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1970-12-23 第64回国会 参議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十二月二十三日(水曜日)    午前十一時二十二分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         塚田十一郎君     理 事                 山本茂一郎君                 渋谷 邦彦君                 松下 正寿君     委 員                 稲嶺 一郎君                 河口 陽一君                 大松 博文君                 増田  盛君                 達田 龍彦君                 三木 忠雄君                 春日 正一君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        国 務 大 臣  山中 貞則君    事務局側        常任委員会専門        員        小倉  満君    説明員        外務省アメリカ        局北米第一課長  千葉 一夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○沖繩及び北方問題に関しての対策樹立に関する  調査  (当面の沖繩問題に関する件)  (沖繩における裁判権移管に関する決議案)     —————————————
  2. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) ただいまから沖繩及び北方問題に関する特別委員会を開会いたします。  沖繩及び北方問題に関しての対策樹立に関する調査議題といたします。  これより質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  3. 達田龍彦

    達田龍彦君 私は、去る二十日に沖繩コザ市で起こりましたコザ事件について、政府対策並びに方針について若干質問を行ないたいのであります。  非常に限られた時間でございますから、きわめて端的に私は質問を申し上げたいと思うのです。特に本事件の性格上、外務大臣出席要求し、その中で解明していくべき内容が多いのでありますけれども外務大臣出席がどうしても得られないという事情でございますので、総務長官にいろいろ質問を申し上げ、政府を代表する立場でひとつ十分なる御回答をいただきたいと思います。  そこで、まず私が御質問を申し上げたいのは、今回の事件発生をいたしたのでありますが、この発生をした事件原因及び背景を、どう政府はまず認識をされておるのか、この点についてまず政府の御回答を求めたいのであります。
  4. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 背景と申しますか、原因といいますか、やはり敗戦以来、本土と切り離されて、二十五年間の事実上の軍政下に置かれた沖繩県民方々の、うっせきしたものがまず第一であろうと思います。  さらに、直接の引き金と申しますか、それは糸満の御婦人の交通事故による犯罪事件が、当人は死亡されたわけでありますが、軍事法廷において、県民によく理解されない形において無罪の判決が行なわれた。したがって、どのように共助協定その他によって琉警側との間の捜査の提携、範囲拡大が行なわれても、一ぺん米軍のほうに引き取られていってしまったら、これはどうにも手一の打ちようがないのだ。しかも、祖国復帰がきまって、もうあとわずか残された期間となっておるのにかかわらず、その期間、なおわれわれがしんぼうさせられるのかという強い不満が私は爆発したというふうに考えておる次第でございます。
  5. 達田龍彦

    達田龍彦君 私は、いま総務長官がおっしゃられているようなことも原因であり背景であると思います。しかし、なおかつ、沖繩県民の今日まで二十五年にわたる異民族支配に対する多くの不満や憤り、こういうものが、いま言われた以外にも根本的にたくさんあるんではないか。私は指摘をしたいのでありますけれども、時間の関係がありますから省略をいたしますけれども、そこで、さらにお尋ねをしておきたいことは、この事件が起こった当時の政府のまずとった措置ですね。どういう措置をとられ、今後どういう対策を進められようとしておるのか、お尋ねしておきたいと思います。   〔委員長退席理事山本茂一郎着席
  6. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) たまたま日曜でございましたので、政府が組織立って行動いたしておりませんが、しかし、総理大臣から愛知外務大臣への指示、並びに私と外務大臣との相談、そういうものによりまして、現地の私ども出先機関であります沖繩事務局並び外務省出先、それぞれの出先を通じて、まず実情の把握につとめ、それがなかなかその真相が伝わってくるのがおそうございまして、その実情判明を受けて、外務大臣外交ルートによって緊急に米側連絡をして、これ以上の不祥事態が広がらないよう要請するとともに、たまたま偶然でございますが、その翌日に日米安保協議委員会予定されておりましたため、その協議委員会議題外緊急事項としてそれを外務大臣が取り上げられて議論され、さらにこれは非公式ではありますけれどもマイヤー大使外務大臣との間でさらに二人だけの非公式の突っ込んだ話し合いが持たれた。さらに昨日もその会合が公的に持たれたという一応の筋道でございます。
  7. 達田龍彦

    達田龍彦君 そこで、今後の対策について私からお尋ねしたいのは、それは当面そういう措置をとられたと思うのでありますけれども、今後、この事件に対する政府の長期、短期の対策をどうお考えになっているか、どうとられようとしているのか、お尋ねをしておきたいと思うのであります。
  8. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) まず、施政権者であります米側のほうがこの事件について、突発的なものではないのだ、あるいは、突発的な暴徒の集団の行なった行動ではないのだ、いわゆる長年の間に、自然々々のガス漏れ部屋に充満して、何らかの機会、何らかの、たとえば電気冷蔵庫スイッチの火花みたいなものでも点火することがあるのを私たち社会面記事等でよく見るわけでありますが、このマッチ一本で部屋中が爆発するような状態がかもし出されてきたことについて、やはり沖繩県民の置かれた立場というものに対して、支配者気持ちを持って臨みがちな施政権者に、もう一ぺん自分たち沖繩県民の心をくんだ施政権行政をやっているかどうかという点を反省してもらいたい。  さらに具体的には、裁判管轄権を、今日までの折衝では、強固な姿勢を持って、施政権のいわゆる具体的な行使としての形で交渉になかなか応じなかったものについて、外務大臣の御努力によってその話し合いの糸口がつかめつつある。したがって、これをなるべく見通しを早くつけて、沖繩県民方々が、不幸にしてそういう事件が起こったときでも、公正にして納得できる処置ができる、その処理が行なわれることについて安心していただくというようなことに全力を傾けたいと思います。
  9. 達田龍彦

    達田龍彦君 いま若干本質的な問題にお触れになったのでありますが、裁判管轄権の問題、それから捜査権の問題、これの移管の問題について、政府はいままでアメリカ側の強い壁のために交渉にのせられなかったという状態にあったという説明でありますが、要求をしていくという基本的な姿勢をおきめになったのかどうかですね。この二つの移管の問題について、正式に、しかも基本的な姿勢として今後復帰実現までの間に具体的に日米協議委員会の中で話を進めるという姿勢をおきめになったのか、また、アメリカはそれに対してどういう答えを出しているのかお聞きしておきたいと思います。
  10. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは、捜査権の問題はすでに具体的に十一月に決着を一応見ましたように、これは接触もしなかったわけでもないし、あるいは、はね返されたわけでもありませんので、その問題については、表向きは琉球警察と米の公安当局憲兵隊との間に妥結になっておりますけれども、これの陰において、本土政府のほうで、琉球政府捜査権というものを、もう少し住民側に立った範囲拡大主体性の確立に持ち込んでほしい。したがって、今回の事件でも、その共助協定どおり、当初、加害者と思われる米兵も、また被害者の人も、ともにコザ署に連行して、必要な調書その他を作成し、これでだいじょうぶだということでそれを警察署から出しているということにおいては、いわゆる共助協定の新しい第一歩の運用がそのまま正確に行なわれているものと考えます。したがって、今後も裁判捜査権を完全に移せという御意向であると思うのですが、しかし、捜査権をどこまで移した場合において可能な範囲であるか、すなわち、捜査権の一定の限度までいきますと、それは裁判権を伴なわなければ踏み込めない範囲なのであります。したがって、裁判権そのものがやはり伴なわなければ、幾ら捜査してもやはり身柄は向こう側裁判所に渡さなければならぬということの限界が、接触点が生じてくるわけであります。そこで、今後も警察捜査権というものを琉球政府主体性において運用できるように、琉警の主体性あるいは独自性というものを確保していくための努力をさらに続けますが、今日まで私たち裁判管轄権を全くタブーとして触れなかったのではありません。機会あるごとに、あるいは会合を持つごとに、われわれとしては、もう復帰もきまったことであるし、したがって、これらの問題についても検討しようということを申し入れておりますが、米側がそれに対して反応を示すということがなかなかなかった。それが今回反応を示し始めているように愛知外務大臣から私はお話を承っている。少し前進を始めた感じがするということを申し上げたつもりであります。
  11. 達田龍彦

    達田龍彦君 この裁判権移管の問題について、私は、理論的に施政権の一部でありますから、これを日本へのいわゆる復帰前に民政府移管をするということは、私は理論的に正しいのではないかと思う。要は、日本政府ほんとうに腹をきめてアメリカ側と話をするかどうかに私はかかっていると思っている。で、今回の事件の中でも日本政府態度が出てまいっておりますけれども復帰までは何とかしてアメリカ刺激を与えないようにしていこうというのがどうも政府姿勢のようであります。また、アメリカ側アメリカ側で、施政権返還が七二年度にきまっている、あと沖繩基地機能さえ維持をしていけばいいのだという姿勢だ。そこに私は、一つ真空状態といいますか、谷間があると思うのであります。その谷間の中に、今回の事件発生した一つ原因といいますか、要因も私は存在をしていると見ている。だから、今回、先日の新聞によりましても、佐藤総理は、返還に対してこの事件悪影響を及ぼさなければいいがということだけであって、沖繩県民ほんとう気持ちを知ろうとしない、理解しようとしないところの総理認識それ自体にも、そういうことが先行していることを、いみじくも今回の事件の直後における首相の発言の中にもはっきり私は出ていると思うのであります。そういう意味で、「刺激をしない」ということだけが先行をして、正当な要求政府ほんとうに腹を据えてしないところに、裁判権移管の問題が実現をしない大きな原因があると私は見ているのでありますけれども、いま説明をされたように、そういう気持ちが若干動いてきている、こういうことでありますけれども、私は、もう一歩進めて、日米協議委員会の中で、どうしても今後沖繩に再びこういう事件が起こらないためには、まず裁判権移管ということを実現すべきであるという認識に立って強く交渉すべきであると思いますが、どうですか。
  12. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 前段の御批判は御自由でございます。しかし、総理大臣はそのことばあとにも、自分自身でも沖繩県民の苦しい気持ちをまだなお理解していないのかもしれない、という反省のことばも述べておられるようでありますが、その後の二回の閣議で発言をされて、このようなことが二度と起こらないよう、沖繩県民立場をよく考えて、外務大臣折衝はもちろんだが、総務長官球琉政府と緊密な連絡をとるようということも言っておられますから、私は、私の感じている姿勢としては、復帰がそれによっておくれるものでもありませんし、そのことは確定された事実でありますから、総理がそのことを心配をして、沖繩県民の方はがまんせいと言っておるとは思いませんし、また、祖国総理としてそのような態度がとれるものではないと考えております。これは御批判に対する私の考えでございますから、そちらのほうも率直に受け取っていただけなければしかたございませんが、しかし、誠心誠意、私は二度とこのような事件の起こらないようにできるだけ努力をしなければならぬという責務をひしひしと感じておるわけであります。したがいまして、裁判権完全移管ということが復帰前に実現できるかどうかは別といたしまして、少なくとも現在のような裁判管轄権行使のあり方というものについては沖繩県民は絶対に納得していない、したがって、祖国もこれは納得してはならないのだという立場折衝を続けていってもらうつもりでありますし、私も、外交権がありませんけれども、私の行動範囲内においてそのような方向をとって進むつもりでおります。
  13. 達田龍彦

