運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1970-12-08 第64回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十二月八日(火曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 加藤 清二君    理事 小山 省二君 理事 始関 伊平君    理事 古川 丈吉君 理事 山本 幸雄君    理事 渡辺 栄一君 理事 島本 虎三君    理事 岡本 富夫君 理事 寒川 喜一君       伊東 正義君    伊藤宗一郎君       木部 佳昭君    久保田円次君       葉梨 信行君    浜田 幸一君       林  義郎君    藤波 孝生君       松本 十郎君    森田重次郎君       大原  亨君    佐藤 観樹君       佐野 憲治君    土井たか子君       平林  剛君    古寺  宏君       松本 忠助君    西田 八郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議官      城戸 謙次君         中央公害審査委         員会事務局長  川村 皓章君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         経済企画庁審議         官       西川  喬君         大蔵政務次官  中川 一郎君         厚生政務次官  橋本龍太郎君         厚生省環境衛生         局公害部長   曾根田郁夫君         農林大臣官房技         術審議官    加賀山國雄君         食糧庁長官   亀長 友義君         水産庁長官   大和田啓気君         通商産業政務次         官      小宮山重四郎君         通商産業省公害         保安局長    荘   清君         通商産業省重工         業局長     赤澤 璋一君         通商産業省公益         事業局長    長橋  尚君         運輸省鉄道監督         局長      山口 真弘君         運輸省自動車局         長       野村 一彦君         自治政務次官  大石 八治君  委員外出席者         内閣官房内閣審         議官      植松 守雄君         法務省民事局参         事官      味村  治君         経済企画庁国民         生活局参事官  山下 一郎君         法務省刑事局刑         事課長     前田  宏君         農林省農政局参         事官      岡安  誠君         食糧庁次長   内村 良英君         運輸省自動車局         整備部長    隅田  豊君         建設省都市局参         事官      石川 邦夫君         日本国有鉄道施         設局保線課長  村山  熙君     ————————————— 委員の異動 十二月八日  辞任         補欠選任   土井たか子君     大原  亨君   藤田 高敏君     佐藤 観樹君   川端 文夫君     西田 八郎君 同日  辞任         補欠選任   大原  亨君     平林  剛君   古寺  宏君     松本 忠助君   佐藤 観樹君     藤田 高敏君 同日  辞任         補欠選任   平林  剛君     土井たか子君   松本 忠助君     古寺  宏君     ————————————— 十二月七日  光化学スモッグ等大気汚染追放に関する請願  (小林政子紹介)(第三五号)  同(寺前巖紹介)(第三六号)  同(土橋一吉紹介)(第三七号)  同(不破哲三紹介)(第三八号)  同(松本善明紹介)(第三九号)  同(米原昶紹介)(第四〇号)  同(青柳盛雄紹介)(第四一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  公害対策基本法の一部を改正する法律案内閣  提出第一二号)  公害防止事業費事業者負担法案内閣提出第一  七号)  騒音規制法の一部を改正する法律案内閣提出  第一四号)  大気汚染防止法の一部を改正する法律案内閣  提出第二三号)  環境保全基本法案細谷治嘉君外七名提出、衆  法第一号)      ————◇—————
  2. 加藤清二

    加藤委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  理事会で御協議いただきましたとおり、内閣提出公害対策基本法の一部を改正する法律案、並びに細谷治嘉君外七名提出環境保全基本法案について、明九日午前十時より参考人出頭を求め、その意見を聴取したいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 加藤清二

    加藤委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  なお、参考人人選及び出頭の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 加藤清二

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ————◇—————
  5. 加藤清二

    加藤委員長 内閣提出公害対策基本法の一部を改正する法律案公害防止事業費事業者負担法案騒音規制法の一部を改正する法律案、及び大気汚染防止法の一部を改正する法律案、並びに細谷治嘉君外七名提出環境保全基本法案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。葉梨信行君。
  6. 葉梨信行

    葉梨委員 私は、公害防止事業費事業者負担法案を主として伺いたいと思います。  最初に、昭和四十二年に基本法ができましたけれども、基本法の第二十二条に費用負担方法については、別に定めるという規定をしたわけでございますが、それから三年半もかかってやっと負担法案が提案されたという理由をまず伺いたいと思います
  7. 山中貞則

    山中国務大臣 これは政府の怠慢といえばそれだけのことばに尽きるかと思います。しかし、さらに具体的にいいますと、企業負担を定める場合、別の法律をもってしなさいということを二十二条で要求いたしております。  内容について、たとえば負担させる額の算出方法というものが書いてあります。そうすると、算出する方法を政令にゆだねないで法律で書き込まなければならない。ここに、一部ではそういうことを不可能でありますということばさえ聞けたほど非常にむずかしい問題がありましたし、例のいわゆるなわ張り争いと申しますか、役所の厚生通産等を中心とするそれらの意思の統一がなかなかされなかったというところ等にも問題があったと思います。しかし、私が担当する大臣となり、あるいは公害対策本部が設けられたことによって、それぞれの各省の意思の調整並びに算出方法、額について、法律に書き込めるのではないか。いわゆる書き込むための作業というものが急速に進んだわけであります。そこで手元に出したような法律ができ上がったわけであります。もし対策本部ができないで、あるいは公害担当大臣ができなかったら、おそらくまだ今国会にも、この費用負担法提出できないほど実はむずかしい内容のものであっただろう、そういうふうに考える点もあります。
  8. 葉梨信行

    葉梨委員 副本部長の御苦心のほどを伺ったわけでありますが、内容につきましては後ほど質疑をさせていただきたいと思います。  まず、(定義)の中に防止事業対象を書いてございますが、緩衝緑地あるいはヘドロその他の河川、湖沼、港湾等公共水域におけるしゅんせつ、導水事業、それから汚染農用地客土事業公共下水道、この四つをうたっているわけでございますが、私はこのほかに植林であるとか、あるいは住宅工場学校移転であるとか、あるいは工業用水道等もつけ加えるべきではなかったかと思うのであります。昨日の当委員会における質疑におきまして、山中総務長官から、住宅等は入れるべきだという御答弁がございましたが、その他の特に工業用水道についての御所見を承りたいと思います。
  9. 山中貞則

    山中国務大臣 学校移転住宅移転等については、きのう答弁したとおりでありますし、工場移転は現在の税法の特例として残っている事業用買換資産特例の適用によって、意思さえ決定すればそれは行なわれることであるということを申し上げました。  さらに、植林については、緩衝緑地というところで読んでいただければいいので、明らかにこれは植林事業でありますから、そのつもりで公害関係のない植林までやるわけにいきませんので、そういう意味では植林は入っていない。  さらに、これもきのう答弁いたしましたけれども、工業用水道については、どの業者がどの程度使用するかが初めにはなかなか推測しにくいし、また、それを、先行投資費用を先に負担させるということもなかなかなじまない点もありますので、まずこれを公共事業でつくったならば、それを利用料金等によって、それぞれの工場工業用水道に対する利用度は明確に出ますので、その利用度に応じた応分負担をさせるほうが、思想的にも、あるいは体系上も正しかろうということで、費用負担法対象にしておりませんが、工業用水道がつくられれば、当然、それを利用するものはそれに対して応分利用料を払うという仕組みのほうでいきたいと思います。
  10. 葉梨信行

    葉梨委員 防止事業につきましては、現に公害が起こっている地域に対する事業と、これから起こるであろう地域に対する事業とがありますが、むずかしいのは、これから起こるであろう地域に対して防止事業を行なった場合に、どうやって事業者負担をさせるかという問題だろうと思います。その点についてのお考えを伺いたいと思います。
  11. 山中貞則

    山中国務大臣 いまの質問は、事業者に対する負担のさせ方ですか。
  12. 葉梨信行

    葉梨委員 現在起こっているものについては測定ができるわけでございますが、これから公害が起こるであろう地域防止事業を実施した場合に、どうやって企業負担をさせていくか、企業に割り当てていくかという問題です。
  13. 山中貞則

    山中国務大臣 これは二とおりあると思います。ということは、当然そこに立地することが予定されている企業、それも負担対象となるということで、一つ防止効果が出る。  さらに、いま一つの点は、グリーンベルトもしくは大幅な緩衝街路、場合によっては、水を引き込んで運河みたいに隔絶するというようなこと等は、明らかに、公害が発生する以前の状態を保つために、防止施設よりか前に防止事業としてこれを取り込んでいくのだという思想ですから、いま言われたことに対しては二とおりの対応策があるということだと思います。
  14. 葉梨信行

    葉梨委員 この第二章の、「事業者負担総額及び事業者負担金」の項を読んでまいりましてまず感じることは、ヘドロ公害の場合は一〇〇%その原因者負担するように規定されておりますが、その他の場合については、私が読んだところでは、その地域を汚染している、公害をまき散らしている企業がかりに一〇〇%責任がある場合でも、幾らか国あるいは地方自治体負担をするというように読めたわけでございますが、私は、それはちょっと不合理だと思うのです。その点はどうお考えでしょうか。
  15. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、防止施設そのもの企業の責務において三条に明確になっておりますし、それを受けて、この費用負担法は、企業全額を持ってやるのが原則です。しかしながら、公共事業として行なわなければならないようなものについて企業負担もさらに定めます。その場合の原則、大前提はやはり企業負担である。したがって、全部が一〇〇%になじまないことは、たとえば緩衝緑地一つ考えても、これは、企業が、緩衝緑地がなくても、完全に防止施設を整えれば公害は出ないはずなんですが、それでも出るおそれがあるということならば、事前に住宅街その他と隔絶をしておくグリーンベルトの設置が必要であろうというようなことについて、企業側もそれについて応分負担をすべきであるということになるわけですから、したがって、それぞれの柱ごと負担基準を定めておるわけで、これを全部、すべての事業について一〇〇%負担させるということを前提にしますと、今度は、公共事業として行ない得る範囲がごくわずかになりますから、それではやはりまずかろうと思うわけです。
  16. 葉梨信行

    葉梨委員 そうしますと、一〇〇%企業責任がある場合には企業に全部負担させるということでございますね。  そこで、この第二章をずっと読んでまいりますと、まず負担総額をきめて、それから、あるプロセスに従って事業者負担金をきめていくわけでございますが、このきめていくプロセスが、具体的に、実際問題として非常にむずかしいと思うのです。そのきめ方等について御説明願いたいと思います。
  17. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、まず国のほうがよって立つべき基準を示しておりますから、その基準参考といいますか、ものさしにしながら、その都道府県やその地域における特異な態様、あるいはその特異な態様に対する会社関連のしかた、度合い、そういうものが異なりますので、それらの問題は、施行者である地方公共団体の長が設けられる審議会にはかりつつ適正なる率を定めていくという仕組みになるわけであります。
  18. 葉梨信行

    葉梨委員 まず、事業者の側に立って考えてみますと、国、地方公共団体負担すべき額と企業負担すべき額がきまるわけでございますが、その場合に、事業者が複数の場合があります。そういう場合に、事業者団体を設立させて、その団体と国または地方公共団体話し合いをするというような措置をとる必要があると思いますが、いかがでございましょうか。
  19. 山中貞則

    山中国務大臣 そのとおり法律に定めてございまして、したがって、それらが共同で一括納付を申し出る場合には、その時期なり、あるいはその分担の内容なりを明確に示したものを提出して施行者の許可を得るということになっておりますから、御主張のとおりだと思います。
  20. 葉梨信行

    葉梨委員 それから、その額についてなかなか話し合いがつかない場合に、第三者不服裁定機関と申しますか、何か第三者機関裁定しなければならぬ、話がつかぬというような場合もあるかと思いますが、そういう機関をおつくりになるお考えはございますか。
  21. 山中貞則

    山中国務大臣 話し合いがつかないという場合は、その企業がその地域自治体の長あるいは地域の有識者で構成される審議会委員、そういう人々あるいは周囲の世論等によって、自分たちの引き起こした公害に対する応分企業費用負担を渋る企業であるということになると、逆に、地域の社会のよき隣人としての評価を問われる、そういうことは企業もおそらく避けるという心理はもう現代では確立していると思いますから、そういうような裁定機関までつくって、従わない場合もあり得る、だから従わなくてもいいんですよと逆に開き直られるような根拠は必要ないと私は考えまして、法律の中に、この負担不服のある業者があった場合には、これをどこかほかのところでさらにさばくという方法はとっておりません。これはもう大体話し合いできめるものでありますから、そのよって立つ基準を踏まえて地方できめていただければ、その残りについて国と地方公共団体負担をするという仕組みでいけるものだと私は考えております。
  22. 葉梨信行

    葉梨委員 そうしますと、審議会にそういう役割りもさせるというお考えでございますね。
  23. 山中貞則

    山中国務大臣 審議会は、不服審査その他の事柄を所掌するというつもりはありません。すなわち、審議会の議を経て施行者が定めるのである、それに対して業者不服だと言ったら、その自治体の長だって黙ってはいないでしょう。そうすると、やはりその企業自身の立地の問題が、営業を続けていく問題がそこに出てまいりますから、やはりそういう反社会的な行為というものは、今日企業はとれなくなっている。そういうことを考えていますので、その審議会には不服審査裁定というようなことは考えておりません。
  24. 葉梨信行

    葉梨委員 私は、現在の企業公害に対してふまじめな態度をとったり、拒否する態度をとるということは考えられませんが、お金の問題でございますから、やはりAの会社とBの会社があって、自分会社のほうが少しよけいじゃないかとか、いろいろそういう問題は当然起こると思うのです。その起こるべき問題に対しては、やはりしかるべき機関をつくるなり、あるいはこの審議会においてそういう役割りもさせることが必要ではないか、精神論だけではいかないというように考えますが、いかがでしょうか。
  25. 山中貞則

    山中国務大臣 いままでの緩衝緑地等は、建設省都市計画として、都市施設の一環として仕事をやってきておりますね。これは業界のほうは寄付金という形で応分負担をやはりしています。したがって、問題は、中小零細企業等に対する配慮等が必要だと思いますので、その点は法律の中にも、念のために、負担金そのもの中小企業については配慮せい、税制金融ばかりではないぞという特異なことが書き込んでございますので、これを、では配慮のされない企業といえば中小企業以外ですから大企業である。そういうようなわがままを押し通せるかどうか。これはもしそういうケースでも将来起こるという場合には、あらためて私たち考え直さなければならない。いわゆる日本企業というものの姿勢は、過去に論ぜられたような形で依然として残るのだということであれば、さらにきびしい態度を国がとる必要があろうと思いますので、そこらのところは、いままでにやっておるもの等を見ると、負担というものについては寄付金の形であっても案外応じておるようだ。だから今回も、あるいは最近の田子の浦等の例でも企業側負担全額させられることについて文句を言うとか、反対するとかいうことはありませんで、やはり中小零細企業への配慮であったように体験としても記憶しておりますので、やってみて私はそう不安なことはないと考えております。
  26. 葉梨信行

    葉梨委員 そうしますと、審議会意味というのは非常に重大だと思いますが、審議会の決定に権威を持たせるために、審議会委員人選等は非常に慎重にやっていただかなければいけないと思います。大体どういう方々をメンバーとして予定しておられるか、それから審議会のそういうメンバーをいつまでにおきめになるおつもりであろうか、そこら辺をお伺いしたいと思います。
  27. 山中貞則

    山中国務大臣 これは中央で、こういう側の代表が一人、こっち側の代表が一人というふうにきめませんで、地方において必要な構成をもってつくっていただきたい、こういうことでございます。でありますから、たとえば地方におけるいろいろな知事姿勢には千差万別ありますから、悪いのは企業との癒着もある場合にはあるかもしれません。今度は反対に、敵みたいに非常にきびしくする知事もおるかもしれません。これらのところもありましょうから、直接利害関係者の、いわゆる企業負担するはずである企業代表みたいなものが委員になったりなどすることは好ましくないとは思いますが、これらのものは地方のそういう構成にゆだねますし、さらに今回は多くの法律を出しましたので、本来ならば、それぞれの法律について、地方審議会を設けなければならないことに法律のたてまえはなるわけです。しかしながら、これはやはり行政簡素化意味から、一つだけ、水質審議会だけは中央にもございますし、新しくつくるものでないということで、地方水質審議会だけは別にいたしておりますが、原則として都道府県段階で必置制となる公害対策審議会にそれを全部たばねて、その中である場合においてはそれらの人々各種法律の中をそれぞれ検討してもよろしゅうございますし、場合によっては企業費用負担部会みたいなものをおつくりになっておやりのこともけっこうだし、地方に非常に自主性を持たせて運用したいと考えております。
  28. 葉梨信行

    葉梨委員 ぜひそのようにしていただきたいと思います。  第四章「雑則」の十六条に、中小企業者費用負担に対していろいろ金融税制上の必要な措置を講ずるというふうにうたってございますが、もう少し具体的に、総理府総務長官として、ここら辺までめんどうを見てやりたいというようなお心づもり等を伺いたいと思います。
  29. 山中貞則

    山中国務大臣 総理府総務長官としてはちょっと私答弁できないわけですが、公害担当大臣もしくは公害対策本部本部長として答弁いたします。  まず十六条の二行目ですね。二行目の「事業者負担金納付」というところで配慮考えられるのは、たとえば延納あるいは分割納付ということが考えられると思いますね。それから金融税制上必要な措置という場合等については、特別償却等を三分の一を二分の一ぐらいに中小企業はできないか。こうなると、実質の償却は七割になると思うのです。あるいは損金算入ということはもう大蔵大臣も答弁しましたから、これは最終的に詰めてなかった段階ですけれども、大蔵省も踏み切ったと思いますから、そういうものの措置、あるいは特別下水道関連負担金等なんかに関連しては一時償却というようなことができると、そういう特別下水道等については中小企業者も非常に助かるだろうと思うのです。実際は、現在たとえば二十八年間の繰り延べ費用みたいになっておりますので、それでは中小企業の場合はちょっときついだろう。そういう場合の一時償却考えられないかという点等を、今後大蔵省と詰めてみたいと思っております。
  30. 葉梨信行

    葉梨委員 副本部長のお心づもり、ぜひ実現していただきたいと思いますし、それから大蔵省との詰めについても、積極的に熱心にひとつお願いしたいと思うわけでございます。  その次に伺いたいのは、こういう公害防止事業を行なって、その効果をどうやって判定するかという問題でございます。公害防止事業がスタートして、そのときに大体予測をしてスタートするわけですが、その後の経過については、毎年結果がどうだったというようなことの判定を行なわれるのかどうか。  それからもしも効果が著しく出なかった場合、また新しく多額の費用をかけて防止事業をやらなければならぬという事態も、万一起きないとは限りませんので、そういうときにどういうように費用負担等をさせていくか、こういう問題についてお伺いしたいと思います。
  31. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、企業者はまず全額自己費用負担でもって防止施設を完備する。そしてその規制基準というものを守らなければならぬ。もし守らないと、今回は直ちに直罰でいきますよということが一方で新しいものとして登場してきております。  さらに、たとえば緩衝緑地等をつくった場合に、それでもって完全に緩衝緑地住宅街その他と遮蔽できるのか、効果はどうなんだというと、これはまた風向きや、風の強さや、あるいは煙突の高さや、いろいろなもので違ってくるでありましょうから、個々のケースはあると思いますが、この公害防止事業費事業者負担金というものは、そういうものを効果あらしめる、すなわち防止事業として防止できる性格のものとしての事業を予定しておりますから、われわれはそれで公害防止できるための事業である、こう割り切っておりますので、これがもし防止できなかったらということについては、いまのところちょっと考えておりません。  しかし、この施設ができても、今後は都道府県知事が大体において常時観測あるいは規制、そういうことになりますから、そういう公共事業として国も負担をしながら行なった事業効果がないということは、いまのところちょっと考えておりません。
  32. 葉梨信行

    葉梨委員 ここでちょっと問題を変えまして、すでに非常にはなはだしい公害が発生している地区として、京浜地区、それから公害の発生が予想される地区として、鹿島臨海工業地帯を取り上げまして、その状況を少し伺ってみたいと思います。  特に、京浜地区大気汚染をここで取り上げてみますが、大気汚染の現況、それから、これから考えておられる公害防止事業公害防止計画、そして達成すべき目標等についてまず伺いたいと思います。
  33. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 京浜葉地区と申しましょうか、これは千葉県方面までも含めてでありますが、大気汚染の現況というものは、代表的な硫黄酸化物で見てまいりました場合、昭和四十二年度において東京都では測定点十カ所のうちの半数の五カ所、また横浜・川崎地区では、測定点九カ所のうちの大半の七カ所が硫黄酸化物の濃度で環境基準を超過しておりました。汚染の度合いというものは相当以上に高い状況にあります。また、千葉・市原地区におきましては、測定点十九カ所のうちで一測定点のみが環境基準をこえておりました。その意味では、ここはまだそれほど汚染の度合いは進んでおらなかったということが言い得るかと思います。ただ、この千葉・市原地区の場合は、この地域における今後の企業立地の動向から見てまいりますと、また、生産規模の拡大等も相当のものが予測されますだけに、いまのうちに十分手を加えていかない場合、将来汚染が相当進行する可能性があるという心配を今日いたしております。現在、このような汚染の状況にかんがみ、計画的な解決をはかっていくために、いわゆる公害対策基本法十九条に基づいての東京及び神奈川地区については、近く関係都及び県知事に対して、公害防止計画の策定を指示いたすつもりでありますし、そのための国の基本方針を現在策定を急いでおる最中であります。  また、千葉・市原地区については、昨年五月、公害防止計画の基本方針を指示いたしますと同時に、これに基づいて出されました公害防止計画の設定を、この十二月一日付をもって承認を行ないました。  一応私どもは、これらの公害防止計画に基づく各種防止施策を計画的に推進してまいることによって、公害の未然防止の上でも、またすでに汚染の度合いの相当以上に進行いたしましたものに対しても対処していくつもりであります。
  34. 葉梨信行

    葉梨委員 次に、茨城県の鹿島臨海正業地帯について伺いたいと思います。  鹿島地区は、京浜・泉葉工業地帯と違いまして、あらかじめ公害を予想される地区にいろいろな防止計画を立てて、それから工業施設をつくったという、全国でも特異な地区であると思うのでございます。これについては、公害基本法が成立しました直後に、厚生省並びに通産省が協力して、いろいろその計画の策定をされたわけでございますが、当時の予防計画と現況について、また企業は大体昭和五十年にフル操業に入るわけでございますが、そのころに、どの程度の汚染で食いとめられるかということについて伺いたいと思います。
  35. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 これはもう葉梨先生よく御承知のとおりに、鹿島臨海工業地帯の工業規模というものは、鉄鋼でありますとか、電力あるいは石油精製、石油化学等約三十社の立地が決定をされておるところでありますけれども、現在においては、その操業規模は四分の一程度であると私どもは承知をいたしております。  この現況の中でまいりますと、現在の大気汚染代表的な硫黄酸化物の濃度で調べてみますと、二酸化鉛法で調査をいたしましたところでは、年間平均で一日百平方センチメートル当たり〇・二ミリグラム、PPMに換算いたしますと〇・〇一PPM以下、大体〇・〇〇七PPM程度であります。これはきわめて低いところで計画どおりに押え切っておるということが言えると思います。  さらに、大気汚染防止法に基づく地域指定が昨年行なわれたわけでありまして、総合事前調査等によりまして全計画が完成いたしました時点においての環境基準が維持されるように、私どもは企業に対しても指導をしてまいりましたし、また関係企業も協力を惜しんではおりません。  こういう状況を考えてまいりますと、今後予防的な措置を必要とする地域代表的なものの一つでありますから、本年度公害対策基本法に基づく第三次の公害防止計画の策定指示をすべき地域として取り上げておりますから、将来にわたって、私どもは、環境基準以下の状況で当地域においては公害防止が可能である、またそのとおりにしていくつもりであるということで、今日対処をいたしております。
  36. 葉梨信行

    葉梨委員 実は鹿島工業地帯につきましては、たいへんさい先がいいというか、住民も安心してスタートをしましたところ、最近共同火力発電所の建設に関して、建築許可が出ないうちに建築を始めてしまったとか、いろいろ住民の不安をかき立てるような事態が起こっているわけでございます。そうすると、一〇〇%操業の昭和五十年ごろに一体どうなるだろうかということで、住民はますます不安にかられるというのが今日の状況でございますので、行政当局の県並びに国のきつい御指導をお願いする次第でございます。  そこで、企業が鹿島地区でどんな努力をしておるか、また国はどんな助成をしておられるか、この点についても伺わせていただきたいと思います。
  37. 荘清

    ○荘政府委員 鹿島地区につきましては、これからの大規模な工業の開発が予定されておりますので、問題の亜硫酸ガスにつきまして、現在はK値規制という方式で規制をやっておりますけれども、予防的な意味を含めまして、非常にきびしい基準をすでに設定して指導をいたしております。各工場につきまして数年先までの増強計画を全部出させまして、その場合におきます燃料の使用量等を全部積算いたしまして、それに基づきまして、この程度の予防的なきつい基準をいまからはめておけば、その数年先の時点におきまして亜硫酸ガスの濃度というものを、いま厚生政務次官からお答えになりましたような基準に持っていけるだろうという先回りの基準として、東京がK値一一・七でございますけれども、鹿島は千葉と同じく一二・八という規制を加えてございます。  この総合事前調査に基づきまして、各企業に対しましての設備なり燃料の使い方について、個別の強力な指導を行なっております。幸いに、あそこの地区は、公害型産業でしかも大企業がほとんどでございますので、通産省としての指導も、相当徹底して集中的に現在のところ行なえておるのではないか、今後も一そう努力をいたしたいと考えております。
  38. 葉梨信行

    葉梨委員 公害防止計画に基づきまして公害防止事業が行なわれるわけでございますが、これが全国一斉にスタートするのか、あるいはだんだんと汚染のはなはだしい地区から順次やっていくのか、そういうことを伺いたいと思うのでございます。  というのは、公害防止事業はたいへんな資金を要するわけでございまして、そして実施主体は主として地方公共団体でございます。財政的にも地方自治のワク組みの中だけでは対応できない膨大な必要資金が予想されるわけでございます。そういう意味では、国が行政的指導を行なうだけでなくて、積極的に財政援助を行なう責任があると思うのでございます。そういう意味において、まず防止計画をどうやって進めていくのか、総務長官から伺いたいと思います。
  39. 山中貞則

    山中国務大臣 これはあと東京、大阪、神奈川と順を追って、逐次総理大臣の承認を与える計画をつくっていくつもりでありますが、あなたのおっしゃるように、地元負担という問題が相当問題になります。ところが、交付税等で手当てをしようにも不交付団体というような、いわゆる地方財政的な言い方ですると、富裕団体というような大都市が中心でこういう工事が行なわれていく傾向になっていくわけでありますから、したがって、巨大都市で、財政的には豊かであるというような場合において、どのような手段があるかといえば、やはりこれは起債であろうということになりますから、まだ詰めておりませんが、なるべく起債について公害の特別の条件なり、内容なり、ワクなりというようなものを定めた地方債を起こして、公害防止計画というものの観点、あるいは防止事業等を行なう場合の観点から見て、特別に公害については考える。したがって、富裕府県であるからどうこうとかいうことは考えないで、むしろ富裕府県等がこの起債等を十分に利用できるように、また、その能力もあるわけですから、そういう期待にこたえる方向で検討していきたいと思います。
  40. 葉梨信行

    葉梨委員 いまおっしゃられたように、その第一回の防止計画の策定を指示されたのは千葉、三重、岡山の三県で、この三県は、財政力はあまり強くない。第二回の予定されている東京、大阪、神奈川、これらは一応富裕団体ということになっておりますけれども、実は公害が非常に集積しておりますし、それから対象地域が東京なら東京の半分とか、あるいは全体について公害防止事業を行なわなければいけないというように、実際に仕事を始めたらたいへんな金がかかるというところばかりでございますので、ぜひひとつ国の助成をお願いしたいわけでございます。  いま、総務長事官からの御答弁にもございました公害防止債を事業者に引き受けさせる、これはぜひやっていただかなければならぬだろうし、そのほか国庫補助率の引き上げであるとか、あるいは地方交付税において、基準財政需要額の中に算入しなければならぬとかというような問題があると思うわけでございます。この地方交付税の問題は自治省の管轄であろうとは思いますけれども、ぜひこういうことも考慮していただきたいと思うのでございます。  それから、そういう資金面の援助のほかに、財政計画の中に、公害対策を明確に位置づけなければいけないのではないだろうか、予算編成をする上で、公害対策費というのを、社会保障費と並べて予算項目として取り扱わなければこれはやっていけないというように思うのでございますが、その点についてのお考えを伺わせていただきたいと思います。
  41. 山中貞則

    山中国務大臣 葉梨君の話の前段で一つだけ取り違えがあります。それは、私が不交付団体であるために起債を考えていかなければならないと言ったのは、現在の地方債のことを言っておるのであって、新たに企業にそれを消化させる、いわゆる公害債というものを発行するという意味ではありませんから、その点だけ一つ意見が違います。そうでないことを申し上げておきます。  あとの予算の中の位置づけの問題は、確かに公害のあり方から考えて、それだけの大きなウエートを持つし、また、予算の中でそれだけの形をきちんと整えるべき立場にあると思います。ただ、事柄が予算でありますから、私たち対策本部で、各省ばらばらの予算要求をし、予算折衝をし、最終的に設定して詰めていくというような形をとってはもらいますけれども、さらに、対策本部である私のところがそれにもう一枚かみまして、そしてこれをセットする場合において、国全体の来年度の予算の中で、公害対策の費用というものはどういうバランスであって、どういう金額であって、それは国の財政から見ていかなるウエートを持つかという形にはしたいと思いますが、さて、それを公害予算というもので社会保障費と同じように別のワクを組むかということについては、大蔵大臣ともう少し相談してみませんと、私一存で答弁できかねる範囲の問題でございます。
  42. 葉梨信行

    葉梨委員 いろいろ申し上げましたのは、実は公害防止事業というのは考えてみればみるほどたいへんな事業であって、かつて新産都市がはなばなしく打ち出されましたけれども、それが亀頭蛇尾と申しますか、現実には絵にかいたもちになってしまっている。そういうことの二の舞いにならないようにと願うからでございます。  ちょうど大蔵政務次官がお見えになりましたので、大蔵省として財政計画の中に公害対策費を社会保障費と並んで計上してほしいという私の希望に対しまして、大蔵省のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  43. 中川一郎

    ○中川政府委員 ことしの公害予算は、一千億を上回る要求が出ております。昨年は六百億程度でありましたが、いま御審議を願っております費用負担の法案の結果を見まして、あるいはまた、公害の実態を見きわめた上で万遺憾なきを予算の上では期してまいりたい、このように考えておる次第であります。
  44. 葉梨信行

    葉梨委員 ただいまの言明のようにぜひ御努力をお願いしたいと思います。  そこで、最後にもう一つ伺いたいのでございますが、四、五日前の新聞紙上で、酸化チタンメーカー七社が、公害防止費用がたいへんかさんで困るというようなことで、約二〇%近い値上げをしたというニュースを見たのでございますが、公害企業といいますか、公害を出す企業が、公害を出しっぱなしにしてはいけない、企業責任において公害防止を行ない、公害防止費用企業負担すべきであるというのが、いまはもう万人に認められた原則であろうと私は思うわけでございます。いろいろな意味におきましてこの七社の値上げというのは問題を含んでいると思いますが、公正取引委員会は、この問題に対しましてどう対処しておられるか、その点について承りたいと思います。
  45. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 お答え申し上げます。  酸化チタンのいわゆる需要家渡しの販売価格についての値上げ協定事件、これにつきましては、ことしの二月四日付で酸化チタンメーカー七社に対して勧告をいたしております。  その内容は、酸化チタンのメーカー七社が、ことしの四月二十三日に、酸化チタンの需要家渡しの価格を、六月二十一日から現行価格よりキログラム当たり三十円の値上げをするという申し合わせをしたわけでございます。これを現実に実施いたしましたのは、六月の下旬から七月の上旬の間にかけてキログラム当たり三十円の値上げをしたということでございまして、こういう事実に対しまして、独占禁止法第三条違反、つまり共同行為ということで勧告を行ないました。  勧告の主文の内容としては、申し合わせの、酸化チタンの販売価格に関する申し合わせを破棄しろ、それから今後はこういう申し合わせによらず、各社が自主的にきめた需要家渡し価格で販売せよということ、それから十二月以降一年間酸化チタンの需要家渡し価格を公正取引委員会に届けなさい、こういう内容の勧告をいたしたわけであります。これに対する応諾の期限は十二月の十七日でございます。間もなく応諾するかどうかの返事が来ると思います。
  46. 葉梨信行

    葉梨委員 この酸化チタンメーカーだけではなくて、いろいろな業界で、やはりそういう便乗値上げ的な価格協定がこれからも行なわれると予想されるわけでございまして、そういう問題については、そのつどひとつ公正取引委員会におきまして、法律に基づいて厳正な態度をとっていただきたいということを希望するものでございます。そういうような価格協定がなくても原材料が値上がりしたということは、ある意味ではしかたがないというか、やむを得ない問題だろうと思いますが、公害防止費用が赤かったから製品価格を上げるというようなことは、そう簡単に許すべきではないと思うのでございます。やはり企業努力によってまずそういうコスト増を吸収すべきであると思いますが、これからはそういうメーカーがあちこちにふえてくると思います。それにつきまして、経済企画庁ではどういうように対処されるおつもりであるか、伺いたいと思います。
  47. 山下一郎

    ○山下説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、酸化チタンの例に見られますように、今後公害防止のための経費増を口実にいたしまして価格の引き上げをはかるケースは多く出てまいると思います。確かに公害防止のために新たに従来以上の経費がかかるケースは多いと思いますけれども、これも先生御指摘のございましたように、本来公害防止の経費は、企業経営に組み込まれるべきものでございまして、技術開発による公害防止コストの低減と、一般的な生産性向上等の企業努力によって、そのコストを吸収すべきものと考えておりまして、安易に価格に転嫁すべきものではないと考えております。今後こういうケースが発生いたしました場合には、経済企画庁といたしましては、関係省庁と連絡をとりながら、業界の実態等をよく洗いまして、極力公害防止の経費増による安易な価格転嫁が行なわれないように、そのケースケースによりまして努力をいたしてまいりたいと、このように考えております。
  48. 葉梨信行

    葉梨委員 いまの御答弁のようにしていただきたいと思いますが、さらに積極的には、製品価格については経済企画庁が全部関与できるとは思いませんけれども、積極的に、そういうことをしてはいかぬのだという、何といいますか、PRというか、そういうようなものを行なっていっていただきたい。というのは、私、前に聞いたことがありますが、京葉工業地帯の大石油精製メーカーで、百億円近い重油直接脱硫装置をつけまして脱硫に努力をした、しかし、そのメーカーの石油というか、ガソリンの値段は一円も上がらないというように、また、非常にまじめに公害防止に努力をしている企業もたくさんあるわけでございます。そういう意味におきまして、不心得な企業というか、非常に甘い企業が出ないように、企画庁並びに関連省庁の御努力をお願いするものでございます。  私の質問は、これで終わります。
  49. 加藤清二

    加藤委員長 終わりませんでしょう。ちょっとちょっと、あなた動いちゃいけません。交代してください。終わったんじゃありません。  関連の申し出がありますので、これを許します。渡辺栄一君。
  50. 渡辺栄一

    ○渡辺(栄)委員 貴重な時間をちょうだいいたしましたが、きわめて短い時間でございますから、簡潔に御質問をいたしますし、御答弁もぜひひとつ簡単にお願いいたしたいと思います。  ただいま当委員会等におきましては、公害基本法の一部改正案、並びに土壌汚染の防止法案、あるいは公害事業負担法案等を検討いたしておりますが、時あたかも岐阜県の神岡町におきまして、カドミウムによります土壌汚染の問題がいろいろと発表をされまして、住民を非常な不安動揺におとしいれているわけでございます。特に十二月五日に県が発表いたしましたところによりますと、約十五地点の調査等によりまして、一部におきましては一五・六PPMというような、観察地域をこえるような汚染を発表いたしているわけでございます。そういうような意味におきまして、今回わが委員会におきまして、あるいは連合審査会等におきまして、御検討いただいてまいりましたこれらの法案につきましては、非常な関心を持っていると思うのでありまして、簡単に私は問題点につきまして関係者の御所見を承り、最後に、山中長官の格別御理解のある御発言をお願いいたしたいと思っているわけでございます。  その第一は、今回の調査によりまして、非常に地域によりましてまちまちでございますけれども、特にはなはだしい地域におきましては、土壌汚染は一五・六、玄米の汚染は〇・八四PPM、こういうことになっております。  なお、その全体の平均といたしましても、大体土壌汚染は五・八PPM、玄米の汚染は〇・四八PPMということでございまして、県も、七日の日には県議会も現地におきまして公害対策特別委員会を開くというような、緊迫した情勢下にあるわけでございます。  そこで、まず第一に私お伺いいたしたいと思いますのは、これらの農地が汚染をいたしておりまして、〇・四PPM以上のカドミウム汚染を受けております農家に対しまして、保有米の交換はしていただけるのかどうか、この点につきましては、現在まで明確な御所信を承っておりませんので、できましたならば、この機会に食糧庁のはっきりした御見解を承りまして、関係者にも十分ひとつ安心をさしたいと思っておりますが、この点につきまして、まずお答えを願いたいと思います。
  51. 内村良英

    ○内村説明員 お答え申し上げます。  十一月二十五日に、食糧庁といたしましては、カドミウム環境汚染米要観察地域の農家の保有米につきまして、農家の希望があれば、これを政府の米と交換する方針をきめたわけでございます。  御質問の岐阜県の神岡町は、私どもが承知しておりますところでは、まだカドミウム環境汚染要観察地域になっておりません。そこで、そういった要観察地域外でありましても、一・〇あるいはそれに近い米が出ている地域につきましては、知事の申請を待って、食糧庁といたしましては、農家の希望に応じ、農家の保有米と政府所有米とを交換しようと思っております。  そこで神岡町のケースにつきましては、現在県当局から交換の申請がなされております。したがいまして、現在食糧庁において検討中でございますが、食糧庁といたしましては、これを認める方針で処理したいと考えております。
  52. 渡辺栄一

    ○渡辺(栄)委員 明快な御答弁をいただきましたので、関係者はこれで非常に安心をすることと思います。  次に、いまお話がございましたが、観察地域よりもはるかに上回っておりますカドミウムが発見されておりますが、現在のところは、まだ観察地域にも入っておりません。なお、県としても調査を続けておりますし、特に、健康診断を積極的に精密に行なおうという努力をいたしておりまして、おおむね十二月中にはそれらの検査を極力完了したいという方針を持っているようでございますが、これらに対しまして、厚生省はどのような御配慮を願えるのか、御答弁を願いたいと思います。
  53. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 いま御指摘の神岡町において、四十五年度産米十五資料のうち最高〇・八四PPM、平均〇・四八PPMのカドミウムが検出され、水田土壌十五資料中最高一五・六PPM、平均は五・二PPMのカドミウムが検出をされ、その報告を県から受領いたしました。現在、厚生省が昨年九月に示しましたカドミウムによる環境汚染暫定対策要領に従って、県のほうでさらにこまかい、米あるいは野菜等を収集し、精密な環境汚染調査を実施していただいております。私どもはこの数値を見ました上で、要観察地域とするかどうかの検討を行ないたいと考えております。  これは非常にばく然としたことを申し上げて恐縮でありますが、米の数値は、いままで要観察地域に指定されたものに比べて、必ずしも高いとは申せません。しかし、土壌の最高値は、確かにいままで要観察地域に指定したものの中位よりはむしろ高い水準にございます。これは調査結果を待ってのことでありますが、そうした点をやはり考えなければならぬと思いますし、同時に、要観察地域に指定をいたしました場合、調査費でありますとか、所要の健康診断費等、私どもとして、当然国として負わなければならぬ義務は果たしてまいるつもりでおります。
  54. 渡辺栄一

    ○渡辺(栄)委員 ただいまお話しのように、観察地域の指定を受けますと、国の補助等いろいろな御配慮が願えますが、それまでの段階におきます調査等におきましては、どうしても県自体でこれを進めてまいらねばならぬわけであります。また、地元の町村におきましても、相当な経費もかさんでくる、だろうと思うのでありますが、そういう意味におきます地方財政上の措置につきましては、いろいろ交付税等の問題もこの委員会で取り上げられておりますが、簡潔にひとつ自治省のお立場から御回答をお願いしたいと存じます。
  55. 大石八治

    ○大石政府委員 ただいま交付税で公害対策関係というのは、人件費と、それから測定器具等の経費及びその仕事に関連する事務費ということが、一般的な交付税の算定対象として計算をしておるわけであります。昭和四十五年度では、たしか三十億円くらいのものがいまの交付税の中に見積もられているわけであります。  ただ、いまお話しの病人を検診をして調査をする費用というものは、まだ交付税の算定というふうにはしていないと私は思っておりますが、それはある意味では、ちょっと共通的な現象でないことになるのではないかと思います。事業等によりまして、いわゆる特別交付税の中で見ている数字も、実はいままでの実績の中にも出ておりますが、交付税で一体どういうふうに公害問題をこれからとらえるかということは、さらに私どもも検討を続けていきたいと思っております。
  56. 渡辺栄一

    ○渡辺(栄)委員 時間がございませんので簡単にお願いしてまいりますが、特に今回の土壌汚染防止法が成立をいたしますと、これらの地域に対しましては、あるいは土地改良の問題あるいはその地域におきますところの土地利用の問題等につきましても、合理的な解決ができるわけでございまして、やはりそのためには今回の法令の中におきます第三条、これらの政令によりまする要件に該当しなければならぬことになってくるのでありまして、われわれはこういう問題こそ、今回の公害関係法案によりまする住民の期待に沿うものではないかと思います。これらの具体的な事例に対しましては、もちろんもっと具体的な調査を進めなければ、この場で御回答を願うことは困難であろうと思いますが、今後の考え方等につきまして、農林省のほうからお考え方が述べられれば幸いであると思います。
  57. 岡安誠

    ○岡安説明員 お答えいたします。  この農用地の土壌汚染防止法が成立いたしまして施行されますと、農林省といたしましては、全国的に概況調査、さらに汚染の進んでいるところにつきましては、細密な調査をいたしまして、資料を整えて、都道府県知事が対策地域の指定をいたすという段取りになるわけでございます。私どもといたしましては、神岡町につきまして現にやっております県の調査等を検討いたしまして、さらに必要あらば補足調査をし、そのような資料を背景といたしまして、かりに要件に該当するならば、都道府県知事がこれらの地域を対策地域として指定をし、さらにその地域につきまして、諸種の計画が樹立をされるというような段取りになろうかというように考えております。
  58. 渡辺栄一

