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1970-12-09 第64回国会 衆議院 内閣委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十二月九日(水曜日)     午前十時十二分開議  出席委員    委員長 天野 公義君    理事 伊能繁次郎君 理事 佐藤 文生君    理事 坂村 吉正君 理事 塩谷 一夫君    理事 大出  俊君 理事 伊藤惣助丸君    理事 和田 耕作君       阿部 文男君    伊藤宗一郎君       加藤 陽三君    笠岡  喬君       辻  寛一君    中山 利生君       堀田 政孝君    上原 康助君       佐藤 観樹君    楢崎弥之助君       横路 孝弘君    鬼木 勝利君       山田 太郎君    受田 新吉君       東中 光雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 中曽根康弘君  出席政府委員         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務総局         給与局長    尾崎 朝夷君         総理府人事局長 栗山 廉平君         警察庁警備局長 山口 廣司君         防衛庁長官官房         長       宍戸 基男君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      江藤 淳雄君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁参事官  高瀬 忠雄君         防衛施設庁長官 島田  豊君         大蔵政務次官  中川 一郎君         運輸省航空局長 内村 信行君  委員外出席者         防衛庁衛生局長 浜田  彪君         防衛庁経理局長 田代 一正君         防衛施設庁施設         部長      薄田  浩君         公安調査庁次長 内田 達夫君         自治大臣官房参         事官     佐々木喜久治君         内閣委員会調査         室長      茨木 純一君     ――――――――――――― 委員異動 十二月八日  辞任         補欠選任   横路 孝弘君     三宅 正一君 同日  辞任         補欠選任   三宅 正一君     横路 孝弘君 同月九日  辞任         補欠選任   木原  実君     楢崎弥之助君 同日  辞任         補欠選任   楢崎弥之助君     木原  実君     ――――――――――――― 十二月八日  旧軍人に対する恩給改善等に関する陳情書外七  件  (第一号)  旧軍人の一時恩給改定に関する陳情書外五件  (第二号)  靖国神社国家管理反対に関する陳情書  (第三号)  靖国神社国家護持等に関する陳情書外一件  (第四号)  靖国神社法早期制定等に関する陳情書  (第五号)  職務関連罹傷病の旧軍人軍属傷病恩給支給に  関する陳情書  (第六号)  消防団長等に対する生存者叙勲対象年齢引下げ  に関する陳情書  (第七号)  恩給等受給者処遇改善に関する陳情書外二件  (第八号)  公務員給与引上げ等に関する陳情書  (第九号)  公務員給与改定に伴う高齢者昇給制限中止  に関する陳情書  (第一〇号)  大阪府天王深山地区ナイキ基地設置反対に関  する陳情書(第一一号)  海道音別町に自衛隊誘致に関する陳情書  (第一二  号)  首都圏整備委員会の運営に関する陳情書  (第一三号)  青少年健全育成に関する陳情書  (第一四号)  青少年育成センターに対する補助規制除外に関  する陳情書  (第一五号)  同和対策事業特別措置法具体化促進に関する  陳情書外十二件  (第一六号)  文部省に産業技術教育局設置に関する陳情書  (第一七号)  基地対策に関する陳情書  (第一八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  一般職職員給与に関する法律等の一部を改  正する法律案内閣提出第六号)  特別職職員給与に関する法律等の一部を改  正する法律案内閣提出第七号)  防衛庁職員給与法等の一部を改正する法律案  (内閣提出第八号)      ――――◇―――――
  2. 天野公義

    天野委員長 これより会議を開きます。  一般職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律案特別職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法等の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。  一般職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律案内閣提出)  特別職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律案内閣提出)  防衛庁職員給与法等の一部を改正する法律案内閣提出)   〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 天野公義

    天野委員長 順次、趣旨説明を求めます。山中総理府総務長官
  4. 山中貞則

    山中国務大臣 ただいま議題となりました一般職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概略を御説明申し上げます。  本年八月十四日、一般職国家公務員給与について、俸給表を全面的に改定し、調整手当改正すること等を内容とする人事院勧告がなされたのでありますが、政府としては、その内容を検討した結果、人事院勧告どおり、五月一日からこれを実施することが適当であると認めましたので、この際、一般職職員給与に関する法律等について所要改正を行なうとするものであります。  まず、一般職職員給与に関する法律の一部を次のとおり改めることにいたしました。  第一に、全俸給表俸給月額を引き上げることにいたしました。この結果、俸給表全体の改善率平均一〇・七〇%になることになります。  第二に、初任給調整手当について、医療職俸給表(一)の適用を受ける職員に対する支給月額限度を三万二千五百円から四万五千円に引き上げるとともに、その最長支給期間を十五年から二十年に延長することにいたしました。  第三に、調整手当について、現行の甲地のうち、人事院規則で定める地域及び官署における支給割合を百分の六から百分の八に引き上げるとともに、これらの地域及び官署以外の地に在勤する医療職俸給表(一)の適用を受ける職員等については、当分の間、その在勤する地域等の区分にかかわらず、一律に百分の八の調整手当支給することにいたしました。  また、転勤等により調整手当支給割合が減少する場合または調整手当支給されなくなる場合の異動保障期間を二年から三年に延長することにしております。  第四に、今回、新たに住居手当を設けることにし、公務員宿舎入居者等を除き、みずから居住するため住宅等を借り受け、月額三千円をこえる家賃を支払っている職員に対し、その家賃の額と三千円との差額の二分の一の額を、三千円を限度として支給することにいたしました。なお、この住居手当は、休職者についても所定の割合の額を支給することにしておりますが、指定職俸給表適用を受ける職員には、支給しないことにしております。  第五に、通勤手当について、自転車利用者に対する支給月額を七百円から九百円に引き上げるとともに、自転車等利用者のうち、人事院規則で定める官署勤務する職員通勤が不便であると認められる者に対する支給月額を千四百円とすることにいたしました。  第六に、隔遠地手当を改め、その名称を特地勤務手当とし、離島その他の生活の著しく不便な地に所在する官署として人事院が定める特地官署勤務する職員に対して、この手当支給することにし、その支給額俸給及び扶養手当月額合計額の百分の二十五をこえない範囲内で人事院規則で定める額とすることにいたしました。また、職員異動し、その異動に伴って住居を移転した場合において、当該異動後の官署特地官署または人事院が指定するこれらに準ずる官署に該当するときは、これらの職員に対し、異動後三年以内の期間、特別な場合にあっては、さらに三年以内の期間特地勤務手当に準ずる手当支給することにし、その支給額は、俸給及び扶養手当合計額の百分の四をこえない範囲内の額とすることにいたしました。  第七に、宿日直手当について、勤務一回の手当の額を五百十円から六百二十円(その勤務が主として管理監督等業務を行なうものにあっては千円から千二百円)に引き上げるとともに、これらの勤務が土曜日等の退庁時から引き続いて行なわれる場合には七百六十五円から九百三十円(その勤務が主として管理監督等業務を行なうものにあっては千五百円から千八百円)に引き上げることにし、また、常直的な宿日直勤務に対する手当についても、月額三千六百円から四千四百円に引き上げることにいたしました。  第八に、期末勤勉手当について、六月に支給する支給額をそれぞれ〇・一月分ずつ増額することにいたしました。  第九に、常勤職員俸給月額改定に伴って、委員、顧問、参与等非常勤職員に対する手当支給限度額日額七千二百円から八千三百円に引き上げることにいたしました。  さらに、五十六歳以上の年齢人事院規則で定めるものをこ、える職員昇給について、当該年齢をこ、えることになった日以後における昇給期間を十八月または二十四月を下らない期間とすることにして昇給制度合理化をはかることにいたしました。  以上のほか、昭和三十二年法律第百五十四号一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律及び昭和四十二年法律第百四十一号一般職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律附則の一部を改めて、暫定手当制度を廃止するとともに、これに伴う所要改正を行なうことにしております。  なお、本法に附則を設けて、この法律施行期日適用日及び俸給月額の切りかえ等所要措置について規定するとともに、今回の住居手当の新設、隔遠地手当改正及び暫定手当制度の廃止に伴う関係法令改正等について規定することにいたしました。  以上この法律案提案理由及びその概要について御説明申し上げました。  次に、特別職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概略を御説明申し上げます。  この法律案は、ただいま御説明申し上げました一般職国家公務員給与改定に準じて、特別職職員給与について所要改正を行なおうとするものであります。  すなわち、第一に、特別職職員俸給月額を引き上げることにいたしました。具体的に御説明しますと、内閣総理大臣国務大臣等は据え置き、内閣法制局長官等は四十三万円とし、その他の政務次官以下については一般職国家公務員指定職俸給表改定に準じ四十万円から三十四万円の範囲内で改定することにいたしました。次に、大使及び公使については、国務大臣と同額の俸給を受ける大使は据え置き、大使号俸は四十三万円とし、大使及び公使号俸以下については一般職国家公務員指定職俸給表改定に準じ三十九万円から二十九万円の範囲内で改定することにし、秘書官については、一般職国家公務員給与改定に準じて改定することにいたしました。  第二に、常勤委員に対し日額手当支給する場合の支給限度額日額一万六千四百円に改めることにし、また、非常勤委員に対する手当支給限度額日額八千三百円に改めることにいたしました。  第三に、一般職国家公務員住居手当支給されることになるため、秘書官に対しても住居手当支給されるよう改めることにいたしました。  第四に、昭和三十二年法律第百五十三号特別職職員給与に関する法律の一部を改正する法律及び昭和四十二年法律第百四十二号特別職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律附則の一部を改めて、暫定手当制度を廃止するための所要改正を行なうとともに、これに伴う規定整備を行なうことにいたしました。  最後に、日本万国博覧会政府代表及び沖繩復帰のための準備委員会への日本国政府代表俸給月額についても大使号俸に準じ三十九万円に改定することにいたしました。  以上、この法律案提案理由及びその概要について御説明申し上げました。  何とぞ両法案について慎重御審議の上すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  5. 天野公義

  6. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ただいま議題となりました防衛庁職員給与法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案は、このたび提出されました一般職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律案の例に準じて、防衛庁職員給与改定を行なうものであります。  すなわち、第一条においては、参事官等及び自衛官俸給並びに防衛大学校学生学生手当等一般職職員給与改定の例に準じて改定し、あわせて営外手当についても従前の例にならい改定するほか、一般職におけると同様、新たに住居手当を設け、さらに、隔遠地手当特地勤務手当に改めることとしております。  なお、事務官等俸給並びに初任給調整手当調整手当通勤手当宿日直手当期末手当及び勤勉手当並びに一定年齢をこえる職員昇給制度合理化につきましては、一般職職員給与に関する法律規定を準用しておりますので、同法の改正によって同様の改定が行なわれることとなります。  第二条においては、暫定手当整理に伴い、同手当支給に関する規定等を削除することとしております。  第三条においては、暫定手当整理に伴い、同手当俸給繰り入れ等に関する規定を削除することとしております。  この法律案規定は、公布の日から施行し、昭和四十五年五月一日から適用することとしております。このほか附則において、俸給の切りかえに関する事項、調整手当特地勤務手当に関する経過措置等につきまして、それぞれ一般職におけるところに準じて定めております。  何とぞ、御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  7. 天野公義

    天野委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  8. 天野公義

    天野委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  9. 大出俊

    大出委員 総務長官の時間があるようでございますから、なるべくよけいなことを言わないで、単刀直入に承っていきたいのでございます。  ところで、新しい問題ですが、長官、五十六歳という規定法律に一つありまして、人事院規則できめた場合には、その規則の定めるところによって十八カ月または二十四カ月を下らない期間、こういうことで、つまり高齢者に対する昇給延伸という問題が出ておるわけです。私実は時間との戦争ですから満足なわけにはまいりませんでしたが、調べてみまして、生活実態という面から見て、どうしてもこれは簡単に十八カ月、二十四カ月延伸というわけにはまいらぬという具体的な例証が幾つかある。そういう意味で、法案提出者である総務長官立場で、これは人事院ではございませんから給与を専門的におやりになってはいませんけれども、この辺のところを多少中身をお調べになったり、結果的にどういうことになるかということを御存じで御提案なさっているのかどうか、そこらをまず承りたいのです。その結果いかんでは専門家である人事院皆さん方やりとりをして、もう一ぺん長官にこの高齢者問題を私の質問の結果として御再考いただきたい、こういうふうに思っているのですが、そういう前提で、ひとつどうお考えになっているかをまず承っておきたいと思います。
  10. 山中貞則

    山中国務大臣 これはたてまえ論と本質論と二つあるでしょうね。たてまえ論からいけば、私たち人事院勧告というものを完全に実施したいという気持ちはあって、財政上の制約等でいままで私が率直に申しわけがなかったと申しましたように、なかなか踏み切れなかったものを今回完全実施をしたということでありますから、人事院勧告どおりというたてまえが一つあります。しかし本質議論になって、その中身について、たとえば問題となっている一定年齢以上の高齢者昇給延伸と俗に言われている取り扱いについてどのように思うか、実態についてはどうか。もちろん私ども人事局を持っておりますし、国家公務員全体についての責任官庁であるわけですから、担当大臣としてこの事態について知らないわけではありません。しかし、これをかりに議論を詰めていって、であるからそのたてまえに戻って、私たちの手元で一部あなた方の主張だけ入れればいいほうに改正をする——私たちの言い分とすれば、率直に申し上げて、住居手当等の踏み切りが早かったのではないか。ということは、その対象調べ方が、人事院の御調査ですから私どもはそのとおり従いますが、住居手当だけについては、一般俸給ベースアップ勧告前提としての調べ対象と違うのですね。たとえば転勤等が定期的にある職域であって、そして社宅等もある民間の企業というようなとらえ方をして、それでやっと六〇%になる。しかし全体のベースアップ前提となる調査でいけば五〇%にならないと思われる。というようなことを考えますと、私たち住居手当は、いましばらく人事院の中で調査あり方等も含めて、国家公務員に踏み切るについては、三千円をこえる額の半分で三千円限度までということでかりに限度があるにしても、その創設ということはことしゃるべきであったのかなかったのか、これもまた政府側としては、私だけではなくて大蔵等異論はなきにしもあらずです。しかしそれらのことは、やはり一切たてまえ論のもとに吸収されるべきものであろう。だから問題があれば率直に議論し合う。その議論人事院が常時続行しておる次年度への、次々と勧告する内容に逐次盛り込まれていっておりますですね。だからここで論争しておることは不毛の論争になっていないと私は思うのです。そういう意味での議論ならば、私も昇給延伸については問題も存在することを認めます。しかし人事院としては、それを思い切って目をつぶったのでしょう。国家公務員擁護者立場として独立の権能を与えられておる立場からの勧告でありますから、相当な決意をされたと思うのですが、その決意というものの背景等を私たち一般民間状態等から見て、やはり人事院もここだけは、民間には実態が合っても、これを実施すれば公務員には若干マイナスになるからと目をつぶるという作為的な作業が良心的にできかねたのではないかというふうに考えております。したがって、たてまえ論の立場で私としては御意見は承って異論があるところではございませんが、実施するについては、いまのところそういうことを採用する立場にないというたてすえを貫きたいと思うのです。
  11. 大出俊

    大出委員 歴代総務長官でございますと、まあ答えるのは人事院が答えるのだからということで、あまりどうも中身を御検討いただいていないですね。決して歴代総務長官の悪口を言うわけではないのだけれども、残念ながらいつもそういう気がしながら足かけ八年私は給与をやってきたのです。いまの御答弁を聞いていますと、ちゃんと押えるところを押えておられるようでございますから、たいへんありがたいのでございますが、それだけに実はおわかりを願えるのではないかという気がするので、人事院に承ってからもう一ぺんお答えいただきたいのです。  たてまえ論として、人事院改正案というのが出たたびに、私は人事院擁護論者ですから、そういう立場でずいぶん長い間やってまいりましたから、たてまえは私も百も承知なんです。ただし、現にこういうとんでもない結果になるということがあるとすれば、公務員の側に立って御判断をいただく人事院ですから、これはやはり改めるべきものは率直に改めて悪いことはない、こう私は思っているのです。  もう一つここで長官に承っておきたいのは、高齢者昇給延伸等をやるんだけれども冷酷むざんなことはしない、こういうふうに本会議人事院総裁がお答えになっておられる。この冷酷むざんなことはしないということについては長官も聞いておられたと思うのですが、法案提出者という立場で、同様にやはり冷酷むざんなことはすべきでない、こうお考えいただきたいと思うのですが、いかがでございますか。
  12. 山中貞則

    山中国務大臣 人の発言を批判はいたしませんが、冷酷むざんというのは少しオーバーだと思って私は聞いておりました。これは佐藤総裁のふだんの人柄で、実に気楽にものを言っておられる、これは実はいいことだと思うのです。しかし率直な意見も言われるから、その意味から冷酷むざんという表現を使われたと思うのですけれども江戸引き回しの上打ち首という、そういう意味冷酷むざんではないんで取り扱いが若干冷たいことを高齢者にするのではないか。高齢者というのは、若いときから国家公務員として国民のために働く職場に従事して、あなた方の立場からいえば、いわゆる政治活動等の公的なことも一応は禁止されているかわりに、こういう人事院というもののそでにすがっているんだ、そういう気持ちがあろう。そういうことから考えれば、やはり人事院が持ち出すことについては相当な決意がありましたでしょうから、そういう自分たちの内部の苦悩というものが、決断するにあたって、自分たち冷酷むざんではないんだという意味の、自分自身に対するおことばと考えて私は聞いておりました。
  13. 大出俊

    大出委員 なかなか名答弁ですな。  私は実はオーバーに冷酷むざんとおっしゃっていただいて助かったと思いました。ここでやりとりをかつてからやってきて、本会議でしらばくれて、という言い方ではないけれども、あらためて聞いてみた。そうしたらあらためて、冷酷むざんなことはしない、こういうふうにおっしゃった。これはたいへんありがたい話で、そこまではっきり言っていただければやりようがある、こういう気持ちに実はなったので質問する気になったのですが、総裁のいつものくせで、法律のミステークとか、「法律の悪魔」という本にお書きになって、ずいぶんずけずけとはっきりものをおっしゃる性格だと思っておりまして、気持ちがいいくらいなんですが、そこにひとつ根拠を置いて、それをたよりにして私は承りたいのです。  この高齢者の問題で、人事院皆さんに私のほうから資料を出していただきたいといってお願いをして出していただいたものがございます。これは皆さんに渡っているかどうかわかりませんけれども、本会議で申しましたが、どうも人事院というのは調査をおやりになる、結果を御発表になるけれども調査諸表なんというものは見せていただいたことはない。資料がくっついてるけれども、わかったようなわからぬような資料で、結局わからぬような資料をつくっているんじゃないかという気がするくらいの資料がついている。まことに不親切きわまるという以上に、ふざけてるというような気持ちがするような資料なんです。それで、私は出してくれと言った。お出しになったそれを見てみると、なぜこれは早く出さないのかという気がするのです。たいへん低い賃金で、しかも年齢まさに五十八歳になっちゃってる方々行口でいうならたいへん安い賃金で、しかも六十になってしまっている方々、だからこの法律が通ってしまえばすぐ昇給延伸されてしまう方々がたくさんいるのですね。下位等級にたくさんいる、こういうわけですね。  そこでひとつ承っておきたいのは、人事院調査の方法なんですけれども、個人を例にとった場合、何等級の何号という号俸ですね、たとえば五等級の四号というものをながめた場合に、五万五千七百円という、これが民間より低いのか高いのかという点がどこにも書いてないわけですね。つまり五十六歳以上の高齢者民間と比較をした場合に、平均をとって出ているけれども、個々の号俸何等級の何号というものの個々人についてはお調べになっていないのではないか。つまり全部が民間より高いはずはない。何等級の何号という方については民間より低い場合も当然あり得る。低い方もあって高い方もあって、平均して総体的に官民の較差という形で、民間よりも公務員のほうが五十六歳はこれこれ高い、こういうふうになっているはずだ。だから調査方法について、低い人、高い人があったはずですが、まず民間に比較して五十六歳以上で個々人にとってみれば低い人もあり、高い人もある、こう考えているのかどうか、そこのところは具体的なデータができているのかどうか、まずそこを承っておきたい。
  14. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 民間給与調査をいたしまして官民の比較をいたしておるのでございますけれども、その比較の方法は、毎回申し上げておりますように、俸給表別、等級別、学歴別、年齢別、それから地域別ということで比較をいたしておるわけでございます。したがいまして、号俸ごとにどうなっているかという面についての比較はしていないわけでございます。号俸というのは、民間と対応しておりませんので、どうしてもそういう関係じゃないわけでございます。号俸の中にいろいろな年齢の人がおるわけでございますけれども、そういう関係で、号俸といたしましては、大体まん中、中位号俸から前のほうは官民較差があり、中位号俸からあとのほうは官民較差がだんだん少なくなっていくといったような傾向にございます。したがいまして、個人別の、つまり学歴別、年齢別、地域別には官民の比較をしておるのでありますけれども、つまり年齢において比較をしておるということでございますけれども、したがって、年齢の中にいろいろな号俸の人がおられますけれども、そういう点で申しますと、同じある年齢において民間のその給与より低い人がいるかどうかという点でございますけれども、その点のチェックはいたしておりません。それはそういう形の集計になっておらないので、いたしておりませんが、一般的な傾向としてそういうことであるということでございます。ただしチェックは、たとえば今度いま御提出いたしました資料に基づきましていろいろごらんいただきますと、非常に低い給与、たとえば行口の五等級の十三号俸というのがございますけれども、それは大体三万七千円くらいでございます。それはしかし、今回のいわゆる調整、経験年数によって約三号俸の調整をいたしておりますので、大体四万三百円、つまり二人世帯の標準生計費程度まで調整しておるといったようなことの配慮はいたしてございます。
  15. 大出俊

    大出委員 いまの御答弁ででも、個々にとらえた場合に民間より低い、こういう方がいるかいないかわからないということになるんですけれども、そんなことはないでしょう、官民較差を見ても、幾らでもありはしない、去年よりことしのほうが詰まっている、低い人がいるはずですよ、あなたはそこを全然調べていないのですか。
  16. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 民間と申しましても、たとえば五十八歳以上の民間のほうの該当者は調査人員が約四万人くらいおるわけでございます。したがいまして、民間と申しましても非常に散布いたしておりまして、高い低いが非常にございます。つまりその平均平均を比較してどうかという問題として現在とらえておるわけでございます。つまり一般的な大きな傾向としてとらえておりまして、それが資料として御提出申し上げたような形で、五十六歳以上は顕著に違うという形になっているわけでございます。したがって、民間との比較と申しましても、民間にもいろいろございますから、個々について比較をするというのはなかなか困難であるということだと思います。
  17. 大出俊

    大出委員 だからそこに問題の焦点があるわけですね。個々に比較ができない、困難である、また比較をしていない、こういうことになる。そうすると、今度逆に個々の側に立って考えると、とんでもない気の毒な人ができてしまう。この点はあなたはわからない。だから私は本会議でも、公務員生活実態というのが法律上あるのだから、少しはそれを調べたらどうだというものの言い方をしておるわけなんですがね。個々にはわからない、個々にはわからないままにやってしまう昇給延伸という措置ですから、改定をして上げるのじゃないのですから、延伸をするのですから、つまりダウンの措置なんです。そうすると、いまでも民間に比べてうんと低い、まさに冷酷むざんな等級号俸におる方がたくさんいる。平均をとったら公務員が高いのだからというので、平均よりはるかに下の方を昇給延伸してしまう。これが法律できめるのでなければいいですよ、不服審査請求したっていいのですから、そうなれば。そうでしょう。ところが法律できめてしまったら、幾らそれが不合理であり、だれが考えても不当であり、不服であっても、不服審査請求を認められるようなことであっても、法律できめてしまったら、不合理だからといって文句言ったって法律上認めようがないでしょう。そういう措置をやろうというわけです。  この問題は時間の関係もありますから、もう少し中に入ってものを言いますけれども、行政(一)表にしても行政日表にしても同じことがいえるのですけれども行口の例をここで取り上げてものを言いますと、行口で一番下位等級、五等級、この中で、五等級の十四号というところに一人六十歳の方がいる。五等級の十四号の方というのは改正号俸でいって三万八千円、お隣の五等級の十五号三万九千四百円、こういう金額になりませんか。間違いがあるといけませんからまず金額のほうをひとつ聞いておきたいのですが。
  18. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 御指摘のとおり三万八千円と三万九千四百円です。
  19. 大出俊

    大出委員 そうですね。行政日表という——私は冷酷むざんとは言わなかったけれども、非人間的な俸給表というものは否定したいということを本会議で申し上げた。こんな俸給表があっていいはずはないと申し上げた。何しろ四人世帯形成ができない。こういう俸給表があってはいけないということを言ったんですけれども、行政日表十四号の方は三万八千円、一名、六十歳。十五号の三万九千四百円、ここに二人いる。十九号四万三千円、ここは一名。二十号の方が四万三千九百円、ここに五人いる。  ところで、この中である一人の個人の例をとりますと、六十歳のお年寄りで、自分の子供さんがなくなってしまって、奥さんもなくなってしまって、現に一人でお孫さん四人を育てている。一体三万八千円だとか三万九千四百円というのが民間に比べて高いですか。これはあなたのほうの言うとおり、個々にはわからぬということで、平均とって延伸をしたら、三万九千四百円、六十歳のおじいさんはお孫さん四人を育てているのにたちどころに昇給延伸に入ってしまう。これを称して冷酷むざんといわなければ何が一体冷酷むざんなんです。あなたは実際お調べになりましたか、調べてないでしょう。私は御本人から手紙をいただいて調べておる。こんなこと私は容認できないですよ。答弁は要りませんが、私はわずか三人の世帯だけれどもお伺いして調べた。少し気の毒過ぎますよ。しかもこれは行政日表、いまの公務員給与の中で一番低いところですよ。しかも年齢まさに六十歳、悪戦苦闘して人生渡っている世の中に、平均をいかにとったからといって、そういうことは私はあり得ないと思っているのです。正直に申し上げてこれはおたくの罪でない。なぜならば、長い間人事院というのはそういう調査方式をとってきたのだからおわかりにならないのは無理もない。それが実は私の発想の出発点で、本会議の席上で、予算を大蔵省に認めてもらって、公務員の生計の実態というものを、たとえどれだけでもほんとうに調べてみてもらいたいということを強く申し上げた理由はそこにある。あなた方のほうがほんとうに公務員生活実態を、生計費そのものがどうなっているかをお調べになっていないところに、現状というものを把握してないで、ただ数字の上で官民比較をとって、中位等級をとって突き合わせて、平均で論議をされる。そうしたら統計局へ持っていって機械に入れてお出しになる。エコノミストの臨時号におたくの前の給与一課長さんがたいへんいいことを言っておられる。全くもって公務員擁護者で、玄関番で、生活も何もかもみんな人事院がめんどう見てやっているんだということを言っている。その意識でいていただかなければ困るけれども、その課長さんが——いまはおかわりになっているので、いまの長橋さんを責めるわけじゃない。前の方です。年々給与勧告の時期になると人事院の前を新聞記者がうろうろして、わっと集まってくるというのです。そのときだけ生きがいを感ずるというのです。それはそう考えていただかなければ困る、実際に。なぜならば、われわれは公務員生活擁護者だからという。生活擁護者生活実態を知らないで擁護できますか。そうでしょう。もう言いませんがね。  長官に私は承るのですけれども、いま私が申し上げたのは、一番下位等級の、あってはならない俸給表と私は申し上げて行政日表を取り上げて本会議で申し上げた。非人道的な俸給表ですよ。あってはいけません、こういう俸給表は。私はそう思う。食えないどころじゃない、これは子供を生めないです。  そこで私はもう少し上のほうの号俸に触れて申し上げますが、これまた行政日表の方々なのですけれども、行政日表の五等級ではなくて、その一つ上の四等級を取り上げまして——先ほど私が申し上げた等級号俸の数字が間違っていないようでありますから確認は求めません。求めませんが、この四等級の十三号、ここにも該当者がおります。六十歳、これは四万三千九百円。十四号に五人おいでになりますが、これは四万五千二百円。十五号に二十五人おいでになりますが、四万六千三百円。十六号に五十九名おいでになりますが、これが四万七千四百円。十七号に三十六人おいでになりますが、これが四万八千三百円。十八号、ここに十五人おいでになって四万九千二百円。行政日表の四等級の十九号にいってようやく五万円になる、五万百円、ここに十四人おいでになる。二十一号にいって五万一千九百円。二十二号は五万二千七百円。二十一号というのは二十人です、五万一千九百円。二十二号にいって五万二千七百円、ここに二十二名おる。二十三号が五万三千五百円、ここに七人。つまりこういう六十歳の行口俸給表に載っておる方々の分布状況になっておる。全部四万円台、五万円にやっと足がかかったというところ、ここにこれだけいるのです。これが官民比較の面で民間より高く出るはずはない。どういう突き合わせをしているかはそれは別だ。  ところで、行口俸給表の比較的いいところ、たとえば一等級の七号六万三千円、ここにも一名おいでになる。行口の一番てっぺんの十号六万九千百円ですが、ここにも二人おるのです。一等級の十二号にいって十六名、この辺では七万二千九百円。やっとこういうことですね。二等級というのはほとんど五万円、まん中からまあ六万円台になりますが、こういう状況、これが行政(二)表。  行政職の(一)表、表看板みたいな俸給表ですが、御参考までに申し上げておきますが、これでいっても行(一)表のほうで、これは行政職ですから、れっきとした表看板ですけれども、この行(一)表のほうの七等級の七号に一人おいでになる。行(一)ですからこれは五十八歳です。この方が四万六千百円。この法律が通れば、規則が出てくれば直ちにこれは延伸に入るわけなんです。四万六千百円、年齢五十八歳。七等級の九号、ここにもおいでになりますけれども、これはぴったり五万円。七等級の十二号に一名おいでになりますが、五万五千四百円。十三号に三人おいでになりますが、五万七千二百円。七等の十六号にいってようやくこれは六万円台になりますが、六万四百円。ここにも該当者がおいでになる。決して高い俸給じゃありません。さらに六等級にいきまして、六等級の二号にも該当者がおる。五十八歳。ここで四万二千百円しかもらっていない。五十八歳ですよ。六等級の五号俸、ここにも該当者がおいでになりますが、これで四万九千四百円。六等級の六号で五万一千九百円。六等級の十一号くらいまでいって六万四千二百円になりますが、このところに十三人いる。六等級の十五号あたりへいきますと三十五人もいますが、この辺はずっと三十人前後の人が並んでおります。十五号までいって七万二千八百円。よわい五十八歳です。ここのところはみんな三十人台、四十人台いる。十六号をとらえましても七万四千三百円。もう一つ、四十二名存在する十八号、ここで七万六千七百円、こういう数字です。五等級の場合でもそうです。五等級だって、これはずいぶんおいでになる。五等級十七号あたり百七十四人いる。こういうところを当たっていきますと、四等級なんかだって、八万四千百円というところに五人いる。みんなこれは五十八歳です。ですから、ここらをずっと当たっていきますと、どういう官民比較を皆さんがおやりになったかそれはわからぬけれども、こういうところにたくさんおいでになる。  しかも、この中には女性もおいでになるはずです。なぜならば、ここに女の方々がどのくらいいるかという数字を人事院からお出しをいただいた。これを見ますと、女子の実数を示すと三等級で六千八百六十六人、四等級で七千三百三十九人。これは行政日表でございます。つまり行政(二)表の三等級で女子の方が二九・八%いるんですね。行政日表の四等級にいきますと七千三百三十九人で、これは五二・二%女子なんですね。年寄りで、これだけの年齢で、何か事情がなければいないですよ、大体働いていない。それぞれみんな家庭事情をかかえてずいぶん苦心惨たんして、せがれの借金を払っている人だっているんだ。みんなそれが四万円台にいる。それを年が六十だからというので昇給延伸いきなり十八カ月、さらに二十四カ月、そこから先は昇給させない、こういうことを、個々の公務員対象にして、そこに基礎を置いて調べていないで、平均をとったら高いから、これは私は筋が通らぬと思うのですよ、この点は。だからもっと理論的にいえば、そうではなくて、各号俸等級別に一つの基準をつくって、ここから以上の人は高いんだから延伸をする、この基準以下の人はしない、こういうふうにしなければ、これは個々の人たち法律だからあと持っていき場所がない。法律じゃなかったら、まことにもって不服だといって審査請求さえできますよ。行口というのは特殊な仕事をするんだからとおっしゃるならば、もしそういうことばかりやっていたら、ますますそういうところに働く人はなくなってしまう。政策的につくっている行(二)表でしょう。たんつぼの掃除なんというものはやり手がない。ないからといって行政日表をつくって、そういうところに集めてやらせている。だとすれば、そこらはやはり考えなければ、この昇給延伸措置というものは非常に大きな負担を個々の、そういう公務員の低所得の方々にかけてしまうということになりはせぬかと心配する。だから、そういうところまで手を伸ばしてお調べになっての上のことならば私も納得をいたします。しかし給与局長に承った限りは、個々についてはおわかりにならぬとおっしゃる。ならなければたいへんな結果になったこの責任はだれが負うのかということになる。私はそこを心配をするのでこう言うのですがね。総裁何か御答弁がありましたら……。
  20. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 個々の問題に触れて非常に精密な御論議を拝聴したわけでありますけれども、非常に素朴な基本的な立場に一応立ち返って私なりに考えてみますと、昇給制度というものを抜きにして、そのもう一つ手前の現在の給与制度というものの目から見て、それでいまお話しのように、たとえば行口の六十歳で三万円しかもらっていない人がいるということ、これは現行給与制度の話ですから、まずそこからだんだん積み上げていかないと正しい結論にいかぬのじゃないかということを、拝聴しながら考えておったわけです。  給与制度というものは、とにかく非常に冷酷むざんとは申しませんけれども、冷たい面があると思います。まあ職務と責任とかなんとかいう鉄則を掲げて号俸がつくられている。ほんとうを言えば、その立場をひっくり返してみれば、一人一人の生活状態を逐一調べて、おまえは子たくさんだから気の毒だからこれだけ俸給をやろう、おまえはひとり者でしかも家作もたくさん持っているからこれでがまんしろよ、おまえは会社づとめを終わって、会社が定年になって用務員になっている人だから、もうだいぶたまっているだろうからこれでいいだろう。もう年齢にかかわらない問題として、そういう考え方で個人的に考えていけば、そういう面が必ず出てくると思う。冷たいと申しますのは、現在の給与制度はそれを一応ならしてしまっている。そこに私の言う冷たさがあるのではないか。これは給与制度という以上は、民間であろうと公務員であろうと、官民を通じて給与制度の宿命とこれは考えなければならぬというふうに思います。  そこで今度は、昇給制度というものをそれにかみ合わせてみた場合に、昇給制度というものは何のためにあるのだ、だんだん一段階ずつ上がっていくというのはどういうわけだというような問題がそれにからまってまいりまして、そして現在の御指摘のような問題にこれはつながる。しかしその原則は、官民を通じての原則だと認識した上で話を進めていかないと的確なあれができないのではないかという気持ちを持っておるわけです。
  21. 大出俊

    大出委員 もう一ぺんこれはあらためて聞きたいのですが、公務員給与というのは公務員法と給与法と原則が二つございますね。そこらをどういうふうに受け取ればいいのですか。いま基本的な話が出てきましたから承っておきたいのです。
  22. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ちょっと聞きそびれたところもございますけれども、要するに公務員法で給与法のもとがそこに据えられておって、そこから今度は給与法が給与問題についての具体的な法制として出発しておる。しかしその原理原則は両方通じてのもので、先ほどちょっと触れましたように、職務と責任というようなこともその大きな柱になる。とりあえずそういうことをお答え申し上げまして御指摘を待ちたいと思います。
  23. 大出俊

    大出委員 いま法律をあけるのに時間がかかりますからそういうふうに聞いただけなんですが、たいへん大事なつなぎなんで、これは給与法に原則が明記されておりますね、一般職職員給与に関する法律総裁、この公務員の生計費の実態というものを、法律は、その他人事院の定めるというふうになっておりますけれども、そこのところを規定している点を御存じない答弁じゃないかといま考えまして、ここまで言えばおわかりになるだろうと思うのですがね。
  24. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 いつもこれは御指摘になる条文で、肝に銘じておるわけです。六十二条というのがありまして、いわゆる六十二条は、「職員給与は、その官職の職務と責任に応じてこれをなす。」とまずうたいまして、次の六十四条において「俸給表は、生計費、民間における賃金その他人事院の決定する」という条項がございます。これはおっしゃるとおりであります。
  25. 大出俊