    達田龍彦君 ひとつこの裁判権移管の問題については誠心誠意政府は当たってもらいたいということを強く要望しておきたいと思うのです。  さらに私は、今後沖繩で再びこういう事件が起こらないという保証は現在のところではないと私は判断いたしております。特に沖繩県民のいままでの軍政下に対する積年の不満あるいは要求をどういうふうに解決していくかということが根本的に解決されなければ、今後再びこういう事件が起こらないということは保証できないと私は考えております。その具体的な一つのあらわれとして、今回の事件に対してランパート高等弁務官毒ガス撤去をめぐる発言をしておるのであります。私はこれはきわめて重大な問題であると思うのであります。出先高等弁務官が、大きな、しかも高い政治的な問題に対してこういう発言をするということは、きわめて私は不適当であると考えております。しかも、事件の性質を考えてみても、こういう発言をすることは事件をおさめることにはならない。逆に事件を扇動し、さらに事件拡大させることには役立っても、これを鎮静化するという方向にはこの発言は私はならないだろうと思います。そういう意味で、私はこの高等弁務官発言に対して政府はどう受け取っておるかということをまずお聞きをしておきたいのでありますけれども、どういうふうにこの発言に対して判断をされておりますか、お尋をしておきたいと思うのであります。   〔理事山本茂一郎退席委員長着席
  14. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これはまだその発言の具体的な表現のしかた等が正確に伝わらないときに、ワシントン筋においても、出先弁務官がそのような基本的な政策の決定されたものについてこれを左右するような言辞を弄することは軽率であるような感触報道等もなされておりますし、事実、そのような感触があったようでありますし、ランパート高等弁務官発言全部を読んでみますと、毒ガスの百五十トンの移送についてはすでに決定しており、近々それに着手できる段階にあるが、このような騒擾状態——向こう側考え方からしますと、いわゆる輸送途中で毒ガスそのもの、非常に危険なものに対して輸送が危機におちいるというような事態の場合においては、米側感触からすれば、県民の人はもちろんのこと、自分たち自身にもいわゆる生命の危険というものが起こり得る状態がある。そのような場合においては輸送の開始という作業の着手が困難になるであろうと暗に言っておるように思うわけでございます。もっとも、事件が起こった直後のことばでございますから、そのことばどおり感触県民に受け取られたかどうか、私は多分に疑問な点があると思います。が、われわれとしては、そのようなことによって、少なくとも百五十トンの撤去そのものに満足しておるわけではないのでありますから、一万三千トン全部を、すみやかにジョンストン島の受け入れ施設を完成して早く持っていってくれ、沖繩には不要のものである。沖繩人人間ではなくて、アメリカ人だけが人間かという現地県民人たちの憤りの底流というものも、ある意味では、長年の沖繩不満の中に具体的に堆積したものの中に数えることができる重要な要素の一つ考えておりますから、このような問題について、発言全部を文書で読んでみますと、そういうこともありませんけれども、もっともな心配であるという点もあります。もし輸送の際に襲われたらという感触発言のようでありますから、そういう発言もあるいは出たかもしれぬと思いますが、少なくとも、コザ事件のようなことが、すでに決定された毒ガス輸送の時期がそれによって左右される、あるいは毒ガス撤去そのもの悪影響を与えるというふうに受け取られるような発言であるということに受け取られたことはたいへん遺憾に思います。
  15. 達田龍彦

    達田龍彦君 いまの説明では私はどうも要領を得ないのでありますが、端的に言って、この発言は、あの時期で、ああいう状況の中で発言されたということは一体適当と思いますか、どうですか、お答えいただきたいと思います。
  16. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 人の発言に対して、しかも、外国の人の発言に対して、その時期とか、適当であるとかどうかということを私が言うべき立場にあるかどうかわかりません。感触からいえば、コザ事件が起こったあくる日に二千八百名にものぼる解雇の予定発表するというようなことの感触等も、どうですか。私どもも事前に知らされておりませんでした。そのようなことは、このような事件が起こったときには当然の配慮があってしかるべきじゃないかということを、直前になって、日米協議委員会と申しますか、夕方のランパート高等弁務官発表があるらしいということを知って、外務省とも連絡をしたのでありますが、いかんとも、これは既定の計画の発表なので、コザ事件とはこれは全く関係がないことだという考えのようでございます。これなどもたちとしてはちょっとどうかと思われますけれども、しかし、それを私が批判をしてみても覆水が盆に戻るわけでもないし、その発言をとめる権限も私にはないと思っております。
  17. 達田龍彦

    達田龍彦君 私は非常に総務長官回答としては残念だと思うわけであります。私はこれはきわめて不適当な発言であると思うのです。直ちにこの発言を取り消すよう政府要求すべきであると私は考える。これは、当時の事情から判断をしてまいりますと、きわめて感情的だし、しかも権力的だし、権力をかさに着た高圧的な統治者意識に根ざした私は発言であると判断をいたすものであります。しかも、こういう発言がある限り、沖繩県民気持ちを理解しようという気持ちは全然ないのでありますから、再びこういう問題が起こらないということは私は考えられない。そういう意味でも、こういう問題を起こさないためにも、この発言は、私は、政府ほんとうに腹を据えてこれを撤回するように申し入れることが非常に重要なポイントではないか、こう思うのであります。そういう意味で、いまあなたは、外国の高官の発言だからこれを批判をする、あるいは説明することは不適当だというお話でありますけれども、私はこれはきわめて重大な問題であると考えますので、政府においては、この問題に対して、事件の解決のために、また沖繩の問題を完全に処理するためにも、ぜひこの発言に対しては、慎重に検討された結果、これを撤回するように要求をしてもらいたいということを強く要請をしたいと思うのであります。  さらに、昨日の新聞でございますけれども、今回の沖繩コザ事件に対してアメリカ政府筋発表したところによりますと、七二年の七月を目標返還協定をつくり返還をしたいということを明らかにしたようだということを伝えておるのでありますが、これは、正式にアメリカ政府から日本政府通告がすでにあったものかどうかですね。ないとすれば、これは、どういうふうに政府はこのアメリカ筋報道に対して受け取っておるのか。わかっておればお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  18. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 正式な通告ではないと思っておりますし、また逆に言うと、復帰の時期というものを米側が初めて触れたと、公式、非公式にも初めて触れたという点においては大きな意義があると思います。しかし私たちは、日本側会計年度でいえば三月の三十一日、すなわち四月一日に復帰を願っております。しかしながら、現在は、琉球政府会計年度米会計年度と同じ会計年度でありますから、六月三十日ということが一つ区切りであることも私たちもわかっております。でありますので、来年の予算要求については、復帰の年でありますが、九カ月分の予算要求して、そうして九カ月分の予算を組むことによって四月一日返還を期するほうが是か、あるいは一年分の予算を組んで、三カ月予定がおくれても会計年度切りかえのときには復帰しているような予算措置を講ずべきかについて、八月の時点においても相当議論をいたしましたけれども、しかし、三カ月予算が足らない事態が起こった場合にはたいへんであるということで、一九七二年のなるべく早い機会区切りがいいとすれば四月一日からということを希望して、今後はそういう方向努力いたしますが、しかし、予算としては、不測の事態が起こらないように、来年は一年間の全部の、すなわち米会計年度琉球政府会計年度に合わせられるような予算をいま作成をしておるところでございまして、今後、私たちとしましては、非公式、公式にかかわらず一なるべく早く返してもらいたいということの要望については変わりありませんが、米側が、米会計年度である琉球政府会計年度スイッチ時点において米側要求、希望を持ってくることは、ある意味ではあり得ることだと考えております。
  19. 達田龍彦

    達田龍彦君 そうしますと、七二年の七月を目標返還協定を結ぶということは、これは政府としては、いつの時期にどういう場で確認しようというお考えですか。
  20. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) それは外務大臣の行なわれます返還協定交渉というもので進められていくわけでございますが、最終的には返還協定ということになると思います。
  21. 達田龍彦

