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1970-12-09 第64回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十二月九日(水曜日)     午前十時四十分開議  出席委員    委員長 草野一郎平君    理事 安倍晋太郎君 理事 小沢 辰男君    理事 仮谷 忠男君 理事 丹羽 兵助君   理事 三ツ林弥太郎君 理事 芳賀  貢君    理事 斎藤  実君 理事 小平  忠君      稻村佐四郎君    上村千一郎君       鹿野 彦吉君    亀岡 高夫君       小山 長規君    佐々木秀世君       斎藤 邦吉君    坂村 吉正君       瀬戸山三男君    田澤 吉郎君       高見 三郎君    中尾 栄一君       中垣 國男君    別川悠紀夫君       松野 幸泰君    森下 元晴君       山崎平八郎君    渡辺  肇君       田中 恒利君    千葉 七郎君       松沢 俊昭君    山口 鶴男君       瀬野栄次郎君    鶴岡  洋君       二見 伸明君    合沢  栄君       小宮 武喜君    津川 武一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         経済企画庁審議         官       西川  喬君         農林大臣官房技         術審議官    加賀山國雄君         農林省農政局長 中野 和仁君         農林省農地局長 岩本 道夫君         水産庁長官   大和田啓気君  委員外出席者         内閣官房内閣審         議官      遠藤 寛二君         経済企画庁国民         生活局水質公害         課長      白井 和徳君         法務省刑事局参         事官      佐藤 道夫君         大蔵省主計局主         計官      松下 康雄君         厚生省環境衛生         局公害部公害課         長       山本 宣正君         食糧庁次長   内村 良英君         通商産業省公害        保安局鉱山課長 伊勢谷三樹郎君         通商産業省公害         保安局公害部公         害第二課長   根岸 正男君         運輸省自動車局         整備部車両課長 飯塚 良政君         農林水産委員会         調査室長   松任谷健太郎君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月九日  辞任         補欠選任   赤城 宗徳君    稻村佐四郎君   鹿野 彦吉君     上村千一郎君   熊谷 義雄君     山崎平八郎君   松野 幸泰君     別川悠紀夫君   角屋堅次郎君     楯 兼次郎君   中澤 茂一君     山口 鶴男君   瀬野栄次郎君     渡部 通子君 同日  辞任         補欠選任  稻村佐四郎君     赤城 宗徳君   上村千一郎君     鹿野 彦吉君   別川悠紀夫君     松野 幸泰君   山崎平八郎君     熊谷 義雄君   楯 兼次郎君     角屋堅次郎君   山口 鶴男君     中澤 茂一君   渡部 通子君     瀬野栄次郎君     ――――――――――――― 十二月八日  総合農政推進に関する陳情書  (第一三八号)  農業基本政策確立等に関する陳情書  (第一三  九号)  食糧管理制度堅持等に関する陳情書外四十三  件(第一  四〇号)  農薬安全対策に関する陳情書  (第一四一号)  果樹産業振興対策に関する陳情書  (第一四二号)  多目的利用する林道改良舗装に関する陳情  書  (第一四三号)  瀬戸内海海域における赤潮対策に関する陳情書  (第一四五号)  総合農政確立に関する陳情書  (第一四六号)  農林漁業金融公庫造林融資条件改善等に関す  る陳情書  (第一四七号)  林道開設事業用地費等助成に関する陳情書  (第一四八号)  農業生産地域分担に関する陳情書  (第一四九号)  花卉園芸振興法早期制定に関する陳情書外十  件(第一五  〇号)  福岡県の麦被害対策に関する陳情書  (第一五一号)  総合農政対策に関する陳情書  (第一五三号)  瀬戸内海栽培漁業推進に関する陳情書  (第一五四号)  農業基盤整備事業推進に関する陳情書  (第一五五号)  林業信用基金業務範囲拡充に関する陳情書  (第一五六号)  造林補助単価の引上げに関する陳情書  (第一五七号)  卸売市場法案成立促進に関する陳情書  (第一五八号)  農林漁業近代化促進に関する陳情書  (第一五九  号)  米の生産調整等に関する陳情書  (第一  六〇号)  家畜伝染病予防法に基づく殺処分の手当金増額  に関する陳情書  (第一六  一号)  茶業振興対策に関する陳情書  (第  一六二号)  蚕糸業振興対策に関する陳情書  (第一六三号)  秩父山地の国有林保護に関する陳情書  (第一六四号)  愛媛県滑床及び成川地区自然休養林指定に  関する陳情書  (第一六五号)  かんしょ及びかんしょでん粉安定対策確立に関  する陳情書  (第一六  六号)  スーパー林道田代山線開設促進に関する陳情  書(第一六八号)  大分県の風成漁港改修工事中止に関する陳情  書  (第一六九号)  米生産調整に伴う休耕田の有効利用等に関する  陳情書(第  一七一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農薬取締法の一部を改正する法律案内閣提出  第二〇万)  農用地土壌汚染防止等に関する法律案(内  閣提出第二一号)      ――――◇―――――
  2. 草野一郎平

    草野委員長 これより会議を開きます。  農用地土壌汚染防止等に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中恒利君。
  3. 田中恒利

    田中(恒)委員 私は農用地土壌汚染防止法につきまして、昨日の委員会に引き続いてできるだけ各委員との重複を避けながら、若干御質問をいたしたいと思います。  農林大臣お尋ねをいたしますが、大臣は最近、新しい日本農政の課題として、農工一体化ということを盛んに主張せられておるわけであります。具体的には、たいへん高度に発達してまいりました日本企業農村誘致をしていくということでありまして、工場地方分散という観点に立ちましても、私どもとしても基本的にはその趣旨を了解をいたしておるわけでありますが、具体的に工場誘致農村に持ち込まれた場合にどこでも起きます問題は、今日問題になっております公害の問題であります。あるいは農村地域においてすでに工場等設置をせられておる地帯におきまして、公害問題がたいへん深刻になっておりまして、私ども地域におきましても本年度、新居浜の住友五社のあります地帯では、原因はまだよくわかりませんが、果樹地域全般にわたりまして五〇%の減収という問題が起きておって、たいへん大きな問題になっておるわけでありますが、その他ヘドロの問題なども全国各地に、工場進出公害の問題はたいへん深刻になっておるわけであります。経済の発展に伴いまして、公害の問題がある意味では必然性を伴うものであることは理解されるわけでありますけれども、今後の新しい日本農政の方向として農業工業一体化という問題を考えるにあたって、第一次産業であります農林漁業に対する公害防止をどのような観点で織り込ませながら、工業地方分散というものを進めていかれるのか。この点についてまず大臣の基本的な所信をこの際お承りいたしたいと思います。
  4. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私ども農政のことを考えてみますのに、だんだんと農村においては労働力も窮屈になってまいります。しかも農村にある労働力というものを従来のような型で放置しておきましたならば、太平洋ベルト地帯と申しますか、そういわれておるような地域にかなりな勢いで若い労働力が吸収される傾向が非常に強いわけであります。全体として私はそういうことは好ましいことではないと思います。そこでそういう意味からも、また地方農村を荒廃させないという意味からも、これは日本のわれわれが考えるだけではなくて、ヨーロッパの諸国なども同じような考え方で政治の面でもたいへん努力をいたし、国によっては地方に分散していく工場に対して助成金等、あるいは税の面でめんどうを見たりして、できるだけ産業全国的に分散して、そしていわゆるメガロポリスといわれるような形でなくて、地方を含めた全体的に産業と人口と国民の所得をできるだけ平均化していこうという傾向があるようでありますが、われわれでもやはりそういうことが必要ではないか、こういうことで、いわゆる田園都市的なことを構想に描いておるわけでありますが、四十五年度予算で通産、労働農林三省にそういうことについての調査検討いたしてまいる予算を取ってありますけれども、まだ具体的にそういう問題を全国的に計画的にやるという段階にまでなっておりません。前回の国会で御賛成を得ました農協法改正案等につきましても、農協の方々も、いま私が申しましたような趣旨で、農住構想というようなこともその一環として活用するような傾向が見えていることは御存じのとおりであります。そこで、地方産業を分散していきますためには、地方の県知事町村長農業団体等と緊密な連絡をいたしながら計画的に進めなければなりませんが、もうこれからの企業というものは、いままでの工業地帯であろうと、それから新しい処女地である地方農村地帯であるとを問わず、まずもって公害というものを除去する計画が先行すべきでありまして、公害が出たから、それから処理をしていくというようなことでは許されない時代に入ってきております。したがって、いまお話しのような、産業地方に分散するために地方自治体等と協力して地方に分散される企業というものは、まずそういうことから先行しなければならない。またそういうふうにさせるべきである。従来われわれが戦後のどさくさの間に自分の住まいだけ建てましたところは、下水だの排水だのというふうなことに一般家庭ですらあまり考慮せずに畑のまん中に家を建ててやってまいりました。あの当時はあれで済んだ。しかし、いまではそうでなくなったと同じように、まず終末処理を先に考えて設計をする。こういうことでございますので、これから私ども計画的に進めようとする産業分散もそういう趣旨でやっていかなければならない、こう思っているわけであります。
  5. 田中恒利

    田中(恒)委員 私もいま大臣の申されましたことはそのとおりだと思うわけでありまして、公害政策公害除去というものを工場誘致前提条件として先行させる、こういう意味をそのまま理解をいたしたいと思うわけであります。特に私はこの機会大臣に御検討をわずらわしておきたいと思いますが、農村における公害発生源と思われる各種工場事業所等立地計画あるいは進出についての住民心配、不安がいろいろな問題で起きておりますだけに、この際、これらの事業所施設等設置には公聴会制度的なものを何らかの形で設けておく必要があるのではないか、こういう考えを持つものであります。農業振興地域整備法に基づきます農業振興地域等につきましては、特にこの配慮を行なうべきではないか。今回提示をされております汚染土壌原因につきましても、三万七千ヘクタールのうちの三万ヘクタール、全体の約八〇%が水であります排水原因がある、こういうことになっておるわけでありますが、河川は本来、古い人間の歴史の中で農耕用地として形成をされてきたという歴史があるわけでありますが、その水が今日工場用水として分割されて、汚水として地域住民生活環境を悪化させる状態を導いてきておるわけであります。こういう水利河川等について、今後企業誘致に伴って農林省行政分野の中で取り上げられる問題がたくさんあると思うわけでありますが、こういう点について農林省として早急に点検をいたしまして、具体的に企業誘致に伴う公害防止政策防止処置をどのようにしていくか、こういうきめのこまかい方策を農林省内部で早急におつくりになる必要があると思うのです。この点について、重ねて大臣のこれからの点についての具体的な御意見をお聞きをいたしたいと思います。
  6. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ただいま御審議を願っております二つの法律、これができますことによってだけでも、いまお話しのようなことについてかなり私どもとしてなすべき事柄が多いわけでありますが、そういうことにかかわらず、やはり農政一環として農業地域に対していわゆる公害が出てまいらないようにするためには、農林省の中央、地方の機関を通じていまお話しのようなことに十分努力をしなければならない、これは当然なわれわれの任務である、このように考えておるわけであります。
  7. 田中恒利

    田中(恒)委員 農政局長お尋ねをいたしますが、この法律は「農用地土壌汚染防止等に関する法律案」、こういう名称になっておりますし、法第一条には「農用地土壌特定有害物質による汚染防止及び除去並びにその汚染に係る農用地利用合理化」、こういうふうに(目的条項がきめられておるわけでございますが、どうも土壌汚染防止法を見ますと、まず対策計画を樹立していく、あるいは特別にひどいところでは特別地域指定をしていく、その特別地域の中において農作物等についての作付規制をやっていく、こういうことが内容になっておる程度でありまして、この法律の(目的)に出されております「特定有害物質による汚染防止」を具体的にどういうふうにしていくのかということが私の理解範囲ではまだよくわかっていないわけですが、この法律の中で汚染防止をやるためにどういうふうな規定、どういうふうな内容が織り込められておるのか、単に汚染をされた土壌をこういうふうな「対策計画」で処理をしていくということだけに終わっておるのではないかと心配をしておるものでありますが、積極的に土壌汚染防止するためにこの法律の中でどのような内容が織り込められておるか、この機会にお聞きをいたしたいと思います。
  8. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまのお話でございますが、今回の法律内容は、いまお話しになりました汚染された土壌に対する対策と同時に、防止対策をやるということを明瞭にしておるわけでございます。そのことを二、三御指摘を申し上げますと、第七条で(排水基準設定等のための都道府県知事措置)というところで、これ以上汚染がどんどん進行しないように、汚染をされました土壌がありますような指定地域におきましては、そのことを頭に入れまして都道府県知事が大気の汚染防止法なり水質汚濁法なりによりましてきびしい排出基準を定めるものとするということを書いてございます。このことが一つ。  それから「対策計画」の第五条をごらんいただきましても、その中の二項の二のイは、「農用地土壌特定有害物質による汚染防止するためのかんがい排水施設その他の施設」というふうになっております。これはたとえば水源を転換いたしましてきれいな水を田畑に引いてくるというような防止対策、あるいは沈でん池をつくりまして有害物質農用地に流入しないような防止対策をとるということを考えておるわけでございまして、ただいま申し上げましたようにそういう両方の面からやるのが今度の法律内容でございます。
  9. 田中恒利

    田中(恒)委員 若干ないこともないでしょうけれども、大体この法律中心は、汚染土壌をなくしていく、現に汚染されておるもの、特にカドミウム等で非常に大きな社会問題になったものを当面取り上げながら汚染されたものの処置をしていく、こういう内容がほとんど中心になっておるんじゃないですか。それに関連して、将来予想される土壌汚染防止処置のいま若干言われましたような事項が載せられておる、こういう内容じゃないのですか。
  10. 中野和仁

    中野政府委員 話は少し逆のように思います。と申しますのは、まずそういう事態についてはこれ以上汚染が進まないような排出規制のいろいろな必要があるわけでございます。と同時に事業といたしましても、防止をやるためのいろいろな事業が必要だと思うのですが、むしろほかの法案と違いましたこれの特色は、汚染されてしまったところをどうするかということが大きな一つ特色だと私は考えております。
  11. 田中恒利

    田中(恒)委員 だから、汚染されたところをどう処置するかということがこの法律中心になっておるのでしょう。
  12. 中野和仁

    中野政府委員 繰り返すようでありますが、これ以上汚染が進まないような排水基準について知事に必要な措置をとらせるということを第七条に明瞭に書いてありますので、田中先生おっしゃいますように汚染されたところだけを主として対象にしておるというふうには私たちは考えていないわけでございますが、何といいましても、すでに汚染されてしまったところについて早急にいろいろな対策をとる必要があるものですから、こういうふうな法案になっておるわけでございます。
  13. 田中恒利

    田中(恒)委員 それでは少しこまかく御質問いたしますが、この法律に基づいて対策地域指定が行なわれ、対策計画が樹立をせられるわけでありますが、第五条において規定せられております「土壌汚染対策計画」というものはどういう性格を持つものなのか、この機会に明らかにしていただきたいと思うのです。たとえばこの「対策計画」が設定されることがイコール事業計画、こういう観点になるのか。事業計画というのはまた別なものになっていくのか。調査があって対策があつくそうして調査があって計画があって、そして実施計画というものがあるわけでありますが、この法律では単に「対策計画」を立てるということだけにとどまっておるわけで、それからあとどうするのかということがつながりがわからないわけでありますので、この法律に基づく「対策計画」は一体どういう性格のものなのか、この点を明らかにしていただきたい。
  14. 中野和仁

    中野政府委員 第五条によります「対策計画」は、これはいわば指定されました地域での汚染防止するなりあるいは除去するなりの全体としての計画でございます。あるいはマスタープランと申し上げてもよろしいかと思います。  そこで、具体的にこういう計画が立った場合に、たとえばかんがい排水施設設置なりあるいは客土なり、こういう事業土地改良法に基づきまして具体的な計画を立ててやるということになるわけでございます。
  15. 田中恒利

    田中(恒)委員 それでは、具体的な実施計画というのは、土地改良法に基づいてさらに策定をせられるということになるわけですね。  この点はまたあとで御質問いたしたいと思うわけでありますが、実施計画というのはまた別途につくられてくるということですね。そういたしますと、この対策計画に基づいて農林大臣承認をする、こういうことになっておりますが、この「農林大臣承認」というのは、一体どういう判断に基づいて承認あるいは不承認ということになっていくのか。単なるマスタープランでありますれば、それでよろしいということで、出てきたものを全部単に承認をするということなのか、この「農林大臣承認」ということばの中には、どういう承認条件になるものがあるのか、この点をお聞きしておきたいと思うのです。
  16. 中野和仁

    中野政府委員 その点につきましては、第五条の第三項に、対策計画は、その地域特定有害物質による汚染程度、その事業に要します費用、それからその事業の効果、緊急度等を勘案しまして、適切なものでなければならないと書いてあります。農林大臣承認いたします基準は、この三項によるわけでございます。  単なるマスタープランでありますと、農林大臣承認は必要ないかと思いますが、先ほど申し上げましたように、このプランができましたあと具体化をする必要があります。地元の計画がでたらめだということを申し上げるわけではございませんけれども農林大臣マスタープラン段階で具体的にどうやるかということを承知しておくという必要もございますので、ここで承認をいたします。そうなりますと、農林省としましては、承認をした計画を実現させるように、相当な費用を要する場合がございますので、そういう承認をした中身によりまして、財政当局とも折衝をして予算を具体化する、こういうことになってくるわけでございます。
  17. 田中恒利

    田中(恒)委員 この「農林大臣承認」という内容の中には、たとえば汚染土壌対策に対する国の予算措置というものがなされていく、その予算措置のワクの中で、全国で何カ所かを選定しなければいけない、そういうような事項がこの承認事項の中に織り込まれているのかどうか、この点はどうでしょうか。
  18. 中野和仁

    中野政府委員 ちょっと御質問趣旨がのみ込めない点もあるわけでございますが、あらかじめ農林省のほうで予算的に何カ所ときめておいて、その中にこの地区数をしぼっていく、そういう考え方ではございません。やはりこれは、普通の土地改良と違いまして、予算折衝いたしました結果、ことしは予算が五地区とれたからその五地区しかやらぬ、こういうことではございませんで、まずこういう汚染土壌をよくするというための指定をしまして、そして計画を立てそれを予算化するというふうにわれわれは考えております。
  19. 田中恒利

    田中(恒)委員 それではこの対策計画は、法律条項に照らし合わせあるいは現地実態等に照らし合わせて、各都道府県が出したものにあやまちがなければ全部承認をされていく、特別に予算その他の条件に触れることなく、一斉に全国各地の府県から出てくるものが、農林大臣承認事項の中では、別に実態にそぐわなくても適正な計画であればそのまま承認をしていく、こういうふうに理解してよろしいですか。
  20. 中野和仁

    中野政府委員 都道府県知事が出してまいりましたものをこちらでいろいろ審査をいたしまして、それが適切であれば承認をするということでございます。
  21. 田中恒利

    田中(恒)委員 私は汚染土壌というのは、ある意味では農業災害以上の問題をやはり内容的に持っておると思うのであります。災害の場合は——最近特に人災といったようなこともいわれておりますけれども、やはり自然災害という性格が非常に強いわけであります。けれども、この汚染土壌というのはやはり人災でありまして、端的にいえば企業がもうけるために、農地を所有する農民を犠牲にして企業活動をやってきた、この結果が汚染土壌を生んでおるわけであります。したがって、あとで御質問をいたしたいわけでありますが、土地改良事業の中でこの事業を取り扱うといったようなものではなくて、むしろ積極的に特別対策事業的な性格を持たせて、独自の予算を組んで国が直轄をしてやっていく、災害復旧早急原形復旧事業以上の性格を持たしたものにしなければ、この汚染土壌に対する事業計画性格というものが浮き彫りに出ないのではないか、こういう理解をしておるわけでございますが、これらの点について、農林大臣はどういうお考え土地改良事業の中でこれを取り扱うというふうにせられたのか、この辺をお聞かせをいただければと思います。
  22. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 事務当局から申し上げます。
  23. 岩本道夫

    岩本政府委員 先ほど農政局長から御答弁がございましたように、この法律の五条に基づく計画は、都道府県知事が立てまして農林大臣承認を得るわけでございます。この計画性格はいわゆる総合的なマスタープランというべきものでございまして、具体的な実施計画は、土地改良法の定める手続に従いまして、土地改良事業として実施してまいることになります。そこで、土地改良法には国営事業県営事業市町村営事業団体営事業等、いろいろな段階事業がございます。この土壌汚染対策計画に基づきます土地改良事業は、現地の具体的な実情によってその規模等がきまってまいりますので、それを拝見しないとどの段階でやったらよろしいか判断がつかぬわけでございますが、現在やっております土地改良事業国営事業の規模は、受益面積一千ヘクタール以上でございますので、その程度以上の対策計画事業があるかどうか、問題は今後に待たないと判断できません。また、県営以下の事業につきまして、どの段階でやらせるかということを考えます場合に、県知事対策計画を立てるという点に着目をいたしますと同時に、この事業企業の負担を伴うということでございまして、これは単に企業費用を割り当てる、配分をやるだけでなしに、実際にその負担金を納付させ、徴収するということも考えなければなりませんので、それらを勘案しますと、県営でやるのが妥当ではなかろうかと判断をいたしております。
  24. 田中恒利

    田中(恒)委員 土地改良事業というのは申請主義のたてまえをとっておりますから、土地の所有者からこの土地を改良事業をやってほしいという申請をとることが原則になっておるわけでございますが、この土壌汚染対策事業の場合も、汚染土壌を所有しておる農民が、そういうふうな、申請の組織も土地改良区等の組織をつくってやっていく、こういうことになるので、それと同じような形にこれはなるわけですか。大体土地改良法の第何条の手続によってこの改良事業を進められていくわけですか。
  25. 岩本道夫

    岩本政府委員 先ほど申し上げましたように、土地改良法に基づく所定の手続を踏んで事業を実施するわけでございます。  なぜそういうことにいたしますかという点でございますが、これは土壌汚染対策計画マスタープランという性格を持っておりますこと、したがって、そういう土地改良法に従って具体的な事業の申請が出た場合に、それが対策計画に合致しておれば承認をするという意味合いを含む計画だろうと思います。したがいまして、土地改良法に基づく所定の計画によって進めることになりますが、その基本的な考え方は、公害を受けた農用地であろうと、それは各農民の財産権に関することでありますがゆえに、農民の同意を得て土地改良法事業を進めるという基本的原則は維持すべき必要があるというふうに考えるからであります。
  26. 田中恒利

    田中(恒)委員 土地改良法の第何条に基づいて申請の受理がなされるわけですか。
  27. 岩本道夫

    岩本政府委員 土地改良法第八十五条第一項に基づいて申請の手続をとることに相なります。   〔草野委員長退席、三ツ林委員長代理着席〕
  28. 田中恒利

    田中(恒)委員 土地改良法第八十五条に基づいてなされるということになりますと、まず当該所有者の同意が前提になりますし、さらにその周辺の関係者の同意が必要になってまいりまして、それぞれ手続上めんどうな問題が起きるんじゃないですか、どうですか。
  29. 岩本道夫

    岩本政府委員 先生の御質問のように、企業者の特定有害物質の排出という人為的な要因に基づいて農民が被害をこうむっておるわけでございますから、その被害を防止する、もしくは回復をするという見地の事業の実行についてそれほど現地に反対があるとも思えませんし、先生のおっしゃるようなめんどうが起こるとも考えられません。
  30. 田中恒利

    田中(恒)委員 考えられませんとおっしゃいますけれども、普通の土地改良事業にいたしましても、土地改良事業の着工にあたっては関係農民の間で利害が相反しましてなかなかむずかしいわけであります。まして汚染土壌をよくするということでありますけれども、やはりこの汚染土壌の周辺にある農民がそのことによって水路の変更等が出てくるということから、私はいろいろ複雑な問題が起きてくると思うのです。こういう問題が土地改良法に基づいて事業を実施するという場合にも相当将来問題になって発生してくるんじゃないかということを私は心配いたしますし、特に法律でわざわざ汚染土壌をなくしていく処置をこういうようにするのだということを明記しながら、一方では従来行なわれておる土地改良事業に乗せてやるということでは、どうもせっかくこの法律をつくって積極的に汚染土壌を改良していく、こういう姿勢が非常に薄くなっていくんじゃないか、こういうように思うのです。だからむしろこれは土地改良法ということではなくて、別途な対策事業としてもう少し国が積極的に中心になって汚染土壌をなくするのだ、こういう姿勢で問題を処理すべきじゃないか、こういうように私は思うのです。
  31. 岩本道夫

    岩本政府委員 土地改良土地改良法に基づいて実施をするというのが現行のたてまえでございまして、土壌汚染対策計画に基づく事業といえども農民の財産権の尊重というたてまえに照らし、土地改良法の諸手続を踏んで実施すべきものであると考えます。
  32. 田中恒利

    田中(恒)委員 どうもよく議論がかみ合わないわけでありますが、農民の財産権を原則とするというのは同じですけれども、やはり農地汚染をされて、その土地をよくしたいというのは、所有者は当然持っておると思うのですよ。だからそういうものを国が積極的によくしてやるのだということで、特別にもっとはっきりとそういう事業計画を組んでやったほうが農民に対してはもっと親切じゃないか、こういうふうに私は思いますので、そういう観点で御質問をしておるわけであります。  なお、昨日の委員会審議で若干不明確な点についてこの際ただしておきたいと思いますが、それはこの事業費用負担の問題であります。私は五日の連合審査会におきまして山中総理府長官に、責任が企業に課せられるものでないということがなかなかはっきりしない場合——企業に責任があるということがはっきりした場合には一〇〇%企業負担、企業に責任があるかないか、あるいは企業はすでになくて、どうもその辺が不明確で企業の責任に帰せられがたい、こういう場合にはどうするのか、こういう質問をいたしましたら、山中総理府長官は、全額国または地方公共団体が持ちます、こういうふうに明言をしたわけであります。ところが昨日農政局長は、各委員質問を通しましてこの対策事業費用負担についての議論が多く出たわけでありますが、農政局長の答弁を聞いておりますと、できるだけ農民に負担をかけないという表現が一貫して使われておるわけであります。できるだけ農民に負担をかけないということは、多少農民に負担をかけるかもしれない、農民に多少負担をかけるのだ、こういうような要素が残っておると思うのです。この点は農林大臣は一体どういうふうにお考えになっておりますか。この際大臣のこの費用負担についてのお考えをお聞きをしておきたいと思うのです。
  33. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 原因者がわかっておるときのことは、きのうもずいぶん御質疑がありました。それのわからない場合のことだと思うのでありますが、そういう場合にはやはり土地改良はしなければなりません。原因者がわかってもわからなくても、汚染されておるところにはやはり土地改良をすべきである。そういう場合には、お話のように農民に負担をかけないようにひとつできるだけ努力をしなければならぬ。個々別々のケースがいろいろありますので、そこで慎重に申し上げておるわけであります。そういう方針で、できるだけ農民には負担をかけないようにひとつ検討してやってまいりたい、こういうわけであります。
  34. 田中恒利

