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1970-12-07 第64回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十二月七日(月曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 加藤 清二君    理事 小山 省二君 理事 始関 伊平君    理事 古川 丈吉君 理事 山本 幸雄君    理事 渡辺 栄一君 理事 島本 虎三君    理事 岡本 富夫君 理事 寒川 喜一君       伊東 正義君    伊藤宗一郎君       木部 佳昭君    久保田円次君       葉梨 信行君    林  義郎君       藤波 孝生君    松本 十郎君       森田重次郎君    井野 正揮君       佐野 憲治君    中谷 鉄也君       藤田 高敏君    細谷 治嘉君       古寺  宏君    川端 文夫君       米原  昶君  出席国務大臣         通商産業大臣  宮澤 喜一君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君         労 働 大 臣 野原 正勝君         自 治 大 臣 秋田 大助君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議官      城戸 謙次君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第二         部長      林  信一君         内閣法制局第四         部長      角田礼次郎君         中央公害審査委         員会委員長   小澤 文雄君         中央公害審査委         員会事務局長  川村 皓章君         経済企画庁審議         官       西川  喬君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         開発局長    岡部  保君         大蔵大臣官房審         議官      吉田太郎一君         厚生政務次官  橋本龍太郎君         厚生省環境衛生         局公害部長   曾根田郁夫君         農林省農地局長 岩本 道夫君         食糧庁長官   亀長 友義君         通商産業政務次         官      小宮山重四郎君         通商産業省公害         保安局長    荘   清君         通商産業省重工         業局長     赤澤 璋一君         通商産業省鉱山         石炭局長    本田 早苗君         通商産業省公益         事業局長    長橋  尚君         運輸省航空局長 内村 信行君         労働省労政局長 石黒 拓爾君         自治大臣官房長 岸   昌君  委員外出席者         科学技術庁原子         力局次長    大坂 保男君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省民事局参         事官      味村  治君         運輸省自動車局         整備部長    隅田  豊君         高等海難審判庁         長官      藤原 重三君         最高裁判所事務         総局総務局長  長井  澄君     ————————————— 委員の異動 十二月七日  辞任         補欠選任   土井たか子君     細谷 治嘉君   西田 八郎君     川端 文夫君 同日  辞任         補欠選任   細谷 治嘉君     中谷 鉄也君 同日  辞任         補欠選任   中谷 鉄也君     井野 正揮君 同日  辞任         補欠選任   井野 正揮君     土井たか子君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害対策基本法の一部を改正する法律案内閣  提出第一二号)  公害防止事業費事業者負担法案内閣提出第一  七号)  騒音規制法の一部を改正する法律案内閣提出  第一四号)  大気汚染防止法の一部を改正する法律案内閣  提出第二三号)  環境保全基本法案細谷治嘉君外七名提出、衆  法第一号)      ————◇—————
  2. 加藤清二

    加藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公害対策基本法の一部を改正する法律案公害防止事業費事業者負担法案騒音規制法の一部を改正する法律案、及び大気汚染防止法の一部を改正する法律案、並びに細谷治嘉君外七名提出環境保全基本法案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松本十郎君。
  3. 松本十郎

    松本(十)委員 過日の連合審査ではいろいろの論議がかわされたわけでございますが、きょうから当委員会における審議が行なわれるにあたりまして、私は公害対策基本法中心といたしまして若干の質疑を行ない、また要望をいたしてみたいと考える次第でございます。  激動の七〇年代、これは変化の時代だ、こういわれております。その中でもわれわれが特にひしひしと感じますことは、生活価値観が変化している、こういうことではないかと思うのであります。ここ数年来、人々の生活価値観というものは単に物質的な生活の豊かさを求める、こういうことだけではありませんで、精神的な意味においても人間としての生活を豊かにする、これを求めるようになったと思うのであります。都市的な便利な生活、これとあわせまして、同時に汚染されない空気を呼吸し、緑の豊かな自然との調和のとれた生活環境に暮らして、社会的に生きがいのある生活をしたい、こういう希望が全国民的な要望となってきている、こう感ずるわけであります。  公害対策というものもそういった観点からとらえてこれに対処しなければならないだろうと思うわけでございますが、そういう意味公害担当大臣であります山中長官に、まず最初に政府公害に対する基本的な姿勢と申しますか、言いますならば哲学といったものについてお伺いをしてみたいと思うわけであります。
  4. 山中貞則

    山中国務大臣 この種の性格の議論については総理からすでに本会議場連合審査等を通じて意見を明らかにされておるところでありますけれども、担当大臣の私といたしましても、そういうような、ただいまお話しになりましたような考え方前提にしておるわけであります。  さらに、これは私たちの現在生活しておる環境、生存しておる状態というものについてのみでなくて、われわれがいま後代の日本人、それらにどのように責めを果たすか、すなわちわれわれの子々孫々にどのような日本列島居住環境を残してあげられるかという、すでに私たち自体がある意味においてはこのような環境破壊汚染状態をつくり出した責任者でもありますから、それを償うと同時に、後世に向かってどのようなことをなし得るかを問われているときであろうというふうに受けとめております。  さらにこれを、単に日本のみならず地球的な規模において考えるべきであろう。もっとも公害についての各地の態様は、それぞれその国のよって立つ条件によって違います。ヨーロッパの国々は道路越し国境があるわけでありますから、したがって、それらの陸地続きの国における環境保護あり方などは、スエーデン等で典型的に見られるように、自分の国だけではいかんともなしがたいような国もあれば、あるいは日本の場合においては、川は上流の県、下流の県、場合によっては加害県、被害県という程度の国がつかまえ得る範囲でありますけれども、ヨーロッパにおいては、ある国が汚染すれば、ある川において下流の国がその上流の国に対して、いわゆる何らなし得な  い、国境を隔てた地域に対して問題を提起しなければならないという環境もありましょうし、あるいはまた大きな国であるアメリカ、このアメリカにおいても、ニクソン大統領が、荒野を含む土地についての計画というものがこの環境保全にはさらに見直されるべきだということを提案しておりますことは、わが国が狭小な国土であって、しかも限られた面積の中で人間生存活動がされておるということの環境から考えるときに、われわれは大きな教訓を学びとって、日本の今後の国土の新しい土地政策というものに対して、ばらばらでない総合的な見方をしていくことを示唆されておるような気がしてならないわけであります。そのアメリカにおいても、自分たちの一国のみでは処理し得ないものとして、やはり国際的な協調というものが必要であり、自分たちの体験し得なかった価値を持っておる国に対しては、謙虚にその資料の公開なりあるいは技術指導等を求めてきておりますことは、先般私とラッセル・トレイン委員長との間で日米会談を持ちましたけれども、今後行なわれるであろう定例閣僚級会議において、さらに太平洋を越えた国の問題として提携して、共同で開発に当たる。それがひいてはOECDにおける議論あるいは一九七二年に予定されております国連生活環境についての環境保全のための特別の会合に、わが日本がどのような役割りが果たせるかということも、いま国会で私たちがどのような姿勢をとるかによってきまると考えておるわけでございます。
  5. 松本十郎

    松本(十)委員 先般の連合審査における総理答弁、あるいはただいまの山中長官の御答弁を聞いておりまして力強くも感じるわけでございますが、たまたま国際的な角度からする問題の取り上げ方がされましたので、私も国連の場における公害問題についての論議というものが、事公害だけに局限されませんで、一つはフィジカルな環境の型というものはどういうものか、また二番目に環境汚染防止、これは即公害防止でありますが、これはどういう角度からとらえらるべきか、そうして最後に天然資源の管理、こういった三つの角度から論議が進められておるようでございますが、そういうことから思い合わせましても、今度の公害対策基本法改正案というものがやや次元が低いと申しますか、少なくとも先ほど長官の発言されたような基本的な姿勢なり理念というものから考えます場合に、そういったものが必ずしも改正案の中に十分入っていないんじゃないか、こういう懸念を持つものでございます。社会党はじめ野党三派の提案されました環境保全基本法を読んでみましても、まだまだ熟していないようでございまして、これには賛成いたしかねますが、しかし政府提案のこの改正案そのものも、そういった基本的な考え方というものを何らか打ち出す必要があるんではなかろうかという感じがするわけでございます。元来この法律が制定されました昭和四十二年と申しますと、まだまだ公害論議なりあるいは環境に対する意識というものが現在ほど徹底しておりませんで、ああいう形の法律になったかと思うのでありますが、少なくともこの半年、一年の公害論議の経過に振り返ってみましても、さらに問題を掘り下げまして、そういう根本的な問題から法律改正に取り組むべきではなかったかという感じがしないでもないわけでございます。まあ時間的な余裕がなかったとか、あるいはそういったことは法律以前の問題であると言ってしまえばそれまでであろうかと思うのでありますが、しかし公害というものが七〇年代の一番大事な課題の一つになっているわけでございますし、また行政の面でも新しい分野で特異のアプローチを必要とする問題であろうかと思うわけでございまして、そういう意味でもこの公害対策憲法ともいうべき基本法というものは、従来の法律概念というものを越えたものから出発してもいいのじゃないかという感じがしないでもないわけでございます。  そこで、そういう角度論議を進めてまいりまして、国の責務ということでありますが、どうも条文を読んでまいりますと、第三条に「事業者責務」というのがありまして、そのあとを受けて第四条に「国の責務」がある、こういうことでございます。最近行なわれましたある世論調査によりますと、公害については国は何もやっておらない、こういう答えが過半を占めたと聞いております。これは必ずしも国が何もかもやれという意味でのやっていないということではありませんで、国家がみずからやるべきことはみずからやる、さらにまた地方公共団体なり企業者にやらせるべきことを適確にやらせる、ときにはまた地域住民の協力を求める、そういう意味での最終責任者としての国の活動と申しましょうか、行政と申しますか、政治というものが公害について徹底して行なわれておらない、こういうことを反映した答えであろう、こう注釈されております。そういう意味からもこの四条にある「国の責務」、あるいは第二節に事こまかに「国の施策」として条文を相当あげておりますが、そういったことはもちろん大切でありますが、それらの大もととしての国の責任と申しましょうか、公害に関するファイナルレゾートとしての国の立場、姿勢、スタンス、こういったものを条文に入れたほうがよかったのではないか、こう感ずるわけでありますが、長官の御感触はいかがでありましょか。
  6. 山中貞則

    山中国務大臣 わが国環境保全の盛り上がりというものは、一応すでに公害といわれる環境破壊あるいは汚染の現象が進んでいることに対して国がその基本的な姿勢を示そうとしたのが公害対策基本法である。その意味では確かに私たちはいま一つの別な角度をもってものをながめていかなければ、先ほど私が申しました国際的な視野にもこたえられない、あるいは国際的な責務に対応できない、あるいは子孫にわれわれが何をすべきかについて、議論が具体的な現実論のみに終始するおそれがあることは私も認めたいと思うのです。したがって、日本が国際的のいろいろな問題を勉強もし、日本があるべき姿を考えながら、環境保護憲章的な、すなわち事業とかなんとかというものを越えた公害対策基本法はあっても、さらにもっと大きな公害憲章というようなものを掲げて、日本が、現在のところ美しい日本列島というものをいかに保つかの理念を持つことは必要であると私も考えますし、そういう方向にいずれ進むだろうと思いますが、いまここで公害対策基本法環境保護憲章にするには、今度は保護憲章としてはあまりにもこまかな事業についての定めが多過ぎますので、やはりこれは事業者がまず一義的に負担する前提公害対策事業というようなことを念頭に置いて公害対策基本法というものがあるという範囲でいく以外にないと考えたわけであります。しかしながら、第一条の「目的」では、憲法二十五条を引いて国民の健康にして文化的な生活を守るんだということを明記いたしましたし、十七条二項に、さらに緑地の保全並びに自然環境保護等についても定めて、そのような姿勢を少しでも高めたい。しかしこれは空論ではありませんで、それに伴って自然公園法なりあるいは清掃法を全面改正して廃棄物処理法をつくったというような具体的なものが出ておりますから、政府姿勢の一端はそこらに出ておるとお受け取りいただいてけっこうだと思います。
  7. 松本十郎

    松本(十)委員 まず、それでは今回はやむを得ないとしまして、将来機会があれば、そういう角度からもさらに現行法なり改正案についてまた検討機会を持っていただきたい、これを要望いたしておきます。  それから少し話が具体的な問題に移ってまいりますが、費用負担との関連もあるわけでございますが、この廃棄物に対しまして放出税、水を出すものについて排水税、あるいはきたないばい煙、空気等を出すものに対して排気税、合わせて放出税と申しましょうか、こういう目的税的なものをつくることについて自治大臣の御感触を伺ってみたいと思うわけでございます。  少しとっぴな議論のようでありますが、この放出税というものはまだまだ現実に実施されてはいないようでありますが、ちょうどこの七月の初めにニクソンが諮問しました委員会が、国家目標の探求に関する専門家グループという名前で報告書を出しておりまして、これが八月の大統領環境白書の基礎になった、こういわれておるわけでございますが、この中に放出税、イミッションタックスですか、そういうようなものを一つのアイデアとして掲げておるようなわけであります。一口に申しますと、企業がよごれた水を出す、よごれた空気を出す、当然これはしかし排出基準に従いましてそれ以下のものを出すわけでありますが、それでも害がゼロとはいえない。それの防止技術はもちろん企業開発につとめ、設備をつくるわけでございましょうが、しかし同時にどうしても出してまいります排水排気に対しまして、その量とマイナスの質と申しましょうか、そういったものを考えあわせてこういう税をとってみたらどうか、こういう考え方であります。そのほうが、企業に対して税制金融上の措置を加えて公害防止施設整備につとめさせるということも一つのいき方ではございますが、それだけでは不十分であって、こういう税をとることによってさらに公害防止技術開発を進め、また企業がこれに熱を入れる、こういうほうがインセンティブとしてまたいいのではないかということを考えるのでありますが、ちょっと翻訳文、かたいようでありますが、読んでみますと、「放出税は好ましからざる生産物を一定量に抑え、また独善的な直接規制による政府介入を防ぐのには有効であろう。減税措置その他の補助は、汚染者廃棄物放出を防いだり減少せしめたりするうえで助けとなるであろう。その理由は、廃棄物を制限し制御することを目的とするものであろうが、補助政策は結局において非汚染者被害者)にそれだけ多くの税負担をかけることを意味する。汚染を低減するための汚染者に対する補助は、結局、政府の他のサービスを低下させるか、或いは税負担をそれだけ増加させるか何れかになる。」こういう表現をしておりまして、後段の部分はアングロサクソン的なエクイティーと申しましょうか、衡平の概念に発したものではないかと思うわけであります。要するに国が、地方公共団体が何か防止施設をやるということは、それに必要な金は国民の、また地域住民の税によってまかなわれるんだから、むしろそれは企業のほうでまかなうべきものだ。あるいはまた国がそういう施設をするということはその分だけ他の国民地域住民に対するサービスが減少するんだ、こういう意味税負担を増加させるというふうな論を詰めているようでありますが、これについて自治大臣の御感触を伺ってみたいと思うのであります。
  8. 秋田大助

    秋田国務大臣 放出税なるお考えは、一種の公害税考えられるわけでありまして、地方公共団体等公害防止事業を行なう費用負担を、企業者負担に求めるか一般的な税に求めるかという間額になろうかと思います。  ただいま外国の考え方等いろいろお示し願いまして、お考えの御提示があったわけでございますが、税の形をとりますれば、税制一般とのいろいろ関係検討しなければなりませんし、また一長一短があろうかと存じます。事業者のその該当公害に対する責任感の強弱につきまして、その他一長一短があろうと思うのでございまして、さしありは、御承知のとおり、企業者に直接負担を求めるという考え方でまいっておるわけでございますが、この点につきましてはさらに検討さしていただきたいと思います。
  9. 山中貞則

    山中国務大臣 松本君の提案、非常におもしろい問題を含んでおりますので、私の手元でだいぶ議論もしておりますから、その考え方を申し上げますと、ただいま自治大臣のおっしゃったとおりでございますけれども、さらに、公害防止企業のモラルの問題も相当大きな問題がありますから、公害税というものを納めておるということを免罪符みたいに考えて、もう税金は納めたんだからという安易な気持ちになられては困るのである、ならば、公害債というものを発行して、公害関係のある企業が全部それを消化する責任者である、いわゆるそれらの人たちがその公害債を消化しなければならぬ、その財源によって公害防止事業等が行なわれるという一つあり方等も、さらに議論としては発展していく、だろうと思うのです。  さらにいま一つは、公害を、ちょうど自動車の、いままでつかまえておりました概念からさらに一歩前進さして、全部、一億総前科者にしたくないという配慮もあるし、普及率に従って、軽微なものは反則金という制度をつくりましたですね。公害罪が、公害関係法においても、それぞれいけないことは罰金あるいはその他の体刑等を含めてありますから、そういうことが、たとえば法律のそれぞれの過程において改善命令等出さざるを得ないような状態になった場合には、直ちに過料をそこで取るという公害反則金みたいなものも取ってみたらどうだろうかということも、考え考えられない構想ではなかろうと思います。  さらに、これらの考え方というものから、私たちが、今後公害というものが企業者の自覚を促すものであるということのために進んでいくためには、やはり自分たちは常時、検査官が来たときに違反していなければいいんだといま受け取られがちな、そういう工場、会社等の運営をしてはいけないんだというものが生まれてくるのではなかろうかというふうに考えているわけでありますが、いずれにしても、いろいろな問題を示唆していると思いますので、担当大臣の私から申し上げました。  さらに、各方面において、罰金の軽重あるいはそれらの量刑の重い軽いの議論が必ず出ると思うのです。これは私、法務大臣と相談をいたしまして、罰金その他については、これはバランスの問題があって、公害というような問題で罰金がやはりバランスをとられて、金額としてはいかにもどうも、法律では大上段であって、いざ差し伸べた首は蚊みたいな首であるというようなことではおかしいので、やはりバランス論考えても、公害罪というものについては、刑法の特別法として法務省ではバランス考えないで踏み切っておりますから、この公害関連をして罰金あり方その他についてももう少しバランス法務省において基本的に考え直していただけませんか。——いまのところはバランスをとらざるを得ないわけです。そこらのところはいま私たち検討中でありますので、御参考になればと思って、答弁は求められませんでしたけれども、御披露申し上げておきます。
  10. 松本十郎

    松本(十)委員 それではその面でさらに御検討をお願いしたいと思います。  ただ、自治大臣あるいは大蔵省——大臣見えておりませんが、あとで質問し要望したいと思いますが、七月にちょうどヨーロッパへ視察に参りましたときに、ライン川を十年ぶりで見直したのであります。十年前に比べますと若干よごれているという印象を受けましたが、しかしやはり満々とたたえた水が、ローマ時代からほんとうに千何百年以上にわたって、静かに、スイスのバーゼルから発して西ドイツの平野を流れ、さらにオランダに入ってロッテルダムのユーロポートから北海に流れ込んでいる、その姿を見まして現地で二、三質問したわけでございますが、この流域はやはり何と申しましてもルール地方中心としてドイツ一大工業地帯でございます。そこから流れ出ます排水というものは相当なものであろうと思うのでありますが、やはりドイツ産業資本家と申しますか、企業経営者公害意識というものは予想以上に高い。先ほど山中長官答弁にございましたような国際的な意味ももちろんあるのでしょう。ドイツでよごせば下流オランダからクレームがつく、こういうこともあるのでありましょうが、ライン川がほんとうにきれいな水をたたえて流れておる。これを見るにつけましても、ドイツ企業公害意識がいかに高いかということを現地で説明されて、いかにもとうなずいたわけでありまます。その際に水の汚染対策として、私の記憶が確かでありますならば、五十数億マルク、相当な金であります、この金をかけておるが、この六割強は関係企業から特別税として徴収している、こういうことを聞いたわけであります。どういう名前であり、課税標準なりあるいはつかまえ方はどうなっておるのかと聞いたわけですが、それは必ずしも的確な答えがはね返ってはまいりませんでしたが、最近ではそのドイツルール地方の工業連盟の人たちも、あまりにも負担が高過ぎる、何とかもう少し連邦政府で出してくれてもいいじゃないか、こういうことで、かなり政府支出をふやさざるを得なかろう、こういう議論が出つつある、そしてまたその方向で連邦政府が予算措置を講じようとしている、こう聞いたわけであります。そういう実例もあるようでありますから、さらにこの辺のところにつきましても調査をしていただきまして、そして検討の上、何らかわれわれが見習うと申しますか、いいところがあれば取り入れてもいいのではないかという感じもいたしますので、そういう方向で御検討をお願いしたいと思うわけでございます。  大蔵省はだれも来ておりませんか。——それでは大蔵省からお願いします。
  11. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 お答えいたします。  先ほど松本委員のお話しになりました西独ルール地方の例でございますが、私どもも多少調べておるわけでございますが、必ずしも正確な事実とデータをいま手元にはいたしておりません。ただ私どもの調べました限りにおきましては、ルール地方では河川管理組合というものがございます。これはルール地方の工場主でございますとかあるいは関係の地方団体が組合を構成しておりまして、その組合が汚水処理プラント、酸素浄化池、貯水池等の建設、維持をはかっておる。そこでその排出いたしました汚水の量及び質に応じまして、一定の方式で料金を算定いたしまして、料金を受け取っておる、こういう仕組みになっておるようでございます。したがいまして、正確には税と申しますよりは、負担金あるいは料金ということではなかろうか、かように考えておるわけでございます。先生の示唆されましたこういう一種の公害税的な方法につきましては、いま私どもが調べております限りでは、世界各国まだやっていないようでございます。大体、こういうものが一般的に特定の地方あるいは特定集団に限局されておりまして、その集団に属するものの利害が明確に評価し得るという場合には、租税でやるよりはむしろ料金または負担金という形で徴収することが適当ではないか、現在の時点においてはかように考えております。
  12. 松本十郎

    松本(十)委員 なお、これとの関連におきまして通産大臣にお伺いしたいと思うのでございますが、過日の連合審査でローサルファですか、硫黄の脱硫化あるいは低硫黄の原重油の輸入等について、四十八年度でたしか一億七千万キロリットルのうち四千万キロリットルぐらいは低硫黄にできるんだとおっしゃったと思うのでありますが、その方向で御努力願いたいと思うのですが、はたしてそういうようになるんでしょうかということと、私の懸念いたしますのは、近畿地方を特にとってみますと、すでに両三年先の電力需給事情というものはかなりあぶないんではないか、いまにして発電所をどんどんつくらなければ、情勢によっては電力不足を招来するんではないか、こう懸念されておるわけでございますが、そのやさきに、あそこで発電所をつくりたい、ここに置きたいという計画が出ると、必ず地域住民の反発を買い、地方議会の反対等を受けまして、なかなか現実に立地がむずかしそうである、こういうことから考えましても、やはりこの低硫黄重油というものを早く現実にそういう方面に流せるような体制というものを促進していただく必要があるのではなかろうか。  さらに、またかなり牽強付会に相なろうかと思うのでありますが、先ほど申しましたような放出税的なものを電力会社が負担することによりまして、みずから廃棄の量なり、質なりをよくする努力をどんどん進めているでありましょうが、同時にやむなくある程度出ますものについては、これに対する負担をいたしまして、そうしてせめて地方の団体なり、あるいは地域の住民に対して、何と申しましょうか、免罪符とまではまいりませんが、先ほど長官の言われたようなところまではまいりませんが、最善の努力をしているんですということで、せめて緩和剤になるんではないか、こういう感じもするわけでございます。そういった脱硫問題と、またあわせて企業負担ということについて、通産大臣のお立場でどういうお考えであるか、伺ってみたいと思います。
  13. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 過日も一部申し上げたわけでございますけれども、エネルギー総合調査会の低硫黄原油部会で昨年いっぱい研究いたしました需給の見通しでございますけれども、一応昭和四十八年度における燃料合計の所要量を一億七千万キロリットル余りと想定いたしました際の低硫黄重油の供給量を、二千七百万キロリットル余りとしておるわけでございます。それで、しかしその節も申し上げましたように、この低硫黄重油は、あるいはうまくいってこれ以上入手できるかもしれませんが、何ぶんにもあなたまかせのところがどうしてもございますので、やはり脱硫に重点を置いていくべきではないかということで、同じ年度に直接、間接の重油の脱硫の見通しを四千三百万キロリットルぐらいと考えております。  なお、電力との関係で申しますと、そのほかに排煙脱硫あるいは原油のなまだき、LNG等が考えられるわけでございまして、石油業法の設備の許可をいたしますときに、私どもとしては低硫黄重油の入手の確保ということと脱硫装置を実行するということを条件にいたしておりますので、この点は、行政はある程度実質のある行政ができるようになっております。したがいまして、まずまず、ただいま程度のことは、確実に実行ができるのではないかと考えておるわけでございます。  ところで、電力事情につきましては、まさに御指摘のような問題がございまして、ことに関西電力においては、尼崎のかなり老朽化したものを動かさざるを得ないようなことが、これはやはり舞鶴等における問題が直接の原因でございますけれども発生いたしました。そういたしますと、それに対してはただいまのような低硫黄重油の確保をはからなければならない。これは当然そうしなければなりませんし、できることと思っております。  また、たとえば姫路等におきまして立地の問題が起こっておりまして、いろいろお力添えもいただいておるわけでございますが、これにつきましてもただいまのような諸施策をあわせまして、住民の納得を得るようにしていかなければならない。また、それは確実にできるという見通しを持っております。  なお、先ほど公租の徴収についての御示唆もございましたが、その点は私どもも研究をさしていただきたいと思っております。
  14. 松本十郎

    松本(十)委員 次に、再び山中長官にお伺いいたしたいと思いますが、過日の連合審査の経過を聞いておりまして、ときにちらちらと感じましたことは、公害の加害者は企業家である、企業家は即資本であり、総資本即政府である。被害者は小羊である地域住民であって、そうして地域住民は反体制の側について公害に取り組むべきだ、こういう論旨が、はっきりとは出ませんでしたが、聞いておりまして底流に流れておるやに受け取れたわけでございますが、私の感じますところでは、公害問題は、やはり党派をあげて対決すべき大事な問題である、こういうことでございまして、この半年、一年の間、あまりにもきびすを接して具体的な公害問題が痛ましい姿で出過ぎた。またこの犠牲者の姿を見ましても、もう同情のことばもないような実情である。そういうことからするならば、かなりモーショナルと申しますか、激しい角度から計画が出され、論議が展開された点はやむを得ないと思うわけでございますが、しかし、これはあくまでも警告、警鐘を乱打したという意味で歴史的な意義があったと思うわけでございまして、これから問題に取り組む姿勢というものは、あくまで党派を越えて、全国民的な課題としてこれに対決しなければならぬ、こう思うわけでございまして、そういう意味から今度改正されます公害関係の中央の審議会あるいは府県、市町村の審議会、こういったものの委員の人選のしかた、あるいはこの運営のしかたというものを、もっと市民的な基盤を持った意味での運営、広く言えば全国民的な立場での運営というものに特に配慮をお願いしたいと思うわけでございますが、山中長官の御見解をお伺いいたします。
  15. 山中貞則

    山中国務大臣 この問題の議論の出発点は、今日の状態について責任を持っております政府というものが、どういう態度をいわゆる国民的な要請に対して打ち出せるかという問題でありましょうから、したがって、議論のおおよその概念というものはいかに政府は心得るか、あるいは政府はどう受けとめて何をなさんとするかという議論になるのは、私はやむを得ないと思います。また、私たち政府はそういう責任を負っているわけでありますから、その議論に耐え、そしてまたその国民的な要望にこたえていく責任があると思います。ただ公害というものは態様がいろいろありますから、企業があったから、その企業関連した付近住民が被害を受ける場合もあり、私も例をとって申しましたように、自分被害者であると思っている人が握っているハンドル、そのハンドルで走る自動車排気ガスが結局は環境汚染の原因のそれこそ何百万分の一かになっているというような事態について意識はあまりない、あるいは廃棄物等の個人個人のレジャー地等における例もあげて、そのようなことも申しましたし、やはり国民的な自覚、国民的な努力というものが結集されていくべきことは、これはまた別な意味で私も同じだと考えるわけであります。  そこで、これから地方にそれぞれ必置制となる都道府県の公害対策審議会あるいは市町村に任意制として置かれる審議会等についての置かれ方でありますが、私たちとしてはやはり広くそういう意味の合意が得られるように、そして意義ある事業に、いわゆる被害者、加害者的な形の抗争の場と化しないように、しかし少なくとも被害を受けておる地域住民の代表と思われる人は参加するものでなければまた意義がないというふうにも考えておりますが、これは基本的な考え方であって、その都道府県によって、市町村によってそれぞれ態様が違いますので、それらのところはやはり都道府県におまかせするような形を前提として、そして行政指導と申しますかあるいは相談を受けた場合にはお答えするという基本的な姿勢をとっておるわけでございます。
  16. 松本十郎

    松本(十)委員 ただいま相談の話も出ましたが、審議会といえばどうしてもかた苦しくなるわけでありまして、臨時的に公害相談所、こういったものを地方自治体なりあるいは商工会議所あるいは商工会等の、いわゆる経済団体の中などに置きまして、地域住民の方々の公害に対する不満というものをその場でぶちまけていただいていろいろ話し合いをしながら、これをやわらげていただくとか、あるいは公害に対する不安感、これは現実公害に対する不安と同時に、何か日本じゅうが、公害列島というようなことばで象徴されますように、あとからあとから公害が出てきて、われわれの生きておる環境が破壊されてしまうのではないかというふうな不安感、この半年いろいろと騒がれ過ぎましたためのおそれもありましょうが、そういうものがびまんしているわけでございますので、そういったものも考え合わせて相談所のようなものを設ける、これを通していろいろ出てきます意見等も、またこれからの公害対策策定上の参考に資し得るんではないか、こう感ずるわけでございますが、そういった公害相談所のようなものをつくる、あるいはまた公害のモニターというふうなものを各地に置きまして、公害に対する国民全般、特に私の強調いたしたいのは、もの言わぬ国民の大多数の方々と申しますか、サイレントマジョリティを構成している方々のお気持ちをくみ上げるようなものができないだろうか、こういう意味提案をしてみたいと思うのでありますが、御感触を伺いたいと思います。
  17. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 松本委員のお考えの方向につきましては私ども全面的に賛成でございまして、こうやって警鐘を乱打するためにこの問題が全国民の関心となった経緯は、まさしくこの問題を取り上げる契機を与えたことになったわけでございますので、建設的な意味を持っておると思いますが、これが一時の感情の燃え上がりだけにとどめさせないためには、継続的に、合理的に、客観的に問題を把握してまいらなければならないわけだと思います。そうしてまた、それによって企業もルールを守り、住民もいたずらな不安を持たないような形で公害問題に対処していく、そういう末長い、恒久的な体制を立てなければならないと思っておるわけでございます。  そのためには、ただいま御指摘のように、都道府県においてもあるいは商工会議所、商工会等におきましても、公害についての正しい理解というものを持たせ、その正しい防除体制をとらなければならないのでございますから、御承知のように、すでに都道府県においてはそのような部局、体制の整備をしつつございますが、同時に地方の商工会議所等におきまして、主として中小企業を頭に置いておりますが、公害の相談室あるいは公害の指導員というようなものを置いてまいりたい、すでに十数カ所の商工会議所におきましては相談室というものを設けたわけでございますが、来年度もさらにそれを拡充してまいりますとともに、このための専門的な知識を持っております指導員の養成ということも、一部国の負担においてなさなければならないと考えておりまして、具体的な施策を御指摘のような方向でやってまいる所存でございます。
  18. 松本十郎

    松本(十)委員 確かにおっしゃるとおり、事は理性的に現実的に解決しなければならないと思うわけであります。通産大臣のお話を伺っておりますと、ニクソンも八月の教書で、環境問題はきわめて深刻で差し迫っておる、しかし恐怖やヒステリーにおちいってはいかぬ、問題はきわめて複雑であり、その解決は理性的、組織的なアプローチと努力と忍耐を要しよう、こう言っておりますが、これからの七〇年代に向かってわれわれやはり公害問題につきましては、党派をあげて、理性に即して前向きに現実的に対処すべきだと思うわけでありますが、あわせて相談所、モニターについての山中長官の御感触も伺いたいと思います。
  19. 山中貞則

    山中国務大臣 いまの通産大臣の御答弁の大体の方角というものは、やはり中小零細企業等がどういうふうにしたらいいかわからないという問題の御相談に応ずるという構想で、すでに具体化の方向をたどっておる事柄だと思いますが、一方やはり不特定多数の、いま松本君の言われるような一般の人たちがどういうふうにしたら私たちのこの問題は、どこで相談して、どこでさばいてもらえるんだろうか、そういう問題等に対して、たとえば交通の問題としては交通対策の相談所というものができておりますので、先般出発しました中央公害審査委員会、これが各都道府県等にも設けられることになりますけれども、ここらのあり方と勘案をしながら、一般の人々が相談に行く窓口というようなものを、さらにこまかく考えてみる必要があるのではないか、これは通産省のそういう構想とさらに相まって補完すべき事柄がまだ残っているのではなかろうかという気がしております。
  20. 松本十郎

    松本(十)委員 最近行なわれました青少年の意識調査、かなり権威のあるものだと考えておりますが、この結果によりますと、一番こわいものは何かという質問に対しまして、交通災害、次が戦争といっておりまして、公害はややランクは落ちておりますが、しかし二十前後の青少年でも公害問題については一割五分前後の人たちが、こわい、たいへんだ、こういう意識を持っております。その同じ青少年の人たちが現在の政治家に対して、半ば以上が政治家は真剣に問題に取り組んでいない——事公害だけに限っておりません。あるいは責任感を持っておらぬ、これは五〇%強でありますし、国民の気持ちをつかむ努力をしておらない、こういう答えが出たのが、これまた六〇%弱というところでありまして、かなり青少年のといいましょうか、若い人たちの政治に対する距離というものが、われわれの想像以上に離れておる、こういう感じでございまして、七〇年代、事内政に関しましては物価と並んでやはり一番公害対策ということが基本でありますので、そういうことにもかんがみまして、いろいろこれまでも政府は努力をしていただいたわけでありますが、さらに格段の努力と配慮を願いまして、前進をお願いしたいと思います。  せっかく厚生政務次官もおられますので、一言お聞きしたいと思いますが、最初に七〇年代、変化の時代で、生活価値観が変わってきた、こういう申し上げ方をいたしましたが、生活行政というものも、そういう変化に対応いたしまして、うしろ向きに出てくる現象を追っかけるだけではありませんで、前向きなビジョンのもとに大きく体系を打ち立てていただきたいと感じるわけでございますが、公害対策はその一環でありますが、厚生省としまして生活行政についてそういう角度からどういうお考え方をお持ちか、伺っておきたいと存じます。
  21. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 御承知のとおりに、この八月に公害対策本部が設置されましてから、従来厚生省として、公害行政の中で被害者サイドに立ち得べき官庁でありながら、調整権限を持たされておったために、非常に苦労をしておりましたその部分が一応消されたわけであります。そして今回基本法そのものの改正に伴い、正式に本部のほうに、その調整機能及び基本法を所管する省としての他省との折衝業務等のようなものを移管することができました。私どもはこの結果、厚生省として本来の仕事であるいわゆる被害者サイドに立つ行政というものに専念できる状態になったわけであります。そうした中で、今日各種のいわゆる公害立法というものをこの国会において私どもが御審議を願い、その結果を見て行政を行なっていくわけでありますが、私どもとしては公害行政そのものと同時に、あるいは現在医薬品あるいは食品等について多くの問題の出ておるときでありますし、むしろいわゆる内政の問題といわれる七〇年代の当初の年として、ある意味では厚生省が今日かかえておる問題が、全部世間に明らかになりました時点において、将来に対するレールをようやく敷きかけたという状況であります。今後私どもとしての姿勢と言われれば、本来の厚生省の姿そのものの行政に取り組んでいくという以外に特に申し上げることはございません。
  22. 松本十郎

    松本(十)委員 生活行政についてもこれから大事な課題をかかえておりますし、公害対策、繰り返り申し上げたようなわけでございまして、現状に即してひとつ——総理も百の論議よりも一の実行だとおっしゃっておりますように、要はこれから具体的にいかに予算措置を講じながら対策を実施していくかということにあろうと思うわけでございまして、政府側の奮起を期待し要望をいたしまして、私の質問を終わります。
  23. 加藤清二

    加藤委員長 次は、細谷治嘉君。
  24. 細谷治嘉

    細谷委員 今度の公害問題に対して、山中長官のたいへんな努力を認めるにやぶさかでありませんけれども、全体としてこれをながめますと、非常に重要な点で、あるいは個々の点で、今日の公害問題を解決するには不十分、不徹底であるという感じが強くいたします。  そこで、私は、問題を主として大気汚染法にしぼりまして御質問をいたしたいわけでありますが、質問に入る前に事務当局にお尋ねいたしますが、今度出しました政府法律案で正誤表か何かを出しておりますか。——正誤表を出してあるかどうかすぐわかるだろう。
  25. 山中貞則

    山中国務大臣 もし印刷のミス等の関係であれば、私どもの手元を離れた後のものでございますので、正誤表その他についてはちょっとわかりませんが、原案を作成いたしました最終段階において、正誤表を要すると思われる点はいまのところ気がついておりませんので、率直に御指摘願えれば幸甚だと存じます。
  26. 細谷治嘉

    細谷委員 この法案の中にある電気事業、ガス事業の適用除外の条項、何ページですかちょっとページはわかりませんけれども、適用除外の条項、それから政府から出ました法律案の参考資料、これはいずれも同じでありますけれども、ガス事業法に第二条第七項というのありますか。
  27. 加藤清二