    達田龍彦君 予定の時間が来まして、まだいろいろ質問をしたいのでありまするけれども、時間が来ましたのでこれで終わりたいと思いますが、最後に私は申し上げておきたいことは、一番問題なのは、アメリカ側は七二年の返還ということで、施政権の問題についてはあと基地機能を維持するということを重点的に考えればいいという方向で、重点をそこに置いていろいろ今後施策を行なってくるであろうと思います。現実にそういうものが行なわれてまいっております。先ほど私が触れましたように、日本政府は、七二年までは、悪いことは出さないで、できるだけ控えて、刺激をしないようにして、何とか七二年の返還というものを確定をしたい、こういう気持ちが動いておるのであります。したがって、沖繩県民要求も押えながら、アメリカの都合の悪いこと、あるいはアメリカ政府のきげんをそこなうようなことにはできるだけ触れないで、七二年の返還まで持っていこうという姿勢が出てまいっております。そのことに対する県民不満というものが、今回の事件に私は大きく作用をしておると見ております。ですから、その間における沖繩の内政あるいは県民の生活というものは、ある意味では真空状態の中に置かれておるし、また、谷間の中に追い込まれておるという状態が出てくる。私は、施政権返還実現するまでの間にそういうものを詰めていかなければならないのがいま日本政府の任務であるし立場でなければならぬと思う。それを佐藤総理が、先ほどから私が指摘しておりますように、刺激をしないように、きげんをそこねないようにという配慮だけが先行するために、沖繩県民はそこに大きな不満と苦しみを味わっていると私は見ておる。したがって、私は、総務長官だけではありませんが、日本政府姿勢として、それを詰めながら七二年七月の予定をされている返還について、完全に沖繩県民要望不満を吸収しながら問題の解決をはかっていくような姿をとるべきであると考える。そういう努力政府は私はしなければならぬと思うんです。そういうことを完全にやらない限り、今回の事件みたいなことはまた起こってくるんではないかと私は思うんであります。でありますから、そういう点についてひとつ総務長官考え方をただして私の質問を終わりたいと思うんでありますが、どう思いますか。
  22. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私は沖繩担当大臣に就任いたしましてまっ先に米側に申しましたことは、基地機能というものは周辺住民の理解と協力なしには維持することは不可能であり、それと切り離された基地というものは、いかに巨大であってもナンセンスである、ということであります。さらに、残された二年間ぐらいのわずかな期間を日米友好に亀裂を生ぜしめる二年間にいくのか、それとも、日米友好の基礎にゆるぎを生じさせないという配慮を持って残りの二年間を施政権を活用していくのかという基本的な姿勢を問いました。米側は、もちろんそれは自分たち沖繩において残りの二年間に日米友好の立場に亀裂を生ずるようなことに絶対になってはならないと思うことは当然であるということで、目的について意見が一致したならば、あとはそれに対するお互いのアプローチのしかたである、復帰へのアプローチの方法論であるということで、私は最初会談を切り出しておりますが、そのような姿勢で私たちとしては進んでおりますし、沖繩住民の人たちの間にトラブルが起こらないようこれは願っておりますけれども米側刺激しないようという配慮一方で政府がいっているとお考えになることは、それは党の立場でそう主張されるのでありましょうけれども、私たちとしてはそのようなことは考えておりませんし、そのような刺激が繰り返され、ポーランドのようなハチの巣をつついたような騒ぎになって沖繩がはたして基地機能として健全な基地が維持できるのか、米側から見て当然反省すべきことでありましょうし、ワシントンの首脳部筋もそのような配慮を深刻に表明しているということでも私はうががえると思うわけでございますが、これは私ども姿勢を御理解願えないということでありますから、いたしかたのないことでございます。
  23. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 去る二十日に起きましたコザ事件につきましてお伺いいたしたいと存じます。  あの事件は、この二十五年間に起きました最初の事件でございまして、しかも、従来の事件一つ変わっているところがあります。それは、基地の中に入って建物を焼いたということでございます。私どもはこの点につきまして、県民の一人といたしましてたいへん心配いたしておりました。一九七二年の復帰を迎えまして、この間において私どもの念願とするところは、本土アメリカ沖繩も一体となって沖繩の繁栄のコースをこの一年半の間に築くところにあるんじゃないかということが私どもが常に考えていることでございます。不幸にしてこの問題が起きたということは、私どもにとってはまことに残念でございます。しかし、起きたことは事実でございまして、今後これにわれわれがどう対処していくかというのが一番大事な問題じゃないかと思っております。これがためには、先ほど総務長官からも言われましたように、これの背景、遠因、近因、それからきっかけとなった理由につきましても徹底的にこれを洗い、そして根っこまでもわれわれが掘り下げていって検討を加え、その上にわれわれがどういうふうにいくべきかということを、私はほんとうのりっぱな結論を出して進むべきじゃないかというふうに考えております。私ども考えておりますのは、施政権の二十五年の異民族支配という問題でありますが、その内容となるものが、あるいは裁判権の問題にいたしましても、私どもにとってはかなり疑惑の多いものでございます。それから、最近頻発いたしております事件が毎月何件というふうにある。こういうものが重なっておりますので、私どもはこの疑惑をなくするということと、それから、われわれの沖繩百万の県民が人権を維持されるということ、この二つの問題が私どもにとっては一番切実な問題になっております。それで長官にお伺いいたしたいのは、私どものいま考えておることについて長官がどういうふうに考えておられるか。また、さらにもっと掘り下げた形において今回の事件の遠因、あるいは近因、きっかけになった問題について御説明いただければ幸いだと思います。
  24. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私が沖繩担当大臣になりまして一番つらいことは、私に外交権がないということ、そして、私は沖繩県民でなく、沖繩人たちと一緒に二十五年の苦しみを自分自身が体験していない立場にあるということでございます。第一の点は、外務大臣外交権がございますので、幸い沖繩に対する考え方も食い違いはございませんし、外交技術の行使についてはいろいろと議論をすることもございますが、その面で十分に補てんをしていかなければならないと思っておりますが、さらに、私が沖繩の人々の苦しみをいかに理解しようとしても、それは私が沖繩に二十五年の苦しみに耐えてきた人間でないということにおいて、これはもう簡単に否定されることでございます。しかし、幸いにして、国会の意思によって復帰以前において沖繩の代表の皆さま方が、衆議院五名、参議院二名、国会に議席を得られました。これは思想、党派を越えて沖繩県民方々の声が、直接議会において、国会の審議権というものを通じて発言をし行動をされる。このことが沖繩県民でない私にとって最大の救いでございます。したがって、皆さま方の言われます代表の声を県民の声と謙虚に耳を傾けながら、私の大臣としての職責を、県民立場から見て誤りのないようにしていくことにつとめなければならぬと考えております。ただいまの稲嶺議員の言われた基本的な背景その他は、先ほどお答えいたしたとおりでございまして、これを米側が単なる偶発的な事故と見ることは間違いなんで、必然の偶発であるというふうに私も受け取っておるわけでございます。
  25. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 私どもは今日まで何カ年間にわたりまして、われわれがアメリカ裁判に対する疑惑を解くために、私ども裁判権の民移管の問題、これを今日まで唱えてまいりました。それから捜査権の問題も唱えてまいりましたが、これは、先ほど総務長官が言われたように、完全ではないのですが、まあある程度、これならという点までは来ておりますので、この点には触れませんが、民移管の問題についていかがお感じですか。
  26. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 今日までもそういう話し合いは進めてまいっておりますが、米側裁判管轄権に対する基本的な姿勢は、あくまでも施政権そのものの一つの実体であるという感触で、たいへん厚い壁を感じてまいりました。また、ひるがえって考えますと、私ども本土においても、独立をいたしました後、なお二年くらい裁判管轄権がやはり返らないで、ジラード事件等が一つの契機になりましたけれども、やっと属人主義から属地主義へ、本来の独立国としての裁判管轄権を獲得し得た歴史を私たちも持っておるわけでございます。その意味で、どのような形で、たとえば軍裁判権民政府裁判に移される、あるいは日本側にはない陪審員制度を活用して陪審員の中に沖繩の人も入ってもらうというような配慮等も、検討の一つの形ではないかと思いますが、日本本土のほうで裁判管轄権の取り戻しが独立後も時間がかかったということは、今回は沖繩については復帰時点においては自動的に日本側に移るということは明白でありますが、このような事件に省みて、復帰前においても国政参加さえ実現したのでありますから、これが別な意味から米側の牢固とした基本の態度であっても、これに対して、先ほど私が述べましたように、基地機能の維持も地域住民の憎しみと反感の中ではこれはもう有名無実である。しかも、幾ら解雇を続けていっても、アメリカ人だけで基地を維持することは不可能でありますから、どうしても現地県民の皆さん方がその基地の中に入って加勢したり何かする、いわゆる軍労務者というものが当然必要であります。そういう人々を全部敵に回してはたしてできるものか、できないものか、私どもは多分に疑問に存ずるところでございます。したがって、今後も裁判管轄権の少なくとも現状よりの前進ということを復帰以前においても獲得したいという気持ちで、沖繩県民の御希望に沿う努力を続けてまいるつもりでございます。
  27. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 ただいま総務長官は、裁判権の民移管というものはなかなか壁が厚い、しかし、民政府裁判には可能性があるのじゃないかということも言われておりますが、私どもとして大事なことは、裁判というものがわれわれの納得のいくように、また疑惑のないようにしてもらう。従来の裁判においては、沖繩側からは陪審員もおりませんし、全然沖繩側がいないところでやられますので、この点について県民不満と疑惑というものは重なるばかりでございます。そういう意味におきまして私どもは、もし軍裁判の民移管がどうしてもできない場合においては、民政府裁判に移してもらう。その場合におきましては、私も民政府のほうで陪審員を一ぺんやったことがございますが、そういうふうに、民政府のほうに移管される場合においては沖繩県民から陪審員も出ておりますので、公正な裁判が可能になるのじゃないか。また、県民の疑惑もこれによって解かれるのじゃないか。また、裁判の全貌も明らかになるということで、私どもとしては、ぜひこの点だけは通すように総務長官におかれてがんばっていただくようにひとつ希望いたす次第でございます。これについての総務長官のお考えをちょうだいいたしたいと存じます。
  28. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 総理大臣にも、そして外交折衝の窓口である外務大臣にも、依然として同じ姿勢を私は続けていくつもりでございますが、ただいまの稲嶺委員の、陪審員に自分が選ばれた体験によって考えられる形態の中の、沖繩人たちの意思の反映、あるいはそれによって沖繩人たちがその裁判の中に入っていける立場、そういうもの等が一つの体験としての価値を持つものであることをごふえんになりましたので、それに対して、私もさらに一そうその問題についていま具体的な検討をしているという御返答を申し上げるところまで来ておりませんが、外務大臣のほうにそういう形の折衝を続けていかれるように——基本的には返還でございますけれども返還がむずかしいからといって、それならばオール・オア・ナッシングという議論にしてしまわないように、一段の努力をしていただくようにお願いするつもりでございます。
  29. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 次に、沖繩の百万県民不満に思っていることは、毎月起きております軍人の犯罪でございます。これは多い場合には三件もございまして、ことしに入ってから非常に激増いたしております。これについては私どもも、軍紀をもっと厳正にしこういう事態が起こらないようにしてもらいたいということを、立法院におきましても、あるいは民間の代表におかれましても、軍に今日まで話をいたしてきております。しかしながら、なかなか効果がありません。これにつきましては、私は軍がこの問題について厳重にすれば、兵隊も、こういうことはやると割りに合わないということで、自然に自粛して犯罪事件というものがなくなるのじゃないかと思いますが、政府におかれましても、この点につきましてはアメリカ側と話をされまた交渉されることがありますかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  30. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは、私自身もございますし、外務大臣もございます。軍紀の維持、これは何よりもベトナムと沖繩と違うのだという基本的な認識というものすら欠けておるのじゃないかというような点等が散見されますので、これらの点は具体的に、沖繩にかりに休養なりあるいはアメリカに帰る途中で立ち寄るなりした兵隊にいたしましても、これに対して、沖繩はこのようなところである、もう日本に近く返っていく外国なんであって、ベトナムの戦場とは違うのである、沖繩県民というものは独立国の国民なんだということをよく知らしてほしいということを、直接、間接申しておるわけでございます。これは正式な連絡は受けておりませんが、私のいま聞いております情報の範囲では、ランパート高等弁務官は今回の事件に省みて軍紀の粛正を強く呼びかけたことがマイヤー大使を通じて明らかにされておるように思いますけれども、幾らきびしくしてもこのことはきびし過ぎるということはないわけでありますから、二十か二十一の思慮分別のない若い兵隊が起こしましたことも、これはやはりアメリカの権力のもとにおいて起こす行動でありますから、それはその個人の責めに帰すべき問題ではないという考え方も、アメリカ側のそういう配慮というものを自分たち自身の責任として行なっていただくように、これからもわれわれとしては働きかけ続けていくつもりでございます。
  31. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 この点につきましては、私ども県民の一人といたしまして軍関係には強く押していくつもりでございますが、総務長官におかれましても、ぜひ強くその点については押していただきたいと思います。  次に、今度の事件につきまして、あるいはランパート弁務官毒ガス撤去にからませるような発言をしたり、それから、ある新聞報道によりますと、七二年の返還にあるいは影響を及ぼすんじゃないかというふうな報道もちらちら見えるわけでございますが、私どもといたしましては、今度のコザ事件コザ事件として取り扱うべき問題であって、これをほかの問題とからませてやるということは、私どもとしては非常に遺憾に考えている次第でございます。これについての総務長官の御意見をお伺いいたしたいと存じます。
  32. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 毒ガスの問題については、確かにランパート高等弁務官が、撤去作業というものがいわゆる心配であるというようなことを結びつけて言ったようでございます。しかし、返還そのもの、七二年返還にまで悪影響があるという発言をしたとは、いままでの私の入手した情報では全くございません。さらに、これはコザの問題としてとらえよというおことばでありますが、私もそう思いますが、逆に、コザでこういう事件が起こったことについてアメリカはよく考えてみるべきだと私は思うんです。というのは、ほかの町と違ってコザという町は、戦前の——表現は穏やかでございませんが、実際は一寒村であった村が、名前も「コザ」というかたかなでしか書けないような市になったわけですけれども、膨大な人口を擁する、しかも基地が大きくなったことによって発展してきた市である。したがって、市民全部が何らかの形で、職業の形態からいっても、あるいは市民のそれぞれの基地への依存の割合からいっても、一番米側との間に、まあ表向きは別として、コザの町というものは、基地に対してある程度柔軟な姿勢を持つ町であるように私は受け取っております。基地に対して一番理解をせざるを得ない、柔軟な姿勢をとらざるを得ないそのコザにおいて、なおかつ、瞬時にして二千人もの——これは琉警調べでありますけれども——人たちが立ち上がって、そして現場検証のMPを取り巻いて、再び糸満事件にしてしまおうというのか、というようなことを口々に叫びながら取り囲んだということは、これは私は、コザで起こったからより深刻である、コザにさえこういう問題が起こるんだということを、私は痛切にその点を感じた次第でございました。その意味で、今回のコザ市に起きた事柄というのは、ほかの町で起こったと仮定するよりももっと大きな問題を内蔵しておるように私としては受け取っておる次第でございます。
  33. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 いま沖繩県民一つ不安に思っていることがございます。それはコザでああいう暴動が起きた、事件が起きた。あるいは軍関係の諸君がこれに対して報復措置に出てくるんじゃないか。そうなれば、次はまた沖繩のほうもそういうふうな方法をとる。そうすると、これが非常にエスカレートしていって、ついには収拾のできないような事態にまで発展するんじゃないかというふうな危惧の念を抱いているのもございます。それで、私どもといたしましては、今度の問題を拡大しないようにあらゆる措置を、日本政府のほうもアメリカもあるいは琉球政府一つになって、一つのテーブルの上において原因を究明し政策を検討するというところまでいってもらえないか、そして、これで終止符を打つというところまで進めていただきたいというように考えております。その点についての総務長官の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  34. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 二度と起こしてはならない、これ以上起こるとすれば、それはもう収拾のつかない状態になるであろうということを私は憂えておりますから、ただいまの稲嶺君の言われるようなことを体して努力をしてまいります。
  35. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 コザ基地の問題につきましてはこれで終わります。  次に、新聞報道によりますと、今回、日本及び沖繩基地が縮小される。それに伴って軍人の軍雇用員の大量解雇が、沖繩においても三千人の解雇があるというふうに新聞は報じておりますが、これについてアメリカ側から日本政府のほうに何らかの通知がありましたかどうか。
  36. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 今回は、どういうものか事前の通知がございません。通知と申しますか、連絡はございませんでした。たいへん遺憾なことでありますが、しかし、われわれとしては、現在の予算のやりくり、あるいは予備費、調整費等を操作しながら、本土並みの退職金のいわゆる差額の補てんについて、あるいはその後の再就職、雇用等のあっせんその他について遺憾なきを期したいというふうに考えている次第でございます。
  37. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 三千人といいますと、沖繩の百万に対する三千人になります。日本一億の人口から考えますと約三十万人になります。三十万の人間が一時に職を失うということは、国家にとっても重大な問題でございます。…千人という数字は、あるいは小さい数字にも見えるかもしれませんが、沖繩において占めるこの地位というものはきわめて重大でございまして、就職の問題もございますが、さらに経済的にも、現在まで軍雇用員から来る収入が大体七千万ドルございます。それから、大体三千人では約四百万ドルから五百万ドルになります。これの沖繩経済に与える影響というものはきわめて重要でございます。その意味におきまして、ただいま総務長官が言われたように、これの就職あっせん、あるいはまた退職金の支給の問題等御考慮されると同時に、さらに、これから来るところの沖繩の経済のマイナス面につきましても十分御考慮の上に対策を立てられるように私は希望する次第でございます。これについての総務長官の御意見をお伺いいたしたいと思います。   〔委員長退席理事山本茂一郎着席
  38. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 昨日も沖繩の造船調査団一行と最終報告をめぐって議論したのでありますが、これらの造船事業等には非常に雇用需要というものが大きいものでありますので、私としては、軍労の方々は年配はある程度いっても相当な技術を習得している。そういうことで、一番活用しやすい分野の人たちである。したがって、すみやかに進出計画を定めて、これらの人たちが皆さん方の仕事の中で新しい人生を開拓できる条件が十分あると思うので配慮してもらいたいということを、一つの例でありますが、申し上げておきました。これは造船工業会側も、なるほど軍労の方々はそういう特殊な技術等についてなじみやすい経験を持っておられるからそういうことが実行できるかもしれません、ということを言っておりましたけれども、来年度予算その他を通じましても、いろいろな予算がずいぶんたくさんつくことになりますので、それらの予算に関連する事業執行等において、民間の分野等においても相当な需要喚起がなされると思います。もちろん、企業進出に伴うものもあるわけでございますが、それらのものに、なるべく円滑にしかも所得がむしろかえってプラスになるような方向に転出できることを、側面からあっせん努力をつとめてまいる所存でございます。
  39. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 軍雇用員の解雇の問題につきましては、まあ私どもは、何かスピードがないような形において行なわれていくんじゃないかというふうに今日まで考えておりました。ところが、最近の情勢によりますと、私ども考えている以上にどうもスピードアップされて軍解雇が行なわれていく。こういう状態におきまして、沖繩に企業誘致の問題がいまのようにもたもたして動かない場合においては、両方をつなぎ合わすということがきわめて困難なような事態に入り、一つ谷間が生まれて、そこからあるいは社会的な問題、経済的な問題が大きく浮かび上がってくるんじゃないかと思っています。その意味におきまして、この軍雇用員の解雇のスピードアップに応じて政府の施策が十分に適応するような形において行なわれることを期待いたしております。この点についてひとつ総務長官の御意見をお伺いいたします。
  40. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 企業の進出と申しましても、これはやはり企業は企業の側の一種の進出の条件その他についていろいろの検討をしておるわけであります。まあ、アルミ五社の進出が、日本軽金属を中心として十二月に会社の設立申請をいたしました。これが一つの端緒にはなり得るだろうと思うわけでありますが、今後沖繩の既存産業というものに脅威を与えない分野の産業の進出を奨励し、輸銀金利の特利ワク等を活用することによって、企業も進出しやすいように、また、現地の琉政側においても税制その他で復帰前にごめんどうを見ていただければ、私たちのほうでそれらの得べかりし財源等に対する補てん等を考えていかなければならぬというような配慮はいたしていくつもりでございます。ただ、個々の企業に、何月何日にどこにつくれということは、なかなか自由主義経済の中では言えませんので、なるべくそれを促進し、誘導し、そして援助するという姿勢を強くしていくということが一番の問題であろうと考えるわけでございます。
  41. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 この問題についてはこれで終わります。  それから、外務大臣がおられないですが、千葉さんがおられますので、お伺いいたしたいんですが、マイヤー大使と愛知外相が会談をされておりますが、沖繩の問題についてどういう話がされたか、それが御報告願えれば幸いだと思いますが、いかがですか。
  42. 千葉一夫