    田中(恒)委員 農民には負担をかけない、こういうことを大臣はいま表明をせられましたので、私はそのとおり受け取って、この土壌汚染防止法に基づく事業費用負担につきましては、少なくとも該当農民の受益者負担的な性格によってこの事業が進められる、そういうことのないようにこの際はっきり大臣に要請をいたしておきたいと思います。  なお、この土壌汚染と関連をいたしますので水産庁にお尋ねをいたしておきたいと思いますが、ヘドロ、これは漁民にとりましては、土壌汚染法には該当いたしませんけれども農地と同じような海底に堆積をされておるわけであります。このヘドロの除去につきましては公共事業負担法に基づいて処理されるわけでありますが、このヘドロの堆積除去については具体的にどういうような費用負担の割合で、どういう手続でなされていくのか、この際漁民の問題として、問題のあるところではいま一番大きな問題になっておりまするので、御質問をいたしておきたいと思います。
  35. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 ヘドロの問題は、工場用水等からくるものが現在大きな問題になっておりますけれども、その他発生の経過からいいますと、いろいろ、たとえば真珠あるいはハマチ養殖等の老廃物の堆積ということも関係しておりましょうし、あるいは昔から非常に有機物が堆積しているということもいろいろあろうかと思います。原因者がはっきりいたしておりますものにつきましては、当然公害防止事業事業者負担法に基づきまして、ものによりまして四分の三以上十分の十以下あるいは二分の一以上四分の三以下、そういう規定になっておるわけでございますから、私どもこの規定に従いまして、不当に漁民が費用負担をして不利益な取り扱いを受けないようにいたすつもりでございます。私ども、この費用負担法で公室防止事業としてヘドロのしゅんせつ等が規定をしてあるわけでございますけれども、それ以外に来年度の事業といたしまして、原因者が必ずしも明らかでない場合の漁場復旧についての若干の予算の要求をいたしておるわけでございまして、この費用負担法に基づく事業と、それから私どもの独自の漁場復旧事業と、両者相まってヘドロの問題に取り組んでまいるつもりでございます。
  36. 田中恒利

    田中(恒)委員 水産庁長官、この点もなお確認をしておきたいと思いますが、いま土壌汚染については大臣は農民負担をさせないということなので、ヘドロだって全く同じだと思うのですが、関係漁民に対して費用負担がない、こういうように理解してよろしいですか。
  37. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 ヘドロというのは別に科学的に厳密に定義されておらぬわけでございますから、事態によってはいろいろな経過があろうと思います。したがいまして、原因者が明らかな場合、あるいは原因者が不明で公的に処理すべき場合も私は現実に相当あるだろうと思います。ただ先ほど申し上げましたように、漁場の運営といいますか漁業の運営といいますか、養殖事業等の遂行によって有機物がたまったような場合の措置につきましては、これはまた別途考える必要があろうと思います。したがいまして、一般的なお話といたしましては、農林大臣が申し上げましたとおり、公的負担として行なうべき筋合いのものだ、そういうふうに申し上げてよかろうと思います。
  38. 田中恒利

    田中(恒)委員 総理府にお尋ねをいたしますが、公害防止事業事業者負担法第七条第三号に、「農用地の客土事業その他の政令で定めるもの」について「二分の一以上四分の三以下の割合」こういうことになっておるわけですね。「その他の政令で定めるもの」という事項あとで政令で定められるわけでありますが、土壌汚染防止法の第五条第二項二号に掲げられております排水施設であるとかあるいは客土、地目の変換は入るわけでありますけれども、こういう対策事業計画に織り込まれておる事業、これが二分の一から四分の一以上の割合で企業者負担をさせていくという事項の中に政令で入っていくのかどうか、政令で将来予想されておるのかどうか、この点を明確にしていただきたいと思うのです。
  39. 遠藤寛二

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  費用負担法第七条第三号の「政令で定めるもの」でございますが、現在検討中でございまして、確定はいたしておりませんけれども、当面考えておりますものとしましては、農用地の客土事業、排土事業、地目変換等でございまして、おおむね農用地土壌汚染防止等に関する法律案第五条に掲げております事業は大体これに含まれることになろうかと思っております。
  40. 田中恒利

    田中(恒)委員 この点は農政局長に要望しておきますが、ここのところがいまたぶん含まれるだろうということでありますけれども、この政令の設定と対策事業、それから土地改良事業法に基づく事業計画ということでありますが、その辺の事業との間に関連性を十分持たすように、今後総理府と十分連携をとって処理をしていただきたいと思うのです。  それから総理府になおお尋ねいたしますが、汚染土壌についての環境基準、これはどういう方法で、目安としては大体いつごろ設定できるわけですか。
  41. 遠藤寛二

    ○遠藤説明員 政令は農林省と通産省、厚生省その他関係各省で御協議をしてきめられますので、私どものほうでいつということにはならないかと思います。またそのきめ方につきましても、農林省が主管省でございますのでそちらでおきめになると思いますが、現在まで私どもが承っております範囲では二つのものがございまして、人の健康に関係する環境基準と、それから作物の生育の被害等に関する環境基準とに分けられまして、そして人の健康に関するものについては作物の中の有害物質土壌との関係を明らかにする、それから作物被害については作物と土壌との相関関係を明らかにしてきめられるということになっておりますが、承っております範囲では、具体的な技術的な検討というものに非常にむずかしい点がありまして、早急にはきまらないと承っております。詳細は農林省からお聞き取りいただきたいと思います。
  42. 田中恒利

    田中(恒)委員 農林省がおきめになるようですので農林省お尋ねをいたしますが、今度カドミウムを当面指定をせられて、一PPM以上のカドミウム発生地というものが一つ指定地域基準になるわけでありますが、公害基本法できめられました土壌に関する環境基準と一PPMの汚染土壌との関連は今後どういうふうに組み合わせられていくのか。環境基準の設定の方法と、それからこれは相当かかるんじゃないかと思うのですけれども、その間はいま申しました一PPMだけで処理をせられていくわけですね。この辺どおですか。
  43. 中野和仁

    中野政府委員 いまの点は田中先生のお話しのとおりでございまして、昨日も申し上げたわけでございますが、土壌汚染の度合いと作物の特定有害物質によります汚染の度合いとの相関関係というものを明確にしませんと、土壌として望ましい環境基準というものはできません。その点につきましては、農林省といたしまして試験研究機関を動員いたしまして調査をやっておるわけでございますが、カドミウムにつきましては緊急を要しますので、とりあえず、すでに厚生省のほうで、食品衛生法に基づきまして、カドミウムが一PPM以上含まれている米はつくっても販売してもいけないということになっております。それを基準にいたしまして、そしてきのうも申し上げましたが、そういうカドミウムが一PPM以上含まれておる米が生産される土壌と、近くそれに達することが明らかなところというところを含めて今度の地域指定をしたいと考えておるわけであります。そういう地域指定と環境基準とがどういう関係になるかということは、先ほど最初に申し上げました環境基準のきめ方、これによりまして環境基準といまの地域指定とがほぼ一致する場合もあるいはあるかもわかりませんし、あるいはもう少し環境基準のほうが広がるかもわかりません。その辺はまだ現段階においては確たる御答弁が申し上げられない段階でございます。
  44. 田中恒利

    田中(恒)委員 大体この環境基準というのはいままで幾つできておるのですか。
  45. 遠藤寛二

    ○遠藤説明員 お答えします。  大気汚染につきましては一酸化炭素と硫黄でございます。それから水につきましては、ちょっといま数字をど忘れいたしましたけれども、かなりな項目につきまして地域ごとにきまっております。
  46. 田中恒利

    田中(恒)委員 どうもこの環境基準というのが実は一番大切だと思うのです。その辺がその他の公害関係の法律に基づいたものでも実はあまり明確な形で出てきにくいわけですね。技術的にいろいろむずかしい問題はあるのでしょうけれども、私はそこのところがはっきりしないと今後の土壌汚染の問題に対する一つの目安というものが明確に出てこないと思うのですね。これをやはり早く急がなければいけないと思うのですね。これは農林省ではどこでやるのですか。大体どのくらいかかる目安ですか。それもわかっていないですか。
  47. 中野和仁

    中野政府委員 農林省といたしましては、農林水産技術会議中心にいたしまして、農政局、農地局協力いたしましてつくりますが、なおこれは関係各省とも関連がございますので、そことも御相談をしなければなりません。また、現在、それでは一年先にするとか二年先にするとか、そういうめどは立っておりません。
  48. 田中恒利

    田中(恒)委員 これは早く立ててもらわなければ困りますね。これがやはりいろんなこの規制をするにいたしましても事業をするにいたしましても一番目安になるわけでありますから、めくら飛行のような一PPM以上という問題そのものも技術的、科学的に推していった場合にどうなっていくか、私はやはり問題があると思いますので、この環境基準の設定というものについて少し力を入れて、はっきりとした形でやらないとみんな安心できないと思うのですね。この点を特に強く主張しておきたいと思います。  それから、たとえばこの事業費の負担割合等をめぐって、非常にこの土壌汚染の強弱といいますか、一PPMをこした土壌とあるいは〇・九PPMといったような程度、いわゆるこの法律ではこえた場合とおそれのある場合、こういうふうに区別をせられておりますが、この区別をせられたことが、今後の対策事業を進める上にあたって、いろいろ、順序であるとか、費用負担であるとか、補助融資であるとか、こういう問題をめぐって何か区別されるわけですか、特別にそういう区別はしないということですか。
  49. 中野和仁

    中野政府委員 企業費用負担の場合は、現にこれはカドミウムを例にとって申し上げれば、一PPM以上のカドミウムを含む米は人の健康をそこなうおそれがあるということで、まさにそういうような汚染をさせた企業の責任になるわけでございます。また、そこまで達しないところにつきまして、その企業に負担がかかるということはないというのがこれは原則だと思います。しかし、実際問題といたしまして まだ、その辺をこれから法律が通りましたあと、具体的に詰めていかなければならぬ問題だと考えております。
  50. 田中恒利

    田中(恒)委員 それから、この調査測定の問題でありますが、この法律に基づきます調査というのは、何か常時監視をしていくといったような側面がなくなっているんじゃないか、こういうふうに思うわけでありますが、やはりこの汚染地帯においては、常時観察員的なものを配置をして、この土壌の動向あるいは水、空気、そういったようなものをじっとやはり見守っていくという体制をどうしてもつくらなければいけないと思いますし、さらに進んで汚染源をなしております企業なり施設に対する立ち入り検査、こういったようなものまで積極的にやらないと私は効果はないんじゃないかと思うのです。こういう点が非常にこの法律の中では不明確になっておるわけでありますが、これらについてはどういうふうに具体的に取り扱われようとしておるのか、ここのところをもう少し内容的に御説明をしていただきたい。
  51. 中野和仁

    中野政府委員 まず調査の問題でございますが、農林省といたしましては、最近でも、昭和三十四年から現在まで地力保全基本調査というのをやっております。それの結果によりますと、差し上げました資料のように、約三万七千ヘクタール程度は、汚染のおそれがあるといいましょうか、自然の賦存量以上にこえておるということがわれわれわかっております。しかし、こういういろいろな問題が出てまいりましたので、来年度はもう一度一斉全国点検をやりたいと考えております。そういうことをやりましたあとは、大体汚染されているところがどの辺かということが、もういまでもわかっておりますし、それによりまして大体はっきりします。そういたしますと、特に今度の対策事業との関連を考えまして汚染のおそれの多いところには特別の調査を精密にいたしたいと考えております。  精密に調査をいたしました結果、それによって地域指定なり対策事業を立てられるわけでございますが、企業側の排出規制がゼロにならない限りは、ある程度汚染の進行ということが考えられます。そこで、そういう地帯につきましては、われわれとしましては動態調査をやる、いわば、いまおっしゃいました常時観測するということばで申し上げてもいいかもしれませんけれども、そういうことをやるということで考えておるわけでございます。  それから、立ち入り調査の問題につきましては、今回の、御説明いたしました法律によりますと、排出基準につきましては、大気汚染防止法なり水質汚濁防止法によりまして、知事排出基準をきめる。それを守っているかどうかその他につきましては、その両方の法律都道府県知事がやるということになっておりますので、今回の土壌汚染防止法には、工場事業場等への立ち入りはきめておりません。ただ、今回この法律に書いてありますのは、農用地について、農家との関連での立ち入り調査の点だけを今回のわれわれのほうの法律には規定したわけでございます。
  52. 田中恒利

    田中(恒)委員 農家のところだけ規定して、特に当面カドミウムを指定をするということになっておるわけでありますが、カドミウムの源泉企業なり施設なりに対して立ち入り検査をやるということがはっきりしてないですね。やれますか。  水の問題にしましても、企業に対する、水質汚濁法に基づく立ち入り検査というのはやれるわけですから。私は、どうも農家のほうには、まあきのうも問題になっておったですが、憲法に違反するのじゃないかという議論もあるようですが、無償で土壌なり作物を搾取していく。それを拒否した場合には、罰金ですか、そういうものを科す。こういうきびしい立ち入り調査の規定があるけれども、一方たれ流しをしておるカドミウムの源泉体に対しては、何もそういう規定がないですね。関係法案でやれますか。ここのところです、問題は。
  53. 中野和仁

    中野政府委員 ただいま御説明いたしましたように、たとえば水質汚濁防止法案によりますと、二十二条で、都道府県知事は、「排出水を排出する者に対し、特定施設の状況、汚水等の処理の方法その他必要な事項に関し報告を求め、又はその職員に、その者の特定事業場に立ち入り、特定施設その他の物件を検査させることができる。」という規定がございますが、これでやるわけでございます。それとのつなぎでございますが、先ほども申し上げましたが、土壌汚染のほうの法律で、第七条にございますように、都道府県知事土壌のことを考えた上で、よりきびしい基準をきめるということになっております。それで向こうの法律とのつなぎをつけてありますので、当然この規定で知事工場事業場等への立ち入り検査をやるわけでございます。
  54. 田中恒利

    田中(恒)委員 それははっきりやれないのじゃないですか。鉱山の場合どうですか。
  55. 伊勢谷三樹郎

    ○伊勢谷説明員 鉱山保安法におきましては、鉱務監督官が常時鉱山に立ち入りまして、その監督を行なうことができるということになっております。
  56. 田中恒利

    田中(恒)委員 その場合、保安官がやれるか、知事知事でやれるのですか、やれないのですか。
  57. 伊勢谷三樹郎

    ○伊勢谷説明員 大気法及び水質法におきましては、立ち入り検査は保安法にゆだねることになっておりますので、この場合は監督官がその責任を負うことになっております。
  58. 田中恒利

    田中(恒)委員 それで、これは知事はやれないわけですよ、鉱山等については。そういう関連というのは、むしろこの法律の中で明確に知事がそういうものをやれるようにしたほうが、私はいいと思うのですよ。だから、そういう点が、どうも条項を見ましても、片っ方農民のほうにはきちっと書いておるのだけれども、片っ方のほうは、いま言われたようなもので処理をするということで逃げられておるわけですね。これはやはり特に企業のほうが責任主体でありますから、この企業のほうに明確に処置をしていくということがより大切だ、こういうふうに私は思うわけであります。  時間が参りましたので、あと一つ大臣お尋ねをいたしておきますが、今度の公害国会の焦点は、何といっても無過失賠償責任の問題でありますが、この無過失賠償責任の問題については、時間がたつに従って政府のほうでも後退をいたしておる感が深いわけでありますが、土壌汚染につきましては、特にこの無過失責任の問題が、私は一番重要な問題だと思うのです。この法律でやはり一番抜けておるのは、責任所在がこの法律の体系の中に明確に打ち出されない。農林省は当初出したかったようでありますけれども、どこかの強い声でさえぎられて削除をした、こういう経過があるようでありますが、土壌汚染が持つ汚染源の性格からして、この無過失責任という問題をどうしてもつけ加えられるべきだと思うのです。ところが政府内部の足並みがだいぶ乱れておるようでありまして、法務大臣は、これらの無過失責任は、個々のケースによって状態が異なるから、むしろ個々のケースでやったほうがよろしい、こういう意見を言われております。農林大臣は、昨日公室対策中央本部で一貫的に処理すべきだ、こういうふうに言われておるのです。これは佐藤内閣の内部で多少足並みが乱れておるわけでありますが、これらの点は、基本的に主管大臣として農林大臣はどういうふうにお考えになっておるのか、重ねて明確にお答えをいただきたいと思うのです。
  59. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 このことは、もう何べんかここでお答えいたしておるとおりでありまして、人の人権の基本的な問題であります無過失賠償責任ということにつきましては、これは民主主義のたてまえ上、きわめて厳粛に考えるべきであることは当然なことでありますけれども、今度のような公害につきましては、個々別々なケースではやはり——かなりそういうことについて結論が出るかもしれませんが、そもそも政府の中で各省別にいろいろなことをやっておりますというと、どうも行政がばらばらになるおそれがあるということで、公害対策本部という統一したものをつくったわけでありますから、いろいろな法律に普遍的にかかってまいりますような無過失賠償責任のようなことの政府としての態度は、そういうところで慎重に検討をした上できめるべきである、これは私どももそういう主張をいたしたわけであります。初めは、いまお話しのように個々の法律でそういうことを書こうという考え方もあったわけでありますけれども、せっかくいま申しました統一した機関をつくって足並みをそろえてやっていこうということであるから、これは慎重に検討して、そして時間は若干ずれても、そういうことについて政府としてしっかりした態度をきめるべきである、こういう主張を私どもはいたしまして、それではそうしょう、こういうことにいたしておるわけでありまして、ただいまのお話のように、どこかから何か言われたから後退したといったよりな意味もございましたけれども、きのうも申し上げておりますように、われわれはそういうことは全然関知いたしておりませんし、理論的にいまの無過失賠償責任というような重要な問題については、政府としてまず態度をきめる、そして個々の法律に挿入するならば、そういう現実の結果によってそういうことをなすべきである、こういう一般論からそういう今度のような措置を講じた、こういう以外に何ものもないわけであります。
  60. 田中恒利

    田中(恒)委員 農林大臣として土壌汚染の責任の所在を明確にするという観点に立って無過失責任の問題を明らかにしていくということは必要であるとお思いになっておりますかどうか。この点は全国の関係農民は非常に注目している点だと思うのです。だから農林大臣としては、農林省原案第一次案に載っておったわけでありますから、農林大臣は必要があると認めて出されたと思いますが、さらに広い観点に立って、基本的人権等の観点からいまそういう御解釈もせられたというように理解をしているのですが、農林大臣という立場からいえば、この責任条項というのは、何らかの形で明らかにしておく必要がある、こうお思いになりますかどうか、最後にお尋ねしておきたいと思います。
  61. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いま田中さんは、第一次原案とおっしゃいましたけれども農林大臣の第一次原案というのを私は知らないのでありまして、第一次原案は、いま提出してある法律が第一次原案であります。
  62. 田中恒利

    田中(恒)委員 終わります。
  63. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 二見伸明君。
  64. 二見伸明

    ○二見委員 ただいま田中委員質問されておりましたまず工場への立ち入り検査の問題から大臣お尋ねしたいのですけれども、ただいま第一次原案は、ここに出されたものが第一次原案であって、それ以外に農政局で審議したものは全然知らないという御答弁がございました。知らないのか知っているのか私にはわかりませんけれども農政局が検討している段階では、工場に対する報告の徴収及び検査、これが大臣の言う原案ではなくて私のほうの言う原案では入っているわけです。それが最終的には、大臣のおっしゃる原案ではこれがないわけですね。これはどういう過程でなくなったのか、まずそれを明らかにしていただきたいのです。
  65. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 工場への立ち入りのことについては、いま農政局長からお答えいたさせますが、われわれが演説をやる場合でも、原稿は何べんか書いて推敲して、そして演説の直前までにでき上がるというようなことがあると思うのです。事務当局は、それぞれ私の指示に従いまして法律をつくるように命じてありましたから、いろいろなものをつくったでありましょうが、過程においていろいろな意見が出たのかもしれませんが、農林省として決定いたしたものは、ただいま御審議を願っているものである、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  66. 二見伸明

    ○二見委員 農政局長は、どういう理由でこれをはずしてしまったのですか、最終的に。
  67. 中野和仁

    中野政府委員 いま大臣からお話しのように、私たちもいろいろこの土壌汚染の問題が公害基本法に入ってくる、入ってきた場合の具体的な実施方法をどうするかということで検討を命ぜられたわけでございます。その場合に、ここ数カ月の話でございますので、農林省のサイドからいろいろどうやっていったらいいか考えたわけでございますが、当時はまだ大気汚染防止法、水の汚染防止法、これはいろいろ関係各省で考えられておったわけでございます。それで土壌からやればこういう筋書きになるということを、全部一ぺんわれわれのほうの法案としてまとめてみたものでございます。その後関係各省の法案も出てまいりました。そうしますと、昨日も申し上げたわけでございますが、排出規制につきましては、両方の法律で大体土壌のことも考えて普通はやるわけでございますが、いけるということにだんだんなってまいりまして、今回御提案申し上げておる法案になったという経過でございます。したがいまして、初めのほうで、農林省はがんばったとかそういうことではなくて、最初われわれが命ぜられましたときに、こういう筋書きでほかの法案と関係なく書いてみれば、こういうことになるというような気持ちでございました。
  68. 二見伸明

    ○二見委員 要するに、大気汚染防止法と水質汚濁のほうで立ち入り検査が規定されたから、土壌のほうでは規定しなくてもいい、こういうわけですね。そういう理由でもってはずしたというのが、いまの御答弁ですね。
  69. 中野和仁

    中野政府委員 私がいま経過を申し上げましたのは、全体を通じての話でございますが、立ち入り検査の件につきましては、先ほど田中先生の御質問にもお答えしましたように、明瞭に両方の法律に、工場事業場への都道府県知事の立ち入り検査ができるということになっておりますから、あらためて別にその同じことを書く必要はございませんので、これははずしたわけでございます。
  70. 二見伸明

    ○二見委員 これはささいなことかもしれませんけれども農用地土壌に対する立ち入り調査は、農林大臣または都道府県知事がやることができる。ところが大気汚染防止法とそれから水質のほうでは都道府知事ができることになっておる。農用地土壌農林大臣または都道府県知事にその権限があるならば、土壌汚染に関して工場側に原因があるかどうか調べるために、あるいは土壌汚染しないように予防措置として、工場あるいは鉱山を調査する場合には、農林大臣または都道府県知事が立ち入り検査できるようにしてもいいのじゃないですか。
  71. 中野和仁

    中野政府委員 おそらくいまのお話は、最初われわれがいろいろ考えました際の最初の案にそうあったというお話でございますが、今度の政府として提出いたしました法案につきましては、水にしましても、それから大気にいたしましても、都道府県知事が立ち入り検査をやるということで、特別に企画庁長官なりあるいは通産大臣、厚生大臣が立ち入り調査をやるという規定をいたしておりません。大体権限委譲と申しましょうか、そういう現場のほうに重点を置いてやるという、全体の取りまとめ方の一環としてそういうことになったわけでございます。
  72. 二見伸明

    ○二見委員 通産省は、ちょっと確認いたしますけれども工場あるいは鉱山への立ち入り検査は、土壌汚染防止するためにもできる、こういうふうに解釈してよろしいわけですか、あの条文は。
  73. 根岸正男

    ○根岸説明員 ただいまの御質問は、その都道府県知事がという意味でございますか。
  74. 二見伸明

    ○二見委員 そうです。
  75. 根岸正男

    ○根岸説明員 都道府県知事であるとしますと、ただいま申し上げましたように、当然できます。ただ、適用除外の関係の鉱山保安法については、その点多少調整を要するかと思っております。
  76. 二見伸明

    ○二見委員 それではもう一点、同じ十五条で調査をして、土壌汚染されていると判明した場合に、その原因者がだれであるかわからない、原因者がA、B、Cとあると、A、B、Cのうちどれであるかわからないという場合には、この原因者を究明するためにも、工場への立ち入り検査は、これはしてもよろしいわけですね。通産省、どうですか。
  77. 根岸正男

    ○根岸説明員 おっしゃるとおりでございます。
  78. 二見伸明

    ○二見委員 それから農林省お尋ねしますけれども、やはり十五条で汚染が判明した場合には、農林省としてはどういう処置をまずおとりになるのか。それは二つのケースがありますので、二つのケースについて別々にお答えをいただきたいのですけれども、調べたところ過度に汚染されていた——たとえはカドミウムによって過度に汚染されていたという場合と、現在はそれほどではないけれども、このまま続くならば、将来、三年後あるいは五年後にはかなり汚染されるのじゃないだろうか。二つケースがあるわけですね。調査した場合には、その二つのケースについて、農林省としてはどういうふうな処置をおとりになるのか。それぞれのケースについてお答えをいただきたいと思うのです。
  79. 中野和仁

    中野政府委員 われわれのほうで調査をいたしました結果、たとえばカドミウムにつきまして、米に一PPM以上のものを含んでおるということが明瞭になっておるところにつきましては、これはすでに農家としてもそういう米は売れませんので、そういうところについては、当然直ちに対策計画を立てまして、事業をやらなければならないわけでございます。ただ、いまのお話のような、汚染が進行しておるというところにつきましては、その進行ぐあいの調査を一歩進めなければなりません。と同時に、そういうことがわかりますれば、この条文にもございますように、関係行政機関あるいは都道府県知事に対しまして所要の措置をとってもらいたい、具体的に申し上げますれば、これ以上汚染がどんどん進行しないような排出計画その他をとるようにやってもらいたい、こういうような要請をする必要があると考えております。
  80. 二見伸明

