○林(百)
委員 私は、日本共産党を
代表して、ただいま議題となっております
公職選挙法の一部を
改正する
法律案に対し、反対の意思を
表明するわけでございます。
先ほど、
自民党の奥野
委員からの発言がありまして、
京都で行なった
選挙の引例がございました。事は
選挙であり非常に重要でありますから、私も意を尽くさしていただきたいと思います。先ほどの奥野
委員の発言の中で、
婦人の中からもシンボル・マークなどは
制限すべきであるという意味の
意見が出た、こういうような御発言がありました。しかし、
参議院の
公職選挙の
特別委員会が
京都に出向きまして、直接
府民と会って
調査した結果によりますと、そのときの
婦人代表である
上京区の
連合婦人会の
会長はこう言っているわけですね。「
選挙公害であったといわれるが、
ビラは読みたくなければ捨てればよい。今まで無関心であった人も
政治、
地方自治を身近かに感じ、
政治意識を向上させ、
学習討論に利用するなど
効果があった。
政策の
争点も明らかとなり、
自覚ある
真実の
投票ができた。これは正しい
選挙の第一歩ではないか。シンボル・マークも自主的に着けたのであって、そのことによって
自覚を高め、
意識の向上に役立った。」こう言っておりまして、奥野
委員の言っていることとは全く反対のことを、これは
権威ある
参議院の
公職選挙特別委員会が特別共都へ行って
調査した
報告であります。さらにその
報告を見ますと、「
選管側の
選挙管理のうえからの
規制意見とは対照的に、
地元代表側は、自由にして
明朗豁達な
選挙へ移行するための
一つの過程として、
選挙公害も否定することなく、その
可能性を前向きに受取っているように思われたのである。」要するに
選管側の
規制的な
意見とは対照的に、地元側ではこれを積極的にさらに発展させるべきだ、こういう方向をそういうように受けとめたという
報告がちゃんと出ております。また同じ
報告の中で「また、今回の
選挙においては、その性格が開放的で、買収、供応などは一件もなく、
有権者の
自覚を高め、
政治意識を向上させた点も事実でありまして、この点は、
地元代表側が一様に認め」る、こう言っておるわけでございます。したがって、奥野
委員の発言が意味があるとすれば、自分の思うようにいかなかった、結局
京都の
選挙が負けてしまったから、これでは
政策と
政策の自由な戦いを許しておくならば、これは統一候補という
候補者の側に勝つ見込みがないから、その手をしばる必要があるのだ、だからこの
法案を出すのだという意味以外にはとれないと思うのであります。周知のように、本
改正案提案の
理由は、
京都の府
知事選挙において
ビラ宣伝など目に余る
行き過ぎがあったので、それを
規制するということであります。またそのことによって金がかかり過ぎることを防ぐため、こういうことを
理由としておるのであります。
そこで、第一の、目に余る
行き過ぎという問題でありますが、
民主主義制度のもとでの
選挙活動の基本は、
政策と
政策の争い、これが基本であります。これ以外に
選挙の基本的な
活動というのはあり得ないのであります。それによって
国民の審判を受けることであります。したがって、それぞれの
政党あるいは
候補者は、みずからの
政策を
国民の問題
意識あるいは関心に即して具体化し、広く深く訴えていく義務があるし、また
国民の側からはそれを知る権利があるし、そしてその知る権利に基づいてみずからの
判断の材料とする権利を持っているわけであります。これを奪うことは、
国民の固有の権利を奪うことになるわけであります。本
法案はそのようなことを行なっておる。そしてこれは日本国憲法の基本的な精神をおかすことにもなると思います。だからこそ第五次
選挙制度審議会の
答申も、
政党本位の
選挙においては
言論、
文書による
選挙運動は
選挙運動の最も本来的なものとして、
選挙運動が公正に行なわれるための
最小限度の
規制を限き、
自由化すべきだということをはっきり言っておるのであります。そしてこのことに基づいて、
自民党をも含めて、この
現行法を昨年の六月に成立させたはずであります。その後、
