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1970-12-10 第64回国会 衆議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十二月十日(木曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 草野一郎平君    理事 安倍晋太郎君 理事 小沢 辰男君    理事 仮谷 忠男君 理事 丹羽 兵助君   理事 三ツ林弥太郎君 理事 芳賀  貢君    理事 斎藤  実君 理事 小平  忠君       赤城 宗徳君    鹿野 彦吉君       亀岡 高夫君    小山 長規君       佐々木秀世君    齋藤 邦吉君       坂村 吉正君    澁谷 直藏君       瀬戸山三男君    田澤 吉郎君       高見 三郎君    中尾 栄一君       中垣 國男君    別川悠紀夫君       松野 幸泰君    森下 元晴君       山崎平八郎君    渡辺  肇君       角屋堅次郎君    田中 恒利君       千葉 七郎君    中澤 茂一君       長谷部七郎君    松沢 俊昭君       瀬野栄次郎君    鶴岡  洋君       合沢  栄君    小宮 武喜君       津川 武一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         農林大臣官房技         術審議官    加賀山國雄君         農林省農政局長 中野 和仁君         農林省農地局長 岩本 道夫君  委員外出席者         参  考  人         (全国購買農業         協同組合連合会         技術顧問)   黒川  計君         参  考  人         (岡山大学教         授)      小林  純君         参  考  人         (東京教育大学         教授)     弘法 健三君         参  考  人         (日本工営株式         会社コンサルタ         ント事業部農業         部副参事)   宮里  愿君         農林水産委員会         調査室長   松任谷健太郎君     ————————————— 委員の異動 十二月十日  辞任         補欠選任   熊谷 義雄君     山崎平八郎君   中尾 栄一君     別川悠紀夫君 同日  辞任         補欠選任   別川悠紀夫君     中尾 栄一君   山崎平八郎君     熊谷 義雄君     ————————————— 十二月九日  仙台市蒲生海岸渡り鳥渡来地保存に関する請  願(愛知揆一君紹介)(第四〇六号)  花卉園芸振興法制化促進に関する請願赤城  宗徳紹介)(第四〇七号)  農業共済団体事務費国庫負担金増額等に関する  請願佐々木良作紹介)(第四七三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  農用地土壌汚染防止等に関する法律案(内  閣提出第二一号)      ————◇—————
  2. 草野一郎平

    草野委員長 これより会議を開きます。  農用地土壌汚染防止等に関する法律案を議題といたします。  本日は、本案について参考人から意見を聴取することといたします。  本日出席参考人は、全国購買農業協同組合連合会技術顧問黒川計君、岡山大学教授小林純君、東京教育大学教授弘法健三君及び日本工営株式会社コンサルタント事業部農業部参事宮里愿君、以上四名の方々でございます。  参考人には、御多用中にもかかわらず、本委員会に御出席くださいましてまことにありがとうございます。  ただいま本委員会におきまして、農用地土壌汚染防止等に関する法律案について審査いたしておりますが、本案につきまして参考人方々の忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと存じます。  なお、はなはだかってではありますが、参考人の各位からの御意見開陳は、お一人おおむね十五分程度にお願いすることとし、その後、委員からの質疑があれば、これにお答えいただくことにいたしたいと存じます。  御意見開陳は、黒川参考人小林参考人弘法参考人宮里参考人の順序でお願いいたします。  それでは、黒川参考人にお願いいたします。
  3. 黒川計

    黒川参考人 私、参考人黒川でございます。  私、技術者でありますので、この法案の主として技術の問題を中心にして参考意見を述べさしていただきたいと思います。  この法案の第一の問題といたしまして、ほかの公害法案との関係で、最近急速な鉱工業の発展によって、都市あるいは工場地帯中心にして非常な公害が起こっているわけでありますが、もしこの排煙排水、こういうものだけについて公害規制をいたしますとしますと、やはり煙と排水の害は防げましても、土壌はその中に有害物質がいつまでも残っておるわけでありまして、その土壌公害防止しないと、そこに一つ抜け道ができることになろうかと思います。そういうことで、この土壌排水と煙の害は三本そろってやることが、やはり公害防止一つの行き方じゃないかと思っております。  それから土壌汚染の問題としましては、有機物によるもの、無機物によるものいろいろあるわけでありますけれども、特に土壌汚染の場合は、土壌の中にたまって半永久的に残ります重金属中心にして公害防止をするということがさしあたりの問題じゃないだろうか、こういうふうに考えておるわけです。  それから重金属の問題でありますが、法律では政令で指定するということになっておりますけれども、やはり法律にありますように、農畜産を通じて人間に害をするものと、農作物に直接害をするものと二つに分けまして、人間に害をするものとしましてはカドミウムとかあるいは鉛とか砒素とか、あるいは農作物に害をするものとしては銅とか亜鉛とか、こういうものがあろうかと思います。さしあたりの問題としましては、やはりカドミウム人間に対する害としては一番問題になっておりますので、これは最初にやはり取り上ぐべき問題であり、また作物に対する有害作用としては銅とか亜鉛とか、これはずいぶん古い昔から、戦後においても大体昭和二十二年ごろから、それから戦前はすでに明治の中期から足尾の銅の鉱害を中心にしていろいろの問題を起こしただけに、いろいろの試験データあるいは調査データもそろっていることだろうと思います。こういうものを整理をするのはなかなかたいへんなこととは思いますけれども、それを整理をいたしますれば、やはり法律に載せてやっていけるものではあるまいか、こういうふうに考える次第でございます。  それから、その次に問題になるのは対策地域指定をすることになっておりますが、その対策地域指定をする場合に基準をきめることが必要になるわけですが、たとえばカドミウムのごときは、対策地域指定する場合に、農産物に含まれているカドミウム含有量基準にして指定するようなことになろうかと思いますが、その場合に土壌との関係がどうなんだということですけれども、いままであちこち新聞等で見ますと、土壌中の含有パーセントと、それから作物の中の含有割合との関係が必ずしも一致しないというような御意見もあるわけですけれども、いままでのやり方であれば、こういうことはあり得ることだと思うわけです。というのは、土壌分析作物分析が深い関連なしにやはりやられている場合が多いということだと思います。  それでもう一つの問題は、分析をする土壌の取る場所の問題でありまして、場所が少し違いますと、あるいは土層の深さが違いますと、その含有の量が非常に変わってくるわけでありまして、そういう意味からもそうだろうと思います。また分析の方法なんかについてもあるかと思います。今後こういうものを、土壌農産物の中の含有量相関関係を持たせるためには、やはり土壌の類型、土壌種類ですね、土壌種類に応じまして、それから作物種類に応じまして、相関関係というのは出てくるものと思います。これはほかの成分でもそういうことが行なわれているわけで、カドミウムにおいてもそういうことができると私は思っております。  それから銅や亜鉛の問題でありますけれども、これについてはすでに長いこと経験もありますし、また直接その作物に対する被害程度でございますので、これについては十分検討をすれば基準はきめられる、こういうふうに考えておるわけです。  それから、もう一つの問題として私たち心配になることなんですけれども汚染防止対策の計画を立て、それを実施する場合の費用とかあるいは被害を受けたものの補償とか、そういう問題は別に費用負担法があって、それによって事業者あるいは事業者が負担できないところは国や県が負担されることになるのかもしれませんけれども、いままでの長い、こういう法律のない時代にはとかく被害者が負担する場合が相当多かったわけでございます。こういうものが一つの前例みたいになりまして、そういうことになってはやはり困ると思います。被害者がその対策費用とかそういうものを負担するということになりますと、ちょっと筋違いじゃないかと思うわけです。  それから最後一つ問題なのは、この土壌汚染程度を調べたり、そういうことをする場合に非常に調査測定の仕事が出てくるわけでございます。何ぶん正確な調査測定が要求されるわけです。それから、この種のものは被害物が、排水が出たりあるいは煙が出てそれによって汚染するわけですから、相当まばらのものが、でこぼこのものが多いと思うのです。それだけ調査件数が相当多くなる。狭い面積でも、いままでの土壌調査のようなぐあいには私はいかないと思うのです。それだけに調査件数が多くなる。それから、こういう微量のものを調査をするので、測定技術が高度のものを要求されるわけだと思います。そういうことでありますので、ぜひとも高度な技術者の確保ということあるいはその教育というようなこと、こういうことがこの法律を実施する一つの前提になるのじゃないかと私はこういうふうに考えております。  以上でございます。(拍手
  4. 草野一郎平

