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1970-12-09 第64回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十二月九日(水曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 八田 貞義君    理事 浦野 幸男君 理事 鴨田 宗一君    理事 進藤 一馬君 理事 橋口  隆君    理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君    理事 近江巳記夫君 理事 塚本 三郎君       石井  一君    稲村 利幸君       遠藤 三郎君    大橋 武夫君       神田  博君    北澤 直吉君       久保田円次君    小峯 柳多君       左藤  恵君    坂本三十次君       始関 伊平君    田中 六助君       藤尾 正行君    増岡 博之君       石川 次夫君    岡田 利春君       中井徳次郎君    松平 忠久君       相沢 武彦君    松尾 信人君       川端 文夫君    西田 八郎君       米原  昶君  出席国務大臣         通商産業大臣  宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  出席政府委員         経済企画庁審議         官       西川  喬君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         厚生省環境衛生         局公害部長   曾根田郁夫君         通商産業省公害         保安局公害部長 柴崎 芳三君         通商産業省鉱山         石炭局長    本田 早苗君         中小企業庁長官 吉光  久君  委員外出席者         大蔵大臣官房審         議官      中橋敵次郎君         大蔵省主計局主         計官      徳田 博美君         厚生省環境衛生         局公害部公害課         長       山本 宣正君         通商産業省重工         業局次長    山形 栄治君         運輸省港湾局技         術参事官    竹内 良夫君         建設省都市局参         事官      石川 邦夫君         建設省河川局次         長       角田 正経君         自治大臣官房参         事官     佐々木喜久治君         自治省財政局地         方債課長    石見 隆三君         商工委員会調査         室長      椎野 幸雄君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月九日  辞任         補欠選任   前田 正男君     久保田円次君   中谷 鉄也君     下平 正一君   正木 良明君     相沢 武彦君 同日  辞任         補欠選任   久保田円次君     前田 正男君   下平 正一君     中谷 鉄也君     ――――――――――――― 十二月八日  貿易振興対策等に関する陳情書  (第一七四号)  米国に対する繊維製品輸出自主規制反対に関  する陳情書外四件  (第一  七五号)  中小企業金融対策に関する陳情書外一件  (第一七六号)  中小企業安定対策に関する陳情書外二件  (第一七七号)  流通近代化に関する陳情書  (第一七八号)  本場大島つむぎ技術韓国流出防止に関する陳  情書(第一七九号)  石油製品需給調整緊急措置に関する陳情書  (第二一一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  水質汚濁防止法案内閣提出第二二号)      ――――◇―――――
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出水質汚濁防止法案を議題といたします。  質疑の申し出があります。順次これを許します。左藤恵君。
  3. 左藤恵

    左藤委員 昨日来、この水質汚濁に関します法案につきましていろいろと御審議が行なわれたわけでございますが、この法案が今回提案されましたその背景には、私は、やはり提案理由説明の中にもありましたように、人口の集中が著しい大都会の周辺の河川が、あるいはまたその他の水域が、いま抜本的な対策をとらなければ、もう・取り返しのつかないような現状になっておるという点が一番大きな——従来いろいろ方策は講じてこられたわけでありますけれども、それでは十分でない、抜本的な改正を何とかひとつ行ないまして、それによっていま手をつけなければ、国家百年の大計と申しますか、将来において取り返しのつかないようなことになりはせぬかということで今回の法案が提案されたものと思うわけであります。そういった観点から、私は、いま経済企画庁長官がいらっしゃいませんが、あとでお伺いいたしたいと思います。  この法案の一番の、最大の眼目と申しますか、そういった点は、やはり地域住民に密着した問題であるという点から、地方公共団体権限強化等、中央、地方を通じた一体となっての公共用水域水質汚濁に対する対策というものがとられていかなければならないと思うわけで、そういった点が一番の大きなこの法案提出眼目であろうと思うわけでありますが、きのうのいろいろの御審議の中でありました排水基準の問題について、まず一、二お伺いしておきたいと思います。  経済企画庁国民生活局審議官にお伺いいたしたいと思いますが、きのうもお話がございましたように、まず第三条におきまして総理府令で定めることになっている。この議論につきましては、きのうもお話が出ましたが、私は、排水というものは量の問題というものをやはり考えていただかなければならないと思います。大企業の場合は非常に大量の排水が行なわれる。そうした場合に、いろいろな汚濁原因となる、特に健康の問題になりますそういう金属が微少でも含まれておりましたら、これを合わせますと非常に大きな問題になってきて、あるいは土壌汚染原因にもなるというふうなことがあろうと思いますが、零細企業あるいは中小企業の場合につきましては、排水量は非常に小さいということであれば、一定の濃度があって規制されるというところについて、こういった点の矛盾と申しますか、不合理というものは、やはり科学的な調査研究を進めていただく。測定技術も、あるいはその他の点につきましても、必ずしも不可能なことでないと思うわけでございますので、今後そういった点で、たとえば大企業が出します大量の排出と、中、小というふうに三段階に区分するとかいうふうなくふうをやっていただくことができないかどうか。あるいはそういうことを計画しておられるかどうか。その点について、まずお伺いいたしたいと思います。
  4. 西川喬

    西川政府委員 お答え申し上げます。  現在行なっております排出規制におきましても、量のいわゆる付加量というものは、念頭に置きまして基準をきめております。具体的には、排出量の大きなものにつきましてはきびしい基準という、段階的なこの基準をきめているようなあれをとっております。いま先生がおっしゃいました微量重金属の問題につきましても、これはやはり環境基準というものをきめておりまして、この環境基準を達成するための規制ということを考えておりますので、具体的には、最近決定いたしました洞海湾等におきましては、シアン問題等につきまして、従来の十倍希釈という考え方全国一律の基準を考えておるわけでございますが、この基準をもってしては洞海湾環境基準が達成できないということでございまして、そのうちの大量に出す企業につきましては、全国一律基準よりもさらにきびしい、これを半減させた基準をきめております。これらはやはり一応は計算式でございますが、計算によりまして、流水中の環境基準目標とする環境基準が達成できるかどうかということから計算いたしまして、排水規制のほうにそれを加味して基準をきめているというような処置をとっております。
  5. 左藤恵

    左藤委員 いま御答弁がありましたように、私は、要はこういった水質汚濁原因となります排水規制汚濁をどのようにして防ぐか、そういう立場から、ことばは悪いかもしれませんが、逆算してでも、そういったものをなくするという点から、あるいは企業にとって非常にきつい基準になるかもわかりませんが、そういうことはやはりやっていただかなければならない、このように思うわけであります。  そこで、ことしの四月二十一日に閣議決定をしておられます環境基準というのは、やはり一つ行政目標である、こういうふうに私は理解いたしておるわけでございますが、ここにシアン以下の八種の有毒物質が「人の健康に係る環境基準」として定められております。また「生活環境に係る環境基準」として五つの基準値が示されておるわけでありますが、この点につきまして、この法律が施行されたときに、その閣議決定内容がそのまま政令として考えられておるものか。あるいはまた、きのうも徐々に追加するというふうなお話もありましたが、そういった場合に、この数値が再検討した上で政令となって施行されるものであるか。その辺についてお伺いいたしたいと思います。
  6. 西川喬

    西川政府委員 四月二十一日、五月二十九日に一部変更しているわけでございますが、この環境基準は、川の中の流水あるいは海のわれわれの目標といたします基準でございます。法律のほうできめますのは、工場排水基準でございます。  現在、健康項目につきましては、大体ここできまっております八項目数値、これは流水基準でございます。これに対しまして、普通の場合よりも一応非常に安全度を見込んでおりますが、十倍希釈ということを念頭に置きまして、排水で出されましたものは十倍に、少なくとも十倍以上に薄める、十倍を最低限のあれといたしまして、排水基準といたしましては十倍のものを考えております。大体、健康項目に関しまして、今回新法できめます全国一律の基準といいますのは、 いまやっておりますこの十倍希釈そのままのものをきめてまいりたい、このような考え方をいたしております。ここにきまっておりますこの基準値そのものは、現在の疫学的見地その他から考えまして、安全性も見込みまして妥当であるという数値を各省の間で協議して決定いたしたものでございますので、現在。法律改正によりまして直ちにこの環境基準値そのもの改正するという考え方はございません。  それから、環境項目のほうにつきましては、やはり同じような観点から、利用目的に対応する数値を現在の知見の段階において決定いたしておりますので、この基本的な考え方をいま変更する考え方はございません。これと見合います排水基準につきましては、これは健康項目と違いまして、それぞれの水域の特性がございます。それでございますので、一応、一律基準というのは、この環境基準とは離れまして、公共用水域排出水を出そうとするものの道義的、社会的義務によりまして、この一律基準ナショナルミニマムを守らなければならない、きれいであろうときたなかろうと、環境基準には十分適合しておっても、そういうものは守らなければならないというのが、ナショナルミニマム考え方でございます。そのナショナルミニマムを各排水者が守っておりましても、流量が少ない、あるいはそこに非常な企業集積があったというようなことから環境基準が守れないときに、初めてそれぞれの水域につきまして上のせ基準都道府県がきめる、一律基準よりももっときびしい基準をきめるということになっております。それでございますので、環境項目に関しましてのナショナルミニマム府令で定めます一律基準というものは、個々にきめております。閣議決定いたしております環境基準とは離れて決定されるというふうに考えております。
  7. 左藤恵

    左藤委員 いまのお話で、たとえば異常渇水のときとか、そういうような緊急のときにつきまして、都道府県知事が上のせ基準をつくることができるわけでありますが、さらにそういった問題について、特別の排水規制という問題が十八条に書かれてあるわけであります。この十八条は「勧告することができる」ということで、これがきのう産業公害委員会でも問題になった点だろうと思います。大気汚染の場合と同じような形でこれはいろいろと論議の対象になる点だろうと思いますが、たとえば河川異常渇水時とか、そういった緊急時におきまして、都道府県知事工場排水規制することについて勧告することができることになっているわけでありますけれども、こういった点は、将来において操業を制限することができるかどうかというふうな可能性も、いまから検討しておいていただいてはどうか。  あるいはまたもう一つ、私は一つ要望として申し上げたいと思いますが、都道府県知事排水につきまして改善命令を出すとか、あるいは排水の一時停止ということができるようになっておるわけでありますけれども、そういった場合に、公害を防止する設備、こういうものを義務づけるために何か設備基準を設ける必要があるのじゃないかと思うわけであります。こういった点につきまして、何か経済企画庁においてそういったものが検討に値しないかどうか、その辺の御判断をお伺いしたいと思います。たとえば、これはアルカリの洗浄装置ですか、そういったものを汚染ぐあいによりまして工場に設置することを義務づけるような、そういう基準みたいなものを考えて、それを都道府県知事権限に与えるというふうなことについて御検討されたことがあるかどうか、この辺についてお伺いいたしたいと思います。
  8. 西川喬

    西川政府委員 まず一番最初に、先ほど申し上げました上のせ基準といいますのは、十八条の緊急時の問題とは別でございまして、流量に対しまして非常に集積が多いというようなことで、常時の問題としての考え方の上のせ基準でございます。十八条の緊急時の問題は、通常の形でなくて、異常な濁水というような理由によりまして、その上のせ基準なりあるいは一律基準なりを守っておったとしても環境上非常によろしくないというようなときに、十八条の緊急時の措置が行なわれるわけであります。その点。御了承願いたいと思います。  十八条の緊急時の勧告でございますが、これにつきましては、私どもといたしましても、命令勧告かというものを相当検討いたしたわけでございます。その場合、命令といたしますと、やはりこれの命令違反というものに対します罰則の問題が出てまいります。罰則をかけるということになりますと、命令を出す基準を相当明確にしなければいけないという問題が、法制上の問題として出てきたわけでございます。その点で「政令で定める場合」といっておりますが、特に水質の場合におきまして、どのような渇水程度のときに初めてこれを発動させるのか、あるいは水質の場合におきましては、その継続時間という期間的な問題もございます。たとえば、一日の渇水であればまだ被害は生じない、それが一週間、十日と継続すると初めて被害が生じてくる、というようなケースもあるわけでございます。そのために、現状におきまして、ただちにこういう命令を出す基準をはっきりときめるということが、現在のところまだその辺が詰まってない。渇水程度あるいはそれに対します規制程度というものが、はっきり定義づけられないという問題が生じてきたわけでございます。そのため、当面は勧告ということでスタートいたしまして、今後このような事態に対しましてのいろんな経験勧告を発動したというような経験を積み重ねまして、いよいよこのようなときからは当然というようなことがはっきりしました段階におきましては、将来におきましては、この勧告命令にさらに強化するというようなことも考えられるのではないか。現在このような考え方でございます。  それから第二点の除害施設、その設備基準という問題でございますが、この問題につきましては、同じ排水基準がかかっているといたしましても、これはそれぞれの工場生産の方法、内容、これもそれぞれの事業場におきまして一つのものではございませんで、いろんなものを多角的に生産しておるわけでございます。その中からいろんな汚濁物質、あるいはいま先生のおっしゃいました酸性の問題等が出てくるわけでございまして、そのような汚濁物質なりを処理いたします場合には、工場生産設備なり生産品目なり、あるいは立地条件等によりまして、千差万別でございます。もっとも、そこに立地しております企業に適した処理方式というものをそれぞれの企業で考えることが最も妥当であろうかということで、排水のほうの基準のほうを押えておりまして、それに合致するような最適な設備計画の中においてしていただくということになっておりますので、それを機械的に、このようなものであれば、このような物質であればこのような処理設備をつくりなさいということ、そのものが必ずしも一義的に言えるかどうか。かえってそのようなことは、基準を守らせるということに決して有効ではないのではないだろうかというふうに考えておりまして、そのような設備のほうの基準をつくるというような考え方は、現在のところ持っておりません。
  9. 左藤恵

    左藤委員 いま、設備基準というものを、この法律なりそういったところで考えるということは、用意しておられないということでありますけれども、結局、この水質汚濁を防ぐということについての指導を、地方公共団体がその中心になってそういったものをやっていかなければならないという点から考えまして、対策事業費予算と、あるいはまたそういう指導をするための一つ公害防止処理技術と申しますか、というものが、地方公共団体では不十分な点もありますので、そういった点について十分の予算なり技術指導というものを国でやっていただくことを、お願いいたしておきたいと思います。  それから一点、この法律のことについてお伺いしておきたいのは、二十二条の関連でありますが、二十二条には、都道府県知事特定事業場へのいわゆる立ち入り検査権というものを与えることにしております。そして二十三条に、その適用除外と申しますか、鉱山なり電気事業あるいは廃油処理という問題について、特定施設の届け出あるいは計画変更命令、また改善命令というふうな問題につきましては、これは別の法律でやるということで適用除外ということが規定されておるわけでありますけれども立ち入り検査権については適用除外になっていませんので、都道府県知事は、こういった鉱山なり電気事業なり、あるいは廃油処理につきまして、そういう工場立ち入り検査権があるというふうに反対解釈していいと思うわけでありますが、この点について明確にしていただきたいと思います。
  10. 西川喬

    西川政府委員 そのとおりでございます。
  11. 左藤恵

    左藤委員 それでは次の問題に進みまして、こういう公共用水域水質汚濁防止につきまして、どうしてもこの排出規制と並んで、いわゆる公共下水道流域下水道、あるいはまた汚水処理施設だとか廃油処理施設というふうな公害防止施設を十分つくって、それで防止していくということが一つでありますけれども、さらにこの排出規制というふうな問題になじみがたい問題といたしまして、しかし無視することができない大きな要素を占めておるものに、私は家庭汚水排出水というものがあるように思うわけであります。その汚濁発生源が、工場を四といたしますと、家庭からの排出水が六だというふうにもいわれておりまして、これはやはり、この汚水対策につきましての一番大きな問題は、特に人口が過度に集中いたしております都会における下水対策じゃなかろうかというふうに思うわけでございます。五カ年計画では、全国で二十数兆というふうな大きな計画を立てて、今後の対策を考えなければならないというふうなこともいわれておるわけであります。自治省は、こういった下水対策につきまして、特に地方公共団体が大きな負担をしなければならないという点で、何か抜本的な下水対策としての財源措置、これを検討しておられるかどうか、その辺をまず伺いたいと思います。
  12. 佐々木喜久治

    佐々木説明員 御指摘のとおり、環境改善をはかりますために、下水道事業を今後急速に進めていかなければならないということに相なるわけでございますが、現在、建設省におきまして、昭和四十六年度を初年度とする下水道整備五カ年計画の第三次の計画検討されております。これに伴いまして必要な財源措置を講ずることに相なるわけでございますが、国におきましても、私ども建設省に対しまして国庫補助対象範囲を相当拡充してもらいたいという要望をいたしておりますが、同時に私どもといたしましても、その必要な財源といたしましては、主として地方債による建設債券充当ということが考えられるわけでございます。この地方債につきましては、従来の充当方式につきまして現在いろいろ検討いたしておりますが、特に単独事業の分量が多い大都市等につきましては、そうした単独事業も十分に執行し得るような地方債充当方式というものを考えていかなければならないということで、その方向でその地方債の充実というものをはかってまいる所存でございます。なお、その他の建設に要します一般財源措置につきましては、地方交付税等におきます基準財政需要額の算定を通じまして、少なくとも下水道建設財源につきましては十分手当てし得るように措置してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  13. 左藤恵

    左藤委員 努力していただけるということであります。  地域的なことを申し上げるようでありますけれども近畿地方建設局一つの案として発表しておられる問題に、淀川のよごれに対します一つ方策といたしまして、淀川の端に汚水のバイパスというようなものをつくって、それを下流であります大阪市へ入りましてからの長柄というところで処理をして工業用水にしたらどうかという、一つの案が発表されたことがございます。これは私は非常にいい案じゃなかろうかと思うわけでありまして、実際に汚水の九割が京都から流れてきます下水だというふうな点から考えましても、そういった問題について、これは十分検討に値する案じゃなかろうかと思うわけであります。  さらにまたもう一つ、最近大阪、兵庫、こういう阪神間の水資源の問題が非常に問題になっておりまして、これは政府におかれても、またわれわれのほうでも、琵琶湖総合開発という問題が非常に大きな問題として、水資源利用見地から議論されておるわけでありますけれども、そこで特に、この総合開発について今後進められていく上において、これは企画庁においてひとつ検討していただきたい問題といたしまして、湖というのは、自分できれいにする自浄作用というものが、川とかそういったものに比べて、その可能性が非常に少ないわけであります。最近でも合成洗剤の中に含まれておる燐酸ソーダですか、これが湖の中に流れ込みまして、一つの特殊なモが発生して汚濁原因になっておるというふうなことも聞くわけでありますが、これは淀川を経由して下流で飲んでおります大阪の市民の問題というふうな点も考えて、将来の総合開発について、こういった公害が湖で起こらないように、開発される場合に十分の配意をお願いいたしたい。まず建設省のほうにお伺いいたしまして、下水対策としてそういった近畿地方建設局の案はどうであるかの点をお伺いし、さらに企画庁には、そういった琵琶湖総合開発に関する対策というものについてお伺いいたしたいと思うわけであります。
  14. 角田正経

    角田説明員 お答えいたします。  ただいま先生指摘ございました淀川の水路に汚水を入れましてそれを利用していこう。これは一方では淀川の水が、いま先生指摘ございましたように、上水道等取水口下流にございまして、その水質を確保していく意味におきましても、また一方で水資源が非常に少ないということもございまして、そういうふうな角度から検討していこうということでございますが、ただその中に、それ自身が実は水質をよくするというふうな角度からいきますと、流域下水道のほうを整備していただきまして、それの還元水をもう一回使うというふうな考え方も出てくるかと思います。いろんな角度から、私どもも、現在の流域下水道のほうの整備とあわせまして、河川のほうの立場からも何らかのそういうふうな措置検討していこうということで、来年度の調査費を要求いたしまして、いろいろの観点から利用の途につきまして詰めていきたいというふうに考えております。
  15. 西川喬

    西川政府委員 湖沼の問題につきまして、富栄養化という問題、非常に重要な問題になってきております。いま先生がおっしゃいました、家庭洗剤のビルダーといたしましてのトリポリリン酸ソーダでは、これも富栄養化の一つになっているわけでございます。この富栄養化のもととなりますものは窒素と燐、N、Pでございますが、これが非常に大きなウエートを占めております。いずれにいたしましても、窒素は人間のし尿から出るわけでございます。それから燐も、いまのようなあれで人間のからだからも出ますし、また現在、家庭用洗剤の中から相当出てくるというようなことでございまして、いずれも排出規制になじみにくいものでございます。しかもなおかつN、Pというものは、現在、処理技術としても非常に問題がございます。処理技術の開発というものも研究を進めているわけでございますが、いずれにいたしましても、下水道の整備ということが非常に重要な問題になるわけでございます。  琵琶湖につきましては、現在特に富栄養化の傾向が認められます南湖を中心といたしまして、今年度、経済企画庁のほうにおきましても水質調査を実施いたしておるわけでございますけれども、この調査は、来年度以降は新法におきまして、県のほうが上のせ基準というものを策定するときの重要な基礎資料となるだろう、このように考えております。琵琶湖総合開発計画におきましても、水資源開発という観点だけではなしに、水質の保全ということがきわめて重要でございますので、総合開発計画の中の一環といたしまして、琵琶湖周辺の流域下水道の整備というものを、この計画の中に含ませるというような方向で現在検討が進められているところでございます。
  16. 左藤恵

    左藤委員 いまお話のありました点で、十分配意して進めていただきたいと思います。  そこで、これは建設省にお伺いするというよりも、一つ下水につきましての長期ビジョンをお立てになる上で参考にしていただきたいという提案でございますが、個々の市町村でこういった下水処理の終末施設をつくるということでやっておりますけれども、BODが二〇PPMということで、一つ行政目標ですか、これを常に維持するということは、なかなかむずかしいと思います。そういった点から、たとえば臨海の埋め立て地であるとかいったようなところに大々的な一つの終末下水処理場を建設して、そこまでバイパスで汚水を運ぶというふうなことも、ひとつ将来の下水処理の長期計画を立てる上において十分検討していただきたいということを希望申し上げておきたいと思います。  ここで、ひとつ関連質問の希望がございますので、私の質問を中断いたしたいと思います。
  17. 八田貞義

    八田委員長 久保田君。
  18. 久保田円次

    ○久保田委員 同僚議員から下水道の整備その他の問題で御質問があったわけでありますが、下水道に限らず、各工場からの排出物、これは重大な問題でございます。  そこで、私がお伺いしたいのは、最近におきまして、地下水に対しましての汚染でございます。これは地方においても、各公共団体においても、たとえば深井戸あるいは伏流水、こういうような面から水をとっておるわけでありますけれども、この問題について影響が出始めてきておる。家庭の井戸の問題でありますけれども、非常に毒物と称されるものが入ってきて問題を起こしておる。この法律案を見まして、地下水に対しましての歯どめというものが、この法律案においてできるかどうか。あるいはまた、その中で政令あるいはそのほかの規定の問題もございましょうけれども、そういうふうな問題でもって、地下水の問題はこういうことで歯どめをする、こういうふうな点がありましたならば、お聞かせ願いたい。
  19. 西川喬

    西川政府委員 地下水の問題につきましては、法案作成の段階においていろいろ検討したわけでございますけれども、現在の技術のレベルにおきましては、いわゆる地下水の浸透、それが結果として出てきます地下水汚染問題につきまして明確な判断がしがたいということから、いわゆる罰則を伴います基準といたしまして確定するということが、困難な状況でございます。そのような段階から、本法におきましては地下水対策をどのように考えるかということで、一応考え方といたしましては、第五条におきます「設置の届出」、このところにおきまして、「特定施設の使用の方法」、あるいは「特定施設から排出される汚水又は廃液の処理の方法」というところがあるわけでございます。これによりまして、いわゆる地下へ浸透させるおそれがあるような処理施設というようなものにつきましては、この点でチェックいたしたいというふうに考えておるわけでございます。  それからさらに、これは現行法に入っておりませんでしたが、新しい規定でございますが、第十四条の第三項におきまして、一応健康有害物質につきましては、「地下にしみ込むこととならないよう努めなければならない」。一応、現段階におきましては、先ほど申し上げました理由で訓示規定になっておりますが、このようなあれを足がかりといたしまして、将来におきましては規制ができるような方向へ前向きで前進してまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  20. 久保田円次

    ○久保田委員 ただ、問題になりますのは、工場排水というようなものが、はっきり測定されればいいですよ。ところが工場が集中しておって、それから必然的に地下へいつの間にか浸透してきているのですね。そういうふうなものが井戸水の中に流れてきている。問題は、一般住民がこれについて非常に困惑をしておるというふうな点を、はたしてどういうふうにやっていくか。
  21. 西川喬

    西川政府委員 いま申し上げましたように、そういうようなところが非常に問題になったわけであります。実際地下へしみ込んでいってしまう、しかし、それがどのような形でしみ込んでいくのか、いっそれがどのような濃度でしみ込んでいくのか、このような測定をする技術もないわけでございます。はっきり沈でん池等を設けておりますと、その沈でん池の構造等によりまして一応の見当がつくわけでございますが、いま先生がおっしゃいましたような事実は、必ずしもないとは言い切れないと思います。それで、それを結果的に押えますのは、やはり地下水のほうへ出てきたようなところから押えなければ、現在の段階ではほかに方法がないわけでございます。その辺のところが、先ほど申し上げましたように、まだ科学的に解明されていないということで、合後、一応しみ込ませてはならないという訓示規定を設けましたことを足がかりといたしまして、そちらのほうの研究というものを進めてまいりたい、このように考えている次第でございます。
  22. 久保田円次

    ○久保田委員 これは確かにそう思います。  そこで、無過失賠償責任というような問題もいろいろ議論されると思いますけれども、この問題はまた後日の機会に取り上げることにいたしまして、そこで長官にひとつ考え方としてお聞きしたいのですが、われわれ人類が、広域、公共的にそれを甘受しているというような問題は、太陽、それから空気、水——土地という問題もいろいろ議論は出ますけれども、これは次の段階にしまして、こういうふうな基本的な考え方のもとに、この太陽、それから水、空気というようなもの、このものを、あるいは個人、工場企業場でも、いずれもが汚染してはならない、こういう一つの原則とでも申しましょうか、これは打ち立てることができるわけでございますけれども、こういうふうな点に対しましての大臣の所見はどうであるか。
  23. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 われわれが今回、特に公害臨時国会といわれるような臨時国会において、たくさんの公害関係の法案をお出しして御審議をお願いいたしておりますゆえんのものも、ただいまも御指摘がありましたように、公害問題についての意識が非常に大きく変わってまいった。そしていままで局部的に汚濁の問題として取り扱っておりましたが、単に汚濁という以外に、いま御指摘のように、自然における循環作用といいますか、調節作用といいますか、あるいは浄化作用といいますか、そうした能力を越えた汚濁が目についてきた、しかもそれが全国的な広がりを持とうとしておる、こういうふうな観点からとらえないと、もう公害の問題は基本的には片づかない。そういうことで、われわれとしても、そうした自然の循環作用というものが維持できるような状態に再び戻すようにしなければならない。そういうことになりますと、いままでのように、ただ特定のきたないところだけを対象にしておればいいというわけにまいりませんので、指定制度というようなものをやめて、全国的に対象を広げていく。製造工業だけでなく、第一次産業、第二次産業にもさらに広げていく。こういうようなことで、いままでは工場のわきに通っておったところの川なり海なりというものは、そこはいわば自然の捨て場である、その工場企業に与えられておった当然のはけ場である、こういうような考えがどっちかというと強かったのが、そうじゃない、そういうところもこれは汚濁してはいけないのだ、こういうように大きく考え方が変わってまいり、したがいまして、一律排水基準というような、いわゆるシビルミニマムと称するような制度を設定いたしまして、そしていままでは、場所によってはいいのだというのが、そうじゃない、一応全部いけないのだ、こういう体制を確立し、そしてそうしたシビルミニマムに違反する場合においても、これは罰則がかかるんだ、こういう非常にきびしい体制を打ち立てるという方向に向かったようなわけでありますからして、いま御指摘の点は、われわれも全くそのように考えておる次第であります。
  24. 久保田円次

