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1970-12-16 第64回国会 参議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十二月十六日(水曜日)    午前十一時十三分開会     —————————————    委員異動  十二月四日     辞任         補欠選任      小林  武君     喜屋武眞榮君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         塚田十一郎君     理 事                 山本茂一郎君                 川村 清一君                 渋谷 邦彦君                 松下 正寿君     委 員                 伊藤 五郎君                 稲嶺 一郎君                 河口 陽一君                 長谷川 仁君                 増田  盛君                 山本 利壽君                 達田 龍彦君                 三木 忠雄君                 春日 正一君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        外 務 大 臣  愛知 揆一君        文 部 大 臣  坂田 道太君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        沖繩北方対策        庁長官      山野 幸吉君        沖繩北方対策        庁総務部長    岡田 純夫君        沖繩北方対策        庁調整部長    田辺 博通君        外務政務次官   竹内 黎一君        外務省アメリカ        局長心得     大河原良雄君        外務省条約局長  井川 克一君        文部省初等中等        教育局長     宮地  茂君        文部省管理局長  岩間英太郎君    事務局側        常任委員会専門        員        小倉  満君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○沖繩及び北方問題に関しての対策樹立に関する  調査  (当面の沖繩問題に関する件)  (沖繩毒ガス撤去に関する決議の件) ○沖繩即時無条件全面返還に関する請願(第五  三八号) ○継続調査要求に関する件     —————————————
  2. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) ただいまから沖繩及び北方問題に関する特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動につきまして御報告いたします。  去る十二月四日小林武君が委員を辞任され、その補欠として喜屋武眞榮君が選任されました。  ただいま御報告いたしましたように、沖繩選出喜屋武眞榮君を本委員会委員としてお迎えすることになりました。  御承知のとおり、本委員会は、沖繩の当面の諸問題等について、その解決のため種々調査を進めてまいっております。これまでの同君の貴重な御経験を本委員会の活動に十分反映していただくよう御期待申し上げまして、ここに喜屋武眞榮君を御紹介いたします。(拍手
  3. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 一言ごあいさつ申し上げます。  特別のおはからいでこの委員会に加えていただきましたことを心から感謝申し上げます。  二十五年の断絶の中から参加いたしまして、戸惑いを感じておる毎日でございます。どうか皆さんの心からなる御指導を賜わりますようお願いを申し上げまして、ごあいさつといたします。  よろしくお願いいたします。(拍手)     —————————————
  4. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) それでは、沖繩及び北方問題に関しての対策樹立に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  5. 川村清一

    川村清一君 私は、八月十日の本委員会におきまして初めて尖閣列島の問題について質問いたしました。その際、将来東シナ海大陸だな開発をめぐって台湾政府韓国あるいは中国との間に問題が起きてくることを予想して、この問題を指摘し政府見解をただしたのであります。  その後の経過を見ておりますというと、私が指摘いたしましたように、尖閣列島の問題をめぐって国民政府との間に、あるいは中国との間にもいろいろと問題が複雑に発展してきておるように受け取っておるわけであります。  それで、この際、八月十日以降の推移について外務大臣からひとつ概略御説明をいただきたいと思います。
  6. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 尖閣列島の問題については、八月のときも申し上げましたように、尖閣列島自身の問題と、それから東シナ海に及ぶ大陸だなの問題と、まあ二つあるわけでございます。  尖閣列島の帰属といいますか、主権の問題については、いかなる意味から申しましても日本領土であるということは、もう間違いのないことであって、また、現在におきましては、サンフランシスコ平和条約第三条によってアメリカ施政権を持つ、その施政権の範囲といたしましても、きわめて明確に施政権の対象になっておりますので、今度の復帰に際しましても、当然これが復帰されることはあまりにも一明白な事実でございます。したがいまして、本件については、政府としてはもうあまりにもはっきりしている日本固有領土でございますから、これについていかなる国がいかなることを申しましても、これとの間に話し合いを持つとか協議をするという性質の問題ではないと、こういう態度で終始いたしております。  もう一つ大陸だなの開発の問題につきましても、これについても国際法上ある国が一方的に権利主張し得べき性質のものではないという基本的な立場をとっておりますから、かりに他国がこの海底開発等に対して一方的にその他の国、あるいはその他の団体、その他との間にいかなる話し合いをしたりあるいは仕事を進めようと思っても一、そうした一方的な一つの国の計画というようなものを承認するわけにはいかないわけでございます。しかし、これについては、事実あるいは主張しておる根拠経過等については、十二分に政府といたしましても承知をした上で適宜な処理をしなければなりませんから、この点については、国民政府が何らかの計画をし、あるいは処理をし、あるいは第三国の団体会社等との間にいろいろの計画を設定するというようなことについては、重大なる関心を持って抗議申し入れ、そして、その経過あるいは考え方等を十分調査するとともに、日本側としての見解というものを明らかに先方に申し入れておきますことが絶対に必要であるという見解に立ちましたので、国民政府に対しまして申し入れをし、そして話し合いをいたしておるわけでございます。  ただいままでに判明いたしておりますところでは、この東シナ海海底開発について日本側見解が明らかにせられておりますので、一時うわさされておりましたアメリカ会社との間の開発ボーリング計画というようなものは、当該会社におきましても、日本側立場というものを承知をいたしました上でこの話し合いを進めるということは考えておらないという態度を表明いたしておる段階でございます。国民政府との決着というようなことについては、まだ終局までは行っておりませんけれども、先ほど来るる申し上げておりますように、一方的に国民政府だけのやり方を認めるわけにいきませんから、その点に対しましては十分くぎをさしておるということが現在申し上げ得ることかと思います。  それから、これに引き続きまして、中華人民共和国側でも一特にこの大陸だなの問題については主張をいたしておるようでございますけれども、このほうは、新華社の記事その他によって、そうした意見を持っているようであるということがわかっておりますけれども、その後、これはという具体的な態度あるいは申し入れというようなものには全然接しておらないような状況でございます。
  7. 川村清一

    川村清一君 時間がきわめてないので、はしょって質問して恐縮なんですけれども、実は八月十日の質問のときにも外務大臣は、こうした風評を耳にしたのでさっそく公式に国民政府に対して抗議申し入れ——というような御答弁があったわけであります。しかし、私、ずっとこの問題についての経過調査したのでありますが、その経過の中には、日本政府から国民政府に対して抗議をしたというようなのが出ておらないのですね。そして九月の三日に政府板垣国府大使を通じて沈国府外務次官東シナ海大陸だな問題について話し合いをしたい旨の申し入れをした、それに対し国民政府側の同意を得た、こういうようなことも一つわかっておるわけであります。それから九月十日の日に琉球政府尖閣列島領有権及び大陸だな資源開発主権に関する主張を発表した。これは尖閣列島に対する領有宣言と言うべきものを琉球政府が出しておるわけであります。同日アメリカの国務省は、尖閣列島米国施政権下にある琉球の一部として扱われているが紛争の解決日本国民政府との当事者間同士が行なうべきものと見解を表明しておる。こういうようなことになっておりまして、琉球政府ははっきり領有宣言主張しております。また、アメリカもそのようなことを言っておるわけでありますが、日本政府国民政府にはっきり抗議をしたということは、私、ちょっとわからないのですが、それは一体いつごろどういう内容抗議をしたのか。それから、九月三日に板垣国府大使を通じて東シナ海大陸だなの問題について話したいといったようなことを申し入れたのかどうか、この問題をもう一回御答弁願います。
  8. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 先ほど申しましたように、大切なことは、尖閣列島領有権ということは、何ぴとが何と言っても、これはもう明らかに、いかなる根拠から申しましても、日本固有領土であります。いまはアメリカ施政権下にありますが、アメリカ返還しようとしているその中に明らかに入っていることでございますから、この問題に対しまして日本政府としましては、たとえば例は非常に悪いかもしれませんが、日本のある県をある外国が、「あの県はおれのもののはずだ」と言うのと同じような実に不当なることでございますから、そういうことに対しては、こちらのものであるという態度を厳然ととっておることが大切なことであって、そういうことを言っていることがけしからぬと言って話し合いに応ずるというふうな問題ではない、こういう私どもとしては態度をとっているわけです。  同時に、大陸だなの問題は、これとはやや性格を異にしておりますから、その後者の問題について、国民政府に対する外交的な措置をとっているわけであります。これは七月の十八日が最初でございます、日本政府としての国民政府への申し入れ。それからその後経過がございますが、九月三日、九月八日というふうに立て続けて国民政府側申し入れをしあるいは話し合いを持った、こういうのが事実の経過でございます。  またその間に、たとえば国民政府青天白日旗を立てたとか、あるいは落書きをしたとかいうような事柄につきましては、施政権者で現在ありますところの米側協力によりまして、事実問題としてこれを撤去し、あるいはその落書きを消したというような事実もその経過の中には含まれておるわけでございます。
  9. 川村清一

    川村清一君 大臣、一時間しかおいでにならないそうで、その一時間を各党に割り振りして時間がありませんので、御答弁もひとつ簡単にお願いします。  私は、大臣の言われた前段のことは、全くそのとおり受け取っておるのです。ですから、国民政府領有権主張するなんというのは、何を根拠にして言っているのかということを疑っているのであって、ただ、私が聞いているのは、八月十日の質問の際に大臣は、国民政府に対して正式に抗議申し入れたということを申されたので、ですから、私がずっと調べたところによれば、日本政府抗議をしたという記録がないから、それで、抗議は何月何日どういう内容抗議をしたということをお聞きしたわけでありまして、あなたのおっしゃっていることを決して反論しているわけではございません。  それでは続けて言います。九月三日の大陸だな問題について話し合いたい旨の申し入れをしたということを大臣はお認めになられました。次に十一月三日のソウル発報道によれば、韓国石油開発予定区域が重複している大陸だな問題打開のため、外務省金沢アジア局参事官等が訪韓し四日から交渉を開始する、こう伝えられておるわけでございます。  中国問題についても申し上げたいのですが、新華社報道等いろいろ問題がありますが、時間がありませんのでこれはまたいつか触れますが、ここであらためて私お尋ねしておきたいことは、国民政府との間に東シナ海大陸だな問題についてひとつ話し合いたいという申し入れをした、政府はそういう見解を持っている。それから、韓国との間にもやはりこの大陸だな問題打開のための話し合いを正式にするという態度をこれは現にとられて、もう実行されておる。この二つの事実から大臣は、日本政府見解として、一貫して大陸だな問題につきましては日本政府大陸だな条約には参加していないので国民政府との間だけでなく、対ソ関係においても、対韓関係においても、世界的に日本と直接関係がないところにおきましても非常に大きな国際的な問題として全般的に取り上げていく、そうして日本主体的立場を確立していくと言って、きわめて慎重な態度をとられてまいったわけであります。大陸だなの問題につきましては、私、予算委員会その他において数回お尋ねしておりますが、大臣は常に慎重な態度大陸だなについては対処されてきているわけです。ところが、もう国民政府との間には大陸だな問題について話し合いをする、韓国についてもする、こういったようなこと、また新華社の通信を読むというと、もっといろいろな問題があるわけですが、そこから判断して、日本政府大陸だなに対する考え方、いわゆる大陸だな条約に関する態度といったようなものについて従来と変更をされたのかどうか、この点をはっきりひとつお聞かせ願って、それできょうの私の質問は終わらしていただきます。この問題は今後の機会にさらに突っ込んでお聞きしたいと思います。
  10. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 大陸だな条約そのものに対する政府考え方は従来と変わっておりません。これはもう川村委員もよく御承知のとおりに、現在できております大陸だな条約のいろいろ問題はあると思いますけれども、一番問題は、大陸だなに定着している生物資源について、これは沿岸国主権的な、いわば排他的な権利を認めている。これはたとえばカニなどの問題になってまいりますと非常な問題でございます。ですから、たとえばソ連は、この大陸だな条約によるところの権利主張しておりますが、日本はこれを認めないのでありまして、そこで、それはそれとして、カニの毎年の漁獲高について日ソ間の二国間の話し合い協定を結んでおりますことは御承知のとおりでございます。もし日本側が、大陸だな条約生物資源沿岸国の一方的な排他的な権原であると主張していることにこちらが承服をしておりますれば、ソ連の申しますように、大陸だな条約によってこうしたカニ——全部とは申しませんけれども——ある種類カニ固有のものであって、他国に譲るべきものでないというたてまえをとっておりますれば、こういう話し合いができないはずである。したがって、ソ連としても大陸だな条約条約として、それはそれとして、日本との間の二国間の話し合いができておるわけでございますから、現状におきましては、かくのごとく政府立場に立ってむしろ国益を守り得ていると私は確信を持っておるわけでございます。そういう意味合いにおきまして、大陸だな資源の問題については、先ほど申しましたように、国民政府であろうが中華人民共和国であろうが、あるいは韓国であろうが、一方的にだけ固有権原として主張し得るものではないという立場日本政府がとっておりますから、その立場から申しまして抗議申し入れる、あるいは話し合いに乗ってこいという態度をとっているわけでございます。
  11. 川村清一

