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稲葉参考人 私、ただいま御
紹介にあずかりました、
石炭鉱業審議会体制委員会の
部会長代理をしておりまする
稲葉でございます。
今般、私
たちが
審議いたしました
中間答申をこれから御
報告を申し上げるわけでございますが、すでに
文書その他はお
手元にあると思っております。本来ならば
部会長の
圓城寺が参るはずでございますけれども、外国に行くということになりましたので、私がかわって参った次第でございまして、この点御了承を得たいと思うのであります。
私は、
昭和三十四年以来十一年間、
石炭鉱業審議会の
委員をつとめて、
わが国の
石炭対策につきまして御
協力を申し上げてまいった次第でございます。きょうはお招きにあずかりまして、
中間答申として取りまとめた、
石炭鉱業の
体制に関する当面の諸
対策、こういうことにつきまして、私
たちの
趣旨、
考え方を
先生方に御
報告を申し上げたいと思う次第でございます。
まず、このようなことになりましたのは、
皆さま御存じのように、現在の
石炭対策と申しますのは、
昭和四十三年十二月に当
審議会の
答申を基礎としてまとまりました第四次
石炭対策、これに端を発しているわけでございます。それで、私
たちはこの線に即応いたしまして、今日まで
石炭対策というものにつきましてこれを運営する、こういったようなことを進めてまいりました。
ところが、すでに
皆さま方も
御存じのように、
石炭を取り巻く諸
条件が、その後におきましてもいろいろと
変化をしてまいりました。したがいまして、そういう第四次
答申という
基本線はございますけれども、やはりそれに即応いたしまして、いろいろ弾力的な
対策を実施していかねばならない、このような必要に迫られているわけであります。そして、本年四月二日に、
通商産業大臣から、
石炭鉱業の
体制に徴し、その
体制上の
改善策について問う、こういう御
諮問を受けまして、自来当
審議会でそれを
論議をする、また
結論を取りまとめる、こういったようなために
体制委員会、こういうものができまして、十一回にわたり
審議を重ねてまいりました。また、この
一般の
審議のほかに、それぞれ専門的な
審議とか懇談、こういったようなこともやってまいりました。そして十一月二十日に、これを取りまとめた次第でございます。
そこで、
文書はお
手元にございますけれども、やや重複を避けまして、これに至ります基本的な
認識と
対策の方向、こういうことにつきまして、ひとつ簡単に御
説明を申し上げたいと思う次第でございます。
まず第一に、第四次
対策発足後の
事態、このようなものにつきまして、私
たちはやはり正確な
認識を得なければならない、そして、それに対しまして、可能な限りの
対策を集中していかねばならない、このように考えた次第でございます。
そして、それではどのような
事態が生じているのか。この点は
先生方も
十分御存じだと思うのでございますけれども、ここに、それに対する
項目があがっておるわけでございます。たとえば、
出炭が
計画を下回ってきたとか、それから
労働者確保、特に
若年労働者の
確保がむずかしくなってきたとか、それから
出炭の低減のほかに、
石炭企業の
経営悪化の
条件としては、
資金とか経理上の困難また
賃金、こういったようなものが起こってきたとか、こういうことがあげられるわけでございます。その点の
事情につきまして、ごく
概略をひとつ御
報告を申し上げたいと思っております。
その
一つは、現実の
出炭の
事情でございますけれども、私
たちは、いろいろいままで
検討してまいりました。たとえば
昭和四十四
年度につきましては、当初四千四百三十四万トンの
計画目標を立てたのでございますけれども、実績は四千三百五十万トンくらいになっております。それから、
昭和四十五
年度、今
年度につきましては、
実施計画は四千万トンということになっておりますけれども、三千九百万トンくらいに落ちつく。場合によりましては、これは私個人の見込みで、現在
需給部会長をつとめておりますけれども、三千九百万トンをひょっとすると落ちるのではなかろうか、こういったふうに思います。また
労働者につきましては、
昭和四十四
年度末の
労働者数は六万百十四人でございますけれども、今年の九月末におきましては五万六千四百人、こういうふうなところにまで下がっております。また
賃金の
上昇は必ずしも全
産業並み、こういうふうにはいっておりませんけれども、それでも四十四
年度におきまして一二%、四十五
年度におきまして一三%の