    ○久保田委員 そこで、この法律案において「公共用水域とは」という定義を設けているわけですが、この点について、こういうふうな「河川、湖沼、港湾、沿岸海域その他公共の用に供される水域及びこれに接続する公共溝渠、かんがい用水路その他公共の用に供される水路」云々としてあるわけでございますけれども、先ほど私が申し上げました水という問題を基本的に考えたときに、これはやはり、「公共用水域」というふうに一つ限定をしてやらずに、公共用水として地下水も何もみんなこれは含まれるのだ、こういうところでもってやはり立法措置のその基本的な考え方は盛っておく必要があるのじゃないか。将来やはりそんなぐあいに必ずなってくるような感じが私はありますので、その点の所見をひとつ聞かせてもらいたい。
  25. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 われわれも、もちろん御指摘のような点につきましても、できるだけ規制対象になるような方向でもって進めてまいりたいと思います。ただ、先ほど政府委員からも説明がございましたように、いわゆる有害物質と称せられるところの微量重金属というものが、昔から天然にどの地方の土壌にも入っておった。そういう昔から含んでおるものもございまして、それと、今度は汚濁水によって入ってきたものとの分け合いをどういうふうなところに基準を設けるかとか、健康に、あるいは全体の環境にどの程度のものを一体規制程度として設定したらいいかというような、どうもまだ科学的な基準がございません。それと同時に、またいかなる汚水がいかなる地域へ流された場合に、それがどういうメカニズムを経てどういうところに因果関係として出てくるかというような点も不十分である。そのために、今回のように罰則を伴う規制ということになりますと、よほどその点、基準を明確にしておかなければならないという別の法律的な立場がございます。そういうところから、もう少しわれわれもデータを収集しなければ、直罰の対象にするというところまでなかなか踏み切れない。そういうようなところから、一応いわゆる有害物質を含んでおるところの水を地下に流してはいけないという規定は設けましたけれども規制対象としない、こういうところでもって一応のめどにしたわけでございますけれども、なお今後われわれとしましてもできるだけこの方面の研究を進めまして、そしてこの規制対象になり得るように、そういう方向でもって進めていきたい、こういうふうに考えています。
  26. 久保田円次

    ○久保田委員 私はこの法案を見まして、この定義のところで地下水というような問題が浮かび上がりましたので質問をしたわけでございますけれども、水は公共用水であるという全体的な考え方から、思想はそういうふうな考え方のもとに立法措置をすると、この地下水という問題も公共用水に入るんだというところにいけば、この定義の疑問というものがないわけでございますけれども、あまりにも「公共用水域」というぐあいにここで定義づけましたので、あえて御質問申し上げた次第でございます。
  27. 左藤恵

    左藤委員 引き続いてもう一、二点お伺いいたしたいと思いますが、この汚水の問題といたしまして、特に人の健康にかかわる環境基準の問題として心配な問題は、シアンだとか、そういったメッキの工場から出てまいります重金属による環境基準の侵害という問題が、一番大きいと思うわけであります。こういったメッキ工場というのは、一般に非常に零細企業が多い。弱電の部門がわりあいにそういったものをよく使うわけでありますが、そういうメーカーの下請あるいは孫請というふうな工場が、そういった非常に危険な重金属をたくさん使っておるという実態があるわけであります。そこで、そういった企業がこの法律に基づいて公害の防止のために必要な施設をやろうと思えば、一つで千五百万から二千万近くかかるというふうなこともいわれておりますし、さらにまた、カドミウムのようなもののメッキの場合には、それを沈でんさせるために溶剤を入れるというふうなことで、一トンについて一万円かかるとかいうふうなこともいわれておりまして、そういった実際の運営費というものも相当かかるわけであります。  こういう点から考えまして、一つには、私はやはり、将来のいろいろなメッキの工場の運営の問題から、ノンシアンのメッキのしかたを技術的に開発する必要があろうかとも思います。さらにまた、そういった零細企業でありますので、公害防止施設をつくることもなかなかむずかしいと思います。そうした場合に、協業化といいますか、幾つかの工場が一体となりまして工場団地に団地化するという問題、そういったことでいわゆるこまかい指導がいろいろな面で必要だと思います。シアンを使わないでニッケルメッキしますと、加工賃が三倍もかかるという問題もありますので、そういうものを使う防衛庁なり電電公社とかいうところの使用者の面でも、考えてもらわなければならない問題があろうかと思います。  そういった点について、一つ中小企業に対する金融対策をどのように考えておられるか。あるいは現在のメッキ工場が今後どういう変わり方をするであろうと見込んでおられるかといった点について、通産省あるいは中小企業庁のお考えを伺いたいと思います。
  28. 本田早苗

    ○本田政府委員 お答えいたします。  専業の電気メッキの業者数は、大体二千四百社程度ございまして、そのうち個人あるいは資本金が五百万円以下というものが約九〇%ございます。また、従業員が十九人以下というもので見ますと九九・三%ということで、御指摘のように、ほとんどが小規模の零細メッキ業者であるということが言えると存じます。それから、ちょっとお触れになりましたカドミの排水規制が、この八月一日から適用になるということになりまして、これに伴いまして、カドミウムメッキ業者が今後の排水規制を守ることができるかどうかという問題が出てまいっております。昭和四十二年には、二千四百ほどある専業メッキ業者の中で二百十五がカドミメッキをしておったという状況でございますが、先般実態調査をいたしましたら、百十八に減っております。先般のカドミ排水の状況で〇・一PPM以上出しておるという事態から、今後この排水規制にたえ得るかどうかという問題を検討いたしておりますが、百十八のカドミメッキ業者のほとんどが他のメッキに転換をしたい、こういうふうに言っておる次第でございます。  それから、ノンシアンのメッキの技術開発の問題でございますが、昭和四十二年以降、大学の研究室あるいは関係の試験研究機関において研究をしていただいておりまして、銅メッキにつきましては、ピロ燐酸銅を使用するとシアン銅を使用した場合と同様のメッキができそうになってまいりまして、銅メッキのノンシアン化は進歩しつつあります。それから亜鉛メッキにつきましてのノンシアン化のほうは、大体、実験段階が終わりまして一部で実用化に若手をするという状況になっておりまして、したがいまして、最近のシアンの使用量は、二割方減ってまいっております。四十六年度におきましては、中小企業庁のほうで、愛知県の工業指導所のほうの共同研究に対しまして補助を出していただくようにお願いをいたしておる次第でございます。  それから、カドミメッキにつきましては、特に御指摘のような団地化、集団化等を行なわなければ、PH調整が非常にむずかしい。また、御指摘のように、処理施設にかなり金額のかかる設備をせざるを得ないということでございますので、親企業の資金、技術援助のもとに集中的に生産できるような体制ぶ必要であるというふうに思う次第でございます。
  29. 吉光久

    ○吉光政府委員 御指摘いただきましたように、小規模事業者は、何と申しましても金融調達力でございますとか、あるいは技術開発力等で劣っております。したがいまして、これらの劣っておる不利を国が積極的に補整してやるというふうな体制が、必要であろうかと思うわけでございます。業態によりましていろいろと防止態様も変わってまいると思いますけれども、特に小規模事業者の場合におきましては、現に事業の集団化その他を通じながら共同して公害防止施設を進めるというふうな動きも相当出てまいっておりますし、現実に実績もございます。また、メッキ業界におきましても、具体的な計画が現に提出されつつあるという状況でございます。したがいまして、こういう高度化事業の関係につきましては、特に中小企業振興事業団の高度化資金を最大限に活用いたしまして、共同公害防止施設の設置等につきましての援助体制を整えてまいりたいと考えております。  それから、御指摘ございました技術開発力のほうの問題でございますけれども、これも、企業のほうで開発するということは非常にむずかしい問題でございまして、いまも鉱山石炭局長のほうからお答えありましたように、国あるいは公立の試験所等に対しまして、公害防止の技術の開発に積極的な予算的援助の措置を講じてまいりたい、このように考えております。
  30. 左藤恵

    左藤委員 特に零細企業中小企業に対しまする御配慮をお願いいたしたいと思います。  最後に、時間がございませんので、ほかにもまだお伺いしたいこともございますが、経企庁の長官にお伺いしたいと思います。  この法案そのものが、非常に倉皇の間のと申しますか、早々の間と申しますか、非常に忙しい間につくられた法律案でありますし、さらにまた、今日科学の進歩というものがどんどん進んでおる、いろいろな技術的な開発も進んでおるという点等も考え合わせ、さらにまたこの公害そのものも非常に急テンポで広がっておるという実態から考えまして、この法律を施行することによって、それで終わりとしないで、今後とも十分さらに規制を強化していくというふうなことについて御配慮を賜わることをお願いいたしたいと思いますが、その点についてのお考えをお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  31. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 一つは、法律制度を非常に拡充いたしましたけれども、問題は実行の問題がございます。そして常時監視測定というような体制の確立をどう進めるかということも、重要な問題でございます。それからまた、いろいろ御議論のありました地下水問題等も、さらに今後規制を進めていかなければならないという問題もあります。いろいろと今後まだわれわれが精力的に進めていかなければならない問題がたくさんあると思います。法律ができたからそれでよいということでは決してないのでありまして、問題は、汚濁をいかに防止し、さらに過去に汚濁せられたものをいかに清浄化していくか、こういう課題でございます。したがいまして、先ほどから御議論のありましたように、下水道の普及等についてもさらに一そうの促進をはからなければなりませんし、立地規制の問題も、さらにわれわれとして考えなければなりません。この法律案一本で汚濁防止が完全にできるということでなくて、全体としての環境汚染防止の政策を今後さらに政府として進めてまいらなければならない、こういう気持ちでおります。
  32. 左藤恵

    左藤委員 ありがとうございました。
  33. 八田貞義

    八田委員長 中村重光君。
  34. 中村重光

    ○中村(重)委員 若干お尋ねをしてみたいと思うのですが、ちょうどいまこの法律案の取り扱いと申しますか、修正点について野党の間で打ち合わせ会をやっておりました。したがって、いま行なわれました質疑を実は伺っていなかったわけですので、多分に重複するような点もあろうかと思いますけれども、まず経済企画庁長官にお尋ねをいたします。  この水質汚濁防止法の「目的」、第一条、これは工場とか事業場から公共用水域排出される水の規制にとどまっている。そこで、国民の健康保護、それから生活環境の保全というのも「目的」の中にあるわけですから、その場合、工場排出水だけではなく、自然の浄化能力と申しますか、そうしたおそれのある有毒物質の製造であるとか、あるいは加工であるとか、それから販売あるいは使用するという場合に、その処理能力が可能だというように判断されるもののみに限るというように規制措置を講ずるべきではなかったかと思うのですが、その点、長官いかがでございましょうか。
  35. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 ちょっと私、御質問の御趣旨を完全にとらえてないかもしれませんが、もちろん自然を汚濁するものは、ここに規定しておるものだけではございません。そういう意味におきましては、海洋投棄を防ぐ意味の海洋汚染の防止の問題もごいますし、それから一般に廃棄物についての廃棄物処理の問題もございます。それから、先ほどからも議論になっておりましたが、たとえば地下水の問題をさらに科学的に究明を進めて、そしてこれを規制対象に加えるようにやっていかなければならぬ。いろいろとそうした問題があろうと思います。これらはわれわれとして、さらにその政策の充実をはかっていかなければならないところであります。
  36. 中村重光

    ○中村(重)委員 私の質問と若干違ったお答えになったのですが、これから中身についてお尋ねをしてまいりますから、その際伺うことにいたしましょう。  そこで、排水規制をしましても、これがなかなか守られない。そこで、通産当局としても、工場等の公害を出さないための設備規制ということで相当行政指導をやっている。ところが、河川であるとか港湾の水は、非常によごれている。これは現実の問題であろうと思うわけです。そうした点にかんがみて、今度、本法案の十五条、これは「監視」という条文になっているわけです。それから十六条の「測定」。この監視、測定というものがほんとうに実効あがるものにならなければならぬと私は思うのです。そこで、具体的な点に対しての構想というものがあろうと思うのですが、この際それを明らかにしていただきたいと思います。
  37. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 お答え申し上げます。監視測定の問題でございますが、これは現行法のもとにおきましても、経済企画庁の調査委託費あるいは府県の単独の経費、さらに関係省で行なう調査費というような形で、統一は十分とれておりませんでしたけれども、ある程度やっておりました。今度の法律によりましてこういった監視、測定の規定を設けまして、しかもその測定計画というのを都道府県知事のところでつくらせる、そこに集中をいたす、こういうことにいたしましたので、こういう形で今後運営してまいるわけでありますが、これにつきましては、いま現に指定水域になっておるところ、また当然規制が行なわれているところにつきましては、従来もやっておりましたが、この法律によりましてさらに強化をしていく、こういうことになると思いますし、さらに都道府県知事がごらんになって上のせ基準等をつくって特別に規制をしようというようなところについても、これは監視、測定が行なわれていく。さらに一般の水域についての測定もある程度行なっていただく、こういうことを規定いたしております。来年度の問題といたしましては、大体百四十くらいの水域が問題ではないか、こういうことをわれわれ事務的には考えておりますが、これにつきましては、国庫の補助をつけることによりまして、監視、測定の万全を期していきたいと思っておる次第でございます。
  38. 中村重光

    ○中村(重)委員 この測定の義務というのは、工場事業場自体にも負わせることになりますか。
  39. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 法案十四条にその規定がございます。要するに工場事業場等であって「排出水排出する者は、総理府令、通商産業省令で定めるところにより、当該排出水汚染状態を測定し、その結果を記録しておかなければならない。」という義務をここに明示しております。現実には、この法律の運用によりまして、そういった工場につきまして、測定器をつける、あるいはその記録をつけておかす、こういうやり方をしてまいりたいと思っております。
  40. 中村重光

    ○中村(重)委員 いま、工場事業場等についても、これを記録するためには測定器をつけなければならない、こういうことですが、当然やらなければならないことだ。同時にまた、やるためには、中小企業等の対策についてあとでお尋ねをいたしますけれども、当然、助成というものも考えられなければならない。同時に、そうした工場事業場等に対して測定器をつけさせるということになってまいりますと、また、この十五条によるところの「常時監視」をする場合、そうした百四十ですか、その水域を、だれか監視員がいて黙って見ておるというわけでもないでしょう。何か自動測定器といったようなものをつけて、絶えず水質の変化の状態を見るとか、いろいろな具体的な監視、測定の方法というものが考えられなければならぬと思うのですが、そこらはもう少し具体的に自動測定器等の計画はないのかどうか。  それから、いま国庫補助を来年度の予算に要求しておるというお答えでございましたが、その国庫補助というのは、都道府県に対するところの補助という形で交付されようとしていくのか。また、そのことが、工場事業場等に対するところの自動測定器等々の設置の助成という形にもつながってくるのかどうか、そこらあたりはいかがでしょう。
  41. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 現在、測定をやっております方法は、御承知のように、測定点を定めまして、その測定点におきまして、月に何回とか、あるいはひんぱんにやる場合には一日に何回という、この計画に基づいた時間的なスケジュールをきめまして、採水をいたしましてこれを分析する、こういうやり方をとっております。これでは非常に人手もかかりますし、なかなか能率もあがらないということで、自動測定器をひとつ開発しなければならぬということが問題になっております。現にそういったものの開発もある程度進みまして、幾つかの種類のものができておるようでございます。経済企画庁といたしましても、来年度、これはややテスト的でございますが、ある程度の数のものを都道府県に補助をすることでこれを試験的に使わせることにしてはどうかということで、これも予算要求をしておるところでございます。建設省のほうでも、その辺についての開発にいろいろ御努力をいただいておるようでありますので、将来はこういった自動測定装置にだんだん切りかえられる、こういうふうに考えております。  それから、事業場等の測定をいたす場合の問題でございますが、この法律を守るために、いろいろの除害施設あるいは処理施設等をつくること、これは相当多額の金を要しますので、こういったものについては、現在融資の道もございますし、税制上の措置等もあるわけでございますが、私ども一般的に見まして、工場において排出口の測定をするということについてまで特に国庫から補助をするという必要は、いまのところないのではないか、こういうふうに考えております。もちろん、非常に零細なものについてまでこの測定器を課するかどうか、この辺は具体的な措置をきめる段階で、あまり零細なものもそこまでいくかどうかということは、もう少し検討したいと思っておりますが、いずれにしても、これについての特に援助をするということまでは考えておらないわけでございます。
  42. 中村重光

    ○中村(重)委員 「排出水に含まれる有害物質の量について、有害物質の横額ごとに定める許容限度とし」ということがあるわけですが、たいへん初歩的な質問になるわけですけれども、許容限度の定義というもの、それから算定の根拠というのは、どういうものでしょうか。長官いかがですか。
  43. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 いわゆる特定有害物質についての許容限度という問題でございますが、これは現在の水質基準においてきめておるものと同様の考え方でございます。要するに、たとえばシアンでありますれば、これは何PPM、こういうことを個々の水域ごとに、あるいは全国的にほとんど同じ数値を使っておりますが、現実に水質基準としてきめております。カドミウムは何PPMというようなことで、成分として含まれておる割合をもってきめていくつもりでございます。
  44. 中村重光

    ○中村(重)委員 そうすると、科学的根拠ということになりましょうか、いま現在の水質基準で定められておるところによった、こういうことですが、それから、シアンにしてもカドミウムにしてもそうなんですが、BODなんかは何PPMということに、環境基準にしても、排出基準にしても、きめられているわけですが、これが科学的根拠という形になりましょうか。
  45. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 この点は昨日もお答えを申しておるわけでございますが、要するに、いわゆる排水基準というものをきめますのは、第一条にいいます人の健康あるいは生活環境を保全するという目的を達するためにやるわけでございます。現実の運用といたしましては、御承知のとおり、環境基準というものを前提としてきめますが、その際に、たとえばカドミウムでありますと、人の健康にかかわる環境基準としては〇・〇一PPM以下でなければならないということがきめられておりますが、   〔委員長退席、橋口委員長代理着席〕 これは人の健康ということから、疫学的に見ましてどの程度までならばだいじょうぶか、それに若干の安全性を見てこの基準がきまっておるわけでございます。この環境基準が守れるというようなことで排水基準をきめるとすればどうなるか。大体一般的には十倍ぐらいの希釈があるようでございますので、この環境基準値の十倍ぐらいのところを排水基準としてきめておるのが通常でございますが、これはしかし場合によっては水域の事情によってもう少しきびしくしなければならない場合もございますが、そういう関係でそれぞれきめるわけでございます。そういう形でございますので、根拠はあると言っていいのではないかと思います。
  46. 中村重光

    ○中村(重)委員 私がこの許容限度ということについてなぜにお尋ねをするかといいますと、両大臣も御承知だと思いますが、例のお米に対してカドミウムが検出をされたわけですね。初め厚生省が、これは農林省と話し合いをしてのことであると思うのですけれども、〇・四PPM以上は有害であるから、こういうことが公表されておったわけですよ。ところがあとで、玄米で一PPM以上、これは人体に影響があるけれどもそれ以下はよろしいのだということになった。それで学者は、どうも厚生省なり両省の算定というのは科学的でない。小林教授なんかは特に、これを中心にいたしまして、相当政府の決定に対する批判というものをなされたわけです。ところが、お米が余っているから国民感情としてというような、何とか理由づけはいたしておりましたけれども、一PPM以下は食管会計から買い上げはするけれども、〇・四PPM以下でなければ配給はしないという決定をしたわけですね。どうも許容限度というものに対する疑問というのか、非常に不見識だ。そこから実は不安というものが出てきた。だから私は、どうもこの許容限度というのは、科学的な根拠というものが実はあるのではなくて——この場合、この水質汚濁防止法の中で、私をして指摘させていただきますならば、ここでいう許容限度というものは、その意味するものは、工場事業場に対して事業活動を続けさせるためにはこの程度はやむを得ないのだという、いわゆる妥協の基準値だというように判断すべきではないかという感じがするわけです。したがって、その許容限度というようなものに対して、ほんとうに確固たる科学的根拠というものからこれを定めておるのだという確信あるお答えがはたして出てくるのかどうか、この点、非常に不安であるわけですから、私が申し上げたように、そうした妥協の基準値ではないのだという確信あるお答えが出てまいりますならば納得もいたしますけれども、どうもその許容限度というものがあやしいというような私は感じがいたします。この点はひとつ両大臣から、非常に重大な問題点でもありましょうし、単に杞憂であるとするならば、国民のこの不安を一掃していただいたほうがよろしいだろう、こう思うのです。私はこの委員会でも、長崎県諌早の泉水海でとれましたノリにカドミウムが検出されたという問題に対して、生産者も消費者も非常に不安に思っているのだから、この程度は人体に影響ないのだということを明確に関係大臣から公表してもらいたいという要求をいたしましたが、今日に至るまでそれがなされていないという点等々があるわけですから、そうした許容限度ということについて、いま少しく明確なお答えをこの際伺っておきたいと思います。
  47. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 いろいろな経緯等もございまして、いまのような御疑問が出るのかもしれません。率直に言いまして、公害の問題が最近大きく取り上げられ、そしてまた学者によって説をなす者も確かにございますし、そういうことでしばしば最近までに行き違いのあったことも事実でありますけれども政府といたしましては、水質審議会をはじめといたしまして、各方面の専門家というものを重用し、そして現在として知見し得る限りにおいては、やはり最も権威のあるものをもって水準をきめておるわけでございます。もちろん中には、特に最近における地方大学の先生方などで、いろいろとそれについて異論を出したりされておる面もあります。そうした面はもちろん十分に検討しながら、しかし全体として議論を尽くした上で、どれが現在としては間違いのない基準である、こういうものを設定することにしておるのでありまして、企業側が、それはつらいからもう少しゆるめてくれ、こういうような気持ちで基準を設定しておることは絶対にございません。
  48. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 国民の健康、生命を守るということが第一でありますから、それに差しつかえない限度というものを許容限度としてきめておるわけでありまして、企業のほうがつらかろうがどうであろうが、それは第二のことであろうと思います。
  49. 中村重光

    ○中村(重)委員 公害発生源となるところの各種工場とか事業場のうち、立地計画、それから進出する企業に対する地元住民や漁業者の意見というものが、私は尊重されなければならぬと思うのです。したがって、そうした立地計画をお立てになる場合、あるいは工場の進出といったような場合、公害問題というものを重視される以上は、やはり公聴会等を開かれる必要があるのではないか。そうしたことを法制化する御意思はないかどうか。法制化までいかないとするなら、どのような行政指導をなさろうとお考えになっていらっしゃるのか。  私は当委員会で、先般、長崎港の問題について、例の埋め立て、締め切りでございますね。それをお尋ねしました際に、長官も、これは七年も八年も前の調査であったので、その点は不十分であったということをお認めになったのでありますが、これらのことを考えてみましても、これは締め切ったために公害源はふえ、今度は潮流は全く停滞してしまうのですよ。住民はたいへんな不安にさらされるわけですよ。それらのことを考えると、私は、公聴会くらい開く、そうしたことの法制化が必要であると思います。この際ひとつ御見解を承っておきたいと思います。
  50. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 水質の問題は、公害の中でも特に関係方面が広く、その関係も錯雑しておるわけでございます。そういう意味で、今般も特にほかの公害と分けまして、地方水質審議会というものを設けるようにしたようなわけでございます。そうしてその構成には、もちろん、いま御指摘になった地域住民の代表、あるいはまた水産関係の代表、こうした者も当然含まれてしかるべきものでございます。また、そうしたことでできるだけ各方面の衆知を集めますとともに、今回は、御存じのように、いわば地域住民の代表ともいうべき府県知事がこの行政の大部分を統括いたしまして、そうしてその判断によって実行されるわけでございます。その知事が実際の基準その他をきめて行政を行なうにあたりまして、いま御指摘になったような観点がございますれば、それはこの地方においてそうした措置を十分とり得る余地があるわけでございます。それぞれの地域の実情にもよることと思いますが、地域住民の意思を反映するようにするという意味におきましても、今回の、知事がこうした方面の行政の総括的な責任を持つという姿勢は、それにこたえ得るに十分であろうと考えておるわけであります。
  51. 中村重光

    ○中村(重)委員 そうした立地計画等は、国土総合開発の立場から、経済企画庁長官が十分関心をもって対処してもらわなければならないことでありましょうし、また、工場事業場等のそうした設置に対する担当大臣であられる宮澤通産大臣は、特に関心をもって対処していただかなければなりませんが、いまお答えになりましたことでは、一応の考えはわかるのですけれども、望ましい姿として私が申しました、公聴会を制度化するということ、これに対する考え方を、この際いま少しくはっきりさせていただきたい。  それから、今回、都道府県知事権限委譲という形になったので、都道府県知事が、そこはこの法律の目的達成のために十分対処してくれるであろう、地域住民の意向を尊重してくれるであろうというお答えではございますけれども、やはり政府としてどのような行政指導をするのか。公聴会というものを制度化するということがいま直ちにできないならば、それでは住民の意思を尊重するためにどのようなことをやることが望ましいのか、この際いま少しくはっきりお答えをいただきたいと思います。
  52. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 今般、国でいままでやっておりましたものを地方団体にまかせることになりましたけれども、それにつきましては、やはり自治体という立場というものを非常に重視をいたしております。一面において、各地方自治体がばらばらであってはならない、もう少し経済企画庁なり中央の各省がこれについて調整的なコントロールをきかすべきじゃないか、こういうことの意見もずいぶんありました。しかし、それらもやはり結局、地方自治の本旨にかんがみて、できるだけ国のほうでそういう制約は加えないということにいたしたわけでございます。これの審議につきましては、地域住民の代表であり、また地域住民の意思によって選出されたところの知事が、自由な判断のもとにおいて行政を十分なし得るように、私はこれがやはり大事であろうと思います。  そういう意味において、あまりかれこれと、地方自治体の長がやることにつきまして、この法律では具体的なことを指示しておりません。むしろ逆に今度は、同時に先ほど中村さんから御指摘がありましたような、公共事業関係なんかで国がなし得るようなものにおいて、自治体のほうから注文つけることができるようにということで、あの「要請」という規定も特に入れました。国と自治体の関係というのは憲法上も微妙なことでございます。一方が他方を命令をするというような関係にはないわけでございますからして、そういう意味におきまして、歯切れが悪いですが、一方において「要請」というようなことばも出てくる、そして一方において「勧告」ということばも出てくる、こういうようなことでございますが、その限度にとどめまして、そして、できるだけ自由な判断のもとにこの行政を進めていってもらう、こういうつもりでございます。もし何か全国的に一切統一しなければ非常に困るというようなことが起こりまして、しかも、それが国の事務として法律に規定することが適当なものがありますれば別でございますけれども、いま言ったような点は、各知事の判断によって十分行ない得ることである、こういうふうに考えております。
  53. 中村重光

    ○中村(重)委員 都道府県、いわゆる地方自治体を尊重する、その考え方はよろしいと私は思うのですよ。しかし、この法律案の全体を見てみましても、経済企画庁長官に対するところの通知義務であるとか、いろいろな制約があるわけですよ。して見ると、住民の意思を尊重しなければならないのだ、これは最高に配慮してもらいたいというお考え方があるならば、この際こうあることが望ましいというような御意思くらいは表明されてしかるべきではないかと私は思います。住民の意思を尊重する方法として公聴会等開催することが望ましいというふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  54. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 これは、ものにもより、ケースにもよると思います。しかし、住民の意思を十分に尊重しなければならない、これは法律の運営上当然のことでございます。したがって、そうした判断に立って地方知事が行政運営をしてもらえるものと政府としては十分に期待しております。
  55. 中村重光

    ○中村(重)委員 通産大臣、いかがでございますか。工場の誘致の問題等々、これは地方自治体の発展のためには必要であるということは言うまでもありません。そのことが公害を発生させて、地域住民の健康や生命を非常に脅かす、あるいは環境を破壊するといったような事態が起こってくるわけでありますから、したがって住民の意思を十分尊重しながら対処をしていくということにならなければなりません。やはりそうした工場事業場等の生産関係の担当大臣として、私がただいまお尋ねをいたしましたことに対して、調和といったような面等々からお考えになりましても、どのような見解を持っていらっしゃいましょうか。
  56. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私ども工場排水法の適用のあります工場につきましては、従来、毎年排水関係の点検をいたしてまいりたわけでございますけれども、最近は、パルプなどで従来ですと工場排水法の適用のない地域においても相当問題を起こすに至りましたから、これは、それらの工場の責任者を呼びまして、一応行政上の点検をし、また改善勧告したりしております。それから、直接健康に響きますシアン等々につきましては、これは適用あるなしにかかわらず、私どもで点検をしておるわけでございます。それが常時のことでございますが、仕組みといたしましては、御承知のように都道府県各県がほぼ公害担当の部局を設けました。私ども通産省としましては、地方通産局に公害相談室、いわゆる苦情を持ち込んでもらうところを設けておりまして、直接なり、あるいは遠い方は市町村を通じてなり、そこへ問題を持ち込んでもらう。それによって私ども発見の端緒をつかむこともまたしばしばあるわけでございまして、そういう形で、できるだけ地方の方々の考えなり、あるいは苦情なりを行政の上にくみ取っていきたい。そういう努力をいたしておるわけでございます。
  57. 中村重光

