○佐野
委員 先日来いろいろ法案をめぐりまして真剣な討議がかわされておるわけですが、私、そうした
論議を聞きながらやはり
感じますことは、
公害というものは発生してからではもうおそい。発生すれば八〇%敗北だ。ですから、今日
公害対策を皆さんが苦労しておられ、
政府も
関係者も一体となって努力しておられるのですけれ
ども、いまたいへんな問題に当面しており、
公害が起きているという現実の中で私たちは幾多の教訓を学んでおるわけです。そういう意味からいたしましても、やはり
公害というものは発生しない前に予防措置をとる、発生しない前に規制をするということでなければならない。このことを
考えるわけですけれ
ども、そこで
大臣は、やはり閣議の中におきましてもこれを主張していただきたいし、どうしても今日の
公害を予防する、事前に規制をするという立場に立っていろいろ発言していただきたい、かように
考えるわけです。
と申し上げますことは、先日産業
公害対策特別
委員会で山中長官なり各省の方々といろいろ質疑応答をいたしましても、その点に対しては
建設省のほうがいろいろな問題でどうも一歩前進している、いろいろな経験を持っておられると私は思うのです。ですから、やはりそういう経験を生かして問題の対処に当たっていただきたい。そういう意味で私は
公害の問題を
考えますときに、建築基準法が長い国会の中でいろいろな問題を呼び起こしながらも一応通過いたしましたが、あのときにおける
論議、そういうことがいま非常に
参考になるのじゃないか。特に、住宅問題におきましても、違法建築というものが非常に大きな問題となると同時に、現に違反建築をされて、そのような状態になってしまっておることに対しては、
都市再開発なり、あるいは区画整理なり、
都市改造なり、たいへんな経費とたいへんな問題にぶつかる。同時に、違法建築に対しましては、もう違法建築ができてしまってからではたいへんだから違法建築が起こらない前に、事前の規制あるいは事前の予防
対策をどうするかということで、
論議もそこに集中されてまいっただろうと思います。そういう中で
論議され、そこで国会の意思としてもまとまり、
政府としても、その中においてとるべき今後の措置としていろいろな点が明らかになってまいったわけですが、そういう問題点の二、三を申し上げて、
大臣の所信を一応伺っておきたいと思います。
と申し上げますのは、
一つは執行罰の問題についてでありますが、今日の
公害関係諸法案を見てまいりますと、
行政罰が科せられておる。しかしながら、執行罰という制度を採用いたしていないわけです。少なくともやはり違反建築に対する措置として、この不作為義務と申しますか、たとえば
公害の場合におきましても届け出をする。それを虚偽の届け出をした場合においては処罰をする。また届け出ない場合にもやはり処罰、
行政罰の
対象になっておるわけですが、しかし、届けなくて実はどんどんと工事を事実上やっておる。これが今日における慣行とまでなっておるのじゃないか。ですから、労働基準局が調べましたところの一万三千六百六十五の
事業所の中において、排気におけるところの清浄装置を持っていないというものがまず七割からある。ほとんど出しっぱなしだということが明らかにされておるわけですが、同じようなことを私たち
考えてみるべきじゃないか。そうした場合に、起こってしまった、届け出をしなくてやったんだというものに対しては処罰をするのだ、だからいいではないかと言う。届けたから、ここにおきましていろいろな規制をやる。場合によれば改造命令なり改善命令を出す。それまでは
事業停止をする。けれ
ども、それを、何だ、おれのところはやらなくちゃいけないんだ、
計画がもうできてしまっておるじゃないか、用地も買収したのだ、それ始めろという形において始まってくる。これは建築の場合もやはり同じことだと思うのですがね。土地を買った。そとに、基準法上におけるところの、人の健康、環境のためのいろいろな基準が国で設けられておる。それに従って建築確認申請をすればいいわけですけれ
ども、そんなことやっちゃいないというのが違反建築をばっこさせた大きな原因なんですが、その場合に一番問題になってまいりますのは、そういう処罰があるからいいじゃないかというのじゃなくて、そういう不作為の義務、やっちゃならぬぞ、あるいはまた停止しなさい、こういう場合に、これを聞かない場合に処罰をする。当然これは裁判に訴えなくちゃならない。時間がかかってまいる。相手は、それだけの罰金を払えばいいじゃないか、だから工事を進めてまいる。進めてまいりますときには、もはや完成してしまう。完成してまいりますと、実は、建築の場合におきましては、人の居住だと生活権の問題が出てくる。同じく工場の場合におきましても、人員は採用されておる。やはり従業員のことも
考えなくちゃならない。資金
計画もできてしまって、もう投入されておるのだ。これを変更を命ずるということはたいへんな問題となって出てまいる。ですから、事前にこれを押えるために執行罰の制度を導入する。この点につきまして