上昇、このようなことになっている次第でございます。このようなことによりまして、私
たちが予想いたしましたよりも、
石炭を取り巻くいろいろな
条件が、率直に申しまして悪くなってきたのではなかろうか、このように思う次第でございます。
もう
一つ起こってまいりました問題は、公害問題の進展に伴いまして、高
硫黄炭の処理がむずかしくなってきている、このような次第でございます。
さらにもう
一つ、
石炭の最近の状況におきましてやはり
変化をいたしておりまする点は、これは
内外の
エネルギー事情の
変化、こういうこともございますけれども、最近におきまする
内外原料炭需給の逼迫を背景といたしまして、
わが国の
原料炭に対する評価をやり直していかねばならぬ。考え直してみますると、もっと
原料炭の
生産をプッシュをしなければならない、こういったような
条件が起こってきたということであります。そしてまた、こういうことをしてまいりませんと、ひいては
鉄鋼業とか
国民経済、こういったようなものに対しまして、いろいろな影響が起こってくるのではなかろうか、このような点を私
たちは
配慮さしていただいた次第であります。
これらの点を頭に入れまして、第四次
対策後の
事態の
推移にどのように対応せしめていくか、このような点を
検討した次第でございまして、それが「
石炭対策の
基調の
変化」、このようなところに要約をしているわけでございます。そしてこの
基調の
変化につきましては、部分的な
対策と全体的な
対策、このようなことにつきまして、やはりいろいろ考え直していかねばならない、また
実行措置をとっていかねばならない、このように感じたのであります。
ここでは、すでに
先生方が
御存じのように、当面の
原料炭の
長期確保体制をどのようにしていくのか、このような
観点が出てまいりまして、この
意味で、従来の
石炭対策に比べまして、この
要素をもっと強く押し出していかねばならない、このように考えた次第でありますけれども、それにつきましては、
事業運営の第一次的な
責任体制はやはりあくまで
石炭企業にある。したがって今後とも一そうの
合理化努力が要求される、このようなことが必要ではございますけれども、さらに
需要業界の
協力、こういったようなものも不可欠な問題ではなかろうか、このように判断をいたしました。そしてさらに、それに対しまして、
供給確保の
観点からやはりいろいろな国の
助成施策の強化、このようなことをやっていかねばならないのではなかろうか。ことに
事態自体が先ほど申し上げましたように、マイナスになっている、悪循環をしている、こういうことを考えますと、やはりそういう面につきまして
相当の
努力を集中すべきではなかろうか、このように判定をいたした次第でございます。
さて、この
原料炭対策、このように申しましても、
原料炭だけこれを掘り出していくというわけには、
石炭業の
特殊性から申しましてまいりません。したがって、いまの
事態全体を考えながら、全体としてこれをどのように調整をしていかねばならないか、こういったような問題がクローズアップしてきて、それに対しまして私
たちはいろいろ多角形的な
配慮をいたしまして、この十一
項目からなる
対策を当面の必要な
対策として
中間答申に織り込み、そしてとりあえずこれを実行していただく、こういうことを
前提にしながら、さらに今後の
対策、また特に第四次
対策は四十八
年度までということになっておりますので、四十九
年度以降の
あり方ということにつきましても、この際、総合エネルギー的な
観点からこれを見直していかねばならない、このように感じた次第でございます。
ただ、これは私
たちの
体制委員会におきます
中間答申以後の問題でございますけれども、実は九月の末から十月一ぱいにつきまして、私は通産省の
エネルギー調査団の
一員といたしまして、アメリカと
ヨーロッパに参りました。そして
エネルギー事情の総体的な
変化、こういうものをひとつ見きわめまして、今後の
エネルギー対策、
日本全体の
エネルギー総合対策の
あり方について、どのような問題が国際的な
場面からクローズアップしているか、このようなことを調べに参った次第でございます。
私
たちの
調査団の
結論はまだ出ておりません。ただ、私が
一員として参加をいたしまして、そして今回は三回目の
調査団でございますけれども、一回目も二回目も、私参りました。
その中で、
石炭についてやや、今回の場合、特徴的に感じられますことは、
前回昭和三十九年、
前々回昭和三十六年でございますけれども、今
年度、ことしについて感じておりましたのは、決して