    ○二見委員 それから費用の問題でございますけれども、先ほど、原因者がわかっている場合には、原因者が費用を負担する、こう、大臣だったと思いますが、そういう御答弁でございましたけれども、その場合、原因者が無過失であった場合には、これは先ほどですと、国あるいはその他の関係で費用を負担することになるわけですが、原因者がわかっている、しかしその原因者それ自体が無過失であったという場合には——過失であった場合は費用負担は当然としても、無過失であった場合は、国が負担するわけですか、費用は。
  81. 岩本道夫

    岩本政府委員 費用負担法におきまする費用負担の考え方は、そういう特定有害物質の排出によって被害が生じたという事実に着目して考えておるわけでございまして、過失の有無には関係ないと思います。
  82. 二見伸明

    ○二見委員 無過失であっても、これは費用は当然企業が負担するわけですね。  もう一つ原因者がわかっていない場合には、これは先ほどの御答弁ですと、国が負担する。その場合、田中委員のほうから、これは農民には絶対に負担をさせない、こういう意味で了解するという質疑が、たしかございましたけれども、これはその点でよろしいですね。
  83. 岩本道夫

    岩本政府委員 昨日来申し上げておるところでございますが、原因者がわからない場合には、一般の土地改良事業のやり方に準じまして、たとえば自然災害によって被害を受けた場合の復旧をやるための土地改良事業とか、そういうようなやり方に準じて土地改良事業を進めていくことになるわけでございます。  ただその費用負担のやり方の具体的問題でございますが、そういう被害が起きた原因並びに農民側の事情を勘案をしまして、農民負担についてはできるだけ軽減をするように配慮をしていくということを申し上げておるわけでございます。その趣旨は、被害をもとに復旧する限度においては、国、地方公共団体がなるべく費用を持つということに相なるかと思いますが、復旧の限度を越えて客土等で経済効果が生ずるということも考えられますので、ケース・バイ・ケースに応じて処置を講じてまいりたいというふうに考えておりますが、姿勢としましては、おっしゃいますように、農民の負担については十分配慮してまいる所存でございます。
  84. 二見伸明

    ○二見委員 農家に負担をかけるかどうかというところに対すると、いまの御答弁ですと、あまり負担をかけないようにする、軽くする、配慮する。ということは、これはたとえば全然ゼロにするという考え農林省は持ってないわけですね。農林大臣どうでしょうか、農民には費用の負担はゼロにするという……。
  85. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いま事務当局がお答えいたしましたように、加害者と申しますか、原因者のよくわからない場合、こういうような場合には一般の土地改良法を適用してやるのだ、こういうことを申し上げたわけです。そこで原状回復以上に客土等で経済効果があがるようになった場合には、普通ならば当然それ相当な費用負担をすべきでありますけれども土地改良法でありますから。しかし、いま公害問題でこういう工事をいたしましたような場合には、いままでよりもさらによけいにいろいろなことをやった場合には、本来ならばそれ相当の御負担を願うべきであるが、そういうことについては個々のケースを見てなるべく負担がかからないようにいたしたい、こういうことであります。
  86. 二見伸明

    ○二見委員 それでは原因者は明らかではあるけれども、たとえば鉱山なんかの場合で原因者は明らかであるけれども、鉱山それ自体がすでに閉山している、あるいは企業が倒産しているというような場合にはどうなるのですか。それはおそらく費用の負担はできない、その場合にはどうなりますか。
  87. 岩本道夫

    岩本政府委員 休廃鉱山等で、原因者はわかっておりましても、すでに休廃して転業しておるとか、どこか行くえ不明になっておるといったような場合におきましては、費用を負担すべき企業が存在しませんので、その負担をさせることができません。したがって、一般的に費用負担法の対象となる事業者がいないと判断せざるを得ないわけでございますが、この場合におきましては、原因者がわからない場合と同様に処置せざるを得ないと思います。したがいまして、これは自然の降雨によって休廃鉱山から汚水、毒水が流れてくるといったような場合の土地改良事業のやり方に準じまして事業を実施することになります。現在鉱毒対策事業という名目で、自然的に鉱毒が流れてくる場合の対策事業を実施しておりますが、そのやり方によってやっていくことになろうかと思います。
  88. 二見伸明

    ○二見委員 ちょっとはっきりしないのですがね。要するに、その場合は費用は国が持つのかあるいは都道府県が持つのか、一部は農家が負担するのか、その点だけはっきりと答弁してくれないでしょうか。
  89. 岩本道夫

    岩本政府委員 ただいま御説明申し上げました鉱毒対策事業の場合におきましては、県と地方公共団体で経費を負担しておりまして、実質的に農民に負担をかけておりません。
  90. 二見伸明

    ○二見委員 もう一度原因者の問題に戻りますけれども公害の問題はいつも原因者といいますか、加害者が大きな問題になるわけですね。その場合  普通の、たとえばイタイイタイ病であるとか水俣病の場合には、現在の民法でいくと、原告側が、被害者側が証拠を提示しなければ裁判の場合はほとんど負ける。提示しなければならないのが原則になっているわけです。土壌汚染の場合にはその因果関係はどういうふうにして究明するのですか。
  91. 中野和仁

    中野政府委員 具体的になりますと非常にいろいろな問題が出てまいるかと思いますが、土壌は動きませんので、大体大気で汚染されたか、水で汚染されたかということは、地域的にもかなり明確になりますので、その因果関係はわりとわかりやすいというふうにわれわれは考えております。
  92. 二見伸明

    ○二見委員 これは福島県のいわきですが、いわきにも東邦亜鉛があるのです。あのまわりで土壌汚染とカドミウム米の問題が出ている。ところがあそこのいわきの東邦亜鉛の工場では、うちが原因者じゃないとがんばっているのです。うちは原因者ではない。ところがカドミウムを出しているのはそこ以外ちょっと考えられない。うちではないとあくまでもがんばっているわけです。そういう場合も個々のケースとして出てくるわけですね。企業としては費用は払いたくないのはわかっていますから、うちのほうの責任ではない、うちのほうが原因者だというならそれなりの証拠を出してこい、こういうケースもかなり出てくるわけです。その場合は農林省としてはどういうふうな考え方で対処するわけですか。
  93. 中野和仁

    中野政府委員 まだちょっと私のほうで、具体的にいわきの場合に県を通じたりあるいは直接農林省からその工場といろいろ話し合いをしたことはございませんので、何とも申し上げられませんが、一般論として申し上げますれば、そこに工場事業場がありまして、カドミウムを含むような排水をしているとか、あるいは煙突から煙を出しておるとか、ほかに何ら原因がなければ、われわれとしましてはまずその汚染された土壌はそれが原因であろうかというふうに考えるわけでございます。具体的にはそういう観点から話し合いをしなければならぬと思います。
  94. 二見伸明

    ○二見委員 原因者が複合する場合どうしますか一社だけならば因果関係ははっきりする。三つも四つも重なる場合はどうしますか。同じようなものを出す会社が三つないし四つあるという場合、いわきの場合は三つくらいあるのです、工場が。だから東邦亜鉛のほうではおれのほうじゃない、向こうだ、こういっているわけです。一社なら因果関係はわりとはっきりしますよ。一社でない場合どうしますか。その場合、企業が三つなり四つなり複合します場合は、費用の負担はどういうふうになるのですか。
  95. 中野和仁

    中野政府委員 費用負担法案の第五条によりますと、「公害防止事業につき各事業者に負担させる負担金の額は、各事業者について、公害防止事業の種類に応じて事業活動の規模、公害原因となる施設の種類及び規模、事業活動に伴い排出される公害原因となる物質の量及び質その他の事項基準とし、各事業者の事業活動が当該公害防止事業に係る公害についてその原因となると認められる程度に応じて、負担総額を配分した額とする。」というふうに法律に規定されております。具体的にはこれを運用していくことになろうかと思います。
  96. 二見伸明

    ○二見委員 たとえばA・B・Cと三つがある。負担総額が全体でたとえば一億なら一億としますね。その場合A・B・Cでもってお互いにそれぞれ言い分はあるわけです。おれのほうはそんなに出していない、おれのほうの割合は一だ、おまえのほうは三だろう、おまえのほうは二だろう、施設の数だけできめられないだろうかとか、排水量によってきまるだろうとか、いろいろなめんどうくさい関係が出てきますね、この場合は。その場合は農林省はどういうふうに処置をしていただけますか。
  97. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまの費用負担法によります原則がございますので、それは施行者が決定をするということになるかと思います。
  98. 二見伸明

    ○二見委員 法務省にお尋ねしますけれども公害罪の第二条、第三条では、たとえば第二条では「工場又は事業場における事業活動に伴って人の健康を害する物質を排出し、公衆の生命又は身体に危険を生じさせた者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。」、第三条も同じような規定があります。土壌汚染の場合には土壌汚染されることによって、そこからとれる農産物に、たとえばBHCが入っているとかカドミウムが入っているとか、明らかに公衆の生命または身体に危険を生じさせるような事態も生じてくるわけです。そういう場合には土壌汚染に関してもこの公害罪の二条あるいは三条は適用されるのかどうか、法務省の見解いかがでしょうか。
  99. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 いわゆる公害罪が土壌汚染の場合に適用があるかどうか、こういう御質問でございますが、ただいま先生のお続み上げのとおり、この法律案のいわゆる基本的な構成要件というものは、「工場又は事業場における事業活動に伴って人の健康を害する物質」、いわゆる有害物質を大量に排出して危険な状態を生じさせるという構成要件の定め方をしてございますので、大気汚染あるいは水質汚濁に限るというふうな限定的な限り方をしていないということでございますので、この構成要件に当てはまる限りにおきましては土壌汚染の場合であっても当然適用がある、こういう解釈でございます。
  100. 二見伸明

    ○二見委員 それから先ほどの無過失責任については、これも何回か連合審査でも問題になりまして、ただいま大臣も御答弁になりました。法務省では横割りの場合は認めないけれども縦割りの場合は個別に認める、いわゆる縦割りは認めるというのが法務省の基本的な考え方であるということが明らかになりまして、ただいま大臣も個々のものについてはこれから検討する必要があるという御答弁でありますけれども大臣としては先ほどはどうもちょっと公害対策本部のほうに責任を預けたような、げたを預けたような御答弁でございますけれども、たとえばカドミウムについては無過失責任というものは明らかにする、あるいはほかの重金属については無過失責任は明らかにする、こういう規定を設けるお考えがあるかどうか、その点いかがでしょうか。
  101. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 何べんかお答えいたしておりますように、公害対策本部で慎重に検討して政府の方針をきめたい、こういうことであります。
  102. 二見伸明

    ○二見委員 ということは、大臣の一存ではこれはきめかねるということになるわけでしょうか。
  103. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私の意見も入れて政府の方針をきめます。
  104. 二見伸明

    ○二見委員 政府のほうの方針は大臣が何回か御答弁になっているからわかるわけですけれども大臣としてはそこまで規定したほうがいいというふうなお考えを持っているのかどうか。ただ最終的には政府として統一見解を出すのでしょうけれども大臣としては、農林大臣の立場としてはどうしても、たとえばカドミウムについては無過失責任というものをはっきりさせたい、させるべきだという基本的なお考えを持っているのかどうか、その点いかがでしょうか。
  105. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 公害対策本部というのをつくったのは、政府の統一した考え方で、行政がばらばらにならないようにしようというのでありますから、そういうたてまえで本部で検討しようというのでありますから、その結論を私どもは尊重してそれに従う、こういうことであります。
  106. 二見伸明

    ○二見委員 五条の三項についてちょっとお尋ねしたいのですけれども、この対策計画というのはまず三条で対策地域指定ができて、対策地域指定をすると第五条によって対策計画をきめなければならない、こういうふうになるわけですね。ところが第三項ではこれに対して「第一項に規定する目的を達成するため必要かつ適切と認められるものでなければならない。」という、こういうあえてこの三項を入れた理由はどこにあるのでしょうか。これは都道府県知事対策地域指定する、と同時に都道府県知事対策計画を定める、三項はその都道府県知事に対するこれはチェックというような意味合いを持った規定になるわけでしょうか。
  107. 中野和仁

    中野政府委員 チェックというような極端な意味ではございませんで、知事がこういう計画を立てる場合の考え方を書いてありますと同時に、これはまた農林大臣承認基準でもあるということでございます。やや補足いたしますと、こういう二項によりますいろいろな一、二、三と計画がございますが、たとえば「汚染程度」ということが書いてありますのは、表面だけ少し汚染しているような場合はこれは天地がえしてもいいじゃないかとか、あるいは相当底まで汚染されている場合は排土をして客土したほうがいいじゃないか、そういうことも考える必要があるからでございます。費用につきましても、少しばかりの汚染について相当な客土をやるというのはむだなことでございます。そういうようなことで、この立てる場合のものの考え方を書いておるわけでございます。
  108. 二見伸明

    ○二見委員 第五条の第一項で対策計画を立てるということは非常にいいことだと思うけれども、第三項があるために、たとえば「汚染程度」であるとか、「当該事業に要する費用、」であるとか、「当該事業の効果及び緊要度等を勘案し、」というこのことばによって対策計画それ自体が骨抜きになるのじゃないか、そういうおそれがこの第三項にあるのじゃないだろうか。すなおに解釈すればおたくのおっしゃったような答弁になるわけです。これだけしか汚染されてないのを計画ではこれだけやってくるから、そうじゃなくてこれだけにしろとか、ほんとうの費用ならば十億円で済むのを、それを三十億かけてくるとかをチェックする、そうするのではないぞというのがすなおな読み方だと思う。逆に読めば私のような読み方もできるのじゃないだろうか。これではまだそれほど、たとえば緊要度からいけばそれほど必要性が薄いだろう、まだいまやらなくても来年やってもいいだろう、再来年やってもいいだろうという、そういう規定にもこの条文はなりかねないのじゃないですか。
  109. 中野和仁

    中野政府委員 たびたび申し上げておりますように、計画はやはり適正あるいは合理的でなければいけないという趣旨のことを書いてあるわけでございまして、いまおっしゃいましたように裏のほうの意味までわれわれ含めてこういうことを規定したつもりはございません。
  110. 二見伸明

    ○二見委員 おつくりになるほうは裏の意味なんか考えないかもしれませんけれども、運用する場合は裏の解釈が出てくることもあり得るわけでしょう。そういうおそれだって十分あるのじゃないですか。冷静に考えてみた場合、どうでしょうかね、おたくのおっしゃったような正式な解釈もできると同時に、私が皮肉ったような解釈のしかたもやってできないことはないのじゃないですか。そういう解釈のしかたはできる可能性はあるのじゃないでしょうか。
  111. 中野和仁

    中野政府委員 私はないと思っております。
  112. 二見伸明

    ○二見委員 それから第一条の目的のところでありますけれども、これは「人の健康をそこなうおそれがある」というこの「おそれ」、この基準はどういうふうにおきめになっていただけるのか。このおそれというのは基準がなければおそれが出ないわけですね。どの段階でおそれというふうになるのか。いまはまだだいじょうぶだけれどもそれが将来一年ないし二年続くとあぶないというところでもって、そういう早い段階でおそれの基準をきめるのか。もういまここで限度いっぱいだぞ、これ以上ふえたらあぶないぞというぎりぎりのところへきておそれの基準をきめるのか。どちらでおきめになるのか。
  113. 中野和仁

    中野政府委員 具体的に申し上げますと、米につきまして、先般厚生省のほうで食品衛生法の七条に基づきまして、食品の成分の規格といたしまして、カドミウム一PPM以上含む米は食品衛生法上いけない、いけないといいますか、「人の健康をそこなうおそれがある」ということにしたわけでございますが、現在は米だけでございます。あと厚生省の食品衛生法でいろいろきまってきますれば、その基準をもって、われわれは「おそれがある」というふうにやりたいと考えております。
  114. 二見伸明

    ○二見委員 あくまでこれは厚生省のサイドの、厚生省の基準をそのまま準用するわけですね。
  115. 中野和仁

    中野政府委員 そのとおりでございます。いま申し上げましたとおりですが、厚生省の基準にわれわれは従うということでございます。
  116. 二見伸明

    ○二見委員 その場合、厚生省のほうに農林省としてはいろいろ注文をおつけになりますか。厚生省のほうがどの段階基準をきめるかわかりません。一番きびしいところで基準をきめるのか、限度一ぱいのところできめるのか。これはきめ方がいろいろありますね。農林省としては、その場合厚生省に全部まかせっぱなしにするのか。農林省としても、せめて農林省としてはここで基準をきめてもらいたいという、そういう要求を厚生省になさるのか。その点、どうでしょうか。
  117. 中野和仁

    中野政府委員 いろいろものによってあるかと思いますけれども、われわれといたしましてわかる範囲のデーターはもちろん厚生省に対して提供いたしますし、また意見がありますれば、そのつど厚生省に申し上げたいと思っております。
  118. 二見伸明

    ○二見委員 これはぜひ意見を申し述べていただきたいのですけれども、その場合は甘いところでありますか、きびしいところで意見を申し上げますか、農林省としては。
  119. 中野和仁

    中野政府委員 人の健康をそこなうおそれがあるかどうかの最終判断は、これは厚生省がおやりになるわけでございます。農林省が甘くしろとか辛くしろとか、そういうことはなかなか言えないのではないかと思います。
  120. 二見伸明

    ○二見委員 厚生省が最終的にきめるのは、私もわかるんですよ、農林省が厚生省の基準でやるのですから。農林省が言ったことがそのまま厚生省に通るとは限りませんけれども、意見を言う姿勢としては、どちらのほうできめてもらいたいという、農林省としての意向は言うわけでしょう。必ず言うとは限らないかもしれないけれども、言うケースもあるわけでしょう。その場合の姿勢を私は聞いているわけなんです。向こうがきめるんだじゃなくて——向こうかきめるのはわかるんだけれども、きめる場合には、一、二、三、四と、いろいろある、農林省としてはここできめてもらいたいと思っているんだと、そういう具体的な姿勢が、意見を言う場合には当然出るわけですね。その場合には、農林省としてはきびしいほうで臨んでいくのか、あるいは一般的に基準をきめてくださいというような態度で臨んでいくのか、その点はいかがですか。
  121. 中野和仁

    中野政府委員 繰り返すようで恐縮でございますが、人の健康を阻害するおそれがあるかどうかの判断は、これは厚生省でございます。農林省が、これ以上きびしくして——人の健康との関連をもっと、何といいましょうか、いまおっしゃいましたように、ぎりぎりのところできめろとか、あるいはもっと非常にゆるめてしまえ、そういうことはなかなか言えないと思うのです。また、農林省では、試験研究にもそういうことはやっておりません。私は、最初に申し上げましたのは、もしそういうことで厚生省の御必要なデータがあれば提供するということしかわれわれとしてはできない、というふうに思います。
  122. 二見伸明

    ○二見委員 終わります。
  123. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 午後一時三十分に再開することとし、休憩をいたします。    午後零時二十五分休憩      ————◇—————    午後一時四十五分開議
  124. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。山口鶴男君。
  125. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 他の委員からすでに御質問のありましたことはできるだけ重複を避けるようにいたしまして、具体的な問題について二、三の問題をお尋ねいたしたいと思います。  お尋ねする前に、農林大臣お見えになりましたから一言御礼を申し上げたいと思います。安中のカドミウム汚染米——安中ばかりではありません。現在富山の黒部あるいは福島県の磐梯町等におきまして、カドミウム汚染米が大量に出まして、特に農家の保有米につきましてはいままで対策がなかった。これについて農家の保有米を交換いたしまして、農家の人たちに対してカドミウムに汚染されていない米を食べさせることができるようにぜひ農林省の配慮をお願いしたいということを、地域住民の人たちとともに要求をいたしてまいりました。党といたしまして、カドミウム汚染対策共闘会議もつくりまして、そういう立場でも要請をいたしてまいりました。十一月二十五日、農林省、食糧庁におかれましては農家のカドミウム汚染の保有米をきれいな米と交換するという措置をとっていただきましたことに対しまして、心から感謝を申し上げたいと思います。  さてそこでまずお尋ねいたしたいことは、この法律の第一条にありますこの「特定有害物質」、これはもういろいろ議論はあったと思います。私はしたがって具体的に聞きたいと思いますが、従来までの御答弁ですと累積性ある重金属、これに限定をされるようでございまして、当面カドミウム、次いで銅、亜鉛あるいは鉛、砒素等の重金属を逐次政令指定していく、こういうお考えのようであります。私どもとしましては、すみやかに、カドミウムばかりではなしに銅、亜鉛、鉛、砒素等の金属につきましても政令指定をしていただくように強く要請をしたいと思います。  特に銅の問題は、日本公害第一号といわれている足尾の鉱毒、このことを考えましても、私は、銅は一日も早く指定すべきである、日本の鉱害の原点といわれる足尾鉱毒の問題を解決するためにも、銅につきましては一日も早く指定をすべきではないか、かように考えております。まずこの点をお伺いしたいと思います。
  126. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お話しのとおりでございまして、そこで銅、亜鉛等につきましてはなお引き続いて指定をするように研究を進めるわけであります。
  127. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そこで有機物質が除かれておるわけですね。有機物質の中にも私は累積性あるものはあるのではないかと思います。  それからさらに具体的にお尋ねしたいと思いますが、本年正月以来利根川のくさい水が問題になりました。これは群馬の渋川にあります化学工場、これに原因するところの有機物質によって農地汚染され、当該農地では農作物の生育が阻害されるという現状がすでに出ております。問題は、この土壌汚染を解決するためにということで、地下水のくみ上げをやってその水を利根川に流した。それがくさい水の原因ではないかということで、議論をされました。後段のほうはいいわけですが、そういうことで、有機物質であっても農産物に著しい損害を与えるという状況は現にあるわけです。そういうことを考えた場合に、なぜこの有機物質をお考えにならないのか、この点いかがでございますか。   〔小沢一辰)委員長代理退席、委員長着席〕
  128. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまのお話の有機物につきましては、これは原則論でございますけれども、有機物は徐々に分解をしていきまして消失をするといいますか、なくなるということが普通でございます。そこで、当面われわれは何を対象とするかといった場合に、有機物は考えておりません。しかしながら、今後どういうものがどういうふうに出てくるかということで、厳密な調査研究を要するのではないかというふうに考えております。
  129. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 有機物質は分解しやすいというお考えは科学的ではありません。私は一昨日の社会労働委員会で、特に廃棄物の問題で、プラスチック合成高分子物質の問題を議論いたしました。なぜプラスチックが問題になるのか、有機物ではありますが、全く分解しがたいということであの廃棄物は問題になるのではありませんか。さらに合成洗剤の問題が議論されております。ハードの合成洗剤、ABSが分解しがたいということで問題になるんじゃありませんか。だから有機物は分解するのだから、除外するんだというのは非科学的ですよ。
  130. 中野和仁

    中野政府委員 一般的に私は申し上げたわけでございますが、後段御答弁申し上げましたようにそういう点を詰めて調査研究をした上で、必要があるならまたその段階考えるということを申し上げたわけなんです。
  131. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 後段のほうにウエートを置いてそこだけお答えになればいいわけで、今後、有機物質についても分解しがたいものも、また当然この政令指定範囲に入れるべき問題として十分検討する、入れる場合もあるんだというふうに了解してよろしいわけですね。
  132. 中野和仁

    中野政府委員 調査、検討の上、必要があればそういうことを考えるということでございます。
  133. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 有機物質を除くということは非科学的でありまして、今後有機物質については十分検討して、政令で指定していくようにすべきだということを強く要請しておきたいと思います。  時間がありませんから、先に進みましょう。  それから次に、対策地域の問題であります。厚生省のほうでカドミウムを一PPM以上含む米は食品衛生法上の有害物質ということになりますので、したがって、一PPM以上の米が出ます地域は問題なく対象地域ということになると思います。  そこで問題になりますのは、冒頭私感謝申し上げたように、要観察地域からとれる米で、一PPM未満のものですね。これについては食糧庁としては配給凍結をした、また農家の保有米についても交換するという措置をおとりになったということを考えますならば、一PPMというもので線を引くということは、実情に合わぬのじゃないか、少なくとも〇・四PPM以上の米が発見された地域、いうならば要観察地域指定区に入れなければ実情に合わぬ、私はかように思います。この点はどうでしょうか。
  134. 中野和仁

    中野政府委員 先生も御承知のように、〇・四といいますのは、厚生省が要観察地域をきめる前提といいますか、スタートの基準でございます。それによりまして具体的には要観察地域がきまってくるわけでございます。この法律にもございますように、現に米に一PPM以上のカドミウムを含むような土壌及びそれらのおそれが著しいと認められるものとして、政令で要件を定めるということでございますから、現に出ておるところと、それから近くそれに達することが明らかだと認められるところ、両方含めて指定をしたいと考えております。
  135. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうしますと、要観察地域は、ずばりとは言えぬでも、現実問題としてほぼ指定地域に重なるというふうに理解してよろしいわけですね。
  136. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまの要観察地域は、いろいろ場所によって引かれ方が若干違うようなこともあるようでございますけれども、われわれといたしましては要観察地域が全部入るということはいま断言できませんけれども、大体それになるか、あるいはそれに近いところになるか、そういうふうに考えております。
  137. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そこで問題になりますのは、排水の場合は、米を基準にして、米の中に含まれるカドミウム量で線を引いていくということは、私は合理性があると思うのです。ところが、問題になりました群馬の安中、それから富山の黒部、それから福島県の磐梯町、東邦亜鉛それから日鉱、日曹金属、いずれも乾式製錬をやっているわけでありまして、排煙によるカドミウム汚染が問題になるわけです。そうしますと、排煙による汚染でありますから、これはたんぼとは限らぬわけでして、畑地にも土壌汚染が進行することは当然でしょう。そうした場合に、畑地に陸稲がつくられておれば、その米の中のカドミウム量でもって議論ができましょうけれども、畑地で陸稲でないという場合、米以外の農作物についてものさしがなければそこは除外される、こういうかっこうになる。これは、私は考えてみて全く非科学的だと思う。土壌汚染されている状況というのは同じだ、ところが水田であるか畑であるかによって差別があるということは、これはおかしいのじゃありませんか。この点はどうお考えですか。
  138. 中野和仁