    川村清一君 この次の質問の素材として申し上げておきますが、それは大臣、詭弁だと思うのです、私は。大陸だな資源というのは、これは大陸だなの生物資源だけでなしに、いわゆる大陸だなの地上といいますか、そこに生息している生物資源だけでなく、その地下資源も一大陸だな資源ということに大陸だな条約ははっきり明言されておるのです。ソ連との関係カニの問題をあなたおっしゃいましたが、そのカニ資源については、ソ連大陸だな資源であると言うし、日本大陸だな資源ではないという観点に立ってソ連カニ交渉をされておるわけです。ところが、こちらの、いま言う東シナ海開発についての大陸だな、いわゆる石油資源開発といったようなことで国民政府といろいろ話し合う、韓国政府と話し合うということは、大陸だな資源として認められているということですよ。ソ連のほうは大陸だな資源として認めておらないんですよ。ですから、いまおっしゃっている大臣のお話は非常に食い違いがあるわけです。ですから私は、いままで大陸だな条約に入っておらないし、したがって大陸だな条約に基づく一切の話し合いはしないということで来た。しかしながら、大陸だな資源について話し合うということは、大陸だな条約というものをある意味において認めているのではないか。だから、いままで言ってきておった政府見解は変わったのかどうかということを私は確認しておるのです。この問題については実はもう私、時間がないのでやめますが、今後なお突っ込んで聞きたいと思います。
  12. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 時間の短いところを長々と申し上げるのは恐縮ですが、一言だけ申し上げておきますが、これは万々御承知のとおり、生物資源がこの大陸だなの問題として一番の問題でございます。鉱物資源については大陸だな条約で、やはり一方的といいますか、沿岸国権原を認められておりますが、同時に、この鉱物資源のほうは、大陸だな条約に限らず、国際司法裁判所の判決等に見ましても、国際間の通念として、鉱物資源というものは大体大陸だな条約で規定されているような観念をとっております。この点は大陸だな条約上の違いであることは御指摘のとおりでございます。
  13. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 本日の委員会におきまして発言機会を与えられたことに対しまして厚くお礼を申し上げます。なお、私どもは二十五年間産みの悩みを続けておりまして、ようやく陣痛を乗り越えて今日に参りました。私ども陣痛は非常に長かった。しかも、悩みは、痛みは非常に深かったのでございまして、その意味におきましてこれから私が発言いたしますことはだいぶ激しいところもあるかもしれません。その点はあらかじめ御容赦を願っておきたいと思います。  まず沖繩返還についてお伺いいたしたいと存じます。日米共同声明の根幹となっております沖繩の七二年・核抜き本土並み返還につきましては何らの疑問を差しはさむ余地がないかどうか、お聞きいたしたいと思います。
  14. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 沖繩を代表される稲嶺議員に初めて本委員会でお答えすることを、たいへん私も欣快とするものでございます。  この沖繩返還問題は、昨年十一月の日米共同声明によりまして、ことに第六、第七、第八の三項目にその基幹とするところがきめられております。七二年中の返還本土並み核抜きということは、これによって決定されておりますから、この三項目に基づきまして、ただいま返還協定の作成並びにこれに伴う諸般の準備を進めておりまして、ただいま日米双方の折衝の過程におきまして、われわれといたしましては、七二年中のなるべくすみやかな時期に返還が全部実現できるようにということを期待しつつ、それから逆算して協定の調印、国会における審議あるいは米国側における手続というようなことを、十分それに間に合わせるように、ただいま鋭意努力中であり、また自信を持ってその作業を進めつつある、こういうことが申し上げられる段階でございます。
  15. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 新聞の報道によりますと、政府返還協定は来年の四月か五月までには完了したい方針のようでございますが、その内容が明らかにされていないということは私どもにとってまことに残念でございます。もちろん、外交上の秘密があることは私も承知いたしておりますが、事実、百万沖繩県民はこれに対しては非常な不安を持っておるのでございます。復帰不安をなくするためにも一、基地整理縮小米資産の引き継ぎの問題、沖繩県民の対米請求権の問題、また裁判効力継続の問題、それに外国資本企業取り扱い問題等、具体的にぜひ明らかにしていただきたいと存じます。
  16. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 返還協定につきましては、協定それ自体に盛らなければならない、そして日米双方合意しなければならない事項と、これに関連いたしまして各般の措置をとらなければならない事項と、大別して二つあるわけでございます。返還協定それ自体のほうにつきましては、ただいまも一部言及されておりましたが、一つは、いわゆる対米請求といわれている問題が一つ、それから裁判並びに裁判に関連する諸問題の取り扱い一つ、それから米国資産処理をいかにするかという問題それから現在沖繩にあります米系企業取り扱い、こういったようなものは返還協定それ自体において、あるいはそれに直接関連する問題として日米間に合意をしなければならない主要事項でございます。  それと今度は切り離しましてといいますか、協定それ自体の問題ではございませんけれども、それにまさるとも劣らない重大な事項は、先ほど申しましたような原則で返還がされるわけですから、いわゆる基地の問題につきましては、これが返還と同時に安保条約に基づく地位協定がそのままずばりと何らの変更なしに適用されるわけでございます。そのために、その以前において日米双方合意をし、かつ、作業し実行していかなければならない幾多の問題があるわけでございます。これらの準備話し合いを煮詰め、またさらに協定以外の問題といたしましては、本土政府沖繩県民の方々との間で処理しなければならない問題も相当多量にございます。それから、それらに関連する憲法以下一切の法令が本土並みに相なるわけでございますが、立法事項として、その移り変わりについて施政権返還のときに適用せらるべき各種国内立法が当然予想される。これらと準備等につきましては、沖繩北方対策庁が役所としては中心になりまして、ほとんど政府部内の各省あげて協力を求めて、また、取りまとめは沖繩返還に関する閣僚協議会でこれを総まとめにいたしまして、目下鋭意準備を進めているわけでございます。  なお、その中で、たとえばあるいは請求問題と言いあるいは補償問題と呼ばれているようなものが具体的に非常にむずかしい問題でございますけれども、これらについては、政府といたしましては、琉球政府立法院決議琉球政府要請書琉球政府がこれまで復帰準備委員会に提出された要請書沖繩軍用地地主会連合会日本政府に提出しておられまする提議書その他各種要請がございますが、これを大ワクで分類いたしましても一次のような種類がございます。ちょっと読み上げさせていただきますと、  一、講和補償のうち人身損害に関するものの補償漏れに対する補償。それから二が軍用地復元補償。三が米軍演習等による漁業補償。四が軍用地の接収によって生じる通損補償。五が軍用地賃増額要求。六が軍用地立ち入り制限に伴う入会制限による損失補償。七が講和後の人身損害に関する補償。八がつぶれ地に関する補償。九が滅失地に関する補償。十が基地公害に関する補償。  で、これは一例としまして一つの重要なる事項を申し上げたわけでございますが、この一つ一つにつきまして各省庁の協力を求め、十分実態を掌握いたしまして、その実態に即して、先ほど申しました、沖繩から公にあるいはそれに準ずる形でわれわれがちょうだいしております御要請に基づいて、県民の方々の御要望が貫徹できるようにということで、ただいま鋭意努力いたしておるわけでございます。何ぶんにもこうした広範な問題でございますので、その内容等につきましては、政府の率直な立場を申し上げますと、返還協定の正文ができるにしたがってこれは当然国会の御審議を願うわけでございますが、そのときには、詳細にこうした処理のやり方について御納得のいくような御説明を全部についてできるようにということで、いま一生懸命にやっているわけでございます。ただいまこの一つ一つに、これはこういうふうにやっていく、これは折衝上の問題として処理する、これは国内的に処理する、その額が総額で幾らになる、あるいはこれを個別的に各項目に分けるとどれほどになるというところなどを今日御説明するまだ段階に至っておりません。これには、急ぎながらも相当なやはり日数をさらにちょうだいしなければとてもこれ追っつきませんので、いましばらくの御容赦をお願いしたいと思います。
  17. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 なお、沖繩百万県民が協定内容につきまして常に不安を持って見ておりますので、ぜひこの不安を解消するような線に沿うて折衝に当たられますよう要望いたします。  次に、毒ガス兵器の撤去についてお尋ねいたしたいと思います。  最初に、現在沖繩県民が最も大きな不安とおそれを持っている毒ガス兵器の撤去につきましてお伺いいたします。  このたび米国国防総省の発表で、沖繩にある毒ガス兵器の一部が撤去されることになりましたが、私たちはこの決定に不満を持っておるのでございます。まことに遺憾と言わなければなりません。これは、今回の第一次撤去計画に含まれております量が一万三千トンの約一%にすぎないわずか百五十トンであり、しかも、それは比較的危険度の低い旧式マスタード・ガスであるといわれ、最もおそれられている致死性ガスは復帰時点まで残されるということ、また、百五十トンの毒ガス撤去につきましても、その具体的時期が不明確であるということからいたしまして、この計画が県民の不安を除去するどころか、ますます不安感をつのらせているからでございます。沖繩からの毒ガス撤去につきまして、政府はそのつど、撤去交渉は進められていると言明しておられるのでございますが、現在どのように交渉が進められておりますか。また、早期撤去を前提といたしました強い姿勢で交渉に臨んでおるかどうか、この点を明確にしていただきたいと存じます。
  18. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 稲嶺さんによって代表されます沖繩県民百万の方々の御心配はほんとうにごもっともだと、政府としても痛切に感じておるわけでございます。われわれとしても、実に長い間かかりましてようやく撤去と行く先がきまりましたことは、ほっといたしましたけれども、あらためて安全かつ早期の撤退を期さなければならないということで、日本時間で申しますと今月の五日でございますか、通報を受けまして以来、同時に米側に強く折衝をあらためて開始しております。その中でおもな点はできるだけ早く発表いたしたいと思いましたので、すでに報道も相当部分されておりますから、その詳細は省略いたしますが、十二月十一日に米側から第二兵たん司令官のヘイズ少将を東京に招致いたしました。これは外務省だけではこの専門的な、ことに安全性、あるいは移送計画、あるいは警備というようなことはとても負い切れませんので、関係省庁広く協力を求めまして、まずヘイズ少将の詳細な説明を聴取いたしました。それに対して活発に質疑をいたし、ただすべきはただし、要請すべきことをあらためてこれから発足をいたしておるわけでございます。ただいままでにはっきりいたしておりますことは、この詳細は具体的に報道されておりますから、これは先ほど申しましたように省略いたしますが、公開をして移送などを日中だけに限ると、それから日本側官憲の立ち会いを認める。この日本側の参加につきましては、本土政府から、その道の専門家を含めまして防衛庁あるいは沖繩対策庁等からも人を派遣いたしまして、那覇における移送が開始されまするときも、なお一そう本土政府としても関心を深めて、そうしてこれに参加をするといいますか、立ち会いをするということになりました。これが原則ということであります。  それから、内容的に申しますれば、撤去について何よりも県民の方々に万々一でも危険なことがあってはならないという点につきましては、すでに発表せられたところによりましてもある程度は理解ができますけれども、なお一そうそれらの点については今後とも十全の納得のできるようなやり方をしてもらうように十分折衝を続けつつあります。   〔委員長退席、理事山本茂一郎君着席〕  それから、被害などということは、考えられない、絶対起こり得ないようにいたしたいと思いますけれども、そうして、それには確信を持ってやらなければなりませんが、万々一被害というようなことがありました場合には、外国人損害賠償法——アメリカの法律でございますが——これによって補償するということになっております。  それから、百五十トンの毒ガスは、ただいまお示しがありましたように、HDでカラシ・ガスで百五十トンでありますが、いかにもこれは数量的にも少ない。これは全く私も同感でございます。ただ、同時に、安全移送して、第一回の移送でございますから、この百五十トンを貯蔵庫から港に運びますのに、コンボイをつくって自動車等で運ぶわけでございますが、二回にわたって運びます。そうして、船に積み込む準備その他に四日間、それから船がジョンストン島へ着きますまで約十日間といわれておりますが、船倉内の検査その他をも含めまして、第一回の移送につきましては十分なひとつ安全移送ということを期待しておるわけでございますが、第二回目以降は、船の運搬積載能力等から申しますと、この量は非常に多くなる見込みでございまして、   〔理事山本茂一郎君退席、委員長着席〕 したがいまして、一九七二年にかりそめにもずれ込むことなどのないように、ただいままで私どもが聞いたところでは、アメリカの現在の計画をもってしても相当のスピードアップができることが期待できるようでございますから、さらにそれらの点を詰めまして、できるだけすみやかに撤去を完了できるようにいたしたいと考えております。  なお、これもすでに報道されておることでございますけれども、大体これまで来るまでには米国内にも御承知のようないきさつがあっただけに、ジョンストン島というふうないわば無人島で、そうして、どこの州にも属さない直轄の属領地が移送先として選ばれただけに、ここに受け入れるための施設も急につくらなければならない、これに若干の時日がかかる、あるいは相当の費用がかかるというような事情もこれはある程度理解できるところでございますが、その建造の促進とそれから船の配船の計画、これとにらみ合わせまして、アメリカ側の誠意と努力に期待しつつ、できるだけすみやかにこの作業の完了を期してまいりたい、かような考え方で今後とも大いに米側との折衝を続けてまいるつもりでございます。
  19. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 沖繩の県民が非常な不安を持っておりますので、一日も早く撤去が実現しますよう強力に折衝していただきたいと存じます。  それから、時間がありませんので、あと一つだけお伺いいたしたいと存じます。  ファントム・ジェット戦闘機の沖繩への移駐が新聞で報ぜられておりますので、これについて御質問いたしたいと存じます。  沖繩からB52戦略爆撃機がいなくなって非常に安心していたやさきに、今度は横田や三沢基地に駐留しておりますファントム・ジェット爆撃戦闘機百八機のうち約半数が沖繩に移駐すると新聞は報じておりますが、本土でもいやがっておりますところのこの飛行機を沖繩に持っていくということは、私どもにとってどうしても了解できないことでございます。これが事実であるかどうか。  また、不幸にしてこの問題が米国から提案された場合には、沖繩県民に対して非常に愛情を持っておられるところの愛知外務大臣はそれに対して反対を私はやっていただけるというふうに信じておりますが、大臣の決意のほどを伺いたい。  これをもって私の質問は終わりたいと存じます。
  20. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 在日米軍全体が相当の縮小計画をかなり具体的に考究しておりますことは事実でございます。そして、これはいま先方が事務的に考えておりますことを、当方の事務当局が内々に先方の意向を打診しながら、事務的な話し合いと申しますか、これを現に行なっておりますことも事実でございます。しかし、この話し合いはきわめて大事なことであり、ことに沖繩米軍との関係がここに関連してきて、そして、せっかくほかの諸般のことが進んでおりますのに、あらためて沖繩の方に御心配をかけるようなことがあってはならない、この角度を私としては堅持してまいりたいと思っております。要するに、現在のこの米側計画その他につきましては、二十一日に日米安保協議委員会を東京で行ないますが、そのときにいわばハイ・レベルの話し合いの場に先方からの希望も出ましょうし、また、こちらとしての、政府としての態度というものも明確にいたしたいと思っておりますが、それから先、これはもちろん一度でどうこうという問題ではなかろうと思いますけれども、これらを機会といたしまして、十分御趣旨を体しまして私としても努力をいたしたい、かように考えております。
  21. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 時間も差し迫っておりまして御迷惑かと思いまするが、私、ぜひ愛知外務大臣にお尋ねをいたしたいことがございます。と申しますのは、私は去る十二日の公害関係法案連合審査会においても特に沖繩基地公害の最たるものである毒ガスの撤去につきまして申し上げいまさっき稲嶺議員からも強い要望がございましたが、ぜひそのことについて重ねて申し上げ、さらにこの委員会の名において満場一致ひとつその撤去についての決議をしていただき、さらに本会議においても決議をしていただく、その方向にぜひ進めていただきたい、こういう要望を前提にいたしまして、いま沖繩県民の生命に対する不安、危険の最たるものはこの毒ガス以外にない、これが最も差し迫った重大な問題であります。県民は怒りと不安の極に達しておる、こう私は感じとっておるのであります。さらに、沖繩県民の心情というものは、核をまくらに爆弾を抱いて、そうして毒ガスを吸わされようとしておるというこの危機迫る思いの生活の明け暮れであるということをぜひ理解してほしい。そう思うがゆえに、屋良主席からこのような十二月六日付で緊急な電報が寄せられておるのでありますが、この前も申し上げましたが、重ねて申し上げます。「オキナワニチヨゾウサレテイルドクガスヘイキノモンダイニタイスルベイコクボウチョウカンノハツピョウワ、ドクガスヘイキノゼンメンソクジテツキヨヲヨウキユウスルケンミンノヨウキュウニハンスルモノデアリ、シヨウフクデキナイ、 コレワタンニオキナワダケノモンダイデナクゼンコクミンテキモンダイトシテコツカイニオイテテツテイテキニキユウメイシ、セイフワコノサイ、ミズカラノコクミンノセイメイザイサンヲマモルタチバカラキヨウリヨクナタイベイセツシヨウヲスルヨウツヨクヨウキユウスル」、こういう屋良主席からの緊急な電報。  さらに十二月の十二日に立法院議長星克氏から「ベイグンノドクガステツキヨニッイテハ、アンゼンノカクホトソクジカンゼンテツキヨセラレルヨウツヨクヨウセイスル、ナオ、カンケイホウメンニタイシツヨクセツシヨウサレタシ」、こういうことで十二日に。  さらに星立法院議長は十五日——きのうです——重ねて「ドクガステツキヨニッイテコッカイノケツギヲオコナイアンゼンカクホトンウキカンゼンテツキヨヲツヨクタイベイコウシヨウシテモラウヨウリツポウインゼンギインノヨウキユウニモトヅキヨウセイスル」リツポウインギチヨウホシカツ」。  このように刻々と迫りつつあるこの危機感をお察し願い、さらに「早期撤去」ということではなく、要求する側からしては「即時撤去」ということが電文にも盛られておるこのことをぜひ御理解願いたい、こう思う次第でございます。  さらに、来たる十二月の十九日には毒ガス即時撤去県民総決起大会が、あの毒ガスの貯蔵されておる中部の知花の近くの美里中学校校庭において、全県民がそれこそ超党派で毒ガス撤去県民大会が持たれる予定になっております。  さらに、きのうはまた本土の尼崎の婦人会から毒ガス撤去に対する陳情書が出されておると、このように差し迫った沖繩の状況でございます。  どうかひとつ、即時撤去というこのような心情を重ねておくみ取りくださいまして、そうしてまた委員長さんにもぜひお願い申し上げたいことは、この特別委員会の名において、それこそ満場一致でひとつ決議をしてくださるよう御要望申し上げ、さらにまた、国会におきましても、政府におかれましても、そのような姿勢で重ねて決意を新たにしてくださるよう強く御要望申し上げて、これに対する外務大臣の御見解を賜わりたいと存じます。
  22. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 喜屋武議員の強い御要請並びに切々たるお気持ちにつきましては、もう私も全く同感でございます。あらゆる努力をいたしまして、安全でそして早期の撤去について、この上ともできるだけの努力をいたしたいと思います。  私も、ただいまもおあげになりましたが、六日の日に屋良主席、あるいは副主席からも相次いで、あるいはまた十二日には星議長からも、非常に強い切々たる御要請を受けておりますし、また政府の那覇の事務所のほうからも刻々その情勢は伝えてまいっておりますので、私どもとしても気持ちの上においてもほんとうに焦慮を感じておるようなわけでございます。何ぶんにも、この本土の政府といたしましても、すでに一九二五年とだいぶ古い条約ではございますけれども、あらためてこの批准を、国会の承認を最近お願いいたしたようなわけで、沖繩に貯蔵されておりますこのHDも、GBも、あるいはVXも、すべてこの一九一五年の条約によって使用が禁止されておる。そうして政府といたしましてはこれに全面的な参加を表明し、また軍縮委員会等におきましても累次日本政府としての態度を表明しあるいは提案をいたしておるくらいでございますから、沖繩本土並みということから申しましても、筋からいっても、また、本土政府はわがこととして努力をしなければならない、そういう筋合いでありますから、沖繩の県民の方々のお気持ちを体することが第一であり、同時に、本土政府としてもかねてのこれは方針でもございますわけですから、本土政府としてもあげて努力を集中して米側協力を求めたい、かように存じております。
  23. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 さらに十二月四日に新しい事態が発生しておることについて御存じでありましょうか。こういう事態が起こっております。十二月四日午後一時三十分沖繩県中部の中頭(なかがみ)のコザ市倉敷内喜納原(きなばる)で起きた正体不明の毒ガス騒ぎの原因について調査なさったかどうかということを前提にしまして。こちらに参ってからでございますが、伝えるところによりますと、この毒ガス騒ぎは労働者が仕事をしておるとき、何の前ぶれもなくのどが痛み、息が詰まった。一回目はあまり気にとめないで仕事を続けたようでございます。しかし、二回目に同じ症状に襲われたとき、突然恐怖に取りつかれた。毒ガスではないかと避難までした。現場はコザ市と北谷(ちゃたん)村の共同ごみ焼却場建設現場で、周囲が丘に囲まれた盆地で、その中に約六千坪の整地がされているところで、近くにキャンプ・へーグ、キャンプ・ケンザー、その北側に嘉手納米軍航空基地、毒ガスが貯蔵されておるといわれる弾薬倉庫が隣接しております。この日現場には鉄工廠請負業者の労働者十七人が作業していてその被害にあったものであります。風は近くの米軍基地の方向から吹いており、基地内から毒性のガスが漏れたのではないかと見られていると、こういうことで報ぜられているわけでありますが、このことについては御存じでありますでしょうか、お伺いいたします。
  24. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ただいまおあげになりました事件がございましたことは、私ども承知いたしております。そして、その原因あるいは背景等については十分関心を持ちまして正確に調査をいたしまして御報告をいたしたいと思っております。まだ技術的その他の面において確信を持って具体的に御説明申し上げるだけの資料を持っておりませんけれども、その事件の起こったときの直後の情報等によりますと、催涙弾ガスの関係ではなかろうかというようなこともいわれておりますが、非常に大切な問題でございますから、詳細に納得のできるような情報を得ましてから御報告いたしたいと思います。
  25. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 もう一点、次は、この返還協定内容の問題については、さきに稲嶺議員からも質問されたのでありますが、私はその中の一つの、その内容一つである米国資産の移譲について特に沖繩県民が不満に思っておりますことは、この米国資産の買い上げということに対して、これは当然沖繩県民が無償でこれを受けるべき資産である、それを、米国資産を買い上げるとは何ごとかと、こういう非常に不満を持っておりますし、また、われわれ沖繩県民立場からいたしますならば、二十五年もアメリカ沖繩にお世話になっておる、このようにわれわれは理解するわけでありますが、そのアメリカが去るに臨んで、お世話になりましたという道義的立場からも、その資産は残して沖繩にくれるべきのが私は当然だと、このように思っておるわけでありますが、このようなアメリカ資産を一も二もなく金に換算して買い上げていくという、また、日本政府はそういう態度を持っておられるやに聞いておるわけでありますが、この点に対する御見解をお伺いいたしたいと思います。
  26. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) この沖繩に現存しております米国所有の資産のうちには、申し上げるまでもなく、いろいろのものがございますが、原則的に申しますと、兵舎とか飛行場とかいうような軍事的な施設を除いて考えたいと思います。そして、それらを除きます民生用の資産たとえば、これはいわゆる三公社あるいは行政上の建築物というようなものが例としてあげられると思います。それらの中には、施政権返還後におきましても、沖繩の県民の方々のためにいわばお役に立つべきであるというものも相当あろうかと思いますが、それらの資産の引き継ぎをどういう形でやるかということにつきまして、日米間で折衝の事項に相なっておるわけでございます。ですから、終局的にどういうふうにしたらよいかということを、ただいままだはっきりお答えするだけの段階には立ち至っておりません。
  27. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 限られた時間がわずか十分でありますので、初めに私は委員長に要望でありますが、まあ稲嶺議員あるいは喜屋武議員を迎えて沖繩のこの委員会を開くにあたって、あまりにも時間が少な過ぎるのではないか。どうか今後時間と大臣の確保をしっかりやっていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  何点かお聞きしたいと思ったのですけれども、時間が限られておりますので、私は最近沖繩本島における米軍犯罪の激増の問題について、二、三お伺いしたいと思うのですが、裁判権移管の問題について、特に最近激増する米軍犯罪の問題に対して外務省としてどのように認識をされておられるか、まず、その点についてお伺いをいたします。
  28. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 政府といたしましても、まことにこれは遺憾千万なことであるという基本的な認識を持っております。したがいまして、まあ私自身も含めまして、東京においてはもちろんでございますし、また、那覇に参りましたときには、現地の責任者であるランパート司令官に対しましても、率直に日本国民の感情から申しまして、何とかこういうふうな続発するいろいろの事件を根絶してもらいたいということを、特にいろいろの角度からの要請協力——要請をして協力を求めているわけでございますが、まあ率直に申しまして、上部の上級指揮官その他におきましては相当これを苦にしていろいろとくふうしてくれているようでございますが、なお目立った成果があがっておらないのは、まことに私も心残りと申しますか、残念に思っておる次第であります。同時に、御承知のように、警察権の運営その他につきましては、別途話し合いをずっと続けまして、過般も一つの結論が出まして、これは一歩前進だと思いますけれども、現在の段階においてこの裁判権の移管ということまではなかなか参りませんので、やはり現状においては、率直に申しますが、現在の制度並びに改善された琉球警察の関与等のもとにおきましてこうした犯罪の起こらないようにすることと、並びに、先方の裁判等の運営等についてもっと県民の納得するような公正な裁判、これを期待するということでまいりたいと思います。
  29. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 十三日ですか、ひき逃げで実は無罪になったと、こういう問題で非常に現地は激高されているわけでありますが、私はこれは当然なことだと思うのであります。それで七二年に大体復帰がもう確定しているわけなのですから、せめて本土と別個に取り扱う必要はないのではないか。何を根拠にして——もう衆議院あるいは参議院に国政参加として代表を選んでいるわけだし、もう返還も確定している現実において、なぜこういう問題をもう一歩強く日本政府としてアメリカに要求できないのか。今後その問題について、とみに返還のまぎわになってこういう事故が非常に激増しているということは、ある意味では、復帰恩赦とかいろいろなことを考えているのではないか。そういうような意向もくみ取れなくもないような、いろいろな不満な、納得できないような問題が数多く最近頻発しているわけです。こういう問題について外務大臣としてもう一歩この施政権下においてもこの問題は解決できるのではないかと、こう私は感ずるわけでありますけれども外務大臣、どう処されるか、その決意をお伺いしたい。
  30. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ただいまのような環境でございますし、もう復帰がいわば目前に迫っておるわけでございますから、それらを念頭に置きまして、かくのごとき不幸な事件、あるいは納得できないような裁判のやり方というようなことが、われわれの納得のできるような運営にこの上ともに留意されるように、米側に対しましても、十二分のひとつ配慮を求めるべく最善の努力をいたしたいと思います。この復帰に伴ないます裁判の引き継ぎといいますか、裁判権のあり方、司法の引き継ぎということは、先ほど返還協定のところでもちょっと言及いたしましたが、なかなかこれもむずかしい問題で、返還協定上にこれは登場する問題でございますが、結局、終結的にはっきりしたきれいな形に裁判権が全面移管するというのは、復帰の時期ということを私は待たなければならないと思います。要は、それまでに、先般も若干改善されましたが、警察権等の運営の改善と、それから、やはり基本的には、もう復帰が目前に迫っていることでございますから、運用で秩序正しくやってくれるということをやってもらう、このことを先方に対しても強く求めてまいりたい、かように思っております。
  31. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 毒ガス撤去の問題については先ほどもいろいろ問題が出されましたが、前々回かの当委員会で渋谷議員が質問したときに外務大臣の、もうことしじゅうに全面撤去されるというような話も私は承ったわけであります。いままでの状態から考えても、百五十トンのこの毒ガスの問題ですら、先ほどの答弁からうかがいましても、本土側の代表を派遣するとか、あるいは、船に積むのが四日間かかるとか、あるいは、輸送が十日かかると、こういうふうな状態で、今年中にはたして、たとえ百五十トンでも輸送が可能なのかどうか。あるいはまた、いまの状態から判断していって、スピードアップできるという先ほど答弁がございましたけれども、七二年までに実際に全部撤去できるという——七二年までかかったら困るわけでありますけれども、ほんとうに全部撤去できるという米軍どの確約はとられているのかどうか、この点についてお伺いしたい。
  32. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私は先ほども率直に申しましたんですが、いままで米側と折衝しているところから得ている印象では、配船の関係、それからジョンストン島の建造の進捗状態、それ等から見まして、私はもう一九七二年の沖繩返還の時期にこれが関連してくることは私は全然心配を持ちません。明年中にはどんなにおそくとも解決するだろうと思います。私が非常に心配しておりますことは、非常に即時で急ぐということと同時に、安全でなければ——先ほども喜屋武議員から御指摘がございましたように、毒ガスというおそるべき問題でございますから、かりに移送中なり何なりさらに県民の方々に御心配をおかけするという事態を起こさないで、納得の上で十分の配慮と準備をいたしまして実行しなければならない。この二つの重要な要素をアメリカ側に十二分に理解させ、かつ、これを実行するということでございます。また、そういう配慮から、この百五十トンというようなきわめて微量なもの、これを第一回にということは、そういう点も、これは第一回であるだけに量も限定し、かつ、ここで移送がほんとに心配なく行なわれるという非常に大切なあれでございますから、第一回についてのこれだけの配慮と準備をいたしますれば、いま申しました船の関係とジョンストン島の整備がどんどん進んでいくはずですから、これとにらみ合わせれば、私は返還の時期に影響するということは万々ないと確信を持ち、また、いままでの米側の説明からいえば、私のようなしろうとでもこれはいけるなというような感じを強く持ったわけでございます。
  33. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 アメリカのいろんな話を聞きますと、ハワイのほうでもだいぶジョンストン島への移送の問題に対しては反対意見も相当強いと、こういう結果から見まして、もう次の移送計画等については具体的に話し合いは進んでいるんでしょうか、この問題を伺いたい。
  34. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) そういう点に及んで全国民的に御理解、御納得を得るためには、全部がいつどういうプロセスで完了するかということの全貌を私も掌握して、そして、できるなら御報告をいたしたいと、こういうふうにいま思っているところでございます。
  35. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 それでは最後に、これは尖閣列島の問題で、特に日韓台の合同石油資源開発計画について十一月の十二日ソウルで開かれた日韓、日華両国委員会の下部調整機関である三国連絡委ですか、そこでいろいろな合意をされた、計画等についての合意があったというようなことで新聞紙上で報道されているわけであります。これに対して新華社ですか——のほうの報道によりますと、いろいろな非難がされているわけでありますが、この問題に対して日本政府として今後どういうふうな立場をとっていくのか、これについてお伺いをして私の質問を終わりたいと思います。   〔委員長退席、理事山本茂一郎君着席〕
  36. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私もこの新聞記事を見ましたのですけれども政府間の、三国間の云々ということは全然事実ございませんもんですから、あまりたいした関心を持たずにこの記事を読みましたのが実情でございまして、いまもここで聞いたくらいでございまして、三国間の、政府間の打ち合わせ等とか協議とかいうことは全然ございません。何か、あるいは想像しますと、民間で何かそういうときに会合があったのかなと、それが間違えて伝えられたのかなというようなことのようでございます。
  37. 春日正一