    説明員(千葉一夫君) お答え申し上げます。  愛知・マイヤー会談をただいま申されましたが、これは沖繩返還協定交渉のための定例会談をおさしになっておるかと存じております。昨日、本年の一番最後の会談を行なったわけでございますが、従来の会談どおり、昨日の会談におきましても、返還協定交渉問題のみならず、より広い、返還交渉全般に関します意見交換を行なったわけでございますが、特にやはりこのコザの問題につきまして、先ほど総務長官からお話し申し上げましたように、この点は再び昨日、一昨日及び日曜日に続いて取り上げたわけでございます。この中におきましては、先ほど来総務長官が御答弁申し上げましたような趣旨のことを、再びるると愛知外務大臣より申したわけでございまして、これに対しまして、種々またマイヤー大使からも説明等ございましたわけであります。マイヤー大使は、とにかくこういった問題の再発防止及び種々先ほど来御指摘の問題がございますが、こういった点に関する改善について日本政府のほうから御意見があればいつでも喜んでそれを承り、ともに検討いたしていきたい、そう申した次第でございます。
  43. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 これで質問を終わります。
  44. 山本茂一郎

    ○理事(山本茂一郎君) 速記をやめてください。   〔速記中止〕
  45. 山本茂一郎

    ○理事(山本茂一郎君) 速記を起こしてください。
  46. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 今回のコザ事件はまことに残念であったと思います。しかし、考えてみると、やはり起こるべくして起こったという背景を強く感ずるわけです。七二年に返還がきまったとはいうものの、あと一年といえば、短いといえば短い。しかし、やはりこの時間的な問題は決して短いものではないと思うのです。あるいは、こうして質疑をしているさなかにおいても、沖繩においては事件が起こっているかもしれない。そうして、繰り返し繰り返しそれが積み重なって、また今回と同じような事件が起きないという保証は全く考えられないというような、まことに緊迫した事態に到達したということをしみじみと思うわけであります。そこで、先ほど来から問題になっております。いわゆる裁判権捜査権の問題は、これこそ緊急の政治的課題ではないだろうか。しかも、申すまでもなく、人権にかかわるというのがこの裁判権の問題でありますれば、どうしても民間に移管ができない、これからも厚い壁をなかなか乗り越えることはむずかしいと、先ほど来の答弁を伺っておりましても、そういうふうに認識をするわけでございますけれども、ならば、これからも、返還が行なわれるまで、沖繩県民の人権というものは相も変らず侵害されると、このように思わざるを得ないわけです。この点についていかがでございますか。   〔理事山本茂一郎退席委員長着席
  47. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 努力はいたしてまいりますし、そのようなことの二度と起こらないようにしたいということをいま繰り返し申しておるわけでございます。ただ、日本政府施政権沖繩に持っていないという立場から、どうしてもそこに隔靴掻痒の感があることを私としては否定できません。また米側としても、基本的には施政権裁判管轄権というものとを一体不離のものという姿勢を今日まで保持してきた。これも私たちが幾ら話をしても変わらない態度でございます。しかしながら、基本的には、申し上げましたように、基地機能の維持というものが地域全体の憎しみの中に包まれて維持できるかどうか、これらの問題は、アメリカ側から見て問題が当然なければなりませんし、また沖繩県民が、私たちが、これ以上——おっしゃるように、二年足らずならば短い期間でもありましょう。しかしながら、つらい人権侵害等の毎日の積み重ねの期間ならば、それは非常に長い長い毎日の積み重ねであるという実感が伴うでありましょう。私たちは、その苦しいつらい毎日を、七二年復帰時点まで重ねさせてはならない。これは私たち祖国の義務だと思います。そのためには、形式上どういう行動をとるかとらぬかは別として、われわれのなし得る全部の力を注いで、不祥事件の起こらないよう、あるいは、不祥事件の起こるきっかけとして累積していくそのような日常の米軍犯罪の人権侵害等に直接あらわれてくる状態が根絶されるよう、できるだけの努力を続けていく必要がある。その点についてはおっしゃるとおりでございまして、同感でございます。
  48. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 長官のいま申された、今後の努力ということについては私も十分納得ができます。ただ、世界の状況を見渡した場合、沖繩以外に、変形されたこういう形のまま存在しているという所は見当たりません。しかも、部分的には戦争の起こっておる所もあるとはいいながら、全体観に立って見た場合には一応平和である。この平和時において、こういう、あるいは各国間のつながりというものを阻害するようなあり方というものは、あるいは再び国同士の険悪な傾向あるいは方向というものをつくるかもしれない。そうしますと、平和確立という世界共通の願いというものが、再びそうした問題からくつがえされないとは限らない。それが沖繩のかかえている大きな要素ではないかと、こう思いますときに、努力はわかるにいたしましても、やはり具体的な実行をそこにあらわすようなアメリカ政府との折衝というものが非常に強く望まれてならないわけであります。きょう外務大臣出席がないということは非常に遺憾でありますけれども総務長官のほうからもその努力という、いまおっしゃられたことが政府全体の決意であると同時に、決意というものは簡単にできるものであります。しかし、その決意が実際にそれじゃどうあらわれたかということによって初めてその決意が実るのでありまして、私どもは今後のそうした裏づけのある努力というものを期待したい。一刻も早くこの裁判権捜査権というものが移管されることを、私のほうからも強く要望を申し上げたいと思うのであります。  先般、御承知のとおり捜査協定というものが結ばれましたが、これはほんの形でございます。それはおそらく沖繩県民の感情というものをカムフラージュする以外の何ものでもないのではないかという印象すら受けるわけであります。事件が起こった。そして基地内に設けられた軍事裁判の中に、いわゆる被害者の家族あるいは弁護士という限られたわずかの人にしか裁判を公開されない。あるいは捜査にいたしましても、こちらが考えておるようなぐあいにはいかない。結局は、そういう返還協定みたいなものを結んで、いかにもアメリカ政府日本に対してよくやっているぞ、沖繩県民に対しても、あなた方の意思を十分に尊重してやっているつもりだ、こう言っておる。具体的に現実的な問題として何一つ効果あらしめるような結果になっていない。これがやはり沖繩県民の感情というものを疎外する最大の原因ではないだろうか。そういうところに人権を無視した、あるいは植民地的な、そういう支配者的な考えというものが今後残るとするならば、おそらく日米両国間におけるそのきずなというものに大きくひびを入れることになるのではないだろうかということをおそれるわけであります。先ほど来から質問を伺っておりましても、今後再びこのような暴動事件というものが起きないという保証は何もないわけで、したがって、事前にそうしたような事態発生することを政府当局としても十分配慮していくということを申されておりますけれども、こうした一つ一つの現実的な問題が解決されない限り、はたしてできるのだろうか。また、ここに大きな不安と疑問が起こらざるを得ない。やはり、その問題の解決がない限りは保証がない。私どもはそのように判断するのでありますが、政府としてはいかがでございましょうか。
  49. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) マッカーサー元帥でありましたか、どんな善政を施しても占領政治というものは三年が限度だということを、みずから省みて言ったということを記憶しておりますが、そのような、三年どころか三十年に近い年月というものが沖繩において軍政下にあるということは、私は、その軍政下に置かれた人間としての耐えがたい苦しみというものはだれよりもわかる気がいたしますが、私も、立場を離れて個人としてわっと叫びたい気持ちは一ぱいあります。しかし、日本政府が決定したことがそのまま命令として現地で実行されるということであるならば、直ちに決定もいたしますし、そのように命令も出しましょう。しかし、やはり相手が、自分たちの戦争後得た権利というものによって実質軍政、施政権というものを権利として持っております。立法、司法、行政の三権もなお権利としてゆだねられておるわけであります。それをアメリカ側というものと交渉なしにかってに日本政府がきめることができれば、私は本日直ちに決定してもよろしいと思うのでございますが、われわれは意思はきめております。そして努力もしております。やはりアメリカ側に対して善処を促し、反省を促し、そしてアメリカ自身のためにもかくあるべしということを根気よく話をしていかなければ、相手方に国際法上の権利のある問題でございますので、これをくずしていくわけでありますから、それは容易なことではないということだけはわかっていただけると思うのでございますけれども、だからといって、私たちは、だめだからといって拱手傍観するというつもりはございません。幾ら厚い壁でも、われわれとして沖繩県民の心をこれ以上踏みにじってもらっては困るという姿勢は、依然としてより強く打ち出していくつもりでございます。
  50. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そこで、当面の課題といたしまして、今度の問題をきっかけとして、あるいは外務大臣あるいは総務長官でもけっこうです、国を代表して、近いうちにアメリカを訪問して、そうして、あるいは国務長官あるいはニクソン大統領に会って、一刻も早く裁判権捜査権移管というものに対して折衝する用意はお持ちになっていらっしゃいませんか。
  51. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私はそのような折衝をする権限を与えられていないわけでございます。でありますから、そのような行動をとるとすれば外務大臣がおとりになるということでございますが、そのようなことについては、まだ外務大臣と相談をいたしておりません。
  52. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうしますと、現在の政府部内におきましては、直ちにアメリカ政府とこの問題を通して、いま私が申し上げた課題を中心とした折衝というものをまだ考えてはいないと。これから考えられる余地はあるのか、その辺もう一ぺん。長官がいらっしゃらなくてもけっこうです。外務大臣が行ってくださればけっこうです。その用意はないか。
  53. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) アメリカの外交の出先である大使館、あるいは、沖繩アメリカの外交のルートとしての米側出先である在日大使館、あるいは、沖繩の実質上の軍の指揮権を持つハワイの太平洋司令部、そういうものを飛び越して直ちにアメリカの大統領なりあるいは国防長官なりと直接折衝をせよという御意向だと思いますが、私も、外交的な手段をどのように行使されることが正しいのか、緊急事態においてはどのようなことをすべきなのか、あるいは、そこまで来れば総理の仕事のなか、あるいは、そういうことをしなければならないことで現在の外交ルートではもうとだえてしまった道なのか、そこらについては外務大臣のお考えを直接伺ってほしいと思います。
  54. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 次に、今度の問題をきっかけに高等弁務官の言動というものがやはり批判されております。それは翻訳のしかたがどうの、あるいはそのときの異常な雰囲気の状態のために、あるいは一時的に感情的な発言があった等々いわれております。私も、事実アメリカ大使館からそういうことを聞いております。ただし、少なくとも、琉球放送でございますか、そういう公器を通して伝えられた内容をまず冷静に判断してみた場合、いままでアメリカ大使館等から伝えられたのとはやはり非常にニュアンスが違うのではないだろうか。あるいは御存じかもしれませんが、確認のために私が申せば、このように伝えられているわけです。まず一つは、この事件に加わった群衆を、「恐喝的群集」、まず「暴徒」と呼んだことが一つ。それから、催涙ガス使用は、米人家族地域への波及を防ぐために私が命令した」。次に、「軍事裁判の無罪判決に批判はあるにせよ、暴動の口実にはならない」。次に、「私はこのような脅威がなくならない限り、化学兵器の」——これは毒ガスのことを意味していると思いますが——「撤去作業開始を承認しない」。次に、「今回の暴動は、現在、日米両政府努力している満足のいく本土復帰の目的を阻害し、破壊するものである」。このように述べたと言われております。これは政府当局がキャッチした正確ないわゆる真相と先ほど長官は冒頭に申されましたけれども、合致しているか、まずこの点から伺いたい。
  55. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) おおむねそのとおりだと思います。
  56. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 だとするならば、こんなふざけた暴言は許せないと思うのですね。したがって、いま現地においても、ランパート追放大会ですか、それが持たれている向きも聞いております。あたりまえだと私思います。こんなばかにした言動というものは、施政権を持っているアメリカ、しかも最高のリーダーであります。不用意といえばあまりにも不用意。こうしたことが、先ほど来から申し上げておりますように、再び事件が起きないという保証にはならないと、こういうことになるわけですね。外務省当局はこれはどう一体とらまえて今後の外交ルートにのっけた折衝をするか私はわかりませんが、少なくとも、担当大臣である山中長官は、こういった言動については、私が申し上げているその意見とやはり同意見ではないだろうか。ならば、これはもうやはり今度は沖繩現地に行かれて、ランパート高等弁務官に直接真意をただし、今後ないように、接触する必要もあるのではないだろうか。それも出先機関にまかしたほうがいいんだろうか。この点どうですか。
  57. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私はランパート高等弁務官を敵として認識をして戦いを宣告する立場にはありません。やはり施政権現地における責任者としての高等弁務官でありますから、話し合いの相手だと思っております。でありますから、それらのおことばについては、私が一々答えますと、それは日本政府の担当大臣の公的な批判ということになるでありましょう。それをやれということであれば、あるいは私の答弁は納得できないと思うのでありますが、私は、やはり話し合いというものをすべきである。あるいは高等弁務官はどのような真意を持ってそのような受け取られ方の発言をするに至ったのか。その後どういうふうに考えているか。やはりこれは話し合いすべきことであります。ですから、弁務官がこちらに来たときでも、私が現地に参りましたときでも、そのようなことについては話し合いを持つつもりでございますが、いま私が急速、この予算の本庁内示が始まりました編成作業の中で現地に飛ぶということは考えておりません。一応、コザ事件は不幸なことでありましたけれども、幸いにして飛び火もせず、あるいはまた、そのままコザで引き続き暴動が起こっておるということもございませんので、いまのところはやはり外交ルート話し合いを持続していくことのほうがよろしいであろうと私は判断をいたしております。
  58. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 私は敵に回してどうのこうのということを申し上げているのではありません。いま申されたように、やはり話し合いを通してアメリカ政府姿勢をただす、こういうことを申し上げているのであります。その点、いかがですか。