    中野政府委員 お話のようなふうだと私も思いますけれども、具体的にそれじゃたとえば畑作物のどういうものについて、これはどの程度になりましたから人の健康をそこなうおそれがあるといえるかどうかという判断が、農林省としてはできないわけでございます。これは午前中にも申しましたが、厚生省の食品衛生法に基づきます食品の成分規格できめていただかなければ判断ができません。したがいまして、当面は米と、いまおっしゃいました陸稲ということを対象にしてやらざるを得ないと思っております。
  139. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 厚生省来ていますね。人の健康に害があるかどうかというのは、米に限らぬわけですね。空気から体内に入ります。ばいじん中のカドミウムも人の健康を害する、野菜から体内に摂取されるものについても健康を害する、牛乳もそうでしょう。特に食管法上米と麦は同格に扱っておるわけでして、麦すらきめてないということは、私は厚生省のほうの大きな怠慢ではないか、かように思います。その点はどうなんですか、今後どの程度のテンポでこれをきめるのですか。
  140. 山本宣正

    ○山本説明員 お答えいたします。  いままでのカドミウムの事件につきまして、出ましたものは米からでございますが、お尋ねのとおり麦につきましても、地域によりましては大気の汚染からくるカドミウムの汚染というのは考えられるわけでございます。現在まだ米のように麦につきましての基準が作成されておりませんが、鋭意調査研究を進めているという段階でございまして、その結果が得られ次第、麦のように非常に食糧としてたくさん食べるものにつきましての基準はつくっていったほうがよろしいように私は思っております。
  141. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうしますと、いつまでに麦はきめるつもりですか。これはゆっくり研究しておるなんということでは困るわけでして、この法律が通過いたしまして施行になるのは六カ月をこえない範囲ということですから、その範囲できまりますか。あるいはさらに、私が連合審査で山中公害担当大臣に承りましたように、少なくとも次の通常国会で議論をしております段階にはそういうものはきめますか。
  142. 山本宣正

    ○山本説明員 ただいまのお尋ねの件でございますが、食品衛生課なり、環境衛生局で現在の段階で鋭意研究はしておりますけれども、この法の施行の時期までにその研究成果による基準が間に合うかどうかにつきましては、少しむずかしい点があるのではないだろうか、かように存じております。
  143. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 大臣お尋ねしたいと思うのですが、いま言いましたように、排水から土壌汚染されるだけなら問題はない。ところが、現にいま全国でカドミウム土壌汚染が問題になっている地域の大部分は、排煙によるカドミウム汚染、それから排水による汚染、両方が併合しているわけです。そうして、この法律を適用し仕事をやっていきます場合に、水田は指定地域に入った、たまたまそのまん中に丘があって、そこは畑地であって陸稲もつくっていなかったというところは除外になる、こういうことは理屈としてはやはりおかしい、また地域住民からいえば、これは当然納得することはできぬと私は思うのです。そういう点について指定地域指定する場合、当然そういった住民感情、それから厚生省がなまけておってまだ麦等の基準がきまっていないという状況を考えまして、実情に即する措置をとることが必要ではないか、私はかように思います。もちろん公害関係閣僚の一人として、厚生省に対して、麦その他の農作物の基準をきめるように強く要請することも強くお願いをしたいと思いますが、それと同時に地域指定にあたって、いま申し上げた状況を十分考慮して指定する用意があるかどうか、この点お答えをいただきたいと思います。
  144. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 麦類や野菜など米以外の農作物につきましても、国民の健康を保護するという観点に立ちまして、食品衛生法に基づく人の健康をそこなうおそれのある食品の成分、規格が設定されました場合には、もちろん積極的に必要な措置を講ずるのはあたりまえのことだと思いますが、やはり技術的なことでございますので、それぞれ専門的に、厚生省においても慎重に検討してくれることだと思います。それができますれば、私どものほうでは積極的に措置をいたしてまいりたい、こう思っております。
  145. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 倉石農林大臣は地元が長野ですから、信越線にお乗りになることが多いと思うのです。あの東邦亜鉛を汽車の窓からごらんになっていると思います。一番土壌汚染のひどいところはどこだと思いますか。あの東邦亜鉛——傾斜地でございますが、その傾斜地の一番高いところに煙突がある。あの煙突から出る排煙中の友カドミウムに汚染されているのは、この丘陵地帯汚染の一番はなはだしいところなんですよ。ですから、あの地域対策地域指定するという場合、米をつくっておらぬ下のほうの汚染のあまりたいしたことのないところだけ指定をして上のほうが除外されるということになれば、これは実情に全くそぐわぬ、こういうことは明らかだと思うのです。ですから私は、厚生省のほうに強く要請して、麦等の基準をきめさせる努力をしてもらうことはけっこうですけれども、しかし、それがきまってからでなければどうにもならぬというのではなくて、少なくとも、汚染程度がはなはだしい——米はつくっておらぬでも、土壌等を調べれば汚染程度はわかるわけでありますから、そうした場合、おそれのある地域、関連のある地域という形で指定をするということは、この法律からいってもできないことではないと思うのですね。そういう意味での配慮はどうかと聞いておるのです。
  146. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 よく両省の事務当局打ち合わせまして、できるだけのことはしなければならぬと思っております。
  147. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 とにかく水田と畑地とでそういう差別をされるおそれがあるんですね。そういうことは地域住民感情からいって許されぬので、そういう実情を十分考慮してやっていただくことを強く要請をしておきたいと思います。  それから、特別地区指定されるわけでありますが、結局事業者負担法がかかって事業者の負担がきまり、そして排土事業、客土事業をするというのはこの特別地区ということになるわけですね。
  148. 中野和仁

    中野政府委員 カドミウムの問題につきましては、現に厚生省のほうで一PPM以上米にカドミウムを含んでいる場合はいけない、こういっておりますから、そこがまさに事業者として、原因者がおれば負担するところになるわけであります。
  149. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうしますと、全国各地の状況を私は申し上げたいと思うのですが、群馬県の安中の場合は一PPM以上の米が発見されたいわゆる汚染田が十一・二ヘクタール、ところが要観察地域ということになればこれが百五十ヘクタールです。それから富山県の場合ですが、富山の黒部の場合は一PPM以上が七十二ヘクタール、要観察地域ということになれば、これが十倍にふくらんで七百八十四ヘクタール、それから長崎県の対馬の場合は、一PPM以上ということになれば八ヘクタール、要観察地域ということになれば五十九ヘクタール、それから大分県の奥岳川、これも要観察地域になっておりますが、一PPM以上ということになれば五ヘクタール、要観察地域ということになれば百二十三ヘクタール、こういうことになる。そうしますと、この事業者の負担法がかかり、そして現実に排土、客土等やって土壌対策をやるのがこの全体の要観察地域の一割にしか満たない地域に限定をされるということでは、私は当該地域の農民は、磐梯町の場合もそうだと思うのですが、現実にそういうことでは納得をせぬと思うのです。ひとつ具体的にお答えをいただきたいと思うのですが どうでしょうか。
  150. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまお話のありましたのは食糧庁のほうで一PPM以上カドミウムが入っている米は買わないというために線引きをしたところだと思うのです。これは各県が行政的に調べておるものでございまして、必ずしもそう各圃場を全部調べたわけでもないので、かなりの推定も入っているかもしれません。われわれのほうといたしますれば、この法律が施行になりますれば、もう一度きちっと統一した調査方法によりまして調査したいと考えておりますので、具体的にいま線引きしてあるところだけしかやらないということではございませんで、そういう統一した方法によりましてのやり方で、一PPM以上米にカドミウムが入っているような場所の線引きといいましょうか、認定をあらためてしなければならぬと考えておるわけであります。
  151. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 午前中の議論の中で、この客土、排土の事業をやる場合は、これは当然土地改良法に基づいてやるのだ、土地改良法の八十五条の規定が当然生かされるのだ、こういうお答えだったのですね。この一PPM以上ということになると奥岳川の場合は五ヘクタール、関係農家は五戸ですよ。土地改良法の八十五条からいけば十五戸以上の農家がこの要請をした場合に土地改良区を設定し、三分の二以上の農民の同意ということで仕事が進んでいくわけですね。そうしますと一PPMというような厳格な基準でやった場合には、奥岳川の場合、土地改良法八十五条すら生きてこぬ、こういうことに具体的にはなるのですよ。こういうことについてはどうでしょうか。
  152. 岩本道夫

    岩本政府委員 先ほど農政局長から答弁がございましたように、いま先生の御指摘になった被害の実態は、ほかの目的と申しますか、食糧庁の米の買い上げの関連で都道府県が行政的に調査したものでございますから、はたしてどの程度現実に被害が出てきておるかということは、農政局長の手元でもう少し調査をしていただかないとはっきりいたしませんので、その結果を見ますとともに、この対策計画のきまり方を見た上で私ども事業として取り上げてまいりたいと考えております。したがいまして、今後の対策計画のきまり方を見た上で土地改良法を発動してまいるつもりでございます。
  153. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうしますと、食糧庁がきめたこの範囲よりは見通しとしては広くなるということは確実なんですか、どうですか。
  154. 中野和仁

    中野政府委員 それは広くなるか狭くなるか、これから調査をいたしますからわかりません。
  155. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうしますと、奥岳川のような場合五戸しかない。広くなるか狭くなるかもわからぬ。そうしますと、十五戸未満であるという場合が非常にあるのですけれども、そうした場合土地改良法では一体どうなるのですか。
  156. 岩本道夫

    岩本政府委員 かりにいまの例にあげられました奥岳川の五戸、五ヘクタールというものが事実であるとしますと、土地改良法の要件に合致しませんので、土地改良法に基づく土地改良事業、つまり公共事業として取り上げることはできないと思います。したがいまして、これは別個な事業、たとえば低利の融資によりますところの非公共の事業として別の面で考えていかなければならない筋合いのものだろうと存じます。
  157. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 過般、連合審査で私は足尾の、経企庁が進めております対策事業、現実には農林省がおやりになることだと思いますが、この例を取り上げまして、その場合農民負担はゼロになることを保証するかとお尋ねいたしまして、関係大臣、大蔵大臣も含めまして、そのようにいたしますという答弁があったわけですが、カドミウムの場合も、汚染地域客土、排土の事業をやる場合、二分の一ないし四分の三を事業者が負担をして、残りは国なり自治体が負担をして、農民負担はゼロ、当然そういうことだろうと思いますが、それでよろしいですね。  それから、いま私が申し上げたような奥岳川の場合、五戸しかなくて土地改良法事業はできぬという場合においても、原因者が明らかであり、そうして事業者負担というものが当然かかってくるという中で、農民負担はゼロになる、こういうふうに了解してよろしいわけですか。
  158. 岩本道夫

    岩本政府委員 前段の御質問は、たびたびいままで質疑応答にございましたように、原因者がはっきりしております場合には、まず費用負担法によりまして原因者負担でございます。その場合、筋として全額が原則でございますけれども、特にカドミウム等は長期にわたって蓄積をしたものであることが大部分でございますから、原則として二分の一ないし四分の三という率を企業者に負担させまして、残額は現状を回復するという限度におきまして国、地方公共団体ができるだけ持って、農民には迷惑をかけぬようにしたいという考え方であります。  ただ、後段が、質問趣旨がちょっとよくわかりませんものですから、もう一度おそれ入りますが……。
  159. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 前のほうは詳しくお答えにならぬでもいいわけで、後段のことが問題なんですが、後段の場合、五戸しかないということになれば、土地改良法事業というわけにはまいらぬ、他の事業でやらなければならぬ、こう申しましたね。その場合、原因者ははっきりしておる。後段の場合、原因者が大体明確ですから、改良事業でない、他の事業でやる、こうした場合に農民の負担がゼロになるのか、こういうことです。
  160. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまのような想定の場合、まだ具体的にそういう地区がありうるということが私たち明確になっておりませんので、農地局長が公共事業としていままでずっと御答弁で申し上げてまいりました、たまたま公共事業の限界を割ったような場合どうするかということにつきましては、われわれとして今後それを詰めて研究させていただくということになるかと思います。
  161. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 しかし現に食糧庁でこういう数字も出しておるわけですからね。十五戸未満の個所ができるということは十分想定されるのですから、そのことについてもやはり考え方を固めておく必要がある、こう考えて私はお尋ねしたわけです。時間の関係がありますから、こういうものが他のものと違って農民負担があるということでは住民感情としては許さぬと思います。このことは、私の気持ちはわかると思いますから、十分ひとつ考えておいていただきたいと思います。  それから特別地区については作付転換の勧告ができることになっておるのですが、この場合の補償は一体どうなるのですか。
  162. 中野和仁

    中野政府委員 この補償は、当然これは原因者がおりますれば、その農家とそれから原因者との話し合いで民事的に解決することになるわけです。
  163. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ずばり事業者負担がかぶるというわけではなくて、住民企業者との間の民事上の訴訟であるかあるいは話し合いでやるか、あるいは紛争処理でやるか、いろいろあろうかと思いますけれども、そういうことにまかされるということですね。
  164. 中野和仁

    中野政府委員 これはしかし事業者の費用負担の問題とは別でございますから、当然いま私が申し上げたとおりになります。
  165. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 しかしこの場合は当然国が行政指導として企業に持たせる。たとえば全国でカドミウムの汚染米が発見されました。一PPM以上のものについては、これは企業がそれぞれ負担をいたしております。これもやはりそういう趣旨の行政指導が——鉱山課長もおるようですが、特に鉱業法の場合は無過失責任なんですから、通産省等指導いたしまして、そして汚染米については補償するということになったと思うのですが、やはりその点はきちっとやってもらわなければ困ると思うのですね。ですから、これは当然鉱業法上で監督しておる通産省もそうですが、あわせて農林省も弱い農民の立場に立ってきちっと行政指導をする。本来ならば、私はそういうものも企業者負担にかぶせなければいかぬ、こう思いますが、法律上は残念ながらそうなっている。修正等の話は理事さんのほうでやられますから、私はその点は触れませんが、少なくともこの点の行政指導はやはり厳格にやっていただきたいと思います。農林省、通産省のほうの御答弁をいただきましょう。
  166. 中野和仁

    中野政府委員 それは御趣旨のとおりでありまして、われわれといたしましても、関係都道府県知事にいろいろな指導をいたしたいと考えております。
  167. 伊勢谷三樹郎

    ○伊勢谷説明員 農林省のほうとよく御相談申しあげまして、善処したいと思っております。
  168. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 これはこの法律もざるの一つだと思いますが、本来は法律できちっとすべきものだ。努力するということじゃなくて、きちっと行政指導で必ずやる、農民の立場を守る、こういうことでひとつやっていただきたいと思います。  次に排出基準の上のせの問題でありますが、これも午前中議論がございました。まず上のせができるということになるわけですが、これは排出基準の上のせですね。ですから排出中のカドミウム、排煙中のカドミウム、これに対して現行基準を上のせできるということになるのだろうと思いますが、私は排水排出基準はよく承知をいたしております。こういう法律をお出しになって、排煙も含んでおるのですから、しかもカドミウムは政令ですぐ指定する、こういう態度なんですから、当然カドミウムの排出基準の案は政府においてすでにきまっておるものと私は了解をいたします。カドミウムの排煙の排出基準は一体何ぼでございますか。
  169. 山本宣正

    ○山本説明員 お尋ねでございますが、カドミウムにつきましての排煙からの排出基準につきましては、この法施行の時期までにきめたい、かように存じております。
  170. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 六カ月以内にやる。おおむね何PPM、何PPBですか。
  171. 山本宣正

    ○山本説明員 現在カドミウムの暫定対策要領の中で大気中に含まれております数値が示されてございますが、それは環境基準としておおむねそのくらいの数字になるということでございまして、これと排出基準につきましては、それらの排煙の状況等をどのように規制して規定するかという点をこれから詰めてまいりたい、かように存じておりますので、数字的に正確なことはちょっとまだ申し上げられない段階でございます。
  172. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 法律を出し、カドミウムについてはすぐ政令指定をするという態度をきめていながら、肝心のカドミウムの排煙基準すらまだ雲をつかむようだということは私は政府の怠慢だと思います。たいへん遺憾だと思います。六カ月以内にきめるというのですから、これはひとつすみやかにきめていただきたいと思います。  ついでに聞きますが、HCIの排出基準、これはどのような基準をきめるつもりですか。
  173. 山本宣正

    ○山本説明員 現在提案しております大気汚染防止法におきまして、塩素あるいは塩化水素につきましても、特定有害物質として政令で早急に指定するという考え方を持っております。これにつきましても、その排出の態様によりまして基準考えていかなければならないと存じております。現在までのところまだ最終的な数字ができておりませんが、これも同様法施行の時期までにはきめられるわけでございます。
  174. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 とにかく今度出ました法律は政令等にゆだねている面が非常に多く、その作業が進んでいないことは残念だと思います。  さて、それじゃ排煙のほうは議論ができませんから、そこで排出の基準のほうを議論したいと思いますが、排出基準は〇・一PPM、環境基準は〇・〇一PPMということになっています。カドミウムというのは御案内のように蓄積性ある重金属ですね。ですから、すでに汚染されている地域はもう全然出さぬということが対策上重要であることは言うまでもありません。この場合、上のせできるのは青天井ということになりますか、どうですか。
  175. 西川喬

    ○西川政府委員 お答え申し上げます。  新しい水質汚濁防止法におきます都道府県の上のせ基準でございますが、一応「政令で定める基準に従い、」ということで考えております。「政令で定める基準」といたしまして考えておりますのは、この測定方法等を一律基準で国が定めましたものを統一しておりませんと混乱が起こりますので、そういう測定方法等の統一並びに環境基準の維持達成ということを一つの目安にしておやりなさいという程度のあれを考えておりまして、量的な縛りをつくる意思はございません。
  176. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうしますと、本日の朝日新聞に出ておりますが、社会党の佐藤委員質問に対して橋本厚生政務次官が、政令には規制方法を書くのであって、いわば測定方法とか守らるべき環境基準というものを書くのであって、排出基準の上限、下限はきめるわけではない、こう答えていますが、いまの御答弁も上限についてはきめるわけじゃない、こういうことだったと思いますから、この点は橋本政務次官の答弁のように経済企画庁の事務当局理解しておる、こう理解してよろしいわけですね。
  177. 中野和仁

    中野政府委員 橋本政務次官は大気汚染のほうについて申し上げたのかと思いますが、水質のほうにつきましても上限を画す考え方はございません。
  178. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうしますと、上限がないのですから、青天井まで規制ができるということになるんだろうと思います。だから排出基準は〇・一PPMではなくて、〇・〇〇〇〇と零を幾つもつけてほとんどゼロに近いものをきめても、ただいまの御答弁でいえば差しつかえないということですから、たいへんけっこうだと思って了解をいたします。  さて、そこで午前中から議論のございました立ち入り検査ですが、都道府県知事が上のせをする。そうすると、当然これに対して立ち入り検査をしなければなりませんね。ところが水質汚濁防止法あるいは大気汚染防止法でも、鉱山保安法適用の事業については適用除外だということになります。しかし現実にはこのカドミウム汚染は、これはカドミウムのメッキ工場もありますが、いま現実に全国で問題になっている多くのケースは、鉱山保安法適用の企業が多いです。製錬所であっても、独立製錬所があって鉱山保安法適用外のものもございますから、そういうものは問題ないということになるでしょうけれども、安中にしろ富山の黒部にしろ鉱山保安法適用の企業ですね。そうした場合、都道府県知事が上のせをやった、上のせをやったが立ち入り検査権はないということでは、私はこの法律第七条の実効は期しがたいと思うのです。この点どうなんでしょうか。少なくとも土壌汚染防止のたてまえから上のせをしたという場合については、鉱山保安法適用の企業であっても当然知事の立ち入り権ありということにしなければ、私は問題は片づかぬと思うのです。この点いかがですか。
  179. 西川喬

    ○西川政府委員 水質汚濁防止法におきまして適用除外をいたしておりますのは、届け出、計画変更命令並びに改善命令の項だけでございまして、立ち入り検査の件は適用除外をいたしてございません。ですから鉱山につきましても都道府県知事の立ち入り権限はございます。
  180. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 通産省の鉱山課長、それでよろしいですね。
  181. 伊勢谷三樹郎

    ○伊勢谷説明員 いまの御答弁のように今度新しく改正されます水質法によりますれば、都道府県知事は監督のために鉱山の中に立ち入ることができるというふうになっております。この点はダブルチェックになるわけでございます。大気のほうはそういうふうにはなっていませんで、監督官だけが立ち入り検査ができる、こういうふうになっております。
  182. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 厚生省公害課長がおられるわけですが、大気のほう、特に問題になっているカドミウムの汚染地区、何回も繰り返しますが、安中の場合、それから黒部の場合、それから磐梯町の場合、いずれもこれは乾式製錬と湿式製錬併用です。乾式製錬のために、排煙から出るカドミウム汚染ということが問題になっておるわけでございまして、そちらのほうが大気汚染防止法の関係で知事に立ち入り権限がない。むしろ排煙の汚染のほうが大きく問題になっておるときに、上のせしたが、知事の立ち入り権限がそちらにはないということでは、これは問題ではありませんか。厚生省も、経済企画庁と同じように割り切って、それは知事も、それから鉱山保安監督部も、両方でダブルチェックできるのだということになるのが当然だと思いますが、どうなんでしょう。
  183. 山本宣正

    ○山本説明員 鉱山におきます監督規制につきまして従来と変わらない除外をしているわけでございますが、知事に上のせの権限を与えながらその点が問題であるということの御指摘でございますけれども、私ども知事と関係の行政機関との間での相互連絡は十分とれるようにしていくという形でございますし、鉱山につきましては、鉱山保安監督部局に置く監督官がその取り締まりをできるという体制になっておりますということで、このように、従来どおりにしたわけでございます。
  184. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 これは鉱山課長どうなんですか。おたくのほうのなわ張りばかり争わないで、当然厚生省のほうでは大気汚染防止法を将来直してもらわなければならぬと思いますが、鉱山保安監督部のほうも、いやこれは私どもの権限だけで、一切いかぬ、県のほうはだめだということでなしに、これは都道府県知事の立ち入り権限も認めるという方向で、当然、鉱山を監督しておる鉱山保安監督部が、そういう指導を当該鉱山にするということは可能だと私は思うのですが、その点はいかがでしょうか。  それから厚生省、大気汚染防止法と水質汚濁防止法との間に違いがあるのですから、将来それを水質汚濁防止法と同じようにそろえる、こういう気持ちがあるかどうか、このこともひとつ聞いておきたいと思います。
  185. 伊勢谷三樹郎

    ○伊勢谷説明員 お答え申し上げます。  まず水の場合には、カドミウムが含まれております水を排出するのは鉱山ばかりではございませんで、一般の工場にもその例が見られるわけでございます。したがいまして、そういうところから、鉱山においても都道府県知事の立ち入り検査があるというかっこうになるわけでございます。ただ大気の場合には、すすその他の粉じんを出します設備によって押えるということになっておりまして、カドミウムが排出されますのは、これは主として鉱山の製錬所のような、ある特定のものに限られております。少し極言いたしますると、排煙中にカドミウムが大量に含まれて出てくるという可能性があるのは製錬所であるとすら言って差しつかえないということでございます。したがいまして、他の工場にはその例は少ないということで、そういう意味合いからも大気法におきましては監督官が立ち入り検査権を持つというふうにきめられた、こういうことでございます。
  186. 山本宣正

    ○山本説明員 厚生省のほうの考え方といたしましては、水質汚濁防止法と大気汚染防止法とが同じような方式の肩並びをしたほうがよろしいという考え方もございまして、そういう意味では将来水質汚濁防止法と同じような形にしたほうがよろしい、こう考えられますが、要するにその監督につきましての実効のあがります点に問題がございますので、実効があがるということでございますならば、いまの形でもよろしいのではないか。したがいまして、将来の状況を見まして、私どものほうとしては、必要があれば知事のほうの直接の指導監督権限という形に直すことも必要ではないか、状況を見て判断して直すということを考えてみたい、かように存じます。
  187. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 大臣、結局、土壌汚染防止という観点で、水質汚濁防止法については知事の上のせができるわけですが、知事の立ち入り権限がある。ところが、排煙のほうは、これは大気汚染防止法の規定のしかたで、知事のほうには立ち入り権限がない、こういう状況なんです。厚生省は将来改めたい、こう言いましたけれども農地汚染防止の関係で、農林大臣としては当然両方の法律の違いがあるわけですから、この食い違いをなくす、そしてあくまでも知事の立ち入り権限を認めて農地汚染防止につとめる、こういう態勢をつくるのが私は当然だと思うのです。大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  188. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 午前中もこのことをだいぶ質疑応答ありまして、こちらからもお答えしておりますが、よく見まして、関係省で相談をして、遺憾のないようにすべきではないかと思っております。
  189. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 時間が参りましたから、最後に一つだけお尋ねしてやめたいと思います。  鉱山課長お尋ねしたいのですが、安中の現地住民諸君と一緒に通産省に参りました。安中の東邦亜鉛は、鉱山保安法八条、九条違反の行政不服審査で敗れまして、一万七千トンに一応施設拡充を通産省は許可いたしましたが、これを取り消しました。現在一万一千トンで操業いたしております。十二月末までに公害防止施設ができるということになっていますが、しかし、この土壌汚染防止法、この法律ができ、これに伴う土壌汚染防止計画というものが確立をする、その過程では当然、農地法に基づく住民の同意も必要でしょうし、それからさらに関係市町村長と協議をするわけですから、当然市町村長の同意も必要だ。しかも事業者の負担も明確になる。そういう中で仕事に着手するといいますか、計画が一応完成すると申しますか、そういうときまではこの一万七千トンの施設操業については許可をしない、こういうことを公害保安局長が明確におっしゃったわけでありますが、いまこの法律審議の過程でありますから、その点を国会におきましても明確にひとつ御確認をいただけるか、この点を承りまして、質問を終わっておきたいと思います。
  190. 伊勢谷三樹郎