    ○春日正一君 時間がないようですから私は資料要求の点だけにしておきますが、この前、十一月十七日の委員会で提出を約束されたガルフの金武(きん)湾管理権に関する資料十一点のうち、指令の正文、訳文のほか四点はいただいたのですけれども、肝心の六十年の期限を定めておる水域使用許可その他五点についてはまだいただいていないわけですが、これが一番大事なものですし、これは別に秘密文書でもないし、コピーをとりさえずればできるものだというふうに私ども考えるのですけれども、これが一月たってもまだそろわぬというのは一体どういうことなのか、これはいつ出していただけるか、この点、ぜひ提出していただきたいということで、そのお返事をお聞きしたいのですが。
  38. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 御要求がございました資料については、政府としてはできるだけの御協力をいたしたつもりでございます。若干の時間はかかりましたかもしれませんが、御要求には御協力申し上げたつもりでございます。いまお述べになりました、アメリカの民政府一つアメリカ会社に与えた許可証というようなものは、これは米民政府会社との間の書類であって、日本政府が現在の状況においてかりにこれは知り得たとしても、国会の公式の資料として日本政府からそれを提出するというのは私は筋がいかがかと思いますけれども、そういう点で私のほうからはお出しができないということだと思います。
  39. 春日正一

    ○春日正一君 念のためにあれしておきますと、まだいただいてないのは、五四年の布令一三一号同じく一二五号、これは米民政府の布令ですからね。それから一九六六年九月六日付の第二兵たん司令部規則第五六の一号。一九五四年琉球立法第五九号、同じく五五年の琉球立法六四号。こんな琉球立法の五九号とか六四号なんというのがまだ出されていないんですけれども、これは何ぼ何でもおかしな話だと思いますよ。琉球政府の立法がここの国会に提出されない理由はないんだし、日本政府は現地にちゃんと事務所を持っているわけですから、電話かければすぐにでもこれはできることですから。ところが、そういうものがいまだに出されていない。  それから、一九六九年十一月十日、水域使用許可。これがいま問題になっている、六十年の許可を与えたものですけれども、しかし、これは民間の契約に属するものだから正式に国会に出すのはいかがというようなことですけれども、私は事、日本の国の主権にもかかわるような大きな問題を含んでおるこの許可証でしょう。七二年に返すというのに六十年先まで許可を与えている。それでそのことが国会で問題になっているわけですから、これは出されないという私は理由はないと思うのですよ。民間の文書だからここへ出せないというようなことにはならぬのじゃないか。それはアメリカの民政府とガルフの会社との関係の文書ですけれども、同時に、これはガルフとどこかの会社が私的契約をやっているということじゃなくて、沖繩施政権者である民政府がガルフに対して与えた許可証なんですから、これは政府政府関係のものですね。ですから、決して私は私的なものじゃないと思うし、こういうものが出てきて、そろった上でやはりガルフの問題、平安座(へあんざ)島の問題ははっきり究明していかなければならぬ問題だろうと、私どもはそういう意味で非常に慎重に、政府の側から材料を出していただいてそれに基づいて私どもの立論を進めようという態度をとっておるわけですから、それに協力願いたいと思うのですよ。
  40. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) さきに提出方御要求ございました十一件の資料につきまして、そのうち、ガルフ社に与えられました米民政府の許可証につきましては、ただいま大臣から御説明がございましたような次第でございます。一九六六年の第二兵たん司令部規則につきましても資料の要求がございますが、これは米軍内部の内規というふうに承知いたしております。したがいまして、残りの資料につきましては、おそくなりまして恐縮でありましたが、資料をそろえましたので、なるべく早い時期に提出いたすようにはからいたいと思っております。
  41. 春日正一

    ○春日正一君 これ、いまの水域使用許可、これはまあいま大臣も言われたように、民間の私企業に関するものだから政府としてここに資料として出すわけにいかぬというような話があるのですけれども、私がいま申しましたように、これは私企業間のもの、私の取引じゃなくて、沖繩施政権を握っているアメリカの民政府が私企業に与えた許可なんで、これは政府の問題ですわ。だから、沖繩をめぐる日本政府アメリカ政府関係の問題ですから、当然提出されてしかるべきだと思うのですよ。だから、この問題はあとで理事会ででも検討さして、みんなの委員がそれを見て、そうして検討できるようにひとつはからっていただきたいと思います。どうですか。
  42. 山本茂一郎