    ○中村(重)委員 お答えはきわめて不十分で私は不満です。またあとでお尋ねをすることにいたします。  この十四条に、排水汚染状態に対する措置というのがあるわけですが、これはきわめて重要な条文だと思います。しかしながら、昨日同僚岡田委員から指摘がありましたように、これは訓示規定であるということは、私は、重要な条文であるにかかわらず不十分であるというように考えているわけです。特に十四条三項にありますところの「有害物質を含む汚水等が地下にしみ込むこととならないよう努めなければならない。」、これが実際問題として御承知になっておられるならば、このような訓示規定にならなかったのではないか。  実ば当委員会から長崎県諌早市の勝川クローム工場公害調査に私が団長ということで参りました。当委員会に報告もいたしたところでございましたが、この勝川クローム工場の有毒性の排水のために農作物はもちろん減収になってしまいました。それだけではなくて水源地が一つだめになったのです。井戸水は言うまでもないわけです。そこで勝川工場は、自分のほうはその公害源ではない、加害者ではないということを盛んに言っておったわけですが、最終的には、通産省の指導等もありまして、この問題は解決をいたしまして、勝川クローム工場が諌早市あるいは住民の要求額の半分程度を出しまして解決したという事例があるわけです。私ども行って見たのですが、廃液を流すところが素掘りになっておるのですよ。意識的に地下に浸透さしているわけですね。それがもう長い間続いたわけです。したがってそうした公害が出るのは当然のことなんです。この法律案によりますと、特殊施設に対するところの、これでは届け出制になっておりますが、いろいろな規制措置というものが考えられている。要するに、届け出をしてから六十日の期間その届け出の内容を十分に調査をして、それがよろしいということになればこの設置を認めてやろう。ところが、適当でないとすれば改善命令を出すというような配慮があるということは、私は承知をいたしております。その努力のあとというものは考えられますけれども、ところが、それではそのあとにどうするのかということになってくると、またそのような非良心的なことをやらないという保障はない。十分それで調査監督なんということができるのか。ところが、通産局にいたしましても、あるいは都道府県の陣容からいたしましても、なかなかそれができないというような事態がこの後起こってくるであろう。したがってこれは、訓示規定ではなくて、当然、命令規定にして罰則対象とするということでなければならぬと私は思います。どうしてこれを訓示規定にされたのか、この際いま一度この問題についてお答えをいただいておきたいと思います。
  58. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 確かに、この十四条三項で規定しました地下水の問題は、水質汚濁の問題としてはやはり重要な部分でございます。公共用水域排出するかわり地下にどんどん入れられてしまったならば、ざるになってしまうわけでございますから、何とかしてわれわれとしても、このところをきちっりした規定で書きたいということは考えておったわけであります。しかし何ぶんにも、罰則で担保するような規定で書くということになりますと、地下水にどのような濃度のものをどの程度の量で入れた場合に、地下の伏流水なり、あるいはその近辺の農地とか用水池等にどの程度の影響が出るのかということが、科学的に十分明らかにされませんと、基準のきめようがいまのところできないわけでございます。その辺のところが非常にあいまいなままで罰則までつけるということがどうもむずかしい、こういうこともございまして、このような形で一応今回の法律をまとめたわけでございます。  ただいま御指摘のように、具体的な事例も全国で若干ずつ出てまいっております。こういうものについては、強力な行政指導をこの条項によってやっていただきたいわけでありますが、そういったある程度の実績の積み上げによりまして、さらにまた科学的な知見がだんだん積み上がってくるというようなことを通じまして、基準等がきめられるまでのデータを持つようになりましたならば、将来われわれは、これはひとつぜひもっとしっかりした規定にかえたい、こういうふうに考えておるわけでございます。現段階としては、どうもそこまでのことができないということで、このようなことにした次第でございます。御了承を願いたいと思います。
  59. 中村重光

    ○中村(重)委員 将来に対して十分な条文にこれを直したいということはわかりましたけれども、私は十四条三項にある「排出水排出する者は、有害物質を含む汚水等(これを処理したものを含む。)が地下にしみ込むこととならないよう努めなければならない。」、こう書くのを、「排出水排出する者は、有害物質を含む汚水を地下にしみ込ませてはならない」とどうして書けなかったのでしょうか。そうむずかしいことじゃないでしょう。これは当然でしょう。いかがですか。
  60. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 法律上の表現としてどう書くかということは、これはそのほうの専門の法制局等の御意見できめていただいたわけでございますが、実体問題として、ここに条項を設けまして罰則で担保をするということが、現段階ではそこまでのことがむずかしい、こういうことでございますので、ここに訓示規定という形にいたしたわけでございます。その表現として「努めなければならない。」というふうにいたしましたのは、その二項もそうでございますが、訓示規定であるということでこういう書き方が妥当である、こういう御判断で私どもそれに従っておるわけでございます。
  61. 中村重光

    ○中村(重)委員 この第五条の「特定施設の設置の届出」というのには、いまたいへんに災害を起こしておる採石場を含みますか。
  62. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 特定施設政令で定めることになりますが、採石場はこれに入ることになると考えております。
  63. 中村重光

    ○中村(重)委員 通産大臣にお尋ねいたしますが、政令で定める採石場はこれに入ることになる。ところがいま採石場は届け出制ですよ。ただ火薬を使うときだけ火薬取締法によってそれの許可を受けなければならぬというだけなのだ。したがって採石場もどこにもできる。河川の川上につくって、そして土砂の防止施設も何も要らない。どんどんどんどん土砂が流れる、そしてその川がそれで埋まってしまって、水があふれて水害を起こすという事態がある。それから設備も不十分ですから、事故を起こして、そして死亡事故なんというものがひんぴんとして起こってきているのです。例の砂利採取法というのは許可制に実はなっているわけですね。その際、なぜにこの採石に対しては届け出制というのを許可制にしないのか。具体的な事故の起こった事例を私は引用して考え方をただしてまいりましたが、そういう趣旨に沿って対処するというお答えがあった。ところがもうその後数年間ほったらかしだ。ところが新聞を見ても、御承知のように、最近、何か事故ということになると、採石場の事故というものが、これはオーバーな表現かもしれませんが、一番多いぐらいに事故が多いんですよ。それで、今回の水質汚濁法律案の中では、政令の中に特定施設として入れるんだということになっている。ところが採石法の中には、これは届け出制としてそのままになっているんですね。これは矛盾だと私は思うのですよ。これをこの後どうしようというふうにお考えになっていらっしゃるのか、ひとつこの際はっきりしておいていただきたいと思います。
  64. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 採石場の特定施設はこれに含まれるわけでありまして、水との関係ではSSというのだそうでございますが、おそらくサスペンデッドソリッドと言うと思います。懸濁物質というのだぞうでございますが、そういうものとの関連がございますから、この特定施設に入れて、それで届け出をさせる、こういうふうに考えております。
  65. 中村重光

    ○中村(重)委員 これはわかるんです。それはもう、特定施設として政令でこの中に入れることは、私はよろしいと思います。そうならなければならぬと思っているのです。ところが採石法に対して、それをいまのように届け出制にするのか、これは許可制に改めるのか、その点いかがですか。
  66. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは、ほかのことにつきましても申せるわけでございますが、その点は届け出制をもって足りると考えております。
  67. 中村重光

    ○中村(重)委員 どうも私は、前に私がお尋ねをしたときと——その当時宮澤通産大臣じゃなかったのですが、後退をしたいまのお答えでは非常に問題だと思います。あらためてこの点は見解をお尋ねしておきたいと思います。  この都道府県が特別地域に対し排出基準を上のせする場合、基準の限度を示すのかどうか。この点に対しては昨日も、同僚中谷議員からであったと思うのですが、お尋ねがしてありまして、それに対する佐藤大臣のお答えは出たようでありますけれども中谷委員が昨日指摘をいたしましたのは、高度の生産技術ですね。この場合に上限をきめるのかというお尋ねに対するお答えであったと思うのですが、経済的コストによる見解をきめるのかどうかという問題であると私は思うのです。高度な技術を——まあ二年先、三年先というのは、これが有効に働いていく程度、当然限度というものが引き上げられてこなければならぬという形になってこようかと思うのですけれども、それまでは、実行性のない限度をきめるということは、法律をつくっても実際動かないという形が出てまいりましょうから、昨日の大臣のお答えはそれなりにわかるような気がいたしますが、企業は、できるだけこの限度を低くしてもらいたいという考え方があることは間違いございません。そこで、この経済的コストによる上限というものをきめるということに対して、、経済企画庁としては、これをどの程度チェックしようとしているのか。これをチェックすることはないということを明確にお答えができるのか、いかがでしょう。
  68. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 経済企画庁としては、特別にこれを制約しチェックしようとする気持ちはございません。
  69. 中村重光

    ○中村(重)委員 ところが、昨日、中谷委員の質問に対しては、実行性のないようなものに対してはこれを認めることはできないという意味の、ある程度チェックしなければならぬという意味のお答えがあったんではございませんか。
  70. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 中谷委員とやりとりがございました。いま中村さんから御指摘を受けまして、私も初めて気がついたのですが、このことに関連してあったのかと思ったのですが、このことと関連してチェックする、こういう気持ちで答えたことは私は一度もございません。あのときにも議論はもっと一般的なものの考え方であったように、私、了解しております。具体的に知事がきめたところのその基準というものをチェックする、こういうことはしないつもりであります。
  71. 中村重光

    ○中村(重)委員 そうなってくると、上限を政令できめるということはありませんですね。
  72. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 政令できめますことは、この前も御説明しましたように、環境基準と適合していることとか、測定方法を同一にしてもらわないと、シビルミニマムと上のせ基準が別々の測定方法できめられているのでは困るという意味において、そういう基礎的な条件を政令できめますけれども、個々のものを制約する、こういう考えはありません。
  73. 中村重光

    ○中村(重)委員 そうなってくると、三条五項によるところの上のせ基準を「企画庁長官及び関係都道府県知事に通知しなければならない」というふうに書いてあるわけですが、上のせを定めるときですからね。その事前なんですよ。そうなってくると、事前に対して、経済企画庁長官、それと関係ある都道府県知事に通知をするということは、その段階において意見というものが述べられるということは予想されるというふうに私は思うのでございますが、この条文のこの五項というのはどういう考え方で入れられたのでしょうか。
  74. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 これにつきましては、一方においていわゆる地方的な立場というか、それに対して全体的にもっと中央の政府のほうで指導を強めて、そして束縛のないようにすべきではないかというような議論も一ぱいあったわけです。しかしわれわれは、そういう議論に対しても、個々のものについてあまりわれわれが干渉する気はない。ただ、たとえば大きな木曽川なら木曽川のように、数府県にまたがる河川がある、そういうようなことで、従来からわれわれの経験に徴しますと、そういうものを県際河川と称しておりますが、県際河川のようなもののごとき場合において、どうしても県同士でもって話がつかない、そういうようなことでもって調整を要するような問題も起こってまいることがある。そういうようなことも頭に入れまして、別にそうひんぱんにこれを行なうつもりもないのですけれども、まあ一応知っておく必要があろう、こういった程度の意味であります。
  75. 中村重光

    ○中村(重)委員 その点は理解ができました。  次に、厚生省お見えでしょうからお尋ねをいたしますが、川や水の水質を保全をするということは、この工場とか事業場からの排出水規制ということだけでは達成できない。そこで、船からの有害物質の投棄を規制する、あるいは家庭排水は、下水道の整備あるいは終末処理というような形を行なうことによって目的達成をはかっていくということになろうと思うのですが、そのために、公害関係法案としてそれぞれ御提案にはなっているようでございますけれども工場排水規制で目的が達しないということと関連がございますから、私はこの際お尋ねをしておくわけですが、下水道五カ年計画というものがある。それから終末処理計画というものがあるように伺っているわけですが、この具体的な計画、それから普及率というものは、どのようにお考えになっていらっしゃるのか、明らかにしておいていただきたいと思います。
  76. 石川次夫

    石川説明員 お答えいたします。  下水道の整備が非常におくれておりますことは、先生指摘のとおりでございまして、現在でございますと、普及率は四十五年度末におきまして、市街地面積に対して二二%前後というふうになっておる状況でございます。御指摘のように、今後、下水道の整備を急がなければならないということで、現在われわれ、四十六年度を初年度といたします第三期の下水道整備五カ年計画を策定いたしまして、強力にはかってまいりたい。その際、水質環境基準に対応するような形での下水道の整備というものを重点に置いて整備してまいりたいというふうに考えておるわけでございまして、流域別に総合的な下水道計画を立て、特に事業の施行にあたりましては、流域下水道を重点に置きまして下水道の整備をはかり、水質の保全に寄与するような形で事業の推進をはかってまいりたい、かように考えておるわけでございます。もちろん終末処理場は、現在、公共下水道の中で終末処理場がないものも公共下水道というふうにいわれておったわけでございますが、現在、御提案いたしております下水道法の一部改正におきまして、公共下水道はすべて終末処理場を持つか、あるいは各市の公共下水道を受けまして、流域下水道でもって一本にまとめて処理するというふうな形の流域下水道という制度を、現在まで事実上は事業を実施しておるわけでございますが、法律的に整備するという形で現在御審議いただいておるわけでございます。
  77. 中村重光

    ○中村(重)委員 ところが、終末処理をしても、汚泥の処理をどうするかという問題が起こってくるのではないかと思うのです。この点はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  78. 石川次夫

    石川説明員 汚泥につきましては、焼却処分、あるいは一部有害物質を持たないもの等につきましては、農業用の土壌というふうなことにいたしておりますが、その他のものにつきましては廃棄するという形になっておるわけでございます。
  79. 中村重光

    ○中村(重)委員 その汚泥の処理というものが量が非常に多くなってくる。ところが、なかなか埋め立て地なんというようなものもないということ、そこで乾式の処理方式というのがあるわけですね。この点はあまり日本ではまだ普及をしていないように思うのですけれども、乾式処理方式ということになってくると、これはそれだけ廃棄物がずっと減ってくることになるわけですね。この点は検討していらっしゃいますか。
  80. 石川次夫

    石川説明員 乾式の処理、つまり焼却する方法でございますが、これがやはり一番汚泥の処理としては適切な方法でございます。現在そういう方法をできるだけとるようにいたしておりますし、かなり実施いたしておる状況でございます。
  81. 中村重光

    ○中村(重)委員 乾式の処理方法というのは、これは廃棄物が少なくなることから好ましいことであることはわかる。ところが、重金属がこれに入っておりますと、これが大気の中に入ってくるという新たな公害を発生するということになってまいりますが、その対策はいかようにお考えになっていらっしゃいますか。
  82. 石川次夫

    石川説明員 下水道の中には、御指摘のとおり、一般の都市排水家庭下水と、それから工業排水が同時に入ってくるわけでございますが、工業排水の中で、御指摘のような重金属類等につきましては、一定の基準を設けまして、これ以上は入れないというふうなことで除害施設を設けまして、そういう基準以上の重金属につきましては、物によりましては、全く入れないということで企業の側で処理する、こういうふうな除害施設によります除去を行なっておるわけでございます。   〔橋口委員長代理退席、委員長着席〕
  83. 中村重光

    ○中村(重)委員 湿式酸化法であるとか共同処理場についてもお尋ねしたいのですが、時間の関係がありますから省略いたします。  家庭排水下水処理するということになってまいりましても、洗剤等の有害物というものは処理できないと私は思うのです。これは何らかの規制措置を講じていかなければならぬと思いますが、この点はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  84. 石川次夫

    石川説明員 洗剤につきましても、御指摘のように完全に処理できないということで、川に白いあわが立つというふうなことが現在あるわけでございますが、これはできるだけソフトの洗剤にかわってまいりますと処理が非常にしやすいということで、現在、次第にソフトな方向に向かっておるということでございます。われわれとしても、そういう希望をいたしておるわけでございます。
  85. 中村重光

    ○中村(重)委員 それが好ましいことはわかるのです。ですけれども、これを製造すること趣とめない限りは、私は規制ができないと思う。したがって、そうした下水処理によって処理できないようなもの、規制できないようなものは、メーカー段階においてこれを規制するということでなければならないと思います。したがって、当然そのことは検討されなければならぬと思いますが、その点に対する対策はないのですか。
  86. 石川次夫

    石川説明員 洗剤でございますとか、そのほかのもの——洗剤でも同様でございますけれども、毒物につきましては、先ほど申し上げました除害施設によって排除するわけでございます。問題は、洗剤の中でハードなものが多いと非常に川がよごれるといいますか、あわが立つというふうなことでございますので、現在でも七〇%程度あるいはそれ以上、ソフトと申しますか、溶解しやすいものにかわっており、順次そういうふうな傾向にあるということでございます。
  87. 中村重光

    ○中村(重)委員 どうもいまのお答えでは弱いと思う。やはりこの際、下水道五カ年計画というものをお立てになり、それから終末処理というものをこれから当然強力に推し進めていくということになってまいりますと、どうしても洗剤等のメーカー段階において規制ということを強力にやらなければいけないというような感じがいたします。いまの答弁では、一応の考え方はわかりますけれども、なお不十分なような感じがいたします。  しかし、これは時間の関係がありますから、あらためてお尋ねをすることにいたしますが、そこで、この下水処理と並行して水質汚濁の防止をするという点については、川や海底の汚泥の処理をどうするかということが重要な課題であろうと思う。私は端的に申し上げさせていただきますならば、水質汚濁防止法の中には、川であるとか海のヘドロ、この処理というようなものも、一体的なものとしてこの法律規制対象にならなければならないような気がするわけです。ところが、行政官庁が違うというような点から、別の法律案が出されておるというように思うのです。ところが実際問題として、現に汚染されているものに対する対策を強力に進めていかない限り、この公害をなくすることができないということを、佐藤大臣は昨日来お答えになっていらっしゃるわけです。私もそのとおりだと思うのですが、具体的な例としてこの際お尋ねしておきたいと思うのです。  洞海湾、それから長崎港。洞海湾は先般水質基準をおきめになったようでございますが、ヘドロをどうするかという問題。それから、まわりの工場等の規制措置というのが、やはり課題にならなければならないというように思うわけです。それらの点に対してどのようにお考えになっていらっしゃるのか、関連している問題でございますから、この際お答えを伺っておきたいと思います。
  88. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 確かにおっしゃいますように、これから出ますところの排水規制するということも大事でありますけれども、現在相当の汚泥があるわけでございます。それで、そうした問題をどういうふうに処理するか、こういうことでございますが、結局これは、河川法等によるしゅんせつであるとか、あるいは埋立法によるところの埋め立てであるとか、あるいはまた河川法によるところのいわゆる浄化下水の流入であるとか、いろいろと公共事業の推進によりましてこれの処理をはかっていく、こういうことになろうと思います。それらについて特段の事業法というものをまだ持ってはおりませんけれども、所管がおのおの分かれておりますけれども、しかしこれらは、今後、水質行政をやっていく上において特段に推進をはからなければならない問題でございますから、いわゆる公共事業の推進の一部になるわけでありますが、建設省においても、最近におけるこうした方面の問題点を十分に考えまして、今後、公共事業の予算を編成いたしますときに、十分そうした対策を頭に入れて予算的に処理をしてまいる、こういうことになっておるわけです。
  89. 中村重光

    ○中村(重)委員 それでは、洞海湾水質基準、これはおきめになったわけでしょうから、そうすると、汚泥の処理、しゅんせつですね、それから地元との意見調整、まわりを取り巻いておるところの工場事業場等の規制、そういうことをやることによって、魚が住める昔の海にかえる可能性があるのかどうか。これは総括的には大臣のお答えも伺いましょうが、宮崎局長その他関係局長もお見えでございますから、具体的な問題でございますし、お答えを伺っておきたいと思います。
  90. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 洞海湾水質汚濁の問題につきましては、今年の春ごろから非常に問題になりまして、調査をずっと実施いたしてまいったわけでございますが、去る十月に水質基準並びに環境基準の成案を得まして、水質基準のほうは一応審議会を通して案がきまっております。こういう形で規制をやってまいりますと、昭和五十年には環境基準としてきめたいと思っておりますが、かなり良好な状況に持っていける、一応こういうふうに考えられるわけでございますが、御承知のように、洞海湾の場合には、現在たまっておるヘドロが相当ございます。これをどうするか、水質規制だけではたして環境基準ができるかどうかということになりますと、計算上の問題としては一応できるという結論が出ておるわけですが、あわせてヘドロの問題も考えていかなければならないのではないか、こういう点が若干問題が残っております。  そこで、本年度の国土総合開発事業調整費から一千万円の予算を出しまして、運輸省のほうにおいてこの水質汚濁の機構とヘドロの関係をいま解明をしていただいておるわけでございます。この調査の結果が出ました段階で、何らかの対策事業としてやっていくかどうかということをきめたいと思っておりますが、一応環境基準のほうの決定の段階では、この汚泥のしゅんせつというものを留意事項として掲げておりまして、できるならばそういうことをやるべきだ、こう考えておりますが、ただいま申しましたような調査の結果によって、その辺の決着をつけたいと思っておる次第でございます。
  91. 中村重光

    ○中村(重)委員 これは強力にやってもらわなければならない。昔の魚が住める洞海湾の再現ということをやらなければならぬわけですから。  それから、長崎港は水質汚濁環境基準の指定がまだなされていなかった。ところが今度は一律指定をなさるわけですね。そこで今度は、特定地域への指定に長崎港は入ってまいるということになってまいりますか。  それから水質基準については、相当前から検討されてもう構想がまとまっておったと思うのですが、これはひとつ具体的にお示しいただきたいと思います。
  92. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 長崎港の水質基準の問題につきましても、現在調査中でございまして、今年度内にはひとつ基準を設定いたしまして規制をやってまいりたい、こういうふうに考えております。
  93. 中村重光

    ○中村(重)委員 特定地域というものの中に入れようという考え方も、大体かたまっているわけですね。
  94. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 今年度に基準をきめますものは、現在の水質保全法に基づくものでございますから、指定水域ということになるわけでございます。新法に移りますと、これを経過規定で新法の基準に切りかえていく、こういうことにいたしたいと思っております。
  95. 中村重光

    ○中村(重)委員 昨日、宮崎局長は、許容限度内であっても被害があれば補償するとお答えになったというふうに記憶するのですが、その補償というのは、国や地方公共団体がするという意味なのかどうか、あるいは被害を与えた企業に補償させるという意味のお答えであったのか、この点がはっきりしなかったように思うのです。また、補償するということになってまいりますと、その補償の基準というものをどのようにお考えになっていらっしゃるのか。
  96. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 昨日お答えいたしましたのは、工場事業場等から排水を出しまして、これが排水基準は一応守っておっても、それによって被害が出たという場合にこの補償の問題がどうなるか、こういうことでお答えをしたつもりでございます。したがいまして、この場合においては工場事業場等から出した排水によって被害が出たということが明確でありますれば、当然この事業場等が補償しなければならない、こういうことであろうとお答えをしたつもりであります。その場合の補償の基準なり額は、それぞれの事情によって相互の相談によってきめられるものということに私は考えております。
  97. 中村重光

    ○中村(重)委員 経済企画庁が示した基準、これは守っておった、ところが被害が出たのだ、それで工場事業場に対してその被害の補償をしろということになってまいりますと、問題をかもし出してくるような感じがしてなりません。いわゆる無過失賠償責任追及というような問題等々が重要視され、議論されておる点は、そこらあたりにあるのではないかと私は思います。しかし、いずれにあったにしても、国民が被害を受けたという事実に変わりはありません。これは企業がしなければ国がやらなければならないということになってまいりますが、両大臣、ただいま宮崎局長のお答えになったことを御確認いただけますね。
  98. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 たとえば規制基準は守ったが、一例として漁業補償というようなことはあるいは起こり得ると考えられます。そういう場合に、民事の問題としてはそうことがあり得るのではないかと思います。
  99. 中村重光

    ○中村(重)委員 佐藤長官、いま宮崎局長のお答えになったことと通産大臣のお答えとは一致していません。漁業補償ということは起こり得るかもしれぬけれども、昨日、岡田委員がお尋ねいたしましたのは、これは地域住民に対する問題としてお尋ねしたわけです。もちろんこれは、漁業者も入ることは言うまでもありません。漁業者であろうとも、あるいはその他一般市民であろうとも、被害を受けたということにおいては変わりはないわけでありますから、漁業者だけがいわゆる被害の補償対象になり、一般地域住民がならないということは筋が通りません。したがって、国が水質基準をきめたのでありますから、その水質基準はきめたけれども、全く工場、専業場側には過失というものはないのだ、そこで、被害が発生をしたということになってまいりますと、この責任は工場事業場にやらせるのか。あるいは工場事業場にやらせない、やらせることができないというような形になってまいりますと、当然これは国がその責任を負わなければならない。そこで、国が責任回避をしておった、たまたま工場事業場相手に損害賠償のいわゆる訴訟提起等がなされた、その結果のいかんにかかわらず——あるいはいま申し上げたように、要求著、提訴した側が敗れるという結果が起こるかもしれません。しかし、そういった場合であろうとも、当然、その基準は国が示したわけでありますから、私は、最終的責任というものは国が負わなければならない、そのように考えます。当然、宮崎局長お答えのとおり、私は補償されなければならぬ、こう思いますが、長官いかがでございますか。
  100. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 いろいろな議論がおことばの中に含まれておると思いますが、一ぺんに無過失責任論に関係づけることはないと思います。もちろん、その前提の前に、故意または過失の場合を前提にして議論をしていいと思います。無過失の問題はまだ片づいていないわけでしょう。  そこで、いまのお話の場合、いろいろあると思います。宮崎局長が答弁しましたのは、まあ漁業補償なんかを頭に置いてのようでありますが、これは、ある意味においては社会的な補償といいますか、社会問題になって、実際問題として補償している、こういうものも含めて答弁したんじゃないかと思います。たとえ行政基準をきめたにいたしましても、現実の問題として、加害と被害との因果関係が立証されましたときに、民事上のいわゆる損害賠償責任というものは当然にあるであろう。これは法律の一般論からそういう解釈をしての答弁であろうと思います。ここらのところは、なかなか複雑微妙なところでありますから、なお、法務省もしくは法制局のような専門家に、ほんとうは答弁してもらうほうがよろしいんではないかと私は考えます。  それからさらに、そうしたことによって民事の訴訟が起こるような可能性のあります場合に、国が一応の基準を設けておるのであるから、今度は最終的には国が責任を負うべきであるという御議論のようでありますが、これについては私は疑問を持っております。おそらく、直接法律上の責任を国がしょうということは、普通の一般の理屈から言うと出てこないんじゃないかと思っております。まあ、ここいらのところ、いま御質問の趣旨も多岐でありましたから、間違ってつかんでいるかもしれませんが、なお法務省等の専門家にひとつお聞き願いたいと思います。
  101. 中村重光

    ○中村(重)委員 私は別に質問は多岐ではなかったんですね。それで、別に私のほうから、法務省その他の関係省に対する質問をすることもそれなりに必要であるかもしれませんが、宮崎局長お答えになったわけですから、そこで、経済企画庁と通産省との間の見解が違っておれば、私は統一見解をお出しいただくことが適当であるというように考えます。  それから、宮崎局長が昨日お答えになったのは、別に漁業者に限っておるとか、民事訴訟が起こった場合、当然それが補償すべしという判決が下されるであろうということを予想してお答えになったものであるとは、私は考えません。基準限度内、許容限度内でも、被害があれば補償する、このようにはっきりいまお答えになった。また、私の重ねての先ほどの質問に対しても、同様のお答えがあったわけでありますから、これは当然その被害を受けた者すべてを含むという形になってくるであろう、さように考えます。  私は意見として——質問が多岐にわたったわけではありませんが、質問の中に意見が入りまして……。被害を受けた人が、国が補償してくれないので、やむを得ず企業相手に訴訟を提起するということがある。そしてその訴訟によって、原告、いわゆる被害者が敗訴する、そういうことが万が一あったという場合であっても、最終責任は、国が許容基準を定めたのだから、その定めた限度内で被害が出たということであって、それがいわゆる工場事業場側には、故意もなければ過失もないのだというようなこと。無過失責任の追及というものはまだ法制化してないという判断のもとに、原告側が敗訴という決定がなされたというようなことが万が一あったとします場合、当然その限度というものは国がきめたのだから、最終責任は国が負うべきではないか、このように意見を含めてお尋ねをしたわけであったわけです。ですから私が、いまお答えが違っておるから、それぞれの関係省にお尋ねをするということよりも、答弁をした側が、これは違っておる、これはもっと関係省と話し合いをして統一見解を出さなければならぬというふうに判断されるならば、統一見解をお出しになる必要がある。いま答弁が食い違っておるわけでありますから、当然、統一見解を要求をいたします。
  102. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 その点はよく法務省とも相談いたしまして、御答弁申し上げたいと思います。
  103. 中村重光