    ○渡辺(栄)委員 いまいろいろ御回答をいただきましたように、今度の公害関係法案が成立をいたしまして、これらの御配慮が願えることになりますと、今回のような問題につきましても非常に住民の不安を除去し、また生活を守り、生活環境を保全することができるわけでございます。しかし、現実の問題といたしましては、たとえば最もひどい殿地区におきましても土壌は一五・六でございますが、米のほうは〇・八四である。また、土壌汚染の低いほうの地区におきましても、今度は反対に土壌汚染と玄米の汚染の度合いというものは必ずしも比例をいたしておりません。たとえば釜ケ崎におきましても土壌は二・五六でございますが、玄米は〇・二一である。また寺林におきましては、土壌は〇・九六でございますが、玄米は〇・一七である。まちまちな数出て出ておりますので、その間におきまする当該因子の因果関係というものも明確につかみにくい。また現在の調査によりますと、飲料水にはカドミウムは含まれていない。現在農業用水、大気等、ただいまいろいろ調査は進めておりまするけれども、その間におきまする因果関係その他の問題につきましては、なお今後検討を要する次第でございます。  そこで私は、時間がございませんので端的に山中長官にお願いをいたします。  これらのカドミウム等の問題につきましては、今度の土壌汚染法案の中におきましても、その汚染が農産物等に及ぼす影響につきましてはさらに研究を推進するというようなことになっておると思うのでありますが、ひとつこれらの問題につきましては、明確に研究をいただきまして、住民の不安を取り除いていただき、的確な対策を立てられるようにお願いをいたしたいと思っております。特に先ほど農林省の御回答もございましたが、第三条によりまするところの「農用地の利用に起因して人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産され、」「又はそれらのおそれが著しいと認められるものとして政令で定める要件に該当するもの」、この政令という内容が私は大きく作用してくると思うのでございまして、こういうような問題につきましては特にひとつ、今後の問題でございますが、副本部長のお立場におきまして、各省と密接な御連携の上に、十分に適正な内容を盛り込んでいただきまして、住民の期待におこたえを願いたい。特に私、その点についてお願いをする次第でございます。
  59. 山中貞則

    山中国務大臣 ただいま渡辺君の言われたように、土壌の汚染度と米から出てくる含有度との相関関係というのは、ほとんどないにひとしい。すなわち、わせか、おくてであるか、あるいは土壌が酸性であるか、アルカリ性であるか、あるいは日陰であるか、ひなたであるか、あらゆる状況によってすぐそばでも違ってくる、こういうようなことがありますので、今回は割り切って、米に含まれる含有度が一PPM以上である地域ということで一応入りますが、しかし、それらのものはさらに汚染を防止することが目標でありますから、もっと政令の段階においてどこまでいけるか等については詰めたいと思いますし、さらに銅、亜鉛等による減収というものがありますから、この収穫が減った地域について、まあ今日まで慣行として一応の会社から見舞い金みたいなことで済ましておりましたけれども、やはり銅、亜鉛等によってその土壌が汚染されて減収するのであれば、これもやはり一つの要素としてとらえて土壌汚染防止の仕事を行ない、費用企業負担法に基づく負担企業者に持たせるということになっていくであろうと思います。
  60. 渡辺栄一

    ○渡辺(栄)委員 ありがとうございました。
  61. 加藤清二

  62. 葉梨信行

    葉梨委員 以上、私は費用負担法案について御質問申し上げたわけでありますが、この問題について関連するところは非常に多岐にわたりまして、関連する諸官庁の方々におかれては、御要望申し上げたような点について十分に留意されることをお願いする次第でございます。特にこの公害防止事業を遂行するためには、国の財政的な援助が必要であるということが明らかになったと思いますが、その点につきましてもぜひ副本部長よりもお力添えを願いたいということを希望いたしまして、私の質問を終わります。
  63. 加藤清二

    加藤委員長 次は、佐野憲治君。
  64. 佐野憲治

    ○佐野委員 公害問題に関しまして、特に公害は発生してしまってからでは九〇%までは敗北である。このことは、公害問題を中心として非常に広域複雑化しておる、しかも、日に日に深刻の度を増してきておるという現況を見るときに、何としてもこれに対処するには事前に防止する、あるいはまた行政的に事前に規制をする。これを強固に行なわねばならないのではないか、かように考えるわけでありますが、そういう意味におきまして、私はきょう事前防止並びに行政における事前規制、この問題に関しまして大臣の所信を逐次伺ってまいりたい、かように考えておるわけです。  まず第一に、その意味からいきまして、公害罪の問題につきましては、本会議なりあるいは連合審査におきましていろいろと論議されておりますので、大臣もよく内容は御存じのことと思いますが、しかしながら、公害罪が法務省から法律要綱として発表される、あるいはまた原案が発表されておる、こういうときに、私たちが抱いておりました期待、その期待が現実の法案となってまいりましていま申し上げましたような事前防止、あるいはまた予防的な措置として、内容につきまして非常に期待を裏切ったのではないか、かようにも考えるわけですけれども、担当大臣としてこの法案に対しまして、公害の事前防止、予防措置としての意味におきまして、どのように理解をしておられるか、その点をまずお聞きしたいと思います。
  65. 山中貞則

    山中国務大臣 公害罪法案ができまする過程において、そのような誤解を与えたことはまずかったと思っております。しかし、提出いたしました公害罪というものは、まずその意義として、今日まで公害というものを強盗や殺人みたいな刑事犯として自然犯であるべきものを取り締まる、処罰するという考えは、わが国の刑法上なかったものを、刑法の特別法として踏み切ったということに大きな意義があると私は思うのです。これはやはり慎重なるが上にも慎重なスタートをいたしませんと、法律はでき上がるとひとり歩きをいたしますので、治安維持法の例を引くまでもなく、やはりしっかりとした範囲のもので確定された前提条件がなければならぬというふうに、私は担当大臣として思うわけでございます。  技術的な問題について御質問であれば法務省から答弁をさせたいと思いますが、しかしながら、先生のおっしゃったのはおそれのある状態を削除したことをおっしゃっておると思うのですが、わかりやすい例で話しますと、いままでの問答にもありましたように、私もそうだと思うのですが、プランクトンの段階で刑法がかかっていくのか、プランクトンを食べた魚に蓄積された状態が発見されたときに、人が食べるおそれがあり、人が食べて人間の体内に蓄積が行なわれるための健康、生命を害するおそれがある状態になるから、その前に魚の段階でいくかということについては、プランクトンでいけばなおよろしいのでしょうが、魚であっても魚が危険な状態にまで蓄積されておることが発見されれば、それに対して刑事罰がかかっていくということでありますし、私としては人間が食べて病気になった状態のときを刑事罰の発動にしてないというところに、すなわち人間が食べるという状態の当然の常識である魚にそういう汚染度が見られたという場合においては、この刑法が働くというところにやはり大きな事前の制御の価値を持つものであると考えます。  私の担当大臣としての答弁はこの程度で、もしもっとこまかくであれば法務省から答弁をさせたいと思います。
  66. 佐野憲治

    ○佐野委員 技術的な問題は法務委員会でそれぞれ専門的にやっておりますから、私はやはり公害の予防あるいはまた事前規制、こういう意味におきまして、たとえば大臣が指摘されるように、おそれの問題につきましても、先ほどの刑事政策から考えてまいりましても、あるいは世界が歩んでまいりました人権擁護の立場から考えてまいりましても、やはり明白かつ現実の危険に対処する、そういう意味においておそれということを公害法案の中に入れたということは、疑わしきは罰しない、こういう刑事法と違った意味において、やはり公害罪なるがゆえに、今日持っておる公害罪の凶悪性を考えてまいると、それを事前に予防する、こういう必要から疑わしきも罰するという意味においてやはりおそれというものは入ってまいったのじゃないか。  第二の点として、対象を排出基準内にとどめる、こういう解釈が出てまいっておるわけですが、これでは違法性を阻却してしまう。こういうことになってまいりますと、予防措置としての効果というものはほとんどなくなってしまうんじゃないか。  第三の点として、そういう意味考えてまいりますと、結局は予防的な効果なり、事前規制という効果が薄れてしまって、現に起こったこれに対する刑事責任の追及、事後的な贖罪、罪を償う、あるいはそれらの犯罪に対する報復的な措置としての刑罰の規定、この程度に下がってしまう。と申しますと、私が最初に申し上げましたような公害の事前予防、こういう意味における効果というものはほとんど失われてしまっておるのではないか。こういう点、大臣としてはどうお考えになるか、再びお聞きしておきたいと思います。
  67. 山中貞則

    山中国務大臣 プランクトンは人間が食べるものではありませんが、魚は人間が食べるものであるというのは常識であろうと思うのです。したがって、プランクトンの段階でできなくなって、しかし、魚の段階ではつかまえるというのであれば、人間が食べる常識の範囲のものが汚染された場合に発動されるわけですから、予防効果は魚の段階で確実にあると私は思います。こまかな阻却性の問題その他について答弁をいたしてもよろしゅうございますが、間違えるといけませんので法務省を呼ぶことにいたします。
  68. 佐野憲治

    ○佐野委員 その問題はまた後ほど技術的な問題としては論議しますけれども、法案の持っておる性格そのものから一つ問題があるのではないか。大臣としてもその点は強く主張していただきたかった。いまのような形だとするならば、大臣は自然法犯的な刑法の概念に入らないのではないかと言われますけれども、結果的には同じことになるのではないか。警察当局にしても現在における検察当局の能力から考えてみても、これはほとんど取り上げることができ得ないのではないか。もしそうであるとするならば、刑法第十五章における「飲料水ニ関スル罪」、これに対しましては、結果加重犯も規定されておるわけなんです。あるいはまた殺人罪あるいはまた業務上におけるところの過失致死あるいは過失罪あるいは傷害罪、こういう自然法的な意味におけるところの刑事的な面を運用面において強化することによってもちっとも変わらぬじゃないか、これが非常に困難であった、現在における日本の刑法の立場から考えて非常になじみ得ない、こういうような問題があってなかなか踏み切れなかった。しかしながら、同じことが、公害法という名はついておりますけれども、実際には結果的な問題に対するところの措置であるとするならば何ら変わらないのではないか。公害の名において出てまいりました、特に疑わしきは罰するという、このために特別法を特に設けるのだという趣旨が、根本的にくつがえってしまっておるのではないか、こういう点を逆に私たちはおそれるわけです。しかし、これは法務委員会において法律技術的にまたいろいろ論議されておるところでありますので、その問題につきましてはまた別の機会に取り上げさしていただくといたしまして、私が大臣にお聞きいたしますのも、そういう意味におけるところの公害が起こってしまったらば、それは九〇%まで敗北だ。それは大臣自身が公害問題に取り組んでおられる教訓の中からも共感を呼び起こされるだろうと思いますが、そうした意味から私は二、三の点についてお尋ねしたいと思うのです。  第一は、執行罰を採用すべきではないかと非常に強く主張されてまいったわけであります。不作為の義務に対して強制執行として執行罰が採用されることが最も適切な時期ではないか。幾多の政府の法案あるいは審議会におきましても、たとえば違法建築の場合におきましても、こういう違法建築を強制執行するために執行罰が必要になるのではないか。こういう点が答申の中にも出てまいっておるわけです。こういう意味におきまして、一体大臣は執行罰を今度の公害関係法案の中において採用されなかったのはどこに理由があるのか。法理論的に何か問題があるのかどうか、まず第一点としてこの点をお聞きしたいと存じます。
  69. 山中貞則

    山中国務大臣 これはたびたび申しておりますとおり、今回のきびしい規制基準を犯した場合には、直罰で参りますので、直罰と併用して、また同時に執行罰と申しますか、そういうようなものを科するというのは、私はちょっとなじまないのじゃないかと思うのです。
  70. 佐野憲治

    ○佐野委員 不作為義務に対してそれを強制執行——公害が発生したら、もうだめだ、実体的な違法行為が出てしまったら、それはもう作為行為として、あるいは除去なり、移転なり、あるいは改善命令なり、あるいは代執行においてこれを担保することができる、こういう考え方におけるところの罰則規定の強化でしょう、行政罰の。しかしながら、不作為義務として、現に進行しているものを停止するのだ、その手段として刑事罰があるじゃないか。刑事罰というのは、行なわれてしまったことに対しての刑罰であって、現に進行している不作為義務に対して、これを途中で押えることができないのか。法理論上できないのか。法理論上はできると大臣考えておられるかどうか、その基本的な考え方をまずお聞きしておきたいと思います。
  71. 山中貞則

    山中国務大臣 法務省よりお答えいたさせます。
  72. 佐野憲治

    ○佐野委員 しかしながら大臣、現在でも砂防法の中に執行罰が存在しているわけですね。行政執行法、これが一般的な行政の手続きとしては廃止になった。しかしながら、特別法の中にこれを採用することを拒否しているものではない。逆にこれを採用することで実行性を確保できるのではないか。このことは、私たちは建築基準法をめぐりまして、違法建築の場合も大臣が言われたとおりなのです。違法建築が現にある場合に、処罰規定がある。行政罰がある。しかしながら、東京都における当時の——私たちは、当時社会保険審議会の会長をやっていた有泉博士なり、あるいは違法建築被害者の会の事務局長である、鶴見女子大学の暉峻教授ですか、この方たちとも、いろいろ具体的にお聞きをしたのですが、東京都に昭和二十二年か二十三年、この一カ年間に八千件の違法建築がある。しかしながら、これに対して現在の警察当局では、この告発に対しまして対処したのはたった二十件だ。これしか起こってないわけですね。それからまた、すでに停止は命じておるけれども、違法建築が進行して完成してしまった、こうなってまいりますと、代執行しかない。それでは代執行はどうか、代執行はわずか四件、八千件の違法建築に対しましてたった四件、これだけしか代執行はとられていないわけですね。そういたしますと、でき上がってしまってから、実体的な違法が出てしまってから、作為に対するところのいろいろな代執行なりがあったといたしましても、実際上は取り上げられていない。このことは大臣、先般労働省が出しました労働安全衛生の立場から調査したといわれる一万三千六百五十五の事業場、この事業場の中の七割までは有毒物資を排出しておる、何ら浄化装置を持っていなかった、こういうぐあいにいわれている。そういう違反がやられてしまって、もうでき上がってしまっているのだ。これを事前にどう押えるか、不作為義務に対してこれをどう強制執行するか。この場合においては行政罰しかないのじゃないか、こう考えるのですが、大臣いかがですか。
  73. 山中貞則

    山中国務大臣 少しわかってきましたが、そういうケースの場合等を念頭に置いて、いわゆる反則金というようなもの等がなじむケースが出てくるのじゃないか。これは今後検討いたしますと、きのう答えたつもりでありますが、いまの執行罰と申しますか、そういう形が、いまのようなことをおっしゃっているのならば、これはまた別な意味の問題でありますから、名前は別として、やはり検討する必要があろうと思います。
  74. 佐野憲治

    ○佐野委員 執行罰というのは、罰は罰なんですけれども、過料ですね。しかもこれを現に進行している、たとえば違法な行為が行なわれておる、これに対して停止を命ずる、これは不作為の義務ですね。これに対して、ともかくこれを押えなくちゃならない、強制執行しなくちゃならない、その場合に過料を科せる。しかも、いつ幾日までにやらなければ一日五十万円なら五十万円、二日目にはまた五十万円、累積して過料を科することができるわけです。それがいま日本の場合におきまして、砂防法の中にも残っておりますけれども、これは戦争前からの法律ですから残っておるといわれればそれまでかもしれませんけれども、イギリスやアメリカの、いわゆる英米法を見ても、ドイツの法律を見ても、執行罰は、有効な手段として、不作為義務に対するところの実行性を確保するものとしてすでに広範に取り上げられてきておる。こういう意味からも、日本におきましても、法理論上問題がある、憲法上問題がある、それならなにですけれども、なじまない、これだけで問題を——一万三千六百五十五のうち七割までが違法行為によって、浄化装置を持たないで、四十六もの有害物質を排出しておる。これに対しまして、一体、あなたの言われるところの大気汚染法の第六条が動いておりますか。
  75. 山中貞則

    山中国務大臣 今回の法律では、直罰規定というのはあるのですが、どういう——それ以外のケースというものはどういうものかよくわからないのですけれども……。もし法理論の問題でありますとすれば法務省から、そうでなくて実体の議論であればもう少し教えていただきたいと思います。
  76. 佐野憲治

    ○佐野委員 私は、行政の問題として、担当大臣として十分検討されておるのじゃないかと一と申しますのは、違反建築の場合におきましてもこれは問題になりました。法理論上は問題はないのだ、しかし、なおいろいろ諸外国の例も日本においてはまだ研究してないんだ、研究さしてもらいたい、そのために検討の時間を与えてもらいたいということで、法律の中に附則として、この執行罰の問題を検討条項として特に入れたわけですね。自来、ここに当時の委員長がおいでになりますけれども、それは各党一致においてその必要性を認めたからこそ、検討しなさいと再検討条項の中にこの執行罰を入れたわけです。それが今日新しい法律公害法のような抜本的ないろいろな行政措置がとられる、事前防止として。とするならば、当然この問題が政府内部において検討さるべきじゃなかったか、検討条項として法律の中にあるのですから。同じことをひとつ御参考までに。第六条において、ばい煙に対するところの発生施設の届け出をしない、この場合は五万円の罰金だと、行政罪がついておりますね。しかしながら、そこで届け出をした者が、第九条におきまして計画変更命令を出した、この計画変更命令に従わなかった場合には一カ年間二十万円の罰金だ、こういう問題が出てまいりますね。  そこで、届け出をしないのだ、現在やっておるところの一万三千六百五十五のうち七割までが、ほとんど届け出もせずにやっておったんでしょう。違法建築の場合を見てまいりましても、建築確認の手続をとらないでどんどん建ててしまっておる。その場合に、問題は、届け出を出したから改造命令なり浄化装置が要求されてくる。それに従わなかった場合一カ年間の懲役だぞとやっておる。しかしながら、そんなのはおれは届けない、かってにやってしまうんだ、現在そういうことが行なわれておる。そうなってまいります場合に、届けた者が五万円で済んで、しかも大きな責任が第九条においてかぶってきて、届けない者は告発すればいいじゃないかということなんですけれども、実際告発が行なわれているかどうか。今日の事業場、今日の工場の、いわゆるばい煙ならばい煙に対するところの発生施設に対して、一体警察なり検察当局が——そういう法律は前からもあるわけです、そういう法律に対して動いているだろうか、発動しておるだろうか。おそらく違法建築の場合に、人間の生活の大事な城であり、しかも、ここにおいては、生活環境なり健康に重大な影響を及ぼす違法建築、こういう違法建築に対してさえも、警察も検察庁も取り上げていないわけです。法律にはちゃんと同じく五万円の罰金がかけられておるわけです。実際上は発動していない。そして建ててしまったら、これに対するところの停止命令その他はもちろん動いてまいりますが、停止命令を受けたけれども、現に仕事をどんどんやってしまう。やってしまうと、作為義務としての代執行なりその他が動かなければならない。家が建って、人が住んでおるのに代執行はかけられないじゃないですか。工場事業をやっているじゃないか。従業員もおる。多くの生産にも寄与しておるということになれば、これに対しては、まあ罰則などよりも、そのうち何とかやるだろうというような形で来たのが今日の公害問題を大きくさせてしまった原因じゃないか。ですから、発生が起こってしまえば九割までは敗北だと私が冒頭に言ったのはそういう意味からであるわけなんですけれども、大臣、こういうばい煙規制法なら規制一つを見て、現実はどうだろうか。届け出しなかったらいいじゃないかという考え方のものに対して何が一体発動されるだろうか。いや、行政罰があるじゃないか、二重の不利益になるんだなんといったことを言っておれば……。
  77. 山中貞則

    山中国務大臣 違法建築のことでしたら建設省を呼んでいただきたいと思います。それからそのあとの、届け出をしないで、かってに公審をまき散らすことを承知の上で企業が動く、今後も、この国会で法律が整備されても動くというようなことはちょっと考えられないことだと思うのですけれども、しかし、そういう場合においてどのような措置がとれるかは、現在の立場ならば、法務省に相談をしないとちょっと答弁できかねます。
  78. 佐野憲治

    ○佐野委員 時間の関係がありますから、また法務省が参りましてから別の機会にやって、次の質問を進めていきたいと思います。  第二の点として、そういう違反を行なっている事業場なり工場に対してガス、水道を事業開始前に停止する、こういう考え方を公害基本法の中に採用されるべきではなかったか。この点に対して、通産あるいは厚生の方から一応お聞きしたいと思うのです。
  79. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 先ほどからの先生お話しの不作為義務に関する部分でありますが、現行のこの公害関係各法、大気汚染防止法は、私どもの所管から申し上げますならば、確かに第七条に届け出の義務がございます。しかし、先生のお話しになりましたような形での不作為義務が、はたして現在のこれだけ公害というものに対し——私は建築基準法のことは存じません、しかし、公害の問題がクローズアップされた今日において不作為義務という形で犯されるとは私どもは考えておりません。むしろその場合には、直ちに罰則規定このままが準用されていく。それが実態の姿であると考えております。  それと同時に、いまそうした場合にあるいは電気あるいは水道をとめたらどうなんだというお話がございました。私ども水道を所管しておりますけれども、水道そのものについて法令違反等がありました場合に供給停止をすることは、確かに法律上も明記をされております。しかし、その法律そのものが目的としております対象以外の問題、いわば他の法律の部分に関して違反が生じた   、水道の供給を停止できるかといえば、現行の法体系上それば困難であると私どもは考えております。
  80. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 電気、ガスの供給を停止できるかというお話でございますけれども、通産省といたしましては、排出基準の違反の企業が出ないように、また出た場合はいろいろなことで規制ができます。たとえば大気汚染防止法の(目的)では公害防止のことも規定しておりますし、排出基準も三条で書いておりますし、排出制限もできます。それから、ばい煙施設の設置などは認可制になっておりますし、計画変更命令なども認可制でございますので、そういうことを、とめなくても全部できると考えております。
  81. 佐野憲治

    ○佐野委員 先ほど橋本次官のお話が、不作為義など考えられない、現に停止命令を出して、事業場が、それに対して不作為の義務としてやめなさいといわれたにもかかわらずやる、こういうことが現実に起こっていればこそ、先ほど申し上げましたような七割までも浄化装置を置かないで排気ガスを出しておるじゃありませんか。それに対して、違法行為だから、検察当局が一体動いておりますか。法律違反でしょう。有毒物質の四十六、カドミウムなり、亜硫酸ガスなり、鉛なりを出しておった場合において、浄化装置をつけさせなくてはならない。つけずに出しておるということを同じ政府部門の中から明らかにされておるでしょう。この場合に、やはり不作為の段階にこれを行政的にどう強制執行するか。これは執行罰しかないんじゃないか。他に有効な方法がありますか。  それはそれとして、通産次官の御答弁がありましたけれども、昭和四十四年四月十四日、建設省住宅局長と通産省公益事業局長との間に行なわれましたところの覚え書きをあなたは御存じですか。
  82. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 いま手元に資料がございませんので、あとでお答えさせていただきます。
  83. 佐野憲治

    ○佐野委員 橋本厚生次官、あなたは昭和四十四年の四月十四日、建設省住宅局長厚生省環境御生局長との間にかわされましたところの覚え書き、特に水道の供給停止に関する覚え書きを御存じですか。
  84. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 それは私は存じておりません。
  85. 佐野憲治

    ○佐野委員 そういたしますと、違法建築の場合におきましても大きく問題になって、現に水道を送ってしまう、電気もやってしまうということになると、もう押さえようがないじゃないか。すでに事実ができてしまってからではしようがないじゃないか。違法建築だ、だからこれに対しては電気はやりませんよ、水道はやりませんよと、その違法建築者に通告をする。と同時に、そういうことを通告したということを、厚生省なり通産省に通達をする。そうすることによって、人が入居しない前に、もうガス、水道は送りませんということを電気供給者に対して通告をする、あるいはまた、厚生省もそのような措置をとる。そのために、非常に大きな問題も含んでおりますから、連絡会議を開く、こういうことが覚え書きの最後になっているわけですね。いままでそういうことに対する連絡会議なんというのは開かれてないのですか、あなたは覚え書きさえ知らないということになりますと。どうですか。
  86. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 私、存じ上げませんので、事務当局のほうにお答えさせます。
  87. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 いまのことにつきましては、私、ちょっと承知しておりません。
  88. 佐野憲治

    ○佐野委員 これは非常に重大な問題として、違法建築なり、こういう公害の違法の場合も同じなんですけれども、こういう場合に、やはり事前に規制をする、事前に予防する。その措置として、行政執行罰、過料一日幾らと、改めるまでもう累積的にやる。このことによって、これはもう罰金を払うよりも、一日おくれれば一日だけ過料が高くついていく、こういうことにおいて押えることができるじゃないか。もう一つは、ガス、水道、これをとめてしまう、そういう要請をする。だから、これを本文の中に書きなさい。これが国会の要求であったわけです。しかし、国会のそうした要求に対しまして、本法の中にこれを記入することに対しましては、外国にはそういう法律がある。日本においては初めてのことで、建設省段階において、建築基準法の中にこれを挿入することには、やはりいろいろな問題があるから、政府部内で統一したい。では、そのことに対して実行性をどうあげるか、こういうことから、ガス、水道の停止の要請、このためにひとつ覚え書きをやろうじゃないか。じゃ、覚え書きを国会において明らかにしなさい。こういうことで、国会に覚え書きが出されてまいったわけであります。  と同時に、そういう問題だからこそ、建設省と通産省、建設省厚生省、常時連絡会議をもってこれらに対処していく、こういうことなんですが、いままで一体、事務当局にしましても、連絡会議が一回も開かれてないのですか。
  89. 加藤清二

  90. 山中貞則

    山中国務大臣 建築基準法に基づく違法建築の問題の過程と、今度の公害防止の各法律の過程との問題と、少し私は性格を異にすると思うのです。ということは、届け出の義務を課しているわけですから、その届出の義務を怠っているのだということであれば、そのことが罰にかかるわけであって、その罰以外に届け出をしないで、のがれてどこかでこっそりやっているというケースが、あるいは絶無とはいえないかもしれませんが、それを一つの論理的なものとして、確定したものとして議論するのには、少し不法建築とは違うのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  91. 佐野憲治

    ○佐野委員 いや、そうじゃなくて、私は不作為義務に対して、一体どうしたら執行することができるか。作為義務じゃないですよ。そういうものは、行政的に特に公害が発生したら終わりだ。不法建築ができてしまったら、もう手がつけられない。だから、発生する前にこれを行政的に規制をする。そうすると、執行罰しか有効な方法がないじゃないかということが一つと、もう一つは、人が入ってしまっては、ガスや水道をとめておってはこれはどうもならないわけです。事業活動が開始されておるのにガスや水道を途中でとめるということは、これはほとんど困難だろうと思うのです。その事業を開始する事前にそれをやることができないか。それを法律の中に諸外国のように——同じことですよ、大臣。建築基準法の上で確認書を求めるのですよ。確認書を求めて、その確認されたものに対してのみ建設ができるわけですね。大気汚染防止の場合に、届け出した場合にでしょう。何ら変わらない。だから罰則があるわけです。どちらも五万円の罰則があるのですよ。届け出をしなかった場合、虚偽の届け出をした場合五万円だ。建築基準法における建築確認申請、わずか十五坪、十七坪の家を建てるにしても確認が要るわけです。その確認を怠って実は不法建築がなされておる。あるいはまた労働省の調査によるまでもなく、公害というものは深刻な姿をもって現在われわれの目の前にあらわれておる。四十六の有毒物質に対して、浄化装置をやっていないものが七割もある。シアンのごときは、猛毒性のあるやつを百六十七の工場がたれ流しておる。こういう違法事実が出てまいっておるときに、届け出によって、一体改善なり、あるいはまたそういう命令を下した不作為行為に対して、どうして実行性を確保するか。そこで、私は、どうしても執行罰という制度を導入してまいらなければ実際に押えることができないじゃないか。できてしまったら、従業員がおる、生産がある……。
  92. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 先ほどの水道供給の問題についてのみとりあえずお答え申し上げます。  ただいま水道課長を呼んで確認をいたしましたところ、建設省との間の覚え書きは、水道の供給を途中で停止をするということではなく、違法建築ができた時点というのはまだ居住しておらぬわけでありますから、水道の供給申請が出ましたものの実行を保留するという形で協力をいたすということを私どもは約束をしております。その意味での覚え書きでありましたら、先生の御趣旨とちょっと違いますが、私ども聞いておりました。そしてそれはむしろ事務的にはしょっちゅう連絡をし合いながら作業を進めておりますので、水道の供給停止という、いわゆる本来のその法律に書かれておる目的以外のものについて、他の法律の中身を適用するという体系とは異なると存じます。
  93. 加藤清二

    加藤委員長 石川参事官。——石川参事官は呼んであったのに、なぜ着席していない。なぜ返事しない。
  94. 石川邦夫

    ○石川説明員 都市局の石川でございます。
  95. 加藤清二

    加藤委員長 君は石川参事官か。さっきから何度も呼んだのになぜ返事をしない。
  96. 石川邦夫

    ○石川説明員 失礼しました。
  97. 加藤清二

    加藤委員長 おかしいじゃないか。
  98. 石川邦夫

    ○石川説明員 廊下に出ておったものですから……。
  99. 加藤清二

    加藤委員長 冗談じゃないよ、審議中に。
  100. 石川邦夫

    ○石川説明員 建設省とそれから厚生省並びに先ほどの通産省との電気、水道の供給の関係、私、都市局でございまして、事業法の関係は詳しく存じませんので、いますぐお答えすることはできません。いま連絡しておりますので、後刻お答えするようにいたしたいと思います。
  101. 加藤清二

    加藤委員長 審議の最中に限席は許しません。
  102. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 先ほどの御質問の四十四年四月十二日の建設省と通産省と取りかわした文書の中で、違法建築の場合については、まず人が住んでいないこと、それから不法建築であるということが確認された場合には、ガス、電気の使用申し込み承諾を留保ができるということでございます。
  103. 佐野憲治

    ○佐野委員 私の言っていることと同じでしょう。橋本厚生次官、同じでしょう。いわゆる不作為義務が課せられておる。工事の停止を命ぜられておる。にもかかわらずやる、そういう進行形が出てきておる。それをどう押えるか。それには行政罰があるじゃないか。罰金がついているじゃないか。それでは違法建築というものは進行してまいるから、それをどこでとめるか。執行罰で一応とめる。一日幾らの過料を課するということで押える。もう一つは、やはり人が住んでしまったらどうにもならないんだ。そのときにはもはや完成して、作為義務に変わってくるわけだ。作為義務に変わった場合にはこれは水道やガスというものは、人間の生活に重要な問題ですから、これはなかなか——同じことが事業所の場合だって言えると思います。現に事業を開始しておる、従業員もおる、生産もやっておる。そこへ電気やガスをとめるということは、これはなかなか困難な条件を伴う。しかしながら、不作為義務の間は、それをその場合には入れないんだぞ、作業を開始しても、電気やガスは送らないんだぞ、こういうことができるのじゃないか。そういう努力をやるということと、常設の協議会——連絡をとっておりますじゃないのですよ、双方の間で協議会を設ける。こういうぐあいに覚え書きがはっきり国会に報告されたのは、協議会を設けます、単なる連絡をしてやっておるのじゃありません。そういうことで、いわゆる本文の中に、違法建築の場合、人の住まない前に、電気、ガスはとめるぞ、こういうことを法律の中に書く前に、ひとつ覚え書きとして実行さしてもらいたい。その協議会をつくって、その運用のいかんによっては本文の中にこれを入れていいではないか、こういう国会論議の場から出てまいりましたところの覚え書きだということを、あなた方はもう少し考えなければいけないんじゃないかということで、時間も迫ってまいっておりますので、また別の機会にこれらの問題を掘り下げていただくとして、大胆、どうですか、こういうのを見てまいりますと、やはり届け出制よりも許可制、このことが必要になってくるんじゃないか。届け出制よりも許可制、この点に対して何か法理論上あるいはまた問題が存在しているのかどうか、しておるならその点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  104. 山中貞則

    山中国務大臣 それはもう許可制で一律にいければ、これが一番しっかりしておると思います。これは議論の余地のないところですが、しかし、届け出制であっても、その効果というものは、結果的に許可しないことが設置できないことになるわけですから、したがって、目的は達せられるということで、一応私たちは一律全部許可制という立場をとらなかったということであります。
  105. 佐野憲治

    ○佐野委員 どうもやはり、公害がこのような形で発生しておる中に、わが国におけるところの土地利用計画が十分でない、土地利用計画に法的な拘束力と執行力を持たせなかった、こういう点が、企業をして高度経済成長政策の名のもとに公害をまき散らした、こういう点が強く反省されねばならないと思いますけれども、そのためには、都市計画法ができて、いわゆる土地利用計画が初めて法的拘束力を持ってわが国に登場してまいった、八つの用途地域に分ける、あるいはまた高度地区なり、空地地区なり、文教地区なり、幾つかの地域地区制を採用することになる。ここには私権の制限も行なわれますし、特に市街化調整区域の場合におきましても、都市計画法上の許可制をとっておる。ですから市街化区域の場合においては、七十坪以上であります場合には、県知事の許可がなくては開発行為はでき得ない、こういう規定を置いておるわけですね。しかも工業地域、準工業地域、工業専用地域、こういう用途地域の区分も法的拘束力をもってこれから執行していく、こういう出発が始まったわけですね。それだけ私権には相当な影響を及ぼしますから、ここで公聴会なり何なり、住民の参加のもとでいわゆる都市計画はどうするか、あるいは用途地域をどう決定するか、こういう住民参加の中で一つのプランをつくっていく。そこには法的拘束力を持たせる。先買い権、買い取り請求権という制度もこの中から生まれてまいる。ですから、これからの企業立地に関しては、都市計画法なり建築基準法が大きく動いてくるわけです。  その場合に、許可制をもって、わずか七十坪の土地を動かすにいたしましても、そこにいま構築物を建設する場合におきましても、知事の許可制にかかってきておるわけですね。その他の法令を見てまいりましても、高圧ガスその他を見ましても、やはり県知事の許可制になってまいっておる。多くの法令は県知事の許可制になってきておる。  と同時に、土地利用計画で十分な関係のある、しかも過去の反省の中から出てまいりましたところの公害事前防止として、用途地域の法的な拘束力を持たせる。こういう場合に、その用途地域の中における工場建設、しかも、ここにおいていろいろな発生装置を持つところの事業所ができてまいる。これに対して県知事がほとんど届け出制だけだ。たとえば許可制その他によってやっていくというのは、許可制の場合ならば、これは公害基本法によって許可されたところの事業所であります。これにはばい煙施設はありますけれども、それは心配ないんだ、あるいは粉じん、やりますけれども問題ないんだ、しかも、これは県知事として都市計画上にも沿っておる。同時に内容もそうであります。こうしてこそ住民は公聴会を開き、住民参加の中できめるところの都市計画、用途区域、その中におけるところの事業場そのものが、住民の生活環境なり住民の健康のためにどうなるかということも十分にわかってまいる。何をやっているのだ、これは許可を受けてやっておるのだ、片方のほうは許可を受けて、片方の施設だけはこれを無許可で届け出でやるのだ、これを届け出ているのか届け出ていないのか住民にはちっともわからない。自分たちの住んでいるところを自分たちでよくしていこうじゃないか、そのために私権も制限しますよ、こういう法のたてまえが、国会においてずいぶん時間をかけて都市計画法を三国会までも通じてやりましたのが、ようやくいま動いてまいった中で、実は発生施設がこの中には届け出でいいのだ、こういう形で通産省なり厚生省の基準に従って、私は届け出ました、いや虚偽の届け出をしたら五万円の罰金だ、しかも、それはどんどん進んでいく、これはおかしいじゃないか、これはとめなければいかぬじゃないかといったときには、罰金があるから、あなたの言うには行政罰があるから、その上にもう一つ執行罰という過料を課するのは二重的な不利益を与えるというのですけれども、ちっとも不利益には——全然性格が行政罰というものと違ってくるのじゃないですか。その不作為的なために停止命令、事業はやめなさい、作業はやめなさい、工事はやめなさい、やめなかったら一日幾らくらいの罰金をとりますよ、こういう形で押えるよりしょうがないじゃないか。そういう状態なんですから、とめなければそういうものに電気やガスはあげませんよ、こういうことは、法律上明確にしておくために、私は許可制があった場合にいろいろな口実化ができる。これはこういう基本法によって許された届け出があるのだとか、いろいろ内容も告示できる、そのためには届け出だと、県知事としては届け出を受け付けて、内容を書類審査するなりいろいろやるという過程の中においてしかでき得ない。しかも、そういう場合にもっと住民も参加して無届け——現にこれは無届けの発生装置なり何なりというものを一体どうして押えるか、やはり住民参加なり、そういう都市計画の中におけるこういう事業場なんだ、こういうことがはっきりすることにおいて押えることができるのじゃないか。そうするには、他のものは許可制になってきておるのに、このことだけは厚生省と通産省が基準をつくって、その基準によっておまえらは届け出ればいいのだ、こういう形の第六条というものは、考えてみても、もっと実行性を持たせる、実行性を担保するためにはやはり許可制にすべきじゃないか。大臣どうですか。私は一、二の地方自治体もそういう意味において許可制をとっておる。また許可制をとらなければ実行性をあげられない、こういうことで許可制を条例の中に採用している。ある県におきましては国の基準に従って届け出でいいのだ、こういう条例を設定したところにおきましては、いわゆる許可制に条例を改正する直接請求としての県民の請求運動が起こってまいっておる。こういう現状を考えてまいりますなら、もうすでに自治体におきましては公害を事前に防止する、起こったらもうだめなんですから、防止するためにはもっと地方自治体に許可権限を持たせなければならぬ。その許可権限の内において地域住民と一緒になってこれを防止する道が生まれてくるのだ、権利としていろいろな方法がとれるのだ、公示だとか、掲示だとか。しかしながら、単なる届け出の場合にはこれはわからぬじゃないか、告示のしようもないじゃないか、片方においてはたった十五坪や三十坪の建物を建てるためにも——あるいは公聴会を義務づけているところもありますが、聴聞会を開く。住居地区の中にこれを建てていいのかどうか、利害関係で聴聞会を開く。こういう形で片方でやられておるときに、公害をまき散らして、発生源になるこれらの問題について、事前に規制をする。そのために強力な権限というものを地方自治体に与えるためにも、許可制というものは妥当な措置じゃないか。そういう世論、そういう動きが真剣にいま高まっておるのが現実じゃないか。そういう現実にやはり法律はこたえる必要があるんじゃないか。こういう点について、大臣はどうお考えになりますか。
  106. 山中貞則

    山中国務大臣 これはどうも前提が少し私たちと違うので、あなたがおっしゃるようなことであれば、許可制でもやはり同じように、許可を得ないで営業するということが議論されなければならぬと思うのです。届け出をしないでやったら直罰がかかるわけですから、届け出をして内容がそぐわないことをやったらまた直罰がかかるわけですから、そこらのところはその前提としては違わないのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  107. 佐野憲治

    ○佐野委員 違うから、府県において条例で許可制というのを採用しておる。そうすることによって都市計画と組み合わせて、あるいはまた排水の場合にいたしましても、排水溝の中でもっとやる方法があるんじゃないか。許可の場合におきましては、そういうことをいろいろ指導することもできるじゃないか。それを防除する技術なり何なりというものをやるなり、あるいはいろいろな意味において事前防止方法がとれるんじゃないか。届け出制よりも許可制のほうが実行性を確保されるんじゃないか。こういう意味において、すでにそういう現実の動きになってまいっておるときに、条例がそういうほうに動いてきておる。国と同じような考え方の条例に対しては改廃請求運動が、直接請求が住民の中から起こってきておる。こういうぐあいに非常に大きな運動の波が高まろうとするときに、法律厚生省なりの基準だからいいじゃないかというのじゃなくて、その内容をもっと地域の実情に合わしたように、あるいは地域で開発したいろいろな防除対策なり、いろいろなものをそこにつけ加えることができるんじゃないか。住民にもこれを公示する方法が、許可制の権限においてとれるじゃないか。こういう点を一応私としてはお聞きしたのですけれども、またそういう点につきましても、もう少し大臣としてお考えになっていただきたい。
  108. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 先ほどからいろいろ議論を聞いておりますと、執行罰の関係で届け出制ではまずいじゃないかというお話もございまして、いままた届け出制と許可制とのバランス論でございます。純粋の届け出制と許可制との問題でございますれば、また届け出なり許可なりのそれぞれの利害得失もございますが、この大気汚染防止法なり水質汚濁防止法でとっております場合におきます届け出制は、あとで計画変更命令、場合によりましては廃止命令も出せる、またかりに届け出がありません場合、そういう特定施設基準違反をやりました場合は、直罰もかかる、また改善命令等もかかっていく、こういうような形になっておりまして、建築基準法の場合のように、不法建築ができ上がったらあともうどうにもしようがないというたぐいと全く違うわけでございます。その辺が、私、さっきから先生のお考えを聞いておりまして、どうもしっくりこの公害関係にすぐ取り込めるかどうかということにつきましては、疑問を持っているものでございます。
  109. 佐野憲治

    ○佐野委員 おかしいじゃないですか。私が言っているのはそうじゃなくて、この改善命令があると同じく——建築基準法をあなたお読みになっておりますか。確認を求めるのですよ。確認書を得て、しかも、これに対しては工事中止命令、そういうことができるんですよ。にもかかわらず、工事を進めてまいる。不作為の義務に対する強制執行をどうするか、このことを言っているのです。同じように改善命令をやったけれども、仕事をやっていっておる、こういう場合がずいぶんあるでしょう。あなたは現地を見ていないからです。現に、そういう問題でずいぶん問題を起こして、何だ、県が行ってみたらもうすでに仕事をやってしまっておった、これは何だと言ったら、いやこれは試運転でございますなんという形で、企業のいまのやり方の乱暴さというものは、一万三千六百六十五も数えられる。労働省あたりで、どういうひどいものか、ひとつ聞いてごらんなさいよ。あなたは、そういう場合に停止命令をやれる、直罰もある。——あるけれども、それでもやらない場合にどうするのだ。いや、罰金があるじゃないか。行政罰があるじゃないか。——だから、不作為義務に対してこれをどう押えるか。不作為義務ですよ。作為義務に変わってしまえば、これはもちろんこっちの場合もあっちの場合も一緒です。代執行その他において排除するよりしかたがない。このことを言っているのですよ。一体建築基準法をあなたは読んでおるのですか。  それからもう一つは、私は何か横に入っていったというのではなくて、そういうことから都市計画の問題を考え地方の実情を考えた場合に、許可制がいいか届け出制がいいか。現実の事態は許可制へと動いてきておるじゃないか。そのほうがより実行性があがる道じゃないか。こういう点を、私は得失の問題を中心としてここで指摘しておるわけで、何も執行罰とこれと関係したのではない。  時間がありませんで、あともう五分だそうで、最後に、現在公害防止協定、公害基本法といわれるものが取り上げられておる。あるものは紳士協定である。あるものは私法上におけるところの規定である。あるものは公法上の規定だ。あるいはこれが重複しているのもありますし、非常にいろいろ問題があると思います。ですから、やっても不信感を持たれたり、いろいろな問題を起こしてきておる。いや、これは紳士協定だからおれは従う必要はないんだという居直り事業者も実は出てまいっておるわけです。ですから、こういう問題に対しまして、大臣、もっと公法的にしっかりした規定、位置づけを、公害基本法なら公害基本法の中で、いろいろな基準はあるけれども、地域の実情に応じてそうした公害協定を結ぶには、どういう手続と、どうして公法上の性格を持たせるか。こういう点に大臣としてはお考えになったことはありませんか。地域が、地域の実情によってつくっておるのだ、内容がどうであっても、紛争が起こってもやむを得ないというのではなしに、これをもう少し位置づける、こういう考え方がないかどうか。あるいはまた、自治省においても、そういう現実に直面してどういう考え方でこれに臨んでおられるかをお聞きしておきたいと思います。
  110. 山中貞則