  59. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私がただすことができるならただしたいと思います。しかし、これは、こちら側の意見というものをアメリカ側が耳を傾けて、そうして合意した形において向こうも日本側立場沖繩県民立場を理解して初めて姿勢が変わってくるのでありまして、動物園の猛獣つかいみたいに、むちをふるえばそのとおり走り回るという性格のものではありませんので、そこはやっぱり話し合い折衝というものでなければ片づかないだろう。一方的に私どもは宣言なり非難のことばを投げつけてみても、そこに生まれるものはないのではないかということを私は心配するわけでございます。
  60. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 長官は、何かいかにも日本政府が威圧的に命令がましくアメリカ政府に対してものを言えというふうにお受け取りになっていらっしゃるようですけれども、そのことを申し上げているのではありません。先ほど来から申し上げておりますとおり、話し合いを通して、今後沖繩県民に誤解を与えるならばまた再び暴動の発火点になるようなそうした不愉快な言動というものを慎むように話し合いを通して相手に理解を与えていただきたい、私はこう申し上げておる。
  61. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私はランパート高等弁務官を弁護する必要もありません。でありますから、ランパート高等弁務官と、外交ルートを通じ、あるいは直接そのような意思の交換ということをしたいというように考えておりますし、なるべく早くそういう機会を得たいとも思っております。
  62. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 次に、はしょって申し上げますが、今度の事件をきっかけに、まことにタイミングが良過ぎると申しますか、いまも申し述べた中にございますように、毒ガス撤去の問題、それから軍労働者の解雇問題、なんか、ちょっと直覚的に感ずる場合には、報復措置とも思えるようなそういう印象すらうかがえるのであります。まあ、それはとにかくとして、今度の大量解雇というものを、先ほども論議されておりましたように、総理府のほうにも何ら連絡がなかった。おそらくあらためてこの問題についての折衝というものが行なわれるだろうと私は思いますけれども、いま現地のそうした模様を伝える報道を通して考えてみますと、非常に困惑している。次に起こる問題は当然失業。一体、その後における生活の保障はどうなるのか。連鎖的にそういう問題が必然的に起こってくるわけであります。今回の三千人というものは、非常にいまだかつてない大量解雇だといわれておる。二万人の中の三千人ですから、非常に膨大な数字にのぼるわけです。ところが、基地の縮小というニクソン・ドクトリンの方向に従って、日本内地の基地の軍労働者の解雇、それに関連する沖繩における基地の労働者の解雇。もっと近い将来には数がふえるのではなかろうか。あまりにも突然にそういうような一方的な解雇通告を受けたのです。あなたもしばしば当委員会でお答えになりましたように、死活問題になる。そういうことが言えるわけでありまして、しかも、返還を前にして次から次へこういうような問題が起きますと、この問題から端を発しまして、また形の変わった暴動というものが——暴動ということばは当たらないかもしれませんが、抵抗というものが起こるのではないだろうか、このような心配もありますけれども、重ねて私はその点をお伺いしておきたいと思います。
  63. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 本土においても大量の解雇が発表されましたし、現地においても大きなウエートを持つ数の解雇発表がありました。これは私が先ほど申しました、何もこの時期に、コザ事件の翌日にという気が私にはございましたけれども、一方には、やはりわれわれが長年要求しております、なるべく予告期間本土並みという配慮もあったようでございます。しかし、それらはやはり解雇の期日をおくらすことによって予告期間の維持はできたから、それらの配慮があってしかるべきだったと思います。結果としては、これはアメリカのワシントンの決定によるものでありますから、米軍人・軍属や家族も相当な数が引き揚げていくということでございますので、私たちとしては、すでに既定の事実となった事柄についてその持つ意義というものを、先ほど稲嶺君のお話しにありましたように、重大な影響が、沖繩経済についても大きな影響を与えるのだ、県民の生活レベルの問題でもある。一人一人の生活の問題はもちろん直結した問題でありますけれども、そういうつもりで、できるだけの措置を講じなければならぬ。しかも、緊急にそれは講ずるつもりでございします。
  64. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 最後に一点だけお伺いします。  今度の問題によりまして、あのコザ地域には、これも伝えられるところによりますと、米軍人家族、その他軍属も入るでしょう、三カ月間あの地域に立ち入ることを禁じられております。それによって、いわゆるAサイン業者あるいはスーベニール・ショップ等の、米軍人家族等を相手にして商売をやってきたその業者が、塗炭のいま苦しみの状態に置かれておる。おそらくこれから一カ月過ぎ、二カ月過ぎ、年末、年始を迎えて最大のピンチを招くのではないだろうか。私もかねがね当委員会で問題にしてまいりました。非常にまた根の深い問題でございましょう。けれども、やはりもう事実となってあらわれてきているわけであります。長官はこの問題にこれからどういうふうに一体対応して根本的に解決をされようとしているのか。もうすでに問題は起こっちゃっている。これをどうするのか。じゃあ直ちに打てる手があるのか。あるいは直ちに打てる手があれば、それはどうなのか。それから、長期の計画としてはこれからどういう計画を持って、そういう人たちの救済といいますか、新しい方向に向けるようなそういう政治的配慮というものをここで考えられているのか。この二点を最後にお尋ねをいたしまして、私の質問を終わります。
  65. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 人権の問題が暴動に結びつくならば、その反面において、生活権の問題というものが二律背反的にコザ市の人たちに押しかぶさってきておる。このことはまことにむずかしい問題であると思います。米軍人の外出その他が禁止されれば、そのようなトラブルが起こらなくなる。原因がなくなるわけでありますから、大いに犯罪やあるいは人権じゅうりん等の事件は減少することになるでありましょうが、しかし、それらの基地に依存しております——これは好むと好まざるとにかかわらず、そういう形態の町として発展してきたコザ人たちにとっては、まずさしあたりクリスマスをどうしよう、あるいは年末に当て込んでいた越年の営業収入というものがだめになっちゃったということが現実の問題として私はあると思います。しかし、この問題は、やはり優先すべきは人権の問題であろうと考えます。その意味で、生活権の問題について、これは短期間の問題でなく、できれば、平穏になったらなるべくまた解除してもらいたいと私も思いますが、しかし、長期的には沖繩の三次産業、ことにサービス業等について、望ましい形態で——変則的な基地依存的な業態でなくて——そのような業態が維持できるような、あるいはドル受け取り制度、あるいはフリーゾーン、いろいろのことを考えておるわけでございますけれども、みやげ品免税その他の措置等を考えながら、それらの沖繩における特殊な生活形態というものがなるべくひどく変革をされないで自分たちの生活権の向上維持というものがはかれるようにしてまいりたいと思いますが、これは長期的な展望でございますから、最終的に幾らになるかわかりませんけれども、いますぐ、外出禁止をされたその期間の生活権というものをどうするかについては、率直に申し上げて、私どもが何かしてあげるという手段を発見するのに非常に苦しんでおる次第でございます。
  66. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  67. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) それじゃ速記をつけてください。
  68. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私はまず初めに、沖繩に起こりました事件の数々というものは、そのままが国の問題であることに変わりはなかったわけでありますが、これまでのいきさつに比較いたしまして、今回のコザ事件に対しましていち早く参議院においてこのように特別委員会を全会一致で開催していただきましたことに対し、沖繩出身の議員といたしまして心から敬意を表します。  そこで、ただいままで問題がコザ事件に焦点がしぼられましたので、どなたの発言も大体同じ方向に集約されたわけでありますので、私といたしましても同じことを重ねて聞くようなことに対して非常に気がねもいたすわけでございますが、事が重大でありますがゆえに、私、できるだけ重複を避けながらも、さらに確認すべきことは再確認をしていきたいと、このように思いまして、時間も制限されておりますので、できるだけはしょって質問をいたしたいと思います。  まず第一点、このコザ事件は、マスコミをはじめどなたの意見を聞きましても、当然起こるべくして起こった事件であると、こういうとらえ方が一致したとらえ方であると私は判断いたしております。決してちょっとやそっとの偶発的な事件ではない、こういうとらえ方に対して総務長官はどう御判断なさっておられるでしょうか、お伺いいたします。
  69. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 先ほど「必然の偶発」と申しましたけれども、そのような積年の、積み重ねられてきたものがたまりたまっていわゆるがまんの限度に来たということになるだろうと思います。また、捜査共助協定が相当広範囲に琉警のほうの立場が鮮明にされたとはいっても、しかし、一たんそれを手離してしまえば、ゲートの中に入り込んでしまえば、あとは軍事裁判という強固なとりでの中でかってなことがされる、自分たちはそれに対してこのまま指をくわえて見ておらなきゃならぬのかというその怒りが、やはりコザの場合において引き金の役目を果たしたであろうと考えております。私たちは、過去二十五年そのような状態に置いたことに対して祖国の償いをしなければならないということを繰り返し申し上げておりますが、復帰が確立した残りの時間もなおかつ同じ条件で同じ苦しみを味わっていくことを傍観してはならない。そういうことはあってはならないという気持ちで一生懸命やっておるつもりでございます。しかし、今回の事件については、私も、喜屋武委員の言われるような、底流の上にたまたまそれが一つあらわれただけであって、この問題は、復帰までにいつどのような形でどこかで同じようなことが起こらないという予測はつかない。それだけの問題がありますので、施政権者米側も、みずからのためにもそれはマイナスであるということを十分認識するように繰り返し機会をとらえて米側の了解というものを求めてまいりたいと思います。
  70. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、この事件背景、いわゆる遠因、近因の形で先ほどから述べられましたが、ただそのような形でこれがとらえられるのではなく、私は戦前、戦中、戦後、今日まで沖繩に生活し、そして復帰協の会長という立場からあらゆる問題に直面してそれなりに問題を解決してきたつもりでございます。その体験の上に立って、二十五年にわたるアメリカ支配の中で、沖繩県民の生命、財産、人権にかかわるもろもろの問題が数限りなく至るところで展開されてまいったということは、統計資料もいまここに持ってきておりませんが、もし必要であればそれを御利用願いたいと思うのであります。ところが、その事件が表面にあらわれて取り上げられたこともあるし、やみからやみに葬られ、うやむやにされた事件もあるし、さらにその処理の段階で、全く沖繩県民の納得のいかないような、このようないろいろの形で二十五年にわたってさまざまな問題が処理されてきた。この中から沖繩県民が心の中にこらえにこらえ、耐えに耐えてきた、そのことをまず抜きにしてはこの問題は考えられないということでございます。事件があるたびごとに、私たちは陳情、要請あるいは抗議集会、大衆運動のいろいろの形で、現地施政権者にも、政府にも、ときには日本政府にも、国会にも、政党にも訴えてまいったのでありますが、私たちはそのたびごとに、もしこのような問題が本土他府県に起こっておったとするならば、はたして日本政府は、はたして日本国民は黙っておるであろうかということを常に感じさせられてきたというのがその実感でございます。そして私たちは、国によって保護されない人間のみじめさ、憲法のもとに守られない人間の無力さというものをいやというほど今日まで味わってまいりました。味わわされてまいりました。そのような情勢の中から、最近における外人犯罪の目に余る、あの前原高校女生徒事件や、あるいは糸満のあの婦人の轢殺事件や、あるいは日々夜々行なわれておるところの沖繩県民への外人の暴力事件、暴行事件、そしてあの毒ガス事件、そういった県民感情が広がり高まり、非常に高ぶっておるさなかに起こったあのひき逃げ、もうがまんならない、こういう情勢の中から爆発したということをはっきりと理解してもらわなければ、ただ結果的に現象的にこの事件をとらえていくならば、私がおそれますことは、この事件の処理にあたって、いかにも沖繩人間が悪者だと、敵だ〜、こういう形で今後事件が処理されていくならば、おそらくこの問題はさらに尾を引き、さらに、いかなる権力でも圧力でもこれを押えることができない、そのような私は危険を感じてなりません。それに対する総務長官の御見解を賜わりたいと思います。
  71. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 基本的には喜屋武君の御意見と全く同じでございます。しかも私たちは、私たち自身も終戦直後において、たとえば国民が飢餓に瀕しておるということでもありましたけれども、農民が自分の食べる自家保有米すら完全に維持できないような強制割り当て、強権発動等の背後に、アメリカの兵隊の銃口あるいは機関銃というものをちらつかされた経験もわれわれも一応持っております。しかし、沖繩において四・二八デーというものがどれほど大きな重みを持っておるかを、遺憾ながら本土の国民はまだよく知っていないのではないかと私は残念に思っております。私たち日本の代表によって署名をいたして独立をいたしましたその独立の調印に、沖繩の人々は何の相談もなしに切り離されて、それ以後の長い長い月日を占領状態のままで送ってきたことに対して、八月十五日も問題ではない、問題は四月二十八日である、そのことをわれわれ本土の者はよくかみしめてみなければなりません。そこに私たちが四・二八の持つその日の意義というものを、沖繩人たちが、祖国が相談もなしに里子に出してしまった日であるというふうに長いこと一貫して考え続けておられる。私たち祖国の者としては、それをほんとう自分たちの責任でそうしてしまったということに対する償いの意識、その前にそれを知る意識、あるいはそのことの事実を知っておるか、どう考えておるかという問題が、私自身の今日まで、野にあるとき、あるいは担当大臣になりましても、終始頭を去らない問題でございます。私ども日本国民全体は、沖繩に対してその重みを十分にかみしめ、そして、ただいま言われたような見解に私も全面的に賛成でございます。そのような見解のもとに、このようなことが二度と起こってはならない。これは県民のためにも私は絶対にあってはならないことだと思います。では、起こらないようにするにはどうすればいいか、先ほど来たびたび繰り返し申し上げておりますような、沖繩県民方々がもう少しのしんぼうだ、がまんをしようという御理解の範囲内の生活が送れるような努力を私たちはしなければならぬ。その義務がわれわれにあるし、私たちはそれを怠ることは一日も許されないのだというふうに私は考えておる次第でございます。