    ○理事(山本茂一郎君) 承知しました。
  43. 春日正一

    ○春日正一君 それでは質問を終わります。
  44. 山本茂一郎

    ○理事(山本茂一郎君) 本調査に対する質疑は、午前中はこの程度とし、暫時休憩いたします。    午後零時三十四分休憩      —————・—————    午後二時五分開会
  45. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) ただいまから沖繩及び北方問題に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、沖繩及び北方問題に関しての対策樹立に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  46. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 沖繩経済開発の基本的問題について政府の所見を承りたいと存じます。  政府が策定いたしました新全国国土総合開発計画の中では、わが国を数ブロックに区分し、ブロック単位の特性を生かして開発を進めているのでございますが、本土との関連において復帰後の沖繩は何をめどとして開発したらいいかということをまずお伺いいたしたいのでございます。  お伺いするその前に私の私見を申し上げたいと存じます。沖繩から台湾、九州、韓国、上海は一千キロ以内にございます。また、香港、フィリピン、東京も、沖繩を基点とした場合、等距離の位置にございます。私は、これがゆえに、沖繩が米国の西太平洋における戦略上のキーストーンとして航空基地となり、兵たん中枢としての役割りを果たしているものと考えるのでございます。私は、この戦略上のキーストーンを平和のキーストーンにすることがわが国の英知であり使命であると確信するものでございます。  いま世界の文化と経済はアジア・太平洋へとその中、心を移動しております。かくのごとく考えますると、沖繩こそはアジア・太平洋経済圏の中心になり得るも一のと信ずるものでございます。今日の文化、経済は、交通、輸送の革命、すなわち船舶、航空機の巨大化によって生まれたものでございます。したがいまして、沖繩に大空港の整備、大港湾の整備拡充が行なわれ、その上、水、電力等の産業基盤が整備され、公害のない工業が立地された場合においては、今日の貧乏はあすの繁栄を約束し、今日の負担になっておる島は宝の島となるように私どもは考えております。そのときこそ沖繩がアジア・太平洋経済圏のキーストーンになり得ると確信いたしてやみません。私ども沖繩県民はその覚悟で開発に精進いたしたいと存じているのでございます。  この私の基本的な考え方に対して、誤りがあるかどうか、政府のお考えを明確にお答え願いたいと存じます。
  47. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) まず、沖繩から国会議員の選挙によって選び出された稲嶺君に対して答弁できること、たいへん感無量でございます。なお、喜屋武議員の質問も、一昨日でございましたか、先にすでにいただいておりますが、事柄が公害の連合審査でございましたので、言いたいことの半分も言うことができなかったであろうと、私も同情しながら答弁をした次第でございますが、そのようなことを考えながら、私も沖繩の問題について、直接沖繩県民代表の御要望を伺えることをたいへん喜びに存じている次第でございます。  さて、ただいま述べられました基本的な考え方については、ほとんど誤りはありませんし、私どももさような方向にしていくべきだということで考えてやってまいりました。さて、日本列島は四つの大きな島と、それに附随する小さい島嶼、現在は南は奄美大島の与論島をもって断ち切られているわけでございますが、沖繩の弓状の列島が日本に返ってまいりますことの価値は、先ほど距離でもって表現されましたとおり、非常に日本列島に与える付加価値の大きさを物語っておるものと私は信じておるわけでございます。ことに、日本が戦後軍事力というものを、自分自身では国土、国民を守るという専守防衛の立場だけでしか持たない憲法のもとに出発いたしておりますので、その制約のもとにおいて日本の繁栄の道は、経済国家として国民生活の向上をはかり福祉国家の建設に努力する以外にはないという、われわれはその道を今日まで歩いてまいったわけであります。その際において、われわれの国土は狭小にしてかつまた資源の乏しい国であり、また、居住人口も非常に狭い環境の中で過密な状態を昔から続けてまいりましたし、今日は一そう、俗にいう太平洋べルト・ラインにメガロポリスを構成しながら、過密の悩みと過疎の悩みとをかかえているわけでございます。しかし、われわれのこの原材料が乏しい中で、なぜ日本がこれだけ大きな経済的な伸展を遂げたかといえば、それは、日本人が原材料を日本に運んでまいりまして、そして日本の優秀な科学技術あるいは技能、こういうものをつけ加えることによって、世界の国々が太刀打ちできないりっぱな製品を海外市場に持ち出す。すなわち貿易という手段を通じて、輸出の収益をもってわが国は繁栄してきたものと考えるわけでございますが、そのときにあたり、原材料の主たるものはほとんど中近東、東南アジアに依存していることもまた当然の事実でありますが、それらを考えますときに、その輸入先に近い列島が日本に返ってくることによって、日本列島の新全国総合開発計画、いわゆる俗に「新全総」といわれますものの中では、沖繩の新全総の中に位する地位というものは明確に定めてございません。復帰の際にそれを考慮することが述べられているだけでございます。これはまさに復帰しようとしておるわけでございまするので、沖繩日本列島にどのような大きな経済的価値を持ちつつ返ってくるのであるかということをしさいに検討し、しかもまた、沖繩に対して、ただいま言われたように、アジア開発のキーストーンとしての役目を負っていただくということが沖繩県民の幸福でもあり、また日本列島全体に対しても新しい大きな分野がそこに開けてくるものと私も信じておるわけでございます。てこで、先ほど言われましたような、新全総の中に沖繩の占める位置というものは、これは単に沖繩県が、四十七都道府県のうち最後の一つの県が返ってきたというようなものではないのでありまして、非常に大きな価値を備えている。その際に新全総はおそらく書き直しを余儀なくされるであろう。それほどの大きな価値を私たち日本国民は認識しなければならぬと考えるわけでございます。その前提としては、御指摘のような空港、港湾、あるいは電力、工業用水を含めた水というようなもののいわゆる先行基盤整備がなされなければなりません。   〔委員長退席、理事山本茂一郎君着席〕 そして、そこに初めて日本の持てる力の全部が結集され、沖繩もまた軍事経済依存のいびつな形態から、業種、職種等の変更があったにしても、少なくとも生活が向上し、所得が伸びていく沖繩県民の姿というものを私たちはぜひともつくり上げなければならぬと考えるわけでございます。したがって、本年度予算からさらに来年度予算への展望は、明らかにこの空港、港湾、水、電力等について基盤整備的な形でもってまず先行的にこれが整備されることが先決であるという考え方をもって進んでおるわけでございます。繰り返して申し上げますが、稲嶺君の考え方とほぼ見解を一にして進んでまいったつもりでございます。
  48. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 ただいま総務長官の非常に広くて高い見地からの御所見をお伺いいたしまして、私ども沖繩県民といたしましては、これ以上の喜びはありません。  次に、工業用水及び生活用水の開発計画についてお伺いいたしたいと存じます。  まず、工業用水及び生活用水の開発計画についてお伺いいたしますが、沖繩本島北部安波川の開発と塩屋湾と羽地(はねじ)内海の糊水化等によって、一日当たり約三十万トンの水の供給が可能であるといわれております。沖繩の工業化のため、これが計画実施は必要欠くべからざるものでございます。政府はこれに対していかなる計画を持っておられるか、具体的に御説明を願いたいと存じます。  なお、現在福地ダムは米国資金で建設中でございますが、これが完成後も用水は十万トンに過ぎず、したがって、十年後を想定いたしますれば、あと三十万トンの用水が必要となってくるのでございます。私も一沖繩の産業人の一人といたしまして、これまで大規模ダム建設の必要性を痛切に感じてまいりましたし、私なりにダム建設の検討などもいたしてまいりましたが、これはばく大な資金を伴うものであります。私の資料により、ますと、ダム建設に二百億円、北部のダムからコザや那覇に送水する設備に二百億円、計四百億円という巨額の資金が必要であります。政府はこれまでこの計画をなされたことがございますかどうか。また、あるものであるならば、その試算をぜひお伺いいたしたいと存じます。なお、これだけの巨費を投じても、沖繩の用水開発はぜひとも必要であるということをお考えになりまして、政府の御方針を承わりたいと存じます。
  49. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) まず、基礎的な基盤整備の第一条件が水である、これは確かに御指摘のとおりでございます。われわれとしては本年度予算においても北部の水系の調査をいたしておるわけでございますが、さらに来年度予算において、ただいまの安波川、さらに普久川、塩屋、屋我地(やがじ)等を含めたどのような総合利用ができるかについて検討したいと考えておるところでございます。現在の福地ダムは、主として中南部の密集地域の飲料水供給ということを重点に着工を開始したと思うのでありますけれども、ただいまのお話にもありましたように、どうしても工業用水というものが先行しなければなりません。今日の技術では、まだ海水脱塩により真水を取るという工業用水の開発方法は非常に高いものにつきますし、そこで、これは工業をどこに立地させるかという問題とも関連があるわけでありますが、いまのままでやりましても膨大な経費がかかる。ただいま御試算を言われましたけれども、まだ私のほうも、どのくらいの規模にしてどのくらいのものが要るかということについては調査段階でありますので、工事費の段階ではございませんから、金額の策定は事実上いたしておりませんけれども、しかしながら、これを南のほうに引っぱってまいりますと、これは非常にコストの高い工業用水になる。おそらく四十円をこすような高い工業用水になるのではなかろうか。内地の工業用水は大体四円見当であります。それを著しく越す場合は、その見当まで引き下げるように財政措置さえ行なっている状態であります。そういうことを考えますと、喜屋武君が質問された、いわゆる公害と沖繩の今後の企業立地についてどう思うかという質問にも答えたのでありますけれども、現在の琉政の計画の中では、中城湾の埋め立て、並びに平安座(へあんざ)島、それから勝連半島の埋め立てということしか計画がありませんので、ぜひ北のほうというものを計画してもらいたい、できれば大浦湾一体、あるいは琉球政府立海岸公園というものになっておりますので、ここらのところはいろいろ議論もありましょうが、要するに、水に一番近いものは塩屋、屋我地の附近の海面でございますので、ここらのところを一部政府立公園の区域から解除してもらって、埋め立て計画ができるかどうか、これはまだ具体的に考えておりませんが、ぜひともそういう御相談をしながら、大浦湾というものに着目してほしい。ということは、大浦湾に工業用水を持ってまいりますと、これは安波川、普久川も含めて塩屋、屋我地、これらをレイアウトいたしまして、屋我地まではまだはっきりとどういう構想にするか、いわゆる内陸部のほうが平野で低うございますから、これをどうするかについて、農耕地との間に提防を築くかどうか、これらの問題点もございますが、さしあたりは屋我地に注いでいる川の水も途中でためて取るというような構想にいたしますと、どうしても工業立地というものは、その近くに来てほしいのだということを考えているわけでございます。しかし、西海岸のほうは季節風の問題もありましようし、いろいろありましょうが、要するに、人口密集地域というのは、公害の見地からも避けなければならない。むしろ沖繩は、基地公害は別として、産業公害はまだ処女地でございますから、せっかくの美しい空と海と陸とをきたないものに変えてしまうことは、もういまからわれわれは避ける準備をしておかなければなりませんので、そういう意味から考えても、北部をよごしていいと私は言っているわけで、はありませんが、そういう配慮をしつつ、公害の見地からも、なるべく工業用水の取りやすい水源地の近くに立地すべきであろう、そういう場所もあるではないかというようなことを考えておるわけでございます。したがって、今後日本政府としては、この福地ダムの完成を待つまでもなく、安波川に着工を急ぎ、あるいは普久川の調査をすみやかに終え、そして塩屋湾の利用計画をすみやかに工事設計等が終われるように急いでまいりたいと考えておる次第でございます。
  50. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 次に、電力の問題について御質問いたしたいと存じます。  本土企業沖繩に進出するにあたりまして非堂に不安に思っておる点は、電力の豊富かつ安定供給とコストダウンが沖繩において可能であるかという点について疑問に思っているのではないかと考えている次第でございます。  現在琉球電力公社は法人税や原油関税の免税、長期低利の金融措置の特典を得まして、電力コストを低廉にいたしております。政府は、復帰後におき、ましても現行の特別措置を継続していかれるお考えであるかどうか承りたいと存じます。  また、本土並みの工業用電力料金が確保できるような措置を講じていく用意がありますかどうか、これもお伺いいたしたいと存じます。  政府に私どもは希望いたしたいことは、本土側の企業沖繩進出に対しましては、政府が前向きの姿勢で積極的に進進していただきたいということでございます。
  51. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 次に、電力の問題に対するお尋ねでございます。これは現在民政府の電力公社が電力を管理しておりますこと、これの取り扱いについて引き継ぎ事務を本土側の大蔵省とアメリカ側の財務省との間で話を進めておること、ともに御承知の事実でございますが、私どもは、これが無事引き継ぎを終わりまして、そのあとどういうふうな経営が成り立つかという試算もまたしておかなければなりません。通産省と私どものほうと試算をいたしてみました概略の見当では、琉球政府、いわゆる将来の沖繩県営の電力会社にされた場合に、発電から送配電まで一貫しておやりになる。離島等における異常な電力格差の問題等をかりにのけて、あるいはまた必要な今後の新しい電力需用の開発というものに対して投資も計算をしないで考えてみましても、消費者に対して二〇%引き上げという、電力料金のバランスをとるための措置が必要であるというふうにどうしても計算上出てくるわけでございます。私、この点をたいへん心配をいたしまして、民間の、幸い配電会社の五社が一緒になられるということでございますから、配電会社の方にもその資料をお渡しいたしましたし、また、政府の責任者である屋良主席にもお渡しいたしまして、通産局でぜひ検討してくださいと言って資料を差し上げてあるわけでございますが、私の考えとしては、琉球政府がそれでもなおかつ県営電力でなければならぬとおっしゃる場合には、何らかの電力を据え置く措置を講じなければならないだろう。しかし、それは非常に困難であるということであります。私としては概略、当初全くの素案でございましたけれども日本には電発というものがあるわけでございますから、この電源開発会社のほうで、卸売り価格の段階において本土とほぼひとしい価格にするための赤字をかかえ込んでもらう。その赤字の措置は、電発でございますから、もちろん国がめんどうを見ることは容易でございますので、その後沖繩のほうで配電だけおやりになると大体ペイするのではないかということの私案も持っていたのでございますが、しかし、やはり電力公社というものは自分たちが県民の資産として引き継ぐべきものであるという御主張が強いようでございますので、今後はその琉球の電力公社を沖繩県が将来引き取った場合に、どこまで目的が達せられるか。すなわち、本土並みの電力料金というものが工業用、民間用を問わず確保できるかどうか。この手段をひとつ解明して、できるだけその御要望に沿うようにしなければならぬと考えます。本土のほうも九電力に分割されておりますために、たとえば東北電力等は営業形態がたいへん悪うございまして、電力料金が他地域に比べて高かった。そのためにせっかく北海道東北開発公庫とかいろいろなものがありまして、あるいは国策会社等をつくりましても、なかなか企業というものが東北のほうに足を向けなかったという私たちは体験も持っているわけであります。でありますから、企業進出の前提はどうしても電力量と水である。これはいずれもまたその料金の価格の問題であるということは十分わかっておるわけでありますので、今後沖繩県民の御意向をくみながら、それらの目的が達成できるような手段を詰めてまいりたいと考えておるわけでございます。  アルミの問題につきましては、幸い約束どおり本年中にもう近々会社設立の申請をいたすようでありますが、アルミの電力の場合は、これは自家発電でやっていただきたいということで当初からお願いをしております。ただ、アルミ会社のほうは、間違っていたらあとで訂正しますが、電気事業法だったと思いますが、定めるところがありまして、発電施設というものは年に四十日休んでそれを点検しあるいは修理等を行なうという法律の定めがございますので、その期間の電力をどこからかもらわなければならぬ。ところが、その期間の電力まで自家発電ということにいたしますと、それは、今度は四十日を除いた残りの期間はコストにかかってきてロスを生ずるという非常なつらい点があるようであります。ここらの点は、水と電力の問題でアルミがちゅうちょいたしました理由がそこに一つあるわけでございますので、これらの点も操業開始までにはぜひとも、どのような形で自家火力発電をかりにいたしましても、その修理期間の電力を供給してあげるかということの手段を発見しなければならないだろう。こういうことを考えておりますが、いまのところ、その点は未解決のままでございます。したがって、アルミ会社は、それらのことを私たちがやることによって、すみやかに沖繩で操業が約束の年次に開始できるようにいたしたいと考えます。
  52. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 電力問題は経済開発の根本をなすものでございますので、できるだけ低廉で提供できるような方向において政策を決定していただきたいというふうに考えております。  次に、経済開発機関の設置についてお伺いいたしたいと存じます。  現在、政府沖繩開発の主体は、沖繩北方対策庁にございますが、復帰後は、北海道開発庁のもとに北海道開発局があるように、まず沖繩開発庁を設置し、その下部機関として沖繩開発局を設け、沖繩開発を強力に推進していただきたいというふうに考えております。政府のお考えはいかがですか、お伺いいたします。
  53. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これも一つの方針としてそろそろきめなければならないところですが、この行政機構の問題というのは、本土のほうではたいへんうるそうございまして、いわゆる事柄の重大さとは別に、どのような機構を新しくつくるか等については、相当な議論を要する仕組みになっておりまして、この点はたいへん申しわけないですが、一つには総理の決断も要ることだと思います。おそらくはただいまのような沖繩開発庁みたいなものが発足するんではないだろうかというつもりではおりますが、最終的には、いまのところ明言できかねる状態にございます。ただし、沖繩のために専念する機構というものが要るであろう、このことについてはもう大体意見の相違はございません。
  54. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 次に、総合開発金融機関の設置についてお伺いいたしたいと存じます。  沖繩開発を進める上で、開発金融機関の設置は必要欠くべからざるものと考えております。そのために私はい開発金融機関といたしまして沖繩開発総合金融公庫の設置を提案いたしたいと存じます。現在本土には数多くの金融公庫がありますが、沖繩復帰する時点におきましては、これら金融機関の沖繩営業所が設置されるものと考えます。しかしながら、人口百万人のところで、しかも、幾つかの島から成り立っている沖繩におきましては、これらこま切れの営業所の設置は不合理であり、また、開発のためにも不便ではないかと思っております。私といたしましては、これらの金融公庫を統合し、一本の根の太い沖繩開発総合金融公庫といたしまして設置し、大企業、中小企業、農漁業者等が長期低利で借り入れることのできるような機関にすべきであると考えておりますが、政府の御見解はいかがでございますか。   〔理事山本茂一郎君退席、理事川村清一君着   席〕
  55. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 沖繩復興開発金融公庫については、内々、もうその方向で進むということについて意思を統一しつつあるわけでございますが、ただいまのお話しのように、「総合」ということになりますと、これは各種政府金融機関がございますので、それらはそれらなりにいいところもありますし、やはりそれがばらばらに行なわれることによって融資を受ける側については困ることもあるいはあると思いますけれども、ただいまのおっしゃったことは十分念頭に置いて、今後沖繩復興開発公庫をつくる場合において、どのような内容のものにするかについては、今後詰めていくつもりでおります。
  56. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 次に、海洋博覧会の沖繩開催について政府の御意見をお伺いいたしたいと存じます。  世界各国の参加を求めまして沖繩において海洋博覧会を開催することは、私ども県民がひとしく期待しているところでございます。海洋博覧会につきましては、ことしの三月と十月に開催されました日琉沖繩経済振興懇談会において満場一致で決議され、それに基づきまして、その開催の要望書を政府にすでに提出してあるのでございます。私ども沖繩百万の県民は、海洋博覧会の開催を沖縄復帰最大の記念事業といたしましてぜひ実現していただきたいと存じておるのでございます。開催年度は昭和五十年度が適当といわれておりますがゆえに、これの準備も早急に進める必要があると思うのでございますが、政府のお考えを承りたいと存じます。  なお、通産省は来年度予算要求で、海洋博予備調査費といたしまして八百万円要求されていると聞いておりますが、この予算要求の備考欄に、「これは沖繩における海洋博の是非についての検討」とありますが、八百万円以上の調査費を使って「是非の検討」というのはどうも奇異に感じられてしょうがないのでございます。昭和五十年にはぜひ開催できるよう準備を進めていただきたいと思いますが、御見解をお伺いいたしたいと存じます。