    草野委員長 次に、小林参考人にお願いいたします。
  5. 小林純

    小林参考人 ただいま御紹介を受けました岡山大学小林でございます。  この大気汚染水質汚濁、これにつきましてはすでに規制されるPPMというようなものがカドミウムその他の金属類についてきめられております。しかしながら、まだ土壌については何にも、汚染がどのくらい以上であってはいけないというような規制が全然行なわれておりません。ところが、実際に、私どもこの汚染地区住民の体内に入ってまいります重金属を見ます場合に、飲料水から直接入っていく重金属もございます。それからまた大気汚染煙突から出ます重金属によりまして、鼻から人体に入る場合もございます。しかし一番大きなルートと申しますか、一番大きな経路は、どうしても水質あるいは大気汚染が一たんどろに集積いたしまして、何年となく同じような排水あるいは煙がどろの上にたまってまいりまして、そこに農作物が栽培されます。そうしてその農作物を食べていくことによりまして人体に徐々に重金属が蓄積いたしまして、そして最後発病するという状態になっておりますが、しかしその発病までにいく経過としまして、人体へのいろいろの重金属類集積というものが知らず知らずの間に起きております。そうしてその人体へたまっていきます経路は、いま申しましたように水や大気汚染から直接いくものではなくて、一たんどろが汚染され、それがそこに積もり積もって、そこに農作物が栽培されて、農作物が根から吸収して吸い上げる。それを人々が食べる。こういう経路によって人体への集積が起きるわけであります。ですから水の汚染大気汚染だけのPPMをきめたりするということは実際は意味がない。その大気や水がどろを一年汚染した場合と十年汚染した場合では、どろの中への集積量は全然違ってまいります。そういうものを全然無視して、ただ水や大気だけのPPMできめるということは、それはすぐ人体に及ぶという意味ではある程度意味はありますが、実際上はいま申しましたようにどろに毎年毎年たまっていって、そしてどろが次第に年とともに汚染が増してまいります。ですからそのどろの汚染状態をよく分析しまして、この土がどのくらい汚染されているかということを基礎的に研究調査するということは非常に大切なことだと思います。  農作物によりまして、同じ汚染されたどろに栽培されましても、その吸い上げる量というものは全然違います。たとえばカドミウムなんかにいたしましても、同じどろに栽培されました場合でもお米なんかですとせいぜい騒がれましても二・何PPMが出れば非常に高い値です。普通のお米は〇・〇七PPMぐらいが私ども分析では平均である。日本全国平均〇・〇七PPMぐらいのお米をふだん私どもは非汚染地区で食べておるわけです。ところが汚染地区のお米は一PPMとか二PPMとか、そういうことで、どんなに汚染度を増しても五PPMをこすということはまずまずないわけで、それ以上になりますとお米自身が枯れてしまって穂ができなくなります。ところが今度は、その同じどろに麦をつくってみますと、麦のほうはずっとたくさんカドミウムを吸い上げます。ですからその麦を使いましてパンとかうどん、そういうものをつくりまして食べます場合には、お米より何倍も何倍もたくさんのカドミウムを摂取することになります。それからまた野菜類、たとえば白菜、そういうものになりますと、乾燥したものに対して二〇PPMとか三〇PPM、こういう値はざらに出ます。たとえば安中なんかにおきましては、お米は一PPMであっても、どろに同じくらいカドミウムがある場合に、白菜からは何十PPMという値が出ます。ですから私ども白菜のような菜っぱ類は絶対食べないように、キャベツやそういうものは食べないように、つけ菜も食べないようにということを安中に参りましてよく住民人たちにお話しをしてきて、住民たちカドミウム摂取量は減ってきておるわけですが、しかしながら、こういうぐあいに土汚染度は全く同じであっても、農作物種類によりましていろいろの値が出る。そういうものをその住民たちが食べてからだに汚染集積が起きておるわけであります。  ですから、汚染の変わらないのはどろの汚染であって、そこに栽培されます農作物種類やまた同じ一つ農作物でも根と葉っぱで全く違います。大根の場合を見ますと、根の部分葉っぱ部分で全く違っておりますように、部分によっても違います。それからまた、同じ水田にお米をつくりましても、ことしと去年のお米は全然カドミウムの値が違ってまいります。去年一PPM出たからといってことし一PPMになるとは限りません。その倍になることもあればその半分になることもありまして、その年のお米のできぐあいとか気候とか、そういうようないろいろな条件働きまして、同じ汚染度であっても同じお米をつくっても年によって違ってまいりますし、お隣同士たんぼでちょっと栽倍法が違っても、汚染度は同じでもお米のカドミウムは違う。たとえば石灰を入れてあれば吸い上げようが少ないとか、いろいろなことが出てまいります。ですからそういう意味から申しますと、どろの汚染度測定していろいろなことを考えていくということがとにかく一番の基礎になるものである、こういうふうに考えられるのであります。そういう意味で、私は土壌汚染の基礎的な研究が最も重要である、こういうように考えております。  きょう資料が非常に足りませんでしたが持ってまいりまして、一部の方にお配りしてあると思いますが、岩波書店から去年六、七、八月の三回にわたりまして出版されました「科学」の別刷りとそれから「ジュリスト」という、これは裁判なんかの関係の方がよく読まれますその別刷りと、それからここにこういうゼロックスのものがございまして、御参考にと思って持ってまいりました。  これをごらんいただきますと、一番上は植木ばちでポット栽倍をやったわけです。同じような図が六つございますが、このうちの一番上の欄がカドミウムを与えた場合、カドミウムを米と麦に与えましたならば、お米のほうが収量がだんだん減っていく減り方が少ない。お米はカドミウムに対して非常に抵抗力が強い。収量はなかなか減らない。そうして、今度はカドミウムがお米の中にたまっていく量が、図にわかりにくくなっておりますが、ぬかと白米の部分にたまっていく量はだんだんふえていく。収量が減少するとともにふえる。それから今度は、その右側は小麦についてやったわけですが、小麦は非常に敏感である。収量が非常に早く減る。と同時に、今度は小麦の中のカドミウム分析してみますと、一四〇PPMをこしておることがわかります。お米のほうは最高が五PPM。ところが小麦のほうでは百何十PPM最高ですね。収量はわずか一%くらいしかなくなっておりますが、そういうような実験的な結果によりましても作物によって違う。  それからその次のページをごらんになりますと、同じ桑の葉でも煙突からの距離別によって桑の葉の重金属汚染程度が違う。煙突に近いほど汚染がひどいということを示してあります。だからこれは水質汚濁よりも大気汚染によって、桑の葉がどろに集積したカドミウムあるいは亜鉛、鉛、そういうものを吸い上げたのだということを示しております。  同じページの下には、同じ場所でとりましてもこういうぐあいに農作物によりまして非常に差がある。「越後」なんというのが左にあります。これはつけ菜ですが、これは非常にたくさんのカドミウムを吸い上げることがわかりますし、一方、右のほうにはトウモロコシとかカボチャのようななりもの類は非常に吸い上げ方が少ない。だからこういうものは食べてもだいじょうぶ。それから菜っぱ類はいけない。  それから三枚目にまいりますと、やはり煙突からの距離別にとりました小麦粉ですね。これも調べてありまして、大体右のほうに岡山県産のものがございますが、比べてごらんいただきますと、やはり煙突からの距離によって違う。  それから申し忘れましたが、二枚目におきましても桑の葉の比較において、一番右に岡山大学対照地区の桑の葉があります。そうしますと、二キロ半も遠く煙突から離れておりましてもカドミウム汚染は相当あるということがわかります。  それから、今度いまの三枚目の下の図をごらんいただきますと、いろいろなものが出ておりまして、それの対照としまして下側岡山県産の例が出ております。この岡山県産のものとお比べいただきますと、いかに汚染地区農作物がいろいろな重金属をたくさん吸い上げておるかということがわかりますが、それと同時に、農作物種類によってこんなにも違うのだということがわかります。ですから、これはやはりどろの汚染をまず調べて、どろがどのぐらい持っているかということのほうが、この決定的な絶対に動かないファクターであって、その上に育つ農作物はいろんな種類の違いや条件の違いによってしょっちゅう変動があるということがわかります。  それから最終のページをごらんいただきましても、そこにいろんな農作物水田裏作とかあるいは丘陵地の全然煙だけの影響を受けるところ、水田裏作というのは工場排水影響も同時に受けるところですが、これをごらんいただきましてもその大根の菜、葉の部分と根の部分と違うとか、いろいろなことがおわかりになります。  このようにしまして、いろいろ土壌汚染は同じであっても人体に及ぶ影響というのは、そこにつくる農作物種類とかいろいろなことによって非常に大きな変動がございます。ですから私は、基礎的には土壌汚染をまず調べて、しかる後にそこに育つ農作物種類とかいろんなものを考えていけば人体に対する汚染集積がわかりますし、また早期発病を発見することもできますし、また早期に病気を予防する手段にもなり得る、こういうふうに考えますので、私は土壌汚染ということは絶対に必要な基礎的な調査研究である、このように考えます。(拍手
  6. 草野一郎平