  72. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に私が強調いたしたいことは、人間にとって差別ということは一切の不幸を生むということを強調いたすのでありますが、そのことが沖繩県民のとったあのような行動事件に対して、きょうの新聞によりますと、米軍政への抗議として琉球立法院も総立ち上がりをし、毒ガス撤去も関連しておりますが、その中で、沖繩におる黒人米兵も、沖繩県民が、コザ市民がとったその行動に対して全面的に賛意を表したアピールをいたしておるのでございます。このようなことからいたしましても、沖繩県民がどのようにしいたげられてきたかというこの怒りの爆発を如実に証左するものだと思うわけでございますが、今後の事件の処理につきまして具体的に長官はどのようにお考えでありましょうか、お聞きいたしたいと思います。
  73. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 最終的にはやはり外務大臣米側との間に外交ルートを通じて詰めていただきたいと思いますが、私としては、沖繩方々が今回の事件は不幸なこととして記憶すると同時に、このことが、それらの事態が収拾することができたことによって、初めて今後そのようなことが起こらない明らかに原因一つにもなり得ると思いますので、この事態の処理については、十分県民側の立場で納得のできる処理が行なわれるように努力をしていきたいと考えます。
  74. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 そこで、強調いたしておきたいことは、沖繩県民はどだい県民性といたしまして、非常に行動的には、表現的にはぱっとしない県民性であるといわれておりますが、根は非常に正直で、すなおで親切で礼儀正しく、そして非常に忍耐強い、こういう特色を持っておる県民性であると、これはわれわれが言うのではなく、外部の方々がよくこのことを強調してくださるのであります。私たちは教育的な立場からもそのことを県民性の誇りとして強調いたしておるわけでありますが、そのような沖繩県民が、なぜ予想だにしないこのようなことをしでかしたか、しでかさせたかと、こういうことを思いますときに、「一寸の虫にも五分の魂」ということを私はよく言うのでありますが、人間、その「五分の魂」を踏みにじられるときに、人間としての生きる本能、自己主張、自己表現、こういった考え方に立って抵抗する、立ち上がるのは、これは人間の生きる本能である、こう思われてなりません。それほど痛めつけられた沖繩県民であるということを、本土の皆さんはどれだけ理解し、どれだけ協力し、どれだけ沖繩県民に対して、主体的に、だれが沖繩をそうさせたのか、何が沖繩をそうさせたのかということをほんとうに知っているのかどうかという疑問を私は今日まで幾たびか持ってまいりました。そういう立場から、「知るは愛するの初め」ということもありますが、総務長官には、この事件に関連してテレビ、ラジオあるいは間接に沖繩事情を聴取なさるだけではなして、ぜひ現地に乗り込んでいって沖繩の生の声を、実態を調査していただく意思がおありでしょうかどうでしょうか。
  75. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 沖繩県民性については、いま一つ、非常に明るい南国的な気風であるという点もあるかと思います。それらの人たちが、本来の県民性である底抜けに明るいそういう生活を、日々陰うつな生活を余儀なくされてまいりました今日までの長い歴史、そしてまた、いまなおそれが復帰を確定されながらもその環境が続いておることに対するいら立ち、いわゆる忍耐の限度というところに来ておることを私は知っているつもりでございますが、喜屋武さんの言われるように、はたしてわれわれ一億余りの国民がどこまでそれを知っているであろうか、自分自身の実感としてそのことを感じているであろうか。この点については、御感想にもありましたように、私も疑問に思う点もあると思います。しかし、私自身としては、国民もそういう気持ちをあらためて呼び起こしてもらいたい。同じ民族の血液の中に呼び合うものがあるはずでありますから、そういう国民としての本然の姿で沖繩の姿をながめてほしいと思います。私自身が参りますことは私も一応考えてはおりますが、今年内ということはちょっと予算編成その他の事情——あるいは初めて国政に参加されましたのでおわかりにならないかとも思いますけれども、たいへんあわただしい、ときには徹夜などということもやりまして予算を三十日までに詰めるという、また私沖繩担当以外にも数多くの予算その他を持っておりまする担当大臣として、ちょっとあけられない事情がございます。でありますので、予算が年内編成をされまして事情が許しますならば、なるべく早い機会に私も沖繩を再び訪れて、そして今回の事件県民の皆さま方の立場からよく御意見を伺って、私たちのとらなければならない姿勢が誤りはないかどうか、これを選出議員の皆さん方の声は声として、現地の住民のまたなまの声も十分に承って参考にする機会を得たいというふうに考えております。
  76. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いまの点は、できますならばぜひ実現してほしいことを御要望申し上げます。  次に、沖繩県民がこのような不幸の目にあわされているということには、沖繩におるアメリカの人々の、軍人をはじめ、沖繩県民べっ視、人間べっ視、そしてベトナムで戦争をしたアメリカの兵隊が沖繩に来て、戦場意識をそのまま沖繩に持ち込んだいろいろの複雑な要因もあると、こう思うわけでありますが、日本政府としてどのような今日までこのことに対する強硬な申し入れがあったかどうか、このことをまずお聞きいたしたいと思います。
  77. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) まず、沖繩は戦地ではない、沖繩県民はベトナムの戦地の人たちとは違う、また敵でもないということは、たびたび申し入れておりますし、そしてまた、沖繩はようやく両国のトップ会談によって責任ある取りきめのもとにもう復帰する日が間近に迫った独立国の国民である、ただその期間の間施政権を預かっているのが米側立場である、そのようなことを念頭に置いてその運用に誤りなきを期してもらいたいということをたびたび申し入れておる次第でございます。それについては米側も反論はいたしておりません。
  78. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 にもかかわりませず、事実はいささかもそういった申し入れに対する自粛が具体的にあらわれているとは思われない。のみならず、むしろ質的にも悪質、そして頻度としてもひんぱんに起こりつつある現状を悲しむものでございますが、特に私が強調しあるいは要望したいことは、日本政府の対米姿勢ということについてでございます。あるときには沖繩問題を取り上げて、それは憲法違反だという隠れみのになる。たとえば国政参加の問題が、沖繩県民としては公職選挙法による無差別平等の参加は当然の権利である、こういうことで一貫して要求した時点におきまして、それは憲法違反であるということをたてにして断わられた、規制をされた事件がございます。ところが、時をかさずして、沖繩県民が国政へ参加することは当然であると、手のひらを裏返すがごとくに言われた。まあ、その結果、国政参加にもなったわけでありますが、今度は沖繩県民の人権が無視され、極端に言いますと、虫けらのごとくに葬り去られていくという事実も、全く殺され損、なぐられ損、ひかれ損、こういった無法地帯、戦場さながらの治外法権が今日もあるわけであります。その中で私たちは、人間にとってその人権の保護、重さというものは地球よりも重いといわれているその重い人権を守るとりでは裁判権である、こう主張しまして、裁判権の民移管を今日まで機会あるごとに要望してまいりました。ところが、いままでの答えは、それは困難である、それは不可能である、現時点においては。こういうことを、ときによっては「不可能である」、ときによっては「困難である」、こういう形で私たちに述べられました。私はそのときに、沖繩問題は何一つ不可能という前提に立つべきではない。大体、沖繩の置かれておる事態がこれは不可能から出発しておるのではない。ならば、沖繩の諸問題は、不可能という前提に立つならば一つとして解決の道はない。前進もない。困難であることは間違いない。困難であることはだれが困難にしたのか、だれがそうさせたかということを主体的に受けとめるならば、困難はやってやろうという理解、誠意、愛情、この責任ある受けとめ方があるならば、必ずその厚い壁は、問題は開かれていく、前進していく、こう私は絶えず訴えてまいったのでありますが、今回その裁判権移管が、きょうの新聞によりますというと、裁判権の民移管についてはマイヤー大使が検討を約束したと、こうあるわけであります。これも不可能という前提に立つならば、このようなことはあり得ない。結局、このことも、沖繩問題の深刻さに立ち上がってもらった日本政府が、これではこれではこれではと、こう姿勢を正して追及していく中から相手の態度もそのように開けてきたものと私は思います。この二つの事実をとらえましても、この日本政府の対米姿勢の弱さが、遠慮が、気がねがすべて沖繩にしわ寄せとなって、悲劇となり犠牲となってきておる、こう私たちはいまさらのように思われてなりません。このことに対して総務長官はどうお考えでしょうか。
  79. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 一切の責任が本土政府にあることを認めます。しかし、けさの新聞報道は、私、愛知さんから伺いましたら、新聞報道そのものが確定的なものでもないようであります。また、そのことが確定いたしましても、それは裁判権琉球政府移管されたという形にならない、アメリカ施政権の中の民政へ軍事裁判が移るというにすぎないということで、それは一つの手段としてはあり得るかもしれませんが、裁判管轄権を返せという基本的な姿とは違った形であると私は見ておるわけであります。  そこで、私は「不可能」ということばは使っていないと思いますが、「きわめて困難である」とは、卒直に申し上げました。アメリカ側考えは、施政権というものは、具体的にいえば裁判管轄権というものがその実体の一つであるという姿勢を今日までもとっておりましたし、現在もとっておることに変わりはない。その意味においてきわめて困難な壁があるということを率直に申し上げておるわけであります。それを私が、何も日本政府が責任を果たさないという意味で軽々しく「きわめて困難である」と言っているわけではなくして、その困難な壁に向かって努力はしておる。しかし、その見通しについてはきわめて困難という表現がそういう表現になっただけにすぎないわけでございまして、私たち努力をするということにおいては変わりはないものと受け取ってもらいたいと思います。
  80. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それでは、裁判権移管の問題は今後も追及されていかなければいけない、実現するまでは。これは問題になると思いますが、それまでの過程、この期間において現地アメリカ施政権者に対してまず打つべき手は、いますぐやってもらうべきことはどういうことをお考えでありましょうか、お尋ねいたします。
  81. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私はアメリカ側外交権がございませんので、私の意見がそのまま外交権行使にならないわけでございますが、私としては、この事件の重大さというものを、先ほど来繰り返し御答弁申し上げておりますように、二度と起こしてはならないための措置を、あらゆる面から米側に向かって、愛知外務大臣を通じてお願いをしてまいる。愛知外務大臣にお願いをいたして、そのようなことを一つ一つ成果をあげていっていただいて、このような不幸な事件が二度と復帰前に起こってはならないということを日本政府の責任において努力してまいりたいと存じます。
  82. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 総務長官のお答えに対してさらに私から要望申し上げます。  まず、この事件によって、一方的に沖繩県民が悪者扱いをされましてこれが不利な立場に追い込まれないように、この事件処理に際して公平な適切な処理がなされますように申し入れてもらいたい、これが第一点。  次に、軍紀の粛正につきましては、現地方々高等弁務官の「二度と再び」ということばをもう何べん聞き飽きているかしりません。「仏の顔も三度まで」といいますが、もうこのことは何の役にも立ちません、そのことばそのものは。そこで第二点は、軍紀の粛正を、文化国家を誇るアメリカの第一等国民としての立場からのこの軍紀粛正をきびしくひとつ要求してもらいたい。  第三点に、沖繩におるアメリカ兵が占領意識を持って沖繩でのさばらないように、占領意識を払拭してもらうように強く申し入れてもらいたい。  第四点に、軍民のもっと緊密な連絡提携。このことがまだ十分でないと思っております。  以上の点御要望申し上げて、時間が来たようでありますので、次に問題を移したいと思います。  時を同じうして、ガス撤去の問題にブレーキをかけたり、あるいは軍雇用員の、沖繩の軍労働者解雇問題についてのことは、偶然といえば偶然であるかもしれませんが、とにかくこのことがいろいろの形で沖繩県民のさらに心情を刺激しておることは間違いありません。そこで、私たちといたしましても、基地の縮小、基地の撤廃につながる軍解雇は、これは当然だという、こういう基本的な考え方に立っておりますが、しかし、いままでの解雇は、その基地の縮小や撤廃につながる解雇ではなく、全く一方的な解雇であり、しかも、抜き打ちの解雇である場合もある。こういうことに対しまして、その就職の面、あるいは補償の面、あるいは制度の面、こういうものの裏づけがない限り、たとえ基地撤廃、縮小につながる解雇であったとしても、これは受けつげるわけにはいかない、人権問題の立場から。そこで、いままでの解雇に対して問題になっておりました間接雇用制度の問題はどうなっておるでありましょうか、そのことについて第一点。  第二点は、その退職した軍雇用員の退職金の差額の問題、差額の支給につきましては、いつ、どこでどうなるでありましょうか。このことについてお尋ねをいたしたいと思います。
  83. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 間接雇用問題は、今日までも日本政府側あるいは琉球政府の完全な間接雇用、あるいはそれに準ずる間接雇用、いろいろな問題を検討いたしております。米側もこれに対しては検討に応じておるわけでありますが、しかしながら、いまのところ、これを具体的に、このような形で直接雇用を完全にアメリカ側の手から離すというところまでの構想が煮詰まっていないのをたいへんに残念に思うわけであります。私は、できれば、この間接雇用は、何らかの形において、直接、間接の中間的なものであっても、何らかこれを実現させたいという念願のもとに努力してまいりましたけれども、これまた私の力及ばず、今日まで間接雇用が実現をいたしておりませんが、この問題は、沖繩事務局の出先機能を生かす、あるいは来年度予算で防衛施設庁としての間接雇用対策その他を含めて予算要求もしておるようでありますし、防衛施設庁単独、もしくは私のほうの沖繩・北方対策庁の機構の中、あるいは場合によっては琉球政府の機構の中等において、いろいろな問題を考えながら、なるべく早く望ましい雇用形態が実現するように努力をしてまいりたいと思います。  退職金の本土との差額については、これはいままでとっております方針どおり今後実施いたしてまいります。ことしすでに解雇されました五百名余りの方々につきましては、先週の土曜日大蔵との折衝が終わりまして、年末までに間に合うような処置をいたした次第でございます。
  84. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 時間がございますので、これで私は終わります。
  85. 春日正一