    加藤委員長 これは通産省関係だ。荘君のところでわかってないか。——こういう時間は考慮しますからどうぞ。
  28. 細谷治嘉

    細谷委員 これは法案もそうなっておりますが……。
  29. 加藤清二

    加藤委員長 ちょっと待った。指名しておりません。——答弁できなければあとに延ばしますか。じゃあとに延ばして。
  30. 細谷治嘉

    細谷委員 内容の問題じゃなくて、この法案も、参考資料も、ガス事業法第二条第七項なんて書いてありますが、これは間違いですよ。ガス事業法には第二条第七項なんてないんです。第二項なんですね。法案もそのままになっているものですから、こんな重大なミスをしてはいかぬと思いますので、正誤表も出てないようでありますから、注意をしたいとこう思ったわけです。
  31. 長橋尚

    ○長橋政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの御指摘のガス事業法の第二条の条項につきましては、前回の国会におきましてガス事業法の一部を改正する法律が可決されまして直っております。そして従来の第二項が第七項に組みかえられているわけでございます。ただいま修正されましたものを取り寄せておりますが、さように御了解いただきたいと思います。
  32. 細谷治嘉

    細谷委員 そうしますと、第二条第七項というのは正しいということですね。
  33. 長橋尚

    ○長橋政府委員 さようでございます。
  34. 細谷治嘉

    細谷委員 私は法案を見て、ミスプリントではないかと思っていたら、それは正しいそうでありますから、これ以上申しません。  そこで、まず山中長官にお尋ねしたいのでありますけれども、今度の大気汚染の場合に非常に重要な問題として第二十七条に電気事業法とガス事業法の適用除外をいたしたわけでありますが、これは一体どういうわけなのか。長官と通産大臣に、あるいは厚生大臣に、時間がありませんから簡単にお尋ねいたします。
  35. 山中貞則

    山中国務大臣 すでに副本部長担当大臣としての基本的な考え方は、低硫黄重油確保が国際的にも国内的にも要請について完全に充足しきれない状態であって、国家的な確保課題であること、第二点は電力というものは、県境やあるいはそれらの発電所単位のものの供給だけではなくて、やはり全国土的な供給体制のものであるから、したがってその供給の円滑なる確保については、国である直接の担当大臣の通産大臣の所管であることが正しいこと等について申し上げたわけであります。具体的な問題については通産大臣のほうにお願いいたします。
  36. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほども御質問がございましたように、今日の公益事業、ことに電気においてさようでございますけれども、公益的な供給をいたします上におきまして、ある地方におきましては需給関係バランスが実はかなり不安定な状態になっておるわけでございます。明年度におきましてはさらにこれが不安定の度を増すのではないかということを心配いたしておるわけでございますが、その場合、発電施設につきまして非常な公害を起こすという場合に、かりにその施設をとめなければならないような事態があるといたしますと、私どもとしてはそれに代替する施設を動かすなり、あるいは修繕期間の調整を行なうなり、または他の地域からの供給を計画するなり、そういたしておきませんと、万一電力の供給が断たれましたときには、これはもう直ちに人の生命、身体に関係をいたしますので、そういう意味では広域的な見地から運用することが必要であろう。もし現在の電力の供給体制に何らの心配がなく、また低硫黄の原油の入手がきわめて容易であるということでございましたら問題はあるいは別かと思いますが、現実はそのようになっておりませんので、これは一元的に国の立場において運営することが必要である。しかし、そのための公害との調整規定をいろいろ設けましたことは御承知のとおりでございます。
  37. 加藤清二

    加藤委員長 次は自治省。自治省は次官が来ているはずでしょう。——いや、さっき呼んであるです。自治省事務次官、政務次官いずれでもよろしい。呼んであるです。——だめですそれは。もう呼んでから三十分の余になる。交代するときにそれはいけませんと言うておいたはずです。交代者がないのに交代するという手はないです。答えてもらいたい。呼びなさい。——ただいま、では間に合いませんよ。さっき、だから交代するときに私がそれはいけませんと言うたはずだ。——細谷君。
  38. 細谷治嘉

    細谷委員 いま通産大臣のお答えによりますと、電気の需給関係ということにウエートを置かれて適用除外にしたようでありますけれども、一体、発電所が人間の健康、生命というものから見て、この適用除外について厚生省としてはどう考えておるのか、お答えいただきたい。
  39. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 先国会から閉会中審査にかけまして、この大気汚染防止法の中に電気事業法あるいはガス事業法を取り入れることの是非について当委員会で御議論がございました当時、厚生省としては、私自身から電気事業法あるいはガス事業法の中から大気汚染防止法の中に現行なら取り入れることが望ましいということを申し上げた記憶がございます。しかし、私ども今日までのこの改正案の作成に従事してまいります間において、やはり電気及びガスというものの国民に与える影響その他を考えてまいりますと、この供給義務というものを全然ネグレクトしてこの法案を考えるわけにはまいりませんでした。ただし、それだけに私どもは今日都道府県知事の要請権あるいはその立ち入り検査権等を加えましたことにより、自治体として十分にその状況を把握することができるようになりましたので、今回の改正でおおむね私どもは対処していき得るものと考えております。  同時に、法制局等の見解をただしましても、その所在地の都道府県知事ばかりではなく、その影響を受け得る隣接の都道府県知事からもその要請権は発動できる旨の解釈が示されましたので、それならば電気事業法及びガス事業法にこの部分を残しましても、大気汚染防止法の適用除外にいたしましても状況に対処し得るということを考えまして、こういう法律案の体裁にいたしました。
  40. 細谷治嘉

    細谷委員 不満であるけれども、状況に耐え得る、こういうふうに答える以外はないではないか、この段階では。  そこでお尋ねいたしますが、石油系燃料から一年間に排出される大気汚染をする物質の量について、全国的にはどうなっているのか、東京都ではどうなっているのか、これをひとつお聞きしたい。
  41. 荘清

    ○荘政府委員 わが国の重油消費量のうち火力発電関係で現在消費しております量がC重油の大体四五%程度でございます。したがいまして、それに伴いまして、現在C重油消費量が全重油の約八〇%でございます。したがいまして、火力発電所関係だけでわが国全重油消費量の四割弱程度のものが消費されておるという状況でございます。したがいまして、亜硫酸ガスにつきましても鉄鋼業その他からも発生はしておりますけれども、最も大きな発生源として約四割程度の亜硫酸ガスの発生は火力である、こういう状況でございます。
  42. 細谷治嘉

    細谷委員 私の質問に答えてないのですよ。厚生省、あなたのほうでは、ちゃんと石油が燃焼された場合に大気汚染にどういうふうに寄与しているかという計数があって、それに基づいて試算しているでしょう。あなたのほうで言わぬなら、私のほうで数字を言いますよ。
  43. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 お答えいたします。  昭和四十二年度の東京都における発生源別排出総量及び分担率、これを申し上げますと、ただいま御指摘の硫黄酸化物、これにつきましては、自動車からの排出量が〇・九万トン、工場、発電所からのものが四十五・一万トン、合計四十六万トンでございます。  硫黄酸化物だけでよろしゅうございますか。
  44. 細谷治嘉

    細谷委員 酸化窒素。
  45. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 一酸化炭素で申し上げますと……(細谷委員「一酸化炭素じゃない、酸化窒素と言っているじゃないか。」と呼ぶ)窒素酸化物は、自動車から六・四万トン、工場、発電所から十一・三万トン、航空機から〇・一万トン、合計十七・八万トンでございます。  炭化水素、自動車から十七万トン、工場、発電所から〇・三万トン、航空機から〇・一万トン、合計十七・四万トンとなっております。
  46. 細谷治嘉

    細谷委員 いま数字をあげられたのでありますが、厚生省公害部の資料というものが出ております。それをおもな物質について申し上げますから、これで正しいかどうか。  酸化窒素は、東京都の場合に一年間三万五千トン、これはガソリン車。ディーゼルから一万三千トン。それから産業——石油ばかしではありませんが、十一万トン。この割合を申し上げますと、石油関係、いわゆる産業から出ますのが六九%となります。自動車等からは、ガソリンから二二%、ディーゼルから八%でありますから、おおよそ三〇%ということになります。  亜硫酸ガスは、東京都の場合は、産業関係から四十六万トン、自動車から、ガソリン車で二千六百トン、ディーゼルから二千百トン。そうしますと、石油系の産業から排出されるものが九九%、ことばをかえていいますと、亜硫酸ガスの圧倒的な部分は発電所等の産業関係からです。酸化窒素は、七割が産業関係、発電所等から出る、三割が自動車等であると、こういうことになりますが、この数字は正しいですか。
  47. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 そのとおりでございます。
  48. 細谷治嘉

    細谷委員 さらに申し上げますと、いわゆるパンといわれて非常に人体に有毒だといわれるアルデヒト関係が、産業関係から四一%出ている。——これはあなた、首を振っても、厚生省の資料なんだから。——これも正しいですね。  そこで、私がお尋ねいたしたいのは、山中長官でもいいのですけれども、光化学スモッグの犯人といいますか、引き金というのは一体何ですか。
  49. 山中貞則

    山中国務大臣 どうも化学の先生からの質問をやられると、私も答弁に窮するかもしれませんが、私どもがいわゆる知り得た範囲内について考えますと、当初は、柳町の鉛公害等の問題で、オクタン価の向上のための芳香族というものの大気中への濃度というものが、異常に高くなったというようなことで最初議論したわけでありますが、その後、川崎を中心とする工業地帯の排出物、こういうものが相当後になって、その当時のたとえば杉並の立正高校等の問題の場合のときのそういう日、並びにその前の日ぐらいの風速あるいは気流、温度、日照の強さ、それから地域における停滞、構成したオキシダントの層、そういうもの等から考えると、どうも川崎の上空の光化学スモッグを発生させた原因というものが非常に大きなウエートを占めているのではないかという、測候所その他等の全体の資料を総合してみると、そういう議論もあるようであります。しかし、これ以上、ちょっと追及して、あの時点において起こった現象は何であったか、何が犯人であったかについては、私自身はこれ以上わかりません。
  50. 細谷治嘉

    細谷委員 厚生省にお尋ねしますが、光化学スモッグでアメリカのロサンゼルスではたいへんな問題が起こっておる、たいへんな被害が起こってくる。この夏、日本でもずいふん騒がれました。そこでひとつ二点についてお尋ねしたい。  私が先ほどあげました酸化窒素なり亜硫酸ガスのロサンゼルスにおける産業関係なりあるいは自動車等の寄与率、酸化窒素の寄与率、そういうものは、どういう割合になっているのか。  第二点は、ことしの光化学スモッグでどれほどの被害が起こったか、これを明らかにしていただきたい。
  51. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 お答えいたします。  日本における窒素酸化物、炭化水素等の発生源別の分担率につきましては、先ほど先生もおっしゃいましたように、東京都の場合、窒素酸化物は、自動車から約三六%、工場、発電所等から六四%、これが大部分でございます。それから、炭化水素につきましては、自動車から九七%、ほとんど大部分が自動車からの排出ガスによるものでございます。  それで、アメリカのロサンゼルスにつきましては、これと対比するような意味での寄与率の具体的排出量なり、寄与率の具体的数字は、いま手元に持っておりませんので、御了承願いたいと思います。  それから、被害についてでございますが、本年六月から七月にかけまして、千葉県あるいは都内、埼玉等で各種の被害が報ぜられまして、まだ未確認のものもございますけれども、一応申し上げますと、六月二十八日、千葉の木更津付近で起こったとされておる光化学スモッグによる被害を受けた者が、約六千名でございます。それから、七月二十日、同じく千葉の市川から木更津にかけまして光化学スモッグが起こったその被害者は、約三百名でございます。それから、同じ七月二十日に埼玉で報ぜられました被害者が、四百名でございます。なお、七月二十一日、都内西部で起きましたスモッグにつきましては、具体的な数字が必ずしも確認されておりませんけれども、約五千名というふうに聞いております。
  52. 細谷治嘉

    細谷委員 第一点の、ロサンゼルス地区における各種汚染物質の主要発生源と寄与率、私が調べておりますから、申し上げますが、酸化窒素はガソリン車は六三%です。一酸化炭素が九七%。一酸化炭素のふえる一番大もとが自動車であるということは明確であります。そして酸化窒素は六三%であります。燃料の燃焼、いわゆる発電所、産業関係から出ますものが、酸化窒素は二九・八%、おおよそ三〇%であります。亜硫酸ガスは五三・六%、おおよそ五四%となります。一酸化炭素についての産業関係の寄与率はほとんどゼロであります。  こういうことを見ますと、酸化窒素については、ロサンゼルスの場合は、自動車が六三%寄与しているんですよ。日本の場合は、自動車は三〇%しか寄与していないんですよ。ロサンゼルスの場合には亜硫酸ガスについては五四%しか寄与していないんです。そして一酸化炭素については三割でありますから、ことばをかえていいますと、ロサンゼルスと日本では自動車と産業関係から排出する汚染物質は逆転しているんですね。わかりやすくいいますと、日本では酸化窒素に対する七割の寄与率というのは産業関係からしているんですよ。発電所がしているんですよ。光化学スモッグの原因というのは七割は自動車じゃないんですよ。発電所なんですよ。先ほど申し上げましたように、亜硫酸ガスについては九九%ですよ。そうでしょう。こういう実態を数字的にとらえてみても、一体総務長官、これで大気汚染防止法といえますか。七割以上、亜硫酸ガスでは九九%の犯人をとらえないで、法律の中では燃料を規制するだけ。それで大気汚染をやろうなんということはおこがましいじゃないですか。できますか。お尋ねします。
  53. 山中貞則

    山中国務大臣 私が全部お答えできるかどうかわかりませんが、私たちはそれをやろうという姿勢を示したつもりでおりますし、この大気汚染防止法の附則においても、いままで電気、ガス事業法等の目的にも公害概念がありませんでしたけれども、取り入れて、そしてそれぞれ都道府県知事の要請等にはとった措置を通報しなければならぬというようなことで、それがないがしろにされないように、いわゆる国家目的を二つあげましたけれども、そのために肝心の周辺地域の人々のそれらの適用除外された施設から排出されるものについて被害というものは適用除外、いわゆる被害の救済が適用除外、防止が適用除外とはならないような最大の配慮はいたしたつもりであります。
  54. 細谷治嘉

    細谷委員 最大限の努力をした、こうしか言えないでしょう。しかし連合審査でも問題になっておりましたが、大体光化学スモッグの七割の原因をなしておる産業、亜硫酸ガスの九九%の原因をなしておる産業、そういうものを適用除外にしておいて、大気汚染防止ができるとは私は思わない。通産大臣いかがですか。
  55. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 光化学スモッグがいかなる状況のもとに起こるかということは、必ずしも十分に解明されていないと思いますけれども、ハイドロカーボンとNOxが存在する場合に、一定の温度と光があって発生するというふうにとらえられておるわけであります。亜硫酸ガスにつきましても御指摘がございましたが、それらの発生源の一つが電力会社である。大きな発生源であるということは、私は御指摘のとおりであろうと思います。したがって、電力に対しましても、あるいは自動車に対しましても、排出の規制をするということでそういう現象が起こらないようにつとめてまいりたい、こう考えておるわけであります。
  56. 細谷治嘉

    細谷委員 通産大臣、この大気汚染防止法の中で附則の10に、ガス事業法の一部を改正する。その第一条の「確保する」というのを、「確保し、あわせて公害防止を図る」と書いてあります。そして、12には、電気事業法も同様でありまして、「確保する」と第一条に書いてあるのを「確保し、あわせて公害防止を図る」と書いただけなんです。あと何も改正してないんです。原子力に対する被害、これは原子力基本法。それに基づく被害予防については、人体に対する放射能の影響というものについては詳細に書いてあります。電気事業法やガス事業法、この場合一番大きな問題は電気事業でありますが、電気事業法をあさってみましても許可の基準とか、あるいは改善命令とかなんとかについては、公害のコの字もありません。人命の尊重とか人の健康なんという字は、一つもありませんよ。全く生産ペースであります。その点に手を触れないで適用除外ということは、私が現実に数字を申し上げたとおり。そしてそのほうはやったかというと何もやってない。これでは通産大臣、あなたがエネルギーバランスの問題から、また電気ガス事業というのは公益事業であって、人の生命にも関係する問題だからと言うけれども、大気汚染防止という意味においてはこれはもうなっちゃおらぬ、意味がない、こういうふうに申さなければならぬわけですが、どうですか、厚生省、これであなた自信があるというんですか。まあまあ何とかやっていけるというんだけれども。
  57. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 確かに御指摘の点に問題があることは事実であります。そして大気汚染防止法自体、従来窒素酸化物を取り入れておりませんでしたものを、今回の改正としてこれを加えたわけでありますが、当然私は電気事業法及びガス事業法が通産大臣の所管として行なわれております中におきまして、所要の監視、監督はしていただけるものと信じております。
  58. 細谷治嘉

    細谷委員 通産大臣、先ほどあなたは光化学スモッグの原因なり機構については明瞭になっておらぬというけれども、あなた基本だけはおっしゃった。何といいましても光化学スモッグの引き金は酸化窒素なんですよ。酸化窒素というものがある一定量に達しますと、日光の光の作用でこれが分解する。非常に反応性の強い酸素が生ずる。それによってオゾン等が生ずる。いろいろなオキシダントができてくる、こういうことなんでありますから、その場合に、炭化水素の存在というのが大きくこれを促進するということは、これははっきりしているんですね。そういういまたいへんな大きな問題になっておるロサンゼルスの問題、ことしたいへんな被害が出ておる光化学スモッグの問題を押えるには、自動車の問題じゃないんですよ。七割というのは、一番大きな問題は、これは何といいましても酸化窒素をよけい出す、自動車は一酸化炭素を減らそうとすれば酸化窒素がふえていく。酸化窒素を減らそうと思えば、一酸化炭素がふえるわけですから、一酸化炭素のほうはコンバーターか何かで炭酸ガスにしてしまえばいいんですけれども、高温で燃料を燃しておるこの発電所の酸化窒素は防ぐことはできないですよ。また、大気汚染防止法では酸化窒素は問題にしてないようですけれども、これじゃだめなんですよ。ですから、言ってみますと、酸化窒素さえなければ光化学スモッグが起こらぬ、こういうことになるわけです。亜硫酸ガスの問題はまあおいて……。ですから、光化学スモッグというのが来年も起こらないようにするためには、酸化窒素を押えるよりない。酸化窒素を押えるのはどこかといいますと、これは七割の寄与率を持っておる発電所を押えなければ……。どうしますか、お答え願いたい。
  59. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 問題は、こういうことであろうと思います。いま電気事業法のお話がございましたが、このたび私どもが公害関係のたくさんの法案を提出いたしましたのは、これによって勧告基準、排出基準というものを確立いたしまして、そして公害が発生しないようにしたい、こういう目的からでありますが、それらのものの中から、たとえば電気事業、ガス事業が全然これだけはいかなるものを排出してもいいんだというたてまえになっておりましたら、ただいまのような御指摘がございましょうと思います。事実はもちろんそうじゃないわけでありまして、それを電気事業法に書くか、あるいは今回のように各事業横断した法体系に書くか、そういう問題だと思います。私どもは後者をとったわけでありますが、ただ、それにいたしましても、電気事業法そのものの第一条の(目的)には、何らそれに触れるところがございませんから、それではいかにも手落ちであろうということで、第一条の(目的)を追加したわけでございます。  そこで、ただいま御指摘の光化学スモッグでありますけれども、たとえばNOxというものが規制の対象になっていないというのでありましたら、ただいまのような御指摘になりますが、今回NOxが規制の対象になるのでありますから、それをきちんとしていけば光化学スモッグの一つの原因は除かれる、こういうふうに考えるわけであります。
  60. 細谷治嘉

    細谷委員 通産大臣、あなた、この電気エネルギーというものを確保するということを前提で言っておりますけれども、あなたの部下であります通産省の化学工業局長が、「先駆者の自負と責任を」というこの記事をある新聞に書いております。その記事の一節に、こう書いてあります。これは地球エネルギーの縮小再生産に入ることを心配するエコロジーや脱産業に走る公害論と軌を一にする思想である、公害問題というのは産業優先ではいかぬのだ、やはり人命優先、生活優先、こういうことでなければならぬということで、この論文は、いまこれから問題になろうとする石油化学からの合成木材や合成紙や合成たん白について論じておるわけです。あなたの部下ですらここまできているのですよ、公害問題に対する基本的な考えは。それを先ほど来、いや何でもかんでもやるんだ、大気汚染防止法には入れないけれども、電気事業法なりガス事業法でやるんだとおっしゃるけれども、それについては単に数字を入れただけにすぎない。あとはおれたちにまかせい、こういうことです。しかも、大気汚染の一番決定的な亜硫酸ガスについては一〇〇%に近い、光化学スモッグの原因については七割に近い原因者である。これを大気汚染でとらえない、大気汚染法でチェックすることができない、こういうことになれば、これは山中長官、ざる法もいいところですよ。そう思いませんか。これでは副本部長としてつとめが果たせないんじゃないかと私は思うのですが、いかがですか。
  61. 山中貞則

    山中国務大臣 副本部長たる私個人の考えはございます。しかし、政府としては、提案をする際に政府が意見が一致していないというものの法案は、閣議という経過をたどりますから、提出できないということになります。したがって、その感触として責任がとれるかという問題になりましょうが、私は最大限にこれだけ物質も追加し、目的も明らかにし、そしてそれに対応する義務を通産省が今度は負わされたわけでありますから、たとえば都道府県知事から要請があって、それをとらないという通報をする場合であっても、なぜとれないかという理由をはっきり——いわゆる被害を受けておる状態というものの中で、住民に対しても納得できる対応策というものである、とれないならとれないという理由が、明示されなければならない。しかし、大体においてはとれないことはないのであって、とることになるのでありましょうけれども、そういう新しい方策をとることによって相当な前進が期待できる。私の念頭には、来年光化学スモッグが、少なくとも東京、大阪近郊等においては起こらないようにしたいという悲願がございます。したがって、あなたの言われるように、これの根源を断ちたいという考えは、いまも変わっておりませんが、根源を断つように一そう努力をしていくために、通産省のそれぞれの法制に従った運用というものを厳格に、きびしくやってもらいたいと念願しております。
  62. 細谷治嘉

    細谷委員 厳格に、きびしくやってまいりたい、——おそらく山中長官考えているのは、これはもう大気汚染の決定的な役割りを演じておる電気事業を適用除外にするということは、文字どおり大気汚染法は、これは改正しても意味がない、ざる法にすぎないという私と同じような考えに立っておると思うのですが、まあ、これ以上は答えられない。  ところで、法律案を見ますと、重要な点は燃料規制ということにウエートを置いたのでしょう。その燃料の規制でも、十五条の第一項、「政令で定める地域」、緊急時の措置、これも「政令で定める場合」、何もかも通産省が握っているわけですね。そして電気事業法については、原子力基本法のような公害問題についての丁寧な書き方は一言一句もない。あととにかく通産大臣のフリーハンドにまかせろ、こういうかっこうなんですよ。政令できめるのならば、燃料の規制だって県知事はできませんよ。緊急時の措置だってできないんですよ。こういうことなんですね。これで通産大臣、どうやろうといったって、大気汚染は文字どおりざる法、私に言わせますならば、第二条の(定義)から硫黄酸化物を特に取り出して煤煙を分けた、この辺から通産大臣のこの大気汚染法をざるにしようという意図が、この法律を通じて歴然とあらわれている、こういうふうに私は申さなければならぬと思うのですが、いかがですか。
  63. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 もし、公益事業排出基準を守らなくてもいい、公益事業はその例外であるというような法律の立て方でございましたら、ただいまのような御批判があろうと思いますが、そうではありませんので、電力会社といえども当然排出基準を守らなければならないというたてまえになっておりますことは、これは申し上げるまでもないことでございます。  それから政令というのは、通産省がかってにつくるのであろうと仰せられますけれども、むろんそうではございませんで、これは内閣において決定するのでありますから、こまかいことは法律に書けずに政令に落とすというだけであって、それは各省の権限をどうこうというものでないことも御承知のとおりであります。  それから硫黄酸化物につきましては、これは御承知のように、ただいま全国に八つの段階を置いて、基準を、低いほうから高いほうへ絶えず地域によって異ならしめているわけでございますから、それをもっておそらく行政は十分にできるであろう、もちろんこの場合には、冒頭に申し上げましたような実際に低硫黄の重油がもう自由に供給できるということでございましたら、この問題についても別の見地があり得たと思いますが、現実はさようではございません。しかも電力をとめるということは、国民の生命、健康に直ちに関係をするということも、もう疑う余地のないことでございますから、このようにいたしました。
  64. 細谷治嘉

    細谷委員 電力会社は、公然とこう言っておりますよ。公害公害ということで言っているけれども、電気がとまったら人の命もあぶないですよ、電気をとめるほうの公害のほうがたいへんですよ、こういうふうに電力会社は公然と言っておりますよ。通産大臣、これは何かといいますと、基本法に書いてある経済との調和条項、それを地でいっているのですから、直そうとしていませんよ。  そこで私は、山中長官にお尋ねしたいのでありますけれども、最近横浜方式をはじめといたしまして、都道府県や市町村で、企業誘致に関連して公害防止協定というのをたくさん結ばれております。これは一体どういうことが原因しているのか、その内容は一体どう考えているのか、これをひとつお尋ねします。
  65. 山中貞則

    山中国務大臣 企業が存在するためには、まず立地が定まらなければなりませんし、その立地を定める場合において、地域住民もしくはその地域責任者たる知事、市長等の承認を得ないことでかってにそこに埋め立てをして企業立地を定めるわけにはまいりませんから、したがって、自分たちの会社をまずつくらなければならない要請の前に、地域住民の代表たる知事ないし市長から、これの条件でなければならないというきびしいものを突きつけられた場合に、それを企業経営その他から考えても、なお自分たちはそれをのんで、そして立地しなければならないのだという意味において立地がなされておるのであろうと思いますが、少なくとも地域において、地域住民の健康を守るために、新規進出企業等について、あるいは新しい増設等について、地域住民の代表との間にそういう取りきめが円滑に結ばれて、相互の合意が成り立つということについては、たいへんけっこうなことであると考えております。
  66. 細谷治嘉

    細谷委員 けっこうなことでありますけれども、どうしてそうさせたのかということを政府自体考えなければならない。地方公共団体は、住民の生活と生命を守らなければならぬということで、必死であります。そういうことから、この公害防止協定というのを企業と結んでおるわけですが、その最たる原因は、地方公共団体昭和二十三、四年ぐらいに東京都の条例をはじめとしてずっと条例をつくってきた、そして三十年代になりましてから、これはたいへんだということで、あわてて政府あと取りをして法律をつくった、その法律企業のサイドに立って、地域住民の健康を守ることができないということがたくさん起こってきたわけです。そして地域住民の生命と健康を守ろうということで条例をつくりますと、いや憲法あるいは地方自治法十四条に基づいて、国の法律を上回ったようなことではだめなんだということでやってまいりました。今度大気汚染防止法はこの全国一律指定地域制度をやめますけれども、それではどうしても地方公共団体は住民の生活は守れない、これでは企業と協定をして、公権力によるわけじゃないけれども、これでなければどうにもならないというような形で、企業誘致に関連してこういう協定が結ばれてまいっておると考えなければならぬのであります。言ってみますと、政府あと取りをした法律はざるであり、穴だらけであり、これではとても守れないということからこういう事例がたくさん出てきたと考えなければいかぬと思うのですが、いかがですか。
  67. 山中貞則

    山中国務大臣 そういうこともございましょうし、またざるといっても、それをたんねんに紙で張り合わせる努力をすれば水もくめるわけですから、私たちとしてはできるだけの努力をして、そういう水漏れのないようにという配慮を一生懸命やっておるわけです。しかし、これは見る人の考え方角度、そういうものによって違うわけでありましょう。私たちにおいては、努力は一生懸命やっているということでありますが、その地域の問題は、あなたの言われたとおり、法権力でもって強制しておるわけではないのですから、その条件をのんで、そしてその条件のもとの合意が成立したということであって、御質問にはありませんが、法律とか条例とかいう問題の、違法とかなんとかという議論を越えた別な次元であるということで、一カ所においてそういうきびしい条件でのみしか許されなかったから、それが一番好ましい基準だといって、政府がその基準を直ちに採用できるかどうかということは、やはり実態をいろいろ見ながら、これから政府はこういうものを改定をするに遅滞なくやらなければなりませんから、そういうことについての弾力性と申しますか、絶えず事態に合ったものに改善していく努力をしてまいります。少なくともお話のように法権力で強制はしないのだ、しかし、それをのまなければその結果出られないのだからそれに従うのだということであれば、私としてはそういうかた苦しい議論にならない範囲において、その地域において、よりいい環境というものは保たれるということで、けっこうであると申し上げたわけであります。
  68. 細谷治嘉

    細谷委員 通産大臣にお尋ねしますけれども、最近の公害防止協定の事例を見ますと、地方公共団体と個別企業との協定の実例というのが圧倒的に多いのです。そして、その中には、公害によって責任が生じた場合には、企業がその責めに任ずるという無過失責任を内容とした協定すらも結ばれておる、こういう事態に来ておるわけですよ。この事態の原因は、大気汚染防止法をつくるといいながら、その重要な犯人を、依然として通産省が縦割り行政で、生産第一主義という形で守ろうとしているので、どうにもならなくなってこういう公害防止協定というのが結ばれて、そしてその内容はいまや無過失責任をも織り込まなければできない、こういう事態に来ているわけですよ。通産省の責任じゃないですか、こういう事態にしたのは。そう思いませんか。いかがですか。
  69. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほども電力のお話がございましたが、電力というものを、電力会社の企業の利益とかいうことと混同してはならないと思うのであります。私どもが守ろうとしておるのは企業の利益ではなくて、国民の生命、健康に直接関係のある電力の供給は、これは円滑でなければならないということを申し上げているのであって、そのことは経済あるいは企業の利益ということと直接関係のないことだというふうに考えております。  それから、ただいまいろいろ公害防止協定があちこちにできておりますこと、確かでございまして、私どもその内容を一々存じませんので、一般的な批評は差し控えますけれども、かなりきびしい協定を企業と地方団体が結ぶ、それはけっこうなことではないだろうか、その中で、いわゆる契約の形で、ある場合においては挙証を求めずに企業側が一定の責任を負う、こういうことがありましてもそれはかまわないことではないかと思います。
  70. 細谷治嘉

    細谷委員 通産大臣、あなたのいまのことばの中で、やはり通産省としては何といっても地域住民の健康を守らなければいかぬ、生活を守らなければいかぬ、そのためには公害も出さぬようにする、あるいは日常生活にも困らないようにする、別に企業サイドに立っているわけじゃない、こういう意味のことをおっしゃったけれども、それならば、そこまで来ているのなら、あえて今回の改正においても適用除外はする必要はない。私は、ずばり言いますと、今度の二条の硫黄酸化物をばい煙の中で特に有毒物質等から分けていった、そして一連の法律改正を見ますと、通産省ががっちり握っておって、私はこの大気汚染防止法は、現行の大気汚染防止法より実質上は改悪になる。都道府県知事に事務を一部委譲して、住民の生活を守るかのごとく見せておるけれども、事実は私は改悪だ、こういうふうにいって差しつかえないと思うのでありますけれども、山中長官、それから厚生省、どう見ておりますか。
  71. 山中貞則

    山中国務大臣 改悪では絶対にございません。一前進していることは間違いないと思っております。
  72. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 私ども、これが改悪だとは断じて思っておりません。少なくとも従前よりは相当以上に進歩しておると思っております。
  73. 細谷治嘉

    細谷委員 改悪だと思わない、こうしか答弁できないでしょう。それは、燃料規制の新しい条項等を入れて前向きであるように見せておりますけれども、大きな犯人をのがしてこそどろをつかまえようということなんですから、事実上は改悪ですよ。それが、電気事業とガス事業と、大気汚染というのはきわめてさい然と分けておるところに問題がある。そして本来ならばこういう防止協定を結ばなくても済むように、国はナショナルミニマムといいますか、最低の基準を示して、そしてその地域の気候なり風土なりあるいは社会的な条件、そういうものを勘案して、県なりあるいは市町村にその条例をつくらせる。基本法もそうでしょう。基本法の五条、国の方針に準じて社会的なあるいは自然的な条件を加味して条例をつくれと書いてあるわけです。四条と五条の関係はそうなっているのでしょう。にもかかわらず、移したかのごとく規定し、実際は政令で押えていこう、こういうことでありますから、こういう防止協定があっちこっちと出るのは私は当然だと思うのです。本来ならばこれは法律、それに基づいた条例、そういうものによって地方団体の生活が守られなければならぬ、こういう体制が一番望ましいと思うのでありますけれども、いかがですか。
  74. 山中貞則

    山中国務大臣 それは進出できればいいほうであって、東京電力の銚子とか、あるいは関西電力ですか、そういうもの等は立地すらできないという状態のところにあるわけでありますから、立地できるということの条件についてきびしいものがつくということでも、絶対必要な要件を企業側が満たさなければならない場合において、私はそういう事態は今後もあり得る。たとえ国のほうがかりにあなたのこれはよくできたというおほめにあずかるような内容のものをつくっても、さらにやはり立地させるかさせないかの議論、そういうようなものは残りますし、それ以上のきびしいもの、立地してみたところで、運営できないようなものの要求等はやはり出てくると思います。したがって、その意味においては、政府がきびしい基準をつくった、これならまあまあ全国の取りきめの内容も全部取り入れているわい、かりにそういうものができても、さらにまた新しい現象として起こってくるであろう。やはり国民の、自分たちの住んでいる地域環境に対する考え方というものは、相当きびしくなってきていることを政府も認識し、企業側もそれをはっきりと自覚しなければならぬ、そういうふうに私は受けとめております。
  75. 細谷治嘉

    細谷委員 時間がありませんから……。この問題については私がいままで申し上げましたように、大気汚染防止法ということで前向きに検討したというけれども、これでは大気汚染防止する前向きの姿勢はとり得ないのではないか。その決定的なガンは、重罪犯人を適用除外として見のがしておるところにあるんだ、こういうことでありますから、ひとつこれについては再検討をいただきたいということを申し上げてみたいと思う。  最後に、時間がありませんからひとつ山中長官にお伺いしておきたいのでありますけれども、法律はたくさん出したけれども予算措置はない。地方に対しては予算措置は次の通常国会だ、こう言っているわけですが、一点だけお尋ねいたしたい点は、厚生省の公害防止費用研究会等から厚生大臣に答申が出ておりますね。その答申の中に、国の財政計画の中に公害対策の明確な位置づけ、それをしてほしい。言ってみますと、予算項目の中に、社会保障費と並ぶような項目を新しくつくって、公害対策費という項目をつくって、そうして十分な予算措置をしていかなければならぬのではないか、こういう答申があります。こういう方針でいくつもりなのか、いままでのようにばらばらでわからないようにするつもりなのか、これをお尋ねしておきたいと思う。
  76. 山中貞則

    山中国務大臣 これは予算の組み方の形の問題で、そういう厚生省の審議会の答申等も参考にしていかなければなりませんし、一方大蔵省が予算を組みます場合の予算の組み方の形にもなりましょう。でありますから、いまのままでいきますと、各省がばらばらに要求してくる予算が、各省大臣限りで、最終的にバランスという国全体の公害対策の予算はこれでよろしいかという、そういう角度から見られないままに最終決定になるおそれがございますので、特に閣議で発言を求め、公害対策本部というものが、予算の要求の内容についても、査定のしかたについても、最終セットする場合においても、全体のバランスとして、いま言われたようなことを念頭に置きながら確認をするという方式をとることを関係各省大臣も了解をしていただいた次第でございます。
  77. 加藤清二

    加藤委員長 細谷君に申し上げます。あなたに与えられた時間が少なくなりましたので、結論を急いでください。
  78. 細谷治嘉

    細谷委員 終わります。
  79. 加藤清二

    加藤委員長 午後一時十分再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十五分休憩      ————◇—————    午後一時二十一分開議
  80. 加藤清二

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。藤田高敏君。
  81. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は、まず山中総務長官にお尋ねをいたしたいと思います。  今次臨時国会が召集をされ、本会議また連合審査、こういった審議過程を経て今日に至っているわけでありますが、この臨時国会に向けて国民の期待は、政府及び立法府である国会が、公害問題に対して具体的にどういう成果のあがる対策、立法を整備し、また今日イタイイタイ病なり水俣病なり、あるいは四日市ぜんそくに代表されるようなこういう公害患者に対しても、あたたかい具体的な施策を差しのべてくれることができるであろうか、こういう強い期待をもって、この臨時国会というものは国民注視の中に開かれていると思うわけです。しかし、本会議以来今日までの審議経過を見ますと、政府の基本的な公害対策に取り組む姿勢、特に公害罪に対する政府原案についての手直し、最も大切であるといわれておる無過失賠償責任制度が見送られる、次の通常国会に向けても、政府がこの問題について誠意をもって具体的に提案するかどうかも、今日までの審議経過の中では明らかでない、こういう一連の経過の中から、国民はこの国会に対し、あるいは政府のこの態度に対して、私は非常に大きな失望を抱いているのではないかと思うわけです。そのことは、新聞論調にすべて依拠するわけではありませんけれども、ここ二、三日来の新聞に代表される論調、特に公害病で悩んでおる人たちの意見、そういう人たちが国会に傍聴をした意見として出されておるものは、私はそういうふうに判断をするわけでありますが、山中総務長官は、この国会を通じての国民の反応というものに対して、どういうふうに把握をされておるかということをまずお尋ねをいたしたいと思います。
  82. 山中貞則