    草野委員長 次に、弘法参考人にお願いいたします。
  7. 弘法健三

    弘法参考人 本日、本委員会参考人として出席するようにとの要請によりまして出てまいったのでありますけれども、何ぶんこの依頼を受けましたのは昨日でありましたので、何らの準備をするいとまもなかったのは遺憾に思う次第でございます。また私個人としましては、公害問題についてはこれまで専門的にこれを研究してまいったものでもございませんので、このような公式の席に出て意見を述べることがはたして適当であるかどうかについて逡巡したのでありますけれども、長年研究生活を続けてまいったものといたしまして、このような機会に、日ごろ考えていることか申し述べることは、土壌学を専攻する一学徒といたしましての義務であると存じまして出席した次第であります。  そこで私は個別的なことについて述べることは避けまして、概念的な点について申し述べたいと思います。  言うまでもなく、農耕地農作物の生育する立地といたしまして、国民生活をささえる基盤でございます。その意味において、農耕地農民所有地であるとともに、国の貴重なる土地資源でもございます。しかもこの農耕地は、一朝一夕にできたものではなく、長い過去の年月にわたっての農民労働が注ぎ込まれた結果でき上がったものでありまして、言いかえますならば、単なる土地と区別すべき生きた具体的な人間労働生産物であるというべきでございましょう。  ところで、現在われわれの目の前に存在する土壌は、自己同一のものではなく、ところによって千差万別でございます。もちろんこのような相違をもたらしたのは自然の働きでありまして、決して人間の力であるというのではありませんけれども土壌学の書物では土壌生成のマクロの要因といたしまして、土壌の材料、つまり岩石の風化生産物ですが、それから気候、地形、植生、つまり自然にはえている植物へそういったものの自然的要因のほかに、必ず人間の関与、つまりヒューマンファクターというものを併記しているのであります。このことは、自然の営力を強く反映している土壌でも、人間働きが関与すれば、そうでないものに比べていつの間にか異なった性質のものに変わっていくということを教えているのであります。したがいまして、ひとしく植物がはえている土地でありましても、自然土壌農耕地土壌とは内容的に区別さるべきであると申せます。  わが国のような湿潤気候条件下に推移した土壌では、ある種の重要な成分が失われておりまして、これを開墾して作物を植えた場合に、初期には満足な収穫が得られないのが普通でありまして、現在の進んだ農耕技術をもっていたしましても、熟畑として土壌が安定するには数年を要することは、戦後の開拓に従事した人々のひとしく経験したところでございます。ましてや農耕技術が未発達で、土壌改良資材のなかった昔の農民農耕地を造成していった苦労はどんなであったろうかと考えますと、気が遠くなるほどでございます。  わが国農耕地は、古くは荘園時代、下っては徳川時代に著しく広げられたそうでありまして、そのことは本庄とか、新庄とかいった地名、あるいは何々新田といった部落名として残されておりますが、一部は弥生時代以来、二千年にも及ぶわれわれの祖先の汗の結晶ともいうべきところもあるはずであります。このように考えてまいりますと、農耕地は単に農民所有地であるばかりでなく、農業に従事するといなとにかかわらず、ひとしく国民の貴重な財産であるといっても過言ではないと存じます。  このような歴史的生産物であるところの農耕地土壌も、絶えず地力の維持に心がけていませんと、たちまちに悪変することがあります。その簡単な例は土壌酸性化であります。土壌酸性石灰を投入することによって容易に矯正できますが、土壌の内包する諸性質は互いに相関連しつつ調和を保っているのでありまして、土壌が強酸性になりますと、土壌中で重要な働きをしている粘土の性質が悪変いたします。土壌酸性反応そのものは石灰によって容易に矯正できるといたしましても、一たん悪変した粘土をもとに戻すのはきわめて困難であるというよりもむしろ不可能であるといってもよいくらいであります。  一般的に申しまして、土壌を棄損することは容易でありますが、一たん棄損された土壌を完全にもとに戻すことはきわめて困難であるということになります。  もう一つの見近な例といたしまして、老朽化水田があります。いわゆる水稲の秋落ちはこの種の水田に発生する現象であります。老朽化水田には土壌種類によってなりやすい土壌となりにくい土壌がございます。たとえば花崗岩とか石英斑岩といった珪長質の岩石に由来した土壌は老朽化しやすく、安山岩や玄武岩のような苦鉄質の岩石に由来した土壌は老朽化しにくいということが知られております。ところが元来老朽化しにくい土壌でも、硫黄鉱山から流れ出す硫酸を含んだ川の水を知らず知らずにかんがいしておりますと、いつの間にか強度の老朽化水田になっていたという例は少なくありません。これは人為的に土壌を棄損した一例であります。  終戦直後、老朽化水田は三十万町歩ぐらいありましたが、耕土培養法の施行に伴い、土壌改良資材が補助されたことが契機となりまして、現在はほとんど改良され、それが水稲の増収に少なからず貢献したことは事実でありますが、そのためにはばく大な労力と国民の税金が消費していたことを銘記すべきでありましょう。  それにしても、以上の例は、土壌を構成している成分が溶脱した結果、言いかえますと、溶けて失われた結果発生したもので、よしんば土壌が破壊され、作物収量が減退いたしましても、そこにできた作物人間の健康を害するようなことはありませんので、またがまんはできますが、最近問題になっているカドミウムのように土壌の構成分でなく、しかも作物に吸収されて人間の健康に悲惨な障害を与えるような物質が土壌に混入いたすようなことになりますと、問題はおのずから別になります。  現在、経済成長が謳歌されている反面、農耕地土壌汚染が進行しつつあります。その中でも特に問題とすべきは重金属類であります。なるほど、これらの物質が多少土壌に混入いたしましても、これまで申し述べてまいりましたような意味での土壌の破壊には直接結びつかないでありましょう。しかし、重金属類土壌に混入いたしますと、長く土壌中にとどまり、その間人間の健康をそこなう農産物の生産の原因となったり、そうでなくても、農作物の生育を著しく阻害する原因となることによって、いわば農耕地土壌を半身不随の状況に押し込むことになります。つまり、国の重要な土地資源としての農耕地農業労働集積物としての農耕地をみすみす廃棄するにひとしいことになりますので、土壌学を専攻する一学徒の立場から申しますならば、まず第一にこのような物質が土壌に混入するようなことのないような方策を講じていただきたいということ。次に、すでに汚染してしまっている土壌ないしは汚染の危険性のある土壌は、こういう場合にはやむを得ませんから、すみやかにこれを調査しまして、農作物に対する影響を把握し、早期に復旧対策を講ずる施策を進めていくべきであろうと存じます。  なお、一言つけ加えさせていただきたいことは、米の中のカドミウムの量と土の中のカドミウムの量との間には一義的な相関がないから、米だけ分析して判断すればよいと考える意見があるようでございますが、この点は、先ほども黒川参考人が触れられたことでありますが、これは現象形態にとらわれた考え方と思われますし、土壌には、カドミウム作物に吸収されやすい形で存在する土壌と、比較的吸収されにくい形で存在する土壌とがあることを無視してはならないと存じます。そして、この後者の土壌の場合、吸収されにくい形で存在するような土壌では、これは一面カドミウムが多量に集積することを意味しておりまして、それがいずれは作物に移行する危険性があるのでありまして、その意味からしましても土壌調査は欠くべからざるものと考えます。  終わりに、最近米の収穫量が向上して、作付を制限するような時代になってまいりますと、終戦直後のあの食糧不足の時代と打って変わりまして、えてして農耕地を軽く見る傾向になりがちでございますが、国民生活の基盤としての土壌を悪変させず、これを保全していくということに、この際一そうの関心を向けていただくことをお願いしたいと思います。  これで私の公述を終わります。ありがとうございました。(拍手
  8. 草野一郎平

