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伊藤説明員 ただいまメモを忘れまして、おくれましてたいへん申しわけございません。
国連大学につきましての
審議経過と今後の
見通しにつきまして、
概略御説明さしていただきます。
国連大学につきましては、十月
ユネスコ総会で一応
決議ができまして、それから十二月の
ニューヨークにおける
国連総会で
方向が一つ決定しております。その点について御説明申し上げます。
ユネスコの
動きという点に御
関心が深かろうと存じますので、そのバックグラウンドと申しますか、
動きにつきまして
概略御説明させていただきます。
国連が昨年の九月、
国連大学設置の
必要性を強調いたしまして以来、
ユネスコのほうの
態度は非常に消極的でございました。それは、なぜ
ユネスコがこういう問題に消極的であったかという点を私なりに推測いたしますと、
ヨーロッパの中におきまして、
ユネスコは
大学の教授とかそれから
文化、
学識経験者、そういった集まりのところでございますので、これに対しましては相当じっくりした
研究と批判をやっていかなければいけないという
態度を基本的に維持しておりますので、その中にあります
パリの
ユネスコの
本部は、その空気を反映いたしまして、やはりこれは火中の栗を拾うようなものだ、
実現性のないものに飛び込むのはいささかどうかと思われるという点があったかと存じます。
なお、
ヨーロッパの
諸国は、今度の
総会でも
経験いたしましたように、
国連大学のようなものを
日本なら
日本という
アジアの国につくった場合に、
ヨーロッパのこれまで持っております
国際性を持った諸
大学のいままでの
既存の
利益——と申しますとオーバーな表現かもしれませんが、
既存の地位が多少新しい
国連大学のほうに進んでくるんじゃないかという点がかなりおそれられているようでございます。
〔
委員長退席、
谷川委員長代理着席〕
さようなものを新たにつくるよりは、
ヨーロッパの現在の
大学——その
大学ば約二十何%、多い
大学におきましては半数以上が外国の、
発展途上国の学生に開放しているというような
国際性を持った
大学がかなり多いものですから、その
肩がわりをさせるのはどうかという
考えがあったのは事実でございます。
しかしながら、
ユネスコの
事務局は、先般
日本に来朝いたしました
ユネスコのナンバーツーのアジセシアという人が
国際教育年に出席いたしまして、
日本の朝野にわたる
国連大学の
設置に関する
熱意というものにいたく動かされたようでございます。
日本のような国で、かつこの
熱意をもってすれば、これは
日本が
国連大学の主役を演じてくれるというところで、
可能性が出てきたという判断を持って帰りまして、そうして八月、帰るやいなや、直ちに
ユネスコの
幹部会を開きまして
方向転換をやったわけでございます。私
たちが行きました際に、十月に
パリの
ユネスコの
総会に臨んだわけでございますが、その際には、
ユネスコの
事務局は
日本と手を握って、そして
発展途上国をバックに控えてこれを
実現しようじゃないかという、非常な強い
熱意を示してくれたのでございます。私
たち、この線に沿いまして、とにかく
招致の問題の前に
設置をきめるということの大切なことに思いをいたしまして、
全力を注いだわけでございます。
しかしながら、オランダとかイギリスとかスイスとか、
ヨーロッパの
諸国はやはり依然として強い
反対の
態度を示しております。何もそういうものを
アジアにつくるのにわざわざ多額の
拠出金を出す必要もなかろうじゃないか、いままでのものでいこうじゃないかという線を出したわけでございます。
それで、私
たちは、
ユネスコの
事務局と
中心国、それから
発展途上国、さらに
アメリカ等の
主要国も若干加えまして、
決議をいたしたわけでございます。その
決議の
内容は、かいつまんで一点でございます。
ユネスコは、約十カ月間の間に
国連大学に関する全面的な
研究をしろ、それをウ・タントは頼んでくれということでございます。これをつくるとかつくらないという問題は、
学識経験者と
大学人と集まって
研究すべき問題であって、いますぐ軽々に言うことは相ならぬというのが
ヨーロッパの国の強い姿勢でございまして、私
たち、その点は妥協いたしまして、
設置の
必要性は特に強調せず、とにかく十カ月の間これを
研究せよという点で、
ユネスコのほうはおさめてまいったわけでございます。
舞台は
ニューヨークに移りまして、
ニューヨークの
国連総会では、十二月の初旬からこの
審議が開かれたわけでございます。この
審議の結果は、新聞ですでに報告されておりますように、九十四カ国が賛成し、十一カ国が保留いたしまして、
反対はゼロで、きまったのは、これから要点を申し上げます
決議でございます。私は、これをしぼりまして、四点あろうかと思います。
四点の第一点は、来年の五月末日までに
各国の
政府の
意見を出してくれ、財政はどのくらい負担できるかということまで入れて、
政府の
意見を
国連に出してくれというのが一点でございます。第二点は、
ユネスコで十カ月
審議したのを踏まえて、
態度をきめるという勉強をやるために十五人の
委員会を設ける。
日本もそこに入りたいということでございます。それから、それは来年の秋の
総会で、大体
設置の
方向に進むように向けていこうじゃないかというようなのが
決議の
内容でございます。
これに対しまして私
たちは、これを受けましてこの
設置につきましての
全面協力ということで、このための
予算要求をいたしておるとともに、この
内容につきまして、できるだけの
協力を惜しまないという形の体制を整えたいと思っております。
なお、十五人
委員会とか
ユネスコの
委員会には、向こうも当然予想しておると思いますが、
日本からの
専門家を任命してもらうということも私
たち信じておる次第でございます。
この
重要性にかんがみまして、それから
国連事務局、
ユネスコ事務局並びに全般の、特に
発展途上国、
中心国の期待に応じまして、私
たちは、この
実現に向かって最大の
努力を払うべきであるというふうに感じておるのでありまして、
大臣にも叱咤勉励されているわけであります。
なお、
文化センターにつきましては、
アジアの
文化というものは、非常に古い
伝統と長い
経験といいものを持っているにもかかわらず、とかく
西洋文明のもとに外に出てこなかったというおそれがありまして、このために、
ユネスコの、
アジアに
日本の
文化の
センターのようなものをつくって、
アジアの
文化——天然記念物とか、
文化財とか、舞踊とか、いろいろなものを含めて、広い
意味の
文化の
センターを
日本に置いてくれ、そしてその機能をもって
アジアの
文化活動を活発にさしてくれという強い
要望にこたえまして、私
たち、今回
アジア文化センターの設立に踏み切ったわけでございます。これは、ただ
経済的な問題で
アジアと手を握って進んでいくというのみならず、
経済と同時に、やはり
教育、特に
文化の面、精神的なつながりというものが非常に大きな力を持っている。彼らは精神的な
誇りを持っている。その
誇りを持っている同士が、国際的な
ユネスコという輪を通じまして肩を握り合って進んでいきたいというのがその趣旨でございまして、そのために
財団法人もすでに所定の経費は調達いたしまして、発足の前夜にあるわけでございます。この
活動が進みましたならば、
日本の
アジアにおける精神的な連帯というものは非常に強くなる。いままで
日本は、こういった広い
意味の援助というものは全然やっていなかったということを私
たち非常に残念に思っている次第でございまして、今後GNP一%は何に振り向けられるかという問題に際しましては、前の
国連大学、それから
文化センター、
アジアの
技術協力といった点は、非常に有意義な効率の多いプロジェクトであると私は思っております。
たいへん長くなりまして……。