    ○春日正一君 コザ事件でお聞きしたいのですけれども外務大臣が、こういう大事な問題のときに、何をおいても特別に開かれたこの委員会に出てくるということをしてくれなかったということの中に、政府のこういう問題に対する姿勢のゆるみといいますか、軽視といいますか、そういうものを私は感じます。しかし、まあ総務長官がおいでになっていますから、総務長官にお聞きします。  この事件原因は何と考えるかということについて、総務長官は、起こるべくして起こったものだ、戦後二十五年の異民族支配、そこから来る民族的な屈辱や、いろいろな人権じゅうりんや、そうした問題に対する沖繩県民のうっせきした不満の爆発だ、というふうにお答えになったと思います。私も、その点ではそのとおりだと思います。そうして、当然そこから、戦後二十五年間沖繩県民をそのように置いたそのことに対する責任ということが追及されなければならぬ。そういう問題もあると思います。   〔委員長退席理事山本茂一郎着席〕 しかし私は、いまはこのコザ事件についてもう少し議論の範囲をしぼって——確かに糸満の裁判とか、毒ガスの問題その他、それ以前からあるいろいろな人権じゅうりんの問題があって、それが今回のコザ事件で爆発したという、いわゆるアメリカ側の責任に帰すべきものがありますけれども、同時に、一方では、私どもがこの委員会でも人権問題としていろいろ取り上げて、当然日本政府として、沖繩県民を保護する立場からアメリカに抗議し、あるいはそれをやめさせるというふうな処置をとるべきだというようなことを、いままで何回か要求もしてきましたけれども、そのたんびの政府回答というものは、日米親善の関係にあるんだからということで、事なかれ主義をとっておいでになった。その政府の事なかれ主義が、やはりこの事件の一部の責任を負わなきゃならぬのじゃないか。そこの反省から出発しなければ、今後このような問題を起こさないという具体的な処置は出てこないだろうと思うんですけれども、その点、総務長官のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  86. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 沖繩をこのような状態に置いたことの責任は本土にございますし、現在は自民党政権でございますから、私たち政府にあると思います。ただ、政府アメリカに対する姿勢は、国民の声をくみ取っていない、あるいは沖繩の声をくみ上げていないというおしかりでありますならば、私は一生懸命やっているつもりでありますけれども、相手方と合意しなければその結論が出てまいりませんので、その意味では私の努力の足らないということのおしかりを甘受いたします。
  87. 春日正一