    大出委員 生計費が入っているのですね。点が打ってあるんです。いつも私が言うけれども、そうすると総裁そういうふうにおっしゃるけれども、基本的な問題じゃないですか。素朴なところに立ち返ってとおっしゃるけれども給与法という法律は生計費ということばがびちっと入っている。それと民間給与でしょう。その点は課長さんが書いている中にも逆に書いてある。官民比較、生計費なんて月刊エコノミストにひっくり返して書いてある。そんな意図的なことは法律違反です。あなたは「法律の悪魔」という本をお書きになっているけれども、その中に法律のミステークとお書きになっている。第一給与課長のミステークでは困るのですよ。やはり法律上に書いてあるものを先に書いてもらわないと困る。これは一般に読まれるのですから。官民給与比較が先で、そこから生計費の実態調査をやればいいのじゃなくて、やはり生計費の実態が先だ。そこから民間給与なんです。そこらのことを人事院始まって以来一つもやらない。だから、いまの方式では限界が来るから、したがって、福田さんもしろうとなものだから間違って何か何十万人か調べるのじゃないかと思ってそんなことを言ったのだけれども、そうじゃなくて、やはり予算を取るものは予算を取って、その実態調べるというこは、少なくとも法律上あるのだからしてもらわなければ困るということを私は言いたい。そういう意味です。そこを聞いているのです。だから素朴な論議ではない。
  26. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私は素朴なほうでひとつまいりたいと思いますが、先ほど私が申し上げましたのは、いまのたとえば生計費のことばにつなげて申せば、一人一人の職員をつかまえて、おまえは生計費は一体どのくらいかかっておる、その原資はどこから得ているか、家賃やアルバイトからかということを一々聞いて個人についての生計状態を調べまして、おまえは二万円、おまえは五万円というふうにいくことが考えられるのではないかということからいって素朴なと申し上げまして、そこから出発しているのですが、ちょっとお話が高級なほうへ行き過ぎたと思います。
  27. 大出俊

    大出委員 私は何も人事院に——給与課長さん書いておられるように、たまたま集計する時期が八月になって、こういう仕事をする時期にはなじまない。だがしかし、一人の職員が病気をしやせぬかとかなんとか心配しながら、なおかつ公務員生活を守らなければいかぬからという意識でみんな仕事をさしている。私も人事院と長い間おつき合いしているのでよくわかっているが、国家公務員災害補償法なんというものを担当している人事院が、そういうことをやっていていいのかと私は言いたい。この間も私はその質問をして、病気が起こらぬように予防するのが職場における管理者の責任ではないか。国家公務員災害補償法の趣旨はそこにあるのではないか。病気をなくするために施設その他をつくるようになるんじゃないか。人事院はその法律上の責任を果たしていない。その仕事をほうっておいて、八月の暑いさなかにみんな徹夜をやって、いつ病気が出るか、いつ欠勤が出るかと思ってひやひやしながらやっているのです。給与課長なんか健康をそこなうのを知りながらやっている。知っていてやってはいけない。この間も総裁の御指摘のとおり、まず職場においてそういう不健康な状態をつくらぬことです。御本人の総裁の足元が一番不健康な状態をつくってはだめです。そうでしょう。だから何も一人一人調べる必要はない。サンプリング調査というのがあるでしょう、皆さんがやっておられる。だったら、これだけ下位号俸方々があって、しかも下位号俸にかかる昇給延伸をやるとするならば、膨大な調査をされるわけですから、かたわらこの一番下のほうになる方々を摘出して、一体どうなっているかということくらいは調べたって悪くはないでしょう、延伸をしたらその方々にどういう影響を与えるかということを。公務員の生計費の実態調べることが法律上は先に書いてある。そこからが官民の比較です。そのくらいのことをおやりになったって悪くはないでしょう。私は素朴なことを言っている。人事院総裁一人でやっているのじゃない、そうでしょう。それをおやりにならぬから給与局長のおっしゃるようにわかりませんということになる。それで昇給延伸というふざけた話があるかということを私は言っているのだ。だから各等級号俸別に、こんなに低い者は延伸できない。だから中位等級をおとりになるなら、これはあなた方の出した資料ですから間違いないと思いますが、二つ資料があります。一つは昭和三十年七月十六日、たいへん古い話で恐縮ですが、人事院月報一九五五年五十八号、七〇年から見ると古いですが、私は素朴に言っていますからかんべんしてください。これによりますと、この一番下の注に「公務員給与は、職務の級の中央号俸に相当するものであり、民間の基準内給与は、その号俸に対応するものである。」こういうふうに明確に中位号俸と書いてある。それと三十二年七月十六日、一九五七年七十八号の人事院月報、ここにいわば原則が書いてある。「次に、本院が本年三月に行った職種別民間給与実態調査による給与額は、第一表のとおりである。この給与額は、その職を占めている個人の昇給等とは無関係に、いわばその職自体の給与の高さを表わすものであるが、この表にみられるように比較の基準にとった職種により程度の差はあるけれども平均では昨年のそれに比べて二・八%上昇したことになっており、」こういっている。この原則でいけば、個々の実態というものはどこかへいってしまっている。個人の昇給問題に関係ないと書いてある。給与の高さをあらわす、それが中位号俸だ。言うならばまん中です。だからまん中とまん中を官民突き合わせてこっちが高い、高いから五十八歳以上は全部延伸だ、昇給なんかに関係がない、そういうことをやっていると、個々の方々にとってみればたいへんなことになるという気がするのです。だから私はくどいけれども、なぜ調べないのか、法律に書いてあるじゃないかということを言っている、本会議でも。だからそうなると、いまの私に言わせれば、こういう昇給延伸をおやりになるなら、もう一年くらいせめてお延ばしなさい。そして、さっき総裁も言われたのですが、私は素朴に言っているのですが、サンプリング調査をやって、これあたりから調べて、そこを民間と突き合わせてみれば、どのくらい公務員がダウンしているかということもわかるんだから、そこのところを一ぺん実態調べていただいて、私がこんなことを言ったら、ここはこうなっておるからそうじゃないのだとあなたのほうで説明ができるくらいの——この資料だって、ほかのほうからお願いしたらないという。それでは質疑ができないじゃないかといって、実はおたくさんにお願いした。そこまでしなければ出していただけない。そうでしょう。そうではなしに、やはり戦後の民主主義というのは説得ですから、公務員の末端の方々だって、正当な理由づけができることならば説得しうるはずですよ。だからやはりそういう対策をお考えいただかないと、総裁気持ちは十分わかっているけれども、結果として冷酷むざんなことになってしまう。だからオーバー冷酷むざんという表現はありがたいと申し上げたが、冷酷むざんなことができかねない。できかねないから、あなたは冷酷むざんなことはやらないとおっしゃるけれども、それならありがたい、そこをお考えいただきたいのです。だからできれば延ばしていただいて、二年間じっくり資料をそろえていただきたいし、私どももその気でやります。  二、三のもうちょっと違った例をあげますと、大学の若い先生方が私のところにお見えになって、話を聞いていると、五十八歳の先生がおいでになる。この方はいろいろな経歴があって入ってきていますから五十八歳になってしまった。ところが学問の中心はその人がやっている。若い方がみんな取り巻いていて一緒に住んでいる、まさに仕事の中心です。そのおやじさんが延伸になってしまう。回りの若い諸君は見ていられないというのです。だから何とかしてくれという話が出てくる。それほど千差万別、個々にとってみればたいへんなことがあるわけです。それを、これはし上げるならいいけれども下げるから問題になる、昇給延伸をする、十ぱ一からげに一山幾ら、これでは私はまずいんじゃないかと思うのです。だから年齢云々ではなしに、いま定年制があるなら別だ。定年制がないからつとめる権利がある。だから各官庁は肩たたきをやってやめてくれ、こうなっている。しかもやめてもらいたいために割り憎し退職金を払う。御本人は五十八であってもつとめる権利がある。ある限りは仕事の中心になっているからつとめたいのです。仕事は人一倍する。するのだが、中位号俸をとってきて官民突き合わせたら高いからというので十ぱ一からげで、おまえさんは昇給延伸、それではその職場はおさまりませんよ。だからそういうところまで突っ込んで皆さん方のほうで御検討願って出していただかないと、私は議論がかみ合わない気がするのですが、総裁いかがですか。
  28. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 どうもまだかみ合ったところまでまいらないように思いますが、もう一ぺん素朴に立ち返ることをお許しいただいて、いま官民比較の問題で、たとえば中位等給なら中位等給、中位号俸なら中位号俸というお話がありましたけれども、先ほど私の申し上げたところからさらにそれをつなげて考えてまいりますと、民間の中位号俸はこうなっている。しかしこれは年齢とかなんとかの要素は入れていますけれども、一体子供が何人いる、家族が何人いる、病人をかかえておるのが何人おるかというところまでは、民間生活実態まで詳しく調べる、こっちのほうの公務員生活実態も詳しく調べて、それにウエートをかけて突き合わせるという話までいかないとどうも話が進展しないと思う。ところがそれは実際、先ほど申し上げましたように、やはれ制度となるといささかの冷酷面はどうしても免れないということで踏み切りませんと、徹底していったらやはり民間の人員構成、その人の世帯構成、その人の生活実態、それを調べて突き合わせていかないと、私は平面的な比較自体ができないんじゃないかと思います。  それから発展して、たとえば昇給延伸の問題、民間はよく昇給延伸をやっていらっしゃる。その民間のおやりになっている昇給延伸の場合に、子たくさんの人はまけてやるとかあるいは病人をかかえている人は昇給させてやる、そういうところまで話がつながっていけば、それはさっき申しました基礎の問題から昇給の問題までずっと一貫したきわめて精密な体系ができるわけです。制度の宿命としてはそこまではどうしても無理だ。これはお認めいただいて、そういう観点から、やはり多少ぎごちない形になりますけれども、このようなカテゴリーで進まざるを得ないというふうな気持ちを持っているものだから、さっぱり話がかみ合わない。
  29. 大出俊

    大出委員 そうじゃない。私はそこまで何もやってくれとは言っていない。だから実態調べる方法はサンプリングでいいじゃないかと言っている。あなた方何にもやろうとしてないでしょう。しようとしないでしょう。法律上あるでしょう。にもかかわらずやってない。あなた方の怠慢だ。自分たちのほうで法律上あることをやっておかないで、いまのようなことを言う。やるべきことをやりなさい。そうすればわかる。そうすれば、いま読み上げたように、まん中に中位号俸というのがあって、これが言うならば高さを示すのですから、平均ということばが給与局長から出てくる。だから、平均以下の人は延伸しない、平均以上の人はするということにすればいい。それでもはずれる人はあるでしょう。定年制がない限りはっとめる権利があるのだから、五十八だから悪いということにはならない。そうでしょう。法律はないのですから、規則もないのですから、六十一になったってかまわないので、六十五だってつとめていますよ。六人ですか、ちゃんとここにいるじゃないですか。これはなぜかというと、権利があるからです。そうすると、やはりそこに等級号俸別に見て一つの基準を設けて、それが高さを示しているのならばそれと突き合わせて、そのところが民間より高いのですから、だから以下のところは延伸をしない。あたりまえじゃないですか。そうすれば、いま私が取り上げた例はみんな以下に入ってしまいますよ。つまり、概念的に言って、民間より高くない人まで延伸をなぜするかと私は言う。だからこれは不服審査請求ができるものならやり得るけれども法律できめてしまうのだから、できないのだから、そういうところは救えるじゃないかと言っている。救う方法を考えるのが妥当であると言っている。決して総裁の言うように、民間を一人一人調べて、そんなことを言っているのじゃないのだから、サンプリング調査をやれば実態はわかるはずだ。しかも筋道からいえば、いま私が申し上げたようになると言っている。これはおわかりになるでしょう。できる、できないは別だ。あなた方の思想の問題、政策の問題だから。
  30. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 したがいまして、制度的な面からこれを論じていけば、どうしてもこれはある程度の冷酷性と申し上げていいと思います、これは免れない。しかし今度またはそれに延伸をかぶせましたから、その冷酷さというものは相当またエスカレートした形になってくるだろうということを私は考えて、冷酷むざんと言う。これはまさに先ほど山中総務長官の批評のとおり、これはオーバーかもしれませんけれども、それで間違った表現ではないと思います。あたたかい気持ちを持っていればそういう表現が当然出てくるだろうという気持ちで御理解をいただきたいと思います。  したがって、そのあたたかい気持ちをもってこれに当面どう善処するかという今度制度上——私どもは先ほど申し上げましたような立場から、一人一人をつかまえての手当てというものはできません、制度のあれからいいまして。したがって今度は、制度面からのそこに計らいというものがあるだろう。その計らいをどうするかということで、前回以来申し上げておりますようにいろいろな方法を考えて、たとえば初任給の幅を広げることによって在職者調整、中途採用者等の救済もはかりましょう、また退職時における特別の昇給も考えましょうという意味の、やはり制度面からの措置というものをかみ合わせていかなければならぬ。このままずうっと機械的にやっていいものとは考えておりません。そういう点の計らいについていろいろまたお気づきがございましたら、これは謙虚にお教えを受けて、なるべく衝撃のないような形で運用のほうへ持っていきたい、その気持ちに燃えているわけです。
  31. 大出俊

    大出委員 私が申し上げておることはおわかりの上でお話しになっているようですから、ここで結論を出せと言ったって、隣に提出者の大臣もおいでになるのだから、いまここでそれでは取り下げましょうというわけにまいらぬわけです。五十八歳までを削りましょう、削ってしまえば何にもなくなるということになるのだから、そこまでこの席で求める気持ちはないけれども、この問題についてもう二点ばかりはっきり承っておきたい。  それはおたくの勧告の十五表です。年齢別の官民比較のところ、よろしゅうございますか。ここに「三十歳未満」から始まりまして、「三十歳以上四十歳未満」「四十歳以上五十歳未満」「五十歳以上六十歳未満」、こういうふうにずっとございまして、「五十歳以上五十六歳未満」「五十六歳以上六十歳未満」「六十歳以上」、こういうふうに分かれていますね。それで「計」、こうなっているわけです。ここにことしの調査によりますと、五十六歳から六十歳というのは九一・四になっていますね。それで「六十歳以上」というところは八五・八になっていますな。これは去年の調査の結果はどうなっておりましたか。
  32. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 本年の場合には御指摘のとおり八五・八%でございますが、昨年の場合には八三・五%でございます。
  33. 大出俊

    大出委員 そうしますと、ことしの勧告に出ているのは、五十六歳から六十歳のところは九一・四という数字、これはどういう数字かというと、これはまた皆さん方がお出しになっているのだから皆さんのよく御存じのとおりに、公務員を一〇〇とした場合ですね。そうでしょう。公務員を一〇〇として官民比較をやった場合に、民間のほうが九一・四というわけですね。公務員が一〇〇なんです。だからこの数字は、一〇〇から九一・四を引いたという計算でいいわけです。たとえば六十歳を例にとれば、六十歳は八五・八という数字になっているのですから、公務員が一〇〇で、民間の六〇歳以上は八五・八なんです。だから一〇〇から八五・八を引きますと、一四・二という数字になる。つまり一四・二だけ、民間の六十歳以上の方よりも公務員の六十歳以上の方々が高い。こういう数字ですね。間違いないですね。——そうすると、いま昨年のことをお話しになりましたからその例をあげますと、昨年公務員を一〇〇とすると、同じランク、つまり「六十歳以上」というところは八三・五でございますから、その差は一六・五になる。だから民間よりも公務員の六十歳以上は、同じ六十歳以上を比較すると、去年の勧告のときのほうは一六・五公務員が高かった。ことしは公務員のほうが民間より一四・二高いことになった。つまり去年に比べてことしはこの差は縮まっている。数字をあげたとおり一六・五マイナス一四・二の差だけその差が縮まっている。つまり差が減っている。公務員がそれだけ高くなくなっている。このことは五十六歳以上六十歳についてもいえる。昨年は九〇・八、ことしは九丁四ですから、つまり公務員のほうがその差だけ高いということなんですから、昨年は一〇〇から九〇・八を引いていただければいいわけで、だから九・二ですか、本年は九一・四なんですから八・幾つかになっているわけです。そうでしょう。そうすると、このランクも去年に比べると五十六歳から六十歳までの人は民間に比べて去年ほど高くはなくなった、差が詰まった、こういうわけです。そうすると、これは来年になったらまだ詰まる、再来年になったらまだ詰まって、やがてなくなっちゃうかもしれない。あなたのほうは過去にさかのぼっていままで何回この種の調査をおやりになりましたか。全部資料をお出しいただけますか。この五十六歳から六十歳が毎年どういう傾向を持って、いま私が例にあげた去年とことしのように、これを過去に引き直して、どうなっていたかということを全部お出しいただけますか。
  34. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 ちょっと詳細な集計は昨年と今年と二回……。
  35. 大出俊

    大出委員 二回しかやっていないでしょう。
  36. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 それでいま御指摘でございますけれども、昨年の場合は公務員のほうが一六・五%高く、今年の場合は一四・二%高くなっているということでございますけれども、全体の較差が昨年の場合には平均六・八%でございましたのが、本年の場合には八・六%、全体に水準が高くなっているわけです。較差がよけい出ているわけです。したがいまして本年のほうが昨年のベースアップよりは高うございまして、その関係を差し引きますと、この関係は昨年と大差がないという形で考えております。
  37. 大出俊

    大出委員 そういう答弁をなさるだろうと思ったから、過去にさかのぼってお出しいただけますかと私は聞いている。そうしたらあなたはないとおっしゃる。詳細な調査は去年とことししかやっていない。こういうものは一つの大数法則にしても、一年や二年じゃわかりゃしない、傾向というのは。そうすると、これは去年とことし初めて詳細なやつをやってみて出てきた数字でしょう。その二つとってそう変わらない。そう変わらないようにしても下向傾向にあるとすれば、過去にさかのぼって十年調べてみたら下向傾向というものはどこまで行ったらクロスするのかということだってある。つまり官民給与というものは、今日一つのポイントをめぐって寄ってきているのですから、同じ傾向を持っているのですから。そこで現在千人以上の製造業の九九・五%は五十五歳が定年制だけれども、その団体協約その他をながめてみますと、協約でいろんなふうに書いている。そうなってくると寄ってくるのはあたりまえ。下向傾向をたどるのは、私に言わせれば将来見てごらんなさい、必ずそうなりますから。それをなぜ一体去年調べてことし調べて——政策意図がなければやるはずはないと思っているんです。それを去年前ぶれをやっておいて、ことしぽかんと出してきた。それで、あなたは「人事院月報」で金子さんと対談したときなんか、ひどいもんです。尾崎さんは、一生懸命官民比較を論じて最後にどう言ったかというと、金子さん民間の重役さんなんかずいぶん年末手当だとかボーナスはよけいありますな。官庁はそれに比べれば少ないですよ。それはいいところに気がつかれた。尾崎さん、将来天下りとかなんとかはでにあるでしょうが、いまの指定職の甲だ乙だというのは、今回本俸の上げ幅を十万円近く上げたけれども、それにしても民間の重役とはこんなに違う。それは何とか考えなければいけませんよということになって、PRをしている。そうすると来年あたりからあぶない。指定職の甲だ乙だというところには手当民間と比べてぱっと高くなるかもしれない。しかし重要な職にある困難の度合いとか責任の度合いというものが変わっているわけではない。そういうことをおやりになるから、私は気になるから政策意図があるのではないかということを総裁にお伺いした。幾らあなたが統計学者でも、去年ことしの二つだけでは傾向はわかりませんよ。  そこでもう一つ承っておきたいのですけれども、あなたのほうでことしこういうふうにお出しになって、あと規則でおきめになり、かつ冷酷むざんなことをしないとおっしゃっているわけなんですけれども、さっき私がるる申し上げたようなことがある。そうすると民間の企業の中で、たとえば去年自治省が出した地方公務員定年制にありましたように、一ぺん五十八歳なら五十八歳で切ってしまう。再採用する。そして再採用する条件は、共済年金を支給する、給料をもらったら併給する。これは異例な措置だけれども、つまりそれだけ行政コストを倹約しようという意図であった、通らなかったけれども。同じことが民間で行なわれている。私の知っている限りでもたくさんあります。給与はいま十万円もらっているやつが三万円に減った。残り七万円は企業年金がつく。だから自分の手取りは変わらない。俸給台帳に出てくるのは十万が三万になって出てくる。たくさんある。したがって人事院は定年制をしいている企業については調査対象からはずしたとおっしゃっておる。定年制のないところだけおとりになった。千人以上の企業というものは九九%以上定年制があるのです。しかしそうすると、あこたのほうで比較された中に、千人以上の企業なんというものはみんな対象からはずしてあるわけです。そうするとここにあらわれたこの官民較差、いまあげた数字というものは、企業規模別に考えてどういうところが対象になっているのですか。定年制をしいているところはあなた方はみんなはずしたというのですから。そうすると一つ間違えば五百人以上の規模になってしまう。中小企業が中心になり、この比較の中身でめどのつく資料はただの一度も出てこない。この数字は、いま申し上げた五十六歳以上六十歳が九〇・八が九丁四、六十歳以上八三・五が八五・八と出てきた。そしてこの対象になっている企業の中から定年制のしいてある企業は抜けているのだから。念のためにもう一ぺん申し上げますが、千人以上の製造業は九九%以上定年制をしいています、五十五歳。これは全部抜けている。そうすると中小零細の企業、百人規模以上五百人規模だと——最近は定年制もたくさんありますけれども、そういうところに集中している資料になる。そうすれば公務員のほうが高く出るのはあたりまえ。だから企業規模別に事業所別にどういう調査になっているのか、ここのところをお示しいただきたい。
  38. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 民間調査といたしましては、いま御指摘のとおりでございまして、要するに定年制のある場合に、一応定年制は、やめられまして期限つきの再雇用といったような場合には調査対象とはいたしておりません。公務員の場合はいわば無期限雇用でございますので、それと同じようなタイプの前期限雇用のものを対象として調べておるということでございます。  企業規模別の御指摘がございますけれども、そのような定年制のある事業所には、そういう対象者が比較的少ないということは事実でございます。しかしそういう関係が高齢者関係の給与実態であるということもまた事実でございます。
  39. 大出俊

    大出委員 それじゃ答弁にならぬですよ。
  40. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 それから先ほどの関係をちょっと訂正いたしたいと思いますけれども高齢者の官民比較の年齢別の表をお示しいたしたわけでございますけれでも、各俸給表を通じましての全部の平均的な年齢、階層別の較差というのは、去年とことしの二回でございますけれども、最初に申し上げましたように、官民の比較は各俸給表別、各等級別、年齢別、地域別にやっておりますので、官民比較をやっております限りは、その各俸給哀別、等級別、年齢別の比較というものはそういう形で較差が全部出ておりまして、長年のそういう調査の結果の上での表として、昨年ことしというふうなことで、全体として合計したものをお示ししたということでございます。
  41. 大出俊

    大出委員 あなた方だって資料をお出しにならなければわからぬでしょう。この資料だって、私のほうからお願いしてやっと出していただいた。資料を出さぬでおいて、出したのは十五表だけでしょう。私はあと何にももらっていない、何もない。あなたが勧告をされたときに出された書類と、あの半ぺらの何とかの概要みたいなものと、総裁が言いたいようなことを言っている資料だけですよ。あと資料は何もない。何もなくて、あなた方はそれだけで判断しろといっても、審議もへちまもできやしない。それでかってなことを言う。そういうのはマスターべーションだ。それではだめですよ。そこで資料があるかと言ったらないという。しいていえば去年とことしだ。それじゃだめですよ。しかも、いまのあなたのは御答弁にならぬじゃないですか。千人以上というところは、定年制というものはちゃんときめている、就業規則やその他で。だから団体協約で抵触するところははじいておりますから、その限り抜けるのであって、あとは少し少なくしょうとかなんとかいって、ないんですよ、実は少ないどころか、ない。民間調べてごらんなさい、自分で。そんなものはすぐわかる。私は総評に長くいたから、そんなことはちゃんと知っている。だからみんなはずれている。そうすると、ここに出てきているのは、定年制のしかれていない中小企業なんです、みんな。それを対象にしていばったって、これは話にならぬじゃないですか。それを出してくれといったら、そんなものは出ない、出なければ判断のしようがないじゃないですか。だから、あなたは調査票を出せと言ったらおこっちゃう。年齢の差を考えてみればしかたがない。おこらせてしまうといけませんから、それは困るんですよ。やっぱり尾崎さん、ここではあまり小理屈を言ったってだめなんだ。だから、総裁は、あまり冷酷むざんなことはしないと本会議で言ったんだから、一年延ばすとか、五十六歳を削っちゃうとか——削っちゃうというと、あなたはさか立ちしておこるかもしれぬけれども、だからそこのところは満足していただくようなことにしていただかぬと。内輪のことで恐縮ですけれども理事会に御提案申し上げたのですけれども、与野党を含めて皆さんに御賛同していただいておりますから、附帯決議をつけましょうということになっている。だから、そこのところは、せっかく大臣も完全実施をするということなんですから、実は本会議で、たいへん骨折りをかけました、御努力のほど感謝を申し上げます、くらいなことは申し上げたかったのです。だけれでも、高齢者問題に引っかかっちゃって、陳情ひきも切らぬということで、皆さんがおいでになったところで、儀礼にしてもそんなことは言、えない。言わなかったら、佐藤さん、言ったらどうですかということを言ったんですが、——佐藤総理のほうですよ、佐藤さんが二人おるから困るが、達夫さんじゃなくて、榮作さんのほうからそういうお話がございましたが、しかし言えないんです、高齢者の問題が片づかぬと。だから高齢者問題は、そういう意味で御再考をいただいて、だから大臣にいていただいたんですけれども、御再考いただいて、何とかそこのところは——何もここでやり合っているばかりが能じゃないですから、処理をしていただいて、私はこの際だから、これは本会議で申し上げましたように、初めての完全実施なんですから、きれいにみんなで賛成していこうじゃないか、こう思っているんですよ。だからこの点を中心に取り上げたわけなんですよ。  最後に、ひとつこの点の締めくくりに、冒頭に申し上げたように、やりとりをしていきまずから、その上でもう一ぺん御回答と申し上げたのですが、結果はお聞きになったとおり、いろいろと疑問があるはずなんです。そういう意味で、この点はやはり特段にお考えいただかぬと——法律を削るのだって、人事院規則に残されるのですから、やりようは幾らもある。完全実施のたてまえをくずすわけじゃない。人事院規則中身まで完全実施の中に入るわけじゃない。だから、これはやはり御検討いただきたいと思うんですけれども、いかがでございますか。
  42. 山中貞則

    山中国務大臣 人事院自分たち立場において調査された結果、手直しをされる時期がきたら、私たちはそれを拒否するという気持ちはありません。
  43. 大出俊

    大出委員 一にかかって、総裁の責任、冷酷むざんなことをしないと言われた公約をお守りになるかどうかということでありますから、いますぐ即答はいただきません。それを御検討いただきたいと思います。  そこで、あとの皆さん総務長官への質問の関係がございますので、もう一つ、二つここで承っておきたいと思うのでありますが、この人事院規則に託されましたのが幾つかありますが、何と何と何を人事院規則でやるんですか、たとえば調整手当であるとか、幾つかありますが。
  44. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 人事院規則に御委任いただきたいという案になっておりますのは、手当関係で申しますと、御指摘の調整手当の関係、地域指定の関係、官署指定の関係、それから特地勤務手当官署指定の関係といったようなものがございますが、さらに従来の人事院規則できめております内容改正部分が、たとえば通勤手当の関係とか初任給調整手当、特殊勤務手当宿日直手当あるいは俸給の調整、あるいは高齢者関係の年齢等、あるいは中途採用の初任給基準の改正等につきましては、初任給、昇格、昇給等の基準等の改正と、いろいろございます。
  45. 大出俊

    大出委員 時間がありませんから、その中の一点だけ承りますが、調整手当というのはいわく因縁がございまして、地域給の時代からいろいろなことがありまして、私も尾崎給与局長にはずいぶん御迷惑をかけた点はございますけれども、さて、先般この委員会調整手当が初めて出てまいりましたときに、都市手当といって出たんですかね、忘れましたが、このときに、上げるところ、下げるところという論議がありまして、私は、いわば既得権になっているんだから——CPSだCPIだという問題はありますけれども、CPSにしろCPIにしろ、それをやっていくとハチの巣をつついていくことになる。だから既得権も認めて、都市現象という形で変わってきているところを取り上げて、六、三、〇、こうなっているわけでありますが、その辺をきめて、そうしてしばらく検討期間を置いて、もしやるんだとすれば思い切って全体的な各地域意見を全部聞けるようなことにして、相当なことになるだろうけれども、その上でやったほうがいいんじゃないか、こういう意見を吐いたことがある。人事院調整手当受付所くらいなところをこしらえて、局長さんはたいへん忙しいから課長さんくらいを置いて、さあいらっしゃい、全国津々浦々からいらっしゃいといったことで二、三年やらないと、これはなかなかまとまらない。何しろその地域手当対象になると地場賃金まで上がるのですから、土地の繁栄にもかかわる、こういう市長さんまでおいでになるのですから。そうすると、その市長さんから、中には警察の署長さんまで、あげて陳情に来てしまうのですからね。そのくらいのことをやらなければこれはできない、上げたい下げたいといっても。だからそういう意味でも、先般はああいうおさまり方をしたわけでありますが、だからいまこれを上げるところ、下げるところをつくるといえば、たいへんなことになる。まずこの辺の観点がありますので、そこらをどういうふうにお考えかということとあわせて——この文章づらからいきますと非常に不明確なんですね。一番手近な例をあげれば、私の住んでいる横浜なんかの例をあげれば、京浜地域といったって、東京——横浜のまん中には川崎がはさまっているし、横浜の向こうには横須賀があるし、同じ東京湾岸地域でございまして、鎌倉なんかも最近うんと変わってきておりますから、衛星都市を含めて、そこら辺一体どういう関係になるのか。そこにまた官署指定なんというものが飛び出してきておる、新聞紙上によれば。そうすると、官署指定ということから始まって、一体どういうことになるのか、人事院の裁量範囲というものは一体どの程度なのかということなどなど、また、案ができているのかいないのかということ、そこらのところを一括して、ひとつ構想という意味でお述べをいただきたい。ずばりお話しいただければそれが一番いいのでありますが、そこらのところをお願いしたい。
  46. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 調整手当につきましては、今回一部の地域につきまして八%地域勧告いたしておるのでございますけれども、その場合におきまして、現行制度の基本と、それから現行の地域指定につきましては変更しないということをたてまえにして考えているのでございますけれども、したがいまして今回の地域指定につきましては、そういういわばワク内で現在最終的な検討をいたしているところでございますが、その中身といたしましては、勧告のときにも考えておったのでございますけれども、第一に地域指定の関係は、現在の地域指定は昭和二十七年現在の地域指定になっておりますので、これを本年五月現在の市町村区域による地域指定にいたしたいということが一点でございます。それから第二点といたしましては、八%地域の指定を今回しなければいけないのでございますけれども、それは、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、京都府、兵庫県の甲地は一応八%にしたいということで検討いたしております。それから第三点の官署指定でございますが、現在の官署指定は約六十ほどございますけれども、つまり従来の非常に小さな、昭和二十七年の市町村区分に接続したところにつきまして約六十ほど官署指定をいたしております。したがいまして、これが拡大された市町村区分ということに相なりますので、大体半分は市町村の合併の中に入っておりますので、ほぼ半分が残るという感じでございます。したがいまして、今後は、広がりました市町村区域のさらに周辺にどういう官署があるかという点の検討を現在いたしております。しかしながら、地域指定の関係は、やはり従前と同じように、地域指定をいたしております市街地と接続して隣の市町村に市街地が続いているといったような状況で市街地状況がほぼ同様であるというような、非常に近接いたしておりまして、指定同様に取り扱うことが適当だというようなところにつきまして、従前と同じような基準でやりたいと考えております。現在、最終的に検討しているところでございます。
  47. 大出俊

    大出委員 そうすると、人事院が、たとえば二キロなら二キロときめても、はみ出したりするのがある。特殊事情がある。たとえば医者は東京からしか行かない。たとえば函南の病院が昔そうでございましたが、全部東京からしか行かない。居住地重点主義じゃありませんから、職場重点主義、勤務地重点主義ですから落ちてしまう、というようなところは人事院の裁量というものがそこにある、そういう範囲はお残しになるおつもりですか。
  48. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 やはり官署の性格がございますので、その中における職員が、たとえば病院とか研究所とか付属機関的な官署の性質につきましては、やはりその状態をよく考えていかなければならないという感じでございます。
  49. 大出俊

    大出委員 これを論議いたしますと、非常に時間もかかりますので概略のいまの考え方を承りまして——まだ問題はあります。たとえばいま御発言になった地域だけでいいのかどうか、いろいろ問題はあると思うのでございますが、後刻に譲りたいと思います。  あと、〇・二、〇・〇九を切ってしまって何だと言ったら、民間はいろいろ変動があるんだからという非常にうまい答弁総裁おやりになりましたが、まことに不満であるというところを申し上げなければなりません。  また、公務員共闘の皆さんあるいはその他の方々を含めて、住居手当なんかは長年の懸案でございまして、額はともかくとして、たいへんな勇断をおふるいになって、総務長官は少し早過ぎたんじゃないかというようなことを言われたけれども、これは勧告をしてしまいましたから、しようがない、おあきらめいただきたいと思うのですが、ワクができましたから、それで一体家を借りられますかという論法で来年から攻めようと思うのですがね。いまの場合は、公務員宿舎だというようなことで三千円ということを規定されているわけです。そして、そこからはみ出した分、それの今度半分——半分ならいいんだけれども、まだ制限がついて、三千円が限度である半分だ。いささか冷酷むざんです。つまり三千円プラス三千円で六千円までということになる。それで一体家に住めますかということでここで攻めたいのですが、だいぶ無理を言って、何でもかんでも出せというようなたてまえで、ワクが出たのだから、これ以上あまりかってなことを言いかねるじくじたるところも私ありますから、これだけにします。ただ一つだけ、御夫婦で苦労されて、ローンを借りたり、住宅貸付し付けを借りたり、公庫資金を借りたりして建てていて、苦しい支払いをしている人もいる。一口に持ち家といったって、そういう面も考えなければならぬ点もたくさんあって、実はその後ずいぶん各所で文句を私は聞いているのです。ですから、ちょっと早過ぎたかもしれないけれども、ほんとうは全部そういうところまで手当てをすれば早過ぎなかったかもしれないという気がするのです。長官、これはひとつ先の宿題にさしていただきたいと思うのです。  そういうふうな問題とか、あるいはまた例の初任給の問題ですね。これによってどうも公務員俸給体系だって実は変わっちゃうかもしれないというくらい、初任給の上昇が早い。そこらのところをどうするかという問題もある。これらの点は、総務長官がおいでになる時間におさめませんとぐあいが悪いわけでありますから、残念ながらあとに譲らしていただきます。  いまの第一に申し上げました高齢者の対策につきましては、くどいようでございますけれども何とかひとつもう一ぺん、どういう限度を置いてお考えになるということもありましょうが、これは十分御検討をいただきたい、こういうふうに思っているわけでございます。その点をつけ加えまして、終わらしていただきます。  あと防衛庁関係の問題、あるいはこれに付随をする公営企業の問題、あるいは軍労働者の方々の問題等々につきましては、午後関係大臣その他が御出席になるそうでございますから、そちらのほうに譲らしていただきたいと思います。
  50. 天野公義

    天野委員長 受田新吉君。
  51. 受田新吉

    ○受田委員 人事院総裁、この勧告案につきまして、これを政府がそのまま採用という段階になったわけでございますが、総裁に一言だけお聞きしておきたいことがある。それは、勧告案を作成される民間給与実態調査の時点は四月である。そうすると勧告は五月実施でなくて四月実施が筋として通るという形になるのではございませんか。
  52. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 近ごろそういうお声がたびたび聞かれるのでありますけれども、御承知のように五月実施をうたいましたのが昭和三十五年、それまではなるべくすみやかにというようなことでやっておったわけでございますが、期限をはっきりしろといういろいろな御要望があって、五月一日からといって十一回目ですが、いってきておるわけです。五月一日実施は、発足当初には何も御議論なしに、もうそれがおかしいじゃないかという御批判もない、そのままきわめて平穏に来ておったわけです。ここ二、三年前から突如として、いまおことばにありましたように、四月調査なら四月実施が正しいのじゃないかというお声が出てきて、私どもも、筋が通ることなら何も昔のしきたりにこだわることはないわけです。といって現在の段階で五月実施が間違いであるという結論はまだ得ておりません。しかし、これはたびたび申し上げていることでありますけれども、四月実施説も全然黙殺してしまうべき、理屈の全然ないものでもないような気がするというところまでわれわれは謙虚な気持ちで検討しておるというのが、率直な実情であります。
  53. 受田新吉