  57. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは予算は八百三十三万七千円確かに要求はしておりますが、その沖繩で開くことの可否ですか、そういうことは、これは別な意味でして、実は万国博覧会条約というものによって、日本でやりました万博みたいなものを各国持ち回りでやっているわけですが、その条約の中の「特別博」というものの中にこの海洋博覧会が位置づけられるであろうということでありますので、条約上現在まだ返っておりません沖繩というものを対象にして、その万博条約加盟国に対して、沖繩でたとえば昭和五十年なら五十年に開きたいがと申し入れることが可能であるかどうか、こういう議論等も、外務省条約局あたりの見解等も徴したのですが、これは復帰したあとに開くのだからよかろうと思います。ところが今度は、これを諸外国が相当引っぱり合いをすることはオリンピックと同じで、競争がありますから、その場合に、日本は東洋で初めてやって、非常な注目を浴びたわけですけれども、万博をやったばかりじゃないか、引き続き、海洋博覧会とはいえ、海洋博みたいなものを同じ条約の中で四、五年後にまたやるのかという異論等もあるようです。そこらのところを、よく説得が要りますし、それらのところのためにそういう表現を念のために使ったということでありまして、われわれとして、日本沖繩復帰記念のための海洋博覧会をやりたい、あるいは、やることにしようという意思を持って八百余万円の予算要求をしておることの姿勢は全然変わらないということでございます。ただし、できれば、昭和五十年でなくても、もっと前にでもやりたいという気持ちも私は持っておるわけでございます。
  58. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 もう時間がありませんので、尖閣列島に関連する問題としてお伺いいたしたいと存じます。  いま尖閣列島周辺、先島周辺におきましては、わが国の領土でございますが、それにもかかわりませず、現在、領海は他国の船によりまして荒らされているのが実情でございます。また、尖閣列島周辺、先島のほうには、台風期におきましては遭難する漁船が多いのでございますが、政府といたしましては、尖閣列島周辺の領海を守り、また、同海域で操業している漁船団を保護し、また、台風時期に際しましては遭難船舶を救助する等、お考え願いたいというふうに考えておりますが、これがためには、いま現在、本土におきましては海上保安庁がありまして、いま第十管区海上保安本部が設置されておりますが、しかし、鹿児島と南方とは非常に遠いのでございますので、沖繩も加えて力を貸すということは非常に不可能じゃないかというふうに考えております。その意味におきまして、ひとつ第十一管区海上保安本部を沖繩のほうに将来復帰段階において設置をいたしまして、沖繩の広い海域を守り、また、漁船の安全操業と台風時における遭難救助を期する。そのために沖繩に第十一管区海上保安本部の設置を私どもは痛切に感じておるのでございます。これについてはあるいは長官から御意見をお聞きしたほうがいいのか、あるいはほかの政府の方の御意見を徴したほうがいいのかわかりませんが、長官が沖繩全体の問題を取り扱っておられますので、長官の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  59. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 海上保安庁の第十一管区海上保安本部の設置については、すでに現地で私、言明をいたしております。運輸省の海上保安庁とも連絡はとれておりまして、これはほぼ設置の方向で検討いたしますし、そのつもりでおります。  なお、その当時はまだ尖閣列島に対する問題がいまほど国民政府並びに中華人民共和国等からももの言いのついていない時期でありましたけれども、やはり、ただいま言われましたように、沖繩は数十の島嶼から成り立つ島である、人間の住んでいる島が三十をこえるというような現況から考えますときに、やはり鹿児島の第十管区というものではとても及ばない、カバーはできないと考えております。ことにまた本土の船等が操業をいたします海域も、沖繩からこれを見るときにはひどく近いところに位置しているわけでございますので、それらのことも万般考えながら、航空機、船舶その他の必要な要因等も配慮しつつ、第十一管区海上保安本部というものを設置するつもりでおるわけでございます。
  60. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 もっとお伺いいたしたいことはございますが、時間がありませんので、あとは対策庁長官のほうからお伺いすることにいたしまして、これで質問を終わります。
  61. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 最初に、山中長官にお尋ねいたしたいと思います。ところが、これは問題によってはあるいはどうかなとも思いますが、実は最近、私の体験しておる、実に奇々怪々といいますか、割り切れない問題がございます。それは、「沖繩県」の取り扱いについてどうお考えですかという質問をいたしたいと思います。「沖繩県」ということに対する取り扱いの問題です。
  62. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 御質問に答えることになるかどうかわかりませんが、心がまえとしては、四十七番目ではあっても、四十七番目の力の県にはしたくないということであります。すなわち、沖繩の方々はあのような苦しい環境の中で、なおかつ、経済形態に本土に見られない異常のものがあったにせよ、少なくとも本土の最低県の県民所得よりか高い県民所得の確保を達成しておられる。こういうことを考えますときに、四十七番目にようやく返ってくる沖繩県ではありますが、私たちは沖繩県の力というものはぜひとも四十七番目に置いてはならないんだという決意でおります。  さらに、形式上のお尋ねがいずれあるでありましょうが、一部、復帰について任命知事説が——ただ、法制上からは幾つもの手段等が考えられますので、切りかえ時における手段として流されたということは、星議長でございましたか、たいへん心配して——憤慨してと言うほうが正しいのかもしれませんが、そういうやり方はけしからぬというお話がございまして、これについては私も同感でございますので、なるほど、法律上はいろんな解釈の中に自治大臣の任命ということもあるわけでございますけれども、しかし、それは手段としてとらないということを衆議院の沖繩出身の国会議員の諸君の質問の中で私は明確に答えてあるところでございます。  あとは質問を持ってお答え申し上げます。
  63. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いまのお答えによりまして、沖繩県に対する心がまえ、理解いたしましたが、実は形式上の問題になるかもしれませんが、この前、去る九日に、参議院要覧に議員略歴掲載のため喜屋武眞榮の住所を要求されましたので、私は「沖繩県コザ市字諸見里七一七番地喜屋武眞榮」と、このように出しましたところ、「県」を削除してもらいたいという申し入れを受けたのであります。ところで、その資料課の庶務係からその連絡を受けたのでありますが、「県」を削除する法的根拠は一体何か、自分を明らかにするための住所の表示は戸籍法によるべきではないか、戸籍では明らかに沖繩県云々となっておるはずでありますというふうに秘書が質問したところ、どうしても表示しろと言うなら、「沖繩県」の表示そのものを削除して「コザ市」にする、こういうことを、まあ、おどかしか何か知りませんが、そのようにせよと、こう答えたので、秘書もむっとしたようでありますが、   〔理事川村清一君退席、委員長着席〕 そこで私は、何よりの証拠に、ここに私の当選証書を持っておるわけでございます。この中に「沖繩県コザ市字諸見里七一七番地」と、このように明記されておるわけでございます。こういうことからしましても、私は、従来慣例上どうあったにせよ、このようにれっきとした証書をもらった喜屋武に対して「県」を削除しろとか、しいてそれをやろうというならコザ市から書くんだという、全く不遜きわまる態度、この態度は許せない、こう思って実はこの問題をお尋ねした次第でございますが、これに対する御見解いかがでしょうか。
  64. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 喜屋武君も国会議員になられたのは初めてでございますので、それらの手続その他についての仕訳等についてはお気がついておられないことであろうと思います。これは政府のことではありません、参議院事務局の議院要覧作成の問題でございますので、委員長からも、ぜひ私からも担当大臣としてお願いをいたしますので、ただいまの喜屋武君の言われることはもっともだと思いますので、しかるべく参議院事務局に御手配を賜わりますようお願いを申し上げる次第でございます。
  65. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いまの個人名を明らかにする必要がありますか。
  66. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) それは要らない。——委員長、こういうことでございます。議院要覧に喜屡武議員が「沖繩県」そのあと「コザ市」ということで自分の住所を記載するように書いたところが、「県」を削除してくれということだった。ところが、それは困る、自分は当選証書にもはっきり「沖繩県」と書いてあるということを言ったんだけれども、では「沖繩」まで取ってしまって「コザ市」から始めてくれと。はなはだ心外である、侮辱であるというお話があったわけです。これは政府のことではございませんので、参議院事務局でおつくりになるたぶん議院要覧のことだろうと私は拝察いたしました。そこで、委員長に私からも、これは差し出がましいことでありますけれども、担当大臣としてただいまの喜屋武君の御意見はごもっともであると思いますので、委員長において事務当局にしかるべく喜屋武君の御意向をお取りはからいいただくようお願い申し上げる次第であります。
  67. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) よくわかりました。そのとおりはからいます。
  68. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それじゃ次に総務長官にお尋ねいたします。  「沖繩復帰対策の基本方針」に基づいて「沖繩復帰対策要綱(第一次分)」が発表されたわけでございますが、その中からまず第一点、政府はいつまでにこの格差をなくしたいというあるめどを持っておられるかどうか。沖繩県の二十五年の差別と犠牲から来たもろもろの格差がいっぱいあるわけですが、それはいつまでに是正したい、こういっためどを持っておられるかどうか、その点。
  69. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これはこれからつくります復興計画、具体的には来年の臨時国会と思われます沖繩返還協定の議会承認を求める際、同時にそれらの計画は提出するつもりでありますが、一応こういう特例措置は五年ということに常識上なっておりますので、五年区切りになるかと思いますが、しかし、奄美大島の予算上の計画でございますけれども、これがいま最終五ヵ年計画に入っておりますから、戦後二十年続いております。これらは単に格差というもののみでなくして、これを振興させる。最初は奄美予算は奄美復興予算でございました。振興以前の姿であったわけです。そのあと十年間の、戦後を二期に分けた十年の復興計画の後、第一期の振興計画を終わりまして、いま最終五カ年振興計画に入っているわけでございます。ところで、沖繩の問題を奄美の例と同じにするつもりはありませんが、たとえば文部大臣も来ておられますけれども、元来平等であるべき学校の環境その他について、学校の施設その他も、私も至るところで拝見をいたしまして、本土に比べて非常に、校長室も職員室もない、あるいは特別教室もない、運動道具を格納する建物もない、普通の教室の片隅に飛び箱その他が入っている。屋体等の普及も十分でない。これらの点を拝見いたしまして、これらの問題や、あるいは社会福祉その他の基礎的な問題については、これは当初の五カ年計画で完全に本土並みにするようにしなければなるまい。しかも、これは復帰の時点を待つまでもなく、重点的に来年度予算においても配慮いたしておるところでございますが、これらの問題は何にも増して基礎的な国民として受ける平等の権利の達成に全力をあげていく。その他の問題は、これは格差というよりも、先ほど稲嶺君も言われましたが、沖繩の持つ最も有利な条件をどのように生かしていくかということにも結果としてつながっていくと思いますけれども、私どもとしては、これらの特別措置を進めていくことによって沖繩が格差ももちろん薄まる、さらに沖繩の持つ有利な立地条件というものにおいて今後雄飛できる沖繩というものの基盤をつくり上げることが私たちの、祖国のつとめではなかろうかというふうに考えて、今後計画を具体的に進めて、議会の御審議を賜わりたいと思っておる次第でございます。
  70. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いまの御答弁で基本的な姿勢はよく理解できました。ところが、気になりますことは、沖繩七二年返還のめどもついた、国政参加も実現した、こういうことからして、もう差別はしないのだ、一体化、本土並みだ、こういったことで、過去の二十五年のこの異常の支配から来る吹きだまりのいろいろな格差は伏せておいて、そうして、これからも本土並みだ、本土並みだということに対しては、この格差を伏せた「本土並み」だということ。この二十五年の格差というものは永遠の差別につながっていくわけです。だから、これを埋めるまでは、これは甘えるなということではなしに、私たちの立場からすると、共通の底辺にまで埋めていく、当然の権利であり要求である、このように思うわけであります。それに対して、もう差別しない、沖繩問題は終わったんだ、次は北方領土だと、こういった形で沖繩が埋没しはせぬかという大きな不安があるわけです。そういうことでございますので、どうかこの格差を是正し、同時に開発していくということはおっしゃるとおりであるわけでありますが、その格差を埋めていくまでは国の責任であり義務である、このように理解なさって、差別をしないんだということが隠れみのになりませんように強く要望いたしたいと思います。  次に、沖繩復帰対策方針に基づく要綱によりますと、大きい七つの項目と四十の小項目にわたっておりますが、この中身については後ほど要望申し上げたいのでありますが、多くの項目に「復帰後一定期間」云々という、この暫定措置のニュアンスがあるわけでありますが、その「復帰後一定期間」という中身は、一体どれくらい、何年後をめどにしておられるか、お聞きしたいと思います。
  71. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私の答弁がまずかったようでありまして、格差について二十五年の空白というものを埋めないんだというふうに受け取られてはたいへん私も心外でございますので、そうじゃなくて、奄美の例を引きましたのは、なぜ最初から奄美振興五カ年計画にしなかったのか。それは奄美というものが、たとえ沖繩よりかもっと短かかったにしても、やはり奄美も長年占領のもとに苦しんだわけでございますから、それに対してまず振興以前の復興から先だということで、奄美復興の前・後期十カ年計画というものが練られたわけでございます。そのあと今度は振興ということに移ったわけでございますので、そのことを私がもう少し説明すればよかったのでございますが、沖繩にしても、なるほど自力で復興はされております。しかし、もし本土が沖繩に二十五年間やるべき義務をなしていたらどれだけのことをさらにお力添えできたであろうかということを念頭に置いて、私たちは本土のいかなる地域にいかなる条件で適用されておることよりも、本土のいかなる地域よりも条件よりも、もっともっと最高の条件をもって国がこの二十五年の空白を埋める償いのための復興計画を立てなければならぬだろう、こういうふうに考えておりますので、その点は御懸念なくお願いをしたいと考えます。さらに、「一定期間」という表現でございますが、これを「五年」とかなんとかはっきりしておりませんのは、一つには自動車の右側通行の問題があるわけでございます。これを実は「五年」ということできめてしまうと、当面「五年間」と書いてもよかったんでございますが、この右側通行の問題は、御承知のように、条約に基づくものでございまして、一つの国の中で右と左と両方の交通手段をとってはならぬという条約の定めがございます。でありますので、これは国際会議において了解を取る必要があるわけでございますが、したがって、沖繩において今後交通安全施設その他も、ほとんど軍用道路的な色彩でありますから、でき上がっておりませんし、まず右から左に切りかえるためには、あるいはバスの昇降口を反対にしなければならぬとか、それまでには新車を購入する買いかえのしかたについてどうするとか、いろいろな準備が要りましょうから、最低二年ぐらいほかかると思いますけれども、五年ということになりますと、ちょっと国際条約の、同一国内において右と左と両方の交通手段をとってはならないということに抵触するおそれがございまして、こで、ただ交通問題だけ短い期間というのもどうかと思いましたのでそういうような表現が随所に出ておるわけでございますが、原則は五年を一区切りということで考えておるわけでございます。なお、交通問題については、なるべく早い年次計画でもって、何年後に右側通行を左側通行に切りかえるというような方針が立ちましたならば、これはバスの運行等からオーナー・ドライバーまでも含め、あるいは学校教育の交通安全からあるいは道路標識から道路の立体交差のあり方まで、全部念頭に置いて年次計画をつくっておかなければいけませんので、それらの点に向かって進めたいと思います。そういう意味でちょっとばく然としたように受け取られるかもしれません。
  72. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 そうしますと、大体大まかに五年後というめどだと了解してようございますか、ある特殊なものは別といたしまして。
  73. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 五カ年間で終わりではなくて、おおむね五カ年ということを一区切りにするということを申し上げているわけでございます。
  74. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次にお尋ねしたいことは、第一次分を見まして、これは当然だという項目だと思うんですが、もっと大事な項目は第二次分の中に早急にあらわれてこなければいけないと、こう理解いたしておりますが、その第二次分の内容は何であるか、あるいはいつそれが生まれ出るのであるかお尋ねしたいと思います。
  75. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 第二次は目下作業を急いでおりまして、大体三月ごろまでには第二次分をつくり上げたいと考えております。でありますから、第一次に漏れておりまする部門の大体大きなものは第二次分で決定できるのではなかろうか。場合によっては、やはり臨時国会までに、残りの、おこぼれと申してはなにですが、小さな問題等については、三次ということもあり得るという感触でおります。
  76. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 そこでお伺いをさらにいたしたいのでありますが、目下沖繩問題は総理府沖繩北方対策庁を窓口とされまして七二年返還準備を進めておられるわけでありますが、われわれが心配しますことは、七二年までは調査段階に終わって、あるいはその調査さえもおぼつかないで七二年復帰の時点から沖繩問題の具体的な対策がすべり出すということになりますというとたいへんなことになる、こう思いまして、その御努力は多としながらも、むしろ窓口を集約されることはけっこうでありますが、各省の長期計画沖繩の事業費を取り入れた計画を予算化していく、いわゆる調査段階では、むしろ各省の立場から急ピッチにそれぞれの分野を調査をしてそれを集約していくという、こういう考え方に立ってその予算の裏づけも持つ。そういう意味で、そのためには、四十六年度予算に各省が計画されるための調査費を計上することが最も緊急かつ重要だと、こう思っておる次第でありますが、そのことに対する御見解を承りたいと思います。
  77. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは見ようでいろいろ受け取り方が出てくるわけですけれども、現実には、私が現地へ参りましてくまなく回りましていろいろと考えましたこと、あるいは調査を要すること、確定すべきこと等については、各省それぞれ全部が、専門官が遅滞なく行ってくれて具体的な調査をし、それぞれの省にも報告すると同時に私のほうへも連絡してくれておるわけでございます。でありますから、今後の計画策定にあたっても、沖繩北方対策庁だけでやるには能力もきざいませんので、これはずっと各省連絡官会議というものを開いておりまして、各省とも非常に好意的にやってくれておりますので、また、今後は各省ばらばらで予算をやるんだということになりますと、実は内地のほうでは、ばらばら行政というそしりが非常にあるんです。各省が有機性を欠いて、意欲があるのはけっこうですけれども、受けるほうの沖繩はたった一つの県ですから、その一つの県が受けるのに各省が全部違った感触を出してくると非常に困るわけです。そこで、やはりどうしても調整が必要ですし、各省が具体的な計画を立てましても——かりに沖繩対策庁でなくとも、現在は奄美については自治省あるいは小笠原についても自治省ということで、やはり窓口を一本にしたほうが効率があがるということに一応なっております。これについては、手段の問題でございますから、ただいまの御指摘は、専門は専門家にやらせろ、すなわち、それが沖繩の人たちの幸福につながるという御意向だと思いますので、その「もちはもち屋」の連中のつき上げたもちを私の手元でうまくこねるということをやっぱりやっていくことが当面よろしいように考えます。
  78. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 時間が参りましたので、あえていま申し上げた質問をいたしましたのは、一本化にはそれぞれ長所、短所も一あると思いますが、われわれがおそれているのは、窓口を一本化していくところから来る、いわゆる直接具体的に実施していく取り組みがおそくなっていきはしないかという懸念を持つわけでございますので、どうかそういうことになりませぬようにひとつ一そうの御尽力をお願い申し上げたい。  さらにこの要綱につきましてもお尋ねしたいこともございますけれども、時間でございますので、また後日に譲りたいと思います。  ありがとうございました。
  79. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 対策庁長官にお尋ねいたしたいと存じます。  まず最初に、軍雇用者に対する退職金の支給についてでございます。解雇されました沖繩の軍雇用者への退職金は本土の労務者に比べまして低いのでございます。その差額を本土政府で見ると約束しておるのでございますが、現地では、年末すでにぜひ支給してほしいというふうに言っております。年末までに支給できる見通しがございますかどうか、御意見を承りたいと存じます。
  80. 山野幸吉

