○浅井美幸君 私は、公明党を代表して、現下の国際的、国内的重要問題が山積する中で、特に日中問題、
日米繊維交渉、公害問題などに焦点をしぼって、総理並びに関係閣僚に質問をいたしたいと思います。
質問に先立ち、沖繩の祖国復帰に先立って、
沖繩県民の待望していた
国政参加が実現し、本院に五名の沖繩県選出議員を迎えることができましたことを心から喜ぶものであります。(拍手)
最初に申し上げたいことは、本臨時国会は、言うまでもなく、国民的重要課題である公害問題を審議するわけでありますが、われわれ野党三党は、かねてからすみやかな公害臨時国会の開催を要求しておりました。しかるに、政府は言を左右にして現在まで遷延せしめ、緊急の対策を怠ったことは、行政府の立法府軽視、民主主義の精神を踏みにじることはなはだしいというべきであり、許しがたいことであります。(拍手)野党三党の要求を無視して、今日まで遷延させた理由をしかと伺いたいのであります。
一九七二年沖繩の祖国復帰のための準備と折衝が続けられております。ここで最も肝要なことは、いかに
沖繩県民の意思を反映していくかということであります。政府の一方的な押しつけであってはならないのであります。すなわち、教育委員公選制度の否定、中曽根防衛庁長官の独善的な復帰後の防衛構想などは、このことを露骨に示したものといわねばなりません。
そこで私は、
沖繩県民百万の平和と福祉を実現する真の祖国復帰のために、次の事柄について伺うものであります。
まず第一に、政府は返還協定に県民の意思を反映する決意があるのかどうか。
第二に、過日発表された第一次沖繩復帰対策原案においては、教育委員の任命制をうたっていますが、これは現行の公選制のままにすべきであると思うが、その考えはあるか。
第三に、返還協定の締結はいつごろを予定して
いるのか。
第四に、沖繩の外資対策をどうするのか。
第五に、米軍用地の処理をいかなる方法で行なおうとするのか。
第六に、沖繩への自衛隊派遣について、さきの中曽根構想を撤回すべきであると思うが、この点についてはどうか。
第七に、米軍基地の撤去、縮小、返還、毒ガス撤去を、積極的に
アメリカ側に要求するつもりはあるのかどうか。
第八に、近来激しくなっている米軍基地労務者の解雇対策に関連して、沖繩の基地労務者の雇用条件の改善、離職対策、間接雇用制の確立等緊急を要する課題について、沖繩の復帰を待つまでもなく、早急な対策を実施しなければなりませんが、どのように考えているか。
第九に、尖閣列島の石油資源開発をめぐる日本、台湾、米国の関係をどう判断し、対処しようとしているのか。今後日
中国交正常化が実現したときに起こる問題をも含めて、政府の所信を明らかにしていただきたいのであります。
この一九七〇年代は、国際的にも国内的にも、まさに激動の時期を迎えております。中でも、
中国をめぐる国際政治の展開は、七〇年代最大の課題であるといっても過言ではありません。特に、昨年十一月の佐藤・
ニクソン共同声明以来、満一年を迎えることになりました。いわゆる第三次日米安保体制が発足してのこの一年は、
中国をめぐる国際政治の潮流が大きく変化しようとしているのであります。
すなわち、
カナダに続く
イタリアの
中華人民共和国政府の承認によって、承認国はすでに五十五カ国に達し、さらにオーストリア、ベルギーなどのヨーロッパ諸国、南米、アフリカの多数諸国が
中華人民共和国政府の承認を行なおうとしているのであります。
また、先日来の第二十五
国連総会の
中国代表権問題の表決結果は、すでに明らかなとおり、
中国代表権問題が討議され続けて二十年、初めて
中華人民共和国の国連復帰を認める、いわゆるアルバニア
決議案が過半数の賛成国を獲得したのであります。
これら一連の動きを見るとき、もはや
中華人民共和国政府の承認、国際社会復帰は、世界の潮流であり、動かしがたいものであるというべきであります。
しかるに、政府は佐藤・
ニクソン共同声明によって、韓国、台湾との運命共同体を強調して、日米安保体制を
アジア核安保に拡大し、
中国敵視、
中国封じ込めの姿勢をますます露骨にしようとしていることは、時代錯誤もはなはだしく、緊張を激化し、
わが国の平和に逆行するものといわざるを得ません。むしろ、おろかなる