    草野委員長 次に宮里参考人にお願いいたします。
  9. 宮里愿

    宮里参考人 私は日本工営の宮里です。私は去年まで現場の仕事をしておりました関係上、長いこと現場の技師の体験を通じて本法をにらめっこしまして、私の感じたことを率直に述べさせていただきます。  この法律の目的は、国民の健康の保護及び生活環境の保全をすることを目的とし、そのために農用地土壌の特定有害物質による汚染防止及び除去並びにその汚染にかかわる土地利用の合理化をうたい上げておりますので、これは私の体験がら推すと、非常に類例のないすばらしい法律案と思いますので、ぜひとも国民の一人として、すみやかにこの法律案が議会で議決され、またすみやかに農林当局の手によって実践されますよう心から希望しております。  さて、私の経験に基づきましてこの案を見ますと、私は土壌汚染防止ということが第一義でありまして、次は、汚染された土壌を、いかにして汚染した物質を除去し、並びにまた、そのための合理的な土地利用をはかるかということが第二の段階として大事なことであろうと私は考えております。  そういうような立場で見ますと、先ほど述べられました小林参考人と同じ立場でございますけれども早期発見、早期予防でございますけれども、その立場に立ちますと、この法律案は時勢の波に押されてか知らぬですけれども、その防除とか土地利用に非常にきめこまかい規定が三条以降ございますが、私は、最も重要である早期発見のことについては第十二条でもってしか述べられてないような感じがするのであります。しかも、第十二条は、第一線の経験からしますと、私は最も強調されるべき条項だと思いますが、ここでは単に「汚染の状況に関し、必要に応じて調査測定を実施し」云々と、土壌についてのみの規定がございません。これは先ほど三名の参考人のお方からの御意見でも十分御了解したと思うのですけれども、単に土壌だけでなく、その時期における土壌の上に生育する作物のいわゆる汚染の状況等が、あるいは特定有害物質の含量を測定しないとはっきりした予想の方法はとりにくいだろうと思います。  それで、ここの条項につきましては、やはり法律案でございますから、姿勢だけについて——では具体的にどのように実施するか、そういうことが一つも触れてないのでございますけれども、私のいままでの経験から推しまして、かつて農林省で施行しました耕土培養事業とかあるいは低位生産地事業のような形で、しかも、それらよりももっときめのこまかいような方法でもって調査測定等を具体的に遂行してもらえばしあわせに存じます。  さて、十二条と並行しまして、十八条には研究の推進がありますけれども、やはり現況の問題に対して国及び都道府県の研究の推進状況が非常になまぬるいと感じますので、この点非常に強力に、具体的に農林当局で推進していただきたいと思うのであります。  それから、これは、いままで述べたことは予防についての私の感じですけれども汚染された土壌についての処置、これは三条以降非常にきめこまかく述べられております。ただ、ここでいささか気になる点を申し上げますと、第三条では土壌汚染対策地域指定しておりますけれども、ここの条項を見ますと、なぜ汚染対策地域指定するかという理由は、ここでは述べられてございます。すなわち都道府県知事は当該農用地に生育する作物等に含まれる特定有害物質種類及び量等から見て、このように汚染対策地域指定するのであるという理由は、ここではっきりしておるのでありますけれども、しかしこの時点における原因の解明が少ないように思うのであります。これはおそらく法律でございましょうから、基本的な姿勢を法律でうたってあって、こまかいことはないとは思いますけれども、その時点における原因の解明がはっきりつかめますと、すみやかに対策も樹立できると思います。でございますので、先ほどから弘法先生、小林参考人黒川参考人からもるる御説明がありましたとおり、作物土壌関係を必要に応じて見るのじゃなくて、やはり問題が起きたときに常に連続的に両者の動きを見ないと、はっきりした因果関係、原因と結果はつかみにくいと思います。  それから有害物質のことで内容でございますけれども、特定有害物質は、いま最も問題になっておるのは、米を通じてのカドミウムの害でございます。しかし、これは被害者にはまことに申しわけないのでございますけれども、米を通じての生体実験で初めてカドミウムの有害性が把握されたのでありまして、その他の作物につきましては、先ほど小林参考人がおっしゃったように、安中でもって蔬菜の中のいろいろカドミウムの含量についてのお話がございましたけれども、私不勉強にしてきょう初めて聞いたのでございますけれども、いろいろその他の作物についてはわかっておりません。わかってはっきりしているのは米だけについてと私は感じております。しかしながら、日常われわれが口にするものは、むしろ米というのはだんだん減ってきてございます。その他の農畜産物についての特定有害物質、私がここで特定有害物質というのは、先ほどから黒川さんからお話があったのですが、古くから銅とか亜鉛、そのほか鉛、砒素、そういう面についても含めて、作物との関連において有害物質として検討していただきたいと思います。  ごく簡単でございましたが、私の体験を通じてこのように感じました。以上です。(拍手
  10. 草野一郎平

    草野委員長 以上で参考人の御意見開陳は一応終わりました。     —————————————
  11. 草野一郎平

    草野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長谷部七郎君。
  12. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 ただいまお忙しい中、四人の先生方から御意見を拝聴したわけでありますが、その中で特に私小林先生にお尋ねをしたいと思うわけでありますが、まずその一つは、ただいま私たちの議題になっております農用地土壌汚染防止等に関する法律案、この法案ではたして所期の目的が達成されるのかどうか。私たちは疑問を持っておるわけでありますが、この際ひとつ先生の法案に対する御見解を承りたい、こう思うわけであります。
  13. 小林純

    小林参考人 ただいまお尋ねのございましたこの土壌汚染防止などに関する法律案という内容が、これで十分所期の目的を達するに適したものであるかどうかという御質問でございますが、実は私不勉強でございまして、ここへ参りましてただいまこれをちょうだいしまして、ちょっといままで十分勉強しておりませんでしたので、そのことにすぐお答えいたしかねるのでございます。けれども、先ほど申しましたように、とにかくまだ厚生省でもお米のカドミウム基準があるだけでして、何も農作物については基準がない。麦のほうがお米よりはるかにたくさん吸い上げるし、また野菜類はさらにさらに吸い上げる。ですから、米だけ基準をきめたって意味がない。ところが野菜なんかは、みんな種類ごとあるいは部分別にカドミウム集積量が違いますから、絶対に動かない数値を調べるとなれば、結局はやはり土壌汚染度を調べるということが一番必要であります。ですから、この法案はおそらくそういう意味汚染防止を意図しておきめになったものである、私はそう考えております。
  14. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 重ねてお尋ねをいたしたいと思うわけでありますが、今度の法案の第三条に「土壌汚染対策地域指定」、こういうものがあるわけでありますが、この指定にあたって政府の考え方は、米の中に一PPM以上のカドミウムが発見された地域をもって汚染防止指定地域にしよう、汚染対策地域指定をしよう、こういう考え方でございます。さらにいま一つは、土壌中に含まれておる重金属汚染度、こういうものはほとんど対策地域指定条件になっておらないわけです。先生のお話によりますと、作物中に含まれておるカドミウムの量だけでは、現象面だけにとらわれるものであって完ぺきなものじゃない、少なくとも対策地域指定する場合は土壌汚染度というものが根本にならなければならないのだ、こういう御指摘があったように私承ったわけでありますが、そういう観点からまいりますと、この対策地域指定に対する政府の考え方というものはきわめて不十分なものではないかという感じがするわけでありますが、これは一番根本の問題でございますので、ひとつあらためて重ねてこれに対する御見解をお聞かせいただきたいと思うわけであります。
  15. 小林純