    ○伊勢谷説明員 ただいまの先生の御質問でございますが、私も同席しておりましたので、そのときの様子をよく知っております。あらためてここで当時どういうことがきまったかということを申しあげてみますると、公共事業として土壌の改良が行なわれることになろうけれども、それによって県が方針を打ち出して、会社が——会社と申しますのはこれは東邦亜鉛でございますが、これに積極的に協力する姿勢を明確に打ち出し、これを県、市が了承した段階で認可を考えていきたい、こういうことでございます。ただいま御審議をいただいております土壌汚染防止法ができました場合には、この線にのっとりまして土壌改良が進んでいくわけでございますが、私どもといたしましては、県が指定地域というものにつきまして計画を立て、農林省のほうに提出するというような段階がこの段階であろうというふうに考えております。
  191. 草野一郎平

    草野委員長 合沢栄君。
  192. 合沢栄

    ○合沢委員 農用地土壌汚染防止等に関する法律案について質問をいたしますが、農用地の鉱山の廃石等によるところの農作物の被害の歴史はいまさらではないのでございまして、先ほどもお話がございましたが、足尾銅山の鉱毒事件にその例を見るごとく、すでに百年にも及んでいまだ解決を見ていないという例が全国に非常に多いわけでございます。特に近年は経済成長とあるいはまた人口の都市の集中化に伴って農用地汚染地区は非常に広がってまいっておりまして、汚染農地は十八万八千ヘクタール、被害地区も千五百地区、関係農家は三十四万というように及んでいると聞いておるわけでございます。しかも、最近ではその被害がカドミウムの汚染米のように直接人間の健康あるいは生命にまでも及んでおるということで、まことに憂うべき現象ではないかと思うわけでございます。  私の地区にも、先ほどお話がございましたが、奥岳川流域のカドミウムの汚染地区がございまして、要観察地帯としての指定を受けておるわけでございます。私も現地調査をしておりますが、被害地区の農家の受けておるところの損害は、物質的にも精神的にもまことにはかり知れないものがあるわけでございます。昭和四十三年にこのカドミウムが問題になったときに、現地の高校の女子生徒が作文をつくっております。私は非常に感激を受けたわけでございますが、その作文を摘記、読んでみますが、「この私の体もカドミウムに侵されているかも知れないのです。私の住む村の中央を流れる清らかな川は、子供の鮒釣りに夏の泳ぎに、そして灌漑用水としてまさに平和な農村の生活の源であったのです。ところが鉱山が開発されてからしだいに川の様子は変わり、悪臭と混濁の水が流れ、魚一匹住まない「死の川」に変わってしまったのです。村役場では水質検査や被害調査などこの対策にとりくんでいました。ところがその結果を私達が知る前に、突如として「奥岳川にはイタイイタイ病の原因であるカドミウムが多量に含有されている」と新聞やテレビで報道されてしまったのです。住民の驚きと憤りは一時に爆発し「村は一体俺達の命を守る考えは持たないのか」と悲痛な叫びが起こってきました。村人達は朝から仕事も手につかず、大人も子供もこのみえない悪魔の恐怖に騒然となったのです。現在日本公害列島といわれるように、全国各地公害の波が押し寄せ、全くその種の恐怖にさらされていないのは、四十六都道府県のうちわずか十二府県だそうです。今、身近に私達の村にあの神通川と同じ悲劇が繰り返えされようとしているのです。不安と恐怖が迫ってきます。私は一体どうしたら良いのでしょうか。」というような文章でございますが、さらにまた続けてこういったことが書いてございます。「憲法第二十、五条の、健康で文化的な生活とは単なる飾り文句なのでしょうか。」といったようなこと、さらに、「現在世界第三位という経済の高度成長は確かに世界に誇れることかも知れません。しかし生きている人柱で築かれた高度成長は、その美名とはうらはらに世界の笑いものでしかありません。」「生命の尊重が人権の根源であり、人権の尊重こそ平和な生活の基礎です。今こそ公害の正体を明らかにして十分に認識して、この人柱思想をこの日本全土から払いのけようではありませんか。」全文ではございませんが、こういった文章を読みまして私非常に感激したわけでございます。  このようなことで、地域の農家の方は非常に不安におののいておるわけでございます。特にこの地区の人は許容量以下の汚染米でも長い年月にわたって食べてきているということでございまして、将来神通川流域に見たようなイタイイタイ病の発生はしやしないか、また、米作で生活している農家は過剰米の今日米の質が非常に問題になるわけでございまして、この辺からも非常に心配しているわけでございます。また、汚染地区農家の結婚ということさえも心配になりまして、このことは非常に社会問題となっておると思うわけでございます。憲法の二十九条ですか、財産権の侵害ということは、これは憲法で保障されているわけでございますが、最近ではその上人間の生命の危険にまで及んできているということでございます。私は今回提案された法案は当然これらの公害防止措置と同時に被害農家の救済措置というものが立法化されるものということで期待しておったわけでございまして、また関係住民もそのような措置を期待しておったわけでございます。しかし提案された法案を見ておりますとその救済措置がないわけでございまして、まあ救済措置は民法によってやればいいではないかということのようでございますが、御存じのようにきわめて零細な農家にはその挙証能力は技術的にもまた経済的にも非常に困難でございます。また、かりに裁判になりましても、非常な長年月を要しているというようなことであるわけでございます。また、原因者が中小企業の場合とかあるいは原因者が消滅しているといったような場合には泣き寝入りになるわけでございます。この被災農家に対するところの救済措置ということがきわめて重要なことではないかしいうように考えるわけでございます。そういった見地から、将来農林大臣はこのような被災農家に対してあたたかい恩情のある措置をとっていただきたいように考えるわけでございますが、こうった問題についての大臣の所見を承りたいというように考えるわけでございます。
  193. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 そういうことを考えますので、このたび政府としても十四にわたる法律をつくりまして、できるだけそういう御迷惑のかからぬように、また事前にそれを防ごう、それからまたこれがたいへん完ぺきなものと思っているわけではございませんので、逐次そういうことに対してできるだけ検討をして善処してまいりたい、こういうわけで今回の対策をつくっておるわけでございます。
  194. 合沢栄

    ○合沢委員 大臣は、将来そういった措置は検針していこうといったようなことでございますが、ぜひひとつ御検討を急いでお願いしたいわけでございます。  それから次に、この問題は従来もずいぶん出ておる問題でございますが、無過失損害賠償の問題でございます。これは、大臣は財界の圧力等は全然なかったんだといったようなことを言っておられるわけでございますが、しかし大蔵、通産サイドからの農林省事務当局に対する猛烈な反対があったことは私はよく承知しておるわけでございます。事務当局も、世界で初めてのこの法案の作成でございましたし、また調査資料等も決して十分でなかったということで、これが防戦にはずいぶん苦労もしたというように考えるわけでございますが、この法案作成に当たった当局の努力はまことに多とするわけでございます。しかし、この無過失責任の損害賠償の規定がなくてはどうにもならない。特に被害を受けている農家の救済には役立たないというようにも考えるわけでございますが、この五日の連合審査の際に小林法相あるいは山中総務長官も、新聞で見ると次のようなことを言っておるようでございます。小林法相は、公害を総体的に規制することは民事法ではできにくいので、現象に応じて各規制法の中で検討してほしいと各省庁にお願いしておる。それから山中総務長官は、各省の規制法の中に無過失責任が盛り込めないか検討中であるというような答弁を五日の連合審査でしております。そこで農林大臣は、先ほども御答弁がございましたが、ぜひひとつ無過失責任の賠償規定をこの法案の中に将来加えるように前向きの姿勢をもって臨まれるように要請申し上げ、なお重ねてその御意見をお聞きしたいと思います。
  195. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ただいまお読みになりました答弁の中に山中総務長官の答弁があったようであります。そのとおりにわれわれも考えておるわけであります。
  196. 合沢栄

    ○合沢委員 それから次は、特定有害物質についてでございますが、第二条の3の特定有害物質は、当面カドミウムに限定して、なるべく早く亜鉛とか銅とかは政令できめたいという答弁を従来されております。第一条の目的では、「人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産され、又は農作物等の生育が阻害されることを防止し、」とあって、最初、健康を害すおそれがあるという点でまずカドミウムを特定の有害物質に政令で定めるということで、このことは当然でございますが、農作物の生育阻害の特定有害物質については、本法が施行されるまで全然その特定有害物質がきめられないということは、法律はできてもできない以前と何ら変わらないというようなことになるわけであります。カドミウムの場合は近年のことでございますが、銅とか亜鉛とかいったような重金属による農作物の被害というものはきのうきょうのことではないわけであります。調査資料が不十分だということでございますが、この生産を阻害されるところの特定の有害物質がいまだに政令できめられないということは、これは政府は怠慢のそしりを免れないのではないかというように私は考えるわけなんです。いまどのような点で調査なり資料が不足しておるのか、そういう点についてお聞かせ願いたいと思います。
  197. 中野和仁

    中野政府委員 農林省といたしましては、先生も御指摘のように、銅の問題は昔からの問題でいろいろデータは持っております。しかしながら地域指定の要件を考えます場合に、どういう被害とそれから土壌との関係になるかということをこれから詰めました上で、なるべく早く政令の指定に持っていきたいということで努力をしたいと思っております。
  198. 合沢栄

    ○合沢委員 なるべく早くということでございますが、見通しとして、これは農林省だけでやる作業と思う。この法律を施行されて生育を阻害する特定有害物質がまだ政令で一つもないということでは問題だろうと思います。一日も早く指定してもらいたいと思いますが、いつごろそれが政令で定められる見通しであるか、お聞きしたいと思います。
  199. 中野和仁

    中野政府委員 昨日も私は一、二年以内、こう申し上げましたが、その範囲内でできるだけ早くやりたいと思っております。
  200. 合沢栄

    ○合沢委員 一、二年というようなゆうちょうなことでは、この法律が何のために急いでつくられたのか、全く意味をなさないと思うのです。早急にお願いしたいと思います。  それから次は、従来の説明では、特定有害物質については大気汚染についての物質について言及されていないと思うのですが、大気汚染についての有害の物質というか、特定物質は何を考えておられるのか、御説明願いたいと思います。
  201. 中野和仁

    中野政府委員 大気汚染特別のものということではございませんで、われわれといたしましては、当面人の健康をそこなうおそれのある有害物質としてはカドミウムということを考えておるわけでございます。
  202. 合沢栄

    ○合沢委員 生産を阻害する特定有害物質というものは大気汚染の中ではどのようなものが考えられるかということなんです。
  203. 中野和仁

    中野政府委員 土壌汚染防止法で対象となります有害物質としましては、先ほど申し上げました生育障害については銅、亜鉛ということを考えておるわけでございます。
  204. 合沢栄

    ○合沢委員 たとえば亜硫酸ガス等は生育障害に対する特定有害物質とは全然考えていないということですか。
  205. 中野和仁

    中野政府委員 亜硫酸ガスは土壌に蓄積するというのではございませんで、これは大気汚染防止法自体でいろいろ規制する問題でございます。
  206. 合沢栄

    ○合沢委員 ばい煙とか亜硫酸ガス等は、ひとり農用地だけではなくして農作物あるいは山林等にも非常に大きな被害を与えておるということは御承知のとおりなんです。大気汚染防止法だけでこれらが十分とお考えかどうか、その点をお聞きしたいと思います。
  207. 中野和仁

    中野政府委員 ただいま申し上げましたようにわれわれのお願いをいたしております法律は、土壌汚染を通じて人の健康をそこなうか、あるいは生育障害を起こすというような問題でございます。いまお尋ねの件はこれは大気汚染防止法で対処すべき問題であり、もし問題があればそちらのほうでいろいろ検討するということになるわけであります。
  208. 合沢栄

    ○合沢委員 大気汚染でない水質汚濁等で林野等には相当大きな損害を与えると思うのです。この際そういった面から農用地土壌汚染防止ということを、林地も含めた汚染防止ということにしてはどうかと思うのですが、その点についての御意見をお聞きしたい。
  209. 中野和仁

    中野政府委員 林地につきましては、林地がどういうふうに汚染されておるか、それからまた林産物がどういうふうに生育障害を起こしているかまだよくわかっておりません。そこで、これは林野庁のほうでも昨日答弁をいたしておりましたがその辺の調査を進めた上で、林地を含めた法律が必要なのかどうかということを検討するということにいたしたいと思います。
  210. 合沢栄

    ○合沢委員 次に、対策計画事業でございますが、農地カドミウム等汚染されているときには、まず被害農家はもとどおりに復旧してほしいということが第一の要望であろうと思うのです。この法律では汚染程度土壌改良とか、あるいは深耕だとか、あるいはまた排土、客土というようなものを計画する。そして農林大臣承認を求めて実行されるということになろうかと思うのですが、先ほど五条の三項ですか、ここで先ほどのご質問に局長は答えられておりますが、「汚染程度、当該事業に要する費用、当該事業の効果及び緊要度等を勘案し、」「必要かつ適切と認められるものでなければならない。」ということなんです。この辺は決してチェックする意味はないんだ、この書いてあるとおりだというように言われておりまして、そのとおりであればきわめてけっこうだと思うのです。ただ心配になるのが、汚染程度がはなはだしい場合には排土とかあるいは客土というような非常に多くの費用を要する事業になろうかと思う。その結果は新たに開田するよりももっと大きな費用が要るというようなことも考えられるわけなんです。そういうような場合には、こういった項に触れないのかどうか、その点について具体的にお伺いしたいと思うのです。
  211. 中野和仁

    中野政府委員 御指摘のような場合、まさに非常に大きな金がかかり過ぎるということになりますと、そこはむしろ非農地に転換をいたしまして、そのかわりに代替地の造成をしてやったほうが安上がりだ、またそのほうがよろしい、農家も喜ぶという場合がありますので、そういうことも含めてこの対策計画は立てたいと思っております。
  212. 合沢栄

    ○合沢委員 農家が了承する場合はいいのですが、そう簡単に——もう相当全国的にも開田が進んでおりますし、特にこういった地区の場合は、そういった代替地が簡単にあるはずはないと思うのです。現実に私のほうの地区の奥岳川ではそういった余地がないということなんです。そういう場合、なおかつ代替地が見つからないというような場合には、やはりこれは何とかしてもとどおりに復旧してほしいという希望があるわけですが、それらがこういった五条三項の規定によってチェックされるということはあり得ると思うのですが、どうなんですか。もう一度はっきりお伺いしたいと思います。
  213. 中野和仁

    中野政府委員 農家のもとどおり復旧していきたいという気持ちは、私たちもよくわかっておりますので、一反歩を復旧するのに何百万円もかかるということではこれは無理だし、また農家もその辺は理解してくれると思いますが、合理的な費用のかかるものであれば、それをかけても復旧してあげるべきだと思います。
  214. 合沢栄

    ○合沢委員 相当な費用でも、開田を上回る程度費用でも認めるというようなことに解して、次に進みます。  なお、これに関連してですが、最近米の余剰米というような問題が起こりまして、生産調整が進んでおるわけなんです。そこで心配になるのが、水田の汚染されている場合等については、米の生産調整等との関連等から、こういった事業がチェックされるというような心配がないかどうか、この点をひとつ確かめさせていただきます。
  215. 中野和仁

    中野政府委員 防止対策事業と生産調整とは、直接は制度的には関連させるべきではないというふうに思います。しかしながらまた生産調整の面からいいますと、これはことしのあの経験からいたしましても、全国全町村に一応自主的な協力をいただくという意味で目標を示しております。それがどういうふうにその部落のほうにおりていって、その部落ではどう扱うかという問題は、別途また問題が出てくるわけでございます。
  216. 合沢栄

    ○合沢委員 制度的には直接関連を持たせないということでございますが、運用の面においてこれが特に生産調整の全国平均を上回って関連づけられて規制されるといったようなことはないということで解してもようございますか。
  217. 中野和仁

    中野政府委員 全国全部そういうふうに割り切れるかどうかわかりませんけれども、ことしの安中等の例によりますと、該当地区の農家は全部会社との損害賠償で交渉して、そちらから補償を受けております。生産調整はやっておりません。
  218. 合沢栄

    ○合沢委員 会社等からの補償によって生産調整をやるということなんですが、これはそういうようなことのできる企業の場合はいいのですが、中小企業で現在操業はしているか非常に経営が悪い、少し無理すれば倒産するというような内容の、そういう企業もあり得るわけなんです。したがってそういった場合には生産調整の休耕といったようなことは、そういった企業の補償によって行なうことはまず不可能だというようにも考えられるわけです。そういったことは考慮なしに、したがってそういうこととは関係なしに客土あるいは土壌改良というか、そういったことが生産調整と関連づけられないように、ぜひひとつお願いしたいと思います。よろしゅうございますか。
  219. 中野和仁

    中野政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、具体的なものは部落の段階におりて、その場合に生産調整はどういうふうにしてやるかということは一つの問題としてあるわけです。一方対策計画を立てて復旧工事その他やるということになりますれば、こちらでやるわけでございますから、その辺は指定されました具体的な地区での実情に応じて、われわれといたしましては適切な指導をいたしたいと思っております。
  220. 合沢栄

    ○合沢委員 私はこの法案を見まして悪くとると非常に悪くとれるわけなんです。第一、最初に申し上げましたようにはたして被害農家の側に立っての制度であるのかどうか。悪く見ると反対にとれる節があるわけなんです。先ほどもお話がございましたが、まず第一にこの法律は被災者の救済措置は全然考えられていない。防止措置中心になっている。しかも防止措置特定有害物質によって汚染された地域知事指定する。そしていろいろな計画が出る。ところがそういった計画というものは五条三項によっていろいろチェックされる。特に最終的には農林大臣承認だということなんです。こうなってきて、はたしてこれが被害農家のためになるのだろうか。しかもその間受ける損失というか、特に、費用負担等については、これは被害者なんです。被害者が負担するということもあり得るということなんです。こういったことでは、ほんとうに農家のサイドに立った対策なのだろうかどうだろうかということに私はきわめて不信を持たざるを得ないわけなんです。そういう点もう一度、これはそうじゃなくて、農民の側に立った制度だということについて、全国の被災農民にわかるように説明してほしいと思います。
  221. 中野和仁

    中野政府委員 今回こういう法案を提出いたしましたことこそ農民のためにやっているわけでございます。いままでだと、この辺が全部うやむやになっておりまして、一般の土地改良事業でやられている場合もあり得たわけでございますが、大部分は年々賠償なり何なりでうやむやに済んでいる。これを積極的に汚染された土壌を改善していこうということでございますから、われわれといたしましては、これによりまして初めて具体的に汚染地域対策ができるというふうに思っております。
  222. 合沢栄

    ○合沢委員 特に第五条の3等、十分そういう点で配慮して今後の運用に当たっていただきたいということを要請しておきます。  次に、この問題も従来再三質問に出る問題点でございますが、対策事業としてやる場合の農家の負担でございますが、いま一度確認をしておきたいと考えるわけでございます。御答弁では、対策事業によって前よりもよい条件ができるということを想定して、そして農家の負担もあるといっているようにとれるわけです。これはいろいろな場合があるかと思う。原因者がはっきりしていう場合、そういった原因者が支払い能力ができて双方の話し合いができるというような場合には当然農家の負担もないし、話ができて、よくなった分も問題なく農家の負担なしにできるだろうと思うのですが、しかしそうでない場合が多いと思うのです。で、まあ相当長い期間にわたって被害を受けている農家がこういった復旧の工事をして、いささかよくなったからといって農家の負担になること自体私はおかしいのだと思う。この点についてもう一度御見解を伺いたいと思うのです。
  223. 岩本道夫

    岩本政府委員 午前中からたびたび御答弁申し上げておりますように、汚染農用地対策事業に基づきます土地改良の実施につきましては、対策計画が定められ、事業者が明確である場合におきましては、まず費用負担法によって事業者の負担を求め、残額については国、地方公共団体の負担としてなるべく農家に御迷惑をかけないということは申し上げたとおりでございますが、御質問の、原因者が明確でない場合におきましては、現在鉱毒対策事業といったような種類の土地改良事業をやっている例もございますので、それらの例に準じまして措置をするつもりでございますが、問題の性格、この事業の特殊性にかんがみまして、できるだけ国、地方公共団体が費用負担をして農家に御迷惑がかからぬように検討してまいりたいと存じております。   〔委員長退席、三ツ林委員長代理着席〕
  224. 合沢栄

    ○合沢委員 農家が被害者であるということを念頭に置いて、農家に負担のかからないように、万全の運用というか措置をぜひお願いしたいと思うわけでございます。  それから第五条の二項の対策計画の一になると思うのですが、二項の一では「対策地域の区域内にある農用地についてその土壌特定有害物質による汚染程度等を勘案して定める利用上の区分及びその区分ごとの当該農用地利用に関する基本方針」ということになっておるわけですが、これは具体的にどのようなことを意味しているのか、ちょっと御説明願いたいと思います。
  225. 中野和仁

    中野政府委員 指定いたしました地域地域によりましていろいろ実情が違うわけでございますが、その地域がたとえば五十ヘクタール指定されたといたします。その中で非常に汚染がはなはだしくて、これは排土、客土をやっても無理だというようなところは、非農地に転換をしてほかのものに使うということも考えなければなりません。それから水田をもう一ぺん復旧したほうがいいと思われるところもございますし、むしろこの際畑にかえたほうがいいと思われるところもあるかもわかりません。そういうことをその地域の実情に即して、その五十ヘクタールを大体どういう形で持っていくか、どういう利用のしかたをするかという方針を具体的に基本的にきめるわけでございます。
  226. 合沢栄

    ○合沢委員 たぶんそうであろうと思ったのですが、その一つ「基本方針」によって、二の具体的な事業を策定するというようなことになろうかと思うのです。  そこで事業費ですが、これらの事業土地改良法によって行なうということでございますが、この土地改良法公害事業費の事業者負担法との関連についてひとつわかりやすく説明を願いたいと思うのですが。
  227. 岩本道夫

    岩本政府委員 土地改良法に基づく土地改良事業は、法の定める手続によって事業を実施する手順なり意味合いを定めたものでございますが、一方費用負担法に基づく費用負担の原則は、特定有害物質を排出した事業者の費用負担の原則を定めたものでございまして、それぞれ別の体系になっております。対策計画に基づいて土地改良を実施いたします場合には、この対策計画に規定されております指定地域事業について、原因者がはっきりしております場合にはその原因者に費用を負担させるというのが、両方の関連した読み方であろうと思います。
  228. 合沢栄

    ○合沢委員 この点については、午前中でしたか、田中議員の質問であったわけでございますが、私はやはりこういった事業土地改良法で行なわれるというのはどうも適当ではないのじゃないか。特に土地改良法は受益者の負担ということが前提になっていると思うのです。で、もともとこういった事業は、先ほど来言っているように農家の負担はほとんどないようにしなければならないというような考え方があるならば、土地改良法でやるのは適当でないのじゃないか。むしろこれは全然別な事業として行なわれるべきじゃないかというように考えるわけでございますが、その点もう一度ひとつ……。
  229. 岩本道夫

    岩本政府委員 土地改良事業は、農民の重要な生産手段であり、かつ財産である土地の形質を変更する事業でございますから、財産権の尊重という趣旨からいきましても土地改良法に定めた所定の手続、すなわち事業をやる場合にも三分の二の農民の同意といったような手続を踏んで慎重にやることが望ましいと思います。したがいまして公害対策土壌汚染対策計画に基づく事業の執行にあたりましても、そういうような慎重な手続を踏むほうが、財産権の尊重という趣旨に合致するものであると確信をいたしております。
  230. 合沢栄

    ○合沢委員 財産権の尊重という点ではそのとおりと思うのでございますが、問題は、この受益者負担の原則というか、こういった問題が非常に支障になるんじゃないかというように考えるわけなんですが、その点はどうなんですか。
  231. 岩本道夫

    岩本政府委員 確かに、お説のように土地改良法は法体系の中で費用の負担割合も国、都道府県、農民というふうに割り振って定めることにしておりますので、土地改良法を前提にしますとそういうことになりますが、一方費用負担法のほうは、そういう事態にもかかわらず、公害を起こした、特定有害物質を流して農地汚染したという企業者の責任を追及すると申しますか、公害対策基本法の責務に反するという趣旨において企業者に費用を負担させることを規定をした法体系でございますので、両方かね合わして読みますと、事業土地改良法で施行しても費用企業負担に求めるということになるわけでございますから、ちっとも支障はないんじゃないかというふうに考えております。
  232. 合沢栄

    ○合沢委員 そういうことで、一応この問題は——私も受益者負担というか農家負担ということが前提になる土地改良法についてはどうもしっくりしない。特にさっきの話では何とか農家の負担がないようなことに努力するというような程度のことでございまして、そういう点、被害者が金を出すといったようなことについてはどうもしっくりしませんが、一応の説明を了解して次に進みたいと思います。  なお、この土地改良法でやる場合には県営事業で行なうということなんですが、県営事業でやった場合、県によっては相当大きな事業になってこようかと思うのです。従来の県営事業の規模を越すような大きな事業になってくる可能性もある。そこで、県の負担というものも、またいろいろな技術上の問題も起こってこようかと思うのですが、そういう点について、県の負担なりあるいは技術の問題なりについての考え方をお聞きしたいと思います。
  233. 岩本道夫

    岩本政府委員 事業の規模がどの程度になるかということは、この法律が成立をして対策地域指定され、対策計画が立ってみないとはっきりしませんので、先ほど来も問題になっておりましたように、そういう現地実態調査、掌握しつつ考えてまいりたいと思います。したがって、現状においてどういう事業のやり方をやるかということを明確に申し上げる段階にないわけでございますが、今後費用負担のあり方については十分配慮してまいりたいと考えております。
  234. 合沢栄

    ○合沢委員 次に進みます。対策計画では汚染防止のために特に沈でん槽等を設置するというような考え方もあるわけでございますが、沈でん槽をつくるのはいいが、沈でん槽にカドミウムとかその他の重金属が濃縮して非常に多量に堆積される。それでは豪雨等があった場合には下流に一挙に多量の有害物質が流れ出る。その結果、かえって被害を大きくするというような心配が出てくるのじゃないか、こういう点についてはどのようなお考えか、お聞きしたいと思うのです。
  235. 岩本道夫