    山中国務大臣 各種法案の作成過程において、立案省いわゆる原局等が、それぞれ新聞等の御要諸等もありましたでしょうし、あるいは新聞のほうで抜いて書いた記事等もございましたでしょうし、その経過が比較的に今回つまびらかにされていたものでありますから、その過程を踏まえて、最終案というものが原案でありますが、その原案の前の素案等がこういう形であったのに、でき上がったものを見れば、これはおかしいではないかという批判が、今回ことにきびしいと私も思っております。これらの点について、何も法案ができ上がるまで秘密を守るべしということを逆に強弁しているのではありませんので、やはり私たち国民の批判を率直に受けとめませんと、これは午前中の質問にも出たわけでありますが、やはり国民が全部その気になる、いわゆる政府がやる気を出して法律をつくったならば、国民全体もそれを受けて立つのだという気に、企業者はもちろんでありますが、すべての国民がなることが必要な要素が多数ございますので、その意味において、今日までの本会議、合同審査等において傍聴された被災者の方々等が不満である、政府のいっておることは、自分たち自身のいま現在苦しんでいる問題と遠い話をしているではないかという御感想を持たれたことは、たいへん申しわけないことであるし、私たちはこういうことをしっかと受けとめて、それらの人々にも、たいへんおくれたわけでありますけれども、おくれてもなお最善を尽くそうとしている努力を認めてもらう義務があるというふうに考えておるわけでございます。
  83. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は、この傍聴をされた方、あるいは公害病で悩んでおる、また病床に横たわっておる、そういう人たちに代表される意見は、大同小異の形で国民の統一したと申しますか、共通したこの国会に対する一つの失望としてあらわれているんじゃないか。私はその点については、この公害問題というものに限定をするのではなくて、この失望は、すでに論議の中でも部分的に出てまいりましたが、今日の議会政治に対する不信感というものを助長する結果になるのではないか、この点を非常に私自身心配をし憂慮するわけでありますが、この政治不信に対する大臣の見解を承りたいと思います。
  84. 山中貞則

    山中国務大臣 これこそ、国民の総意によって選ばれた者が国民の権利をかわって行使するという形の議会政治の中において、その前提としての政治のあり方に対する不信ということは、最も避けなければならない要素であります。信なくして政治が立つわけはありませんし、国民の信がなくて選ばれた者が、自分たちは間違いなく国民の信託にこたえているなどと言えない。そういうことになりましたならば、議会政治は破壊されるし、崩壊の道をたどるおそれがある。私が午前中に、われわれがいまなさなければならないことは、当面のそのような問題と同時に、われらのあと生まれかわり死にかわりしていく日本民族に、どのように自分たちがこの国土というものを残していけるかということも念頭に置いているのだということを申しましたのは、そういうことも含めてでありますので、もし議会政治に対する不信等の声がありますならば、われわれはそれを取り戻すために、これはもちろん、一義的には政治の責任でございますから、われわれ政府の側が負うべきことでありますけれども、少なくとも国民から見て政府というもの、そして立法府というものが、どのような形で合意するのか、どのような形でその成り行きを定めるのかについて、最も真摯な努力を払うべきであると考えておる次第でございます。
  85. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 この基本的な問題に関連をして、具体的にお尋ねをしたいと思うわけでありますが、いま段階的に国民が、この公害国会、臨時国会を通して一種の大きな失望感を持ちつつある。この失望感を、やはり期待の持ち得るようなそういう臨時国会として有終の美をあげていきますためには、すでに論議をされてきておりますが、一つは、無過失賠償責任制をこの臨時国会の中で法制化することができないということであれば、少なくとも次の通常国会に向けては、挙証責任の転換問題とあわせて、政府は誠意をもって次の通常国会で無過失賠償責任制度を確立していく、こういうことを具体的に約束することが、いま私が指摘しておる問題の根本的解決の主たる条件になり得るのではないか、こういうふうに私は確信をするわけですが、これに対する見解をお尋ねいたしたいと思います。
  86. 山中貞則

    山中国務大臣 公害担当大臣としての範囲内でお答えいたしますが、私は、今国会でどのような形で法律が制定をされますか、国会の意思にまつところでありますけれども、その結論を踏まえて、さらに次に、この各種行政法規の取り締まり法規の中で無過失責任等も盛り込み得る範囲があるはずであるということで、これは厚生省とかその他いろいろ所管がございますが、食品とか薬品とか、あるいは毒物、劇物とか、そういうようなもの等、やはり行政法規の中で、原子力や鉱山法に定められたような無過失責任というものが求められ得るはずである。その分野は、私自身が総括する担当大臣としてさらに勉強して詰めてまいりまして、もし次の国会に間に合えば、そういうものは提案したいと思っております。  さらに一歩前進して、普遍的な形における無過失賠償の前提としての第一段階である挙証、立証責任の転換という問題についても、やはり法務省も努力をして検討すると言っておられますので、私は私なりに、政府姿勢の問題として、ただいまの御要望のような方向に努力を重ねていくことを怠ってはならないというふうに考えているわけでございます。
  87. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 抽象的な表現の言い回しとしては、この無過失賠償責任制度というものを普遍的に、民法の特例法としてつくるということがかりにむずかしいとしても、いわば原子力関係あるいは独禁法関係、あるいは労働基準法関係その他鉱業法関係といったような形で、すでに無過失賠償責任制を明らかにする単独法がありますが、たとえば今日、大気汚染の元凶といわれておる火力であるとかガスであるとか、あるいは重化学工業関係の、化学関係の産業部門に対して、単独立法で無過失賠償責任制度というものを確立していく、そういう単独法といいますか、そういうものをつくっていくというように理解をしてよろしいかどうか、この点、重ねてお尋ねいたしたいと思います。
  88. 山中貞則

    山中国務大臣 手段、方法はいろいろあろうと思います。いま言われたような、私も先ほど申しましたような、各種取り締まり法規の中で書き込んでいける分野、あるいはまたそれを普遍的に横断しまして有害、有毒な物質等をとらえて、それにかかるものについては、各種規制法の定めにかかわらず、これは挙証責任の転換なり無過失責任なりということに別な意味の指定をしていくというようなことも、またあろうかと思いますが、たいへん技術的にむずかしい法理論上の問題がありますので、これらの問題は、法務省からも民事局長に来ていただいておりますので、さらにこまかい問題等でございますれば、関係当局から答弁をしてもらいたいと思います。
  89. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は、無過失賠償責任の問題については、宇都宮における一日内閣において佐藤総理が言明をされたとき以来、この臨時国会に対処する政府の基本的な方針の中には、この無過失賠償責任問題をどう取り扱うかということは、政府部内においても一番大きな問題として論議されてきたと思うのです。法理論上の技術上の問題、あるいは今日まで、先ほど来指摘をしておるような単独立法との関係、こういうものを含めて立法技術上の問題は、私の判断によればさしてむずかしい問題でない、むしろ問題は政府自身がそういう腹になり得るかどうかという政治判断の問題だと思うのです。  私はあえてお尋ねいたしたいのですが、非常に困難な問題もあると、こう言われておるのですけれども、この臨時国会に至るまでの間いろいろ検討されてきた中で、どういう点が具体的にむずかしい問題として論議をされているのか、この点を総務長官にお尋ねしますと同時に、立法技術上の問題であえてこの臨時国会に間に合わなかったとすれば、これまたどういう点が非常にむずかしいのか、この点は法務省の民事局長にお尋ねをしたいと思います。  三つ目の問題は厚生次官にお尋ねしたいと思いますが、たしか園田厚生大臣のときであったと思いますけれども、いわゆる熊本の水俣病とか、あるいはイタイイタイ病、新潟の水俣病等に対して、俗にいう公害病として厚生省はこれを認定をしたわけです。なるほど公害対策の全般的な所管責任者としての総務長官の立場もさることながら、無過失賠償責任の問題について、最も積極的に、最も熱意をもって努力をしなければならないのは私は厚生省じゃないかと思う。それはわが国のような異常な公害が発生をして、社会的な犯罪とまでいわれておるような公害国になっておるわが国において、人命の尊重あるいは快適な生活環境保全、こういう観点からいけば、その中心的な役割りを果たすべき行政官庁は、何といっても私は厚生省でなければならぬと思う。この厚生省が無過失賠償責任の問題について、どういう積極的な考え方を持っているのか、この臨時国会に臨むまでの過程において、この主管省としてこの問題に特に力点を置いて努力をしなければならない厚生省自身が、どのような見解のもとに積極的努力をしてきたか、このことについてお尋ねしたいと思う。
  90. 山中貞則

    山中国務大臣 まず宇都宮の一日内閣において、総理公害一本にしぼって、当面の問題についての所信の表明をいたしました。これは政府の行事であるからといえばそれまでのことでありますが、やはり政府が公的にものを言います場合においては、少なくとも責任ある言動をしなければならない義務を絶えず負っておるわけでありますが、一日内閣の言行でも、総理が申しましたのは、公害罪については、臨時国会にという表現はしておりませんが、つくる、しかし挙証、無過失責任については検討を急ぐという表現をしておりますのは、そのときからすでに議論をいたしまして、そして臨時国会には間に合わないということは、その時点でも明らかであったわけでございます。そしてさらに私の手元で、各省の取り締まり法規をつくります際にも、たとえば毒物、劇物等は最もなじむものではないか、その取り締まり法に無過失責任というものが入れらるか入れられないか、そうすると、今回は毒物劇物取締法で顕著な一つのこととしては、運送する業者も登録制にするというようなことがございます。そうすると、運送途上等において起こった被害についてもはっきりとその責任は明らかになるのですが、その運送業者が無過失責任を負うべきものなのか、そういうものを製造販売するものが負うべきものなのか、そこら等の議論もなかなかありまして、最後に、これだけでもって一つだけとらえて、あるいは土壌汚染防止法でカドミウムだけとらえて、そしてこれを無過失責任だというには、カドミウムは何も土壌汚染防止法だけではないじゃないかという議論等もございまして、結局は、ずいぶん議論をいたしました結果、やはりこれは検討しようじゃないかということで残っておるということで、経過は以上のような次第でございます。
  91. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 いま全体にわたっては副本部長よりお答えを申し上げたとおりでありますが、私ども自体として、特にいま藤田委員からも御指摘のありましたような一連の事件における水銀、あるいは毒物劇物取締法等に記載されている毒物、劇物、あるいは今回の改正で追加して対象としようとしておる亜毒性物質、こうしたものは本来の無過失責任の制度になじむものであると考えて、今日までもまいりました。遺憾ながら今国会に間に合わなかったことは事実でありますが、厚生省としては、将来ともにこうしたものは無過失責任制度になじむものであると考え、同時にそういう方向へ努力をしてまいるつもりでおります。
  92. 味村治

    ○味村説明員 民事局長が法務委員会に出席しておりますので、私からお答えを申し上げます。  過失責任主義は、これは近代法の大原則でございまして、これは、私個人の自由とも関連をするわけでございます。そして実体的に考えてみましても、無過失責任主義と申しますのは、個人なり企業なり、ともかく行為者が尽くすべき注意を十分尽くしたのにかかわらずなお損害賠償責任を負わなければならない、こういうことでございますので、場合によっては不可抗力あるいは第三者の行為、こういうものによりましても責任を負わなければならぬというケースも出てくるわけでございます。したがいまして、無過失責任主義の立法ということになりますと、これはその行為の危険性とか、そういった高度の危険性をいろいろしさいに検討しなければならないというように考えられるわけでございます。従来、私ども法務省といたしましてもいろいろ検討はいたしましたが、その危険性をどういう場面に置くかということにつきましては、やはり具体的な公害の態様に応じて検討しなければならないというようなことで、それぞれの個別的な公害の態様を検討した上で個別的な物質あるいは行為、そういうものをとらえていくよりしかたがないんではあるまいかというのが、現在の私どもの考えでございます。
  93. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は、無過失賠償責任制度が法制化できない、確立できないようなことでは、イタイイタイ病あるいは四日市ぜんそく、水俣病といったようなこの種の公害問題を根本的に解決することができないのではないか。というのは、現在の民法によってこの賠償責任を明らかにしていくということになれば、これは少なくとも十年ぐらいは裁判では時間がかかるのじゃなかろうか。際には、こういう被害を受けた人たちは全く泣き寝入りの状態になるのではないか。したがって、この公害問題を根本的に解決していく法律上の問題としては、この無過失賠償責任を原則としては普遍的に明確化していく、このことにいわば最重点を置いて、今後の対策と申しますか、立法化を急ぐべきではないかと思うわけです。特に今日のように技術が高度に発展をしてきますと、原子力産業ではありませんけれども、放射性物質の問題等については、私は非常に厳格な注意を管理者としても払うと思うのです。しかし、幾ら厳格な注意を払っても、これは半ば不可抗力的に公害が起こる余地が、どの産業についてもたくさんあるんじゃないか。そういうふうに考えますと、無過失賠償責任の問題については、これは何を差しおいてもこの無過失賠償責任制度というものを、少なくとも次の通常国会に向けては政府責任においてお出しになる、確立する、こういうことを約束されることが最も大切であり、この臨時国会に課せられた政府としての最大の政治責任を果たすことになると思うのですが、重ねてその点についての所信をお尋ねをしておきたいと思います。
  94. 山中貞則

    山中国務大臣 これは合同審査会でも私申し上げましたが、やはり今日の係争中の実態等を見ても、あるいは予想される状況等を見ても、訴訟に持ち込まざるを得ない人々は大体不特定多数の一般市民であって、訴訟を起こしたほうの側で故意または過失の責任の立証というものは、金銭的にも、あるいは能力の面においても、あるいは時間等の面においても非常にむずかしい問題があろう。したがって、私たちとしてはそのような心情的な立場において、そういうことを十分念頭に置かなければならないことであると考えますが、政府としてそれをどうするか、いつまでにやるかということになると、やはり法務省という、法理論上のきちんとした仕訳が公害とはいっても、それは全部のばく然とした、公害とは何ぞやという議論からおそらく始まるのでありましょうから、どのような範囲、どのようなケース、どのような物質、どのような場合においてというようなことで、やはり法理論上のきちんとした前提が打ち立てられて——一般論としては、それがないと民法特別法というものはつくりにくいのではないかと思います。
  95. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私自身のこの主張が具体的に約束されないことを、はなはだ遺憾に思うわけであります。その点については連合審査以来、すべての質問者からといってもいいほどこの問題に触れておりますから、私は以上でこの問題については終わりまして、大気汚染防止法関係について少しく、この条文中心として質問をいたしたいと思います。  まず第一にお尋ねをしたいことは、立法形式の問題と規制方式の問題であります。これは先ほども、わが党の細谷議員のほうから質問があったかと思いますが、今回の改正法もそうでありますし、現行法もそうでありますが、規制対象になる基準が、法律規制対象にならないで、省令や政令にゆだねておる部分がほとんどであるといってもいい形式になっております。これは私は、具体的な技術を要する問題もありますから、この政令、省令にゆだねることがいけないということではありませんけれども、このような公害防止中心的な法律案としての大気汚染防止法の条項の中に、いわば白紙委任的な性格を持って省令や政令にゆだねることについては、私は立法技術上としても問題があるし、実態としても問題があると思うわけであります。少なくとも私は、この省令、政令にゆだねるといたしましても、この法律審議するこの国会の場に政令なり省令の具体案というものを、この法律の参考資料といいますか、付加して提案をし、われわれ自身がそのことについて十分審議をすることができる、そういう中身を知った上で政令なり省令に委任をするということでなければ、私は権威のある法律としてのていさいを、また意義をなさないと思うわけですが、これについての見解をひとつ聞かせてもらいたい。というよりも、むしろ私は、そういうものを大急ぎで、この国会に向けていまからでも出してくるべきではないか、その用意があるのかどうか、その点についてお尋ねをしたいと思う。
  96. 山中貞則

    山中国務大臣 原則は藤田君の言われるとおりです。そうあるべきものであります。したがって、政令にゆだねてある部分についてはこういうものであるという政令も、同時に参考資料として配付すべきものが原則であることは、私も異論はありません。しかしながら、今回の場合は、私が担当大臣に就任して三カ月間余りで各省のそれぞれの、自分たちの省だけで持っております法律その他を全般的に目を通しながら新しい法律をつくったり、あるいは新しい角度から時代に対応する改正をしたりなどいたしましたから、それに伴って、内容もやはり相当な前進したものの基準でなければなるまいということで、これはやはり主務省においては、それぞれ政令に何と何をうたい込むか、あるいはどのような考えを持っておるかについて、全然白紙ということはないわけであります。しかし、それを今国会に提案するには、各省間において、これでいいという確認がまだとれるに至っていないということでありますので、その点は、私もたいへん申しわけなく思っております。
  97. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 そういうことであれば、この国会に向けてはそういう資料は間に合わない、こういうことですか。
  98. 山中貞則

    山中国務大臣 連合審査会でもそういう答弁をいたしまして、ある省においては、自分たちはこういうことを大体考えているという答弁をした省もありましたけれども、これを確定した政令として閣議で決定をして、そうして国会の御審議の場に供するというのには、そこまで持ち上げるまでの議論が詰まっていないわけです。各省はみないろいろな感触を持っておりますけれども、それを最終的に政府として法制局の手順を踏んで閣議で決定したものが政令でありますから、それをやはり持ち込まないと、各省が考えているものをそのまま参考に供するというのでは、あとで違った場合はまたたいへんでございますので、そこらの点は実情をごしんしゃく願いたいと思います。
  99. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は、政府のこの種の法律の取り扱いについても、いま指摘いたしましたように非常に準備が不十分というか、われわれ自身はこの法律条文だけを見て、政府あるいは政府委員の説明を聞いてそれでわかる程度で、自主的に材料を持って具体的に検討をするということができない。そんなことで、この大気汚染防止法であれば、防止法についてわれわれ自身が国会議員としての責任をもって国会審議をやったという責任を果たすことができるかどうか。これは私はできないと思うのですよ。それは山中総務長官のように頭のいい人だったら、もう一から十まで一ぺん説明を聞いたらわかるかもしれないけれども、私どもはやはりこれは具体的なそういう裏づけ資料というものがなければこれは審議にならないと思うのです。そういう点ではあえて言えば、今日公害問題についても政府のとっておる態度はいささかというか、私は国会軽視のそしりを免れないと思うのですが、その点についてはどうですか。
  100. 山中貞則

    山中国務大臣 御批判は甘受いたしますが、しかし、やはり法律として政令にゆだねることが衆参両院で可決されました後に、その政令というものは手順としては閣議決定という手順を踏むわけでありますから、法律よりか先に政令が閣議決定されるということも理屈を言えばないわけでして、その意味では審議の参考に供するための努力をすることが原則であるということを申し上げたわけでありまして、へ理屈をこね回しているわけではありませんので、そういう手順であることは御理解願いたいと思います。
  101. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は大気汚染防止法に関する限りは同じ政令、省令にゆだねるにしても、その幅が非常に広過ぎるということが一つ。それと、なるほど手順からいけば長官が言われるとおりであることを私も理解をいたしております。しかし、こういうもので法律が通れば、政令としてきめていきたいというぐらいなものは当然この国会に向けて出されるべきではないか。将来に向けてやはりこの大気汚染防止法のみならず、私はそういう取り扱いをすることが真の国会審議にふさわしいのではないか。そういう観点から私は今回のこの取り扱いについてははなはだ不当であるということを私の見解として強く主張しておきたいと思います。  次に、規制方式の問題についてでありますが、これまた先ほども若干議論になったところでありますけれども、いわゆる大気汚染防止法の中身を見てみますと、大事な事柄がほとんどもう届け出一本でなされるという形になっている。もちろんいろいろ説明を聞いてみると、届け出の過程ではこの計画変更を命ずるようなことができるのであるから、実際の運営面としては許可制に匹敵するようなことになるのだ、こう主張される向きもあるようでありますけれども、私は公害防止というものを徹底していくためには、公害発生源である各種の産業が公害を発生させないような施設をまずつくることである、あるいは公害を発生させない燃料を使用さすことである、そういうことが具体的に計画の段階で、それを認可する段階で、許可する段階でチェックすることが最も大事じゃないかと思うのです。届け出をしたその事業を、届け出のとおり許可をした、許可をしてから公害が発生をしてくると、改善命令を出したりあるいは一時操業停止をする、これはやはり私は公害問題を根本的に解決していくという道筋あるいはその発想から考えれば、これはさか立ちしておるのではないか。これはやはり届け出制ではなくて、厳格な許可制にすべきではないかと思うわけでありますが、この点については産業政策との関係もありますので、総務長官並びに通産大臣の見解を承りたいと思います。
  102. 山中貞則

    山中国務大臣 原則論としてはそのとおりだと思います。ただ、何が何でも全部許可制にしたらそれで済むのかということもまた別に疑問がありますし、大気汚染防止法を例にとって言われた電気、ガス事業等であれば、これは原則許可というものはその電気、ガス事業法で備えられているわけでありますし、今回の汚染防止法の別途の定めによって、今回は直ちに直罰をもって規定がされるようになっておりますから、この直罰というのはやはり相当に——量刑はまた別な議論として、先ほど答弁もいたしましたが、直罰がとられるということは非常に大きな問題として私たち意識を持っておるわけでありますけれども、そういうことを考えてみて、原則全部何でも許可制でなければならぬというふうには私もちょっと考えかねる点がございます。
  103. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これはなかなかむずかしい問題でございます。今回法律案の改正をお願いいたすことによりまして、大気汚染防止法それから水質の保全と工場排水規制というようなものがいわゆる地区の指定制でなく全国制になりますので、こうなりますと、この新法成立後は、地区のいかんにかかわらず公害発生施設についてはその内容を審査し、必要があればその案の段階において改善命令あるいは問題にならないものは廃案を命ずる、これが全国的に行なわれるようになりますので、従来それが地区制でございましたので、そういう規制が働かない地区が相当にあったわけでございますが、今度はそれがなくなりますので、私は実態においては公害発生施設をチェックすることはできる。万一の場合はただいま山中長官の言われましたように、直罰もございますし、使用停止の命令もかけられることになりますので、まずこれで目的を達し得るのではないかというふうに考えております。
  104. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 山中総務長官答弁を聞きますと、原則的にはそうだ、こうおっしゃる。原則というのは私は文字どおり十中八、九までそうすることが望ましいということだろうと思うのです。そういう原則的に正しいと思われることが、なぜ具体的に法律の中で改善をされていかないのか。また、通産大臣の御見解を聞きますと、届け出制であっても実態としては十分チェックできるのだから、それでいいではないか、こうおっしゃる。しかし私は、この日本語の概念としては、届け出というものと、許可制というものと、承認というようなものについては、それぞれことばの上のニュアンスの違いがありますし、そのことばからくる強制力、拘束力、そういうものからいけば、私はやはり許可制であるべきであろう、実態が同じであればなおさらのこと許可制にすべきではなかろうかということであります。特に私は、この条文との関連において申し上げますと、七条は申し上げるまでもなくばい煙発生施設の設置の届け出になっています。で、このことについてこの十四条においては一項、二項、三項、四項にわたってばい煙処理の方法に対する改善命令、使用燃料の変更を命ずる改善命令、あるいはばい煙発生施設の使用停止を命ずる改善命令、こういうふうになっております。この十四条でわざわざこういう改善命令というものを具体的につくるくらいですから、こういう改善命令が実際問題として起こらないようにすることのほうが公害防止のたてまえからいけば大事な手だてでなければならぬ。そういうことが行政的にも立法的にも処置されてこそ、公害というものが未然に防止することができるのじゃないか。したがって、公害問題は結果が起こって対策を講じるよりも、予防の段階でその具体的な手だてをすべきだという観点からいけば、私は、当然この法律の改正にあたっては、いま私が指摘をいたしておるような諸条項については許可制にすべきであると思いますが、その点についての見解をあらためてお尋ねいたしたいと思います。
  105. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 確かにこれは非常にむずかしい問題であると、私自身も考えておるわけでございます。たとえば、さしずめすぐに考えられますことは、憲法における営業の自由との関係がどうなるであろうかといったような問題でございます。と申しますのは、今後製造業などについて考えますと、いわゆる煙を出さない製造業あるいは水を出さない製造業というのは、ことに最近のいろいろな福祉施設などまで考えてまいりますと、きわめて少なかろう。ほとんどあらゆるものが、そのどっちかに関係が出てくるのではないかと思われるわけでございます。そういたしますと、実際上は工場なり何なりを設けるんなら全部これは許可を受けなければならないということになってまいろうかと思います。それも考えようによりましては、公害発生という見地からある地区によってはどうしても必要だ。しかし、ある地区ならまあまあであるという公共の福祉との関連考えることになるのではないかと思いますが、たとえば首都圏あるいは近畿圏等の人口過密地域において、工場立地の規制をしておるといったようなこと、そういうところにおいては、公共の福祉との関連がもうかなりぎりぎりのところまできておるという考え方から出ておるのではないであろうか。私、しろうとでございますが、そういう観点がやはり入ってまいりますので、非常にむずかしい問題になってくるのではないだろうか。私ども今度全国区制にいたしましたから、まず実害を防いでいけると思っておりますが、御指摘のような問題が確かにある、非常にむずかしい問題ではあろうが、やはり研究していかなければならない問題としてあるという問題意識は持っております。
  106. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 通産大臣の御答弁を聞いておりますと、公害問題に関してはこれはすでに論議をされてきておりますように、公害対策基本法の改正の問題にも触れるわけでありますが、いわゆる産業との調和条項ですね、こういうものを削除したということだけで、人間尊重、生活環境保全優先の原則というものが出てないことば私どもが指摘をしてきたとおりであります。私は、口でどんなに政府公害防止をやかましく言いましても、具体的にこういう各条文の中にあらわれてきておる姿勢というものを考えると、これは率直に申し上げて産業過保護の思想なり、そういうたてまえというものが、依然として貫かれているのではなかろうか。やはり私は、たとえば電気事業法であるとか、ガス事業法であるとか、何々事業法であるという事業法の場合であれば、大臣がおっしゃるような思想的な背景というものがあってしかるべきだろうと思うのです。しかし、少なくとも大気汚染防止法であれば、これは公害防止立法ですから、公害防止立法の中には、思想的なバックボーンは公害をいかにして防止するか、そのためには届け出制がいいのか、許可制がいいのか、こういう観点から政府は対処することが大切ではないかと思うわけであります。そういう点については、これまたいやな言い方でありますが、政府部内においては、この種の問題についてはどうしても産業政策を推進する立場と、国民の生命なり健康をいかにして保持するかという厚生省との間には、私は若干の見解の対立があると思うのです。若干というよりも、ある意味においては深刻な対立があるかもわからない、そういう対立があってしかるべきだと思うのです。そういうたてまえからいきますならば、厚生省はこの種の問題についてどういう考え方を持っておるかということをお尋ねいたしたい。これが一つ。  時間の関係がありますから、問題点を二、三列挙して質問をいたしたいと思います。  次に、私は条文でいいますと、第四条の三項。第四条の三項には、「排出基準は人の健康を保護し、または生活環境保全するために必要な限度を越えないものであり、かつばい煙を排出する者に不当な義務を課することとならないものでなければならない」というような、きわめて念には念を入れたような条項がございます。これは、ばい煙規制関係では四条の三項、特定有害物質の中では十七条の六項、粉じん関係では十八条の六項に同じような条文が入っておるわけであります。私はなぜこの公害防止法律ともいうべきものの中に、ここまで企業の立場を考え条文を入れなければならないのか、どんなにきれいごとをいっても、ここに私は、公害防止法律案の中に依然として産業優先、産業保護の思想というものが具体的にあらわれてきておると思うのですが、これに対しての見解はどうか。これは私は少なくとも削除すべき条文ではないかと思いますが、これに対する見解を関係大臣から聞かしていただきたい。
  107. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 いま幾つかの点にありました最初に、四条三項の点を御指摘になりました。四条三項をはじめとして、いま削除すべきであるという御意見を吐かれました条文は、すでに全部削除して国会に提出をいたしております。お調べを願いたいと思います。  それからもう一つは、先ほど粉じん排出施設、届け出制、許可制の問題がございました。私どもも先ほどからの御意見、決して藤田先生の御指摘になりましたような点が食い違っておるとは考えません。ただ一つ申し上げたいと思いますのは、法理論の上からまいりますならば、許可制というものは一応全面的に一般に禁止をしたものの中から個別的に許可すべきものを免除するという考え方でございます。私どもとして、はたしてそういう考え方をとることが大気汚染防止法の中で望ましいものであるかどうかには、必ずしも先生と意見をともにするものではございません。
  108. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私のいま指摘したことは、具体的な修正の中で生かされておるようでございますから、この点は、いま答弁がありましたように、この条項については訂正が加えられておるようでありますから、次の質問に移りたいと思います。  次に、条文でいきますと、新たに今度の法律で出てまいりました大気汚染のいわゆる監視、測定についてであります。この監視、測定については、こういう条文が出ておるわけですが、問題は、いま全国的にこれだけ大気汚染中心に問題が起こっておる、しかし、これをどういうふうに測定をし、監視をし、そうして適切な対策を講じるかということが、当面の具体的問題として非常に国民が関心を持っておる問題であります。この点については、すでに先進県では、東京にしても、大阪にしても、非常にりっぱな公害監視センターというものができ、そうしてそれぞれの地域の大気汚染の実態というものがテレメーターで集約をされ、そうして適切な措置がとられるようになっておりますが、政府はこの法律の成立に並行して、全国的にはどういう監視体制というものをいまつくろうとなさっておるか、大綱的でいいですからその計画を示してもらいたい。  そのことに関連して、このような監視センター、測定器を設置していく場合の費用負担の問題はどういうふうにしていくか、その考え方についてもお尋ねをしたいと思います。
  109. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 最初に一つ訂正をさせていただきますが、先ほど修正したと言われましたが、政府原案そのものにないのでありますから、修正をしたのではございません。この点は最初に申し上げます。  同時に、現行の大気汚染防止法に基づいて、現在指定地域内二十五平方キロ当たり一カ所の自動監視測定点を設けております。この整備がようやく四十五年度現在で五四・五%の進捗状況を示しておったわけでありますけれども、今回御審議を願っております大気汚染防止法が成立をいたしました場合、当然この計画全体を練り直さなければなりません。それに伴って測定点その他の整備が急がれることは当然でありますが、補助率自体は、私どもは従来どおり三分の一の考え方をとっております。
  110. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 この監視センターの問題については、各府県に最低一カ所くらいは設置をして、そして亜硫酸ガスなり弗素なり、その他さまざまな大気汚染の状況というものが的確に把握できる、そういうものを時期的にも設定して、そして府県あるいは市町村を含めてこの体制というものを具体的に整備をしていく必要があるのじゃないか。その時期設定等についてはどういうふうに考えておりますか。
  111. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 いまの御指摘のとおりに、確かに今度は全国一律に考えます場合に、むろん各都道府県、それぞれ基幹になる基準点というものは設けなければなりません。ただ、これが来年度の予算編成の問題ともからみますので、私どもとしては、基本的な考え方としては、まず全国的な網を引いていくことを中心考えますが、全国的にそれぞれの府県に基準となるべき監視センター等を設けていく考え方をとってまいりますが、むしろこれは来年度予算設定と同時にその中で考えていかなければならぬ問題でありまして、いまの時点で、的確にここまでやれるということを申し上げる余裕はございません。お許しをいただきたいと思います。
  112. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 国民の立場から考えれば、こういう法律をつくることも大事だけれども、それ以上に、いま私が指摘をしておるような対策が早く確立することをみんなが希望しておると私は思うのですよ。そのことは、なるほど答弁としては来年の通常国会に向けての来年度予算との関係もある、かんべんしろ、こういうことになるかもわかりませんが、この法律をこういう新規なものとして出してくる以上は、さっきの政令事項の問題ではないけれども、こういう条文が出てくる以上は、少なくとも厚生省なり主管省としては、これに見合う裏づけとして、全国的には来年のたとえば八月だったら八月まで、あるいは五月だったら五月までに主たる県について、もうすでに大気汚染防止地域として現行法による指定をされておるような地域に対しては、どういうふうにやっていく、それに対しては所要財源は大体どのくらい要るんだということが、具体的な計画としてなされた上でこういう法律が出てこないと、法律は通ったけれども公害はなくならぬ、こういうことになると思うのですよ。そういう意味において、私はやはり来年の予算上の問題としてではなくて、具体的なこの裏づけ構想として示してもらいたいと思う。
  113. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 センターの設備は国で行なうもの、自治体で行なうもの、いずれもがございます。それだけに予算の中身にかかわらずいずれにしてもやらなければならぬ仕事でありますから、来年度主要各県において全部の一応のセンターの設置が終わるところまで私ども持っていくつもりでおります。
  114. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 ちょっと私時間を見間違うておりましてもうあと五、六分のようですから、次に質問を移したいと思います。私が一番中心的に質問をしてみたいと思っておったところがちょっと抜けてきたわけでありますが、簡単に質問いたしたいと思います。  それは先ほど細谷議員も指摘いたしましたが、結局、この法律から電気、ガスが規制対象からはずされています。先ほどの答弁を聞くと、いわゆる電気を供給していく、そういう事業の性格と公害防止との調和といいますか、関連というものを、むしろ、あえて言えば、産業優先、事業優先の御答弁であったと思いますが、私の主張からすれば、この種の公益事業であればあるほど、他の民間産業なり、他産業よりも一歩突出した形で公害防止責任を果たしていく、そういう性格なりあるいは国としての立法規制のワクの中に、電気とか、あるいはガス事業というものは、当然包括していくべきではないかと思いますが、それに対しての見解を承りたいと思うわけであります。  実際問題として電気事業法やガス事業法のなにを見てみますと、公害防止に関する条項というのは一カ所もありません。あえて実際の運営の中でやっていくというのであれば、私はこの電気事業法の中に、あるいはガス事業法の中に、この大気汚染防止法関係する公害防止の条項というものを挿入すべきじゃないかと思うのです。そのことができなければ、やはり電気、ガス事業についてはこちらでこの大気汚染防止法の対象として規制していくべきではないかと思いますが、その点についての見解を承りたいと思います。
  115. 山中貞則

    山中国務大臣 電気、ガスについての特異性については、通産大臣からもお話がありましたとおりでございますが、たとえばそうでないもの、現行工場排水等の場合には、ガス事業等も含めて、閣議で政令を変えて全部地方に委譲をいたしましたことは、すでに御承知のことでございますが、できるだけのものはやる。しかしながら、その場合においてどうしてもやはり公益性、原料確保等の問題からむずかしいという場合において、今度は次に、単なる目的公害という概念を入れるばかりでなくて電気、ガス事業法のそれぞれの中においてその目的を受けた新しい条項が生まれるべきであるという点については、今後私たち検討していく分野であろうと思っております。
  116. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 いま答弁がありましたように、なるほどこの条項の中では二十七条ですか、電気工作物あるいはガス工作物にかかる取り扱い条項として、知事が、ばい煙発生施設等に対して改善を命ずべきこと、その他必要な措置をとることを通産大臣に対して要請することができる、こうなっておりますが、私はやはり知事の見解というものと大臣の見解、あるいは地方自治体の考え方と国の所管省の考え方とは、必ずしも一致しないと思うのです。そういう点からいけば、これは条文どおりに解釈すれば要請することができても、その要請にこたえない場合もあり得ると思うのです。ですから公害防止を完全にしていくためには、私はやはり規制対象としては法律の中にガス、電気を包括しない限り、全くこれはざるというよりも底抜けの法律になるのではないか。そういう点であえてこの二つの事業大気汚染防止法のワクに入れるべきだと思いますが、その点についての見解を承ると同時に、時間の関係で最後に質問をいたしたいのでありますが、この事業所の中における公害問題を、組合活動の一環として対外的に発表したという理由によって解雇をされておる問題が起こっております。その事業所は京都の中郡峰山町丹波七百七十五、日本計算器株式会社峰山製作所でありますが、時間がありませんから簡単に申しますと、ここの事業所は基準法違反だけでも十八件、監督署の命令に従わず、再監督命令書によって注意をされておるような事業所であります。ここの首切り問額というのは、基本的には活動的な組合幹部を解雇するということがねらいであり、組合組織の弱体化をねらっておるのが中心でありましょうけれども、少なくとも表向きの理由は公害問題で解雇をしておるわけであります。私は、公害発生に関する技術問題等についてはこれは秘密はあり得ない。企業は株主に対して責任を持つと同時に、地域の住民に対しても責任を持つという社会的な責任があると思うわけであります。そういう観点からいけば、当然その会社で起こっておる公害、そのことによって事業所の従業員はもとよりでありますが、地域の住民に対しても稲作を中心とする農作物に対しても、相当大きな被害を与えておるわけであります。こういう問題について通産省当局はどういう手だてをしておるか、また労働省自身はこの種のいわば労働問題が発生しておることに対して、今日まで監督署としては手だてをしておるわけでありますが、労働省自体の労働行政として、この種の問題をどう指導をしていこうとなさっておるか。  さらに私は、時間がありませんから結論的に申しますが、この種の公害問題を対外的に発表したということで、労働者の基本権である雇用権が侵害されるようなことがあってはならぬと思うわけであります。その点については労働基準法の中に、あえて言えば公害問題によって労働者の雇用権は侵害をされないと、こういう具体的な権利保障の条項を入れる基準法の改正、もしくはやろうとすれば三党から出しておる環境保全基本法の中に(事業者責務)というところがありますが、そういう中に社会党を中心とする三党の考え方が出ておるわけですが、こういうものを政府の出しておる基本法の中に具体的に入れて、そうしてこの公害問題というものは内からも外からもみんながやかましく社会的に規制をしていくということが大切ではないかと思いますが、その点に対する労働大臣の見解を承りたいと思います。
  117. 加藤清二

    加藤委員長 藤田君に申し上げます。与えられた時間が来ておりますので、結論を急いでください。
  118. 山中貞則

    山中国務大臣 要請というのは非常に大きな意義がありまして、報告するとか、意見を申し出ることができるというのとは根本的に違います。要請は、その要請する根拠を持って、すなわち要請された大臣が所管しておるプロパーの法律においてとるべき措置をとることを要請するのですから、原則はその要請に沿って措置がとられなければならないという考え方があるわけです。  そしてもしそれがとられない場合には、先ほども申しましたが、なぜとれないかの理由を当事者にも、あるいは一般国民にも納得のできる明らかな理由でなければとらないという場合はあり得ないということがあるわけですから、要請というものは普通の場合とは違う相当な背景があるのだということを申し上げておきたいと思います。
  119. 野原正勝