    小林参考人 ただいま、第三条の汚染地域をきめるきめ方が根本的にこれでよろしいかという御質問がございましたが、私もまことにごもっともである、こう考えます。と申しますのは、お米の一PPMというものは、これは絶対に安全な基準であるかどうかということにまず疑問がございます。厚生省があのお米の一PPM、白米でいえば〇・九PPMをことし七月に安全な基準としておきめになっております。ところがその安全な基準のきめ方というのは、非常にお粗末な方法でおきめになっております。三つの汚染された地域から、汚染されたものを食っている人たちと、汚染されたものを全然食ってない対象地域の人たちを半分ずつ選び出しまして、そしてその人たちの小便にカドミウムが何ぼ出るか、その日にカドミウムを幾ら食っているか、そうすれば小便から今度は食ったカドミウムの量が逆算して出てくるのじゃないか、そういうことと、それからまたアメリカの労働衛生の関係の人が書いた本から、小便の中には一リットル中三十マイクログラムまでは大体安全の限界点であるというのを外国の本からとって、それを——それは労働衛生の、労働者に適用すべき小便の調べ方を、日本人が一生涯常食として食べる米に持ち込んで、そうしてまた小便から食べたカドミウムを逆算して出すといういろいろな操作がしてございまして、それが全然間違っておるということは、岩波書店から出ております「世界」という雑誌がございますが、今度出ましたそれに、私、はっきりと厚生省のやり方は間違っておるという科学的な根拠をあげまして、これは全く安全性を保証する何らの根拠がない、どこから見てもそういう根拠がないということを申し上げてあるわけです。したがいまして、ここで一PPMというものを絶対的なものであるとお考えになって、それによって法案をいまおきめになるということは、あとでこの一PPMが変わってきました場合にまたやり直しになってしまう。ですから、私はやはり土壌汚染というものを基礎的に調べることのほうが必要である、そう考えます。
  16. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 いまの点はよくわかりました。  次にお尋ねをいたしたいと思いますことは、これは同じく小林先生にですが、今度のこの法案のいわゆる重金属指定の問題でございますが、政府の考え方は、当面は人体に害のあるカドミウムにしぼっておるわけであります。農作物の生育に障害のある銅、亜鉛、こういうものはこれからやっていくんだ、こういう説明になっておるわけであります。私は、この重金属を政令で定める場合に、しかも対策地域指定する場合に、特に私の県などは、秋田県でして鉱山地帯でございますが、昔から小坂鉱山、尾去沢鉱山あるいは花岡鉱山、こういった全国でも屈指の大鉱山があるわけであります。この鉱山は、幸いにしてカドミウム汚染された米は出ませんけれども、銅、亜鉛によって汚染された作物というものは非常に多いわけなんです。ですから私は、どうせこれから土壌汚染防止対策事業を進めていく場合に、カドミウムだけにしぼった進め方というものは片手落ちではないか。少なくとも銅、亜鉛汚染地域につきましても同時に取り上げるほど重要な問題ではないのかというぐあいに考えておるわけでありますが、この点ひとつ御見解を承っておきたいと思うわけであります。
  17. 小林純

    小林参考人 ただいまカドミウムだけでなくてほかの金属も同時に考えるべきだという御意見がございましたのですが、まことにごもっともでございます。特に秋田県の米代川とか、あるいは雄物川もそうですが、米代川流域に非常にたくさんの鉱山がございまして、私もたびたび行って調べております。そうしますと、カドミウムだけを抜き出して考えてみました場合はそれほど高い値は出ない。ですけれども米代川流域は硫酸が非常にたくさん含まれておりまして、飲んでいる水も酸性である。そしてまた酸性であればカドミウムなんかの重金属も溶けやすくなりまして、どうしても人体集積していきやすくなります。それから銅とか亜鉛とか、その他の金属が、秋田県の場合は同時に存在しておりまして、こういうものがみんな一緒になって農地を汚染し、農作物汚染し、そうして人体集積していきます。ですから、秋田県の鉱山地区の人たちの小便を見ますと酸性が強いわけです。よその地区よりは明らかに酸性が強くて、PHで申しますと五くらいの小便が出ております。ところが、よそのたとえば安中辺の人たちの小便は中性にずっと近い。これは結局、ああいう鉱山地区では飲んでいる水が非常にたくさんの硫酸を含んでおる。そしてカルシウムのようなアルカリ性のものが乏しくなって、どうも酸性になり、酸性の障害も出ておる。そして、そこへカドミウムとか銅とか亜鉛とか砒素とか、いろいろなものがこんがらかっておる。鉛もあるでしょうし、そういうようなものが総合して人体の健康をおかしておる、こういうふうに考えられますので、もちろんカドミウムだけでなくてやはり総合的に重金属人体に及ぼす影響というものを考える必要がございますが、ただしそれはだんだんとむずかしい問題になってくるだろうとは考えられます。  それから先ほど申し忘れましたが、水田の一PPM、米の一PPMだけにしぼりますと、畑はどうするかという問題が出てまいります。水田はなくても畑の汚染も当然考えなければなりませんので、お米の一PPMというのは水田を対象とするような印象を——実際農林省のお考えはそうではないとは思いますけれども、畑も当然考えなければならない。としますと、やはり先ほどおっしゃいましたように、土壌汚染が基礎になって、そして米の一PPMなんというものは年によっても値も違ってまいりますことですから、動かない土壌汚染について調査して、そしてその土壌汚染カドミウムだけにとどまらないで——たとえば私ども岡山県下ではいまニッケルがメッキ工場排水から出まして、それが水田に流れ込みましてお米がニッケルを持っておる。どろはもちろんニッケルで汚染されて何十PPMというニッケルが出てまいります。それからまた、そこは水田裏作としまして、夏は稲をつくりますが、冬の間はニンジンをつくりまして、そして農林省の指定ニンジン栽培地区と申しますか日本で非常にいいニンジンが出るところとして農林省から指定された地区ですが、そこへメッキ工場排水が流れ込みまして、ニッケルが非常に夏のかんがい時期に入り込む。お米をつくっておる間に入り込んで、それが今度は冬、水は全然かんがいしないのですが、ニンジンをつくっております間に、そのニンジンにもニッケルが集積する。そうやってニンジンの生育の障害が出ますと同時に、ニンジンそのものがニッケルを吸い込みまして、からだに影響があるのではないかということで、いまはそこの耕作物を休耕しましてニンジンもつくらない、米もつくらないというような地区もございます次第でして、やはりいろいろの金属を取り上げて御研究になったほうがよろしいかと、私はそう考えます。
  18. 草野一郎平

    草野委員長 田中恒利君。
  19. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 参考人からたいへん貴重な御意見をお伺いをいたしましたが、汚染土壌に対する調査測定というものがいかに重要であるかというような点が各参考人に共通のお話であったよよに感じます。私どもも強くその点を感じておるわけでありますが、これに関連いたしまして若干御質問をいたしたいと思います。  弘法先生にお尋ねをいたしますが、これまで日本の土壌学というものに原理を置きまして土壌調査というものが農林省やあるいは団体、試験場等を通じて行なわれておるわけでありますが、今日までなされてまいりました土壌調査というものが、いま問題になっておりますこの汚染土壌の把握というものにどれだけの適格性を持つものなのか、これまでのデータがどれだけ役に立つのか、この点でお教えをいただいたら、というふうに思うわけであります。
  20. 弘法健三

    弘法参考人 いまの土壌調査の問題でございますが、土壌調査には、目的によっていろんなやり方がございます。たとえば地球上に分布している自然土壌を分類する方法、これはグレート・ソイル・グループの分類というようなことをいいますが、それからまた、土壌でも今度は農耕地になりますと、自然土壌の分類にするのと違った基準が必要になってまいりまして、おのずから別種の土壌調査をしなければならなくなります。それは自然土壌の場合には、土壌の生成がどういうふうにしてこういう生成がきたのかということだけを明らかにすればよろしいのですけれども農耕地の場合には、作物がよくできるか、あるいはできが悪い土であるか、あるいは、いわば地力が高い土であるか低い土であるかということもあわせて調べなければならぬ。むしろそれのほうが重要なことになってくるというようなことになりまして、また別のやり方をしなければなりません。もちろんそういうやり方でも、自然分類としてはどういうグループに入るかということは、当然自然の分類のほうが進んでいればそこにあとで入れることができますけれども、その自然分類だけではそういう地力のいかんということは知ることはできません。そのための特別な調査項目をつくらなければなりません。それから今度は、事実、現在、水田を目的とした土壌調査、それから畑を目的とした土壌調査というものも、そういうふうな農耕地土壌を対象としますと、同じ農耕地土壌でもまた別種な方向をとらなければならない。たとえば水稲の性質とあるいは畑作物性質というものが違いますから、それに応じた、それに直結するような要素を取り上げて、それを基準にするというようなことでおのずから違ってまいります。こういうような重金属汚染を受けた土壌になりますと、私、まだそこまで十分に考えておりませんけれども、私は、当然おのずからまた別な基準が出てくると思います。なぜかといいますと、重金属の場合には、その金属がその土壌にキャッチされやすいかされにくいか、そういう力がある。土壌のそういう意味の力を、たとえば重要な項目として取り上げてこなければならぬというようなことになりますし、また、キャッチされた重金属作物の吸われやすい形で存在するか、吸われにくい形で強くキャッチされるようなものであるかというようなことも重要な項目として取り上げるようなことがおそらくされるんじゃないか。それは、私がつくるわけではございませんから断言はできませんけれども、私の考えとすれば、そういうようなことが新しく重要な項目として浮かび上がってくる。ですから、やはり、こういうふうな重金属汚染ということに対しては、私はまた、従来の水田なら水田、畑なら畑の調査というものももちろん役に立ち、すでにそこで調査されたものはおのずから、当然はぶかれても利用できるものがあるわけでありますけれども、それ以外の直接に重金属集積を問題とした項目というものについては別種に取り上げてやらなければならない。これは私の個人の考えとしますれば、こういうふうに非常にそういう土地が広がってくるような状況ですと、それはまたそういう点でおのずから別なものをやらなければいけないんじゃないか、私はそうすべきであると存じます。
  21. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 よくわかりました。私も、実は汚染土壌調査というのはいままでほとんどなかったと思いますし、この問題が出てまいってからは、この実態把握の前提になる土壌汚染をいかに把握するかということで、全く新しい土壌調査というものが設計せられなければいけないだろう、こういうふうに思っておるわけでありますが、いま先生のお話で、大体骨組みはわかりました。  小林先生にお尋ねいたしますが、いま先生から、同一土壌でも作物によって、たいへんカドミウム等の、出てくるものが違うという貴重な試験研究のお話があったわけですが、そういう作物土壌との相関関係というものについて、原理論的に野菜なりあるいはくだものなりあるいは穀物なり、そういうものによってそういう作物の生育の内容と土壌との相関関係はこういう原理によってくるのだというような学問的な前提条件にまでこの問題の研究が進んでおるのでしょうか。いまの段階では、まだ、米について違う、野菜について違う、くだものについて違うという程度のものなのでしょうか。その点をお尋ねをいたしたいと思うのです。
  22. 小林純

