あるいはまた、あんまり計画的に行なわれなかったところもありまして、急速な都市計画事業の遂行等でむしろそういう意味の緑地あるいは公園、あるいは街路樹、並み木道をとってもまことにそういう面が立ちおくれておるのであります。  そこでお尋ねしたいのは、自然公園法の改正は、十七条の二を受けて今回出ておりますが、都市の区域内の公園とか、緑地あるいは街路樹、そういう緑を守り育てる制度としては現在の都市計画法なり、都市公園法なり、現行の法制で必要にして十分であると考えるかどうか、この点まず伺います。
  98. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 先ほど橋本君よりその点に触れた答弁もありまして、補足の必要もないかと思いますが、公害基本法に基づく公害防止計画については都市公園、あるいはそれらの緑地公園と申しますか、そういうようなものもちゃんと計画に組み込まれてあるわけであります。  さらにまた、公害防止事業費事業者負担法等でまいりますれば、これはグリーンベルトその他ということが当然念頭に置かれてあるわけです。私たちのいまおります東京のこの宮中の緑がたいへん都心にしては、日本にしては珍しく残っておるところでありますけれども、この宮中の中の亜硫酸ガスの着地濃度がその周辺よりかはるかに低い、大体荒川堤くらいの濃度でとまっておるということをちょっと聞いたのでありますが、これなどもやはり緑の果たす役割りというのは、これは単に目に見えた緑地や公園ができたとか、あるいは緩衝緑地がつくられたというものを越えた効果をもたらしておるのだということを私たちが知らなければなりませんし、光化学スモッグ等で杉並区の立正高校ですか、ここの生徒たちが何かそういう異常な現象に襲われて、目が痛んだりしゃがみ込んだという。しかし、植物はそういうことを言いませんが、われわれが気がついたことは、東京の街路樹とかそういうものが、時ならぬときに紅葉し、あるいはちりぢりにちぢれて落葉していった、そうして時ならぬときに新芽が出ていった、これは植物が先に生存のための本能的な防御をやっているんだろうと、私たちは非常な関心を持つわけであります。でありますから、われわれは、今後この法律に基づくものは今回は自然公園法と海洋汚染防止法としか言えないわけでありますけれども、今後のいろいろな計画やあるいはもっと動植物、ことに温熱排水等を今回は公害基本法の中の典型公害の中に取り入れて読むことにいたしましたので、これらについてはやはり水産動植物というものの観点からいま少しく研究を進めていかなければならない分野がございますし、陸上においても野鳥の分布図というものが逐次都市周辺から後退をしていくというようなことについて私たちは無関心であっていいだろうかという問題は、単に高等動物の人間たちだけが自己防衛をすればいいとは私たちは思わないわけです。自然の環境というものはそのようなものも含めて、総理は私に、ホタルの飛ぶ野原、あるいはドジョウの泳ぐ小川を取り戻せるか、こういうふうな難問を最初担当大臣になったときに投げかけたわけですけれども、しかし、それらは一つの象徴的な表現にしても、やはりそういうものにまで心を用いた環境保護、あるいは環境破壊への挑戦という私たちは心がまえで、引き続きただいまの御指摘のような、われわれの今後進むべきいわゆる自然の動植物も含めた環境保護、破壊から守る、小さい生命を守っていくという考え方を今後いよいよ確立していく必要がある、その点においては今回は決して満足すべき成果に至っていないと私も思うわけでございます。
  99. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 いま長官から傾聴に値する御答弁をいただきまして全く同感でございます。問題はこれからの行政の運用にあるし、また特に、この緑地公園あるいは街路樹とか花壇とか、そういうものを含めて、あるいはいまお話しの野鳥が来るようなそういう環境をつくるということは一つは、スペースの問題と、あとは上の緑を育てる費用の問題だと思います。けさほどもあるいは参考人の意見にも出ましたように、ことに日本ではまだ公園の面積が現在でも少ないのに、それが何かというと削られていくと、こういう問題をひとつ行政運用の面においても十分ひとつ関係省庁相携えて今後注意をしていただきたい。また、必要な予算もできるだけ充実していただくように要望いたします。ただ、基本的には、私は法律、制度がそう万能的な効力を持ってるとは思いませんけれども、ちょっといろいろ考えてみたのですけれども、この自然環境の保護について、自然公園のみならず、都市内の緑地とか公園その他を含めた自然環境保護法というような法律を将来ひとつ検討していただいたらどうかと思いますが、この点どうですか。