    ○野原国務大臣 お答えいたします。  労働組合が公害問題等で広報宣伝活動を行なうことは、社会通念上正当なものである限りは、これは当然なし得ることであります。虚偽の宣伝等によりまして会社の信用を失墜させるということはなすべきではない。もしも労働組合の広報活動等が、正当な範囲を逸脱しておるというふうな場合は、就業規則の懲戒規程によりまして懲戒されることもあり得る。しかしまた、労働組合の広報宣伝活動が、労働条件の維持改善等の労働組合法第一条の目的達成のために正当な行為である限り、その行為を理由として組合役員を解雇する等の不利益を与える処分は、それはなすべきではないということに考えております。  いずれにしましてもこの峰山製作所というものの組合の三役の解雇の問題につきましては、ただいま裁判をしておるわけでございます。裁判所の判定あるいは労働委員会等が十分事実の調査をいたしまして、いずれ近く最終的な決定が下される、労政当局としましては、ただいまのところとかくの批評は避けたいと考えております。
  120. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 電気事業についての問題については、大気汚染防止法あるいはスモッグの規制その他も受けますし、県知事が立ち入り検査の権限も持っております。通産省といたしましては、そういう立ち入り検査その他状況がございまして要請があった場合には、その要請に従って最善の努力をする所存でございます。  もう一つは、いま労働大臣からのお答えの丹波の日本計算器峰山工場の件でございますけれども、状況が入っておりませんけれども、さっそく調べてやっていきたい。ただこれは良識の問題でございます。非常に遺憾だと考えております。
  121. 岡本富夫

    ○岡本委員 私は、いまの労働大臣の……
  122. 加藤清二

    加藤委員長 まだ許しておりません。橋本厚生政務次官答弁ありますか。ありませんか。藤田君に申し上げます。あなたの時間は超過いたしております。
  123. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 労働大臣答弁については、社会労働委員会でもう少し煮詰めたいと思います。  時間がありませんから、これで終わります。
  124. 加藤清二

    加藤委員長 次は、岡本冨夫君。
  125. 岡本富夫

    ○岡本委員 私は最初に委員長にお願いしたいのですが、それは御承知のように今度の法案は非常に各法案とも政令事項が多過ぎる。したがって、審議がスムーズにいきますように、一つ一つ事例をあげてやろうと思いましたけれども、したがって、各省の政令に対するところの、どういうようにやるということがまだ調整はされておりません。でも各省の意見というものは出ておるのだということが、山中長官から先ほどもお話がありましたから、各省の政令に対するところの資料をひとつ当委員会に、できればきょうじゅう、できなければあした午前中にでも出していただきたい、こういうように思いますが、委員長、いかがですか。
  126. 加藤清二

    加藤委員長 ただいま岡本君から申し出のありました政令ないしは政令に関する資料、これはきょうじゅうないしはあすの午前中と期限を切っての希望でございますが、それは提出できますか。
  127. 山中貞則

    山中国務大臣 ちょっと、それは各省が全部いま作業をしておる段階でございますから、きょうじゅうとか、あしたの午前中とかということでは、残念ながら御期待に沿えないと思います。
  128. 岡本富夫

    ○岡本委員 いまのは委員長に対する答弁だったのですけれども、そういうように、これから政令の中の内容を検討するということでは、法案によって非常に曲げられる。したがって、審議する過程においては慎重に一つ一つ読んでやらなければいかぬ。したがって、この会期中に全部やるということが非常にむずかしくなる。したがって、私は一歩譲って、政令事項の分だけは各省の考え方を出していただきたい、こういうことですが、いかがですか。
  129. 加藤清二

    加藤委員長 わかりました。それは後刻理事会を開きまして、理事会によくはかりまして、岡本君の希望がなるべく達成できるように尽力をいたします。
  130. 山中貞則

    山中国務大臣 こういうことではどうでしょう。資料と言われましても、結局は印刷物になるわけでしょう。それがあと関係各省や閣議前の法制局の調整等で変わりますと、また後退とか変わったとかという御意見が出るわけですね。だから質疑応答を通じて、この政令ではどういうことを考えているんだということ等の問答の中で、アウトラインなり、あるいは大体固まっているものなら、そういう方向で作業中であるぐらいの、そういう参考的なものを念頭に置かれるような質疑応答をされたらいかがであろうかと思うのですが、そういうことではいけませんでしょうか。(「それじゃいけないよ」と呼ぶ者あり)しかし、それはいけないといったってできないのですよ。
  131. 岡本富夫

    ○岡本委員 委員長、いま私が申し上げているのは、簡単にこの質疑応答を全部やれ、こういうのならば、これはほんとうにありがたい。確かに、私どもも資料がありますから、それに合わせてやれるわけでありますが、何ぶんにも、会期というものを考えたり、あるいはまた理事さんの皆さんの意見を考えたりすると、スムーズにこの審議ができなければならぬ、したがって、一つ一つ答弁を各委員がみなやっていると非常に長くかかるので、こうしたいということを私は申し上げているのですが、委員長いかがですか。
  132. 加藤清二

    加藤委員長 わかりました。あなたの希望が達成できるよう、政令または政令のできていない部分については、それに関する資料を、提出できるところからはしてもらう、そのことについては、きょうの委員会後の理事会にはかりましてこれをきめる、こういうことでいかがですか。
  133. 岡本富夫

    ○岡本委員 では、そういうことにしていただきます。  そこで私は、一昨日までの連合審査におきましていろいろと論点が出てまいりましたが、さらにこれを当委員会で明らかにして、そうしてほんとう国民が期待するような法案をつくりたい、こういう考えでございますので……。  そこで、法務大臣は、公害罪公害の抑止力になるんだ、したがって、若干不備なところもあるけれども、それよりも、公害罪で人を罰するというよりも抑止が目的だ、こういうお話でございました。  そこで、私どもが、やはりこの抑止の問題で、公明党、社会党、民社党この三党で提案しておりますところの「公害に係る紛争の処理及び被害の救済」、あるいは「無過失損害賠責任制度の確立」、こういうのも大きな抑止力になる、こういうことで、この問題からまず答弁をいただきたい。  その前に、農林省の食糧庁長官見えておりますか。——カドミウムの汚染米、これが玄米で一PPM以上は買い上げない、〇・四PPM以上は買い上げるけれども配給にしない、こういうように答弁がたびたび当委員会でもあった。しかし、さきおとといですか、兵庫県会において問題になっておりますのは、この汚染米が配給されておる。三十万トンのうち十五万トンも配給のルートに乗ってきておる。これは神通川の婦中町の米でありますが、これについての確たる答弁をお願いしたい。
  134. 亀長友義

    亀長政府委員 お答え申し上げます。  富山県から兵庫の方面に管理米、自主流通米等送られておりますが、御指摘の婦中町のうち、神通川流域の米は兵庫県には送っておりません。
  135. 岡本富夫

    ○岡本委員 そういうことないでしょう。ちゃんとこれは農林省兵庫食糧事務所に知らされたのが十一月十四日、県が汚染米であるという連絡を受けたのが十七日、はっきりとここで出ているじゃありませんか。あなたごまかしてはいけませんよ。
  136. 亀長友義

    亀長政府委員 富山県と兵庫県の間は、従来とも米の流れのあるところでございますが、自主流通米、管理米を含めまして、婦中町は非常に広い地域でございまして、そのうち神通川流域の地域もございますが、神通川流域の地域につきましては出荷をいたしておりません。神通川以外の地域につきましては、安全であるということで出荷をいたしております。
  137. 岡本富夫

    ○岡本委員 いずれにしても婦中町の熊野、宮川、あと二つほど、四つの要観察地域からの米でありまして、富山県の経済農協連の分析結果が出ているわけです。いずれにいたしましても〇・四から〇・九の米は買い上げても配給しないというのが、配給のルートに乗っておる、それについてもう一ぺん答弁してもらいたい。
  138. 亀長友義

    亀長政府委員 お答え申し上げます。  自主流通米に関しましては、先ほど私が申し上げたとおりでございますが、政府管理米の中に、兵庫へ持っていったものの中に疑わしいものがございますので、これは配給停止をして、現在一般米屋には渡しておらない状況でございます。
  139. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは県会でも問題になっているのです。あなたは事実を確かめたのですか。これはそんないいかげんな答弁ではいけないですよ。これで時間をとっているとあれですから、もう一度あなたのほうから直接調査して、そうしてきちっと報告をしてもらいたい。いいですか。
  140. 亀長友義

    亀長政府委員 私どもきょう御質問の御趣旨を伺いまして、県、食糧事務所等に、電話照会をして調査した結果、ただいま御答弁申し上げた次第でございます。間違いないと思いますが、念のため、もう一回調査をいたします。
  141. 岡本富夫

    ○岡本委員 一ぺんだれか派遣をしてしないと、この前農林省の福島県ですか、あの問題だって本省との行き違いがあったわけです。その点はひとつ要求しておきます。  次に、通産省の公害保安局長来ておりますね。——鉱業法におけるところの無過失責任状態、すなわち、どういうような状態だからこういう無過失責任がつくられたのか、これをひとつはっきりしてください。次には科学技術庁から、この無過失責任の問題を、どういう状態だからつくったのか、この二点について、両方から……。
  142. 荘清

    ○荘政府委員 鉱業法の無過失賠償責任の規定の立法理由でございますけれども、この規定が設けられましたのは戦前の昭和十四年におきまする鉱業法の改正の際に設けられたわけでございますが、明治以来、鉱山では煙の関係あるいは水の関係で非常に広範囲にわたる重大な農業等を中心にしました被害を与えてきておることは御案内のとおりでございますが、こういう歴史にかんがみまして、鉱業というものはいろいろ公害防止に努力をしてみても、その当時の判断といたしまして、どうしても近隣に農作物被害等を与えかねない、そういうやっかいな産業である、こういう認識が一つ基礎にあったというふうに聞いております。
  143. 大坂保男

    ○大坂説明員 御答弁いたします。  現在の原子力損害賠償法ができましたのは昭和三十六年でございますけれども、その前年に原子力委員会の委嘱に基づきまして原子力損害賠償専門部会が設置されまして、そこの答申が出ております。それによりますと、原子力の損害賠償につきましては、いまだ未知の分野もございますし、諸外国あるいは条約等の例も参照いたしましたところ、被害者に故意または過失を立証させることは酷な点もあるということで、被害者保護の観点から現在の無過失賠償責任制度を採用したものと聞いております。
  144. 岡本富夫

    ○岡本委員 よくわかりました。鉱業法は大体被害の歴史的関係から、それから原子力は未知の問題が多いから、こういう答弁であります。  法務省来ておりますね。——そこで質問をいたします。  一昨日、私は総理にこの場所におきまして、この無過失賠償責任問題についていろいろとお聞きしましたところか——島本君に対する答弁の中にも、これは私から答弁すると一生懸命やっているところの山中君が意欲を失ってはいけないから、こういう答弁がございました。また、私に対するところの答弁は、カドミウムや水銀はどうか、こういうように無過失賠償責任公害全般というのじゃなくて、特殊なものにやったらどうだと言いますと、それに対して総理は、国民に対してこう答える。カドミウムはまだ人体被害の調査ができてないからこれはまだ問題にならぬ。そこで、私はあとの水銀について聞こうとしたのですけれども、実は時間がなかった。したがって総理答弁は、カドミウムについてはまだ人体に対する影響度がわからぬからできないんだというのがこの無過失責任賠償問題の答弁でございました。  だから、総理が非常に信頼している山中長官にお答え願いたいのですが、では、水銀あるいは砒素、シアンというものは、もう人体に影響があるということははっきりわかっておるのですから、これは特定有害物質、こうなっておるのですから、まずそういう特殊な有害物質については、無過失賠償責任制度を適用することができるか、これをひとつお聞きしたい。
  145. 山中貞則

    山中国務大臣 先刻も答弁いたしましたとおりでありまして、そういうことも一つの手段である。すなわち、物質をとらえてそれを各種規制法を横断して、それにかかるものについては無過失責任あるいは立証責任の転換ということの法律ができるかどうかも含めて、あるいは各規制法の中でそれぞれ盛り込んでいく方法等も含めて検討をしていく。しかし、一般の民法の特例としては、先ほど法務省から答弁がありましたとおりで、法務省の見解というものがまず優先しなければなるまいと思っております。
  146. 岡本富夫

    ○岡本委員 じゃ、法務省から答弁を求めます。はっきりしてください。
  147. 味村治

    ○味村政府委員 先ほども申し上げましたとおり、過失責任主義は、これは近代法の大原則でございまして、その例外を認めるにつきましては、これは相当合理的な根拠が必要であるというように考えているわけでございます。  ただいま御指摘のように、原子力なりあるいは公害、こういうものにつきましては無過失責任主義というのが採用されているわけでございまして、これは一般的に危険であるという見地から、まあ非常に高度の危険性を持っておるという見地から、そういう無過失責任主義が採用されたものだと考えておりますが、やはりこのように個別的な行為、企業企業活動、こういうものに着目して無過失責任主義を採用する必要があるものは採用していくということではなかろうかと存じております。
  148. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうですね。あなたおっしゃったように、やはり人体に被害があるとか、いろいろ検討しなければならぬ、こういうことでありますね。  そこで山中長官、この通産省の鉱業法は、歴史的に農業被害とかいろいろなものがある。それから原子力のほうでは、これはまだ非常に未知数である。両方ともやはりこの被害があるというところから、その精神からできたと、こういうことです。  そうしますと、水銀だとか、シアンだとか、そういったはっきりしたものは、これはもうこの事例があるんですから、そういう特定物に限ってこの立法にしていいか。それでなければ、この私ども三党で出しておる二十五条、二十六条、こういうものがなければ今後のこの公害の抑止力にならない。そうなりますと、どうしてもいま審議しているあなたのほうから出された政府法案がほんとうにはっきりしなくなるのです。その点について、もう一度あなたから確実な答弁をいただかぬと審議ができない。
  149. 山中貞則

    山中国務大臣 これは先ほども申し上げたとおり、私たちはつくらないと言っているのではなくて、そういう方向でさらに鋭意努力をして、できるものはつくっていきたいと言っておるのでありますから、広い意味においては人の健康に有害なものとしては、やはりカドミウム等も含めなければならぬと思うのです。そういう意味において、ただし、どの程度の場合にどうであるかという問題が非常にむずかしい。そういうこと等や、たとえば各種規制法を横断するといっても、光化学スモッグ現象等について無過失賠償をだれが負うのかというような問題等は、これはいわゆる未知の分野であっても、因果関係すら未知であるという問題がありますから、だから全部すっぱりといけるかどうかについても問題がありましょうし、これはだから前向きで努力する、こう言っているわけですから、いまここでできないだけであって、間に合わなかっただけであって、これから検討を続けていきますということを申し上げているのですから、何もそうひどく岡本君の意見と私と違っておるわけではないと思うのです。
  150. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、あなたの御意見は、カドミウム、いろいろなものを見て、その因果関係の問題がはっきりしていないというものもある。じゃ、大体砒素とか、シアンだとか、水銀というのは、いままでの四つの裁判を見ましても、厚生省からはっきり原因究明しているわけです。そういうものは、そのはっきりした分から個々別に分けて、またたとえば物質別で分けるとか、よく政令できめるとかいいますけれども、これはそういうことはできましょうか。
  151. 山中貞則

    山中国務大臣 そういうことも念頭に置いて一つの方式であると考えております。
  152. 岡本富夫

    ○岡本委員 じゃ、これはそういう個々別に分けて、そうしてこういう無過失賠償責任制度を検討するということでありますけれども、われわれ心配いたしておりますのは、この現在の基本法がそのままいった場合、また何年もかかる。考えてみると、四十二年に私どもこの政府の原案を審議したことがあって、そして不本意だったけれども、環境基準やいろいろきめなければならぬということで修正をして通過をした。ところが、費用負担法、これは何年かかっておりますか。そういうことを考えると、非常に国民は不安なのです。したがって、大体そうした特殊なものに分けて、これだったらあなたも考えられるということでありますから、まあ今臨時国会では無理であれば、通常国会あたりにはそうした原案が出てくるか、この点をひとつはっきりしておいていただきませんと、この法案の通過に非常に差しつかえがある、こういうことでありますが、いかがですか。
  153. 山中貞則

    山中国務大臣 費用負担法も三年以上たっております。これもしかし通産、厚生両省だけで話し合いをさしていたのでは、あるいは今臨時国会にも間に合わなかったかもしれません。やはりここに対策本部というものができて、強力なる調整をいたしましたから、国会で受け取っていただけるかいただけないかは別の問題にして、悪臭防止法等も、やはり不可能といわれた法律をつくることができました。そういうことを考えると、やはり私たちは、なるべく現在の機構が持っておるいいところを生かして、そして国民が何を期待しているかに沿うためには、各省庁のそれぞれの意見の違いを乗り越えて調整をして立法していくという努力は、これも臨時国会が終わったからもう何もしないということでないのでして、やはり本部としてはその機構を最大限に生かして、そういう方向へ努力してまいりますから、臨時国会に出せと言われても、これは初めから、宇都宮の一日内閣のときから臨時国会には間に合わぬということは念頭にあったのだということを申しておりますので、やがて次の通常国会に間に合うかどうか、これは私たち一生懸命作業してみたいと思うのです。
  154. 岡本富夫

    ○岡本委員 どうもはっきりしないな……。  作業する、その場合は——いま私はなぜ食糧庁の話をしたかというと、要するにカドミウムも人体に影響があるから、一PPM以上は買い上げない、あるいは〇・四から一PPMの間は配給しない、こういう政策を農林省がとっているわけですから、カドミウムがやはり——きのう佐藤総理が、カドミウムは人体に影響があるかないかわからぬというようなことを言ったのは、これは間違いですね。こういうふうに私は聞いた。これは人体影響の関係がわからないから入れられないのだと言ったのは、これは間違いじゃないですか、どうですか。
  155. 山中貞則

    山中国務大臣 総理が言われたのは、カドミウムが有害な物質でないと言っておられるのではないのです。カドミウムをつかまえる場合に、それがどの程度のときにどのような状態になるのかという、そこのところが科学的にいまのところきちんとできない点があるということを言われたと、私はそばにおって聞いておりました。
  156. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、いま厚生省から聞いてもいいのですが、時間がありませんから、これをやっていると……。  そうすると、厚生省が要するに白米で〇・九PPM、これは少し安全値を見たといっておりますけれども、しかし、人体に影響がなければそういうことをきめるわけがない。すでに神通川にああしたところが出ております。したがって、これはカドミウムもその検討の中にあなたは入れる考えがおありかどうか。無過失賠償責任の中に入れるかどうか。これもひとつお聞きしたい。
  157. 山中貞則

    山中国務大臣 先ほど私は、カドミウムを含めて検討すべき対象としておる旨は答弁いたしております。
  158. 岡本富夫

    ○岡本委員 じゃ、これは検討検討といって長年かかっては困りますから、あなたも実力あるところの、特に総理から山中君の意欲をそいではならぬというような答弁もあるくらいですから、絶対にひとつ通常国会には出すのだという決意を持っていただきたいのですが、いかがですか。
  159. 山中貞則

    山中国務大臣 ここで出すのだと言っておいて出なかったら、また私の責任になります。私は、なるべく早くつくりたいという熱意をもって一生懸命やっているわけですから、だから総理は私の熱意をそぎたくない、こういうことを言われたのでしょう。だから、内閣一体となって取り組むということでありますから、私の意思が受け入れられないことはないと私は信じております。
  160. 岡本富夫

    ○岡本委員 まあ、あなたの意向を取り入れないことはないとおっしゃったから、そのくらいのところで、次の通常国会には出していただくというように努力していただく、あるいはまた必ず出していただくということを要求して、次に進みたいと思います。  そこで次は、通産省の政務次官来ておりますね。先ほど法務委員会におきまして、法務大臣から、公害罪が成立しますとその責任というものがその工場の一番最末端にいってしまう、それでは非常にぐあいが悪いから、どうしてもやはり企業公害責任者を置いてもらわなければならぬ、こういうことで通産省にもお願いするのだというようなことの答弁がありましたが、通産省としての決意、あるいはまたどうするかということ。これは実は私ども政策審議会、要するに野党三党と、それから与党の政調会長との会談のときにもこれはそうすべきだというようにお互いに意見が一致したわけですが、この点についてひとつ……。
  161. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 この問題につきましては、通産省の諮問機関でございます産業構造審議会の中に公害の部会をつくりまして、各界の委員を選びまして、県知事では千葉、岡山、市長さんには横浜市長さんなどにも入っていただいて、八月から検討を重ねておりますので、今年以内にその答申が出ると考えておりますので、その答申を尊重して考えたいと思っております。
  162. 岡本富夫

    ○岡本委員 答申も答申でしょうが、これも野党、与党大体一致したことですから、必ず入れていくのだ、つくっていくのだという前向きの決意はありますか、どうですか。
  163. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 そういうつもりでございます。
  164. 岡本富夫

    ○岡本委員 次に、先ほど野党三党の環境保全基本法の二十五条、この中に、紛争が生じた場合に裁定権がなければならない。一昨日も実は総理に私は、加害者と被害者、すなわち加害者は企業になっておりますが、この力関係考えると非常に被害者のほうが弱い。総理はそれは非常に心配しておる、こういうやさしい御答弁でありました。心配しておるということは、この紛争処理法案の中に裁定権が入ってないからぐあいが悪いのだ、総理自身も非常に心配していらっしゃると思うのです。  そこで、この裁定に類するところのものがいままであると思うのです。その中で、一つは運輸省の海難審判庁、こういうものがあると思うのですが、海難審判庁来ておりますか。——審判庁長官から一言、ひとつ機構、いろいろなことを答弁してください。
  165. 藤原重三

    ○藤原説明員 お答え申し上げます。  いま御質問なされたのは、海難審判庁の機構というようなことについてと存じますので、御説明申し上げることにいたします。  海難審判庁は、運輸省の外局として、運輸大臣の所轄ということになっておりまして、二審制度を有する海難審判機関でございます。その組織、それから権限は、海難審判法で定められておりまして、中央機関といたしましては東京に高等海難審判庁がございます。それから地方機関といたしましては函館、それから仙台、横浜、神戸、広島、門司、長崎の七カ所に、それぞれ地方海難審判庁が設けられているわけでございまして、なお、事件の申し立て機関といたしましては、海難審判理事所が各海難審判庁に対応してそれぞれ設けられておるわけでございます。そういう組織になっております。
  166. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、この人的構成、これは聞くところによると、私どもの調査によると、船長だとか、あるいは海のことに非常によく通達した方、こういう人たちがこの審判官になっておるそうであります。  それからいま二審制度だとおっしゃったのですが、地方にあって、中央にあって、それから以降はおそらく裁判所に移行するのだと思うのですが、裁判所にいった場合には、いままでの私の調査によりますと、海難審判所で大体結論が出た、裁決したというものは今度それが待っておって、もしも事件があれば検事が起訴をする、こういうようなシステムになっている。なぜかならば、普通の裁判長あるいはまた裁判官、弁護士、こういうものは海のことがわからないから、しろうとであるから、こうしたものができたと思うのです。  そこで、山中長官にお聞きしたいのですが、いま話したとおりでありますので、実は公害裁判ということになりますと、裁判所も、裁判所の判事あるいは裁判長も、それから弁護士も——これは中谷さんみたいな弁護士だったら非常にわかると思いますけれども、こういうことがわからない。まして技術的なことがわからない。こういうことでは的確な裁判が非常にむずかいのじゃないか。したがって、いまやられているところの四つの裁判、四大裁判というのは、一昨日も私言いましたけれども、厚生省から原因究明をした。それによって裁判に移行してあるわけであります。したがって、この公害にかかる紛争処理法案をつくるときに、山中長官は、どうしてもこの問題でぐあいが悪いときは、和解の仲介、あるいはまた調停でぐあいが悪いときには、裁判へいったらいいんだ、こう簡単におっしゃったのですが、その後、私これをずっと調べておりますと、裁判へいきましても、結局、裁判官も弁護士も公害問題はしろうと同士のわからぬ者同士がやるわけですから、原因の究明がなかったらこれは裁判にならない。したがって、いまの四つの裁判は、これは厚生省の善意で原因究明されたので、小さな、政治問題にならないものは、これは原因究明ができないから裁判では明確な決定ができない。その点を考えますと、厚生省にこうした海難審判所に準ずるようなもの、公害審判所——イギリスにおいてすでにあります公害裁判所のようなシステムにするか、それともここに、裁定を入れるか、二つに一つにする、これが大きく公害の抑止力になるのじゃないか、また被害者の救済になるのじゃないか、私はこういうように思うのですが、この点について山中長官の決意を伺いたい。
  167. 山中貞則

    山中国務大臣 これは前国会からあるいは今国会に入っても私答弁をしております。ただ前国会で、紛争処理委員会で片がつかなければ裁判にいけばいいんだというふうに突っぱねたような言い方をしていないので、まるい卵も切りよで四角でございますから……。私が言っておるのは、憲法で何人も裁判を受ける権利を剥奪されないと同時に、行政においては終審としての裁判が行なえないという制約がある。であるから、この私たちが発足させた公害紛争処理法にのっとっての中央公害審査委員会の権限は、単に賠償額の確定について双方をあっせんして努力するということばかりではない。そういう行為の差しとめ請求とか、あるいはそういう発生の防止施設をつけさせる請求とか、そういうもの等も含めてそれらの紛争処理をしようというのがねらいであって、そこで裁定制度をかりに導入してみても、いまそれに不服であればそれを縛ることはできないわけですから、やはり裁判所にいっちゃうということになるわけであります。この点私はこだわって言っているわけじゃないので、出発したのが最近でございますから、具体的な案件もぽつぽついま、受けつけるケースと受けつけられないケース、地方に回すケースといろいろ裁いておりますが、相当活用されそうであります。これらの実績を踏まえてみまして、これはどうしてもやはり裁定制度まで持ち込むべきである、そういう結論が体験値から生まれましたらそこまで踏み切ることもあり得るというふうに考えておるわけでございます。
  168. 岡本富夫

    ○岡本委員 私ども三党も非常によく調査しまして、結局和解の仲介というのは両方が大体これで和解しようという場合、その中には、きのうお話しましたように非常に生活に困って、企業のほうから札びら見せられて、もうしかたがないというので不本意ながら同意しておる、そういうふうなかわいそうなものがありますね。それはほんとうの和解の調停ではないと思うのです。もう一つの仲裁のほうは、加害者といったらおかしいですけど、被害者が申し立てても、一方の加害者のほうの同意がなければ実は紛争の処理ができないようになっているということはあなたもよく御存じだと思うのです。そうしますと、加害者のほうがそれはもう知らない、こういうことになりますとできないのです。したがって、これはどうしても裁定権がなければならないという結論に達して、私どもはずいぶん長い間かかってこれを審議しまして、一つ一つ見て、そして確かめた上で三党できまったわけでありますけれども、この点についてひとつはぐらさずに、周囲のいろいろな力関係被害者と加害者の力関係、いろいろなものを見て、ほんとうに紛争の処理、被害者の救済、これをやろうというあなたの御決意がなければ、ずっと見てから、こういうことになってしまうと私は思うのですが、もう一度その点についてひとつ御答弁いただきたい。
  169. 山中貞則

    山中国務大臣 私は、裁定制度を持ち込んじゃ絶対にいけないということは申しておらないわけでして、そこまでいくべきかどうかについてもう少し体験を積ましてほしいということを言っておるわけです。ただ、まあ社名をあげていいでしょうが、NHKが二、三カ月前に、全部個人の責任者の社長ないしそれに代行する人々の名前がはっきり入った全国の大手百社の企業者意識調査をやっておるのです。そのときにたいへん興味あるデータが一つあるのですが、それは裁判に持ち込んだら、とことん手続やその他でがんばって逃げ回っているように見える、企業というものが心理的にはどういうことかというと、裁判に持ち込まれたら反社会的な企業であり、ときには殺人企業というそういういい方もされるわけですね。そうすると、新しいその会社の名前による企業立地もなかなか困難になってくるし、あるいはまた新卒を採用しようと思っても、そういう会社には、どうもイメージが悪くなって来なくなったというような実例等も聞いておりますが、そういうようなことで、当事者間で話し合いがつけばそうしたいというのと、私たちのいま持っておりますような紛争処理審査委員会等の第三者機関の仲裁等に従いたいというのが実に九〇%を占めているわけです。裁判に持ち込んでもやむを得ないというのは、一〇%以内ですね。というところを見ると、企業責任者もみんな裁判だけは避けたい、話し合いで片がつくものならそうしたいという気持ちが出ておるものと私はそれは見たわけですが、そういうことを踏まえて中央公害審査委員会が出発するときに、これは実はたいへん多忙な繁忙な審査会になるかもしれぬ、ぜひひとつ練達たんのうな経験豊富な委員長はじめ各常任、非常勤の方々六名で、これを、国民のためにたいへんいい機関ができたと思うような運営をしてほしいということをお願いをしたぐらいでありまして、そういう意味からいって、もう少し私たちにその経験を積ましてもらいたい。いますぐにここで裁定権を持つのは行き過ぎであるとも、あるいはその意思はないとも言っていないのでありますから、そういう趣旨を了解していただきたいと思うのです。
  170. 岡本富夫

    ○岡本委員 うまく逃げてしまうと困るのですけれども、それで、厚生省にお聞きしたいのですがね。  いまの中央審査会ですか、これについて私どもちょっと不満なところがあるのですけれども、厚生省のほうも、実はこうした問題を非常に心配なさっておるのがお姿だと私思うのです。そこで、やはり法律家とその原因を究明する科学者、それからもう一つは医者、この三つが寄った、要するに海難審判所みたいな専門家が寄ったものがなければならぬと思うのですが、厚生省のほうではこの公害審判庁というのですか、こういうものを外局に前向きにひとつ考え考えはないかということをひとつお聞きしたいのです。
  171. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 紛争処理制度が国会に上程されました際、日本社会党また公明党からもそれぞれの対案が出されました。そして、その当時各党から出されました対案と政府の原案との間に、非常に大きく食い違いましたのがその裁定制度等を取り入れるか取り入れないか。同時に、両党から提出されました対案は、私の記憶にもし間違いがないならば、その裁定を経なければ訴訟には移れない形態をとっておったはずであります。これが本委員会におきましても非常に議論になりましたが、結局、それぞれの当事者の考え方によって訴訟にも、また和解、調停等を受ける方向にも、いずれの道をもいつの時点でも選び得るほうが望ましいということで、当時本院としてもこれを成立させた経緯がございます。  そういう意味からまいりますと、現在総理府において御準備を願っております紛争処理制度というものを活用していくことによって、また現行の訴訟制度を活用していくことによって、いずれのかまえをもとり得るということのほうがむしろ望ましいのではないか。構成についても、先ほど岡本先生のお話しになりましたような形を私どもも望みますが、制度としてはその運用にまつほうがよりよいのではないかと考えております。
  172. 岡本富夫

    ○岡本委員 確かにそうですね。厚生省では私が提案したものをやはり望むというのがあたりまえだと思うのです。なぜかならば、いまあなたがおっしゃったように、和解の仲介やら調停のときには裁判権を放棄してしまわなかったならばだめなんですね、この紛争を処理していただくためには。そういうことを考えますと、よしんば裁判権が残っておったといたしましても、原因究明というものは四つの大きな裁判のように、厚生省が善意をもってやられたらこれは間違いがないのですが、それは個々のケースについては御無理だと思うのです。それにかわるべきものもやはり必要であろう、こう思うのですけれども、そこで山中長官そうした面からも考えて、やはり裁定権を、あるいは私たちが主張しているところの裁定権というものはどうしても——私たちはそれによって被害者の救済ということが一つあります。もう一つ公害を大きく防止していく、抑止していくこの公害罪の精神からも考え、また公害はないほうがいいのですから、環境が非常にいいということは望ましいことでありますから、その面からも考えて、ぜひこれは必要じゃないかと思うのですが、あなたはいまやっている最中だからそれをよく勘案してと、こうおっしゃっているけれども、こうしたいろいろな事実の上に立った場合に、やはり裁定権もつけていこう、もう少し前向きにならないといけないとぼくは思うのですが、いかがですか。
  173. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、前国会で公害紛争処理法案を制定いたします際に、そういう議論をしたわけなんですね。そして、一応法律としては、あなた方は足らないと思われたかもしれませんが、法律は、できればやはり法律ですから、そういうことの運用をすることにして出発したのは先月なんです。ですから、これからいろいろなケースをやってみてやはり中央公害審査会はそのような権能を持つことが国民のために必要なんだという結論が——結論といいますか、そういう体験なり方向なりが得られたら、私はそれにこだわるものではないと申し上げているので、まだ先月出発して始まったばかりのもので、一応その基本論としては先国会で最終的には、賛否は別として法律は通っているわけですから、その運営を先月始めたというならば、しばらく時間をかしてくれというのは逃げているとあなたが先ほどおっしゃったのですが、私は逃げているのではないので、まじめにやろう、こういうことを言っているつもりでおります。
  174. 岡本富夫

    ○岡本委員 まじめにやろうということはよくおっしゃるのですけれども、法律というものはやっぱり完全なものがいいと思う。やってみてもう一ぺんやり直そうか、そういうようないいかげんなことでは国民のほうはあんまり喜ばない。少なくともこうして私たち立法府は、やはり国民ほんとうにこれならばだいじょうぶだと政府を信頼し——これを施行するのは政府ですからね。それがまた政府のためにもなると思うのです。やってみてうまくいかなんだらまた改正しようかという、そういう簡単なことでは——私そういうことを考えますと、出発して何件、やってみてどういう状態だったか、これをひとつ聞きたい。
  175. 山中貞則

    山中国務大臣 私は、そんなあいまいな、あやふやなことを言っているわけではないのです。やってみてだめだったらということで、いまやっているわけではないので、これは前国会で公害紛争処理法というものを国会に提案して、法案をめぐって議論をして、そして最終的に私たちはその法律に示された内容でいいという結論を——だから先ほど申しましたように、足る足らぬは別として、賛否は別として法律になったんだから、その法律を受けて先月出発したばかりでございます。ですから、御議論の趣旨も私はよくわかりますので、そういうことは先国会以来踏まえておりますから、それらのものを運用していって、やはり皆さま方の御要望というものを取り入れて、この制度をさらに完ぺきなものにしたほうがいいのだという方向が出ましたら、そうすることもやぶさかではない、こう申しておるわけであります。これはことばの言い回しでしょうけれども、私たちが何もやらなければならぬことをサボっておいて、しばらくやっているうちに、だめだったら何とかしょうというふうにおとり願わないようにお願いしたいと思うのです。  それから、出発以来何件ぐらいあったかということでございますが、六件ぐらい、大体個人的に、あるいは電話そのもので話がございましたが、地方に回すべきと思われるものが大体半分ぐらいでございましたか、正確に私最近値を知悉いたしておりません。したがって、事務局長来ておりますから、その件数その他報告させます。
  176. 川村皓章

    ○川村政府委員 ただいまの御質問にお答えを申し上げますが、現在私どもに参っておりますのは、苦情その他申請手続についての問い合わせを含めまして十数件でございます。ただ、ごく最近、福井県に樹苗被害をめぐっての和解の仲介の申請が十一月半ばに出ておりますことを承っております。以上でございます。
  177. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは山中長官、完全なものがいい。ですからもう一度検討して、そしてあの紛争処理法案を採決したときも与野党一致して緊急に前向きに検討するようにということの附帯決議もついておったわけです。あなたもそのときは決意を発表されたわけですから、やってみてどうかということでなしに、諸種のいろいろな事情から考えて、そしてもう一度再検討を前向きにしていただきたいのですが、いかがですか。
  178. 山中貞則

    山中国務大臣 私は検討しないとは言っていませんです。そういう方向で検討するが、それについても出発したばかりなのでもう少し模様を見さしてほしいということを繰り返し繰り返し申しておるわけであります。
  179. 岡本富夫

    ○岡本委員 この問題で押し合いをしてもしかたがありませんから……。  次に、山中長官は、当国会で権限の委譲を地方自治体に大幅にやる、こういうこともたびたび言明なさいました。ところが、今度出てきた法案を見ますと、大幅な権限の委譲が非常に少ないと思うのです。勧告権をつけているとか、あるいはまた通知をしなければならぬとか、そういった非常に特定の地域、あるいはまた硫黄酸化物、亜硫酸ガスについては非常にきびしい条件がついております。  そこで、それはそれとして、法制局長官にお聞きしたいんですが、憲法の九十二条、「地方自治」というところのこの九十二条をひとつ説明をしていただきたい。
  180. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。  憲法九十二条を説明せよということでございまして、私どもはよく公務員試験の上級職試験なんかにそういう問題を出すわけでございますが、そういうお話をどの程度申し上げていいかわかりませんので、おそらくきわめて簡単に申し上げる必要があるかと思いますが、「地方自治の本旨に基づいて、」というところが解釈の重点だろうと思います。住民自治の理想に従って、言いかえればそういうことであろうと思います。
  181. 岡本富夫

    ○岡本委員 国民が見ておるわけですから、法制局長官もこの「本旨に基づいて、」ということはそのとおりだ、こういうことですけれども、これはやはり私、地域住民の生命や、健康や、あるいは生活環境地域住民の最も密着したところの生命、財産、あるいは健康、こういうものは地方自治体の手で守らなければならぬという、保障しようとしているのがこの地方自治の本旨、こういうように思うのですが、いかがですか。それを法律で定めるということじゃないか。
  182. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 住民自治の理想ということを申し上げましたが、要するに地方住民の生活にきわめて親近の事務、それらは地方公共団体がみずからの事務として処理すべきであるということであることは確かでございます。
  183. 岡本富夫

    ○岡本委員 親近の事務ということは、要するに生命、健康、生活環境、これをいうわけですね。
  184. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 いま例示にあげられたようなものがそれに入ることは当然でありますが、念のためにつけ加えますけれども、そういうことについては、国もまた関心を持つものであることは後ほどだんだんお話が出るのかもしれませんが、そのことをつけ加えてそのとおりであるということを申し上げます。
  185. 岡本富夫