    ○受田委員 長官、四月実施が検討される段階になり、それが勧告案として表面に出た場合は、完全実施というのは当然四月という形をとられるわけですね。
  54. 山中貞則

    山中国務大臣 私たちは、ことしの人事院給与に関する勧告については、完全実施をすることを国民に対しても、国会に対してもお約束をいたしたつもりでおりますから、これは今後のルールが確立したとお考えいただいていいと思います。したがって、人事院給与勧告前提が何月からということの基本的な線が変わりましょうとも、また内容においていろいろ手直しがされましょうとも、これは完全実施をしていく、財政事情その他によって今後特殊な措置はとらないというルールを、私たちは国民の前に明らかにしたものと考えております。
  55. 受田新吉

    ○受田委員 私は、もう一つ、このたびの高年齢職員昇給延伸措置について、大出委員に続いて、ちょっとお尋ねしておきたいのですが、これは管理職の地位にある者も含むのかどうかです。
  56. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これは当然含みます。
  57. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、大学教授も含むのか。
  58. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 そのとおりでございます。
  59. 受田新吉

    ○受田委員 そこで、一般職に該当する職員の中に検察庁の職員もあれば外務公務員もある、こういう皆さんの五十六歳以上も、当然これらの法律をその点については同じ基準でやっていく形になっておるのかどうか。これは総理府の、大臣でなくても人事局長でもけっこうです。御答弁願います。
  60. 山中貞則

    山中国務大臣 勧告特別職にも当然及ぶものと思いますが、その措置については国会で定められたそれぞれの法律を御可決願うことによって実効を発するものと考えます。
  61. 受田新吉

    ○受田委員 ちょっとはっきりしません。特別職に及ばない一般職を私はここに例示しておるのです。
  62. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 ただいまの先生のお話は、一般職の中で検察官、外務公務員、これのほうにもほかの行政職と同じように人事院勧告権は及ぶのではなかろうか、こういうお話でございます。公務員法によりますれば、これは及ぶものとわれわれ考えております。ただし、先生よく御承知のごとく、国会の御審議を経ました特別の法律によりまして、検察官並びに外務公務員につきましては、特別法でそれぞれ実情に応じた決定がなされておるわけでございまして、そうすることがそういう特別な事情からしまして適当であろうし、また特別法がそういうふうに規定している趣旨はそういうものであろうというふうにわれわれも考えておりますので、形式上は及ぶものでございますけれども、実際はそういうかっこうできめていただいておるというのが実情に即しておるのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  63. 受田新吉

    ○受田委員 法のたてまえからいえば、大学教授も六十三歳が定年になっておる。検察官もそういう意味では高年齢の定年がある。そういうちょうどそのおしまいのころの上位の階級に上がったころが該当者になるわけでございますから、大学教授を制限するならば検察官も制限すべきだし、外務公務員も当然制限の対象になってしかるべきであると私は思うのです。これを例外を設けるべきではない。しかもこれらの諸君は一般職であるという点において、きびしいようであるが、私は法のたてまえからいま申し上げているので、いまから高年齢職員昇給延伸措置というものは適当でないことを言うわけでありますが、言う前に法のたてまえをいまちょっと言っておりますが、長官、法のたてまえでは人事局長と同様にきびしいものであるべきと判断してよろしゅうございますね。
  64. 山中貞則

    山中国務大臣 私の言ったことは、ただ特別職という言い間違いをしただけで、基本的には同じでございますから、及ぶものであるということは明確でございます。
  65. 受田新吉

    ○受田委員 私ここで、人事院総裁たいへんお勉強でございますが、あなたがいつも唱えておられる国家公務員法の規定からいうならば、一般職はあなたのほうの所管である。ところが一般職職員給与法の第一条では、「別に法律で定めるものを除き、」というのですから、これを逃げるという形になる。だからこの点ではっきりしておきたいのですが、国家公務員法の規定に基づいて検察官や外務公務員給与勧告は当然やってしかるべきですね。この点、勧告権においては侵害されていないと解釈してよろしゅうございますか。
  66. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 外務公務員は、外務公務員特例法ではっきり列挙して除かれている在勤俸のようなもの、これは法律的にはっきりしているから、わがほうの権限は及びません。また大公使、これは特別職ですから及びませんが、それ以外の一般の外務公務員給与関係はわがほうの勧告を当然受ける。一般職というその内容に入るものは当然適用される。したがって昇給延伸もそのものずばり適用を受けるということです。むずかしいのは検察官です。これは受田委員からたびたびその点を指摘されて、そのたびごとに少々ひるんでおるわけでございます。これは法文の表にそういう明文がない。ないにもかかわらず、ずっともう慣習法的な形で今日まで来て、われわれの勧告対象にはしていない。むしろ実際は裁判官、あっちのほうの系統のつながりの面が重視されてきたという実情もあるでしょうけれども、そういう性格の問題もありましょうけれども、実はそういう実情で今日まで来ておるのです。勧告したことは二度ぐらいある。初めの段階は昭和二十四年ともう一回、検察官もやったことがあるのです。これは国会でお取り上げにならなかったというきわめて不幸なあれを持っておるわけです。そういうことが左右したかどうか知りませんけれども、ずっとそのまま検察官は別であるということで来てしまっておるのが率直な実情であるということでございます。
  67. 受田新吉

    ○受田委員 検察官はだんだん上がって、裁判官とのバランスで国務大臣と同じ四十八万円までいま上がっておる。これはえらい処遇が改善されておるわけなんです。これは人事院勧告を除外してかってにやっておるという点において、筋論として通らないと私は思っておる。  もう一つ、長官、これは総裁とかね合いで答弁願いたいのだが、教育公務員特例法、あなたもそうした経歴をお持ちのお方で、教育には深い慈愛を持っておられる方である。だが、教育公務員特例法として文部省が法案を出しておる。そこで特別の手当をいままですでに法案を出された前例もある。しかし、ついにこれはつぶれた。しかしこれは一般職職員であることは間違いないのですから、したがって、人事院勧告によってこの給与が改善せられ、それを政府が総理府を通じて一般職職員給与改善案で提出すべきである、本質論はそこにあると思うのですが、長官よろしゅうございますか。
  68. 山中貞則

    山中国務大臣 まだ隣と打ち合わせておりませんが、原則的には私はそのようなものが正常なるルートであろうと考えます。
  69. 受田新吉

    ○受田委員 長官と同様かどうか。勧告する対象に当然——文部省がかってに出すべきものではなくて、人事院勧告して、それが今度一般職の血員の給与法の改正案として出されるのが筋だと長官は思わないか。長官じゃない。かつての法制局長官。現在の人事院総裁
  70. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 国立学校の関係の職員給与は、先生方もそうですが、これはわがほうの御告の対象になります。ただし産業教育振興手当とかいろいろ別の法律で出ておるものがあります。これはまた別になっておりますからしかたがございません。
  71. 受田新吉

    ○受田委員 基本給のやつです。
  72. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 基本給は、わがほうの勧告でやっております。
  73. 受田新吉

    ○受田委員 そこで私は次の問題で尋ねたいのだが、いま教育公務員、教育職員給与は、超過勤務手当などが除外されるというような形で、いろいろと法案がいじくられてきたわけです。これは、少なくとも教員の給与は、一般職給与の中では比較的低い水準に、昇給などがおくれて、あるいは通し号俸などになっておる関係で、スタートはちょっとよく見えて実際は給与は低い水準に取り残されておるので、本俸の水準を高めるというこの問題も含めた給与改善を人事院としていま検討しておるのかどうか。私この前のときに、今年末のこの法案審査の段階までには間に合うように勧告してほしいと要望しておいたのですが、その準備がいまできておるかどうか、経緯を御説明願いたい。
  74. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これはさかのぼれば、昭和三十九年の報告書でうたった手前もありまして、私どもで一応問題を投げたような経緯にもなっておりますので、私どもも十分その後研究に研究を重ねて、政府案が出たようなこともありました。ともあれ今日の段階ではまだブランクの問題になっております。私どもとしては、われわれのやはり責任として、いつでも勧告できるようにというような気がまえで鋭意いま検討を続けておるというのが実情でございます。
  75. 受田新吉

    ○受田委員 その勧告の時点が、あまりのんびりしていると間に合わなくなると思うのです。宙ぶらりんに放置されているわけです。政府自身も一度三年前に法案を出しておる。そういう事例もあるわけです。文部省が出した案はつぶれたわけです。ですから、じんぜん日をけみしないで、次のどの時点くらいまでにはこれを提出したいという御用意があるのか、御答弁を願いたい。
  76. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 かつての政府案そのままで出すなら簡単なことで、一日でもそれはできますが、われわれとしては、やはりわれわれの責任上、これなら正しい、各方面御納得いただけるようなものをつくらなければならぬという覚悟でおるわけでございます。したがって、検討を紡げてまいりましたけれども、先ほど大出委員の御質疑がありましたように、今度の給与法の改正規則だけでもたいへんなことになります、それを受け持っておるところがたまたま超過勤務関係の課なものですから、とても当分は手がつかない、これは正直に申しますればそういう段階で、これからめでたくこの法案が成立いたしますれば、大体規則の準備もでき得ますので、それが一斉に公布されるということになりますれば、また直ちにそのほうの問題に取り組みたいという気がまえでございます。
  77. 受田新吉

    ○受田委員 長官総裁も気がまえがなかなかあるわけでございます。老骨にむち打ってやろうという御熱意のほどは十分わかります。この際、文部省あるいは自民党の党内などから別個のかっこうで法案が出るようなぶざまな形にしないで、人事院勧告、そして総理府総務長官からの提案理由による一般職職員給与の改善で、思い切った教職員給与改善もはかっていくという本筋で、堂々と前進してほしいと思うのです。長官は閣議でもその点を十分主張して、よそのほうからひょろひょろと出るような、ぶかっこうなことはしない。さっきだてまえと本質を言われたが、そのたてまえで、また本質論から、本委員会を通じて法案が提出されるということを断固としてやるかどうか。
  78. 山中貞則

    山中国務大臣 政党政治でございますから、与党の中の動きについて、私がいまの立場では批判することは避けます。しかしながら筋道で、人事院が詳細なる勤務実態あるいは特殊なる教職員の超勤の中に入るべき範疇、その事柄等については、私も体験を持っておりますから、なかなか一律はむずかしいと思いますけれども、いずれにしても、人事院がそういうものについて作業を詰められて、そして勧告されたならば、やはり裁判において超勤についての判決が一ぺんあっておりますので、これらの点はたえず私たちは念頭にあるところでございますから、筋道としても、実情としても、政府としては受田委員の言われるとおり、断固としてとかなんとかいう表現ではなくて、ごく自然にそういう勧告を実施していきたいと考えております。
  79. 受田新吉

    ○受田委員 熱意を持っておいでのことはよくわかりますから、あなたに御期待しておる。現閣僚の中では一番ファイトが満ち満ちておるという定評のある人ですから、期待しております。私はその意味で、長官総裁とがよくお話し合いをされて、筋道を通す教職員給与改善を期待しております。
  80. 山中貞則

    山中国務大臣 ちょっと誤解があるといけませんが、私と長官とが話し合いをしてということになりますと人事院の中立が侵されますので、私は人事院のその中立性に基づいて厳正公平な勧告がなされたらすなおに従うということを言ったのでありますから、誤解のないようにひとつお願いしたいと思います。
  81. 受田新吉

    ○受田委員 政府部内の独立機関としての人事院に対する敬意、十分にあふれでよろしいと思います。  私はもう一つ、高年齢皆さんに対する昇給延伸ということは、どうも私自身には理解できないのです。高年齢勤務している人は、退職勧告してもやめないがんばり屋という意味にとかく誤解されるのですが、大出委員が指摘されたように、生活に追われて高年齢まで勤務しなければならない事情に満ちあふれている人がほとんど大半と実は私は判断するのです。したがって、生活を中心に高年齢まで勤務する立場を考えてあげるならば、七十歳くらいになられて、老骨にむち打って公務に精励する老職員に対してこういう措置をとるということは、私は人間として忍びがたいと思うのです。高度の人間尊重の給与政策の点と人事政策の点から、この問題は民間給与との比較などという点でこれを出されると、比較の基準にも問題があるし、それから調査した数量を拝見すると、大体いま四万とかいっておるようですが、四万というと公務員の場合は約七・六%という相当な数量にものぼっているわけで、これは軽々しく扱う問題ではないと思っておるわけです。  それからもう一つ、例の生活保護を受ける標準四人世帯で、一級地三万三千七百八十五円という数字を見るときに、さっき大出委員から指摘されたような三万数千円台の各号俸に該当する皆さんというのは、もう働かないでそのままじっとしている人と変わらないような給与にしかなっていないということなので、老骨にむち打って子弟を養育しているという崇高な勤務ぶりに対して敬意を払う意味からも、私はこの措置については徹底的な批判をしたいと思っております。  なお定年制その他のいろいろな問題もあるわけでありますから、そういうこととかね合わせてこれが出されたというような印象も受けておりますので、この問題はもう大出委員からつぶさに質問されておるので繰り返しませんが、根本的な考え方の上に政府が冷酷な考え方を具体化した問題として、私としては絶対に賛意は表せないものであることを指摘しておきます。  もう一つ総裁にちょっと承っておきたいのですが、公務員給与の中には退職金と退職年金のことを考えた前提があるかないか。国家公務員法律の第六十四条にある俸給表の基準として定められておる生計費、それから民間給与、もう一つ、その他人事院が適当と認める諸事情というような問題が入っておるのですが、退職金とか退職年金とかいうようなものをその他適当と認める諸事情の中に入れて勘案しているのかどうか。その他人事院が適当と認める諸事情とは具体的にはどんなものがあるか、例示していただきたいと思うのです。
  82. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 退職手当及び退職年金関係でございますけれども、私どもとしては、職員給与民間との比較におきましては給与そのものとして比較をし、また退職手当なり年金なりの退職給与につきましては、それ自体として民間調査もしまして、適当かどうかという検討を別に行なうということでやっております。退職手当につきましては、これは人事局の所管でございますけれども人事局の御依頼を受けて従来調査をやったのでございますが、また来年もそういう関係を両方で調査をいたしたいというようなことを協議しているところでございます。
  83. 受田新吉

    ○受田委員 人事局長に話が及びましたけれども、退職金はあなたのほうの所管になっておる。この退職金は公務員の場合非常に低いのです。民間の労務者の退職金と比較すると非常に低い水準にあることを、中労委などの出された資料とあなた方の調べ資料と比較検討してもらいたいのですが、確かに行政(二)の退職者の給与などを見ると、民間と比較して半分程度のところにあると私は判断をしておるわけです。そういう退職金という問題とかね合わせて給与というものはやはり考えなければならぬと思うのです。したがって、行政(二)の立場にある皆さんなど、もう少し優遇する考え方をしないと、退職金も低い、本俸も低い、こういうかっこうではあまりにも残酷だと思うのです。退職金についての引き上げ措置というものをお考えかどうか、御答弁を願いたいと思います。
  84. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 民間と比べまして、公務員の退職手当がどんなぐあいかということでございますが、先ほど給与局長からお話がございましたが、昭和四十一年に人事院調査をしていただきましたところによりますと、必ずしも民間と比べまして公務員のほうが低いということが出なかったわけでございます。しかし、その後のいろいろの事情もございますし、また、公務員の組合の方々からのいろいろの御要望等もございまするので、ぜひ来年はまた、この中立専門機関の人事院に一ぺん御調査を願いたいということで、来年度の予算要求をするようにお願いいたしている次第でございます。
  85. 受田新吉

    ○受田委員 この問題は、退職金は、確かに中労委の調査というのは、われわれ一応持っておるのだが、これは人事院調査と別個の基準でいっているのかどうか、さらにわれわれ検討してみなければならないが、それに比較すると、半分とちょっと程度のところまでしかいっていないようです。こういう問題もひっくるめて、退職金制度を根本的に検討してもらう時期がきておりますので、人事局、総理府として十分対処してもらいたい。  もう一つ、これは長官、あなたに特別職給与でお尋ねしたいことがあるのですが、国務大臣、総理はこの際遠慮されたようです。人事院総裁も、遠慮したというか、遠慮さぜられた。その点は、私は、非常にいいことだと思うのです。これからも引き続き、これを毎年実行に移していただきたい。まだ二、三年の間は——私はスウェーデンという国の給与をよく知っているが、総理大臣が三十万程度、一般国務大臣が二十万程度、大学出が初任給八万程度、上下の格差が非常に接近して、上に薄く下に厚い給与政策がとられている。これは間違いない、実態調べてみていただけばわかる。そういうのを調べてみただけに、日本の場合は、特別職給与が非常に高水準にどんどん前進している。その点、また一般職でも、指定職の諸君にぐんぐん処遇改善をやって、次官などは九万円も上がっているという問題がここに提起されてくるのですが、上に厚く下に薄いという印象を与えるような給与政策というのはとるべきじゃないと私は思うのです。これは人間を大事にする国家として、その点は、国務大臣以上がこのたび遠慮されたということについては、画期的な給与政策の第一歩を踏み出されたものとして敬意を払いたいと思うのです。  ただここで、特別職で問題になるのですが、国家公安委員会委員皆さんとか、そのほか文化財保護委員会委員皆さんとか、特別職の相当高給をはんでいらっしゃる各種行政委員会等の委員の方、特に常勤委員の方は別として、事実的には一年に何十回かしか出ないような、非常勤のような勤務をされている委員さえも高禄をはまれておるということがちょっと問題がある。これは私、この前に指摘したのでございますが、この各種行政委員会委員皆さんに対する処遇——人事院のように年がら年じゅう常勤勤務している場合は、総裁国務大臣あるいはそれ以上の給与をあげても、これはうなづけると思うのですが、国家公安委員会その他——ちょっと出席日数を調査願っておいたが、どうですか大蔵省、まだ出ていませんか。事実的に非常勤的な勤務しかしていない行政委員会が非常に多いのです。これは人事院が、一日出勤すれば今度八千三百円ですか、幾らになったかね、非常勤の各種委員の出席などに対する一日の日当、八千幾らに上がっておったようですね。
  86. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 八千三百円でございます。
  87. 受田新吉

    ○受田委員 その程度で、そうして一年間に何日出るかくらいの分で私はけっこうだと思うのです。ほんとうは名目に対して、一応形の上で、委員長とか委員とかいうかっこうでは、もう社会で十分認められているのですから、実質給与に近い形に特別職皆さん給与を改めるべきだと思うのですが、長官、これはどうぞひとつその勤務形態に応じて、それに即した給与が当てられるように御考慮を私は願いたいと思うのです。  この前一例を、国家公安委員会委員にとったのでございまするが、一年に二十回か三十回かしか出席しない委員がいる。それで合計六百万円も七百万円も給与をもらうというと、一日出れば二十万円から三十万円になるというたいへんな給与なんです。しかし、年がら年じゅう国家公安委員会委員であって、職務が非常に重いという意見が一方にあるのでありますが、それと、その他委員方々の出席日数なども検討をされまして、特別職給与というものはもっともっと実態に即して改善されるべきだと思う。これは人事局長、この前も私は指摘した問題で、その後これは改善されていると思ったら、一向改善されないで、もっと引き上げられているというこの措置に対して、ふんまんやる方ないものを感じまして、いまこの問題を出した。それは、まじめに勤務している、薄給に甘んずる職員にとっては、この高嶺の花をつみます方々、しかも、勤務は実は一年を通じてほんにわずかしかないようなかっこうの上での高位高官にあるような方々に対しての処遇として、もっと検討されるべきだと思うのだが、どうですか。
  88. 山中貞則

    山中国務大臣 前の段階の議論の中で、総理大臣並びに国務大臣を据え置いたということは、全く政治的な配慮であります。それの評価は、ただいまの受田議員なり国民の評価するところにまたなければなりませんが、ただ、その際にも、私たちがたいへん苦慮いたしましたことは、総理大臣を据え置くことによって、両院議長が据え置かれることは、これは同じ政治家として議論のないところであろうと思うのです。異論は言われないと思うのですが、ただ、最高裁判所長官が自動的に据え置かれる。さらに、国務大臣になりますと、今度は、一般の官職でありましても、会計検査院院長、人事院総裁大使特号等も同じような扱いを受けますし、司法部門の同じく最高裁の判事や検事総長も据え置かれることになる。一方、両院の副議長は、これは政治的な判断でありましょうが、しかしながら、国会図書館長も据え置かれるというようなことがございまして、給与担当の私としては、非常に決断をいたしかねた事態がございました。また、法務大臣等からは、やはり検察部門、裁判所部門、現在そういうところの一般の人たちの充足率と申しますか、そういうものになりたがらない、あるいは充足率が非常に低くなって困っているんだという御陳情等もありまして、ぜひ何とか扱いを変えることはできないだろうということがございましたが、先ほどの御議論のように、やはりこれらの人々にも勧告は及ぶものである。勧告を受けて、特例の措置をいたした以上は、これは残念ながら、がまんしていただかなくちゃならぬ。ただし、次のランクの、同じ司法部門でいえば、東京高裁長官との開きが非常に少なくなる。前は十万円の開きでバランスがとれておりましたものが、ずいぶん接近いたしてまいりましたので、これは逆転するという事態は、やはり私たちとしては念頭に置いておかなければならない。これから先の措置でございますが、そういう配慮がありましたことだけつけ加えておきます。また配慮しなければならないことであろうと思います。  さらに、ただいまの国家公安委員会というものを例にとられてのお話でございますが、国家公安委員の執務ぶりとその待遇という問題で、あるいは問題点が一般論としては提起されると思いますけれども、しかし、国家公安委員というものは、子、の性格は、国家の公安について常時、行住座臥、深夜といえどもその責任を私はとられるものと思います。ただし、問題はその際も、兼職禁止等の問題はどうなんだという問題はいま一つ考えてみなければならない問題があるのではないか。これは私が国家公安委員会制度というものをつくった責任者じゃありませんけれども、そういうことについては、御指摘はありませんが、念頭にはございます。
  89. 受田新吉

    ○受田委員 時間が来たようでございますからこれでおきますが、この特別職職員給与につきましては、外交官の場合、大使などは私はもっと処遇して、一国を代表して全権大使として御苦労されている場合は、処遇をもっと、国務大臣に該当する俸給もあるわけですが、事実的には国務大臣と同格の給与を与えている大使は一人もないようです。アメリカにおられた下田大使などは、任期を越えてなお精励恪勤した。ああいう大使には、この国務大臣格の特号を、法律に基づく特号を当然支給すべきでなかったかと思うのですがね。そういう点について、大使公使、それから公使の中にきのうも私申しました名称公使というのがある、名称公使などは、当然公使のワクの外に、認証官とするかどうかの議論は別にあるとして、公使俸給をもう少し二、三号ほど幅を広げて、この俸給表適用せしめるとかいうような、そうした問題もひとつ一緒に検討していただくべきじゃないかと思いますから、注文を申し上げておいて質問を終わります。注文に対する御答弁があれば幸いです。
  90. 山中貞則

    山中国務大臣 外交官については、まさしくそのような問題が内在しておることを私も感じておりますが、大使特号については、国務大臣の経歴者である岡崎勝男さんだけがその対象となりましたものであって、やはり国務大臣のランクの中に入るものとして取り扱われた特号措置であろうと思います。しかし全般的に外交官のあるべき給与体系がどうであるかは、やはり検討する必要がありますが、一方サンドイッチまで交際費で食っているというような批判等を受けているようなことも、たいしたもんだと思うようなこともございますので、そこらの実態等と重責というもの等とよく勘案をして、やはりそれぞれのランクづけを検討することについては異存はございません。
  91. 受田新吉

    ○受田委員 そういう大使はけしからぬやつだ、サンドイッチはどうも三三。
  92. 天野公義

    天野委員長 午後二時、委員会を再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十二分休憩      ————◇—————    午後二時九分開議
  93. 天野公義

    天野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  一般職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律案特別職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法等の一部を改正する法律案の各案を議題とし、質疑を続行いたします。加藤陽三君。
  94. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 私、提案になりました議案のうちの防衛庁職員給与法の一部改正案について質疑をしたいと思うわけでありますが、法案内容の質問に入ります前に、自衛隊の生命ともいうべき隊員の規律の問題及び士気の問題についてお尋ねをしたいと思うのであります。  申し上げるまでもなく、自衛隊はわが国の最も強力なる武力組織であります。この隊員の規律が厳正でなければ、また士気が高くなければ、有事の場合には役に立ちません。のみならず、平時におきましては国民にとりまして無用の存在というよりも、むしろ有害なる存在ですらあるといわれなければならないと思うのであります。  先般いわゆる楯の会の事件がございました。これは、三島由紀夫氏の主宰する団体で、その世界に有名なる文学者である人の率いる団体でございまして、きわめて劇的な行動をとられた。そうしてその檄の内容を読んでみましても、自衛隊の存在そのものに関する基本の事項をひっさげて、自衛隊の内部においてそういう行動に出たのであります。この件が自衛隊に及ぼします影響は、私はいろいろな面で、きわめて大きいものがあろうと思うのでございますが、長官はこの事件についてどういうふうにお受け取りになりましたか。またこれについて、自衛隊に対して、何らかの手を打たれたとするならば、その措置をまずお聞きしたいと思います。
  95. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 三島事件はまことに遺憾な事件でございまして、再びこういう不幸な事件を起こさないように戒心をしたいと思います。  この事件に関しましては、いろいろな見方があると思いますが、三島由紀夫氏個人のああいう悲劇的な死に対しては哀悼の意を表したいと思いますけれども、公人といたしましては、ああいう直接的暴力的行為を容認するわけにはまいりません。戦後日本国民が営々として築いておる平和的、民主的な秩序をますます充実さしていくように私たちは努力しなければなりませんし、また自衛隊自体も、そういう平和的、民主的秩序下にある節度ある防衛力として、国民の期待に沿うようにしていかなければならないと思っております。しかし幸いなことに、ああいう事件にかかわらず、自衛隊の内部はいささかも動揺するようなことは、その後もございません。三島君のあの演説に対して隊員が見せた反応は、きわめて常識的な、バランスのとれた判断力を示していると私は思います。今後とも文民統制下における節度ある自衛力として、そして国民に期待され信頼されるような防衛力として成長するように心がけていきたいと思っております。
  96. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 ただいまの長官の御答弁によりますと、隊員には動揺はなかった、隊員の受け取り方は、大体長官から見られて妥当であるように思われる、防衛庁としては特別にこの事件についての措置はとってない、こういうふうに了解してよろしいですね。——その点それで了解いたしました。  次にもう少し具体的な問題についてお尋ねをしたいと思うのであります。実は私は、東部方面総監の益田君とは古い友人でございまして、彼の沈着、冷静しかも豪放な人柄というのは尊敬をしておるものでございますが、きょうは私情を越えてひとつお尋ねしてみなければならないと思うのであります。  第一は、東部方面総監の要職にある方が、その執務室において自由を束縛されたということは、これは自衛隊にとって私は非常に残念なことであったと思うのでございます。どういう事情でそういうふうなことになったのだろうかという点について、重ねてお答え願いたいと思います。
  97. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この事件直後、益田総監から私に口頭の報告がございましたが、それ及びその後の調査によりますと、三島君が、二日前であったと思いますが、電話で面会を申し込んできまして、そのいわれは、新しい学生を紹介したい、またあいさつもしたい、こういうことの由だったそうです。三島氏ほどの有名な人でありますから、それを承知して、そしてその約束の日の十一時ごろに、これから行くという電話もあって、それで待っておったそうです。それで玄関の立哨にも三島氏が来るからということで連絡をしておいた。それで自動車で乗りつけたものですから、立哨も許可をした。そして庁舎の前に来まして自動車からおりて、たしか業務関係の幕僚が案内をして総監の部屋に入れた。しかしその前に、軍刀を持っておったので、それは軍刀ですかというふうに聞いたところが、いやこれは指揮刀です、そういうことでそのまま通過させた。それで部屋に入っておのおのすわり合ったらしいのです。初めはそこはかとなく世間話みたいなことをして、学生を紹介した。学生にはうしろにすわっておれと言って、うしろにすわらせたそうです。そのうちに益田総監が、三島さん、それは軍刀ですかと言ったら、軍刀です、そういう物騒なものを持って警視庁からおとがめがありませんか、そういう趣旨のことを言ったら、いや、携帯証を持っておりますといって携帯証を見せたとかいうことでありました。関の孫六とかいうことで、お見せしましょうかというので、見せてくださいと言って刀を受け取った。そのとき、三島君が学生にハンカチを持ってこいと言って、ハンカチを持ってこさせて刀をぬぐった。そして渡したそうです。学生は、その刀を見ているときに、自分も一緒に見ておるようなかっこうをして総監を取り巻いて、そうして総監が刀を返したその瞬間にがっと押えて、一人が首を締め、他が手足を持って、そうしてやにわにくくりつけて口もきけないようにした。ばたばたして、冗談をするな——初めは冗談と思ったらしいのですけれども、冗談をするな、そういうことを言って、ついにいすにくくりつけられてしまった。そういう情勢でこの事件が起こったのでございまして、よもや三島といろ人がそういうことをするとは何びとも思わなかったのではないかと思います。電話もかけてきて、アポイントメントをとってきたことでございますから、油断もあったのでございましょうけれども、遺憾なことではありますが、まことにやむを得ない不可抗力に近い事態であった、私はそのように思います。
  98. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 その辺の事情はわかりました。  次にお伺いしたいことは、益田総監は縛られておったのでございましょうけれども、三島氏に演説を許したという点については、妥当の筋であった思いますか、そこらの点をお伺いいたします。
  99. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は当時、参議院で天皇をお迎えし、それが終わりまして、私の事務所で洋服を着かえておったときに、たしか十一時半ごろ幕僚長からその第一報が入りまして、そのときすぐ事務次官に連絡をしまして、犯人を逮捕しろ、それからこれは社会人の有名な人の事件で自衛隊員によるものではないから、できるだけ警察を表に出したほうが賢明だろう、そういうことを指示しておりました。それと、隊員に話をさせろということを聞きましたが、できるだけそれはさせるな、もしやむを得ない場合には幹部だけにさせることを考慮せい、そういうことをすぐ指示いたしました。それで防衛庁にすぐかけつけまして幕僚以下、次官以下を呼んで対策を練ったのでありますが、その当時はすでに幕僚副長以下八名が相当な深手を追って負傷されておりまして、それから三島君の要求書というものがばらまかれて中身がわかって、これはもう覚悟の事件である、それで異常な決意をもって、もし失敗した場合には益田総監を殺して自決するということがはっきり出ておったようですから、幕僚側がその場で判断をして、これはもう呼び集めて益田総監を救出する以外にないだろう、それをやれば殺害はしないし、事態をおさめる、そういうような感じを持ったのでありましょう。やむを得ずこの緊迫した事態を緩和するためにマイクで呼び集めた。私がそういう命令を出したときには呼び集めの行為に入っていた時期ではないか。それはもう現場の責任者の指示でやっておったと思うのです。そういうことをやっているということを私は庁舎へ行ってから聞きまして、その情勢全般を聞いて、それはやむを得ないだろう、そういうことを言明いたしました。ある雑誌でしたか新聞でしたか、私のところへ通知する前に沖繩にいる幕僚長に電話がいったとか通知がいったとかいう記事が載っておりましたが、そういう事実は全くありません。沖繩にいる幕僚長のところにいったのはそれよりずっと後刻のことでございます。
  100. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 いまの長官のお話はわかりましたけれども、その次にお伺いしようと思っておったのですが、実はあの事件については、これは明白なる現行犯であります。私の記憶によりますと、警察と自衛隊との協定で、自衛隊の隊内における犯罪については警務官が担当するようになっておったように思うのでありますが、あの場合に、そういう協定にかかわらず、自衛隊でなしに警察のほうに処理をさせられたという点について、もう一ぺん長官の考えを聞きたいと思います。
  101. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 あの事件が勃発しますと、直ちにあそこの警務隊長——名前はあとで正確に申し上げてもけっこうですが、二佐が部下をひき連れて現場へ急行しまして、取り巻いており、窓を破って中へ入ろうというようなこともやっておったようです。たしか警務隊が二個隊くらい行っておったように記憶しております。しかし私の判断では、あの時間だいぶ対峙しておりまして、まああの一行が内部でバリケードをつくって入れないようにしておったりしておったものですから、対峙しておった。若干時間があったようです。その間に私は、ともかく警察を表に出せ、自衛隊内部の自衛官による行為であるならば警務隊がいってやるのもいいけれども、あまりにも高名な、社会的な性格を持った人の事件であるから、警察と連絡がつきさえすれば警察を出すほうが賢明である、そういうふうに判断をして指示したわけでございます。それで事件勃発と同時にあそこの所轄の警察に東部方面総監部から通知がいったようであります。それから一一〇番を使ったというのもございます。それからあらゆるルートを通じて警察に知らせるという行為をやったのです。正式のものはあそこの牛込警察でございますか、そこへ東部方面総監から急報が直ちに入っているのでございます。
  102. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 いまの問題につきましても、これは長官のお考えだということならそれでいいのですが、そうしますと、今度の事件について、益田総監の行動につきましては、長官は、何も責任はない、彼としてはやむを得ざる事態であったというふうにお考えになりますか。責任ありとお考えになりますか。
  103. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 行政上の問題としては、あれはほとんど不可抗力に近い問題で、私は責任を追及する気持ちはありません。やむを得ない事態であって、あれだけの高名な人がああいう手続で入ってくれば、だれでもああいうふうにやられるだろう、むしろ彼が縛られながらも、非常に沈着に三島君に対して命を大事にしろとか、あるいは自刃後学生に対してお参りをしなさいとか、あるいは自首をしなさいとか、非常に沈着に冷静にああいう誘導といいますか、勧告をしたということは、相当胆力のすわっている人間ではないか、そう思います。しかし、ともかく自衛隊の内部でああいう事態が起きたこと自体はまことに遺憾でございまして、この点は今後ともそういう事件を起こさないように大いに戒心しなければならない、かように思います。
  104. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 次にお伺いいたしたいのは、楯の会と自衛隊との関係でございますが、巷間いろいろ新聞や雑誌で書いておられますが、実際のところ防衛庁ないし自衛隊と楯の会とはいままでどう関係があったのでございましょうか。
  105. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 楯の会といいますのは三島由起夫個人を中心とします学生の集まりでございます。防衛庁とは特別の関係はございません。体験入隊を何回かやっておりますが、これは三島氏からの依頼によりまして、一般に体験入隊をいろいろな団体の方にやっておりますが、それと同じ意味で体験入隊を何回か許しているという関係はございますが、隊そのものと自衛隊との関係があるということはございません。
  106. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 体験入隊のことにつきまして、いつ何日間くらい入隊したか、また入隊中にどういう作業といいますか、体験をさせたかということについてお答えを願いたいと思います。
  107. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 楯の会と称する学生グループの体験入隊の実績で申し上げますと、約四週間程度の体験入隊を五回ばかり富士駐とん地滝ケ原分とん地でやっております。それから三日から七日程度の、数日程度の体験入隊は、やはり富士駐とん地滝ヶ原分とん地で五回程度やっております。また、ごく短い時間ですが、二時間程度の体験入隊を、これも五回程度市ヶ谷駐とん地でやっております。大体一回に人数にしまして二十人から五十人程度でございます。体験入隊して訓練した内容は、訓話とか一般服務とか、通信とか、地図判読とか、体育とか行進、武器見学、そういった種類のものでございます。
  108. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 今後防衛庁におかれましては、体験入隊——いまのように一つの団体がたいへんだびたび体験入隊している、これも必要があったのかもしれませんけれども、体験入隊についていままでのようなやり方でいかれるか、この際体験入隊という制度またはやり方を検討するというお考えはありますか。その辺お聞かせください。
  109. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 体験入隊は、先生御承知かと思いますけれども、もう十何年前から一般の会社の方とか、警察とか消防とか役所とか、いろいろな方が、特に若い人たちに集団生活を体験させたいという御希望があり、また自衛隊のほうから見ましても、そういう方々に実際に自衛隊の中に入って隊員と一緒に食事をしたり、ふろに入ってもらうということで、自衛隊を理解してもらうために非常に効果があるというふうにわれわれは考えまして、できるだけ御便宜をはかっております。  件数にしますと二千数百件、人数にしまして十万人近い人たちが毎年体験しておられます。非常に自衛隊の理解のためには効果があるというようにわれわれは考えております。したがいまして、一般的には体験入隊の制度は今後も続けてまいりたいと考えております。ただ、三島氏を中心とする楯の会、先ほど申し上げましたような回数がございましたが、これは世界的に有名な三島氏から依頼されて、今度のような事件のことは全く夢想もしませんで便宜をはかっております。これは全く楯の会と特別な関係なしに、三島氏の依頼という特別な要請でやったことでございまして、こういう事態が今後出るとも考えられませんし、一般的には体験入隊を続けてまいりたい。しかし、もちろんこういうこともございましたから、今後ケース・バイ・ケースで十分調査検討はしなければいかぬ、かように考えております。
  110. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 大体、昨年の例でもいいのですが、体験入隊の人数、件数はどれくらいあるのですか。
  111. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 四十四年度で件数で二千五百四十七件、人数にしまして九万三千五百人、四十三年度で二千六百件、九万八千四百人ばかり、こういう状況であります。
  112. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 相当たいへんな人数が体験入隊していらっしゃるようでございます。そのこと自体は問題ないかもわかりません。しかし、今回の三島氏のような事件がありますので、私は今後の体験入隊の運営につきましてはよく慎重にお考えになる必要があるのじゃないかと思うのでございます。  もう一つ、この事件について関連をしてお伺いをしたいのは、事件のありました翌日かあるいはその翌日か新聞で見たのでありますが、愛国党総裁ですか、赤尾氏が、のぼりを立てた車に乗ってきて防衛庁の構内で演説をやったというふうな記事が出ておりましたが、これは事実はどういうことでございましょうか。
  113. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 日本愛国党の赤尾敏が防衛庁に参りましたときの事実関係を申し上げますと、十一月の二十七日でございますが、午後二時ごろ赤尾敏が数名の者と宣伝カーに乗りまして防衛庁の正門に参りました。そうして長官に会わせろということを言ったわけです。当時正門の守衛に当たっておりました警備係長、いわゆる守衛さんですけれども、正門のとびらを閉じまして中にはすぐ入れなかったわけです。それで入りたいということにつきまして条件をつけまして、宣伝カーを外に置きますと交通のじゃまになりそうなので、すぐ横に入れるが構内では放送はさせない、その他当庁の指示に従うことという条件をのませまして、赤尾のほうはその約束をしましたので、宣伝カーを正門から内側に一たん入れまして、そこに哨舎がございますが、門のすぐそばですが、そこへ停車させて下車するように指示したということでございます。前にも赤尾敏が来たことがございまして、警備係長が似たような行動をとりましたときには、約束を守って庁内で放送するようなことはしておりません。警備係長としてはそれで約束を守ってくれる、こう思ったようでございます。しかし、中にちょっと入りましたところで突然マイクを持ち出して放送を始めましたので、警備係長は、二人おりましたけれども、直ちに放送を中止するように何回か言いまして、同時に今度は物理的に引っぱりまして下車させたという事実でございます。しかし、その間約三分にわたりますけれども、そういう行動をとっている間に赤尾は門のすぐ入ったところでスピーカーを使って放送した、こういう事実がございました。  以上が事実関係でございます。
  114. 佐藤文生