石炭をそでにするとか、そういったようなことではなくて、あくまでやはり総合エネルギー的な
観点からこれを
維持育成をしていかねばならない、こういう
考え方は、
ヨーロッパの各国にも根強いのでございますけれども、やはりいろいろな
事態の
推移等を見まして、たとえば、イギリスも一時は二億トンの
石炭を
生産をした国でございますけれども、またこれは国有、国営でやっておられる国でございますけれども、現在は一億五千万トン、十年後には一億トンを割って、八千万トンか九千万トンになるだろう。西ドイツにつきましても、
石炭対策、
石炭問題というのは、非常に大きなウエートを置かれている次第でございますけれども、ひところ一億四千万トンぐらいの
石炭、そのほかに褐炭がございましたが、
石炭については現在一億トンプラスアルファ、また十年後にはこれはやはり七千万トン見当までは減っていかざるを得ない。そのかわりに、やはりそれを考えて、今後の
エネルギー需要の中でどのように
安全性とそれからその
低廉性を維持するか、こういったような問題も起こっている。こういうことを考えますと、やはり国際的な経験も生かして、私
たちは
現状並びに将来について、もっと多角形的な
配慮をしなければならぬ問題をなお残しているのではなかろうか、このように感じた次第でございます。
やや蛇足であるかもしれませんけれども、こういったような
事情も最近感じてまいったということを、
先生方に御
報告申し上げておきます。
そこで、当面の
対策といたしましては、この
文書にもございますように、いかにして
原料炭の
確保をはかっていくのか、この問題を今度の
中間答申では非常に強く打ち出しました。これは、ただ単に
原料炭山を助けるというだけではなくて、やはり全部の
石炭、こういったような問題の今後の
あり方を決定いたします上で非常に重要ではなかろうか、このように感じました。そして、これらを
中心にいたしまして、このためには
需要業界の
協力というものが不可欠な
要素である、そして
他方、
政府といたしましては、具体的な
措置といたしまして、新
鉱開発とか、新
区域転換の支援のために、
開銀融資を
拡大をしていくとか、
石炭鉱業合理化事業団の
資金確保につとめるべきだとか、このようなことをひとつ打ち出している次第でございます。
それから、第二の、この五ページ以下の「
生産合理化対策」というものについて申し上げれば、もう
皆さま御存じのように、
石炭鉱業はだんだん深部に採掘というものがなっていくにもかかわらず、その
意味におきましては能率というものが一面向上をしております。そして
他方、
労務者確保の困難、
生産費の
上昇、このようなものが予想されておる次第でございまして、
炭量の先行的な把握や、
坑内骨格構造の
整備、
機械化を
中心とする
生産合理化体制がどうしても必要で、これに対しましては、もっと前向きの姿勢をとっていかねばならぬ。また、わが
日本といたしまして、将来
製鉄業の
あり方ということにもよりますけれども、おそらく
昭和五十
年度ごろには、九千万トンぐらいの
原料炭の輸入が必要になるかもしれない、このようなことを考えますと、やはり最近の世界の
エネルギー事情の
変化、こういうものを考慮をいたしまして、いままでやっていなかったような新しい
海底炭田におきまする
調査開発、こういったようなものを補助する
措置を
検討すべきではなかろうか、このように感じた次第でございますので、このように
結論づけた次第でございます。
また、
保安対策につきましては、
災害の発生が、
坑内骨格構造の
整備が十分に行なわれていないということに結局は基因するのではなかろうか、このようなことからいたしまして、
企業の
努力と
政府の
助成ワクの
拡大、このようなことを必要とする、こういう
考え方に立ったわけであります。
その(4)の「
労務者確保対策」と、その(8)の「
離職者対策の再
検討」、これが
体制委員会の中で
相当論議が戦わされた
場面でございます。そして今日、
炭鉱が直面をしている問題は、やはり
労務者をいかに
確保するか、こういったようなことにあるということは
十分御存じのとおりでございます。しかし、その
一つといたしましては、やはり
賃金その他の
労働事情が他
産業並みになっていく、このようなことが必要でございます。と同時に、やはり他
産業並みになるということにつきましては、場合によりましては
生産が増大しない、こういう
前提条件のもとにおきましては、よけいにその負担、
企業経営の収支が悪くなっていく、このようなことになっていかざるを得ない。そして、これらのことにつきまして、住宅や
雇用奨励金等の
改善、このようなことについて