    ○岡本委員 なるほどあなたがおっしゃったように、国も監視もする。たとえば戦争とかいう大きな問題、あるいは大きな経済の問題、あるいは外交問題、こういうものは、これは国が責任を持つことになると思いますけれども、それは健康も生活環境もそうですけれども、健康あるいはまた生活環境、生命の問題というものは、これは地方自治が一番の根本になってくるんではないか。そこで、その公害問題というのは、健康それから生活環境それから生命にも及んでおりますから、その地域の地方自治、これが一番の責任を持たなければならぬ。したがって、それは地域差がありますから全部同じというわけにはいかないのですから、やはり地方自治がその地域の特殊性に即した規制、これを行なう、地方自治で行なうのが、これは憲法二十九条にあらわしたところの根本精神じゃないか、こういうように思うのですが、その点はどうですか。
  186. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいま憲法二十九条とおっしゃいましたが、おそらく最初の九十二条のことだと思いますが、その中でおっしゃいました意味はよくわかりますし、そういう面があることはむろんでございますが、しかし、公害対策基本法は、御存じのように四条、五条を指摘するまでもないと思いますけれども、この公害関係が人の健康、生命にも影響を及ぼすという意味合における、そういうものについての施策というものは、地方団体も持つのがあたりまえでありますけれども、国もまたこれを持つということは、公害対策基本法の四条、五条を見れば一見きわめて明瞭でございますので、そのことを申し上げてお答えにかえさしていただきます。
  187. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで国が責任を持つということは、地方自治の本旨に基づいて法律できめるから国で責任を持つことになる。地方自治の本旨に基づかないところの法律はいけないということが、九十二条の精神じゃないでしょうか、その点いかがですか。
  188. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 抽象的におっしゃる限りそのとおりでございます。地方自治の本旨に基づいていなければいけないということはそうでございますが、どうも私の説明が足りないかもしれませんが、そういう特定の事項に関しては、国もまたそれについての重大なる関心を持ち、地方団体もまた親近の事務としてこれに関心を持つ、両面があること、これを御留意くださるようにお願いしたいと思います。
  189. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、大体この公害問題というのは、その地域の健康、あるいはまた生活環境、あるいはまた生命問題、こういうことでありますので、いま法制局長官から説明があったように、まず第一義的には地方自治の一番の責任でありますから、地方自治体のこの本旨にそむいてはいけない。  そこで、私きょうは公害対策基本法審議でありますので、基本的な考え方からただしているわけでありますが、通産省に聞きますけれども、通産大臣が、先般東京都におきまして国よりもきびしいところの条例をきめた。それに対して何というか、法律違反であるというようなことを発表しておりますが、それについての見解はいかがですか。
  190. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 これは、先生の御指摘の点は、都の都条例だろうと考えます。国の基準を上回った基準を設けたということで紛争をかもしたこと、その点については私も十分よく承知しませんので、大臣がどのような答弁をしたか、あとで調べてお答えいたします。
  191. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、小宮山政務次官、大臣がそういう答弁をやっておったとすると間違いということになりますね。たとえば一つの例をとりますと、きょうはこれはまだ公害対策基本法のあれですから環境基準まで行きませんけれども、そこまで話をしませんけれども、たとえば自動車排気ガス、新車は二・五%、中古車は国は五・五%、ところが東京都では五%、五%ということは五〇〇〇PPMということです。すごい問題ですけれども、こういうものをばっと横で吸うわけですね。それはそれとして、そうした場合に法律違反ではない、これはここから見るとそうなるでしょう。もしも通産大臣が、その問題じゃありませんけれども、ほかの問題で、東京都がきめたことが法律違反だ、こういうように発表しておった場合は、これは間違いですね。どうですか。この点をひとつお聞きしたい。
  192. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 先ほどの御質問の点について通産大臣がそういう発言をしているという私は記憶はございませんけれども、通産省の事務官が何かしゃべったことがそういう記事になったと私は聞いております。
  193. 岡本富夫

    ○岡本委員 だから、あなたわからないのだから、もしも発言をしておったとしたら間違いですねと、こう聞いているのじゃないですか。どうですか。発言をしておったとしたら、これは憲法の精神に反しますねということを聞いておるわけですからね、発言しておるとかしてないとかまだ言うてないのですから。
  194. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 その点について、局長からお答えいたさせます。
  195. 荘清

    ○荘政府委員 条例の規定というものは法律範囲内で自治体が制定することができるのだという規定がございますので、そういう意味法律範囲を越えた事項については、条例は有効な拘束を課することができないというのが政府としての従来の解釈になっておるものと私は承知いたしております。
  196. 岡本富夫

    ○岡本委員 いま憲法九十二条の「地方自治の本旨に基いて、」ということになっておりますからね。公害問題については特に生活環境、生命の問題、健康の問題ですからね、地方自治体がその地域に応じて、そうして特別に上のせをして基準がきまっておっても、それよりもこうしなければ守れないのだというようにきめたことは、これは決して憲法の精神からすれば間違いない。法律より憲法のほうが優先するわけですからね。ですから、もしも東京都がそういうふうに法律よりもきびしいものをきめたというのは法律違反である、こういうたことは憲法の精神に反しますか、反しないですか、これを聞いているのですよ。これをもう一ぺん政務次官か通産省かどっちか……。法制局長官に聞きましょうか。
  197. 山中貞則

    山中国務大臣 同じ憲法に、条例は法律範囲内で定めるというのがたしかあったと思うのですが、そういう意味で、憲法の条章にもそのことは根拠があるわけです。
  198. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、人の生命、健康、生活環境、まず生命ですよね。こういうものは基本的人権です。これを地方自治の本旨に基づいてきめた場合は、これは憲法の精神からいったら何ものにも優先するのがあたりまえじゃないですか。それについてもう一ぺん……。
  199. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 いま総務長官が言われましたように、憲法九十四条の規定に、地方公共団体は「法律範囲内で條例を制定することができる。」という規定があることは御承知のとおりだと思います。要するに、法律範囲内でなければならない、法律範囲を越えては制定できないというのが憲法の規定であります。したがって、通産省の事務当局がどういうことを申し上げたかわかりませんが、いまのようなことであれば、これはまさに憲法の説明をそのままにしたというふうに言えるだろうと思っております。
  200. 岡本富夫

    ○岡本委員 そういう説明があるだろうと思っておったのですが、そうしますと、その法律というものは、地方自治の本旨に基づいた法律でなかったならばだめなんだ、そうでしょう。今度は法律に基づいて地方自治が条例をきめるのです。ですから、そのもとは、もとというのは憲法ですが、そこからいいますと地方自治の本旨に基づいた法律でなかったならば、この法律がおかしいということになる。ですから、この点を私はきょうはただしておいて、そして次の各法案の審議のときにあなたのほうから聞いて、その見解によってやはり修正するものはしなければならぬ、こういうことですから、その点について山中長官からもう一度聞きたい。
  201. 山中貞則

    山中国務大臣 憲法は、定められてあることが絶対であって、どの条項が憲法のどの条項にまさるというものでは私はないと思うので、やはり憲法に定められたものは定められたとおり守っていけばいいのだと思っています。
  202. 岡本富夫

    ○岡本委員 話をすりかえたら困りますね。確かに条例は法律の定められたところによって定めると書いてあるのはわかりますよ。しかし、その根本、その法律は、私たちがこれからきめるのです。この立法府できめる。その立法府できめるときに、審議する際に、憲法に反したような法律をきめてはならない。これはわかりますか。どうですか。その点についてもう一ぺん。
  203. 山中貞則

    山中国務大臣 憲法に違反するような各種法規がつくれないことはあたりまえでございます。
  204. 岡本富夫

    ○岡本委員 わかりました。じゃ、それでもう時間があれですから、きょうはあと古寺君がちょっと十分間ほど関連質問があるそうですから、私は明日に回しまして、これで終わります。
  205. 加藤清二

    加藤委員長 まだ十五分ばかりあります。約十五分。
  206. 岡本富夫

    ○岡本委員 それじゃ十五分でやってください。
  207. 加藤清二

    加藤委員長 関連はなるべく十分以内というお約束でございまするから、さように心得てください。
  208. 岡本富夫

    ○岡本委員 それじゃ五分だけ。  そこで、公害のこの審議をまだこれからずっとするわけでありますが、公害問題の歴史的背景というものは、最初大阪市あるいは東京市——東京市の当時でありますが、そういう条例で最初きまっておったわけです。そして地域の住民を守っておったわけでありますが、それがいつの間にか中央集権になってしまった。そういう背景もございます。そこでやはりもっと地方の条例できまるような法案に私どもは修正をしなければならぬと考えております。  そこで、最後に、自治大臣来ておりますね。——地方自治体に権限が委譲された場合に、一番問題になりますのは技術者の問題であります。たとえば三重県の尾鷲市の火力発電所をつくるときに、三重県に非常にりっぱな技術者がいたのかいないのか知りませんが、火力発電所から出てきたところの書類を見ますと、着地濃度を計算するときの計数というのがある。これを途中でごまかしてしまって、非常に薄いのだというようなことが出ておる。したがって、この技術者あるいはまたそうした企業を監督するところのりっぱな吏員と申しますか、そういう者が必要である。これの養成について自治省はどういうお考えを持っておるか。  もう一点は、地方自治体に対して権限を委譲するというけれども、権限は委譲するけれども、口は出すけれども金は出さぬ、こういう非常に変なことが出ておりますので、そうならないように、どのくらいの予算を公害対策に要求するつもりをしておるか。この二点についてお聞きして終わりたいと思います。
  209. 秋田大助

    秋田国務大臣 公害対策事業の円滑な推進のために、関係地方公共団体技術者の養成あるいはこれの研修が大切なこと。従来各関係官庁でもこれが研修等のことをされておりますが、これを強化してまいる必要があります。地方公共団体におきましても、体制を整備されるとともに、研修等をひとつやっていただくように指導してまいりたいと思いますが、自治省といたしましても、現在公害に関する技術その他の知識が完全とは申されません。しかし、さりとてそれを待ってというわけにはいきませんから、現段階で必要なものを、できるだけの範囲におきまして、研修機関を設けるようなことの必要を私は痛感をいたしておりまして、とにかくこの点についてひとつ関係各省とも御連絡を申し上げ、もしできなければ自治大学校等におきましても特別の講座を設けるか、特別の研修機関を設けるような手段を事務的に講ずべしということを強く命じてございます。  なお、地方公共団体がこれらの対策を実行するのに、権限はあるが金がないということでは、仏つくって魂を入れないわけでございまして、公害防止計画遂行の事業中心に国の責任を明確にする必要があろうと思います。したがって、国と地方との責任の区分、あるいはこれに対する財政の考慮、措置というものを、事業者公害対策事業に対する責任範囲の明確化とともに明確にする必要があり、これに対する財政上の措置を総合的に強化する必要を認めております。この点につきましては、先般来たびたび御答弁申し上げておりますとおり、地方公共団体が一定の予定期間内に、計画期間内に、公害防止計画事業の遂行が完全にできまするように各関係官庁と協議を重ねております。たとえば河川、港湾等におけるしゅんせつ事業につきましても、新たに国の責任制度のあるものについては明確にする必要もあろうと思います。また問題になっております下水道の整備事業につきましても、この国庫負担の制度を拡充強化をする必要を認めております。それから、地方債につきましても、いろいろ所要の考慮を講ずるとともに、来年度といたしましては、所要のいろいろ交付税に処置を講ずるとともに、不交付団体においては交付税の問題が関係しないということになりますから、地方債につきまして金額といたしましては千四百四十四億円、これは本年度と比較いたしまして四百二十一億円の増、五一%増でございますが、これは下水道を中心として、その他ゴミ処理対策等を含めました金額であります。  以上御説明申し上げます。
  210. 加藤清二

    加藤委員長 関連の申し出がありますので、これを許します。古寺宏君。
  211. 古寺宏

    ○古寺委員 最初に、山中総務長官にお願いしたいのでございます。  公害対策基本法に基づく公害防止事業でございますが、これは現在公害がすでに発生している地域だけに計画があるようでございますが、今後開発計画が行なわれる地域に対するところの公害防止計画についてはどういう御構想をお持ちになっているか、まず最初に承りたいと思います。
  212. 山中貞則

    山中国務大臣 原則的には、全国一律の規制基準がかかることは、たびたび申し上げているとおりでありますが、さらに先般の閣議決定いたしました千葉とか、岡山とか、そういう三カ所の公害防止事業というものの計画を国が承認をして、五カ年間の計画に対する国の財源の裏づけをしていくというようなことをやるわけでありますから、したがって、これからは東京とか、神奈川とか、あるいは大阪というものが出てくるでありましょう。さらに、全般的には企業立地のあり方等について、経企庁長官等から御説明がありましたように、今後の日本列島土地利用のあり方企業立地のあり方というようなものが当然提起されてくるであろうと考えます。
  213. 古寺宏

    ○古寺委員 企画庁長官にお願いします。  現行の地域開発計画というのがございます。東北開発促進計画であるとか、中国、四国、九州等の開発促進計画がございますが、この開発促進計画の公害対策と申しますか、こういう点についてはどういうふうになっておりますか。
  214. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 御存じのように、現在の地域計画はいずれももう相当古くなっておるものが多いのでございます。したがいまして、私たちの目から見ましても、公害問題のとらえ方について必ずしも十分でない、こういう感じのものがございます。それらは実を申しますと、たとえば新産都市の例をとりましてもそうでございますけれども、新産都市を最初に行ない始めましたころは確かにそういうきらいがございましたが、最近におきましては、新産都市におきまして公害問題を非常に重視いたしまして、逐次事態に応ずるような事業の施行をいたすように心がけております。御存じのように、新全国総合開発計画が昨年の五月に決定をされました。この新全総の際には、公害問題を、当然のことながら十分議論をいたしました。御存じのように新全総の中にはいわゆるブロックごとの、地域別の開発の基本構想を示しております。でありますから、現在の計画そのものは古くなっておりますけれども、それに新しい新全総の方針というものを取り入れましてそうしてその方針によってやってまいる、こういうことになっております。御存じのようにブロック別の地方開発はそういうことで相当古いものですから、われわれもその方面についての再検討を行なっておるところであります。
  215. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで、東北開発促進計画というのは昭和四十五年度で大体終わることになっておりますが、四十六年度の新しい計画というものは現在お考えになっておりますか。
  216. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 その開発の具体的な計画の前に、実は法律そのものについて、もうだいぶ古くなっておるのではないか、こういうことで、私どもはまず法律の問題について根本的にいま検討を開始しておるような次第でございます。したがいまして、その法律の新しい構想がもしでき上がれば、それに基づいて今後また新しい計画を持つかもしれません。現在のところでは、そうした点をなお検討中でございます。  なお、それから従来のような方式で地域別に一々別の法律をつくって別々の開発構想を持つのがいいのかどうか、そういうような基本的な問題もあわせて検討しております。そういう意味では目下検討中、こう申し上げるよりほかないと思います。
  217. 古寺宏

    ○古寺委員 その検討はけっこうでございますが、これは早い機会にやりませんと、新しい計画に間に合わないのではないか。現行法の立場でいきますと、当然東北開発審議会に諮問しなければならない時点に達しておるわけでございますが、まだそういうこともなされていないようでございますので、検討の作業を早急に進めて、新しい計画を考えていただきたいし、さらにまた、東北開発二法につきましては、前国会におきまして長官検討中である、こういうお話もございましたが、まだその結果は出ていないようでございますので、これもあわせてお願いをしておきたいと思います。  現在東北開発の中で、むつ・小川原湖の工業開発の問題があります。これは周防灘等とあわせて非常に大規模な工業開発でございますが、御承知のように青森県のむつ・小川原湖の工業基地開発地域におきましては、すでに相当の土地ブローカーその他によって土地が先行取得をされておる、こういうような実情でございますが、今日までの公害の原因を調べてみますと、工業立地計画の問題が非常に大きな公害の原因になっておるわけでございます。こういう点に関しても、新しい大規模工業開発促進法と申しますか、こういうような立法措置、あるいは土地の先行取得の問題、こういう点について、現在長官はどういうふうにお考えになっているか承りたいと思います。
  218. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 小川原湖に例をとって御説明がありましたが、御存じと思いますが、私たちいま新全総の審議会のもとに、特に小川原湖の研究部会を設けまして、そこでいま御指摘になったような点を中心にして検討してもらっています。専門家を相当集めまして、そしてやりたい。新しい公害問題、エコロジーの問題、こういうような問題も十分に取り入れて、そしてやってまいる。こういうことで、せっかく検討いたしております。  われわれとしましては、土地の問題等がいまの御指摘のようにたいへんうるさくなってきておりますので、まず土地の問題等についてやはりめどをつけていかなければならない。この際に法律を必要とするかどうか。これについてはいろいろと意見もございます。その前に、いろいろそれに必要な機構をつくり上げなければならない。そういうことで、一方においては資金調達の機構が要りますし、一方においては現地の県を中心とした土地の先行取得の機構が要ります。また、それらを結んで、関係方面の多いことでございますから、関係の調整のための機構も考えるということで、いま三つぐらいの機構を並行的に考えておるところであります。
  219. 加藤清二

    加藤委員長 古寺君に申し上げます。話の途中かもしれませんが、与えられた時間が三分超過いたしました。  次は、川端文夫君。
  220. 川端文夫

    川端委員 山中長官にまず最初にお尋ねしたいと思いますことは、民主主義の政治は世論政治だと思うわけです。今国会、二十四日から開会されて、私ども民社党としては公害国会をもっと早く開会すべきだといって要求してまいったわけでありますが、しかしながら、とにもかくにも政府公害基本法の一部改正及び十三法案を出されて公害国会は開かれておるわけです。本会議質疑あるいは連合審査会の質疑を通して、毎日、新聞及びテレビに報道されて、その多くはこの国会に大きな失望を感じているのが大多数ではないかと思って見ていいのではないか。私もそのことが心配になりまして、地域の各方面に一応この国会をどう見るかという立場を聞いて回って、きょう出てまいっておるわけでありますが、やはり大多数の国民は、何か国会は与党と野党の堂々回りをしていて本質に触れていないではないか、やろうという気がないではないかという感じを持って見ている人が大多数のように感じたのです。このことは、大臣もさることながら、われわれ国会に議席を持つ野党といえども、議員という立場に立って、やはりわれわれが深く反省しなければならぬことではないか、こういうふうに考えるわけです。  言うならば、この国会に与えられている使命は三つあるのではないか。  その一つは、いままで起きて、このような臨時国会まで、公害国会を開かなければならなくなった原因に対して責任感じて、これをすみやかに処置をするというその具体的な処置の出し方の問題が一つではなかろうか。もう一つは、今後再びこういう問題を拡大させない、あるいは防止するという意味の問題点が内容であろうと思うのであります。もう一つは、やはり今日までイタイイタイ病なり水俣病によって苦しんでおる被害者に対して、どのような具体的な愛情の手を差し伸べるかということが、何か示されるのではないかと期待されておったのにかかわらず、何か言いわけと追及とに繰り返しを続けておるというように、国民の大多数が印象として受けておることは、はなはだ私どもは残念に思うわけです。  そこで、私は冒頭に山中長官にお尋ねしたい点は、二十四日からの国会開会以来の質疑の中に、ある程度皆さんが準備されたものの以上のものとして、なるほどと感じられたものがあったはずじゃないか、委員会に出てみたり、テレビを見ていて、いろいろまじめにお聞きになっているような顔もときどき見受けるところから見て、どこか胸に打たれるものがあったはずだ。そういう意味において、あまり原案に固執しないで、よりいいものができるならば、ある程度少数野党の意見といえども聞いて直していくという雅量があるのかどうか。何でもかんでもそれは聞きっぱなし、われわれはこれを出した以上はこれしかないというがんこな態度を続けられるのかどうかという点を、まず最初に承りたいと思うのです。
  221. 山中貞則

    山中国務大臣 私、総理ではございませんので、そのような基本的な姿勢に御返事申し上げる場合には限度があろうかと存じますが、私たちは謙虚に耳を傾けているつもりでありますし、また誠心誠意、説明や答弁もいたしておるつもりでございます。しかし、国民がそういう目で見ておるということであれば、私もたいへん残念に思います。しかし問題は、いま出ておる法案のどこが足りないとか、後退とか、いろいろ議論がありますけれども、その前に、もう一つ議論があるのではないか。  それはたとえば公害罪にしても、やはり刑法の特別法として自然犯を、強盗や殺人と同様につかまえていこうとする国というのは日本しかない。これはいばるわけではありませんけれども、そういう立法例というものを初めてつくるその意欲というものについては、やはり一つの評価というものは前進であることを認めないとはいえないのではなかろうか。あるいは今日の生活実態、逆に小さい問題に例をとれば、清掃というものは市町村だけにまかしておいては無理な面が出てきた。したがって、産業廃棄物生活廃棄物等について、広域処理を前提とした廃棄物処理法というものに変えていって、いろいろやろうというようなこともいっておる。そういうようなこと等から、やはり一生懸命やって、しかも相当時間があったようでありますけれども、私が担当大臣になりましてから正味三カ月余りでこれだけの法律も各省の協力を得てつくり上げたわけでございますので、やはりいままでの状態からすると、基本法をはじめとして、前進をしておるところもある。この点は、政府のやっておることは全部だめなんだ、しかも、全部政府のやっておることは政治の裏切りであって、国民の不信を買うばかりだというふうにお受け取り願わないように私たちもつとめなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。  いずれにしても、国民から信頼される政治というものが前提であることにおいて、御所論と私も見解を異にするものではございません。
  222. 川端文夫

    川端委員 私も先ほどから言っておるように、公害基本法の一部改正と十三の法律を出されておる姿から見て、一歩前進であることを否定したものの見方の上に立って、ものを言おうとしていないし、言っているわけでもない。しかしながら、国民はいま深刻に公害の問題が公害ノイローゼ的な意味になって、よりいいものを、もっと勇断を持ったものを期待していたのに対して、しかも、前々から言われておるように、私は、これはいまさら繰り返して、財界の圧力に負けたとかなんとかいうことを言おうとは思わぬけれども、国民自身が期待しておるものが非常に期待はずれになったことだけは、お互いに謙虚に、与党も野党も反省の上に立ってこの公害法案に当たらなければならない。私どもは、野党といえども正しいことに対し、一歩前進に対して鞭撻をするにやぶさかではないけれども、なおいいものがあるといった場合に、すなおに聞くという態度がまず前提にほしい。それがなければ国会の意味が非常に減殺されてくるのではないかということを申し上げておるのであって、否定した立場に立ってものを言おうとしておるのではない。このことはあらかじめ知っておいていただきたいし、総理に対しても、やはり国民の期待にこたえるためにこの程度のことは聞くべきだという勇気をお持ちになっていただくように、長官からもお伝えを願いたいことをお願いしておきたいと思います。  そこで、もう一つ具体的になりますけれども、大蔵大臣山中長官の間に、どうも食い違いの答弁をされているのではあるまいが、はっきりとしないような意味をわれわれ感ずる場合があるわけです。大蔵大臣は来年度予算編成の中に公害対策費は、あるいは二〇%なり二五%の積極財政を組む中において十分消化できる、こういうふうに堂堂と答弁されておるわけですが、山中長官は、どれくらいかかるかまだ十分明らかではない、こういうような意味において、数字の上に対しては具体的にお答えになろうとしていないようにしか考えられない。私は寡聞にして聞いていないから、あるいはどこか聞き漏らしている点があるのかもしれぬが、ここでひとつ、来年度の予算の中にはこれとこれだけは明らかに公害として、私どもの主張を生かして予算の中に織り込んである、織り込み済みである、たとえば国の責任の問題と、地方公共団体責任を負うべきものと、あるいは企業負担の問題と、この数字は明らかにしてあるから御安心願いたい、こういうことをきょうここでお示しいただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  223. 山中貞則

    山中国務大臣 数字において大蔵大臣と私と食い違うことはないと思うのです。たとえば公害関係予算要求額財投を含め三千五百六十八億になりますということを、大蔵大臣が否定しているわけではないと思うのです。しかし、それを受けとめる姿勢については、それはやはり違うと思うのですね。その意味でおっしゃったと思うのですが、大蔵大臣は、自分日本一のけちんぼうであることをもって誇りにするなんてことを言っているのですから、なかなかそう簡単にシブチンぶりを脱却いたしませんが、しかし、その大蔵大臣のもとで、大蔵省が来年度の予算の中で量も重点として柱を立てておりまする中に、公害が数少ない重点の中に入っている旨、はっきり内外に表明しておりますし、大蔵大臣も当席を通じ、本会議を通じて、来年の予算の重点に公害対策予算を組むんだということを言っております。さらにまた、私たちとしては、最終的に公害データバンクでいいのか、あるいは国立公害研究所として各行政機関の研究機関を一本にしたものをつくって、あるいはさらに地方公務員の公害関係職員の研修センターまで併置して、総理が裁断をされれば、そういうものまでつくる。とすれば新しくやはり予算を追加して要求をしなければならないものもございますので、さらにこれからも必要ならば、間に合わないということはないわけでありますから、必要なものは必要なものとして、締め切り日が八月の三十一日であったからといって、この緊急重要公害問題については、私たちとして予算の追加請求等もしたい。大蔵省もそれをこばむものではないと考えております。
  224. 川端文夫

    川端委員 予算の問題に対しては、しからば、本国会において各同僚委員質疑の中から、なるほどと考えられるものがあればそれを生かし、なお新しくお考えになるものは追加要求する用意がある、こうように受け取らしていただいてよろしいわけですか。
  225. 山中貞則

    山中国務大臣 同僚委員というのはどういう話かわかりませんが、結局今国会で企業費用負担法というものは出た。ところが、それに対する国と地方の財政問題についての特例法は出ていないじゃないか。この点は私どもは、率直に承りましてそのとおりである。しかし、これはやはり予算編成の際に一括して詰めなければならない。補助率等の問題は、大蔵省渋い姿勢を示すのが原則でございますので、そういうことも含めて、地方債の特別ワクというようなことなんかも考えなければなるまいと思いますから、そういうものを含め、さらに税制、金融等もあわせて詰めるべきであろうと考えておりますので、そういう問題は質疑応答等の過程を通じて、国会の御意思を十分に反映させるようにしたいものだと考えている一つの例でございます。
  226. 川端文夫

    川端委員 ひとつ話を変えて、予算の問題を通じて、数字はここで申し上げませんけれども、二つに分けられるのではないか。  その一つはこれから起きてくるであろう公害等の問題防止のためのいろいろな手当ての問題と、現在までの問題、先ほども申しました現在まで起きているこの事実に対して、たとえば田子の浦の問題、これは一つの試案が出ておるようでありますが、東京湾の問題にしても、多摩川の汚染の問題にしても、いつ、どのようにきれいになるのか、このことが明らかにされていないように思うのです。これらの問題をどのように区分し、まずもって過去の問題に対してはさかのぼって企業負担を追及してこれから取るのか。政府責任においてやるのかということが、まだ明確でないように思うのですが、この点いかがでしょうか。
  227. 山中貞則

    山中国務大臣 公害事業費の事業者負担法案について、それらのものは明らかにしてございまして、長年の堆積によるヘドロやその他の排出物の堆積等についても、公害防止事業の対象にするのだということが明確にしてございます。
  228. 川端文夫

    川端委員 過去の追及の問題は、後ほど費用負担の問題で少しお尋ねいたしますが、とにもかくにも法律はどうあろうと、公害国会が開かれた以上は、水質もきれいになるのではないか。   〔委員長退席、島本委員長代理着席〕 先ほどから申し上げておるように、東京湾の水もきれいになる段取りがもう始められるのじゃないかという期待を皆さんが持っておる。しかしながら、これが一向にかかろうとしている様子も見えないというところに、失望も大きいことを考えて、費用負担の問題もさることであるけれども、まず国がなすべきことは、国が先手をとってやる勇気が必要ではないかということを、私は申し上げておるわけでありまして、この点は十分御理解をいただきたいと思うわけです。  そこで、もう一つ角度を変えて、今度の国会でいろいろ文章の問題はたびたび質疑に出ておりますが、私ども野党三党が出しておりまする環境保全基本法案の、文字が気に入らなければ、精神でもよろしいというのか、すべてを否定する立場に立つのか、この点はどっちがほんとうなのか、ひとつ本心を聞かしてもらいたいと思います。
  229. 山中貞則

    山中国務大臣 私は今国会の始まります前、すなわち閉会中の間に、私どもの党と、野党の大多数の各党の方々との間に、この公害の問題については、思想、党派を越えた合意を見るための作業が進められていた。これはいままでわが国の議会政治の中でも珍しい、ちょっと例を見ないことだと思いまして、これを興味深くながめておりましたし、もしこれが実を結んだら、これは実に異例のことであるし、たいへんけっこうなことだと思ったのですが、最後に公害罪と申しますか、公害罪はそのとき議論しておりませんから、多分無過失責任議論だったと思うのですが、そこらのところの議論を詰めたいというほうと、なかなか詰まらないというほうとで、結果全部御破算になってしまって、四党合意を見た点もあったのにと、私はたいへん惜しい気がいたしました。しかしながら、これらの四党が合意された内容については、掬すべきところは掬すべきであると考えまして、今回の各種法案の中には最大限取り入れたつもりでございます。しかしながら表現等で、私どもが環境権ということばについて、あるいはそういう表現をまだ踏み切り切っていない。憲法の条章を基礎にした国民の健康にして文化的な生活を守るのだという表現をしたのに対して、それではだめだとか、こういう御意見等については私たちもよくわかります。しかしながら、それならばいますぐ表現を変えるかというと、私たちはいまの憲法の条章を受けた表現でよろしいと思っているとかいう程度の違いでございまするし、先ほど申しましたとおり財政等については言われるまでもなく特例法が必要ならばつくりますし、予算編成のときに考慮いたしますと申し上げているのですから、野党の方々の御意見というものを無視するという気もございません。また、具体的な今国会の審議の過程で与野党合意された修正等がなされまする場合に、これは最高の立法機関としての国会の意思でございますから、私たちはその意思に従ってそれを法律として修正に応じていかなければならないことは、これは当然の大前提でございます。
  230. 川端文夫

    川端委員 先日も総理が、政党政治家であるから政府が原案出したものは、修正するならば与野党の合意を求めて改正してもらいたいと、なかなかうまいことを言うのですね。やる気があれば政府みずからが修正する用意があっていいのではないか。たとえば第一のこの公害の問題のことば一つの使い方の中に、精神が違っているのじゃないかという疑惑を持たざるを得ない。「公害対策の総合的推進を図り、もって国民の健康を保護するとともに、」保護するというこの考え方が、古い封建的ないわゆる支配者的な考え方ではないか。新しい憲法下においては、どうして保障するというそれくらいのことは変えられないのか。そこに基本的な考え方姿勢として、どうしても政府がやってやるのだという考え方が抜け切っていないところにわれわれとしてはいろいろな質問も出てこざるを得ないし、意見を言わざるを得ないことに対して、もしほんとう憲法の精神にのっとってそういうお気持ちがあれば、修正等は与野党の間に政府が割って入って、修正に対して協力をさせるという御努力があってしかるべきと思うのだが、いかがでしょうか。
  231. 山中貞則

    山中国務大臣 政府提案をいたします際に、これは中途はんぱなものでございますので、御意見があれば直しますという法律を出すわけにはまいりません。やはり最善を尽くして、これで国会の議論に耐え得るもの、国民に対して政府責務を果たし得たものという前提で私たちは出しておるわけですが、かといって、それに私が固執をしないということ、柔軟にあるいは謙虚に耳を傾けるということを申し上げておるわけであります。  さらに、生活環境保護するという言い方が封建的の権力主義であると言われるのですが、その前の、最初に出てきます国民の健康にして文化的なという憲法における条章は、これは健康にして文化的な最低の生活を営む権利として、まあ最低ということばは基本法に使うわけにいきません。しかし、憲法では権利として国民が持っていることを明らかにしているものでありますから、その国民の持つ権利に対して、この公害基本法目的の中にそれを引き取って、憲法の条章を受けたその権利を冒頭に明確にしたということでございますので、これはやはり表現の角度の違いであろう、気持ちにおいては変わりはないのだというふうにお受け取りいただければ幸いに存じます。
  232. 川端文夫

    川端委員 表現の方法の問題であって、精神に変わりがないというならば、いまの憲法に保障されているという国民的な——憲法の精神から言うならば、与えるというよりは責任を持つという、保護を保障に変えるくらいのことは謙虚に耳を傾けていただいても悪くないのではないか。たとえば、また次の問題の字句になりますが、野党三党が法律提案している中にこういう意見を出しているわけです。「事業活動に伴って生ずるばい煙、汚水、廃棄物等の処理等公害防止するために必要な措置を講ずるとともに、」という、「ともに、」という非常にあいまいなことばを、必要な措置を講じなければならないと、こうはっきり規定したほうがいいではないかという意見を出しておいでるのだが、どうも答弁が逃げ回っておいでるように聞こえてならない、こういう感じがするのですが、いかがでしょう。
  233. 山中貞則

    山中国務大臣 「講ずる」ということは、講じますということでございますから、」とともに、」というのはその次にやることが書いてあるので、つなぎに使ってあることばでございますから、「講ずるとともに、」という「講ずる」は、講じないことを意味するわけではないと思うのです。
  234. 川端文夫

    川端委員 どうも言語学者じゃないからここで議論したくないのだが、しかしながら、どうもそうであるならば、講じなければならないという規定をはっきりさしたって悪くないじゃないか。講じ、そこで切って、「ともに、」というこういう回りくどいことをしないで、講じなければならないという規定をするくらいのことは、やはりいま企業責任ということを明確にする意味においても必要ではないかと思うのです。ささいなところにも問題の焦点がぼけている、こういう感じの中から、いろいろ町に流れている疑惑に答え意味においても、それくらいのことを直すということは、私は勇気を持ってお答えいただいてもいいように思うのだが、いかがでしょう。   〔島本委員長代理退席、委員長着席〕
  235. 山中貞則

    山中国務大臣 これは「講ずる」というのは、そうするということでございますから、講じなければならないというのと語感の違いはございましょうけれども、法律上それが違うということにはならないと思います。
  236. 川端文夫

    川端委員 どうも「講ずる」と「なければならない」ということで押し問答をしているようですが、どうも先ほどからお聞きいたしておりましても、どこか逃げ道をこしらえておいてものを追いかけているという感じがしてならない。このことだけは私の疑問が解けていないということを御理解願いたいと思うのです。私が頭が悪いのならあやまりますけれども、私はそういう感じでないと——私はそれくらいのことははっきりさせるべきだという立場に立って御意見を申し上げ、御質問申し上げているわけです。  そこで、角度を変えまして、事業所の設置の問題に対して各地で公害の一番大きいと思われる問題は、電気、ガス、石油の問題ではないかと思うのです。それらの問題に対して、その企業に対して知事がある程度の規制措置の権限を持ったとしても、電気やガス事業施設に対し直接監督できないという現行法の中において、やはり中途はんぱになりはしないのか、このことはいかがお考えでございましょうか。
  237. 山中貞則

    山中国務大臣 適用除外ということは、適用すべきことが原則であるが、特別な理由があるので除外をしたということでございますから、その意味では、おっしゃるとおり原則的には適用さるべきものが他の別な理由、すなわち御答弁いたしました燃料供給の確保の事情と、電力等の供給の県境を越えた広域的な責任を国が持つべきであるということから、原則が排除されたというふうに思っております。
  238. 川端文夫

    川端委員 どうもまたおかしげなコンニャク問答になりそうなんでおかしくなるのですが、私は、別な方法で十分電気、ガス等の公益事業は監督できる方法があるはずだと思う。この場合に、これを知事にまかしても差しつかえないという立場を私はとりたいわけです。その意味において、もう一つ知事にまかした場合に、こういうめんどうがある、こういう問題がじゃまになるという問題点があるならばお示し願いたい、こういうことをお尋ねしたいと思う。
  239. 山中貞則

    山中国務大臣 通産大臣にお答えいただくのが最も正確かと思いますが、私が間違っていたらあとで通産大臣から訂正させていただくのにやぶさかではございませんが、もしかりに、どこかの県の知事さんが、ちょっと常識で考えられないような規制を要求して、そして発電の停止を命じたといたします場合に、今日の電力というものは、家庭の血液みたいなものであると私は思います。そのような、煮たきから洗たくに至る全くの血液みたいなものを、一地域だけがとめられた結果、その地域国民であるはずの住民の人々が受ける被害というものは、端的にいうと生命の被害があることもありましょうし、要するに、はかり知れないものがあると思うのです。ですから、その場合は国が遅滞なく、それこそ一秒も狂いなく、直ちに他の事業所なり、あるいは他の電力会社等から、それらの地域に対して電力を供給する義務を持っておると思います。しかし、それが国に何も相談なしに、一方的にある地域がとめられるという事態については、これはやはり重大な事態になるおそれがあるので、それらのところはやはり広域供給の義務というものが要るのではなかろうか。あるいは普通の規制の場合でも、先ほど来議論がされております国際的な低硫黄重油の確保の困難な事情から考え、あるいはまたわが国内の低硫黄重油の需要に対する供給の能力の限度から考え、ある地域のところについてだけ知事さんがきめた方式に従うために、全国の配分は考えないで、そこだけにはどんどん低硫黄重油をやらなければならない。そうすると、その場合に他の地域については低硫黄重油はもう品切れでございますというふうには、ちょっとまいらないのではないかと思います。これは私、所管大臣でございませんので、間違っていたら、おしかりを受けたらいつでも訂正をいたします。
  240. 川端文夫