    政府委員(山野幸吉君) 昭和四十四年度の予備費で、実は一千五十三人に対しまして一億九千二百万円の予備費を支出いたしたわけでございます。これはことしの三月一ぱいまでの退職者でございます。ところが、その後、本年六月までに新たに五百十八人が解雇されまして、この人たちに対する本土並みの退職金の差額の手当が現在ついておりませんので、これはいま大蔵省と調整金の解除を交渉中でございまして、年内にも支出できるように鋭意大蔵省と協議中であります。ただ、ことしの七月以降——だから、四月から六月までじゃなくて、七月一日から解雇された者が五百十三人います。この人たちのものにつきましては、解雇された人の名簿その他経歴等が出ておりませんので、まだ算定のしょうがないわけでございます。この人たちは年内の支払いは困難でございますが、まず、ことしの四月から六月までの五百十八人の分については年内に支払えるようにしたい。それから、引き続き七月以降の分も、資料の整い次第、大蔵省と折衝してまいるつもりでございます。
  81. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 まあ、七月以降のものにつきましても、できるだけ早く支払いができますよう御尽力をお願いいたしたいと思います。  それから、軍雇用者の対策についてでございますが、米軍基地で働く労働者の大量解雇問題は、沖繩経済の存立にとってきわめて重要な問題でございます。私はこの問題を解決するための措置といたしまして、間接雇用制度の早期実現、解雇予告期間の延長、退職金の増加、駐留軍関係離職者雇用促進事業団の沖繩事務所の設置等を緊急に御研究願いまして実施していただくようにお願いいたしたいと存じます。特に第四の、駐留軍関係の離職者雇用促進事業団の沖繩事務所の設置については、復帰前においてもできるかどうか、復帰後でなければできないかどうか、お伺いいたしたいと存じます。
  82. 山野幸吉