自民党まで含めて成立させた
法案をこのように
政策発表の自由の手をしばらなければならない
理由というものは何かといえば、これはもう
京都で自分が負けたから相手方の正しい手をしばるなんということはひきょうきわまるやり方である。だから、各
新聞の
社説からも
党利党略だということをはっきり言われているわけであります。わずか一年もたたないうちにこの
公職選挙法の一部
改正を企てた。これをよく考えてみますと、佐藤総理も本
会議で、目に余る
ビラ合戦と言っております。
しかし、これは一体何をさすのか、もう少し深く考えてみますと、もし
京都府
知事選挙に際してこの大量の
ビラの
配布が問題になるとするならば、それは
政党の
政治活動、
選挙活動とは全く言うに足らない、個人あるいは団体に対する
自民党側の行なったデマ、
中傷、仮処分でとめられてまでいるようなそういう謀略的な
宣伝ビラ以外の何ものでもないじゃないか。たとえば
柴田派の「若い
京都」の号外として出された「赤軍による日航機乗っ取り!これが
共産主義の正体だ!」という
ビラ、これは全く
政策と
関係のない
ビラである。こういうものが大量にまかれている。これは典型的な一例であります。
さらに
京都府
知事選挙の
経過を調べてみますと、
選挙活動の本来の姿である
政策と
政策による争いでは太刀打ちができない、みずからの欺瞞的な
政策ではとうてい多くの
選挙民の支持を得ることができないという
自民党柴田派が、非常に卑劣なデマや
中傷や謀略
宣伝をしたいほうだい行なったことに対して、共産党や社会党その他明るい
民主府政をすすめる会に結集した
民主勢力が堂々とした
政策と正当な反論を行なった、これが事実であります。
正当な反論、
政策に敗れた
自民党は、今度は手のひらを返すように、あたかも
京都府
知事選挙が両派による目に余るどろ合戦であるというような、こういう口実を描き出して、本来の
選挙活動の基本である
政策宣伝を大幅に
規制しようとする、これが本
法案を
自民党が出してきた本性である、こう言わざるを得ない。
これは、
京都府民さらには
世論の動向を無視したものであって、
政府みずからの諮問機関である第五次
選挙制度審議会、これは私が幾度も言っていますけれども、この意向を無視したものであって、
民主主義そのものの基本的精神を踏みにじる以外の何ものでもないと思うのであります。わが党は、このようなねらいを持つ本
改正案を断じて許すわけにはいきません。まずこれが第一の
理由であります。
第二に、金がかかるという問題があります。これもこの
委員会で論議されました。本来、
選挙において金がかかるというのは、買収や供応などの不正手段によって
有権者の票をかすめとろうとするからこそ金がかかるのであります。これが最も大きな
原因であります。正当な
政策宣伝活動によって金がかかるというようなことはあり得ません。もし正当な
政策宣伝活動をさして金がかかるというならば、それは買収や供応などの不正手段をあいまいにさせることであって、これは正当な
選挙活動を
規制することになる口実にすぎないのであります。
京都における府
知事選挙は、
政策宣伝活動が広く行なわれて、
有権者の
政治的関心が高められた、このことは先ほど私が
報告したとおりであります。その結果、買収や供応など不正手段による
選挙は一件もなかったという
報告がなされているのは御承知のおりであります。
参議院の
公職選挙法の関する
特別委員会の現地における
調査も、そのことが先ほど私が読み上げたように
報告されております。また地元側
代表の
意見が正しく指摘しているところであります。すなわち、すべて明朗濶達な
選挙であり、
選挙公害を乗り越えてもこのやり方を続けることが
民主主義選挙を完成する過程である、こういうふうに位置づけて
評価しているわけであります。さらには両候補の
政策の対立を知る機会を十分持つことができるとともに、汚職や買収など一件も起こる余地がなかった。要するに
政策を堂々と両派が明らかにして、この
争点で争えば、汚職や買収など一件も起こらない、金は全くかからない。だから、金がかからないということは