    川端委員 この問題は、通産省の問題でもあるし、明日から商工委員会が開かれますから、商工委員会でもう少し詰めるとして、私は知事を信用していないという根拠をあなたから聞きたかったわけです。できないという根拠を聞きたかったので、権限の問題は商工委員会ではもう少し詰めますけれども、そういう観点がどうしても中央集権的になって、地方自治体を信頼しないところに——世の中はやはりギブ・アンド・テークというか、相対的なもののはずでしょう。こっちが信用しなければ向こうも信用できないというのがあたりまえな話なんだから、政府みずから地方自治体を信頼して、やらせるという前提に立つならば、知事もまた協力できるはずだということを十分考えておいていただきたい。今後の問題として法案の扱いの中でまだ他の委員からものを言われるはずだと思いますけれども、私はそう考えて御質問申し上げているわけです。  そこで、次に移りますけれども、公害に最も身近に問題を感ずる立場にある市町村の権限の問題は、具体的にこの問題には何らこの法律は触れていない。そこで、これは当然知事から委任事項としてまかされるであろうからということで、知事から市町村にという間接だけでいいのかどうか。いろいろ具体的に、一つ地域一つ企業なり、いろんな問題が——いち早く公害等の問題が見つかった場合の市町村の権限というものに対して、具体的な案があったらお示し願いたいと思います。
  241. 山中貞則

    山中国務大臣 まず、都道府県知事を信用しないのかと言われるのですが、そうじゃありませんで、政令事項でございましたから、閣議決定等で措置できるものはすでに緊急措置をいたしまして、たとえば大蔵省としてはちょっといままでは正常な議論としてはとうてい受け入れがたかったはずの大蔵省の造幣局の印刷工場も、やはり都道府県知事の立ち入り検査その他の対象にして、工場排水法に関する限り、もちろん通産省の直営アルコール工場も含めて、全部地方に委譲いたします。したがって、政令で書いてあります各事業は、全部の業種にわたって知事がその権限を行使されることが可能になったわけです。私たちは、そういう意味で都道府県知事を信頼しないから一部おろさないのだという気持ちでは毛頭ないことを考えておりますし、ことにまた水質等についても、一部の市等については必要な場合には市におろしていくことも考えておりますし、さらに、町村の固有な権限の行政としてでき得る範囲内のもの、たとえば現在の清掃法、今度出ます廃棄物処理法についても、あるいは騒音等についても、あるいはもし受け取っていただければ国会で御議論願えるはずの悪臭防止法等についても、これは地域の市町村単位の自治体というものが把握されることが最も適当だと考えて、まず市町村の固有事務という形で処理をいたしておるわけでございますから、決して国が地方を信用していないということはないんだということを御理解賜わりたいと思います。
  242. 川端文夫

    川端委員 そこで、この問題はいろんなお答えがありましたけれども、どうも納得できないけれども、時間の関係上次に移って、お尋ねしたいと思うのですが、事業者費用負担の問題ですね、この問題の中の第四条の「事業者事業活動が当該公害防止事業に係る公害についてその原因となると認められる程度に応じた額とする。」この「程度に応じた額」ということは、ここでは公害が起きた程度という額とすなおに受け取っていいんじゃないかと思いますけれども、もし事業経営が、今日のような金融引き締めによる金詰まり等によって、赤字経営におちいっている場合にどうされるのか、この点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  243. 山中貞則

    山中国務大臣 いまの条項でも原因者負担の原則ははっきり貫かれておるわけでありまして、それらのものの汚染に占める割合と申しますか、自分たちが原因者となった度合いというものは、一応のそれぞれの事業ごとに割合は、基準とすべきものは定めてございますが、それぞれ地域の特殊事情がございますから、都道府県あるいは置くことができる市町村の審議会等において相談をして定められる、そういう審議会を経て、施行者が最終的に決定をする、都道府県知事、市町村長ということになると思います。
  244. 川端文夫

    川端委員 ちょっと聞き方が悪かったのかもしれませんが、私の問いにお答えになっていないのですが、私は、言うならば、その負担がわかっておっても払う能力のない企業が出た場合にどういう処置をされようとするのか、操業停止するのか、廃業を命ずる権限をお持ちなのかどうか。また、先ほどの話に戻りますけれども、現在起きている公害問題に対する費用負担は、さかのぼって負担を命ずるのだという場合に、たとえば赤字のために廃業した企業があった場合に、だれが負担をかわってするのか、こういう問題は予想されたことがあったかどうかということをお答え願いたいと思うのです。
  245. 山中貞則

    山中国務大臣 これは赤字であろうとなかろうと、原因者負担として企業負担をするわけでありますから、したがって、大蔵大臣がはっきり申しましたように、負担金等については損金算入等の措置も講じようと言っておりますし、企業の事態が、その仕事を続けていくために負担をすればやっていけないというならば、これはやはり企業の存立に関する問題でありましょうし、事実上メッキ業者等が、自分たちは今後カドミウムメッキはやらないといって、特定な事業者層が非常に心配しているという事実もございます。そういうようなケースは出てくると思いますが、しかし、これは中小企業に対してまた特別にその負担の金額並びに税制、金融等について特別の配慮をしなければならないと書いてございますので、そこら範囲内において中小企業負担等については、金額そのものも、それぞれの態様に応じた地方の施行者が、審議会の議を経て定める内容において定められていくものと考えるわけでございます。
  246. 川端文夫

    川端委員 私の聞いているのは、ここでは中小企業と言ったわけじゃないんです。中小企業の問題に私が言及するだろうと考えて先に御答弁願っておるわけですが、私は、企業が、赤字のために廃業したようなところが公害を出しておった事実が残っておる場合に、だれがその負担の穴埋めをするのかということが明確にされていないのではないか。政府が出すとおっしゃればそれでいいんですが、そういう点が明らかでないということをお尋ねしておったわけです。  いませっかく出たから、時間もないようですから、もう一つの問題で、ここでは中小企業といっても非常に幅が広うございます。言うまでもなく、中小企業基本法に定められている中小企業の中にかなり大きな格差があるわけですが、少なくとも小規模企業ぐらいは公害費用負担の対象にしないということを明確にできないのかどうか、できなかった事情は何であるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  247. 山中貞則

    山中国務大臣 まず第一に、すでに企業がつぶれているとかなんとかという場合どうするかという話でありますが、連合審査で土壌汚染等の場合にもそういう御議論がございました。また、そのときにも、私、対馬のカドミウムとか、奈良の水銀とかいうことを申し上げましたけれども、そういうようなものについては国が全額やらざるを得ない。しかし、現にその会社は、別に事業者が存在をしてやっている場合とか、あるいはその鉱業権等がまだ残っている人がおって、それを持っている人がいるとかいう場合には、応分の負担を強制されることは間違いありません。  さらに、第二点の零細規模の業者の場合には、完全に負担を免れるということを書くか書かぬかの問題でありますが、これはやはり原則は企業の規模の大小にかかわらず、それらの人の健康や、あるいはその他に定められた事業の内容に原因を持つ人は、事業者というものは全部負担をすべきが原則でありますから、中小零細規模であるからといってそれは負担をさせない原則を一方につくることはいけないと思います。したがって、先ほど申しましたとおり、事業者の規模については配慮をし、中小企業負担金についても配慮をするということを答弁申し上げたところでございます。
  248. 川端文夫

    川端委員 時間の催促がありますから、はしょってものを言いますが、この問題も商工委員会でもう少し詰めさしてもらうとして、この辺にしておきますが、事業者費用負担法の中の第十三条に共同納付の規定がありますね、この問題は、これは手続上の問題として考えなければならぬと思うのですが、共同納付制度を負担者が申請した場合においては、これを受け入れて個々の負担額をきめないでもいいということになっているんだが、ややもすれば善意に解釈ばかりできない場合もあるのではないか。共同負担金のようなものをつくっても、結果的にはそれが実施されない場合においてはどうなるのであろうか。正直者がばかをみないためにも、そういう共同負担制度をつくる場合においてはあらかじめその共同負担の内容を提示させる、少なくとも延滞なり不履行の場合においてはもとへ戻って、個々負担に還元した実施を行なうということくらいは明記しておくべきではないかと思うのですが、いかがですか。
  249. 山中貞則

    山中国務大臣 その点は法律に明記してございます。納付の方法というものは、その共同で納める場合に必要な一切の方法を明示しなければなりませんから、それぞれの負担額から、納付の時期から明らかにすることを求めているものでありますし、それが御破算になって、一社が脱落したら、あとの残りがかぶるかということは、それはありませんで、脱落したら、脱落者が出ると共同納付そのものがだめになりますし、もとの個々の負担のケースに戻るわけです。かりに滞納その他があった場合においては、国税徴収と同じ手段をもって、国税、地方税の次に優先した徴収をする。しかも、その徴収は、延滞があった場合には、延滞金から先に取っていくぞというようなことがはっきり法律に定められておるわけでありますから、ただいまの御疑念は明確になっておるものと思います。
  250. 加藤清二

    加藤委員長 川端君に申し上げます。あなたの時間が迫ってまいりましたので、結論を急いでください。
  251. 川端文夫

    川端委員 中途はんぱな質疑に終わりそうなんですが、時間の関係もありますから、ここで一応打ち切りにいたしますけれども、たびたび質疑の中でも、皆さん、各大臣も絶対という確信の上に立っての考え方での御答弁がすべてではない、こういうふうに理解をしておるわけです。したがって、私ども野党三党として、こまかいことではあるかもしらぬけれども、公害をなくするという善意の上に立って修正案を出して、御理解、御協力を賜わろうとしているわけですから、この点も十分御理解いただいて、謙虚に耳を傾け、協力を願いたいことを申し上げて、私の質問を終わります。
  252. 加藤清二

    加藤委員長 次は、中谷鉄也君。
  253. 中谷鉄也

    中谷委員 私はまず最初に、政府の無過失責任に対する姿勢がどの程度後退をしているのか、この問題について指摘をしておきたいと思います。  お手元に資料を差し上げました。ごらんをいただきたいと思いますが、公害審議会の答申によりますると——資料の三であります。「公害によつて他人の生命、身体、財産その他の利益に一定の受忍限度をこえる損害が生じたときは、原因者がこれを賠償する責任を負うこととする。」という規定を設けようではないか、設けるべきであるということが、審議会答申であったわけであります。  そこで、長官にお尋ねをいたしたい。この問題について、受忍限度の範囲を越えた、受忍限度を越えたというのは無過失責任制度を認めたことになりますか、なりませんか。
  254. 山中貞則

    山中国務大臣 まだ私は、そのときに担当大臣でありませんし、関知しておりませんでしたが、受忍限度を越えたというのは、無過失責任とは関係ないのではなかろうかと思います。
  255. 中谷鉄也

    中谷委員 受忍限度を越えたというのは、無過失責任に近いけれども、無過失責任ではない。答申は、そのような無過失責任に近い、裁判例の積み重ねのそのような制度はつくろうじゃないか、こういうふうにいっているわけです。これらの点について、長官は無過失責任制度についてはずいぶん検討したとおっしゃる。これらの問題について、政府として御検討されたことがありますか。
  256. 山中貞則

    山中国務大臣 四十一年十月七日の答申についても議論はいたしましたし、なお国会に、なぜ最終的にあのような形になったのかについても追跡をして、一応頭の中には入れました。しかしながら、公害罪並びに無過失責任の問題は、初めから法務省が純法理論的にこれを議論するということで、残りの十四と申しますか、一つだけ、公害罪に伴うものについて、すなわち刑法、民法の特別法については法務省に作業をしていただくということに分担をいたしましたので、私としては詳しく経過にタッチいたしておりません。
  257. 中谷鉄也

    中谷委員 法務省にお尋ねをいたしたいと思います。  近代民法の原則などという大型なことばを、何べんも何べんもこの委員会においてお聞きをいたしました。我妻教授の説によれば、七百十七条を原則として七百九条を例外規定とするという理論構成も十分に可能である、こういうふうなことを無過失責任の座談会の中で述べておられます。受忍限度を越えたそういう損害を生じたときに、原因者がこれを賠償する責任に任ずる、こういうふうな無過失責任に近いけれども無過失責任を認めてない立法はなぜ困難なんですか。この点について、法務省の御見解を承りたい。
  258. 川島一郎

    ○川島説明員 最初に、いまの受忍限度の点でございますけれども、受忍限度は違法性の問題であると思いまして、答申の文全体を読みますと、これは無過失責任的な制度を認めることをいっておるものと思います。  そこで、法務省でございますが、法務省といたしましては、この問題につきましては民法的な立場から検討をして、一応問題点はいろいろ考えてございますけれども、実施にあたりましては各省の御協力が必要であるということで……
  259. 中谷鉄也

    中谷委員 お尋ねをいたします。  無過失責任制度は横断的で認められない。——しかし、受忍限度を越えたというのは、そういう損害を生じた場合にはというのは、現在のほとんどの裁判例がそういうことを認めておることは、御専門家ですからもう御承知のとおりですね。それを立法化しようじゃないかというのが答申の趣旨だと思うのです。それができない趣旨は一体何ですか。長官にお尋ねをすれば、法務省にまかしていると言う。法務省にお尋ねをすれば、各省と検討していると言う。  あなたにお聞きしたいのは、受忍限度を越えた損害、そういうものについて、横断的な法律をつくることができない合理的な根拠が一体あるのですか。無過失責任的だということと、無過失責任制度を認めたこととは違いますね。だから、一歩進んで、私はきょうは無過失責任的なものさえも認めようじゃないか、そこまで下がってでも政府考えていないのかということは、無過失責任制度に対する政府姿勢というものが後退に後退をされている、おそらくまじめにこの問題について討議したのではないのじゃないか、こういうことを私はあえて追及をするためにこの点についての御答弁を求めているのです。
  260. 川島一郎

    ○川島説明員 無過失責任の問題につきましては以前から検討をいたしておりまして、この点は公害対策本部とも十分連絡をとっておるつもりでございます。この点に関する考え方を申し上げますと、無過失責任を認める根拠は何かということが民法的には問題になってくるわけでございます。そこで、私どもといたしましては、要するに危険責任中心とした理論構成をとるべきである、この場合には非常に危険度の高い企業についてまず無過失責任の制度を検討すべきであるというところで、現在それについての検討をいたしておるわけでございます。
  261. 中谷鉄也

    中谷委員 それは何べんもお聞きをいたしました。しかし、受忍限度を越える損害が生じたときにはという横断的な法律をつくることについてさえも阻止をする、拒まれる、拒否をされる、拒絶反応を示される、その理由は一体何なんですかと聞いているのです。無過失責任を認めようということをきょうは言っているのではない。そんな話については、もうフランス民法以来の話をあなたから何べんも聞きました。そのことを言っているのではないのです。無過失責任制度的なものさえもという、きょうは私は一歩後退して、それさえも認めないならば、政府の態度というものは無過失責任どころではないのですよ。無過失責任的なものも認めないのですねということを私はきょうは確認をしたい。それさえも政府は横断的には認めないのですね。立法する意思がないのですか。
  262. 川島一郎

    ○川島説明員 ただいま申し上げましたように、非常に危険性の強い企業、これを選び出す必要がある。そのためには、むしろ一般的な制度としてではなくて、個々的な制度として考えるべきであろう、こういう立場でございます。
  263. 中谷鉄也

    中谷委員 審議会答申の趣旨とは違う。審議会答申の趣旨は、横断的な法律を、無過失責任まで踏み切ることはたいへんだろうから、受忍限度を越えた限度において横断的な法律はつくれるのですよとこういう答申ですね。それは結局よう踏み切らないのですね、それさえも法務省はよう踏み切らないのですね。だから、後退だということはいわれておりますけれども、後退どころではない、総退却だということを横断的な面についてはきょうは確認してよろしいか。
  264. 川島一郎

    ○川島説明員 委員会の答申がどのような趣旨か、はたして一般的なことまでも意味しているのかどうかは、私はっきり審議会の経過を知りませんので存じませんけれども、私の考えでは認める必要のあるものについて認めよということであろうと考えております。
  265. 中谷鉄也

    中谷委員 おかしいじゃないですか。あなたは政府の民事局長でしょう。委員会の答申はそういう趣旨じゃないならないと言ってください。一般的に認めるなら認める趣旨だと言ってください。審議会の経過を知らない——前代あるいは前々代の民事局長から無過失責任というものについて、三年間われわれは論議してきたのです。審議会の趣旨を知らないというような答弁は、一体国会における答弁ですか。何を言っているのですか。審議会の趣旨を知らないなんという答弁があるか。
  266. 川島一郎

    ○川島説明員 私は、危険性のある企業について認めれば、その趣旨は貫徹されるものと考えております。
  267. 中谷鉄也

    中谷委員 違います。委員会の答申、審議会の答申はどんな趣旨なのかということを、あなたはどう理解しているかということを聞いているのです。それは一般的に横断的なものと認める趣旨じゃないのならないで、私はけっこうです。それはあなたの読み方ですから、それならそれで答えてください。それを、知らないということを民事局長の立場で言っていいのかどうかということを、そのことを聞いているのだ、何ということを言っているのですか。
  268. 川島一郎

    ○川島説明員 私は、ただいま申しましたとおりでございます。横断的じゃなくて、縦に認めてもその趣旨は通るものだと考えております。
  269. 中谷鉄也

    中谷委員 違います、質問はそうじゃない。審議会の答申は横を認めている趣旨の答申じゃないのか、それが縦を認めよという趣旨の答申なのかどうか、どちらなのかを聞いているのです。
  270. 川島一郎

    ○川島説明員 私は、無過失責任を……。(中谷委員「読んだことがありますか」と呼ぶ)読みましたが、それにはその点についてはっきり何も書いてございませんけれども、しかし、必要のあるものについては認めれば足りるという趣旨だと思います。
  271. 中谷鉄也

    中谷委員 資料の七をごらんをいただきたいと思います。たいへん欠落をいたしていると思いますけれども、要するに縦だとおっしゃるわけですね。それで、長官にお答えいただきたいと思いますが、二重まるを打ってあるのはすでに無過失責任を認めたところの法律、欠落があるかもしれませんけれども、法律です。そして、三角のしるしは私自身が、危険性の高いものとして将来無過失責任を認めるものとして検討すべきもの、あと末尾の三つは、法案として、同じく三角に相当するものとして私は規定したつもりです。個々の法律検討すると、これらの法律検討の対象になるかどうか。この点については、ひとつ、検討の対象になるかどうか、これらの法律検討されるかどうか、長官答弁をいただきたい。
  272. 山中貞則

    山中国務大臣 いま数多く並べてあるのをちょっと見ただけですから、まるのついていることが間違いないことは、これは現実関係として認めます。しかし、あとの三角の問題については、先ほど来答弁していますように、各行政法規の中で盛り込めるものは盛り込むための努力をしましょうということを申し上げているわけです。
  273. 中谷鉄也

    中谷委員 川島さんにお尋ねをいたします。  無過失責任の問題については、法務省の方針は縦だということで三年努力をされたというのですね。ここに私が書いてきた三十幾つの法律、まだまだ欠落があると思いますが、これらの法律について、これは検討に値するかどうかも——あなたのほうは縦の検討は現在始めているのですね。
  274. 川島一郎

    ○川島説明員 個々の法律についての検討は各省にお願いしておりまして、私のほうとしてはいたしておりません。
  275. 中谷鉄也

    中谷委員 それでは橋本さんにお聞きします。厚生省の政務次官として。橋本さんしかおいでになってないから。  橋本さんの場合には、厚生省の場合には、一体縦としてどの法律検討しておられますか。
  276. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 先ほど藤田委員にもお答えをいたしましたが、私どもはこれは横と考えても縦と考えても、私ども個別法規の責任者とすれば作業としては同じことになりますが、たとえば水銀のようなもの、あるいは今国会に御審議を願っております毒物及び劇物取締法に書かれておる毒物、劇物、あるいは今回その対象に加えていただこうとしておる亜毒性の物質、こうしたものは無過失責任制度になじむものであると考えております。受忍限度においても同じことが言えると思います。
  277. 中谷鉄也

    中谷委員 厚生政務次官に、さらに引き続いて質問をいたします。  典型公害じゃありませんが、食品衛生法と薬事法、これらの問題は、通常世間でいわゆる食品公害とか薬品公害ということばが使われている。これらの問題については、いわゆる無過失責任検討の対象の法律になるのかどうか、いかがでしょうか。
  278. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 中谷先生はそういう点での非常に専門家でありますし、私はその意味ではしろうとでありますが、むしろその意味からいくならば、食品公害あるいは薬品公害といわれている一連のものは、むしろ無過失責任を許さない性格のものだと私どもは考えております。何となれば、人間の生命にかかわりのある直接の物質であります。無過失を許さない性格のものだと考えております。
  279. 中谷鉄也

    中谷委員 無過失を許さないということは、最低限無過失は認めているのだ、結局そういうことですね。無過失を許さないということは、過失があったら承知しないのだぞということ、過失があったらとにかくとんでもないことなんだということが無過失責任を認めている趣旨ですね。
  280. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 少なくとも、今日の科学において判別し得る限りの過失は許さないということであります。
  281. 中谷鉄也

    中谷委員 では、無過失責任は、過失は許さないというのは期待じゃないですか、過失は許さないのだ、許しては困るのだ、過失があったら困るのだということは国民の常識であり、願いですよ。法律制度として、無過失を認めているということを、縦の法律の中に、薬事法の中にほうり込んでいる、食品衛生法の中にほうり込んでいるということをお考えになっているかということなんです。
  282. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 考えておりますから現行の法制を検討しております。
  283. 中谷鉄也

    中谷委員 検討しているのですね。  そこで、長官にお尋ねをいたします。無過失責任の縦の検討の中で、公害の問題のほかに、近代科学の発達に伴い、航空機、鉄道、大型船舶、ガス爆発、電気のとにかくたいへんな事故、こういうようなものがある。これらのものは縦の法律として無過失責任の個々の縦の検討の中には当然入れらるべきだと私は考えます。典型公害だけじゃなしに、無過失責任の縦の検討は、そのような大事故を発生する、すなわち、大技術を持ったところの、高度の技術を持ってしかも高度の危険性を持ったこれらのものについても、無過失責任の縦の検討は少なくとも検討さるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  284. 山中貞則

    山中国務大臣 いまあげられた代表的な例としては、航空機なんかの損害は、やはり航空機会社が問答無用で責に任ずるというのは大体確立もしていることでしょうけれども、しかし、法的にそういうことは前提としては当然そうだという気がいたします。
  285. 中谷鉄也

    中谷委員 私も一夜づけですけれども、フランス法とそれからイギリス法にそういう制度があります。日本にはそういう制度がございません。これらの問題については約款の関係が非常にまたやかましい問題になってきて、約款が非常に問題になっている。こういうような点についてはあわせて検討されるということ、法務省もよろしゅうございますね。ちょっとけっこうという返事をしてください。
  286. 川島一郎

    ○川島説明員 山中大臣の言われたとおりでございます。
  287. 中谷鉄也

    中谷委員 次に、当面挙証責任の問題について大臣は努力をされるということを連合審査の際にお話しになりました。そこで挙証責任というのは私は非常に概念が混乱していると思うのですけれども、これはしかし、民事局長おいでになっていますけれども、法律的な挙証責任の転換、とにかく挙証責任法律的に転換させる、こういう意味でございますね。大臣が言っておられます趣旨は、結局そういう趣旨ですね。要するに本来被害者が挙証しなければならぬものを、法律的に加害者のほうへ、被告のほうへとにかく移してしまうのだ、事実上の、そういう意味で挙証責任の転換ということを当面考えておられるとおっしゃったと思うんですが、公害について御検討になることは、私は非常にけっこうだと思いますし、大事なことだと思うんです。そこで、いま申しました航空機、船舶、電気、ガス等のいわゆる大事故、要するに相手が巨大であって、どうしても市民が勝てないという場合に、実質的な公平を期待するために、あるいは薬品であるとかあるいは食品などというふうに、非常にデリケートであって、とうてい過失について一市民であるわれわれが立証できないというふうなもの、これは典型公害ではなくても、そういうものについても、あわせて挙証責任の転換を御検討いただきたい、御検討さるべきだ、これが私の見解でありますが、いかがでしょうか。
  288. 山中貞則

    山中国務大臣 これは私が全部一応たばねはいたしますが、その過程の作業を、私自身が全部命令をしてやらせるわけには、ちょっと職階上まいりません。しかし、私としてはそういうふうな方向に作業をしつつ、各省がそれに対応して立法してもらうことを努力いたします。
  289. 中谷鉄也

    中谷委員 次は、大気汚染関係について少しお尋ねをいたしたいと思います。  橋本さんにお尋ねをいたしますが、第四条、これは都道府県についてのいわゆる積み上げといいますか、よりきびしい許容限度を定める規定でございますね。この中に「自然的、社会的条件」ということばがございます。自然的、社会的条件というのはどのように理解したらよろしいのでしょうか。
  290. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 この上乗せ規定の中で、私どもが自然的条件と一応考えておりますものは気象、特にわが国の場合など非常に複雑な地形の国でありますから、気象あるいは地形、こうしたものが自然的条件といえると思います。同時に、社会的条件といいます場合には、ばい煙発生施設そのものが非常に集中しておるかどうか、あるいは付近に人家が密集しておるかどうか、こうしたものがその条件といえると思います。
  291. 中谷鉄也

    中谷委員 社会的条件について橋本さんにお尋ねをしたいのですが、その社会的条件というのはあくまで客観的だから、私は社会的条件だと思います。その地域の住民が非常に公害に対する意識水準が高い、公害防止に対する意識水準が高い、地域社会において公害防止していこうという気持ちが非常に強い、こういう社会心理学的なものを私は導入すべきものだと思う。そうすると、その社会的条件は、そういう主観的社会的条件も当然入ると理解してよろしいか。
  292. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 純法理論的にいえば、こうした心理的なものというものは把握のしようがないわけでありますから、必ずしも入るといえないかもしれません。しかし、現在のわが国の社会の中で考える場合、当然考慮の対象にすべきものだと思います。
  293. 中谷鉄也

    中谷委員 次にお尋ねをいたしたいと思います。  それは十四条と、それから二十三条の一項と四項について。十四条は、継続的な排出により人の健康云々に係る被害を生ずると認められる場合、こうありますね。この点については、結局どういう場合がそういう場合に当たるのかということについて特別に規定がないようですが、ただ、ここの場合、厚生省としてお答えいただかなければならぬと思う。いわゆる厚生省の公衆衛生の立場、疫学の専門家のお立場からして、継続的な排出により人の健康に係る被害を生ずると認められる場合というのは——どういうふうに組み合わせていただいてもけっこうです。何時間どれだけのものというかっこうのことで、含有あるいはPPM、どんなかっこうでもいいですから、それをひとつ。私は、それが将来の条例としてあらわれてくる可能性が非常に強いと思う。その見解を承りたいのです。  それから、二十三条の緊急時の措置ですけれども、大気の汚染が著しくなり、人の健康に係る被害を生ずるおそれがある場合、この場合は、現行法の「大気の汚染が著しく人の健康をそこなうおそれがある場合」よりもきびしいものであることは言うまでもないと私は思うのです。よりきびしいものだと思う。そこで、十七条の緊急時におけるものについては、すでに規則において定めがございますね。もうこんなことは、政務次官百も御承知のことだけれども、一応時間のむだを省くために規則の十三条をコピーしてまいりましたが、規則の十三条には、緊急時の場合として一から四まで取りきめがありますね。そうすると、それと同じようなかっこうでこの二十三条の、人の健康に係る被害が生ずるおそれがある場合というのは、政令ではいままでそういうものがきまってないけれども、一体どんな場合なのですか。二十三条の場合について、何らかの設例をもって答えてください。
  294. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 現行法と比べまして、いわゆる「生活環境に係る被害」ということばが加えられただけの強みは当然出てまいります。ただ、こまかい部分にわたりますので、公害部長より答弁することをお許しいただきます。
  295. 中谷鉄也

    中谷委員 公害部長さんのほうから、こまかいということで——こまかくないと私は思うのです。人の健康のことですから、たいへんなことだと思うのです。  もう一度聞きますよ。「著しく人の健康をそこなうおそれがある場合」については、すでに規則の定めがある。そうすると——私はきょうは公衆衛生学的な話を聞いているので、そういう政令のきめ方をしなかったからといって私は言うのじゃないから、考え方を聞きたいのだが、人の健康に係る被害が生ずるおそれがある場合というのは一体どんな場合か、それをまずひとつ答えてください。例は一つでいい。三つのなにについてひとつ言ってください。
  296. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 御承知のように、現行の十七条で、省令でおそれがある場合として、ただいま御指摘のように四つ書いてございますけれども、法律改正に基づいて、今度は政令になるわけでございます。その政令の中身としては、少なくともSO2関係は、大体現行の省令の中身を基礎に一応置いておりますけれども、なお検討して、場合によればあるいはもう少しきついものを書くかどうかについては、検討いたしてみたいと思っております。
  297. 中谷鉄也

    中谷委員 おかしいですね。人の健康に係る被害が生ずるおそれがある場合と「著しく人の健康をそこなうおそれがある場合」とが同じ現行でいくのだというふうなことは、私は大体、SO2なんと言われても何のことかわからない程度の、化学についてはしろうとだけれども、日本語の解釈としてはおかしいじゃないですか。おかしいどころじゃありませんよ。
  298. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 実は予定で、すでに先生方もことばの上としては御存じでありますので、公害部長はあのように申し上げましたが、現行〇・〇六PPMというものが亜硫酸ガスに定められております。それを私どもは、この法律案が通りました場合に、可及的にすみやかに〇・〇五PPMまで下げるつもりでおります。
  299. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、次に十四条、継続的な排出により人の健康に被害を生ずると認められる場合、この継続的な場合という場合は、一体公衆衛生学的にはどういうふうに見ておられますか。
  300. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 先生御承知のように、今度の改正法で、排出基準違反の状態に対して直ちに罰則が科せられる、いわゆる直罰規定が今度かかることになりました。したがいまして、その後に行なわれる改善命令のありようも、現在の改善命令は、改善命令違反で初めて罰則がかかるものですから、その改善命令はいわば行政措置的なとらえ方で法律の上で規定しておったのですが、今度は改善命令以前に、違反の状態で直ちに罰則がかかりますので、改善命令のありようは、むしろ予防的な意味で法文の整理をする必要がある。そういうことで罰則も、改善命令違反の状態のほうが重くなっておりますので、そういう整理をいたしました。
  301. 中谷鉄也

    中谷委員 違うんです。そんなことは、私は法律屋だから、条文を読めばわかるのです。私が聞いたのは、継続的な排出により人の健康に被害を生ずると認められるという場合は、公衆衛生学的に見てどういうふうな場合に当たるのですか、それはとにかく排出する物質についてそれぞれの設例、大体どの程度のことを考えているかということを答えてくださいと言っているのですよ。
  302. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 排出しておれば罰則がかかる、罰則がかかったにもかかわらずなお継続しておる、そういう状態でございます。
  303. 中谷鉄也

    中谷委員 ついでといえば失礼ですけれども、橋本さんにお尋ねをいたします。  先ほどあなたは、こういうようにお答えになりました。適用除外例の問題の中で、二十七条の都道府県知事については、隣接都道府県知事についても要請権があるんだということを法制局で聞いてきた、法制局はそう言っているとおっしゃいましたね。そうすると、三項の通知は隣接都道府県にはあるのですか、ないのですか。それとも、それは二十八条でまかなうという趣旨なんですか。
  304. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 先生よく御承知のとおり、二十八条でまかなうつもりでおります。
  305. 中谷鉄也

    中谷委員 そこでお尋ねをいたしますけれども、橋本さんもおかしいと思われるでしょうね。幾ら二十八条でまかなうといったって、立ち入り権がなしに要請しろというのは、やみ夜に鉄砲なんですね。やみ夜に鉄砲じゃなくても、とにかく夕やみでスズメを撃つようなものです。立ち入り権を何で認めなかったのでしょうか。ふしぎに思われませんか。ちょっと次官にお答えになってもらってください。
  306. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 ついでに聞かれる私ではわかりませんので、専門家に答えさせます。
  307. 中谷鉄也

    中谷委員 では、合理的な根拠をひとつお聞きしましょう。法制局は筋がこまかいから、質問を整理します。  立ち入り権を認めないのでは、結局、要請というものができますよといったって、これは要請のしようがないじゃないですか。二十八条で資料をもらっても、人に教えてもらって質問したって、質問に迫力がないのと同じで、やはり自分が、とにかく腹に入らなければだめですよ。百聞は一見にしかずということばもある。だから、隣接県、特に実際に公害を全部かぶっているところの県に、何で一体立ち入り権を認めないのか、これは一体どういうわけなのかということについて、私は、法制局じゃなしに、通産省のほうに実務の問題として聞きたい。法律論より、実務の問題として聞きたい。
  308. 荘清

    ○荘政府委員 法律論ではなく、実際の行政運営の問題としてお答えいたします。  今回の電気、ガスの適用の除外に関連いたしまして、まず資料を所在地の知事さんに送付するという点がございまして、先生、いまございました、公害をかぶると見られる隣接県のほうには、法の規定に基づいては資料を送ることには実はなっておりません。なっておりませんが、行政運営といたしましては、きわめて緊密な連絡を従来からとるようにつとめておりますが、今後はさらに一そう、その点には十分配慮するということを根本前提考えております。
  309. 中谷鉄也

    中谷委員 では、この前の質問をもう一度追いますよ。電気事業法四条、八条、新設、増設の規定ですね。四条は発電所の新設、八条は増設ですね。その場合に、実務的には、許可条件には入っていないけれども、設置県の知事の同意書面をつけていますね。隣接県の知事の同意書面については、十一月十二日の産業公害特別委員会で通産大臣は、そのように担保をする、こういうふうに答弁をされました。これは私は、かなり重大な答弁だと思っている。要するに公害防止をとるか火力発電所の建設をとるかという、私は実務の面では非常に大きな影響があると思うのです。この考え方は、通産省として、いまなお緊密な連絡ということですから、変わりませんね。隣接県の同意も要るわけですね。同意も運用上つけられるわけですね。
  310. 荘清

    ○荘政府委員 そのとおりでございます。
  311. 中谷鉄也

    中谷委員 京阪神、それから千葉、東京、神奈川——東京都に火力発電所ができるという場合に、それが神奈川に影響する、千葉に影響するという場合には、そうすると神奈川県、それから千葉県の同意書も運用上つけるわけですね。
  312. 荘清

    ○荘政府委員 あらかじめ公害の総合事前調査等を綿密に行なってまいりまして、関係ありと見られるところについては、一県であろうと二県であろうと、数には関係ございません。
  313. 中谷鉄也

    中谷委員 どうも質問が荒っぽくなりましたので整理をいたします。  次に、もう一度話をもとに戻します。長官にお尋ねをいたします。  挙証責任の転換という概念が、実は私自身一生懸命になって勉強したが、なかなかよく頭に入らないほどむずかしい概念だと思います。これに長官お取り組みになりましたのは非常に敬意を表しますが、挙証責任の転換というのは、故意、過失のとにかく立証責任を相手方のほうへ法律上移していくということですね。ところが、因果関係の問題については、たとえば阿賀野川でいいますと、水銀が出た。そして水銀中毒があった。工場が水銀を排出して中毒が出た。そうしたら、とにかくどれだけの水銀が出て、どんな経路でどうなったのかというそこまでの機序的な証明をしろ、疫学的な証明だけでは足らぬということが、結局会社側の言い分ですね。それだったら、挙証責任を転換しただけではどうにもならない。結局力の強い会社のほうは、反証を十分にあげることができると思うのです。ここに私は、推定と蓋然性だけで足るのだ、要するに水銀が出て、水銀中毒があれば、そういうふうな場合には、とにかく疫学的な証明だけで足るのだという考え方についても、挙証責任の転換にお取り組みになるのだから、そのような因果関係の問題についてもひとつ検討を加えていただきたい。これが私の提案であり、当面お取り組みになる問題の挙証責任転換の内容としてそれを加えられるべきだというのが、私の主張であります。この点についてお答えいただきたい。
  314. 山中貞則

    山中国務大臣 これはやはりたいへんむずかしい問題の一つでしょう。私が言っている挙証責任の転換は、やはり故意または過失でなかったことの証明ができなかった場合には、故意または過失があったものと裁判官が認定する、さばく。挙証責任のいわゆる故意または過失でなかったことの証明が、訴えられたもののほうができなかったという場合には、訴えられたもののほうがその責任を負うということを言っているのであって、これ以上の範囲のものについては、法務省のほうの答弁に譲りたいと思います。
  315. 中谷鉄也

    中谷委員 法務省にお尋ねしますけれども、私の質問も少し混乱をしたのです。要するに、自由心証主義の立場においては非常に問題はあると思いますけれども、因果関係については疫学的な証明だけでいいのだという点は、すでに裁判例においてもかなり確定していると思うのですけれども、挙証責任の転換とはこれは関係がないわけだ。自由心証主義という民訴の基本的な原則に触れてくる問題ではありましょうけれども、そういうようなことについては、立法の検討の余地はありませんか。これはやはり自由心証主義の問題との関連で非常に困難でしょうが、しかし、裁判の積み重ねの中では、因果関係は蓋然性でいいんだというふうな方向に向かいつつあるという前提の中で、法務省、お答えください。
  316. 川島一郎

    ○川島説明員 因果関係についての挙証責任の転換のお話でございますが、これは中谷委員御承知のとおり、非常にむずかしい問題でございます。実際問題といたしまして、因果関係の証明が非常に困難であるということは仰せのとおりでございますけれども、これを転換させるということは、法律で規定するためには一定の要件を書かなければなりませんし、その要件をどのように書くかということがまず問題となりますし、公害はいろいろ態様が異なりますので、それに応じてまた要件が異なってくるということも考えられますので、非常にむずかしい問題であろうと思います。最近の裁判例におきましては、比較的因果関係の認定を、いまおっしゃったような疫学的な方法によって大量的な観察をするというようなもとに推定をしていくというやり方も行なわれておるようでございますけれども、これとてもやはり限度があるわけでございまして、この点につきましては、非常にむずかしい問題であるということだけをお答えさせていただきたいと思います。
  317. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、挙証責任の転換、無過失責任、因果関係は疫学的立証で足るというふうなことを、裁判例もずいぶん積み重ねてもらえるだろうと思うし、要するに被害者をどのように救済していくかということで、私の質問がこれからずっと続いていくわけですけれども、最高裁判所の総務局長さんにお尋ねをいたしたいと思います。  裁判所法の五十七条によれば、裁判所調査官制度というものがございます。地方裁判所については、工業所有権または租税に関する事件についてそういう調査官制度を設けておりますが、ひとつ公害についてやはり前向きにそういう調査官制度を設けられることを、公害と申しますか、大きな爆発事故とかそういうふうな技術どういうふうに表現していいのか、それはあなたのほうでひとつお答えになっていただきたいと思いますけれども、そういうことが必要じゃないのか。こういうような点について、言ってみれば、公害調査官というようなものについて御検討の余地はないかどうか、お答えいただきたいと思います。
  318. 長井澄