    ○中村(重)委員 最後に、中小企業対策についてお尋ねをいたします。  先ほど、中小企業に対する助成については、中小企業庁長官からお答えがありましたけれども、具体的にこの際ひとつ考え方をお聞かせいただきたいと思うのです。時間の関係がありますから私から申し上げますが、公害問題によるところの転廃業に対する援助措置をどのように考えるか。それから事業転換に対してはどうなのか。これに対しては、金融上の特別優遇措置であるとか、税制上の特別優遇措置が当然考えられなければならないと思いますが、具体的な考えを聞きたい。それから廃業というものが起こってまいります。その際に、土地、建物あるいは機器等の買い上げということをお考えになるかどうかという点。それから、中小企業公害防止資金の貸し付け制度という中におきましては、貸し付け利率は無利子にする必要があるのではないかと私は考えます。それから、貸し付け率は要求一〇〇%、貸し付け期間は十五年ないし二十年、担保等に対しては当然無担保保険の対象ということで考えていかなければならないというように思いますが、これらの問題に対して、具体的にひとつこの際お答えを伺っておきたいと思います。
  104. 中橋敵次郎

    ○中橋説明員 中小企業者が、現在、問題になっております公害関係につきまして融資を得たいということについて、いろいろただいま個別具体的にお話がございました。それらの点については、現在、中小企業庁その他と、新しい法制のもとにおきまして、従来ありました中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫等からの融資そのものを、一体どういうふうに拡充していったらいいかということを検討中でございます。  それで、いま具体的にお示しになりました、たとえば利率の問題でございますとか、期間の問題でございますとか、あるいは保険の問題でございますとか、他のいろいろな、そういう現在とっておりますような制度と権衡をとりながら、どの程度までやるべきであるかということは、なお今後検討する時日をかしていただきたいのでございます。ただ、利率を非常に下げますということは、現在もすでに中小公庫等におきまして、公害防止施設についての金利というものもかなり他のものと比べて安くしておりますので、お示しのように、非常に低くできるかどうかということは、かなりむずかしい問題ではないかと思っております。  それからなお、公害のために転廃を余儀なくされたものにつきまして一体どういうふうにするかというお尋ねでございますけれども、現在もすでに御承知のように、中小企業金融公庫におきましては、公害が非常にはなはだしいために他の工業適地に移転をします場合に、特利でもって融資をするという道を講じておりますけれども、転廃そのものが、一体どういうような理由で行なわれたという認定が非常にむずかしいということも考えますと、転廃ということについて特別にそういうワクをつくりまして、あるいは特別の利率をもって処理するということも、これまた非常にむずかしい問題ではなかろうかと思いますけれども、いずれにつきましても、全般的に今後の予算の問題としまして検討してまいりたいと思っております。
  105. 中村重光

    ○中村(重)委員 中小企業が非常に資金的に弱い立場にあるということは、御承知のとおりだろうと思うのです。金融引き締め等ももろに実は受けている。引き締めは緩和されたけれども中小企業の金融難は解消されない。しかし公害問題という一のは何ものにも優先してやらなければならない。ところが現実にはなかなかそれができがたい状況にある。してみると、この転廃業なんということは当然起こってまいります。その場合は、炭鉱閉山等の場合における転廃業に対する金融その他の助成措置もあるわけですが、私はこの公害問題に対しましては、より強い助成措置が講じられてこなければならないであろう、こうあるべきだということを先ほど来一申し上げましたが、当然、土地、建物とか、あるいは機器の買い上げなんということは、これは手厚くやってやらなければならないであろうし、税制上の優遇措置は言うまでもありません。それから、そういう転廃業しないところの中小企業に対しましても、公害防止のための設備に対するところの貸し付け条件。あえて私は、無利子あるいは貸し付け率は一〇〇%、貸し付け期間は十五年、二十年というように具体的に申し上げましたが、中小企業は数も非常に多いわけでありますから、公害を出す率は非常に低いにいたしましても、数が多ければ、それが実は非常に大きい公害を全体として引き起こしてくることになってまいりますので、弱い中小企業に対しましては、これは当然、通産大臣としましても積極的にひとつ対策を講じられるように対処してもらわなければならぬと思いますから、この際ひとつお考え方を伺っておきたいと思います。
  106. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一般的に公害のための支出というのは、そこから利益を直ちに生むという性格のものでございませんので、したがって、通常の投資事業のような返済能力というものが、すぐに生まれるというわけではございません。ことに中小企業の場合にそうでございますから、ただいまも大蔵省から御答弁がございましたが、御趣旨を体しまして折衝を続けてまいりたいと思います。
  107. 中村重光

    ○中村(重)委員 これで終わりますが、最後に佐藤長官に考え方をひとつお聞かせいただきたいと思います。  昨日来、本法案審議にあたりまして、大臣は、この法律案の実施にあわせて、いままでよごされた水をどうしてきれいにするかという対策が並行して強力に進められてこなければならぬと、熱意のある前向きの答弁であったわけであります。当然そうあらねばならぬと思います。しかしながら、具体的な対策ということはどういうことが構想されておるのであろうか、聞きたいところはそこであります。これからであるとは申しながら、大臣がたしか、この水質汚濁問題等々、その他公害対策について、テレビ等で考え方を明らかにされたのは、私は数カ月前であったような感じもいたします。その際に、いま提案されておりますこの一律規制問題等々も構想を明らかにされたわけでありますから、まあずいぶん前から検討されておったのだということをうかがい知ることができるわけであります。したがいまして、いろいろな諸対策につきましても具体的な構想というものがあるであろう、私はこう思います。この際、ひとつ大臣からその点についていま一度構想を明らかにしていただきまして、私の質問を終りたいと思います。
  108. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 御審議をいただきました今度の基本的な制度改正、これを実のあるように十分な運営をなしていくことが基本でありますが、もちろん、この法律一本で水がきれいになるわけではございません。そういう音曲味におきましては、廃棄物の処理法の運営あるいは海洋汚染法の実施、またいわゆる事業的なものといたしましては、今回、下水道事業法の強化をはかりましたが、この下水道事業の推進その他、あるいは立地規制の推進、いろいろとこの水質に直接間接に関連するものがたくさんございます。それからまた、過去の汚泥を処理するところの事業の推進、そういうようなことで各般の施策を総合的にやりまして、そうして初めてこの目的を達し得る、こういうふうに私も考えておりますから、なお、法律ができたというだけのことでなく、今後、全般的にそうした総合政策というものをわれわれが立案し、また注目してそれぞれの推進をはかってまいりたい、こう考えています。
  109. 八田貞義

    八田委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。    午後一時七分休憩      ————◇—————    午後二時九分開議
  110. 八田貞義

    八田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。松尾信人君。
  111. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 私は、この水質の保全ということにつきましては、いままでにも法律がちゃんとあるわけであります。そして現在のように非常に汚濁されておるという問題。法律がなければいざ知らず、やはり厳然とそのような保全の法律がありまして、そして政府もしっかりやっていくのだという、このようになっておるわけでありますけれども、その汚染というものがますますひどくなりまして、生命に危険を及ぼす状態になっておる。これは一体どういうわけであるか、こういう素朴な疑問というものを国民一同が持っておるわけであります。でありますから、結局、そのような現状というものは、この法律の実施面、実行というものがおくれて、なされていなかった、このように言えるのではないかと判断いたします。  まず、順序から申しますならば、水域の指定がなされ、その指定水域水質基準がきめられ、そこからこの規制というものが、水域の指定から水質保全のスタートが始まるわけでありますけれども、その指定というもののあとを振り返ってみれば、非常におくれております。四十五年は相当ピッチも早くなり成果もあげておるということは、一応評価はいたします。しかしながら、このように河川も魚介類が死滅する。そうしてヘドロで港湾の機能は停止しておる。人の生命の危険というものは続々と発生しておる。法の制定から十年以上の期間がたっておりまするのに、なぜもっと早く、これほど公害を広めないように、及ぼさないように指定ができなかったかどうかということにつきまして、まず企画庁長官に、おくれた点、そういうことにつきましてお尋ねしたい、こう思います。
  112. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 ただいま御指摘になった事態には、私いろいろな原因が積み重なっていると思います。水質保全という法律がせっかく三十三年にできたのでありますけれども、これを運用する精神というか、公害意識というものがやはり非常に立ちおくれておったという点が、基本的に背景にあると思います。同時にまた、十年以上前にできた法律でもございまして、やはり制度そのものにも非常に欠陥がある。その特に最大のものはやはり指定水域制度である。指定水域の制度というものは、御存じのように、いわゆるあと追い行政といいますか、よごれたことが相当わかって初めてその地域をあとから指定していく、こういうことでございます。でありますから、どうしても汚濁を防ぐのには十分でない点がある。そのほかにもいろいろあると思います。科学的、技術的なデータの不足とか、そういうようなものもいろいろございます。が、やはりそうした制度的な不備というものが、現行法の法律の中に含まれておった。そういう点を見のがすわけにはいかないと思うのであります。
  113. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 一応わかりますけれども、やはり何といいましても、基本法の中にも、事前調査をする、いろいろの測定計画等もしっかりしていくんだということもありますれば、また水質保全法の中にもあるわけでありまして、あながち汚染されたものを追及していくという姿勢ではいけないんじゃなかったか。現在は、確かにその点は認識も改まり、非常に困難な作業を一生懸命されておることはわかりますけれども、やはり事前調査という問題もありまするし、その点もやっていらっしゃったのでありまするし、われわれもかねがね政府にもいろいろの資料も差し上げ、早くそのような水質の保全について全力をあげていきなさい、このように主張しておるわけでありますが、いまおっしゃっただけでは、ちょっと納得できかねる面があります。事前調査の面、そういうものについて、もう少し政府が真剣に取り組んでおったならば、このような事態にならなかったであろうと、このように思うのでありますけれども、重ねてお答え願います。
  114. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 確かに事前調査等が不十分であったと思われます。この事前調査が不十分ということも、やはり帰するところ、現在の制度があと追い的になっておる、よごれたその事態を指摘されてからやるというような制度になっておりまして、やはり全面的に事前調査をするというような体制にすでになっておらなかった。  御存じのように、いわゆる基本法によりまして、水質基準のもとになるところの環境基準、こういう制度ができたのもつい二、三年前でございますが、これなんかも、データが不足でありましたために、御存じのように、四十五年度に入りましてから初めて環境基準をつくる。もともと水質基準というのは環境基準というものに適合するようにつくられるものである、こういうことでありますから、いわば排水基準の基礎になるものも目標が十分できてなかった。そういうことで、これを全面的にできるだけ調査をする。もちろん、調査をするものにはスタッフにもいろいろ限界がございます。そういうことで、できるだけ急速にやってはおりますけれども、まだ限界があることも、同時にやむを得ないことであったわけであります。  今回は、制度の改正によって、それを今度は全面的に全水域に当てる。それから御存じのように、業種につきましても、今日までの工場排水法というものが通産省の所管である点もありますが、ほとんど製造業でございました。ところが今日は、製造業以外の産業の比重が非常に増しております。こういうような点においても、そもそも規制対象が少なくなっておる。あるいは下水道の普及率が少しずつ高まっておりますけれども、ここらの点にもさらに問題があった。いろいろなものが重なってこうなってきて、ここへ来まして、こういうふうにたくさんの法律も御審議願い、全面的に制度的な整備をはかる段階に来て今日に至っておる、こういうことだと私は思うのであります。
  115. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 基本法自体の、基本法に基づくいろいろの企画立案、そういうものも環境基準等おくれておる。それを受けて企画庁がやられる指定水域もおくれておる。それで通産省の工場排水規制のほうもおくれていくわけでありまして、一連に言えば、やはり公害に取り組む政府の姿勢というものがきちっとしていなかった。これは私が指摘するまでもなく、十分反省されておると思いますので、これ以上もう追及はいたしません。  次には、通産省の問題に入るわけでありますけれども企画庁が、そのようにいたしまして指定水域をきめ、そして水質基準を示す、あとは工場排水規制によりまして通産省が実行していくわけでありますけれども、先ほど私、資料をかねがね要求しておりまして、いただいたわけでありますけれども工場排水法に基づく改善命令の件数、これは四十五年の十一月三十日、最後の日までの総累計でありますけれども、九十三件というものが出されております。この九十三件というものにつきまして、中を見ますと、真剣にやっているところは件数が非常にあがっておる。東京都に例をとりますれば、通産局二十、東京都五十三というふうに、九十三のうち七十三は東京都の例であります。ところが、問題はありながらも、四国だとか福岡なんかはゼロ件。仙台もそうであります。北海道は、通産、道各一件、合計二件。このようなことでありまして、これは事例がないからというだけでなくて、やはりやる気があったところは出てきておるんじゃないか。そういうのを前提にいたしまして、この改善命令が出ておるわけでありますけれども、どういうところからその改善命令の必要さを感じ、発見し、原因を見つけ出して改善命令をされたか、このことにつきましてまずお答え願いたい。
  116. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 御説明申し上げます。  現在、工排法はすべての業種を地方公共団体に委任しておるわけでございますが、つい最近までは十一業種を国で持っておりました。そのうち七業種が通産省の所管であったわけでございます。したがいまして、具体的な監督も、通産省の所管業種のうち、県で都道府県知事がやるものと、地方の通産局長がやるものと、二つに分かれておるわけでございますが、それぞれの業種につきまして、県と十分相談の上で、毎年国の予算に基づき、国のほうでも、県のほうにも委託費を配賦いたしまして、総点検的な点検をやってきておるわけでございます。  その間の実績を申し上げますと、昭和四十四年度におきましては、約九百八十工場の立入り検査を実施したという実績が出ております。それから昭和四十五年度につきましては、やはり県と通産局両方でございますが、三千八百程度工場を点検したという実績が出ておるわけでございますが、こういう現場の立ち入りその他現場の点検に基づきまして、具体的に違反しておる事実を発見するケースが多いわけですが、中には、地元の住民その他からの御連絡によりまして、それに基づいて現場を調べまして、確認をした上で改善命令を出すというような、いろいろのケースがあるわけでございます。
  117. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 いまのお答えでは、いろいろの立ち入り検査もした。その件数もおっしゃいましたけれども、その検査の結果はどのように掌握されておるのか。その検査の結果では、水質基準を越えるものも相当あったのではないか。われわれは実態調査の結果からそのように判断するのでありますけれども、そのようなたくさんの工場排水を実際検査されたということであれば、その結果は排水基準に比べてどうであったか、その点いかがですか。
  118. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 ただいまの立ち入り検査に関します詳細なデータはただいま手元にございませんが、立ち入り検査をいたしまして、水質基準をオーバーしておる場合につきましても、性格的に見まして二種類ございまして、その場で運営方法あるいは管理方法、維持方法その他を相当綿密にやれば、オーバーしておったものは直ちに改善できるというような場合には、そういう指導を強力にいたしまして直ちに改善させる。次のケースは、設備そのものに欠陥がございまして、その設備を改造するか、あるいは取りかえなければ水質基準が守れないというケースがあるわけでございますが、その場合には、具体的に期限を定めまして改善命令を出しまして、その施設改善させるという手続をとっておるわけでございます。後者に該当するものが、ただいま先生の御指摘の九十三件でございまして、前者に該当するものは非常に数多くあったと思いますが、ただいま手元に詳細なデータを持ち合わせておりません。
  119. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 では、いまの行政指導によりまして改めた分、そういうものも、私たちの比較対照のために、できましたときでけっこうでありますから、ひとつお知らせください。  それから、いろいろ各地の指定水域についても聞きたいことが一ぱいあるわけでありますけれども、公明党といたしましては洞海湾の調査をいたしました。これは九月十四日でありまして、六十人の議員が参加いたしまして、二班に分かれて広範な調査をいたしました。その中でも具体的に工場排水基準を越えるものもたくさん出ております。私が申し上げたいのは、公明党の調査の前に、すでに経企庁としましても、昨年六月から九月にかけて、二十二の工場につきまして七十五カ所を調査されております。その結果だけでも非常に憂慮すべき、おそるべき結果が出ておるわけでありますけれども、その時点においてどのようにそれぞれの工場に対して行政指導をなされ、どのように改善に対してやってこられましたかということをお聞きいたします。
  120. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 洞海湾につきましては、御指摘のとおり、本年に入りまして、水質基準設定のための調査を行なってまいったわけであります。昨年以来行ないまして本年まとまったわけでございますが、この段階でその状況を、現地において水質審議会の洞海湾部会という形で部会を開きまして、そこで発表いたしますと同時に、地元の企業の方あるいは関係の方々にも御出席を願って、いろいろと御意見も伺う、また調査の結果もお知らせするということをやったわけでございます。そして、これに対する対策としてどうやっていくかということをいろいろ議論したわけでございますが、ともかく現行法に基づく水質基準を早くきめるということで作業をいたしまして、本年十一月二十日にこの水質基準の設定を行なっております。  一方、環境基準につきましても同時に作業をいたしておりますが、昭和五十年までに、あの水域としてある程度望ましいと考えられる環境基準を設定することで、これも結論を得ております。  そこで、それを前提にしてただいま申しました水質基準もきめたわけでございますが、問題は、この水質規制だけでははたしてこの環境基準が十分に達成できるかどうか、若干問題もあるようでございます。特に、ヘドロの問題等がございますので、そういった水質汚濁の機構とヘドロとの関係、こういう点をさらに専門の方々で調査をする必要があるだろうということで、急遽、国土総合開発事業調整費から一千万円を支出いたしまして、これは運輸省のほうに予算をつけたわけでございますが、ただいま申しました関係の調査を実施しておるわけでございます。そして、これによって、必要があれば、たとえばヘドロのしゅんせつの事業というようなこともやらなければならないと考えておるわけでございます。  一方、企業に対しましても、ただいま申しましたようなことで基準の設定をいたしましたから、これに基づいて規制が行なわれるわけでございますが、これは企業の業態あるいは施設改善の必要等から見まして、若干猶予期間を置いてあるものもございます。原則的には六カ月くらいの猶予でございますが、非常に大規模な設備を要するものにつきましては、もう少し長期のものもございます。そういう形で規制が行なわれる。それ以外のものは、調査の結果を待ちまして、必要があればこれを実施しなければならないと思っておる次第でございます。
  121. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 いまのお答えでありますけれども、よその指定水域に定められておる基準よりも明らかに何倍というようなものが排出されておるわけであります。でありますから、昨年の六月——九月にわたっての調査もあるわけでありまして、その結果はあなたのほうでもあるわけでありますから、何も、そこを指定水域となし、そこの水質基準をきめてやらないでも、もうわかっております。あれだけ死の海、洞海湾といわれておる。場所はわかっておるわけでありますから、そのような緩慢なる方法ではなく、すみやかにそういうものは処理していきませんといけない。まあ水質審議会のほうもありましょうけれども、そういうものを飛び越えて、調査の段階においてまず行政指導というものをきっちりして、やがてそこには改善命令というものがどんどん出ていくわけでありますから、その予備的な折衝等も早目にしておいて、企業にもそのような決心を固めさしておくというのがあなた方のとるべき基本的な態度ではないでしょうか。どうですか。
  122. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 まことに先生指摘のとおりでございまして、われわれもそういった気持ちでやってまいっておるわけでございますが、具体的には調査が始まりましたのが去年の六月からでございます。最終的な結果が出ましたのが去年の十二月でございます。その段階におきまして、問題工場が大体十三工場あったと思います。特にその十三工場のうち六工場は、シアン関係が非常に高いということで特に問題になったわけでございますが、この事実がはっきりした段階から直ちに企業指導に移りまして、特にシアン関係の六工場につきましては、再三通産局にも招致し、通産局の職員も現場に派遣いたしまして、とにかくこの排水をいま一般の指定地域で適用されておる基準まで下げなさいということで指導いたしたわけでございますが、今年の八月に現場に立ち入りまして、具体的な調査をいたしました結果、少なくともシアン関係につきましては、すべての工場が応急措置をとりまして、一般の基準内の数値におさまっておるということを確認したわけでございます。それらシアン以外のCODにつきましては、これは基本的に設備改善その他をいたしませんと、なかなか下がらない性格のものでございますので、十一月に告示されました水質基準に基づきまして、目下、各企業とも設備改善その他に努力しておる最中でございますが、しかし、その過程の期間におきましても、応急措置でCODを下げる方法があればできるだけの努力をするように、目下これも強力に指導中でございます。
  123. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 ことしの八月の立ち入り検査とおっしゃいますけれども、もう去年の六月——九月のあたりで出てきておるわけですよ。そして大体、十二月とおっしゃいましたけれども、あなたのほうではそのような結果というものはわかっておるわけですよ。でありますから、八月じゃなくて、そういう段階においてもう答えはわかっているんですから、やがてそこには規制が行なわれていくわけでありますからね。  私は、なぜこんなことをくどくど言うかといえば、先ほど企画庁長官にも申しましたとおりに、法律はありましても、公害の予防、公害の防止というものができなかったという事実をはっきりさせていきたい。それは、どうしてそのようになったのかということでありまして、これは政府の怠慢である、このように私はいま思い込んでおります。そういうことでございますれば、せっかく今回公害国会まで開きまして、一生懸命になっていま各公害法案審議しておるので、いまは違っておると私は思いますけれども、そのような姿勢が少しでもあれば、今後ともやはり結果としてはりっぱな結果が出ないんじゃないか。こう思えばこそ、過去のそういうことを明らかにしまして、そしてりっぱなこの水質基準が出てくるように、そうしてそれが各工場に守られまして、早くこの水質汚濁をりっぱにしていこう、こういうことからきておるわけでありますから、あなたの答えも、どうもそのように思っておる。私に言わせれば、それがおくれのもとではないかという気持ちがするわけです。気持ちでなくして、そのように私は判断いたします。  通産大臣は、時間がきょうはもうないそうでありますが、いままで通産大臣も聞いておられたわけでありますけれども、そのような基本法、そこにおけるおくれ、それを水質に関する限りは、経済企画庁は受けて立つ面におけるおくれというものがあり、やはり通産省におきましても工場排水でそれを受けとめていくわけですから、そこで水質基準がなされまして、そのなされたものを工場排水規制していく、そういう段階がおくれておって、今日このような公害現状に来ておるということについて、大臣の見解をまず私ははっきりさしてもらいたい。  それと今後の問題でありますけれども、私は、そこに重点を置いてこのようなことを質問しておるわけでありますから、この後ともに、政府はいまのような答えじゃなくて、やはり事前調査をして、その結果に基づいていろいろ早急の手を打つ。今度の新法ができればいいというわけのものではありません。やがてこれは政令の制定がなされ、また都道府県に委任されて、そこでまたいろいろの手順がなされて、実際には新法の適用ということになるわけでありますから、うんとこれは半年、一年以上おくれていくわけであります。その間は旧法の現在の法でやっていくわけでありますから、やはりまず政府の姿勢というものを正しまして、しっかりやっていかなくちゃ相ならぬ、このように思うのでありますけれども、大臣のその点に対する所見というものを承っておきたいと思います。
  124. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御指摘の点はよく承りました。ことしになりまして、本省におきましても、公害保安局という公害の名を冠しました行政機構もつくりましたし、地方通産局におきましても、同様の配置がえ、いわゆる公害体制というものをとるに至りましたので、従来よりは充実いたしました体制と、それから、何といってもいまや行政の非常に大事な一つの課題でございますので、御期待に沿えますように総力をあげたいと思います。
  125. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 次は、この監視体制の確立という問題でございます。いまも申し上げましたとおりに、この法というものは、いかに実行するか。実施面というものが、やはり一番大事であろうと思うのであります。今回は、そういう意味におきましては、都道府県に大体の権限が委譲されておる。都道府県がどのように実行していくか、そういう点が非常に今後は問題となってくるわけでありますけれども、この都道府県の能力、監視体制が弱体でありますれば、いままで私が質問したとおりに実効があがりません。公害防除というのは、一に今後は、この都道府県の監視体制がどうかということにかかっているわけでありますけれども、それで、まず人員の面、技術面も含んだそのいろいろの質の向上の面、国の援助というものが、非常に強く要請されるわけでございます。基本法の二十三条にも、ちゃんと「地方公共団体に対する財政措置」というものが規定されておるわけでありますが、まずそういうことを前提にいたしまして、一般予算について聞いてまいりたいと思います。  経済企画庁並びに通産省予算の中で、地方公共団体に対してどのくらい予算を見ておるか。四十五年はどうか、四十六年はそれをどのくらいに見込んでおるかという点がわかっておれば、お知らせ願いたいと思います。
  126. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 御指摘のように、この監視、測定あるいはこの上のせ基準設定のための水質調査というようなことが、非常に強化されなければならないわけでございます。この点につきましては、現在までのやり方は、一応、基準等の設定は国がやるたてまえでございましたが、実際には、これは都道府県に委託をいたしまして、調査の実施は都道府県でやっていただくというやり方をとっております。そういう形で経済企画庁から委託費を出してやる以外に、建設省において一級河川についての調査をやっていただくとか、また海域については一部水産庁のほうでやっていただくとかいうようなことでやっておりました。  今度はたてまえが変わって、都道府県にやっていただくわけでございますが、まず水質監視、測定の調査につきましては、四十五年度は委託費として千八百万円でございますが、四十六年度は、要求といたしまして一億八千六百万、事業費にいたしますとこの倍額の三億七千万程度をやっていただこう。相当大幅な事業量の増加になります。それから、水質調査のほうの補助金といたしましては、四十五年度は九百二十八万円でございますが、これに対して四十六年度一億一千五百万円程度の要求をいたしております。
  127. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 通産省の分の予算関係を御説明申し上げますと、四十五年度の予算は、工場排水関係につきましては、工場排水規制事務委託費ということで七百七十万円、地方公共団体に渡しております。四十六年度につきましては、金額は約千七百万円をただいま大蔵省に要求しておるところでございますが、今回の法律改正を含めまして、すべて工場排水規制等の事務が地方の事務になりますので、従来のような形の予算の要求ではちょっと実態に合わないということで、現在、千七百万円の内訳を原子吸光器等の分析機器に切りかえまして、その三分の一補助というようなことで大蔵省にお願いしておるわけでございます。
  128. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 内容も大切でございますけれども、私が聞いておるおもな点は、要するに都道府県にトータルで幾らやるのかということであります。でありますから、いま、そのような作業ができていなければいないでけっこうですから、四十五年どのくらいだった、四十六年はこのような見込みだというものを、都道府県に対する分だけをひとつはっきり出していただきたい。トータルだけでいいのですから、四十五年はこうで四十六年はこうとおっしゃってもらえばなおいいわけです。
  129. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 四十五年度は委託費、補助金合わせまして三千四百万でございます。四十六年度要求は、補助金になりますが、三億七千七百万という程度でございます。
  130. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 県に対する委託費として四十五年は七百七十万円。四十六年度の要求は、当初千七百万円でございましたが、事情の変更に伴いまして現在約七百万円程度に減額いたしまして要求しております。
  131. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 内容はただいま聞いたわけでありますけれども、先ほど長官がおっしゃったとおり、製造業のみならず全産業の事業者に対して拡大強化して規制していくわけで、対象も広がっております。また都道府県としては、そのようなことに伴いまして、いろいろの工場に対して、個別に立ち入り検査をしたり、排水口の調査をしたり、常時監視という責任があるわけでありますから、はたして、いまおっしゃったような、そういう一般予算でいいものかどうか。これはひとつうんとがんばっていただきたい、このように希望しておきます。比べればふえたようでありますけれども、私は、前年度との比較は問題にならない、いまのこのような状態から判断いたしましてそのような予算では納得できない、これをまず申し上げておきます。  それから、財投も含めたいろいろのものでございますけれども、ちょっと話はこまかくなりますけれども、この助成措置といたしまして、公害防止事業団、この事業の拡充がございますけれども、この公害防止事業団の事業の中で、工場排水関係にどのくらい金を使っておったか、どのくらいの計画があるか、これはわかりますか。
  132. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 詳細に整理したデータはございますが、ただいま手元にございませんので、整理次第御提出いたしたいと思います。
  133. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 この事業団でございますけれども、連帯保証その他のことがありまして規制が非常にきびしい。これはもっぱら中小企業に関することでありますけれども、実現できない、または申し出ておりましてもそのグループからはずされる、というような実態があります。でありますから、そのようなきびし過ぎるという面につきましてはよく見てください。今後ともにそういうところをよく注意していきませんと、やる気があっても資金面でできない、こういうことであります。  それから、公害防止の機器のリースの問題でありますけれども公害防止の機器のリースというものはいつから始められたのか。そしてこのようなリースする機械をつくる工場等を、どのようにいま指導されておるか。今後、工場排水につきましてリース制度というものをどのように盛んに活用されていくであろうか、こういう見通しについて聞きたいと思います。
  134. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 リース制度が始まりましたのは昭和四十五年度、すなわち今年度からでございます。今年度の資金源といたしましては二十億を用意したわけでございますが、現在、リース制度に乗っかっておりますリース会社が三社ないし四社ございまして、そのリース会社を通じまして、主として、集じん機等の設置が比較的容易で、かつ相当広範囲に需要のあるものというところに重点を置いて運用しておるわけでございますが、現在の段階では、この二十億の金額を相当消化いたしまして、現時点で幾らくらいであるか、ただいま直ちに調べまして御報告申し上げたいと思います。  四十六年度につきましては、現在の需要の状況からいって、おそらく二倍以上の資金が要るであろうということで、四十四億円計上いたしまして大蔵省にお願いしておるところでございます。  対象は主として中小企業でございますが、機械の用意あるいは設置その他、すべてこのリース会社でやっていただけるために、非常に簡便で、かつすぐに間に合うというような利点が高く評価されまして、今後ともこのリース制度に期待する中小企業は相当の数にのぼるのではないか、かように考えております。
  135. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 私は、あとで中小企業の問題はお尋ねしようと思っておったのでありますけれども、このリースがもっぱら中小企業のほうに活用されていくという答えがいまありました。これは四十五年度から新設されたのだ、こういうことでありますので、一応これは了承いたします。  それから、もう一つ聞きたいのは、特定の公害防止施設の設置に対する助成というものがありまして、開銀融資が百億円新たに要求されるようでございますけれども、これは内容は何でございましょうか。
  136. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 百億円の内容は、業種といたしましては、鉄鋼、石油精製、石油化学、あるいは紙パルプという、いわゆる公害型産業を対象にしております。  開銀にワクを設けまして要求しておる趣旨は、御趣旨のように、公害防止事業団におきましては、昭和四十年以前に設置された工場公害防止機器だけが大手企業については融資対象になっておりまして、それ以後に設置されました工場の防止機器は対象になっていないわけでございます。したがいまして、現在、基準その他を相当強力に締めておりますし、特に排水関係は、いろいろ指定地域も急激に増加しておるというような全般的な情勢に対応いたしまして、こういう公害企業公害防止機器に対する設備投資も大幅に進んでおるわけでございますが、特に四十六年度からは、現在の制度では若干ブランクになっておりますその部分を埋めまして、大幅に公害型産業の公害防止機器の設置を促進したい、かように考えて要求している次第でございます。
  137. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 私がここで申し上げたいのは、鉄鋼とか電力等の基幹産業みたいなものに、なぜこのような予算を組まなくちゃできないのか、どうしてこのように融資を特別にやらなければできないのかという問題が一点ですね。  そしてなお、いま申し上げますけれども、非常に中小企業の倒産がきびしくなっております。それは金融上の規制もありました。その見通しとしては非常に暗い。倒産も今後とも非常にふえてまいりましょうし、公害防止でつぶれた中小企業はたくさんございます。でありますから、大企業よりもそういうところに重点を置いてやるべきではなかろうか。またやるべきである。それで片方のほうも、四十五年度からリースもやりましたけれども、まだ検討はなさっていない。これはおくれておりますけれども、そういうところをうんと促進して、うんとそういうところに金を回して、そして中小企業がいま非常に倒れかかっておる、金にも困っておる、公害の防除には手も足も出ないというところにこそ、そういうものを回していくのが至当ではないか、こういう立場で聞いておるわけであります。
  138. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 先生指摘のような方向は、財政投融資の要求全般の中には、われわれとしては十分織り込んだつもりでありまして、一例を申し上げますと、公害防止事業団につきましては、造成事業と貸し付け事業に分かれるわけでございます。造成事業はほとんどすべてが中小企業対象でございますが、契約ベースで本年度百二十億を来年度は二百億に増加して要求しております。それから、貸し付け事業の金額は九十億を四百二十億に増加して要求しておるわけでございますが、貸し付け事業の中の二割ないし三割は中小企業向けという考え方でございます。  それでリース制度につきましては、先ほど御説明申し上げましたが、中小企業金融公庫につきましては、今年度の公害ワク十五億に対しまして来年度の要求額は五十五億になっております。国民金融公庫につきましては、五億を二十億に増加しておるというようなことで、全体といたしましては、やはり中小企業の実態をとらえまして、できるだけこれに潤沢な資金を供給する体制をとりたいと考えておる次第でございます。
  139. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 いま百億のほうの考えはなかったのでありますけれども、それは、やはり鉄鋼等に対するものは、どうしても組まなくちゃできませんか。
  140. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 最近の調査によりますと、いわゆる公害型業種の設備投資の中に含まれております公害防止投資の割合は大体八%程度になっておるわけでございますが、たとえば鉄鋼業で年間三千億の投資があるとすれば、二百四十億というものが公害防止のための投資になってまいるわけでございまして、公害防止投資が、直接、生産性の向上とかあるいは生産力の増強とかに役に立たない性格のものであることは、御承知のとおりでございまして、現在、一方におきましてわれわれは、こういった公害型産業に対しましては非常に強い指導行政を展開しておりまして、むしろ公害防止投資を促進すべく最大限の努力をしておる最中でございますので、これを裏づける資金というものは何らかの形で用意したいと考えておる次第でございます。
  141. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 これは非常に私は考えるべき点だと思います。いまのお答えでは納得できません。ひとつよく再検討をしていただきたい、こう思うのであります。  それから、従業者等の公害防止体制の問題でございますけれども企業のほうの責任者、管理者というものを国家試験をしていこう、このような考えもあるようでありまして、これは質の向上にはいいことじゃないかと思います。なお、公害防止担当者養成機関の設立とありますけれども、これは一体どういうことか。これは、公害防止のために大学でもつくって、そうして企業のほうも、都道府県または行政官庁のそのような責任者を、非常に質の向上のためにやっていこう、その構想があれば、簡単でけっこうですから、おっしゃってください。
  142. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 企業内の公害防止の管理体制につきましては、現在、産業構造審議会の中の公害防止体制小委員会というところで近く結論を得る段階までまいりました。その答申に従いましてこれからの行政を展開していきたいと考えておるわけでございますが、基本的な考え方の中に、企業内の組織といたしまして、公害防止のための強力な組織をつくり、その中の統括者的なポジションもはっきりきめまして、さらにその下に公害管理者あるいは公害技術者というようなものを設けまして、企業内の体制を面目を一新する必要があるというような内容が盛り込まれることになろうかと思いますが、その答申の線に従いまして今後努力してまいりたいと思います。  公害防止大学という点につきましては、本年度の予算におきまして、その設立の可否につきましていろいろ勉強したいことがございますので、その調査費を要求したという段階でございますが、その調査費がつきまして、その調査の結果、必要があるということになれば、相当高度な形の教育機関というものをつくりたいと考えております。対象といたしましては、企業の中堅技術者、それから地方公共団体の中堅技術者、そういったものをねらっておるわけでございます。
  143. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 いまの答えはなかなかいい。そのような面にしっかり力を入れまして、この公害排除というか、防除の体制を固めていきたい。しっかりがんばってください。  それから今度は、中小企業庁の関係でございますけれども、いろいろ苦労されましてがんばっていらっしゃる、これはよくわかります。いろいろあなたのほうでも、公害防止機器の開発に委託制度を設けるという考えがあるようであります。それを簡単に承りたいと思いますし、先ほど申し上げましたリースの問題ですけれども、このリースの問題につきましては、中小企業庁においてどのように今後しっかりやっていこうとなされるか、二つの点についてお伺いいたします。
  144. 吉光久