    ○春日正一君 じゃ、具体的にお聞きしますけれども、今度のコザ事件一つ原因といわれておる例の糸満の裁判の問題、これについて金城トヨさんが殺された。しかも、その犯人が無罪の判決を受けている。この判決について日本政府として長官はどうお受けとめになるのか。また、日本政府アメリカ当局に対して、一体こういう判決に対してどういう意思表示なり抗議なりをされたか。そしてこういうふうな問題を、   〔理事山本茂一郎退席委員長着席〕 こんな判決が二度と出ないようにするためには何が必要だとお考えになるか、その点もお聞きしたいと思います。
  88. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) まず、アメリカ側裁判制度、あるいは軍の裁判というものがどのようなものであるかを、たとえば日本にはない陪審員制度などという制度、あるいは日本側では理解しがたい制度等について、現実にそれが日本国の一部で行使されている。それらについてよく理解をしてもらう努力を、事件のあるなしにかかわらず、まず米側は行なう責任がある。陪審員制度というものは、きめ手となる確証がなければ、結果、無罪にしてしまうという例は、たとえば「十二人の怒れる男」ですか、そういうような映画で私は非常な感銘を受けたのですけれども、そのような陪審員制度の実態というものをよく沖繩県民に知らしてあげる。あるいはまた、今回の糸満の事件等において、なぜこういう結果になったのか、その経過あるいは資料その他の問題等について、よく沖繩県民の納得する説明が必要であったと思います。総理大臣もその点については、このような問題をもう少しわかるような、親切な態度というものがあるべきではないだろうかということを、閣議でもものを言われましたし、愛知外務大臣もその指示を受けて、米側について、もう少し県民不在の一方的な判決行為というようなものでないような努力をしてもらいたいという申し入れをされているやに伺っております。
  89. 春日正一

    ○春日正一君 それから、今度の問題で当然出てきた問題として捜査権の問題、それから裁判権の問題、これがありますけれども、先ほど来捜査権の問題について、「捜査協定の覚え書き」というようなものが言われて、これで非常に進んだというように言われておりますけれども、しかし、実際にはこの捜査協定というものは、私、時間がないからすべて読んではおられませんけれども、この第三条の二項、三項というようなものを例にとってみても、米軍関係者の相互間、あるいは米軍内部にだけしか影響のない事件を除いて、沖繩県民とかかわりのあるすべての事件について、その捜査権琉球警察に移し、米軍機関が逮捕あるいは管理している犯人、容疑者すべて、琉球政府に引き渡すというようにすれば、そしてその捜査にゆだねられるというふうになれば、それだけでも事態はずいぶん変わってくると思います。アメリカの軍人が沖繩県民に被害を与えたという場合ですね、琉球の警察がこれを捜査し逮捕もするということになれば、ずっと事態は変わってくると思います。ところが、ただいまの協定を読んでみますとそうなってないんですね、だから、先ほどもお話しのあったように、きわめて欺瞞的な実効の薄いものになっている。これをやはりそういう実効のあるものに具体的にしていくように当然要求されるべきだし、要求すべきだと思います。  それから、ついでですから言っておきますが、裁判権の問題でも、アメリカ施政権の一部であるからなかなか困難だというふうに言われますし、それはアメリカとしても、最後のものとして復帰の前まで握っておこうということはわかるんですけれども、しかし、現にもう返るという日時もほぼめどがついて、あと一年半、しかも、その間も依然として人権じゅうりんの事件というものが頻発しておる。しかも、そういうものが、先ほどのように、人をひき殺した者が無罪になるというような判決が出るということになれば、これはがまんのならぬのはあたりまえなんで、だから、当然、こういうもりについては復帰以前にも日本移管するということを要求すべきだと思います。そうして、日本弁護士連合会がことしの七月十八日に見解を明らかにして、政府にも提出しておるようですけれども、「沖繩での司法権は米国に属しており、米側米軍軍法会議、米民政府裁判所と琉球政府側の琉球政府裁判所の三系統の裁判所が、沖繩統治の基本法である大統領行政命令の定める管轄規定に従って裁判に当っている。」、したがって、琉球政府側への裁判権移管は、米施政権下の移管にすぎないから、復帰前といえども裁判権移管は可能である。日本法曹界がこのような判断を出して、政府にこういう形で裁判権移管ができるのだということをやはり進言しておるわけですから、そういう大義名分に立っても、返還以前に返すということは論理的にも可能なんだし、政府としても当然これを要求するという立場をはっきりとるべきだと思います。それをおやりになるお考えがおありかどうか。  それからもう一つ最後にお聞きしておきますけれども、ランパートの発言ですね、あれは明らかに占領者として沖繩県民に対する一つの威嚇、そういうものですよ。こういう態度をとる。しかも、この問題の背後に毒ガスの問題があったということ、安全が保証されないから撤去の命令を私は出さぬぞというような、これは傲慢きわまる威嚇ですよ。こういうものに対して現地沖繩県民が非常な反発をして、これに対して那覇の教職員会、立法院でも問題としておるようでありますけれども、その他民間の団体も問題としておる。これは当然だと思います。日本でも東京の保谷の市議会でもって、自民党も含めて満場一致でランパートのこの発言に抗議して、高等弁務官を罷免せよという要求を決議しております。だから、こういう国民の気持ち、これを代表して、政府が当然アメリカに対してこのランパートの発言の撤回を要求する。それくらいのことは日本政府として当然のことじゃないのか。むしろ、そういうことをやったらアメリカがおっかながるとか、気分を害するとかいうことをおそれて、言うべきことを言わなんできたことが沖繩県民を苦しめ、同時に、今回のような事件にまで至らざるを得ないようにしたのじゃないのか。問題は一番そこにあるし、政府態度にあるのだと思うのですけれども、その辺について、裁判権の問題、捜査権の問題、それからランパートの発言の問題、それについて長官の考えを聞かしていただきたいと思います。
  90. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 捜査権については、その過程において、私たちはやはりもっと前進したもの、たとえばゲート内に現行犯を追っかけて入る場合において、米側の了解をとらなくても、そのまま琉警の警察官が追跡逮捕できるということの要求もございましたが、しかし、琉警側も長い経験から、ゲートの中に琉警側だけで入った場合における、起こるかもしれない不測の事態というものを、やはり現実に事件を処理してまいりました琉警としては、第一線としての立場心配をされたわけでありまして、そこで、やはりこれはもちろん県民でありますけれども、大体基地の中における米側の要員の立ち会いのもとに入るということで不測の事態の起こるのを避けざるを得なかったというようないきさつもございますし、あるいはまた、ただいまの裁判管轄権お話がございました日弁連の問題等を念頭に置きながら、たとえば琉球政府も、裁判所の発行する令状によって、米側の了解なしに琉球政府の逮捕権その他捜査権行使できるようにということの話もいたしたのでございますが、これは原則のいわゆる管轄権という議論の中にまた踏み込んだ議論になりまして、結果としては、今回の捜査共助協定に入ることができなかったといういきさつ等は、率直に申し上げて、ございました。でありますから、今後といえども捜査権琉球政府の自主性、琉警の自主性というものによって県民が最悪の場合に守られておるという実態の確保にはさらに協力を重ねていきたいと思いますし、裁判管轄権に対する日弁連の意見は、一つの有力な見解として愛知外務大臣米側に伝え、米側もその資料を入手してその検討をしておるということを私は伺っておる次第でございます。  なお、ランパート発言に対しましては、これは先ほど来申し上げておりますように、いろいろの見方、批判があろうと思いますが、私が政府を代表していまことでランパート高等弁務官発言を取り消せということを言う立場にございません。かりに取り消せと言っても、取り消さないと言うことも向こうの自由でありますから、そういうような言い方でない、沖繩県の県民方々を預かっておる責任者としてどうあってもらいたい、どうあるべきだという話し合いはしたいと思いますけれども、公的な場所においてそれを取り消せと言う、私にはそういう権限が実はないわけでございます。
  91. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  92. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 速記をつけて。  この際、便宜私から各派の共同提案にかかる  沖繩における裁判権移管に関する決議案を提出いたします。  まず、案文を朗読いたします。    沖繩における裁判権移管に関する決議   去る十二月二十日コザ市で起こつた事件の背  景には、米軍人の犯罪に対する裁判権米側に  あり、沖繩県民不在の一方的な処理が行なわれ  てきたことに対する県民のうつ積した不満があ  つたものと考えられる。   しかるにランパート高等弁務官が、特別声明  において、この事件を理由に毒ガス撤去の延期  もあり得ることをほのめかしたことは、県民感  情を無視した発言であり、きわめて遺憾であ  る。   よつて政府は、米国政府に対し、裁判権の民  移管のすみやかな実現をはかるよう申し入れる  べきである。   右決議する。  本決議案を本委員会の決議とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。  ただいまの決議に対し山中国務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。  山中国務大臣
  94. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) ただいまの御決議は、各党派一致しての、満場一致の御決議でございます。その御決議の趣旨を体し、政府としてもその方向に向かって善処することをいたしたいと存じます。
  95. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) なお、本決議の取り扱いにつきましては、委員長に御一任願います。  本調査に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十六分散会