大臣、非常に誤解されておるわけですね。執行罰というと、何か、罰金を取る、罰金が二つつくじゃないかという誤解をされておるわけなんですけれ
ども、終戦後の国会の中において
行政執行法というものが廃止になったときに、
一般法として手続として執行罰を持ってもいわゆる実効性がないじゃないか、だからこれは一応廃止する、しかし、特別法の中でやはり執行罰というものがとられてもよろしいのだという
考え方が明らかにされておるわけです。ですから、
考えてまいりますと、この執行罰というのは過料にすぎない。ですから、これをやってはいけないというのにやる場合に、一日幾らずつ罰金を、過料をふやしていく。そうすることによって、罰金を払えばいいじゃないか、実はおれ知らなかったのだ、だからやったというのじゃなく、もう停止をやる。そういう場合に執行罰をかけることによって、一日幾らだと、これは
建設省関係の砂防法の中に現在まだ生きておるわけです。ですから、そういう制度を採用することによって、違反建築の場合でも、
公害の違法な工場の
建設に対しましても、事前に規制することができるのじゃないか。こういう意味においては、執行罰という問題につきまして、きのう
質問いたしましても、何か罰金と勘違いしておられたり、あるいは反則金のようなものかという誤解があって、執行罰に対する理解は非常に薄いわけですけれ
ども、英米法の中においては、事前に措置する不作為義務に対して強制執行をやるという場合に、やはり執行罰が一番有効な手段じゃないかというので、英米法においてもずいぶん取り上げている。ドイツ法の中においても最近多くなってきておる。先般におけるニクソンの教書の中でも、執行罰一日幾らという制度をとるべきであるといっている。これは
日本から見ますと、非常に限定が甘い中でやるのですから、
日本の場合には非常に問題があるといたしましても、執行罰というものは採用さるべきではないか。
大臣、こういう点を
建設委員会の中で
論議いたしたわけです。他に有効な方法があるだろうか、できてしまえばしょうがないじゃないか、作為義務を科する、いわゆる移転させる、あるいはまた代執行によってこれを取り除く、こういうことができるから必要ではないじゃないかというのが法制局の意見だったのですけれ
ども、実際問題として、もうでき上がってしまったら、それをこわすなり何なりするというのは、ほとんどこれは代執行というものがやりにくいことは建築の場合ももう一緒だと思いますね。
昭和二十三年に八千件違反建築があった。その中において代執行をやったのはわずか四件だ。と同時に、
大臣、届け出だからいいんだ。しかし、届け出しなくてやるというのは現在ほとんど慣行化されておる。そういう中で、それを押えようとする場合に、告発すればいいじゃないか、検察権が発動すればいいじゃないかといっても、違反建築の場合もそうですが、今日の
公害のこういう問題に対しまして、取り上げて研究するというひまに工事はもうどんどん進んでいってしまうわけです。だから、違反建築の場合でもほとんど検挙されていない。八千件のうち検挙したのはわずか二十件だ。あとは警察に訴えても、ほとんどがまあまあということで、そのうちに建物ができ上がってしまう。こういうことですから、法制局の皆さんの言われる摘発をどんどんやればいいじゃないかというのは、実効性がほとんどあがっていない。また、今日の警察なり検察の中においても、
公害に対する科学的な判断なり何なりをするための
機関を持っていない。調査部門を持っていないという中で、摘発だとかなんとかというのをやったって、これはほとんど取り上げられないのが現状じゃないか。だとするなら、やはりここで
行政的な強制執行としての執行罰が必要になってくるんじゃないか、こう
考えるのだが、この点は、官房長が、幸いにして当時におけるところの住宅
局長であり、その
論議をよく御存じなわけですから、そういう点を、ひとつ閣議の中においても、執行罰というのは常識的な意味における罰を科するのではなくて、不作為の義務に対する停止なんだ、こういう点をひとつ明らかにして
——しろうと用語ですから非常に誤解されますけれ
ども、
ほんとうはこうなんだ、こういう制度を採用してみたらどうだということは、建築基準法の場合も
論議いたしまして、やはり現在における
日本においてやっていないし、やれといってもなかなかなじまない面があるからひとつ研究させてみろ、ぜひそういう方面に
検討したいということになればこれを法律の中に入れようじゃないかというので附則の中に
検討条項を
——法律の中に
検討条項というのは実はおかしいわけです。やるものはやればいいのに、
検討条項というのはおかしいのですけれ
ども、ひとつ入れようじゃないか、こういうことで執行罰というのが非常に大事なかぎになるんじゃないか。そこで
検討するという
検討条項を附則の中に入れたわけです。そのことも
政府内部にちっとも理解されてないわけですから、
質問しても何のことか意味がわからない。こういう点に対して
大臣としてひとつやっていただきたい。これに対する
大臣の所見を伺っておきたいと思います。