    ○吉光政府委員 最初に技術開発の関係でございますけれども、技術開発の援助方策といたしまして二つのことを考えておるわけでございまして、特に中小企業関係の技術につきましては、地方の公設試験研究機関に対しますところの技術研究開発費の補助をやっておるわけでございますけれども、やはり公害問題の解決には、それぞれの地方の公設試験研究機関の御協力を要請しなければならない点が非常にあるわけでございます。性格上、それぞれの地域に関連した問題が多うございます。そういう意味で、地方の試験研究機関に対します技術開発の中心を、公害防止技術の開発というところに最重点を置きまして予算援助を続けてまいりたいと考えております。  それから、いま御指摘ございました委託研究の関係でございますが、これは実は通産省の工業技術院のほうで予算要求をいたしておるわけでございますけれども、この内容は、そこで開発されました技術の使用者が、中堅企業あるいは中小企業——中小企業向け技術の開発につきまして、現にある工場で研究開発が進んでおるといたします。その進んでおります会社を選びまして、それに対して研究を委託して開発を促進してまいり、その成果を、中堅企業あるいは中小企業のほうで享受する、こういう制度でございまして、そのための委託費を準備いたしておるところでございます。  それから次に、リースのほうの関係の御指摘がございました。確かにりっぱな制度でございまして、特に中小企業にとりましては、一時に金を借りて、それを償還してまいるという方式のほかに、やはり月賦払いと申しましょうか、そういう方式で機械設備を早く設置するということが必要であろうと思うわけでございまして、積極的にこのリース制度を活用することを検討いたしておるところでございます。  なお、同じような制度が実はあるわけでございまして、これは現在御承知の機械貸与制度というのがございます。これも実はリースと同じような制度でございます。この機械貸与制度の貸与の対象の中に公害防止機をもぜひ加えまして、リース制度と同じように中小企業者の利用しやすい形態の制度を創設いたしたいと考えております。
  145. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 いま、貸与の問題が出ましたが、リースとともに、ひとつその前に貸与制度、これを確立してください。  次は、いま申し上げましたとおりに、そのように一般予算につきましては、またいろいろ融資の面についても必要でありますが、特に、都道府県に対する基本法にいう財政措置、これはもう、すべての法律がりっぱに運用されるかどうかということは、一にここにかかっておる。このような観点から、まず自治省に対して聞くわけでありますけれども、交付税の確保の問題、交付税というものば絶対確保しなくちゃ相ならぬ、こういうのが第一点でございます。  次は起債ワクでございますけれども、四十五年度の起債ワク、四十六年度のワク、こういうものについてどのように地方公共団体に考えておられるか。簡単でいいですからひとつお答え願いたい。
  146. 石見隆三

    ○石見説明員 お答え申し上げます。  お示しのように、公害防止事業の執行に必要といたしまする経費、あるいはまた公害に関しまする地方公共団体の事務の処理に要しまする経費につきましては、現行の国庫補助、あるいは負担金制度の充実ないしは強化ということが、もとより必要であろうと考えておるわけでございますけれども、これに伴いまする地方負担につきましては、各地方団体の実態に即しまして、それぞれの財政状況にも応じまして、地方債あるいは地方交付税によりまして、専業の円滑な実施が確保できますように十分措置してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  なお、本年度の起債の中で公害関係の起債ワクといたしましては、現在、四十五年度で約八百八十九億円ということに相なっておりますが、現在、大蔵省のほうに提出いたしております昭和四十六年度の地方債計画案では、この額を約五割あまり伸ばしまして、千四百五十億円余りの要求をいたしておる次第でございます。
  147. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 大蔵省にお聞きしますけれども、いまのように、国の公害関係官庁におきましては、一般予算にも大いに努力はしております。また、起債ワク等についてもいま自治省のお答えのとおりでございますけれども、大蔵省としまして、もう結局最後のかぎを握るのはまた大蔵省に戻ってくるわけでありますから、この各省庁から提出されておる予算、財投も含めまして、また地方交付税起債ワク等につきましてどのような考えでいまおられるか、どのようにされるかということを、はっきりと答えていただきたいと思います。
  148. 徳田博美

    ○徳田説明員 お答えいたします。  産業公害問題は、非常に深刻な社会問題となっておりますので、今日、各企業公害防止対策に万全を期することは、非常に大切なことはお示しのとおりでございます。特に、先ほど御指摘もございましたように、中小企業につきましては、資金調達力あるいは技術開発力等につきまして、大企業に対しまして不利な条件にあるという問題があるわけでございまして、これらの点を勘案いたしまして、現在、政府におきましてはすでに各般の措置がとられておるわけでございますけれども、今後におきましてもなお一そう、特に来年度の予算につきまして十分この点を配慮してまいりたい、このように考えております。
  149. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 じゃ大蔵省としては、各関係省庁の要求に対しまして、これは日本の公害を排除するという面においてしっかり努力してもらいたいと思います。  最後に、これは公害対策本部の問題になるかもしれませんけれども企画庁長官にお尋ねするわけでございます。  これは基本法第十六条の関係でございます。これには「知識の普及等」という規定があるわけでございますけれども、諸外国におきましては、公害の実態というものをどんどん国民に知らせております。わかりやすく、また色刷り等で、企業にも逐次注意を喚起しておる次第でございますけれども、わが国はこの点が非常になされていない。でありますから国民は何も知らされない。何も知らないうちに公害が起こされまして、いつの間にやら自分の生命にも危害を及ぼしている。いわばつんぼさじきに置かれているというのが実態でございます。でありますから、政府の事前調査の結果等は、やはり国民にも教えて注意も喚起する。また先ほど申し上げましたとおりに、企業者にも早くその実態を告げて行政指導をし、またどんどん現実的にそれを改善さしていく、このような方法がなされませんと、国民あげての公害防除というものにはならぬのじゃないか。いま政府がそういうものをあまり教えない。何か資料も出さないというような傾向では相ならない。このように、政府の基本姿勢に対しまして、非常に私はいま残念に思っております。でありますから、この基本法第十六条に基づきまして、政府は今後どのように国民と企業に対して知識を普及さしていくか。公害の認識を深めて、国民も企業もあげて公害防除に対しまして真剣に取り組む、このような姿勢をつくっていかないと、その総仕上げというものにはならぬのじゃないかと思うのですけれども、長官、いかがです。
  150. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 確かに、この公害問題の立ちおくれには、いま御指摘のような点もあったわけです。そういう意味で、御存じのように、三年ばかり前にできました基本法の規定に基づきまして、公害白書というものを政府が出すようになりました。またその他、いわゆる消費者保護基本法に基づくいわゆる国民生活白書、こういうようなところにおいても公害問題の指摘を怠らないようにし、経済白書等においてもそういうことをやっております。それから、そのほか最近においては、テレビをはじめ、政府予算を使ってできるだけのことを講じつつございますけれども、しかし、御指摘の点は今後ますます重要性を増してくるわけですから、この方面の施策をさらに充実していく、この必要は私も大いに感じております。そのつもりでやっていきたいと思います。
  151. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 いま白書の問題が出ましたけれども、非常にかたいのですね。でありますから、色刷りだとか、わかりやすく、そうしてだれにもそれをやるというふうな、そのようなものを出されていかないと、徹底しない。企業のほうにもどんどん注意を喚起する、事前調査も発表する、お互いにわかって、そうしてともに公害を防いでいこう、このような体制をしっかりつくっていくようにつとめてもらいたい。これを申し上げまして、私の質問を終わります。
  152. 八田貞義

    八田委員長 西田八郎君。
  153. 西田八郎

    ○西田委員 最初に、法案の各条文について、多少疑義の解釈についてお伺いしたいと思います。  まず、第一条のカッコの中ですが、「水質以外の水の状態が悪化することを含む」とありますが、「水質以外の水の状態」とは一体どういうことをいうのか。
  154. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 ここに「水質以外の水の状態が悪化すること」ということに予定いたしておりますのは、いわゆる熱によります温度差の問題、熱汚染の問題といいますか、発電所の排水等の問題がございます。その問題と、それから水の色、この二つをいま予定いたしておるわけでございます。
  155. 西田八郎

    ○西田委員 「水質以外の水の状態」というのは熱と色だけですか。「第三条第一項に規定する排出基準のうち有害物質に係る排出基準」ということで、シアンほかクロームまで幾つか物質があげられておりますが、この中に、水には当然臭気というものが出てくると思うのですけれども、臭気を発する物質、そういうものに対する規制というものをなさる用意があるのかどうか、それも含むのかどうか。
  156. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 現在、水質保全法によって規制いたしております項目、特に生活環境項目等につきましては、たとえば、SSあるいはBODというような規制をいたしますと悪臭がなくなるという結果をもたらしますが、しかし、特ににおいそのものを防止するという形でのことまでは考えておらないわけでございます。このにおいの問題は非常にむずかしい問題でございまして、悪臭防止法というような別途の法律を現在検討中というふうに伺っておりますが、そういう形で処理される、こういうふうに考えております。
  157. 西田八郎

    ○西田委員 そうすると、検討というよりも、連合審査のほうで質問した中では、山中総務長官から、臭気の防止法案もできてはいるんだ、できてはいるんだけれども、国会が受けつけてくれないから出さないんだ、こういう答弁があったわけです。そうしますと、いまの答弁と若干食い違うわけでありますけれども、その政府の予定されておる悪臭防止法の中には、そうした悪臭を放つ発生源となる物質等についてはもうすでに調べ済みだ、そして、そうしたものも十分検出できるだけの技術が開発されておる、こういうことであったわけですが、そういうことであるとするなら、水のほうも当然その関係が出てくると思うのですが、いかがですか。
  158. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 悪臭防止法案につきましては、厚生省と公害対策本部のほうで作業いたしておりまして、私、残念ながら、どういう内容のものまでいま考えておるのか、ちょっと承知いたしておりませんので、御答弁をごかんべん願いたいと思います。
  159. 西田八郎

    ○西田委員 これは、生活環境ということになりますと非常に重要な問題で、どぶのにおいであるとか、あるいはいろいろな施設から流出される水の中にやはり臭気があるわけであります。ですから、知らないということではちょっと困るし、知らない方に質問をしてもいけないので、できましたら、そうしたものについての資料を御提出をいただきたいと思うのです。
  160. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 いま答弁が不十分でございまして、対策本部において検討しているという長官の答弁が正しいと思いますが、ただ、その内容をいま御説明する用意がないようでございます。いま公害対策本部の部員がおりましたが、ちょっと席をはずしておりますので、後刻来ましたら答弁いたさせます。
  161. 西田八郎

    ○西田委員 それじゃ、後刻御答弁をいただくことにしまして、次に、第二条の「この法律において「特定施設」とは、次の各号のいずれかの要件を備える汚水又は廃液を排出する施設政令で定めるものをいう。」、こうなっておるわけでございますが、一号と二号があるわけですが、こうしたものを排出するのは特定の工場あるいは事業場ということになるわけでありますけれども、それ以外に、水質以外の水の状態を汚染するということになりますと、一次産業といわれる農業等からの排水、あるいは三次産業といわれるサービス業等から排出される排水、さらには病院の排水も、相当汚染原因になるのではなかろうかと思うのですが、こういう事業場等については政令で定められる中に入るのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  162. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 およそこの法律に書いてごごいますように、「汚水又は廃液を排出する」ような工場事業場であって、それによってこの法律の目的としております国民の健康なり生活環境の保全という面に影響のあるような施設は、これはひとつ広く特定施設として指定してまいりたい思っております。  病院そのものを具体的にどうするかということは、私まだそこまでの詰めた話を聞いておりませんけれども、問題があれば当然入れていくということであると思います。
  163. 西田八郎

    ○西田委員 結局、病院を入れるかどうか、あるいは一次産業等がどうなるか、あるいは三次産業のサービス業等の大量に水を使うところの排水というものが、結局「生活環境に係る被害を生ずる程度」という中に含まれるというふうに解釈して、当然、政令の中には、そういうものを検討して入れらるべきだというふうに私は思うのですが、その点いかがお考えになりますか。
  164. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 お説のとおりやってまいりたいと考えております。
  165. 西田八郎

    ○西田委員 それと関連をしまして、最近、家庭排水が、有害物質ではないけれども、いろいろと水を汚染するというよりも濁すほうの役割りを果たしておるというふうに報道もされておりますし、聞いてもおるわけであります。そういう意味で、家庭排水等については今後どういうふうにしていかれるつもりなのか。ここでは規制はなされていない。規制外になるわけですけれども、これは重要な問題だと思うのです。後ほど下水道のことについてもお伺いをしたいと思うわけでありますけれども下水道不備な現状においては特にこの問題を放置しておくわけにいかないわけでありますけれども、将来この点についてどういうふうにしていかれるおつもりなのか。その点をお聞かせをいただきたい。
  166. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 ただいまもお話がございましたように、家庭排水につきましては、この法律にいういわゆる「特定施設」として、この対象にしていくということにはなじまない形のものでございます。したがいまして、これにつきましては、やはり現在の基本的施策であります下水道の整備を行ないまして、これによって処理をしていく、こういう形で進めてまいる以外には方法はないのではないかと考えております。
  167. 西田八郎

    ○西田委員 それ以外にないと思います。したがって、あとで下水道の問題について質問をいたしますが、次に、熱を含むということになってきたわけであります、が、熱を含むということになりますと、その地域の水域の常時水温というものを常に計量しておかなければならぬということにもなりますし、四季によってかなり熱というものは変化をいたします。そういう場合の熱の規制といいますか、温度で表示されることになろうと思うのですが、その温度等についての基準はどのように設けられるのか。これは非常に微妙な問題ですので、ひとつお聞かせをいただきたい。
  168. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 熱の汚染問題というのは、今度の法改正で、水質汚濁対象として一応入れようということにしたわけでございますが、現在、具体的に問題になっておりますのは、発電所の冷却水等でございます。こういったものは、いわゆる通常の汚染はないわけでございますが、その温度差によりまして漁業等に影響があるということがいわれておるわけでございます。現在まだ、この基準としてどういう形にきめるかということまで問題はきまっておりません。おそらく、その季節別に見た絶対温度、あるいは温度差を問題にすべきである、こういうふうに考えております。この辺はさらに今後十分詰めまして、そうして運用してまいりたいと思います。
  169. 西田八郎

    ○西田委員 この熱の問題は十分詰めましてということでありましたが、この委員会での答弁だけでなしに、ほんとに詰めていただかないと、これは非常にデリケートな問題が出てまいります。特に、摂氏一度、二度ということになると、気温の関係も生じてくるわけでありますから、そしてまた、その地域の流水の質といいますか、によっても相当変化をしてくると思いますので、そうした点を特に慎重に扱われるようにお願いしたいわけであります。  次に、第五条に移りますが、排出するものは届け出る、こうなっておるわけでありますけれども、自然公園法によりますと、排出はすべて許可制度、こういうことになっておるわけであります。そうしますと、国定公園として定められておるところの湖等の周辺で工場建設した場合、この排出水の扱いはどうなるのか。許可制になるのか、届け出でいいのか、そこら辺のところ、非常にむずかしいと思うのですが、その関係はどのようにお考えになっておるんですか。
  170. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 御指摘の、自然公園法によります国立公園または国定公園の問題でございますが、特別の地域というのは指定されておりますが、ここにおきましては、現在の法律においても、風致を維持するために、工作物の設置とか、あるいは行為の制限が行なわれておりまして、一般的に工作物を設置するときには許可を受けなければならないことになっております。そしてまた、その許可には条件を付することができることとされております。今回、また自然公園法の改正案が現在御審議願っておりまして、許可の対象として、特別地域内において、厚生大臣が指定をする湖沼等においては、汚水または排水排出する行為をこの条件の中に加えることになっております。したがいまして、本法の規制対象となっております工場事業場、それが自然公園内の規制地域内に立地しようというようなときには、水質汚濁防止法案による届け出の排水規制と、自然公園法による排水規制とが競合するという形になります。その結果、両方の排水基準あるいは許可条件というものを守らなければならないということになるわけでありますが、実際上の問題といたしますと、国立公園の特別地域とか、あるいは国定公園のそういった特別地域というところに、汚水を出すような工場事業場が立地するというようなことはまれであると思われますので、こういった二重の行政という問題は、それほど議論しなくてもいいんではないか、両方の条件を満足させてもらう、こういうことで運用してまいりたいと思っております。
  171. 西田八郎

    ○西田委員 そのきわめてまれなのが、実は滋賀県の琵琶湖という大きい国定公園があるわけなんですよ。これは周辺にずっと工場が誘致されまして、昭和三十八年ごろから六百事業場ほど誘致をされてきておるわけです。この事業場は全部水を排出するわけでありまして、中には非常に有害物質も含まれておるという工場排出水もある、こういうふうにいわれておるわけです。そうしますと、琵琶湖全体が国定公園ですから、そのどこへ工場を建てようと、その周辺であるならば全部これは規制を受けるということになりまして、許可を受けなければならぬ。片方、知事に届け出て知事の許可を受ける、こういうことになる。許可をする許可権者は知事でありますから、これはそう問題はないように思いますけれども、非常に不公が生じてくるのではなかろうかというふうに思うわけでありますが、きわめてまれだとおっしゃったのですけれども、まれの中に大きなまれがある。ひとつその点どうですか。
  172. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 私の理解しておりますのは、この自然公園法による国立公園または国定公園内の特別地域といいますのは、自然の保全が非常に重要な特別の保全をする地域ということでこれがきめられておると思っておりますので、いまの大津の周辺のように工業化されておるところまでこれに入っておるのかどうか、この点ちょっと私つまびらかでございませんが、しかし琵琶湖汚染問題ということは私ども非常に重視をいたしております。現在この水域についても調査をいたしておりますが、一方また経済企画庁も関係ございますが、琵琶湖開発という問題でこの数年来いろいろと計画が練られてきて、だんだん結論にきておるわけでございますが、これは御承知のように、水資源開発として下流地域の水需要にこたえようという問題が一つございますが、同時に湖周辺の地域の総合開発をやりたいということが問題になっております。  この総合開発の問題に対しましては、たとえば流域下水道を整備するとか、あるいは周辺地域の計画の中で、いわゆる汚水を出すような工場の立地というようなことは極力やめさせるというようなことで、この湖の汚染が今後あまり進まないように配慮していこうということで、県当局のほうとも、これはいろいろ相談をしてやっておるところでございます。そういった観点で今後ともひとつこの湖を大事にしていきたいと考えております。   〔委員長退席、進藤委員長代理着席〕
  173. 西田八郎

    ○西田委員 次に長官にお伺いをしたいわけですけれども、いまの届け出あるいは許可というようなことに関連をいたしまして、各省原案が発表されました時点におきましては、十三条の「改善命令」も、いわゆる汚水処理方法の改善その他の措置をとることを命令できる、こういうような原案であったと報道されておるわけでありますが、それが本案となってきたときに、「継続的な排出により人の健康又は生活遠境に係る被害を生ずる」というふうに変えられておるわけであります。ということは、規制が少しゆるめられたのではなかろうかというふうに私どもはとるし、各報道関係も、そういう意味で非常に強く不満を訴えておられるわけであります。また同様に十八条の「緊急時の措置」にいたしましても、出水量の減少などを命令できるというふうに規定されようとしておったのが、それが原案なんですが、本案では、「排出水の量の減少その他必要な措置をとるべきことを勧告することができる」となっている。命令勧告ではだいぶ質的に違うと思うのですが、その違い。さらには三十一条の罰則で、排出基準に違反した場合は三年以下の懲役または三十万円以下の罰金と、こういうふうに原案ではなっておったのが、本法では「六月以下の懲役又は十万円以下の罰金」と、懲役に関しては六分の一、罰金に関しては三分の一と大幅に減額をされておるわけでありますが、こうした点のいきさつ等についてお聞かせをいただきたい。
  174. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 この十三条の点は、実は私どもは実体的には後退したという理解をしてないのです。表現が法律の専門家の手でより正確になった。ですから逆に言いますと、改善命令を出す場合はこういう場合しかないんだ、こういう前提になっておるわけです。改善命令を出す場合を考えてみると、どうしても、継続使用する機械そのものに、設備そのものに構造上の欠陥があるとか、管理上の手落ちがあるとか、何かそういうことに基づいてやる場合に改善命令を出すことの意味があるのであり、一町的な場合はこれは問題にならぬ、当然のことである、こういうことで、まあこういう表現が一番適確である、こういうことであるものですから、実体をゆるめた、こういう感じは私どもは持っておりません。  それから「緊急命令」につきましては、確かに命令勧告になったわけでありますが、これにつきましては、今度初めて、御存じのようにいわゆる直罰という制度を導入いたしました。そういうことになりますと、罰則を規定する以上は、罪刑法定主義の原則は計算に入れなければならない。そうしてみますと、あまり抽象的な基準で罰するということはできない。今日のわれわれの経験に徴しますと、たとえば異常な渇水が起こってきた場合とか、あるいは急激な気象の変化によって汚水の移動が起こってきた、こういうようなときに、その該当者はとにかく従来命ぜられた排出基準は守っておったんだ、そういう意味において本来同情すべき点がある。したがって、よほどしっかりとした基準を設けておかなければ、過酷にわたる場合もあるのじゃないか。そういう気象条件の変化が起こった場合に、どういう程度で、どういう範囲のものに、どの程度排水量の減量を命ずべきかという基準を示せと言われたわけですが、残念ながら私どもにはまだ経験的なデータがございません。そこで、どうしても法律の規定として「命令」と書くことが無理であるならば、まあ「勧告」という、これは罰則は伴いませんけれども、単なる助言や法律にない勧告とは違う、やはり制度としての勧告制度をしばらくとってみよう。実際問題としましては、四日市その他でも勧告によって煙の量をかげんしたりしている経験がありますから、責任者である知事勧告を無視することは実際上できない、ないであろう、こういうことで、しばらくこれをやってみよう。そしてなお一方において、私たちが勧告を重ね、もしくは警報を発するというようなことでデータの積み重ねができて、しかもそのときになってやはり命令のほうがいいということであるならば、その経験の上に立って制度の改正を行なう、こういうことであったわけでありますから、別にわれわれ、実体的にこれの規制をゆるめるという気持ちよりも、法律技術的な観点があったわけであります。  それから罰則につきましては、何ぶんにも初めての罰則を規定することでございましたので、専門家でない企画庁の当局としては、一応のしろうと考えで出したわけでありますけれども、この罰則の規定は、当然のことながら法務省が全体をながめてやるわけです。それで、各種の法律に定められた罰則との間のバランスを見て、この程度以上は無理であろう、こういう判断が下されました。ただし、これは小林法務大臣も言っておるのですけれども、そもそも現在における刑法の罰則基準というものがあまりに現状に合ってない、低過ぎる、したがって、どうしても天井が低いものですから、こういう結果になったのであって、これは、刑法典というとたいへんな法律ですから、そう軽々な改正はできません。しかし近い将来において、これについて改正も含めて検討をするつもりである、こういう法務大臣の話もありまして、そして現在としては、現行法令の各種の場合を比較検討した結果、バランスとして法務省の、このくらいが適当である、こういう判断に従ったわけです。
  175. 西田八郎