    ○長井最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  ただいまお尋ねのような公害調査官というような官職を設置できないかということにつきましては、今年の三月、公害関係の民事裁判官の会同でも要望として出ましたので、審理の適正、迅速の処理というたてまえからたいへん必要なことであるということで検討いたしました。ただ公害事件は、争点になります点が科学的に非常に特殊性に富んでおりまして、ある程度の件数は出ておりますが、各事件の争点が非常にばらばらでございますので、しかも、その争点につきましての専門家がそれぞれ分かれておりまして、これを種類の限られた公害調査官というふうにまとめて処理することが、現段階では予算的に現実性がない。必ずしも適切ではない。しかし、今後ある程度の事件がまとまると申しますか、審理の関係で類型化されますれば、私のほうとしてはぜひこれを検討いたしまして、実現に持っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  319. 中谷鉄也

    中谷委員 中央公害審査委員会委員長にお尋ねをいたしたいと思います。お待たせをいたしましてたいへん恐縮ですが、質問は非常に素朴な質問であります。  公害紛争処理法に基づいて、中央公害審査委員会が発足をいたしました。委員長に御就任をいただいたわけでありますけれども、一体どの程度の案件が係属するというふうなお見通しをお持ちになっておられるでしょうか。それと、一体実務的にほんとうに、俗なことばで言えばまだ店開きをされたばかりでございますけれども、法の運用の面で、あるいはまた機構、予算等の面で、これらの問題については問題点がありそうだというふうな点については、ひとつ忌憚のない御意見を伺いたい、こういうことで御出席をいただいたわけであります。お尋ねをいたしたいと思います。
  320. 小澤文雄

    ○小澤政府委員 お答えいたします。  いま御指摘のように、中央委員会発足早々でございまして、具体的に、本来委員会で処理しなければならない事件はまだ起きておりませんけれども、発足後すぐ、委員会に出すについての手続をどうするかとか、そういう点についての問い合わせとか、それから、これは苦情処理に相当するものだろうと思いますが、そういうのはすでに十数件起きております。ただ、いま申し上げましたように、委員会が本来の法律の趣旨に従って処理しなければならぬ事件はまだ起きておりませんので、そちらのほうの処理上の経験に基づいて意見を申し上げるという、そこまで行っていないのは非常に残念でございます。
  321. 中谷鉄也

    中谷委員 私、委員長にもう一点だけお尋ねをいたしたいと思うのです。これは、あるいは委員長というお立場で御答弁いただけないことかもしれませんが、ひとつ新しい制度をつくる観点から、御専門家ですから、これらの制度についてはどういうふうにお考えになっておられるか。  実は先ほどから同僚委員も、裁定の権限といいますか、そういうものをとにかく認めるべきじゃないか、こういうふうな点についての話と申しますか、主張を繰り返し繰り返しておったように思います。裁定権を認めるがよいかというようなことで研究——ジュリストなどにも出ているようでございますけれども、一つ考え方としては、そうすると一体五審制度になるじゃないかというふうな問題点もあるようです。いろいろな問題点はありますけれども、委員長御自身としては、紛争処理法によるあの権限だけ、何かそういうことではちょっと問題があるのじゃないか。何もこれが終審でないことはあたりまえのことであって、労働委員会制度のようなもののほうがいいのじゃないかという感触はお持ちなのかどうか。立法者じゃございません、実際の委員長にこういうことをお尋ねするのは、あるいは失礼に当たるかもしれませんけれども、それらの点についての意見を、もし言っていただけるようでしたらお答えをいただきたい、こういう趣旨でございます。
  322. 小澤文雄

    ○小澤政府委員 どうも私からお答えできることではないのでございますけれども、御指名でございますから、私の感じただけのことを申しますと、裁定制度というのも、この種の問題について考えるとすれば、やはり本来の調定、仲裁と同じように、迅速に安い費用で早く救済を与えるための制度として考えることになるのだろうと思いますが、ただ裁定をかりにそういう制度をとりましても、これはやはり、それに不服な当事者からは取り消し訴訟を起こすということになると思います。それで、そのためにはやはり裁定も相当しっかりした、当時者の十分納得のいくような裁定をしなければなりませんが、前提として、そうなりますと事実の調査などについて、そうおざなりな調査はできません。そうなりますと、双方の利害の衝突している場でございますから、証拠調べそのほかの調査について、相当の手数と時間もかかるのではないかと思います。もしその点が粗漏になりますと、訴訟で取り消しになって、さらに手数がかかるということになりますので、その点は、やはり裁定が直ちに、迅速な最終的な救済につながるとはなかなか言いにくいのじゃないかと思います。  私の考えではその程度で、やはりそう急にはいかないのじゃないか、そういう感じでございます。
  323. 中谷鉄也

    中谷委員 長官にあらためて私は因果関係の問題に関連をしてお尋ねをいたしたいと思うのであります。要するに委員長に対する質問はこれだけです。ありがとうございました。  そこで資料の三の二枚目をごらんいただきたいと思うのです。こういうふうなことは被害者救済のために非常に必要じゃないか。私はこの考え方がどの程度熟しているのかどうかは別といたしまして、被害者汚染地区構想、こういうふうな構想があります。要するに蓋然性というものをとにかく認めていこうじゃないか。そこで図の一のように、人数と濃度とある。そうしますと一定の原因ですと、その中から一定の被害との間の因果関係というものを、被害者汚染地域といったようなものを設定して、因果関係の推定を定型的に行なう。こういうふうなことをやっておけば、たとえば四日市ぜんそくにしろ何にしろ、あるいはそういうふうな汚染地区構想と、そういうふうな線が引かれた場合には、線が引かれておる、そういうふうな定型的なものがあれば私は非常にいいのじゃないか、これみたいなものも若干ありますけれども、たとえばそういうことが私は可能じゃないかと思う。こういうふうなことについてある特定地域に、赤線で引っぱっておきましたが、ある特定原因物質が年間平均して一定濃度、これは罹病基準というものに名づけると、そういう罹病基準以上になれば、それは先ほど述べた一定の指定疾病を引き起こすというような確率が大きくなるのだ、そういうようなことが私可能だと思うのです。こういうようなことを当然政府として御努力いただく。被害者汚染地区構想として、ここには因果関係の立証を容易にするために提案されているのですが、政府としてはこういうふうにやっているということがあれば、ひとつお答えいただきたい。
  324. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 ただいまの点、あるいは厚生省のほうからお答えするのが適当かと思いますが、私からお答えします。  現在の健康被害救済特別措置法では、先生のおっしゃるような意味合いにおきまして地域を指定し、それに関連の疾病を指定しまして、そこに救済措置が行なわれる根拠を求めているわけでございます。ただ、健康被害救済特別措置法では、いまの因果関係ということではなしに、影響によるということで、それを広くとった形で運用がなされておるということを申し添えたいと思います。
  325. 中谷鉄也

    中谷委員 しかし結局ここで書かれている構想というのは、一つのモデルをつくろうじゃないかという考え方でございますね。モデルをつくろうじゃないかという考え方のように私は理解をいたしますが、そういうことは、では公衆衛生学というのでしょうか、現在の学問の水準あるいは政府行政努力において可能でしょうか。これは城戸さん御専門ですからひとつお答えになっていただきたい。
  326. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 いまの健康被害を例にとりましても、被害を起こします物質によりまして、特異的な関係のものと非特異的な関係のものとに分かれます。たとえば水銀のような場合には、ある程度非常にはっきりとした因果関係に近いものが確定できると思いますし、非特異的な関係といわれております硫黄酸化物、あるいは粉じんのようなものにつきましては、これと慢性気管支炎等との関係は、やはり私が大気汚染によって慢性気管支炎になったのか、本来私自身の素質、素因によってそういうことになったのか、この辺が判然としない。しかし、大きく統計的に見ますと、その濃度が、たとえば硫黄酸化物につきまして、高いところは重症率も高いということでございますので、双方の要素を組み合わせまして地域を指定し、疾病を指定して現実行政を行なっている、これが現在の姿でございます。
  327. 中谷鉄也

    中谷委員 そろそろ時間ですので、私の質問も大体終わりたいと思いますが、先ほど長官に私お尋ねしたのです。資料の七ですね。一番最後の法律をずっと書き出してまいりましたが、縦の関係で無過失責任をとにかくやっていこうじゃないかという考え方、これはもう私はとにかく資料の中に、特に無過失損害賠償責任に関する三党提案法律案も資料としてつけてまいりましたが、もうこの論議は、率直にいって非常に平行線のようですから、では縦の、このいろいろな法律についての各省間の検討というのはいつ始められるのか。それで私は、結局この法律について検討してみましょうということがまずあると思うのです。この法律について検討してみよう、検討の結果、この法律については無過失責任を入れるべきだろうという判断があって、入れられるかどうかというふうな一つのまた判断があって、入れられるとすればどういう立法形式になるかということですが、どの法律をまず検討の対象にあげるかということは、率直にいって無過失責任の問題はわれわれは三年間論議してきたわけですから、しかも縦の問題については努力している、こうおっしゃるわけですから、この委員会は九日まで続くようですけれども、いわゆる審議が九日まで続くか十日まで続くか、要するに本臨時国会中に、この法律検討の対象にするとかしないということはお答えいただけないのでしょうか。私はお答えいただきたいと思うのです。縦、縦ということばが非常に出ましたね。縦のものを検討の対象にする法律というものをきめるのは、一体いつになるのかどうか。それに無過失責任を導入するかどうかは別として、これとこれとはひとつ検討してみようということが入るのは、一体いつの時期なのか、これをひとつお答えいただきたい。
  328. 山中貞則

    山中国務大臣 経過としては今日までもやはり検討はしたのです。ところがやはり法務省のほうで民事の特別法として定めてほしいという希望が——法務省のほうに対する私の希望ですね、それがなかなか困難らしい。ならばあらためて法務省の希望も、各種規制法の中でまず取り上げられるようなものから始められたらどうですかという大臣のお話もありましたので、私のほうもそれじゃ作業してみましょうということでございますから、時間的にどうかと言われますと、今国会でそれをどれとどれということをやるのにはたいへんむずかしい。そうすると時間的にはどうかというと、次にすぐ予算編成作業をやりますので、私も公害ばかりやっておるわけじゃありません。予算もやらなければなりませんから、予算が詰まって、そうしてやはり予算関連法律等もつくらなければなりませんし、その過程には、並行して今国会で行なわれた議論を受けて、次の国会にでも出せるものありとすればそれはどれか、それはどのような理論でもって、どこまでの範囲をどのようにしてとらえるか。法理論的には間違いがないかどうか等の確認をしつつ並行していきたい、作業としては並行していきたいと思います。
  329. 中谷鉄也

    中谷委員 もう一度私お尋ねしますけれども、同じ質問をするのはとにかく私はあまり好まないのですけれども、立証責任の転換についての法律をとにかく当面努力したいとおっしゃいましたね。それは結局民事訴訟法の特例法として、単独立法としてお出しになるような法形式になるわけだと私は当然理解をいたしますけれども、それもお答えいただきたいのが一点と、いま一つ、どうしても長官御自身もそういうお気持ちがあると思うし、私も無過失損害賠償責任に関する法律案というのは、どうしても横のものをつくりたい。これはやっているうちに執念のほどを見せて、私はこの問題についてはねばりたいと思うのですが、最低では無過失責任の法案について当面挙証責任をやると同時に、将来の展望として無過失責任考え、いま一つは受忍限度を逸脱したという、いわゆる審議会答申をもとにした横断的な法律、この作業はぜひまず努力をしてもらわなければ、これは無過失責任に近いけれども、無過失責任じゃない。無過失責任的なんですから、こういうことについては、ひとつ大臣としての御答弁を私はいただきたいと思うのです。やはり横のやつを、縦ができてから横というのではなしに、これも私は並行してやっていただきたい、こう思いますが、いかがでしょうか。
  330. 山中貞則

    山中国務大臣 まず第一点の、民法の特別法としての、(中谷委員「民訴じゃないですか、挙証責任は。」と呼ぶ)損害賠償に関するですね。という意味特別法をつくっていただきたいという、やはり担当大臣としての私の法務省に対する要望は、依然として続けていきたいと思いますし、その作業もするにやぶさかでない、検討はしますと法務大臣も言っておられます。  さらに第二点に関して、各種規制法の中でそういう検討をしていく手段と、いま一つは、物質をとらえて各種規制法を横断をして、これに関するものは各種規制法においても全部無過失責任あるいは挙証責任の転換を負わされるという形式のとり方と、これはいずれも——私は、どっちがいい悪いの問題ではなくて、全部検討の対象として、最終的に両方を並立したものとして法律をつくるか、あるいはそれぞれの規制法の中で果たし得るので、それで満足させられるということになるのか、これはいずれも捨てがたい議論でありますから、これから検討を全部していきたい。御提案の項目を全部検討したいと思います。
  331. 中谷鉄也

    中谷委員 法務省に、特に私は提言をしておきたいと思います。  もちろん、私は無過失責任というふうなものについて、各国の法制を調べたわけではありませんけれども、たまたま昭和三十年十一月の法律時報二十七巻十一号、「各国における無過失責任への傾向」という座談会の一節を引いておきたいと思います。我妻先生の発言でありますけれども、「日本の民法の理論だって、七〇九条を大原則とし、例外的なものが七一二条以下にあるといわなければならないとは限らない。日本の場合でも、無能力者の監督の責任、使用主の責任土地の工作物等の占有者及び所有者の責任、動物占有者の責任、とまずかぞえ上げ、その後に、その他の責任として七〇九条を持ってくることもできないではない。」というふうに言っておるわけであります。そういうふうなことが通説でないことは、私は認めますし、先生御自身もそれを通説だと言っておられるわけではありませんけれども、私は、やはりこの無過失責任の問題について、民法の近代法の原則だ、個人の自由を守るのだということを通じて、かえって大きな企業と、そうして弱い市民というものの中における、非常な問題を暴露していると私は思うのです。こういうような問題については、もう多くの人が申しましたが、私も最後にそのことだけはどうしても申し上げたい。  きょうの質問は、あっちへ行ったり、こっちへ行ったりになりましたけれども、その点を申し上げまして、私のきょうの質問は終わりたいと思います。
  332. 加藤清二

    加藤委員長 次は、井野揮君
  333. 井野正揮

    井野委員 過般の合同審査会で、わが党の内藤議員から御質問をしました。そして何か三十分の中では、どうも消化不十分であった運輸問題に限って私はお尋ねをしたい、こう考えているわけであります。  まず第一に、過般の本会議で、総理は、自動車公害の場合は、私自身が、被害者でもあり、加害者でもあるという、また新語、名言をつくられたわけでありますが、そこで、この大気汚染法律の第十三条に、排気ガスを出す、あるいはそういういろいろな物質を出す施設責任の問題がうたわれておるわけでありますが、自動車の場合は、その生産過程にそういうガスが出るのではなくして、製品である自動車それ自体の構造、あるいは自動車の使う燃料、あるいは運行のしかた、この三種によって、公害が起こるわけでございますので、原因はもうよくわかっておるわけであります。ただし、いつ、どの時点でだれがどうして出したのかということが非常に問題になり、それが集積をされて、公害を起こすわけでありますから、この問題については、やはりその淵源にさかのぼってこれを規制していかないと、みずからの生産のために人命がそこなわれる、生活環境を悪くする、こういう問題があるわけでございますので、その根本に触れての規制が非常に必要だ、こういうふうに考えるわけであります。  そこで第一番に、これは事務的にお尋ねしてみると、運輸省に聞けば、それは通産省だと言うし、通産省に聞けば、それはどうも運輸省のほうだ。ちょうど道路の問題とか道交法の問題とかいうのは、三つないし四つぐらいの省にまたがっておって、お互いにキャッチボールをやって、責任はおれのところだとは言わない、こういうところにたいへん問題があろうかと思います。  そこで、まず構造上の問題でありますが、これは山中大臣が内藤議員にお答えになったように、例の排気ガスの規制の問題について、再燃焼の装置については、一台について四万円ぐらいかければ、これは国際的に見てもそういう弊害を起こさないものができるのだ、こうお答えになっておりますから、これはもう議論の余地のないところであります。橋本次官は、いまちょっと行かれましたので、基準の問題はあとに残すことにいたしまして、この有害ガスの中に四つの名称をあげられておりますことも、今日もう常識になっておるわけであります。したがって、一つにはガスの再燃焼の問題、あるいは触媒の問題、騒音については消音器の問題、これらが取りつけられれば、今日の常識技術の中ではこれは防ぐことができる、こういうことになるわけでございます。これを検査段階で規制するとか指導するという形では徹底をいたしませんので、当然人間の命を優先するという考え方に立つならば、製造過程の中においてこれを規制し、義務づけることが正しいと思うのでありますが、この点通産省ではできるのか、できないのか。また運輸省は、あくまでも指導の問題だということを言い張っておるようでありますが、私は、製造過程の中で、販売のときにすでにこういうものでなくちゃ売っちゃならない、こういうことになっておるべきだと思うのでありますが、総務長官のほうでは、どういうふうに通産省に要求されるつもりか。それとも、運輸省の指導の範囲の中で、それは万全を期することができるとお考えになっておられるか。これはひとつ、大臣及び両省のお考えを承りたい、こう思うのであります。
  334. 山中貞則

    山中国務大臣 私はいまから要請するつもりじゃなくて、すでに幸か不幸か、私、公害担当大臣というのと交通対策のほうの責任者でもあります。そこで、たまたま交通対策の末端——末端と申しますか、接点が、排気ガスにおいて、公害と交通のいわゆるいままでの常識の人命を守るという意味とが接点を生じてきたということで、その意味では、両方の立場から、両省のそれぞれ大臣に、ぜひ通産、運輸両省で話し合って、そうしてメーカーのほうなども、あながちそれに対して輸出向けだけ特別につけて、国内ではっけないものを売るということについて、いや絶対そうなければならぬというような言い方をしておるようじゃないと私も思っておりますし、そういう問題でぜひ相談をしてほしいということは言ってあります。ただ、どこまでいま相談ができておるかについては、私もまだそこまで関知いたしておりませんので、今後この問題は、ニクソンアメリカの議会に勧告をいたしました一九八〇年の九〇%カットするという一応の勧告案、これは議会で、上下両院どうなりますか、これらの行くえも、やはり対米市場を大きなシェアとしておるわが国自動車産業の無視できないことでしょう。そうすると、これらの問題も考えながら、せめていまできることは、アメリカ規制にパスする車は輸出だけ、そうして国内では、いまのところその物質が規制されていないからつけないのだというようなことは、やはりモラルの問題でもあるので、どちらで——生産段階のほうできちんとするのか。生産されたものを検査する運輸省のほうが、きちんとすることを生産者に命ずるのか。いずれにしても合意を得なければならない問題だと思っておりますから、これはやはり急いで詰めなければならぬ問題の一つであろうと思います。
  335. 井野正揮

    井野委員 アメリカでそういう世論が起こり、アメリカの政治で議論をされておるから、やがて日本にもそういう風潮が来るだろう、だから輸出だけやって、国内生産はまだこれから両省に話し合いをさせる、そういう段階ではないのであります。逆に、国内でそういう問題が起こり、たとえば柳町における交番の巡査が倒れる、あるいは立正高校の子供たちが突然原因不明の大気のために倒れる、こういうような、現に人命に重大な影響があるという現象が起こっておる。その原因を突きとめたところが、実はどの自動車だとは指定することはできないけれども、ある一定の気象状態の中に、ある一定の密度があったときに、そういう現象が起こるということは社会的に実証された。学問的にはあとから追及された。こういう段階で公害国会召集のときに、大臣、それで迫力のある対策なんですか。去る五日の合同審査会に対する国民の大きな失望というのは、一つの例証をあげればこういうことじゃないですか。私は、むしろ、この論議の中ではっきりさせるべきだと思うのですよ。国民世論は、そういうものをもう生産過程で規定づけるべきだ、こう言っているのですよ。この点、どうなんですか。
  336. 山中貞則

    山中国務大臣 私が言ったことを誤解しないでください。私は、アメリカがそうやっているという現実はすでに見通しができているのだから、日本自動車アメリカの輸出市場においては、生産として相当大きなウエートを持っているだろう。だから、日本の業者もぼやぼやしておっちゃいかぬということを言ったつもりであります。  さらに、いま公害国会が始まるまでに、なぜ詰めないかということですけれども、しかし、その問題は、私が両大臣に命令する立場にありませんので、あくまでも相談をしていただきたいということをお願いしておるわけでありますから、それらの問題の御相談はできると思いますし、できない場合は、本部長たる総理大臣の意思を受けて、閣議その他において指示していただかなくてはならぬと考えておりますが、やはり両者の合意、ことに通産省においては、そういうものの強制を法律や政令等でいたします場合に、業界がこれに何カ月かかったら対応できる生産体制に入れるのかどうか。全車両に対して義務づけした場合に、それを受けられるかどうか等について、一応通産は通産としての準備も要るでありましょうから、今国会にそれを詰めないでおいたのはけしからぬということは、ちょっと私としては当らないのじゃないかと思うのです。
  337. 井野正揮

    井野委員 通産省、来ておられますね。  これは、エンジンの構造をまるまる変えるとか、そういうような生産過程を大きく変革させるものではないのです。付属器をつければいいだけの話です。付属器をつければ、一台について販売価格が、山中長官のことばをかりれば、四万何千円高くなる。それだけの話なんです。あるいは、消音器等については、マフラーの問題ですね。触媒——何と言うんですか、バーナーの問題等にしても、これは二万円そこら。これらを全部つけ加えたとしても、自動車の生産価格はそんなに高くなるものじゃないわけです。ただ、長官考えなければならないのは、これをつけなければ売ってはならないと規定すると、購買力が落ちるという問題が出てくると思います。購買力が高くなってこなければ、こういうふうに有害な自動車を売ってはならぬということにはならぬと思うのですが、その点、通産省はどうですか。いまそれをすぐ規制することはできないのですか。
  338. 荘清

    ○荘政府委員 自動車排気ガス対策につきましては、御案内のとおり、運輸省におきまして、四十八年及び五十年における目標をことしの夏に定められたわけでございます。通産省としては、その目標を達成すべく、これから努力を大いにいたすわけでございますが、その場合に、一酸化炭素だけの問題ではなくて、実は、ガソリンの組成を改善いたしまして、現在入っております鉛を将来全部抜いてしまおうということも同時にいたしたい、かように考えておるところでございます。その結果、排気ガスの組成等が、また鉛を抜く結果複雑に変化をするという困難な事情等も出てまいりますので、これらを一括して処理するためのエンジンの改造とか、あるいは一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物、こういうものを同時に総合的に処理してしまうに必要な触媒等の開発、これを大きな目標にいたしておるわけでございまして、ぜひ五十年からの量産に備えますために、四十七年度いっぱいでそういう基本的な技術開発をいたしたい。アメリカの業界でも、いま鋭意やっておるようでございますが、あと二年ほどで抜本的な技術開発をして、五十年からの生産に備えたい、こういうことでやっておるわけでございます。
  339. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 ただいまアメリカ向けの輸出車と日本の車との間で、こういった有毒ガスの防除装置が日本のものはついてないのじゃないか、こういう御質問がございましたが、まず、自動車から出ます大気汚染物質のうちで一酸化炭素、これにつきましては輸出車と国内車とほとんど特段の変わりはございません。問題になっておりますのは、おそらく炭化水素の排出装置、エアポンプ、こういったものだろうと思います。アメリカでは御承知のように、早くから光化学スモッグ、これが問題になっておりまして、その対策として炭化水素の規制を行なってきたのであります。このために日本側からの輸出車も、エアポンプといったようないわば炭化水素の排出防止装置、これをつけて輸出をしてまいりました。ところが最近になりまして、アメリカの経験でいろいろ分析をいたしますと、光化学スモッグ、これにつきましては、どうも炭化水素だけではないようだ、これはやはり炭化水素と窒素酸化物、これを両方同時に規制をしないと十分な効果が出ない、こういうことが明らかになってまいりました。その結果、日本では、先ほども荘公害保安局長から申し上げましたように、この炭化水素と窒素酸化物を同時規制をするという方向で、先生も御承知だと思いますが、四十八年、五十年、それぞれの目標をきめまして、それに向かって規制をしていく。同時にその規制に合うようなエンジンそのものの改造あるいは浄化装置の研究開発、こういったものを進めておるところであります。したがいまして、いまの炭化水素に関する面につきましては、確かに一部の対米輸出車にはこれをつてけおりますが、実際問題としては、これだけでもって日本のほうがものが悪いというふうには一がいに断定できないかと私は思っております。
  340. 井野正揮

    井野委員 燃料の問題についても、添加物である鉛の問題について、この間の五日の合同審査会の答弁をテレビで聞いておりますと、これは精製過程の中で除くのにたいへんだという御答弁で、内藤議員のほうは、添加物なんだから入れなければいいじゃないか、こういうことに、御質問と答弁と食い違ったようであります。  そこで、総務長官、いますでにもう一万三千人の死者が交通災害で出たわけですね。昨年よりも一〇%くらいふえてきておるわけです。交通災害の一番大きな原因は、スピードの出し過ぎになっておるわけですね。鉛を添加するという大きな要素は、媒介を通じて出力、スピードを出す、こういうことになっており、大気汚染の場合の取り締まり対象車両は、普通自動車と小型自動車とこういうことに法律ではなっておるわけです。ところが、実際には、何も鉛だけじゃございませんから、われわれの常識で、街頭で一番ばい煙とかそういう各種ガスを出すであろうと思われるのは、むしろ特殊大型車なんですね。ところが、これは今度の改正でも法令の中には入ってきていない。ずっと以前に出された大気汚染法律には、普通自動車とそれから小型自動車しか入っていない。この鉛の問題については、いま言ったようにスピードと非常に関係があるのにもかかわらず、私の知っておる範囲では、出力の問題とこういうハイオクタンにしなければならぬという原因とは、非常に矛盾してきておる。都市の中では六十キロ出せるところなんかありゃしない。高速道路だって都市の中では実際は五十キロぐらいしか出されない。そうしてこの公害が起こっておるのは都市の中だ。半面、八十キロ出せるような道路は、有料道路五つしかないのです。全線八十キロ以上走らせられるような道路は。ここで起こっておる災害の原因別、被害を受けた被害者別調査は、長官、よく御承知だと思うのですが、まだ、閣僚でなった人もなければ、次官でなった人もいなければ、大会社の社長でほんとうに身辺忙しいような人が災害を受けた例はないです。ほとんどは、好奇心にあふられて、スピードで快感を味わうレジャー族なんです。社会的に見て、産業的に見て、一体そんなスピードが必要なのかどうかという問題にも触れてくるのですが、こういう形の中でも、一定の段階的に経過措置をとっていかなければ、鉛を除くことはできないという答弁は、なかなか納得できないのですが、この根拠をひとつ示してください。
  341. 山中貞則

    山中国務大臣 私は、交通対策の問題から、一番弱い歩行者の死傷というものを半減させたい、いわゆる車が凶器であるという感じからいって、その意味からの対策というものに専念して、各種施策も、あるいは建設、警察運輸等の五カ年計画等もお願いしてまいったわけでございますけれども、ここ一両年非常に顕著な傾向になってきたのは、アメリカ型の走る棺おけ的な、車対車、車自身のみによる死傷者が異常にふえる。したがって、対前年比で死傷者の減というのは非常に困難であるし、これはふえ続けるのではないか。やはり理由の一つは御指摘のとおりだと思います。私は、じょうだんを言っておるのではありませんで、ちょっと私の言っている話を聞いてもらいたいのですが、たとえば輸出車と国内車と分けるのは、またたいへんだろうと思うのです。エンジンやその他の性能を。だから、国内車だけアクセルを一定以上踏み込めないように、何か輪をかませるようなことを必置性にしたらどうだという話をしましたら、かりにそれが八十以上は幾ら踏んでも出ないというような車をつくった場合に、追い越しその他の場合等において、一ばい走っても全部同じスピードでしか走らないということになると、非常に危険な状態等が起こるというような話等もありまして、これは私のちょっとつまらない思いつきだったのかもしれませんが、考えてはみたのです。しかしながら、外国では、今度は逆に相当なスピードで走る性能を要求されていると思います。そうすると、輸出用の車と、主としてエンジンですが、国内消費用の車と別につくるだけ、日本自動車産業というものがそれだけの能力を持っているのかどうか、国際的な競争力というものにたえていけるのかどうか、そこらは、通産省のほうがよく知っておると思うのですが、私もそこまではちょっとわからないのですが、おっしゃることは私自身にもわかっておりますし、いままでいろいろと議論はしております。
  342. 井野正揮

    井野委員 通産省のほう、いろいろお尋ねをしますと、鉛を添加しないと出力の基準に欠けるから、エンジン構造その他が整うまでは一定期間が必要なんだ、こういう御説明があるわけですが、一体鉛を添加してそういう力を持たせなければならないという根拠は、普通自動車、小型車、こういういわゆるガソリンをもって走らせる車について、どういう条件の中でそれが必要なのか、ひとつ御説明願いたいと思います。
  343. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 いまのスピードと鉛の関係でございますが、確かに鉛が入ったほうの、いわゆるハイオクタンと称するガソリンを使いますと、いまのエンジン構造の上からいうと、エンジンそのものが非常に快適に操作するということになりますから、鉛そのものとスピードというものと、物理的にいいますと直接的な関係はないと思います。ただ、いまのエンジン構造から見て、鉛が入ったハイオクタンのものを使ったほうがいい構造になっている、そういうことだと思います。われわれといたしましては、御承知かと思いますが、四十九年四月から、全く鉛のないガソリンを使っても所定の安全等に合致をいたしますような、スピードも出せ、かつ、エンジン構造としても耐久性のあるエンジンをつくるべく、いま技術開発を進めておるというのが現状でございます。
  344. 井野正揮

    井野委員 どうも鉛を加えるという根拠が薄弱なんですよ。だから、鉛のないガソリンで走ったらどういう欠陥があるのか、これをひとつ……。たとえば、こういうメーカーのこういう自動車では、ハイオクタンでない場合はこれくらいの距離しか走らないし、ガソリンはこれだけの量よけいかかるし、あるいはこういうふうにエンストを起こして不愉快なんだとかどうなんだという説明を、ひとつしろうとにわかるように説明してください。
  345. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 詳細な技術的なことは運輸省の担当者からお答えをいただきますが、私が承知いたしておりますところですと、鉛抜きで、いまのままのエンジンを使ったといたしますと、ある種のエンジンにつきましては、バルブ・シート・リセッションと申しますか、構造の一部についてふぐあいが起こるというふうに承知しております。ただ、これも程度問題であろうかと私は思っております。したがって、将来、鉛抜きのガソリンでも十分作動し得る完全なエンジンをつくるには、やはり数カ年この構造改善につきまして、研究開発が要るものと承知をいたしております。
  346. 井野正揮

    井野委員 それは重大な答弁だと私は思うのです。現に、鉛によって多くの人体に害がある、排気ガスによって問題が起こっている。ところが、あなたの答弁を逆にひっくり返すと、そのメーカーの生産機能なり利益を保障するために、有害であるものの鉛添加を依然として認めるということに置きかえられますよ。そういうことなんですか。
  347. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 私の御答弁が若干舌足らずでございましたが、私が申し上げましたのは、鉛がなしでももちろん作動はいたします。ただ、エンジンそのものの耐久性と申しますか、あるいはそのものの破損する寿命、こういったものの関係で、現在のところは、一部の自動車については鉛なしで動かす場合には、そういった故障が将来起こり得るという可能性がある、そういうことを申し上げたわけであります。したがって、鉛がなければ全くエンジンは動かない、そういったエンジンばかりつくっておるかということであれば、そうではないということでございます。
  348. 井野正揮

    井野委員 耐久性の問題は、走行キロで何万キロか、あるいは年数で何年というのか、これは私はわかりませんが、摩滅して起こる場合と、腐食によって起こる場合と、いろいろ耐久性を失う要因があるわけですから、したがって、鉛の効用というものについては、今日まで、爆発点における出力をふやすのだというふうに説明されてきておったのが、私はこの議会の論議だと思うのです。それ以上またむずかしいもっと微妙な関係については、私、知りませんし、専門家じゃありませんから論議しようとは思いませんが、そういう面で、一部の自動車については、この鉛を添加したガソリンでないと円滑な作動をしない、あるいは耐久性、耐用年数が減ってくるとか走行キロが減ってくるとか故障、円滑な作動を障害する原因があるから、この鉛をいま急になくするわけにはいかないのだ、こういう御説明だと思うのですが、これは私、間違ってますか。もしそうだとすると、私はこれはたいへんな考え違いがある。このハイオクタンのガソリンを使った場合には、特に低速で走って密集したときに、この排気ガスは集積されて、人体に重要な被害があり、これを規制しなければならないということはもう常識になってきたわけだ。そうすると、あなたのことばをかりますと、一部の企業の利益のために、それらの人たちが現在持っておる自動車なり生産の設備なりを改善するまでは、やはりハイオクタンのガソリンを売ってやらないとこの企業は成り立たないということにはね返ってくるじゃありませんか。一部の生産メーカーにおいてはということになりますとですよ。それが全体なんだから、いますぐハイオクタンをなくすると、自動車そのものが社会需要に合わなくなってくるのだという説明なら、まだ一歩譲るところはありますけれども、一部の自動車の中で、ハイオクタンでないと耐久年数に欠くるところがあったり、作動を妨げるようなものが出てくるから、にわかにこれをやめるわけにはいかないのだという答弁は、これは人間尊重じゃなくてメーカー尊重じゃないですか。
  349. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 先ほどの鉛とエンジンの関係は、先生のおっしゃるとおりだと思います。ただ私どもは、メーカーの利益擁護とか、そういうことじゃございません。ただ、いま千六百万台ございます自動車、それについておるエンジン、これはハイオクタンといいますか、鉛添加物の入ったガソリンというものを一応対象にして設計をされております。したがって、これは鉛がなければ全然動かぬかといえばそうではございませんで、先ほど来申し上げておりますように、いろいろ運転操作上におきましても、また耐久性という面においてもふぐあいが起きてくる、こういうことを申し上げておるわけであります。したがって、そういうものが全くなしでも十分安全かつ快適にと申し上げたほうがいいかもわかりませんが、そういうふうに作動し得るエンジンというものをつくるには、なお若干の技術開発の日時が必要でございます。でありますから、メーカーの問題と申しますよりも、いまございます千六百万台の日本じゅうの自動車の問題、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  350. 井野正揮

    井野委員 局長、私も自動車に毎日乗って歩いておるのですから、快適な操作とかふぐあいとかというものはよくわかるわけですよ。いきなりエンジンがかからないとか、こつんこつんノックするとか——しかしハイオクタンを使わない自動車に乗って、サニーに乗ろうとあるいは今日いろいろ出ておる国産の自動車に乗って、ハイオクタンを使わないで問題があるとは常識的には私どもは考えられない。十五万キロ走れるものが十三万キロでだめになるのかどうかは知らないけれども、それがガソリンの原因だというふうに証拠づけられる実験はまだ出ていないですよ。やっていないでしょう。ハイオクタンが問題になってから、官庁は全部やめさせたでしょう。あなたの答弁など三百代言ですよ。それでは、具体的にハイオクタンを入れないときに、どのメーカーのどのエンジンについてどういう結果になるのだということを実証できますか。ハイオクタンを使えばこういう重大な公害の原因になるということは、もう今日社会常識ですよ。片一方は明確であり片一方は明確でないのじゃないですか。四十八年までにどうしますとか五十何年までにどうしますとかいうのは、むしろ今日の石油メーカーのほうです。ガソリンを売るほうの立場に立ってあなた言っているのじゃないですか。この点国民は非常に疑惑を持っていますよ。私ども帰ってから幾つも電話が来るのです。そんなことはない、通産省の答えはおかしい、鉛添加した自動車を使わなくたってそんなものは関係ないのだ、ああいうことにだまされるなという電話がかかってくるのです。この点、どういうエンジンがどういうふうなふぐあいが起きるのか。ふぐあいというのはなかなかこれはむずかしいです。ふぐあいの程度について説明してください。
  351. 隅田豊

    ○隅田説明員 自動車局の整備部長からお答えさせていただきます。  ただいま先生御質問の、ハイオクタンガソリンを使わない場合にどういうふぐあいを生ずるかということでございます。具体的な型式の名前までちょっと申し上げにくいのでございますが、現在調べましたところでもって、国産車のエンジン型式の中で、約一四%のエンジンは一応ハイオクタンガソリンを対象として設計がされております。こういうエンジンを、いきなりハイオクタンでないレギュラーガソリンでもし使うといたしますと、点火時期の調整それから点火装置の改良、それから非常にひどい場合には圧縮比の改良まで必要になる場合もございますが、とにかく一応調整ないし軽微な点火装置関係の改良が必要でございます。それをやりますれば一応使用可能になるかと存じます。
  352. 井野正揮

    井野委員 わかりました。点火装置と点火時期、俗に言う初めかかるかからぬかの問題ですね。これはそうたいした問題ではないですね。むしろ足腰のほうが問題だと思う。足腰は一体何に必要なのか。四人乗りの自動車に六人乗せれば、これは定員オーバーで警察に引っぱられるわけですね。スピードしかない。この足腰の問題で、八十キロ以上のスピードに耐えることが条件になっているのじゃないですか。
  353. 隅田豊