    政府委員(山野幸吉君) 御指摘のように、軍雇用者の解雇者につきましては、もう申し上げるまでもなく、本土の軍雇用者の離職者対策にほぼ準じたような対策を琉球政府米軍側と協議しながら進め、必要な予算措置を講じておることは御案内のとおりでございます。しかし、私どもがこの問題を考えます場合に一番困難な問題は、これらの労務者を沖繩現地で就職さしていくということが第一の目標でございますから、したがいまして、そういうことを離れて、本土の駐留軍の労務者の対策とあわせて本土に吸収していくのならば、これはきわめて簡単でございます。そうじゃなくて、むしろ現地の雇用の場をどうやって開拓し、どうやって訓練して転職さしていくかということでございますので、いま御指摘のような駐留軍労務対策の本土の支所をつくるということも私は一案だろうと思いますけれども、まずもって琉球政府が全力をあげてこれらの職員を現地の雇用の場にあっせんし、また、それに必要な技術援助なりその他の対策を本土政府が援助していくということが一番大事じゃないだろうか。いま突然の御指摘でございますが、そういう点も十分考えていきたいと思いますが、当面の問題としては、私どもは、ただいままで発生した離職者の中でごくわずかの人が就職しておりますが、そのわずかな人の中で、八割は本土に来ておるわけでございます。そういうような実態から考えまして、私どもは、まず沖繩の現地でどうやったらこれらの人を再就職できるかということについて、目下一番腐心しておるわけでございます。
  83. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 私ども、この軍雇用関係の再就職については、非常に心を痛めているわけでございます。この場合、千五百名首になってそのうち百五十名ぐらいしか就職していないということは、軍雇用者にとってはきわめて重大な問題でございますので、ひとつこの問題については政府におきましても親身になって考えていただきたいというふうにお願いいたしたいと存じます。  それから、離島関係や社会保障の問題についてひとつお願いいたしたいと存じます。沖繩は、先ほど総務長官も一言われましたように、六十の島々がある。そのうち三十の島では人が住んでいる。こういう離島僻地に住んでいる諸君には、唯一の娯楽機関といいましてはラジオとかテレビ、こういったものでございますが、そういうところにはその受信もなかなかむずかしいという点もございますので、その点をお考えになりまして、簡単に受信できますように、特別に財政措置を考えていただけないかというふうに考えております。  また、心身障害者やあるいは老齢者、精神病者、母子家庭等、沖繩の場合は社会保障制度が非常におくれておりますので、これらの方々に対しても生活が保障のできるような財政措置を十分に考えていただけないかと、ひとつお願いいたす次第でございます。
  84. 山野幸吉

    政府委員(山野幸吉君) 離島の難視聴地域のテレビ局、簡易テレビ局と申しますか、設置問題につきましては、明年度は西表(いりおもて)の白浜部落の共同受信設備、それから南北大東島の受信設備等につきましても財政投融資を含めまして一億五、六千万余の予算要求をしておりまして、これが実現できますれば、これらの地域のテレビの難視聴は解消するというぐあいに考えております。今後とも一こういう方針に沿って施策を進めてまいりたいと思います。  それから、身障者福祉施設等につきましては、これは稲嶺議員も十分いろいろ御努力いただいておるところでございますが、明年度は宮城原の更生センターとか、また盲人センター、それから身体障害者の総合授産所、これらにつきまして大体七千万程度の予算要求をしておりますし、これらが完成しますと、一段と施設は整備されるものと思います。
  85. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 終わります。
  86. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 山野長官お帰りかと思いまして遠慮しておりましたので、他の復帰対策要綱の内容について、御要望をかねて、お答えできる点について承りたい、よろしくお願いいたします。  まず、教育・文化の面で第一点の教育行政につきまして引き続き坂田文部大臣にお尋ねいたしたいと思います。  2項の「琉球大学の国立移管」につきましては、特に総合大学へという希望、それから、教授・教官の定員を、四三%の現状のようでありますので、これを引き上げていただきたいということ。  それから、国費学生制度につきましても、復帰後も一定期間ぜひ暫定措置をとっていただきたい。そのことがさきの一定期間では五カ年というお話でございました。  第4の「学校給食」につきましては、復帰しますと給食費が高くなる心配がございます。これが高くなりませんように、リパック物資の継続を中心とする、とにかく復帰したために困った、こういったことになりませんように、特に沖繩における学校給食、ミルク給食、パン給食については、私が保健体育課長時代にこれを獲得いたしまして実現したいきさつもあるわけでありますが、特にこのことについて私は責任も感じておる次第でありますので、よろしくお願いいたします。  次に、5の「文化財の保護」につきましては、文化財保護委員会の独立性、復元補償、この問題につきまして強く要望いたしたい。  それから、厚生・労働の面での医療保険は、これは復帰すれば、いま沖繩は現金給付でありますが、現物給付に強い要望があるわけでありますが、このこと。  次に、厚生・労働の3項の「ハンセン氏病療養所」の問題の中で高校部設置、できれば単大まで御計画を要望いたしたいと、高校部の設置の問題であります。  次に、生活保護基準については、引き上げ対象を拡充していただきたい。沖繩は非常にボーダーラインの率が多い。このことを特に御要望申し上げます。  次に、雇用対策につきましては、われわれとして一番気にしておりますのは、若年労働者の本土流出防止、あるいは不良あっせんの防止、このことを非常に問題にいたしております。この点、御配慮願いたい。  次に、7項の「最低賃金」、これは本土並みに。  次に、六ぺ−ジ、「自然公園」につきましては、きのう社労委員会におきましても私強く訴えたのでありますが、ぜひ、沖繩に予定されております自然公園の中での国立公園、国定公園に指定してもらうよう強く要望いたします。  次に、通貨・金融に関する2項、「日本銀行」の問題に関連しては、これが沖繩に進出しますために、沖繩の市中銀行との関係において不利になりませんように御配慮願いたい。  次に、4項の「農林漁業中央金庫」の問題につきましては、資金量がきわめて貧困でありますので、資金量の不足を補って、低利融資をしていただくよう強く要望いたします。  それから、産業・経済の点では、特にキビ作、パイン作の米作切りかえの不安がございます。そうして、食復帰したら、食管制度による米価が一・五倍に上昇するという不安がございますので、これが上がりませんように要望いたします。  次に、八ページの「農地制度」の問題につきましては、農地法の適用に関連して不在地主の問題が問題となりますので、この点、御配慮願いたい。  次に、糖業につきましては、特恵措置の必要がどうしてもありますので、この期間の延長を御配慮願いたい。  次に、九ぺ−ジの5、「たばこ専売制度」の問題に関連して、七百人の不当解雇にならぬよう沖繩に関連支社を御検討願いたい。  6、「輸出入制度」に関連しまして、特に東京との流通機構を持ちたいという強い要望がございます。  次に、7の「観光税制」、これは保護関税暫定期間を長くしていただくように非常に強い要望を持っております。  次に、一一ページの9、「企業対策」、これは先般来問題になっております公害防止、特にこの執行権の問題、この公害防止に対して強い関心を——現地は現地で検討いたしますが、この問題を御配慮願いたい。  それから、一二ページの「交通・通信」の問題につきましては、第2項の「自動車損害賠償責任保険」の問題については、本土の制度をそのまま適用してもらいたい。  それから、郵政事業につきましては、外国扱いされているところに問題がありますので、これが復帰した時点で不利にならないように御配慮願いたい。  それから、一四ぺ−ジの六、「免許資格」の件、特に教員の免許資格については仮免許がまだございますので、復帰後どうしても暫定措置をとってもらわなければいけない。  それから、2の「社会教育主事」の身分につきましては、教育公務員法の身分保障を適用してもらいたい。  それから、3の「医師、歯科医師及び薬剤師」につきましては、無医地区の解消と、派遣制度を何としてもしばらく存続してもらう必要があると、こう思います。  それから、介輔及び歯科介輔の資格保障、これも不利にならないように御配慮を願っていると聞いておりますが、これもよろしくお願いいたします。  次に、一六ページの、公務員の身分につきましては、希望配置をぜひ考慮願いたい。  以上要望を申し上げまして、もし私の要望に対してはっきりした御見解がございましたらお聞かせ願いたいと思います。
  87. 山野幸吉

    政府委員(山野幸吉君) 非常に問題が全般に及んでおりますので、時間の関係等もございますので、文教関係は文部大臣がいらっしゃいまするし、文教関係につきましては文部省とよく御相談しまして、文部省のほうの御了承、あるいは御意見によってつくられたものでございますので、私からは触れるのを差し控えたいと思います。  ハンセン氏病につきまして、国立になった場合に、高校部とか、あるいは短大までも考慮していただきたいということでございますが、この点につきましては、現在の沖繩の二つの療養所の実態から見まして、まだそこまでは考えていないわけでございます。現在、高校生が本土のほうへ数名収容しておるわけでございますが、したがいまして、いまのところそういうことは考えておりません。将来の状況を見まして、また対処していかなきゃならぬと思うわけでございます。  それから、おおむね御指摘になった御趣旨は、私どもの考えているところとあまり大きく相違はございません。ただ、日本銀行が出るから、何か沖繩の市中銀行を圧迫するとか影響を及ぼすとかいうようなおそれはないかという御指摘でございますが、これはそういう地方銀行としての使命を果たす銀行でございますから、そういう御懸念はないと思うのであります。  たばこの問題につきましては、これは従業員七百人の失業問題とも関連するわけでございまして、現在、ただいままで大蔵省、専売公社等と、具体的な細目まではきまってない実情でございますが、私どもはこの七百人の労務者を今後どういうぐあいにしていくかということにつきましては慎重にひとつ配慮して、一挙に多数の失業者が出ないような方策を考究してまいりたいと考えておるわけでございます。  その他、公務員につきまして、いろいろ本人の希望を尊重してもらいたいという御意見でございますが、これはもう当然のことでございまして、本人の希望も十分聞いて、国家公務員になるべき者は国家公務員、沖繩県職員になる者は沖繩県職員になっていただくというぐあいに考えておるわけでございます。  それから、申し落としましたが、医療保険につきましては、現物給付の方向で、本土と同じように、同じ制度に、できるだけ早い機会に持っていきたいというぐあいに考えておるわけでございます。  非常にごく概略の御答弁で失礼だと思いますが、御指摘になりました点のほとんどは私どもの考えておる考え方とあまり相違はないようでございます。
  88. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それじゃ、文部大臣にお尋ねいたします。  七二年返還に向けて沖繩県民が最も望んでいることは、沖繩の完全復帰の実現によって、平和な豊かな沖繩県づくりをすることであることは申し上げるまでもありません。皆さんもそのように理解してくださっておると思います。ところで、そのためには押しつけの、そして天下り式の復帰ではなく、沖繩県民の民意、民論を最大に尊重する復帰でなくてはならないと思います。沖繩県民は、再び差別につながる琉球処分を最もおそれておるのであります。このような形での沖繩返還を最もおそれており、きらっておるのであります。  第六十四回国会における佐藤内閣総理大臣所信表明演説の中で、「政府は、去る三月に決定した沖繩復帰対策の基本方針に基づいて、諸般の準備を進めつつありますが、国会並びに各界各層の御協力を得て、復帰対策の万全と豊かな沖繩県づくりのため全力を尽くし、一九七二年祖国復帰という歴史的事業の完遂に遺憾のないようつとめたいと思います。」と述べておられます。  ところで、復帰対策要綱(第一次分)の教育行政制度につきまして、まず、その対策要綱の冒頭には、「これら施策の決定にあたっては、琉球政府および沖繩県民の意志を反映するため、できる限りの努力が払われたことはいうまでもない。」とうたわれております。また、昭和四十五年三月三十一日閣議決定されました「沖繩復帰対策の基本方針」の中においても、「基本方針に沿って沖繩復帰対策をすすめることとし、その推進に際しては琉球政府をはじめとする沖繩県民の民意を充分に尊重するものとする。」と、このようにうたわれておるのであります。しかるに、沖繩側と調整もすることなく、全く政府側の一方的ペースでこの教育委員制度が第一次分について決定されたことは、「沖繩復帰対策の基本方針」及び「沖繩復帰対策要綱」の精神からして、全く理解に苦しむものであります。われわれ県民は、戦後長期にわたり異民族支配の困難なもとで、多くの曲折を経ながらも布令を撤廃し、日本国民を教育するのに布令によってはまかりならぬ、この心意気に燃えて布令撤廃と民立法による教育基本法の制定を展開いたしましてかちとった教育委員の制度でございます。すでに長期にわたる沖繩の歩みの中で、紆余曲折を経ながらも定着した公選教育委員会制度は、教育関係者をはじめ県民になじみ深い民主的な制度となっておることはもちろん、果たしてきたその役割りもまことに大きいものがございます。したがいまして、県民の十分なる理解と協力の上で行なわれるのが民主的な当然の行き方だと思います。それを信じておったやさき、いきなりこの問題が取り上げられたとたんに、沖繩県民は大騒ぎしまして、琉球政府をはじめ沖繩県民は、すなわち責任ある中央教育委員会あるいは教育関係団体のPTA連合会、教育長協会、沖繩教職員会などなど、このショックに立ち上がって、屋良主席も最近この問題をひっさげて、各大臣にも、各政党にも、関係機関にも会っておられることは御存じと思いますが、このような非民主的な仕打ちに対してまことにうらはらな感じをいたすのであります。なぜそのようなことをしなければいけないのであるかということについての見解を承り、さらに、このことは何としても今後大きな沖繩の問題として尾を引く重大な問題でありますから、再度の御検討を強く要望したいと思うのでありますが、その意思があるのであるか、ないのであるか、その見解についてお伺いしたい、このように思います。
  89. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 沖繩の教職員をはじめとする方々が日本国民としての教育を確保するために払ってこられましたこれまでの御努力に対しましては、心から尊敬と敬意を表する次第でございます。また、感謝の気持ちを申し上げたいと思うのでございます。  しかしながら、いままでの異民族支配、異なった民族、すなわちアメリカ施政権下にあった教育行政というものが、今回沖繩が祖国に復帰する機会にその異民族支配を脱却しまして、そして日本国民としての教育制度に、国民の教育という立場から同じような制度のもとにやるということは、むしろ沖繩が本土に復帰する一番大事な点ではなかろうか、当然の事柄ではなかろうか、そう考えることがすなおなことではなかろうか、こういうふうに私どもは考えるわけでございます。沖繩だけが別の教育制度のもとに置かれるということは、私は、復帰した暁においては望ましいことではない。そして、やはり日本国民としての同じ水準の教育を受けるというふうに配慮するということが、むしろ祖国復帰の意義ではなかろうか。かように考えまして、今回の教育委員会制度につきましても、日本本土で行なわれておりまする任命制に切りかえるということが好ましいことである、望ましいことである。また、復帰後の沖繩のいわば教育条件の整備、充実という面から考えましても、そういう形において進まれたほうが効率がいいのではないか。そういうふうに私どもは考えたわけでございます。しかし、そういうふうに私どもが考えるからというて、アメリカ占領下にあって、しかも、主席がアメリカ側の任命のもとにおいて日本国民としての教育を守るということは非常にむずかしかったと思うのでございます。その中において、アメリカ政府としては、公選制ではなくて、任命制を一応委員の方にはしようとしたことも私も聞いておるわけでございますが、その間におきまして、冒頭に申し上げましたように、屋良主席をはじめ喜屋武さん等がみんなこぞって、日本国民としての教育を守るためにはむしろいまは公選制をとるほうがよろしいんだということでやってこられた。その功績を私は認めないわけじゃない。そのことそれ自体には、まことに意味のあることであったと思うのでございます。さりながら、今回本土に復帰する以上は本土と同じような制度のもとにおいて教育行政制度が日本国全体として統一的に行なわれることが望ましいということは、私はすなおな考え方ではなかろうかと思うのでございます。また、この点について皆さん方と十分な御相談をしなかったという御指摘でございますが、私自身といたしましてはやらなかったわけでございますが、しかし、北方対策委員会としてはかなりその点についてはやっていただいておるものと私は了承をいたしておるわけでございます。
  90. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私たちが復帰するということに対する基本的な考え方は、この制度が本土においても問題含みのいきさつがあったということは、文部大臣もよく御承知だと思います。われわれは、復帰するからにはすべて無条件に手放しで本土に右へならえするという、このような自主性、主体性を失った隷属的な考え方は決して持っておりません。異民族支配のもとで、われわれが日本国民の教育を守り育て、そして、踏まれてもけられても、日本国民ここにありという、こういう不退転の決意を新たにし堅持して守ってきた。より平和的なより民主的な制度内容は、復帰したといえども、むしろ誇りを持って、沖繩にならえ、こういう矜持を持って復帰すべき点があってもいいのではないかと、このように思っておる次第でございます。そういう観点に立ちますならば、この教育委員会制度が任命制と公選制がどちらがより民主的であるかということは、これは申し上げるまでもないはずであります。そういう意味におきまして、決してわれわれは、復帰するからにはすべて一本化、右へならえ——基本的にはそれはよく了承できます。しかしながら、必ずしも、一本化しなかったから、すぐ右にならえしなかったから、沖繩の教育が混乱、混迷するとは毛頭思いません。そのような問題含みのあるものは、時をかし、移行するにいたしましても、納得のいく立場をとるのがより民主的な態度であり、進め方であると、こう理解いたすわけであります。その意味におきまして、とられた態度が非民主的なこのことに対しても理解に苦しむものであり、さらに、無条件に従うというこのことこそ教育の主体性、自主性を失う立場であるわけでありまして、任命制か公選制かということは、教育の本質からすればいずれがいいかということははっきりしたことであると思うのであります。そのことに対する文相の御見解を承りたいと思います。
  91. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) おことばを返すようでございますけれども、喜屋武さんは、任命制がいいのか公選制がいいのかは自明のことであるとおっしゃいましたけれども、それが実は自明のことではないわけでございます。しかも、日本本土におきましては、一たん公選制をやりまして経験をいたしまして、そして、その間いろいろな弊害等が出てまいりまして、国民大多数の意思によりまして、この議会制民主主義下における国会の手続を経まして、現在任命制に切りかわっておるわけでございます。これはお認めいただかなければならないことだと思うのでございまして、これこそ、いま日本国において行なわれておるのがむしろ任命制である。しかも、何か公選制だけが民主的であって任命制は民主的制度ではないかのごとき御議論でございますけれども、これも私は直ちに了承はできないのでございまして、たとえば、現在行なっております教育委員会制度は、いわゆる公選制による知事のもとにおける任命制であり、しかも、公選によって選ばれた議会の承認を受けたものによって構成をされておる。こういうことでございまして、民主的という意味においては、いずれも民主的な方法である。ただ、一体日本の教育行政としてどちらがベターであるかという問題はいろいろ議論の存するところであろうかと思いますけれども、非常に財政力の乏しい市町村等におきまして、公選制によるいわゆる教育委員がその教育権等を主張し、そしてまた一方、同町村内における地域住民の投票によりまする市町村長が長になります。そういう場合に、この市町村における教育行政がどうなるか。いろいろな弊害が起こっておったことはわれわれも経験したところでございまして、そういういろいろのことが問題にされて、現在は任命制に切りかわっておるわけでございます。しかも、この制度そのものはどこから来たか。アメリカのある州の一部に行なわれた制度を持ってきておるわけであって、すでにアメリカにおきましても、こういうような制度を、全体として非常にいい制度であるというふうにはとっておらない。そういうようなことから考えますと、私は、やはりすなおな行き方として、日本で行なわれておるこの制度を、復帰の暁において、やっていただくということが望ましいことであって、このことだけは、アメリカの施政下にあったと同じような制度に残すというそれだけのメリットがあろうとは、どうしても考えられないのでございます。そういうわけでお答えを申し上げたいと思います。
  92. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 時間のようでございますが、私が「自明の理」と申し上げましたのは、本土における任命制に至るいきさつの上に立って、関連して申し上げたわけでございます。  そこで、このように沖繩におきましてはそのよさが定着してきておりますし、世論もそのような受けとめ方をしておる中で、もしこれが有無を言わさず、右へならえと、このような形で押し切られた場合には、非常に今後問題をはらむ。こういう危険が一ぱいあるわけであります。ということを重ねて申し上げましてこの問題を終わりたいと思います。
  93. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) この制度の切りかえにあたりまして、またわれわれの考えておりますことが十分御納得がいかない面もあったかと思います。その点につきましては、今後十分ひとつ北方対策委員会を通じ御説明を申し上げ、御相談を申し上げたい。特に、制度が変わるにつきましても、その必要な経過措置というものは、これまた皆さま方と十分御相談を申し上げなければならない課題ではなかろうかというふうに考えておりますので、そういうような皆さま方の御意見等を十分尊重しつつ移行に対して万全の措置を講じたいと、かように考えておる次第でございます。
  94. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 先ほど、時間がないと思いまして、長官に対する御質問をやめたわけでございますが、あと一点だけお尋ねいたしたいと思います。それは、南北文化センターを沖繩につくったらどうかという提案でございます。  わが国の経済成長に伴い、東南ア諸国の平和と繁栄を促進するための責務と能力がきわめて大きくなりつつありますが、これら諸国との協力を一そう効果あらしめるために、今後は、温帯と熱帯の中間にある亜熱帯の沖繩をわが国と東南ア交流の接点となし、ここに南北文化センターを設け、アメリカ・ハワイの東西文化センターに匹敵する施設を置くべきだと存ずるのでございます。  一例をあげますと、熱帯植物あるいは日本の植物を一時沖繩で栽培の上これを東南アなり日本に移しますと栽培効果が高まりますが、人間についても一同様でございますからして、日本人並びに東南ア諸国民を沖繩においてその心身を馴致し、かつ、その間準備研修をすることは、経済協力を一そう効果あらしめるものではないかと思います。  こうした馴致、研修とともに、熱帯文化、熱帯医学、熱帯動植物の研究に当たり、琉球大学とともに協力いたしまして広く資料を収集し、南北問題の解決に当たることがぜひ必要だと考える次第でございます。つきましては、硫球大学が移転することとなっておりますから、その土地と建物を南北文化センターに充当いたしまして、政府においてもこれが援助をなすように希望いたす次第でございます。  御意見をお伺いできますれば幸いだと存じます。
  95. 山野幸吉