中国敵視政策をすみやかに撤回し、緊張緩和のためのあらゆる平和努力を払い、
中国を挑発する要因をみずから取り除くことがきわめて重大な
わが国の使命であり、特に
中華人民共和国の承認と国際社会の復帰は、
わが国外交の最重要緊急テーマであります。
従来、政府の対
中国問題に対する政策は、長期的視野とその見識が全く見られず、すべて
アメリカの
アジア政策、
中国政策に無批判に追随し、その結果、日米両国の
中国封じ込めによる
中国孤立化政策はすでに破綻を来たし、いまや、日米両国が国際的孤立を招き寄せようとしているのであります。しかも、
わが国が政経分離を固執して、日中政府間に公式の接触ルートを持たないのに比べて、
アメリカは、ワルシャワにおける大使会談などの政府間交流、あるいは昨年来第七艦隊の台湾水域常時パトロールを随時パトロールに切りかえるなど、さまざまな米中接近政策が講じられ、
アメリカの対
中国政策の変換が伝えられているのであります。もし、
わが国が従来の対
中国硬直姿勢をとり続けるならば、最後に孤立するのは、
中国に最も近いわが日本という皮肉な現象となって
あらわれ、国際外交場裏における最も悲劇的な役割りを果たすことになることすら予想され、政府の責任はきわめて重大であります。(拍手)
そこで、総理にお伺いしたい。
政府は、
中国の国際社会への復帰についてどのように考えているかであります。すなわち、従来の政府の対
中国政策は、あくまでも政経分離方式であり、かつ
中国の出方論に終始した、まことに抽象かつ拒否的態度であったと私は理解いたしております。現在のように、
中国をめぐる国際政局が大きく変化をした現在、政府は、
中国に対してどのような具体的政策をもって臨もうとするのか。
そのまず第一は、
中国並びに台湾は、ともに一つの
中国論に立っておりますが、政府は、今後の
中国問題に対する政策の基本は、一つの
中国論に立つのかどうか、それとも二つの
中国論、ないしは今後台頭を予想せられる一つの
中国、二つの政府論をもってするのか、伺いたいのであります。
また、政府は、
中華人民共和国を
中国の正統政府として承認する意思ありやなしや。また、その方策はどのように進めるかについて
お答え願いたいのであります。
総理は、さきの答弁におきまして、
中国は一つ、双方が全
中国の主権を主張している現在、国際信義にもとることはできないと述べられたが、それでは、
台湾政府が全
中国を支配することもあると予想しているのか、また、大陸反攻をもってそれを成就することを総理は予想し、期待しているのか、御答弁願いたいし、今日の世界において、台湾が全
中国を将来支配するなどと信じている国が一国でもあるのか、この点についても
お答え願いたいと思います。(拍手)
また、
中国の国連復帰に関しては、一九六一年の
国連総会におけるいわゆる
重要事項指定方式に固執して、積極的提案国であったのでありますが。この
重要事項指定方式は、
中国を国連から締め出す意味において用いられているものであることは明らかであります。七億五千万人という、世界人口の四分の一を占める大陸
中国が、
中国を代表しないということは、全く虚構の上に組み立てられた論理であります。憲章十八条を乱用したこの非現実的かつ冷戦的発想による
重要事項指定方式が、もはやアルバニア
決議案の表決に示されたとおり、何ら説得力を持たないばかりか、国連の場において、いまやこの方式が理不尽な方式として各国の目に明確に認識されつつあるのであります。
本年の
国連総会における鶴岡国連代表の演説においては、
わが国が
重要事項指定方式再確認
決議案共同提案国となった積極的理由は何ら見られないのでありますが、まず第一に、かかる
中国承認、国際社会復帰の
国際世論が必然的に高まっているにもかかわらず。かつまた、国内的にも、
中国の国連復帰に際して、少なくとも重要事項指定決議の共同提案国になるべきではないという国民の声は、世論調査の結果においても歴然としているにもかかわらず、
わが国政府がなぜ重要事項指定再確認
決議案の共同提案国となったのか。主体性なき盲従外交といわれてもいたし方ありますまい。その理由を明らかにしていただきたいのであります。
さらに、歴史的ともいうべき今
国連総会におけるアルバニア