    ○隅田説明員 圧縮比の問題はそういう問題よりも、一応高圧縮比でもってハイオクタンを予想して設計いたしました車は、レギュラーのガソリンを使いますと異常燃焼を起こしまして、車の運転自体に支障を来たしてくる、こういうことでございます。
  354. 井野正揮

    井野委員 異常燃焼というと、それは爆発点における回転の問題でしょう。足腰というのはスプリングとかタイヤ、車両の問題じゃないですか。(「足腰じゃなく、プレッシャーだ」と呼ぶ者あり)ああ、圧縮比、プレッシャー、これは失礼いたしました。日本語でやっておると思うもんだから、これは失礼いたしました。そうですが、いやわかりました。これはどうもナンセンスですね。  プレッシャーの問題だとすれば、一四%がこれに該当して、すでに市販をされて使われておることになるわけですね。この一四%の自動車は大体二年間くらいでだめになるから、それまで待つという意味ですか。それともこういうハイオクタンに適応する自動車はもう生産をさせない、こういう形でハイオクタンのガソリンも売らないようにするのか。ハイオクタンがいけないということになって、これを規制しようとすれば、当然それに対応するエンジンの生産をやめさせなければならぬ、あるいはまたガソリンメーカー、石油メーカーに対しても、こういうものはもうだめなんですよ、需要がなくなるんですよという警告をしていかなければならぬ。この点はどうなんですか、通産省でないとわからぬということにならないですか。
  355. 隅田豊

    ○隅田説明員 私たち新型の車を審査いたしますときには、ハイオクタンガソリンをできるだけ使わないエンジンをつくるようにという方向で、現在メーカーの指導をやっております。
  356. 井野正揮

    井野委員 通産省のほうにお尋ねします。  お話によりますと、運輸省のほうから要望のあったのは四十八年ないし五十年、ただいま四十五年ですから、あと三年ないし五年ということになるわけですね。これを目標にしてハイオクタンのガソリンを使わさなくする、エンジン構造も変えていくということである。しかしながら、実際には、ハイオクタンでなくちゃ困る車は一四%しかないですね。これは年次的に計算してみると、ただいまの運輸省の説明と、それから運輸省が要求された通産省に対する計画とは、量的に時間的に少しズレがあるのじゃないか。たった一四%の現在出ておる車、ただいまからもう生産をさせないという方向をとるとするならば、将来売られなくなる車をさらに多く売ろうとするメーカーはないだろうし、生産するメーカーはないだろうと思う。そうすると、出された計画とただいまの説明はだいぶズレがあるのじゃないですか。この点いかがでしょう。
  357. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 四十九年の四月までに無鉛化を終わります。そうしますと、先生がいまハイオクタンと言っておりますけれども、無鉛化になりますから、全然鉛が入りません。それまでにやはりハイオクタンといわれる燃料を使う車は、生産しないようにしなければいけないわけでございます。そういう計画でいま業界を指導しております。
  358. 井野正揮

    井野委員 次にお尋ねしたいのは、先ほどから議論になっております一酸化炭素の規制の問題、それから炭化水素の問題、酸化窒素の問題等々、今日、自動車排気ガスの中で問題になります有害ガスははっきりしておるわけです。法令の中では、これを一定の基準あるいは定める基準というふうにして、いまだこれらのガスが明確に規定をされておりませんが、委任を受ける政令の中で、厚生省としてはこういうガスの名称について、明確に規制をされるお考えがあるかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  359. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 炭化水素と鉛に関しては当然規制の対象といたします。
  360. 井野正揮

    井野委員 どうも失礼いたしました。炭化水素だけですか。
  361. 橋本龍太郎

    ○橋本政府委員 いま御指摘になっておる自動車排気ガスに関してだけいえば、炭化水素と鉛でございます。同時に窒素酸化物等はむしろ大気汚染防止法全体の問題として私どもはとらえております。
  362. 井野正揮

    井野委員 大気汚染防止法の中では、普通自動車と小型自動車だけしか規定されておらないし、またガソリンだけしか規定をされておりませんが、むしろ特殊大型の自動車が問題だと思います。それに重油、軽油等からも各種のガスが出てまいるわけでありますが、これが規制されないのはどういう理由なのか御説明を願いたいと思います。
  363. 隅田豊

    ○隅田説明員 現在ディーゼル自動車がまだ入っておりません。これは、現在規制の対象になっております一酸化炭素につきましては、技術的に申しまして問題が全然ございませんもので、対象になっていないのでございまして、将来、たとえば粉じん等でディーゼル黒煙を規制しなければならぬという場合には、当然対象になってくると思います。
  364. 井野正揮

    井野委員 大型特殊自動車について害が出ておらないから、これは規制をしておらぬ、こういう御説明でございますが、これは佐藤総理答弁を引用されるとおわかりになると思う。自動車に関する限りは、私自身が、加害者でもありまた被害者でもある、きわめて集積された全体量の中において起こる災害でありますから、この分だ、その分だというわけにはまいらぬわけであります。しかしながら、実際におそらく大臣も御経験になったろうと思いますが、あの非常に混雑した自動車の中で、大型自動車排気口は横についております。乗用車と並んでとまるわけであります。あそこから出てくる熱気と、そしてあのばい煙はたまらない不愉快なものであり、もしこのまま三十分も車がとまるようなことがあったら窒息死するだろうと思うくらいきびしいものであります。私は、むしろこういうような問題については、ここにもう明らかにその瞬間において被害を与えている加害者として規制をされるべき性格のものであり、運行の時間とか、あるいは運行する場所等においても、きびしくされるべき性格のものであると思います、これは特殊自動車の免許になりますから。この点、先ほど局長のお答えになったようなお考え大臣は持っておられますか。こういうような特殊自動車については、法律は特別規制をしておらないのです。これについてはどうお考えになりますか。
  365. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 特殊自動車、大型自動車につきましては、特殊の規制を行なう特別規制といいますか、一般車とは異なったきつい規制を行なうという方針で、目下これを作成し、今後これをなるべく早く実行する方針でおります。
  366. 井野正揮

    井野委員 これは集積されたものでないけれども、直接そばを通行するものがたいへん被害をこうむる問題でございますので、一般的ないままでの論議とは違って、個々の自動車について、個々の特定の地域についての運行の、乗り入れの規制になろうかと思いますが、おおむね時間、地域、それから路線、こういうようなものについて規制をされなければならないだろうと思いますが、どの範囲について検討されておられますか。
  367. 隅田豊

    ○隅田説明員 御指摘の点で、ただいま検討いたしましておりますのは、車自体からの黒煙の排出規制そのものを何とかしたい、こういうふうに考えております。
  368. 井野正揮

    井野委員 そうすると、あの渋滞をしておる中で、小さな他の車と比べますとビルディングのような車が停止をして、非常な不快指数と、直接被害を与えておるのです。あるいは今度は自動車がようやく通れるようなところに、ああいう大型のが入ってきて騒音と排気ガスとそれから圧力感、こういうものでたいへん被害をこうむっておるのが今日は野放しになっておるわけです。これは運輸省としては警察庁の所管だといわれるかもしれませんが、運輸省としては、とめるということになると、これまた特定企業の輸送に対して行き過ぎになりますから問題があるとか、そういうようなことが起こってこようかと思いますが、こういう点についてもかなり前向きで警察庁に要請をされるというお考えはありますか。
  369. 隅田豊

    ○隅田説明員 御指摘のとおり、私たちといたしましても、そういう点については前向きに検討したいと思っております。ただ一番運輸省所管の問題としてできますことは、まず排出規制を押えていくというほうが先でございまして、警察のほうへももちろん交通規制その他については要望はいたしてはまいりたいとは思っております。
  370. 井野正揮

    井野委員 次に、今度は音のほうについてお尋ねをしたいと思います。  今度の災害法の中で、飛行機の音の問題についてはどこにも触れていないわけでありますが、御承知のように、飛行機の騒音については単独の法律があり、大阪と東京の国際空港だけがその対象になっておるわけであります。大臣、おそらく各地で飛行機騒音についての陳情を受けられておられると思いますので、この点特に今回これに対する規制をなさるお考えがなかったから触れられなかったのだと思いますが、いまなおこれを触れる必要がないというふうにお考えでしょうか。
  371. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 御承知のように、東京、大阪等は、一日の大型機の飛ぶ回数が非常に他の飛行場とは数が違っております。おそらく東京と大阪は数が大体同じようといいますか、大体東京の七割くらいが大阪の発着回数ですが、地方のジェット飛行場につきましても、これは非常に、回数は何分の一の程度であります。東京、大阪だけが指定飛行場になって規制を受けておるわけでありますが、もちろんしかし一般の就寝といいますか、夜、寝る時間とか、そういう点を考慮して、地方におきましても、時間の制限は行なっておるわけであります。しかし昼間の時間については、もちろん、これは制限は行なっておりませんが、将来やはりこのように公害問題がやかましくなってまいりますと、こういう飛行場につきましても、必ずしも東京、大阪に及ばないけれども、やはり騒音公害という点から考えていかなければならぬ、積極的にこれは考えていきたいと思います。ことに将来SSTとかコンコルドとかの超音速機、これが出てまいります。これは新聞で皆さんも御承知でありますが、アメリカにおいても大陸間を音速で飛んではいけないという規定を設けようとしておるようであります。日本の場合は比較的海に近いのでありますけれども、それにしても影響するところはありますから、これら飛行場に飛行機が入ってきた場合、どういう規制をするか、相当思い切った規制をする必要はあろうと思いますが、それらにつきましては、今後十分に検討して、公害対策の上において遺憾なからしめるようにいたしたい、かように考えております。
  372. 井野正揮

    井野委員 飛行場の建設はなかなか金がかかりまして、思うように進みませんし、しかし需要は非常に高くなってきており、この特定飛行場の騒音防止法をつくったのも四十二年、三年前であります。したがって、この当時の羽田、大阪の航空回数から考えてみますと、いまはもう二倍以上になっておるわけであり、今日の一種、二種の地方空港の中でも、ほぼこの制定当時に近いものが生まれてきておることは御承知のとおりであります。したがって、現にもうそういう状況に達してきて、苦情が出る前に公害の先取りとしてやろう、やらなければならない空港が私はあると思うのですが、運輸省では、こういう点についてはおそらく検討をされていると思いますが、されているとすれば——されておらなければならぬと思いますが、どの程度の空港をお考えになっておられますか。
  373. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 東京及び大阪が特定飛行場として指定されました当時は、東京の場合、一日百六十三回、大阪の場合、七十五回という数字であります。現在まだそれ以外の地方空港でこれに匹敵するような数字を出しておるところはありません。参考に申し上げますれば、鹿児島において二十八回、宮崎において二十四回ジェット機が飛んでおるわけであります。もちろんしかし、こういう公害問題がやかましいおりからでありますから、大阪、東京を指定した回数までいかなければ指定しない、こういうわけでもありません。これは周囲の状況及びエンジンの改良等を考慮して、かつまた住民の環境保全という点を考えて、今後とも前向きに善処してまいりたい、かように考えております。
  374. 井野正揮

    井野委員 ところが、いまおあげになった飛行場のほかに基地空港で、これは安保条約の関係もあって、運輸大臣規制するところではないかもしれませんが、かなり苦悩しておる周辺住民があるわけでありますが、これらの騒音防止についての対策はいかように考えておられますか。
  375. 内村信行

    ○内村政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの点でございますが、先生御指摘のとおりに、たとえば板付でございますとかあるいは千歳でございますとか、基地ないし自衛隊の使用している飛行場がございます。こういうところにつきましては、防衛施設庁におきましてほぼ同様な基準でもってやっておるのが現状でございます。
  376. 井野正揮

    井野委員 大臣は、大臣のほうからいまおあげになった空港等の視察の場合に、反面においては騒音を防止してほしい、反面においては今度は別な人たちから二十四時間の運航を認めてほしいという陳情を受けられると思うのです。私はわずか一年間の経験でありますが、この中で、これらはそこへ置いておいて、国際的なダイヤの関係で、なぜか日本へ到着するのは真夜中で、しかもものすごい音の大型機が入ってきて、かなり試験飛行のときから問題になっておるわけでありますが、今後国際的な交流が交易その他の上においてますます高まってくる中で、飛行場の施設そのものはなかなか進んでいかぬ。こういう関係で、夜の乗り入れについて、需要と被害との関係をどういうふうに調整していくお考えか、承っておきたいと思うのです。
  377. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 御承知のように、夜の到着時間の制限をいたしております。ただおしかりを受けているのは、せんだってのジャンボジェット機が非常におそくなって、たいへん迷惑をかけた。これに対しては運輸省からきびしく制限をいたしまして、今後そのようなことがあるなれば夜中は飛ばさない、翌日に回せという強い指示をいたしまして、その後においてはまあまあそういうようなこともほとんど解消をした、こういう事実になっておりますので、今後もそのようなことがありますれば、これはもう厳重に取り締まって、その日は出発させない、翌日出発させるという措置を講じていく、こういう方針でおります。
  378. 井野正揮

    井野委員 これはきわめて小さな車の問題でありますが、いわゆるバイクですね。オートバイです。実は自動車の騒音はかなり常識化して、警笛を鳴らさないとか、エンジンをあまりふかさないとかというふうに、ドライバーの質が向上しましたから、よほど大量のところ、道路構造なんかのぐあいの悪いところ以外は慎まれているように思います。しかし、人もなげに雷のような音を立てて自動車の間を縫って走る、そしてまた、自分自身が命を賭しておるバイクの、あの消音器を取りはずして走っている——これは構造上の問題ではないと思いますが、これの対策についてよいお考えがあればお聞かせを願いたいと思うのです。
  379. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 私の答弁の不足のところは事務当局から答弁させますが、実は私もこの問題は周囲からだいぶ陳情を受けております。何であんな大きな音を立てるのだ、そうして人もなげに走っている、こういうことで、これは何とかならぬかという強い要望がことに御婦人方から多いのであります。ごもっともであります。これに対してはもちろん騒音規制等を行なっておるのですが、若い者は、あの音がするところがいいのですね、かっこいいのですね。それでもって、はずしてしまう例もありまするが、もちろんそれにいたしましても、瞬間にある程度の速力を出すために、相当に爆発音も大きい。これについては今後とも規制を強めていきたいと考えております。その他は道交法の問題で、交通安全の問題からこれを考えていかなければならぬ、かように考えております。
  380. 井野正揮

    井野委員 このオートバイの問題は、私はいわゆるレジャー用に販売してはならない、人に貸してもならないというようにしない限り、いろいろ考えてみましたけれども、騒音の防止の方法もないし、交通安全の方法もないという気がしてなりません。しかし実際に社会に有用なのかというと、きわめて零細な企業者や、あるいは行政上の公務員などがこれを活用して、非常に効果をあげておるようでありますが、寒い国ではまた病気の原因にもなりますので、できる限りこのオートバイというものは、あまり活用しないほうがいいのではないかという気がしております。実は、車に乗って歩くたびに、必ず一日に二件や三件はあのカミナリ族が、車の間をあたかも——何にたとえたらいいかわかりませんが、ひらひらと切って歩く音ですね。あの子供の親御の気持ちになってみても、社会人として、先輩としてみても、あるいは政治家として考えてみても、行政官として考えてみてもたいへんな問題だと思うわけであります。私はこのオーバイの製造というものを相当禁止をして、特殊の産業以外、特殊の用務以外には使わないという方向に行かない限り、このオートバイの弊害をなくすることはできないと思うほどの反社会性を持っておると思うのです。  ところが、これを助長しておるものは何かというと、オートバイ競走と、かっこうのいいものを宣伝をし、これをこの産業の振興のために必要だとして、振興会等をつくっておられるし、大臣はまさかその振興会の顧問になっておられるかどうかは知りませんけれども、かなり政治家の中にもこのことについて責任のある人たちがいるのじゃないか、こういう気がいたします。私はオートバイの製造をきわめて縮小する、これしかないと思うのでありますが、大臣の見解を最後に承っておきたいと思います。
  381. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 青少年の問題の点から、いろいろ考えられる点は多々あると思います。お話のような御意見もりっぱな御意見であると存じます。これらを踏まえまして十分に検討してまいりたい、かように考えております。
  382. 井野正揮

    井野委員 大臣、その青少年の問題はよろしいのですが、この種のバイクに乗って快感を味わい、かっこうのいいことを人に見せびらかすような気持ちを青少年に植えつけるオートバイ競技会ですね、あるいはこういうことが自動車の振興になるとする催し等について、政府要人あるいは有力政治家等が支援することは、いかがにお考えになりますか。
  383. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 その製造その他は私のほうではありませんで、通産省のことでありますから、ちょっとその点はわかりませんけれども、いわゆる振興会といいますか、政治家がそういうものの顧問とかなんとかになることは好ましくないのじゃないかというお話でありますが、どういう人がなっておるかも承知いたしませんけれども、製造上の問題等につきましては通産省のほうにおいてお考えであろうと思います。  ただ私が先ほど青少年云々と言ったのは、青少年にかっこいいようなものを与えようという意味じゃありません。全体的に青少年の問題というものを考えていく上においてもこの問題は重要であろう。安全とかあるいはそういうようなてらう気持ちをだんだんなくしていくとかいうような意味で、私は前向きの意味で申し上げた点を御了承願います。
  384. 井野正揮

    井野委員 大臣、私もその点は賛成なんです。賛成なんですが、そういうものを助長するような風潮が、行政や政治に重要な関係のある部門の中にあることは事実なんです。きょうは名前を申し上げませんが、あります。通産省もこれを奨励しているのじゃないかと思うのですが、売れればいい、ある産業が振興すればいいということで、反社会性が高まるというようなことについては、通産省どう考えますか。
  385. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 確かにカミナリ族の問題は困った問題でございます。しかしこれは消音装置をつける義務になっておりますので、今後とも大いにその面で取り締まっていただく。ただ、いままで零細企業その他がこういうものを相当利用しておりますので、企業その他が成長したから、これで音が出るから、さあやめなさいというわけにはいかないのじゃないかというようなことで、今後その騒音の問題についてメーカーとの話し合い、指導をするべきだろうと私は考えております。
  386. 加藤清二

    加藤委員長 井野揮君に申し上げます。あなたに与えられた時間がきました。結論を急いでください。
  387. 井野正揮

    井野委員 じゃ結論的に申し上げます。  確かに戦後の日本の経済復興の過程の中で、ある時期においてオートバイというものがいろいろな産業や行政、社会的に必要であった時期はございました。その時代に多く生産をされて、それに依拠しているメーカーのあることも十分承知しております。しかし今日ではむしろ四輪のほうがずっと進みまして、至るところで四輪になり、オートバイはむしろレジャーの方向に変わってきているという姿の中で、生産を抑制し、この種社会的な弊害をなくする方向に努力をすべきではないか。いまなお依然としてこれの振興のためにあるいは特定の会をつくり、あるいは有力政治家が参加をし、ギャンブルまでやってこれを振興するような風潮は改めるべきだということを要望して、私の質問を終わります。
  388. 加藤清二

    加藤委員長 次は米原昶君。
  389. 米原昶

    ○米原委員 私は、いわゆる費用負担法並びにそれに関連して公害対策基本法について、主として山中総務長官に質問したいと思います。  一昨日の連合審査会におきましてわが党の寺前巖君が、公害問題解決のためには公害を引き起こしている加害者を明確にする必要があるという観点に立ちまして、総理に質問しました。しかし総理はこの回答を避けて、ほかの政府委員にこれをやらせたのであります。最後に、感情的にならないでもっと冷静に合理的に今後の対策を立てるべきだというようなことを申しました。しかしこの問題は、実は今度の国会において公害問題を解決していく上にも、単に感情問題じゃないのです。冷静に公害発生源の責任を明らかにするということがなければ、結局公害対策が成り立たなくなっていくのであります。そういう点でたとえば私たちが言うのは、産業公害の発生源としての企業責任、こういうことが公害基本法でも原則的に明確にされなければいけない、こう考えるのです。責任と申しますのは、公害を発生させるまた発生させるおそれのあるような企業公害防除施設をつくる責務があるというような程度じゃなくて、先ほども民社党の方からその点指摘されましたが、つくるのが義務なんだ。あの富士市におけるヘドロ問題ですね。あの場合に、事業者はそれを防除する設備をつくることが絶対的な義務なんだ、この考え方をはっきりさせる必要があると思う。また、その義務を怠った結果公害が発生して、そうして一般住民に迷惑をかけた。ある場合には死者や病人まで出しておるわけでありますが、そういうものに対してはその費用は全面的に負担しなければならない、こういう原則です。そうしてまた公害防止施設をつくるにあたっては、その公害を引き起こす事業者が全額原則として負担するんだ、こういう原則です。また、そういうことを怠って死者や病人を出す一つの刑事的な犯罪にも問われる問題が公害罪として今度出ているわけですが、その公害罪の原則ですね。そういうものは刑事的な犯罪としても責任をとらなければならないんだ。私は、こういう義務づけを公害基本法に明確にすべきだと思うのです。  なるほど公害基本法にも事業者責務ということはうたわれております。同時に、国の責務地方公共団体責務、これは三つ並べて書かれているわけです。ところがその先を読んで見ると、事業者の場合は確かに公害を引き起こす側のそういう責務の形でちゃんと書いてあります。同時に、国の場合の責務というのは、その公害防止して住民を保護する、そういうほうの責務ですね。地方公共団体も同様です。そうすると、同じ責務といっても責務意味は違っているわけです。これが第一条では並列的に並べて書かれている。そういう点でも、この責務そのものの意味がぼやけてくるんです。なるほど三条、四条、五条でそれぞれの責務が別々のものだということは書かれておりますがね。特に発生源の問題ですね。この責任というものをもっと明確な形にしなければいけないんじゃないか。責務ということばは、私、法律の専門家でないのでよくわかりませんが、これを読んでみましても、いわゆるこれを怠ってはならないという義務ですね。そういうものとは若干違う何か心がまえ、努力目標のような印象を与えているんです。これに違反したら当然それに報復する、罰が加えられる、そういう費用も全額出さなくてはならぬ、こういう原則が非常に不明確になっているんですね。この点をもっとはっきり書くべきじゃないか。  これはこの費用負担法の場合にも関係してくるのです。もちろんここに書かれているのは、企業の中につける防除設備というようなものじゃなくて、確かに公共的な意味を持った公害防止事業ですね。これを国や地方公共団体がやるという形になっていて、その費用事業者が全部あるいは一部負担する、こういう形になっております。しかしこの場合に、本来は公害を引き起こした企業責任をもって原則としては全額負担するんだ。もちろんその場合にもいろいろな事態がありますから、必ずしもその一つ企業だけの責任とは言い切れない問題、連合して起こしている問題、それで当然企業責任は分担されなければならぬわけです。それにそのほかの複合作用もあるわけですから、それを減額していく場合はもちろん起こり得る。しかし原則としては公害を引き起こしている原因者のところが全部の責任を負う、この原則ですね。これをはっきりさせないでこの費用負担でいきますと、ある場合には非常にまずい結果になる。結局、公害を引き起こしているその企業者のほうは費用を全額出すのではなくて、それを国や地方自治体がしりぬぐいしてしまう。国や地方団体がしりぬぐいする結果になるということは、結局国民がその税金でまかなう、被害者のほうの国民のほうが費用を出すという結果になります。やはりそういうことを許さないものにしないといけない、そういう点を考えるわけです。  私はその意味では基本法そのものにこの点をもっと明確にしなければいけないのじゃないか。基本法の第一条その他のところで書かれている程度では、これは不明確じゃないか、はっきりした義務づけになっていないということなんです。そして二十二条のところは今度の法案に関係があるわけですが、原則としては基本法の中の何らかのところにこれを入れる。これに入れられなければ今度出された費用負担法の中にまず第一にこれを入れる。そういうふうにしないとこれは結局費用負担のしりぬぐい法になる、こういう危険があると思うのです。この点について総務長官の見解をお伺いしたいと思います。
  390. 山中貞則

    山中国務大臣 これはもう基本法も、企業費用負担法も、いずれも企業者負担が原則であるということは大前提であります。したがって第三条でも事業者責務として防止する設備、防止する措置を講ずるということがまず原則でございますから、少なくとも公害を排出しないような防止施設を講ずることは全額その企業負担するんだということをはっきりと法律の文言にもそれは出ているわけでありまして、さらに費用負担法の場合においても、原則はこのような加害者がはっきりしている場合においての負担は一〇〇%が原則である。しかしながら、それらの場合において事業を幾つかに分けておりますが、それらの事業においてはたとえば緩衝緑地的なもの等については、起こさない以前の状態をつくっておこうということが目的でありますから、負担率の一番低い、よるべき基準が示されておるわけでありますけれども、原則は要するにあなたの言われたことと私どもが法案として出していることと変わりはない、そういうふうに考えております。
  391. 米原昶

    ○米原委員 今度改定される第三条だと「事業者は、その事業活動に伴って生ずるばい煙、汚水、廃棄物等の処理等公害防止するために必要な措置を講ずるとともに、国又は地方公共団体が実施する公害防止に関する施策に協力する責務を有する。」責務ですね。これははっきりした義務づけと言えるかどうか、これはできなかった場合、しなかった場合、怠った場合には、当然それに違反したものには何らかの処置をとる、これは当然しなければならない義務なんだ、こういうふうにこれを解することになりますか。私はこれだけの文章ではそうならない、そういうふうに思います。
  392. 山中貞則

    山中国務大臣 その考え方を受けて、事業者がそのことを行なうことを義務づけ、そしてそれに対して各種規制法がきびしく課せられていくわけです。そしてそれを怠った場合において、基準に違反した場合は直罰という新しい形式を盛り込んだのは、その思想を貫いたものと考えております。
  393. 米原昶

    ○米原委員 しかしそれならばもっと明確に費用負担法にも、公害を起こしたあるいは起こすおそれのあるその企業が全部の責任を持っているのだ、だから原則としてはそこが費用の全部を負担しなくちゃならないのだ。この場合は公共事業ですからね。もちろんそれから幾らかマイナスされるいろいろな事態が起こるでしょう。そういう原則をまず入れるということをしないと非常な底抜けになってしまうのじゃないか。現実には、いままでは事実いろいろな事業者公害を起こしましても、ほとんどこれは国や地方自治体がしりぬぐいしてきたわけです。全然費用負担しなかった。今度の法律は少なくとも費用負担するという原則を出した点では、私は一歩前進だと思っているのです。しかしここで大切なのは、公害を引き起こした企業がその公害に関する限りは全額負担するのが原則です。このことをはっきり入れないと、これはいろいろな意味で悪用されると思う、そういうふうに考えます。どうでしょうか。
  394. 山中貞則

    山中国務大臣 まず出さないことが第一ですから、出さないことについては基準に合う防止施設を全額自分費用でつくれということは、これははっきりしているわけです。さらに防止事業費用負担の区分の法律においても、第三条で、その汚染関係をした度合いというものは、これはその企業者負担することが義務づけられておりますし、四条においてもその意思がはっきりと出ておりますから、先生の御主張のとおりだと私は思うのですが。
  395. 米原昶

    ○米原委員 それでは具体的な問題でひとつ聞いていきましょう。たとえば田子の浦のヘドロですね。この条文を読みましても、あのヘドロの場合はこの二条の二項二号のところに出ているこれに当たると思うのですがね。この場合には十分の十または四分の三とありますが、大体あの田子の浦の場合は一〇〇%事業者のほうが負担するということになるのが常識としても当然だと思いますが、その点はそうなりますか。
  396. 山中貞則

    山中国務大臣 そのとおりでございます。事実、緊急措置として知事との間において話し合いをいたしました財源の十五億の措置についても、業者がそのための施設をする費用十億も全額業者負担ならば、異例の方式として大蔵省が特認いたしました転貸債として静岡県が起債を起こした七億、それが富士市に転貸されて富士市の責任のようでありますが、それの返済は全部企業責任という、特殊な転貸債で処理しておりますし、さらに全体のどこまでをやるかの問題でありますけれども、田子の浦の場合は疑いもなく十分の十負担でいきますが、それが大沢くずれ等の特殊な原因というものによる普通の堆積土壌というようなもの等がそれまでに含まれて行なわなければならない、いわゆる製紙工場のSS——沈でんしたもの以外のものまでもやるのだということになりますと、若干の減額ということがそこに起こるかもしれませんが、田子の浦は典型的な十分の十の負担であると考えております。過去もそうしてまいりました。
  397. 米原昶

    ○米原委員 私はそれが当然だと思うので、その点はいいと思うのです。  もう一つ実例で聞きます。神通川の場合ですね。私ごとしの五月神通川のあの婦中町へ行きまして、イタイイタイ病の患者とも会った。あの地帯は田畑がすっかりカドミウムで汚染されて、天地がえというのですか、掘り返して下のほうの土を上へ持ってくる。それは県がたしかやっているのですね。ところが、その結果というのは、下のほうを掘ってみたらそこまでカドミウムがもう入っているのですね。結果は逆に悪くなった。どうもひどいので、その土を調べてもらうために県のほうにやっているのですが、その回答が一年たってもまだ来ないといって非常に憤慨しておりました。あそこの場合なんか当然よそからいい土を持ってきて客土事業をやらなければならない。そうすると、ここに書いてある、農用地または農業用施設について実施される客土事業このケースに入ると思うのです。ところがこの場合の費用は四分の三または二分の一ですね。私はこれは非常にはっきりしていると思うのですね。あそこの場合をとってみると、どうしてあそこの土地汚染が起こったか。神岡鉱山から排出されたカドミウムだということはもうはっきりした事実だと思うのですよ。そうすると、その発生源の神岡鉱山が全額負担するのが当然だ。多少ほかの要因がありましてそこから若干引くということはあり得るかもしれない。しかしこれは初めから四分の三だというふうに書かれているのですね。多くても四分の三、その次は二分の一ということになるのでしょうが、なぜそういうことになるのか。あそこの例をとってみると、当然全額神岡鉱山に負担させるというものにしなければならない。わざわざこの法律をつくることによって全額負担しないで四分の三に下げる、これはおかしいじゃないか。これは企業責任を明確にしてないじゃないかと私は考えるのです。ですからこんなこまかいこういう事業は何ぼだというようなことはやめにして、こんなにいろいろ例示する必要は逆にない。そして当然の場合は十分の十、または四分の三または二分の一という場合があるということだけ書いておけばいいと思う。こういう規定をしていくことは間違いじゃないかと思うのです。この点どうでしょうか。
  398. 山中貞則

    山中国務大臣 二分の一から四分の三とよるべき一応の基準を示しましたのは非常に長年月にわたって蓄積されたものでありまして、ただカドミウム等の議論がなされ始めたのはここ四、五年くらいのことである。そうすると、それ以前の事業者なり居住者なりというすべての人たち、周辺の人たちは加害者意識被害者意識も実はなかった。したがって悪意でもって営業活動を行なって、そして加害者たるべきことを自覚しつつやっていたものではなかったという背景は私はあると思うのです。したがって、神通川の場合どうかという議論について議論しますとあやまちをおかすかもしれませんが、私たちはよって示す基準をここにつくったのでありまして、それらの事情を勘案して、二分の一から四分の三としておりますが、その地方の工事施行者というものが都道府県に置かれる審議会の議を経てそして定める場合にはただ基準とすればいいのであって、ここの場合には明確だから十分の十だという結論が出ればそれは当該企業の——まあ裁判その他のことになるかわかりませんが、問題は別にして、十分の十を妨げるものではないということであることだけはわかっていただきたいのであります。
  399. 米原昶

    ○米原委員 そうだとしますと、そういうことも可能だとするならば、わざわざ四分の三または二分の一としますと、それこそいま言われた会社のほうが裁判を起こすかもしれない。やっかいなことになるのです。むしろそんなものを入れないで十分の十または四分の三または二分の一とこうしておけば、いま言われたような措置をとることができるわけですね。非常に問題を複雑にしてしまうのじゃないか、そういうふうに考えるのです。  これはあそこの神通川のところだけでなく、ことし問題になった黒部市の日本鉱業の三日市製練所、あの場合でも汚染して田畑が使えなくなった。この場合にも最終的には一部は工場が買い上げるともいっておりますけれども、まだ汚染されている地域はもっとひどいらしいのです。そうすると客土事業とかいろいろなことが問題になる。これなんか古いといいましても、そんな古いことじゃないのです。もう原因ははっきりしている、わかっているわけですね。あの製練所ができる前にはそんな問題は一つもなかったのですから、原因は一つしかない。その場合にやはり十分の十という問題になってくると思うのです。なぜ十分の十という場合を入れるような措置をとられないのか。逆に書いておくと、原則的には基準が十分の十でないのだから、そうするとこれは不当だというようなもんちゃくを起こすのじゃないか、こう考えるのです。どうですか。
  400. 山中貞則

    山中国務大臣 七条にも長期にわたって蓄積されたものということを一応明示しておりますが、大体においてそういうような形態をとっておるものと思います。したがってわれわれとしては、これはよって立つ基準を示したのであって、その地方の特殊な事情に応じてこれをこえてはならぬという天井を示しておるものではないことは法律にはっきりと書いてございますから、それをたてにして訴訟したら勝つだろうということはちょっと間違いだと私は思います。
  401. 米原昶

    ○米原委員 時間もありませんから、もう一つ例をあげて聞きます。  それは一昨日連合審査会で私、時間がなくて十分に質問できなかった例なのですが、東京の江東地区で地盤沈下が非常に起こって大問題になっている。この場合に、御存じのようにずっと前から東京都は防潮堤をつくってそれを年々かさ上げするというようなことで公害を防いでいるわけです。地盤沈下というのは公害基本法でもはっきり公害一つになっているわけです。その地盤沈下が地下水のくみ上げから主として起こっていることも周知の事実なんです。これは何とかして地下水のくみ上げをやめさせていかないと根本的な対策にならない。結局いま言いました防潮堤のかさ上げ、これに東京都がずいぶん金を使って、これに国のほうも相当金を出していると思うのです。こういうことでいままでやっている。明らかにこれは公害防止事業の一種だといっていいと思うのです。こういう場合に、今度の法律が適用できるかどうか。何かよく読んでみると、どういう場合ということをわざわざあげているために、ああいう場合には全然適用できないのじゃないかというふうに思うのですが、これはどうですか。
  402. 山中貞則

    山中国務大臣 ただいまの問題、工業用水道の問題はまた別の問題で、利用量で処理すべきであろうということではずしてあるわけですが、防潮堤等については、これはやはり因果関係の明らかである企業等について応分の負担をさせるのは、この費用負担法についても明確になっていると私は思います。
  403. 米原昶

    ○米原委員 そうしますと、防潮堤その他の地盤沈下の結果として起こった事態を救済するためのいろいろな公害防止施設、こういうものはこの法律を適用する。いままでは防潮堤かさ上げのために国のほうだけでも三〇%から四〇%金を出しているわけですね。そういう場合に、防潮堤をつくらなくちゃならぬというその原因てつくったのは明らかに公害を引き起こした地下水のくみ上げだと思う。そうすると、この場合の費用負担は——もちろん、これも地盤沈下の原因はただ水のくみ上げだけが原因かどうかというので、いろいろ検討してみなくちゃならぬ点もあるから、若干引かれるという問題は起こると思うのです。またはあの地域のくみ上げだけじゃなくて、千葉方面における地下水のくみ上げも影響していると聞いておりますが、そうするとあの地域企業だけに全部を負担させるというわけじゃないです。いろいろ考慮しなくちゃならぬ点はあるが、しかし結局相当の費用企業が出すということにしなくちゃならぬと思います。そういうふうになるわけですか。
  404. 山中貞則

    山中国務大臣 お手元の法律案の第二条の第二項第五号がございまして、「第一号から第三号までに掲げる事業に類するものとして政令で定める事業」というのがございます。これにいまの防潮堤は因果関係の明確な範囲において対象になると考えております。  ついでですが、そのほかに何を考えているのかということをちょっと申し上げておきますと、好ましいことではありませんが、現にそういうことも起こりつつあります学校の移転あるいは住宅の移転等も考えております。工場の移転は考えないのかということでありましょうが、工場の移転は現在、昨年改正しました事業用買いかえ資産の特例の中で、事業者が移転する場合においては買いかえ資産の特例が残っておりますから、そちらのほうで意思を決定しさえすれば対象になるということで、工場の移転ということは考えておりませんが、そういうところまで考えておるわけでございます。
  405. 米原昶

    ○米原委員 そうしますと、私はこれで一応質問を終わりたいと思いますが、最初に申しました点ですね。やはり全体としては、いままでと比べれば確かに企業負担させる、それは義務になっておる。いままではこういう事業をやると企業も金を出している。しかし、寄付という形で出して、義務的なものじゃない。これを義務づけた。そういう意味での企業が一部責任を持たなくちゃならぬ。こういうことにしたという点は公害罪が実際の適用になるといろいろ問題があるし不明確なところがありますが、公害は犯罪である、これはそういう面では一歩前進だと思うのですよ。しかし繰り返して申しますが、公害を引き起こした原因の企業はまず全面的な責任を負うのが原則であって、本来はそれが費用を全部出すのだ。ことに工場内の防除施設は全部出さなくちゃならぬ。しかし排出基準に合っていたといっても、排出されるものが積もっていくとやはり公害を起こすわけですから、その範囲では防止事業ということが必要になりますね。そういうものもまた分担するというようなことは、原則を明らかにしませんと、法律全体を読んでみましてもその原則がここに書いてない。これに書くのではなくて、基本法に書くべきだろうと思いますが、基本法のところも「責務を有する。」というのでことばが非常に抽象的です。防除施設をつくる責務を有するというような言い方で、つくらないでそして被害を起こしたら罰せられるのだ、義務なんだという書き方に改めないと、実際は運用の過程でこれが企業のしりぬぐいの法律になる危険ははなはだ多い。これが抜けていると、それを主とした法律体系としてなっているというふうに私は考えるものであります。この点について山中長官がさらに一考されることを希望しまして、私の質問を終わります。
  406. 加藤清二

    加藤委員長 次回は明八日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時三分散会