    小林参考人 お答え申し上げます。  先ほどお配りしました私の研究データにありますように、作物によって非常に違うということははっきりしておりますが、しかしながら土壌の中のカドミウムが何PPMだからそこの米は何PPMになるとか、あるいはそこの野菜は何PPMになる、そこまで密接な相関関係は実は出ないわけでございます。それはそのどろによって違いますし、その土地作物のでき柄によっても違いますし、つくり方によっても違いますし、あるいはまた酸性が強いどろと弱いどろ、石灰を入れますと、重金属被害が減ります。結局、銅山なんかの被害地でよく御承知だと思いますが、石灰を入れて農家はみんな防止対策をやっているわけでして、もちろん鉱山が銅を流さないのがいいわけですけれども、流れて水田に入りました銅をどうやって被害を防ぐかといいますと、石灰を入れれば銅の被害はずうっと軽くなります。そういうようなぐあいですから、重金属が何PPMあるからその被害が幾らあらわれて、そしてその農作物が何PPM重金属を吸い上げるかということは、なかなかきまらない問題だ、こう考えております。  それから先ほど、最初の御質問に対しましてもちろん私はお米の一PPM基準になるのじゃなくて、土壌汚染そのものを御調査になったほうがいいと申し上げましたのですが、おそらく農林省のほうでは、やはりその出発点としてどこもかしこも一ぺんに全国的に調査するのはたいへんだから、出発点としてお米の一PPMの地区から始めるというような意味かもしれないと、こう考えましたので、まだよく法案を読んでおりませんので、ちょっと考えつきましたので申し添えます。
  23. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 そういたしますと、やはり汚染土壌から出てくる有害物質を除くということになりますと、どうしても常時調査、監察をしていくという機関や体制が一番大切な問題になるように理解をいたすわけでありますが、いま一つ小林先生にお尋ねをいたします。  まだこの資料全部よく見ておりませんのですけれども、一般的に野菜がどうも一番たくさん出てくるようにお聞きしたわけですが、実は私ども今度の土壌汚染法の問題点の一つとして、農用地に限っておるというところにも一つの問題がある。それがいま先生言われました一PPMという形で当面やっていくというところにも問題があるという議論をしたわけですけれども、ところが野菜につきましては、最近、都市近郊、特に産業立地地帯におきましては、自家菜園といったようなものが実はたくさん個人住宅につくられて、物価高の問題等もありまして、わずかな自分の庭で野菜をつくっておくというのが非常にたくさん出てきておるわけです。こういうものが特にこの汚染地帯の土壌の週辺では非常に大きな影響を与える、こういうものに対して現在、農用地における土壌汚染防止法だけではこれは処理できないのじゃないかという議論をしたわけでありますが、こういう点について何か御研究せられたような点、ございませんか。あるいは林地が持っておる汚染の度合いというような点について、何か御研究がございましたらお知らせをいただいたらと思うわけであります。
  24. 小林純

    小林参考人 ただいま農地、それも水田だけでなく、もちろん畑、さらに進んでは都市の何かの小さな菜園に至るまで、人間の健康を汚染するような重金属の問題を考えるべきじゃないかというお話でございましたのですが、結局そういうものも問題になってまいります。しかしながら一番大きな問題は、住民がたとえばカドミウムについて申しますと、一日当たり何ミリグラムのカドミウムを摂取するかということが非常に根本的な問題になってまいります。そうしますと、やはりそこの農民が一番そういうたくさんカドミウムを摂取集積する機会が多くなってまいります。それからおつとめなんかなさって農業をやってない方はどうしても市場なんかで買い入れた野菜なんかを食べますから、どうしてもその摂取量というものは少なくなってまいりまして、やはり被害を一番大きく受けるのは農民である。それからまたその被害地なんかは、たとえば安中なんかに参りますと、ああいう煙がやってまいりますところでは土地が、宅地にすればいいようなところであっても全然だれも買い手がつかない。そういうような土地の値段にもずいぶん響いてまいりますから、そういう土地を所有している農家は非常な目に見えない損害を受けているということも考えられます。  それからまた、私はいまのお話で申し上げましたように、住民のたとえばカドミウム摂取量が多いか少ないかを判定するには、お便所の中の屎尿をよくまぜてとって帰りまして、そして重金属分析する。そうすれば——大体日本人は一人一日当たり一リットル屎尿が出るということになっております。これは屎尿処理場なんかの統計でよくわかっておりまして、人口一万人の分の屎尿処理場をつくるにはだからちょうど一万人の人が日に一リットル出るという計算でやっていけばちょうど合うのだそうです。ですから特に汚染された農作物をいつも食べているような専業の農家の便所へ行きまして、ちょっと鼻をつまみまして、びんを持っていきまして、ひしゃくでよくまぜてくみ取りまして持って帰ります。そしてそれを分析しますと、ああここの農家はどのくらいのカドミウムを一日に食っているかという比較ができます。そうしますと、たとえば去年の六月から十月までの間に二回安中で岩井という地区と野殿という別の地区ですが、その二つの地区から屎尿を持って帰りまして分析しますと、一リットルの中に岩井地区では〇・九ミリグラム、非常にたくさん出てまいります。それから野殿という地区は、ちょうど安中の製錬所の裏側、駅から見ますと裏側の山手になりますが、そこでは〇・六ミリグラム、一リットル中出ました。まあ一日そのぐらいとっているということになるわけですが、それから今度は婦中町の、昔の神通川の患者が非常にたくさん発生しましたところでとってまいりました屎尿ですと〇・三ミリグラムしかない。そうすれば、安中のほうが二倍、三倍と多いということがわかります。それからまた普通の非汚染地区の、たとえば私のいます倉敷の屎尿処理場なんかへ参りまして、バキュームカーがくみ取ってきたやつをもらいまして分析しますと、またこれは非常に少ない。〇・〇四ミリグラムぐらいしかない。こういうぐあいでして、ですから私どもはどろの汚染調査すると同時に、そういう屎尿をもらってきて分析する。こういうことはなかなか厚生省はやらないのです。私どものほうがこういう分析は、土壌肥料学のほうが昔から屎尿が肥料に使われた関係なんかありまして専門的にやっておりまして、こういう面からも土壌汚染影響人体にどのぐらい及んでおるかということがわかるわけです。ことしまた安中へ行って調べますと、その量が大体三割ぐらい減っておる、こういうこともわかりまして、だんだん安中の人たちが警戒して食べなくなってきておるという実情がわかるわけです。そういう調べ方もございます。
  25. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 あと一つだけ御質問をいたして終わらしていただきます。  当面カドミウム指定をされるわけですが、引き続いて農作物の生育に影響があるといわれております銅、亜鉛指定をされることになるわけですが、純然たる研究者の立場でこの銅、亜鉛指定について必要な試験研究というものはどのくらいの期間である程度の資料の整備等ができるとお考えになっておりますか。
  26. 小林純