決議案の表決結果をどう評価し、今後どう対処しようとするのかも明らかにしていただきたい。
日本政府は国連において、来年以降も引き続いて重要事項指定再確認
決議案を提案しようとするのかどうか、明らかにしていただきたい。
アメリカと密接な関係にある
カナダの
中国承認は、まさに
カナダの自主的な外交姿勢を示す英断であります。政府が対米追随外交でないというならば、いまここに政府の自主的な対
中国政策を明らかにしていただきたいのであります。
日華
平和条約の取り扱いをどう考えているのか、この点についてもあわせて明らかにしていただきたい。
佐藤総理は、過日の
所信表明演説におきまして、日中大使級会談の呼びかけ、分裂国家間の武力不行使協定の締結の呼びかけの用意のあることを明らかにいたしました。しかし、これをどう具体的に実施しようとするのか明示しなければ、従来のこの種の呼びかけが何ら成果のあがらないものとなっていることからも、相も変わらぬリップサービスに終わってしまうと考えられるのであります。御見解を承りたい。
むしろ、私がここで指摘したいことは、昨年秋の
日米共同声明、さらには日本の際限のない軍事力増強政策、さらには国連における
中国代表権問題に対する態度など、一連の力による対決姿勢や、
中国封じ込め政策を誠意をもって改めることが
中国との国交正常化を実現するために不可欠であるということであります。
さらに、
わが国の向かうべき方向は、世界唯一の平和憲法の精神を世界に宣揚し、平和国家、文化国家として、
わが国の持つ経済力を
わが国の科学技術、文化水準の向上に注ぎ、さらにその能力を十分に発揮して、発展途上国の文化水準の向上にも資するべきであると思うのであります。(拍手)
従来、世界の常識は、経済的余力はすべて軍事力の増強に注がれることでありました。しかし、おそらく七〇年代は、科学技術や文化的価値が大きく評価され、その力を平和的に駆使し得る国が世界で最も大きな影響力を持つことになるでありましょう。そういう面で、
世界各国は真剣に軍縮を考えようとしているときに、最近の
わが国は
軍事大国一への傾斜を著しくしていることはきわめて遺憾であります。
わが国のごとき高度
工業国家における軍事力の増強は、兵器の国内生産という必然的な結果を招き、この兵器生産能力は科学技術の急速な進歩により、兵器の旧式化の速度を早めて、さらに生産設備の増強、更新となり、生産設備の過剰は、自国の兵器供給から兵器の対外輸出という面に発展することは、歴史の証明するところであります。
すなわち、軍事力増強の発展は、産軍複合体を生み、かつはシビリアンコントロールの限界を飛び越えて自己運動を始め、軍事国家として急激に巨大化することは火を見るよりも明らかであります。
アジア諸国をはじめ
世界各国が、
わが国の軍事力増強路線に重大な脅威の危惧を抱くのは、
わが国の経済力の向かうところが軍事的脅威として著しく成長することを予測しているからであります。いたずらに軍事力や経済力を誇示し、それに政策の重点を置くのではなくて、平和と
国民生活に
人間性を回復する文化的価値を結実させる方向に向かうべきであり、したがって、とりあえず第四次
防衛計画の廃棄をはじめとする軍事力強化路線の撤回、さらには、外交政策においてもこのことが重視されなければならないと思うのであります。(拍手)
また、徴兵制が憲法違反であり、
わが国は今後一切徴兵制をとることはあり得ないことを明らかにしていただきたいのであります。
さらに、昨日、自衛隊市ケ谷東部方面総監部において起こった三島由紀夫事件は、きわめて重大な示唆を含んだ大事件であります。いやしくも今日の民主主義社会と平和憲法は、
わが国が苦悩に満ちた敗戦の多大の犠牲の中からつかみ取り、国民が力を合わせてはぐくんできた貴重な遺産であります。法と秩序は民主主義のルールによって運営されなければならないことであり、憲法を自衛隊の行動により改めさせようなどということは、許されない暴挙であります。今回の事件の中に、この平和民主主義社会の将来に対する重大な危惧を持たざるを得ないのでありますが、政府の見解を伺いたいのであります。
今日、日米両国の経済関係は、
日米繊維交渉に象徴されるごとく、きわめて緊迫したものになっております。この原因は、あくまでも