    佐藤(文)委員 中曽根長官に三島事件についての関連質問をいたします。  長官は、若い集団の自衛隊の最高指導者であると同時に、大学教育にも関係されている、そういう立場でありますので、三島事件についての影響力と申しますか、そういった認識についてお尋ねをしたいと思うのです。  その第一点は、三島事件についての国際的な反響について、私は私なりに調査をいたしたのですが、長官も御存じのコロンビア大学の助教授であるジェラルド・カーチス君を直ちに私呼びまして、アメリカにおける反響というものは一体どういう反響か——彼が取り寄せたニューズウイークとかあるいはその他の新聞あたりではトップにこれが載りまして、非常に大きな影響を与えた。隣国の韓国においても週刊誌あるいは新聞においてはトップに扱って非常な大きな影響を与えております。しかし、その内容を聞いてみますと、アメリカの一大学生は、ケネディだってこういうことがあったのだ、こういうことがあるのだからたいして影響はないよ、こういう返答がはね返ってきている面もある。しかし、かつて長官がアメリカに行って、日本に軍国主義が復活しつつある、あるいはフィリピンに革命が起こりそうになる、あるいはマレーシアに暴動が起こりそうになるといったようなアメリカの一国会議員のレポートの内容に示されておる日本の軍国主義復活について、それを払拭してきた、こういうことをされたのですが、この事件が一部のアメリカの有識者の中に、やはり日本に軍国主義というものが復活しつつあるのだということを言っておる面も出てきました。また、これだけ経済的に復興し、大きな経済大国になった日本のこの姿の中においても、自決という、介錯という、野蛮的な行動が日本人の中にあるのだという痛烈な批判もアメリカの一部識者の中から出てきました。韓国においては、日本の軍国主義の復活と同時に先般われわれが行ったときに李東元が、金持ち必ずしも尊敬せずということばがある。日本という国は経済大国になったが、今後チンピラな国になるのか、われわれが尊敬する国になるのか見守っていきたい、こういう討論まで李東元の発言の中から出てきました。こういったような中でこの事件が起こりましたので、国際的な反響についてどのように認識をし、今後防衛庁長官として、また一政治家として中曽根長官は、そういう反響に対してどのようなお考えを持っておるか、それが一点。  それから国内的な反響でありますが、自衛隊員にはさして影響がない、非常に冷静である、あなたは公人として、防衛庁長官としてお答えになったと思いますが、私は逆な立場を持っております。私は若き世代の者に深刻なショックを与えていると思います。現にあの事件が起こりました翌日、議員会館の私の部屋に京都の産業大学の学生が二人飛び込んできました。三島に続くといって自決のかまえで飛び込んできました。あるいは長崎大学からそういった学生が授業中抜け出してやってきた。あるいは北海道の高校生の生徒会長は、三島事件で討論しようといって生徒を集めたけれども、反響がなかったので自決未遂をやってのけた。その他数件が若き世代の者に三島事件のショックとして出てきております。私はこういったような若い世代の者に与える影響というものは、長官が考えておられるような簡単なものでないという認識を持っておるのですが、この点についてどういう認識を持っておられるか。また政治家中曽根康弘氏として、若い世代の者にこの事件をどのように指導し、それを自衛隊の中に生かしていこうかということを、公人という公のことばをひとつ脱ぎ捨てて、中曽根康弘氏として真剣にこの問題についてのお考えをお聞きしたい、こう思っております。
  115. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 三島事件の国際的反響につきましては、地域によって若干違うように思われました。アメリカの反響は、当初は三島君をよく知っている人から取材したものが多いために、非常に美術的に、美学的にとらえた個人的事件としてとらえて、わりあいに軍国主義とかいうような感じのものは入ってこなかった。むしろ日本の特派員がその後いろいろな人に聞いたりして、日本の特派員の感じも入ったものは軍国主義とかなんとかいうものがその次の段階に入ってきました。しかし、その後ニューズウイークやタイムやそのほか全般を見てみますと、大体経済成長で近代化した日本にまだこういうものがあったのか。腹切りというものと、それから介錯というものが非常に大きなショックを与えて、ある意味においては日本はまだわからぬ国である、こういうような印象を与えておるようです。そういうようなことは一部の人たちに、日本軍国主義化するという材料に使われる危険性はかなりある、そのように思います。それから、ヨーロッパ方面の影響は、概していうと、封建的な日本あるいは軍国主義の危険性がある日本というような印象をやはり与えておるように思いました。東南アジア近隣諸国の関係は、やはりそれと同じように、腹切りとかあるいは介錯というような問題が、さむらい日本、軍国日本という過去の大東亜戦争のイメージをやはり少しゆり動かして起こしておる、そういうことを憂えております。これらはやはり日本にとっては非常にマイナスのことでありまして、われわれは、あらゆる機会を通じて現在の平和化し、民主主義化している日本の実相を伝えなければならぬと思います。しかし幸いに自衛隊が、クーデターを三島君がやろうとして、それに関して全然かかわりがなかったということはよくわかっておるようですし、またアメリカやそのほかの識者の間では、軍国主義的でないことを憤慨して三島君は切腹したんだ、つまりそれは、軍国主義化してないというのが日本の一般的な姿であるというふうにとっている向きもかなりあるようです。ですから、これは受けとめる人の頭の水準とか認識力によってかなり違いますが、われわれとしては、やはり外国に非常に誤解を与えているという危険性を前提としていろいろ考えていかなければならぬというように思います。  国内的な影響は、私はいろんな人と会って話を聞いてみましたが、私の友人がこういうことを言うのです。青年実業家で、こういう問題に関心のある人ですが、自分が調べたところでは、日本の年齢層を全部調べてみると、一つのパターンがある。明治生まれで、明治四十年前に生まれた人は、日本にまだこんなやつがいたか、あっぱれなやつだという、やや感嘆の声が明治のお年寄りにはかなり強い。それから大正生まれで、われわれと同じゼネレーション、戦争に行ってきた人間は、やはり非常に深刻な精神的ショックを受けた。なぜなら、お互い戦争に行ってきて、いろんな体験をしてきておるから、そのショックはわりあいに純粋に入ってきておる。ところが昭和生まれの昭和十年ぐらいまでの人たちは、あそこで死なないで、総理大臣官邸でやったらどうだとか、あるいは防衛庁長官のところへ行ったらどうだとか、そういう場所とかテクニックの問題がかなりある。それがまあ大体昭和十年前後の者である。戦後派になると、まつ二つに割れていて、ナンセンスと一言で片づける層と非常に深刻なショックを受けた層と、まつ二つに割れてきている。中間層がない。そういうことを私に言うのを私も聞きまして、私もいろいろな人に聞いてみると、大体そういうような傾向があるように思います。したがって、青年層に対しては、われわれの予想以上にある深刻なショッを与えておる事件であって、これは三島君も前から言っておりましたが、思想とか精神という問題は、その当座はきき目はないけれども、しかし十年か二十年後にわかればいいんだ、本人もそういうことを言っておったようですけれども、ある程度の懐妊期間を持って、その間に人間がみな自分のことを自分で考える、その問題を考えてくると、やはり思想史的な事件としてはかなり重要視しなければならぬ事件、そのように私は受けとめております。
  116. 佐藤文生

    佐藤(文)委員 私は、いまの長官のお話で、さらに突っ込んでお聞きしたいのですが、いまの長官のお話だけでは、まだ私はもの足りないのでございます。私は、この機会に、三島事件が起こした影響というものを重大視して、どのように若き世代の者を指導するかという政治家としての発言がほしいと思います。私は、この三島事件は、戦後二十五年の経済繁栄を続けた陰には、経済人のたゆまざる努力、労働組合員の一生懸命働いた労働力あるいはテクノクラートに代表されるような技術革新を中心とした、そういうエネルギーが戦後の新しい日本をつくり上げたが、昭和元禄になった、この時代に、人の心にどことなく風が吹き込んでおる、それを三島事件は鋭いやいばで突きつけた、こう私は解釈します。その頂点の国家の秩序というものに対して、もう一回考えたらどうか、こういうことを私は教えたんじゃないかと思うのです。  そこで長官は、国家の秩序というものは一体どういうことなのかということを、いま一回私はここで若い世代の者に教えてやってほしい。私は私なりに、国家の秩序というものは、三島理論の中にあるような神、天皇絶対制そのものの中から生まれる国体というものではなく、一人の市民の中から生まれる連帯感の中から新しく国家秩序をいまこそ生み出さなければならぬ、そういうことを教えるべきではなかろうか、そういうことを洗い直す必要があるのではないだろうか、こういうように私は三島事件から考えるのでありますが、国家の秩序に鋭いやいばを突きつけた三島事件について、国家の秩序についての長官のお考え方をお聞きしたい、こういうふうに思います。
  117. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本は、憲法によって思想の自由が保障されておるのでありまして、憲法や法律秩序に違背しない範囲内においては、何人も自分で思想し、思索し、考えを持っているということは自由であります。しかし、これが直接行動に出て、社会に対してある限界を逸脱するということは十分規制されているところです。それで、やはり日本全国民が基礎法である憲法というものをみなで約束して、そのルールでやっていこうということで国家の基礎は法的にはできている。したがって、そういう基本的ルールというものを守っていくということは、国民として最も大事な仕事である、責任であるそう思っております。どんなにえらい人であろうと、どんなに世界的に有名な人間であろうと、国民としてのルールを守るということは、国民である第一義であると私は考えます。それは身分や有名度によって差別があるべきではない、それがほんとうの平等であると私は思います。法の前の平等ということは、この際厳然として維持されなければならぬと私は思います。  それで、私は、あの事件が起きたときに、新聞記者会見をしまして、やはり平和的、民主的秩序を乱す直接行動はいけない、そういうことを言いましたけれども、それは、あの二・二六事件が起きましたあとに、あのときに陸軍は、二・二六の将校たちと妥協しようとしたり、取引しようとしたり、いろいろいたしました。そういう政府側の不明確な態度が、ついに大東亜戦争にまで軍人の横暴を許した形に伸びていってしまったと思うのです。私はそれがすぐ直感にきまして、これは政府としては右か左かはっきりしなければいけない、そういう直感を持ちましたものですから、こういう直接行動は断固糾弾しなければいけない、そういうことを言ったのです。その結果、ずいぶん私のところにいろいろな人から電話があって、おまえは三島に冷たいじゃないか、おまえを見そこなったとか、二晩くらい寝られないくらい電話がありました。ありましたけれども、やはり国家というものをみんながつくっている以上は、基本的ルールは、どんなえらい人であろうと、どんなお金持ちであろうと、権力者であろうと守らなければならぬ。法の前の平等ということを、やはり厳然として為政者は貫かなければ国がもたないというふうに感じているわけです。しかし思想の問題となると、これは個人の心の内容の問題でありまして、他人が制肘すべきものでありません。私は三島君の考え方というものは、彼の本を読んでいるから知っているつもりでございますけれども、たとえ彼の思想というものは理解することができたとしても、直接行動を容認することはできない。そういうことは、やはりはっきり申し上げておかなければならないと思うのです。しかし、これを思想的な面から——私は拓大でこの間総長講演で言ってきたことでありますが、それを公人を離れて一学究の徒としてこの問題を取り上げてみた場合には、これは相当日本の思想史、精神史に影響する問題であります。戦前でいえば、昔は徳川時代の「大日本史」の水戸光圀とかあるいは賀茂真渕、平田篤胤とか吉田松陰とか、あるいは戦前においては東大で憲法を講じておられた筧先生とか、あるいは戦後においては三島君であるとか、そういうふうに吹き出てきている感じがある。それくらい影響力と力を持った思想史的な事件である。これを美学的な問題としてとらえてはならぬ。それは彼の本を読めばわかることである。彼は陽明学を信奉してやったことでございます。そうういうように私は感じまして、この問題をどういうふうにこなしていくか、正しく青年たちを善導していくかということは、非常に深い姿勢で、そして非常に深いおもんばかりを持ってやっていかなければならぬ。単なる形式的なことやあるいはその場限りのつじつまを合わせるようなことだけで済む問題ではない、そういうふうに思います。やはり青少年に与えた一つの大きな問題があるわけです。その問題に対して正しい解明が与えられる、これは政治家も全国民も一生懸命になって協力して青少年のためにいい解明をしていかなければならぬ、そういうふうに考えておるわけであります。
  118. 佐藤文生

    佐藤(文)委員 最後に。長官もかつては関係しておられて、いまでも指導的な関係にある日本青年会議所において、二十代から四十代の経済人の集団でありますが、この問題の直後、国家問題として数日間検討会を行ないました。その中で、若き者がこの事件に共感するところがある、どういうところだろう、そういう討論の中から出たのは、あの檄の中に「戦後の日本が経済的繁栄にうつつを抜かし、国の大本を忘れ、」「政治は矛盾の糊塗、自己の保身、」偽善等々、日本の伝統が失われつつあることに歯がみしている。「われわれは四年待った。最後の一年は熱烈に待った。もう待てぬ。自ら冒涜する者を待つわけには行かぬ。しかしあと三十分、最後の三十分待たう。」という檄文、そういう国の政治に対する激烈なる檄文の内容の面に三島の認識に対する一つの評価がおぼろげに若い世代の中にあります。しかし、いま長官が言われた同感の点は、こういった右翼的な思想と言ってもいいと思うのですが、共感はできないのですが、この事件が日本の歴史の中に残したどす黒い血というものは私は十分に気をつけていかなければならない、こういうぐあいに思います。そこでこの若き世代に風が吹き通っていく、空虚な気持ちを持っておる青年が非常に多いということです。その多い青年の指導というものに自衛隊を通じて長官は一大躍進をして強い姿勢で指導してほしい。ということは、具体的に言わなければいかぬと思うのです。真の民主主義というものはやいばは不要であるということ、市民の連帯感を形成した根強い苦しい戦いの中から新しい民主主義というものが生まれてくるのだということを自衛隊員に強い姿勢を持って長官は御指導をお願いしたい、これが与える影響というものは大きいと思いますので、長官のお考え方に私は賛成をいたしまして、私の意見を述べて関連質問を終わりたい、こう思っております。
  119. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いまの点に関連しまして青少年にというおことばでございましたから、私の考えをもう少し述べさせていただきますと、三島君の考えは、思想のタイプから見ますとやはり尊王攘夷的なものがあると思うのです。幕末の尊王攘夷というような思想は、外国の侵略とかあるいはいままでの封鎖国家というものから出たおびえというものが私はあるだろうと思います。そういう中に生まれた思想は非常に純粋度も高いし、きらめくようなところもありますけれども、明治になって開国をして、西洋文明を取り入れて外国に追いつこうという姿勢をとってきたときには当然ぶつかるわけです。そういうものが神風連に出てきたので、三島君はこれは本にまで明らかに書いております。しかし明治の時代がばかな時代でだめな時代であったかというと、ちょっとそうは思えない。やはり西洋文明を取り入れて近代化をやるために、いろいろな事件もあったけれども、日本民族は明治天皇の指導のもとに非常な努力をして、近代性を取り入れて、日本民族の偉大な消化力が外来文明を消化して明治文明をつくり上げ、世界の一流国家に入ろうとしてきたわけです。これが今日東南アジア諸国から敬愛されている一番のもとであります。明治がなかったら日本は尊敬されていないと思うのです。そういう貴重なものをつくり上げたのは、外来の文明を取り入れて近代国家をつくるということであっても、士魂商才といわれるように、昔からの日本固有の精神を基調にしてそれが行なわれたということではないかと思うのです。  それで今日の時代になりますと、日本は国際関係を離れては存在し得ない国になってきているわけです。これだけ経済成長したのも、いろいろ外国から物を入れて、付加価値をつけて、また外国に輸出して、貿易で生きておれる国であって、日本の存立は国際関係であるといっていいわけです。だから尊王攘夷というような考え方でいったら日本はなかなか存立しにくい。そういう日本固有の純風美俗と国際関係とを現代版においてどう調和させていくか、そういう努力をなすべきなのであって、片方だけの主観主義によって分析していくということがはたして日本全国民にとってそのまま適用さるべきかどうか、疑問な点がそこにあります。  第二には、平和を維持するということが無上の命法になって世界人類に要求されてきております。核が出てきて平和共存という形にそれがなってきた。平和共存という形は、人類が生存していこうという生存本能からそういう英知が生まれているのかもしれません。動物が迷彩したりカムフラージュして生き残ろうとすると同じように、核抑止力や部分的核停条約にすらそういうものがあるのじゃないかとも思われます。そうすると平和共存の世界というものは、さみだれみたいな、曇天でグレーブな中にも生き抜いて新しい時代を待ち望んでいかなければならない。そういう非常に沈うつな、そしてあいまいな時代に耐えられないのが潔癖な人でしょうけれども、それを耐え抜いていくところに次の人類の新しい光が出てくると思うのです。  そういう核抑止力下における平和維持という問題や国際関係を離れて日本は生きていけないということを国民諸君によく認識してもらって、そして明治の同胞が外来文明をみごとに消化して明治時代をつくったように、今日のわれわれが同じような形で外来文明も消化するし、新しいわれわれの戦後の時代をつくり上げていくという理想に向かって邁進しなければならぬ。それには世界的な、国際的な視野を広めて、日本の座標の位置がどこにあるかを認識させれば新しい勇気も生まれてくるだろうと思うのです。そういう点についてわれわれは大いに国民諸君と語り合うべきである、そのように考えております。
  120. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 それでは、これから法案内容について質問していきたいと思います。  まず今回の改正案で二等陸海空士、二万五千百円、営外手当七千三百三十円というのが出ておりますが、この根拠を教えてください。
  121. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 先生も御承知のように、自衛官俸給表は二士の場合をとってみますと、公安職(二)の七等級一号を基準にしております。この基準号俸が今回一般職におきましても格段の改善をはかられておりまして、二万九千五百円になっております。これに対しまして超過勤務手当相当額二十一・五時間を加算しまして三千三十一円、さらに従来地域手当と申しましたが、調整手当を加えまして四百二十五円で一応本俸を考えまして、隊内に居住します関係で一般の私生活相当の経費が節減されますので、その分として食事分の六千五百十六円と、営舎経費分八百十四円並びに医療費分五百二十六円というものを控除しまして、合計約二万五千百円ということになっております。この改定は、先ほど申し上げましたように、一般職のほうで公安職の俸給表が格段の配慮が加えられておりますものをそのまま準用いたしておりますので、したがいまして、中堅以下の自衛官俸給表、特に曹士の俸給表が、今回また格段の向上をいたしておるということになっております。先ほど申し上げました控除額の食事分六千五百十六円、営舎分八百十四円というものを加えたものが営外手当となるわけでございます。
  122. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 そこでお伺いしたいのは、隊員の食費は、いま一日幾らですか、月に何ぼですか。
  123. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 手元に資料がございませんが、新しく改定になりますのは二百九十八円でございます。
  124. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 二百九十八円としますと、隊員の給料計算から差し引かれた金額は、これはボーナス分も加えなければいけないと思いますけれども、大体二百九十八円全額が隊員の負担ということになるのじゃないですか。
  125. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 二百九十八円ということになりますと、一カ月三十日としまして、八千九百四十円でございますが、そのうちの約七一%余りの六千五百十六円を、本俸の計算をする場合に控除いたしております。したがいまして、毎月の給与そのものから申しますと、糧食費の約七割程度が個人負担で、約三割近くが国の負担ということで俸給表は作成されております。しかしながら、御指摘のように、それがボーナスのほうにはマイナスにはね返ってまいります。一方、調整額とか地域手当というようなものがボーナスの場合にはプラスにはね返ってまいりますので、全体として年間給与を考えますれば、従来の、ここ数年間とってまいりました給与改定方式と変わっておりません。特に改悪されたというようなことはございません。
  126. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 いまの二百九十八円で計算しますとそういうことになるわけですが、私問題にしているのは、やはりこれはボーナスにはね返るということなんですね。実際上は、隊員が隊内で食事をする負担が、給料の中からほとんど引かれているということになると思うのです。これは、隊員として必要なカロリーを供給しなければならぬですけれども、もしも自由にカロリーをとるとすれば、自分で好きなものが食えるわけですね。ところが、隊内では、献立をきめて、強制的ということばは悪いですけれども、そういった食事を与えられる。にもかかわらず、その費用を全額給料から差し引くというのは、私は、隊員のためを思って、これは長官ひとつお考えいただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  127. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は、私もかねがね考えておるところでございまして、改善に努力したいと思っております。
  128. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 その次に、営舎費の八百二十円ですが、これは現在国費のほうで光熱水料とか——この前長官は、部隊を回ってみたところがトイレットペーパーを私費で出しておったというようなことをここでもおっしゃっておりましたが、そういうふうなものは、全部、隊員の給料計算の中から差し引いたものでまかなうということになっておるのですか。
  129. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 営舎費のほうは、従来から、ここ数年間、大体三分の二を個人負担、三分の一が国負担ということで、この八百十四円というものが計算されております。
  130. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 そうしますと、営舎費八百二十円で長官のおっしゃったことは今後なくなるのでしょうか。これはだれにお尋ねしたらいいのかわからないけれども、経理局長か、人事局長か。トイレットペーパーなども全部国のほうで支給してやれるようになりますか。
  131. 田代一正

    ○田代説明員 ただいまの御質問は、営舎費等々の問題に関連した御質問だと思います。これにつきましては、御案内のとおり、四十五年度予算におきまして相当大幅な増額をいたしたわけでございますが、まだ十分ではございませんので、今後とも、毎年、細心の注意を払いながら増額につとめるということをやっていきたい、かように考えております。
  132. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 ぜひそういうふうにお願いしたいと思いますが、次に、給料の計算の中で医療費を五百二十六円差し引いてあるわけですね。これはどういう根拠で五百二十六円という金額を出されたのですか。
  133. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 従来から、医療は国が負担するものであるという前提がございます。したがいまして、自衛官が病気になりました場合の療養費はすべて国が負担いたします。しかしながら、一般の健康保険法にしましても、あるいは共済組合法にしましても、やはりある程度個人が負担するという基本原則がございますから、その基本原則を自衛官の場合にも当てはめまして、年間疾病率、それに要する療養経費等を全般的に把握しまして、おおむね俸給表に対して千分の二十四程度の額を俸給から一応控除しまして、一方、国庫負担金も加えて医療関係の経費に別途予算として計上いたしております。
  134. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 まあ千分の二十四ということですからそんなものかもしれませんね。  ときに、これに関連いたしまして、現在の自衛隊の隊員の衛生状況と申しますか、病気の状況はどのようになっておりますか。
  135. 浜田彪

    ○浜田説明員 ただいま御質問の自衛隊員の健康の状態はどうだろうかということでございますが、いろいろな指数をあげることができるわけでございますが、一例として、隊員が隊務を休んでおる率というふうなものを一応の資料として考えますと、昭和三十三年には隊員千人当たり二〇・五という数になっておりましたものが、昭和三十六年度が一五・八、昭和四十年度が一二・三、それから昭和四十四年度が、一番新しい数字でございますが、一〇・四ということで、三十三年に比べますと約二分の一程度に減っております。したがいまして、隊務を休んでいる者の数は年々減少の傾向にある。したがいまして、この数字だけをとりますと、一応健康状態は全体としてはよくなっているというふうに判断されるのではないかと思います。
  136. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 たいへんけっこうだと思うのですが、隊員の病気の種別、どういうふうな病気が多いのですか。
  137. 浜田彪

    ○浜田説明員 この休んでおります患者さんの疾病分類を、一体昭和四十三年度を例にとって率を出してみますと、最も多いのがかぜ引きでございまして、これが約四二%でございます。それから下痢等の消化器疾患が二番目でございまして、これが二一%、したがいまして、六割ちょっとの大部分のものはかぜ引き、下痢等の疾患でございます。こういったようなものが大部分を占めておりますために、わりかた早くなおる、したがって勤務率としては改善の傾向にある。これに比べまして、結核でありますとか、あるいは新生物のような慢性の疾患は比較的少ないというようなことが言えると思うのであります。  ただ、不慮の事故が第三番目に位置しておりまして、これが疾病の中の約一三%という数になっております。
  138. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 次に、私一つ大きな疑問があるのです。というのは、今度の給与は五月一日にさかのぼって施行されるわけですね。そうすると、隊員は、新しい給与をきめられましても、その中から、いまのお話ですと、食糧費にしても営舎費にしても医療費にしても、五月から差し引かれるんですよ。いまさらこれを追加するわけにいかぬですね。これは具体的に隊員にどういうふうに還元しようと考えていらっしゃいますか。
  139. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 御指摘のとおりでございますが、従来からも、方法としましては、これまで控除しました糧食費を、給与改定以後来年三月まで、年度末までの間に、この額全体を割り振りまして、相当糧食費の改善になりますが、こういう方法で全額を隊員に分配するという方法をとっております。
  140. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 私、いままでもそれに近いことをやっていらっしゃるということは知っているのです。ただ今度の場合、五月にさかのぼるわけでしょう。これはたいへんな金額ですよ。これを十二月、一月、二月、三月で消化できるかということを疑問に思う。思うからお尋ねするのですが、どれくらいの金額になりますか。
  141. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 先ほど申し上げました六千五百十六円相当分の十一・二倍というものが、糧食費として一月以降隊員に分配すべき予算になります。したがいまして、今回非常に額としては大きくなりますので、特に正月とか、その他創隊記念日とか、そういうものの際に、十分糧食費の質の面を配慮しまして、できるだけ隊員に全額はね返るような方法をとってまいりたいというふうに思っております。
  142. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 これはもし自衛隊に組合でもあったら、当然たいへんな交渉問題になる事項だと思うのです。いま急にはお答えができないかもわかりませんが、これくらいの財源が隊員に返すべきものであって、この三月までにどういうふうに隊員に還元するかという具体的な計画を、防衛庁の名においてぜひ私にお示しいただきたい、これをお願いいたします。  その次に、食糧費の問題でありますが、これはこの前も申し上げたことがあるのですが、いまのように隊員の給与計算から食糧費を差し引く、しかも残飯が出るということになると、やはり隊員としては何か損をしているような気になると思うのですね。前に私が防衛庁におりましたときから考えておったのですが、昔の軍のように委任経理というやり方はとれないものでしょうか。これは経理局長にお願いします。
  143. 田代一正

    ○田代説明員 旧軍隊に委任経理という制度がございまして、私も実は昨晩古い文書をさがして勉強をしたわけでありますが、明治二十三年の法律でございます陸軍給与に関する委任経理の件、法律になっております。この経理のしかたは、主として給与関係について、行なわれる経理でありまして、給与の定額を部隊に交付して、その経理を給与実施の責任者である部隊長に委任するということであります。したがいまして、一種の渡し切り経費みたいなかっこうになりまして、予算の支出というものがかなり弾力化するという問題であります。もう一つは、たとえばさっき御指摘がございましたように、残飯問題でございます。その売り払い金が出ますと、それをまた使うことができるという、二つに特色があったように考えられるわけでございます。  そこで、いま御指摘の残飯という問題が出ておりますけれども、これは実を申しますと、現在の財政会計法規の考え方から、昭和二十二年にできました財政法に従ってやっているわけです。その第十四条におきまして予算総計主義というのがあります。これは従来、ともすれば財政を乱すもとである歳入、歳出を混淆するということのないようにということで、その年度中の歳出は全部歳出にあげる、歳入は全部歳入にあげるという立場がとられております。そういう点もございまして、確かにおっしゃった問題につきましては、今後検討する問題が幾つかあろうかと思いますけれども、そういう一つの財政法規的なものの考え方からいって、そういった税外収入というもので歳出をまかなうということはいろいろ問題があるというぐあいに現在の段階では考えております。なおこの点につきましては、今後とも検討さしていただきます。
  144. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 次にお伺いしますのは、今度航空手当が増額になっておりますが、私疑問に思いますのは、航空手当の引き上げはどういう理由でおやりになったのか。とにかくいいことだと思うのですよ。いいことだと思うのだが、同時に同じような手当、乗り組み手当とか落下傘の隊員手当とか、こんなものがあるわけですね。これはやはりほかの事情はいろいろありましょうが、部隊内の給与として見た場合に、航空手当だけ引き上げてほかの手当は引き上げないということは、隊の規律上いいことでしょうか。この点をお伺いいたします。
  145. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 今回の航空手当の改善は、一般職の乗り組み手当改正と歩調を合わせまして改正したものでありまして、その他の艦船、潜水艦乗り組み手当とか、あるいは空挺隊員の落下傘降下手当というもののベース改定とは関係ございません。今後予算の面で配慮していくべき問題でございます。ただ、乗り組み手当とかあるいは潜水艦乗り組み手当というものは、隊員の現在受けておる本俸に対しての率でございまして、毎年毎年本俸の平均額がかなり上がってきておりますので、その点、航空手当が初号俸に対するものであるとの比べてだいぶ差がついてまいりますので、実質的には乗り組み手当はかなり改善されておるということは言えると思います。
  146. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 その点わかりました。ただ、落下傘手当のようなものは人事院で研究しようにもしようがないわけですね。やはりこれは防衛庁自体でお考えにならなければいけない問題でありまして、来年度予算で増額になるのでしょうから、その点期待しております。  その次にお伺いしたいのは、今度の俸給表で事務次官と統幕議長は幾らになるのですか。
  147. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 事務次官は現在指定職の甲の五号俸になっております。統幕議長も同じでございます。これが新たに指定がされまして、指定職の甲六号になります。現在甲の五号は本俸が二十九万五千円でございます。これに調整手当も六%つきますが、新たに指定がえを受けまして、新しい本俸は三十八万円、これに調整手当が八%つくということになります。
  148. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 これはひとつ長官にお聞きしたいのですが、統幕議長は、長官も御承知と思いますが、防衛庁設置法の中で、陸海空自衛隊の最高位とするということが書いてあるわけですね。さっきもちょっと特別職ですか、検察官の俸給表を見ておりましたら、検事総長は別として、次長検事が三十九万円ですね。三十九万円で認証官になっておる。統幕議長の待遇というものは、長官、もう少し考えられぬものですか。自衛隊の士気の上にもこれは非常に影響するのではないか。もっと端的に申し上げますと、統幕議長を認証官にする、あるいは給与を引き上げるというようなお考えはいかがでしょうか。
  149. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 同感でありますので、努力してみたいと思います。
  150. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 時間がなくなりましたので、最後に一つ。住居手当が今度新設されたことは非常にけっこうだと思うのでありますが、現在の自衛隊の、防衛庁の公務員宿舎の充足状況、これはどういうふうになっておりますか。
  151. 田代一正

    ○田代説明員 ちょっと手元に資料がございませんが、現在のところ、おおむね六〇%くらいだと思います。
  152. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 これはほかの役所に比べてどうなんでしょうか。ほかの役所よりはまだ悪いのですか。ほかの役所の標準までいっておりますか。
  153. 田代一正

    ○田代説明員 ほかの官庁につきましては正確なデータがなかなか得られないのですが、やはり率直に申しましてよくないというぐあいにわれわれは考えております。
  154. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 いままでも、私どももおりました間にこれを努力してまいったのでありますが、まだまだほかの役所に比べて足りないようでありますから、来年度の予算以降におきましても、宿舎の問題についてはさらに力を入れていただきたいと思います。  若干まだ質問が残りましたが、時間が来ましたので、これで私の質問を終わります。
  155. 天野公義

  156. 大出俊

    大出委員 ただいま加藤さんから質問がありました三島君の問題でございますけれども、事の事実関係というのを、まず明らかにしていただきたいと私は思うわけでございまして、そういう意味できょうはこの問題について、調査あるいは捜査されました警察庁の関係の方に御出席をいただいておりますので、最初にいろいろとお調べになった経緯並びにその結果につきまして、事件の概要についてのひとつ御説明をまず承っておきたいのでありますが、関係の方から御答弁をいただきたいと思います。
  157. 山口廣司