    小林参考人 私からお話し申し上げますが、これは私も実は終戦まで農林省におりまして、鉱害の担当官をしておりました。昭和十八年に神岡鉱山のいまの神通川地区の患者が出ましたあのあたりの稲の被害調査に参って、その報告書がいまごろになりまして患者の発生した場所と全く一致するということが出てまいりまして、そういう昔の調査が今度のイタイイタイ病の原因究明に役立つというようなこともあったわけでして、私も長い経験をもってこういうお話しを申し上げておるわけなんです。十六年から水や鉱害調査をやっておりまして、おいそれとすぐ成果があがるかということはなかなか困難な問題だと思います。ですから、着手しますには全面的に一ぺんにやろうとするとたいへんな混乱も生じましょうし、やはり予算やいろんな関係があって重点的にしぼってスタートなさるんじゃないかと考えます。  それからカドミウムとたとえば亜鉛との毒性というものはどのくらい違うかといいますと、私なんかが農作物なんかで調べましたところでは二百倍以上違っております。カドミウムのほうがそれだけつまり毒性が強い。亜鉛カドミウムの二百倍与えてもまだ亜鉛の毒性のほうが弱いというふうに感じておりますから、やはりいまさしあたりはカドミウムについてしぼって重点的にお調べになったほうがあるいはいいんじゃないか、こういうふうに考えます。
  27. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 どうもありがとうございました。
  28. 草野一郎平

  29. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 本日は参考人の方にはお忙しい中をおいでいただきましてたいへん感謝申し上げます。  農用地土壌汚染防止等に関する法律案が提案されましていろいろ審議をしてきたところでございますが、いますでに私たちいろいろお伺いしたい点もたくさん出ましたが、時間の関係もございますので若干補足してお尋ねをいたしたいと思います。  まず、小林参考人に最初一点お伺いいたしたいのでありますが、政府の過去の土壌調査の結果から見ますと、カドミ、銅、亜鉛、鉛、砒素によって汚染されている農用地及びそのおそれのある農用地が十ヘクタール以上の集団しているものでも全国で百二十カ所、面積にしましておおむね四万ヘクタールと推定されております。その他を入れますと相当量になるわけでございますが、農業者はたいへんな不安を抱いておるわけでございます。  そこで、このような公害によって汚染された土壌に対する分析、こういったものはどのようにすればいいのか。また土壌汚染は混合汚染であるということをよくわれわれは承知しておるのでありますが、この点について先生の御意見を承りたいのでございます。
  30. 小林純

    小林参考人 ただいまのお話にお答えいたしますが、大体重金属の場合は鉱山の種類によりましてその金属が違うわけでありまして、銅山の場合ですと銅が主体になりまして、その地区の汚染は銅がおもに原因になりますが、しかし、もちろんその中に砒素とか亜鉛が一緒に含まれて一緒に害をするというような場合もございます。  それからまたカドミウムなんかは、亜鉛の鉱山あるいは掘り出す鉱山だけでなくて、亜鉛の製錬をする場合にその煙突からカドミウムが出てくる。鉱山の場合は排水のほうから亜鉛カドミウムが出てまいりますが、そういうぐあいに、鉱山の種類によりまして、出ます汚染物質が違ってまいりますから、やはりそこら辺にピントを合わせて調査分析したほうがよろしいと思います。  それから、最近は分析方法が非常に進歩いたしまして、新しい機械がどんどん開発されております。ですから、ただいまは原子吸光分析装置という名前の装置が出ました。出ましてからこれまでほんの数年しかたちません。私どもが十年前にイタイイタイ病の患者からカドミウムを見つけ出しましたときはそういう装置は全然なかったわけでございまして、昔はそういうようなものを見つけ出すのは非常にむずかしかったわけですが、いまはカドミウムでも亜鉛でも銅でもニッケルでもいま申し上げました装置によりまして、わりあいに楽に分析ができるような時代になってまいりました。  それから、先ほど申し忘れましたのですが、やはり土壌調査というのは汚染源を中心として広がり方を見るのが必要である。水平分布とかあるいは垂直的な深さによる分布とか、そういう汚染の分布の模様を調べていくことが必要である。そうして、それが年々濃度が増していくかどうか、そういうようなことを見ることも必要ですから、これは単に米だけで調べては一方的になると思います。米だけでどろの汚染状態はきまらない。それから、たとえば最近神岡地方でもお米の汚染が出ております。こういうのは鉱山の上流にあるというような新聞記事を見まして、それが神岡鉱山のせいであるかどうかわからないような感じがいたします。けれども神岡鉱山が排水を流しておるよりも上流であっても、あそこに製錬所もございますから、煙から出る場合もあります。ですから、風によって運ばれたかもしれないし、あるいはまた、神岡鉱山というのは大きなダムを持っておりまして、そこに排水を全部ぶち込んでおりますが、昭和三十年に洪水で決壊したこともございますから、そういうときにどろをかぶった水田に多いのか、そういうようなこと、つまり鉱山を中心としたどろの中のカドミの分布状態を調べれば、そういう由来もわかってくると思うわけです。
  31. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この機会に小林参考人にもう一点ちょっと追加してお伺いしますが、先ほど土壌汚染の度合が基礎になる、これの調査測定が最も基本であるということで、たいへん力強い御意見を承りまして了解いたしたのでありますが、その中で、水田に稲作をやりましても、年の米のでき高によって違うということやら麦の場合は吸収が多い、また石灰が入れてあれば吸収量が減ってくるというようなことの御意見を承りました。そこで、汚染された土壌作物を永年つくっていったとした場合に、どのくらいでカドミ等は消失するものであるか。ひとつおわかりになる範囲で、基準といいますか、そういったことを参考までにお伺いしておきたいのでございます。
  32. 小林純

    小林参考人 カドミウムがどのくらいの期間に減っていくかという御質問にお答えするのも、なかなかはっきりしたことは申し上げられませんですが、神通川の場合を申し上げますと、戦争中に神岡鉱山が亜鉛や鉛の大増産をやりまして、そのとき排水処理が間に合わなかった。そして神通川が汚染されて、そして下流の水田に流れ込んでいったわけですが、そのころおそらく水田中のカドミウムの濃度、どろの中の濃度は一番高かったと考えられます。その当時、おそらく二〇とか三〇PPMというような値に達したのじゃないか。もちろんそれは水田の水口や水しりで違ってまいります。水田の場合は水口にまず沈でんしますから、水口のほうが濃くなりますので、その場所で違いますが、二〇とか三〇PPM程度までいったかもしれない。ところが最近調べてみると、六だとか七PPMだ、こういうようなふうになっておりまして、それは戦時中からいえばもういま二十何年かたっております。それから神岡鉱山が三十年から先ほど申し上げましたようなダムをつくって、この中に排水をみんなぶち込んでしまいますから、もっとも三十年に一度決壊はいたしましたが、三十一年からは完全なものになっておりますから、いま神通川を通じて水田カドミウムが入ってこない。それが三十一年からすでに十何年たっております。そういうように長期間のうちにだんだん減ってはきておりますし、おそらく米の中のカドミウムもそれに応じて減ってきておるということは申し上げられます。ですから十年、二十年たってだんだん減ったのがはっきりとはわかるということでして、十年で半分減るのか、そこら辺のところは私もよくわからないと申し上げます。
  33. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に宮里参考人に一点だけお伺いをいたしたいと思いますが、宮里参考人は長い間農林省におられ、土壌専門にやってこられた方で、また現在も土壌専門にいろいろ各地を世界にまたがってお歩きのようでありますが、広い意味での土壌改良法というものについて簡潔に御意見を承っておきたいのでございます。よろしくお願いします。
  34. 宮里愿

    宮里参考人 広い意味での土壌改良法といまおっしゃいましたけれども、広い意味でという意味はよくわからぬですけれども土壌ということを広い意味でとらえますと、ごく学問的にとらえますといろいろむずかしい分類がございますけれども、われわれが日常生活の場においてとらえますと、生物が生息し人間生活している、世界の地球上の表土を土壌と見てよいと思います。それから土壌改良法ですけれども、いまわれわれの議題にのぼっている土壌改良というのは、作物の生育の場としての土壌に、作物の生育にマイナスの面がいろいろあるわけです。そのマイナスの面を改良して、作物をして正常な生育をさせる手段を土壌改良といいます。具体的には、日本でもって一番問題になっておるのは酸性土壌ですね、そういうときには石灰を加えて酸性を直してやれば作物は正常な生育を行ないます。それから日本の畑土壌に多い火山灰土壌の場合には、新しい火山灰土壌の場合には燐酸が非常に欠乏しておるので、燐酸をやればそこで作物は正常な生育をします。そのような具体的な方法が土壌改良法としてわが国じゃ一般に行なわれております。以上です。
  35. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 それじゃ最後に一点だけ、全国購買農業協同組合連合会技術顧問をしておられる黒川参考人にお伺いいたします。今回土壌汚染防止法案が提案されておりますが、農業者の代表という立場からも、いろいろこれは改正を要するたくさんの問題点が今後にまかされておるわけでございますけれども、今回の法案についてどのように評価しておられるか、また今後ぜひこうありたい、あってほしいというような希望、意見等ございましたならば、この機会にお聞かせをいただきたい、かように思います。よろしくお願いします。
  36. 黒川計