アメリカの
保護貿易主義を相手国に押しつけようとするエゴイズムに由来することは明らかであります。今日、世界貿易の拡大発展がひとしく各国から強く望まれているとき、自由貿易の推進者として戦後の世界経済発展に大きな役割りを果たしてきた
アメリカが、いまやそれに逆行する
保護貿易主義の立場に立ち、輸入数量制限を強行せんとすることは、はなはだ遺憾であります。今回
アメリカが
わが国に対し強圧を加えております繊維の輸出自主規制の問題は、ガットの場において解決するのが条約の趣旨であります。もしも輸入品の増大によって
アメリカの繊維産業が被害を受けているため規制を必要とするならば、その解決を輸出国の自主規制取りきめといった形に求めるべきではなく、ガット十九条により処理されるべきであります。しかるに、
アメリカの主張は、この規定を全く無視し、しかも安易な方法で実質的な輸入制限を
わが国の手で行なおうとしており、これは大国主義的な横暴というほかはなく、また、
わが国政府がいままでとってきた軟弱な姿勢にまことに遺憾というほかはないのであります。(拍手)
さて、
アメリカに大きく台頭した
保護貿易主義は、テレビのダンピングの疑いを理由に関税評価差しとめ、金属洋食器の関税割り当てなど、繊維以外の品目にも次々と波及して、今後さらに多くのものに不当な輸入制限を課してくることが予想されるのであります。このような重大な時期にあって、
繊維交渉に見られるような政府の
一貫性を欠いた弱腰の態度では、今後安心してまかせておけないと思うのであります。
日米繊維交渉は、一年有余の長きにわたってもめてきたのであります。その大きな一つの原因は、昨年十一月の佐藤・
ニクソン会談における際の
アメリカ側に対する総理の軽率な約束によるものである、このようにいわれており、この責任は重大であるといわねばなりません。もともと経済ペースで解決すべき問題を政治ペースに乗せられたところにこじれる原因があったのであり、沖繩返還と繊維のからみ合いは、総理がいかにその事実を否定されても、今日までの日米交渉の経過を通じて後退に後退を重ねる政府の姿勢を見たとき、すなおに受け取ることはできません。(拍手)もはや、今日においては、この密約説は公然の事実として認識されているのであります。
ここで総理に
お尋ねしたいことは、
アメリカが一年有余の長い交渉の経過を通じて最後まで一貫して主張を変えることがなかったのにもかかわらず、
わが国政府はなぜ終始譲歩を続けたのかということであります。
アメリカ側の主張はきわめて説得力を欠いた理不尽のものであることは、総理みずからも認めておられるはずであります。米国は、国際収支の悪化とそれによるドル不安によって、政治的にまた経済的に国際的権威は低下したとはいえ、依然として世界最大の
工業国であり、最も先進的な産業構造を持っている国であることは、あらためて申し上げるまでもありません。また繊維業界としても、従来より世界最大の生産国であったし、現在においても、化合繊の分野において世界的に群を抜く地位にあることは御存じのとおりであると思います。さらに、米国業界は輸入の増大によって重大な衝撃を受けているといっているが、それを裏づける統計的な立証を拒否しており、むしろ紡繊業においても、衣料製造業にあっても、最近の好調ぶりは、利益率の上昇、投資動向の上向き、雇用の増大等を見ても、繊維業界の好況は明らかであり、そのことは総理もよく御存じであるはずでございます。
政府は、このような米国の不当な要求に対して全面的に譲歩してまで早期解決をはからねばならない理由がいずれにあるのか、まことに理解に苦しむところであります。交渉再開にやっきとなったのは
わが国であり、今回また、業界との調整を得られぬまま
見切り発車までして交渉妥結を急ぐのはなぜか、その理由を明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
さらに、このような政府の行為は、昨年五月の衆議院本会議において満場一致をもって可決した、
わが国の