    岩本政府委員 沈でん槽でろ過してなるべくよごれない水を排出するというのは有効な方法であろうと思いますが、この方法は農家の側よりもむしろ汚水を排出する企業側、工場、鉱山側にその設置を求めるべきものであろうと思います。したがいまして、工場排水口においてそういう施設をして、よごれない水が流れるように関係方面に要請をしたいと思います。それでもなお流れてきます場合に、圃場の入口あるいは水路等に沈でん槽を設けるのは有効でございますので、あわせてそういう措置もとりたいと思いますが、ここ何年間かの確率、降雨を計算いたしまして、工事の設計なり施工なり施設の維持、管理等について、そういうことが起こらぬように十分配慮してまいりたいと考えます。
  236. 合沢栄

    ○合沢委員 いまの沈でん槽に関連しまして通商省にお聞きしたいのですが、私、奥岳川の現地に参りまして沈でん槽の状態を見たわけなんですが、上流に沈でん槽をつくってある。そして自動的に石灰を投入しながら沈でんさして、そして汚水を下流に流さないようにしているわけでございますが、その結果、非常に多量のそういったカドミウム等を含む有害物質が上流にうんとあるわけなんです。それらが乾燥されてあるということなんです。これは、しかし豪雨でもあれば一挙にカドミウムが下流に流出するおそれが十分あるわけなんです。このカドミウムをそこに置いたのではたいへんなんです。この点どのように考えるか、その対策等があればお聞かせ願いたいし、また指導も願いたいと思うわけです。
  237. 伊勢谷三樹郎

    ○伊勢谷説明員 お答えいたします。  そのお話は私どものほうにも陳情がございましてよく存じておることでございます。御説のようにただいま流れておる水は十分に処理されておりますので安全と思っておりますが、問題は鉱山のそばにあります堆積場でありまして、この堆積場のことを先生が意味されていると思います。堆積場につきましては、鉱山保安法で監督官の監督を受けるということになっておりまして、異常天候以外の場合には十分に補修されるように常時監督をいたしております。ただ自然現象として、たとえば集中豪雨のような場合に、それが完全にいついかなるときでも守り切れるかどうかという点になりますとやや問題がございますが、通常の場合には十分防止できますように常時監督をしておるということでございます。
  238. 合沢栄

    ○合沢委員 常時監督をしておってあの程度のものかと思って心細くなるわけなんです。  それでもう一つ関連しますが、沈でん槽に行くまでに石灰が自動的に入るようにしているわけなんですが、地区の農家の方が非常に心配しているのは、停電でもあると直ちに石灰の投与ができなくなってくるわけなんです。そうすると汚水のままの有害な水が流れるということになるわけなんです。また道の非常に悪い高いところで沈でん槽がつくられてあるわけなんです。したがって水でも出て途中の道が悪くなって石灰も持っていけないというような事態も起こる可能性もずいぶんあるわけなんです。そういった場合にはこれは非常に問題になる。特に雨が降ったりしますと、それほど汚水の出る量も多くあるわけですが、その際に電気がとまって石灰がいかない、さらにまた石灰を持って行こうにも持っていけないというような事態も起こってくるということなんです。カドミウム等が人体にも影響するような非常に危険な物質なんです。そういったものが堆積されておるということについても、先ほどのお話では監視しているということでございますが、私の見た限りでは非常に不十分な監視ではないかと思う。あるいは少し雨が降れば、すぐ有害物質が流出するような危険性を持っているということは、これはしろうとでも十分わかると思う。いま一度現場等を見られて、そういった不安のないような万全の措置をとることを強く要請しておきたいと思います。  以上で私の質問を終わります。
  239. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 松沢俊昭君。
  240. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 私、農林省にお聞きしたいわけなのでありますが、新潟県の六日町で、東邦亜鉛の南越鉱業所でやはり問題が起きておりますので、その辺、農林省がいままで調査された報告をまずお願いしたいと思うのです。——私、米の問題を中心にしてちょっとやりたいと思っておりましたけれども、そういうことであるとするならば、これは鉱山関係の方が来ておられますね。それでは、鉱山関係のほうで、東邦亜鉛の南越鉱業所でカドミウムが出ているということにつきましての立ち入り調査のようなことをおやりになったことがありますか、どうですか。
  241. 伊勢谷三樹郎

    ○伊勢谷説明員 お答え申し上げます。  東邦亜鉛の南誠鉱山につきましては、ごく最近も私どもの監督官が立ち入り検査をやっております。ここで起きました問題は、私が承知しておりますところでは、森下助手がここの二つの部落で米のサンプルをとられて、その分析をやられたということで問題が起きたというふうに聞いておりますが、その後私の聞いております範囲では、県の衛生研究所におきまして相当広域の米の調査をされましたところ、二つの水系に分かれておりますが、三国川の水系におきましては、一番高い米中のカドミウムの量は〇・一三七PPMであったということを聞いております。あともう一つの水系に宇田沢川というのがありますが、宇田沢川のほうの県のデータによりますると、一番高いのが〇・六四PPMであったというふうに聞いております。
  242. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 そこで私聞きますけれども、これは私たちのほうでも調査をやったわけなのであります。調査をやりましたところが、やはり工場のほうの案内でやりますと、第一通洞というところにおきましてはちゃんと予防措置を講じている。したがってカドミウムそのものというのは出ないようになっているんだ、こういう説明であったわけなんです。そこで、工場側とは別に、けわしい山の中へ入りまして調査をいたしましたところが、第二通洞がございまして、第二通洞と第一通洞のその間に黒又沢川という川がありまして、その川にたれ流しの状態で流れているという、そういう要するに結果というものが出てきているわけなのでありまして、そういうものに対するところの、いままでのこの鉱業所に対しますところの政府側のほうの、いわゆる対策を立てさせる方針というものはどういうふうにきまったのか、その点をお聞かせ願いたいと思うのです。
  243. 伊勢谷三樹郎

    ○伊勢谷説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘になりましたように、ここの鉱山では第一通洞と第二通洞があります。第一通洞と申しますのは、地形で、鉱山の鉱床に達します間に長いトンネルで掘り進んだところでございまして、この間には鉱床は全くございません。そして、この第一通洞を掘るにあたりまして、ここから出てまいりましたズリを、先生おっしゃいました黒又沢川の流域に簡単なダムを作りまして、そこに堆積しておるということでございます。このズリは、本来が運搬坑道というものでございますので、このズリが鉱石によって汚染されているという事実は、これは全くございません。ただ、これも先生御指摘になったことと思いますけれども、このダムのつくり方が非常に簡単なものであるということでございますが、これは、監督法規上で、ある高さ以下のダムの場合には——保安法で堆積場の施設認可をやっておりますけれども、ある高さ以下の場合には認可という行為はいたしませんで、ただ保安法上これを監督していくという措置をとっております。  もう一つの問題は第二通洞のほうでございますが、第二通洞が実際に鉱山の鉱床にぶち当たっている坑道でございまして、ここからは坑内水が流れておりまして、これが黒又沢川に入っております。この坑水については、現在のところ何ら処理はいたしておりません。ところが、ごく最近の分析の結果によりますと、たとえばカドミにつきましては〇・〇一PPMであるということでございます。通常の排出基準、カドミウムの場合には〇・一でございますので、その約十分の一であるということで、私どもといたしましては、現在の第二通洞から流れております坑内水によって鉱宝が惹起されるというふうには考えていないわけでございます。
  244. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 水質の許容基準の問題でちょっとお伺いしたいと思いますが、私は、直接土壌汚染とは関係はないわけなんでありますけれども、ただしかし、土壌汚染それから水質汚濁というこの問題は浮上に関連があると思うのです、そういう点で聞くわけなんでありますが、たとえば、私、新潟県の場合だけを出しまして恐縮でございますけれども、新潟県の北蒲原郡に胎内川という川があるわけなんであります。その胎内川の上流には中条町という町がありまして、倉敷レイヨンだとか協和ガスだとかいう、いわゆる工場誘致運動というものが始まったころ、鳴りもの入りでその誘致運動というものが行なわれたわけなんでありますが、そこから出るところの工場排水、これは魚が全然いなくなってしまいましたので、そこで県の衛生研究所で排水の分析を実はやってもらったわけなんであります。分析をやってもらいましたところが〇一〇一シアン、そういう結果が出てきているので、これは基準に照らして問題がない、こういう結論になるわけなんであります。  ところが、私が実際に実験をしてみましたところが、一升のびんに排水を入れまして、それを洗面器のところに入れて、そこへヒブナを入れておきましたところ、大体三十分で死んでしまうわけなんです。それでも基準としては差しつかえないんだという結果になるわけなんでありますが、それと同じように、いまお話ございましたように、東邦亜鉛の第一通洞の黒又川に流れるところの許容基準というものは、カドミウムの場合においては〇・〇一である。だからこれは問題ない、こういうことになるわけなんです。ところが実際は、これは米の問題にからみまして、そこから今度検出されましたところの米というものは一応出荷どめになったわけです。出荷どめになってから、また食糧庁のほうでこれを買い上げる、そういう結果にもなっておるわけなんでありますが、しかしもうここまでまいりますと、そこからとれるところの農産物というものは非常に評判の悪い農産物になってしまうわけなんであります。というようなことを考えていきました場合におきまして、〇・〇一のカドミウムだからこれは差しつかえない、そういう方法で基準がきめられていくということになりますと、その産出されますところの農産物による被害というものは一体どうなるのだろうかという疑問が出てくるわけなんであります。また、そこからとれておったところの川の魚というものば基準からすれば〇・〇一シアンだ、だからこれは心配ないんだ、こういうことになりますと、こういう法律というものができたとしましても、さっぱり結果的におきましては効果があがってこないという結果になるのじゃないかと思っておりますので、どなたか来ておられると思いますが、その水質の基準をきめる方ですね、それについてひとつ御見解を聞かせていただきたい、こういうわけで質問しているわけなんです。
  245. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 いま答弁者の方がまだ見えませんので、このまま待ちますか。
  246. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 それじゃ食糧庁次長がおいでになりましたので、米の問題でちょっと御質問申し上げたいと思いますけれども、さっき私質問しておりましたのは、新潟県南魚沼郡六日町の東邦亜鉛の鉱業所のカドミウム汚染によるところの米の問題ですが、これをいままで皆さんのほうでも調査されたと思いますので、調査の結果をまず先にお伺いしたいということで御質問しておったわけです。
  247. 内村良英

    ○内村説明員 お答え申し上げます。  六日町の東邦亜鉛製錬所におきますカドミウム汚染米の問題につきましては、本年の十月二十七日、まず新潟の食糧事務所から次のような報告が入りました。六日町の字宮というところと薬師堂というところにつきまして、東京教育大学の農学部の調査によって四十五年産のウルチ玄米についてカドミウムを分析したところ、宮で一・一PPM、薬師堂では〇・四五PPM、二つのサンプルにつきまして一・一、〇・四五PPMという数字が出て、その他の二つにつきましては、〇・一四、〇・二〇PPMという数字が出たという報告が入りました。その後、県のほうで調査いたしましたところ、それはサンプルが非常に多くて、それぞれ二十近くのサンプルをとったわけでございますが、その調査の結果では、一・〇PPM以上のものはずっと出ておりません。そういったことがございまして、食糧庁といたしましては、この地区の米についての買い入れを制限するというような措置はとっておりません。ただし、この地区の米は非常に銘柄がいい米でございまして、自主流通米に相当売る予定にしていた。それがこういった事件が起こりまして、自主流通米に売れずに、すでに三千五十俵くらいは売ってあったようでございますが、その他のものにつきましては、結局全部政府買い入れになったという事実について報告を受けております。
  248. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 そこで一つ問題になりますのは、教育大学の先生が調べられたのは、やはり一PPM以上の米があったということですね。県のほうで調べたのによると、それ以下であった。したがって、これは許容量を下回っているのだから差しつかえない、こういう結論が出たわけなんです。ですけれども、その中には一PPMの米というのはあるはずなんです。あるはずのものが政府米として売られていっているわけなんですから、全体を調べた場合においては、それ以下のものが大半であったとしても、しかしその許容量以上のものもその中には入っていると思うのですよ。その場合に、それを食べるところの消費者の立場からすると、非常にたいへんな米を食べているということになるわけなのでありますが、この辺の区分けといいますか、そういうものを一体どうされるのか、この点が一つであります。  それからもう一つは、ここは何しろ山ですから、いわゆる反収はあまりないのですけれども、反収のないところの米というのは比較的うまいということになるわけなのでありまして、私は別に自主流通米に賛成ではないのですけれども、やはりそういう制度ができると、自主流通米のほうに回したいという希望というのがあるわけなんです。そこで、たとえば自主流通米の場合におきましても、モチの場合におきましては、これは五百円近く加算金、これがなくなっているわけなんですから、つまり五百円くらい損をする。政府米に売るということになると損をしなきゃならないわけです。それからウルチの場合においては、大体五十円くらい損をして政府米として売らなければならない。ここでとれるところの米の量というのは、三万六千俵程度あるわけです。でありますから、結局二つの農協で、もし自主流通米に売った場合におきましてはどのくらいになるのか、政府米に売った場合はどのくらいになるのかという比較をしますと、大体七百万円くらい損害を受ける、こういう結果になってしまっているわけなんです。そうすると、この七百万円というところの被害額というものはだれが責任を負うのか、この点を明確にしてもらいたい。これは食糧庁だけでなしに、やはり、要するにこの法律にあります、いま提案されておりまするところの土壌汚染防止に関するところの法律、それから、今度は事業者負担の法律というものができてきておるわけなんでありますが、そういう点と関連し、これは農政局長からも答えていただきたいわけですけれども、こういった場合、一体だれが責任を負うのか。食糧庁のほうでは、こういう場合においては、今回はどういう措置をとられておるのか。将来この法律というものができた場合におきましては、こういう問題が起きたときにおいては、一体だれが責任を負うのか。これは農政局長のほうからお答えを願えればいいと思うのです。
  249. 内村良英

    ○内村説明員 まず第一点についてお答えいたしますと、カドミウムの汚染、人為的な汚染があるというようなおそれがある場合には、厚生省といたしましては、〇・四PPMというものを基準にして調査に入るわけでございます。その調査の結果、その他の、尿に入っておるカドミウム含有量だとかいろいろな条件がございまして、そういう条件があるものにつきましては、いわゆるカドミウム汚染の要観察地域ということになるわけでございます。そこで米につきましては、要観察地域の中で一PPM以上の米がとれているところを線引きいたしまして、そこの地区の米は政府が買わない。これは食品衛生法上処分を禁止されておる米でございますから、食糧庁としても買えないということで、そこの米は買わない。そのかわり関係の企業に対して補償を農家としては請求をするそれから一・〇未満の米につきましては、要観察地域の中でありましても、政府が買い入れる。それから現在お米が、御承知のとおり、余っておりますので、要観察地域の米は、とりあえず現在の需給事情のもとでは配給に充てない、こういう条件つきで、食糧庁といたしましては、カドミウムの米を処理しておるわけでございます。その場合に、線引きは一応県知事さんにお願いする。この六日町のケースにつきましては、まだ要観察地域になっておりません。そこでそういった地域のものにつきましては、要観察地域に準じて、人為的汚染のある場合は扱おうということにしております。そこで知事さんに線引きをしてもらうということになるわけでございますが、知事さんが、東京教育大学のサンプルでは四点でございますが、もっとそれの五倍以上のサンプルをとりまして調査をした、その結果一・〇PPM以上の米が出なかったということで、県の線引きの対象になることがないわけでございます、県の調査では。ということで、一応六日町の米の問題については、したがって六日町の米は全部政府が買い入れるという措置をとったわけでございます。  それから、第二点の御質問趣旨は、六日町の米は非常にいい米だから、これを自主流通米として売ろうとしておったところにカドミウムの問題が起こって、その結果、政府に売らざるを得なくなった。その結果、自主流通米としての販売価格によって得られる、政府に売り渡す場合の価格との差額でございますね、期待利益としてのそういうものが失われた。これの損害賠償というのは一体どうなるのか、こういう御質問だと思いますが、これは一応民事上の問題として、農家と企業の当事者の間で話し合って解決すべき問題だと思います。そこで法律的なことを若干申し上げますと、これは不法行為——民法の七百九条による、不法行為に対する損害賠償請求ということになるのじゃないかと思いますが、その場合に、製錬所が汚染原因となっておるかどうかということの因果関係、あるいは得べかりし利益というものが、法律的な意味における損害なのかどうか。これは民事上の問題があるのではないかというふうに私は思っております。
  250. 中野和仁

    中野政府委員 いま食糧庁の次長が答弁いたしましたとおり私も考えております。
  251. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 食糧庁の次長のほうからございました、つまり要観察地域の米というのは、買うけれども、これは配給に回さぬ、こういうお話なんですが、配給に回さないで、どこへ回されるのですか。
  252. 内村良英

    ○内村説明員 厚生省の見解では、要するに一・〇PPM以上、これは玄米でございますが、それは食品衛生法上処分を禁止しなければならない毒な米である、一・〇PPM以下のものは食品衛生法上安全である。これは八月に八人の学者を集めまして、厚生省で三日間にわたって検討された結果そういう結論を出されたわけであります。そこで、一・〇PPM以下の米というものは、これは配給に回し得る米でございます。ところが、現在米が余っておりますので、多分汚染米じみた米というような感じがいま消費者の間にある、要観察地域の米につきまして。それを無理に売りつけまして、配給米というのはあぶないのだというような印象を国民に与えることは、現在の食糧配給の立場からいって問題じゃないかということで、とにかく米が余っているから、そのような米は配給しないで、一応保管しておこうという措置をとっているわけでございます。
  253. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 だから、保管しておいても、それはいずれか処分しなければならぬわけでしょう。ところが、それは配給に回さないということになると、動物のえさにするとしても、それはやはりカドミウムが入っていることだけは間違いないのですから、それもやはり危険でしょう。廃棄処分にでもされるということなんですか。それはどういうことなんですか。
  254. 内村良英

    ○内村説明員 繰り返し申し上げますが、厚生省の見解によれば、一・〇PPM以下の米は口に入れてだいじょうぶ、こういうことになっているわけでございます。なっておりますが、いま米が余っておりまして、どうも心配だというようなおそれがあるとすれば、そういうものを、卸売り業者に向かってこれを買えといっても、消費者からのいろいろな批判があって、それはちょっとトラブルが起こるというようなことがあると困るからということを申しますので、一応食糧庁が保管しているわけでございまして、いまのところ、それを廃棄処分にするというような考え方は持っておりません。ただ、ただいま持っているわけでございます。
  255. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 いや、持っていることはわかりますけれども、その先どうなるのだということを私聞いているのだけれども、その先はまだはっきりしないわけですな。
  256. 内村良英

    ○内村説明員 御承知のとおり現在米が余っておりますので、そういうものを配給しないで持っているという状況になっているわけでございます。
  257. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 それ以上に言ってももうどうにもなりませんから……。  そこで、それじゃもう一回聞きますけれども、私は、農薬の場合においても同じことが言えると思うのです。土壌汚染の問題につきましてもやはり同じことが言えるような気がするのです。ということは、いま食糧庁次長のほうからも御答弁がございましたし、農政局長のほうでも、全く同じでありますという御答弁であるわけなんでございますが、とにかくいま公害騒ぎなんですね。国をあげての公害騒ぎなんです。でありますから、結局、トマトとか米というものが危険なんだということになると、かりに、いま次長の申されましたように、実は厚生省のほうでは一PPM以下であるならば心配たい、心配ないといっているけれども、われわれのほうとしては、そういう要観察地域の米については、米はあるのだからそれは一応保管しておくということでやっておられる。これは、そういうものを国民のところに出すということになると、やはり消費者のほうからいろいろな非難が出てくるということは、逆にいうならば、商品価値というのが下がるわけなんですね。下がった場合においては、これはカドミウムの排出をやることによって下がるのでしょう。ですから、私は、これはやはり企業の責任だと思うのですよ。ところが、その場合においては、つくったところの農民だけが泣き寝入りをしなければならないという、そういう法律では全く——要するに、公害問題では、農民をも含めて、公害からすべてを、生活とその生命というものを守ってもらいたい、そういう気持ちがあると思うのですよ。ところが、農民だけに対しては、もう切り捨てごめんの結果に終わってしまうのじゃないかと言うのですよ。だから、どこかで、何らかの方法で、こういう問題が起きてきた場合においては、救済措置というのがあってしかるべきなんじゃないか、こう思うのですが、農政局長、これは一体どうお考えになりますか。
  258. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまのお話は、先ほど食糧庁次長の申しましたことと私も同じだと申し上げましたが、商品価値が下がるといったような場合、はたしてそれが損害賠償の範囲に入るかどうか、いろいろ議論のあるところだと思います。その点につきましては、やはり基本的には、原因が明確でありますれば、これはもう当然被害者側と企業者側との話し合いになるわけでございます。その場合に、国として、あるいは地元の県として、その間に入っていろいろ仲裁といいましょうか、調停といいましょうか、そういうことは指導としては当然やるべきだと思っております。
  259. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 あなたも御承知だと思いますけれども、新潟県にはいろいろな公害が起きているわけなんです。その最たるものとしては昭和電工の有機水銀中毒事件です。第二の水俣病といわれる問題が起きているわけなんです。これは大体昭和電工が犯人であるということがもう明らかであるにもかかわらず、いまだにその裁判の決着はついていないという状態になっているわけなんです。こういう問題というものが解決できるために法律というものを制定してもらわなければならぬと私は思うのです。ところが、いまの御答弁からしまするならば、あくまでも、そういう場合においては両当事者が考えてやっていけばいいのじゃないかという。そういう法律であるとするなら、何にもならない法律になってしまうのじゃないかと思うのです。だから、そういう点は、やはり国のほうで何らかの方法で——国が金を出せということじゃないわけだ。しかし、国がやはりこういう問題に対して責任をとらなければならぬじゃないかと思うのです。特に零細な経営をやっているところの農民の立場から見まするならば、農薬の問題におきましても、被害があった場合においては、要するに農民との間において調整をつければいいじゃないか——今回このカドミウムの米の問題なんかにいたしましても、かりに自主流通米とするならば、七百万円の収入というやつが、その収入よりももっと上回るのじゃないか、こういうことになっているにもかかわらず、この問題についてはちっとも解決がつかぬということになってしまう。しかも、いま水の汚濁の場合におきましては、さっき御答弁がございましたように、基準から下回っているのだからこの工場の排出は差しつかえないのだという。差しつかえないけれども、その結果は、そういう米というところの農産物になった場合には、商品価値が下がってしまっているじゃないか、これの救済というのは全然考えられない法というやつはないと私は思うのです。そういう点の解決は一体どうされるのですか。
  260. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまも申し上げましたように、基本的には被害者側と加害者側との話し合いの問題だと思います。ただし、それを国なり県なりが、民間でもめているのを放置するというのはよろしくないと思いますから、その間に入っていろいろな指導等はすべきだということであるわけでございます。ただ、鉱山の場合には、賠償の範囲その他を別にいたしまして、これは鉱山法で企業側の無過失賠償責任がもうすでに規定されておりますので、その点は賠償の範囲をそれからきめるということで、どちらが犯人なんだというようなことで議論になることは、損害賠償としてはないわけでございます。
  261. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 そうすると、やはり一つの具体的な例を出しますけれども、こういう問題というのは全国にたくさん出てくると思うのです。そういう場合、全部やはりこの方針でやられるとなると、全く被害者というのは農民になってしまうのですよ。要するに農業問題に関する限りにおいては、被害者は農民になってしまう。さっき水の問題でお聞きしましたところが、これは〇・〇一PPMであった。そうすると、この東邦亜鉛南越鉱業所というのは何らの責任をとらなくてもいいということになるのですか。どうですか、これは水の関係で。
  262. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 質問者に申し上げますが、いま経済企画庁の担当者が運輸委員会で答弁中だそうでありますので……。
  263. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 どうも質問というのはやはり順序正しくやっていかぬと全くわけがわからなくなってしまうのですよ。私のほうで非常に困るのですがね。  鉱山局は来ておられますか。——じゃ聞きますけれども、この事件が起きてから、たとえばいわゆる残滓ですね、クラッシャーにかけたところの残滓ですね、ズリといいますか、そういうものが、調査によりますと八千立米も実はここで出ているわけなんですが、これの要するに処理というのはどのようにしてやっておられるのですか。
  264. 伊勢谷三樹郎

    ○伊勢谷説明員 お答え申し上げます。  鉱山の活動によって出てまいります先生おっしゃいます残滓といいますのは、一つは坑道の掘進、切り羽の採掘ということに伴いまして、鉱石以外に出てくるズリと申します一種の石ころでございますが、それがございます。それともう一つは、今度は選鉱場へ鉱石を持ってまいりまして、選鉱場で破砕いたしまして、有用なものだけをとるということで、残りました非常に微粉のもの、これはおおむね水とまざっておりますので、そういったものと大体二種類ございます。  それで、御質問の南越鉱山の状況で申し上げますと、二つの水系がございますが、宇田沢川のほうに流れておりますのがあとで申しましたいわゆる選鉱場から出てくる廃滓でございまして、これはその選鉱場の下のほらに中手原堆積場というのをつくっておりまして、ここに全部堆積をさせておるわけでございます。この堆積場は保安法の上で認可された設備でございますし、かつこれにつきましては保安法上監督を行なっておる。また、私どものほうへ参っております報告によりましても、この堆積場において欠陥があるということは、まだ報告は来ておりません。  もう一つは、いわゆるズリでございますが、先ほども申し上げましたが、黒又沢のほうへ出されておりまして、これは非常に簡単なダムでございます。先ほど申し上げましたように、ある高さ以下では設備認可の対象になっておりません。そういう意味において、非常に簡単なダムでございます。ただ、このズリは、先ほど申し上げましたように、第一通洞の掘さくによりますズリでございますので、鉱物によって汚染されているということは考えられないわけでございます。この黒又沢のほうのダムが、たしか昭和四十四年の集中豪雨のときに一部が流れ出したという事実を私ども報告を受けておりますが、この下流には御承知のように東京電力のダムというのがございまして、これが、ずっとこの三国川の下流のほうまで流れていくという事実はちょっと考えられないのではないかというふうに思います。先ほど食糧庁のほうからもお話がありました、この地区でやや汚染されている米が出たという宮部落といいますのは、この三国川のもう少し下流のほうにございますので、この黒又沢のほうのズリ捨て場から流出したものが、三国川の下流にあります宮部落に影響を及ぼしたというのは、途中にございます東京電力のダム等から考えて、まず考えられないのではないかというふうに推察いたしております。
  265. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 それじゃ鉱山局のほうとしては、鉱山保安法ですからに照らして——今度の法律には指定地域というのを設けることになっておるのでありますが、この東邦亜鉛南越鉱業所周辺というものは、これはそういう指定地域にする必要はない、そういう判断に立っておられますか、どうですか。
  266. 伊勢谷三樹郎