    政府委員(山野幸吉君) 琉球大学に南北文化センターをつくってもらいたいという御要望はここ一、二年ございましたし、その内容は、ただいま御指摘ございましたような構想に基づいておるわけでございます。  琉球大学が本土へ返りましたときに、国立大学に移管されまして、そうしてこの国立大学をどういうぐあいに整備していくかということを私どもは当面の問題といたしておりますが、将来、沖繩の国立大学になった琉球大学の方向としましては、いま御指摘になりましたような南北文化センターでございますか、いまいろいろ御説明になりましたような機能を持たして、何か沖繩の国立大学としての特殊性を持たしていくということは、政府としても今後真剣に検討していかなければならない課題だと思っております。ただ、当面は、実は七二年に復帰が迫っています現段階におきましては、まず、琉球大学の国立移管に伴ってどのように琉球大学を整備していくかということが一つあります。そうしてそれに関連して、現在保健学部がございます。この保健学部をどのように育てていくか。そうしてまた、国立移管後の琉球大学の附属病院としての新那覇病院をどのように整備するかということに私どもはまず主力を注いで、そのためには教授等を相当大幅にふやしていかなければいけません。施設設置基準もうんと高めていかなければいけません。そこへ目下焦点を合わしています。将来、これに続きまして考えていますのは、医学部の設置——委員会でも御質問ございましたが、医学部の設置問題をどうするかという問題に取り組んでいきたい。それと、それに続いて、あるいはまたそれに合わして考えるべきものが、いま御指摘になりましたような東西文化センター的な、琉球大学をほんとうに沖繩の特殊性、地理的特殊性を考えたそういう特殊な大学として育てていく、そういう問題に取り組みたい。方向としては、政府はまさにそういう方向について十分ひとつ真剣に検討すべきものと考えておるわけでございます。
  96. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 私が提案いたしましたのは、ちょうど琉球政府の建物もあくのでございますので、これを活用することによって、南北文化の接点としての位置というものを十分に生かし、また東南アジア、日本のためにもなると考えて提案いたしたのでございます。で、ただいま長官のお話をお伺いいたしましても、その方面に沿うてお考えになっていたということになっておりますので、ぜひ今後積極的にこの問題を推進していただきたいと存じます。
  97. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 これはむしろ要望になるかもしれませんけれども、山中長官が今日まで当委員会を通じてしばしば言明されておりました中に、復帰にあたって、あらゆる分野にわたる問題を通しましてショックを起こさないと。いわゆる復帰ショックを起こさない、これが大前提である。これは、ここにおられる委員各位も全部了承しているはずであります。いま文部大臣とのやりとりを聞いておりますと、たいへん問題はやはりあるように私たちは強烈な印象を受けるわけであります。また、この「復帰要綱」を策定するその段階におきましても、特に教育委員制度の任命制あるいは公選制という問題をめぐって、非常にまだ結論が出ないとも伝えられております。いずれにしても、この七二年までという時間的な問題は刻々と過ぎてもまいりますし、まごまごしておりますと復帰後にこうした問題が持ち込まれないとも限らない。そこで、そうした沖繩県民の間にそういう議論あるいはショックという問題が喜屋武委員を通していま述べられたわけであります。どこに一体政府として説得できなかった問題があったのか、原因があったのか。いま文部大臣答弁の中にも筋論として述べられたことはわれわれ一応了解いたしますけれども沖繩県の人にとってみれば、あまりにも突然のことでそれは理解に苦しむ。これはむしろ当然過ぎるほど当然の問題ではないだろうかというようなことがありますので、対策庁はもとより総理府においても、積極的にそういう問題の解消に取り組むと同時に、絶対にショックを起こさないということをしばしは言明しておられるわけでございますので、そういうことが今後においてもあとあと尾を引くような不愉快、あるいはまた、復帰後においても、とんでもないことになったという県民の間におけるそういう不満感というものを絶対に与えないように、十分その点はこれからも慎重にまた真剣に取り組んでいただきたいと思います。  それで、そうした問題が起きないためにも、説得力がなかったと私は申し上げたのでございますけれども、どういう場所を通じて、どういう人に対して、いつ、どういう形で行なうか、いろいろな問題があるだろうと思うのです。この問題のみに限らず。いまここで答弁を求めようとはいたしません。次の機会に、いま申し上げたようなことをまた詰めて整理をし、申し上げてみたいと思いますけれども、要望として山中長官にもお伝えいただきたいし、対策庁としても当然そういうことが起きないように十分配慮をいただきたい。長官、そのことに対してどうですか。
  98. 山野幸吉

    政府委員(山野幸吉君) 今度の「復帰対策要綱」の一次分につきまして、そのほとんどにつきましては沖繩側の了承を得たと思いますが、ただいま坂田文部大臣からもお話がございましたように、沖繩の本土復帰の真義といいますか——というものからして、やはり国家の基本的な制度、それから県とか市町村の組織、基本的な組織に関する問題というような問題、それから沖繩県百万の同胞の日本人としての法的地位というような問題これは全く本土の日本の制度あるいは日本人としての地位と一体化するということにまあ祖国復帰の真義があろうかと思うわけでございます。もちろん、経済問題とか住民生活の問題とかにつきましては、できるだけの暫定措置、特例措置を講じまして、そうして混乱のないようにしなければいけないことは申し上げるまでもございませんが、そういう基本的な祖国復帰ということの持つ意味に照らして、そういう基本的な制度についていろいろ変化がある場合には、なかなか二十五年違った施政権下におられましたのですから、いろいろ問題があろうかと思います。そのようなことにつきまして、政府としましては、いま御指摘ございましたように、琉球政府なり沖繩の住民の方々に十分に御説明し、御納得をいただくようにつとめなければなりませんし、私どもも今後全力をあげて御了解をいただいて、円満に復帰ができるように配慮したいと思います。今後の要綱策定等につきましても、ひとつ、「基本方針」にもありますような、そういう沖繩側の御納得をいただくように全力をあげてまいりたいと思うわけでございます。
  99. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまの御答弁でちょっと気になることがあるのですね。それは、基本的な問題については本土とできるだけ早くやりたいと、これは当然だと思う。わかるのです。それは。けれども、やはり中身によっては段階的にということをしょっちゅう山中長官も言っておられるわけです。それが基本的な問題であってもショックを起こさない——いまの答弁の中にもあったように、混乱を起こさないということが大前提にならなければならないと思いますので、その辺は弾力的に御配慮をいただきたい。そして、いまも申されましたように、事前に——復帰前において十分な説得力を持って当たっていただきたい、こういうふうに申し上げておるわけでありますから、誤解のないようにお願いいたします。
  100. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 速記をちょっととめてください。   〔速記中止〕
  101. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 速記をつけてください。  この際、各派の御賛成を得まして、私から  沖繩毒ガス撤去に関する決議案を提案をいたしたいと存じます。  最初に案文を朗読いたします。   沖繩毒ガス撤去に関する決議(案)   去る十二月四日、米国国防省は、沖繩にある毒ガスの撤去計画を発表したが、それによれば、近く開始される第一回目の積出しはマスタード・ガス百五十トンに限られ、残余の撤去は、一九七一年末か七二年早期に予定されているジョンストン島の貯蔵施設の完成後となることが明らかとなった。   これは、従来米国政府が言明してきたところと必ずしも一致せず、沖繩県民に大きな不安と動揺を与えている。   よって政府は、沖繩にあるすべての毒ガス兵器の一日もすみやかな撤去と、搬出に当たっての安全の確保を、再度米国政府に強く要請すべきである。   右決議する。  以上でございます。  本決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  102. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 全会一致と認めます。よって、本決議案は、全会一致をもって本委員会決議とすることに決定いたしました。(拍手)  ただいま御決定をいただきました決議に対し、愛知外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。  愛知外務大臣
  103. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ただいま本委員会におかれまして、「沖繩毒ガス撤去に関する決議」が御決議に相なりました。政府といたしましては、この御決議に対しまして、米国政府に強く要請をいたし、この早期、安全な撤去について努力を新たにいたしたいと存じます。
  104. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 本調査に関する質疑は、本日はこの程度にとどめます。     —————————————
  105. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) それでは、これより請願の審査を行ないます。  第五三八号沖繩即時無条件全面返還に関する  請願を議題といたします。  まず、専門員より請願の趣旨につきまして説明をいたさせます。
  106. 小倉満

    ○専門員(小倉満君) 御説明申し上げます。  請願は、沖繩即時無条件全面返還に関する請願というのが一件ございます。  趣旨は、昨年十一月の日米共同声明は、沖繩施政権返還を口実にしながら、沖繩を含む日本全土からのベトナム、朝鮮中国へのアメリカ軍の自由出撃を認めるなど、一そう侵略的な軍事同盟に日本を組み入れたもので、日本の平和と安全を守り、真の独立した中立日本を実現するために、沖繩県の即時無条件全面返還を国会がすみやかに議決し、直ちに必要な措置をとるよう要求する。  以上のような趣旨でございます。
  107. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 速記、ちょっと中止して。   〔速記中止〕
  108. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 速記開始。  それでは、五三八号沖繩即時無条件全面返還に関する請願は、保留とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  109. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  110. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 次に、継続調査要求に関する件についておはかりいたします。  沖繩及び北方問題に関しての対策樹立に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  111. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成及び提出の時期につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  112. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三分散会      —————・—————