アメリカに対する繊維品の輸出の自主規制に反対する決議を全く無視するものであります。国権の最高機関たる立法府の決議、すなわち国民の意思がむざんにも一方的に行政府によってじゅうりんされることは、全く民主主義のじゅうりん以外の何ものでもございません。(拍手)これは単に繊維問題というよりも、民主主義の基本に根ざす問題であり、総理の確たる見解を求めるものであります。
米国の保護主義の台頭は、構造的に根深いところから出ております。それゆえ、単に繊維のみ
アメリカ側の言いなりになったとしても、日米経済関係の解決とならないことは明らかであり、綿製品におけるLTAの二の舞いとなることは十分予測されるところであります。そして、むしろこれが一つのきっかけとなって、次々と他品種にも同じ圧力が波及するであろうことは、容易に考えられます。
今後、
わが国はあくまでも自由貿易、ガットの原則の通商政策の分野に徹底させる政策を貫くことこそ肝要であります。従来のごとく対米追随外交は、もはや百害あって一利なしであることを認識し、
自主性のある経済外交を展開していくべきであると確信するものでありますが、総理の所信を伺いたいのであります。(拍手)
ここで、わが党調査団が、全国主要な繊維生産地における調査をいたしましたが、いまさらながら、この
アメリカが強要する繊維の自主規制問題が、繊維業界、特に中小企業に対して大きな影響をもたらしていることを知ったのであります。まだ輸出規制そのものが実施されていないのに、すでに大きな不況が襲ってきているのであります。
その第一は、先行き不安のために、商社、メーカーとも製品のストックを減らす方向で下請の中小企業に対する発注が激減していること。
第二に、そのため業者は、仕事がほしいために、採算のとれない無理な工賃で受注するしかないというせっぱ詰まった状態に追い込まれている。
第三に、銀行の中小企業に対する融資はきわめてきびしい選別融資になったため、資金難におちいっております。
これらの要素がからみ合って、倒産続出、赤字続出、人員整理続出という状態が起こっているのであります。
いまや、業界も、また働く従業員、ともに生活の不安に直面しており、ひいては社会不安の種にもなりかねないというのが実情であります。このときにあたり、政府の重大決意が国民総意として求められておるのでありますが、総理の所信を伺いたいのであります。
また、
アメリカの輸入制限措置が実施される段階においては、
わが国として、ガット二十三条による対抗措置に踏み切るお考えはあるのかどうか、あわせてお伺いしたいのであります。
最後に、今国会最大の焦点である公害問題について
お尋ねします。
いまや、公害は人類の生存に重大な脅威を与え、人間社会の真実の繁栄とは何かを真剣に追求されるときがきております。GNP至上主義で急速な成長を遂げた
わが国経済は、同時に驚くべき公害の拡大をもたらしたのであります。その現況は、
わが国をして公害列島と呼ばれるごとく、水と空を、そして大地を汚染し尽くし、加えて食品、薬品公害にまで及び、有害物質による人体の汚染濃度を高め、生命の危機を迎えているのであります。
そして、このような公害の暴威を許している企業優先の、人間無視の政治に対し、国民の怒りは、いまや頂点に達しております。(拍手)公害悪を追放することは、すべてに優先して、大胆に、そして迅速に、確実に実現しなければならない国民的重要課題であり、かつその対策は、深刻な現状認識と反省に立つべきであると考えます。
わが党は、公害追放の国民的要請にこたえるために公害総点検を実施し、全国各地における公害の実態を把握し、分析調査の結果を公表してまいりました。その結果、東京湾をはじめ伊勢湾、大阪湾、洞海湾等、日本の沿岸は完全に死滅し、まさに死の海と化しております。猛毒性物質のシアン、有機水銀をはじめカドミウム等、大量の有毒物質によって汚染され尽くしたこの死の海から、第三の水俣病や第二のイタイイタイ病が発生しないと、だれが保証できるでしょうか。(拍手)
景勝松島に昔の面影はすでになく、漁場を奪われた漁民の怒りが渦巻いております。日本の地中海といわれた瀬戸内海も、また同様であります。さらに東北各県における土壌汚染の状況は、すでに公害病の潜在が十分懸念され、秋田においては、新しいイタイイタイ病の疑似患者まで発生しているといわれております。
まさに国民は、公害の恐怖におそれおののき、政治に対する
不信感は日増しに増大しております。いまこそ、