    山中国務大臣 各地において、自治体責任者と企業との間にそういう協定が結ばれておることは聞いておりますし、また紳士協定と言われましたが、そのとおりでございましょう。しかし、それを約束しておいて守らない企業者が出るというなら、一体それは取りきめの合意が成り立っていたのかどうかが私は疑問なんで、やはりまとまったものは、どちらの側もそれを承認したものとしてまとまっておるものと私は解釈をして見ておるわけでありますが、それを法律上きちんとしろということであれば、やはりこれは国の法律の基本の基準、定めた基準と、さらにそれを受けた範囲内の条例というものの問題となりましょうから、それぞれ地域においてそれを上回る条件をもって妥結されたとしても、強制力を持たないかわりに、国家権力を背景にしないかわりに、それはお互いが拘束し合うことを前提として話を詰めたのだということでありますから、その範囲では、これは法律違反だとかなんとかいうしゃくし定木なことを言う意思はないということはたびたび申しておりますが、それを今度はさらに法律で定めろということになると、また今度はもとの法律というものとその紳士協定とはいかなる関係があるかという、条例との関係とも変なことになりますので、やはり紳士協定は文字どおり紳士協定というもので好ましき状態として受けとめていくということでよろしいのではないでしょうか。
  111. 大石八治

    ○大石政府委員 防止協定は、私どもはやはり協定として進められるべきものであろう。現在の段階でかなり効果的にできますし、しかも、法律以上の基準というものを両者で話し合って協定する、それが公表されるということで、それぞれ社会的に責任を負うということでありますから、しかも、それを法律でどういうふうにするということは、いわゆる企業の種類や立地条件その他がありますから、それは実際上なかなかできにくいのではないかという意味で、公害防止協定をそれぞれの地域地方自治体企業者との間に進めるようにというのがわれわれの指導方針であります。
  112. 佐野憲治

    ○佐野委員 もう時間が来たそうで、恐縮です。  最後に、大臣、私がそう申し上げますのも、たとえば建築基準法なり建築協定というのを公法上に位置づけておるわけですね。もちろんその中身なり何なりは違います。違うけれども、単なる紳士協定なり、あるいは私法上の契約なりじゃなくて、もっと公法上に位置づける。そういう善意にて行なわれたところの協定というものを公法上にて位置づける。そのために一つの手続なり、あるいはそれらの問題に対してはある程度の限定したものを法律の中に明記する。こういう形で、建築基準法の中にはいわゆる建築協定というものを位置づけておるわけですね。ですから私は、公害の場合におきましてもせっかくそういう形で協定が結ばれておる、あるいは紳士協定に類するようなものを居直った場合には、それは道義的な問題だ、こういう形で見のがすのではなくて、そういう協定なり契約というものを私法上の契約なのかと、いわゆる紳士協定であってはいろいろな問題が起こるではないか、公法上の位置づけをやってもいいんではないか。そういう、基本法の中に、排出基準とかいろいろあって、地域の実情に応じて、場合によれば事業者なりそれらとの間における地域協定というものを結ぶことによって、的確な生活なり、環境水準なり、あるいは健康にして文化的な生活なり、こういうものを確保するために、自主的にそういう協定がつくられる。そのことが企業にとりても地域住民にとっても望ましいとするならば、そういうことに対してやはり一つ基準というものを公害基本法の中においても位置づけたほうがいいのではないか、こういうことを考えまするがゆえに、ひとつこれは検討していただきたい。  そういうことで、持ち時間も終わりましたので、一応はきょうの質問は終わらしておいて、次回にまたひとつ、委員長、よろしく御配慮をお願いしたいと思います。
  113. 加藤清二

    加藤委員長 午後一時三十分再開することとし、暫時休憩いたします。   午後零時四十二分休憩      ————◇—————   午後一時三十七分開議
  114. 加藤清二

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。大原亨君。
  115. 大原亨

    大原委員 私は、これから公害対策基本法案、政府が提案いたしておりまするその法案を中心に、わが党が、環境保全基本法——三野党で出しておりますが、そういう問題を対比しながら、基本的な問題とあわせて関連のある具体的な問題の二、三について質問いたします。  先般、私ヨーロッパの公害調査をいたしたわけですが、その前に大々的な調査団を編成をされた、村上孝太郎君が団長でやられたのがありますが、その報告の中に掲げておる中で、私がそういう点に関する限りにおいては全く意見が一致すると考える点があるわけですが、それは公害対策というのは、結局は二つの点が重要である。その第一の点は企業責任を明確にすること、それから第二は土地政策を確立すること、こういう二つの点を指摘をいたしております。私もやはりヨーロッパの八カ国とソビエトその他を視察いたしまして、結論といたしましては、これが全部ではありませんが、これが基本であるというふうに私は判断をいたしました。主管大臣山中長官は、日本公害対策の欠陥というか、解決すべき問題はどこにあるか、そういうことについてひとつ見解を、かなり審議が進んできたわけですから、はっきりお答えいただきたい。
  116. 山中貞則

    山中国務大臣 ただいまの二つあげられました基本的な問題の企業責任の明確ということは、これは私も全く同感であります。そのために基本法並びに費用負担法その他各種の法制をいたしました前提は、企業にまず公害を出す場合の排除あるいは防止する施設を、全額自分負担において行なう義務がある、そういう気持ちで貫いております。  ただし、第二番の問題としての土地政策という問題が、私は日本にやはり欠けていた問題の一つであろうと思います。先般もこの委員会で申し上げましたけれども、アメリカのような自分の領土内で、陸地で原爆の実験ができるような、そういうような広大な土地であっても、荒野を含む土地について全部のレイアウトがされ直すべきであるということを、ニクソンが議会に向かって言っておられますが、こういうことを考えますときに、私たち日本というのは、居住可能な環境というものは非常に限られた面積であって、ただの面積対比人口率では、あるいはベルギーその他と比べられるかもしれませんが、平たんな、どこにでも住める地域の密度と、日本のように六割ぐらいは山岳地帯であるというような国が、対比されるべき一律の密度というものは質が異なるのではないか。でありますから、同じ自動車の保有台数等についても、まだまだアメリカには及ばないという議論をしておりますが、実際に走り回っておる自動車、その自動車の引き起こす交通災害なり、公害なりというもの、あるいは停滞なり過密なりの状況というものは、やはり違った取り方をすべきである、そういう場合のことを考えますと、日本のこの土地政策というものが、今日まで全国的な視野で、一応経済発展計画についても、全国総合開発計画についてもとらえた形はとっておりますし、また、都市計画や、あるいは農業専用地域とか、いろいろこのごろ地域的な個別的なものが出てまいりますけれども、日本列島全体が、過去十年くらいの間に、太平洋ベルト地帯にメガロポリスを構成していって、それが実際の過密人口が引き起こすであろう公害あるいは産業が、急速な成長をすることによって伴う有害、不用なものの処理等について、そういうもの等について、やはりもう少し計画的なものを設定しておくべきだったのではないかという反省を持っております。でありますから、これから先の日本列島の公害論争の前提には、日本列島の土地利用計画あるいは土地政策というものが、どうしても一枚大きな柱が立てられなければならぬという気持ちがしておるところでございます。
  117. 大原亨

    大原委員 国際的に比較をしてみまして、日本ぐらい公害、環境の汚染や破壊というものが非常にショッキングに、つまり広範かつ深刻に進んでおる国はない。カドミウムとか有機水銀による、そういう公害は、外国では公害などというようなことはいわない。いわないが、日本はこれをも含めて公害というふうにいわざるを得ない。あるいは光化学スモッグとか、赤潮の異常発生とか、こういう自浄能力を越えるそういう汚染というものが、深刻かつ広範に広まっておる。これは一体どこに原因があるか、そういう点についてどういう考えを持っておられるかお聞きしたい。
  118. 山中貞則

    山中国務大臣 川端康成さんじゃありませんが、やはり日本人というものは、美意識というものを底辺に持っている民族だと思うのですが、その美しい、四季の移り変わりのある美しい風土を誇りとしている日本であったはずでありますけれども、しかしながら、やはり経済成長というものの急速な進展、それに伴う無計画に近い人口の移動というものが引き起こした結果が公害であるというようなことを考えますときに、やはり基本的な問題として、もう一ぺんそこらの見直しのところが必要になってくるのではないだろうか。したがって、日本の場合は被害が起こった、あるいはほっておけない状態が起こったという時点からいわゆる公害論争が始まっておる。  ところが外国では、自然の環境なり姿というものを悪くしてはならないという、昔日本人が持っていたはずの美意識というものを具体的に前提に持って、環境汚染に対して立ち向かおうとしておる。ここに私たちは、学びとるべきものが大きく日本に対して投げかけられているのではなかろうかという気がいたしますし、私たちも立ちおくれたとはいっても、やはり日本人の美意識を前提にした、われわれの美しい自然を守り抜いて、そうして後世に伝える義務をいま私たちが負っておるものと考えております。
  119. 大原亨

    大原委員 こういう議論だけに時間をとれませんが、基本法の大切なことですから……。  日本公害は、この十年間GNPは三倍に超高度成長している。こんな国はないわけです。それが太平洋の臨海工業地帯を中心に工場が集中して、人口の七割近くがそこへ集結している。それを、短期間にそういう人口の激動があり、工場の設置があったわけですが、そういう煙突や排水口がやたらに出る姿というものが、——都市計画も立っていない。住宅工場を分離するというような都市計画もない。その基本の都市政策もない。下水や道路その他の公園等の公共投資をしようと思えば、土地の買収のために予算の三分の二あるいは半分以上、三分の二も食う。これでは新経済発展計画をつくろうが、新全総、新全国総合開発計画をつくろうが、全く描かれたもちにすぎない。臨海工業地帯に日本の工業がそういうふうに集中したことは、運賃コストを非常に安くした。ソビエトやアメリカのような内陸工業地帯とは違う。ヨーロッパとは違う。運賃コストが安い。公害のたれ流しである。こういうコスト安のために、日本の超高度成長政策は大企業中心に行なわれた、こういうことの結果が、破滅的な公害を深刻に発生せしめておるのではないか。私の所見に対してあなたはどう思われますか。
  120. 山中貞則

    山中国務大臣 そういうことも大きな理由の一つでありますし、また、私たち政府姿勢においても反省すべき点がありますことは、これは少し別な現象になりますが、要するに企業とか産業とかというものが自分たちのところに来れば、それで幸福が得られるという感じの後進地域、低開発地域工場誘致促進法とかあるいは新産都市とか、それらのいろいろの政府法律考え方でも、とにかく企業来たればそれで住民が富み栄え、幸福になるという気持を進めてまいった。事実また、その法律はいまあるわけですから、私たち政府姿勢自体にも、今日の現状から考えれば少し角度が違っていた。やはりここで謙虚に反省をして、そうして、ただいま御指摘の点や、いま私が申し上げました反省の点等を踏まえて、量から質の経済、質の前提には人間が幸福に暮らせる環境の維持ということを考えて、経済政策の転向も必要であると考えております。
  121. 大原亨

    大原委員 われわれが総合政策を議論する際に、産業基盤のほうに対しましては、中央自治体あらゆる財政面において集中的な力があった。しかし、生活基盤の整備についてはおくれている。社会資本のいわゆるストックとフローの問題、ストックのおくれ、こういうものが集中的に公害として日本的な特色を発揮をしているということになると思う。で、それらの問題を議論するならば、私は総合的に日本の政治において欠けている集中的なものが公害問題である。公害は部分的な現象ではない。政治のトータルなものである。そういう面において、村上孝太郎君が調査をして、一つの結論としてどこかで発表しているのを読みましたが、つまり企業責任が不明確である。企業責任が不明確になっている。企業優先である。もう一つは土地問題である。土地問題について、今日まで政府は政治の中で何ら解決してない。こういうことが基本となって集中的に出たものであるというふうに考えるが、もう一度ひとつ簡単に所見を伺わせていただきたい。
  122. 山中貞則

    山中国務大臣 村上君を長とする調査団の報告も、私も見ましたし、また直接村上君と話もいたしました。また対談等もいたしまして、大体村上君がつかんで帰りましたような考え方というものは非常に参考になりますし、また、私たちがもう一ぺん、流行語で言えば原点に立ち戻って考え直すべき時期に来ている。これは私たち政府自身が、まず一義的にそのことに対して答えを出す責任があるというふうに受けとめております。
  123. 大原亨

    大原委員 なかなか見解が一致して愉快でありますが、さて、これからひとつ話を進めていきます。  私どもが、こういうふうに議論をいたしてまいりまして、日本公害対策で欠如しているものは、私が申し上げたように総合性である。総合的な公害対策がないということです。つまり現象が起きた場合にそれはこう薬ばり、部分的な対策の積み上げである。ですから政府中央集権で法律はたくさんつくる。佐藤総理も、あなたも言われたかどうかわからぬが、法律がたくさんできておることにおいては世界一である。その法律がざる法であることにおいても世界一である。つまり総合政策がない。私が指摘した二つの点も、総合政策の欠除を物語っておると思うのですが、そういう面において私は抜本的に転換をしなければならぬときであるというふうに考えるが、いかがですか。
  124. 山中貞則

    山中国務大臣 日本はあまり法律が多過ぎることは、私も同感です。また、ささいなものでも法律にしなければ承知しないという今日までの議論の環境がありましたことも、やはりそういうことの前提になっていると思うのですが、しかし、法律があればそれで済むということと、さらに、法律自体について、絶えず自分たちはそれを見直し洗い返していく、いわゆる時代に対応する法律というものを制定し、改正していく義務があるというふうに思うのです。  たとえば、昭和二十八年に議会の混乱まで起こしてスト規制法というのをつくりましたですね。これは保守党としては労働政策にその当時においては相当思い切った取り組み方をした一つの端緒になったと思うのですが、あの法律において、電気産業に従事する者が停電ストをしてはならぬ。しかし、いま一体停電なんかやる可能性があるかというと、そういうことはもう大体やり得るストではない。あるいは炭鉱の保安要員を引き揚げてはならぬというのがありますが、そういうものを、炭鉱はストなんかぶったらもう山がつぶれるという状態にきておることを考えると、あの法律はずっと生きているわけですが、一体そういうことであっていいのかどうか。私たちはやはり絶えず、政府自身のことでありますが、法律というものの、現時点における現在の社会に対応する法律がどれだけ必要なのか、あるいはもう役目を終わったもの、あるいは換骨奪胎して衣がえをして出直さなければならないもの、それを大衆が要求しているものが古い法律で眠っているというようなものは、勇敢にこれを掘り起こしていかなければならぬと考えています。
  125. 大原亨

    大原委員 私は以上の前提に立って、重要な政策の柱となる問題について、四つ五つの点について質問をいたしますが、第一はばらばら行政。ばらばら行政であってはならぬ、そういうことは政府も、佐藤内閣といえども認めているわけです。ばらばら行政であってはならぬということは、公害行政の一元化が必要であるということは、どういう点で必要なんですか。
  126. 山中貞則

    山中国務大臣 各省の間に、相互に、研究資料にしても行政の実態にしても、絶えず有機的な、いわゆる公害なら公害という角度からの関連性を持って進められていないきらいがある。  たとえば今回も対策本部が設けられたのは、まさに総理の意思は、これまでのような各省ばらばらの行政のプロパーの仕事だけにまかしていたのでは、政府全体の公害に取り組む姿勢というものがどうしても引き出しにくい、各省がやったことのただ集めたものが、政府の施策だけではいかぬのだということで、担当大臣もきめて対策本部の出発をしたわけでありますが、たとえばもしそうでなかったならば、今回の大気汚染とか、水質汚濁とか、いろいろの法律が出ておりますけれども、こういうような問題で関係大臣法律に七名も原案では列挙されておりました。しかしながら、それはなるほど各省の主張どおりであるならば七名並べなければならない関連を持つ法律でありますけれども、しかし、最も責任を持つ役所はどこであるか、そこの役所が責任をもって、関係の各省と意見の調整さえできておれば、その役所が責任を負えるのではないかということにこたえるために、これはもう閣議で私が発言をいたしまして、役人の諸君の段階ではとても、これは局長でも次官でもおりることはできない環境がわが国にはあるようでございます。私も今度しみじみ体験をいたしましたが、そこで閣議で、国務大臣たる関係閣僚にその由を述べまして、これから対策本部が所管大臣については極力しぼり上げて、審議会等についても一本にしていく原則を承認してほしいということで閣議の了承を得たわけであります。  それにしても、なお具体的な個々の法律を閣議にかけますときには、大臣から、まだ自分のところが入ってないのはおかしいという意見が出た内幕等もございますけれども、これは前に閣議で了承を得た原則に反するということで、全部閣議の段階で排除をいたしました。  でありますので、私たちは、ばらばら行政のそしりを反省をして、そして有機的に、総合的に、統一的に国民の福祉のために行なわれるはずの公害行政が進められていくように、対策本部の機能を全力を尽くして発揮したつもりでありますが、そのために、関係各省等で、法律ができますまでの間に、ふだんならばそんなに外に漏れないはずの法律なども、自分たちの意見は入ってないからつまらぬのだとかなんとかというような意見が散見したこともありました。これは私どものところで、いままでの長い長いそういうばらばら行政というものをしぼり上げた、そのしぼり上げ方に、別な表現でいえば反感等もおそらく持ったであろう。しかし、でき上がった今日の姿勢というものは、やはりしぼり上げたことが国民のためにはよかったと私は確信を持っております。
  127. 大原亨

    大原委員 あなたが御答弁になりました点で、有機的、統一的に国民の福祉優先の公害行政をやる、こういう面において対策本部をつくって一元化してきたことはよかった、こういうことについては、その面に関する限りは賛成です。賛成ですが、あなたはほんとうのことを言ってない。ばらばら行政というのはいけないということは、各省の企業との関係における助長行政と官僚と政党が癒着をしている。そういうところが企業優先になって住民無視になるし、あるいは生活優先にならない、そういうばらばら行政はそこに致命的な欠陥がある。それを克服するような行政の一元化でなければならぬと考えるが、いかがですか。
  128. 山中貞則

    山中国務大臣 これは行政機構の問題まで入っていかないと解決できないと思います。やはり公害行政は、機構も予算も人間もごっそり一カ所に集めて、研究機関、そういうものまで附属した国の態勢を整えていかなくてはいけないのではないか。その意味では、スウェーデンの環境保護庁にしてもアメリカの環境保護局にしても、私にとっては非常な参考としてこれらの内容についても勉強いたしております。イギリスの環境省は、住宅政策その他が入っておりまして、少し意味が違うようですが、いずれにしても、そういうものを掲げた役所をイギリスはやはりつくったということを考えますと、わが国においてこれからどうしなければならないかについては、この先は私はすべて資料その他についても検討をし、自分の見解を加えないで総理の判断を仰ぐということにしておりますので、本部長の決断があれば、総理大臣としてどのような機構をつくろうとされるかは明らかになると思いますが、いまの時点では、総理はまだ明確にいたしておりません。
  129. 大原亨

    大原委員 あなたは非常に有能な大臣で、一級大臣でありますが、私も一生懸命議論いたしますけれども……。  そこで、大臣、この日本公害対策本部なるものは、いかなる法令上制度上の根拠においてできておるのか。その本部に集まっておる官僚諸君の身分というものは、一体どこにあるのか。この監督権限その他はどこにあるのか。この点についてお伺いします。
  130. 山中貞則

    山中国務大臣 これは閣議決定を経て設定された機構でありまして、身分は内閣官房でございます。したがって、官房審議官という形でございます。しかしながら、その機能はまあ新選組みたいなものですかな。そういう感じのものであります。
  131. 大原亨

    大原委員 新選組のようなものであるという答弁は、なかなか的確な答弁である。これは非常に日本人的でその場当たりであって、そして非常に思いつきである。その場当たりと思いつきというのは同じことでありますが、そういうことである。したがって、法令上の根拠もないし、スタッフとしても不十分であるし、また足もない。スウェーデンの環境保護庁はその上に審議会があるけれども、これは自然保護という観点で農林省の外局である。アメリカがつくった環境保護局は大統領の直属の機関であって、各省から四千名の職員を動員いたしまして——いや、六千名だ、多々ますます弁ずるで六千名、六千名を各省から動員いたしまして、ちゃんと末端までの機関を持っている。イギリスの環境省は住宅、自治省を中心にいたしまして、公害関係の行政を集めた。これは自治省であるから自治体まで、末端まで届くというシステムであって、これも一つ考え方である。したがって私は、日本においては厚生省とか、自治省とか、そういうふうなものがかなりのビューロー的な役割りを果たす、こういうことがしかるべきではないかと考えておったが、あなたが発言力が強いのか、佐藤総理が間違ったのか、総理府という幽霊のような、足も何にもない調整官庁が公害のなにを握った。そういうことは、法律をつくるときには各方面に命令してやるけれども、だんだんとその過程において、担当大臣の指導力の問題もあるし、あるいはそれぞれの官庁のセクトの問題が、あなたいみじくも言われたようにある。したがって、法律をつくるまではなかなか勇ましい。勇ましいけれども、さて、実行しようとすると、なかなか言うはやすく行なうはかたい、こういう欠陥があり反省があってしかるべきではないか。今後どのように公害行政に対して一元化をすべきであるかということは、今日までの議論を通じて、私は基本法を出すんであるから、私はしかるべき構想が示されても、これは国民としては当然の要求ではないかと思うが、いかにお考えでありますか。
  132. 山中貞則

    山中国務大臣 確かに総理からも、大体法案が出そろいました閣議で、山中君、これだけそろえて、いわゆる法律はできただろう、しかし、これから実効をあげることについて確信があるか、問題は実効だということで、これは各省のそれぞれまとめ上げた法律を所管する大臣が、政府全体の姿勢として、同じ姿勢でもって臨んでもらえるならば、私は確実に確証があがるということを申しましたら、総理から、ただいまのようなことであるから、各省大臣は、今回法律が制定をされた後は、それぞれ公害対策について、その実効をあげるように努力せよという指示があったわけであります。したがって、それぞれ関係大臣が、自分の政治責任において、政治家として最高の責任者として自分たち法律を駆使して、公害行政に立ち向かうべき努力を傾けるものと思います。しかし、それでもなおかつ法律がまたばらされて、もとの役所に戻っていくということは間違いのない現実の姿ですから、それでいいか悪いかは、各国の例も、あなたもお引きになったし、私も考えておりますが、これらについてはもう少し模様を見たいという総理の意向もありますから、いまのままでいって、もしばらばら行政にまた戻るというようなことがあったら、われわれは率直に改めるにはばかるところがあってはならぬと考える次第であります。
  133. 大原亨

    大原委員 二つの問題ですが、将来公害の担当専任大臣を置く、こういう方針で臨んでおるのかどうかということが一つ。  それから、外国における行政一元化の例を考えながら、やはりアメリカのように、大統領直属の環境保護局を設けて、そこに権限を集中するということもあるでしょう、指導性を発揮するということもあるでしょうが、いずれにしても生活優先の原則で有機的統一的な公害行政を進める上においては、機構においても抜本的改正を、最も近い将来に、しなければならない。いまの閣議決定で、あなたが副本部長になっているという対策本部というのは、これは全く行き当たりばったりの新撰組的な機構であって、もう少しきちっとした公害問題に対処する機構が必要であるというふうに私は考えます。私ども野党三党は環境保全省ということの構想を持っておるわけですが、基本法で一元化の方針を出すべきである、こういうことを主張いたしているわけでありますが、その二点についてひとつあなたの——大臣との議論ですから、役人との議論でありませんから、政治的な議論ですから、あなたのお考えを聞かしてもらいたい。
  134. 山中貞則

    山中国務大臣 私が今日まで四カ月の間苦労いたしてまいりました体験、あるいはそれから学んだ教訓はといえば、やはり担当大臣というものがおるべきであろうという気持ちがいたします。しかし、それを私の口から言うことは、泣きごとを言っているということにもなりますので、私はそういうことは、自分自身では助けてくれということを言っているつもりではありません。能力の限りにおいてやりたい。しかし、理想の姿はやはり担当の大臣がおるべき、重要な仕事ではなかろうかと思います。その際においては、第二点の行政機構も、人員も、予算も、研究機関も、そして場合によっては地方の職員の研修施設も、全部一貫してそろえて、国内的にも国際的にもその機構がたえられ得るような、評価されるようなものになるべきであろう。中途半端なものはいけないと考えます。
  135. 大原亨

    大原委員 原則的には意見が一致しますね。  そこで、野党の案は、環境保全省をつくるという案ですが、あなた、この点は御賛成ですね。あなたは御賛成だと思って進めていきますよ。——それからばらばら行政ということなのですが、行政の一元化ということは、逆にいいますと、一人一人の住民の立場に立った行政の責任体制を確立するということでもあるわけです。そういう点からいいますと、自治体に対する権限の委譲の問題が出てくるわけです。もう一つは、研究機関のあり方の問題が出てくるわけです。日本の行政は企業に従属をしておる。日本の行政は、企業助長行政とべったりになっておる。くっついているから、罰則をつけてもしり抜けになって適用されない。こういうたくさんの法律ができても、全部しり抜けだ。どこが責任を持っていくかわからぬ、末端にいけば。ばらばらになっていて、住民の立場からみると、どこにいっていいかわからぬ、こういうことです。  もう一つは研究機関が行政に従属しておる。私は資料を持っておりますが、別の機会に議論いたしたいと思いますが、当然公表すべき資料にいたしましてもなかなか政治的な圧力がかかる、あるいは漁業組合から補償問題が起きてくるだろう、そういうふうなことをおそれまして、そういう研究の発表を押える、こういう例がたくさんある。つまり行政は企業と癒着をする、研究機関は行政に従属する、それであってはならぬ。たとえばスウェーデンは、国立の研究所の権威あるものを持っておる。それは法律で専門的な助言機関として、その助言があった場合には行政はこの研究機関に従属しておる。イギリスもやはりそういうふうに、国際的に有名な研究機関を持っておって、大気の汚染や水の測定の機能と監視の機能を一元的に運営しておる。技術省に集めてそして強化しておる。日本の科学技術庁は宙ぶらりんだ。総理府の調整機関のようなものである。そういう面において研究機関自主性を確立する。行政の従価から断ち切って国民の信頼できるような行政機関をつくっていく。そういう国立の行政機関もつくっていく。そこに測定機能や監視機能を一緒にいたしまして、それが出した結論というものは行政に対しては一つの絶対的なものである、こういう形をとることが私は必要であると思うが、研究機関の面についてどういうふうにお考えか、お聞かせいただきたい。
  136. 山中貞則

    山中国務大臣 先ほどちょっと触れたわけでありますが、いまお話になりましたように、それぞれ各省の研究所、試験所というものは、熱心にそれぞれの分野においてやっているわけなんですね。ところが、それが国の政治の場、政府の形において、完全に活用されているかという問題点が確かにあります。でありますから、役所の中の——あるいは試験研究所の中だけで循環したりあがったとしても、その役所の中だけで試験研究の成果というものが回っちゃって、外のほうへは連絡がとれない可能性もある。あるいはそういう傾向が非常に強い。国立大学で行なわれている研究でさえも、文部省が知っているのは、せいぜい予算で委託研究としてだれに幾ら金を出したということについてのみしか知らない。しかし、その他多くの研究がなされているはずですけれども、そういうものは文部省大学学術局もつかんでいない。さらにまた瞬間にも活用すべき多くの研究所があり、あるいは場合によっては企業において開発したもの等についての研究等の成果もある。そういうようなものがやはりどうしても国の研究機関には全体的に統合して保存され、活用され、公開されていくべきものであろう。  そこで、いろいろ議論をいたしましたが、いまのところ現在の時点で決定しておりますのは、関係閣僚協決定を見ましたデータバンクの構想でありまして、それは、いまの研究機関はそれぞれのままとしておくけれども、それぞれのデータは全部一応国としてそのデータバンクに集め、しかも二次情報等を加えつつ、これをさらにそれぞれの役所にも流し、民間にも公表し、活用をはかっていくという、海外交流も含めましたデータバンクだけでありまして、これだけではたしていいかどうか、総理も疑問を私に投げかけて、これの検討を命じておるところでございます。
  137. 大原亨

    大原委員 データバンクも構想としてはいいわけですが、これは公害についての、大気汚染なら大気汚染、水質汚濁なら水質汚濁について、最も衆知を集め、専門家を集めて権威ある研究をやっていく、こういう体制としては非常に不完全である。西ドイツのように、州や都市が大きな権限を持って、財源持っていて、そこに有力な研究機関を持っておるところもあるけれども、それぞれ国立の権威のある研究機関を持っている。総合的な、公害に焦点を合わした研究機関を持っている。総合的な研究機関を持っている。総合的なんですから、公害というものは。ですから、私は三野党が提案をいたしておりまする国立の公害研究機関をやはり確立すべきであるという、そういう議論ですね、そういう考え方について、もう一歩突き進んであなたの所見を伺わしていただきたいと思います。
  138. 山中貞則

    山中国務大臣 研究機関だけならば、その方向に進むべきであろうと思います。ただ、今度はそうなりますと、研究機関はできた、しかし、行政は依然としてまたばらばらであるという壁にもう一ぺんぶち当たることになるんですね。それらのところも踏まえて議論はしておりますが、研究機関に限っていえば、国としては、当然のことながら統一された研究機関というものにおいて受けとめ、もしくは開発し、それを活用していくということが原則であろうと思います。
  139. 大原亨

    大原委員 われわれが環境保全法で提案しておるものは全部賛成ですな。——そこで、もう一つ話を行政の一元化という点から進めてまいりますと、行政の一元化というのはことばのやりとりではない。これはやはり住民の立場から見て、公害行政が最も信頼される形で有機的に統一できているということであると思う。そういう観点からいうなれば、自治体が、住民に近いのは自治体なんですから、公害は具体的なんですから、生活環境の問題なんですから、ですから、元来は環境権として自治体の住民の権利であり、そして自治体の固有の事務ともいうべきものである。たとえば外国へ行きまして、ヨーロッパなどで自分の庭の木だって、大きいものを切る場合には許可が要る。家の改造だって色合いに至るまで許可が要る。これは相互に自治体を通じて自分たちのわがままを一規制をして環境を保全しているということのあらわれであります。積み重ねであります。だから、工場が出てきて、煙突がその中ににゅっと入ってくるようなことはできない。そういうことは、企業のあるべき姿としては許されない、騒音でも何でも。そういうことが徹底をある程度しておるということでありましょう。であるとするならば、私は県知事——中二階の県知事に権限を委譲するだけでなしに、能力その他の問題がありますが、それらの要請の問題もありますが、そのカバーをする県とか国の任務と考え合わせながら、政令都市とか自治体に対しまして権限を委譲していく。それで自治体の本来の具体的な、しかも生きた総合行政として環境行政がなされている、自然保全がきめこまかになされるということが必要ではないか。何でもかんでも全部自治体におろせとは言わないけれども、あらゆる重要な面において自治体の発言をする権利、参加をする権利を保障することが、制度として行政一元化の上において必要ではないか、この見解に対しましてどういうお考えであるか、お聞かせいただきたい。
  140. 山中貞則

    山中国務大臣 原則論、異議ありません。しかし、国が公害行政の責任を回避するような形で全部地方にほうり出してしまうというものであっては断じてならないと思うのです。やはり国が国民に対して一義的に責任を負う。しかしながら、その行政は、日本がたとえばカリフォルニア一州の広さだけにすぎない国であるとしても、そこに四十数府県というものが現実に存在をしております。そうすると、たとえば河川一つとらえてみてすし、日常の住民の生活の感情等まで手のひらに載せるように知っておる、たなごころからとるように知っておる自治体の長というものが、そういうことの監視、測定やその他の取り締まり行政に当たってもらえれば、国が責任を回避しない形において、最も好ましいというような姿勢を貫いていったつもりでありますが、またさらに、それらについても、事柄によっては単に自治法でいう政令市ではなくて、公害のために必要な市については権限も委譲する用意がありますし、現在でも相当な数の委譲がなされておりますが、さらに、市町村については、現在、清掃法が今回廃棄物処理法になりますし、あるいは騒音も市町村であります。さらに、もし、政府のほうとしては閣議決定いつでもできる状態になっております悪臭防止法等が議会で受け取っていただければ、これも町村の固有の事務としてやっていただく予定にしておるわけでありまして、基本的な方向はほぼ同感でございます。
  141. 大原亨

    大原委員 具体的な問題について質問いたします。  いままで本委員会、他の委員会等で議論があったわけですが、行政の一元化の中で自治体に権限を委譲していく問題と、それからそれのうらはらの問題は、私は企業責任を明確にする問題だと思うのですね。そうして住民の立場に立って公害行政を貫いていくという問題だと思うのです。その具体的な問題として、私はいままでの議論を踏まえて端的にお尋ねしたい。  大気汚染防止法の件についてでありますが、これは厚生大臣に質問いたしますが、大気汚染防止法の一部を改正する法律案で、この改正案では、二十三条の(緊急時の措置等)の問題であります。伝えられるように、都道府県知事規制権限の強化という中に——厚生省の法律原案の中に「改善命令の強化」というのがありまして、「都道府県知事は、規制基準に違反する者に対して、ばい煙等の処理方法の改善命令にあわせて当該施設の使用の停止命令ができるものとすること」、こういう原案があるのであります。私は、当時のいろいろな情報や議論で察するに、このあとの条文にありまするし、いままでわれわれの同僚委員が議論いたしましたが、適用除外の事業場が電気、ガスにあるわけですが、電気、ガスの議論をする際には、これは公益事業である、エネルギーである、いろいろな観点から理屈をつけまして、他の産業のように、他の企業のように停止命令を知事が持っているというふうな、そういうところへ、知事のところへ権限を委譲すると、公益事業というものが全体的に見て支障を来たすのではないか、だから、通産大臣なら大臣政府がこれを掌握するんだという企業ベースの発言、あるいは政府全体でいえば、全体の調整——よくいえばですよ。それは表であって、本音は違う。そこで、そういう議論をしながら、いま申し上げたそういう政府の原案は、当時議論されておった原案というものは、法律となって今回大気汚染防止法の一部改正で出てまいりますと、改善勧告になっておる。改善命令でもない。ぐっと下がっている。知事のほうの権限は下がっている。大体イギリスでは、きれいな水を使った者はきれいな水で返さなければならぬという慣習法がある。慣習法は法律以上に尊重されている。アメリカでも一番公害源となっておる化学工業協会が、大気汚染防止の宣言を出しておる中に、第四項に「清浄大気管理は、株主に対すると同様地域社会に対する責任である。」企業の清浄大気管理について述べているところでは、企業というものは株主に対して責任を負うているけれども、それ以外に、それと同様に、地域社会に対する責任を負うているのだという化学工業協会の公害宣言がある。その他参考になることがあるわけです。終末処理よりも、生産工程で予防でやるほうが安くつくのだ、そのほうがより道義的なんだ。企業のモラルとして道義的なんだという宣言もある。その中にそういうことがあるわけですが、どこへ行っても日本くらい企業が無責任なところはないわけですよ。であるから、この法律のように何段階かの処置をとったあとにおいては、改善命令を出して、そして聞かない場合には停止命令をかけるというだけの権限なしに、自治体が住民にかわって大きな企業公害発生源をチェックすることができないのではないか。私は政府の原案というものは、厚生省の原案というものはりっぱではなかったか。この点について、時間がかなり制約されておりますけれども、私は経過と現在の所見を、まず厚生省のほうからお聞かせいただきたい。
  142. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 いまの大原先生のお話、提出いたしました大気汚染防止法では、十四条と同時に二十三条の四項、両方にかかる問題だと思います。十四条のほうでは、先生お手元にお持ちのとおりに、これは一時停止等の命令権を都道府県知事は持っておるわけであります。問題になりますのは二十三条の緊急時の場合でありますが、これは現実に行なわれている作業自身は、先生も御承知のとおりに、これは通産当局並びにそれぞれの現在私どもが把握しております限りの大きな企業等においては、すでに協力を願い、大気の汚染が急激に進んでまいりました場合、低硫黄の重油に切りかえる。またテレメーターシステムによるチェック、また電話等を利用しての緊急処置を伝達する等の方法をすでにとっておるわけであります。  私どもは、この二十三条を最初に考えました時点では、いま先生の御趣旨のとおりに、むしろこれは勧告ではなく、緊急時においては命令を下すべきものであると考えました。そして、これは通産省当局とも合意の上で、法制局にその案を提出したわけであります。しかし、実は現状において緊急事態の発生というものをかなり事前から予測をいたすことはきわめて困難でありますし、むしろ事前に把握できるようであれば、これはそれを処理することはできるわけであります。したがって、問題は緊急時、きわめて短期間に多量のばい煙を排出した者に対して確実に命令を伝達する手法、またその担保、こういうものが問題になるわけでありまして、法制的に現在行なわれているテレメーターシステム、電話による緊急処置の連絡、こうしたものが、この伝達手法というものが罰則で担保された命令となり得るものかどうかについて、実は議論を完全に詰めるだけの時間的な余裕がございませんでした。で、私どもとして、今回これを勧告としてこの第四項をまとめたわけでありますけれども、むしろその法制的な伝達方法その他についての技術的な問題が解明されるならば、私どもは、これは本来私どもが考えましたような形で命令とするべきものであると思います。ただ現実には、時間的制約と法制的な技術上の問題として、はたして現行の連絡方法というものが罰則で担保された命令と言い得るかどうかについて議論がなお煮詰まらなかったため、こういう手法をとらせていただきました。
  143. 大原亨

    大原委員 経過についてかなり率直に、正直に御答弁になったわけでありますが、そういう点においては非常にまじめな答弁として敬意を表します。  それで、これはまだ審議を煮詰める時間的な問題等もあってこのような原案になった、率直にいえばそういうことであります。私は、緊急時において差し迫って、そういう生命や——そういう光化学スモッグその他いろんな問題があるわけですが、そういう差し迫ったことで自然の浄化能力との関係において、そういう広範な深刻な事態が発生するというおそれのある場合には、やはり厚生省の原案のように、知事企業に対する停止の権限が保障されておる、何もかにもひっくくってしまえというのではない。行政の面においても、司法の面においても、被害者の立場というものが、被害者の意思というものが貫かれるようにしておかないと、政治の信頼はないし、対策は立たないわけですよ。それでなかったら、押えつけておくばかりだったら、これは政治運動化することであります。行政の無能ということで政治化するのでありますから、これは単なるイデオロギーとか、そういう党派の問題ではないわけです。ですから、やはり停止をさせるというそういう担保があって、初めて緊急時における最後の秩序を維持することもできるし、あるいはそれを抜かないで抑止力として、小林法務大臣もよく言っている抑止力としての機能も発揮できる、電話一本でぱっと影響するようになる、こういうのが行政の一元化というか、末端における責任行政の確立と企業責任が調和をする点としては、私は厚生省の案が適当である。断じて適当である。私は、厚生省が勇気を持って、他の障害をこういう点において克服されなかったことについて、きわめて遺憾である。遺憾であるが、努力をされたことについては認めます。その点について厚生省としては十分部内においても議論をし、関係官庁とも議論をし、われわれは時間をかけて、時間つぶしにこの議論をしているわけではないのであるから、国会における私どもの議論とも並行して、この面について私は、一歩原案に返った理解のできる態度をとってもらいたいと思う。あそこも、行政の点も司法の点も、裁判の点も、どこもざる法だというのでは、これはもう審議の値打ちはない。理屈の上でわかっておる問題については、私は改めるにはばからずということが正しいのじゃないかと思うが、橋本厚生次官のもう一回御答弁をいただきます。
  144. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 いま御指摘になりました点については、私ども全然意見を異にするものではございません。ただ、いまもやっていないわけではなく、あるいはテレメーターシステム等の採用もどんどん行なっておりますし、また燃料の汚染の大量発生等に伴う燃料の切りかえ等も、むろん行なっておるわけであります。そして、この勧告においても、むろんやっていくわけでありますが、ただ罰則で担保された命令という形をとり得るかどうかという議論が煮詰まらなかっただけでありますから、私どもとして、これでこのままにいつまでも置き去りにしておくつもりはございません。なお法律上の問題点等も煮詰めて、前進をはかってまいるつもりでおります。
  145. 大原亨

    大原委員 この国会の審議を通じまして、国会の意思が一致をし、政府も当然これについては改善をすべきであるという、そういう前向きのいまのような考え方によって処理をしていただきたい。これは私は主管大臣の、これは非常に賢明な大臣ですが、山中大臣にお答えいただきます。
  146. 山中貞則

    山中国務大臣 ただいま厚生省から答弁したわけですけれども、これは通産省も同意をしておったわけです。そして、私のところでも法制局との間に、なるべく早く国会に間に合わせるように作業を進めたいと思って、ある程度関与、調整もいたしました。ところが、法制局では、今国会に間に合わせるとすれば、いま橋本君の申しました現在の方式による命令の伝達形式というもののあり方が、純法律的にはなかなか疑問があって、これを明らかにするとすればもう少し時間がほしい、こういうことで法制局もやはりたいへんラッシュ、ラッシュで、徹夜、徹夜をやっておりましたので、今国会に出さないということと、今国会には出さざるを得ないという、どちらかをとらなければなりませんでしたので、私としては今国会に出すほうをとりまして、引き続き今後検討をするということにしております。
  147. 大原亨

    大原委員 国会の審議の過程において、私どもがそういう意思の統一ができましたならば、与党とも話し合いが成立いたしましたならば、これは政府としては異議がない、よろしいですね。
  148. 山中貞則

    山中国務大臣 与野党が一致で修正をされたものに対して、政府が抵抗できないのは当然のことです。しかし、その前には、修正なさるときにやはり法制局の見解がいかなる点に問題があるのか、どうしてこれが書き込めなかったかについての疑問だけは、きちんと詰めておいていただきたいということだけはお願いします。
  149. 大原亨

    大原委員 それは法案が出し合わず、時間切れだということですが、そういう時間切れでこんな基本法を含む大きな法律案を決定して——昭和四十二年に基本法をきめておいて、また基本法を変えておいて、生活優先の原則が明確でないから、環境の問題でまた変えるのだというふうな、そういう基本法は私はないと思うのですよ。そういう基本法をつくるから、政策がばらばらになるのです。そういう面においては、企業責任の問題はきわめて重要な問題ですから、何も企業をとっちめるということではないけれども、そういうモラルを確立するという面においては、日本は高度成長を続けて乱れに乱れたわけですから、そこをきちっと引き締めていく面において明確なる権威のある態度を国会としてはとるべきである。そういう点を私は重ねて要望いたしておきますので、政府も積極的にこの審議に対しましては協力して、審議の過程であらわれた問題等については、実りある審議が結論として出るように、そういう点について協力をされるように、ブレーキをかけたり、じゃましたり、あなたはそういうことは絶対にないと思うけれども、そういう点について重ねて最後の見解をお伺いしたい。
  150. 山中貞則