    ○西田委員 そうしますと、いまの長官の説明で、勧告というものは行政指導上これから初めてやることであるので、いきなり命令ということにも問題があるだろう、しかも環境基準というものは相当きびしくきめていく、それを守らせる上においては、向こうもいままでそういう設備も十分整っていない、命令に従わざるものはということになっては困るので、やはり勧告程度にしたということは、私の法の解釈としては、勧告しても、その勧告に応じない場合とか、あるいは応じたけれどもまだ不服のある場合は、命令したと同じような効力を持つ勧告だ、こういうふうに理解していいわけですか。
  176. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 法律的に罰則はありませんが、拘束力は相当強いものであるというふうに私たちは理解しております。そしてそれは、なるほど文句は勧告ですけれども、率直に言いますと、いままで野放しであった、指定水域以外であった、全然県知事のやっかいにも何もならなかったところが、すべての水域について県知事が監督をする、監視をする、常時測定もされる、こういう体制になってきますと、単なる勧告といいますけれども知事勧告というものは非常に大きな制圧を工場に与える結果になる。これはわれわれの行政経験から見て十分考えられることであると思っております。
  177. 西田八郎

    ○西田委員 十分理解したわけではありませんが、説明はよく承りました。勧告される場合にも、ただ単なる勧告ですよというようなことでなしに、ぜひひとつ権威をもって勧告をし、そしてその勧告には少なくとも相手側が応ずるという、きびしい姿勢で臨んでいただきたいということを希望しておきたいと思います。  次に、排出水排出基準なんですけれども、臨海工業地帯であるとか、あるいは臨港工業地帯、あるいは河川の流域等において、有審物質を除去する、あるいはSS値であるとかPHであるとかいうものをその基準値に下げるために、川から水を揚げてくるわけですね。それは、排出水をある程度ためておいて希釈して流すというような方法も考えられるのじゃないかと思う。そうしますと、もとの水を持ってきてそれで薄めて流すわけですから、結局、流れていくときに量的には同じようなことになりはしないかという気がするのですけれども、そういうことについての行為に対する規制は、どういうふうにお考えになっておりますか。
  178. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 実は、そういうことも立案の過程においては議論になったのですが、実際問題としまして、そうすぐどこでも簡単に水が手に入りません。長期契約によって、相当高い水道料金を払って水をやっと確保している現状でありますから、そういう事態はないであろうし、またわれわれのきめるところの水質基準は、あくまでも一定の水量を前提にして初めてきめ得るものでございますから、もしそういうようなことが把握されましたならば水質基準を変えなければいけない、大体そういうふうに考えて処理してまいりたい。なお、水質基準の中には、一定の水量に応じて基準をきめておるものもずいぶんございます。
  179. 西田八郎

    ○西田委員 次に、鉱山鉱山保安法によるということになっておるわけですけれども、これは全くのしろうとですので、お教えいただきたいのですが、廃山いたしました鉱山がたくさんありますね。廃鉱しておってもやはり鉱害は出ると思うんですよ。そういうところの責任は一体だれが負うのかということです。
  180. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 いわゆる廃鉱して鉱業権もすでに消滅したような鉱山が数多くあることは、御指摘のとおりでございまして、この問題を取り上げまして、四十六年度から新しい体制をつくりたいということで、都道府県知事がこういった廃鉱を取り上げて、そこから流れ出ます廃水その他について防除工事その他を行ないます場合には、国が三分の二の補助をいたしまして、できるだけこういった対策を促進させたいというぐあいに考えまして、現在、予算要求中で、ございます。この水質汚濁防止法とは直接の関係のない仕事になりますけれども、しかしその精神を体しましてぜひ実行したい、かように考えておる次第でございます。
  181. 西田八郎

    ○西田委員 次に、下水問題について若干伺いたいわけですが先ほども申し上げましたように、最近の水質を濁すほうの犯人が家庭排水であり農業排水であるといわれておるわけでありますが、いまのところ各家庭から出てくる排水規制するということはとうていできない、これは仰せのとおりだと思います。そこで結局、下水道を整備するということが緊急の課題になってくるわけでありまして、その下水道につきましては、建設省で五カ年計画を持っておられるようでありますけれども、その目標を達成すると、大体、いま統計上にいろいろの基礎をとられておりますけれども人口当たりのパーセンテージで一体どの程度まで普及率を高めることができるのか、その点について建設省の方からお伺いしたいと思うのです。
  182. 石川次夫

    石川説明員 現在の下水道の四十五年度末でわれわれ考えております排水面積は大体十三万ヘクタール、千三百五十四平方キロでございますが、ただいまわれわれが策定しております第三次の五カ年計画によりますと、この排水面積を倍以上の三十二万ヘクタールくらいまで広げたいというふうに思っております。また、排水人口は現在は二千百八十万、処理人口が二千二百四万という状況でございますが、これもそれぞれ四千百四十万、五千二百五十万というふうなことでございまして、結局、排水面積の普及率につきましては、現在、市街地面積の二二・八%でございますが、これを三十八%程度まで、それから排水人口につきましては、市街地人口の三四・七%を五五%まで、昭和五十年度末までに持ってまいりたい、こういうふうな目標で第三次五カ年計画を現在策定中でございます。
  183. 西田八郎

    ○西田委員 それは五カ年計画ということですね。そうすると何年までということになりますか。
  184. 石川次夫

    石川説明員 昭和四十六年度から昭和五十年度までを一期とする第三次下水道整備五カ年計画を現在計画中でございます。
  185. 西田八郎

    ○西田委員 そうしますと、その三八%まで普及率を引き上げることによって、いわゆるその都会地の下水道布設率はどのくらいに上がりますか。
  186. 石川次夫

    石川説明員 現在、先ほど申し上げました市街地面積でございますが、五十九万ヘクタールというのは昭和四十五年度の市街地の面積でございます。それに対しまして排水面積が十三万ヘクタールということでございます。五十年は、八十四万ヘクタールに対しまして三十二万ヘクタールの排水面積になるということでございます。で、これは大体人口集中地区ということで、人口が集中しております市街地をとりまして、面積と、それから排水面積を出しまして二二%、三八%を出したということでございます。
  187. 西田八郎

    ○西田委員 三八%と言われるから、ずいぶん急テンポでと思ったのですが、これは全国じゃないわけですね。そうすると、全国的に直すと相当まだ低いところに落ちてくるということを考えなければならぬわけですね。全国的にはもっと落ちるわけですね。そうしますと、これはもう水質汚濁防止法ができて、産業その他の事業場から排出される水については相当きびしい規制がなされるけれども、しかし、家庭やあるいは農業その他から排出される水は、やはり下水処理しなければならぬということになりますと、かえって家庭排水、生活排水のほうが汚濁度を非常に高めるんじゃないか。  そうでなくてさえ、現在、東京都の比率を見ましても、負荷割合は従来のそれとは相当な早さで変わってきておる。たとえば多摩川の下流部等は、生活排水の負荷割合が七三、工場排水が二二、その他が五。荒川で五六対一四対三〇というふうになっておりまして、この汚濁をする負荷割合というものが、非常に家庭排水、生活排水にウエートが変わってきておる。この計画を早急に早めなければ、ほんとうに全水域におけるところの水をきれいにするわけにはいかぬのじゃないかということになるわけでありますが、その場合に、建設大臣おられないのでなんですけれども、ひとつこれは長官から、下水道計画というものをもっと早める意思があるのかないのか。  ここにも全国下水道協会からも非常に強い要望書が出ておるわけでありますけれども、これはやはり早急に確立していかないと、もうほんとうに子供が水泳をする場所すらなくなってくるのではないかということを心配がされるわけであります。自然の中に育ってこそ、ほんとうに強健なからだもつくれると思うのですが、水泳はプールの中でやる、そして外に出れば自動車で人間は穴ぐらにもぐる、横断歩道を渡るときには橋の上を渡るのだというような形で、もう全く人間の本来の生活態様というものを大きく変えられておるわけです。せめて水ぐらいと思っておったら、その水もこれはよごれてどうにもならぬということになったのでは、私はこれはたいへんな問題になってくると思うわけであります。ですから、早急にこの下水道計画を見直して、そうしてせめて人口が集中しているところからでも先にやるべきではなかろうかということが一つ。  もう一つは、指定水域というものが今度ははずされてしまいました。したがいまして、指定をされております水域については何とか早くしなければならぬということで危険度が高かったわけですけれども、今度はそういうものがなくなってくると、この基準というものは非常にとりにくいと思うのです。したがってそういう場合、やはり生活用水として利用される、特に上水道用水として利用されるような水源地、あるいはその流域の下水道というものは早急に整備しなければならぬのではないか。  たとえば、私が住んでいます琵琶湖の水は、先ほどもお話しのように、相当汚濁度が高まってきておりまして、この透明度もここ五年間で倍以上も汚濁しておるわけであります。このままでいきますと、琵琶湖の水そのものが上水道に使用することができなくなるということになります。これは滋賀県だけの問題なら私はさして問題はなかろうと思いますけれども、この水が宇治川に流れていって桂川、木津川と合流して淀川に流れる。そうしてその淀川の一番上流のところには取水口があり、大阪の全人口の上水道になるわけであります。そういうことになりますと、やはりこの琵琶湖の水をきれいにすることは、近畿圏としてはきわめて重要な緊急事ではなかろうかと思うわけであります。  そういう点から考えましても、この下水道整備というものは急がなければならぬし、その下水道を整備するにあたってはやはり緊急を要するところからやっていく、こういう措置がなければならないと思うわけであります。指定水域がはずされるというようなことから、そういう矛盾が起こってきても困るというふうにも思うわけであります。先日の連合審査会でも建設大臣に要望したわけでありますが、どうも政治的に政治下水道ができては困る。非常に力の強い政治家の存在するところが、そう汚濁度も高くないのに下水道がつくられたりということになっても困ると思うのです。これは国の費用の分担があるものですから、そういうことも私は起こりかねないと思うのです。したがってそうした点について十分配慮をいただけるかどうか、ひとつ長官からお答えをいただきたい。
  188. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 下水道の拡充はもちろんわれわれも特に一番方を入れておるところでございます。ただ、先ほどの説明にありましたように、わが国の現在の下水道普及率が二二%、五十年度になりますと、第三次のただいま建設省が考えておりますところの計画によりますと、三割八分になる。これは当然のことながら市街地の面積の中における下水道の面積でございます。これはやはり全国で比べるので、この市街地でいいのだろうと思うのですが、ただこれは、面積で比べることがいいかどうかも私は疑問を持っています。ほんとうはこの対象処理人口——結局、人口の集中しているところもあるわけで、面積が広い原野と比較しても始まらない、こういうことで、処理対象人口の普及率からいいますと、現在、三割五分のこれが今度の三次五カ年計画になると約七割になります。でありますから、諸外国に比べて非常に低うございますし、それから決してまだ十分とはえません。普及率だけでなく質の問題ということになると、処理基準は別に質の問題があるわけですから、決して進んではおりませんが、形の上の普及率はまあそう低くはないのですけれども、しかし、これは五十年になっての話でありまして、われわれはそういう意味において、今度の五十年を目標にするところの第三次計画に相当の力を入れれば、ある程度の伸びが期待できるのじゃないか。二兆六千億ということは、率直に言うと、財政当局としてはなかなか簡単にのめない大きな数字である、こう言っておりますけれども、新経済社会発展計画におきましても大体これに近い規模を想定しておる際でもありますから、極力ひとつこの方面の拡充をはかるように努力をしてまいりたい、こういうふうに思っています。  それから、いま御指摘の湖のいわゆる富栄養化の問題、とかく水の停滞しがちな湖のいわゆる腐敗、こういう問題は、だんだんこれも社会的な問題になってきつつありまして、われわれとしても、これも相当に対策を講じてまいらなければならなない、こういうふうに考えております。  そしてまた、なまじ指定地域制度をやめましたために、かえってぼけてしまう点があるのじゃないかという御心配でありますが、もちろんこの意味は、知事権限を集中し、そして一挙に各地方において、従来のようなやり方でなく、全面的に水域の上のせができるように、こういうことで従来の拘束をはずしたわけでございます。もちろん、この基準を設けますときは、従来の指定のときと同じように、この対象になる面積がどこまでの地域であるかということは明確にいたします。決してぼけるようなことのないようにいたします。そして、その上のせ基準のいわゆる全国一律の基準というものを設けて、そして、どこの地域でも一定限度までは必ず守らなければならない基準を設けることにいたしておりますから、私はそう御心配の点はないと思います。今後できるだけこの法律の趣旨に沿ってやっていく、こういうことだと思います。
  189. 西田八郎

    ○西田委員 まあ御心配ないということだし、知事でも十分ということですが、一つ水域を通じまして、多府県にまたがって利用される水域があります。私の言いました琵琶湖がそうでありますけれども、関係いたしますのは滋賀、京都、大阪。尼崎がちょっと使っておりますから兵庫県、ということになるわけですけれども、兵庫県のほうは、直接水が流れ込むわけではありませんから関係ないにいたしましても、大阪、京都、滋賀というこの関係府県知事はそれぞれ、環境基準は一律にきめられるわけでありますけれども、やはり排出基準等についても相互に連絡をとらなければいけないと思うのであります。そういう意味で、いわゆる水を扱われる経企庁としては、そうした関係上、東京もそうですけれども、利根川その他全部関係があるわけですが、そういう関係府県知事の連絡というようなことについて行政庁としてどうされるおつもりなのか、その点ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  190. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 西田さんもよく御存じのように、琵琶湖の問題については、その開発との関係においても、下流である大阪と、関係の京都あるいは滋賀、こういうような諸県との間においていろいろの調整をいま行なおうとしていることは、御存じのとおりでございます。当然、やはり今度の排水水質の問題を議論するときは、その開発とあわせて議論することになっていこうと思います。目下ちょうど調整をしておる際でございますから、やはりその調整をできるだけ具体的に行なうように進めてまいらなければいけないと思います。今度、府県知事中心になってまいりましたときにどういう事態になりますか、私どもは、府県にまかせても相当良識をもって処理してもらえると思いますが、万一調整を要するようなときには、われわれも、今度のこの制度によりまして一応通知を受けるわけですから、その立場に立ってできるだけ調整をやっていかなければいかぬ、こう考えています。
  191. 西田八郎

    ○西田委員 御承知のように、近畿のことを考えますと、京都の知事がちょっと異色の存在でございます。したがって、大阪と滋賀とが話し合っても京都が合わぬというようなことができてくると思うのです。また、現にここ二、三年前に重要な問題が起こりまして、宇治川になまふん尿の投棄というようなことがありまして大きな問題を起こしたわけでありますけれども、この点非常に問題が起こってくる。しかも京都の場合は、まだ公害防止条例もできてないわけであります。いまようやく審議会から答申案が出たというようなところだが、大阪市は持っておる。こういう特殊な関係のところは、地域の利害関係をいかに一にする府県といえども、問題が生じてくると思うのです。したがいまして、そういう点については、ひとつ関係府県の連絡調整というか、相違したもののあっせんの労を、ぜひ中央の経企庁等においてとっていただきたいことを要請をいたしておきたいと思います。  次に、水処理技術の問題について若干お伺いしたいわけでありますが、最近どんどんと水の汚染因子といいますか、そういうものの数もふえてきておりますし、また新しい問題も持ち上がってきておるわけであります。ことに、先ほど長官からもお話しがありましたように、湖沼等におきましては、燐、窒素というような富栄養素というようなものができ、そうしたものが生物の循環を変えていく。そういうことが非常に汚濁することにもなるし、またいろいろな弊害をもたらしておるわけですが、こういう水の処理について、第三次処理法というようなことも最近の文献ではかなりやかましくいわれておるし、英米等におきましては相当進んだ処理技術が開発されておるようでありますけれども、日本の場合、下水道そのものが普及率が低くて、まだそこまで手が回らなかったといえばいささか語弊があるかもわかりませんが、非常にお粗末な状態であります。したがって、処理技術というものも非常に問題視されてきておるわけでありますけれども、開発技術がどの程度進んでおるのか。  そうしてまた、色素というようなものが入ってきますと、この脱色というのは非常にむずかしいと聞いておるわけであります。いままで、ほとんどの染色工場その他、色素を排出するところはたれ流しになってきておるわけでありますけれども、これも規制されるということになると、その技術というものはかなり高い技術を要するのではないか。資本金一億円そこそこの中小企業で、そしてこの色素を脱色するためにかけた費用が三千万円以上というような状態で、もうそのために非常に企業そのものの存続にも影響をしてくるというようなことも私ども聞いておるわけであります。そうしますと、この開発をして、低廉にしてしかも高度な処理ができるというような方法が開発されれば、それに越したことはないわけでありまして、この水処理の技術というものがどの程度開発されておるのか、おわかりの範囲内でお聞かせをいただきたい。
  192. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 水質基準を定めます立場から、私のほうから一応御説明いたしますが、技術的な問題でございますので、もし不十分でございましたら、ひとつ通産省のほうからさらに補足して御答弁をいただきたいと思います。  まず、第一点の富栄養化の問題、燐、窒素の問題でございますが、これは自然の状態においても徐々にこういった富栄養化というものが進行するようでございますが、最近、人為的な行為によってこれが非常に進んでおるということでございます。これに対して現在私どもがやっておりますのは、たとえば最近、印旛沼、手賀沼、あるいは諏訪湖等について基準を定めましたが、要するに、こういう湖に燐、窒素等を含む排水を、食品工業とか、あるいは一般家庭汚水、これは下水でございますが、屎尿処理施設、こういうものについての排水規制をいたしまして、そうして汚濁の進行を防止し、さらに規制をしていく、減少さしていく、こういう措置をやっておるわけでございます。燐、窒素そのものを直接除去するということはなかなかむずかしい問題のようでございますが、現在、技術開発が進められておる、こういうふうに聞いております。  それから第二点の色の問題でございますが、これもまたなかなかむずかしい点があるようでございますけれども、現在までにすでに行なわれておる方法として、凝集沈でん法あるいは凝集浮上法というようなことで現実に行なわれておるものがあるようでございます。それぞれ相当コストがかかるようでございますので、これについてもいろいろ融資等の措置が考えられなければならないと思いますが、さらに現在、工業技術院におきましてオゾン分解法というふうなものの研究が進められておる、こういうふうに聞いております。
  193. 西田八郎

    ○西田委員 大体その程度のことであろうと思うのですが、それでは処理がだいぶん先になるし、むずかしくなると思いますので、ひとつ長官、これは相当の予算を見て、ぜひこの水処理について早急に新しい技術を開発していただきたいことを要望いたしておきます。  次に、水をよごさないためには、やはりよごさないようにする国民的なモラルといいますか、そういう水に対する認識というものをもっと高めていかなければならぬのじゃないか。生まれたときというよりも、この世に人間という存在が出てきてから、水というものはすぐそばにあるものですから、ことほどさように、貴重なものであるという感覚はお互いに少ないのではないか。私どもの子供のころは、ともかく汚物は川に流せ、こういう親の教えもあったくらいで、河川というものは汚物の廃棄場のように理解されておった。最近になって、川にごみを捨てるなということになってきたわけでありますが、こうした国民的な意識といいますか、モラルの向上というものも、私はやはり必要ではなかろうかと思うわけであります。そういう点について、水の責任者である経済企画庁長官、今後どういうふうにお考えになって、またどのようにしてそれを普及していかれるか、ひとつ具体的にお答えをいただきたいと思います。
  194. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 よく話に、ヨーロッパをはじめ先進諸国で下水が非常に発達したのはどうしてかというときに、やはり海や水が比較的少なくて、内陸に面しておる国であって、捨て場がないということから、廃棄物の処理であるとか下水の問題が発達したということがいわれますが、その逆にわが日本の場合には、いま御指摘のように、至るところに海あり、川あり、そうしてすべて水に流すということで生活をしてきたのだろうと思うのです。それが一種の生活の知恵であったと思うんです。そういう長い風土、伝統というものがあるわけですから、ここのところに来まして、おおよそいかなる水域に対してもものを投げ込んではいけないのだ、こういう大きなプリンシプルの大転換があっただけに、いま御指摘の点は私は非常に重要だと思います。多少時間がかかることはやむを得ませんけれども、しかし、やはり根本から頭の切りかえをはかっていく、そういう意味においては、先ほどもお話が出ておりましたけれども、やはり普及、啓蒙という活動も大事でございましょう。いろいろな角度からこの点を推進しなければなりませんし、特に企業家に対して頭の切りかえを求めなければならない、そういうことについては政府も十分今後考慮してまいりたい、こう思っています。
  195. 西田八郎

    ○西田委員 ハワイ等におきましては、廃棄物を市街地に捨てた場合、たばこのあき箱一つ捨てても、見つかった場合には直罰として三十ドルの過料を取られるというような制度もとられておるようであります。そこまで進むのがいいのか悪いのか、その点は、そういうことで罰をもって人の行為を規制するということは、これはあまり好ましくない状態だと私は考える。しかし、自然一を守り、特に水というものを守る上において、そうした廃棄等があった場合は、やはり厳重にそうした取り締まりをする、そして水を大切にしようという、あるいはきれいにしようというみんなのそうした観念というものを植えつけていかなければならぬと思うわけでありまして、いま長官からもお答えがありましたように、ひとつぜひそのほうの努力も進めていただきたいということを要望をいたします。  さっきの臭気のほうは、あとで資料をよこしてください。  それじゃ委員長、これをもって終わります。
  196. 進藤一馬

    ○進藤委員長代理 相沢武彦君。
  197. 相沢武彦

    相沢委員 今回、政府提出しております水質汚濁防止法案は、現行の保全法と工排法を一本化する、また知事への大幅の権限委譲、あるいは政令と条例で企業に対して二重の網をかぶせるなど、かなり前向きになった法案ということが一応言えると思います。しかし、まだまだ不備と抜け穴等が見られるということで、きのうから同僚議員からも問題点をあげての質疑が続いているわけですが、私も一、二の点を御質問をしていきたいと思うわけでございます。  まず、排出基準設定に関する問題ですが、法案では、排出基準を人の健康に関するものと生活環境保全に関するものとに分けられており、その基準設定は総理府令で定めることになっておるのですが、排水基準の策定にあたりまして、四月二十一日の閣議決定した中の、人の健康にかかる環境基準をどのように考慮しているのか、まずお尋ねしたいと思います。
  198. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 人の健康にかかわる環境基準につきましては、現在すでにきまっております環境基準という、これは公害基本法に基づくものがございますが、ここで八項目現にきめております。このほか、あと二項目ほど加えまして、これは有機塩素とかその他ございますが、そしてこういうものについて許容限度をPPMというような形できめたいと思っております。そのもの考え方は、現在環境基準として一律にきまっておりますもの、これを達成できるということに十分なような排水基準、こういうことで考えていきたいと思っております。
  199. 相沢武彦

    相沢委員 昨日、経済企画庁の国民生活局の素案として、「排水基準のうち有害物質に係る排水基準」、これが出されておりますが、これと照らし合わせると、大体十分の一ということでのお考えであると思いますが、今回の法案が成立しても、総理府令段階でいわゆるゆるい規制基準になる危険性が強いという心配が一部にありますが、やはり人の健康にかかる環境基準として出されているわけでありますから、できるだけこれに近づけた基準、これが望ましいのではないかと思うわけです。この素案が出されておりますが、この十分の一というこの基準は、ほんとうに今後、国民の健康を保持し狩る医学的根拠がはっきりしておるのかどうか、責任が持てるのかどうか、この点の明言をお願いします。
  200. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 先日も御説明いたしましたように、本年八月に決定いたしました公害基本法による環境基準というものは、これはそれぞれの物質につきまして、許容限度として、専門家の意見も十分参酌いたしまして、審議会でも相当の議論をして、これでだいじょうぶということできめたものでございます。これと昨日お出しいたしました排水基準の案の関係は、御指摘のように、環境基準のおおむね十倍くらいの数字になっておりますが、これは通常、排水基準というものは希釈の関係がございますので、環境基準として守りたいものの十倍程度までよかろう、こういうことで通常やっております。したがって、この辺のところが基準値になってきまっていくものと思っております。詳細はこれからさらにまた十分議論をしてきめたいと思いますが、大筋はこんなことになるであろう、これが一律の基準になる、こういうふうに考えておるわけでございます。
  201. 相沢武彦

    相沢委員 次に水質規制の問題ですが、わが国ではBODあるいはSS、PH等、おもに濃度で規制が行なわれているわけでありますが、今後、水質汚濁防止を完ぺきにはかっていくというたてまえから、排水量規制も今回の法案で明文化されるべきだという意見がきのうから出されております。排出の制限については、今回の十二条にありますように、「当該特定事業場排水口において排水基準に適合しない排出水排出してはならない。」ということでありますが、一つ河川工場群が集中するような今日の状態から見て、幾ら排水口で規制をしても、一定期間がたてばまた環境基準が悪化するというのは当然目に見えている。  きのうから、各地の河川あるいは港湾等を例に出されて、いろいろ話されておりますが、私も一つの例として申し上げると、北海道の石狩川の水系の場合は、全道五百四十万の人口の約三分の一がこの水系に集中して、パルプ工場とか、あるいは酒造会社、あるいは炭鉱関係の会社等の企業群が連なっておりまして、どんどん産業廃水を流し込んでおります。各工場排水基準等が定められて、今日まで規制はされておりますが、石狩川の上流でBODが二八・七PPM、あるいは下流の河口付近でさえも五・〇PPMという高い数値であります。御存じのように、石狩川は、サケ、マスの遡上がされる川でありますが、その限界といわれております一二・〇PPMと比べますと非常なオーバーであります。そういうことから、ここ十数年来、石狩川のサケ、マスの遡上が急激に減少しておりまして、河口の石狩町のサケの漁穫高は、戦後の二十九年の十三万五千尾というのをピークにしまして、どんどん減少しております。こうした環境では将来効果的な養殖が望めないということで、現在では、北海道のさけ、ますふ化場が、昨年からふ化放流の重点を後志管内の余市川にすでに移しております。そうして石狩川本流への放流を従来の五分の一に縮小しておる現状でありまして、石狩川も昔あったサケがのぼってくるということもすでに昔物語、いわゆる死の川になりつつあるわけなんです。水質保全法によりまして指定水域になってから、産業排水規制基準が各工場に定められて、各企業とも改善の努力はしているわけでありますが、また監督官庁の話を聞きましても、各工場排水基準は守っているということをいわれますけれども、実際に河口にいる漁民たちに聞いてみますと、実際の川の汚染は年々ひどくなっている、こう言っております。  結局、工場がふえる、排水量が多いということで、どんなに排水基準をきめても、排水量自体の制限というか、もっとそれに応じた排水基準というものをきめていかなくてはならぬのではないかということが、ここでもってはっきりしてくるわけであります。ですから、各工場排水が法で定めた基準以内であっても、それが複合すると汚染はひどくなる。工場排水だけならまだしも、だんだん都市化が集中しまして、その下水関係がほとんど川に流し込まれる。今回も、下水道法案等で別に審議はされておりますけれども、実際的には下水道の完備というものはなかなか年月がかかる。そうなると、どうしても工業排水のほうで相当な規制をしなければならないのではないか。  こういったことから考えまして、当然、今回の法案には、排出量規制ということもはっきりすべきではないか。きのうの政府答弁では、五条の二項において、特定施設の設置の届け出に、排出水汚染状態及び量、これを記載した書類を添付して提出されるのだから、排水基準計算の際に考えるのだ。また今後、排水量の増大が予想されるので、既設工場よりも新設工場排水基準はきびしくするという意味の御答弁がありました。  そこで私は御質問したいのですが、都道府県知事に対して、国の一律基準に上のせした排水基準を定めるにあたって、特定工場ごとに排水に応じての排水基準を定める権限をも委譲するということなのか。そう理解していいのかどうか。指定の水域においてその上のせをする、あるいは排水基準をきめるということはわかりますけれども、私はそうではなくて、もう一ぺん繰り返しますが、国の一律基準、さらに今度都道府県知事がそれに対する上のせの排水基準を定めることが権限委譲されますが、そのときに、大量に工業排水排出する特定工場ごとの排出量に応じて排水基準を定める、その権限をも委譲する、こういうふうに理解してもいいかどうか。
  202. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 御指摘のように、石狩川水域排水基準は、昭和三十八年、比較的古くきまっておりまして、その後の状況から見まして、これでは不十分ということになって、現在これを再検討すべく調査をいたしておるところでございます。  そこで、ただいまの御質問の点でございますが、今度の法律によりますいわゆる上のせ基準といいますのは、特定の水域をきめて、そこについて排水基準をきめるわけでございます。その排水基準のきめ方としましては、現在の指定水系についてやっておるやり方と大体似たようなことになるであろうと思いますが、どういうことをやっておるかといいますと、まず業種別に、たとえばパルプでありますとか、木材工業でありますとか、それぞれごとにこの基準をきめていくというやり方になっております。その場合でも、排水量の非常に多い工場についてはきびしくするとか、あるいは新設についてはきびしくするとか、こういうことを現実にやっております。したがいまして、その特定の水域としてきめるところの実態が、非常に大きな特定の工場があって、そこが主たるものであるというようなときには、その実情に合ったような基準のきめ方ができるのではないかと私は考えております。ただ一つ工場をつかまえるというやり方ではなくして、ある水域をつかまえて、そこについての基準をきめる、こういうたてまえでやるわけでございます。
  203. 相沢武彦