公害絶滅への英知の結集と勇気ある政治の実践しかないのであります。しかるに、今回政府が提出を予定している法案は、公害の当面する対症療法的な段階においても、なお不備な点が多々あることを指摘せざるを得ません。それは、政府部内からも、規制が骨抜き同然との批判が出ていることでも明確であります。
そこで、提出を予定されている法案全般を通して、問題点について質問いたします。
公害罪の設定について、政府が大企業の圧力によって新立法を見送ろうとしたことが伝えられるや、国民は、大きな怒りと政府への
不信感をつのらせました。その後政府は、公害罪を立法しても、その実効、効果のあがらぬものにするという説得を財界に試みて、その了承の上提案ということが伝えられております。従来の政府の企業に対する擁護姿勢から見て、きわめてありそうなことであると国民は思っております。政府は、この財界の圧力に屈せず、公害罪の成立と、その厳格な実施についての明確な見解を示していただきたいのであります。(拍手)
公害対策基本法は、経済との調和条項については削除することになりましたが、内容は、いまだ対症療法的といわざるを得ません。なぜかならば、基本法は、国民の健康と
生活環境の保全を第一義とすることはもちろん、欧米諸国のごとく、
自然環境の保全をはかるという
公害絶滅への基本姿勢を確立すべきであります。そこに基本法の精神があると思いますが、今回の改正では、その姿勢と決意が盛られていないのでありますが、この点についてお伺いしたいと思います。(拍手)
先ほど総理は、世界に冠たる公害法案と仰せられた。いかなる理由をもって世界に冠たる法案であるか、明快にその理由を説明していただきたいのであります。(拍手)
次に、産業を営むすべてのものに、大衆に迷惑をかけないという企業の社会的責任を自覚させ、企業道徳を高揚し、同時に法的な規制の強化徹底、監視体制の強化が必要なのであります。
特に企業の無過失責任の立法化をいまだに避けている政府の態度は、全く不可解といわざるを得ません。無過失責任を認めない現行法のもとで、現在まで公害はどれほど拡大、深刻化してきたか、その例は水俣病やイタイイタイ病、第二水俣病の実態から見ても明らかであります。公害の特質から、無過失といえども、事件発生の責任は
公害発生源である企業が負うべきことは当然であり、無過失
企業責任の問題をたな上げにしていることは、政府が公害問題の解決についていまだ企業側に立つ姿勢を如実に示しているといわざるを得ないのであります。(拍手)
公害対策基本法の
企業責任の確立のポイントとしては、
公害発生企業のこの無過失責任を明示しないことはあり得ないのであります。この明示しない理由について明らかにしていただきたいのであります。
また、企業内に安全衛生管理者と同様に公害防止管理者を置き、その資格は国が認定するものとし、同時に、
企業責任を明らかにするために、企業代表者が公害防止総括責任者となることを規定すべきであります。
なお、また、
公害防除工程を生産工程に義務づけるとともに、廃棄物の処理を立法化するとともに、これまた義務づけるべきであると考えるものであります。
以上の
企業責任の確立について、明確な
お答えを願いたいと思います。
わが国経済の計量的な発展計画は、今年すでに政府が発表したとおりであります。しかしながら、この計画に基づく経済の発展が公害の発生をますます増大する傾向にあることは、世論も深刻に憂慮するところであります。そこで、
公害絶滅の計画的な諸施策の推進と、それを実現する体制を年次計画として立てなければならないと考えるものであります。このことは、現在の科学の力をもってすれば不可能なことではありません。政府は、産業廃棄物処理処分を含めた
公害絶滅のための年次計画を立てる用意があるかどうか、
お答え願いたいのであります。(拍手)
公害防止のためには、環境基準の規制強化と排出基準の運用の高度化とあわせ、工業立地、都市構造、車両運行の計画的な規制と、適切、迅速な運用が重要な要素となることは言をまちません。したがって、企業立地の規制と許可制の実現は不可欠の要素であります。すなわち、過密都市や
公害発生源の多い地域及び水系における工業立地については、事前に当該地区の都市計画を勘案するとともに、汚染の可能性によっては、企業の立地を規制する法の規定がない限り、事実上