    ○山口(廣)政府委員 それでは、事案の捜査状況について申し上げます。  先月二十五日午前十一時十二分ごろに、自衛隊の東部方面総監部から、私どものほうへ一一〇番で通報がされて事件の発生を知ったわけでございます。警察庁といたしましては、直ちにパトロールカー及び機動隊、あのそばに第四機と第五機がございますが、四機の機動隊一個中隊を現場に派遣をいたしております。そのあと引き続いて制服員、私服員を派遣いたしまして、制服員の合計が五百十一名、私服員が六十名で配備につきまして、所轄の牛込警察署長が現場の指揮に当たったのでございます。  現場では、当時の状況から申しまして、強引に総監室に踏み込むと、総監に危害が及ぶと判断されましたので、総監部の建物を包囲、警戒の上、自衛隊側とも十分協議をいたしまして、これは説得による事態解決への努力をすべきであるということで、その努力をいたしたのでありますが、そうした中で十二時十五分ごろから同二十分ころの間に、三島、森田の両名が自決をいたしました。それから二十二分ごろ小川ら三名が総監室から出てきたところを、警察官が協力をして逮捕して、警視庁に引致いたしまして調べた、こういうことでございます。  なお、警視庁では、直ちに牛込の警察署に公安部長を長とする約九十名編成の特別捜査本部を組織いたしまして、今日に至っておるところでございます。  この間、当日の夜から翌二十六日にかけまして、令状を得まして、現場の検証を行ないますとともに、これと並行いたしまして事件当日の夜三島邸等六カ所の捜索を実施いたしまして、証拠物件百三十三件を押収いたしまして、証拠の確保に当たったのでございます。  一方、当日は午前十一時から市ケ谷会館の中で、楯の会の会員三十二名が例会を開催をいたしておりましたが、午後一時五分ごろ事件を知りました会員三名が総監部へかけつけようといたしまして、会館付近で警戒に当たっていた警備部隊に突っ込み、なぐったりけったりというような暴行事案がございましたので、会員三名を公務執行妨害容疑で現行犯逮捕いたしまして、四谷警察署に引致して取り調べを行なったのでございます。他の二十九名につきましては、新宿、四谷、麹町の各署に任意同行をいたしまして、事情聴取を行ないましたが、いずれも当日の事件とは無関係であるということが判明をいたしました。なお、この公務執行妨害容疑で現行犯逮捕されました三名は、現在勾留中でございます。  それから、二十五日に逮捕して取り調べの上、二十七日に、この総監室から出てまいりまして逮捕いたしました三名を、嘱託殺人、傷害、監禁、建造物侵入、暴力行為等処罰に関する法律違反、それから銃砲刀剣類所持取締法違反の六つの罪名で東京地検に送致をいたしました。このあとは検察庁の手によって取り調べが行なわれておりますが、今月の十六日まで勾留が認められておるというふうに聞いております。  この事件は目下捜査中でございますので、あまり具体的なあるいは詳細なことにつきましては目下のところはひとつ控えさせていただきたいと思いますが、被疑者らの供述によりますと、今度の事件は三島を中心としました五名だけの、限られた者によって計画をされ、敢行されたものであるということが明らかになっております。被疑者らの友人、知人、それから楯の会会員等も全く知らせられなかったというのが実情であるようであります。自衛隊をその舞台に何かやろうということは本年の春ごろから考えておったようでございまして、三島を中心に五人がたびたび会って話し合ってきたようでございます。会合の場所としましては、ホテルとかサウナというようなところが使われておったようであります。  犯行の計画は、東部方面総監を拘束して人質にした上で、自衛隊員を集合させて、集まった自衛隊員に憲法改正の必要を訴えて覚せいを促し、その上で三島と森田はその場で自決するという考え方で当日の犯行に臨んでおるようでございます。  これまでの被疑者の取り調べからは、クーデターをやろうというようなことは全然出ておりません。三島は憲法改正のために自衛隊が立ち上がってくれることを気持ちの上では期待をいたしておったようでありますが、しかし、そのために具体的な準備をしたというようなことは取り調べの上では出てきておりません。とにかく三島としては、自分の気持ちを自衛隊員の前で訴えて死んでいくということを最初から心にきめておったようでございまして、それ以上のことは考えていなかったというのが取り調べの結果でございます。  このことは、犯行当日三島が家を出発直前に、森田を除く三名に渡しました命令書に、三島、森田の自刃が書かれているのを見ても、三島のその意図がうかがわれると思うのでございます。  大体以上でございます。
  158. 大出俊

    大出委員 幾つかあわせて聞いておきたいのでありますが、この新聞によりますと、これはおそらく皆さんがお話になったのだと思いますが、どの新聞の取り上げ方も、このクーデター計画と称するものがあって、失敗したからこうなったのだという言い方になっているのでありますけれども、いまの話を聞きますと新聞にあるのとだいぶ違う。クーデター計画が自供によって明らかにされた、こうなっておりますが、時間がありませんから長い質問はいたしませんが、そこの点が一つ。  それからもう一つ、先ほどもちょっと話が出ましたけれども、五百人からの機動隊の方々が出かけていったわけでありますけれども、私の時間の聞き違いかどうかわかりませんが、それから多少の時間がここにある。ああいう結果になり、つまり切腹するなどということになる。皆さんが集まった、つまり取り囲んだ時間、どのくらいあったのですか。この点二つだけとりあえずお答えをいただきたい。
  159. 山口廣司

    ○山口(廣)政府委員 最初の御質問でございますが、私どもとしては、三島のこの春ごろからの心の中のいろいろな微妙な変化を顧慮することはできませんからわかりませんけれども、残りました三名の取り調べから出てまいりますもの、それからその他いろいろな文書等から見まして、そういうクーデターの計画はなかったということが、私どもの取り調べの結果でございます。  それから、機動隊が参りまして、三島が自決して三名が出てまいりまして逮捕するというまでに大体一時間前後の時間ではなかったかと思います。
  160. 大出俊

    大出委員 これは警察のほうで取り調べをされて、最初は何も東部方面総監室で自刃するんじゃなかったということは明らかでしょうね。これも承りたいのですが、市ケ谷の宮田さんというのですか、ここに名前が載っておりますけれども、途中で宮田隊長に対する——つまり第三十二連隊の宮田隊長に対するものの考え方が最初あった。つまり実戦連隊長であるこの宮田隊長を、ことばを悪くいえば脅迫して全体を動かす、こういうものの考え方があった。ところが数日前になって、二十二日ですか、市ケ谷に行っているのですね。ところがどうも二十五日はいない、これは明らかになった。変更をした。つまり宮田連隊長を同様に監禁をする、脅迫をする、そして動かすというこの計画が冒頭にあった。これはおたくのほうの調査でもはっきりし、新聞が伝えるところでございます。これは取り調べ当局でないのですから、どういう目的かは、おたくに聞かなければわからぬけれども、これは明らかに実戦連隊——昔の近衛連隊ですから、ここをねらった。これは何か目的がなければねらいやしない。ただ単に宮田隊長をそこで押えてその前で自刃をする、初めからそういう計画を立てることはない。檄を見たって、ついてこないのですから。そこらのところ、どうもいまのあなたの説明ではわからない。そこのところをもう一ぺん承りたいのです。
  161. 山口廣司

    ○山口(廣)政府委員 おっしゃるとおり、最初は三十二連隊長を人質にして、その部下の隊員に訴えるということであったようでございますが、詳細は防衛庁のほうからまた話があると思いますけれども、その二十五日には、三十二連隊長が不在であるということで、急遽東部方面総監に対象を変更したということのようでございます。三十二連隊の隊員に訴えると申しましても、これは今日までの取り調べのところでは、ただ訴えるというだけであって、そしてその場でかれは自刃する、こういうのがずっと変わらない計画のようでございます。
  162. 大出俊

    大出委員 これは、あとで防衛庁のほうからお話があると思いますが、取り調べをしたのは、おたくじゃないですか。防衛庁じゃないでしょう。どうなんですか。
  163. 山口廣司

    ○山口(廣)政府委員 さようでございます。それで私ども調べでは、三十二連隊長は当日演習か何かのために不在であるというように聞いております。
  164. 大出俊

    大出委員 そこのところ、あなたもう少し調べた結果を言えないのですか。この書いてある中身をいろいろ読みますと、三島が事前に連隊に行ったのですよ。行ったところが連隊長不在で、そこで一体二十五日はというので聞いているのですね。二十五日にはいない、いつ帰ってくる、二十七日に帰ってくる、それもわかっている。演習の終わりなのですからね。それで変更したんですね。そうすると、あなたのいまおっしゃっているのとつじつまが合わない。取り調べているのは、何も防衛庁が調べているのじゃない。警察のあなた方が調べている。そこのところ、どうもそうあいまいに答えられちゃ困るので、これは捜査中というのでしたら、そこから先のことはいいですけれども、現在わかって、新聞に発表されていることを的確にお答えいただかぬと、事問題が問題ですから、これははっきりしていただきたい。
  165. 山口廣司

    ○山口(廣)政府委員 三十二連隊に行ったのは、私ども調べでは、森田が行っておりまして、それで森田が死んでおりますので、その辺のところは、大体いま申し上げたようなことしか私のほうとしてはちょっと申し上げかねるのでございます。
  166. 大出俊

    大出委員 それはわからぬということになれば、いたしかたありませんが、しかし考え方としては、三十二連隊を中心に置いていたことは間違いがない。それを急遽計画を変更した、こうなっているわけですね。二十七日に帰ってくるとわかっていて、なおかつ変更しているわけですが、ここらのところは、あなたのほうで調べなければならぬ。われわれにはわからぬ。あなたのほうで残った人を連れていっておりますからね。そこをあなたが答えられないというなら、あるいは死んでしまってわからぬというなら、これはやむを得ないということになります。  もう一つのほうの一時間時間があった、この間の警察の判断はどうだったのですか、もう一ぺん聞きたい。
  167. 山口廣司

    ○山口(廣)政府委員 先ほども申し上げましたように、自衛隊側と緊密な連絡をとって警備警戒に当たったわけでございますが、短兵急に踏み込みますと、総監のお身に危害が及ぶということで説得活動を続けたということでございます。
  168. 大出俊

    大出委員 もう一歩立ち入って聞きますが、具体的にどういう説得活動を警察はおやりになったのですか。あなたは警察は一時間時間があって、この間説得活動をおやりになったとおっしゃるのだから——これは三島由紀夫君という人だって、憲法上保障されている個人の人権の尊重もあれば、一人の人間に間違いない。結果論だけれども、命が失われているということについては、自分がやったにしても、これはなかなか簡単な問題ではない。そうすると、その間に警察の責任もなくはない。だから私は、一時間時間があったのだとすると、どういうふうにやったのかということは聞いておかぬと、あとあとの問題もあります。だから説得をなさったとおっしゃっておられるから、どういうふうにおやりになっているのかということを聞いているのであって、お答えをいただきたいわけであります。
  169. 山口廣司

    ○山口(廣)政府委員 先ほど申し上げましたように、牛込の署長が現場の指揮官として現場に参っておりましたから、その三沢署長を中心にしまして、バルコニーのほうに向かって、何度も早くこういう状態をやめろ、出てこい、こういうことを説得したように聞いております。
  170. 大出俊

    大出委員 そうすると、三島君がバルコニーにおった、その総監の部屋には何人かいたのかもしれませんが、窓を破ったり何かしておったわけですから、そこを取り巻いておったわけですから、中の様子は見えるわけですね。そういう状況でございましたか、そこのところを確認しておきたいのですが。
  171. 山口廣司

    ○山口(廣)政府委員 総監室の内部は、おそらくわからなかったと思います。
  172. 大出俊

    大出委員 それではバルコニーでしゃべっているのにおりてこいという説得したわけですか、そういうことになりますか。
  173. 山口廣司

    ○山口(廣)政府委員 バルコニーにいるときだけではなくて、もう中に入っていったあとも、下のほうからマイクか何かでいろいろしゃべれば、総監室の中におそらく聞えるでありましょうし、あるいは私もちょっと具体的に存じませんけれども、廊下あたりのちょっと遠いところからも、そういう説得を続けたと思います。
  174. 大出俊

    大出委員 先ほど五百十一名の制服の方、私服六十名の皆さんが取り巻いたとおっしゃったから、そうすると、これは総監室に益田総監なんかがおいでになるから、そこの状況はおおむねわかっている時点ですから、それを取り巻いたということになると、ずいぶん警察も能のない話だという気がする。そこで私は、いまこういうことを聞いているのですが、さっぱりいまの話はわけがわかりませんが、私もお目にかかって多少の話をしておるのですから、そこらくらいのことはやはり話しておいていただかぬと、あとあとのこともあるので私は困ると思うのです。おわかりにならぬわけですか。
  175. 山口廣司

    ○山口(廣)政府委員 私は先ほど制服部隊について申しましたが、それは必ずしもバルコニー、総監室の直近だけを取り巻いたのじゃなくて、あの市ヶ谷の隊内に入ってくる者があるかもしれないということで、あちらこちらに分散配置をしたものの総計でございまして、あの数が全部総監室、バルコニーのそばを取り巻いた、こういうことではないのです。
  176. 大出俊

    大出委員 そこがはっきりしませんから、実はその先に申し上げたいことがあるのでありますがまたの機会に譲ります。  ところでもう一つ警察に聞いておきたいのです。  牛込の警察に遺体を引き取られたわけですが、どうもこれは大したことじゃありませんけれども、こういう際は、私は警察ですから非常に気をつけるべき筋合いだと思うのです。東京新聞なんかの記事を見ますと、警察署の外のところへ祭壇を設けて、花を飾っていろいろおやりになった。通行する市民の方から注意があってあわてて中に入れたというようなことまで書いてある。そこらどうも私は皆さんの認識がわからぬのですけれども、そこのところはどういう気持ちだったのですか。
  177. 山口廣司

    ○山口(廣)政府委員 いまの遺体に対して祭壇を設けました問題は、実は死骸が署に運び込まれました場合には、今回のような場合だけでなくて、一般的に祭壇を設けて遺族とか友人等の焼香をしてもらうような便宜をはかるということでございますが、ただあの際は、やはり右翼関係者とかなんとかいろいろな人が参りますので、警察署としましては、どうもこのままにしておいたのではぐあいが悪いということで、署でちょっと設けた祭壇はすぐ撤去いたしました。いま大出先生のおっしゃるのは、何かある右翼が祭壇を持ってきて、そして花も持ってきて署のそばの道路ぎわに置いた、しかしそれもすぐに市民のほうから注意されて取り払った、こういうように私ども聞いております。
  178. 大出俊

    大出委員 実はそこに何らかの仲間意識みたいなものがあると、私は問題としては非常に考えなければならぬ問題だという気がするのです。新聞の記事を見ると、どうも三島さんだからというそんな感じがする。署長さんの話は、非常にまずかったからあわてて中に入れたと言うが、そこら何かしら仲間意識みたいな感じがする。私読んでそういう感じがする、時間がないから私ここであらためて読みませんけれども。それは私非常にまずいと思うのです。仲間意識というか、そこを私気にするのでいまのような質問をしたわけなんですが、なくなった方がとやかくじゃなくて、そういう意味で非常に考えなければならぬ問題だと思っているのです。  そこで先ほどの点に返りまして、防衛庁の皆さんとの関係を承りたいのですけれども、これは前にここにおいでになる横路君のおとうさんが質問したこともありまして、警察と防衛庁の間の関係、つまりどういう形でこの警備、警務というようなものを分けてどうされておるかという点ですね、あらためてこの際承っておきたい。
  179. 山口廣司

    ○山口(廣)政府委員 捜査関係につきましては、防衛庁の施設内で行なわれた犯罪とかあるいは自衛官に対して行なわれた犯罪につきましては、自衛隊の警務官が受け持つということになっておりまして、ただいろいろ社会的な影響等考慮して警察がやったほうがいいというような場合には警察がこれをやる、こういうことになっておりまして、今回はそういうことでやられたわけであります。警備全体の面につきましては、これは格別そういうあれがございませんので、そのつど連絡、協力をしておるわけでございまして、平素のそういう出入り等はもちろん自衛隊の責任においてされておるわけでございますが、ただここ両三年来、御承知のとおり、たとえば過激派学生が防衛庁を襲うというようなことがありますれば、私どものほうとしては防衛庁にそれを連絡するとともに、警察独自の立場でその周辺の警備、警戒に当たる、こういうようなことでございます。
  180. 大出俊

    大出委員 もう一つ伺いたいのですが、翌日、総監室の、この事件のあったすぐそばの廊下ですか、その周辺に菊の生花をリボンを巻いてささげてあったというのですね。これはこの地域は、この新聞等によりますと、翌日も警察の皆さんが捜査の必要上固めておられたはずでしょう。まさか警察のほうがそこに持っていったのではないと思いますが、警察の皆さんはその点についてお気づきで、またどけたというようなことはどういうかっこうになっておるのか、その辺も気になるので承りたいと思います。
  181. 山口廣司

    ○山口(廣)政府委員 ちょっと私どもそのことを承知いたしておりませんので、お許しをいただきたいと思います。
  182. 大出俊

    大出委員 その点防衛庁のほうでおわかりになっておりますか、その間の状況をこまかく書いてあるものがございますが。
  183. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 ちょっとその事実を耳にしておりません。すぐ調べてみます。
  184. 大出俊

    大出委員 なぜ私この質問をするかといいますと、中曽根長官は二十五日の午後の記者会見でものを言われたわけですね。これは非常に早いわけでありますが、まことに迷惑千万であるということで、自衛隊はこのことによっていささかも影響を受けない、こういうように言い切っておられる。これはこの事件があってきわめて短い時間の間でございますから、これは何か言わなければならぬ長官立場がわからぬわけではないけれども、一体いささかの動揺があったか、いささかも動揺がなかったのかは、そう簡単に判断のできる筋合いではない。この種のことはやはり先々のことを考えて、世間一般の受け取り方等を考えて、本来ならば相当慎重にものをお考えいただきたい時点だと思います。ところがいささかの動揺ということになりますかどうかわかりませんが、翌日総監室のところに花がささげられておったというので、これはクラブの記者諸君がおそらく書いておるのだと思いますが、非常にあわててこれを皆さんのほうで取り片づけた、こういうふうになっているのでありますけれども、そこら辺非常に気になりますので、そういう意味でさっき質問したわけなんであります。これは長官は御存じありませんか、この間の事情は。
  185. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私知りません、そういう事実は。
  186. 大出俊

    大出委員 もう一つ承りたいが、翌日の新聞を見ると——翌日だろうと思いますが、さっきも外でしゃべっておられた赤尾敏さんが防衛庁へ入られて演説をぶっていたような記事。さっき外でしゃべったのがそうでしたけれども、何で一体中で演説までぶたしたのか、私どもまことに奇異に感ずるのであります。しかもその演説で、迷惑千万だとたわごとを言った中曽根などは殺してやりたいということを言っておる。これは新聞記事だからわかりません、私見ておりませんから。新聞記事だからわからないといってしまえば記者の諸君がおこるかもしれませんが、それに近いことを言ったのでしょう。そういうことになりますと、宍戸さん、官房長におなりになって間もないのですが、やりとりを新聞で見ますと、赤尾さんに警備隊の方かどうか知りませんが、先生やめてください、やめてください、こう言った。ところがそこでしゃべり始めた。あなた出てこられて、それから例の辞任要求書ですか、辞任勧告書ですか、何か知りませんが持ち込んだ、こういうわけなんですが、これは私どもの常識からすると、いささかどうも仲間意識があって、しようがないということになってそうなったのか。普通ならば私ども——実は私用事があって翌日おたくに行ったことがある。ところが、たいへんな固め方をしておられたはずです。ちっとやそっとで入れる状態じゃなかった、私が見た限りでは。だとすると、何で——しかもどなたも知っておるはずです、私もよく知っておりますから。ですから、そういうことが行なわれると、国民一般の受ける疑惑がどうしても出てくる。私自身もそういう疑惑を持つ。ますますもってこれは仲間意識が多過ぎるわいという気がする。いままでのいわく因縁で入れざるを得ないということであったのならあったように、この際、はっきりしておいていただきたい。
  187. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 まず結論から申し上げますと、仲間意識ということは全くございません。先生も御存じのように、門扉を厳重に固めて、あそこでちゃんと許可を得て入るようにしております。先ほどもちょっと申し上げましたけれども、宣伝カーで乗りつけました。そこで、あそこでとめておろしたわけです。そしてそのときに約束をさせたわけです。ただ、車がその場におりますとじゃまになるものですから、現実には、門にちょっと入ってすぐ横にどけるようなかっこうにするわけです。門のすぐそばに守衛の控え室がありますが、そのうしろに回すわけです。そして通行のじゃまにならないようにするという措置をとったわけです。その間に守衛も注意はしたわけですけれども、突如そのマイクを使ったということで、守衛もあわててそれを制止にかかったということが事実でございます。仲間意識というようなことは、全く守衛にも、もちろん何もございません。
  188. 大出俊

    大出委員 別に私もこまかいことをとりたててどうこう言おうというのではなくて、そういう先ほどのお話、これは牛込の署長さんがどういうふうに御配慮になったかわかりませんが、あるいは私が色めがねで見ているかもしらぬけれども、人の話をちらっと聞いても、事の処理のしかた、あと処理のしかたについても、何かしらぬけれども、どうも普通の状態ではない、そういうふうに受け取れることがちょいちょい出てくる。私は先ほど警察の方と話しておりましたが、かくて、警察関係の方々に責任はないということになる。  さて、先ほどのお話を聞いておって、そうなると、では防衛庁の皆さんはどう考えているかというと、益田さんを含めて、あるいは警備隊の関係の方々を含めて、皆さんこれは全く責任がないという感じに受け取れる。そうなると、これはどっちを向いても、これだけ、週刊誌といったら、あなた方ごらんになればわかる、これは売らんかなで書いていることもわからぬわけではないけれども、至るところ三島三島で、三島問題ばかり書いてある。ずっと国際的な反響なんというものを一ぱい新聞に載せている。これは世間を相当に騒がせていることは事実です。いろいろな意味の、逆の意味のショック、あるいはまた反対の意味のショック、いろいろある。ごらんなさい、そこのところ永田町から向こうへ行けば、黒いビラがずらっと張ってあるでしょう、追悼会をやろうといって。そうでしょう。これだけのことになっているのですけれども、この件に関する責任というのは、どなたもわがほうに責任があるとはおっしゃらない。全く責任がない。これでは一体どういうことになるのですか、その責任の所在というのは。そこのところふしぎな気がするのです。私は、自衛隊というのはそう簡単に——それは身元が明らかであって知っているからということになるのかもしらぬけれども、そう簡単なものかという気がするのです。ふしぎに思うのですけれども、その点、これは抽象的な聞き方だけれども、とりあえず承っておきたいのです。ここのところはどういうことになるのですか。
  189. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まことに遺憾な事件でありまして、ああいう有名な三島君のような人が、よもやああいうことはやることはないと、おそらく全国民の皆さんも思っておったんじゃないかと思うのです。その点は、結果的に見ますと自衛隊もぬかっておったとは思います。しかし、前後をいるいろ調べてみますと、だれも考えもつかんような、二百年に一ぺんか三百年に一ぺんくらい、もっと確率のない事件かもしれませんが、そういう意味においてやむを得ない事件であったというふうに私は思います。
  190. 大出俊

    大出委員 私は実は、やはり責任は中曽根長官にあると思っているのです。これはやはり、実はうかつであった、ぬかっていた、まさかと思ったということはいつだってあり得ることです。たとえば、増田甲子七さんが防衛庁長官のときに、山口空将補という方がなくなられた。あんなところで死ぬとは全く夢にも思わなかった、思わなかったのだからしかたがない、そういうことにはならぬと私は思うのです。すべてあらかじめ予見ができれば、こういう結果にはならぬのですから。だから、予見しにくいことであっても、突発的にという事件であっても、そのことについて対処し得るような形にしておかなければならぬというのは、ある意味では当然なことで、そうでなければならぬわけです。そういう意味では、よしんば全く予見しがたかったことであっても、責任の所在というものは明らかにある。  ところが、それだけじゃないのです。私は、これは長官におやめいただかなければならぬくらいの気持ちがある。長官が、私はやめる気はないということになっているようですから、それ以上言ってもしかたがないかもしれませんけれども。なぜかというと、順々に承ってまいりたいのでありますけれども、先ほど体験入隊の話が出ましたが、ここにある資料によりますと、最初が四十二年七月、新人コースということで三十五人、四十三年の三月一日から四十三年三月三十日まで三十日間、これが二十人。これは先ほどの四週間より長い。それから四十三年七月二十五日から八月二十三日まで三十日間、三十三人、四十四年三月一日から三月二十九日まで二十九日間、二十七人。もう一回申し上げれば、一番最初が三十五人、その次が二十人、その次は三十三人、その次が二十七人、その次が三十人、四十五年三月一日から三月二十八日まで二十八日間、三十人、これで百四十六日ちょっとになりますが、百七十五人、これは楯の会の方々ばかりです。それからリフレッシャーコースというのがありまして、再入隊、これが四十四年三月十一日から四十四年三月十五日まで五日間、二十四人、四十五年三月八日から三月十四日まで七日間、これはことしですが、これが三十五人、そして六月二日から六月四日まで三日間、三十五人、昨今になりまして九月十日から九月十二日まで三日間、五十人、十一月四日になってまた入っておりまして、十一月六日まで三日間、四十五人、これが合計百八十九人、楯の会の方々です。しかも、事もあろうに、本年の六月からは楯の会の例会と称するものを自衛隊の隊内でやる、市ケ谷の三十二連隊の庭でやる、こういうことになって、ここで例会をやっておるわけですね。ですから、宮田連隊長の発言によれば、このときには三島氏に会ったというようなことになっておるようでありますけれども、しかしその楯の会の例会を自衛隊の、しかも第一線部隊である三十二連隊の隊内でやることを認めているなどということが——私は、そんなことをいえば、ほかのほうの青思会の皆さんだって、そういっていけば認めざるを得なくなるはずであります。こちらのほうも相当人数が多いようでありますけれども、そういうことになると、自衛隊というのは一体どういうことになるのだ。それは郷土防衛隊を百万人つくれと言った方もある、三島民兵だ、こういう認識、そういうことになると、これを仲間意識といわずして一体何だということになる。  しかも別な書類によりますと、長官、これはどういうふうにお考えか知りませんが、防衛庁のある広報紙に、長官と三島さんの対談が載ったりしておりました。かつて私は見たことがございますが、ここに書いてあるのを読みますと、これはある人が書いております、中曽根防衛庁長官も、三島に肩入れしてあれこれと便宜をはかったりしていたが、三島の自衛隊びいきを利用したつもりが、逆に手をかまれたかっこうとなったのは皮肉だった、こう書いてある。三島は中曽根長官の選挙区である群馬県によく出かけて講演をしたりしていた、こう書いてありますが、そこまで長官が三島さんという人の民兵意識をお考えになって、あるいは国際的に有名な文学者であるという意味もあったかもしれませんが、群馬に行って講演をやっておられたというようなことを書いた人が間違っているのだといえば別ですけれども、そこに今日こういうことになる、つまりそういう機会を相手方に与えなければこういう結果にはなっていないわけでありまして、そこらのところが非常に大きい問題だと私は考えております。だからこれは長官に大きな責任がある、こう申し上げざるを得ないということを私はさっき申し上げたのです。それを長官は、何か知らぬけれども、だれもがやらぬと思ったことができたんだからしかたがないというお話なんですが、そう簡単なことではないはずだと私は思うのですが、いかがでございますか。
  191. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私が三島君に頼んで群馬県へ演説に行ってもらったなんということは全然ございません、いま初めてそういうことを聞くわけであります。  それから体験入隊というのは私も三回ほどやっています。青年を連れて私も一泊ずつ二回、あとは泊まりませんでしたけれども、やはり青年の精神修養、しつけ、訓練等のために非常に有益だったと私思います。また青年も非常に希望しております。そういうことは決して悪いことではない。自衛隊としては広報活動の一環として、自衛隊の中身を知ってもらうという意味で体験入隊という制度をもって、それは相応の成果をあげているだろうと思うので、これをやめるつもりはありません。しかし、一つの団体がある考え方を持って繰り返しやるというようなことは、今度わかりましたから、そういうことについては今度大いに戒心していろいろ規制してまいりたいと思っております。  自衛隊が三島君に肩入れしたというような事実はございません。私は、座談会とかあるいは研究会とか、そういうことで個人的に三回ぐらい会っただけで、そのほかは個人的にも公にも会ったことはございません。しかし彼の作品はほとんど読んでいるつもりです。そういう意味では三島君というものには非常に注目しておりました。しかし個人的に肩入れしたとか、自衛隊が特に肩入れしたというようなことはない、あとで考えてみると利用されたという感じがしております。
  192. 大出俊

    大出委員 利用されたか利用したかということは個人認識の問題ですから、これはまた三島さんに言わせれば利用されたと向こうも言うかもしれぬ。それはわからぬことですが、ただ私の言いたいことは、先ほどお答えがありましたが、ここにある数字が正しければ、昭和四十四年度の例だけあげれば二千五百件、約九万三千九百人、これだけの方が入っております。長官もいま体験入隊をおやりになったとおっしゃるのですが、つまりこれだけ入っておりますが、どんなに長くてもほとんど全部一週間が限度なんです。ところが楯の会の皆さんについては、これは富士学校の滝ケ原分とん地というところの例がここにありますけれども、再入隊、断続的な入隊、これをずっと仲よくなる程度の長い間何回かやって、非常に異例なんです。しかもこの制度、体験入隊というのは、三十五年の七月に広報活動に関する防衛庁長官訓令の形で出て、いまだかつてこういう例はほかには一つもない。しかも、なぜこれができ上がったかというと、長官はおやりにならなかったかもしれない、長官の時代じゃない前の時代でありますけれども、当時の三輪次官はたいへんな肩入れをしている。これは具体的な肩入れでございますが、事務次官の三輪さんは、三島さんたち方々が体験入隊をするのについて長いという異論が広報課の方々から出た、これに対して、体験入隊は広報活動だから、まあいわば料理屋のメニューのように、ワンコースいくのもあるし、フルコースいくのもいろいろある、いずれにしても広報が目的なんで、フルコースいきましょうという注文が出たら、これは私の考えとしてはそのコースを体験入隊させるべきである、特例だけれども、そうしなさい、こう言っておられる。つまりこれは他に例がない限りは、第三者である私が考えれば、明らかに楯の会の皆さんにたいへんな肩入れを前任者の皆さんがされている。さらにそのあとのほうを見ますと、市谷の三十二連隊の庭で例会をやることまでお認めになっているのですから、そうなると、中曽根長官になってからもその意味での頻度はますます重なっていっている、こういうことになるのですね。だから、皆さんのほうも全く警戒心がない。それは何ですか、と言ったら、軍力だと言えばあるいは気がついたかもしれぬというようなことを当面のその衝に当たった方が言っておりますけれども、指揮刀だと言ったら、ああそうですかと言ったと言っている。しかも車からおりてはいない。こういうことになってしまうわけですね。こういうことがなければこれは何でもなく済むことかもしれませんけれども、やはり理解者であるという意味の仲間意識があって、こういう点が非常にルーズに行なわれてきている。こういうところに今日のこういう結果になる一つの大きな責任があった、私はこういうふうに考える。そこのところはいかがですか。
  193. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 体験入隊の中にはいまお話しのようにいろいろコースがありまして、レインジャー訓練をやりたいというところまで三島君は言ってきている。そういう学生を育てたいという話のようであります。そこでレインジャー訓練というような強度の訓練まで受けるというのは奇特なことだというくらいに思ったのでしょう、そういう意味で長期のレインジャーコースをやらしたのであるだろうと私は思います。まあ結果論から見ますと、ともかくもっと注意をしてやるべきであったと思っております。今後とも大いに戒めたいと思います。  いまの市ケ谷の問題は、例会は市ケ谷会館でやっていたらしい。それが終わってから徒手訓練をやるというので市ケ谷会館の屋上でやっていたが、場所が狭いのであの営庭を貸してくださいというので、あそこで体操をしたり徒手訓練をしておった。例会ではないようであります。
  194. 大出俊

    大出委員 これはものの受け取り方でありますから、例会の行事ということで楯の会はそういっていますけれども、いま長官の言っているような理屈も成り立つのかもしれませんが、とにかくそれが例会をやる日の訓練であったにしても、それを隊内で認めてやらせることは、私はたいへん間違いだというふうに思っています。  それから、結成一周年記念パレードに音楽隊とか観閲官を派遣してほしいというようなことを楯の会の諸君から自衛隊に申し入れる。こんなことが申し入れられること自体にすでに問題があったというふうに私は思う。幸いにして皆さんのほうはこれはお断わりになったようでありますが、しかし、長い間入ったり出たりしていますから、すっかり仲よくなっている。富士学校の校長さん、この方は現在日本ビクターにおつとめになっておられますが、自衛隊の現職というのではまずいという御判断をされたのかもしれません、この方が、昨年十一月三日に国立劇場の屋上で結成一周年記念のパレードをやったときに、現職ではないから観閲官にはならぬと思いますけれども、出かけていかれておる。だから育ての父であるの、母であるのになってしまうと思うのでありますが、こういうことになってしまったということになると、私は、私が立場が違うからということを離れて見て、これは非常にたいへんなことだという気がしているのであります。そういう意味で、もうこれ以上長官に何べんも、たいへん遺憾なことだと言わしてみてもしようがありませんから、そこらは全体的に皆さん方が考えていただかなければならぬ筋合いだ、こういうふうに思うわけであります。  次の問題は、長官の記者会見における発言によれば、今回の事件について隊員はいささかも影響を受けない、こういうふうに言っておられるのでありますけれども、その後またどういうわけで——これは官房長に承ったほうがいいと思いますが、隊員の意識調査を千人ばかり、あなたはどういう意味でおやりになったのですか。
  195. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 あの事件が起きてとっさに、何か関連があるのかすぐ調べなければならぬと私は思いましたから、三自衛隊にすぐ命じまして、とりあえず調べてすぐ報告しろ、不穏な動きをする部隊でもあればたいへんだ、そう思いまして、とっさに命令を出しまして間髪を入れず情勢報告を受けたわけです。そして確信をして、安心をして発言をした。それから、しかし一定の時間がたちますと、あれは一つの思想的事件でございますから、だんだんいろいろな反応が出てくる。時間がたってみなければ思想的な問題というのは出てこない、そういう意味である時間がたったら面接その他によって大体どういう反応を持っているか調べてみなさいと言って調べさせたわけでございます。
  196. 大出俊

    大出委員 これはどのくらいの範囲でお調べになりましたのですか。
  197. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 各部隊合わせまして千人近いもの、その程度のものから調べたようでございます。
  198. 大出俊

    大出委員 その結果はどういう結論が出たわけですか。
  199. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 ほとんど一〇〇%近く、九十数%までが、三島氏の行動も考え方も、いわば否認といいますか、賛成しがたいという結論でございます。
  200. 大出俊

    大出委員 そうしますと、千葉であるとか習志野であるとかの部隊あるいは東京周辺の近郊の部隊千人程度、その結果、大部分の隊員の皆さんが三島檄の檄文には共鳴をする、少数ではあるけれども、大いに共鳴をするという人もあった。ただしかし、この行動にはとてもついていけないという声が最終的についている、それで安心をなさった、こういうように、これは関係の記者の方が皆さんに近いから調べてそう言っておられるわけであります。だから心情的には三島氏の檄文というものについてはほとんどが共鳴をしている。大いに共鳴するというのも少数はある。ただしかし、行動的にはとてもあんなものはついていけた筋合いのものじゃない、そういう認識、私は長官とその点は同じ考え方に立つのですけれども、この種のことというのは北一輝、大川周明という人のものの考え方、ぼくらは戦争中ですから長官と同じように一緒に兵隊に行ったほうですから、ずいぶん読んだり読まされた機会がありました。当時の日本の軍国主義といわれる時代の若い方々気持ちが、つまりそういう思想家の思想に大きく影響を受けていったのはまぎれもない事実です。してみると、三島氏の書いておられる数々のもの、私も一、二読んでおりますけれども、やはり結果がこうなると、何となく読んだもの、あるいはフィクションだと思って読んだものが相当思想的には大きな影響を持つ時代がくるかもしれない。ときには世の中の動きによってこれは変わってくると思いますけれども、そういうものの考え方をぼくもしたいのです。だから長官のシビリアンコントロールのたてまえでお流しになられた訓辞というか、長官の何になるのかわかりませんけれども、隊員に与えたもの、この中で政治というものは政治の分野の諸君に一切まかせるという原則に立つ、そういう趣旨のことを言っておられることは私も賛成なんですけれども、しかしそれにもかかわらず、これから日本という国、世の中の移り変わりに、時過ぎてみれば非常に大きな影響を持つかもしれない。そこまで実は慎重に考えていかなければならぬ話、だろうというように思うわけでありまして、そういう意味では、そう簡単に実は影響がないといっておられるものでもないし、こういう結果が出て、行動的にはついていけないから安心だといっていられるものでもないから、より慎重に考えなければならぬ。  もう一つは、自衛隊というものを見る国民の見方が両極に変わってきていると私は思う。ある局面ではそんなこととんでもないということになりそうだということで、ますますもって危険だという見方になる人もあるし、あるいはもって憲法改正だという言い方になる人もあるし、ある意味ではいろいろ分極化すると思うのです。そのことも慎重に考えなければならぬと思うのですけれども、それらのところを長期的な面で見てもう一ぺん承りたいのですが、この意識調査というものの結果、いまの御答弁は全くなかったと、こう言うのですけれども、心情的に賛成者が相当あるということになると全くなかったわけではない、そこらのところを承りたい。
  201. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この間の調査では非常に健全で、いまの情勢ではよろしいと思っています。しかしこういう思想的な問題というものは若干の懐妊期間がありまして、それが社会的反応を受けて成熟していくという要素があります。ですから、常時そういう思想関係等を注意しまして、健全な状態を維持するように今後とも努力してまいりたいと思います。特に年の若い初級幹部等につきましては、深甚の注意をしてまいりたいと思っております。
  202. 大出俊