政策発表の機会を十分に保証してやるということであります。
制限するということは、これは逆であって、かえって金のかかる道を開いてやることになるといわざるを得ないのであります。
政府がこのような
参議院の
公職選挙特別委員会の
調査報告結果をあえて無視した真の意図は、金がかかり過ぎるという口実で正当な
政策活動を
規制することにあるということは、もう明白だと思います。もし真に金がかかることを防ぐつもりであるというならば、買収、供応など不正手段につながる独占資本との腐り切った
関係を断ち切るために、先ほど
同僚委員からの話もありましたように、
政治献金を
規制する
政治資金規正法をすみやかに
提出したらいいじゃないでしょうか。わが党は
政府・
自民党がこのような重大な問題にほおかぶりして、本
改正案を強引に成立させようとすることを断じて許すことはできません。これが第二の
理由であります。
第三には、本
改正案によれば、
確認団体が頒布することができる
政治活動用
ビラは三
種類、二
種類に限るというこの問題であります。
もしこのようなことになるならば、デマや
中傷や謀略
ビラが不法にも多数発行されたという場合に、それに正当に反論する道が閉ざされる。このことは先ほどの私の
質問でも明らかになったのでありますが、そういうことになってしまう。かりに三回ももう
ビラを出してしまった、その
あとで
中傷、謀略の
ビラが不法に出された場合、それを反駁する道が全く閉ざされている。また
ビラの
種類をこのように限定するためには、その
ビラを検討し、確認するために
自治大臣あるいは
選挙管理委員会がこれを実質的に検閲するという事態が起きてくると思います。これは実質的には検閲制度の復活を促すものであり、検閲をしてはならないという憲法の精神を踏みにじることになると思います。これはまた
政党の自主的な
活動を
規制する実質的な
政党法の制定への第一歩でもあり、
民主主義の根本を侵す重大な問題であります。
政府は、この
選挙法一部
改正案を契機として、いわゆる金のかからない
選挙、
政党本位の
選挙と称して、
政党法の制定を検討している、そしてこの次の
選挙制度審議会にこのような意向を含んで
答申にかけたいということは、本
委員会の質疑でも明らかになったところであります。
さらに、本
改正案が議会制
民主主義を破壊し、
与党の専制を確保し、憲法を
改正して戦争への道を歩ませる小
選挙区制の実施をはかろうとすることにも通ずるということを、われわれは深く警戒せざるを得ないのであります。一九七〇年代のわが党及び
民主勢力の前進に直面した
政府自民党が、それへの対策として打ち出したものである。この
法案が小
選挙区制にも通じてくるということをわれわれは十分警戒せざるを得ないのであります。これが私
たちが反対する第三の
理由であります。
最後に、いま真に
民主主義的な
選挙制度を確立するために必要なことは、以上指摘してきましたような謀略的な
公職選挙法の改悪ではなくして、再度強調しますけれども、
選挙を最も毒する汚職、腐敗、買収などを根絶し、財界からの
政治献金を一切根絶させる、そのための
政治資金規正法を直ちに制定し、
国会に
提案する、また人口の移動に伴って生じたそれぞれの
選挙区におけるあまりに不合理な定数の不均衡を是正する問題であります。このような重大な問題に手をつけようとせずして、しゃにむに今
国会において、
政党の本来の
活動である
政策発表の
ビラを三
種類、地方
議員の
選挙では二
種類、このような
制限をして、これを押し通そうとするということは、われわれは断じて許すことができないと思います。
このようなことは、幾度か申し上げますけれども、
政府・
自民党の
党利党略によって、
民主主義そのものの根本を侵すことになり、全く反動的な本
法案だといわざるを得ないのであります。わが党はもとより、
民主主義を愛しておるすべての
国民は、断じてこれを許すことはできません。
わが党は、ここに
政府・
自民党の猛省を促して、このような
法案は直ちに撤回することを強く要求いたしまして、私の反対討論を終わります。
(拍子)