  100. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは衆議院で産業公害特別委員会を法案が通過いたしまする際に、与野党一致して環境憲章宣言みたいなものを決議をされました。私たちはこの決議の中に意味するものに耳を傾けて、そして次のわれわれの進むべき姿勢、場合によっては環境保全基本法にもなりましょうし、あるいは環境保全宣言みたいな形にもなりましょうし、いずれにしても、私たちが現在取り組んでいる基本法から始まる姿勢というものは、さらにもっと前進をする必要があるのではないか。しかし、基本法基本法として、公害防止事業については私たちは一応これでたえ得ると思っておりますので、さらにただいま御示唆になりましたような新しいものを求めて、そして世界に恥じない日本環境汚染に対する挑戦の態度あるいはそれの具体策について、新しい分野からの検討並びに立案が必要な時期にきておるということは考えておりますので、御示唆を承って検討をしてまいりたいと考えます。
  101. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 時間があまりありませんのではしょって簡単にお尋ねしますが、一つは基本法第十九条の公害防止計画、これを中心に、公害防止対策というものと、昨年の五月ですか策定されました新全総、新全国総合開発計画関係を伺いたいのです。新全総に今日のような公害防止対策というものの認識を取り入れて新全総ができておるかどうか、あるいは新全総を、きょうは進藤武左衛門氏でございましたか、そういうものをひとつ練り直す必要があるのではないかという発言がございました。私もそういう感じを持つのです。そういう今日の公害対策あるいは公害防止の必要性というものを頭に置いてお考えになっておるにしても、あの総合開発計画の中身では十分それが読み取れないように思うものでございますから、新全総はやはりこの本来の基本法にいう公害防止計画、これと結びついていかなければならぬと思いまするし、さらには新都市計画法の都市計画にも結びついていかなければならぬ。都市計画のほうは、これは新都市計画法の何条でありましたか、それに従うべき旨が規定してあります。まず新全総との関係をひとつ。
  102. 武藤正幸

    説明員(武藤正幸君) お答え申し上げます。新全国総合開発計画の主要な計画課題といたしまして、経済社会の高密度化が進むに従い、国民生活が破壊と危険にさらされることとならないように、やはり都市・農村を通じて安全快適で文化的な環境条件を整備保全すること、ということを計画基本目標の一つとして掲げております。また、主要な計画課題といたしまして公害防止の事項を定めておりまして、公害防止に関します環境基準の設定、汚染物質の排出規制の拡充強化、公害発生源の集中排除等と並んで、緩衝地帯の設定、下水道の整備、廃棄物の体系的な処理の推進等々の施策を進めるということにしております。さらに公害問題等、環境悪化の根本原因は、国土利用が一部の地域に偏在している点にあるというふうに考えられるわけでございますけれども、新全国総合開発計画ではこのような認識に立ちまして国土利用の再編成をはかるということを基本的な姿勢として考えておるわけでございます。したがいまして、公害防止には十分配慮してつくられておるというふうに私どもは考えておるわけでございます。なお、計画の実施にあたりまして、まあ大規模な工業基地等におきます総合的な土地利用計画の策定だとか、それに基づきます関連施設の先行的な整備などといった、環境保全の観点を特に重視してまいりたいというふうに考えております。  以上でございます。
  103. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 まあ十分考慮しておると言われますけれども、計画自体の文面からはあまりこまかく触れてないから、そういうことになると思いますけれども、しかし私は、どうもちょっと感覚的にも、十分考慮しておると言い切れるかどうか、まあ私自身も新全総を前に読んでそういう感じを持ったことがあるんです。たまたまきょう進藤参考人もそういう提言をいたしておりましたので、なお今後あの計画自体についてもひとつ御検討願うとともに、あるいはもっと積極的に公害対策の配慮というものを織り込むべきじゃないかという余地があるんではないかと思いますから、そういう意味でひとつ御検討願いたい。