    山中国務大臣 それはまず国会の中で与野党の合意を発見することが、議会のほうの当面の仕事であろうと思うのです。したがって、その合意のためには、法制局の純法律上の問題点を詰めてもらいたい。私自身のほうも、また引き続き作業はしていくわけでありますから、そういう点についてはさらに、やはりむずかしいのか、あるいは時間をかけてさらに法制を整備すればできるのか、そこらのところは、私たち自身の義務としても仕事をいたしていきます。
  151. 大原亨

    大原委員 中央行政、いわゆる公害行政官庁の一元化の問題、あるいは公害大臣責任、権限の問題、あるいは権限委譲の問題、住民に近づけるという問題。そういう問題の一つの例として、企業責任との関係でこの問題を議論いたしました。  さらに、研究所が権威のある研究所として成立するように、そういう問題について、いまから予算編成期、通常国会にかけてまだ議論があるわけですから、これを十分議論を煮詰めて、いろいろな外国の立法例等も考えて、行政に従属しない研究機関をつくらなければ、これは公害対策にはならぬ。費用を使うばかりです。ですから、そういう点においては、研究所のあり方について転換してもらいたい。私は、それ以外にも、司法裁判で住民の意思がほんとうに疑惑なしに貫かれるということでなければいけないという議論を結論的にはしたいわけですが、時間がないので同僚委員に譲るわけです。  要するところ、たとえばイギリスだったならば、三人の被害者が問題を市役所なら市役所に提起すれば、市役所はその告発をいたしまして、裁判になる前に和解をするというふうな実際的な方法をとっておる。こういう訴える方法、持ち出す方法はきわめて端的にできるようにしておくということです。日本では、水俣病のように、十七年間も生活保護をもらって、裁判をやってもいまだに加害者は明確であるのに決着がつかぬようなでたらめなことであっては、これは公害問題というものをやたらに陰惨にし、地下にもぐらせることになるのではないか。行政、政治に対する信頼を失わせるものではないか。そういう点において、司法上の問題についても、議論をした問題については英断をもって政府は結論を出す、国会は最高の機関であるから、そういう態度がなければ公害国会に値しないものである、そういうふうに私は考えますが、担当大臣はいかがですか、はっきりひとつ答弁してください。
  152. 山中貞則

    山中国務大臣 裁判の批判は別にして、私たち責任をのがれてはならない。したがって、国会の議論中与野党で合意される点があれば、これはもちろん法的にも従わざるを得ませんし、また、議論の中で掬すべき、耳を傾けなければならない点があれば、十分耳を傾けて、次に、とるべき措置についてそれを反映させるべきであると考えている点については同感でございます。
  153. 大原亨

    大原委員 協力しますよ。以上で終わります。
  154. 加藤清二

    加藤委員長 まだあなたの持ち時間は二分あります。
  155. 大原亨

    大原委員 じゃ、一つ聞いてみます。  つまり総合行政がないという点ですが、瀬戸内海は港湾の管理者というものが——それぞれ港かあるわけです。他のほうは水路があるわけです。広範な瀬戸内海全体を管理する責任者はいないわけです。二十年間に一回しか水が変わらぬわけです。工場排水や都市排水や油送船の汚染や、ラワン材等を持ってきまして皮が下へ沈でんいたしまして腐敗する問題や、一ぱいあるわけですよ。それを総合的、有機的に対策を立てて、いままでのヘドロ蓄積を除去することを考えながら予防措置考えていく、そういう一元的な広域的な行政はどこが責任をもってやるのか。これは東京湾でもどこでもそうです。公害というものは、地域的であるとともに、広域的なものですし、国際的な問題でもあるわけですから、そういう面において、一体どこが責任をもって全体の管理をやるのか。瀬戸内海はこのままいけば死ぬという。そういう総合的な立場からの行政責任はどこが負うのか。
  156. 山中貞則

    山中国務大臣 水質汚濁防止法の所管庁である経企庁、通産省でございます。
  157. 大原亨

    大原委員 時間が来ましたけれども、そうじゃないのですよ。海上の汚染監視等については運輸省が一元的にやったのです、今回の法律案は。廃棄物その他含めて全部やったのですよ。清掃法関係も全部やったのです。運輸省に権限が移ったのですよ、そういう点は。一元化したのですよ。しかし、運輸省だけではできないのです。海上保安庁が監視するといったって、そんな能力なんかないのだ。人員の力も検査能力もないのですよ。だから全部ざる法になっちゃう。全部ざる法で、油も何もたれ流しになっているのですよ。だから、それを総合計画をだれが責任をもってやるのかということはないではないかという問題点だけを私は指摘して、後の機会に質問は続けるということで、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  158. 加藤清二

    加藤委員長 次は、古寺宏君。
  159. 古寺宏

    古寺委員 公害防止事業は、企業責任を持つべき問題であり、一〇〇%事業者負担するという、原則を貫いていくべきは当然であると思いますが、この点についての政府の見解を承りたいと思います。
  160. 山中貞則

    山中国務大臣 何べんもお答えいたしておりますが、そのとおりでございます。
  161. 古寺宏

    古寺委員 現在の公害防止事業というものは、公害が発生してから行なわれる事業が多いようでございますが、特に今度のこの費用負担法につきましては、公害発生時の公害事業に対する費用負担法というふうに考えられるわけでございますが、この点についてはどうでございますか。
  162. 山中貞則

    山中国務大臣 そうばかりではありませんので、たとえば水底の底質の悪化とか、土壌汚染の前提となる土壌の汚染というようなもの等については、これはとらえ方の角度は違いますけれども、相当長年にわたる蓄積というようなものを前提にしておるわけであります。
  163. 古寺宏

    古寺委員 この公害防止事業につきまして、その費用が物価にはね返る、こういう心配が非常にあるわけでございますが、そういう点について政府はどういうふうにお考えになっておるのでしょうか。
  164. 山中貞則

    山中国務大臣 田子の浦の製紙業界の出すSSの問題が夏ごろ議論されまして、そして政府のほうで十七億、事業団融資と起債とを提供した。それは全部業者負担であるということが公になりましたころ、まだ何にも負担をしていないのに、中小ちり紙業者の人たちが値上げを発表した。それは公害対策に金がかかるからということでした。これは、ある新聞の漫画で、たれ流しのしりぬぐいはちり紙でと、まさにそのものずばりの漫画が書いてありましたですね。さすがに業界も恥ずかしくなったのでありましょう、負担をしてないわけですから、かけ声のうちにもう値を上げる、そういうようなことは、これは消費者のほうが許しませんから、結局は自分がまた逆な意味で音をあげて引っ込めたわけであります。冗談を言っているわけじゃありませんが、そういうようなことはやはりある意味においては、寡占的なものであれば独禁法が働いてまいりますし、また不当な便乗であればこれは別な意味の消費市場における批判を受けることは、カラーテレビなんかが、公害の問題ではありませんが、いま、非常な苦境に、曲がり角に立っておるというようなことでも明らかであります。ですから原則としては、企業防止費用に要する費用というものは、その製品コストの中に企業の合理化によって吸収すべきことが原則である。そのために政府のほうでも、ことに中小企業等に意を用いながら、財政、税制金融等を考えていこう、こう言っているわけでありますから、それらのことを受けたやはり姿勢というものがなければならない。しかし、最終的に合理化できて市場において価格を維持できた企業と、合理化できなくてそして防止費を上のせして市場に出した企業とは——消費者の選択する市場において敗北するであろう。やはりそのことは国際的にも日本がいま公害防止のために費用を投じないで、アメリカの市場にダンピングをかけているんだという非難を一部述べる人がありますが、これは国際的な議論としても提起されるわけでありますから、国内の市場においても当然それに耐え得る企業というものの努力が前提になければならぬと思います。
  165. 古寺宏

    古寺委員 そういたしますと、企業費用負担しても、あるいは公害防止事業をやっても、それは物価にはね返ることはない、そういうふうにお考えでございますか。
  166. 山中貞則

    山中国務大臣 私たち自由民主党は、統制経済をとらざる政党でございます。すなわち自由主義経済でございますので、値を上げてはならないという禁止規定等をやるわけでもありませんから、やはりこれは職業の選択の自由というものを受けて、それぞれの企業の、個人と同じく創意くふう、能力、そういうものに応じて伸びる企業、だめになる企業、あるいはやっていけなくなる企業、いろいろあると思うのです。その中で、やはり企業というものは、自由な競争の中から社会の繁栄に貢献する企業であらなければならない。すなわち、反社会的な企業でない姿を要請されているのがいま公害関連企業であろうと思いますので、絶対にこれが値上げにつながらないかといえば、場合によっては、どんなに合理化、近代化の努力をしてみても、たとえばいま人件費等のコストプッシュによって、中小企業等の分野等においては、どうしても値を上げざるを得ないというところに追い込まれておる環境が物価問題等にも出ておるわけですけれども、このようなことから考えますと、やはり生きていくためには、そして消費市場の許容する範囲の中において製品の中にその価格を織り込まざるを得ないという分野も出てくるであろうと思います。これは、しかし、やはりぎりぎりどうにもならない場合において、消費者がそれはやむを得ないだろうと納得する範囲のものでなければならないであろうと考えます。
  167. 古寺宏

    古寺委員 そういたしますと、公害防止については企業が一〇〇%責任を持つという原則から、あるいは社会的責任原則から、そういう企業は、そういう原則に相反するわけでございますが、そういう点につきまして大臣はどういうふうにお考えですか。
  168. 山中貞則

    山中国務大臣 ちょっと質問の要点がわからなかったのですが、取り違えていたらまた訂正いたしますが、私の考えとしては、企業というものが公害を出さないようにして事業活動しなければならないというのが原則ですから、その公害を出さないようにする施設については、財源手当ての融資措置その他は別にして、企業全額みずからの負担において行なうべきものが原則である。そして企業が全部自分企業内だけでなくて、地域に対して負うべき責任というものを果たすための度合いというものが、公害防止費の事業者負担法案であります。そういうことで、まずその負担法案についても事業者の持つべき割合を先に定めて、残りを公共事業といっても、国と自治体とが持つということに形が別な商旅で違ってきておるわけでございます。
  169. 古寺宏

    古寺委員 そういたしますと、物価にはね返った場合は、これは国民が、住民が負担するという形にはならないでしょうか。
  170. 山中貞則

    山中国務大臣 結果的に企業が存続するために、私が申しましたように、市場において許容される範囲というのは、消費者が買わないといったらそれでその企業は倒れるわけですから、やはり買ってもらえる価格でなければならないと思うのですが、そういう場合において、その条件の中で、場合によってはそういうような消費者が負担をすることになる場合もあり得る。それは国民の消費者としての立場というものでやはり認めざるを得ないものもあろう。しかし、それが独禁法に触れるようなものであれば、これは別な法律でもって、国民不在のそういうような価格構成をして、国民の選択の余地のないところにもぐり込んでいこうとするものは、別な法律が働いていく。私は、あくまでも自由市場のことを言っているわけでございます。
  171. 古寺宏

    古寺委員 そこで、そういういわゆる物価へのはね返りを予防する措置を、政府としてはどういうふうにお考えでございますか。消費者にそういう企業費用がはね返ってこないような予防措置、それはどういうふうにお考えでございますか。
  172. 山中貞則

    山中国務大臣 何べんも申しておりますが、その防止施設に要する費用等については事業団、開発銀行あるいは中小公庫等の政府機関等の融資あるいは税制、そういうものをセットしながら、負担は一応企業負担ですけれども、それに対して国も援助の手を差し伸べるが、それは返してもらう金ですから、一応援助をするだけであって、本来は自分負担でやるわけでありますから、そういう意味において国のほうで、ことに費用負担等の法律においてはわざわざ、基本法の二十四条にもあるのですけれども、それはやはり明確に費用負担法の中でも中小企業については、その負担金そのものについても、延納なりあるいは分割払いなりを認めようじゃないか、あるいはさらに税制金融等について、午前中答弁いたしましたような特別償却とか、あるいは損金に算入するとか、いろいろなことで、なるべくそういうものが直接コストに響かないように配慮をしてやる必要が、政府のまた一方において負うべき義務であろうと思います。
  173. 古寺宏

    古寺委員 中小企業に対してはいわゆるそういう税制上の措置その他は、これは当然配慮がなされなければならないと思いますが、大企業の場合に、そういう配慮をするということは、これは企業優先の立場にならないですか。
  174. 山中貞則

    山中国務大臣 これはまあものの言いよう、考えようでしょう。やはり社会公共のために必要とする施設を社会が要求しておる。それに対して社会人としての企業活動を続ける立場の企業が、自分たちがそれを社会に迷惑をかけないように、要請にこたえるための努力をする。それに対して国は全く突っぱねておいていいという意見もありましょう。あるいは国がある意味においては、きびしくやる場合において違反等の罰金のこともありますが、罰則もありますが、しかし、それらの良心的な努力をしようとする場合において、国がやがては返してもらうのだという条件で融資等してやることについて特別に企業を守ってやると申しますか、企業に援助するということにはならないのであって、ほっておけばその企業がやらないおそれがあるという場合における周辺国民、住民に与える迷惑なり、あるいはまた悪いという意味の悪を考えますと、その悪をなさせないために国が援助することは、私たち考え方としては行き過ぎではないと思っております。
  175. 古寺宏

    古寺委員 そうしますと、それは非常に利益をあげている会社あるいは事業場、そういうものに対してもそういう制度をつくるわけでございますか。
  176. 山中貞則

    山中国務大臣 これを利益をあげている会社だから、あるいは利益をあげてない会社だからという仕分けをいたしますと、これまたたいへんなことになりまして、ある会社は、ことしは負担すべき費用を持つ。しかし、決算で赤字になったので、来年は負担せぬでいいのだということになってもいけませんので、やはりこれらは赤字黒字の議論ではなかろう。企業がそこに存在し、そして地域住民の中で事業活動を続ける、そのことに対して負うべき義務をひとしく果たせるということだと思うのです。
  177. 古寺宏

    古寺委員 前に進みますが、今度の負担法の第四条の第二項に「公害防止事業に係る公害の原因となる物質が蓄積された期間等の事情により前項の額を負担総額とすることが妥当でないと認められるときは、同項の規定にかかわらず、同項の額からこれらの事情を勘案して妥当と認められる額を減じた額をもつて負担総額とする。」ということになっておりますが、これは前の企業は、不遡及の原則によれば負担しなくてもよいということになるのか、あるいはさかのぼって負担させるとすれば、どういう基準によって負担をさせるというお考えなのか、その点について承りたいと思います。
  178. 山中貞則

    山中国務大臣 これはたとえば田子の浦でも、昭和の浅い時代からの企業進出の歴史を持つところでありますし、非常に長い歴史がある。あるいは水銀、カドミウム、あるいは銅、亜鉛、こういうもの等も非常に長い歴史があります。そうすると、たとえば鉱山法などで遡及できる限度というものは、鉱山法が明治に施行された日以降のことについて遡及するというふうになっておるようでありますが、やはりどこかで、ずっときたものについては、区切らざるを得ない。  あるいは、カドミウム等が議論され始めたのは僅々四、五年のことであります。それまでは、その地域においてカドミウムを確かに発生させてはいたでありましょうが、その企業地域からも歓迎され、企業はまた、地域の中のよき隣人であり得た環境があったと思われますが、それがカドミウム汚染というのが議論になり始めて、これはたいへんな企業だったのだということを、企業側のほうもあらためて、自分が長い間加害者の立場にあったことを知ったというような環境があると思うのです。そうすると、自分たちは悪いことをしておると知って長いことやっていた加害者の意識も、ある時点まではなかったのだ。また結局被害者といわれる立場の住民の人たちも歓迎こそすれ、そう非難しているところは別段なかった企業の排出物というものが、自分たちは長い間被害者の立場に置かれていたのだということを最近になって知ったような事情が確かにあります。これは否定できない事実だと思うのです。  そのような場合において、これは将来も、われわれがいま公害として発見していない特殊な物質等が、日本の科学技術等の発達、あるいは世界のそれぞれの情報等の交換によって明らかにされた場合には、これは取り入れていかなければいけません。そうすると、これはその企業がそこに行ったときからだとかなんとかというきちんとしたきめ方、あるいはまた、それが複合的なものもありましょうし、そういうこと等を勘案することができるというふうにしたわけでありますが、しかし、あくまでも前提はそうではなくて、全額企業が持つのを原則として、それの原則と違うものを逐次列挙していったということでございます。
  179. 古寺宏

    古寺委員 そこで、複合汚染とか、あるいは複合によって累積されたようなそういう被害の場合に、負担はどういうふうになるのでしょうか。
  180. 山中貞則

    山中国務大臣 それはケースによって個々の企業がみんな相談をして、自分たち全体で負担し合おう、そしてお互いが——その企業のいろいろな計算方式があるでしょう。生産高とか、生産費とか、あるいは企業の敷地面積とか、従業員数とか、いろいろなものをみんなが納得し合うような分担をすれば、それが一つの、共同で納付すべきものを時期、支払い方法等について明示しながら申し出たときということに該当すると思います。  複合であっても、いや、わが社はわが社として持ちます、あの社が幾らなら私の社は幾らだというようなことが、大体においてその施行者である都道府県の了承を得られ、あるいは審議会等において、それぞれの個々の負担する事業費が妥当であると認められたものは、個々の負担としてその事業対象負担をしていくということに、二通りのケースがあろうかと思います。
  181. 古寺宏

    古寺委員 そこで、公害防止事業の中に「公害の原因となる物質により被害が生じている農用地又は農業用施設について実施される客土事業施設改築事業その他の政令で定める事業」が入っているが、この「政令で定める事業」というのはどういうことですか。
  182. 山中貞則

    山中国務大臣 大体、水の導入口、取り入れ口のつけかえ、いわゆる汚染された川からでない、きれいな川から取りかえるというような事業等も念頭に置いております。
  183. 古寺宏

    古寺委員 そこで、製錬所あるいは鉱山等の廃水あるいは大気汚染によってカドミウムの土壌汚染が起きた場合には、こういう防止事業対象になるわけでございますね。
  184. 山中貞則

    山中国務大臣 当然対象になるわけでございます。
  185. 古寺宏

    古寺委員 その場合に、鉱業権者がいないとか、あるいはその法人が解散をして現在いないというような場合もあり得るわけでございますが、そういう公害防止事業をする場合にはこの費用負担法は該当しないわけでありますが、そういう場合の公害防止事業については、一体どういう計画によって行なうわけでございますか。
  186. 山中貞則

    山中国務大臣 たとえ、いま営業をしていなくて、会社も解散していても、営業していた法人を代表する個人なり、あるいは別な会社の形でそれがどこかに存在しておる場合においては、当然その責任をそこまで追跡して負担をしてもらう。しかし、もうこの地球上のどこにも、一かけらも何もない。会社もなければ人もいない。あるいは人を見つけたけれども、財産も何もなくて不具廃疾みたいなものであったというような場合においては、これは当然全額国と県、場合によっては市町村段階まであるかもしれませんが、そういうことになろうかと思います。
  187. 古寺宏

    古寺委員 現在、山形県の米沢市に西吾妻という鉱毒防止事業がございます。これは非常に被害が大きいのでございますが、酸性水による被害でございます。この場合、この鉱業権者はもういないわけでございますが、こういう事業に対しては、公害防止事業というものはどういうふうになっているのか。
  188. 荘清

    ○荘政府委員 山形県の西吾妻鉱山の場合は鉱業権が消滅し、かつ法人がもう解散して不存在になっておりますが、こういう場合に備えまして、通産省では、明年度予算から国費をもって県に補助金を交付し、県と国の金を合わせまして今後の公害防止に必要な防除施設を整備したいということで考えておりまして、御指摘のこの鉱山の場合も、当然対象として私ども考えております。
  189. 古寺宏

    古寺委員 この西吾妻の例は別といたしましても、カドミウムによる汚染が起きているような地域が非常に多いわけでございます。いまのように、鉱業権者がいない、あるいは法人が解散をしている場合には、これは通産省がそういう対策を考えているということでございますが、現在通産省としては、大体何カ所ぐらいを来年の事業としてもくろんでおりますか。
  190. 荘清

    ○荘政府委員 明年度予算要求額は約一億円でございます。これは県に三分の二補助して、三分の一は県費で上のせをしていただくということで、関係県と御了解を得ましてやっておるわけでございますが、額が確かに不十分だと思っております。一億円で、初年度工事分といたしまして約八十鉱山を現在考えております。四十七年度以降は金額もふやし、対象もふやして、この制度を抜本的に拡充いたす所存でございます。
  191. 古寺宏

    古寺委員 この西吾妻だけで大体四億ぐらい費用が要る、こういうふうにいわれているわけでございますが、それだけ多い休廃止鉱山の対策としてわずかに一億の予算でもってしては、これはもう公害防止はできないと思いますが、こういう点については、総務長官はどういうふうにお考えでしょうか。
  192. 山中貞則

    山中国務大臣 その前に、私の先ほどの答弁であるいはちょっと言い間違えたかと思いますが、ただいまの通産省の公害保安局長の答弁が正確でありまして、いわゆる法人がなくなっていた場合は追っかけられないということでありますから、申しわけありません、訂正をいたしておきます。  さらに、その予算ですが、それは単年度で、一年に全部やっちゃうということでありますと、なるほど、当然だれが考えても足らないわけですけれども、それはやはり調査、設計等のいろいろな費用等を含んで、逐次年度別に計画を立てて施行するのが常識でございますので、来年度の予算が一億台であるから、二億要するのに足らないではないかという御意見はごもっともでありますが、目的達成の金額としては変わりはないのではないかと思っております。
  193. 古寺宏

    古寺委員 農用地に対する汚染防止法律はできたわけでありますが、沿岸漁業のノリであるとかワカメであるとかカキであるとか、あるいはそういう魚介類が非常に被害を受けているわけでございます。そういう沿岸漁業に対するいわゆる汚染防止の立法化と申しますか、法制化と申しますか、そういうものを政府としてはお考えになっておられますか。
  194. 山中貞則

    山中国務大臣 今度の新しい、最も進んだと思っております内容ですが、その一つである海洋汚染防止法というものの際にも、さらにまた新しく工場排水も一緒にした水質汚濁防止法の際にも、私の念頭にありましたのは、漁民等の紛争の現実を踏まえるまでもなく、やはりこの公害というものが水産動植物に及ぼす影響というものをどこかでか考えなければいけないという気持ちで、ずっとおったわけであります。基本法の第二条の典型公害の「水質の汚濁」の中に、今回は新しく色と温度、すなわち熱排水等も取り入れていくことにいたしました。この熱排水あるいは色も、場合によっては魚にとってすめないこともあるわけでありましょうから、これらのことをこれから新しく受けて、水産動植物の被害に対して公害で何らかの規制法に書き込むか、あるいはまた温熱排水等の際は、これは当然水産動植物のことを念頭に置いて取り入れたことでございますので、これらの問題を立法化するときにはこの問題に取り組んでいきたい。これはずっと作業を継続いたしますから、比較的早くでき上がるのではないかと思いますが、あるいは私が簡単に考えるほどのものではないかもしれませんけれども、方向は、あなたのおっしゃるとおりの方向へ作業していきたいと思うのです。
  195. 古寺宏

    古寺委員 そうしますと、当然沿岸漁業の公害に対する公害防止事業というものも考えておられるわけですね。具体的にはこれは水産庁にお聞きしたいのですが、どういうような防止事業をお考えでございますか。
  196. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 費用負担法公害防止事業として私どもいま考えておりますことは、一つは、ヘドロの堆積ないし水質の汚染によりまして漁場の生産力が哀えました場合、しゅんせつ、導水、さらに客土あるいは耕うん等のいわば水産土木技術を使っての事業一つございます。  それからさらに、公害の原因となります物質によって被害を受けます水産動植物の増養殖施設等を守るために、オイルフェンス等の事業一つ考えておるわけでございます。
  197. 古寺宏

    古寺委員 今度の農用地の土壌汚染防止法の中で、一定基準以上の米が産出される地域がこの事業対象になっているようでございますが、これは大体どのくらいが基準になっているのか、どの基準を用いるのか、それを承りたいと思います。
  198. 岡安誠

    ○岡安説明員 農用地の土壌汚染防止法におきまして地域指定をいたしまして、対策、計画その他やるわけでございますが、地域指定の基準といたしましては、これは政令でもってその要件を定めるということにいたしております。その要件につきまして私ども考えておりますのは、当面カドミウムにつきましては、カドミウムが一PPM以上玄米に含まれると認められるような地域、それと、近くそのような状態に達することが明らかな地域というようなものを、地域指定の対象というふうに考えております。
  199. 古寺宏

    古寺委員 そうしますと、〇・九PPM以下の地域についてはこの防止事業が行なわれないわけでございますか。
  200. 岡安誠

    ○岡安説明員 〇・九PPMのように一PPMにきわめて近いという場合には、近くそのような状態に達する見込みがあるということで、おそらくこの対策地域に含まれるというふうに私どもは考えております。
  201. 古寺宏

    古寺委員 この土壌汚染の場合でございますが、米の基準によって対象としているようでございます。土壌を基準にしないという理由は、先ほど総務長官からもお話がございましたが、この土壌と米の相関関係について、農林省はどういうふうにお考えになっていますか。
  202. 岡安誠

    ○岡安説明員 土壌中に含まれますカドミウムの量と、それからその土壌に作付けられました農産物中に含まれますカドミウムの量の関係につきましては、私どもは相関関係があるものというふうに考えておりますけれども、これはいろいろ土壌の状態、それから作付けされました作物の種類、また天候その他によりまして、いろいろ吸収のしかた等が現に違っております。そこで私どもは、そういうような土壌の状態その他に応じました因果関係を明らかにいたしまして、土壌の状態によるいろいろな指定その他を考えたいと思っておりますが、当面やはり玄米中に含まれますカドミウムの量から地域指定その他をやってまいりたい、かように考えているのであります。
  203. 古寺宏

    古寺委員 現在、この汚染された米を買い上げをしているわけでございますが、一PPM以上の米が一体どのくらいあるのか。また、〇・四PPMから〇・九PPMまでの米を含んだ汚染米の総量はどのくらいになっているか、承りたいと思います。
  204. 内村良英

    ○内村説明員 お答え申し上げます。  現在、要観察地域内のカドミウム含有米の政府在庫量は、約三千五百トンでございます。それ以外に農家の保有米が約二千トンございます。
  205. 古寺宏

    古寺委員 こういうようなカドミウムによって汚染された米は、これは当然企業がやはり責任を持って買い上げるべきであると思うのでございますが、その点について、総務長官はどういうふうにお考えですか。
  206. 山中貞則

    山中国務大臣 食管法と企業と農家の収穫補償との問題は、少し関連を異にいたしますが、食管法はいま食糧庁から説明しましたように、一PPM以上のものは国民の食糧に適しないという食管法の前提がある、適しないものは買わないでいいという前提でございますから、これに買わない措置をとる。そのかわりにおいて、これは食糧庁が、農林省として答弁をするでありましょうが、厳重に関与して、人間の口に入らない加工用原料として、全量これを処理させておるようであります。  一方、一PPM以下のものは食糧としては適している。そしてまた事実米食民族ですから、三食ずつ食べていく主食として食べても、それは人体に対しては害はないということを厚生省は言っておるのですけれども、一方〇・四PPM以上になると、要観察地域への指定ということで調査が始まりますので、国民の間に不安がある。そこで、一応買い上げた米も配給にはいたしませんということと同時に、それならば、保有している農家の保有米は食管法で買い上げられませんから、その買い上げられないものは等量を交換をするということで一応処理いたしておるのが、食管法からの範囲です。  さらに、それらに対しては、今度は銅、亜鉛等の場合も減収が伴うわけですが、これはカドミウムだけに限定をいたしますと、それらによって農家の受けた被害は、それぞれの地域によって、企業と農業者あるいは地域の広さその他によっても違うのでしょうが、大体反当の金額が定まって、それによって補償金を農家の方は受け取っておられるというふうに承知いたしております。
  207. 古寺宏

    古寺委員 この〇・四PPMから〇・九PPMまでの米につきましては、これは国民が不安を持っているので売ることができない。そうしますというと、これは当然公害によって汚染された米ということになりますが、この汚染した責任というものは、これはだれが責任を負うべきものか、法務省の見解を承りたいと思います。
  208. 味村治

    ○味村説明員 お答えいたします。  汚染につきまして、民事上の損害賠償責任がどこに帰属するかという御質問だと承りますが、かりに、この汚染米につきまして、汚染の原因につきまして鉱業法の適用があります場合は別といたしまして、一般の民法でまいりますれば、その汚染につきまして故意または過失によりましてその汚染を生じさせた者、これが責任を負うということに相なると思います。
  209. 古寺宏

    古寺委員 そうしますと、これは当然その企業責任を負うべきものを、食管法によって買い上げをしているということになるというふうに考えるのですが、この点はどうでございますか。
  210. 山中貞則

    山中国務大臣 これは法で命令されたり法廷で裁かれたりした結果でなくて、その企業の所在する周辺の被害を受けておる農家の方々とその企業とが話し合って、もちろん市町村も中に入っているでしょう、そうしてそれが払われておるということであって、払われているから食管のほうでは買い上げなくてもいいじゃないかということではないので、食管は食管として、やはり正常な価格で買い上げます。しかし、買い上げるものであっても、企業は、それを対象にして農家の要求する、妥結する金額を支払いますという一応の約束事になりつつあるように承知しております。
  211. 古寺宏

    古寺委員 今後、こういう汚染米が非常にふえてくるということも予想されるわけでございますが、こういう米を工業用のアルコールあるいはのりの原料として使う、こういうこともおっしゃっているようでございますが、こういう米の処分について農林省はどういうふうに考えておられるのか、承りたいと思います。
  212. 内村良英

    ○内村説明員 ただいま先生からお話のございましたとおり、いわゆる一・〇PPM以上の米につきましては農家に厳重に別に保管させておきまして、それを食糧庁あるいは県が中に入りまして、のりその他の加工業者に売っております。現に、すでに富山の米あるいは安中の米、対馬の米の一部は、そういう形でライススターチとか、あるいはのりの業者に売られております。  そこで、今後こういったケースが非常にふえていった場合に、需要に限界があるのじゃないかというのが御質問かと思いますが、現在のところ、のり用の需要は相当ございますので、さしあたり売却先に非常に困るというようなことはまずないのではないかと思っております。
  213. 古寺宏

    古寺委員 そこで、カドミウム汚染が生じている場合に、原因者がはっきりしないというケースがたくさんございますが、そういう点について、いわゆるそういう被害を救済する方法については政府はどういうふうにお考えですか。
  214. 内村良英

    ○内村説明員 お答え申し上げます。  先ほど山中大臣から御答弁がございましたように、食糧庁といたしましては、一・〇PPM以上の米は、食品衛生法でも販売その他を禁止されておりますので、買い入れないわけでございます。これについては関係企業が補償する。それから要観察地域内の一・〇PPM未満の米については、政府はこれを買い入れているわけでございます。しかし、保有米につきましては、これは政府が買い入れることはできないということで、消費者のほうには、そういった要観察地域内の米は配給しないという措置をとりながら、農家のほうは、希望があれば金を払って買えるということは片手落ちではないかということがございましたので、今年の十一月二十五日に通達を出しまして、そうした地域の農家が、保有米について政府の米と交換を希望する場合には、これは同じ質の米を交換するということをきめまして、農家の損害が極力最小限に済むような措置をとっているわけでございます。
  215. 古寺宏

    古寺委員 私は、米の処置じゃなくて、汚染された土壌に対する措置をどういうふうに考えているか、そういうことを承っているわけであります。
  216. 岡安誠

    ○岡安説明員 汚染された土壌で、そこから一PPM以上のカドミウムを含むような米ができるような土地につきましては、やはり何よりも土壌改良、客土等をやるということにいたしまして、汚染された米ができないようにするということが先決だろうと思っております。そこで私どもは、この法律が通過成立いたしました場合には地域を指定いたしまして、その地域につきましては、そのような事業を計画いたしまして早急に実施をするということが先決であろう、かように考えております。
  217. 古寺宏

    古寺委員 それは原因者のいない場合も行なうわけでございますか。
  218. 岡安誠

    ○岡安説明員 それは原因者の有無にかかわらず、対策事業として実施する予定でございます。
  219. 古寺宏

    古寺委員 時間がないので、次に、大気汚染のほうに移ります。  規制基準の設定の問題でございますが、現在大気汚染の中で硫黄酸化物の基準が全国一律になって、地方に権限が委譲されないというように拝見したわけでございますが、この点について地方に権限を委譲する、そういうお考えを将来お持ちになっているのかどうか、まず長官に承りたいと思います。
  220. 山中貞則

    山中国務大臣 これは燃料関係の問題でありますので、やはりわが国のみがひとり、低硫黄重油を完全に需要に対して供給ができる体制にございませんし、また国際的にも、低硫黄重油の要求に対して、日本が満足すべき供給をされる背景がございません。したがって、当分の間は、新しい、低廉にして簡単な脱硫なり何なりの技術が完全に開発されて、低硫黄重油の確保が完全であるというような事態ができたら考え直すときがくるであろうと考えております。
  221. 古寺宏

    古寺委員 そうしますと、そういう時代が来ないうちは大気汚染公害防止することは不可能である、あるいは一つの目標を達成するのに非常に困難である、そういうふうに理解してよろしいですか。
  222. 山中貞則

    山中国務大臣 そうではありませんで、環境基準の設定の際には知事とよく相談をして、その地区にふさわしい環境基準というものが設定をされるわけでありますから、それに対して規制等を行ないます際のいわゆる燃料の確保の問題について、地方自治体がもちろん責任もって確保できませんし、企業に命令をしたって、企業がひとりで特定の地域だけにそれを確保できる燃料事情がございませんから、そのようなことを申し上げているわけで、環境基準が達成できないというようなことではないと思うのです。
  223. 古寺宏

    古寺委員 それでは逆の立場でお伺いいたしますけれども、SO2の年平均の基準が〇・〇五PPMである。ところが、ある地域においてはそれ以下の〇・〇三あるいは〇・〇四であるという場合には、その基準に達するまで、汚染が進行するまで放置しておくのか、あるいは環境がそれ以上汚染されないように保全するのかどうか、その点について厚生省の考えを承ります。
  224. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 われわれが環境基準をきめたのは、現在非常に悪化している大気汚染の状況にかんがみて、とにかくどこまで下げなければならないかという一つのめどをつけて、それに向かっての仕事をしていく上で設定したものであります。逆に、現在汚染の度合いが進んでおらないところに対して、そこまで汚染してよろしいというような基準を示したものでは断じてありません。
  225. 古寺宏

    古寺委員 そこで、全国一律の基準を設定した場合には非常に実態に即応しない、そういうケースがたくさん出てくると思うわけでございますが、そういう点については、どういうふうにカバーするわけでございますか。
  226. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 全国一律の基準そのものが、先生よく御承知のとおりに八段階に分けております。そして、それぞれの地域の実情に応じた数値をとり得るようにしておりますので、御不安をお持ちのような点は、私はないと思っております。
  227. 古寺宏

    古寺委員 やはりこの八段階のランクを設けて基準を設定いたしましても、これは地理的な条件あるいは気象の条件、その地域に合った基準でなければいけないわけでございますが、そういういわゆる基準の確定権と申しますか、そういうものを地方に権限委譲しなければ、実態に合ったランクづけと申しますか、そういうものをきめるのが非常に無理になってくるのじゃないか、そういうふうに考えるわけでございますが、その点はどうでしょうか。
  228. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 先ほど山中本部長から御答弁がありましたように、結局、燃料の入手という問題がございますから、確かに現行全国一律の基準をかぶしております。しかし、その基準設定そのものについて、都道府県知事の意見を私どもが取り入れるように法律上もなっておりますし、また、それぞれの地域の自然的な、あるいは社会的な特性というものを無視して設定をいたすわけでもございませんので、そうした点は、私どもは無事に行なえるものと考えております。
  229. 古寺宏

    古寺委員 そこでお伺いしたいのですが、現在わが国には千六百万台の車が走っているわけでございますが、これらの車両のマフラーにグラスウールというものが使用されているわけでございますが、これが大気中にまき散らされているという事実がございます。その点について運輸省は知っておるかどうか、承りたいと思います。
  230. 隅田豊

    ○隅田説明員 マフラーの中にグラスウールが使われておる事実は知っております。
  231. 古寺宏

    古寺委員 大体どのくらい使用されているのでございましょうか。
  232. 隅田豊

    ○隅田説明員 正確な台数まではつかんでおりませんが、主としてスポーツタイプの車、あるいは比較的軽量の車に使われているということを承知しております。
  233. 古寺宏

    古寺委員 このグラスウールの内容ですね、どういうものでございますか。
  234. 隅田豊

    ○隅田説明員 いわゆるガラスを繊維状にしたも  のでございます。
  235. 古寺宏

    古寺委員 それはガラスだけで、ございますか。
  236. 隅田豊

    ○隅田説明員 私ちょっと専門でございませんので、そこまではっきりわかりませんですが、珪素系統のガラス状のものを、繊維状につくったものというふうに存じております。
  237. 古寺宏

    古寺委員 これは私は、ガラスの繊維と重金属と一緒にしたものである、そういうふうに承っているわけでございます。われわれの調査によりますと、千六百万台のうちの約半数の車がこのガラスウールをつけておる。それがこの大気中に毎日ばらまかれておるわけでございます。これはこの大気のいろいろな基準の中には入っていないわけでございますが、そういう点について厚生省は知っているかどうか、承りたいと思います。
  238. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 ガラス繊維そのものが開発された歴史は相当古くにさかのぼりますけれども、これがいま先生御指摘のように、金属類あるいは合成樹脂等の溶剤等で接着をされて、マフラーその他のものに形成されるようになりましてから、実はそれほど長い時間がたっておりません。それだけに、御指摘のように、古くなった場合それが内側から飛散するというようなケースは、確かに想定はされることでありますが、現実の状況として、必ずしも目立った事態も起きておりませんために、正確な数値等は、実は私どもは把握をいたしておりません。また具体的な事例としても、実は把握をいたしておりません。しかし、将来において考えなければならない一つの問題点であることは御指摘のとおりでありますので、現在生活環境審議会の専門委員会において、浮遊粉じん全体についての環境基準設定の作業をしていただいておるわけでありますが、その中の一つの課題として、これもあわせて検討をいたしてまいりたいと考えております。もし、その結果において——まだ私ども、普及度等から考えて、必ずしもそれほど焦眉の問題とは実はとらえておりませんけれども、そういう事態が必要であるとなれば、当然大気汚染防止法に基づく自動車排出ガスの許容限度として一つの設定を急がれるものになると考えております。
  239. 古寺宏

    古寺委員 運輸省ではこれについてどういう研究、調査が行なわれておりますか。
  240. 隅田豊

    ○隅田説明員 率直に申し上げまして、このグラスウールがどの程度に外へ飛散していくかということにつきましては、まだ研究データはございません。しかし御指摘のようなものでございますれば、当然の問題といたしまして今後これの実態を研究しなければならないと思っております。  ついでにつけ加えさせていただきますと、こういう浮遊粉じん的なものが自動車から各種出てまいるわけでございますが、どちらかと申しますと、このグラスウールにいたしましても、マフラーの消音効果についてはかなりプラスの面があるものでございます。それから、ほかの例でございますが、最近もちょっと一部新聞紙上で書いてありましたが、ブレーキ関係の部品、こういうものが使われる段階で常に摩擦が起きますために、これまた一つの粉じんとして空気中にばらまかれる問題がございます。しかしながら一方において、この性能は安全のために非常に大事なものでございます。結局安全面、公害面の両方の性能をいかにして確保し、かつ浮遊粉じんとしての公害防止していくかということを含めて、全般的に検討していきたいと考えております。
  241. 古寺宏

    古寺委員 いま大臣もお聞きになったと思いますが、こういう実態のはっきりしない粉じんが毎日日本国じゅうにばらまかれているわけでございます。こういうような非常に調査、研究というものがおくれた、そういう基準に立った大気汚染防止法でございますので、いろいろと欠陥があるんじゃないか、そういうふうに考えるわけでございます。それをさらに全国一律の基準でやった場合には、非常にいろいろな問題が発生してくるんじゃないかということが想定されるわけでございますが、こういう点について大臣はどういうふうにお考えでございますか。
  242. 山中貞則

    山中国務大臣 私はまだそのグラスウールの問題をよく知りませんので、お答えする資格もございませんが、現在私どもが想定しておる全国一律の基準はきびしい基準を定めるということにしておりますので、そのような御懸念はないと思いますが、その指摘された物質についてはちょっと私は答弁できないわけでございます。
  243. 古寺宏

    古寺委員 次にお伺いしたいのですが、大気汚染防止法の中で、交通規制の権限はあくまでも警察にあるわけでございますが、たまたまこの前、東京都において公害防止運動月間で検査をした場合に、同じ場所で測定をしたところが、一酸化炭素五%の基準と五・五%という基準の食い違いが出てきた、こういう場合に事実上都の条例が否定されるというようなことが今後生じてくると思うのでございますが、こういう問題については政府はどういうふうにお考えになっていられるのか、承りたいと思います。
  244. 山中貞則

    山中国務大臣 これは何回も答弁しておりますが、条例は国の法律の範囲内において地方自治体が定めることができるというふうになっております。しかし、いまの一酸化炭素の問題はそういう条例とかなんとかの問題じゃなくて、排出基準をどこで検査するかという基準点のとり方の問題だと思いますけれども、間違っていたら失礼しますが、そういう場合においては、やはり取り締まり官庁の警視庁というものと都というものが食い違った調査をすること、そのことが間違いであって、やはり意見を事前に統一しておくべきものであって、一般自動車運転者の方々に迷惑を与えるようなことはよろしくないことであると思います。
  245. 古寺宏

    古寺委員 これもまた再三問題になったことでございますが、一般業種と、特定業種のガス事業あるいは電気事業の問題でございます。四日市その他の例を見ても、特定業種による大気汚染というものがその大部分を占めているわけでございますが、こういう点についてはやはり一元化すべきが妥当じゃないか、こういうふうに考えるわけです。こういう点について厚生省はほんとうはどういうふうに考えていられるのか、承りたいと思います。
  246. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 先生の御指摘になりました特定業種と一般業種という意味がもう一つはっきりしませんけれども、先般来当委員会で繰り返し問題になっておる電気事業あるいはガス事業、これを特定業種という意味でさしておられるものだとすれば、私ども、すでに先生も御承知のように、さきの特別国会の会期中において、電気事業法及びガス事業法を大気汚染防止法に取り込んではどうかという御質問に対して、私自身そのほうが望ましいということを申し上げました。しかし、同時にそれらの事業内容、きわめて公共性の高い供給義務を負わされた仕事というもの、これが、必ずしも円滑に事業が行なわれないような事態になった場合には、また逆の意味で今度は国民に対して迷惑をかけるわけであります。それだけに、従来とは異なって、知事の要請権、しかもそれには隣接都道府県知事の要請権も含めてこれを設定し、またそれに伴う都道府県知事の立ち入り権限等をも付与することによって、本体は電気事業法あるいはガス事業法においてその作業が行なわれるものであっても、国全体の大気汚染防止の観点から、SOを出さないようにということで考え方をまとめて、昨日も申し上げましたとおり、私どもは都道府県知事の要請を受けた場合の通産大臣の御努力というものを信頼をいたしておるということであります。
  247. 加藤清二