    ○伊勢谷説明員 お答えいたします。  県の衛生研究所のほうが御調査なさいました玄米のカドミウム分析のデータを私どもも持っておりますが、その中で見ますると、一番高い米の濃度が〇・六四ということでございまして、厚生省のほうの要観察地域の要件が〇・四以上ということでございますから、その米の濃度だけで申しますと、この地域は要観察地域指定される一つの要件にはかなっているというふうに数字の上では考えられます。ただ、それ以外の要件につきましては、これは厚生省のほうでいろいろ基準をつくっておられまして、そのほうの要件にかなうかどうか、私どものほうではよくわからない問題でございます。
  267. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 いろいろ、鉱山局のほうではそこがやはり一つの問題点だと思いますけれども、調べてみますと、こちらのほうの調査ではその水の中にあるところの量というものが結局〇・二四五というのと〇・〇六六五という、こういうものが出ているわけなんですよ。それから土砂のほうですね、これを調べてみますと、〇・五、それから一・〇一、一・一六、こういうぐあいにやはり出ているのですね。でありますから、こういうものがそのままずっとこういけば、これは土壌は相当汚染されてくることになるわけなんです。ところが、いまあなたのお話からしますと、保安法のたてまえからいって鉱業所に落ち度はない、こういうお話なんですが、落ち度がないという前に、こういう問題が出ている。こうなれば、どこかにこの鉱業所に落ち度があるというふうに判断して、そういう立場で皆さんが立ち入り調査というものをやっていかなければならぬじゃないか。いろいろと立ち入り調査権の問題につきましては午前中から午後にかけまして質問が集中しているわけです。集中はしているにもかかわらず、私はこういう具体的な事実というものを出しているわけですが、   〔三ツ林委員長代理退席、委員長着席〕 こういう場合においてもたいしたことはない。こうなると、立ち入り調査権というものがかりに知事にあったとしても、あるいはまたあなた方のほうにあったとしても、こういう問題が規制されない限りにおいては、だれかが死なぬ限りにおいては問題の解決にならぬということになるんじゃないですか。やはりどこかに欠点があるからこういう性質の水が出、こういう性質の土壌汚染というやつが行なわれているんじゃないですか。要するに、そこをきちんと押えてしまうというめどがなかったら、公害防止ということにならぬと私は思うのですが、そのいう点、どうお考えになりますか。
  268. 伊勢谷三樹郎

    ○伊勢谷説明員 お答えいたします。  先生のいまおっしゃられました数字がどういう数字であるかは、実は私はよく存じないわけでございますが、そういう事実がもしあるといたしますならば、さらに私どもとしては厳重な監督を続けてまいりたい。さらに努力を継続したいと思います。
  269. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 その辺一体農政局長としてはどうお考えになりますか。いま最後にいくと、やっぱり縦割り行政の弊害というのがしょっちゅう出るんですよ。だから公害対策は一本化してやっていったほうがいいんじゃないか。これは私は賛成なんです。賛成なんだけれども、これは要するに法務大臣のあれからいくと、やはり横にやっていくんだというようなお話がありましたが、横へやっていきますと、やはりこういう弊害というものが出てくると思うんですよ。そういう点で結局公害だ、公害だといって騒がれて、公害国会という国会まで開かれたとしても、結果的におきましては鉱山局のほうでは心配ないんだと、こういうお話になるわけでしょう。しかし水が流れてくる、土壌汚染される、汚染米が出てくる、そうするとその米が売れなくなってくる。そうして売れなくなってきても、これは飢饉ではないから、消費者には配給はしないけれども、これは保管しておくだけだ。要するにこういう食糧庁長官の話にまでなってしまうわけです。結果的においては高く売れる米が高く売れないという状態になってくる。その米の行くえということについて消費者が非常に心配する。こういう因果関係でぐっとくるわけなんです。ですからその辺、十分こっちの省とこっちの省が連絡とってやりますよといっても、結果はできないことになるんですよ。そういう点についていま鉱山局のほうからお話がございましたけれども、私はそれは非常に不満なんですが、農政局長も農産物とか農地土壌汚染だとかそういう問題から考えると、鉱山局と同じような考えであっては困ると私は思うのですよ。そういう点、局長のほうから御答弁願いたいと思うのです。
  270. 中野和仁

    中野政府委員 お話しの点もっともでございまして、そのために今度土壌汚染防止法案を御提案申し上げておるわけでございます。従来どちらかというと、農林省は受け身のようなことが多かったわけでありますが、今度は——先ほどの委員の先生方でございましたか、申し上げましたが、農林省といたしましては、この法案の成立を契機にいたしまして、全国的な土壌調査をもう一ぺん総点検してやりたいと思っておりますが、特にその中で汚染程度の著しいところにつきましては、精密調査をいたします。そうして地域指定をやり、またそのあとの動態調査をいたします。したがって、先ほど数字をあげられまして、だんだん蓄積してくるじゃないかというところは、当然いま私が申し上げました精密調査をやるところに入ってくると思います。そういう土壌汚染の面から、われわれといたしましてはそこを調べた上で、そのデータをもちまして、いまの鉱山の場合でありますと、これは通産大臣に当然要請をする、いろいろ話し合いをするということになるわけでございますので、われわれといたしましては積極的に土壌汚染防止の立場から、ある場合には企画庁、ある場合には通産省、ある場合には厚生省というぐあいにお話をしたいというふうに考えております。
  271. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 どうしてもいまのような御答弁になれば、なかなかあなた方のほうでもそれ以上言うわけにいかぬという結果になるわけです。そういうところに、やはりこの法律ができたとしてもざる法という批判がありますけれども、そういう結果に終わってしまうのじゃないかということを私は申し上げているわけであります。  そこで、水産庁の長官、おいでになっているそうでありますからお聞かせ願いたいと思います。さっき私質問しましたけれどもおいでになりませんので、同じことをもう一回繰り返しますが、水の汚染というものと、それに伴うところの土壌汚染というものは非常に深い関係があるわけなんであります。そこで、さっき一つの例を出しましたけれども、シアンの問題で、川に魚が一匹もいなくなってしまっている、そういう地域というものが新潟県にあるわけです。胎内川というところになりますと、昔は淡水魚の産地であったわけでありますけれども、いまは全然いなくなってしまったわけなんです。上流に倉敷レイヨンだとか協和ガスだとかいう会社がありまして、そこから流れ出るところの排水、それが原因をなしている、こういうことだけは大体はっきりしているわけなんです。そこで、県の研究所のほうで分析をしてもらいましたところが、シアンの許容量、基準量ですか、それは基準よりも下回っているから心配ないという、そういう結果が出ております。したがって、企業責任を問うというわけには、いまではいかないという状態になっているわけです。しかし現実には魚が死んで、魚が住めない。私が調査しました、実験しましたのによっても、ヒブナがその水の中に入れてから三十分で死んでしまうわけです。それでも基準を下回っているというそういうことで、企業責任が問われないということになっているわけです。いまの東邦亜鉛の問題にいたしましても、やはり基準から下回っているからそれほど問題にならないということであれば、これまた企業責任というものを追及するというわけにもいかないということになるわけであります。そこで、その基準というものをどういうふうにしておつくりになるのか、その点を明らかにしていただきたい。これが、さっきの私の質問であったわけなんです。水産庁の長官、 おいでになっていたら御答弁願いたいと思うのです。
  272. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 公害対策基本法の第九条で、河川、湖沼あるいは海等、「人の健康に係る環境基準」というものがございますが、それに基づきます公共用水域では、シアンは「検出されないこと」という、そういう条件になっております。それから工場事業場等の排出基準につきましては、指定水域が九十ほど現在ございますけれども、そこでの排出基準は、シアンは一PPMでございます。これは九十ほどの指定水域でございますから、全国に及ぶということではございませんで、及ばないところは現に県で条例をつくって規制をいたしております。たとえば関東周辺でいいますと、福島とか新潟とかは、県の条例でシアン二PPMということで規制をいたしておるわけでございます。これらは私ども水産関係の海洋学者あるいは水産学者等の意見も聞きまして、経済企画庁にこれらの基準をつくりますときにいろいろ意見を申し上げて、いわば各省共同でつくったわけでございまして、これらの基準が守らるならば私は魚が死ぬという事態はまずないというふうに思います。しかし、実際問題といたしましては、いまの御指摘の例は私よく存じませんけれども、ことしになりましても長良川でありますとか狩野川あるいは栃木県の思川でありますとか、毒物あるいはアルカリ性の物質が流されたということで魚が相当死んでおるわけでございます。これは具体的にどの工場、どの事業場がいわば元凶であるかということは詰めて、詰めてもなかなか詰めきれない場合があるわけでございますが、それが因果関係が追及できれば当然漁業補償の問題になります。現にそういうことで漁業補償を受けておる場合もあるわけでございます。したがいまして、私どもとしては、今後排出基準を厳重に守ると同時に、排出基準をこえて汚水を流します場合に、できるだけ早く事態を発見して真の元凶を突きとめることができるような、そういう体制をつくるように現在努力をいたしておるわけでございます。
  273. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 県でも条例がありますので、それに基づいてやるわけなんですよ。だけれども、具体的に学者の御意見等を聞きながら一つ基準というやつができ上がっていくと思うのですけれども、しかし現実は、学者の要するに説も大切ですけれども、しかし魚を入れて実験してみると、一番簡単な話なんです。死んでしまうのです。死んでしまってもこれは要するに基準以下であると、こうなるのです。こういう問題は一体今後どういうふうにして解決されるのか、それを聞いているわけなんです。胎内川漁業協同組合というのがあったのです。それが十年前にもう解散してしまっている状態なんです。しかし県の条例からするならば、基準があって、基準をはるかに下回っているというのです。しかし魚はいなくなってしまっている。そうすると基準が間違っているんじゃないかというのです。基準が間違っていなかったならば、試験分析をやるところの機関が間違いをやっているんじゃないか。どっちか片方でなかったなら、魚は死ななくなるのじゃないかと思うのです。この辺は一体どうなるのでしょうか。だから、こういう公害防止の幾つかの法案ができておりまするけれども、そういう点が、かゆいところに手の届くような法案になっているのかいないのかということになりますと、どうも御答弁を聞いてみますと、なっていないような気がするので、できれば、今度はこうなるのだというそういう具体的なものがあるならば、この条文のどこにどういうふうにしてどうするのかということをはっきりしてもらいたい、こういうことなんです。
  274. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 私が先ほど申し上げた基準どおりで水質がありますれば、これは決して学者の空論でございませんで、当然水産学者は生物実験もいたしておりますから、魚が死ぬことはまずないので、検定の方法に問題があるか、あるいはそれ以外の理由で水が汚濁をしたか、あるいは水温等によって魚がいなくなったのか、あるいは二PPMという県の条例あるいは一PPMという政府の水質基準に従わないで、それ以上の汚水をどこかの事業場が出しているのかという、私はそういう問題であろうと思います。これからの問題といたしましては、当然排出基準、環境基準の施行を厳重にするということであろうと思います。私どもといたしましても、先ほども申し上げましたが、幾つかの川で漁業被害が現実に起きておりますけれども、なかなかどこのだれがいつどういう形で悪水を流したかということは突きとめられない場合がいままで多かったわけでございますから、今後の措置といたしまして、できるだけ漁業協同組合等の職員を訓練して、また簡単な分析器具を漁業協同組合に配って、そこで魚が斃死したような場合には、試験場に連絡して試験場の先生方に来てもらって検査をするという前に、できるだけ早く大体の見当がつくようにというそういう体制をつくるように現在努力をいたしておるわけでございます。
  275. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 いろいろ御答弁がございましたのですけれども、しかし現実の問題としてそれも解決できるかどうかということにつきましては私は非常に疑問に思っているわけですが、経企庁のほうからもおいでになっているそうでありますから、経企庁のほうではこういう魚の問題だけではなしに、鉱山から出ますカドミウムを含むところの廃液、そういうものに対して通産のほうからもいろいろ御答弁ありましたのですが、東邦亜鉛の問題を具体的な例にあげながら質問しているわけですが、まあそう川の水には心配がないという御答弁でありますけれども、しかし現場はたいへんな問題になっているのです。この辺についてどういうふうにお考えになっているのかお聞かせ願いたいと思います。
  276. 白井和徳

    ○白井説明員 御説明申し上げます。  一般的には、われわれ水質汚濁を防止するといりことにつきましては、公共用水域の水質保全という観点からやっておるわけでして、当該水域が上水道あるいは農業排水、内水面漁業、そういう観点から被害が生じないように、当該公共用水域に立地している工場または事業場を必要な限度で規制していくということをやっているわけでございます。したがいまして、具体的に問題が出るようなところにつきましては、今後は水質汚濁防止法において国で、もちろんいまの基準にまちますが、必要限度において上のせ基準をして当該水域の水質汚濁の防止をはかってまいる、かように考えております。
  277. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 だからいま私、質問しておりましたのです。東邦亜鉛の六日町の鉱業所のカドミウムの問題を話しているわけです。  そこでそれの水は〇・〇二四五、〇・〇六六五、こういう調査が出ているのですよ。それは鉱山局のほうでは大した心配はないのだ、こう言っておられますけれども、これが要するに心配ないどころの話か、はっきり言うと、現場では大騒ぎなのですよ。大騒ぎがあってもこれはどうしようもないのだ、そういうことにはならないのじゃないかと思う。だから、そういう場合においては、やはりそれを上積みさせるという話がありましたけれども、上積みをさせるというそういう具体的な措置というものはとってもらわなければならぬと思うのですが、だからそれはケース・バイ・ケースでやるのですか、これはどういうことになるのですか。
  278. 白井和徳

    ○白井説明員 お答えいたします。  カドミウムにつきましては、御承知のように国の環境基準で、流水におきまして〇・〇一PPMときまっております。したがってこの〇・〇一という数値の安全度という観点からいたしますと、その水をすぐに飲んでも十分な安全度を見込んだ数値になっているわけであります。そして排水規制の段階において現在は指定水域制をとっているわけでございますが、川の流量なり等から考えまして大体十倍ぐらいの濃度でもって排出規制が行なわれておれば、特殊な地域は別といたしまして、ほぼ十分ではなかろうかというふうに考えております。
  279. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 私はだからそれが不満なんですよ。十分でないから問題が起きているのじゃないか。十分であれば問題が起きないじゃないか。どうして〇・〇九PPM、これが十分なんですか。要するに十分であるならば何もカドミウム汚染米というような問題がクローズアップされてこないと思うのです はっきり言うと。それは一体どういうことなんだ。しかもいま米の問題につきましては、食糧庁のほうでは、買うことは買うけれどもこれを配給には回さないというところまでいっているわけでしょう。そのことによって商品価値というものは下がっておるのじゃないか、それだけの被害を現に受けているのじゃないか。受けているにもかかわらず、あなた方のほうでそれは安全だ、心配ない、そういう態度は問題なのじゃないかと思うのです。こういう点についてはっきりと御答弁を願いたいと思う。これは農林大臣のほうからもやはり御答弁願いたいと思うのです。
  280. 白井和徳

    ○白井説明員 私の答弁は、〇・〇一PPMというのは流水の基準で申し上げたわけでございます。したがいまして、ただいま先生が問題にいたしましたような土壌における蓄積によって結果として農作物被害が出るという場合については、私が先ほど申し上げました一般原則論、これは当たらないと思っております。
  281. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 大臣に最後に御質問申し上げますけれども、いままでいろいろ具体的な例を出しまして質問しました。いわゆる鉱山局のほうのお話、水産庁のお話、そしていま企画庁のお話、みな聞きました。具体的な事実というものと基準というものはだいぶ食い違いがある。そのことによって、この水はだいじょうぶなんだといってもそこに魚がいなくなってしまう。要するにカドミウムの量ではだいじょうぶなんだというところへその水がたれ流されていることによって土壌がよごれてしまう、そしてそこから出るところの米というものが大問題になっているわけなんです。大問題になっている例を二つあげたんですが、しかしこの大問題になっているところの二つの例をあげてもその基準は安心だと言っておられるわけなんです。結果はたいへんな問題になっているわけです。要するに何か基準というものと現実というものが非常に矛盾が起きている、開きがあまりに大き過ぎる、そういうことによって農民の受けるところの被害というものがだんだん大きくなっている。こういう点をこの法律ができた場合においては解決されなければならぬじゃないかという真剣な考え方で私は御質問申し上げているわけなんでありますが、いまの御答弁からすると一向に、この法律案というものがかりにこの国会を通過してもこの問題の解決にならぬ、私はこう判断せざるを得ないわけなんです。その点につきまして大臣から、こういう現実と学者の学説との食い違いというものをこれからどう調整をして、現実にそういう問題が起きないような方法を立てられるのか、その点をお伺いしたいと思うのです。
  282. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 各省の担当の者からそれぞれお話し申し上げたようであります。きめられた基準はもちろん政府は厳格にこれを守るようにいたさせます。  なお、先ほど来いろいろ当事者と質疑応答があったようであります。十分あなたのおっしゃいます現実の問題も事務当局は承っておると思いますので、十分検討して不安なからしめるようにいたしたいと思います。
  283. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 それではこれで質問を終わります。
  284. 草野一郎平

    草野委員長 千葉七郎君。
  285. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 農用地土壌汚染防止等に関する法律案につきまして質問をいたします。だいぶ問題も検討されましたし、また与えられた時間もごく少なくなりましたので、二、三点につきましてお伺いをいたしたいと存じます。  その第一点でございますが、第二条の第三項、特定の有害物質は政令でこれを定めるという規定になっております。この特定の有害物質の決定につきましてはどのような物質を政令で定める予定であるか、まず第一にお伺いをいたしたいと存じます。
  286. 中野和仁

    中野政府委員 昨日からたびたび申し上げておりますが、われわれといたしましては、いまカドミウムの問題が一番緊急に問題になっておりますので、まずこの法律が成立いたしますれば政令でカドミウムを指定をいたしたいということを考えておりますが、しばしば御議論のありますように、生育障害の問題といたしまして銅、亜鉛が非常に問題であります。われわれの調査を緊急に進めまして準備整い次第次には銅、亜鉛を考えておるわけでございます。それからあと砒素、鉛につきましては人体に影響があるというふうに聞いておりますので、厚生省ともよく協議の上、その辺の見通しがつきました際に指定をいたしたいと考えております。
  287. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 まずカドミウムを指定する、銅と亜鉛等については追って政令で定める、こういう御答弁でありますが、午前からの質問に対する答弁によりますと、銅や亜鉛の決定はここ一、二年のうちになるべく早く決定をする、こういう答弁にお聞きをしておるわけでありますが、一年と二年では倍の違いがあるわけだと思うのであります。したがって、一、二年の間になるべく早く決定をするということでは一年と二年では倍でありますから、そういうゆうちょうな考えでは——銅の被害なんていうものはわかり切っておることなんです。したがってはっきり一年以内なら一年以内に決定をする、こういう答弁はできませんか。
  288. 中野和仁

    中野政府委員 一、二年以内と申し上げましたのは、われわれといたしましてこれから調査をいたしまして自信をもっていろいろな要件その他の基準をきめるわけでありますので、いわば用心してと申しましょうか、一、二年と申し上げたわけでございますが、気持ちといたしましてはできるだけ早くやりたいと考えておるわけであります。
  289. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 そこで第五条についてお伺いをいたしますが、農用地汚染対策計画、この汚染対策についての必要な事業は、汚染防止、それから汚染されておる土地の汚染物質の状況、それからそれらの農地利用合理化、これは利用の変更でありましょう。こういう三つの仕事が予定をされておるわけでありますが、この三つの仕事について公害原因者の明確なものは公害防止事業事業者負担法の第四条、第五条によって定められたところに従ってこの費用の負担をする。それから原因者の不明確なものについては土地改良法によってこの事業を行なう、こういう御答弁なわけであります。  そこでお伺いをいたしたいのでありますが、土地改良法の第八十五条の一項によりますと、土地改良法による土地改良事業を行なう場合には、第三条の有資格者が十五人以上で申請をしなければ土地改良事業が認められない、こういう規定になっており、さらに第二項では、施行土地の三分の二以上の同意がなければこの土地改良法による土地改良事業というものは行なわれないわけであります。この汚染農地が、必ずしも土地改良法の第八十五条第一項、二項に該当するものだけとは限らないと思うのであります。たとえば、汚染された土地の所有者が三人か五人しかなかったというようなこともありましょうし、あるいはまた、それらに接続をしておる土地もその区域に入るとしても、三分の二以上の施行土地の同意が得られないといったような場合もあるでありましょうし、したがって、そういう場合には、いままでの質疑で答弁のありました、いわゆる土地改良法によって第五条の農用地汚染対策事業を行なうということが不可能になってくるではないかというような感じがするのでありますが、その点に対してはどういうお考えでございましょうか。
  290. 岩本道夫

    岩本政府委員 この問題は、先ほどもほかの委員からお尋ねがございましてお答えしたところでございますが、私ども農用地汚染はかなり問題になっておりまして、汚染範囲も広がっているのじゃないかという想定のもとに、また、事業性格なり、それから費用事業者に負担させる場合の費用の徴収なり納付なりの問題がありますので、県営事業として仕組むのが一番妥当であろうという考え方をしているわけであります。県営事業として土地改良事業をやる場合には、御存じのとおり、八十五条の手続で、十五人以上の申請がないとできないわけでございますが、御質問の、少人数の被害者があって面積も非常に少ないという場合は、先ほどの御答弁でも、今後検討させていただきたいということを申し上げたわけですが、その具体的な内容といたしましては、土地改良法によらない、全員同意で土地改良をやるということも考え得ますし、また、特にかんがい排水事業であれば、非申請の事業考え得るわけでございまして、また、その他融資等による事業考えられますので、そういう小規模の被害の場合には、どういう方法をとるのが当事者にとって一番有利であるかということを勘案をしつつ今後十分検討してまいりたいと思います。
  291. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 御答弁によりますと、必ずしも土地改良法のしゃくし定木の適用ということではなくて、いろいろ別の方法で事業の実施を考えてまいる、こういう答弁であります。いずれにいたしましても、被害を受けているのは農民でありますから、したがって、農民の犠牲にならないような方法で汚染対策事業の実施がぜひできますように、これは強く要望いたしておきたいと存じます。  それから、第八条の特別対策地域ですか、特別地区でございますね、この特別地区指定をされました農地のうちの水田の問題であります。この特別地区指定をされた農地に対しましては、「当該農用地において作付けをすることが適当でない農作物又は当該農用地に生育する農作物以外の植物で家畜の飼料の用に供することが適当でないものの範囲を定めて、」その地区指定する、こういうことになっておるわけであります。したがって、この水田に対しては水稲の作付ができない、こういうことになるわけであります。  そこで、私は、そういう特別地区指定をされました水田は、これは今後の米の生産制限と申しますか——米の生産制限が来年度どういうふうになるかわかりませんけれども、こういう地域は米の作付制限の方針を適用して、そして休耕地というような扱いをして休耕補償金の支給等ができないか。そういうことにするならば、一石二鳥の効果をあげることができるのではないか、こういうふうに考えますが、その点はいかがでございますか。
  292. 中野和仁

    中野政府委員 お話のように、米をつくりますと、これは食品衛生法で売れませんので、当然そこは米以外のものをつくる、あるいは休むということになるかと思います。その場合に、ことしでありますれば、平均三万五千円の休耕なり転作奨励金を出したわけでございますが、具体的な例で申し上げますと、群馬なり富山なりでのことしの実情を申し上げますと、会社側がそこを補償して休耕させております。三万五千円よりもはるかに高い、それの倍以上の補償金を出しておりますので、原因者がはっきりしておる場合は、これはおそらく会社側の補償で解決がつくというふうに思います。原因者が全然わからぬ場合あるいはその農家の希望によりましては生産調整の対象にしてもいいのかというふうに思います。
  293. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 公害原因者のわかっている土地は、会社でそれ以上の補償をしておる、原因者が明確でないときについては、希望によってはそれを該当してもよろしい、こういう御答弁でございますね。それならば了承いたしました。  それからもう一つお伺いしておきたいのは、この該当の土地の所有者が希望するならば、国の方針として、作付制限の土地の国の買い入れという方法はとられますか、とられませんか。
  294. 中野和仁

    中野政府委員 今度の対策事業計画によりまして土地利用の方針をいろいろきめます。その時に、非農地に転用する場合、これを会社側が買う場合もありましょうし、あるいは公共団体がそこを非農地としていろいろ活用するということで買う場合がございましょう。ただ、国のほうで、いま特別の措置として買うという法制はございません。しいて申し上げれば、農地法での国が買うという問題がございますけれども、これは汚染土壌でありますので、自作農創設は使えませんので、その面ではなかなか困難だと思います。
  295. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 第七条の問題でありますが、この第七条の定めによりますと、水質汚濁防止法、大気汚染防止法等の基準よりもさらに都道府県知事がそれを規制する排出基準を定めて、この「当該排水基準若しくは排出基準を変更するために必要な措置をとるものとする。」こういう定めになっておるわけでありますが、これは、この水質汚濁防止法なりあるいは大気汚染防止法なりでは、その法律による排出の基準ではとうてい土壌汚染防止することができない、そういう状態のときにおいて都道府県知事が一そうそれよりもきびしい排出基準を定めることができるのだ、こういうふうに解釈ができるわけでありますが、この排出基準を新たに設定をする、あるいは変更をするというのでありますから、したがってこの「変更するために必要な措置をとる」ということではなくて、変更することができるとかいうふうにはっきりきめることが必要ではなかったかと思うのですが、「必要な措置をとる」というその措置は、どういう措置なんでしょう。
  296. 中野和仁