同時に、この公害防止計画そのものは、けさもお答えがあったように、全国でまだ三ヵ所しかできてない。まあ近くかなりできてくるようでありまするし、特に東京、大阪、名古屋、北九州等の大都市については、急いでひとつ防止計画の策定を考えていただきたいと思います。これはまあ知事がきめる責任者になっておりますから、急いでといっても政府の思うようにはいきませんかもしれませんが、政府のほうで鞭撻され、また協力をしていただきたい。同時に並行して、並行的に新都市計画法による都市計画と有機的なつながりを持つように、どうせ都市計画をどんどんいま改定しなきゃならぬという段階になってきておりますから、並行してひとつ有機的な関連を持たしていくように、これは長官にもひとつお願いしたいんですが、ぜひそのようにして、公害も新しい町づくりも、むしろ公害対策を一つの柱とした新しい町づくりができるようにひとつ御指導を願いたいと思うんです。
  104. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私は、今回の基本法をつくるにあたって、念頭にはニクソン大統領の公害教書が絶えずあったわけです。そこで、やはり日本の土地政策というものをこの基本法で書けるかどうかいろいろ考えてみたんですが、第十七条に現在、「(地域開発施策等における公害防止の配慮)政府は、都市の開発、企業の誘導等地域の開発及び整備に関する施策の策定及び実施にあたっては、公害の防止について配慮しなければならない。」と、この文章が文章としてはりっぱに基本法に生きてるわけなんですね。これを私たちは、第十七条をどのように一体この三年間生かしてきたかということを反省してみますと、実はこれがあまり生きていない。であるからばらばらに都市計画法も制定され、あるいは農業は農業でまた農業専用地域を定めて、わが陣地内に侵入させずというような、体系的でないことがここ一両年の間に行なわれてきました。やはりこれは基本法に定められている精神というものを生かして、今後日本の新全総に定めた土地利用政策というものがちゃんと誘導できるような条章が入っておりますので、これは、基本法の精神を体して、ただいま言われたような日本全体の土地利用計画地域の開発計画等については、これが念頭に置かれて作成され運用されなければならぬ。こういうことにおいて、今後基本法の精神を体して進めてまいりたいと思います。
  105. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 あと具体的な問題を二つばかりお尋ねして質問を終わりたいと思いますが、一つは、廃棄物の処理法及び清掃に関する法律案で、廃プラスチック類等の処理につきまして、たとえば条文でいうと十四条、産業の分がこれが十四条ですか、それから第七条、一般の分、これも業としてやる分でしょうが、いずれもただし書きで、再生利用の目的となるものははずされておりますね。そこで、特に伺いたいのは、廃プラスチックだとか、紙、毎日住宅にやってきてちり紙と交換している、雑誌類やなんか、あれです、あれは一種のまた公害をまき散らしているような一つの業態ですが、こういうものは、再生利用でやっている分には野放しになるということですか。まずその点伺います。どういうわけではずされたか。
  106. 橋本龍太郎

    政府委員橋本龍太郎君) 先生御承知のとおりに、従来の清掃法の体系で、今日の広域的な廃棄物の処理、これは必ずしも産業廃棄物ばかりじゃございません。都市廃棄物いわゆる一般の家庭から出る廃棄物もございますし、いわゆる粗大ごみと言われるものもございます。今日までの清掃法の体系の中で処理をしてまいりました中で、やはりどうしても行き詰まりが出てきましたために、今回、全面的にこれを手直ししたいわゆる産業廃棄物の処理に関する法律というものを現在本院の社会労働委員会で御審議を願っている最中でございます。  いまさら私が申し上げるまでもなく、よく先生御承知のとおりに、日本という国はきわめて原材料の乏しい国であります。わが国の輸入額の中に占める原材料の分野、製品の分野お比べをいただけば、これは簡単にわかることであります。そして、その原材料を加工し、わが国はそれを輸出して食っています。輸出どころじゃない。ただ単に毎日私たちが生きていくためにも、原材料の輸入がなければ生きていくことができません。その中で、再生しかつ活用することのできるような資源があれば、当然これは私どもとしてその活用をはからなければならぬ。いわゆる廃棄物として処理してしまうわけにはまいらないものが多くあります。そうしたわが国固有の状況というものをいわゆる廃棄物処理法の背後に控えて、いま御指摘になりましたような点を考えながら、今回国会提出をしたわけでありまして、むしろ私どもは、廃棄物処理法の中で云々ということよりも、再生し得る資源は最大限に駆使していかなければならない。いわゆる廃棄物として処分をしてしまうわけにはまいらないという考え方でこの法案をまとめてまいりました。