    大出委員 もう一つそこに問題があるのは、私は昨年の本会議でございましたか、一昨年でしたか忘れましたが、防衛大学をお出になる若い方々、階級にしてちょうど三佐、昔でいえば少佐になるのでしょう。したがって、そういう意味でこの方々は戦争体験というものは直接的にはない。そうなると旧軍にあった方々が、これは宮田さんもそのようでございまして、当時少尉でおいでになったようでございますから、だから私どもとそう変わらぬところにおったんだと思うのでございますけれども、それなりの認識があったはずであります。そうでないだけに、最近名前入りで防衛大学の学生さんのものの考え方が、どこまでどういうふうに調査されたかわかりませんが、ものの本などに出るようになっておりますが、そこらを含めて私は気をつけなければいかぬという考え方、相当慎重に考えなければいかぬということを総理に私は質問したことがありますけれども、そこらまで含めて自衛隊の現状、これらの調査長官立場でごらんになって、名前をつけて発表したことについて、とやかくという庁内のいろいろな問題もあったように聞きますけれども、はたして一体どういうふうにお考えでございますか。
  203. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先ほど来申し上げましたように、時代に敏感な若い人たち、特に初級幹部等の動向は非常に注意を要しますと私思います。そういう意味において、これからもよく調査点検をいたしまして、万が一にも間違ったことがないように注意してまいりたいと思います。
  204. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 関連して一問だけお伺いしたいと思います。  大出委員のいまのたび重なる質問の中にありましたように、やはり楯の会に対して自衛隊がかなり肩入れをするというとあれになるかもしれませんけれども、便宜をはかっていた点は、私はいなめないと思います。それで三島が檄の中にも、「われわれ楯の会は、自衛隊によって育てられ、いはば自衛隊はわれわれの父でもあり、兄でもある。」「われわれにとって自衛隊は故郷であり、」そういうふうに書いてある。そして現実に、あとからまだ横路委員のほうから質問があると思いますけれども、体験入隊にしても異常に長い間、異常な数やられている。この便宜をはかっている。さらに大出さんからもお話しありましたように、例会というものを——先ほどの話では例会でなくて、あとの訓練だといいますけれども、一つのこういう思想的団体が市ケ谷の駐とん地の中での訓練を行なわれたということ、私は、これは何といっても自衛隊との関係というのは切れないと思うのです。こういう精神的あるいはいろんな面での便宜をはかったということとともに、もう一つ私は非常に重大な事実があると思うのです。  それは宮田一佐、いわゆる三十二連隊の隊長であります宮田一佐が三島由紀夫と会ったときに、これは何で会ったかと申しますと、本年六月二十九日、三島が東部方面総監部の許可を受けて、第三十二普通科連隊が訓練用に使っていたヘリポートを楯の会が訓練に利用させてもらったことのお礼のあいさつだとあるわけです。これは事実ですか。これがきっかけになって三十二連隊の隊長宮田一佐と三島由紀夫が会っているわけです。こういう自衛隊の機材を、御存じのような楯の会——もう御存じだと思いますけれども、左翼と対決するためには、量と質が必要な時代である。武器もある。武器を入手しても使い方を知らなければならない。したがって、自衛隊に体験入隊一カ月の人が結成するというこういう会に自衛隊のヘリポートを貸したという事実、どういうふうにお答えになるか、お答え願いたいと思います。
  205. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 楯の会の者が市ケ谷駐とん地で二時間程度の体験入隊したということは、先ほど申し上げましたとおりで、市ケ谷の中でその徒手訓練とか体育なんかを二時間ばかりやるわけですが、その場所がヘリポートであったという事実でございます。
  206. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それで、先ほど長官は、つまりそれが楯の会の例会ではなくして楯の会の例会が終わったあとにやられたのだということでございますけれども、ただそれだけではたして済むものかどうか。いま私が読んだように、楯の会というものがそのような会であること、過激的な、現存の憲法も否定するような会であることは当然御存じだと思うのです。そういうものにヘリポートを貸した、場所を貸した。これは一体どういう御見解か、どういうお気持ちか、はっきりとお伺いをしたいと思います。
  207. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 体験入隊させましたことは先ほど申し上げましたとおりですが、その体験入隊の中には座学もありますし、外での徒手訓練なり体育もありますが、市ケ谷の場合は、連隊の敷地の中で数十名の者が訓練をするのに、たまたまあいているヘリポートが適当な場所であるということで、そこを三十分なり一時間なり使わしたというだけのことでございます。
  208. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 時間もございませんので、最後にもう一度だけお伺いしますけれども、その際、楯の会に三つの大きな項目があり、反共であるとか、その他の項目がある、こういう過激な団体であるということは御存じの上でしょうか。
  209. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 そのことは全く知らないで、有名な三島氏からの依頼によって体験入隊を許した、こういう事件以前の認識は全くそうでございます。
  210. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私は当然そこは知っているというお答えが出てくると思ったのですが、これはちょっと意外でした。知らないということはないと私は思うのです。そして先ほどの官房長の御答弁の中で非常に明らかになったのですけれども、有名な三島氏の依頼だったから直ちに体験入隊をさせたのだ、たしかそういうおことばがございましたけれども、ではお聞きしたい。今後体験入隊は続けられる、そうしたらどういう人の紹介ならば体験入隊、さらにいままで楯の会にしたような便宜をはかってもらえるのですか。
  211. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 体験入隊は、こちらの業務に支障がなくて一般方々で御希望があればなるべく便宜をはかりたいというふうに思っております。ただ今度のような事件が全く予想外に出ましたので、教訓としまして、ケース・バイ・ケースでもちろん慎重に検討しなければいかぬと思っておりますが、楯の会の先ほどの認識につきましては、先ほどから繰り返して申しておりますが、事件以前の三島氏につきましては、全くわれわれは常識としてこういう行動に出られるということは予想もしなかった。世間的に全く信用のある方だということです。
  212. 大出俊

    大出委員 いまの件ですが、記録がここにいろいろありますが、楯の会結成以来いろいろなことをやってきております。はでな方だから、その中には財界の第一線の方じゃありませんけれども、何人かの方が資金援助を申し入れたりいろいろなことがありました。それを、一年にもなるのに宍戸さん、あなたは知りませんでしたなどということを言えた義理じゃないですよ。そんなことを言うなら、体験入隊をさせるときにはどういう相手かということをあなた方は全然調べずにやるのですか。そんな無責任なことをやるはずないです。楯の会というものが結成されて、隊服をつくって週刑誌にも一ぱい載った。いま始まったことじゃない。前から載っている。楯の会の目的も当時週刊誌に載っている。そうなると、それをあなた方知らぬとはいえない。だから私はさっきから仲間意識があり過ぎるという。もしほんとうに知らなかったとすれば、これは重大なあなたの責任だ。だから口の先で知る、知らぬと言う前に結果が出ているのですから、こういう団体を体験入隊云々といってさせたことは非常にまずかったということをあなたは率直にお認めにならなければいかぬですよ、宍戸さん。
  213. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 体験入隊させたことはいまから考えるとほんとうにまずかったと思います。ただ楯の会というものの性格を調べてみますと、一部の週刊誌に出ていたような現憲法下の体制を否認して直接行動に出るとか、そういうような暴力的、右翼的性格は必ずしも出ていない。何か精神修養する団体のようなものが出ておって、週刊誌その他に出ておったのが、どこにそういうものが出ているのかと調べてみましたら、私の知っている限りではないようです。それから警視庁においても楯の会というものを右翼団体として取り扱ってなかった。いわんや破防法としての対象としても取り扱ってない。そういうことが頭にあって安易なことをやったのではないか、いまから考えるとそう思います。
  214. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 どうもやはり知らぬということに関しては気になるのですけれども、楯の会は一つの大きな項目の中に暴力是認を入れているわけです。そうしてこれが結成されたときに、警視庁は三島由紀夫のところに聞きにいっているわけです。そうしたら、三島由紀夫は笑って、いや、現在ではまだこういうことはいたしませんということを言っているわけです。それで警視庁もそのまま帰ってきたということを私は耳にしているわけですけれども、せっかく警備局長さんもいらっしゃいますし、その辺どうなのかお伺いしたいと思います。
  215. 山口廣司

    ○山口(廣)政府委員 楯の会の性格につきましては、防衛庁長官もおっしゃいましたように、私どもとしては、その綱領というものがございませんので、ただ規約にきわめて事務的なことが書かれているにすぎませんから、それからは何もうかがえないわけでございますが、三島がいろいろ申しておりましたところから推察いたしますと、国家危急の際に警察や自衛隊で事が処理し得なくなったときに事を起こすとか、あるいはそういう場合に自衛隊の後方支援的な民兵組織であるというようなことを言っておりましたので、あの時点において現実に具体的にああいう危険なことをする団体であるとは私どもはさらさら考えておりませんでした。もしさような危険な団体であるならば、もちろん防衛庁のほうにもそういう御連絡もいたしますし、またいろいろ御相談もしなければならなかったと思いますけれども、そういうことはなかったのでございます。
  216. 大出俊

    大出委員 いまの質問の結論ですが、これはやはりいま長官がおっしゃったように、当然国民に責任を負うのですから、そうすると、どういう団体であるかということは調べるのがあたりまえであります、いま警察庁お答えのように、警察庁でさえ気になって聞いておるのですから。だとすれば、防衛庁がそれを知らぬはずがない。それを知らぬとお答えになるところにそもそも問題がある。ただ長官がその点をまずかったとおっしゃっておられるから、時間もありませんから締めくくっておきますが、これはやはり宍戸さん、あなたそこのところはお気をつけいただきたい。  時間がありませんから、あとかけ足で給与問題についてできるだけ簡略に承ってまいりますが、まず一つは、先ほども加藤さんから防衛庁関係の給与のお話が出ましたから、同じ防衛庁所管であります、かつまた公務員給与に準ずる形になっております駐留軍におつとめになっていらっしゃる皆さん、この方々について承りたいのであります。その前提となりますのは、この基地の大幅な整理統合という問題が、リーサー陸軍長官の証言以来何べんか私は本会議等で質問してまいりましたが、続いてまいっておりまして、江藤さんのところと思いますが、私が沖繩に参ります前に、おたくのところで、小幡さんがアメリカに行って帰ってこられる、長官がおいでになる、そうしてお帰りになる、そのあとで百二十二カ所ある基地について、大体おおむね予備基地を入れて十カ所くらいということで検討されたという新聞記事が出ていたのです。以来今日正式に相手方から話が行なわれている。そうして今日公式か非公式かは別として、アメリカ側といろいろと話が進んでいる、やがて合同委員会かその他の機関を通じてもう少し具体的におきめになる、こういう過程であると思うのでありますが、この間どういう動きになっておるのかという実情について、まず前提になりますのでお答えいただきたいのでございます。
  217. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 ただいまお話がございましたように、在日米軍基地の整理統合の問題につきましては、かねてから日米間で公式、非公式、いろんな形で打ち合わせが行なわれておるわけでございますが、大体の傾向といたしましては、新聞等でも報ぜられておりますように、米軍基地の縮小、整理あるいは米軍の削減というような方向に進むことは予想されますけれども、個々の問題につきましてはまだ現在それを申し上げるという段階にはございませんので、御了承願いたいと思います。
  218. 大出俊

    大出委員 と言われても、それだけでそうでございますかというわけにいかない。なぜかというと、首になるのですからね。これは生活にかかる。それだけの用意をやはりしませんと、いままでもちょいちょい例がある。防衛庁が知らない知らないといっているうちにすぱっといきなり出てしまう。てんやわんやの大騒ぎになる。それでは困るのですよ。今回は一万人にも及ぶかもしれないという予測が立つ世の中ですよ。しかも相手方からこういうふうなことになる雲行きは正式に防衛庁に話がいっている。こういうわけですから、そういう意味で、事がめんどうになりますから具体的に承りますが、あらかじめ各基地における状況というものを質問通告の際に差し上げてあるつもりでございますので、まず空軍関係で申せば三沢の飛行場、これにつとめておられる方二千人ばかりおいでになる。この三沢の飛行場は、すでにファントムの三中隊、そうして偵察中隊、これは韓国に行っちゃっていない。移動済み。九月ごろまでに突貫工事をやることになっていた兵員宿舎、これも建設中止。三沢の空幕が同居をしている、こういうかっこうですね。この三沢飛行場というのは一体ゼロになるのかどうか。それから関連をいたしまして、三沢の対地射爆場があすこにあります。ここにもわずかではございますがつとめている方がある。当然これは三沢の飛行場との関連で、なくなればここもなくなる筋合いになる。あわせてこの点が一体どういうことになっているのかということが一点。  それから横田の飛行場、これが三千百五十人ばかり勤務されておる方がおります。ここはすでにファントムの三中隊、これは移動済みでございますが、昨年末山田弾薬庫から運送した弾薬類、これはもうすでに韓国の烏山に移送済み、残っているのはMAC、つまり輸送隊関係だけ、こういうことになっておるのですから、三沢、横田、この関係のところをどういうふうに防衛庁のほうは——確たる結果でなくてけっこうでございますが、いまの動きとしてどうとらえておられるか、そこらのところを、対象が大きいですから、お知らせいただきたいと思います。
  219. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 ただいま申し上げましたように、こういう問題につきましていろいろ日米間で協議を進めておるところでございますし、また内局におきまして基地管理協議会を設けましていろいろ検討いたしておるところでございますけれども、残念ながらそういう個々の基地がどういうふうになるかということにつきましては、まだ今日の段階においては申し上げる段階でございませんので、その点はよろしくひとつ御了承いただきたいと思います。
  220. 大出俊

    大出委員 島田さん、これはあなたに幾らそう言われてみても、これだけ新聞紙上をにぎわしていて、どんなふうに動いているかぐらいのことが出てこなければ、委員会審議している意味がない。そんな無責任な話がありますか。片っ端首になってしまうという大騒ぎになっている。長年、ぼくはこの間ストライキのときに寄ってみたけれども、みんなもうそれこそ平均年齢四十七歳ですからね。朝六時に一ぱい柱を持ってきたり木を持ってきたりして積んで、たき火してみんなあたっているでしょう。かつて二十三万人もいたのですから、皆さんは切られ切られて残った方ばかりでしょう。あなた、もう少し、そんな木で鼻をくくったようなふざけた答弁しなさんな。
  221. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 在日米軍基地の整理がかなり進められていく趨勢でございますので、当然われわれといたしましてもその従業員の人員整理ということは予想しておるわけでございます。ただ、まだ今日の段階におきましては、個々の基地につきまして、どういう職種について解雇があるのか、またそれが時期的にどういうふうな段階で行なわれるかということについてはわかっておりません。したがいまして、私どもとしては、いずれ大量の整理が予想されますので、それに対する対策ということは十分考えなければならないということで、その認識は持っておるつもりでございますけれども、そういう個々のケースにつきまして、数量あるいは時期、そういうものが判明いたしておりませんので、その点はひとつごかんべんをいただきたいというふうに申し上げておる次第でございます。
  222. 大出俊

    大出委員 これは何も私は無理なことを聞こうというのではない。具体的な内容として新聞に一ぱい載っているでしょう。いま私があげた三沢、横田というのは新聞記事になっている。間違いならこういうわけで間違いだと言ったらいい。新聞記事はみんな見ているのですから。何回も何回も載っているのですから。私も出ていないことを聞いているのじゃない。三沢、横田、厚木、横須賀、板付、ここまでは新聞に出ている。それをいまの段階で、ここまできて——もっとも考えてみれば、島田さん施設庁長官になって間もなくだから、あるいは防衛局長、官房長をおやりになっていたのだから、いまここで私が言ってもいささか無理かもしらぬ。知らぬなら知らぬで、江藤さんもそこにいるのだから、折衝の張本人がいるのだから、少しはものを言わなければおかしいじゃないですか。新聞に出ているものを言ってください、江藤さん、あなたから。
  223. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いまの米軍基地の整理統合の問題は彼我でいろいろ折衝している最中でありまして、個別的な基地のそういう問題は、まだ非常に流動的な情勢になっている。それでここで言明するべくまだ熟しておりません。したがってこの点は御容赦願いたいと思う。いずれ発表して適当なときが参りましたら発表したいと思っております。しかし、従業員の問題は非常に大事な問題でありますから、大出委員前からわれわれにお申しつけの予告期間の問題であるとか手当の問題であるとか、そういう問題についても、それを込めて先方といま強く折衝している最中なのであります。
  224. 大出俊

    大出委員 どうしても長官が、折衝中であるから、かつまた流動的であるから、何がしかの支障がどういう方面かにある、だから言うわけにいかない、こうたっておっしゃるなら、私もきのうやきょうじゃありませんから了解してもいいのです。いいのですが、いつも、いままでの例からすると、新聞にはいろいろ載る。ところがなかなか防衛庁というのはものごとがはっきりしない。突然ずばっと首切り何人と出てくる。そのたびに切られるほうの身にとってみれば家族を含めてたいへんな目にあっている。だから、今回大量なことになりそうだという現実があるのですから、そのときになってしまう前にできる限りこれはあなた方のほうでも努力をされて、いっ何日に何人やるというのがきまった、国会審議をやっているのですから、やっぱり言える範囲のことをつくって言言ってくれるのがあたりまえじゃないですか。私はそう思うから、くどいようですが言っているのです。たいへんなことになりそうだという予測をするのですが、間違いですか。相当な首切りが出る。アイクの時代、あの例の声明以来、たいへんな数の首切り、一つ間違えば一万人前後の首切りになる、こう予測をしなければならぬと思うのですが、間違いですか。そこのところはどうですか。
  225. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ある程度のものは出そうです。ですからいまいろいろその点について米軍と折衝している最中なのです。
  226. 大出俊

    大出委員 ある程度のものは出そうです、こう言うのですが、いま働いている方々の数は明確にわかっている。今回の場合は共同使用という形のものも一面ある。そうすると基地は返ってきてしまうのではない。基地になって残る。にもかかわらず、そこにいる人はやめろ、こうなる。そうなんだ。旧来と違って、返ってくるならいたしかたないという面がありますけれども、基地はそのまま維持をするという形にもしなるところがあるとすると、しかしいる人間はやめろ、こうなるのですから、それだけに、やはり政府立場というものも、そういう方々を、ではどうするかということを旧来より以上にお考えいただかなければならぬ時期に来ている、実はこういうふうに思うのです。  そういう意味で、以下幾つか承っていきたいのでございますけれども、いつごろになれば大体煮詰まることになりますか、年内でございますか。
  227. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 いつごろということがなかなか申し上げられないのでございますけれども、おそらく年内には何らかの結論が出るという段階が来はしないか、そういうふうに考えております。
  228. 大出俊

    大出委員 皆さんがいま非公式な形でやっておられるとすれば、それが公の形になって取りきめが行なわれると表へ出るわけですが、それが年内にはおそらく何らかの形で出る、いまこういうお話でございますから、そうしますと、本日は九日でございますね。年内、これは何日もないですね。年内に出るのだということになるとすれば、その予測が成り立つということになるとすれば、これはほんとうに日にちがないということになる。そうすると、何の予備知識もなくていきなりぽかっと出る。あなたのほうでまとまって表へ出るときには、どこの基地から何名、どこの基地は何名、こういうことになって出てくるわけですね。そう見ていいのでしょう、違いますか。そこのところと、そうだとすると、いささかもってこれは不親切過ぎやせぬかという気がするのですけれども、そこのところをお答えをいただきたい。
  229. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 米側の事情によりますと、結局予算がきまりまして、それに基づきまして全体の整理の数がきまり、それがそれぞれの国あるいはそれぞれの基地に割り当てられまして支出をされる、こういうことになろうかと思います。  そこで私どもとしましては、先ほど大臣からお話がございましたように、九十日の解雇予告期間ということ、これは厳重に守ってもらうように再三申し入れをしてございますし、また外交ルートを通じてもそういう努力をいたしておるわけでございます。また二面、米側のほうも、極力運用の面においてそういう九十日の予告を実施するように確認をいたしておるところでございます。ただ現在のところ、さっき申しましたように、どういう段階で出てくるかということについては、実はまだわかっておらないというのが実情でございます。
  230. 大出俊

    大出委員 そうすると、予告期間は守る、この点はよろしゅうございますか。
  231. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 この問題につきましては、御承知のとおりに、基本労務契約の中で、九十日ということを入れるべく再三努力をいたしてまいっておりますが、米側のほうはそれに対してなかなか難色を示しておりまして、結論は得ておりません。この問題につきましては引き続き努力をいたしたいと思いますが、米側の申しておりますのは、この原則については極力順守していく、こういうことを確認をいたしておるわけでございます。
  232. 大出俊

    大出委員 極力その方向に向かって努力するということを確認している、こういうことですか。——防衛庁としては、何が何でも整理前九十日の予告期間というのは確保する、この点について責任を持とうとお考えでございますか。
  233. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 これは、ことしの一月に事務次官と在日米軍参謀長の間にそういう原則については確認をいたしておるわけでございます。その後も私どもしばしば機会あるごとにその点は申し入れをしておりますし、また外交ルートを通じても申し入れをしておりますので、しかもそれにつきましては極力順守をする、こういうことでございますので、われわれとしてはそういうものが順守されるというふうに期待をいたしております。
  234. 大出俊

    大出委員 私はこれは期待でなくて、やはり九十日の予告期間というものは、防衛庁の責任においてはっきりさせるという決意で、何が何でもそうさせる、こういうことで責任を持ってもらわないと、期待したらそうならなかったとあとで言われたって、切られる方は困るのですから、家族をかかえているのですから、この点はそういいかげんでなく、やはり私は防衛庁は責任を持ってもらいたい、こう思うのですが、くどいようですけれども、いかがですか。
  235. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 できるだけ努力をいたします。
  236. 大出俊

    大出委員 できるだけなんていう、またよけいなことをあなたはくっつける。あなたは新施設庁長官なんですから、やはり責任を負うということでこれはおやりいただきたいのです。くどいようでありますけれども、念のためにもう一ぺん答えてください。
  237. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 努力をいたします。
  238. 大出俊

    大出委員 これは私は実は心配だから、前のときに私も個々に話してみてずいぶん困ったことがありまして、それでこんなにくどく申し上げるので、御容赦いただきたいのです。  それから、日米協議がいろいろな形で、公式、非公式を問わず、表に出す出さないを問わずいろいろ進んでおるのでありますが、年内にばらばらとあっちこっちで出てくるというかっこうが予測されますか。
  239. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 整理が漸次行なわれますと、その人員整理が漸次出てくる可能性もあると思います。そこで、われわれとしましてはできるだけまとまった時期にまとまった人数が出てくるということを期待いたしまして、米側にはそういう旨を申し入れをいたしております。
  240. 大出俊

    大出委員 もう一つ承りたいのですが、この整理をする、さてその仕事を民間に請け負わせる、こういうケースが、たとえば横浜の営繕なんというところにあるのですが、そういうふうなこともお考えですか。
  241. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 そういうことのないことをわれわれとしては期待をいたしておりますし、民間の業者に業務を委託するという、そういうことを前提として解雇が行なわれるということは非常に困りますので、そういうことのないように、これも米側にはしばしば申し入れをしてあるわけでございます。
  242. 大出俊

    大出委員 それに基づきまして二つ問題がある。さっき長官がお答えになりましたが、そこをもう少し具体的に聞きたいのであります。  この予測される整理というものに対しまして、防衛庁は二つの問題で予算措置を、四十六年度については防衛庁原案の中でいまお考えのようでありますが、そこで特別給付金の増額という面が一つあります。もう一つは、これは何といったらいいのか、まだ折衝段階がありますから正式名称がどうつけられるかわかりませんけれども、特別休職手当、こういったらいいのかと思うのでありますが、両方予算措置をされていると思うのでありますけれども、どのくらいずつ予算を計上しておられるのか、承りたいのであります。
  243. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 特別給付金の増額につきましては、昭和四十六年度は約七億五千四百万でございます。特別休職手当、これは中高年齢者に対する特別休職手当でございますが、これにつきましては一億八百万を要求いたしております。
  244. 大出俊

    大出委員 七億五千四百万ということになりますと、旧来の給付金は増額措置でどの程度の見当にふえることになりますか。平均でけっこうです。
  245. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 これは勤務年数によりまして従来は二万円から二十七万円の額でございましたが、来年度は七万ないし三十五万ということを要求いたしております。したがいまして五万ないし八万の増額要求ということになります。
  246. 大出俊

    大出委員 さてそこで大蔵省に承りたいと思います。中川さんにはお忙しいところをお待たせいたしまして申しわけないのですが、本会議で私が福田大蔵大臣に承りたいと思って質問いたしましたら、四十六年度については給付金なりあるいけ休職手当なり、防衛庁原案によって要求を受けている。したがって、積極的に取り組みたい。こういう御答弁なんですよ。いま額を言っていただきましたけれども、わずかな額なんですよ。もう残り少ない方々になってしまっておりまして、私はこれは最後の機会だと思っておるのです。したがって、この程度のことは事の性格上何としても防衛庁が要求するものは認めてやっていただきたいと思うので、そういうことをひとつ前提にして、そこのところをどうお考えかというのが一つ。  さらにもう一点。たまたま本会議に中曽根長官おいでにならなかった関係があって、その分の質問を省きましたが、そのことも前提にして承ったところが、大蔵大臣の答弁は、四十六年はそうなんだけれども、さて四十五年については予測されるところがあるのだけれども、防衛庁がまだお出しになっていない、いないから実は不本意だけれどもお答えをいたしかねる、こういうことになっておる。だから積極的に取り組みたいという御趣旨からすれば、四十五年度に、年度内にとおっしゃっておられるのですから、三月までが四十五年度だとすると、当然予告期間その他を考えてみても、四十五年度で処理をしなければならぬことになるという方々が相当数出るのではないかと思う。これは防衛庁がという意味じゃありません、大蔵大臣の答弁がそうなんですから。してみると、これと、いまおっしゃっておる四十五年に出てくるというのでありますから、ここの関係を防衛庁の側でつかみ得て、このくらいといったときに、四十五年度分、何らかの予備的な措置を講じていただかぬと、これまた大きな問題になるので、そこのところいかがお考えになりますか。
  247. 中川一郎

    ○中川政府委員 四十六年度について、先ほど防衛庁のほうから説明のあった数字の増額要求がなされたということは事実でありますし、大蔵大臣が答弁いたしましたように、積極的に取り組んでおりますが、まだ結論はどうするか得ておりませんが、積極的に取り組んでおることは事実であります。ただ、昨年四十四年に、御承知のように大幅にこれは増額したばかりであります。(大出委員「たいして大幅じゃないよ。」と呼ぶ)数字の上では大幅になっております。  そこで、四十五年度はさてどうするかということでありますが、先ほど来質疑応答の中にありましたように、まだ時期も、したがって人員もはっきりしておらないので、十二月末になるかもしれないということになり、しかも三カ月間は期間を置きたいということになりますと、四十五年の中にどれほど入ってくるか、この辺もまだ数字的にもわからない段階でありますので、それらが詰まった段階において考えてみたい、このような態度でおるわけであります。
  248. 大出俊

    大出委員 この暮れにある種の決着がついて発表されるとすれば、三カ月の予告期間、九十日の予告期間を置けば、年度内にならざるを得ぬと思うのです、さっきの島田さんの答弁からすれば。そういう予測で進めておられるということになるわけなんで、そこでいまの点承ったわけですけれども、防衛庁のほうとしても、そこらのことがあるから四十五年こうだ、ということを言えずにいる。だからここで非常に詰めにくいのです。おまけに中川さんは私と同期生だからあまりがんがん言いたくないのです、そこのところは困るのですけれども、ひとつ言ってほしい。それは年齢制限ですよ。これは休業手当年齢制限の件は、人事院総裁の言によれば、冷酷むざんなことはしないといういい表現がありましたが、いささかこれは冷酷むざんではないかという気がする。ということは、長年つとめてこられた基地従業員の皆さん平均年齢は四十七歳なんです。そうすると、五十歳という年齢制限、これは五十歳以上でなければ見ないということになると、首切るのは四十くらいから切るのですから、そういう意味では若い人はあまりいないのですから、そうすると五十という年齢制限はいささか私はふに落ちない、こういろふうに思うのです。そこでこれは私の一人言になるかもしれませんが、聞くところによると、大蔵省というところはうるさいところで、そろばん勘定が高いから、さいふの口を握っておるから、いきなり年齢制限なしにぶつけると、ぽんとけられたら困るというようなことで、大蔵省というものは強いのですから、そこでとりあえずはまあ五十歳、年齢制限もつけたんですからといって大蔵省に来年度は認めていただいて、そうしておいてさらにその先年齢制限を取っぱずせばということがあるのですけれども、もう目の前にきた、情勢かわった、そんなけちなことを言っちゃおられない。平均年齢四十七なんですから、ほとんど四十以上なんですから、だからそこのところはひとつ年齢制限はなくしていただきたい。大蔵政務次官がおいでになるところで、防衛庁長官がおいでになるところで、施設庁長官がおいでになるところで、ここのところは何かひとつ施設庁のほうから、長年つとめた方なんですから、最後に残ってきた方なんですから、そこを含めてひとつ御答弁いただきたいのですが。どちらからでもひとつ……。
  249. 中川一郎

    ○中川政府委員 実はそのことについてはまだよく承知しておりませんので、防衛庁の考え方を聞いた上で正式にお答えいたしたいと思います。
  250. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 来年度要求いたしております特別休職手当、これは初めての制度でございますけれども、これは先ほど先生おっしゃいましたように、五十歳以上につきまして三カ月間のいわば待命の制度でございます。五十にいたしました理由は、五十歳ごろになりますと再就職が困難になるという度合いが非常に強いということで一応その辺で切ったわけでございます。われわれとしては来年度できるだけ関係機関と協議いたしまして実現に努力いたしたいというふうに考えております。
  251. 大出俊

    大出委員 これはまた別の機会に申し上げますが、この年齢制限だけは、私はこの出た結果を——これはもう出る前に島田さんのほうでどの辺の範囲でどういう人員がということはおわかりになるのですから、そうするとその時点でどのくらいの年齢の方がということがおわかりになるはずなんですから、そこのところは私は、ここまできて年齢制限をというのは、これは本人にとってみたらたいへんな不公平な話になると思いますので、これはひとつ中川さん、詰まっていないからそれ以上無理な聞き方はしませんけれども、十分御考慮をいただきたい、いかがでございますか。
  252. 中川一郎

    ○中川政府委員 十分考慮してみたいと思います。
  253. 大出俊

    大出委員 個々の基地につきましては、実は厚木の飛行場なんかの件につきましても非常にこれは問題がありまして、これはどうやら運輸省あたりは民間の飛行場にしたいという気持ちが厚木は非常に強い。ところがどうもこれは、中曽根さんがアメリカに行かれてレアードさんと会ってどうされたかわかりませんけれども、何かあったときには使えるようにという一つの話がありますから、ここがあいても、本来なら運輸省あたりの考えているように民間にという気持ちがあるけれども、そうではない、自衛隊が、こうなると、これも非常に問題がある。そこらのところも非常に心配になるのですよ。だから私は何もかも、たとえば上瀬谷の通信基地なんかも長年問題になりましたが、あそこだって長年みんなつとめているのですから、駐留軍の方はみんな知っている。地下施設もどんどん運び出してどこかへ持っていってしまう、通信用のポールなんかも取りこわして運んでおる。現にそうやっているのですから、現実は。そうすると、やはりそこにつとめているのですから、おれの首が、になる。だから私はわかる範囲のことくらいは、くどいようだけれども、たとえば厚木あるいは上瀬谷、そういうくらいのところはどういう傾向を持つかというようなことくらいは出てきてもよかりそうに思うのですね。重ねて伺いますが、そういう点は一切この際はもう明らかにしない、こういうことでございますか。
  254. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 個々の基地につきましては、現在の段階でまだ流動的でございますし、きょう申し上げてもあした変わるという可能性よございます。その辺は今日の段階ではまだ申し上げられません。
  255. 大出俊

    大出委員 きょう話してもあした変わるというのじゃ、これは言ってもらったってしようがないですから、せっかく話が出たけれども、あしたは変わりますというのじゃ意味がありませんから、その点は次の機会に譲ります。  そこで最後の問題、簡単に承りますが、自治省の方お見えになっておりますか。この公営企業の問題はやはりどうしても最後に残るのでございまして、それともう一つ人事院のほうに関連する退職手当の問題があるのでありますが、特に公営企業の問題、この点だけ、ひとつ中心点だけ承ってまいりたいのであります。  再建計画その他の方式をおとりになってもう久しきにわたる。三十八、九年ごろからずいぶん長い間私どものほうも論争をし、自治省の皆さんとも話を続けてまいりました。したがって、おっしゃられるとおりの合理化措置というものもずいぶんたび重なってやってまいったわけであります。そこで、ここまで来て、一体地方公営企業というもの、交通であれ水道であれ病院であれ、特に交通、これをどうしたらいいかという点についてのお考え方、もうそこらがあってしかるべきだと思うのでありますが、どうにもならぬとお考えならそのように、こうすればいいというように考えているというならそのように、まずお答えをいただきたいのです。
  256. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 公営企業の中におきましても、その経営収支の状況は、事業の種類によって相当な差がございます。現在の公営企業で経営上非常に問題があります事業は、御承知のとおり交通事業、それから病院事業というものが、大きい赤字をかかえている事業の二つの大きなものでございます。そのほか若干の問題が残っておりますのが、工業用水道といったようなものがございます。水道事業等は、全般的に見ますならば大体経営収支は採算点にあるというふうに考えております。
  257. 大出俊

    大出委員 いまの状態をながめて、自治省がお考えになっているような形での将来の再建、これは可能だとお考えでございますか。
  258. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 公営企業の再建団体は各事業を通じてございますけれども、再建が非常に困難であるという事業は、まず大都市における交通事業、それから病院事業のうち特に僻地にあります病院事業というものの再建をはかります場合、その計画遂行が相当むずかしい事業だというふうに考えております。
  259. 大出俊

    大出委員 六大都市を中心にお考えいただいて、いま交通事業という話が出ましたが、再建の方法がない、こういうお考えになりませんか。
  260. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 六大都市の交通事業は、事業としましては路面電車、バス、地下鉄というのがおもな事業ということです。そのほかトロリー等もございますけれども、まずこの三つの事業に限定して考えてみますと、路面電車は、現在の交通事情の関係から次第に撤去の計画を進めまして、すでに大阪市におきましては四十三年度末において廃止いたしております。そのほかの都市におきましても、大体四十七年、八年ごろでこれを撤去いたすということになっております。としますと、残りますものがバス事業と地下鉄事業でございます。最近の都市の道路交通の事情から見ますならば、やはり路面電車の撤去ということはやむを得ないものとして考えていかなければならないだろう。それで、その撤去の過程において発生する赤字というものは、その事業のいわば撤退作戦の最中でございまして、何らかの措置をもって、その地方団体としては処理をしていかなければならないということになると思います。  それから、六大都市の都市交通の主力は、地下鉄並びにそれを補完する事業としてのバス事業というふうに考えられるわけでございますが、地下鉄につきましては、御承知のとおり昭和四十五年度から、その建設に対する補助制度というものが、相当抜本的な対策をとられたわけでございます。これによりまして、現在建設計画の作成中でございます。今後の交通需要の状況から見まして、長期的には、地下鉄事業というものはある程度健全な経営が将来可能になるというふうに考えております。バス事業につきましては、やはり道路混雑の状況から見て、その経営は相当考えていかなければならない、こういうふうに考えております。
  261. 大出俊

