○合沢
委員 農用地の
土壌の
汚染防止等に関する
法律案について
質問をいたしますが、
農用地の鉱山の廃石等によるところの農作物の被害の
歴史はいまさらではないのでございまして、先ほ
どもお話がございましたが、足尾銅山の鉱毒事件にその例を見るごとく、すでに百年にも及んでいまだ解決を見ていないという例が
全国に非常に多いわけでございます。特に近年は経済成長とあるいはまた人口の都市の集中化に伴って
農用地の
汚染の
地区は非常に広がってまいっておりまして、
汚染農地は十八万八千ヘクタール、被害
地区も千五百
地区、関係農家は三十四万というように及んでいると聞いておるわけでございます。しかも、最近ではその被害がカドミウムの
汚染米のように直接人間の健康あるいは生命にまでも及んでおるということで、まことに憂うべき現象ではないかと思うわけでございます。
私の
地区にも、先ほどお話がございましたが、奥岳川流域のカドミウムの
汚染地区がございまして、要観察
地帯としての
指定を受けておるわけでございます。私も
現地の
調査をしておりますが、被害
地区の農家の受けておるところの損害は、物質的にも精神的にもまことにはかり知れないものがあるわけでございます。昭和四十三年にこのカドミウムが問題になったときに、
現地の高校の女子生徒が作文をつくっております。私は非常に感激を受けたわけでございますが、その作文を摘記、読んでみますが、「この私の体もカドミウムに侵されているかも知れないのです。私の住む村の中央を流れる清らかな川は、子供の鮒釣りに夏の泳ぎに、そして灌漑用水としてまさに平和な
農村の生活の源であったのです。ところが鉱山が開発されてからしだいに川の様子は変わり、悪臭と混濁の水が流れ、魚一匹住まない「死の川」に変わってしまったのです。村役場では水質検査や被害
調査などこの
対策にとりくんでいました。ところがその結果を私達が知る前に、突如として「奥岳川にはイタイイタイ病の
原因であるカドミウムが多量に含有されている」と新聞やテレビで報道されてしまったのです。
住民の驚きと憤りは一時に爆発し「村は一体俺達の命を守る
考えは持たないのか」と悲痛な叫びが起こってきました。村人達は朝から仕事も手につかず、大人も子供もこのみえない悪魔の恐怖に騒然となったのです。現在
日本は
公害列島といわれるように、
全国各地に
公害の波が押し寄せ、全くその種の恐怖にさらされていないのは、四十六
都道府県のうちわずか十二府県だそうです。今、身近に私達の村にあの神通川と同じ悲劇が繰り返えされようとしているのです。不安と恐怖が迫ってきます。私は一体どうしたら良いのでしょうか。」というような文章でございますが、さらにまた続けてこういったことが書いてございます。「憲法第二十、五条の、健康で文化的な生活とは単なる飾り文句なのでしょうか。」といったようなこと、さらに、「現在世界第三位という経済の高度成長は確かに世界に誇れることかも知れません。しかし生きている人柱で築かれた高度成長は、その美名とはうらはらに世界の笑いものでしかありません。」「生命の尊重が人権の根源であり、人権の尊重こそ平和な生活の基礎です。今こそ
公害の正体を明らかにして十分に認識して、この人柱思想をこの
日本全土から払いのけようではありませんか。」全文ではございませんが、こういった文章を読みまして私非常に感激したわけでございます。
このようなことで、
地域の農家の方は非常に不安におののいておるわけでございます。特にこの
地区の人は許容量以下の
汚染米でも長い年月にわたって食べてきているということでございまして、将来神通川流域に見たようなイタイイタイ病の発生はしやしないか、また、米作で生活している農家は過剰米の今日米の質が非常に問題になるわけでございまして、この辺からも非常に
心配しているわけでございます。また、
汚染米
地区農家の結婚ということさえも
心配になりまして、このことは非常に社会問題となっておると思うわけでございます。憲法の二十九条ですか、財産権の侵害ということは、これは憲法で保障されているわけでございますが、最近ではその上人間の生命の危険にまで及んできているということでございます。私は今回提案された
法案は当然これらの
公害の
防止の
措置と同時に被害農家の救済
措置というものが立法化されるものということで期待しておったわけでございまして、また関係
住民もそのような
措置を期待しておったわけでございます。しかし提案された
法案を見ておりますとその救済
措置がないわけでございまして、まあ救済
措置は民法によってやればいいではないかということのようでございますが、御存じのようにきわめて零細な農家にはその挙証能力は技術的にもまた経済的にも非常に困難でございます。また、かりに裁判になりましても、非常な長年月を要しているというようなことであるわけでございます。また、
原因者が中小
企業の場合とかあるいは
原因者が消滅しているといったような場合には泣き寝入りになるわけでございます。この被災農家に対するところの救済
措置ということがきわめて重要なことではないかしいうように
考えるわけでございます。そういった見地から、将来
農林大臣はこのような被災農家に対してあたたかい恩情のある
措置をとっていただきたいように
考えるわけでございますが、こうった問題についての
大臣の所見を承りたいというように
考えるわけでございます。