  107. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 いまお話しのように、どうも戦後、近年、日本の文化は使い捨ての文化だということばもあるくらい、安ものを買ってどんどん捨てる。また、包装がいやにりっぱになって、中身よりも包装のほうがりっぱで、その包装を捨てる。こういう傾向が顕著になってきておりますが、全く捨てるばかりが能じゃないのです。特に廃プラスチック、あるいは建材会社あたりのはね材、あるいはさっきの雑誌だとか新聞紙だとか、こういうものを再生するという事業を、私は一面規制もしていいかもしれぬが、規制すると同時に、助長していかなければならぬと考えるのです。そういう事業の助長というのは、厚生省さんでこれを所管されるのは適当でないという意味なのか。ここでこの法律がはっきりはずされておるものですから、それはどういうわけかということを伺ったわけです。同時に、通産省おいでになっておれば、そういう再生事業、あるいはポンコツの車のあれもあるでしょう、そういう再生事業に対する御方針をひとつ伺いたいと思うのです。
  108. 莊清

    政府委員(莊清君) このたびの産業廃棄物処理法案衆議院の御審議でも多数附帯決議をちょうだいしたわけでございますが、その場合等でも、先生御指摘のように、廃棄物の処理というのは、工場から出る場合というのは当然に事業者が原因責任を負えと、それから、その場合にも、処理にあたっては、これを再生利用するということに十分着意をして国も特段の配慮をするようにという御決議をいただいております。  それで、いま二、三具体的な御指摘がございましたが、たとえばプラスチックの関係でございますけれども、現在、家庭経由で出てまいりますごみの中に入っております入れものとかこういうものは、全国非常に散っておりまして、一般のごみと一緒になっておったり、たいへん問題になっておりますが、これはいま燃すのに非常に苦労しておるという段階で、その中からプラスチックを集めて再生利用するというだけの秩序整然たる態勢というのは、まだ国全体として残念ながらできておりません。今後はそういう問題も大きな課題になろうかと思いますけれども、先生御指摘の、専門の成型加工業者の手元から出てくる不良品等をどうしておるかという点でございますけれども、プラスチックの成型加工業者というのは全国で約一万軒ございます。一万軒。八五%くらいまでが、従業員も非常に少ないいわゆる零細企業でございます。そういうところから出る、打ち抜きのくずでありますとかあるいは不良品というようなものは、またこれは零細なんでございますが、専門のメーカーが集めまして、それを砕きまして、それをまた溶かして、それをシートのような状態にまた再生加工しておる。塩ビでもそうで、塩化ビニール系統でも、年間約十万トンぐらいは再生された製品になって、大体包装関係の資材にするというのが多いようでございます。また、ポリエチレンの関係でも、数万トンぐらいは出ているというふうな段階でございます。これは、出すほうも処理するほうも、先ほどお話のございましたくず紙の製造業者と同じでございまして、非常に零細でございます。こういうものに対しましては、もちろん処理段階からまた公害が起こりますと非常な問題になるわけでございますから、加工業者自身がその公害原因を起こさないように十分指導監督すると同時に、中小企業でございますから、こういうものの設備の面でありますとか技術の改善という方面につきましては、これは都道府県等とも連絡の上で、通産省としても前向きに指導していきたい、かように考えております。
  109. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 まあ私が聞いたのは、この法案からはずされておるが、通産省なら通産省として、今後、一面規制をする。やっぱりこれは公害も相当出ますからね、規制をする。一面助成もすると。しかも事業者、普通の会社でありますと、自分のところで始末すると、これはいいのですよ。やっぱり、商売としてやる再生業について伺ったのですけれども、前向きに一生懸命やっておりますと。時間がないからいいです、それは。  それから、たとえて申しますと、廃プラスチック材で、道路の舗装に、アスファルトですかにまぜて熱処理して上層に使えるようなものを現に研究して試作し、ちゃんとした舗装会社が舗設した例もあるのです。これは道路局長御存じですか。——私はこういうものを、骨材もだんだん砂利、砂が少なくなってきているときに、これが強度その他からいって十分であれば、それを使う余地があるのじゃないかと思うのです。簡単にひとつ答えてください。