    大出委員 簡単に承りますが、バスというのは、御存じのとおり道が非常に混雑いたしておりますから、走行キロという意味等を含めての収支、企業体効果などということになってまいりますと、どこを向いたってそう満足にいかない。さて自治省の方針もございまして、自治体の経営者側にすれば、ワンマンにしようというからワンマンにする。さて合理化をといって数々おあげになるから、一々やってくる。片一方じゃ、いまお話がありました路面電車はどんどん撤去する。撤去計画を立てたら、急げというからさらに急いだ。やれることはみんなやってきたわけですね。さて民間と同じように、たとえば洗車なんかにしても、何台に一人なんていってみたって、これは民間が正しいのか官庁が正しいのかといったら、そこにも問題がある。市営バスでこんなことは何だといわれるから、そう簡単にこれもいかない。そこへ持ってきて、賃金体系を、初任給がもうちょっと高くならぬと民間から入ってこないといわれて、上げろといわれてみても、てっぺんをカーブを落とせといわれても、民間と違って長い歴史があるとすると、年齢の高い人もあるから、そう簡単にいかない。まさにてんやわんやをしながら、私は横浜だから、わがほうの市長だからかもしれないけれども、苦心惨たんをしてやってきている。歴代まことにまじめな交通局長さんがすわっていらっしゃるから、あまりまじめだから、組合のほうも文句の言いようがないといわれながらやっているわけでしょう。それぞれ努力をしているのですから、自治省の皆さんに努力をしないじゃないかといわれる義理は私はないと思う。  そうなると、さて問題が残るのは何か。料金だ。それでは料金値上げをしたらどうなるかといえば、料金で今日的経営の赤字というものを食い切れるか。これは限度があります。そんなに毎年毎年上げるわけにいかない、こういうわけです。そうなると、これはやはりそこに何らかの方法を考えなければいかぬ時期に来ている。それじゃ一般会計から——これは事は簡単ですが、一般会計財源はそんなに急激にふえるかというと、これはまた限度がある。そうすると、国の責任に立ち返って、当面、現在の地方公営企業の各自治体の企業側に、経営者側に責任があるということはまぎれもない事実だけれども、しかもなおかつその上に立って何らかの方途を国が考えなければ、再建しようにもしようがないという時期に来ている気がする。この状態は必ずしもよくなっていない、こう言わざるを得ない。そうすると、この辺で自治体でやれではなくて、国として法制措置をするなり何なりということをやって、その上で自治体にやれといわなければ、たとえばアメリカなんかでやっているような受益者負担の形で、周辺の企業なりあるいは百貨店等の商店なりから目的税的に金を取るということを考えるにしても、それは一つの市だけではできない。あるいは原因者負担ということで、交通混雑をするのだからそちら側から金を取ろうとしても、これまた一つの市だけではできない。そうすると、そこらのことについてはやはり国が責任を負ってくれる、責任を負って政策を出してくれる、そうでなければやりようがないところに来ている、こういうふうに思うのですよ。ここのところはどうお考えですか。
  262. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 交通事業は、再建計画の策定以来相当な合理化を進めてきたことは御指摘のとおりであります。そうした合理化がこれでもう全部し終わったのかというと、まだ必ずしもそこまでいっていないというところもあるかと思います。またその企業内部におきましても、現在の道路交通の現状から見て、たとえばバス路線の再編成の問題にいたしましても、まだまだ検討すべき余地はあるだろうというふうに考えております。しかしながら、それだからといって企業の外部環境の悪化ということは、あらゆるそれに対応する対策をとりましても、企業としては、努力にはまた限界があるというふうに私どもも考えております。そうしたこれからの交通事業をどういうふうに持っていくかということは、やはりそれぞれの都市の問題でございまして、いたずらに国に対して依存するというような体制ではなしに、やはりその都市の交通問題として十分に都市の中で考えあわせていく必要があるだろうというふうに考えております。ただ、私ともも、そういうような地方団体の内部の問題であるけれども、その考え方の中には、企業会計と一般会計との区分があるという問題もあるわけでございます。そういう点をそれぞれの都市の事情等も十分聴取いたしまして、適切な方策というものをともどもに考えていきたいということで、いま検討を進めておる段階でございます。
  263. 大出俊

    大出委員 結論を急ぎますが、ここに私は一つ持っておるのを見ますと、次は何々商店前、こういう見出しなんですね。これは中身を読んでみると、市電の停留場がCMつきになっているというのですよ。宣伝広告つきに。これは京都ですが、市電がとまると、次は何々商店前でございます。こう商店の名前を放送する。商店側からCM料を取る。これは古都京都の例ですが、いわゆる三百七十億ぐらい赤字があるというのですけれども、まあつけもの屋さんから始まって私立の高校までこのCMに登場して、一つの電車の中に二十本くらいCMのテープがあって次々とかけていく。そうしたら、お買いものはどうぞ当店にというのが入っていたら、陸運事務所からそれだけはだめだというクレームがついて、そこを切ったというのです。これを大阪でもやろうかという。ここまで正直なところ各都市ともに苦労し抜いているわけですよ。こう思うと、横浜市だって、私のいるところだって、きのうも承ってみると、路面電車を撤去した。急げというからまた急いで撤去した。さて今度はベースアップがまた出てきた。十一賃と称する、いまの一一・六七に見合うものをというと、六億から金がかかる。さて財源はというと、自治省にまたおこられるからさがしてみたら、電車の線路を取った線路敷きが、これは横浜市の土地である、財産である。横浜市の土地だといってもいま自動車が走っているんだけれども、これは横浜市の土地だから、これを国に買ってもらおうというので、かつて買うようになっておったんだけれども、そういうわけで、わずか七千万、来年一年含めたって一億ぐらいのものを何とか建設省に買ってくれ。そんなことは頭から知らないと建設省は言う。冷酷むざんですよ、こんなもの総裁がいてぐあいが悪いけれども。ところで、自治省の皆さんのほうも、とにかくそうなれば建設省に話さざるを得ないということになるという、お互いに苦しいところにいまあるわけですよ。それは横浜の市の交通会計、赤字のところから見れば、二年間通算して一億という金はなみなみならぬ金ですよ。だから線路を撤去したその下の線路敷きが市の土地だから国に買ってくれ。これは全くCM流のことだけれども、それも買わないといわれちゃ困るわけですよ。私はこれは建設大臣にも言いたいと思うけれども、そこまで苦労しているのですから、そこをひとつお互いに認識しあって、もう理屈は言うことはないですけれども……。  さて、そこで当面従業員の皆さん方はやれストライキだなんという。年内に片をつけたいという。来年は四月の統一地方選挙もある。その先には参議院選挙もある。ずるずる延ばしていたらどこまでいくかわからない。こういうわけなんですが、この暮れというところを使って、年度内にめどをつけるという気持ちに私はなっていただきたいという気がするのです。そこのところ、いかがですか。
  264. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 都市によりまして、現在いわゆる十一賃の団体交渉を持っておると思いますが、その再建団体の市によりましては、何とか年度内に片をつけたいというような考え方でいろいろ検討しているところもあるかと思います。また、市によりましては、とてもいい案が思い浮かばないということで、現在の段階では思案投げ首というようなところもあるかと思います。ただ私どもとしましては、現在の段階におきましては、本年度の収支見通しということもまだ十分わかっておらない段階でもあります。管理者としましては非常にその解決は思い悩んでいる状態ではなかろうかと思います。私どもも、いたずらにこうした問題の解決を延ばすということは好ましいことではございませんので、それぞれの市の実情をよく聞きまして、適切なる対策を講じてまいりたい、かように考えております。
  265. 大出俊

    大出委員 年度内という一つのめどを置けば、そういう目標を立てれば、年内におおむねの大筋はきめられると私は思う。年度内解決という目標をお互いに立てれば、何とかひとつ詰めようじゃないか、春になってのんびり——やはりこれは双方に問題があるわけですよね。私は、そういうことで努力をしてみていただいて、いたずらにここで、市長選挙でも終わって——三月末日の告示だということになると、市長は、自治省の考えている給与体系に、下をちょっと上げて上をおろしてと言われたって言えないだろう。だから、選挙が終わっちゃって、新市長になってからのほうがいいというお考えかもしれないけれども、そうではなしに、新市長になったって同じことです。新市長になって、さて料金値上げをからめていったって、佐藤経済企画庁長官は公共料金ストップだというのだから、これは同じこと。そうすると、そこまでいかないで片づけなければならぬわけです。どうせやるのですから、だからひとつ年度内という一つの目途をつくって、この暮れのこの時点で一つ見通しをつける、こういう御努力をいただきたいのですが、そこのところ、いかがですか。
  266. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 再建計画をこの給与改定を織り込んでどういうふうにつくっていくか、そしてまた給与改定財源をどうするかという、その処理のしかたは、六大都市をとりましても、それぞれの都市によりまして事情がみな違っております。したがいまして、各都市がそれぞれの実態に応じた方策というものを考えていただかなければ、また私どもが一人で張り切っておっても何ともならないというのがいまの現実でございます。やはり各都市がそれぞれの市の実態に応じた対策について、十分私どもと相談をしていただけるような機会ができるだけ早くあればよろしいというふうに考えております。
  267. 大出俊

    大出委員 これは私も、前提を置いているのは、しょっている市長もいるわけですからね。私どもも努力していると申し上げているので、これは相互努力をしなければ、ここまでくれば、お互いにさんざん言ってきたことだから、言うことはないのです。だから、そうではなくて、現実的にお互いに、組合も含めて、努力をしよう、そして何としてもこの際ですから、こういう時期ですから、何とかひとつ再建の方途をこの年度内ぐらいにまずめどを置いて、そうすれば年内何とかの方法をきめなければなかなかそういう進み方はしませんから、そういう努力をする。いまの御答弁も、まあ早く努力はしたいということですから、そういう意味に受け取りたいと思うのでありますが、ぜひこれは御努力をいただきたい。  そこで、結論でございますけれども、方法なんですけれども、私は本会議で秋田さんに、特交方式の解決のしかたが前例としてある、だからそういう意味でものを考えられないかということを言ったら、これはわけがわかって言っているつもりなんだけれども、そういう方向はなじまない、しかし積極的に努力する、こういうお話だった。  そうなると、これは責任は自治体にある、これははっきりさせたい、これは自治省のお気持ちだろうと思う。ただしかし、どうひねくってみても、またそこに一つの大きな支障がある。これまた事実だと思う。そうなると、即賃金という形の入れ方はできないにしても、何らかの形でその自治体の努力に応じてお考えをいただくところはいただかないと、前に進まない。これは普通交付税の方式をとるにしろ何にしろ、そう思うわけですよ。そこらのところを、考え方として、事情はおのおの違うけれども、一体どの辺に中心を置いてお考えになるかという点は、これは言っておいていただいたほうがいい、こう思うのですが、そこのところはどうです。
  268. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 給与改定財源を特別交付税で措置するということは、前例もありませんし、今後ともするつもりはございません。考え方としましては、公営企業の給与改定というものは、やはり企業会計の健全化、合理化を通じて生み出されるべきものだというふうに考えておるわけです。ただ、現在の交通事業が非常な経営の悪化の状況にあって、いろいろまた企業の外部からの要因で悪化しておる。こういうものについて、はたして公共的な負担というもの、料金負担以外の公共的な負担というものが、あり得るかどうかという点について検討しながら、それが一般会計の措置として適切であるということであるならば、その点についての財政需要というものを交付税の算定を通じて見ていくというのがたてまえだろうと思います。そこで各都市ごとにそういう方式を見て考えます場合に、そういう方式が一律的にとれないというところに非常に問題があるわけでありすす。  六大都市の中では、御指摘の横浜市などの場合には、企業会計としては一番悪い状況にあるわけです。横浜が解決できますならば、六大都市のほかの都市は、またそれに見ならってできる状況にあるかと思います。この点は各都市とも、そうしたものについてのいろんな筋道の立て方ということが非常に困難じゃなかろうかというふうに私どもも感じます。それで別な機会を通じまして、いろいろその内容につきましての検討会をいまやっておる段階でございますが、直ちに特別交付税でどういう措置をとるかということになりますと、いまここではお答えしにくい問題でございます。
  269. 大出俊

    大出委員 佐々木参事官がおっしゃっていることは、私はわからぬわけじゃない。一番悪いところにおるから私がものを言っているのですね。そうすれば、ほかは出すんだから、一番悪いサンプルなんだから。そしてそれには長い間の歴史があって、横浜には基地もいっぱいあって、路面状態がたいへん激しいところですし、そういう意味での財産もないし、当然理由があるわけですけれども、長年やってきたわけですから、それを言ったってしようがない。結論は、事情が違うというのは、ただ単にバス路線一つ考えても、市議会で、地域住民のやはり利益、不利益がありますから、その要望にこたえていろいろ市の委員会で発言が出てくる。そうすると、政策路線ということになってしまう。つまり不採算であっても、たとえば本牧にコンテナバースができて、A突堤、B突堤とたくさんできると、そこに港湾の労働者の皆さんの住宅もできる。そこにバスが行かなければどうにもならぬ。そうすると、その間、路線の採算もあって、採算のとれる七十円というものできまる。しかしその七十円というのでは住民はたまらない。そうすると、赤字路線を入れていかなければならぬのでございますけれども、そういう問題が——あるいは団地がたくさんできると、それも不採算路線だけれども、とりあえずやらなければならぬ。民間でやるといってもできっこない。そうすると市のバスでやらなければならない。そうしますと、これまた不採算でやらなければならぬ。そういう例が各所に最近たくさんあるわけですよ。そうすると、おっしゃる意味における企業努力も必要だし、あるいはそれに見合う職場努力も続けなければならぬけれども、採算の問題、売り上げその他の問題も考えなければいけませんけれども、しかしながら、残るのは一般の何らかの形の公共負担がやはり必要だということになる。そこのところを、あなたがお話しになりましたが、お考えをいただいて、しかもできるだけこれは早期に、いま検討会でやっておるものを精力的にやっていただいて——来年は地方議会にしても何にしても、そうでございますけれども、地方議会選挙のまっただ中にそんなことを国会でやっている人はいない、政党政治だから。そのあとに参議院選挙がやはりあって、選挙区で走り回りますから、そうすれば、それをずるずると延ばされたのではかなわぬという気持ち一般従業員の奥さん方にもある。だから、そういう意味でできるだけ早く進めていただきたい。それでいまからずるずる延ばしていけば——やはり料金値上げができてからとお考えにならないで、そこのところは、ひとつ早急な処理をお考えいただいて、料金値上げ、料金値上げだけではなく、料金値上げが一般的に認められれば、それをやらなければならぬときはやらなければならぬのですから、そういうふうにお進めいただきたい。これは私の気持ちですが……。
  270. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 確かにバス路線の中には、いわゆる政策路線といいますか、行政路線といいますか、そういうものもあることは事実でございます。ただ、そういうような路線について、現在のような均一的な料金算定制度というものがいいかどうかという点も一つは問題があるだろうと思います。やはりその内容によりましては、場合によっては利用者負担というもので一部かぶってもらわねばならぬものも出てくるだろうと思います。また、市の全体の立場から考えて、これでは一般行政費を入れなければならないというような問題もあるわけであります。いま、そういう問題につきまして、できるだけその問題の検討をやっておりますし、また大体の考え方がまとまってまいりました場合には、またそれに対して具体的にどういう措置をとるかということも検討しなければならない。しかしそれかといって、料金を適正化するという問題について、これをなおざりにしておくということもできないわけでございます。そうした問題を総合的に検討しながら、できる限り私たちも適切な措置を考えていきたい、かように考えております。
  271. 大出俊

    大出委員 最後に、さっき時間の関係で省いた問題がありますので、一、二点伺って終わりにしたいと思いますが、一つは人事院に伺いたいと思いますが、他の委員からも出ましたが、退職手当制度に関する問題、これは人事局方々にもお願いしたいのですが、この問題は、できるだけ早く御調査を願いたいという気がするのです。ですから四十六年度予算に入るとするならば、そこらにめどがあるわけですから、そこらをお考えいただいて、できるだけ早く手をつけていただきたい。これはお願いです。できれば、これは附帯決議くらいつけていただきたいと思いますが、その辺は理事会のほうで御相談させていただきますが、これが一点でございます。  それからもう一点は、島田さん、先ほど私はたいへん失礼にかつ性急なことを言いましたが、陰ながら事情を知らぬで言っているわけではないが、もう少し事情が言えるだろうと思っておりましたが、岸根の陸軍病院ですが、これは私、本会議で中曽根さんに御質問をして御答弁をいただいた前国会以来継続している問題ですが、これは延々とそのままになっているわけです。それで地域住民の皆さんも、歴史がありますので、きょうもおそらくバスか何かで防衛庁に出かけていったのじゃないかと思いますが、ここらのところは、アメリカの会計年度の標準予算編成その他にからんでほぼ明らかになる筋道だと思っておりますが、その辺はちょっと切り離しまして、この問題は一体どういうふうになっていくかを、御存じのところで答えていただきたい。
  272. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 これは一応閉鎖をされまして、現在一部医療機械をそのまま何しているようでありますが、これを管理しておりますのは、ごくわずかな米人と日本人でございますが、これについては、米軍のほうは条件づき返還という条件を出しておりますし、われわれのほうは全面的に返還されることを希望しているわけでございます。その間の調整も実はついておらない、鋭意協議中である、こういう段階でございます。
  273. 大出俊

    大出委員 条件づきでというのは、その条件は話してさしつかえないでしょう。目下の条件はどうなっているのですか。
  274. 薄田浩

    ○薄田説明員 多少のリロケーションを含んでおりますが、実際機能を停止しておりますので、いま長官が言われましたように、リロケーションにはちょっとなじめないのではないかということで強く単純返還をたびたび要求しております。向こう側に申し入れてまだ返事がこない。先日も催促したわけでございます。
  275. 大出俊

    大出委員 だいぶ長時間恐縮でございました。
  276. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 大出先生、先ほどの報告がまいりましたので、御報告申し上げます。  先生おっしゃるように、二十六日、事件のあくる日に総監部の廊下に黒リボンをつけた花があったというのは事実でございました。これは、だれがどういう意図でやったかは、目下調査中でわかりません。
  277. 天野公義

  278. 横路孝弘

    横路委員 長官が来るまで人事院のほうに少しお尋ねしたいと思いますが、寒冷地手当の問題ですが、この公務員給与の体系そのものが、少し勉強したところではわからない。いろいろな経過がありまして、その辺のところを踏まえてお尋ねしたいと思うのですけれども、今度の勧告で、いわゆる石炭手当加給について勧告がなされなかったわけですけれども、最初に公務員の寒冷地手当に関する法律の二条の「次の表に掲げる額を加算した額とする。」ということで甲地、乙地、丙地、そのほか分けて額があるわけですけれども、これの算定の基準というのは一体どこにあるのか、その辺のところから明らかにしていただきたい。
  279. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 現在の寒冷地手当につきましては、いま御指摘のように非常に沿革的な問題がございまして、現在はいわゆる定率分と定額分と、それを加算したものになっているわけでございます。それで定額分と申しましても二つございまして、一つは、昔から沿革的に申しますと、石炭手当あるいは薪炭手当という形のものがございます。それからもう一つの関係は、前回の昭和四十三年度改正のときに定率分の約半分を定額化したものという、その三つの部分に分かれているわけでございます。そして全体として寒冷増高費に対応する部分ということで支給されているわけでございますが、四十三年の改正前におきましては、いわゆる石炭手当あるいは薪炭手当相当分につきましては、石炭価格の調査をいたしまして、その動向を見て改正してきたといういきさつがございます。
  280. 横路孝弘

    横路委員 回りくどいお答えをなさると、こちらもちょっと理詰めで質問していかなければならぬ。質問する趣旨はもうおわかりのことなんで、要するに勧告がこの部分出なかったのはなぜなのかということが究極の目標にあるので、それはそちらのほうも十分御承知だろうと思うのです。そこで結局、たとえば甲地で扶養親族のある場合には二万九千八百円、これは一体何を基準にしてこういう額が出てきたのか。それはいろいろいままでの経過はあります。経過があるから、そこのところをきちんとお答えいただかないと、議論があとに進まないわけなんです。この二条の表にいうところの金額が一体何を基礎にして、どういう計算方法で出てきた金額なのかということがお尋ねの趣旨なんです。
  281. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 いわゆる昔からの石炭手当でございましたものが、現在は定額分という形で法律規定されております。その関係は、昭和四十三年におきましては、当時の北海道における石炭価格を調査いたしまして、それに北海道の中の地域別に何トンというトン数が従来ございましたので、それに乗じて得た額をここに規定しておるといういきさつがございます。
  282. 横路孝弘

    横路委員 ですから、結局石炭一トン当たりの価格に運賃を計算をして、トン当たり合計で八千二百八十二円というのを基礎にして、甲地の場合は三・六トン、乙地の場合三・三トン、丙地の場合は三・一トンということで算出されているわけですね。そこでこの算出は昭和四十三年当時ですからその当時でけっこうですが、石炭のカロリーは何カロリーを基準にしてやられたのか、それはいかがですか。
  283. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 当時昭和四十三年の勧告におきましては、四十三年の春と申しますか、そのころにおきます北海道における石炭価格を調査いたしまして、そのときの結果が平均的なものとしまして六千六百七十六カロリーで、運搬賃五百二十四円を込めまして八千二百六十五円で算定されたといういきさつがございます。
  284. 横路孝弘

    横路委員 そこで、これは北海道のほうの人事委員会調査ですね。調査当時からすでに食い違いを見せてきているわけですね。四十三年当時、北海道人事委員会の場合で八千五百円です。公労委の調停委員会のほうでは八千七百円、これはカロリー基準が七千二百カロリーになっているようですけれども、こういう差が当時からあったわけですね。それからすでに二年たっているわけですが、そこでいまお話があったようなことを基準にしてやられたとすれば、一体本年、昭和四十五年度において炭価の調査を行なわれたかどうか、行なわれたとするならば、その結果はどういう結果になっているか、それをお答えいただきたい。
  285. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 最近の関係は現在集計をいたしておりまして、まだ最終的な関係がはっきりはいたしておりませんけれども、約九百円程度上がっているのではないかというようなことでいまチェックしているところでございます。
  286. 横路孝弘

    横路委員 北海道の人事委員会がことしの七月一日調査したところによると、小売り価格は九千七百四十四円、運賃のほうは六百十二円、持ち込み料三百五十円ということで一万七百六円という数字が出てきているわけですね。トン当たりですよ。そうすると相当な差、トンについてほぼ千八百円程度の差というのが出てきているわけです。こういう現実を見ると、当然勧告対象にしてしかるべきではないかと考えるわけですけれども、その辺のところ、今後のおたくの作業についてお答えをいただきたいと思います。
  287. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 御指摘のとおり石炭価格につきましては最近若干の値上がりが見られます。これは統計局の調査でも出ておりますし、私どものほうの関係でも若干出ておるわけでございますけれども、それによって従前の計算をいたしました場合よりどれだけふえるかということになりますと、大体二千円から三千円弱ということだろうと思います。一方におきまして、最近寒冷地手当はいわゆる本俸にスライドしているところが相当ございまして、それによりますと、最近のベースアップが相当大幅にございますので、それによる支給額というのが相当出ておるわけでございます。七千円ほど出ておるという面もございまして、全体といたしまして寒冷地手当と申すものの性質という場合に、寒冷増高費というものに対応して支給される性質のものではなかろうかといったようなことで、その寒冷増高費というものがどの程度のものであろうかといったような関係をいろいろ考えておりまして、民間支給額もどうだろうかといったような調査をしておるわけでございますが、そういう意味合いで総合的に現在いろいろ検討しておるということでございます。
  288. 横路孝弘

    横路委員 その総合的にというところに持っていかれるとこれは困るわけなんです。いまはね返りがあるというお話でしたけれども、それは結局寒冷地帯全体の問題ですね。いわゆる二条による加算というのは北海道だけの問題なんで、その辺のところを考えると、そこは区別してもらわないと困るという感じがするわけなんです。一本にまとめて考えようというお考えはわかるのですけれども、現実に額の計算方法というのは明確に分かれているわけですね。明確に分かれていて、北海道の場合だけ二条の適用になっているわけなんですけれども、そこのところを寒冷増高費云々ということの議論になると、また一つずつやり直した議論をしていかなければならぬということになります。きょう何か非常にお急ぎのようなので議論を省略して結論のところだけを実はいま求めたわけなんですが、ひとつついでにお尋ねしておきたいのは、調査ということをお話しになりましたね。統計局の調査というおことばだったのですけれども、統計局の調査だけで、人事院独自としては調査をやっておられないわけですか。
  289. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 先ほど申し上げましたように人事院といたしましても毎年石炭価格の調査をいたしております。先ほど申し上げましたように、人事院調査は最終的な結果は出ておりませんけれども、大体九百円程度上がっているのじゃないかというような感じでいま詰めております。統計局の調査と申しますのは、石炭なり石油なり灯油なりにおきまして小売り物価を毎年毎月調査しておりまして、これはまあ一つのオーソライズされた値段でございますので、そういう動向も見ておるということを申し上げたわけでございます。
  290. 横路孝弘

    横路委員 寒冷地給としては一本化されているわけですけれども、現実にその計算の方法というのは、やはり石炭の炭価をもとにしてこちらのほうの加算額というのはきめられているわけですね。そして運賃も上がっているわけですし、現実に石炭の炭価というのも上がっている。さらに北海道の場合は持ち込み料というのはもう常識化されているわけでありまして、たとえば北海道の人事委員会調査によっても、ことしの場合、トン当たり第一回の場合二百五十円、二回になるとこれが四百円、三回になると八百円、四回になると千二百円というような結果も出ておる。それも皆さん方十分御承知だろうと思うのです。そこでそういうようなことを考えて、それは確かに全体の問題もあるでしょうけれども、こういう事情を考えてやはりこれは検討していただくべきではないかということを、これは人事院総裁のほうからも御答弁いただいて、まあこの件に関しては終わりにしたいと思います。
  291. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ごもっともな御疑問だと思います。これを大きな立場から申しますと、ちょうど二年前のいまごろでございますが、四十三年に相当の根本的な改革をやりました。その改革をやりますときに、従来石炭とか薪炭とか別にとられておったものを、これを定額分に総括しまして、それで片や定率分、片や定額分と大きく二つに分けたわけです。そこでいまの御疑問は、定額分を見ると何百何十円というところまで、こまかくきわめて精密な数字が出ておる。そうすると、これは時の変化によってだんだんふえていくなりなんなり変わるのじゃないかという御疑問だと思います。私どもがこの四十三年の改正をやりますときには、定額分、定率分と分けますについての一応の算定の基礎がありましたから、こういうはんぱの数字のものが定額分に出てまいりますけれども、結論は両方、定額分、定率分を合わせたものが寒冷地にお住まいになっている人の、たとえば薪炭のためとか、着物をよけいお着になるとかいうような寒冷増高費の関係でそれをカバーするものであろうということでございますから、この二つ合わせたものが、寒冷増高費に対処するに対して足りるか足りないかという問題でわれわれはこれを見ていくべきだということになりますから、ただいまの石炭の上がりとかそのほかの諸物価の上がりは、われわれ常に注視しながら今日まできておるわけでございます。しかしいま局長が申しましたように、定率部分の関係で、去年、ことし、まあ二けたの大幅賃上げがあったりいたしまして、それからくる金額というものは相当のものがございますので、まだ寒冷増高費を割るようなところまでいっていないのじゃないか、そういう問題で現在物価の上がり等を注視しながら常に臨んでおる、こういうかまえでおるわけでございます。
  292. 横路孝弘

    横路委員 北海道もだんだん石炭から石油に切りかわってきて、しかもこれは一冬、ドラムかんにして十本くらい私なんかのところは使っているんですね。そのほかもちろん石炭もたいているわけです。そうするとかなり高いものになってきているわけなのです。その辺のところも全部含めて、ともかくあらゆる面で値上がりをしている、運賃から持ち込み料から石炭の炭価から。ということでやはり検討をしていただきたいと思うのです。その点はいかがですか、ぜひこれは再検討していただきたい。
  293. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 先ほど申しましたような立場で常にそういう点の検討は怠らず注視を続けてまいっておるというわけでございます。
  294. 横路孝弘

    横路委員 どうもはっきりしないのですがね。注視されておられるのはけっこうなんですけれども、見守っておられるだけでは困るわけなので、現実にこういう計算の方法をされている以上、しかも先ほど御答弁があったように、これは石炭の炭価をもとにしてこの二条の額というのがきめられているということであれば、それを基準にして考えていただかなければ困る。それを全体にまとめて、寒冷増高費がどうこうということではなくて、やはりこの二条の金額というものが実情に合致しているのかしていないのかということを、石炭から石油にかわりつつあるという現状も踏まえてひとつ調査をして検討していただきたいということなのです。最後にそれだけ御答弁を願いたい。
  295. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 御趣旨はよくわかりました。先ほど申しましたような立場で、注視ということばはちょっと積極性のないことばで反省いたしますけれども、もっと積極性のある意味の注視をしてまいりたいというふうに考えております。
  296. 横路孝弘

    横路委員 今度は防衛です。  最初に警察の方にお尋ねしたいと思うのですけれども、楯の会のような、こういういわゆる民族派学生団体といいますか、右翼的学生団体、これは現在どのくらいありますか。その団体名と大まかな組織人員みたいなものを最初に御報告をいただきたいと思います。
  297. 山口廣司

    ○山口(廣)政府委員 いわゆる反共ないし民族的な主張をいたしております学生団体の勢力は、大体現在七十五団体、一万二千名ぐらいと推定いたしております。しかし、この数字はあくまで現段階のものでございます。その代表的な団体といたしましては、日本学生同盟、これは略称日学同といっておりますが、大体約四百名、などであります。統一組織といたしましては全国学生自治体連絡協議会、これは略して全国学協といっておりますが、大体二千八百名くらいでございます。
  298. 横路孝弘

    横路委員 そこで防衛庁のほうにお尋ねしますけれども、こういう団体は相当たくさんあるということで、七十五団体一万二千名ですね。いまその日学同と全国学生自治体協議会だけ名前をあげられたわけなのですけれども、こういう団体で体験入隊しているケースというのはありますか。
  299. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 調べてみないと正確にはわかりかねますが、警察等から情報がありましたら、そういう団体はお断わりするというのが趣旨でございます。
  300. 横路孝弘

    横路委員 今回の事件で、楯の会の団体の性格といいますか、方針というのは、軍事技術の修練をするのだ、軍人精神の涵養だ、いろいろあるわけですね。これはやはりそういうことを目的にしている一種の右翼的民族派団体だと思うのです。今度の事件を通して、私は先ほど来議論を聞いておって、中曽根長官のおことばの中から、いわゆる今度の事件で自衛隊が一体何を反省したらいいのだろうか、今度の事件から何を学ぶべきなのかということが、先ほど来いろいろ議論はあったけれども、その辺のところはどうも伺うことができなかったわけなのです。いまの官房長の御答弁でも、まだよく調べておられない、ただそういう団体についてはお断わりをする方針だ、こういうことですね。しかし、これは現実に体験入隊をしているケースがあるのです。たとえばことしの七月二十三日から二十五日まで、日学同の正統派の学生が朝霞と伊丹と江田島でやはり体験入隊しているではありませんか。この事実御存じありませんか。
  301. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 その事実は私は存じておりません。
  302. 横路孝弘

    横路委員 しかも、この団体は去年も防衛庁に体験入隊の申し込みをしたのです。去年は七〇年安保の前だからといって防衛庁のほうで断わった。ことしは安保が終わったからというので七月に認めてやらせている。やらせているのですよ。これは広報課長さんでもけっこうですが、そんなこと知らぬなんということをおっしゃられても困る。
  303. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、年間二千五、六百件、人数にしまして十万人程度の者が体験入隊いたしております。方針しましては、自衛隊に支障のあるような、全般的に社会にとって、また社会の常識に合わないような者を体験入隊させようとだれも思っているわけではございませんけれども、一々それを内局で審査するというふうな手続はやっておりませんので、個々具体的な団体がいつどこに入ったかということは、官房長としましても広報課長としましても即座にはお答えいたしかねる、こういうことでございます。
  304. 横路孝弘

    横路委員 日学同のケースの場合、毎日グラフの九月二十七日号、つい先日の号ですが、これに出ているわけです。安保の前だからというので昨年断わったというのです。軍事訓練だというような受け取り方をされたら困るというので断わった。ことしになって認めておられる。実際に銃剣術をやっている写真が写っている。今度の調査を通して、あれは気違いのできごとだ、突然のできごとだ、体験入隊については何も考えることはない、こういう先ほどの御答弁だ。しかし少なくともどういう団体が一体いままで体験入隊していたのかということぐらい調査されてしかるべきことではありませんか。長官どうですか。
  305. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大学によっては銃剣道部というのがあるのです。その銃剣道部というのが普通の運動部と同じように銃剣道の練摩を自衛隊に教えてもらいたい、そういうので体験入隊する例というのはあります。私は、銃剣道部の連中で、日学同なんかに入っている人たちも多少あるのではないかと思います。そういう人たちがあるいは体験入隊しているということはあるかもしれません。しかし日学同としてそれは正直に名のって入ってきているのかどうか、これは調査を要すると思います。
  306. 横路孝弘

    横路委員 日学同正統派関西支部として二十人、三十人とまとまっているのですよ。
  307. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう名前で申請したかどうか調べてみましょう。
  308. 横路孝弘

    横路委員 この団体ばかりではなくて、警察庁のほうだってそういう右翼学生のリストみたいのはあるはずですから、札つきの人だっているわけですよ。そして軍事訓練はやはり軍事訓練です。この団体なんか、たとえばことしの八月十八日から二十三日まで八丈島で軍事訓練をやっている。いろいろある右翼的な学生グループの中でも特に過激なグループだ、こういうグループを堂々と体験入隊させている。しかも問題は、去年断わってことし認めた、七〇年安保の前だからだめだと言って、ことしになってこれを認めたということは私は重大な事実だと思うのです。だから先ほど体験入隊については何も反省する必要がない、考え直すことは何もないということをおっしゃったけれども、私はまだ調査が不十分だと思う。やはり再検討すべきだと思う。どうですか。
  309. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 再検討するということは私は前から言っているので、体験入隊については今後個別的にいろいろ点検をしてみます、そういうことを申し上げているわけであります。
  310. 横路孝弘

    横路委員 そこで楯の会なり三島なりの入隊ですが、体験入隊で一体どういうことを行なったのか。先ほどは行進とか地図を読むこととか、いろ  いろあげられておったけれども、もう少し具体的に、自衛隊の隊員と一緒になってどういう訓練を受けたのか、ほかにも四週間も入っているケースがあるわけですから、その中で一体どういうことを一緒にやったのか、お話しいただきたい。
  311. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 具体的に申し上げます。  まず、自衛隊員と一緒になってという訓練ではございません。学生のグループを入隊させて、そして指導官等をつけまして、次に申し上げるような科目の訓練をいたしておる。ただ日課、六時なら六時に起床、何時に朝めしだというようなのは一緒にやりますが、訓練そのものは一般隊員とは別になっております。  科目として具体的に申し上げますと、まず一般科目として、内容は訓話とか服務とか、いろいろな予備の知識とかいうのがあります。いま申し上げますのは長い四週間のグループの内容でございますが二十時間。それから基礎的な科目として基本の教練、戦史の教育、地図の判読それから通信、こういったものをやっておりますが五十時間。それから野外の訓練科目として野外勤務の要領、行進が四十八時間。それから体育、これは徒手のものだとか体力検定だとか銃剣術などが内容でございますが三十時間。その他映画を見たり装備品の見学をしたりというのが合わせて二十四時間。こういうのが四週間をやりました場合の科目の内容でございます。  やり方としまして、初めにちょっと申し上げましたが、学生の中で大体十名ぐらいの班をつくりまして、交代して当直を置いて世話役をやらしております。それから教官、助教等二名なり三名をもって指導してやるというふうなやり方をしております。これが四週間のコースの内容でございます。  それから、三日ないし七日のコースもございましたが、これを縮小したような内容になります。科目で申し上げると、一般科目それから基礎科目、野外訓練科目、体育といったような科目になりまして、内容は先ほど申し上げたような内容でございますが、これが逐次時間が少なくなっているということでございます。それから市ケ谷駐とん地で二時間だけやりましたのは、体育とか徒手訓練程度のもの、こういうのが内容でございます。
  312. 横路孝弘

    横路委員 たとえば行進なんかの場合、一拍二日というような徹夜行進なんかを含めたそういう行動も、これは自衛隊員と一緒に一種のレインジャー訓練みたいなものも受けていたわけですか。
  313. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 重いものをかついだり夜も歩いたりというようなのを、指導官が指導してやるというふうなやり方はしたようでございます。
  314. 横路孝弘

    横路委員 そのとき、銃はどうですか。持っていますか。
  315. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 銃は持っておりません。
  316. 横路孝弘

    横路委員 たとえば「国防」という雑誌、これに長官が三島と対談したのが載っているわけなんですが、「国防」の二月号の中に、三島自身のことばによると、一泊二日ぐらい泊まり込みで訓練を受けながら、あちこちずっと回るコースがある。それを一緒に寝起きをしながら二、三日行動をともにする。いま言った、いろいろ重いものをかついでの訓練だろうと思うのですけれども、重いものをかついでの訓練というものは、昼間ではなくて夜通しずっとやる、そういうふうないわばレインジャー訓練のような範疇に入るものなんですか。
  317. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 三島氏が長官にお話ししたのは、あるいは御自分で空挺団等に入られましたから、そのときに、レインジャー訓練というほどじゃございませんが、それを見学している、その内容をいろいろな場所で紹介されているということはあるかもしれません。それから、その三島氏の紹介による学生の訓練は、先ほど申し上げたようなことで本格的なレインジャー訓練にはほど遠いわけで、ただ夜歩くとか、多少重いものを持たすというような程度のことはやっておるようでございます。
  318. 横路孝弘

    横路委員 それから、いろいろ報道によりますと、小銃を使っての銃撃の訓練、これをやらせていたということなんですけれども、その事実はありますか。
  319. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 いわゆる体験射撃と称しますものはやっております。部隊に小銃がございますが、自衛隊員が小銃の指導をしながら、こういうふうにたまを込めて、ここで引き金を引くのだという指導を、一人一人つけてたまを撃つ体験をさせるということはやっておりました。
  320. 横路孝弘

