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国務大臣(
愛知揆一君) かなり私は率直に申し上げているつもりなんでありますけれども、やはりこういう場合には、基本的な
認識の合意をつくることがまず第一に一番必要なんでありますが、幸いに今回の
事件については、
米側も
憂いをともにするという
認識と
姿勢をとっているということがまず私としてはほっとしているところでございます。したがって、
共助協定をつくりましたときとは、私は
環境も違ってきているのではないだろうか。したがって、先ほど来申しておりますことをもう一ぺん
整理して申し上げまする、
裁判権そのものをずばり無条件で
日本に復帰させるということは、これは無理だと思います。率直に申しまして、これは事実、物理的準備もできません。いまかりに、観念的な問題ですけれども、それなら全部
日本本土が
司法権を引き受けた、
裁判をみんなこちらでやるんだと、かりになりましても、それに応じて公正な
裁判をやり、そして検察官、弁護士、一切これをそろえてやるということ。それから、法律制度がまた完全に施行されておりませんですから、これは私は、
施政権返還のときに十分りっぱにやっていけるということを着々準備いたしまして、
返還実現のときに完全に
本土と同じ
裁判権が確立されるということにいかすべきであると思います。
それから、その次には、先ほど来申しておりますように、
軍事裁判でございますが、これを
施政権範囲内で
民政府の
裁判というかっこうにできるのかどうかと。これには、やはり私は、
アメリカの代弁をするというふうにお聞き取りをいただかないでいただきたいと思うんです。法令の
解釈、
大統領令の
解釈というような法理論もございましょうが、また、やはり組織の問題にあるので、そういう点は
米側の努力に待つよりほかないわけでございまして、こういう点がどこまで
検討されるかということについて、これは
アメリカ側の研究と実現のフィージビリティということも、やはり
向こう側は
考えてもらうべき問題である。
それから、
沖繩政府への
移管ということについては、さらにそれよりももう少しむずかしい条件が私はあるように思います。それらの点を、過去の研究は研究として、しかしとにかくあらためて何かよい
考え方、知恵はないかということについて、双方で共同に詰めてみるというところまで来ているということは申し上げることはできると思います。
それから、もう
一つは、頭からそんなことはと言われるかもしれませんが、実際問題として、現状のもとにおいても、
軍事裁判のあり方その他について、やはり今回の
事件に徴しまして、いかようかの
配慮が私は期待できると思うのです。
アメリカの
態度に徴して、それから、先ほどもるる申しましたが、
警察権の捜査その他の
やり方につきましても、これはもっとくふうがあり得るというか、これはきわめて実際的な、すぐまた目に見えてあらわれることでもございますから、こういう点については
ほんとうに前向きに、積極的に、具体的な成果をもたらすようにやってまいりたい。このように
考えております。先ほども衆議院の
沖特でも率直に申したけれども、こういう際、きわめて微妙でございますから、申し入れたか申し入れないか、申し入れた、できないじゃないか。これがまた
一つの紛争や刺激になるということも、率直に言って、十分
配慮していかなければならないことでございますから、できたことを御
理解をいただきたい。ただ申し入れた、申し入れたと言うだけでは、この微妙な場合に対する誠実な
政府の
態度でないと思います。その辺のところは、事実きわめてヴァルネラブルな微妙な状況でございますから、ひとつ各方面の御
理解を得まして、あまり刺激的な、また、刺激の材料になるような取り上げ方にならないようにということを
政府自身ずいぶんこれは戒心をいたしておるところでございますから、その辺のところはひとつ御
理解をいただきたいということは先ほども申しておりましたようなわけで、全くこれは取り扱いに非常な注意と細心の努力が必要なことではないかと思っております。