    中野政府委員 大気汚染防止法でも水質汚濁防止法でも同様でございますが、知事がよりきびしい上のせの基準をつくります場合は、条例で定めることができるということになっております。土壌汚染防止法では都道府県知事が「必要な措置をとるものとする。」ということになっておりますのは、知事が条例を直すように提案をするというふうに御理解いただければ、両方つなげて読んでいただけると思います。
  297. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 もう一点だけ伺いまして私の質問を終わります。というのは第十五条ですね。これは、「農林大臣又は都道府県知事は、農用地土壌特定有害物質による汚染の状況を調査測定するため」に、「その必要の限度において、」「農用地に立ち入り、」あるいは土壌若しくは農作物等」について、その「必要な最少量に限り土壌若しくは農作物等を無償で集取」することができる、こういう規定になっておるのでありますが、最小限度といってもその量は決して一定にきまっておるわけではないわけであります。したがって、最小限度があるいは非常に多量になるかもしれぬということも考えられるわけであります。それをそういう不特定な数量の土壌なりあるいは農作物なりを集取する際に、それを無償で集取するということは、私は、何と申しますか、財産権の侵害だと思うのです。その点につきましてはどういうお考えですか。
  298. 中野和仁

    中野政府委員 実際問題といたしましても、稲の一株か二株、土の一握りか二握りと申しますか、その程度以上のことはわれわれ予想をいたしておりません。これはこの対策計画を立てて、いわば農家の汚染された土壌を回復するためのいろいろな事業でございますので、最小限度の量に限って無償ということにいたしたわけでございまして、いま御指摘のよっに、そんなに大量に持っていくというようなことはないつもりでございます。
  299. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 しかし、農薬取締法の第十三条を見ると、農薬の検査のために必要な農薬を製造する業者から集取した場合には、「時価によってその対価を支払わなければならない。」という定めになっているのですね。農薬メーカーは、大資本家が大量な生産をやっておる。どうも政府の態度は、大資本家、大企業家には検査に必要なものを収集する場合にも時価によって対価を支払う。そうして力の弱い農民からは、おまえのためにやっているのだからただで持っていくのだという、こういう態度は改むべきだと思うのであります。大資本家に対しても、弱い農民に対しても同じ態度で臨むのが政府の公平な政治ではないかと私は思うのであります。そういう観点からこれは改める考えはありませんか。やっぱり時価によってその対価を支払うということに改めるのが筋ではないかと思うのですが、その点はどうですか。
  300. 中野和仁

    中野政府委員 農薬の場合は、これは流通をいたしまして、かなり値段が明確になっております。それから農薬のほうの法律では最小限度という限定もしておりません。したがって、非常に大きな場合もあり得るということで、時価の対価を支払うということになっておりますが、先ほどから申しておりますように、これは土一握りということになると、なかなか対価というわけにもまいりませんので、やはりこの事業を円滑にやるための最小限度の担保といたしまして、農家からは土の一握り、稲の一株を無償でいただくということを明確にして、あとのトラブルを避けるようにしたわけでございます。
  301. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 私はそういう考えは間違っておると思うんだな。たとえ少なくとも時価による対価を支払うということが当然政府の立場でなければならぬと思うのであります。改める意思がなかれば、これはやむを得ませんけれども、いずれにしても、そういう政府の態度は私は納得がいかないわけであります。  以上、時間が超過をしましたから、これで私の質問を終わります。      ————◇—————
  302. 草野一郎平

    草野委員長 農薬取締法の一部を改正する法体案を議題といたします。  本案につきましては、他に質疑の申し出もありませんので、これにて質疑は終局いたしました。     —————————————
  303. 草野一郎平

    草野委員長 この際、本案に対し芳賀貢君外三名から自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党共同提案にかかる修正案が提出されております。
  304. 草野一郎平

    草野委員長 提出者より趣旨の説明を求めます。芳賀貢君。
  305. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党を代表して、ただいま提案されました農薬取締法の一部を改正する法律案の修正案につきまして、簡単にその趣旨を御説明申し上げます。  修正の第一点は、登録農薬の販売が禁止された場合、当該農薬の回収規定を設けたことであります。すなわち、販売禁止措置がとられた農薬が回収されることなく、農家等農薬使用者のもとにそのまま放置されることは、これら危険な農薬が販売禁止後もなお使用されるおそれがあり、これが改正案の趣旨とする農薬安全使用確保の徹底を欠くといった事態を生ぜさせることは十分考えられるところであります。  このため修正案は、かかる事態の発生を防止するため、「製造業者若しくは輸入業者又は販売業者は、」販売禁止にかかる農薬につきこれを「防除業者その他の農薬使用者から回収するように努める」旨の規定を設けたことであります。  修正の第二点は、指定農薬の使用にあたっての指導体制を定めたことであります。  指定農薬は、その残留毒性等により人畜等に被害を生ぜさせるおそれがある農薬であり、これが使用にあたっては農林大臣の定める使用基準の厳守、または都道府県知事の許可を必要とする等、きびしい使用規制が行なわれ、これに違反した場合は罰則の規定が設けられているのであります。このためこれら指定農薬の使用にあたっては、十分なる農薬使用の知識を持った者の指導のもとにこれを行なわせ、その使用基準厳守の徹底をはかる必要があるのでありまして、修正案はかかる点にかんがみ、指定農薬の使用に際しては、農業改良普及員または病害虫防除員またはこれに準ずるものとして都道府県知事指定する者の指導を受けるようつとめる旨の規定を設けたものであります。  農業改良普及員、病害虫防除員等に対する農薬安全使用のための研修の強化等の措置と相まって、本修正により農薬の安全かつ適正な使用が期待されるのであります。  以上が修正の趣旨であります。  何とぞ全員の御賛同を賜わりますようお願い申し上げ、提案の説明を終わります。
  306. 草野一郎平

    草野委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  307. 草野一郎平

    草野委員長 本修正案について、別に御発言もありませんので、引き続き原案及び修正案を討論に付するのでありますが、討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、芳賀貢君外三名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  308. 草野一郎平

    草野委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。(拍手)  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  309. 草野一郎平

    草野委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。(拍手)     —————————————
  310. 草野一郎平

    草野委員長 この際、本案に対し、山崎平八郎君外三名から、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党共同提案にかかる、本案に附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。山崎平八郎君。
  311. 山崎平八郎

    ○山崎委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党及ぶ民社党の四党を代表して、ただいま修正議決されました農薬取締法の一部を改正する法律案に対し、附帯決議を付すべしとの動議を提出いたします。  まず案文を朗読いたします。    農薬取締法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法改正の目的が人の健康を害する農薬公害防止策を講じて農業生産の安定と国民の健康の保護および生活環境の保全に資するためのものであることにかんがみ、これが運用にあたっては、左の諸事項の実現に努め、農業者の生産意欲の高揚に留意すべきである。       記  一、低毒性農薬について、その開発および実用化促進のため必要な措置を講ずること。  二、農薬に関する試験研究および検査体制の整備充実に努めるとともに、残留農薬研究所に対しては、国の試験研究検査機関との連けいを密にし、所要の助成措置を講ずること。  三、共同防除の推進、指導の強化その他防除体制の整備確立を図るとともに、農薬使用者の健康及び安全確保のため特段の指導を行なうこと。  四、農作物についての農薬残留許容量の設定と安全使用基準の策定を早急にすすめるとともに、残留許容量をこえる農作物が出荷されることのないよう万全の指導を図ること。  五、販売禁止等を受ける以前の農薬の使用により汚染された農作物が廃棄され、農業経営に相当な打撃を与えることとなるときは、経営安定のため必要な措置を講ずること。  六、森林に対する薬剤の撒布については、とくに環境汚染等副次的悪影響の防止に留意すること。   右決議する。  これら附帯決議の内容につきましては、委員各位の熱心なる質疑を通して十分御承知のところと思いますので、説明は省略さしていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜わりますようお願い申し上げます。
  312. 草野一郎平

    草野委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  本動議に対し、別に御発言もありませんので、直ちに採決いたします。  おはかりいたします。山崎平八郎君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  313. 草野一郎平

    草野委員長 起立総員。よって、本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議について政府の所信を求めます。倉石農林大臣
  314. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして善処してまいりたいと存じます。
  315. 草野一郎平

    草野委員長 なお、ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  316. 草野一郎平

    草野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  317. 草野一郎平

    草野委員長 農用地土壌汚染防止等に関する法律案について質疑を続行いたします。津川武一君。
  318. 津川武一

    ○津川委員 日本共産党を代表して質問いたします。  池田、佐藤と続いた自民党内閣の高度経済成長のもと、わが国は山河も海も空も公害によごされ、多数の死亡者や健康破壊者が出て、すべての国民にとって住みがたくなっています。  土壌についていえば、カドミウム汚染がこの臨時国会の最中にも新聞をにぎわし、カドミウムで田や畑をよごされ、そこから生産される米や野菜をよごされた農民は、よごされ損になり、政府が汚染を押え、汚染された田や畑をもとに戻すことを汚染源に要求し、よごされた米や野菜の補償を求めていますが、今回提出されたこの法案によっては、問題は解決されそうもありません。  また、たとえば足尾銅山の銅をけじめとする鉱山の排出物により田畑がよごされ、農作物が育たなくなった農民は、今日まで長い年月にわたって、被害の回復の保障を求めて戦ってきましたが、今回の法案によっては問題は一歩も前進しないと落胆しています。  日本土壌と湖沼が水銀剤でよごれてしまっていることは、世界的に有名になり、公害対策では先進国であるスウェーデンから水銀汚染の実情を調査報告してくれと、WHOを通じ、日本農村医学会にきていますが、水俣病につながるこの水銀汚染も、今回の法案によっては、いささかも改善されません。  日本土壌はカドミウム、銅、水銀ばかりでなく、鉛、砒素、亜鉛などに汚染され、そのために人体や農作物の生長を障害していることは、いろいろの面から具体的に明らかになっております。それが今回の法案では解決されません。と申しますのは、本法案公害源である企業にはあまり規制が加わらないからであります。もう一つには、守るべき土壌基準が明らかに決定されてないからであります。  そこで質問ですが、土壌に環境基準を定めるべきと思うのです。特定有害物質のそれぞれに個別に、人の健康に有害な農作物が生産され、または農作物の生育が阻害されることを十分阻止できるように、土壌の含有量を定めることであります。そうしないからカドミウムによる米の汚染が一PPM以上になるのを汚染の許容量とするという対策に出たのです。これでは農用土壌がカドミウムに汚染されても、カドミウムに汚染されがたい作物をつくるとか森林にすればいいことになり、土壌汚染防止が二義的になるおそれがございます。そこで、これ以上土壌をよごしてはいけないという基準、すなわち土壌の環境基準はまずカドミウムと銅、次いで亜鉛についてやるべきだし、やれると思うのであります。農林省は銅と亜鉛については長い経験もたくさんの資料も持っておるはずであります。したがって私は、これをまずやることを年次計画としてきめて、そのあとに 素だとか水銀だとか鉛を年次計画にすべきだと思うのでございます。こういう土壌の環境基準をつくる腹がないか、これを年次計画にしないか。この点が一つ。  もう一つ、大蔵省が来ておれば、この土壌の環境基準をつくることに対して大蔵省もやはり計画を立ててあらかじめ財政の支度をしておかなければ私はこれは進まないと思うのであります。農林省と大蔵省の答弁を聞かしていただきます。
  319. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 銅によります生育障害のお話がございました。あなたのただいまの御演説の中にありました点はきょうお聞きのとおり、もう何べんかこちらの方針を申し上げております、人の健康に関係するカドミウムにつきましては指定を行ないますが、銅につきましては先ほど事務当局からもお答え申し上げましたように、早急にその被害の実態土壌汚染度等について調査を進めた上で、できる限り早期に特定有害物質として政令で指定して、対策地域指定対策計画の樹立等、この法律に基づく所要の手続を経た上で必要な対策事業を進めてまいる、こういう計画でございます。
  320. 松下康雄

    ○松下説明員 土壌汚染の改良復旧事業予算の問題につきましては、ただいま農林省はじめ関係当局におきまして関係個所についての調査、検討を行なっておる段階であると考えております。今後この法案の成立に伴いまして地域指定等が行なわれます場合には、調査の結果等に基づきまして事業の施行の予算要求となって現実に提出をされるものと思っておりますが、その際には一々検討をいたしまして、必要と認められます事業につきましては土地改良法の規定に基づく事業といたしまして、実施に遺憾ないように措置してまいる考えでございます。
  321. 津川武一

    ○津川委員 厚生省来ていますか。——自動車の排気ガスが大気汚染源として大問題になっています。鉛について非常に問題になるのですが、その鉛の環境基準、許容基準はできておりましょうか。できていないと思うのですが、できていないとすれば、計画や作業を進めておりましょうか。この点は建設省にも伺います。  自動車の排気ガスの鉛が呼吸器を通じて人体に影響するだけでなく、大気にあるときにはすぐ飛散する可能性もありますが、土壌になりますと長いことそこにたまりまして、沈積して非常に土壌汚染する危険が多い。現に自動車の往来のひんぱんな付近の土壌が鉛によごれておりますが、これに対する対策、自動車から鉛が出ないようにするにはどのくらいの年数かけて計画しておりますか、明らかにしていただきます。
  322. 草野一郎平

    草野委員長 運輸省ですか。——運輸省車両課長来ていますか。——飯塚車両課長
  323. 飯塚良政

    ○飯塚説明員 お答え申し上げます。  運輸省では、現在自動車の排気ガスから鉛が出るわけでございますが、それにつきましては、通産省と協議をいたしまして、ガソリンの無鉛化計画を昭和四十九年の四月までに達成するというふうなことが通産省の御計画でございまして、その計画に基づきまして鉛の入っていないガソリンを使う自動車の開発研究、それから現在使っております自動車から排出されます排気ガスの清浄装置の開発研究を現在逐次進めつつある状況でございます。
  324. 津川武一

    ○津川委員 運輸省にもう一つ土壌汚染、ガソリンの中の鉛に対する、これは何か調べてありますか。現状を御存じですか。
  325. 飯塚良政

    ○飯塚説明員 これは理論的にはガソリンの中には四アルキル鉛を加えておりますので、自動車の排気ガスからは鉛が出ることと考えられますけれども、現在それが土壌にどういうふむな状況で蓄積されているかというふうなデータはまだ入手しておりません。
  326. 津川武一

    ○津川委員 建設省に一つだけ注文しておきますが、農林省の一部で調べてありますから、これはすみやかに握って対策を講じていただきたいと思うのです。  その次に、ばい煙や吐き出される特定有害物質土壌汚染との因果関係ですが、これはやはり厳重に因果関係を律していかないと加害者がはっきりしてきませんし、被害者が救済されないのです。そこで土壌汚染基準にしないで米のカドミウムによる汚染基準にして法案をつくったり対策を進めているので、因果関係が不明になってしまうのです。私たちも福島県の磐梯や宮城県の細倉や秋田県のいろいろなところに行って実態を聞いてみましたが、米のカドミウムによる汚染土壌のカドミウムによる汚染は必ずしも並行しないで、その間にいろいろな因子が入ってくるので事がめんどうになってくるし、企業もそれを理由にして損害賠償の責任を逃げているのです。今回カドミウムによる米の汚染だけを法の対象としたので、正直なところ企業側はほっとしているそうであります。これをたてにして逃げていくことは火を見るよりも明らかなのであります。極言すれば、この法律で救われるのは被害者の農民でなく、むしろ企業なのではないか、こういう意見が出てまいります。そこで土壌の環境基準をきめることが問題になるわけであります。土壌の環境基準で事を律すれば因果関係ももっとはっきりしてまいります。そういうことが学問でもあるし、被害者を救う道でもあるのであります。したがってこの法律を運営するにあたって土壌の環境基準をきめること、その基準に従って事を運ぶということが決定的な要素でございますが、農林省の御見解を伺わせていただきます。
  327. 中野和仁

    中野政府委員 基本的な考え方は御指摘のとおりでございます。ただ、いまもお話がございましたように、カドミウムについて申し上げましても、米の中のカドミウムと、土壌の中のカドミウムとの相関関係と申しましょうか、これは地域によりましては大体の傾向は出ておるわけでございますが、なおその辺を明確に詰めた上でないと、なかなか環境基準としてはできないわけでございます。農林省といたしましては技術陣を動員いたしまして、その辺を明確にした上で、なるべく早く環境基準はつくるべきだと考えております。銅についても同様でございます。
  328. 津川武一

    ○津川委員 念を押して恐縮ですが、そうすると農林省自身も土壌の環境基準中心にしてやりたいということですね。そういうことですか。答えていただきます。
  329. 中野和仁

    中野政府委員 その点はこの法律にも明確にしておりますように、地域指定基準といたしましても、土壌に含まれる有害物質の種類、量から見てということを入れております。ただ、いま緊急にカドミウム対策をやらなければなりませんから、作物からも見てやるという考え方です。
  330. 津川武一

    ○津川委員 それから土壌調査、測定についてですが、これもだいぶ議論になりましたが、やはり問題にしなければならないと思います。十二条と十五条の規定があります。ここでも公害の発生源である企業工場に立ち入ることをこの法案は規定していないのです。水質汚濁防止法では通産省は工場に立ち入ることができます。厚生省も大気汚染防止法でそのようにしたいといっております。工場の立ち入り検査は大気汚染防止法や水質汚濁防止法の立場からでありますが、土壌汚染を防ぐことがこの法律の主なる目的ですから、農林大臣が立ち入り検査できないのはほんとうに根本を逸していると思うのであります。厚生省が入るのは大気です。通産省が入るのは水です。こちらは土壌です。したがって、水で入っていっても土壌で入っていくと断わられることになります。したがって、土壌を守るべき農林大臣が立ち入り検査できるということ、こうしなければいけないと思います。十五条で農民の農地には農林大臣が立ち入りできるが、発生源である事業場に農林大臣が立ち入りできないというのは非常に大きな問題をはらんでおりまして、この点どうするのか。間に合わなかったらこの次改正する、またいま方針があれば方針を聞かせていただきます。
  331. 中野和仁

    中野政府委員 これはたびたび申し上げておりますように、大気の法律なり水の法律によりまして、よりきびしい基準を定めるために知事が必要な措置をとるということを本法案では明確にしておるわけでございます。したがいまして、そういう土壌汚染と関連のある地域につきましては、当然知事はその観点から大気の法律なり水の法律によりまして立ち入り検査をやるわけでございますので、二重にやる必要はないということから、ここに書いてあるわけでございます。
  332. 津川武一

    ○津川委員 局長、それはおかしくありませんか。水質保全法では入れる、土壌汚染防止法では入れない、したがって、具体的に土壌汚染を問題にするときに、土壌汚染をどこまで許すかという基準がないから、こういうことになる。皆さんの作業が、カドミウム、それと米という形で、特定有害物質を作物でやるからこうなるのであって、土壌の環境基準というのを守るという立場からいけば方法も変わってくるし、当然やれるのじゃないかと思うのですが、この点どうでございますか。
  333. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまも申し上げましたように、水、大気ということにいたしましても、たとえば先ほど渡良瀬の話が出ましたけれども、現在でも渡良瀬につきましては、水の排出基準につきましては、土壌のことを考え基準をつくっております。その場合には、当然作業としては農林省が入っておりますし、そういうことでございますので、渡良瀬でありますれば群馬県知事が立ち入り調査をいたします際に、土壌のことを考えないで、水のことだけで入るということはございませんので、その点は私たちは安心しております。ただ、法の運用を今後やってまいりまして、いろいろ問題がありますれば、その際には検討しなければならないと思っております。
  334. 津川武一

    ○津川委員 まだ少しその点がひっかかりますが、次に、公害は発生源で押える、公害で起きたいろいろなトラブルは、その発生源の人が片づける、これが当然な私たちの要求ですが、とすれば、土壌汚染防止法の立場からは、事業者自身が吐き出した煙や排水について調査し、観測し、その結果を発表して対策を立てるのが当然ではありませんか。土壌がどのくらいよごれているかということを企業が調べて、観測して発表する、そうでなければうそです。いまの状態だと水とばい煙だけやっていればよろしい、ここにも土壌の環境汚染という環境基準を設けないことが、こういう形であらわれたと思うのですが、企業はこの汚染に対する責任はありませんか。また、調査させて、観測させて発表させませんか。
  335. 中野和仁

    中野政府委員 水質汚濁防止法によりましても、排出をいたします場合、その結果を記録しておかなければならないというふうに水質のほうは規定されております。土壌の点につきましては、これは土壌に蓄積するという問題でございますので、われわれといたしましては予算のことを申し上げた際に、農林省としてはこの汚染の著しいところにつきましては、常時観測をするという予算もとって、われわれのほうの試験所の側からはやるわけでございます。あわせて企業がやる必要があれば、当然われわれとしてもやるように要請はしたいと思います。
  336. 津川武一

    ○津川委員 そこで、別の問題ですが、観測、監視、調査、そういうことでもう一つ問題がある。私たちはカドミウムの汚染地域にときどき行ってみましたが、先ほど公明党の方も言っていましたけれども企業は、おれには責任はないと言っている。それでは民間の技術者に入ってもらって、調査させろと要求してみますと、それも断わるのです。だから、私たちは公選制で公害委員をつくり、そこで立ち入りも検査も、結果の公表も対策もやれることを基本的に要求しているのですが、こうした被害者が起こす汚染防止の運動といいますか、動きといいますか、これは汚染防止する上に一番大きな力になると思うのですが、こういう運動に対して、農林省も喜んで応援すべきだと私は思うのですが、態度を聞かしていただきます。
  337. 中野和仁

    中野政府委員 そういうふうにおっしゃいましてもどういう運動かよくわかりませんので、何とも申し上げようもございませんけれども、その被害を受けておる農民はじめ、住民の意見を十分聞くというのは当然のことでございます。
  338. 津川武一

    ○津川委員 そこで、被害を受けた農民の被害補償ですが、先ほどからこれもたくさんの論議になっています。繰り返しませんが、法の十七条で、国はいろいろ指導援助をしなければならないというふうになっておりますが、土壌がカドミウムで汚染されますと、現実にその田の値段が下がってきております。こういう被害を援助していく、助けていく上について、この十七条はそういうことも意図しておるのでございますか。もし意図しているとすれば、具体的にどうするのか、もう少し明らかにしていただきたいと思うのです。厚生省関係では、いろいろな苦情処理所、困りごと相談所、出かせぎ者では出かせぎ相談所だとか、いろいろなことがあるのですが、そういったことまでこの第十七条は含んでいるのかどうか。十七条の実態をもう少し明らかにしていただきたい。
  339. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまお話しのように、カドミウムで汚染された農用地の値段が下がるという問題もあろうと思います。したがいまして、われわれとしましてはできるだけ早くそれをもとに戻して、正常な土壌にしたいということを考えておるわけでございますから、そういうことを基本にいたしまして、いろいろな国なり県なりは当然援助をすべきだというふうに思っております。それでは具体的にどうしろということになりますと、これは地域指定をいたしまして、そこの調査をした結果、どういうふうに農家のためにやってやればいいかということをよく見きわめた上で、対策をとっていかなければならないと思っております。
  340. 津川武一

    ○津川委員 被害を受けた土壌の、いまの話された土地改良事業、回復ですがね。今度は費用負担法で、企業に明らかに責任がある場合には企業も負担しなければならない 企業が異議を申し立てて民事裁判に持ち込んだときは三年も四年もかかることがあるわけであります。こういう苦情処理のために時間のかかっているときに、企業者の費用負担がきまらないので、土地改良事業が延ばされる心配がありませんか。そういう場合には国で責任を持ってお金を出して、あとで問題がきまったとき、国がかわってそいつを請求して受け取るという、そういうことをしないと二年も三年もよごれっぱなしに放置される心配があるということを農民が言っているのですが、土地改良関係のベテランか——その心配はありませんか。
  341. 中野和仁

    中野政府委員 その点、私御心配ないと思いますのは、民事上の損害賠償の問題は、最終的には裁判によるものでありますが、費用負担法のほうは、これは施行者が負担金額の額を決定しまして通知をいたしまして、そして払わない場合は強制徴収の規定まで置いておりますので、これは損害賠償とは別に、対策計画がきまり、費用負担計画がきまりますと、その段階でどんどんやれるわけでございます。
  342. 津川武一

    ○津川委員 厚生省来ておりますか。まだ来てませんか。あとで来ると言っておりましたが……。それではいいです。  それでは質問を最後に一つだけ。繰り返すようで、念を押すようですが、やはり土壌の環境基準を設けていく。そのためには特定有害物質をきめていく。大蔵省にその計画も話して予算も要求する。これはただやりますでは私はできないと思う。厚生省が今度食品の中に含まれる農薬の許容基準を四十八年までに、作物でいうと四十八種類、農薬でいうと十八種類——二十八種類ですか、それを四十六年にはこれをやる、四十七年にはこれをやる、四十八年にはこれをやると手はずをきめておる。そうすると私は実行できると思う。せっかくこの法案であるから、そうしないと有効なことにならないので、こういった年次計画を立てていく、そういう必要があると思うのですが、これは局長でけっこうです。
  343. 中野和仁

    中野政府委員 お話しのとおり、年次計画ということばでございますが、私たちとしましては、カドミウム問題というのはもうことしから調査をやっております。来年もことしの何倍かの予算要求をしております。そこでまずカドミウムについていろいろ地域指定の面から考えます。と同時に、銅、カドミウムを含めまして、環境基準につきましてどういうふうな設定をするかという予算も当然要求しておるわけでありますから、四十八年までかかるとかいうよりも、もっと早くできればやりたいということであります。
  344. 津川武一

    ○津川委員 終わります。
  345. 草野一郎平

    草野委員長 次回は明十日開会することとし、これにて散会いたします。    午後五時四十五分散会