公害対策は常に
公害発生の後手に回り、今回のせっかくの改正にもかかわらず、公害関係の各法はざる法となるおそれを多分に持つことになります。(拍手)これら立地条件の規制強化についてはどのように考えておるのか、具体的に御答弁を願いたいのであります。
公害対策の基本的問題として、単にこれが法の整備のみにとどまっただけでは、その効果は期待できません。その法を機能化、その法を効果あらしめるためには、調査、監視体制の強化並びに
公害防除技術の不断の進歩、研究改善が実施されなければなりません。
わが国が先進諸国に比べ
公害対策の最もおくれているものは、まさに
公害防除技術と調査監視体制の整備であります。したがって、
公害対策審議会を抜本的に改組し、公害に関する科学的専門事項について調査、審議をさせるため、自然科学及び人文科学全般にわたる科学者をもって構成し、あらゆる角度から総合的に対策を検討することを提案するものでありますが、これに対してどのように考えるか、
お答え願いたいのであります。(拍手)
また、公害専門技術者の早期養成は目下の急務であります。政府においては、公害研究所の設立を用意しているようであります。これにあわせ公害専門技術者の養成機関をつくり、国と地方自治体に公害検査官を配置する、権威ある検査官体制を確立する必要を強く主張するものであります。政府はどのように考えているのか、
お答えいただきたいのであります。
さらに、監視体制として、河川の汚濁防止のための基礎調査と水質汚濁の監視のための水質汚濁防止センターの設置、大気汚染防止センターの整備、増設とあわせ、コンピューターの採用はもちろん、観測点を広域的に、かつ細分して配置し、さらにはテレビ、新聞等による監視データの早期公開の迅速化等の措置を実現すべきであると考えますが、これに対する
お答えを伺いたい。
行政体制の強化について
お尋ねします。
現在、各省庁に分掌された
公害行政は、セクト主義を各所に暴露し、責任官庁不在とさえいえる中で、公害問題の解決を遷延してきました。現在中央
公害対策本部は、その陣容も三十数名で組織され、担当大臣も他を兼職し、その機能は各省庁の調整機関にすぎないといわざるを得ないのであります。
わが国の
公害対策はようやくその緒についたという段階であり、急速に要求される諸施策は、あくまでも被害者国民の側に立ち、
わが国の
自然環境の保全を確保するため、強力な権限と勇気ある執行機関としての確立が強く望まれるのであります。
わが党は、現在各省に分掌された
公害行政の各部局を統合し、これを
環境保全省として設置することを強く要求するものでありますが、これに対する
お答えを伺いたいのであります。(拍手)
次に、地方自治体への公害規制
権限委譲については、今回政府は、規制権限体制を地方自治体にウエートを置くとしております。企業としての広域的な
公害発生源である電気、ガス事業については、通産大臣を経由して間接的な権限の譲渡であり、地方自治体は通産省に従属する結果となります。このことは、公害の大型発生源である企業に対して、地方自治体が規制権限を持つことができないことであり、規制権限の事実上の形骸化に通ずるものであります。また、地方自治体に対する権限の委譲について、これには膨大な財源措置が予想されます。政府は、
権限委譲に伴う財源措置の裏づけを並行して行なわず、権限譲渡のみを先行させようとしていることは、地方自治体にかえって大きな負担を与え、地方自治体の
公害行政を実行不可能に追い込み、
公害防除対策の実質的な骨抜きをはかろうとするものであります。これらについて、政府の今回の方策が、権限、財政ともに、円滑なる公害防止に結びつく根拠を明確にしていただきたいのであります。
聞くところによれば、これらについて自治省においては、地方財政に対する特別措置に関する
立法措置が用意されていたにもかかわらず、これらの提出を今国会見送ったと伝えられますが、あわせて
お答え願いたいのであります。(拍手)
公害対策が中小企業に及ぼす影響は、その費用負担においてきわめて深刻なものがあります。政府は特に中小企業について特別な計らいをすることを、強く求めるものであります。