    加藤委員長 古寺君に申し上げます。あなたに与えられた時間が参りましたので、結論を急いでください。
  248. 古寺宏

    古寺委員 そういう場合に、通産大臣がもしもきかなかったらどうしますか。
  249. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 私は、今日のこの状況下において、都道府県知事から妥当な要請が出た場合に、その要請を受け入れないような通産大臣が現内閣におられるとは考えておりません。また、通産省の事務当局に対してもその意味での信頼を持っております。
  250. 古寺宏

    古寺委員 そうしますと、電気、ガス事業によるところの大気汚染に関しては、今後心配がない、そういうふうに厚生省では理解しているわけでございますか。
  251. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 大気汚染防止法の一般的な規制については、これは同じようにかぶるわけであります。そして、その方針の中で電気事業あるいはガス事業というものが一体どのように協力をしていくかという問題でありますから、私は当然信頼をいたしております。
  252. 加藤清二

    加藤委員長 次は西田八郎君。
  253. 西田八郎

    西田委員 最初に山中総務長官にお伺いするわけですが、汚染あるいは環境破壊の要因、いわゆる公害要因というものに、公害対策基本法によりますと、大気汚染、水質の汚濁、騒音、さらに悪臭ということで、いろいろ定められておるわけですが、現在出されておりますのは、いわゆる大気汚染、水質汚濁というものを中心にして法改正の用意をしておられるわけで、また騒音についても、自動車騒音というものを加えられたわけでありますが、人間が生きていく上において、非常に感覚の動物でありますから、臭気というもの、特に悪臭、これは鼻持ちならぬというようなことばもあるほど、とにかく臭気というもの、悪臭については、相当人間の生活上感情を害する問題だと思うのです。ところが、この臭気についても法案が出されるということであったわけでありますけれども、それが今回法案が提出されなかった。その提出されなかった理由ですね。また、臭気というものは、それほど環境破壊というか、環境を害するというふうにとられなかったのかどうか。そこら辺のところをひとつお伺いしたいわけであります。
  254. 山中貞則

    山中国務大臣 悪臭防止法については、すでに前の閣議で、要綱で内諾を得て、そしてその後法律案ができ上がっております。しかしながら、正式に国会のほうで受け取っていただくかいただかないかについて、まだ国会の意思が定まっていないようであります。私たちは、受け取っていただければ、本日ただいまでも国会に提出する準備は先週の土曜から整っているわけでございます。
  255. 西田八郎

    西田委員 そうすると、政府としてはもう提出する予定があった、しかし国会のほうで、受付というか、そういう手続で、現在法案として出ていないということなんですね。そうすると、悪臭というものを規定される場合に、一応参考のために聞かしていただきたいのですが、臭気を出すいろいろな因子については、たとえば硫化炭素の硫黄のにおいであるとか、いろいろそういうものは規制することができるとしても、生物が排せつするものであるとか、あるいはそれらを飼育していく過程において、この要因なしに出てくる、そのもの自体から発生する臭気、しかも、それが非常に人間の感覚を刺激するといいますか、悪い影響を与える、こういうそのものの規定のしかたですね。こういうものについては、どういうふうにまず考えられておりますか。
  256. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 いま私どもが用意しております悪臭防止法案で考えておりますのは、においではなくて、悪臭を発する物質を代表的なものをとらえるという考えでございまして、大体考えておりますのは、アンモニアあるいはメルカプタンあるいは脂肪酸あるいはサルファイト類ですね。そういうふうに、データとしてもあるいはまた測定方法等についてもすでに確立されておる物質をとらえて規制しようというふうに考えておるわけでございます。
  257. 西田八郎

    西田委員 それでは、そういう物質をとらえるということでありますから、結局、人体あるいは腐敗等によって出てくる、どぶのにおいであるとか、あるいは豚舎のにおいであるとか、あるいは鶏舎のにおいであるとか、厩舎のにおいであるとか、そういうものについては悪臭とは規定していないわけですか。
  258. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 悪臭物質としてとらえておりますので、特に何々業とかあるいはどういう施設ということのしぼりはございませんけれども、おのずからこういう悪臭物質は、たとえば畜舎あるいは斃獣処理場等から出るこういう悪臭物質は、たとえばKP、クラフトパルプあるいは石油精製工場から出る、そういうことはもうすでに明らかになっておりますので、御了承願いたいと思います。
  259. 西田八郎

    西田委員 そうしますと、それを防止する対策というものは、当局としても持っておられるわけですね。
  260. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 悪臭は非常に微妙な問題でございまして、従来も、結局最終的には人間の臭覚といいますか、ということに訴えざるを得ないのでございますけれども、いわばこれはにおいの強さでございます。しかし、ある強さにおける濃度を機械で測定することはできます。ですから、その人の臭覚と、並びに測定分析機械と両方相まって、大体考え方としては、いまの騒音規制法と同じように、この程度以上のにおいであればおよそ地域住民としてはがまんならないという幅を設けまして、その幅の中で具体的に市町村として規制する数値を選ばせる、そういう考え方をとっております。
  261. 西田八郎

    西田委員 次に、同じ公害要因という騒音の中の工場騒音、建設騒音、このたび自動車騒音というものが出てまいったわけでありますが、鉄道、軌道の騒音並びに飛行機の騒音、これらについて現在のところ野放しになっておるわけであります。特に、東海道新幹線の沿線における新幹線の騒音というものは非常にものすごいものであります。そしてまた、その振動が、私のほうへ訴えが参っておりますのによりますと、食器だなの中に格納してあるさらや茶わんが、振動によってその食器だなのとびらがあき、そうしてその中から茶わんやさらが落ちて割れる。これは下にだれもおらなければいいのですけれども、下におった場合には、人体に危害を加えることになるわけであります。こうした騒音あるいは振動について、規制できないから出せなかったのか、それとも鉄道は、日本国有鉄道だ、公社だということで、いわゆる政府の管掌するところである。したがって、そうしたものには国の責任において解決する部分もたくさんあるので、なかなか規制がしにくいということで出されなかったのか。この鉄道、その他軌道の騒音並びに振動、飛行機の爆音、いわゆる騒音ですね。これらに対しての規制がなされないのはどういうことなのか、ひとつお伺いをしたいわけです。
  262. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 騒音につきまして、今回の改正法で取り入れました自動車騒音以外に代表的なものとして、新幹線騒音あるいは航空機騒音、こういったものが非常に大きな問題になっておるのは事実でございまして、私どもいろいろ検討を進めておりますけれども、現在の段階におきましては、航空機騒音につきましては、御承知のように、運輸省所管の法律等もございますし、ある程度の規制も行なわれ、あるいはこれに伴う補償等も行なわれておる。また新幹線につきましては、国鉄におきましていろいろと技術上の研究もやっておられるということもございまして、今回は見送った次第でございます。  なお、私ども、目下生活環境審議会で、騒音についての環境基準、これが近々おそらく年内に答申が得られる運びでございますが、この生活環境審議会の騒音にかかわる環境基準におきましても、現時点においてやはり新幹線あるいは航空機騒音にまで検討を及ぼす余裕がなかったということで、今回は見送られることになっておりまして、引き続き検討する、その結果も待ちまして、私どもも所要の措置を講じてまいりたいという考えでございます。
  263. 西田八郎

    西田委員 検討する余裕がなかったと言われると、若干問題があるわけですけれども、伊丹飛行場等におきましては、もうすでにそうした問題については早くから紛争が起こっておるわけですね。そうしてこの飛行場のある伊丹、豊中、池田等の市民が一つの市民団体を結成してやっておるのでありますから、当然これらは対処されるべきであったのではなかろうか。特に、これは東京都の出しておられる資料でありますけれども、音もいろいろのところから出てくるので、やはり一番激しい騒音というのは、飛行機のエンジンの近くで百二十ホンというふうにいわれておるわけです。これはどれだけ離れて測定したのか、その距離は明らかにされていませんが、その次に自動車の警笛、そうして電車が通ったときのガード下という順序になっておるわけです。そうすると、自動車が規制されて、そうして鉄道や飛行機が規制されないということになれば、これは片手落ちになるのではないか。そういう点から、今度の騒音規制で、自動車のいわゆる構造上の騒音規制も行なわれておるわけですね。そうしてさらにそうしたものが集合する場所における交通の規制というものも行なわれておるわけなんです。それにもかかわらず、こうした飛行機や鉄道等が規制対象にならなかったあるいはできなかったということは、私は少し片手落ちではなかろうかというふうに思うわけであります。そういう点について、今回対象にならなかった、それでは一体いつごろこれをどういう形で行なわれるのか、現在準備が不十分であったといわれるわけでありますが、もし準備ができたとするならば、少なくとも政令というような形においてでもこれを規制するか、行政指導という形をとられるのか、それらの点についてひとつお聞かせをいただきたい。
  264. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 確かに御指摘の鉄道並びに航空機の騒音というものは、非常に大きな問題であることは私どもよく承知しております。現に運輸省のほうでも、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律というものを持たれ、また、防衛施設周辺の整備等に関する法律によって騒音防止工事の助成とか、あるいは移転の補助等がなされていることは先生の御承知のとおりでありますし、また国鉄において、あるいはロングレールの採用であるとか、あるいはコンクリートのまくら木を使う、レールとまくら木の間にゴムパッドをかませるという方法をとっておられることは先生の御承知のとおりなのであります。これが遺憾ながら有効な規制措置になっておらない、それだけで確実に騒音をなくせるというものでないこともまた事実で、それを軽減する程度のものであることは確かであります。ただしかし、この点で、これは私ども非常に頭をかかえておる問題でありますけれども、同時に航空機騒音というものに対しては必ずしもわが国ばかりではなく、実は世界各国において悩みの種であります。それこそ何万馬力というエンジンを持つものが忍び足で空を飛んでいくこともできない。そして現実にそれを、たとえばオートバイその他のようなマフラーによって消去するといっても限界があります。  実は、との騒音規制法の改正をする際に、各国でいままで飛行場周辺の騒音等についてどのような判例が示されておるか私なりに調べてみましたが、私の入手し得た限りでも各国とも実は判然とした判例がなかなかございません。しかし、私の見ましたところ、実は一九五〇年ごろのアメリカ合衆国最高裁の判決の中に、超低空、約六十七フィートの低空飛行を繰り返した飛行機に対する損害補償の訴えがありまして、これはもし土地の所有者がその土地の所有権を十分享有するべきであるなら、直接手の届くところで包囲をしている大気もまた専有管理の権限があるという判決主文によって、そのとき騒音によって死んだ鶏の実費三百七十五ドルをアメリカ政府が補償した例がございます。しかしそれと同時に、六〇年代に入りましてから出されております判例を見てみますと、たとえば一九六三年の判決である合衆国政府対バッテン事件といわれるものでは、実際の物理的不法侵入のみ補償が成立をする。騒音だけでは成立をしないという判決が出ておりました。また一九六四年、これはカリフォルニア州最高裁の判決で、それ以上の提訴がなされておらずに、これで結審になった事件でありますが、ポータル市民クラブ対アメリカンエアラインの訴訟事件で、土地所有者は空港周辺の家の上を飛行機が飛ぶのを限制する権利はないという判例が実は出ております。  これはあくまでも私が個人的に調べましたものでありますから絶対に正確だと申し上げる自信はございませんし、そのほかの判例が全然ないかどうかも自信を持って申し上げることはできませんが、航空機の騒音というもの、これをただ単に法律で条文の上に取り入れてまいりましても、実際の手法としてこれを解決することがきわめて困難であるということは先生にもぜひ御理解をいただきたい点であります。
  265. 西田八郎

    西田委員 橋本さん、それはあなたのおっしゃるとおりアメリカではそういう判例が出ているかもわかりません。しかし、日本とアメリカとは立地条件が違います。土地も違います、広さが違います、そして人口の密度も違うわけですよ。また公害対策、あるいは人間の環境保全という意味においてのとらまえ方も、大きく違うわけですよ。そういうところの判例をもってこられても、これは私は一つ参考にはなろうと思うけれども、政務次官としての答弁とは受け取りがたいと思うのです。少なくとも、五百人の人間を乗せて飛ぶ飛行機が、一万人近い人間に迷惑を与えるということであるなら、これはやはり公害として取り組み、それに対する処置を講ずる姿勢があってしかるべきではなかろうか。その付近の子供は難聴になって知能の発達指数もおくれておる、こういうようなことさえ、実際に測定した結果出てきておるわけなんですよ。だから、これは国民の生活だけではない、人間の生命そのものにも、危険とはいいませんけれども、影響が出てきておるわけです。だから、そういう点について将来どうするかということをお伺いしておるわけでありますから、その外国の判例を言われるのじゃなしに、こういうふうにしたいという政府の希望があったら、希望というよりも政府の目標、方針があれば、それを端的に答えていただけばけっこうだ。したがって、そういう考え方があればひとつお聞かせいただきたい。
  266. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 根本的には、それこそ技術開発が進められなければならぬわけでありまして、今日の時点で有効適切にその騒音を防止し切るだけの技術を日本政府として持っておれば、実際できることであれば私どもはそれを騒音規制の対策として取り入れることに何ら異存があるものではございません。ただ先生御自身もよく御承知のとおりに、遺憾ながら有効な技術というものが今日開発されておらない状況であります。その中で、現に運輸省自身が努力されておる部分、またこれは国鉄ばかりでなく私鉄も含めて全体がその騒音規制に払っておる努力というものを私どもは評価し、そして有効な技術が開発されることの一日も早いことをむしろ願っておるものであります。
  267. 西田八郎

    西田委員 この点は非常に苦慮しておられる点でありますし、早急にそうした問題についても対策を樹立されて、多くの人が迷惑をこうむっておるわけでありますから、その迷惑を除去するために御努力いただきたいと思います。  次に、公害防止事業費用負担法について若干お伺いをしたいわけでありますが、法第二条第二項第二号に「汚でいその他公害の原因となる物質がたい積し、又は水質が汚濁している河川、湖沼、港湾その他の公共の用に供される水域において実施されるしゅんせつ事業導水事業その他の政令で定める事業」ということになっておるわけですが、しゅんせつすれば当然汚泥を底からかき上げるわけですね。そうすると、その汚泥を処分する事業というのは一体どこに入るのか。これは廃棄物処理費のほうにいくのか、あるいは公害事業のほうに含まれるのか、お答えをいただきたい。
  268. 山中貞則

    山中国務大臣 それは形式によって、埋め立てみたいな形で役に立つ場合もありますし、あるいはただそれを埋め立てただけではいけないので曝気しなければならない場合等もありましょうし、中和剤等を使用すること等が事業として考えられることもありますから、政令で定めるものにはそういうものが入ってくるということでございます。
  269. 西田八郎

    西田委員 そうすると、曝気したり、あるいは埋め立てに使ったり、あるいは中和させるという事業もこの事業に含まれるということですか。そういうことですね。  次に、第三条「又は行なうことが確実と認められる事業者」、こういうことに法は規定しているわけでありますが、そうしますと、最近各地方の財政を堅実にするために工場誘致等が相当盛んに行なわれておるわけであります。ところが、その事業場が公害を発生するということから、おまえさんのところは公害を出すからうちの誘致はお断わりだというようなことになったり、あるいは逆に、事業場は来たいけれども、こちらから断わる場合、向こうから断わる場合、いろいろあって、今後の地方の財源確保という意味での工場誘致などに非常に大きな影響を与えると思うのです。そこで、地方としてはまずそうした工場誘致に対する先行投資というような形で、公共事業として水路を引いたり、あるいは廃棄物処理場を設けたりというようなことをしていかなければならぬと思うのです。その場合は、これはもういわゆる地方自身でそれをやるということであって、予定される事業ではあるけれども、それに対する援助というか、補助というか、あるいは負担、こういうようなことは全然考えておられないのかどうか。
  270. 山中貞則

    山中国務大臣 自治体はそのような企業誘致のための先行投資をやる場合において、起債その他において財源の手当てもできますし、それらの財源に関与しないでそこにあとで立地してきたものは、いまの「確実と認められる」者でというのは、そこでいよいよ公害防止事業が始まれば、それらのケースに該当する者は「確実」として届け出て立地しようとするわけですから、分担しなければならない。しかもまた、その公害防止事業ではないが、あなたのおっしゃったような先行投資には何ら自分たち関係してない、ただ買い取っただけだという場合においては、利用料その他の負担もさらに加味されて徴収されていかなければならぬだろうと思います。
  271. 西田八郎

    西田委員 そうすると、そうした事業というものはいわゆる公害防止事業から除かれると解釈していいわけですね。
  272. 山中貞則

    山中国務大臣 企業等を誘致するために特定な企業が定まっていないで、基礎事業、基盤整備と申しますか、誘致のための前提条件をつくる場合においては、この公害防止事業費事業者負担法というものには当然初めから入らないということでございます。
  273. 西田八郎

    西田委員 次に、四条第一項の末尾のほうに、「その原因となると認められる程度に応じた額」、こういうことです。「費用負担させるすべての事業者事業活動が当該公害防止事業に係る公害についてその原因となると認められる程度」というふうに規定されておるわけですが、この「原因となると認められる程度」というあいまいなことばでは、解釈のしようが非常に幅が広くなってくると思うのです。これはいずれ基準を定めて、あるいは例記をして、こういう場合はこうだというようなこともお示しになるのかどうか。
  274. 山中貞則

    山中国務大臣 第七条で、事業ごとのよって立つべき基準は示してございますが、そのいわゆる環境を悪化させた度合いというものの判断は、その基準参考にしながら、それぞれの地域において年月の違いとか、事業態様の違いとか、いろいろございますし、また、それが周辺地域に及ぼす実際の被害の状態等も違ってまいりますから、それらは一義的な施行者である都道府県知事のもとに設けられる審議会というもの等で、企業費用負担に関する部会等をつくっていただいて、そこで、その県の実態によくマッチする内容のものを一応つくってもらって、それに基づいて施行者が実際上の負担範囲を定めていくということを意味しているものでございます。
  275. 西田八郎

    西田委員 多分そうなるのだろうということを予想して質問申し上げたのですが、そうすると、公害費用負担審議会が、あるいは都道府県公害審議会がこれをきめるということになるわけですが、ここでは、そういう意味では利害関係が非常に対立してきますね。その対立してくる場合に、公害対策委員会としても基準をきめるあるいはその額を安定するのが非常にむずかしいと思うのです。そういう場合はやはり中央から事例というようなものをあげておやりになるのか、あるいは一定の基準を設けて、それらのことに対してこうこうこういうふうに処理したらどうだというような行政指導が行なわれるのかどうか。
  276. 山中貞則

    山中国務大臣 委員構成についても、原則として地方にまかしておりますが、ただ、好ましくないというようなこと等は、一応いっておくことが必要であるという点もございます。たとえば、その公害を発生させておって、その審議会で最終的に答申するであろう負担の額を定められる立場にある企業、そういうものの代表者みたいなのが審議会に入ってくるとこれはおかしなことになりますから、そういうことは念のために言い添えておく配慮はしたいと思いますが、審議会できまらないという場合においては、やはりきめなければならないことでありますので、その国の定めております基準というものを当てはめようということになると思います。
  277. 西田八郎

    西田委員 審議会構成のところでは、いずれまた順を追うてお伺いしたいのですが、次に第四条第二項です。「その公害防止の機能以外の機能」ということばが使われておるわけです。これは私、たとえばグリーンベルトのようなものではないかと思うのですけれども、そうしたもの以外に、何か「機能以外の機能」を発揮するいわゆる施設というようなものを設けることがあるかどうか。もし事例といいますか、こういうものがあるというものがあったらお示しをいただきたい。
  278. 山中貞則

    山中国務大臣 これは非常に広い、不必要までに広い街路みたいなものも場合によってはありましょうし、あるいは水を引けるようなところは、運河みたいにして水で隔てるというようなこと等もありましょうし、また都市下水道等において、一般の家庭の出す屎尿程度のものは、まあまあその程度のものなら一般家庭と同じじゃないかということで配慮されることもあり得るというようないろいろな態様があろうと思います。
  279. 西田八郎

    西田委員 そうすると、家庭排水とは別に工場の排水を、工業用排水路を共同で引く場合——いまのはそういう解釈以外にまたほかにありますか。
  280. 山中貞則

    山中国務大臣 しゅんせつなどをいたしました際に、航路維持の仕事、こういうものなんかもやはりいまのところ想定しておくべきではないかと思うのです。
  281. 西田八郎

    西田委員 次に、第六条に入るわけですが、第二項で「前項の費用負担計画に定める事項は、次のとおりとする。」その中に「公害防止事業の種類」、これが第一号、第二号に「費用負担させる事業者を定める基準」、こうなっているわけです。これは先ほど古寺さんともやりとりがあったわけですけれども、一体その「事業者」を定める基準の中に、以前にやっておって、いまはやってない。しかし、それが非常に大きな汚染の原因になっておるというような場合に、その「事業者」に定められるのかどうか。  これは具体的に申し上げると、Aというメッキ工場があった。そのメッキ工場の排水が、その流域の河川を非常に汚染をしておった。しかし、その河川流域が完全な水路になっていなかった。したがって、その汚染物質が一般の川に流れておったので、そこから有害物質が浸透していって、そして付近のたんぼにも影響をした。そこでここ四、五年前に、公害問題が取り上げられるようになってから、そういう事業をやめようということで、率先してやめた。その当時は、なかなかりっぱなやつだ。水をよごしたりあるいは近所のたんぼをよごすから、こんなメッキをやめて、ほかの事業をやったという場合に、この法人は同一人であるが、現在は全然影響がない。こういう場合に、その事業主は、一時は非常にほめられた、称賛されるべき事業であったにもかかわらず、今度はこのことによって費用負担させるということになろうと思うのですが、その場合やはり算定の、いわゆる定められる基準事業者ということになるかどうか。
  282. 山中貞則

    山中国務大臣 いま言われたケースは、確かにその対象になります。それは、その者の事業活動が過去において行なったことにより堆積されたものの排除事業等でありますから、これからつくるとか、いまできたものの被害が起こらぬようにするグリーンベルトなんかではないので、おそらくしゅんせつとかそういうことになろうと思うのです。そういう場合には、ほかの会社に転業していても、やはりその人には応分の、汚染を発生せしめた原因に関する度合いを負担してもらうことになります。
  283. 西田八郎

    西田委員 それは当然なるという解釈のもとで私はお伺いしたのです。  その次に、全く法人がかわった場合、施設はそのまま、もちろん中の設備等については、業種が転換されるわけですから、業種転換をしたその場合に、法人がかりに変わった場合ですね。(山中国務大臣事業は一緒ですか」と呼ぶ)事業内容も変わる、そして法人も変わるということになれば、その対象にならないというふうに解釈していいのかどうか。
  284. 山中貞則

    山中国務大臣 どうも個々のケースになるとなかなかむずかしいのですけれども、その会社が解散してしまって、がらんとなった建物をどこかの人が買って、また別な事業を始めたという場合には、対象にならないと思うのですね。しかし、その人はその公害を発生する事業をやめたけれども、他の人と合併なり統合なりして、その施設、建物の中を新しくつくり変えて、そしてまた別な事業活動を行なっている場合には、これは対象となり得る範囲と思っております。
  285. 西田八郎

    西田委員 次に、第七条第一項第二号イの中の「たい積物中に人の健康に有害な物質が相当量含まれ、又は汚でいその他公害の原因となる物質が著しくたい積し、若しくは水質が著しく汚濁している場合」、この「著しく」というのは一体どういう場合をいうのか。これは非常に幅が広くなってくるわけであります。したがって、そういうものにはやはりある程度の基準が示されなければならぬと思うのですが、その「著しくたい積」、「著しく汚濁」というのは、どの程度のことをいうのかですね。
  286. 山中貞則

    山中国務大臣 われわれが俗称いまヘドロヘドロといっておるのは、これは天然のどこの湖底でも海の底でも、どんな深いところでも一応あるもの、これが日本語としてはヘドロの正確ないい方だろうと思うのですが、その上に人の活動なり、あるいは人間の生活その他事業活動等によって何かが堆積されていくというような問題を、われわれはいま人間に関係のあるものとしてヘドロといっておるということだろうと思うのです。そういうことの確認の上に立ちますと、その天然のヘドロの上に非常に多くの有害なる物質やその他を含んだものが、あるいは堆積したことによって浅くなって、港湾機能を麻痺させたりなどするような現象となって、このままではほうっておけない重大な事態であると思われるような状態は「著しく」といえると思うのです。たとえば田子の浦がいまのところですね。しかしながら、たとえば洞海湾等になりますと、最近までは問題にされなかった色とかなんとかいうものもやはりいまは問題になってくる。しかし、洞海湾は何とか緊急にしなければならないかどうかについては、今日の国民の自覚、地域住民のあらためて環境に対する考え方というものの上からは、ちょっと田子の浦ほのど緊急性はないと思うのですけれども、しかし、これは入り海の一つの典型的なケースですから、しかも、色があんなになって、水底に二メートルほどの長い企業活動による堆積物があるらしいということで、これは一応先般の経済企画庁の調整費の中から、緊急一千万円を調査費として支出をいたしましたけれども、これ等はその「著しくたい積し、」の中に入るかどうかはこれから検討を要するところであろう。だから、どうしても公共事業としてやらなければならぬのですから、相当目立っておる地域であることは間違いありませんが、十分の十という、天井まで、一ぱいまでというところは、よほど緊急を要し、しかも人体、生命等に、あるいは港湾の本来の機能等に影響を現に与えつつある場所というようなことになってくるだろうと思います。
  287. 西田八郎

    西田委員 そうすると、「著しく」ということばは、結局こういうふうに解釈していいわけですか。その場所、立地条件あるいはその周囲の環境、そういうものから判断されて、そして頭に持ってこられておる「人の健康に」という形で解釈をされる、そういうふうに解釈すればいいわけですか。
  288. 山中貞則

    山中国務大臣 大体そのとおりです。
  289. 西田八郎

    西田委員 そうすると、これはちょっともとに戻るのですが、先ほどの費用負担させる事業者の場合の起算についてちょっと聞きたいのですが、有害物質であるかないかということがきめられたのは、公害対策基本法ができるその以前にも大気の問題が若干出ておったように思うのです。しかし、政府自身が、これは有害だ、これはこれだけ以上含んではいけないんだというように政令あるいは法律できめられる。そのきめられる以前に出されたもの、それが十年も十五年も前であったとか、あるいは五、六年前であったとか、その排出していた時期というものが非常に重要な問題になってくると思うのです。この費用負担させるということになってまいりますとね。そうすると、政府が一応認めておったということは公認ということになるのではないか。その政府の認めておったころのものが、今度そのことによって責任を問われるということになってくると、この場合は無過失賠償責任とまではいわなくても、いわゆる本人の過失ではないと思うのですね。過失ならすでに政令なりそのほかの処罰法によって処罰をされておるはずなんです。ところが、そうではない。しかも、故意に流したわけでもない。当時公害対策といいますか、水質保全という意味工場排水等については浄化するということになっておった。そして浄化をしておって、この程度のものならということで認められておったものを出しておった。ところが、それが今度は規制がきびしくなってきてそれもいけないということになってくると、十年なり、十五年前、二年前、三年前、いろいろ期間によって問題が生じてくると思うのです。したがって、そうした場合の起算点を一体どこに置かれるのか、その点をひとつお聞かせをいただきたい。
  290. 山中貞則

    山中国務大臣 いまの、お手元の法律の第七条の三、これは農用地の客土事業その他ですがね。これには「物質が長期にわたって蓄積された」という表現が使ってあります。これはそのとおり長期にわたっているものですから、あとで減ずることができる、も受けるわけです。しかし、いまのお話のイのところでは、「長期」ということばが使ってありません。それは最近の、大体過去十カ年ぐらいの急速な経済の高度成長の中で、いわゆる現象としては見る見るという感じで堆積されていった結果、人の健康やその他の本来持つべき水面の機能が阻害されるという現象が顕著でありますので、表現はこうしてありますが、つかまえるのにはわりと簡単につかまえやすい問題だと思っております。
  291. 西田八郎

    西田委員 ということは、かなり以前のものは免責されるというふうに解釈できるのですか。何年の時点、たとえば年代でいうなら昭和三十年なら三十年以降とか、あるいはそれ以前ということをきめられるのか、あるいはその堆積された物質の量その他によってはかられるのか。それを工場事業場がどれだけ出してきたか、こういうことからはかられるのか。そうなるとこれは、こういう法律あるいは日本の政治体制が変わる以前の問題も出てくるわけですね。戦時中のメッキの問題だとか、あるいは軍隊がやった軍需工場の問題だとかいうような問題まで出てくるというようなことになってくると、それは非常に重要な問題になってくると思うのです。したがって、いまおっしゃったのでは、ここ十年間ほど経済が非常に発展してきたその過程で問題になってきたのだから——それだったら十年間なら十年間で切るということになるのか、その辺のところをひとつ……。
  292. 山中貞則

    山中国務大臣 そういう期限を切るつもりはないのです。期間を定めるつもりはありません。それは、そういう現象が最近起こったのだというのがほとんどである。たとえば、先ほど長期にわたってと言ったのは、カドミウムとか、銅とか、亜鉛とかというもの等が念頭にありますので、これは非常に長期のものである。たとえば事業場そのものがなくとも、飛鳥時代の朱をやったときの水銀が残っておるらしいとか、あるいは対馬のカドミウムは、これは何百年か前の藩制時代のものらしいというような話等も聞いておりますが、それらのもので一応長期ということで書いてありますが、いまの堆積物については、そう長期間のものはない。かりにそういう長期間のものがあった場合においては、その地域によって、地元の都道府県段階で一番よく承知しておるわけでありますから、あとの条項の軽減することができることを受けて、審議会等の意見を聞いてそれらの分は差し引くことが可能であるということでございまして、国が定めた基準は、ぴしゃりそれ以外であってはならないということを言っているつもりはございません。
  293. 西田八郎

    西田委員 それでは、大体こういうふうに理解していいのですか、これは問題になってくると思うのです。費用負担させる場合、大きな問題になってきますが、要するに昭和二十年八月十五日以前の問題は一応抜きにする、そしてそれ以後のことでとにかく政治体制が変わってからと、こういうふうに理解していいのか、それでもいけないのか、そこらのところは非常に問題になると思うのです。ということは、その当時はとにかく奨励されておった、その当時はそれをどうしてもやらなければならなかった、こういう事態のもとでつくってきた事業所もあると思うのです。それが今日ここへ来てから、それもいけなかったのだということになると、私は政府責任というものもここで免れ得ないと思うのです。そういう意味でどういうふうに解釈なさるか。
  294. 山中貞則

    山中国務大臣 これはいつごろからと定めることについては、法律では現実にむずかしいと思います。やはり、だから地方でいつごろから一番ひどくなったかという実情は知っているわけですから、それらの度合いに応じて減額される。しかしながら、一方において鉱山等の無過失責任等は、鉱業法が制定された時期というところから遡及を一そこまでしか認めないということになっているようでありますけれども、この全体的な今回の公害防止事業に関しては、そういうように時期を定めることは困難な問題であります。そういう意味で、大体原則として一応のそういう基準法律にございますが、それは参考である、基準として地方において定めなさいという何だかばく然とした言い方をしているのは、そこらの事情を地方しか知らないからということで、中央から強制をしていないということであります。
  295. 西田八郎

    西田委員 先ほど一級大臣というお声もかかりまして、公害関係については非常に熱心であり、かつ幅広くかなり深く検討をしてこられた山中総務長官にしていまのような御答弁であるわけですよ。そうしますと、これを地方審議会できめるということになると、審議会はこれをきめる、その事業者であるという判定をすること自体が非常にむずかしくなってくると思うのであります。したがって、やはりこの点は、政府としてもぜひとも早急に何らかの方法できめられると思うのです。これはもういろいろな文句をきめてこられた経験もおありですし、そういう過程から判断すれば、これについてはきめられると思うのです。ぜひひとつきめていただきたいと思うのですが、その意思はおありかどうか。
  296. 山中貞則

    山中国務大臣 地方に置かれる審議会委員構成等を明示する例もございますし、私どもは今回明示しないで、その地域に、ローカルに最もふさわしい審議会構成というものがよかろうと思って、そういう手段を一応とっております。しかし、これを運営してみて、やはり地方においては場合によってはその県の政治体制と特定な企業との癒着等のこと等も悪くいうとあり得るかもしれませんし、あるいは企業退治みたいなことで名を売るような知事さん等おった場合には、またそこらでちょっと常識はずれの人選をしてきめてしまうということもあるかもしれません。これはあくまでも架空のことでありますから、要するにそれらのリスクはあっても、地方においていわゆる県民から選ばれる知事さんですから、非常識な行動は大体とられないだろうと思うので、今日の世論はそういうかってなことを許さない環境があると思いますから、一応そういうふうにいたしました。しかし、やってみて、これは各県ごとにばらばらで非常に問題がある、負担法という法律を、基準も示してつくっていながら、これはたいへんなことであるという、国民たる住民自身が迷惑をするようなことが起こるようであったら、あらためてそのときに考えてみたいと思います。
  297. 西田八郎

    西田委員 審議して、質疑をしているわけですから、そんなに大声をあげてどなるというようなことは避けたいと思いますけれども、それはしかし、ちょっと無責任じゃないですか。こういうふうにして第二条第二項で費用負担させる事業者を定める基準というふうに、はっきりしてあるわけですから、その基準がまだ提案者のほうでもこうしたものだというふうに断定というか、判定ができない、あるいは基準が示せないというようなことを、今度は地方でやりなさいというようなことになれば、これは地方はどうにもならないですよ。しかも、公害費用負担する場合には、そのことによってやはり企業の存続そのものにも非常に大きな影響を及ぼしてくるわけですから、これはもう、ほんとうに事業機関にとっては大きな利害関係がまつわってくるわけです。ですから、それを業者として指定されるかされないかということは、非常に重要な問題になってくる。そこから私は場合によると、よけいな心配かわからぬけれども、汚職という問題も出てくると思うのです。ですから、それはやはりきちっと、少々無理があってもきめておくべきである。それは、政府がこういうものは有害ときめた、その有害ときめて後にそういう有害物質を排出した者というふうにするか、あるいはそれ以前であってもこうこうこういうものについてはそれを適用するとか、とにかく今日、人間の生活環境あるいは生活、生命を維持する上において、きわめて危険な物質についてというふうに限定してでもいいから、これはぜひきめるべきだと思うのですが、いかがですか。
  298. 山中貞則

    山中国務大臣 私はたびたび言っていますように、国が責任を回避したような形はいかぬということを言っておりますから、これは当然都道府県等から、そういう場合において例示なりなんなりしてほしい、あるいは人選等についても何か範囲があるならば示してほしいとか、相談があると思います。そういう場合において、政府としては、意思を統一して乱れのないようにまず配慮はするつもりでございます。
  299. 西田八郎

    西田委員 時間の関係もありますので、その答弁で一応は了承いたしますが、ぜひひとつこれについては早急に適切な指導、あるいは基準の策定をしていただきたい、これは希望として申し上げておきます。  次に、いまちょこちょこと大臣の口から出たわけですが、「公害防止事業費負担審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。」そうして地方にあっては地方の条例で定めるということになるわけですが、これの審議会委員メンバーというのは、これはまたきわめて重要な役割りを果たしてくるようになると思います。したがって、この構成をされるメンバーについて、一体どのようにお考えになっておるのか。地方のことについては、この審議会中央事業負担審議会構成メンバーにならうということになりましょうから、中央では一体どういうことをお考えになり、どういう構成にするお考えであるのか、ひとつお伺いをいたしたい。
  300. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、中央では委員の数とか、あるいは構成、あるいは運営等について定めるわけで、直接国が直轄事業でやることはわりと少ないと思いますので、それらの人選その他について、ここでまだ念頭に、こういうケースということで定めて政令にゆだねておるわけではありませんので、法律が通過いたしました後、これらの議論等もよく拝聴した後に、人選に誤まりなきを期したいと思っております。
  301. 西田八郎

    西田委員 聞くところによると、審議会メンバーに、学識経験者、これは当然はいられますね。そうしてまた、その地域の住民の代表、これもやはりはいってくる、その場合に、産業の代表も入れられるというふうにお考えのように承っておるわけですけれども、産業代表を入れるということになると、非常に問題じゃないかと思うのですが、それは絶対入れないというお約束をいただけるかどうか。
  302. 山中貞則

    山中国務大臣 国の審議会ですから、いろいろな立場の人たちが入るわけですけれども、これを、利害を代表するというか、地域住民の代表というものも、一体どういう人が地域住民の代表なのか、都道府県段階に行くとよくわかります。しかし、国の場合においては、やはり当該国が行なう事業に関して、それぞれ違ってまいりますので、大体全国民的に見てどういう人がいいのか、あるいは私が先ほど排除しなければならないということを念頭に置いておると申しましたのは、公害を発生しておる企業なり役員なりというものをやっておるような人は、この審議会にお願いするわけにはまいらぬだろう。しかし、産業人であるから、たとえば商工会議所の会頭であるとか、そういうと、今度は東京だとあれは永野さんですか、そうなると新日鉄ですから、やはり公害を出しておるわけですね。そういうこと等を排除しますから、要するに客観的に見て、産業界という言い方かどうか知りませんが、いわゆる企業というもののわかっている人というものがやはり入るべきだと思いますが、これは別段こだわってものを言っているわけではございません。
  303. 西田八郎

    西田委員 そうすると、いわゆる利害関係者はとにかく除くということを前提にするということですね。大臣、いいですか。
  304. 山中貞則

    山中国務大臣 発言の訂正をいたします。どうも少しくたびれてきましたが、十五条の、「国の行政機関に、政令で定める」というところをいま話をしているわけでありまして、これは実は国の行政機関は、国、中央ということでありませんでして、中央はこういうのをつくるつもりはなかったんですが、この地方建設局等でやる場合のことを念頭に置いておりますから、わりと選びやすいということになると思います。先ほどの被害を受けておる地域の住民の代表という人たちも、地方の出先につくるわけですから、これは選びやすいということで、先ほどの私の説明は、少し前提を誤っておりましたので取り消させていただきます。
  305. 西田八郎

    西田委員 そうすると、私もそういうふうに聞いておったわけですが、施行者が国の行政機関である場合においては公害防止事業費負担審議会、こうなっているわけですね。そうすると、それはいまの説明で大体中央に固定して置かないということですね。そのいわゆる地方の建設局であるとか、そういうようなところに大体置いていこう、あるいは農政局であるとかいうところに置いていこうという、こういうことであるわけですか。そうすると、それの事務は一体どこが扱うのですか。
  306. 植松守雄

    ○植松説明員 その場合の庶務は、当然地方建設局に置かれる場合は地方建設局が行なうと思います。
  307. 西田八郎

    西田委員 時間がなくて、もう最後に一つ。  これは重要な問題になってこようと思うのですが、第十六条で「この法律に基づく中小企業者費用負担に関しては、施行者費用負担させる事業者を定める基準及び負担総額の配分の基準の決定並びに事業者負担金納付について適切な配慮をするほか、国及び地方公共団体は、税制上及び金融上必要な措置を講ずるよう努めるものとする。」こうなっておるわけですが、いわゆる中小企業というのは、一体どういう基準に基づいていわれるのか。おそらくここでは、中小企業法等にいう中小企業というふうに理解するわけですが、そうしますと、資本金五千万円、従業員三百名未満ということになった場合は、資本金五千万円でも非常に特殊なものをやっておって、非常に大きなシェアを持って、市場占有率が非常に高いというような中小企業で、負担能力が十分あるというような場合と、それからもう五千万ぎりぎりのところでもっておるけれども、なかなかもう瀕死の状態であるという中小企業があると思うし、さらには中小ということで含まれてくると、零細という、企業協同組合法等による対象になる事業主は除いても、たとえ従業員十人でも、資本金五百万、六百万でも、事業をやっているものということになってくると、これが対象になってくる。非常にここのところが、中小企業という判定がむずかしくなってくるわけですが、そこの中小企業の定義を一体どうなさっておるのか。どういうふうに規定されるのか。
  308. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、もう税法でも何でもやはりそのような基準をとっておりますから、その基準でいきますが、先ほどもどなたかの質問で、景気のいい企業と、赤字の企業とも同じように取るのかということでしたが、これはやはり責務の問題ですから、景気がことしはよかったから持ちます。来年悪くなったらやめてくださいというものでありませんので、やはり負担は営業成績のよしあしは配慮しないということで、中小企業の規模を押えていきたいと思うのです。
  309. 西田八郎

    西田委員 そういう点から考えれば、中小企業の中は別としても、小企業者については原則として適用の除外をし、そして著しくその地域の汚染その他をし、人の健康あるいは生活に害を与えるものについてのみ特別の適用をはかるというようなことのほうが、私は運用もしやすいし、またそのことのほうが適切ではなかろうかというふうに考えるわけですが、そういう考えについて、当然そうなると法の改正ということになるわけですから別ですけれども、そういう考え方は大臣認められるかどうか。
  310. 山中貞則

    山中国務大臣 お気持ちはわかりますが、これをもし法律に書くとなると、ではどういうものが免れ得るんだということが、また大論争になると思うのですね。たとえばメッキ工場などは、もう大体零細企業といっては失礼かもしれませんけれども、実態はまさにそういう家庭工業的なものだろうと思うのです。そういうものが、実際はやはり有毒なる物質を流す最も典型的な企業一つとされておる。そういう場合に、じゃメッキ工場はほぼ零細なもの、特定の大きなものを除いて対象から省くというと、またここに非常な不公平が起こります。一定規模以下のものは対象にしないということを書くと、またたいへんなことになるのじゃないかと思うのです。それらのところはそれぞれ掛け金、それぞれの分担金の延納あるいは分割納付、そういうこと等についてもこれは特例の定め方で、中小企業には大体税制金融上の配慮をするということが、法律の普通の書き方ですね。この場合においては負担金そのものについても言及しておりますから、そこらのところで十分に配慮ができるものと思います。また、それらの負担金については大蔵大臣が明言いたしましたように、損金算入なりあるいは特別償却の度合いをさらに高めるとか、一時償却を当てはめるとか、いろいろのくふうをこらしていって、そして実際上公害防止もせねばならぬ、しかし、企業そのものはつぶれてしまうということのないような配慮は、当然の、為政者としての責務であろうと思います。
  311. 加藤清二

