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福田国務大臣 私は、日本経済の最近の動きを見ておりまして一番心配をいたしておりましたのは、この成長の高さ、これが高過ぎる。これはもう非常に基本的な問題でありまして、昨年までの四カ年の日本の経済の動き、これは平均して実質一三%成長だ、しかもそれがさらに激化しようというような勢いにあったわけです。その勢いを続けますと、実に今後五カ年間で日本の経済が、GNPがまた倍になる、こういうような勢いだった。そのGNPが五年で倍になるというような事態がもしかりにありとすると、これはたいへんな奇跡的なことでありますが、そういうことは実は絶対に実現できないのです。資源が
一体そんなに海外から入手できるか。鉄鉱石にしても原油にいたしましても、その他もろもろの非鉄金属その他の諸原材料、これは非常に入手難である。また入手がかりに海外でできてもこれを国内に輸送できるか。この輸送力も、これもとてもそう簡単には調達できない。また国内に運ばれると仮定いたしまして、これを国内で生産をして一億
国民の消費に乗っける、流通過程に乗っけるということを
考えてみましても、国内の輸送力ではとてもそんなものを運べない。倍のものを運び切れるだけの能力はございません。さらに問題なのは
労働力の需給ですよ。そんなことを
考えますると、賃金はますます高騰する。賃金が上がるからまた物価を押し上げる。賃金、物価の間にとめどもない悪循環を生じ、日本の経済は、五年後というようなことでない、もう一、二年であらゆる面で壁に突き当たる。成長の高さを落とさなければならぬ問題です。また、いま現に問題になっておる
公害の問題にいたしましても、これと非常に大きな関連がある。
そこで、成長の高さを押えようというので、昨年の九月に
金融引き締め政策を始めた。ところが一年を経過したこの夏までの勢いでは、どうも実体経済に対する影響というものは出てこない。ところがこの秋口からいよいよ実体経済に対する影響も出てまいりまして、ただいま御指摘のような
状態になってきておるわけです。まあ通観いたしまして、ことしの上半期は大体私は一二%ないし一三%の実質成長の日本経済であったと思います。それが急速に下がってまいりまして、下半期は一〇%ないし一一%の線を彷徨しておる。だんだんと下がっておりまするから、ことしの年度末、来年三月ごろの時点の日本の経済はおそらく実質一〇%成長の程度の経済になるだろうか。
そこでその先が
一体どうなるだろうかということをいま
松本さんが問題にしておるんじゃないか、そういうふうに思いますが、
国民の消費が非常に旺盛です。日本経済を動かす五〇%以上は
国民消費なんですが、これは非常に堅実な勢いで伸びておる。それから輸出ですね。いま
わが国の卸物価が非常に安定をいたしておりまして、世界第一の安定度であります。したがいまして、この輸出物価、
わが国の物価面から見た輸出力、これは強化されるばかりである。アメリカあたりでいろいろ問題を起こしておりますが、それらを乗り越えて日本の輸出というものは進むであろう、こういうふうに見ておるわけであります。
問題は、財政並びに産業投資がどういうふうになるか、こういう問題でございますが、産業投資のほうは、
金融緩和、そういうような施策がとられておる、そういうようなことでさほどの落ち込みを来たすというような
状態ではなかろう、こういうふうに見ております。私が一番希望しておりますのは、来年というその年が、三月ごろ一〇%成長の水準に落ちたその辺を横ばいでずっと動いてくれればなあ、こういうことなんでありまして、そういうふうに動いていく日本経済でありますれば、私は万々歳である、さように思います。
そういう
考えのもとに
昭和四十六年度予算というものを編成いたしたい。つまり景気に対しましては、これは中立型ということがよかろうじゃないか。しかしいろんな見方が立つであろう。また昨年までのような過熱
状態に逆戻りをする、
金融緩和の結果そういうようなことになっては、これはたいへんなんだ。その際には
金融上、財政上これを抑制するという手段をとらなければならぬというふうに
考えます。それからまた一〇%に落ち込む——一〇%というのはこれは高い成長率でありまして、ヨーロッパ水準の三倍の高さになるわけでありますが、それでも、日本の経済人はどうも高度成長麻痺症というか、そういう病気に取りつかれておりまして、不況感を感ずる、こういうような
状態でございますから、一〇%を大きくめり込むような事態を私は避けたい。そういう徴候があらわれるという際には、
金融政策上の配慮もできますが、しかし財政上もそういう配慮をすべきであるというふうに
考えまして、財政上そういう配慮が実現できるように弾力のあるかまえ、これを予算の仕組みの中に取り入れてみたい、そういうふうな
考えでございます。