    相沢委員 その水域において一つの大きな工場がある、隣に小さな工場があるという場合に、その大きな工場と小さな工場排水量に応じた排水基準をきめていくという考えは持っていないのですか。
  204. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 先ほども申しましたように、排水量の多寡によりまして基準段階を分けておるやり方は現在でもとっておりますから、そういった形での規制が最も妥当だということが都道府県知事の判断でできますれば、そういう形のきめ方もできると思います。
  205. 相沢武彦

    相沢委員 それから、届け出制と許可制の問題できのうからやりとりがあるのですが、第六条の「都道府県知事に届け出なければならない。」というところを、認可ということにするのにどういう差しつかえがあるのか、もう一ぺん御答弁いただきたいと思います。
  206. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 この点は昨日来、大臣からたびたび御答弁をいたしておるところでございますので、私が繰り返すことになりますが、要するに、今度の届け出による規定というのは、後の変更命令その他ありまして、実際の法律上の措置といたしましては、許認可とほとんど同じような効果を十分果たし得る、こういうふうに私どもは考えております。わが国の場合の実情として、もし許可制をとった場合には、一ぺん許可しますと、それが既得権のような形になって、かえってあとの措置がとりにくいというような場合もあるのではないか、こういった議論もございました。いろいろ考えた末に、届け出制でやって、そしてその後の措置もしっかり書いておく、こういうことで運用していくことが実情に最も合っておる、こういう判断で書いておるわけでございます。
  207. 相沢武彦

    相沢委員 次に、第十二条の二ですが、「前項の規定は、一の施設特定施設となった際現にその施設を設置している者の当該施設を設置している工場又は事業場から排出される水については、当該施設特定施設となった日から六月間(当該施設政令で定める施設である場合にあっては、一年間)は、適用しない。」ということと、それから附則のところで、「この法律は、公布の日から六月以内において政令で定める日から施行する。」と、こうあります。また、都道府県知事が上のせをする場合にはさらに条例できめられて、それが施行されるまでにはさらに相当の期日を要すると思うのであります。そうしますと、この期間を執行猶予期間というように企業が考えて、基準以上の汚水を平気で排出するのじゃないか、こういう心配もあるわけです。また、これは極端な言い方ですけれども汚水を流すだけ流して、その猶予期間が終わったならば生産活動を停止してしまう、こういうようなことが起こらないための措置、手段を何か考えておられますか。
  208. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 この規定は、既存の工場があって、その工場のある施設特定施設となったという場合において、猶予期間を六カ月、場合によっては一年、こういうふうに規定したものでございます。この間において基準に合うように施設改善なり変更なりをしてもらう、こういうことを考えておるわけでございます。それで、これが長過ぎるとか、あるいはこの間にかってなことをするおそれがあるのではないかというようなお話でございますが、現実の運用としましては、現在すでに水質保全法によって、汚染のひどいようなところは大体基準を設定いたしておりますし、また今年度内にもかなりの水域について基準を設定しようと思っていま努力いたしておるわけでございます。そういう形で現在の法律による措置をいたしておきますと、経過規定によって、これは当然規制がかかっていくということになります。そういう形で、ただいま御指摘のようなおそれが生じないようにできるだけ運用してまいりたいと思っております。
  209. 相沢武彦

    相沢委員 ひとつその点の監督を厳重にして、こういったおそれが絶対起こらないような厳重な監督をお願いしたいと思います。  次に、罰則のことでお尋ねいたしますが、経済企画庁の素案から比べて今回提出法案は幾ぶん後退をしておるようでありますが、この辺の事情について簡単に御説明いただきた。
  210. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 罰則につきましてのただいまの御指摘は、おそらく経済企画庁が十月末ごろに出した素案と比較しておっしゃっておられると思いますが、この罰則でどの程度内容にすべきかということは、これはもう全く法務省の御判断によるわけでございまして、今回公害関係の法律がいろいろと出ておりますが、そういうものの比較、相互のバランス関係、そういうことを十分法務省で御判断いただきまして、こういった形の罰則内容が適当である、こういうことでおきめを願ったわけでございまして、私どもそれに従ったということで、別に後退とか、そういうことではないわけでございます。
  211. 相沢武彦

    相沢委員 経済企画庁としては、わが国と諸外国の水質汚濁に関する罰則の比較等をおやりになったことがあるかどうか。法の体系に違いがありますので、そのまま比較はできないと思いますが、その点の御見解はいかがでしょうか。
  212. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 公害関係の規制の法体系も各国それぞれまちまちでございますし、したがってまた罰則についても、それぞれの国の事情によって違いがあるのはある程度当然であろうと思いますので、単純に比較することはむずかしい、こういうふうに考えます。  しかし、二、三の例をちょっと御説明いたしますと、アメリカの場合は、大体、州法でございますが、ニューヨーク州の公衆衛生法では、流水水質基準に違反する下水あるいは汚物等の排出をいたしますと、汚染内容物の除去のための措置を命ぜられることになっておりますが、その命令にさらに違反した場合には、百ドル以上五百ドル以下の罰金もしくは一年以下の拘禁刑に処せられるということになっておるようでございます。イギリスの場合は、一九六一年河川法で規定がございますが、許可を受けない産業排水または下水流水への排出に対しましては、判決による罰金または即決裁判による百ポンド以下の罰金、大体九万円弱の罰金が課せられるということになっておるようでございます。フランスの場合は、水質汚濁防止に関する法律で規定がございまして、必要な工事、整備を裁判所が定める期間内に行なわなかった場合には二千フラン、約十二万円以上一万フラン、約六十三万円以下の罰金が課せられる。さらに、汚濁原因となる設備の使用禁止が宣告をされまして、これに従わなかった場合には二カ月以上六カ月以下の処罰が科せられる。こういったような形でそれぞれできておるようでございます。
  213. 相沢武彦

    相沢委員 先ほど申しましたように、法体系の違いから一がいには比較できないと思いますが、やはり勘として、水質汚濁に対する罰則というものは相当きびしい立場でやられていると感ずるわけであります。わが国においても、企業側に対して、こういう法律に違反した場合、あるいは改善命令を出された場合、それを実施する、あるいは早く対策を立てたほうがよっぽど安く済んだはずだというほどの高い罰金刑に処するということも一つの手段ではないかと思うわけなんです。  それで、もう一つ言いたいことは、チェコスロバキアでは、水質規制はBODあるいはSSで規制されておりますけれども、さらにチェコの場合は、負荷重、すなわち濃度と流量、つまり絶対排出量規制を行なっているわけでありますが、違反をした場合に、その企業工場排水排出量に応じての罰金が科せられるようになっている。わが国でもこういった点はある程度考慮していくべきではないか。ですから、小企業や中企業と大企業との場合、同じ違反をしても同じような罰金刑が科せられるというのでは、かなり不合理、不公平といいますか、大企業にとっては少しも痛くない。こういった総排水量に対しての罰金刑ということになると、やはり相当慎重にならざるを得ないんじゃないか、こういう感じを持っておりますが、こういう点についての御意見を伺いたい。   〔進藤委員長代理退席、委員長着席〕
  214. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 チェコの場合の事例の御指摘がいまございましたが、私どもまだそこまで十分勉強しておりませんけれども、そういった点もひとつ十分これから検討していきたいと思っております。
  215. 相沢武彦

    相沢委員 次に、中央水質審議会について若干お尋ねしたいのです。  第二十条に、「中央審議会は、委員二十人以内で組織する。」、「学識経験のある者及び関係行政機関の職員のうちから、経済企画庁長官が任命する。」とありますが、その構成割合はどういうように考えておられますか。
  216. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 これは、現在ございます水質審議会と大体同様の構成というふうに考えておりますが、現在の構成は、二十人の委員のうち、関係各省の事務次官が九人、それから水質問題に学識経験のある方々が十一人、こういう構成でやっております。
  217. 相沢武彦

    相沢委員 今回の法案では、相当権限地方自治体に委譲されて、そのために仕事も多くなるということで、都道府県にも水質審議会を設ける、こういうことで考えられたと思うのですが、従来までの水質審議会と、今回ここに載せられている中央水質審議会と、今後の仕事の量あるいは重要性、それはこれまでと同じ、あるいは地方にも水質審議会ができたといいながら、さらに重要になってくるというお考えでしょうか。その点の意義、あるいは今後の水質審議会の役割りといったようなものについて、どういうようなお考えを持っているのか、御説明いただきたいと思います。
  218. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 現在までの水質審議会の運営は、環境基準の当てはめ行為、あるいは指定水域についての具体的水質基準の決定、こういうことを仕事の中心としてやっていただいておるわけでございまして、相当の忙しさでございます。今後はそういった問題としては、一律基準という総理府令できめるもの、これをこの審議会で御審議を願ってきめなければなりません。これは相当の仕事だと思います。ただ個々の水域についての、従来までやっておりましたような作業は都道府県知事にまいりますので、水質汚濁全体についての大所高所の御意見なり御審議をいただく、そういうことになってまいると思っております。
  219. 相沢武彦

    相沢委員 公害除去の中でも、水質汚濁の防除ということは非常に大事な仕事でありまして、今後も、中央水質審議会がかなり大きなウエートを持っての仕事をするとすれば、この審議会の仕事を専門的にやる審議会員が配属されなければならぬのじゃないか。どうも各種の審議会を見ても、肩書きはたくさん持った方がつかれても、他の仕事に忙し過ぎて実質的な効果があがらないという、そういう憂いがあったわけです。そういった点で、この大事な水質審議会の会員あるいは委員に、専門的に仕事をやっていく実質的な方を配属すべきだ、こういう意見を述べておきたいと思います。  次に、都道府県水質審議会につきましてお尋ねしますが、第二十一条第四項に「都道府県水質審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める基準に従い、都道府県の条例で定める。」とありますが、私は、都道府県水質審議会は、審議権と行政権を持った水質汚濁防止対策機関のような性格を持たせるべきではないかということを主張したいのです。ということは、都道府県段階では、実際的に種々の水質汚濁にかかわる紛争事件等が起こった場合に、やはり直接意見を求められる、あるいはそれにタッチをしなければならないのではないかということが考えられます。そうなりますと、やはりこういった審議権あるいは行政権等を持った水質汚濁防止対策機関のような性格を持った機関でないと、集中的あるいは能率的な解決をはかられない、こういう考えを持ちますが、それが一点と、もう一つは、都道府県水質審議会の中には、住民あるいは民間代表を三分の一または半数を入れるということを政令で定める等のことが必要ではないかと思うわけであります。ということは、これまでのように、公害問題が起こるたびに一般市民がいわゆる大衆行動を起こしていかないと、なかなか事件の解決が促進しないというようなことではいけないと思うわけでありまして、こういうことが繰り返されてきますと、だんだん一般市民はあきてしまう、また公害に対する意識が薄れてしまう、なれっこになってしまう、こういうことでありまして、また、そういう事件のたびにむだなエネルギーを排除するという点からも、一般市民、住民の意思が絶えず反映するような制度的な保障が今後はされていかなくてはならない。こういった点から、審議会に住民代表が出ていれば、もし問題が起きて、あるいは起きそうだというときに、そうした地域の人たちの意見を水質審議会に入っている代表の人たちに訴えて、よく調査をし主張をしてもらうというようなことにすれば効果的な働きができるのではないか、こういう意見を持っておるのですが、これについてのお考えはいかがでしょうか。
  220. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 この都道府県水質審議会は水質基準設定——上のせ基準でございますが、これの設定その他、水質に関する仕事が非常に多方面にわたりますので、いわゆる公害対策審議会とは別個に、特にここに規定を置いて設けることにしたものでございます。  そこで、この審議会の運営の方向につきましてただいま御指摘があったわけでございますが、第一点の紛争処理のような問題につきましては、これは御承知のように、別途、先般成立をいたしました公害紛争処理法、これによりまして都道府県公害審査会というものがつくられまして、もっぱらそういう仕事をやっていただくことになりますので、この関係の仕事は、特にここでまた再び取り上げていく必要はないのじゃないかと思っております。  それから、この審議会の構成についてでございますが、これは政令の定める基準に従って都道府県が条例で定める、こういうふうにいたしておりますので、この政令でどういう内容をきめるかということをまだ確定的にきめておりませんけれども、私どもは、これはやはりできるだけ条例に譲りまして、各県の実情も違うわけでありましょうから、そういうところで最も適当な形での組織をつくっていただくことがいいのではないか。たとえば住民代表というような問題もございましたが、都道府県の判断でそういう方々を入れたほうがいいというお考えであれば、それでけっこうではないかと思っております。
  221. 相沢武彦

    相沢委員 いまの御答弁の中での紛争処理委員会ですか、そこの中の人たちは、やはり実際に水質に対する有識者でないと問題解決のときに困る場合があるんじゃないかと思いますが、水質審議会とそれから紛争処理のほうの委員会と兼任される場合がだいぶ出てくるのじゃないかと思いますが、その点はいかがですか。
  222. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 この点、私もあまり自信のある答弁は実はできないわけでございます。ただ、一般的な問題として考えてみますと、この公害審査会の組織委員は九人以上十五人以内ということになっておりまして、これは人格が高潔で識見の高い者のうちから都道府県知事が議会の同意を得て任命する、こうなっておりますから、重複して委員になることは別に差しつかえないのではないか、こういうふうに考えております。
  223. 相沢武彦

    相沢委員 あと最後に一言だけ長官に御質問いたしますが、二十五条に「国は、公共用水域水質汚濁の防止に資するため、特定事業場における汚水等の処理施設の設置又は改善につき必要な資金のあっせん、技術的な助言その他の援助に努めるものとする。」、これは非常に弱い表現だと思うのです。これでは実際には財政的な措置がとられるのかどうか、非常に心もとないわけでございまして、自治体に権限を委譲されて、国の排出基準を上回る基準を自治体が自由に設定して、また多般にわたる仕事もやっていく、強力な公害防止計画を立てて実施していくといっても、予算の裏づけがない権限では何の力も持たないと思うわけでありまして、この点、必要な資金の援助を行なうものとするというような強い表現の条文にできるように、長官から大蔵省と強力に折衝して、国の助成をはかるように一そうの努力をいただきたいと思います。  それからこれは提案でありますが、地域的に今後もっともっと予算をふやして、その地域はどれくらい水質汚濁が起こっているのかということを地域単位でもっと研究できるというようにしていくべきではないか。実際に地方水質審議会等を設けても、せいぜいパトロール程度で終わってしまう。もっと将来に対する資源をどういうふうに残して、どう活用していくかという地域レベルの研究というような段階にまでいかないといけないのじゃないか。もしそれが、予算がとれてそういうことが地域ごとにやっていけるようになれば、非常に効率よく効果的な将来に対する資源の確保ということもできると思いますし、またそういったデータをもとにして、これまでもありました新全国総合開発計画にかわる新しい高度開発計画もつくられるんじゃないか、こういうふうに考えるわけでありますが、その点について長官のお考えをお伺いしたいと思います。
  224. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 この二十五条は、もちろん国が援助につとめるということは当然でございますが、ここに例示をしてございますので、かえってそういう誤解を招く点もあろうかと思います。この中で、いま相沢さんがお触れになりました後段のこととこの「技術的助言」というのは特に重要な関係がございまして、率直に申しまして、私どもが今般地方に委譲いたしますについては、この技術的な点が非常に気になっております。まだ初めての地域もございますし、それからまだ十分技術的なものを用意のない県もございます。当分、われわれはそういう意味において、この技術的な助言は相当濃密に中央政府がやらないとうまくいかないのじゃないか、こういう心配も持っていますし、またしたがって相当力を入れなければならない、こういう意味もありまして、いろいろな援助をしなければならぬ中でも、特にこれをここに例示をしておるわけでございます。  ただ今後、御指摘のように監視体制をもっと整備していく。これもわれわれは、補助金も使ったりいろいろなことをして整備をしていきたいと思っておりまして、この援助の中の一つに入るわけでございますけれども、監視の体制が進むに従って、また常時監視をやっておるうちに、現場の材料というものを府県知事が手に入れることができます。そうして、手に入れたその材料をフィードバックいたしまして、今度は逆に新しい基準の設定の参考にする、こういうようなことで、だんだんとこの方面の行政も、経験を積み重ねることによってしっかりしたものになっていくということになろうかと思うのであります。  それから資金の問題は、中小企業等について、御存じのように、いわゆる現在の各種の中小企業金融機関を通じまして財政投融資の援助をすることは、これは当然でございます。そういう意味において、特にこの方面に対して財政援助の量を拡大してまいりたい。むしろ、なかなか問題なのは民間の資金あっせん、これがとかく十分でないものですから、そういうことでここに特に例示的に書きましたけれども、全体としては、財政的な援助、あるいは財政投融資による援助、あるいは資金あっせん、技術助言、各般の援助を国がやっていかなければならない、こういうふうに考えています。
  225. 相沢武彦

    相沢委員 きのうから長官は、この水濁法だけがつくられたとしても完全に水質汚濁防止ははかられない、ほかの法案と相まってまたさらに今後改善されていかなくちゃならない、ということをたびたび言明されておりましたが、河川あるいは湖沼、そうして海の死滅は人類の死滅を意味するともいわれて、非常な警告が発せられております。この水質汚濁ということは非常に大事な問題でありますし、きのうからの審議を通じて、各党とも真剣な論議を行なっての修正案もできたようでございますが、どうかより一そう内容の充実した法案としてこれを提出し、そしてその、実施を確実にはかることを強く要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  226. 八田貞義

  227. 中井徳次郎

    ○中井委員 朝来、各委員から熱心な御討議があり、また両大臣から懇切丁寧な御回答がございました。私は大体大まかなことを四、五点だけお尋ねをいたしたいと思うのであります。  その前に、昭和四十二年に公害対策基本法がこの国会を通過いたしましたときに、社会党を代表しては、私ほか三名が公害基本法を出したわけであります。それとほとんど同文同文字の公害対策基本法を、民社党及び公明党の諸君も出されまして、そうして本会議にいよいよかける、委員会を通すという段階になりまして、「自民党の諸君から異議が出ました。その異議は、いわゆる第一条である。そういたしまして、「産業との調和をはかりつつ」という文句をどうしても入れてくれ、そうでないとこの法案は廃棄にする、こういって私に迫ったのであります。そこで私はたいへん困りまして、法案を流してしまおうかどうしようかと一晩考えました。しかし、まあないよりあるほうがましである。一歩前進である。とにかく起爆剤でも何でもいいから、小さな旗でもいいからどこかに立てなくちゃいかぬというので、翌日自民党の諸君に対しまして、こいねがわくは第一条の冒頭に書かずに、項目を別にして「産業との調和をはかるものとする」ということにしてくれないか、こういう希望を申しまして、自民党の奥野誠亮君にそれを引き受けてもらいました。それでできましたのが、現在の四十二年に通りました公害基本法であります。それにつられて、各地方公害問題がぼつぼつ盛んになる。特に水俣病とか、イタイイタイ病とか、特殊なケースは全国民にとって非常にわかりやすいことでもありまするから、そういうものを中心に、過去三年間非常に大きな声になりまして、今度は自民党の諸君も、佐藤総理以下全員が、いわゆる生活優先であって企業優先という考え方を削るのだと、うことにまで踏み切られた。このことについては、私をして言わしめれば三年おそかったと思います。おそかったけれども、議会制民主主義であるし、自民党は多数でありまするから、私といたしましては、ようやくここまで早く来てくれたなという半ば感慨もありまして、そういう意味であなたと宮澤君に、きょうはまず敬意を表して——あとたくさんありますよ。しかし、おそらくいまはだめでしょう。無過失賠償責任、もう自民党は閣議で反対したでしょう。しかし、三年たてばこれはまたちゃんと通ります。私はいま大体予言をしておきますが、司法省におきまして、やはりなかなかもって——無過失賠償ということになりますると、諸外国の例もありましょうしというようなことでなかろうかと私はいま考えておるわけでありますが、とにかくそういうことで、今度はまたすばらしく十四か十五どっと一挙にたくさん法案を出してもらった。一々見ているひまがない、こういうわけでありますが、私はいま商工委員ということになっておりまするので、おまえも何かひとつ聞けということでありますから、けさから読んで、それによって過去の記憶をたどりながら二、三お尋ねをいたしたいのであります。  まず、第三条であります。こまかいことはもういいですが、三条に「排水基準は、排出水汚染状態について、総理府令で定める」と、こうありますね。これはしばしば質問になっておりましたが、一体、総理府令がいつまでにきまるんでございましょうか。法律がたくさん出ておりますが……。  私ども法案を出しましたときも、もちろん水質汚濁その他たくさんの法案がございました。ございましたが、今度は、こういうふうな画期的なものだというわけでございまするが、要は実行しないことには、しゃべっているだけではもう何にもならぬ。最近の全国の状況を見ますと、はしがころんでも公害でございまして、新聞はもう毎日毎日書いております。それで、たいへんなことでございまして、この間も、カドミウムの公害というのが東京の多摩川の上流のほうで起きた。某大会社けしからぬというので、私はローカル紙を見ましたら出ておりましたが、あくる口はそうじゃなくて、それより上流の中小企業であったとかいろんなことがございますが、要するにこれは、実行しなくちゃいけない。そこで、総理府令で定めるというその排出基準ですね、これをいつまでにお出しになるのか、大臣から御回答を賜わりたい。
  228. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 この法案では、この施行につきましては、「公布の日から六月以内において政令で定める日」とされておりますが、この施行期日までにこの基準をきめたい、こういうふうに考えております。
  229. 中井徳次郎

    ○中井委員 そうすと、半年以内にきめるわけですね。大臣、確かにだいじょうぶですか。
  230. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 これは、この法律基準がかなめでございますし、一律基準でございますから、この一律基準がないと上のせ基準もできなくなります。そういう意味において、この一律基準は必ず施行までに間に合わせなければならない、こう考えています。
  231. 中井徳次郎

    ○中井委員 非常に明快でけっこうでございます。私は異議は言っておりません。ただしかし、いよいよ実施になるというと、あの薬はどうだ、あの色はどうだ、この悪臭はどうだといって、たくさんいろんなものが出てきて、いよいよやるということになると、なかなかきまらぬのじゃありませんか。その辺のところをちょっと心配するから、私はあらかじめ念を押しておいたのですが、半年はだいじょうぶですね。
  232. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 だいじょうぶであります。
  233. 中井徳次郎

    ○中井委員 それじゃ、その問題はそれでけっこうでございます。そこで、半年というと来年の六月ですから、来年の通常国会の終わるころまでによう出さぬようなことなら、内閣は責任をとってください。こんなものようきめぬようじゃ、なっちゃおらぬ。  それから、それに関連をしまして、ほめてもおかなければなりませんが、今度は大幅に地方自治体に権限をお譲りになった。大局的にはこれは非常にけっこうだと思います。金をくれとかくれぬとか、そんなことはあとの話でよろしい。大体地方自治体、できれば私は人口十万くらい以上の市にもやはり譲るべきであると思う。特に今度は河川だけでなくて、海岸、港湾というふうなことになっています。そうしますと、一例をあげますると、静岡市はどうか知りませんが、清水市なんということになると、みんな静岡県がやるということで、ほんとうにこまかいところへ手が届くであろうかというふうな心配が私はあります。これは希望であります。将来は市にまで委譲するくらいの気持ちで、そうして住民の気持ちをひとつ推しはかってやってもらいたい。市が県と相談をしてきめるとかなんとか、こいねがわくはそういうことを入れてもらいたいと思うのであります。  そこで、四十二年にその基本法ができまして、あのときは私どもは新聞記者諸君から、中井のつくった法案はざる法だというのでさんざんな目にあいましたよ。きょうここにいらっしゃるかどうか知りませんが、さんざんな目にあいましたが、そんなことは繰り言でございますが、しかしながら、日本全体としましては、公害に対する考え方がずっと上向きになりまして、そうしてあれから相当な企業におきましても、あるいは自覚しました市町村におきましても、府県におきまても、公害対策に取り組んでおるものも相当あると思うのでございます。私は、別に明治時代の足尾銅山の田中さんの話までさかのぼって資料を出せとは言いませんが、大体、昭和四十年ごろから四十五年の今日まで、いわゆる公害対策として市町村、府県、あるいは各企業、あるいは住民、そういうものが投じた経費は一体合計でどれくらいになっているか、この点をちょっと伺ってみたいのであります。
  234. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 ちょっといま手元に資料がございませんが、調べられましたら調査をして、資料でも出したほうがいいかと思います。
  235. 中井徳次郎

    ○中井委員 私がこういうことを聞きまするのは、えらい自慢話みたいになりますけれども、私どもの県ではかなり積極的に、金額としても一千億をこえる程度のものはやっておるわけであります。ところが、場所によりましては、口先ばかりようしゃべるけれども、現実にはほとんどやっておらぬというふうな府県、市町村がなきにしもあらずというふうなことを私は考えまするので、これは通産大臣のほうがいいと思いますが、単に水質汚濁じゃありませんのですから、これはわかっておると思いますが、通産省の係の人、だれかおりませんか。大体の合計。——そんなのんきなことじゃだめだぞ。それじゃ、厚生省の橋本君なら知っておるかも一しれない。だれかおりませんか、厚生省。
  236. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 まことに申しわけございませんが、後ほどさっそく資料をつくりまして、お届け申し上げたいと思います。
  237. 中井徳次郎

    ○中井委員 そういうことではだめですよ、法案をつくるのに。ちょっと調べてごらんなさい。私は、きょう質問するというから、ちょっと電話をかけて、いわゆる皆さんがやかましくいわれる四日市について、市役所に電話をかけて聞いてみました。それじゃ参考までに御披露しましょう。四日市のコンビナート企業公害対策費用は、大協石油が七十三億九千七百万円、端数は切り捨てます。昭和四日市石油が三十三億七千二百万円、石原産業が二十三億三千七百万円、中部電力は十八億一千百万円、三菱油化が十二億九千八百万円、三菱化成が九億二千百万円、日本合成ゴムが三億円、協和油化が二億七千二百万円、三菱モンサントは一億七千五百万円、大協石油化学という子会社でありますが、これが一億五千万円、味の素が四千万円というふうに、合計百八十一億出しております。これでけっこうだというのじゃありませんよ。これは途中なんだから、こんなものでは何も安心しておるわけでは決してありません。ありませんけれども、とにかくもうかかっておるのです。これについては、もちろん通産省の係の者も経費の面その他で助成をしておるところもありましょう。しかしながら、私の聞いたところでは、そんなことをすると、またお役人がうるさいで、もうわしのところで金を出しておきますわ、という調子の者が実は多い。これはずっと見まして、私の感じでは、これは三菱系統が一番悪い。天下の三菱ともあろうものが、一番出し渋っております。大協石油なんというのは地方産業でありますが、これが七十三億も出して、例の硫黄分を、四・五%あるやつを一・七%まで低める。そのために硫黄をいまたくさん生産をしております。松尾鉱山はそのおかげでつぶれたかどうか知りませんが、とにかくもう硫黄が大暴落をして、それが結果として道路の舗装に非常に都合がいいというような逆効果も出てきている。これはもう御存じのとおりだろうと思うのです。大協石油は、ある時期には利益がなくなりました。赤字になって、配当も犠性にしてやっておる。一方、昭和四日市石油というのは一番大きいのですが、出している金はわずか三十三億、半分以下であるというふうなこと。この間、石原産業というのが、これは海上保安庁に摘発されました。それで海上に濃い硫酸を流す。硫酸というのは、海水と一緒になると中和しますわね。中和しますけれども、中和するまでの間、相当な距離がある。その距離を海上保安庁は見つけて、いま訴えており、裁判ざたになっておる。これも決して一流商社とは言えないでしょう。石原産業、これがいわゆる四日市市民の声やらそういうことに動かされて、二十三億という金を出して、この間完成しましたというふうに、実施をしておるところはもうずいぶんあるわけだ。ちょっと私は皆さんに御披露しておかねばならぬ。  それでお尋ねするのですが、こういう公害を防ぐためのいわゆる投資、そのために企業ができているわけですね。この企業が熱心山にいま売り込み競争をしておるわけだ。この点については、大体通産省ばどういうふうにお考えですか。いまそういう業者はどれくらいあって、どういう工事をやっておるか、おわかりだと思うのだが、おわかりであったら、説明を願いたい。
  238. 山形栄治