  110. 高橋国一郎

    政府委員高橋国一郎君) ただいまのプラスチックの廃材を道路の舗装に使った例というのは実は私は聞いておりませんけれども、もしそういう事実がございましたらさっそく調査いたしたいと思いますが、私の——私実は舗装は専門でございまして、わりに詳しく知っておるつもりでございますけれども、御承知のように、高速で自動車を安全にかつ円滑に通行させるためには、表面のスムーズ性と申しますか、これが非常に重要な問題でございます。したがいまして、これの一番大事な要件は、まず材料は耐久的であることと、それからしかも均一であるということが非常に大きな条件になっております。おそらくプラスチックの圧縮されたものだと存じますが、耐久的だとは思いますけれども、均一なものができるかどうか非常に疑念に思っております。そういう点から舗装のいわゆる骨材のかわりにプラスチックを使えるかという現在段階になっているかどうか、私詳しく存じませんが、さっそく、研究しまして、もしそういうような状態でしたら使えるような研究をさしたいと思います。
  111. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 道路局長ね、正規な道路じゃないけれども、工場の構内に舗設した例があります。ここにも現物持ってきておりますから、データもありますから、あとでひとつ研究してください。  最後に、これも簡単にお尋ねしますが、農薬取締法の改正で、農薬が相当また販売規制が強化されることになりますが、現在でも相当製造中止なり、あるいは、ここに一覧表がありますけれども、登録を取り下げたりしておりますね。それで、今後さらに今度の改正によってどの程度に——どの程度って簡単に言えないかもしれませんが、大ざっぱでいいです。農薬の有効なものが使えなくなって、そのために特に水稲、米ですね、稲のほうの収穫量にどのくらい影響するか、マイナスの影響、この点を伺っておきたいと思います。
  112. 加賀山国雄

    政府委員加賀山国雄君) ただいまのお尋ねでございますが、今回の農薬取締法改正案によりまして、だんだんと農薬規制が強くなるわけでございますけれども、過去水稲に使いました農薬で中止いたしましたのは水銀剤、それからパラチオン、それから最近はDDTやBHC等も中止いたしたわけでございますが、これら農薬を中止いたしたことによりまして、どのくらい水稲の減収を来たすかということはなかなかむずかしい問題でございまして、簡単には計算ができないわけでございます。非常に地帯も違いますし、品種も違いますし、その年の気象条件等も違うものでございますから、ただし、これらの農薬をだんだんと中止、あるいは人体、家畜等に有害な農薬を規制することによって減収する分というものは、新しい農薬を開発することによりまして、逐次補ってまいるつもりでございますので、農薬取締法の改正におきまして、農薬の規制をいたしましても、農業生産に大きな影響が出るとは考えておりません。
  113. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 まあ今年とか去年とか、最近の年次においてはやはり病虫害、たとえば福岡県などはある程度出ているんですよ。これはやはり農薬規制のせいだと、お天気の関係ももちろんありますけれども、言われておるし、昔は御承知のように、病虫害も相当ございましたね。そこで新しい農薬が開発されて、効能があまり違わぬということになれば、近年の非常に増収された年とあまり違わないと、将来は。こういうことになりますか。
  114. 加賀山国雄

    政府委員加賀山国雄君) 水稲の生産技術というものはかなり高度に発達しておりまして、ただ一つ農薬をやめて、新しい農薬にかえるということにいたしましても、そんなに水稲の収穫が動かないという段階に達しております。ですから、農薬を使っているということは、いかに増産するかということよりも、最近は安定的に米をとるかということに重点がございますので、その点はいささかも御心配がないと思います。
  115. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 本日の質疑はこの程度にし、これにて散会いたします。    午後五時十五分散会