    加藤委員長 西田君に申し上げます。あなたに与えられた時間が迫ってまいりました。結論を急いでください。
  312. 西田八郎

    西田委員 これを最後にいたします。  いまの中小企業の問題ですが、日本の場合は産業の二重構造ということで、中小企業というものは大企業の系列化に置かれている企業がほとんどであります。そして大企業でやりにくい仕事が中小企業でやらされておる。しかも、それが非常にきびしいコスト計算で、そしてみずから対等で交渉するというのではなしに、大企業の押しつけられたような工費、工賃でやっている場合が多いと思うのです。そうしますと、やはりこうした公害事業としての費用負担、多少でも負担するということになるとするならば、当然そうしたコストアップというものも考えていかなければなりません。そういう場合に、これは中小企業庁に聞けばいいのかどうか別としまして、大企業が、そうしたものも加味してやはりコスト計算の基礎にするようにやはり指導をしていかなければならぬ。そうでないと、中小企業はほんとうにこのことによって、いわゆる公害を出すような企業というものは壊滅してしまうおそれがあると思います。それは日本の産業のいわゆる後退でもあるというふうに考えますので、その辺のところのひとつ指導について、お約束がいただけるかどうか。
  313. 山中貞則

    山中国務大臣 たとえば卑近な例をとれば、メッキ工場がカドミウムメッキはやらないという申し合わせをいたしました。そうしますと、しかし、航空機の部品とか、あるいは電子部品とか等について、どうしても必要なカドミウムメッキというものが充足されない。それについてはやはり大企業が、必要とする企業が、自分たちで直営のメッキ工場を持つなり、あるいは全部負担をしてやる工場を下請みたいにつくるなりなどして乗り切ろうとしておるようでありますが、まさにその点は大企業中小企業も、いわゆる親、下請の関係も一体となってこれは乗り切っていかなければならぬと思います。
  314. 西田八郎

    西田委員 終わります。
  315. 加藤清二

    加藤委員長 次は、林義郎君。
  316. 林義郎

    ○林(義)委員 私は、まず山中長官に敬意を表したいと思うものでございます。実はこの臨時国会、公害国会でございますが、十四の法案をまとめられるというのは、私はたいへんな御努力だっただろうと思うのです。公害対策ということでやらなくてはいかぬ。しかも、十四の法案を各省いろいろ持っておられる。その中で、現実問題としては各省でいろいろ権限の争い、意見の相違というものがあって、それをまとめるというのはたいへんな御努力だったと思いますが、当初の御予定、一本欠けましたけれども、とにかく十四法案が出されたことは、私は特筆大書すべき偉大な功績だったと思うのです。しかしながら、実は私も自民党の中で、いろいろ法案の作成過程にも若干あずかっておりましたけれども、法案の作成過程を通じまして非常に急いだという点もございまして、私は、その立法技術の問題あるいは立法論の問題として、若干問題があるような点が少しずつあるのではないだろうか、こう思うものでございます。その点を中心といたしまして、最初に御質問を申し上げたいと思います。  まず最初の問題でございますが、公害対策基本法の中に二条の改正案がございます。二条の改正案の中には「「水質の汚濁」の下に「(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。第九条第一項を除き、以下同じ。)」」ということが書いてございます。実は、まず申し上げますと「水底の底質が悪化すること」ということでございますが、これは私はヘドロの問題をいっておるのだろうと思うのです。  ところが、ヘドロにつきましては公害対策基本法の第二条の中に入れたにもかかわらず、実はほかの法律によりましてはヘドロに対する規制の問題というのは一つもあらわれてない。公害対策基本法は申すまでもなく基本法でございますから、ほかの実施法がなくてはうまく働かない、効果的な規制はできないということだと思うのです。そういった点からいたしましても、この国会において、わざわざこの点を入れるだけの必然性というものはなかったのではないだろうか。もちろん、将来におきまして、ヘドロの問題というのはないがしろにしておいてはいけない、私はこれは当然のことだと思います。そういった意味におきまして、ここに二条の中に入れておるということでございましたならばわかるのですが、そういったものであれば、将来そういった対策ができるときにおいて、公害対策基本法を改正すればよろしいという議論も成り立つわけでございまして、その辺につきましてどういうお考えなのか、まずこの点についてお尋ねをしたいと思います。
  317. 山中貞則

    山中国務大臣 これはヘドロの、いわゆる必要な以外の物質がたまることを防止するのは、いわゆるいままでの工場排水法、公共用水域の水質の保全法、こういうものが一本になった水質汚濁防止法というものが受けるわけですが、いまたまっておるものについては規制する方法はないわけです。たまっておる状態の改善ですから、それを受けるものは公害防止事業費事業者負担法というものの中で、先ほど来議論しております条項によってしゅんせつとか、そういうことを、「水底の底質の悪化」からそれを改良するということが入ってくるわけでありますから、実態がないわけじゃないのです。ただ一つだけ「水質以外の水の状態」ということで、「水質の汚濁」の中に、今回は色も考えることにしたことがもう一つありますが、根本的には温熱排水というものを考えております。これは「水の状態」というものをそのために入れたのです。これは原子力発電所、火力発電所等、ことに原子力発電所において、アメリカ、ソ連等ではすでに顕著な問題を提起しておりますし、日本でもそろそろ各地で議論が始まっておりますので、これは後手後手に回らないために、温熱排水というものを念頭において、この法律は今国会に間に合いませんが、これもいずれ温熱排水に対する、先ほど来私が申しました中にも、水産動植物等に直接関係のある被害ということが想定されますので、こういう問題を含めた立法がなされる予定であります。そういうほうに進むために、ここにそのことばを出したということで、次の国会に法律を出すなら、このことばもやめておけばよかったということでしょうが、私は基本法というものは、そうたびたびいじってはならぬと思うのです。四十二年につくったものが、基本的な第一条第二項から議論がされる。それが三年目です。こういうことではならないので、やはり議論はあるにしても、少なくとも相当長期間の今後の公害施策の姿勢にたえる基本的なものが、一応の姿として出ておるものが文字どおり基本法でなければならぬという意味で、いずれも作業に着手しなければならない、先取りしなければならない、原子力発電所等の冷却水の温熱排水等による被害については、いままで基本法の中にそうは書いてありませんが、「水の状態」ということで読んでいこうということで、一応先取りがしてあるということでございます。
  318. 林義郎

    ○林(義)委員 それでは、いまのお話で温熱の問題でございますが、温熱の問題については、将来あるいは通常国会、またその次の国会、いずれかの段階におきまして法律が出されるということでございますが、「水底の底質が悪化する」点につきましては、これはいわゆるヘドロの問題でございまして、いまの長官の御答弁がちょっとよくわからなかったのですが、ヘドロがこうたまっている、その現在の状態について、どうこうするというようなお話でございましたが、私は法律論からいたしますと、ヘドロがいまからたまってくるというものを問題にしなくてはいかぬのではないだろうか、そういうふうな気がいたします。いずれにいたしましても、この場合におきましては「第九条第一項を除き、以下同じ。」というふうな規定がございますので、将来におきましてもこれはいわゆる環境基準というようなものはつくらない、悪臭と同じような規制の方式になるものだというふうに了解してよろしいものでございましょうかどうか。先ほどの「水底の底質が悪化する」という問題、それから将来の予想される立法の形というものがもしわかっておれば、お示しいただければ幸いと思います。
  319. 山中貞則

    山中国務大臣 水底の底質の悪化というものの対策は、いわゆるヘドロをどうするかという汚泥その他の公害防止事業で対処していく。しかし、それがたまらないようにするというのは、すなわち排出口からの排出の規制ということですから、水質汚濁防止法できちんと今後これ以上たまらないようにする施策をとるわけです。  さらに、その事業公害防止事業費事業者負担法にさらにたまらないようにするためになじむものであれば、それもまた入ってくるということになります。  さらに、先ほど私が説明しました今後の先取りとしての温熱排水の問題は、一応単独法でなくとも、今回の水質汚濁防止法の第一条に「水質の汚濁」と書いて、やはり基本法を受けて、「水質以外の水の状態が悪化することを含む。」を入れておりまして、さらにそれを受けて、第三条の(定義)で、第二項の二で「水素イオン濃度その他の水の汚染状態(熱によるもの)を含み、」と書いてありますので、これでもって一応対策が立てられると思います。  ただ、しかし問題は、水産動植物というものを、どこまでこの水質汚濁防止法で対策が立てられるのか。温熱排水はまさに水産動植物そのものの問題でありますから、ここらのところは、この法律を御可決いただいたあと、政令等でそこまでいけるものかどうか、さらに進んで、できなかったら独立法等や、あるいはもっと広く海洋汚染防止法等の中にも、そういう考え方を入れて、両方入れていくか、これから研究してみたいと思います。
  320. 林義郎

    ○林(義)委員 いま長官から御指摘があったところですが、実は議論を進めます前に事務当局からでもけっこうでございますから、その水質汚濁防止法案の第二条第二項第一号の政令、及び同項第二号の政令、それから大気汚染防止法の第二条第一項第三号の政令、第二項の政令につきまして、どういったものを政令で定められるのか。あるいは政令ができておらなければ、どういったものを現在考えておられますか。ペンディングの状態でもけっこうでございますから、御説明をいただきたいと思います。
  321. 西川喬

    ○西川政府委員 お答え申し上げます。  水質汚濁防止法におきましては、二条の第二項第一号の政令といたしましては、現在環境基準できまっております健康項目、八項目ございます。これらのものを予定いたしております。さらに環境基準につきましては、将来のあれによりまして、現在検討中の項目がございますが、これらのものは各省の意見が一致しましたところで追加してまいりたい、このように考えております。  それから第二号のほうでございますが、これは現在環境基準できまっておりますのは、PH、BOD、またはCODそれからDOそれからSS、それだけでございます。しかし、排水基準といたしましては、それぞれの水域の特性に応じまして現在約十項目程度のものが、いま申し上げました項目以外にもきまっております。それらのものにつきましても一応ナショナルミニマムとしての数値を設定いたしたい、このように現在考えております。
  322. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 大気汚染防止法の中で、有害物質としていま考えておりますのは、カドミウム、塩素、弗化水素あるいは塩化水素、マンガン、クローム等のものを考えております。
  323. 林義郎

    ○林(義)委員 こういった被害にかかる公害関係の物質につきましての指定は、大体現在と同じだというお話でございますが、法務省の方来ておられますか。——実はこの法律法律と申しますのは大気汚染防止法、それから水質汚濁防止法、いずれの法律もそうでございますが、こういった物質を排出する、また法律に書いてあるいろいろな硫黄酸化物その他の物質を排出する、そうした場合におきまして、その排出をするところの施設を設置をした場合には届け出をしなければならない、届け出をして三十日ないし六十日たった場合においては動かしてよろしい、こういうことになるのだと思います。届け出をした場合におきましては、もしも届け出の手続を怠った場合には過料か、または罰金が課せられる、また届け出をしたところが、この法律に書いてあるところの基準に合致しないときには、三月以下の懲役または五万円以下の罰金に処する。さらに都道府県知事その他からの命令によって、排出基準の違反のための改善命令が出されるというような場合におきましては、六カ月以下の懲役または十万円以下の罰金に処する、こういうふうな形になっていると思うのです。したがいまして、こちらの法律におきましては、実は法律構成要件というものは、概念的にはきわめてはっきりしていると思うのです。実際には排出基準をどう定めるか、排出基準のあいまいさというものはありますけれども、これは法律論としては非常にはっきりした規定になっているだろうと思うのです。  ところで、そういった意味でここに書いてありますような排出基準違反の場合と、先般来この合同委員会で問題になっておりました公害罪法案でございますが、そのほうの関係を私は並べてみたいと思うのです。一体こちらの法案は刑事法でございますから、書いてあるのは「人の健康を害する物質を排出し、公衆の生命又は身体に危険を生じさせた者は、」というふうに書いてあるわけです。これと、こちらのほうの関係を私はむしろ聞きたいのですが、一体この大気汚染防止法、水質汚濁防止法にかかるところの基準に合致しているもの、基準以下であるものについて、こちらの公害犯罪の処罰に関する法律案の適用の対象になり得るものかどうかということでございます。概念的にはいずれのほうも、一方は行政犯であり、一方は刑法犯であるという違いはあるかもしれません。しかし、実定法の解釈からすれば、私は全く同じことだと思うのです。この段階におきまして、立法技術の問題あるいは立法政策の問題として言うならば−解釈論の問題は別ですけれども、立法政策の問題として言うならば、いずれも罰金または懲役ということが書いてあるわけですから、そうあまり違わない問題だろう。そういたしますと、こちらの大気汚染防止法、あるいは水質汚濁防止法に書いてあるところの範囲、その構成要件のうちに、こちらのいわゆる公害罪法案の中のものが入っているのかどうか。あるいはその概念から外に飛び出すところがあるのかどうか、その辺をまず聞きたい。これは構成要件の問題でございますから、違法性の問題であるとか、有責性の問題であるとかいうような問題は別にいたしまして、その点をまず聞かしていただきたいと思います。
  324. 前田宏

    ○前田説明員 お尋ねの、排出基準違反と、いわゆる公害罪法案の二条なり三条なりの罪との関係でございますが、ただいま御質問の中にもございましたように、いわば理論的には各行政法規におきますところの排出基準というものとこのいわゆる公害罪法案とは、形式的には無関係でございます。ただ、その前提といたしまして、排出基準と申しますものはここであらためて申し上げるまでもないかと思いますけれども、いわゆる努力目標と申しますか、例の環境基準を前提といたしまして、それを達成するために、相当多数の工場なり事業場なりから若干の有害物質が出ましても、そういう健康に危険なような状態が起こらない、そういうことを本来ねらいといたしまして、いわば非常にきびしい排出基準がきめられておるというふうに理解しておりますし、またそうであるべきものというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、理論の問題として御質問のようでございまするので、適当であるかどうかと思いますけれども、そういうような排出基準の性格からいたしまして、その排出基準を守っているようなごく微量の排出というものによりまして、このいわゆる公害罪法案で言う二条なり三条なりの罪が成立するということは、実際問題として考えられないというふうに申していいかと思います。
  325. 林義郎

    ○林(義)委員 実は、私はこの法律をずっとながめてみますと、一つだけ私は抜け穴があるのじゃないかと思うのです。緊急時において気象条件その他によって公害が発生いたすという規定がございます。先ほど、どなたか先生からお話がありまして問題になりました。勧告の規定ではゆるい、命令にしなくちゃいかぬというふうなお話がありましたが、ああいった事態におきましては、この基準を守っておっても、あるいは気象条件その他によって、そういった人の健康を害するようなおそれというものがあるのではないだろうかと私は思うのです。  ところがそれにつきましては、やはりこれは気象条件その他によって左右されるわけですから、有責性という点からいたしまして、私はおそらくそういったものの責任は解除される、たとえ構成要件に該当しておっても、有責性という点から私は解除されるのではないかと思うのです。  そういたしますと、私はもう一つお尋ねをしたいのは、この規定がなぜ一体ここにはっきりこういった罰則を掲げるかということです。さらにきびしい基準をつくったときにはやらなくちゃいかぬか。そのきびしい基準を、一般のいわゆる排出基準というような基準がありますけれども、それよりも非常に高い基準をおいて問題を刑事犯については問う、こういうことでございますから、それの立法の基本的な考え方というものは何であるかということを、ごく簡単にお答えいただきたいと思います。
  326. 前田宏

    ○前田説明員 いわゆる公害罪法案の立法のねらいと申しますか、その点についての御質問だと理解するわけでございますが、これまでもいろいろ御議論がございましたように、またいまも申しましたように、いろいろな関係行政法規におきます規制というものがだんだんと整備されてまいりまして、各企業におきましてそれを完全に守っておるということでございますれば、問題は起こらないといっていいかと思うわけでございますけれども、場合によって、この基準というものをいわば無視するような場合もないとはいえないわけでございます。したがいまして、極端な例、本来そういうことがあってはならないわけでございますけれども、そういう基準以上の、はるかに基準を越えるような有害物質を大量に出しまして、そうしてここにいう「公衆の生命又は身体に危険を生じさせた」というような、たいへん多数の国民の方に危険な状態が起こったという場合には、やはり単なる排出基準違反ということではなくて、自然犯と申しますか、刑事犯と申しますか、そういうような評価をもって臨むべきではないかということでございます。
  327. 林義郎

    ○林(義)委員 公害対策という観点からながめますと、この公害罪法案については、私がすらっと見たところでは非常に問題がある。と申しますのは、これはやはり刑事犯でございますから、行為者個人を罰するわけでございます。これをすらっと読みますと、一つ工場から出たものが、人に対して危険を及ぼすような状態を規制するということでございます。  ところが、公害の問題というのは、一つ一つ工場から出るのもありますけれども、いわゆる複合公害と申しますか、大気汚染であるとか、水質の問題であるとか、こういったたくさんの工場から出ていわゆる公害をつくっておるという点が一番の問題だと私は思うのです。実はその点につきましては、この公害罪の処罰法案というのは、ほとんど無力ではないだろうか、私はこう認識しておるのですが、その認識に間違いないかどうか、まずお尋ねしたいと思います。イエスかノーか言っていただけばけっこうです。
  328. 前田宏

    ○前田説明員 一言でもちょっと申し上げかねますので、御説明さしていただきますが、要するに、いまおっしゃいましたような、いわゆる複合と申しますか、多数の工場事業場から少しずつ有害物質が出まして、いわば結果としてこういうような好ましくない状態が起こったという場合は、当然予想されるわけでございます。そのほうがむしろ問題ではないか、こういう御意見も当然だと思います。  そういう意味におきまして、法務省におきまして、いわゆる公害罪の法案を立案するにあたりまして、どういうものを犯罪の対象としてとらえるべきであるかということは、種々検討いたしたわけでございます。しかしながら、いま御指摘のような事案、いわゆる複合形態というものを考えました場合には、多数の工場事業場から出ておるわけでございまして、その排出量等いろいろ考えますと、たくさん出しておるところもございましょうし、ごく微量出しておるところもございましょう。そういう意味で、いわばそういう状態をつくるに至りました企業の度合いと申しますか、そういうものが非常に千差万別であるわけでございます。したがいまして、そういう複合形態なるものを、いわばそのままの形でとらえるということになりますと、そういう企業の度合いの違うものを、いわば一律に刑事罰としてとらえるということに相なろうかと思うわけでございまして、その刑事罰の対象として、そういう責任の度合いが違うものを一律にやるということは、やはり適当ではないのではないかというふうに考えたわけでございまして、大臣も申しておりますように、刑事罰といいますか、その機能というものは、やはり二次的、補充的ということにおのずからならざるを得ないわけでございまして、そういういわゆる複合現象というものは、やはり大気汚染防止法なり、あるいは水質汚濁防止法なり、そういうもののきめこまかい規制によりまして防止するというのが、適当ではないかというふうに考えた次第でございます。
  329. 林義郎

    ○林(義)委員 そういたしますと、連合審査会のときにいろいろと問題がありました、いわゆる「おそれ」の条文をつけたらどうだという話がございましたが、いまのような基本的な考え方に立つ限りは、危険というものを書く、これこれの「危険」という字を書く、あるいはそういった「危険を生じさせるおそれがある」とこう書いても、立法論としてはほとんど違わない結果になるのではないだろうか、私はこう思うのです。「危険」ということばは、もう一ついいますと、こういった「生じさせた危険」ということばは、あるいは「危険を生じさせた者は」と、こういうふうな規定は確かに刑法典の中にもはっきりあるわけです。温水罪という、水があふれたときのような「危険」であるとか、ガス罪、それからもう一つ何かありました、確かに三つか四つあったと思いますが、そういったような形で、実は刑法理論としては「危険」という概念は確立されておる。「危険」というのはあぶない状態ですから、「おそれ」という状態であると非常に平たく言えば私は言えることだろうと思うのです。そういったいわゆる「危険」というのは、蓋然性と申しますか、必然性ではないけれども、相当な程度それに近いような状態というものをさすのが私は「危険」だと思うのです。したがって、それにさらにおそれをつけ加えると、非常に法律概念としてはっきりしない、特に先ほどもお話がありましたように、二次的なものというような形で考えるならば、やはり立法政策の問題としては、そこはやはり概念をはっきりしておく必要があるのではないか、少なくとも従来の刑法概念に基づいて、はっきりしていろいろと解釈が出てきているような、そんな解釈にたよっているのが一番安全なことでございますから、そういった形で立法を進めなければいかぬだろうと思うのです。私のいま申し上げたその論理につきまして、法務省のほうで、間違いの点があれば御指摘をいただきたいと思います。
  330. 前田宏

    ○前田説明員 いま林委員のおっしゃいましたこと、別に違っている点はないわけでございますが、若干補足させていただきたいと思います。  要するに、いわゆる公害罪法案のねらっておりますことは、「人の健康に係る公害防止に資する」ということでございまして、したがいまして、死傷というような実害が生ずる前の段階で犯罪としてとらえるということにあるわけでございますが、その実害の生じない前の段階を、どこまでとらえるかということが問題になるわけでございまして、そういうどこまでとらえるかということにつきましては、この(目的)でも、他の関係法規と相まってということをうたっておりますことからも明らかなように、関係行政法規の内容、あるいは規制の強化の程度というものとにらみ合わせながらきめるべきものであろうというふうに考えるわけでございます。その意味におきまして、私ども最終案の作成の段階におきまして、そういう行政法規とのにらみ合わせというようなこと、あるいはいま御指摘の「危険」を生じさせたという概念が、刑法上いわば確定されておるというようなことをいろいろと考え合わせまして、本来の目的でございますところの、実害の発生前にとらえるという目的が達成されますこともあわせ考えまして、この提出いたしまして御審議をいただいておりますような内容のものが、最も適当であるというふうに考えた次第でございます。
  331. 林義郎

    ○林(義)委員 公害罪法案のほうにつきましては、私は個人的な意見といたしましては、実は罰則が「三年以下の懲役」云々というようなところは少し軽いのではないか、これだけ人の健康に対して危険を生じさせた者を、しかも、それは二次的にやるわけですから、相当に重くしてもいいんじゃないだろうかという実は個人的な感じは持っておりますが、もうこういうふうな法案が出ておりますから、その点につきましては、法務委員会で十分に議論していただきたい。私は量刑の問題については、専門家でないからここで議論することはやめておきますが、私はやはりその辺にも若干の問題はあるのではないだろうかという感じがしております。これは私の意見だけにしておきます。  続きまして、水質のほうにつきまして若干のお尋ねをしたいのです。  実は、今度排水基準という点が変わってまいりましたのですが、いままで排水基準というのは各地ばらばらに定められている。特に人の健康に関するものにつきましてはこれは絶対的だ、相当に安全度を見越してやっておられるということだと思いますが、いわゆる環境と経済との調和という条項がございました。その点につきましては、私も六法を見ますと非常にたくさん、複雑になっております。今回法律の目的も改正されたことでもございますし、これはやはり相当一律的な基準法律考え方からすると、「自然的、社会的条件から判断して」と書いてありますので、いままでの考え方とは相当に違っている。したがって、いわゆる自然環境をどうするかというような排出基準につきましては、これは相当に変えていかれなくてはいけない性質のものだろうというふうに思うのですが、その辺いかがですか。  たとえて申しますと、実は先般参りました所で広島県の大竹というところがございます。大竹のところでいわゆる化学的酸素許容量というのが、パルプ製造業につきましては千三百五十ミリグラム・パー・リットル、その他のものについては二百ミリグラム・パー・リットル云々というような形になっておるわけでございます。一体、こういうように非常に違っているということは、パルプ製造業から出るのはたくさんある。そのほかのものはたくさんだからということでしようがないといえばしようがないのかもしれない。それが社会的条件ということになるのかもしれませんけれども、そこはやはり少しいじっていかなければいかぬのじゃないだろうか。私はそう考えておるのですが、その辺につきましてどういう基本的なお考えを持っておやりになるのか。排出基準をつくられる考え方ですね。何か四十二年か四十三年には、水質汚濁につきまして基本的な方針を——環境基準の設定の基本方針というのは、四十五年の三月三十一日ですか、つくっておられますが、こういった基準の中にも「生活環境の保全は、経済の健全な発展との調和を図りつつ行なうべきものであり、この調和は、基本的には個々の水域ごとに考慮することが適当と考えられる」、こういうふうな規定がありますが、こういった規定というものは、今度はやはりなくならなければいかぬ。そうすると、具体的な排水基準についても相当に変わりが出てくるのだろうということをお尋ねしたいわけですが、その辺については変えないとおっしゃるのか、変えるとおっしゃるのか、ちょっとお尋ねしたいと思います。
  332. 西川喬

    ○西川政府委員 ただいまのお尋ねは、環境基準とそれから排水基準、二つの問題にからむかと思いますが、環境基準につきましては、現在きめました基本方針、これは経済の発展との調和は考えておりません。現在の知識をもとにいたしましてきめたことでございますから、これを変える必要はございません。問題は、生活環境項目のほうにつきましての当てはめというものがあるわけでございます。この当てはめにつきまして、一応経済の健全な発展との調和がどの程度考慮されたかということでございますが、当てはめは、四十九水域につきまして九月一日に閣議決定をいたしております。これを当てはめましたときにわれわれのほうで考えましたことは、現在の利水の状況ということ、並びに今後の下水道の整備、社会資本の整備のほうに重点を置きまして検討いたしております。その観点から、ただいまこの法律改正によりまして、直ちに当てはめを変える必要があろうかということにつきましては、行政目標としての達成ということを考えました場合に、直ちに変える必要はないのではないか。この目的が達成されました場合に、さらにその上位段階というものを考えるかどうかということの問題ではないだろうか、このように環境基準については考えております。  それから、排水基準につきましては、この環境基準を達成するための一つの施策といたしましての排出規制ということで排水基準を定めているわけでございますが、これにつきましては、今回法律改正によりまして、一応ナショナルミニマムというような基準がかかるわけでございます。その場合には、当然従来かかっておりました基準というものは、ゆるいものは失効することになるわけでございます。その点につきましては、やはり当然のことといたしましての経過規定、現在のきまっております基準から、新法によります基準に乗り移ります経過規定というものは、今後検討しなければならないであろう、このように考えている次第でございます。
  333. 林義郎

    ○林(義)委員 そういたしますと、先ほど申し上げた大竹のような例でございますが、それについてもあまり変えられない。実は大竹などというところに参りますと、私も同僚の先生方と、お伴をして参ったのですが、やはり海がまっかになっておる。パルプの排水がまっかになっておる。そういうふうな状況でございました。その水をくみ上げて魚を入れると、二分とか三分とかたちますと魚が死んでしまう、こういうふうな形ですが、常識的に申しますと、もしもこの場合における環境基準ということであるならば、そこにおいて魚が住めなくてもよろしいということをきめない以上は、やはりちょっと常識に合わないのではないだろうかという気がするのです。もしもそこに魚が住めというのだったならば、やはり魚が住めるような状態にしてやらなければいかぬだろう、こういうふうな気がするのです。  非常に常識的な話をして、あるいは法律的には間違っているのかもしれませんから、その辺もし間違っていれば間違っているということで、はっきりお示し願いたいと思います。
  334. 西川喬

    ○西川政府委員 大竹・岩国の場合につきましては、環境基準につきましては、現在臨海工業地帯となっております一番至近の個所、これは地域によってやや違いますが、海岸線から五百メートルないし千メートルの幅というものにつきましては、これはC類型と当てはめております。それから先をB類型、さらにその先におきましてA類型と考えているわけでございますが、B類型以上になりますと、魚の生存に適するということでございます。それからC類型につきましても、決して魚が住めないというわけではございません。特にC類型になりますと魚はだめなんだ、このように考えられるわけでございますが、そういうことではございません。それからC類型が五百メートルないし千メートル先ということになっておりますが、それから先は直ちにBにならなければいかぬわけでありますから、もちろんCOD八PPMから直ちに三PPMになるということは考えられませんので、同じC類型でございましても、海の場合につきましては、B類型に近いほうは三をわずかにこす程度であるということで、もちろん魚の生息はその程度ならば十分可能であるというような類型値になっておるわけでございます。  その類型値に対しまして、工場排水口からどのくらいの程度の濃度で排水をした場合に、拡散していく段階におきまして、海水の水質がだんだんどの程度になっていくかということを、いろいろ計算によりまして算定しているわけで、それによりまして、この基準であれば環境基準を守られるというふうに考えているわけでございます。ただ、今後の新法によります新しいナショナルミニマムの考え方は、そういう考え方ではございませんで、公共用水域に排水を出す以上、その水域がよごれているとよごれてないとにかかわらず、当然の義務としてこのくらいのものにしなければならないということから、ナショナルミニマムを設定したいという考え方でございます。それで、そのナショナルミニマムを設定いたしました基準をもちましても、ここに載っておりますような自然的、社会的条件——自然的条件と申しますのは流量のほうでございます。特に川の場合に該当するわけでございますが、河川の流量が非常に少ない、そういう場合におきましては、ナショナルミニマムだけの基準値ではだめだ。それから社会的条件と申しますのは、集積がはなはだしくなってくる。そうなりますと、どの工場もナショナルミニマムで出しておりましても、集積されていくわけでございますから、そのようなことに対しましての社会的条件、この自然的、社会的条件を合わせまして、このナショナルミニマムではその水域の環境基準が守られないというときに、初めてよりきびしい上のせ基準を県のほうで設定してもよろしい、このようなことになっているわけでございます。  先ほどちょっと申し忘れましたが、ナショナルミニマムにつきましては、相当きびしい基準をいま念頭に置いているわけでございますが、現在いわゆる技術的な限界値と申しまして、どうしてもナショナルミニマムを守れないような業種がございます。これはもうその業種はやめなければいけないというようなものがございます。そのような、非常に数少ない業種でございますが、先ほど先生がおっしゃいましたパルプ、パルプのうちでも特にSPでございますが、SPはこの業種に該当いたしますが、このようなものにつきましてはやはりやむを得ません。ナショナルミニマムをある程度、期間を限ってゆるめざるを得ないのではないか。その間におきまして、今後の処理技術の研究開発を進めまして、できるだけ早い機会に、ナショナルミニマムがすべての業種について守られるように持っていきたい、このように考えております。
  335. 林義郎

    ○林(義)委員 次に、大気のほうをお尋ねしたいのです。  大気の基準でございますが、(排出基準)というのが第三条にございます。第三条にあるところの基準の中で、第三条の二項に一号から四号まで、こう書いてございます。私が非常に奇異に感じたのは一号の硫黄酸化物にかかわるものと、それからばいじんにかかわるものとありますが、何か読みますといずれもばい煙発生施設で、硫黄酸化物だけについては着地濃度主義をとり、それからその他のばいじんについてはその排出口の基準による、こういうふうな感じになっています。なぜ、そういうふうな区別があるのだろうか、その三号も何か排出口規制でございますし、四号はまた着地濃度規制、こういうふうな形になっておりますが、一体なぜこういうふうに考え方を分けておられるのか、この辺についてちょっと御説明いただきたいと思います。
  336. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 確かにK値規制と濃度規制両立てをしているわけでございますが、いずれにしても私どもの根本になりますものは、結局、排出汚染物の濃度をできるだけ低く処理してまいる、そしてできるだけ低く処理してから排出するということであります。結局高煙突による拡散によって、汚染物の着地濃度を薄める方法一つ方法であります。ですからその場合に、今回排出基準のきめ方の原則として、施設の種類、また規模ごとに、排出口における汚染物濃度により設定する場合の中で、硫黄酸化物のようにまだ排煙処理が技術的に確立をされておらない状態のもの、また特にこれら物の燃焼に伴い発生するガスでありますから、通常の場合かなり高い煙突から排出されるものでありますから、拡散によって着地時点で薄められる、いわゆるK値規制を行なうほうがよりべターではないかという考え方からK値規制をとりました。そしてこの際、ただ発生源と重合しても汚染濃度が環境基準以下になるようにと、合理的な計画をして排出を行なったわけであります。いわゆる有害物質、また特定有害物質というような分類、これを四つに分けてまいりましたのは、それぞれの排出される有害物質について、いずれがより実質的に排出を規制し得るかという観点からとりましたものでありまして、そのとり方については私どもはこれで一応成功ではないかという考え方をしております。
  337. 林義郎

    ○林(義)委員 ちょっといま御説明がよくわからなかったのですが、K値規制というのは、煙が出ていって上がってさっと拡散して落ちる、こういうふうな形だと思うのです。だからしたがって高い煙突にすればできるだけ広いところにいく、こういうことですが、そういった形でやるならやるということで、二項二号、三号というのもそういう形でおやりになったほうがむしろよかったのじゃないだろうか。二号、三号は出るところだけ規制する、なぜこういう形でおやりになったのか、ちょっとその辺がもう一つよくわからないのですが、教えていただきたいと思います。
  338. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 日本語がまずいためにたいへん恐縮であります。結局、こういうふうに簡単に申し上げてみればより御理解をいただきやすいのじゃないかと思うのですが、結局、二項一号できめておりますもの、いわゆるSO、亜硫酸ガス、これらの排出口から大気中に排出されて非常に拡散されておりてくる。また四号に定めた特定有害物質という考え方でとられておるものは主として窒素酸化物、いわゆる物の燃焼に伴って発生しておりてくるもの、これをK値規制でとらえた。カドミウムでありますとか、塩素でありますとか、そのほかいろいろございますその他の粉じん、必ずしも物の燃焼に伴って出てくるという性質ではない粉じん、これは許容限度をその方法でとらえた、そのように御理解をいただけば一番いいのじゃないかと思います。
  339. 林義郎

    ○林(義)委員 そういたしますと、実はここに書いてあります許容限度というのは、大体現在やっておられる許容限度、こちらのほうも非常に安全度を見込んだ許容限度がつくってあると思うのですが、そういった許容限度というものは大体同じようなものをおやりになるのか、あるいは今度は非常に変わった許容限度をおつくりになるのか。いままでよりはるかに低いやっとか、全然高いやつとか、いろいろあるでしょうが、そういったものをおつくりになるつもりなのか。その辺はまだきまっていなければ、いまから御議論されるならそれでけっこうですが、ちょっとお答えをいただきたいと思います。
  340. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 私、化学の専門家ではないものですから、こまかい点についてまで熟知はしておりませんが、御承知のとおり、今度の法案をごらんになりますと、上乗せ規制その他を加えております。従来以上にいく、きびしくしていくということについては間違いはございません。
  341. 林義郎

    ○林(義)委員 実は、私は先般の合同委員会関連質問をさしていただきまして、そのときにマッチをすりまして、委員長にあとでお話を承ったのですが、実はそのときにお話をいたしましたマッチの数字というのは少し違っているのです。私が実はああいうふうなことをやってお話をしたところが、ある人から、林先生あの数字は少し違っています、こういう話があったのです。実は私はあの数字は東洋経済か何かに出ていた数字を、計算しますと大体あれくらいの数字になると思ったのですが、マッチ一本の中の薬品量からしまして、その中に硫黄分がどれくらいあるかということをはじきますと、もう少し少ないものになる。それで計算いたしますと、この中で百五十本ほどマッチをすると、いわゆる大気汚染の中の基準〇・〇五PPMと同じくらいの亜硫酸ガスの濃度になるというような計算が出るのです。もちろん戸がありましたり、その辺をあけたり何かしますと、これは当然違ってきますけれども、全然密室の中でやっているとそういうふうな形なんです。きょうはわりとこの委員会はすいておりますから、そう問題はないと思うのですが、もしも最初の連合審査委員会のときみたいに、わあっと込んでいると、たいへんな濃度になってきてこれがずっと続いておると、山中長官みたいに、朝から晩まですわりどおしになりますと、相当に健康に被害を及ぼすのじゃないかと私は思うのです。そういったような基準なものですから、いままで環境基準なり排出基準、排水基準というものは何PPMとか、COで幾らであるとかいうような形で、いろいろと新聞にも出ておりますし、一般の人も受けておる。ところが、それがどの程度のものであるかということは、実はみなはっきりわかっていないわけなんですね。私もそんなものはしろうとでありまして、さっき申し上げたように相当間違ったなにをしたのですが、そういった間違ったことでその数字がふえんしてしまうということは、私は非常に遺憾なことだと思うのです。やはり公害対策にほんとうに取り組んでいかなくちゃいかぬというのが、私はこれからの日本の大きな問題だと思うのです。そういったときには、環境基準あるいは排出基準というものが、大体大気がどのくらいになるのであるかとか、あるいはどのくらいになったらどうであるかということは、人の健康に対する影響ですから、ぜひとも一般の国民にわかるような形にしてもらいたい。〇・〇五PPMだからいいとか悪いという形では、私はちょっと官僚的過ぎるのじゃないかと思う。やはり十二歳の小学生にもわかるような説明をしてもらいたい。私はそういうふうに基準をつくるのがいいと思うのですけれども、それは科学的にいろいろ判断する、いろいろな機械を使って判断するわけですから、やはり〇・〇五PPMとかいろいろな数値が要ると思いますけれども、その数値の持つところの意味というものはこういうものである、これだけのものであるならば、相当からだが悪い人でも、この空気の中ならば絶対にぜんそくにはならないとか、あるいは水の基準につきましては、こういった水の基準であるならば絶対に魚は住む。金魚は住まないかもしれませんけれども、ほかのもう少しごつい魚は住むとか、いろいろあると思うのです。たとえば洞海湾なんというのにいたしましても、シャコというのはまだあの近所には生きておるというような話でございます。普通の青い魚は全部だめだ、シャコぐらいなら生きておるとかなんとかいうような話を私は聞いたことがあるのです。私は、一般国民がやはりそういったものについてなじむような説明というものを考えておかなくてはいかぬ。と申しますのは、何といったところで、いろいろな法律がありまして、いろいろたくさん並べてありますけれども、一番国民の健康なり、あるいは生活環境に密接に関係する、また企業に対して一番問題が出てきますのは、こういった排出基準なり、排水基準なり、環境基準だと思うのです。ですから、ぜひそういった問題についてできるだけ国民がわかるような説明をしていただきたい。もちろん科学的な——科学は発達しますし、医学は発達します。だから、今日の段階においての医学では危険だと思われたものが、あすの段階ではいいということになるかもしれない。また、今日の段階でいいというものがあすの段階で悪くなるかもしれない。それは私はあると思うのです。そういったことは別にしまして、私はやはり、政府としては、そういったものが広く国民にわかるような形のものをぜひ出していただきたいと思うのです。これをひとつ、山中長官が公害本部で総まとめをしておられますので、山中長官も帰っておられますから、その辺につきましての山中長官の御見解を承りたいと思います。
  342. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、私たちも最近PPMになじんだような気がしますが、それを正確に感じているかということになると、感じていることについては疑問があると思うのですね。そうするとやはり、たとえば水系なら水系で水域ごとに定めます際に、これはAAからずっとランクをつけていくという場合に、まあ都道府県の広報あたりで知らせる場合には、その水域の人たちが、まあ県民でもいいですが見る場合に、お魚の絵などが、ここらのところはBならBというのはどういうところまで魚が住む、アユは住まない、ヤマメはもう一つ上のところでなければ住まないとか、あるいは一番ひどいところでも、たとえばあなたの例をとればシャコはいますとかいうふうに、解説書みたいなものがあるいは要るかもしれません。そういうことが、今度は廃棄物やあるいはその他、一般の河川等についても相当きびしくなるわけですけれども、やはり地域の一般の人たちの協力というものも得なければならないわけですから、そういう意味では、自分たちのこの水面はどの程度までを目標としておるのだ、したがって、そういうことはどういう意味なんだということを知っているということは、相当大きなプラスになるかもしれません。これは今後解説書みたいなものをつくる際にはひとつ検討してみましょう。
  343. 林義郎

    ○林(義)委員 いま長官から、解説書をつくる際には御検討になるということでございますが、現実に私、いろいろ選挙民とお話をしていますと、林先生、瀬戸内海は一体どうなるのでしょうか、こういうふうな話をよく聞くのです。漁民の人から、だんだんこの辺に工場ができてくる、そうすると海もよごれてくる、いままでノリをつくっていたのだけれども、去年よりは、だんだんノリはつくれなくなってきたというときに、私はそういった環境基準というものをつくって、いまこの環境基準政府がいろいろな施策をやっているから、将来には必ずノリもつくれるようになりますと言うのか、またはノリはだんだんできなくなるからほかのほうに転換をしてくださいと言うのか、いろいろ言い方があるだろうと私は思うのです。それはわれわれだって実は、何PPMだったらどうなるかというのはよくわからぬわけです。よほどよく厚生省なり通産省なんかに聞かないと、実際はよくわからないというのが実情だと思うのです。そういった意味で、どういうことになるのだ、将来はどういうふうにするのだということを、やはりはっきり国民に示していただくということがぜひとも必要なことではないかと思うのです。さっき申し上げましたなには、そういった漁業者の奥さんですけれども、実は自分の子供を今度どうしようかと思う。実はいまからノリの漁業をやっていくならば、いまはいいわけですから相当な稼ぎがある、ところがだんだん海がきたなくなってきそうだ、だから将来は、ノリをつくるのはもうやめておいたほうがよろしい、むすこは大学にやってサラリーマンにしちゃったほうがむすこのためになるだろう、そういったことでないとわからない。わからないけれども、一体子供を漁師にしたほうがいいのか、サラリーマンにしたほうがいいのかというのは、年ごろの子供を持つおかあさんたちの一番切実な問題だろうと思うのです。これから将来われわれのところがどうなっていくのだということをやはりはっきりやっておかなくてはいかぬ。これが私はほんとうの意味における国土開発の問題だろうと思うのです。住民と一緒になって、住民の気持ちにぴったりしたような国土開発計画というものは、私はそこら辺にまさに根ざしていかなくてはいかぬ問題だろうというふうに考えるわけでございますので、この点はぜひお願いをいたしておきたいと思うのです。  そういった点におきまして、たとえば小学校の教科書あたりにも、国民的な基準でもつくるということになれば、大体こういうふうな形になるのですよということを入れられていくのも私は一つ方法ではないかと思います。まあきょうは文部大臣来ておられませんからありませんが、その辺は総務長官から文部大臣のほうにでもお話しいただけたらありがたいと思っております。  それに関連いたしまして、先般来当委員会、また連合審査委員会におきましていろいろ議論がありました一つの大きな議論は、やはり被害者に対する救済をどうするかという問題でございます。これにつきましては、まあいろいろと議論はありましたけれども、やはり病気によって被害を受けておる方についてはあたたかい手を差し伸べてやらなくてはいかぬ。これは私は政治の姿勢として当然のことだと思うのです。現在では被害者の救済法案というのがあります。確かにいろいろと手当てはしてありますけれども、私はそれで十分だとは思わない。ところが、四十三年十月十八日付で、中央公害対策審議会の「公害に係る紛争の処理及び被害の救済の制度についての意見」というのがありまして、この中で実は相当こまかく、基金制度をつくったらどうだろうかという意見が出ておるわけでございます。この辺につきまして、こういったものでもつくってやる積極的な前向きの姿勢政府はぜひとっていただきたい、これでなくてはいかぬのじゃないか、こう私は思いますが、こういった問題につきまして、厚生政務次官から御意見を賜われば幸いと思います。
  344. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 いまの御指摘の点は、いわゆる健康被害に係る救済制度を創設する時点においても、本委員会で非常にきびしい質疑が繰り返されました。しかし、現実の問題として、その被害の認定あるいはその加害者の明定及び責任の範囲、こうした点を論議しております過程から見て、非常に実施が困難であるということから、健康被害にかかる救済というものを先行させたわけであります。その問題点そのものは今日もなお実は消えておらないわけであります。確かに生活保障を考えろという御意見には、私ども気持ちの上で納得をするものはございますけれども、現行の制度の中で取り入れていくとするならば、現在ある各種の制度を活用していくことによって補う以外に、そのための立法を特別につくるということは非常に困難であろうと考えております。
  345. 林義郎