    ○山形説明員 お答え申し上げます。  現在、公害防止のための機械の生産、流通等は、重工業局で所管いたしておりますけれども公害関係の機器メーカーの現状につきましては、これは近年新しいメーカー等も非常にふえておりまして、若干正確を欠く点もあるかと思いますけれども、ことしの十月現在で、関係の工業会等を通じまして確認いたしましたところでは、現在百三十九社がこの公害機器メーカーとして活動しておる、こういうふうにわれわれのほうではつかんでおるわけでございます。  なお、若干詳細になりますが、この公害機器メーカーというのは、大部分化学機械関係でございまして、大きく分けて、大気汚染と、水質汚濁と、それから廃棄物の処理、こういうことで若干重複している面もございますけれども大気汚染が百十三社、水質汚濁は九十三社、廃棄物処理は四十四社というのが、現在の現状でございます。
  239. 中井徳次郎

    ○中井委員 やや正確なお話がありましたが、中には、旧グループのダミーみたいなものや、コンサルタントのできそこないのものやら、そういうものもあるのじゃないでしょうか。その辺の監督なり指導なりをしっかりなすっておるか、ひとつ重ねてお尋ねしたい。
  240. 山形栄治

    ○山形説明員 お答え申し上げます。  公害関係の機器メーカーに対する監督といいましても、いまお話がありましたように、なかなかこれはむずかしいところがあるわけでございますが、現在、大体半分くらいが中小企業でございます。先ほど申し上げましたように、いま新規産業の企業は数が多くなっておりますが、中小企業の数も非常に多いものでございますので、通産省といたしましては、機械工業振興臨時措置法に基づきまして、四十四年から品種をなるたけしぼりまして、品質向上をはかるという意味での法律に基づくカルテルを、現在、結成、実施中でございます。なお、いろいろなものを雑多につくっておりますと品質の向上につながりませんので、近く規格の制限の一つの取りきめを行ないたい。これは両方とも法律に基づく措置でございますが、現在このほうはいまよりより案をつくっておる段階でございます。  なお、お話しのように、機器メーカーのほうの非常に悪い点もございますが、粗悪品を流すことによって、むだな投資を行なったり、ユーザーに御迷惑をかけたりすることがいかぬじゃないかということで、通産省のほうで行政指導いたしまして、現在、関係の工業会のほうでことしの十月に、優良な公害機器の製造につとめるという申し合わせをつくりまして、ユーザー及び各県と連絡をとりまして監視機構をつくりまして、不良なる機器をつくったメーカーからはその陳述を求め、なおそれでも非常に悪いものについては、この申し合わせ全体の中から除名するというようなことで、現在百三十九社を監督といいますか、指導をしておる現状でございます。
  241. 中井徳次郎

    ○中井委員 いまの答弁で大体内容がわかりましたが、実際相当な、そう言っては悪いが、インチキなものがある。  笑い話を一つ紹介しますが、工業技術院の、もういまはやめておられませんが、馬場博士の指導によって、亜硫酸ガスの発生を防ぐために、中部電力が二十五万キロの——将来は五十万キロになりますけれども——発電所の中で五万キロだけマンガンを使って発生する煙を吸収をしまして、それから硫安を取るという試験を、これは通産省が金を出して——中部電力ももちろん出したのでありましょう。いよいよその試験に三年前にかかるということになったときに、ある日突然、三重県の四日市周辺に向かって、マンガンを使ってやると非常に有毒である、それは全然だめであるという、かなり詳細なデータをつくった投書が四日市市に三百枚ばらまかれたわけであります。ですから、しろうとはみんなそれを信用しまして、地方紙には一斉にそれが大きく報ぜられました。  私は、そういう事件が起こりますときから、前の国会でありまするから、社会党の井手以誠君が公害対策委員長のときでございましたから、よく知っておりましたので、これはおかしいなと思っておりましたけれども、新聞にどんどん出ておりまするから、どうかいな思っておりましたら、一年たったら、それは全くのうそではありませんけれども、売り込みに行ったが断わられたので、腹いせに手紙を三百通出した。東京から出してはわかるというので、飛行機に乗ったかどうか知らぬが、北海道の飛行場から投函をしておるというようなことで、結局、実験は成功しました。実験は成功しましたが、そういうことが何かあるので、もういやになってしまって、その後ずっと続けておるかどうか、私もまだ確かめておりませんが、そういう一例をとりましても、日本という国はあわて者の集団ですから、勇み足といいますか、そういうことも、十分ひとつ通産省あたりがよく監督をしてもらいたいというふうに考えるわけであります。  そこで、宮澤君が来ましたから、先ほどから言っております四日市のコンビナートの企業公害対策費のことでありますが、大協石油や石原産業や中部電力というようなところは、もちろん少のうございますけれども、まあ必死になって対策を講じておるが、昭和四日市石油というのは、一番大きなところは案外にやっていないのではないかと言ってきのうおこりました。ところが、いや煙突を高くしているというので、私はそれじゃ調べてみると言ったら、煙突を四本高くしている。百メートルが一本、百十メートルが一本、百二十メートルが一本で、合計五億三千七百万円、硫黄回収装置が一億三千九百万円とか、水添脱硫装置が十五億円とか、いろいろこう書いてきておりますけれども、実際この程度で四日市の亜硫酸ガスが減っておるかどうか。使用量はどんどんふえているのですから、たとえば〇・一七%にしても、二、三年して倍たくということになれば、もとどおりになってしまうのですから、その辺のところをもう少し——今度せっかくいろいろな法案が十四も十五も一挙に通るわけですから、これは水質汚濁委員会でありますけれども、ひとつ各企業にもやかましく言ってもらいたい。百メートルばかりの煙突では、もう間に合いません。たしかオランダでは、四百メートルぐらいの大きな煙突が一本立っているそうであります。日本は、あまり高い煙突は技術的に非常に不可能だという説明をしばしば私は聞くのでありますが、現実にそんなことはない。もっと高いものを立てられると私はしょっちゅう言っているのですが、いや、高いものを立てると、四方八方に広がるだけであって、ちっともかわらないというふうな理屈もありますけれども、その辺のところについて——これは私、市役所から取った資料でございます。きのう市長が来まして取った資料でございますが、合計百八十一億も使っているのですよ。一体、政府はどれだけこれに助成したのか。労働組合の諸君も、私どもと一緒になってやっておるのです。これは当然のことですから私は黙っていますが、海上保安庁が、たとえば石原産業を摘発しましたときには、労働組合員の各労働者が朝十時から夜十時まで二十人ばかり引っぱられて、昼めしも晩めしも食わしてもらえずに調べられたというような話もあり、東京支社にもガサが入り、大阪の本社にもガサが入ったというようなことで、それで三十三億七千二百万円使っているが、まだ盛んに攻撃されている。こういう事態は、私は皆さんの判断にまちまするけれども、こういうことも申し上げておきたいと思う次第であります。  そこで、これは言いっぱなしのことでありますが、宮澤さん来ましたので、ちょうど悪水等の関係が出てきましたので、ちょっと申し上げますが、第三条によりまする、排水汚染状態に対する総理府令というのは半年以内に必ず出すと、佐藤君にいま言い切っていただきましたので、たいへんありがたいのでございます。四日市としましては、亜硫酸ガス——これは無色無臭なのですよ。何かにおいがするから、四日市へ行ったらくさいし、亜硫酸ガスが出る、それはうそです。これは無色無臭です。今度は排水のほうですが、小さな川がたくさんございます、四日市の市内に流れ込む川ば。その川は三十年、四十年前から全くくさいのであります。悪臭であります。作業環境で発生する悪臭であります。それから色は黄色、茶色、それからときには黒い色、あるいは白いのも出る。それから、あわがいっぱい出てくるそうでございます。透視度、これは正常なものではもちろんない。大体一尺くらい下が見えるという程度でありまして、これを出しておるのはどこかということになると、いま繊維問題でアメリカとやっていらっしゃるのにはなはだ申しわけないのだが、これは谷口君の東洋紡績、それから鈍紡、東亜紡織、そういう日本の一流の紡績、特に羊毛の整毛の段階において出る。御案内のとおり、豪州からの羊毛の七割は四日市に陸揚げされます。そして四日市で整毛されて愛知県なり大阪なり兵庫県に出る、これが順序でございますが、その整毛の過程がたれ流しなのだ。これはアメリカのほうの紡績業界ではどういうふうにされておりますか、ちょっとそれを伺いたいのです。
  242. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 おそれ入りますが、政府委員からお答え申し上げます。
  243. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘の羊毛紛績会社の所在する地域は、すでに指定地域になりまして、現行の基準がかかっておるわけでございますが、現行の基準の中に色の基準が入っておりませんので、先生指摘の、いろいろの色がそのまま流れ出ておるということは、これは否定すべからざる事実でございまして、今後、技術開発その他を懸命に進めながら、できるだけ早い時期にこの色の問題を解決したい、このように考えておる次第でございます。
  244. 中井徳次郎

    ○中井委員 色にもいろいろあるが、入ってくる羊毛の整毛の段階において、まっ黒になったり、あわが出たり、いろいろ変わるわけだ。茶色もあれば黄色もある。黒もある。これはこのままほっといていいのですか。色はいいのですか。それから悪臭もいいのですか。何ともしょうがない。魚なんかももう全然住んでおりません。  それから、いま聞いたように、アメリカのほうではどうなっておるか。これはおもに、ニューヨーク、フィラデルフィアか、東のほうであるいはシカゴか、その辺が多いのじゃないかと思いますが、繊維関係。あるいは南部地帯が多いかもしれません。ニューオーリンズかもしれませんが、その辺はどういう態度をとっておられるのか、ちょっとそれを伺いたい。
  245. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 色はほっておいていいのかというお話でございまして、私ども実は、決してほっておいていいとは考えておりませんわけでございますが、そういう意味で第一条に「水質以外の水の状態が悪化することを含む。」とございまして、いずれは色ということについても対策を考えなければならない。ただ御承知のように、色というものは非常にむずかしいものだそうでございまして、技術的にどういうふうに改善することができるのかといったようなことが、まだ十分に開発されていないようでございますので、今回は、法律上こういう余地を置いておきながら、色についてどうするかということにまだ結論を得ていないというような現状でございます。  諸外国がいかにしておるのでございますか、もし知っております者がおりましたらお答え申し上げますし、おりませんようでございましたら、調査をさせていただきます。
  246. 中井徳次郎

    ○中井委員 これはさっそく調べてみてくれませんか。いま繊維問題で四つに組んでやっておるが、向こうにいい口実をしゃべってしまう、しゃべっているという状況に私は考えられてならないので、向こうだって、それはほんとうの清水にして出しているかどうか、ちょっとその辺、調べてください。
  247. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは何かデータがございましょうと思いますので、調べましてお届けをいたします。
  248. 中井徳次郎

    ○中井委員 それから、半年以内に政令を出すというのだから、そのときまでに悪臭の問題を片づけなければだめですよ。揚子江や黄河の水は、砂が入っているので何ともしょうがないが、日本の川はみんなアユが泳いでおった水なんだから、白砂青松の昔に戻すことは決して不可能ではない。そうして企業にとりましても、こんなことくらいは何でもないと私は思っております。大きな水槽でもつくって沈でんをさすとか、いまあります工場ば、私の記憶では、周辺におのおのまだ大きな余地を持っております。ですから、そういうところに水槽をつくるとかなんとかして善処する。たいした経費もかからないでできるということを私は指摘したいと思うので、どうですか、ひとつ半年以内に政令の中にやはりこういうものを入れておかないと、それは何ともなりませんよ。私は白砂青松の昔の日本の姿を返せというのが基本的な立場で、絶えず三年前から言っておるわけでございますが、それはできるのですから、こんなことはちっともむずかしいことではない。問題は科学的、合理的に、つまらぬ——つまらぬと言っては悪いですけれども、一時の感情論に走るのじゃなくて、もっと合理的、科学的な研究を徹底的にやる。  さっきも、だれか一千万円ばかりどうかこうかと言って、私は横で、一千万、少な過ぎると言ってひやかしましたが、そのことでございます。ですから、工業技術院を通産省は持っておりますが、あれをもっと規模を大きくしてやる。私は自動車の排気ガスのときに運輸省へ行きました。それはちょうどこのくらいの広さのところで、まん中へ自動車を置いてぷうっと走らせておいて試験をしているだけで、自動車一台しかないというふうなところで排気ガスがどうのこうの言っても始まらないじゃないか、ということを言ったことがありますが、こういうことは何でもないことです。科学的に合理的に考えていけば、何でもないことです。ここの委員長さんがよく知っていますよ。水俣の水俣病ですね、あれは無機水銀や、こういってみんな言いよった。無機水銀だけれども、人間が食べたら一ぺんに有機水銀になるのだという落とし話みたいなことですね。そういうようなことさえわからぬようなことでは何ともなりませんので、私はこんな色ぐらいは片づけてもらいたいということを特にお願いしますが、いかがですか。
  249. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 今度の水質汚濁防止法案で初めて色という問題を対象にいたそうということにしたわけでございまして、これについては現在技術的に開発が進んでおるわけでございまして、先ほど二、三の事例を申し上げましたが、そういった処置が行なわれているものがございますけれども、しかし、これはいままで取り組んでないというものでもございますので、どの程度のところに基準を置いてやるべきかということば、まだ今後かなり議論が要るだろうと思います。したがいまして、この色についての基準というようなものは、先ほど総理府令ということを申し上げましたけれども、この点については、もう少しやはり時間をおいて十分色の実例その他を考えてきめなければならない。もちろんその間において、技術開発その他を急いでいくということはつとめなければならないと思いますが、そういうふうに現在考えておるわけでございます。
  250. 中井徳次郎

    ○中井委員 宮崎君、気の毒だけれども、それは反対だな。そんなにせぬだって、こんなものくらい解決できるだろう。半年もあれば、私はさっき言うたように、半年できめるというのだから、これくらいのものは解決ができる。  それから府県が国の標準よりも上のせをするということを言われました。たいへんけっこうです。これは土地によって違いましょうし、あるいは観光地等におきましては、ほんとうに清水でなければいけない。私のくにのことをたびたび申して恐縮ですが、伊勢の大神宮の五十鈴川などは、原水そのままの流れをずっと持っていきたいものだと考えておりますが、あの上流にもやはり人家があります。私の選挙区じゃありませんが申しますが、人家があります。高麗広という村であります。最近豚を飼ったり鶏を飼うなんということになりますと、多少の心配はある。そういうふうな小さいことまで手の届くようなことにするためには、冒頭言いましたように、府県だけではなくて、人口十万以上くらいの都市まで下げてもかまわぬのじゃないか、という考え方さえしておる次第でございます。  そこで私の立場から、いまの日本の川のうちでひどい川は一体どこだ。先ほどから石狩川の話もありましたけれども、やはり私は東京は隅田川、それからその南にあります神奈川県との境の、この間からカドミウムを出しておるあの川、それからさらに西に行きますと、名古屋の河口にどろどろの中川という川があります。それから西に行くと、大阪淀川はまだいい。その支流であります安治川、南へ行った大和川、奈良から流れておるわけであります。佐藤総理は古跡を見に行かれたりしましたけれども、流れておる川がひどいことでありまして、大和川がひどい川になっております。神路川というのもたいへんひどうございます。それからずっと西に行って洞海湾、大牟田川、こういうふうな、先ほど言ったような、四日市の悪臭どころじゃないひどい川がたくさんあると思う。  そこで、私は一つにしぼって、隅田川のことを聞いてみたいのです。この隅田川に悪水を流しておる中小企業や大工場、あるいは各家庭からの下水がありますが、そういうものを隅田川に流しておる事業体は、全部で大体どれくらいございますか。
  251. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 御指摘のように、隅田川の汚染は非常にひどいわけでございまして、ここに汚水を流す工場事業場等は、御承知のように、荒川下流から、特に江東地区等を中心とした中小工場、こういうものが主体でございますが、具体的に工場事業場の数が幾らであるかというのは、いま手元に資料がございませんけれども、御承知のとおり、この江東地区等の中小工場等は、東京都が数年前から計画的に分散をやっていこうということで、近県の団地等に分散が逐次進んでおります。そういったこととも相まちまして、排水規制を行ない、さらに下水の整備をやる、また河川のしゅんせつもやっていく、こういう形でひとつ環境基準の達成にこれからつとめてまいりたいと思っている次第でございます。
  252. 中井徳次郎

    ○中井委員 わかっておられるのにお返事がなかったのではないかとも思うのですが、私が三年前に尋ねましたときには、東京都の調査によれば、隅田川に悪水を流す工場その他は、全部で四千七百か八百であったと私は聞いておる。そのうち、いま言われましたように、鉄鋼団地のように南に行ったものもあるし、方々に分散をしましたので、いまはどれくらい残っておるかということを私はお尋ねしておるわけでございますが、それはいまどのくらい残っておるか。また、ふえておるのか。たとえばお茶の水ですね、それから神田川の周辺なんか、一体どうなっているのか、わけのわかったものじゃない。口先ばかりべらべらしゃべったって、四千七百か八百あるものを具体的に一つずつとらまえていって、こう直せ、ああ直せしていかなければ片がつかない。河野さんが建設大臣のときに、オリンピックの前で、急いで荒川から水を流してようやく使用したというような、そんな火事場どろぼう的な、一時を糊塗する——それもおやりにならぬよりはけっこうなことでございました。けっこうなことですが、お済みになると同時に、やはりその基本的なことをお始めにならなければいかぬと私は思うのです。東京都自体は、私の長い体験からいいまして、金がないとは言わせない。去年あたりも一兆一千億円を突破している。一体幾つあるんだとか、何をしているんだとか、統計ばかり何十回言っておったってしょうがない。現実にどういう公害をなくするという仕事を東京都はやっておられるか、それを聞かしてもらいたい。これはわかっておられるはずです。
  253. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 東京都の公害対策といたしましては、御承知のとおり、都の関係部局が協力をいたしまして、昨年シビルミニマムということで三年間の長期計画を立てております。この公害対策でどの程度のことをやるかということを相当詳細にきめたわけでございます。この内容については、もちろんわれわれも勉強いたしておりますが、別途のこの公害基本法による公害防止計画というものをつくらなければなるまいということで、現在、東京都の中で作業が進んでおるはずでございまして、おそらく来年度くらいにはこれが正式にきまって内閣総理大臣の承認になる、こういうかっこうで、そこで政府も含めました正式の公害防止計画というものがきめられていく、こういう作業段階であると承知しております。
  254. 中井徳次郎

    ○中井委員 私も、最近両国橋か永代橋か、あの辺を通ってみましたが、やはり相変わらずくさくて、もうここ五年ほど川開きもやれない。なぜ川開きがやれないのだと言ったら、いや、くささと関係がないんで、周辺の堤防の高さがどうやこうやと言うから、ばかやろうとぼくは言ったのですよ。どういうわけですか、ぐずぐずしてそれを直さない。お茶の水の神田川その他が隅田川に注いで、いるかなり上流に支流があります。相当大きな支流です。その沿線が一番ひどい。私も二回も五年ほど前に見ておるのです。それがいま五年たってそのままじゃ何ともならぬ。一体何をしておるのか。人間ばかりたくさんおったってしょうがないじゃないかというふうな感じ。  それからついでに申し上げますが、その当時、一番公害を出す、悪臭あるいは有毒なものを出すというのは米俵でありました。これを、東京都でありまするから、一日に何百トンも使うわけでありますが、米俵から馬ふん紙を製造しておる。この馬ふん紙を製造しておる会社が十三社ばかりありまして、それが一番悪臭を流すということでございました。それも記憶しておる。しかし、それは五年たった今日、もう俵がなくなりまして袋になりましたから、この工場はおそらくよそへ行ったと思うのです。それはたいへんけっこうなことでございますが、そういうことを私でも覚えている。今日もう五年たって隅田川を通って、まあ最近少し魚がおったとか、だれやら行って釣りをしたら釣れたといって大きく新聞に出ておりましたが、そんななまちょろい話をしておったってしょうがないわけです。ひとつ大いに、これは佐藤さんの領域だと思いますが、半年たって法案が通ったら、しりたたいて——私は東京都に金がないとは言わせないと考えています。市町村によりましては金がないところがたくさんありますが、東京都はあるんじゃないか。ないという理由もありますよ、理屈もありますけれども、何にも優先してやるというのだから、やったらいいじゃないかというふうに思う次第であります。これを強く要望しておきます。まるで四年間遊んでおったような感じを私は持っておる。  それからもう一つ、これに関連して最後に聞いておきたいのですが、この水質汚濁を直す。直したら水がきれいになる。しかし、下のどろをどうするのか。たとえばヘドロですね。何十年たまっているどろをかい出す。これをしなければ、ほんとうの清水になるまいと思います。これをくみ上げるにはたいへんな労力もかかりますし、経費もかかると思うのでございますが、こういう点については、どういうふうに政府としてお考えでございますか。最後にこれだけお伺いしておきます。
  255. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 河川法に基づく、あるいは港湾法に基づくしゅんせつ工事をどういう規模で行なうかということでありまして、これは今日の公害問題とあわせて考えましても、今後、公共事業投資の中でも非常に努力をしなければならない問題になってくる、そういうふうに考えております。
  256. 中井徳次郎

    ○中井委員 それはけっこうや。そんな答弁要らぬわ。全国的にそういうものをやるにはどのくらいの経費がかかるかということを聞いておる。調べてみぬとわかりませんか。
  257. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 建設省におきまして都市河川整備事業という形でこの問題を取り組んでおりまして、川ごとにそれぞれ計画が立てられております。いまちょっと手元に資料を持っておりませんけれども、これは治水五カ年計画という形で、それぞれ事業量等もきめられておるはずでございます。
  258. 中井徳次郎

    ○中井委員 どのくらいか、経費を聞きたいんですがね。それじゃ、いまわからなかったらあとでもけっこうですから、一体どれくらいの経費がかかるか。ヘドロを取ってきれいにして、あるいは新しい陸地もそのためにできるかもしれません。問題は、もっと科学技術をフルに運用して、そうして経費を惜しまずにやって——惜しまずにやるということは、私は高くかかるということと別だと思うのですよ。何も心配しなくったって、そんな大金がかかるはずがないというのが、私の基本的な実は考え方でございます。いなかでは出合いということを昔からやっていますが、道路なんか、その点きちっと整備しているということでございます。そういうわけにもいきませんでしょうが、しゅんせつなんて、そんなむずかしくも何ともない。経費もたいしたもんじゃない。その概算もいまだに計算されておらぬということは、非常にさびしいことであるというふうに考える次第でありますが、いかがですか、大臣の御所見を伺っておきたい。
  259. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 河川については、先ほども説明がありましたように、一定の計画を担当省である建設省が持っておりますが、いま私も具体的な数字を申し上げることはできません。やはりしゅんせつで一番問題なのは、私は投棄の方法と投棄の場所だと思います。これは今後相当の問題になってくる。やはりそこいらのところは、もっと将来科学的にも計画的に検討しなければならない。でありますから、一部でもってきれいになっても全体としてきれいになるかという問題になりますと、いろいろ問題がございます。この間も大牟田川でしゅんせつ工事をしようとしましたところが、下流のノリの養殖業者が、変にしゅんせつなんかしてもらっちゃ困る、汚泥をいたずらにかき回してもらったんでは迷惑だ、こういうようなところもありますし、なかなか具体的な問題にはむずかしい問題がありますけれども、しかし、どうせ早晩この問題にくるわけでございますから、われわれとしてもなお建設省等にも特段の要求をしまして、この方面の事業の整備が進むように、予算措置その他においてもできるだけわれわれも応援したい、こう思っています。
  260. 中井徳次郎

    ○中井委員 おっしゃるような話がありますが、それはみんな徹底しないからです。大牟田川をしゅんせつして海に持っていって流そう、そんなことを言うからノリ業者から反対される。ずっとシナ海のまん中辺まで行くとか、そういう思い切ったことをやらぬからです。  この海洋投棄の問題は、御案内のとおり、私はいつも言いますが、山本五十六さんが海軍中佐でアメリカ駐在武官のときからの問題なんです。日本側出席者、山本五十六海軍中佐が出ているんだ。それを、さきおととしまで運輸省がほったらかしておる。重油の投棄もほうっておいた。そこで、少なくとも海岸から五十キロないし六十キロ離れてそれを投げろ。その前の年に逗子や鎌倉の海岸がべとべとになったことがあるでしょう。あれから調べてみましたところが、運輸省が怠慢であった。ことにいわゆる海運関係だ。それで、怠慢であった、けしからぬというので、それを私どもが言い出しまして、その翌年に通った。通ったけれども、摘発しないのだ。そうして私に言わせると、変なことばかり摘発する。きのうも愛知の某代議士から質問がありました。海洋投棄すべきものを伊勢湾の中で汚物を投棄しておる。それから春日井という市の市長の汚職事件にまで発展した。春日井の市長というのは、社会党です。社会党であろうが、自民党であろうが、共産党であろうが、悪いやつは悪いので、断固やれと私は言っておるのです。海洋投棄ですね。それはもうわかり切ったことなんです。川崎へ行ってごらんなさい。あのくさいところ、それはもう問題になりませんですよ、私どもの出身県なんかに比べて。それが何十年の歴史で、みんなそんなものだと思っておる。それを今度改めるのですから。  私は、海洋投棄なんというのは、いま大牟田の事件はちょうどいい例だと思いましたから申し上げるのですが、それは福岡県のやったのは、海上保安か何か知りませんが、福岡なんか、大牟田川をちょっと掘ってまいって、ノリのそだのところへ投じておっては、それはおこりますよ。だからもっと徹底した対策を講じてもらいたい。そうしましたら、そう長いこと待たずに、前の経企庁長官の菅野君が、昭和六十年には日本が公害なんか一つもない国になる、と言って私にたんかを切ったことがありますが、そうなりますかねと思いましたが、しかし、これはおそいよりも早いほうがいいのです。先ほどから伺っていますと、汚物関係は昭和六十年までかかる、五十年は三六%だとか四〇%だとか、そんなテンポでは、私はおそいと実は思います。  きょうは時間がございませんから、もう六時にもなりましたので、この程度にしておきますけれども、思い切ったことをやっていただく。その思い切ったことは、金額ではありません。私はやはり行動だと思います。どうぞそういう点を十分峻厳にやってもらいたい。自動車の排気ガスの問題とかああいう事故というのも、みんなそうでございまして、われわれ国会議員の仲間では四年前から、排気ガスの問題についてはロサンゼルスはたいへんだ、いまに日本にも来るからというので、いろいろな議論をしておりますからして、皆さん、どうぞ三年前の速記録でも、係の者にもう一ぺん読ませてください。そうしたらもっとはっきりすると思います。どうぞ今回の法案、十四本ありますが、大体において国が積極的に取り組むようになった。大筋においては、私は何も反対ではございません。しかしながら、無過失責任の問題とかいろいろな問題はありましょう。それは、党と党との関係でいろいろ意見のあることも私は知っておりますが、その点まで、あえてきょう私個人が触れようとは思いません。  以上で大体質問を終わりますけれども、どうぞひとつ思い切った考え方に、あなた、まだ若いのですから、転換をしてもらいたい。  以上のことをお願いしまして、私の質問を終わります。
  261. 八田貞義

    八田委員長 次回は、明十日、午前十時理事会、午前十時半委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時三分散会