    黒川参考人 今回のこの法案の問題ですけれども、先ほど弘法参考人からのお話がありましたように、土壌は何といいましても日本の農業生産の基盤でありますので、これを健全な形で保全していかなければならぬということが、われわれ農業団体としては一番大事な問題だと思っております。それには、今回のこの法律のように汚染防止するというようなこともその一つでありますけれども、生産力を高めるということ、そういうこともぜひやっていただきたい。そうすることが、単位当たりの生産量の増大なりあるいは品質の改善、こういうことに直接結びつくものでありますので、さらにそういう方向にも発展をしていただきたい、そういうふうに考えておるわけであります。そういう意味で、今度の法律がぜひその出発点として成立していただくことを念願をしているわけです。この場合に、先ほども申し上げましたように、この土壌汚染に伴ういろいろの対策費用被害者に負担がかからないように、それだけはひとつぜひともお願いしたいと思っております。
  37. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ありがとうございました。  以上で終わります。
  38. 草野一郎平

    草野委員長 以上で、参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の各位には、御多用中のところ、長時間にわたり御出席をいただき、貴重な御意見を拝聴し、かつ御答弁いただきましたこと、ありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  この際、暫時休憩いたします。    午後零時十二分休憩      ————◇—————    午後二時四十六時開議
  39. 草野一郎平

    草野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農用地土壌汚染防止等に関する法律案を議題といたします。  本案につきましては、他に質疑の申し出もありませんので、これにて質疑は終了いたしました。     —————————————
  40. 草野一郎平

    草野委員長 この際、本案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党共同提案により、芳賀貢君外三名から、また日本共産党津川武一君から、それぞれ修正案が提出されております。
  41. 草野一郎平

    草野委員長 提出者より順次趣旨説明を求めます。芳賀貢君。
  42. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表して、ただいま提案されました農用地土壌汚染防止等に関する法律案の修正案につき、簡単にその趣旨を御説明申し上げます。  修正の第一点は、政令で定める特定有害物質について、カドミウムその他の物質を法に例示したことであります。  修正の第二点は、都道府県知事が汚染対策地域指定する場合に、汚染地域の市町村長は、当該地域を汚染対策地域指定するよう都道府県知事に対し要請することができる道を開いたことであります。  修正の第三点は、右の市町村長の要請に対応し、都道府県知事が対策地域のうち特別地区を指定する場合においても、当該市町村長は、都道府県知事に対し特別地区として指定するよう要請することができることといたしました。  修正の第四点は、農林大臣が、農用地土壌汚染防止に関し、関係行政機関の長または関係地方公共団体の長に対し、他の法令に基づき必要な措置をとることを要請するものとすることについて、必要な措置を要請し、または勧告するものとすることに改めたことであります。  修正の第五点は、都道府県知事は、農用地土壌汚染に関し、必要に応じて調査測定を実施し、公表することとしている点について、十分に調査測定をなし得るよう「必要に応じて」を削除することといたしました。  修正の第六点は、国及び都道府県の援助について、必要な「助言」、指導その他の援助を行なうようにつとめるものとする点を、必要な「助成」、指導その他の援助を行なうようつとめるものとすることに改めたことであります。  以上が修正の趣旨であります。  何とぞ全員の御賛同を賜わりますようお願い申し上げます。(拍手
  43. 草野一郎平

    草野委員長 津川武一君。
  44. 津川武一

    ○津川委員 人の健康を維持し、農作物の生育を保障し、環境汚染防止するために、修正案の大綱を説明申し上げます。  一つは、現在問題になっております特定有害物質を、カドミウム、水銀、鉛、砒素、銅、亜鉛等について法に明らかにすることであります。  二つ目には、環境基準を明らかにして、土壌汚染防止すること、排水基準、排気基準について都道府県の上のせは、対策地域内に限らず行なえるようにすることであります。  三つ目には、地方自治体に権限を大幅に移すことでありまして、事業者による土壌汚染施設の設置、変更は都道府県知事の認可を要するというふうにすること。知事は、土壌汚染施設の設置者に対して常時観測、測定、報告を義務づけるとともに、立ち入り検査もできるようにし、必要があれば操業中止命令ができるようにすることであります。  四つ目には、対策計画を定めるとき、その計画を民主化するために農民の意向を聞くということであります。  五つ目には、被害者被害を救済するということでありまして、農作物等の汚染に伴う損害については無過失責任を原則とする、土壌汚染設置者がその賠償の責に任ずることにする、こういうことであります。  その他、十数項目を加えてありますが、何とぞ皆さんの慎重な御審議の上に御賛成くださるようお願いいたしまして、趣旨説明を終わらせていただきます。
  45. 草野一郎平

    草野委員長 以上で趣旨説明は終わりました。     —————————————
  46. 草野一郎平

    草野委員長 別に御発言もありませんので、引き続き原案並びに両修正案を一括して討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、津川武一君提出の修正案について採決いたします。  津川武一君提出の修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  47. 草野一郎平

    草野委員長 起立少数。よって、津川武一君提出の修正案は否決されました。  次に、芳賀貢君外三名提出の修正案について採決いたします。  芳賀貢君外三名提出の修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  48. 草野一郎平

    草野委員長 起立総員。よって、芳賀貢君外三名提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  49. 草野一郎平

    草野委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。(拍手)     —————————————
  50. 草野一郎平

    草野委員長 この際、本案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党共同提案により、三ツ林弥太郎君外三名から附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。三ツ林弥太郎君。
  51. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員 私は自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党を代表して、ただいま修正議決されました農用地土壌汚染防止等に関する法律案に対し附帯決議を付すべしとの動議を提出いたします。  まず案文を朗読いたします。     農用地土壌汚染防止等に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、食糧生産の基盤である農用地の環境保全が国民の健康保護と生活環境保全に資するものとして、本法による土壌汚染の除去防止事業を積極的に講ずるよう、特に左記事項に留意して運用の万全を期すべきである。      記  一 本法による特定有害物質としては、カドミウムのほか、銅、亜鉛等についても早急に指定を行ない、農作物の生育障害防止に遺憾なきを期するとともに、米以外の農畜産物の汚染の許容限度についても早急に調査をすすめ、地域指定の促進を図ること。  二 水質汚濁防止法または大気汚染防止法に基づく排水基準または排出基準の設定については、土壌汚染防止の観点を十分に考慮し、所要の規制が行ないうるよう措置するとともに、発生源に対する立入調査その他の監督を厳重に行なうことにより本法制定の目的が十分達し得られるようにすること。  三 対策計画の作成にあたっては、地元市町村等の意向を十分に反映せしめ対策計画に盛り込まれた諸事業については、その確実な実施を図るとともに、採択基準の緩和、経費の助成について特段の配慮を払うものとし、農業者負担を極力軽減すること。  四 特別地区について指定農作物等の作付け等に関する勧告を行なうときは、農業者の蒙る損失について救済の方途が講ぜられるよう十分な行政指導を行なうこと。  五 農用地土壌汚染に関する調査測定体制を整備充実し、試験研究の推進に特段の考慮を払うこと。  六 現在および将来にわたり国民が健全な心身を保持し、安全かつ快適な生活を営むことを保障するよう、林地その他農用地以外の土壌全般についても環境基準の設定、その汚染防止のための適切な措置等を講ずることについて、すみやかに検討をすすめること。  右決議する。  以上の附帯決議の趣旨につきましては、委員各位の熱心な質疑の過程で各位の十分御承知のことと思いますので、説明は省略さしていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
  52. 草野一郎平

    草野委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  引き続き採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  53. 草野一郎平

    草野委員長 起立総員。よって、三ツ林弥太郎君外三名提出の動議のごとく本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議について政府の所信を求めます。倉石農林大臣。
  54. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、善処してまいりたいと存じます。(拍手)     —————————————
  55. 草野一郎平

    草野委員長 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 草野一郎平

    草野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  57. 草野一郎平

    草野委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  卸売市場法案の審査に資するため、参考人より意見を聴取することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 草野一郎平

    草野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選、出頭日時及びその手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 草野一郎平

    草野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は来たる十五日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時散会