    ○林(義)委員 それからもう一つの問題は、無過失責任制度の問題がずいぶん議論されましたけれども、この問題は、私も自民党の一員としてこんなところで申し上げるのはどうかと思いますが、これは私たちもやはり積極的に取り組んでいかなくてはいかぬ。総務長官は、政府としても取り組んでいくと言っておられますが、非常にむずかしい問題であるけれども、やはり個別の法律体系、個別のものについての無過失責任というアプローチのしかた、それから挙証責任の転換というアプローチのしかた、そういったようなかっこうでやると同時に、何かやはり損害保険に類似したような考え方というものは一体やれないものだろうかどうだろうか、何かその辺もやはり考えてみなくてはいかぬような気がしております。そういったこともございますが、実は時間だというお話でございますので、もうあまり長くやりません。  実は、先ほど申しました国民的な基準に基づいて排出基準をつくる、環境基準をつくる云々ということが、相当に一般国民の中に流行してきますと、それでもって行政目標にする。ところが、私は自然環境をだんだんよくしていくということは、その行政目標に達したならばそれでよろしいということではないと思うのです。もちろん、五年なら五年先においてそういった目標に達する、あるいは現在において達するということは、やはりこれから自然を保護していくという観点からすれば、その基準より下のところのほうにだんだんと持っていくような努力をしなくてはいかぬのじゃないかと思います。そういった点におきまして、これが現在の科学技術の水準からしてできないかというと、そんな科学技術じゃない。むしろ科学技術としては、非常にできるものを持っているのじゃないかと思うのです。したがって、一たん健康なり一律の生活環境基準というものができたならば、さらにそれを下へ持っていくというような段階におきましては、先般松本委員からも話がありました、排出負担金というものをつくってやる。いろいろ煙を出す、あるいは悪いものを出すという企業と、いろいろな煙を出さないような施設をし、または水をよごさないような施設をしているところとはやはり違うような形のものを考えていく。特にそれをプライスメカニズムによって動かしていくというような考え方にしていかないと、公害の技術開発というのは、私はなかなか進まないだろうと思うのです。はっきり申しまして、やはり技術の開発というのは、利益があるところに技術の開発というものがあるわけでございますから、そういったような考え方で、一応健康基準というものがあるならば、それからさらに下がったところの基準に持っていくためには、どうしてもそういったものを考えていかなければいかぬ、そういったメカニズムを考えていかなければいかぬ、こう私は思うのです。特に技術開発をこれからはかっていかなければいかぬという点について、私は特にそういった点を感ずるわけでございます。  小宮山政務次官が来ておられますので、小宮山政務次官から、その辺に関するお考えを述べていただければ幸いと思います。
  346. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 いま林委員のおっしゃった方法一つ方法だと思います。通産省といたしましても、工業技術院その他で、あるいは補助金を出して公害防止技術というものの育成をしなければいけないということでいままでやってまいりましたけれども、今後ともこの育成に大いに努力をしようという考えでございます。
  347. 加藤清二

    加藤委員長 林君に申し上げます。  まだ質問はあるでございましょうが、時間が参りましたので次に移ります。  佐藤観樹君。
  348. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私は、大気汚染防止法一本にしぼりまして、いままでの長時間にわたる質問でなお解明し切れない点について、質問を試みたいと思います。  御存じのように、現状の大気汚染防止法では、大気汚染の主たる原因である電気ガス事業に対して規制ができません。この点に関しましては、四日の連合審査でわが党の中谷議員のほうから執拗なる質問がございましたので、この点は抜かしまして質問を続けたいわけでございます。  まず私は、厚生省及び山中総務長官に次の一点、大事な一点でございますので、お聞きしたいと思います。  私の手元に、十一月の十三日に厚生省の公害部から配られました「大気汚染防止法の一部を改正する法律案要旨」という、わら半紙三枚のものがございます。これは中間報告という形で、各議員に説明されたものでございます。これが十一月の十三日。そして二十四日に臨時国会が開かれたときには、その内容はかなり後退したということは私は厳然たる事実だと思うのです。  そこで、まずお伺いしたいのは、この十一月の十三日から臨時国会が開かれます二十四日までの間に一体何が起こったのか。どのような交渉があって、今日ここに出されておる大気汚染防止法の一部を改正する法律案ができてきたのか。個々のこまかい点につきましては、後ほどお伺いいたしますので、このわずか十一日間に一体どのような人と会い、どのような意見が出てこのように後退してきたのか、その点を厚生省及び山中総務長官にお伺いしたいと思います。
  349. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、どういうわけで、わら半紙といえどもそういう一省だけの考え方のものを持っていったのか、よく私わかりません。たぶん社会党の政策審議会等で、公害関係の方々の勉強会をやるから、いまの段階でもいいから持ってきて説明しろというようなお話があって、厚生省からとりあえず伺ったものと思いますが、しかし、最終的に法制局を経て決定をされたものが政府案でございまして、これは当然厚生省一省だけで決定をされるべきものではありませんから、したがって、その間の調整は、通産もやはり共管の法律でございますし、これらの問題について、一方的に厚生省の案だけが原案であるというのもおかしいので、通産省から意見を聞いていればまた違った原案もあったかもしれません。そこらのところを調整をして、そして本部段階で調整もいたしましたし、また意見の一致を見て、さらに法制局との間で純憲法論上、あるいは他の法律との権衡、あるいは目的に合致する内容のものであって、効果をあげ得るものであって、国民の要望に沿う範囲のものであるか等の議論を最終的に詰めて、最後につくり上げるのが政府の原案でございますから、各省が最初作業を始めますときには、これはもう全部違っております。それが最終的に出たものを政府の原案だと思っていただきたいと思うのです。いまのは大気汚染防止法のお話でしょうが、そう極端に変更されておるという点はあまりないのではないかと思います。
  350. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 いま山中本部長と私に対して、なぜ原案が著しく変わったかという趣旨のお尋ねがございました。  この事態は、正確に申し上げたいと思いますが、社会党のほうから、私どもまだ作業中であるということを申し上げたのに、その作業中の中間報告を求められたわけであります。そしてそれに対して、公害対策本部の御了解を得て、本部も同道して、その中間の問題をまとめましたものを持って御説明にあがったはずであります。そして、その御説明にあがった時点から今回提出をいたしました大気汚染防止法との間に変わりました点は、緊急時の命令となっておりましたものが緊急時の勧告権に変わった、その一点であります。むろん法制局において条文を整理され、書き方が法律用語としてなお適切なものに改められたものはございます。しかし、内容として変わっておるのはその一点であります。
  351. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 山中総務長官のほうは、そう極端に変更されている点はないのではないか。それから厚生省のほうからは、緊急時の項の一点である。その点につきましては、私も今後六項くらいに当たりまして、実際にそうなのかどうなのかということをこまかく詰めたいと思うわけです。  私が疑問に思いますのは、山中総務長官の認識も少し違うのではないかと思いますけれども、とにかく中間報告として厚生省の名で出された、それがわずか十日余りの後にはかなり変わってきたものになってきているのではないか。それが私はやはり非常に後退したという印象をぬぐえないわけでございます。  それではどういうところが後退していったか、それについて、私は逐条的に述べさせていただきたいと思います。  大気汚染防止法の、まず第二条の六項でございます。これは前にもいろいろな方が御質問なさったと思いますけれども、第六項では、厚生省のここで出された案では「「自動車排出ガス」の定義を改め、自動車排出ガス中の炭化水素、鉛についても規制するものとすること。」こういうふうになっておるわけでございます。ところが、今度出された案では「自動車の運行に伴い発生する一酸化炭素その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある物質で政令で定めるもの」ということになっております。すなわち、「鉛」なり「炭化水素」ということばが抜けているわけでございます。まずお伺いしたいのは、これは一体なぜ抜けたのか。それからそこでいま読みましたような「人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある物質で政令で定めるもの」というのは、一体どのようなものをさしているのか、それをまずお答え願いたいと思います。
  352. 山中貞則

    山中国務大臣 佐藤君、政党もみんな勉強するでしょう。そうすると、役所のほうも呼ばれたら行って説明しなきやなりません。ですから、中間の段階でいろいろの御説明を申し上げたことはあるでしょうが、それは実は政府案ではないんです。やはり政府としては責任を持って出す場合の法制局の最終的な詰めを経たもの、すなわち法律上瑕疵なしとして法制局をパスしたものをもって最終案の、そこで初めて政府の案というものが出るわけですから、そうきびしく言われますと、私どもは——政府与党にはこれは政党政治ですから事前に説明しなければならない。しかし、野党に説明をしておくと、あとで説明したときとまた違ったらひどくやられるということで、みんなが持っていきたがらないことになりますから、その持っていった状態のときと……(「改悪をしているから問題になるんだ、骨抜きにしたからいけないんだ」と呼ぶ者あり)いや、そういうことじゃないのです。そういう意味ではやっぱり事前にお互いが作業段階でも議論を交換し合うことは、野党の御意見を聞いて、あるいは法律に入ることもあり得るかもしれませんし、そういう意味であまりその違いを厚生省なら厚生省を責めるということはひとつお許しを願いたいと思うのですが。
  353. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 法律の整理の技術の中に例示というものがございます。幾つかのものを取り上げて並べ立てたのでは長々となるもののうちの代表的な一つを書き、そしてそれ以外のものをその他とくくることがございます。その意味では私どもは炭化水素も鉛もまた将来において窒素酸化物も取り入れるということを申し上げてまいりました。現行法ではただ単に「人の健康に有害な物質であって」とのみ書いてありますが、むしろ改正法をごらんいただきますと、「人の健康又は生活環境に係る被害」と、むしろ範囲を広めておるわけであります。炭化水素も鉛もむろんこの対象に取り入れてまいります。また技術的にその水準がきめられた時点において、私どもは窒素酸化物も取り入れるという従来の方針を一歩も変えておりません。
  354. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 自動車から排出する排気ガスについては、柳町に見られるような鉛害なり、あるいは光化学スモッグというたいへんなる公害があったことはすでに皆さん御承知なわけでございます。その点において、法律上確かに例示項目がございますけれども、一酸化炭素のあとに鉛なり炭化水素というものをつけてもそれほど長くなるものではないし、むしろここで、はっきりしないことのほうが国民に疑惑を招くものになるのではないかと思うわけです。  そこで、「政令で定める」となっておりますけれども、それではいま橋本さんのほうからお話ございましたように、炭化水素あるいは窒素酸化物、鉛、こういうものが政令ができれば定められるというふうに確認してよろしゅうございますか。
  355. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 繰り返して申し上げますが、炭化水素並びに鉛は直ちに政令に取り入れます。また、窒素酸化物においては現在基準その他を設定中であります。将来においてということを先ほど申し上げたとおりであります。
  356. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 この問題については何度も前の方がお聞きしたと思いますので、もう一点だけお伺いしたいのですが、それでは国民の疑惑を招かないように、炭化水素及び鉛というものをこのあとに入れる考えはないか、その点について最後にお伺いしたいと思います。
  357. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 私は法制局の審査で別に差しつかえがないと思っております。むしろ国民の疑惑を招かないためにも、本委員会で明瞭に御答弁を申し上げているとおりでおります。
  358. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それでは次の項目に移ります。  第四条でございますけれども、これは非常に大事な問題だと思うのでございますけれども、ここに「都道府県は、当該都道府県の区域のうちに、その自然的、社会的条件から判断して、ばいじん又は有害物質に係る前条第一項又は」云々ということばがございます。すなわちばいじんまたは有害物質においてのみ都道府県知事は、あとで述べるように、よりきびしい許容限度を定める排出基準を定めることができるわけでございます。つまりばいじんまたは有害物質しかここに書いてないということは、最も大気汚染の中で大事な硫黄酸化物が抜けているということでございます。これは一体どういう意味なのか、お伺いをしたいと思います。
  359. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 これは従来から実は硫黄酸化物をこうした形に取り入れておりませんでした。先生よく御承知のとおりに、低サルファの重油の入手量というものに遺憾ながら限界がある限りにおいて、そうした実態を無視して法律に書くこと自体が問題であろうと私は思います。
  360. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 この大気汚染防止法というのは、硫黄分のサルファを抜くのが本来の使命であるのに、この部分で一番大事な硫黄酸化物が抜けているというのはやはり非常に問題ではないかと思うのです。いまの御答弁にありましたように、低硫黄計画に問題があるのだ、量に限りがあるのだということで、都道府県知事に硫黄酸化物について権限を与えないということは、何と申しますか、低硫黄が少ないということは、この前の八月に行なわれました産業公害委員会でもやりましたように、ある程度世界的にはわかっている実態だとぼくは思うのです。その意味からいくならば、低硫黄にたよるだけではなくして、今後とも脱硫装置その他によって硫黄酸化物というものをなくす方向にしていかなければならぬのであって、低硫黄が少ないからということで、ばいじんまたは有害物質だけに限って、ここから肝心な硫黄酸化物を抜いていることはどうも解せないわけでございます。そういう意味において、通産省にお伺いしたいのですけれども、いま橋本厚生政務次官のほうから述べられましたように、低硫黄が少ないからここで硫黄酸化物を抜いているんだという答弁、どうも納得がいかないのですが、その辺今後のサルファ問題について通産省の考えをお伺いしたいと思います。
  361. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 低硫黄の石油については、世界的に非常にショートでございます。現在私たち通産省で検討いたしているのは、低硫黄燃料の需要量を四十八年に九千九百キロリットルぐらいまでに持っていきたいという考え方でございますけれども、脱硫装置その他も一基やはり五十億ないし百億かかる問題でございます。これをぜひ早く実現するためには、財政的には問題を解決してやらなければいけないということで、いま低硫黄対策を練っております。しかし、いまサルファの問題で出ておりましたけれども、その地域の暖房などで、やはり低硫黄を使わなければならない地域をある程度指定しまして——全体的に指定しますと需給量の問題あるいは火力発電その他の問題もございますので、その辺は非常にむずかしい問題なので、地域指定をやっているようでございます。
  362. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それからこの第四条でもう一つ問題なのは、後半の部分の「政令で定める基準に従い、」という項目だと思うのです。ここでいう「政令で定める基準」というのは一体どんなことなのか。すでに御存じのように、美濃部知事その他革新的な知事からは、この項目がある限り条例の効果が薄れるのじゃないか、むしろ公害をつぶそうとする、やる気のある自治体にとってみては足手まといになるのじゃないか、そういう懸念もあるわけでございますけれども、ここでいう「政令で定める基準」というのは一体どのようなことをしようとしているのか、その点をお伺いしたいと思います。
  363. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 この上乗せの排出基準のきめ方の中で「政令」と申しておりますのは、私どもは、いま量規制あるいは濃度規制等の方式などをきめたい、これが一つであります。また、いつからいつまでというある程度時間の切れるものもありますから、適用の期間と、また、これは急に設定をいたしましてすぐその日からといいましても、設備更新等の時間もあるいはかかるかもしれません。そうした場合の経過規定等、むしろ、こういうものを政令で定めたいと考えております。一部にいわれておりますように、いま上限を云云、あるいは下限云々ということをこの政令できめていこうとは考えておりません。
  364. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いま橋本厚生政務次官のほうから話がありましたように、あくまで上限、下限と申しますか、そういう量の規制をするものではないということを確認をさせていただきたいと思います。  その次に、問題なのは、第十四条でございます。これは条文が、前のものと比較いたしますと、一歩前進しているようでもあり、一歩後退しているようにもとれるわけであります。つまり、三行目の「排出基準に適合しないばい煙を継続して排出するおそれがある場合において、」と「おそれ」という文字が入っているということに関しては、私はこれは非常に前向きだと思うのです。その次に「その継続的な排出により人の健康又は生活環境に係る被害を生ずると認められるときは、」という条文が入っておるわけでございます。これは一体なぜこのような条文が入ったのか。旧来の大気汚染防止法にはなかった項目でございますが、これが一体なぜ入ったのか、その点を御説明願いたいと思います。
  365. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 お答えいたします。  このたび、いわゆる直罰規定が設けられまして、排出基準違反について直ちに罰則が科せられることになります。したがいまして、まず、基準に合わない排出を行なえば罰則で一応担保し、それでもなおかつ、引き続き継続してそういう状態を生ぜしめているものには、さらに改善命令をかけて、改善命令違反の罰則は、いわゆる基準違反の罰則より重くしておりますので、そういう法律上の手当てに伴う整理であります。
  366. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私は、この十四条を読んだ限りでは、少しこの感覚ではもうすでに公害防止の観点からいくと古いのではないか。つまり、これを逆に読みますと、人の健康または生活環境にかかわる被害を継続というか「排出により人の健康又は生活環境に係る被害を生ずると認められるときは、」つまり、かなり多くの量の排出をしていても、人の健康または生活環境にかかる被害を生じない場合にはかまわない——かまわないというのは言い過ぎかもしれませんけれども、そのようにとられる一項ではないかというふうに思うのですが、重ねてその辺の考えをお伺いしたいと思います。
  367. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 先ほどちょっと答弁が不十分でございましたけれども、今度は改善命令と並んで、いわゆる施設の使用停止命令ですね。これは従来ですと、まず改善命令を出す、それに違反した場合に停止命令を出すというステップをとっておったのですが、今度は改善命令と並んで、改善命令または使用停止命令のいずれかでも出し得る、そういうことになりましたので、そういったことも考えた上での表現でございます。
  368. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その次、二十二条に移らしていただきたいと思います。  これは前条に比べますと、指定地域の指定がなくなっておりますので、その意味では、私は非常に公害行政に対して積極的だと思うのです。そして「都道府県知事は、大気の汚染の状況を常時監視しなければならない。」となっております。これは非常に大事なことでございますけれども、御存じのように、監視には非常に金がかかるわけでございます。この点、どのような経済的裏づけを厚生省としては考えていらっしゃるのか、その点御答弁願いたいと思います。
  369. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 従来から大気汚染の監視測定網につきましては、まず国が行なう国設の測定網と、それから、地方公共団体に補助をいたしまして、地方公共団体で整備させるものと二本立てで整備を行なってまいっております。国のものは一応、年次計画をもってやっておりますが、今回、いずれにいたしましても、指定地域制度が取り払われますので、従来の計画をさらに再検討する必要があるとは思いますけれども、今後とも予算措置その他については十分の努力をいたしまして、少なくとも、いずれかの監視測定網の整備されていない府県は、すぐでも、来年度にも解消するというような方向で努力したいと考えております。
  370. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ここに一つのデータがあるのですが、たとえば東京都の場合に、監視測定体制整備に対して国の補助が、四十三年度では百六万円、四十四年度は四百三十二万円、四十五年度が百三十五万円——もっともこれは十二月まででございます。  これに対して都が一体どれだけこういうものに資金が必要かと申しますと、監視測定整備の予算が四十五年度では六億円でございます。そうして、これを内訳を見ますと、大きく分けますと、汚染状況などを測定する機械、オキシダントとか、亜硫酸ガスとか、あるいはそれを統合しますコントロールセンター、こういうものにかかる費用が三億円でございます。残りの三億円が、工場などの発生源を監視するのに必要なものでございます。これが三億円、合わして六億円東京都では四十五年度の予算に組んでいるわけでございます。これに対して、国は原則的には三分の一の補助、つまり、残りを都がやるということでございますけれども、東京都は富裕県ということで国から四分の一しか補助をもらってないわけでございます。いま申しましたように、六億円かかる中で国が補助をしているのは、汚染状況を測定する装置に対してだけでございます。たとえば今年度の百三十五万円、三億円かかるうちの百三十五万円でございますけれども、これは一酸化炭素の測定機二台分のいま申しましたような四分の一の額でございます。ほんとうに政府はこのようにばく大にかかる測定機等に対しまして予算的措置をするつもりがあるのかどうなのか、あらためて確認さしていただきたいと思います。
  371. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 東京都の監視測定体制機器整備等に対する補助金の少額であることが指摘されたのでございますけれども、実は東京都は、先ほど申しました国設の大気汚染監視センターをつくりまして、これは国費であの施設をつくるわけですし、その運営はまた、委託費の形で別途支出しておりまして、これはいわば国がまるがかえでやっておる。そのほかに、先ほど申し上げましたように、地方公共団体に対する補助金を出しておるのですが、その補助金は、監視測定、いわゆるステーションを整備するほかに、たとえば保健所等の簡易な測定機械類の補助とか、いろいろの種類がございまして、おそらく東京都の、いま数字でございますのは、簡易な測定機具等であろうかと思いますけれども、いずれにいたしましても、東京都は非常に機器その他の整備が十分整っておりますので、私どもとしますると、やはり重点的には、どうしてもこの方面の整備のおくれておる府県を重点に考えざるを得ないということでございます。
  372. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 もう一つ、この二十二条に関しましてお伺いしておきたいのでございますけれども、いま私が申しましたように監視測定整備のためには、まず現在どのくらいよごれているかという汚染状況を測定する部門と、もう一つは発生源を監視する部門があると思うのです。つまり発生源を監視すると申しますのは、たとえば東京都で行なわれておりますのは、亜硫酸ガスにつきまして煙突に監視の機械をつけまして、これを有線で引っぱってきまして、コントロールタワーで監視するというような、いわゆる発生源を監視する測定機が必要なわけでございますけれども、この二十二条の経済的裏づけの中で、このような、いま私が申しましたような発生源を監視するもの、つまり汚染の状況ではなくして煙突など、直接的にそういう発生源を監視するものに対する費用というのは、この二十二条の裏づけのある財政からは出るようにお考えでしょうか。
  373. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 現行法十五条で、排出者はみずからの施設における排出量の測定あるいは記録義務が課されております。もちろん、ものによりましては、そういう測定機器等に経費を要するものもございますけれども、企業といたしますと、当然いわば基準を守る、あるいは基準を越えた排出をしてはいけない、そういう義務もございますし、いまの記録義務もございますから、いまの段階で、国が地方公共団体のそういう施設整備以外に、企業にまで直接助成するということはいかがか。将来の方向としては検討しなければならぬと思いますけれども、ただいまのところは特に考えておりません。
  374. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 この件に関しては、もう一点お伺いしておきたいのでございますけれども、このような法律ができて、都道府県に財政的な援助をするということでございますけれども、その比率が国が三分の一、そして地方公共団体が三分の二という原則では、地方公共団体というのは負担が非常に重くなるのじゃないか。せめて国が率先して公害防止をするということならば、少なくも折半ぐらいにして監視装置をつける必要があるのじゃないか。もちろん財源の許す範囲だけれども、とにかく私も四月から公害問題をやってみて、まず監視をしないことにはこれはどうしようもならないと思うのです。そういう意味において、まず監視体制の整備という点から申しましても、国が三分の一、地方公共団体があとの三分の二ということでは、少し地方公共団体負担が重過ぎるのじゃないかというように感ずるのですが、その点いかがでしょうか。
  375. 山中貞則

    山中国務大臣 大蔵大臣は、連合審査等において、補助率については非常に慎重な答弁をしております。この背景には、打ち明けた話、下水道の占める比率が非常に高いものですから、大蔵省はそれも当然入ってきての議論になることを承知していますので、ああいう表現をしていると思いますが、しかしながら、常時監視測定ということが規制の前提になることは、佐藤君の言われるとおりでありますので、これらのものの整備については、本部としても各省の予算要求に協力をしつつ大蔵省との間に関与して、地方財政に対して過度の急速な負担がかからないような措置を何らか講じてまいりたいと思います。
  376. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 続きまして最も肝心な第二十三条に移らしていただきたいと思います。  二十三条というのは四項までございますけれども、この一番最後のところはいずれも「協力を求めなければならない。」「届け出なければならない。」「勧告することができる。」「要請するものとする。」全般的に二十二条は緊急時の措置と申しながらも、私はこの条文が非常に弱いと思うのです。  まず二十三条の第一項でございますけれども、「ばい煙の排出量の減少又は自動車の運行の自主的制限について協力を求めなければならない。」となっておりますけれども、はたしてほんとうに「協力を求めなければならない。」というようなことでできるのだろうかということを非常に疑問に思うわけです。東京都の例なんか見ましても、強制力がないものですから、東京都の職員がマイカーの自動車に対して、迂回してくれ、迂回してくれといっても、マイカー族は涼しい顔で従来の道を行くというのが普通ではないかと私は思うのです。その点「自主的制限について協力を求めなければならない。」などということばではたして拘束力があるものだろうか、あるとお考えなんだろうかということをお伺いしたいと思います。
  377. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 先生御指摘のように、二十三条の一項から三項までは、新たに自動車関係の事項が入りました以外は、ばい煙等につきましては現行法どおりでございます。その際、御指摘のように現在の協力、要請、これがどこまで実効があがるかという点については、御指摘のような御意見もあろうかと思います。そういうこともございまして、今回現行法になかった第四項を新しく追加したわけでございます。
  378. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ちょっと答えがはぐらされた感じなんですけれども、第四項も私は御質問申し上げますが、その第一項の「協力を求めなければならない。」という条項ぐらいではたして公害防止の実効があがるかということを私は疑問に思うのです。これが、また山中総務長官におこられるかもしれませんが、厚生省の中間報告では使用禁止という字句になっておるわけで、そのくらいにしないとこの緊急時にあたって措置はできないのではないかと考えるわけです。再び御答弁をお願いしたいと思います。
  379. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 先ほど最初にお断わりを申し上げましたとおりに、この中間的にごらんをいただきましたもの、わずかに三枚の紙に要約をしたものであります。そしていま御指摘になりました点、私どもはこの四条をさす部分、これをこの中間報告の形のものにまとめたつもりでおります。
  380. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それでは第二項についてちょっとお伺いしたいのです。第二項は「ばい煙排出者であって、いおう酸化物に係るばい煙量が厚生省令、通商産業省令で定める量をこえるばい煙発生施設を設置しているものは、厚生省令、通商産業省令で定めるところにより、当該ばい煙発生施設についていおう酸化物に係るばい煙量の減少のための措置に関する計画を作成し、都道府県知事に届け出なければならない。」というふうになっておりますけれども、これもやはり緊急時の措置の話ですか。
  381. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 この第二十三条は、現在行なわれております大気汚染防止法の第十七条に見合うものであります。第十七条の見出しは「緊急時における都道府県知事措置等」と書かれております。そしてその第二項がそのまま自動車に関するものを加えてこの「緊急時の措置等」という第二十三条になった中の第二項としてまいっておるわけであります。自主計画の提出というものは、現在あります大気汚染防止法にも定められたもの、それがそのままにここに書かれておるわけであります。
  382. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 緊急時とは一体どういうときをさすのか。その点に関しましては、この二十三条の最初の部分にございますように、「大気の汚染が急激に著しくなり、人の健康又は生活環境に重大な被害が生ずる場合として政令で定める場合」というのが緊急時ということばの概念だろうと私は思うのです。そういうときにあたって「ばい煙発生施設についていおう酸化物に係るばい煙量の減少のための措置に関する計画を作成し、都道府県知事に届け出なければならない」、こういうのんびりしたことではたしてできるんだろうかという気がするわけです。もう少し御説明を願いたいと思います。
  383. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 少し私の説明のほうが不足でありました。あらためて詳しく御説明を申し上げますと、この自主計画というものは、こうしたばい煙発生施設を設置しておる事業者そのものが、緊急事態発生のときに備えてあらかじめ自主計画を作成して、知事に届け出ておくものであります。ですから、そういうふうに御解釈を願えば第三項とのからみにおいて御了解が願えるかと思います。
  384. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、やはりこれは二十三条の第二項に入れていくというのが少しおかしいんじゃないかという気がする。確かに橋本厚生政務次官の言われるようなことなら私もわかるわけですけれども、二十三条の冒頭に緊急時の措置となっていて、そして第二項に計画を作成し、届け出なければならないというのんびりしたことが書いてあると、緊急時にそんな計画を作成して、ましてやそれを届け出るなんということができるだろうかという疑問を持つと思うのです。この辺、もし法制局の方いらしたら御答弁願いたいし、どうも私も法律作成の専門家ではございませんけれども、緊急時の措置の中にこの第二項があるというのは、あまりよくわからない気がするんですが……。
  385. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 専門家の法制局からも答弁をさせますけれども、結局この第二項にある自主計画というものが第三項の呼び水になっておるわけであります。あらかじめ届け出られた自主計画というものがあり、そしていわゆる第一項に規定をしているような事態が発生した場合に、都道府県知事は要するにこの自主計画そのままの実施を勧告することができるというわけでありまして、なるほど確かにちょっと条文上異質のものがあるかもしれません。しかし、要するにその自主計画というものがあってはじめて第三項の知事勧告権というものができてくるということでありまして、従来の法体系そのままをここはとっておるわけであります。
  386. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ひとつまだ法令の——こういう順序でこういうところに書かれていいものかどうかについて疑問を持つんですが、もう一つ大事な点は、計画を作成し、都道府県知事に届け出なければならない。ですけれども、届け出るということは、はい、こういうふうに計画をしました、というふうに置けばいいということですね、机の上に。その計画が合っているか合っていないか、ほんとうにそれによって改善ができるのかどうかに関しては、都道府県知事は何のことばをさしはさむ余地もないということだと思うのです。届け出なければならないということは、つまり許可制ならば、許可を得なければならないというのならば、確かに改善ができておる。だから、それでよろしいということになるんでしょうけれども、ただ、届け出なければならないということで私は知事に対しては何の権限もないと思うのです。そういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  387. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 これは法律的に見ますと、確かに先生御指摘のように、第二項というものは、それ自体は緊急時の措置ではございませんので、緊急時に備えての事前の、平時におけることを書いておりますので、そういう意味では緊急時の措置という条文の題名から見て、異質な規定であることはおっしゃるとおりだろうと思います。それで、いずれにしましても、ここで大事なことは、第三項で緊急時において一番問題になります大規模発生源ですね。大規模発生源について、たとえば使用燃料の切りかえとか、そういういろいろな措置都道府県知事は勧告するわけですが、その場合に、あらかじめそういう大規模発生源から、私のところでは万一こういう事態が起こった場合には、こういう計画でたとえば燃料を切りかえます、あるいはこの部分の操業を停止します。そういうプログラムをふだんから出しておいてもらわぬと、第三項の緊急時に有効適切な手が知事として打てない、そういうために二項をわざわざ置いておるわけでございます。
  388. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その第三項へいくまでの導入部である、あるいは三項との関連でここにあるということは了解できるわけですけれども、いまの答弁では、届け出であって許可制ではないということについては、私は御答弁なかったと思うのです。なぜ、ここを「都道府県知事の許可を得なければならない。」というふうにしなかったのか。ただ届け出れば、机の上に置いておけば私はそれで済むことだと思うのです。それじゃ公害防止ということは私はできないと思うのです。その点についてお答えを願いたいと思います。
  389. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 お答えいたします。  もともと届け出と許可につきましては、ばい煙発生施設の設置についての際に基本的問題があることは承知しておりますが、その条文で言っておりますのは、あくまでも大規模発生源が万一の場合に備えて自主的にプロダラムをつくっておって、そのプログラムを都道府県知事としてはぜひ事前に知っておきたい、それに応じた緊急措置を命ずるのだから、そういう趣旨でございますので、本来的に許可という制度にはなじまないと考えております。
  390. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 しかし、自主的につくるといっても、それがほんとうに適切な装置であるかどうか。それがなければ私は自分のところでこれはこういうことで緊急時が起こっても、こういうことでできますと言われても、都道府県知事としては、実際そういうふうになるかならないか非常に困ると思うのです。しかも私は、またもう少し聞いてから三条に移りますけれども、三条では勧告することができるんですね。どのようにせよということを——あくまで勧告ということはこうしたほうがいいですよということであって、こうしなければいけませんということでは絶対ないわけです。その点から言いますと、この第二項、まずその計画書を届け出ればいいんだ。自主的にこういうことをつくっております、万が一何か起こったときには、これでだいじょうぶですということは私はできないと思うし、まして三項に至って一番最後に勧告する、命令されるのではなくて都道府県知事がこうしたほうがいいですというような勧告条項では、とてもじゃないけれども私は緊急時に対して公害防止ということはできないと思うのです。  まず私は、二項の話ですけれども、どうしても届け出なければならないというのは、許可制でなければ私はちっとも効力はないと思います。御答弁を願いたいと思います。
  391. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 そういうふうに再度の御質問になりますと、実はここで法律論を云々する気持ちもございませんけれども、もしあの二項の届け出が許可でなければならないということになりますと、許可という法律上の行為の性格が、一般的にはいかぬことを特定の場合に解除するというのが、行政法上の許可の性格でございますから、そうすると一般的には、それじゃそういう計画をつくってはいかぬのか、特定の場合にその許可を受けるという、そういう問題も法律的には起ころうかと思うのでございます。
  392. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 しかし、その場合、特定の場合というのは私は緊急時の場合だと思うのです。何か起こったときには、こういうふうにしますという問題だと思うのです。その点からいうと、どうもやはり納得がいかないのは、緊急時にはこういうふうにいたしますという計画書をつくる、プログラムをつくる、ちゃんと良心的につくれば、緊急時そのとおりにすれば実際なくなるのかもしらぬ。しかし、ただそれは都道府県知事に届け出ればいいんだ、こういうふうにいたしますと、緊急時のときにはこういうふうにいたしますということを届け出ておけばいいんだということでは、たとえばそれが実際のとき、いざというときに、役に立たないかもしれないわけですね、届け出ならば。それが都道府県知事の許可で、判こをもらって、確かに緊急時にそういうことになった場合には、有効にそれがきくということがない限り、これは第二項は第三項の導入部だといっても、あまり効力を持たないことだと思うのです。
  393. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 いま公害部長から法律論をついに申し上げてしまったのでありますけれども、いまむしろ逆に、これを「許可」として書かれていた場合を想定していただきたいと思うのであります。いま申し上げたとおり、これは決してこの条文ばかりではございません。わが国の法制全体において、一般的禁止の中の個別解除を許可と呼ぶという法律の基本的な原則があります上で、むしろこれを「許可」と書きました場合に、どういう問題が出てくるか。逆に、自主的な計画をつくることそれ自体が、今度は逆の問題も出てくるわけであります。しかし、私はそういう法理論の問題で長い時間をちょうだいしようとは思いませんが、現実にこの条項は従来の大気汚染防止法の十七条の二項にあったわけであり、それを受けた三項とあわせて、現在各都道府県においてテレメーターシステムであるとか、あるいは緊急時、電話等を利用して緊急措置を講じさせている、その実際の行為にこれ自身がすでに役立っておるわけであります。そうした点から実態をお考えいただいて御議論を願いたいと私は思うのであります。この条文は現に生きて使われて、テレメーターシステムあるいは緊急事態発生時に電話連絡等で低硫黄重油に切りかえる等の作業を現実にさせておる、その基本になる条文であるということを申し上げたいと思います。
  394. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 むしろ私も法律論を述べるよりも、実態論のほうから話をしたほうがいいと思うのですが、先ほど厚生省の方々は、これは自主的にやるものだということを言われますけれども、私はこの条文を読んで、何も工場側、企業側、あるいはそういうものを排出しているところが自主的につくるものとは必ずしも読めないと思うのです。つまり、厚生省令、通産省令で定める量を越えるばい煙発生施設を設置しているものは、これは明らかに通産省令か厚生省令に触れているわけですから、まず何らかのチェックが必要になるだろうし、これはあくまで自主的にやるものじゃなく、やはり都道府県知事が強制してやらせなければいけないし、なお、緊急時の場合には自主的にと言われるけれども、緊急、何かの起こった場合、緊急時の場合の計画をつくっていくということは、どうもやはり実効の面で、ただ届け出ていけばいいんだということではやはり効力が薄いのじゃないか。私も詳しい法律論までわかりませんけれども、実態論の中でほんとうにこれで効力があるものかどうか、もう一回だけ御答弁を願いたいと思います。
  395. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 先ほど自主的と申しましたけれども、ややことばが不正確だったと思いますので、これは届け出につきましては届け出書の様式も定めておりますので、その記載内容、その計画等については、事実上、県が審査といいますか、企業側といろいろ話し合って指導するということがあろうかと思います。いずれにしましても、これは本来からいえば、こういう緊急時における事態に備えてのそういう計画は、あらゆる発生施設から提出してもらうのが一番いいのでございますけれども、全施設というわけにもまいりませんので、そこにございますように、省令で定める毎時十立法平方メートル以上の大規模の発生源にかからしめている。そして、大都市におけるテレメーターシステムによる警報その他については現実に非常に有効な役割りを果たしておるというのが実情でございます。
  396. 加藤清二

    加藤委員長 関連の申し出がありますので、これを時間内において許します。土井たか子君。
  397. 土井たか子

    ○土井委員 先ほどからるる法律論についてはお伺いをいたしました。ならば申し上げたいと思います。  実際問題、私の住んでおります近辺に引き起こっている事例なのでございますが、尼崎というところは、御承知のとおりに大気汚染で有名な場所にただいまなっております。この尼崎の大気汚染の中で、最も大気汚染公害発生源と目される一企業、関西電力の問題に例をとってみたいと思うのです。関西電力では現在のこの大気汚染防止法のただいま問題になりました十七条に従いまして、兵庫県尼崎市と関西電力相互間に契約を結んで、年次計画を具体的に取りきめております。内容は使用する原油に対する硫黄の含有量が本年は一・五、来年は一・一、四十七年度になりますと一・〇、ただいま御承知のとおり通産省では一・八ということでございますから、通産省の問題にされております基準以下を、実はこの契約の内容では問題にして取りきめておるわけなのでございます。もしこれが、このとおりに守られておりますならば、ただいまの尼崎のような状況は引き起こされるべくもないと私は思うのでございます。ただいま届け出をやりまして、実際問題、契約を具体的に結んで、そうして現状はこうでございますから、いかがでございますか、法律の手続の上で瑕疵がない、形式的にいろいろな指導ができる、具体的にいろいろ勧告できるとおっしゃいましても、実際問題、押えがきかなくてはどうにもならないと思うのです。この点につきましてどのようにお考えをお持ちであるか、ひとつお伺いしたいと思います。——それじゃ先ほど来御答弁を願った方にただいまの……。
  398. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 関西電力は電気事業法の適用を受けております。大気汚染防止法の範囲外でありますので、所管の通産省のほうからお答えをいただきたいと思います。
  399. 長橋尚

    ○長橋政府委員 お答え申し上げます。  この尼崎の火力発電所の問題につきましては、昭和四十一年に、地元と公害防止協定が結ばれた経緯があるわけでございます。その後の電力需給の逼迫化傾向、こういう中におきまして、地元との協定どおりとめるわけにいかない、こういうふうな事態が出たものと承知いたしております。これに関しましては、国会の御指摘その他もいただきまして、まず燃料の低硫黄化という点につきまして徹底した指導をいたしますと同時に、電力の公益融通の趣旨に即しまして、他の地域の発電所の広域的な協力体制というふうなものをさらに喚起いたしまして、尼崎第一、第二発電所をどうしてもたかざるを得ない、関西地域の需給が非常に苦しい、こういうふうな時点におきましては他地域がその時点での状況に即しまして、最大限の応援をする、かようなことを措置いたしておるわけでございます。かような結果といたしまして、この九月から十月にかけまして以降は、非常に稼働もほんとうのピーク時に局限する、かような状況に相なっておる次第でございます。今後とも大気汚染防止の趣旨に即しまして電気事業行政の見地からも最大限の努力をいたしたいと存ずるわけでございます。  なお、こういった緊急時の措置の規定につきましては、電気事業につきましても大気汚染防止法が適用されることは申し上げるまでもないところでございます。
  400. 土井たか子

    ○土井委員 ただいまの御答弁は、産業との調和条項、経済との調和条項が批判の対象になりまして、そして基本法のこの個所を削除したという今回の改正案からすると、たいへん矛盾した御答弁だと思うのです。ただいまの御答弁の内容は、何と申しましても、生産第一主義という傾向がうかがわれてなりません。特に第一発電所なんかにつきましては、契約内容からしますと、もはや稼働時期ではないはずでございますのに、これをやはり動かさなければならないという現実は一体どこから出てきておるのか、この契約なり協定なりの内容は何としてでも公害を押えなければならないというところが目的なのでございますから、これが守れないというところは、やはり公害を押えることに対して消極的である、公害の問題はあと回しという態度であるといわざるを得ないのです。  いまの御答弁の中から、私はさらに申し上げたいことは、いま届け出制を守ってこういう状態なんでございますから、もはやこれ以上届け出制にたよって、それによる手続で万事をまかなっていこうとするのは甘くはないか、届け出制に対してこのままでよいかどうかの吟味を、いま徹底してやらなければならないときではないかということを私は考えて、そういう意を含めて先ほど来御質問申し上げたわけなんですが、いかがでございますか。これを、先ほどから佐藤委員がここで質問並びに意見を申し述べられましたとおりに、許可制ということにすることに実効性があると私は考えるわけですが、この際、この条文に対して、いまの尼崎の事例などにつきましても、届け出制ではなく許可制にしていくことに、積極的意味というものをお認めにならないかどうか、先ほどの御答弁ではその点がしかと出ておりませんので、さらにお伺いしたいと思うのです。
  401. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 いまの御質問でございますけれども、尼崎の問題については、勧告が参りますと、やはり低硫黄をたきます。これをとめますと、この地方の公共、その他電力がとまる、需給関係がとまるということがございますので、勧告制度で、勧告を受けた場合には、低硫黄の石油をたいて、万全を期したいということでございます。
  402. 土井たか子

    ○土井委員 それが事実できておればいまのような現状ではないということを、再度私は繰り返し申し上げたいと思うのです。やはり実効性ある制度、方法というのをこの際考えていくならば、もはやこれではだめだということを私は再度申し上げたいと思います。ただ、あと三分しか時間がないようでございますし、本質問が残っているようでございますから、私は再度繰り返して申し上げることを避けたいと思いますが、別の機会に、責任者の方にじかに私はもう一度この点についてはせんじ詰めてお尋ねをしたいと思っております。
  403. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 最後に、私も時間がございませんので、第三項の一番最後の「勧告することができる。」という項目は、これはわが党の大原亨議員がたびたび御質問しましたので、内容についてはもう触れる時間はございませんけれども、「勧告することができる。」というのを「命令することができる。」さらに、従わないときは「操業停止をすることができる。」というまでに拡大しなければならないと考えますけれども、関係御当局の御見解をお伺いしたいと思います。
  404. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 もともと厚生省、通生省、この法案を協議し、つくり上げ、法制局に提出をいたし、法制上の審査を受けますまでは、私ども自体が命令として考えておったものであります。それだけに、法制局となお実は論議が残っておりますので、今回「勧告」として提出をいたしました。私ども自体が、将来においてもなお検討をしたいと考えておるものであります。
  405. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いまの御答弁ですと、「勧告する」を「命令する」というふうに改正する可能性、余地、考え方もあるというふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  406. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 現に、法制局に提出する段階まで、またその後においても、なお今日においても論議を続けておる点でありますから、私どもは将来において法制上の疑義が解明されれば、「命令」としてこの点は変わるものと考えております。ただ、現実に、遺憾ながら、いまの電話による連絡であるとか、こうしたものは「命令」として法律上明定をされぬということでありますので、私どもはこうした制度をとる限りにおいては、「勧告」という形にしておるわけであります。
  407. 加藤清二