    横路委員 それは機関銃についてもやらしておるのですか。
  321. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 小銃だけでございます。
  322. 横路孝弘

    横路委員 そういう小銃だって、これは国有財産で、自衛隊が管理しているものでしょう。そういうものについてやることのできる法律的な根拠というものは、一体何にあるのですか。
  323. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 体験入隊一般が自衛隊法に基づく合法ということでやっております。  それから小銃そのものをいじくるといいますか、操作することは一般の人には禁ぜられております。自衛隊員だとか警察官だとか、法令に基づいて所持、操作し得る者は限定されております。したがいまして、どの学生であれ、自衛官の身分のない者、警察官の身分のない者がかってに銃をいじくることは法律上禁止されております。したがいまして、それを体験さすときには、自衛官の支配のもとに、一人一人自衛官がつきましてやるということであれば、銃砲刀剣類所持等取締法の違反にはならないというのが警察庁の解釈でございまして、その解釈のもとに指導してやらせた、こういうことであります。
  324. 横路孝弘

    横路委員 たしか自衛隊法の八十七条ですか、武器は自衛隊が管理をするということになっているわけですね。そうすると、日本の場合はこれらの扱いというものは特にきびしいわけでございまして、いまお話の出た銃砲刀剣不法所持罪があるわけですが、しかし現実にともかく小銃に手々やって引き金を引いて撃つわけでしょう。しかもこれは自衛隊管理なんだ。それはそばにだれかついておるかもしれない。確かに自衛隊の敷地の中でやることだといっても、しかしやはり一時は小銃の占有権は発射する人間に移るわけです。そうすると、いまおっしゃったように明確に全然それには触れませんということではない。すぐそこから違法だと言うことはできなくても、やはり非常に大きな疑問というものは残るのじゃないか。しかもいまお話しのように、それを合法活動、体験入隊ということでやっておられるわけでしょう。私はやはり銃の取り扱い——つまり楯の会でも軍事技術を習得するのだということが一つの大きな目的になっている。右翼団体が入っていって体験入隊するというのも、実は一つはそこにあるのですね。いろいろな軍事技術を自衛隊の中で習得したい。だからいまの体験入隊の、特に小銃のそういう訓練をさせているということは、それはいろいろそばについていたとしても、法律的にも疑義があるし、実際の問題としても私は妥当なことではない、少なくともこれはやめるべきだと思いますけれども、これは長官いかがですか。
  325. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私はやめる必要はないと思います。それはちゃんと管理者がそばにいてやるならば、銃ぐらい操作するというのは、昔は軍事教練でもやったことがあるので、私はちゃんとした管何者がついていれば悪いとは思わない。むしろそういうようなものがいかに重いかとか、あるいはどういうふうに操作するとかいうくらいのことは、スイスでは国民がみんなやっているような情勢ですから、知識としても持っていいのじゃないかと思うのです。
  326. 横路孝弘

    横路委員 いまの発言は、これはちょっと問題の発言だと思うのです。スイスは徴兵制度をしいている。いまの発言はやはり徴兵制度につながっていく発言ですよ。そういうことですけれども、いま日本の場合、銃の取り扱いについて非常にきびしいですね。そのことは私はやはりいいことだと思っているのです。あなたのお考えだと、いま国民全部が銃の操作技術を持っていたほうがいいというわけでしょう。いまそうおっしゃった。それでよろしいですね、いまの発言で。私はそれはちょっと問題だと思うのです。
  327. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 人間がちゃんとついていて管理してやれば、体験入隊で銃の操作とか、鉄砲をかついで歩くとか、その程度のことはやっても私は悪いとは思わない、そういうことを言っているのです。
  328. 横路孝弘

    横路委員 あの三島由起夫と楯の会の一つの発想の中に、これは武器なき軍隊組織なんだということを彼は言っているわけです。何かいろいろな治安上の問題があったときに、自分たちはその先兵になって死のうということがあの檄の中に書いてある。いまの長官の発言だと、体験入隊でどんどん銃の操作を覚えさせておいて、いわば民兵組織みたいなもの、民兵組織といかぬまでも、そういうようなことが頭の中にあるような感じを私は受ける。ことしのいつでしたか、この間、一年入隊の中卒の少年自衛官というような発言も新聞に報道されていた。そのことから、徴兵制度はなかなか憲法があってできない、何かそれにかわる方法がないかという考え方がどうも長官の中からうかがわれて、私は非常に気がかりなわけです。長官、先ほどの右翼の体験入隊の問題も含めて、これは軍事訓練をして、それは言いかえれば民兵にしようという考え方があるのじゃないか、どうですか。明確にしておいてもらわぬと困る。
  329. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そんな意味じゃ毛頭ありません。私は、やはり青年が非常な困難に遭遇したり、あるいは重いものを持っても不撓不屈の精神に耐える、そういう耐えるというとうとい精神を生む訓練はいい、そういう意味で言っているのであって、惰弱になってはいかぬという意味のことを言っているのであります。重いものをかついだり苦労したりするということは、若い時代にうんとやったほうがいい、私はそう思うのです。
  330. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 関連。われわれが遠く過ぎ去った昔経験した軍事教練ということばが出たのです。体験入隊では軍事教練をしてもいいというお考えでしょうか。昔やっておったからその程度のことはいい、たしかそういう御答弁でございましたが……。
  331. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 中学時代に、あの若いからだでも鉄砲をかついだり非常に苦労に耐えて、いろいろ演習をやらされたりして心身をきたえた。そういう無難に耐えるという意味のことを私は申し上げたのです。
  332. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたのお考えの中で、軍事教練とどう違うのですか。
  333. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 要するに難難に耐える、不撓不屈の精神を養う、そういう練成の意味で私は申し上げたのです。
  334. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 軍事教練とどう違うのです。
  335. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 何も軍事、ミリタリーの意味で申し上げたのではないのです。要するに心身を鍛える、そういう意味で申し上げたのです。
  336. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは軍事教練とは違うという意味ですか、あなたのいまの御答弁は。
  337. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ミリタリーな意味でいえばそれは違います。そうじゃなくて、トレーニングという意味で申し上げた。
  338. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは軍事教練というおことばはお取り消しになったほうがいいのじゃありませんか。これは非常に今後問題を残していく重要なおことばだと思いますが。
  339. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは例で、トレーニングという意味で申し上げたので、もし誤解があれば取り消してもけっこうです。
  340. 横路孝弘

    横路委員 先ほどの発言の趣旨は、スイスは国民皆兵で、みんな銃の操作ができるのだ、それくらい日本国民全体が銃の操作ぐらいは覚えておいていいじゃないかということばの中で、軍事教練ということばが出てきたのです。この問題はまた今後いろいろ議論していかなければならぬ。長官の発想、頭の中にあるものは、私は非常に危険な考え方があるのじゃないかという気がするのです。  そこで今度のこの事件で感じたことの一つは、三島からの働きかげがあったけれども、それに自衛隊員が付和雷同していかなかったというのは、これは自衛隊にとっても幸いなことだったろうと思うのです。ただしかし、そういう余地というのは、これはやはり一つの閉鎖社会で、しかもいろいろな——あれはことしの五月でしたか六月でしたか、新潟県の新発田市の今東光の発言をめぐっていろいろ議論がされましたけれども、自衛隊の中でのそういう教育の基調というものは非常に右翼的なものが実は中に入っている。先ほど来いろいろ議論があったけれども、それは講師の一覧表を見れば、もうだれでも明確にこれは断定することのできるものだと私は思うわけなんです。  そこでひとつお聞きをしたいのです。その前に警察庁の方にちょっとお尋ねをしたいと思いますが、三島の追悼集会というものが計画されておるようですね。どういう人が発起人になり後援者になっていますか。
  341. 山口廣司

    ○山口(廣)政府委員 今後いろいろな形で出てくると思いますけれども、現在具体的になっておりますのは、十一日の午後五時から豊島区の公会堂で一部の文化人が発起人となって追悼集会が計画をされておるのがございます。この集会の発起人として私どもの承知いたしておりますのは、林房雄氏、山岡荘八氏あるいは五味康祐氏などが名前を連ねておられます。それから二十五日ごろに一部の右翼団体が中心になって追悼会をやるような計画もあるようでございますけれども、これはまだ具体化しておらないようでございます。また当然楯の会自体としましても、独自に三島、森田の合同追悼会を考えているようでありますけれども、これも現在のところは具体化をいたしておらないようでございます。
  342. 横路孝弘

    横路委員 そこで長官にお尋ねしますけれども、昨年の四月の一日からことしの三月三十一日までの一年間の部外の講師名簿を見ると、防衛大学において十人の人が行っているわけですが、いま追悼集会の発起人になっている作家の山岡さんですね、この人なんかが、ほかにもいろいろな問題のある人ばかり、名前をあげるのは差し控えますけれども、こういう三島の今度の事件の追悼集会の発起人になったり、こういう集会に出てあいきつをするような人を今後少なくとも防衛大学で呼ぶべきではない、防衛庁の中でそういう人の講演を私はやはりすべきじゃないんじゃないかと思うのです。これは個人の思想は自由だとはいっても、これだけ大きないろいろな影響というものが考えられる事件ですから、これは自衛隊の中における教育全体を通して私は言いたいわけでありますけれども、今度の事件で、たまたま外のポスターを見ておったらそういうことが目についたもので、これはぜひお願いをしたいと思うのですが、どうですか。
  343. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 思想の自由を侵すようなことはやはり私は適当でないと思います。ただ、その人によりけりで、山岡荘八さんが防衛大学で話をするのに不適当な人であるとは私は思わないのであります。
  344. 横路孝弘

    横路委員 三島追悼集会の発起人になっている人ですよ。それを防衛大学に呼んできて話を聞くということ、これはやはり少しは不謹慎じゃありませんか。妥当ではないということは私は言えると思うのです。それを平然とこれからも呼ぶのだということになれば、一体今度の事件を、じゃ自衛隊としてどうとらえたのかという問題にもなっていく、どうですか。
  345. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 昔、中野正剛さんが自刃したときに、緒方さんがあの中でお葬式のめんどうを見たりいろいろやったということを私聞きましたけれども、やはりその人がりっぱであれば、特にこれはいけないということが指摘されるようなことがなければ、私はいいんじゃないかと思います。
  346. 横路孝弘

    横路委員 それじゃ、これからもそういう人でもどしどし自衛隊に呼んできて、特にこれは防衛大学ですが、そういうところに呼んできても話を聞くのだ、こういうことでございますね。
  347. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 山岡荘八先生を排斥しようとは思いません。
  348. 横路孝弘

    横路委員 これはお答えをいただかなくてもいいのですけれども、「国防」という雑誌の中で長官は三島と対談をしているわけですけれども、その中で長官は、自衛隊をあちこち見た直後の対談だと思うのですけれども、自衛隊の中に、いわば隊員の活動の中に三島文学のような美がある、最高の美があるのだということをこの対談の中で述べられておられるわけです。三島自身も今度の檄文の中で自衛隊の中にこそ真の日本の魂があるのだというようなことを述べている。私は自衛隊を認める、認めないということは別にして、やはり軍隊というのは国家にとって目的ではなくて、あくまでも手段なわけです。軍隊自身としての存在価値があるわけでは決してないわけです。やはり国というのは、とにかく毎日毎日農村でも都会でも汗を流して働いている人たちによって成り立っている。政治というのはそういう人たちを大切にしていかなければならぬというように考えるならば、軍隊の中に最高の美があるという考え方自身に、私はいわば軍国主義的な国家主義に走っていく、そういうことになるだろうと思うのです。だから長官が個人としていまの自衛隊の中に最高の美があるというようにお感じ取られるのは、それはけっこうなんだけれども、しかし私は、長官としてそういう考え方で自衛隊を統括したり動かしたりしてほしくないという感じをしているわけなんです。その辺のところをぜひお考えをいただきたい、問題だというように思うわけです。  次に、一つお尋ねしたいのですが、これは三島事件とは関係ないのですが、右翼については、先ほどから親戚づき合いだとかいろいろ言われておりましたけれども、実はけさ北海道のほうから電話があって、北海道の胆振支庁の相浦というところの駐とん地の陸上自衛隊百三施設大隊幌別第一中隊の甲斐という陸士長が、苫小牧の朝鮮総連のある女子職員に意識的に接近をして情報収集をした。しかもその中で、いま在日朝鮮人の国籍変更運動が非常に大きな問題になっている。北海道でもあちこちで書きかえの運動——苫小牧でもそういう動きがあるわけです。そのいろいろな情報収集の中に、国籍変更運動の活動内容とか、これを支援する社会党なり労働団体との接触内容、そういうことを調査をした。これについては本人がそのことを認めた文書まで書いているわけですね。もう自衛隊のほうにも報告がきていると思いますけれども、まずこの事実についてお尋ねをしたいと思う。
  349. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その報告を私は聞いておりますが、報告によりますと、おっしゃったようなことと逆であって、その陸士長は十時間くらいの暴行脅迫を受けて、そして——本人同士は恋愛関係にあって、一時は二人でかけ落ちしょうくらいの気持ちにもなっておったのですが、相手の親に反対されて、それでそういう関係から、それをスパイ行為であるというふうに誤解されて、そして十時間以上にわたって暴行脅迫を受けて、ほとんど、脅迫の中にそれを書かせられた。それからテープレコードもとらされた、そういう事実であるとわれわれは報告を受けています。おそらく私はそうだと思います。ですから、もしそういうようなことで法に反するようなことがあったら、こちらも法的手段を講ずる必要があるだろう、そう思います。本人の名誉のためにも必要だと思っております。
  350. 横路孝弘

    横路委員 この隊員は十二月二十三日に除隊することになっているんですけれども、これはじゃどうしてですか。
  351. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 甲斐陸士長が相手の女性と結婚します場合に、結婚を申し出たわけでございますが、その場合に相手の親のほうが了承しない。どうしてもやはり自衛隊をやめなければとうてい結婚できないであろうというふうに思い詰めまして、九州の新日鉄のほうへつとめるということで就職試験を受けて合格しております。そこでなるべく早くやめて新しい結婚の生活に入りたいということで退職の申し出をいたしておったものであります。
  352. 横路孝弘

    横路委員 いま暴行脅迫というお話がありましたけれども、私もこれはいろいろな事実の経過というものを聞いてみた。たとえばちゃんと隊なら隊に電話を入れてその晩帰るとか帰らぬということを連絡しているわけです。暴行脅迫なる事実はこれは明らかに認められない。このKという女性の話を聞いてみても、本人の話と合致するのであって、いろんな情報を提供したという事実を認めているわけです。事実の問題についてここで議論をしても始まりませんが、この問題は、実は新潟県の新発田市の例の今東光発言にからむところの手帳等、いろいろな問題が自衛隊の国内の情報収集の問題としてあるわけですけれども、このあと楢崎先生が関連質問をされるということなんで、時間もございませんので、今後さらに私は問題にしていきたいということを申し上げて終わりにしたいと思います。
  353. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大出委員の基地に関する問題、それから横路委員の三島事件に関する問題に関連して、時間の与えられた範囲内で関連質問をさせていただきます。  まず基地の問題でございますが、いま米軍基地の縮小についてお話し合いがなされている。縮小される場合の形は、全面返還、それは民間への場合あるいは自衛隊への場合、それからいわゆる地位協定二条四項(b)による自衛隊との共同使用、そういうことが考えられますが、そういう方向に仕分けされる、このように理解しておっていいですか。
  354. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 まだ現在協議中でございますので、その形態そのものにつきまして私どもまだ申し上げる段階ではないと思いますけれども、返還の形態はいろいろあろうかと思います。その場合、共同使用いたします場合にも、二条四項(a)の場合もありましょうし、(b)の場合もあろうかと思います。それから全面返還、一部返還、その場合にもそれが民間に返還されるという場合もあろうかと思いますので、いろいろな形態が考えられると思います。
  355. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 全面返還あるいは自衛隊との共同使用の場合あるいは民間との共同使用の場合、この場合にいわゆる有事再使用ということが懸念されるわけであります。そのような場合の措置について一応お伺いをしておきたいと思います。全面返還の場合は、有事再使用するときの法的な関係は地位協定二条一項による、間違いありませんか。
  356. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 米軍の施設を返還します場合に、将来における緊急の事態の再立ち入りを条件として返還するという場合もあり得るわけですが、こういった場合、それをどのような形で確保するかといいますと、現在の地位協定の条項でいきますと、二条四項(b)という条項、米軍が必要なときには随時一定の期間を限って使用できるという条項によって、その将来の再立ち入りを保証するという以外には現在の地位協定上は方法がない、こういうことになると思います。
  357. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が言っているのは、全面返還の場合をまず例にあげているのです。全面返還の場合に二条四項(b)が出てくるわけはないじゃないですか。全面返還されたものについて米軍が再使用する際には、地位協定二条一項による以外はない。それを聞いているのです。あるかないか。
  358. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 全面返還しました場合に、同時にその時点で地位協定の二条四項(b)により将来の米軍の随時使用を保証するということは、いわゆる使用転換といいますけれども、そういう方法は技術的にございます。  それから先生のいまおっしゃるように、全面返還だから条件なしだと単純に割り切ってしまえば、そのときに同時に二条四項(b)による使用を保証しなければそこで切れてしまうということは、実際問題としてそうなるわけでございます。したがいまして、もしそういう手だてを講じてなければ、新たに使用するときにはその時点において日米間で二条一項の合意なりあるいは二4(b)の合意なりを新たにしなくてはならない、こういうことになると思います。
  359. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 全面返還された場合に再使用するのはたいへん困難である。したがって全面返還の場合も、いわゆる留保条件がそこに出てくる可能性はいまの答弁からも十分見込まれるわけです。  そこで、長官としては、全面返還の場合でもそのような条件をお認めになるおつもりかどうか。たとえば二条四項(b)を持ってきて、そして有事の際には再使用させる、そのような留保条件をお認めになるつもりであるか、お伺いしたいと思います。
  360. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう場合は全面返還じゃなくて、二条四項(b)よる返還である、そういうことになると思います。
  361. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はいまの長官答弁のほうが正しいと思う。全面返還の場合に条件として二条四項(b)を持ってくるなんというのはあり得ない。だからもし再使用を米軍がしたいと思う場合には、私は全面返還ではなしに、二条四項(b)でくると思う。そこで二条四項(b)できた場合に、そのような条件は何か協定で行なわれますか、文書をかわして行なわれますか。
  362. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それはそのときのケースでないとわかりませんが、合同委員会で、これはどこにする、これはどこにするという仕分けがあるんだろうと思います。
  363. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が申し上げているのは、再使用について、それを明文化したような協定というものは文書でなされるつもりですかということです。つまり、ここは二条四項(b)によって一応共同使用にする。その際、もし必要ならば米軍がまたこれを使うというような要求があったときに、それは文書でなさるか、確認されるかどうかということを聞いているんです。
  364. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それはその基地のいろいろな条件、それから情勢、そういうものをよく検討して、そのとき具体的に個別的にわれわれは考えてみたいと思います。いまここで一般的、抽象的には申し上げられないと思います。
  365. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もし再使用させるという文書がない場合、協定がない場合は、再使用する際は合同委員会にかかるわけですね。
  366. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 二条四項(b)というきめ方をするときに、合同委員会できめて、それでそういうふうにきまれば、おそらくこれは通告とか協議ですぐやれるんじゃないですか。よく調べてみないとわかりませんが、そういう最初の性格づけが一番問題じゃないか、こう思うのです。
  367. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私がなぜこういう点をシビアに考えておるかというと、結局一たん縮小されて返す、あるいは共同使用する際に米軍はいつでも使える状態にしてドルだけは削減する、そういう方向に米軍の方向があるということを私は見るからです。そこで、いつでも使わせるという協定の内容  いかんによっては事前協議が完全に骨抜きになる。これは非常な落とし穴だと私は考えるのです。  そこで文書で取りかわさないときは当然合同委員会にかかる、これはそうなっていると思いますが、間違いありませんか。再使用の場合。
  368. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 二条四項(b)の米軍に提供するという取りきめをする場合には、合同委員会でそれをきめることになっております。
  369. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこでチェックする機会があるのです。ところが、あらかじめ有事に再使用するという協議あるいはコミットがあれば合同委員会にかけなくてもよい、こういうことになりますね。
  370. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 二条四項(b)は一定の制限がございます。適用条項についても特に「適用があるこの協定の規定範囲を明記しなければならない。」という規定がございますので、その合意された範囲内の使用であれば事前の特定の通告は必要ないと思います。しかしそれを越えるようなことになると、やはりその時点において日米間で協議をいたすということになろうと思います。
  371. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで私はいままでのケースで二点だけ実例をあげて長官のお考えをお伺いしたいと思います。  いま審議中でありましょうが、新聞の報道するところによると、板付と厚木は管理権を日本側に移すという米軍の意向のようであります。もし板付を例にとりますならば、日本側に管理権が移された際、第五空軍と航空局との間で結ばれております四十二年の秘密協定はどうなります。航空局見えられておりますか。
  372. 内村信行

    ○内村政府委員 ただいま先生おっしゃいましたとおりに、私ども、このたびの板付ないしは厚木の返還と申しますか、あるいは地位協定の変更と申しますか、そういったことにつきましてはまだ何ら正式の通告を受けておりません。ただ新聞等に出ておりますので、そういうふうな空気があるということは私どももわかっておりますので、その際にそういう場合にはどうするかということについて、いま内部的にいろいろ検討しておる段階でございます。したがいまして、どういう条件でもって返ってくるか、それによってまた考えていきたいというふうに考えております。
  373. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういう官庁用語の答弁で済むと思ったらあなた間違います。私は具体的に聞いておるのです。いまの協定ですね、私が申し上げている協定。ちょっと確認しておきます。  四十二年の五月二十七日、福岡の航空保安事務所長がまずその協定にサインし、同年六月二十九日福岡の防衛施設局長がサインし、六月十八日に板付の米軍司令官がサインをし、八月十日に第五空軍の担当官が最終的にサインした協定のことを申し上げておる。そういう協定はありますですね。
  374. 内村信行

    ○内村政府委員 私のここに持っております協定は、一九六七年の三月一日に実施するものでございまして、福岡の保安事務所長が五月二十七日に署名しております。現地の司令官の署名が六月十八日、福岡の防衛施設局長の署名が六月二十九日、これではございませんでしょうか。それでよろしゅうございますか。
  375. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 え、え、そうです。それの表題は板付エアポート使用に関する協定、そうなっておりますね。
  376. 内村信行

    ○内村政府委員 表題は、現地司令官と福岡防衛施設局長及び福岡航空保安事務所長の間で締結された板付飛行場一部の共同使用地域(エプロン地域)に関する現地協定ということになっております。
  377. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私略してそういうふうに言ったわけですが、その中に——これは二年前に中曽根防衛庁長官が運輸大臣のときにちょっと質問したことがある。大臣はそのとき途中で中座されました。そのときの大臣の答弁もここにあるわけですが、その協定の中に、第五空軍司令官は事前協議なしに永久的または臨時的にこの協定によって航空局に許可した共同使用を終了させることができる、こういう文言があります。
  378. 内村信行

    ○内村政府委員 お説のとおり、「第五空軍司令官は、事前の通告なしに、この協定による航空局の共同使用権を無期又は臨時に終了させることができる。」という条文がございます。
  379. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これなんですね。私はこのケースが、これが今後活用される可能性を十分に見るわけです。つまり事前協議なしに再使用ということがこの種の協定によって行なわれていく可能性がある。もし管理権が日本側に移された際に、いま板付に例を出しておりますが、板付の管理権が日本側に移された際にこの種の協定は生き残るのでしょうか、生き残らないのでしょうか。中曽根長官の御見解をお伺いしておきたいと思います。
  380. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は専門家じゃありませんからわかりませんが、板付の基本的ステータスが変わってくれば、それはまた変わるのじゃないか、そう思います。
  381. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 このような協定は、つまり事前協議の入ってくる余地がないのですね。この種の協定というものについて長官はどのように思われますか。今後私は基地の縮小の際に具体的に起こり得る問題だと思うのです。
  382. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 たしか板付は二4(a)であって、米国が管理権を持っていて、日本側に米国が情勢を見て利用させる、そういうことですから、いまのようなものになっておると思うのです。これが二4(b)になり、日本側が主たる管理権を持つという情勢になると、またステータスも変わってくる。そういう意味においては、それは今後の研究課題であろうと思います。
  383. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは長官のいまのお考えとしては、この種の事前協議なしに再使用できるというような協定は、二条4項(b)の場合でも適当であると思われるか。こういうことは、今後はこの種の協定はいたさない方針であるか、お伺いしておきたいと思います。
  384. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは各基地別の個別的ケースについて、先ほど申し上げましたようにいろいろ点検してみて判断をしたい、これから研究してみたいと思います。
  385. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと、ケース・バイ・ケースで事前協議なしに再使用を認める基地もあり得るということですね。
  386. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まだわれわれのほうは、具体的に各基地について先方が最終的にどういう意思を持っているのか、まだ明確に、正式にとらえておりません。したがって、そういう問題が出てきたときに個別的に検討してみたい、こう申し上げるので、将来についてはコミットしておりません。
  387. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では、その可能性も十分見込まれるといまの御答弁から推察せざるを得ないわけです。  もう一つのケースをあげてみたいと思います。九月二十四日ですか、沖繩の嘉手納のB52が、これは実際はタイのウタパオ基地に移動したわけです。これについて、沖繩の国会議員の選挙の前ですから、政府も大いに宣伝されました。しかし私は、これは別の観点から非常に重要な問題をはらんでおると思います。なぜならば、この九月二十四日のB52撤去の発表と関連して、米軍はこういう声明をしております。「この措置は、将来作戦上の必要が生じた場合、B52を再び臨時に配置することを排除するものではない」、そして外務省はこれをコミットしておる、ということは、いまは施政権は返還されておりませんが、施政権が返還されても、された後にこの種のやり方が予想されますか、あり得ると思われますか。米軍が、必要ならばいつでも使えるんだと声明を出す、それを外務省がよろしゅうございますというまた声明を出す、こういうやり方が施政権返還後も許されると思いますか。
  388. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたように、各基地についてその個別的条件等を検討して、それを各基地別にそういう問題は考えをまとめていきたい、そういうことでございまして、現在どうするかということはまだ申し上げる段階ではありません。
  389. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いま否定されないところを見ますと、場合によってはあり得るということですね。こういうケースが場合によってはあり得る——全然否定されない、そう受け取ってよろしゅうございますか。
  390. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 否定も肯定もしない、白紙の状態にしておきたい、そういうことであります。
  391. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 総理候補かしりませんが、あまり白紙なんというのは使われないほうがいいんじゃないですか。もう問題は具体的にそこに見えておるのですね。このようなことが法的にできますか。今度は法的な観点からお伺いしてみましょう、安保条約と地位協定の関係から長官に。
  392. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 二4(b)ということを法的に解釈すれば、それは移動する兵力量等の条件によって可能なこともあるんではないか、私はそう思います。これが事前協議にひっかかるような兵力量や、その他の場合には、また問題は別かもしれませんけれども、純粋法的解釈という点を考えると、あるいは可能ではないかと思います。
  393. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは共同声明の四項、ベトナムが片づいていない場合の再協議の問題と非常に関連するのです。きょうは時間がありませんから、一応私は、いまの長官の御答弁は非常にあいまいであるし、有事再使用問題がこの種の安易なやり方によって保証される可能性が非常にある、これを指摘をしておきたいと思います。もしこのような嘉手納の基地に対するやり方が返還後も継続するとすれば、これはたいへんだと思うんです。つまり私どもがいう安保条約を変質さして、そして沖繩にこれを適用を拡大する、それを先取りしたやり方だ。この九月二十四日の米軍声明並びに外務省のコミットはそのように思わざるを得ないのです。これは一応ここでは保留にし残しておきたいと思います。  そこで、次に三島事件に若干入ってみたいと思います。  クーデターと内乱の関係については、長官はりのようにお考えでしょうか。
  394. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 むずかしい問題ですが、どういう意味を指摘されておるのか、ちょっともう少し説明していただきたいと思います。
  395. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 クーデターが刑法七十七条にいう内乱に該当する場合があると思う。そういう意味を込めて聞いているのです。
  396. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は刑法にあまり詳しくないので、専門家によく調べ答弁させることにいたしたいと思います。
  397. 内田達夫

    ○内田説明員 内乱とクーデターの意味はどう違うかというお尋ねでございますが、クーデターは、まあこれは英語でありますが、その概念としては、内乱罪はクーデターの一種ではないかと思っております。
  398. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 「「楯の會」のこと 三島由紀夫」こういうパンフレットがありますが、警察のほうでは把握されておりますか。
  399. 山口廣司

    ○山口(廣)政府委員 去年の十一月三日の国立劇場の屋上でのパレードにおきまして、これはたしか会員に配られたものであると思います。
  400. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いつ発行されて、発行所はどこでありますか。
  401. 山口廣司

    ○山口(廣)政府委員 三島個人がつくったので、私どもは、それがどこで発行されたのか、ちょっと把握いたしておりません。
  402. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 警察庁としては、この「「楯の曽」のこと」の。パンフレットをいつ手に入れられたか、どのような検討がなされたか、この楯の会についてお伺いします。
  403. 山口廣司

    ○山口(廣)政府委員 ちょっと正確にはお答えしかねますが、あのパレードがありましてから暫くして入手をいたしまして、関係者が通読をいたしました。私どもも読みまして、中に、楯の会はスタンドバイの軍隊であってレッツゴーの軍隊ではない、ぎりぎりのときが来るまでは表立ったデモだとか投石とか、そういうようなことは一切しないというようなことがたしか書かれてあったと思います。そして精神的な軍隊だ、それから彼個人のポケットマネー、印税ですか、印税でまかなうので百名以上にはなかなかふやせないとか、それから体験入隊のことがいろいろ書かれてあったと思います。
  404. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その程度でたいしたことはないという御判断だったのですか。
  405. 山口廣司

    ○山口(廣)政府委員 先ほども申し上げましたとおりに、現実具体的な危険性というものはそこからは感じとれなかったというのが私どもの結論であります。
  406. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ちょっと念のために、私はこれを読みまして、これはたいへんな団体だと思いましたね。「「楯の會」はつねにStandbyの軍隊である。いつLet’sgoになるかわからない。永久にLet’sgoは来ないかもしれない。しかし明日にも来るかもしれない。」「最後のギリギリの戦ひ以外の何ものにも参加しない。」それから「思想を守るのは自らの肉體と武技を以てすべきだ、」と。「武技」とは何でしょうか。そして「特に私のために二ケ月の自衛隊體験入隊を許してもらって、士官候補生として陸上自衛隊に入隊した。」士官候補生という制度はあるのですか。
  407. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 士官候補生という名前の制度はございません。おそらく三島氏が四十二年に陸上自衛隊の幹部候補生学校に体験入隊しておりますそのことではないかと思います。
  408. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 なお、楯の会の規約によりますと、三のところにこういうことがあります。「一ケ月の体験入隊を了えた者は、練度維持のため毎年一週間以上の再入隊の権利を有する。」、これは自衛隊に対して権利を有しているんですか。
  409. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 その規約は自衛隊は全く関知いたしておりません。
  410. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 こういう団体であるということを私は申し上げておる。こういう認識で楯の会はおった。これは正式の規約です。自衛隊に毎年一週間以上入隊するのは権利である。規約はそうなっているんです。そこで警察のほうは、先ほどマークしだしたのは本年の三月ごろからとかおっしゃいましたね。去年ですか、警察がマークしだしたのは。
  411. 山口廣司

    ○山口(廣)政府委員 警察がマークと申しますか、どういうことばを使ったらいいかわかりませんが、場合によっては視察をしておったのは、楯の会ができた当初からでございます。したがって、昨年の十一月三日のパレードのときにもちゃんと様子は見ておりました。また現に十一月二十五日の市ケ谷会館の例会の際にも、私服員は、やはりしかるべく視察をいたしておりました。
  412. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、いろいろマスコミも書かれております非常に大事な点で重視されていない問題があると思う。それは、宍戸さんの先ほどの御答弁とも関連いたしますが、自衛隊幹部が八名傷つけられておるんですね。一番長い方は、この診断書によると十二週間です。私は、自衛隊の存在自体には社会党としての意見があります。しかし自衛隊が現に存在しておる。自衛隊員の方々にも家族がある。八名の方が傷つけられておる。私はこの事実をもう少しシビアに考える必要があると思うのです。つまりこれは殺人行為です。たまたま死者が出なかっただけです。総監も傷つけられた。殺すということをいわれた。加害者が有名人であり、一つの特権的な立場にあったからこういうことが問題にならない。自分の部下が傷つけられたその加害者に対して、先ほどあなたは、三島氏について「御自分」と「御」の字をわざわざ三島さんにつけられておるんですね。私はそういう感覚がおかしいと思うのです。これは明らかなテロ行為です。  そこで公安調査庁にお伺いしたい。いま捜査の段階でしょうけれども、捜査内容が詰まってくれば、これは破防法との関係はどうなるか。それを一応お伺いしておきます。
  413. 内田達夫

    ○内田説明員 破防法は、御承知と思いますが、楯の会の団体として破壊活動を行なった場合、そして将来また破壊活動を行なうおそれが十分ある場合には、楯の会に対して解散請求ができます。ところが、いままでのいろんな状況では、今回の三島事件がはたして楯の会の団体としてなされたものであるかどうか、あるいは五人だけの共謀による犯罪であるのか、あるいは単に三島がもっぱら指導的な立場でほかのものがそれに付和随行したといったような事件であるかどうか、このような点がはっきりしませんと、私のほうも団体の意思としての破壊活動であるかどうかという認定ができないわけで、その点、目下検察庁、警察で捜査中でございますので、いまの段階では、これを破壊団体と認定するだけの資料がないわけでございます。そういう関係から、これを規制するかしないかというようなことを、まだいまの段階では申し上げかねます。
  414. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、いまのところは楯の会の行動等は野放しにされておかれるわけですね。
  415. 内田達夫

    ○内田説明員 楯の会の残党と申しますか、いまつかまっておる三名以外に百名足らずの楯の会の会員と称する者がおりますけれども、彼らの全部ではありません一部について聞いておりますが、今後楯の会としてどういう行動に出るかというようなことについては、残った会員としてははっきりした供述等をしておりません。解散するかどうかもきまっていないという状況で、野放しと申しますか、これについては注目はしておりますが、直ちに危険な行動に出るような差し迫った状況ではないと思います。
  416. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いままでの御答弁で、まさかこういうことをするとは思わなかったというのがずいぶんありましたね。そうすると、いまあなたはそういう答弁をされましたが、あなたは責任持たれますか。いまのところ、そういう危険はないようだとあなたはおっしゃいましたが、いまの答弁を聞いてもそうでしょう。このようなことは起こり得ないと思っておった、だから体験入隊もさせたのだと盛んにおっしゃった。責任を持たれますか。
  417. 内田達夫

    ○内田説明員 今後かような危険な行動を起こすかどうかについては、残された隊員からははっきりしないわけでございます。したがって、行動を起こすとも起こさないとも、私のほうでは認定もいたしかねるというわけでございます。
  418. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これだけの文書があって、もう何回も質問したが、楯の会の性格が大体はっきりしている。行動にも出ている。この現段階においても、あなたはそういう見解ですか、楯の会について。それをはっきりしておいてください。
  419. 内田達夫

    ○内田説明員 楯の会に限らず、過激左翼団体、学生等を見ましても、ずいぶん激しいことを言っております。こういう団体にはとかく激しい表相あるいは文書、言論はなされておりますけれども、そのとおりに実行されるかというと、実行されない場合が非常に多いわけで、激しいことを言っておるから危険な行動が起こるとも直ちには考えられない。(楢崎委員「起こったんじゃないか」と呼ぶ)起こらないというわけではない。現に楯の会としては先日の事件が初めてでございまして、過去に何回か繰り返してあったということではない。そういう意味から、私のほうとしては、さような危険性が具体的に非常に起こる可能性が強いとまでは申し上げかねるというわけでございます。
  420. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 約束の時間でございますからこれでやめますけれども、いまのあなたの認識は、私は非常に問題があると思うのです。もしこれが破防法の関連がちょっとでも出てくれば、これは警察庁の長官や中曽根長官は重要な責任が法的にからんでまいります。私は、近い将来にまた機会があるそうですから以下、この楯の会の思想性と自衛隊の思想性と、どのようにからみ合っておるか、これを事実によって立証していきたいと思います。一応これで保留にして終わります。
  421. 天野公義

    天野委員長 次回は、明十日午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後七時散会      ————◇—————