努力をするとともに、従来の
離職者対策につきましても、
高齢者、
身体障害者、
未亡人等の
離職者の再
就職が困難である、またこれらの再
就職の困難な者につきましては、十分の
配慮を必要とする。、しかし、全体的な
労働力の
確保ということにつきましては、いままでと違いまして、やはりもっと
現状に即した
観点におきまして、再
検討が必要ではなかろうか、このようなことを勧告さしていただいた次第でございます。
閉山対策につきましては、
特別閉山交付金制度は、法律に規定をされておりまするとおり、本
年度の末をもって廃止をするということになっておりますけれども、今後これを
検討してはどうか、こういったような問題が出ております。
それから、
電力用炭販売株式会社法というものにつきましては、やはり
一般炭の問題が非常にデリケートになってまいっておりますので、四十八
年度末まで
有効期限を
延長することが必要ではなかろうか、このようなことをやった次第でございます。
さて、これらを通じまして、ひとつ私
たちが
検討し、苦労してまいりました問題は、この(5)の「
価格対策」ということについてでございます。
価格につきましては、コストの
上昇が今後とも避けられない、このような
事態が予想される次第でございます。そのためには、国で
大幅助成をしていくとか、あるいは
需要業界に対しまして、合理的な範囲での
引き上げを認めていただくとか、このような基本的な問題が出てきたわけでございます。しかし、
現状の
石炭対策というもの、つまり第四次
対策というものにつきましては、ひとつ、これを
日本の
石炭鉱業の基本的な
対策としてやっていくという
前提におきまして、格段の
措置がとられてきた。そしてそのために
石炭に対しまして
特別会計も設置をされた次第でございます。したがいまして、いまのところ、それでは
財政のほうにしわを寄せて、そしてそのような
事態の
変化を、
政府支出によって増大をする、このような
考え方はやはり従来の
経過にかんがみましてなかなか困難ではなかろうか。したがって、そういったようなことを
前提といたしまして、当面につきましては、中の
あり方の
検討と、それから
需要業界に対しまして、その
引き上げ、こういったようなことを要請をしてまいったわけであります。そして、私
たちが第四次
対策の以降の問題を
検討している過程で、この
体制委員会の
審議と並行いたしまして、
原料炭の値上げの問題、さらに
一般炭につきましても、ひとつ二百五十円の
引き上げを認めていただこう、こういったような
措置を、お役所のほうと私
たち委員で強力に進めまして、これをひとつ実行していただくということになった次第でございます。しかし、率直に申しまして、じゃそれが認められたから、四十五年以降のものがだいじょうぶだ、こういうふうには実はまだ言い切れないほど、
日本の
石炭というのはむずかしい問題が出ておる次第でございます。したがいまして、これらのことを受け取りまして、私
たちは
中間答申以後におきましても、この問題をどのようにしていくのか、さらにやはり四十九年以降の
あり方をどうしていくのか、こういうことにつきまして、全体の
エネルギー政策の中で、もう一ぺん根本的な
検討をしていかねばならない、このように感じておる次第でございます。
若干
あとのほうにつきましては、まだ
体制委員会で
論議をしたということではございませんで、やや個人的な私見が入っているかもしれませんが、一応
皆さま方に、第四次
対策を進めてきた、こういう
経過と
問題点というものを御
報告申し上げる上に必要ではなかろうか、このように感じた次第でございます。
最後に、やはり私
たちの申し上げたいのは
財政の問題でございます。以上で御
紹介をいたしました当面の諸
対策、その他
石炭施策遂行のためには、どうしても財源が必要だ、このように思っております。これにつきましては、とりあえずは本
年度末をもって期限切れとなることになっておりまする原
重油暫定関税について、
昭和四十八
年度末までこれを
延長するということが必要ではなかろうか、そして、それと同時に、当面は、
現行の
ワクの中においてどのようにいま申し上げました
推移をしていくのか、このような問題と、さらに今後の
事態に備えまして、もっと突っ込んだ
検討及び
財政的な問題、こういうことにつきまして
検討していかねばならない、このように思っておる次第でございます。
十分という時間がやや超過をいたしまして、まことに申しわけございませんけれども、そういったような
趣旨で、ひとつ第四次
答申が取りまとまったのだ、こういうことを御了解を得たい次第でございます。(拍手)