    加藤委員長 佐藤君に申し上げます。  まだまだ質問をしたいでございましょうが、時間でございますので、結論を急いでください。
  408. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 最後に、この件を公害対策本部の副本部長である山中長官にお伺いしたいと思いますけれども、いま将来においてはということを厚生政務次官が言われましたけれども、「勧告する」を「命令する」、さらに、従わないときには操業停止をさせることもできるというふうに改正する意向があるかどうか、お伺いしたいと思います。
  409. 山中貞則

    山中国務大臣 これは異論のあるのは法制局でございますから、純法制理論上の問題が残っておりますので、法制局と結論を詰めない限りは、私の口から簡単にどうすると申し上げられない事柄の問題でございます。
  410. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 質問を終わります。
  411. 加藤清二

    加藤委員長 次は、松本忠助君。
  412. 松本忠助

    松本(忠)委員 今回公害関係の十四本の法案の一つといたしまして、騒音規制法の一部を改正する法律案というものが上程されております。この提案理由の説明におきましてございますように、従来の工場騒音並びに建設騒音、これに加えて新たに自動車の騒音が入ったわけでございます。騒音規制法が成立したのは四十三年六月でございます。まだ二年早々でこれを改正することになったということ、これも時代の趨勢かと思うわけでございますが、山中総務長官は、本法案が施行せらたました暁には、都市における住民の生活環境が保全され、快適な生活が保障されると確信を持たれますかどうでしょうか、この点をまず第一番目にお伺いいたします。
  413. 山中貞則

    山中国務大臣 道交法で交通公害という問題を取り上げたのは、まさに時代の趨勢のしからしめるところで、松本君の言われるとおりです。その際、それらの地域について、いわゆる最も静穏な環境を必要とする学校、病院あるいは住宅街等について、今日までの交通対策に、公害の観点を含めて、それらのところを極端には通行禁止もしくは制限あるいはスピードその他の減速、いろいろの措置をとりまして、迂回路等を当然考えたりしなければなりませんが、そういうことにおいて、最底必要な環境を自動車騒音から守っていこうという考え方でございますから、これが施行されると直ちに東京じゅうの自動車の騒音が静かになるという画期的なものではもちろんございません。しかし、最低それでも必要な場所について道交法上の取り締まりとして新たに騒音を加えていったということにおいて意義があろうかと思います。
  414. 松本忠助

    松本(忠)委員 大臣が、どのような環境にお住まいであるか私は存じませんが、都内におきましても、環状七号線あるいは中仙道、川越街道、これは私の選挙区内にも通じております重要な道路であります。この道路において、昼間は車両の渋滞によるところの排気ガス、夜になりますと自動車の騒音、これに悩まされまして、実に、住民の健康を保持することは非常に困難な状態でございます。このことを私はよく見たり聞いたり、また体験もいたしております。したがいまして、今回の騒音規制法の一部が改正されることはたいへんけっこうでございますが、これによって実効がある、そのことを多く期待しているわけでございます。いま国務大臣のお話の中にも、完全にはこれが実効を得ることは不可能かもしれないけれども、最善の努力を費やすというお話でございますので、どうかこの法案を、一日も早くりっぱな実施をされるように私は希望しておきます。しかし、これで完全だというわけじゃありません。ただただいろいろの注文もあります。しかし、一応この法案が私は一歩前進の形においてはたいへんけっこうだとは思います。しかし、注文をつけたいものがいろいろございますので、それらの点についてこれからお伺いをいたしたいと思うわけでございます。  まず最初に、厚生省にお伺いいたしますが、この規制の実施区域の拡大について伺いたいと思います。  今回の改正案におきまして、具体的には住居の集合している地域、病院、学校の周辺地域というように明確にされたことにつきましては、一歩前進、このように考えます。  そこで、三条でいうところの指定地域の中で「その他の騒音を防止することにより住民の生活環境を保全する必要があると認める地域」というのがございますが、これは具体的にはどのような地域をさされるのでございましょうか。
  415. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 それは人家の密集している地域以外であっても、たとえば学校でありますとか、病院でありますとか、あるいは集団収容施設等とか、人の多数集合しておるような、そういう施設があるようなところを考えております。
  416. 松本忠助

    松本(忠)委員 また交差点とか、坂、そういうところにおきましては自動車が発進をする場合、あるいは加速によって騒音が普通の平たん地を走るよりは激しくなることは当然だと思うわけでありますが、こういう地域につきましても、指定地域として認められるお考えがあるかないか、この点を伺っておきます。
  417. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 交差点等で、騒音が問題になりますような交差点は、通常は当然に人家も集合しておると考えられますので、一応騒音で問題になるような交差点等はおおむね入るというふうに考えております。
  418. 松本忠助

    松本(忠)委員 坂はどうですか、坂の登るところ。
  419. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 坂等につきましても、先ほどと同じように、問題になるような地域は大体入ることになろうと思います。
  420. 松本忠助

    松本(忠)委員 また、指定地域の決定にあたりまして、住宅地域とか、あるいは文教地域、あるいは病院等のある地域、こういった面の規制、その面の規制と同時に、道路に沿った地域規制する場合、このように分けられると思うわけでございますが、どちらに重点を置かれるか。そして規制に当たられるか。道路沿いに指定地域を設けるとするならば、どのような条件でやるか、交通量によって、あるいは主要幹線道路等、これはのべつ、ずっとつけてしまうのか、こういう決定についてどのようなお考えがあるのか、また、もう一つ、裏通りは規制対象地域になるかならないか、この点についてもお答えを願いたい。
  421. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 裏通り等も含めまして、いずれにしても当該地域において生活環境の点から騒音が問題になるような地域は、できるだけ指定地域として取り上げていきたいという考えでございます。
  422. 松本忠助

    松本(忠)委員 次に、厚生省と運輸省にお伺いいたしたいわけでございますが、一台の自動車の騒音については、技術的にこれを低減するということは可能だろうと思うのでありますけれども、運輸省は、今回車種別に定常走行時の騒音並びに排気騒音等の規制強化をはかる、このようなお考えはわかりますが、現実は都市における道路で一台の車が走っているという状態は、東京都内におきましてはあまりないわけであります。いずれの場合でも多数の車が集団になって走っていく、信号によって切れることがありますけれども、集団で走っていく、こういう場合に、交通量の増減に大いに関係もあるし、また車の流れ、速度等によりまして、あるいはまた道路の整備の状況のよしあし、こういうことによりまして付近の住民が多大の影響を受ける、このように思うわけでございます。  そこで、限度について、十七条におきまして総理府令、厚生省令で許容限度を定める旨が示されておりますけれども、「総理府令、厚生省令で定める限度」とはどの程度の限度をいわれるのか、これを山中長官と厚生省、先ほど運輸省と申し上げましたが、長官と厚生省からお答えいただきたい。
  423. 山中貞則

    山中国務大臣 総理府令というのは、警察庁のほうです。
  424. 松本忠助

    松本(忠)委員 わかりました。けっこうでございます。  厚生省の方からお伺いいたしておきましょう。
  425. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 騒音の環境基準について、現在生活環境審議会で審議をしてもらっておりますが、ほぼ内容が固まってまいりまして、厚生大臣に近く答申をされる見込みであります。それまでに、それを待ちまして、政府部内の取りまとめをし、本年度末までには閣議決定をしてまいりたいと考えておりますし、同時に、都道府県知事から公安委員会に対して、交通規制の要請等が出てまいりました場合、この要請をすることになるのは、地域内の自動車騒音は「総理府令、厚生省令に定める限度」ということであります。その意味において、私どもはいまこの環境基準の設定を非常に急いでおりますが、答申を得次第これを確定して発表いたしたいと考えております。   〔松本(忠)委員「その点は、具体的に言うと   どれくらいになるか。」と呼ぶ〕
  426. 加藤清二

    加藤委員長 私語は慎んでください。
  427. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 いま審議会で審議中のものでありますので、具体的にという点はお許しを願いたいと思います。
  428. 松本忠助

    松本(忠)委員 さきに厚生大臣の諮問機関であるところの、生活環境審議会の騒音環境基準専門委員会、ここでまとめました道路に面した地域に適用する自動車騒音の制限基準、こういうのがありますけれども、これが該当するのでしょうか、どうでしょうか。  また聞くところによりますと、年内には騒音の環境基準案というものを閣議で正式決定したい、こういう考えがあるということも聞いております。このいずれかに該当するわけでしょうかどうでしょうか。
  429. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 生活環境審議会の審議はすでに専門委員会としては一応の討議を終わっておりまして、公害部会ないし総会の審議待ちというところでございまして、専門委員会限りでの数字は一応固まっております。ただ、環境基準の設定は、いずれにしましても生活環境審議会の答申を受けまして、これは基準値以外に達成期間あるいは達成のためのいろいろ行政上の措置等もございますので、関係各省にも関係がございますので、場合によればあるいは中央公害対策本部等を中心に関係省庁と調整をはかった上で、最終的な閣議決定の案をつくっていくということになろうかと思います。
  430. 松本忠助

    松本(忠)委員 それでは厚生省に伺いますが、四十四年度にきめた第一次原案でございますが、この騒音の一般基準値は、一般地域の場合は昼間が五十ホン、朝夕が四十五ホン、夜間が四十ホン、商工業地域でも昼間六十ホン、朝夕五十五ホン、夜間五十ホン、こんなふうに定められたように第一次原案にはなっておるようでございます。今回の基準案に二車線以下と三車線以上、こういうふうに区別をしておられますけれども、これと対比をしましたときに、五から十ホン高くきめられておりますけれども、この違いというものは私どもはどのように考えたらよろしいのか、この点を厚生省から伺っておきたい。
  431. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 一応、昨年の答申といいますか、中間報告のあとでさらに検討を進めまして、この交通騒音、自動車騒音について、道路に面している地域について、その車線が二車線以上であるかいなかという点まで考慮に入れて第二次中間報告は作成いたしておりますので、そういうことに伴う数字の変更とお考え願ってけっこうです。
  432. 松本忠助

    松本(忠)委員 第一次原案をきめるときには二車線以下とか三車線以上というような区別——四十五年度になってこれがきまった、そういう道路ができたわけではなくて、すでに二車線とか三車線というものは前からあったわけでありますが、前はそのようなことを全然考慮しなかったわけでございましょうか。今回初めてこのように区別をされた、前は全然検討の余地がなかった、単なる道路一本として考えておられたというのか、これらの点について伺いたいわけであります。
  433. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 昨年の第一次報告では、道路騒音については別途検討するということで、その後の検討の結果、ただいま言いましたように、道路に面する地域は、車線の多数に応じて別の数値をきめたということでございます。
  434. 松本忠助

    松本(忠)委員 それから騒音の基準値というものは、いわゆる健康を害さないためのぎりぎりの線、このように私どもは思うわけでございますが、商工業地域の二車線以下と三車線以上の場合、ともに夜間の基準値は屋内では何ホンぐらいになるのか。要するに、住民も昼間はそれほど騒音を気にしないけれども、夜間寝静まって、そして睡眠をとる時間、この時間におけるところの騒音というものが非常に健康を害するものと私どもは思うわけでございますが、この夜間の屋内における基準は大体どれくらいなのか、これを伺いたいわけです。
  435. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 一応四十五ないし五十程度と考えております。
  436. 松本忠助

    松本(忠)委員 屋内と屋外では、家屋の構造等によりましても違いはあるだろうと思います。大体ガラス戸一枚で何ホンぐらい違うものですか。
  437. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 通常、屋内と屋外では十ホン程度の相違があるといわれております。
  438. 松本忠助

    松本(忠)委員 家屋の構造によりましていろいろと違うと思いますけれども、木造の家屋で、屋内と屋外では十ホン違う。それは、いま御質問しましたところのガラス戸一枚、こういうわけでございますけれども、たとえば雨戸をつけた場合、あるいはカーテンを引いた場合、こういう場合でそれぞれ違うと思いますが、そういうことに対する具体的な調査、研究をいままでされたことがございましょうか。
  439. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 従来いろいろの研究班に委嘱いたしまして研究を進めておりますけれども、私、その具体的ないまのカーテン等々につきましての内容は承知しておりません。
  440. 松本忠助

    松本(忠)委員 それでは、いま四十五ないし五十というお話でございました。ガラス戸一枚屋内において四十五ないし五十。四十五というのは一応睡眠が妨げられない限度と思いますが、五十になると、やはりちょっと睡眠を妨げられる、健康に害がある、このように思うわけでございますけれども、大体大都市、特に東京の主要道路、いわゆる地域で言いますと、環状七号であるとか、あるいはまた目黒街道、川越街道、甲州街道、こういったところでは、夜間でもこの四十五ホンをオーバーしている点が非常に多いように思います。実際ではもう四十五とか五十などということは全然考えられない。どのように雨戸を立て、あるいは二枚にし、厚手のカーテンを引いてみても、音はあまり変化がないといわれるほど非常に住民は困っているわけでございます。この点について大幅に騒音が四十五以上になっている、こういうところに対して、処置をどのように考えられますか。
  441. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 結局、先ほどの先生の御質問とも関連するわけでございますが、許容限度が個個の車についてはきめられますけれども、総量としての道路騒音ですね。これは別な基準でやらなければいかぬわけですが、それで、この具体的な交通騒音の規制のやり方としては、結局は道路交通法に基づく交通規制しかないわけでございますので、今度の改正案におきましても、省令で定める限度をこえる場合には、都道府県知事に、国家公安委員会への交通規制の要請権を与えたということでございます。
  442. 松本忠助

    松本(忠)委員 その処置についてはいま御答弁があったようでございますけれども、現実には、すぐ都道府県知事に連絡をし、そうしてそれから規制がされるというようなことは、お役所仕事としてはなかなかできないわけです。二カ月、三カ月、あるいは実際問題として平坦な道路ばかりでなく、道路が工事中であるとか、東京では主要道路は年じゅう掘り返しているような状態であります。こういうところでは特に騒音がひどくなるわけでありますが、こういう場合に一体どれぐらいの期間を見てあればその規制が達せられると思いますか、現状から。
  443. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 交通規制の問題になりますと、率直に申し上げて私どもで一がいに御答弁はできません。周辺の道路状況等、むしろ警察庁その他にお確かめをいただきたい点であります。
  444. 松本忠助

    松本(忠)委員 それでは、問題を変えまして運輸省に伺いますが、運輸省の車種別の規制の問題でございますが、いずれにしましても、保安基準を変えることは、この次の通常国会において審議される御予定だろうと思うのでありますけれども、騒音が乗用車にしましても一応七十ホン、こういうふうに今度きめられるようなことを新聞で伺っております。厚生省でいわれている環境基準というものから見ると、これは非常に高いように思うわけでございますが、この点はどうでございましょうか。
  445. 野村一彦

    ○野村政府委員 お答えいたします。  道路運送車両法に基づきます騒音の規制につきましては、保安基準と申しますのは省令でございまして、私ども去る十二月四日に省令を改正いたしまして、ただいま先生がお示しになりましたような車種別の規制をすでに実施いたしておるわけでございます。そういう内容でございます。
  446. 松本忠助

    松本(忠)委員 いまその規制がされまして、七十ホンとなりますね。先ほど厚生省からお話もありましたけれども、環境基準のほうが四十五ないし五十五ホンとか、あるいは二車線の場合、昼間の五十五、あるいは朝夕の五十以下、夜間でも四十五以下、こういうふうになっておるわけですが、これと、運輸省でいま言うところの保安基準の改正によって乗用車の場合でも七十ホンとなるわけですが、厚生省の環境基準から比べて非常に高いように思うわけですが、この点はどうなんでしょう、高過ぎると思いますが。
  447. 隅田豊

    ○隅田説明員 技術的な問題でございますので、私からお答えさせていただきます。  厚生省でおきめになります環境基準は、正確なところはまだ発表されておりませんので私たちも存じておりませんが、一台一台の発生基準と違いまして、全体の流れの中で、おそらくある所定の時間の間、音がどういうふうに続くかということからおそらくきめられるのだろうと思っております。一台一台の音は、これは瞬間的な音でございますので、一応の差が出てくるのはやむを得ないだろうと考えております。
  448. 松本忠助

    松本(忠)委員 それでは通産省に伺いますが、この騒音の防止の実効ある対策、これについて、自動車産業の元締めである通産省では具体的にどのようにこれを実施されようとするか、その姿勢をまず伺わせていただきたい。
  449. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 自動車の騒音対策でございますが、やはり四輪車につきましては、まずマフラーの構造を改善することが第一であると思います。  そのほかタイヤパターンと騒音の研究、これも現にやっております。  さらにまたエンジンの振動、これから騒音が出てまいりますので、エンジンの振動防止、さらには車体構造全体の問題としての構造の改善、こういったことにつきまして、現在すでに業界において研究を進めております。  さらにさらにまた、二輪車等につきましても、これは実際問題といたしましては、いま申し上げましたようなほかに吸気糸のエアクリーナーの改良、こういったもの、あるいは今度は排気系のマフラーの改良、こういったこともあわせて現在研究を進めておりまするし、私どももそういった研究をさらに推し進めるように指導してまいりたいと考えております。
  450. 松本忠助

    松本(忠)委員 そこで、重ねて伺いたいわけでございますが、やはりこれは各車種別に一定の基準、それ以下にするようにということを、一つの目標をきめ、しかもその実施の時期、完成の時期、こういうものをきめてやりませんと、なかなか具体的には各メーカーがその通産省の意向を体してやろうということになるまいと思うのです。こういう具体的な、車種別に基準をきめる、あるいは達成の時期をきめる、こういうことをやられる御意思があるかないか、この点を伺いたい。
  451. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 先ほど運輸省のほうから御答弁ございましたが、新しく運輸省のほうで改正されました保安基準は、新型車につきましては四十六年の四月から、新造車につきましては四十七年の一月から、こういうふうに取りきめられております。したがいまして、私どもの業界指導の体制といたしましても、来年の四月から以降の新型車につきましてはすべてこの七十ホンというものに合うように、また新しくつくる新造車、これにつきましては四十七年一月から全部この基準に合うように、期限をきめて指導してまいる所存でございます。
  452. 松本忠助

    松本(忠)委員 一応その基準をきめてやられることは大いにけっこうではありますが、どうか基準をきめたというだけでなくて、その実施の過程において逐次行政指導をしてりっぱなものをつくる、そして騒音防止に役立ててもらいたい、このように思うわけでございます。  そこで、運輸省に伺いますが、新車に対する騒音規制、いまもつくるほうの通産省でもその意向を示されましたが、現在中古車といわれるような車については対策が講じられておりません。この点、新車に比べまして被害を及ぼす率も、新車よりも中古車の音のほうが多いように私は思います。中古車に対して何らかの対策が必要ではなかろうか、またこれをやるとすればいつごろをめどにして実施をしようとしているのか、これらの体制について運輸省の考え方を知らせてもらいたいわけであります。
  453. 隅田豊

    ○隅田説明員 お答え申し上げます。  中古車対策につきましては、一応は車検場においてはかるということになっております。しかしながら、実際問題といたしましては、車検場に参ります車は整備して参りますので、基準から申しましてもほとんど騒音計ではかっても合格するのが現状でございます。御指摘のとおり、中古車の音を下げさせるというのが、これからの騒音対策としては非常に大きな問題だとわれわれも考えておりまして、現在まず問題としては、車の設計製作と申しましょうか、生まれてくるところでまず非常に音の少ない車に持っていくという意味での新車規制の強化ということを、まず手を打っておるわけでございますが、さらにそういう音の面から見まして比較的質のいい車をつくらせまして、それに対して定期的な点検整備をユーザーに励行させる、これがやはり中古車としての直接の対策になるだろうと考えております。
  454. 松本忠助

    松本(忠)委員 それでは、重ねて伺いますが、そういうものの達成について一つの計画といいますか、何年までにはこうするというようなものはお立てになっていられますか。
  455. 隅田豊

    ○隅田説明員 ただいまの中古車の定期点検の対策を進めてまいりますために、ステッカーをたとえばユーザーに励行させた車には張るというようなことは行政指導でできないかという点で、いまいろいろと鋭意検討中でございます。
  456. 松本忠助

    松本(忠)委員 要するにいまのお話しのステッカーを張るというようなことは、私も申し上げようと思った。騒音規制について、規制に合格した車に対しては、この間やりました、COの規制ができた、その車に対しては規制された、一応検査して合格したという車に対しては、ステッカーのようなものを張るというように、騒音の面でもそれを張られることも一つ方法かと思います。しかし、やはりこの中古車なるものは相当の台数が出ているわけです。これを少なくとも、何年産の車に対しては何年までに規制するというような一つの大ワクを定めなければ、これはいつまでたっても野放しで、なかなか実効があがらないというふうに私は思うわけなんです。ですからここまでにはこうやるというようなその一つのワク、そういうもの、それが一つないかと聞いているわけです。方法としてステッカーを張る、これは一つのいい方法だと思うのです。私も提案しようと思ったわけです。期限的にこうきめられないか、こういうわけであります。
  457. 隅田豊

    ○隅田説明員 具体的な方法につきまして、目下実は検討している最中でございますが、できるだけ御趣旨に沿うような方法で期間を切って徹底させる方法をとりたいと考えております。
  458. 松本忠助

    松本(忠)委員 部長をたびたびわずらわせますが、自動車局長さん、やはりこれは野放しはいかぬと思うのですよ。やはりある時期までにはこうしたいというぐらいにしなければ、騒音の規制なんというものはとうていできないと思うのです。それですからやはり何年産の車は何年までにはこうしようというような一つの期間的なワクをきめてそして規制させる、こういうふうにしたい。これはぜひひとつ実行したいと私は思いますが、この点、局長はどう思われるか。
  459. 野村一彦

    ○野村政府委員 ただいま整備部長から答えましたように、私どももこの点につきましてはいろいろとただいま研究をいたしておるわけでございまして、できるだけ早期にこれの結論を出すようにしたいと思いまして、ただいまのめどといたしましては、来年度の前半ぐらいには、いま先生のおっしゃいましためどがつくように、研究の成果をまとめたいとせっかく努力中でございます。
  460. 松本忠助

    松本(忠)委員 それではまあ来年の前半にそのことをひとつ考えよう、——ぜひ実行してもらいたいと思うわけであります。  そこで、その騒音の規制について、まず何といっても一番問題になるのはいわゆる測定器であります。簡易測定器、こういうものの開発についてはどのように考えておられるか。この点についてはひとつ厚生省でも答弁をしてもらいたいと思いますが、どうでしょうか。自動車局長並びに厚生省。
  461. 隅田豊

    ○隅田説明員 騒音計につきましては、一応車検場で使えるような、比較的簡易な騒音計というものは、現在開発されております。
  462. 松本忠助

    松本(忠)委員 厚生省ありませんか。——それでは次に、騒音について、いわゆる定期の整備検査、この対象にいまいろいろのものがあげられておりますけれども、新車、中古車を問わず、排気ガスあるいは照明度あるいは最近いろいろの車でも問題になるところの横ぶれ、あるいはブレーキのききぐあい、こういったことと同様に、騒音についても定期的整備検査の対象にすべきではないか。これは実施される予定があるのですか。この点はどうでしょうか。
  463. 隅田豊

    ○隅田説明員 自動車から出ます騒音の、ことに機械的部分の騒音の原因につきましては、これは各部のがたとかあるいはエンジンで申しますと、やはり普通の意味での定期点検整備そのものの悪い結果から出てくるものでございます。したがいまして、従来ある定期点検整備をできるだけ励行させるということが、先ほどの騒音のための定期点検整備にも非常に効果があるとわれわれは考えております。
  464. 松本忠助

    松本(忠)委員 それでは、次に問題を変えまして、国鉄関係、それから運輸省の鉄監局の関係の方にお願いをいたしたいと思うわけでございます。  鉄道騒音、特に新幹線の騒音についてでございますけれども、今回の騒音規制法からはずされております。しかし、この問題は、この法案をつくるときに検討の対象になったことはございました。さきの国会におきましても、全国新幹線鉄道整備法が成立いたしました。全国的にも新幹線が整備されようとしておる段階でございますが、この新幹線を中心としたところの鉄道騒音について、いろいろと問題が起きております。先般も私のほうで、神奈川県の一部につきまして、鉄道沿線において十メートル、二十メートル、こういうところを対象にいたしまして、個々に当たってまいりました。いまそのデータもとっておりますけれども、だんだん新幹線が全国的にもつくられていく、こういうことになりますと、今後の大きな社会問題となるのではなかろうかと思います。  そこで、法的にもこの対策を立てるべきではなかろうか、その必要があるのではなかろうかと思うわけでございますが、この点について、運輸省と厚生省のお考えを聞かせていただきたいわけであります。
  465. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 この騒音規制法に個別に記載されておる騒音でありましても、いわゆる騒音公害といわれるものは基本法から全面的にかぶってくるものでありますけれども、従来といいますか、現在施行されておる騒音規制法並びに今回改正をお願いいたしております改正法案、いずれにも新幹線の騒音というものを明記いたしておらないということは、実は鉄道の場合は、自動車騒音のように許容限度を定めるということ自体に技術的に非常にむずかしい部分があるということと、同時に、新幹線等の鉄道というものは、きわめて公共性の高いものでありますために、自動車の場合のような交通規制というような手段も、実際上、実施しがたいというようなことから、現段階で私どもとして有効な対策を実はとりがたい点があったためであります。これは現在国鉄当局において防音壁等の工事をしていただいておりますし、またそういうもの以外にも、コンクリート製の枕木、あるいはゴム製のパッキングをかませていくことによって、騒音を減らす等の処置はしていただいております。実はいずれもそれがきめ手となる手段ではございません。それだけに、現実に法律に明記をいたしましても、実施しがたいものを書くこともできませんでしたので、実は今回厚生省としては、この騒音規制法対象から新幹線をはじめ鉄道を落とした次第であります。
  466. 松本忠助

    松本(忠)委員 運輸省鉄監局長、この点についてはどのようにお考えでございましょうか。
  467. 山口真弘

    ○山口(真)政府委員 お答え申し上げます。  鉄道の騒音でございますが、これは一般の騒音と若干性質を異にいたしておりまして、特に音質なり、頻度なり、あるいは継続時間でかなり性質が異なっております。  それといま一つは、鉄道騒音と申しますのは、車両と、それから通路との関係において生ずる、しかも、その通路におきましても切り取りがあり、盛り土があり、橋梁があり、隧道がある、非常に各種の異なる条件にありますために、その間の規制関連づけるということになかなか困難な点がございます。  それから一方、新幹線騒音につきましては、新幹線自体が非常に新しい技術でございますので、この騒音防止につきましても技術の進歩といいますか、技術の開発を非常にやっておりまして、時間がございますればあとで御説明申し上げてもよろしゅうございますが、各方面の技術の改良をやっておりまして、それによって騒音防止対策もいわば日進月歩のような姿がございます。そんなような次第でございますので、私どもとしましては、現段階におきましては騒音規制法法律の中でこれを規制するということは必ずしも適切ではない、その上に国鉄一社でございますから、十分の指導というものも国としてできるという点もございますので、いまのところ、法律の中でやるということでなく、さらに技術の進歩を進め、将来検討を続けてまいりたい、このように考えております。
  468. 松本忠助

    松本(忠)委員 そこで、実例を伺いたいわけでありますけれども、国鉄の村山保線課長が来ていらっしゃるようですが、東海道新幹線が昭和三十九年に開通して以来、今日までにこの騒音における、あるいは新幹線の通過のための振動に対して補償の要求あるいは苦情、こういうものが国鉄に相当出ているわけです。これに関しては、私たちの知っている向きでも、国鉄に対して補償要求をしておりますので、全国的に見れば、東海道新幹線の開通以来今日までにどれくらいのものが出ているか、その点の数字がわかっておりましたらば種目別にお話を願いたい。
  469. 村山熙

    ○村山説明員 御指摘の点でございますけれども、三十九年に新幹線が開通いたしまして、その後沿線の方々からの苦情、陳情はたくさん出ております。ことしの十月時点で総計いたしまして、約百件の苦情、陳情が来ております。  その中身を申し上げますと、その百件うち二十件が学校からの苦情でございます。それから四件が病院でございます。それから残りの七十六件がその他の、学校、病院以外の方々からの苦情でございます。もう一つ、これを騒音についての苦情、あるいは振動をまじえた、騒音だけでなくて振動が困るのだというような陳情と分けますと、その百件のうち、四十九件は騒音でございます。残りの五十一件が振動についての苦情ということになっております。
  470. 松本忠助

    松本(忠)委員 そのような百件の振動あるいは騒音、こういうものに対して、被害を受けた学校、あるいは病院、一般の家庭、こういうものに対して、現実に補償をするとか、あるいは防護の施設をするとか、こういう事実はございますか。
  471. 村山熙

    ○村山説明員 先ほど運輸省あるいは厚生省からもお話がございましたが、国鉄におきましても、この騒音の問題は過去いろいろと勉強をしてまいりましたし、技術的にとれる限りのことはしてまいったわけでございます。それで、ただいまの百件の苦情、陳情に対しても、そのつど現地でいろいろとお答え申し上げ、できることはできるだけしてまいっております。たとえて申しますと、学校、あるいは鉄げた、あるいは病院、こういうところに対しましては、壁をつくりますとか、あるいは音を小さくするような工法をできるだけとってきております。  それから補償でございますが、いままでに国鉄で補償した事例はございませんけれども、いま申し上げましたような措置をできるだけいたしまして、極力騒音を減らすように努力をしてまいっております。
  472. 松本忠助

    松本(忠)委員 いま国鉄からお話があったように、現実にこれらの苦情に対して防音壁をつくるとか、いろいろ策をなさっておるようでありますし、また鉄監局長からも非常に技術の面において一生懸命検討して騒音を少なくする施設をやられているということはわかりますけれども、やはりこれから全国新幹線網ができてまいりますと、これらの問題については、やはり早急に何らかの対策を立てておく必要があろうかと思うわけであります。私が先般岡山へ参りましたおりに、山陽新幹線の騒音対策について聞いてまいりましたけれども、現実に市街地を走る高架の部分については、線路の両側に高さ二メートルのコンクリートの防音壁を設けた、あるいは車体そのものにもスカートをはかせることを考えている、あるいはレールは鉄げたに直接取りつけないで、コンクリートの床を張って、砂利を敷いて、騒音が左右やあるいはガード下に抜けるようにしたい、こういうふうにいろいろとくふうしていることも聞いてまいりました。レールについても、東海道新幹線の五十三キロ、これを六十キロにして、そうしてまくら木の下にも吸音パットを入れて音を緩和しよう、また車軸の左右、両側にも、先ほども申し上げましたそのスカートをはかせる、こういうようなことでかなり騒音が減るということを言われておりましたが、大体こういう処置をしたときに、沿線十メートルのところと、二十メートルのところ、あるいは三十メートルくらいの段階に分けて、どれくらいに現在の東海道新幹線よりも騒音が減るのか、具体的にどのようになるかということの見通しが立っているかどうか、この点はどうでしょうか。国鉄さん、ひとつお答えがいただけたらば……。
  473. 村山熙

    ○村山説明員 どのぐらい減るかというはっきりした数字を、ここで申し上げるほどの資料を持ちあわせておりませんけれども、大体防音壁を二メートルの高さで立てまして、いままでの実績でいいますと、大きなところでは十ホーン程度減っております。それから、小さなところでも六ホーンないし七ホーン、そういう減り方でございます。  それから、あと、車両のスカートをもっと伸ばすとか、あるいはその他いろいろな補助的な手段がいろいろございますけれども、そういうものをいろいろと兼ね合わせまして、いま申し上げました数字よりももう少し上回る数字は期待できるというふうに考えております。
  474. 松本忠助

    松本(忠)委員 最後に長官にお伺いしますが、いま新幹線の騒音についていろいろと伺ったわけでありますが、この点について、将来日本の新幹線網ができるまでに、この騒音対策を、新幹線の騒音対策を考える必要が私はあるのじゃなかろうかと思いますが、国務大臣はどのようにお考えであるか、この点をひとつ最後に確かめておきたいわけであります。
  475. 山中貞則

    山中国務大臣 いままでの答弁をずっと聞いておりまして、なるほど新幹線騒音にしても、その他の列車も、やはり密集した住宅街その他を走っておるわけでありますから、それらのものについて、なるほど技術革新その他が要りましょうけれども騒音、振動あるいは小林進君でしたか、黄害というものも言われましたし、さらに電波障害、こういうもの等もあるのですね。やはりこれは国の機関でございますから、民間の私鉄その他があるにしても、まず国が率先してそういう対策を確立できる範囲は確立しなければならぬと考えますので、運輸省もそういうつもりで努力はしておるようでありますから、新幹線等がさらに全国に張りめぐらされる国家体系というものができ上がりますときに、これらの問題が解決されないままただ延びていくということは、ちょうど道路がどんどんできるだけで、交通の安全対策等が若干立ちおくれておったためのいろいろな問題が生まれているように、そういう問題を提起するおそれがありますから、政府全体としてもよく考えていかなければならぬ問題だと思います。
  476. 松本忠助

    松本(忠)委員 終わります。
  477. 加藤清二

    加藤委員長 関連の申し出がありますので、これを許します。岡本富夫君。
  478. 岡本富夫

    ○岡本委員 先ほどから同僚の佐藤委員からも討議がありました大気汚染防止法の二十三条の緊急時の措置について、これは緊急のときには勧告、これを命令にしたらどうか。これは一つは、通産省と厚生省の共管になっておりますから、両方とも合意はしておりますか。まずお聞きをしておきたいと思います。
  479. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 合意をいたしております。
  480. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで山中長官にお聞きしたいのですが、この問題は実は私、四十四年の二月十一日、東京のスモッグが四日間続いた。そのときに東京都の知事から勧告をしたけれども、各官庁街あるいはまた企業のほうが、燃料転換あるいはその他の処置を全然とらなかったところがある。ただ、厚生省だけは燃料転換なんかをやったのか、その煙が出なかった。こういう問題で私は追及したことがありましたが、御承知のように、ロンドンにおいては一九五二年に死者四千人を出しておる。こういうことを考えますと、昨年の二月十一日のデータをとりますと、二月十一日の十二時には〇・二七PPM、十二日には〇・三七、十三日は〇・四六、この環境基準は〇・〇五でありますが、こういうことになりますと、相当な病人も出ている。したがって、この冬、二月ごろになりますと、再びこうした災害を起こすことになる。したがって、そういうことを考えますと、法務当局で、——これが法制局でなかなかうまくいかないのではないか。命令については電話で、あるいはまた電報で、あるいは特殊な暗号で、あるいは特定の人をきめてそうして連絡するとか、いろいろな方法があろうと思うのですが、少なくともこの冬、要するに二月、この時期までにちゃんと検討して、そうして法改正をしなければならない、こういうように思うのですが、山中長官の決意をお伺いしたい。
  481. 山中貞則

    山中国務大臣 ロンドンの例をあげてのいわゆる都市地区の冬のスモッグのお話だと思うのです。これは今回の法律で、燃料規制知事ができるようになっておりますから、それらの都心部等を典型的な例とする指定地区については、知事が燃料基準を定めることができるわけでありますから、それで暖房等の排煙、粉じんその他については規制が行き届くということでございますので、その配慮については今回の法律でなされておる範囲だと考えます。
  482. 岡本富夫

    ○岡本委員 その燃料規制については、主務大臣の一々チェックが要るのです。御承知のように、わが国の燃料は、この間公害シンポジウムでも問題になった。この中に、時間がありませんからあまり詳しく言いませんけれども、質の悪い原油をわが国は国際資本でもって押しつけられておる。したがって、自由に買えるような燃料というのはせいぜい二〇%、したがって、そういうことを見ますと、燃料が非常に少ない。そうして私ども実態調査に回りましたところが、いま各発電所あたりでは、絶えず燃料の中の低硫黄のものを使います、こういうことをいっておる。だから、そういうことを考えますと、一々チェックを受けながらやらなければならない。したがって、この勧告で、そしてこの施設のいろいろなことをやっただけではおそいのですよ。その点を見ますと、少なくともことしの冬までの間に、これは命令権にきちんとしておいたら、そうしたらきちっと命令されて、四十四年の二月のようなことにならなくて済む。調査によりますと、だいぶこのときも事故が出ているのですよ。その点もう一ぺん聞きたい。
  483. 山中貞則

    山中国務大臣 いまのところ、私の承知している範囲では——違っていたら厚生省なり何なりから訂正させますが、政令で定める地区について、知事が全面的に燃料規制ができるということにたてまえがなっておると思いますが、自由にできないという、チェックというのはよくわからないのですけれども……。
  484. 岡本富夫

    ○岡本委員 あなたも四十四年の二月の十四、五日ごろはここにいたのです。そして四日間スモッグが続いたのです。もしもロンドンのように逆転層がこの上空にできたときに、たくさんの被害者が出る。被害者が出て、たくさんなくなったりしてからではおそい。まあいまごろの、秋のように澄みきったときにこの公害問題をやかましく言っても、あまりピンとこない場合もありますけれども、事実はそうではない。予防というものは十分しなければならない、そういうことを考えます。  さらに、ただ法制局の段階だけですから、それは長官がどういうようにするかということを一日も早く検討して、そしてこの法改正をすべきである。十分手厚いところの法制改正をすべきである、こういうように思うのですが、この点について、もしも長官がどうしても答えられぬと言うのだったら……。
  485. 山中貞則

    山中国務大臣 ちょっと整理したいと思うのですが、そういう指定された地域の暖房等についての燃料基準知事が定めることができるわけですから、これはチェックなしなんです。したがって、緊急時の問題と双方混同しているわけじゃないのですか、御質問の内容が。——いまの御質問は緊急時の話ですね。私は、ロンドンの例をとられたものですから、いわゆる冬起こる暖房その他のスモッグというもののことをおっしゃったのだろうと思ってそういう答弁をしたわけで、それについては知事に権限があることはおわかりでございますね。  そうすると、緊急時については、これは先ほども答弁しておりますように、法制局段階の意見、純法制上の議論というものが詰められなくてそういう形になっておりますが、政府としても作業は続けてまいります。これは法制局の純法理論上の段階のことでございます。
  486. 岡本富夫

    ○岡本委員 それで、現在公害対策本部なるものが、何の法的根拠もなくしてできた。それは山中長官に実力があるからだ。いま公害対策会議公害対策本部と別個にできておるのです。だから、公害対策会議のときは何もできなかったとも言えませんけれども、ほとんど進んでいない。そうすると、公害対策本部ができて、各省をまとめる実力があなたにはあるんだ。先ほどもえらい自慢をしていたのですから、やはりこれだけのことくらいはきちっとやって、要するに前も勧告権があったのです。ところが、事実の上においてあの四日間、ちょうど厚生省の武藤部長の時代だった。この問題を私はやかましく言ったけれども、結局、知事が命令しても、知事が勧告をしても、結論は四日間そのままだったのです。気流が変わるまではそのままだった。現実にみな見たのです。その当時新聞にもずいぶん大きくでかでかと出たのです。ですから、そういうことのないように、四十六年の二月にそういうことにならないように、あなたが努力をして——法制局だって、あなたが話をすれば、やはり調整されるのですから、それを目途にちゃんとなさるかどうかということを、答えていただければいいわけですよ。
  487. 山中貞則

    山中国務大臣 各委員ひとしく述べておられる趣旨はよくわかっておりますので、私たちとしては法制上可能であるならばそれはいずれやりたい。したがって、今国会に間に合わなかったということで結論としたいと思います。
  488. 岡本富夫

    ○岡本委員 それで最後に、実はきのう農林省の長官に対して、富山県の汚染米が兵庫県に流れて、三十トンのうち十五トンだけ残っているけれども、あと十五トンは食べちゃった。これについてあなたのほうは、富山県の米は全然回っておりません、こういうように答えたけれども、事実はそうでなくして、この汚染米が出たときに、兵庫県の食糧事務所からそうした汚染米が出ましたということを十一月十四日に県の農林部長に対して報告があった。県の農林部長は、さっそくその汚染米の配給をやめろと言ったけれども、もう半分食べた。これを通報受けたのは一七日ですけれども、その点についてはっきりした答えをひとつ出していただきたい。
  489. 亀長友義

    亀長政府委員 お答えを申し上げます。  昨日、富山の経済連でカドミウムの調査があったということに関連をして私お答えしたのでありますが、御承知のように政府の配給米と称するものに、現在経済連の扱っております自主流通米と、それから政府の直接扱っております政府管理米と二種類ございまして、経済連の扱っております自主流通米には神通川流域の米は兵庫県に送られていないということと、それから政府米の中で兵庫に持っていったものの中に疑わしいものがございますので、これは配給停止をして、現在一般米屋には渡しておりませんということをお答えいたしたのでございます。  再度調査をせよというお話でございましたので、調査をいたしました結果を本日御報告申し上げます。  経済連の自主流通米に関しましては、問題の四地区の米は出荷していないことは、昨日お答えしたとおりでございます。  政府管理米に関しましては、兵庫県にはこの四地区の米が三十トン送られております。十一月の四日に経済連でこのような調査があったということを承知をいたしまして、即日配給停止を指示いたしたわけでございます。名古屋あるいは大阪におきましては、まだ売却未済のものがかなりあまして、これはかなり凍結をできたのでありますが、兵庫につきましては、五トンだけしか凍結することができなかったわけでありまして、その他のものはそれ以前に配給をされておったというのが事実でございます。  なぜ、このようなことになったかと申しますと、富山の食糧事務所におきまして、この地区が要観察地域に指定されておらなかった。したがって、事前にこの地域がそういうところであるということを確認する方法がなかったことが一つであります。しかしながら、富山の食糧事務所といたしましては、この地区で新谷、青島、為成新、十五丁、萩島、この地区につきましては警戒をいたしまして、消費地への搬出は一切いたしておりませんでしたが、今回問題となった四地域はこの地域の近傍でございまして、一部含まれておるところもございますが、大体において近傍でございまして、その点につきましては事前にこれを予見する方法がなかったということでございまして、そのようなことを知り次第さっそく緊急停止の措置をとった次第でございます。  なお、富山県といたしましては、要観察地域以外でもございますので、経済連調査の結果をさらに精密調査中ということを、私ども本日承知をいたしております。  以上が、現在の判明いたしました事項でございます。
  490. 加藤清二

  491. 松本忠助

    松本(忠)委員 以上で質問を終わります。(拍手)      ————◇—————
  492. 松本忠助

    松本(忠)委員 以上で質問を終わります。(拍手)
  493. 加藤清二

    加藤委員長 次回は、明九日午前九時四十五分理事会、十時委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時五十分散会